(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[D]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-B]ピリジン-6(7H)-オンの塩及び結晶形
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20230613BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230613BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K31/496
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568819
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 CA2021050645
(87)【国際公開番号】W WO2021226707
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ブレイ,マーク・アール
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジー-ワン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC01
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF06
4C071GG10
4C071HH17
4C071JJ05
4C071LL01
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB26
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
以下の構造式によって表される化合物(I)の新規の塩形態、及びその対応する医薬組成物が開示される。1:1の化合物(I)酒石酸塩の特定の単結晶形態は、様々な特性及び物理的測定値によって特徴付けられる。特定の結晶形態を調製する方法も開示されている。本開示はまた、対象のがんを治療する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式によって表される化合物(I)の酒石酸塩であって、
【化1】
化合物(I)と酒石酸とのモル比が1:1である、酒石酸塩。
【請求項2】
結晶性である、請求項1に記載の酒石酸塩。
【請求項3】
少なくとも90重量%が単一結晶形態である、請求項1に記載の酒石酸塩。
【請求項4】
2θにおいて0.2±11.9°、15.4°、16.9°、及び17.2°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項5】
2θにおいて11.9°、15.4°、16.9°、17.2°及び25.6°±0.2から選択される少なくとも3つのピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項6】
2θにおいて11.9°、14.0°、15.4°、16.9°、17.2°、25.6°、26.3及び30.7°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項7】
2θにおいて11.9°、14.0°、15.4°、16.9°、17.2°、22.1°、25.6°、26.3、30.7°及び34.0°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項8】
2θにおいて8.7°及び12.9°±0.2にピークを更に含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる、請求項4~7のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項9】
189±2℃の示差走査熱量計(DSC)ピーク相転移温度によって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項10】
吸水量が、以下の条件:
i)窒素雰囲気下、0%の相対湿度で2時間、0.5~1.5mgの酒石酸塩を乾燥させること、
ii)相対湿度を0%から90%まで10%刻みで増減し、次に0%にすること、
iii)各工程での最小及び最大持続時間がそれぞれ10分及び180分であるという条件で、1分あたりの元の酒石酸塩の質量と比較した質量変化が0.01(%/分)未満になるまで、各工程で相対湿度を維持すること、並びに
iv)90%の相対湿度の酒石酸塩の質量を測定し、工程i)~iv)は25℃で実施されること
の下で測定される場合、90%の相対湿度(RH)の酒石酸塩の質量の4%未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項11】
吸水量が、90%の相対湿度(RH)の酒石酸塩の質量の1%未満である、請求項10に記載の酒石酸塩。
【請求項12】
吸水量が、以下の条件:
i)窒素雰囲気下、0%の相対湿度で2時間、0.5~1.5mgの酒石酸塩を乾燥させること、
ii)相対湿度を0%から90%まで10%刻みで増減し、次に0%にすること、
iii)各工程での最小及び最大持続時間がそれぞれ10分及び180分であるという条件で、1分あたりの元の酒石酸塩の質量と比較した質量変化が0.01(%/分)未満になるまで、各工程で相対湿度を維持すること、並びに
iv)30%の相対湿度で酒石酸塩の質量を測定し、工程i)~iv)は25℃で実施されること
の下で測定される場合、30%の相対湿度(RH)の酒石酸塩の質量の1%未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の酒石酸塩。
【請求項13】
吸水量が、30%の相対湿度(RH)の酒石酸塩の質量の0.1%未満である、請求項12に記載の酒石酸塩。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の酒石酸塩及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の酒石酸塩又は請求項14に記載の医薬組成物を対象に投与する工程を含む、がんを有する対象を治療する方法。
【請求項16】
有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の酒石酸塩又は請求項14に記載の医薬組成物、及び有効量の第2の抗がん治療(例えば、化学療法剤、標的治療剤、放射線又は外科手術)を対象に投与する工程を含む、がんを有する対象を治療する方法。
【請求項17】
有効量の請求項1~13のいずれか一項に記載の酒石酸塩又は請求項14に記載の医薬組成物、及び有効量のチェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、抗CTLA4抗体又は抗PD-L1抗体)又はトリプトファン酸化の阻害剤(例えば、IDO1、IDO2又はTDO2阻害剤)などの免疫調節剤を対象に投与する工程を含む、がんを有する対象を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2020年5月11日出願の米国仮出願第63/022,867号の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
