(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】スルホン化ポリスチレン不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4282 20120101AFI20230614BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20230614BHJP
B01J 39/19 20170101ALI20230614BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230614BHJP
【FI】
D04H1/4282
B01J39/05
B01J39/19
D04H1/728
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568370
(86)(22)【出願日】2021-05-03
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 US2021030406
(87)【国際公開番号】W WO2021231114
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519415100
【氏名又は名称】ディディピー スペシャルティ エレクトロニック マテリアルズ ユーエス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】コストゥー、チュンシア
(72)【発明者】
【氏名】ディー、グレゴリー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】オストランダー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フィンチ、ジョン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】オルセン、マシュー
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA18
4L047AB02
4L047AB08
4L047BA08
4L047BA10
4L047CC12
4L047DA00
(57)【要約】
450nm~2000nmの平均直径及び0.05meq/g~2.0meq/gの容量を有するスルホン化ポリスチレン繊維。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
450nm~2000nmの平均直径及び0.05meq/g~2.0meq/gの容量を有する繊維を含むスルホン化ポリスチレン不織布。
【請求項2】
0.4~1.5meq/gの容量を有する、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記繊維は、450nm~1750nmの平均直径を有する、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
ポリスチレン分子の少なくとも90重量%は、架橋を含有する、請求項3に記載の不織布。
【請求項5】
スルホン化ポリスチレン不織布を作製するための方法であって、
a)450nm~2000nmの平均直径を有するポリスチレン不織布繊維を提供する工程と、
b)30℃~150℃の温度で前記ポリスチレン繊維を架橋剤と接触させる工程と、
c)30℃~150℃の温度で工程b)の生成物を少なくとも90重量%の硫酸と接触させる工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記繊維は、450nm~1750nmの平均直径を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程c)は、0.4meq/g~2.0meq/gの容量を有するスルホン化ポリスチレン繊維を作製するのに十分な時間にわたって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋剤は、硫酸及びアルデヒド又はジアルデヒドであり、工程b)は、スルホン化ポリスチレン繊維を作製するのに十分な時間にわたって行われ、前記繊維の少なくとも90重量%は、架橋を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程c)は、0.4meq/g~1.5meq/gの容量を有するスルホン化ポリスチレン繊維を作製するのに十分な時間にわたって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
