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特表2023-526156免疫療法のためのT細胞及びT細胞受容体を単一細胞解析により腫瘍から単離する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】免疫療法のためのT細胞及びT細胞受容体を単一細胞解析により腫瘍から単離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20230614BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230614BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230614BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230614BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20230614BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20230614BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N15/12
C12N5/10
C07K14/725
A61K35/17
A61P31/12
A61P35/00
A61P31/20
A61K38/17
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556459
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 US2021023240
(87)【国際公開番号】W WO2021188954
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/992,701
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510002280
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ、スリ
(72)【発明者】
【氏名】ロウリー、ザ サード、フランク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】花田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ジェームズ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ、スティーヴン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ、ポール エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヨセフ、ラミ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA93X
4B065AB10
4B065AC14
4B065AC20
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA35
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法が提供される。該方法は、患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択すること;及び選択されたT細胞を選択されなかった細胞から分離することを含み得る。分離された、選択されたT細胞は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を提供する。T細胞受容体(TCR)を単離する方法、TCRを発現する細胞の集団を調製する方法、単離されたTCR、単離された細胞の集団、医薬組成物、及び哺乳動物における状態を治療又は予防する方法も提供される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法であって:
患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択すること;及び
選択されたT細胞を選択されなかった細胞から分離し、分離された、選択されたT細胞は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を提供すること;
を含み、
標的抗原が、がん特異的変異によってコードされるネオ抗原か、がん抗原か、又はがん関連ウイルス抗原であり、遺伝子発現プロファイルが:
(a)(i)CD4及びCD8の一方又は両方並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの1以上;
(b)CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの1以上;
(c)CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの1以上;
(d)CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの1以上;
(e)ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLEKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの1以上;
(f)CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの1以上;
(g)CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの1以上;
(h)AHI1+、CXCL13+、FABP5+、NAP1L4+、ORMDL3+、PPP1R16B+、SH2D1A+、TIGIT+、及びTOX+のうちの1以上;又は
(i)TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの1以上
を含む、方法。
【請求項2】
標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)又はその抗原結合部分を単離する方法であって、
請求項1に記載の方法に従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;
濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;
1以上の個別の単一T細胞試料においてTCR相補性決定領域3(CDR3)を配列決定すること;
CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;
ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させること;
標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること;並びに
標的抗原に対して抗原特異性を有する、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択すること
を含み、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離される、方法。
【請求項3】
標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)又はその抗原結合部分を単離する方法であって:
患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;
濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;
個別の単一T細胞試料においてTCR相補性決定領域3(CDR3)を配列決定すること;
遺伝子発現プロファイルを有する、個別の単一T細胞試料を選択すること;
CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、遺伝子発現プロファイルを有する個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;
ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させること;
標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること;並びに
標的抗原に対して抗原特異性を有する、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択すること
を含み、
標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離され、
標的抗原が、がん特異的変異によってコードされるネオ抗原か、がん抗原か、又はがん関連ウイルス抗原であり、遺伝子発現プロファイルが:
(a)(i)CD4及びCD8の一方又は両方並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの1以上;
(b)CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの1以上;
(c)CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの1以上;
(d)CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの1以上;
(e)ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLEKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの1以上;
(f)CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの1以上;
(g)CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの1以上;
(h)AHI1+、CXCL13+、FABP5+、NAP1L4+、ORMDL3+、PPP1R16B+、SH2D1A+、TIGIT+、及びTOX+のうちの1以上;又は
(i)TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの1以上
を含む、方法。
【請求項4】
遺伝子発現プロファイルがTIGITを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
遺伝子発現プロファイルがCXCL13を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
遺伝子発現プロファイルがCD8及びCXCL13を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
遺伝子発現プロファイルがCD4及びCXCL13を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
遺伝子発現プロファイルが、CD8、TIGIT、並びにCD39及びPD-1の一方又は両方を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
遺伝子発現プロファイルが、CD8、TIGIT、CD39、及びPD-1を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
遺伝子発現プロファイルが、CD8、CXCL13、並びにCD39、TIGIT、及びPD-1のうちの1以上を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
遺伝子発現プロファイルが、CD8、CXCL13、CD39、TIGIT、及びPD-1を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
遺伝子発現プロファイルが、CD4、CXCL13、並びにCD39、TIGIT、及びPD-1のうちの1以上を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
遺伝子発現プロファイルが、CD4、CXCL13、CD39、TIGIT、及びPD-1を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが:
(i)遺伝子発現プロファイルの正に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の存在を検出すること;
(ii)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が負である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の不存在を検出すること;
(iii)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が負である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の量を測定すること;及び/又は
(iv)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が正である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の量を測定すること
を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが:
(i)遺伝子発現プロファイルの正に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの存在を検出すること;
(ii)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が負である遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの不存在を検出すること;
(iii)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が負である遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの量を測定すること;及び/又は
(iv)遺伝子発現プロファイルにおいて発現が正である遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの量を測定すること
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが、1以上の単一細胞次元削減法を実施することを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが、配列決定によるトランスクリプトーム及びエピトープの細胞インデックス化(CITE-Seq)解析を実施することを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが、単一細胞トランスクリプトーム解析を実施することを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することが、遺伝子発現プロファイルにおける1以上の遺伝子の細胞表面発現を検出することを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(d)の遺伝子発現プロファイルが、PD-1及びTIM-3の一方又は両方を更に含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
(e)又は(g)の遺伝子発現プロファイルがLAG3を更に含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
がん関連ウイルス抗原がヒトパピローマウイルス(HPV)抗原である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
標的抗原に対して抗原特異性を有する、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の集団を調製する方法であって:
請求項2~22のいずれか1項に記載の方法に従って、TCR又はその抗原結合部分を単離すること、及び
