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特表2023-526292高いエネルギー効率を有する環境に優しい亜鉛/水性ポリスルフィド充電式フロー電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】高いエネルギー効率を有する環境に優しい亜鉛/水性ポリスルフィド充電式フロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230614BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20230614BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20230614BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M4/90 M
H01M4/92
H01M4/90 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569128
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2021062896
(87)【国際公開番号】W WO2021229087
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020000011263
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アコリ,アレッサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】サレルノ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】パンツェーリ,ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトーリ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ジベルティーニ,エウジェニオ
(72)【発明者】
【氏名】マガニン,ルカ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA08
5H018AS07
5H018DD01
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE05
5H018EE06
5H018EE10
5H018EE11
5H018EE12
5H018HH05
5H126AA03
5H126BB10
5H126GG02
5H126GG05
5H126GG06
5H126GG08
5H126GG11
5H126GG12
5H126GG17
5H126GG18
5H126GG19
5H126JJ05
5H126RR01
(57)【要約】
本発明は、Zn2+イオン源を含有する第1の電解質(114)および第1の半電池内に配置された静的電極(112)または流動性電極を含む第1の半電池(110)であって、閉ループ構成において第1のポンプ(116)を通して第1の電解質を含む第1の外部タンク(115)に接続されている第1の半電池と、その中にポリスルフィドが溶解されている第2の電解質(124)および第2の半電池内に配置された静的電極(122)または流動性電極を含む第2の半電池(120)であって、閉ループ構成において第2のポンプ(126)を通して第2の電解質を含む第2の外部タンク(125)に接続されている第2の半電池と、第2の半電池では、粒子の形態で静的電極の表面にあるか第2の電解質中に分散されている触媒と、2つの半電池間のセパレーター(130)とで作られた亜鉛/水性ポリスルフィド充電式フロー電池(100)に関する。本発明の充電式フロー電池は有毒もしくは環境上有害な化学物質の使用を回避する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn2+イオン源を含有する第1の電解質(114;314;414;514;614;714)および第1の半電池内に配置された静的電極(112)または流動性電極を含む第1の半電池(110;310;410;510;610;710)であって、閉ループ構成において第1のポンプ(116)を通して前記第1の電解質を含む第1の外部タンク(115)に接続されている第1の半電池と、
その中にポリスルフィドが溶解されている第2の電解質(124;721;821;921;1021;1121;1221;1321;1421;1521;1621;1721;1821;1921;2021;2121;2221;2321)および第2の半電池内に配置された静的電極(122;622;722;822;922;1022;1122;1222;1322;1422;1522;1622;1722;1822;1922;2022;2122;2222;2322)または流動性電極を含む第2の半電池(120;620;720;820;920;1020;1120;1220;1320;1420;1520;1620;1720;1820;1920;2020;2120;2220;2320)であって、閉ループ構成において第2のポンプ(126)を通して前記第2の電解質を含む第2の外部タンク(125)に接続されている第2の半電池と、
前記第2の半電池では、粒子(711;911)の形態で静的電極(622)の表面にあるか前記第2の電解質中に分散されている触媒(623)と、
前記2つの半電池間のセパレーター(130;160)と
を備える亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池(100)。
【請求項2】
前記第1の電解質(114)は、
水と、C1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物と共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物とから選択される溶媒と、
0.01M~20Mの総濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化ビスマスの中から選択される1種以上の化合物と、
0.001M~1.5MのZn2+イオン濃度を有するような量の酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛またはそれらの組み合わせの中から選択される亜鉛イオン源と
を含む、請求項1に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項3】
前記第1の電解質(314;414;514)は、
0.01重量%~20重量%の総濃度の亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子、亜鉛コーティング粒子、グラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの組み合わせの中から選択される亜鉛系および/または炭素系導電性粒子(311)、および/または
0.01重量%~50重量%の範囲の量の異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子(411)
をさらに含む、請求項2に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項4】
前記第1の電解質(614、714)は、
水と、C1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物と共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物とから選択される溶媒と、
0.01M~20Mの総濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化ビスマスの中から選択される1種以上の化合物と、
亜鉛イオン源として、0.01重量%~50重量%の範囲の量の異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子(411)と、
任意に、0.01重量%~20重量%の総濃度の亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子、亜鉛コーティング粒子、グラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの組み合わせの中から選択される亜鉛系および/または炭素系導電性粒子(311)と
を含む、請求項1に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項5】
前記第1の電解質は、
0.001M~1Mの範囲の濃度のPb、Mn、Sn、Fe、Ni、Cu、Mg、Ti、Co、Al、Li、Zrの中から選択される、亜鉛電気化学ポテンシャルを変化させることができ、かつ水素発生の過電圧を上昇させるための1種以上の金属の塩、酸化物または水酸化物、
0.001M~5Mの範囲の総濃度のケイ酸塩、ホウ酸、金属Pb、Bi、Mn、W、Cd、As、Sb、SnおよびIn、前記金属の酸化物またはそれらの組み合わせの中から選択される水素発生抑制剤、
0.001M~10Mの濃度のロッシェル塩、
0.0001ppm~10000ppmの濃度を有するポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、チオ尿素、第四級アンモニウム塩、デキストリン、シクロデキストリン、スクロース、ポリテトラフルオロエチレン、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、グルコース、セルロースおよびそれらの組み合わせの中から選択されるレベリング剤、
前記第1の電解質の0.1重量%~5重量%の範囲のポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、単糖、脂肪酸、尿素、エタノールアミン、トリエタノールアミン、植物油、レシチン、蝋、アミノ酸、界面活性剤およびオレイン酸の中から選択される可塑剤添加剤、
前記第1の電解質の0.0001重量%~10重量%の範囲の増粘剤添加剤、および
前記第1の電解質の0.0001重量%~10重量%の量のキサンタンガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、キトサン、寒天、アルギン酸ナトリウムおよびポリエチレンオキシドの中から選択される有機添加剤
のうちの1種以上をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項6】
前記第2の電解質(124)は、
水と、C1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物と共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物とから選択される溶媒と、
0.01M~20Mの総濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化ビスマスの中から選択される1種以上の化合物と、
0.01M~20MのS2-イオンの総濃度を有するような量のリチウムスルフィド、ナトリウムスルフィド、カリウムスルフィドまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択されるポリスルフィド源と、
鎖(式中、AはLi、Na、Kまたはそれらの組み合わせである)を形成するための化学量論量の元素状硫黄Sと
を含む、請求項1に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項7】
前記第2の電解質(721;821;921;1721;1821;1921;2021;2121;2221;2321)は、
前記第2の電解質の0.001重量%~10重量%の量の触媒粒子(711)、
前記第2の電解質の0.01重量%~20重量%の総濃度のグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される導電性粒子(811)、
触媒粒子(911)によって修飾された導電性粒子であって、前記導電性成分は、グラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択され、かつ前記触媒粒子によって修飾された導電性粒子は前記第2の電解質の0.01重量%~20重量%の濃度で存在する導電性粒子、
前記第2の電解質の0.01重量%~50重量%の範囲の量の異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子(1011)、および
前記第2の電解質の0.01重量%~50重量%の量のスルフィドイオンを含有し、かつ触媒粒子(1311)によって修飾された有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項6に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項8】
前記第2の電解質(1021)は、
水と、C1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物と共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物とから選択される溶媒と、
0.01M~20Mの総濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化ビスマスの中から選択される1種以上の化合物と、
0.01重量%~50重量%の範囲の量のポリスルフィドイオン源として機能するスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子(1011)と、
を含む、請求項1に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項9】
前記第2の電解質(1321)は、
水と、C1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物と共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物とから選択される溶媒と、
0.01M~20Mの総濃度の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウムおよび水酸化ビスマスの中から選択される1種以上の化合物と、
