(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】核酸リガンドコンジュゲートおよび細胞への送達のためのその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20230614BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230614BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C12N15/113 Z
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/64
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569012
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2021031903
(87)【国際公開番号】W WO2021231518
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500093834
【氏名又は名称】ザ・ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】ペコット,チャド
(72)【発明者】
【氏名】アザム,サルマ・エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バウワーズ,アルバート
(72)【発明者】
【氏名】フレミング,マシュー・シリル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA54
4H045BA55
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA20
4H045EA28
4H045FA50
4H045FA53
(57)【要約】
本発明は、核酸に連結したリガンドを含むコンジュゲート生成物に関する。本発明は、核酸を細胞へ送達するための方法およびコンジュゲート生成物を使用して疾患を処置するための方法にさらに関する。本発明は、核酸をリガンドにコンジュゲートして本発明のコンジュゲート生成物を形成することを含む、細胞による核酸の取り込みを増大させる方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)上皮増殖因子受容体(EGFR)ターゲティング部分を含むポリペプチド、
b)リンカー、および
c)核酸
を含むコンジュゲート生成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドがGE11を含む、請求項1に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、C末端においてシステイン残基を含むように改変されている、請求項1または2に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項5】
前記リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項6】
前記リンカーがジベンゾシクロオクチン-PEG4-マレイミドを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項7】
前記リンカーが、切断可能なジスルフィド結合または切断不可能なハンドルとコンジュゲートされたヘキシルアミノリンカーである、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項8】
前記リンカーが、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、スクシンイミジル-trans-4-(N-マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートまたはトリエチレングリコールである、請求項1~4のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが前記リンカーに共有結合している、請求項1~8のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが前記システイン残基上のチオール基に共有結合している、請求項9に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項11】
前記核酸がDNAである、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項12】
前記核酸がRNAである、請求項1~10のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項13】
前記核酸が一本鎖である、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項14】
前記核酸が二本鎖である、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項15】
前記核酸が、siRNA、マイクロRNA、shRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、キラーtRNA、ガイドRNA、長鎖非コードRNA、抗miRNAオリゴヌクレオチドおよびプラスミドDNAからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項16】
前記核酸がKRASサイレンシングsiRNAである、請求項1~15のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項17】
前記リンカーが前記核酸に共有結合している、請求項1~16のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項18】
前記核酸が、前記リンカーへの結合部位を提供するように改変されている、請求項17に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項19】
前記核酸が、前記結合部位としてアジド基を含むように改変されている、請求項18に記載のコンジュゲート生成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物および担体を含む組成物。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか1項に記載のコンジュゲート生成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項22】
核酸を細胞へ送達する方法であって、前記細胞を有効量の請求項20または21に記載の組成物と接触させるステップを含む方法。
【請求項23】
前記細胞が、がん細胞である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記がん細胞が、非小細胞肺がん細胞、肺がん細胞、結腸がん細胞、膵がん細胞および血液がん細胞からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、高レベルのEGFRを発現する、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
トランスフェクション試薬を使用することを含まない、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
疾患の処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、前記対象へ治療有効量の請求項21に記載の医薬組成物を投与し、これによって前記疾患を処置することを含む方法。
【請求項28】
前記疾患が、がんである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記がんが、非小細胞肺がん、肺がん、結腸がん、膵がんおよび血液がんからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
トランスフェクション試薬を使用することを含まない、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
細胞による核酸の取り込みを増大させる方法であって、コンジュゲート生成物を形成するために、EGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにリンカーを介して前記核酸をコンジュゲートするステップを含み、ここで、前記細胞がEGFRを発現し、前記細胞による前記核酸の前記取り込みが、EGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにコンジュゲートされていない核酸と比較して増大している、方法。
【請求項32】
前記ポリペプチドが、GE11を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが、C末端においてシステイン残基を含むように改変されている、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項31~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記リンカーが、ポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記リンカーが、ジベンゾシクロオクチン-PEG4-マレイミドを含む、請求項31~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリペプチドが、前記リンカーに共有結合している、請求項31~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが、前記システイン残基上のチオール基に共有結合している、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記核酸がDNAである、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記核酸がRNAである、請求項31~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記核酸が一本鎖である、請求項31~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸が二本鎖である、請求項31~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記核酸が、siRNA、マイクロRNA、shRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、キラーtRNA、ガイドRNA、長鎖非コードRNA、抗miRNAオリゴヌクレオチドおよびプラスミドDNAからなる群から選択される、請求項31~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸が、KRASサイレンシングsiRNAである、請求項31~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記リンカーが前記核酸に共有結合している、請求項31~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記核酸が、前記リンカーへの結合部位を提供するように改変されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記核酸が、前記結合部位としてアジド基を含むように改変されている、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下において、2020年5月13日出願の米国仮出願第63/024,142号の利益を主張し、当該出願の全内容は、参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本発明は、核酸に連結したリガンドを含むコンジュゲート生成物に関する。本発明は、核酸を細胞へ送達するための方法およびコンジュゲート生成物を使用して疾患を処置するための方法にさらに関する。本発明は、核酸をリガンドにコンジュゲートして本発明のコンジュゲート生成物を形成することを含む、細胞による核酸の取り込みを増大させる方法にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の手法を使用して多くの重要ながん標的を阻止することは困難であるため、本発明者らおよび他の研究者らは、RNA干渉(RNAi)を治療手法として使用することを考えた(Pecot et al., Nat. Rev. Cancer 11:59 (2011))。2006年のノーベル賞へとつながった、1998年のRNAiの発見(Fire et al., Nature 391:806 (1998))は、二本鎖RNA(dsRNA)が細胞質内のmRNA配列に結合し、次にRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によってmRNAが分解または翻訳抑制されることをもたらし得ることを明らかにした(Pecot et al., Nat. Rev. Cancer 11:59 (2011))。RNAiの、任意のRNA配列を強力にサイレンシングする能力のために、「新薬開発不可能な」標的をターゲティングするための「治療用RNAi」の使用は、非常に望ましい。本発明者らは、RNAiが突然変異体KRASをターゲティングするために使用され得る実証実験を以前に実証した(Pecot et al., Mol. Cancer Ther. 13:2876 (2014))。
