(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】カーボンナノ構造組成物およびカーボンナノ構造組成物を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/172 20170101AFI20230614BHJP
C01B 32/159 20170101ALI20230614BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20230614BHJP
【FI】
C01B32/172 ZNM
C01B32/159
B82Y40/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568840
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021031693
(87)【国際公開番号】W WO2021231365
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512037705
【氏名又は名称】ナノ-シー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANO-C, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】バオ,ジェナン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,セオドア ゼット
(72)【発明者】
【氏名】シュエ,シアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,エドワード エイ
(72)【発明者】
【氏名】トレイシー,コリーン イー
(72)【発明者】
【氏名】シバラジャン,ラメシュ
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146AC03B
4G146AC16B
4G146AD28
4G146BC17
4G146CB10
4G146CB12
4G146CB35
(57)【要約】
本発明は、カーボンナノ構造組成物(例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT))ならびにカーボンナノ構造組成物を精製するための方法(例えば、そのエレクトロニック・タイプ(例えば、プライマリ・セミコンダクタ・エンリッチメント)による分離)に関する。分離されたこのタイプの半電導性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、多くの下流の用途(例えば、プリンテッド・エレクトロニクス、センサ、オプトエレクトロニクス、ソーラー・エネルギー・コンバージョンなどの用途)において使用することができる。
【選択図】
図33
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエレクトロニック・タイプ、キラリティ、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含む混合物から、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を分離するための方法であって、当該方法は、以下の工程(a)および(b):
(a)超分子ポリマーおよび/または化学添加剤および溶媒を含んで成る分離混合物を提供する工程、および
(b)エレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)が濃縮された組成物を単離する工程
を含み、
前記工程(a)において、前記超分子ポリマーは、前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)の混合物から、1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)を選択的に分散させるように構成されており、
前記工程(a)において、前記化学添加剤は、以下の(i)または(ii):
(i)前記超分子ポリマーの選択性、または
(ii)前記超分子ポリマーの能力であって、前記1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離収率を高めるための能力
のうち、少なくとも1つを増加させる、方法。
【請求項2】
前記超分子ポリマーは、分解された超分子ポリマーを含んで成り、前記提供する工程が、結合破壊剤を提供することと、前記溶液に逆溶媒を添加することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超分子ポリマーを沈殿させることと、前記沈殿した超分子ポリマーを単離することとをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離混合物が、分散された複合体を含んで成り、前記複合体が、前記超分子ポリマーと、単層カーボンナノチューブ(SWNT)とを含んで成り、前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分散された複合体に結合破壊剤を提供することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記超分子ポリマーを分解し、前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)を放出し、前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)が、1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化学添加剤が構造単位を含んで成り、前記構造単位が、前記単層カーボンナノチューブ(SWNT)と相互作用する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記化学添加剤は、以下からなる群:
【化1】
[式中、
R基は、それぞれ、独立して、H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR
0R
00、-C(O)X
0、-C(O)R
0、-C(O)OR
0、-NH
2、-NR
0R
00、-SH、-SR
0、-SO
3H、-SO
2R
0、-OH、-NO
2、-CF
3、-SF
5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルからなる群から選択され、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子を含んでよく、
R
0およびR
00は、それぞれ、独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC
1-40のカルビルまたはヒドロカルビルであり、
X
0は、ハロゲンである]
から選択される構造単位を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
R
0およびR
00は、独立して、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
X
0は、F、ClまたはBrである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記化学添加剤は、キレート化、水素結合、パイ(π)・スタッキング、イオン相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、またはそれらの任意の組み合わせが可能な1以上の基を含んで成る、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記化学添加剤が前記超分子ポリマーと相互作用する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記化学添加剤は、以下からなる群:
【化2】
[式中、
R基は、それぞれ、独立して、H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR
0R
00、-C(O)X
0、-C(O)R
0、-C(O)OR
0、-NH
2、-NR
0R
00、-SH、-SR
0、-SO
3H、-SO
2R
0、-OH、-NO
2、-CF
3、-SF
5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルからなる群から選択され、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子を含んでよく、
R
0およびR
00は、それぞれ、独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC
1-40のカルビルまたはヒドロカルビルであり、
X
0は、ハロゲンである]
から選択される構造単位を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
R
0およびR
00は、独立して、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
X
0は、F、ClまたはBrである、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記化学添加剤は、溶解性を変更する、請求項1~7または13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化学添加剤は、以下からなる群:
【化3】
から選択される構造単位を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学添加剤は、以下からなる群:
【化4】
から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記化学添加剤は、無機の複合体を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記化学添加剤は、有機金属の複合体を含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の前記分離混合物が、超分子ポリマーを含んでいない、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記化学添加剤の測定された添加によって前記超分子ポリマーの性能を再現性よく最適化および較正する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この特許出願は、2020年5月14日に出願された米国特許出願番号第63/024,790号の先の出願日の利益を主張するものであり、その内容は、参照により、その全体が本開示に組み込まれるものである。
【0002】
この特許の開示には、著作権保護の対象となる内容が含まれている場合がある。著作権者は、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されている特許文献または特許開示のあらゆるファクシミリ複製物について、何ら異議を唱えるものではないが、それ以外は、あらゆるすべての著作権の権利を留保している。
【0003】
(参照の援用(又は参照の組み込み))
本開示で引用されている特許、特許公報、雑誌刊行物(又はジャーナル・パブリケーション)、その他の文献は、いずれも、参照することにより、その全体が本開示に明確に組み込まれるものである。
【0004】
(発明の分野)
本発明は、カーボンナノ構造組成物(又はカーボンナノ構造体の組成物又はカーボンナノストラクチャ組成物又はカーボン・ナノストラクチャ・コンポジション)(例えば、単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube)(SWCNT))、およびその精製方法(例えば、そのエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)(例えば、プライマリ・セミコンダクタ・エンリッチメント(又は一次半導体濃縮又は第1半導体濃縮))による分離)に関する。
【背景技術】
【0005】
(発明の背景)
単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube)(SWCNT)は、可撓性(又は柔軟性又はフレキシブル)かつ伸縮性(又は伸縮自在又は伸縮可能又はストレッチャブル)なエレクトロニクス(又は電子工学又は電子装置)の新しい分野で応用される最先端の電子材料として有望な候補である。しかし、典型的な製造方法では、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の自然で統計学的な分布を形成する傾向にある。1/3が金属的な挙動(又はメタリックな挙動)を示し、残りの2/3が半導体的な挙動(又はセミコンダクティングな挙動)を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多くの用途(又はアプリケーション)では、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の混合物で対処することができる。しかし、その一方で、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)(TFT)、ロジック回路(Logic Circuitry)、センサ(Sensor)などの電子デバイスの用途(又はアプリケーション)では、単一(又はシングル)のエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)が非常に高い純度で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
1つの態様において、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を分離するための方法が提供され、当該方法では、複数のエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)、キラリティ、またはそれらのサブセット(又は部分集合)を有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)を含む混合物から、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を分離する。当該方法は、以下の工程(a)および(b):
(a)超分子ポリマー(又はスプラモレキュラ・ポリマー)および/または化学添加剤(又は化学的な添加剤又はケミカル添加剤又はケミカル・アディティブ)および溶媒を含んで成る分離混合物を提供する工程(又はステップ)、および
(b)エレクトロニック・クオリティ(又は電子クオリティ又は電子品質)、キラル・ポーション(又はキラル部位)、またはそれらのサブセット(又は部分集合)を有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)が濃縮(又は豊富化又はエンリッチ)された組成物を単離する工程(又はステップ)
を含み、
前記工程(a)において、超分子ポリマーは、単層カーボンナノチューブ(SWNT)の混合物から、1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)を選択的に分散させるように構成されており、
前記工程(a)において、化学添加剤は、以下の(i)または(ii):
(i)超分子ポリマーの選択性、または
(ii)超分子ポリマーの能力であって、1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有する単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離収率(又はセパレーション・イールド)を高めるための能力
のうち、少なくとも1つを増加させる。
【0008】
いくつかの実施形態において、超分子ポリマーは、分解(又は崩壊又は破壊又はディスアセンブル)された超分子ポリマーを含んで成り、前記提供する工程が、結合破壊剤を提供すること(又は工程又はステップ)と、溶液に逆溶媒を添加すること(又は工程又はステップ)とをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、当該方法は、超分子ポリマーを沈殿させること(又は工程又はステップ)と、沈殿した超分子ポリマーを単離すること(又は工程又はステップ)とをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、分離混合物(又はセパレーション・ミクスチャ)が、分散された複合体(又は錯体又はコンプレックス)を含んで成り、複合体が、超分子ポリマーと、単層カーボンナノチューブ(SWNT)とを含んで成り、単層カーボンナノチューブ(SWNT)が1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有している。
【0011】
いくつかの実施形態において、当該方法は、分散した複合体(又は錯体又はコンプレックス)に結合破壊剤を提供すること(又は工程又はステップ)をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、超分子ポリマーを分解(又は崩壊又は破壊又はディスアセンブル)し、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を放出し、単層カーボンナノチューブ(SWNT)が1つのエレクトロニック・クオリティ、キラル・ポーション、またはそれらのサブセットを有している。
【0013】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、以下からなる群から選択される構造単位(又は構造ユニット)を含んで成る。
【0014】
【0015】
式中、
R基は、それぞれ、独立して、H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR0R00、-C(O)X0、-C(O)R0、-C(O)OR0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルからなる群から選択され、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子(又は複素原子)を含んでよい。
R0およびR00は、それぞれ、独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC1-40のカルビルまたはヒドロカルビルである。
X0は、ハロゲンである。
【0016】
