(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】扁平ラメラ構造を有する金属粒子を含有する殺菌性、消毒性、非溶剤性の環境に優しいコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20230613BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230613BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20230613BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20230613BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/43
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568719
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2021062556
(87)【国際公開番号】W WO2021228902
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522439984
【氏名又は名称】マギリ,ステファン
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デボア,ミシェル
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038HA066
4J038HA506
4J038JA21
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA09
4J038MA15
4J038NA01
4J038PA04
4J038PA06
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
本発明は、エポキシ樹脂と、チキソトロピック剤と、水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/若しくは変性アルコールの中から選択される天然希釈剤と、を含む結合剤中の懸濁液中に、45ミクロン未満の直径を有する重なり合う扁平ラメラ金属ナノ粒子及び/又は微粒子を含む、表面用の殺生物コーティング組成物に関する。本発明は、更に、当該組成物を塗布する工程を含むコーティングプロセス、及び表面をコーティングするための本発明によるコーティング組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤中の懸濁液中に、45ミクロン未満の直径を有する重なり合う扁平ラメラ金属ナノ粒子及び/又は微粒子を含む、表面用の殺生物コーティング組成物であって、
-エポキシ樹脂と、
-チキソトロピック剤と、
-水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/又は変性アルコールの中から選択される、天然希釈剤と、を含む、殺生物コーティング組成物。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子及び/又は微粒子が、銅及び/又は白銅ナノ粒子及び/又は微粒子である、先行請求項のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物。
【請求項3】
前記組成物の総重量の10%~95%、好ましくは40%~95%、より好ましくは55%~95%が、前記ナノ粒子及び/又は微粒子で構成される、先行請求項のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物。
【請求項4】
前記組成物の総重量の1%~50%、好ましくは5%~45%、より好ましくは5%~35%が、前記エポキシ樹脂で構成される、先行請求項のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物。
【請求項5】
前記組成物の総重量の10%~45%、好ましくは15%~45%、より好ましくは28%~45%が、前記チキソトロピック剤で構成される、先行請求項のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物。
【請求項6】
前記チキソトロピック剤が、ナトリウム、マグネシウム、及びリチウムケイ酸塩の混合物から構成されるコロイド粘土である、先行請求項のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物。
【請求項7】
先行請求項のいずれか一項に記載の表面コーティング組成物に塗布する少なくとも1つの工程を含む、表面コーティングプロセス。
【請求項8】