前記第2の電解質の0.01重量%~50重量%の量のスルフィドイオンを含有し、かつ触媒粒子によって修飾された有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子(1311)と
を含む、請求項1に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項10】
前記第2の電解質(1121;1221;1421;1521;1621)は、
前記第2の電解質の0.001重量%~10重量%の量の触媒粒子(711)、
前記第2の電解質の0.01重量%~20重量%の総濃度のグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される導電性粒子(811)、
触媒粒子によって修飾された導電性粒子(911)であって、前記導電性成分は、グラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択され、かつ前記触媒粒子によって修飾された導電性粒子は前記第2の電解質の0.01重量%~20重量%の濃度で存在する導電性粒子
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項8または9のいずれか1項に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項11】
粒子の形態で静的電極の表面にあるか前記第2の電解質中に分散されている前記触媒は、金属Mo、Zr、Ti、Ni、In、Pb、Zn、Fe、Co、Cu、Mn、Cd、Bi、Al、Ga、Cr、W、Nb、Au、Ag、Pt、Ru、Ir、Pd、合金およびそれらの金属間化合物ならびにそれらの化合物の群から選択される金属である、請求項1~10のいずれか1項に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項12】
前記金属化合物は、酸化物、混合酸化物、カルコゲニド、混合されたカルコゲニド、前記金属の窒化物、酸窒化物および炭窒化物ならびに非貴金属の炭素系化合物の中から選択される、請求項11に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項13】
前記金属化合物は、CoOOH、Co(OH)、Co、CoO、CoO、Co、Co、CoS、CoSe、CoSe、CoSe、CoSe、NiSe、NiSe、NiSe、NiSe、MoSe、Bi、WS、WSe、CuO、CuSe、CoCuS、CoCUS、CoNiOOH、CoFeOOH、NiCo、CoNiS、CoNiS、CoNiSe、CoNiSeおよびそれらの混合物の中から選択される、請求項12に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項14】
前記第2の電解質は、
前記第2の電解質の0.1重量%~5重量%の範囲のポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、単糖、脂肪酸、尿素、エタノールアミン、トリエタノールアミン、植物油、レシチン、蝋、アミノ酸、界面活性剤およびオレイン酸の中から選択される可塑剤添加剤、
前記第1の電解質の0.0001重量%~10重量%の範囲の増粘剤添加剤、および
前記第1の電解質の0.0001重量%~10重量%の量のキサンタンガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、キトサン、寒天、アルギン酸ナトリウムおよびポリエチレンオキシドの中から選択される有機添加剤
のうちの1種以上をさらに含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。
【請求項15】
前記セパレーターは、
能動イオン交換材料を含まない多孔性セパレーター、イオン選択的多孔性膜、固体状態のセラミックセパレーターまたはガラスセラミックセパレーター、Naイオンスルフィド系ガラス、Liイオンスルフィド系ガラス、またはパーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマーで作られた膜の中から選択される一様な組成のセパレーター(130)と、
少なくとも第2の層(162)に結合された第1の均質な層(161)からなる多層セパレーター(160)であって、前記第2の層はポリビニルアルコール(PVA)、キトサン、ポリアクリル酸(PAA)、ゼラチンおよびパーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマーの中の1つで作られており、前記第2の層はイオン粒子および/または炭素系導電性粒子を含有する多層セパレーター(160)と
から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の亜鉛-ポリスルフィド充電式フロー電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有毒もしくは環境上有害な化学物質の使用を回避する亜鉛/水性ポリスルフィド充電式フロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではエネルギーの必要性が絶えず増加しており、従来の化石燃料の代わりに新しい再生可能クリーンエネルギー源が徐々に採用されてきている。しかし再生可能エネルギー源は大気条件に大きく依存するため、それらを信頼できるエネルギー貯蔵システムに繋ぐ必要がある。1つの一般的な形態のエネルギー貯蔵システムは、化学エネルギーの形態でエネルギーを貯蔵し、かつ必要な場合にはいつでもそれを電気の形態で放出することができる電池によって代表される。
【0003】
例えばレドックスフロー電池(RFB)は大量のエネルギーを蓄積することができ、かつ長いライフサイクルを特徴とする有望かつ多目的アーキテクチャを表す。RFB電池は主に、膜(すなわちセパレーター)によって分離されたそれぞれが電極(それぞれ正極および負極)および電解質を含む2つの半電池によって構成されている。集電体は一般にRFBの外側にある電気回路に接触した状態で存在し、バイポーラプレートは集電体を電極から分離する。アノード液およびカソード液と呼ばれる電解質は水性もしくは非水性溶媒に溶解された酸化還元活性種を含有し、電極と接触した状態で外部ポンプにより半電池の中を流れる。
【0004】
活性材料は電池の外側にある2つの外部タンクに貯蔵されるため、従来の静的電池アーキテクチャとは対照的に、この構造により当該装置の出力とエネルギー密度とが完全に切り離される。このようにして貯蔵槽の体積は、必要性に従って当該系をスケールアップする可能性を保証し、電池の総エネルギー密度を決定する。有効な体積エネルギー密度を達成するためには、活性種の溶解度を考慮および最適化しなければならない。
【0005】
他方、電池内部の電解質のみがレドックス反応するので、出力は電極の作用面積によって決定される。最も一般的な電極は、高活性表面積を有し、かつ大部分の溶液およびpHに対して化学的不活性であるという理由からカーボンフェルトのような炭素材料である。
【0006】
異なる種類のRFBが70年代から研究されてきており、最も一般的なものはオールバナジウム、Fe-CrおよびZn-Br系である。最後の2つの系の容量衰退および毒性ならびにバナジウム塩の高コストにより、世界的にそれらの商品化が制限され、そのためRFB系の改良の必要性に迫られている。
【0007】
「ナノスケール導体ネットワークをパーコレートすることにより使用可能になるポリスルフィドフロー電池(Polysulfide flow batteries enabled by percolating nanoscale conductor networks)」,F.Y.Fanら,Nano Lett.2014,14,4,2210-2218という論文は、リチウム-ポリスルフィド系をベースとするRFBについて記載している。リチウムの存在により有機の極性非プロトン性溶媒の使用を強いられ、この論文ではテトラエチレングリコールジメチルエーテルの使用が例示されている。この種の溶媒の使用は、これらの電池の作製および特にこれらの寿命の終了時の廃棄を複雑にし、さらにそれらのコストを上昇させ、それらを広範での作製および使用に適さないものにする。
【0008】
米国特許出願公開第2020/0006796A1号は、それらの中に溶解されたイオンのレドックス反応を利用する、マンガン酸、過マンガン酸または鉄-シアン化物イオンをベースとするカソード液と組み合わせてアルカリ性条件下での充電式フロー電池の組み立てのためにアノード液として使用されるポリスルフィド系電解質を用いた水性ポリスルフィド系電気化学電池について記載している。
【0009】
「媒介イオン固体電解質を用いた充電式亜鉛-水性ポリスルフィド電池(Rechargeable zinc-aqueous polysulfide battery with a mediator-ion solid electrolyte)」,M.M.Grossら著,ACS Appl.Mater.Interfaces 2018,10,13,10612-10617という論文は、水溶液をベースとする亜鉛/ポリスルフィド電池について記載している。この論文に記載されている電池は静的装置であり、従ってRFB型のものではなく、いくつかの限界および欠点を有する。第1に正極側(カソード液)では、電解質中の低濃度のポリスルフィド種および水酸化物イオン(0.1MのNa、0.1MのNaOH)は結果として電気化学的レドックス反応(S 2-→HS)に関与したという事実を有する。HS種はガス状硫化水素の発生を助け、これは容量およびサイクリングに関する装置信頼性、ひいては総電池サイクルライフに深刻に影響を与えるため、これにより電池性能が低下し、かつ電気化学的可逆性が乏しくなり、その上ガス状HSの生成はヒトの健康にとって極めて高いリスクを示すHSの有害懸念と共に、液体の漏出を防止するために密閉されている電気化学的フロー電池内部で過剰圧力を生じさせる場合がある。この論文の電池の第2の問題は、開示されている条件下ではOH種はZn2++4OH→Zn(OH) 2-反応に従って消費されるので負極半電池(アノード液)と関係があり、亜鉛酸塩種の溶解度はOHの濃度と共に増加するため、電解質pHの低下は電極表面での不働態層の形成を助け、経時的な導電減衰を引き起こすことである。これらの限界は、この論文の系のRFB電池への移行を阻む。最後に、Grossらによって報告されている固体セラミックセパレーターは、本質的に低いイオン伝導率(1mScm-1)および大きい厚さ(500μm)を示し、電池が高い電流および電力密度で動作するのを妨げ、2.5mAcm-2で1mWcm-2の低いピーク出力を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服する充電式フロー電池を提供することにある。特に本発明の目的は、アルカリ性条件下で亜鉛系アノード液と組み合わせてカソード液としてポリスルフィド系溶液を初めて用いて高いエネルギー効率で高サイクル数を維持することができ、シアン化物種のような有毒かつ環境上潜在的に有害な化学物質の使用を回避する充電式フロー電池を提供することにあり、この場合、電池の片側への亜鉛の金属堆積を利用し、このようにしてハイブリッド金属-ポリスルフィド充電式フロー電池を得る。さらに、本発明のさらなる目的は適切に調整された触媒材料を用いてポリスルフィド反応を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高いエネルギー効率を有する電源を提供することができる、安全で低コストかつ地球に豊富な材料をベースとする充電式フロー電池に関する。
【0012】
特に本発明は、
Zn2+イオン源を含有する第1の電解質および第1の半電池内に配置された静的もしくは流動性電極を含む第1の半電池であって、閉ループ構成において第1のポンプを通して第1の電解質を含む第1の外部タンクに接続されている第1の半電池と、
その中にポリスルフィドが溶解されている第2の電解質および第2の半電池内に配置された静的もしくは流動性電極を含む第2の半電池であって、閉ループ構成において第2のポンプを通して第2の電解質を含む第2の外部タンクに接続されている第2の半電池と、
第2の半電池では、粒子の形態で静的電極の表面にあるか第2の電解質中に分散されている触媒と、
2つの半電池の間のセパレーターと
を備える亜鉛-ポリスルフィドRFBを提供する。
【0013】
2つの電解質は、対応する半電池へ/から2つのポンプを用いて循環される。
【0014】
2つの半電池において、電池の充電および放電のために酸化および還元反応が生じる。2つの半電池内の電極は静的であってもよく、例えば金属スラリー電極または多孔性炭素電極であってもよく、あるいは互いから独立して2つの半電池内の電極は流動性であってもよく、すなわち第1の電解質はその上にZnを堆積させることができる分散された導電性粒子の形態で電極を含んでいてもよく、かつ/または第2の電解質は、そこでポリスルフィド酸化還元(レドックス)反応を行うことができる分散された導電性粒子の形態で電極を含んでいてもよい。
【0015】
さらに本発明では、第2の半電池に含まれている電極は、電池の充電および放電段階中に硫黄種が関与する電気化学反応を促進および維持するために必要な触媒で修飾されている。本明細書における「触媒」という用語は、後で説明されているように単一の触媒または異なる触媒材料の混合物を指してもよい。
【0016】
いくつかの添加剤を電解質のいずれか一方または両方に優先的に含めることができる。特に第1の電解質は水素発生抑制剤、錯化剤および/または緩衝剤を含んでいてもよい。第2の電解質は錯化剤および/または緩衝剤を含んでいてもよい。分散された電極の場合、増粘剤添加剤も電解質配合物に含められていてもよい。
【0017】
以下では図を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】その最も一般的な実施形態における本発明に係るフロー電池の概略図を示す。
図2-7】本発明に係るフロー電池の構築のための可能な第1の半電池の概略図を示す。
図8-25】本発明に係るフロー電池の構築のための可能な第2の半電池の概略図を示す。
図26】2つの半電池が多層の形態のセパレーター膜によって分けられており、層のうちの1つが触媒および電気活性粒子を含有する、本発明に係るフロー電池の概略図を示す
図27-28】本発明のスラリー電極を用いたZn系電解質についてのサイクリックボルタンメトリーのグラフを示す。
