IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード エンドバスキュラー リミテッドの特許一覧

特表2023-526065血管内での展開のための拡張可能な管
<>
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図1
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図2
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図3
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図4
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図5
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図6
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図7
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図8
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図9
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図10
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図11
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図12
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図13
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図14
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図15
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図16
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図17
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図18
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図19
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図20
  • 特表-血管内での展開のための拡張可能な管 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】血管内での展開のための拡張可能な管
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20230613BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568940
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 GB2021050609
(87)【国際公開番号】W WO2021234340
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2007488.6
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519341935
【氏名又は名称】オックスフォード エンドバスキュラー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC12
4C097DD10
4C097EE06
(57)【要約】
血管内での展開のための拡張可能な管であって、該拡張可能な管は、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ、可逆的に切り換え可能であり、該拡張可能な管は、編組フィラメントを有する第1のフレームと、この第1のフレームに接続されるとともに半径方向に第1のフレームと重複する第2のフレームであって、該第2のフレームは、非重複要素網を有し、これら非重複要素は、半径方向に互いに対して非重複である、第2のフレームと、を有し、上記非重複要素網は、長手方向に繰り返す複数のサブ・ユニットを有する相互接続構造を有する、拡張可能な管が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内での展開のための拡張可能な管であって、前記拡張可能な管は、半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態へ、可逆的に切り換え可能であり、また前記拡張可能な管は、
編組フィラメントを有する第1のフレームと、
前記第1のフレームに接続され、且つ半径方向において前記第1のフレームと重複する第2のフレームであって、前記第2のフレームは、非重複要素網を有し、非重複要素は、半径方向において互いに対して非重複である、第2のフレームと
を有し、
前記非重複要素網は、長手方向に繰り返す複数のサブ・ユニットを有する相互接続構造を有する、拡張可能な管。
【請求項2】
前記非重複要素網は、複数の、長手方向及び/又は周方向に変形可能な要素を有する、請求項1に記載の拡張可能な管。
【請求項3】
前記非重複要素網は、前記第2のフレームの長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素と、前記第2のフレームの半径方向の拡張及び収縮をもたらす複数の周方向に変形可能な要素とを有する、請求項2の記載の拡張可能な管。
【請求項4】
前記長手方向に変形可能な要素は、前記周方向に変形可能な要素のいかなる実質的な形状変化なしに、長手方向に拡張又は収縮されるように構成されている、請求項3に記載の拡張可能な管。
【請求項5】
前記周方向に変形可能な要素は、前記長手方向に変形可能な要素のいかなる実質的な形状変化なしに、周方向に拡張又は収縮されるように構成されている、請求項3又は4に記載の拡張可能な管。
【請求項6】
前記第2のフレームは、前記拡張可能な管を、前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態から、前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態にするように構成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項7】
前記第2のフレームは、前記第1のフレームに半径方向に力をかけることによって、前記拡張可能な管を、前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態から、前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態にするように構成されている、請求項6に記載の拡張可能な管。
【請求項8】
前記非重複要素網は一体形成されている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項9】
前記第2のフレームは、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項10】
前記第2のフレームは、少なくとも70%の有孔率を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項11】
前記第2のフレームの長さは、前記第1のフレームの長さの少なくとも50%である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項12】
前記第2のフレームは、前記拡張可能な管の長さの少なくとも50%にわたって前記第1のフレームと重複している、請求項1から11までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項13】
前記第2のフレームは、前記第2のフレームの少なくとも一端において前記第1のフレームに接続されている、請求項1から12までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項14】
前記第2のフレームは、前記第2のフレームの長さに沿った1つ又は複数の個所において前記第1のフレームにさらに接続されている、請求項13に記載の拡張可能な管。
【請求項15】
前記第2のフレームは、溶接、圧着、接着剤、又は封入のうちの少なくとも1つによって前記第1のフレームに接続されている、請求項1から14までのいずれか一項に記載の拡張可能なフレーム。
【請求項16】
前記第2のフレームは、複数のフィラメント受け入れアパーチャを有し、
1つ又は複数の接続用フィラメントが前記第1のフレームに織り込まれ、
各接続用フィラメントは、前記フィラメント受け入れアパーチャののうちの1つ又は複数を貫通する、請求項1から15までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項17】
前記接続用フィラメントは、前記第1のフレームのフィラメントを有する、請求項16に記載の拡張可能な管。
【請求項18】
前記接続用フィラメントのうちの1つ又は複数に、1つ又は複数の放射線不透過性マーカが取り付けられる、請求項16又は17に記載の拡張可能な管。
【請求項19】
前記複数のフィラメント受け入れアパーチャは、前記第2のフレームの長手方向端領域内にフィラメント受け入れアパーチャを有している、請求項16から18までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項20】
前記複数のフィラメント受け入れアパーチャは、前記第2のフレームの長さに沿って離間したフィラメント受け入れアパーチャを有している、請求項16から19までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項21】
前記第2のフレームは、前記第1のフレーム内に位置決めされる、請求項1から20までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項22】
前記第2のフレームが前記第1のフレームに接続されておらず、且つ前記第2のフレームが半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮している非拘束状態での前記第2のフレームの半径は、前記第1のフレームが前記第2のフレームに接続されておらず、且つ前記第1のフレームが半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮している非拘束状態での前記第1のフレームの半径よりも大きい、請求項1から21までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項23】
前記第1のフレームの第1の伸び率は、前記第2のフレームの第2の伸び率の25%以内であり、
前記第1の伸び率は、前記第1のフレームが前記第2のフレームに接続されおらず、且つ前記第1のフレームが半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮している非拘束状態での前記第1のフレームの長さと、前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態での前記第1のフレームの長さとの比率であり、
前記第2の伸び率は、前記第2のフレームが前記第1のフレームに接続されておらず、且つ前記第2のフレームが半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮している非拘束状態での前記第2のフレームの長さと、前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態での前記第2のフレームの長さとの比率である、請求項1から22までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項24】
