(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】免疫細胞回復のためのアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230614BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20230614BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20230614BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230614BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230614BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/53 D
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/09 110
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515940
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020050112
(87)【国際公開番号】W WO2021050673
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515041446
【氏名又は名称】リサーチ インスティテュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH INSTITUTE AT NATIONWIDE CHILDREN’S HOSPITAL
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】リー,ディーン アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】モーズマン,ジェナ エドワーズ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
(57)【要約】
融解されたばかりの免疫細胞の回復の可能性を測定するための組成物および方法が開示される。本方法には、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルをアッセイすることが含まれ、この表面受容体のレベルは、免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する(すなわち、対照と比べたADAM-17切断表面受容体発現レベルの増加が大きいほど、回復の可能性が高くなる)。本方法を使用して、免疫細胞が、使用前に免疫療法で使用するのに十分な生存率を有するかどうかを決定することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法であって、前記免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルをアッセイすることを含み、前記表面受容体のレベルの増加が前記免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する、方法。
【請求項2】
前記膜損傷事象が、凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露を含む、請求項1に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項3】
前記膜損傷事象が凍結融解サイクルを含む、請求項2に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項4】
免疫細胞が、水浴を使用して融解された、請求項3に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項5】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記免疫細胞膜損傷事象の後0~24時間以内にアッセイされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項6】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記免疫細胞膜損傷事象の後12~24時間以内にアッセイされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項7】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項8】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、CAR NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、または好中球を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項9】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはCAR NK細胞であり、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16である、請求項1~8のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項10】
前記NK細胞が拡大されたNK細胞である、請求項9に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項11】
前記免疫細胞が、T細胞またはCAR T細胞であり、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD62LまたはIL-15Rを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項12】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項13】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体のレベルが、前記免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、前記細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、請求項1~12のいずれか一項に記載の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法。
【請求項14】
免疫療法を、それを必要とする対象に施す方法であって、
a)細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた1つ以上の免疫細胞を得ることと、
b)前記免疫細胞をアッセイして、ADAM-17切断表面受容体の発現レベルを決定することと、
c)前記対象に、対照免疫細胞と比べて増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する治療上有効量の免疫細胞を投与することと、を含む、方法。
【請求項15】
ADAM-17切断表面受容体の発現レベルのアッセイ結果を、免疫細胞治療薬の製造ロットのスクリーニングまたは選択のために使用することをさらに含む、請求項14に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項16】
前記免疫療法が、がんを有すると診断された対象のための抗がん治療である、請求項14または15に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項17】
前記細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露を含む、請求項14~16のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項18】
前記細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクルを含む、請求項17に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項19】
免疫細胞が、水浴を使用して融解された、請求項18に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項20】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後0~24時間以内にアッセイされる、請求項14~19のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項21】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後12~24時間以内にアッセイされる、請求項14~19のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項22】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)を含む、請求項14~21のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項23】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、CAR NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、または好中球を含む、請求項14~22のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項24】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはCAR NK細胞であり、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16である、請求項14~23のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項25】
前記NK細胞が、拡大されたNK細胞である、請求項24に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項26】
前記免疫細胞が、T細胞またはCAR T細胞であり、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD62LまたはIL-15Rを含む、請求項14~25のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項27】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる、請求項14~26のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項28】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体のレベルが、前記免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、前記細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、請求項14~27のいずれか一項に記載の免疫療法を施す方法。
【請求項29】
細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた治療上有効量の免疫細胞の免疫療法における使用であって、前記細胞が、対照免疫細胞と比べて増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する、使用。
【請求項30】
前記免疫療法が抗がん治療である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露を含む、請求項29または30に記載の使用。
【請求項32】
前記細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクルを含む、請求項29または30に記載の使用。
【請求項33】
前記免疫細胞が、水浴を使用して融解された、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後0~24時間以内に決定される、請求項29~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後12~24時間以内にアッセイされる、請求項29~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)を含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、CAR NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、または好中球を含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCAR NK細胞を含み、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16である、請求項29~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記NK細胞および/またはCAR NK細胞が、拡大されたNK細胞を含む、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記免疫細胞が、T細胞および/またはCAR T細胞を含み、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD62LまたはIL-15Rを含む、請求項29~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる、請求項29~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体のレベルが、前記免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、前記細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、請求項29~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた治療上有効量の免疫細胞を含み、対照免疫細胞と比べて増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する、免疫療法用組成物。
【請求項44】
前記細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露を含む、請求項43に記載の免疫療法用組成物。
【請求項45】
前記膜損傷事象が、凍結融解サイクルを含む、請求項43または44に記載の免疫療法用組成物。
【請求項46】
前記免疫細胞が、水浴を使用して融解された、請求項45に記載の免疫療法用組成物。
【請求項47】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後0~24時間以内に決定される、請求項43~46のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項48】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、前記細胞膜損傷事象の後12~24時間以内にアッセイされる、請求項43~46のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項49】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)を含む、請求項43~48のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項50】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、CAR NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、または好中球を含む、請求項43~49のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項51】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCAR NK細胞を含み、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD16である、請求項50に記載の免疫療法用組成物。
【請求項52】
前記NK細胞および/またはCAR NK細胞が、拡大されたNK細胞を含む、請求項51に記載の免疫療法用組成物。
【請求項53】
前記免疫細胞が、T細胞および/またはCAR T細胞を含み、前記ADAM-17切断表面受容体が、CD62LまたはIL-15Rを含む、請求項50に記載の免疫療法用組成物。
【請求項54】
前記ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる、請求項43~53のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項55】
