(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】小型化された手術用ロボットユニットの選択された構成要素の方向および視野を生体内で逆にするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230614BHJP
【FI】
A61B34/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568771
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021031747
(87)【国際公開番号】W WO2021231402
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522440603
【氏名又は名称】ヴィカリアス・サージカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バンクス・ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・フィッシュ
(72)【発明者】
【氏名】サミー・カリファ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA12
4C130AA33
4C130AA34
4C130AA37
4C130AA44
4C130AA47
4C130AA54
4C130AB01
4C130AC02
4C130AC05
4C130BA09
(57)【要約】
生体内でロボットユニットを動作させるためのシステムおよび方法。ロボットユニットは、カメラの軸方向に延びるサポート部材に結合されるカメラアセンブリを有するカメラサブアセンブリと、第1のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材に結合される第1のロボットアームを有する第1のロボットアームサブアセンブリと、第2のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材を有する第2のロボットアームサブアセンブリとを含むことができ、ここにおいて、挿入点を介して患者の腔内に挿入されたとき、カメラアセンブリならびに第1および第2のロボットアームは、第1および第2のロボットアームのそれぞれのエンドエフェクタ領域が、挿入点の方向を向いているように、ロボットアームのそれぞれの少なくとも1つの継手を逆方向に作動させ、かつカメラ要素が、挿入点の方向を向いているように、カメラアセンブリを選択された方向に移動させるように制御され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用ロボットシステムであって、
ユーザが生成した動作データを受信し、かつそれに応じて制御信号を生成するためのコンピューティングユニットと、
サポート支柱を有するロボットサポートサブシステムであって、前記サポート支柱は、ベース部分、前記ベース部分に結合される第1の端部および複数の調整要素のうちの近位のものに結合される反対側の第2の端部を有するサポートビームを含み、前記複数の調整要素は、前記複数の調整要素のうちの隣接するものの間で、かつ前記近位の1つの調整要素と前記サポートビームとの間で枢動継手を形成するように構成され、かつ配置される、ロボットサポートサブシステムと、
ロボットサブシステムであって、
モータユニットに関連付けられる1つまたは複数のモータ要素を有するモータユニットであって、前記複数の調整要素のうちの遠位のものに結合されるモータユニット、および
カメラサブアセンブリおよび複数のロボットアームサブアセンブリを有するロボットユニットであって、前記カメラサブアセンブリおよび前記複数のロボットアームサブアセンブリは、前記モータユニットに結合され、また前記モータユニットが作動すると、前記カメラサブアセンブリおよび前記ロボットアームサブアセンブリの一方を、選択された方向に移動させる、ロボットユニット
を有するロボットサブシステムと
を備え、
前記複数の調整要素のうちの1つまたは複数、ならびに前記カメラサブアセンブリおよび前記ロボットアームサブアセンブリのうちの1つまたは複数は、前記制御信号に応じて動作する、手術用ロボットシステム。
【請求項2】
前記カメラサブアセンブリは、
軸方向に延びるサポート部材と、
前記サポート部材の一端に結合されるインターフェース要素と、
前記サポート部材の反対側の端部に結合されるカメラアセンブリと
を備える、請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項3】
前記インターフェース要素は、前記モータユニットの前記モータ要素のうちの1つまたは複数と係合するように構成される、請求項2に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項4】
前記カメラアセンブリは、関連する第1の光源を有する第1のカメラ要素と、関連する第2の光源を有する第2のカメラ要素とを備える、請求項3に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットアームサブアセンブリのそれぞれは、
軸方向に延びるサポート部材と、
前記サポート部材の一端に結合されるインターフェース要素と、
前記サポート部材の反対側の端部に結合されるロボットアームと
を備える、請求項3に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項6】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、また前記ロボットアームサブアセンブリの前記インターフェース要素のそれぞれは、前記モータユニットの前記複数のモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成される、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項7】
前記カメラサブアセンブリの前記インターフェース要素は、前記ロボットアームサブアセンブリのうちの1つの前記インターフェース要素と同じモータ要素に結合される、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項8】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、また前記カメラサブアセンブリの前記インターフェース要素、および前記ロボットアームサブアセンブリのうちの1つのインターフェース要素は、前記複数のモータ要素のうちの異なるものに結合される、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項9】
前記ロボットアームは、エンドエフェクタ領域を有し、また前記カメラアセンブリならびに第1および第2のロボットアームは、挿入点を介して患者の腔内に挿入されるような寸法であり得、かつそのように構成することができ、前記コンピューティングユニットは、前記ユーザが生成した制御信号に応じて、
前記エンドエフェクタ領域が前記挿入点を向くように逆向きにするために、前記第1および第2のロボットアームのそれぞれを作動させ、かつ
カメラ要素が前記挿入点を向くように、前記カメラアセンブリを選択された方向に移動させる
ために、前記第1および第2のロボットアームならびに前記カメラアセンブリにより受信される前記制御信号を生成する、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットアームは、エンドエフェクタ領域を有し、また前記カメラアセンブリならびに第1および第2のロボットアームは、挿入点を介して患者の腔内に挿入されるような寸法であり得、かつそのように構成することができ、前記コンピューティングユニットは、前記ユーザに生成された制御信号に応じて、
前記ロボットアームを、それらが前記サポート部材の軸に対して横断方向、または直交方向である第1の方向を向くように方向付け、かつ
前記第1および第2のロボットアームのそれぞれを、前記エンドエフェクタ領域が、前記第1の方向とは実質的に反対の第2の方向を向くように逆向きに作動させる
ために、前記第1および第2のロボットアームならびに前記カメラアセンブリにより受信される前記制御信号を生成する、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項11】
前記ロボットアームは、エンドエフェクタ領域を有し、また前記カメラアセンブリならびに第1および第2のロボットアームは、挿入点を介して患者の腔内に挿入されるような寸法であり得、かつそのように構成することができ、前記コンピューティングユニットは、前記ユーザに生成された制御信号に応じて、
第1の方向を向くように前記ロボットアームを方向付け、かつ
前記第1および第2のロボットアームのそれぞれを、前記エンドエフェクタ領域が、前記第1の方向とは実質的に反対の第2の方向を向くように逆向きに作動させる
ために、前記第1および第2のロボットアームならびに前記カメラアセンブリにより受信される前記制御信号を生成する、請求項5に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項12】
前記カメラアセンブリを前記挿入点に向けて移動させる前に、前記カメラアセンブリが、カメラサポート部材の上に配置され、また前記カメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が、前記挿入点から離れる方向を向くように、前記カメラサポート部材を回転させることをさらに含む、請求項9に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項13】
前記コンピューティングユニットは、前記ユーザに生成された制御信号に応じて、前記カメラ要素が前記挿入点の方向を向くように前記カメラアセンブリをピッチ方向に回転させるために、前記第1および第2のロボットアームならびに前記カメラアセンブリにより受信される前記制御信号を生成する、請求項12に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項14】
前記コンピューティングユニットは、前記ユーザに生成された制御信号に応じて、前記カメラ要素が前記挿入点の方向を向くように前記カメラアセンブリをヨー方向に回転させるために、前記第1および第2のロボットアームならびに前記カメラアセンブリにより受信される前記制御信号を生成する、請求項12に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項15】
生体内でロボットユニットを動作させる方法であって、前記ロボットユニットは、カメラの軸方向に延びるサポート部材に結合されるカメラアセンブリを有するカメラサブアセンブリと、第1のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材に結合される第1のロボットアームを有する第1のロボットアームサブアセンブリと、第2のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材を有する第2のロボットアームサブアセンブリとを含み、挿入点を介して患者の腔内に挿入された場合に、前記カメラアセンブリならびに前記第1および第2のロボットアームは、
前記第1および第2のロボットアームのそれぞれのエンドエフェクタ領域が前記挿入点の方向を向くように、前記ロボットアームのそれぞれの少なくとも1つの継手を逆方向に作動させるステップと、
カメラ要素が前記挿入点の方向を向くように、前記カメラアセンブリを選択された方向に移動させるステップと
を行うように制御され得る、方法。
【請求項16】