前記非重複要素網は、前記第2のフレームの長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素を有し、
前記非重複要素網の各サブ・ユニットは、前記第2のフレームが前記第1のフレームに接続されておらず、且つ前記第2のフレームが半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態である前記非拘束状態において、長手方向に第1の長さを有し、
前記第1の長さと各長手方向に変形可能な要素に沿った経路長との比率は、前記第1の伸び率の25%以内である、請求項23に記載の拡張可能な管。
【請求項25】
前記第1のフレームは、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有する、請求項1から24までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項26】
前記拡張可能な管が、前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態で、使用の際に動脈瘤嚢に対して開口にわたって位置決めされるとき、前記第1のフレームは、血流を動脈瘤嚢からそらし、それにより前記動脈瘤嚢内に血栓形成を促進するような有孔率を有している、請求項1から25までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項27】
前記第1のフレームは、前記拡張可能な管の前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態において、多くとも90%の有孔率を有している、請求項1から26までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項28】
前記第1のフレームは、少なくとも48本のフィラメントを有する、請求項1から27までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項29】
前記第1のフレームの前記フィラメントは、多くとも30μmの直径を有する、請求項1から28までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項30】
前記第1のフレームは、少なくとも30細孔/mmの細孔密度を有する、請求項1から29までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項31】
前記第1のフレームは、少なくとも50°の編組角度を有する、請求項1から30までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項32】
前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態において、前記拡張可能な管は、前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態における前記拡張可能な管の半径方向の最大寸法よりも少なくとも30%小さい半径方向の最大寸法を有する、請求項1から31までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項33】
前記半径方向に拡張し且つ長手方向に収縮した状態から、前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態へ切り換わることによって生じる、前記拡張可能な管の長手方向の伸びは、少なくとも10%である、請求項1から請求項32までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【請求項34】
前記半径方向に収縮し且つ長手方向に拡張した状態において、前記拡張可能な管の半径方向の最大寸法は、最大で1.0mmの内径を有するカテーテル内に前記拡張可能な管が挿入されることができるようなものである、請求項1から33までのいずれか一項に記載の拡張可能な管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内での展開のための、特に血流を動脈瘤嚢からそらすのに用いるための拡張可能な管(tube)に関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内動脈瘤は、脳内の動脈壁における脆弱部位であり、この部位において動脈壁の拡張又は膨張が生じ得る。組織学的に、動脈の中膜、中間の筋層、及び内弾性板における疾患は、構造欠陥を引き起こす。これらの欠陥は、血行力学的要因と組み合わさると、動脈瘤嚢を引き起こす。頭蓋内動脈瘤は、剖検調査によれば成人人口のうち1~5パーセントの範囲の罹患率を有するかなり一般的な疾患である。米国単独において、1000万~1200万人が頭蓋内動脈瘤を有している可能性がある。
【0003】
頭蓋内動脈瘤を治療する現行方法は、外科的クリッピング及び血管内コイリングを含む。外科的クリッピング法では、患者の頭蓋骨を開き、外科的クリップを動脈瘤のネックにわたって配置して血流が動脈瘤嚢に流れ込むのを停止させる。この方法のリスクは、特に高齢患者又は医学的に複雑な患者にとって比較的高い。血管内コイリングは、動脈瘤嚢がコイルで完全に詰められるまで、カテーテルを通じて送達される1つ又は複数のコイルを動脈瘤内へ配置することを含む、低侵襲性方法である。これは、動脈瘤の内側に血栓を誘発するのに役立つ。血管内コイリングは、外科的クリッピングよりも安全であると考えられているが、それ自体の限界がある。第1に、動脈瘤は、コイルで充填された後、その最初のサイズのままである。その結果、動脈瘤がかける周囲組織への圧力は取り除かれない。第2に、この手技は、コイルが親血管に突入する可能性がある、ワイドネック型動脈瘤の場合には、あまり効果的ではない。この課題は、ステントをコイル塞栓術と組み合わせて用いることによって軽減され得るが、その手技は困難であるとともに時間がかかる。
【0004】
ステントと呼ばれる場合もある拡張可能な管を単独で使用して動脈瘤を治療することは、上述した課題を回避する有望なやり方である。この方法では、比較的低い有孔率(porosity)の領域を有する拡張可能な管は、血流を嚢からそらすとともに動脈瘤内での血栓の形成を誘発するように動脈瘤ネックにわたって配置される。動脈瘤がそれ自体自然に凝固するため、その破裂の危険性は低い。さらに、この方法に含まれるコイルはいっさいないため、動脈瘤は、血栓が吸収されるにつれ次第に収縮する。したがって、周囲組織にかけられる圧力を取り除くことができる。しかしながら、この用途のために最適な特性を有する拡張可能な管を製造することは困難である。拡張可能な管は、血流を十分な程度まで動脈瘤からそらすのに十分に低い有孔率をもたらすと同時に、脳内の非常に曲がりくねった血管を通るとともにその形状に適合するのに十分に可撓性である必要がある。
【0005】
拡張可能な管の知られているタイプは、例えばワイヤの、編組フィラメントから形成される。フィラメントは一緒に編組されてメッシュ管を形成する。このタイプの拡張可能な管は、血管内への配置のためにカテーテルの内部で半径方向に収縮されるとともに長手方向に拡張されることができる。拡張可能な管は、動脈瘤のネックに対して適正な位置にある場合、カテーテルの内部から展開されると、半径方向に拡張するとともに長手方向に収縮し、それにより、血管内に留置され、動脈瘤に出入りする血流を塞ぐ。しかしながら、編組フィラメントの拡張可能な管に伴う課題は、編組構造におけるフィラメント間の多数の接触点が摩擦を生じることである。さらに、各フィラメントが、他の交差するフィラメントに対して自由に動く結果、不十分な半径方向外力が生じる。このことは、カテーテルからの展開時に、編組フィラメントの拡張可能な管を緩慢にゆっくりと一貫性なく半径方向に拡張させ、それにより、動脈瘤のネックに対する拡張可能な管の適正な配置をより困難且つ信頼性のより低いものにする。
【0006】
別の既存のタイプの拡張可能な管は、相互接続する非重複要素網から形成される。これは例えば、形状記憶合金等の材料の細い管からレーザ切断によって形成されることができる。これらのレーザ切断された管は、摩擦を生じさせる接触点が編組フィラメント間になく、それら管の展開がより一貫するものであり得るという利点を有する。しかしながら、静脈瘤を十分に塞ぐのに十分に低い有孔率を有するこのタイプの管を設計することは困難である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、特に拡張可能な管の展開に関して、性能が向上した、血管内での展開のための拡張可能な管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、血管内での展開のための拡張可能な管であって、該拡張可能な管は、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ、可逆的に切り換え可能であり、該拡張可能な管は、編組フィラメントを有する第1のフレームと、この第1のフレームに接続されるとともに半径方向にこの第1のフレームと重複する第2のフレームであって、該第2のフレームは、非重複要素網(network of non-overlapping elements)を有し、これらの非重複要素は、半径方向に互いに対して非重複である、第2のフレームと、を有し、上記非重複要素網は、長手方向に繰り返す複数のサブ・ユニットを有する相互接続構造を有する、拡張可能な管が提供される。
【0009】
編組フィラメントのフレームと非重複要素網を含むフレームとを含むハイブリッド構造を有する拡張可能な管を用いることによって、一貫した展開及び低い有孔率という、それらフレームのそれぞれの利点を組み合わせることが可能である。非重複要素を含むフレームは、編組フレームを拡張するさらなる力をもたらす。2つのタイプのフレームを組み合わせることは、2つの管の異なる拡張特性が2つのフレームの適正な動作を妨げないようにそれら管の慎重な設計を必要とする。さらに、非重複要素を有するフレームの有利な拡張特性により、編組フィラメントを有するフレームが、より小さい直径を有するフィラメントを使用して作製されることが可能となる。これにより、編組フィラメントのフレームが、必要な付属デバイス(例えば、血管内への拡張可能な管の送達に用いられるマイクロカテーテル)と適合性があるままで、さらなるフィラメントから成ることが可能となる。フィラメント・カウントが高いほど、拡張可能な管の壁におけるフィラメント間の個々の細孔のサイズが縮小し、このことは、動脈瘤嚢内でのより多くの流量低減と動脈瘤のネックにわたるより迅速な再内皮化とに関連付けられる。
【0010】
一実施例では、上記非重複要素網は、複数の長手方向及び/又は周方向に変形可能な要素を有する。一実施例では、上記非重複要素網は、上記第2のフレームの長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素と、上記第2のフレームの半径方向の拡張及び収縮をもたらす複数の周方向に変形可能な要素と、を有する。これにより、フレームがその半径方向の寸法及び長手方向の寸法を双方とも変えることが可能となり、管の拡張/収縮比が増加することが可能となり得る。これにより、管が展開のためにより容易にマイクロカテーテルに挿入されることが可能となる。
【0011】
一実施例では、上記長手方向に変形可能な要素は、実質的に上記周方向に変形可能な要素のいかなる実質的な形状変化もなく長手方向に拡張又は収縮されるように構成される。一実施例では、上記周方向に変形可能な要素は、実質的に上記長手方向に変形可能な要素のいかなる実質的な形状変化もなく周方向に拡張又は収縮されるように構成される。長手方向に変形可能な要素及び周方向に変形可能な要素を、実質的に独立的に拡張及び収縮することができるように設計することによって、第2のフレームをその拡張特性が第1のフレームの拡張特性と合うように設計することがより容易である。
【0012】