【0004】
RNAiの使用は、多大な可能性を有するが、がん治療のためのオリゴヌクレオチドの送達の成功および効率的な送達には多くの実際的な困難が、立ちはだかっている(Pecot et al., Nat. Rev. Cancer 11:59 (2011))。障害には、血清エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼによる血管内分解、迅速なオリゴヌクレオチドクリアランス、エンドソームエスケープの必要性、ならびに免疫刺激の回避が含まれる。過去数年間にわたり、ターゲティング可能な生体適合性リガンド(例えばアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)をターゲティングするGalNAC)の使用、および最先端の化学修飾siRNA(siR)の使用は、これらの障壁の多くを回避することにおいて一部の成功を示している(Foster et al., Mol. Ther. 26:708 (2018);Nair et al., J. Am. Chem. Soc. 136:16958 (2014))。説明された困難のために、多くの者は、オリゴヌクレオチドを腫瘍へ送達するためのナノ粒子担体の使用を開始しているが、しかしながら、今までのところ、それは臨床的成功にはつながっておらず、がんにおけるナノ粒子媒介オリゴヌクレオチド送達についての、FDAに認可された治療はない。
【0005】
当該技術分野においてなされた進歩にもかかわらず、当該技術分野において、核酸の細胞(例えばがん細胞)への送達を可能にする系の改善についての必要性が存続している。したがって、本発明は、核酸を細胞へ送達するためのターゲティングリガンドを使用する組成物および方法を提供することによって、当該技術分野における欠陥を克服する。
【発明の概要】
【0006】
肝臓のASGPRをターゲティングする、FDAに認可されたギボシラン(givosiran)(Sardh et al., N. Engl. J. Med. 380:549 (2019))などのGalNACをコンジュゲートした化学的最適化siRの注目すべき成功から、本発明者らは、リガンドコンジュゲート手法が、がんをターゲティングし、ナノ担体の必要性をなくすことができるかどうか査定することを選択した。がん細胞株エンサイクロペディア(CCLE)データセットを使用して、上皮増殖因子受容体(EGFR)が、ほとんどの上皮がんにおいて高度に発現することを見出した。EGFRに結合するが分裂促進的シグナル伝達を誘導しない12アミノ酸ペプチドとして発見されたGE11リガンド(Li et al., FASEB J. 19:1978 (2005))を選択した。生体適合性ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを使用してGE11をsiRNAにコンジュゲートするための、スケーラビリティの高い手軽なGE11合成およびクリックケミストリー手法を開発した。異なる癌腫起源からの2種の細胞株(LU65肺がん、HCT116結腸がん)は、両方ともEGFRを発現し、これらの細胞株において、GE11-Cy5-siRNAは、コンジュゲートしていないsiRと比較して迅速かつ豊富に細胞内へ内部移行された。また、トランスフェクション試薬を使用することなくGE11-KRASターゲティングsiRNAを使用した場合、実質的なRNAi活性も観察された。両方の細胞株へのsiRNAの取り込みの程度は、ちょうど24時間でおよそ150~250倍超の増大に達し、これは、注目に値し、肝細胞をターゲティングするように設計されたGalNAC-siRNAを使用した場合に見られるレベル(約8倍の増大)(Nair et al., J. Am. Chem. Soc. 136:16958 (2014))を考慮して期待されていた値をはるかに超えるものである。がん細胞へのオリゴヌクレオチド取り込みの程度から、リガンドをコンジュゲートした核酸送達は、核酸をがんにおける治療剤として使用するための真の潜在性を有する。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、
a)上皮増殖因子受容体(EGFR)ターゲティング部分を含むポリペプチド、
b)リンカー、および
c)核酸
を含むコンジュゲート生成物に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、本発明のコンジュゲート生成物を含む組成物、例えば医薬組成物に関する。
【0009】
本発明のさらなる態様は、核酸を細胞へ送達する方法であって、細胞を有効量の本発明のコンジュゲート生成物または組成物と接触させることを含む方法に関する。
【0010】
本発明の追加の態様は、疾患の処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象へ治療有効量の本発明のコンジュゲート生成物または医薬組成物を投与し、これによって疾患を処置することを含む方法に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、細胞による核酸の取り込みを増大させる方法であって、コンジュゲート生成物を形成するために、EGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにリンカーを介して核酸をコンジュゲートするステップを含み、ここで、細胞がEGFRを発現し、細胞による核酸の取り込みがEGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにコンジュゲートされていない核酸と比較して増大している、方法に関する。
【0012】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の説明においてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】多くの癌腫が高レベルのEGFRを発現することを示す。
【
図2】LU65肺がん細胞株は、FACSにより確認される高EGFR発現を有することを示す。
【
図3】HCT116結腸がん細胞株は、FACSにより確認される高EGFR発現を有することを示す。
【
図4】コンジュゲート生成物の合成スキームを示す。
【
図5】GE11-PEG-KRAS Seq3 siRNAのコンジュゲーション生成物のLC/MS確認を示す。
【
図6】GE11-PEG-KRAS Seq3 siRNAのコンジュゲーション生成物のLC/MS確認を示す。
【
図7】GE11をコンジュゲートしたCy5標識化siRNAが、2種の異なるEGFR発現がん細胞(結腸がんおよび肺がん)への劇的な時間依存的自由取り込み(トランスフェクション試薬なし)を示すことを示す。
【
図8】GE11をコンジュゲートしたKRASサイレンシングsiRNA(Seq2およびSeq3)は、HCT116(KRAS-G13D突然変異体)結腸がん細胞において両方のsiRNAについて48時間にて有意なKRASサイレンシングを提供することを示す。トランスフェクション試薬は使用されなかった。このことは、GE11をコンジュゲートしたsiRNAは、細胞に取り込まれ、mRNAを有効にサイレンシングし得ることを実証する。
【
図9】GE11をコンジュゲートしたCy5標識化siRNAは、EGFR発現がん細胞(HCT116結腸がん)において受容体媒介エンドサイトーシス機構を通して細胞に入ることを示す。がん細胞に、初期(緑色、Rab5a)および後期(緑色、Rab7a)エンドソームまたはリソソーム(緑色、Lamp1)細胞小器官構造のいずれかに局在化するGFP標識化レポータープラスミドを最初にトランスフェクトした。その後、細胞を、培養培地中においてトランスフェクション試薬を伴わずにGE11-siRNAにより4時間処理した。その後、細胞をPBSにより3回洗浄し、その後画像化した。Cy5シグナル(シアン)は、初期および後期エンドソームならびにリソソームと共局在化し、それらが受容体媒介エンドサイトーシス機構を通して細胞に入ることを示す。
【
図10】GE11をコンジュゲートしたCy5標識化siRNAは、EGFR発現がん細胞(HCT116結腸がん)において受容体媒介エンドサイトーシス機構を通して細胞に入ることを示す。がん細胞に、初期(緑色、Rab5a)および後期(緑色、Rab7a)エンドソームまたはリソソーム(緑色、Lamp1)細胞小器官構造のいずれかに局在化するGFP標識化レポータープラスミドを最初にトランスフェクトした。その後、細胞を、培養培地中においてトランスフェクション試薬を伴わずにGE11-siRNAにより24時間処理した。その後、細胞をPBSにより3回洗浄し、その後画像化した。Cy5シグナル(シアン)は、初期および後期エンドソームならびにリソソームと共局在化し、それらが受容体媒介エンドサイトーシス機構を通して細胞に入ることを示す。
【
図11A】
図11A~11Bは、HCT116腫瘍(KRAS-G13D)におけるKRASサイレンシングについてのインビボ証拠を示す。HCT116(KRAS-G13D)腫瘍を、大きさ約125mm
3において確立し、その後、PBS、または示されるリンカーによりKRAS-siRNA配列にコンジュゲートしたEGFRターゲティングリガンド(GE11)のいずれかにより処理した。評価したリンカーは、切断可能なジスルフィド結合(SPDP)または切断不可能な(SMCCまたはTEG)ハンドルとコンジュゲートしたヘキシルアミノリンカーを利用した。(SPDP:スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート;SMCC:スクシンイミジル-trans-4-(N-マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート;TEG:トリエチレングリコール)。マウスを、滅菌PBS中に懸濁したGE11-siRNAにより5mg/kg(mpk)で皮下処理した。腫瘍を、GE11-siRNAを200μL/マウスのPBS中で注射した単回皮下注射の3日後(D3)および7日後(D7)に抽出した。腫瘍RNAを単離し、KRASおよび18Sハウスキーピング遺伝子についてリアルタイムqPCRを行った。示される時点において腫瘍におけるKRASの最大で50~70%のサイレンシングが見出された。示される各群および時点は、5つの独立した腫瘍を表す。*p<0.05、***p<0.01、****p<0.001。また、マウスに、5mpkもしくは10mpkの1回用量、または10mpkの5日間毎日の用量(5日間で50mpkの累積)を与え、観察可能な毒性または体重減少は見出されなかった。
【
図11B】
図11A~11Bは、HCT116腫瘍(KRAS-G13D)におけるKRASサイレンシングについてのインビボ証拠を示す。HCT116(KRAS-G13D)腫瘍を、大きさ約125mm
