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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ミエリンナノ小胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/30 20150101AFI20230613BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230613BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K35/30
A61K47/46
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/28
A61P25/16
A61P37/02
A61P27/02
A61P21/00
A61P29/00
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568701
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2021054046
(87)【国際公開番号】W WO2021229461
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020000010888
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502346002
【氏名又は名称】コンシッリョ ナツィオナーレ デッレ リチェルケ
【氏名又は名称原語表記】CONSIGLIO NAZIONALE DELLE RICERCHE
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ピッコーネ パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ヌッツォ ドメニコ
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ ファビオ サルヴァトーレ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC07
4C076EE41
4C076EE57
4C076FF34
4C076FF43
4C076GG41
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BB45
4C087CA06
4C087MA21
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA16
4C087ZA20
4C087ZA33
4C087ZA94
4C087ZB08
4C087ZB11
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA61
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA71
(57)【要約】
本発明は、ナノ構造ミエリンのナノ小胞、ならびに、中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の脱髄疾患および神経変性疾患の治療におけるそれらの使用に関する。別の態様では、CNSまたはPNSのための薬物送達システムとして、かつ免疫寛容のために、髄鞘の回復に適した特定の特性を有するミエリンナノ小胞の調製のための方法が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するミエリンナノ小胞であって、前記ナノ小胞はミエリンを含み、前記ミエリンは、70%~85重量%の脂質および15%~30重量%のタンパク質を含む、ミエリンナノ小胞。
【請求項2】
前記ミエリンが脳組織から抽出されたものである、請求項1に記載のナノ小胞。
【請求項3】
前記タンパク質が、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ、カルモジュリン-1、およびミエリン関連糖タンパク質を含む、請求項1または2に記載のナノ小胞。
【請求項4】
前記脂質および前記タンパク質が、天然の構造および立体構造にて存在し、かつ、融合、酵素切断、スペーサーまたは官能基の結合または付加、架橋からなる群から選択されるいずれの物理化学的修飾も受けていない、請求項1~3のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項5】
90~110 nmの範囲の平均直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項6】
-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項7】
物質または分子が積載されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項8】
前記物質が、薬物、造影剤、蛍光プローブ、サイトカイン、成長因子、抗酸化剤、抗炎症剤、免疫調節剤である、請求項7に記載のナノ小胞。
【請求項9】
薬剤として使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項10】
中枢神経系および末梢神経系への薬物および治療上活性な生体分子の運搬(薬物送達)のためのビヒクルとして使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項11】
脱髄疾患の治療における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項12】
前記脱髄疾患が、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチーおよびレーベル遺伝性視神経症である、請求項11に記載の使用のためのナノ小胞。
【請求項13】
免疫寛容における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項14】
中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患の治療における使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項15】
前記中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症である、請求項14に記載の使用のためのナノ小胞。
【請求項16】
以下の工程を有する、ナノ小胞の調製のための方法:
a.水性溶媒中に、0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度でミエリン分散液を調製する;
b.Ultra-Turraxを用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で5~15分の範囲の時間、工程a.のミエリン分散液をホモジナイズして、ホモジナイズされた分散液を得る;
c.超音波処理器を用いて、35~45 kHzの強度で1~15分間、工程b.のホモジナイズされた分散液を超音波処理し、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するミエリンナノ小胞を得る。
