IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリーン バレー バイオ-フィルトレーション テクノロジーズ シーアイシーの特許一覧

特表2023-526094水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ
<>
  • 特表-水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ 図1
  • 特表-水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ 図2
  • 特表-水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ 図3A
  • 特表-水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ 図3B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】水産養殖水からマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物を除去するための複数ステージ式バイオフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/04 20060101AFI20230613BHJP
   A01K 61/54 20170101ALI20230613BHJP
   C02F 3/32 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
A01K63/04 A
A01K61/54
C02F3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570620
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 CA2021050676
(87)【国際公開番号】W WO2021232151
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/026,265
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522451230
【氏名又は名称】クリーン バレー バイオ-フィルトレーション テクノロジーズ シーアイシー
【氏名又は名称原語表記】CLEAN VALLEY BIO-FILTRATION TECHNOLOGIES CIC
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アレン、ダミル
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ、ハンター
(72)【発明者】
【氏名】イングリッシュ、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット、ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】レーン、ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】ラバル、ニコラス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】エドモンズ、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】デロング、ザカリー
【テーマコード(参考)】
2B104
4D040
【Fターム(参考)】
2B104AA22
2B104CA01
2B104ED12
2B104ED26
2B104ED35
2B104ED36
2B104ED37
4D040CC03
4D040CC11
(57)【要約】
水から粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を除去するための水濾過システム及び対応する方法を提供する。このシステムは、懸濁液中に藻類を包含する第1区画を備える。藻類は水中で粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を凝集して藻類微粒子を形成するのに使用可能である。水及び藻類微粒子は、流体移送導管を通じて第2区画に提供される。第2区画は、第1セットの吊り下げアセンブリを含み、吊り下げアセンブリの各々は、水から藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を除去するための水濾過システムであって、
懸濁液中に藻類を包含する第1区画であって、前記藻類が前記水中で前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を凝集して藻類微粒子を形成するのに使用可能である、第1区画と、
流体移送導管を通じて前記第1区画から前記水及び前記藻類微粒子を受容する第2区画と、
前記第2区画内に配置された第1セットの吊り下げアセンブリであって、前記吊り下げアセンブリの各々が前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する、一組の吊り下げアセンブリと、
を備える、水濾過システム。
【請求項2】
前記水から前記粒子状廃棄物の一部を除去して前処理水を生成するためのメッシュフィルタを包含する第3区画を備え、前記前処理水は第2流体移送導管を通じて前記第1区画に提供される、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項3】
前記第2区画から第3流体移送導管を通じて水及び藻類微粒子を受容する第4区画を備え、前記第4区画は第2セットの吊り下げアセンブリを含み、前記第2セットの吊り下げアセンブリの各々は前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項4】
前記第4区画から前記第3区画へ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させる流体再循環導管を備える、
請求項3に記載の水濾過システム。
【請求項5】
前記第4区画から前記第1区画へ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させる流体再循環導管を備える、
請求項3に記載の水濾過システム。
【請求項6】
前記第1区画が、前記藻類を前記第1区画内に包含するための少なくとも1つのバッフル構造を有する、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項7】
前記藻類及び前記二枚貝が、前記システムの地理的位置に存在する藻類種及び二枚貝種にそれぞれ対応する、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項8】
