(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】上昇させた温度での核酸の単離
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230613BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230613BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20230613BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12M1/00 A
C12Q1/6806 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568709
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2021062856
(87)【国際公開番号】W WO2021229066
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519391642
【氏名又は名称】バイオエコー ライフ サイエンシズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フックレンブロイヒ イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイター マキシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー マルクス ヘルムト
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
4B029CC01
4B029GA03
4B029GA08
4B029GB10
4B063QA08
4B063QA13
4B063QQ06
4B063QQ08
4B063QQ09
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR75
4B063QR77
4B063QR78
4B063QS14
(57)【要約】
本発明は、還元剤、好ましくは式(I)の還元剤、陰イオン性界面活性剤、および緩衝物質を含む溶液を用いて、試料から核酸を単離するための方法および使用に関する。本発明はまた、還元剤、好ましくは式(I)の還元剤、陰イオン性界面活性剤、および緩衝物質を含む溶液、ならびに該溶液を含むキットにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約60℃の温度で試料から核酸を単離するための溶液の使用であって、
(a)緩衝物質;
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含む、溶液の使用。
【請求項2】
試料から核酸を単離するための溶液の使用であって、
(a)緩衝物質;
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含む、溶液の使用。
【請求項3】
試料から核酸を単離するためのインビトロの方法であって、
(i)(a)緩衝物質;
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含む溶液と、試料を接触させる段階;
(ii)少なくとも約60℃の温度で、試料を含む溶液をインキュベーションする段階
を含む、インビトロの方法。
【請求項4】
試料から核酸を単離するためのインビトロの方法であって、
(i)(a)緩衝物質;
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含む溶液と、試料を接触させる段階
を含む、インビトロの方法。
【請求項5】
試料を酵素と接触させる段階を含まない、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項6】
方法のすべての段階の間、核酸が溶液中に残っている、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項7】
単離された核酸が、PCR、次世代シーケンシング、SNP遺伝子型判定、またはRT-PCRによって解析される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項8】
(i)R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より、好ましくはH、-OH、および-COOHより、独立に選択され、かつ/または
(ii)R
4~R
10が-Hであり、かつ/または
(iii)A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
9)アルキレン-、-(C
3~C
9)シクロアルキレン-、-(C
2~C
9)アルケニレン-、好ましくは-(C
1~C
5)アルキレン-、-(C
3~C
6)シクロアルキレン-、-(C
2~C
5)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、かつ/または
(iv)A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
9)アルキレン-および-(C
2~C
9)アルケニレン-、好ましくは-(C
1~C
5)アルキレン-および-(C
2~C
5)アルケニレン)-、より好ましくは-(C
1~C
3)アルキレン-および-(C
2~C
3)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、かつ/または
(v)A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4もしくは(C
1~C
15)アルキル、好ましくは(C
1~C
15)アルキルより選択される1つもしくは複数の置換基でさらに置換されている、
前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項9】
前記溶液が、錯化剤をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項10】
陰イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項11】
方法または使用が、試料を清澄化溶液と接触させる段階をさらに含み、該清澄化溶液が陽イオン性イオンを含み、好ましくは該陽イオン性イオンが、K
+、Rb
+、Cs
+、Mg
++、Ca
++、Sr
++、またはBa
++である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項12】
試料から核酸を単離することが、少なくとも約80℃の温度で少なくとも10秒間であるか、またはインキュベーションする段階が、少なくとも約80℃の温度で少なくとも10秒間である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用。
【請求項13】
前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用において使用するための溶液であって、
(a)緩衝物質(BU);
(b)式(I)に記載の還元剤(RA)であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン)-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含み、
少なくとも約60℃の温度を有する、溶液。
【請求項14】
前記請求項のいずれか一項記載の方法または使用において使用するための、試料を含む溶液であって、
(a)緩衝物質(BU);
(b)式(I)に記載の還元剤(RA)であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン)-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含み、
少なくとも約60℃の温度を有する、試料を含む溶液。
【請求項15】
陰イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である、
請求項13記載の方法もしくは使用において使用するための溶液、または請求項14記載の方法もしくは使用において使用するための試料を含む溶液。
【請求項16】
試料から核酸を単離するためのインビトロの方法であって、
(i)(a)緩衝物質;
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤
を含む溶液を、試料と接触させる段階であって、
試料を含む該溶液が、少なくとも約60℃の温度を有する、段階
を含む、インビトロの方法。
【請求項17】
陰イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)、好ましくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
試料を清澄化溶液と接触させる段階をさらに含み、該清澄化溶液が陽イオン性イオンを含み、好ましくは該陽イオン性イオンが、K
+、Rb
+、Cs
+、Mg
++、Ca
++、Sr
++、またはBa
++である、請求項16または請求項17記載の方法。
【請求項19】
(a)前記請求項のいずれか一項記載の溶液、
(b)任意で、酵素消化のための手段、好ましくは酵素、および/または
(c)任意で、核酸から非核酸成分を分離させるための手段、好ましくは、核酸から非核酸成分を分離させるためのマトリックス
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、上昇させた温度で、還元剤、緩衝物質、および陰イオン性界面活性剤を含む溶液を用いて試料から核酸を単離するための方法および使用に関する。本発明はまた、該成分を含む溶液、および該溶液を含むキットにも関する。とりわけ、本発明の方法および組成物は、様々な細胞試料から、十分な純度および完全性を有する核酸を非常に迅速かつ確実に単離するために適している。
【背景技術】
【0002】
説明
核酸を抽出するための様々な方法が、ずっと以前から公知である。最初は、フェノールおよびクロロホルムなどの毒性試薬を用いるもっぱら化学的な方法が使用されていた。これらの方法は、実験室安全性(毒性、火災危険、化学物質の廃棄)が強く要求されること、および遂行に大きな労働力を要し時間がかかることを特に特徴とした。
【0003】
1980年代にシリカ技術が出現し、末端利用者が該方法を実施することが容易になったことにより、この状況は変わった。しかし、シリカを用いる核酸抽出において使用される化学物質(カオトロピック塩、アルコール)は、依然として、安全な取扱いおよび個々の廃棄を要する危険物質である。さらに、シリカ技術は、プロテイナーゼKによる酵素消化を多くの種類の試料に対して用い、長いインキュベーション時間を特徴とする。
【0004】
WO 2006/138444 A2(特許文献1)では、非イオン性表面活性剤Triton X-100を界面活性剤として用いる、溶解および安定化緩衝液を説明している。しかし、非イオン性界面活性剤Triton X-100は、著しく不純であり望ましくないA260/280比およびA260/230比を特徴とする核酸をもたらし、量は不十分である。WO 2006/138444 A2(特許文献1)の作成者は、核酸濃度を定量もせず、得られた核酸の純度についての情報をまったく提供しなかったため、この欠陥を理解することができなかった。
【0005】
したがって、生物試料などの試料から核酸を単離するための様々な方法が公知である。しかし、代替の方法が引き続き必要とされている。特に、種々の試料からの迅速な核酸単離を可能にし、かつ得られる核酸の量および質が、種々の下流の用途、例えば、RT-PCR、qPCRなどの核酸増幅方法、次世代シーケンシングなどの配列決定方法、またはクローニング方法などのために十分である、方法が必要とされている。特に、時間のかかる酵素消化段階を適用する必要がない、試料からの迅速な核酸単離を可能にする方法が、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本発明は、様々な細胞試料から、十分な純度および完全性を有する核酸を非常に迅速かつ確実に単離するためにとりわけ適している、組成物、使用、および方法を提供することにより、これらの必要性に対処する。
【0008】
本発明者の研究活動の範囲内で、核酸を単離するための様々な新規の溶解方法が開発された。驚くべきことに、酵素を含まない(完全に化学的な)方法であって、例えば化学的TCEP(または類似のホスフィン化合物)などの還元剤およびSDSなどの陰イオン性界面活性剤を、上昇させた温度で用いる、方法が特定された。この方法は、関与する化学物質の毒性が両方とも低く、極めて効率的で、迅速で、かつ実施が容易であり、十分な純度および完全性を有する核酸をもたらす。この新しい方法は、核酸単離のための時間を15分未満まで短縮し、現況技術と比べて末端利用者に大きな利点をもたらす。
【0009】
本発明の解決法を以下に説明し、実施例において例証し、図に例示し、特許請求の範囲で示す。
【0010】
本発明は、少なくとも約60℃の温度で、好ましくは少なくとも10秒間、試料から核酸を単離するための、以下を含む「溶液」(以下、「本発明の溶液」とも表記される)の使用に関する:
(a)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11または4~10、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質;ならびに
(b)式(I)に記載の還元剤であって、
式中、
R
1、R
2、およびR
3が、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10が、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3が、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている、
還元剤、ならびにその塩;ならびに
(c)好ましくは陰イオン性界面活性剤。
【0011】
本発明はまた、本発明の溶液を利用する、試料から核酸を単離するためのインビトロの方法にも関する。
【0012】
本発明はまた、試料から核酸を単離するための、(d)1M未満のカオトロピック塩(CAO)ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を任意でさらに含む本発明の溶液の使用にも関する。(d)1M未満のカオトロピック塩(CAO)ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を任意でさらに含む本発明の該溶液はまた、試料から核酸を単離するためのものである本発明のインビトロの方法においても利用され得る。
【0013】
本発明はまた、本明細書において定義される本発明の溶液にも関し、かつさらに、本明細書において開示される方法または使用において使用するための、本明細書において定義される本発明の溶液にも関する。
【0014】
さらに、本発明は、本明細書において開示される方法または使用において使用するための、本明細書において定義される本発明の溶液であって、1M未満のカオトロピック塩(CAO)ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を任意でさらに含んでよく、かつ少なくとも約60℃の温度を有する、該本発明の溶液にも関する。
【0015】
本発明はまた、本明細書において説明される溶液を含むキット、特に本発明の溶液にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は以下を示す:
【
図1】
図1は、
図1に示される、実施例1で様々な試料を使用して実施したゲル電気泳動を示す。
図1Aのゲルは、試料1および試料2から得られた核酸を反映している。
図1Bに示されるゲルは、試料3、試料4、試料5、試料6、および試料7から得られた核酸を示す。
図1から明らかであるように、すべての試料が高分子量バンドを与え、低分子量のスメアを与えないことから、分解した核酸が、試験された試料中にごく少量存在するか、またはまったく存在しないことが示される。
【
図2】
図2は、実施例2で得られた核酸を対象とするゲル電気泳動を示す。この実験で様々な試料を使用して実施したゲル電気泳動によって得られたゲルが、
図2に示されている(個々のレーンに、試料1、試料2、試料3、試料4、試料5、および試料6から得られた核酸)。
図2から明らかであるように、すべての試料が高分子量バンドを与えることから、完全な(分解していない)核酸が、試験された試料中に存在することが示される。低分子量のスメアは、アルカリ性条件よりも酸性条件の場合に、より多いように見える。したがって、分解した核酸の量は、アルカリ性条件よりも酸性条件下の方が多い可能性がある。
【
図3A】
図3は、実施例3で得られた核酸を対象とするゲル電気泳動を示す。この実験で様々な試料を使用して実施したゲル電気泳動によって得られたゲルが、
図3Aに示されている(個々のレーンに、試料1、試料2、試料3、試料4、試料5、および試料6から得られた核酸)。
図3Aから明らかであるように、すべての試料が高分子量バンドを与えることから、完全な(分解していない)核酸が、試験された試料中に存在することが示される。さらに、TCEP溶解によって得られる核酸の量は、酵素消化を含む溶解によって得られる量より明らかに多い。対応するPCRグラフを
図3Bに示している。RT-PCRを、実施例3で得られた核酸に対して実施した。これらのデータから、「TCEP溶解」によって得られる核酸の量の方が、酵素消化の段階を含む標準的な溶解によって得ることが可能である核酸の量より多いことが裏付けられる。
【
図4A】
図4は、グラム陰性菌を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。グラム陰性菌を対象とする実施例14の試料1~4について、個々の光度測定を
図4Aに示している。
【
図4B】
図4は、グラム陰性菌を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。グラム陰性菌を対象とする実施例14の試料5~8について、個々の光度測定を
図4Bに示している。
【
図4C】
図4は、グラム陰性菌を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。グラム陰性菌を対象とする実施例14の試料9~12について、個々の光度測定を
図4Cに示している。
【
図5】
図5は、グラム陰性菌を対象として実施例14で実施されたゲル電気泳動の結果を示す。以下の番号付与が適用される:ライン1~4:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ライン5~8:ドデシル硫酸リチウム(LiDS);ライン9~12:Triton X-100;およびライン13:DNAラダーGeneRuler 1KB+。
【
図6A】
図6は、ヒト血液を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。ヒト血液を対象とする実施例14の試料1~4について、個々の光度測定を
図6Aに示している。
【
図6B】
図6は、ヒト血液を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。ヒト血液を対象とする実施例14の試料5~8について、個々の光度測定を
図6Bに示している。
【
図6C】
図6は、ヒト血液を対象として実施例14で実施された光度測定を示す。ヒト血液を対象とする実施例14の試料9~12について、個々の光度測定を
図6Cに示している。
【
図7】
図7は、ヒト血液を対象として実施例14で実施されたゲル電気泳動の結果を示す。以下の番号付与が適用される:ライン1~4:ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ライン5~8:ドデシル硫酸リチウム(LiDS);ライン9~12:Triton X-100;およびライン13:DNAラダーGeneRuler 1KB+。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において開示される還元剤(b)、本明細書において説明される、緩衝物質(a)、および陰イオン性界面活性剤(c)を含む溶液を用いる場合、約15分またはそれ未満、好ましくは10分またはそれ未満、より好ましくは5分またはそれ未満で、様々なタイプの試料から十分な量かつ高い質の核酸を得ることが可能であることが、驚くべきことに発見された。緩衝物質(a)は、溶液をpH約6~9に、好ましくは約7.5に緩衝化するためのものであることが好ましい。