いくつかの実施形態において、R0およびR00は、独立して、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルである。
【0017】
いくつかの実施形態において、X0は、F、ClまたはBrである。
【0018】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、キレート化(又はキレーション)、水素結合、パイ(π)・スタッキング、イオン相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、またはそれらの任意の組み合わせが可能な1以上の基を含んで成る。
【0019】
いくつかの実施形態において、化学添加剤が超分子ポリマーと相互作用する。
【0020】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、以下からなる群から選択される構造単位(又は構造ユニット)を含んで成る。
【0021】
【0022】
式中、
R基は、それぞれ、独立して、H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR0R00、-C(O)X0、-C(O)R0、-C(O)OR0、-NH2、-NR0R00、-SH、-SR0、-SO3H、-SO2R0、-OH、-NO2、-CF3、-SF5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルからなる群から選択され、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子(又は複素原子)を含んでよい。
R0およびR00は、それぞれ、独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC1-40のカルビルまたはヒドロカルビルである。
X0は、ハロゲンである。
【0023】
いくつかの実施形態において、R0およびR00は、独立して、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルである。
【0024】
いくつかの実施形態において、X0は、F、ClまたはBrである。
【0025】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)を変更(又は修飾又は改善する又は向上させる)。
【0026】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、以下からなる群から選択される構造単位(又は構造ユニット)を含んで成る。
【0027】
【0028】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、以下からなる群から選択される。
【0029】
【0030】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、無機の複合体(又はコンプレックス)(又は無機錯体)を含んで成る。
【0031】
いくつかの実施形態において、化学添加剤は、有機金属の複合体(又はコンプレックス)(又は有機金属錯体)を含んで成る。
【0032】
いくつかの実施形態において、分離混合物は、超分子ポリマーを含んでいない。
【0033】
いくつかの実施形態において、化学添加剤の測定された添加(又は化学添加剤を測定して添加すること)によって、超分子ポリマーの性能(又はパフォーマンス)を再現性よく最適化および較正(又は調整又はキャリブレーション)する。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をそのエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)(プライマリ・セミコンダクタ・エンリッチメント(又は一次半導体濃縮又は第1半導体濃縮))によって分離することに関連するものである。分離されたこのタイプ(又は種類又は型)の半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、多くの下流の用途(又は応用又はアプリケーション)(例えば、プリンテッド・エレクトロニクス(又はプリント電子工学又は印刷電子工学)、センサ、オプトエレクトロニクス(又は光電子工学)、およびソーラー・エネルギー・コンバージョン(又は太陽エネルギー変換)などの用途)で使用することができる。
【0035】
いくつかの実施形態において、超分子ポリマーによる半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離(又はセパレーション)の効率(又はエフィシエンシー)は、超分子ポリマーの平均分子量および構造の形態に関連するものである。
【0036】
いくつかの実施形態において、超分子ポリマー・ストックの平均分子量、溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)および分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)は、「スパイク剤(又はスパイキング剤(spiking agent))」の意図的な添加によって制御(又はコントロール)することができる。また、スパイク剤は、超分子ポリマー構造の部位(超分子ポリマー構造の一部である部分)の構造に関連していても、全く関連していなくてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態において、直鎖状または環状の構造の形態は、超分子ポリマー・ストックの分離効率に影響を与える。かかる形態は、順次、「スパイク剤(又はスパイキング剤)」の意図的な添加によって制御することができる。スパイク剤として、ポリマー・ストックの末端基(又はエンド・グループ)を全体的または部分的に模倣するものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スパイク剤は、本開示において、「末端基(又はエンド・グループ)」または「ストッパ」または「末端ストッパ(又はエンド・ストッパ)」などと称されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離において使用する超分子ポリマー(1)の合成経路(又は合成ルート)である。
【
図2】
図2は、超分子ポリマー(1)の
1H NMRである(CDCl
3、トリフルオロ酢酸(トレース(又は痕跡量))。
【
図3】
図3は、分離した半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分散体(トルエン中)のUV(紫外)-Vis(可視)-NIRスペクトルである。P1-3、P1-4、P2-6およびP1-7は、この分離方法に用いる異なるバッチの超分子ポリマーを表す。
【
図4】
図4は、モノマーの合成時に副生成物として生成し得る可能性のある不純物分子の構造である。ポリマー合成の最終段階では、生成物1分子あたり2回のカップリング(反応)が必要であるため、不完全な反応で中間体(A)を得ることも理論的には可能である。また、還元的な脱ハロゲン化(金属を媒介したカップリング反応における共通の副反応)によって、所望のクロスカップリングに至る前に、不純物分子Bが生じる可能性がある。かかる不純物は、分子に存在する異なるプロトン(H)に由来するシグナルをトラッキング(又は追跡)することによって、NMRで定量化することができる可能性がある。
【
図5】
図5は、スクリーニングの中でも特に最も高い分離効率および最も低い分離効率を示す超分子ポリマーの2つのバッチの
1H NMRスペクトルを並べたものである。末端基の部位に帰属し得ると思われるいくつかのシグナルを縦線で通して示す。シグナルの強度は、任意単位(arbitrary unit)(a.u.)で示されている。不純物の存在を定量化するために、段落[0083]および[0084](又は0114および0115)に記載するように、元のデータに対してシグナルの積分を行った。
【
図6】
図6は、所定のバッチの超分子ポリマーの抽出効率(UV(紫外)-Vis(可視)-NIRの吸光度によって、分離した半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の濃度として測定している)と、NMRスペクトルの水素の合計割合(%)との相関であり、これは、ポリマー鎖の末端基部位または類似構造の単独(又はスタンドアローン)の不純物に起因し得るものと考えられている。
【
図7】
図7は、700MHz Bruker Avance 核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて2種類の異なるポリマー・バッチ P1-3およびP2-4の298KでのDOSYスペクトル(又はオーバーレイド(Overlaid))である。各ポリマーのメチル基の化学シフト(化学シフト=2.65ppm,6H(2つのメチル基に由来する)、挿入図の分子構造の丸で囲んで示した部分)を示す領域を拡大したものである。分離効率のより高いポリマー・バッチP1-3は、P2-4と比較して、拡散定数(又はディフュージョン・コンスタント)がより大きいことを示し、平均分子量が相対的により小さいことが示唆されている。
【
図8】
図8は、スパイク剤(又はスパイキング剤)C(挿入図で示す構造のもの)を図示する通り異なる量で使用した場合、UV(紫外)-Vis(可視)-NIRのスペクトルを示す。所定のバッチの超分子ポリマーの分離した半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の濃度として測定した抽出効率(又はエクストラクション・エフィシエンシー)の変化(又はバリエーション)を示している。
【
図9】
図9は、化合物B(
図4参照)(エンド・キャップ試薬(又はエンド・キャッピング試薬)としての化合物C(
図8参照)ではない)であり、特に低分子量において、フルオレン(fluorene)・サブユニットの相対的な存在量が増加する可能性がある。フルオレンの提案された半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用して「選択(又はセレクト)」する部位としての役割に基づくと、化合物Bを含むか、あるいは化合物Bでスパイクした超分子ポリマーの潜在的な性能(又はパフォーマンス)は、化合物Cを含むか、あるいは化合物Cでスパイクした超分子ポリマーと比較して、著しく向上する可能性がある。同様にして、化合物A(
図4参照)を用いて、フルオレンの相対的な存在量を増加させた(化合物Cではない)。
【
図10】
図10は、チェイン・ストッパ(又は鎖ストッパ又は鎖状ストッパ)による超分子ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)のチューニング(又は調整又は制御)の概略図である。薄い灰色の部分は、超分子ポリマーを示し、濃い灰色の部分は、チェイン・ストッパを示す。
【
図11】
図11は、UPy系の超分子ポリマーのリング(又は環)とチェイン(又は鎖)の平衡を示す概略図である。
【
図12】
図12は、モノマー濃度の関数として測定される拡散定数(又はディフュージョン・コンスタント)である。c=10mMにおいて、2つの異なる領域が遷移(又はトランジション)することを観察することができる。すべての値は、テトラメチルシラン(TMS)の拡散定数で規格化されている。
【
図13】
図13は、DOSYデータのベイジアン変換(又はベイジアン・トランスフォーメーション(Bayesian transformation))である(c=5.3mM)。拡散定数を縦軸に沿ってプロットし、
1Hの化学シフトを横軸に沿ってプロットしている。
【
図14】
図14は、DOSYデータのベイジアン変換(又はベイジアン・トランスフォーメーション(Bayesian transformation))である(c=14.9mM)。拡散定数を縦軸に沿ってプロットし、
1Hの化学シフトを横軸に沿ってプロットしている。
【
図15】
図15は、モデリングされたリング(又は環)とチェイン(又は鎖)のフラクション(又は分画)をモノマー濃度の関数としたものである(K=6×10
-7 M
-1,EM
1=1mM)。c=2.5mM(モデリングされた臨界濃度を示す)において、リング(又は環)とチェイン(又は鎖)のフラクション(又は分画)は平衡である。
【
図16】
図16は、モデリングのパラメータEM
1(モノマーのリング(又は環)の有効モル濃度(又はエフェクティブ・モラリティ))が臨界濃度の計算値(クロロホルム中)に与える影響を示す。
【
図17】
図17は、ディフュージョン・オーダーのNMRデータのベイジアン変換(又はベイジアン・トランスフォーム(Bayesian transform))である(c=14.9mM、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)=0.72)。挿入図は、モノマーの部分的な化学構造である。拡散定数(又はディフュージョン・コンスタント)(D)を縦軸に沿ってプロットし、
1H化学シフトを横軸に沿ってプロットしている。プロットの左側のトレースは、拡散定数(D)の関数として、すべてのプロトン(H)からの
1Hシグナルを積分した値の合計であり、3つの別々のピーク(1、2、3)を示している。プロットの上部のトレースは、サンプルの
1H NMRスペクトルであり、ピークは挿入図に従ってラベル(又はラベリング)されている。モノマーのピークは黒色でラベル(又はラベリング)し、ストッパからの対応する水素は、灰色の斜体(又はイタリック)でラベル(又はラベリング)している。
【
図18】
図18は、DOSYデータのベイジアン変換(又はベイジアン・トランスフォーメーション(Bayesian transformation))である(c=14.9mM、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)=0.17)。拡散定数を縦軸に沿ってプロットし、
1H化学シフトを横軸に沿ってプロットしている。灰色でハイライトされたピークは、ストッパに対して排他的である(又はストッパに含まれていないものである)。
【
図19】
図19は、超分子ポリマーの温度可変(VT)のNMRである(クロロホルム中)。温度を上げるとピークは鋭くなることが観察できる。あるいは、温度を下げてもピークは鋭くなることが観察できる。
【
図20】
図20は、超分子ポリマーのヘテロニュークリア・マルチプル・ボンド・コリレーション(Heteronuclear Multiple Bond Correlation)(HMBC)のスペクトルである。挿入図は、超分子モノマーの部分構造である。関連する
13C化学シフトは、灰色でラベル(又はラベリング)し、関連する水素原子は、H
1、H
2およびH
3でラベル(又はラベリング)している。
【
図21】
図21は、濃度が異なる超分子ポリマー(左)と、ストッパのモル分率(又はモルフラクション)が異なる超分子ポリマー(右)(c=4.1mM)の
1H NMRである。
【
図22】
図22は、超分子ポリマーのトルエン中における溶液SAXSスペクトル(c=0.2mM)である(xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)=0.66)。
【
図23】
図23は、超分子ポリマーの回転半径(トルエン中)をxストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の関数として示す(溶液のX線小角散乱データから抽出している)。
【
図24】
図24は、超分子ポリマーのモデリングされたリング(又は環)とチェイン(又は鎖)の平衡(トルエン中)であり、臨界濃度は、およそc=約26mMである。モデルのインプットは、K=6×10
-8 M
-1、EM
1=1mMであった。
【
図25】
図25は、超分子ポリマーとストッパの紫外・可視のスペクトル(又はUV-vis スペクトル)であり、吸光度のピークの重なり(又はオーバーラップ)は示されていない。400nmのピークを使用して、超分子ポリマーのハイパークロミシティを計算した。
【
図26】
図26は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の関数として示す超分子ポリマーの吸光度である(トルエン中)。
【
図27】
図27は、ストッパのモル分率(又はモルフラクション)を変化させた超分子ポリマーの温度依存的なハイパークロミシティである。ハイパークロミシティ(温度による吸光度の増加)は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の値が低いと顕著であるが、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の値が高いと観察できない。
【
図28】
図28は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の関数として示される超分子ポリマーの吸光度である(クロロホルム中)。
【
図29】
図29は、トルエン中で選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の収率(又は収量又はイールド)および純度(φ)をxストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の関数として示す。
【
図30】
図30は、クロロホルム中に分散させた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の積分強度をxストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の関数として示す。
【
図31】
図31は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶解性およびポリマーの溶解性の範囲に関するポリマー・カバレッジのフラクション(又はポリマー被覆率)の関数として示す溶媒和(又はソルベーション)の自由エネルギーである。ΔG
CNT-溶媒/ΔG
ポリマー-溶媒(又はΔG(CNT-溶媒)/ΔG(ポリマー-溶媒))の高い値は、ポリマーの溶解性に対して、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶解性が低い(又は乏しい)ことを示し、その逆もまた同様である。ΔG
CNT-溶媒/ΔG
ポリマー-溶媒(又はΔG(CNT-溶媒)/ΔG(ポリマー-溶媒))が高い値の溶媒(例えば、トルエン)に関して、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)・ポリマーの複合体(又は錯体又はコンプレックス)を溶媒和(又はソルベート)するためには、ポリマー・カバレッジのフラクション(又はポリマー被覆率)の高い値が必要である。ΔG
CNT-溶媒/ΔG