前記藻類が、前記濾過システムに使用される前記二枚貝にとって栄養価の高いものである、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項9】
前記藻類及び前記二枚貝の種が、(i)二枚貝の吸い上げ速度、(ii)二枚貝の吸い上げ範囲、(iii)ポンプに対する二枚貝の生存率、(iv)二枚貝の寿命、(v)藻類による窒素の凝集、(vi)藻類によるアンモニアの凝集、及び(vii)藻類による前記粒子状廃棄物の凝集、のうち少なくとも1つに基づいて選択される、
請求項8に記載の水濾過システム。
【請求項10】
前記二枚貝がアメリカガキ(Crassostrea virginica)及びムラサキガイ(Mytilus edulis)の何れかであり、前記藻類が植物プランクトンである、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項11】
前記二枚貝がムラサキガイ(Mytilus edulis)であり、前記藻類がハプト藻(Isochrysis sp)である、
請求項1に記載の水濾過システム。
【請求項12】
二枚貝であるムラサキガイ(Mytilus edulis)200個と、ハプト藻(Isochrysis sp)2Lと、を含む、
請求項11に記載の水濾過システム。
【請求項13】
粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を除去するための水の濾過方法であって、
懸濁液中に藻類を包含する第1フィルタを設けることと、
前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を包含する水を前記第1フィルタに導くことであって、前記第1フィルタ中の前記藻類が前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を凝集して藻類微粒子を形成する、ことと、
前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する第2フィルタに前記水及び前記藻類微粒子を導くことと、
を含む、水の濾過方法。
【請求項14】
前記粒子状廃棄物及び生化学廃棄物を包含する前記水を前記第1フィルタに導く前に、メッシュフィルタを包含する第3フィルタに前記粒子状廃棄物及び生化学廃棄物を包含する前記水を導いて、前記水を前処理することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2フィルタから、前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する第4フィルタに向けて、前記水及び前記藻類微粒子を導くことを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第4フィルタから前記第3フィルタへ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させることを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第4フィルタから前記第1フィルタへ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させることを含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1フィルタに少なくとも1つのバッフル構造を設けて、前記第1フィルタの第1区画内に前記藻類を包含することを含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記藻類及び前記二枚貝が、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタの地理的位置にそれぞれ存在する藻類種及び二枚貝種の組み合わせに対応する、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記藻類種が前記二枚貝種にとって栄養価の高いものである、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記藻類及び前記二枚貝の種が、(i)二枚貝の吸い上げ速度、(ii)二枚貝の吸い上げ範囲、(iii)ポンプに対する二枚貝の生存率、(iv)二枚貝の寿命、(v)藻類による窒素の凝集、(vi)藻類によるアンモニアの凝集、及び(vii)藻類による前記粒子状廃棄物の凝集、のうち少なくとも1つに基づいて選択される、
請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記二枚貝がアメリカガキ(Crassostrea virginica)及びムラサキガイ(Mytilus edulis)の何れかであり、前記藻類が植物プランクトンである、
請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記二枚貝がムラサキガイ(Mytilus edulis)であり、前記藻類がハプト藻(Isochrysis sp)である、
請求項13に記載の方法。
【請求項24】
二枚貝であるムラサキガイ(Mytilus edulis)200個と、ハプト藻(Isochrysis sp)2Lと、を含む、
請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して水処理に関し、より詳細には、水産養殖水などの水からのマイクロプラスチック粒子及び生化学的廃棄物のバイオフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
海洋及び他の水源を保護することは、それらの資源の継続的で地球規模の開発及び水産養殖などの持続可能な実施の可能性を利用するために重要である。現在、海洋マイクロプラスチックは世界中の海洋に見られ、海洋全体の健全性に対して重大な懸念が提起されている(Van Cauwenberghe&Janssen 2014)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらマイクロプラスチック粒子の摂取は、ムラサキガイ(Mytilus edulis)などの二枚貝を含むいくつかの海洋生物で起こることが示されている。二枚貝では、摂取されたマイクロプラスチックは軟部組織に存在する。実験室での試験では、二枚貝に含まれるマイクロプラスチック粒子の平均濃度は、軟部組織(湿潤重量)1グラム当たり0.36粒子であることがわかっている。様々な海洋種によるこのマイクロプラスチックの摂取については、海面(open-pen)水産養殖環境では市場に出るサイズの魚もマイクロプラスチック摂取のリスクがあるので、こうした場所で飼育される海産物の消費者に潜在的な脅威をもたらし得る(Van Cauwenberghe & Janssen、2014年)。
【0004】