【0018】
値に関する文脈においての「約」という用語は、その値それ自体も含むことが理解されると考えられる。pH値に関する文脈においての「約」という用語は、その値それ自体および該値+10%もしくは該値-10%または該値±10%を意味することも、さらに理解されると考えられる。
【0019】
還元剤(b)は、約20mM~100mMの濃度で、好ましくは約50mMで溶液中に存在することが想定される。本明細書において説明される本発明の溶液中の試料は、少なくとも約60℃で、好ましくは、約60℃~約85℃の範囲内のある温度で、より好ましくは約80℃で、インキュベーションされてよい。好ましい還元剤(b)はTCEPであり、SDSおよびLiDSが、好ましい陰イオン性界面活性剤(c)である。本発明の使用および方法ならびにキットに関する文脈において、陰イオン性界面活性剤を沈殿させる清澄化溶液(h)を溶液に添加してよいことが、さらに好ましい。したがって、清澄化溶液は、K+、Rb+、Cs+、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++を含んでよい。好ましくは、陽イオンは、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++であってよい。より好ましくは、陽イオンは、Ca++、Sr++、またはBa++であってよい。より一層好ましくは、陽イオン性イオンは、Ca++またはSr++であってよい。さらにより好ましくは、陽イオンは、Sr++である。別の好ましい態様において、清澄化溶液はSrClを含む。清澄化溶液の添加は、陰イオン性界面活性剤を沈殿させる化合物の添加を狙いとする―したがって、「清澄化溶液」という用語はまた、沈殿作用のある固形化合物、例えばSrClの添加も包含することが、理解されるであろう。
【0020】
さらに、本明細書において説明され、かつ本明細書において説明される方法および使用において利用される、溶液、特に、本発明の溶液は、カオトロピック塩(d)、錯化剤(e)、溶液中でOH-イオンを与える化合物(f)、および/またはDNA安定化剤(g)のような、さらに別の任意の成分を含むことが好ましい。
【0021】
様々なタイプの試料から核酸を単離する場合、本明細書において説明される方法からプロテアーゼ消化という時間のかかる段階を省略することができ、その結果、様々な細胞試料から、十分な純度および完全性を有する核酸が非常に迅速かつ確実に単離されることが、驚くべきことに発見された。添付の実施例の表12は、試料の溶解が本発明の溶液を用いて少なくとも約60℃の温度で実施される場合、十分な量および質の核酸が得られることを示す。したがって、本明細書において説明される溶液に加えられた試料は、少なくとも約60℃の温度で、より好ましくは約60℃~約85℃の範囲内のある温度で、およびさらにより好ましくは約80℃でインキュベーションされることが好ましい。
【0022】
本発明において、および本明細書において使用される場合、「約」という用語の後に記載される温度値は、該温度値それ自体±5℃、好ましくはその温度値の±2℃、およびより好ましくは±1℃を意味する。
【0023】
このようにして、核酸を、短期間で、例えば約15分またはさらに短い時間、好ましくは約10分またはさらに短い時間で、十分な質かつ量で得ることが可能である。注目すべきことに、還元剤を熱と組み合わせると、より詳細に実施例10で説明するように本発明の方法および使用によって得ることができる核酸の量が劇的に増加する。たいていの場合、温度を40℃から60℃または80℃に上昇させると、核酸の量を少なくとも6倍に増加させることができる。これらのデータから、還元剤と温度上昇が核酸単離を相乗的に向上させることが示唆される。試料を含む溶液が加熱下でインキュベーションされる場合、溶液中にカオトロピック塩(CAO)ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素が存在することは、核酸を得るために必要ではない。
【0024】
カオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素の存在は任意であり、許容されてよい(ただし、カオトロピック塩の量が、陰イオン性界面活性剤を沈殿させないような量であることを条件する)が、これらの成分は、本発明の使用、方法、溶液、およびキットのために必要ではない。したがって、溶液がカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を含む場合に核酸を単離することも可能である(が、最適ではない)。
【0025】
本明細書のこれまでの箇所および別の箇所で既に言及したように、様々なタイプの試料から核酸を単離する場合、プロテアーゼ消化という時間のかかる段階を省略することができることが、驚くべきことに発見された。したがって、本明細書において説明される方法および使用は、試料を、核酸単離方法と関連して当技術分野で典型的に使用される(より詳細に本明細書において説明されるもののような)酵素と接触させる段階を含まないことが好ましい。同様に、本発明の溶液およびキットがそのような酵素を含まなくてよいことが好ましい。したがって、本明細書において説明される方法および使用が、酵素を用いて溶解を実施する段階を含まないことが、好ましい。
【0026】
前述の「酵素」には、核酸単離方法において典型的に使用される酵素、例えば、プロテアーゼ、リゾチーム、リパーゼ、セルラーゼ、ヒドロラーゼ、キチナーゼ、アミラーゼ、またはグルカナーゼが含まれる。
【0027】
例示的なプロテアーゼには、サブチリシン、サブチラーゼ、およびアルカリ性セリンプロテアーゼが含まれる。例示的なサブチリシンには、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、サブチリシンA、サブチリシンB、またはテルミターゼが含まれる。
【0028】
本明細書において説明される方法/使用により、30分未満で、好ましくは15分未満で、より好ましくは10分未満で、例えば、5分未満、4分未満、3分未満、2分未満、1分未満、またはさらに30秒未満での核酸単離が可能になる。
【0029】
したがって、該方法/使用が10分またはそれ未満以内での核酸単離を可能にすることが好ましく、該方法/使用が5分またはそれ未満以内での核酸単離を可能にすることが最も好ましい。
【0030】
上記の制限時間は、本発明の使用/方法の溶解段階に関することが好ましい。したがって、制限時間の測定は、試料と本明細書において定義される溶液との接触の開始時から計算されることが好ましい。
【0031】
本発明の方法/使用が、試料を、100mMもしくは200mMまたはそれより高い濃度のカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素と接触させる段階を含まないこともまた、想定される。本明細書において開示される溶液が100mMもしくは200mMまたはそれより高い濃度のカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を含まないこともまた、想定される。実施例で示すように、十分な量かつ十分な質の核酸を得るために、本明細書において説明される溶解溶液は、カオトロピック塩の存在も尿素の存在もまったく必要としない。
【0032】
溶液中でOH-イオンを与える化合物(化合物(f))の添加についても、同じことが言える。したがって、本明細書において開示される溶液は、溶液中でOH-イオンを与える化合物(f)を含んでも含まなくてもよい。
【0033】
単離されるべき核酸が、本明細書において説明される方法のすべての段階または使用の間、溶液中に残っていることもまた、企図される。その結果として、例えば段階(iii)によって得られる溶出液中に核酸が存在することが、さらに企図される。段階(iii)は、本明細書において以下にさらに詳述するように、核酸から非核酸成分を分離させる段階である。
【0034】
本明細書において説明される方法/使用によって得られる核酸の量および質は十分であり、その結果、これらの核酸を種々の下流の用途において使用することができる。したがって、単離された核酸/溶出液(単離された核酸を溶液中に含む)は、あらゆる従来の分子的技術、例えば、PCR、次世代シーケンシング、SNP遺伝子型判定、qPCR、またはRT-PCRによって解析することができる。したがって、単離された核酸は、(それらの単離後に)それ以上の単離段階を必要とすることなく、PCR次世代シーケンシング、SNP遺伝子型判定、またはRT-PCRなどの方法によって解析することができる。
【0035】
本明細書において説明される方法/使用において、有機溶媒の添加によって核酸を沈殿させないことも、さらに企図される。したがって、本明細書において説明される方法/使用は、試料を有機溶媒と接触させる段階を含まなくてよい。核酸の沈殿をもたらすことが当業者に公知である有機溶媒には、例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノールなどのアルコールが含まれ得る。
【0036】
本明細書において使用される核酸についての「単離すること」もしくは「単離」という用語(または同様の用語)は、核酸の精製を意味する。例えば、単離することまたは単離は、核酸を試料から抽出することを意味し得る。試料からの核酸の抽出は、核酸を溶解状態にすることを含み得ることが想定される。「溶解状態にする」という用語は、核酸が、試料、例えば、細胞、細胞核、またはタンパク質から単離され、かつこれらの構成要素から(少なくともある程度)離れて溶液中に存在できることを意味する。核酸についての「単離すること」または「単離」という用語は、細胞試料の単なる溶解を除くことが好ましい。
【0037】
本明細書において説明される核酸は、任意の核酸を指してよい。例えば、核酸は、RNAまたはDNA、好ましくはDNAであってよい。本明細書において使用されるRNAは、任意のRNAを指してよい。RNAは、mRNA、tRNA、またはrRNAであってよい。DNAは、ゲノムDNA、循環DNA、またはプラスミドDNAであってよい。
【0038】
本発明の方法/使用は、試料からの核酸の単離に関する。試料は、任意の適切な試料であってよい。例えば、試料は、核酸を含む任意の試料であってよい。試料は、細胞、ウイルス、ウイロイド、もしくはプラスミドを含むかまたは含むと推測される試料であることができる。
【0039】
したがって、試料は生物試料であることができる。よって、試料は、動物、植物、微生物、ウイルス、原生動物、クロミスタ、または真菌から得られた試料であってよい。試料が、血液試料、好ましくはヒト血液試料、または組織試料、好ましくは、筋肉試料、精子試料、植物試料、細胞試料、粘膜試料、例えば口腔粘膜試料、または細菌試料、好ましくはグラム陰性菌試料であることもまた、想定される。
【0040】
環境試料もまた、想定される。環境試料は、水試料、土試料、空気試料であってよく、好ましくは、これらの試料は、細胞、ウイルス、ウイロイド、もしくはプラスミドを含むか、または含むと推測される。
【0041】
試料は、(a)緩衝物質(BU)、(b)還元剤(RA)、および(c)好ましくは陰イオン性界面活性剤;ならびに任意で、本明細書において説明されるさらに別の成分を含む溶液と接触させられると説明される。
【0042】
還元剤(b)は、式(I)に記載の化合物およびその塩であることが好ましい:
式中、
R
1、R
2、およびR
3は、-H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-N(R
8)R
9、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より独立に選択され、
R
4~R
10は、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3は、-(C
1~C
15)アルキレン-、-(C
3~C
10)シクロアルキレン-、-(C
2~C
15)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、
A
1、A
2、およびA
3は、任意で、-OR
4、-COOR
5、および-(C
1~C
15)アルキルより選択される1つまたは複数の置換基でさらに置換されている。
【0043】
本明細書において説明される方法/使用は、試料を、とりわけ、本明細書において定義される、還元剤(b)、好ましくは式(I)の還元剤を含む溶液と接触させる段階を含む。
【0044】
通常、任意の適切な還元剤、好ましくは式(I)の還元剤を、本明細書において説明される溶解溶液中で使用することができる。当業者なら、式(I)を有する適切な還元剤を知っている。
【0045】
式(I)
において、以下であることもまた、好ましい:
(i)R
1、R
2、およびR
3は、H、-OR
4、-COOR
5、-P(O)(OR
6)OR
7、-S(O)
0~2R
10、および-SO
3Hからなる群より、好ましくはH、-OH、および-COOHより、独立に選択され、かつ/または
(ii)R
4~R
10は-Hであり、かつ/または
(iii)A
1、A
2、およびA
3は、-(C
1~C
9)アルキレン-、-(C
3~C
9)シクロアルキレン-、-(C
2~C
9)アルケニレン-、好ましくは-(C
1~C
5)アルキレン-、-(C
3~C
6)シクロアルキレン-、-(C
2~C
5)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、かつ/または
(iv)A
1、A
2、およびA
3は、-(C
1~C
9)アルキレン-および-(C
2~C
9)アルケニレン-、好ましくは-(C
1~C
5)アルキレン-および-(C
2~C
5)アルケニレン)-、より好ましくは-(C
1~C
3)アルキレン-および-(C
1~C
3)アルケニレン-からなる群より独立に選択され、かつ/または
(v)A
1、A
2、およびA
3は、任意で、-OR
4もしくは(C
1~C
15)アルキル、好ましくは(C
1~C
15)アルキルより選択される1つもしくは複数の置換基でさらに置換されている。
【0046】
さらなる態様において、式(I)中、R1、R2、およびR3は、H、-OR4、および-COOR5からなる群より独立に選択され、ここで、R4およびR5は、-Hおよび-(C1~C10)アルキル、好ましくは-(C1~C5)アルキルからなる群より独立に選択され、かつA1、A2、およびA3は、-(C1~C5)アルキレン-からなる群より独立に選択される。
【0047】
別の態様において、式(I)中、R1、R2、およびR3は、H、-OR4、および-COOR5からなる群より独立に選択され、ここで、R4およびR5はHであり、かつA1、A2およびA3は、-(C1~C5)アルキレン-、好ましくは-(C1~C3)アルキレン-からなる群より独立に選択される。
【0048】
したがって、式(I)に記載の還元剤は、Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、Tris(ヒドロキシメチル)ホスフィン、Tris(ヒドロキシエチル)ホスフィン、およびTris(ヒドロキシプロピル)ホスフィンからなる群より選択されてよいことが企図される。
【0049】
好ましい態様において、式(I)中、R1、R2、およびR3は、それぞれCOOHであり、かつA1、A2、およびA3は、-(C1~C5)アルキレン-、好ましくは-(C1~C3)アルキレン-からなる群より選択される。最も好ましくは、式(I)中、R1、R2、およびR3は、それぞれCOOHであり、かつA1、A2、およびA3は、それぞれ-(CH2)2-である。
【0050】
したがって、最も好ましい態様において、式(I)に記載の還元剤(b)は、Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。
【0051】
「アルキル」という用語は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素のモノラジカルを意味する。好ましくは、アルキル基は、1~15(例えば1~10)個の炭素原子、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個の炭素原子を含む。例えば、「(C1~C15)アルキル」という用語は、1~15個の炭素原子を有するアルキル基を表す。より好ましくは、アルキル基は、1~8個の炭素原子、最も好ましくは1~5個の炭素原子、さらにより好ましくは1~4個の炭素原子を含む。例示的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、sec-ペンチル、ネオ-ペンチル、1,2-ジメチル-プロピル、イソ-アミル、n-ヘキシル、イソ-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソ-ヘプチル、n-オクチル、2-エチル-ヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、およびn-ドデシルなどが含まれる。
【0052】
「アルキレン」という用語は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素のジラジカルを意味する。好ましくは、アルキレンは、1~15個の炭素原子、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個の炭素原子を含む。例えば、「-(C1~C15)アルキレン-」という用語は、1~15個の炭素原子を有するアルキレン基を表す。より好ましくは、アルキレン基は、1~9個の炭素原子、最も好ましくは1~5個の炭素原子を含む。例示的なアルキレン基には、メチレン、エチレン(すなわち、1,1-エチレン、1,2-エチレン)、プロピレン(すなわち、1,1-プロピレン、1,2-プロピレン(-CH(CH3)CH2-)、2,2-プロピレン(-C(CH3)2-)、および1,3-プロピレン)、ブチレン異性体(例えば、1,1-ブチレン、1,2-ブチレン、2,2-ブチレン、1,3-ブチレン、2,3-ブチレン(cisもしくはtransまたはその混合物)、1,4-ブチレン、1,1-イソ-ブチレン、1,2-イソ-ブチレン、および1,3-イソ-ブチレン)、ペンチレン異性体(例えば、1,1-ペンチレン、1,2-ペンチレン、1,3-ペンチレン、1,4-ペンチレン、1,5-ペンチレン、1,1-イソ-ペンチレン、1,1-sec-ペンチル、1,1-ネオ-ペンチル)、ならびにヘキシレン異性体(例えば、1,1-ヘキシレン、1,2-ヘキシレン、1,3-ヘキシレン、1,4-ヘキシレン、1,5-ヘキシレン、1,6-ヘキシレン、および1,1-イソヘキシレン)などが含まれる。
【0053】
「シクロアルキレン」という用語は、飽和または部分的に不飽和な環状の直鎖または分枝鎖の炭化水素の非芳香族ジラジカルを意味する。好ましくは、シクロアルキレンは、3~10個の炭素原子、すなわち、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を含む。例えば、「-(C1~C10)シクロアルキレン-」という用語は、1~10個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を表す。より好ましくは、シクロアルキレン基は、3~9個の炭素原子、最も好ましくは3~6個の炭素原子を含む。例示的なシクロアルキル基には、シクロプロピレン、シクロプロペニレン、シクロブチレン、シクロブテニレン、シクロペンチレン、シクロペンテニエネル、シクロヘキシレン、シクロヘキセニレン、シクロヘプチレン、シクロヘプテニレン、シクロオクチレン、シクロオクテニレン、シクロノニレン、シクロノネニレン、シクロデシレン、シクロデセニレン、およびアダマントリーが含まれる。「シクロアルキレン」という用語はまた、その二環型および三環型も含むことが意図される。二環式の環が形成される場合、各環が、2つの隣接した炭素原子の位置で互いに結合しあっていることが好ましいが、別の方法としては、2つの環が同じ炭素原子を介して結合している、すなわち、それらがスピロ環系を形成しているか、またはそれらが「架橋」環系を形成している。シクロアルキレンの好ましい例には、-(C3~C9)シクロアルキレン、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、スピロ[3,3]ヘプチル、スピロ[3,4]オクチル、スピロ[4,3]オクチル、ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[5.1.0]オクチル、およびビシクロ[4.2.0]オクチルが含まれる。