単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を末梢血単核細胞(PBMC)に導入して、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞を得ること
を含む、方法。
【請求項24】
標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を調製する方法であって:
(a)請求項1及び4~22のいずれか1項に記載の方法に従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;
(b)濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;
(c)個別の単一T細胞試料において、TCR相補性決定領域3(CDR3)を配列決定すること;
(d)CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;
(e)ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を末梢血単核細胞(PBMC)に導入し、PBMCにペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現させること;及び
(f)(a)に従って調製された標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団の複数の個別の単一T細胞試料に対して(c)、(d)、及び(e)を実施し、それにより標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を提供すること
を含む、方法。
【請求項25】
TCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCの数を増幅することを更に含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
請求項2~22のいずれか1項に記載の方法に従って単離されたTCR又はその抗原結合部分。
【請求項27】
請求項1及び4~22及び23~25のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、単離された細胞の集団。
【請求項28】
請求項27に記載の単離された細胞の集団及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項29】
哺乳動物における状態の治療又は予防において用いるための、請求項25に記載のTCR、請求項26に記載の単離された細胞の集団、又は請求項27に記載の医薬組成物であって、状態ががん又はウイルス状態である、TCR、単離された細胞の集団、又は医薬組成物。
【請求項30】
状態の治療又は予防のための医薬を調製する方法であって、請求項1及び4~22のいずれか1項に記載の方法に従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;又は(ii)請求項23~25のいずれか1項に従って、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の単離された集団を調製することを含み、状態ががん又はウイルス状態である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年3月20日に出願された米国仮特許出願番号第62/992,701号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府支援の研究又は開発に関する陳述
本発明は、連邦政府の支援を受け、プロジェクト番号ZIA BC010984の下、米国国立衛生研究所、米国国立がん研究所によりなされた。本発明において、連邦政府は一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出された物件の参照による組込み
本明細書と同時に提出され、以下の通り識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、参照により、その全体が本明細書に組込まれる:2021年3月18日付けの「753067_ST25.TXT」という名前の553バイトのASCII(テキスト)ファイル1件。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
がん特異的変異によってコードされるネオ抗原を標的とするT細胞を用いる養子細胞療法(ACT)は、一部の患者において有益な臨床反応をもたらし得る。それにもかかわらず、がん及び他の状態の治療にACTを首尾よく用いるには、いくつかの障害が残っている。例えば、がん反応性T細胞を生成するために用いられる現在の方法では、相当の時間が必要となり、がん標的に結合する所望のT細胞受容体が容易に特定されない場合がある。従って、ACT用の細胞の単離された集団を得る方法の改善についてのニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
発明の要旨
本発明の一態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法であって:患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択すること;選択されたT細胞を選択されなかった細胞から分離し、分離された、選択されたT細胞は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を提供することを含み、
標的抗原が、がん特異的変異によってコードされるネオ抗原か、がん抗原か、又はがん関連ウイルス抗原であり、遺伝子発現プロファイルが:(a)(i)CD4及びCD8の一方又は両方並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの1以上;(b)CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの1以上;(c)CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの1以上;(d)CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの1以上;(e)ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLEKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの1以上;(f)CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの1以上;(g)CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの1以上;(h)AHI1+、CXCL13+、FABP5+、NAP1L4+、ORMDL3+、PPP1R16B+、SH2D1A+、TIGIT+、及びTOX+;又は(i)TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの1以上を含む、方法を提供する。
【0006】
本発明の別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)又はその抗原結合部分を単離する方法であって:本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるいずれかの方法に従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;1以上の個別の単一T細胞試料においてTCR相補性決定領域3(CDR3)を配列決定すること;CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させること;標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること;並びに標的抗原に対して抗原特異性を有する、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択することを含み、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離される、方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を調製する方法であって:(a)本発明の他の態様に関して本明細書に記載される記載の方法のいずれかに従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;(b)濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;(c)個別の単一T細胞試料において、TCR CDR3を配列決定すること;(d)CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;(e)ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列をPBMCに導入し、PBMCにペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現させること;及び(f)(a)に従って調製された標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団の複数の個別の単一T細胞試料に対して(c)、(d)、及び(e)を実施し、それにより標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を提供することを含む、方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を単離する方法であって:患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;個別の単一T細胞試料においてTCR CDR3を配列決定すること;遺伝子発現プロファイルを有する、個別の単一T細胞試料を選択すること;CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、遺伝子発現プロファイルを有する個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させること;標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること;並びに標的抗原に対して抗原特異性を有する、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択することを含み、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離され、遺伝子発現プロファイルが:(a)(i)CD4及びCD8の一方又は両方並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの1以上;(b)CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの1以上;(c)CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの1以上;(d)CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの1以上;(e)ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLEKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの1以上;(f)CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの1以上;(g)CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの1以上;(h)AHI1+、CXCL13+、FABP5+、NAP1L4+、ORMDL3+、PPP1R16B+、SH2D1A+、TIGIT+、及びTOX+のうちの1以上;又は(i)TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの1以上を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明の更に別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有する、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の集団を調製する方法であって:本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかに従って、TCR又はその抗原結合部分を単離すること、及び単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を末梢血単核細胞(PBMC)に導入して、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞を得ることを含む、方法を提供する。
【0010】
本発明の更なる態様は、本発明の方法のいずれかに従って調製された、関連のTCR又はその抗原結合部分、単離された細胞の集団、及び医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明の更なる態様は、哺乳動物における状態を治療又は予防する関連の方法、及び哺乳動物における状態の治療又は予防のための医薬を調製する関連の方法であって、状態ががん又はウイルス状態である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面のいくつかの観点の簡単な説明
図1A図1Aは、結腸直腸がん患者4323由来のT細胞のt-SNE分析の結果(t-SNEマップ)を示す。クラスターには0~7の番号を付けている。
図1B図1Bは、図1Aのt-SNEマップ上に投影した公知のネオ抗原反応性TCRを示す。公知のネオ抗原反応性TCRは、クラスター5(四角で囲まれた領域)に局在している。
図1C図1Cは、図1Aのクラスター5中の4323T細胞による、選択した遺伝子の発現を示す。
図2A図2Aは、患者4323のTILについてのt-SNEマップであり、クラスタートランスクリプトームプロファイルに基づいて前向きに再構築されたすべてのネオ抗原反応性TCRがクラスター5(四角で囲まれた領域)に位置することを示す。
図2B図2Bは、患者4323のTILについてのt-SNEマップであり、試験された非反応性TCRのすべてが、特異性を示す8のクラスターの全てに位置する(黒丸)ことを示す。
図3A図3Aは、結腸直腸がん患者4324由来のT細胞のt-SNE分析の結果(t-SNEマップ)を示す。クラスターには0~6の番号を付けている。
図3B図3Bは、図3Aのt-SNEマップ上に投影した公知のネオ抗原反応性TCRを示す。公知のネオ抗原反応性TCRは、クラスター6(四角で囲まれた領域)に局在している。
図3C図3Cは、図3Aのクラスター6中の4324T細胞による、選択した遺伝子の発現を示す。
図4A図4Aは、乳がん患者4322由来のT細胞のt-SNE分析の結果(t-SNEマップ)を示す。クラスターには0~8の番号を付けている。
図4B図4Bは、図4Aのt-SNEマップ上に投影した公知のネオ抗原反応性TCRを示す。公知のネオ抗原反応性TCRは、クラスター3(四角で囲まれた領域)に局在している。
図4C図4Cは、図4Aのクラスター3中の4322T細胞による、選択した遺伝子の発現を示す。
図5A図5Aは、以前の結腸直腸がん患者4323並びに肺がん患者4234及び4237由来のCD8T細胞の組み合わされた(combined)t-SNE分析の結果(t-SNEマップ)を示す。クラスターには0~6の番号を付けている。
図5B図5Bは、図5Aのt-SNEマップ上に投影した公知のネオ抗原反応性TCR、並びに4323CD8クラスター(4234及び4237を含む)の再クラスター化を示す。公知のネオ抗原反応性TCRは、クラスター4(四角で囲まれた領域)に局在している。
図5C図5Cは、図5Aのクラスター4中のCD84323、4234、及び4237T細胞による、選択した遺伝子の発現を示す。
図6図6は、患者4323のネオ抗原反応性T細胞(n=236細胞)及び患者4323のネオ抗原反応性T細胞以外の細胞(n=2597)についてのNeoTCRシグネチャスコアを示すグラフである。
図7A図7Aは、結腸直腸がん患者4283由来のT細胞のt-SNE分析の結果(t-SNEマップ)を示す。クラスターには0~4の番号を付けている。
