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特表2023-526117連続細胞培養による生細胞を適応進化させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(54)【発明の名称】連続細胞培養による生細胞を適応進化させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230613BHJP
   C12M 3/02 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 1/14 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20230613BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20230613BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12M3/02
C12N1/14 B
C12N1/16 A
C12N1/20 A
C12N5/04
C12N5/071
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571761
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021063352
(87)【国際公開番号】W WO2021234033
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】2005430
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522454264
【氏名又は名称】アルター
【氏名又は名称原語表記】ALTAR
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】マルリエール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】パトルイ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】トランカール,シモン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA04
4B029BB02
4B029BB04
4B029BB06
4B029BB07
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4B065BC08
4B065CA42
4B065CA43
4B065CA50
4B065CA51
(57)【要約】
本発明は、生細胞の連続培養による生細胞を適応進化させる方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞の連続培養による、ヒト胚性幹細胞を除く生細胞を適応進化させる方法であって、n個の培養容器(RCi)が使用され、iが1~nの範囲であり、n≧2であり、前記方法が、
a)少なくとも1つの液体培地と生細胞を前記n個の培養容器のそれぞれに導入する工程、
b)前記n個の培養容器のそれぞれにおいて、所与の選択的状況に基づいて、事前に規定された培養パラメータを使用して、前記n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、決定された成長段階に到達するまで前記生細胞を培養し、前記n個の培養容器のそれぞれにおいて、前記液体培地中の生細胞の懸濁液を得る工程、
c)工程b)で得られた少なくとも2つの培養容器(RCi)からの生細胞の前記懸濁液の少なくとも一部を混ぜ合わせて、生細胞の混合懸濁液を得る工程、
d)工程c)で得られた生細胞の前記混合懸濁液を均質化して、混合生細胞の均質化懸濁液を得る工程、
e)工程d)で得られた混合生細胞の前記均質化懸濁液の少なくとも一部を、少なくとも2つの培養容器(RCi)に分配する工程、
f)工程b)~e)を繰り返す工程、
g)前記n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、所望の表現型を獲得した生細胞を数サイクル培養した後に回収する工程、
を含むことを特徴とする、生細胞を適応進化させる方法。
【請求項2】
生細胞が、ヒト、動物、又は植物の真核細胞又は原核細胞から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)の前記選択的状況が、ケモスタット、タービドスタット、培地スワップ、及び反復バッチから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)の前記事前に規定された培養パラメータが、温度、pH、細胞密度、培地組成、気体組成、特定の波長の電磁波への曝露、変異原性物質への曝露、又はそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)で得られた少なくとも2つの培養容器(Ri)からの生細胞の前記懸濁液の少なくとも一部を混ぜ合わせることからなる工程c)が、前記少なくとも2つの培養容器の1つを混合容器として使用する、又は前記少なくとも2つの培養容器から独立した混合容器で、前記の少なくとも2つの培養容器の内容物の全部又は一部を収容することを可能にすることで実行されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)が混合容器を使用して実行され、工程b)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部が少なくとも2つの培養容器から少なくとも1つの混合容器に移送されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
均質化工程d)が、機械的撹拌及び気体流の注入から選択される撹拌手段によって全体又は部分的に実施されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程e)が、工程d)で得られた混合生細胞の前記均質化懸濁液の少なくとも一部を少なくとも2つの培養容器(RCi)に移送することで構成されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程e)で移送された前記懸濁液の少なくとも一部は、混合生細胞の前記均質化懸濁液の体積の1~100%の間の画分に相当することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)を繰り返す場合、培養サイクル中に使用される前記選択的状況及び/又は前記培養パラメータは、先行培養サイクルで使用されたものと同じであっても異なっていてもよいことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
n個の培養容器(RCi)が使用され、iは1~nの範囲であり、nは少なくとも2に等しく、また、少なくともn-1個の混合容器(RMj)が使用され、jは1~n-1の範囲であり、前記少なくともn-1個の混合容器がそれぞれ、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け取るように配置された培養容器(RCi)であり、工程c)~e)が、
i)工程b)で得られた前記懸濁液の全部又は一部を、培養開始容器と呼ばれる培養容器(RCi)から移送先容器と呼ばれる混合容器(RMj)に移送することで、移送先への移送を実施すること、
ii)前記移送先容器(RMj)で、前記培養開始容器(RCi)の懸濁液を前記移送先容器(RCj)の懸濁液と均質化し、混合生細胞の均質化懸濁液を得ること、
iii)工程ii)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部を前記移送先容器(RMj)から前記開始培養容器(RCi)に移送し、戻し移送を実施すること、
iv)RCiとRMjを変化させながら、全ての懸濁液が少なくとも一度は二つ一組になって混ぜ合わされるように、先行工程i)~iii)を繰り返すこと、
で実行されることをさらに特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの混合容器は、前記培養容器のセットから独立した単一の容器であり、前記n個の培養容器の前記内容物を受け入れるように配置されていることを特徴とする、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
n個の培養容器(RCi)が使用され、iは1~nの範囲であり、nは少なくとも2に等しく、また、少なくとも1つの混合容器(RM)が使用され、前記少なくとも1つの混合容器が前記培養容器のセットから独立した単一の容器であり、前記n個の培養容器の内容物を受け取るように配置されており、工程c)~e)が、
c)工程b)で得られた生細胞の前記懸濁液の全部又は一部を、少なくとも2つの培養容器(RCi)から前記少なくとも1つの混合容器(RM)に移送し、混合された生細胞の懸濁液を得ること、
d)工程c)で得られた生細胞の前記混合懸濁液を前記少なくとも1つの混合容器(RM)で均質化して、混合生細胞の均質化懸濁液を得ること、
e)工程d)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部を、前記少なくとも1つの混合容器(RM)から前記少なくとも2つの培養容器(RCi)のそれぞれに移送すること、
で実行されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生細胞の連続細胞培養による生細胞を適応進化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生細胞はしばしば、例えば食品、動物飼料、香料、化粧品、燃料、化学物質、及び健康製品を生産するために使用される。微細藻類、菌類、酵母、及び細菌のような生細胞は、小さなセルサイズ、短い世代時間、及び比較的低廉な培養コストを含む、いくつかの有利な点を有している。しかしながら、製品の効率的な生産に必要な条件はしばしば、工業プロセスにおいて使用される、前記細胞の成長及び生存への最適条件とは異なる。
【0003】
製品の製造、分解、又はリサイクルには、人工的な条件下で得られる高性能な生細胞が必要であり、このことは生細胞の必要性と製品製造に必要な条件との間の妥協案を表している。生細胞の所望の性能を向上させるため、遺伝子組み換えが関連するアプローチを含む様々なアプローチが存在する。しかし、遺伝子組み換え生細胞及びその利用に関して、安全性及びヒトを含む他の生物への影響を含む、いくつかの異論があがっている。一方、どの遺伝子組み換えによって、所望の表現型を持つ生細胞が得られるかを完全に予測できるモデルは、現在は存在しない。
【0004】
したがって、別のアプローチがますます重要になっている。これらの代替アプローチは、例えば、遺伝子組み換え生物の使用を禁止する規制に基づきながら、所望の表現型を達成するために必要な変異の知識なしに産業上注目される変異体を得るため、微生物集団に自然に生じる遺伝子変異の可能性を利用し、非遺伝的に生細胞を改良することに基づく。
【0005】
遺伝的変異は、例えばランダム変異及び有性生殖によって、常に生成されている。したがって、集団中の生細胞は、所与の環境に対する適応の度合いが異なり、このことは選択の基礎となる。選択は、所与の細胞の集団において、時間の経過とともに有益な表現型形質が増加する傾向を指し、有益な表現型形質は、前記細胞の生存、交配、及び/又は繁殖の可能性を高める。同時に、前記細胞の生存、交配、及び/又は繁殖の可能性を低下させる表現型形質の頻度が低下する、又は集団から排除されることさえある。したがって、環境が変化しても、集団は、集団内に存在する遺伝的変異に基づき、有利な、つまり有益な表現型形質を蓄積し、有害な、つまり負の影響を持つ表現型形質を排除しながら、時間をかけてそれぞれの環境に適応できる。遺伝的変異の可能性は、例えば、製品の効率的及び商業的な生産など、意図した用途に望ましい表現型形質を選択することにより、人為選択の状況で利用される。しかし、効果的な人為選択の実施は困難である。
【0006】
特に、選択圧が高すぎると、自然突然変異によって出現する遺伝的多様性が制限される可能性があるため、人為選択では、目標とする表現型を効果的に達成するための最適な選択圧のパラメータを選択するという大きな課題に直面している。さらに、ほとんどの場合、成長速度の向上に関わる表現型形質、基準培地と比較して異なる組成の成長培地への適応、温度への適応、特定の濃度及び/又は栄養成分で存在する阻害剤への適応など、複数の表現型形質の選択が必要とされる。複数の表現型形質を順次選択していく、つまり表現型形質を次々と改良していくために、特定の表現型形質に特化した中間段階を通す必要があり、そこから他の形質へ人為選択することは困難、面倒、又は不可能である。人為選択によって、いくつかの表現型形質と並行して、つまり同時に改良することで、この障害を克服できる。
【0007】
低コスト及び/又は高収量の工業的生産に最適化された条件下で、所望する表現型、すなわち同時にいくつかの形質を獲得した懸濁状態にある生細胞を効率的かつ自動的に選択する代替解決策に対する必要性がある。
【0008】
US2012/0263690には、とりわけ温度耐性、化学物質耐性、及び紫外線耐性から選択された単一の表現型形質を獲得した微生物を人工的に選択する方法が記載されている。
【0009】
国際出願WO2009/112739には、一過性に酵素を分泌し、懸濁状態で増殖する所望の細胞を選択する方法であって、前記細胞は所望する酵素の分泌の決定要因であると知られている細胞密度値に維持される方法が記載されている。
【0010】
特許EP1135には、単一の選択的状況下、ケモスタット又はタービドスタットで細胞を増殖させる方法が記載されている。
【0011】
Mansらの論文(Mans et al.Current Opinion in Biotechnology、2018、vol 50、pages 47~56)には、酵母株の適応進化による燃料及び化学物質の生産量増加のための様々な方法が記載されている。酵母をある容器から別の容器に順次移送する方法、又は同じ容器で連続的に培養する方法がある。さらにこの論文では、適応進化は一般的に、選択された表現型形質と生物の他の生理学的側面の間のトレードオフを通じて起こり、一方で、非構成的な表現型形質、つまり選択圧によって誘導されたがその選択圧の適用がなくなると発現しなくなるものを選択してしまうリスクが残ることが指摘されている。これらの困難を回避するため、Mansらの論文で、生物を異なる選択的状況に曝露する動的な進化過程の必要性が強調されている。特に、ある容器から別の容器に移送する際に、培地を交互に入れる方策について説明されている。しかし、本方策には、選択的状況を順次交代させながら、一つの進化経路を探索することが含まれる。
【0012】
国際出願WO2018/152442は、プログラム可能な連続培養システムにおける微生物の液体培養の適応進化方法で、微生物培養を動的環境に曝露し、前記培養を培養適応度関数に重畳するストレスランプ関数に曝露した後、微生物培養の適応度の上昇に応答して微生物培養に加えるストレス量を増加させる方法を記載している。
【0013】
しかしながら、従来の提案されている方法は、多大な時間を必要とし、実行するのが面倒であり、とりわけ、いずれも所望の表現型、特にいくつかの表現型形質を同時に改良することを必要とする複雑な表現型を持つ微生物集団に迅速かつ効率的にアクセスすることはできない。
【0014】
それゆえ、所望する表現型を獲得した生細胞を迅速かつ効率的に得ることを可能にする、生細胞の適応進化のための新たな方法を開発することが必要であると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2018/152442号
【0016】
【非特許文献1】Mans et al.Current Opinion in Biotechnology、2018、vol 50、pages 47~56
【非特許文献2】Doring et al.ACS Synthetics Biology、2018、vol 7(9)、pages 2029~2036
【発明の概要】
【0017】
本発明は、その目的として、n個の培養容器(RCi)での前記生細胞の連続培養により、ヒト胚性幹細胞を除く生細胞を適応進化させる方法であって、iが1~nの範囲であり、n≧2であり、前記方法が、
a)少なくとも1つの液体培地と生細胞を前記n個の培養容器のそれぞれに導入する工程、
b)前記n個の培養容器のそれぞれにおいて、所与の選択的状況に基づいて、事前に規定された培養パラメータを使用して、前記n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、決定された成長段階に到達するまで前記生細胞を培養し、前記n個の培養容器のそれぞれにおいて、前記液体培地中の生細胞の懸濁液を得る工程、
c)工程b)で得られた少なくとも2つの培養容器(RCi)からの生細胞の前記懸濁液の少なくとも一部を混ぜ合わして、生細胞の混合懸濁液を得る工程、
d)工程c)で得られた生細胞の前記混合懸濁液を均質化して、混合生細胞の均質化懸濁液を得る工程、
e)工程d)で得られた混合生細胞の前記均質化懸濁液の少なくとも一部を、少なくとも2つの培養容器(RCi)に分配する工程、
f)工程b)~e)を繰り返す工程、
g)前記n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、所望の表現型を獲得した生細胞を数サイクル培養した後に回収する工程、
を含むことを特徴とする、生細胞を適応進化させる方法である。
【0018】
本発明者は、驚くべきことに、本発明方法で、選択的状況を並列的及び多重的に適用することにより、所望の表現型を持つ生細胞を選択及び収集できることを示した。本発明方法は、これらの選択的状況の単純又は連続的な使用と比較して時間を節約できるのが好ましい。特に、工程b)からe)を繰り返すことで、少なくとも2つの異なる培養容器から採取した生細胞の懸濁液を連続的に混合し、新しい培養容器に再分配でき、培養サイクルの過程で適用した選択的状況に最も反応する生細胞を徐々に選択し、所望の表現型を獲得した生細胞の集団を達成することが促進される。したがって、本方法により、生細胞の懸濁液がとり得る進化経路の数が増加し、所望の表現型が出現する確率及び速度が向上する。
【0019】
本発明は、とりわけ、生細胞の効率的な進化に対する必要性に取り組んでおり、このことは特に懸濁培養条件によく適しており、製品の生産、分解、又はリサイクルに最適化されている。