一実施例では、上記第2のフレームは、上記拡張可能な管を、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、上記半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すように構成される。第2のフレームを用いて第1のフレームの拡張を促すことは、管をより一貫して信頼性高く展開させ、それにより、展開の失敗の可能性を減らすのに役立つ。
【0013】
一実施例では、上記第2のフレームは、半径方向に上記第1のフレームに力をかけることによって、上記拡張可能な管を、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、上記半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すように構成される。半径方向に力をかけることは、第1のフレームが、展開カテーテルから解放されると該第1のフレームの全直径に迅速に拡張し、そのため、より容易に適正に配置されることができることを意味する。
【0014】
一実施例では、上記非重複要素網は一体形成される。これにより、網の要素を接合する必要性を除くことで製造プロセスの複雑性が低減する。これはまた、要素間の接合に起因する、第2のフレームの表面における欠陥又は凹凸も低減する。
【0015】
一実施例では、上記第2のフレームは、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有する。形状記憶合金は、拘束から解放されると所望の形状に戻るように設計され、それにより、該形状記憶合金を半径方向に拡張させるために管に外力をかける必要性を除くことができるため、好都合な材料選択である。
【0016】
一実施例では、上記第2のフレームは、少なくとも70%の有孔率を有する。第2のフレームの有孔率が比較的高いことによって、第1のフレームは、拡張可能な管の有孔率の主要な決定因子であり、拡張可能な管の特性全体の設計を単純にする。
【0017】
一実施例では、上記第2のフレームの長さは、上記第1のフレームの長さの少なくとも50%である。一実施例では、上記第2のフレームは、上記拡張可能な管の長さの少なくとも50%にわたって上記第1のフレームと重複する。これらの要件は、第2のフレームがその長さの大部分にわたって第1のフレームと相互作用することができ、それにより、拡張可能な管の均一な挙動を生み出すことを確実にする。
【0018】
一実施例では、上記第2のフレームは、該第2のフレームの少なくとも一端において上記第1のフレームに接続される。2つのフレームをともに接続することは、それらフレームが互いに対して動かず、拡張可能な管が一貫して予測可能に挙動することを確実にする。
【0019】
一実施例では、上記第2のフレームは、該第2のフレームの長さに沿った1つ又は複数の地点において上記第1のフレームにさらに接続される。このことは、第1のフレーム及び第2のフレームの相互作用が拡張可能な管の長さに沿って均一であり、拡張可能な管の両端において拘束されるだけではないことを意味する。
【0020】
一実施例では、上記第2のフレームは、溶接、圧着、接着剤、又は封入(エンキャプシュレーション)のうちの少なくとも1つによって上記第1のフレームに接続される。これらは、上記第1のフレームが編組フィラメントから形成される、特に好都合な接合方法である。
【0021】
一実施例では、上記第2のフレームは、複数のフィラメント受け入れアパーチャを有し、1つ又は複数の接続用フィラメントが上記第1のフレームに織り込まれ、各接続用フィラメントは、上記フィラメント受け入れアパーチャの1つ又は複数を通る。接続用フィラメントを用いることにより、圧着又は溶接等の他の方法に比して第1のフレームと第2のフレームとの接合のプロファイルが低減することで、拡張可能な管の表面がより均一となる。
【0022】
一実施例では、上記接続用フィラメントは、上記第1のフレームのフィラメントを有する。このことは、さらなるフィラメントが加えられず、拡張可能な管の寸法を接続用フィラメントがない場合と同じに保つことを意味する。
【0023】
一実施例では、上記接続用フィラメントの1つ又は複数に1つ又は複数の放射線不透過性マーカが取り付けられる。接続用フィラメントは、展開時に拡張可能な管の視認性を向上させる放射線不透過性マーカにとって好都合な取り付け点である。
【0024】
一実施例では、上記複数のフィラメント受け入れアパーチャは、上記第2のフレームの長手方向端領域内にフィラメント受け入れアパーチャを有する。これにより、2つのフレームの長さ全体がともに固定される。
【0025】
一実施例では、上記複数のフィラメント受け入れアパーチャは、上記第2のフレームの長さに沿って離間したフィラメント受け入れアパーチャを有する。第2のフレームに沿って離間したさらなるアパーチャを含むことは、第1のフレーム及び第2のフレームの互いの取り付けを高め、これら2つのフレームが分離する可能性を減らす。
【0026】
一実施例では、第2のフレームは、上記第1のフレーム内に位置決めされる。上記拡張可能な管の外側に編組フィラメントを有することは、均一なシースが拡張可能な管の長さに沿って設けられることを意味する。このことは、第2のフレームが第1のフレームの外側に設けられる場合よりも大きい半径方向拡張力が第1のフレームにかかることになり、それにより、拡張可能な管の適正な展開をさらに促す。
【0027】
一実施例では、上記第2のフレームが上記第1のフレームに接続されていない、上記第2のフレームが半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での上記第2のフレームの半径は、上記第1のフレームが上記第2のフレームに接続されていない、上記第1のフレームが半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での上記第1のフレームの半径よりも大きい。第2のフレームの非拘束半径が第1のフレームの非拘束半径よりも大きくなるように第2のフレームを過大に寸法決めすることは、第2のフレームが拡張可能な管の展開を促すことができるとともに、特に、曲がりくねった解剖学的構造内で展開される場合に、2つのフレーム間での半径方向の分離のリスクを最小限に抑えることができることを確実にするのに役立つ。このことはまた、2つのフレームをともにしっかりと接合するのに必要とされる固定点がより少ないことを意味する。
【0028】
一実施例では、上記第1のフレームの第1の伸び率は、上記第2のフレームの第2の伸び率の25%以内であり、上記第1の伸び率は、上記第1のフレームが上記第2のフレームに接続されていない、上記第1のフレームが半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での上記第1のフレームの長さと、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態での上記第1のフレームの長さとの比率であり、上記第2の伸び率は、上記第2のフレームが上記第1のフレームに接続されていない、上記第2のフレームが半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での上記第2のフレームの長さと、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態での上記第2のフレームの長さとの比率である。編組フィラメントを有する拡張可能な管の以前の設計は、編組管の端の適正な展開を促すために、拡張可能な管の一端又は両端に拡張リングを含んでいた。しかしながら、適切な展開を全長にわたって促すために編組ステントに対する拡張リングの長さを増加させることは、2つのタイプのフレームの拡張特性が異なるため、難題である。伸び率を合わせることは、拡張可能な管を展開させた場合に第1のフレーム又は第2のフレームのシワ又は座屈が生じないことを確実にし、それにより、展開から複雑化の可能性を減らす。これにより、第2のフレームが第1のフレームに対してより長くなることがさらに可能となり、拡張可能な管の展開の一貫性がさらに向上する。
【0029】
一実施例では、上記非重複要素網は、上記第2のフレームの長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素を有し、上記非重複要素網の各サブ・ユニットは、上記第2のフレームが上記第1のフレームに接続されていない、上記第2のフレームが半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態である非拘束状態で、長手方向に第1の長さを有し、上記第1の長さと各長手方向に変形可能な要素に沿った経路長との比率は、上記第1の伸び率の25%以内である。長手方向に変形可能な要素に沿った経路長を適正に選択することにより、第2のフレームの長手方向の拡張が第1のフレームの第1の伸び率に合うように該拡張が決定される。
【0030】
一実施例では、上記第1のフレームは、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有する。形状記憶合金は、拘束から解放されると所望の形状に戻るように設計され、それにより、該形状記憶合金を半径方向に拡張させるために管に外力をかける必要性を除くことができるため、好都合な材料選択である。
【0031】
一実施例では、拡張可能な管が、半径方向に拡張しているとともに長手方向収縮した状態で使用の際に動脈瘤嚢に対して開口にわたって位置決めされると、第1のフレームは、血流を動脈瘤嚢からそらすとともにそれにより動脈瘤嚢内に血栓形成を促すような有孔率を有する。このことは、拡張可能な管が動脈瘤内に血栓形成を生じさせる際に作用することを確実にする。
【0032】
一実施例では、上記第1のフレームは、上記拡張可能な管の上記半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態で、多くとも90%の有孔率を有する。第1のフレームの有孔率を制限することは、拡張可能な管の有孔率を減少させ、それにより、動脈瘤内に血栓形成を生じさせることができる。
【0033】
一実施例では、上記第1のフレームは、少なくとも48本のフィラメントを有する。フィラメント・カウントが高いほど、細孔密度を増加させるのに役立ち、これにより、拡張可能な管が動脈瘤を塞ぐ能力が高まる。
【0034】
一実施例では、上記第1のフレームの上記フィラメントは、多くとも30μmの直径を有する。より小さい直径のフィラメントにより、適したサイズのマイクロカテーテルと適合性を保ちつつ、フィラメント・カウントが増加し続けること可能である。
【0035】
一実施例では、上記第1のフレームは、少なくとも30細孔/mmの細孔密度を有する。細孔密度が高いほど拡張可能な管が動脈瘤を塞ぐ能力が向上し、管の内皮化が促される。
【0036】
一実施例では、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態では、上記拡張可能な管は、上記半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態での上記拡張可能な管の半径方向における最大寸法よりも少なくとも30%小さい最大寸法を半径方向に有する。このことは、拡張可能な管が展開のためにカテーテルに挿入されることができるように該拡張可能な管の十分な圧縮を可能にする。
【0037】
一実施例では、上記半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態から、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態へ切り換わることによって生じる、長手方向における上記拡張可能な管の伸びは、少なくとも10%である。長手方向の拡張及び収縮をもたらすことにより、拡張可能な管が半径方向に拡張及び収縮することができる程度が増加する。
【0038】
一実施例では、上記半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態では、上記拡張可能な管の半径方向における最大寸法は、上記拡張可能な管が多くとも1.0mmの内径を有するカテーテルに挿入されることができるようなものである。このサイズのカテーテルは、広く入手可能であり、脳動脈瘤の治療に日常的に使用され、そのため、このカテーテル・サイズとの適合性が望ましい。