造血前駆細胞キナーゼ1(HPK1)は、造血細胞拘束性Ste20セリン/スレオニンキナーゼである。HPK1はがん免疫療法の新規標的となり得ることが報告されている(Sawasdikosolら、Immunol Res.2012年12月;54(1-3):262-5)。詳細には、HPK1対立遺伝子の標的破壊は、TCR関与に応答して増加したTh1サイトカイン産生をT細胞に付与する。HPK1(-/-)T細胞は、ハプロタイプにマッチした野生型対応物よりも急速に増殖し、プロスタグランジンE2(PGE(2))を介した抑制に耐性がある。最も驚くべきことに、HPK1(-/-)T細胞の養子移入を受けたマウスは、肺腫瘍の増殖に対して耐性になった。また、樹状細胞(DC)からのHPK1の喪失は、マウスに優れた抗原提示能力を与え、HPK1(-/-)DCががんワクチンとして使用される場合、より強力な抗腫瘍免疫応答を誘発することができる。
【0003】
米国特許第10,501,474号は、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる、HPK1の非常に強力な阻害剤を開示する。米国特許第10,501,474号に開示された阻害剤の1つの構造は、本明細書において以下に示す「化合物(I)」と呼ばれる:
【0004】
【0005】
化合物(I)の化学名は、4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オンである。
【0006】
化合物(I)のような薬学的に活性の剤の開発を成功させるには、通常、合成後に単離及び精製の準備ができ、大規模な製造に修正可能であり、水の吸収、分解又は他の固体形態への変換を最小限に抑えて長期間保存することができ、製剤に適しており、対象への投与後に容易に吸収され得る(例えば、水及び胃液に可溶性である)特性を有する固体形態の識別が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、化合物(I)と酒石酸とのモル比が1:1である、化合物(I)の酒石酸塩に関する。酒石酸上の2つのカルボン酸基と化合物(I)中の複数の塩基性窒素原子のために、複数の可能な化学量論が可能である。例えば、化合物(I)は、1:1の酒石酸塩と1:0.5の酒石酸塩の両方を形成する。化合物(I)の1:1の酒石酸塩を、本明細書では「1:1の化合物(I)酒石酸」又は「1:1の化合物(I)酒石酸塩」と呼ぶ。
【0008】
また、1:1の化合物(I)酒石酸塩を、明確に定義された条件下で結晶化して、非吸湿性の結晶形態を提供できることもわかった(実施例6を参照のこと)。酒石酸塩はまた、水及び模擬胃液への溶解度が向上し(実施例7及び表7を参照されたい)、長い貯蔵寿命を有し(実施例8を参照)、大規模合成に適する(実施例5を参照)。
【0009】
異なる化合物(I)/酸モル比を有する13種類の異なる酸(実施例1~3参照のこと)による塩スクリーニングを行った。得られた20個の塩形態(実施例1及び2)のうち、一塩酸塩、メシル酸塩、酒石酸塩及びマレイン酸塩のみが、X線粉体回折(XRPD)により中程度から良好な結晶性を示した。異なる溶媒系におけるこれら4つの塩の更なる評価は、メシル酸塩及びマレイン酸塩の結晶性が中程度であることを示す(実施例3を参照されたい)。更に、異なる溶媒系を使用した場合、一塩酸塩、メシル酸塩、及びマレイン酸塩について異なる多形形態が単離された。注目すべきことに、二塩酸塩は、実施例1及び4で実証されたように結晶性を有さない、又は非常に低い結晶性を有する。
【0010】
一塩酸塩と比較して、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、非吸湿性であるという更なる利点を有する。更に、下記の実施例9に示すように、遊離塩基及び一HCl塩と比較して、結晶形態の1:1の化合物(I)酒石酸塩は、経口投与後のイヌにおける血漿濃度の向上をもたらす。これは、新しい固体形態を経口投与して効果的な薬物の血漿レベルをもたらすことができるため、重要な利点である。
【0011】
一態様では、本開示は、化合物(I)と酒石酸とのモル比が1:1である、化合物(I)の酒石酸塩を提供する。
別の態様では、本開示は、1:1の化合物(I)酒石酸塩及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
更に別の態様では、本開示は、がんを有する対象を治療する方法であって、有効量の本明細書に開示される1:1の化合物(I)酒石酸塩又は対応する医薬組成物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0013】
本開示はまた、がんを有する対象を治療する方法であって、有効量の本明細書に開示される1:1の化合物(I)酒石酸塩又は対応する医薬組成物、及び有効量のチェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体又は抗PD-L1抗体)又はトリプトファン酸化の阻害剤(例えば、IDO1、IDO2又はTDO2阻害剤)などの免疫調節剤を対象に投与する工程を含む方法も提供する。一例では、免疫調節剤は抗PD-1抗体である。
【0014】
1つの代替では、1:1の化合物(I)酒石酸塩又は対応する医薬組成物は、有効量の1つ以上の他の抗がん療法と共に、好ましくはPD-1阻害剤と組み合わせて投与される。一実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、BMS 936559、MPDL3280A、MSB0010718C又はMEDI4736である。1つの特定の実施形態では、PD-1阻害剤はニボルマブである。1つの特定の実施形態では、PD-1阻害剤はペムブロリズマブである。
【0015】
本開示は、本明細書に開示される1:1の化合物(I)酒石酸塩、又は1:1の化合物(I)酒石酸塩を含む対応する医薬組成物を上記の方法のいずれかで使用することも提供する。一実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかに使用するための1:1の化合物(I)酒石酸塩又は1:1の化合物(I)酒石酸塩を含むその医薬組成物を提供する。別の実施形態では、本明細書に記載の方法のいずれかのための医薬を製造するために、1:1の化合物(I)酒石酸塩又は1:1の化合物(I)酒石酸塩を含むその医薬組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】異なる実施例から得られた1:1の化合物(I)塩酸塩のX線粉体回折(XRPD)パターンを示すグラフである。下のスペクトルは、実施例1(バッチ1)から得られた塩酸塩に対するものである。中央のスペクトルは、IPA:水を使用する実施例3(バッチ2)から得られた塩酸塩に対するものである。上のスペクトルは、アセトンを使用する実施例3(バッチ3)から得られた塩酸塩に対するものである。
【
図2】異なる実施例から得られた1:1の化合物(I)メシル酸塩のX線粉体回折(XRPD)パターンを示すグラフである。下のスペクトルは、実施例2(バッチ1)から得られたメシル酸塩に対するものである。中央のスペクトルは、IPA:水を使用する実施例3(バッチ2)から得られたメシル酸塩に対するものである。上のスペクトルは、アセトンを使用する実施例3(バッチ3)から得られたメシル酸塩に対するものである。
【