前記免疫細胞上に発現する前記ADAM-17切断表面受容体のレベルが、前記免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、前記細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、請求項43~54のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【請求項56】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項43~55のいずれか一項に記載の免疫療法用組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2019年9月24日出願の米国仮出願第62/904,843号、および20219年9月10日出願の米国仮出願第62/898,170号の利益を主張し、これらの出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
免疫細胞の凍結保存は、免疫療法にとって克服が困難な問題となっている。凍結保存された免疫細胞の異なるロットまたは異なるドナーの生存率の変動性も、細胞ベースの免疫療法にとって重大な問題である。加えて、融解直後に行われる生存率の一般的なアッセイは、機能的回復の予測値が不良な場合がある。例えば、T細胞は、群間の融解後の変動性が90%を超える。凍結保存されるナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞は、融解後の回復および機能が不良であることが多い。融解直後のNK細胞は80~90%の生存率を有するが、次の24時間で生存率を失い続け、最終的な生存回復率は20%と低いことが多い。したがって、融解直後の生存率は、細胞が生存するか、または高度に機能的であるか否かの良好な指標ではない。
【0003】
多数の臨床グレード細胞の精製および拡大のための新しいプロトコルが利用可能となったため、NK細胞ベースの免疫療法への関心が再び高まった。しかしながら、そのような細胞は使用前に凍結保存されるため、凍結保存後のNK細胞の生存率を決定して、投与された細胞が有効な生細胞の数に従って投薬されることを確実にするための信頼できる方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0004】
細胞膜損傷事象の間にカルシウムが細胞内に進入することによって活性化されたメタロプロテアーゼ(例えば、ADAM17など)によって切断される細胞表面の表面受容体(例えば、CD16など)の代理測定に基づいて、細胞膜損傷事象後の細胞回復を測定することに関する方法が開示される。
【0005】
本発明者らは、融解当日に、ADAM17による切断に起因してCD16受容体が喪失するが、その24時間後に、CD16の表面レベルが生細胞上で回復することを発見した。理論に拘束されるものではないが、エビデンスは、ADAM17などのメタロプロテアーゼがCD16の脱落を介してNK細胞機能に有害な影響を有するという意見と一致する。CD16は、NK細胞の抗体依存性および抗体非依存性の細胞傷害性の原因となることから、NK細胞上で発現する重要なタンパク質である。本発明者らは、凍結保存試料の融解当日に生細胞集団中に存在するCD16のパーセンテージを分析することにより、NK細胞がどの程度良好に回復するかを予測することができる技術を特定した。これは、融解当日に即時の回復マーカーを手に入れ、患者が、注入のために機能的な生NK細胞製品のみを受けることを確実にすることにより、免疫細胞療法に役立つ。
【0006】
一態様では、細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない)後の免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、好中球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/またはCAR NK細胞など)の回復の可能性を測定する方法が本明細書で開示され、本方法には、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体(例えば、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)など)のレベルをアッセイすること(フローサイトメトリーを介してアッセイすることを含むがこれに限定されない)が含まれ、表面受容体のレベルの増加(対照免疫細胞と比べて、または細胞膜損傷免疫細胞の混合集団と比べて)は、免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する。
【0007】
また、ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが免疫細胞膜損傷事象の後0~24時間または12~24時間以内にアッセイされる、いずれかの先行する態様の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法も本明細書で開示される。
【0008】
一態様では、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルが、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、いずれかの先行する態様の細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法が本明細書で開示される。
【0009】
また、免疫療法(例えば、抗がん治療など)を、それを必要とする対象に施す方法も本明細書で開示され、本方法には、a)細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない)後の以前に主題にされた1つ以上の免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、好中球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/またはCAR NK細胞など)を得ることと、b)ADAM-17切断表面受容体(例えば、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)など)の発現レベルをアッセイすることと、c)対象に、対照免疫細胞と比べて、または細胞膜損傷免疫細胞の混合集団と比べて、増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する治療上有効量の免疫細胞を投与することと、が含まれる。
【0010】
一態様では、ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが免疫細胞膜損傷事象の後0~24時間または12~24時間以内にアッセイされる、いずれかの先行する態様の免疫療法を施す方法が本明細書で開示される。
【0011】
また、ADAM-17切断表面受容体発現のレベルが、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる、いずれかの先行する態様の免疫療法を施す方法も本明細書で開示される。
【0012】
一態様では、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルが、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、いずれかの先行する態様の免疫療法を施す方法が本明細書で開示される。
【0013】
また、細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた治療上有効量の免疫細胞の免疫療法における使用も本明細書で開示され、ここでは、細胞は、対照免疫細胞と比べて、または細胞膜損傷免疫細胞の混合集団と比べて、増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する。一態様では、本免疫療法は、例えば、抗がん治療であってもよい。
【0014】
また、細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた治療上有効量の免疫細胞を含み、対照免疫細胞と比べて、または細胞膜損傷免疫細胞の混合集団と比べて、増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する、免疫療法用組成物も、本明細書で開示される。本免疫療法用組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0015】
本明細書に記載される方法、使用、および免疫療法用組成物のうちのいずれかの様々な態様は、細胞膜損傷事象が、凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露のうちのいずれか1つを含んでもよい、方法、使用、および組成物を包含することを理解されたい。本明細書に記載される方法、使用、および組成物のうちのいずれにおいても、ADAM-17切断表面受容体発現レベルは、細胞膜損傷事象の後0~24時間以内または12~24時間以内に決定され得る。本明細書に記載される方法、使用、および組成物のうちのいずれにおいても、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体は、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)を含み得る。本明細書に記載される方法、使用、および組成物のいずれにおいても、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、好中球、および/またはCAR NK細胞を含み得る。免疫細胞がナチュラルキラー(NK)細胞および/またはCAR NK細胞を含む場合、ADAM-17切断表面受容体はCD16を含んでもよく、かつ/あるいは、細胞は拡大されたNKまたはCAR NK細胞を含んでもよい。免疫細胞がT細胞および/またはCAR T細胞を含む場合、ADAM-17切断表面受容体は、CD62LまたはIL-15Rを含んでもよい。本明細書に記載される方法、使用、および組成物のうちのいずれにおいても、ADAM-17切断表面受容体発現のレベルは、フローサイトメトリーを使用してアッセイされてもよく、かつ/または免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、一部の実施形態を例示し、説明とともに、開示される組成物および方法を例示する。
【0017】
【
図1】CD16を発現する生リンパ球のパーセンテージを測定するためのゲーティング戦略を示すグラフを提供する。
【
図2】NK細胞上のCD16発現が融解直後に失われるが、完全培地およびIL-2中で一晩静置した後に回復することを示すグラフを提供する。
【
図3】0日目のCD16発現と、完全培地およびIL-2中で一晩静置した後に回復するNK細胞のパーセンテージとの間に正の相関があり、IL-2が7つの異なるNK細胞ドナーにわたって一貫していることを示すグラフを提供する。
【
図4】0日目のCD16発現と、完全培地およびIL-2中で一晩静置した後に回復するNK細胞のパーセンテージとの間の正の相関、ならびにIL-2が9つの異なる種類の凍結保存培地にわたって一貫していることを示すグラフを提供する。
【
図5】0日目のCD16発現と、完全培地およびIL-2中で一晩静置した後に回復するNK細胞のパーセンテージとの間の正の相関、ならびに時間および実験条件にわたって一貫している5つの異なる実験にわたるIL-2を示すグラフを提供する。
【
図6-1】CD16の喪失がADAM17によって調節され、ADAM17が欠失しているNK細胞により、CD16発現の回復が強化されたことを示す図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法を開示および説明する前に、それらは、特に明記しない限り、特定の合成方法または特定の組換えバイオテクノロジー方法に限定されず、特に明記しない限り、特定の試薬に限定されないこと(当然、変化し得るため)を理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0019】
A.定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「1つの」(「a」、「an」、および「the」)は、文脈上別段明らかに指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物などを含む。
【0020】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、のように表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、そのある特定の値から、および/またはその他の特定の値まで、を含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞の「約」を使用することによって、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されよう。さらに、範囲の各終点は、他の終点と関連して、および他の終点とは独立して、両方とも重要であることが理解されよう。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」も開示される。当業者によって適切に理解されるように、ある値が「その値以下」であることが開示される場合、「その値以上」およびその値の間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。また、本出願全体にわたって、データは、いくつかの異なる形式で提供され、このデータは、終点および始点、ならびにデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント15が開示される場合、10と15の間に加えて、10より大きい、10以上、10未満、10以下、および10に等しい、15より大きい、15以上、15未満、15以下、および15に等しい値が開示されるとみなされることが理解される。また、2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることが理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、以下の意味を有するべく定義されたいくつかの用語を参照されたい。
【0022】
「任意選択の」または「任意選択で」は、後で説明する事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、この記載には、当該事象または状況が生じる事例および生じない事例が含まれる。
【0023】
「増加」は、より多くの量の症状、疾患、組成物、状態、または活性をもたらす任意の変化を指し得る。増加は、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個々の値、中央値、または平均の増加であり得る。したがって、増加は、その増加が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の増加であり得る。
【0024】
「減少」は、より少ない量の症状、疾患、組成物、状態、または活性をもたらす任意の変化を指し得る。ある物質はまた、その物質を含む遺伝子産物の遺伝的出力が、その物質を含まない遺伝子産物の出力と比較して少ない場合に、遺伝子の遺伝的出力を減少させると理解される。また、例えば、減少は、症状が以前に観察されたものよりも少ないような、障害の症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量の状態、症状、活性、組成物の任意の個々の値、中央値、または平均の減少であり得る。したがって、減少は、その減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0025】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」は、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これには、活性、応答、状態、または疾患の完全な除去が含まれ得るが、これらに限定されない。これには、例えば、天然または対照レベルと比較して、活性、応答、状態、または疾患の10%低減も含まれ得る。したがって、低減は、天然または対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低減であり得る。
【0026】
「低減する」または他の形態の単語、例えば「低減すること」または「低減」は、事象または特徴(例えば、腫瘍成長)の低下を意味する。これは典型的には、いくつかの標準値または期待値に関連しており、換言すれば、それは相対的であるが、標準値または相対値を参照することが必ずしも必要ではないことが理解される。例えば、「腫瘍成長を低減する」は、標準または対照と比較して、腫瘍の成長速度を低減することを意味する。
【0027】
「予防する」または単語の他の形態、例えば「予防すること」または「予防」とは、特定の事象または特徴を停止すること、特定の事象または特徴の発達または進行を安定化させるか、または遅らせること、あるいは特定の事象または特徴が発生する可能性を最小限に抑えることを意味する。予防は、典型的には、例えば、低減よりも絶対的であるため、対照との比較を必要としない。本明細書で使用される場合、何かを低減することができるが、予防することができない場合があるが、低減される何かを予防することができる場合もある。同様に、何かを予防することができるが、低減することができない場合があるが、予防される何かを低減することができる場合もある。低減または予防が使用される場合、特に具体的に指定しない限り、他の単語の使用も明示的に開示されることを理解されたい。