【請求項17】
工程b.の間、水と混和性を有する有機溶媒中にあらかじめ溶解されたミエリンを水性媒体中に注入して、工程a.のミエリン分散液が調製される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下の工程を有する、ミエリンナノ小胞の調製のための方法;
a.極性溶媒中に、0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度でミエリン分散液を調製する;
b.工程a.のミエリン分散液をマイクロミキシングのためのマイクロ流体チップに0~5,000 μl/分の流量で流し、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するミエリンナノ小胞を得る。
【請求項19】
前記工程a.のミエリン分散液が脳組織から抽出されたものである、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程c.から得られたミエリンナノ小胞を凍結乾燥し、凍結乾燥されたミエリンナノ粒子を得る追加工程を有する、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ小胞が、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、前記ナノ小胞がミエリンを含み、前記ミエリンが、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法によって得られるナノ小胞。
【請求項22】
前記タンパク質が、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ(P13233)、カルモジュリン-1およびミエリン関連糖タンパク質を含む、請求項21に記載のナノ小胞。
【請求項23】
前記ミエリンがナノ構造化されている、請求項21または22に記載のナノ小胞。
【請求項24】
90~110 nmの範囲の平均直径を有する、請求項21または22に記載のナノ小胞。
【請求項25】
-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有する、請求項21~23のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳組織から抽出されたナノ構造のミエリンに基づくナノ小胞、ならびに中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の脱髄および神経変性疾患の治療におけるその使用に関する。別の態様では、CNSまたはPNSのための薬物送達システムとして、損なわれた髄鞘の回復に適した特性を有するミエリンに基づくナノ小胞の調製のための、および、免疫寛容のための方法が記載される。
【背景技術】
【0002】
脱髄疾患は、神経細胞を取り囲むミエリンの障害を特徴とする疾患の大きな群を形成する。脱髄した軸索は、損傷、変性、および死を受けやすく、破壊的な障害をもたらす。遺伝学、感染性病原体、自己免疫反応、および他の未知の因子は、脱髄疾患を引き起こし得る。
【0003】
多発性硬化症(MS)は、免疫防御の異常反応を特徴とする、中枢神経系に影響を及ぼす脱髄性かつ神経変性の疾患である。
【0004】
免疫系によって引き起こされる炎症プロセスは、ミエリン(神経線維を取り囲み、絶縁する鞘)を損傷し得る。脱髄と呼ばれるこのプロセスは、プラークと呼ばれるミエリンの損失または損傷の領域をもたらし得る。プラークは、炎症初期から慢性期に進展させ得、その場合、プラークは瘢痕様の特性(硬化症という)を示す。
【0005】
他の脱髄疾患は、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィーおよび副腎脊髄ニューロパチー、レーベル遺伝性視神経症である。
【0006】
再ミエリン化プロセスは、損傷した軸索の周りのミエリン層を再構築することを含む。ニューロンおよび神経線維のミエリンの修復およびその再構成を促進し、結果として生じる神経変性を防止することを目的とする治療法は、依然として知られていない。再ミエリン化の分野における最近の研究は主に、アメリカ食品医薬品局および欧州医薬品庁によって他の疾患のために既に承認されている薬物の再解析にフォーカスしてきている。一方、オピシヌマブおよびGNbAC1のようなモノクローナル抗体等の新たな薬剤は、完全に新規かつ非従来的な経路を標的とする。それらのうちのいくつかは既に臨床試験されており、再ミエリン化および神経変性/神経保護に有益な効果を発揮することが見出されている。(Kremer et al., 2019, Cadavid et al., 2019)。
【0007】
さらに、ミエリン破壊をもたらし、多発性硬化症に関与する自己免疫反応が、応答(免疫寛容)を「仲間」として誘発する抗原(Ag)を認識する免疫系を教示する治療のおかげで、強力に含有され得る。このタイプの治療に対する第1のステップは、自己反応性免疫を誘発する標的抗原を同定することである。MSにおける抗原は、患者間で異なり得、同じ患者において多様であり、かつ、自己免疫反応の特異性は、1つの初期有髄抗原エピトープから別のエピトープまたはAgにシフトし得ることが知られている。病原性応答の抗原特異性における進化のこの概念は、「エピトープスプレッディング」と呼ばれる。
【0008】
MSの動物モデルにおける有髄ペプチドを用いた許容試験は、安全であり、免疫調節反応を誘導可能であることが示されている(Lutterotti A, et al. 2013)。(https://bit.ly/2W3u6H0e https://bit.ly/2W2kufSも参照)。実験研究では、髄鞘の主要なタンパク質の1つであるミエリン塩基性タンパク質(MBP)全体またはその断片を、MSにおける治療戦略として試験した(Goverman J.M. 2011)。MBPタンパク質は、ミエリン膜の外因性タンパク質であり、したがって、脂質と関連する。MBPは、天然変性タンパク質として、水溶液中の伸長した構造から、脂質との相互作用によって引き起こされる整った二次構造の要素を有する自己集合タンパク質への構造変化を受けることが知られている。さらに、MBPファミリーは、多数のアイソフォームを含み、複雑な一連の翻訳後修飾を受け、C1~C8成分と称される電荷異性体をもたらす。MBPの重要な翻訳後修飾は、脱イミノ化、すなわちペプチジルアルギニンデイミナーゼによるアルギニンのシトルリンへの酵素的変換である。脱イミノ化は、タンパク質の実効正電荷を減少させる(Doyle and Mamula 2001, 2002)。したがって、多発性硬化症の病理における重要な役割を果たすのは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)それ自体ではなく、髄鞘の脂質からなるその本来の環境とのその相互作用、またはその異なるアイソフォームもしくは翻訳後修飾であることが知られている(Doyle and Mamula 2001, 2002)。
【0009】