図3】異なる実施例から得られた1:1の化合物(I)マレイン酸塩のX線粉体回折(XRPD)パターンを示すグラフである。下のスペクトルは、実施例2(バッチ1)から得られたマレイン酸塩に対するものである。中央のスペクトルは、IPA:水を使用する実施例3(バッチ2)から得られたマレイン酸塩に対するものである。上のスペクトルは、アセトンを使用する実施例3(バッチ3)から得られたマレイン酸塩に対するものである。
【
図4】1:2の化合物(I)二塩酸塩のX線粉体回折(XRPD)パターンを示すグラフである。
【
図5】実施例5から得られた1:1の化合物(I)酒石酸塩の熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量分析(DSC)サーモグラムを示すグラフである。
【
図6】実施例5から得られた1:1の化合物(I)酒石酸塩のX線粉体回折(XRPD)パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、化合物(I)の新規の酒石酸塩(すなわち、1:1の酒石酸塩)、及び前述の多形形態を対象とする。
一実施形態では、化合物(I)の酒石酸塩(すなわち、1:1の酒石酸塩)は結晶性である。
【0018】
本明細書に使用される場合、「結晶性」は、個々の分子が非常に均質で規則的なロックイン化学立体構造を有する結晶構造を有する固体を指す。結晶性化合物(I)塩は、化合物(I)塩の単結晶形の結晶でも、又は異なる単結晶形態の結晶の混合物でもよい。単結晶形とは、化合物(I)塩を単結晶として、又は各結晶が同じ結晶形を有する複数の結晶を意味する。
【0019】
本明細書に開示される化合物(I)の結晶形態に関して、1:1の化合物(I)酒石酸塩の少なくとも特定の重量パーセントは、単結晶形である。特定の重量パーセントは、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%、99.9重量%、又は70重量%~75重量%、75重量%~80重量%、80重量%~85重量%、85重量%~90重量%、90重量%~95重量%、95重量%~100重量%、70重量%~80重量%、80重量%~90%、90重量%~100重量%の単結晶形の化合物(I)塩である。これらの値と範囲の間のすべての値及び範囲は、本開示によって包含されることを意味することを理解されたい。
【0020】
結晶性化合物(I)塩が化合物(I)塩の1つの特定の結晶形の指定された割合として定義される場合、残りは、指定された1つ以上の特定の形態以外の非晶質形態及び/又は結晶形で構成される。単結晶形の例として、本明細書に論じられる1つ以上の特性によって特徴付けられる1:1の化合物(I)酒石酸塩が挙げられる。
【0021】
本明細書に開示される結晶性化合物(I)塩は、2θの角度ピーク位置に対応する鋭いピーク及び平坦なベースラインを有する強力でユニークなXRPDパターンを示し、高結晶性物質を示す(例えば、
図6)。本出願に開示されるXRPDパターンは、銅線源(Cu Kα1;λ=1.54179Å)から得られる。
1:1の化合物(I)酒石酸塩結晶形態の特徴化
一実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、2θにおいて11.9°、15.4°、16.9°、及び17.2°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、2θにおいて11.9°、15.4°、16.9°、17.2°及び25.6°±0.2から選択される少なくとも3つのピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、2θにおいて11.9°、15.4°、16.9°、17.2°及び25.6°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、2θにおいて11.9°、14.0°、15.4°、16.9°、17.2°、25.6°、26.3及び30.7°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。更に別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、2θにおいて11.9°、14.0°、15.4°、16.9°、17.2°、22.1°、25.6°、26.3、30.7°及び34.0°±0.2にピークを含むX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、前述で識別されたようにX線粉体回折パターンによって特徴付けられ、2θにおいて8.7°及び12.9°±0.2にピークを更に含む。更に別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、
図6と実質的に類似するX線粉体回折パターンによって特徴付けられる。
【0022】
本明細書に使用される場合、X線紛体ディフラクトグラムは、2つのディフラクトグラムにおける信号の少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%が2θにおいて同値±0.2である場合、「[特定の]図におけるものと実質的に類似する」。「類似性」を決定する際に、当業者は、同じ結晶形態であってもXRPDディフラクトグラムの強度及び/又はシグナル位置に変動があり得ることを理解する。したがって、当業者であれば、XRPDディフラクトグラムのシグナル最大値(本明細書でいう2シータ度(°2θ))は、一般に、報告された値の報告された値±0.2度2θを意味し、以下に論じられるような当技術分野で認識された変動であることを理解する。
【0023】
結晶学技術分野において、任意の所与の結晶形について、角度ピーク位置は、温度変化、試料変位、及び内部標準の有無などの要因によりわずかに変化し得ることが周知である。本開示では、角度ピーク位置の変動性は、2θにおいて±0.2である。更に、特定の結晶形の相対ピーク強度は、XRPD分析用の試料調製における結晶子径及び非ランダム結晶子配向の差により変化し得る。この変動性が結晶形の明確な識別を妨げることなく上記の要因を説明することは、当技術分野で周知である。
【0024】
別の実施形態では、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、示差走査熱量計(DSC)ピーク相転移温度が189±2°Cであることを特徴とする。
別の実施形態では、化合物(I)の1:1酒石酸塩は吸湿性測定値によって特徴付けられ、ここで、吸水量は、90%の相対湿度(RH)の酒石酸塩の質量の4%未満(例えば、2%又は1%)、又は60% RHの酒石酸塩の質量の2%未満(例えば、1%又は0.5%)、又は30% RHの酒石酸塩の質量の1%未満(例えば、0.5%又は0.1%)である。異なる相対湿度(RH)での吸湿性は、以下の条件下で測定される:
i)窒素雰囲気下、0%の相対湿度で2時間、0.5~1.5mgの酒石酸塩を乾燥させること、
ii)相対湿度を0%から90%まで10%刻みで増減し、次に0%にすること、
iii)各工程での最小及び最大持続時間がそれぞれ10分及び180分であるという条件で、1分あたりの元の酒石酸塩の質量と比較した質量変化が0.01(%/分)未満になるまで、各工程で相対湿度を維持すること、並びに
iv)所望の相対湿度(例えば、90%、60%又は30%)の酒石酸塩の質量を測定し、工程i)~iv)は25℃で実施されること。
【0025】