【0020】
本発明は、特に、異なる選択的状況及び/又は培養パラメータに基づいて徐々に増加する選択圧の下で並行して培養される異なる培養容器からの生細胞懸濁液の画分を頻繁に混合することによって、目標条件によく適応した生細胞を得ることに基づく。
【0021】
本発明の目的では、「連続培養」とは、少なくとも1つの液体培地中で実行される生細胞の培養であり、生細胞を長期間成長させ続けるために、前記培地の一部が更新されることを意味する。有利には、生細胞は予め規定されない多数の世代にわたって維持され、有利には生細胞の2世代超、有利には3世代超、有利には4世代超、有利には5世代超、有利には6世代超、有利には7世代超、有利には8世代超、有利には9世代超、有利には10世代超、有利には20世代超、有利には30世代超、有利には40世代超、有利には50世代超、有利には60世代超、有利には70世代超、有利には80世代超、有利には90世代超、有利には100世代超、有利には150世代超、有利には200世代超、有利には250世代超、有利には300世代超、有利には130世代超、有利には400世代超、有利には450世代超、有利には500世代超、、有利には550世代超、有利には600世代超、有利には650世代超、有利には700世代超、有利には750世代超、有利には800世代超、有利には850世代超、有利には900世代超、有利には950世代超、有利には1000世代超、有利には5000世代超、有利には10000世代超、有利には15000世代超、有利には20000世代超、有利には25000世代超、有利には30000世代超、有利には35000世代超、有利には40000世代超、有利には45000世代超、有利には50000世代超である。
【0022】
培地、又はその成分(希釈剤)の更新は、永久的、定期的、又は周期的に実行できる。前記培地は、その組成中の1つ以上の成分について更新、又はこれらの成分の混合物全体について更新できる。前記培地は、培養中の細胞の少なくとも0.01%が保持されるように更新される。有利には、培養中の細胞の少なくとも0.1%が懸濁状態にあり、有利には少なくとも1%、有利には少なくとも2%、有利には少なくとも3%、有利には少なくとも4%、有利には少なくとも5%、有利には少なくとも6%、有利には少なくとも7%、有利には少なくとも8%、有利には少なくとも9%、有利には少なくとも10%、有利には少なくとも11%、有利には少なくとも12%、有利には少なくとも13%、有利には少なくとも14%、有利には少なくとも15%、有利には少なくとも16%、有利には少なくとも17%、有利には少なくとも18%、有利には少なくとも19%、有利には少なくとも20%、有利には少なくとも21%、有利には少なくとも22%、有利には少なくとも23%、有利には少なくとも24%、有利には少なくとも25%、有利には少なくとも26%、有利には少なくとも27%、有利には少なくとも28%、有利には少なくとも29%、有利には少なくとも30%、有利には少なくとも31%、有利には少なくとも32%、有利には少なくとも33%、有利には少なくとも34%、有利には少なくとも35%、有利には少なくとも36%、有利には少なくとも37%、有利には少なくとも38%、有利には少なくとも39%、有利には少なくとも40%、有利には少なくとも41%、有利には少なくとも42%、有利には少なくとも43%、有利には少なくとも44%、有利には少なくとも45%、有利には少なくとも46%、有利には少なくとも47%、有利には少なくとも48%、有利には少なくとも49%、有利には少なくとも50%、有利には少なくとも51%、有利には少なくとも52%、有利には少なくとも53%、有利には少なくとも54%、有利には少なくとも55%、有利には少なくとも56%、有利には少なくとも57%、有利には少なくとも58%、有利には少なくとも59%、有利には少なくとも60%、有利には少なくとも61%、有利には少なくとも62%、有利には少なくとも63%、有利には少なくとも64%、有利には少なくとも65%、有利には少なくとも66%、有利には少なくとも67%、有利には少なくとも68%、有利には少なくとも69%、有利には少なくとも70%、有利には少なくとも71%、有利には少なくとも72%、有利には少なくとも73%、有利には少なくとも74%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも76%、有利には少なくとも77%、有利には少なくとも78%、有利には少なくとも79%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも81%、有利には少なくとも82%、有利には少なくとも83%、有利には少なくとも84%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも86%、有利には少なくとも87%、有利には少なくとも88%、有利には少なくとも89%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%の培養中の細胞が保存されるように、前記培地は更新される。
【0023】
本発明の目的では、「所望の表現型を獲得した生細胞」又は「細胞変異体」は、同一条件下で成長した親細胞と同一の生理的特性を持たない娘細胞を意味する。
【0024】
本発明の目的では、「適応進化させる方法」は、生細胞の集団が選択的状況に曝露され、有利な生理的変化を蓄積することで所望の表現型の獲得を促進する過程である。生理的変化は、遺伝子組み換え(点突然変異、遺伝物質の消失又は獲得)もしくはエピジェネティック修飾によって起こり、ストレス又は培養中の生細胞の挙動に永続的な影響を与え得る他の要因によってもたらされる可能性がある。
【0025】
本発明は、これらの生理的変化を事前に定めておく必要はない。それに対して、本発明の目的は、その表現型に至る遺伝的及び生理的修飾の事前知識なしに、所望の表現型を獲得した生細胞の出現を促進し、その後、所望の表現型を獲得した生細胞を回収することであり、前記表現型は、例えば、特にストレスに耐える、所与の条件下で成長する、所与の条件下でより速く成長し得る、培地をよりよく利用する、又は工業的基準を満たす他の特性を与えるなど、他の細胞に対して競争上の優位性を持つ。
【0026】
本発明の目的では、「選択圧」とは、可溶化又は気体化した毒性化合物によるストレス、可溶化又は気体化された必須化合物の不足によるストレス、温度上昇によるストレス、温度下降によるストレス、pH上昇によるストレス、pH低下によるストレス、特定の波長の電磁波への曝露、特に紫外線への曝露、赤外線への曝露、細胞にとって致死的な波長の電磁波への曝露、変異原性物質への曝露、又はこれらのストレスの組み合わせを意味し、これらのストレスは、例えば生細胞の倍加時間の増加による生産性の低下、例えば生細胞の生産量の減少による収率の低下、又は生細胞の消滅のいずれかにつながる。
【0027】
本発明の目的では、「細胞」又は「生細胞」又は「生細胞の集団」は、膜に囲まれた細胞質からなり、自律的に再生する能力を有する1つ以上の小さな生物学的実体を意味する。有利には、生細胞は、ヒト胚性幹細胞を除いて、真核生物又は原核生物、ヒト、動物、又は植物でありうる。微生物は細胞であると考えられている。有利には、生細胞は、哺乳類細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、微細藻類、植物細胞、真菌、及び微生物から選択される。本発明の目的では、「微細藻類」とは、単細胞の藻類を意味する。また、有利には、「生細胞」は、ヒト胚性幹細胞を除く、真核細胞又は原核細胞、ヒト、動物、又は植物で、ウイルス、ファージ、寄生虫に感染している可能性があり、及び/又は1つ以上の所望のプラスミドが組み込まれた細胞を意味する。
【0028】
本発明の目的では、「培養容器」又は「培養室」又は「培養槽」とは、所与の選択的状況に基づいて培地中で生細胞を培養する容器で、特に所与の培養パラメータに基づく操作規則に基づいて培養条件が設定される様式を、所与の成長段階に到達するまで確立することを意味する。特定の実施形態では、培養容器はリサイクル可能である。特定の実施形態では、培養容器は使い捨てである。
【0029】
本発明の目的では、「懸濁液」は、生細胞を含む液状培地を意味する。
【0030】
本発明によれば、工程b)で得られた少なくとも2つの培養容器(Ri)からの生細胞の懸濁液の少なくとも一部を混ぜ合わせることからなる工程c)が、前記少なくとも2つの培養容器の1つを混合容器として使用する、又は前記少なくとも2つの培養容器から独立した混合容器で、前記少なくとも2つの培養容器の内容物の全部又は一部を収容することを可能にする、ことで実行されうる。
【0031】
本発明の目的では、「混合容器」又は「混合槽」は、少なくとも2つの培養容器の内容物が混合される容器を意味する。したがって、混合容器には、少なくとも最初の培養容器からの懸濁液と2番目の培養容器からの懸濁液が含まれる。有利には、本発明方法は、培養容器と同数の混合容器を含んでもよい。有利には、混合容器の数は1~nの範囲で変更してよい。特定の実施形態では、混合容器の数は少なくとも2である。特に有利な実施形態では、混合容器の数は3に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は4に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は5に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は6に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は7に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は8に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は9に等しい。特に有利な別の実施形態では、混合容器の数は10に等しい。
【0032】
特定の実施形態では、前記混合容器はリサイクル可能である。特定の実施形態では、前記混合容器は使い捨てである。
【0033】
工程a)において、少なくとも1容積の液体培地と特定量の生細胞を、n個の培養容器の各々に導入する。有利には、特定量の生細胞は、少なくとも1個の生細胞、少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも20個の生細胞、有利には少なくとも30個の生細胞、有利には少なくとも40個の生細胞、有利には少なくとも50個の生細胞、有利には少なくとも60個の生細胞、有利には少なくとも70個の生細胞、有利には少なくとも80個の生細胞、有利には少なくとも90個の生細胞、有利には少なくとも100個の生細胞、有利には少なくとも200個の生細胞、有利には少なくとも300個の生細胞、有利には少なくとも400個の生細胞、有利には少なくとも500個の生細胞、有利には少なくとも600個の生細胞、有利には少なくとも700個の生細胞、有利には少なくとも800個の生細胞、有利には少なくとも900個の生細胞、有利には少なくとも1000個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも10個の生細胞、有利には少なくとも1010個の生細胞、有利には少なくとも1011個の生細胞、有利には少なくとも1012個の生細胞を意味する。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの培地は、生細胞の成長に必須の栄養素を含む。当業者は使用される生細胞のタイプに基づく少なくとも1つの培地、及び特にその組成の適応の仕方を知っているであろう。有利には、前記少なくとも1つの培地は、新鮮で無菌の培地である。
【0035】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの培地及び生細胞は、培地槽をn個の培養容器のそれぞれに接続することを可能にする供給手段、例えばラインによって接続されたポンプ及びバルブを介して、n個の培養容器のそれぞれに導入される。
【0036】
工程b)において、前記の決定された成長段階は、細胞密度、又はpH、蛍光、放射能、生成された分子の濃度、栄養素などの消費された分子の濃度、毒性物質の存在、希釈率、ストレス培地の注入数、培地の2回の注入間の経過時間などの培地で測定可能な物理的/化学的指標に関連する、事前に定められた期間の終了時点で到達することが可能である。
【0037】
この「決定された成長段階」は、目標とする表現型に基づいてもよいし、実験的又は文献データから事前に確立された典型的な成長曲線に基づいてもよい。
【0038】
特定の実施形態では、細胞密度は光学測定により計測することができる。
【0039】
特に有利な実施形態では、測定可能な物理的/化学的指標の特定の値、例えば、細胞密度の閾値、特定の希釈率、ストレス培地の注入数、培地の2回の注入間の経過時間、特定のpH、特定の温度、懸濁液を撹拌する特定の気体組成、特定の蛍光、特定の放射能、特定の強度及び周波数での電磁波又は放射性放射線、特定の生成分子濃度、特定の栄養素濃度、特定の成長因子濃度、特定の毒性物質濃度が設定されている。
【0040】
本方法において、培地の播種後に生細胞が設定値まで成長する。この臨界値に少なくとも1つの培養容器で到達し、培養物、つまり培地と生細胞からなる懸濁液の全部又は一部が少なくとも1つの混合容器に移送される。
【0041】
別の特定の実施形態では、前記の決定された成長段階は、事前に規定された持続期間に関連していてもよい。有利には、事前に規定された持続期間は、1分、有利には2分、有利には3分、有利には4分、有利には5分、有利には6分、有利には7分、有利には8分、有利には9分、有利には10分、有利には15分、有利には20分、有利には25分、有利には30分、有利には35分、有利には40分、有利には45分、有利には50分、有利には55分、有利には60分、有利には65分、有利には70分、有利には75分、有利には80分、有利には85分、有利には90分、有利には95分、有利には100分、有利には105分、有利には110分、有利には115分、有利には120分後、有利には3時間、有利には4時間、有利には5時間、有利には6時間、有利には7時間の培養、有利には8時間、有利には9時間の培養、有利には10時間、有利には11時間の培養、有利には12時間、有利には13時間の培養、有利には14時間、有利には15時間の培養、有利には16時間、有利には17時間の培養、有利には18時間、有利には19時間の培養、有利には20時間、有利には21時間の培養、有利には22時間、有利には23時間の培養、有利には24時間、に固定しうるが、このリストは限定的ではない。
【0042】
有利には、前記の決定された成長段階は、培養1分後、有利には2分後、有利には3分後、有利には4分後、有利には5分後、有利には6分後、有利には7分後、有利には8分後、有利には9分後、有利には10分後、有利には15分後、有利には20分後、有利には25分後、有利には30分後、有利には35分後、有利には40分後、有利には45分後、有利には50分後、有利には55分後、有利には60分後、有利には65分後、有利には70分後、有利には75分後、有利には80分後、有利には85分後、有利には90分後、有利には95分後、有利には100分後、有利には105分後、有利には110分後、有利には115分後、有利には120分後、有利には3時間後、有利には4時間後、有利には5時間後、有利には6時間後、有利には7時間後、有利には8時間後、有利には9時間後、有利には10時間後、有利には11時間後、有利には12時間後、有利には13時間後、有利には14時間後、有利には15時間後、有利には16時間後、有利には17時間後、有利には18時間後、有利には19時間後、有利には20時間後、有利には21時間後、有利には22時間後、有利には23時間後、有利には24時間後に達しうるが、このリストは限定的ではない。
【0043】
この場合、本方法において培地の播種後に、生細胞は事前に設定された期間成長する。この培養時間に到達すると、培養物、つまり培地と生細胞からなる懸濁液の全部又は一部が少なくとも1つの混合容器に移送される。
【0044】
本発明方法の特定の実施形態では、工程b)において、選択的状況で生細胞が培養され、該選択的状況は、ケモスタット、タービドスタット、培地スワップ、及び反復バッチから選択される。
【0045】
本発明の目的では、「ケモスタット状況」又は「ケモスタット」は、細胞を希釈するために、限られた含有量で少なくとも1つの必須栄養素を含む単一の培地、好ましくは無菌のものを使用し、培地の流速が一定である細胞培養の一種を意味する。有利には、培地を所定の速度で連続的に、つまり中断せずに前記培養容器に供給し、前記容器の容積を一定に保ちながら細胞を希釈する。その代わりに、一定間隔で、前記培養容器に所定量の培地を送り、細胞を希釈する。
【0046】
本発明の目的では、「一定間隔」は、30秒毎、有利には35秒毎、有利には40秒毎、有利には45秒毎、有利には50秒毎、有利には55秒毎、有利には1分毎、有利には2分毎、有利には3分毎、有利には4分毎、有利には5分毎、有利には10分毎、有利には15分毎、有利には20分毎、有利には25分毎、有利には30分毎を意味する。
【0047】
本発明の目的では、「タービドスタット状況」又は「タービドスタット」は、細胞を希釈するために、全ての必須栄養素を過剰に含む単一の培地、好ましくは無菌のものを使用し、培地の流速が一定である細胞培養の一種を意味する。有利には、培地を可変速度で連続的に、つまり中断せずに前記培養容器に供給し、前記容器の容積を一定に保ちながら細胞を希釈し、濁度を前記閾値に保つ。その代わりに、一定間隔で、少なくとも1つの培養容器において、培養細胞密度を測定し、前記閾値と比較する。測定された細胞密度が閾値より小さい場合、次の間隔が終了するまで培養が続けられる。測定された細胞密度が閾値より大きい場合、前記培養容器に所定量の培地が送られて細胞が希釈される。
【0048】
本発明の目的では、「培地スワップ」とは、細胞培養状況の一種で、許容培地と呼ばれる培地とストレス培地と呼ばれる、2種類の異なる、好ましくは無菌の培地を使用し、前記培養容器の容積を一定に保ち、半連続的に培地を追加して細胞を希釈することを意味する。その場合、一定間隔で、少なくとも1つの培養容器において、培養細胞密度を測定し、前記閾値と比較する。測定された細胞密度が閾値より小さい場合、事前に決定された量の許容培地が培養容器に送られる。測定された細胞密度が閾値より大きい場合、培養容器に所定量のストレス培地が送られる。培地スワップは、Doringら(ACS Synthetics Biology、2018、vol 7(9)、pages 2029~2036)に記載されているように実施できる。