前記表面への前記少なくとも1つの塗布工程後の前記コーティング乾燥の少なくとも1つの工程を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の表面コーティングプロセス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの塗布工程が、低温金属化を使用して実施される、請求項7及び8に記載の表面コーティングプロセス。
【請求項10】
低温金属化を使用する前記少なくとも1つの塗布工程が、スプレー及び/又は塗料ローラー及び/又はブラシ及び/又は電着によって実施される、先行請求項のいずれか一項に記載の表面コーティングプロセス。
【請求項11】
前記少なくとも1つの塗布工程が、少なくとも600ミクロンの厚さを有するコーティングが得られるまで繰り返される、請求項7~10のいずれか一項に記載の表面コーティングプロセス。
【請求項12】
木材、複合材、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、フェロセメント、コンクリート、ポリエステル、エポキシド、PCV、剛性炭素又は半剛性炭素の中から選択される、多孔質又は非多孔質の表面をコーティングするための、請求項1~6のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物の使用。
【請求項13】
ボートの船体をコーティングするための、請求項1~6のいずれか一項に記載の表面用の殺生物コーティング組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と、チキソトロピック剤と、水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/若しくは変性アルコールの中から選択される天然希釈剤と、を含む結合剤中の懸濁液中に、45ミクロン未満の直径を有する重なり合う扁平ラメラ金属ナノ粒子及び/又は微粒子を含む、表面用の殺生物コーティング組成物に関する。更に、本発明は、当該組成物を塗布する工程を含むコーティングプロセス、及び表面をコーティングするための本発明によるコーティング組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
銅には何世紀にもわたって知られてきた抗菌性がある。人間は、最も早い時代から、銅の天然の抗菌特性を使用してきた。銅が最も耐性のある細菌、カビ及びウイルスを根絶し得ることは、数十年にわたって行われた多くの科学的研究によって明確に示されている。また、その特性は、院内感染の予防に用いられることが知られている。
【0003】
科学的文献は、以下を含むいくつかの種類の病原性細菌、カビ及びウイルスの殺傷及び非活性化における銅の有効性を挙げている。Acinetobacter baumannii、Adenovirus、Aspergillus niger、Candida albicans、Campylobacter jejuni、Clostridioides difficile、Enterobacter aerogenes、Escherichia coli O157:H7、Helicobacter pylori、Influenza A (H1N1)、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Poliovirus、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella enteritidis、Tubercle bacillus、Staphylococcus aureus、vancomycin-resistant Enterococcus及びmethicillin-resistant Staphylococcus aureus。
【0004】
船体のような沈み込み面は、藻類又は海洋動物の発生から保護されなければならず、保護されなければ、これらの表面を形成する構造物の耐久性及び機能性に大きな影響を与えることになる。特に,船体の水中滑走抵抗が大幅に増加し,船体表面が損傷する可能性がある。
【0005】
この保護は、いわゆる防汚塗料を使用して確保し得ることは周知である。効果的な塗料は、環境に広がる有毒な粒子を含んでいるという大きな欠点があり、環境保護に関する新しい国際基準はこの点でますます制限されている。これらの国際基準を遵守する塗料、特にプレジャーボート向けの塗料は、従来の塗料よりも明らかに効果が低く、ボートのより頻繁なケアにつながり、そのために長期間固定され、運用コストが増加するという欠点がある。
【0006】
そのような防汚塗料又はコーティングについては、結合剤中の懸濁液中の銅又は銅及びニッケル合金粒子を使用することが知られている。しかしながら、これらの塗料又はコーティングは、水没面の保護の有効性及び環境の尊重の点で完全な満足を提供しない。
【0007】
文献US5284682は、ラメラ粒子で構成されたコーティングであって、ラメラ粒子が必然的に互いに隔離されて当該コーティングが塗布された金属表面の腐食を抑制する、コーティングを開示している。更に、本文献により開示される組成物は、天然溶媒を使用しない。