吸湿性は、標準的な方法、例えば、G.Zografi及びM.J.Kontny、「sorption of water by solids」in Physical Characterization of Pharmaceutical Solids,ed.H.G.Brittain、Marcel Dekker、New York、NY(1995)、pp.385-418又は本開示の実施例6に記載の手順を使用して測定される。
1:1の化合物(I)一塩酸塩結晶形態の特徴化
一実施形態では、1:1の化合物(I)一塩酸塩は、
図1の上のスペクトルと実質的に類似するX線粉体回折パターンを特徴とする単結晶形態である。
医薬組成物
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の1:1の化合物(I)酒石酸塩又はその結晶形態、並びに1つ以上の薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。用語「薬学的に許容される担体」は、あらゆる対象組成物又はその成分を担持又は輸送することに関与する液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料のような薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを指す。各担体は、対象組成物及びその成分と適合性であり、対象に有害ではないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ち得る物質のいくつかの例として、以下が挙げられる:(1)乳糖、グルコース及びスクロースのような糖;(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプンのようなデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなセルロース、及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び坐剤ワックスのような賦形剤;(9)落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;並びに(21)医薬製剤に使用される他の非毒性適合性物質。
【0026】
本開示の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔内に、膣的に、又は移植されたリザーバーを介して投与することができる。本明細書に使用される用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病変内及び頭蓋内注射又は注入技術を含む。一実施形態では、本開示の組成物は、経口的に、腹腔内に又は静脈内に投与される。本開示の組成物の滅菌注射可能な形態は、水性又は油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用して当該技術分野で公知の技術に従って製剤化することができる。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、無毒の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。使用され得る許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル溶液及び等張塩化ナトリウム溶液がある。更に、無菌の固定油は、従来、溶媒又は懸濁媒体として使用される。
【0027】
この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含むあらゆるブランドの固定油を使用してもよい。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいて、オリーブ油又はヒマシ油のような天然に薬学的に許容される油のように、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液又は懸濁液はまた、エマルジョン及び懸濁液を含む薬学的に許容される剤形の製剤に一般的に使用されるカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤のような長鎖アルコール希釈剤又は分散剤を含有してもよい。他の一般的に使用される界面活性剤、例えばTween、Spans及び薬学的に許容される固体、液体、又は他の剤形の製造に一般的に使用される他の乳化剤又はバイオアベイラビリティ増強剤もまた、製剤の目的に使用されてもよい。
【0028】
本開示の薬学的に許容される組成物は、限定するものではないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液、又は溶液を含むあらゆる経口的に許容される剤形で経口投与されてもよい。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤も典型的に添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤として、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口使用に必要とされる場合、活性成分は乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望により、ある種の甘味剤、香味剤、又は着色剤も添加されてもよい。
【0029】
あるいは、本開示の薬学的に許容される組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与されてもよい。本開示の薬学的に許容される組成物は、薬剤を、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することによって調製することができる。そのような材料には、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0030】
本開示の薬学的に許容される組成物はまた、特に、治療の対象が、眼、皮膚、又は下部腸管の疾患を含む局所適用によって容易に接近可能な領域又は器官を含む場合、局所投与されてもよい。適切な局所製剤は、これらの領域又は器官の各々について容易に調製される。下部腸管の局所適用は、直腸坐剤製剤(上記参照)又は適切な浣腸製剤で行うことができる。局所経皮パッチも使用されてもよい。
【0031】
局所適用のために、薬学的に許容される組成物は、1つ以上の担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適切な軟膏に製剤化されてもよい。本開示の化合物の局所投与のための担体としては、限定するものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス及び水が挙げられる。あるいは、薬学的に許容される組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適切なローション又はクリームに製剤化されてもよい。適切な担体としては、限定するものではないが、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が挙げられる。
【0032】
本開示の薬学的に許容される組成物は、鼻エアロゾル又は吸入によって投与することもできる。このような組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は他の従来の可溶化剤又は分散剤を使用して、生理食塩水中の溶液として調製され得る。
