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特表2023-526354送達中にクリック音が鳴る薬剤送達装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】送達中にクリック音が鳴る薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20230614BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20230614BHJP
   A61M 5/315 20060101ALN20230614BHJP
   A61M 5/20 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/24 502
A61M5/315 550
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570167
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021062590
(87)【国際公開番号】W WO2021233754
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175119.5
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソルガード, クルト
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE14
4C066FF06
4C066HH03
4C066HH13
4C066QQ72
4C066QQ78
(57)【要約】
ハウジングと、ピストン(136)を有する医薬貯蔵部(135)と、を備える、ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置(100)。装置は、ラチェット機構であって、医薬の排出中に、第1および第2の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材(281、381、481、165.1、365.1)を備える、ラチェット機構をさらに備える。ラチェット機構は、第1および第2の複数の周期的な信号が位相外に生成するようにさらに適合されており、それにより、信号の各々は、ユーザによって区別可能である。ラチェット機構は、他の点では、周波数の変動を生成し得る、放射方向の遊びからの影響に対抗するための放射方向の力を提供するための手段をさらに含む。
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置(100)であって、前記装置が、
-ハウジング(140、165、365)と、
-ピストン(136)を有する医薬貯蔵部(135)と、
-駆動機構であって、遠位移動中に前記ピストン(136)を駆動し、それによって、前記医薬の量を排出するためのピストンロッド(109)と、前記ピストンロッド(109)を駆動するために動作可能に配設された駆動部材(280、380、480)と、回転可能に配設された移動可能なラチェット本体(280、380、480)と、を備え、前記移動可能なラチェット本体(280、380、480)が、前記ピストンロッド(136)に動作可能に接続されており、かつ前記医薬の送達中に前記ハウジング(140、165、365)に対して回転するように適合されている、駆動機構と、を備え、
前記ハウジングが、前記移動可能なラチェット本体(280、380、480)と協働し、それによって、前記薬剤の排出中に前記ピストンロッド(136)のラチェット式ガイドを可能にするラチェット機構を提供するように配設された、固定的なラチェット本体(165.1、365.1)を備え、
前記ラチェット機構が、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材(281、381、481、165.1、365.1)であって、前記医薬の排出中に、前記移動可能なラチェット本体と前記固定的なラチェット本体との間の相対的な回転移動に応答して、前記第1および第2のセットのラチェット部材に対応する第1および第2の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材(281、381、481、165.1、365.1)を備え、
前記ラチェット機構が、前記第1および第2の複数の周期的な信号が位相外に生成するように適合されており、それにより、前記信号の各々が、ユーザによって区別可能であり、半径方向の遊びが、前記移動可能なラチェット本体と前記ハウジングとの間に提供され、
前記移動可能なラチェット本体(280、380、480)または前記ハウジングが、前記移動可能なラチェット本体と前記ハウジングとの間に付勢半径方向の反応力を提供して、前記半径方向の遊びによる影響に対向し、それによって、前記第1の周期的な信号または前記第2の周期的な信号の周波数の変動を低減するように適合されている、薬剤送達装置(100)。
【請求項2】
前記移動可能なラチェット本体(380、480)の前記ラチェット部材(381、481)の先端が、45度の角度距離内に位置付けられて、前記ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、前記半径方向の遊びの前記影響に対向する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記移動可能なラチェット本体(380、480)の前記ラチェット部材(381、481)の先端が、10度の角度距離内に位置付けられて、前記ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、前記半径方向の遊びの前記影響に対向する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記移動可能なラチェット本体(280)が、前記ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、前記半径方向の遊びの前記影響に対抗する、ばね要素(280.1)を備える、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記ハウジングが、前記移動可能なラチェット本体(280)に対して半径方向の力を提供し、それによって、前記半径方向の遊びの前記影響に対抗する、ばね要素を備える、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記ピストンロッド(109)が、前記ハウジングとねじ込み係合し、前記駆動部材(280、380、480)が、前記ピストンロッド(109)に対して軸方向にスプラインされ、前記駆動部材(280、380、480)の回転移動が、前記医薬の排出中に前記ピストンロッド(109)の軸方向移動を誘発する、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ピストンロッド(109)が、前記ハウジングに対して軸方向にスプラインされ、前記駆動部材(280、380、480)が、前記ピストンロッド(109)とねじ込み係合し、前記駆動部材の回転移動が、前記医薬の排出中に前記ピストンロッド(109)の軸方向移動を誘発する、請求項1~3のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記移動可能なラチェット本体(280、380、480)が、前記駆動部材(280、380、480)であり、前記可聴信号が、前記ピストンロッド(109)と一緒の前記駆動部材(280、380、480)の回転によって生成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記移動可能なラチェット本体(280)の前記ラチェット部材(281)の先端が、170~190度の角度距離内に位置付けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記移動可能なラチェット部材(281、481)の先端が、軸方向に整列し、それによって、前記固定的なラチェット部材(165.1)上の先端接触点が、軸方向に整列する、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記ピストンロッド(109)が、前記ハウジングとねじ込み係合し、前記駆動部材が、前記ピストンロッド(109)とねじ込み係合し、前記駆動部材の軸方向移動が、前記医薬の排出中に前記ピストンロッド(109)の回転および軸方向移動を誘発し、前記移動可能なラチェット本体が、前記ピストンロッド(109)に対して軸方向にスプラインされたピストンロッドガイドの一部分として提供され、前記可聴信号が、前記ピストンロッドガイドと一緒の前記ピストンロッド(109)の回転によって生成される、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記ラチェット機構が、前記移動可能なラチェット本体(280、380、480)の一方向の回転を可能にし、それによって、前記ピストンロッド(109)の近位移動を阻害するように適合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記駆動機構が、前記第1の周期的な信号の前記周波数と前記第2の周期的な信号の前記周波数との間に一定の比を有する前記周期的な信号を生成するように適合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記駆動機構が、同じ周波数を有する前記第1の周期的な信号および前記第2の周期的な信号を生成するように適合されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記駆動機構が、逆位相で前記周期的な信号を生成し、排出中の一貫した音の生成および時間内の均質な解像度を提供するように適合されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達装置、およびある量の医薬を送達するための薬剤送達装置の使用方法に関する。本発明は、医薬の送達を信号伝達するためのラチェット機構を含むこのような薬剤送達装置、および装置の使用方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