【0028】
「対象」という用語は、投与または治療の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。一態様では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、またはネコであり得る。対象はまた、モルモット、ラット、ハムスター、ウサギ、マウス、またはモールであってもよい。したがって、対象は、ヒトまたは獣医学的患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば、医師の治療下にある対象を指す。
【0029】
「治療上有効」という用語は、使用される組成物の量が、疾患または障害の1つ以上の原因または症状を軽減するのに十分なものであることを指す。このような軽減は、低減または改変を必要とするだけであり、排除である必要はない。
【0030】
「治療」という用語は、疾患、病的な状態、または障害を治癒し、軽減し、安定化し、または予防する意図を有する患者の医学的管理を指す。この用語は、能動的治療、すなわち、疾患、病的な状態、または障害の改善に特異的に向けられた治療を含み、原因治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、または障害の原因の除去に向けられた治療も含む。加えて、この用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病的な状態、または障害の治癒ではなく、症状の緩和のために設計された治療、予防的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、または障害の発症を最小限に抑えるか、または部分的もしくは完全に阻害することに向けられた治療、および補助的治療、すなわち、関連する疾患、病的な状態、または障害の改善に向けられた別の特定の療法を補充するために使用される治療を含む。
【0031】
「生体適合性」は、概して、レシピエントにとって概して無毒であり、対象に重大な副作用を引き起こさない材料および任意の代謝産物またはその分解産物を指す。
【0032】
「含む」という用語は、組成物および方法などが、列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。組成物および方法を定義するために使用される場合、「~から本質的になる」は、列挙された要素を含むが、組み合わせに対する任意の本質的な重要性を有する他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義される要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法から微量汚染物質および薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、保存剤などを除外しない。「~からなる」は、本開示で提供されるおよび/または特許請求される組成物を投与するための他の成分の微量要素を超えるもの、および実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
【0033】
「対照」は、比較目的で実験に使用される代替の対象または試料である。対照は、「陽性」であっても「陰性」であってもよい。
【0034】
薬剤の「有効量」とは、所望の効果を提供するのに十分な量の薬剤を指す。「有効」である薬剤の量は、対象の年齢および一般状態、特定の薬剤(複数可)などの多くの要因に応じて、対象によって異なるであろう。したがって、定量化された「有効量」を指定することは必ずしも可能ではない。しかしながら、任意の対象の場合における適切な「有効量」は、日常的な実験を使用して当業者によって決定されてもよい。また、本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、薬剤の「有効量」とは、治療上有効量および予防上有効量の両方をカバーする量も指すことができる。治療効果を達成するのに必要な薬剤の「有効量」は、対象の年齢、性別、および体重などの要因に従って変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調整することができる。例えば、一日に用量をいくつかに分割して投与してもよく、または治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例して減らしてもよい。
【0035】
「薬学的に許容される」構成要素は、生物学的または他の望ましくないものではない構成要素、すなわち、著しく望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれが含まれる製剤の他の構成要素のいずれかと有害な様式で相互作用することなく、本開示によって提供される医薬製剤に組み込んで、本明細書に記載のように対象に投与することができる構成要素を指し得る。ヒトへの投与に関して使用される場合、本用語は、概して、構成要素が、毒性試験および製造試験の必要な基準を満たしているか、またはU.S.Food and Drug Administrationによって作成されたInactive Ingredient Guideに含まれることを意味する。
【0036】
「薬学的に許容される担体」(「担体」と称されることがある)は、一般に安全かつ無毒の薬学的または治療組成物の調製において有用な担体または賦形剤を意味し、獣医学的および/またはヒトの薬学的または治療的使用が許容される担体を含む。「担体」または「薬学的に許容される担体」という用語には、リン酸緩衝食塩水、水、エマルジョン(油/水もしくは水/油エマルジョンなど)、および/または様々な種類の湿潤剤が含まれ得るが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、任意の賦形剤、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、脂質、安定剤、または医薬製剤で使用するために当該技術分野でよく知られた材料、および本明細書にさらに記載される材料を包含するが、これらに限定されない。
【0037】
「薬理学的活性」(または単に「活性」)は、「薬理学的活性」誘導体または類似体において、親化合物と同じ種類の薬理学的活性を有し、程度がほぼ同等な誘導体または類似体(例えば、塩、エステル、アミド、複合体、代謝産物、異性体、断片など)を指し得る。
【0038】
「治療剤」は、有益な生物学的効果を有する任意の組成物を指す。有益な生物学的効果としては、治療効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態の治療、および予防効果、例えば、障害または他の望ましくない生理学的状態(例えば、非免疫原性がん)の予防の両方が挙げられる。これらの用語はまた、本明細書に具体的に言及される有益な薬剤の薬学的に許容される薬理学的に活性な誘導体を包含し、限定されないが、塩、エステル、アミド、前駆薬剤、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含む。「治療剤」という用語が使用される場合、次いで、または特定の薬剤が具体的に特定される場合、この用語は、薬剤自体、ならびに薬学的に許容される薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、前駆薬剤、複合体、活性代謝産物、異性体、断片、類似体などを含むことを理解されたい。
【0039】
組成物(例えば、薬剤を含む組成物)の「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、所望の治療結果を得るのに有効な量を指す。一部の実施形態では、所望の治療結果は、I型糖尿病の制御である。一部の実施形態では、所望の治療結果は、肥満の制御である。所与の治療剤の治療上有効量は、典型的には、治療される障害または疾患の種類および重症度、ならびに対象の年齢、性別、および体重などの要因に関して異なるであろう。この用語はまた、疼痛緩和などの所望の治療効果を促進するのに有効な、治療剤の量、または治療剤の送達の速度(例えば、経時的な量)を指すこともできる。正確な所望の治療効果は、治療される状態、対象の耐容性、投与される薬剤および/または薬剤製剤(例えば、治療剤の効力、製剤中の薬剤の濃度など)、ならびに当業者によって理解される様々な他の因子に従って異なるであろう。場合によっては、所望の生物学的応答または医学的応答は、数日、数週間、または数年にわたって、組成物を複数回投与した後に達成される。
【0040】
「免疫細胞(複数可)」は、任意の免疫細胞、例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、γδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、好中球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/もしくはCAR NK細胞、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0041】
「ADAM-17切断表面受容体」は、他のプロテアーゼによって媒介される脱落または喪失の対象ともなり得る受容体を包含することを理解されたい。
【0042】
本出願全体をとおして、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は、その全体が、本出願に関係する技術水準をより完全に説明するために参照により本出願に援用される。開示される参考文献はまた、参考文献に依る文章で論じられ、それらに含まれる材料について、個別にかつ具体的に参照により本明細書に援用される。
【0043】
B.細胞回復の可能性を測定する方法
本発明は、細胞膜損傷事象(例えば、凍結保存をとおして生じるものなどの凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露など)後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法を提供する。本方法には、損傷誘導性ADAM-17活性のための代理として免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルを測定することが含まれ、損傷していない細胞と比べたこの表面受容体のレベルの増加(すなわち、ADAM-17切断表面受容体のレベルが維持されるか、またはADAM-17切断表面受容体のより少ない喪失を有する)は、より少ない損傷および免疫細胞回復のより高い可能性と直接相関する。つまり、ADAM-17切断表面受容体の喪失が少ないほど、免疫細胞回復の可能性が高くなる。一態様では、本発明は、細胞膜損傷事象(例えば、凍結保存をとおして生じるものなどの凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露など)後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法を提供し、本方法には、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体(例えば、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)など)のレベルをアッセイすることが含まれ、表面受容体のレベルの増加は、免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する。つまり、免疫細胞上のADAM-17切断表面受容体の表面発現が大きいほど(すなわち、ADAM-17切断に起因する表面受容体の喪失が小さく、表面受容体レベルが損傷していない対照に近いほど)、免疫細胞が回復する可能性が高くなる。したがって、表面受容体のレベルの増加が免疫細胞の回復の可能性と直接的に相関する、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルをアッセイすることを含む、細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法が本明細書に開示される。
【0044】
本明細書に開示される方法により、細胞膜損傷事象からの回復の可能性を評価することができるようになる。免疫細胞回復は、免疫細胞による機能の復元を指す。生きている(生)細胞は回復した細胞であるが、一部の生きている細胞は、正常な機能のある程度の喪失を呈する。細胞生存率は、例えば、限定されないが、トリパンブルー排除を使用して行われた生細胞計数を使用して、決定することができる。あるいは、細胞生存率を決定するための当該技術分野で既知の多くの方法のうちのいずれかを使用することができる。好ましくは、復元された細胞は、特定の種類の免疫細胞について見られる典型的な活性のすべて、または少なくとも大部分を含む。細胞機能は、当業者に既知である様々なアッセイを使用して評価することができる。
【0045】
「細胞膜損傷事象」は、細胞膜の変形または透過化(例えば、永続的、可逆的、または一過性透過化など)をもたらす細胞の任意の事象または操作を指し得ることが理解され、本明細書で企図される。そのような事象には、凍結融解サイクル(凍結保存の結果として生じるものなどの)、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンによる透過化など)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露が含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
例えば、免疫細胞の凍結保存は、凍結および融解プロセス(および機器)を使用して実行することができ、このプロセスでは、細胞を、-80℃または約-200℃の液体窒素温度に達するまで毎分約1℃の速度で凍結させ、この温度で無期限に貯蔵してもよく、その後は非常に急速に融解させなければならない。免疫細胞は、単離した後に凍結させても、血液試料中で凍結させてもよい。免疫細胞は、様々な異なる装置、例えば、Nalgene(登録商標)によって提供されるポリカーボネート凍結容器であるMr.Frosty(登録商標)、衝撃凍結、発泡スチロール断熱材中の凍結を使用して、または速度制御された冷凍機を使用して、凍結保存することができる。-80℃または約-80℃の貯蔵温度が好ましい。多くの場合、ジメチルスルホキシド(DMSO)または別の凍結保存剤(例えば、グリセロール)も、細胞の保護を助けるために使用される。典型的には、約5%~約15%のDMSO、および/またはグリセロール、エチレングリコール、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、もしくはトレハロースなどの糖ベースの抗凍結剤が使用される。いったん凍結すると、免疫細胞は、比較的長い貯蔵可能期間を有することになり、その後、必要なときに融解させることができる。免疫細胞が必要となったら、それらを融解させることができる。融解は、細胞を解凍するプロセス、すなわち、温度を氷点を超えて上昇させるプロセスを指す。細胞を、約37℃などの正常な細胞培養温度までさらに加温してもよい。本発明は、融解させたばかりの免疫細胞の回復の可能性を測定するための方法を提供する。
【0047】
免疫細胞は、当業者に既知である様々な方法を使用して融解させてもよい。例えば、免疫細胞は、水浴、または制御された伝熱デバイスを使用して融解させることができる。本明細書で使用される水浴は、実験室水浴である。水浴は様々な体積で利用可能であり、浴中の水を所望の温度に加熱するために温度制御を含む。水浴は、多くの場合、循環および撹拌などの水を移動させるための手段を含む、水浴内に均一な温度を提供するための様々な手段を含む。例えば、様々な好適な実験室水浴を、Thermo Scientific、Benchmark Scientific、またはSheldon Manufacturing,Inc.から入手することができる。好ましくは、水浴は、水を37℃の温度で含み、これにより、融解が完了した後に免疫細胞の温度が体温に上昇する。Asymptote,Ltd.(GE Healthcare Life Sciencesの一部門、現在のCytiva)からのVIAThawデバイスなどの制御された伝熱デバイスは、伝熱媒体として水を使用せずに同じプロセスを達成する。概して、凍結免疫細胞は、凍結貯蔵から除去された直後に融解させるべきである。その後、免疫細胞は、細胞を保持する容器を、細胞を含む容器内に氷の小さなかけらしか残らなくなるまで、水浴中に浸漬することによって、速やかに(すなわち、数分以内に)融解させるべきである。次いで、細胞を、細胞に適した予熱した成長培地(例えば、RPMI-1640培地)に移す。免疫細胞を遠心分離し、新たな成長培地に再懸濁させるなどの追加のステップも実施することができる。
【0048】