【0049】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの培地は、いわゆる「許容」培地、又はいわゆる「ストレス」培地であってもよい。「許容培地」は、細胞の成長に不可欠な栄養素や成長因子を含み、細胞成長阻害剤などの細胞死を引き起こす毒性物質を含まない、又は前記細胞にとって致死的ではない量で存在する、細胞の成長に完全に適合した培地である。「ストレス培地」は、細胞の成長に必須の栄養素を含み、細胞成長阻害剤のような細胞死を引き起こす量の毒性物質が存在する、又は細胞の成長に必須の成長因子が存在しない、又は毒性物質の量が無視できない割合で存在する、又は細胞の成長に必須の成長因子が欠落する、又は前記細胞の好ましい基質でない培地のことである。
【0050】
本発明の目的では、「反復バッチ」は、培地、好ましくは無菌のものを用いて細胞を希釈する、細胞培養状況の一種を意味する。この場合、細胞は、所定の細胞密度値に到達するまで、培地を希釈することなく少なくとも1つの培養容器内で成長する。細胞密度値に到達すると、懸濁液は所定の培養時間維持される。前記培養容器において細胞密度閾値に到達した後の時間が経過すると、前記培養容器に無菌培地を一定量で送る。代替の実施形態では、前記培養容器において細胞密度閾値に到達した後の時間が経過した場合、前記培養容器からの懸濁液の一部を、既に成長培地を含み、好ましくは無菌である少なくとも1つの異なる培養容器に送る。
【0051】
特定の実施形態では、工程b)において、生細胞はケモスタット選択的状況で培養される。
【0052】
特定の実施形態では、工程b)において、生細胞はタービドスタット選択的状況で培養される。
【0053】
特定の実施形態では、工程b)において、生細胞は培地スワップ選択的状況で培養される。
【0054】
特定の実施形態では、工程b)において、生細胞は反復バッチ選択的状況で培養される。
【0055】
特に有利な態様では、本発明方法の工程b)で使用される選択的状況はn個の培養容器の全てに対して同一でもよい。
【0056】
特に有利な態様では、本発明方法の工程b)で使用される選択的状況は、培養容器の各々で互いに異なってもよい。本発明の特定の態様においては、n個の培養容器の間で、異なる選択的状況を培養工程b)で使用することができる。有利には、n個の培養容器の間で、2つの異なる選択的状況を使用することができ、有利には3つの選択的状況、有利には4つの選択的状況、有利には5つの選択的状況を使用することができる。
【0057】
本発明方法の特定の実施形態では、工程b)において、生細胞を、事前に規定された培養パラメータを用いて、n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、決定された成長段階に到達するまで、上記で定義された選択的状況で培養し、懸濁液を得る。本発明方法の特定の実施形態では、工程b)の前記事前に規定された培養パラメータは、希釈率、温度、pH、細胞密度、培地組成、気体流組成、特定の波長の電磁波への曝露、変異原性物質への曝露、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0058】
本発明によれば、「異なる選択的状況」は、同じ性質であるが強度が異なる選択的状況、又はその強度に関わらず異なる性質の選択的状況のいずれかを意味する。したがって、例として、選択的状況がpHの場合、培養容器ごとに異なる値をとることがある。別の実施例によれば、所与の培養容器でも生細胞がpHの影響などの特定の選択的状況に曝露され、他の培養容器では生細胞が温度の影響などの別の特定の選択的状況に曝露される場合、選択的状況は異なる。
【0059】
本発明の目的では、「特定の波長の電磁波への曝露」とは、可視波長(400nmより長く800nmより短い)の電磁波への曝露、紫外線(400nmより短い)への曝露、赤外線(800nmより長い)への曝露、更には細胞を致死させる波長の電磁波への曝露を意味する。
【0060】
本発明の目的では、「変異原性物質」は、細胞のゲノムに挿入型、欠失型、又は置換型の変異を引き起こす化学物質を意味する。有利には、変異原性物質は、N-ニトロソ-N-エチル尿素(N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)とも呼ばれる)又はメタンスルホン酸エチル(メタンスルホン酸エチル(EMS)とも呼ばれる)などのアルキル化剤、プロフラビンやアクリジンオレンジなどのインターカレート剤、フリーラジカル、酸素イオン、過酸化物などの活性酸素から選択できる。
【0061】
特に有利な実施形態では、本発明方法の工程b)で使用される選択的状況は、n個の培養容器の全てにおいて同一であってもよい。
【0062】
特に有利な実施形態では、本発明方法の工程b)で使用される選択的状況は、 培養容器の各々で互いに異なってもよい。
【0063】
特に有利な実施形態では、本発明方法の工程b)で使用される培養パラメータは、n個の培養容器の全てにおいて同一であってもよい。
【0064】
特に有利な実施形態では、本発明方法の工程b)で使用される培養パラメータは、培養容器の各々で互いに異なってもよい。
【0065】
有利には、本説明の残りに対して、全ての培養容器(RCi)を以下のように表記する:
- T0i、培養容器RCiの工程b)で使用した初期温度、
- pH(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した初期pH、
- DO(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した初期細胞密度、
- MC(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した少なくとも1つの初期培地の組成、
- G(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した初期気体流の組成、
- λ(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した特定の初期波長の電磁波への曝露、
- Td(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した初期希釈率、及び
- AM(i、k)、培養容器RCiの工程b)で使用した変異原性物質への最初の曝露。
【0066】
有利には、工程b)において、細胞は、温度T0i、pH(i、k)に等しいpH、細胞密度DOk(i、k)、組成MC(i、k)の少なくとも1つの培地中、希釈率Td(i、k)、組成G(i、k)の気体存在下で、n個の培養容器の全てについて培養される。
【0067】
特定の実施形態によれば、培養方法は、例えば培養容器に導入された通気ロッドの形態の気体供給装置によって、気体流が懸濁液に圧力下で注入されることを提供できる。この気体流の注入により、懸濁液の通気、懸濁液の均質化(バブリングによる撹拌)が可能になり、培養容器内の気体圧が一定に保たれる。本方法によれば、有利には無菌気体流が培養容器を通過する。この気体流は、空気、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(C0)、メタン(CH)、硫化水素(HS)、酸素(O)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、又はこれらの の混合物から選択される気体により構成されうる。
【0068】
特定の実施形態では、前記培養方法は、培養容器において懸濁液を機械的に撹拌する手段を提供してもよい。
【0069】
工程c)において、工程b)で決定された成長段階に到達するとすぐに、少なくとも1つの培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部を、少なくとも1つの他の培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部と混ぜ合わせる。前述のように、懸濁液の混ぜ合わせは、少なくとも2つの培養容器のうちの1つで、混合容器として機能し、そのときの前記培養容器の内部物は、少なくとも1つの他の培養容器から来る懸濁液の全部又は一部を収容するのに十分である、又は前記の少なくとも2つの培養容器の各懸濁液の全部又は一部を収容する内容積を有する少なくとも1つの独立した混合容器で実施できる。
【0070】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも3つの培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部、有利には少なくとも4つの培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部、有利には少なくともn個の培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部は、少なくとも1つの混合容器に移送される。
【0071】
本発明の特定の実施形態では、工程c)において、少なくとも2つの培養容器に含まれる各々の懸濁液の一部のみが混ぜ合わされる。有利には、本発明の目的では、「懸濁液の一部」は、培養容器に含まれる懸濁液の少なくとも1%、有利には培養容器に含まれる懸濁液の少なくとも2%、有利には少なくとも3%、有利には少なくとも4%、有利には少なくとも5%、有利には少なくとも6%、有利には少なくとも7%、有利には少なくとも8%、有利には少なくとも9%、有利には少なくとも10%、有利には少なくとも11%、有利には少なくとも12%、有利には少なくとも13%、有利には少なくとも14%、有利には少なくとも15%、有利には少なくとも16%、有利には少なくとも17%、有利には少なくとも18%、有利には少なくとも19%、有利には少なくとも20%、有利には少なくとも21%、有利には少なくとも22%、有利には少なくとも23%、有利には少なくとも24%、有利には少なくとも25%、有利には少なくとも26%、有利には少なくとも27%、有利には少なくとも28%、有利には少なくとも29%、有利には少なくとも30%、有利には少なくとも31%、有利には少なくとも32%、有利には少なくとも33%、有利には少なくとも34%、有利には少なくとも35%、有利には少なくとも36%、有利には少なくとも37%、有利には少なくとも38%、有利には少なくとも39%、有利には少なくとも40%、有利には少なくとも41%、有利には少なくとも42%、有利には少なくとも43%、有利には少なくとも44%、有利には少なくとも45%、有利には少なくとも46%、有利には少なくとも47%、有利には少なくとも48%、有利には少なくとも49%、有利には少なくとも50%、有利には少なくとも51%、有利には少なくとも52%、有利には少なくとも53%、有利には少なくとも54%、有利には少なくとも55%、有利には少なくとも56%、有利には少なくとも57%、有利には少なくとも58%、有利には少なくとも59%、有利には少なくとも60%、有利には少なくとも61%、有利には少なくとも62%、有利には少なくとも63%、有利には少なくとも64%、有利には少なくとも65%、有利には少なくとも66%、有利には少なくとも67%、有利には少なくとも68%、有利には少なくとも69%、有利には少なくとも70%、有利には少なくとも71%、有利には少なくとも72%、有利には少なくとも73%、有利には少なくとも74%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも76%、有利には少なくとも77%、有利には少なくとも78%、有利には少なくとも79%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも81%、有利には少なくとも82%、有利には少なくとも83%、有利には少なくとも84%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも86%、有利には少なくとも87%、有利には少なくとも88%、有利には少なくとも89%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%を意味すると理解される。
【0072】
本発明の別の実施形態では、工程c)が混合容器を使用して実行され、工程b)で得られた懸濁液の少なくとも一部が少なくとも2つの培養容器から少なくとも1つの混合容器に移送される。この実施形態では、各々の培養容器から少なくとも1つの混合容器に移送される前記懸濁液の画分は、同一でも異なってもよい。
【0073】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの混合容器は、配置された培養容器であり、その内容積は、少なくとも2つの培養容器の内容物を収容するのに十分である。有利には、少なくとも1つの混合容器は、少なくとも3つの培養容器、有利には少なくとも4つの培養容器、有利には少なくともn個の培養容器の内容物を受け入れるように配置された培養容器である。有利には、「少なくとも1つの培養容器の内容物」は、工程b)で得られた懸濁液で、少なくとも1つの培養容器に存在するものを意味する。有利には、「少なくとも2つの培養容器の内容物」は、工程b)で得られた懸濁液で、少なくとも2つの培養容器に含まれ存在するものを意味する。
【0074】
本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの混合容器は、単一の容器で、培養容器のセットから独立し、培養容器のセットの内容物を受け入れるように配置されている。
【0075】
本発明の特定の実施形態では、工程c)が懸濁液を少なくとも1つの混合容器に移送する操作を含む場合、前記の少なくとも2つの培養容器から少なくとも1つの混合容器への懸濁液の各々の全部又は一部の移送は、移送手段によって実施され、前記移送手段は、特に、1つ以上のポンプ、1つ以上のバルブ、1つ以上の気体流の注入、1つ以上のピペットロボット、又はこれらの組み合わせで構成できる。
【0076】
有利には、前記ポンプは、機械的に駆動するか、又は有利には制御手段を使用して自動的に、電気的若しくは電子的に制御することができる。有利には、前記ポンプは、制御装置により駆動する、有利にはオートマトン又はコンピュータにより駆動するペリスタルティックポンプとすることができる。
【0077】
有利には、前記バルブは、機械的に駆動するか、又は有利には制御手段を使用して自動的に、電気的若しくは電子的に制御することができる。有利には、前記バルブは、制御装置により駆動する、有利にはオートマトン又はコンピュータにより駆動する電磁弁とすることができる。
【0078】
有利には、気体流の注入は、例えば培養容器に配置された気体供給装置、又は外部気体源から行うことができる。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、工程c)が移送する操作を含む場合、前記移送は、1つ以上のポンプ及び1つ以上のバルブを使用して実施される。
【0080】
本発明の別の特定の実施形態では、工程c)が移送する操作を含む場合、前記移送は、1つ以上のバルブ及び1つ以上の気体流の注入、例えば圧力差によって生じた気体流の注入を使用して実施される。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、工程c)が移送する操作を含む場合、前記移送は、1つ以上のピペットロボットを使用して実施される。
【0082】
本方法の工程d)は、工程c)による少なくとも2つの培養容器からの生細胞の懸濁液の全部又は一部の混ぜ合わせから得られる混合物を均質化することから構成される。本発明によれば、均質化工程により、少なくとも2つの培養容器のそれぞれからの細胞の混合容器の体積における分布がランダムな生細胞の懸濁液が得られる。
【0083】
本発明の特定の実施形態では、均質化工程d)は、特に機械的撹拌及び気体流の注入から選択される撹拌手段によって全体又は部分的に実施される。
【0084】
本発明の特定の実施形態では、均質化工程d)は、気体流の注入によって全体又は部分的に実施され、前記気体流は圧力下で工程c)の混合細胞懸濁液を含む前記容器に気体供給装置により注入される。この気体流の注入は、バブリングによる撹拌(例えばエアリフトの原理を用いて)により、懸濁液混合物の均質化を可能にする。有利には、この気体流は、選択した培養パラメータに応じて、空気、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(C0)、メタン(CH)、硫化水素(HS)、酸素(O)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、又はこれらの気体の混合物から選択される気体により構成されうる。
【0085】
好ましくは、本方法の工程e)は、工程d)で得られた、混合生細胞の前記均質化懸濁液の少なくとも一部を、少なくとも2つの培養容器(RCi)に移送することで構成される。
【0086】
本発明の特に有利な実施形態では、工程e)で移送された前記懸濁液の少なくとも一部は、混合生細胞の前記均質化懸濁液の1~100%の間の画分に相当する。
【0087】