異なる液体製剤の自己投与のための薬剤送達装置は、現在、様々な形状およびサイズで存在する。輸液セットに接続するように適合されたものもあれば、注射針に接続するか、または注射針と一体化されるものもある。後者のタイプは、注射装置と呼ばれる。いくつかは、薬剤貯蔵部を有するカートリッジを備える耐久性のある装置であり、カートリッジが交換され得る。他方、カートリッジが空であるときに廃棄される使い捨て装置もある。使い捨て装置は、複数用量または単一用量装置のいずれかであってもよく、この場合、ユーザは、各注射の前に所望の用量サイズを設定することができ、またはユーザは、予め設定された固定用量の送達を起動することができる。
【0003】
薬剤送達装置の駆動機構は、典型的には、ピストンロッドに結合された回転可能に配設された駆動部材を備える。要素が回転するときに、ピストンロッドは前進して、貯蔵部からある量の薬剤を送達する。駆動部材は、ピストンロッドに対して軸方向にスプラインされ得、ここで、ピストンロッドは、ハウジングとねじ込み可能に係合されている。例えば、Novo Nordiskによって出願された[特許文献1]および[特許文献2]を参照されたい。代替的に、駆動部材は、ピストンロッドでねじ込み可能に係合され、ハウジングに対して軸方向にスプラインされ得る。両方の代替は、駆動部材の回転に応答してピストンロッドの軸方向移動を提供する。駆動部材は、ユーザによって手動で駆動されるように配設されたばね、電動モータ、またはプランジャによって回転し得る。例えば、Copernicusによって出願された[特許文献3]を参照されたい。
【0004】
回転可能な駆動部材の代替として、ピストンロッドは、駆動部材およびハウジングとねじ込み係合することができ、駆動部材の強制された軸方向に回転不能な移動は、ピストンロッドの回転および軸方向移動、すなわち、螺旋状移動を誘発することができる(例えば、DCAによって出願された[特許文献4]の図1図16の実施形態を参照されたい)。
【0005】
さらなる代替として、ピストンロッドは、ハウジングに回転的に係止され得る。用量設定中に、駆動部材は、ピストンロッドの外ねじに沿って螺旋状に移動する。投与中に、駆動部材およびピストンロッドの両方は、回転することなく軸方向に移動する(例えば、Eli Lillyによって出願された[特許文献5]を参照されたい)。
【0006】
所定の固定用量を送達するように適合された装置は、毎回正しい用量を調節する装置に抵抗を感じるか、またはそれを動作させることができない場合があるため、一部のユーザに好ましい。例えば、装置が小児または高齢者によって使用される場合、過大または過少投与につながるユーザエラーを回避するために、単純さおよび使い易さが重要である。他の事例では、治療レジメンは、例えば、GLP-1タイプの薬剤の固定用量を処方する。他のユーザは、用量を調節することができる注射装置を好む。
【0007】
ユーザに音響フィードバックを提供するために、駆動機構は、回転駆動部材とともに回転する1つ以上のクリックアームを備える。アームの自由端は、固定部分上に円形パターンで配設された、固定のこぎり歯形状のラチェット歯に対して装填されるばねである。代替的に、回転駆動部材は、ラチェット歯と、1つ以上の偏向可能なクリックアームを有する固定ハウジング部分とを備える。
【0008】
[特許文献1]は、最小用量または固定用量が設定された後にのみ、ユーザが注射を実施することができる、注射装置を開示している。文書は、ねじりばねのトルクがピストンロッドドライバ65の回転を伝達し得ることを説明する。ピストンロッドドライバは、ハウジング構造体の基部部分55の内側にある歯付き周辺部59と係合する1つ以上の一方向アーム67をさらに備え、ピストンロッドドライバ65の1つの回転方向での回転のみを可能にする(本開示の実施例では、近位位置から見たときに、反時計回り方向)。反時計回り方向での回転中に、一方向アーム67は、ハウジング構造体の基部部分55の歯付き周辺部59をクリックする。これは、用量が分配されているという明確な音をユーザに提供する。
【0009】
Techpharmaによって出願された[特許文献6]は、液体生成物を単回固定用量で投与するための注射装置を開示している。装置は、液体生成物を自動的に注射するためのピストンロッド5を有する駆動機構を備える。装置は、装置の軸方向または長手方向軸に沿って配設されたいくつかのラチェット要素31(図11)を備える、キャッチスリーブ22およびキャッチ30をさらに備える。キャッチスリーブは、ピストンロッド5の軸方向移動の間、およびそれによって用量の排出の間、キャッチに対して比較的移動可能である。係合部材とキャッチとの間の相対的軸方向移動は、用量の排出中にハプティックおよび/または音響信号を生成する。
【0010】
[特許文献2]は、各注射に対して用量を調節することを可能にする注射装置について説明する。用量を投与するための駆動機構は、ばね駆動式であり、[特許文献1]に記載されるのと同じ原理に基づいており、[特許文献2]は、駆動部材が一方向ラチェット歯205のリング形状10アレイと係合するように適合された一対の対向する円周方向に延在する可撓性ラチェットアームを備えることを記載する。用量送達中、駆動部材は、反時計回りに回転し、ラチェットアーム235も、ラチェット歯205との係合によって、ユーザに小さなクリック音、例えば、インスリン一単位排出ごとに1クリック音を与える。示した実施形態では、インスリン一単位当たり15度の回転に対応して、24個のラチェット歯が提供されている。ラチェットアーム235は、ラチェット歯205と係合することによってユーザに小さなクリック音、例えば、排出された15インスリン単位当たり1クリック音も与える。
【0011】
Novo Nordiskによって出願された[特許文献7]は、用量設定機構および手動で駆動する駆動機構を有する注射装置を開示する。図1図5は、ピストンロッド6の外ねじを嵌合するための内ねじ5と、ピストンに対してスプラインされ、かつピストンロッド6を駆動するために適合されたピストンロッドガイド14と、を有する、ハウジング1を備える、こうした装置の第1の実施形態を示している。ハウジングの内面は、爪ホイール歯10をさらに備える。ピストンロッドガイド14上に取り付けられた少なくとも1つの爪13は、爪歯10と協働し、その結果、そのピストンロッドガイドは、時計回りにのみ回転することができる。用量は、ピストンロッドガイドの時計回りの回転に応答して投与される。図6図10は、こうした装置の第2の実施形態を示している。装置は、ピストンリッドを駆動するために適合された延長部33を有する注射ボタン23を備える。注射ボタンおよびその延長部33の長手方向穴35は、ピストンロッドの近位端で拡大部37における対応する螺旋状の溝37と係合して、ボタン23とピストンロッド6との間のねじ込み接続を形成する、内部螺旋状リブ36とともに提供される。ピストンロッドはまた、ハウジングとねじ込み可能に係合される。爪13(図8)を有するピストンロッドガイドは、ピストンロッドに対してスプラインされ、かつハウジングに軸方向に係止される。投与中に、注射ボタンは、回転的に係止され、遠位軸方向移動に応答してピストンロッドの螺旋状移動を誘発する。これにより、爪13を有するピストンロッドガイドは回転し、一方向の回転を確実にする。こうした実施形態では、爪は、ピストンロッドを回転させる駆動部材に取り付けられていない。逆に、爪は、駆動部材によって駆動されるピストンロッドによって回転されるピストンロッドガイドに接続されている。
【0012】
Sanofiが所有する[特許文献8]は、用量投与手順中に用量減少方向に回転するように適合されたラチェットを備える駆動機構を有する注射装置を説明する。ラチェット部材は、ハウジングの歯付きプロファイルと連続的にメッシュする半径方向に延在するアームを備える。歯付きプロファイルに沿って摺動するラチェット部材86の相互係合はまた、投与手順が進行中のことをタイルユーザに本質的に示す可聴クリック音を生成する。文書は、用量を段階的に調整するための第2のラチェット機構をさらに説明する。したがって、第2のラチェット機構は、注射装置が投与モードにあるときに分離される。第2のラチェット機構は、連続的に配設された歯の半周期分だけ円周方向にオフセットされる第1および第2のラチェット要素を備える。このように、用量設定のための個別の工程のサイズは、それぞれの小さなサイズの歯およびラチェット要素を使用する必要性なしに、効果的に減少され得る。
【0013】
一部の用途では、ピストンロッドまたは駆動部材の回転速度が比較的低い場合、用量が排出されていることを示す信号伝達クリックの周波数は低すぎる。これは、例えば、ピストンロッド上に高ピッチを有する用途にすることができ、角度回転に対して比較的大きな軸方向変位を提供する。
【0014】
より大きな数のより小さな/より短い歯を適合させることによって、クリック速度をある程度まで増加させることができる。小さな歯をどのように作ることができるかには、実用的な限界があるため、上述の従来的および典型的な設定では、達成可能なクリック速度の増加が制限される。
【0015】
例えば、高粘度の液体を排出する注射装置、およびまたは小さな直径の注射針を通して注射する他の用途では、周波数も低すぎる場合がある。
【0016】
Novo Nordiskによって出願された[特許文献9]は、排出中に回転する第1の要素140と、静止している第2の要素と、を備える、薬剤注射装置を開示している。固定要素103は、それぞれ第1および第2の先端を有する、第1および第2の偏向可能なアームを備える。先端部分103a’は、先端部分103b’とほぼ直径方向反対側に位置する。しかし、本発明によれば、先端部分103a’と103b’とが、第1の要素140の直径方向に対向する突起部143と協働することによって、同時に偏った半径方向の第2の位置を占めることがなく、互いにわずかにずれるように、先端部分103a’および103b’は、第2の要素103上に位置する。図示の実施形態では、第1の要素140が第2の要素20 103に対して回転するのにつれて、第2の撓み可能なアーム103bが第1の突起部から直径方向反対側に配設された突起部との協働を経る寸前に、第1の撓み可能なアーム103aが特定の第1の突起部との協働を経るように、先端部分103a’と103b’とは、約178度離れて位置する。偏向可能なアームが正反対に配設されている場合、対応する正反対に配設された圧電素子は、偏向を測定することができる。先端がわずかにオフセットしているため、第1および第2のアームの登録された偏向の間の時間遅延がある。プロセッサは、生成された起動信号を登録するために圧電素子に接続されており、かつ薬剤の量を決定することができる。第1および第2の偏向可能なアームからのパルス間の時間遅延を使用して、正しい機能を検出することができる。
【0017】