3において確立し、その後、PBS、または示されるリンカーによりKRAS-siRNA配列にコンジュゲートしたEGFRターゲティングリガンド(GE11)のいずれかにより処理した。評価したリンカーは、切断可能なジスルフィド結合(SPDP)または切断不可能な(SMCCまたはTEG)ハンドルとコンジュゲートしたヘキシルアミノリンカーを利用した。(SPDP:スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート;SMCC:スクシンイミジル-trans-4-(N-マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート;TEG:トリエチレングリコール)。マウスを、滅菌PBS中に懸濁したGE11-siRNAにより5mg/kg(mpk)で皮下処理した。腫瘍を、GE11-siRNAを200μL/マウスのPBS中で注射した単回皮下注射の3日後(D3)および7日後(D7)に抽出した。腫瘍RNAを単離し、KRASおよび18Sハウスキーピング遺伝子についてリアルタイムqPCRを行った。示される時点において腫瘍におけるKRASの最大で50~70%のサイレンシングが見出された。示される各群および時点は、5つの独立した腫瘍を表す。*p<0.05、***p<0.01、****p<0.001。また、マウスに、5mpkもしくは10mpkの1回用量、または10mpkの5日間毎日の用量(5日間で50mpkの累積)を与え、観察可能な毒性または体重減少は見出されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ここで、本発明の好ましい実施形態が示される附属の図面を参照して説明される。しかしながら、本発明は、様々な形態で具体化することができ、本明細書で示される実施形態に限定されるとは解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的および完全であるように、かつ本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0015】
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で本発明の説明において使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみであり、本発明の限定であるとは意図されない。本明細書で言及されるすべての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらを全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
ヌクレオチド配列は、別に特に示されない限り、本明細書で一本鎖のみにより、左から右へ5’から3’方向に示される。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書で、IUPAC-IUB生化学命名法委員会により推奨される様式で、または(アミノ酸について)37 CFR§1.822および確立された使用法に従う一文字表記または三文字表記のいずれかにより表される。例えば、PatentIn User Manual, 99-102 (Nov. 1990)(米国特許商標庁)を参照されたい。
【0017】
別に示される場合を除き、当業者に公知の標準法は、組換えパルボウイルスおよびAAV(rAAV)構築物、パルボウイルスRepおよび/またはCap配列を発現するパッケージングベクター、ならびに一過性かつ安定にトランスフェクトしたパッケージング細胞の構築に使用され得る。そのような技法は、当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th Ed.(Cold Spring Harbor,NY,2012);Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley & Sons,Inc.,New York)を参照されたい。
【0018】
さらに、また、本発明は、本発明の一部の実施形態において、本明細書で示される任意の特色または特色の組合せを除外または省略することができることを企図する。
【0019】
さらに例示すると、例えば、明細書が、特定のアミノ酸が、A、G、I、Lおよび/またはVから選択され得ると示す場合、この言葉は、アミノ酸がこれらのアミノ酸の任意のサブセット、例えば、A、G、IまたはL;A、G、IまたはV;AまたはG;Lのみなどから選択され得ることもまた示し、各そのような下位の組合せが本明細書で明白に示されているのと同様である。さらに、そのような言葉は、特定のアミノ酸のうちの1つまたは複数が、放棄され得ることもまた示す。例えば、特定の実施形態において、アミノ酸は、A、GまたはIではなく;Aではなく;GまたはVではないなど、各そのような可能な放棄が本明細書で明白に示されているのと同様である。
【0020】
[定義]
以下の用語は、本明細書中の説明および附属の特許請求の範囲において使用される。
【0021】
単数形「a」および「an」は、文脈が明らかに別に示さない限り、複数形も含むと意図される。
【0022】
さらに、「約」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の長さの量、用量、時間、温度などの測定可能な値について言及するとき、特定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%またはさらには0.1%の変動を包含することを意味する。
【0023】
また、本明細書で使用される場合、「および/または」とは、関連する列挙される項目のうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての可能な組合せ、ならびに択一で(「または」)解釈される場合組合せの欠如を指し、包含する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「から本質的になること(consisting essentially of)」という移行句は、列挙される材料またはステップ、および特許請求の範囲の発明の「基本的かつ新規特徴に実質的に影響を及ぼさない材料またはステップ」を包含すると解釈すべきである(例えば核酸送達)。したがって、本明細書で使用される場合「から本質的になること」という用語は、「を含むこと(comprising)」と同等であると解釈すべきでない。
【0025】
「から本質的になる」という用語(および文法的変形)は、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される場合、列挙される配列(例えば配列番号)と、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの機能が実質的に変更されないような、列挙される配列の5’末端および/もしくは3’末端またはN末端および/もしくはC末端の全部で10個またはそれ以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個)の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸との両方からなるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。全部で10個またはそれ未満の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸は、両方の末端の追加のヌクレオチドまたはアミノ酸を一緒に合わせた総数を含む。「実質的に変更される」という用語は、本発明のポリヌクレオチドに適用される場合、列挙される配列からなるポリヌクレオチドの発現レベルと比較して少なくとも約50%またはそれ以上の、標的核酸の発現を改変する能力における増大または減少を指す。「実質的に変更される」という用語は、本発明のポリペプチドに適用される場合、列挙される配列からなるポリペプチドの活性と比較して少なくとも約50%またはそれ以上の、酵素活性の増大または減少を指す。
【0026】
「向上させる」または「増大させる」という用語は、少なくとも約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、10倍、12倍またはさらには15倍の特定のパラメーターにおける増大を指す。
【0027】
「阻害する」もしくは「低減させる」という用語またはそれらの文法的変形は、本明細書で使用される場合、少なくとも約15%、25%、35%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、95%またはそれ以上の、特定のレベルまたは活性における減少または減弱を指す。特定の実施形態において、阻害または低減は、ほとんどまたは本質的にまったく検出可能な活性をもたらさない(多くてもわずかな量、例えば約10%またはさらには5%未満)。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、別に示さない限り、ペプチドおよびタンパク質の両方を包含する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「核酸」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば化学合成)DNAまたはRNA、ならびにRNAおよびDNAのキメラを含む、RNAおよびDNAの両方を包含する。ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列または核酸という用語は、鎖の長さにかかわらず、ヌクレオチドの鎖を指す。核酸は、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖である場合、核酸は、センス鎖であっても、アンチセンス鎖であってもよい。核酸は、オリゴヌクレオチドアナログまたは誘導体(例えば、イノシンまたはホスホロチオエートヌクレオチド)を使用して合成することができる。そのようなオリゴヌクレオチドは、例えば、塩基対形成能力が変更された、またはヌクレアーゼに対する抵抗性が増大した核酸を調製するために使用することができる。本発明は、本発明の核酸、ヌクレオチド配列またはポリヌクレオチドの相補体である核酸(完全な相補体または部分的な相補体のいずれかであり得る)をさらに提供する。dsRNAが合成産生される場合、イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチンおよびその他などのあまり一般的でない塩基もまた、アンチセンス、dsRNAおよびリボザイム対形成のために使用してもよい。例えば、ウリジンおよびシチジンのC-5プロピンアナログを含有するポリヌクレオチドは、RNAに高親和性で結合すること、および遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが示されている。ホスホジエステル骨格、またはRNAのリボース糖基の2’-ヒドロキシへの修飾などの他の修飾もまた、行ってもよい。
【0030】
「配列同一性」という用語は、本明細書で使用される場合、当該技術分野における標準の意味を有する。当該技術分野において公知である通り、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが公知の配列への配列同一性または類似性を有するかどうかを特定するために、いくつかの異なるプログラムを使用することができる。配列同一性または類似性は、非限定的に、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)のローカル配列同一性アルゴリズム;Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の配列同一性整列アルゴリズムによる技法;Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索方法による技法;これらのアルゴリズムの電算実装(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive、Madison、WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA);Devereux et al., Nucl. Acid Res. 12:387 (1984)によって説明されている好ましくはデフォルト設定を使用するBest Fit配列プログラムによる技法;または検査による技法を含む、当該技術分野において公知の標準の技法を使用して決定してもよい。
【0031】
有用なアルゴリズムの例は、PILEUPである。PILEUPは、漸進的な対整列を使用して、1群の関連する配列から多数の配列整列を作出する。また、それは、整列を作出するために使用したクラスター化関係を示す樹形図をプロットし得る。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351 (1987)の漸進的整列法の単純化法を使用し、この方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151 (1989)によって説明される方法と類似する。
【0032】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403 (1990)およびKarlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873 (1993)において説明されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al., Meth. Enzymol., 266:460 (1996);blast.wustl/edu/blast/README.htmlから得られるWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2は、いくつかの検索パラメーターを使用し、これらは好ましくはデフォルト値に設定される。パラメーターは、動的値であり、特定の配列の組成、および目的の配列が検索される特定のデータベースの組成に依存して、プログラムそれ自体によって確立される。しかしながら、値は、感度を増大させるように調節され得る。