図7B図7Bは、図7Aのt-SNEマップ上に投影した公知のネオ抗原反応性TCRを示す。公知のCD4ネオ抗原反応性TCRは、クラスター2(四角で囲まれた領域)に局在している。
図7C図7Cは、図7Aのクラスター2中の4283T細胞による、選択した遺伝子の発現を示す。
図8A図8Aは、他の患者の原型のtSNEプロットに投影した、Pt.4323のNeoTCRクラスタートランスクリプトームプロファイルに由来するNeoTCRシグネチャの第95パーセンタイルを発現する細胞(より暗い点)を示す。
図8B図8Bは、他の患者の原型のtSNEプロットに投影した、Pt.4322に由来するNeoTCRシグネチャの第95パーセンタイルを発現する細胞(より暗い点)を示す。
図8C図8Cは、他の患者の原型のtSNEプロットに投影した、Pt.4323、4234、及び4237由来のNeoTCRシグネチャの第95パーセンタイルを発現する細胞(より暗い点)を示す。
図9図9は、抗体ベースのtSNE及びトランスクリプトームベースのtSNEによって分析されたT細胞のクラスタリングを比較するプロットを示す。T細胞は、3人のNSCLC患者(4234、4237、及び4369)由来の6のネオ抗原(DOPEY2、U2AF1、SLFN11、BPNT1、及びMLLT4)に対して反応性であった。ネオ抗原反応性CD8T細胞をより暗い点で表す。
図10図10は、患者4234についてのtSNEプロットを示す。四角枠中の2のtSNEプロットは、患者4234のTILにおけるCD8細胞及びネオ抗原反応性CD8T細胞のそれぞれの分布を示す。四角枠の外側の10のtSNEプロットは、表示した、ネオ抗原反応性T細胞に関連する分子を発現する細胞の分布を示す。代表的な10の分子の結果を示す。すべてのプロットにおいて、暗い点は各プロットの上に表示する特徴に関連する細胞を表す。
図11図11A~11Dは、FBC抗体によって検出される細胞表面タンパク質の発現を示す。患者4234のTILにおいて、黒色の点はネオ抗原反応性T細胞を表し、灰色の点は他の非抗原反応性T細胞を表す。図11A:ネオ抗原反応性T細胞上ではCD8A発現が低い(薄暗い)。図11B:CCR7及びCD45RAの両方の発現が低く、このことによりネオ抗原反応性細胞がエフェクターメモリーT細胞であることが示唆されている。図11C:ネオ抗原反応性細胞は、CD103発現が低く(弱い陽性)、CD39陽性である。図11D:ネオ抗原反応性CD8 T細胞の大部分は、PD-1及びTim-3の両方を発現する。
図12図12は、本発明の態様による単一細胞解析を用いる、腫瘍からの迅速なネオ抗原TCR単離のためのワークフローを示す模式図である。本発明の態様は、例えば、免疫療法のための抗腫瘍変異特異的ネオ抗原反応性TCRを得る2の方法:(1)単一細胞RNA配列決定及びその後の、TCRをインシリコ再構築するための、NeoTCR遺伝子シグネチャの適用、及び(2)最小限のマーカーを用いてのフローサイトメトリーベースの分取とそれに続くTCR再構築による、腫瘍ネオ抗原反応性TCRの直接的単離、を提供し得る。
図13図13は、DMSOで処理した標的細胞(対照)(左パネル)又はHPV16 E4を提示する標的細胞(右パネル)との共培養後の、4397TCR1で形質導入したエフェクター細胞による4-1BB発現を示すFACSデータを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
多くの腫瘍は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含有し得るが、これらの一部のみが、実際にがん変異がコードするネオ抗原と反応し得る。ある特定の腫瘍内に存在するTILの多くは、腫瘍の標的化免疫拒絶に直接関与しないバイスタンダーT細胞であり得る。混合集団から腫瘍を標的とするT細胞を濃縮するマーカーを同定する以前の取り組みは、成功の達成がまちまちであり、ほとんどコンセンサスがない。インビトロネオ抗原反応性に基づいて選択されたTIL断片培養物で患者を治療するこれまでの取り組みは、TILの、進行した転移性がん患者における長期退縮を媒介する能力を示している。しかし、TIL断片スクリーニングは、時間のかかる労働集約的なプロセスである場合があり、純粋な腫瘍反応性TIL集団で患者を治療できない場合がある。むしろ、TIL断片スクリーニングは、増幅のためのインビトロ反応性の程度が最も高いTIL断片を選択するのみであり得る。かかる技術は、腫瘍反応性TILが腫瘍に無関係なコンペティターによって増殖し、反応性の低下した治療製品をもたらす可能性がある確率的方法であり得る。自己腫瘍反応性T細胞のマーカーについての検索により、PD-1及びCD39等の一部のマーカーが腫瘍反応性T細胞を濃縮できることが示されているが、かかる濃縮がT細胞療法のエンジニアリングに適用できるTCR配列の同定を可能にするのに十分であるのか明確ではない。がん関連ウイルス抗原に反応性のT細胞の同定に関して、同様の課題が存在する。
【0014】
本発明の方法は、抗原、例、治療のためにT細胞を改変するために用いられ得るがん特異的抗原及びがん関連ウイルス抗原、に対して反応性のT細胞のTCR配列を迅速に同定することによって、これら及び他の欠点を改善し得る。本発明の方法は、好都合なことに、より低い頻度のかかる細胞を含有する天然のTIL集団を発見し、増殖させ、投与することに関連する不確実性を回避し得る。
【0015】
複数の一般的な上皮がんに存在する、標的抗原に対して反応性の、以前に同定されたTCRの大部分を包含する細胞集団が、腫瘍標本から単離されたT細胞の単一細胞解析により発見されることが見出された。この集団は、本明細書に記載の遺伝子発現プロファイルによって定義され得る。例えば、患者の腫瘍由来の、個別の固有の体細胞変異を標的とする、クローン的に明確なT細胞受容体を用いて、本明細書に記載の遺伝子発現プロファイルを有する細胞によって発現される新規な未知のTCRが再構築され、がんネオ抗原反応性であることが判明した。本発明の態様は、がんネオ抗原反応性T細胞を選択及び同定する、遺伝子発現プロファイルのCITE-seq解析を用いる独立した方法も提供する。本発明の方法により、一般的ながんの細胞ベースの免疫療法のためのT細胞及びTCRを迅速に単離するための潜在力が、増殖する腫瘍浸潤T細胞及び高価で時間のかかるスクリーニングを必要とせずに、劇的に増大する。本明細書に記載の遺伝子発現プロファイルは、好都合なことに、がん関連ウイルス抗原に反応性のT細胞及びTCRも同定し得る。
【0016】
また、複数の組織像の腫瘍においてがんネオ抗原反応性TILの明確な集団が存在すること、及びこの集団のシグネチャが、混合集団からがんネオ抗原反応性TILを前向きに同定するのに十分信頼性があることも発見された。本明細書に記載の本発明の方法によって同定された遺伝子発現プロファイルを利用して、腫瘍由来の単一T細胞を正確に分析し、TCR情報を用いて、患者の治療のためにがんネオ抗原反応性TCRを前向きに合成することが可能である。
【0017】
本発明の一態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法を提供する。語句「抗原特異的」及び「抗原特異性」は、本明細書で用いられる場合、T細胞が抗原又はそのエピトープに特異的に結合し、免疫学的に認識でき、該T細胞の該抗原またはそのエピトープへの結合は、免疫応答を誘発することを意味する。これに関して、本発明の方法によって得られたT細胞の集団は、本発明の方法によって得られているのではない細胞の集団と比較して、より高い割合の、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞を含み得る。
【0018】
本発明の一態様においては、標的抗原はがん抗原である。用語「がん抗原」は、本明細書で用いられる場合、該抗原が腫瘍又はがんに関連するように、腫瘍細胞又はがん細胞に専ら又は支配的に発現又は過剰発現する任意の分子(例、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、脂質、炭水化物等)を指す。がん抗原は更に、正常細胞、非腫瘍細胞、又は非がん細胞に発現し得る。しかしながら、そのような場合、正常細胞、非腫瘍細胞、又は非がん細胞によるがん抗原の発現は、腫瘍細胞又はがん細胞による発現ほど強力ではない。これに関して、腫瘍細胞又はがん細胞は、該抗原を過剰発現するか、又は正常細胞、非腫瘍細胞、又は非がん細胞による該抗原の発現と比較して有意に高いレベルで該抗原を発現し得る。また、がん抗原は、生育又は成熟の異なる状態の細胞に更に発現し得る。例えば、がん抗原は、成体宿主においては通常見られない胚又は胎児期の細胞に更に発現し得る。或いは、がん抗原は、成体宿主においては通常見られない幹細胞又は前駆細胞に更に発現し得る。がん抗原は当該技術分野で公知であり、例えば、メソテリン、CD19、CD22、CD276(B7H3)、gp100、MART-1、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRVIII)、TRP-1、TRP-2、チロシナーゼ、NY-ESO-1(CAG-3とも呼ばれる)、MAGE-1、MAGE-3等が挙げられる。
【0019】
本発明の一態様においては、標的抗原は、がん特異的変異によってコードされるネオ抗原である。ネオ抗原は、発現タンパク質におけるがん特異的変異から生じる1群のがん抗原である。用語「ネオ抗原」は、正常(非がん性)細胞に発現する対応する野生型(非変異)ペプチド又はタンパク質と比較して、1以上のアミノ酸改変を含む、がん細胞に発現するペプチド又はタンパク質に関する。ネオ抗原は、患者固有のものであり得る。「がん特異的変異」は、腫瘍又はがん細胞の核酸に存在するが、対応する正常、即ち非腫瘍細胞や非がん性細胞の核酸には存在しない体細胞変異である。
【0020】
本発明の一態様においては、標的抗原はウイルス特異的抗原である。ウイルス特異的抗原は当該技術分野で公知であり、例えば、ウイルス感染細胞(APC)に発現するか又は提示され、ウイルスに感染していない細胞に発現しないし提示されない、任意のウイルスタンパク質又はペプチド、例、env、gag、pol、gp120、チミジンキナーゼ等が挙げられる。本発明の一態様においては、ウイルス特異的抗原は、がん関連ウイルス抗原、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)16E4、HPV16E6、HPV16E7、HPV18E6、HPV18E7等である。ウイルス特異的抗原は、例えば、ヘルペスウイルス抗原、ポックスウイルス抗原、ヘパドナウイルス抗原、パピローマウイルス抗原、アデノウイルス抗原、コロナウイルス抗原、オルソミクソウイルス抗原、パラミクソウイルス抗原、フラビウイルス抗原、及びカリシウイルス抗原であり得る。例えば、ウイルス特異的抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原、インフルエンザウイルス抗原、単純ヘルペスウイルス抗原、エプスタイン・バー(EBV)ウイルス抗原、HPV抗原、水痘ウイルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、A型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス抗原、カリシウイルス抗原、アデノウイルス抗原、及びアリーナウイルス抗原からなる群から選択され得る。本発明の一態様においては、がん関連ウイルス抗原はHPV抗原である。
【0021】
前記方法は、患者の腫瘍試料からT細胞を単離することを含み得る。腫瘍試料は、例えば、原発性腫瘍からの組織又は転移性腫瘍の部位からの組織であり得る。従って、腫瘍試料は、吸引、生検、又は切除を含むがこれらに限定されない任意の好適な手段によって得られ得る。本発明の一態様においては、患者はがん患者である。本発明の別の態様においては、患者はウイルス状態に罹患している患者である。
【0022】
前記方法は、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することを更に含み得る。遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、T細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること、及び1以上の単一T細胞による1以上の遺伝子の発現及び/又は非発現を個別に検出することを含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、単一細胞トランスクリプトーム解析を実施することを含む。
【0023】
1以上の単一T細胞による1以上の遺伝子の発現及び/又は非発現の検出は、例えば、CHROMIUM Single Cell Gene Expression Solutionシステム(10xGenomics,Pleasanton,CA)(「CHROMIUMシステム」)を用いて実施され得る。CHROMIUMシステムは、細胞ごとにハイスループットのデジタル遺伝子発現により複雑な細胞集団の詳細なプロファイリングを実施する。CHROMIUMシステムは、5’転写解析又はTCR解析のために個々の細胞のcDNAをバーコード化する。例えば、試料は10,000の細胞のインプットで開始し得、平均約500遺伝子/細胞で、約3000細胞/試料に関するデータをもたらし得る。
【0024】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、配列決定によるトランスクリプトーム及びエピトープの細胞インデックス化(Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by Sequencing)(CITE-Seq)解析を実施することを含む。CITE-Seqは、例えば、Stoeckius et al.,Nat.Methods,14(9):865-868(2017)に記載されている。簡単に言えば、CITE-seqは、タンパク質マーカーの抗体ベースの検出と、多くの単一細胞に関するトランスクリプトームプロファイリングとを並行して組合せている。オリゴヌクレオチド標識抗体が、細胞タンパク質及びトランスクリプトームの測定を効率的な単一細胞の読み出し情報に統合するために用いられる。
【0025】
単一細胞トランスクリプトーム解析によってもたらされるデータの次元性が高いため(例、約3000細胞/試料及び約500遺伝子/細胞)、遺伝子発現データの解析のために次元削減が実施され得る。従って、本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、1以上の単一細胞次元削減方法(single cell dimensional reduction method)を実施することを含む。単一細胞次元削減方法の例は、t分布型確率的近傍埋め込み(t-Distributed Stochastic Neighbor Embedding)(t-SNE)分析である。t-SNEは、各データポイントにマップ内の2次元又は3次元の位置を与えることにより、高次元データを視覚化する。t-SNEは、例えば、Van der Maaten and Hinton,J.Machine Learning Res.,9:2579-2605(2008)に記載されている。簡単に言うと、t-SNEは2工程で実施される。工程1においては、高次元空間で確率分布が作成され、さまざまな近傍点間の関係が決まる。工程2においては、その確率分布に可能な限り従う低次元空間が作成し直される。t-SNEにおける「t」は、工程2において用いられる分布であるt分布に由来する。「S」及び「N」(「確率論的な」及び「近傍」)は、近傍点間の確率分布の使用に由来する。単一細胞次元削減方法の別の例は、均一マニホールド近似投影(Uniform Manifold Proximation and Projection)(UMAP)である。
【0026】
遺伝子発現プロファイルは、(i)1以上の遺伝子の正の発現、(ii)1以上の遺伝子の負の発現、又は(iii)1以上の遺伝子の負の発現と組み合わせた1以上の遺伝子の正の発現を含み得る。表示された遺伝子の発現に関する用語「正の」(「」と省略される場合がある)は、本明細書で用いられる場合、T細胞が、患者の腫瘍試料中の他のT細胞と比較して、表示された遺伝子の発現をアップレギュレートすることを意味する。アップレギュレートされた発現は、例えば、約0.2、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、又は前述の任意の2つの範囲の値、又はそれ以上の平均対数倍数変化(2を底とする)だけの、表示された遺伝子の発現における量的増加を包含し得る。表示された遺伝子の発現に関する用語「負の」(「-」と省略される場合がある)は、本明細書で用いられる場合、T細胞が、患者の腫瘍試料中の他のT細胞と比較して、表示された遺伝子の発現をダウンレギュレートすることを意味する。ダウンレギュレートされた発現は、例えば、約-0.2、約-0.5、約-1、約-2、約-3、約-4、約-5、約-6、約-7、約-8、約-9、約-10、約-11、約-12、約-13、約-14、約-15、約-16、約-17、約-18、約-19、約-20、約-21、約-22、約-23、約-24、約-25、約-26、約-27、約-28、約-29、約-30、約-31、約-32、約-33、約-34、約-35、又は前述の値の任意の2つの範囲、又はそれ以上の平均対数倍変化(2を底とする)だけの、表示された遺伝子の発現における定量的減少を包含し得る。ダウンレギュレートされた発現は、表示された遺伝子の発現の欠如を包含し得るが、ダウンレギュレーションはまた、患者の腫瘍試料中の他のT細胞と比較して低いレベルではあるが、表示された遺伝子の発現の存在も包含し得る。