図29】本発明のスラリー電極を用いたポリスルフィド系電解質についてのサイクリックボルタンメトリーのグラフを示す。
図30-31】本発明の第2の半電池に使用するための触媒のX線回折結果を示す。
図32】本発明に係るZn-ポリスルフィドRFBについての充電および放電単一サイクルに対する触媒の効果を示す。
図33】本発明に係るZn-ポリスルフィドRFBについての充電および放電サイクルに対する触媒の効果を示す。
図34】本発明に係るZn-ポリスルフィドRFBについての充電および放電サイクルを示す。
図35】本発明のZn-ポリスルフィドRFBについてのサイクル数に対するクーロン効率を表す。
図36-39】本発明に係る異なるZn-ポリスルフィドRFBについての充電および放電サイクルを示す。
図40】本発明のRFBの体積容量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、アルカリ性亜鉛電解質を水性ポリスルフィド電解質と組み合わせることにより水性RFBが得られる。本発明は先行技術のRFB系の以前に記載されている毒性および高コストに関連する問題に対処するだけではなく、高い効率および安全性を達成することも可能にし、実際に亜鉛は最も豊富かつ安価な元素のうちの1つであり、別の非常に安価な元素である硫黄は、水性電解質においてアルカリ金属イオンの存在下で高い溶解度を示し、異なる長さを有するポリスルフィド鎖を形成し、このようにして電池のエネルギー密度を増加させる。
【0020】
亜鉛塩が関与する他の種類の化学系、例えば亜鉛-臭素または亜鉛-鉄電池とは異なり、本発明のRFBの化学的性質はアルカリ性条件下で働くことを可能にし、酸性環境に関連する問題を回避する。
【0021】
その上、上で言及したGrossらの論文に記載されている静的電池と比較して、本発明の電池は充電式フロー電池であり、ここでは電解質は外部タンクから電気化学電池に流れ、このようにして当該装置の出力とエネルギー密度とを切り離し、かつより高い電流密度でより長い時間にわたって電池を充電および放電する可能性を可能にする。
【0022】
上で考察したM.M.Grossらの論文の系とは異なり、本発明のRFBのカソード区画、すなわちS 2-→S2-において生じるレドックス反応は、HSの生成を可能にせず、エネルギー密度を増加させ、かつ電池の寿命を引き延ばし、かつ電池からの有毒ガスの生じ得る漏出に関連するリスクを回避する。本発明のRFBは、M.M.Grossらの論文のアノード液半電池および固体セラミックセパレーターを用いた場合に直面する上記問題も回避する。以下に示すように、本発明に記載されている系は同様の化学的性質に基づいて、あらゆる入手可能な先行技術装置よりも最大50倍高い電流密度で働き、サイクルを通してより高い安定性およびより長い電池寿命を有する。
【0023】
以下の説明および特許請求の範囲において「溶媒」という定義は、電解質(アノード液およびカソード液の両方)の液相に言及する場合、水あるいはC1~C4アルコール、エチレングリコール、酢酸、グリセリンまたはそれらの2つ以上の組み合わせ、好ましくはC1~C4アルコール、エチレングリコールの中から選択される1種以上の化合物またはそれらの組み合わせと共に少なくとも40体積%の水を含有する水性混合物を意味する。本発明の好ましい実施形態では、溶媒は水および70体積%よりも高い、好ましくは80体積%よりも高い、なおより好ましくは90%よりも高い水の割合を有する極性プロトン性溶媒を含む。
【0024】
本明細書および添付の図面では、全ての実施形態において同じ要素は同じ符号で特定されている。
【0025】
最後に、以下では本発明の第1および第2の電解質の調製について異なる実施形態において説明する。明確性のために、あらゆる電解質の調製を一連の工程(i)、(ii)、...として説明する。あらゆる調製の第1の工程(i)は、溶媒を用意し、かつ第1の化合物を添加してイオン伝導性溶液を生成することからなるが、当業者には明らかであるように以下の工程の順番(すなわち、各電解質の完全な組成を得るための構成成分の添加の順番)は変えることができ、次の構成成分は任意の順序で添加することができる。
【0026】
充電式フロー電池は放電モードで動作する場合にはエネルギー源として働き、充電(再充電)モードで動作する場合にはエネルギー貯蔵装置として働く。
【0027】
本発明のRFBでは、充電および放電段階中に関わる2つの異なる半電池反応は、
1.充電段階:
【化1】
2.放電段階:
【化2】
【0028】
言い換えると、充電段階中に亜鉛は負極に電気メッキされ、S 2-イオンはS 2-(m>n)に酸化され、放電段階中に逆の反応が生じ、すなわち亜鉛はZn2+に酸化され、S 2-は還元されて、電解質を初期状態に戻す。
【0029】
負極において反応する亜鉛イオンを含有する電解質をアノード液と呼び、正極において反応するポリスルフィドイオンを含有する電解質をカソード液と呼ぶ。
【0030】
図1はその最も一般的な実施形態における本発明の亜鉛-ポリスルフィドRFB100を概略的に表す。RFB100は、第1の半電池110を膜セパレーター130を介して第2の半電池120に結合することにより形成されている。第1の半電池は集電体113と電気的に接触した状態で、その中に第1の電解質114およびフロースルー(3D)または平面(2D)のどちらであってもよい電極112が存在する容器111を備え、第1の電解質114はポンプ116、弁系(図には示さず)および配管117を用いて外部貯蔵槽115に再循環される。同様に第2の半電池は集電体123と電気的に接触した状態で、その中に第2の電解質124およびフロースルー(3D)または平面(2D)のどちらであってもよい電極122が存在する容器121を備え、第2の電解質124はポンプ126、弁系(図には示さず)および配管127を用いて外部貯蔵槽125に再循環される。第2の半電池には、ポリスルフィド鎖のレドックス反応を促進するために必要な触媒も存在するが、触媒は本発明のRFBの一般的な構築を表すことを目的とした図1の一般的な実施形態には表されていない。触媒を第2の半電池に導入する様々な可能な方法については、本発明の様々な具体的な実施形態の説明を参照しながら以下に詳細に示す。
【0031】
2つの別個のパートに分けたその最も一般的な構成における本発明のRFBの動作の説明を以下で報告する。第1のパートは充電もしくは再充電段階(すなわち、RFBはエネルギー貯蔵装置として機能する)に言及し、第2のパートは放電段階(すなわち、RFBはエネルギー源として機能する)に言及する。これはカソード/アノードのような用語および同様の用語の使用における曖昧さを回避するものである。
【0032】
(再)充電段階における動作
(再)充電では、第1の半電池110においてカソード反応、すなわち電極112の表面におけるZn2+の金属亜鉛への還元が生じる。第1の電解質114は外部タンク115に蓄積されており、レドックス反応が生じる間はポンプ116によって半電池110を通って流れる。レドックス反応が生じると、第1の電解質は外部パイプ117を通して貯蔵装置タンク115に再循環されると共に、新しい/再生された電解質が電解槽の中に入ることができる。
【0033】
同様に第2の半電池120は第2の電解質124および集電体(123)に接触した状態で電極122を備え、この半電池では電極122の表面においてアノード反応(ポリスルフィドの酸化)が生じる。第2の電解質124は外部タンク125に蓄積されており、レドックス反応が生じる間はポンプ126により半電池120を通って流れる。レドックス反応が生じると、第2の電解質は外部パイプ127を通して貯蔵装置タンク125に再循環されると共に、新しい/再生された電解質が電解槽の中に入ることができる。
【0034】
放電段階における動作
放電段階では、本発明の亜鉛-ポリスルフィドRFB100は上記(再)充電段階とは逆に動作する。RFBの要素は同じであるが、この場合第1の半電池では金属亜鉛のZn2+への酸化反応が生じ、第2の半電池ではポリスルフィドの還元反応が生じる。
【0035】
図1を参照しながら上で述べたように、本発明の完全なRFBは、膜セパレーターによって分けられた2つの異なる半電池を組み合わせて作られている。各半電池の具体的な構築、特に半電池および第2の半電池において使用される電極の種類、触媒の配置は、主に第1および第2の電解質の組成によって決まる。電解質、電極、触媒および膜セパレーターならびに本発明の他の任意の要素について以下で別々に説明する。
【0036】
Zn系アルカリ性電解質(第1の電解質)
本発明の第1の電解質すなわちアノード液はZn2+イオンを含有しており、任意の好適な亜鉛イオン源を1種以上の水酸化物を含有する水性支持電解質中に溶解することにより調製してもよい。
【0037】
第1の最も単純な可能な実施形態では、アノード液は亜鉛化合物、例えば酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH))、酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))、塩化亜鉛(ZnCl)、炭酸亜鉛(ZnCO)またはそれらの2つ以上の組み合わせを溶媒に溶解することにより調製する。好ましい実施形態では、この電解質は0.001M~1.5M、好ましくは0.01M~1M、なおより好ましくは0.1M~1MのZn2+イオン濃度を有するために、酢酸亜鉛または塩化亜鉛を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を含有する溶媒に溶解することにより生成する。好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである。
【0038】
一例として一実施形態では、0.3M~1MのZn2+イオン濃度が得られるような量でZnOを5M~10Mの範囲の濃度でNaOHを含有する水溶液に溶解する。
【0039】
第1の可能な組成のこのアノード液を用いた第1の半電池は図2に概略的に表されており、図1を参照しながら既に説明した第1の半電池110に対応しており(この図および半電池を表している以下に説明されている全ての図において、膜セパレーターの存在も示されている)、溶媒、亜鉛イオンおよび少なくとも1種の水酸化物のみを含有するこの塩基性アノード液は電解質114である。
【0040】
本発明の第2の実施形態では、アノード液は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)任意の好適な亜鉛イオン源、例えば酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH))、酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))、塩化亜鉛(ZnCl)、炭酸亜鉛(ZnCO)またはそれらの2つ以上の組み合わせを工程(i)の溶液に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、この電解質は0.001M~1.5M、好ましくは0.01M~1M、なおより好ましくは0.1M~1MのZn2+イオン濃度を有するために酢酸亜鉛または塩化亜鉛を溶解することにより生成する工程、および
(iii)導電性粒子、好ましくは亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子、亜鉛コーティング粒子、グラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される亜鉛系および/または炭素系粒子を工程(ii)の溶液に懸濁させる工程であって、これらの粒子は電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入され、好ましい実施形態では、総濃度は電解質の0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
によって得られる。
【0041】
この第2の可能な組成を有するアノード液を用いる第1の半電池310は、図3に概略的に表されている。この実施形態のアノード液314は導電性粒子311を上記電解質114に添加することにより得られ、この状況は図3の挿入図に表されている。電気化学電池の内部では、アノード液は平面電極112に接触した状態である。
【0042】
本発明の第3の可能な実施形態では、アノード液は支持電解質中に亜鉛を含む電気活性粒子を含有する。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)好適な亜鉛イオン源、例えば酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH))、酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))、塩化亜鉛(ZnCl)、炭酸亜鉛(ZnCO)またはそれらの2つ以上の組み合わせを工程(i)の溶液に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、この電解質は0.001M~1.5M、好ましくは0.01M~1M、なおより好ましくは0.1M~1MのZn2+イオン濃度を有するために酢酸亜鉛または塩化亜鉛を溶解することにより生成する工程、および
(iii)電極の表面においてレドックス反応することができる異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子を工程(ii)の溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化をもたらすことができ、Znイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0043】
この第3の可能な組成に係るアノード液を用いる第1の半電池410は、図4に概略的に表されている。この実施形態のアノード液414は電気活性粒子411を上記電解質114に添加することにより得られ、この状況は図4の挿入図に表されている。電気化学電池の内部では、アノード液は平面電極112に接触した状態である。
【0044】