【0033】
追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389 (1997)によって報告されるgapped BLASTである。
【0034】
アミノ酸配列同一性の割合値は、適合同一残基の数を、整列した領域における「より長い」配列の残基の総数で割ることによって決定される。「より長い」配列は、整列した領域における最も現実的な残基を有する配列である(整列スコアを最大限にするためにWU-BLAST-2によって導入されるギャップは無視される)。
【0035】
同様の様式において、核酸配列同一性パーセントは、本明細書で具体的に開示されるポリヌクレオチド中のヌクレオチドと同一の、候補配列中のヌクレオチド残基の割合として定義される。
【0036】
整列は、整列される配列におけるギャップの導入を含み得る。加えて、本明細書で具体的に開示されるポリヌクレオチドよりも多いまたは少ないヌクレオチドを含有する配列について、一実施形態において、配列同一性の割合は、ヌクレオチドの総数に関する同一のヌクレオチドの数に基づいて決定されると理解される。したがって、例えば、本明細書で具体的に開示される配列よりも短い配列の配列同一性は、一実施形態において、より短い配列中のヌクレオチドの数を使用して決定される。同一性パーセントの計算において、相対的重みは、配列変動の様々な現れ、例えば挿入、欠失、置換などに割り当てられない。
【0037】
一実施形態において、一致のみは、正(+1)にスコア付けされ、ギャップを含むすべての形態の配列変動は、「0」の値に割り当てられ、このことは、配列類似性計算について以下に説明される重み付けした尺度またはパラメーターの必要性を不要にする。配列同一性パーセントは、例えば、適合同一残基の数を、整列した領域中の「より短い」配列の残基の総数で割り、100倍することによって、計算することができる。「より長い」配列は、整列した領域において最も現実的な残基を有する配列である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「実質的に同一の」または「に対応する」という用語は、2つの核酸配列が少なくとも60%、70%、80%または90%の配列同一性を有することを意味する。一部の実施形態において、2つの核酸配列は、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有し得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチド(例えば「単離されたDNA」または「単離されたRNA」)とは、天然に存在する生物もしくはウイルスの他の構成成分、例えば細胞もしくはウイルス構造構成成分、または一般にポリヌクレオチドと関連して見出される他のポリペプチドもしくは核酸のうちの少なくとも一部から分離されているか、またはそれを実質的に含まないポリヌクレオチドを意味する。
【0040】
同様に、「単離された」ポリペプチドとは、天然に存在する生物もしくはウイルスの他の構成成分、例えば細胞もしくはウイルス構造構成成分、または一般にポリペプチドと関連して見出される他のポリペプチドもしくは核酸のうちの少なくとも一部から分離されているか、またはそれを実質的に含まないポリペプチドを意味する。
【0041】
「断片」という用語は、ポリヌクレオチドに適用される場合、参照核酸またはヌクレオチド配列と比較して長さが減縮しており、参照核酸またはヌクレオチド配列と同一のまたはほとんど同一の(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一の)連続ヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、から本質的になる、および/またはからなるヌクレオチド配列を意味すると理解されるだろう。本発明によるそのような核酸断片は、適切な場合、それが構成要素であるより大きなポリヌクレオチドに含まれ得る。一部の実施形態において、そのような断片は、少なくとも約8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個またはそれ以上の連続ヌクレオチドの長さの本発明による核酸またはヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含み、から本質的になり、および/またはからなり得る。
【0042】
「断片」という用語は、ポリペプチドに適用される場合、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と比較して長さが減縮しており、参照ポリペプチドまたはアミノ酸配列と同一のまたはほとんど同一の(例えば、90%、92%、95%、98%、99%同一の)連続アミノ酸のアミノ酸配列を含む、から本質的になる、および/またはからなるアミノ酸配列を意味すると理解されるだろう。本発明によるそのようなポリペプチド断片は、適切な場合、それが構成要素であるより大きなポリペプチドに含まれ得る。一部の実施形態において、そのような断片は、少なくとも約4、6、8、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200個またはそれ以上の連続アミノ酸の長さの本発明によるポリペプチドまたはアミノ酸配列を有するペプチドを含み、から本質的になり、および/またはからなり得る。
【0043】
「融合タンパク質」とは、天然において共に融合されていることが見出されない2つの(またはそれ以上の)異なるポリペプチドをコードする2つの異種のヌクレオチド配列またはその断片が、正しい翻訳リーディングフレームにおいて共に融合されている場合に産生されるポリペプチドである。例示的な融合ポリペプチドは、本発明のポリペプチド(またはその断片)の、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、またはレポータータンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなど)、ヘマグルチニン、c-myc、FLAGエピトープなどのすべてまたは部分への融合を含む。
【0044】
ポリヌクレオチドコード配列「を発現する」またはポリヌクレオチドコード配列の「発現」という用語によって、配列が転写され、場合により翻訳されることを意味する。典型的に、本発明により、本発明のコード配列の発現は、本発明のポリペプチドの産生をもたらす。また、発現されるポリペプチド全体または断片は、精製なしでインタクトな細胞において機能することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、mRNA、アンチセンスRNA、miRNAなどを産生するために使用することができる核酸分子を指す。遺伝子は、機能タンパク質を産生するために使用することが可能であっても、そうでなくてもよい。遺伝子は、コード領域ならびに非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、停止配列ならびに5’および3’非翻訳領域)の両方を含み得る。遺伝子は、「単離され」ていてもよく、これによって、その天然状態において核酸と関連して通常見出される構成成分を実質的にまたは本質的に含有しない核酸を意味する。そのような構成成分は、他の細胞物質、組換え産生からの培養培地、および/または核酸の化学合成において使用された様々な化学物質を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「相補的」ポリヌクレオチドは、標準のワトソン・クリック相補規則に従って塩基対形成することができるポリヌクレオチドである。特に、プリンはピリミジンと塩基対形成して、シトシンと対形成したグアニン(G:C)と、DNAの場合チミンと対形成したアデニン(A:T)、またはRNAの場合ウラシルと対形成したアデニン(A:U)との組合せを形成する。例えば、配列「A-G-T」は、相補配列「T-C-A」に結合する。2つのポリヌクレオチドが互いに完全に相補的でない場合でさえも、各々が他方に実質的に相補的な少なくとも1つの領域を有する限り、それらは互いにハイブリダイズし得ることが理解される。
【0047】
「相補的」または「相補性」という用語は、本明細書で使用される場合、塩基対形成による、許容される塩および温度条件下でのポリヌクレオチドの天然結合を指す。2つの一本鎖分子間の相補性は、ヌクレオチドの一部のみが結合する「部分的」であってもよく、または完全な相補性が一本鎖分子間に存在する場合、相補性は完全であり得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に顕著な効果を有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「実質的に相補的な」または「部分的に相補的な」という用語は、2つの核酸配列が、それらのヌクレオチドの少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%相補的であることを意味する。一部の実施形態において、2つの核酸配列は、それらのヌクレオチドの少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上相補的であり得る。また、「実質的に相補的な」および「部分的に相補的な」という用語は、2つの核酸配列が、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズすることができることを意味する場合があり、そのような条件は当該技術分野において周知である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「異種の」とは、別の種が起源であるか、または同じ種もしくは生物が起源であるが、その元の形態もしくは細胞において主に発現される形態から改変されている核酸配列を指す。したがって、ヌクレオチド配列が導入される細胞の生物または種とは異なる生物または種に由来するヌクレオチド配列は、その細胞および細胞の子孫について異種である。加えて、異種のヌクレオチド配列は、同じ天然の元の細胞種に由来し、それに挿入されるが、非天然状態、例えば天然に見出されるコピー数とは異なるコピー数において、および/または天然に見出される調節配列とは異なる調節配列の制御下で存在するヌクレオチド配列を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「接触させる」、「導入する」および「投与する」という用語は、互換的に使用され、標的遺伝子の発現または細胞プロセスを阻害または変更もしくは改変するために、本発明のコンジュゲート生成物または本発明のポリヌクレオチドが細胞へ送達されるプロセスを指す。コンジュゲート生成物は、非限定的に、生物の腔、間質腔への、または循環中への細胞外導入を含むいくつかの方法において投与することができる。
【0051】
細胞または生物の文脈における「導入する」とは、核酸分子が細胞の内部へアクセスすることができるような様式で核酸分子を生物および/または細胞へ提示することを意味する。2つ以上の核酸分子が導入される予定である場合、これらの核酸分子は、単一のポリヌクレオチドまたは核酸構築物の部分としてアセンブルしても、別々のポリヌクレオチドまたは核酸構築物としてアセンブルしてもよく、同じ核酸構築物に位置しても、異なる核酸構築物に位置してもよい。したがって、これらのポリヌクレオチドは、単一の形質転換事象において細胞に導入しても、別々の形質転換事象において細胞に導入してもよい。したがって、「形質転換」という用語は、本明細書で使用される場合、異種の核酸の、細胞への導入を指す。細胞の形質転換は、安定性または一過性であり得る。
【0052】
ポリヌクレオチドの文脈における「一過性形質転換」とは、ポリヌクレオチドが細胞へ導入され、細胞のゲノムへ組み込まれないことを意味する。
【0053】
細胞へ導入されるポリヌクレオチドの文脈における「安定に導入する」または「安定に導入された」によって、導入されたポリヌクレオチドが細胞のゲノムへ安定に組み込まれ、したがって、細胞がポリヌクレオチドにより安定に形質転換されることを意図する。
【0054】