抗原エピトープは、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質と脂質との相互作用によるものであり得、または脂質自体もしくはまだ同定されていない糖脂質を含み得、さらに複雑なものとなっている。全体として、MSにおける関連するAgのアイデンティティは未知のままであり、Agについての知識のこの欠乏は、MSのための有効な治療の開発を妨げる。
【0010】
近年、血液脳関門を克服する能力のために、小胞またはナノ粒子が、中枢神経系を含む疾患(Picone et al., 2016e 2018)や一般的な治療に関する問題(Croese et al., 2018;Casella et al., 2018)に対する薬物の送達のための有益なツールとして提案されている。従来の方法と比較して、薬物送達システムは多くの利点を有する;実際に、それらは、薬物を特定の部位に選択的に送達し、分解から保護し、放出を制御し、有害な全身性副作用を回避し、適切に設計される場合、生物学的な障壁を越えることが可能である(Picone et al., 2016)。これらの利点の全ては、より大きな患者コンプライアンスを伴い、治療投与量および投与頻度の低減を可能にする。しかしながら、ミエリン修復に適した薬物装填または非薬物装填ナノ担体/小胞の使用は、医学の背景には未だ存在しない。
【0011】
したがって、本発明の目的は、一方で、髄鞘の再構成によって神経細胞および神経線維の修復を促進し、損なわれた機能の回復および結果として生じる障害の低減をもたらす効果的な治療を提供することである。他方、中枢神経系への薬物の放出および免疫寛容の発現のための有効な治療を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を有する、動物脳組織から抽出されたミエリンから出発して生成されたミエリンナノ小胞に関する。
【0013】
特に、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、ナノ小胞と称され、ナノ構造ミエリンを含み、前記ミエリンが70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む、ナノ小胞が記載される。
【0014】
特定のプロトコールによって生成されたこれらのナノ小胞は、球状の形態を有し、髄鞘に典型的な脂質およびタンパク質を示す。実際に、髄鞘の主要タンパク質(ミエリン塩基性タンパク質またはBMP、ミエリンプロテオリピドタンパク質またはPLP、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質またはMOG、ミエリン関連糖タンパク質またはMAG、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼまたはCNP)に加えて、ナノ小胞は、天然の条件下(立体構造、アイソフォーム、エピトープ露出、およびAg-脂質相互作用)で脂質構造中に存在する400を超えるタンパク質を天然に含有する。したがって、ミエリン小胞は、全てではないが大部分の関連ミエリン抗原を含有する。起源(脳組織)、性質(ミエリン、すなわち脂質およびタンパク質を含む)、調製(物理的プロセス)、物理的化学的特性、および生物学的特性(天然立体構造における様々なミエリン抗原の存在、脂質の存在、抗原-脂質相互作用)による小胞は、脱髄疾患の分野における潜在的かつ革新的な戦略を表す。このナノ小胞をMyVesと命名した。
【0015】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するためのミエリンナノ小胞の使用に関する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、脱髄疾患の治療のためのミエリンナノ小胞の使用に関する。
【0017】
さらなる態様では、ミエリンナノ小胞の調製のための方法が記載され、これは以下の工程を有する:
a. 0.1 mg/ml~10 mg/mlの濃度で、水中にミエリン分散液を調製する;
b. Ultra-Turrax(Ika)を用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で、5~15分間、工程a.のミエリン分散液をホモジナイズして、ホモジナイズ溶液を得る;
c. 超音波処理器(Bandelin)を用いて、35~45 kHzの強度で、1~15分の範囲の時間、工程b.のホモジナイズ溶液を超音波処理して、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、髄鞘に典型的なタンパク質を示すミエリンナノ小胞を得る。
【0018】
本発明は、免疫寛容における使用ならびに中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患の治療のためのミエリンベースのナノ小胞の使用をなお記載し、ここで、前記中枢神経系または末梢神経系の神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症である。
【0019】
さらなる実施形態では、ミエリンナノ小胞の調製のため方法が記載され、これは以下の工程を有する:
a. 0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度で、極性溶媒中にミエリン分散液を調製する;
b. (内相として)工程a.のミエリン分散液を、外相として水を用いて、マイクロミキシング用のマイクロ流体チップ(スプリットアンドリコンバイン型のマイクロミキシングチップ)(Dolomite, UK)に流す。この工程は、フローおよびポンプの制御ユニットとしてElveflowマイクロ流体機器を用いて、2~8 barの圧力で動作するOB1圧力調整器および0~5,000 μl/minの範囲で10 μl/minの精度で動作する流量センサを装備して実施され、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、髄鞘に典型的なタンパク質を示すミエリンナノ小胞を得た。
【0020】
この圧力によって、ミエリン溶液は内部流路に、水相は外部流路に押し出され、流量は10~200 μl/minの範囲となった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する:
図1図1は、ミエリンが抽出される動物(ラット、マウス、ウシ)脳組織から出発するMyVesミエリン小胞を調製するための工程のスキーム、ならびにMyVes、すなわち脂質およびタンパク質を含む、の代表的な画像を示す。これらのタンパク質は、脱髄した軸索または損傷したミエリン自体にMyVesを固定すること、および免疫寛容効果の両方を潜在的に担い得る;さらに、MyVesに薬物を積載する可能性が示される。
図2図2は、MyVesに存在するタンパク質と、脱髄ニューロンまたは損傷ミエリン自体によって露出されたタンパク質とで生じ得る相互作用によるミエリン修復プロセスのスキーム;ならびに、脱髄活性部位、および、ミクログリアまたは反応性リンパ球等の免疫細胞における薬物の放出を示す。
図3図3Aは、ショ糖密度勾配を用いて脳ホモジネートを遠心分離して単離し、得たラットまたはウシの脳ミエリンを含む試験管を示す;図3Bは、ショ糖を除くために水で抽出し、洗浄し、次いで、遠心分離(5,000 rpmで15分間)して、洗浄水を除去し、凍結乾燥し、凍結したミエリンを含む試験管を示す。