窒素及びリン廃棄物の生成は、高濃度のアンモニア、硝酸塩及びリンなどの成分が環境及び人の健康の両方に有害な影響を及ぼす可能性があるため、水産養殖産業にとって難しい課題となる。アンモニアとリンは、地表水や地下水に排出されると、藻類の繁殖を促進し、その結果、藻類の毒素が増加し、他の水生生物のための酸素含有量が減少することがある。飲料水中の高濃度の硝酸塩は、メトヘモグロビン血症(ブルーベビー症候群)の直接的な原因となり、乳児にとって特に懸念されるため、硝酸塩は人の健康に対する潜在的なリスクとなるおそれがある。
【0005】
したがって、上記で特定した問題の少なくともいくつかに対処又は改善するための解決策が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、概して、水産養殖施設における水産養殖水などの水から、マイクロプラスチック粒子及び生化学廃棄物を除去するための水濾過システムについて記載している。以下に説明するように、濾過システムはバイオフィルタを含み、このバイオフィルタは、濾過システムの異なる濾過ステージ内に配置された二枚貝及び藻類の組み合わせを包含している。
【0007】
本発明の広範な第1態様によれば、水から粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を除去するための水濾過システムが提供され、このシステムは、懸濁液中に藻類を包含する第1区画であって、前記藻類が前記水中で前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を凝集して藻類微粒子を形成するのに使用可能である、第1区画と、流体移送導管を通じて前記第1区画から前記水及び前記藻類微粒子を受容する第2区画と、前記第2区画内に配置された第1セットの吊り下げアセンブリであって、前記吊り下げアセンブリの各々が前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する、一組の吊り下げアセンブリと、を備える。
【0008】
本発明の別の態様によれば、前記水から前記粒子状廃棄物の一部を除去して前処理水を生成するためのメッシュフィルタを包含する第3区画を備え、前記前処理水は第2流体移送導管を通じて前記第1区画に提供される、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、前記第2区画から第3流体移送導管を通じて水及び藻類微粒子を受容する第4区画を備え、前記第4区画は第2セットの吊り下げアセンブリを含み、前記第2セットの吊り下げアセンブリの各々は前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、前記第4区画から前記第3区画へ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させる流体再循環導管を備える、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、前記第4区画から前記第1区画へ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させる流体再循環導管を備える、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、前記第1区画が、前記藻類を前記第1区画内に包含するための少なくとも1つのバッフル構造を有する、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、前記藻類及び前記二枚貝が、前記システムの地理的位置に存在する藻類種及び二枚貝種にそれぞれ対応する、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、前記藻類が、前記濾過システムに使用される前記二枚貝にとって栄養価の高いものである、上記何れかに記載の濾過システムが提供される。
本発明の別の態様によれば、前記藻類及び前記二枚貝の種が、(i)二枚貝の吸い上げ速度、(ii)二枚貝の吸い上げ範囲、(iii)ポンプに対する二枚貝の生存率、(iv)二枚貝の寿命、(v)藻類による窒素の凝集、(vi)藻類によるアンモニアの凝集、及び(vii)藻類による前記粒子状廃棄物の凝集、のうち少なくとも1つに基づいて選択される、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、前記二枚貝がアメリカガキ(Crassostrea virginica)及びムラサキガイ(Mytilus edulis)の何れかであり、前記藻類が植物プランクトンである、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、前記二枚貝がムラサキガイ(Mytilus edulis)であり、前記藻類がハプト藻(Isochrysis sp)である、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、二枚貝であるムラサキガイ(Mytilus edulis)200個と、ハプト藻(Isochrysis sp)2Lと、を含む、上記何れかに記載の水濾過システムが提供される。
【0018】
本発明の広範な第2態様によれば、粒子状廃棄物及び生化学的廃棄物を除去するための水の濾過方法であって、懸濁液中に藻類を包含する第1フィルタを設けることと、前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を包含する水を前記第1フィルタに導くことであって、前記第1フィルタ中の前記藻類が前記粒子状廃棄物及び前記生化学的廃棄物を凝集して藻類微粒子を形成する、ことと、前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する第2フィルタに前記水及び前記藻類微粒子を導くことと、を含む、水の濾過方法が提供される。
【0019】
本発明の別の態様によれば、前記粒子状廃棄物及び生化学廃棄物を包含する前記水を前記第1フィルタに導く前に、メッシュフィルタを包含する第3フィルタに前記粒子状廃棄物及び生化学廃棄物を包含する前記水を導いて、前記水を前処理することを含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様によれば、前記第2フィルタから、前記水から前記藻類微粒子を吸い上げるのに使用可能な二枚貝を包含する第4フィルタに向けて、前記水及び前記藻類微粒子を導くことを含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様によれば、前記第4フィルタから前記第3フィルタへ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させることを含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、前記第4フィルタから前記第1フィルタへ前記水及び前記藻類微粒子の一部を再循環させることを含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、前記第1フィルタに少なくとも1つのバッフル構造を設けて、前記第1フィルタの第1区画内に前記藻類を包含することを含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、前記藻類及び前記二枚貝が、前記第1フィルタ及び前記第2フィルタの地理的位置にそれぞれ存在する藻類種及び二枚貝種の組み合わせに対応する、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、前記藻類種が前記二枚貝種にとって栄養価の高いものである、上記何れかに記載の方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、前記藻類及び前記二枚貝の種が、(i)二枚貝の吸い上げ速度、(ii)二枚貝の吸い上げ範囲、(iii)ポンプに対する二枚貝の生存率、(iv)二枚貝の寿命、(v)藻類による窒素の凝集、(vi)藻類によるアンモニアの凝集、及び(vii)藻類による前記粒子状廃棄物の凝集、のうち少なくとも1つに基づいて選択される、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0025】