有利には、工程e)に移送された混合生細胞の前記均質化懸濁液の体積の画分は、前記均質化懸濁液の全体積の少なくとも1%、前記均質化懸濁液の全体積の有利には少なくとも2%、有利には少なくとも3%、有利には少なくとも4%、有利には少なくとも5%、有利には少なくとも6%、有利には少なくとも7%、有利には少なくとも8%、有利には少なくとも9%、有利には少なくとも10%、有利には少なくとも11%、有利には少なくとも12%、有利には少なくとも13%、有利には少なくとも14%、有利には少なくとも15%、有利には少なくとも16%、有利には少なくとも17%、有利には少なくとも18%、有利には少なくとも19%、有利には少なくとも20%、有利には少なくとも21%、有利には少なくとも22%、有利には少なくとも23%、有利には少なくとも24%、有利には少なくとも25%、有利には少なくとも26%、有利には少なくとも27%、有利には少なくとも28%、有利には少なくとも29%、有利には少なくとも30%、有利には少なくとも31%、有利には少なくとも32%、有利には少なくとも33%、有利には少なくとも34%、有利には少なくとも35%、有利には少なくとも36%、有利には少なくとも37%、有利には少なくとも38%、有利には少なくとも39%、有利には少なくとも40%、有利には少なくとも41%、有利には少なくとも42%、有利には少なくとも43%、有利には少なくとも44%、有利には少なくとも45%、有利には少なくとも46%、有利には少なくとも47%、有利には少なくとも48%、有利には少なくとも49%、有利には少なくとも50%、有利には少なくとも51%、有利には少なくとも52%、有利には少なくとも53%、有利には少なくとも54%、有利には少なくとも55%、有利には少なくとも56%、有利には少なくとも57%、有利には少なくとも58%、有利には少なくとも59%、有利には少なくとも60%、有利には少なくとも61%、有利には少なくとも62%、有利には少なくとも63%、有利には少なくとも64%、有利には少なくとも65%、有利には少なくとも66%、有利には少なくとも67%、有利には少なくとも68%、有利には少なくとも69%、有利には少なくとも70%、有利には少なくとも71%、有利には少なくとも72%、有利には少なくとも73%、有利には少なくとも74%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも76%、有利には少なくとも77%、有利には少なくとも78%、有利には少なくとも79%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも81%、有利には少なくとも82%、有利には少なくとも83%、有利には少なくとも84%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも86%、有利には少なくとも87%、有利には少なくとも88%、有利には少なくとも89%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%、有利には100%である。
【0088】
本発明方法の工程e)のもう1つ実施形態では、工程d)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部をn個の培養容器に移送する場合、n個の各々の培養容器に移送される混合生細胞の前記均質化懸濁液の画分は、同一でも異なってもよい。
【0089】
本発明の特定の実施形態では、本発明方法は、iは1~nの範囲であり、nは少なくとも2に等しいn個の培養容器(RCi)、及びjは1~n-1の範囲であり、少なくともn-1個の混合容器(RMj)を含み、前記少なくともn-1個の混合容器がそれぞれ、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け取るように配置された培養容器(RCi)であり、前記方法は工程c)~e)が、
i)工程b)で得られた前記懸濁液の全部又は一部を、培養開始容器と呼ばれる培養容器(RCi)から移送先容器と呼ばれる混合容器(RMj)に移送することで、移送先への移送を実施すること、
ii)前記移送先容器(RMj)で、前記培養開始容器(RCi)の懸濁液を前記移送先容器(RCj)の懸濁液と均質化し、混合生細胞の均質化懸濁液を得ること、
iii)工程ii)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部を前記移送先容器(RMj)から前記開始培養容器(RCi)に移送し、戻し移送を実施すること、
iv)RCiとRMjを変化させながら、全ての懸濁液が少なくとも一度は二つ一組になって混ぜ合わされるように、先行工程i)~iii)を繰り返すこと、で実行されることをさらに特徴とする方法である。
【0090】
特に有利な実施形態では、nは3である。別の特に有利な実施形態では、nは4である。別の特に有利な実施形態では、nは5である。別の特に有利な実施形態では、nは6である。別の特に有利な実施形態では、nは7である。別の特に有利な実施形態では、nは8である。別の特に有利な実施形態では、nは9である。別の特に有利な実施形態では、nは10である。
【0091】
有利には、本発明方法は、3つの培養容器、第1培養容器RC1、第2培養容器RC2、第3培養容器RC3を含み、3つの培養容器は連続的に混合容器RM1、RM2、及びRM3として機能し、それぞれの培養容器は他の2つの培養容器の内容物を受け入れるように配置されており、前記方法は、工程c)~e)が、
i)第1培養容器RC1から、第1混合容器RM1としても機能する第2培養容器RC2に生細胞の懸濁液を移送し、移送先への移送を実施すること、
ii)第1培養容器RC1と第2培養容器RC2からの懸濁液を、第1混合容器RM1として機能する第2培養容器RC2で均質化し(RC2=RM1)、混合生細胞の均質化懸濁液を取得すること、
iii)前記懸濁液の少なくとも一部を第1混合容器RM1から第1培養容器RC1に移送し、戻し移送(return transfer)を実施すること、
iv)第3培養容器RC3から、第2混合容器RM2としても機能する第1培養容器RC1に懸濁液を移送し、移送先への移送を実施すること、
v)第3培養容器RC3と第1培養容器RC1からの懸濁液を、第2混合容器RM2として機能する第1培養容器RC1で均質化し(RC1=RM2)、混合生細胞の均質化懸濁液を取得すること、
vi)前記懸濁液の少なくとも一部を第2混合容器RM2から第3培養容器RC3に移送し、戻し移送を実施すること、
vii)第2培養容器RC2から、第3混合容器RM3としても機能する第3培養容器RC3に懸濁液を移送し、移送先への移送を実施すること、
viii)第2培養容器RC2と第3培養容器RC3からの懸濁液を、第3混合容器RM3として機能する第3培養容器RC3で均質化し(RC3=RM3)、混合生細胞の均質化懸濁液を取得すること、
ix)前記懸濁液の少なくとも一部を第3混合容器RM3から第2培養容器RC2に移送し、戻し移送を実施すること、で実行されることを特徴としている。
【0092】
本発明の別の特定の実施形態では、本発明方法は、iは1~nの範囲であり、nは少なくとも2に等しいn個の培養容器(RCi)、及びjは1~n-1の範囲であり、少なくともn-1個の混合容器(RMj)を含み、前記少なくともn-1個の混合容器はそれぞれ、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け取るように配置された培養容器(RCi)であり、前記工程c)~e)が、
i)工程b)で得られた生細胞の懸濁液の全部又は一部を、培養開始容器と呼ばれる培養容器(RCi)から移送先容器と呼ばれる混合容器(RMj)に移送することで、移送先への移送を実施すること、
ii)移送先容器(RMj)で、培養開始容器(RCi)の懸濁液を移送先容器(RMj)の懸濁液と均質化し、混合生細胞の均質化懸濁液を得ること、
iii)工程ii)で得られた懸濁液の少なくとも一部を移送先容器(RMj)から開始培養容器(RCi)に移送し、戻し移送を実施すること、
iv)培養開始容器(RCi)から移送先容器RMj+1へ懸濁液の全部又は一部を移送し、さらにn-(i+1)回の培養先移送とn-(i+1)回の戻し移送を実施するために、各繰り返しでjを1単位増やしながら、前記工程i)~iii)をn-(i+1)回繰り返し実施すること、
v)工程v)の終了ごとに培養開始容器がRCi+1となるように、各繰り返しでiを1ずつ増やしながら、工程i)からiv)をn-(i+1)回繰り返すこと、で実行されることを特徴とする。
【0093】
特に有利な実施形態では、nは3である。別の特に有利な実施形態では、nは4である。別の特に有利な実施形態では、nは5である。別の特に有利な実施形態では、nは6である。別の特に有利な実施形態では、nは7である。別の特に有利な実施形態では、nは8である。別の特に有利な実施形態では、nは9である。別の特に有利な実施形態では、nは10である。
【0094】
有利には、本発明方法は、3つの培養容器、すなわち第1培養容器RC1、第2培養容器RC2、第3培養容器RC3を含み、第2及び第3培養容器(RC2及びRC3)は連続的に混合容器RM1及びRM2として機能し、それぞれの培養容器RC2及びRC3は2つの培養容器の内容物を受け入れるように配置されており、前記方法は、前記工程c)~e)が、
i)第1培養容器RC1から、第1混合容器RM1としても機能する第2培養容器RC2に、工程b)で得られた生細胞の懸濁液を移送し、培養先移動を実施すること、
ii)第1培養容器RC1と第2培養容器RC2からの懸濁液を、第1混合容器RM1として機能する前記培養容器RC2で均質化し、混合生細胞の均質化懸濁液を取得すること、
iii)前記懸濁液の少なくとも一部を第1混合容器RM1から第1培養容器RC1に移送し、戻し移送を実施すること、
iv)第1培養容器RC1から、第2混合容器RM2としても機能する第3培養容器RC3に懸濁液を移送し、培養先移動を実施すること、
v)第1培養容器RC1と第3培養容器RC3からの懸濁液を、第2混合容器RM2として機能する前記第3培養容器で均質化し、混合生細胞の均質化懸濁液を取得すること、
vi)前記懸濁液の少なくとも一部を第2混合容器RM2から第1培養容器RC1に移送し、戻し移送を実施すること、
vii)第2培養容器RC2から、第2混合容器RM2としても機能する第3培養容器RC3に懸濁液を移送し、培養先移動を実施すること、
viii)第2培養容器RC2と第3培養容器RC3からの懸濁液を、第2混合容器RM2として機能する前記第3培養容器RC3で均質化すること、
ix)前記懸濁液の少なくとも一部を第2混合容器RM2から第2培養容器RC2に移送し、戻し移送を実施すること、で実行されることを特徴とする。
【0095】
本発明の別の特定の実施形態では、本発明方法は、n個の培養容器(RCi)が使用され、iは1~nの範囲であり、nは少なくとも2に等しく、また、少なくとも1つの混合容器が使用され、前記少なくとも1つの混合容器は前記培養容器のセットから独立した単一の容器であり、前記n個の培養容器の内容物を受け取るように配置されており、工程c)~e)が、
c)工程b)で得られた生細胞の前記懸濁液の全部又は一部を、少なくとも2つの培養容器(RCi)から前記少なくとも1つの混合容器(RM)に移送し、生細胞の混合懸濁液を得ること、
d)工程c)で得られた生細胞の前記混合懸濁液を前記少なくとも1つの混合容器(RM)で均質化して、生細胞の均質化混合懸濁液を得ること、
e)工程d)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部を、前記少なくとも1つの混合容器(RM)から前記少なくとも2つの培養容器(RCi)のそれぞれに移送すること、で実行されることを特徴とする。
【0096】
別の特に有利な実施形態では、nは3である。別の特に有利な実施形態では、nは4である。別の特に有利な実施形態では、nは5である。別の特に有利な実施形態では、nは6である。別の特に有利な実施形態では、nは7である。別の特に有利な実施形態では、nは8である。別の特に有利な実施形態では、nは9である。別の特に有利な実施形態では、nは10である。
【0097】
前記培養容器のセットから独立し、前記n個の培養容器の前記内容物を受け取るように配置された単一の容器の使用により、より簡単に実施でき、混合工程d)の速度を速めることができる。
【0098】
本発明の特に有利な実施形態では、工程e)で少なくとも2つの培養容器のそれぞれに移送された前記懸濁液の少なくとも一部は、混合生細胞の前記均質化懸濁液の体積の画分に相当し、前記画分は前記懸濁液の全体積の1~100%の間である。
【0099】
有利には、工程e)で移送された混合生細胞の前記均質化懸濁液の画分は、前記懸濁液の全体積の少なくとも1%、有利には少なくとも2%、有利には少なくとも3%、有利には少なくとも4%、有利には少なくとも5%、有利には少なくとも6%、有利には少なくとも7%、有利には少なくとも8%、有利には少なくとも9%、有利には少なくとも10%、有利には少なくとも11%、有利には少なくとも12%、有利には少なくとも13%、有利には少なくとも14%、有利には少なくとも15%、有利には少なくとも16%、有利には少なくとも17%、有利には少なくとも18%、有利には少なくとも19%、有利には少なくとも20%、有利には少なくとも21%、有利には少なくとも22%、有利には少なくとも23%、有利には少なくとも24%、有利には少なくとも25%、有利には少なくとも26%、有利には少なくとも27%、有利には少なくとも28%、有利には少なくとも29%、有利には少なくとも30%、有利には少なくとも31%、有利には少なくとも32%、有利には少なくとも33%、有利には少なくとも34%、有利には少なくとも35%、有利には少なくとも36%、有利には少なくとも37%、有利には少なくとも38%、有利には少なくとも39%、有利には少なくとも40%、有利には少なくとも41%、有利には少なくとも42%、有利には少なくとも43%、有利には少なくとも44%、有利には少なくとも45%、有利には少なくとも46%、有利には少なくとも47%、有利には少なくとも48%、有利には少なくとも49%、有利には少なくとも50%、有利には少なくとも51%、有利には少なくとも52%、有利には少なくとも53%、有利には少なくとも54%、有利には少なくとも55%、有利には少なくとも56%、有利には少なくとも57%、有利には少なくとも58%、有利には少なくとも59%、有利には少なくとも60%、有利には少なくとも61%、有利には少なくとも62%、有利には少なくとも63%、有利には少なくとも64%、有利には少なくとも65%、有利には少なくとも656%、有利には少なくとも67%、有利には少なくとも68%、有利には少なくとも69%、有利には少なくとも70%、有利には少なくとも71%、有利には少なくとも72%、有利には少なくとも73%、有利には少なくとも74%、有利には少なくとも75%、有利には少なくとも76%、有利には少なくとも77%、有利には少なくとも78%、有利には少なくとも79%、有利には少なくとも80%、有利には少なくとも81%、有利には少なくとも82%、有利には少なくとも83%、有利には少なくとも84%、有利には少なくとも85%、有利には少なくとも86%、有利には少なくとも87%、有利には少なくとも88%、有利には少なくとも89%、有利には少なくとも90%、有利には少なくとも91%、有利には少なくとも92%、有利には少なくとも93%、有利には少なくとも94%、有利には少なくとも95%、有利には少なくとも96%、有利には少なくとも97%、有利には少なくとも98%、有利には少なくとも99%、有利には100%である。
【0100】
本発明方法の別の工程e)の実施形態では、工程d)で得られた前記懸濁液の少なくとも一部を、前記少なくとも1つの混合容器から前記n個の培養容器に移送する場合、n個の各々の培養容器に移送される混合生細胞の前記均質化懸濁液の画分は、同一でも異なってもよい。
【0101】
例として、4つの培養容器が使用される場合、移送工程e)において、4つの培養容器の各々に、混合生細胞の前記均質化懸濁液の全体積の25%の画分を分配することができる。
【0102】
例として、4つの培養容器が使用される場合、移送工程e)において、第1培養容器に、前記混合容器に含まれる生細胞の前記均質化懸濁液の前記全体積の10%、第2培養容器に前記全体積の20%、第3培養容器に前記全体積の30%及び第4培養容器に前記全体積の5%を移送することができる。
【0103】
例として、4つの培養容器が使用される場合、移送工程e)において、第1培養容器に、前記混合容器に含まれる生細胞の前記均質化懸濁液の全体積の0%、第2培養容器に前記全体積の20%、第3培養容器に前記全体積の30%及び第4培養容器に前記全体積の5%を移送することができる。
【0104】
前記例は限定的ではなく、工程e)を説明するためだけの役割を果たす。
【0105】
前記方法の工程f)は、工程b)~e)を繰り返す工程からなる。本発明の目的では、「培養サイクル」は、本方法の工程b)~e)の繰り返しを意味する。
【0106】
本発明の特定の実施形態では、工程b)を繰り返す場合、培養サイクル中に使用される前記選択的状況及び/又は前記培養パラメータは、先行培養サイクルで使用されたものと同じであっても、異なっていてもよい。有利には、使用される前記選択的状況及び/又は前記培養パラメータは、培養サイクルごとに同じであっても異なってもよい。
【0107】
本発明の特定の実施形態では、各培養容器に対して選択される前記選択的状況は、培養サイクルごとに同じであっても異なってもよい。有利には、前記選択的状況は、ケモスタット、タービドスタット、培地スワップ、及び反復バッチを含む群から選択されるが、このリストは非制限的である。
【0108】
本発明の特に有利な実施形態では、所与の培養容器における選択的状況は、互いのサイクルにおいて同じであってよい。例として、所与の培養容器において、ある培養サイクルの間にケモスタット選択的状況を適用し、次いで、同じ培養容器において、次の培養サイクルに対し、その同じ選択的状況を適用することができる。例として、所与の培養容器において、ある培養サイクルの間にタービドスタット選択的状況を適用し、次いで、同じ培養容器において、次の培養サイクルに対し、その同じ選択的状況を適用することができる。上記の例は限定的ではなく、全ての選択的状況に適用することができる。
【0109】
特に有利な別の実施形態では、所与の培養容器内の選択的状況は、1つのサイクルから別のサイクルへと変更されることがある。例えば、所与の培養容器において、ある培養サイクルではケモスタット選択的状況を適用し、次の培養サイクルでは同一の培養容器の選択的培養状況をタービドスタット選択的状況に変更可能である。例えば、所与の培養容器において、ある培養サイクルではケモスタット選択的状況を適用し、次の培養サイクルでは同一の培養容器の選択的培養状況をタービドスタット選択的状況に変更でき、次の培養サイクルでは同一の培養容器の選択的培養状況をケモスタット選択的状況に変更可能である。例えば、所与の培養容器において、ある培養サイクルではケモスタット選択的状況を適用し、次の培養サイクルでは同一の培養容器の選択的培養状況をタービドスタット選択的状況に変更でき、次の培養サイクルでは同一の培養容器の選択的培養状況を培地スワップ選択的状況に変更可能である。上記の例は限定的ではなく、全ての選択的培養状況に適用される。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、工程b)を繰り返す場合、使用する培養パラメータは、各培養容器に対して、ある培養サイクルから別の培養サイクルまで同じであっても異なっていてもよい。有利には、培養パラメータは、希釈率、温度、pH、培地の組成、気体流の組成、及びそれらの組み合わせの1つからなる群から選択され、前記パラメータは、あるサイクルから別のサイクルまで潜在的に同一である。有利には、培養パラメータは、希釈率、温度、pH、培地の組成、気体流の組成、及びそれらの組み合わせの1つからなる群から選択され、前記パラメータは、あるサイクルから別のサイクルまで潜在的に変更される。有利には、これらの培養パラメータのうち1つだけを変更することも可能、つまり、温度だけを変更したり、pHだけを変更したり、培地の組成だけを変更したり、気体流の組成だけを変更したりすることも可能である。有利には、これらの培養パラメータを同時に変更可能である。有利には、少なくとも2つの培養パラメータ、少なくとも3つの培養パラメータ、少なくとも4つの培養パラメータを同時に変更可能である。
