(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】siRNAを使用してPRDM2/RIZタンパク質の発現を調節するがん治療
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230614BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230614BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230614BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230614BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230614BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20230614BHJP
A61K 31/513 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/713 ZNA
A61P43/00 111
A61P35/00
A61K45/06
A61K47/02
A61K47/69
A61K9/51
A61K9/14
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
A61K31/513
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569509
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021032311
(87)【国際公開番号】W WO2021231771
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522444151
【氏名又は名称】エイアールアイズィー・プリシジョン・メディスン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ロニー・エル
(72)【発明者】
【氏名】ベイッシュ,ナレンドラ・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ナイルズ,ブラッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フリン,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ヌニェス,ニコル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD27
4C076EE59
4C076FF01
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4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC43
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
哺乳類RIZ2発現を特異的に阻害する阻害性RNA分子であり、がんなどの細胞増殖性疾患における治療効果を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞増殖を阻害する方法であって、細胞の集団を、網膜芽細胞腫タンパク質相互作用ジンクフィンガータンパク質2(RIZ2)阻害剤を含む組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
RIZ2阻害剤が、前記細胞におけるRIZ2 mRNAの発現を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RIZ2阻害剤が、前記細胞においてRIZ2タンパク質の発現を減少させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記RIZ2 mRNAは、前記細胞においてハウスキーピング遺伝子の発現と比較して少なくとも10%減少する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記RIZ2 mRNAは、対照細胞集団と比較して少なくとも10%減少し、前記対照細胞集団は、前記RIZ2阻害剤を含む前記組成物と接触したことのない細胞集団である、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
RIZ2 mRNAの発現は、前記対照細胞集団と比較して、少なくとも50%減少する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
RIZ2 mRNAの発現は、前記対照細胞集団と比較して、少なくとも80%減少する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.1倍を超えるように変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.5倍を超えるように変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも2倍変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
RIZ2阻害剤が、さらに、RIZ1の高メチル化を減少させる、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、哺乳類細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞は、ヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞は、がん細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
RIZ2阻害剤を含む前記組成物は、送達システムに結合された一以上のポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記RIZ2阻害剤は、配列番号1の配列を有するセンス鎖および配列番号10の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RIZ2阻害剤は、配列番号6の配列を有するセンス鎖および配列番号11の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織である組織に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
対象において細胞増殖性の疾患または障害を治療する方法であって、RIZ2阻害剤を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項21】
RIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要のある対象として患者を選択する方法であって、当該方法は、
(i)対照サンプルまたは対照値と比較して、前記対象の生体サンプルにおけるRIZ1メチル化レベルの増加を検出すること、または
(ii)対照サンプルもしくは対照値と比較してRIZ1 mRNAレベルの低下を検出することを含むものであり、
前記対照サンプルまたは前記対照値と比較して、前記対象の前記生体サンプル中のメチル化RIZ1の少なくとも1.1倍の増加またはRIZ1 mRNAレベルの少なくとも2分の1の低下により、前記対象がRIZ2阻害剤を含む前記組成物を投与する必要があるとして決定され、
前記対照サンプルは、臨床的に健康な個体からのサンプルであり、
対照値は、二以上の臨床的に健康な個体のサンプルからのRIZ1メチル化レベルの平均値である、方法。
【請求項22】
前記細胞増殖性の疾患または障害は、がんである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、送達システムをさらに含む、請求項1、19または20に記載の方法。
【請求項24】
(a)RIZ2阻害剤、および(b)薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項25】
前記RIZ2阻害剤は、配列番号1の配列を有するセンス鎖および配列番号10の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記RIZ2阻害剤は、配列番号6の配列を有するセンス鎖および配列番号11の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記RIZ2阻害剤は、
(i)ヒトPRDM2/RIZ2遺伝子に対して相同性を有する10~21ヌクレオチドの二本鎖RNAを含むsiRNAを含み、
(ii)PEG分子に共有結合し、
(iii)細胞標的部分に結合されるものであり、
該細胞標的部分がアプタマーである、当該siRNAを含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記RIZ2阻害剤を組み込むカルシウムホスホシリケート(calcium phosphosilicate)複合体を含むナノ粒子をさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
一以上の化学療法薬をさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
本願は、2020年5月14日に出願された米国仮特許出願第63/024,624号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書で援用される。
【0002】
がん疾患は、世界で二番目に主要な死因である、世界中の主要な健康上の懸念であり続けている。世界保健機関(WHO)によると、新たな226万の症例の乳がん、次いで221万の症例の肺がんを含めて、2020年には世界中で1,000万人近くががんで死亡すると推定されている。低分子干渉RNA(siRNA)は、いくつかの疾患で有望な結果を示してきた新規かつ新興の治療薬である。リンパ腫は、リンパ球から生じるがんである。T細胞リンパ腫(TCL)は、T細胞から生じるリンパ腫であり、これらは、米国におけるすべての非ホジキンリンパ腫の約7%を占める。TCLの一般的なサブタイプには、以下が含まれる。別段に特定されない末梢性T細胞リンパ腫(PTCLNOS)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、および皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)。TCLの各タイプには、それぞれ独自の病状および症状がある。低分子干渉RNA(siRNA)は、いくつかの疾患で有望な結果を示してきた新規かつ新興の治療薬である。がんの複雑性および重症度を考慮して、改善され、正確に目標とする治療の開発に対して継続的な要望が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本明細書においては、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞の集団を、網膜芽細胞腫タンパク質相互作用ジンクフィンガータンパク質2(RIZ2)阻害剤を含む組成物と接触させることを含む当該方法を開示する。一実施形態では、RIZ2阻害剤が、細胞においてRIZ2の発現を減少させる。一実施形態では、RIZ2阻害剤が、細胞においてRIZ2 mRNAの発現を減少させる。一実施形態では、RIZ2阻害剤が、細胞においてRIZ2タンパク質の発現を減少させる。
【0004】
一部の実施形態では、RIZ2 mRNAは、細胞においてハウスキーピング遺伝子の発現と比較して少なくとも10%減少する。一部の実施形態では、RIZ2 mRNAは、対照細胞集団と比較して、少なくとも10%減少する。一部の実施形態では、対照細胞集団は、RIZ2阻害剤を含む組成物と接触したことのない細胞集団である。
【0005】
一部の実施形態では、RIZ2 mRNAの発現は、対照細胞集団と比較して、少なくとも50%減少する。
【0006】
一部の実施形態では、RIZ2 mRNAの発現は、対照細胞集団と比較して、少なくとも80%減少する。
【0007】
一実施形態では、RIZ2阻害剤が、さらに、細胞集団においてRIZ1の発現を増加させる。一部の実施形態では、当該組成物が、RIZ1 mRNA発現レベルのRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を変化させる。一部の実施形態では、当該組成物が、RIZ1タンパク質発現レベルのRIZ2タンパク質発現レベルに対する比を変化させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.1倍を超えるように変化させる。
【0008】
一部の実施形態では、RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.5倍を超えるように変化させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも2倍変化させる。
【0009】
一実施形態では、RIZ2阻害剤が、さらに、RIZ1の高メチル化を減少させる。
【0010】
本明細書に記載される方法の一部の実施形態では、細胞は、哺乳類細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態では、細胞は、がん細胞である。
【0011】
本明細書に記載の方法の一部の実施形態では、細胞は、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織である組織に由来する。一部の実施形態では、がん細胞は、血液がん由来である。
【0012】
一部の実施形態では、がん細胞は、固形腫瘍由来である。
【0013】
一部の実施形態では、接触させることは、細胞の集団を、RIZ2阻害剤を含む組成物と接触させることを含む。一部の実施形態では、接触させることにより、結果として、細胞の集団の細胞数が少なくとも10%減少する。一部の実施形態では、接触させることにより、結果として、細胞の集団の細胞数が約90%減少する。
【0014】
一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を少なくとも10%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約50%減少させることを含む。
【0015】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、細胞を接触させることは、RIZ2阻害剤を細胞内に組み入れることをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、RIZ2阻害剤は、非天然由来の化合物を含む。一実施形態では、RIZ2阻害剤は、合成薬である。一実施形態では、RIZ2阻害剤は、ペプチドを含む。一実施形態では、RIZ2阻害剤は、複合体化したポリペプチドを含む。
【0017】
一実施形態では、RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチドを含む。
【0018】
一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、合成ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、一以上のポリヌクレオチドは、一以上の修飾ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤を含む組成物は、送達システムに結合された一以上のポリヌクレオチドを含む。
【0019】
一実施形態では、送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウム(calcium phosphate)ポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む。
【0020】
一部の実施形態では、送達システムは、脂質を含む。一部の実施形態では、送達システムは、PEG化脂質を含む。一部の実施形態では、送達システムは、細胞標的部分を含む。一部の実施形態では、細胞標的部分は、細胞型特異的である。一部の実施形態では、細胞標的部分は、標的細胞上の受容体に選択的に結合するリガンドである。一部の実施形態では、細胞標的部分は、標的細胞上の細胞表面分子に結合する抗体である。一部の実施形態では、細胞標的部分は、単鎖抗体または抗体断片である。一部の実施形態では、細胞標的部分は、ペプチドである。一部の実施形態では、細胞標的部分は、細胞透過性ペプチドである。一部の実施形態では、細胞標的部分は、環状ペプチドである。一部の実施形態では、細胞標的部分は、アプタマーである。一部の実施形態では、送達システムは、リポソームを含む。一部の実施形態では、送達システムは、ナノ粒子を含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、RNA分子を含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、阻害性RNA分子を含む。
【0021】
一実施形態では、本明細書で開示する阻害性RNA分子は、PRDM2遺伝子またはPRDM2遺伝子産物上の少なくとも10個の隣接し合う核酸塩基に対してハイブリダイズする。一部の実施形態では、阻害性RNAは、約10ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、二本鎖である。一部の実施形態では、RNA分子は、一以上の修飾ヌクレオチドを含む。
【0022】
本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、配列番号1の配列または配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、阻害性二本鎖RNAを含む。本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、配列番号1の配列および配列番号10の配列を含む、阻害性二本鎖RNAを含む。
【0023】
本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、配列番号6の配列または配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、阻害性二本鎖RNAを含む。本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、配列番号6の配列または配列番号11の配列を含む、阻害性二本鎖RNAを含む。
【0024】
本明細書においては、対象において細胞増殖性の疾患または障害を治療する方法であって、RIZ2阻害剤を含む組成物を対象に投与することを含む、当該方法を開示する。
【0025】
本明細書においては、RIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要のある対象として患者を選択する方法であって、(i)対照サンプルもしくは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおいてRIZ1メチル化レベルの増加を検出すること、または(ii)対照サンプルもしくは対照値と比較してRIZ1 mRNAレベルの低下を検出することを含むものであり、対照サンプルまたは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおいてメチル化したRIZ1の少なくとも1.1倍の増加またはRIZ1 mRNAレベルの少なくとも2分の1の低下により、当該対象がRIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要があるとして決定され、また対照サンプルは臨床的に健康な個体由来のサンプルであり、対照値は、二以上の臨床的に健康な個体のサンプルからのRIZ1メチル化レベルの平均値である、当該方法を開示する。
【0026】
本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、細胞増殖性の疾患または障害は、がんである。
【0027】
一部の実施形態では、がんは、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織のがんである。
【0028】
一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。一部の実施形態では、がんは、肺がんである。
【0029】
本明細書で開示する方法の一部の実施形態では、投与することは、有効量のRIZ2阻害剤を投与することを含む。
【0030】
一部の実施形態では、有効量のRIZ2阻害剤は、細胞増殖性障害に関連する少なくとも一以上の疾患のパラメータを減少させる量である。
【0031】
一部の実施形態では、細胞増殖性疾患は、がんであり、また有効量のRIZ2が、がん細胞の数を減少させる。一部の実施形態では、細胞増殖性疾患は、固形腫瘍であり、また有効量のRIZ2が、腫瘍量を減少させる。
【0032】