本発明の別の態様によれば、前記二枚貝がアメリカガキ(Crassostrea virginica)及びムラサキガイ(Mytilus edulis)の何れかであり、前記藻類が植物プランクトンである、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0026】
本発明の別の態様によれば、前記二枚貝がムラサキガイ(Mytilus edulis)であり、前記藻類がハプト藻(Isochrysis sp)である、上記何れかに記載の方法が提供される。
本発明の別の態様によれば、二枚貝であるムラサキガイ(Mytilus edulis)200個と、ハプト藻(Isochrysis sp)2Lと、を含む、上記何れかに記載の方法が提供される。
【0027】
本発明のさらなる態様は、以下の説明を考慮すれば明らかになるであろう。
本発明の実施形態の特徴及び利点は、添付の図面を参照して行われる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】少なくとも1つの実施形態に係る水濾過システムの概略図である。
図2】別の実施形態に係る水濾過システムの概略図である。
図3A】別の実施形態に係る垂直積層型濾過システムの斜視図である。
図3B】別の実施形態に係る垂直積層型濾過システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明及びそこに記載される実施形態は、本発明の原理の特定の実施形態の例の説明として提供される。これらの例は、それらの原理及び本発明を限定する目的ではなく、説明の目的で提供される。
【0030】
本明細書の実施形態は、海面(open-pen)養殖施設などの養殖施設において、養殖水からマイクロプラスチックなどの微粒子、並びに、例えば窒素及びリン廃棄物などの生化学廃棄物(まとめて「汚染物質」という)を除去するための自律型濾過システム、及び、対応する方法を開示している。開示された濾過システムは、陸上の掛け流し(フロースルー)式施設、再循環養殖システム(recirculating aquaculture systems:RAS)、二枚貝孵化場、及び魚類(finfish、ひれのある魚)貯蔵施設を含むがこれらに限定されない、水産業内の他の同様の操作で稼働するように構成可能又は適応可能であることも意図された目的である。使用中、汚染物質を包含する水は、濾過システムに設けられたバイオフィルタを通過するようになる。後述するように、バイオフィルタは、無機メッシュフィルタ、藻類による生化学的フィルタ、二枚貝による微粒子フィルタなどの複数段階(多段式)の濾過ステージを含む。処理される水は、汚染物質を最大限に除去するために、特定の順序で上流側の濾過ステージを通じて循環されてもよい。
【0031】
陸上養殖施設と同様に、抽出を行う種による濾過(藻類による生化学的濾過及び二枚貝による微粒子濾過など)システムを導入し、有害な化学物質及び物体を除去することで、海面養殖場は魚介類の成長と健康を最適に保つための、きれいな水の状態を維持することができるようになる。このようなシステムを使用すると、ダイオキシン及びフランなどの揮発性有機化合物、又は水銀などの有害化学物質を濾過して流入水質を改善できるほか、マイクロプラスチック又は海シラミなどの環境問題の原因となる大きな粒子も除去することができる(Webbら、2013年)。また、濾過は、養殖場からの廃水を改善し、社会と多くの非政府組織(NGO)が海面養殖に関連して声を上げている注目すべき環境問題を解決することができる可能性がある。沖合又は沿岸の網仕切り、あるいは陸上の掛け流し式施設に設置されたシステムは、流入する有害物質を除去すると同時に、施設の廃水に包含される有害な副産物を除去することができる。陸上RAS施設に導入されたシステムは、施設の製品から発生する生物学的汚染物質を除去し、高い水質を確保し、その結果、より高品質の製品を提供することを可能にする。
【0032】
養殖業は、窒素系廃棄物の除去という形で、二枚貝の濾過能力を発揮する機会を提供する。陸上施設の多くは糞便などの固形物を除去することができるが、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニアなどの溶存窒素化合物は依然としてかなりの量が残存しているため、養殖魚(cultured finfish)の健康に危険を及ぼす可能性がある。この溶存窒素化合物を積極的に利用して成長する微細藻類と組み合わせることで、ムラサキガイ(Mytilus edulis)などの二枚貝が藻類を消費し、結果として水質を改善することができる。これは、水質浄化に有効であることが実証されている方法である(Giffordら、2004年)。
【0033】
人口が増加し、海洋環境が悪化する中、安価で高品質な水産物を生産するためには、自律的な濾過システムの構築が有効である。このようなシステムの導入がなければ、養殖産業を拡大するために、「海面養殖施設で育てられた魚が環境の影響を受けたり、その逆に環境に影響を与えたりするというリスクをとる」か、あるいは、「設置コストと維持コストがはるかに高い、制御された陸上施設を持つ」か、という選択を迫られ続けることになる。資本コストは、この産業の拡大を奨励する際に考慮すべき重要な点である。再循環型の陸上システムへの移行がより一般的になり、5千万米ドル以上を必要とすることがあるからである。抽出を行う種を利用した濾過は、この産業が持続的に成長し続けるための、新しい、費用対効果の良い技術を提供し得る。
【0034】
魚や他の魚介類を育てるための海面養殖場における開示されたバイオフィルタシステムの使用は、海面施設の拡張の実行可能性を向上させることを意図している。このような使用は、環境への悪影響が少なく、病気又は寄生虫(すなわち、海シラミ)の可能性が低く、エネルギー使用量が少なく、しかも、陸上の同種のものと比較して著しく低い運営コスト(ノルウェーのサーモン養殖場においては、最大で1.50ユーロ/kg低い)を維持することが意図されている。(Intrafish、2018年)。
【0035】