図4図4Aは、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)によって測定された、本発明によるナノ小胞のサイズ分布のグラフを示す;図4Bは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得たMyVesの写真を示す。
図5図5Aは、脂質との相互作用に次いで蛍光を発する親油性の色素であるナイルレッドと小胞との相互作用に次いで発せられる蛍光の強度に関連するグラフを示す。これは、生成された小胞の脂質の性質を示す。 図5Bは、脂質の性質を確認するATR-FTIR分析結果のグラフを示す。具体的には、-COOH、-NH、-OH、-CH等の主な官能基に関連するバンドが存在する、4000~2500 cm-1図5B1)と1200~800 cm-1図5B2)の2つの異なったFTIRスペクトルが分析された。4000~2500 cm-1の領域での最も強い吸収は、様々な水分子の-OH伸縮振動によるものであり、これは小胞中に捕捉された残留水の存在を示す。図5B1は、炭素水素結合(-CH2および-CH3)の非対称および対称伸縮振動に起因し得る、2930 cm-1および2884 cm-1における2つの顕著な広帯域の存在を示す(Nzai et al, 1998; Casal et al., 1984)。図5B2において、リン脂質の存在は、PO2-基の伸長による1109 cm-1および1041 cm-1における2つの主要なピークの存在によって確認される(図5B2)(Nzai et al, 1998; Casal et al., 1984)。 図5Cは、試料中のタンパク質成分の70%を含むタンパク質をパーセンテージで表した円グラフを示すが、残りの432個のタンパク質は、タンパク質量の30%のみを含む(タンパク質当たりの相対パーセンテージ<1%)。
図6図6Aは、血液脳関門(BBB)のin vitro細胞モデルのスキーム、およびこのシステムを通過する小胞の能力を示す。 図6Bは、(BBB)のモデルにおいて蛍光色素(Alex488)で標識化されたミエリン小胞(MyVes-Fluo)の交差に次いで、異なる時間に、基底チャンバーにおいて測定された蛍光に関連するヒストグラムを示す。
図7図7A-Dは、本発明によるミエリンナノ小胞の細胞適合性を決定するために、異なる投与量および時間にて投与されたそれと共に培養した、ニューロン(SH-SY5Y)、ミクログリア(BV2)、上皮(H292)および肝(HuH7)細胞の様々な細胞株の処理後の細胞生存率および細胞形態に関連するヒストグラムを示す。
図8図8は、プローブなしのMyVes(MyVes)および用いた溶媒(ビヒクル)と比較した、蛍光プローブDi-8-ANEPPSとの相互作用後のMyVes(MyVes-Fluo)が発光する蛍光強度のヒストグラムを示す。そのようなプローブは、水性媒体中で弱く蛍光を発光し、膜等の親油性環境に結合すると、高度に蛍光を発光する。これは、分子/薬物を積載するMyVesの能力を示す。
図9図9Aは、細胞体、樹状突起および無髄軸索からなる灰白質の外層、ならびに主に有髄軸索からなる白質の内核からなる哺乳類脳の矢状断面を示す(下部に示される)。 図9Bは、灰白質または白質とMyVesとで生じ得る親和性を試験し、理解するために、Alex488で標識化されたMyVes(MyVes-Alex488、「MyVes-Fluo」)と共にインキュベートされた、400~500μm厚の脳切片の写真画像を示す。脳切片中の髄鞘をナイルレッド蛍光色素(「NileRed」)で標識した。蛍光スキャナーを用いた可視化によって、MyVes-Alex488(「MyVes-Fluo」)はナイルレッドと同じ領域に位置し、したがって、白質中の髄鞘と相互作用するMyVesの能力を示した。 図9Cにおいては、蛍光顕微鏡によって可視化されたミエリン繊維とMyVesとの相互作用が見られる。
図10図10Aは、Alex488蛍光プローブで標識したMyVesで処理した後のニューロン(SH-SY5Y)、ミクログリア(BV2)、上皮(H292)および肝(HuH7)細胞によって発光された蛍光の強度のヒストグラムを示す。 図10Bは、Alex488蛍光プローブで標識したMyVesで細胞を処理した後の、処理4時間後および24時間後の、蛍光顕微鏡法によるニューロン(SH-SY5Y)、ミクログリア(BV2)、上皮(H292)および肝(HuH7)細胞によって発光された蛍光の存在および局在を示す。円形の図は、拡大図を参照する。これは、分子/薬物を細胞、特にミクログリアに送達するMyVesの能力を示す。
【発明の詳細な説明】
【0022】
したがって、本発明は30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するナノ小胞に関し、前記ナノ小胞はナノ構造ミエリンを含み、前記ミエリンは70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む。
【0023】
本発明は、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を有する、動物(マウス、ラット、ウシ)またはヒト脳組織から抽出されたミエリンから出発して生成されたミエリンナノ小胞に関する。特定のプロトコールによって生成されるこれらの小胞は、球状の形態、30~200 nmの範囲の平均直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、前記ミエリンナノ小胞は、髄鞘に典型的な脂質およびタンパク質を示す。実際に、ミエリンナノ小胞は400を超えるタンパク質(442)を天然に含有し、その中で最も代表的なものは、試料中のタンパク質成分の70%(パーセンテージで)を占め、ミエリン塩基性タンパク質(P02688)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(P60203)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(Q63345)、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ(P13233)、カルモジュリン-1(P0DP29)、ミエリン関連糖タンパク質(P07722)であり、一方、残りの432のタンパク質はタンパク質量の30%(相対パーセンテージ<1%)を占める。
【0024】
これらのタンパク質は、天然条件下(立体構造、アイソフォーム、エピトープ露出、およびAg-脂質相互作用)で、脂質構造中に存在する。したがって、ミエリン小胞は、全てではないが大部分の関連ミエリン抗原を含有する。
【0025】
したがって、本発明の小胞は、脳組織に由来し、物理的プロセスを介して生成され、天然の立体構造にて相互作用する脂質およびタンパク質を含み、物理的化学的特性(サイズ、ゼータ電位、形態、および安定性)および生物学的特性(天然の立体構造における様々な有髄抗原の存在、脂質の存在、抗原-脂質相互作用、(BBB)モデルを透過する能力)を有し、脱髄疾患の分野における生物医学的用途に適したものとなる。
【0026】