【0054】
「アルケニレン」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素のジラジカルを意味する。通常、アルケニレン基中の炭素-炭素二重結合の最大数は、アルケニレン基中の炭素原子の数を2で割ることによって計算される整数に等しい数であることができ、アルケニレン基中の炭素原子の数が奇数である場合、割り算の結果の端数を切り捨てた整数となる。例えば、9個の炭素原子を有するアルケニレン基の場合、炭素-炭素二重結合の最大数は4である。好ましくは、アルケニレン基は、1~4個、すなわち、1個、2個、3個、または4個の炭素-炭素二重結合を有する。好ましくは、アルケニレン基は、2~15個の炭素原子、すなわち、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個の炭素原子を含む。例えば、「-(C2~C15)アルケニレン-」という用語は、2~15個の炭素原子を有するアルケニレン基を表す。より好ましくは、アルケニレン基は、2~9個の炭素原子、最も好ましくは2~5個の炭素原子、特に好ましくは2~3個の炭素原子を含む。したがって、好ましい態様において、アルケニレン基は、2~15個の炭素原子および1個、2個、3個、4個、5個、6個、または7個の炭素-炭素二重結合を含み、より好ましくは、アルケニレン基は、2~9個の炭素原子および1個、2個、3個、または4個の炭素-炭素二重結合、最も好ましくは2~5個の炭素原子および1個または2個の炭素-炭素二重結合、特に好ましくは2~3個の炭素原子および1個の炭素-炭素二重結合を含む。炭素-炭素二重結合は、cis(Z)またはtrans(E)立体配置で存在してよい。例示的なアルケニレン基には、エテン-1,2-ジイル、ビニリデン、1-プロペン-1,2-ジイル、1-プロペン-1,3-ジイル、1-プロペン-2,3-ジイル、アリリデン、1-ブテン-1,2-ジイル、1-ブテン-1,3-ジイル、1-ブテン-1,4-ジイル、1-ブテン-2,3-ジイル、1-ブテン-2,4-ジイル、1-ブテン-3,4-ジイル、2-ブテン-1,2-ジイル、2-ブテン-1,3-ジイル、2-ブテン-1,4-ジイル、2-ブテン-2,3-ジイル、2-ブテン-2,4-ジイル、および2-ブテン-3,4-ジイルなどが含まれる。
【0055】
還元剤(RA)は、任意の適切な量で溶液中に存在してよい。例えば、本明細書において説明される方法において使用される還元剤は、少なくとも1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、500mM、またはそれより高い濃度で存在してよい。還元剤はまた、約1mM~500mMの濃度で存在してもよい。還元剤は、約1mM~約200mMまたは2mM~150mMの濃度で、好ましくは5mM~140mMの濃度で、より好ましくは約10mM~約100mMの濃度で、より一層好ましくは約10mM~約50mMまたは10mM~40mMの濃度で存在してよい。還元剤はまた、5mM~約100mMの濃度で、より好ましくは約10mM~約100mMの濃度で、最も好ましくは約10mM~約50mMの濃度で、さらにより好ましくは約20~40mMの濃度で存在してよい。還元剤はまた、約1mM~約200mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、約30mM~約50mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、20mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、30mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、40mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、50mMの濃度で存在してもよい。還元剤はまた、100mMの濃度で存在してもよい。
【0056】
本明細書において説明される方法において使用される還元剤(b)は、約20mM~約100mMの濃度で存在することが好ましく、より好ましくは、還元剤(b)は約50mMの濃度で存在する。
【0057】
試料を溶液、すなわち、本明細書において説明される、緩衝物質、還元剤、および好ましくは陰イオン性界面活性剤を含む溶液と接触させることもまた、企図される。
【0058】
緩衝物質(BU)は、任意の適切な緩衝物質であることができる。主に、緩衝物質は、希釈の際または少量の酸もしくはアルカリを添加した際のpHの何らかの変化に抵抗する。緩衝剤は、例えば、pH約1~13、好ましくは2~13、より好ましくは4~11または4~10、さらにより好ましくは4~7または5~8または6~9のpH範囲に緩衝する能力を有するべきである。緩衝剤はまた、約3~約11のpH範囲、好ましくは約4~約10のpH範囲に緩衝する能力を有することも可能である。緩衝物質は、約6~約9のpHの間のpH範囲、最も好ましくは約7.5のpHに緩衝する能力を有することが好ましい。上記のpH値の範囲が本発明の全態様において使用され得ることは言うまでもない。
【0059】
緩衝物質(BU)は、当業者に周知であり、TRIS-HClなどのTRIS、酒石酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、HEPES、HPPS、MES([2-(N-モルピリノ)エタンスルホン酸])、ADA(N-2-アセトアミド-2-イミノジアセイチック酸)、AMP、AMPSO、CAPSO、CAPS、CABS、CHES、PIPES、ACES、MOPSO、MOPS、BES、TES、DIPSO、TAPSO、TEA、EPS、HEPBS、POPSO、HEPPSO、HEPPS、TAPS、コラミン塩酸緩衝剤、アセトアミドグリシン緩衝剤、トリシン緩衝剤、グリシンアミド緩衝剤、グリシルグリシン緩衝剤、ビス‐トリスメタン緩衝剤、ビシン緩衝剤、もしくは任意のアンモニア緩衝剤を含む群またはそれらからなる群より選択されてよく、好ましくは、緩衝物質は、TRIS、好ましくはTRIS-HCl、または酒石酸緩衝剤、好ましくは酒石酸ナトリウムである。
【0060】
1つの好ましい態様において、緩衝物質(BU)はTRISである。
【0061】
より好ましい1つの態様において、緩衝物質(BU)はTRIS-HClである。
【0062】
1つの好ましい態様において、緩衝物質(BU)は酒石酸緩衝剤である。
【0063】
より好ましい1つの態様において、緩衝物質(BU)は酒石酸ナトリウムである。
【0064】
試料を、任意の適切な量の緩衝物質(a)を含む溶液と接触させてよい。例えば、緩衝物質(a)は、少なくとも約2mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、またはそれより高い濃度で存在してよい。緩衝物質(BU)が、約2mM~約50mMの濃度で、好ましくは約5mM~約40mMの濃度で、より好ましくは約10mM~約30mMの濃度で存在することができることが、さらに想定される。例えば、緩衝物質は、約20mMまたは50mMの濃度で存在してよい。したがって、緩衝物質(BU)は、TRIS-HClなどのTRISであってよく、その際、TRISは、約2mM~約50mMの濃度で、好ましくは約5mM~約40mMの濃度で、より好ましくは約10mM~約30mMの濃度で存在する。
【0065】
緩衝物質は、(本明細書において前述したように)酒石酸塩であってよい。酒石酸塩は、約2mM~約50mMの濃度で、好ましくは約5mM~約40mMの濃度で、より好ましくは約10mM~約30mMの濃度で、最も好ましくは約20mMの濃度で存在してよい。
【0066】
本明細書において開示される溶液はまた、界面活性剤(c)も含む。
【0067】
本発明の全態様に関連して使用され得る界面活性剤は、任意の適切な界面活性剤、および特に、任意の適切な陰イオン性界面活性剤であってよい。
【0068】
界面活性剤の非限定的な例には、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、またはNaDSと表記されることもある)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)および3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)が含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。
【0069】
陰イオン性界面活性剤の非限定的な例には、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、NADS、オクチル硫酸ナトリウム、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、オレイン酸カリウム、ペンタンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、4-モルホリンエタンスルホン酸、デシル硫酸ナトリウム、リグノスルホン酸、リグニンスルホン酸カルシウム塩、1-ブタンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム塩、アリルスルホン酸ナトリウム、3-(N,N-ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホナート、スルホン化ヒマシ油、2,6-ジモルホリン-4-イルピリミジン-4-カルボン酸、メチレンビスナフタレンスルホン酸二ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジステアリン酸ヒドロキシアルミニウム、2-スルホラウリン酸エチルナトリウム、スルホコハク酸ジイソブチルナトリウム、ドデシルベンテンスルホン酸ナトリウム塩、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム塩、4-ドデシル-2,4'-オキシジベンゼンスルホン酸二ナトリウム、スルホン化脂肪族ポリエステル、n-メチル-n-オレイルタウリンナトリウム、ジ-n-ナトリウムスルホスクシナート、二塩基性ステアリン酸鉛、n-オクチルスホン酸ナトリウム、ドデシルトリエタノールアミン硫酸塩、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸マンガン、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、4-[2-[(1-オキソウンデク-10-エニル)アミノ]エチル]2-スルホナトコハク酸二ナトリウム、ポリ[(ナフタレンホルムアルデヒド)スルホン酸]ナトリウム、1-ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸アンモニウム、1-ペンタンスルホン酸ナトリウム塩一水和物、リグノスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、ラウリルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム、ノニルフェノールポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコール硫酸アンモニウム、オレイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレンエーテルトリエタノールアミン塩、ドデシルフェニル硫酸アンモニウム、ピロリドン炭酸ナトリウム、n-アシルグルタミン酸カリウム塩、ポリアルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル硫酸ナトリウム、ステアリルトルエンスルホン酸ナトリウム、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテルスルファートトリエタノールアミン、グリセリルエーテルカルボン酸塩、ステアリル乳酸カルシウム、モノエタノールアミンドデシルスルファート、アルコキシエタノールアミドスルホコハク酸ナトリウム塩、アンモニウムドデシルベンゼンスルホナート、ドデカイジエタノールアミンスルファート、ナトリウムジベンジルアミンベンゼンスルホナート、またはナトリウムジベンジルアミンベンゼンスルホナートが含まれる。
【0070】
本明細書において説明される任意の使用、方法、または溶液の、より好ましい1つの態様において、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸アンモニウム、モノエタノールアミンドデシルスルファート、ジエタノールアミンドデシルスルファート、またはトリエタノールアミンドデシルスルファートである。
【0071】
本明細書において説明される任意の使用、方法、または溶液の、より一層好ましい1つの態様において、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸アンモニウム、モノエタノールアミンドデシルスルファート、またはトリエタノールアミンドデシルスルファートである。
【0072】
本明細書において説明される任意の使用、方法、または溶液の、より一層好ましい1つの態様において、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、またはドデシル硫酸アンモニウムである。
【0073】
本明細書において説明される任意の使用、方法、または溶液の、より一層好ましい1つの態様において、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)である。
【0074】
本明細書において説明される任意の使用、方法、または溶液の、さらにより好ましい1つの態様において、界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0075】
試料を、1M未満、900mM未満、800mM未満、700mM未満、600mM未満、500mM未満、400mM未満、300mM未満、200mM未満、190mM未満、180mM未満、170mM未満、160mM未満、150mM未満、140mM未満、130mM未満、120mM未満、110mM未満、100mM未満、90mM未満、80mM未満、70mM未満、60mM未満、50mM未満、40mM未満、30mM未満、20mM未満、10mM未満、5mM未満、4mM未満、3mM未満、またはそれより低い濃度の界面活性剤、例えば陰イオン性界面活性剤と接触させることが想定される。
【0076】
界面活性剤、例えば陰イオン性界面活性剤はまた、約1mM~約150mM、約2mM~約140mM、約3mM~約130mM、約4mM~約120mM、約5mM~約110mM、または約7mM~約110mM、または約10mM~約100mMの濃度で存在してよい。界面活性剤はまた、約20mM~約100mMの濃度で存在してもよい。
【0077】
本明細書において開示される溶液は、還元剤(b)および緩衝物質(a)に加えて、任意で錯化剤(e)をさらに含んでもよい。したがって、本明細書において説明される方法および使用において、試料を、錯化剤(e)をさらに含むこのような溶液と接触させてよい。錯化剤は、好ましくはキレート剤である。錯化剤は、任意の適切な錯化剤であってよい。キレート剤を用いる錯体形成は、多座(多重結合される)配位子と単一の中心原子との間で2個もしくはそれより多い別々の配位結合が形成すること、または存在することを含む。
【0078】
錯化剤は、DNアーゼ活性を阻害するために溶解溶液に添加されてよい。
【0079】
錯化剤の非限定的な例には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)、およびエチレンジアミン二酢酸(EDDS)が含まれる。また、錯化剤は、酒石酸またはその塩、例えば酒石酸ナトリウムであってもよい。
【0080】
1つの好ましい態様において、錯化剤は、エチレングリコール-ビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸(EGTA)である。
【0081】
1つの好ましい態様において、錯化剤は、エチレンジアミン二酢酸(EDDS)である。
【0082】
1つの好ましい態様において、錯化剤は酒石酸ナトリウムである。
【0083】
錯化剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であることが、最も好ましい。
【0084】
錯化剤は、任意の適切な濃度で存在してよい。例えば、錯化剤は、10mM未満、9mM未満、8mM未満、7mM未満、6mM未満、5mM未満、4mM未満、3mM未満、2mM未満、1mM未満、0.9mM未満、0.8mM未満、0.7mM未満、0.6mM未満、0.5mM未満、0.4mM未満、0.3mM未満、0.2mM未満、0.1mM未満、0.05mM未満、またはそれより低い濃度で存在してよい。錯化剤が、約0.01mM~約1mM、約0.025mM~約0.75mM、約0.05mM~約0.5mM、約0.075mM~約0.25mM、または約0.1mMの濃度で存在してよいこともまた、想定される。
【0085】
本明細書において説明される本発明の溶液は、還元剤(b)、緩衝物質(a)、界面活性剤(c)、および任意で錯化剤(e)に加えて、カオトロピック塩(CAO)ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素(本明細書において説明される任意の化合物(d))を任意で含んでよい。
【0086】
カオトロピック塩(CAO)は、任意の適切なカオトロピック塩であってよい。同様に、尿素は、任意の適切な尿素であってよい。典型的には、カオトロピック塩は、非共有結合性の力、例えば、水素結合、ファンデルワールス力、および疎水性作用によってもたらされる分子間相互作用の邪魔をすることにより、タンパク質ならびに核酸(例えばDNAおよびRNA)などの高分子の構造を乱し、かつ変性させる、化合物である。同様の作用が、尿素にも予期されている。
【0087】
カオトロピック塩は、NO3
-、Br-、ClO4
-、ClO3
-、Cl3CCOO-、SCN-、K+、Ba+、Li+、NH4
+、Mg2+、Ca2+、およびグアニジニウムからなる群より選択されるイオンを含むか、または与えることができる。好ましくは、カオトロピック塩は、NO3
-、Br-、ClO4
-、ClO3
-、Cl3CCOO-、SCN-、Li+、NH4
+、Mg2+、およびグアニジニウムからなる群より選択される陰イオンを含むか、または与えることができる。より好ましくは、カオトロピック塩は、NO3
-、Br-、ClO4
-、ClO3
-、Cl3CCOO-、SCN-、Li+、NH4
+、およびグアニジニウムからなる群より選択される陰イオンを含むか、または与えることができる。
【0088】
カオトロピック塩(CAO)の非限定的な例には、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、NH4Ac、NaCl、塩化グアニジウム、グアニジニウムヒドロクロリド、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウム、グアニジニウムイソチオシアナート、またはグアニジニウムイソシアナート(GuSCN)が含まれる。好ましくは、カオトロピック塩には、NaBr、NaI、NaSCN、LiCl、LiBr、NH4Ac、NaCl、塩化グアニジウム、グアニジニウムヒドロクロリド、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、酢酸リチウム、グアニジニウムイソチオシアナート、またはグアニジニウムイソシアナート(GuSCN)が含まれ得る。
【0089】
尿素の非限定的な例には、尿素またはその塩が含まれる。
【0090】
試料を、1種、2種、3種、4種、5種、6種、またはそれより多い種類の異なるカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素と接触させること、あるいは本明細書において説明される溶解溶液がそれらを含むこともまた、企図される。
【0091】
カオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素(c)が、0.9M未満、0.8M未満、0.7M未満、0.6M未満、0.5M未満、0.4M未満、0.3M未満、0.2M未満、0.1M未満、0.09M未満、0.08M未満、0.07M未満、0.06M未満、0.05M未満、0.04M未満、0.03M未満、0.02M未満、0.01M未満、0.009M未満、0.008M未満、0.007M未満、0.006M未満、0.005M未満、0.004M未満、0.003M未満、0.002M未満、0.001M未満またはそれより低い濃度で存在することが想定される。
【0092】
試料をカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素と接触させないこともまた、企図される。したがって、溶液がカオトロピック塩ならびに/または尿素および/もしくはチオ尿素を含まないこともまた、企図される。
【0093】
本明細書において説明される方法/使用において、特に溶解段階において、試料を酵素と接触させることは任意である。
【0094】
これに関連して、すでに本明細書において上記に説明したように、試料を酵素と接触させずに方法および使用を実施することが好ましいことに、もう一度留意されたい。例えば、核酸の単離後に、酵素を添加してよい。したがって、還元剤(b)、緩衝物質(a)、陰イオン性界面活性剤(c)、および任意で(d)~(h)のうちの1つまたは複数を含む溶液が、酵素を含まないことが、さらに想定される。
【0095】
溶液中でOH-イオンを与える化合物(本明細書において説明される溶解溶液に溶かした任意の化合物(f))を溶液がさらに含むこともまた、企図される。溶液中でOH-イオンを与える化合物は、溶液中でOH-イオンを与える任意の適切な化合物であってよい。例えば、溶液中でOH-イオンを与える化合物はNaOHであってよい。例えば、溶液中でOH-イオンを与える化合物は、必要とみなされる場合には、pHを調整するために使用されてよい。
【0096】
しかし、この化合物は、好ましくは、少量のみで存在するべきである。したがって、溶液は、溶液中でOH-イオンを与える化合物(f)を含んでよく、その際、この化合物は、0.1M、0.05M、0.005M、0.0005M未満、またはそれより低い濃度を有する。本明細書において開示される溶液が、溶液中でOH-イオンを与える化合物(任意の成分)を含まないこともまた、可能である。
【0097】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよく、または以下からなってよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)に記載の還元剤(RA)、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(c)陰イオン性界面活性剤、好ましくはSDS、ならびに
(e)任意で、錯化剤(CA)。
【0098】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよく、または以下からなってよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)に記載の還元剤(RA)、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(c)SDSである、陰イオン性界面活性剤、ならびに
(e)任意で、錯化剤(CA)。
【0099】
本明細書において開示される溶液が、以下を含んでよく、または以下からなってよいこともまた、想定される:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)に記載の還元剤(RA)、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(e)任意で、錯化剤(CA)、ならびに
(d)任意で、カオトロピック塩(CAO)、ならびにさらに、
(c)陰イオン性界面活性剤、好ましくはSDS;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、より好ましくは約6~9のpH、および最も好ましくは約7.5~8のpHを有する。
【0100】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよく、または以下からなってよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)に記載の還元剤(RA)、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(e)任意で、錯化剤(CA)、
(d)任意で、カオトロピック塩(CAO)、ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤、好ましくはSDS;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、より好ましくは約6~9のpH、および最も好ましくは約7.5~8のpHを有する。
【0101】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよく、または以下からなってよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)に記載の還元剤(RA)、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(e)任意で、錯化剤(CA)、
(d)任意で、カオトロピック塩(CAO)、ならびに
(c)SDSである、陰イオン性界面活性剤;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、より好ましくは約6~9のpH、および最も好ましくは約7.5~8のpHを有する。
【0102】
本明細書において開示される溶液が、DNA安定化剤(g)をさらに含んでよいこともまた、想定される。したがって、試料をDNA安定化剤(g)と接触させてよい。DNA安定化剤は、任意の適切なDNA安定化剤であってよい。DNA安定化剤は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム塩などのアンモニウム塩、または塩化カルシウム(CaCl2)であってよい。好ましい態様において、塩化アンモニウムがDNA安定化剤として使用される。
【0103】
DNA安定化剤は、少なくとも1M、少なくとも2M、少なくとも5M、少なくとも7.5M、少なくとも10M、もしくは少なくとも15M、またはそれより高い濃度で溶液中に存在してよい。また、DNA安定化剤は、少なくとも20M、少なくとも25M、少なくとも30M、少なくとも40M、少なくとも15M、またはそれより高い濃度で存在してもよい。溶液はまた、500mM未満、450mM未満、400mM未満、350mM未満、300mM未満、250mM未満、200mM未満、150mM未満、100mM未満、75mM未満、またはそれより低い濃度でDNA安定剤を含んでもよい。DNA安定剤が、約1mM~約500mM、約5mM~約400mM、約10mM~約300mM、約20mM~約120mM、約25mM~約75mMの濃度を有することもまた、想定される。好ましくは、DNA安定剤は、溶液中で約50mMの濃度を有する。
【0104】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)の還元剤、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(e)任意で、錯化剤(CA)、
(c)陰イオン性界面活性剤、より好ましくはSDS、ならびに
(g)任意で、DNA安定化剤。
【0105】
また、好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよい:
(a)本明細書において定義される還元剤(RA)、好ましくは、式(I)の還元剤、
(b)好ましくは、溶液をpH約1~13、より好ましくはpH約4~11、およびさらにより好ましくはpH約6~9に緩衝化するための、緩衝物質(BU)、
(e)錯化剤(CA)、
(d)任意で、カオトロピック塩(CAO)、
(g)任意で、DNA安定化剤、ならびに
(c)陰イオン性界面活性剤、より好ましくはSDS。
【0106】
本明細書において説明される溶液は、核酸配列を単離するために適している任意のpHを有してよい。例えば、溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、さらにより好ましくは約5~8のpH、および最も好ましくは約7.5~8のpHを有することができる。溶液が約5~9のpH、好ましくは約6~8のpHを有することができることもまた想定され、より好ましくは、pHは約7(6.5~7.5)である。溶液が約7.5~8.0のpHを有することができることもまた、想定される。溶液が2~13、好ましくは4~11のpHを有することができることもまた、想定される。好ましい態様において、溶液は、約4~7のpHを有することができる。溶液が5~9、好ましくは5~8のpHを有することができることもまた想定され、より好ましくは、pHは約7(6.5~7.5)である。溶液が3~6のpHを有することができることもまた、想定される。溶液が8~10のpHを有することができることもまた、想定される。
【0107】
好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約1~500mMの還元剤を含み、かつ/または約2~13のpHを有する。
【0108】
より好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約1~500mM、さらにより好ましくは約5~100mMの還元剤を含み、かつ/または約4~11のpHを有する。
【0109】
より好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約5~100mMの還元剤を含み、かつ/または約2~13、さらにより好ましくは約4~11のpHを有する。
【0110】
さらにより好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約5~100mMの還元剤を含み、かつ/または約5~8のpHを有する。
【0111】
さらにより好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約10~40mMの還元剤を含み、かつ/または約2~13のpH、さらにより好ましくは約4~11のpHを有する。
【0112】
さらにより好ましくは、本明細書において説明される溶液は、約10~40mMの還元剤を含み、かつ/または約5~8のpHを有する。
【0113】
したがって、本明細書において開示される溶液は、以下を含んでよい:
(a)10~80mM、好ましくは約50mMの緩衝物質、好ましくはTRIS、
(b)1~500mM、好ましくは5~100mM、より好ましくは20~40mM、最も好ましくは約50mMの、本明細書において開示される還元剤、好ましくはTCEP、
(e)任意で、0.001~1mM、好ましくは約0.1mMの錯化剤、好ましくはEDTA、
(c)1~100mM、好ましくは20~100mM、より好ましくは約70mMの陰イオン性界面活性剤、好ましくはSDS、および
(g)任意で、10~75mM、好ましくは約50mMの、本明細書において開示されるDNA安定化剤、好ましくは塩化アンモニウム;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、最も好ましくは約5~8のpHを有する。
【0114】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mM、好ましくは約50mMの緩衝物質であって、TRISである、緩衝物質、
(b)1~500mM、好ましくは5~100mM、より好ましくは20~40mM、最も好ましくは約50mMの還元剤であって、TCEPである、還元剤、
(e)任意で、0.001~1mM、好ましくは約0.1mMの錯化剤であって、EDTAである、錯化剤、
(c)1~100mM、好ましくは20~100mM、より好ましくは約70mMの陰イオン性界面活性剤であって、SDSである、陰イオン性界面活性剤、および
(g)任意で、10~75mM、好ましくは約50mMのDNA安定化剤であって、塩化アンモニウムである、DNA安定化剤;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、最も好ましくは約6~9のpHを有する。
【0115】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
任意で、この溶液は、約1~13のpH、好ましくは約2~13のpH、より好ましくは約4~11のpH、最も好ましくは約6~9のpHを有する。
【0116】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約1~13のpHを有する。
【0117】
好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約2~13のpHを有する。
【0118】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約4~11のpHを有する。
【0119】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約6~9のpHを有する。
【0120】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約5~8のpHを有する。
【0121】
より好ましくは、本明細書において開示される溶液は、以下を含む:
(a)10~80mMのTRIS、
(b)1~500mMのTCEP、
(e)任意で、0.001~1mMはEDTAである、
(c)1~100mMのSDS、および
(g)任意で、10~75mMの塩化アンモニウム;
ここで、この溶液は、約7.5~8のpHを有する。
【0122】
前述したように、試料から核酸を単離することは、少なくとも約60℃の温度で、好ましくは約60℃~約85℃の範囲内のある温度で、より好ましくは約80℃の温度で、好ましくは少なくとも10秒間であることもまた、企図される。
【0123】
温度は標準温度圧(NTP)で測定されることに留意されたい。NTPでは、20℃(293.15K、68°F)の温度および1atm(14.696psi、101.325kPa)の絶対圧力が存在している。圧力は、気圧計を用いて測定できる。温度は、温度計を用いて測定できる。
【0124】
段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの酸の単離は、少なくとも約60℃の温度、少なくとも約70℃の温度、少なくとも約75℃の温度、または少なくとも約80℃の温度であってよい。段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの酸の単離は、約60℃~約95℃または約75℃~約85℃の温度であってよいこともまた、想定される。
【0125】
段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの核酸の単離は、10秒間、15秒間、30秒間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、12分間、15分間、17分間、20分間、25分間、30分間、40分間、50分間、もしくは1時間、またはそれより長い時間であってよい。段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの酸の単離は、10秒間、15秒間、30秒間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、12分間、15分間、17分間、20分間、25分間、30分間、40分間、50分間、もしくは1時間、またはそれより長い時間であってよいこともまた、想定される。
【0126】
段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの核酸の単離は、最長で、1時間、50分間、40分間、30分間、25分間、20分間、17分間、15分間、12分間、10分間、9分間、8分間、7分間、6分間、5分間、4分間、3分間、2分間、または1分間であってよい。段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの酸の単離は、最長で、1時間、50分間、40分間、30分間、25分間、20分間、17分間、15分間、12分間、10分間、9分間、8分間、7分間、6分間、5分間、4分間、3分間、2分間、または1分間であってよいこともまた、想定される。
【0127】
段階(ii)でのインキュベーションまたは試料からの核酸の単離は、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも7分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間、および/もしくは最長で1時間であってよく、または試料から核酸を単離することは、少なくとも40℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも7分間、少なくとも10分間、少なくとも30分間である。
【0128】
したがって、試料を含む溶液が、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10秒間インキュベーションされるか、または試料から核酸を単離することが、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10秒間であることもまた、想定される。試料を含む溶液が、好ましくは少なくとも10秒間、少なくとも約60℃の温度を有することも、さらに企図される。
【0129】
試料を含む溶液が、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10分間、少なくとも15分間、もしくは少なくとも30分間インキュベーションされるか、または試料からの核酸の単離が、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10分間、少なくとも15分間、もしくは少なくとも30分間、および任意で最長1時間であわれることもまた、想定される。
【0130】
試料を含む溶液が、少なくとも約60℃の温度で10~60分間、15~60分間、15~40分間、または少なくとも約60℃で10~60分間、15~60分間、15~40分間、もしくは15~30分間インキュベーションされることもまた、想定される。
【0131】
試料を含む溶液が、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~20分間インキュベーションされるか、あるいは試料から核酸を単離することが、少なくとも約60℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~10分間であり、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することもまた、想定される。
【0132】
試料を含む溶液が、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~10分間、少なくとも約60℃の温度を有し、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することも、さらに企図される。
【0133】
試料を含む溶液が、少なくとも約70℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~10分間インキュベーションされるか、あるいは試料から核酸を単離することが、少なくとも約70℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~10分間であり、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することもまた、想定される。
【0134】
試料を含む溶液が、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、5分間、10分間、15分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~40分間、より好ましくは1分間~30分間、最も好ましくは1分間~10分間、少なくとも約70℃の温度を有し、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することも、さらに企図される。