一部の実施形態では、RIZ2阻害剤を含む組成物は、送達システムに結合された一以上のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、一以上のポリヌクレオチドは、阻害性RNA分子を含む。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、配列番号1の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を含む二本鎖RNA分子である。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、配列番号6の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を含む二本鎖RNA分子である。
【0033】
一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、表2に列挙した配列のうちのいずれか一つに対して少なくとも90%の配列同一性を含む二本鎖RNA分子である。
【0034】
一部の実施形態では、組成物は、送達システムをさらに含む。一部の実施形態では、送達システムは、脂質および/または細胞標的部分を含む。一部の実施形態では、脂質は、PEG化脂質である。一部の実施形態では、細胞標的部分は、細胞透過性ペプチド、環状ペプチド、抗体もしくはその断片、またはアプタマーである。
【0035】
さらに本明細書においては、(a)RIZ2阻害剤、および(b)薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物が開示される。本明細書で開示する医薬組成物の一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチド分子および送達システムを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、阻害性RNA分子を含む。一部の実施形態では、阻害性RNA分子を、PRDM2遺伝子またはPRDM2遺伝子産物上の少なくとも10個の隣接し合う核酸塩基に対してハイブリダイズする。
【0036】
一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、約10ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、二本鎖である。一部の実施形態では、阻害性二本鎖RNAは、配列番号1の配列または配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、阻害性二本鎖RNAは、配列番号13の配列または配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、阻害性二本鎖RNAは、配列番号13の配列または配列番号14に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。一部の実施形態では、送達システムは、細胞標的部分を含む。一部の実施形態では、細胞標的部分は、リガンド、および抗体または抗体断片、単鎖抗体、ペプチドまたはアプタマーである。一部の実施形態では、細胞透過性ペプチドである。
【0037】
一部の実施形態では、送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、(i)ヒトPRDM2/RIZ2遺伝子に対して相同性を有する10~21ヌクレオチドの二本鎖RNAを含むsiRNAを含み、(ii)PEG分子に共有結合し、(iii)細胞標的部分に結合されるものであり、該細胞標的部分がアプタマーである、siRNAを含む。一部の実施形態では、送達システムは、リポソームを含む。一部の実施形態では、送達システムは、ナノ粒子を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、およびそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、カルシウムホスホシリケート(calcium phosphosilicate)複合体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、RIZ2阻害剤と結合したカルシウムホスホシリケート複合体をさらに含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、一以上の化学療法薬をさらに含む。
【0038】
前述の多機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞、または方法のいずれかのさらなる特徴は、以下の列挙された実施形態のうちの一以上を含む。
【0039】
当業者は、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または通例の実験のみを使用して確認することができるだろう。こうした均等物は、以下の列挙された実施形態によって包含されることを意図する。
【0040】
前述の多機能性分子、核酸、ベクター、宿主細胞、または方法のいずれかのさらなる特徴は、以下の列挙された実施形態のうちの一以上を含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】[0041]
図1は、RIZ mRNAに対する相補性を有するsiRNAペイロードを含有する薬剤送達システムを含む、本発明の一実施形態による例を示す。この例では、薬剤送達システムはPEG化され、またペイロードをがん細胞またはがん幹細胞に特異的に向ける標的ペプチドを担持する。薬剤送達システムが一以上の追加のペイロードを含有し得ることを説明するために、ナノ粒子を、抗RIZ siRNAに加えて、小分子または大分子の併用剤を含有するように示している。こうした追加のペイロードは、現在承認されている化学療法薬、リパーパス薬、またはがん細胞の死滅させる、もしくはがん細胞の増殖もしくは転移を制御するのを効果的に支援する、あらゆる薬剤であり得る。
【
図2】[0042]
図2は、PRDM2に対して向けられるsiRNAへの曝露後のヒト肺がん細胞(細胞株A549)の生存率を示す。
【
図3】[0043]
図3は、ARIZ-011への曝露後のA549肺がん細胞におけるRIZ1 mRNAレベルおよびRIZ2 mRNAレベルを示す。
【
図4】[0044]
図4は、ARIZ-011への曝露後のヒト結腸がん細胞(細胞株HCT116)および正常な結腸細胞(細胞株CCD112)の生存率を示す。
【
図5】[0045]
図5は、ARIZ-011への曝露後のHCT116がん細胞におけるRIZ1 mRNAレベルおよびRIZ2 mRNAレベルを示す。
【
図6】[0046]
図6は、ARIZ-047への曝露後(シスプラチン有りまたはシスプラチンなし)のヒト肺がん細胞(細胞株A549)および正常な上皮細胞(細胞株CCD112)の生存率を示す。
【
図7】[0047]
図7は、ARIZ-047への曝露後のA549肺がん細胞におけるRIZ1 mRNAレベルおよびRIZ2 mRNAレベルを示す。
【
図8】[0048]
図8は、ARIZ-011での細胞の処理後の多発性骨髄腫細胞KMS11の生存率を示す。
【
図9】[0049]
図9は、自己組織化して、インテグリンαvβ3受容体を標的とするナノ粒子薬剤送達システムを形成するc(RGDfk)-PEG-MAL-siRNA構築物を示す。
【
図10】[0050]
図10は、A549肺がん異種移植片モデルにおける腫瘍退縮を示し、その例示的データを示す。ナノ粒子で送達されたsiRNA(ARIZ-047)が、腫瘍増殖制御で最も有望な効果を示す。
【0042】
[0051] 本明細書に番号付けされた添付図面は、例示のみで与えられるものであり、いかなる範囲への制限を意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[0052] 本開示は、哺乳類細胞におけるRIZ1レベルおよびRIZ2レベル間の均衡が、細胞の不安定でない正常なライフサイクルの決定因子であること、およびそれが不均衡であることが、細胞サイクルの変化を導き、これが例えば過形成またはがんなどの過剰増殖性障害につながることという重要な知見に基づく。本開示は、当該不均衡に対処し、それによってがんなどの過剰増殖性障害を防止または改善するために、RIZ2を特異的に標的化することができるというさらなる画期的な展開に基づく。
【0044】
[0053] 現在の抗がん剤治療は有効性が限定的である。通常使用される抗がん剤は、腫瘍の一時的な緩解をもたらし、患者の延命に役立ち得るが、ほとんどの場合、がんを完全には除去しないことが多くその後腫瘍が再発する可能性があることを理由に治療に有効ではない。小分子化学療法は、現在、がんに対して最も広く使用されている治療であるが、その作用はほとんど非特異的である。
【0045】
[0054] 化学療法薬は、非特異的な毒性作用が深刻であり、これは制御および破壊が意図されるがん性細胞のみならず、正常で健康な細胞および組織に対して、付随的に損傷を引き起こす。その結果、患者は毒性により激しい副作用に悩まされる。免疫療法は、毒性が低く且つ生存率を向上させると予想されたが、その見込みにもかかわらず、がん治療および良好な長期的な患者転帰の見通しは漸進的に向上するに過ぎなかった。標的療法および免疫療法は、従来の化学療法の補充または代替としてますます使用されるが、がんが一般的に適応し、急速に耐性を発現し、標的療法の効果を逃れるため、そのような療法は概して長期的な有効性を欠く。前述の理由から、化学療法、免疫療法、および標的療法が治癒に有効的であることはまれである。根本的原因に取り組むことで、例えば、そもそも細胞をがん化させてこの壊滅的な疾患を生じさせる根底にある遺伝的異常を克服することで、がんは治癒する可能性がある。このアプローチには、正常な細胞における腫瘍形成を抑制するが、異常発現した場合がん細胞形成の駆動因子となる、主要制御因子として作用するタンパク質の発現を調節することを伴い得る。
【0046】
[0055] 特に興味深いのは、PRDMクラスの腫瘍抑制遺伝子の発現を変動させることに焦点を当てたがん治療である。PRDMは、細胞の成長、増殖、生存、および可動性を制御する遺伝子およびタンパク質のファミリーである。研究によると、PRDMの発現および活性の変化が、がん細胞形成につながる正常細胞の最初の変化に通常含まれるということが示されている。PRDM遺伝子の異常発現は、多種多様ながん型に強く関与している。PRDMは、例えば乳房、結腸、胃、肝臓、肺、黒色腫、前立腺、およびその他のがんなどの固形腫瘍、ならびに例えば白血病、リンパ腫、および骨髄腫などの血液がんにおける原因遺伝子および原因タンパク質として関連している。
【0047】
定義
[0056] 別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多くの用語の全般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed.,1988)、The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag (1991)、およびHale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、別段の指定がない限り、以下の用語は、以下に帰する意味を有する。本明細書で使用される用語は、単に特定の事例を記述する目的であり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、用語「含むこと(including)」、「含む(include)」、「有すること(having)」、「有する(has)」、「伴う(with)」またはその変化形が、発明の詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される限りにおいて、かかる用語は、用語「含むこと(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。当然のことながら、「含む(comprise)」、「含まれる(comprised)」、「含むこと(comprising)」などの用語は、米国特許法においてそれに帰属する意味を有し得るものであり、例えばこれら用語は、「含む(include)」、「含まれる(included)」、「含むこと(including)」等を意味することが可能であり、また「本質的に~からなること(consisting essentially of)」および「本質的に~からなる(consist essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれに帰する意味を有するものであり、例えば当該用語は、明示的に列挙されていない要素も許容するが、先行技術に見出される要素、または本発明の基本的もしくは新規の特徴に影響を及ぼす要素は除外する。本明細書のいかなる内容も、保証として意図されているものではない。
【0048】
[0057] 「薬剤」とは、あらゆる小分子の化合物、抗体、核酸分子、またはポリペプチド、またはその断片を意味する。
【0049】
[0058] 用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書では区別なく使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含み、例えばmRNAである。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/もしくはその類似体、またはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドおよび核酸は、インビトロで転写されるmRNAであり得る。一部の実施形態では、本発明の方法を使用して投与されるポリヌクレオチドは、mRNAである。
【0050】
[0059] 二以上の核酸またはポリペプチドの文脈における「同一」または「一致」率という用語は、配列同一性の一部として何らかの保存的アミノ酸置換を考慮することなく最大限一致するように比較および整列(必要に応じてギャップを導入する)したときに、同じであるか、または同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を特定の割合を有する、二以上の配列または部分配列を指す。一致率は、配列比較ソフトウェアまたはアルゴリズムを使用して、または視覚的検査によって測定することができる。アミノ酸配列またはヌクレオチド配列のアラインメントを取得するために使用できる様々なアルゴリズムおよびソフトウェアは、当技術分野で周知である。これらには、BLAST、ALIGN、Megalign、BestFit、GCG Wisconsin Package、およびそれらの変形が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載する二つの核酸またはポリペプチドは、実質的に同一であるが、これは、配列比較アルゴリズムを使用してまたは視覚的検査によって測定しながら、最大限一致するように比較および整列された場合に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、および一部の実施形態では少なくとも95%、96%、97%、98%、99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の同一性を有することを意味する。
【0051】
[0060] 本明細書で使用される場合、細胞増殖性障害または過剰増殖性障害は、一以上の細胞周期関連遺伝子の機能停止に起因する、細胞増殖の増加、ほとんどの場合細胞増殖の制御不能に関連した疾患または障害である。例示的な過剰増殖性障害は、新形成、がんである。細胞周期は、細胞のライフサイクルにおける連続する二つのG0/G1期(または連続する二つのG1/M期)の間の周期的間隔であり、これは通常、最適な環境条件下では、細胞型で不変のままである。細胞周期異常は、概して細胞周期調節因子の破損によって引き起こされる場合がある、細胞のライフサイクルにおける連続する二つのG0/G1期(または連続する二つのG1/M期)間の正常な周期的間隔を破壊する障害であり得る。例えば、例示的な細胞周期調節因子は、サイクリンDである。一部の実施形態では、RIZ1および/またはRIZ2が、細胞周期の調節因子とみなされ得る。一部の実施形態では、RIZ1および/またはRIZ2は、それらがライフサイクルを遍在的に制御するという点で、またはそれらが、細胞型、位置、もしくは環境条件に関係なく細胞のライフサイクルにおける節目を制御するという点で、細胞周期の主要調節因子とみなされ得る。
[0061] 過形成は、例えば、例えばチェックポイント阻害剤である細胞周期調節因子の破損の結果として、急速な細胞増殖の状態として定義され得る。新形成は、細胞が腫瘍性転化、例えばがん性の悪性転換を経た状態である。
【0052】
[0062] RNA干渉およびsiRNA。RNA干渉(RNA interference)とは、低分子干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す(Zamore et al,2000,Cell,101,25-33、Fire et al.,1998,Nature,391,806、Hamilton et al.,1999,Science,286,950-951、Lin et al.,1999,Nature,402,128-129、およびStrauss,1999,Science,286,886)。植物における対応するプロセス(Heifetzら、国際PCT出願公開公報、国際公開第99/61631号)は、通常、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼称され、また真菌においては膨化(quelling)とも呼称される。細胞中に長鎖dsRNAが存在することが、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する(Bass,2000,Cell,101,235、Zamore et al,2000,Cell,101,25-33、Hammond et al.,2000,Nature,404,293)。ダイサーは、dsRNAを、低分子干渉RNA(siRNA)として知られる短い断片のdsRNAへと処理する際に関与する(Zamore et al.,2000,Cell,101,25-33、Bass,2000,Cell,101,235、Berstein et al.,2001,Nature,409,363)。ダイサーの活性に由来する低分子干渉RNAは、典型的には約21~約23ヌクレオチドの長さで、約19塩基対の二本鎖体を含む(Zamore et al.,2000,Cell,101,25-33、Elbashir et al.,2001,Genes Dev.,15,188)。ダイサーはまた、翻訳制御に関与する保存された構造の前駆体RNAからの21ヌクレオチドおよび22ヌクレオチドである低分子一過性RNA(stRNA(small temporal RNA))の除去にも関与している(Hutvagner et al.,2001,Science,293,834)。RNAi反応はまた、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と通常称されるエンドヌクレアーゼ複合体も特徴であり、これはsiRNA二本鎖体のうちのアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二本鎖体のうちのアンチセンス鎖に相補的な領域の真ん中で行われる(Elbashir et al.,2001,Genes Dev.,15,188)。
【0053】
[0063] 用語「阻害」はしばしば、「減少」または「発現レベルの減少」と区別なく使用されるが、これは阻害される特定の成分のレベルの減少を示し、当該減少は、部分的(例えば、20%、50%、75%、80%)であっても、または完全(約100%)であってもよい。例えば、RIZ2阻害剤は、細胞内のRIZ2タンパク質を約50%、または約100%阻害する。
【0054】
[0064] 疾患、傷害、または障害の文脈で使用される場合、用語「治療」、「治療すること」、「緩和」などは、本明細書では、望ましい薬理学的および/または生理学的効果の獲得を概して意味するために使用され、また治療される状態の一以上の症状の重症度を改善、緩和、および/または低下させることを指すためにも使用され得る。当該効果は、疾患、状態、またはその症状の発症または再発を完全にまたは部分的に遅延させるという点で予防的であり得、ならびに/または疾患もしくは症状、および/もしくは当該疾患もしくは症状に起因する有害作用に対する部分的もしくは完全な治癒という点で治療的であり得る。本明細書で使用される場合、「治療」は、特にヒトである哺乳類の疾患または症状のあらゆる治療を包含し、以下を含む:(a)疾患または症状の素因があり得るが当該疾患または症状があるとまだ診断されていない対象において、当該疾患または症状が発症することを予防すること、(b)当該疾患または症状を阻害すること(例えば、その発症を阻止すること)、または(c)当該疾患または症状が緩和すること(例えば、当該疾患または症状の退縮を引き起こすこと、一以上の症状の改善をもたらすこと)。
【0055】
PRDM遺伝子および生態学