前記ロボットユニットはモータユニットに接続され、前記ロボットユニットまたは前記カメラアセンブリを、挿入部位に対して直線方向に移動させるように前記モータユニットを作動させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、また前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリのインターフェース要素のそれぞれは、前記モータユニットの前記複数のモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、また前記カメラサブアセンブリのインターフェース要素は、前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方の前記インターフェース要素と同じモータ要素に結合される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、また前記カメラサブアセンブリのインターフェース要素、ならびに前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方の前記インターフェース要素は、前記複数のモータ要素のうちの異なるものと結合される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記カメラアセンブリを移動させるステップの前に、前記カメラアセンブリは、カメラサポート部材の上に配置され、かつ前記カメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が前記挿入点から離れる方向を向くように、前記カメラサポート部材を回転させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記カメラアセンブリを移動させる前記ステップは、前記カメラ要素が前記挿入点の方向を向くように、ピッチ方向に前記カメラアセンブリを回転させるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記カメラアセンブリを移動させる前記ステップは、前記カメラ要素が前記挿入点の方向を向くように、ヨー方向に前記カメラアセンブリを回転させるステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記ロボットアームおよびカメラサポートアセンブリを回転させる前に、カメラサポート要素を切開点から離れる軸方向に移動させるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
生体内でロボットユニットを動作させる方法であって、記ロボットユニットは、カメラの軸方向に延びるサポート部材に結合されるカメラアセンブリを有するカメラサブアセンブリと、第1のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材に結合される第1のロボットアームを有する第1のロボットアームサブアセンブリと、軸方向に延びるサポート部材に結合される第2のロボットアームを有する第2のロボットアームサブアセンブリとを含み、挿入点を介して患者の腔内に挿入された場合に、前記カメラアセンブリならびに前記第1および第2のロボットアームは、
前記第1および第2のロボットアームのそれぞれの各エンドエフェクタ領域が、挿入軸に対して直交する方向を向くように、前記第1および第2のロボットアームのそれぞれの少なくとも1つの継手を逆向きにするように作動させるステップと、
カメラ要素が、前記挿入軸に対して直交する方向に向くように、前記カメラアセンブリの少なくとも1つの継手を、選択された方向に前記カメラアセンブリを移動するように作動させるステップと
を行うように制御され得る、方法。
【請求項25】
前記ロボットユニットは、モータユニットに接続され、前記ロボットユニットまたは前記カメラアセンブリを挿入部位に対して移動させるように前記モータユニットを作動させるステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリのインターフェース要素のそれぞれは、前記モータユニットの前記複数のモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、前記カメラサブアセンブリのインターフェース要素は、前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方の前記インターフェース要素と同じモータ要素に結合される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記モータユニットは、複数のモータ要素を含み、前記カメラサブアセンブリのインターフェース要素、および前記第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方の前記インターフェース要素は、前記複数のモータ要素のうちの異なるものと結合される、
請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記カメラアセンブリを移動させるステップの前に、前記カメラアセンブリは、カメラサポート部材の上に配置され、かつ前記カメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が前記逆向き方向から離れる方向を向くように、前記カメラサポート部材を回転させるステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記カメラアセンブリを移動させる前記ステップは、前記カメラ要素が前記逆向き方向を向くように、ピッチ方向に前記カメラアセンブリを回転させるステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記カメラアセンブリを移動させる前記ステップは、前記カメラ要素が前記逆向き方向を向くように、ヨー方向に前記カメラアセンブリを回転させるステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記ロボットアームおよびカメラサポートアセンブリを回転させる前に、カメラサポート要素を切開点から離れる軸方向に移動させるステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年5月11日に出願され、「System And Method For Reversing Orientation And View Of Selected Components Of A Miniaturized Surgical Robotic Unit In Vivo」と題する米国仮特許出願第63/023,034号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に組み込むものとする。
【背景技術】
【0002】
1990年代の早期に開始されて以来、侵襲性の少ない手術分野は、急速に成長している。侵襲性の少ない手術は、患者の利益を大幅に向上させるが、この向上は、正確かつ容易に手術する外科医の能力と引き換えに得られたものである。従来の腹腔鏡手技中に、外科医は、通常、患者の腹壁における複数の小切開を通して、腹腔鏡器具を挿入する。器具は、腹壁に傷をつけずに左右に動くことができないので、腹壁を通るツール挿入の性質上、腹腔鏡器具の動きが制約される。標準的な腹腔鏡器具はまた、動きが制限されており、通常、4つの運動軸に限定される。これらの4つの運動軸は、トロカールに入出する器具の動き(軸1)と、トロカール内における器具の回転(軸2)と、腹腔内へのトロカールが入る枢動点を維持しながら2平面内におけるトロカールの角度的な動き(軸3および軸4)とである。20年間以上、侵襲性の低い手術の大部分は、これらの4つの運動自由度だけを用いて実施されてきた。さらに、従来のシステムは、手術が腹腔内における複数の様々な場所を処置する必要のある場合、複数の切開を必要とする。
【0003】
既存のロボット手術デバイスは、これらの問題の多くを解決しようと試みた。いくつかの既存のロボット手術デバイスは、器具の端部におけるさらなる自由度を用いて、非ロボット的な腹腔鏡手術を再現する。しかし、手術手技に対して多くの費用のかかる変更を用いる場合であっても、既存のロボット手術デバイスは、それらが使用される大部分の手技において、向上させた患者の利益を提供することに失敗している。さらに既存のロボットデバイスは、外科医と手術用エンドエフェクタとの間の遠隔状態(separation)を増加させる。この増加した遠隔状態は、動きに対する外科医の誤解から、またロボットデバイスにより加えられる力から受ける傷害を生ずる。多くの既存のロボットデバイスの自由度は、ヒトの操作者には不慣れなものであり、偶発的な傷害が起きる可能性を最小化するために、外科医は、患者に手術をする前に、ロボットシミュレータにおいて幅広い訓練を行う必要がある。
【0004】
既存のロボットデバイスを制御するために、外科医は、通常、コンソールに座り、自分の手および/または足を用いてマニピュレータを制御する。さらに、ロボットカメラは、半固定の場所に存在し、外科医からの組み合わされた足と手の動きにより動かされる。これらの半固定のカメラは、限られた視野を提供し、手術する範囲を視覚化するのが困難になることが多い。
【0005】
他のロボットデバイスは、単一の切開を通して挿入される2つのロボットマニピュレータを有する。これらのデバイスは、へそ部であることが多い必要な切開の数を単一の切開に低減する。しかし、既存の単一切開のロボットデバイスは、その作動器設計に起因する大幅な欠点を有する。既存の単一切開ロボットデバイスは、生体内(in vivo)ロボット内にサーボモータ、エンコーダ、ギアボックス、およびすべての他の作動デバイスを含み、それは、患者内に挿入される比較的大きなロボットユニットとなる。この大きさは、様々な手技を行うための動きおよび能力の点において、著しくロボットユニットを制限する。さらに、このように大きなロボットは、通常、ほぼ開腹手術の大きさになることも多い、大きな切開部位を通して挿入される必要があり、したがって、感染、痛み、および一般有病状態(general morbidity)になる危険を高める。
【0006】
従来のロボットデバイスのさらなる欠点は、その限定された動きの自由度である。したがって、手術の手技が、複数の異なる場所において手術を必要とする場合、異なる手術場所において、ロボットユニットを挿入することができるように、複数の切開点を作る必要がある。こうすることは、患者が感染する機会を高める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,285,765号
【特許文献2】PCT特許出願第PCT/US20/39203号
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0076199号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、手術用ロボットシステムを対象とし、それは、少なくとも3つの関節自由度を有するカメラアセンブリと、少なくとも6つの関節自由度、および関連するエンドエフェクタ(例えば、把持具、マニピュレータ、および同様のものなど)の動きに対応するさらなる自由度を有する1つまたは複数のロボットアームとを使用する。患者内に取り付けられたとき、カメラアセンブリは、ピッチまたはヨー方向に約180°移動する、または回転することができ、したがって、カメラアセンブリは、挿入部位に向けて後方を見ることができる。したがって、カメラアセンブリおよびロボットアームは、巧みに前方を(例えば、挿入部位から離れて)、各側部を、上方向を、または下方向を見て操作することができ、ならびに後方向を、挿入部位に向けて後方を見ることができる。ロボットアームおよびカメラアセンブリはまた、ロール、ピッチ、およびヨー方向に動くこともできる。