【0135】
試料を含む溶液が、少なくとも約75℃、80℃、または85℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、2分間、3分間、4分間、5分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~10分間、より好ましくは1分間~10分間、最も好ましくは3分間~5分間インキュベーションされるか、あるいは試料から核酸を単離することが、少なくとも約75℃、80℃、または85℃の温度で少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、2分間、3分間、4分間、5分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~10分間、より好ましくは1分間~10分間、最も好ましくは3分間~5分間であり、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することもまた、想定される。
【0136】
試料を含む溶液が、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、2分間、3分間、4分間、5分間もしくはそれより長く、または少なくとも10秒間~1時間、好ましくは10秒間~10分間、より好ましくは1分間~10分間、最も好ましくは3分間~5分間、少なくとも約75℃、80℃、または85℃の温度を有し、ここで、該溶液が、約1mM~500mM、好ましくは5mM~500mMの還元剤、より好ましくは5mM~100mMの還元剤、最も好ましくは10mM~40mMの還元剤を任意で含み、かつ/または約2~13、好ましくは約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを任意で有することも、さらに企図される。
【0137】
さらにまたはその代わりに、試料を含む溶液は、約60℃~約95℃の温度で1分間~30分間インキュベーションされるか、または試料から核酸を単離することは、約60℃~約95℃の温度で1分間~10分間、行われる。試料を含む溶液が、約60℃~約95℃の温度で1分間~10分間インキュベーションされることも、さらに企図される。
【0138】
試料を含む溶液が、約60℃~約95℃の温度で1分間~30分間インキュベーションされるか、または試料から核酸を単離することが、約60℃~約95℃の温度で1分間~10分間、行われ、ここで、該溶液が、任意で、約5~100mMの還元剤を含み、かつ/または約4~11のpHを有することもまた、想定される。試料を含む溶液が、約60℃~約95℃の温度で1分間~10分間インキュベーションされ、該溶液が、任意で、約5~100mMの還元剤を含み、かつ/または約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9のpHを有することも、さらに企図される。
【0139】
さらにまたはその代わりに、試料を含む溶液は、約75℃~約85℃、好ましくは約80℃~約85℃の温度で約3~5分間インキュベーションされるか、または試料から核酸を単離することは、約75℃~約85℃の温度で約3~5分間である。試料を含む溶液が、約75℃~約85℃、好ましくは約80℃~約85℃の温度で約3~5分間インキュベーションされることも、さらに企図される。
【0140】
試料を含む溶液が、約75℃~約85℃、好ましくは約80℃~約85℃の温度で約3~5分間インキュベーションされるか、または試料から核酸を単離することが、約75℃~約85℃、好ましくは約80℃~約85℃の温度で約3~5分間であり、ここで、該溶液が、任意で、約5~100mM、好ましくは10~40mMの還元剤を含み、かつ約4~11、好ましくは約5~8のpHを有することもまた、想定される。試料を含む溶液が、約75℃~約85℃の温度で約3~5分間インキュベーションされ、該溶液が、任意で、約5~100mM、好ましくは10~40mMの還元剤を含み、かつ約4~11もしくは約4~10、より好ましくは約6~9、または約5~8のpHを有することも、さらに企図される。
【0141】
当業者は、ある特定の温度で溶液をインキュベーションできる方法を知っている。さらに、エッペンドルフチューブなどの標準的な容器が実験室で使用されることも明らかである。これらの標準的なチューブおよびその中の溶液は、例えば、サーマルシェーカーを介して温度/熱が加えられる場合、所望の温度まで直ちに温まることが予想される。
【0142】
サーマルシェーカーは、少なくとも800rpm、より好ましくは1400rpmで振盪することが好ましい。
【0143】
たいてい、当業者は、温度、温度が適用される/存在する時間、および/または還元剤の量が、実施例でも説明されるように相互関係のある因子であり得ることを理解している。したがって、温度が高いほど、温度が適用され得る時間が短くてよく、かつ/または還元剤の濃度が低くてよい。
【0144】
試料のインキュベーションまたは単離は、本明細書において開示される様々な温度で行われる。原理的には、温度は、様々な方法で実現することができる。
【0145】
一方では、溶液および試料を、例えば60℃の温度または本明細書において示される他の任意の温度で調製し、次いで、互いに接触させることができる。その後、試料を含む溶液を、ある期間にわたって同じ温度に予熱しておいたサーマルシェーカー中に入れる。
【0146】
他方では、溶液および試料を、約20℃の室温で調製し、次いで、互いに接触させることができる。その後、試料を含む溶液を、ある期間にわたって例えば約60℃の温度または本明細書において示される他の任意の温度に予熱しておいたサーマルシェーカー中に、入れることができる。
【0147】
さらに別の選択肢は、溶液および試料を約90℃の温度で調製し、次いで、互いに接触させるというものである。次いで、試料を含む溶液を、関心対象の温度、例えば、60℃または本明細書において開示される他の任意の温度に到達するまで、室温、例えば20℃で放置する。
【0148】
方法/使用が、さらにまたはその代わりに、試料の機械的均質化の段階(i01)を含んでよいことが、さらに想定される。当業者は、試料を機械的に均質化する方法を知っており、そのうちのいくつかは、とりわけ、Burden (2008) “Guide to the Homogenization of Biological Samples” Random Primers, Issue No. 7, Sept. 2008, page 1-14によって説明されている。一般に、機械的均質化とは、試料の破壊を意味する。例えば、試料は、粉砕、剪断、破砕、衝撃、またはそれらの組合せによって機械的に均質化されてよい。
【0149】
粉砕は、試料を穀類ミル、コーヒー粉砕機、ボルテックスミキサー、ビーズ破砕機、またはガラス製ホモジナイザーと接触させることによって遂行され得る。粉砕は、互いに摺動する2つの硬い表面の間に試料を挟むことにより摩擦を作り出すことに依拠している。
【0150】
剪断は、試料をブレンダーまたはローターステーターと接触させることによって遂行され得る。剪断の際は、接線力が試料に加えられている。
【0151】
破砕は、プロジェクタイルを用いて試料を破砕することに関する。ほとんどのビーズ破砕方法は、試料およびビーズをチューブに入れ、それらを前後に高速で振盪することに依拠する。例えば、試料の機械的均質化は、乾式ビーズ破砕または湿式ビーズ破砕などのビーズ破砕によって達成され得る。
【0152】
衝撃(圧力)には、とりわけ、例えば超音波処理を用いるような、試料を破壊するために使用される衝撃波が含まれる。
【0153】
試料を機械的に均質化する段階は、段階(i)で試料を接触させる段階の前に行われることが想定される。
【0154】
本発明の方法/使用は、さらにまたはその代わりに、試料を酵素と接触させる段階を含んでもよい。この酵素消化段階は、例えば、段階(i)の前、すなわち本明細書における試料を接触させる段階の前、または段階(i)の後のいずれかに行うことが可能である。
【0155】
したがって、これらの方法/使用は、段階(i)で試料を接触させる前に、試料を酵素と接触させる段階(i02)をさらに含んでよい。しかし、方法が、段階(i)で得られた(溶解)試料を酵素と接触させる段階(i1)をさらに含むこともまた、想定される。
【0156】
段階(i02)および(i1)は、典型的には、約60℃の温度でのインキュベーションを必要とする。したがって、段階(a02)および(a1)は、約60℃で実施することが可能である。酵素は、温度を約80℃またはさらに90℃に上げることによって不活性化され得る。段階(i02)が段階(i)の前に実施される場合、試料と接触させた溶液の加熱(40℃または40℃超でのインキュベーション)によって、酵素が不活性化される。段階(i1)が段階(i)の後に実施される場合、方法は、付加的なインキュベーション段階(最高で80℃または90℃)を含んでよい。
【0157】
本発明の方法/使用は、さらにまたはその代わりに、試料を含む溶液を清澄化溶液(h)と接触させる段階(ii1)を含んでもよい。
【0158】
本明細書において説明される溶液、特に本発明の溶液が、清澄化溶液(h)をさらに含むことが、さらに好ましい。
【0159】
清澄化溶液は、陰イオン性界面活性剤を沈殿させることができる作用を有する。したがって、清澄化溶液は、例えば(溶解)溶液に含まれる陰イオン性界面活性剤と試料を接触させた方法において添加されることが典型的である。
【0160】
したがって、適切な界面活性剤が陰イオン性界面活性剤である場合、清澄化溶液は、該界面活性剤を沈殿させるための陽イオン性イオンを含んでよい。適切な陽イオン性イオンには、例えば、K+、Rb+、Cs+、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++が含まれ得る。いくつかの態様において、陽イオンは、K+、Rb+、またはCs+であってよい。好ましくは、陽イオンは、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++であってよい。より好ましくは、陽イオンは、Ca++、Sr++、またはBa++であってよい。より一層好ましくは、陽イオン性イオンは、Ca++またはSr++であってよい。さらにより好ましくは、陽イオンは、Sr++である。陽イオン性イオンがAl、Zn、Sn、またはFeであることもまた、想定される。好ましくは、これらの態様のいずれか1つにおいて、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸アンモニウム、モノエタノールアミンドデシルスルファート、ジエタノールアミンドデシルスルファート、またはトリエタノールアミンドデシルスルファートである。より好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸アンモニウム、モノエタノールアミンドデシルスルファート、またはトリエタノールアミンドデシルスルファートである。より一層好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム(LiDS)、またはドデシル硫酸アンモニウムである。より一層好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)である。さらにより好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)である。
【0161】
したがって、清澄化溶液は、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、RbI、CsCl、CsBr、CsI、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。いくつかの態様において、清澄化溶液は、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、RbI、CsCl、CsBr、またはCsIを含んでよい。いくつかの態様において、清澄化溶液は、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、またはRbIを含んでよい。好ましくは、清澄化溶液は、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。より好ましくは、清澄化溶液は、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。より一層好ましくは、清澄化溶液は、CaCl2またはSrCl2を含んでよい。さらにより好ましくは、清澄化溶液は、SrCl2を含んでよい。
【0162】
例えば、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、K+、Rb+、Cs+、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++を含む塩を含んでよい。いくつかの態様において、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、K+、Rb+、またはCs+を含む塩を含んでよい。好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、Mg++、Ca++、Sr++、またはBa++を含む塩を含んでよい。より好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、Ca++、Sr++、またはBa++を含む塩を含んでよい。より一層好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、Ca++またはSr++を含む塩を含んでよい。さらにより好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、Sr++を含む塩を含んでよい。
【0163】
清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、RbI、CsCl、CsBr、CsI、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。いくつかの態様において、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、RbI、CsCl、CsBr、またはCsIを含んでよい。いくつかの態様において、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、またはRbIを含んでよい。好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。より好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaCl2、BaBr2、またはBaI2を含んでよい。より一層好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満の、CaCl2またはSrCl2を含んでよい。さらにより好ましくは、清澄化溶液は、6M、5M、4M、3M、2M、1M、0.5M、0.25M、またはそれ未満のSrCl2を含んでよい。したがって、清澄化溶液は、1Mまたは2MのSrCl2を含んでよい。清澄化溶液は、蒸留水またはpH8の20mM Tris HClに溶かした1Mまたは2MのSrCl2を含んでよい。
【0164】
本発明の方法/使用は、さらにまたはその代わりに、段階(iii)、すなわち、核酸から非核酸化合物を分離させる段階を含むことができる。当業者は、非核酸化合物が何であり得るかを知っている。
【0165】
例えば、非核酸成分は、段階(i)、(i1)、(ii)、または(ii1)で得られる溶液中のあらゆる非核酸化合物である。非核酸成分は、例えば、タンパク質、塩、カオトロピック塩、界面活性剤、有機溶媒または無機溶媒、色素、代謝産物、試料破片、低分子の分子、好ましくはヌクレオチドおよび/またはPCR阻害剤であってよい。したがって、非核酸成分には、タンパク質、塩、カオトロピック塩、界面活性剤、有機溶媒または無機溶媒、色素、代謝産物、およびヌクレオチドが含まれる。
【0166】
例えば、分離は、核酸を沈殿させることを含んでよい。このような沈殿は、核酸に結合することを含んでよい。
【0167】
例えば、適切な条件下で核酸に結合できる固相成分(固相とも呼ばれる)が、核酸を沈殿させるために使用され得る。例示的な固相成分には、シリカ粒子、二酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ホウケイ酸塩、ニトロセルロース、ジアゾ化紙、ナイロン、金属酸化物、ジルコニア、アルミナ、疎水性クロマトグラフィー樹脂が含まれる。
【0168】
したがって、核酸から非核酸化合物を分離させる段階(iii)は、核酸に結合できる固相成分の使用を含んでよい。しかし、いくつかの態様において、核酸は、本明細書において説明される、核酸に結合できる固相成分を使用せずに、単離される。
【0169】
また、ある種のポリマーも、核酸を沈殿させることができる。したがって、核酸から非核酸化合物を分離させる段階(iii)は、核酸に結合できるポリマーの使用を含んでよい。このようなポリマーの例は、ポリエチレンエイミン、DEAEデキストラン、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンである。しかし、いくつかの態様において、核酸は、本明細書において説明されるポリマーを使用せずに、単離される。
【0170】
また、ある種のアルコールも、核酸を沈殿させることができる。例示的なアルコールには、エタノール、プロパノール、またはブタノールが含まれる。したがって、核酸から非核酸化合物を分離させる段階(iii)は、アルコールの使用を含んでよい。しかし、本明細書において説明される方法が、段階(a)の溶解試料をアルコールと接触させる段階を含まないこともまた、想定される。
【0171】
核酸から非核酸化合物を分離させる段階(iii)が、水溶液からの核酸の単離を含んでよいことも、さらに企図される。核酸のこのような単離は、段階(i)、(i1)、(ii)、または(ii1)の試料を含む溶液を有機溶媒と接触させることを含むことができる。有機溶媒の例には、フェノール、およびフェノールとクロロホルムの組合せなどが含まれ得る。
【0172】
分離させる段階が、段階(i)、(i1)、(ii)、または(ii1)の生成物/試料/試料を含む溶液を、非核酸成分を保持できるマトリックスに移行することを含んでよく、一方で核酸は該マトリックスを通過することが、想定される。このようなマトリックスは、例えば、任意のゲルろ過マトリックス(ゲルろ過クロマトグラフィーマトリックス)であることができる。例えば、マトリックスは、セファクリル樹脂またはヒドロキシル化メタクリルポリマーを含むマトリックスであってよい。例示的なセファクリル樹脂は、Sephacryl S100、Sephacryl S200、Sephacryl S300、Sephacryl S400、またはSephacryl S500、好ましくはSephacryl S400である。したがって、マトリックスがSephacryl樹脂であることが想定される。ヒドロキシル化メタクリルポリマーを含む例示的なマトリックスは、メタクリラート(エチレングリコール/メタクリラートコポリマー)を含むマトリックスである。例えば、このようなマトリックスは、HW-40マトリックス、HW-50マトリックス、HW-55マトリックス、HW-65マトリックス、またはHW-70マトリックスであってよい。マトリックスがHW65Sであることも想定される。このようなHWマトリックスは、とりわけ、Tosoh Haasから入手可能である。マトリックスがシリカ膜またはイオン交換樹脂であることもまた、予想される。しかし、いくつかの態様において、核酸は、マトリックスを使用せずに単離される。
【0173】
本発明はまた、本発明の溶液(a)、および任意で、本明細書において説明される清澄化溶液を含むキットにも関する。キットは、(b)酵素消化のための手段、および/または(c)核酸から非核酸成分を分離させるためのマトリックスなどの手段、好ましくは、核酸から非核酸成分を分離させるための樹脂をさらに含んでよい。
【0174】
本明細書において開示される本発明の溶液は、溶解溶液であってよい。
【0175】
本明細書において上記に説明される方法、使用、キット、および溶液について、還元剤が、下記式(II)に記載の化合物、およびその塩、複合体、ラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、互変異性体、または同位体濃縮型であることもまた、企図される:
式中、Bは、以下からなる群より選択される
式中、R
1は、-H、-C(=O)(C
1~C
15)アルキル、および-C(=O)(CH
2)
n1C(H)(N(R
3)R
4)COOR
5からなる群より選択され、
n
1は1~15であり、
R
2は、-H、-C(=O)NH(CH
2)
n2COOR
6、-(C
1~C
15)アルキル、-OR
7、-COOR
8、および-N(R
9)R
10からなる群より選択され、
n
2は1~15であり、
R
3~R
10は、-Hおよび-(C
1~C
15)アルキルからなる群より独立に選択される。
【0176】
式(II)に記載のこの還元剤(b)が本発明の全態様において使用されてよいことは言うまでもない。したがって、いくつかの態様において、式(II)に記載の還元剤(b)が、式(I)の還元剤に加えて使用されてよい。あるいは、式(II)に記載の還元剤(b)は、式(I)の還元剤の代わりに使用されてよい(言い換えると、式(II)に記載の還元剤(b)が、式(I)の還元剤に取って代わってよい)。
【0177】
したがって、1つの態様において、本明細書において説明される方法は、試料を溶解溶液と接触させて、本明細書において定義される式(II)の還元剤をとりわけ含む溶解試料を得る段階もまた含んでよい。通常、式(II)の任意の適切な還元剤を、本明細書において説明される溶解溶液中で使用することができる。当業者は、式(II)を有する適切な還元剤を知っている。
【0178】
式(II)において、
(i)R2が、H、-C(=O)NH(CH2)n2COOR6、-(C1~C15)アルキル、-OR7、および-COOR8、好ましくはHおよび-C(=O)NH(CH2)n2COOR6からなる群より選択され、かつ/または
(ii)R3~R10は、-Hからなる群より独立に選択され、かつ/または
(iii)n1は1~5、好ましくは2であり、かつ/または
(iv)n2は1~5、好ましくは1である
ことが好ましい。
【0179】
式(II)に記載の還元剤が、システイン、グルタチオン、チオグリコール酸アンモニウム、およびN-アセチルシステアミンからなる群より選択されることが、より好ましい。
【0180】
したがって、別の態様において、本明細書において説明される方法/使用は、試料を、本明細書において定義される式(II)の還元剤をとりわけ含む溶液と接触させる段階を含む。
【0181】
本明細書において上記に説明される方法、使用、および溶液について、還元剤が、1つの態様において、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する化合物であることもまた、企図される。この還元剤が本発明の全態様において使用されてよいことは言うまでもない。したがって、いくつかの態様において、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する化合物が、式(I)の還元剤に加えて使用されてよい。あるいは、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する化合物は、式(I)の還元剤の代わりに使用されてよい(言い換えると、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する化合物が、式(I)の還元剤に取って代わってよい)。SO3
2-は、亜硫酸アニオンである。
【0182】
S2O4
2-は、亜ジチオン酸アニオンである。
【0183】
したがって、1つの態様において、本明細書において説明される方法は、試料を溶解溶液と接触させて、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する化合物を還元剤としてとりわけ含む溶解試料を得る段階もまた含んでよい。
【0184】
通常、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する任意の適切な還元剤を、本明細書において説明される溶解溶液中で使用することができる。当業者は、溶液中でSO3
2-イオンまたはS2O4
2-を提供する適切な還元剤を知っている。
【0185】
溶液中でSO3
2-イオンを提供する作用物質が亜硫酸水素塩もまた含むことが、好ましい。亜硫酸水素塩は、好ましくは、Na2SO3、KHSO3、NaHSO3、K2SO3、ZnSO3、CuSO3、CDSO3、SrSO3、MgSO3、CaSO3、BaSO3、PbSO3;より好ましくは、Na2SO3、NaHSO3、K2SO3、ZnSO3、MgSO3、CaSO3からなる群より選択され、かつ/または溶液中でS2O4
2-イオンを提供する作用物質は、好ましくは、Na2S2O4、K2S2O4、ZnS2O4、CuS2O4、CdS2O4、CaS2O4、SrS2O4、BaS2O4、PbS2O4、MgS2O4、より好ましくはNa2S2O4、K2S2O4、ZnS2O4、CaS2O4、MgS2O4からなる群より選択される。
【0186】
還元剤が、亜硫酸水素ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸ナトリウムからなる群より選択されることが、より好ましい。
【0187】
本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において特に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「1つの試薬」への言及は、そのような様々な試薬のうちの1つまたは複数を含み、「その方法」への言及は、修正され得るか、または本明細書において説明する方法の代わりに使用され得る、当業者に公知である同等の段階および方法への言及を含む。
【0188】
別段の定めがない限り、要素の系列の前にある「少なくとも」という用語は、その系列中の全要素を指すと理解すべきである。当業者は、本明細書おいて説明される本発明の具体的態様の数多くの等価物を認識するか、または少なくとも日常的な実験を用いずに確認することができるであろう。このような等価物は、本発明によって包含されると意図される。
【0189】
「および/または」という用語は、本明細書において使用される場合はいつでも、「および」、「または」、および「該用語によって連結される要素のすべてまたは他の任意の組合せ」の意味を含む。
【0190】
「未満」またはさらに「少なくとも」という用語は、その特定の値を含まない。
【0191】
例えば、20未満とは、指定された数より少ないことを意味する。同様に、「少なくとも」または「を上回る」とは、少なくとも指定された数であるか、または指定された数を上回ることを意味し、例えば、少なくとも80%とは、少なくとも指定された数、すなわち80%であるか、または指定された数、すなわち80%を上回ることを意味する。
【0192】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈において特に指示がない限り、「含む(comprise)」という単語、ならびに「comprises」および「comprising」などの変形は、記載した整数もしくは段階、または整数もしくは段階の群を包含するが、他の整数および段階ならびに整数および段階の群のどれも除外しないことを意味するものと理解される。本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」という用語の代わりに、「含有する(containing)」もしくは「含む(including)」という用語、または時には、本明細書において使用される場合、「有する(having)」という用語を用いることができる。本明細書において使用される場合、「からなる(consisting of)」は、指定されていない任意の要素、段階、または成分を除外する。
【0193】
「含む(including)」という用語は、「含むが、限定されるわけではない」を意味する。「含む」および「含むが、限定されるわけではない」は、同義的に使用される。
【0194】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、所与の値から最大5%、最大10%であり得る差異が、個々の値または範囲(例えば、pH、濃度、パーセンテージ、モル濃度、アミノ酸数、時間など)に存在し得ることを意味すると理解される。例えば、製剤が約5mg/mlの化合物を含む場合、これは、製剤が4.5~5.5mg/mlを有し得ることを意味すると理解される。
【0195】
本発明は、本明細書において説明される特定の方法論、プロトコール、材料、試薬、および物質などに限定されず、したがって変化できることを理解すべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0196】
本明細書の本文を通して引用されるすべての刊行物(すべての特許、特許出願、科学的出版物、取扱い説明書などを含む)は、前述であるか後述であるかを問わず、全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書における何事も、以前の発明によるそのような開示に本発明が先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。参照により組み入れられる資料が本明細書と矛盾するか、または一致しない範囲では、本明細書が任意のそのような資料に優先するものとする。
【0197】
本明細書において引用されるすべての文書および特許文書の内容は、その全体が参照により組み入れられる。
【0198】
本発明およびその利点のさらに深い理解は、例示のみを目的として提供される以下の実験例から得られるであろう。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを決して意図しない。
【実施例】
【0199】
本発明の実施例
実施例1:標準プロトコールと比較した、様々なTCEP濃度を用いる溶解
Fraunhofer Instituteから入手したCHO細胞を、2種の異なる溶解プロトコールを用いて溶解した。
【0200】
一方では、以下の成分からなる溶解溶液(溶解溶液LS)を用いて、106個のCHO細胞を溶解した:50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、50mM塩化アンモニウム。NaOHの添加により、この緩衝液のpHをpH8に設定した。
【0201】
この実験設定において、溶解は、以下の段階を含んだ:
1. 1.5ml容の反応チューブ中で2000×gの遠心分離によって細胞を回収し、上清を除去する段階。
2. 55μlの溶解溶液LSおよび25μlのプロテアーゼを添加し、短時間ボルテックスによって細胞ペレットを完全に再懸濁する段階(pH=10)。
3. 反応チューブをサーマルシェーカーに入れ、最大限に撹拌しながら60℃で10分間、インキュベーションする段階。
4. 10μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClをさらに加えたものに溶かした2M SrCl2)および1μlのRNアーゼを、溶解した各試料に添加し、10秒ずつ4回、勢いよく短時間ボルテックスする段階。試料は濁った状態になる。
5. 室温で2分間インキュベーションしてRNAを除去する段階。
6. 最大速度で2分間、遠心分離する段階。
7. DNAを含む溶解上清(最大100μl)をスピンカラムに移す段階。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。この樹脂は、塩、ペプチド、固体の残渣、例えば、染料、未沈殿SDS、または可溶化SDSの残渣をろ過する。
8. 1000×gで1分間遠心分離する段階。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。精製したゲノムDNAは、1.5ml容の溶出チューブに溶出し、下流の用途に直ちに適用され得る。
【0202】
他方では、以下の成分からなる溶解溶液(溶解緩衝液)80μlを用いて、ペレット状にした106個のCHO細胞を再懸濁し、溶解した:10mM、20mM、30mM、40mM、または50mM TCEP、50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM塩化アンモニウム。塩化アンモニウムは、DNAの溶解性を高め、したがってDNA収率も高める。NaOH/HClの添加により、この緩衝液のpHを7に設定した。溶解は、サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で3分間実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0203】
その後、溶解した細胞を、15μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClをさらに加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。清澄化溶液の添加は、陰イオン性界面活性剤を沈殿させる作用を有する。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。
【0204】
DNA/RNA(核酸)濃度は、様々な方法によって評価することができる。以下に、吸光度(光学濃度)およびアガロースゲル電気泳動測定値を、得られた核酸の獲得品質の指標として説明する。
【0205】
初めに、得られた核酸を光度測定によって解析した。この場合、原理は、核酸がヌクレオチドの複素環の寄与により紫外(UV)光を吸収するのに対し、糖-リン酸骨格は吸収に寄与しないことである。DNAおよびRNAの両方の最大吸収波長は260nm(λmax=260nm)であり、各塩基に対応して特徴的な値を有する。DNAの吸収特性を、検出、定量、および純度の評価のために使用することができる。λmaxは一定であるが、核酸の吸光係数は環境に応じて変わる。
【0206】
下記の表1において、2種の異なる測定が実施されている。すなわち、波長260nmでの吸光度の単一測定(A260;7番目の縦列)と、波長280nmでの吸光度の単一測定(A260;8番目の縦列)。さらに、波長260nmおよび280nmで検出される吸光度の比(比A260/A280)ならびに波長260nmおよび230nmで検出される吸光度の比(比A260/A230)も示されている。
【0207】
通常、260nmの吸光度が、核酸の濃度を算出するために使用される。濃度50μg/mlおよび1cm光路長*において、dsDNAはA260nm=1を有する。吸光度の値はまた、淡色性が原因で、DNA中の二次構造の量にも左右される。信頼性が高い分光光度的DNA定量のためには、A260読取り値が0.1~1.0の間であることが望ましい。
【0208】
DNAの純度は、A260/A280比に基づいて明らかにすることができる。この比がタンパク質混入の指標を与えることが、その理由である。しかし、A260/A280比は、正確な答えではなく、純度の指標にすぎない。純粋なDNA調製物のA260/A280比は、1.8以上である。純粋なRNAのA260/A280比は2.0であり、したがって、あるDNA試料のA260/A280比が1.8より大きい場合、これはRNAの存在を示唆し得る。
【0209】
A260/A230比は、核酸純度の二次的尺度である。純粋な試料のA260/A230比の値は、しばしば、それぞれのA260/A280比の値よりも大きい。230nm周辺での吸光度が強いことは、精製された核酸中に有機化合物またはカオトロピック塩が存在することを示し得る。230nmに対する260nmの比は、精製された核酸における塩繰越し汚染のレベルを評価する助けとなり得る。比が小さいほど、存在する塩の量は多い。ガイドラインとして、A260/A230比は1.5より大きく、理想的には1.8に近いことが望ましい。
【0210】
これらの測定の結果を下記の表に示している。
(表1)様々な試料の分光光度的核酸定量によって得られた結果。
【0211】
表1から確認できるように、分光光度的核酸定量のA260読取り値(表1の7番目の縦列)はすべて、0.1~1.0の間であった。したがって、これらの測定値は信頼性が高い。この測定を、表1の4番目の縦列に示すように、得られた核酸の最終濃度の決定のために使用した。
【0212】
さらに、A260/A280の比によって示されるように、どの試料も、1.8に近い比を与えている。純粋なDNA調製物のA260/A280比は、1.8以上であることから、試料1~7のどれも、意味のある量の付加的RNAを含まないことが推定される。
【0213】
別の溶解によって得られた核酸の純度を明らかにするために、A260/A230比を測定した(表1の6番目の縦列)。上記の表1に示すように、すべての試料のA260/A230比が1.5より大きかった。これは、核酸が優れた純度を有していたこと、および非核酸成分が、仮にあったとしても、ごく少量で存在したことを示す。
【0214】
より具体的には、表1は、標準プロトコールとTCEPを用いる溶解のどちらも、十分な量の、分解されていないDNAをもたらすことを示す。最低量の核酸は、濃度10mMのTCEPを含む溶解緩衝液を用いた場合に得られた。しかし、20mM、30mM、40mM、および50mMのTCEP濃度の場合、同程度のDNA量が得られた。TCEP濃度50mMおよび30mMでの溶解(92.883ng/μLの核酸および81.311ng/μLの核酸)は、標準プロトコールを用いた場合に得られた核酸の量(66.587ng/μLの核酸および74.483ng/μLの核酸)よりも多い核酸量をもたらしさえした。
【0215】
試験された様々な溶解プロトコールによって、核酸を高純度かつ十分な量で得ることができ、以降の解析が可能になることが、これらの光度測定から証明される。
【0216】
さらに、得られた核酸をゲル電気泳動によって解析した。核酸をアガロースゲル中で可視化するために、臭化エチジウムまたはSYBRグリーンなどのインターカレート色素による染色が必要とされる。核酸の質にアクセスすることが、ゲルを流す1つの理由である。1~1.5%アガロースゲル上で、完全なゲノムDNAは、密な高分子量バンドとして現れ、低分子量スメアは伴わないはずである。分解したDNAは、偏った標識をもたらす。
【0217】
この実験で使用される様々な試料を用いて実施されるゲル電気泳動を、
図1に示している。本明細書において説明される実験では、0.8%アガロースゲルおよび色素GelRedが使用された。
図1Aのゲルは、試料1および2から得られた核酸を反映している。
図1Bに示されるゲルは、試料3、4、5、6、および7から得られた核酸を示している。
【0218】
図1から明らかであるように、どの試料も高分子量バンドを与え、低分子量スメアは伴わないことから、試験された試料中に分解核酸はごく少量しか存在しないか、またはまったく存在しないことが示される。
【0219】
実施例2:異なるpHでのTCEPを用いる溶解
TCEPを用いる溶解にpHが与える影響を明らかにするために、以下の実験を実施した。試料としての200μlの全血を、赤血球溶解緩衝液(10mM炭酸ナトリウム水和物(NaHCO3)、155mM塩化アンモニウム、0.1mM Na2EDTA、pH7.3)で1回洗浄した。この洗浄のために、1.3mlの赤血球溶解緩衝液を試料に添加した。インキュベーションを、約20℃の室温で3分間、実施した。その後、2000gで2分間、試料を遠心分離し、上清を廃棄した。
【0220】
次いで、以下の溶解溶液(溶解緩衝液)80μl中に80℃で10分間、ペレットを再懸濁し溶解した:50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM TCEP。この緩衝液のpHは、pH8~9であった(試料1~3)。他の試料は、pH3~4の溶解溶液と接触させた(試料4~6)。酒石酸を用いてpHを調整した。
【0221】
加熱する段階は、サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。インキュベーションを、1400rpmで10分間、実施した。重要なことには、これらの実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0222】
その後、各溶解試料を、15μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。
【0223】
得られた核酸を、光度測定およびゲル電気泳動によって解析した。これらの測定の結果を下記の表2に示している。
(表2)様々な試料の分光光度的核酸定量によって得られた結果。
【0224】