[0065] 本開示は、例えばPRDM2遺伝子である一以上のPRDM遺伝子の発現および機能を調節する方法および組成物に関する。概して、PR/SET(ヒストンメチルトランスフェラーゼ(HMT)の大きな群を画定する[Su(var)3-9、Enhancer of ZesteおよびTrithorax(トライソラクス)])ドメイン2(PRDM2)は、ヒトでは現在19種のメンバーを含む、PRDM(正の調節ドメイン(positive regulatory domain))遺伝子ファミリー、Kruppel様ジンクフィンガー遺伝子産物のサブファミリーに属する。PRドメインはタンパク質結合界面を有し、そしてそれらのいくつかは、普遍的なメチル供与体S-アデノシルメチオニン(SAM)を収容することができ、したがってリジンメチルトランスフェラーゼ(KMT)としての機能を果たす。PRDM(PRDI-BF1およびRIZ相同ドメイン含有)タンパク質ファミリーメンバーは、ヒストン/タンパク質メチルトランスフェラーゼ(PRDM)のスーパーファミリーに属するが、当該メンバーは、C末端にメチルトランスフェラーゼ活性およびジンクフィンガーアレイを伴って、保存されたN末端PRドメインを特徴とする。このクラスのメンバーは、PRドメインおよび異なる数のZnフィンガーが存在することを特徴とする。実験的証拠によると、PRDMタンパク質は、遺伝子発現調節で重要な役割を果たし、直接的に、メチルトランスフェラーゼ活性を介して、またはクロマチンリモデリング複合体のリクルートを介して間接的に、クロマチン構造を変化させるということがわかっている。PRDMタンパク質は転写因子として機能し、成長、分化、増殖、可動性、および生存を含む発生過程に関与する膨大な数の他の遺伝子の発現を支配する。したがって、PRDMタンパク質は、発生シグナルに応答して細胞状態遷移を駆動および維持する主要転写調節因子である。一部のPRDMタンパク質は、通常、腫瘍抑制因子として機能するが、それらの発現が調節不全となった場合、または特定のアイソフォームが異常な割合で発現するようになると、これら変化が、がんの発症および進行の駆動因子となり得る。多くのがん型が、特定のPRDMタンパク質の機能障害と強く関連している。こうした腫瘍では、正常なPRDMタンパク質の発現が、異常に低いレベルである可能性がある。RDMタンパク質は、ステロイドホルモンのように異なる細胞シグナルによって誘導される効果を媒介すること、そして増殖因子の発現を制御すること、という二重の作用を有する。したがって、PRDMタンパク質は、細胞の増殖および分化、その結果としての腫瘍性転化を制御するシグナルの伝達において中心的役割を果たす(Zazzo et al.,Biology (Basel).2013 Mar;2(1):107-141)。PRドメインは、ヒストンメチルトランスフェラーゼの群を画定する触媒的なSET(Su(var)3-9(Suppressor of variegation 3-9)、Enhancer of zesteおよびTrithorax(トライソラクス))ドメインと高い相同性を共有する(Xiao B.et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.2003;13:699-705)。ヒトゲノムでは、PR/SETを有するタンパク質をコードする17個の遺伝子があり、それらのうちPRDM11を除くすべてが、Znフィンガードメインを様々な数で有している(Fumasoni I.et al.,BMC Evol.Biol.2007;7:187)。PRDMタンパク質は、細胞の増殖および分化、その結果としての腫瘍性転化を制御するシグナルの伝達において中心的役割を果たす(Fog C.K et al.,BioEssays.2011;34:50-60)。PRDMファミリー遺伝子の共通の特徴は、選択的スプライシングによる、または異なるプロモーターの作用による、異なる分子形態の発現である。さらに、このファミリーの一部の遺伝子は、二つの選択的な形態として発現され、その一つはPRドメインを欠いている(PR-マイナス)が、もう一方であるPR含有産物(PR-プラス)とその他の点では同一である(PRDM1、PRDM2、PRDM3、PRDM16)[(Gyory et al.,J.Immunol,2003,170:3125-3133)、(Liu L.,et al.,J.Biol.Chem.1997,272:2984-2991)]。他の遺伝子は、Zn-フィンガードメインが存在するかまたは存在しないかの点で異なるタンパク質をコードする(PRDM6、PRDM9)。
【0056】
[0066] PRDM1およびPRDM2は、それぞれBlimp-1(B lymphocyte-induced maturation protein-1(Bリンパ球より誘導された成熟タンパク質-1))およびRIZ(網膜芽細胞腫相互作用ジンクフィンガータンパク質)として最初に特定されたが、PR-プラスのアイソフォームおよびPR-マイナスのアイソフォームをコードする二つのプロモーターを有する。PRDM1プロモーターは、それぞれエクソン1およびエクソン4の上流に位置決定されている。以下の二つのプロモーターにおけるこれら転写開始部位は以下をガイドする:PRドメインが存在することのみが異なる、PRDI-BF1(正の調節ドメインI結合因子1)α(PR-プラス)e PRDI-BF1β(PR-マイナス)。PRDM1と同様に、PRDM2は、二つのプロモーターによって開始される示差的転写によって、PRDM2a/RIZ1(PR-プラス)およびPRDM2b/RIZ2(PR-マイナス)である二つのタンパク質を発現する。PRDM2の一方のプロモーターは、エクソン1aを含む領域内のオープンリーディングフレームの上流に位置し、また第二のプロモーターはイントロン5およびエクソン6の範囲内に位置している。PRDM2はまず、それぞれ独立の試験において、ヒトcDNAライブラリーの機能スクリーニングを通して、網膜芽細胞腫相互作用ジンクフィンガータンパク質(RIZ)として、およびGATA-3結合タンパク質として特定された(Sorrentino,A.,et al.,2018,Volume 1861,Issue 7,Pages 657-671)。その後、ヒト単球性白血病細胞株のcDNA発現ライブラリーから、PRDM2バリアントが単離され、これはMTE結合タンパク質ジンクフィンガー型(MTB-ZF)と名付けられた。
【0057】
【0058】
【0059】
[0068] これまでのところ、酵素活性は、以下のいくつかのファミリーメンバーに関してのみ実験により実証されている。PRDM9(H3K4me3、H3K9me1/3、H3K18me1、H3K36me3およびH4K20me1/2に向けて)、PRDM2、PRDM3、およびPRDM16(H3K9me1)、およびPRDM8(H3K9me3)(Xie,M.et al.,J.Biol.Chem.,1997,272:42,2636-26366)。さらに、PRDM6について、この活性の性質はさらなる解明を必要とするものの、その活性が報告されている。
【0060】
[0069] PRDM2、すなわち網膜芽細胞腫結合タンパク質(RIZ)RIZは、Rb結合タンパク質およびPRDI-BF1/BLIMP1転写リプレッサーをコードし、これはBリンパ球の成熟を促進する。RIZは、PRDM2a(RIZ1)およびPRDM2b(RIZ2)である二つのアイソフォームを有し得る。いずれのタンパク質も、哺乳類細胞で広く発現する。RIZ1は、RIZ2と同一であるが、アミノ末端に追加的な201残基を有する点が異なり、これはRIZ1ではPRドメインを含む。RIZ1におけるこれら追加的な残基は、RIZ1タンパク質に特定の機能を付与することが知られている。内部プロモーターは、RIZ2を生成するが、これはRIZ1 PRドメインを欠いている。このPRドメインは、RIZ1アミノ末端領域内の主要な機能的モチーフを表す。PRドメインは、SETドメインの誘導体であり、またクロマチン介在性の遺伝子発現調節においてタンパク質結合インターフェースとして機能し得る。
【0061】
[0070] RIZ2では不在である、RIZ1内にPRドメインを含むN末端領域の配列の例を以下に示すが、推定のPRドメインを太字で示している:
【0062】
【0063】
[0072] RIZ2は、RIZ1に存在する配列番号19として示したセグメントが存在しないことを特徴とする。
【0064】
[0073] 例示的なRIZ2タンパク質配列を以下に提供する。
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AQLSSKTSRSLHVRVQKSKAVLQSKSTLASKKRTDRFNIKSRERSGGPVT
RSLQLAAAADLSENKREDGSAKQELKDFRNFL(配列番号20)。
【0065】
[0074] 配列番号20の配列は、RIZ1のためのアミノ酸残基202から先において、RIZ1と完全に整列する。以下に示すように、問い合わせ配列はRIZ1であり、またサブジェクト配列はRIZ2である。例えば、PRDM2/RIZ1は、NM_012231のものの配列である。例えば、PRDM2/RIZ2は、NM_001007257のものの配列である。配列NM_012231は、例示的なヒトRIZ1配列である。配列NM_001007257は、例示的なヒトRIZ2配列である。
【0066】
【0067】
【0068】
[0075] RIZ1およびRIZ2のいずれも、GC含量が高いSp-1様DNAエレメントに結合し、シミアンウイルス40の早期プロモーターの転写を抑制するが、RIZ1はRIZ2よりも強力な抑制因子であり、これはRIZ1のPRドメインが転写を調節することを示唆する(Huang,S.,J.Biol.Chem.,Vol.273,No.26,Issue of June 26,pp.15933-15939)。
【0069】
[0076] RIZ1タンパク質は正常な組織中で発現するが、多くのヒト悪性組織およびがん細胞株においては、RIZ1発現レベルの低下もしくは不在、および/またはRIZ2発現レベルの増加が検出されることがよくある。他のPRDMタンパク質について提案されてきたように、二つのタンパク質産物の量におけるこの「陰と陽」の不均衡が、腫瘍性転化に重要であり得る。さらに、RIZ2に対するRIZ1の排他的な負の選択(特異的に遺伝子学的または後成的に媒介される発現低下)は、様々なヒトがんに共通する特徴であるようである。この知見は、RIZ1が腫瘍抑制活性を有し得ること、およびRIZ2は、その細胞分裂活性を介して細胞増殖を促進することによる腫瘍形成に必要であることを示唆している。RIZ2の推定の内因性増殖促進発がん性は、RIZ1およびRIZ2両者に存在するZnフィンガードメインの一番目のクラスター(残基359~507)に関連している。実際に、Znフィンガーのこのクラスターを発現する安定的にトランスフェクションされるMCF7細胞は、エストロゲンの欠乏状態またはエストロゲン刺激の両方において、対照細胞と比較して増殖速度の増加を示し、またより高い発現レベルのサイクリンD1およびAと、抗エストロゲンの増殖阻害効果に対する応答性の低下とを示した。さらにプロテオミクス質量分析に基づく方法を介して、MCF-7細胞におけるPRDM2遺伝子Znフィンガードメインの強制発現は、様々なタイプのがんに関連または細胞増殖および分化に関与するタンパク質の分化発現と相関しており、当該タンパク質は例えばケラチンK8、糖分解酵素α-エノラーゼ、酸性プロテアーゼカテプシンD、およびヌクレオシド二リン酸キナーゼA等である。これらタンパク質の発現の変化が、観察された高めの増殖速度に寄与している可能性がある。RIZ2の発がんの妥当性は、RIZ1タンパク質中のPRドメインの存在によって阻害される可能性が高い。RIZ1およびRIZ2間でのクロマチン調節上の大幅な機能的差異は、RIZ1に特定の機能を付与しているPRドメインに起因するものであるが、腫瘍形成におけるそれらがもつ正反対の役割が背景となっている可能性がある。
【0070】
[0077] RIZ1およびRIZ2のそれぞれの量が不均衡であることは、ここでPR陽性アイソフォームは通常喪失するかまたは下方制御され、またPR陰性アイソフォームはがん細胞中により高いレベルで常に存在していることにより、悪性腫瘍の重要な原因となり得る。興味深いことに、RIZ1アイソフォームはまた、ホルモン受容体との相互作用より下流にあるエストラジオール作用の重要な標的を意味する。さらに、この二つの産物間での不均衡は、他のヒトの疾患の分子基盤ともなり得る。
図1に示す本発明による一実施形態では、薬剤送達ビヒクルは、血流中での薬物寿命を延長し、免疫系による破壊から薬剤送達システムを遮蔽するために、保護層(例えば、リポソームのPEG化)を備える。一実施形態では、薬剤送達システムは、腫瘍細胞またはがん幹細胞の表面上の受容体または他の部分を標的とするリガンドを介して、がん細胞に対して特異的に向けられる。リガンドは、高い特異性および親和性を有する標的がん細胞に結合する能力を有するタンパク質、ペプチド、または他のクラスの分子であり得る。この標的薬剤送達システムは、健康な細胞への損傷を保護するのみならず、標的部位にペイロードを集中させる必要がある。同時にこれは、効能を高め(より少ない薬剤用量で)、また安全性を向上させ、その結果より高い治療指標をもたらす必要がある。
【0071】
[0078] 他の実施形態では、薬剤送達ビヒクルは、
阻害性siRNAに加えてペイロードを担持し、薬物製剤の抗がん有効性を増強することができる。こうした追加的なペイロードとしては、限定されるものではないが、大分子または小分子の化学療法薬が挙げられ得る。
【0072】
PRDM2遺伝子発現の調節
[0079] PRDM2/RIZ1は、メチル化を介して制御することができる。一態様では、RIZ2の高メチル化を、がん療法のための標的とすることができる。例えば、ある研究では、PRDM2/RIZ1のメチル化頻度は、腫瘍では約73%であるのに対して、遠隔の肺組織では20%であることが観察されている(Tan S.et al.,Oncotargets and Therapy 2018:11,2991-3002)。
【0073】
[0080] 二つのRIZアイソフォームは、「陰と陽」の様式で細胞機能を制御し(Di Zazzo,Biology 2016,5,54;doi:10.3390)、それによってこの二つの形態は、二重の優遇される逆の反応を生じる。具体的には、RIZ1タンパク質は、腫瘍抑制因子の役割を果たし、細胞周期のG2/M期においてがん細胞を阻害して、アポトーシスを促進する一方で、RIZ2タンパク質は、癌原遺伝子として作用し、細胞分裂を促進する。すなわち、RIZ1およびRIZ2の量が不均衡であることは、がん進行の重要な原因であり得る。この見解は、RIZ1発現のサイレンシングまたは調節解除が、RIZ2発現の増加と関連して、例えば肝細胞腫、白血病、悪性リンパ腫、乳がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、およびその他を含めた種々のヒトがんにおいて観察されたという研究所見で裏付けられる。
【0074】
[0081] 一態様では、本開示は、PRDM2遺伝子発現を制御するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、RIZ2発現を制御することができる。一部の実施形態では、この方法は、RIZ2発現を減少させるために使用することができる。一実施形態では、RIZ2発現が、本明細書に記載する方法を使用して、細胞において減少する。一部の実施形態では、本明細書に記載する方法は、哺乳類の系内で細胞においてRIZ2発現を減少させるために使用される。一部の実施形態では、哺乳類の系はヒト系である。
【0075】
[0082] 一実施形態では、本明細書において、正常細胞と比較してRIZ2の発現が異常に高い細胞においてRIZ2のレベルを減少させる方法を提供するものであるが、当該方法において正常細胞は健康な細胞、または健康な個体から採取された細胞であり、健康な個体は、疾患または症状の臨床徴候がない個体であり得る。一部の実施形態では、RIZ2の発現が異常に高い細胞は、細胞周期調節障害がある細胞である。一部の実施形態では、RIZ2の異常な高い発現を示す細胞は、過形成を呈する細胞である。一部の実施形態では、RIZ2の発現が異常に高い細胞は、がん細胞である。
【0076】
[0083] 一部の実施形態では、本明細書において、がん細胞、または過形成を呈する細胞において特異的にRIZ2発現を減少させる方法を提供するものであり、当該細胞はRIZ2の異常な高い発現を呈する。一部の実施形態では、RIZ2の発現が異常に高い細胞はまた、同時にRIZ1の発現の減少を呈する。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、RIZ2発現を減少させ、同時にRIZ1発現を増加させることができる。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、細胞においてRIZ1-RIZ2の均衡を回復させる。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、RIZ1の発現増加およびRIZ2の発現低下を可能にする。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、RIZ2の発現低下によりRIZ1の発現増加を可能にする。一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることを含む。
【0077】
[0084] 本明細書では、正常細胞よりも高いRIZ2レベルを発現する細胞においてRIZ2を発現低下して、同時にRIZ1レベルを発現増加する方法であって、正常細胞よりも高いRIZ2レベルを発現する細胞はまた、正常細胞よりも低いRIZ1レベルも呈するものである、当該方法を提供するが、この方法は、当該細胞を本開示に記載するRIZ2阻害剤と接触させることを含む。一部の実施形態では、正常細胞は、正常な細胞分裂周期を呈する細胞である。一部の実施形態では、本明細書においては、細胞においてRIZ1-RIZ2の均衡を回復させる方法を提供する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.1倍を超えるように変化する。例えば、一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.2倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.3倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.4倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.5倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.6倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.7倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.8倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.9倍を超えるように変化する。一実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比は、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を少なくとも2倍変化させる。
【0078】
[0085] 一部の実施形態では、本明細書で提供する方法は、細胞を、網膜芽細胞腫タンパク質相互作用ジンクフィンガータンパク質2(RIZ2)阻害剤を含む組成物と接触させることを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、非天然の薬剤、例えば合成薬である。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、小分子である。一部の実施形態では、小分子は、RIZ2を阻害するために特異的であり、RIZ1を阻害しないように設計される。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、ペプチドを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、細胞においてRIZ2を特異的に阻害するペプチドであり、また少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15アミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸、または20個を超えるアミノ酸、を含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、複合体化したポリペプチドを含む。一部の実施形態では、複合体化ポリペプチドは、RIZ2レベルを減少させることができる少なくとも一つの生理活性ポリペプチド(RIZ2阻害剤)と、インビボで適用された場合に、安定性を与えるか、もしくは細胞膜を通過する経路を与えるか、または生理活性ペプチドを特定の細胞、組織、もしくは器官に向かわせることを可能にする部分とを含む。一部の実施形態においては、RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、合成ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、siRNAなどである合成ポリヌクレオチドを含む。
【0079】