【0033】
単回剤形で組成物を生産するために担体と組み合わせることができる本開示の化合物の量は、治療される宿主、特定の投与様式、及び単回剤形を投与する者によって決定される他の要因に応じて変化する。
投薬量
本明細書に記載の化合物(I)又はその結晶形態の塩の毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。LD50は、集団の50%に致命的な用量である。ED50は、集団の50%で治療的に有効な用量である。毒性効果と治療効果(LD50/ED50)の間の用量比が治療指数である。大きな治療指数を示す化合物(I)の塩、又はその結晶形態が好ましい。毒性副作用を示す本明細書に記載の化合物(I)の塩又は結晶形態を使用してもよいが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減するために、患部組織の部位に対するそのような塩又は結晶形態を標的にする送達システムを設計するように注意するべきである。
【0034】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための投薬量の範囲を処方するときに使用することができる。このような塩又は結晶形態の投薬量は、毒性がほとんど又はまったくないED50を含む循環濃度の範囲内にあってもよい。投薬量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化させてもよい。本明細書に記載の化合物(I)又はその結晶形態の任意の塩について、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に推定することができる。細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルに処方することができる。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0035】
また、任意の特定の対象に対する特定の投薬量及び治療レジメンは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の組み合わせ、並びに治療する医師の判断及び治療される特定の疾患の重篤度を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存することも理解されたい。組成物中の化合物(I)の塩、又は本開示の結晶形態の量もまた、組成物中の特定の化合物に依存する。
治療方法
「対象」とは、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医学的治療を必要とする動物であることもでき、例えば、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)である。
【0036】
本明細書に使用される場合、「がんを有する対象を治療すること」は、部分的又は実質的に、増殖を阻止すること、がんの程度を縮小すること(例えば、腫瘍のサイズを縮小すること)、がんの増殖速度を阻害すること、がんに関連する臨床症状又は指標(組織又は血清成分など)を改善又は向上させること、又は対象の寿命を延ばすこと、及びがんの再発の可能性を低減することの1つ以上を達成することを含む。
【0037】
用語「有効量」は、対象に投与された場合に、対照と比較して対象におけるがんを、例えば阻害、抑制又は低減する(例えば、臨床症状又はがん細胞の量によって決定される)臨床結果を含む有益な又は所望の結果をもたらす量を意味する。
【0038】
一般に、本明細書で教示される化合物の有効量は、例えば所与の薬物又は化合物、医薬製剤、投与経路、疾患又は障害のタイプ、治療される対象又は宿主の同一性等の様々な要因に応じて変化するが、それにもかかわらず、当業者によって日常的に決定することができる。本教示の化合物の有効量は、当該技術分野に公知の日常的な方法によって、当業者によって容易に決定することができる。
【0039】
一実施形態では、本明細書で教示される化合物の有効量は、約0.1~約1000mg/体重kg、あるいは約1~約500mg/体重kgの範囲である。別の実施形態では、本明細書で教示される化合物の有効量は、約0.5~約5000mg/m2、あるいは約5~約2500mg/m2の範囲であり、別の代替形態では約50~約1000mg/m2の範囲である。当業者は、特定の要因が、がんに罹患している対象を効果的に治療するために必要な投与量に影響を与えるか、又はがんの再発の可能性を低減させ得ることを理解する。これらの要因には、疾患又は障害の重症度、治療歴、対象の全般的な健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
有効量の本開示の化合物による対象の「治療」レジームは、単回投与からなり得、あるいは一連の適用を含んでもよい。例えば、1:1の化合物(I)酒石酸塩は、少なくとも週に1回投与されてもよい。しかしながら、別の実施形態では、化合物は、所与の治療のために1週間に約1回~1日1回、対象に投与されてもよい。治療期間の長さは、種々の要因、例えば疾患の重篤度、対象の年齢、本開示の化合物の濃度及び活性、又はそれらの組み合わせに依存する。治療又は予防に使用される化合物の有効投与量は、特定の治療又は予防レジームの過程にわたって増減し得ることも理解される。投薬量の変更は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによって生じ、明らかになり得る。場合によっては、慢性投与が必要になることがある。
【0041】
本明細書に開示される化合物(I)、その塩及び結晶形は、HPK1を阻害する。したがって、一般に、本明細書に記載の化合物は、このようなキナーゼに関連する疾患又は状態の治療に有用である。
【0042】
一実施形態では、本開示は、HPK1活性の阻害を必要とする対象のHPK1活性を阻害する方法であって、有効量の化合物(I)、又は酒石酸塩(例えば、1:1の化合物(I)酒石酸塩)、結晶形又は本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0043】
HPK1に対するそれらの活性のために、化合物(I)、又は酒石酸塩(例えば、1:1の化合物(I)酒石酸塩)、結晶形又は本明細書に記載の医薬組成物は、異常なHPK1活性に関連する状態を有する対象を治療するために使用することができる。
【0044】
一実施形態では、異常なHPK1活性に関連する状態はがんである。