国際公開第2017/120222号は、組織に由来しない、リンカーによって分離された融合タンパク質を含む合成ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)粒子を記載している。本発明のナノ小胞は、脳組織に由来し、国際公開第2017/120222号に記載されている粒子とは異なり、固有の物理化学的特性、組織化、相互作用、エピトープの露出、および様々な治療可能性を与える天然環境(タンパク質-脂質相互作用)において、膜様の脂質構造およびタンパク質を有するミエリンを含む。本発明のナノ粒子の特定の立体構造は、損傷したミエリンの置換、免疫寛容、ならびに、脱髄疾患および/または中枢神経系の疾患に対する薬物の放出における有効性を可能にし、したがって、従来の薬物投与と比較して治療の有効性および安全性を改善する。
【0027】
本発明のナノ小胞は、単層立体構造(二重層、膜様構造)または多層立体構造を有する脂質成分を、含む(full)状態(例えば、固体脂質ナノ粒子等)、またはリポソーム等の含まない(empty)状態で存在させることができる。
【0028】
さらに、本発明のナノ小胞の脂質成分およびタンパク質は、天然の構造および立体構造にて存在し、融合、酵素切断、スペーサーまたは官能基の結合または付加、架橋からなる群から選択されるいかなる物理的化学的修飾も受けていない。
【0029】
本発明による有髄小胞は、実施例に記載されるように特徴付けられた;これはそれらの挙動の起源を完全に理解し、その後、実験室性能に関してそれらの利益を特定の生物医学的用途に変換するために必要な重要なステップである。この目的のために、ゼータ電位は粒子の表面電荷を測定するための重要なパラメータであり、この値は、本明細書に記載の有髄ナノ小胞のために得られ、-10~-50 mVの範囲である。このパラメータは、MyVes調製工程に強く関連している。
【0030】
本発明において、「ミエリンナノ小胞」または「MyVes」または「ミエリンベースのナノ粒子」という定義が使用される場合、-10~-50 mV、好ましくは-20~-40 mV、より好ましくは-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有し、脂質(75~80%)およびタンパク質(15~30%)を含む、本明細書に記載の有髄ナノ小胞を含むことが意図される。
【0031】
「ナノ構造ミエリン」という定義が使用される場合、より大きな構造を有する同じ材料とは、特性および特徴(物理的、生物学的等)が著しく異なるナノメートルスケールの構造を含むことが意図される。
【0032】
コロイド懸濁液の安定性およびその凝集傾向を制御することに加えて、表面電荷はまた、ナノ粒子と環境との間の相互作用をモデリングする際に重要な役割を果たす。さらに、MyVesを特徴付けるために、分子量分散度(PDI)、安定性、薬物積載能力、構造-機能関係(血液脳関門等の生体膜を通過する能力、標的部位に存在するタンパク質と相互作用する能力、担持薬物を放出する能力)等の他のパラメータが必要とされる。
【0033】
脱髄構造は、損傷を受けやすく、損傷は、神経刺激の伝達を担う細胞であるニューロンの死による神経変性をもたらすプロセスである。ニューロンおよび神経線維の修復、髄鞘の再構成、損なわれた機能の回復、および結果として生じる障害の低減を促進するための効果的な治療は、未だ利用可能ではない。ナノテクノロジーは、CNS関連障害の診断および治療において大きな貢献を果たす有望な新しいアプローチである。しかしながら、小胞、または、一般にミエリンを用いて製造され、かつ薬物を積載したナノ担体の使用は、医学的な状況には未だ存在しない。本発明によるミエリンナノ小胞は、神経系の脱髄疾患に対する薬物送達系、および免疫寛容系として、損傷したミエリンを置換するための有益かつ有効なツールである。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明によるミエリンナノ小胞は、30~200 nm、好ましくは90~110 nmの範囲の直径を有する。
【0035】
より好ましい実施形態では、本発明によるミエリンナノ小胞は、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、脂質およびタンパク質成分を示す。タンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質(BMP)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ならびに400を超える他の脂質関連タンパク質である。
【0036】
本発明によるミエリンナノ小胞は、化合物または分子を積載することができ、好ましくは前記化合物は、薬物、造影剤、蛍光プローブ、サイトカイン、成長因子、抗酸化剤、抗炎症剤、免疫調節剤、または、硬化症、ミエリン再生ならびにCNSおよびPNSの神経変性疾患の治療を支持または補助するのに活性な任意の他の分子である。ナノ小胞は、治療効果を有する薬物および生体分子を中枢神経系および末梢神経系に運ぶこと(薬物送達)が可能である。
【0037】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するためのミエリンナノ小胞の使用に関する。
【0038】
さらに別の態様では、本発明は、脱髄疾患の治療のためのミエリンナノ小胞の使用に関する。好ましい実施形態では、これらの脱髄疾患は、多発性硬化症(MS)、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄神経障害、およびレーベル遺伝性視神経症である。
【0039】
したがって、本発明は、神経変性疾患の治療のためのミエリンベースのナノ小胞の使用を記載する。
【0040】
MyVesは、損傷したミエリンを置換するための、かつ、脱髄疾患および/または中枢神経系疾患に対する薬物送達系としての、有用かつ有効なツールであり得る。MyVesは、標的部位での薬物放出プロファイル、安定性、吸収および生体内分布を改善し、したがって、従来の薬物投与と比較して、治療の有効性および安全性を改善し得る。
【0041】
さらに別の態様では、中枢神経系および末梢神経系の軸索のレベルで損傷したミエリンの修復のためのミエリンナノ粒子の使用が記載される。
【0042】
したがって、ミエリンナノ小胞は、ミエリン修復、ならびにCNSおよびPNSの標的部位への薬物の送達を含むいくつかの態様に関連し得る。
【0043】
さらに、MSは自己免疫疾患であるため、特定の抗原の寛容のための戦略が治療目的のために用いられる。MyVes中に単独でまたは相乗的に存在するペプチド(442)は、免疫寛容性応答を誘導することが可能であり、免疫寛容におけるそれらの使用が記載される。実際に、ミエリン小胞は、天然の脂質環境(Ag-脂質相互作用)において、全てではないが、大部分の関連する有髄Agを含有し、したがって、それらは、Ag特異的免疫寛容を誘導し、有髄Agに対する免疫応答によって駆動される疾患を抑制する可能性を有する。本発明者らのミエリン小胞の使用は、各患者において関連するミエリンAgを同定する必要性を回避し、したがって、ミエリン小胞が普遍的に適用可能なAg特異的MS治療であり得る可能性を増大させ、また薬物担体となり、ミエリンを再構築する。
【0044】
本発明は、中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患の治療のためのミエリンベースのナノ小胞の使用をさらに記載し、前記中枢神経系または末梢神経系の神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症である。