本明細書に開示されるように、細胞膜損傷からの免疫細胞の回復の可能性は、ADAM-17活性化と直接的に相関し、このADAM-17活性化は、今度は免疫細胞上に発現するADAM17切断表面受容体のレベルをアッセイすることによって評価することができる。ADAMメタロペプチダーゼドメイン17(ADAM17)は、TACE(腫瘍壊死因子α変換酵素)とも呼ばれ、ディスインテグリンおよびメタロプロテアーゼのADAMタンパク質ファミリーに属する70kDの酵素である。ADAM17は、「脱落」として知られるプロセスにおいて、多種多様な膜アンカーサイトカイン、細胞接着分子、受容体、リガンド、および酵素の放出に関与すると理解されている。ADAM17は、すでにアゴニスト(例えば、CD16、CD62L、および/またはIL-15R)に結合している膜貫通受容体の部分を切り離すことで、アゴニストが別の細胞上の受容体に行きそれを刺激することを可能にし得る。免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体は、免疫細胞の種類に応じて様々であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞であり、ADAM-17切断表面受容体は、CD16である。他の態様では、免疫細胞は、T細胞であり、ADAM-17切断表面受容体は、CD62LまたはIL-15Rである。
【0049】
免疫細胞は、本明細書で定義されるように、サイトカインを産生する免疫系の任意の細胞(すなわち、サイトカイン産生免疫細胞)である。サイトカイン産生免疫細胞の例としては、リンパ球、好中球、マクロファージ、およびナチュラルキラー細胞が挙げられる。リンパ球には、B細胞およびT細胞およびNK細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、好中球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/またはCAR NK細胞である。免疫細胞は、細胞培養物から得ることも、対象から得ることもできる。
【0050】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。T細胞は、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たし、細胞表面上のT細胞受容体の存在により、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球と区別することができる。T細胞の例としては、Tヘルパー細胞(TH細胞)、細胞傷害性T細胞(TC細胞)、エフェクターT細胞、メモリーT細胞、調節性または「抑制性」T細胞、γδT細胞、およびナチュラルキラーT細胞(NKT細胞、NK細胞から区別され、MHC分子によって提示されるペプチドではなく糖脂質抗原を認識する)が挙げられる。異なる種類のT細胞は、そのサイトカイン産生のパターンにおいて互いに異なる。
【0051】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、NK細胞である。ナチュラルキラー細胞は、免疫系の細胞傷害性リンパ球の一種である。NK細胞は、ウイルスに感染した細胞に迅速な応答を提供し、形質転換された細胞に応答する。典型的には、免疫細胞は、感染した細胞の表面上の主要組織適合性複合体(MHC)分子によって提示される病原体からペプチドを検出し、サイトカイン放出の引き金となり、溶解またはアポトーシスを引き起こす。NK細胞は、病原体由来のペプチドがMHC分子上に存在するかどうかにかかわらず、ストレスを受けた細胞を認識する能力を有するため、独特である。これらの細胞は、標的を死滅させるために事前の活性化を必要としないという初期の考えから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。NK細胞は、大顆粒リンパ球(LGL)であり、骨髄で分化し、成熟し、そこから循環に入ることが知られている。
【0052】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、免疫療法用免疫細胞である。免疫療法用免疫細胞は、がんなどの疾患の治療に有用なものである。免疫療法用免疫細胞には、がんの治療に使用するために説明されている腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、T細胞、および/またはNK細胞が含まれる。免疫療法用免疫細胞はまた、同じくがんの治療に使用されている、CAR T細胞およびCAR NK細胞を含むがこれらに限定されない、キメラ抗原受容体(CAR)を含むように操作された細胞でもある。
【0053】
免疫療法中に多数の免疫細胞を投与できることは有益であるため、いくつかの実施形態では、免疫細胞は、拡大した免疫細胞である。拡大させた免疫細胞は、多数の免疫細胞を成長させるためにエクスビボで成長する免疫細胞である。拡大させた免疫細胞は、同時の免疫細胞から拡大させることも、他の細胞型から拡大させることもできる。例えば、NK細胞は、末梢血単核細胞または造血幹細胞から拡大させることができる。いくつかの実施形態では、拡大させた免疫細胞は、免疫応答を誘発することなく容易に対象に投与することができる自己細胞である。しかしながら、いくつかの実施形態では、拡大させた免疫細胞は、同種免疫細胞であり、それらの固有の同種反応性が利益となり得る。さらなる実施形態では、拡大させた免疫細胞は、免疫細胞が疾患組織を標的とするのを助けるために、キメラ抗原受容体を含むように遺伝子操作される。拡大させた免疫細胞の調製は、免疫細胞を活性化し、拡大させることを含む。いくつかのサイトカイン(IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、I型IFN、およびTGF-β)は、NK細胞をエクスビボで活性化し、拡大させるのに有用であることが示されている。例えば、いくつかの実施形態では、評価されるNK細胞は、IL-21で拡大させたNK細胞である。IL-21で拡大させたNK細胞には、可溶性IL-21、膜結合IL-21(mbIL-21)で構成されるフィーダー細胞、mbIL-21を含む細胞膜粒子、mbIL-21を含むエキソソーム、およびmbIl-21を有する固体支持体によって刺激されたNK細胞が含まれる。
【0054】
細胞膜損傷事象(例えば、凍結保存をとおして生じるものなどの凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露など)後の免疫細胞の回復の可能性を測定することは、細胞膜損傷事象の後、いつ生じてもよい。損傷したばかりの免疫細胞は、過去48時間以内に損傷した細胞である。いくつかの実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、0~24時間以内に損傷したものである一方、他の実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、0~12時間以内に損傷したものである。さらなる実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、12~24時間以内に損傷したものである。例えば、免疫細胞は、免疫細胞膜損傷事象の後5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、90、105、120、150、180分、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間以内にアッセイされ得る。
【0055】
細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露を含むがこれらに限定されない)後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法では、ADAM-17切断表面受容体のレベルの増加は、免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する。つまり、ADAM-17切断表面受容体発現の増加が大きいほど(すなわち、ADAM17によって切断される表面受容体が少なく、発現レベルが損傷していない対照に近いほど)、免疫細胞の回復の可能性が高くなる。同様に、ADAM-17切断表面受容体発現の減少が大きいほど、細胞が回復する可能性は低くなる。ADAM-17切断表面受容体のレベルの増加は、対照値との比較によって決定され得る。対照値は、以前に特定された対照値であることも、ADAM-17切断表面受容体レベルの決定と同時に測定される対照値であることもできる。対照は、損傷していない細胞などの陽性対照であることができ、この場合、比較は、喪失の量に対して行われ得、回復する可能性が高い細胞はADAM-17切断表面受容体のより少ない喪失を有する細胞であり、ADAM-17切断表面受容体のより多い喪失は回復する可能性が低い。あるいは、対照は、ADAM-17切断表面受容体発現が低いまたはない細胞表面が損傷しているまたは損傷していない陰性対照であることができ、回復する可能性が高い細胞は、その対照と比べて、ADAM-17切断表面受容体発現が増加している。回復能力は直接相関であるため、回復が多いことは増加とともに見られ、増加または減少は、集団中の他の免疫細胞に対するものであることもでき、ADAM-17切断表面受容体がより少ない同じ試料からの細胞よりも、増加したADAM-17切断表面受容体を発現する細胞のほうが回復する可能性が高い。
【0056】
いくつかの実施形態では、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルは、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される。このため、一態様では、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルが、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定する方法が本明細書で開示される。
【0057】
ADAM-17切断表面受容体の量は、細胞表面上のタンパク質の量を検出することが可能な任意の方法を使用してアッセイすることができる。例えば、ADAM-17切断表面受容体の量は、免疫アッセイまたは細胞選別法を使用して検出することができる。免疫アッセイには、多くの異なる形式および変形例がある。免疫アッセイは、試薬を加え、アッセイの異なる時点で洗い流す、または分離させる複数のステップで実施されてもよい。免疫アッセイには、複数のステップを含む不均一免疫アッセイ、および試薬と試料とを単純に混合し、物理的測定を行うことを伴う均一免疫アッセイが含まれる。免疫アッセイの種類には、競合均一免疫アッセイ、競合不均一免疫アッセイ、一部位非競合免疫アッセイ、および二部位非競合免疫アッセイが含まれる。免疫アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラテラルフロー免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着スポット(ELIspot)アッセイ、抗体アレイアッセイおよびビーズベースのアッセイ、磁気免疫アッセイ、ウエスタンブロット、および放射性免疫アッセイも含まれる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ADAM-17切断表面受容体発現のレベルは、フローサイトメトリーを使用してアッセイされる。フローサイトメトリーは、細胞を蛍光マーカーで標識し、次いで光散乱を使用して細胞を特徴評価するフローサイトメーターを通過させる細胞選別法である。同様に、質量サイトメトリー(CyTOF)をアッセイに使用してもよい。
【0059】
種々の有用な免疫検出方法のステップは、例えば、Maggio et al., Enzyme-Immunoassay,(1987)、およびNakamura,et al.,Enzyme Immunoassays:Heterogeneous and Homogeneous Systems, Handbook of Experimental Immunology,Vol.1:Immunochemistry,27.1-27.20(1986)などの科学文献で説明されており、これらの各々は、その全体が、特にその免疫検出法に関する教示について、参照により本明細書に援用される。最も単純かつ直接的な意味での免疫アッセイは、抗体と抗原との間の結合を伴う結合アッセイである。多くの種類および形式の免疫アッセイが知られており、すべてが開示のバイオマーカーを検出するのに好適である。免疫アッセイの例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RIA)、放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)、免疫ビーズ捕捉アッセイ、ウエスタンブロット法、ドットブロット法、ゲルシフトアッセイ、フローサイトメトリー、タンパク質アレイ、多重化ビーズアレイ、磁気捕捉、インビボイメージング、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、および光退色後蛍光回復/局在化(FRAP/FLAP)である。
【0060】
概して、免疫アッセイは、目的の分子(開示されるバイオマーカーなど)を含むことが疑われる試料を、免疫複合体を形成させるのに有効な条件下で、場合により、目的の分子に対する抗体と接触させること、または目的の分子に対する抗体(開示のバイオマーカーに対する抗体など)を、その抗体が結合し得る分子と接触させることを伴う。試料を、免疫複合体(一次免疫複合体)を形成させるのに有効な条件下かつそれに十分な期間で、目的の分子に対する抗体と、または目的の分子に対する抗体が結合し得る分子と接触させることは、概して、単に、分子または抗体と試料とを接触させ、抗体が、その抗体が結合し得る存在する任意の分子(例えば、抗原)と免疫複合体を形成する、すなわち、その任意の分子に結合するのに十分に長い期間、混合物をインキュベートするだけの話である。多くの形態の免疫アッセイでは、その後、組織切片、ELISAプレート、ドットブロットまたはウエスタンブロットなどの試料-抗体組成物を洗浄して、あらゆる非特異的に結合した抗体種を除去し、一次免疫複合体内で特異的に結合した抗体のみを検出することを可能にすることができる。
【0061】
免疫アッセイは、試料中の目的の分子(開示されるバイオマーカーまたはそれらの抗体など)の量を検出または定量化するための方法を含むことができ、これらの方法には、概して、結合プロセス中に形成される任意の免疫複合体の検出または定量化が伴う。概して、免疫複合体形成の検出は当該技術分野で周知であり、多数のアプローチを適用することによって達成することができる。これらの方法は、概して、任意の放射性、蛍光、生物学的、もしくは酵素的タグ、または任意の他の既知の標識などの標識またはマーカーの検出に基づいている。
【0062】
本明細書で使用される場合、標識は、蛍光色素、ビオチン/ストレプトアビジンなどの結合対のメンバー、金属(例えば、金)、または例えば着色基質もしくは蛍光を生成することによって検出され得る分子と特異的に相互作用することができるエピトープタグを含み得る。タンパク質を検出可能に標識するのに好適な物質としては、蛍光色素(本明細書では蛍光色素およびフルオロフォアとしても知られる)、および比色基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)と反応する酵素が挙げられる。蛍光色素の使用が本発明の実施において概して好ましく、これは、蛍光色素が非常に少量で検出できるためである。さらに、複数の抗原を単一のアレイで反応させる場合、各抗原は、同時検出のために異なる蛍光化合物で標識することができる。蛍光光度計を使用して、特定の抗体に結合した抗原を示すシグナルの存在である、アレイ上の標識されたスポットを検出する。
【0063】
放射性核種などの修飾単位を、ハロゲン化によって、本明細書に記載の化合物のうちのいずれかに組み込むか、またはそれに直接結合させることができる。本実施形態で有用な放射性核種の例としては、トリチウム、ヨウ素-125、ヨウ素-131、ヨウ素-123、ヨウ素-124、アスタチン-210、炭素-11、炭素-14、窒素-13、フッ素-18が挙げられるが、これらに限定されない。別の態様では、放射性核種は、連結基に結合しても、またはキレート基によって結合されてもよく、これは次いで、化合物に直接またはリンカーを介して結合する。本態様で有用な放射性核種の例としてはTc-99m、Re-186、Ga-68、Re-188、Y-90、Sm-153、Bi-212、Cu-67、Cu-64、およびCu-62が挙げられるが、これらに限定されない。これらのような放射性標識技法は、放射性医薬品業界で日常的に使用されている。
【0064】
放射性標識化合物は、神経疾患(例えば、神経変性疾患)または精神状態を診断するための、または哺乳動物(例えば、ヒト)におけるそのような疾患もしくは状態の進行もしくは治療を追跡するための撮像剤として有用である。本明細書に記載の放射性標識化合物は、陽電子放出断層撮影(PET)または単一光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)などの撮像技法と組み合わせて簡便に使用することができる。
【0065】
標識は、直接的または間接的のいずれであってもよい。直接標識では、検出抗体(目的の分子のための抗体)または検出分子(目的の分子に対する抗体によって結合され得る分子)は、標識を含む。標識の検出は、検出抗体または検出分子の存在を示し、これが今度は、それぞれ、目的の分子の存在、または目的の分子に対する抗体の存在を示す。間接標識では、追加の分子または部分を免疫複合体と接触させるか、または免疫複合体の部位で生成する。例えば、酵素などのシグナル生成分子または部分は、検出抗体もしくは検出分子に結合するか、またはそれらと会合することができる。次いで、シグナル生成分子は、免疫複合体の部位で検出可能なシグナルを生成することができる。例えば、酵素は、適切な基質とともに供給されると、免疫複合体の部位で可視のまたは検出可能な産物を生成することができる。ELISAは、この種の間接標識を使用する。
【0066】