生物化学的廃棄物の定義を拡大すると、カナダの法律によると、漁業法の一部は、劇物の定義を「・・・何らかの水に加えられた場合、その水の質を劣化又は変化させ、あるいは劣化又は変化のプロセスの一部を形成することにより、魚や魚の生息地、その水を頻繁に使う魚の人間による利用にとって劇物となる、又はなる可能性のある物質・・・」としている。つまり、魚及び人間の健康に対して引き起こす劣化及び変化を考慮すれば、有害物質には、マイクロプラスチック粒子が含まれる可能性がある。さらに、有害物質には、養殖廃水に含まれる窒素系、リン酸系、その他の溶存固形物も含まれる場合がある。例えば、アンモニア及び亜硝酸塩などの窒素系廃棄物は、過剰になると養殖システム内の魚の健康を害し、その影響を無視して排出されると同様に有害となる可能性がある。そのため、アンモニアなどの窒素化合物を0.5mg/L以下になるように循環水を希釈することが、養殖業における最善の方法(ベスト・プラクティス)となっており、そうしないとシステム内の魚が死滅してしまう。そのため、陸上養殖施設では、硝化・脱窒の主要な状態として細菌を利用する溶存型固体バイオフィルタでこの課題に対応しているのが現状である。以下に説明するのは、当然ながら、より効率的な代替案である。
【0036】
図1は、本発明の少なくとも1つの実施形態による水濾過システム100の概略図である。濾過システム100は、潜在的に有害な成分を低減及び/又は除去するために、海水などの入力水を複数の濾過ステージを通じて循環させる自律的なシステムとして動作可能であり、沿岸領域の魚(finfish)などの海産魚の養殖のための水質改善を提供する。このシステム100は、有害な化学物質、マイクロプラスチック、及び海シラミなどの寄生虫を除去するのに適している。本実施形態では、以下でより完全に説明するように、複数のチャンバ又はセルにわたって配置された、3つの主要な濾過ステージがある。
【0037】
濾過システム100の複数のセルは、任意の適切な方法又は技術を使用して作製されてもよい。例えば、濾過システム100は、壁を用いて分離された別個のチャンバを備える一体型本体(例えば、成形金属又はプラスチック本体)であってもよい。他の実装形態では、濾過システム100は、各容器を接続する適切なチューブを用いて接続された複数の別個の容器から構成されてもよい。
【0038】
濾過システム100は、汚染物質を包含する入力水(例えば、除去が望まれるマイクロプラスチック及び生化学化合物を含有する水)を水濾過システム100の第1濾過ステージ110に対応する第1セルに受け入れるための水入口102を含む。廃水は、水濾過システム100の第1濾過ステージ110に対応する第1セルへと能動的にポンプ輸送されてもよい。参照符号104が付された矢印は、水の流れ方向を示す。第1濾過ステージ110は、適切なサイズの孔を有するふるいを含む。本実施形態では、水中に存在するより大きな微粒子、及び、大きすぎてその後の濾過ステージでバイオフィルタに存在する生物によって消費されないごみを捕捉又は漉し取るために、一次微細メッシュ112及び二次微細メッシュ114が含まれる。このスクリーンの大きさは、それが配備される場所における、大きな粒子状物質の有病率に基づいて変化してもよい。例えば、本実施形態では、0.5mmから0.25mmのサイズの孔が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、入力水が大きなごみをそれほど含まない場合、あるいは、別の前処理工程で濾過が行われる場合には、そうした水の前処理は省略されてもよい。第1濾過ステージ110を出た水は、第1濾過ステージ110からシステム100の第2濾過ステージ120に対応する第2セルに水を移送する第1移送導管116に入る。本実施形態では、飲料水の処理に使用される従来の凝集プロセスと同様に、廃水中の汚染物質と相互作用する懸濁液中の微細藻類が、第2濾過ステージ120に提供される。より具体的には、懸濁液中に浮遊する藻類は、参照符号124が付された矢印で示される方向に流れるときに、水中の微粒子及び他の生化学的汚染物質を付着又は凝集し、第3濾過ステージ130に配置された二枚貝による摂取に適したサイズを有する大きな藻類の微粒子を形成し得る。いくつかの実施形態では、微細藻類の代わりに、大型藻類を使用することができる。あるいは、大型藻類と微細藻類との組み合わせを使用することができる。藻類は、外来種を導入する可能性のあるリスクを考慮して、任意の適切な場所から供給され得る。いくつかの実施形態では、所定の流入物の条件に対する成長及び栄養除去効率を向上させるために、高生産性の単培養株の藻類細胞を利用してもよい。あるいは、より強力な混合株は、複数の成長及び除去パラメータが存在し得る状況において、有利に利用することができる。濾過システムの通常運転中の典型的な藻類密度における藻類の成長速度は、希釈及び流出による損失を補うのに十分であり、したがって藻類密度を維持することができる。本発明者らは、ベンチマークテストと初期プロトタイプテストで利用するために、カナダのノバスコシア州のソバ島(Sober Island)から供給された大型藻類と微細藻類を使用した。
【0039】
また、第2濾過ステージ120にはいくつかの実施形態で使用することができるバッフル構造122が示されており、このバッフル構造122は、第2濾過ステージ120に対応するセル内で藻類が付着する部位を提供し、水中の汚染物質と藻類種との間の相互作用を促進するためのものである。したがって、藻類種は、凝集剤と同様に作用し、汚染物質粒子を藻類細胞内に引き寄せるのに使用でき、藻類細胞が濾過システム100の後続の濾過ステージにおいて二枚貝によって消費されるときに、同じ二枚貝も汚染物質を消費するので、そうした汚染物質を水から除去することが可能になる。
【0040】
濾過に供される水は、第2濾過ステージ120から、2つのステージを接続する第2移送導管126を介して第3濾過ステージ130に対応する第3セル130-1に循環させることができる。第3濾過ステージ130において、廃水は、1以上の吊り下げアセンブリ132にぶら下がる二枚貝の流路を通過する。流体の流れ方向は、参照符号134が付された矢印によって示される。二枚貝の区画は、従来の飲料水処理施設における清澄化又は沈殿と同様のプロセスで、水から藻類及び関連微粒子を吸い上げる(即ち、摂取又は消費する)ことができる。より具体的には、第3濾過ステージ130において、二枚貝は、第2濾過ステージ120から移送された藻類細胞を消費し、それによって、藻類細胞によって既に吸収された汚染物質を消費する。したがって、二枚貝は、水から汚染物質を除去するのに使用可能である。さらに、二枚貝は、バイオリアクタ内の基質への窒素性廃棄物の沈着を促進し、水塊から窒素性廃棄物を隔離し、微生物がより容易に脱窒を開始できるようにすることができる。二枚貝の例としては、アメリカガキ(正式名称:Crassostrea virginica)及びムラサキガイ(正式名称:Mytilus edulis)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0041】