【0111】
本発明に基づく特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、各培養容器RCiの初期温度T0iは、第1培養サイクルと比較して値ΔTだけ上昇してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにΔTの温度上昇分を受け取ってもよい。有利には、値ΔTは、0.1℃、有利には0.2℃、有利には0.3℃、有利には0.4℃、有利には0.5℃、有利には0.6℃、有利には0.7℃、有利には0.8℃、有利には0.9℃、有利には1.0℃、有利には1.1℃、有利には1.2℃、有利には1.3℃、有利には1.4℃、有利には1.5℃、有利には1.6℃、有利には1.7℃、有利には1.8℃、有利には1.9℃、有利には2.0℃、有利には2.1℃、有利には2.2℃、有利には2.3℃、有利には2.4℃、有利には2.5℃、有利には2.6℃、有利には2.7℃、有利には2.8℃、有利には2.9℃、有利には3.0℃、有利には3.1℃、有利には3.2℃、有利には3.3℃、有利には3.4℃、有利には3.5℃、有利には3.6℃、有利には3.7℃、有利には3.8℃、有利には3.9℃、有利には4.0℃である。有利には、ΔT値は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0112】
本発明の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、各培養容器RCiの初期温度T0iは、第1培養サイクルと比較して値ΔTだけ下降してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにΔTの温度下降分を受け取ってもよい。有利には、値ΔTは-0.1℃、有利には-0.2℃、有利には-0.3℃、有利には-0.4℃、有利には-0.5℃、有利には-0.6℃、有利には-0.7℃、有利には-0.8℃、有利には-0.9℃、有利には-1.0℃、有利には-1.1℃、有利には-1.2℃、有利には-1.3℃、有利には-1.4℃、有利には-1.5℃、有利には-1.6℃、有利には-1.7℃、有利には-1.8℃、有利には-1.9℃、有利には-2.0℃、有利には-2.1℃、有利には-2.2℃、有利には-2.3℃、有利には-2.4℃、有利には-2.5℃、有利には-2.6℃、有利には-2.7℃、有利には-2.8℃、有利には-2.9℃、有利には-3.0℃、有利には-3.1℃、有利には-3.2℃、有利には-3.3℃、有利には-3.4℃、有利には-3.5℃、有利には-3.6℃、有利には-3.7℃、有利には-3.8℃、有利には-3.9℃、有利には-4.0℃である。有利には、ΔT値は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0113】
本発明の別の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、初期pHpH(i、k)は、第1培養サイクルと比較して値ΔpHだけ上昇してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにΔpHの温度上昇分を受け取ってもよい。有利には、値ΔpHは、0.1pH単位、有利には0.2pH単位、有利には0.3pH単位、有利には0.4pH単位、有利には0.5pH単位である。有利には、ΔpH値は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0114】
本発明の別の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、初期pHpH(i、k)は、第1培養サイクルと比較して値ΔpHだけ下降してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにΔpHの温度下降分を受け取ってもよい。有利には、値ΔpHは、-0.1pH単位、有利には-0.2pH単位、有利には-0.3pH単位、有利には-0.4pH単位、有利には-0.5pH単位である。有利には、ΔpH値は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0115】
本発明に基づく特に有利な別の実施形態では、第2培養サイクルにおいて、初期培地MC(i、k)、又は培地MC(i、k)-許容、及びMC(i、k)-ストレス、の組成を、培養容器RCiのそれぞれに対して、最初の培養サイクルと比較して変更し、その後、新規培養サイクルごとに更に変更可能である。有利には、1つ又は複数の培地の組成変更は、成長阻害剤などの毒性剤の含有量を増加させることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、細胞成長に必須な成長因子の含有量の減少からなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、1つの基質を別の基質で置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、許容培地をストレス培地に置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、豊富な培地を最小限の培地に置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、最小限の培地を豊富な培地に置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、合成培地(規定培地とも呼ばれる)を複合培地(非規定培地とも呼ばれる)に置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成変更は、複合培地(非規定培地とも呼ばれる)を合成培地(規定培地とも呼ばれる)に置き換えることからなる場合がある。有利には、培地の組成は、新規サイクルごとに同じでも異なっていてもよい。
【0116】
本発明の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、各培養容器RCiの希釈率Td(i、k)は、第1培養サイクルに比較して値ΔTdだけ上昇してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、ΔTdの上昇分を受け取ってもよい。有利には、値ΔTdは0.01h-1、有利には0.02h-1、有利には0.03h-1、有利には0.04h-1、有利には0.05h-1、有利には0.06h-1、有利には0.07h-1有利には0.08h-1、有利には0.09h-1、有利には0.10h-1、有利には0.15h-1、有利には0.20h-1、有利には0.02h-1、有利には0.02h-1、有利には0.02h-1、有利には0.25h-1、有利には0.30h-1有利には0.35h-1、有利には0.40h-1、有利には0.45h-1、有利には0.50h-1、有利には0.55h-1、有利には0.60h-1、有利には0.65h-1、有利には0.70h-1、有利には0.75h-1、有利には0.80h-1有利には0.85h-1、有利には0.90h-1、有利には0.95h-1、有利には1.00h-1、有利には1.05h-1、有利には1.10h-1、有利には1.15h-1、有利には1.20h-1、有利には1.25h-1、有利には1.30h-1有利には1.35h-1、有利には1.40h-1、有利には1.45h-1、有利には1.50h-1である。有利には、ΔTd値は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0117】
本発明の別の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、各培養容器RCiの初期気体流Giの組成を、第1培養サイクルに比較して変更してもよく、その後、各新規培養サイクルにおいて、更に気体流組成を変更可能である。気体流組成の変更は、フローを構成する1つ又はいくつかの気体の含有量の増加又は減少からなる場合があり、前記気体は、空気、窒素(N)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(C0)、メタン(CH)、硫化水素(HS)、酸素(O)、亜酸化窒素(NO)、水素(H)、又はこれらの混合物から選択される。有利には、気体流組成は、各新規サイクルにおいて、同じであっても異なっていてもよい。
【0118】
本発明の別の特に有利な実施形態では、第2培養サイクルにおいて、各培養容器RCiの懸濁液は1つの培養サイクルに対し、温度T0+ΔT及びpH pHk+ΔpHで維持することができ、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとに、n個の培養容器のそれぞれに対し、ΔTの温度上昇及びΔpHのpH上昇を行うことができる。
【0119】
前記例示は、限定的ではなく、単一の培養パラメータの変更又はいくつかの培養パラメータの同時変更に対して等しく適用される。
【0120】
本発明の特定の実施形態では、工程b)を繰り返す場合、使用する選択的状況及び/又は培養パラメータは、1つの培養サイクルから別の培養サイクルへ変更することができ、前記変更は、全てのn個の培養容器に適用される。いかなる変更がなされようとも、全てのn個の培養容器に適用される。
【0121】
本発明の別の特定の実施形態では、工程b)を繰り返す場合、使用する選択的状況及び/又は培養パラメータは、1つの培養サイクルから別の培養サイクルへ変更でき、前記変更は、全てのn個の培養容器に適用されるわけではない。
【0122】
本発明の別の特定の実施形態では、工程b)を繰り返す場合、選択的状況は、1つの培養サイクルから別の培養サイクルへ変更でき、前記変更は、全てのn個の培養容器に適用されるわけではない。
【0123】
例として、工程b)において、1つの培養サイクルにおいて、培養容器RCiはケモスタット選択的状況を受けることができ、残りのn-1個の培養容器はタービドスタット選択的状況を受けることができ、その後、新規培養サイクルごとに選択的状況の変更が可能である。
【0124】
例として、工程b)において、1つの培養サイクルにおいて、培養容器RC1はケモスタット選択的状況を受け、培養容器RC2はタービドスタット選択的状況を受け、残りのn-2個の培養容器は培地スワップ選択的状況を受けてよく、その後、新規培養サイクルごとに選択的状況の変更が可能である。
【0125】
上記例示は限定的ではなく、全ての選択的培養状況に当てはまる。
【0126】
本発明の特定の有利な実施形態では、工程b)を繰り返す場合、使用する培養パラメータは、1つの培養サイクルから別の培養サイクルへ変更でき、前記変更は、全てのn個の培養容器に適用されるわけではない。
【0127】
例として、工程b)において、1つの培養サイクルにおいて、培養容器RC1は温度T0+0.1℃に維持することができ、残りのn-1個の培養容器は初期温度T0に維持することができ、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにn個の培養容器のそれぞれに対し、0.1℃の温度上昇を行うことができる。この場合、第2サイクルにおいて、培養容器RC1は温度T0+0.2℃に維持され、残りのn-1個の培養容器は温度T0+0.1℃に維持されるであろう。その後は同様である。
【0128】
他の例として、工程b)において、1つの培養サイクルにおいて、培養容器RC1は温度T0+0.2℃に維持することができ、培養容器RC2は温度T0+0.1℃に維持することができ、残りのn-2個の培養容器は初期温度T0に維持することができ、その後、各新規培養サイクルにおいて、培養サイクルごとにn個の培養容器のそれぞれに対し、0.1℃の温度上昇を行うことができる。この場合、第2サイクルにおいて、培養容器RC1は温度T0+0.3℃に維持され、培養容器RC2は温度T0+0.2℃に維持され、残りのn-2個の培養容器は温度T0+0.1℃に維持されるであろう。その後は同様である。
【0129】
上記例示は限定的ではなく、単一の培養パラメータの変更及びいくつかの培養パラメータの同時変更に等しく適用される。
【0130】
本発明の特定の実施形態では、所望の表現型を獲得した生細胞が出現するまで、 工程b)からe)は必要なだけ繰り返される。
【0131】
本発明の特定の実施形態では、選択的状況及び/又は培養パラメータは、先行サイクルの培養に関する観察可能/測定可能な基準に応答して自動的に適合させることができる。例えば、細胞成長抑制分子の温度又は濃度などの選択圧基準は、先行サイクルで細胞成長率が所定の閾値より小さい/より大きい値であれば、現行サイクルでその値が変更される場合がある。あるいは、生細胞の懸濁液を阻害分子の目標濃度に適応させるために数サイクルの進化を実施した後(培地スワップモード)、細胞の成長速度を上げるために培養パラメータを変更できる(タービドスタットモード)。
【0132】
本方法の工程g)は、前記n個の培養容器の少なくとも1つにおいて、数サイクル培養した後に所望の表現型を獲得した生細胞を回収することからなる。
【0133】
有利には、所望の表現型は、進化的適応、特に生細胞による有益な突然変異の数世代にわたる蓄積によって獲得され、有益な突然変異は、例えば、紫外線への曝露後、1つ以上の変異原性物質への曝露後、又は生物の自然突然変異率より高い突然変異率をもたらす遺伝子組み換え後、自然発生的であるかに関わらず得られる。
【0134】
本発明の特定の実施形態では、回収工程g)は、採取手段を用いて行われ、該採取手段は滅菌シリンジ、滅菌マイクロピペット、又は所望の表現型を獲得した生細胞をサンプリングする他のあらゆる手段から選択することができる。
【0135】
有利には、所望の表現型を獲得した生細胞は、2サイクル後、有利には3サイクル後、有利には4サイクル後、有利には5サイクル後、有利には6サイクル後、有利には7サイクル後、有利には8サイクル後、有利には9サイクル後、有利には10サイクル後、有利には20サイクル後、有利には30サイクル後、有利には40サイクル後、有利には50サイクル後、有利には60サイクル後、有利には70サイクル後、有利には80サイクル後、有利には90サイクル後、有利には100サイクル後、有利には150サイクル後、有利には200サイクル後、有利には250サイクル後、有利には300サイクル後、有利には350サイクル後、有利には400サイクル後、有利には450サイクル後、有利には500サイクル後、有利には550サイクル後、有利には600サイクル後、有利には650サイクル後、有利には700サイクル後、有利には750サイクル後、有利には800サイクル後、有利には850サイクル後、有利には900サイクル後、有利には950サイクル後、有利には1000サイクル後、有利には5000サイクル後、有利には10000サイクル後、有利には15000サイクル後、有利には20000サイクル後、有利には25000サイクル後、有利には30000サイクル後、有利には35000サイクル後、有利には40000サイクル後、有利には45000サイクル後、有利には50000培養サイクル後に回収される。
【0136】
本発明の特定の実施形態では、本方法は更にn個の培養容器と少なくとも1つの混合容器に対する少なくとも1つの滅菌工程を任意に含めることができる。有利には、少なくとも1つの滅菌工程は、少なくとも1つの培養容器及び/又は少なくとも1つの混合容器が空になるとすぐに実施する。有利には、少なくとも1つの滅菌工程は、培養容器に対し、工程c)の後に実施される。有利には、少なくとも1つの滅菌工程は、少なくとも1つの混合容器に対し、工程e)の後に実施される。1つの特定の実施形態では、少なくとも1つの滅菌工程は、アンモニア等の弱塩基を含む溶液、苛性アルカリ(NaOH)又はカリウム(KOH)等の強塩基を含む溶液、硫酸、塩酸等の強酸を含む溶液、酢酸等の弱酸を含む溶液、過酸化水素及び次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤、エタノール及びイソプロパノール等の溶剤を含む溶液、又はこれらの組み合わせから選択される滅菌液を添加することにより実施される。有利には、上記溶液の組み合わせの場合、該溶液は同時に又は連続的に、すなわち順々に使用することができる。有利には、滅菌液は、苛性アルカリ溶液であり、好ましくは少なくとも0.1Mの苛性アルカリ溶液であり、さらに好ましくは1Mより大である。有利には、滅菌工程は例えば特許EP1135460に記載されているように、すなわち、一時的に、生細胞懸濁液の全体積を培養又は混合容器から貯蔵容器に移送し、次いで培養又は混合容器の全内部表面を滅菌液と接触させ、リンス液がそれに続くようにして、実施することができる。その後、生細胞懸濁液は滅菌された初期培養又は混合容器に戻される。
【0137】
有利には、前記滅菌工程は、一方ではバイオフィルムを除くことを可能とし、他方では少なくとも1つの培養容器及び少なくとも1つの混合容器を、それらの各初期状態に応じた名目上の滅菌状態に戻すことを可能とする。
【0138】
本発明の特定の実施形態では、本方法は、更にn個の培養容器と少なくとも1つの混合容器に対する少なくとも1つの洗浄工程を任意に含めることができる。有利には、少なくとも1つの洗浄工程は、少なくとも1つの滅菌工程の後に実施される。特定の実施形態では、少なくとも1つの洗浄工程は、滅菌剤を中和することが可能な洗浄液を添加することにより実施される。有利には、洗浄液は、酢酸溶液や硫酸溶液等の酸性溶液及び清浄液、特に界面活性剤を含む溶液から選択される。
【0139】
本発明の特定の実施形態では、本方法は、更にn個の培養容器と少なくとも1つの混合容器に対する少なくとも1つのリンス工程を任意に含めることができる。
有利には、少なくとも1つのリンス工程は、少なくとも1つの洗浄工程の後に実施される。特定の実施形態では、少なくとも1つのリンス工程は、洗浄液の残りを除去することを可能にするリンス液を添加することにより実施される。有利には、リンス液は水であり、好ましくは滅菌水である。
【0140】
本発明の特定の実施形態では、本方法は、更に少なくとも1つの紫外線への曝露工程及び/又は変異原性物質への曝露工程を任意に含めることができる。有利には、少なくとも1つの紫外線への曝露工程及び/又は変異原性物質への曝露工程は、本発明方法のいずれかの時点で行うことができる。本発明の特に有利な実施形態では、紫外線への曝露工程は、本発明方法の工程c)と工程d)の間で行われるか、又は本発明方法の工程d)と工程e)の間で行われる。