【0039】
ここで、本発明の実施例を添付の図面を参照しながら単に実例として説明し、それら図面において、対応する参照符号は対応する部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態の拡張可能な管の概略図である。
図2】半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の拡張可能な管の概略図である。
図3】半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態の、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管の概略図である。
図4】半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管の概略図である。
図5】第1のフレームが第1のフレームの端及び第2のフレームの端において第2のフレームに接続されている、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管を示す図である。
図6】半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態の、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管を示す図である。
図7】拡張可能な管の拡張又は収縮時の中間状態の、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管を示す図である。
図8】半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の、第1のフレーム及び第2のフレームを有する拡張可能な管を示す図である。
図9】第2のフレームの非重複要素網の設計の詳細を示す図である。
図10】第2のフレームの要素網の代替的な設計の詳細を示す図である。
図11】第2のフレームの要素網のさらなる代替的な設計の詳細を示す図である。
図12図11の第2のフレームの要素網の設計の概略図である。
図13】第1のフレームと第2のフレームとを接続するのに用いることができる、第2のフレームの端におけるアパーチャを示す図である。
図14】第1のフレームと第2のフレームとを接続するための、アパーチャ及び接合用フィラメントの使用の詳細を示す図である。
図15】第1のフレームのフィラメントが第1のフレームと第2のフレームとを接続する接合用フィラメントとして用いられている、図14の設計の代替的な設計の詳細を示す図である。
図16】アパーチャが第2のフレームの全長に沿って存在する実施例を示す。
図17】接合用フィラメントへの放射線不透過性マーカの付加を示す図である。
図18】半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態と、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態と間での、第1のフレームにおける編組フィラメント間の空間の形状変化を示す図である。
図19】半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態と、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態とにおける、拡張可能な管の寸法を示す図である。
図20図9の網の設計での、長手方向に変形可能な要素に沿った経路長と、非重複要素網のサブ・ユニットの長さとを示す図である。
図21】カテーテルからの拡張可能な管の展開の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示は、血管内での展開に適した拡張可能な管を提供する。ステントとしても知られ得る拡張可能な管は、動脈瘤の治療のための方法において用いるのに適している。特に、本明細書における設計は、拡張可能な管が展開されねばならない血管が細く曲がりくねった脳動脈瘤の治療のための方法における好適な使用である。
【0042】
図1は、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態の拡張可能な管2の外側幾何学形状を示す。図2は、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の拡張可能な管2の外側幾何学形状を示す。拡張可能な管2は、図2に示された、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、図1に示された、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ、可逆的に切り換え可能である。さらに論じられるように、拡張可能な管2は、編組フィラメントを有する第1のフレーム10と、非重複要素網を有する第2のフレーム12とを有する。
【0043】
拡張可能な管2は、伸び軸4に対して細長くなっている。拡張可能な管2は、例えば円筒とすることができる。拡張可能な管2が円筒である場合、最大横寸法は、あらゆる位置及び角度で同じである(すなわち、直径に等しい)。拡張可能な管2が円筒でない場合、最大横寸法は、種々の位置及び/又は角度で異なり得る。最大横寸法は、フレームが挿入されることができる円筒管(例えば、送達カテーテル)の最小内径を画定する。
【0044】
半径方向に収縮した状態では、拡張可能な管2は、半径方向に拡張した状態におけるよりも実質的に細い。好ましくは、半径方向に収縮しているととともに長手方向に拡張した状態では、拡張可能な管2は、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態における拡張可能な管2の半径方向における最大寸法よりも、少なくとも30%小さい、より好ましくは少なくとも50%小さい最大寸法を半径方向に有する。拡張可能な管2を半径方向に収縮することは、拡張可能な管2が対象部位での展開のためにより細い送達カテーテルに挿入されることを可能にする。送達カテーテルが可能な限り細いことが一般的に望ましい。これは特に、展開部位へのアクセスに血管系の曲がりくねった領域のナビゲーションを必要とする場合である。これは多くの場合、例えば脳動脈瘤を治療する場合であり得る。
【0045】
以下の論述において、有孔率ρという用語は、拡張可能な管2、拡張可能な管2のうち説明中の部分、又は拡張可能な管2のフレーム(以下でさらに説明される)が占める外表面積全体に対する空き領域の表面積の比率を指すものと理解される。外表面積全体は、空き領域の表面積と、拡張可能な管2又はフレームの材料が占める領域の表面積との和である。拡張可能な管2又はフレームが円筒である場合、外表面積全体は単に、2π.R.Lであり、ここで、Rは円筒の半径であり、Lは円筒の長さである。
【0046】
拡張可能な管2の第2のフレーム12を考慮すると、第2のフレームは、半径方向に互いと重複できないようになっている要素を有する。第2のフレーム12は、完全に半径方向に拡張した状態での有孔率ρを有する。完全に半径方向に拡張した状態での第2のフレーム12の半径及び長さがそれぞれR及びLである場合、有孔率がゼロとなる状態によって定義される、半径方向に収縮した状態で、第2のフレーム12が達成することができる、最小半径Rminは、
【数1】

によって決定され、式中、Lは、半径方向に収縮した状態での第2のフレーム12の長さである。
【0047】
この関係は、第2のフレーム12の長さが有意に変更させられない場合、半径のみがρの係数だけ減少することができることを示す。ρがかなり低い(例えば、使用の際に動脈瘤嚢に対して開口にわたって位置決めすることを意図された領域等の少なくとも低有孔率領域において90%未満、好ましくは80%未満である)必要があるため、このことは、第2のフレーム12が送達カテーテルへの挿入のために細くされ得る程度までの有意な制限を表す。例えば、第2のフレーム12の有孔率ρが20%であり、第2のフレーム12の長さが半径方向収縮時に変更させられない場合、すなわち、L=Lである場合、第2のフレーム12は最大20%だけ半径減少を達成することができる。長さ増加を可能にすることもまた、第1のフレーム10のような、編組フィラメントを有するフレームにとって重要である。第1のフレーム10は、その長さがその編組構造に起因して変更することができない場合、半径減少が不可能であり、可能な長さ増加が大きいほど、可能な半径減少が大きくなる。
【0048】
半径方向に収縮した状態をとる場合に長手方向に拡張することができるフレームを拡張可能な管2に設けることは、この理解に基づいており、はるかに大きな半径減少が達成されることが可能となる。例えば、長さが二倍にされる、すなわちL=2Lにされる場合、第2のフレーム12は、20%の有孔率について60%の半径減少を達成することができる。この理由から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態から、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態へ切り換えることによって生じる、長手方向における拡張可能な管2(又は拡張可能な管2の一部を形成するフレーム)の伸びは、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%である。
【0049】
図3は、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態の拡張可能な管2のさらなる詳細を示す。拡張可能な管2は、編組フィラメントを有する第1のフレーム10と、第2のフレーム12とを有する。図4は、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の、図3の拡張可能な管2を示す。図4では、第1のフレーム10及び第2のフレーム12は双方とも、図3のそれらの状態に比して半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張している。図3及び図4の拡張可能な管2の一実施例の実例が、図5に示されている。第1のフレーム10の編組フィラメント及び第2のフレーム12の構造をはっきりと見てとることができる。
【0050】
図6図8は、図4に示された、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態から、図3に示された、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態へ、拡張可能な管2が切り換わるプロセスを明示している。第1のフレーム10のフィラメント間の空間は、それらフィラメントの長軸が周方向に配向されている状態の菱形から、それらフィラメントの長軸が長手方向に配向されている状態の菱形へ変わる。第2のフレーム12の要素は、周方向に収縮し、長手方向に拡張する。図6に示された状態では、拡張可能な管2は、該管が展開される血管の壁に係合することができるようにその最大直径を有している。図7に示された中間状態では、拡張可能な管2の有孔率は、第1のフレーム10におけるフィラメント間の空間がそれらフィラメントの最大面積を有するため、最大である。図8に示された状態では、拡張可能な管2は、血管内への展開のためにカテーテルに挿入されることができるようにその最小直径を有している。
【0051】