Eli Lillyによって出願された[特許文献10]は、グリップ部分102を有するプライミングドライバ100を備える、医薬投与装置を開示している。ドライバ本体部分104は、グリップ部分102から延在している。ドライバ本体部分は、ハウジング本体62の内部中空内に挿入されるようにサイズ設定され、ねじセグメント132を通して駆動ねじ80とねじ込み可能に係合するようにさらに適合されている。駆動ねじ80は、長手方向スロット90を通してハウジングに対して回転係止される。したがって、ドライバ100の回転は、駆動ねじを前進させる。本体部分104の近位領域内で、ハウジング62上のラチェット歯68と協働して、ハウジング60に対するドライバ100の単一方向への回転を制限する、少なくとも1つの爪が形成される。示されるドライバ100では、ほぼ正反対の爪の対が、角度を成して延在し、半径方向に曲げられる爪フィンガ106の形態で提供され、この爪フィンガ106は、十分に半径方向外側に遠くに延在して、ラチェット歯68と係合する、キャッチ端部108を有する。図示するように、正確には正反対になるように爪をわずかにオフセットすることによって、1つのキャッチ端部108は、別のキャッチ端部108が異なるラチェット歯68の中央と接触することによって内側に傾斜している一方で、ラチェット歯68と係合することができ、それによって、オフセット爪の角度精度は、正反対に並んだ場合の2倍である。プライミング中にドライバ100が許可された方向に回転すると、医薬は排出される。
【0018】
本発明は、用量の送達中にクリック速度をいかに増加できるかについての解決策に関する。したがって、本発明の目的は、薬剤送達装置に、設計および製造上の制限を損なうことなく、単純かつ費用効果の高い様式で排出する間、望ましい数および信号の一貫性を提供する信号伝達機構を提供することである。予想不可能なクリックパターンを防止し、予想不可能な様式でクリックパターンを変化させる用量クリック機構を提供することは、本発明のさらなる目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2020089167号
【特許文献2】国際公開第14161952号
【特許文献3】国際公開第18007259号
【特許文献4】国際公開第04078239号
【特許文献5】国際公開第05018721号
【特許文献6】米国特許第7758550号
【特許文献7】国際公開第99/38554号
【特許文献8】米国特許第10,420,896 B2号
【特許文献9】国際公開第2019/110618号
【特許文献10】国際公開第03/008023号
【発明の概要】
【0020】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処する、または例示的な実施形態の説明と同様に下記の開示から明らかな目的に対処する、実施形態および態様が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本開示の第1の態様では、ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置が提供され、装置は、
-ハウジングと、
-ピストンを有する医薬貯蔵部と、
-駆動機構であって、遠位移動中にピストンを駆動し、それによって、医薬の量を排出するためのピストンロッドと、ピストンロッドを駆動するために動作可能に配設された駆動部材と、回転可能に配設された移動可能なラチェット本体と、を備え、移動可能なラチェット本体が、ピストンロッドに動作可能に接続されており、かつ医薬の送達中にハウジングに対して回転するように適合されている、駆動機構と、を備え、
ハウジングは、移動可能なラチェット本体と協働し、それによって、薬剤の排出中にピストンロッドのラチェット式ガイドを可能にするラチェット機構を提供するように配設された、固定的なラチェット本体を備え、
ラチェット機構は、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材であって、医薬の排出中に、移動可能なラチェット本体と固定的なラチェット本体との間の相対的な回転移動に応答して、第1および第2のセットのラチェット部材に対応する第1および第2の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材を備え、
ラチェット機構は、第1および第2の複数の周期的な信号が位相外に生成するように適合されており、それにより、信号の各々が、ユーザによって区別可能であり、半径方向の遊びが、移動可能なラチェット本体とハウジングとの間に提供され、
移動可能なラチェット本体またはハウジングは、移動可能なラチェット本体とハウジングとの間に付勢半径方向の反応力を提供して、半径方向の遊びによる影響に対向し、それによって、第1の周期的な信号または第2の周期的な信号の周波数の変動を低減するように適合されている。
【0022】
本明細書では、一連の定期的なクリック生成の一連のラチェット部材を備えるクリック機構が提供されており、ここで、各セットは、移動可能なラチェット部材および固定されたラチェット部材を備える。移動可能な部材は、移動可能なラチェット本体上に提供され、固定部材は、ハウジング上に提供され、これもまた、固定ラチェット本体を提供する。2つのラチェット本体間の半径方向の付勢力は、本体を半径方向へ圧縮し、反応力を生成する。これにより、半径方向の遊びの影響が低減され、すなわち、そうでなければ、1組のラチェット部材の各々に対して周波数が増加する時間間隔が低減または除去されるという意味である。
【0023】
さらなる態様では、移動可能なラチェット本体のラチェット部材の先端は、45度の角度距離内に位置付けられて、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、半径方向の遊びの影響に対向する。
【0024】
さらなる態様では、移動可能なラチェット本体のラチェット部材の先端は、10度の角度距離内に位置付けられて、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、半径方向の遊びの影響に対向する。
【0025】
さらなる態様では、移動可能なラチェット本体は、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、半径方向の遊びの影響に対抗する、ばね要素を備える。
【0026】
さらなる態様では、ハウジングは、移動可能なラチェット本体に対して半径方向の力を提供し、それによって、半径方向の遊びの影響に対抗する、ばね要素を備える。
【0027】
さらなる態様では、ピストンロッドは、ハウジングとねじ込み係合し、駆動部材は、ピストンロッドに対して軸方向にスプラインされ、駆動部材の回転移動は、医薬の排出中にピストンロッドの軸方向移動を誘発する。
【0028】
さらなる態様では、ピストンロッドは、ハウジングに対して軸方向にスプラインされ、駆動部材は、ピストンロッドとねじ込み係合し、駆動部材の回転移動は、医薬の排出中にピストンロッドの軸方向移動を誘発する。
【0029】
さらなる態様では、移動可能なラチェット本体は、駆動部材であり、可聴信号は、ピストンロッドと一緒の駆動部材の回転によって生成される。
【0030】
さらなる態様では、移動可能なラチェット本体のラチェット部材の先端は、170~190度の角度距離内に位置付けられている。
【0031】
さらなる態様では、移動可能なラチェット部材の先端は、軸方向に整列し、それによって、固定的なラチェット部材上の先端接触点は、軸方向に整列する。
【0032】
さらなる態様では、ピストンロッドは、ハウジングとねじ込み係合し、駆動部材は、ピストンロッドとねじ込み係合し、駆動部材の軸方向移動は、医薬の排出中にピストンロッドの回転および軸方向移動を誘発し、移動可能なラチェット本体は、ピストンロッドに対して軸方向にスプラインされたピストンロッドガイドの一部分として提供され、可聴信号は、ピストンロッドガイドと一緒のピストンロッドの回転によって生成される。
【0033】
さらなる態様では、ラチェット機構は、移動可能なラチェット本体の一方向の回転を可能にし、それによって、ピストンロッドの近位移動を阻害するように適合されている。
【0034】
さらなる態様では、駆動機構は、第1の周期的な信号の周波数と第2の周期的な信号の周波数との間に一定の比を有する周期的な信号を生成するように適合されている。
【0035】
さらなる態様では、駆動機構は、同じ周波数を有する第1の周期的な信号および第2の周期的な信号を生成するように適合されている。
【0036】
さらなる態様では、駆動機構は、逆位相で周期的な信号を生成し、排出中の一貫した音の生成および時間内の均質な解像度を提供するように適合されている。
【0037】
以下において、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本開示の第1の実施形態による、複数用量を有する固定用量薬剤送達装置の分解組立図を示している。
図2A図2Aは、図1の装置のハウジングおよび駆動管の内側管状部分の斜視図を示している。
図2B図2Bは、示される線A-Aに沿った、近位端から見た断面を示している。
図2C図2Cは、遠位端から見た断面A-Aを示している。
図3A図3Aは、図1の装置の可撓性ラチェット部材を有する駆動管を斜視図で示している。
図3B図3Bは、図1の装置ののこぎり歯形状の歯の角方向の軌道を有するばね基部を示している。
図3C図3Cは、図1の装置のばね基部の管状部分に挿入された駆動管を斜視図で示している。
図4図4は、図1の薬剤送達装置の動作を示している。
図5A図5Aは、本開示による移動可能なラチェット部材を有する駆動管の一実施形態の作動原理を示している。ラチェット部材は、軸方向に整列している。ボックスAは断面図を示しており、ボックスBは展開斜視図を示している。
図5B図5Bは、本開示による移動可能なラチェット部材を有する駆動管の代替実施形態の作動原理を示している。ラチェット部材は、軸オフセットで配設されている。
図5C図5Cは、本開示による移動可能なラチェット部材を有する駆動管の代替実施形態の作動原理を示している。移動可能なラチェット部材は、軸オフセットで配設されており、ハウジングは、2つの固定ラチェット部材を備える。
図6図6は、一実施形態の駆動管の斜視図を示しており、ここで、その実施形態の作業原理は、図5Aに示されている。ラチェット部材は、約180度の角度で配設されており、軸方向に整列されている。
図7A図7Aおよび図7Bは、半径方向の遊びが一体化されたばねを追加することによって制限または除去された、図6の実施形態のさらなる発展を示している。実施形態の動作原理は、図5Aに示されている。ラチェット部材は、軸方向に整列し、ばねは、半径方向の遊びからの影響を最小化する。