[0086] 一部の実施形態では、この方法は、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることを含み、当該RIZ2阻害剤は、RIZ2およびRIZ1のレベルが正常細胞に匹敵するように、またはRIZ1のRIZ2に対する比率が正常細胞、すなわち例えば正常細胞周期である正常な細胞増殖速度である細胞と同様のレベルに戻すように、細胞においてRIZ2レベルを減少させて細胞においてRIZ1レベルを増加させるのに十分な量で存在するものである。
【0080】
[0087] 一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞の集団をRIZ2阻害剤を含む組成物と接触させることを含む。
【0081】
[0088] 一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、細胞の集団に適用されるとき、当該細胞集団における細胞増殖速度を、過剰増殖状態から、正常な健康細胞と同様の増殖速度まで低下させる。
【0082】
[0089] 一部の実施形態では、本明細書に記載する方法は、細胞の集団に適用されるとき、結果として細胞の集団の細胞数を少なくとも10%減少させる。一部の実施形態では、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることにより、結果として細胞の集団の細胞数を少なくとも約15%、または少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、減少させる。
【0083】
[0090] 一部の実施形態では、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることにより、結果として、細胞の集団の細胞数が約90%減少する。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を少なくとも10%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることにより、結果として細胞の集団の細胞量を少なくとも約15%、または少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、減少させる。%.一部の実施形態では、細胞をRIZ2阻害剤と接触させることにより、結果として細胞の集団の細胞量を少なくとも約15%、または少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、または少なくとも約90%、減少させる。
【0084】
[0091] 一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約50%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約60%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約65%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約70%減少させることを含む。一部の実施形態では、細胞増殖を阻害することは、細胞量を約75%減少させることを含む。
【0085】
[0092] 一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象、例えばヒト対象において、治療有効量のRIZ2阻害剤を対象に投与することによって、過剰増殖障害を治療する方法を含むものであり、当該阻害剤がある用量および適切な時間間隔で投与された場合に、対象の過剰増殖障害が軽減または改善される。一部の実施形態では、過剰増殖障害はがんである。
【0086】
PRDM2 siRNAの設計
[0093] 本明細書において、RIZ2発現を阻害するのに適した阻害性RNA分子を提供する。一部の実施形態では、特定のRNA分子が、治療用途に好適である。例えば、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、およびRNA推論(RNAi)により細胞内の遺伝子発現を調節することができる低分子ヘアピンRNA(shRNA)分子などの合成された小核酸分子である。本発明のsiNA分子は、化学的に修飾され得る。化学的に修飾したsiNAを使用することで、インビボでのヌクレアーゼ分解に対する耐性の増加および/または細胞取込みの改善を経て、天然siRNA分子の様々な特性を向上させることができる。本発明の化学的に修飾したsiNA分子により、様々な治療的、美容的、薬用化粧品的、予防的、診断的、農業的、標的検証的、ゲノム発見的、遺伝子工学、および薬理ゲノミクス的な用途のための有用な試薬および方法が提供される。
【0087】
[0094] 一部の実施形態では、siRNAは、PRDM2遺伝子の少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合することができる少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合する。
【0088】
[0095] 一部の実施形態では、siRNAは、RIZ1遺伝子またはRIZ2遺伝子の少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合することができる少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合する。
【0089】
[0096] 一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2遺伝子の少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合することができる少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合する。
【0090】
[0097] 一部の実施形態では、siRNAは、RIZ1遺伝子ではなくRIZ2遺伝子の少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合することができる少なくとも5、6、7、8、9、10個の連続するヌクレオチドに結合する。
【0091】
[0098] 一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2遺伝子の少なくとも5、6、7、8、9、10の連続するヌクレオチドに特異的に結合して、RIZ1発現レベルに悪影響を与えることなく、主としてRIZ2遺伝子発現に影響を与える。
【0092】
[0099] 一態様では、本開示は、RIZ1遺伝子の発現に悪影響を与えることなく、特にRIZ1遺伝子の発現を減少させることなく、RIZ2遺伝子の発現を減少させる(例えばサイレンシングする)ことができる一以上のsiRNA配列を提供する。より詳細には、本明細書において、RIZ2遺伝子の発現を減少または阻害し、RIZ1遺伝子の発現を誘導するsiRNA配列を提供する。一部の実施形態では、本明細書で提供するsiRNA配列は、ヒトRIZ1発現を阻害することなく、ヒトRIZ2発現を減少または阻害することができる。一実施形態では、本開示は、RIZ2およびRIZ1遺伝子の共通の領域を標的とする一以上のsiRNAが、該siRNAは遺伝子/遺伝子産物の両方に対して相同性を共有しているにもかかわらず、主としてRIZ2は阻害するがRIZ1は残すという、驚くべき予想外の知見に基づいている。
【0093】
[0100] 一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1~500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から10~500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から100~500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から200~500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から500~1000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から200~2000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から500~2500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1000~2500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1600~2200ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1800~2200ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1900~1950ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1920~1940ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から2000~3500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1000~5000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から1500~3000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から2500~3500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から3500~5000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4000~5000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4250~4500ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4300~4400ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4500~5000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4550~4700ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4560~4600ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から4500~6000ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から5000~6140ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から6050~6155ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。一部の実施形態では、siRNAは、RIZ2 mRNAの5’末端から6090~6120ヌクレオチドの間の領域を標的とするよう設計される。
【0094】
[0101] 本明細書に開示する本発明の例示的試験で示されるsiRNAのポジティブ鎖およびネガティブ鎖を含む配列の例示的な一覧が以下に提供される。
【0095】
【0096】
[0103] 本明細書において、表2に提示したセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む複数の二本鎖ポリヌクレオチド組成物が提供されるものであり、表2において左欄は、二本鎖ポリヌクレオチド対のそれぞれのセンス鎖配列を含み、その行内の右欄にアンチセンス鎖配列が提示されている。一実施形態では、siRNAの長さは21ヌクレオチドである。一実施形態では、siRNAは、5’末端または3’末端において、1、2、または3ヌクレオチドの単一のヌクレオチド突出部位を含む。
【0097】
[0104] したがって、一実施形態では、本明細書において、配列番号1のセンス鎖、および配列番号10のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0098】
[0105] 一実施形態では、本明細書において、配列番号6のセンス鎖、および配列番号11のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0099】
[0106] 一実施形態では、本明細書において、配列番号2のセンス鎖、および配列番号12のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0100】
[0107] 一実施形態では、本明細書において、配列番号3のセンス鎖、および配列番号13のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0101】
[0108] 一実施形態では、本明細書において、配列番号4のセンス鎖、および配列番号14のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0102】
[0109] 一実施形態では、本明細書において、配列番号5のセンス鎖、および配列番号15のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0103】
[0110] 一実施形態では、本明細書において、配列番号7のセンス鎖、および配列番号16のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0104】
[0111] 一実施形態では、本明細書において、配列番号8のセンス鎖、および配列番号17のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0105】
[0112] 一実施形態では、本明細書において、配列番号9のセンス鎖、および配列番号18のアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤が提供される。
【0106】
[0113] 一態様では、本発明は、RIZ2 mRNA発現を阻害するための二本鎖ポリヌクレオチド組成物を提供する。一実施形態では、二本鎖ポリヌクレオチドは、いかなる修飾も伴わずに生じ得る。一実施形態では、センス分子またはアンチセンス分子内の一以上のヌクレオチドが修飾される。例えば、ARIZ-0047のセンス鎖およびアンチセンス鎖は、ARIZ-0011と同じヌクレオチド配列を有するが、修飾されたヌクレオチドを含み、例えばセンス鎖が、5’末端にジスルフィド修飾を含む。一実施形態では、当該オリゴマーは、例えば配列番号6の5’-末端から9番目のヌクレオチド残基である、一続きの非修飾ヌクレオチドを中断する例えば2’-メトキシウリジンである一つの修飾ヌクレオチドを含む。一実施形態では、センス鎖またはアンチセンス鎖が、複数の修飾を含んでもよく、例えばARIZ-0047のアンチセンス鎖(配列番号11)は、二つの5’-P’-メトキシウリジン残基をタンデムで含み、また3’末端における末端の3’-ジヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含む。
【0107】
[0114] 本明細書では、表1において本明細書で提示した二本鎖ポリヌクレオチド組成物のいずれか一つのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに対する一つ以上の修飾が企図される。一部の実施形態では、当該鎖の一方または両方は、修飾を含むように設計される。一部の実施形態では、一方の鎖が、中断またはギャップのあるモチーフを含み得、またもう一方の鎖が、ギャップのあるモチーフ、ヘミマー(hemimer)モチーフ、ブロックマー(blockmer)モチーフ、完全修飾モチーフ、位置的修飾モチーフ、または交互のモチーフを含み得る。「中断のある」モチーフまたは「ギャップのある」モチーフは、一続きのヌクレオチドが2領域、または好ましくは3領域に、例えば二つの外側の領域が両側に隣接した内側領域として分割されるように、ヌクレオシドの連続配列を中断する修飾ヌクレオシドを含む。これら領域は、少なくとも、ヌクレオシドを含む(異なる)糖基が修飾されていることによって、互いに中断され分離される。一部の実施形態では、異なる糖基を有するヌクレオシドは、オリゴマー化合物p-D-リボヌクレオシド、または2’修飾ヌクレオシド、または4’-チオ修飾ヌクレオシド、または4’-チオ-2’修飾ヌクレオシド、または二環式糖修飾ヌクレオシドを含む。
【0108】
[0115] 一部の実施形態では、内部領域またはギャップは概してp-D-リボヌクレオシドを含むが、糖修飾ヌクレオシドの配列であり得る。一部の実施形態では、ギャップのあるオリゴマー化合物のギャップに位置するヌクレオシドは、その両翼とは異なる糖基を有する。一部の実施形態では、ギャップのあるオリゴマー化合物は、「対称的」である。一部の実施形態では、ギャップのあるオリゴマー化合物は、「非対称的」である。各翼が同一の均一な糖修飾であるギャップマー(gapmer)は、対称的なギャップのあるオリゴマー化合物であり得る。各翼に異なる均一な修飾を有するギャップマーは、ギャップのある非対称的なオリゴマー化合物と称される。一部の実施形態では、これらのようなギャップのあるオリゴマー化合物は、例えば4’-チオ修飾ヌクレオシドを含む両翼(対称ギャップマー)と、p-D-リボヌクレオシド、または4’-チオ修飾ヌクレオシド以外の修飾ヌクレオシドを含むギャップとを有し得る。一部の実施形態では、ギャップのある非対称的なオリゴマー化合物は、2’-OCH3修飾ヌクレオシドを含む一方の翼と、4’-チオ修飾ヌクレオシドを含むもう一方の翼とを、p D-リボヌクレオシド、または4’-チオもしくは2’-OCH3修飾ヌクレオシド以外の糖修飾ヌクレオシドを含む内部領域(ギャップ)を伴って備え得る。
【0109】
[0116] 一部の実施形態では、本発明の組成物の各鎖は、例えばsiRNA経路における特定の役割を果たすように修飾され得る。アンチセンス鎖は、5’末端で修飾されて、RISCのうちの一領域でその役割を増強され得、一方で、5の3’末端は、異なるように修飾されて、RISCのうちのある異なる領域でその役割を増強され得る。
【0110】
[0117] 一実施形態では、siRNAは、T突出部位を含む。一部の実施形態では、T突出部位は、単一のウリジン(本明細書において提示される配列において、チミジン(T)と区別なく示される)、またはタンデムで二つのウリジンヌクレオチド残基(例えば、dTdT)を含む。
【0111】
[0118] 一部の実施形態では、一以上の残基は、ホスホロチオエート結合で結合する。
【0112】
[0119] 一態様では、本明細書では、例えばがんである過剰増殖性障害の治療のための、本明細書に記載のRIZ2 siRNAのいずれか一つの使用が提供される。一態様では、本明細書では、例えばがんである過剰増殖性障害の治療に好適な医薬を調製するための、本明細書に記載のRIZ2 siRNAのいずれか一つの使用が提供される。
【0113】
[0120] ARIZ siRNA-011~ARIZ siRNA-014は、RIZ1 mRNA転写物およびRIZ2 mRNA転写物の両方で共通する配列に対して相補的である。ARIZ-015は、RIZ2 mRNAの3’末端の最後の19塩基に対して相補的であり、またRIZ2に固有の四つの末端アミノ酸に対応するRIZ2 mRNAに固有の10個のヌクレオチド、ならびにRIZ1 mRNAおよびRIZ2 mRNAの両方に共通する9個のヌクレオチドを含有する。ARIZ-047は、当該示した塩基修飾を除き、ARIZ-011と同じ配列である。
【0114】
[0121] ARIZ siRNA-062~ARIZ siRNA-064は、RIZ2 mRNAに固有の配列に対して相補的である。
【0115】
[0122] 一実施形態では、本明細書において、RIZ2のみを標的とし、RIZ1 mRNAを残すsiRNAを提供する。一実施形態では、本明細書において、RIZ1のみを標的とし、RIZ2 mRNAに影響を及ぼさないsiRNAを提供する。一実施形態では、本明細書において、RIZ2 mRNAを標的とし且つRIZ1 mRNAを残し、そしてRIZ2 mRNAに阻害効果を及ぼすsiRNAを提供する。本明細書においては、本明細書で開示するsiRNAがRIZ1 mRNAまたはRIZ2 mRNAのいずれかを標的とすることができるという事実にもかかわらず、出願人の知見では、siRNAがRIZ2 mRNAを特異的に阻害することを示すという、驚くべき結果を提供する。さらに驚くべきなのは、本明細書で提示するように、siRNAが結果的にRIZ1 mRNAレベルの増加をもたらすという知見であった。さらにまた驚くべきなのは、本明細書に初めて開示される知見であるが、これは本発明のsiRNAが、がん細胞の細胞死を優先的に招き、また非がん細胞を残したままとすることができるということである。このことは、siRNAがRIZ2 mRNAおよびRIZ1 mRNAの両方に共通する領域を標的にすることができ、したがって両mRNAを阻害する可能性があるという状態においては非常に予想外である。
【0116】