本実施形態では、吊り下げアセンブリ132は、きめの粗い基材を用いて製作された着脱可能な二枚貝用ハンガーをイガイ棚に取り付けたものである。このような吊り下げアセンブリは、二枚貝の上を流れる水の流れを促進し、より効果的に二枚貝に近い位置で水の流れを分流させることを可能にする。きめの粗い素材としては、二枚貝が棚に付着してぶら下がることができるナイロン製の網などがある。二枚貝は、異なる深さで吸い上げを行うように、アセンブリ132に沿って垂直に分散して配置してもよい。ただし、吊り下げアセンブリ130を作製する他の方法を適宜使用することができる。本実施形態において、第3濾過ステージ130内で使用される二枚貝は、養殖場の場所に在来しているものを使用することができる。例えば、本発明者らは、一例の濾過システム100が設置されるカナダ大西洋州に在来する二枚貝を使用している。二枚貝の侵略的な外来種の導入を回避するために、濾過システム100の位置に基づいて、適切な在来種である二枚貝を使用することができる。この種の選択における柔軟な原則は、使用する藻類種を選択する際にも適用することができ、濾過システムを設置する現場の位置に基づいて、最も侵襲性の低い、最も効率的な種が選択されることを確実にする。したがって、濾過システム100は、当該養殖施設の現場に最も適合するように、適合、構成、又は変更され得る。
【0042】
また、本実施形態に示されるように、第3濾過ステージ130は、濾過システム100の2つのセル、すなわち、参照符号130-1を用いて示される第3セル及び参照符号130-2を用いて示される第4セルに亘っている。第3セル130-1と第4セル130-2との間の水流を容易にするために第3移送導管を設けることができる。また、第4セル130-2は、藻類細胞、ひいては汚染物質をさらに除去するための二枚貝を包含する。流体の流れ方向は、参照符号134-2が付された矢印によって示される。第3セル130-1及び第4セル130-2は、共に、藻類細胞に存在する汚染物質を除去することで、飲料水処理に見られるプロセスに類似する清澄化プロセスを効果的に提供する。濾過された水は、その後、出口150で濾過システム100を出ることができ、海面養殖設備の利点(すなわち、コスト、エネルギー使用、及びカーボンフットプリントの削減)を備えた、養殖魚介類のための陸上水質の水を提供することを意図している。二枚貝を包含する追加のセルを、所望に応じてさらに含んでもよい。しかし、所望の濾過レベルを得るためには、二枚貝を包含する1つのセルで十分であることも想定される。濾過システム100の動作中、濾過中の水は、より早い位置又は「上流の」位置に戻るように再循環されることがある。例えば、図1に描かれた実施形態では、第3濾過ステージ130の第4セル130-2内の水の一部を同じステージの第3セル130-1に戻して再循環させる再循環プロセスが採用される。再循環は、第4セル130-2内の水を、再循環導管136を通じて第3セル130-1に戻すように、ポンプで送ることによって実行することができる。例示的な実施形態では、流量は、約908L(240ガロン)/時(GPH)~約3785L/時(1000GPH)の間で変動してもよい。この再循環プロセスは、二枚貝の区画による藻類細胞の除去を確実にするために実施され得る。処理中の水は、廃水が意図された通りに各セルを確実に移動するように、これら2つのセルの間で積極的にポンプ搬送されてもよい。
【0043】
いくつかの実施態様では、図1に示すように、第2再循環導管140を介した第2再循環経路も提供される。この再循環経路は、第3濾過ステージ130の第4セル130-2で処理されている水を第2濾過ステージ120の第2セルに戻すものである。
【0044】
他の実施形態では、同じ濾過システム100を、養魚場にて生成された排泄物/流出物を濾過するために使用又は構成することもできる。廃水は、第1濾過ステージ110に入って、大きな粒子をスクリーンに通すようにしてもよい。続いて、第2濾過ステージ120において藻類によって窒素化合物及びリン酸塩を利用することができる。これらの藻類を、今度は第3濾過ステージ130の二枚貝が摂取することで、水が出口150から周囲の水に放出される前に、水塊から過剰な窒素及びリンを除去し得る。あるいは、いくつかの実施形態では、出口150から出る水は、さらに濾過を施すために、同じ構成又は異なる構成を有する第2濾過システムに向けられてもよい。
【0045】
一般に、任意の二枚貝/藻類の組み合わせを、本開示の濾過システム100において使用することができる。北大西洋海洋市場のための例示的な実施形態では、藻類種としてハプト藻(Isochrysis sp.)2Lと、ムラサキガイ(Mytilus edulis)200個と、が使用されてもよい。これらの種及びその量は、窒素廃棄物を95%除去するという目標に対して、藻類:二枚貝の比が適切であることを確認するために、試験段階で何度も室内実験を行うことにより、決定された。例示した実施形態では、ハプト藻及びムラサキガイが存在し得るが、藻類/二枚貝の濾過効果のための最適な条件(すなわち、温度、塩分)を確保にするために、バイオフィルタの位置に基づいて種を変更してもよい。これにより、万が一、これらの生物種が系外に放出された場合にも、侵入種又は外来種が持ち込まれるリスクがないようにする。
【0046】
本開示から理解されるように、藻類と二枚貝との組み合わせは、それらの周囲の水生環境からマイクロプラスチック及び窒素廃棄物を除去するために使用可能である。したがって、二枚貝種が藻類を消費することによって必要な栄養素を得ることができる限り、濾過システム100は機能することができる。したがって、上述したシステムは、水処理のために藻類と二枚貝を収容するための最小限の2つのセルで機能させることができる。冗長性を持たせるため、あるいは所望の処理結果を得るために、必要に応じて追加のセルを導入することができる。例えば、フィルタメッシュを包含するセルを追加することができる。
【0047】
本発明者らは、二枚貝の栄養源として、大型藻類(Ulva)を使用することができることを見出した。さらに、植物プランクトンも使用することができる。例えば、カナダ大西洋州では、植物プランクトンは、ダルハウジーアクアトロン(Dalhousie Aquatron)、ケッチ・フラバー(Ketch Flarbour)のNRCマリーンリサーチステーション(NRC Marine Research Station)、アカディアン・シープランツ(Acadian Seaplants)、及びその他の地元の供給源から調達することが可能である。二枚貝及び植物プランクトン培養株を地元の供給源から調達することにより、バイオフィルタ法テンプレート(Biofilter Method Template :BMT)として知られるテンプレートが確立される。本発明者らは、濾過システム100に使用される二枚貝及び藻類の種の入手/選択を簡略化するために、このテンプレートを開発した。BMTは、二枚貝と藻類の種の間に自然界で見られる水の清澄化関係を模倣し、この関係を機械濾過システム又はプロセス内の用途に利用するプロセスである。BMTは、北大西洋海洋市場向けの前述の例示的な実施形態の量/比率と同様の、所定の場所の生態系内に共生する藻類と二枚貝の組み合わせを設定し、特定の特性を満たし、濾過システム100における使用の適合性を示唆する。このような基準の例としては、二枚貝の吸い上げ速度及び吸い上げ範囲、ポンプに対する二枚貝の生存率、二枚貝の寿命、藻類による窒素及びアンモニアの凝集、並びに、藻類による微粒子の凝集が挙げられる。二枚貝と藻類の適切で局所的な組み合わせのためにBMTを使用すると、濾過システム100内の二枚貝と藻類の間の自然な濾過関係を模倣することができ、種の場所ベースの調達/選択を迅速化することができる。一例の組み合わせにおいて、本発明者らは、地元で調達された植物プランクトンが、栄養価が高く、カナダ大西洋州での展開で利用されるアメリカンオイスターと共に使用するのに適していることを見出した。さらに、この植物プランクトンは、窒素及びアンモニアを凝集させることが可能である。