表2から確認できるように、分光光度的核酸定量のA260読取り値(表1の7番目の縦列)はすべて、0.1~1.0の間である。したがって、これらの測定値は信頼性が高い。この測定を、表2の4番目の縦列に示すように、得られた核酸の最終濃度の決定のために使用した。
【0225】
さらに、A260/A280の比によって示されるように、どの試料も、1.8に近い比を与えている。純粋なDNA調製物のA260/A280比は、1.8以上であることから、試料1~6のどれも、意味のある量の付加的RNAを含まないことが推定される。
【0226】
別の溶解によって得られた核酸の純度を明らかにするために、A260/A230比を測定した(表2の6番目の縦列)。上記の表2に示すように、試料1以外のすべての試料のA260/A230比が1.5より大きかった。これは、試料2~6の核酸が優れた純度を有していたこと、および非核酸成分が、仮にあったとしても、ごく少量で存在したことを示す。
【0227】
より具体的には、表2は、TCEPを用いるアルカリ性溶解および酸性溶解の両方によって、十分に精製された核酸を得ることが可能であることを全体として示す。A260/A230比から明らかであるように、TCEPを用いる酸性溶解によって、純度が若干高い核酸が得られた。
【0228】
さらに、得られた核酸をゲル電気泳動によって解析した。この実験で様々な試料を使用して実施したゲル電気泳動によって得られたゲルが、
図2に示されている(個々のレーンに、試料 1、試料2、試料3、試料4、試料5、および試料6から得られた核酸)。
【0229】
図2から明らかであるように、どの試料も高分子量バンドを与えることから、試験された試料中に完全な(分解していない)核酸が存在することが示される。低分子量のスメアは、アルカリ性条件よりも酸性条件の場合に多いように思われる。したがって、分解した核酸の量は、アルカリ性条件よりも酸性条件下で多い可能性がある。
【0230】
実施例3:標準プロトコールと比較した、中性pHでTCEP濃度を用いる溶解
200μlの全血を試料として使用する。この試料を、赤血球溶解緩衝液(10mM炭酸ナトリウム水和物((NaHCO3)、155mM塩化アンモニウム、0.1mM Na2EDTA、pH7.3)で1回洗浄した。この洗浄のために、1.3mlの赤血球溶解緩衝液を試料に添加した。インキュベーションを、室温で3分間、実施した。その後、2000×gで2分間、試料を遠心分離し、上清を廃棄した。ペレットを、以降の調製において使用した。
【0231】
この最初の実験設定において、溶解は、以下の段階を含んだ:
1. 1.5ml容の反応チューブ中で2000×gの遠心分離によって細胞を回収し、上清を除去する段階。
2. 55μlの前述の溶解溶液LSおよび25μlのプロテアーゼを添加し、短時間ボルテックスによって細胞ペレットを完全に再懸濁する段階。
3. 反応チューブをサーマルシェーカーに入れ、最大限に撹拌しながら60℃で10分間、インキュベーションする段階。
4. 10μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)を、溶解した各試料に添加し、10秒ずつ4回、勢いよく短時間ボルテックスする段階。試料は濁った状態になる。
5. 最大速度で2分間、遠心分離する段階。
6. DNAを含む溶解上清(最大100μl)をスピンカラムに移す段階。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。
8. 1000×Gで1分間遠心分離する段階。精製したゲノムDNAは、1.5ml容の溶出チューブに溶出し、下流の用途に直ちに適用され得る。
【0232】
これに対して、第2の実験設定では、試料としての200μlの全血を、赤血球溶解緩衝液(10mM炭酸ナトリウム水和物(NaHCO3)、155mM塩化アンモニウム、0.1mM Na2EDTA、pH7.3)で1回洗浄した。この洗浄のために、1.3mlの赤血球溶解緩衝液を試料に添加した。インキュベーションを、室温で3分間、実施した。その後、2000×gで2分間、試料を遠心分離し、上清を廃棄した。
【0233】
次いで、以下の溶液(溶解緩衝液)80μl中に80℃で10分間、ペレットを再懸濁し溶解した:50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM TCEP。この緩衝液のpHは、pH7.5であった。酒石酸を用いてpHを調整した。
【0234】
溶解は、サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で3分間実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。
【0235】
その後、溶解した細胞を、15μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0236】
得られた核酸を、光度測定およびゲル電気泳動によって解析した。これらの測定の結果を下記の表3に示している。
(表3)様々な試料の分光光度的核酸定量によって得られた結果。
【0237】
表3から確認できるように、分光光度的核酸定量のA260読取り値(表1の7番目の縦列)はすべて、0.1~1.0の間である。したがって、これらの測定値は信頼性が高い。この測定を、表3の4番目の縦列に示すように、得られた核酸の最終濃度の決定のために使用した。重要なことには、「TCEP溶解」によって得られる核酸の量は、酵素消化の段階を含む標準的溶解によって得ることが可能である核酸の量よりはるかに多い。
【0238】
さらに、A260/A280の比は、酵素消化に供された試料の場合(1.663、1.449、1.568。平均値は1.56に相当する)よりも、TCEPを用いて溶解した試料の場合の方が高い(1.68、1.731、または1.669。平均値は1.693に相当する)。したがって、TCEP溶解を用いて得られる核酸の方が、酵素消化を含む溶解によって処理した試料よりも質が高い。
【0239】
別の溶解によって得られた核酸の純度をさらに明らかにするために、追加的にA260/A230比を測定した(表3の6番目の縦列)。上記の表3に示すように、A260/A230比は、酵素消化に供された試料の場合(1.22、0.66、1.09。平均値は0.99に相当する)よりも、TCEP溶解によって処理した試料の場合の方が高かった(1.164、1.095、および0.9。平均値は1.053に相当する)。したがって、TCEP溶液を用いて得られる核酸の方が、酵素消化を含む溶解によって処理した試料よりも純度が高い。
【0240】
したがって、表3は、酵素消化を用いず、TCEPを含む溶解溶液を用いる溶解の方が、酵素消化の段階を含む標準的な溶解手順より優れていることを示す。さらに、酵素消化を要する標準プロトコールによって必要とされる時間が30分であるのに比べ、わずか3分で溶解が達成可能である。
【0241】
さらに、得られた核酸をゲル電気泳動によって解析した。この実験で様々な試料を使用して実施したゲル電気泳動によって得られたゲルが、
図3Aに示されている(個々のレーンに、試料1、試料2、試料3、試料4、試料5、および試料6から得られた核酸)。
【0242】
図3Aから明らかであるように、どの試料も高分子量バンドを与えることから、試験された試料中に完全な(分解していない)核酸が存在することが示される。さらに、TCEP溶解によって得られる核酸の量は、酵素消化を含む溶解によって得られる核酸の量より明らかに多い。
【0243】
溶解後に得られる溶出液を、さらに直接的に―それ以上は変更せずに―リアルタイムPCR(RT-PCR)によって解析した。リアルタイムPCRアッセイ法において、陽性反応は、蛍光シグナルの蓄積に基づいて検出される。Ct(サイクル閾値)は、蛍光シグナルが閾値と交差する(すなわち、バックグラウンドレベルを超える)ために必要とされるサイクルの数と定義される。Ctレベルは、試料中の標的核酸の量に反比例する(すなわち、Ctレベルが低いほど、試料中の標的核酸の量は多い)。典型的には、29未満のCtは、試料中の豊富な標的核酸を示唆する強い陽性反応であり、30~37のCtは、中程度の量の標的核酸を示唆する陽性反応であり、38~40のCtは、最小限の量の標的核酸を示唆する弱い反応である。
【0244】
この実験において、下記の表4で示されるCt値が得られた。
(表4)様々な試料のRT-PCRによって得られた結果。
【0245】
対応するPCRグラフが
図3Bに示される。このRT-PCRデータは、「TCEP溶解」によって得られる核酸の量が、酵素消化の段階を含む標準的溶解によって得ることが可能である核酸の量より多く、かつ質/純度も優れていることを裏付ける。
【0246】
実施例4:筋肉組織においても効率的なTCEP溶解
本明細書において説明される溶解を別の試料において検証するために、以下の実験を実施した。30mgのラット筋肉組織試料をいくつか、100μlのビーズ破砕緩衝液(20mM Tris、0.1mM Na2EDTA、100mM TCEP、pH7.5)と混合した。直後に、以下の成分からなる溶液(溶解緩衝液)100μlを添加した:25mM TRIS(C4H11NO3)、70mM SDS、50mM塩化アンモニウム、および0.1mM Na2EDTA、pH8(pHはHClを用いて調整される)。
【0247】
30mgのラット筋肉組織を含む他の試料を、100μlのビーズ破砕緩衝液(20mM Tris、0.1mM Na2EDTA、100mM TCEP、pH7.5)と混合した。次いで、ビーズ破砕を実施した。その後に、以下の成分からなる溶液(溶解緩衝液)100μlを添加した:25mM TRIS(C4H11NO3)、70mM SDS、50mM塩化アンモニウム、および0.1mM Na2EDTA、pH8(pHはHClを用いて調整される)。
【0248】
インキュベーションは、サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で3分間実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。
【0249】
その後、溶解した細胞を、25μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0250】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表5Aおよび表5Bに示している。
表5A:
表5B:
(表5)ビーズ破砕を行わない場合(表5A)およびビーズ破砕を行う場合(表5B)の、TCEPを含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0251】
表5から確認できるように、分光光度的核酸定量のA260読取り値(表1の7番目の縦列)は、本質的にすべて、0.1~1.0の間である。したがって、これらの測定値は信頼性が高い。この測定値を、表5の4番目の縦列に示すように、得られた核酸の最終濃度の決定のために使用した。したがって、表5は、酵素消化を用いず、TCEPを含む溶解溶液を用いる溶解を、筋肉組織を溶解するためにも使用できることを示す。
【0252】
実施例5:精子試料においても効率的なTCEP溶解
本明細書において説明される溶解を別の試料において検証するために、以下の実験を実施した。30μlのブタ精子を、様々な溶解溶液(溶解緩衝液)を用いて溶解した。
【0253】
30μlの精子を、実施例2で開示される1.3赤血球溶解緩衝液に接触させ、室温で3分間、インキュベーションした。次いで、2000gで2分間、試料を遠心分離し、上清を廃棄した。
【0254】
ペレット状にした精子を、以下の成分からなる溶液(溶解溶液)80μlを用いて再懸濁し溶解した:50mM TCEP、50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、50mM塩化アンモニウム、pH10、9、8、または7。必要に応じてNaOHを用いてpHを調整した。溶解は、サーマルシェーカーに入れた1.5ml 1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で10分間実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。
【0255】
その後、溶解した細胞を、15μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0256】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表6に示している。
(表6)酵素消化を行わずに、TCEPを含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0257】
表6は、分光光度的核酸定量のA260読取り値(表1の7番目の縦列)がすべて、0.1~1.0の間であることを示す。したがって、これらの測定値は信頼性が高い。この測定を、表6の4番目の縦列に示すように、得られた核酸の最終濃度の決定のために使用した。
【0258】
したがって、表6は、酵素消化を用いず、TCEPを含む溶解溶液を用いる溶解を、精子を溶解するためにも使用でき、その際、様々なpHの溶解緩衝液を使用できることを示す。
【0259】
実施例6:植物試料においても効率的なTCEP溶解
本明細書において説明される溶解を別の試料において検証するために、以下の実験を実施した。約10mgの、ジャガイモの新しい子葉を、100μlの破砕緩衝液(20mM TRIS、0.1mM Na2EDTA、100mM TCEP、pH7.5)と接触させた。次いで、試料を5分間、ビーズ破砕した。その後、1000gで1分間、試料を遠心分離した。次いで、以下の成分からなる溶解溶液(溶解緩衝液)80μlを用いて、96ウェルプレートにおいて試料を溶解した:25mM TRIS(C4H11NO3)、70mM SDS、50mM塩化アンモニウム、および0.1mM Na2EDTA、pH8(pHはHClを用いて調整される)。
【0260】
溶解は、サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で10分間または15分間実施した。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。
【0261】
その後、溶解した細胞を、50μlの清澄化溶液(20mM Trisに20.165ml/Lの15%HClを加えたものに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0262】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表7に示している。
(表7)酵素消化を行わずに、TCEPを含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0263】
表7は、TCEP溶解を用いる場合、植物試料から核酸を得ることも可能であることを裏付ける。80℃での溶解が長いほど、得られる核酸の量が増加した。
【0264】
実施例7:TCEP以外の還元作用物質の使用
他の還元剤を用いた場合にも溶解緩衝液中のTCEPの良い影響を認めることができるかを理解するために、以下の実験を実施した。
【0265】
細菌(P. fluorescence(P.フルオレッセンス))試料を遠心分離した。次いで、以下の成分からなる溶液(溶解溶液)100μl中に試料を再懸濁した:50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2 H2O)、および50mM塩化アンモニウム。HClの添加により、この緩衝液のpHを8に設定した。サーマルシェーカーに入れた1.5ml容のセーフロックエッペンドルフチューブ中で、80℃で5分間、試料をインキュベーションした。サーマルシェーカーは、チューブをサーマルシェーカーに入れる前に80℃に予熱した。1400rpmでインキュベーションを実施した。
【0266】
その後、溶解した細胞を、10μlの清澄化溶液(pH8の20mM Tris/HClに溶かした1M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0267】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表8に示している。
(表8)酵素消化を行わずに、様々な還元剤を含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0268】
表8から確認できるように、どの還元剤を溶解に使用した場合も、A260/A280比とA260/A230比は同程度である。したがって、(様々な還元剤を含む)様々な溶解溶液を用いて得られた核酸の純度および質もまた、類似していると思われる。TCEPを用いる溶解が、最も多い核酸総量をもたらした。この値を100%に設定した。試験された別の溶解溶液を用いて得られた核酸の全収率を、この100%収率と比較して算出した。十分な収率とする閾値は、少なくとも25%に設定した。これはまた、実施例9において説明するように還元剤添加物をまったく用いずに得られた結果を考慮して、行われた。表8によれば、還元剤TCEP、N-アセチルシステアミン、ヒドロ亜硫酸ナトリウム(ヒドロ亜硫酸Na)、およびグルタチオン(L-グルタチオンレッド)は、十分な量の核酸をもたらした(TCEPを用いる場合に得られる収率に対して25%以上の収率)。他方で、還元剤チオ硫酸ナトリウム-5水和物(チオ硫酸Na五水和物)および1-プロパンチオールは、十分な量の核酸をもたらさなかった(25%未満)。
【0269】
A260/A230から理解することができるように、様々な還元剤を用いる溶解はどれも、高い純度/質の核酸をもたらした(どの場合も、1.8に近い比を有している)。
【0270】
実施例8:TCEP以外の還元作用物質の使用
他の還元剤を用いた場合にも溶解溶液(緩衝液)中のTCEPの良い影響を認めることができるかを理解するために、以下の実験を実施した。
【0271】
細菌(P.フルオレッセンス)試料を遠心分離した。次いで、以下の成分からなる溶解溶液(溶解緩衝液)100μ中に試料を再懸濁した:20mMの指定の還元剤、50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、50mM塩化アンモニウム。HClの添加により、この緩衝液のpHを8に設定した。本明細書において説明されるように、80℃で5分間、試料をインキュベーションした。
【0272】
その後、溶解した細胞を、10μlの清澄化溶液(pH8の20mM Tris HClに溶かした1M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0273】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表9に示している。
(表9)酵素消化を行わずに、様々な還元剤を含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0274】
表9から確認できるように、どの還元剤を溶解に使用した場合も、A260/A280比とA260/A230比は同程度である。したがって、(様々な還元剤を含む)様々な溶解溶液を用いて得られた核酸の純度および質もまた、類似していると思われる。A260/A230から理解することができるように、様々な還元剤を用いる溶解はどれも、高い純度/質の核酸をもたらした(どの場合も、1.8に近い比を有している)。
【0275】
TCEPを用いる溶解が、最も多い核酸総量をもたらした。この値を100%に設定した。試験された別の溶解溶液を用いて得られた核酸の全収率を、この100%収率と比較して算出した。十分な収率とする閾値は、少なくとも25%に設定した。これはまた、実施例9において説明するように還元剤をまったく用いずに得られた結果を考慮して、行われた。
【0276】
表9によれば、還元剤TCEPおよびL-システイン塩酸塩は、十分な量の核酸をもたらした(TCEPを用いる場合に得られる収率に対して25%以上の収率)。他方で、還元剤チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム(チオグリコール酸Na)、およびDTTは、十分な量の核酸をもたらさなかった(25%未満)。
【0277】
実施例9:より長い溶解を用いる、TCEP以外の還元作用物質の使用
より長い溶解において他の還元剤を用いた場合にも、溶解緩衝液中のTCEPの良い影響を認めることができるかを理解するために、以下の実験を実施した。
【0278】