図7B図7Aおよび図7Bは、半径方向の遊びが一体化されたばねを追加することによって制限または除去された、図6の実施形態のさらなる発展を示している。実施形態の動作原理は、図5Aに示されている。ラチェット部材は、軸方向に整列し、ばねは、半径方向の遊びからの影響を最小化する。
図8図8は、一実施形態の駆動管の斜視図を示しており、ここで、その実施形態の作業原理は、図5Bに示されている。ラチェット部材は、角度的に近接し、軸オフセットで配設されている。
図9図9は、一実施形態の駆動管の斜視図を示しており、ここで、その実施形態の作業原理は、図5Aに示されている。ラチェット部材は、角度的に近接し、軸方向に整列してオフセットされている。
【0039】
図では、同様の構造は、主として、同様の参照番号によって識別される。参照番号に続く文字「a」は、構造の遠位端を示すために使用され、番号に続く「b」は、近位端を示すために使用される。第1の番号に続いて「.」および第2の番号を含む参照番号は、構造の機能的または構造的詳細を示すために使用される。このようにして、第1の数字は、主(比較的大きい)構造を示し、第2の数字は、副(比較的小さい)構造または特定の機能を示している。参照番号に続く文字c、d、およびeは、回転対称性を有し、または回転シフトされた特徴を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用される場合、これらは、添付の図に言及するだけであり、必ずしも実際の使用状況ではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。部材という用語が所与の構成要素に対して使用される場合、1つ以上の機能を有する単一構成要素または構成要素の一部分を定義するために使用することができる。
【0041】
以下の詳細な説明では、本開示の完全な理解を提供するために多数の特定の詳細が記載されている。しかしながら、本開示はこれらの特定の詳細を用いずに実践されてもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0042】
また当然のことながら、第1、第2などの用語が本明細書では様々な要素および位置を記述するために使用される場合があるが、これらの要素および位置はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素または位置を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の対象者は、第2の対象者と称される可能性があり、同様に第2の対象者は、第1の対象者と称される可能性がある。第1の対象者および第2の対象者は、両方とも対象者であるが、同じ対象者ではない。さらに、「対象者」、「ユーザ」、および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0043】
本明細書で使用される場合、遠位および近位端という用語は、本体への取り付け点から離れて、または最も近くに位置する端を説明するために使用される解剖学的構造からの用語と類似している。したがって、注射装置の遠位端は、ユーザが装置を注射準備完了位置に保持する文脈で画定され、それによって、注射針を有する端が、遠位端になり、反対側の端が近位端になる。さらに、装置の個々の構成要素の遠位および近位端もまた、その文脈で画定される。
【0044】
本明細書で使用される場合、回転対称性は、部分的ターンによるいくらかの回転の後に、同じに見えるか、または同じ機能を保有するときの構造の特性である。構造の回転対称性の程度は、各回転に対して同じに見える、別個の配向の数である。n次の回転対称性は、nが2以上であり、特定の点(2D)または軸(3D)に対して、n重回転対称性、または第n次の離散回転対称性とも呼ばれ、これは、360°/nの角度による回転が物体を変化させないことを意味する。構造の特性は、視認可能な外観および構造的特徴の機能的能力の両方に関連し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、時計回り方向という用語は、正面から見たときに時計の針が回転する方向を説明するために使用される。それゆえに、注射装置の時計回りの回転は、装置を遠位面から見たときに、すなわち近位方向で見たときに観察される時計回りの回転である。反時計回り(counterclockwise)または反時計回り(anticlockwise)の回転は、反対方向として画定される。
【0046】
本明細書で使用される場合、近位面は、近位端から遠位方向で見たときの装置の面であり、遠位面は、遠位端から近位方向で見たときの装置の面である。
【0047】
本明細書で使用される場合、正の軸方向または長手方向は、近位端から遠位端に向かって画定される。正の軸方向および遠位方向は、同じ意味で互換的に使用される。同様に、負の軸方向および近位方向の定義は、同じ意味で互換的に使用される。装置の中心軸は、同じ意味で、長手方向軸とも呼ばれる、正の軸方向における注射装置の中心を通して画定される。
【0048】
本明細書で使用される場合、正の半径方向は、中心軸を起点とする半径方向軸に沿って、中心軸に対して垂直な方向で画定される。
【0049】
正の周方向または正の角度方向は、中心軸から半径方向の距離に位置付けられた点に対して画定され、正の周方向は、負の軸方向で観察されたときに時計回りの回転である。周方向は、軸方向および半径方向に対して垂直である。
【0050】
半径方向および周方向の両方は、軸方向に対して横方向または垂直であるため、本明細書では横方向と呼ばれる。横方向平面は、本明細書では、中心軸を法線ベクトルとして、半径方向および周方向の2つのベクトルにまたがる平面として画定される。
【0051】
本明細書で使用される場合、構造の軸方向移動は、移動を説明するために使用され、構造の変位ベクトルは、軸方向に成分を有する。並進移動は、軸方向のみにおける均一の動きを説明するために使用される。純粋な、厳密な、または均一な軸方向移動は、並進移動と同じであり、これらの用語は、互換的に使用される。
【0052】
構造の半径方向移動は、移動を説明するために使用され、構造の変位ベクトルは、半径方向に成分を有する。純粋な、厳密な半径方向移動は、半径方向のみにおける均一の動きを説明するために使用される。したがって、純粋な、厳密な、および均一な半径方向移動は、同じであり、これらの用語は、互換的に使用される。
【0053】
構造の周方向、または回転移動は、移動を説明するために使用され、構造の変位ベクトルは、周方向に成分を有する。純粋な、厳密な周方向移動は、周方向のみにおける均一の動きを説明するために使用される。したがって、純粋な、厳密な、および均一な周方向移動は、純粋な、厳密な、および均一な回転移動と同じであり、これらの用語は、互換的に使用される。構造に対する回転移動の定義はまた、構造が回転の軸を画定する中心軸を含む、特殊な場合を包含する。この特殊な場合では、中心軸から外れた構造の全ての位置は、円周方向移動を受けるが、中心軸上の位置の変位ベクトルは、ゼロである。それゆえに、それ自体の中心軸の周りを回転する構造は、回転移動を実施すると言われる。
【0054】
構造の螺旋移動は、組み合わせられた軸方向および回転移動を説明するために使用され、構造の変位ベクトルは、周方向および軸方向成分を含む。構造に対する螺旋移動の定義はまた、構造が回転の軸を画定する中心軸を含む、特殊な場合を包含する。この特殊な場合では、中心軸から外れた構造の全ての位置は、螺旋移動を受けるが、中心軸上の位置の変位ベクトルは、軸方向成分のみを含む。それゆえに、それ自体の中心軸の周りを回転し、軸方向に移動する構造は、螺旋移動を実施すると言われる。
【0055】
この文脈では、純粋な、厳密な、および均一な移動は、抽象的な数学的定義であり、これらの用語は、構造体の理想的または抽象的な移動を説明するために使用される。それゆえに、実際の装置内の構造は、この理想的な挙動を呈するように期待されるべきではなく、むしろ、そのような構造は、そのような理想的な移動に近似するパターンで移動することが期待されるべきである。
【0056】
本明細書で使用される場合、右ねじまたは螺旋状の部分は、ねじ山付きのねじが反時計回りに回されるとき、その螺旋が正の軸方向に移動する、ねじまたは螺旋部分である。
【0057】
右ねじのねじは、通常、既定のねじであり、右手によって通常実施される反時計回りの回転によって正の方向にねじ込まれる。同様に、左ねじを有するねじは、時計回りの回転によって正の方向にねじ込まれ、したがって、左手で実施され、右ねじを操作する右手の動きを鏡映し得る。
【0058】
本開示は、ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置を記述しており、ここで、装置は、ハウジングと、ピストンを有する医薬貯蔵部と、駆動機構とを備える。
【0059】
駆動機構は、ピストンを駆動するためのピストンロッドを備え、それによって、貯蔵部の出口を通して医薬の量を排出するように適合されている。駆動機構は、ピストンロッドを駆動するための駆動部材をさらに備える。駆動部材は、ハウジング内に移動可能に配設されており、回転または軸方向移動のいずれかに応答してピストンロッドを駆動するように配設され得る。駆動機構は、移動可能なラチェット本体をさらに備え、これもまた、ハウジング内に移動可能に配設されている。ラチェット本体は、駆動管の一体部分もしくは取り付け部分として提供されてもよく、または医薬の排出に応答して、ピストンロッドによって駆動もしくは移動する別個の構造体であってもよい。いずれにしても、移動可能なラチェット本体は、ピストンロッドに動作可能に接続されており、かつピストンロッドが排出中にハウジングに対して移動するときに、ハウジングに対して移動するように適合されている。
【0060】
ハウジングは、移動可能なラチェット本体と協働して、それによって、医薬を貯蔵部から排出するために必要とされる、ピストンロッドの遠位のラチェット移動を可能にするよう適合されたラチェット機構を提供する、固定ラチェット本体を含む。さらに、ラチェット機構は、ピストンロッドが近位方向に移動することを阻害または防止する。
【0061】
ラチェット機構は、移動可能な、かつ固定のラチェット部材の第1および第2のセットを備える。移動可能なラチェット本体は、のこぎり歯形状の歯および/または可撓性アームの1つ以上の軌道の形態で移動可能なラチェット部材を備え得る。同じ原理が、固定ラチェット本体に適用される。したがって、歯およびアームの少なくとも2つのセットを有するラチェット機構は、典型的にはクリック音である薬剤の排出中の、移動可能な、かつ固定のラチェット本体の間の相対的移動に応答して、第1および第2の相関された可聴信号を提供するように適合されている。信号は、排出中に定期的に生成されるが、ユーザが可聴音を区別できるように、それらは時間内で分離されなければならず、それゆえ、第1および第2の相関する可聴信号は、位相外となるように適合されている。