【0048】
BMTは、濾過システム100の配備が望まれる世界中の任意の地域に適用することができる。それらの局所的な水生環境において、大量の微粒子を濾過することができる種を見つけることが好ましい。
【0049】
マイクロプラスチック、フラン、ダイオキシン、窒素、リンなどの特に有害な物質(PFIS)などの微粒子を最も多く凝集させることができる植物プランクトンも考慮に入れてもよい。BMTは、濾過システム100の位置を決定するために必要なダイナミズムを提供する。したがって、BMTの適用により、世界中の現地の養殖施設から二枚貝を取得することができ、濾過システム100の任意の操作者は、現地の生態系に外国の潜在的な侵入種を導入する懸念もなく、グローバルに稼働させることが可能になる。地元の藻類と二枚貝の種の組み合わせについて試験を実施し、それらの濾過速度、又は二枚貝と藻類が所定のレベルの水純度を得るために水中の望ましくない微粒子を「処理」又は摂取する速度を決定することが可能である。この評価は、微粒子を濾過するそれら生物種の能力、すなわち、濾過システム100において使用される生物種の生存能力、並びに最適な濾過性能を得るために、藻類と二枚貝の組み合わせが必要とする動作条件(例えば、水流量、温度、曝気など)を決定するために使用することができる。光学的スペクトル測定は、時間の関数として廃水濁度の減少(すなわち、微粒子が減少した結果としての水の透明度の増加)を評価するために、試験手順において使用され得る。植物プランクトン/藻類培養株を包含する対照試料を採取することができる。一定期間後に別の試料を採取し、濁度の変化を判定することができる。この評価により、操作者は、所定の二枚貝と藻類の組み合わせの濾過速度を決定することができる。他の実施形態では、濾過システム100は、適切なチューブ(図示せず)で連結された3つの区画又はセルからなるように構成されてもよい。水の流れは、少なくとも部分的に重力を用いて生じさせてもよく、少なくとも部分的にポンプを用いて生じさせてもよい。
【0050】
第1区画は、マイクロプラスチックを含む廃水を受け入れるように構成されてもよい。このような水は、その区画の底の上方に配置された無機メッシュフィルタを通して流し、重力を利用してより大きなマイクロプラスチックをふるい落とすことができる。
【0051】
このふるいにかけられた水は、元の入力水と比較するために第2セル又は区画に集められ、次いで、第3セル又は区画にポンプで送出されてもよい。
この第3区画には二枚貝が充填されてもよく、また、水は、滞留時間にわたって静置されてもよく、無機メッシュによって捕捉されない任意の残りのマイクロプラスチック粒子を二枚貝によって吸い出すようにしてもよい。一実施形態では、ホンビノスガイ(正式には、Mercenaria mercenariaとして知られている)を使用して、汲み上げられた水の圧力下で清澄化を行う。流速、水温、水量を変えて試験を行い、この種の生物が清澄化を行うための最適なパラメータを決定することができる。
【0052】
濾過システムの別の実施形態は、前述の実施形態で使用された自重による落水とポンプとの組み合わせとは異なり、直線状に配置された4つの大型容器からなる4つの区画を含んでもよい。図2は、直線的に構成された濾過システム200を示す。図1の濾過システム100における要素と対応する要素には、同様の符号を付してある。水は、入口202を経由して、第1濾過ステージ210に対応する第1区画に入ることで、濾過システムに入る。大きな粒子状物質を濾過するために、対応するふるいフィルタ(図示せず)が第1濾過ステージ210の内部に設けられていてもよい。そして、水は、汚染物質の塊状化又は凝集のために、第1移送導管216を介して第2濾過ステージ220に対応する第2区画に移動してから、移送導管226,236を介して第3濾過ステージ230に対応する第3区画230-1及び第4区画230-2にそれぞれ通される。第3濾過ステージ230から第2濾過ステージ220に水を再循環させるために、再循環導管240も設けてもよい。濾過された水は、第4区画230-2に配置された出口250から出る。
【0053】
図2の本実施形態の構成は、より大規模に(すなわち、所定期間により大きな体積で)廃水を処理するように動作可能であってもよい。濾過を最大限に行うために、区画間で水を再循環させるための追加の接続部を追加することができる。上記の濾過システムと同様に、物理的に大きな粒子を濾過するために、最初の濾過段階で無機メッシュフィルタを使用することができる。第4区画を有するシステムの最後の2区画は、水からより小さな粒子を吸い上げるために、地元の二枚貝を包含するべく使用することができる。追加の区画220は、メッシュ濾過区画210の間であって、二枚貝を包含する第1区画230-1の前に、並行して実施される、さらなる生物(バイオ)濾過のための追加の藻類を収容するために追加することができる。図3Aは、垂直方向に積み重ねた構成の濾過システム300の別の実施形態を示し、この場合、区画又はセルに対応する容器の各々は、垂直方向の配置で積み重ねられる。図1及び図2の濾過システム100,200に見られる対応する要素には、同様の番号を付している。入口(図示せず)を介して濾過システムに入る廃水は、第1濾過ステージ310に対応する第1区画に入る。大きな粒子状物質を濾過するために、対応するふるいフィルタ(図示せず)が第1濾過ステージ310の内部に設けられてもよい。さらに追加で、又はこれに代えて、微粒子を除去するために、微粒子フィルタ(図示せず)が第1ステージ310の内部に含まれてもよい。その後、廃水は、粒子及び汚染物質の塊状化又は凝集のために、第1移送導管316を通じて第2濾過ステージ320に対応する第2区画に移動させてから、移送導管326,336を通じて第3濾過ステージ330に対応する第3区画330-1及び第4区画にそれぞれ受け渡される。この実施形態における区画の垂直配置は、廃水が追加のポンプなしで区画の間を流れることを可能にする。再循環導管340も、ポンプによって、廃水を第3濾過ステージ330から第2濾過ステージ320に再循環させるために設けられてもよい。濾過された水は、第4区画330-2に配置された出口350からを出て行く。いくつかの実施形態において、区画320は、LED生育用ライト及び機械的エアレータを備えてもよく、これらは、藻類の成長を促進するために、それぞれ適切な光度及び曝気を提供する。エアレータは、廃水を混合及び撹拌し、生物の付着を抑制する役割も果たす。いくつかの実施形態では、出口350からの廃水は、記載された濾過システムが他の一般的に利用可能な濾過システムを補完するために使用されるように、異なる濾過技術を使用して追加の濾過ステージを通過するようにしてもよい。