「安定な形質転換」または「安定に形質転換された」とは、本明細書で使用される場合、核酸分子が、細胞へ導入され、細胞のゲノムへ組み込まれることを意味する。そのため、組み込まれた核酸分子は、その後代によって、より特に、多数の逐次的世代の後代によって受け継がれることが可能である。「ゲノム」とは、本明細書で使用される場合、核およびミトコンドリアゲノムを含み、それゆえ、核酸の、例えばミトコンドリアゲノムへの、組込みを含む。また、安定な形質転換は、本明細書で使用される場合、染色体外で、例えばミニ染色体として維持される導入遺伝子を指し得る。
【0055】
一過性形質転換は、例えば、生物へ導入された1つまたは複数の導入遺伝子によってコードされるペプチドまたはポリペプチドの存在を検出し得る酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはウェスタンブロットによって検出され得る。細胞の好適な形質転換は、例えば、生物へ導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列による、細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。細胞の安定な形質転換は、例えば、生物へ導入された導入遺伝子のヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズする核酸配列による、細胞のRNAのノザンブロットハイブリダイゼーションアッセイによって検出することができる。また、細胞の安定な形質転換は、例えば、導入遺伝子の標的配列(単数または複数)とハイブリダイズする特異的プライマー配列を用いて導入遺伝子配列の増幅をもたらし、それが標準法に従って検出され得る、当該技術分野において周知であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の増幅反応によって検出することができる。また、形質転換は、当該技術分野において周知の直接的シークエンシングおよび/またはハイブリダイゼーションプロトコールによって検出することができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「トランスフェクション試薬」とは、細胞を核酸と接触させる前および/もしくはそれと同時に細胞を接触させること、または核酸が細胞に接触する前に核酸を接触させることにより、核酸の細胞への送達を向上させるために使用される任意の化合物または分子である。トランスフェクション試薬は、核酸に共有結合されない。
【0057】
「治療用ポリペプチド」または「治療用核酸」とは、細胞または対象におけるタンパク質または核酸の非存在、不十分もしくは過剰なレベル、または欠損から生ずる症状を軽減または低減し得るポリペプチドまたは核酸である。あるいは、「治療用ポリペプチド」は、そうでないならば、対象へ利益、例えば抗がん作用または移植生存可能性の改善を与えるポリペプチドである。
【0058】
本明細書で使用される場合、「RNAi」または「RNA干渉」とは、二本鎖RNA(dsRNA)によって媒介される、配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「dsRNA」とは、部分的にまたは完全に二本鎖であるRNAを指す。また、二本鎖RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子干渉核酸(siNA)、マイクロRNA(miRNA)などと称される。RNAiプロセスにおいて、標的遺伝子の一部に相補的な第1の(アンチセンス)鎖、および第1のアンチセンス鎖に完全にまたは部分的に相補的な第2の(センス)鎖を含むdsRNAが、生物に導入される。生物への導入後、標的遺伝子特異的dsRNAは、比較的小さい断片にプロセスされ(siRNA)、次に生物全体を通して分布するようになり、1世代の期間にわたり、標的遺伝子の完全なまたは部分的な欠失から生ずる表現型と酷似するようになり得る表現型を有する機能欠損突然変異をもたらし得る。
【0059】
マイクロRNA(miRNA)は、一般的に長さが約18~約25ヌクレオチドの、非タンパク質コードRNAである。これらのmiRNAは、標的転写産物のtransにおいて切断を指示し、様々な調節および発達経路に関与する遺伝子の発現を負に調節する(Bartel,Cell 116:281-297(2004);Zhang et al.,Dev.Biol.289:3-16(2006))。そのため、miRNAは、成長および発達の様々な態様、ならびにシグナル伝達およびタンパク質分解に関与することが示されている。最初のmiRNAが植物において発見されて以来(Reinhart et al.,Genes Dev.16:1616-1626(2002)、Park et al..Curr.Biol.12:1484-1495(2002))、何百も特定されている。多くのマイクロRNA遺伝子(MIR遺伝子)が特定されており、データベースにおいて公に使用可能になっている(miRBase;microrna.sanger.ac.uk/sequences)。また、miRNAは、米国特許公開公報第2005/0120415号および同第2005/144669A1号において説明されており、当該公開公報の全内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
miRNAをコードする遺伝子は、不完全なステム-ループ構造を形成し得る長さが70~300bpのプライマリーmiRNA(「pri-miRNA」と称される)を産生する。単一のpri-miRNAは、1つ~いくつかのmiRNA前駆体を含有し得る。動物において、pri-miRNAは、核内でRNアーゼIII酵素ドローシャおよびそのコファクターDGCR8/Pashaによって約65ntのより短いヘアピン型RNA(pre-miRNA)にプロセスされる。その後、pre-miRNAは細胞質へエクスポートされ、そこで、それは別のRNアーゼIII酵素Dicerによってさらにプロセスされ、サイズが約22ntのmiRNA/miRNA*二本鎖を放出する。マイクロRNA生物発生および機能についての多くの概要は入手可能であり、例えば、Bartel,Cell 116:281-297(2004)、Murchison et al.,Curr.Opin.Cell Biol.16:223-229(2004)、Dugas et al.,Curr.Opin.Plant Biol.7:512-520(2004)およびKim,Nature Rev.Mol.Cell Biol.6:376-385(2005)を参照されたい。
【0061】
本明細書で使用される場合、「改変された」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に適用される場合、1つまたは複数の欠失、付加、置換、化学修飾またはそれらの任意の組合せのために野生型配列とは異なる配列を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、ウイルスベクターを「単離する」もしくは「精製する」(または文法的同等物)によって、ウイルスベクターが、出発材料中の他の構成成分の少なくとも一部から少なくとも部分的に分離されることを意味する。
【0063】
「処置(治療)する」、「処置(治療)すること」または「の処置(治療)」という用語(およびこれらの文法的変形)によって、対象の状態の重症度が低減され、少なくとも部分的に改善もしくは安定化されること、および/または少なくとも1つの臨床症状における一部の軽減、緩和、減少もしくは安定化が達成されること、および/または疾患もしくは障害の進行における遅延が存在することを意味する。
【0064】
「防止(予防)する」または「防止(予防)すること」または「防止(予防)」という用語(ならびにこれらの文法的変形)は、本発明の方法の非存在下において起こり得るものと比較した、対象における疾患、障害および/もしくは(1または複数の)臨床症状の開始の防止および/もしくは遅延;ならびに/または疾患、障害および/もしくは(1または複数の)臨床症状の開始の重症度の低減を指す。防止は、完全な防止、例えば疾患、障害および/または(1または複数の)臨床症状の完全な非存在であり得る。また、防止は、対象における疾患、障害および/もしくは(1または複数の)臨床症状の発生、ならびに/または開始の重症度が、本発明の非存在下において起こり得るよりも少ないような、部分的な防止であってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「処置有効」量または「治療有効」量とは、対象へ一部の改善または利益を提供するのに十分な量である。言い換えると、「処置有効」量は、対象における少なくとも1つの臨床症状の一部の軽減、緩和、減少または安定化を提供する量である。当業者は、いくらかの利点が対象へ提供される限り、治療効果は、完全または治癒的である必要はないことを理解するだろう。
【0066】
本明細書で使用される「防止(予防)有効」量とは、本発明の方法の非存在下において起こり得るものと比較して、対象において疾患、障害および/もしくは臨床症状の開始を防止および/もしくは遅延させる;ならびに/または対象において疾患、障害および/もしくは臨床症状の開始の重症度を低減および/もしくは遅延させるのに十分な量である。当業者は、一部の利益が対象へ提供される限り、防止のレベルは完全である必要はないことを理解する。
【0067】
<コンジュゲート生成物>
本発明の一態様は、
a)上皮増殖因子受容体(EGFR)ターゲティング部分を含むポリペプチド、
b)リンカー、および
c)核酸
を含むコンジュゲート生成物に関する。
【0068】
EGFRターゲティング部分を含むポリペプチドは、当該技術分野において公知のまたは後に特定される任意のターゲティング部分であり得る。一部の実施形態において、ポリペプチドは、ドデカペプチドGE11のアミノ酸配列(YHWYGYTPQNVI(配列番号1))またはこれと少なくとも80%同一の、例えばこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一の配列を含むか、から本質的になるかまたはからなる。GE11配列は、付加、欠失および/または置換の任意の組合せによって改変してもよく、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方を含み得る。
【0069】
GE11配列または他の任意のEGFRターゲティング部分への改変を行って、コンジュゲート生成物を調製するための反応部位を提供してもよい。一実施形態において、ポリペプチドは、C末端においてシステイン残基を含むように改変される。GE11について、追加のシステイン残基は、配列YHWYGYTPQNVIC(配列番号2)を形成する。一部の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、またはこれと少なくとも80%同一の、例えばこれと少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一の配列を含むか、から本質的になるかまたはからなる。
【0070】
一部の実施形態において、EGFRターゲティング部分は、全体を参照することにより本明細書の一部をなすYin et al., J. Am. Chem. Soc. 141:19193 (2019)において説明されるカルボラン含有大環状ペプチドであってよく、例えば、CbaP5およびCbaP14であり得る。
【0071】
リンカーは、ポリペプチドおよび核酸を共有または非共有結合するのに好適な任意のリンカーであり得る。一部の実施形態において、リンカーは、薬学的に許容されるリンカー、例えば非限定的に、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、還元可能ジスルフィドリンカー、酸不安定性オキシムリンカー、活性酸素種(ROS)感受性ボロン酸エステルリンカー、ペプチドリンカーまたはヒドラゾンリンカーである。一部の実施形態において、リンカーは、切断可能なジスルフィド結合(例えばスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))または切断不可能な(例えばスクシンイミジル-trans-4-(N-マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)もしくはトリエチレングリコール(TEG))ハンドルとコンジュゲートしたヘキシルアミノリンカーである。
【0072】
一部の実施形態において、リンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含み得る。一部の実施形態において、リンカーは、ジベンゾシクロオクチン-PEG4-マレイミドを含むか、から本質的になるかまたはからなり得る。
【0073】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、リンカーに共有結合し、例えばシステイン残基のチオール基に共有結合している。