【0045】
さらなる態様は、以下の工程を有するミエリンナノ小胞の調製のための方法を記載する:
a. 0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度で水中にミエリンの分散液を調製する;
b.Ultra-Turrax(Ika)を用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で、1~15分の範囲の時間、工程a.のミエリン分散液をホモジナイズし、ホモジナイズされた分散液を得る;
c. 超音波処理器(Bandelin)を用いて、35~45 kHzの範囲の強度で1~15分間、工程b.のホモジナイズされた分散液を超音波処理して、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、髄鞘に典型的なタンパク質を示すミエリンナノ小胞を得る。
【0046】
1つの調製実施形態において、工程a.の分散体は、工程b.の混合工程の間、水と混和性を有する揮発性有機溶媒に予め溶解されたミエリンを水性媒体に注入することによって調製される。
【0047】
この方法の実施例は、実施例2において「工程1」として記載される。
【0048】
一つの実施形態では、ミエリンナノ小胞の調製のための方法は、以下の工程を有することが記載される:
a. 揮発性有機溶媒、好ましくはtert-ブタノール中に、0.1~1 mg/mlの濃度でミエリン分散液を調製する。
b. 蒸留水中に工程a.のミエリン分散液を注入し、Ultra-Turrax(Ika)を用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で5~15分の範囲の時間、得られたミエリン分散液をホモジナイズして、ホモジナイズ溶液を得る;
c. 超音波処理器(Bandelin)を用いて、35~45 kHzの範囲の強度で1~15分間、工程b.のホモジナイズ溶液を超音波処理し、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、かつ髄鞘に典型的なタンパク質を示すミエリンナノ小胞を得る。
【0049】
この方法の実施例は、実施例2に「工程2」として記載される。
【0050】
この方法は、治療剤の受動的積載(すなわち、有髄リン脂質の自己集合の間の治療剤の直接封入)を得るために適した製造工程を確立することを目的とし、ミエリン抽出は、水と混和性を有する適切な揮発性有機溶媒(すなわち、tert-ブタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、および他の水混和性揮発性極性溶媒を用いることができる)に溶解した。
【0051】
別の態様では、以下の工程を有する方法に従って得られるナノ小胞が記載される:
a.揮発性有機溶媒、好ましくはtert-ブタノール中に、0.1~1 mg/mlの濃度でミエリン分散液を調製する。
b. 蒸留水中に工程a.のミエリン分散液を注入し、Ultra-Turrax(Ika)を用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で5~15分の範囲の時間、得られたミエリン分散液をホモジナイズし、ホモジナイズ溶液を得る;
c. 超音波処理器(Bandelin)を用いて、35~45 kHzの範囲の強度で1~15分間、工程b.ホモジナイズ溶液を音波処理し、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位をを有し、かつ典型的なミエリン鞘タンパク質を示すミエリンナノ小胞を得る;ここで、前記ナノ小胞は、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、ミエリンを含み、前記ミエリンは、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む。
【0052】
さらなる実施形態では、ミエリンナノ小胞を調製するための方法が記載され、この方法は以下の工程を有する:
a.tert-ブタノール(または適切な揮発性極性溶媒)中に、0.1~1 mg/mlの範囲の濃度でミエリン溶液を調製する;
b. 内相として工程a.のミエリン溶液を、外相として蒸留水を、2~8 barの圧力で動作するOB1圧力レギュレータを備える「Elveflow」マイクロ流体機器、ならびにフローおよびポンプ制御ユニットとして0~5,000 μl/minの範囲で10 μl/minの精度で動作する流量センサを用いて、英国Dolomiteからの「スプリットアンドリコンバイン」型のマイクロミキシングのためのマイクロ流体チップを通して流す。印加された圧力は、10~200 μl/分の流量範囲で、ミエリン溶液を内部チャネルに、水相を外部チャネルに押し込み、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、髄鞘に典型的なタンパク質を示すミエリンナノ小胞を得た。
【0053】
この方法の実施例は、実施例2において「工程3」として記載される。
【0054】
好ましい実施形態において、本発明の方法(方法1、2または3)は、凍結乾燥されたミエリンナノ粒子を得るために、凍結乾燥によって得られたミエリンナノ粒子を凍結乾燥する追加工程を有する。
【0055】
安定性試験は、試料を室温で1月間インキュベートした後、MyVesの貯蔵寿命を評価するために実施され、その結果は、MyVesに優れた安定性を示している。
【0056】
細胞または動物モデルの使用を通して、ニューロン細胞と相互作用するMyVesの能力およびそれらの細胞内局在を分析する。
【0057】
さらに別の態様では、本発明の任意の方法(方法1、2または3)に従って得ることができるナノ小胞が記載され、前記ナノ小胞は、30~200 nmの範囲の直径、-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、ミエリンを含み、前記ミエリンは、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む。
【0058】
好ましくは、タンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質(P02688)、ミエリンプロテオリピドタンパク質(P60203)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(Q63345)、2'3'-環状ヌクレオチド3'-ホスホジエステラーゼ(P13233)、カルモジュリン-1(P0DP29)、ミエリン関連糖タンパク質(P07722)を含み、ミエリンはナノ構造化されている。これらのタンパク質は、脂質に関連する構造および天然の立体構造にて存在し、相乗的に相互作用することが可能であり(タンパク質-タンパク質、タンパク質-脂質相互作用)、したがって、生成されたナノ小胞の効果を増強する。
【0059】
より好ましくは、ナノ小胞は、90~110 nmの範囲の直径および-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有する。
【0060】