間接標識の別の例として、目的の分子または目的の分子に対する抗体(一次抗体)のいずれかに結合し得る追加の分子(結合剤と称され得る)、例えば、一次抗体に対する第2の抗体を、免疫複合体と接触させることができる。追加の分子は、標識またはシグナル生成分子もしくは部分を有し得る。追加の分子は、抗体であり得るため、二次抗体と称され得る。二次抗体の一次抗体への結合により、第1の(または一次)抗体および目的の分子とのいわゆるサンドイッチが形成され得る。免疫複合体は、二次免疫複合体を形成させるのに有効な条件下で、それに十分な期間、標識された二次抗体と接触させ得る。次いで、概して、二次免疫複合体を洗浄して、あらゆる非特異的に結合した標識された二次抗体を除去した後、二次免疫複合体中の残りの標識を検出することができる。追加の分子はまた、ビオチン/アバジン対などの、互いに結合し得る一対の分子または部分のうちの1つであるか、またはそれを含み得る。この様式では、検出抗体または検出分子は、対の他方のメンバーを含むはずである。
【0067】
間接標識の他の様式には、2段階アプローチによる一次免疫複合体の検出が含まれる。例えば、目的の分子または対応する抗体に結合親和性を有する、抗体などの分子(第1の結合剤と称され得る)を使用して、上述のように、二次免疫複合体を形成することができる。洗浄後、二次免疫複合体は、ここでも免疫複合体を形成させる(したがって、三次免疫複合体を形成する)のに有効な条件下で、それに十分な期間、第1の結合剤に結合親和性を有する別の分子(第2の結合剤と称され得る)と接触させることができる。第2の結合剤は、検出可能な標識またはシグナル生成分子もしくは部分に連結させて、このようにして形成された三次免疫複合体の検出を可能にすることができる。このシステムにより、シグナル増幅が提供され得る。
【0068】
タンパク質または特定のタンパク質に対する抗体などの物質としての検出を伴う免疫アッセイには、無標識アッセイ、タンパク質分離法(すなわち、電気泳動)、固体支持体捕捉アッセイ、またはインビボ検出が含まれる。無標識アッセイは、概して、試料中の特定のタンパク質、または特定のタンパク質に対する抗体の存否を決定する診断手段である。タンパク質分離方法は、サイズまたは正味電荷などのタンパク質の物理的特性を評価するためにさらに有用である。捕捉アッセイは、概して、試料中の特定のタンパク質、または特定のタンパク質に対する抗体の濃度を定量的に評価するためにより有用である。最後に、インビボ検出は、物質の空間発現パターン、すなわち、物質が、対象、組織、または細胞内のどこに見出され得るかを評価するために有用である。
【0069】
濃度が十分であれば、抗体-抗原相互作用によって生成された分子複合体([Ab-Ag]n)は肉眼で可視であるが、光束を散乱させるそれらの能力に起因して、より少ない量も検出および測定され得る。複合体の形成は、両方の反応物が存在することを示し、免疫沈降アッセイでは、一定濃度の試薬抗体を使用して特異的抗原([Ab-Ag]n)を測定し、試薬抗原を使用して特異的抗体([Ab-Ag]n)を検出する。試薬種が細胞(血球凝集反応アッセイの場合)または非常に小さな粒子(ラテックス凝集アッセイの場合)に以前にコーティングされている場合、コーティングされた粒子の「クランピング」は、はるかに低い濃度で可視である。これらの基本原理に基づく様々なアッセイが一般的に使用されており、これには、Ouchterlony免疫拡散アッセイ、ロケット免疫電気泳動、ならびに免疫比濁および比濁アッセイが含まれる。このようなアッセイの主な制約は、標識を用いたアッセイと比較して、感度が制限されている(検出限界が低い)こと、場合によっては、非常に高い濃度の分析物が、複雑な形成を実際に阻害し得、手順をより複雑にする予防策を必要とするという事実である。これらのグループ1アッセイのうちのいくつかは、抗体の発見時にさかのぼり、それらのいずれも実際の「標識」を有していない(例えば、Ag-enz)。無標識である他の種類の免疫アッセイは、免疫センサに依存し、抗体-抗原相互作用を直接検出することができる様々な計装が現在市販されている。大部分は、固定化されたリガンドを有するセンサ表面上でエバネセント波を生成することに依存し、これにより、リガンドへの結合の連続的なモニタリングが可能になる。免疫センサにより、動力学的相互作用の容易な調査が可能になり、低コストの特殊計装の登場により、将来、免疫分析に広く適用される可能性がある。
【0070】
特定のタンパク質を検出するための免疫アッセイの使用には、電気泳動によるタンパク質の分離が伴い得る。電気泳動は、電場に応答した溶液中の荷電分子の移動である。それらの移動速度は、電場の強度、分子の正味電荷、サイズ、および形状、ならびに分子が移動する媒体のイオン強度、粘度、および温度に依存する。分析ツールとして、電気泳動は、単純、迅速、かつ高感度である。これは、単一荷電種の特性を研究するために、および分離技法として、分析的に使用される。
【0071】
試料は、例えば、紙、酢酸セルロース、デンプンゲル、アガロース、またはポリアクリルアミドゲルなどの支持マトリックス中で泳動させる。マトリックスにより、加熱によって引き起こされる対流による混合が抑制され、電気泳動の泳動記録が提供される。泳動の終わりに、マトリックスを染色し、走査、オートラジオグラフィー、または貯蔵に使用することができる。加えて、最も一般的に使用される支持マトリックスであるアガロースおよびポリアクリルアミドにより、それが多孔質ゲルであることから、分子をサイズで分離する手段が提供される。多孔質ゲルは、より小さな分子が自由に移動することを可能にしながら、大きな巨大分子の移動を遅延させる、または場合により完全に妨げることによって、篩として機能し得る。希釈アガロースゲルは、概して、同じ濃度のポリアクリルアミドよりも剛性で、取り扱いが容易であるため、アガロースは、核酸、大きなタンパク質、およびタンパク質複合体などのより大きな巨大分子を分離するために使用される。取り扱い、およびより高い濃度での作製が容易なポリアクリルアミドは、遅延のために小さなゲル孔径を必要とするほとんどのタンパク質および小さなオリゴヌクレオチドを分離するために使用される。
【0072】
タンパク質は両性化合物であり、したがって、それらの正味電荷は、それらが懸濁される媒体のpHによって決定される。pHがその等電点よりも高い溶液中では、タンパク質は正味の負電荷を有し、電場中のアノードに向かって移動する。その等電点を下回る場合、タンパク質は正に荷電し、カソードに向かって移動する。タンパク質によって担持される正味電荷は、加えて、そのサイズとは無関係であり、すなわち、分子の単位質量当たりに担持される電荷(または、タンパク質および核酸が直鎖の巨大分子であるとして、長さ)は、タンパク質によって異なる。したがって、所与のpHで、かつ非変性条件下で、タンパク質の電気泳動分離は、分子のサイズおよび電荷の両方によって決定される。
【0073】
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、ポリペプチド骨格を「包む」ことによってタンパク質を変性させるアニオン性洗剤であり、SDSは、1.4:1の質量比でタンパク質にかなり特異的に結合する。そうすることで、SDSは、ポリペプチドに、その長さに比例して負電荷を付与する。さらに、通常、サイズ別に分離するために必要なランダムコイル構成をとる前に、タンパク質中のジスルフィド架橋を低減(変性)することが必要であり、これは、2-メルカプトエタノールまたはジチオスレイトール(DTT)を用いて行われる。したがって、SDS-PAGE分離の変性において、移動は、ポリペプチドの内部電荷によってではなく、分子量によって決定される。
【0074】
分子量の決定は、特性評価するタンパク質とともに、既知の分子量のタンパク質のSDS-PAGEによって行われる。SDS変性ポリペプチドまたは天然核酸の分子量の対数とそのRfとの間に線形関係が存在する。Rfは、分子が移行した距離と、マーカー染料フロントが移行した距離との比として計算される。電気泳動によって相対分子量(Mr)を決定する単純な方法は、既知の試料について、移動距離対log10MWの標準曲線をプロットし、同じゲル上で移行距離を測定した後の試料のlogMrを読み出すことである。
【0075】
二次元電気泳動では、タンパク質を、最初にある物理的特性に基づいて、そして第2のステップで別の物理的特性に基づいて、分画する。例えば、等電点電気泳動法を第1の次元に使用し、チューブゲル内で簡便に実行することができ、スラブゲル内のSDS電気泳動を第2の次元に使用することができる。手順の一例は、O’Farrell,P.H.,High Resolution Two-dimensional Electrophoresis of Proteins,J.Biol.Chem.250:4007-4021(1975)のものであり、本文献は、その全体が、二次元電気泳動法に関するその教示について、参照に本明細書に援用される。他の例としては、Anderson,L and Anderson,NG,High resolution two-dimensional electrophoresis of human plasma proteins,Proc.Natl.Acad.Sci.74:5421-5425(1977)、Ornstein,L.,Disc electrophoresis,L.Ann.N.Y.Acad.Sci.121:321349(1964)に見出されるものが挙げられるがこれらに限定されず、本文献の各々は、その全体が、電気泳動法に関する教示について、参照により本明細書に援用される。電気泳動法に関する教示について全体が参照により本明細書に援用されるLaemmli,U.K.,Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4,Nature 227:680(1970)は、SDSにより変性したタンパク質を分離させるための不連続系を開示する。Laemmli緩衝液系のリーディングイオンは塩化物であり、テーリングイオンはグリシンである。したがって、分離ゲルおよび濃縮ゲルは、Tris-HCl緩衝液(濃度およびpHが異なる)で構成され、タンク緩衝液はTris-グリシンである。すべての緩衝液は、0.1%SDSを含む。
【0076】
現方法で企図される電気泳動を使用する免疫アッセイの一例は、ウエスタンブロット分析である。ウエスタンブロット法または免疫ブロット法は、タンパク質の分子質量の決定、および異なる試料中に存在するタンパク質の相対量の測定を可能にする。検出方法には、化学発光および発色検出が含まれる。ウエスタンブロット分析のための標準的な方法は、例えば、D.M.Bollag et al.,Protein Methods(2d edition 1996)およびE.Harlow&D.Lane,Antibodies,a Laboratory Manual(1988)、米国特許第4,452,901号に見出され、これらの各々は、その全体が、ウエスタンブロット法に関する教示について、参照により本明細書に援用される。概して、タンパク質は、ゲル電気泳動、通常はSDS-PAGEによって分離される。タンパク質は、特殊な吸取紙、例えば、ニトロセルロースのシートに移されるが、他の種類の紙または膜も使用され得る。タンパク質は、ゲル上にあったものと同じ分離パターンを保持する。ブロットを一般的なタンパク質(乳タンパク質など)とインキュベートして、ニトロセルロース上の任意の残っている粘着性の場所に結合させる。次に、抗体を、その特定のタンパク質に結合することができる溶液に加える。
【0077】
特異的な固定された抗原への特異的な抗体の付着は、通常、発色基質(例えば、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)または化学発光基質を使用して、間接的酵素免疫アッセイ技法により容易に可視化することができる。プローブの他の可能性としては、蛍光または放射性同位体標識(例えば、フルオレセイン、125I)の使用が挙げられる。抗体結合の検出のためのプローブは、コンジュゲートされた抗免疫グロブリン、コンジュゲートされたブドウ球菌タンパク質A(IgGに結合する)、またはビオチン化一次抗体(例えば、コンジュゲートされたアビジン/ストレプトアビジン)へのプローブであり得る。
【0078】
この技法の能力は、その抗原性およびその分子質量によって、特定のタンパク質を同時に検出することにある。まず、タンパク質をSDS-PAGEにおいて質量ごとに分離させ、次に、免疫アッセイステップにおいて特異的に検出する。こうして、不均一な試料中の目的のタンパク質の分子質量を近似するために、タンパク質標準物質(ラダー)を同時に泳動させることができる。
【0079】
ゲルシフトアッセイまたは電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用して、DNA結合タンパク質とそれらの同族DNA認識配列との間の相互作用を定性的および定量的両方の様式で検出することができる。例示的な技法は、Ornstein L.,Disc electrophoresis-I:Background and theory,Ann.NY Acad.Sci.121:321-349(1964)、およびMatsudiara,PT and DR Burgess,SDS microslab linear gradient polyacrylamide gel electrophoresis,Anal.Biochem.87:386-396(1987)に記載されており、これらの各々は、その全体が、ゲルシフトアッセイに関する教示について、参照により本明細書に援用される。
【0080】
一般的なゲルシフトアッセイでは、精製されたタンパク質または粗細胞抽出物を、標識(例えば、32P放射性標識)されたDNAまたはRNAプローブとともにインキュベートした後、複合体を、非変性ポリアクリルアミドゲルを介して遊離プローブから分離させることができる。複合体は、非結合プローブよりも緩徐にゲルを通して移動する。結合タンパク質の活性に応じて、標識プローブは、二本鎖であることも一本鎖であることもできる。転写因子などのDNA結合タンパク質の検出には、精製されたもしくは部分的に精製されたタンパク質、または核細胞抽出物のいずれかを使用することができる。RNA結合タンパク質の検出には、精製されたもしくは部分的に精製されたタンパク質、または核もしくは細胞質細胞抽出物のいずれかを使用することができる。推定結合部位に対するDNAまたはRNA結合タンパク質の特異性は、DNAもしくはRNA断片、または目的のタンパク質に対する結合部位を含有するオリゴヌクレオチド、または他の無関係な配列を使用する競合実験によって確立される。特異的および非特異的競合物の存在下で形成される複合体の性質および強度の違いにより、特異的相互作用の識別が可能になる。<http://www.promega.com/faq/gelshfaq.html>(最終閲覧日2005年3月25日)にて利用可能なPromega,Gel Shift Assay FAQを参照されたい。これは、その全体が、ゲルシフト法に関する教示については、参照により本明細書に援用される。
【0081】
ゲルシフト法には、例えば、COOMASSIE(Imperial Chemicals Industries,Ltd)ブルー染料のコロイド形態を使用して、ポリアクリルアミド電気泳動ゲルなどのゲル中でタンパク質を検出することが含まれ得る。そのような方法は、例えば、Neuhoff et al.,Electrophoresis 6:427-448(1985)、およびNeuhoff et al.,Electrophoresis 9:255-262(1988)に記載されており、これらの各々は、その全体が、ゲルシフト法に関する教示について、参照により本明細書に援用される。上で参照される従来のタンパク質アッセイ方法に加えて、組み合わせ洗浄およびタンパク質染色組成物が、米国特許第5,424,000号に記載されており、これは、その全体が、ゲルシフト法に関する教示について、参照により本明細書に援用される。溶液には、リン酸、硫酸、および硝酸、ならびにアシッドバイオレット色素が含まれ得る。
【0082】
放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)は、血清中の特異的抗体を検出するために放射性標識された抗原を使用する、高感度アッセイである。抗原を、血清と反応させた後、例えば、タンパク質Aセファロースビーズなどの特殊な試薬を使用して沈降させる。次に、結合した放射性標識された免疫沈降物を、ゲル電気泳動によって通常のように分析する。放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)は、HIV抗体の存在を診断するための確認試験として使用されることが多い。RIPAはまた、当該技術分野において、Farrアッセイ、沈降素アッセイ、放射性免疫沈降素アッセイ、放射性免疫沈降分析、放射性免疫沈降分析、および放射性免疫沈降分析とも称される。
【0083】
目的の特定のタンパク質を分離および検出するために電気泳動を利用する上記の免疫アッセイは、タンパク質サイズの評価を可能にするが、それらは、タンパク質濃度の評価に対する感度があまり良くない。しかしながら、タンパク質またはタンパク質に特異的な抗体を固体支持体(例えば、チューブ、ウェル、ビーズ、または細胞)に結合させて、それぞれ抗体または目的のタンパク質を試料から捕捉する免疫アッセイも、支持体上のタンパク質またはタンパク質に特異的な抗体を検出する方法と組み合わせて企図される。そのような免疫アッセイの例としては、放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、フローサイトメトリー、タンパク質アレイ、多重化ビーズアッセイ、および磁気捕捉が挙げられる。
【0084】