[0123] 一実施形態では、本明細書で提供するsiRNAは、RIZ2 mRNAを標的とするが、当該RIZ2 mRNAは、例えばがん細胞である罹患細胞において生じる場合に同時の低濃度のRIZ1 mRNAと比較して、例えば罹患細胞、過剰増殖性障害を有する細胞である例えばがん細胞である細胞など、所与の細胞中でより高濃度で存在するとき、siRNAによる操作を利用可能である。何らかの理論に拘束されることを意図するものではないが、本発明のsiRNAが、疾患細胞中においてRIZ1 mRNAよりも高い濃度で存在している、より標的化されやすいRIZ2 mRNAを標的とすれば、siRNAがRIZ2発現を阻害し、RIZ1 mRNAの同時の増加を招く可能性があり得る。RIZ1 mRNAの増加は、細胞周期の恒常性をリセットするのを助け得、そして細胞死が、異常な増殖性細胞、例えばがん細胞に対して達成され得る。
【0117】
[0124] 一部の実施形態では、表2のsiRNAのいずれか一つを含むRIZ2阻害剤が、未処理細胞と比較して、処理細胞においてRIZ2 mRNAの発現を少なくとも5%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも6%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも7%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも8%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも9%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも10%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも11%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも12%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも13%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも14%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも15%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも16%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも17%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも18%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも19%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも20%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも21%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも22%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも23%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも24%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも25%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも26%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも27%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも28%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも29%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも30%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも31%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも32%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも33%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも34%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも35%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも36%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも37%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも38%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも39%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも40%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも41%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも42%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも43%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも44%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも45%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも46%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも47%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも48%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも49%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも50%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも51%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも52%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも53%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも54%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも55%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも56%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも57%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも58%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも59%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも60%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも61%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも62%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも63%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも64%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも65%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも66%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも67%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも68%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも69%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも70%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも71%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも72%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも73%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも74%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも75%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも76%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも77%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも78%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも79%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも80%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも81%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも82%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも83%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも84%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも85%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも86%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも87%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも88%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも89%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、RIZ2 mRNAの発現を少なくとも90%減少させる。
【0118】
[0125] 一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、細胞においてハウスキーピング遺伝子の発現と比較してRIZ2 mRNAの発現を減少させる。例示的なハウスキーピング遺伝子は、GAPDHまたはベータアクチン遺伝子である。一部の実施形態では、RIZ2 siRNAが、対照細胞または対照細胞集団におけるRIZ2 mRNAの発現と比較して、RIZ2 mRNAの発現を減少させる。例示的なハウスキーピング遺伝子は、GAPDH、またはベータアクチン遺伝子である。
【0119】
[0126] 一部の実施形態では、本明細書においては、細胞においてRIZ1-RIZ2の均衡を回復させる方法を提供する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.1倍を超えるように変化する。例えば、一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.2倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.3倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.4倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.5倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.6倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.7倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.8倍を超えるように変化する。一部の実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比が、少なくとも1.9倍を超えるように変化する。一実施形態では、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比は、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を少なくとも2倍変化させる。
【0120】
[0127] 一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、疾患細胞(例えば、がん細胞)の細胞増殖を少なくとも10%減少させるsiRNAである。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約15%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約20%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約25%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約30%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約35%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約40%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約45%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約50%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約55%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約60%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約65%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約70%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約75%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約80%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約81%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約82%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約83%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約84%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約85%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約86%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約87%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約88%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約89%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約90%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約91%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約92%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約93%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約94%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約95%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約96%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約97%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約98%減少させる。
【0121】
[0128] 一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約35%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約40%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約45%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約50%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約55%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約60%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞増殖を約65%減少させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約70%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約75%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約80%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約81%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約82%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約83%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約84%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約85%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約86%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約87%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約88%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約89%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約90%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約91%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約92%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約93%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約94%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約95%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約96%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約97%死滅させる。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約98%死滅させる。