【0009】
本発明はまた、1つまたは複数の調整要素および関連する枢動継手を使用するサポート支柱を含むロボットサポートシステムを対象とする。ロボットサブシステムのモータユニットは、調整要素のうちの最も遠位側のものに取り付けることができる。モータユニットは、例えば、ロボットアームおよびカメラアセンブリを含む、ロボットユニットの1つまたは複数の構成要素を直線的に、または軸方向に動かすために、複数の調整要素および枢動点を使用することができる。
【0010】
本発明は、ユーザに生成された動作データを受信し、かつそれに応じて制御信号を生成するためのコンピューティングユニットと、サポート支柱を有するロボットサポートサブシステムと、ロボットサブシステムとを備える手術用ロボットシステムを対象とする。サポート支柱は、ベース部分と、ベースに結合される第1の端部、および複数の調整要素のうちの近位のものに結合される反対側の第2の端部を有するサポートビームとを含む。調整要素は、調整要素のうちの隣接するものの間で、かつ近位の1つの調整要素とサポートビームとの間で枢動継手を形成するように構成され、かつ配置される。ロボットサブシステムは、それに関連付けられる1つまたは複数のモータ要素を有するモータユニットを含み、ここで、モータユニットは、複数の調整要素のうちの遠位のものに結合され、またロボットユニットは、カメラサブアセンブリおよび複数のロボットアームサブアセンブリを有する。カメラサブアセンブリおよび複数のロボットアームサブアセンブリは、モータユニットに結合され、またモータユニットは、作動されたとき、カメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリの一方を選択された方向に移動させる。さらに、調整要素のうちの1つまたは複数、ならびにカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリのうちの1つまたは複数は、制御信号に応じて動作する。
【0011】
カメラサブアセンブリは、軸方向に延びるサポート部材と、サポート部材の一端に結合されるインターフェース要素と、サポート部材の反対側の端部に結合されるカメラアセンブリとを含む。インターフェース要素は、モータユニットのモータ要素のうちの1つまたは複数と係合するように構成される。さらに、カメラアセンブリは、それに関連付けられた第1の光源を有する第1のカメラ要素と、それに関連付けられた第2の光源を有する第2のカメラ要素とを含む。ロボットアームサブアセンブリは、軸方向に延びるサポート部材と、サポート部材の一端に結合されるインターフェース要素と、サポート部材の反対側の端部に結合されるロボットアームとを含む。さらに、ロボットアームサブアセンブリのインターフェース要素のそれぞれは、モータユニットの複数のモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成される。カメラサブアセンブリのインターフェース要素は、ロボットアームサブアセンブリのうちの1つのインターフェース要素と同じモータ要素に結合され得る。代替的に、カメラサブアセンブリのインターフェース要素、およびロボットアームサブアセンブリのうちの1つのインターフェース要素は、複数のモータ要素のうちの異なるものと結合され得る。
【0012】
さらに、ロボットアームは、エンドエフェクタ領域を含むことができ、またカメラ組立ならびに第1および第2のロボットアームは、挿入点を介して患者の腔内に挿入されるような寸法であり、かつそのように構成することができ、またコンピューティングユニットは、ユーザが生成した制御信号に応じて、制御信号を生成することができ、それは、第1および第2のロボットアームならびにカメラアセンブリによって受信される。制御信号に応じて、第1および第2のロボットアームのそれぞれは、エンドエフェクタ領域が挿入点に向いているように逆方向に作動させることができ、またカメラアセンブリは、カメラ要素が、挿入点を向いているように選択された方向に移動され得る。代替的に、制御信号に応じて、ロボットアームは、それらが、サポート部材の軸に対して横断方向、または直交方向である第1の方向を向くように方向付けられる、または移動することができ、また第1および第2のロボットアームのそれぞれは、エンドエフェクタ領域が、第1の方向とは実質的に反対の第2の方向を向いているように逆方向に作動させることができる。さらにまた、制御信号に応じて、ロボットアームを、それらが第1の方向を向くように方向付けることができ、また第1および第2のロボットアームのそれぞれは、エンドエフェクタ領域が、第1の方向とは実質的に反対の第2の方向を向いているように逆方向に作動させる、または動作させることができる。
【0013】
本発明によれば、カメラアセンブリを挿入点に向けて移動させる前に、カメラサポート部材を、カメラアセンブリがカメラサポート部材の上に配置され、またカメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が挿入点から離れる方向を向いているように回転させることができる。さらにカメラアセンブリを、カメラ要素が挿入点の方向を向いているようにピッチ方向に回転させることができる。代替的に、カメラアセンブリを、カメラ要素が挿入点の方向を向いているように、ヨー方向に回転させることができる。
【0014】
本発明はまた、生体内でロボットユニットを動作させる方法を対象とする。ロボットユニットは、カメラの軸方向に延びるカメラサポート部材に結合されるカメラアセンブリを有するカメラサブアセンブリと、第1のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材に結合される第1のロボットアームを有する第1のロボットアームサブアセンブリと、第2のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材を有する第2のロボットアームサブアセンブリとを含むことができ、ここにおいて、挿入点を介して患者の腔内に挿入されたとき、カメラアセンブリならびに第1および第2のロボットアームは、第1および第2のロボットアームのそれぞれのエンドエフェクタ領域が挿入点の方向を向いているように、ロボットアームのそれぞれの少なくとも1つの継手を逆方向に作動させるように、かつカメラ要素が挿入点の方向を向いているように、カメラアセンブリを選択された方向に移動させるように制御され得る。
【0015】
ロボットユニットは、モータユニットに接続され得、またモータユニットを、ロボットユニットまたはカメラアセンブリを、挿入部位に対して平行移動または直線方向に移動させるように作動させる、または駆動することができる。第1および第2のロボットアームサブアセンブリのインターフェース要素のそれぞれは、モータユニットの複数のモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成され得る。代替的に、カメラサブアセンブリのインターフェース要素は、第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方のインターフェース要素と同じモータ要素に結合され得る。さらに、カメラサブアセンブリのインターフェース要素、ならびに第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方のインターフェース要素は、複数のモータ要素のうちの異なるものに結合され得る。
【0016】
本発明の方法によれば、カメラアセンブリを移動させる前に、カメラアセンブリがカメラサポート部材の上に配置され、かつカメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が、挿入点から離れる方向を向いているように、カメラサポート部材を回転させることができる。カメラアセンブリを移動させるステップは、カメラ要素が挿入点の方向を向いているように、カメラアセンブリをピッチ方向に回転させるステップを含むことができる。代替的に、カメラアセンブリを移動させるステップは、カメラ要素が挿入点の方向を向いているようにカメラアセンブリをヨー方向に回転させるステップを含むことができる。
【0017】
本発明はまた、生体内でロボットユニットを動作させる方法を対象とすることができ、ロボットユニットは、挿入点を介して患者の腔内に挿入されたとき、カメラの軸方向に延びるサポート部材に結合されるカメラアセンブリを有するカメラサブアセンブリと、第1のロボットアームの軸方向に延びるサポート部材に結合される第1のロボットアームを有する第1のロボットアームサブアセンブリと、軸方向に延びるサポート部材に結合される第2のロボットアームを有する第2のロボットアームサブアセンブリとを含む。カメラアセンブリ、ならびに第1および第2のロボットアームは、第1および第2のロボットアームのそれぞれの各エンドエフェクタ領域が、挿入軸に対して直交する方向を向いているように、第1および第2のロボットアームのそれぞれの少なくとも1つの継手を逆方向になるように作動させるように、かつカメラ要素が、挿入軸に対して直交する方向を向いているように、カメラアセンブリの少なくとも1つの継手を、選択された方向にカメラアセンブリを移動するように作動させるように制御され得る。
【0018】
ロボットユニットがモータユニットに接続されたとき、方法は、ロボットユニットまたはカメラアセンブリを、挿入部位に対して移動させるようにモータユニットを作動させるステップを含む。さらに、第1および第2のロボットアームサブアセンブリのインターフェース要素のそれぞれは、モータユニットのモータ要素のうちの異なるものと係合するように構成される。代替的に、カメラサブアセンブリのインターフェース要素は、第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方のインターフェース要素と同じモータ要素に結合される。さらに、カメラサブアセンブリのインターフェース要素、ならびに第1および第2のロボットアームサブアセンブリの一方のインターフェース要素は、複数のモータ要素のうちの異なるものに結合される。
【0019】
方法はまた、カメラアセンブリを移動させる前に、カメラアセンブリがカメラサポート部材の上に配置され、かつカメラアセンブリの1つまたは複数のカメラ要素が、逆向き方向から離れる方向を向いているように、カメラサポート部材を回転させるステップを含む。カメラアセンブリを移動させるステップは、カメラ要素が、逆向き方向を向いているように、ピッチまたはヨー方向にカメラアセンブリを回転させるステップを含む。
【0020】
本発明のこれらの、および他の特徴ならびに利点は、添付図面と併せて以下の詳細な記述を参照することによりさらに十分に理解されよう。図中、同様の参照数字は、様々な図の全体を通して同様の要素を参照する。図面は、本発明の主なものを示しているが、縮尺を合わせておらず、相対的な寸法を示している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の手術用ロボットシステムの概略図である。
【
図2A】本発明の教示によるロボットアームサブアセンブリの斜視図である。
【
図2B】本発明の教示によるカメラサブアセンブリの斜視図である。
【
図3A】本発明の教示による、ロボットサブシステムに結合された手術用ロボットシステムにより使用されるロボットサポートシステムの一部を形成するサポート支柱の斜視側面図である。
【
図3B】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視側面図である。
【
図3C】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視側面図である。
【
図3D】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視側面図である。
