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特表2023-526355マウスTCR遺伝子のコピー数を決定するためのキット及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】マウスTCR遺伝子のコピー数を決定するためのキット及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20230614BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230614BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20230614BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570176
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021032744
(87)【国際公開番号】W WO2021236508
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】202010423994.3
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370577
【氏名又は名称】シャンハイ・セルラー・バイオファーマシューティカル・グループ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ジアチー
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,イーホン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジャーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】チュー,シーグイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ジュンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジシュン
(72)【発明者】
【氏名】レン,ジャーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS32
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するためのシステム、キット及び方法を提供する。プライマーは、マウスTCR遺伝子の保存領域に特異的である。プライマー/プローブは、良好な増幅効率を提供し、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を迅速かつ正確に決定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するためのシステムであって、前記システムが、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対、及び第4のプライマー対から選択される1つ以上のプライマー対を含み、前記第1のプライマー対が、(i)配列番号1に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号2に示される核酸配列を含むプライマーを含み、前記第2のプライマー対が、(i)配列番号4に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号5に示される核酸配列を含むプライマーを含み、前記第3のプライマー対が、(i)配列番号7に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号8に示される核酸配列を含むプライマーを含み、前記第4のプライマー対が、(i)配列番号10に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号11に示される核酸配列を含むプライマーを含む、システム。
【請求項2】
第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、及び第4のプローブから選択される1つ以上のプローブを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のプローブが、配列番号3に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第2のプローブが、配列番号6に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第3のプローブが、配列番号9に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第4のプローブが、配列番号12に示される核酸配列を含むTaqManプローブである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、前記第1のプライマー対及び前記第1のプローブを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
マウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するためのキットであって、前記キットが、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対、及び第4のプライマー対から選択される1つ以上のプライマー対を含み、前記第1のプライマー対が、(i)配列番号1に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号2に示される核酸配列を含むプライマーを含み、前記第2のプライマー対が、(i)配列番号4に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号5に示される核酸配列を含み、前記第3のプライマー対が、(i)配列番号7に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号8に示される核酸配列を含むプライマーを含み、前記第4のプライマー対が、(i)配列番号10に示される核酸配列を含むプライマー、及び(ii)配列番号11に示される核酸配列を含むプライマーを含む、キット。
【請求項6】
第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、及び第4のプローブから選択される1つ以上のプローブを更に含む、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記第1のプローブが、配列番号3に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第2のプローブが、配列番号6に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第3のプローブが、配列番号9に示される核酸配列を含むTaqManプローブであり、前記第4のプローブが、配列番号12に示される核酸配列を含むTaqManプローブである、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記キットが、前記第1のプライマー対及び前記第1のプローブを含む、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