【0122】
[0129] 一実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、腫瘍細胞量を少なくとも約10%減少させ得る。一実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、未処置細胞と比較して、または対照細胞集団と比較して、細胞量(例えば、腫瘍細胞量)を約50%減少させ得る。一部の実施形態では、細胞量の減少は、50%を超えるものであり得、例えば約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%の減少である。
【0123】
[0130] 一実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAは、非がん細胞に有意な影響を与えない。一実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAが、がん細胞を約2倍、2.2倍、死滅させる。
【0124】
[0131] 一部の実施形態では、一以上のsiRNAは、過剰増殖性障害または新形成、例えば乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、神経膠腫、腎がん、白血病、リンパ腫、肺がん、肝がん、副甲状腺がん、下垂体がん、髄膜腫、骨髄腫、神経芽腫、前立腺がん、または甲状腺がん、の治療に使用するための医薬組成物に製剤化される。
【0125】
siRNAの送達
[0132] 一態様では、本発明のsiRNAは、リポソームに封入される。
[0133] 別の態様では、本発明のsiRNAは、封入されていない二本鎖の分子である。
【0126】
[0134] 一実施形態では、本発明のsiRNAは、細胞標的部分と複合体化する。一実施形態では、本発明のsiRNAは、細胞標的部分に結合する。一実施形態では、siRNAは、細胞表面要素を標的化することができる細胞標的部分と結合する。例示的な実施形態では、細胞標的部分は、がん細胞、または過剰増殖性細胞を標的とする。
【0127】
[0135] 一実施形態では、細胞標的部分は、リガンド、および抗体または抗体断片、単鎖抗体、ペプチドまたはアプタマーである。一実施形態では、細胞標的部分は、細胞透過性ペプチドである。一部の実施形態では、送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む。
【0128】
[0136] 一部の実施形態では、送達システムはシクロデキストリンを含む。
【0129】
[0137] 一部の実施形態では、送達システムはキトサンを含む。
【0130】
[0138] 一部の実施形態では、送達システムは炭水化物ポリマーを含む。
【0131】
[0139] 一部の実施形態では、送達システムはエラスチン様ポリマー(ELP)を含む。一実施形態では、標的送達システムは、受動的標的ナノキャリアを含む。「受動的」標的ナノキャリアは、血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を利用する。
【0132】
[0140] 一部の実施形態では、がん細胞表面上の特定の分子またはリガンドは、例えば、抗体またはその断片で標的化される。例えば、前立腺がん標的撮像および療法のための特定の「アドレスタグ」としての単鎖抗前立腺幹細胞抗原(PSCA)抗体(scAbPSCA)である(Ling Y,Wei K,Luo Y,Gao X,Zhong S.Dual docetaxel/superparamagnetic iron oxide loaded nanoparticles for both targeting magnetic resonance imaging and cancer therapy.Biomaterials.2011;32:7139-50)。例えば、Hadjipanayisらは、抗上皮増殖因子受容体(EGFR)欠失変異体抗体を用いて、神経膠芽腫の標的撮像および治療的処置のための酸化鉄ナノ粒子を作製した(Hadjipanayis CG,Machaidze R,Kaluzova M,Wang L,Schuette AJ,Chen H.et al.EGFRvIII antibody-conjugated iron oxide nanoparticles for magnetic resonance imaging-guided convection-enhanced delivery and targeted therapy of glioblastoma.Cancer Res.2010;70:6303-12)。例えば、ChenおよびShuaiらは、T細胞への遺伝子送達のためにCD3単鎖抗体(scAbCD3)官能化非ウイルス性高分子ベクターを使用した(Chen G,Chen W,Wu Z,Yuan R,Li H,Gao J.et al.MRI-visible polymeric vector bearing CD3 single chain antibody for gene delivery to T cells for immunosuppression.Biomaterials.2009;30:1962-70)。これら技術のいずれも、本明細書で企図されるsiRNA送達機序に適合させることができる。
【0133】
[0141] 一実施形態では、siRNAは、一以上の脂質成分、例えば陽イオン性脂質と結合する。一実施形態では、siRNAは、一以上の脂質成分、例えば少なくとも陽イオン性脂質および陰イオン性脂質と結合する。一実施形態では、siRNAは、ポリエチレングリコール(PEG)分子で修飾される。一実施形態では、siRNAは、一以上の脂質およびPEGを含む複合体において結合する。一実施形態では、siRNAは、一以上の脂質およびPEGを含む複合体において結合するものであり、当該PEGは定められた長さである。一実施形態では、PEGは、約20~約120個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約40~120個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約60~120個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約80~120個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約100~120個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約20~40個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約20~60個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約20~80個の炭素原子を有する鎖を含む。一実施形態では、PEGは、約20~100個の炭素原子を有する鎖を含む。一部の実施形態では、PEGは約2000kDaである。
【0134】
[0142] 一実施形態では、本発明のsiRNAは、ナノ粒子を介して送達され得る。一実施形態では、当該ナノ粒子は、脂質ナノ粒子であり得る。一実施形態では、ナノ粒子は、リン酸カルシウムナノ粒子を含み得る。一部の実施形態では、リン酸カルシウムナノ粒子は、複数のsiRNAを含む。
【0135】
[0143] 一実施形態では、ナノ粒子は、非毒性で、安定に、および分解可能に、インビボでsiRNAを放出する。一実施形態では、ナノ粒子は、カルシウムホスホシリケート複合体を含む。カルシウムホスホシリケート複合体は、安定であり、非毒性である。
【0136】
[0144] 一部の実施形態では、
図1に例示されるように、ナノ粒子は、「ナノジャケット」と称する。
【0137】
[0145] 一実施形態では、ナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子、カルシウムホスホシリケートなど)は、直径80~250nmの粒子を含む。
【0138】
[0146] 一実施形態では、本発明のsiRNAは、細胞標的部分に結合し得る。一実施形態では、siRNAは、5’-または3’の突出領域が、標的部分に化学的に架橋され得るように設計され得る。一実施形態では、siRNAは、リンカーを介して標的部分に結合される。一部の実施形態では、リンカーは、非反応性の短いリンカー、例えば短いペプチドリンカーである。一実施形態では、リンカーは、生体活性ペプチドリンカーであり得る。一部の実施形態では、リンカーは、短いPEG分子であり、鎖中に10~12個の炭素原子を含む。一部の実施形態では、PEG分子は、siRNAの一本鎖の5’末端または3’末端に架橋される。一実施形態では、当該架橋剤は、マレイミド官能性バイコンジュゲンーショナル(bi-conjugational)リンカーである。一実施形態では、架橋剤は、短いポリマーである。一実施形態では、当該ポリマーは、機能性ポリマー、複合体ポリマー、またはコポリマー、例えばPLGA-PEG、PLA-PEG、PCA-PEG、脂質PEG、ポリリジンPEGである。
【0139】
[0147] 一部の実施形態では、siRNA送達システムは、ポリエチレングリコール(PEG)表面基を有する陽イオン性脂質または電荷変換脂質を利用する、SNALP(Solid Nucleic Acid Lipid Nanoparticle)技術である。
【0140】
[0148] 一部の実施形態では、siRNA送達システムは、シクロデキストリン系送達システムである。
【0141】
[0149] 一部の実施形態では、siRNAは、直接またはリンカーを介して、アプタマーと複合体化する。アプタマーは、診断目的および治療目的の両方のための合成上扱い易いリガンドであり、しばしば核酸リガンド「オリゴボディ(oligobody)」または「化学抗体」と呼称される。細胞表面受容体に結合するアプタマーは、容易に細胞内に取り込まれる。アプタマーは、複雑な三次構造に折り畳まれ、そしてそれらの標的に対して高い親和性(低いnMから高いpMである平衡解離定数)および特異性で結合する能力を特徴とする。関心の標的に特異的なアプタマーの単離は、SELEX(試験管内進化法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment))と呼ばれるプロセスの複数回の反復を伴う(Tuerk and Gold,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89,6988-6992)。SELEXプロセスでは、アプタマーライブラリーをタンパク質標的とインキュベートする。次いで、タンパク質に結合したアプタマーを特異的に回収する。これら配列を、PCRまたはRT-PCRで増幅させる。次いで、回収した配列を表す一本鎖RNA配列またはDNA配列が、これらPCR産物から生成され、その後の選択ラウンドで使用される。当業者に公知の例示的なアプタマーとしては、がんのタイプ、標的などに応じて、テネイシン-Cアプタマー(TTA1)、PMSAアプタマー、CTLA-4アプタマー、HIV-二価アプタマーなどが挙げられ得る(Thiel et al.,Oligonucleotides.2009 Sep 1;19(3):209-222)。
【0142】
医薬組成物
[0150] 本明細書においては、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。これは薬学的に許容可能な成分も含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチド分子および送達システムを含む。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、例えば二本鎖siRNA分子などである阻害性RNA分子を含む。一部の実施形態では、阻害性RNA分子を、PRDM2遺伝子またはPRDM2遺伝子産物上の少なくとも10個の隣接し合う核酸塩基に対してハイブリダイズする。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、約10ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態においては、RIZ2阻害剤は、一以上のsiRNAを含む。
【0143】
[0151] 本明細書においては、皮下注射で投与するための医薬組成物で製剤化されたsiRNAを提供する。
【0144】
[0152] 本明細書においては、静脈内注射で投与するための医薬組成物で製剤化されたsiRNAを提供する。
【0145】
[0153] 本明細書においては、全身投与のための医薬組成物で製剤化されたsiRNAを提供する。
【0146】
[0154] 本明細書においては、局所的に投与するための医薬組成物で製剤化されたsiRNAを提供する。
【0147】
[0155] 一実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、病原体を含まない水であり得る。一実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、中性pHの適切な緩衝剤、例えばリン酸緩衝生理食塩水であり得る。一部の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、弱酸性の水溶液であり得る。一部の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤は、グリコール、グリセリン、DMSO、可溶性成分、糖類、塩類等を含み得る。一部の実施形態では、製剤は、製剤に所望の一貫性を付与する、および/または製剤成分の安定性を付与する、例えばスクロース、トレハロース、マンニトール、グリシン、ラクトースおよび/またはラフィノースなどの充填剤を含む。一部の実施形態では、当業者に公知のように、局所投与に共通して使用される賦形剤を使用することができる。
【0148】
[0156] 本明細書においては、配列番号1の配列または配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本明細書においては、配列番号10の配列または配列番号10に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。本明細書においては、センス鎖としての配列番号1の配列とアンチセンス鎖としての配列番号10の配列とを含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。
【0149】
[0157] 本明細書においては、配列番号6の配列または配列番号6に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、本明細書においては、配列番号11の配列または配列番号11に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。本明細書においては、センス鎖としての配列番号6の配列とアンチセンス鎖としての配列番号11の配列とを含む阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。
【0150】
[0158] 本明細書においては、阻害性二本鎖RNAを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、配列番号2のセンス鎖または配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号12のアンチセンス鎖または配列番号12に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を本明細書において提供する。
【0151】
[0159] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号3のセンス鎖または配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号13のアンチセンス鎖または配列番号13に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0152】
[0160] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号4のセンス鎖または配列番号4に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号14のアンチセンス鎖または配列番号14に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0153】
[0161] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号5のセンス鎖または配列番号5に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号15のアンチセンス鎖または配列番号15に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0154】
[0162] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号7のセンス鎖または配列番号7に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号16のアンチセンス鎖または配列番号16に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0155】
[0163] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号8のセンス鎖または配列番号8に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号17のアンチセンス鎖または配列番号17に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0156】
[0164] 一実施形態では、本明細書においては、配列番号9のセンス鎖または配列番号9に対して少なくとも90%の同一性を有する配列、および配列番号18のアンチセンス鎖または配列番号18に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む二本鎖ポリヌクレオチドを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0157】
[0165] 一部の実施形態では、医薬組成物は、上述の一以上のsiRNA、および本明細書に開示する例えばリポソーム、ナノ粒子などのsiRNA送達系を含む。一部の実施形態では、送達システムを有する医薬組成物は、細胞標的部分を含むものであり、該細胞標的部分は、リガンド、および抗体または抗体断片、単鎖抗体、ペプチドまたはアプタマーである。一部の実施形態では、細胞標的部分は、細胞透過性ペプチドである。一部の実施形態では、送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む。
【0158】
[0166] 本明細書においては、(i)ヒトPRDM2/RIZ2遺伝子に対して相同性を有する10~21ヌクレオチドの二本鎖RNAを含むsiRNAを含み、(ii)PEG分子に共有結合し、(iii)細胞標的部分に結合されるものであり、該細胞標的部分がアプタマーである、siRNAを含むRIZ2阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0159】
[0167] 一実施形態では、医薬組成物は、一以上の化学療法薬を含む。例示的な化学療法薬としては、以下に限定されないが、オビヌツズマブ、ベンダムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イブルチニブ、メトトレキサート、シタラビン、デキサメタゾン、シスプラチン、ボルテゾミブ、フルダラビン、イデラリシブ、アカラブルチニブ、レナリドミド、ベネトクラクス、シクロホスファミド、イホスファミド、エトポシド、ペントスタチン、メルファラン、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、ダラツムマブ、エロツズマブ、サリドマイド、レナリドマイド、またはポマリドミド、またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0160】
[0168] 一実施形態では、治療用組成物は、追加の薬剤、例えばチェックポイント阻害剤、例えばPD1阻害剤、PDL1阻害剤、またはCTLA4阻害剤またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0161】
治療および診断方法