【0008】
文献FR2894974は、間隔を空けた粒子、結合剤及び希釈剤を含む、船体等の水没を意図した表面を保護するための製品を開示する。
【0009】
これらのコーティングの構成は、細菌及び/又はカビ及び/又は真菌の増殖を助長する空気分子(酸素)の顕微鏡的な閉じ込めを促進し、更に、樹脂の加水分解によって生成された水及び酢酸の存在により、ポリエステル製の基板が破壊され、水の入り口につながり、船体の水没部分に不可逆的な損傷を与える重大なリスクを引き起こす。更に、当該ナノ粒子及び/又は微粒子の環境への分散は、選択されたコンフォメーションのために回避することができず、ウイルス及び微生物が形成され、空気が閉じ込められることを可能にし、これは、保持され得ない銅の消毒特性に影響を与える。
【0010】
文献WO2016/081476は、非金属粒子、エポキシ樹脂及び天然溶媒を含む組成物を開示している。該粒子が懸濁液中に保持されていないため、分散剤の不在が問題となる。
【0011】
更に、ほとんどの現在の組成物は、45ミクロン以上の粒度を有する円筒構造、好ましくは球形を有する粉末を系統的に使用する。当該粒子は互いに不規則な形状を有し、銅及び/又は白銅のイオン特性の連続性を許容しない低い製造コストを有する。それらの不規則な形状及びそれらの重なり合いは、細菌及び/又はカビ及び/又は真菌の増殖に有利な空気分子(酸素)の顕微鏡的閉じ込めを促進する。例えば、航海スポーツでは、樹脂の加水分解によって生じる水及び酢酸の存在により、ポリエステル製の基板の破壊を促進し、水の入り口につながり、船体の水没部分に不可逆的な損傷を与える重大なリスクがある。
【0012】
これらの円筒形粉末は、好ましくは球形であり、いわゆる「丸い」構造を有し、最初に加工された構造を変形させ、その塗布に続いて、当該保護を伴う表面化を必要とし、これはコーティングの厚さの著しい減少をもたらす。
【0013】
更に、銅粉末複合材の場合、銅によって生成された殺生物特性は、食品加工、製薬業界、ヘルスケア、ウォータースポーツ、スポーツ構造、学校複合体、建設、公共施設、空港、駅及び屋根の保護などの多くの技術領域に直接的に適用される。
【0014】
しかしながら、これまで使用されてきた銅及び/又は白銅粉末は、球形で無秩序な構造を有し、標準的かつ規則的な厚さを確保することができず、したがって、最適な殺菌保護を提供することが不可能である。
【0015】
これらの好ましくは球状の金属ビーズは、上述のように、
図1に示すように、コーティングの厚さに気泡を閉じ込めるリスクが存在する。これらのビーズは、各金属ビーズと表面との間の必要な保護の破壊を促進し、これは、滑らかな表面を作成するために比較的研磨性のあるサンディングを通じて改善されなければならないが、厚さに関して不均一なものである。実際には、表面は、経時的に連続する樹脂層を除去するために定期的にサンディングされなければならないため、表面は、汚染防止表面を作成するために再サンディングされなければならない。
【0016】
したがって、上記の全ての問題を解決する殺生性コーティング組成物の必要性が依然として存在する。
【0017】
本発明の技術的目的は、様々な厚さのフィルムを用いて規則的に制御された塗布を可能にするチキソトロピック剤を含む結合剤中に分散された、扁平ラメラ構造を有する重なり合う銅及び/又はニッケルナノ粒子及び/又は微粒子を含有する組成物を提供することによって、上述の技術的問題を解決することであり、したがって、「プラコイドスケール」コーティングを作成し、また、全て、当該組成物を得るために使用されるエポキシ結合剤の量を減少させることによって製造コストを最小限に抑えながら、カビ、細菌及びウイルスを根絶することによって銅の消毒特性を保存することを可能にする。
【発明の概要】
【0018】
第1の態様によれば、本発明は、45ミクロン未満の直径を有する重なり合う扁平ラメラ金属ナノ粒子及び/又は微粒子を含む、表面用の殺生物コーティング組成物であって、
-エポキシ樹脂と、
-チキソトロピック剤と、
-水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/又は変性アルコールの中から選択される、天然希釈剤と、を含む、殺生物コーティング組成物に関する。
【0019】
本発明の意味において、組成物は、異なる性質を有する2つ以上の材料の組み合わせとして理解されるべきである。本発明において、これは、金属ナノ粒子及び/又は微粒子、好ましくは銅及び/又はニッケル及び/又は金属との結合剤の組み合わせである。本発明による組成物は、保護材料から空気分子(酸素)を閉じ込めないことを可能にする。
【0020】
本発明による重なり合う扁平ラメラ粒子は、それぞれが数ナノメートル又は数ミクロンを測定する薄いプレートとして理解されるべきであり、当該プレートは、薄く扁平形状であり、並置され、連動し、表面的な欠陥のない滑らかなメッシュを形成し、前記ナノ粒子及び/又は微粒子の環境への分散を回避することを可能にすると同時に、銅の消毒特性を保持する。これらの粒子は、