図1は、MyVesミエリン小胞を調製するための工程の簡略化されたスキームを示し、MyVesの代表的な画像、すなわち脂質およびタンパク質を含み、薬物をMyVesに積載する可能性も示される。特定の理論に束縛されるものではないが、プロテオミクスアプローチによって同定されたMyVes中に存在するタンパク質(442)は、脱髄ニューロンの表面上に存在する認識部位または損傷したミエリンのいずれかに関与し得、したがって、新しいミエリン層の固着およびその後の再構築(図2)、または免疫寛容を可能にする。薬物を積載および放出し、損傷したミエリンおよび免疫寛容活性を修復するMyVesの能力は、特異的なin vitroおよびin vivoアッセイを用いて評価される。
【0061】
本発明の実施形態の例は、例示の目的のために以下に提供される。
【実施例
【0062】
実施例1:ミエリン単離
ラット脳からの単離:
ラット脳を摘出後、氷上に置き、窒素を用いて乳鉢で粉砕した。続いて、約60 mgを回収し、180 μlの0.32 Mスクロース溶液、10%プロテアーゼ阻害剤(Amersham Biosciences, Milan, Italy)および10%ホスファターゼ阻害剤(Cocktail IIおよびIII;Sigma-Aldrich, Milan, Italy)を用いてホモジナイザー中でホモジナイズした。ホモジネートを超遠心用チューブに入れ、720 μlの2 Mショ糖溶液および300 μlの0.1 mM CaCl2溶液を加えた。続いて、1.8 mlの1 Mスクロース溶液をこの溶液に注意深く重ね合わせ、全体を4℃にて127,000 RCFで3時間遠心分離した。(Franklin et al., 2016)。超遠心分離後、チューブ表面のミエリンを回収した(図3A)。回収したミエリンを15 mlチューブに入れ、5,000 rpmで15分間遠心分離することにより、蒸留水(10 ml)中で3回洗浄を行った。この工程の最後に、ミエリンを凍結乾燥して、粉末の形態で得た(図3B)。
【0063】
ミエリン単離は、ウシ脳組織からも行い得る。
実際に、髄鞘は、脊椎動物ニューロンの軸索を取り囲み、高度に保存された組成および構造を有する構造であるため、このプロトコールはウシにも適用することができる。
【0064】
ラット脳は、パレルモのATeN Center-Stabulario con sale operatorie per piccoli animaliから入手し、イタリア保健省が承認した許可番号69636.N.JCOに従って提供された。動物試験に関する規制の遵守が宣言されている。
【0065】
実施例2:ミエリン小胞の調製
工程1. 高エネルギー混合下でのミエリン抽出物の直接分散
乾燥したミエリン抽出物を、水性媒体中に0.1 mg/mlの濃度で懸濁し、Ultra-Turrax(Ika)を用いて18,000 rpmで30分間ホモジナイズし、次いで35 kHzで10分間超音波処理した。生成後、水性分散液を凍結乾燥し、保存した。水中での分散後、ナノ小胞のサイズは130±60 nm;z電位-7 mVに等しいことが見出された。
【0066】
工程2. 高エネルギーナノ沈殿工程
治療剤の受動的積載(すなわち、有髄リン脂質の自己集合の間の治療剤の直接封入)を得るための適切な製造工程を確立するために、水(tert-ブタノール)と混和性を有する適切な有機溶媒に、ミエリン抽出物を0.1 mg/mlの濃度で溶解した。その溶液を、Ultra-Turrax(Ika)を用いて18,000rpmにて、高エネルギー工程を用いて混合し、次いで35 KHzで10分間超音波処理することによって、水性媒体にゆっくりと添加した。水中での分散後、ナノ小胞のサイズは100±25 nmに等しく、z電位は-42m Vに等しいことが見出された。
【0067】
工程3. マイクロ流体混合(低エネルギー工程)による制御されたナノ沈殿
起こり得るミエリン抽出物のタンパク質成分の不活性化を回避し、高エネルギー製造工程に対して不安定な治療剤のカプセル化を可能にすることを目的として、低エネルギー手順を用いた。マイクロ流体工程は、最終的なナノ粒子サイズの分布を制御することを可能にする。特に、水(tert-ブタノール)と混和性を有する適切な揮発性有機溶媒に、ミエリン抽出物を0.1 mg/mlの濃度で溶解した。外相として水を使用するスプリットアンドリコンバイン型のマイクロミキシングのためのマイクロ流体チップ(Dolomite, UK)を通して、その溶液を流した。2~8 barの圧力で動作するOB1圧力レギュレータおよび0~5,000 μl/分の範囲で10 μl/分の精度で動作する流量センサを備えた、フローおよびポンプ制御ユニットとしてElveflowマイクロ流体機器を使用して、工程を実施した。印加された圧力は、ミエリン溶液を内部チャネルに、水相を外部チャネルに、それぞれ100 μl/分、200 μl/分で押し込んだ。製造後、水性懸濁液を凍結乾燥し、保存した。凍結乾燥物を水に分散させ、-38 mvに等しいz電位で60±10 nmのナノ小胞を生成した。
【0068】
ミエリン抽出、形成および特性分析によるナノ小胞の調製のための3つの工程は、数回成功して繰り返され、得られた成果の優れた再現性を示した。
【0069】
さらに、試料を室温で1月間インキュベートした後のMyVesの安定性試験は、MyVesの優れた安定性を示した。
【0070】
実施例3:ミエリンナノ小胞の特性分析
本発明によるナノ小胞は、以下に報告するように特徴付けられた。我々の予備実験は、ミエリン抽出物が、髄鞘に結合したタンパク質、約15~30重量%のタンパク質および残りの70~85%の脂質も担持することを示している。産生されたMyVesナノ小胞は、脂質(図5A、B)およびタンパク質(図5C)の性質を有する;それらは、約100nmの平均サイズ(図4)、SEM分析による球状の形態(図4)、および-10~-50 mVの間の電位を有する物理的特性に関して特徴付けられた。
【0071】
生物学的特性分析
生成されたMyVesの細胞適合性を決定するために、それらをニューロン(SH-SY5Y)、ミクログリア(BV2)、上皮(H292)および肝(HuH7)細胞において、異なる投与量で投与した。この目的のために、細胞を60万/mLの濃度で96マルチウェルプレートに播種し、5% CO2を含むインキュベーターに37℃にて入れた。RPMIまたはDMEM培地(10%ウシ胎児血清(FBS)、1%グルタミン、1%抗生物質(ペニシリンおよびストレプトマイシン)を補充した)を、細胞増殖および治療のために用いた。播種の24時間後、ミエリン小胞を48時間にわたって異なる投与量で細胞に投与した。処置の最後に、MTS細胞生存率試験(Promega)を実施した。得られた予備的結果は、使用された投与量および時間にて、MyVesが細胞適合性を有することを示す(図7)。図7は、処置後の細胞生存率および細胞形態に関するヒストグラムを示す。
【0072】
生成されたMyVesは、蛍光分子Alex488で標識化され(MyVes-Fluo)、in vitro血液脳関門(BBB)細胞モデルを用いて、このシステムを通過できることを確認した(図6)。
【0073】
さらに、MyVesをDi-8-ANEPPS蛍光プローブと共に30分間インキュベートし、このプローブは、水溶液中で弱い蛍光を示し、生体膜等の親油性環境に結合した後、強い蛍光を示す。蛍光光度計(Glomax)による蛍光分析は、MyVesが蛍光分子Di-8-ANEPPSを積載し得ることを示し、したがって、それらが分子/薬物を積載し得ることを示した。(図8)。