【
図3E】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視上面図である。
【
図3F】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視上面図である。
【
図3G】本発明の教示による、モータユニットが複数のモータ要素を使用し、かつモータ要素がカメラサブアセンブリおよびロボットアームサブアセンブリに結合される、ロボットサブシステムのモータユニットに結合されたサポート支柱の斜視上面図である。
【
図4】本発明の教示による、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図5】本発明の教示による、ロボットアームおよびカメラアセンブリが、中立位置に配置された、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図6A】本発明の教示による、ロボットアームが、後方を向く位置に向けて移動することが示されている、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図6B】本発明の教示による、カメラサブアセンブリが、ロール方向に移動することが示されている、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図6C】本発明の教示による、カメラアセンブリが、後方を向いているようにピッチ方向に移動することが示されている、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図6D】本発明の教示による、カメラアセンブリが、後方を向いているように代替的なヨー方向に移動することが示されている、患者の体腔内に配置されたロボットユニットの描画的な斜視図である。
【
図7A】本発明の手術用ロボットシステムのカメラサブアセンブリの代替的な実施形態の斜視図である。
【
図7B】本発明の教示による、関節継手により実施される回転軸を示す
図7Aのカメラアセンブリの部分図である。
【
図8A】本発明のカメラサブアセンブリの別の実施形態の斜視図である。
【
図8B】関節位置に配置された
図8Aのカメラアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、単一の切開点または部位を通すトロカールを介して患者の中に挿入できる手術用ロボットユニットを使用する。ロボットユニットは、手術部位において生体内に展開されるのに十分に小さく、挿入されたとき、多数の異なる点または部位において様々な手術手技を行うために体内で移動できるように十分に操作可能である。具体的には、ロボットユニットを挿入することができ、カメラアセンブリおよびロボットアームは、それらが後ろを向く方向に後方へと方向付けられるように制御され、かつ操作される。さらにロボットサブシステムは、ロボットサポートシステムの一部を形成するサポート支柱に結合されることができる。サポート支柱は、複数の調整または関節セクションを有することができ、それらは、適正に操作され方向付けられた場合、ロボットユニットの1つまたは複数の構成要素に対して直線運動を付与することができる。
【0023】
以下の記述において、開示される主題の十分な理解を提供するために、本発明のシステムおよび方法、ならびにシステムおよび方法が動作し得る環境に関して、数多くの特定の細部が述べられる。しかし、開示される主題は、このような特定の細部なしに実施できること、また当技術分野でよく知られたいくつかの特徴は、開示される主題の複雑さを回避し、かつ明確さを向上させるために詳細には述べられないことは、当業者には明らかであろう。加えて、以下で提供されるいずれの例も、単に例示的なものに過ぎず、限定するものと解釈されるべきではないこと、および他のシステム、装置、および/または方法は、本発明の教示を実施する、または補足するために使用することができ、かつ本発明の範囲に含まれると見なされることが本発明者により企図されることが理解されよう。
【0024】
本発明のシステムおよび方法は、仮想現実手術システムの一部として使用される1つまたは複数の手術用ロボットシステムと共に使用するように設計され得るが、本発明のロボットシステムは、例えば、ロボット手術システム、真っ直ぐなスティック(straight-stick)タイプの手術システム、および腹腔鏡システムを含む任意のタイプの手術システムに関連して使用することができる。さらに、本発明のシステムは、ユーザが、デバイスまたは装置を制御しながら無数の情報にアクセスする必要のある、手術用でない他のシステムにおいて使用することができる。
【0025】
本明細書で開示されるシステムおよび方法は、例えば、特許文献1、および特許文献2において開示されるロボット手術デバイスおよび関連システムを用いて、かつ/または特許文献3で開示されるカメラシステムを用いて組み込まれ、かつ利用することができ、前述の特許、特許出願および公開のすべての内容および教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の一部を形成する手術用ロボットユニットは、ユーザワークステーション、ロボットサブシステム(RSS)と対話し、かつサポートするロボットサポートシステム、モータユニット、ならびに1つまたは複数のロボットアームおよび1つまたは複数のカメラアセンブリを含む植え込み可能な手術用ロボットユニットを含む手術システムの一部とすることができる。植え込み可能なロボットアームおよびカメラアセンブリは、単一のサポート軸ロボットシステムの一部を形成することができる、またはスプリットアーム(SA)アーキテクチャのロボットシステムの一部を形成することができる。
【0026】
図1は、本発明の教示による、手術用ロボットシステム10の概略的なブロック図の説明である。システム10は、ディスプレイデバイスもしくはユニット12、仮想現実(VR)コンピューティングユニット14、感知および追跡ユニット16、コンピューティングユニット18、およびロボットサブシステム20を含む。ディスプレイユニット12は、VRコンピューティングユニット14、コンピューティングユニット18、および/またはロボットサブシステム20により生成される情報、画像、またはビデオを表示するための任意の選択されたタイプのディスプレイとすることができる。ディスプレイユニット12は、例えば、頭部搭載型ディスプレイ(HMD)、スクリーンまたはディスプレイ、三次元(3D)スクリーン、および同様のものの一部を含む、もしくは形成することができる。ディスプレイユニットはまた、市販の頭部搭載型ディスプレイにおいて見出すことのできるものなど、任意選択のセンサおよび追跡ユニット16Aを含むことができる。感知および追跡ユニット16および16Aは、例えば、看護師または外科医などのシステムのユーザに結合される1つまたは複数のセンサまたは検出器を含むことができる。センサを、ユーザの腕に結合することができ、頭部搭載型ディスプレイが使用されない場合、さらなるセンサを、ユーザの頭部および/または首領域に結合することもできる。この構成におけるセンサは、センサおよび追跡ユニット16によって表される。ユーザが頭部搭載型ディスプレイを使用する場合、目、頭部、および/または首のセンサ、ならびに関連する追跡技術は、そのデバイスに組み込まれる、または内部で使用されることができ、したがって、任意選択のセンサおよび追跡ユニット16Aの一部を形成することができる。外科医の腕に結合されるセンサおよび追跡ユニット16のセンサは、例えば、肩領域、肘領域、手首もしくは手の領域、また望ましい場合には指など、腕の選択された領域に結合され得ることが好ましい。1つの実施例によれば、センサは、外科医により操作される1対の手の制御装置に結合される。センサは、ユーザの選択された部分の位置を示す位置データを生成する。感知および追跡ユニット16および/または16Aは、カメラアセンブリ44、およびロボットサブシステム20のロボットアーム42の動きを制御するために利用することができる。センサおよび追跡ユニット16のセンサにより生成された位置データ34を、プロセッサ22により処理するためにコンピューティングユニット18へと伝達することができる。コンピューティングユニット18は、外科医の腕の各部分の位置および/または方向を、位置データ34から決定または計算して、このデータをロボットサブシステム20に伝達することができる。代替的な実施形態によれば、感知および追跡ユニット16は、外科医の胴、または任意の他の体の部分に結合されたセンサを使用することができる。さらに、感知および追跡ユニット16は、センサに加えて、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、および動きプロセッサを有する慣性モーメントユニット(IMU)を使用することができる。磁力計を追加することは当該分野で標準の慣行であり、これは、機首磁方位(magnetic heading)により垂直軸回りのセンサドリフトを低減することができるからである。代替的な実施形態はまた、手袋、手術用ブラシ、または手術用ガウンなどの手術用材料に配置されるセンサを含む。センサは、再使用できる、または使い捨てにすることもできる。さらに、センサは、手術室などの室内の固定された位置になど、ユーザの外部に配置することができる。外部センサは、コンピューティングユニットにより処理され、したがって、システム10により使用され得る外部データ36を生成することができる。別の実施形態によれば、ディスプレイユニット12が、関連するセンサおよび追跡ユニット16Aを使用する頭部搭載型デバイスである場合、デバイスは、VRコンピューティングユニット14により受け取られ、かつ処理される追跡および位置データ34Aを生成する。さらに、センサおよび追跡デバイス16は、望まれる場合、手の制御装置を含むことができる。
【0027】
ディスプレイがHMDである実施形態では、ディスプレイユニット12は、例えば、Oculus Rift、Varjo VR-1、またはHTC Vive Pro Eyeなど、仮想現実の頭部搭載型ディスプレイとすることができる。HMDは、ユーザに、ユーザの頭部に結合される、または搭載されるディスプレイと、ディスプレイの焦点が合わされた視野を可能にするレンズと、ディスプレイの位置および方向追跡を提供するセンサおよび/または追跡システム16Aとを提供することができる。位置および方向センサシステムは、例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、動きプロセッサ、赤外線追跡、視線追跡、コンピュータビジョン、交番する磁界の放出および感知、ならびに位置および方向の少なくとも一方を追跡する任意の他の方法、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。知られているように、HMDは、カメラアセンブリ44からの画像データを、外科医の左右の目に提供することができる。外科医に対する仮想現実体験を維持するために、センサシステムは、外科医の頭部の位置および方向を追跡することができ、次いで、そのデータを、VRコンピューティングユニット14に、望まれる場合はコンピューティングユニット18に中継することができる。コンピューティングユニット18は、ユーザの頭部の動きに追従するために、ロボットのカメラアセンブリ44のパンおよびチルトをさらに調整することができる。
【0028】