【0141】
本発明の別の特に有利な実施形態では、変異原性物質への曝露工程は、本発明方法の工程c)と工程d)の間で行われるか、又は本発明方法の工程d)と工程e)の間で行われる。有利には、変異原性物質は、N―ニトロソーN―エチルウレア(N―エチルーN―ニトロソウレア(ENU)とも呼ばれる)又はエチルメタンスルホン酸(エチルメタンスルホネート(EMS)とも呼ばれる)等のアルキル化剤、プロフラビンやアクリジンオレンジ等の挿入剤、及び活性酸素種、特にフリーラジカル、酸素イオン、及び過酸化物から選択することができる。
【0142】
本発明方法は、前記生細胞の進化的適応のために生細胞を連続培養する装置で実施することができ、前記装置は以下で構成される:
- n個の培養容器であり、各培養容器は、培地及び生細胞を受け入れるように配置されている、
- 少なくとも1つの混合容器、及び
- 少なくとも1つの培地槽を含む少なくとも1つの無菌流体供給装置で、前記無菌流体供給装置は、主供給ラインを介して前記n個の培養容器及び前記少なくとも1個の混合容器に接続されている。
【0143】
有利には、前記無菌流体供給装置における流体の循環、すなわち、気体の循環、滅菌液、洗浄液、及びリンス液の循環、培地の循環は、ポンプ及びバルブの使用を通じて達成される。前記ポンプ及びバルブは、例えば機械的に操作することができ、電気的又は電子的に、有利には、示されていない制御手段を使用して自動的に制御することができる。
【0144】
特定の実施形態では、前記無菌流体供給装置は、少なくとも1つの外部気体源、少なくとも1つの滅菌液槽、少なくとも1つの洗浄液槽、少なくとも1つのリンス液槽、及び少なくとも1つの培地槽を含む。特定の実施形態では、前記無菌流体供給装置は更に、n個の培養容器のそれぞれに生細胞を導入し、所望の表現型を獲得した生細胞の回収を可能にする、採取手段、有利にはシリンジを含む。代替の実施形態では、所望の表現型を獲得した生細胞は、他の分析装置への流体接続手段により回収される。
【0145】
有利には、n個の培養容器の各々は更に、少なくとも1つの気体供給装置を含むことができる。少なくとも1つの気体供給装置は、加圧気体流を培養容器に注入することを可能にし、懸濁液の成長に必要な気体の供給及び該懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。有利には、少なくとも1つの気体供給装置は、移送流と呼ばれる加圧気体流を培養容器に注入することを可能にし、これにより前記培養容器内の圧力を上昇させて、シリンジのプランジャのように懸濁液を混合容器に押し出すことが可能となる。
【0146】
代替的に、少なくとも1つの気体供給装置に加えて、n個の培養容器の各々は更に、少なくとも1つの移送気体供給装置を含むことができる。この場合、移送流は、単独で及び直接的に少なくとも1つの移送気体供給装置から来て、曝気流及び撹拌流は、単独で少なくとも1つの気体供給装置から来る。移送流の使用は、前記培養容器内の圧力を上昇させて、シリンジのプランジャのように懸濁液を混合容器に押し出す。
【0147】
有利には、n個の培養容器の各々は更に、少なくとも1つの供給ラインを含むことができる。少なくとも1つの供給ラインは、培養容器を少なくとも1つの培地槽からの培地で充填し、また、培養容器を対応する槽からの滅菌液、洗浄液、及びリンス液で充填することを可能にする。
【0148】
供給ラインはまた、前記培養容器を加圧し、培養容器を空にすることにより、懸濁液の全部又は一部を培養容器から混合容器に移送することを可能にする。また少なくとも1つの供給ラインは、懸濁液の全部又は一部を混合容器から培養容器に移送する場合、培養容器の充填を可能にする。供給ラインはまた、滅菌、洗液、及びリンスの操作において、培養容器の内容物を廃棄物槽に流入させて空にすることを可能にする。
【0149】
供給バルブは、供給ラインへのアクセスを制御し、培養容器を充填すること又は空にすることを可能にする。
【0150】
有利には、n個の培養容器の各々は更に、少なくとも1つの放出装置を含むことができ、それは培養容器の充填操作の間において、気体、1又は複数の培地、及び滅菌液、洗浄液、及びリンス液の放出だけでなく、培養の間にバブリングガスの放出を可能にする。
【0151】
有利には、n個の培養容器の各々は更に、少なくとも1つのレベリングライン(leveling line)を含むことができる。少なくとも1つのレベリングラインは、培養容器内の懸濁液の体積を制御することを可能にする。有利には、レベリングバルブは、レベリングラインへのアクセスを制御する。有利には、レベリングラインは、前記培養容器の底面から前記培養容器の全高の半分以下の高さに配置される。
【0152】
より有利には、n個の培養容器の各々は更に、以下を含むことができる:
- 少なくとも1つの気体供給装置、
- 少なくとも1つの放出装置、
- 少なくとも1本のレベリングライン、及び
- 少なくとも1つの供給ライン。
【0153】
特定の実施形態では、n個の培養容器の各々は、以下を含む:
- 培養容器の下部にある少なくとも1つの気体供給装置、
- 培養容器の上部にある少なくとも1つの放出装置、
- 前記培養容器の底面から前記培養容器の全高の半分以下の高さにある少なくとも1本のレベリングライン、及び
- 培養容器の下部にある少なくとも1つの供給ライン。
【0154】
有利には、培養容器は閉鎖系培養容器である。培養容器は使い捨て又は再利用可能でありうる。特に有利には、培養容器は再利用可能である。
【0155】
特定の実施形態では、n個の培養容器の各々は、培地内の生細胞を含む。有利には、前記装置の培養容器は空でない。
【0156】
特定の実施形態では、培養装置は、全てのn個の培養容器及び少なくとも1つの混合容器に対する単一の無菌流体供給装置を含む。
【0157】
別の特定の実施形態では、培養装置は、培養容器ごとに無菌流体供給装置を含む。有利には、n個の培養容器の各々は、個別に及び独立して無菌流体供給装置に接続されている。無菌流体供給装置は供給バルブを介してその培養容器に接続されている。
【0158】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つの混合容器は、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け取るように配置された培養容器である。
【0159】
本発明の別の特定の実施形態では、少なくとも1つの混合容器は、単一の容器で、一組のn個の培養容器から独立しており、一組のn個の培養容器の内容物を受け取るように配置される。
【0160】
有利には、混合容器が、単一の容器で、一組の培養容器から独立している場合、前記混合容器には以下が含まれる:
- 前記混合容器の上部にある気体供給装置、
- 前記混合容器の上部にある放出装置、
- 前記混合容器の下部にある供給ライン。
【0161】
有利には、混合容器は閉鎖系培養容器である。混合容器は再利用可能な容器である。
【0162】
特定の実施形態では、混合容器は撹拌手段、有利には機械的撹拌機又はガス注入による撹拌手段を含む。
【0163】
特定の実施形態では、培養装置は更に、全ての異なる供給手段、特にポンプ及びバルブを作動させるように配置・構成される制御装置を含む。それは少なくとも1つの培養容器の内容物の少なくとも1つの混合容器への移送、及びその逆を可能にする。
【0164】
有利には、培養装置は、前記制御装置によって制御される。
【0165】
特定の実施形態では、培養装置は更に、各培養容器において細胞密度を含む物理的/化学的インジケータを測定、懸濁液の成長動態を測定、及びn個の混合容器における懸濁液混物の自動発動を制御させるように配置・構成される制御装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1a図1aは、本発明の特定の実施形態による生細胞の連続培養装置を表し、前記装置は、無菌流体供給装置及び3つの培養容器を含み、培養容器の全ては、それぞれ連続的に混合容器となるように配置されており、1つの混合容器は、少なくとも2つの培養容器の内容物を受けるように配置されている。
【0167】
図1b図1bは、図1aによる装置を表し、第1培養容器からの懸濁液全体を混合容器となる第2培養容器に移送する、本発明の特定の実施形態による方法の工程c)を示す。
【0168】
図1c図1cは、図1aによる装置を表し、第2培養容器における工程d)で得られた懸濁液の少なくとも画分を第1培養容器に移送する、本発明の特定の実施形態による方法の工程e)を示す。
【0169】
図2a図2aは、第2実施形態による生細胞の連続培養装置を表し、該装置は、n個の培養容器のセットから独立した単一の混合容器を含み、n個の培養容器のセットの内容物を受け入れるように配置されている。
【0170】
図2b図2bは、図2aによる装置を表し、n個の培養容器からの全ての懸濁液を混合容器に移送する、本発明の特定の実施形態による方法の工程c)を示す。
【0171】
図2c図2cは、図2aによる装置を表し、混合容器からの工程d)で得られた懸濁液の少なくとも画分をn個の培養容器のそれぞれに移送する、本発明の特定の実施形態による方法の工程e)を示す。
【0172】
図3図3は、第3実施形態による生細胞の連続培養装置を表し、該装置は、4つの培養容器を含み、培養容器の各々は、個別に、及び互いに独立して、無菌流体供給装置に接続され、4つの培養容器は、それぞれ連続的に混合容器となりうるように配置され、1つの混合容器は、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け入れるように配置されている。
【0173】
図4図4は、第4実施形態による生細胞の連続培養装置を表し、装置は、4つの培養容器を含み、培養容器の各々は、個別に、及び互いに独立して、無菌流体供給装置に接続され、4つの培養容器のセットから独立した単一の混合容器で構成され、前記混合容器は、4つの培養容器のセットの内容物を受け入れるように配置されている。
【0174】
図5図5は、シュードモナス科の細菌株の進化を表している。この図では、各日に発生した希釈の合計数を日数に対してプロットしている。
【0175】
図6図6は、培養容器RC1及びRC2のそれぞれの温度変化を培養サイクル数に対してプロットし、30℃におけるシュードモナス科の細菌株の適応を表している。
【0176】
図7図7は、培養容器RC1及びRC2のそれぞれの温度変化を実験の日数に対してプロットし、30℃におけるシュードモナス科の細菌株の適応を表している。
【0177】
図8図8は、本発明に準拠しない方法に基づいて、単一の15mL培養容器(実線の四角形)又は単一の80mL培養容器(実線の丸印)において25℃で培養したシュードモナス科の細菌株の希釈率適応を表す図である。この図では、時間-1単位の希釈率は日数の関数である。
【0178】
図9図9は、本発明に準拠する方法に基づいて、2つの15mL培養容器(RC1:実線の菱形、RC2:実線の三角形)の間で懸濁液を順次組み合わせ、分離しながら培養したシュードモナス科の細菌株の温度25℃、強制希釈率0.2時間-1における適応進化を示す図である。この図では、気温(℃)は日数の関数である。
【発明を実施するための形態】
【0179】
生細胞の適応進化のための、生細胞の連続培養装置の設計及び機能は、図1aから図4に記載されている。
【0180】
生細胞の連続培養装置は、図1aから図2cに示されているように、3つの培養容器、第1培養容器RC1、第2培養容器RC2、及び第3培養容器RC3を含む。第1培養容器RC1は、第2培養容器RC2に隣接しており、これは第3培養容器RC3に隣接している。前記培養容器は生細胞と培地を含むようにして配置されており、そのため該細胞の培養が可能となる。
【0181】
図1aを参照すると、培養装置には、外部気体源GS、滅菌液槽AS、洗浄液槽AC、リンス液槽AR、及び3つの培地槽M1、M2及びM3からなる無菌流体供給装置10が含まれる。無菌流体供給装置10における流体の循環、つまり、気体の循環、滅菌液、洗浄液及びリンス液の循環、並びに培地の循環は、ポンプ及びバルブなどを使用して実現される。ポンプ及びバルブは、例えば機械的に操作でき、電気的及び/又は電子的に、有利には図示されていない制御手段を用いて自動的に制御できる。無菌流体供給装置10は、培養容器に細胞を導入し、所望の表現型を獲得した生細胞を採取するための採取手段、有利にはシリンジ11を含む。簡単にするために、図1b、1c、2a、2b、2c、3、及び4では、無菌流体供給装置10をブロック又は四角形で示している。
【0182】
図1a、1b、1c、2a、2b、2cを参照すると、培養装置は、主供給ラインC10と、主供給ラインC10に接続された供給バルブ1、2、3、Va1、Va2、及びVa3を含む。前記供給ラインC10及び前記バルブは、前記培養容器の底部に配置されている。無菌流体供給装置10は、前記供給ラインC10及び前記バルブを介して3つの培養容器に接続されている。それらにより気体、滅菌液、洗浄液、及びリンス液、培地及び生細胞を培養容器に入れることができる。また、それらは、例えば、懸濁液の全部又は一部を混合容器から培養容器に移送する際に、培養容器の内容物の移送を可能にし、懸濁液の全部又は一部を培養容器から混合容器に移送する際に、培養容器を空にすることを可能にする。供給バルブVa1により、培養容器RC1の充填又は空にすることが可能である。供給バルブVa2により、培養容器RC2の充填又は空にすることが可能である。供給バルブVa3により、培養容器RC3の充填又は空にすることが可能である。バルブ1、2、3、Va1、Va2、Va3は、非動作状態では通常閉じている。供給バルブVaiが開位置にある場合、培養容器RCiを充填又は空にすることができる。供給バルブVaiが閉位置にある場合、培養容器RCiを充填又は空にすることができない。
【0183】
前記培養装置は、3つの気体供給装置G1、G2、及びG3を含む。それぞれの培養容器RC1、RC2、及びRC3は、気体供給装置G1、G2、又はG3に接続されており、これにより、加圧気体流を培養容器に注入し、懸濁液にガスを注入し、前記懸濁液を均質化(バブリング撹拌)し、必要に応じて培養容器を加圧することが可能である。それぞれの気体供給装置G1、G2、又はG3は、前記培養容器の底面から前記培養容器の全高の約4分の1の高さで培養容器内に開口する気体供給ラインCGにより、その底部から培養容器に接続されている。
【0184】
前記培養装置は、3つの放出装置W1、W2、及びW3を含む。培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれには、放出装置W1、W2、又はW3が接続され、培養中に懸濁液に注入された気体の排出、培養容器への充填作業中の、1つ又は複数の培地や滅菌液、洗浄液、及びリンス液からの気体排出を可能としている。前記放出装置は、培養容器の上部に設置されている。前記培養装置は、3つの放出バルブVd1、Vd2、及びVd3を含む。それぞれの培養容器RC1、RC2、及びRC3には、それぞれ放出バルブVd1、Vd2、又はVd3が接続され、培養中に注入された気体の放出を制御すると共に、培養容器への充填作業中に、1つ又は複数の培地や滅菌液AS、洗浄液AC、及びリンス液ARからも気体放出を制御するようになっている。放出バルブVd1、Vd2、及びVd3は、通常、非動作状態では開位置にある。放出バルブが開位置にある場合、培養容器は充填することができる。放出バルブが閉位置にある場合、培養容器に含まれる懸濁液の全部又は一部の混合容器への移送は、前記培養容器を加圧することで実行できる。
【0185】
図1a、1b、1cを参照すると、前記培養装置は、3つのレベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3を含む。それぞれの培養容器RC1、RC2、及びRC3は、それぞれレベリングラインCTを介してレベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3に接続されている。それぞれのレベリングラインCTは、培養容器の下部から前記培養容器の全高の半分以下の高さで培養容器内に開口している。それぞれのレベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3は、主ラインC10にも接続されている。それぞれのレベリングバルブは、それぞれの各培養容器内の容積を制御し、培養液を加えても容積が一定に保たれる。レベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3は、通常、非動作状態では閉位置にある。レベリングバルブが開位置にある場合、レベリングラインの位置で規定される懸濁液量を超える量の懸濁液が、培養容器から供給ラインC10に放出される。
【0186】
図1a、1b、1cは、特定の第1実施形態を表し、本細胞培養方法を実施する間において、3つの培養容器はそれぞれ連続的に混合容器となるように配置される。
【0187】
図1a、1b、及び1cにおいて示される前記培養装置が関連する、生細胞を連続細胞培養する方法が以下に述べられる。
【0188】
図1aに基づき、3つの培養容器RC1、RC2、及びRC3の各々は、培地中の生細胞を含む。それぞれの培養容器RC1、RC2、及びRC3は、約半分の容量まで充填されている。生細胞は、3つの培養容器のそれぞれに生細胞の懸濁液を得るために、所与の成長段階に達するまで、定められた培養パラメータを用いて、所与の選択的状況に基づいて培養される。この目的で、気体供給装置G1、G2、又はG3を介して3つの培養容器のそれぞれに加圧気体流を注入し、3つの培養容器のそれぞれの内部で気体の注入と懸濁液の均質化(バブリング撹拌)とを実行できる。バルブ1、2、3、4、レベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3、並びに供給バルブVa1、Va2、及びVa3は閉位置である。放出バルブVd1、Vd2、及びVd3だけが、開位置にある。
【0189】
次に、図1bは、工程b)で得られた懸濁液全体を少なくとも1つの培養容器(RCi)から少なくとも1つの混合容器に移送することで構成される本発明方法の工程c)、及び少なくとも1つの混合容器内で工程c)の懸濁液を混合することで構成される工程d)を表している。
【0190】