液体から金属を除去するための方法であって、前記液体を、450nm~2000nmの平均直径及び0.05meq/g~2.0meq/gの容量を有する繊維を含むポリスチレン不織布と接触することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、スルホン化ポリスチレン不織布及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン化によるポリスチレン繊維の機能化が知られている。例えば、Nitanan Todsapon,Tropical Journal of Pharmaceutical Research、2014,13(2),191-197は、放出制御薬物送達に使用するためのポリスチレン繊維のスルホン化を開示している。しかしながら、この参考文献は、金属イオンを除去するための不織マットを形成するのに有用なスルホン化繊維を開示していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、450nm~2000nmの平均直径及び0.05meq/g~2.0meq/gの容量を有するスルホン化ポリスチレン不織布に関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
特に明記されない限り、全ての百分率は、重量百分率(重量%)であり、全ての温度は、℃である。特に明記されない限り、平均は、算術平均である。特に指定のない限り、全ての操作は、室温(18~25℃)で実行される。容量は、最初に酸部位を4.0M NaNO3水溶液で交換し、次いでMettler Toledo T90自動滴定装置を使用して得られた酸性溶液を0.1M NaOHで滴定することによって測定されるか、又はスルホン化反応の物質収支によって計算される。
【0005】
好ましくは、繊維を作製するために使用されるポリスチレンは、高熱結晶性ポリスチレンであり、好ましくは医薬品加工において許容されるポリスチレンである。
【0006】
好ましくは、繊維の平均直径は、少なくとも480nm、好ましくは少なくとも500nm、好ましくは少なくとも520nmであり、好ましくは1750nm以下、好ましくは1500nm以下、好ましくは1200nm以下、好ましくは1000nm以下、好ましくは800nm以下、好ましくは750nm以下、好ましくは700nm以下である。
【0007】
好ましくは、繊維は、ハイブリッド膜技術(HMT)によって作製される。この技術は、例えば、米国特許第7618579号明細書に記載されている。好ましくは、繊維は、非プロトン性溶媒中のポリスチレンの溶液から作製される。好ましい溶媒は、室温でポリスチレンを溶解することができる溶媒であり、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、ジクロロメタン及びトルエンが挙げられる。好ましくは、溶液は、繊維特性を変動させるために、公知の技術によって調整され得る条件下でエレクトロブローによって処理され、不織繊維マットを作製する。好ましくは、溶媒中のポリスチレンの濃度は、15~30重量%、好ましくは18~27重量%である。好ましくは、溶液は、単孔又は多孔のエレクトロブローユニットで処理される。好ましくは、繊維は、回転ドラム上に紡糸される。
【0008】
好ましくは、繊維は、スルホン化前に、ポリスチレンを架橋できる架橋剤で処理される。好ましい架橋剤は、アルデヒド及びジアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒド/硫酸又はグルタルアルデヒド/硫酸、好ましくはホルムアルデヒド/硫酸である。好ましくは、ポリスチレン分子の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも94重量%、好ましくは少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも98重量%が架橋を含有する。架橋されるポリスチレン分子の重量%は、繊維をジクロロエタンに浸し、架橋を含有するポリスチレン分子である不溶性物質を秤量することによって決定され得る。好ましくは、繊維は、20~110℃、好ましくは少なくとも45℃、好ましくは少なくとも55℃、好ましくは100℃以下、好ましくは95℃以下の温度において架橋剤で処理される。時間及び温度の両方を調整して所望の架橋度を得ることができるが、典型的な時間は、好ましくは、30分~6時間、好ましくは1~4時間の範囲である。好ましくは、架橋剤による処理は、上記の条件下で触媒なしに行われる。触媒を使用する場合(例えば、Ag2SO4)、特定の温度で時間がはるかに短くなり、所望の特性が得られるように調整され得る。
【0009】
好ましくは、架橋剤による処理から得られる繊維は、好ましくは、少なくとも80重量%(少なくとも95重量%の水が残る)、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも94重量%のスルホン化剤とそれらを接触させることによってスルホン化される。スルホン化剤は、芳香環をスルホン化できる試薬である。好ましいスルホン化剤としては、硫酸、クロロスルホン酸及び発煙硫酸、好ましくは硫酸が挙げられる。好ましくは、スルホン化は、30~160℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも70℃、好ましくは120℃以下、好ましくは110℃以下の温度で実施される。時間及び温度の両方を調整して所望の容量を得ることができるが、典型的な時間は、好ましくは、30分~6時間、好ましくは1~4時間の範囲である。好ましくは、繊維は、濃硫酸と、0.4meq/g~2.0meq/g又はその中に含まれる任意の所望の範囲の容量を有するスルホン化ポリスチレン繊維を作製するのに十分な時間にわたって接触される。好ましくは、スルホン化は、上記の条件下で触媒なしに行われる。触媒を使用する場合(例えば、Ag2SO4、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物)、所定の温度で時間がはるかに短くなり、所望の特性が得られるように調整され得る。