ポリマー-溶媒(又はΔG(CNT-溶媒)/ΔG(ポリマー-溶媒))が低い値の溶媒(例えば、クロロホルム)に関して、ポリマー・カバレッジのフラクション(又はポリマー被覆率)が低くても、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)-ポリマーの複合体(又は錯体又はコンプレックス)の溶媒和(又はソルベーション)をもたらすことができる。
【
図32】
図32は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)におけるTFAの効果である。TFA/モノマーの比を注意深く選択することで、選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の純度(φ)を妥協することなく、選別収率(又はソーティング・イールド)を向上させることができる。TFAの量が対数的に増加することから、TFAとモノマーのモル比(TFA/モノマー)に対して、収率および純度をプロットしている(TFAとモノマーのモル分率(x
TFA(又はx(TFA)))ではない)。
【
図33】
図33は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の値を変えて選別(ソーティング)した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の紫外・可視のスペクトル(又はUV-vis スペクトル)である。
【
図34】
図34は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の値を変えて選別(ソーティング)した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の長さのヒストグラムである。
【
図35】
図35は、xストッパ(又はx(ストッパ)又はx
stopper)の値を変えて選別(ソーティング)した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用いて作製したフィールド・エフェクト・トランジスタのモビリティ(又は移動性又は移動度)である。
【
図36】
図36は、限定されないが、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を選別(又はソーティング)するために使用されるマクロモレキュラ・エンティティのモノマー単位(又はモノマー・ユニット)またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)として、任意の組み合わせ(又はコンビネーション)、および任意の順序(又はオーダー)において、0、1またはそれ以上の図示する多くの様々な部位(又は異なる部位)を使用してよく、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用することができる。アスタリスク(*)は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の残部(モノマーの種類(又は種又はスピーシーズ)を選別(又はソーティング)する)との共有結合の点(又はポイント)を示す。R基は、それぞれが存在する場合、同一または異なって、以下のように定義されるものである:H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR
0R
00、-C(O)X
0、-C(O)R
0、-C(O)OR
0、-NH
2、-NR
0R
00、-SH、-SR
0、-SO
3H、-SO
2R
0、-OH、-NO
2、-CF
3、-SF
5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルであり、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子(又は複素原子)を含んでよい。R
0およびR
00は、互いに独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC
1-40のカルビルまたはヒドロカルビルであってよい。好ましくは、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルを示す。X
0は、ハロゲンである。好ましくは、F、ClまたはBrである。
【
図37】
図37は、限定されないが、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を選別(又はソーティング)するために用いられるマクロモレキュラ・エンティティのモノマー単位(又はモノマー・ユニット)またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)として、単独または任意の組み合わせ(又はコンビネーション)、および任意の順序(又はオーダー)において、0、1またはそれ以上の図示する多くの様々な部位(又は異なる部位)を使用してもよい(モノマー単位の水素結合の側鎖(又はサイド・アーム)として)。限定されないが、このような相互作用は、キレート化(又はキレーション)、水素結合、パイ(π)・スタッキング、イオン相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、またはこれらの任意の組み合わせに基づくものであってよい。相互作用のモードとして、二量体化(又はダイマー化又はダイメリゼーション)、三量体化(又はトリマー化又はトリメリゼーション)、オリゴマー化(又はオリゴメリゼーション)、重合体化(又はポリマー化又はポリメリゼーション)、およびこれらの変換の逆の変換(又はトランスフォーメーション)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、環境のコンディション(又は条件又は状態)の変化によって生じるものである。環境のコンディション(又は条件又は状態)として、pH、温度、光への曝露または光が存在しないこと(又は不在又は非存在)、超音波または音への曝露、電圧差への曝露、および/または特定の化学的な添加剤(又は化学添加剤)または溶媒への曝露が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アスタリスク(*)は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の残部(モノマーの種類(又は種又はスピーシーズ)を選別(又はソーティング)するもの)との共有結合の点(又はポイント)を示す。R基は、それぞれが存在する場合、同一または異なって、以下のように定義されるものである:H、F、Br、Cl、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(O)NR
0R
00、-C(O)X
0、-C(O)R
0、-C(O)OR
0、-NH
2、-NR
0R
00、-SH、-SR
0、-SO
3H、-SO
2R
0、-OH、-NO
2、-CF
3、-SF
5、あるいは必要に応じて置換されたシリル、カルビルまたはヒドロカルビルであり、前記シリル、前記カルビルまたは前記ヒドロカルビルは、1~40個の炭素(C)原子を有し、必要に応じて置換されてよく、必要に応じて1以上のヘテロ原子(又は複素原子)を含んでよい。R
0およびR
00は、互いに独立して、Hあるいは必要に応じて置換されたC
1-40のカルビルもしくはヒドロカルビルであってよい。好ましくは、Hまたは1~12個の炭素(C)原子を有するアルキルを示す。X
0は、ハロゲンである。好ましくは、F、ClまたはBrである。
【
図38】
図38は、限定されないが、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を選別(又はソーティング)するために使用されるマクロモレキュラ・エンティティのモノマー単位(又はモノマー・ユニット)またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)は、単独または任意の組み合わせ(又はコンビネーション)、および任意の順序(又はオーダー)において、0、1またはそれ以上の図示する多くの様々な部位(又は異なる部位)または機能(又はファンクショナリティ)が同様のものを使用してよく、望ましい溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)の特性を与えてよい。そうすることで、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用することができる。他の溶解性の基は、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、硫黄)を含んでよい。アスタリスク(*)は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の残部(モノマーの種類(又は種又はスピーシーズ)を選別(又はソーティング)するもの)との共有結合の点(又はポイント)を示す。
【
図39】
図39は、限定されないが、ポリマー分離(又はポリマー・セパレーション)のプロセス(又は処理又は工程)は、他の外部からの添加剤(又はアディティブ)をさらに含んでよい。このような添加剤は、必ずしもモノマーの分子構造の一部ではない。このような添加剤として、酸、光酸発生剤(又はフォトアシッド・ジェネレータ)、塩基、光塩基発生剤(又はフォトベース・ジェネレータ)、溶媒または他の分子(パイ・システム(又はπシステム又はπ系)または何らかの水素結合の可能性を有するもの)が挙げられ得るが、これらに限定されるものではない。このような添加剤は、エンド・キャップ剤(又はエンド・キャッピング剤)として機能してよい。限定するものではないが、このような添加剤は、全体的な製剤(又は調製物又は処方物又はフォルムレーション)の溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)との相互作用、または単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(モノマーを選別(又はソーティング)するもの)またはエンド・キャップ剤(又はエンド・キャッピング剤)のそれ自体または互いとの相互作用に作用してよい(又は影響を与えてよい)。このような添加剤は、外部からの刺激に対して、望ましい方法で応答することができる。外部からの刺激として、光、熱、振動(又はバイブレーション)、pH、電圧差、および/または特定の化学的な添加剤(又は化学添加剤)もしくは溶媒への曝露が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような可能性のある添加剤の例をいくつか以下に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離および精製を達成するためには、様々な方法が研究されて、提案されている。なかでも特に関心のあるものは、ポリマーに基づく分離方法であり、20%を超える収率(処理時間:1時間以内)および99.99%を超える半導体の純度が実証されている。このような方法のいくつかの例は、以下の文献に記載されている。
Qiu, S.; Wu, K.; Gao, B.; Li, L.; Jin, H.; Li, Q. Solution-Processing of High-Purity Semiconducting Single-Walled Carbon Nanotubes for Electronics Devices. Adv. Mater. 2018, 1800750; Lefebvre, J.; Ding, J.; Li, Z.; Finnie, P.; Lopinski, G.; Malenfant, P. R. L. High-Purity Semiconducting Single-Walled Carbon Nanotubes: A Key Enabling Material in Emerging Electronics. Acc. Chem. Res. 2017; Wang, H.; Bao, Z. Conjugated Polymer Sorting of Semiconducting Carbon Nanotubes and Their Electronic Applications. Nano Today 2015, 10 (6), 737-758; および Lei, T.; Pochorovski, I.; Bao, Z. Separation of Semiconducting Carbon Nanotubes for Flexible and Stretchable Electronics Using Polymer Removable Method. Acc. Chem. Res. 2017, 50 (4), 1096-1104; および、その中に記載の文献(それぞれ、その全体が参照として組み込まれている)。
【0040】
上記の文献から理解できるように、タイプ(又は種類又は型)による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)自体の分離において、使用するポリマーの大半は、高価な電子材料である。しばしば、分離のコストの最も大きな要因の1つとなる。さらに、このような分離は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の表面へのポリマーの第1のモノレイヤー(又は単層)のラッピング(又は被覆)によって達成されている。このようなラッピングは、非常に難しいものであり、後続の工程(又はステップ)が排除されることになる。
【0041】
選別ポリマー(又はソーティング・ポリマー)を、選別(又はソーティング)されたポピュレーション(又は集団)の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)から除去することは、デバイス(又は装置)の最高(又は最大)の性能(又はパフォーマンス)を得るために必須である。なぜなら、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)エレクトロニクスにおいて、過剰な選別ポリマー(又はソーティング・ポリマー)が存在することは、デバイス(又は装置)の重要な指標(又はメトリクス)(例えば、実用的な産業の用途(又は応用)に必要な重要な性能指標(又はパフォーマンス・メトリクス)である電流密度(又はカレント・デンシティ)、オンオフ比(又はオン・オフ・レシオ)、電荷キャリア移動度(又は電荷キャリア・モビリティ又はチャージ・キャリア・モビリティ)など)を低下させることが知られているからである。このような効果は、以下の文献に開示されている。
Yu, X.; Liu, D.; Kang, L.; Yang, Y.; Zhang, X.; Lv, Q.; Qiu, S.; Jin, H.; Song, Q.; Zhang, J.; ら、Recycling Strategy for Fabricating Low-Cost and High-Performance Carbon Nanotube TFT Devices. ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9 (18), 15719-15726; Joo, Y.; Brady, G. J.; Kanimozhi, C.; Ko, J.; Shea, M. J.; Strand, M. T.; Arnold, M. S.; Gopalan, P. Polymer-Free Electronic-Grade Aligned Semiconducting Carbon Nanotube Array. ACS Appl. Mater. Interfaces 2017, 9 (34), 28859-28867; Gao, T. Z.; Lei, T.; Molina-Lopez, F.; Bao, Z. Enhanced Process Integration and Device Performance of Carbon Nanotubes via Flocculation. Small Methods 2018, 2 (10), 1800189; Li, Z.; および Ding, J.; Guo, C.; Lefebvre, J.; Malenfant, P. R. L. Decomposable S -Tetrazine Copolymer Enables Single-Walled Carbon Nanotube Thin Film Transistors and Sensors with Improved Sensitivity. Adv. Funct. Mater. 2018, 28 (13), 1705568 (それぞれ、その全体が参照として組み込まれている)。
さらに、分離コストを低く維持するためには、選別ポリマー(又はソーティング・ポリマー)の高コストに起因して、使用したポリマーを完全にリサイクル(又は再利用または循環)させることができる分離経路(又はセパレーション・パスウェイ)が重要である。
【0042】
Bao および Pochorovski によって、超分子ポリマー(又はスプラモレキュラ・ポリマー)をモノマー単位(又はモノマーユニット)(可逆的な水素結合によって一緒に保持されているもの)とともに使用することができ、閉じたループの様式において、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって分離する方法が実証されている。かかる方法の詳細については、米国特許出願公開第US2016/0280548号、「Isolating Semiconducting Single-Walled Nanotubes or Metallic Single-Walled Nanotubes and Approaches Therefor」(タイトル)に記載されている(その全体は、参照により、本開示に組み込まれている)。
【0043】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を電子的に分離すること(又はエレクトロニック・セパレーション)を目的として、超分子ポリマーを開示する。複数のモノマー単位(又はモノマー・ユニット)を含ませることで、それらが非共有結合によって、超分子ポリマーを形成する。モノマー単位(又はモノマー・ユニット)は、末端ウレイドピリミジノン(又はターミナル・ウレイドピリミジノン)(UPy)部位、炭素側鎖(又はカーボン・サイド・チェイン)および複数の末端UPy部位(又はターミナルUPy部位)の間にある不特定の部位から構成されている。様々な具体的な実施形態において、複数の末端UPy部位(又はターミナルUPy部位)の間にある不特定の部位として、フルオレン部位、チオフェン部位、ベンゼン部位、ベンゾジチオフェン部位、カルバゾール部位、チエノチオフェン部位、ペリレンジイミド部位、イソインジゴ部位、ジケトピロロピロール部位、エナンチオピュア・ビナフトール部位、および2以上の上記部位のオリゴマーまたは組み合わせ(又はコンビネーション)が挙げられる。例えば、US2016/0280548を参照のこと(その全体は、参照により、本開示に組み込まれている)。
