(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ガス圧スプリング及びガス圧スプリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/00 20060101AFI20230614BHJP
B60G 11/27 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
F16F9/00 A
B60G11/27
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569156
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2021063018
(87)【国際公開番号】W WO2021233842
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】102020113750.8
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プロブスト,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ライザー,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA67
3D301DA14
3D301DA28
3J069AA01
3J069EE73
(57)【要約】
本発明は、作動シリンダ(1)を備えるガス圧スプリング(50)に関し、作動シリンダ(1)は、摺動可能に取り付けられた補償ピストン(10)と共に、作動媒体(1M)が充填される作動チャンバ(1a)を取り囲む。摺動可能に取り付けられた作動ピストン(2)が作動ロッド(6)に締結される。温度が上昇すると、補償チャンバ(16)内の補償媒体(16M)が膨張する。補償ピストン(10)は、作動チャンバ(1a)の容積が増大されるように作動媒体(1M)の圧力と補償媒体(16M)の圧力とによって作用される。ガススプリング力の温度依存性は、できるだけ単純な設計によって減少させる必要がある。この目的のため、補償チャンバ(16)が作動ロッド(16)によって少なくとも部分的に取り囲まれる。したがって、補償媒体(16M)をコンパクトに収容することができ、ガススプリング(50)の組み立てが簡略化される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)作動シリンダ(1)であって、前記作動シリンダ(1)に対して摺動できるように取り付けられた補償ピストン(10)と共に、ガス状の作動媒体(1M)が充填された作動チャンバ(1a)を取り囲む、作動シリンダ(1)と、
b)前記作動シリンダ(1)の開口を通じて前記作動チャンバ(1a)内に突出し、ストローク軸(H)に沿って摺動できるように取り付けられた作動ロッド(6)と、
c)前記作動ロッド(6)に締結されるとともに、前記ストローク軸(H)に沿って摺動できるように前記作動チャンバ(1a)に取り付けられた作動ピストン(2)と、
d)補償チャンバ(16)内に配置され、温度上昇の際に膨張する補償媒体(16M)と、
を備え、
e)前記補償ピストン(10)は、前記作動チャンバ(1a)の容積が増大されるように前記作動媒体(1M)の圧力と前記補償媒体(16M)の圧力とによって作用される、
ガス圧スプリング(50)であって、
f)前記補償チャンバ(16)は、前記作動ロッド(6)によって少なくとも部分的に取り囲まれ、
g)前記ガス圧スプリング(50)が補償容器(120)を備え、前記補償容器(120)は、内部チャンバ(121)を有し、前記作動ピストン(2)に締結されるとともに、前記ストローク軸(H)に沿って摺動できるように前記作動シリンダ(1)に取り付けられ、
h)前記補償ピストン(10)は、前記内部チャンバ(121)を、前記作動媒体(1M)のための前記作動チャンバ(1a)に伝導的に接続された内部作動チャンバ(122)と、前記作動チャンバ(1a)に対してシールされる戻りチャンバ(15)とに分割し、
i)前記ガス圧スプリング(50)は、前記戻りチャンバ(15)内に配置された戻り媒体(15M)を含み、
j)前記内部作動チャンバ(122)の容積が減少されるように前記補償ピストン(10)が前記戻り媒体(15M)によって作用され、
k)前記戻り媒体(15M)が前記ガス状の作動媒体(1M)であり、