本発明のさらに別の(第4の)実施形態では、アノード液は、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する亜鉛および炭素粒子を含有する電気活性粒子を支持電解質に溶解するか懸濁させることにより得られる。この分散液の両粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)任意の好適な亜鉛イオン源、例えば酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH))、酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))、塩化亜鉛(ZnCl)、炭酸亜鉛(ZnCO)またはそれらの2つ以上の組み合わせを工程(i)の溶液に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、この電解質は0.001M~1.5M、好ましくは0.01M~1M、なおより好ましくは0.1M~1MのZn2+イオン濃度を有するために、酢酸亜鉛または塩化亜鉛を溶解することにより生成する工程、
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子を工程(ii)の溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化をもたらすことができ、Znイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される亜鉛系および/または炭素系粒子を工程(iii)の溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0045】
この第4の可能な組成に係るアノード液を用いる第1の半電池510は、図5に概略的に表されている。この実施形態のアノード液514は、上記電解質114にこの場合は炭素系粒子のみである導電性粒子311および亜鉛系電気活性粒子411を添加することにより得られ、この状況は図5の挿入図に表されている。電気化学電池の内部では、アノード液は平面電極112に接触した状態である。
【0046】
本発明の第5の可能な実施形態では、アノード液は支持電解質中に亜鉛を含む電気活性粒子を含有する。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、および
(ii)電極の表面においてレドックス反応することができる異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子を工程(i)の溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化をもたらすことができ、Znイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0047】
この第5の可能な組成に係るアノード液を用いる第1の半電池610は図6に概略的に表されている。このアノード液の液相は溶媒および水酸化物を含み、かつ溶解された亜鉛塩を含有していないという点で先の実施形態の電解質114とは異なり、従ってこの液相は支持電解質として機能し、符号134によって示されている。この実施形態のアノード液614は電気活性粒子411を支持電解質134に添加することにより得られ、この状況は図6の挿入図に表されている。電気化学電池の内部では、アノード液は平面電極112に接触した状態である。
【0048】
本発明のさらに別の(第6の)実施形態では、アノード液は、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する亜鉛および炭素粒子を含有する電気活性粒子を支持電解質に溶解するか懸濁させることにより得られる。この分散液の両粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態の亜鉛イオンを含有する有機および/または無機の電気活性粒子を工程(i)の溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化をもたらすことができ、Znイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iii)導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される亜鉛系および/または炭素系粒子を工程(ii)の溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0049】
この第6の可能な組成に係るアノード液を用いる第1の半電池710は図7に概略的に表されている。この実施形態のアノード液714は、この場合炭素系粒子のみである導電性粒子311および亜鉛系電気活性粒子411を上記支持電解質134に添加することにより得られ、この状況は図7の挿入図に表されている。電気化学電池の内部では、アノード液は平面電極112に接触した状態である。
【0050】
亜鉛と共堆積させて合金を形成することができる任意の好適な金属元素を、上記実施形態のいずれか1つのアノード液に添加することができる。特にイオンの形態の金属元素はそれらのそれぞれの塩、酸化物および水酸化物から得られ、(i)亜鉛電気化学ポテンシャルを変化させ、かつ(ii)水素発生の過電圧を上昇させるために適切に選択される。これらの金属元素はPb、Mn、Sn、Fe、Ni、Cu、Mg、Ti、Co、Al、Li、Zrまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される。好ましい実施形態では、それらを0.001M~1M、好ましくは0.01M~0.5M、なおより好ましくは0.05M~0.3Mの範囲の濃度で導入する。
【0051】
その上、上記アノード液のいずれか1つは、以下に詳述するように第1の半電池の動作を安定化させ、かつ電池性能を高めるために、水素発生抑制剤、Zn錯化剤、レベリング剤、光沢剤、防食化合物などの添加剤および同様の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0052】
第1の電解質の第1の可能な添加剤は水素発生抑制剤である。この成分は電池クーロン効率を上げ、かつ充電段階中に副反応を減らすために添加され、この添加剤は電解質のpH変動を回避するのにも有効であり得る。水素発生抑制剤は0.001M~5M、好ましくは0.01M~2M、なおより好ましくは0.05M~1Mの範囲の総濃度で、ケイ酸塩、Pb、Bi、Mn、W、Cd、As、Sb、Sn、Inおよびそれらの酸化物、ホウ酸またはそれらの組み合わせの中から選択してもよい。
【0053】
アノード液は0.001M~10M、好ましくは0.1M~5M、好ましくは0.5M~2Mの濃度でロッシェル塩をさらに含有していてもよく、これらの塩は亜鉛イオンを錯化させるように機能し、かつ電解質の導電率を上昇させる。
【0054】
アノード液の別の可能な添加剤は、電池の長期性能に影響を与える電着亜鉛の樹枝状成長を減らすレベリング剤である。レベリング剤としては、0.0001ppm~10000ppm、好ましくは0.002ppm~5000ppm、なおより好ましくは1ppm~1000ppmの濃度を有する、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、チオ尿素、第四級アンモニウム塩、デキストリン、シクロデキストリン、スクロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ポリアクリル酸、グルコースおよびセルロースまたはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、Zn系電解質は0.01ppm~5000ppm、好ましくは1ppm~2000ppm、より好ましくは5ppm~1000ppmのPEIを含有する。
【0055】
別の実施形態では、可塑剤添加剤を電解質配合物に添加してもよい。これらの添加剤は0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%、なおより好ましくは0.5重量%~1重量%の範囲でポリオール(ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、テトラエチレングリコール(TEG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなど)、単糖(例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース)、脂肪酸、尿素、エタノールアミン、トリエタノールアミン、植物油、レシチン、蝋、アミノ酸、界面活性剤およびオレイン酸を含む。
【0056】
さらに別の実施形態では、本発明は、分散された粒子の場合に最良の粒子分散および好適な電解質粘度を保証するために必要な増粘剤添加剤の添加にも関する。これらの有機添加剤の量は電解質の0.0001重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲からなる。
【0057】
好ましい実施形態では、亜鉛系電解質は、電解質の0.0001重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲からなる量でキサンタンガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、キトサン、寒天、アルギン酸ナトリウムおよびポリエチレンオキシドの中から選択される有機添加剤を含有する。
【0058】
水性ポリスルフィド系電解質(第2の電解質)
本発明の第2の電解質すなわちカソード液はポリスルフィドイオンを含有し、その働きのために触媒の存在を必要とする。ポリスルフィドイオンおよび触媒の共存は非常に異なる実施形態に従って達成してもよく、これについては以下に詳細に記載されている。電解質の液相としての水または水性混合物の選択および以下に記載されている他の化学物質とのそれらの組み合わせにより、開発された電極触媒材料との組み合わせにより促進される短鎖ポリスルフィド鎖の電気化学反応を利用することができる。
【0059】
本発明の最初の第2の電解質すなわちカソード液は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)水または水性溶媒中のリチウムスルフィド(LiS)、ナトリウムスルフィド(NaS)、カリウムスルフィド(KS)の中から選択される任意の好適なポリスルフィド源またはそれらの2つ以上の組み合わせを工程(i)で得られた溶液に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、アルカリスルフィドの総濃度は0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mである工程、および
(iii)A鎖(式中、n=2~6であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を形成するために元素状硫黄Sを工程(ii)で得られた溶液に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、添加される元素状硫黄の総濃度は0.5M~40M、好ましくは1M~35M、なおより好ましくは2M~30Mである工程
により調製してもよい。
【0060】
本発明の一実施形態では、2M~8Mの範囲の濃度のNaOHを含有する水溶液に、3M~12Mの濃度の元素状硫黄と共にNaSを2M~3Mの濃度で溶解する。
【0061】
この第1の実施形態のカソード液を効果的に用いるために、第2の半電池に含まれている静的電極はカソード液電気化学反応を促進するために必要な触媒により修飾されている。これは一般に、特にMo、Zr、Ti、Ni、In、Pb、Zn、Fe、Co、Cu、Mn、Cd、Bi、Al、Ga、Cr、W、Nb、Au、Ag、Pt、Ru、Ir、Pd金属およびそれらの合金ならびに1種以上の金属の化合物の群から選択される触媒金属Mである。これらの化合物は、場合により結晶相中の金属カチオンM、M’と指示アニオンとのあらゆる可能な組成を指す一般的な命名法M-X(またはM-M’-X)を採用して以下に示されている。可能な触媒的化合物の例は、金属酸化物または混合酸化物(M-OまたはM-M’-O)、硫黄アニオンおよび少なくとも1種の金属カチオン(M-XまたはM-M’-X=Co-S、Cu-S、Fe-S、Ni-S、Zn-S、Sn-S、Cu-Zn-S、Cu-Sn-Sなど)を含有するカルコゲニド化合物またはセレン化物およびテルル化物などの他のカルコゲニド(M-X=M-Se、M-Te)、窒化物(M-N)、酸窒化物(M-O-N)および炭窒化物(M-C-N)または炭素系非貴金属(M/N/C)である。触媒については以下にさらに詳細に記載されている。
【0062】
この第1の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池620は図8に概略的に表されている。この実施形態のカソード液124は溶媒、少なくとも1種の水酸化物およびポリスルフィドイオンを含有する。この実施形態の半電池では、触媒は電極622の表面に付着された粒子623の形態で存在する。
【0063】
本発明のカソード液の第2の実施形態は、分散された触媒粒子をその中に導入することにより得られる。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のS 2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するためにスルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、
(iii)静的電極の表面においてポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0064】
この分散された触媒粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0065】
これらの触媒粒子は、電極622の修飾物質として上に列挙されている同じ金属ならびに金属合金および化合物で作られていてもよい。
【0066】
この第2の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池720は図9に概略的に表されている。この実施形態のカソード液721は、触媒粒子711(図の中の挿入図では星によって表されている)を上記電解質124に添加することにより得られる。この場合、カソード液721に接触した状態の平面電極722はその表面に付着された触媒粒子を有していない。
【0067】
本発明のカソード液の第3の可能な実施形態は、先に記載されている分散された触媒粒子および導電性粒子、好ましくは炭素系粒子を支持電解質の中に導入し、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成することにより得られる。この分散液の粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0068】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のS 2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、