図1bによれば、矢印f12で示すように、培養容器RC1内の懸濁液は全て培養容器RC2に移送される。供給バルブVa1、2、Va2は動作位置(図1bの黒)にあり、開口しているため、第1容器RC1から第2培養容器RC2への懸濁液は前記バルブを通って通過する。第1容器の放出バルブVd1は動作位置(図1bの黒)にあり、閉口しているため、第1培養容器を加圧する。第2容器の放出バルブVd2は、第2培養容器RC2への充填を可能にするため、非動作であり、開位置のままである。培養容器RC1を空にできるように、気体供給装置G1は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入して、培養容器RC1内の圧力を上昇させ、これにより、シリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。その後、培養容器RC2は混合容器となり、第2培養容器RC2に最初に含まれる懸濁液と第1培養容器RC1からの懸濁液の両方を含む。
【0191】
図示しない方法で、加圧気体流が第2培養容器RC2に気体供給装置G2を介して注入され、培養容器RC2内の懸濁液への気体注入及び細胞懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0192】
第3培養容器RC3に関しては、前記培養工程は、培養容器RC3に加圧気体流を注入することにより、及び、バルブVd3を開いたままにすることにより、維持される。
【0193】
培養容器RC1に関しては、バルブ1、Va1を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンス工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC1に添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC1へ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC1へリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。これらの工程は表現されていない。
【0194】
図1cによれば、矢印f21で示すように、培養容器RC2内の一部の懸濁液が培養容器RC1に移送される。レベリングバルブVt2及び供給バルブVa1並びに2は動作位置(図1cの黒)にあり、開口しているため、第2容器RC2からの懸濁液の一部は、前記バルブを通って第1培養容器RC1に送られる。第2容器の放出バルブVd2は動作位置(図1cの黒)にあり、閉口しているため、RC2が加圧され、懸濁液の半分がRC1へ移送される。第1容器の放出バルブVd1は、第1培養容器RC1への充填を可能にするため、非動作であり、開位置のままである。培養容器RC2を空にできるように、気体供給装置G2は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入し、これにより第2培養容器RC2内の圧力が上昇するため、移送ラインを介してシリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。
【0195】
図示しない方法で、加圧気体流が培養容器RC1及びRC2それぞれに気体供給装置G1及びG2を介して注入され、培養容器RC1及びRC2内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0196】
図1bによれば、矢印f31で示されるように、培養容器RC3内の懸濁液は全て培養容器RC1に移送される。供給バルブVa3、3、2、Va1は動作位置にあり、開口しているため、第3容器RC3から第1培養容器RC1への懸濁液は前記バルブを通って通過する。第3容器の放出バルブVd3は動作位置にあり、閉口しているため、第3培養容器を加圧する。第1容器の放出バルブVd1は、第1培養容器RC1への充填を可能にするため、非動作であり、開位置のままである。培養容器RC3を空にできるように、気体供給装置G3は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入して、これにより培養容器RC3内の圧力を上昇させ、シリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。その後、培養容器RC1は混合容器となり、第1培養容器RC1に最初に含まれる懸濁液と第3培養容器RC3からの懸濁液の両方を含む。
【0197】
図示しない方法で、加圧気体流は第1培養容器RC1に気体供給装置G1を介して注入され、懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0198】
第2培養容器RC2に関しては、前記培養工程は、加圧気体流を培養容器RC2に注入することにより、及び、バルブVd2を開いたままにすることにより、維持される。
【0199】
培養容器RC3に関しては、バルブ1、2、3、及びVa3を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンス工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC3に添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVa3によって実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC3へ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVa3によって実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC3へリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVa3によって実行される。これらの工程は表現されていない。
【0200】
図1cによれば、矢印f13で示されるように、培養容器RC1内の一部の懸濁液が培養容器RC3に移送される。レベリングバルブVt1及び供給バルブ2、3、並びにVa3は動作位置にあり、開口しているため、第1容器RC1からの懸濁液の一部は、前記バルブを通って第3培養容器RC3に送られる。第1容器の放出バルブVd1は動作位置にあり、閉口しているため、RC1が加圧され、懸濁液の半分がRC3へ移送される。第3容器の放出バルブVd3は、第3培養容器RC3への充填を可能にするため、非動作であり、開位置のままである。培養容器RC1を空にできるように、気体供給装置G1は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入し、これにより第1培養容器RC1内の圧力が上昇するため、移送ラインを介してシリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。
【0201】
図示しない方法で、加圧気体流は培養容器RC1及びRC3の両方それぞれに気体供給装置G1及びG3を介して注入され、培養容器RC1及びRC3内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0202】
図1bによれば、矢印f23で示されるように、培養容器RC2内の全ての懸濁液が培養容器RC3に移送される。供給バルブVa2、3、Va3は動作位置にあり、開口しているため、第2容器RC2からの懸濁液は、前記バルブを通って第3培養容器RC3に送られる。第2容器の放出バルブVd2は動作位置にあり、閉口しているため、第2培養容器が加圧される。第3容器の放出バルブVd3は第3培養容器RC3への充填を可能にするため、非動作位置にあり、開口のままである。培養容器RC2を空にできるように、気体供給装置G2は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入し、これにより培養容器RC2内の圧力が上昇するため、シリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。その後、培養容器RC3は混合容器となり、当初第3培養容器RC3に含まれていた懸濁液と第2培養容器RC2からの懸濁液の両方を含む。
【0203】
図示しない方法で、加圧気体流は第3培養容器RC3に気体供給装置G3を介して注入され、培養容器RC3内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0204】
第1培養容器RC1に関しては、前記培養工程は、加圧気体流を培養容器RC1に注入することにより、及び、バルブVd1を開いたままにすることにより、維持される。
【0205】
培養容器RC2に関しては、バルブ1、2、及びVa2を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンス工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC2に添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVa2によって実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC2へ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVa2によって実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC2へリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVa2によって実行される。これらの工程は表現されていない。
【0206】
図1cによれば、矢印f32で示されるように、培養容器RC3内の一部の懸濁液が培養容器RC2に移送される。レベリングバルブVt3及び供給バルブVa2並びに3は動作位置にあり、開口しているため、第3容器RC3からの懸濁液の一部は、前記バルブを通って第2培養容器RC2に送られる。第3容器の放出バルブVd3は動作位置にあり、閉口しているため、RC3が加圧され、懸濁液の半分がRC2へ移送される。第2容器の放出バルブVd2は、第2培養容器RC2への充填を可能にするため、非動作であり、開位置のままである。培養容器RC3を空にできるように、気体供給装置G3は、気体供給ラインCGを介して移送流と呼ばれる加圧気体流を注入し、これにより第3培養容器RC3内の圧力が上昇するため、移送ラインを介してシリンジのプランジャのように懸濁液を押し出すことが可能となる。
【0207】
図示しない方法で、加圧気体流は培養容器RC2及びRC3の両方それぞれに気体供給装置G2及びG3を介して注入され、培養容器RC2及びRC3内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。
【0208】
加圧気体流は3つの培養容器のそれぞれに気体供給装置G1、G2、又はG3それぞれを介して再び注入され、3つの培養容器のそれぞれ内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。供給バルブ1、2、3、レベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3、及び供給バルブVa1、Va2、及びVa3は閉位置にある。放出バルブVd1、Vd2、及びVd3のみが開位置にある。
【0209】
所望の表現型を獲得した生細胞が得られるまで、先行する工程は必要なだけ繰り返される。
【0210】
細胞が所望する表現型を獲得したときに、回収工程が実施される。この工程は示されていない。また回収工程は数回の混合サイクル後に行うことができる。好ましくは、回収工程は、採取手段、特にはシリンジ11を用いて行われる。
【0211】
回収工程が実行されると、放出バルブVd1、Vd2、及びVd3が閉じることにより、外部気体源GSから加圧気体流が注入され、及び、供給バルブVa1、Va2、Va3、並びに2、3が開かれることにより、全ての培養容器が空になる。その後、バルブ1、Va1、Vd1、2、Va2、Vd2、3、Va3、Vd3を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンスの各工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれに添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、それぞれのバルブVa1、Va2、及びVa3によって実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれへ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、それぞれのバルブVa1、Va2、及びVa3によって実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれへリンス液を加える。リンス液を空にすることは、それぞれのバルブVa1、Va2、及びVa3によって実行される。これらの工程は、図1a、図1b、及び図1cに示されていない。
【0212】
図2a、2b、2cは、前記培養装置が前記培養容器から独立した単一の混合容器を含み、該培養装置は全ての培養容器の内容物を受け入れるように配置されている第2実施形態を示す。
【0213】
図2aの培養装置は、図1aの培養装置との相違点のみを説明する。図2aの培養装置は、さらに単一の混合容器RMを含み、培養容器RC1、RC2、及びRC3から独立し、前記培養容器の内容物を受け入れるように配置される。前記培養装置は、前記混合容器RMの最上部に接続された気体供給装置GMを含む。気体供給装置GMは、気体流を注入することで混合容器を加圧できる。前記装置は、気体供給装置GMの気体供給を制御する気体供給バルブVgmを含む。培養装置は、前記混合容器RMの上部に接続された放出装置Wmを含む。放出装置(Wm)により、混合中の気体を放出できる。この装置は、混合中の気体の放出を制御する放出バルブVdmを含む。放出バルブVdmは、通常、非動作状態では閉位置にある。放出バルブVdmが開位置にある場合、混合容器への充填及び/又は混合中の気体の放出を実行できる。培養装置は、混合容器の充填と放出を制御する供給バルブVamを含む。これは混合容器の下部に位置し、主供給ラインC10に接続され、培養容器から混合容器に懸濁液の全部又は一部を移送する際に混合容器への充填を可能にし、混合容器から培養容器に懸濁液の全部又は一部を移送する際に混合容器を空にすることができる。供給バルブVamは、通常、非動作状態では閉位置にある。供給バルブVamが開位置にある場合、混合容器は充填又は空にすることができる。供給バルブVamが閉位置にある場合、混合容器への充填又は排出はできない。
【0214】
前記培養装置が関連する、生細胞を連続細胞培養する方法は、図2a、2b、2cにおいて開示されるであろう。
【0215】
図2aによれば、3つの培養容器RC1、RC2、及びRC3の各々は、培地内の生細胞を含む。それらは総容量の約75%に充填されている。混合容器RMは空であり、バルブVdm、Vam、及びVgmは閉位置にある。
【0216】
図2bによれば、培養容器RC1、RC2、及びRC3に含まれる懸濁液は、矢印f1m、f2m、f3m、及びfmpで表されるように、混合容器RMに移送される。この目的で、供給バルブVa1、2、3、Vam、及び放出バルブVdmを開くことにより、培養容器RC1から混合容器RMへの懸濁液の移送が実行される。供給バルブVa2、3、Vam、及び放出バルブVdmを開くことにより、培養容器RC2から混合容器RMへの懸濁液の移送が実行される。供給バルブVa3、Vam、及び放出バルブVdmを開くことにより、培養容器RC3から混合容器RMへの懸濁液の移送が実行される。放出バルブVdmを開くと、混合容器RMの充填が可能になる。懸濁液の移送は、上述のように、気体供給装置G1、G2、及びG3によって実現される。
【0217】
培養容器RC1、RC2、及びRC3からの全ての懸濁液で混合容器が充填されると、供給バルブVamが閉位置に置かれる。
【0218】
培養容器RC1、RC2、及びRC3に関しては、バルブ1、Va1、Vd1、2、Va2、Vd2、3、Va3、Vd3を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンスの各工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれに添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVa1、Va2、及びVa3によってそれぞれ実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれに洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVa1、Va2、及びVa3によってそれぞれ実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれにリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVa1、Va2、及びVa3によってそれぞれ実行される。これらの工程は、図2bに示されていない。
【0219】
図2cによれば、矢印fms及びfm1で示すように、混合容器RM内の一部の懸濁液が培養容器RC1に移送される。この目的で、バルブVgm、Vam、3、2、Va1、及びVd1を開くことで移送を実行する。バルブVdmは閉位置に位置し、気体供給バルブVgmの開口部を介して、加圧気体流が混合容器RMに注入され、混合容器RMを空にすることができる。放出バルブVd1を開くと、培養容器RC1の充填が可能になる。バルブVa2、及びVa3は、閉位置にある。
【0220】
図2cによって示唆されるように、次に破線矢印fms及びfm2で示されるように、混合容器RM内の一部の懸濁液が、第2培養容器RC2に移送される。この目的で、バルブVgm、Vam、3、Va2、及びVd2を開くことで移送を実行する。バルブVdmは閉位置に位置し、気体供給バルブVgmの開口部を介して、加圧気体流が混合容器RMに注入され、混合容器RMを空にすることができる。放出バルブVd2を開くと、培養容器RC2の充填が可能になる。バルブVa1、及びVa3は、閉位置にある。
【0221】
図2cによって示唆されるように、次に破線矢印fms及びfm3で示されるように、混合容器RM内の一部の懸濁液が、第3培養容器RC3に移送される。この目的で、バルブVgm、Vam、Va3、及びVd3を開くことで移送を実行する。バルブVdmは閉位置に位置し、気体供給バルブVgmの開口部を介して、加圧気体流が混合容器RMに注入され、混合容器RMを空にすることができる。放出バルブVd3を開くと、培養容器RC3の充填が可能になる。バルブVa1、及びVa2は、閉位置にある。