第1のフィラメント10は、編組フィラメントを有する。第1のフィラメント10は、一緒に編組された多数のフィラメントを有することができる。図5に見られるように、第1のフレーム10は、複数の螺旋状に配置されたフィラメントを有する。第1のフレーム10は、等しい直径の右巻き螺旋及び左巻き螺旋の双方で配置されたフィラメントを有する。このように、対向する巻きの螺旋のフィラメントが、第1のフレーム10の編組構造を形成するために半径方向に互いに重複する。編組構造を形成するために、第1の巻きの螺旋の個々のフィラメントが、(第1の巻きとは異なる)第2の巻きの螺旋のフィラメントの上下を交互に通ることができる(上下とは、半径方向において、拡張可能な管2の軸に対してそれぞれ離接するものと解釈される)。他の配置も可能である。例えば、第1の巻きの螺旋のフィラメントは、対向する巻きの螺旋の複数対のフィラメント、又は3つ、4つ若しくはそれよりも多くのフィラメント等、より多くの組のフィラメントの上下を交互に通ることができる。対向する巻きの螺旋の複数のフィラメントの上下を通ることは、個々のフィラメントの変形を低減させるとともにフィラメント間の歪み及び摩擦を低減させるのに有利であり得る。しかしながら、一度に多すぎるフィラメントの上下を通ることは、第1のフレーム10の完全性を低減させる可能性がある。
【0052】
第1のフレーム10、具体的には第1のフレーム10のフィラメントは、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有することができる。形状記憶合金材料は、それ自体を半径方向に拡張した状態へ付勢するように構成されることができるため、第1のフレーム10の半径方向の拡張を促すのに有利である。代替的に、第1のフレーム10は、ポリマー、又は他の生体適合性材料を有してもよい。いくつかの実施例では、第1のフレーム10は独立的に自己拡張式とすることができる。すなわち、第1のフレーム10は、該第1のフレーム10が第2のフレーム12に接続されていない状態であっても、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ自己拡張するように構成される。
【0053】
第1のフレーム10のフィラメントは、放射線不透過性材料、例えば白金を有することができる。一実施例では、第1のフレーム10のフィラメントは、別の材料の被覆の内部に放射線不透過性材料のコアを有する。被覆は、形状記憶合金、好ましくはニチノールとすることができる。例えば、第1のフレーム10のフィラメントは、白金コアを有する引き抜き充填管ニチノール・ワイヤを有することができる。かかる実施例により第1のフレーム10が放射線不透過性となることが可能となり、これにより、展開時に拡張可能な管2の視認性が大幅に向上し、拡張可能な管2を展開することができる精度が向上する。被覆材料はまた、放射線不透過性コアに対して向上した生体適合性を有するように選択されることができる。被覆材料はまた、形状記憶合金の自己拡張特性等の他の有利な特性を有するように選択されることができる。
【0054】
動脈瘤を治療するために使用されるステントの重要な特性は、その細孔密度、すなわち、単位面積当たりの、管の壁における細孔数である。細孔密度の増加は、動脈瘤嚢内におけるより大きな流量低減と、血管によるステントのより迅速な内皮化とに関連付けられ、これらの双方とも、より良い、より信頼できる患者転帰をもたらす。したがって、しばらくの間、ステントの設計者の目的は、ステントにおける細孔密度を増加させることであった。
【0055】
編組フィラメントから作製される(第1のフレーム10のような)フレームの場合、より細いフィラメントを使用するとともにフィラメント・カウント(フレームの直径の周りのフィラメントの総数)を増加させることによって、細孔密度を増加させることができる。しかしながら、より細いフィラメントは剛性が低く、細いフィラメントから作製されたフレームは、拡張特性が不十分である。したがって、より細いフィラメントを使用することによって編組フレームの細孔密度を高めるようとする試みは通常、編組フレームの既に理想的ではない拡張特性を劣悪にする。
【0056】
フィラメント直径を減少させることなくフィラメント・カウントを増加させることは、拡張特性を悪化させることなく幾分利益をもたらし得るが、半径方向に収縮した状態でのステントの直径を増大させることになる。このことは、頭蓋内動脈瘤を治療するためにステントを展開するのに使用される標準サイズのカテーテルであって、広く利用可能であるとともに開業医が十分理解している標準サイズのカテーテルとステントを不適合にする。したがって、半径方向に収縮した状態のステントの直径を増大させることなくステントにおける細孔密度を高めるという課題は、しばらくの間、十分な解決策がないままであった。
【0057】
さらに以下で論じるように、本発明において、第2のフレーム12は、第1のフレーム10よりも容易且つ一貫して拡張することができる。したがって、第2のフレーム12は、拡張可能な管2を、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すように構成されることができる、つまり、拡張可能な管2の拡張特性が主として第2のフレーム12によって決定されるようになっている。第2のフレーム12の有利な拡張特性により、より細い直径を有するフィラメントを使用して第1のフレーム10が作製されることが可能となるが、この理由は、拡張可能な管2の拡張を生じさせるのに第1のフレーム10が依拠されないからである。より細い直径のフィラメントを使用することにより、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の拡張可能な管2の直径の増大を要することなく、従来の編組ステントに比して第1のフレーム10のフィラメント・カウントを増加させることが可能となる。
【0058】
同様に、このことは、頭蓋内動脈瘤を治療するために拡張可能な管2を展開するのに広く利用可能な標準サイズのカテーテルと拡張可能な管2が適合性のあることを依然として可能にしつつ、第1のフレーム10の細孔密度を高める。例えば、一実施例では、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態において、拡張可能な管2の半径方向における最大寸法は、拡張可能な管2が、多くとも1.0mmの内径を有するカテーテルに挿入されることができるようなものである。好ましくは、拡張可能な管2の半径方向における最大寸法は、拡張可能な管2が、0.69mm(0.027インチ)又は0.53mm(0.021インチ)或いはそれよりも小さい内径を有するカテーテルに挿入されることができるようなものである。
【0059】
一実施例では、第1のフレーム10は、少なくとも48本のフィラメント、好ましくは少なくとも64本のフィラメント、より好ましくは少なくとも72本のフィラメント、最も好ましくは少なくとも96本のフィラメントを有する。一実施例では、第1のフレーム10のフィラメントは、多くとも30μm、好ましくは多くとも25μm、より好ましくは多くとも20μmの直径を有する。一実施例では、第1のフレーム10は、少なくとも30細孔/mm、好ましくは少なくとも40細孔/mm、より好ましくは少なくとも50細孔/mm、最も好ましくは少なくとも60細孔/mmの細孔密度を有する。
【0060】
第1のフレーム10の別の重要な特性は、編組角度、すなわち、第1のフレーム10の長手方向と第1のフレーム10の個々のフィラメントとの間の角度である。第1のフレーム10の編組フィラメントの曲げ可撓性は、編組ピッチが減少するにつれて(つまり、編組角度が増加するにつれて)増大する。このことは、拡張可能な管2が捩れを示すことなく血管の曲がりくねった解剖学的構造に適合することを可能にする点で有利である。編組角度が高いほど、曲げ可撓性が向上し、細孔がより小さくなり(より高い細孔密度が可能となる)、長手方向の可撓性が向上する。いくつかの実施例では、編組角度は少なくとも50°、好ましくは50~80°の範囲内である。
【0061】
既存のステント設計は一般に、もっぱら、48本のフィラメント、又は多くとも64本のフィラメントのフィラメント・カウントを達成し、最大20又は多くとも30細孔/mmの細孔密度を有する。従来技術のデバイスにおいてフィラメント・カウントをさらに増加させる試みは、標準サイズの0.69mm(0.027インチ)カテーテルとの適合性を維持せず、展開のためにオーダーメイド及び/又はより大きいサイズのカテーテルを必要とした。
【0062】
二重層ステントが以前に考慮されてきた。しかしながら、既存の設計では、双方の層が従来の編組フィラメント層から作製されている。そのような設計によっていくつかの利点が提供される。しかしながら、2つの編組層は、1つが編組フレーム及び1つが非重複要素のフレームである本設計によってもたらされる、拡張の確実性及び一貫性の同じ向上は有しない。
【0063】
さらに、編組フレームにおいて、各フィラメントは交点において他のフィラメントと重複する。これにより、2フィラメント直径の横断面プロファイル(すなわち、半径方向におけるフレームの壁の有効厚さ)が得られる。二重層デバイスが編組フレームのみを有する場合、横断面プロファイルはさらに、内側フレームの2フィラメント直径+外側フレームの2フィラメント直径に増加される。この横断面プロファイルの増加は、より高い血栓形成と関連付けられ、望ましくない。本発明は、より細いフィラメントを使用することができること及び非重複要素を有する第2のフレームを含むことにより低減された横断面プロファイルを有することができる。拡張可能な管2が、半径方向に拡張しているとともに長手方向収縮した状態で使用の際に動脈瘤嚢に対して開口にわたって位置決めされると、第1のフレーム10は、血流を動脈瘤嚢からそらすとともにそれにより動脈瘤嚢内に血栓形成を促すような有孔率を有することができる。例えば、第1のフレーム10は、拡張可能な管の、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態で、多くとも90%、好ましくは多くとも80%、より好ましくは多くとも70%、より好ましくは多くとも60%、最も好ましくは多くとも50%の有孔率を有することができる。第1のフレーム10の有孔率が単独で、血流を動脈瘤からそらすのに十分に低い場合、これにより、第2のフレーム12に関する設計制約が低減し、第2のフレームがより高い有孔率を有することが可能となる。
【0064】
拡張可能な管2はさらに、第2のフレーム12を有する。第2のフレーム12は、非重複要素網を有し、非重複要素は、半径方向に互いに対して非重複である。このことは、半径方向に互いに重複する、第1のフレーム10の編組フィラメントについては当てはまらない。非重複要素網の例示的な設計が、図9に示されている。第2のフレーム12について非重複要素網を有することによって、そうでなければ重複点において生じるであろう、これら要素間の摩擦が、回避される。同様に、これにより、第2のフレーム12の半径方向の拡張に対する抵抗が低減し、そのため、第2のフレーム12は、展開時にカテーテルから解放されると迅速且つ一貫して拡張することができる。
【0065】
非重複要素網は一体形成される、すなわち、非重複要素は、それら要素のいずれの間にも材料境界面がないようにともに接続されて網を形成する。このことは、例えば、中空管をレーザ切断することによって、又は、そのような構造体を製造するための、従来技術において知られている他の技法によって、第2のフレーム12を形成することによって達成されることができる。非重複要素網を一体的に形成することは、それら要素間に、摩擦を増大させ得る、不具合箇所等を生じさせそうな接合がないため、好ましい。しかしながら、それは必要不可欠ではなく、いくつかの実施例では、例えば、複数の個々の要素をともに溶接すること等によって、非重複要素網を形成することができる。
【0066】
第2のフレーム12、具体的には非重複要素は、形状記憶合金材料、好ましくはニチノールを有することができる。いくつかの実施例では、第2のフレーム12は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の有孔率を有することができる。これにより第2のフレーム12が低密度の非重複要素網を有することが可能となり、それにより、フレームの拡張及び収縮時にそれら要素が互いの妨げになる可能性が低減し、網の設計が簡単となる。このことはまた、拡張可能な管2の有孔率が全体として、第1のフレーム10だけによってより完全に決定され、それにより、拡張可能な管2の全体の特性の決定が簡単となることが可能となることを意味する。いくつかの実施例では、第2のフレーム12は独立的に自己拡張式とすることができる。すなわち、第2のフレーム12は、該第2のフレーム12が第1のフレーム10に接続されていない状態であっても、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ自己拡張するように構成される。