(iii)ポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0069】
この第3の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池820は図10に概略的に表されている。この実施形態のカソード液821は、先に記載されている電解質124に触媒粒子711および導電性粒子811(両種類の粒子が図の中の挿入図に表されている)を添加することにより得られる。またこの場合、カソード液821に接触した状態の平面電極822はその表面に付着された触媒粒子を必要としない。
【0070】
本発明の第4の可能な実施形態では、カソード液は電解質の中に分散された触媒粒子により修飾された、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成するいくつかの導電性粒子を含む。
【0071】
導電性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を含有する支持電解質を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のSn2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)先に触媒粒子によって修飾され、かつ電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0072】
この第4の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池920は図11に概略的に表されている。この実施形態のカソード液921は、基本の導電性粒子を触媒粒子により修飾することにより得られた先に記載されている粒子911(挿入図の中)を電解質124に添加することにより得られる。電極922はその表面に付着された触媒粒子を有していない。
【0073】
本発明の第5の可能な実施形態は、支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有し、かつ静的電極の表面にある触媒の存在のおかげでレドックス反応により反応する電気活性粒子を含むカソード液である。電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、および
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0074】
この第5の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1020は図12に概略的に表されている。このカソード液の液相は溶媒および水酸化物を含み、スルフィドを含有していないという点で先の実施形態の電解質124とは異なり、従ってこの液相は支持電解質として機能し、符号144によって示されている。この実施形態のカソード液1021はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011が添加された支持電解質144からなる。本発明の本実施形態では、電極1022は電極622と同様の触媒修飾された静的電極であってもよく、あるいはスラリー電極の形態であってもよい。
【0075】
本発明の第6の実施形態では、カソード液は支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有し、かつその中に共分散された触媒粒子の存在のおかげでレドックス反応により反応するいくつかの電気活性粒子を含有する。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0076】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、
(iii)ポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0077】
この第6の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1120は図13に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1121は、スルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011および触媒粒子711が添加された支持電解質144からなる。電気化学電池の内部ではカソード液は平面電極1122に接触した状態である。
【0078】
本発明のカソード液の第7の実施形態では、これは、(i)支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有する電気活性粒子、(ii)カソード液のレドックス反応を促進するために必要な触媒粒子、および(iii)その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極を含む。全ての分散された粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0079】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、
(iii)ポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0080】
この第7の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1220は図14に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1221はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011、触媒粒子711および導電性粒子811が添加された支持電解質144からなり、これらはこの場合、2D電極1222に接触した状態でスラリー/流動性電極を形成する。
【0081】
本発明の第8の実施形態では、カソード液は、支持電解質中に分散された触媒粒子によって修飾されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その上でレドックス反応が生じ得る触媒を含む/含まない静的電極とを含む。修飾された電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、および
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子それ自体の表面にある触媒の存在のおかげで電気活性粒子と電極との界面で生じ得、ポリスルフィドイオン源および触媒源の両方として機能するこれらの修飾された電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0082】
カソード液1321のこの組成および得られる第2の半電池は図15に表されており、この中の挿入図における符号1311は、それらの表面に支持電解質144に懸濁された触媒粒子を有するスルフィド系電気活性粒子を示す。
【0083】
本発明の第9の可能な実施形態によれば、カソード液は、支持電解質中に分散された触媒粒子によって修飾されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極とを含む。修飾された電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子それ自体の表面にある触媒の存在のおかげで電気活性粒子と流動性電極との界面で生じ得、ポリスルフィドイオン源および触媒源の両方として機能するこれらの修飾された電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iii)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0084】
この第9の可能なカソード液組成1421により得られる第2の半電池1420は図16に概略的に表されている。挿入図における符号1311はそれらの表面に触媒粒子を有するスルフィド系電気活性粒子を示し、符号811は導電性粒子を示す。この粒子は支持電解質144の中に分散されている。
【0085】
本発明の第10の可能な実施形態では、カソード液は、支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する触媒粒子によって修飾された導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極とを含む。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0086】
この場合カソード液は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化によって引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iii)触媒粒子によって修飾され、電解質内に導電性パーコレーションパスを形成し、かつ電気化学反応のために触媒を提供するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0087】
この第10の可能なカソード液組成1521により得られる第2の半電池1520は図17に概略的に表されている。挿入図における符号1011はスルフィド系電気活性粒子を示し、符号911はそれらの表面に触媒粒子を有する導電性粒子を示す。この粒子は支持電解質144の中に分散されており、電気化学電池の内部ではカソード液は平面電極1522に接触した状態である。
【0088】
本発明のカソード液の第11の実施形態では、これは、(i)支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有する電気活性粒子、(ii)カソード液のレドックス反応を促進するために必要な触媒粒子、および(iii)その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極を含む。全ての分散された粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0089】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、
(iii)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0090】
この第11の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1620は図18に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1621はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011および導電性粒子811が添加された支持電解質144からなり、これらはこの場合、その表面に触媒粒子623を含む電極622と同様の2Dの触媒修飾された静的電極1622に接触した状態でスラリー/流動性電極を形成する。
【0091】
本発明の第12の可能な実施形態は、支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有し、かつ静的電極の表面にある触媒の存在のおかげでレドックス反応により反応する電気活性粒子を含むカソード液である。電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、および
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のS 2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(ii)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0092】
この第12の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1720は図19に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1721はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011を電解質124に添加することにより得られる。本発明の本実施形態では、電極1722は電極622と同様の触媒修飾された静的電極であってもよい。
【0093】
本発明の第13の実施形態では、カソード液は支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有し、かつその中に共分散された触媒粒子の存在のおかげでレドックス反応により反応するいくつかの電気活性粒子を含有する。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0094】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のSn2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)ポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0095】
この第13の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1820は図20に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1821はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011および触媒粒子711が添加された電解質124からなる。電気化学電池の内部ではカソード液は平面電極1822に接触した状態である。
【0096】