【0027】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、(i)CD4及びCD8の一方又は両方並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは、(i)CD4及びCD8の一方又は両方、並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10のうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくはそれ以上(又は前述の値の任意の2つの間の範囲)を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、(i)CD4及びCD8の一方又は両方、並びに(ii)AFAP1IL2、ASB2、CXCL13、HMOX1、ITM2A、KLRB1、PDLIM4、TIGIT、LTB、LYAR、RGCC、及びS100A10の全てを含む。
【0028】
本発明の別の態様においては、遺伝子発現プロファイルは:CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの1以上を含む。遺伝子発現プロファイルは、例えば、(i)CD4及びCXCL13;(ii)CD4、CXCL13、並びにCD39、TIGIT、及びPD-1のうちの1以上;又は(iii)CD4、CXCL13、CD39、TIGIT、及びPD-1を含み得る。遺伝子発現プロファイルは、CD4及びBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36のうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくはそれ以上(又は前述の値の任意の2つの間の範囲)を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD4、並びにBATF、CD247、CXCL13、DNPH1、DUSP4、GYPC、IFITM1、IGFLR1、ITM2A、KLRB1、LIMS1、NMB、NR3C1、SH2D1A、SPOCK2、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、CCL5、CD52、GSTP1、JUN、LGALS1、LTB、LYAR、PLP2、RGCC、S100A10、VIM、及びZFP36の全てを含む。
【0029】
本発明の更に別の態様においては、遺伝子発現プロファイルは:CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの1以上を含む。遺伝子発現プロファイルは、例えば、(i)CD8及びCXCL13;(ii)CD8、TIGIT、並びにCD39及びPD-1の一方若しくは両方;(iii)CD8、TIGIT、CD39、及びPD-1;(iv)CD8、CXCL13、並びにCD39、TIGIT、及びPD-1のうちの1以上;又は(v)CD8、CXCL13、CD39、TIGIT、及びPD-1を含み得る。例えば、遺伝子発現プロファイルは、CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A、及びS100A10のうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、若しくはそれ以上(又は前述の値の任意の2つの間の範囲)を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD8、並びにAFAP1IL2、ALOX5AP、ARHGAP9、ASB2、CARD16、CD3G、CD8A、CD8B、CLIC3、CTSW、CXCL13、CXCR6、GALNT2、GZMB、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMGN3、HMOX1、ITGAE、ITM2A、KLRB1、MPST、NAP1L4、NELL2、NSMCE1、PDLIM4、PTMS、RAB27A、RARRES3、RBPJ、TIGIT、ANXA1、EEF1B2、EMP3、IL7R、LGALS3、LTB、LYAR、RGCC、RPL36A及びS100A10のすべてを含む。
【0030】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LAG3、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLEKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは、ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LAG3、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2のうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又はそれ以上を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、ABI3、AC243960.1、ACP5、ADGRG1、AHI1、ASB2、BST2、CARS、CCL4、CD27、CD2BP2、CD82、CTSW、CXCL13、CXCR6、DUSP4、ENTPD1、GALNT2、GATA3、GPR25、GZMB、HDLBP、HLA-DPA1、HLA-DRB1、HMOX1、ID2、IGFLR1、ITGAL、LAG3、LINC01871、LINC01943、MIS18BP1、MPST、NCF4、NSMCE1、PCED1B、PDCD1、PHPT1、PLKHF1、PRF1、PTMS、SLC1A4、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、TNFRSF18、TOX、TRAF3IP3、及びYPEL2の全てを含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルはLAG3を更に含む。
【0031】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは:ADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2のうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又はそれ以上を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD4、並びにADI1、AHI1、ARID5B、BATF、CMTM7、CPM、CXCL13、CYTH1、ELMO1、ETV7、FABP5、FBLN7、FKBP5、GRAMD1A、HIF1A、IL6ST、ITGA4、ITK、JAK3、KLRB1、LEF1、LIMS1、MAF、MAL、MIR4435-2HG、MYL6B、NAP1L4、NMB、NR3C1、PASK、PGM2L1、PIM2、PPP1CC、SESN3、SH2D1A、SOCS1、STAT1、SYNE2、TBC1D4、TIGIT、TLK1、TMEM123、TMEM70、TNIK、TOX、TSHZ2、UCP2、VOPP1、及びYPEL2の全てを含む。
【0032】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは:AC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48又はそれ以上を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、CD8、並びにAC243829.4、ACP5、APOBEC3C、APOBEC3G、CCL3、CCL4、CCL4L2、CCL5、CD27、CD8A、CD8B、CST7、CTSW、CXCL13、DUSP4、ENTPD1、FABP5、GALNT2、GNLY、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HAVCR2、HCST、HLA-DMA、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DRA、HLA-DRB1、HLA-DRB5、HMOX1、IFNG、IGFLR1、ITGAL、JAML、LINC01871、LYST、MIR155HG、NKG7、PLEKHF1、PRF1、PTMS、RGS1、SLF1、SMC4、SUPT3H、TIGIT、及びTOXのすべてを含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルはLAG3を更に含む。
【0033】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、AHI1、CXCL13、FABP5、NAP1L4、ORMDL3、PPP1R16B、SH2D1A、TIGIT、及びTOXのうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは:AHI1、CXCL13、FABP5、NAP1L4、ORMDL3、PPP1R16B、SH2D1A、TIGIT、及びTOXのうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、AHI1、CXCL13、FABP5、NAP1L4、ORMDL3、PPP1R16B、SH2D1A、TIGIT、及びTOXのすべてを含む。
【0034】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの1以上を含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは:TIGIT、CD39、及びPD-1のうちの任意の1、2、又はそれ以上を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、TIGIT、CD39、及びPD-1のすべてを含む。
【0035】
本発明の更に別の態様においては、遺伝子発現プロファイルは:CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの1以上を含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは、PD-1及びTIM-3の一方又は両方を更に含む。例えば、遺伝子発現プロファイルは:CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのうちの任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくはそれ以上(又は前述の値の任意の2つの間の範囲)を含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは:CD8、並びにCD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L及びIL7Rのすべてを含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは(腫瘍内の他のCD8T細胞と比較して):CD8A低、CD45RA負、CD62L負から非常に低、CCR7負から非常に低、CD16負から非常に低、及びIL7R負から非常に低のうちの1以上を含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルは:CD8、並びに細胞表面タンパク質CD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、TIGIT、CCR7lo、CD8Alo、CD16lo、CD45RAlo、CD62Llo及びIL7Rloのうちの1以上を含む。表示された遺伝子の発現に関して用語「低」(「lo」と省略される場合がある)は、本明細書で用いられる場合、表示された遺伝子の発現に関して正である他の細胞よりも、表示された発現遺伝子に関して、免疫組織化学的方法(例、FACS、フローサイトメトリー、免疫蛍光アッセイ及び顕微鏡法)を用いて明るく染色されない細胞の亜集団を指す。例えば、表示された遺伝子の発現レベルが「低い」細胞は、表示された遺伝子の発現について正である他の細胞の、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、若しくは約95%、又は前述の値の任意の2つの範囲よりも、明るく染色されない場合がある。
【0036】
本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルはTIGITを含む。本発明の別の態様においては、遺伝子発現プロファイルはCXCL13を含む。
【0037】
遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、本明細書に記載の遺伝子発現プロファイルにおける遺伝子(複数可)の発現産物(複数可)の存在若しくは非存在を検出すること、又はその量を測定することを含み得る。これに関して、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルの正に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の存在を検出することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおいて発現について負である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の不存在を検出することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおける発現について負である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の量を測定することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおける発現について正である遺伝子(複数可)によってコードされるタンパク質(複数可)の量を測定することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルの正に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの存在を検出することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおける発現について負である遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの不存在を検出することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルの正に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの量を測定することを含み得る。代替的に又は追加的に、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルの負に発現した遺伝子(複数可)によってコードされるRNAの量を測定することを含み得る。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおける1以上の遺伝子の細胞表面発現の存在及び/又は不存在を検出することを含む。本発明の一態様においては、遺伝子発現プロファイルを有する単離されたT細胞を選択することは、遺伝子発現プロファイルにおける1以上の遺伝子の細胞表面発現の量を測定することを含む。細胞表面発現は、任意の好適な方法、例えばフローサイトメトリー(例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS))によって検出又は測定され得る。