【0054】
図3Bは、各濾過区画が棚360上に提供される代替的な構成を示す。
以下の例は、本発明の実施形態をさらに説明するために提供されるものである。この例は例示にすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0055】
例1
生物利用プロセスによって養殖廃水から栄養塩を除去できるかどうかを判断するために、一連の実験を行った。以下の模式図(図式1)は、本研究で実施した実験のプロセスフロー図である。実験は、(1)生物利用プロセスの実行可能性、(2)バイオリアクタの最適な流量と滞留時間、(3)窒素とリンの除去を強化するための最適なバイオリアクタの条件と種を決定するために、ベンチスケールで実施された。
【0056】
【表1】
このプロセスの実行可能性を評価するための初期実験は、地元ノバスコシア州の孵化場からの養殖廃水を使用して、ベンチトップ型のバイオフィルタユニットを用いて行われた。窒素とリンの除去がバイオフィルタシステムのどこでどの程度行われているかを調べるため、入口、出口、藻類チャンバ、二枚貝チャンバで試料が採取された。実験は、海水及び淡水の藻類と二枚貝の種類と、それに対応する流入養殖廃水を用いて行われた。淡水における藻類と二枚貝の結果は、以下のグラフ1の通りである。
【0057】
【表2】
バイオフィルタの複数のプロセスをさらに評価するため、藻類チャンバでの流量と滞留時間の最適な組み合わせを決定するための一連の実験が行われた。ベンチスケールの藻類チャンバ容積と、6時間、1日、2日の滞留時間から、3種類の流量を算出し、実験に使用した。この実験の目的は2つあり、それは、(1)どの滞留時間が最も窒素とリンの除去率が高いかを調べることと、(2)この実験のデータを使って、ノバスコシア州の孵化場から集めた流量データから、養殖施設用のフルスケールのバイオフィルタのサイズを算出すること、である。
【0058】
試料は以下の手順で採取した。最初の6時間は、3つの滞留時間の全てについて、流入廃水、藻類チャンバ、二枚貝チャンバ、システムからの流出水、の4カ所において、2時間おきに試料を採取した。6時間を超える滞留時間では、サンプリングの増分は、初日は6時間ごと、最終日は12時間ごとに増加させた。試料は控えの分も採取し、試料保管に関する米国環境保護庁のガイドラインに従って保管した。
【0059】
流速と滞留時間の最適化を図りながら、マクゴーワン湖(McGowan Lake)から入手した野生型混合株を利用した。この野生型複合株の有効性を評価するために、クロレラ種(Chlorella sp)の単一株で試験した。クロレラは、淡水藻類の中でも丈夫で成長が早いことで知られ、多くの研究が行われていることから、クロレラ属を比較対象として選択した。クロレラと野生型混合株の使用効率を評価するため、図1のベンチトップ型の2つの実験を行った。1つ目は藻類バイオリアクタにクロレラ属を用い、2つ目はマクゴーワン湖の高濃度の野生型混合株を用いた。各試験は、保持時間2日、流量0.026L/分で実施し、各生物種のリン及び窒素廃棄物の除去能力、並びに他の水質指標(pH、BOD、COD、TSS)へのシステムの効果について観察した。いずれの試験もケープブレトンの州立孵化場から採取した廃水を用いて実施し、各採取廃水を使用する際には、未処理の廃水を採取してネガティブコントロールとした。
【0060】
先の2日間のテストと同様に、検出期間の最初の8時間は2時間おきに、次の18時間は6時間おきに、最後の24時間は12時間おきに試料を採取した。試料は、ベンチトップシステム内の各処理ステージ(廃水流入、藻類バイオリアクタ、二枚貝バイオリアクタ、処理済廃水)において、控えの分も採取された。これら試料は、試料保管に関する米国環境保護庁のガイドラインに従って保管された。化学分析は、ダルハウジー(Dalhousie)大学の水・資源研究センター(Centre for Water and Resource Studies)に委託した。
【0061】
各実験期間中、水質試料の控えは少なくとも二重、可能であれば三重に採取された。
水の試料は、ダルハウジー大学イノベーティブウェイストマネジメントラボラトリ(Innovative Waste Management laboratory)において、ブラン・アンド・リューベ分析器III(Bran and Luebbe AutoAnalyzer III、Seal Analytical Inc.,Mequon,WI,USA)を使用して、硝酸態窒素(N0-N)とアンモニア性窒素(NH-N)の濃度を測色計(colorimeter)で測定した。
【0062】
本明細書で使用される例及び対応する図は、説明のためのものである。本明細書で表される原理から逸脱することなく、異なる構成及び用語を使用することができる。
本発明は、特定の特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、その様々な変更が当業者には明らかであろう。特許請求の範囲は、実施例に示された例示的な実施形態によって制限されるべきではなく、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0063】
参考文献一覧
・Cauwenberghe LV, Janssen CR. 2014. Microplastics in bivalves cultured for human consumption. Environmental Pollution 193:65-70.
・Gifford S, Dunstan R, Oconnor W, Roberts T, Toia R. 2004. Pearl aquaculture - profitable environmental remediation? Science of The Total Environment 319:27-37.
・IntraFish. 2018. Land-based salmon farming Aquaculture’s new reality.
・Webb JL, Vandenbor J, Pirie B, Robinson SM, Cross SF, Jones SR, Pearce CM. 2013. Effects of temperature, diet, and bivalve size on the ingestion of sea lice (Lepeophtheirus salmonis) larvae by various filter-feeding shellfish. Aquaculture 406-407:9-17.
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】