【0044】
エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分離するための一般的なプロセスを開示する。例えば、以下の工程(又はステップ)などが挙げられる:
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の混合物に超分子ポリマーを添加することであって、望ましくないエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)を有する分散していない単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と、分散していない超分子ポリマーとの混合物、ならびに、望ましいエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)を有する単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と、超分子ポリマーとを含んで成る分散している複合体(又は錯体又はコンプレックス)を形成させること(又は工程又はステップ);
分散した複合体から、望ましくないエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)を有する分散していない単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(および分散していない超分子ポリマー)を除去する(又は取り出す)こと(又は工程又はステップ)(例えば、混合物の遠心分離および/または濾過);
超分子ポリマーを分解(又は崩壊又は破壊又はディスアセンブル)させるために結合破壊剤を添加することであって、そうすることで、望ましいエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を超分子ポリマーから放出させること。
例えば、US2016/0280548を参照のこと(その全体は、参照として、本開示に組み込まれている)。
【0045】
また、所望のエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)を有する単離した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の純度(又はピュアリティ)および収率(又は収量又はイールド)の分散パラメータ(又はディスパージョン・パラメータ)への依存性についても開示する。分散パラメータとして、超音波処理(又はソニケーション)および/または遠心分離に関連する設定が挙げられる。分散パラメータの例として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の混合物に対する超分子ポリマーの比(又はレシオ)、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の濃度、分散の間に使用する超音波処理の出力(又はソニケーション・パワー)および超音波処理の時間などのパラメータが挙げられる。例えば、遠心分離のパラメータとして、遠心分離の速度、温度および時間が挙げられる。分散パラメータは、様々な実施形態において、変更することができる。それにより、単離される単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の特性を調整することができる。例えば、分散パラメータを調整することができ、それにより、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分散液(例えば、所望のエレクトリカル・タイプ(又は電気タイプ又は電気型)を有する単離された単層カーボンナノチューブ(SWCNT))の純度(又はピュアリティ)および/または収率(又は収量又はイールド)を選択することができる。様々な具体的な実施形態において、分離した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のポピュレーション(又は集団)の純度は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の混合物に対する超分子ポリマーの比(又はレシオ)を変更することによって、さらに最適化されている。例えば、US2016/0280548を参照のこと(その全体は、参照として、本開示に組み込まれている)。
【0046】
実験のコンディション(又は条件又は状態)の厳密な管理にもかかわらず、本発明者らは、異なるポリマー・バッチを使用して、同一セットの出発(スターティング)の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のポピュレーション(又は集団)を同一の分離のコンディション(又は条件又は状態)およびポリマーと単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の比のもとでタイプ(又は種類又は型)の分離(又はセパレーション)をした場合の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)の顕著な変化という重要な観察を示した。そのため、関与するポリマー・バッチの化学的な純度については、厳重な検査に供した。
【0047】
本発明者らは、さらに観察することによって、概して、「不純物」とみなされる特徴(1D NMRスペクトルで観察される特徴)を示すポリマー・バッチが、比較的に「純粋」なポリマー・バッチと比較して、より大きな分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を示したことに驚いた。
【0048】
本発明者らは、さらに、「不純物」として認識されるいくつかのNMRスペクトルの特徴を1つの構造または1以上の構造の末端基部位(又はエンド・グループ部位又はエンド・グループの部分)に帰属した。これは、分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)と比較して、モル比の末端基部位の帰属の間に正の相関を示すものである。
【0049】
この観察を支持するために、さらに、ポリマー鎖(又はポリマー・チェイン)の拡散係数(又はディフュージョン・コエフィシエント)の初期DOSY研究(又はアーリーDOSYスタディ)によると、より高い分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を示したポリマーのバッチは、より低い分子量を示した。
【0050】
所定のバッチの超分子ポリマーの単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を制御および改善するために、さらなる実施態様を開始した。この実施形態では、少量の所定の末端基部位(また、この明細書の全体を通して、「ストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)」または「ストッパ」とも呼ばれるもの)を出発混合物(又は開始混合物又はスターティング・ミクスチャ)(溶媒、超分子ポリマーおよび単層カーボンナノチューブ(SWCNT)から構成される混合物)に添加した。結果として、分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)が増加した。また、さらなる末端基部位を追加するプロセスは、この明細書の全体を通して、「スパイク(又はスパイキング又は添加)」とも呼ばれている。
【0051】
本発明者らは、さらに、ポリマーの2つの構造形態の間(すなわち、環状(又はサイクリック)(または「リング(又は環)」)の形態と、直線状(又はリニア)(または「チェイン(又は鎖)」)の形態との間)において、ポリマー系(又はポリマー・システム)が、所定の溶媒において、所定の温度で平衡状態を示すことに気が付いた。注意深い実験によって、出発混合物(又は開始混合物又はスターティング・ミクスチャ)(溶媒、超分子ポリマーおよび単層カーボンナノチューブ(SWCNT)から構成される混合物)に末端基部位を外部から添加することで、リング(又は環)の形態とチェイン(又は鎖)の形態との間で平衡をシフトさせることによって、分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)がさらに向上し得ることを観察した。
【0052】
様々な可能な末端基部位(又はエンド・グループ部位又はエンド・グループの部分)または「ストッパ」(分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を高めるためのスパイク(又はスパイキング又は添加)に使用されるもの)、存在する超分子の構造形態、あるいは可能な分離のメカニズムに関係なく、本発明者らの結論は、超分子ポリマー系(又は超分子ポリマー・システム)における末端ストッパ部位の組織的(又はシステマチック)な分子工学が、半導体性および金属性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の混合されたポピュレーション(又は集団)から、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分離する効率を引き出す方法であることである。様々な実験および特性評価(又はキャラクタリゼーション)の方法の詳細は、この明細書の以下のセクションでさらに説明する。
【0053】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、グラフェンシートをシームレスにロールしたもの(又は継ぎ目なく巻き上げたもの)であり、ナノスケールの寸法(又は大きさ又は次元又はディメンション)の直径を有し、数ナノメートル(nm)から数十ミクロン(μm)の範囲の長さを有するものである。所定の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、ロール・アップのベクトルおよび最終の直径に依存して、光電子的な挙動および電子的な挙動(すなわち、半導体性または金属性)を示す。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のラボ・スケールおよび/またはプロダクション・スケールの合成に関して、様々な合成方法(例えば、レーザー蒸着法、アーク放電、化学気相成長法(CVD)、高圧一酸化炭素(HipCO)、および燃焼)が採用されている。触媒金属およびチューブ状でない(又はノン・チューブの)炭素不純物の性質は、それぞれの方法によって、大きく変化する。半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)および金属性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の相対比も方法に依存して変化する。概して、ほとんどの方法による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の気相合成法では、半導体性のタイプ:金属性のタイプの相対比が2:1になる。この明細書の全体を通して、ナノチューブ、CNT、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(単数または複数)などの用語は、合成方法、不純物の性質、直径または長さの分布にかかわらず、単層のカーボンナノチューブを指す。
【0054】
本開示に記載されるような様々な実施形態において、チェイン・ストッパを利用して、超分子ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)および重合度を制御した。それによって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)(又はSWCNTソーティング)を改善した。NMR分光法およびモデリングを使用することによって、このような超分子ポリマーがクロロホルム中でリング・チェインの平衡((又は環-鎖の平衡)を示すことを決定した。さらに、コンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)の分布が、チェイン・ストッパによって緩和され得ることが決定された。SAXSおよびUV-vis分光法(又は紫外・可視の分光法)を使用することによって、トルエン中においてもリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)が起こることも見出した。なお、トルエンは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)(又はSWCNTソーティング)に用いられる溶媒である。ストッパを添加することによって、選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の純度または特性を犠牲にすることなく、選別収率(又はソーティング・イールド)を2倍にできることが実証された。
【0055】
本開示に示される実験的な観察に基づいて、様々な追加の実施形態が含まれる。かかる実施形態は、慎重に選択される不純物の意図的な添加によって、出発(又はスターティング)のポリマー・ストックの選択性および/または半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を高めるためのものである。限定されないが、このような添加は、分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の選択性(又はセレクティビティ)および/または効率(又はエフィシエンシー)を高めることを目的とするものである。このような添加は、出発(又はスターティング)のポリマー・ストックの平均分子量および/または多分散度(又は多分散性又はポリディスパーシティ)をシフトさせることによって、あるいは、出発(又はスターティング)のポリマー・ストックの構造形態を変更(又はモディファイ)することによって、またはそれらの任意の組み合わせによるものである。慎重に選択される不純物分子または列挙された他の化合物を、そのような故意に基づいて、制御された量で添加することは、この明細書において、「エンド・キャップ部位」または「エンド・キャップ剤(又はエンド・キャッピング剤)」または「エンド・グループ・分子(又はエンド・グループ・モレキュラ)」または「エンド・グループ部位」または「化学添加物(又はケミカル添加剤又はケミカル・アディティブ)」または「添加剤(又はアディティブ)」または「ストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)」またはストッパまたは「スパイク剤(又はスパイキング剤)」の添加などと様々に呼ばれている。この明細書の全体を通して、互換的に使用されている用語は、すべて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の任意の段階(又はステージ)の間において、このような添加のプロセスは、単に「スパイク(又はスパイキング又は添加)」と称することができる。
【0056】
本開示に示される実験的な観察に基づいて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)の分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の任意の段階において、様々なストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)を分離混合物(又はセパレーション混合物又はセパレーション・ミクスチャ)に添加することができる。そうすることで、純度の向上とともに、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のより多くのフラクション(又は割合)をもたらす分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の選択性(又はセレクティビティ)および/または効率(又はエフィシエンシー)を改善する(又は高める又は向上させる)。このような添加剤は、超分子ポリマーの部位に類似する分子構造に限定されるものではない。むしろ、かかる構造から大きく逸脱する有機分子構造であってよい。必要に応じて、添加剤(又はアディティブ)は、無機の複合体(又はコンプレックス)(又は無機錯体)または有機金属の複合体(又はコンプレックス)(又は有機金属錯体)を含んでよい。かかる添加剤は、水素結合した超分子ポリマーを切る(スライス)または再結合(又はリコンビネーション)することができ、平均分子量、多分散度(又は多分散性又はポリディスパーシティ)および/または構造のコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)をシフトさせることができる。
【0057】
さらに、好ましくは、所定のキラリティ(n,mのインデックス(又は指数))を有する1本または2本または数本の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分離するために、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の任意の段階(又はステージ)において、分離混合物(又はセパレーション混合物又はセパレーション・ミクスチャ)に様々なストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)を添加することができる。このような添加剤は、超分子ポリマーの部位に類似する分子構造に限定されるものではない。むしろ、かかる構造から大きく逸脱する有機分子構造であってよい。必要に応じて、添加剤(又はアディティブ)は、無機の複合体(又はコンプレックス)(又は無機錯体)または有機金属の複合体(又はコンプレックス)(又は有機金属錯体)を含んでよい。かかる添加剤は、水素結合した超分子ポリマーを切る(又はスライス)または再結合(又はリコンビネーション)することができ、平均分子量、多分散度(又は多分散性又はポリディスパーシティ)および/または構造のコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)をシフトさせることができる。
【0058】
(0089)