細菌(P.フルオレッセンス)試料を遠心分離した。次いで、以下の成分からなる溶解溶液(溶解緩衝液)100μ中に試料を再懸濁した:20mMの指定の還元剤、50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM塩化アンモニウム。HClの添加により、この緩衝液のpHを8に設定した。前述のように、80℃で10分間、試料をインキュベーションした。
【0279】
その後、溶解した細胞を、10μlの清澄化溶液(pH8の20mM Tris/HClに溶かした1M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0280】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表10に示している。
(表10)酵素消化を行わずに、様々な還元剤を含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0281】
表9から確認できるように、どの還元剤を溶解に使用した場合も、A260/A280比とA260/A230比は同程度である。したがって、(様々な還元剤を含む)様々な溶解溶液を用いて得られた核酸の純度および質もまた、類似していると思われる。A260/A230から理解することができるように、様々な還元剤を用いる溶解はどれも、高い純度/質の核酸をもたらした(どの場合も、1.8に近い比を有している)。
【0282】
TCEPを用いる溶解が、最も多い核酸総量をもたらした。この値を100%に設定した。試験された別の溶解溶液を用いて得られた核酸の全収率を、この100%収率と比較して算出した。十分な収率とする閾値は、少なくとも25%に設定した。これはまた、実施例9において説明するように還元剤をまったく用いずに得られた結果を考慮して、行われた。
【0283】
表10によれば、還元剤TCEP、ヒドロ亜硫酸ナトリウム(ヒドロ亜硫酸Na)、グルタチオン(L-グルタチオンレッド)、チオグリコール酸アンモニウム、L-システイン塩酸塩、および亜硫酸ナトリウム(亜硫酸Na)は、十分な量の核酸をもたらした(TCEPを用いる場合に得られる収率に対して25%以上の収率)。他方で、還元剤N-アセトリシステアミンおよびチオ硫酸ナトリウム(チオ硫酸Na)は、より長い溶解時間を用いた場合に、十分な量の核酸をもたらさなかった(25%未満)。
【0284】
実施例10:TCEPと組み合わせたSDSが溶解効率に与える影響
本明細書において説明される還元剤を含む溶解溶液にSDSが必要とされることを理解するために、以下の実験を実施した。
【0285】
3種の異なる溶解溶液を調製した。以下の化合物からなる溶解溶液TCEP TE-BE:20mM TCEPおよび0.1mM EDTA、pH7;以下の化合物からなる、細胞緩衝液に溶かした溶解溶液TCEP:20mM TCEP、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM塩化アンモニウム、以下の化合物からなる溶解溶液細胞緩衝液:25mM TRIS、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2H2O)、および50mM塩化アンモニウム。HClの添加により、この緩衝液のpHを7~8に設定した。
【0286】
その後、溶解した細胞を、10μlの清澄化溶液(pH8の20mM Tris/HClに溶かした1M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0287】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表11に示している。
(表11)SDSまたはTCEPを含まない溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0288】
表11は、還元剤(ここではTCEP)が界面活性剤(例えばSDS)と組み合わせて使用される場合に最大量の核酸が得られることを示す。界面活性剤または還元剤のいずれかを含めないと、得られる核酸の量は減少する:界面活性剤がない場合(界面活性剤と組み合わせて還元剤を使用する場合に得られる量(100%に相当)に対して63.33%)および還元剤がない場合(界面活性剤と組み合わせて還元剤を使用する場合に得られる量(100%に相当)に対して30.28%)。
【0289】
A260/A230比から理解することができるように、溶解は、高い純度/質の核酸をもたらした(どの場合も、1.8に近い比を有している)。
【0290】
実施例11:様々な条件での溶解の実施
様々なパラメーターおよび特に温度が溶解に与える強い影響を理解するために、様々な実験設定を比較した。具体的には、温度を80℃、60℃から40℃まで変更し、pHをpH10、pH7から、pH4まで変更し、TCEP濃度を50mMから5mMに変更し、個々の温度での溶解試料のインキュベーション時間は10分とした。
【0291】
シュードモナス・フロウレッセンス(Pseudomonas flourescens)の培養物1mlを遠心分離した。ペレットを、90μlの様々な溶解溶液中に再懸濁した。様々な量のTCEP(5mMおよび50mM)を、25mM TRIS、70mM SDS、50mM塩化アンモニウム、0.1mM Na2EDTA中に溶解した。その後、HClまたはNaOHを用いてpHを10、7、または4に調整した。
【0292】
その後、溶解した細胞を、10μlの清澄化溶液(20.165ml/L HCl中20mM Trisに溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0293】
これらの得られた結果を下記の表12に要約している。
(表12)様々なパラメーターの溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0294】
表12は、溶解が60℃または80℃の温度で実施される場合に最大量の核酸が得られることを示す。溶解が40℃で実施される場合、ずっと少ない量の核酸が得られる。したがって、十分な量の核酸を、少なくとも約60℃またはそれより高い溶解温度で得ることが可能である。要約すれば、表12は以下のことを示す:
- より高い温度(60℃および80℃)は、予想外に多量の核酸をもたらす;
- 溶解時間が長いほど、核酸の取得量を増やすことができる;
- 温度、溶解時間が最適には選択されていない場合に特に、中性pHまたは酸性pHにすることにより、核酸の取得量を増やすことができる。7番のデータ点は正確ではなく(誤った測定値)、したがって削除した。
【0295】
実施例12:TCEPと構造が類似した還元剤の使用
P.フルオレッセンスおよびA. Bohemicus(A.ボヘミカス)の一晩培養物1mlを清浄化し遠心分離して細胞ペレットを形成させた。50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2 H2O)、50mM塩化アンモニウム、および20mM Tris(ヒドロキシメチル)ホスフィン、Tris(ヒドロキシエチル)ホスフィン、またはTris(ヒドロキシプロピル)ホスフィンのいずれかを含む、pH8の溶解溶液を調製した。次いで、80μlの溶解溶液を、前述の細胞培養物の細胞ペレットに添加した。本明細書の別の箇所で説明されるように、80℃で3分間、溶解を実施した。
【0296】
その後、溶解した細胞を、15μlの清澄化溶液(蒸留水に溶かした2M SrCl2)と接触させた。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0297】
得られた核酸を光度測定によって解析した。これらの測定の結果を下記の表に示している。
【0298】
これらの得られた結果を下記の表13に要約している。
(表13)様々な還元剤を含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。
【0299】
表13は、この実験で試された還元剤がどれも、質の高い核酸を提供することを示す。
【0300】
実施例13:TCEPと比較した、Tris(ヒドロキシメチル)ホスフィンを用いる溶解、およびその後のPCR解析
ルテウス菌(M. luteus)または枯草菌(B. subtilis)の一晩培養物1mlを清浄化し、遠心分離によってペレット状にした。50mM Tris(C4H11NO3)、70mM SDS(C12H25NaO4S)、0.1mM Na2EDTA(C10H14N2Na2O8*2 H2O)、50mM塩化アンモニウム、および20mM Tris(ヒドロキシメチル)ホスフィンまたはTCEPを含むpH8の溶解溶液90μlを用いて、細胞ペレットを再懸濁した。本明細書の別の箇所で説明されるように、80℃で3分間、溶解を行った。
【0301】
あるいは、溶解酵素を用いて溶解を実施した。150μlのTE-Bioecho中10mg/mlリゾチームに試料を再懸濁した。37℃で5分間、酵素溶解を行った。その後、2000×Gで3分間、試料を遠心分離した。上清を除去し、次いで、ペレットを溶解溶液と接触させ、前述のように処理した。
【0302】
その後、溶解した細胞を、15μlの清澄化溶液(蒸留水に溶かした2M SrCl2)と接触させた。清澄化溶液の添加は、陰イオン性界面活性剤を沈殿させる作用を有する。次いで、試料を遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含む。1000×Gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムから押し出す。重要なことには、この実験設定は、酵素消化段階の使用を含まなかった。
【0303】
これらの得られた結果を下記の表14に要約している。
(表14)様々な還元剤を含む溶解緩衝液を用いる溶解によって得られた結果。Lysは、付加的なリゾチーム段階が存在したことを意味する。
【0304】
表14は、この実験で試された作用物質が、質の高い核酸を提供することを示す。付加的な酵素消化段階によって、得られる核酸の収量がわずかに増加した。続いて、枯草菌試料の場合に得られた核酸をPCRによって解析した。これらの結果も、上記の表14に要約している。
【0305】
実施例14:陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の比較
陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の結果を比較できるように、以下の実験設定を定めた。
【0306】
グラム陰性菌の場合:
溶解緩衝液の組成は以下のとおりであった:
70mM界面活性剤(陰イオン性:SDS、Li-DS;非イオン性:Triton X-100)、
50mM TCEP、
0.1mM EDTA、
25mM TRIS、および
50mM塩化アンモニウム
pH=7.5(NaOHを用いて調整)。
【0307】
適用される清澄化溶液は、以下の成分を含んだ:
2M SrCl2、および
20mM TRIS、
20.165ml/Lの15%HClを用いて調整。
【0308】
以下のプロトコールを実施した。
【0309】
大腸菌(Escherichia coli)の培養物1mlを5000×gで3分間遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、ペレットを100μLの溶解緩衝液に再懸濁し、80℃で3分間インキュベーションした。SDSまたはLiDSを含む溶解緩衝液の場合、15μLの清澄化溶液を、インキュベーション後に添加した。Triton X-100を含む溶解緩衝液の場合、蒸留水を15μLだけ添加した。
【0310】
次いで、試料を20000×gで遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含んだ。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムに通して処理した。重要なことには、この実験設定は酵素消化段階の使用を含まず、酵素消化段階を必要とする設定と比べて、必要時間の大幅な短縮をもたらした。
【0311】
得られた核酸を、光度測定およびゲル電気泳動によって解析した(下記の解析を参照されたい)。
【0312】
光度測定:
(表15)様々な界面活性剤を用いて試料から得られた、核酸濃度、A260/A280、およびA260/A230に関しての結果。
【0313】
試料1~8(陰イオン性界面活性剤SDSおよびLiDS)は、高い核酸濃度および高い純度(A260/280比およびA260/230比)を示した。また、試料1~8の吸光度スペクトルは、純粋な核酸ピークを260nmに示したことから、高純度の核酸試料が示唆された。
【0314】
試料9~12(非イオン性界面活性剤Triton X-100)は、著しく不純な試料(非常に低いA260/280比および非常に低いA260/230比)を示した。さらに、吸光度スペクトルは、260nmの核酸ピークをまったく示さなかった。さらに、260nm~290nmの間および230nmに、不純物が多く存在した。他の溶解緩衝液成分はすべて変わっていなかったため、この汚染は、単離時に適切に除去されなかった、試料中のTriton X-100が原因で引き起こされた。したがって、Triton X-100による試料の汚染は、下流の用途において望ましくない問題(例えば酵素反応)を招く可能性がある。
【0315】
したがって、実施例14のこの実験によって得られる結果により、Triton X-100を含む溶解緩衝液が核酸単離に適していないことは明らかである。
【0316】
試料1~4の各光度測定を、
図4Aに示している。試料5~8の各光度測定を、
図4Bに示している。試料9~12の各光度測定を、
図4Cに示している。
【0317】
ゲル電気泳動:
図5に示す各ゲル電気泳動により、試料1~8がゲノムDNAの強いバンド(赤色の印を付けている)を示すことが明らかにされ、陰イオン性界面活性剤(SDSおよびLiDS)を用いて細菌からDNAが成功裡に単離されたことが示された。対照的に、試料9~12は、ゲノムDNAの非常に薄く弱いバンド(同様に赤色の印を付けている)しか示さないことから、少なく不完全なDNA単離にすぎないことが示されている。
【0318】
したがって、これらの結果から、界面活性剤としてTriton X-100を含む溶解緩衝液が、グラム陰性菌から核酸を単離するために適していないことが示される。
【0319】
ヒト血液の場合:
溶解緩衝液の組成は以下のとおりであった:
70mM界面活性剤(陰イオン性SDSもしくは陰イオン性LiDSまたは非イオン性Triton X-100)、
50mM TCEP、
0.1mM EDTA、
25mM TRIS、および
50mM 塩化アンモニウム、
pH=7.5(NaOHを用いて調整)。
【0320】
適用される清澄化溶液は、以下の成分を含んだ:
2M SrCl2、
20mM TRIS、かつ
20.165ml/Lの15%HClを用いて調整。
【0321】
以下のプロトコールを実施した。
【0322】
500μlの全血を試料として使用した。この試料を、赤血球溶解緩衝液(10mM炭酸ナトリウム水和物(NaHCO3)、155mM塩化アンモニウム、0.1mM Na2EDTA、pH7.3)で1回洗浄した。この洗浄のために、1.3mlの赤血球溶解緩衝液を試料に添加した。インキュベーションを、室温で3分間、実施した。その後、2000×gで2分間、試料を遠心分離し、上清を廃棄した。ペレットを、以降の調製において使用した。次いで、ペレットを100μLの溶解緩衝液に再懸濁し、80℃で3分間インキュベーションした。SDSまたはLiDSを含む溶解緩衝液の場合、15μLの清澄化溶液をインキュベーション後に添加した。Triton X-100を含む溶解緩衝液の場合、蒸留水を15μLだけ添加した。
【0323】
次いで、試料を20000×gで遠心分離し、上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルター/樹脂を含んだ。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムに通して処理した。重要なことには、この実験設定は酵素消化段階の使用を含まず、酵素消化段階を必要とする設定と比べて、必要時間の大幅な短縮をもたらした。
【0324】
得られた核酸を、光度測定およびゲル電気泳動によって解析した(下記の解析を参照されたい)。
【0325】
光度測定:
(表16)様々な界面活性剤を用いて試料から得られた、核酸濃度、A260/A280、およびA260/A230に関しての結果。
【0326】
試料1~8(陰イオン性界面活性剤SDSおよびLiDS)は、高い核酸濃度および高い純度(A260/280比およびA260/230比)を示した。また、試料1~8の吸光度スペクトルは、純粋な核酸ピークを260nmに示したことから、高純度の核酸試料が示唆された。
【0327】
試料9~12(非イオン性界面活性剤Triton X-100)は、著しく不純な試料(非常に低いA260/280比および非常に低いA260/230比)を示した。さらに、吸光度スペクトルは、260nmの核酸ピークをまったく示さなかった。さらに、260nm~290nmの間および230nmに、不純物が多く存在した。他の溶解緩衝液成分はすべて変わっていなかったため、この汚染は、単離時に適切に除去されなかった、試料中のTriton X-100が原因で引き起こされた。Triton X-100による試料の汚染は、下流の用途において望ましくない問題(例えば酵素反応)を招く可能性がある。
【0328】
したがって、実施例14のこの実験によって得られる結果により、Triton X-100を含む溶解緩衝液が核酸単離に適していないことは明らかである。
【0329】
試料1~4の各光度測定を、
図6Aに示している。試料5~8の各光度測定を、
図6Bに示している。試料9~12の各光度測定を、
図6Cに示している。
【0330】
ゲル電気泳動:
各ゲル電気泳動により、試料1~8がゲノムDNAの強いバンド(赤色の印を付けている)を示すことが明らかにされ、陰イオン性界面活性剤(SDSおよびLiDS)を用いてヒト血液からDNAが成功裡に単離されたことが示された。対照的に、試料9~12は、ゲノムDNAのバンド(同様に赤色の印を付けている)をまったく示さなかったことから、極めて少ないDNA単離またはDNA単離が行われていないことが示された。
【0331】
したがって、これらの結果から、界面活性剤としてTriton X-100を含む溶解緩衝液が、ヒト血液から核酸を単離するために適していないことが示される。
【0332】
実施例14の要約:
実施例14のどちらの実験(グラム陰性菌およびヒト血液からの核酸単離)も、TCEPと共にTriton X-100(非イオン性界面活性剤)を使用することが、充分な溶解のためには不適切であることをはっきりと示している。これらの結果から、感度および収率の大きな低下を招く、Triton X-100を含む溶解緩衝液の低い溶解効率が明らかにされる。さらに、Triton X-100が使用される場合、溶出液は著しく汚染されており、このことは、その後の用途、例えば、配列決定、PCR、ライゲーション、制限、または他の生化学的用途にとって致命的な結果となる可能性がある。絶対的な光度測定定量もまた、Triton X-100混入が原因で不可能であり、このこともまた、下流の用途にとって非常に不利である。
【0333】
実施例15:核酸を単離するためのプロトコール
使用される材料:
溶解緩衝液の組成:
70mMドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、
50mM TCEP、
0.1mM EDTA、
25mM TRIS、および
50mM塩化アンモニウム、
pH=7.5(NaOHを用いて調整)
【0334】
清澄化溶液:
2M SrCl2および
20mM TRIS、
20.165ml/Lの15%HClを用いて調整。
【0335】
プロトコール:
大腸菌の培養物1mlを5000×gで3分間遠心分離し、上清を廃棄した。次いで、ペレットを100μLの溶解緩衝液に再懸濁し、80℃で3分間インキュベーションした。インキュベーション後、15μlの清澄化溶液を添加した。
【0336】
次いで、試料を20000×gで遠心分離し、100μLの上清をカラムに通した。カラムは、樹脂Sephacryl S400でできているフィルターを含んだ。1000×gで1分間遠心分離することにより、上清をカラムに通して処理した。
【0337】
結果として生じる溶出液は、単離されたDNA/RNAを含み、それに続く下流の用途のために容易に使用することができた。
【0338】
参照文献の一覧
Burden (2008) 「Guide to the Homogenization of Biological Samples」 Random Primers, Issue No. 7, Sept. 2008, Page 1-14
【国際調査報告】