【0062】
信号が相関していることは、ラチェット部材の1つのセットが信号を提供する場合、排出中に、第2の信号がまた、排出がまだ継続中である場合、同時に、または第1の信号から特定の期間内に生成されることを意味する。
【0063】
信号が周期的であることは、特性周波数で定期的に生成されることを意味する。各信号の周波数は、送達中に一定であってもなくてもよい。周波数は、特に、張力ばねが駆動部材を駆動するために使用される場合、および張力ばねが用量の完全な送達中に一定のトルクを提供することができない場合に減少し得る。しかしながら、周波数が送達中に一定であることが好ましいが、これは、ばねが一定のトルクを送達する場合に取得することができる。信号が位相外であることは、クリック音が、異なる時点で生成される、すなわち、任意の実用的な理由のための差をマイクで測定することができ、理想的には、ユーザによって知覚され得ることを意味する。
【0064】
第1および第2の信号が互いに、およびラチェット本体の回転速度と相関しているため、各信号の周波数の間の比は、ラチェット本体の回転が純粋な回転である場合に、送達中に同一となる。第1の信号と第2の信号との間の比が1である場合に、各信号の周波数は、同じであり、比が2である場合に、第1の信号の周波数は、第2の信号の周波数の2倍である。
【0065】
図1図3は、複数の固定用量の医薬を送達するための薬剤送達装置100の第1の実施形態を示している。実施形態は、本開示に従って修正され得る、ラチェット機構を備える。図6~8は、リング部材390を有する安全組立品300の一実施形態を示している。薬剤送達装置100および200の両方は、安全組立品300と協働するように修正されてもよい。
【0066】
欧州特許出願第19217357.3号、同第19217323.5号、同第19217333.4号、同第19217339.1号、同第19217358.1号、同第19217343.3号、および同第19217331.8号は、本開示に記載されていない装置のさらなる技術的詳細を開示する。参照される特許出願は、参照により組み込まれる。
【0067】
複数回注射のための薬剤送達装置
図1は、薬剤送達装置100の分解組立図を示している。図1は、キャップ105、シールド先端119、洗浄モジュールのシールド追従部分120.1、針カニューレ124を有する針ハブ125、ハウジング挿入部分160、管状の細長い針シールド構造体110、カートリッジホルダ130、カートリッジ135、管状の細長いハウジング構造体140、コネクタ170、シールド戻しばね107、駆動管180、用量駆動ばね108、ピストンロッド109、およびばね基部165を示している。
【0068】
ハウジング組立品
薬剤送達装置は、ハウジング組立品を備え、装置の他の構成要素をガイドおよび接続するためのガイドおよびコネクタを有する硬質フレームを提供する。ハウジング組立品は、ハウジング挿入部分160、管状の細長いハウジング構造体140、カートリッジホルダ130、およびばね基部165を備える。最終組み立て後、これらの構造は、固定して接続されている。細長いハウジング構造体140は、ピストンロッドの外ねじと係合するための内ねじを備える。ハウジング挿入部分160は、キャップとのバヨネット結合のために、トラックの端にキャップスナップを備える。ハウジング挿入部分160は、シールドをガイドするための近位縁部をさらに備える。ハウジング組立品は、ハウジングと呼んでもよい。
【0069】
針シールド組立品
薬剤送達装置は、シールド先端119および細長いシールド構造体110を備える針シールド組立品をさらに備える。細長いシールド構造体110は、薬剤の検査のための窓111を備え、細長いシールドは、カートリッジホルダ窓131とオーバーラップする第1の位置に、およびオーバーラップしない第2の位置に配設され得、細長いシールド構造体の固体部分は、第2の位置で窓131を覆う。この例示的な実施形態では、細長いシールド構造体110は、以下においてさらに詳細に説明される、起動部材を提供する。針シールド組立品は、針シールドと呼んでもよい。細長いシールド構造体は、回転移動を軸方向移動にするための、階段状の螺旋状のガイド構造体112をさらに備え、すなわち、階段状の螺旋状のガイドは、ハウジング組立品の内面上の構造体またはガイドと協働して、シールドの螺旋状の移動をガイドするように適合されている。
【0070】
カートリッジホルダ
カートリッジホルダ130は、カートリッジ135を受容するように適合されている。カートリッジホルダは、カートリッジ135内の薬剤を検査するための窓131を備える。カートリッジホルダ130は、カートリッジの首状部分137にスナップするための可撓性アームを備える。
【0071】
カートリッジ
図1Aにさらに示されるように、細長いカートリッジ135は、穿刺可能な隔壁によって密封された遠位端135aと、ピストンによって閉鎖された開口近位端135と、を備える。ピストンは、図1には示されていない。カートリッジは、医薬の複数の固定用量を収容する貯蔵部を備える。遠位端135aでは、キャップによってキャップされた隔壁が提供される。キャップおよび貯蔵部の主要部分は、首状部分137によって分離される。
【0072】
針組立品
薬剤送達装置は、針ハブ125および再使用可能な針カニューレ124を備える針組立品をさらに備える。カニューレは、穿刺可能な隔壁を穿刺するための、および貯蔵部との流体連通を確立するための近位端と、装置の対象者またはユーザの皮膚への挿入のための遠位端と、を備える。
【0073】
ピストンワッシャ
図1には示されていないが、ピストンワッシャは、ピストンロッドに接続されて、ピストンに接触するための押さえを提供し得る。代替的に、ピストンロッドとピストンとの間の相対的回転を測定するための用量測定モジュールが、ピストンロッドとピストンとの間に提供され得る。そのような測定モジュールはまた、好適な押さえを提供する。そのような用量測定モジュールは、「Dose capturing cartridge module for drug delivery device」と題された、国際公開第2014/1128155号に説明されている。代替的に、ピストンロッドは、ピストンに直接接触する。
【0074】
キャップ
キャップ105は、ハウジング挿入部分160への取り外し可能な取り付けのために適合されている。キャップは、軸方向および周方向キャップ取り付けトラック161(図3A)によってガイドされるように適合された突出部を有する内面を備える。突出部は、円周トラック161に設けられたスナップ係止部と協働し、それによって、キャップ105を内側ハウジング部分160に取り外し可能に係止するようにさらに適合されている。キャップは、連続的な軸方向および回転移動によって取り付けおよび脱着されるように適合されており、それによって、薬剤送達装置と一緒にバヨネット結合を提供する。キャップ105の内面は、初期化中に、内面から突出し、かつ軸方向に延在するリブ116(図3A)を通してシールド構造体110にトルクを伝達するように適合された、軸方向に延在するリブ(図示せず)をさらに備える。
【0075】
ばね基部
ばね基部165は、近位端でハウジング構造体140に固定的に取り付けられており、かつ圧縮可能なねじり駆動ばね108を受容および支持するように適合されている。ばね基部は、管状であり、のこぎり歯形状のラチェット歯165.1の角度の付いた軌道を有する内面を備え、固定ラチェット本体を提供する。
【0076】
駆動ばねおよび駆動管
駆動ばね108は、予め引っ張られるか、または巻き上げられ、ばね基部165と駆動管180との間に位置付けられる。駆動ばねは、駆動管180上にトルクを誘発するようにさらに適合されている。駆動管180は、ピストンロッド109の軸方向軌道109.2に対して軸方向にスプラインされ、回転時に医薬を排出するよう適合された駆動部材を提供する。駆動ばねは、ねじれセクション108.3、108.5を備え、コイル間の間隔は、比較的小さく、圧縮可能セクション108.4は、圧縮後および医薬の排出中に軸方向の力を駆動管に伝達するように適合されている。駆動管をハウジングと協働する外側螺旋状のガイドとともに軸方向に駆動する能力は、用量機構の終了を可能にし、駆動管のリセットを可能にする。駆動管は、軸部分182を備え、非回転位置に回転停止部、および回転位置に螺旋状の運動をガイドするための螺旋状の部分189を提供する。駆動管は、第1の181c(図2C)と、第2の181d(図1および図2C)のばね基部ののこぎり歯形状の歯165.1と係合する可撓性のラチェットアームと、を備える、移動可能なラチェット本体をさらに一体的に備える。回転安定性を提供するために、ラチェットアームは、対称的に配設されており、それによって、送達中に相内周期的クリック音を提供するように適合されている。クリック音の周波数は、ばねの弛緩により、送達中に減少し得る。
【0077】
戻しばね
コネクタ戻しばね107は、ばね基部165とコネクタ170との間に位置付けられており、かつコネクタを遠位方向に付勢するように適合されている。
【0078】
洗浄組立品
注射間の針の洗浄は、同じ一体化された針が、清潔な状態で複数回使用されることを可能にする。それゆえに、本開示の代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、洗浄組立品を備える。移動可能なシールド構造体110は、シールド追従部分120.1を通して洗浄組立品に固定的に接続されており、洗浄モジュールの原理は、国際公開第2019/101670号でさらに詳細に開示されている。
【0079】
シールドは、異なる位置に配設され得る。初期位置は、初期角度位置および対応する初期軸方向位置によって画定される。係止位置は、係止角度位置および対応する係止軸方向位置によって画定される。係止解除された遠位位置は、係止解除された角度位置および対応する遠位の係止解除された軸方向位置によって画定される。移動可能なシールドは、初期位置から、シールドが軸方向に係止される係止位置への回転および近位移動の組み合わせによって変更され得る。両方の位置で、針先端は、シールドによって覆われ、洗浄チャンバ組立品内に収容される。使用中、シールドをさらに回転させ、螺旋状の移動において近位方向に係止解除された遠位位置までさらに移動させ、それによって、先端が露出され得る。シールドを軸方向移動において近位方向にさらに移動させることによって、シールドは、針のより大部分を露出させ、注射が行われ得る。注射後、シールドは、係止位置に戻され、それによって、針先端が洗浄される。