l)前記ガス圧スプリング(50)は、前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)とを同時に前記作動媒体(1M)で満たすために前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)との間に逆止弁を備える、
ことを特徴とする、ガス圧スプリング(50)。
【請求項2】
a)前記作動ロッド(6)は、前記補償媒体(16M)の圧力によって前記作動ロッド(6)から推し進めることが可能なタペット(110)を備え、
b)前記タペット(110)は、前記内部作動チャンバ(122)の容積が増大されるように前記補償媒体(16M)の圧力を前記補償ピストン(10)に加える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(50)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス圧スプリング(50)を製造するための方法であって、
a)前記ガス圧スプリング(50)のための作動シリンダ(1)を用意するステップと、
b)前記ガス圧スプリング(50)のための補償チャンバ(16)を有する作動ロッド(6)を用意するステップと、
c)前記補償チャンバ(16)に前記補償媒体(16M)を充填するステップと、
d)前記作動ロッド(6)を前記作動シリンダ(1)内に取り付けるステップと、
e)前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)との間の前記ガス圧スプリング(50)の逆止弁を介して前記ガス圧スプリング(50)の前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)とに同時に前記ガス状の作動媒体(1M)を充填するステップと、
f)充填後に前記作動チャンバ(1a)から前記作動媒体(1M)の一部を排出するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項4】
前記タペット(110)及び/又は前記補償容器(120)を取り付け前に前記作動ロッド(6)に締結するステップを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フラップのための駆動システムであって、
a)前記フラップを支持するための請求項1又は2に記載のガス圧スプリング(50)と、
b)前記フラップを駆動するための電気機械ドライブ、好ましくはスピンドルドライブと、
を含む、駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
a)作動シリンダであって、該作動シリンダに対して摺動できるように取り付けられた補償ピストンと共に、作動媒体が充填された作動チャンバを取り囲む、作動シリンダと、
b)前記作動シリンダの開口を通じて前記作動チャンバ内に突出し、ストローク軸に沿って摺動できるように取り付けられた作動ロッドと、
c)前記作動ロッドに締結されるとともに、前記ストローク軸に沿って摺動できるように前記作動チャンバに取り付けられた作動ピストンと、
d)補償チャンバ内に配置され、温度上昇の際に膨張する補償媒体と、
を備え、
e)前記補償ピストンは、前記作動チャンバの容積が増大されるように前記作動媒体の圧力と前記補償媒体の圧力とによって作用される、
ガス圧スプリングに関する。本発明は、更に、そのようなガス圧スプリングを製造するための方法に関する。
【0002】
一般に、ガス圧スプリングには窒素が充填されているため、それに伴うガス圧スプリングのスプリング力が温度変動の影響を受ける。つまり、収容されるガスは、温度Tが上昇すると膨張し、温度Tが低下すると収縮し、或いは、ガス圧pは、一定の体積Vで増減する(理想気体の場合、p*V=n*R*Tが適用される)。一部の用途では、これにより問題が発生するため、この物理的効果を完全に又は部分的に補償することが有利になる。
【0003】