放射性免疫アッセイ(RIA)は、特定の抗体または他の受容体系への標識されていない物質の結合を測定するために、直接的または間接的に、放射性標識された物質(放射性リガンド)を使用して抗原-抗体反応を検出するための古典的な定量アッセイである。放射性免疫測定は、例えば、バイオアッセイを使用する必要なく、血液中のホルモンレベルを試験するために使用される。抗体形成を誘導することができるより大きな担体タンパク質(例えば、ウシガンマ-グロブリンまたはヒト血清アルブミン)にカップリングされている場合、非免疫原性物質(例えば、ハプテン)も測定することができる。RIAには、放射性抗原(ヨウ素原子をタンパク質中のチロシン残基に導入しやすいため、放射性同位体125Iまたは131Iが使用されることが多い)を、その抗原に対する抗体と混合することが伴う。抗体は、概して、チューブまたはビーズなどの固体支持体に連結する。次に、標識されていない抗原または「コールド」抗原を既知量で加え、標識された抗原の置換量を測定する。最初に、放射性抗原を抗体に結合させる。コールド抗原を加えると、これら2つが抗体結合部位について競合し、コールド抗原の濃度が高いと、より多くが抗体に結合し、放射性バリアントを置換する。結合した抗原を、溶液中の結合していない抗原から分離させ、各々の放射能を使用して、結合曲線をプロットする。この技法は、極めて高感度かつ特異的である。
【0085】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、または総称してEIA(酵素免疫アッセイ)は、タンパク質に特異的な抗体を検出することができる免疫アッセイである。かかるアッセイでは、抗体結合または抗原結合試薬のいずれかに結合した検出可能な標識は、酵素である。基質に曝露すると、この酵素は、例えば、分光光度測定、蛍光測定、または視覚的手段によって検出され得る化学部分を産生するように反応する。検出に有用な試薬を検出可能に標識するために使用され得る酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、アスパラギナーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
ELISA技法の変形例は、当該技術分野で既知である。一変形例では、タンパク質に結合することができる抗体を、ポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルなどのタンパク質親和性を呈する選択された表面上に固定し得る。次に、マーカー抗原を含む疑いのある試験組成物をウェルに加え得る。結合を行い、非特異的に結合した免疫複合体を除去するために洗浄した後、結合した抗原を検出し得る。検出は、検出可能な標識に連結した標的タンパク質に特異的な第2の抗体を加えることによって達成され得る。この種類のELISAは、単純な「サンドイッチELISA」である。検出は、第2の抗体を加え、続いて第2の抗体に対して結合親和性を有する第3の抗体を加えることによっても達成することができ、この第3の抗体は、検出可能な標識に連結している。
【0087】
別の変形例は、競合ELISAである。競合ELISAでは、試験試料は、既知の量の標識された抗原または抗体と結合について競合する。試料中の反応性種の量は、コーティングされたウェルを用いたインキュベーションの前またはインキュベーションの間に、試料を既知の標識種と混合することによって決定することができる。試料中の反応性種の存在は、ウェルに結合可能である標識種の量を低減するように作用するので、最終的なシグナルが低減される。
【0088】
用いられる形式にかかわらず、ELISAは、コーティング、インキュベーションまたは結合、非特異的に結合した種を除去するための洗浄、および結合した免疫複合体の検出など、ある特定の共通の特徴を有する。抗原または抗体は、プレート、ビーズ、試験紙、膜またはカラムマトリックスの形態などの固体支持体に連結することができ、分析される試料が、固定された抗原または抗体に適用される。プレートを抗原または抗体のいずれかでコーティングする際には、概して、プレートのウェルを、抗原または抗体の溶液とともに、一晩または特定の時間、インキュベートすることになる。次いで、プレートのウェルを洗浄して、不完全に吸着した材料を除去し得る。その後、ウェルの任意の残りの利用可能な表面を、試験抗血清に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質で「コーティング」し得る。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、および粉乳の溶液が含まれる。コーティングにより、固定化表面上の非特異的吸着部位の遮断が可能になるため、表面上への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドが低減される。
【0089】
ELISAでは、直接手順ではなく、二次または三次検出手段を使用することもできる。このため、タンパク質または抗体のウェルへの結合、バックグラウンドを低減するための非反応性材料によるコーティング、および非結合材料を除去するための洗浄の後、固定化表面を、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下で試験される対照の臨床または生体試料と接触させる。免疫複合体の検出には、続いて、標識された第2の結合剤、または標識された第3の結合剤と併せた第2の結合剤が必要とされる。
【0090】
酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISPOT)は、タンパク質または抗原に特異的な抗体を検出することができる免疫アッセイである。かかるアッセイでは、抗体結合または抗原結合試薬のいずれかに結合した検出可能な標識は、酵素である。基質に曝露すると、この酵素は、例えば、分光光度測定、蛍光測定、または視覚的手段によって検出され得る化学部分を産生するように反応する。検出に有用な試薬を検出可能に標識するために使用され得る酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、アスパラギナーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。このアッセイでは、ニトロセルロースマイクロタイタープレートを抗原でコーティングする。試験試料を抗原に曝露させた後、ELISAアッセイと同様に反応させる。検出は、ニトロセルロースプレート上のスポットの列挙によって決定されるという点で、従来のELISAとは異なる。スポットの存在により、試料が抗原に反応したことが示される。スポットを計数し、抗原に特異的な試料中の細胞数を決定することができる。
【0091】
「免疫複合体(抗原/抗体)を形成させるのに有効な条件下」は、条件が、非特異的結合を低減させ、妥当なシグナル対ノイズ比を促進するために、BSA、ウシガンマグロブリン(BGG)、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)/Tweenなどの溶液で抗原および抗体を希釈することを含むことを意味する。
【0092】
好適な条件はまた、インキュベーションが、有効な結合を可能にするのに十分な温度および期間であることも意味する。インキュベーションステップは、典型的には、約1分~12時間、約20℃~30℃の温度であってもよく、または約0℃~約10℃で一晩インキュベートされてもよい。
【0093】
ELISA中のすべてのインキュベーションステップの後、接触した表面を洗浄して、複合体化されていない材料を除去し得る。洗浄手順には、PBS/Tweenまたはホウ酸緩衝液などの溶液による洗浄が含まれ得る。試験試料と元の結合物質との間に特異的な免疫複合体が形成され、続く洗浄を行った後、微量であっても免疫複合体の発生を決定することができる。
【0094】
検出手段を提供するために、第2または第3の抗体は、上記のように、検出を可能にするための関連付けられた標識を有し得る。これは、適切な発色基質とともにインキュベーションした際に発色を生成することができる酵素であり得る。このため、例えば、第1または第2の免疫複合体を、標識された抗体と、一定期間、さらなる免疫複合体形成の発達に有利な期間および条件下(例えば、PBS-TweenなどのPBS含有溶液中、室温で2時間のインキュベーション)で接触させ、インキュベートすることができる。
【0095】
標識された抗体とのインキュベーション後、非結合物質を除去するための洗浄に続いて、標識の量を、例えば、酵素標識としてのペルオキシダーゼの場合、尿素およびブロモクレゾールパープル、または2,2’-アジド-ジ-(3-エチル-ベンズチアゾリン-6-スルホン酸[ABTS]およびH2O2)などの発色基質とのインキュベーションによって、定量することができる。次いで、例えば、可視スペクトル分光光度計を使用して、色生成の程度を測定することによって、定量化を達成することができる。
【0096】
タンパク質アレイは、ガラス、膜、マイクロタイターウェル、質量分析計プレート、およびビーズまたは他の粒子を含む表面に固定されたタンパク質を使用する固相リガンド結合アッセイシステムである。アッセイは非常に並行(多重化)であり、多くの場合に小型化される(マイクロアレイ、タンパク質チップ)。これらの利点には、迅速かつ自動化可能であり、高感度であることができ、試薬の点で経済的であり、単一実験で豊富なデータを付与することが含まれる。バイオインフォマティクス支援が重要である。データ処理には、高度なソフトウェアおよびデータ比較分析が必要とされる。しかしながら、ソフトウェアは、DNAアレイに使用されるものから適合させることができ、多くのハードウェアおよび検出システムも同様である。
【0097】
主要な形式のうちの1つは、捕捉アレイであり、これにおいては、通常は抗体であるが、代替のタンパク質足場、ペプチド、または核酸アプタマーであることもできるリガンド結合試薬を使用して、血漿または組織抽出物などの混合物中の標的分子を検出する。診断では、捕捉アレイを使用して、複数の免疫アッセイを並行して実行することができ、例えば個々の血清中のいくつかの分析対象物についての試験と、多くの血清試料の同時試験との両方を行うことができる。プロテオミクスでは、捕捉アレイを使用して、健康な状態および疾患状態にある異なる試料中のタンパク質レベルを定量化し比較するため、すなわち、タンパク質発現プロファイリングに使用される。特異的リガンド結合剤以外のタンパク質は、タンパク質-タンパク質、タンパク質-DNA、タンパク質-薬物、受容体-リガンド、酵素-基質などといったインビトロ機能相互作用スクリーンのためのアレイ形式で使用される。捕捉試薬自体が、多くのタンパク質に対して選択およびスクリーニングされ、これは、複数のタンパク質標的に対して多重アレイ形式で行うこともできる。
【0098】
アレイの構築のために、タンパク質源には、組換えタンパク質のための細胞ベース発現系、天然源からの精製、無細胞翻訳系によるインビトロでの産生、およびペプチドの合成方法が含まれる。これらの方法の多くは、ハイスループット産生のために自動化され得る。捕捉アレイおよびタンパク質機能分析には、タンパク質が正しく折り畳まれ、機能的であることが重要であるが、これは、例えば、組換えタンパク質が変性条件下で細菌から抽出される場合、必ず当てはまるというわけではない。それでも、変性タンパク質のアレイは、抗体の交差反応性のスクリーニング、自己抗体の特定、およびリガンド結合タンパク質の選択に有用である。
【0099】
タンパク質アレイは、ELISAおよびドットブロッティングなどの身近な免疫アッセイ方法の小型化として設計されており、これは、多くの場合、蛍光読み出しを利用し、複数のアッセイを並行して実行することを可能にするロボット工学およびハイスループット検出システムによって促進される。一般的に使用される物理的支持体には、ガラススライド、ケイ素、マイクロウェル、ニトロセルロースまたはPVDF膜、ならびに磁気および他のマイクロビーズが含まれる。平面表面に送達されるタンパク質の微液滴が最も身近な形式であるが、代替的なアーキテクチャには、マイクロ流体学の発展に基づくCD遠心分離デバイス(Gyros、Monmouth Junction,NJ)、およびプレート内の操作されたマイクロチャネルなどの特殊チップ設計(例えば、The Living Chip(商標)、Biotrove、Woburn,MA)、およびケイ素表面上の微小な3Dポスト(Zyomyx、Hayward CA)が含まれる。懸濁液中の粒子も、識別のためにコーディングされていることを条件に、アレイの基礎として使用することができ、システムには、マイクロビーズのためのカラーコーディング(Luminex、Austin,TX;Bio-Rad Laboratories)および半導体ナノ結晶(例えば、QDots(商標)、Quantum Dot、Hayward,CA)、ならびにビーズのためのバーコーディング(UltraPlex(商標)、SmartBead Technologies Ltd、Babraham,Cambridge,UK)および多金属マイクロロッド(例えば、Nanobarcodes(商標)粒子、Nanoplex Technologies、Mountain View,CA)が含まれる。ビーズは、半導体チップ上の平面アレイに組み立てることもできる(LEAPS技術、BioArray Solutions、Warren,NJ)。
【0100】
タンパク質の固定化には、カップリング試薬と、カップリングされる表面の性質との両方が関与する。良好なタンパク質アレイ支持表面は、カップリング手順の前後で化学的に安定しており、良好なスポット形態を可能にし、最小限の非特異的結合を示し、検出システム中でバックグラウンドに寄与せず、異なる検出システムと互換性がある。使用される固定化方法は、再現可能であり、異なる特性(サイズ、親水性、疎水性)のタンパク質に適用可能であり、ハイスループットおよび自動化に適し、完全に機能するタンパク質活性の保持と互換性がある。表面結合タンパク質の配向は、それを活性な状態でリガンドまたは基質に提示する上で重要な因子として認識され、捕捉アレイについては、概してタンパク質の部位特異的標識を必要とする、配向された捕捉試薬を用いることで最も効率的な結合結果が得られる。
【0101】
タンパク質固定化の共有結合および非共有結合両方の方法が使用され、様々な利点および問題点を有する。表面への受動的吸着は、方法論的に単純であるが、定量的または配向的制御がほとんどできず、これは、タンパク質の機能的特性を改変することもそうでないこともあり、再現性および効率が変動する。共有的カップリング法は、安定した連結を提供し、いろいろなタンパク質に適用することができ、良好な再現性を有するが、配向は変動し得、化学的誘導体化は、タンパク質の機能を改変することがあり、安定した相互作用面を必要とする。タンパク質上のタグを利用する生物学的捕捉方法は、安定した連結を提供し、タンパク質と特異的にかつ再現可能な配向で結合するが、生物学的試薬を最初に十分に固定しなければならず、アレイには特別な取り扱いが求められ、安定性は変動する。
【0102】
いくつかの固定化化学物質およびタグが、タンパク質アレイの製造用に説明されている。共有結合のための基質には、アミノまたはアルデヒド含有シラン試薬でコーティングされたスライドガラスが含まれる。Versalinx(商標)システム(Prolinx、Bothell,WA)では、フェニルジボロン酸で誘導体化されたタンパク質と、支持表面上に固定されたサリチルヒドロキサム酸との間の相互作用によって、可逆的共有結合が達成される。これはまた、バックグラウンド結合が低く、自家蛍光が低く、固定されたタンパク質が機能を保持することを可能にする。非修飾タンパク質の非共有結合は、三次元ポリアクリルアミドゲルに基づいて、HydroGel(商標)(PerkinElmer、Wellesley,MA)などの多孔質構造内で生じ、この基質は、高いタンパク質機能の能力および保持を伴って、ガラスマイクロアレイ上で特に低いバックグラウンドを付与することが報告されている。広く使用される生物学的カップリング方法は、タンパク質を適切に修飾したビオチン/ストレプトアビジンまたはヘキサヒスチジン/Ni相互作用を介したものである。ビオチンは、二酸化チタン(Zyomyx)または五酸化タンタル(Zeptosens、Witterswil,Switzerland)などの表面に固定されたポリリジン骨格にコンジュゲートされてもよい。
【0103】
アレイ製造方法には、ロボット接触焼付法、インクジェット加工、圧電スポッティング、およびフォトリソグラフィーが含まれる。いくつかの市販のアレイ(例えば、Packard Biosciences)および手動機器(V&P Scientific)が利用可能である。細菌コロニーは、インサイツでのタンパク質発現の誘導のために、PVDF膜上にロボットで格子化され得る。
【0104】
スポットサイズおよび密度の限界は、スポットがナノメートルの空間規模であり、1mm平方未満の単一のチップで何千もの反応を行うことができるナノアレイである。BioForce Laboratoriesは、光学検出限界で85平方ミクロン中1521個のタンパク質スポットのナノアレイを開発し、これは1平方cm当たり2500万個のスポットに相当する。その読み出し方法は、蛍光および原子間力顕微鏡法(AFM)である。
【0105】