【0074】
核酸は、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて細胞へ導入されることが所望される任意の核酸であり得る。核酸は、研究目的または治療目的に有用な核酸であり得る。核酸は、細胞における核酸またはタンパク質のレベルを改変する(増大または減少させる)ために使用され得る核酸であり得る。
【0075】
一部の実施形態において、核酸は、DNA、RNA、またはDNAおよびRNAのハイブリッドである。一部の実施形態において、核酸は、二本鎖または一本鎖である。一本鎖である場合、核酸は、センス鎖であっても、アンチセンス鎖であってもよい。
【0076】
核酸は、当該技術分野において公知の手技によって化学合成および酵素ライゲーション反応を使用して構築することができる。例えば、核酸は、天然ヌクレオチドもしくは分子の生物学的安定性を増大させるように、または核酸と標的ヌクレオチド配列との間に形成された二重鎖の物理的安定性を増大させるように設計された様々な修飾ヌクレオチドを使用して化学合成してもよく、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。核酸を生成するために使用され得る修飾ヌクレオチドの例には、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、ベータ-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)wおよび2,6-ジアミノプリンが含まれるが、これらに限定されない。あるいは核酸は、核酸をコードする核酸がクローニングされている発現ベクターを使用して産生することができる。
【0077】
核酸は、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基のうちの少なくとも1つまたはすべてが修飾ホスフェート、例えばメチルホスホネート、メチルホスホノチオエート、ホスホロモルホリデート、ホスホロピペラジデートおよびホスホルアミデートである、ヌクレオチド配列をさらに含み得る。例えば、ヌクレオチド間架橋ホスフェート残基のうちのいずれも、または1つおきのいずれも、説明される通りに修飾することができる。別の非限定的な例において核酸は、ヌクレオチドのうちの少なくとも1つまたはすべてが、2’低級アルキル部分(例えば、C1~C4直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和アルキル、例えば、メチル、エチル、エテニル、プロピル、1-プロペニル、2-プロペニルおよびイソプロピル)を含有する、ヌクレオチド配列である。別の例において、ヌクレオチドのうちの1つまたは複数は、2’-フルオロヌクレオチド、2-O-メチルヌクレオチドまたはロックド核酸ヌクレオチドであり得る。例えば、ヌクレオチドのうちのいずれも、または1つおきのいずれも、説明される通りに修飾することができる。また、Furdon et al.,Nucleic Acids Res.17:9193(1989);Agrawal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1401(1990);Baker et al.,Nucleic Acids Res.18:3537(1990);Sproat et al.,Nucleic Acids Res.17:3373(1989);Walder and Walder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5011(1988)を参照されたく、当該文献は、修飾ヌクレオチド塩基を含有するポリヌクレオチド分子を含むポリヌクレオチド分子の製造方法のそれらの教示について、それらは全体として参照により本明細書の一部をなすものとする。
【0078】
ある特定の実施形態において、核酸は、siRNA、マイクロRNA、shRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、キラーtRNA、ガイドRNA、長鎖非コードRNA、抗miRNAオリゴヌクレオチドおよびプラスミドDNAからなる群から選択され得る。
【0079】
一実施形態において、核酸は、KRASサイレンシングsiRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、例えば米国特許第10,619,159号または米国公開公報第2020/0248185号において説明されている。
【0080】
ある特定の実施形態において、リンカーは、核酸に共有結合している。核酸は、リンカーへの結合部位を提供するように、例えば結合部位としてアジド基を含むように改変され得る。
【0081】
本発明の追加の態様は、本発明のコンジュゲート生成物および担体を含む組成物に関する。ある特定の実施形態において、組成物は、本発明のコンジュゲート生成物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0082】
本発明のさらなる態様は、細胞による核酸の取り込みを増大させる方法であって、コンジュゲート生成物を形成するために、EGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにリンカーを介して核酸をコンジュゲートするステップを含み、ここで、細胞がEGFRを発現し、細胞による核酸の取り込みがEGFRターゲティング部分を含むポリペプチドにコンジュゲートされていない核酸と比較して増大している、方法に関する。
【0083】
核酸、リンカーおよびEGFRターゲティング部分は、上記に説明される核酸、リンカーおよびEGFRターゲティング部分のいずれかであり得る。コンジュゲートは、当該技術分野において公知の任意の方法によって、ならびに上記および実施例において説明されるように、調製され得る。
【0084】
<使用方法>
本発明のコンジュゲートおよび/または組成物を用いる様々な方法が、本明細書で提供される。したがって、本発明の一態様は、核酸を細胞へ送達する方法であって、細胞を有効量の本発明のコンジュゲートまたは組成物と接触させることを含む方法に関する。細胞は、インビトロ、エクスビボまたはインビボ細胞であり得る。一部の実施形態において、細胞は、がん細胞である。一部の実施形態において、がん細胞は、非小細胞肺がん細胞、肺がん細胞、結腸がん細胞、膵がん細胞および血液がん細胞からなる群から選択される。ある特定の実施形態において、細胞は、EGFR、例えば他の細胞と比較して高レベルのEGFRを発現する。一実施形態において、細胞は、同じ対象からの非がん性細胞と比較してまたは一般集団において見出されるEGFRの平均レベルと比較して、高レベルのEGFRを発現するがん細胞である。
【0085】
一部の実施形態において、細胞による核酸の取り込みを増大させる方法は、コンジュゲート以外に別のトランスフェクション試薬を使用することを含まない。
【0086】
本発明の別の態様は、疾患の処置を必要とする対象において疾患を処置する方法であって、対象へ治療有効量の本発明のコンジュゲートまたは医薬組成物を投与し、これによって疾患を処置することを含む方法に関する。疾患は、病的な細胞がEGFR、例えば他の細胞と比較して高レベルのEGFRを発現する疾患であり得る。一部の実施形態において、疾患は、がんであり、例えば、がんは、非小細胞肺がん、肺がん、結腸がん、膵がんおよび血液がんからなる群から選択される。一実施形態において、がんは、ミスセンス突然変異G12C、G12D、G12VおよびG13Dのうちの1つまたは複数を含む突然変異体ヒトKRAS遺伝子を含む。ミスセンス突然変異G12C、G12D、G12VおよびG13Dのうちの1つまたは複数を含む突然変異体ヒトKRAS遺伝子を含むがんは、1つまたは複数の細胞が突然変異体KRAS遺伝子を発現するがん、例えば腫瘍である。
【0087】
一部の実施形態において、疾患を処置する方法は、コンジュゲートとは別のトランスフェクション試薬を使用することを含まない。
【0088】
これらの態様の各々の一実施形態において、対象は、疾患、例えばがんと診断されている対象であり得る。別の実施形態において、対象は、疾患、例えばがんを発症するリスクにある(例えば遺伝的因子、喫煙、ウイルス感染、化学物質への曝露などのためにかかりやすくなっている)対象であり得る。さらなる実施形態において、対象は、突然変異体KRAS遺伝子を有することが特定され、かつがんと診断されたまたは診断されていない対象であり得る。
【0089】
本発明のコンジュゲートまたは組成物は、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して細胞を接触させることによって、細胞へ送達され得る。一実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは組成物は、対象へ直接的に投与される。一般的に、本発明のコンジュゲートは、薬学的に許容される担体(例えば生理食塩水)中に懸濁され、経口で、局所的にもしくは静脈内点滴により投与されるか、または皮下に、筋内に、頭蓋内に、くも膜下腔内に、腹腔内に、直腸内に、膣内に、鼻内に、胃内に、気管内にもしくは肺内に注射される。それらは、好ましくは、肺、腸または膵臓などの疾患または障害の部位へ直接的に送達される。コンジュゲートまたは組成物は、腫瘍内注射、または腫瘍へ流入する血管への注射によって腫瘍へ送達され得る。必要とされる投与量は、投与経路の選択;製剤の性質;患者の病気の性質;対象の大きさ、体重、表面積、年齢および性別;投与される他の薬物;ならびに主治医の判断に依存する。好適な投与量は、0.01~100.0μg/kgの範囲内である。様々な投与経路の異なる効率の観点から、必要とされる投与量における広い変動を予測すべきである。例えば、経口投与は、i.v.注射による投与よりも高い投与量を必要とすることが予測され得る(例えば、2、3、4、6、8、10、20、50、100、150倍またはそれ以上)。これらの投与量レベルにおける変動は、当該技術分野において十分に理解される通り、最適化のための標準の経験的ルーチンを使用して調節することができる。投与は、1回であっても、多数回であってもよい。好適な送達媒体(例えばポリマー微粒子または埋め込み可能なデバイス)への阻害剤の被包は、送達、特に経口送達の効率を増大し得る。
【0090】
本発明のコンジュゲートまたは組成物は、場合により、他の治療剤と共に送達され得る。追加の治療剤は、本発明のコンジュゲートまたは組成物と同時発生的に送達され得る。本明細書で使用される場合、「同時発生的に(concurrently)」という語は、組み合わせた効果を産生するのに十分に時間が近いことを意味する(すなわち、同時発生的に(concurrently)は、同時に(simultaneously)であってもよく、またはそれは互いに前後の短期間内に起こる2つもしくはそれ以上の事象であってもよい)。一実施形態において、本発明のコンジュゲートまたは組成物は、がんを処置するために有用な剤、例えば、1)ビンカアルカロイド(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン)、2)エピポドフィロトキシン(例えばエトポシドおよびテニポシド)、3)抗生物質(例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンC))、4)酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)、5)生物学的応答改変剤(例えばインターフェロン-アルファ)、6)プラチナ配位複合体(例えばシスプラチンおよびカルボプラチン)、7)アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、8)置換された尿素(例えばヒドロキシウレア)、9)メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH))、10)副腎皮質性抑制剤(例えばミトタン(o,p’-DDD)およびアミノグルテチミド)、11)副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾン)、12)プロゲスチン(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メゲストロール)、13)エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、14)抗エストロゲン薬(例えばタモキシフェン)、15)アンドロゲン(例えばプロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)、16)抗アンドロゲン薬(例えばフルタミド)ならびに17)ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ(例えばリュープロリド)と共に投与される。別の実施形態において、本発明の化合物は、抗血管新生剤、例えば、VEGFに対する抗体(例えばベバシズマブ(AVASTIN)、ラニビズマブ(LUCENTIS))および血管新生の他のプロモーター(例えばbFGF、アンジオポエチン-1)に対する抗体、アルファ-v/ベータ-3血管インテグリンに対する抗体(例えばVITAXIN)、アンジオスタチン、エンドスタチン、ダルテパリン、ABT-510、CNGRCペプチドTNFアルファコンジュゲート、シクロホスファミド、コンブレタスタチンA4ホスフェート、ジメチルキサンテノン酢酸、ドセタキセル、レナリドミド、エンザスタウリン、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤(Abraxane)、大豆イソフラボン(Genistein)、クエン酸タモキシフェン、サリドマイド、ADH-1(EXHERIN)、AG-013736、AMG-706、AZD2171、トシル酸ソラフェニブ、BMS-582664、CHIR-265、パゾパニブ、PI-88、バタラニブ、エベロリムス、スラミン、リンゴ酸スニチニブ、XL184、ZD6474、ATN-161、シレンジタイドならびにセレコキシブ、またはそれらの任意の組合せと共に投与される。