【0010】
好ましくは、スルホン化不織布の容量は、少なくとも0.2meq/g、好ましくは少なくとも0.4meq/g、好ましくは少なくとも0.45meq/g、好ましくは少なくとも0.50meq/g、好ましくは少なくとも0.55meq/g、好ましくは少なくとも0.60meq/g、好ましくは少なくとも0.65meq/g、好ましくは1.8meq/g以下、好ましくは1.6meq/g以下、好ましくは1.5meq/g以下、好ましくは1.4meq/g以下、好ましくは1.3meq/g以下、好ましくは1.2meq/g以下、好ましくは1.1meq/g以下である。
【実施例】
【0011】
これらの実施例において、「℃」が後に続く数字(例えば、30℃)は、℃の温度であると理解される。
【0012】
繊維の調製:
ポリスチレン(PS)溶液は、Aldrichから入手したPS685 Dグレードのポリスチレンを使用して調製した。溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)であった。濃度が21~25重量%の範囲の溶液を調べた。試料溶液は、単孔のエレクトロブローイングユニットにおいて回転させた。繊維を回転ドラム上に紡糸し、実行後、試料である不織布をドラムから収集した。典型的な試料は、溶液に基づいて0.1重量%の塩を加えた21重量%の溶液から調製した。典型的な基本重量は、60から100gsmに変動した。スピンパックとドラム収集機との間の典型的な距離は、33cmであった。典型的な印加電圧は、100kVであった。典型的な紡糸セルの温度は、30℃であった。典型的な試料の平均流量は、1ミクロンであった。
【0013】
硫酸及びホルマリンによる処理
ナノファイバー膜(平均繊維径1700nm)を、試薬グレードの濃硫酸とホルマリン(37重量%のホルムアルデヒド)との混合物、典型的には90:10の硫酸:ホルマリン(体積/体積)を含む浴に浸す。浴を、典型的には、3時間にわたって70℃に加熱し、オービタルシェーカーにおいて60~120rpmで穏やかに振とうする。次に、浴を50℃未満に冷却し、反応流体をデカントし、膜を50%硫酸でゆっくりと水和し、膜を純粋な脱イオン水まで徐々に希釈する。
【0014】
スルホン化
硫酸/ホルマリンによる処理後のナノファイバー膜を濃硫酸(典型的には96%)に浸し、次いで軌道上で振とうしながら90℃で0~8時間加熱する。次に、浴を50℃未満に冷却し、反応流体をデカントし、膜をゆっくりと50%硫酸で水和し、次いで純粋な脱イオン水まで徐々に希釈する。
【0015】
【0016】
1.上部セルにおける硫酸/ホルマリン処理の条件、下部セルにおけるスルホン化の条件。
2.最後の2行の結果は、圧縮された繊維マットから得られ、典型的には、ここで測定された特性が大幅に低下する。それにもかかわらず、許容可能な特性が達成されたことは、0.49又は更にそれ未満の容量を有するマットが許容されることを示す。
【0017】
PS膜及びAmberTec(商標)UP1400イオン交換樹脂からの金属残留物の洗浄:
47mmのディスクの不織布PS膜(平均繊維径:1718nm、容量:0.67meq/g)、UP1400樹脂(強酸カチオン交換)(d=4cm、h=6cm)
試薬:低い金属レベルの塩酸
体積流量:膜では6.9ml/分、イオン交換樹脂では5ml/分。
【0018】
不織布PS膜の金属含有量は、210分で9.76ppbに減少するが、この時点では、樹脂の金属含有量は、依然として20.26ppbであった。塩酸洗浄後、媒体を少なくともpH>5まで脱イオン水で更にすすぐ。
【0019】
PS膜及びイオン交換樹脂を用いる、スパイクされた溶媒からの金属除去。
Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、K、Na、Sn、Ti及びZnのそれぞれ100ppbを有するスパイクされたプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を、UP1400樹脂を充填した4cm×6cm(D×h)のカラムに通し、47mmのPSディスクを上述のように塩酸及び脱イオン水で洗浄した。体積流量:膜では6.9ml/分、イオン交換樹脂では5ml/分。樹脂ベッドでの滞留時間は、15分であり、PS膜ディスクでの滞留時間は、3.5秒である。最初の樹脂ベッド流出液の総金属含有量は、512.7ppbであり、膜ディスク流出液の総金属含有量は、823.4ppbであった。膜ディスクは、最初の滞留時間の3.5秒で初期金属の96%を除去し、イオン交換樹脂は、最初の滞留時間の15分で初期金属の94%を除去する。
【国際調査報告】