例えば、車両のテールゲートに使用する場合、スプリング力の温度依存性により、ガス圧スプリングは、殆どの温度で必要な強度よりも強く設計して、低温でも(例えば、-30~0℃)(例えば、テールゲートを確実に開いたままにするために)十分なスプリング力を与える必要がある。しかしながら、通常は中程度の温度(例えば、0℃~25℃)で動作するため、これにより平均してガス圧スプリングの摩耗が増大する。同時に、手動で操作する場合、ガス圧スプリングを再圧縮するために比較的大きな力が必要になるため(例えば、テールゲートを閉じるとき)、より高温(例えば、25℃以上)では操作性が低下する。自動駆動の場合(例えば、自己開放テールゲートの場合)、高温でのスプリング力に打ち勝つために、より高い駆動力も必要とされる。
【背景技術】
【0004】
欧州特許第1795777B1号は、補償ピストン装置と共に、作動媒体が充填された作動チャンバを取り囲む作動シリンダを備えるガス圧スプリングについて記載している。作動ロッドは、作動シリンダの開口を通じて作動チャンバ内に摺動可能に突出し、補償ピストン装置は、作動媒体の圧力と、補償チャンバに供給されるとともに作動チャンバの容積が増大されるように温度上昇の際に膨張する補償媒体の圧力とによって作用される。作動シリンダを所定の距離を隔てて取り囲む補償シリンダは、ガス圧スプリングの作動ロッド出口端部から離れたその端部で作動シリンダを越えて延び、この端部で閉じられる。補償チャンバは、作動シリンダと補償シリンダとの間の環状チャンバによって実質的に形成される。したがって、補償媒体は、温度に応じて作動媒体に利用可能な容積を適合させることにより、ガス圧スプリング力の温度依存性をある程度低減する。
【0005】
現在、先行技術の問題を解決するために、複数の最適でない解決策が提供されている。
1.例えば温度依存弁を介して、低温で更なる容積を生起することによる温度補償
2.サスペンションストラットの使用、つまり、特にガス圧スプリングと機械式スプリングとの組み合わせの使用、並びに、
3.欧州特許第1795777B1号に記載されている温度依存性を低減するための補償媒体の使用。
【0006】
第1のオプションでは、温度補償の程度が制限され、装置の全長が極端に長くなる。
【0007】
第2のオプションは、十分な寸法のサスペンションストラットの製造コストが非常に高く且つスプリング特性が好ましくないという点で不利である。それとは別に、温度依存性を完全に排除することはできない。
【0008】
第3のオプションは、既知の変形例では非常に複雑であり、特に組み立てに関して、費用効率が高い態様で実装することができない。現在、この実装を手動組み立てライン(つまり、主に手動)でのみ実現でき、半自動又は全自動の機械での生産は不可能のようである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、できるだけ低いスプリング力の温度依存性を有すると同時に、できるだけ簡単な設計である、冒頭で述べたタイプのガス圧スプリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主題は、技術的目的を解決する請求項1に係るガス圧スプリングである。同様に、この目的は、請求項7に係るガス圧スプリングを製造するための方法によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0011】
作動ロッド内の補償チャンバの少なくとも部分的な配置は、温度補償のための補償媒体を含むガス圧スプリングの設計に必要な設置スペースが著しく少ないという点で有利である。補償媒体のためのスペースを確保するために、例えば、作動ロッドの半径を僅かに大きくして、変化しない安定性でキャビティを設けることができる。したがって、原則として、補償媒体は、全長を僅かに増大させることなく又は僅かに増大させるだけで収容することができる。多くの用途では、ガス圧スプリングの可能な全長に制限があるため、これは重要である(例えば、自動車部門のテールゲートにおいて)。
【0012】
同時に、補償媒体を作動ロッドと一緒に導入することができるため、組み立てが容易になる。これに対し、例えば、欧州特許第1795777B1号に記載された膨張材料のリング形状の配置により、設計が著しく複雑になった。
【0013】
好ましくは、補償チャンバは、補償媒体に対して密閉されるように、作動ロッドによって少なくとも部分的に取り囲まれる。
【0014】
特に、補償チャンバは、補償媒体に対して圧力安定であるように、作動ロッドによって少なくとも部分的に取り囲まれる。このようにして、作動ロッドは、補償媒体及び作動媒体の可変圧力に耐えることができる。
【0015】
サスペンションストラットの使用(オプション2)と比較して、高価な機械式スプリングが必要ないため、製造コストも削減できる。同時に、サスペンションストラットを使用する場合よりも一般的に軽量化される。