【0091】
「がん」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞の任意の良性または悪性異常増殖を指す。例には、乳がん、前立腺がん、リンパ腫、皮膚がん、膵がん、結腸がん、黒色腫、悪性黒色腫、卵巣がん、脳がん、原発性脳癌腫、頭頸部がん、神経膠腫、神経膠芽腫、肝がん、膀胱がん、非小細胞肺がん、頭頸部癌腫、乳癌腫、卵巣癌腫、肺癌腫、小細胞肺癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌腫、精巣癌腫、膀胱癌腫、膵癌腫、胃癌腫、結腸癌腫、前立腺癌腫、泌尿生殖器癌腫、甲状腺癌腫、食道癌腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、副腎癌腫、腎細胞癌腫、子宮内膜癌腫、副腎皮質癌腫、悪性膵性インスリノーマ、悪性カルチノイド癌腫、絨毛癌腫、菌状息肉腫、悪性高カルシウム血症、子宮頸部過形成、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性顆粒球性白血病、有毛細胞白血病、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、カポジ肉腫、真性多血症、本態性血小板増加症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、軟部組織肉腫、骨肉腫、原発性マクログロブリン血症および網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、がんは、腫瘍形成がんの群から選択される。
【0092】
<医薬組成物>
本発明のさらなる態様は、医薬製剤、および上記に説明される治療効果(例えばがんの処置)のいずれかを達成するために医薬製剤を投与する方法に関する。医薬製剤は、薬学的に許容される担体中に上記に説明される試薬のうちのいずれかを含み得る。
【0093】
「薬学的に許容される」によって、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない材料を意味する、すなわち、材料は、毒性などの任意の望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象へ投与され得る。
【0094】
本発明の製剤は、場合により、薬用剤、医薬剤、担体、補助剤、分散剤、希釈剤などを含み得る。
【0095】
本発明のコンジュゲートまたは組成物は、公知の技法に従って医薬担体中での投与のために製剤化され得る。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(9th Ed.1995)を参照されたい。本発明による医薬製剤の製造において、コンジュゲート(その生理学的に許容される塩を含む)は、典型的に、特に、許容される担体と混合される。担体は、固体もしくは液体またはそれらの両方であってもよく、好ましくは0.01または0.5重量%~95重量%または99重量%のコンジュゲートまたは組成物を含有し得る単位用量製剤、例えば錠剤として、コンジュゲートまたは組成物と製剤化される。1つまたは複数コンジュゲートまたは組成物を、本発明の製剤中に組み込んでもよく、それは、周知の製薬技法のいずれかによって調製することができる。
【0096】
本発明のさらなる態様は、インビボで対象を処置する方法であって、対象へ、薬学的に許容される担体中の本発明のコンジュゲートまたは組成物を含む医薬組成物を投与することを含み、医薬組成物が、治療有効量で投与される、方法である。投与を必要とするヒト対象または動物への本発明のコンジュゲートまたは組成物の投与は、化合物を投与するための当該技術分野において公知の任意の手段によって行われ得る。
【0097】
本発明の製剤の非限定的な例には、経口、直腸、口腔(例えば舌下)、膣、非経口(例えば皮下;骨格筋、心筋、横隔膜筋および平滑筋を含む筋内;皮内;静脈内;腹腔内)、外用(すなわち、皮膚、および気道表面を含む粘膜表面両方)、鼻内、経皮、関節内、頭蓋内、くも膜下腔内および吸入投与、門脈内送達による肝臓への投与、ならびに直接的器官注射(例えば肝臓への、四肢への、中枢神経系への送達のために脳もしくは脊髄への、膵臓への、または腫瘍もしくは腫瘍の周囲組織への)に好適な製剤が含まれる。任意の所与の場合において最も好適な経路は、処置される状態の性質および重症度に、ならびに使用される特定のコンジュゲートの性質に依存する。一部の実施形態において、全身性投与に伴う任意の副作用を避けるために、製剤を局所的に送達することが望ましい場合がある。例えば、局所投与は、所望の処置部位における直接的注射によって、所望の処置部位付近の部位における(例えば処置部位に供給する血管への)静脈内導入によって達成され得る。一部の実施形態において、製剤は、虚血組織へ局所的に送達され得る。ある特定の実施形態において、製剤は、緩効性製剤、例えば緩効性デポー剤の形態であり得る。
【0098】
注射のために、担体は、典型的に、液体、例えば滅菌パイロジェンフリー水、パイロジェンフリーリン酸緩衝食塩水、静菌水またはCremophor EL[R](BASF、Parsippany、N.J.)である。他の投与方法のために、担体は、固体または液体のいずれかであり得る。
【0099】
経口投与のために、コンジュゲートは、カプセル、錠剤および粉末などの固体剤形で、またはエリキシル剤、シロップ剤および懸濁液などの液体剤形で投与され得る。コンジュゲートは、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、サッカリンナトリウム、タルカン、炭酸マグネシウムなどの不活性成分および粉末化担体と共にゼラチンカプセル内に被包され得る。望ましい色、味、安定性、緩衝能、分散または他の公知の望ましい特色を提供するために添加され得る追加の不活性成分の例は、赤色酸化鉄、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、食用白色インクなどである。同様の希釈剤は、圧縮錠剤を製造するために使用され得る。錠剤およびカプセルの両方は、数時間の期間にわたり薬物の連続放出を提供する徐放性製品として製造してもよい。圧縮錠剤は、任意の不快な味を隠し、大気から錠剤を保護するために糖衣をかけるか、もしくはフィルムコーティングしてもよく、または消化管内の選択的崩壊のために腸溶性コーティングしてもよい。経口投与のための液体剤形は、患者許容性を増大させるために着色料および香味料を含有し得る。
【0100】
口腔(舌下)投与のために好適な製剤は、香味付けした基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中のコンジュゲートを含むロゼンジ;ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中のコンジュゲートを含むパステル剤を含む。
【0101】
非経口投与に好適な本発明の製剤は、コンジュゲートの滅菌水性および非水性注射溶液を含み、その調製物は、好ましくは意図されるレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、抗酸化物質、緩衝液、静菌薬、および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る。水性および非水性滅菌懸濁液は、懸濁剤および増粘剤を含み得る。製剤は、単位/用量または多用量容器、例えば密閉アンプルおよびバイアルにおいて提示してもよく、使用直前の滅菌液体担体、例えば食塩水または注射用水の添加のみを必要とする冷凍乾燥(凍結乾燥)状態において保存してもよい。
【0102】
即時注射溶液および懸濁液は、以前に説明される種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。例えば、本発明の一態様において、密閉容器中の単位剤形の本発明のコンジュゲートを含む注射用安定滅菌組成物が提供される。コンジュゲートまたは塩は、好適な薬学的に許容される担体と再構成されて、対象への注射に好適な液体組成物を形成することができる凍結乾燥物の形態において提供される。単位剤形は、典型的に、約10mg~約10グラムのコンジュゲートまたは塩を含む。コンジュゲートまたは塩が実質的に水不溶性である場合、十分な量の薬学的に許容される乳化剤を、十分な量で用いて、水性担体中においてコンジュゲートまたは塩を乳化してもよい。1つのそのような有用な乳化剤は、ホスファチジルコリンである。
【0103】
直腸投与に好適な製剤は、好ましくは、単位用量坐剤として提示される。これらは、コンジュゲートを1つまたは複数の従来型固体担体、例えば、ココアバターと混合され、その後、生ずる混合物を形作ることによって調製することができる。
【0104】
皮膚への外用適用に好適な製剤は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾルまたはオイルの形態をとる。使用され得る担体には、黄色ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮エンハンサーおよびそれらの2つまたはそれ以上の組合せが含まれる。
【0105】
経皮投与に好適な製剤は、長期間レシピエントの表皮と密着したままであるように適合させた別個のパッチとして提示され得る。また、経皮投与に好適な製剤は、イオントフォレーシスによって送達することができ(例えば、Tyle,Pharm.Res.3:318(1986)を参照されたい)、典型的に、場合により緩衝されたコンジュゲートの水溶液の形態をとる。好適な製剤は、クエン酸塩もしくはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1~0.2Mのコンジュゲートを含有する。
【0106】
コンジュゲートは、あるいは、経鼻投与のために製剤化されるか、またはそうでなければ、任意の好適な手段によって対象の肺へ投与され、例えばコンジュゲートを含む呼吸用粒子の、対象が吸入するエアロゾル懸濁液によって投与され得る。呼吸用粒子は、液体または固体であり得る。「エアロゾル」という用語は、細気管支または鼻道へ吸入することができる、任意のガス中懸濁相を含む。特に、エアロゾルは、定量吸入器もしくは噴霧器中、またはミスト噴霧器中において産生され得るような、ガス中懸濁液の小滴を含む。また、エアロゾルは、空気または他の担体気体中に懸濁される乾燥粉末組成物を含み、これは、例えば吸入デバイスからの吹送によって送達され得る。Ganderton & Jones,Drug Delivery to the Respiratory Tract,Ellis Horwood(1987);Gonda(1990) Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 6:273-313;およびRaeburn et al.,J.Pharmacol.Toxicol.Meth.27:143(1992)を参照されたい。コンジュゲートを含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に公知である通り、圧力駆動エアロゾル噴霧器または超音波噴霧器による手段などの、任意の好適な手段によって産生され得る。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。コンジュゲートを含む固体粒子のエアロゾルは、同様に、製薬分野において公知の技法によって、任意の固体微粒子医薬エアロゾル発生器により産生され得る。
【0107】
あるいは、コンジュゲートを、全身性様式ではなく局所様式において、例えば、デポー剤または徐放性製剤において投与してもよい。