サンプル中のマウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するための方法であって、前記方法が、
(a)サンプルを請求項1~4のいずれか一項に記載のシステムと接触させること、及び
(b)核酸増幅反応を行うことを含む、方法。
【請求項10】
前記マウスTCR遺伝子が導入遺伝子である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である、9の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月18日に出願された中国特許出願第2020104239943号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子データで提出された配列表を包含し、その全体が参照により本明細書に援用される。2021年5月17日に作成された当該ASCIIコピーは、11299-009940-WO0_ST25.txtという名称であり、サイズは4KBである。
【0003】
本開示は、配列分析及びバイオインフォマティクスの分野に関し、具体的には、マウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するためのキット及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
T細胞受容体(TCR)は、抗原ペプチド-MHC(主要組織適合遺伝子複合体)複合体を特異的に認識して結合する、T細胞の表面上のタンパク質複合体である。TCRは、一般的には、CD3分子との複合体の形態で存在する。一部のTCRはα及びβペプチド鎖で構成され、一方、一部はγ及びδペプチド鎖で構成される。
【0005】
ヒト腫瘍特異的抗原を使用してHLAトランスジェニックマウスを免疫すると、ヒト腫瘍特異的抗原を認識できる高親和性マウスTCRを発見できる。これは、治療上の価値を有するTCRをスクリーニングするための重要な方法である。
【0006】
TCR-T療法は、固形腫瘍の治療において幅広い展望を示している。しかし、遺伝子操作された細胞の生物学的安全性を考慮して、FDAは、遺伝子操作された細胞では、導入遺伝子が細胞当たり5コピーを超えることはできないと規定している。これは、TCR-Tの品質モニタリング及び生産において、導入遺伝子のコピー数を迅速かつ正確に決定する必要があることを示している。TCR-Tの動物実験では、動物サンプル(組織又は血液)中のヒトTCR遺伝子のコピー数は、試験動物におけるTCR-Tの増幅及び増殖状態を反映することが可能である。TCR-Tの臨床試験では、試験サンプル(組織又は血液)中の外因性TCR遺伝子のコピー数を決定することで、被験体のTCR-Tの増幅及び増殖状態を反映することができ、これを、TCR-T治療のための主要な薬物動態(PK)指標として使用することができる。
【0007】
現在、TCR遺伝子コピーの検出についての関連する報告は存在していない。したがって、マウスTCRスクリーニングの普及と臨床製品の開発とを用いて、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を迅速かつ正確に決定できる方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、マウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するためのシステム又はキットを提供する。このシステム又はキットは、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対及び第4のプライマー対から選択される1つ以上のプライマー対を含み得る。
【0009】
第1のプライマー対は、(i)配列番号1に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号2に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0010】
第2のプライマー対は、(i)配列番号4に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号5に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0011】
第3のプライマー対は、(i)配列番号7に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号8に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0012】
第4のプライマー対は、(i)配列番号10に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号11に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0013】
システム又はキットは、第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、及び第4のプローブから選択される1つ以上のプローブを更に含み得る。
【0014】
第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、又は第4のプローブは、TaqManプローブであり得る。
【0015】
第1のプローブは、配列番号3に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0016】
第2のプローブは、配列番号6に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0017】
第3のプローブは、配列番号9に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0018】
第4のプローブは、配列番号12に示される核酸配列と約80%~約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0019】
特定の実施形態において、システム又はキットは、以下のプライマー/プローブセットのうちの1つ以上を含んでもよい:第1のプライマー対及び第1のプローブ、第2のプライマー対及び第2のプローブ、第3のプライマー対及び第3のプローブ、並びに第4のプライマー対及び第4のプローブ。
【0020】
特定の実施形態において、システム又はキットは、第1のプライマー対及び第1のプローブを含み得る。
【0021】
本開示は、サンプル中のマウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するための方法を提供する。この方法は、(a)サンプルを本システム又はキットと接触させること、及び(b)核酸増幅反応を行うことを含み得る。
【0022】