【0016】
また、本発明に係る解決策は、温度依存弁(オプション1)よりも優れた機能性、すなわち、温度依存性の高度な補償も有する。
【0017】
ガス圧スプリングの組み立ては、補償媒体を含む既知のモデルと比較して容易であり、自動組み立てさえも可能である。耐用年数への悪影響はないものと思われ、温度補償を改善すると、平均して摩耗を減らすことができるように、傾向としてより適切な大きさのスプリング力が可能になる。
【0018】
好ましくは、ガス圧スプリングは、作動ピストン及び作動シリンダ内に締結され、ストローク軸に沿って摺動できるように取り付けられた、内部チャンバを有する補償容器を備え、補償ピストンが、内部チャンバを、作動媒体のための作動チャンバに伝導的に接続された内部作動チャンバと、作動チャンバに対してシールされる戻りチャンバとに分割する。この実施形態は、補償容器を作動ピストンに予め取り付けてから、作動ピストンと共に作動シリンダに一工程で取り付けることができるため、簡単な組み立てを可能にする。他の取り付けステップは、補償機構を伴わないガス圧スプリングと比較して、実質的に同じままであり得る。
【0019】
一実施形態において、作動ロッドは、補償媒体の圧力によって作動ロッドから推し進めることが可能なタペットを備え、タペットは、内部作動チャンバの容積が増大されるように補償媒体の圧力を補償ピストンに加える。タペットを使用すると、補償媒体の体積を比較的僅かに増大させるだけで、タペットの軸方向ストロークを比較的大きくすることができるため、補償媒体をよりコンパクトに収容することができる。このように、作動チャンバの容積の変化は、補償媒体自体の体積の変化によって達成される必要はなく、タペットと作動チャンバとの相対移動によって達成され得る。
【0020】
好ましくは、補償媒体は、膨張性材料、好ましくは膨張ワックス、油、又は二相媒体であり、補償媒体は特に欧州特許第1795777B1号に記載されているように構成することができ、そこからここで言及されている利点が明らかになる。
【0021】
一実施形態において、ガス圧スプリングは、戻りチャンバに収容された戻り媒体を備え、補償ピストンは、作動チャンバ、好ましくは内部作動チャンバの容積が減少されるように、戻り媒体によって作用される。このようにして、可能な限り簡単な態様で、温度低下時に補償媒体が収縮した場合に、補償ピストンも初期位置に戻る、すなわち、可逆動作が確保されるようにすることができる。補償媒体の体積の減少に伴い、補償チャンバの容積の対応する減少が戻り媒体によって引き起こされる。
【0022】
好ましくは、戻り媒体は、ガス、特に作動媒体である。これにより、媒体又はガスが1つしか使用されないため、ガス圧スプリングの製造が容易になる。ガス状の戻り媒体に加えて又はその代わりに、戻り媒体は、戻りチャンバ内に機械的な戻りスプリングを備えることができる。
【0023】
本発明に係る目的は、上記の実施形態のいずれかに係るガス圧スプリングを製造するための方法によっても解決され、この方法は、
a)ガス圧スプリングのための作動シリンダを用意するステップと、
b)ガス圧スプリングのための補償チャンバを含む作動ロッドを用意するステップと、
c)補償チャンバに補償媒体を充填するステップと、
d)作動ロッドを作動シリンダ内に取り付けるステップと、
を特徴とする。したがって、従来技術とは対照的に、補償媒体は、従来技術でも設けられたガス圧スプリングの「主要構成要素」とともに導入される。したがって、この方法では、既知のガス圧スプリングと比較して、補償媒体を含むガス圧スプリングの設置が大幅に容易になり、自動組み立てさえも可能になる。
【0024】
一実施形態において、方法は、以下のステップ、すなわち、
タペット及び/又は補償容器を取り付け前に作動ロッドに締結するステップ
を含む。その後、タペット及び/又は補償容器並びに作動ロッドを一緒に作動シリンダに挿入することができ、これにより、設計が簡素化される。
【0025】
好ましくは、方法は、
a)好ましくは作動チャンバと戻りチャンバとの間の逆止弁を介して、作動チャンバと戻りチャンバとに作動媒体を同時に充填するステップと、
b)充填後に作動チャンバから作動媒体の一部を排出するステップと、
を含む。このようにして、ガス圧スプリングの組み立てを加速し、容易にすることができる。作動媒体の一部を排出することで、ガス圧スプリングの力を正確に調整することが容易になる。