図3で概略化され、
図4の顕微鏡写真に示されるように、扁平な卵形に似た細長い形状を有し、それらの間の並置及び連動を可能にする。
【0021】
これは特定の爬虫類や魚類の皮膚に自然に見られるパターンに似ている。これらの理由により、コーティングは、本文において「プラコイドスケール」コーティングと称される。当該「プラコイドスケール」は、前記魚類の皮膚を不透過性にすることによって流体力学的役割を果たすために、重なり合って小さな扁平な歯を形成する、セラキアン、すなわちサメ及びエイの鱗などの軟骨魚類の皮下歯肉に類似する。更に、当該扁平ラメラナノ粒子及び/又は微粒子が重なり合って、組成物が塗布されるコーティングが、ウイルス、細菌、又は形成され得る様々なモールドなどの外部剤に対して不透過になることを可能にする。
【0022】
「プラコイドスケール」ラメラナノ粒子は、気泡が制限されることなく、均質性を確保し、各ナノ粒子及び/又は微粒子間の保護の連続性を保証する。
【0023】
本発明の意味において、ナノ粒子及び/又は微粒子は、数ナノメートル又は数ミクロンを測定する小さな粒子として理解されるべきであり、好ましくは、当該ナノ粒子のサイズは5nm~9nmであり、微粒子のサイズは1μm~20μmである。本発明によって使用される当該粒子の直径は45ミクロン未満である。
【0024】
本発明は、原料が被覆されると、その生の状態の銅及び/又はニッケルの強力な天然殺菌及び抗菌特性を保存することを可能にする。
【0025】
本発明の意味において、結合剤は、本発明による扁平ラメラナノ粒子及び/又は微粒子を互いに結合する物質として理解されるべきである。結合剤は、「プラコイドスケール」保護の形成のためのナノ粒子及び/又は微粒子の凝集性を確保する。
【0026】
当該扁平ラメラ銅及び/又は白銅ナノ粒子及び/又は微粒子の重なり合いは、使用される結合剤の量を最小限に抑えながら、粒子の完全な凝集性を保証することを可能にする。
【0027】
エポキシ樹脂は、良好な機械的及び化学的特性を示す熱硬化性樹脂として理解されるべきである。これらの樹脂は、ベース及び硬化剤を含む。これらは、酸無水物、フェノール、又は最も多くの場合アミン(ポリアミン、アミノアミド)塩基を有し得る硬化剤(架橋剤)とのエポキシドモノマーの重合を使用して製造される:これらは三次元ポリマーである。エポキシ樹脂は高価な要素であるため、その使用を減少させることにより、発生するコスト及び本発明によるコーティング組成物のコストを削減することができる。本発明は、粒子の重なり合う構成により、より少量のエポキシ樹脂を使用することが可能となり、したがって、当該組成物に使用されるナノ粒子及び/又は微粒子の初期保護を増加させながら、全ての当該発明の原料を大幅に節約することが可能となる。エポキシ樹脂はまた、その重合剤として理解されるべきである。重合剤の一例は、RESOLCOAT 1014の名称で市販されているものであってもよい。このエポキシ樹脂及び重合剤は、トリクロロエチレンエチレンケトン又はメチルエチレンケトンで希釈したCLEAR COAT/A及びCLEAR COAT/Bの名称でそれぞれ市販されているものであってもよい。
【0028】
好ましくは、組成物の総重量の1%~50%、好ましくは5%~45%、更により好ましくは5%~35%は、当該エポキシ樹脂で構成されている。
【0029】
そのようなエポキシ樹脂の例は、RESOLCOAT 1014、又は他のブランドの名称で市販されている。
【0030】
チキソトロピー剤は、本発明に従って、分散剤として理解され、結合剤の製剤で使用されるナノ粒子及び/又は微粒子を懸濁液中に保持すること、及びチキソトロピーの特性を付加すること、すなわち、一定の拘束の影響下で液体状態から固体状態に行くことができることを可能にする。このことは、本発明による組成物が、コーティングされる表面上に配置されると、その殺生特性を用いることを可能にする。チキソトロピック流体は、長期間にわたって触れられないままにすると、それ自体が再構成され、多かれ少なかれ粘性の高い生成物への変換が可能になり、このことは、金属粒子が懸濁液中で保持されることを可能にする。その粘度は、所望の混合物の種類に応じて増加し、無限大に向かう傾向にあり得る。
【0031】
好ましくは、前記組成物の重量の10%~45%、好ましくは15%~45%、更により好ましくは28%~45%が、当該チキソトロピック剤で構成されている。
【0032】
好ましくは、当該チキソトロピック剤は、ナトリウム、マグネシウム及びリチウムケイ酸塩の混合物で構成されたコロイド粘土である。
【0033】
更により好ましくは、ナトリウム、マグネシウム、及びケイ酸リチウムの混合物で構成される当該チキソトロピック剤は、製品Laponite(登録商標)RDである。
【0034】
本発明の意味において、天然希釈剤は、本発明によるコーティング組成物を構成する異なる元素の希釈を可能にする物質として理解されるべきである。
【0035】
当該希釈剤は、コーティングされる表面上にコーティング組成物を塗布した後に完全に蒸発する。