蛍光標識および検出法は広く使用されている。DNAマイクロアレイを読み取るために使用されるのと同じ計装がタンパク質アレイに適用可能である。示差表示のために、捕捉(例えば、抗体)アレイは、2つの異なる細胞状態からの蛍光標識されたタンパク質でプローブすることができ、ここでは、細胞溶解物を、色が標的存在量の変化の読み出しとして機能するように、異なるフルオロフォア(例えば、Cy-3、Cy-5)と直接コンジュゲートさせ、混合する。蛍光読み出し感度は、チラミドシグナル増幅(TSA)(PerkinElmer Lifesciences)によって10~100倍増幅することができる。平面導波路技術(Zeptosens)は、超高感度蛍光検出を可能にし、洗浄手順を介さないという追加の利点がある。高感度は、フィコエリトリンを標識として使用して(Luminex)、または半導体ナノ結晶の特性を使用して(Quantum Dot)、懸濁ビーズおよび粒子によっても達成することができる。特に商業的なバイオテクノロジーの分野では、いくつかの新規な代替の読み出しが開発されている。これらには、表面プラズモン共鳴(HTS Biosystems、Intrinsic Bioprobes、Tempe,AZ)、ローリングサークルDNA増幅(Molecular Staging、New Haven CT)、質量分析(Intrinsic Bioprobes;Ciphergen,Fremont,CA)、共鳴光散乱(Genicon Sciences、San Diego,CA)、および原子間力顕微鏡法(BioForce Laboratories)の適応が含まれる。
【0106】
捕捉アレイは、発現プロファイリングのための診断チップおよびアレイの基礎を形成する。これらは、従来の抗体、単一ドメイン、操作された足場、ペプチド、または核酸アプタマーなどの高親和性捕捉試薬を用いて、ハイスループット様式で特定の標的リガンドに結合し、それを検出する。
【0107】
抗体アレイは、特異性および許容可能なバックグラウンドの必要な特性を有し、いくつかは市販されている(BD Biosciences、San Jose,CA;Clontech、Mountain View,CA;BioRad;Sigma、St.Louis,MO)。捕捉アレイのための抗体は、従来の免疫化(ポリクローナル血清およびハイブリドーマ)によって、またはファージもしくはリボソームディスプレイライブラリーから選択した後、通常は大腸菌内で発現される組換え断片としてのいずれかで作製される(Cambridge Antibody Technology、Cambridge,UK;BioInvent、Lund,Sweden;Affitech、Walnut Creek,CA;Biosite、San Diego,CA)。従来の抗体に加えて、FabおよびscFv断片、ラクダ科由来の単一Vドメイン、または操作されたヒト等価物(Domantis、Waltham,MA)も、アレイにおいて有用であり得る。
【0108】
「足場」という用語は、特異性および親和性の抗体様特性を有する多様な標的分子に結合することができる複数のバリアントに操作されるタンパク質のリガンド結合ドメインを指す。バリアントは、遺伝子ライブラリー形式で産生され、ファージ、細菌、またはリボソームディスプレイによって、個々の標的に対して選択され得る。そのようなリガンド結合足場またはフレームワークには、Staph.aureusタンパク質Aに基づく「Affibody」(Affibody、Bromma,Sweden)、フィブロネクチンに基づく「Trinectin」(Phylos、Lexington,MA)、およびリポカリン構造に基づく「Anticalin」(Pieris Proteolab、Freising-Weihenstephan,Germany)が含まれる。これらは、抗体と同様に捕捉アレイで使用することができ、堅牢性および製造の容易さの利点を有し得る。
【0109】
非タンパク質捕捉分子、特に高い特異性および親和性でタンパク質リガンドに結合する一本鎖核酸アプタマーも、アレイで使用される(SomaLogic、Boulder,CO)。アプタマーは、Selex(商標)手順によってオリゴヌクレオチドのライブラリーから選択され、それらのタンパク質との相互作用は、臭素化デオキシウリジンおよびUV活性化架橋(光アプタマー)の組み込みを介して、共有結合によって増強され得る。リガンドへの光架橋は、特定の立体要件に起因するアプタマーの交差反応性を低減する。アプタマーは、自動オリゴヌクレオチド合成による生成の容易さ、ならびにDNAの安定性および堅牢性の利点を有する。フォトアプタマーアレイでは、万能蛍光タンパク質染色を使用して結合を検出することができる。
【0110】
抗体アレイに結合するタンパク質分析物は、サンドイッチアッセイにおいて、直接的に、または二次抗体を介して検出され得る。異なる色の異なる試料の比較には、直接標識が使用される。同じタンパク質リガンドを対象とする抗体の対が利用可能な場合、サンドイッチ免疫アッセイは、高い特異性および感受性を提供し、したがって、サイトカインなどの存在量が少ないタンパク質の選択法である。これらはまた、タンパク質修飾の検出の可能性も提供する。質量分析、表面プラズモン共鳴、および原子間力顕微鏡法を含む無標識検出法により、リガンドの改変が回避される。ノイズに高いシグナルを付与するためにバックグラウンドが低い、最適な感度および特異性が、いずれの方法からも必要とされる。分析物濃度は広範囲を網羅するので、感度は適切に調整する必要がある。試料の連続希釈または異なる親和性の抗体の使用がこの問題の解決策である。目的のタンパク質は、サイトカインまたは細胞中の低発現産物など、pg範囲以下での検出を必要とする、体液および抽出物中で低濃度のタンパク質であることが多い。
【0111】
捕捉分子のアレイの代替は、「分子インプリント」技術をとおしてなされるものであり、ここでは、ペプチド(例えば、タンパク質のC末端領域由来)をテンプレートとして使用して、重合性マトリックス中に構造的に相補的な配列特異的空洞を生成し、この空洞が、次に、適切な一次アミノ酸配列を有する(変性)タンパク質を特異的に捕捉(変性)することができる(ProteinPrint(商標)、Aspira Biosystems、Burlingame,CA)。
【0112】
診断用および発現プロファイリングに使用することができる別の方法論は、ProteinChip(登録商標)アレイ(Ciphergen、Fremont,CA)であり、ここでは、固相クロマトグラフィー表面が、血漿または腫瘍抽出物などの混合物からの電荷または疎水性の特徴が類似したタンパク質に結合し、SELDI-TOF質量分析を使用して、保持されたタンパク質を検出する。
【0113】
大規模な機能チップが、多数の精製タンパク質を固定することによって構築されており、他のタンパク質とのタンパク質相互作用、薬物-標的相互作用、酵素基質などの広範囲の生化学的機能をアッセイするために使用されている。概して、これらは、発現ライブラリーを必要とし、大腸菌、酵母、または類似のものにクローニングされ、その後これから、例えばHisタグを介して発現タンパク質が精製され、固定される。無細胞タンパク質転写/翻訳は、細菌系または他のインビボ系で良好に発現しないタンパク質の合成のための実行可能な代替である。
【0114】
タンパク質-タンパク質相互作用を検出するためには、タンパク質アレイが細胞ベース酵母2ハイブリッド系のインビトロの代替であり得、分泌タンパク質またはジスルフィド架橋を有するタンパク質が関与する相互作用など、後者が欠損している場合に有用であってもよい。アレイ上の生化学的活性のハイスループット分析が、酵母タンパク質キナーゼについて、および酵母プロテオームの様々な機能(タンパク質-タンパク質およびタンパク質-脂質相互作用)について説明されており、ここでは、全酵母オープンリーディングフレームの大部分が、マイクロアレイ上で発現され、固定された。大規模な「プロテオームチップ」は、機能的相互作用の特定、薬物スクリーニングなどにおいて非常に有用であることが約束されている(Proteometrix、Branford,CT)。
【0115】
個々の要素の二次元ディスプレイとして、タンパク質アレイを使用して、抗体、合成足場、ペプチド、およびアプタマーを含む特定の結合パートナーを選択するために、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることができる。このようにして、「ライブラリー対ライブラリー」スクリーニングを実行することができる。ゲノムプロジェクトから特定されたタンパク質標的のアレイに対するコンビナトリアル化学ライブラリーにおける薬物候補のスクリーニングは、このアプローチの別の応用である。
【0116】
例えばBD(商標)Cytometric Bead Arrayなどの多重化ビーズアッセイは、可溶性分析物を捕捉および定量化するために使用され得る、一連のスペクトルが別々の粒子である。次いで、分析物を、蛍光に基づく放出およびフローサイトメトリー分析の検出によって測定する。多重化ビーズアッセイは、ELISAベースのアッセイと同等であるが、「多重化」または同時方式でのデータを生成する。未知の濃度が、任意のサンドイッチ形式アッセイと同様に、すなわち、既知の標準を使用し、標準曲線に対して未知をプロットすることによって、サイトメトリービーズアレイについて計算される。さらに、多重化ビーズアッセイは、試料体積の制限によりこれまで検討されたことがなかった試料中の可溶性分析物の定量化を可能にする。定量的データに加えて、ユーザに一目で追加情報を提供する独自のプロファイルまたはシグネチャを明らかにする強力なビジュアル画像が生成され得る。
【0117】
C.免疫療法の方法
本発明はまた、治療上有効量の免疫細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、免疫療法の方法も提供し、ここで免疫細胞は、損傷したばかりであり、本明細書に記載の回復の可能性の方法を使用して、投与前に生存が決定されている。このため、一態様では、免疫療法(例えば、抗がん治療など)を、それを必要とする対象に施す方法が本明細書で開示され、本方法には、a)細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール曝露(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない)後の以前に主題にされた1つ以上の免疫細胞(例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、好中球、γδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/またはCAR NK細胞など)を得ることと、b)ADAM-17切断表面受容体(例えば、CD16、CD62L、またはIL-15受容体(IL-15R)など)の発現レベルをアッセイすることと、c)対象に、対照免疫細胞と比べて、または細胞膜損傷免疫細胞の混合集団と比べて、増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する治療上有効量の免疫細胞を投与することと、が含まれる。
【0118】
上述のように、本免疫療法の方法には、治療上有効量の免疫細胞を、それを必要とする対象に投与することが含まれ、細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露を含むがこれらに限定されない)後の主題にされた免疫細胞は、それらが増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現したことを決定することによって、投与前に生存しており回復されることが決定されている。回復した細胞は、効果的な免疫療法を提供する可能性が高く、投与プロセスを生き延びる可能性が高く(このため、移入細胞の取り込みを増加させる)、結果として、免疫療法のための投与前に免疫細胞の回復を評価することを可能にするために有用である。一態様では、免疫細胞の回復を測定することによって(ADAM-17切断表面受容体の発現レベルをアッセイすることによる)、診療医は、回復した(すなわち、増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する)移入細胞を選択することができ、これにより、対象への移入を生き延び、対象にとって免疫療法となる可能性の高い細胞の割合を増加させることが理解され、本明細書で企図される。
【0119】
免疫療法は、本明細書で使用される場合、リンパ球(腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含むがこれに限定されない)、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)、B細胞、γδT細胞、好中球、細胞傷害性Tリンパ球、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、および/またはCAR NK細胞などの免疫細胞が対象に投与されて、治療効果を達成する、細胞ベースの免疫療法を指す。細胞ベースの免疫療法は、がんを有すると診断された対象のための抗がん治療として最も頻繁に使用される。細胞ベースの免疫療法には、免疫細胞が患者または別の個体から抽出された後、免疫機能を改善するために投与される、養子細胞移入が含まれる。例えば、自己がん免疫療法では、T細胞またはNK細胞を患者から抽出し、任意選択で遺伝子修飾し、インビトロで培養した後、同じ患者に戻す。代替的に、同種細胞ベース免疫療法には、免疫細胞を受ける患者とは別のドナーから単離し、拡大させた細胞が関与する。いくつかの実施形態では、免疫療法の方法には、細胞膜損傷事象(凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない)を経験したT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞の使用が含まれる。さらなる実施形態では、本免疫療法の方法には、拡大させたNK細胞などのNK細胞の使用が含まれる。
【0120】
細胞が得られた時と、細胞が免疫療法のために必要とされる時との間に遅延が生じるため、細胞を、必要になるまで貯蔵できるように凍結することが一般的である。免疫細胞の凍結および融解方法は、本明細書に記載されており、当業者には既知である。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、水浴を使用して融解された。他の態様では、細胞は、治療用ベクターもしくはペプチドの挿入、遺伝子編集、またはキメラ抗原受容体の構築などにより、より効果的な治療を提供するように操作されてもよい。これらの操作には、多くの場合、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露を介した、細胞膜の透過化が伴う。これらの操作または凍結保存の取り組み(すなわち、凍結融解サイクル)により、細胞膜損傷が生じるが理解され、本明細書で企図される。
【0121】
開示の免疫療法の方法に使用するために細胞膜損傷事象(例えば、凍結保存をとおして生じるものなどの凍結融解サイクル、遺伝子編集、エレクトロポレーション、マグネトフェクション、細胞スクイーズ、洗剤透過化(例えば、サポニンおよび/またはジギトニンなど)、ストロトリシンO(SLO)曝露、物理的形態変化(細胞スクイーズ)、および/またはエタノール(30%以下のエタノールを含む溶液を含むがこれらに限定されない)曝露など)後の免疫細胞の回復の可能性を測定することは、細胞膜損傷事象の後、いつ生じてもよい。損傷したばかりの免疫細胞は、過去48時間以内に損傷した細胞である。いくつかの実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、0~24時間以内に損傷したものである一方、他の実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、0~12時間以内に損傷したものである。さらなる実施形態では、損傷したばかりの免疫細胞は、12~24時間以内に損傷したものである。例えば、免疫細胞は、免疫細胞膜損傷事象の後5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、75、90、105、120、150、180分、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、または48時間以内にアッセイされ得る。
【0122】
細胞膜損傷事象後の免疫細胞の回復の可能性を測定することは、細胞表面上のタンパク質の量を検出することができる任意の方法を使用して行うことができる。例えば、ADAM-17切断表面受容体の量は、免疫アッセイまたは細胞選別法を使用して検出することができる。免疫アッセイには、多くの異なる形式および変形例がある。免疫アッセイは、試薬を加え、アッセイの異なる時点で洗い流す、または分離させる複数のステップで実施されてもよい。免疫アッセイには、複数のステップを含む不均一免疫アッセイ、および試薬と試料とを単純に混合し、物理的測定を行うことを伴う均一免疫アッセイが含まれる。免疫アッセイの種類には、競合均一免疫アッセイ、競合不均一免疫アッセイ、一部位非競合免疫アッセイ、および二部位非競合免疫アッセイが含まれる。免疫アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラテラルフロー免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着スポット(ELIspot)アッセイ、抗体アレイアッセイおよびビーズベースのアッセイ、磁気免疫アッセイ、および放射性免疫アッセイも含まれる。
【0123】
細胞膜損傷事象後に以前に供された免疫細胞を使用した免疫療法の方法において、ADAM-17切断表面受容体のレベルの増加は、免疫細胞回復の可能性と直接的に相関する。つまり、ADAM-17切断表面受容体発現の増加が大きいほど、免疫細胞回復の可能性が高くなる。いくつかの実施形態では、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体のレベルが、免疫細胞上に発現するADAM-17切断表面受容体の正常なレベルと比較した、細胞膜損傷免疫細胞上に発現するADAM17によって切断された表面受容体のレベルの比率として表される、免疫療法を施す方法が本明細書で開示される。
【0124】
1.薬学的担体/医薬品の送達