【0026】
本発明に係る目的は、
a)フラップを支持するための上記の実施形態のうちの1つに係るガス圧スプリングと、
b)フラップを駆動するための電気機械ドライブ、例えばリニアドライブ、特にスピンドルドライブと、
を含むフラップのための駆動システムによっても解決される。
例えば、フラップは、車両のフラップ、特にボンネット、テールゲート、トランク蓋、又は、旋回ドアであってもよい。
【0027】
フラップを支持するためのガス圧スプリングと、フラップを駆動するための電気機械ドライブとを含むフラップのための駆動システムは、先行技術において知られている。一般的なものの代わりに本発明に係るガス圧スプリングを使用することを除き、本発明に係る駆動システムは、先行技術に係る、例えばドイツ特許第10313440A1号又はドイツ特許第102008045903A1号に係る駆動システムのように設計されてもよい。
【0028】
駆動システムのガス圧スプリングは、フラップを重力に抗して任意の位置に保持する働きをし、一方、電気機械ドライブはフラップを開閉する働きをする。更に、ドイツ特許第10313440A1号及びドイツ特許第102008045903A1号のように、フラップを手動で操作することも考えられ得る。
【0029】
ガス圧スプリングは、周囲温度が低い場合でもフラップを支持することができるように、非常に高いスプリング力を持たなければならない。一般的なガス圧スプリングのスプリング力は温度が上昇すると増大するため、結果として、高温では、フラップを閉じるために電気機械ドライブ又はオペレータが非常に強い力を加える必要がある。したがって、駆動システムは、非常に強力な電気機械ドライブを備えなければならず、これは高価であり、大きな設置スペースを必要とし、動作時に多くのエネルギーを消費する。それとは別に、電気機械ドライブや、フラップに機械的に接続される他の部品、例えばヒンジの過度の摩耗がある。
【0030】
従来技術では、これらの問題は、ガス圧スプリングの代わりにサスペンションストラットを使用することによって回避される(例えば、ドイツ特許第102008045903A1号、段落[0021])。サスペンションストラットは、ほぼ温度に依存しないスプリング力を有する場合があるが、匹敵するスプリング力を有するガス圧スプリングよりも大きく、重く、高価である。
【0031】
したがって、標準的なガス圧スプリングの代わりに本発明に係る温度補償ガス圧スプリングを使用することにより、特に費用効果が高く、製造が容易で、耐久性があり、コンパクトで、省エネで操作が簡単なフラップのための駆動システムが提供される。
【0032】
本発明の更なる利点、目的、及び、特徴は、以下の説明及び本発明に係る主題が例として示されている添付の図面に基づいて説明される。ここで、少なくともそれらの機能に関して実質的に同一の特徴は、図面において同じ参照番号によって示される場合があり、前記特徴は、必ずしも参照番号が与えられず、全ての図において説明されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】補償ピストンの第1の位置にある本発明に係るガス圧スプリングの実施形態を示す図である。
【
図2】補償ピストンの第2の位置にある
図1の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1及び
図2
図1及び
図2には、作動シリンダ1に対して摺動できるように取り付けられた補償ピストン10と共に、作動媒体1Mが充填された作動チャンバ1aを取り囲む作動シリンダ1を備える、本発明に係るガス圧スプリング50の第1の実施形態が示される。ここで、ストローク軸Hに沿って摺動できるように取り付けられた作動ロッド6が、作動シリンダ1の開口を通じて作動チャンバ1a内に突出する。
【0035】
作動ロッド6には、ストローク軸Hに沿って摺動できるように作動チャンバ1a内に取り付けられた作動ピストン2が締結される。作動ピストン2は、作動シリンダ1の径方向内側の壁に向かってリング状のシール4(例えば、Oリング)を備え、作動ピストン2が移動されるときに、作動媒体1Mが作動ピストン2の周りを流れることができないようにする。したがって、作動ピストン2の移動は、最初に作動チャンバ1a内の圧力の変化をもたらす。しかしながら、作動ピストン2は、スロットル孔(図示せず)を備えてもよく、及び/又は、作動シリンダ1の径方向内側の壁は、圧力補償のために作動ピストン2のストローク軸Hに沿った長手方向の溝を有してもよい。