【0067】
図9は、非重複要素網が複数の長手方向及び/又は周方向に変形可能な要素を有する、第2のフレーム12の一設計の拡大を示す。そのような複数の要素により第2のフレーム12が長手方向及び/又は半径方向に拡張及び収縮して第1のフレーム10の寸法の変化に応じることが可能となる。図9の実例では、非重複要素網は、第2のフレーム12の長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素8と、第2のフレーム12の半径方向の拡張及び収縮をもたらす複数の周方向に変形可能な要素6と、を有する。第2のフレームの非重複構造によって可能にされる高度の長手方向の収縮及び伸びは、多くの利点を有する。例えば、小さい編組ピッチ(高い長手方向可撓性が特に望ましい神経血管用途において好ましい)を用いる結果、第1のフレーム10が、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態と、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態との間で(及びその逆の間で)長手方向に有意に収縮する。第2のフレーム12の非重複設計により該第2のフレーム12が短い編組ピッチの場合であっても第1のフレーム10の長さの変化に応じることが可能となる。
【0068】
上述したように、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態から、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態へ切り換わることによって生じる、長手方向における拡張可能な管2(又は拡張可能な管2の一部を形成するフレーム)の伸びは、好ましくは少なくとも10%である。血管が細く曲がりくねった神経血管用途の場合、高い長手方向の可撓性が特に望ましい。これらの用途において高い長手方向の可撓性をもたらすために、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態から、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態へ切り換わることによって生じる、長手方向における拡張可能な管2の伸びは、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%であるものとすべきである。
【0069】
図9における要素網は、長手方向に変形可能な要素8が周方向に変形可能な要素6のいかなる実質的な形状変化もなく長手方向に拡張又は収縮されるように構成されるようなものである。一実施例では、長手方向に変形可能な要素8の変形は、その変形の少なくとも一部について周方向に変形可能な要素6の実質的にいかなる変形もなく行われる。さらに、図9における要素網は、周方向に変形可能な要素6が長手方向に変形可能な要素8のいかなる実質的な形状変化もなく周方向に拡張又は収縮されるように構成されるようなものである。一実施例では、周方向に変形可能な要素6の変形は、その変形の少なくとも一部について長手方向に変形可能な要素8の実質的にいかなる変形もなく行われる。2つのタイプの変形におけるこの独立性により第2のフレーム12が第1のフレーム10におけるいかなる変形にも滑らかに一貫して追従することが可能となる。
【0070】
非重複要素網の他の設計が可能である。図10は、図9の設計と同様であるが、周方向に変形可能な要素6が周方向に繰り返している設計を示す。換言すると、周方向に変形可能な要素6は、「リング」を形成するように周囲に接続されている。各リングは、接続する長手方向に変形可能な要素8によって接続されている。
【0071】
図9の設計では、各周方向に変形可能な要素6は、拡張可能な管2に沿った同じ長手方向位置を有する2つの長手方向に変形可能な要素8を接合する。対照的に、図10の設計では、各周方向に変形可能な要素6は、拡張可能な管2に沿った異なる長手方向位置を有する2つの長手方向に変形可能な要素8を接合する。
【0072】
好ましくは、図10に破線によって示されているように、各周方向に変形可能な要素6によって接合された長手方向に変形可能な要素8間の角度は、第1のフレーム10の編組フィラメントの編組角度と一致する。
【0073】
図11及び図12は、周方向に変形可能な要素6が拡張可能な管2の伸び軸4の周りに閉リングを形成する、別の設計を示す。各閉リングはもっぱら、周方向に変形可能な要素6から成り、各周方向に変形可能な要素6は、略V字状である。したがって、各閉リングは、各V字のアームの外端においてともに接続された複数のV字から成る。図11は、拡張可能な管2の半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態における網を示し、周方向に変形可能な要素6の閉リングが長手方向に互いに重複している。図12は、拡張可能な管2の半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態における、図11の網を示す。
【0074】
非重複要素網は、長手方向に繰り返す複数のサブ・ユニットを有する相互接続構造を有する。この特徴は、拡張可能な管2の長さを、より多くのサブ・ユニットを加えることによって任意の特定の用途に合わせるように容易に変更することができるという利点を有する。長手方向に繰り返すサブ・ユニットはそれ自体、周方向に繰り返す複数のセルを有し得る。この場合、非重複要素網の構造はそれ自体、長手方向及び周方向の双方に繰り返すことができる。セルの周方向の繰り返しにより、拡張可能な管の半径が特定の用途の要件に応じて容易に調整されることが可能である。
【0075】
第2のフレーム12は、半径方向に第1のフレーム10と重複する(重なる)。すなわち、伸び軸4に沿った少なくともいくつかの地点について、伸び軸4に対して垂直な線が、第1のフレーム10及び第2のフレーム12の双方を通る。第2のフレーム12は、拡張可能な管2の長さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%にわたって、第1のフレーム10と重複し得る。図3図5の実例では、第1のフレーム10及び第2のフレーム12は、実質的にそれらの全長にわたって重複する。第1のフレーム10と第2のフレーム12との実質的な重複を有することにより、拡張可能な管2の特性が拡張可能な管2に沿って同じであることが確実となり、そのため、拡張可能な管2の挙動が予測可能である。図3では、第2のフレーム12が第1のフレーム10内に位置決めされている。しかしながら、このことは必要不可欠ではなく、他の実施例では、第1のフレーム10が第2のフレーム12内にあってもよい。第1のフレーム10が第2のフレーム12内にある場合、このことは、第2のフレーム12が該第2のフレーム12の長さに沿った1つ又は複数の地点において第1のフレーム10に接続されることをさらに必要とし得る。
【0076】
第2のフレーム12の長さは、第1のフレーム10の長さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%とすることができる。図3図5の実例では、第1のフレーム10及び第2のフレーム12は略同じ長さを有する。このことは、拡張可能な管2の特性が拡張可能な管2の長さに沿って一貫していることを確実にすることに寄与し得る。重複の要件並びに第1のフレーム10及び第2のフレーム12の相対的な長さに関する要件もまた、拡張可能な管2の両端において第1のフレーム10及び第2のフレーム12をともに接続することを可能にし、このことはいくつかの実施例において好ましいものであり得る。
【0077】
第2のフレーム12は、第1のフレーム10に接続される。接続は、任意の適したやり方で達成されることができる。例えば、第2のフレーム12は、溶接、圧着、接着剤、又は封入のうちの少なくとも1つによって第1のフレーム10に接続されることができる。封入によって或る地点において第1のフレーム10と第2のフレーム12とを接続することは、生体適合性ポリマー(例えば、PTFE)等の好適な材料のひと続きの部分において第1のフレーム10及び第2のフレーム12をともに局所的に被覆することによって達成されることができる。
【0078】
好ましい実施例では、第2のフレーム12は接続用フィラメント16を用いて第1のフレーム10に接続される。このことを容易にするために、第2のフレーム12は、複数のフィラメント受け入れアパーチャ18を有する。1つ又は複数の接続用フィラメント16が第1のフィラメント10に織り込まれ、各接続用フィラメント16は、フィラメント受け入れアパーチャ18の1つ又は複数を通る。
【0079】
接続用フィラメント16を使用する利点は、圧着又は溶接等の他の方法に比して第1のフレーム10と第2のフレーム12との間の接合のプロファイルを低減させることで、拡張可能な管2の表面をより均一にすることである。それらフィラメントは、連続編組(すなわち、連続ピッチを有する編組)へのレーザ切断構造の接合も可能にする。さらに、フィラメント16は、拡張可能な管2の拡張及び収縮時に変形することができる。それにより、接続用フィラメント16を使用することで、第1のフレーム10及び第2のフレーム12をともにフィラメント受け入れアパーチャ18のいくつかの位置において固定しつつ、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態と、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態との間での滑らかな移行が可能となる。
【0080】
図13は、複数のフィラメント受け入れアパーチャ18が第2のフレーム12の長手方向端領域内にフィラメント受け入れアパーチャ18を有する実施例における、第2のフレーム12の長手方向端領域の一実例を示す。長手方向端領域は、拡張可能な管2の長さの多くとも10%、好ましくは多くとも5%である、拡張可能な管2の一端の或る距離内における領域を有し得る。第2のフレーム12は、拡張可能な管2の一方又は双方の端領域内にフィラメント受け入れアパーチャ18を有することができる。図13の実施例におけるフィラメント受け入れアパーチャ18は、第2のフレーム12の相互接続要素網の長手方向に最も遠位の要素に位置する。図示されていないが、図13の実施例におけるフィラメント受け入れアパーチャ18はまた、第2のフレーム12の相互接続要素網の長手方向に最も近位の要素に位置する。
【0081】
図14及び図15に示されているように、1つ又は複数の接続用フィラメント16が第1のフレーム10に織り込まれ、各接続用フィラメント16は、フィラメント受け入れアパーチャ18の1つ又は複数を通る。
【0082】
図13の実例では、第2のフレーム12は、該第2のフレーム12の同じ要素に2つのフィラメント受け入れアパーチャ18を有する。この場合、同じ要素におけるフィラメント受け入れアパーチャ18間の線と拡張可能な管2の長手方向軸4との間の角度は好ましくは、第1のフレーム10の編組フィラメントの編組角度と同じである。それにより、第2のフレーム12の同じ要素におけるフィラメント受け入れアパーチャ18を通る接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメントに対して平行に延びる。これにより、第1のフレーム10への接続用フィラメント16の織り込みが容易となる。
【0083】
接続用フィラメント16は、第1のフレーム10に織り込まれる。こうして、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメントの上下を交互に通る(上下とは、半径方向において、拡張可能な管2の軸に対してそれぞれ離接するものと解釈される)。他の配置も可能である。例えば、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10の複数対のフィラメント、又は3つ、4つ若しくはそれより多くのフィラメント等、より多くの組のフィラメントの上下を交互に通ることができる。第1のフレーム10の多数のフィラメントの上下を通ることは、組み立て時間を短縮するのに有利であり得る。接続用フィラメント16の配置は、第1のフレーム10のフィラメントの配置と一致していてもよく、又は異なっていてもよい。例えば、接続用フィラメント16が第1のフレーム10のフィラメントよりも大きい直径を有する場合、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメント自体が通るよりも多くの組の、第1のフィラメント10のフィラメントの上下を通ることが望ましいであろう。