本発明のカソード液の第14の実施形態では、これは、(i)支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有する電気活性粒子、(ii)カソード液のレドックス反応を促進するために必要な触媒粒子、および(iii)その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極を含む。全ての分散された粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0097】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のS 2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(ii)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、
(iv)ポリスルフィドレドックス反応を触媒することができる異なる酸化状態でM-X化合物を含有する触媒粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、触媒粒子は0.001重量%~10重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(v)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(iv)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0098】
この第14の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池1920は図21に概略的に表されている。この実施形態のカソード液1921はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011、触媒粒子711および導電性粒子811が添加された電解質124からなり、これらはこの場合、2D電極1922に接触した状態でスラリー/流動性電極を形成する。
【0099】
本発明の別の(第15の)実施形態では、カソード液は、支持電解質中に分散された触媒粒子によって修飾されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その上でレドックス反応が生じ得る触媒を含む/含まない静的電極とを含む。修飾された電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0100】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、および
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のSn2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(ii)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子それ自体の表面にある触媒の存在のおかげで電気活性粒子と電極との界面で生じ得、ポリスルフィドイオン源および触媒源の両方として機能するこれらの修飾された電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程
により調製してもよい。
【0101】
カソード液2021のこの組成および得られる第2の半電池2020は図22に表されており、この中の挿入図における符号1311はそれらの表面に電解質124に懸濁された触媒粒子を有するスルフィド系電気活性粒子を示す。
【0102】
本発明の第16の可能な実施形態によれば、カソード液は、支持電解質中に分散された触媒粒子によって修飾されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極とを含む。修飾された電気活性粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のS 2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(ii)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子それ自体の表面にある触媒の存在のおかげで電気活性粒子と流動性電極との界面で生じ得、ポリスルフィドイオン源および触媒源の両方として機能するこれらの修飾された電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁する工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0103】
この第16の可能なカソード液組成2121により得られる第2の半電池2120は図23に概略的に表されている。挿入図における符号1311はそれらの表面に触媒粒子を有するスルフィド系電気活性粒子を示し、符号811は導電性粒子を示す。これらの粒子は電解質124に分散されている。
【0104】
本発明の第17の可能な実施形態では、カソード液は、支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有するいくつかの電気活性粒子と、その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する触媒粒子によって修飾された導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極とを含む。当該粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0105】
この場合カソード液は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のSn2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(i)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応は、電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化によって引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、および
(iv)触媒粒子によって修飾され、電解質内に導電性パーコレーションパスを形成し、かつ電気化学反応のために触媒を提供するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(ii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0106】
この第18の可能なカソード液組成2221により得られる第2の半電池2220は図24に概略的に表されている。挿入図における符号1011はスルフィド系電気活性粒子を示し、符号911はそれらの表面に触媒粒子を有する導電性粒子を示す。これらの粒子は電解質124に分散されており、電気化学電池の内部ではカソード液は平面電極2222に接触した状態である。
【0107】
本発明のカソード液の第18の実施形態では、これは、(i)支持電解質中に分散されたスルフィドイオンを含有する電気活性粒子、(ii)カソード液のレドックス反応を促進するために必要な触媒粒子、および(iii)その中/その上でレドックス反応が生じ得るパーコレートされた導電性ネットワークを形成する導電性粒子、好ましくは炭素系粒子の形態の流動性電極を含む。全ての分散された粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0108】
この電解質は、
(i)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、水酸化ビスマスまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される1種以上の化合物を溶媒に溶解する工程であって、好ましい実施形態では、水酸化物の総濃度は0.5M~20M、好ましくは1M~12M、なおより好ましくは1.5M~10Mである工程、
(ii)0.5M~8M、好ましくは1M~7M、なおより好ましくは2M~6Mの総濃度のSn2-イオンのために、A(式中、n=4~5であり、AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合わせの中から選択されてもよい)を生成するために、スルフィド塩および元素状硫黄を1:1超の比(A)、好ましくは1:3~1:4からなる比で工程(i)で得られた溶液に溶解する工程、および
(iii)レドックス反応することができる異なる酸化状態でスルフィドイオンを含有する有機および/または無機のスルフィド系電気活性粒子を工程(ii)で得られた溶液に溶解するか懸濁させる工程であって、レドックス反応により電気活性粒子の結晶格子内または電気活性粒子と集電体との界面のいずれかにおけるイオンの配位数の変化を引き起こすことができ、ポリスルフィドイオン源として機能する電気活性粒子は0.01重量%~50重量%、好ましくは1重量%~30重量%、なおより好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で導入することができる工程、
(iv)電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を工程(iii)で得られた溶液に懸濁させる工程であって、好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である工程
により調製してもよい。
【0109】
この第19の可能な組成に係るカソード液を用いる第2の半電池2320は図25に概略的に表されている。この実施形態のカソード液2321はスルフィドイオンを含有する電気活性粒子1011および導電性粒子811が添加された電解質124からなり、これらはこの場合、電極622と同様の2Dの触媒修飾された静的電極2322に接触した状態でスラリー/流動性電極を形成する。
【0110】
上記カソード液のいずれか1つは、好ましくは二酸化硫黄またはあらゆる他のS含有廃棄化合物および/または溶液の処理のための精製プロセスから生じるものの中から選択される硫黄系溶液を用いて得ることができる。
【0111】
上記カソード液のいずれか1つは、第2の半電池の動作を安定化させ、かつ電池性能を高めるための添加剤としての可塑剤および/または増粘剤をさらに含有していてもよい。
【0112】
添加することができる可塑剤添加剤は、0.1重量%~5重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%、なおより好ましくは0.5重量%~1重量%の範囲のポリオール(ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、テトラエチレングリコール(TEG)、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、キシリトールなど)、単糖(例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、スクロース)、脂肪酸、尿素、エタノールアミン、トリエタノールアミン、植物油、レシチン、蝋、アミノ酸、界面活性剤およびオレイン酸を含む。
【0113】
増粘剤添加剤は、分散された粒子および分散された触媒の場合に最良の粒子分散および好適な電解質粘度を保証する。これらの有機添加剤の量は電解質の0.0001重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、なおより好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲からなる。好ましい実施形態では、カソード液はキサンタンガム、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、キトサン、寒天、アルギン酸ナトリウムおよびポリエチレンオキシドの中から選択される有機添加剤を含有する。
【0114】
電極
本発明のZn-ポリスルフィドRFBで使用される電極は任意の種類の電極材料から選択することができる。
【0115】
当該電極は炭素系もしくは金属材料で作られていてもよく(例えば板または発泡体または網の形態)、あるいは分散された電極の形態であってもよい。本明細書では、前者の電極は静的電極として示されており、カーボンフェルトのようなフロースルー3Dのものまたは黒鉛板のような平面2Dのものであってもよく、後者の場合は流動性電極として示されている。
【0116】
炭素系静的電極は例えば黒鉛シート、カーボンフェルトまたは炭素系ファブリックのものであってもよく、あるいは炭素系電極は、ポリマーマトリックス中に分散された炭素系導電性粒子から形成されている。炭素系電極は第1および第2の半電池の両方に適している。
【0117】
好ましくは第1の半電池に使用するための金属静的電極は、Zn金属板、Znコーティングされた金属板、Zn金属発泡体、Znコーティングされた金属発泡体もしくは網からなっていてもよい。第2の半電池では、静的電極すなわち金属電極または炭素系電極はどちらも、後で記載されているように溶解された化学種のレドックス反応を促進および維持するために必要な触媒によって修飾されている。好ましくは第2の半電池では、炭素系電極はカーボンフェルトで修飾された電極である。本発明の別の好ましい実施形態では、使用される金属電極は第2の半電池では修飾された金属発泡体である。
【0118】
分散された導電性粒子のパーコレートされたネットワークの形態の流動性の分散された電極は、有機もしくは無機の導電性粒子、機能化粒子または粒子の形態の流動床電極からなっていてもよい。これらの電極は両方の電解質中に分散されていてもよく、それらはその中/その上でレドックス反応が生じ得る粒子である。これらの分散された電極の例は金属粒子、膨張黒鉛、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、活性炭、遷移金属酸化物粒子、金属酸化物粒子で修飾された炭素系材料、カーボンナノチューブ、カーボンブラック粒子、アセチレンブラック粒子、金属コーティングされた粒子またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、これらの粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。好ましい実施形態では、Zn系電解質中の流動性電極は、電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入されるZn粒子、Zn酸化物粒子、Znコーティングされた粒子および/またはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を含有していてもよい。好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である。