本教示の方法によって治療することができるがん(再発の可能性の低減を含む)としては、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、白血病、リンパ腫、脳がん(多形性膠芽腫及び神経芽細胞腫を含む)、頭頸部がん、膵臓がん、黒色腫、肝細胞がん、腎がん、及び軟部肉腫が挙げられる。一実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、及び卵巣がんである。一実施形態では、がんは、白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、乳がん、脳がん、結腸がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、肝細胞がん、肺腺がん、転移性黒色腫、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん及び腎がんから選択される。一実施形態では、がんは、肺がん、結腸がん、脳がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、黒色腫、多形性膠芽腫又は卵巣がんである。別の実施形態では、がんは、肺がん、乳がん、結腸がん、脳がん、神経芽細胞腫、前立腺がん、黒色腫、多形性膠芽腫又は卵巣がんである。更に別の実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、及び肺がんである。別の実施形態では、がんは乳がんである。更に別の実施形態では、がんは、基底サブタイプ乳がん又は管腔Bサブタイプ乳がんである。更に別の実施形態では、がんは基底サブタイプ乳がんである。更に別の実施形態では、基底サブタイプ乳がんはER(エストロゲン受容体)、HER2及びPR(プロゲステロン受容体)陰性乳がんである。更に別の実施形態では、がんは軟部組織がんである。「軟部組織がん」は、身体の任意の軟部組織に由来する腫瘍を包含する当該技術分野で認識された用語である。このような軟組織は、これらに限定されないが、平滑筋、骨格筋、腱、線維組織、脂肪組織、血管及びリンパ管、血管周囲組織、神経、間葉系細胞及び滑膜組織を含む身体の様々な構造及び器官を連結、支持、又は取り囲む。したがって、軟部組織がんは、脂肪組織、筋肉組織、神経組織、関節組織、血管、リンパ管、及び線維組織のものであり得る。軟部組織がんは良性又は悪性である可能性がある。一般に、悪性軟部組織がんは肉腫、又は軟部肉腫と呼ばれる。脂肪腫、脂肪芽細胞腫、冬眠腺腫、脂肪肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、神経線維腫、シュワン細胞腫(神経鞘腫)、神経腫、悪性神経鞘腫、神経線維肉腫、神経原性肉腫、結節性腱滑膜炎、滑膜肉腫、血管腫、グロムス腫瘍、血管周囲細胞腫、血管内皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管腫、線維腫、弾性線維腫、表在性線維腫症、線維性組織球腫、線維肉腫、線維腫症、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、悪性線維性組織球腫(MFH)、粘液腫、顆粒細胞腫、悪性間葉腫、胞状軟部肉腫、類上皮肉腫、明細胞肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍を含む多くの種類の軟部組織腫瘍が存在する。特定の実施形態では、軟部組織がんは、線維肉腫、胃腸肉腫、平滑筋肉腫、脱分化型脂肪肉腫、多形性脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、円形細胞肉腫、及び滑膜肉腫からなる群から選択される肉腫である。
【0045】
本教示はまた、疾患を有する対象を治療する方法であって、有効な免疫調節療法(免疫療法とも呼ばれる)と組み合わせて、有効量の構造式(I)によって表される化合物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。免疫療法は、免疫調節剤を使用して免疫応答を誘導、増強、又は抑制することによる疾患の治療である。免疫応答を誘発又は増幅するように設計された免疫療法は活性化免疫療法として分類され、低減又は抑制する免疫療法は抑制免疫療法として分類される。本明細書に記載の疾患はがんである。
【0046】
免疫調節療法は、単独で又は組み合わせたアプローチで使用され、i)抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)抗体(例えば、イピリムマブ)、PD-1/PD-L1及びPD-L2相互作用を破壊する薬剤、例えばニボルマブ(オプジ-Bristol Myers Squibb社)、ペムブロリズマブ(キイトルーダ、KM-3475、Merck社)、ピディリズマブ(CT-011、Cure Tech社)、BMS 936559(BMS社)及びMPDL328OA(Roche社)及び他の免疫応答阻害受容体、例えば抗CD47を含むが、これらに限定されない、免疫チェックポイント遮断阻害剤、ii)細胞ベースの治療法(樹状細胞療法を含むが、これらに限定されない(例えば、シプルーセルT(Provenge社)及び養子T細胞療法を含むが、これらに限定されない、iii)ワクチン接種戦略、iv)養子T細胞療法、v)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(例えば、INCB024360(Incyte社)、1-メチル-D-トリプトファン、インドキシモド(NewLink Genetics社))又はアルギナーゼの阻害剤を含む免疫応答の代謝阻害を防止する薬剤;vi)サイトカインベース療法、例えば、インターフェロン(特にI型インターフェロン)及びインターロイキン(例えばインターロイキン-2)を含む。
【0047】
一実施形態では、免疫調節療法に使用される免疫調節剤は、PD-1阻害剤、例えば抗PD1抗体である。
プログラム細胞死タンパク質1は、PD-1及びCD279(分化クラスター279)としても知られ、ヒトにおいてPDCD1遺伝子によってコードされるタンパク質である。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞表面受容体であり、T細胞及びプロB細胞に発現する。PD-1は、PD-L1とPD-L2の2つのリガンドに結合し、どちらもB7ファミリーのメンバーである。
【0048】
PD-1とそのリガンドは、T細胞の活性化を防ぎ、自己免疫を低減させ、次に自己寛容を促進することにより、免疫系を下方制御する上で重要な役割を果たす。PD-1の阻害効果は、リンパ節の抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進し、同時に、制御性T細胞(サプレッサーT細胞)のアポトーシスを低減させるという2つのメカニズムによって遂行される。
【0049】
本発明に使用されるPD-1阻害剤としては、限定するものではないが、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、BMS 936559、MPDL3280A、MSB0010718C又はMEDI4736が挙げられる。このうち、BMS 936559、MPDL3280A、MSB0010718C、及びMEDI4736はリガンドPD-L1に結合し、これらはすべて抗体である。ニボルマブとペムブロリズマブはどちらも、他の薬剤に応答しなくなった切除不能又は転移性黒色腫の治療のために食品医薬品局によって承認されている。
【0050】
ワクチン接種戦略には、抗微生物免疫療法が含まれ、これはワクチン接種を含み、感染病原体に応答するために免疫系を活性化することを含む。
養子T細胞療法は、T細胞ベースの細胞傷害性応答を使用してがん細胞を攻撃する。患者のがんに対して自然又は遺伝子操作された反応性を有するT細胞は、インビトロで生成され、次いでがん患者に戻される。自家腫瘍浸潤リンパ球を用いた1件の研究は、転移性黒色腫患者に有効な治療法であった。これは、患者の腫瘍と共に見出される、がん細胞を攻撃するように訓練されたT細胞を採取することによって達成することができる。これらのT細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と呼ばれ、高濃度のIL-2、抗CD3及びアロ反応性フィーダー細胞を使用してインビトロで増えることが促される。次に、これらのT細胞は、IL-2の外因性投与と供に患者に戻され、抗がん活性を更に高める。