【0036】
したがって、本明細書で取り扱われる組成成分のパーセンテージは、塗布前のものである。
【0037】
好ましくは、当該天然希釈剤は、水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/又は変性アルコールの中から選択される。
【0038】
好ましくは、組成物の総重量の10%~45%、好ましくは15%~45%、更により好ましくは28%~45%は、天然希釈剤で構成されている。
【0039】
好ましくは、当該銅及び/又は白銅ナノ粒子は、5nm~9nmの直径を有する。
【0040】
好ましくは、前当該銅及び/又は白銅微粒子は、1μm~20μmの直径を有する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記組成物の総重量の10%~95%、好ましくは40%~95%、更により好ましくは55%~95%が当該ナノ粒子及び/又は微粒子からなる。
【0042】
本発明の意味において、殺生物剤は、欧州議会及び1998年2月16日の指令98/8/ECによって提供される「殺生物剤」の定義として、殺生物剤製品の市場への投入に関するものとして理解されるべきである(JO/CE no.(1998年4月24日のL 123)を含み、「化学的又は生物学的手段によって任意の有害な生物体を破壊、抑止、無害化、防止、又はそれ以外の方法で制御効果を及ぼすことを意図して、それらが使用者に供給される形態で配置される、1つ以上の活性物質を含有する活性物質及び製剤」と定義される。
【0043】
好ましくは、当該金属ナノ粒子及び/又は微粒子は、銅及び/又は白銅で作製されたナノ粒子及び/又は微粒子である。
【0044】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は、
-10%~95%のナノ粒子及び/又は微粒子と、
-1%~50%のエポキシ樹脂と、
-1%~30%のチキソトロピック剤、好ましくはLaponite(登録商標)RDと、
-10%~45%の天然希釈剤であって、水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/若しくは変性アルコールの中から選択される、希釈剤と、を含む。
【0045】
本発明の代替的な実施形態によれば、組成物は、
-40%~95%のナノ粒子及び/又は微粒子と、
-5%~45%のエポキシ樹脂と、
-5%~30%のチキソトロピック剤、好ましくはLaponite(登録商標)RDと、
-15%~45%の天然希釈剤であって、水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/若しくは変性アルコールの中から選択される、希釈剤と、を含む。
【0046】
本発明の代替的な実施形態によれば、組成物は、
-55%~95%のナノ粒子及び/又は微粒子と、
-5%~35%のエポキシ樹脂と、
-5%~30%のチキソトロピック剤、好ましくはLaponite(登録商標)RDと、
-水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/又は変性アルコールの中から選択される、28%~45%の天然希釈剤と、を含む。
【0047】
本発明の代替的な実施形態によれば、組成物は、
-45%~99%のナノ粒子及び/又は微粒子と、
-5%~45%のエポキシ樹脂と、
-7%~45%のチキソトロピック剤、好ましくはLaponite(登録商標)RDと、
-水、好ましくは脱塩水、及び/又はエチレングリコール及び/又は変性アルコールの中から選択される、28%~45%の天然希釈剤と、を含む。
【0048】
本発明は、水没させることが意図されるか、又は野外に留まることが意図される表面に塗布され得る組成物を提供する。この組成物の塗布は、浸漬の有無にかかわらず、当該表面の保護の改善された有効性を提供する。
【0049】
表面に塗布した後、組成物は、従来の防汚塗料の層の約5~10倍の厚さを有する粒子及びバインダーの層を形成し、これは船体の「二重化」に匹敵する。重なり合う粒子の割合が非常に高いことにより、粒子間の固定が可能になるため、これらの粒子の環境への分散を回避することが可能になる。
【0050】
処理されることが意図される表面への塗布後、コーティングされる材料の性質に応じて、コーティング組成物は、少なくとも600ミクロンの厚さを有するナノ粒子及び/又は微粒子の層を形成する。
【0051】
本発明によるコーティングの耐性は、処理表面が乾燥した場所に配置されるときも、又は数年間連続して水没するときにも、空気中で変化するリスクなしに経時的に増加する。この層の固有抵抗もまた増加し、例えば、船舶の船体、又は処理された表面を含む別の構造物の表面の潜在的な保守によって損傷されないようになる。このような層の寿命は、ボートそのものと比較するのが妥当である。偶発的に劣化した場合、層は、製品の局所的な再塗布を通じて修復することが容易である。
【0052】