【0108】
さらに、本発明は、本明細書で開示されるコンジュゲートおよびその塩のリポソーム製剤を提供する。リポソーム懸濁液を形成するための技術は、当該技術分野において周知である。コンジュゲートまたはその塩が水溶性塩である場合、従来型リポソーム技術を使用して、コンジュゲートまたはその塩は、脂質小胞に組み込むことができる。そのような場合、コンジュゲートまたは塩の水溶性のために、コンジュゲートまたは塩は、リポソームの親水性中心またはコア内に実質的に取り込まれる。用いられる脂質層は、任意の従来型組成物の層であってもよく、コレステロールを含有し得るか、またはコレステロール非含有であり得る。目的のコンジュゲートまたは塩が水不溶性である場合、ここでもまた従来型リポソーム形成技術を用いて、塩は、リポソームの構造を形成する疎水性脂質二重層内に実質的に取り込まれ得る。いずれの場合でも、産生されるリポソームは、標準超音波技法およびホモジナイゼーション技法の使用を通して、大きさを低減させることができる。
【0109】
本明細書で開示されるコンジュゲートまたはその塩を含有するリポソーム製剤を、凍結乾燥して凍結乾燥物を産生してもよく、これは、水などの薬学的に許容される担体により再構成されてリポソーム懸濁液を再生し得る。
【0110】
水不溶性コンジュゲートの場合、例えば、水性基剤エマルション中などの、水不溶性コンジュゲートを含有する医薬組成物が調製され得る。そのような場合、組成物は、所望の量のコンジュゲートを乳化するために十分な量の薬学的に許容される乳化剤を含有する。特に有用な乳化剤には、ホスファチジルコリンおよびレシチンが含まれる。
【0111】
特定の実施形態において、コンジュゲートは、治療有効量において対象に投与され、治療有効量の用語は、上記に定義される通りである。薬学的に活性な化合物の投与量は、当該技術分野において公知の方法によって決定することができ、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co.,Easton,Pa)を参照されたい。任意の特定の化合物の治療有効投与量は、化合物毎および患者毎にいくらか変動し、患者の状態および送達経路に依存する。一般的な提案として、約0.001~約50mg/kgの投与量は、治療有効性を有し、すべての重量は、塩が用いられる場合を含み、化合物の重量に基づいて計算される。より高レベルでの毒性の懸念のために、静脈内投与量は、最高で約10mg/kgなどのより低レベルに制限される場合があり、すべての重量は、塩が用いられる場合を含み、化合物の重量に基づいて計算される。約10mg/kg~約50mg/kgの投与量は、経口投与に用いられ得る。典型的に、約0.5mg/kg~5mg/kgの投与量は、筋内注射に用いることができる。特定の投与量は、静脈内または経口投与ために、それぞれ、約1μmol/kg~50μmol/kg、特に約22μmol/kg~33μmol/kgの化合物である。
【0112】
本発明の特定の実施形態において、治療効果を達成するために、2回以上の投与(例えば、2、3、4回またはそれ以上の投与)を、様々な時間間隔で(例えば、毎時、毎日、毎週、毎月など)用いてもよい。
【0113】
本発明は、獣医学的適用および医療適用において使用を見出す。好適な対象は、鳥類および哺乳動物の両方を含み、哺乳動物は好ましい。「鳥類」という用語は、本明細書で使用される場合、ニワトリ、カモ、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウおよびキジを含むが、これらに限定されない。「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類などを含むが、これらに限定されない。ヒト対象には、新生児、幼児、児童および成人が含まれる。他の実施形態において、対象は、疾患、例えばがんの動物モデルである。ある特定の実施形態において、対象は、がんを有するか、または疾患、例えばがんについてのリスクを有する。
【0114】
以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲を限定するとは意図されず、むしろ、ある特定の実施形態の例示であると意図される。当業者に想起される例示される方法における任意の変動は、本発明の範囲内に入ることが意図される。当業者によって理解される通り、請求される発明の各態様についていくつかの実施形態および要素が存在し、異なる要素のすべての組合せはこれにより予期され、そのため、本明細書で例示される特定の組合せは、請求される本発明の範囲における限定として解釈すべきでない。特定の要素が組合せで使用可能な要素の群から除去されるかまたはこれに付加される場合、要素の群は、そのような変化を組み込んだものとして解釈すべきである。
【実施例】
【0115】
[実施例1]核酸コンジュゲートの開発
<方法>
フローサイトメトリー:EGFR発現プロファイリングのために、接着していないLU65またはHCT116細胞をPBS中に再懸濁して単細胞溶液を得た。フルオロフォアをコンジュゲートしたEGFRまたは対照IgG抗体を、一定分量の細胞溶液に添加し、暗室において氷上にて30分間インキュベートした。過剰な抗体を、細胞から洗い流した。その後、試料をフローサイトメーターにかけて、蛍光シグナルを検出し、抗体によって陽性に標識化された細胞の割合を特定した。
【0116】
遊離siRNA取り込みの評価のために、蛍光標識したsiRNA(GE11にコンジュゲートしていないまたはコンジュゲートした)を、示される時点についてLU65またはHCT116細胞とインキュベートした。その後、細胞をPBSによりすすいで、過剰なsiRNAを洗い流し、その後、2%パラホルムアルデヒド中に固定した。その後、試料を、フローサイトメーターにかけて、蛍光シグナルを検出し、蛍光siRNAを取り込んだ細胞の割合を特定した。
【0117】
GE11合成およびsiRNAコンジュゲーション:固相ペプチド合成を使用してGE11を合成した(
図4)。ペプチド鎖の末端に余分のシステインアミノ酸を付加した(GE11C)。c末端システイン上の遊離チオールを、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)-PEG4-マレイミド試薬と反応させて、GE11C-DBCO-PEG4-マレイミドをコンジュゲートした生成物を生成した。銅フリークリック反応を行って、DBCO含有生成物を、アジドをコンジュゲートしたsiRNAとコンジュゲートして、最終GE11C-siRNAコンジュゲート生成物を生成した。その後、生成物をRNA Clean & Concentratorキットに通して、過剰なコンジュゲートしていないGE11ペプチドを除去した。
【0118】
液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS):GE11をコンジュゲートしたsiRNAを、LC/MSにより分析して、ペプチドの、siRNAへのコンジュゲーションの成功を確認した。LC/MSにより、提示された試料中に存在するすべての種の質量サイズが明らかになった。
【0119】
mRNA発現分析:HCT116またはLU65細胞を、対照またはGE11をコンジュゲートした抗KRAS-siRNAと、示される用量において48時間インキュベートした。48時間において、過剰なsiRNAを含有する培地を除去し、細胞をRNA溶解緩衝液中に溶解した。RNA単離キットを使用して溶解物試料からRNAを単離した。その後、Nanodrop分光光度計を使用してRNAを定量し、各試料からの等量のRNAを、cDNA合成反応にロードした。得られるcDNAを、KRASについてのプライマー、および結果を正規化するために使用された「ハウスキーピング」遺伝子についてのプライマーを使用した定量的PCRによって分析した。
【0120】
<結果>
図1は、何百もの固形腫瘍由来がん細胞株にわたるEGFR発現陽性を実証し、がんのEGFR媒介ターゲティングについての可能性を強調する。
【0121】
図2および
図3は、肺がんLU65細胞株または結腸がんHCT116細胞株のいずれか(それぞれ)を、EGFR抗体により染色すると、対照IgG抗体により染色した細胞と比較して、蛍光シグナルにおける右方へのシフト(または増大)がもたらされることを示す。これは、両方のがん細胞株モデルにおける高いEGFR発現陽性を示す。
【0122】
図5において、GE11の質量(1642)、DBCO-PEG4-マレイミドリンカーの質量(674)およびsiRNAのアンチセンス鎖の質量(6562)の合計に等しい巨大生成物(8878)の存在は、コンジュゲートに成功した生成物の存在を示す。
【0123】
図6は、コンジュゲートしていない蛍光標識化siRNAと比較して、GE11にコンジュゲートした場合の、EGFR発現がん細胞による蛍光標識化siRNAの取り込みの劇的な経時的増大を実証する。使用したsiRNAは、KRASへターゲティングされたSeq2-DV22であった。これらのデータは、GE11ペプチドの存在が、がん細胞へのsiRNA送達を有意に向上することを示唆する。
Seq2-DV22
センス鎖(配列番号3)
[mG]*[mU]*[mC][mU][mC][mU][2flU][mG][2flG][2flA][2flU][mA][mU][mU][mC][mU]
[mC][mG][mA]
アンチセンス鎖(配列番号4)
[mU]*[2flC]*[mG][mA][mG][2flA][mA][mU][mA][mU][mC][mC][mA][2flA][mG][2flA]
[mG][mA][mC]*[mA]*[mG]
m -糖部分の2’-O-メチル
2fl -糖部分の2’-フルオロ
* -ヌクレオチド間のホスホロチオエート
【0124】
図7および
図8は、GE11をコンジュゲートしたsiRNAによる処理に際しての標的遺伝子発現の堅牢なノックダウンを実証する。使用したsiRNAは、KRASへターゲティングされたSeq2-DV22およびSeq3-DV22であった。トランスフェクション試薬を使用しなかったので、細胞へのsiRNA進入は、受容体媒介取り込みに完全に依存していた。これらのデータは、GE11コンジュゲーションは、細胞内部移行に際して、機能的に活性なsiRNAの生産的効果的な取り込みを可能にするという原理の証明を提供する。
Seq3-DV22
センス鎖(配列番号5)
[mC]*[mA]*[mG][mC][mU][mA][2flA][mU][2flU][2flC][2flA][mG][mA][mA][mU][mC]
[mA][mU][mU]
アンチセンス鎖(配列番号6)
[mA]*[2flA]*[mU][mG][mA][2flU][mU][mC][mU][mG][mA][mA][mU][2flU][mA][2flG]
[mC][mU][mG]*[mU]*[mA]
【0125】
図9および
図10は、GE11をコンジュゲートしたCy5標識化siRNAが、EGFR発現がん細胞(HCT116結腸がん)において受容体媒介エンドサイトーシス機構を通して細胞へ進入することを実証する。使用したsiRNAは、KRASへターゲティングされたSeq2-DV22であった。
【0126】
図11A~11Bにおいて、GE11をコンジュゲートしたsiRNAを使用した遺伝子サイレンシングについてのインビボ証拠が示される。HCT116(KRAS-G13D)腫瘍をマウスにおいて確立し、その後、PBS、または示されるリンカーによりKRAS-siRNA配列にコンジュゲートされたEGFRターゲティングリガンド(GE11)(5mg/kg)のいずれかにより処理した。使用したsiRNAは、KRASへターゲティングされたD2-G13D-Hi2Fであった。私たちは、示される時点における腫瘍でのKRASの最大で50~70%のサイレンシングを見出した。また、マウスに、5mg/kgもしくは10mg/kgの1回用量、または10mg/kgの5日間毎日の用量(5日間で50mg/kgの累積)を与え、観察可能な毒性または体重減少は見出されなかった。
D2-G13D-Hi2F
センス鎖(配列番号7)
[2flG]*[mU]*[2flA][mG][2flU][mU][2flG][mG][2flA][2flG][2flC][mU][2flG][mG][2flU]
[mG][2flA][mC][2flG][mU][2flA]
アンチセンス鎖(配列番号8)
[mU]*[2flA]*[mC][2flG][mU][2flC][mA][2flC][mC][2flA][mG][mC][mU][2flC][mC][2flA][mA][2flC][mU][2flA][mC]*[mC]*[mA]
【0127】
上記は、本発明の例示であり、本発明の限定であるとは解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物は、それに含まれるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】