【0222】
移送が完了し、混合容器が完全に空になった後、バルブ1、2、3、Vam、及びVdmを開いて、滅菌、洗浄、及びリンス工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RMに添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVamによって実行される。その後、洗浄液槽ACから混合容器RMへ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVamによって実行される。その後、リンス液槽ARから混合容器RMへリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVamによって実行される。これらの工程は、図2a~2cに示されていない。
【0223】
加圧気体流は3つの培養容器RC1、RC2、及びRC3のそれぞれに気体供給装置G1、G2、又はG3のそれぞれを介して再び注入され、前記3つの培養容器のそれぞれ内の懸濁液への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。供給バルブ1、2、3、レベリングバルブVt1、Vt2、及びVt3、及び供給バルブVa1、Va2、及びVa3は閉位置にある。放出バルブVd1、Vd2、及びVd3のみが開位置にある。
【0224】
培養容器内で所望の表現型を獲得した生細胞の数回の培養サイクルの後に、回収工程がその後実施される。この工程は示されていない。
【0225】
前記回収工程が完了すると、第1実施形態と同様の方法にて全ての培養容器は空にされる。これらの工程は図2aから2cに示されていない。
【0226】
図3の培養容器は、図1の培養容器と異なる観点からのみ記載されるであろう。
【0227】
図3に示すように、生細胞を連続細胞培養する装置は、第1培養容器RC1、第2培養容器RC2、第3培養容器RC3、及び第4培養容器RC4の4つの培養容器を含む。この実施形態では、培養容器のセットは、細胞培養方法の間、それぞれ連続的に混合容器となるように配置されており、それぞれの混合容器は、少なくとも2つの培養容器の内容物を受け取るように配置されている。それぞれの培養容器RC1、RC2、RC3、及びRC4は、上記の無菌流体供給装置10に、個別に、及び互いに独立して接続されている。無菌流体供給装置(10)は、供給バルブ1を介してその培養容器に接続されている。
【0228】
図3によれば、4つの培養容器のそれぞれは、培地内の生細胞を含む。生細胞は培養されて、懸濁液が得られる。例えば、加圧気体流は4つの培養容器のそれぞれに気体供給装置G1、G2、G3、又はG4のそれぞれを介して注入され、4つの培養容器RC1、RC2、RC3、及びRC4のそれぞれ内への気体注入及び懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。供給バルブ1、レベリングバルブVt1、Vt2、Vt3及びVt4、及び供給バルブVa1、Va2、Va3及びVa4は閉位置にある。放出バルブVd1、Vd2、Vd3及びVd4のみが開位置にある。
【0229】
前記培養装置は、前記4つの培養容器の相互接続を可能とするバルブV10、V20、V30、及びV40を含み、通常は非活動状態の閉位置にある。
【0230】
図3に示す前記培養装置が関連する、生細胞の連続細胞培養の方法は、図1a、1b及び1cに関連する培養方法と同様である。
【0231】
最初に、矢印f12で示されるように、第1培養容器RC1内の全ての懸濁液が培養容器RC2に移送される。この目的で、バルブVa1、V10、V20、Va2、及びVd2を開くことで移送を実行する。バルブVd1は閉位置に位置し、上述のように、気体供給装置によって培養容器RC1を空にすることができる。放出バルブVd2を開くと、培養容器RC2の充填が可能になる。その後、培養容器RC2は混合容器となり、培養容器RC2に最初に含まれる懸濁液と培養容器RC1からの懸濁液の両方を含む。加圧気体流が培養容器RC2に気体供給装置G2を介して注入され、培養容器RC2内の懸濁液への気体注入及び細胞懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を可能にする。培養容器RC3及びRC4では、加圧気体流を培養容器RC3及びRC4に注入し、バルブVd3及びVd4を開いた状態にすることで、培養工程が維持される。
【0232】
培養容器RC1では、その後、バルブ1、Va1、Vd1を開くことにより、滅菌、洗浄、及びリンス工程が実行される。最初に、滅菌液槽ASから滅菌液を培養容器RC1に添加する滅菌工程を開始する。滅菌液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。その後、洗浄液槽ACから培養容器RC1へ洗浄液を加える。洗浄液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。その後、リンス液槽ARから培養容器RC1へリンス液を加える。リンス液を空にすることは、バルブVa1によって実行される。これらの工程は、図3に示されていない。
【0233】
次に、矢印f21で示すように、培養容器RC2内の一部の懸濁液が培養容器RC1に移送される。この目的で、バルブVt2、V20、V10、Va1、及びVd1を開くことで移送を実行する。バルブVd2は閉位置に位置し、GC2から注入された気体を使用して懸濁液に圧力をかけることにより、培養容器RC2を空にすることができる。放出バルブVd1を開くと、培養容器RC1の充填が可能になる。加圧気体流が培養容器RC1及びRC2にそれぞれ注入され、気体供給装置G1及びG2を介して気体を懸濁液に注入し、培養容器RC1及びRC2内の細胞懸濁液の均質化(バブリング撹拌)を実行できる。第3培養容器RC3及びRC4では、加圧気体流を培養容器RC3及びRC4に注入し、バルブVd3及びVd4を開いた状態にすることで、培養工程が維持される。
【0234】
その後、点線矢印f13で示唆されるように、培養容器RC3内の全ての懸濁液が第1培養容器RC1に移送される。この目的で、バルブVa1、V10、V30、Va3を開くこと、並びにバルブVd3を閉じることで移送を実行する。その後、容器RC3の滅菌、洗浄、及びリンスを、上述の容器RC1に対してのように実施する。次に、混合後、矢印f31で示すように、培養容器RC1内の一部の懸濁液が培養容器RC3に移送される。この目的で、バルブVt1、V30、V10、Va1を開くこと、並びにバルブVd1を閉じることで移送を実行する。
【0235】
点線矢印f14で示唆されるように、培養容器RC1内の全ての懸濁液が第4培養容器RC4に移送される。この目的で、バルブVa1、V10、V40を開くこと、並びにバルブVd1を閉じることで移送を実行する。次に、混合後、矢印f41で示すように、培養容器RC4内の一部の懸濁液が培養容器RC4に移送される。この目的で、バルブVt4、V40、V10、Va1を開くこと、並びにバルブVd4を閉じることで移送を実行する。
【0236】
その後、点線矢印f23で示唆されるように、培養容器RC2内の全ての懸濁液が第3培養容器RC3に移送される。この目的で、バルブVa2、V20、V30、Va3を開くこと、並びにバルブVd2を閉じることで移送を実行する。その後、容器RC2の滅菌、洗浄、及びリンスを、上述の容器RC1に対してのように実施する。次に、混合後、矢印f32で示すように、培養容器RC3内の一部の懸濁液が培養容器RC2に移送される。この目的で、バルブVt3、V30、V20、Va2を開くこと、並びにバルブVd3を閉じることで移送を実行する。
【0237】
点線矢印f24で示唆されるように、培養容器RC4内の全ての懸濁液が第2培養容器RC2に移送される。この目的で、バルブVa2、V20、V40、Va4を開くこと、並びにバルブVd4を閉じることで移送を実行する。その後、容器RC4の滅菌、洗浄、及びリンスを、上述の容器RC1に対してのように実施する。次に、混合後、矢印f42で示すように、培養容器RC2内の一部の懸濁液が培養容器RC4に移送される。この目的で、バルブVt4、V40、V20、Va2を開くこと、並びにバルブVd2を閉じることで移送を実行する。
【0238】
最後に、点線矢印f34で示唆されるように、培養容器RC3内の全ての懸濁液が第4培養容器RC4に移送される。この目的で、バルブVa3、V30、V40、Va4を開くこと、並びにバルブVd3を閉じることで移送を実行する。次に、混合後、矢印f43で示すように、培養容器RC4内の一部の懸濁液が第3培養容器RC3に移送される。この目的で、バルブVt4、V40、V30、Va3を開くこと、並びにバルブVd4を閉じることで移送を実行する。
【0239】
図4の培養装置について、図3の培養装置と異なる観点からのみ記載されるであろう。図4は、4つの培養容器と該培養容器のセットから独立した単一の混合容器RMとを含み、前記混合容器は、培養容器RC1、RC2、RC3及びRC4のセットの内容物を受け入れるように配置されている特定の第4実施形態を表す。培養容器RC1、RC2、RC3及びRC4のそれぞれは、個別に、及び互いに独立して、前述した無菌流体供給装置10に接続される。無菌流体供給装置(10)はその培養容器に供給バルブ1を介して接続される。
【0240】
図4に示す前記培養装置が関連する、生細胞を連続細胞培養する方法は図2a、2b、及び2cが関連する培養方法に類似する。
【0241】
有利には、培養容器RC1、RC2、RC3及びRC4に含まれる懸濁液は、混合容器RMに移送される。
【0242】
その後、容器RC1、RC2、RC3及びRC4の滅菌、洗浄、及びリンスの作業が実施される。
【0243】
前記混合工程が完了すると、混合容器RM内の一部の懸濁液が、第1培養容器RC1に移送される。その後、混合容器RM内の一部の懸濁液は、第2培養容器RC2に移送される。その後、混合容器RM内の一部の懸濁液は、第3培養容器RC3に移送される。その後、混合容器RM内の一部の懸濁液は、第4培養容器RC4に移送される。
【0244】
次に、混合容器RMの滅菌、洗浄、及びリンスの操作が実施される。
【実施例
【0245】
以下に説明する全ての実施例において、成長状況は、タービドスタットであり、希釈率(単位、時間-1)は、進化中に培養室内の微生物濃度を一定に保つための成長培地の流量と、培養室の容積との比として定義される。これらの実験では、希釈率が個体数の増加率と同等になるようにタービドスタットが導入された。
【0246】
実施例1:細菌株の30℃への進化的適応
最適温度より低い準最適温度において、生物の成長速度は最適温度より低くなる。生物が最適温度より低い温度で使用されるよう意図されている場合、この生物を前記温度に適応させることが関係する。
【0247】
以下の実験1及び2において、使用した菌株は、シュードモナス科の土壌細菌である。炭素源として20g/Lのスクロースを含む合成生育培地における本菌の比成長速度は、最適温度35℃において0.315時間-1であった。
【0248】
2つの実験それぞれについて、この株を30℃の温度に適応させることを目的とし、30℃における成長速度が35℃における出発株と同程度になることを目指す。
【0249】
この目的を達成するために、上記と同一の株を使用して、上記と同一の設定で、同一の参照培地を使用して、2回の適応進化実験を実施した。
【0250】
1/実験1:本発明に含まれない比較方法:目標温度30℃のタービドスタット
実験1は、本発明によらない単純な進化プロトコルに基づいて、前述の細菌を進化的に適応させるもので、単一の培養容器でタービドスタット選択的状況のみを実施する。
【0251】
実験開始時に、培養容器に上記の菌株を植え付ける。
【0252】
実験中、温度は30℃に固定され、保たれている。
【0253】
選択的状況は以下のように不連続に実施され、10分ごとに、光学測定で測定された透明度を、任意に80に設定された閾値と比較する。
・測定値が閾値を超えている場合、アクションは発生しない、
・測定値が閾値より小さい場合、懸濁液の希釈は、培養容器内に上記の成長培地を4mL加え、培養容器内に存在する懸濁液の体積を13.5mLで一定に保ち、培養容器内に存在する同じ体積Vを引き抜くことで実施される。
【0254】
得られた結果を図5に示す。
【0255】
得られた結果
30℃のタービドスタットで20日間の適応進化を経て、理論上の希釈率又は成長速度0.358時間-1に相当する29回の日次希釈回数に到達する
【0256】
2/実験2:2つの培養容器を使用する本発明方法
実験2は、本発明方法に基づいて、上記と同一の細菌を進化的に適応させ、2つの培養容器RC1及びRC2を異なる温度で実施した。このプロトコルは、実験1で使用したものと同一の装置で実施されている。
【0257】
実験開始時に、それぞれの培養容器RC1及びRC2に、実験1の開始時に植え付けたものと同じ上記の菌株を植え付け、初期温度は容器RC1及びRC2とも35℃である。
【0258】
2つの培養容器RC1及びRC2は、それぞれ選択的状況がタービドスタットで、実験1で使用したものと同一のパラメータで、実験1で述べたように不連続的に実施した:
・上記で定義した成長培地
・透明度の閾値=80
・培養容器内に成長培地を4mL加え、培養容器内に存在する懸濁液の体積を13.5mLで一定に保ち、培養容器内に存在する同じ体積Vを引き抜くことによる懸濁液の希釈。
【0259】
成長段階は任意に12時間と定義され、その終了時に培養容器RC1の全内容を混合容器となる培養容器RC2に移送して工程c)を実行する。したがって、1サイクルは12時間で、1日2サイクルである。
【0260】
新規サイクルごとに、これら2つの培養容器RC1及びRC2のそれぞれの温度は、容器RC1内の平均希釈率の計算に基づいて自動的に調整され、直前に終了したサイクルの平均である容器RC1の希釈率が、30℃のタービドスタットに20日間置いた後の実験1で得られた0.358時間-1を任意に設定した閾値を超えた場合、すぐに培養温度を下げるように指示されている。
【0261】
以下の表1は、2つの培養容器RC1及びRC2のそれぞれで、連続サイクルで適用される温度を示し、実験7日目に1サイクルだけ実施されたことを考慮している。
【表1】
【0262】
得られた結果
得られた結果を図6及び7に示す。
【0263】
18サイクル目の培養サイクルの間、つまり適応進化の10日後、培養容器RC1内の温度は30℃である。このサイクルの間、平均希釈率は0.387時間-1で、同一の装置で30℃のタービドスタットで20日間適応進化させた後に得られた平均希釈率よりも高い。
【0264】
成長率を比較するために、実験2の1サイクルにおける希釈率を実験1で測定したものと比較することは正当である。これは、各サイクルにおいて懸濁液が、同一のバッチプロトコルに基づいて、同一のパラメータで、同一の装置(実験2の培養容器RC1は実験1で使用したものと正確に同じ培養容器)において実施されるタービドスタット選択的状況に曝露されるからである。
【0265】
したがって、実験2の10日目、18サイクル目で成長した懸濁液は、タービドスタット実験1の20日目に得られた30℃における成長率よりもわずかに高い成長率を示している。
【0266】
結論
したがって、本発明方法に基づいて2つの培養容器に定期的に混合及び再分配される2つの部分集団の並行進化的適応を実施する実験2のプロトコルにおいて、単一の集団が単一の容器で成長する従来のタービドスタット状況に比べて、細菌を準最適温度に適応させる速度を2倍にすることが可能であった。
【0267】
実施例2:細菌株の25℃への進化的適応。
いずれの実験でも、この株を25℃の温度に適応させながら、成長速度を上げることが目的である。
【0268】
この目的を達成するため、実施例1と同一の株を使用して、同一の設定で、同一の参照培地を使用して、35℃、希釈率0.315時間-1で初期進化させた2回の適応進化実験を実施した。
【0269】
1/実験3:本発明に含まれない比較方法:目標温度25℃のタービドスタット
この実験は、上記の実施例1で示した実験1/と同一の条件で実行したが、温度は25℃とした。
【0270】
実験は、容量15mL又は80mLの単一の培養容器を使用して実施した。
【0271】
得られた結果
その結果を添付の図8に示す。この図では、希釈率(時間-1)は日数の関数である。実線の丸印で示した曲線は容量80mLで実施した実験に対応し、実線の四角形で示した曲線は容量15mLで実施した実験に対応する。
【0272】
容量15mLの培養容器でも容量80mLの培養容器でも、18日間で25℃における希釈率又は成長率0.2時間-1が得られることが確認され、培養容器の容量は微生物の進化に重要なパラメータではないことが示された。
【0273】
2/実験4:所定の希釈率0.2時間 -1 で、2つの培養容器を使用する本発明方法
実験4は、それぞれが容量15mLを有する2つの培養容器RC1及びRC2を使用して、実施例1の実験2に記載のプロトコルに基づいて、本発明方法に基づいて同一の細菌を進化適応させることで構成された。ただし、温度は35℃から25℃に変化させた。
【0274】
実験開始時に、それぞれの培養容器RC1及びRC2に実施例1と同じ菌株を植え付け、初期温度は両方の容器RC1及びRC2とも35℃である。
【0275】
新規サイクルごとに、これら2つの培養容器RC1及びRC2のそれぞれの温度は、容器内の平均希釈率の計算に基づいて自動的に調整され、直前に終了したサイクルの平均である、培養容器RC1の希釈率が、任意に0.2時間-1と設定した閾値、25℃のタービドスタットに18日間置いた後の実験3で得られた値を超えた場合、すぐに培養温度を下げるように指示されている。
【0276】
以下の表2は、2つの培養容器RC1及びRC2のそれぞれで、連続サイクルで適用される温度を示している
【表2】
【0277】
得られた結果を添付された図9に示す。
【0278】
この図では、気温(℃)は日数の関数である。実線の菱形で示した曲線はRC1で実施した実験に対応し、実線の四角形で示した曲線はRC2で実施した実験に対応する。
【0279】
これらの結果は、2つの培養容器の内容物の反復混合を実施する本発明方法によれば、25℃における希釈率又は成長率0.2時間-1の菌の適応が7日間で得られる、つまり、本発明によらない実験3の方法より2.6倍速く得られることを示している
【0280】
進化的適応法について観察された利点は、少なくとも2つの培養容器から来る懸濁液を定期的に組み合わせ、分離することからなる本発明方法によって実際にもたらされる。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】