例えば、ディスプレイユニット12および/または追跡ユニット16Aに関連付けられるなど、HMDに関連付けられる場合、センサにより生成されるセンサまたは位置データ34Aは、直接的に、またはVRコンピューティングユニット14を介して、コンピューティングユニット18に伝達され得る。同様に、ユーザの腕および手に関連付けることのできる感知および追跡ユニット16からなど、システムにおける他のセンサにより生成された追跡および位置データ34は、コンピューティングユニット18へと伝達され得る。追跡および位置データ34、34Aは、プロセッサ22により処理することができ、かつ例えば、記憶ユニット24に記憶することもできる。追跡および位置データ34、34Aはまた、制御ユニット26によって使用することができ、それは、それに応じて、ロボットサブシステム20の1つまたは複数の部分の動きを制御するために制御信号を生成することができる。ロボットサブシステム20は、ユーザワークステーション、ロボットサポートシステム(RSS)、モータユニット40、ならびに1つまたは複数のロボットアーム42および1つまたは複数のカメラアセンブリ44を含む植え込み可能な手術用ロボットユニットを含むことができる。植え込み可能なロボットアームおよびカメラアセンブリは、特許文献1で開示され、かつ述べられたものなど、単一のサポート軸ロボットシステムの一部を形成することができる、または特許文献2において開示され、かつ述べられたものなど、スプリットアーム(SA)アーキテクチャロボットシステムの一部を形成することができる。
【0029】
制御ユニット26により生成された制御信号は、ロボットサブシステム20のモータユニット40により受信され得る。モータユニット40は、ロボットアーム42およびカメラアセンブリ44を別々に駆動するように構成された一連のサーボモータおよび歯車を含むことができる。ロボットアーム42は、関連するセンサにより感知された外科医の腕の縮小された動きまたは動作に従うように制御され得る。ロボットアーム42は、ユーザの肩、肘、および手首関節ならびに指に関連する動きに関連付けることのできる部分または領域を有することができる。例えば、ロボットの肘継手は、ヒトの肘の位置および方向に従うことができ、またロボットの手首継手は、ヒトの手首の位置および方向に従うことができる。ロボットアーム42はまた、例えば、ユーザが人差し指と親指で共に挟んだときの人差し指など、ユーザの1つまたは複数の指の動きに従うエンドエフェクタにおいて終わることのできるそれに関連付けられた端部領域を有することができる。ロボットのアームがユーザの腕の動きに従う間、ロボットの肩部は、定位置に固定される。一実施形態では、ユーザの胴の位置および方向は、ユーザの腕の位置および方向から減じられる。この減算により、ユーザは、ロボットアームを動かすことなく、自分の胴を移動させることができる。
【0030】
ロボットカメラアセンブリ44は、例えば、手術または手術部位の生のビデオ送りなど、画像データ48を外科医に提供し、ならびに外科医が、カメラアセンブリ44の一部を形成するカメラを作動しかつ制御できるようにするように構成される。カメラアセンブリ44は、好ましくは、1対のカメラ70A、70Bを含み、その光軸は、手術部位の立体的な視野または画像を提供するために、カメラ間距離として知られる選択された距離だけ軸方向に離間される。外科医は、頭部搭載型ディスプレイの動きを介して、もしくは外科医の頭部に結合されたセンサにより、またはユーザの頭部もしくは腕の動きを追跡する手の制御装置もしくはセンサを用いることにより、カメラ70A、70Bの動きを制御することができ、したがって、外科医には、直感的かつ自然に、手術部位の望ましい視野が得られるようにする。カメラは、知られているように、例えば、ヨー、ピッチ、およびロール方向を含む複数の方向に移動可能である。立体的なカメラの構成要素は、自然であり快適に感ずるユーザ体験を提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、カメラの間の軸間距離は、ユーザにより知覚される手術部位の深さに合わせるように修正することができる。
【0031】
一実施形態によれば、カメラアセンブリ44は、外科医の頭部の動きにより作動させることができる。例えば、手術中に、外科医が、現在の視野(FOV)の上に位置する対象物を見たい場合、外科医が上方向を見ると、立体的なカメラは、ユーザの観点からピッチ軸回りで上方に回転するようになる。カメラアセンブリ44により生成される画像またはビデオデータ48は、ディスプレイユニット12上に表示され得る。ディスプレイユニット12が頭部搭載型ディスプレイである場合、ディスプレイは、HMDのヨー、ピッチ、およびロール方向に対する生の方向データ、ならびにHMDのカルテシアン空間(x、y、z)における位置データを取得する組み込まれた追跡およびセンサシステム16Aを含むことができる。しかし、HMDの組み込まれた追跡システムに代えて、またはそれに加えて、ディスプレイの追加の位置および方向追跡データを提供するために、代替的な追跡システムを使用することができる。
【0032】
カメラアセンブリ44により生成された画像データ48は、仮想現実(VR)コンピューティングユニット14に伝達されて、VRまたは画像レンダリングユニット30により処理され得る。画像データ48は、なお写真もしくは画像データ、ならびにビデオデータを含むことができる。VRレンダリングユニット30は、当技術分野で知られているように、画像データを処理するために、また次いで、ディスプレイユニット12により表示するための画像データをレンダリングするために、適切なハードウェアおよびソフトウェアを含むことができる。さらに、VRレンダリングユニット30は、カメラアセンブリ44から受信された画像データを、カメラアセンブリのカメラの位置および方向に関連付けられた情報、ならびに外科医の頭部の位置および方向に関連付けられた情報と組み合わせることができる。この情報を用いて、VRレンダリングユニット30は、出力ビデオまたは画像レンダリング信号を生成し、かつこの信号をディスプレイユニット12に送信することができる。すなわち、VRレンダリングユニット30は、例えば、外科医により装着されたHMDなどにおけるディスプレイユニットにおいて表示するために、外科医の手の制御装置の位置および方向の読取り、ならびにその頭部位置をレンダリングする。
【0033】
VRコンピューティングユニット14はまた、ディスプレイユニット12において表示されるVR世界で使用される、またはそこに据え付けるための1つまたは複数の仮想現実(VR)カメラを生成するための仮想現実(VR)カメラユニット38を含むことができる。VRカメラユニット38は、仮想世界において、1つまたは複数の仮想カメラを生成することができ、またそれを、頭部搭載型ディスプレイ用に画像をレンダリングするためにシステム10によって使用することができる。これは、VRカメラが、頭部搭載型ディスプレイを装着したユーザがキューブマップを見るのと同じ視野を確実に常にレンダリングするようにする。一実施形態では、単一のVRカメラを使用することができ、また別の実施形態では、分離した左眼および右眼VRカメラが使用されて、ディスプレイにおける分離した左眼および右眼キューブマップに対してレンダリングを行い、立体視を提供することができる。VRカメラのFOV設定は、カメラアセンブリ44により出されたFOVに対してそれ自体で自己設定することができる。ライブカメラ視野、または画像データに対する前後関係の背景を提供するのに加えて、仮想の対象物に対して動的な反映を生成するために、キューブマップを使用することができる。この結果、仮想対象物上の反射面が、キューブマップからの反映を取得できるようにし、これらの対象物が、現実世界の環境を実際に反映しているかのようにユーザに見えるようにする。
【0034】
ロボットサブシステム20は、異なる、または分離した軸に沿って展開可能な複数の異なるロボットアーム42A、42Bを使用することができる。さらに、複数の異なるカメラ要素70A、70Bを使用できるカメラアセンブリ44はまた、共通の分離した軸に沿って展開することができる。したがって、手術用ロボットユニットは、異なる軸に沿って展開可能な、1対の別々のロボットアームおよびカメラアセンブリ44など、複数の異なる構成要素を使用する。さらに、ロボットアーム42およびカメラアセンブリ44は、別々に操作可能であり、操縦可能であり、かつ移動可能である。ロボットアームおよびカメラアセンブリを含むロボットサブシステム20は、別々の操作可能な軸に沿って配置することができ、かつ本明細書では、スプリットアーム(SA)アーキテクチャと呼ばれる。SAアーキテクチャは、単一の挿入点もしくは部位において、単一のトロカールを介してロボット手術器具の挿入を簡単化し、かつ効率を高めるように設計されるが、付随して、手術器具の、手術の準備ができた状態への展開、ならびにトロカールを介する手術器具のその後の取外しを支援する。例として、手術器具は、患者の体腔内にアクセスし、かつ生体内手術を実施するために、トロカールを介して挿入され得る。いくつかの実施形態では、これだけに限らないが、ロボット手術器具、ならびに当技術分野で知られた他の手術器具を含む様々な手術器具を利用することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明のロボットサブシステム20は、ロボットアーム42A、42Bおよびカメラアセンブリ44(例えば、ロボットユニット50)が、単一の位置、または複数の異なる位置へと患者内で操作され得るように、多数の自由度を有する構造によりサポートされる。いくつかの実施形態では、ロボットサブシステム20は、手術台に、または手術室内の床もしくは天井に、または任意の他のタイプのサポート構造に直接取り付けることができる。他の実施形態では、取付けは、これだけに限らないが、クランプ、ねじ、またはそれらの組合せを含む様々な締結手段により達成される。さらに他の実施形態では、サポート構造は、自立型とすることができる。サポート構造は、本明細書において、ロボットサポートシステム(RSS)と称される。RSSは、外科医が、患者内で、仮想的な手術を実施できる仮想ステーションを含むことのできる全体的な手術用ロボットシステム10の一部を形成することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、手術用ロボットシステム10のRSSは、任意選択で、一端において、ロボットユニット50に結合され、反対側の端部において調整可能なサポート部材もしくは要素に結合されたモータユニット40を含むことができる。代替的に、本明細書で示されるように、モータユニット40は、ロボットサブシステム20の一部を形成することができる。モータユニット40は、ロボットユニット50の1つまたは複数の構成要素に動力を与え、かつ駆動するために、歯車、1つまたは複数のモータ、ドライブトレーン、電子装置、および同様のものを含むことができる。ロボットユニット50は、モータユニット40に選択的に結合され得る。一実施形態によれば、RSSは、その遠位端に結合されたモータユニット40を有するサポート部材を含むことができる。モータユニット40は、次いで、カメラアセンブリ44、およびロボットアーム42のそれぞれに結合され得る。サポート部材は、ロボットユニット50の1つまたは複数の構成要素を、直線的に、または任意の他の選択された方向もしくは向きへと移動させるように構成され、かつ制御され得る。
【0037】
モータユニット40はまた、ロボットユニット50に対して、機械的な動力、電力、機械的な伝達、電気通信を提供することができ、1つまたは複数のシステム構成要素(例えば、ディスプレイ12、感知および追跡ユニット16、ロボットアーム42、カメラアセンブリ44、および同様のものなど)からの入力データを処理し、かつそれに応じて制御信号を生成するための任意選択の制御装置をさらに含むことができる。モータユニット40はまた、データを記憶するための記憶要素を含むことができる。代替的に、モータユニット40は、コンピューティングユニット18により制御され得る。モータユニット40はしたがって、1つまたは複数のモータを制御するための信号を生成することができ、この信によって、次いで、例えば、各アームの各関節継手の位置および方向を含むロボットアーム42、ならびにカメラアセンブリ44を制御し、駆動することができる。モータユニット40は、トロカール108など、適切な医療デバイスを介してロボットユニット50の各構成要素を挿入し、取り外すためにまず利用される平行移動または直線的な自由度をさらに提供することができる。モータユニット40はまた、トロカール108を介して患者100の中に挿入されたとき、各ロボットアーム42の挿入深さを調整するために使用することができる。