【0036】
補償媒体16Mは、補償チャンバ16内に配置され、温度上昇の場合に膨張する。補償ピストン10は、作動チャンバ1aの容積が増大されるように作動媒体1Mの圧力と補償媒体16Mの圧力とによって作用される。
【0037】
ここで、
図1は高温の状況を示し、一方、
図2は低温の状況を示す。
【0038】
補償チャンバ16は、ここでは作動ロッド6によって部分的に取り囲まれる。特に、補償チャンバ16は、作動ロッド6及びタペット110によって取り囲まれる。
【0039】
ガス圧スプリング50は補償容器120を備え、補償容器120は、内部チャンバ121を有し、作動ピストン2に締結され、ストローク軸Hに沿って摺動できるように作動シリンダ1に取り付けられる。補償ピストン10は、内部チャンバ121を、作動媒体1Mのための作動チャンバ1aに伝導的に接続された内部作動チャンバ122と、作動チャンバ1aに対してシールされる戻りチャンバ15とに分割する。この目的のために、補償ピストンは、周方向シール11、例えばOリングを備える。
【0040】
作動チャンバ1aを内部作動チャンバ122に接続するために、例えば、補償容器120を作動ロッド6に接続する接続部材123に穴124が設けられる。作動媒体1Mは、好ましくは、補償容器120と作動シリンダ1との間を通じて(例えば、ストローク軸Hに対して径方向の補償容器120と作動シリンダ1との間のスペースを通じて、或いは、作動シリンダ1の内壁のストローク軸Hに沿う少なくとも1つの縦溝又は補償容器120の外壁を通じて)流れることができる。
【0041】
作動ロッド6は、補償媒体16Mの圧力によって作動ロッド6から推し進めることが可能なタペット110を備える。タペット110は、内部作動チャンバ122の容積が増大されるように補償媒体16Mの圧力を補償ピストン10に加える。
【0042】
温度が上昇した場合に作動ロッド6からタペット110を推し進めると、ストローク軸Hに沿って(図面では上向きに)補償容器120に対して補償ピストン10が移動する。このようにして、内部作動チャンバ122、したがって作動媒体1Mに利用可能な作動チャンバ1a全体が拡大される。
図1と比較して、
図2は、低温で、タペット110が作動ロッド6内に更に収縮した状態を示す。
【0043】
補償媒体16Mは、例えば、膨張材料、好ましくは、ガス圧スプリング50の全動作温度範囲において少なくとも液相及び少なくとも固相を特に含む膨張ワックスである。
【0044】
ガス圧スプリング50は、戻りチャンバ15内に配置された戻り媒体15Mを備え、補償ピストン10は、作動チャンバ1a、好ましくは内部作動チャンバ122の容積が減少されるように戻り媒体15Mによって作用される。このようにして、補償媒体16Mが温度低下時に収縮した場合(
図1→
図2)に、最も簡単な想定し得る態様で、補償ピストン10も最初の位置に戻される、つまり、可逆的な動作が確保されるようにすることができる。補償媒体16Mの体積の減少に伴い、戻り媒体15Mは、補償チャンバ16の容積の対応する減少をもたらす。戻り媒体15Mを支持するために、ガス圧スプリング50は、戻りチャンバ15内に戻りスプリング(図示の実施形態には示されない)を更に備えることもできる。
【0045】
好ましくは、戻り媒体15Mは気体であり、特に作動媒体1Mである。これは、ただ1つの媒体又はガスが使用されるので、ガス圧スプリング50の製造を容易にする。
【0046】
図1では、
図2の状況と比較して、作動媒体1Mは、このように作動ピストン2の同じ位置にあるより大きな作動チャンバ1a(特に、より大きな内部作動チャンバ122)に配置される。したがって、作動媒体1Mの圧力の温度に関連した増大は、内部作動チャンバ122の容積の増大によって、部分的に又は完全にさえ補償され得る。このように、ガス圧力スプリング50は、従来技術よりも大幅に小さい温度依存スプリング力をもたらす。
【符号の説明】
【0047】
1 作動シリンダ
1a 作動チャンバ
1M 作動媒体
2 作動ピストン
4 シール
10 補償ピストン
11 シール
15 戻りチャンバ
15M 戻り媒体
16 補償チャンバ
16M 補償媒体
50 ガス圧スプリング
110 タペット
120 補償容器
121 内部チャンバ
122 内部作動チャンバ
123 接続部材
124 穴
H ストローク軸