【0038】
本発明の一態様においては、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法は、T細胞の数を増幅することを含まない。T細胞の数の増幅は、例えば、米国特許第8,034,334号;米国特許8,383,099号;米国特許出願公開第2012/0244133号;Dudley et al.,J.Immunother.,26:332-42(2003);及びRiddell et al.,J.Immunol.Methods,128:189-201(1990)に記載されている通り、当該技術分野において公知の多くの方法のいずれかによって達成され得る。例えば、T細胞の数の増幅は、T細胞をOKT3抗体、IL-2、及びフィーダーPBMC(例えば、放射線照射同種異系PBMC)と共に培養することによって実施される。標的抗原に対して所望の特異性を有する希少及び/又は脆弱なT細胞は、T細胞の数の増幅中に失われる可能性がある。本発明の方法は、好都合なことに、本発明の方法を実施することによって、T細胞の数を増幅することなく、かかる希少及び/又は脆弱なT細胞を含む、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製し得る。
【0039】
前記方法は、選択されたT細胞を選択されなかった細胞から分離することを更に含み得、分離された選択されたT細胞は、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を提供する。これに関して、選択された細胞は、選択されなかった細胞、即ち遺伝子発現プロファイルを有さない細胞から物理的に分離され得る。選択された細胞は、例えば、分取等の任意の好適な方法によって選択されなかった細胞から分離され得る。
【0040】
本発明の別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有する、T細胞受容体(TCR)又はその抗原結合部分を単離する方法を提供する。
【0041】
TCRの「抗原結合部分」は、本明細書で用いられる場合、抗原結合部分が、本発明の他の態様に関して本明細書中に記載される通り、標的抗原に特異的に結合するならば、それが一部であるTCRの、連続するアミノ酸を含む任意の部分を指す。用語「抗原結合部分」は、本発明のTCRの任意の一部又は断片(該一部又は断片は、それが一部であるTCR(親TCR)の生物学的活性を保持する)を指す。抗原結合部分は、例えば、標的抗原に特異的に結合する能力、又は状態を検出、治療、若しくは予防する能力を、親TCRと比較して、類似程度、同程度、又はそれを上回る程度保持する、TCRの一部を包含する。親TCRに関して、機能的部分は、例えば、親TCRの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%又はそれ以上を含み得る。
【0042】
抗原結合部分は、本発明のTCRのα鎖及び/又はβ鎖の可変領域(複数可)の相補性決定領域(CDR)1、CDR2、及びCDR3の1以上を含む部分等の、本発明のTCRのα鎖及びβ鎖のいずれか又は両方の抗原結合部分を含み得る。本発明の一態様においては、抗原結合部分は、α鎖のCDR1(CDR1α)、α鎖のCDR2(CDR2α)、α鎖のCDR3(CDR3α)、β鎖のCDR1(CDR1β)、β鎖のCDR2(CDR2β)、β鎖のCDR3(CDR3β)のアミノ酸配列、又はそれらの任意の組合せを含み得る。好ましくは、抗原結合部分は、本発明のTCRのCDR1α、CDR2α、及びCDR3αのアミノ酸配列;CDR1β、CDR2β、及びCDR3βのアミノ酸配列;又は、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、及びCDR3βのすべてのアミノ酸配列を含む。
【0043】
本発明の一態様においては、抗原結合部分は、例えば、上記のCDR領域の組み合わせを含む本発明のTCRの可変領域を含み得る。これに関して、抗原結合部分は、α鎖の可変領域(Vα)のアミノ酸配列、β鎖の可変領域(Vβ)のアミノ酸配列、又は本発明のTCRのVα及びVβの両方のアミノ酸配列を含み得る。
【0044】
本発明の一態様においては、抗原結合部分は、可変領域と定常領域との組み合わせを含み得る。これに関して、抗原結合部分は、本発明のTCRのα鎖若しくはβ鎖の、又はα鎖とβ鎖の両方の全長を含み得る。
【0045】
前記方法は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される本発明の方法のいずれかに従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製することを含み得る。
【0046】
前記方法は、濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること、及び個別の単一T細胞試料の1以上においてTCRα鎖CDR3及びβ鎖CDR3を配列決定することを含み得る。本発明の一態様においては、TCRα鎖CDR3及びβ鎖CDR3の配列決定は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される、遺伝子発現プロファイルを分析するために用いられる単一細胞トランスクリプトーム解析を用いて実施され得る。TCRα鎖CDR3及びβ鎖CDR3を配列決定するための他の技術は、例えば、米国特許出願公開第2020/0056237号及び国際公開第2017/048614号に記載されている。
【0047】
前記方法は、CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすることを更に含み得る。これに関して、前記方法は、CDR3を含むアルファ鎖可変領域とCDR3を含むベータ鎖可変領域とのペアリングが機能的TCRをもたらすように、TCRを再構築することを含み得る。本発明の一態様においては、TCRはインシリコで再構築される。インシリコでTCRを再構築し、CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングする方法は、例えば、米国特許出願公開第2020/0056237号及び国際公開第2017/048614号に記載されている。
【0048】
前記方法は、選択されたT細胞から、TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を単離することを含み得、該TCR又はその抗原結合部分は、標的抗原に対して抗原特異性を有する。
【0049】
前記方法は、ペアリングしたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入すること、並びにペアリングしたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させることを含み得る。単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列(例、組換え発現ベクター)を宿主細胞へ導入することは、例、Green et al.(Eds.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;4th Ed.(2012)に記載される通り、当該技術分野において公知の、種々の異なる方法のいずれかで実施され得る。ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入するのに有用な技術の非限定的な例としては、形質転換、形質導入、トランスフェクション、及びエレクトロポレーションが挙げられる。
【0050】
本発明の一態様においては、前記方法は、TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を、例、Green et al.,上記、に記載の通りの確立された分子クローニング技術を用いて、組換え発現ベクターにクローニングすることを含み得る。組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクションするために用いられ得る。好適なベクターとしては、プラスミド及びウイルス等の、増殖及び増幅のため、若しくは発現又は両方のために設計されたものが挙げられる。ベクターは、トランスポゾン/トランスポザーゼ、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJolla,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)及びpEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)から成る群から選択され得る。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及びλNM1149等のバクテリオファージベクターも用いられ得る。植物の発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物の発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。好ましくは、組換え発現ベクターは、ウイルスベクター(例、レトロウイルスベクター)である。他の態様においては、組換え発現ベクターはレンチウイルスベクター又はトランスポゾンである。
【0051】
宿主細胞(複数可)は、真核細胞、例、植物、動物、真菌、又は藻類であってもよく、原核細胞、例えば、細菌又は原生動物であってもよい。宿主細胞(複数可)は、培養細胞又は初代細胞、即ち、生物、例えばヒトから直接単離された細胞であり得る。宿主細胞(複数可)は、接着細胞又は懸濁細胞、即ち、懸濁液中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は、当該技術分野において公知であり、例えば、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。TCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を増幅又は複製する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、原核細胞、例、DH5α細胞である。組み換え体のTCRを産生する目的のためには、宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は、ヒト細胞である。宿主細胞は、任意の細胞種であり得、任意の種類の組織に由来し得、任意の発生段階であり得るが、宿主細胞は、好ましくは、末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)である。より好ましくは、宿主細胞は、T細胞である。
【0052】
本明細書における目的のために、T細胞は、培養T細胞、例、初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例、Jurkat、SupT1等、又は哺乳動物から得られたT細胞等の任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、又は他の組織若しくは体液を含むがこれらに限定されない多数の供給源から得られ得る。T細胞は、濃縮又は精製もされ得る。好ましくは、T細胞は、ヒトT細胞である。T細胞は、任意の種類のT細胞であり得、任意の発生段階であり得、CD4/CD8二重陽性T細胞、CD4ヘルパーT細胞、例、Th及びTh細胞、CD4T細胞、CD8T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞(例、セントラルメモリT細胞及びエフェクターメモリーT細胞)、ナイーブT細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
前記方法は、標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること、及び標的抗原に対して抗原特異性を有するペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択することを含み得、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離される。抗原特異性について宿主細胞をスクリーニングすること、及び抗原特異性を有するペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択することは、例えば、米国特許出願公開第2017/0218042号及び米国特許出願公開第2017/0224800号に記載の通りの公知技術を用いて実施され得る。本発明の更なる態様は、例えば、単一細胞RNA配列決定及びその後の、インシリコでのTCRの再構築への遺伝子発現プロファイルの適用によって、標的抗原特異的TCRを得る方法を提供し得る。従って、本発明の一態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を単離する方法であって:患者の腫瘍試料からT細胞を単離すること;濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;個別の単一T細胞試料においてTCR CDR3を配列決定すること;遺伝子発現プロファイルを有する分離された単一T細胞試料を選択すること;CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、遺伝子発現プロファイルを有する個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を宿主細胞に発現させること;標的抗原に対する抗原特異性について、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現する宿主細胞をスクリーニングすること;並びに標的抗原に対して抗原特異性を有する、ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を選択することを含み、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分が単離される、方法を提供する。T細胞の単離、T細胞の分取、TCR CDR3の配列決定、個別の単一T細胞試料の選択、アルファ鎖及びベータ鎖の可変領域のペアリング、宿主細胞へのヌクレオチド配列の導入、宿主細胞のスクリーニング、ペアリングされたアルファ鎖及びベータ鎖可変領域の選択、及び遺伝子発現プロファイルは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される遺伝子発現プロファイルのいずれかであり得る。
【0054】
本発明の方法によって単離されたTCR又はその抗原結合部分は、養子細胞療法のための細胞を調製するのに有用であり得る。これに関して、本発明の一態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の集団を調製する方法であって、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りTCR又は抗原結合部分を単離すること、単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列をPBMCに導入して、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞を取得することを含む、方法を提供する。
【0055】
単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列(例、組換え発現ベクター)をPBMCへ導入することは、例、Green et al.上記、に記載の通りの当該技術分野で公知の種々の異なる方法のいずれかで実施され得る。ヌクレオチド配列をPBMCに導入するのに有用な技術の非限定的な例としては、形質転換、形質導入、トランスフェクション、及びエレクトロポレーションが挙げられる。
【0056】
本発明の一態様においては、前記方法は、単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を、患者に対して自己であるPBMCに導入することを含む。これに関して、本発明の方法によって同定及び単離されたTCR又はその抗原結合部分は、各患者に対して個別化され得る。しかしながら、別の態様において、本発明の方法は、再発(「ホットスポット」とも称される)がん特異的変異によってコードされる変異アミノ酸配列に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を同定及び単離し得る。これに関して、前記方法は、単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を、患者に対して同種異系のPBMCに導入することを含み得る。例えば、前記方法は、単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を、腫瘍が同一MHC分子の関連で同一変異を発現する別の患者のPBMCに導入することを含み得る。