【0038】
図2Aおよび
図2Bは、本発明のロボットサブシステム20の選択された構成要素の全体的な設計を示す。例えば、
図2Aは、本発明のロボットアームサブアセンブリ56を示す。示されたロボットアームサブアセンブリ56は、近位端に結合されたインターフェース要素54と、反対側の遠位端に結合されたロボットアーム42Aとを有する軸方向に延びるサポート部材52を含む。サポート部材52は、それに取り付けられたとき、ロボットアーム42Aをサポートするように働き、また、機械的な動力、電力、および通信のための導管としてさらに機能することができる。簡単にするために、第1のロボットアーム42Aだけが示されているが、第2のロボットアーム42B、またはその後に続くアームも同様、もしくは同一であり得る。インターフェース要素54は、モータ要素40からの駆動力および任意の関連する信号を、サポート要素52を介してロボットアーム42Aに移送するために、モータユニット40に接続されるように構成される。インターフェース要素は、任意の選択された形状および寸法を有することができ、好ましくは、モータユニット40のモータ要素の駆動端と係合するように構成される。一実施形態では、インターフェース要素54、76は、一連の電気的な接点、およびそれぞれが回転軸を有するプーリなどの一連の機械的な連結デバイスを使用することができる。別の実施形態では、機械的なプーリは、それぞれ、インターフェース要素の表面から突き出た雄のスプラインを含むことができる。各雄のスプラインは、駆動要素上に位置する雌のスプラインと嵌合し、したがって、トルクの形態の機械的な動力の伝達を提供するように構成される。さらに別の実施形態では、プーリは、駆動要素上に位置する1つまたは複数の雄のスプラインと係合する1つまたは複数の雌のスプラインを使用することができる。さらに他の実施形態では、駆動要素からの機械的な動力は、当技術分野で知られているように他の嵌合タイプの表面によりインターフェース要素へと移送され得る。さらに、示されたロボットアーム42Aは、ヒトの腕の関節に相当する継手セクションを形成する一連の関節セクション58を含むことができる。したがって、関節セクション58は、例えば、肩関節もしくは領域、肘関節もしくは領域、および手首関節もしくは領域など、ヒトの腕の様々な部分を模倣するために、回転および/またはヒンジをなす動作を提供するように構成され、かつ組み合わされ得る。ロボットアーム42Aの関節セクション58は、例えば、ケーブル駆動される回転運動を提供するように構成されるが、それは、合理的な回転限界の範囲に限られる。関節セクション58は、最小の寸法を用いて最大のトルクおよび速度を提供するように構成される。代替的な実施形態では、関節セクション58は、球形の継手を含むことができ、したがって、単一の継手において、2つまたは3つなど、複数の回転自由度を提供する。
【0039】
一実施形態では、各関節セクション58は、開始点に対して、隣接する関節セクションに直交するように方向付けることができる。さらに、各関節セクション58は、ケーブル駆動することができ、また継手位置の追跡を行うために、それと関連付けられたホール効果センサアレイを有することができる。別の実施形態では、関節セクションは、その内部に一体化されて継手位置の追跡または推定を提供する、米国Polhemus社により提供されるものなど、慣性測定ユニット、または磁気追跡ソリューションを含むことができる。さらに、センサのための通信ワイヤ、ならびに機械的な駆動ケーブルが、サポート部材52の内側チャンバを介して近位方向に、近位のインターフェース要素54へと経路を定めることができる。ロボットアーム42Aはまた、当技術分野で知られているように、1つまたは複数の手術用ツールをそれに結合させることのできる端部62を含むことができる。一実施形態によれば、エンドエフェクタまたは把持具64が、端部62に結合され得る。エンドエフェクタは、外科医の指のうちの1つまたは複数の動作を模倣することができる。
【0040】
図2Bは、本発明のカメラサブアセンブリ78を示す。示されたカメラアセンブリは、近位端に結合されたインターフェース要素76と、反対側の遠位端に結合されたカメラアセンブリ44と有する軸方向に延びるサポート部材74を含むことができる。示されたカメラアセンブリ44は、1対のカメラ要素70A、70Bを含むことができる。カメラアセンブリは、サポート部材に対してヨーおよびピッチ方向にカメラアセンブリを移動できるような方法で、サポート部材74に接続、または結合され得る。カメラ要素は、図示のように互いに対して分離され、別個のものであり得、かつ共通のハウジングに取り付けることができる。カメラ要素70A、70Bのそれぞれは、それに関連付けられた光源72A、72Bをそれぞれ有することができる。光源は、カメラ要素に対して任意の選択された位置に配置することができる。サポート部材74は、それに取り付けられたとき、カメラアセンブリ44をサポートするように働き、機械的な動力、電力、および通信のための導管としてさらに機能することができる。インターフェース要素76は、モータユニット40からの駆動力および任意の関連する信号を、サポート要素52を介してカメラアセンブリ44に移送するために、モータユニット40に接続されるように構成される。
【0041】
本発明のカメラサブアセンブリの代替的な実施形態が、
図7Aおよび
図7Bで示される。示されたカメラサブアセンブリ78Aは、近位端に結合されたインターフェース要素76Aと、反対側の遠位端に結合されたカメラアセンブリ44とを有する軸方向に延びるサポート部材74Aを含むことができる。示されたカメラアセンブリ44は、1対のカメラ要素82A、82Bを含むことができる。カメラアセンブリ44は、サポート部材に対するカメラアセンブリの動作を可能にするような方法で、サポート部材74Aに接続、または結合され得る。カメラ要素82A、82Bは、図示のように互いに対して分離され、別個のものであり得、または共通のハウジングに取り付けることができる。カメラ要素のそれぞれは、それに関連付けられた光源84A、84Bをそれぞれ有することができる。光源84A、84Bは、カメラ要素に対して任意の選択された位置に配置することができる。サポート部材74Aは、それに取り付けられたとき、カメラアセンブリ44をサポートするように働き、機械的な動力、電力、および通信のための導管としてさらに機能することができる。インターフェース要素76Aは、モータユニット40からの駆動力および任意の関連する信号を、サポート要素52を介してカメラアセンブリ44に移送するために、モータユニット40に接続されるように構成される。示されたサポート部材74Aはまた、例えば、3つの自由度を含む複数の自由度で、サポート部材74Aに対してカメラアセンブリ44の動作を可能にする1つまたは複数の関節継手86を含むことができる。カメラアセンブリ44の複数の自由度は、関節継手86により実施することができる。複数の自由度は、例えば、
図7Bで示されるように、ロール軸88A、ヨー軸88B、およびピッチ軸88C回りの動作を含むことができる。
【0042】
関節継手86は、例えば、一連の連続するヒンジ継手を含むことができ、そのそれぞれは、隣接する、または前の継手に対して直交し、またカメラアセンブリ44は、最も遠位の関節継手86に結合することができる。この構成は、体腔の比較的大きな部分を見るために、カメラアセンブリ44を再配置し、かつ角度を付けることができるように関節継手86を作動させることのできる、本質的に蛇状のカメラサブアセンブリを形成する。さらに自由度の1つは、回転の自由度を含むことができ、その軸は、サポート部材74Aの長手方向軸に平行である。このさらなる回転軸はまた、他の軸に対して直交しており、カメラサブアセンブリに対して増加した操作性を提供することができる。さらに、カメラサブアセンブリの操作性および位置決め能力は、3より多い自由度を追加することにより向上させることができる。いくつかの実施形態では、示されたカメラサブアセンブリ78Aは、一連の球形の、またはボール状の継手を含むことができ、それぞれは、個々に2つまたは3つの自由度を可能にする。ボール継手は、より小型のパッケージで、同様の自由度を可能にすることができる。
【0043】
カメラサブアセンブリのさらに別の実施形態が
図8Aおよび
図8Bで示される。示されたカメラサブアセンブリ78Bは、近位端に結合されたインターフェース要素76Bと、反対側の遠位端に結合されたカメラアセンブリ44とを有する軸方向に延びるサポート部材74Bを含むことができる。示されたカメラアセンブリ44は、異なって構成することができ、また例えば、1対のカメラ要素を有する撮像ユニット130と、1つまたは複数の光源を含む光ユニット132とを含む積み重ねられたアセンブリを含むことができる。カメラアセンブリ44は、サポート部材に対してカメラアセンブリの動作を可能にするような方法で、サポート部材74Bに接続する、または結合することができる。サポート部材74Bは、それに取り付けられたとき、カメラアセンブリ44をサポートするように働き、また機械的な動力、電力、および通信を行うための導管としてさらに機能することができる。インターフェース要素76Bは、モータユニット40からの駆動力および任意の関連する信号を、サポート要素52を介してカメラアセンブリ44に移送するためにモータユニット40に接続するように構成される。示されたサポート部材74Bはまた、例えば、3つの自由度を含む複数の自由度で、サポート部材74Aに対してカメラアセンブリ44の動きを可能にする1つまたは複数の関節継手134を含むことができる。カメラアセンブリ44の複数の自由度は、関節継手134によって実施することができる。カメラアセンブリ44は、カメラサブアセンブリ78Aと同様に、関節継手を用いて動くことができる。
図8Bは、曲げられた関節位置に配置されたカメラアセンブリの遠位端を示す。
【0044】
ロボットアームサブアセンブリ56、56およびカメラサブアセンブリ78は、動作の複数の自由度が可能である。一実施例によれば、ロボットアームサブアセンブリ56、56およびカメラサブアセンブリ78が、トロカールを介して患者の中に挿入されたとき、そのサブアセンブリは、少なくとも軸、ヨー、ピッチ、およびロール方向に動くことができる。ロボットアームサブアセンブリ56、56は、任意選択のエンドエフェクタ64がその遠位端に取り付けられた状態で、動きの複数の自由度を組み込み、かつ利用するように構成される。他の実施形態では、ロボットアームサブアセンブリ56、56の作業端部または遠位端は、他のロボット手術器具を組み込み、かつ利用するように設計される。
【0045】
図3Aから