【0080】
起動機構
図2Aは、ハウジング140および駆動管180の内側管状部分154の斜視図を示している。駆動管の遠位管状部分185は、ハウジングの内側管状部分154内に挿入されており、したがって、図上では見えない。図2Bは、示される線A-Aに沿った、近位端から見た断面を示している。遠位端で、駆動管180は、内面から突出し、ピストンロッド109の軸方向軌道109.2と係合するように適合された内向き突出部180.2を備える。図2Cは、遠位端から見た断面A-Aを示している。近位端で、駆動管180の内面の断面は、円形であり、駆動管の近位端は、駆動ばね108を収容するように適合されている。
【0081】
図2Aは、コネクタ170の内面の起動タブ178をさらに示している(タブのみであり、残りのコネクタは、図2Aに示されていない)。起動タブ178を有するコネクタは、それが駆動管の突出タブ183と接触する位置に配設されており、それによって、近位移動を駆動管に伝える準備ができ、それによって、駆動管が起動され得る。駆動管180は、駆動ばね108によって遠位および反時計回りに付勢される。図2Aでは、駆動管は、静止位置または非回転位置で例示され、軸方向表面部分182は、ハウジングの内側管状部分154の軸方向表面部分156に当接し、それによって、駆動管180の反時計回りの回転を防止する。静止位置では、駆動管の遠位螺旋表面部分182はまた、ハウジングの内側管状部分154の近位螺旋表面部分157に当接し、それによって、駆動管180の遠位移動を防止する。
【0082】
図2Dは、螺旋投与起動の起点を画定する螺旋表面部分157d.1の近位端と、螺旋投与起動の終点を画定する螺旋表面部分157d.2の遠位端と、を詳細に例示する。同様に、遠位螺旋表面部分189dは、前の点または縁部189d.1、および後ろの点または縁部189d.2を画定する。コネクタを近位方向に移動させることに応答して、起動タブ178は、突出タブ183と当接して配設されたとき、駆動管180の近位移動を誘発する。これによって、前縁部189d.1は、それが軸方向表面部分の近位端を通過し、螺旋投与軌道の開始点157d.1に到達するまで、軸方向表面部分156に沿って近位に移動される。この位置で、駆動管は、回転可能な位置に位置付けられ、軸部分182、156は、もはやそれに当接することはない。駆動管189の反時計回りの付勢に起因して、駆動管189は、回転可能な位置で、反時計回り方向に回転し始めることができ、遠位の付勢に起因して、前縁部189d.1は、内側管状部分154の螺旋用量軌道と接触させられる。駆動管はまた、外面上に突出した螺旋状構造体184cおよび184dを備え、これは、回転中の遠位移動を助けるためにハウジング構造体と協働し得る。回転可能位置において、前縁部189d.1を有する駆動管は、終点157d.2に到達するまで、遠位螺旋移動で螺旋用量軌道157に沿って移動する。同じ効果は、角度的にシフトされた軸方向表面部分182cおよび遠位螺旋表面部分189cによって得られる。
【0083】
回転中、駆動管は、ハウジングにねじ込み可能に接続されたピストンロッド109を回転させる。これにより、ピストンロッド109および136は、遠位方向に駆動して、カートリッジ135からある量の医薬を排出する。
【0084】
図3Aは、可撓性のラチェット部材181cを有する駆動管180の斜視図を示しており、図3Bは、のこぎり歯形状の歯165.1の角方向の軌道を有するばね基部165を示している。図3Cは、ばね基部の管状部分に挿入された駆動管を斜視図で示している。ばね基部の一部分は、歯165.1を示すために分解される。図3Cは、薬剤の排出中のばね基部に対する駆動管の位置を示しており、また、回転すると、歯の軌道に沿って、ラチェットアーム181cが摺動するであろうことを示している。対称的に対向するラチェットアーム181cおよび181dは、のこぎり歯165.1の軌道とともに、ラチェット機構を提供する。
【0085】
回転中に、駆動管180の移動可能なラチェット本体とばね基部の固定ラチェット本体、すなわち、ハウジング組立品との間の相互作用は、ピストンロッドの単方向の回転を確実にし、相内周期的クリック音または可聴信号を提供する。
【0086】
示されるように、単回投与は、駆動管180の360度回転の間に送達される。したがって、ピストンロッド109とハウジングとの間のねじ込みのピッチは、1回の用量当たり比較的大量の薬剤が必要な場合、急勾配または高くなければならない。
【0087】
固定用量の複数回注射のための注射装置の動作
図4に例示されるように、ユーザが第1の固定用量を得ることを望む場合、薬剤送達装置は、開梱され、それによって、包装解除状態(A1)で提供される。その後、薬剤送達装置は、キャップを反時計回り方向に回すことによって、ユーザによって開始される。これによって、キャップは、針シールドと係合し、それによって、針シールドは、キャップ105が回転停止部に回されるまで、キャップ105の回転に追従する。シールドの階段状の螺旋状のガイド112に起因して、針シールドは、ユーザがキャップを回すことに応答して、組み合わせられた近位および回転移動を受ける。さらに、キャップのこの初期回転および針シールドの組み合わせられた回転および近位移動によって、針カニューレ124は、カートリッジ135の隔壁を穿刺し、それによって、カートリッジ135内の薬剤貯蔵部との流体連通を確立する。さらに、この動作では、カートリッジ135は、近位に変位され、ピストンロッド109またはピストンワッシャ104に対して押し付けられる。カニューレが流体接続を確立しているため、およびピストンがピストンロッドと当接して配設されるため、一体化された針が下準備される。キャップが回転停止部に到達すると、薬剤送達装置は、係止解除されたキャップ内、かつ始動状態(B1)に位置付けられ、キャップは、係止解除され、取り外されるように位置付けられている。
【0088】
以下の工程では、ユーザは、薬剤送達装置のキャップ105を引っ張り、それによって、薬剤送達装置は、キャップが外れた状態(C1)に配設され、シールドは、軸方向並進に対して係止される。
【0089】
その後、ユーザは、シールドを反時計回り方向に手動で回し、それによって、装置は、シールド係止解除状態(D1)に配設され、シールドは、係止解除位置に配設され、ハウジング内に近位に押し込まれ得る。シールドの階段状の螺旋状のガイド112に起因して、シールドは、再び、キャップが外れた状態とシールド係止解除状態との間で動作されるとき、組み合わせられた近位および回転移動を受ける。これにより、シールド110は、コネクタ170と接続する。
【0090】
以後、ユーザは、針シールドを注射部位に押し付け、それによって、シールドおよびコネクタ170がシールド戻しばね107の力に対して近位に変位される。これによって、針は、患者の皮膚または皮下層に挿入される。この動作によって、シールドの軸方向移動が駆動機構をトリガし、固定用量が投与状態で針カニューレを通して送達される(E1)。用量の終了時、ピストン136(図4)は、ハウジング上の固定用量残量目盛によって示される次の位置に移動しており、薬剤送達装置は、注射部位から取り外され得る。残量目盛の切欠き窓は、次の位置のピストンを示している。
【0091】
用量が完了した後、ユーザは、装置を皮膚から取り外し、それによって、圧力がシールドから解除される。結果的に、シールドは、戻しばね107の作用に起因して遠位方向に移動する。シールドの階段状の螺旋状のガイド112に起因して、シールドは、遠位移動を受け、その後、組み合わせられた遠位および回転運動を受け、それによって、シールドは、再係止状態(F1)に自動的に戻る。
【0092】
その後、ユーザは、軸方向移動によってキャップ105をかぶせて、装置を、図2に示される順序に示される最後の状態である、キャップオン状態(G1)に置く。キャップ係止解除状態およびキャップオン状態は、同じ順序内で、カートリッジが、キャップオン状態でより少ない用量を含むという点で技術的に異なる。最後に、キャップが回され、それによって、ハウジング組立品にスナップ係止される。
【0093】
後続の用量は、同様の様式で投与することができるが、初期化を必要としない。最終用量が投与されたときに、駆動機構を再び起動することはできない。
【0094】
上述の複数回使用の固定用量装置は、同じ固定用量体積を有する4つの用量を保持する。各用量は、一体化された駆動ばねの1回の全回転によって排出され得る。駆動ばねは、排出の間に巻き戻されない。したがって、利用可能なトルクは、各用量に対してより低い。したがって、4つの排出の各々は、前よりも長い時間がかかる。
【0095】
ユーザに音響フィードバックを提供するため、エンジンは、回転エンジン部分とともに回転するクリックアームを備える。アームの自由端は、固定部分上に円形パターンで配設された、固定のこぎり歯形状のラチェット歯に対して装填されるばねである。
【0096】
通常は利用可能な空間内に適合される歯の数およびサイズを、後期の比較的低い速度、特に最後の4回の用量と組み合わせると、クリック音が遅すぎることが判明した。
【0097】
より大きな数のより小さな/より短い歯を適合させることによって、クリック速度をある程度まで増加させることができる。小さな歯をどのように作ることができるかには実用的な限界があるため、上述の従来的および典型的な設定では、達成可能なクリック速度の増加は制限される。したがって、本開示は、クリック速度が上記で説明した制限を超えて増加され得る解決策を識別することに関する。
【0098】
本開示による解決策の基本的な考えは、固定ラチェット歯の角ピッチの半分にいくつかの完全な歯に相当する角度(数は0とし得る)を加えたものに対応する2つの先端の間の角度距離で配設した2つのクリックアームを使用することである。このようにして、駆動管の1回転中に生成されるクリック数は、角軌道上の歯の数の2倍となる。
【0099】
同様の方法で配設された3つ以上のアームを使用することによって、クリック数をさらに増加させることができる。すなわち、クリック数は、3つのアームを使用することによって3倍にすることができる。
【0100】
位相外のラチェット部材を有する駆動部材
図5Aは、移動可能なラチェット部材281cおよび281dを有する、駆動管280の第1の実施形態の作動原理を示しており、ここで、2つのラチェット部材の先端間の角度距離は、固定ラチェット歯165.1の角ピッチの半分にいくつかの完全な歯165.1に相当する角度を加えたものに対応する。図6は、駆動管280の斜視図を示している。この図示した実施形態では、ラチェットアームのうちの1つは、回転対称性から小さな角度、例えば、半分の歯をシフトしている。この場合、等しいサイズの歯の数は、偶数、例えば、24であってもよい。