【0057】
本発明の一態様においては、PBMCはT細胞を含む。T細胞は、任意の種類のT細胞、例えば、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されるもののいずれかであり得る。特定の理論やメカニズムには縛られないが、分化度の低い「より若い」T細胞は、分化度の高い「より老いた」T細胞と比較して、より高いインビボでの持続活性、増殖活性、及び抗腫瘍活性のいずれか1以上に関連し得ると考えられている。従って、本発明の方法は、好都合なことに、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を同定及び単離し得、該TCR又はその抗原結合部分を、TCR又はその抗原結合部分が単離され得る「より老いた」T細胞(例、患者の腫瘍におけるエフェクター細胞)と比較して、in vivoで、より高い持続活性、増殖活性及び抗腫瘍活性のいずれか1以上を提供し得る「より若い」T細胞に導入し得る。
【0058】
本発明の方法は、例えば、単一細胞トランスクリプトミクスによって、本明細書に記載の遺伝子発現プロファイルを有すると同定されるTCRの1超又はすべてを好都合に収集し、これらすべてのTCRをプールし、及びそれらを臨床T細胞療法製品として組み合わせ得る。これに関して、本発明の別の態様は、標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を調製する方法を提供する。該方法は、:(a)本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;(b)濃縮された集団中のT細胞を個別の単一T細胞試料に分取すること;(c)個別の単一T細胞試料において、TCR相補性決定領域3(CDR3)を配列決定すること;(d)CDR3を含むアルファ鎖可変領域を、個別の単一T細胞試料の核酸によってコードされる、CDR3を含むベータ鎖可変領域とペアリングすること;(e)ペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を末梢血単核細胞(PBMC)に導入し、PBMCにペアリングされたアルファ鎖可変領域及びベータ鎖可変領域を発現させること;及び本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従って調製された、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団の複数の個別の単一T細胞試料に対して、該ヌクレオチド配列の配列決定、ペアリング、及び導入を実施し、それにより標的抗原に対して抗原特異性を有するTCR又はその抗原結合部分を発現する細胞のプールされた集団を提供することを含み得る。該ヌクレオチド配列の分取、配列決定、ペアリング、及び導入は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りに実施され得る。
【0059】
本発明の一態様においては、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の集団を調製する方法は、TCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCの数を増幅することを更に含む。PBMCの数を増幅することは、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通りに実施され得る。本発明の一態様においては、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の集団を調製する方法は、TCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCの数を増幅することを含むが、一方、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製する方法は、T細胞の数を増幅することを含まない。
【0060】
本発明の別の態様は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかによって単離されたTCR又はその抗原結合部分を提供する。本発明の一態様は、TCRのアルファ(α)鎖、TCRのベータ(β)鎖、TCRのガンマ(γ)鎖、TCRのデルタ(δ)鎖、又はそれらの組み合わせ等の、2ポリペプチド(即ち、ポリペプチド鎖)を含むTCRを提供する。本発明の別の態様は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される通り、TCRの、1以上のCDR領域、1以上の可変領域、又はα鎖及びβ鎖の一方若しくは両方を含む、TCRの抗原結合部分を提供する。本発明のTCR又はその抗原結合部分のポリペプチドは、TCR又はその抗原結合部分が、標的抗原に対し抗原特異性を有するならば、任意のアミノ酸配列を含み得る。
【0061】
本発明の別の態様は、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかに従って調製された、単離された細胞の集団を提供する。細胞の集団は、少なくとも1の他の細胞(例、単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現しない宿主細胞(例、PBMC)又はT細胞以外の細胞(例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等)に加えて、単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCを含む不均一集団であり得る。代替的に、細胞の集団は、集団が、単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCを主に含む(例、実質的にそれからなる)、実質的に均一な集団であり得る。集団はまた、集団の全ての細胞が、単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現するように、集団の全ての細胞が、単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現する単一のPBMCのクローンである、細胞のクローン集団であり得る。本発明の一態様においては、細胞の集団は、本明細書に記載の単離されたTCR又はその抗原結合部分を発現するPBMCを含むクローン集団である。PBMCに、単離されたTCR又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド配列を導入することにより、本発明の方法は、好都合なことに、単離されたTCRを発現し、標的抗原に対して抗原特異性を有するPBMC細胞を高い割合で含む、細胞の集団を提供する。本発明の一態様においては、細胞の集団のうちの約1%~約100%、例えば約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、若しくは約100%、又は上記の値のいずれか2つによって規定される範囲が、単離されたTCRを発現し、標的抗原に対して抗原特異性を有するPBMC細胞を含む。特定の理論やメカニズムには縛られないが、単離されたTCRを発現し、標的抗原に対して抗原特異性を有するPBMC細胞を、高い割合で含む細胞の集団では、PBMCの機能(例、PBMCが、標的細胞の破壊を目的とする能力、及び/又は状態を治療若しくは予防する能力)を妨げ得る、不適切な細胞の割合が低いと考えられる。標的細胞としては、例えば、がん細胞又はウイルス感染細胞が挙げられ得る。
【0062】
本発明のTCR、又はその抗原結合部分、及び細胞の集団は、医薬組成物等の組成物へと製剤化され得る。これに関して、本発明は、本発明のTCR、若しくはその抗原結合部分、又は細胞の集団のいずれか及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、本発明のTCR、若しくはその抗原結合部分、又は細胞の集団を、化学療法剤等、別の医薬的に活性な物質(複数可)又は薬剤(複数可)(例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、メトトレキサート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)など)と組み合わせて含み得る。
【0063】
好ましくは、担体は医薬的に許容可能な担体である。医薬組成物に関して、担体は、考慮中の、特定の本発明のTCR、若しくはその抗原結合部分、又は細胞の集団のために従来用いられているもののいずれかであり得る。かかる医薬的に許容可能な担体は、当業者に周知であり、公衆にとって容易に入手可能である。医薬的に許容可能な担体は、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0064】
担体の選択は、特定の本発明のTCR、その抗原結合部分、又は細胞の集団によって、及び本発明のTCR、その抗原結合部分、又は細胞の集団を投与するために用いられる特定の方法によって、ある程度決定される。従って、多様な、本発明の医薬組成物の好適な製剤がある。好適な製剤としては、腫瘍内、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内及び腹腔内投与のための、いずれかの製剤が挙げられ得る。本発明のTCR又は細胞の集団を投与するために、1超の経路が用いられ得、特定の例においては、特定の経路が、別の経路よりも迅速且つ効果的な反応をもたらし得る。
【0065】
好ましくは、本発明のTCR、その抗原結合部分、又は細胞の集団は、注射により静脈内(例)に投与される。本発明の細胞の集団が投与される場合、注射用の細胞のための医薬的に許容可能な担体は、任意の等張性の担体、例えば、通常の生理食塩水(水中約0.90% w/vのNaCl、水中約300mOsm/LのNaCl、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott,Chicago,IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter,Deerfield,IL)、水中約5%のデキストロース、又は乳酸リンゲル液等が挙げられ得る。一態様においては、医薬的に許容可能な担体には、ヒト血清アルブミンが添加される。
【0066】
本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団及び医薬組成物は、状態を治療又は予防する方法において用いられ得ると考えられる。特定の理論やメカニズムには縛られないが、本発明のTCR又はその抗原結合部分は、TCR又はその抗原結合部分が細胞に発現する場合、標的抗原を発現する標的細胞に対する免疫応答を媒介することができるように、標的抗原に特異的に結合すると考えられる。これに関して、本発明は、(i)標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を、本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかに従って調製すること;哺乳動物における状態を治療又は予防するのに有効な量の細胞の集団を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における状態を治療又は予防する方法を提供する。
【0067】
用語「治療する」及び「予防する」並びにそれらの派生語は、本明細書で用いる場合、100%の、又は完全な治療や予防を必ずしも意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療又は予防が存在する。これに関して、本発明の方法は、任意のレベルの任意の量の、哺乳動物における状態の治療又は予防を提供し得る。更に、本発明の方法により提供される治療又は予防は、治療又は予防されている状態の1以上の兆候若しくは症状の治療又は予防を含み得る。例えば、治療又は予防は、腫瘍の退縮を促進することを含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、状態の発症、又はその症状、兆候若しくは再発を遅延させることを包含し得る。
【0068】
本発明の目的のために、投与される本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物の量又は用量(例、本発明の細胞の集団が投与される場合、細胞の数)は、例えば、哺乳動物において、適切な期間にわたって治療的又は予防的反応をもたらすのに十分であるべきである。例えば、本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物の用量は、標的抗原と結合するのに、又は、投与時から約2時間以上、例えば、12~24時間又はそれ以上という期間で状態を検出、治療若しくは予防するのに十分でなければならない。いくつかの態様においては、該期間はもっと長くなり得る。用量は、投与される特定の本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物の有効性、及び動物(例、ヒト)の状態、及び治療される動物(例、ヒト)の体重によって決定される。
【0069】
投与量を決定するための多くのアッセイが、当該技術分野において公知である。本発明の目的のために、それぞれ異なる用量のT細胞を与えられる哺乳動物の1群のうちのある哺乳動物への、ある特定の用量のかかるT細胞の投与の際、標的細胞が溶解される程度、又は、本発明のTCR若しくはその抗原結合部分を発現するT細胞によってIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイが用いられ、哺乳動物に投与される開始用量が決定され得る。一定用量の投与の際の、標的細胞が溶解する程度、又はIFN-γが分泌される程度は、当該技術分野において公知の方法によりアッセイされ得る。
【0070】
本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物の用量はまた、本発明の特定のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は組成物の投与に伴い得る、任意の不都合な副作用の存在、性質及び程度によって決定される。典型的には、主治医は、年齢、体重、身体全体の健康、食事、性別、投与される本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物、投与経路、及び治療される状態の重症度等の種々の要因を考慮して、個々の患者のそれぞれを治療する、本発明のTCR、その抗原結合部分、細胞の集団又は医薬組成物の投与量を決定する。
【0071】
本発明の細胞の集団が投与される態様においては、投与される注入当たりの細胞の数は、例えば、100万~1000億細胞の範囲で変動し得る;しかしながら、この例示的な範囲を下まわるか、又は上まわる量は、本発明の範囲内である。例えば、本発明の宿主細胞の1日用量は、約100万~約1500億細胞(例、約500万細胞、約2500万細胞、約5億細胞、約10億細胞、約50億細胞、約200億細胞、約300億細胞、約400億細胞、約600億細胞、約800億細胞、約1000億細胞、約1200億細胞、約1300億細胞、約1500億細胞又は上記の値のいずれか2つによって規定される範囲)、好ましくは約1000万~約1300億細胞(例、約2000万細胞、約3000万細胞、約4000万細胞、約6000万細胞、約7000万細胞、約8000万細胞、約9000万細胞、約100億細胞、約250億細胞、約500億細胞、約750億細胞、約900億細胞、約1000億細胞、約1100億細胞、約1200億細胞、約1300億細胞又は上記の値のいずれか2つによって規定される範囲)、より好ましくは約1億細胞~約1300億細胞(例、約1億2000万細胞、約2億5000万細胞、約3億5000万細胞、約4億5000万細胞、約6億5000万細胞、約8億細胞、約9億細胞、約30億細胞、約300億細胞、約450億細胞、約500億細胞、約750億細胞、約900億細胞、約1000億細胞、約1100億細胞、約1200億細胞、約1300億細胞(又は上記の値のいずれか2つによって規定される範囲)であり得る。
【0072】