【0051】
本教示は、有効量の化合物(I)、又は酒石酸塩(例えば、1:1の化合物(I)酒石酸塩)、結晶形又は本明細書に記載の医薬組成物を、有効な抗がん療法と組み合わせて、対象に投与することを含むがんを有する対象を治療することも提供する。一実施形態では、がんは転移性がんである。「転移性がん」とは、原発部位から身体の他の部分に広がったがんである。
【0052】
本明細書に記載の抗がん療法は、開示されたHPK-1阻害剤と共に有効量の第2の抗がん剤の同時投与を含む。「抗がん剤」は化合物であり、がんを有する対象に有効量を投与した場合、部分的又は実質的に、増殖を阻止すること、がんの程度を縮小すること(例えば、腫瘍のサイズを縮小すること)、がんの増殖速度を阻害すること、がんに関連する臨床症状又は指標(組織又は血清成分など)を改善又は向上させること、又は対象の寿命を延ばすことの1つ以上を達成することができる。
【0053】
本明細書に記載の方法における使用に適した抗がん剤としては、がんの治療のために承認されたあらゆる抗がん剤が挙げられる。一実施形態では、抗がん剤は、限定するものではないが、標的抗体、血管新生阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ビンカアルカロイド、タキサン、ポドフィロトキシン、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン抗腫瘍剤及び他の抗腫瘍剤を含む。一実施形態では、抗がん剤は、PD-1阻害剤、例えば、抗PD1抗体である。
【0054】
一実施形態では、本明細書に記載の方法に使用することができる抗がん剤としては、限定するものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、5-フルオロウラシル、トラスツズマブ、ラパチニブ、ベバシズマブ、レトロゾール、ゴセレリン、タモキシフェン、セツキシマブ、パニツムマブ、ゲムシタビン、カペシタビン、イリノテカン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メルファラン、シタラビン、エトポシド、ダウノルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン及びアドリアマイシン及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
一実施形態では、抗がん剤と化合物(I)、又は酒石酸塩(例えば、1:1の化合物(I)酒石酸塩)、結晶形又は本明細書に記載の医薬組成物が同時に投与される。同時に投与する場合、抗がん剤及び化合物は、同じ製剤又は異なる製剤で投与することができる。あるいは、化合物及び追加の抗がん剤は、異なる時間に別々に投与される。
【0056】
以下の実施例は、例示を意図しており、本開示の範囲を何ら限定することを意図していない。
【実施例】
【0057】
略語:
1H 陽子
aq. 水性
br. 広い
DCM ジクロロメタン
DVS 動的水蒸気吸着
Equiv 当量
h 時間
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロパノール
LC-MS 液体クロマトグラフィー質量分析法
MeOH メタノール
min 分
NMR 核磁気共鳴
PLM 偏光顕微鏡
RH 相対湿度
rt 室温
TGA 熱重量分析
THF テトラヒドロフラン
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
XRPD X線粉体回折
分析条件
X線粉体回折(XRPD)
XRPD分析は、Bruker D8 Advance X線紛体回折計を用いて実施した。XRPDのパラメータは以下のとおりである。
【0058】
【0059】
熱重量分析(TGA)
2~5mgの材料をオープンプラチナパンに加重し、TA Q5000IR熱重量分析計に充填した。次に、試料を25℃から350℃/400℃まで、10℃/分の速度で加熱した。
示差走査熱量測定(DSC)
0.5~1mgの材料をアルミニウムDSCパンに加重し、アルミニウム蓋で密閉しないで封止した。次に、サンプルパンをTA instruments社のQ2000に充填した。25℃で安定した熱流応答が得られたら、試料と参照物を10℃/分の速度で350℃に加熱し、得られた熱流応答を監視した。
1H-核磁気共鳴分光法(1H-NMR)
核磁気共鳴測定値は、内部標準なしで溶媒としてDMSO-d6又はCD3ODを使用して、400MHz及び室温でBruker D8 Advance DRX 400装置に記録した。
HPLC/UPLC方法
溶解度の測定に用いた代表的な方法を表1にまとめる。安定性評価に用いた代表的な方法を表2にまとめる。
【0060】
【0061】
【0062】
実施例1:初期塩スクリーン
初期塩スクリーンは、DCMとMeOHの混合物(2:1)に、1又は2当量のいずれかでHCl、H2SO4、及びH3PO4を使用して実行した。
【0063】
およそ100mgの4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]-イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)をDCMとMeOHの2:1混合物に50℃で溶解した。1当量又は2当量のいずれかの酸を加え、得られた溶液を室温で3日間撹拌し、得られた塩の試料をXRPDで分析した。
【0064】
結晶性の弱い塩は、HCl(1当量)、H
2SO
4(2当量)及びH
3PO
4(1当量)を用いて得られた。非晶質塩は、HCl(2当量)及びH
2SO
4(1当量)を用いて得られた。一HCl塩(バッチ1)のディフラクトグラムを
図1に示す。
【0065】
実施例2:拡張塩スクリーン
H3PO4、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、安息香酸及びマレイン酸を使用して、THFとMeOHの混合物(2:1)に、0.5、1及び/又は2当量で、拡張塩スクリーンを実行した。合計16個の塩を調製し、その結果を表3にまとめた。
【0066】
およそ100mgの4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]-イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)をTHFとMeOHの2:1混合物に50℃で溶解した。0.5、1、又は2当量の酸を加え、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。固体を得た試料を遠心分離にかけ、沈殿を示さなかった試料を室温で乾燥させた。すべての試料は、1H NMR、PLM及びXRPDによって特徴付けた。
【0067】
単離された16個の塩はすべて、異なる程度の複屈折を示した。しかし、1:1のメシル酸塩、1:1のマレイン酸塩、及び1:1の酒石酸塩のみがXRPDによって中程度から良好な結晶性を示した。この方法を使用して調製された1:1のメシル酸塩(バッチ1)と1:1マレイン酸塩(バッチ1)のディフラクトグラムをそれぞれ
図2と
図3に示す。特に、以下の表3に示すように、0.5当量の酒石酸は所望のヘミ酒石酸塩(1:0.5)をもたらさなかったため、それ以上追求しなかった。
【0068】
【0069】
実施例3:選択された塩の調製