【0084】
複数のフィラメント受け入れアパーチャ18が第2のフレーム12の長手方向端領域内にフィラメント受け入れアパーチャ18を有する実施例では、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10の周囲で第1のフレーム10に織り込まれ得る。そのような実施例の一実例が、図14に示されている。この場合、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10の右巻き螺旋及び左巻き螺旋のフィラメントに交互に追従するように等間隔で曲げられる。このことを容易にするために、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10に織り込まれる前に所望の形状に曲げられることができる。このことは、接続用フィラメント16が第1のフレーム10に織り込まれた後で適正な位置及び角度での曲げを保持するのに役立つ。接続用フィラメント16がワイヤを有する場合、ワイヤは、半径方向に収縮した構成と半径方向に拡張した構成との間での移行を容易にするために所望の位置での曲げを達成するように形状設定されることができる。接続用フィラメント16が第1のフレーム10の周囲で該第1のフレーム10に織り込まれる実施例は、拡張可能な管2がカテーテルから展開されると拡張可能な管2の端における接続用フィラメント16が半径方向の拡張を促すことに寄与することができるため、拡張可能なフレーム2の拡張特性を向上させることもできる。
【0085】
接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメントと同じ材料を有することができ、及び/又は該フィラメントと同じ直径を有することができる。一実施例では、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメントを有する。そのような実施例が図15に示されている。そのような実施例では、第1のフレーム10及び第2のフレーム12をともに接合することは、接続用フィラメント16として用いるために第1のフレーム10の1つ又は複数のフィラメントを解くことを有することができる。接続用フィラメント16は次いで、第2のフレーム12におけるアパーチャ18に通され、第1のフレーム10の他方の編組フィラメントに織り戻される。
【0086】
代替的に、接続用フィラメント16は、第1のフレーム10のフィラメントとは異なる直径を有してもよく又は該フィラメントとは異なる材料から作製されてもよい。接続用フィラメント16は、ニチノール・ワイヤを有することができる。接続用フィラメント16は、医療用縫合糸に一般に使用される材料を有することができる。この実施例では、縫合糸の2つの端を結び合わせて2つのフレームをともに固定することができる。
【0087】
いくつかの実施例では、複数のフィラメント受け入れアパーチャ18は、第2のフレーム12の長さに沿って離間したフィラメント受け入れアパーチャ18を有する。そのような実施例の一実例が、図16に示されている。フィラメント受け入れアパーチャ18は、第2のフレーム12の長さに沿って間隔を置いて、好ましくは等間隔で離間することができる。フィラメント受け入れアパーチャ18間の間隔は、拡張可能な管2の長さの多くとも50%、好ましくは多くとも25%、より好ましくは多くとも10%とすることができる。いくつかの実施例では、第2のフレーム12の各長手方向に拡張可能な要素8は、フィラメント受け入れアパーチャを有する。
【0088】
第2のフレーム12に沿って離間したフィラメント受け入れアパーチャ18を含むことは、第1のフレーム10及び第2のフレーム12の互いに対する取り付けを高め、これら2つのフレームが分離する可能性を減らす。このことは、接続用フィラメント16が図14に示されたやり方で曲げられる必要がなく、代わりに、第1のフレーム10の全長に沿って第1のフレーム10の編組フィラメントの螺旋経路に追従することができることも意味する。このことは、接続用フィラメント16が曲がる場合よりも低い張力を受けるため、有利である。図16に示されているように、第1のフレーム10の編組フィラメントの右巻き螺旋及び左巻き螺旋の双方に追従する、複数の接続用フィラメント16を設けることができる。
【0089】
好ましくは、アパーチャ18は、接続用フィラメント16がアパーチャ18を通る際に各接続用フィラメント16が第1のフレーム10の編組フィラメントの編組角度に追従するように配置される。このことを達成するために、複数のフィラメント受け入れアパーチャ18が第2のフレーム12の同じ要素に設けられる場合、同じ要素におけるフィラメント受け入れアパーチャ18間の線と拡張可能な管2の長手方向軸4との間の角度は好ましくは、第1のフレーム10の編組フィラメントの編組角度と同じである。このことはまた、接続用フィラメント16の不必要な曲げを減らすとともに接続用フィラメント16における張力を減らす。
【0090】
接続用フィラメント16は、展開時に拡張可能な管2の視認性を高めることに寄与することができる。例えば、接続用フィラメント16は、放射線不透過性材料を有することができる。代替的に、図17に示されているように、接続用フィラメント16の1つ又は複数に1つ又は複数の放射線不透過性マーカを取り付けることができる。
【0091】
接続は生体適合性であるやり方で達成されるものとし、そのため、拡張可能な管2がヒト又は動物の体内に挿入されることができることに影響しない。拡張可能な管2は、展開後、長時間にわたって、一般には無期限に体内に残され得る。したがって、同様に、接続に使用されるいかなる材料も生体適合性であることが重要である。
【0092】
第2のフレーム12は、少なくとも該第2のフレーム12の一端において第1のフレーム10に接続されることができる。第2のフレーム12の一端における接続は、第2のフレーム12の要素の端が、第1のフレーム10、例えば、該第1のフレーム10のフィラメントの端に接合されることができるため、都合が良いものであり得る。第2のフレーム12はさらに、該第2のフレーム12の長さに沿った1つ又は複数の地点において第1のフレーム10に接続されることができる。第1のフレーム10及び第2のフレーム12を第2のフレーム12の長さに沿ったさらなる地点において接合することは、第1のフレーム10及び第2のフレーム12が拡張可能な管2の長さに沿ったいずれもの地点における分離、又は座屈若しくはシワを防止することに寄与する。このことは、拡張可能な管2が拡張又は収縮中の場合に特に関係する。第1のフレーム10及び第2のフレーム12の分離は、拡張可能な管2の不適正な展開又は該管への損傷を生じさせる可能性がある。しかしながら、拡張可能な管2の長さに沿った複数の地点における接合は、拡張可能な管2の製造の複雑性を増加させ、そのため、すべての実施例において好ましくないものとなり得る。
【0093】
第1のフレーム10と第2のフレーム12との接続は、拡張可能な管2が展開される血管に損傷を与える可能性を低減させるように設計されることもできる。例えば、図5では、第1のフレーム10の編組フィラメントの端及び第2のフレーム12の要素の端が、終端要素14内に収められている。終端要素14は、例えば、フィラメントの端におけるあらゆる鋭利な地点又は他の鋭利な表面が血管の内壁と接触しないようにすることによって、血管の内部に損傷を与える可能性を低減させるように構成される。終端要素14はそれ自体、血管へのいかなる損傷も防止するように滑らかな及び/又は湾曲した表面を有することができる。
【0094】
いくつかの実施例では、第2のフレーム12は、拡張可能な管2を、半径方向に収縮しているとともに長手方向拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すように構成される。上述したように、編組フィラメントのみから成る従来技術の拡張可能な管に伴う課題は、それら拡張可能な管がフィラメント間の摩擦に起因して常に均一又は確実に拡張するわけではないことである。拡張可能な管2を半径方向に拡張するとともに長手方向に収縮するように促すように構成される第2のフレーム12を含むことによって、拡張可能な管2の挙動をより確実且つ一貫したものにすることができる。いくつかの実施例では、第2のフレーム12は、第1のフレーム10に半径方向に力をかけることによって、拡張可能な管2を、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すように構成される。拡張可能な管2が、その最終サイズに拡張し、展開される血管の内壁と係合するために、一貫した半径方向の拡張が重要である。他の実施例では、第2のフレーム12は、第1のフレーム10に長手方向に力をかけることによって、拡張可能な管2を、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態から、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態へ促すことができる。しかしながら、このことは、一般に好ましくなく、その理由は、拡張可能な管2を半径方向に拡張させる促しが、その場合間接的でしかなく、展開時の半径方向の拡張の一貫性にさほど向上を与えない可能性があるからである。
【0095】
一実施例では、第2のフレーム12が第1のフレーム10に接続されていない、第2のフレーム12が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での第2のフレーム12の半径は、第1のフレーム10が第2のフレーム12に接続されていない、第1のフレーム10が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での第1のフレーム10の半径よりも大きい。第1のフレーム10及び第2のフレーム12は双方とも、それら自体を、半径方向に拡張されるとともに長手方向に収縮される状態へ付勢するように構成され、非拘束状態にある場合にそれらが達する最大半径を有する。第1のフレーム10及び第2のフレーム12がともに接続されて拡張可能な管を形成する場合、拡張可能な管2の半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態のそれらのそれぞれの最大半径は、同じであるように拘束される、すなわち、それらの非拘束状態での第1のフレーム10の半径及び第2のフレーム12の半径のうちの小さいほうに拘束される。第2のフレーム12を非拘束状態でのその半径が非拘束状態での第1のフレーム10の半径よりも大きくなるように設計することによって、第2のフレーム12は、第1のフレーム10をその最大半径に拡張するように促し、特に曲がりくねった解剖学的構造内で展開される場合に、2つのフレーム間の半径方向の分離のリスクを最小限に抑える。これにより、編組フィラメントを有する第1のフレーム10の半径方向の拡張の一貫性が向上する。この特徴は、2つのフレームをともにしっかりと接合するのに必要とされる固定地点がより少ないことも意味する。
【0096】
いくつかの実施例では、第1のフレーム10及び第2のフレーム12のうちの少なくとも一方に、親水性コーティング及び/又は抗血栓症コーティングを設けることができる。
【0097】
第1のフレーム10及び第2のフレーム12を有する、この重層化した拡張可能な管2の設計は、互いと一緒に長手方向に拡張及び収縮するとともに半径方向に拡張及び収縮する第1のフレーム10及び第2のフレーム12に依拠する。拡張可能な管2の長手方向及び半径方向の拡張及び収縮の程度は、第1のフレーム10の編組構造によって主として決まり、例えば長手方向且つ周方向に独立した要素を含む第2のフレーム12が、編組構造の長手方向及び半径方向の動きに適合する。
【0098】