【0101】
代替的に、歯のピッチは、適合して変更され、図3に見られるように、移動可能なラチェット部材が2倍の回転対称性に留まるように適合されている。この場合、歯の数は、不均等、例えば、25であってもよい。
【0102】
図5Aの箱Aは、角方向ののこぎり歯形状の歯の軌道を概略的に図示する。歯は、右から傾斜した適度に増加する直線曲線、およびその後に急激に減少する直線曲線を有する、「塗りつぶされていない」三角形として表される。軌道は折り畳まれておらず、軸方向の軌道として表され、断面としてみなされる。移動可能なラチェット部材281は、パターン化され、同じパターンを有する矢印Vは、ラチェット部材281が塗りつぶされていないのこぎり歯形状の軌道に対して移動していることを示している。ピッチはここで各歯の軸方向の長さとして定義され、pで示されている。角方向の軌道の場合、ピッチは、ばね基部の内面上の歯のアーチ長さとして対応するように表されるであろう。図5Aでは、Tcは、ラチェット部材281cの先端が歯に接触している位置を示しており、Tdは、ラチェット部材281dの先端が歯に接触している位置を示している。上述のように、pに位置付けられたラチェットアーム281cの先端と3.5pに位置付けられたラチェットアーム281dの先端との間に、2.5倍のピッチまたは2.5の歯がある。これは任意の番号で、説明のみを目的として選択されている。しかしながら、先端の間に2.5の歯のみを有する実施形態は可能であるが、回転対称性を2倍にすると位置付けられない。これは、1回転当たり数回のクリックで非常に大きなピッチをもたらすことになるからである。移動可能なラチェット部材281を有する移動可能なラチェット本体が回転し始めると、ラチェット部材は、周期的に上下に動き、また、ラチェット部材がのこぎり歯軌道の上部から底部にスナップする度に、例えば、クリック音またはスナップ音などの可聴信号を周期的に提供する。しかしながら、整数の歯数は、ラチェット部材の接触点の間に存在しないため、ラチェット部材は、その周期的挙動において非段階的である。図示の実施例では、先端間の距離は、整数の歯数に半ピッチを加えたものであり、これは、生成された可聴信号が抗相にあることを意味する。しかし、距離は、整数+0.1、0.2...0.9倍ピッチであってもよい。全ての事例で、2つのラチェット部材281の信号生成は、位相外である。しかしながら、実用的な理由のために、また第1の信号と第2の信号を区別することができるために、ラチェット部材281の位相外位置の「度」と回転速度との間の関係のバランスを取って、すなわち、ピッチの追加画分と、駆動管280の回転速度とのバランスを取って、クリック音を区別できるようにすることが必要である。比較的小さな位相外の度をマイクで測定してもよいが、実用的な理由から、クリック音は、ヒトの耳によって知覚されるべきである。可聴クリック音は、移動可能なラチェット本体280上のラチェット部材281が、同じ本体上に提供されているときに相関する。したがって、それらが生成する可聴音も相関され、信号の周波数は、回転的に移動可能なラチェット本体の回転速度に依存する。
【0103】
代替的に、歯のリングの形態の単一のラチェット部材が、移動可能なラチェット本体の外面上に提供され、2つのラチェット部材が、固定本体上に提供される。こうしたシステムによって生成される可聴信号がまた相関する。
【0104】
同一の軸方向または長手方向位置にラチェットアーム281を位置付けることは、角配向ののこぎり歯265.1の軌道の軸方向または長手方向の長さを限定する。
【0105】
本発明の発明者らは、駆動管280とばね基部165の内面との間の半径方向の遊びにより、駆動管280が予測不可能なパターンで半径方向に移動することができ、クリックの2つのセット間のタイミングが変化し、それらの共通の印象が望ましくないように見えることを発見した。すなわち、クリック周波数は周期的であり、歯のピッチおよび回転速度に依存するが、半径方向の遊びおよびほぼ正反対に位置付けられたラチェット部材281により、周波数の変動が導入され、これは望ましくない場合がある。この効果は、ラチェット部材の第1のセット281c、265.1、および第2のセット281d、265.1の各々に対応する、第1の信号および第2の信号の各々における変動として観察され得る。これらの信号のいずれかが、周波数を増加および減少する時間間隔を有するように変化する場合、それは、半径方向の遊びによる影響の指標となり得る。特に、信号のうちの1つの周波数が増加する場合、これは、半径方向の遊びからの影響の指標である。
【0106】
本発明の発明者らは、移動可能なラチェット本体とハウジングとの間に半径方向の遊びが提供される場合、信号の各々の周波数は増加および減少の様式で変化し得ることを発見した。したがって、この変動を防止するために、移動可能なラチェット本体(280、380、480)またはハウジングは、移動可能なラチェット本体とハウジングとの間に付勢半径方向の反応力を提供して、半径方向の遊びによる影響に対向し、それによって、第1の周期的な信号または第2の周期的な信号の周波数の変動を最小化するように適合されている。
【0107】
図7Aおよび図7Bは、2つのアームの先端の間の接続線(CL)に対して半径方向かつ垂直に力(F)で作用する一体化されたばね280.1を追加することによって、半径方向の遊びの影響が制限または排除された、図6の実施形態のさらなる発展を示している。図7Bで最もよく分かるように、駆動管280の小さく角度的に延在するセクション280.1は、遊びの影響を制限するために半径方向に延在しており、駆動管281の近位端から軸方向に延在する2つのスリット280.2は、セクション、またはばね要素280.1の半径方向の可撓性を増加させ、すなわち、スリット280.2は、接続ライン(CL)に対して垂直なばね力(F)を提供する。セクション280.1は、駆動管の残りのセクションよりも半径方向にさらに延在しており、すなわち、セクション280.1は、駆動管280の残りのセクションよりも大きな外側半径を有する。
【0108】
図5Aと同様に、図5Bは、駆動管380の代替的な実施形態の作業原理を示している。駆動部材380を、図8の斜視図に示している。駆動管380は、小さな角画分内に2つのラチェット部材を備え、すなわち、2つのラチェット部材の先端の間に小さな角オフセットがある。この配設は、図5Aの実施形態で見られた、駆動管の半径方向の移動からの組み合わされたクリック音の印象への望ましくない影響を実際に排除し、ここで、クリックアームは、ほぼ180度の距離で位置付けられており、ばね要素はない。図示の実施例では、先端間の距離は、2.5であり、これは、生成された可聴信号が抗相にあることを意味する。しかし、距離は、整数+0.1、0.2...0.9倍ピッチであってもよい。図8の示される実施例における整数は、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、または9であり、ピッチの画分は、好ましくは0.5である。駆動管は、直径1cmであってもよく、ピッチは、内面の周囲にわたる24の等サイズの歯によって画定されてもよい。こうした実施形態は、実際的な理由から、半径方向の遊びの影響を排除する。これは、ラチェット部材281が、駆動管を半径方向に付勢し、ハウジングの側面に向かって押すばね要素として機能するためである。
【0109】
半径方向の遊びの影響はほぼ排除されるが、クリック音の少量の望ましくない印象が残る場合、図6Aおよび図6Bに示すように、実施形態に、ばね要素を追加的に提供してもよい。
【0110】
図5Cは、図5Bおよび図8の代替的な実施形態の作業原理を示しており、ここで、のこぎり歯形状の歯165.1の単一の軌道は、2つの軌道365.1に分割され、またはのこぎり歯の軌道の数は、軸分離されたラチェット部材381の数に対応している。
【0111】
ラチェット部材381の間に角オフセットを提供する別のまたは追加の代替として、歯の間に角オフセットを提供することができる。
【0112】
別のまたは追加の代替として、歯のピッチは、2つの軌道間で異なってもよく、それによって、生成された信号間の周波数は異なるものとなる。しかしながら、第1の信号と第2の信号の周波数の間の比は、一定である。
【0113】
保管中に2つのアームのうちの1つが永久的に偏向すると、アームが弛緩することがある。これは、保管中に問題のアームが静止している1つの歯を除去することによって解決され得る。第1のクリックと第2のクリックは実質的に同時であり、以下のクリックとは異なっており、歯の除去は、音に実用的な影響を持たない。
【0114】
したがって、別のまたは追加の代替として、歯のうちの一方を除去して、両方のラチェット部材281を保管中に静止位置に置くことができる。
【0115】
図9は、駆動管が、小さな角度または角度セクション、すなわち、数本の歯内に、2つの可撓性部材481とともに提供される、代替的な実施形態を示している。動作原理は、図5Aに示されている。可撓性部材481cは、真っ直ぐな可撓性アームによって形成され、第2の可撓性部材481dは、屈曲した可撓性アームによって形成され、それによって、2つの可撓性部材の先端が、軸方向に整列される。これにより、駆動管が得られ、この場合において、のこぎり歯の軌道の軸方向延長に対する要件は限定され、半径方向の遊びの影響が低減される。
【0116】
解決策はまた、高粘度液体および/または長くて薄い注射針で動作する他の電動式注射装置に関連する。
【0117】
本開示による本発明はまた、国際公開第04078239号に記載されるような代替的な固定用量装置に実装されてもよく、さらに、駆動部材(ねじリング)とハウジングとの間に、ラチェット機構が提供されてもよい。こうした代替的な薬剤送達装置について、用量送達機構は、ハウジングに対して軸方向にスプラインされたピストンロッドと、ピストンロッドの外ねじとねじ込み可能に係合された駆動部材と、を備える。駆動部材が回転すると、回転的に固定されるが、軸方向に移動可能なピストンロッドが、前方に押し出される。さらに、駆動部材は、移動可能なラチェット本体を提供するように適合され、ハウジングは、一方向回転を確実にするために、固定ラチェット本体を提供するべきである。さらに、移動可能なまたは固定されたラチェット本体は、可撓性アームと、のこぎり歯形状の歯の1つ以上の軌道を有する他の本体とが提供されているべきである。さらに、可撓性アームは、位相外のクリック音を提供するためにオフセットされているべきである。