細胞の集団が投与される、本発明の方法の目的のために、細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己の細胞であり得る。好ましくは、細胞は、哺乳動物に対して自己である。
【0073】
本発明の別の態様は、哺乳動物における状態の治療又は予防のための医薬を調製する方法であって、(i)本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかに従って、標的抗原に対して抗原特異性を有するT細胞の濃縮された集団を調製すること;又は(ii)本発明の他の態様に関して本明細書に記載される方法のいずれかに従って、TCR又はその抗原結合部分を発現する細胞の単離された集団を調製することを含む、方法を提供する。
【0074】
本発明の一態様においては、状態はがんである。がんは、好都合には、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、又は肛門直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔又は中耳のがん、口腔のがん、膣のがん、外陰のがん、胆管がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、消化管カルチノイド腫瘍、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、肝臓がん、肺がん(例、非小細胞肺がん)悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、中咽頭がん、卵巣がん、陰茎がん、膵臓がん、腹膜、大網及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、子宮がん、尿管がん、膀胱がん、固形がん、液体がんのいずれかを含む、任意のがんである。好ましくは、がんは上皮がんである。一態様においては、がんは、胆管がん、黒色腫、結腸がん、肺がん、乳がん、又は直腸がんである。
【0075】
本発明の一態様においては、状態はウイルス状態である。本明細書の目的のために、「ウイルス状態」は、ヒトからヒトへ、又は生物から生物へ伝染し得、ウイルスによって引き起こされる状態を意味する。本発明の一態様においては、ウイルス状態は、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス(coronoviruses)、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、フラビウイルス、及びカリシウイルスからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされる。例えば、ウイルス状態は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、HPV、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス、カリシウイルス、アデノウイルス、及びアリーナウイルスからなる群から選択されるウイルスによって引き起こされ得る。本発明の一態様においては、ウイルス状態は、本明細書に記載のウイルスのいずれかによって引き起こされる慢性ウイルス感染症であり得る。ウイルス状態は、例えば、インフルエンザ、肺炎、ヘルペス、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、慢性疲労症候群、突発性急性呼吸器症候群(SARS)、胃腸炎、腸炎、心臓炎、脳炎、細気管支炎、呼吸器乳頭腫症、髄膜炎、HIV/AIDS、HPV感染、及び単核球症であり得る。本発明の一実施形態においては、ウイルス状態は、がん関連ウイルスによって引き起こされるウイルス感染である。
【0076】
本発明の方法において言及される哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。用語「哺乳動物」は、本明細書で用いられる場合、マウス及びハムスター等のネズミ目の哺乳動物、及びウサギ等のウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物が、ネコ科の動物(ネコ)及びイヌ科の動物(イヌ)を含むネコ目由来であることが好ましい。好ましくは、哺乳動物は、ウシ科の動物(ウシ)及びイノシシ科の動物(ブタ)を含むウシ目、又はウマ科の動物(ウマ)を含むウマ目(Perssodactyla)由来である。好ましくは、哺乳動物は、霊長目、セボイド(Ceboids)目若しくはシモイド(Simoids)目(サル)又は、類人(Anthropoids)目(ヒト及び類人猿)である。より好ましい哺乳動物は、ヒトである。特に好ましい態様においては、哺乳動物は、標的抗原を発現する患者である。
【0077】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然、決してその範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0078】
実施例
実施例1~12に記載の実験においては、以下の材料及び方法を用いた。
【0079】
実験のセットアップ/試料の調製
10×ゲノミクス5’単一細胞遺伝子発現プロファイリング及びTCR配列決定(10X Genomics 5’ Single Cell Gene Expression Profiling and TCR sequencing)(10×scTCR)/トランスクリプトーム解析のための試料を、一貫して以下の方法で調製した。単一細胞懸濁液をTIL採取物から作製し、凍結保存した。試料を解凍し、サイトカインを含まないTIL培地で一晩静置した。CD4陽性及び/又はCD8陽性の生細胞を、Sonyセルソーター(MA900又はSH800)を用いて単離し、通常は全部で約30,000T細胞であった。試料を、10×scTCR解析のためにSingle Cell Analysis Core Facility,NIH(SCAF)に提供した。SCAFはバーコード化した遺伝子発現/TCR原データを提供した。転写産物の原データを正規化した。クラスター深度の適切なレベルを決定するために、正規化したデータに対して品質管理(QC)手順を実施した。トランスクリプトームデータに対してT-SNEを実施した。TCRを、トランスクリプトームのt-SNEマップに投影した。
【0080】
CITE-seq解析のために、凍結保存したTILを解凍し、サイトカインを含まないTIL培地中で静置した。翌日、Dead Cell Removal Kit(Miltenyi Biotech,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて死細胞をTILから除去し、EASYSEP Human T Cell Isolation Kit(Stemcell Technologies,Vancouver,Canada)を用いてT細胞を更に精製した。次に、T細胞を、蛍光色素標識抗CD3抗体並びに抗CD4、CD8a、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD27、CD107a、HLA-DR、CD39、CD103、CD69、CD134、CD137、CD244、CD272、CD357、CD279、CD274、CD223、CD366、KLRG1、TIGIT、CD185及びCD278を含むがこれらに限定されないフィーチャーバーコーディング(feature-barcoding)(FBC)抗体で染色した。Sonyセルソーター(MA900又はSH800)を用いてCD3細胞を単離し、約50,000のT細胞を10×単一細胞ライブラリーの作製及びディープシーケンシングのためにSCAFに提供した。配列の原データを10×Cell Rangerにより処理し、トランスクリプトーム、FBC、及びTCR VDJのデータを10×Loupeアプリケーション及びPARTEK FLOWソフトウェアによりマージ及び分析した。
【0081】
実施例1
本実施例は、単一細胞トランスクリプトーム解析を用いて、ヒト直腸がんからネオ抗原反応性TCRを単離する方法を実例で示す。
【0082】
初めて、(変異抗原及びTCR配列の両方について分子的に定義された)自己ネオ抗原特異的T細胞を用いて、ネオ抗原反応性を有するT細胞のマーカーを検索した。これが、結腸がん及び肺がん等の一般的な上皮がん由来のTILを用いて行われたことは特に注目に値する。これは、トランスクリプトームアプローチ及びバーコード抗体技術(CITE-seq)の両方により実施した。新鮮な腫瘍標本の酵素消化によって、単細胞懸濁液を作製した。肝臓転移がんを、直腸がん患者(患者4323)から採取した。この患者に関しては、以前に記載されたTILをスクリーニングするための技術(Parkhurst et al.,CancerDiscov.,9(8):1022-1035(2019))を用いて、4のネオ抗原反応性CD8TCRが以前に同定された。これは合計で腫瘍内のすべてのTILの6.6%になる。フローサイトメトリーを用いて、腫瘍消化物からCD4陽性T細胞及びCD8陽性T細胞を単離した。10x scTCRはSCAFで実施した。トランスクリプトームデータに対してT-SNE実施した。TCRを、トランスクリプトームt-SNEマップに投影した。結果を図1A~1Cに示す。
【0083】
図1Aは、患者4323由来のT細胞のt-SNE分析の結果を示す。図1Aに示すように、得られた単一細胞トランスクリプトームデータのtSNE表現型クラスタリングにより、分取したTIL内に7の異なる表現型クラスターが存在することが示された。(図1A;0~7の番号が付けられたクラスター)。
【0084】
既知のネオ抗原反応性TCRを、図1Aのt-SNEマップ上に投影した。結果を図1Bに示す。図1Bに示すように、既知のネオ抗原反応性TCRをtSNEプロットに重ねると、ほぼすべての反応性TCRが単一のクラスター、即ちクラスター5に局在した。クラスター5は、ネオ抗原反応性TCR(NeoTCR)クラスターと称された。
【0085】
このNeoTCRクラスターは、CD39(ENTPD1)、PD-1(PDCD1)、TIGIT、CD69、LAG3、TIM3(HAVCR2)、CTLA4、及びそれらの組み合わせを含む複数の活性化/阻害マーカーの存在によって示されるように、機能不全のCD8細胞表現型を表した。(図1C)。
【0086】
従って、このNeoTCRクラスター中の他の未試験のTCRもネオ抗原反応性である可能性があるという仮説を立てた。この仮説を試験するために、単一細胞TCR配列決定データを用いて、NeoTCRクラスター中の他の9のTCRを、インシリコで前向きに再構築した。クラスター5内で、195の細胞が、既知のネオ抗原反応性TCRを発現しているか、又はインシリコで再構築できるTCRを有していたかのいずれかだった。
【0087】
TCRをpMSGV1ベクターにクローニングし、健康なドナーPBL中で発現させ、(i)該患者のネオ抗原をコードするTMGとエレクトロポレーションしたか、又は(ii)該患者のネオ抗原コードするペプチドのプールでパルスした、患者4323の樹状細胞(DC)に対する反応性についてスクリーニングした。9の新規な未知のTCRのうち7(77.77%)が、このスクリーニングにおいてネオ抗原反応性であった。
【0088】
全体で、クラスター5中の細胞の97%がネオ抗原反応性であった(図2A)。一部のTCRは、配列決定によって1回しか確認されていないほど希少なものであった。対照的に、(この患者についてのネオ抗原反応性TCRを同定する本研究及び以前の試みから)非反応性クローンは、8のクラスターすべてで特定された(図2B)。
【0089】
実施例2
本実施例は、ネオ抗原反応性が、複数の活性化マーカーについて陽性の細胞集団内で濃縮されることを実証する。
【0090】
実施例1において患者4323から採取したTILを凍結保存した。細胞を解凍し、サイトカインなしで一晩静置した。生CD3細胞を、単一細胞ポリメラーゼ連鎖反応(scPCR)及びPD-1(196ウェルプレート)、CD39(196ウェルプレート)、TIGIT(0.5プレート)、又はLAG3(0.5プレート)発現によるTCR再構築のためにプレートに分取した。マーカーの発現について正である分取した細胞のパーセンテージは次の通りであった:PD-1(63.5%)、CD39(27.0%)、TIGIT(31.1%)、及びLAG3(0.74%)。分取した細胞を、IMMUNOSEQアッセイ(Adaptive Biotechnologies)によって配列決定した。12のネオ抗原反応性TCRはすべて、異なる集団間の頻度について分析できた。
【0091】
FACS分取集団のアダプティブ配列決定(adaptive sequencing)の後ろ向き解析を実施した。表1は、各集団内のネオ抗原反応性TCRのパーセンテージを示す。後ろ向き解析により、複数の活性化マーカーについて、正の細胞集団内の、ネオ抗原反応性の濃縮が示された。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例3
本実施例は、単一細胞トランスクリプトーム解析を用いて、ヒト結腸がんからネオ抗原反応性TCRを単離する方法を実例で示す。
【0094】
結腸がん患者(患者4324)から摘出されている肺転移がんから分取したTILに対して、単一細胞トランスクリプトーム解析及びTCR配列決定を実施した。結果を図3A~3Cに示す。この患者については、以前に3のネオ抗原反応性CD8TCRが同定されていた。これは合計で腫瘍内のすべてのTILの0.98%になる。これら3のTCRは、変異したTP53を認識した。
【0095】
患者4324由来のTILについては、すべての既知のネオ抗原反応性CD8TCRが単一の表現型クラスター(即ち、クラスター6)内に濃縮されただけでなく(図3B)、該クラスターには試料4323において観察されたNeoTCRクラスターと多数のマーカー(即ち、表2に列記したCD8マーカー)も共有されていた。(図3C)。更に、NeoTCRクラスターと同様の表現型を有するCD4TILを含有する更なるクラスター(クラスター4)があった。
【0096】
4324のNeoTCRクラスター由来の4のTCRの再構築により、変異TP53に対する反応性を有するものがもたらされた。4のTCRをCD8CXCL13クラスターから再構築し、変異体TP53(変異をコードするアミノ酸を含有するロングペプチド及びタンデムミニ遺伝子)に対して試験した。1のTCR(つまり、TCR番号5)が陽性であった。
【0097】
CD8細胞由来のTCRががん反応性であるか否かを予測するために、4323及び4324由来のCD8NeoTCRクラスターに共通のマーカーを、単一細胞トランスクリプトームデータに適用できるCD8NeoTCRシグネチャに編集する。CD4NeoTCRシグネチャで同様に試験する。
【0098】
10の新規TCRを、CD8クラスターから前向きに構築した。15の新規TCRを、CD4クラスターから前向きに構築した。これらがネオ抗原反応性であるか否かを試験することが目的である。
【0099】
実施例4
本実施例は、乳がん由来の既知のCD4ネオ抗原反応性TILが、CXCL13発現によって特徴付けられる表現型クラスターに自己集合することを実証する。
【0100】
ネオ抗原反応性TCRシグネチャがCD4TILに当てはまるか否かを試験するために、6のCD4ネオ抗原反応性TCRが公知である乳がん転移試料(患者4322)由来のTILに対して単一細胞トランスクリプトーム配列決定及びTCR配列決定を実施した。結果を図4A~4Cに示す。この試料においては、全TILの2.4%が反応性であることが公知であった(図4A)。
【0101】
公知のCD4NeoAg反応性TCRを発現する細胞は、すべてある特定のクラスター(即ち、クラスター3)(図4Bの四角で囲まれた領域)において見出され、CXCL13を含む、4323及び4324におけるNeoTCRクラスターと同様のマーカー(即ち、表2に列記したCD4マーカー)を発現した(図4C)。
【0102】
実施例5
本実施例は、肺がん由来のCD8ネオ抗原反応性TILが、直腸がん由来のものと共クラスター化することを実証する。
【0103】
TILスクリーニングが反応性TCRを示す、2の外科的に切除された非小細胞肺がん(NSCLC)腫瘍から単離したTILに対して、以前に、単一細胞トランスクリプトーム/TCR配列決定が実施されている(4234及び4237、図5A)。
【0104】
これらのNSCLC試料を用いた4323CD8クラスターの再クラスター化により、3試料からの反応性細胞がすべて同一クラスター中で濃縮されることが示された(図5B)。
【0105】
このNeoTCR含有クラスターは、以前の試料において見られた、NeoTCRと同一の活性化/枯渇/チェックポイントマーカーについて正であり(図5C)、このことにより、CD8NeoTCRシグネチャが、胃腸腫瘍内のTILに限定されず、より広く、浸潤性肺がんのTILに同様に適用できることが示された。