塩酸塩、メシル酸塩、酒石酸塩及びマレイン酸塩は、アセトン及びIPA/水(95:5)の2つの異なる溶媒系を用いて個別に調製した。
【0070】
およそ100mgの4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]-イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)をアセトン(2mL)又はIPA/水(95:5、2mL)に懸濁した。懸濁液を50℃で撹拌した。酸(1当量、0.5mol/L)を加え、混合物を一晩撹拌した。次に、塩を単離し、真空下で30℃で乾燥させた。得られた塩は、TGA、DSC及びXRPDによって特徴付けた。
【0071】
2つの溶媒系は、異なる多形形態の塩酸(IPA:バッチ2;アセトン:バッチ3)、メシル酸塩(IPA:バッチ2;アセトン:バッチ3)、及びマレイン酸塩(IPA:バッチ2;アセトン:バッチ3)をもたらした。単離されたHCl、メシル酸塩及びマレイン酸塩の多形形態のディフラクトグラムを、それぞれ
図1、
図2、及び
図3に示す。XRPDディフラクトグラムに実証されているように、メシル酸塩及びマレイン酸塩の結晶性は中程度である。
【0072】
1:1の化合物(I)酒石酸塩の1つの多形形態を、実施例3に記載される2つの溶媒系を用いて単離した。
【0073】
実施例4:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[D]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)二塩酸塩の調製
およそ15g(40.95mmol)の4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)をDCM(300mL)とMeOH(450mL)の混合物に懸濁した。Et
2O中の2MのHCl(45mL、90.15mmol)を室温でゆっくりと添加した。得られた混合物を室温で60分間撹拌した。次いで、溶媒を真空内で除去し、得られた固体をEt
2O(120mL)で粉砕し、濾過して、二HCl塩を褐色固体として得た。二HCl塩はXRPD及びNMRによって特徴付けた。XRPDディフラクトグラムを
図4に示し、得られた二HCl塩の結晶性が非常に低かったことを示す。
【0074】
実施例5:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[D]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)酒石酸塩の調製
4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(4.5kg)を酢酸水溶液(水44kg、酢酸1.78kg)に55~60℃で溶解した。溶液を15~120分間撹拌した。別の反応器で、酸(1.98kg)を水(14~18kg)に20~30℃で添加することによって、L-(+)-酒石酸の水溶液を調製し、溶液を15~60分間撹拌した。次いで、化合物(I)を含有する酢酸溶液をL-(+)-酒石酸水溶液に55~60℃でゆっくりと添加した。場合により、種結晶を添加した。得られた混合物を55~60℃で12~24時間結晶化させた。次いで、混合物を20~25℃に冷却し、8~16時間撹拌した。次いで、沈殿した生成物を回収し、エタノールで洗浄し、真空下で40~60℃で3~24時間乾燥させて、所望の産物を得た。表題化合物は、1H NMR、DSC、TGA及びXRPDによって特徴付けた。DSCとTGAの結果を
図5に示す。XRPDディフラクトグラムを
図6に示し、結果を表4に表にまとめた。
【0075】
【0076】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d8): 12.65 (br s, 1H), 10.65 (br s, 1H), 8.00 (br s, 1H), 7.68 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 7.49 (br s, 1H), 7.20-7.17 (m, 2H), 6.92 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.71 (br, s, 4H), 4.16 (s, 2H), 3.22 (br s, 4H), 2.88 (br s, 4H), 2.52 (s, 3H).
【0077】
実施例6:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)及びその塩の吸湿性の測定
試験される化合物を、DVS装置によって吸湿性試験に供した。試験パラメータを表5にある。吸湿性測定結果を表6に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
実施例7:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)及びその塩の溶解度
試験される化合物を、以下に述べるような3つの異なる培地に調製した。
【0081】
水中で調製した試料:およそ30~40mgの試験材料をガラスバイアルに加重した。1mLの水を加えた。試料を周囲温度で1時間撹拌し、試料を24時間HPLCで分析した。
【0082】
模擬胃液(SGF)緩衝液に調製した試料:およそ40mgの試験材料をガラスバイアルに加重した。4mLのSGF緩衝液を添加して、10mg/mLの目標濃度にした。試料を37℃で24時間撹拌し、試料を24時間HPLCで分析した。
【0083】
絶食状態模擬腸液(FaSSIF)緩衝液で調製した試料:およそ8mgの試験材料をガラスバイアルに加重した。4mLのFassiF緩衝液を添加して、2mg/mLの目標濃度にした。試料を37℃で24時間撹拌し、試料を24時間HPLCで分析した。
【0084】
試料を周囲温度で1時間又は37℃で24時間撹拌した。次いで、試料を遠心分離にかけ、得られた上清をHPLCで分析して溶解度を決定した。異なる培地における化合物(I)及びその塩の溶解度を表7にまとめた。
【0085】
【0086】
実施例8:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)酒石酸の安定性
4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)酒石酸の純度及び安定性を試験した。安定性試料を調製し、3つの異なる保存条件下で保存した:2~8℃/周囲RH、25℃/60%のRH、及び40℃/75%のRH。安定性試料を各プルウィンドウ内の保存条件から取り出し、分析前に試料を周囲条件に平衡化させた。外観は目視検査により評価し、純度及び不純物の総量をHPLCで分析し、結晶形態はXRPDで特徴付けた。結果を表8にまとめる。
【0087】
【0088】
実施例9:4-アミノ-5-(6-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)チエノ[2,3-b]ピリジン-6(7H)-オン(I)及びその塩の薬物動態分析
化合物(I)のカプセル、1:1の化合物(I)一HCl塩(バッチ3)、化合物(I)の二HCl塩、及び1:1の化合物(I)酒石酸塩の粉末として、125mg/kg又は150mg/kgのいずれかでオスのビーグル犬に単回用量を投与した。血液試料を最大24時間採取し、血漿をLC/MSによって化合物(I)の血漿レベルについて分析した。結果を表9に示す。
【0089】
【国際調査報告】