図1に示す化合物1は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をエレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)で分離するために使用される超分子(又はスプラモレキュラ)のモノマー単位(又はモノマー・ユニット)である。化合物1は、中央(又はセンター)にフルオレンを含み、さらに2つの隣接している水素結合部位(又は2つの側方の水素結合部位)を含んで成る。中央のフルオレン単位(又はフルオレン・ユニット)(本開示において「単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選択ユニット(又はSWCNTセレクティング・ユニット)」と呼ばれているものである)は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)との主要な相互作用(又は最初の相互作用)を提供するものであり、金属性または半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と選択的に相互作用する能力を提供するものと理解されている。フルオレンのいずれかの側部(又はサイド)にある水素結合部位(本開示において「重合基(又はポリメリゼーション・グループ)」と呼ばれるもの)は、環境に基づいて、重合(又はポリメリゼーション)または脱重合(又は解重合又はデポリメリゼーション)する能力、さらに選別(又はソーティング)が達成されると、タイプ(又は種類又は型)によって分離される単層カーボンナノチューブ(SWCNT)から分離され得る能力を超分子(又はスプラモレキュラ)に提供する。最後に、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選択ユニット(又はSWCNTセレクティング・ユニット)ならびに重合基に含まれるアルキル鎖(又はアルキル・チェイン)は、トルエンなどの溶媒に対してポリマー/モノマーに望ましい溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)の特性を与える。かかる基は、「可溶化基(又は可溶性基又はソリュビライジング基)」と呼ばれるものである。したがって、以下の実施形態では、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分離するために、使用される超分子ポリマーの任意のストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)あるいはモノマーが有する上記3つの非常に重要な化学的な官能基(又は官能性又はファンクショナリティ)の可能なバリエーションが提示されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、限定するものではないが、
図36は、段落[0058](又は0089)に記載の「単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選択ユニット(又はSWCNTセレクティング・ユニット)」として役立つことができる多くの異なる化学的な部位または官能基を示す。超分子の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選別ポリマー(又は超分子SWCNTソーティング・ポリマー)のモノマーおよび/またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)は、0(又はゼロ)、1、または1以上の多くの様々な部位(又は異なる部位)を、任意の組み合わせ(又はコンビネーション)、任意の順序(又はオーダー)、および任意の連結性(又はコネクティビティ)で使用してよい。そうすることで、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、限定するものではないが、
図37は、段落[0058](又は0089)に記載の「重合基(又はポリメリゼーション・グループ)」として役立つことができる多くの様々な化学的な部位または官能基を示す。限定されないが、重合基の間の相互作用は、キレート化(又はキレーション)、水素結合、パイ(π)・スタッキング、イオン相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、またはこれらの任意の組み合わせ(又はコンビネーション)に基づいてよい。相互作用のモード(又は態様)として、二量体化(又はダイマー化又はダイメリゼーション)、三量体化(又はトリマー化又はトリメリゼーション)、オリゴマー化(又はオリゴメリゼーション)、または重合体化(又はポリマー化又はポリメリゼーション)、およびこれらの変換の逆の変換(又はトランスフォーメーション)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、環境のコンディション(又は条件又は状態)における変化から生じるものである。かかる環境のコンディション(又は条件又は状態)として、pH、温度、光への曝露または光が存在しないこと(又は不在又は非存在)、超音波処理(又はソニケーション)または音への曝露、電圧差への曝露、および/または特定の化学的な添加剤(又は化学添加剤又はケミカル添加剤又はケミカル・アディティブ)または溶媒への曝露が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
いくつかの実施形態において、限定するものではないが、
図38は、段落[0058](又は0089)に記載の側鎖(又はサイド・チェイン)または「可溶化基(又は可溶性基又はソリュビライジング・グループ)」として役立つことができる多くの様々な化学的な部位または官能基を示す。エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)によって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を選別(又はソーティング)するために使用されるマクロモレキュラ・エンティティのストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)および/またはモノマー単位(又はモノマー・ユニット)において、0(又はゼロ)、1、またはそれ以上の多くの様々な部位、あるいは官能基(又は官能性又はファンクショナリティ)が図に示すものに類似する部位を、単独または任意の組み合わせ(又はコンビネーション)、および任意の順序(又はオーダー)で使用してよい。それにより、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用するために望ましい溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)の特性を与えることができる。他の可溶化基として、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素および硫黄)を挙げることができる。
【0062】
いくつかの実施形態において、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のタイプ(又は種類又は型)の分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)は、外部の添加剤(又はエクスターナル・アディティブ)を含むことができる。外部の添加剤は、必ずしも、段落[0058](又は0089)に記載のストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)および/またはモノマー分子(モノマー・モレキュラ)の構造(又はストラクチャ)の上記3つの機能部分(又はファンクショナル・パート)に関連するものではない。外部の添加剤として、酸、光酸発生剤(又はフォトアシッド・ジェネレータ)、塩基、光塩基発生剤(又はフォトベース・ジェネレータ)、溶媒、または他の分子(π系(又はπシステム又はパイ・システム)または何らかの水素結合能力を有する分子)が挙げられ得るが、これらに限定されるものではない。このような添加剤は、それら自体が、エンド・キャップ剤(又はエンド・キャッピング剤)として機能してよい。限定するものではないが、このような添加剤は、製剤(又は調製物又は処方物又はフォルムレーション)の全体の溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)との相互作用、あるいは単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選別モノマー(又はSWCNTソーティング・モノマー)またはエンド・キャップ剤(又はエンド・キャッピング剤)のそれ自体または互いとの相互作用に作用してよい(又は影響を与えてよい)。このような添加剤は、外部の刺激に対して望ましい方法で応答することができる。外部の刺激として、光、熱、振動(又はバイブレーション)、pH、電圧差、および/または特定の化学的な添加剤(又は化学添加剤又はケミカル添加剤又はケミカル・アディティブ)もしくは溶媒への曝露が挙げられるが、これらに限定されるものではない。限定されるものではないが、このような可能性のある添加剤のいくつかの例を
図39に示す。
【0063】
いくつかの実施形態において、ストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)を含む単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選別ポリマー(又はSWCNTソーティング・ポリマー)の製剤(又は調製物又は処方物又はフォルムレーション)は、1以上のモノマーの構造および/または1以上のストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)の構造から構成されてよい。これは、超分子ポリマー(又はスプラモレキュラ・ポリマー)の選択性および/または選別効率(又はソーティング・エフィシエンシー)を向上させることができる(又は高めることができる)。
【0064】
いくつかの実施形態において、超分子SWCNTソーティング・ポリマー(又は超分子・単層カーボンナノチューブ・選別ポリマー)および/またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)の種類(又はスピーシーズ)は、立体異性体であってもよいような方法で構成されてよい。立体異性体の基は、超分子ポリマーの選択性(又はセレクティビティ)および/または選別効率(又はソーティング・エフィシエンシー)を高めるために、上記の任意の部位、または上記の部位の連結部(又はコネクティビティ)に含まれてよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、SWCNTソーティング超分子ポリマー(又は単層カーボンナノチューブ選別超分子ポリマー)のモノマーおよび/またはストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)は、超分子ポリマーの選択性(セレクティビティ)および/または選別効率(又はソーティング・エフィシエンシー)を高めることができるディレクショナリティ(又は方向性)を当該ポリマーが有することができるように構成されてよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、ストッパ分子は、超分子ポリマーを必要とすることなく、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)のための選択性(又はセレクティビティ)および/または選別効率(又はソーティング・エフィシエンシー)を実証することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選別超分子ポリマー(又はSWCNTソーティング超分子ポリマー)の性能(又はパフォーマンス)は、最適な性能(又はパフォーマンス)を達成するまで、バッチにストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)を部分的に添加することによって、バッチごとに基づいて、最適な性能(又はパフォーマンス)まで、再現性よく較正(又は調整又はキャリブレーション)を行うことができた。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)選別超分子ポリマー(又はSWCNTソーティング超分子ポリマー)の合成収率が高いことは、NMRによる高い純度と関連付けることができる。このことについて、性能(又はパフォーマンス)の低さと相関することが示されている。合成収率が高いことと、性能(又はパフォーマンス)が高いことは、ともに望ましいことである。高収率を有するバッチは、ストッパ分子(又はストッパ・モレキュラ)でスパイク(又はスパイキング又は添加)することによって、高性能にまで較正(又は調整又はキャリブレーション)することができるため、このアプローチによって、商品価値をさらに高めることができる。また、このアプローチは、バッチごとの均一性を確保する上でも重要であってよい。
【0068】
当業者は、慣用的な実験をわずかに用いることによって、本開示に記載される特定の実施形態に対する多くの等価体(又は均等物)を認識するか、または確認することができる。そのような等価体(又は均等物)は、本発明の範囲内にあり得ることが意図されている。
【0069】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、さらに説明されている。
【実施例】
【0070】
(実施例)
本発明のより完全な理解を促進するために以下に実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を製造および実施する例示的な態様(又はモード)を説明するのに役立つ。しかし、本発明の範囲は、かかる実施例に開示された具体的な実施形態に限定して解釈されるべきでない。かかる実施例は、例示に過ぎない。
【0071】
図1に超分子ポリマーのモノマー単位(又はモノマー・ユニット)についての合成スキームを示す。詳細な合成の方法については、Pochorovski らによる H-Bonded Supramolecular Polymer for the Selective Dispersion and Subsequent Release of Large-Diameter Semiconducting Single Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 4328-4331に記載されている。
【0072】
(0103)
上記の文献に記載の手順に従って、様々なバッチ(又は異なるバッチ)のポリマーを様々なバッチ・サイズ(又は異なるバッチ・サイズ)で合成した。本研究の一部として使用される1つの具体的な例において、モノマーのハーフ・グラム・バッチを以下のようにして合成した。付された番号は、
図1に示す分子構造に対応するものである。
【0073】
化合物11の合成
2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(13.89g、111mmol)およびN-ヨードスクシンイミド(25g、111mmol)をアセトニトリル(334mL)中で12時間にわたって80℃で加熱した。室温まで冷却した後、沈殿物を濾過して集め、化合物11(25.38g)をオフホワイトの固体として得た。
【0074】
化合物5の合成
2-アミノ-5-ヨード-6-メチルピリミジン-4(3H)-オン(11)(12.4g、49.4mmol)を乾燥THF(500mL)に懸濁させた。ドデシルイソシアネート(20.2mL、84.0mmol)を加え、8日間にわたって90℃で混合物を撹拌した。混合物を25℃に冷却し、生成した沈殿物を濾取し、CH2Cl2で洗浄して、化合物5を白色固体として得た(21.247g、93.1%)。
【0075】
化合物2の合成
化合物5(4.0g、8.7mmol)、[Pd(PPh3)2Cl2](304mg、433mmol)および2,6-ジ-t-ブチルフェノール(37mg、0.17mmol)をトルエン(60mL)に溶解させた。トリブチル(ビニル)スタンナン(3.0mL、10mmol)を添加した。混合物を脱気し、16時間にわたって100℃で加熱した。混合物を綿(又はコットン)のプラグで熱時濾過し、次いで、セライトで熱時濾過した。得られた黄橙色の溶液を25℃まで冷却すると、結晶が生成した。生成した結晶を濾取し、少量のトルエンで洗浄し、乾燥させて、化合物2を白色固体として得た(0.9g、29%)。
【0076】
(0107)
化合物1の合成
化合物2(0.7g、1.93mmol)およびジヨードフルオレン8(0.655g、0.86mmol)をDMF(41mL)およびTEA(12mL)の混合液にN2雰囲気下で懸濁させた。混合物を脱気し、[Pd(AOc)2](19.7mg、0.086mmol)およびトリ(o-トリル)ホスフィン(53.43mg、0.173mmol)を加えた。16時間にわたって95℃で混合物を撹拌した後、グラスウールで熱時濾過した。明るいオレンジ色の溶液を減圧下で濃縮した。残った固体をCHCl3(28mL)/TFA(0.411mL)に溶解し、MeOH(50mL)で沈殿させた。沈殿物を濾取し、MeOHで洗浄した。この再沈殿の操作をさらに2回以上繰り返し、化合物1を黄色固体として得た(0.485g、収率25%)。
【0077】
超分子ポリマー(又はスプラモレキュラ・ポリマー)のモノマー単位(又はモノマー・ユニット)の特性評価(又は特徴付け又はキャラクタリゼーション)の詳細な方法は、Pochorovskiらによる文献(H-Bonded Supramolecular Polymer for the Selective Dispersion and Subsequent Release of Large-Diameter Semiconducting Single Walled Carbon Nanotubes, J. Am. Chem. Soc. 2015, 137, 4328-4331(その全体は、参照により、本開示に組み込まれている))に記載されている。様々なバッチ・サイズ(又は異なるバッチ・サイズ)で合成した様々なバッチ(又は異なるバッチ)のポリマーについて、上記の文献に記載の手順に従って、特性評価(又は特徴付け又はキャラクタリゼーション)を行った。本研究の一部として使用される1つの具体例において、典型的なポリマーサンプルは、以下のように特徴付けられている。
【0078】
1H NMRスペクトルは、Jeol 300 MHz NMRを用いて、298Kで記録した。内部基準として、重水素化したクロロホルムおよび少量のトリフルオロ酢酸を使用した。
1H NMR: CDCl
3/TFA (
図2参照)δ=0.53-0.74 (m, 4H), 0.86 (dt, J=13.1, 7.0, 12H), 0.96-1.54 (m = 72H), 1.72 (s, 4H), 1.95 (d, J=31.6, 4H), 2.49 (s, 6H), 3.33 (s, 4H), 6.98 (d, J=16.4, 2H), 7.40 (s, 2H), 7.47 (s, 2H), 7.64 (d, J=8.3, 2H), 7.81 (d, J =14.9, 2H).