【0074】
続いて、単離された小胞が有髄線維(白質)と相互作用可能かどうかを理解するために、有髄線維を予めナイルレッドで標識した脳切片(400~500 μm)と共にMyVes-Fluoをインキュベートした(図9)。
【0075】
最後に、単離された小胞が細胞と相互作用可能かどうかを理解するために、MyVes-Fluoをニューロン(SH-SY5Y)、ミクログリア(BV2)、上皮(H292)および肝(HuH7)細胞に投与した。次いで、60万/mLの濃度で96マルチウェルプレートに播種した細胞を、様々な量の標識化されたMyVesと共に4時間および24時間インキュベートした。4時間後および24時間後に蛍光光度計(Glomax)を用いた処理細胞の蛍光分析から、対照(未処理細胞)と比較して、用量依存的に蛍光の増加が検出された(図10A)。さらに、MyVesの相互作用は、蛍光顕微鏡(Zeiss)下での分析によって、処置の4時間後および24時間後にて、主に培養中のミクログリア細胞と確認された(図10B)。
【0076】
上述の詳細な説明および実施例から、ミエリンナノ小胞およびそれらを調製するための方法によって達成される、本発明による利点が明らかとなる。これらの方法は、任意のタイプの実験室で具合よく実施することができる。
【0077】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するナノ小胞であって、前記ナノ小胞はミエリンを含み、前記ミエリンは、70%~85重量%の脂質および15%~30重量%のタンパク質を含前記ミエリンは脳組織から抽出されたものである、ナノ小胞。
【請求項2】
前記タンパク質が、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、2’3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ、カルモジュリン-1、およびミエリン関連糖タンパク質を含む、請求項に記載のナノ小胞。
【請求項3】
前記脂質および前記タンパク質が、天然の構造および立体構造にて存在し、かつ、融合、酵素切断、スペーサーまたは官能基の結合または付加、架橋からなる群から選択されるいずれの物理化学的修飾も受けていない、請求項1または2に記載のナノ小胞。
【請求項4】
90~110 nmの範囲の平均直径を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項5】
-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項6】
物質または分子が積載されている、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項7】
前記物質が、薬物、造影剤、蛍光プローブ、サイトカイン、成長因子、抗酸化剤、抗炎症剤、免疫調節剤である、請求項に記載のナノ小胞。
【請求項8】
薬剤として使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項9】
中枢神経系および末梢神経系への薬物および治療上活性な生体分子の運搬(薬物送達)のためのビヒクルとして使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項10】
脱髄疾患の治療における使用のための、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項11】
前記脱髄疾患が、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチーおよびレーベル遺伝性視神経症である、請求項10に記載の使用のためのナノ小胞。
【請求項12】
免疫寛容における使用のための、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項13】
中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患の治療における使用のための、請求項1~のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【請求項14】
前記中枢神経系および末梢神経系の神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症である、請求項13に記載の使用のためのナノ小胞。
【請求項15】
以下の工程を有する、ナノ小胞の調製のための方法:
a.水性溶媒中に、0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度でミエリン分散液を調製する;ここで、前記ミエリン分散液は、脳組織から抽出されたものである
b.Ultra-Turraxを用いて、8,000~22,000 rpmの範囲の強度で5~15分の範囲の時間、工程a.のミエリン分散液をホモジナイズして、ホモジナイズされた分散液を得る;
c.超音波処理器を用いて、35~45 kHzの強度で1~15分間、工程b.のホモジナイズされた分散液を超音波処理し、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するミエリンナノ小胞を得る。
【請求項16】
工程b.の間、水と混和性を有する有機溶媒中にあらかじめ溶解されたミエリンを水性媒体中に注入して、工程a.のミエリン分散液が調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の工程を有する、ミエリンナノ小胞の調製のための方法;
a.極性溶媒中に、0.1 mg/ml~10 mg/mlの範囲の濃度でミエリン分散液を調製する;
b.工程a.のミエリン分散液をマイクロミキシングのためのマイクロ流体チップに0~5,000 μl/分の流量で流し、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有するミエリンナノ小胞を得る。
【請求項18】
工程c.から得られたミエリンナノ小胞を凍結乾燥し、凍結乾燥されたミエリンナノ粒子を得る追加工程を有する、請求項1517のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ナノ小胞が、30~200 nmの範囲の直径および-10~-50 mVの範囲のゼータ電位を有し、前記ナノ小胞がミエリンを含み、前記ミエリンが、70~85重量%の脂質および15~30重量%のタンパク質を含む、請求項1518のいずれか一項に記載の方法によって得られるナノ小胞。
【請求項20】
前記タンパク質が、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質、2’3’-環状ヌクレオチド3’-ホスホジエステラーゼ(P13233)、カルモジュリン-1およびミエリン関連糖タンパク質を含む、請求項19に記載のナノ小胞。
【請求項21】
前記ミエリンがナノ構造化されている、請求項19または20に記載のナノ小胞。
【請求項22】
90~110 nmの範囲の平均直径を有する、請求項19または20に記載のナノ小胞。
【請求項23】
-35~-45 mVの範囲のゼータ電位を有する、請求項1921のいずれか一項に記載のナノ小胞。
【国際調査報告】