一実施例では、第1のフレーム10の第1の伸び率は、第2のフレーム12の第2の伸び率の25%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内である。第1のフレーム10の第1の伸び率は、第1のフレーム10の非拘束長と半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態での第1のフレーム10の長さとの比率である。第1のフレームの非拘束長は、第1のフレーム10が第2のフレーム12に接続されていない、第1のフレーム10が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での第1のフレーム10の長さである。第2の伸び率は、第2のフレーム12の非拘束長と半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の第2のフレーム12の長さとの比率である。第2のフレーム12の非拘束長は、第2のフレーム12が第1のフレーム10に接続されていない、第2のフレーム12が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した非拘束状態での第2のフレーム12の長さである。言及されている、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態とは、第1のフレーム10又は第2のフレーム12が拡張可能な管2の一部である(すなわち、第2のフレーム12に接続されている)とともに拡張可能な管2がその半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態にある場合の第1のフレーム10又は第2のフレーム12の状態である。これは例えば、拡張可能な管2が、展開される準備ができている状態でカテーテルの内部にある場合であり得る。編組フィラメントを有する拡張可能な管の以前の設計は、編組管の端の適切な展開を促すために拡張可能な管の一端又は両端に拡張リングを含んでいた。しかしながら、完全長にわたって適切な展開を促すために編組ステントに対して拡張リングの長さを増加させることは、2つのタイプのフレームの拡張特性が異なるため、難題である。第1の伸び率と第2の伸び率とを合わせることは、第1のフレーム10又は第2のフレーム12の座屈或いは第1のフレーム10と第2のフレーム12との分離の可能性が低減されることを確実にする。このことは、第2のフレームが第1のフレームに対してより長くなることをさらに可能にし、拡張可能な管の展開の一貫性をさらに向上させる。
【0099】
第2のフレーム12を設計するための寸法入力を決定するために、第1のフレーム10の伸び率を分析的に決定する必要がある。第1のフレーム10の第1の伸び率を決定するための2つの方法が以下に概説され、第2のフレームの要素は、第2の伸び率が第1の伸び率と所要の程度まで合うように設計されることができる。第1の方法は、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態と、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態との間での第1のフレーム10の単一の細孔の長さ及び高さの変化を求めることによる詳細な手法を概説する。細孔は、図18に概略的に例示されているように、第1のフレーム10における隣接フィラメントによって画定された単一の空間である。半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態は、この状態が、拡張可能な管2が血管内への展開前にカテーテルに装填される場合の該拡張可能な管2の状態であるため、装填状態と呼ばれる場合もある。第2の方法は、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態と、半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態との間での第1のフレーム10の全長変化を評価する、より単純な手法を提供する。
【0100】
第1の方法は、図19に見られるように、半径方向に拡張しているとともの長手方向に収縮した状態の拡張可能な管2の直径φexpandedと、編組角度θbraidで開始する。編組角度θbraidは、第1のフレーム10の長手方向と第1のフレーム10の個々のフィラメントとの間の角度である。この角度は、拡張可能な管2が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態にあるのか又は半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態にあるのかに応じて変わる。したがって、拡張可能な管2の周囲Cは、等式1を用いて計算されることができる。
C=πφexpanded 等式1
【0101】
第1のフレーム10におけるフィラメント間の周方向距離Dは、等式2を用いて計算することができる。
【数2】

式中、Nwireは、第1のフレーム10におけるフィラメント数である。
【0102】
第1のフレーム10の細孔は、図18に示されているように、第1のフレーム10の直径が減少するにつれて該細孔の各辺の長さが一定のままである斜方形形状を有し、その結果、細孔の高さが低減するとともに細孔の長さが増加する。
【0103】
細孔の長手方向の長さLporeは、等式3を用いて計算する。
pore=2a sin(90°-θbraid) 等式3
【0104】
細孔の周方向の高さHporeは、等式4を用いて計算することができる。
pore=2a cos(90°-θbraid) 等式4
【0105】
周囲の周りの総細孔数Nは、等式5を用いて計算することができる。
【数3】
【0106】
第1のフレーム10の長さに沿った単一列の総細孔数Nは、等式6を用いて計算することができる。
【数4】

式中、Lexpandedは、図19に見られるように、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態での第1のフレーム10の長さである。周囲の周りの細孔数Nを用いて、装填状態での各細孔の周方向の高さHloadedは、等式7を用いて計算することができる。
【数5】

式中、Dcatheterは、拡張可能な管2が展開のために減少されねばらない内径、例えば送達カテーテルの内径である。装填状態θloadedにおける編組角度は、等式8を用いて計算することができる。
【数6】
【0107】
その後、装填状態における各細孔の長手方向の長さLloaded poreを、等式9を用いて計算することができる。
loaded pore=2a cos(90°-θloaded) 等式9
【0108】
図19に見られるように、装填状態における第1のフレーム10の長さLloadedを次いで、等式10を用いて計算することができる。
loaded=Nloaded pore 等式10
【0109】
最後に、第1の伸び率εを、等式11を用いて求めることができる。
【数7】
【0110】
第2の方法は、第1のフレーム10における個々のフィラメントの長さが装填状態での第1のフレーム10の長さに等しいものとした場合の第1のフレーム10の伸び率を評価するために適用される、より単純な手法である。
【0111】
第1のステップは、等式12を用いて、既知の編組角度θbraid及び周囲Cを有する螺旋のピッチPを計算することである。
【数8】
【0112】
半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態での所定の長さLexpandedについて、第1のフレーム10におけるフィラメント当たりの巻数Nturnsを、等式13を用いて求めることができる。
【数9】
【0113】
第1のフレーム10におけるフィラメントの長さが装填状態での該第1のフレームの長さに等しいものとした場合、等式14を適用することができる。
【数10】
【0114】
第1の方法に関して、第1の伸び率を求めるのに等式11を用いることができる。さらに、等式15を適用することによって、セル数Ncellsを求めることができる。
【数11】
【0115】
第2のフレーム12におけるセル数は整数であるものとし、このことは、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態、及び半径方向に収縮しているとともに長手方向に拡張した状態の双方での第1のフレーム10及び第2のフレーム12について長さが同じままであることを確実にするように第1のフレーム10のパラメータを選択する場合に考慮されねばらないことに留意されたい。
【0116】
第1のフレーム10の第1の伸び率が分かると、図20に示されているように、第2のフレーム12の個々のセルの幾何学形状を決定することが可能である。このことは、それ自体長手方向に繰り返す、第2のフレーム12の非重複要素網のサブ・ユニットが、(上述したように)周方向に繰り返す複数のセルを有する実施例についてなされる。
【0117】
そのような実施例では、非重複要素網は、第2のフレームの長手方向の拡張及び収縮をもたらす複数の長手方向に変形可能な要素8を有する。非重複要素網の各サブ・ユニットは、第2のフレーム12が第1のフレーム10に接続されていない、第2のフレーム12が半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態である非拘束状態で、長手方向に第1の長さを有する。
【0118】
長手方向に変形可能な要素8は、各長手方向に変形可能な要素8に沿った経路長Lpath及び第1の長さ(すなわち、半径方向に拡張しているとともに長手方向に収縮した状態での各セルの長さ)Lcellが第1のフレーム10の第1の伸び率に比例することを確実にすることによって、第1のフレーム10の伸びに合うように設計される。一実施例では、第1の長さと各長手方向に変形可能な要素8に沿った経路長との比率は、第1の伸び率の25%以内、好ましくは15%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内である。
【0119】
拡張可能な管2は、図21に示されている送達システムのような送達システム20において使用するために構成されることができる。送達システム20は、カテーテルとも呼ばれる管状部材24と、ガイド・ワイヤとも呼ばれる細長い本体22とを有する。細長い本体22は、管状部材24内に位置決めされ、拡張可能な管2は、管状部材24と細長い本体22との間に位置決めされる。拡張可能な管2は、細長い本体22と内側で係合し、管状部材24と外側で係合する。送達システム20は、血管内の動脈瘤に近い適切な場所に位置決めされ、細長い本体22は、管状部材24の端を超えて延出される。細長い本体22と拡張可能な管2との間、及び、拡張可能な管2と管状部材24との間の長手方向の係合力は、拡張可能な管を同様に長手方向に移動させるとともに管状部材24から展開させるようなものである。拡張可能な管2は、半径方向に拡張するとともに長手方向に収縮し、それにより、細長い本体22から解放され、血管内へ展開する。拡張可能な管2が管状部材24から完全に展開されると、送達システム20は、拡張可能な管2を適所に留置したまま、血管から引き抜かれることができる。
【0120】
このタイプの送達システムが好ましいが、拡張可能な管2は、他の好適なタイプの従来の送達システムとともに使用されることもできる。例えば、拡張可能な管2は、該拡張可能な管2と外側で係合する細長い本体を有しない送達システムを用いて展開されることもできる。拡張可能な管2は、該拡張可能な管2を近位端から押す送達システムを用いて展開されることもできる。このタイプの送達システムは多くの場合、非重複要素網を有する拡張可能な管には適していない。このことは、それらの拡張可能な管が、例えば、神経血管用途での使用のために、長手方向の可撓性が高くなるように、したがって、長手方向の剛性が低くなるように設計される場合に、特に当てはまる。しかしながら、本発明の拡張可能な管2のハイブリッド設計により、第1のフレーム10が与えるフィラメント密度がより高いため、このタイプの送達システムを用いた展開が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】