[0169] RIZ2を標的とする一以上の阻害性RNA分子を含む上述の治療組成物は、対象における細胞増殖性障害を治療するために使用され得る。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。一実施形態では、細胞増殖性障害は、細胞周期の調節解除、細胞周期チェックポイント阻害の喪失、および/またはRIZ1/RIZ2不均衡と関連しているか、またはそれらの結果である。RIZ1のヒストンH3K9メチルトランスフェラーゼ活性が細胞増殖の負の調節で重要な役割を果たすこと、および様々ながんでRIZ1発現が減少することは周知である。RIZ2は、がん細胞において発現増加することはわかっていたが、その生物学的活性は明らかでなかった。それは主としてRIZ1の非機能的な対応物であると考えられており、またRIZ2は、RIZ1機能の負の調節因子として作用するものであるが、生存および分化遺伝子発現の調節を介してエストロゲンの増殖効果を媒介すると仮定されていた。J Cell Physiol 2012 Mar;227(3):964-75。さらに、RIZ2は、RIZ1と比較して短いN末端で切断された転写物であり、翻訳産物であり、前者はRIZ1とは無関係で操作する機会が少なかった。
【0162】
[0170] 本開示は、RIZ2を標的とする方法、およびRIZ1とは無関係にRIZ2を阻害する組成物を提供する。
【0163】
[0171] 本明細書においては、RIZ2を特異的に標的化および操作するための治療方法および組成物を提供する。一実施形態では、治療用組成物は、細胞増殖性障害の治療のための、RIZ2に特異的なsiRNAを含む医薬組成物を含む。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。
【0164】
[0172] 本明細書においては、がんを治療する方法を提供するものであり、この方法は、それを必要とする対象に、上記セクションのいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む。本開示の研究の結果として、RIZ2は、非常に有望な治療標的を提供し、そしてRIZ2はがん細胞において選択的に発現低下し得るだけでなく、RIZ2が阻害されることによってRIZ1は発現増加し得るということが現在わかっている。また、RIZ/RIZ2の不均衡、例えばRIZ1は発現低下してRIZ2は発現増加することは、細胞周期の有意に上流の節目での制御であるが、これは多くのがんに共通しており、したがってこの療法は、幅広いがんに適用可能である。例えば、一実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、固形がんに治療的に適用可能である。一実施形態では、本明細書に記載の方法および組成物は、液性がん(liquid cancer)に治療的に適用可能である。一実施形態では、がんは、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織のがんである。
【0165】
[0173] 一実施形態では、がんは、固形腫瘍である。一実施形態では、がんは、肺がんである。本明細書に記載の方法および組成物を使用して、任意のがんが治療され得ることが企図される。がんの例としては、がん、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。かかるがんのより具体的な例を以下に記載し、また以下を含む:扁平上皮がん(例えば上皮の扁平上皮がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がんおよび肺の扁平上皮がんをはじめとする肺がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がんまたは胃部のがん、膵がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝腫、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がんまたは腎がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝細胞がん、肛門がん、陰茎がん、および頭頸部がん。用語「がん」は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、その細胞が、元の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の対象の体内の部位に転移していないもの)、および二次性悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、悪性細胞または腫瘍細胞の元の腫瘍の部位とは異なる二次的な部位への遊走、から生じるもの)を含む。
【0166】
[0174] 他の実施形態では、RIZ2阻害剤が、上述および本明細書に記載されるように、過剰増殖性障害、例えば過形成、がん、または過剰増殖性結合組織障害(例えば、過剰増殖性線維症)を治療するために使用される。一実施形態では、過剰増殖性線維症は、多系統の、または器官特異性のものである。例示的な過剰増殖性線維症としては、多系統性(例えば、全身性硬化症、多病巣性線維性硬化症、骨髄移植レシピエントにおける強皮症性移植片対宿主病、腎性全身性線維症、強皮症)、および器官特異性障害(例えば、眼、肺、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、皮膚および他の器官の線維症)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、当該障害は、肝硬変または結核から選択される。他の実施形態では、障害は、ハンセン病である。
【0167】
[0175] 一実施形態では、RIZ2阻害剤は、肺がんを標的とし、かつ治療するように特異的に設計される。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、肺へのエアロゾル送達用に製剤化される。一部の実施形態では、RIZ2阻害剤は、静脈内注射を介した全身送達用に製剤化される。
【0168】
[0176] 一実施形態では、ARIZ-047 siRNAを含むRIZ2阻害剤は、肺がんを治療するために設計される。
【0169】
[0177] 一実施形態では、ARIZ-047は、生細胞または実験動物に対して毒性効果を示さない。
【0170】
[0178] 一部の実施形態では、RIZ2阻害剤を含む治療組成物は、化学療法薬と同時投与され得る。化学療法薬は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、またはリツキシマブ、またはそれらの組み合わせであり得る。他の化学療法薬としては、オビヌツズマブ、ベンダムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イブルチニブ、メトトレキサート、シタラビン、デキサメタゾン、シスプラチン、ボルテゾミブ、フルダラビン、イデラリシブ、アカラブルチニブ、レナリドミド、ベネトクラクス、シクロホスファミド、イホスファミド、エトポシド、ペントスタチン、メルファラン、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、パノビノスタット、ダラツムマブ、エロツズマブ、サリドマイド、レナリドマイド、またはポマリドミド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。「同時投与」とは、治療過程中に二以上の治療薬または医薬組成物を投与することを指す。こうした同時投与は、同時の投与または連続的な投与とすることができる。後で投与される方の治療薬または医薬組成物の連続的な投与は、RIZ2阻害剤を使用した治療過程中の任意の時点で生じ得る。
【0171】
[0179] 一実施形態では、RIZ2阻害剤siRNAは、シスプラチンと同時投与され得る。
【0172】
[0180] 一実施形態では、上述した薬剤と共に本明細書に記載のsiRNA(例えば、ARIZ-047)を使用することで、治療効果を達成するためにより低い濃度または用量の薬剤で十分であり得、それによってがんに罹患した対象における薬剤関連の毒性効果を低減することができるという利点を提供し得る。
【0173】
[0181] 本明細書で企図される医薬組成物の投与は、限定されないが、注入、輸液、または非経口を含め、従来技術を使用して実施され得る。一部の実施形態では、非経口投与は、血管内、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、腫瘍内、皮内、腹腔内、経気管的、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、および胸骨内への注入または注射が挙げられる。
【0174】
[0182] 一実施形態では、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物は、1日に1回、2日に1回、または3日に1回、または4日に1回、または5日に1回、または6日に1回、または7日に1回、または8日に1回、または9日に1回、または10日に1回、または11日に1回、または12日に1回、または13日に1回、または14日に1回、で投与され得る。一実施形態では、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物は、15日に1回投与され得る。一実施形態では、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物は、20日に1回投与され得る。一実施形態では、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物は、1ヶ月に1回投与され得る。一実施形態では、RIZ2阻害剤を含む医薬組成物は、2ヶ月に1回、または3ヶ月に1回、または4ヶ月に1回、または5ヶ月に1回、または6ヶ月に1回、投与され得る。
【0175】
[0183] 一態様では、本明細書においては、RIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要のある対象として患者を選択するものである、患者を選択する方法であって、(i)対照サンプルもしくは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおけるRIZ1メチル化レベルの増加を検出すること、または(ii)対照サンプルもしくは対照値と比較してRIZ1 mRNAレベルの低下を検出することを含むものであり、対照サンプルまたは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおいてメチル化したRIZ1の少なくとも1.1倍の増加またはRIZ1 mRNAレベルの少なくとも2分の1の低下により、当該対象がRIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要があるとして決定され、また対照サンプルは臨床的に健康な個体由来のサンプルであり、対照値は、二以上の臨床的に健康な個体のサンプルからのRIZ1メチル化レベルの平均値である、当該方法を提供する。
【0176】
[0184] 一部の実施形態では、RIZ2阻害剤が、RIZ1遺伝子の高メチル化を減少させる。
【0177】
キット
[0185] 本発明は、RIZ2阻害剤を含むキットも提供する。本開示の一部の態様は、がんまたは過剰増殖性障害の治療のためのキットを提供する。一実施形態では、当該キットは、新形成の治療キットである。
【0178】
[0186] 一実施形態では、キットは、治療活性成分の安全性および有効性を保証する温度および環境条件に保存される、使用に関する濃度および指示が示される適切にラベルをつけたボトル内の本開示に記載されるRIZ2阻害剤を含む治療組成物を含み得る。
【0179】
[0187] 一実施形態では、キットは、生体試料中のRIZ1 mRNAおよびRIZ2 mRNAを検出するための検出体のセットを含み得る。検出体のセットは、プライマーのセット、例えばRIZ1レベルを検出するためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのセット、ならびにRIZ2レベルを検出するためのフォワードプライマーおよびリバースプライマーのセットを含み得る。一部の実施形態では、RIZ1レベルは、痰のサンプルで測定されて、新形成のバイオマーカーとしての役割を果たす。一実施形態では、キットは、ヒトよりの生体サンプル中のRIZ1レベルおよびRIZ2レベル(例えば、mRNA、タンパク質など)を検出するための一以上の成分を含む。一部の実施形態では、キットは、RIZ1メチル化を検出するための診断ユニットを含み得る。一実施形態では、RIZ1メチル化は、メチル化ベースのシーケンシングを使用して検出することができる。一実施形態では、RIZ1メチル化は、一以上のメチル化ベースのプライマーを使用して検出され得る。キットは、プライマー、試薬、酵素、緩衝剤などを含む一以上のバイアルを含み得る。各バイアルは、成分、濃度がラベル付けされている。キットは、キットの使用に関する少なくとも一つの説明書を含む。
【0180】
[0188] 新形成の治療キットは、新形成の治療において修飾された免疫細胞を使用するための説明書を含む。
【0181】
[0189] 検出キットは、含まれる構成要素、安全パラメータ、および使用指示に関する説明書を含む。
【0182】
[0190] 一部の実施形態では、単一のキットが、治療キットおよび検出キットの構成要素を含んでもよい。
【0183】
[0191] 本発明の実施は、別段の示唆が無い限り、当業者の理解の範囲内に充分ある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学についての従来技術を採用する。当該技術は、文献中で完全に説明されており、例えば、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition (Sambrook,1989);“Oligonucleotide Synthesis” (Gait,1984)、“Animal Cell Culture”(Freshney,1987)、“Methods in Enzymology”“Handbook of Experimental Immunology”(Weir,1996)、“Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells” (Miller and Calos,1987)、“Current Protocols in Molecular Biology”(Ausubel,1987)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis,1994)、“Current Protocols in Immunology”(Coligan,1991)などにある。これら技術は、本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生に適用可能であり、そしてそれ自体として本発明を作製および実施する際に考慮され得る。特定の実施形態に関して特に有用な技術については、以下のセクションで説明することとする。
【0184】
[0192]実施形態
1.細胞増殖を阻害する方法であって、細胞の集団を、網膜芽細胞腫タンパク質相互作用ジンクフィンガータンパク質2(RIZ2)阻害剤を含む組成物と接触させることを含む、方法。
2.RIZ2阻害剤が、細胞においてRIZ2の発現を減少させる、実施形態1に記載の方法。
3.RIZ2阻害剤が、細胞においてRIZ2 mRNAの発現を減少させる、実施形態1または2に記載の方法。
4.RIZ2 mRNAは、細胞においてハウスキーピング遺伝子の発現と比較して少なくとも10%減少する、実施形態3に記載の方法。
5.RIZ2 mRNAは、対照細胞集団と比較して、少なくとも10%減少する、実施形態3または4に記載の方法。
6.対照細胞集団は、RIZ2阻害剤を含む組成物と接触したことのない細胞集団である、実施形態5に記載の方法。
7.RIZ2 mRNAの発現は、対照細胞集団と比較して、少なくとも50%減少する、実施形態5に記載の方法。
8.RIZ2 mRNAの発現は、対照細胞集団と比較して、少なくとも80%減少する、実施形態5に記載の方法。
9.RIZ2阻害剤が、さらに、細胞集団においてRIZ1の発現を増加させる、実施形態1から8のいずれか一つに記載の方法。
10.組成物が、RIZ1 mRNA発現レベルのRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を変化させる、実施形態9に記載の方法。
11.組成物が、RIZ1タンパク質発現レベルのRIZ2タンパク質発現レベルに対する比を変化させる、実施形態9に記載の方法。
12.RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.1倍を超えるように変化させる、実施形態9または10に記載の方法。
13.RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも1.5倍を超えるように変化させる、実施形態9または10に記載の方法。
14.RIZ2阻害剤が、RIZ1のRIZ2 mRNA発現レベルに対する比を、少なくとも2倍変化させる、実施形態9または10に記載の方法。
15.RIZ2阻害剤が、さらに、RIZ1の高メチル化を減少させる、実施形態1から8のいずれか一つに記載の方法。
16.細胞は、哺乳類細胞である、実施形態1に記載の方法。
17.細胞は、ヒト細胞である、実施形態1に記載の方法。
18.細胞は、がん細胞である、実施形態1に記載の方法。
19.細胞は、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織である組織に由来する、実施形態1に記載の方法。
20.がん細胞は、血液がん由来である、実施形態18に記載の方法。
21.がん細胞は、固形腫瘍由来である、実施形態8に記載の方法。
22.接触させることは、細胞の集団を、RIZ2阻害剤を含む組成物と接触させることを含む、実施形態1に記載の方法。
23.接触させることにより、結果として、細胞の集団の細胞数が少なくとも10%減少する、実施形態22に記載の方法。
24.接触させることにより、結果として、細胞の集団の細胞数が約90%減少する、実施形態22に記載の方法。
25.細胞増殖を阻害することは、細胞量を少なくとも10%減少させることを含む、実施形態1または22に記載の方法。
26.細胞増殖を阻害することは、細胞量を約50%減少させることを含む、実施形態25に記載の方法。
27.細胞を接触させることは、RIZ2阻害剤を細胞内に組み入れることをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
28.RIZ2阻害剤は、非天然由来の化合物を含む、実施形態1に記載の方法。
29.RIZ2阻害剤は、合成薬である、実施形態28に記載の方法。
30.RIZ2阻害剤は、ペプチドを含む、実施形態29に記載の方法。
31.RIZ2阻害剤は、複合体化したポリペプチドを含む、実施形態29に記載の方法。
32.RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチドを含む、実施形態29に記載の方法。
33.RIZ2阻害剤は、合成ポリヌクレオチドを含む、実施形態32に記載の方法。
34.一以上のポリヌクレオチドは、一以上の修飾ヌクレオチドを含む、実施形態33に記載の方法。
35.RIZ2阻害剤を含む組成物は、送達システムに結合された一以上のポリヌクレオチドを含む、実施形態1に記載の方法。
36.送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む、実施形態35に記載の方法。
37.送達システムは、脂質を含む、実施形態35に記載の方法。
38.送達システムは、PEG化脂質を含む、実施形態35に記載の方法。
39.送達システムは、細胞標的部分を含む、実施形態35に記載の方法。
40.細胞標的部分は、細胞型特異的である、実施形態39に記載の方法。
41.細胞標的部分は、標的細胞上の受容体に選択的に結合するリガンドである、実施形態39に記載の方法。
42.細胞標的部分は、標的細胞上の細胞表面分子に結合する抗体である、実施形態39に記載の方法。
43.細胞標的部分は、単鎖抗体または抗体断片である、実施形態42に記載の方法。
44.細胞標的部分は、ペプチドである、実施形態39に記載の方法。
45.細胞標的部分は、細胞透過性ペプチドである、実施形態44に記載の方法。
46.細胞標的部分は、環状ペプチドである、実施形態44または45に記載の方法。
47.細胞標的部分は、アプタマーである、実施形態39に記載の方法。
48.送達システムは、リポソームを含む、実施形態35に記載の方法。
49.送達システムは、ナノ粒子を含む、実施形態35に記載の方法。
50.RIZ2阻害剤は、RNA分子を含む、実施形態1から49のいずれか一つに記載の方法。
51.RIZ2阻害剤は、阻害性RNA分子を含む、実施形態50に記載の方法。
52.阻害性RNA分子は、PRDM2遺伝子またはPRDM2遺伝子産物上の少なくとも10個の隣接し合う核酸塩基に対してハイブリダイズする、実施形態51に記載の方法。
53.阻害性RNAは、約10ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである、実施形態50に記載の方法。
54.阻害性RNA分子は、二本鎖である、実施形態50に記載の方法。
55.RNA分子は、一以上の修飾ヌクレオチドを含む、実施形態50に記載の方法。