【0079】
実験の別のセットでは、異なるバッチ(ポリマーP1-3、ポリマーP1-4、ポリマーP1-7、およびポリマーP2-6)を合成する目的で、段落[0072]~[0076](又は0103~0107)に記載のプロセスまたはそれに近い変形(又はバリアント)を用いて、同じポリマーの4つのバッチを合成し、NMRスペクトルによって、十分に特性評価(又は特徴付け又はキャラクタリゼーション)を行った。
【0080】
さらに別のセットの実験において、様々なバッチの超分子ポリマー(ポリマーP1-3、ポリマーP1-4、ポリマーP1-7、およびポリマーP2-6)の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を、以下に記載する抽出プロセス(又はエクストラクション・プロセス)によって決定した。各ポリマーの30mgのサンプル(又は試料)を窒素下、20分間のバス・ソニケーションを介して、ダスト・フリーのトルエン(45mL)に溶解させた。さらに、ダスト・フリーのトルエン(5mL)および単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(生成したままの状態)(17.5mg)を溶液に加え、500RPMで5~10分間にわたって撹拌した。この溶液を、窒素下、チルド・ウォーター・バスで、直径1/2インチのティップを用いて、30%の振幅に設定し、30分間にわたってプローブ・ソニケーションを行った。その後、溶液を17,000RMPで42分間にわたって遠心分離し、琥珀色の上清をデカントした。
【0081】
4つのケースのすべてにおいて、トルエン中で分離した単層カーボンナノチューブ(SWCNT)抽出物のUV(又は紫外)-Vis(又は可視)-NIRの吸収スペクトルを、Shimadzu UV-Vis-Spectrophotometer(Model UV-1601 PC(波長範囲:190nm~1100nm、スペクトルバンド幅:2nm、波長精度:0.5nm))を使用して記録した。
図3にスペクトルのトレースを示す。分離された半導体性のSWCNTの濃度(最終抽出物中)は、それぞれのケースにおいて、波長1060nmに最も近いピークの吸光度を用いて測定した。それによって、分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を定量化した。所定のセットの条件下において、この吸光度の数値が高いほど、比例して、使用したポリマー・バッチの分離効率は高いと考えられる。
【0082】
分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)の顕著な差の原因を理解するために、さまざまな要因(又はファクター)(例えば、スターティング・ポリマー・ストックの相純度(又はフェーズ・ピュアリティ))を調べた。ポリマー合成の最終段階(又は最終工程)では、生成物1分子あたり、2つのカップリング(反応)が必要であることから、不純物として中間体A(
図4)が得られる可能性が理論的にはある(反応が完結していない場合)。また、金属を媒介するカップリング反応では、共通する副反応として、還元的な脱ハロゲン化が起こる。また、所望のクロスカップリング(反応)の前に還元的な脱ハロゲン化が進行すると、不純物分子B(
図4)が生成することもある。このような種類の不純物は、分子内に存在する異なるプロトン(H)に由来するシグナルを追跡(又はトラッキング)することで、NMRによって定量化できる可能性がある。以下の段落において、今回の実験のセットに使用した手順を説明する。
【0083】
(0114)
様々なポリマー・バッチ(P1-3、P1-4、P1-7、およびP2-6)の
1H-NMRスペクトル(トルエン中、TFAと混合したもの)を前述のように記録し、慎重に解析した。
図5は、例示として、分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)の観点から、最も大きな差を示した化合物P2-6と化合物P1-3の1-D
1H NMRスペクトルを示している。末端基部位(又はエンド・グループ部位又はエンド・グループの部分)(分子構造Aおよび/またはB)に由来するプロトン(H)に帰属すると考えられる重要なNMRの特徴(又はフィーチャ)を縦線で示している(又はマーキングしている)。
【0084】
(0115)
図5に示すNMRスペクトルは、TFAによって脱重合(又は解重合又は単量体に分解又はデポリメリゼーション)された超分子ポリマー・バッチのものである。超分子ポリマーのモノマーとエンド・キャップ不純物のNMRスペクトルは、似ていることがあり、エンド・キャップ不純物は、複数存在することもあり得るので(
図4のAとBなど)、シグナルが重なる場合(又はオーバーラップする場合)があってよい。それでも、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離(又はセパレーション)に使用した超分子ポリマーのサンプルのモノマー中の末端基(又はエンド・グループ)の特徴(又はフィーチャ)の相対的な定量的な尺度として、各バッチの芳香族の特徴を積分した総和に対する、末端基(又はエンド・グループ)の特徴または不純物の特徴の積分した強度の総和の比(%として)を決定した。
【0085】
図6は、分析した4つのサンプルのすべてについて、半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)と、末端基部位/不純物部位の濃度との相関を示すものである。驚くべきことに、または直感に反して、UV(又は紫外)-vis(又は可視)-NIRの吸光度によって決定されるようなポリマーの分離効率は、予想通り、スターティング・ポリマー・ストックの純度に直接的に比例するのではなく、ポリマー中に存在する末端部位または不純物の濃度(NMRによって決定したもの)の相対量に直接的に比例することが判明した。
【0086】
ポリマーの平均分子量に反映されるスターティング・ポリマー・ストックの鎖長(又はチェイン・レングス)の分布が分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)に及ぼす役割について、さらに別のセットの実験で研究した。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離効率が異なる2種類の異なるサンプル(P1-3およびP2-4;分離効率は、P2-6に近いものである)のポリマー分子量分布を、700 MHz Bruker Avance Nuclear Magnetic Resonance spectrometer を用いて、298Kで2D DOSY NMR(Diffusion Ordered Spectroscopy)分光法を用いて研究した。2つのバッチについて、磁場の勾配(又はグラジエント)の関数としてのNMRシフトにおける変動(又はバリエーション)を決定した。標準的な方法を用いて得られるデータから2つのポリマーの拡散係数(又は拡散定数又はディフュージョナル・コンスタント)を導いた。
図7は、各ポリマーのメチル基の化学シフトに対応する領域を拡大したものを示す(化学シフト=2.65ppm,6H((2つのメチル基に由来する)、挿入図の分子構造の丸で囲んで示した部分)。
【0087】
分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)のより大きいポリマー・バッチP1-3は、P2-4と比較して、拡散定数がより大きいことを示し、平均分子量が相対的により小さいことが示唆された。この観察によって、超分子ポリマーの平均分子量が、ポリマーの分離効率を上げるうえで重要な役割を果たすことができ、超分子ポリマーの平均分子量を変更(又は修正又は修飾)および制御(又はコントロール)できるという考え(又はアイデア)が中心となる。
【0088】
上記の実験による観察から、末端基部位、あるいは末端基部位の構造に類似する分子を意図的な不純物として導入することができ、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のタイプ(又は種類又は型)の分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)を向上させることができることが示唆された。このことを確認するために、別々のセットの実験において、実験の2つの別々のセット(バッチ1およびバッチ2)において、通常の分離時に意図的な不純物の添加物として化合物C(
図8の挿入図として示すもの)を使用した。エンド・キャップ化合物(C)を分離混合物(又はセパレーション・ミックス)に添加すると、いつも、分離効率が顕著に向上した。また、エンド・キャップ試薬Cでは、その効果は、平坦(又は頭打ち又はプラトー)となり、Cの添加において、ある濃度以上では、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)分離ポリマー(又はSWCNTセパレーション・ポリマー)の性能(又はパフォーマンス)は上昇し続けないようになることが観察された。さらに、異なる出発の性能(又はスターティング・パフォーマンス)の異なるバッチでは、化合物Cをスパイク不純物(又はスパイキング不純物)として添加した場合の分離効率のピークが異なることが確認された。これは、AやBといった他のエンド・キャップ試薬の量が変動することができて、異なるバッチで異なる濃度で既に存在するためであると考えられる。AやBなどの他のエンド・キャップの力価(又はポテンシー)がCの力価よりも大きいか、または異なる場合、Cを添加したことによる影響や性能(又はパフォーマンス)の可能なプラトーが変化したり、影が薄くなったりする可能性がある。
【0089】
上記の効果に対する一つの可能性のある説明として、エンド・キャップ試薬(又はエンド・キャッピング試薬)として、化合物C(
図8参照)とは対照的に化合物B(
図4参照)を使用すると、特に、より低分子量においてフルオレン(fluorene)のサブユニットの相対量が増加すると考えられる(可視化(又はビジュアライゼーション)については、
図9を参照のこと)。半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)と相互作用して「選択(又はセレクト)」する部位としてのフルオレンの目的の役割に基づくと、Bを含むか、またはBをスパイク(又はスパイキング又は添加)した超分子ポリマーの性能のポテンシャルは、Cを含むか、またはCをスパイク(又はスパイキング又は添加)した超分子ポリマーと比較して、著しく改善される可能性がある。このようにして、フルオレンの相対的な存在は、Cではなく、Aを使用することで増加する可能性がある(
図4参照)。
【0090】
平均分子量および/または多分散度(又は多分散性又はポリディスパーシティ)の変更(又は修正又は修飾)に加えて、これは、スターティング・ポリマー・ストックの立体特性(又はステリック・プロパティ)、電子特性(又はエレクトロニック・プロパティ)、動的挙動(又はキネティック・ビヘイビア)、または地形学的整列(又はトポグラフィカル・アライメント)を改善すること(又は向上させること)によって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の分離プロセス(又はセパレーション・プロセス)の選択性(又はセレクティビティ)および/または効率(又はエフィシエンシー)を高めるのに役立つ場合がある。あるいは、スターティング・ポリマー・ストックの溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)(到達可能な濃度)を増加させることによって、あるいはそれらのいずれかの組み合わせ(またはコンビネーション)によって、先の段落で説明したように、ポリマー・ストックをエンド・キャップ/ストッパの分子でスパイク(又はスパイキング又は添加)することは、超分子ポリマーが溶液中に存在できる構造形態を制御(又はコントロール)するために使用することができる。また、リング(又は環)の形態とチェイン(又は鎖)の形態との間の平衡を所望の方法でシフトすることは、より高い収率(又は収量又はイールド)を達成するための分離効率(又はセパレーション・エフィシエンシー)の制御(又はコントロール)、あるいは、様々なタイプ(又は種類又は型)の単層カーボンナノチューブのスターティング・ポピュレーション(又は出発集団)の中から、所定のキラル・タイプ(n,m)のナノチューブ、または所定の直径範囲、または選択的な直径のナノチューブを選択的に濃縮(又は豊富化又はエンリッチ)することにも使用することができる。実験例、および特に超分子ポリマーのリング・チェイン構造(環-鎖の構造)の制御に関連する様々な制御因子(又はコントロール・ファクター)および実施形態は、以下の段落で説明している。
【0091】
超分子ポリマーは、リング・チェイン(又は環-鎖)の平衡を示す。ひいては、チェイン・ストッパの添加量によって、ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)を調整(又はチューニング)することができるため、順次、使用することができ、選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の純度または特性を犠牲にすることなく、選別収率(又はソーティング・イールド)を向上させることが可能である。その模式図を
図10に示す。具体的な実施形態では、2-ウレイド-4-ピリミドン(UPy)を組み込んだ水素結合ポリマーを使用した。このモノマーは、2つのUPyユニット(可逆的な水素結合(又はH結合)を可能にするもの)でフルオレン部位(半導体性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)に選択的であることが知られている部位)を挟んで構成されている。ストッパは、単官能性のUPyユニットから構成されており、モノマーと結合することができ、それにより、モノマーの自己会合を防ぐことができる。UPy系のシステムでは、リング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)の存在が十分に確立されているが、リング(又は環)とチェイン(又は鎖)とのプロポーション(又は割合又は比率)は、様々な要因(又はファクター)(例えば、モノマーの長さ、モノマーの剛性(又はリジディティ)、パイ・パイ・スタッキング(又はπ-πスタッキング))に依存することができる。