図3Gで示されるように、モータユニット40は、ロボットサポートシステム(RSS)の一部を形成するサポート支柱90に結合することができ、それは、次いで、本発明の手術用ロボットシステム10の一部を形成する。RSSは、任意の動作をトロカール108回りで、またはそれに対して行えるように、患者の体腔の外部に位置するモータ要素を機械的に動作させるように構成される。RSSは、したがって、ヨー、ピッチ、およびいくつかの実施形態では、トロカール回りのロール方向の動きを提供し、手術中に、患者に危害を加えることなく、ロボットアームサブアセンブリに、かつカメラサブアセンブリにこれらの自由度を提供する、または伝えることができる。この種の動作はまた、複数の要素のロボット的協調により提供され得る、またはロボットアームの継手の関節のモードにより行うことができる。示されたサポート支柱90は、任意の選択された形状および寸法を有することができ、また好ましくは、ロボットサブシステム20のロボットユニット50部分の1つまたは複数の構成要素を動かし、かつ操作できるように構成される。サポート支柱90は、ベース要素92を有する主体と、それに結合された垂直に延びるサポートビーム94とを有することができる。サポートビーム94は、それに結合される1組の調整要素96に対して機械的サポートを提供するために使用され得る。調整要素96は、枢動継手により互いに対して枢動可能に移動可能であり得る。サポート支柱90が、1つまたは複数の調整要素を、好ましくは、2つ以上の調整要素を、また最も好ましくは、3つ以上の調整要素を使用できることは、当業者であれば容易に理解されよう。示された実施形態では、調整要素96は、第1の、または近位の枢動継手98Aを介して、サポートビーム94に枢動可能に結合される第1の調整要素96Aを含むことができる。枢動継手は、サポートビーム94に対して、第1の調整要素96Aの動きを枢動させることのできる機械的要素の知られた集合体を使用することができる。サポート支柱90はまた、第2の、または中間の枢動継手98Bにより第1の調整要素96Aに結合される第2の、または中間の調整要素96Bを使用することができる。第2の枢動継手98Bは、第1の調整要素96Aに対して、第2の調整要素96Bの動きを枢動させることができる。サポート支柱90はまた、第3の、または遠位の枢動継手98Cにより第2の調整要素96Bに結合される第3の、または遠位の調整要素96Cを使用する。第3の枢動継手98Cは、第2の調整要素96Bに対して、第3の調整要素96Cの動作を枢動させることができる。
【0046】
第3の、または遠位の調整要素96Cはまた、モータユニットを平行移動させる、または直線的に動かすために、任意の選択された機械的な接続を介して、モータユニット40に結合することができる。モータユニット40は、ロボットサブシステム20の1つまたは複数の構成要素を駆動するために、具体的には、ロボットアームサブアセンブリ56およびカメラサブアセンブリ78を駆動するために、1つまたは複数の駆動要素、またはモータ要素40A~40Cを使用することができる。具体的には、サポート支柱90は、少なくとも2つの自由度で、またより典型的には、5つまたは6つの自由度で、モータユニット40の1つまたは複数のモータ要素を動かし、調整するように構成することができる。一実施形態では、モータユニット40は、モータ40A~40Cの位置を、したがって、モータに結合されるロボットユニットの1つまたは複数の構成要素の位置を調整するために、調整要素96Cに取り付けられ得る。モータの直線的な、または平行移動位置は、枢動継手98A~98Cを介して互いに対して、調整要素96A~96Cのうちの1つまたは複数の協調する動きによって調整され得る。さらに、モータ要素はまた、摺動させる平行移動動作により、第3の調整要素96Cに対して平行移動され得る。この平行移動の動きは、トロカールに対して各モータ要素の深さを互いに独立して制御することを可能にする。一実施形態では、第3の調整要素96Cと、モータ要素のそれぞれとの間に、トロカールに対して、各モータ要素を平行移動で制御することのできる典型的に直線的なレールの形態の直線の自由度が存在する。直線的なレールは、モータユニット40の異なるモータ要素間に存在することができる。例えば、第3の調整要素96Cをカメラモータ要素に接続する直線的なレールが存在することができ、そのカメラモータ要素の上に、それぞれが第1および第2のロボットアームモータ要素にそれぞれ接続する第2および第3の直線的なレールが存在する。
【0047】
さらに、モータ40A~40Cの位置は、患者に対して軸方向に調整することができる、もしくは弧状に移動することができる、または垂直方向に移動することができる。一実施形態では、複数のモータ40A~40Cを、同時にモータの位置を、したがって、例えば、
図3C、および
図3Eから
図3Gで見られるように、モータに結合されるロボットユニットの1つまたは複数の構成要素の位置を調整するために、同じ調整要素96Cに取り付けることができる。他の実施形態では、モータのそれぞれは、各モータの独立した調整を提供するために、別個の調整可能なサポート要素に取り付けられる。さらに他の実施形態では、2つ以上のモータを、共通のサポート要素上に、また残りのモータを別々のサポート要素上に取り付けることができる。
【0048】
示されたサポート支柱90は、任意の必要な機械的かつ電気的なケーブルおよび接続を担持するように構成することができる。サポート支柱90は、制御信号をそこから受信するために、コンピューティングユニット18に結合、または通信状態に配置され得る。モータユニット40は、1つまたは複数のモータ40A~40Cに結合することができ、またモータユニットは、インターフェース要素54、76を介して、カメラおよびロボットアームサブアセンブリを平行移動する、または軸方向に移動することができる。調整要素96Cは、適切な寸法のモータユニット40を取り付けるような寸法であり得、およびそのように構成することができる。
【0049】
手術中の使用時に、外科医などのユーザは、RSSを手術室に設定することができ、RSSが手術に適した位置に配置されるように、かつサポート支柱90および関連するモータユニット40が、ロボットユニット50に結合される準備がされるように位置決めする。より具体的には、モータユニット40のモータ要素40A~40Cは、カメラサブアセンブリ78に、またロボットアームサブアセンブリ56、56のそれぞれに結合することができる。
図3Aから
図3G、および
図4で示されるように、患者100は、手術室へと運ばれて、手術台102上に置かれ、手術に対して用意される。体腔104にアクセスできるようにするために、患者100に切開が行われる。トロカールデバイス108、または任意の同様のデバイスが、次いで、望ましい体腔104、または手術部位へのアクセスを提供するために、選択された位置において、患者100の中に挿入される。例えば、患者の腹腔にアクセスするために、トロカール108は、患者の腹壁の中に、それを通って挿入され得る。この例では、患者の腹部には、次いで、二酸化炭素などの適切な送気ガスが吹き込まれる。患者の腹部に適切に送気されたとき、サポート支柱90を含むRSSが、次いで、患者100およびトロカール108の上の位置へと操作され得る。カメラサブアセンブリ78および1つまたは複数のロボットアームサブアセンブリ56は、モータユニット40に結合することができ、トロカール108の中に、したがって、患者の体腔104の中に挿入することができる。具体的には、カメラアセンブリ44およびロボットアーム42A、42Bを、個々にかつ順次にトロカール108を介して患者100の中に挿入することができる。順次挿入する方法は、より小さなトロカールをサポートする利点を有し、したがって、より小さな切開を患者に作ることができ、したがって患者が受ける心的外傷を低減する。さらに、カメラアセンブリ44およびロボットアーム42A、42Bは、任意の順序で、または特定の順序で挿入することができる。一実施例によれば、カメラアセンブリの後に第1のロボットアームが続き、次いで第2のロボットアームが続き、それらのすべては、トロカール108の中に、したがって体腔104の中に挿入され得る。
【0050】
患者100の中に挿入された後、ロボットユニット50の各構成要素(例えば、ロボットアームおよびカメラアセンブリ)は、外科医の方向に、または自動化された形で手術準備位置へと移動することができる。いくつかの実施形態では、カメラアセンブリ44は、立体的なカメラを使用することができ、また各ロボットアーム42A、42Bの肩継手から等距離に位置するように構成することができ、したがって、それらの間の中心に配置される。カメラ70A、70Bおよび2つの肩継手の配置は、ロボットユニット50の仮想の肩部を形成する。ロボットアームは、少なくとも6つの自由度を有し、またカメラアセンブリは、少なくとも2つの自由度を有し、したがって、ロボットは、左、右、真っ直ぐ前、および逆の位置など選択された方向に向きかつ働くことができ、以下でさらに詳細に述べる。
【0051】
患者100の内部に入った後、ロボットアーム42A、42Bの作業端部およびカメラアセンブリ44は、調整要素96A~96C、モータ要素40A~40Cの動き、ならびにロボットアームおよびカメラアセンブリの関節継手もしくはセクション58の内部の動きの組合せにより位置決めすることができる。関節セクション58は、ロボットアーム42の作業端部、およびカメラアセンブリ44が、体腔104内で位置決めされ、かつ方向付けできるようにする。一実施形態では、関節セクションは、例えば、ロボットアームの垂直の肩部に関して、ヨー方向、ピッチ方向、およびロール方向への動きを含む、患者の内側での複数の自由度を提供する。さらに、トロカール108回りのヨー方向の動きは、ロボットアームの作業端部をトロカール108に対して、体腔104において、左または右に有効に平行移動させる。また、トロカール108回りのピッチ方向の動きは、患者の内側の作業端部を上下に、または逆の位置に有効に平行移動させる。平行移動の自由度を提供するために、軸方向に、または直線的に移動、または平行移動され得るモータ要素は、各作業端部が、トロカール108の長軸に沿って患者の中により浅く、またはより深く挿入され得るようにする。最後に、関節継手は、エンドエフェクタ64を介して、小さな、巧妙な動き、および組織の繊細な操作、または他のタスクを可能にする。例えば、一実施形態では、カメラアセンブリ44に関連付けられた3つの関節継手は、関連する撮像要素を、手術の操作、または他の望ましい要素を見るために最も有利な位置に配置できるようにする。組合せにおいて、3つの関節継手は、外科医が、任意の望ましい見る角度へとヨーおよびピッチ調整を行い、かつ視水平線の角度を調整できるようにする。様々な要素および様々な動きの能力の組合せは、非常に大きな容積内において、非常に巧妙なシステムを生成し、それは、デバイスおよびユーザに、どのように作業部位へとアプローチし、そこで作業を実施するかに関する高い自由度を与える。別の実施形態によれば、各ロボットアームおよびカメラアセンブリは、それら自身の独立したトロカールを介して挿入することができ、かつ共通の手術部位において作業を実施するために、内部で三角形に分けられる(triangulated)。
【0052】
本発明のロボットサブシステム20は、手術中にデバイスの最大の柔軟性を提供する。外科医は、切開の単一の点を介して、腹腔104内の様々な手術場所において、ロボットアーム42およびカメラアセンブリ44を操作することができる。手術部位は、トロカール挿入点の左側の、トロカール挿入点の右側の、トロカール挿入点の前方もしくは正面の、および必要な場合、カメラアセンブリ44の後方の、またトロカール挿入点に向かって「後方」を見る、これらの部位を含むことができる。本発明のロボットユニット50は、腔104内に挿入されたとき、外科医は、ロボットユニット50の後方にある腹腔のこれらの部分を見るために、ロボットアーム42およびカメラアセンブリ44の視点の方向を逆にすることができる。すなわち、後方を向くために、カメラロボットアセンブリの視点を逆にすることができる。同様に、ロボットアーム42の位置を、アームの動きの複数の自由度に基づいて逆にすることができる。トロカール挿入部位の方向を向きながら操作できる手術用ロボットユニット50を有することにより、手術システム10全体の柔軟性を大幅に高めるが、それは、ロボットユニット50は、腹腔104内のどこにでも達することができるからである。完全な到達範囲を用いて、ロボットユニット50は、単一の切開部位だけを用いてどの手術でも実施することができ、それは、患者の心的外傷を低減する。挿入部位に達することができ、かつそれを見ることのできるロボットユニットはまた、切開点を縫って閉じることができ、それは手術室環境において、時間およびツールの使用を節約することになる。さらに、同様の能力がロボットアームに関しても存在し、それは、内部的に少なくとも6つの自由度、それに加えてエンドエフェクタに関連するいくつかの自由度を有することができる。