【0119】
好ましい実施形態では、流動性電極は第2の半電池では、電解質内に導電性パーコレーションパスを形成するために導入される導電性粒子、好ましくはグラフェン、膨張黒鉛、還元型酸化グラフェン、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブまたはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される炭素系粒子を含有していてもよい。好ましい実施形態では、総濃度は0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、なおより好ましくは1重量%~5重量%の範囲である。
【0120】
流動性の分散された電極を使用することにより、亜鉛めっき/溶解のための過電圧を最小限に抑えるための高い表面積およびより高いサイクルライフ(平面電極へのめっきと比較して)が得られ、ポリスルフィド半電池における流動性の分散された電極の場合に、流動性電極の添加により、より高い電池容量および高い動作速度におけるより良好な挙動を誘導することができる。
【0121】
スラリー/流動性電極は、その中/その上でレドックス反応が生じ得る導電性粒子のインクの形態である。これらのスラリー電極の生成のために有用な材料は金属粒子、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、遷移金属酸化物粒子、金属酸化物粒子で修飾された炭素系材料、カーボンナノチューブ、カーボンブラック粒子、アセチレンブラック粒子、金属コーティングされた粒子、還元型酸化グラフェン、活性炭またはそれらの2つ以上の組み合わせである。スラリーの粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。混合物中にポリマー粉末を導入することができ、それは他の粒子のための結合剤として機能する。好ましい実施形態では、スラリー電極中の導電性炭素粒子の量は、総電極質量の50%~95%、別の実施形態では60%~90%、さらに別の実施形態では70%~80%から選択される。亜鉛を含有する活性粒子の量は総電極質量の1%~50%、より好ましくは5%~30%、なおより好ましくは10%~20%から選択することができる。結合剤の量は総電極質量の0.1%~20%、より好ましくは0.5%~10%、なおより好ましくは5%~10%から選択される。スラリーの組成は2つの電解質に電極導電率を与えるために調整することができる。
【0122】
好ましい実施形態では、第1の半電池に用いられるスラリー電極は、その中/上でZn2+/Znレドックス反応が生じ得る導電性粒子のスラリーである。これらのスラリー電極の生成のために有用な材料は金属粒子、Zn粒子、Znコーティングされた粒子、黒鉛、膨張黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、遷移金属酸化物粒子、金属酸化物粒子で修飾された炭素系材料、カーボンナノチューブ、カーボンブラック粒子、アセチレンブラック粒子、還元型酸化グラフェン、活性炭またはそれらの2つ以上の組み合わせであり、スラリーの粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0123】
好ましい実施形態では、第2の半電池に使用するためのスラリー電極はその上でスルフィドレドックス反応が生じ得る導電性粒子のスラリーから形成されており、このスラリー電極の生成のために有用な材料は、例えば金属粉末、黒鉛、膨張黒鉛、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、遷移金属酸化物粒子、金属酸化物粒子で修飾された炭素系材料、還元型酸化グラフェン、活性炭、アセチレンブラックまたはそれらの2つ以上の組み合わせであり、スラリーの粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~100μmの範囲である。
【0124】
触媒
本発明では、第2の半電池に含まれている電極は、電池の充電および放電段階中に硫黄種が関与する電気化学反応を促進および維持するために触媒材料で修飾されている。前記触媒材料は一般に、特にMo、Zr、Ti、Ni、In、Pb、Zn、Fe、Co、Cu、Mn、Cd、Bi、Al、Ga、Cr、W、Nb、Au、Ag、Pt、Ru、Ir、Pd金属、合金およびそれらの金属間化合物ならびに1種以上の金属の化合物の群から選択される触媒金属Mである。本発明の目的のために有用な合金/金属間化合物の例はCoNi、FeCo、FeCoおよびCoCuである。
【0125】
これらの化合物は、場合により結晶相中の金属カチオンM、M’と指示アニオンとのあらゆる可能な組成を指す一般的な命名法M-X(またはM-M’-X)を採用して以下に示されている。可能な触媒化合物の例は、金属酸化物または混合酸化物(M-OまたはM-M’-O)、硫黄アニオンおよび少なくとも1種の金属カチオンを含有するカルコゲニド化合物(M-XまたはM-M’-X=Co-S、Cu-S、Fe-S、Ni-S、Zn-S、Sn-S、Cu-Zn-S、Cu-Sn-Sなど)またはセレン化物およびテルル化物(M-X=M-Se、M-Te)などの他のカルコゲニド、窒化物(M-N)、酸窒化物(M-O-N)ならびに炭窒化物(M-C-N)または炭素系非貴金属(M/N/C)である。
【0126】
前記触媒は、例えば2つの異なるスルフィド、スルフィドと酸化物、スルフィドとセレン化物、酸化物とセレン化物、およびカルコゲニドの全ての組み合わせとして同じもしくは異なるサブクラスに属する2種以上の材料の混合物を含んでもよい。本発明は、同じ(例えば六角形もしくは立方形Co)もしくは異なる元素組成(例えばCoS、CoS、Co、Co)を有する材料のための異なる結晶相の混合物にも関し、非晶質化合物も検討される。本発明に使用するための好ましい触媒は、CoOOH、CO(OH)、Co、CoO、CoO、Co、Co、CoS、CoSe、CoSe、CoSe、CoSe、NiSe、NiSe、NiSe、NiSe、MoSe、Bi、WS、WSe、CuO、CuSe、CoCuS、CoCuS、CoNiOOH、CoFeOOH、NiCo、CoNiS、CoNiS、CoNiSe、CoNiSeまたはそれらの混合物である。より好ましい実施形態では、Co、CoSまたはそれらの混合物が用いられる。
【0127】
本発明では、当該技術分野で知られている以下の任意の好適な方法、すなわち化学的手段(例えば水熱、化学浴析出など)、物理的手段(例えばスパッタリング、蒸着、反応性アニーリングなど)および電気化学的手段(例えば電着など)またはそれらの組み合わせによって触媒を電極表面に直接堆積させてもよい。一実施形態では、スルフィド化合物は金属および硫黄の直接的な共電着により、あるいは2つの工程プロセスすなわち金属層の成長およびその後の硫黄含有雰囲気下での反応性アニーリングにより合成してもよい。別の実施形態では、金属酸化物の堆積の後に化学的もしくは物理的プロセスのいずれかの反応性プロセスを行って所望のカルコゲニド(例えばスルフィド、セレン化物など)を得る。さらに、水熱アニーリングによる炭素集電極上での直接成長により、ナノワイヤおよびナノロッドなどのナノ構造体の形成を達成してもよい。
【0128】
別の実施形態では金属触媒はスラリーの形態であってもよく、場合によりボールミルと組み合わせた化学反応により得られた触媒粉末を結合剤中に分散させて電極に塗布してもよい。スラリーの触媒粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。混合物中にポリマー粉末を導入することができ、それは他の粒子のための結合剤として機能する。好ましい実施形態ではスラリー中の触媒粒子の量は総電極質量の50%~95%、別の実施形態では60%~90%、さらに別の実施形態では70%~80%から選択される。結合剤の量は総電極質量の0.1%~20%、より好ましくは0.5%~10%、なおより好ましくは5%~10%から選択される。さらに別の実施形態では、スラリーは金属粒子、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、活性炭、金属酸化物粒子、金属酸化物粒子で修飾された炭素系材料、カーボンナノチューブ、カーボンブラック粒子、アセチレンブラック炭素、金属コーティングされた粒子またはそれらの2つ以上の組み合わせの中から選択される導電性粒子も含有する。スラリーの触媒粒子の平均サイズは10nm~1000μm、好ましくは20nm~500μm、より好ましくは20nm~200μm、なおより好ましくは20nm~10μmの範囲である。
【0129】
本発明の一実施形態では、触媒をポリスルフィド系カソード液中に粒子の形態で分散させる。これらの粒子を作製する材料は、触媒が電極を修飾する実施形態について上に報告されているものと同じである。これらの粒子は当該技術分野で知られている任意の好適な方法、例えば金属粒子の化学的沈殿、水熱合成、反応性アニーリング、反応性ボールミル、化学変換により得ることができる。
【0130】
膜セパレーター
2つの半電池は膜セパレーターを介して接触した状態である。当該セパレーターは特定の目的または使用目的のために所望どおりに選択することができる。一実施形態では、当該セパレーターは任意の能動イオン交換材料を含まない多孔性セパレーターであり、セルガード(Celgard)(登録商標)セパレーターまたは同様のものを使用することができる。さらなる実施形態では、固体状態のガラスも使用することができる。一実施形態では、2つの半電池の間でのNaまたはLiイオンのカチオン交換を保証するために、スルフィド系のものの中から選択されるNaイオンまたはLiイオンガラスが使用される。別の実施形態では、この膜はイオン選択的多孔性膜である。当該セパレーターは目的に応じてイオン膜として機能する全ての好適な材料の中から選択することができる。第1の可能な実施形態では、当該膜は可能な限り多くの電解質交差混合を減らすために、アノード液およびカソード液が異なるpHを有する電池に適したカチオン膜である。いくつかの電池構成では、ナフィオン(Nafion)(商標)(パーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマー)膜が用いられる。
【0131】
本発明の別の実施形態では、イオン(目的に応じてカチオンまたはアニオン)粒子を導電性粒子、好ましくは炭素系粒子と共に、パーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、キトサン、ポリアクリル酸(PAA)、ゼラチンなどの中から選択される固体/半固体ポリマー電解質の中に分散させ、先に導入したイオン膜のいずれかに塗布し、このようにして多層セパレーターを得る。イオン粒子の役割は、2つの電解質の能動イオンを遮断し、交差混合効果を減らすことである。本発明のさらに別の実施形態では、触媒を2つの半電池の間のセパレーターに塗布する。本実施形態では、触媒を導電性粒子、好ましくは炭素系粒子と共に、パーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマー、PVA、キトサン、PAA、ゼラチンなどの中から選択されるポリマー結合剤中に分散させ、かつ先に言及したイオン膜のいずれかに塗布し、本明細書では触媒修飾されたセパレーターと呼ぶ多層セパレーターを得る。本発明のさらなる実施形態では、触媒で修飾された炭素系粒子を2つの半電池の間のセパレーターに塗布する。本実施形態では、炭素修飾された粒子をパーフルオロスルホン酸とポリテトラフルオロエチレンとのコポリマー、PVA、キトサン、PAA、ゼラチンなどの中から選択されるポリマー結合剤中に分散させ、かつ先に言及したイオン膜のいずれかに塗布し、本明細書では触媒修飾されたセパレーターと呼ばれる多層セパレーターを得る。塗布の例が図26に示されており、ここでは多層セパレーター160は、触媒(163)で修飾された炭素系粒子および非触媒粒子(164)を含有する第2の層162に結合された第1の均質な層161からなる。この種のセパレーターは本出願に記載されているあらゆるRFB構成に塗布することができる。好ましい実施形態では、あらゆるイオン交換材料の場合に全ての構成(すなわち単層または多層)において、電気化学反応中にアノード液とカソード液との間での適切かつ効率的なイオン交換を保証するために当該膜を利用前に1MのNaOHまたは1MのKOH溶液において膨潤させる。膨潤時間は膜の種類に応じて選択される。全ての公知の固体/半固体の有機/無機複合電解質を含む他の膜も考えられる。
【0132】
RFBは、任意の第1の半電池を任意の第2の半電池と組み合わせることおよび任意の上記膜セパレーターを使用することにより本発明に従って得ることができる。
【0133】
本発明に係るZn-ポリスルフィドフロー電池は一般に、ポリスルフィドの量および使用される触媒に応じて約0.7V~1.4Vの電池電位を有することができる。Zn-ポリスルフィドRFBは一般に、他のフロー電池と比較した場合に環境に優しく、非毒性であり、かつより安全である。商業的に入手可能であるRFBに関して、本発明の電気化学装置はより高いpH値で動作することができ、電池寿命を延ばし、かつ維持費を大きく減らす。
【0134】
さらに、本発明のZn-ポリスルフィドフロー電池は公知のRFBよりも著しく安価である。この電池のコストは電池構成成分については200USD/kWhよりも低く、かつ電解質およびタンクについては60USD/kWhよりも低くすることができ、70~85%も高いエネルギー効率が得られる。
【0135】
本発明のRFB電池は、より高い電圧値を得るために直列に、あるいはより高い電流出力を得るために並列に接続されたいわゆる積層構成で電気的に結合することもできる。
【0136】
以下の実施例により本発明をさらに例示する。
【実施例
【0137】
実施例1
RFB半電池のための亜鉛系電解質の調製
水酸化ナトリウム(NaOH)を6M、次いで0.1Mの濃度の酸化亜鉛(ZnO)と共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製した。酸化ビスマス(Bi)を添加して最終溶液の導電率を高めた。最終配合物は表1に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表1】
【0138】
実施例2
RFB半電池のための亜鉛系電解質の調製