図11に、上述のリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)の模式図を示す。
【0092】
溶液中の超分子ポリマーのサイズ(又は寸法又は大きさ)を決定するために、拡散秩序NMR分光法(又はディフュージョン・オーダードNMRスペクトロスコピー)(DOSY)の詳細な研究を開始した。この方法は、溶液中の種(又は化学種又はスピーシーズ)の拡散係数(又はディフュージョン・コエフィシエンシー)を測定することができ、その拡散係数は、種(又は化学種又はスピーシーズ)の流体力学的な半径に逆に相関するものである。DOSYは、CDCl
3中で行われ、モノマー濃度の関数としての拡散係数は、Stejskal-Tanner の等式(Stejskal, E. O.; Tanner, J. E. Spin Diffusion Measurements: Spin Echoes in the Presence of a Time-Dependent Field Gradient. J. Chem. Phys. 1965, 42 (1), 288-292 (その全体は、参照により、本開示に組み込まれている)に記載されているような等式)を用いて抽出されたものである。
図12に結果を示す。2つの異なる領域(又はレジーム)が、c=約10mMで遷移(又はトランジション)することが観察できる。これは、他の超分子システム(又は超分子系)におけるリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)の観察と一致する。ここでは、臨界モノマー濃度以下(リング様のコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)が支配的となる)と、臨界濃度以上(リング(又は環)とチェイン(又は鎖)の両方が存在する)が存在することになっている。
【0093】
さらに、このシステム(又は系)におけるリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)の存在を確認するために、NMRデータのベイジアンDOSY変換(又はトランスフォーメーション)を行った。これは、Cobas, C.; Seoane, F.; Sykora, S. Global Spectral Deconvolution (GSD) of 1D-NMR Spectra. Stans Libr. 2008, No. Volume II(その全体は、参照により、本開示に組み込まれている)に記載されているものである。これは、多成分系(マルチスピーシーズ・システム)における拡散係数(又は拡散定数)の分布を可視化(又はビジュアライゼーション)する技術である。濃度c=約5mMのサンプルでは、
図13に示す通り、1種類しか存在しないことを示す単一のピークのみが見える。一方、c=約15mMのサンプルでは、二峰性の分布が観察され、サイズの異なる2種類の共存が示唆されている(
図14)。これらの結果は、臨界濃度以上の濃度でなければチェイン(又は鎖)は存在することができないというリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)に関する文献報告とよく一致する。
【0094】
システム(又は系)におけるリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)の存在をさらに確認するために、熱力学モデル(又はサーモダイナミック・モデル)を適合させた。熱力学モデルは、Paffen, T. F. E.; Ercolani, G.; de Greef, T. F. A.; Meijer, E. W. Supramolecular Buffering by Ring-Chain Competition. Journal of the American Chemical Society 2015, 137, 1501-1509(その全体は、参照により、本開示に組み込まれている)に記載されている。この熱力学モデルは、異なる濃度におけるリング(又は環)およびチェイン(又は鎖)の種(又は化学種又はスピーシーズ)のポピュレーション(又は集団)を計算するために使用されている。モデリングのパラメータである有効モル濃度(又はエフェクティブ・モラリティ)(EM
1)を1mMに設定した。この値は、ひずんだUPy系のリング(又は環)に関連する値である。このモデルは、リング(又は環)とチェイン(又は鎖)のフラクション(又は割合又は比率)がc=約2.5mMで等しくなることを予測している(
図15)。このことは、クロロホルム中での臨界濃度がc=約10mMで発生するという実験結果(
図12)にきちんと従っている。
【0095】
EM
1=1mMがこの超分子ポリマーを正確に説明していることを確認するために、リング(又は環)とチェイン(又は鎖)のポピュレーション(又は集団)について、EM
1値の範囲を再計算した。臨界濃度のEM
1への依存性は、
図16に示す通りであり、広い範囲のEM
1値に対して、桁違い(又はオーダー・オブ・マグニチュード)であることが示されている。
【0096】
主題の発明に関連するさらに別の実施形態では、以下にて説明する通り、チェイン・ストッパを使用することによって、ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)を制御(又はコントロール)した。チェイン(又は鎖)がサンプル中に存在することを確実にするために、高いモノマー濃度、c=約15mMを使用した。
図14は、拡散軸に沿って、二峰性の分布を示し、リング(又は環)とチェイン(又は鎖)とが共存していることが確認されている。一方、
図17は、拡散軸に沿って、3つの明確なピークを示し、拡散係数の高い方から低い方の順番で1、2、3とラベル(又はラベリング)されている。1および2でラベリングされた種(又は化学種又はスピーシーズ)は、6ppm付近に
1Hの共鳴を示し、2.32ppmにアリールメチルプロトンに相当するピークを示す。これらの共鳴は、いずれも、ストッパに特徴的なものである。このことから、3でラベル(又はラベリング)された種(又は化学種又はスピーシーズ)は、ストッパ分子を含まず、それ故、超分子ポリマーのリング(又は環)に起因し得ることが示唆されている。
【0097】
もちろん、1および2でラベル(又はラベリング)された種(又は化学種又はスピーシーズ)は、ストッパ分子を含んでいるはずである。しかし、種(又は化学種又はスピーシーズ)1は、モノマーに関連する1H共鳴を全く含まないことから、種(又は化学種又はスピーシーズ)1は、過剰で結合していないストッパ分子によって形成されたストッパ二量体(又はストッパ・ダイマー)を表すことが示されている。このような見地は、さらに、種(又は化学種又はスピーシーズ)1が最も高い拡散係数を有するものであり、その一方で、モノマーを含む種(又は化学種又はスピーシーズ)(2および3)が、かなり遅く拡散するという事実からも支持されている。種(又は化学種又はスピーシーズ)2は、モノマーおよびストッパ分子を含むことから、ストッパでキャップ(又はキャッピング)されたチェイン(又は鎖)を示す可能性が最も高い。これらの知見から、ストッパは、ポリマー鎖(又はポリマー・チェイン)を確かにキャップ(又はキャッピング)することができ、ストッパの存在によって、リング(又は環)、チェイン(又は鎖)、およびストッパ二量体(又はストッパ・ダイマー)を共存させることを示すことがわかった。
【0098】
ストッパの濃度またはモル分率(又はモル・フラクション)が超分子ポリマーのサイズ(又は寸法又は大きさ)に与える影響を決定するために、ストッパのモル分率がより低いサンプルでDOSYを行った(
図18、xストッパ=0.17(0.72ではない))。
図17と同様に、モノマーおよびストッパに特徴的な
1H共鳴が一方の種(又は化学種又はスピーシーズ)(この場合は、濃い灰色の種)で観察することができ、この濃い灰色の種は、ストッパでキャップ(又はキャッピング)されたチェイン(又は鎖)であることが示唆されている。薄い灰色の種は、これらの共鳴を含んでいないので、超分子ポリマーのリング(又は環)を構成している。これら2つのサンプルを比較すると、チェイン(又は鎖)は、xストッパ=0.17で最も遅く拡散する種であることを示し、その一方でリング(又は環)は、xストッパ=0.72で最も遅く拡散する種であることを示す。ストッパがリングのサイズ(又は寸法又は大きさ)に影響を与えることは考えにくいので、これはストッパの添加が、超分子システム(又は超分子系)で予想されるように、ポリマー・チェインの重合度をも低下させることを示している。
【0099】
ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)に与える処理温度(又はプロセス温度)の影響を決定するために、温度可変(VT)NMRを実施した。室温で支配的なコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)がリング(又は環)であるように、c=4.1mMという低いモノマー濃度を選択した。室温付近の温度では、7.0ppmのオレフィンのプロトン(H)のピークは、ブロードであるが、温度の上昇または低下とともに、ピークがシャープになる(
図19)。12ppmおよび13ppm付近のダウンフィールドの水素結合(又はH結合)の共鳴も同様の鋭さを示す。DOSYの結果に基づいて、このような現象は、コンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)の変換(又は変化又は交換)に起因している可能性があってよい。ヘテロニュークリア・マルチプル・ボンド・コリレーション(HMBC)分析を利用することによって、7.0ppmの
1Hの共鳴は、H
2ではなく、H
1でラベル(又はラベリング)された原子に帰属された(
図20)。このことは、温度を変化させると、結合Aの回転が促進される(温度が上昇する)か、あるいは凍結される(温度が低下する)ことを示唆している。これにより、順次、NMRスペクトルの取得時のコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)の変換(又は変化又は交換)のタイムスケールが変化し、究極的には、ピークが鋭くなることが観察されることになる。
【0100】
また、コンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)の変換(又は変化又は交換)の可能性は、1D
1H NMRによって支持されている。この目的のために、NMRを用いて、ストッパを含まない臨界濃度を超えるサンプルおよびストッパを含まない臨界濃度未満のサンプルを分析した(
図21、左)。cが臨界濃度未満の場合、7.0ppm付近のピークは、ブロードであるが、cを増加させると、ピークがシャープになり、最終的には、十分に明瞭なダブレットを形成する。これは、超分子ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)が、cの増加とともに、拘束されなくなることを示唆している。このような結果は、DOSYで観察された濃度依存のリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)と定性的に一致する。さらに、ピークは、10mM付近で鋭くなり始め、DOSYの結果と定量的に一致した。
【0101】
臨界濃度よりも低いcのサンプルにストッパ分子を添加した場合、同様にピークが鋭くなること(又はシャープニング)が見受けられた(
図21、右)。ストッパのモル分率(又はモル・フラクション)が低い場合、あるいはストッパが存在しない場合、7.0ppm付近の
1Hピークが極端にブロードになっている。ポリマーが、リング(又は環)に特徴的に拘束されたコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)で存在することを示している。ストッパのモル分率が高い場合、ピークはシャープになり、ポリマーがチェイン(又は鎖)に典型的なフレキシブル(又は柔軟)なコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)をとっていることが示唆されている。さらに、通常、希薄な条件下において、チェイン(又は鎖)は存在しないことから、このことは、ストッパが、臨界濃度未満のモノマー濃度であっても、超分子ポリマーのリング(又は環)が破壊できることを実証している。要するに、これらのNMRの結果は、温度の上昇やチェイン・ストッパの添加によって、コンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)の分布がチェイン(又は鎖)に偏る可能性を示している。
【0102】
これまで、超分子ポリマーの特性評価(又は特徴付け又はキャラクタリゼーション)は、他の一般的な有機溶媒への溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)が低いために、クロロホルム中で行われてきた。しかし、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)は、クロロホルムなどの極性溶媒ではなく、トルエンなどの芳香族溶媒において行われるのが典型的である。このようなことは、極性溶媒によって金属性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の双極子相互作用のスクリーニングから生じるものであり、遠心分離の際に金属性の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の凝集(又はアグリゲーション)を防ぐためであるとしばしば仮定されている。トルエンに対するモノマーの溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)が低すぎることから(<1mM)、NMRまたはレオロジーの詳細な研究は不可能であった。そこで溶液SAXSを用いて、超分子ポリマーのサイズ(又は寸法又は大きさ)をストッパのモル分率(又はストッパ・モル・フラクション)の関数として研究した。