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)作動シリンダ(1)であって、前記作動シリンダ(1)に対して摺動できるように取り付けられた補償ピストン(10)と共に、ガス状の作動媒体(1M)が充填された作動チャンバ(1a)を取り囲む、作動シリンダ(1)と、
b)前記作動シリンダ(1)の開口を通じて前記作動チャンバ(1a)内に突出し、ストローク軸(H)に沿って摺動できるように取り付けられた作動ロッド(6)と、
c)前記作動ロッド(6)に締結されるとともに、前記ストローク軸(H)に沿って摺動できるように前記作動チャンバ(1a)に取り付けられた作動ピストン(2)と、
d)補償チャンバ(16)内に配置され、温度上昇の際に膨張する補償媒体(16M)と、
を備え、
e)前記補償ピストン(10)は、前記作動チャンバ(1a)の容積が増大されるように前記作動媒体(1M)の圧力と前記補償媒体(16M)の圧力とによって作用される、
ガス圧スプリング(50)であって、
f)前記補償チャンバ(16)は、前記作動ロッド(6)によって少なくとも部分的に取り囲まれ、
g)前記ガス圧スプリング(50)が補償容器(120)を備え、前記補償容器(120)は、内部チャンバ(121)を有し、前記作動ピストン(2)に締結されるとともに、前記ストローク軸(H)に沿って摺動できるように前記作動シリンダ(1)に取り付けられ、
h)前記補償ピストン(10)は、前記内部チャンバ(121)を、前記作動媒体(1M)のための前記作動チャンバ(1a)に伝導的に接続された内部作動チャンバ(122)と、前記作動チャンバ(1a)に対してシールされる戻りチャンバ(15)とに分割し、
i)前記ガス圧スプリング(50)は、前記戻りチャンバ(15)内に配置された戻り媒体(15M)を含み、
j)前記内部作動チャンバ(122)の容積が減少されるように前記補償ピストン(10)が前記戻り媒体(15M)によって作用され、
k)前記戻り媒体(15M)が前記ガス状の作動媒体(1M)であり、
l)前記ガス圧スプリング(50)は、前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)とを同時に前記作動媒体(1M)で満たすために前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)との間に逆止弁を備える、
ことを特徴とする、ガス圧スプリング(50)。
【請求項2】
a)前記作動ロッド(6)は、前記補償媒体(16M)の圧力によって前記作動ロッド(6)から推し進めることが可能なタペット(110)を備え、
b)前記タペット(110)は、前記内部作動チャンバ(122)の容積が増大されるように前記補償媒体(16M)の圧力を前記補償ピストン(10)に加える、
ことを特徴とする、請求項1に記載のガス圧スプリング(50)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス圧スプリング(50)を製造するための方法であって、
a)前記ガス圧スプリング(50)のための作動シリンダ(1)を用意するステップと、
b)前記ガス圧スプリング(50)のための補償チャンバ(16)を有する作動ロッド(6)を用意するステップと、
c)前記補償チャンバ(16)に前記補償媒体(16M)を充填するステップと、
d)前記作動ロッド(6)を前記作動シリンダ(1)内に取り付けるステップと、
e)前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)との間の前記ガス圧スプリング(50)の逆止弁を介して前記ガス圧スプリング(50)の前記作動チャンバ(1a)と前記戻りチャンバ(15)とに同時に前記ガス状の作動媒体(1M)を充填するステップと、
f)充填後に前記作動チャンバ(1a)から前記作動媒体(1M)の一部を排出するステップと、
を特徴とする、方法。
【請求項4】
前記タペット(110)及び/又は前記補償容器(120)を取り付け前に前記作動ロッド(6)に締結するステップを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フラップのための駆動システムであって、
a)前記フラップを支持するための請求項1又は2に記載のガス圧スプリング(50)と、
b)前記フラップを駆動するための電気機械ドライブ
と、
を含む、駆動システム。
【国際調査報告】