この層は、必要に応じて、環境を尊重しながら、処理された表面を乾燥した場所に置くことなく、わずかに研磨性のある家庭用スポンジで擦るだけで研磨され得る。
【0053】
第2の実施形態によれば、本発明は、本発明による当該表面コーティング組成物に塗布する少なくとも1つの工程を含む、表面コーティングプロセスに関する。
【0054】
好ましくは、当該表面コーティングプロセスは、当該表面への当該少なくとも1つの塗布工程後の当該コーティング乾燥の少なくとも1つの工程を更に含む。
【0055】
好ましくは、当該少なくとも1つの塗布工程は、低温金属化を使用して実施される。
【0056】
金属ナノ粒子及び/又は微粒子を結合剤と関連付けることによって、冷間金属化技術は、多孔質材料を含む全ての剛性又は半剛性材料をコーティングすることを可能にする。当該発明は、タッチに対して滑らかな結果を得ると同時に、永続的な消毒保護を提供するために、任意の材料がカバーされることを可能にする。高い重なり合う扁平ラメラ銅及び/又はニッケルナノ粒子及び/又は微粒子含有量は、それらの間の完全な均質性を可能にし、「プラコイド」コーティング保護を形成する。
【0057】
好ましくは、冷間金属化を使用する当該少なくとも1つの塗布工程は、スプレー及び/又は塗料ローラー及び/又はブラシ及び/又は電着によって実施される。
【0058】
好ましくは、当該少なくとも600ミクロンの厚さを有するコーティングがコーティングされる表面上で得られるまで、該少なくとも1つの塗布工程を繰り返す。
【0059】
一実施形態によれば、当該プロセスは、本発明によるコーティング組成物を塗布する工程の前にコーティングされる表面に特定の界面を塗布することを含み得、該組成物のより長期間の維持を可能にする。
【0060】
分解できない、又は重すぎて輸送できない接触にさらされた材料は、直接保護された場所で直接保護され、乾燥するとプロセスを「研磨又は活性化」する必要はない。
【0061】
ラメラナノ粒子及び/又は微粒子で構成されるコーティングは、結合剤のために、扁平ラメラ銅及び/又はニッケル及び/又は金属ナノ粒子及び/又は微粒子の消毒特性も活性化しながら、ウイルス又は微生物のいかなる蓄積及び空気の閉じ込めも防止する「プラコイドスケール」表面を確保する。
【0062】
10m2の表面を処理するために、1層当たり965グラムの生成物を塗布し、1m2当たり96.5gを塗布する。すなわち、
-270グラムの銅又は銅及びニッケル合金粒子と、
-600グラムの脱塩水と、
-90グラムのエポキシ樹脂及び本樹脂の重合剤と、
-0.05グラムのチキソトロピック剤と、を塗布する。
【0063】
塗布後、エポキシ樹脂の重合は、この樹脂の15%、すなわち5.63グラムの蒸発をもたらし、脱塩水は100%、すなわち600グラムの蒸発を受ける。したがって、塗布され重合された生成物の正味重量は、116g/m2である。
【0064】
したがって、m2当たりの乾燥生成物の組成は以下の通りである。
-90グラム、すなわち94%の銅又は銅及びニッケル合金粒子と、
-9グラム、すなわち6%のエポキシ樹脂及びこの樹脂の重合剤。
【0065】
第3の実施形態によれば、本発明は、木材、複合材、鋼、アルミニウム、ステンレス鋼、フェロセメント、コンクリート、ポリエステル、エポキシド、PCV、剛性又は半剛性炭素の中から選択される、多孔質又は非多孔質の表面をコーティングするための本発明による殺生物表面コーティング組成物の使用に関する。
【0066】
第4の実施形態によれば、本発明は、ボートの船体をコーティングするための本発明による殺生物表面コーティング組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】従来技術、例えば、文献FR2894974に見出され得るように、基材、銅ビーズ、及び気泡を含む金属ビーズによるコーティングの塗布の概略例を提供する。
【
図3】本発明によるラメラコーティングの概略例であり、その粒子は平坦であり、卵形であり、「プラコイドスケール」コーティングを形成する。
【
図4】結合剤を含まない、扁平ラメラ「プラコイドスケール」ナノ粒子の顕微鏡図である。扁平ラメラ「プラコイドスケール」粒子が重なり合っている。
【実施例】
【0068】
実施例1:
試験実験では、本発明によるコーティング組成物を調製する。
【0069】
次に、本発明による組成物を、冷間金属化工程を含む実験に従う手順を使用して、ボートの船体の表面に塗布する。
【0070】
本発明によるコーティング組成物でコーティングされたこの船体を、次いで海水中で1ヶ月間水没させる。
【0071】
また、コーティングされたものと同一の材料で作られた2番目の船体は、1番目の船体の近くの海水中に1ヶ月放置されている。
【0072】
この月の終わりには、船体を比較し、本発明による組成物でコーティングしていない船体は、本発明による組成物でコーティングした船体よりも悪い状態にあると思われる。実際、本発明による組成物でコーティングされた船体は無傷であるが、未処理の船体には、生体(細菌、藻類等)による攻撃を示す痕跡が見られる。
【国際調査報告】