【0103】
SAXSスペクトルは、Igor Proのツー・レベル・ユニファイド・フィット(two-level unified fit)を用いてフィッティングした(
図22)。
図23から、平均回転半径(R
g)は、ストッパの添加にともなって、最初は増加し、その後、減少することが示されている。最初の回転半径(R
g)の増加は、凝集(又はアグリゲーション)の増加に起因するものと考えられ得る。ストッパを添加すると、リング(又は環)は、チェイン(又は鎖)に展開し、チェイン(又は鎖)は、リング(又は環)と比較して、より容易に凝集することができるからである。R
gの減少は、チェイン(又は鎖)の収縮によるものと思われる。また、これらの結果は、トルエン中においても、リング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)が起こっていることを示している。このような結論は、熱力学的なモデリングによって、さらに支持されている。このことは、26mM付近の臨界濃度でのリング・チェインの平衡(又は環-鎖の平衡)が予測されている(
図24)。このことは、トルエンでは、実験的にアクセス可能なすべての濃度において、リング(又は環)が支配的なコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)であることを示唆している。
【0104】
溶液SAXSだけでなく、結合解離(又はボンド・ディソシエイション)の関数として、吸光度の変化を記述するハイパークロミック効果(又はハイパークロミック・エフェクト)も、この系の研究に用いられた。このような効果は、DNAで特によく知られているが、他の超分子系でも観察されている。この分析が有効であることを確認するために、UV-vis(又は紫外-可視)を行って、ストッパとポリマーがUV-vis(又は紫外-可視)のピークを重複(又はオーバーラップ)して有していないことを確認した(
図25)。
図26に示す通り、超分子ポリマーの吸光度は、ストッパのモル分率(又はモル・フラクション)に応じて直線的に増加し、ある特定の地点で頭打ち(又はプラトー)になる。直感的には、ストッパを添加するとポリマー・ストランドが解離して短くなり、溶液が三量体(又はトリマー)(2本のチェイン・ストッパに結合した超分子モノマー)のみで構成されるようになることを示唆している。理論的には、xストッパが0.66のとき、各モノマーに対して、ちょうど2つのストッパ分子が存在するようになる。xストッパ=約0.6で頭打ち(又はプラトー)が始まるので、このことは、今回示したデータとよく一致している。
【0105】
ストッパの高いモル分率(又はモル・フラクション)でポリマーが完全に脱重合(又は解重合又はデポリメライゼーション)していることを確認するために、ストッパのモル分率を変化させたサンプルについて、温度依存性のハイパークロミシティを測定した(
図27)。ストッパの高いモル分率(又はモル・フラクション)では、温度を変化させても吸光度に変化が見られなかったことから、このポリマーは、三量体(又はトリマー)の形態で存在し、それ以上は、脱重合(又は解重合又はデポリメライゼーション)できないことが示唆されている。逆に、ストッパのモル分率が低い場合やストッパが存在しない場合、吸光度は、温度とともに増加する。このような結果は、二量体化定数(又はダイマー化定数又はダイメリゼーション・コンスタント)が一桁違うにもかかわらず、ストッパが両溶媒で超分子重合を阻害し得ることを実証している。
【0106】
また、関連する実施形態として、クロロホルム中でのハイパークロミック効果(又はハイパークロミック・エフェクト)についても試験した。
図26と同様に
図28には、xストッパが0.66までは吸光度が増加し、それ以降は頭打ち(又はプラトー)になることが示されている。このような結果は、ポリマーとストッパとの相互作用が両溶媒で類似していることを示唆しており、クロロホルム中の超分子ポリマーの特性評価(又は特徴付け又はキャラクタリゼーション)から得られる知見は、トルエン中の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)の理解に適用できるものと思われ得る。
【0107】
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)は、確立された手順に従って行われた。つまり、ストッパおよびモノマー(c=0.2mM)を20mLの溶媒に溶解し、次いで、5mgの選別(又はソーティング)されていない単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(アーク放電)と混合して、超音波処理した。かかるセットの実験では、合成の都合に起因して、ビニル基ではなくヨウ化物の部位を有する、わずかに異なるストッパを使用した。選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶液を遠心分離後に回収し、その後、UV-vis(又は紫外・可視)で分析して、収率(又はイールド)および純度(又はピュアリティ)を決定した。純度は、指標φで定義され、φ0.4の値は、純度99%に相当する。
【0108】
図29から、ストッパのモル分率(又はモル・フラクション)が増加しても、純度には顕著な変化はないが、収率は最初に増加し、次に、減少することが示されている。上記で報告したNMR、SAXS、UV-vis(又は紫外・可視)の結果から、ストッパの添加によって、リング(又は環)が展開し、続いて、チェイン(又は鎖)が短くなることが示唆されている。したがって、最初の収率の増加は、チェイン(又は鎖)が単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を効果的に巻き付けることができるのに対し、リング(又は環)はできないことから、チェイン(又は鎖)の形成に起因すると考えられ得る。非常に短いチェイン(又は鎖)は、収率を低下させることが知られているため、結果として続く収率の低下は、チェイン・レングス(又は鎖長)の減少に起因するものと思われる。xストッパ=約0.6では、ストッパのモル分率の関数として、選別収率(又はソーティング・イールド)にそれ以上の変化はなく、これは、
図26において、それ以上のハイパークロミシティが観察できなかった点と一致している。これは、この値のxストッパでポリマーが完全に三量体(又はトリマー)に分解されており、ストッパ二量体(又はストッパ・ダイマー)がそれ自体では単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を選別(又はソーティング)できないため、xストッパ=0.66を超えてストッパをさらに加えても、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別効果には影響がないものと推測され得る。
【0109】
この結論を裏付けるために、クロロホルム中での単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別(又はソーティング)をさらに実施した(
図30)。クロロホルム中での選別(又はソーティング)では、エレクトロニック・タイプ(又は電子タイプ又は電子型)による単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選択的な精製はできないが、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のUV-vis(又は紫外・可視)の吸収ピークを積分して測定した分散収率(又はディスパージョン・イールド)は、ポリマーの単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分散する能力を評価するために使用することができる。その結果、低いストッパのモル分率(xストッパ<0.4)は、積分強度には影響を与えないが、高いモル分率では、xストッパとともに積分強度が増加することがわかった。トルエンでの結果とは異なり、xストッパの値が高くても、低下は、見受けられない。
【0110】
収率(又は収量又はイールド)の単調な増加は、各溶媒に対する単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)の違いに起因してよい。熱力学的な観点から、溶媒和(又はソルベーション)の自由エネルギーは、次のように説明(又は記載)することができる。
【0111】
【0112】
式中、fは、ポリマーで被覆(又はラップ又はラッピング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の表面の割合(又はフラクション)である。
図31は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)/ポリマーの溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)の比(又はレシオ)が異なる溶媒の溶媒和(又はソルベーション)の自由エネルギーを示している。単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)が低い場合(トルエンの場合のように)、溶媒和を生じさせるためには、fの高い値が必要となる。一方、クロロホルムは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶解性(又は溶解度又はソリュビリティ)が中程度であるため、ポリマーの被覆(又はラップ又はラッピング)の要件は、それほど厳しくはない。すなわち、より低い値でも、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の溶媒和(又はソルベーション)が起こり得ることになる。
【0113】
ストッパを添加すると、溶液中のポリマー・チェインの総数は増加するが、その一方で、平均重合度は減少することが予想される。その結果、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、単一の長いポリマーに被覆(又はラップ又はラッピング)されるのではなく、いくつかの小さなオリゴマーによって可溶化され、fのより低い値をもたらす。トルエンの場合、これによって、xストッパの値が高いほど、収率は低下する。しかし、クロロホルムでは、fの値がより低くても、溶媒和(又はソルベーション)が起こり得るため、収率は、溶液中のチェイン(又は鎖)の総数とともに、単調に増加し、xストッパの大きさに比例する。
【0114】
上記で示した実験結果は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の選別効果(又はソーティング・エフェクト)が、選別ポリマー(又はソーティング・ポリマー)のコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)および分子量分布の操作(又はエンジニアリング)によって強化できることを示している。さらに、これらの結果は、チェイン・ストッパの選択に特有なものではない。さらに別の実施形態では、超分子ポリマーを脱重合(又は解重合又はデポリメライゼーション)するために典型的に用いられる分子であるトリフルオロ酢酸(TFA)を少量添加しても、同様の挙動が得られた(
図32)。
【0115】
さらに別の実施形態では、ポリマーのコンフォメーション(又は構造又は形状又は配座)が単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の特性に何らかの影響を及ぼすかどうかを判断するために、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を異なるストッパのモル分率(又はモル・フラクション)で選別(又はソーティング)した。
図33は、様々なストッパのモル分率(又はモル・フラクション)で選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のUV-visのスペクトル(又は紫外・可視のスペクトル)を示している。すべてのスペクトルは、十分によく重なっており、キラル分布に変化がないことを示している。
図34は、選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のAFMの長さヒストグラムを示し、両者の間に顕著な差は見られなかった。
【0116】
選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の電気的な特性(又はエレクトリカル・プロパティ)を調べるために、当該単層カーボンナノチューブ(SWCNT)をチャネル材料(又はチャネル・マテリアル)として用いる電界効果トランジスタ(又はフィールド・エフェクト・トランジスタ)を作製した。
図35に電界効果の移動度(又はフィールド・エフェクト・モビリティ)を示す。電界効果の移動度は、ストッパのモル分率に応じて変化しない。今回示した結果は、ストッパを用いることによって、選別(又はソーティング)された単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の特性に悪影響を与えることなく、選別(又はソーティング)の収率(又は収量又はイールド)を高めることができることを実証している。
【図】
【国際調査報告】