水酸化カリウム(KOH)を6M、次いで0.1Mの濃度の酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))と共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製し、水酸化リチウム(LiOH)を添加して最終溶液の導電率を高めた。最終配合物は表2に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表2】
【0139】
実施例3
RFB半電池のための亜鉛系電解質の調製
水酸化カリウム(KOH)を6M、次いで0.1Mの濃度の酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))と共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製し、500~700nmの範囲の平均直径を有する3重量%のカーボンブラック粒子を流動性電極として添加した。最終配合物は表3に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表3】
【0140】
実施例4
RFB半電池のための亜鉛系電解質の調製
水酸化ナトリウム(NaOH)および水酸化カリウム(KOH)を7M、次いで0.3Mの総濃度の酢酸亜鉛(Zn(CHCOO))と共にミリポア水に室温で溶解することにより溶液を調製した。水酸化リチウム(LiOH)を添加して最終溶液の導電率を高めた。最終配合物は表4に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表4】
【0141】
実施例5
分散された電極を用いた亜鉛系電解質の調製
電池容量、出力およびエネルギー密度を増加させるために、分散された電極を6MのKOH支持電解質に添加した。半電池において電極として機能する機能化粒子を適切に分散させるために、電解質配合物を僅かに修飾した。一例として、電解質粘度を増加させるために1重量%のキサンタンガムを増粘剤添加剤として添加した。2重量%の酸化亜鉛粒子および15重量%の亜鉛粒子を添加する。この粒子の直径は10μm~60μmの範囲からなる。最終配合物は表5に示されている。
【表5】
【0142】
実施例6
RFB半電池のための水性ポリスルフィド系電解質の調製
NaOHを4M、次いで3Mの濃度の元素状硫黄Sと共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製した。Sが完全に溶解したら、その溶液中のS含有量を増加させるために1MのNaSをその溶液に添加した。最終配合物は表6に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表6】
【0143】
実施例7
RFB半電池のための水性ポリスルフィド系電解質の調製
KOHを3M、次いで1Mの濃度の元素状硫黄Sと共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製した。Sが完全に溶解したら、その溶液中のS含有量を増加させるために1MのKSをその溶液に添加した。最終配合物は表7に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表7】
【0144】
実施例8
分散された電極を用いたポリスルフィド系電解質の調製
NaOHおよびKOHを5M、次いで2Mの総濃度の元素状硫黄と共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製した。硫黄が完全に溶解したら、その溶液中のS含有量を増加させるために0.5MのNaSおよび0.5MのKSをその溶液に添加した。100~200μmの平均直径を有する3重量%のカーボンブラック粒子を流動性電極として添加した。最終配合物は表8に示されている。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表8】
【0145】
実施例9
分散された触媒粒子を用いたポリスルフィド系電解質の調製
NaOHをおよびKOHを5M、次いで2Mの総濃度の元素状硫黄Sと共にミリポア水に室温で溶解して溶液を調製した。Sが完全に溶解したら、その溶液中のS含有量を増加させるために0.5MのNaSおよび0.5MのKSをその溶液に添加した。最終配合物は表8に示されている。次いで1重量%のCoを分散された触媒として電解質に添加する。調製されたままの溶液は25℃~70℃で働くことができる。
【表9】
【0146】
実施例10
触媒の合成
この場合、2つの工程手順に従って、すなわち(i)カーボンフェルト電極上へのコバルトの堆積、次いで(ii)硫黄含有雰囲気下の管状炉内での反応性アニーリングにより触媒の堆積を得た。金属Co層の電着を10分間印加される20mA/cmの電流密度を印加しながら酸性条件下で行った。金属被覆された試料を400℃の温度で3L/分の窒素流下の管状炉内での硫化プロセスに30分間供した。この試料を予め加熱した炉に直接挿入し、次いで空中で冷却した。硫黄粉末(20mg)をコバルトコーティングされたカーボンフェルト電極と共に配置した。
【0147】
実施例11
触媒の合成
この場合、2つの工程手順に従って、すなわち(i)カーボンフェルト電極上へのコバルトの堆積、次いで(ii)硫黄含有雰囲気下の管状炉内での反応性アニーリングにより触媒の堆積を得た。金属Co層の電着を10分間印加される20mA/cmの電流密度を印加しながら酸性条件下で行った。この金属被覆された試料を400℃の温度で3L/時間の窒素流下の管状炉内での硫化プロセスに60分間供した。この試料を予め加熱した炉に直接挿入し、次いで空中で冷却した。硫黄粉末(100mg)をコバルトコーティングされたカーボンフェルト電極と共に配置した。
【0148】
実施例12
RFB半電池のための亜鉛系電解質の電気化学的特性評価
BioLogic社製VSP300ポテンショスタット/ガルバノスタットと共に作用電極としてのカーボンフェルト、対電極としてのMMO(混合金属酸化物)網電極および擬似参照電極としてのPtを用いて、古典的な3電極セルにおいて25℃で行われるサイクリックボルタンメトリーにより、実施例1に従って調製した溶液の電気化学的挙動を特性評価した。その結果は図27に示されている。
【0149】
実施例13
RFB半電池のための亜鉛系電解質の電気化学的特性評価
BioLogic社製VSP300ポテンショスタット/ガルバノスタットと共に、作用電極としてのカーボンフェルト、対電極としてのMMO(混合金属酸化物)網電極および擬似参照電極としてのPtを用いる古典的な3電極セルにおいて25℃で行われるサイクリックボルタンメトリーにより、実施例2に従って調製した溶液の電気化学的挙動を特性評価した。その結果は図28に示されている。
【0150】
実施例14
RFB半電池のための水性ポリスルフィド系電解質の電気化学的特性評価
実施例5に従って調製した溶液の電気化学的挙動を、でBioLogic社製VSP300ポテンショスタット/ガルバノスタットと共に、実施例11に従って調製した触媒で修飾された作用電極としてのカーボンフェルト、対電極としてのMMO(混合金属酸化物)網電極および擬似参照電極としてのPtを用いて古典的な3電極セルにおいて25℃行われるサイクリックボルタンメトリーにより特性評価した。その結果は図29に示されている。
【0151】
実施例15
触媒の特性評価
実施例10に従って調製した触媒をX線回折(XRD)技術により特性評価した。その結果は図30に示されている。その合成により未反応のCoと共に異なるスルフィド相、主としてCoSおよびCoが形成された。
【0152】
実施例16
触媒の特性評価
実施例11に従って調製した触媒をX線回折(XRD)技術により特性評価した。その結果は図31に示されている。その合成により異なるスルフィド相、主にCoが形成された。
【0153】
実施例17
Zn-ポリスルフィドRFBに対する触媒の効果
この例では、本発明に従って作製されたRFBと、比較のための触媒を含まないRFBおよび先行技術に従って作製されたRFBとの性能結果を比較する。
【0154】
実施例1および実施例6で調製した電解質を使用して、単層膜セパレーター130を介して図2に係る第1の半電池と図8に係る第2の半電池とを結合させることにより得られるZn-ポリスルフィドRFBを作製した。この第1のRFBでは触媒を含めなかった。このRFBでは、ポンピングシステムと共にBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いて10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階では250mA、放電段階では-250mAの総印加電流が得られた。電池性能に対する触媒効果は単一の充電/放電サイクルにおいて強調されており、この試験で得られたグラフは点線として図32に示されている。触媒を実施しない場合に、酸化プロセスを維持するために必要とされる高い過電位の指標として充電段階中に高い電池電圧が記録された。その上、電池電圧は放電段階中にすぐに0.3Vまで低下し、これはポリスルフィドレドックス反応を引き起こすベアカーボンフェルトの能力を示している。
【0155】
同じ手順を使用して、この場合(Co-S)として図32および図33に示されている、Grossらの論文(10614頁)に記載されている手順に従って得られたコバルトスルフィド材料を含む第2のRFBを調製した。このRFBの性能を先の事例と同様に単一の充電/放電サイクルで試験し、この試験の結果は図32では破線によって表されている。このRFBは92.2%のファラデー効率(FE)および71.6%のエネルギー効率(EE)を生じさせた。
【0156】
最後に、この場合(本発明に従って)カソード液半電池において実施例11に記載されているように得られたコバルトスルフィド触媒を使用したという違い以外は、2つの先の事例と同様にRFBを作製した。本発明の触媒の採用により電池の全体的な性能が上昇した。このRFBの充電および放電サイクルは図32に実線により再現されており、FE=96.1%およびEE=79.4%の値を示し、先行技術の触媒を用いるRFBよりもエネルギー効率を10.9%高める。さらに、先行技術(Grossら)の触媒を用いた場合にサイクルを通してRFB性能は長期間不安定となり、RFB性能およびサイクル寿命に悪影響を与えた。他方、本発明の実施例11に記載されているように得られたスルフィド触媒の新規な実施により、サイクルを通してより高い安定性が得られた。図33は点線として表されている先行技術(Grossら)の触媒を用いて作製されたRFBおよび実線で表されている本発明の触媒を用いて作製されたRFBの充電および放電サイクルを示す。
【0157】
実施例18
調整された電解質を用いたZn-ポリスルフィドRFB
実施例1および実施例6で調製した電解質を使用して、単層膜セパレーター130を介して図2に係る第1の半電池と図8に係る第2の半電池とを結合することにより得られたZn-ポリスルフィドRFBを作製した。カソード液半電池の触媒は実施例11に従って得た。このRFBでは、ポンピングシステムと共にBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いて、10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階では250mA、放電段階では-250mAの総印加電流が得られた。図34は、このRFBの充電および放電サイクルの古典的なグラフを示す。図35では、電流効率の相対サイクルも報告されている。
【0158】
実施例19
調整された電解質を用いたZn-ポリスルフィドRFB
実施例1および実施例7で調製した電解質を使用して実施例18の電池と同じ構造を有するZn-ポリスルフィドRFBを作製した。このRFBではBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いてポンピングシステムにより10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階中に250mA、放電段階中に-250mAの総印加電流が得られた。図36はこのRFBの充電および放電サイクルの古典的なグラフを示す。
【0159】
実施例20
調整された電解質を用いたZn-ポリスルフィドRFB
実施例4および実施例6で調製した電解質を使用して実施例18の電池と同じ構造を有するZn-ポリスルフィドRFBを作製した。このRFBではBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いてポンピングシステムにより10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階中に250mA、放電段階中に-250mAの総印加電流が得られた。図37はこのRFBの充電および放電サイクルの古典的なグラフを示す。
【0160】
実施例21
調整された電解質を用いたZn-ポリスルフィドRFB
実施例3および実施例7で調製した電解質を使用して実施例18の電池と同じ構造を有するZn-ポリスルフィドRFBを作製した。このRFBではBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いてポンピングシステムにより10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階中に250mA、放電段階中に-250mAの総印加電流が得られた。図38はこのRFBの充電および放電サイクルの古典的なグラフを示す。
【0161】
実施例22
調整された電解質を用いたZn-ポリスルフィドRFB
実施例2および実施例6で調製した電解質を使用して、図3の第1の半電池と図8の第2の半電池とを組み合わせて得られた構造を有するZn-ポリスルフィドRFBを作製した。カソード液半電池の触媒は実施例11に従って得た。このRFBではBioLogic社製VMP-300ポテンショスタット/ガルバノスタットを用いてポンピングシステムにより10mAcm-2の電流密度を印加して電気化学試験を行った。2つの電極の公称面積は25cmに等しく、充電段階中に250mA、放電段階中に-250mAの総印加電流が得られた。図39は、このRFBの充電および放電サイクルの古典的なグラフを示す。同じ電解質を用いた電池の体積容量が図40に示されている。
図1
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図39
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【国際調査報告】