上述のように、組成物は、薬学的に許容される担体中でインビボで投与することもできる。「薬学的に許容される」は、任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、またはそれと接触する医薬組成物の他の構成要素のいずれとも有害な様式で相互作用することなく、生物学的にまたは別途望ましくないものではない材料、すなわち、核酸またはベクターとともに、対象に投与され得る材料、を意味する。担体は、当業者には周知のとおり、活性成分のあらゆる分解を最小限に抑え、対象におけるあらゆる有害な副作用を最小限に抑えるように、必然的に選択され得る。
【0125】
組成物は、経口、非経口(例えば、静脈内)、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮、体外、局所(局所鼻腔内投与または吸入剤による投与を含む)などで、投与され得る。本明細書で使用される場合、「局所鼻腔内投与」は、鼻孔の一方または両方を介して組成物を鼻および鼻道に送達することを意味し、噴霧機構もしくは液滴機構による、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化による送達を含むことができる。吸入剤による組成物の投与は、噴霧または液滴機構による送達を介して鼻または口をとおして行うことができる。送達は、挿管を介して呼吸器系の任意の領域(例えば、肺)に直接送達することもできる。必要とされる組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、および一般状態、治療されるアレルギー障害の重症度、使用される特定の核酸またはベクター、その投与方法などに応じて、対象によって異なることになる。したがって、すべての組成物に対して正確な量を指定することは不可能である。しかしながら、適切な量は、本明細書の教示を与える日常的な実験のみを使用して、当業者によって決定され得る。
【0126】
組成物の非経口投与は、使用される場合、概して、注射を特徴とする。注射剤は、液体溶液または懸濁液、注射前の液体中の懸濁液の溶液に適した固体形態、あるいはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製され得る。最近改訂された非経口投与のアプローチには、一定の投薬量が維持されるような徐放または持続放出の使用を伴う。例えば、米国特許第3,610,795号を参照されたい(参照により本明細書に援用される)。
【0127】
材料は、溶液、懸濁液(例えば、微小粒子、リポソーム、または細胞に組み込まれる)中であってもよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介して、特定の細胞型を標的にし得る。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化にするための本技術の使用例である(Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,2:447-451,(1991)、Bagshawe,K.D.,Br.J.Cancer,60:275-281,(1989)、Bagshawe,et al.,Br.J.Cancer,58:700-703,(1988)、Senter,et al.,Bioconjugate Chem.,4:3-9,(1993)、Battelli,et al.,Cancer Immunol.Immunother.,35:421-425,(1992)、Pietersz and McKenzie,Immunolog.Reviews,129:57-80,(1992)、およびRoffler,et al.,Biochem.Pharmacol,42:2062-2065,(1991))。「ステルス」および他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸がんを標的とする脂質媒介性薬物を含む)などのビヒクル、細胞特異的リガンドを介したDNAの受容体媒介性標的化、リンパ球特異的腫瘍標的化、およびインビボでのマウス神経膠腫細胞の高度に特異的な治療用レトロウイルス標的化。以下の参考文献は、特定のタンパク質を腫瘍組織に標的化にするための本技術の使用例である(Hughes et al.,Cancer Research,49:6214-6220,(1989)、およびLitzinger and Huang,Biochimica et Biophysica Acta,1104:179-187,(1992))。概して、受容体は、構成的またはリガンド誘導のいずれかのエンドサイトーシスの経路に関与する。これらの受容体は、クラスリン被覆ピット内でクラスター化し、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に入り、受容体が選別される酸性化エンドソームを通過し、次いで細胞表面にリサイクルされるか、細胞内に貯蔵されるか、またはリソソーム中で分解されるかのいずれかである。内部移行経路は、栄養素の取り込み、活性化タンパク質の除去、巨大分子のクリアランス、ウイルスおよび毒素の日和見進入、リガンドの解離および分解、ならびに受容体レベルの調節などの様々な機能を果たす。多くの受容体は、細胞型、受容体濃度、リガンドの種類、リガンド価、およびリガンド濃度に応じて、2つ以上の細胞内経路に従う。受容体媒介性エンドサイトーシスの分子および細胞機構が概説されている(Brown and Greene,DNA and Cell Biology 10:6,399-409(1991))。
【0128】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む本組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせて治療に使用することができる。
【0129】
好適な担体およびそれらの製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(19th ed.)ed.A.R.Gennaro,Mack Publishing Company,Easton,PA 1995に記載されている。典型的には、製剤を等張性にするために、製剤に適切な量の薬学的に許容される塩が使用される。薬学的に許容される担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられるが、これらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、より好ましくは、約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性調製物が挙げられ、このマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、リポソーム、または微粒子の形態である。ある特定の担体が、例えば、投与経路および投与される組成物の濃度に応じて、より好ましくてもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0130】
薬学的担体は当業者に既知である。これらは、最も典型的には、生理的pHの滅菌水、生理食塩水、および緩衝液などの溶液を含む、ヒトへの薬物投与のための標準的な担体である。これらの組成物は、筋肉内または皮下に投与することができる。他の化合物は、当業者が使用する標準的な手順に従って投与されることになる。
【0131】
医薬組成物は、選択される分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、表面活性剤などを含んでもよい。医薬組成物はまた、1つ以上の活性成分、例えば、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などを含んでもよい。
【0132】
本医薬組成物は、局所治療または全身治療が所望されるかどうか、および治療される領域に応じて、いくつかの方法で投与され得る。投与は、局所(眼、膣、直腸、鼻腔内を含む)、経口、吸入、または非経口、例えば、静脈内点滴、皮下、腹腔内、または筋肉内注射によって行われてもよい。開示される抗体は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、または経皮的に投与され得る。
【0133】
非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン、または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、流体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。保存剤および他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなども存在し得る。
【0134】
局所投与用の製剤には、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、点滴剤、座薬、噴霧剤、液剤、および粉剤が含まれてもよい。従来の薬学的担体、水性、粉末、または油性の基剤、増粘剤などが必要であるかまたは望ましくてもよい。
【0135】
経口投与のための組成物には、粉剤または顆粒剤、水または非水媒体中の懸濁液または溶液、カプセル剤、サシェ剤、または錠剤が含まれる。増粘剤、香料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましくてもよい。
【0136】
本組成物のうちのいくつかは、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基、ならびにモノ、ジ、トリアルキル、およびアリールアミン、および置換エタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成される薬学的に許容される酸または塩基付加塩として投与することが可能であってもよい。
【0137】
b)治療的使用
本組成物を投与するための有効な投薬量およびスケジュールは、経験的に決定され得るため、そのような決定を行うことは、当業者の技術の範囲内となる。本組成物の投与のための投薬量範囲は、障害の症状に影響する所望の効果を生じさせるのに十分に大きいものである。投薬量は、有害な副作用、例えば、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などを引き起こすほどに大きいものであってはならない。概して、投薬量は、患者の年齢、状態、性別、および疾患の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれるかどうかによって変動することになり、これは、当業者であれば決定することができる。投薬量は、いずれかの禁忌の場合に、個々の医師によって調整することができる。投薬量は、変動し得、1日または数日間にわたり、毎日1回以上の用量投与で投与され得る。所与のクラスの医薬品に対する適切な投薬量についての指針は、文献に見出すことができる。例えば、抗体のための適切な用量を選択する際の指針は、抗体の治療的使用に関する文献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies,Ferrone et al.,eds.,Noges Publications,Park Ridge,N.J.,(1985)ch.22 and pp.303-357、Smith et al.,Antibodies in Human Diagnosis and Therapy,Haber et al.,eds.,Raven Press,New York(1977)pp.365-389に見出すことができる。単独で使用される抗体の典型的な1日用量は、上述の要因に応じて、1日当たり体重1kg当たり約1μg~最大100mg以上の範囲であり得る。
【0138】
一態様では、免疫療法が、がんを有すると診断された対象のための抗がん治療である、免疫療法を施す方法が本明細書に開示される。開示される免疫療法の方法を使用して、がんなどの未制御な細胞増殖が生じる任意の疾患を治療、阻害、低減、減少、軽減、および/または防止することができる。開示される組成物を用いて治療することができる、代表的であるが非限定的ながんの一覧は、以下のとおりである:リンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱がん、脳がん、神経系がん、頭頸部がん、頭頸部の扁平上皮細胞がん、小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんなどの肺がん、神経芽細胞腫/神経膠芽腫、卵巣がん、皮膚がん、肝臓がん、黒色腫、口、咽頭、喉頭がん、および肺の扁平上皮細胞がん、子宮頸がん(cervical cancer)、子宮頸がん(cervical carcinoma)、乳がん、ならびに上皮がん、腎臓がん、泌尿生殖器がん、肺がん、食道がん、頭頸部がん、大腸がん、造血がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、前立腺がん、または膵臓がん。このため、一態様では、対象において、がんおよび/または転移を治療、阻害、減少、低減、緩和、および/または予防する方法が本明細書に開示され、本方法には、a)細胞膜損傷事象後の以前に主題にされた1つ以上の免疫細胞を得ることと、b)ADAM-17切断表面受容体の発現レベルをアッセイすることと、c)対照免疫細胞と比べて増加したレベルのADAM-17切断表面受容体を発現する治療上有効量の免疫細胞を対象に投与することと、が含まれる。
【0139】
D.実施例
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法の作製方法および評価方法の完全な開示および説明を提供するために示されるものであり、純粋に例示的であることを意図するものであって、本開示を限定するものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。特に指定しない限り、部(part)は重量部であり、温度は℃、または周囲温度であり、圧力は、大気圧またはその付近である。
【実施例】
【0140】
1.実施例1:CD16のパーセンテージおよび全回復率
K562 mbIL21.41bbLフィーダー細胞を使用して、ナチュラルキラー細胞を14日間エクスビボで拡大した。NK細胞を14日目に9つの異なる凍結保存媒体中で凍結させ、Mr.Frosty Deviceを使用して1℃/分の速度で凍結させた。NK細胞を、標準プロトコルを使用して37℃の水浴中で融解させ、計数し、融解直後にフローサイトメトリー分析のために評価した。すべての細胞を、各条件で同数の生存細胞を含むT25フラスコ内で一晩静置した。融解後1日目にNK細胞を計数した。0日目および1日目からの総回復率を計算し、これを
図3および4に示す。
【0141】
これらの結果を生成するために使用した方法を、ここでより詳細に説明する。細胞拡大の14日目に、トリパンブルー細胞排除を使用して、生細胞計数を完了した。次に、上述のように、異なる凍結保存培地を使用して、細胞を凍結させた。融解の0日目に、細胞を、37℃の水浴を使用してわずかに撹拌しながら、バイアルに残った氷の小片が1つだけになるまで融解させた。次に、融解させた細胞懸濁液に培地を加え、細胞を分離するために、培地中の融解させた細胞を400×gで5分間回転させた。その後、細胞を完全培地に再懸濁させ、トリパンブルー排除を使用して生細胞計数を行った。次いで、一般的なフローサイトメトリー染色プロトコルを使用して、NK細胞のアリコートをCD16および生死判定用色素について染色した。続いて、初期細胞懸濁液を使用して、指定数の生細胞を、IL-2を含む完全培地中で一晩静置した。
【0142】
融解後1日目に、トリパンブルー排除を使用して生細胞計数を行った。細胞の回収率を一晩の静置から計算した。
【0143】
図5に示すように、NK細胞を融解させ、凍結保存培地を洗い流し、培養培地に再懸濁させ、24時間の回復のために静置した。NK細胞上のCD16発現を、融解後60分以内にフローサイトメトリーによって決定した。CD16の喪失はADAM17によって調節され、ADAM17が欠失しているNK細胞により、CD16発現の回復が強化された(
図6)。
【0144】
本発明を、その好ましい実施形態を参照して具体的に示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行ってもよいことが、当業者には理解される。前述の明細書で引用されるすべての特許、刊行物、および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0145】
参考文献
Becker et al.,Cancer Immunol.Immunother 65,477-484(2016).
Bethune et al.,Curr Opin Biotechnol.,48:142-152(2017).
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Koepsell et al.,Transfusion,53(2):404-10(2013).
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Rezvani et al.,Front Immunol.,6,578(2015).
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Xin et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.114(4):740-745(2017).
【国際調査報告】