56.RIZ2阻害剤は、配列番号1の配列を有するセンス鎖および配列番号10の配列を有するアンチセンス鎖を含む阻害性二本鎖RNAを含む、実施形態1から55のいずれか一つに記載の方法。
57.RIZ2阻害剤は、配列番号6の配列を有するセンス鎖および配列番号11の配列を有するアンチセンス鎖を含む阻害性二本鎖RNAを含む、実施形態1から55のいずれか一つに記載の方法。
58.RIZ2阻害剤は、表2から選択されるセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む阻害性二本鎖RNA分子を含む、実施形態1から55のいずれか一つに記載の方法。
59.対象において細胞増殖性の疾患または障害を治療する方法であって、RIZ2阻害剤を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
60.RIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要のある対象として患者を選択する方法であって、当該方法は、
(i)対照サンプルもしくは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおけるRIZ1メチル化レベルの増加を検出すること、または
(ii)対照サンプルもしくは対照値と比較してRIZ1 mRNAレベルの低下を検出することを含むものであり、
対照サンプルまたは対照値と比較して、対象の生体サンプルにおいてメチル化したRIZ1の少なくとも1.1倍の増加またはRIZ1 mRNAレベルの少なくとも2分の1の低下により、当該対象がRIZ2阻害剤を含む組成物を投与する必要があるとして決定され、また
対照サンプルは、臨床的に健康な個体からのサンプルであり、
対照値は、二以上の臨床的に健康な個体のサンプルからのRIZ1メチル化レベルの平均値である、方法。
61.細胞増殖性の疾患または障害は、がんである、実施形態59に記載の方法。
62.がんは、乳房、結腸、子宮内膜、食道、胃、神経膠腫、腎臓、肝臓、肺、リンパ腫、黒色腫、髄膜腫、骨髄腫、上咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、副甲状腺、下垂体、前立腺、甲状腺、または子宮組織のがんである、実施形態61に記載の方法。
63.がんは、固形腫瘍である、実施形態61に記載の方法。
64.がんは、肺がんである、実施形態62に記載の方法。
65.投与することは、有効量のRIZ2阻害剤を投与することを含む、実施形態59に記載の方法。
66.有効量のRIZ2阻害剤は、細胞増殖性障害に関連する少なくとも一以上の疾患のパラメータを減少させる量である、実施形態65に記載の方法。
67.細胞増殖性疾患は、がんであり、また有効量のRIZ2が、がん細胞の数を減少させる、実施形態66に記載の方法。
68.細胞増殖性疾患は、固形腫瘍であり、また有効量のRIZ2が、腫瘍量を減少させる、実施形態66に記載の方法。
69.RIZ2阻害剤を含む組成物は、送達システムに結合された一以上のポリヌクレオチドを含む、実施形態59または60に記載の方法。
70.一以上のポリヌクレオチドは、阻害性RNA分子を含む、実施形態69に記載の方法。
71.阻害性RNA分子は、配列番号1の配列を有するセンス鎖および配列番号10の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNAである、実施形態70に記載の方法。
72.阻害性RNA分子は、配列番号6の配列を有するセンス鎖および配列番号11の配列を有するアンチセンス鎖を含む二本鎖RNAである、実施形態70に記載の方法。
73.組成物は、送達システムをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
74.送達システムは、脂質および/または細胞標的部分を含む、実施形態73のいずれか一つに記載の方法。
75.脂質は、PEG化脂質を含む、実施形態74に記載の方法。
76.細胞標的部分は、細胞透過性ペプチド、環状ペプチド、抗体もしくはその断片、またはアプタマーである、実施形態74に記載の方法。
77.(a)RIZ2阻害剤、および(b)薬学的に許容可能な賦形剤を含む、医薬組成物。
78.RIZ2阻害剤は、一以上のポリヌクレオチド分子および送達システムを含む、上記した実施形態に記載の医薬組成物。
79.RIZ2阻害剤は、阻害性RNA分子を含む、実施形態78に記載の医薬組成物。
80.阻害性RNA分子は、PRDM2遺伝子またはPRDM2遺伝子産物上の少なくとも10個の隣接し合う核酸塩基に対してハイブリダイズする、実施形態77に記載の医薬組成物。
81.阻害性RNA分子は、約10ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである、実施形態77に記載の医薬組成物。
82.阻害性RNA分子は、二本鎖である、実施形態77に記載の医薬組成物。
83.阻害性二本鎖RNAは、配列番号1の配列を有するセンス鎖および配列番号10の配列を有するアンチセンス鎖を含む、実施形態77に記載の医薬組成物。
84.阻害性二本鎖RNAは、表2から選択されるセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む、実施形態77に記載の医薬組成物。
85.阻害性二本鎖RNAは、配列番号6の配列を有するセンス鎖および配列番号11の配列を有するアンチセンス鎖を含む、実施形態77に記載の医薬組成物。
86.送達システムは、細胞標的部分を含む、実施形態78に記載の医薬組成物。
87.細胞標的部分は、リガンド、および抗体または抗体断片、単鎖抗体、ペプチドまたはアプタマーである、実施形態86に記載の医薬組成物。
88.細胞透過性ペプチドである、実施形態86に記載の医薬組成物。
89.送達システムは、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの一以上を含む、実施形態86に記載の医薬組成物。
90.RIZ2阻害剤は、
(i)ヒトPRDM2/RIZ2遺伝子に対して相同性を有する10~21ヌクレオチドの二本鎖RNAを含むsiRNAを含み、
(ii)PEG分子に共有結合し、
(iii)細胞標的部分に結合されるものであり、
該細胞標的部分がアプタマーである、当該siRNAを含む、実施形態78に記載の医薬組成物。
91.送達システムは、リポソームを含む、実施形態78に記載の医薬組成物。
92.送達システムは、ナノ粒子を含む、実施形態78に記載の医薬組成物。
93.ナノ粒子は、脂質、シクロデキストリン、キトサン、炭水化物ポリマー、エラスチン様ポリマー(ELP)、リン酸カルシウムポリマー、およびそれらの組み合わせを含む、実施形態92に記載の医薬組成物。
94.ナノ粒子は、カルシウムホスホシリケート(calcium phosphosilicate)複合体を含む、実施形態92に記載の医薬組成物。
95.RIZ2阻害剤と結合したカルシウムホスホシリケート複合体をさらに含む、実施形態90に記載の医薬組成物。
96.一以上の化学療法薬をさらに含む、実施形態77に記載の医薬組成物。
【0185】
[0193]参照による援用
本明細書で言及するすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が、参照により援用されることを具体的かつ個別に示したかのように、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0186】
実施例1:RIZ2 siRNAの効果
[0194] 以下の実施例は、当業者に、本発明のアッセイ、スクリーニング、および治療方法を作製および使用する方法の完全な開示および説明を提供するために提示されており、発明者が自身の発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではない。
【0187】
[0195] A549細胞株を使用したヒト肺がん細胞に対する効果的な細胞傷害性に関する、本明細書に記載のsiRNA設計の例示的な実証を以下に記載する。
【0188】
[0196] 方法:A549細胞を96ウェルプレート(1,000細胞/ウェル)に播種し、24時間後、製造業者の指示に従って、0.2μlのDharmaFECT 1(Dharmacon,Inc.社)を使用して、100nMのsiRNAをトランスフェクションした。培地は、2日後に交換し、そして4日後に、MTS細胞生存率アッセイを使用して、未処理細胞と比較して、百分率の細胞生存率を決定した。対照細胞およびsiRNAトランスフェクション細胞において、RIZ1 mRNAレベルおよびRIZ2 mRNAレベルをqPCRを使用して決定した。トランスフェクションの48時間後に細胞からRNAを抽出して、PRDMアイソフォームA特異的PCRプライマーおよびPRDMアイソフォームC特異的PCRプライマーを使用してmRNA発現レベルを検出した。RIZ mRNA発現レベルを、GAPDHのmRNA発現レベルと比較して決定した。スクランブルsiRNAを陰性対照として使用して、またTox(トランスフェクション対照siRNA(Transfection control siRNA)、市販されている)を陽性対照として使用した。
【0189】
[0197] 結果と考察:
図2に、上記の実施例1に記載の方法による、ARIZ-011、ARIZ-012、ARIZ-013、ARIZ-014およびARIZ-015を含む様々なsiRNAへの曝露後の、A549肺がん細胞の細胞生存率の結果を示す。A549肺がん細胞の生存率は、ARIZ-011、ARIZ-012、およびARIZ-015の適用により低下した。しかしながら、ARIZ-011は、非常に有望な結果を示した。
【0190】
[0198] siRNA ARIZ-011での処理後のA549細胞におけるRIZ1 mRNAおよびRIZ2 mRNAの相対レベルを調べ、
図3に示すように、ARIZ-011はRIZ2 mRNAにおける75%に近い低下だけでなく、RIZ1 mRNAの同時増加も見せた。このことは、がん細胞株におけるRIZ2 mRNAの低下だけでなくRIZ1/RIZ2比の不均衡の回復に関連した驚くべき予想外の結果であった。
【0191】
[0199] 結果をまとめると、PRDM2 siRNAがA549肺がん細胞を死滅させるのに有効であったことが実証された。siRNA ARIZ-011は、調べたsiRNAの中で最も有効であり、siRNAへの単回曝露後に相対細胞生存率が30%まで低下した。
【0192】
[0200] RIZ2 mRNAの3’末端に固有の10個のヌクレオチドを包含する、RIZ2に特異的なsiRNAであるsiRNA ARIZ-015は、RIZ1 mRNAおよびRIZ2 mRNAの両方に相補的であるARIZ-011(細胞生存率30%)よりもA549細胞の死滅(細胞生存率70%)の点で効果が弱かった。
【0193】
[0201]
図3に示すRIZ mRNAアッセイの結果は、siRNA ARIZ-011による見かけ上のオンコプロテインRIZ2のノックダウンが、腫瘍抑制タンパク質RIZ1の発現増加と同時に起こるという点が驚くべき予想外のものであった。
【0194】
実施例2:RIZ2 siRNAと化学療法薬の同時投与の効果
[0202] これは、PRDM siRNAと化学療法薬(5-フルオロウラシル)との同時投与が、健康な細胞への影響は最小限でありながらヒト結腸がん細胞の死滅を増強するという、例示的な実証である。
【0195】
[0203] 方法:細胞(細胞株HCT116)を96ウェルプレート(1,000細胞/ウェル)に播種して、24時間後、製造業者の指示に従って、0.2μlのDharmaFECT 1(Dharmacon,Inc.社)を使用して、100nMでsiRNA ARIZ-011をトランスフェクションした。該当する場合、5-フルオロウラシル(25μM)を、トランスフェクションの1日後に添加した。培地(該当する場合、5-フルオロウラシルを含む)は、2日後に交換し、そして4日後に、未処理細胞と比較して、百分率の細胞生存率を決定した。
【0196】
[0204] 結果と考察:
図4に図示するように、ARIZ-011 siRNAおよび5FUの同時投与により、HCT116結腸がん細胞の細胞生存率が97%低下することにつながったが、これに対しsiRNAまたは5FUいずれかの単回投与に応じては約72~74%の低下であった。実施例1において報告した知見と同様に、HCT116細胞において、RIZ2 siRNAがRIZ2の発現レベルを選択的に減少させたが、RIZ1 mRNAの同時増加が観察された(
図5)。
【0197】
[0205] HCT116結腸がん細胞を死滅させる点で単独のsiRNA ARIZ-011が有効であったが(100nM用量で74%が死滅)、25μM濃度での化学療法薬5-フルオロウラシル(5-FU)と同程度であり(72%)、これら結果により、siRNAが化学療法薬の有効性をさらに高めることができたということが示された。RIZ2 siRNAは、細胞周期停止に起因してがん細胞を死滅させることが知られている腫瘍抑制因子RIZ1のmRNAで増加をもたらす。
【0198】
[0206]実施例3:siRNA修飾
[0207] 設計されたsiRNA中の核酸塩基の例示的な修飾を、以下のように実証および試験する。siRNA ARIZ-011の場合、修飾されたsiRNAは、示されるようにARIZ-047(表1)、配列6、として設計される。本質的には、5’-ジスルフィド部分が組み込まれており、siRNA骨格のセンス鎖において一つのウリジンが2’-メトキシウリジンで置換されている。非センス鎖の修飾もまた、配列6の右側欄に示している。
【0199】
[0208]
図6に示されるように、siRNA ARIZ-047単独(シスプラチンなし)は、健康な細胞(正常な結腸線維芽細胞CCD-112)への限定的な害を伴うのみで、A549肺がん細胞を死滅する(細胞死滅92%)点で非常に有効であった。これら結果は、修飾siRNA(ARIZ-047)が、非修飾のARIZ-011よりも少ない5分の1の用量である20nM用量で、がん細胞死滅に非常に有効である一方で、正常細胞に対する影響は最小限であることを実証するということを示している。さらにARIZ-047は、シスプラチンと併用で、ARIZ-047単独よりも有意により有効(細胞死滅98%)であったが、ARIZ-047単独よりも実質的に大きい害を健康な細胞にもたらした(50%死滅)。
【0200】
[0209] 肺がんおよび結腸がんに関する以前のデータと同様に、肺がん細胞に関する
図7に示すRIZ mRNAアッセイの結果は、RIZ1 mRNAの増加およびRIZ2 mRNAの減少を示す。ここでも、RIZ1レベルに対する効果を示すこれら結果は、RIZ2の発現増加がRIZ1の発現を低下させることをさらに示唆している。
【0201】
[0210]実施例4:多発性骨髄腫細胞に対するsiRNAの効果
[0211] この実施例では、siRNA ARIZ-011の効果を、多発性骨髄腫細胞株KMS-11でさらに試験した。KMS-11細胞株は、市販の供給元から入手し、元々は四名の多発性骨髄腫患者からの細胞に由来していた。これら細胞は形質細胞の特徴を有する。前述のセクションに記載したものと同様のプロトコルを使用して、ARIZ-011が、Tox陽性対照と匹敵して、培地中でのKMS-11細胞死に重要な役割を果たしており、約80%であったことが観察された(
図8)。これら結果は、ARIZ-011が、複数のがん細胞株にわたって有効であり、そして細胞周期の節目での調節異常および過剰増殖を標的とするがん治療薬の開発の手段となり得ることを示す。
【0202】
[0212]実施例5:標的薬剤送達設計
[0213] 本明細書で開示されるsiRNAを用いたがん治療のための標的薬剤送達システムのための例示的な設計をここに示す。キャリアは、抗RIZ siRNAと複合体化した8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸-β-マレイミドプロピオン酸と複合体化した環状ペプチド標的リガンドからなる、腫瘍を標的とする自己組織化ペプチドナノ粒子であり、動物モデルにおいて標的受容体を発現するがん細胞までsiRNAペイロードを特異的に送達させることができる。
【0203】
[0214]
前述のsiRNA ARIZ-047を、環状ペプチドRGDfkと複合体化して、(RGDfk)/siRNAを形成する(
図9)。このsiRNAは、短いリンカーを介してPEG分子に結合し、他方の末端にRGDfkを有する。
【0204】
[0215]実施例6.インビボでのsiRNA有効性の試験
[0216] 雌の胸腺欠損ヌードマウスを使用して、A549細胞をもつ肺腺がん腫瘍モデルを調製した。A549肺がん腫瘍異種移植片を有するマウスに1日1回、(RGDfk)/siRNAを静脈内注射した。マウスは、c(RGDfk)/siRNAの効果に関して腫瘍サイズを監視する。14日後、マウスを屠殺し、そして腫瘍を切除して評価した。RIZ1、RIZ2、および関心の他の遺伝子に関するmRNAレベルをRTPCRで調べるために、血液および他の組織を採取した。
【0205】
[0217] ここに示す標的薬剤、例えばRGDfkで複合体化したsiRNA分子の使用により、リポソームによるまたは他のナノ粒子型の送達システムの必要性が排除される。このことで、それらが肝臓および他の器官に蓄積することで生じるリポソームによるまたは他のタイプのナノ粒子の送達システムの使用に関連する毒性が低減または回避されることとなる。
【0206】
[0218]実施例7:リポソームを使用したインビボでの送達
[0219] この例示的な研究では、標的リガンドを提示するリン酸カルシウムナノ粒子を含むがん治療のための標的薬剤送達システムを使用して、動物モデルにおいてがん細胞までPRDM2 siRNAペイロードが特異的に送達される。
【0207】
[0220] ARIZ-047を担持し且つヒトA549肺がん細胞を標的とする標的ペプチドc(RGDfk)をさらに提示できるナノ粒子を、Paretteら(米国特許第10,226,424号)が記載の方法に従って、調製する。簡潔に述べると、21塩基対または25塩基対のsiRNAを、最初にPEG部分と複合体化する。ホスホアミドの化学では、5’PO4末端基をもつsiRNAをアミン末端メトキシPEG分子と複合体化することを伴い、一方でチオエーテルの化学では、5’-スルフヒドリル末端基をもつsiRNAをマレイミド末端メトキシPEG分子と複合体化することを伴う。ホスホアミドによる複合体化を達成するために、0.12MのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩、47.6uMの一本鎖siRNA(5’PO4基を含有する不活性鎖)、および0.238Mのアミン-PEGを、pH6で0.1Mのイミダゾールに溶解し、50℃で18時間インキュベートする。この反応で典型的には、15~30%の複合体化が得られる。あるいは、0.1MのMES緩衝液、pH4をホスホアミド反応混合物に添加すると、75~90%の複合体化効率が得られる。チオエーテルの化学では、200uMの一本鎖siRNA(5’PO4基を含有する不活性鎖)を、0.1MのTris HCl緩衝液中の0.02MのDTTの存在下で0.476Mのアミン-PEGと組み合わせて、反応物を25℃で18時間インキュベートする。この反応では、約50%の複合体化が得られる。これら反応は、2kDaおよび5kDaのPEG分子を使用して実施された。複合体化後、70℃に加熱してその後ゆっくりと冷却することにより、不活性(センス)鎖を、反応混合物中の複合体化していない活性(アンチセンス)鎖RNAにアニーリングする。高度に効率的な(75~90%)ホスホアミド反応に関しては、活性(アンチセンス)鎖および不活性(センス)鎖の両方における5’PO4基、または活性(アンチセンス)鎖における一つの5’PO4基のいずれかを含有する複合体化していないアニールリングされたsiRNAを、以下に記載されるように、反応混合物に添加して脱塩精製を促進する。不活性(センス)鎖に5’PO4基が存在することで、より負電荷の粒子が得られ、一方でこれら基が存在しないと粒子の電荷は中性に近づくように変化する。
【0208】
[0221] 粒子は、カルシウムおよびリン酸塩を含有する5%のブドウ糖を用いて遠心分離濾過により洗浄され、組み込まれていないsiRNAおよびsiRNA-PEG複合体が除去される。あるいは、組み込まれていないsiRNA、Ca、Cl、Na、およびPO4を、132,000gでの超遠心分離によって懸濁液から取り出すことができるが、これによりサンプル体積の底部10%の粒子収集をもたらす。当該粒子を含有するサンプル体積の底部10%を分離することにより、組み込まれていない残留成分が最大90%減少する。粒子範囲内におけるsiRNAの捕捉は、配列依存的であり、合成で添加されるsiRNAのうちの10~25%の範囲である。本明細書に記載の合成は、以下に示すように、160nm以下の単峰の粒子サイズ分布でsiRNAを含有するリン酸カルシウムナノ粒子をもたらす。
【0209】
[0222] このナノ粒子調製物が、先の実施例にあるようなA549肺がん腫瘍異種移植片を有するマウスに静脈内投与される。マウスに、本セクションに記載のナノ粒子中に封入された1mg/KgのARIZ-047の用量でsiRNAを投与した。一部の実施形態では、これらナノ粒子は、「ナノジャケット」と称する。その後、治療有効性を決定するために、腫瘍サイズおよび治療の任意の毒性効果について、マウスを観察する。最も驚くべきことに、ARIZ-047では、観察された25日間にわたって腫瘍増殖の有効な制御を示した(
図10)。腫瘍増殖は、非siRNAの参照対照と比較して約50%抑制された。
【配列表】
【国際調査報告】