【0106】
実施例6
本実施例は、結腸がん由来の公知のCD4ネオ抗原反応性TILが、CXCL13発現によって特徴付けられる表現型クラスターに自己集合することを実証する。
【0107】
4のCD4ネオ抗原反応性TCRが公知である結腸がん(患者4283)の肺転移由来のTILに対して、単一細胞トランスクリプトーム配列決定及びTCR配列決定を実施した。10×配列決定により、4細胞のうちの3が捕捉された(細胞は合計6のみ)。結果を図7A~7Cに示す。
【0108】
公知のCD4NeoAg反応性TCRを発現する細胞は、すべてCXCL13を発現するある特定のクラスター(即ち、クラスター2)中に見出された(図7B)。
【0109】
実施例7
本実施例は、表2に示されるマーカーを用いて、腫瘍消化物から高い信頼度で腫瘍変異反応性T細胞を同定できることを実証する。
【0110】
4323のNeoTCRクラスターにおいて高度に発現する遺伝子を用いて、「NeoTCRシグネチャ」と称されるネオ抗原反応性TCRについてのトランスクリプトーム遺伝子発現プロファイルを開発した。4323由来のTILにこのシグネチャを単一細胞レベルで適用すると、公知のネオ抗原反応性T細胞と他の細胞を明確に区別することができた(P<2x10-16、Wilcoxon順位和検定)(図6)。従って、NeoTCRシグネチャは、腫瘍由来の単一T細胞をスコア化するために、前向きに用いられ得る。高スコアのNeoTCRシグネチャに基づいて、TCRが合成され得、腫瘍反応性について試験され得る。
【0111】
Pt.4323に由来するNeoTCRシグネチャの第95パーセンタイルを発現する細胞(図6)を他の患者の原型のtSNEプロット上で用いると、NeoTCRシグネチャにより同一細胞クラスター及び同一細胞が高い信頼度で同定されることが示された(図3A~3C-患者(Pt.)4324;図4A~4C-Pt.4322;及び図5A~5C-3の患者試料、即ち患者4323、4237、及び4234))。これらの結果を図8A~8Cにまとめる(8A-患者4324、8B-患者4322、並びに8C-患者4323、4237、及び4234)。
【0112】
【表2-1】
【0113】
【表2-2】
【0114】
従って、表2に示すNeoTCRシグネチャに列記したマーカーを用いて、腫瘍消化物から、高い信頼度で腫瘍変異反応性T細胞を同定できる。表2の第1列には、CD4及びCD8ネオ抗原反応性細胞に共通するマーカーを列記する。表2の第2列には、CD4ネオ抗原反応性細胞に共通するマーカーを列記する。表2の第3列には、CD8ネオ抗原反応性細胞に共通するマーカーを列記する。表2において「(-)」が前に付いているマーカーは、ネオ抗原反応性と負の関連がある。表2において「(-)」が前に付いていないマーカーは、ネオ抗原反応性と正の関連がある。
【0115】
実施例8
本実施例は、CITE-seq(配列決定によるトランスクリプトーム及びエピトープの細胞インデックス化)及び抗体を用いて、ヒト直腸がんからネオ抗原反応性TCRを単離する方法を実例で示す。
【0116】
CITE-seqは、抗体ベースの細胞表面分子検出並びにTCR遺伝子及びトランスクリプトーム解析を提供する単一細胞解析法である。CITE-seqを用いることにより、トランスクリプトーム単独の解析に比べて、より高感度且つ定量的な細胞表面分子発現データを得ることが可能である。例えば、CITE-seqアプローチは、腫瘍試料のRNAの質が損なわれている場合に有用であり得る。
【0117】
CITE-seq解析を、非小細胞肺がん(NSCLC)標本に由来する3の単細胞懸濁液に対して実施した。最初に、CITE-seqベースのtSNEとトランスクリプトームベースのtSNEによって得られたネオ抗原反応性CD8T細胞のクラスタリングを比較した(図9)。図9に示す通り、大抵の場合、抗体ベースのtSNEプロットにより、ネオ抗原反応性T細胞のより良好なクラスタリングが得られた。
【0118】
次に、どの分子がネオ抗原反応性T細胞において特異的に発現するのかを調べた。結果を表3~8及び図10に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
これらの解析により、ネオ抗原反応性CD8+T細胞が、CD27、CD39、CD74、CD103、CD106、CD137、HLA-DR、PD-1、Tim-3、及びTIGIT等の細胞表面分子のうちの1以上を発現することが示された。他の非ネオ抗原反応性CD8細胞と比較して、それらのCCR7、CD8A、CD16、CD45RA、CD62L、及びIL7Rの細胞表面分子発現が低いことも特徴であった(図11)。細胞内分子に関しては、実施例7に記載のNeoTCRシグネチャに含まれる遺伝子に加えて、AFAP1IL2、ASB2、HMOX1、及びPDLIM4等の遺伝子が、ネオ抗原反応性細胞上で発現した。
【0126】
このneoTCRシグネチャが、変異反応性である、これまで未知のTIL及びTCRを同定できるという仮説を試験するために、neoTCRで定義されたクラスター内の高頻度クロノタイプを選択し、それらのTCR遺伝子を合成した。これらの遺伝子を、レトロウイルス形質導入によってPBLに導入し、その後、自己腫瘍の次世代配列決定によって同定されているネオ抗原候補を提示する樹状細胞と共培養した(表9-11)。
【0127】
【表9】
【0128】
患者4234については、調査したこれまで未知の5のTCRクロノタイプのうち、4がネオ抗原反応性であった。驚くべきことに、それらはすべてCD3細胞中に1%未満しか存在せず、PNPLA6の反応性はいかなる従来のTILスクリーニング法でも確認されていなかった。
【0129】
【表10】
【0130】
患者4237については、TCRのF12及びF9が従来のTILスクリーニング法によって同定されたが、クラスター中で1番目及び4番目に順位付けされる高頻度クロノタイプである。neoTCRクラスタリングによって選択した他の未定義の5のTCRクロノタイプのうちの3も、BPNT1ネオ抗原認識することを証明した。合計すると、neoTCRクラスターに存在する最も頻度の高い6のTCRクロノタイプのうち5が、変異BPNT1に特異的に反応性であった。
【0131】
【表11】
【0132】
患者4369については、従来のTILスクリーニングによって最高頻度のクロノタイプが同定された。頻度によって選択した5の更なる未知のクロノタイプのうち、2が変異MLLT4に反応性であった。これら2の新規なMLLT4反応性クロノタイプは、TCR配列決定による総TIL集団の0.1%未満で存在した。これにより、ネオ抗原反応性T細胞の選択における本方法の潜在力が示される。このクラスター内の他の高頻度クロノタイプが、抗原のがん生殖系列ファミリー等、まだ同定されていない他の腫瘍関連抗原を認識する可能性があり得る。
【0133】
実施例9
本実施例は、PD-1/CD39/TIGIT細胞についての選別がネオ抗原反応性CD8細胞を高度に濃縮できることを実証する。
【0134】
2プレートの患者4323由来の細胞を、FACSを用いてCD8、PD-1、CD39、及びTIGITの発現について選別した。細胞を生CD3CD8を使ってゲートした。140の判読可能なTCRベータ鎖配列のうち、123がネオ抗原反応性TCRであることが知られていた(88%)(表12)。
【0135】
【表12】
【0136】
実施例10
本実施例は、CXCL13捕捉が、PD-1/CD39/TIGITと同様の、患者4323由来の公知のネオ抗原反応性CD8細胞の濃縮をもたらすことを実証する。
【0137】
既製のCXCL13捕捉試薬は入手できなかったが、CXCL13は、特異的な刺激/活性化なしでELISAによってインビトロで検出可能であると報告されている。ビオチン化抗CXCL13モノクローナル抗体は、既製のCD45-ストレプトアビジンコンジュゲートに結合した。4323の腫瘍消化物を解凍し、CD45-ストレプトアビジン:CXCL13ビオチン自家製捕捉抗体と共に一晩又は4時間インキュベーションした。次いで、試料を洗浄し、ヤギIgG又は抗CXCL13ヤギ二次抗体のいずれか、及び抗ヤギIgGPE結合検出抗体とインキュベーションした。試料を、セルソーター(Sony MA900)でランした。CD8CXCL13細胞(33)をscPCR TCR配列決定のために分取した。分取した33の細胞のうち、28の判読可能なCDR3ベータ配列が同定された。28の判読可能なTCRベータ鎖配列のうち、85.7%がネオ抗原反応性TCRであることが公知であった(表13)。CXCL13の発現に基づく分取により、ネオ抗原反応性CD4細胞についての理想的な表面マーカーのセットがないという問題が回避され得る。
【0138】
【表13】
【0139】
実施例11
本実施例は、CXCL13発現アッセイがネオ抗原反応性を示す共発現マーカーを同定できることを実証する。
【0140】
患者4397は、転移性肛門がんTIL採取を受けた。腫瘍消化を行った。細胞を直ちにCD45:CXCL13二重特異性抗体で一晩染色した。細胞を、CXCL13並びにPD-1、CD39、及びTIGITについて染色し、生CD3を使ってゲートした。CD4CXCL13細胞は、CD39/TIGIT/PD-1細胞において頻度が最も高かった(表14)。CD8CXCL13は、CD39/TIGIT/PD-1細胞において頻度が最も高かった(表14)。
【0141】
【表14】
【0142】
実施例12
本実施例は、単一細胞解析を用いる、腫瘍からの迅速なネオ抗原TCR単離のためのワークフローを実例で示す。
【0143】
実施例1~11に示すように、一般的な上皮がん(結腸直腸及び肺)由来のクローン的に定義されたT細胞を用いて、腫瘍関連変異抗原(ネオ抗原)を特異的に認識するT細胞のシグネチャを同定した。これは、単一細胞トランスクリプトームベースのアプローチ及びバーコード化された抗体を用いることの両方により行い(CITE-seq)、多次元(tSNE)プロット上の狭く定義された空間内に、かかる細胞をクラスター化できた。
【0144】
このneoTCRシグネチャを用いて、この、公知のネオ抗原反応性T細胞と共クラスター化した、同一表現型を有する他の細胞を調査し、やはり同一腫瘍由来のネオ抗原を認識する、これまで未知のT細胞クローンが非常に高頻度で含有されることを見出した。
【0145】
この技術により、既知のネオ抗原を認識するT細胞のレパートリーが拡大されただけでなく、他の従来のスクリーニング方法によって免疫原性として同定されない新規なネオ抗原に対して特異性を有するT細胞を同定することもできた。
【0146】
本アプローチの高い感度及び特異性、並びにそれが新鮮な腫瘍標本のTILから直接実施されるという特徴によって、それは、変異反応性T細胞を発見する従来の方法とは区別される。
【0147】
反応性TCRの配列を迅速に決定する能力は、治療のためにこの情報をTCR改変T細胞集団に変換する際にも非常に価値がある。実施例1~11において概説した数人の患者から得られたデータを用いて、腫瘍の組織像に関係しない、ヒト腫瘍からの迅速なTCR単離のためにワークフローを設計した。このワークフローを図12に概説する。
【0148】
実施例13
本実施例は、新鮮な腫瘍の切除からのHPV16反応性TCRの前向き単離を実例で示す。
【0149】
患者4397(肛門がん)由来のT細胞を、PD-1、CD39、及びTIGIT共発現によって分取し、TCR配列決定に供した。切除した腫瘍標本がHPV16 E4の発現を示したため、この集団内で見られる上位11のTCRを患者のネオ抗原及びHPV16抗原に対して試験した。表15は、CD39PD1TIGITでの分取集団内の上位11のTCRをまとめたもので、TCR1が強調表示されている。表15の数字は、集団全体内及び濃縮された集団内のパーセンテージを指す。
【0150】
【表15】
【0151】
HPV16由来ペプチドに対する、表15の11TCRのそれぞれのスクリーニングにより、TCR ID1(TCR1)によるHPV16 E4に対する反応性が示された(図13)。TCR1の更なる試験により、HLA-B13:02によって提示されるCD8拘束性HPV16 E4最小エピトープLQSSLHLTA(配列番号1)に対する反応性が示された。
【0152】
実施例14
本実施例は、単一細胞トランスクリプトーム解析を用いてヒトがんからネオ抗原反応性TCRを単離する方法を実例で示す。
【0153】
ネオ抗原反応性T細胞受容体(TCR)を同定するための遺伝子発現プロファイルを、以下のように更に改良した。実施例1に記載の通り、単一細胞トランスクリプトーム解析により、複数の腫瘍種類及び組織像にわたる、13超の患者試料からの45,000超の腫瘍浸潤T細胞を分析した。遺伝子発現プロファイルを、これらの患者T細胞のすべてにおいて検証し、首尾よく整合性がとれた。一般的な遺伝子に加えて、CD4及びCD8についてのネオ抗原反応性T細胞の遺伝子発現プロファイルを表16に示す。
【0154】
【表16-1】
【0155】
【表16-2】
【0156】
【表16-3】
【0157】
NeoTCR遺伝子シグネチャを、盲検化した前向きの患者腫瘍試料における変異反応性T細胞の同定について更に評価した。単一細胞のトランスクリプトーム配列決定及びNeoTCRシグネチャの適用から再構築されたTCRにより、新規のCD4及びCD8 NeoTCRがもたらされた。全体として、本研究により、反応性が確認された12/12の患者の、配列決定されたTILにおいて、腫瘍特異的なNeoTCRの濃縮と検出が首尾よくもたらされた。NeoTCR遺伝子シグネチャは、関係性のないウイルス特異的T細胞とも異なるため、腫瘍と関係性のないT細胞を正確に識別できる。
【0158】
刊行物、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照によって組込まれることが個々に且つ具体的に示されているのと同程度及びその全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照によって本明細書に組込まれる。
【0159】
本発明の説明に関して(特に、以下の特許請求の範囲に関して)、用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に特記しないか文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈すべきである。1以上の事項の列挙の後での用語「少なくとも1」の使用(例えば、「A及びBのうち少なくとも1」)は、本明細書に特記しないか又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列挙した事項から選択された1の事項(A若しくはB)又は列挙した事項のうち2以上の任意の組合せ(A及びB)を意味すると解釈すべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち、「~を含むがそれらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記しない限り、その範囲内に入る各個別の値に個々に言及する省略方法として働くことのみを意図しており、各個別の値は、それが本明細書に個々に記述されているかのように本明細書に組込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施できる。本明細書に提供される任意の及び全ての例又は例示的語句(例、「等(such as)」)の使用は、本発明をよりよく説明することのみを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書の全ての語句は、特許請求されていない任意の要素を本発明の実施に必須のものとして示していると解釈すべきではない。
【0160】
発明を実施するための、発明者が知る最良の形態を含む、本発明の好ましい態様が本明細書に記載される。これらの好ましい態様のバリエーションは、上述の説明を読めば当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がかかるバリエーションを適宜用いることを予期しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法によって許容されるとおり、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載の主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、その全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組合せが、本明細書に特記しないか又は文脈と特に明らかに矛盾しない限り、本発明によって包含される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023526156000001.app
【国際調査報告】