【0053】
図4は、患者100の腹腔104内に配置された本発明のロボットユニット50の全体的な概略的図であり、ここで、ロボットユニットは、後方を向く方向、または位置に配置されている。ロボットユニット50は、切開点110を通り、腔104の中に挿入されたトロカールを通過している。図示のように、カメラアセンブリ44およびロボットアーム42は、本発明の教示に従って、後ろを向く方向に配置される。サポート支柱90、ロボットアーム42、およびカメラアセンブリ44は、コンピューティングユニット18により制御されて、手術手技を実施するために十分に明確な視野を備えた状態で、切開点110に向けて後方を向くように、ロボットアームおよびカメラアセンブリを配置する、軸方向、ピッチ、ロール、および/またはヨー方向への移動または回転などの動作の組合せを実施する、または実行することができる。
【0054】
図5は、患者の、腹腔などの体腔104の中にトロカール108を介して最初に挿入されたときの、本発明のロボットユニット50の概略図である。ロボットアーム42A、42B、およびカメラアセンブリ44の示された位置決めは、ユニットが使用する準備のできたことを示すロボットユニット50の典型的な、または通常の動作位置を形成する。ロボットユニット50は、1対のロボットアーム42A、42Bを含み、そのそれぞれは、長手方向軸に沿って延びる対応するサポート部材52A、52Bにそれぞれ結合される。ロボットアーム42A、42Bは、複数の異なる方向および方向付けへと、サポート部材52A、52Bに対して移動可能であり、かつ対応する肩継手、肘継手、および手首継手を有する。示されたロボットアームは同一のものであり、図示のように、右のロボットアームに対応することのできる第1のロボットアーム42Aと、図示のように、左のロボットアームに対応することのできる第2のロボットアーム42Bとを含む。ロボットユニット50はまた、1対の軸方向に離間されたレンズシステムにより形成される1対の立体的カメラ70A、70Bを使用するカメラアセンブリ44を含み、それは、示された位置において、右カメラ要素70A(例えば、右眼)、および左カメラ要素70B(例えば、左眼)に対応する。カメラアセンブリ44は、対応するサポート部材74に取り付けられ、それに対して、ヨー、ピッチ、およびロール方向を含む複数の異なる方向に移動可能である。カメラアセンブリは、ヨーおよびピッチ方向を含む複数の異なる方向にアセンブリを移動できるようにする任意の選択された機械的な接続を用いてサポート部材に結合することができる。個々のロボットアーム42A、42B、およびカメラアセンブリ44のそれぞれは、切開点110においてトロカール108を介して、腔104の中に挿入され、また長手方向軸に沿って延びるそれらの各サポート部材によりサポートされる。
【0055】
使用中、ロボットアーム42A、42Bおよびカメラアセンブリ44は、外科医などのユーザにより操作することができる。ユーザが、切開点110もしくは体腔の他の部分を見るために、ロボットユニット50を、後方を向く(例えば、逆向きの)方向もしくは位置に配置することを望む場合、ロボットアーム42A、42Bおよびカメラアセンブリ44は、各構成要素を後方を向く位置へと移動するように、いくつかの協調された動きで個々に操作され得る。これは、ロボットアームおよびカメラアセンブリの様々な異なる動きによって達成することができる。例えば、感知および追跡ユニット16、16Aは、外科医の動きを感知し、かつコンピューティングユニット18により受信され、処理される信号を生成することができる。それに応じて、コンピューティングユニットは、ロボットアームサブアセンブリおよびカメラサブアセンブリの動きを制御する制御信号を生成することができる。具体的には、ユーザの手および頭部の動きが、感知および追跡ユニット16、16Aにより感知され、かつ追跡されて、コンピューティングユニット18により処理される。制御ユニット26は、ロボットサブシステム20に伝達される制御信号を生成することができる。それに応じて、1つまたは複数のモータまたは駆動要素を含むモータユニット40は、カメラサブアセンブリ78およびロボットアームサブアセンブリ56、56を選択された方法で駆動または動かすように制御することができる。
【0056】
例えば、ユーザが、ロボットユニット50を、後方を向く位置に配置することを望む場合、制御装置は、例えば、
図6Aから
図6Dで示されるように、一連の協調された動きを実施させる適切な命令を生成し、かつロボットサブシステムに送信することができる。最初に、カメラサポート部材74を、例えば、モータユニットのうちの1つまたは複数により、かつ/またはサポート支柱90の調整要素96のうちの1つまたは複数の協動する、かつ協調された動きにより、切開点110から軸方向に離れる方向に、
図6Aの矢印Aにより示されるように移動する。サポート部材74の軸方向の移動は、カメラアセンブリからの望ましくない干渉を受けることなく、アームの回転を可能にするように、ロボットアームから十分に離れるような方法で、カメラアセンブリ44を配置する。6つの自由度によって可能にされたロボットアーム42A、42Bは、矢印Bにより示されるように、次いで、ロボットアームの対応する関節セクション58により形成された肘継手116、および肩継手114において、選択された量を上方および後方に回転することができる。新しい方向および位置において、右のロボットアーム42Aは、実質的に左のロボットアームになり、左のロボットアーム42Bは、実質的に右のロボットアームになる。サポート支柱90は、モータアセンブリ40を使用することができ、それは、適切な制御信号に応じて、カメラアセンブリ44および関連するカメラサポート部材74を複数の様々な方向に移動することができる。カメラサポート要素74は、次いで、
図6Bの矢印Cにより示されるように、ロール方向に回転する、または移動することができる。この方向において、カメラアセンブリ44も同様に回転し、したがって、カメラ要素は、実質的に側部を切り換える。例えば、カメラ要素70Aは、いまやカメラアセンブリ44の反対側に配置されるが、付随して、なおカメラアセンブリの「右眼」として機能する。同様に、カメラ70Bは、次にカメラアセンブリ44の反対側に配置されるが、付随して、なおカメラアセンブリの「左眼」として機能する。さらに、この位置においては、カメラサポート部材74は、カメラ要素70A、70Bの視野外に位置する。カメラアセンブリ44は、次いで、
図6Cの矢印Dにより示されるように、ピッチ方向に約180度回転することができ、したがって、カメラ70A、70Bの視野は、いまや切開点110に向けて後方を向いているようになる。
【0057】
代替的な実施例によれば、カメラサポート部材74は、ロール方向に180度動き、
図6Dの矢印Eにより示されるように、その後にヨー方向にカメラアセンブリ44の180度回転が続くことができる。カメラアセンブリ44が、このように回転されたとき、カメラ位置は、ユーザの観点からは逆になる。具体的に、左眼は右眼になり、また右眼は左眼になる。この誤配置された眼の方向付けは、制御装置により対処することができ、制御装置は、命令を交換して、左眼用に意図された命令は、次には右眼に伝達されるようになり、その逆も同様である。別の代替の実施例によれば、カメラサポート部材74は、最初に、カメラアセンブリの観点からの挿入点110の視野を不明瞭にしないように腔内に配置され、したがって、カメラを移動させる、または回転させる必要があるだけである。したがって、カメラアセンブリ44は、カメラサポート部材74に対して、約180度だけヨー方向、またはピッチ方向に動かすことができる。カメラアセンブリ44が回転されたとき、アームは、ユーザの観点から逆になる。具体的には、左腕は右腕になり、また右腕は左腕になる。この誤配置された方向付けは、制御装置により対処することができ、制御装置は、命令を交換して、左腕用に意図された命令は、次には右腕に伝達されるようになり、逆も同様である。具体的には、正しいロボットアームおよびカメラ要素のためのコマンドを処理するために、ソフトウェア訂正または再マッピングが実施され得る(例えば、システムソフトウェアは、逆も同様であるが、左の制御装置が右腕を駆動するように再マッピングする必要がある)。さらに、カメラ要素に対するビデオフィードは、望ましい結果を達成するように交換され得る。
【0058】
カメラアセンブリ44の動きに加えて、ロボットアーム42A、42Bも同様に動かすことができる。例えば、ロボットアーム42A、42Bは、挿入点もしくは部位に向けて後方を向くように回転することができる。ロボットアームの回転運動は、例えば、肩継手114においてなど、対応する継手において、アームを回転させることにより達成することができ、したがって、アームは、カメラアセンブリを過ぎて回転し、トロカール108に向けて後方を向くようにする。
【0059】
さらに別の実施例によれば、カメラアセンブリ44は、
図6Bで示される方向に患者100の体腔104の中に挿入することができる(例えば、カメラアセンブリは、カメラサポート部材74の上部に配置される)。カメラアセンブリ44のさらなる動きが実施される場合、カメラ要素は、
図6Cおよび
図6Dで示されるものに対して逆になるはずである。
【0060】
さらにユーザは、アームおよびカメラの継手の相対角を調整する同様な手段により、左を向くモード、右を向くモード、上を向くモード、および下を向くモードでロボットユニットを配置することができ、それにより、ユーザが、挿入部位に対してすべての角度で動作できるようにする。これは、モータ要素の外部のヨー、ピッチ、およびロールによりさらに拡大させることができ、体腔内でのロボットユニットの平行移動配置および動作を可能にする。
【0061】
上記の手術用ロボットシステム10の利点は、非常に適合性があり、操作しやすく、外科医が、ロボットユニット50を体腔104の全体を通して移動させ得ることである。さらにロボットユニット50は、挿入点110に向けて後方を見ることを含む、多くの様々な方法および構成で方向付けることができる。ロボットユニット50は、挿入点110に達し、そこを見ることができるので、ユニットはまた、切開点110を縫合して閉じることができ、それは、手術室環境において、時間およびツールの使用を節約することになる。
【符号の説明】
【0062】
10 システム、手術用ロボットシステム
12 ディスプレイデバイスもしくはユニット、ディスプレイユニット、ディスプレイ
14 仮想現実(VR)コンピューティングユニット
16 感知および追跡ユニット、センサおよび追跡ユニット、センサおよび追跡デバイス
18 コンピューティングユニット
20 ロボットサブシステム
22 プロセッサ
24 記憶ユニット
26 制御ユニット
30 VRまたは画像レンダリングユニット、VRレンダリングユニット
34 位置データ、追跡および位置データ、センサまたは位置データ
34A 追跡および位置データ
36 外部データ
38 仮想現実(VR)カメラユニット
40 モータユニット、モータ要素、モータアセンブリ
42 ロボットアーム
44 カメラアセンブリ
48 画像データ、画像またはビデオデータ
50 ロボットユニット
52 サポート部材、サポート要素
54 インターフェース要素
56 ロボットアームサブアセンブリ、
58 関節セクション、関節セクション
62 端部
64 エンドエフェクタまたは把持具、エンドエフェクタ
74 サポート部材
76 インターフェース要素
78 カメラサブアセンブリ
86 関節継手
90 サポート支柱
92 ベース要素
94 サポートビーム
96 調整要素
100 患者
102 手術台
104 体腔、腹腔、腔
108 トロカール、トロカールデバイス
110 切開点、挿入点
114 肩継手
116 肘継手
130 撮像ユニット
132 光ユニット
134 関節継手
【国際調査報告】