【0118】
本発明はまた、国際公開第14161952号に記載されるような調整可能な用量を有する薬剤送達装置に実装されてもよい。本開示による一実施形態では、このような薬剤送達装置には、位相外のクリック音を提供するために、オフセットされたラチェットアームが追加的に提供される。
【0119】
本発明はまた、図6図10に関連して国際公開第99/38554号に記載されるような薬剤送達装置に実装されてもよく、ここで、ピストンロッドは、ハウジングおよび軸方向に移動可能な押しボタンにねじ込まれる。押しボタンが押されると、純粋な軸方向移動でピストンが回転し、前進する。ピストンロッドに対して軸方向にスプラインされたピストンロッドガイドは、薬剤の排出中にピストンによって回転する。ピストンロッドガイドは、一方向の移動を確実にするために、ラチェットが提供されている。したがって、本開示による一実施形態では、回転および前進ピストンロッドによって回転および駆動されるピストンロッドガイドは、位相外のクリック音を提供するために、オフセットされたラチェットアームが追加的に提供される。
【0120】
さらなる例示的な実施形態
例示的な実施形態では、ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置100が提供されており、装置は、
-ハウジング140、165、365と、
-ピストン136を有する医薬貯蔵部135と、
-駆動機構であって、(i)遠位移動中にピストン136を駆動し、それによって、医薬の量を排出するためのピストンロッド109と、(ii)ピストンロッド109を駆動するために動作可能に配設された駆動部材280、380、480と、回転可能に配設された移動可能なラチェット本体280、380、480と、を備え、移動可能なラチェット本体280、380、480が、ピストンロッド136に動作可能に接続されており、かつハウジング140、165、365に対して回転するように適合されている、駆動機構と、を備える。
【0121】
ハウジングは、移動可能なラチェット本体280、380、480と協働し、それによって、薬剤の排出中にピストンロッド136のラチェット式ガイドを可能にするラチェット機構を提供するように配設された、固定的なラチェット本体165.1、365.1を備える。
【0122】
ラチェット機構は、医薬の排出中に、移動可能なラチェット本体と固定的なラチェット本体との間の相対的な移動に応答して、第1および第2の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材281、381、481、165.1、365.1を備える。
【0123】
ラチェット機構は、第1および第2の複数の周期的な信号が位相外に生成するように適合されており、それにより、信号の各々は、ユーザによって区別可能である。
【0124】
実施形態のさらなる態様では、ピストンロッド109は、ハウジングとねじ込み係合し、駆動部材280、380、480は、ピストンロッド109に対して軸方向にスプラインされ、駆動部材280、380、480の回転移動は、医薬の排出中にピストンロッド109の軸方向移動を誘発する。
【0125】
代替的に、ピストンロッド109は、ハウジングに対して軸方向にスプラインされ、駆動部材280、380、480は、医薬の排出中にピストンロッド109とねじ込み係合する。
【0126】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット本体は、駆動部材280、380、480の一部分として提供され、可聴信号は、ピストンロッドと一緒の駆動部材280、380、480の回転によって生成される。
【0127】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット本体280は、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、移動可能なラチェット本体280とハウジングとの間の半径方向の遊びの影響に対抗する、ばね要素280.1を備える。代替的に、ハウジングは、駆動部材に作用するばね要素を備える。
【0128】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット本体280のラチェット部材281の先端は、170~190度の角度距離内に位置付けられている。
【0129】
代替的に、移動可能なラチェット本体380、480のラチェット部材381、481の先端は、45度の角度距離内に位置付けられて、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、移動可能なラチェット本体380、480とハウジングとの間の半径方向の遊びの影響に対向する。
【0130】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット部材281、481の先端は、軸方向に整列し、それによって、固定的なラチェット部材165.1上の先端接触点は、軸方向に整列する。
【0131】
代替的に、ピストンロッド109は、ハウジングとねじ込み係合し、駆動部材は、ピストンロッド109とねじ込み係合し、駆動部材の軸方向移動は、医薬の排出中にピストンロッド109の回転および軸方向移動を誘発する。
【0132】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット本体は、ピストンロッド109に対して軸方向にスプラインされたピストンロッドガイドの一部分として提供され、可聴信号は、ピストンロッドガイドと一緒のピストンロッド109の回転によって生成される。
【0133】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット本体は、ハウジングに対して半径方向の力を提供し、それによって、移動可能なラチェット本体とハウジングとの間の半径方向の遊びの影響を排除する、ばね要素を備える。
【0134】
実施形態のさらなる態様では、ラチェット機構は、ピストンロッドの近位移動を阻害するように適合されている。
【0135】
実施形態のさらなる態様では、駆動機構は、周波数間に一定の比を有する周期的な信号を生成するように適合されており、排出中の一貫した音の生成を提供する。
【0136】
実施形態のさらなる態様では、駆動機構は、同じ周波数を有する周期的な信号を生成するように適合されており、排出中の一貫した音の生成を提供する。
【0137】
実施形態のさらなる態様では、駆動機構は、逆位相で周期的な信号を生成し、排出中の一貫した音の生成および時間内の均質な解像度を提供するように適合されている。
【0138】
実施形態のさらなる態様では、駆動機構は、医薬の排出中に、移動可能なラチェット本体と固定的なラチェット本体との間の相対的な移動に応答して、第3の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第3のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材281、381、481、165.1、365.1をさらに備える。ラチェット機構は、第1、第2、および第3の複数の周期的な信号が位相外に生成するように適合されており、それにより、信号の各々は、ユーザによって区別可能である。
【0139】
実施形態のさらなる態様では、駆動機構は、時間内の均質な解像度の周期的な信号を生成し、排出中の一貫した音の生成を提供するように適合されている。
【0140】
実施形態のさらなる態様では、移動可能なラチェット部材281、381、481は、1つ以上の固定ラチェット部材165.1、365.1と係合するための先端を有する可撓性アームを備え、ここで、1つ以上の固定ラチェット部材の各々は、歯のリングを備える。
【0141】
実施形態のさらなる態様では、固定されたラチェット部材は、1つ以上の移動可能なラチェット部材と係合するための先端を有する可撓性アームを備え、ここで、1つ以上の移動可能なラチェット部材の各々は、歯のリングを備える。
【0142】
さらなる態様では、駆動機構は、340~360度の回転の間に固定用量を送達するために適合されており、ここで、ピストンロッドは、1~2cmで前進するように適合されており、それにより、ピストンロッドのピッチは比較的高い。
【0143】
別の例示的な実施形態では、ある量の医薬を送達するための薬剤送達装置100の使用方法が提供されており、装置は、
-ハウジング140、165、365と、
-ピストン136を有する医薬貯蔵部135と、
-駆動機構であって、遠位移動中にピストン136を駆動し、それによって、医薬の量を排出するためのピストンロッド109と、ピストンロッド109を駆動するために動作可能に配設された駆動部材280、380、480と、回転可能に配設された移動可能なラチェット本体280、380、480と、を備え、移動可能なラチェット本体280、380、480が、ピストンロッド136に動作可能に接続されており、かつハウジング140、165、365に対して回転するように適合されている、駆動機構と、を備える。
【0144】
ハウジングは、移動可能なラチェット本体165.1、365.1と協働し、それによって、薬剤の排出中にピストンロッド136のラチェット式ガイドを可能にするラチェット機構を提供するように配設された、固定的なラチェット本体165.1、365.1を備える。
【0145】
ラチェット機構は、医薬の排出中に、移動可能なラチェット本体と固定的なラチェット本体との間の相対的な移動に応答して、第1および第2の複数の周期的な可聴信号を提供するように適合された、第1および第2のセットの移動可能かつ固定的なラチェット部材281、381、481、165.1、365.1を備える。
【0146】
方法は、駆動機構を起動または駆動することを含み、それによって、第1および第2の複数の周期的な信号を位相外に生成し、それによって、信号の各々は、ユーザによって区別可能である。
【0147】
例示的な実施形態は、注射針を有する薬剤送達装置のみを示すが、本発明はまた、針の代わりに輸液セットと接続可能な薬剤送達装置に実装され得る。本開示による本発明は、耐久性および事前充填/単回使用の両方の装置に適している。
【0148】
例示的実施形態の上記の説明では、異なる構成要素について説明された機能を提供する異なる構造および手段を、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度まで、説明してきた。異なる構成要素に対する詳細な構築および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8
図9
【国際調査報告】