特定の実施形態において、マウスTCR遺伝子は導入遺伝子である。
【0023】
特定の実施形態において、核酸増幅反応はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。
【0024】
本開示の目的は、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を迅速かつ正確に決定することができるマウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するための試薬を提供することである。
【0025】
本開示の第1の態様では、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するためのキットが提供される。このキットは、マウスTCR遺伝子の保存領域についてのプライマー対とTaqManプローブとを含み、プライマーは以下からなる群から選択される:
(i)配列番号1に示される配列を有するプライマーと、配列番号2に示される配列を有するプライマーとを含む第1のプライマー対(D1)、
(ii)配列番号4に示される配列を有するプライマーと、配列番号5に示される配列を有するプライマーとを含む第2のプライマー対(A1)、及び
(iii)第1のプライマー対と第2のプライマー対との組み合わせ。
【0026】
特定の実施形態において、プライマー対は第1のプライマー対であり、キットは、配列番号3に示される配列を含む第1のTaqManプローブを更に含む。
【0027】
特定の実施形態において、プライマー対は第2のプライマー対であり、キットは、配列番号6に示される配列を含む第2のTaqManプローブを更に含む。
【0028】
特定の実施形態において、キットは、以下からなる群から選択されるプライマー対を更に含む:
(iii)配列番号7に示される配列を有するプライマーと、配列番号8に示される配列を有するプライマーとを含む第3のプライマー対(B1)、及び
(iv)配列番号10に示される配列を有するプライマーと、配列番号11に示される配列を有するプライマーとを含む、第4のプライマー対(C1)。
【0029】
特定の実施形態において、プライマー対は第3のプライマー対であり、キットは、配列番号9に示される配列を含む第3のTaqManプローブを更に含む。
【0030】
特定の実施形態において、プライマー対は第4のプライマー対であり、キットは、配列番号12に示される配列を含む第4のTaqManプローブを更に含む。
【0031】
特定の実施形態において、TaqManプローブの5’末端は蛍光レポーターで標識され、3’末端は蛍光クエンチャーで標識される。あるいは、TaqManプローブの3’末端は蛍光レポーターで標識され、TaqManプローブの5’末端は蛍光クエンチャーで標識される。
【0032】
特定の実施形態において、蛍光レポーターはFAM及びVICであってもよく、一方、クエンチャーはMGB及びTAMRAであってもよい。
【0033】
特定の実施形態において、蛍光レポーターはFAMであり、一方、クエンチャーはMGBである。
【0034】
本開示の第2の態様では、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するための試薬の組み合わせが提供される。試薬の組み合わせは、第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブを含み、第1のプライマー対は、配列番号1に示される配列を有するプライマー及び配列番号2に示される配列を有するプライマーを含み、第1のTaqManプローブの配列は、配列番号3に示される通りである。
【0035】
本開示の第3の態様では、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するための試薬の組み合わせが提供される。試薬の組み合わせは、第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブを含み、第2のプライマー対は、配列番号4に示される配列を有するプライマーと、配列番号5に示される配列を有するプライマーとを含み、第2のTaqManプローブの配列は、配列番号6に示される通りである。
【0036】
本開示の第4の態様では、本開示の第1の態様によるキット又は本開示の第2若しくは第3の態様による試薬の組み合わせの使用が提供される。キット又は試薬の組み合わせは、マウスTCRの品質管理用の試験製品を調製するために使用される。
【0037】
本開示の第5の態様では、マウスTCRのインビトロ品質管理のための方法が提供される。この方法は、以下の工程を含み得る:
(a)試験されるサンプルを提供する工程、
(b)マウスTCR遺伝子の保存領域のプライマー対及びTaqManプローブを使用して、試験されるサンプルに対してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を実行し、それによって、TCR導入遺伝子のコピー数を決定する工程、並びに
(c)TCR導入遺伝子の決定されたコピー数に基づいて、試験されるサンプルの品質を評価する工程。
【0038】
特定の実施形態において、プライマー濃度は0.45μMであり、プローブ濃度は0.125μMである。
【0039】
特定の実施形態において、標準製品のコピーの最小数は10であり、又は最小コピー数ポイントは10コピーである。
【0040】
特定の実施形態において、この方法は非診断的かつ非治療的である。
【0041】
特定の実施形態において、工程(b)において、第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブが使用される。
【0042】
特定の実施形態において、工程(b)において、(Y1)第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブ、並びに(Y3)RNase P参照遺伝子プライマー/プローブが同時に使用される。
【0043】
特定の実施形態において、工程(b)において、一重又は多重(例えばデュプレックス)PCR増幅が使用される。
【0044】
特定の実施形態において、工程(b)において、第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブが使用される。
【0045】
特定の実施形態において、工程(b)において、第3のプライマー対及び第3のTaqManプローブが使用される。
【0046】
特定の実施形態において、工程(b)において、第4のプライマー対及び第4のTaqManプローブが使用される。
【0047】
特定の実施形態において、工程(b)において、(Y1)第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブ、並びに(Y2)第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブが、PCR増幅のために同時に又は連続して使用される。
【0048】
特定の実施形態において、工程(b)において、Ct(閾値サイクル)値を比較することにより、TCR導入遺伝子のコピー数が決定される。
【0049】
特定の実施形態において、工程(b)において、試験されるサンプルのCt値を標準値又は検量線と比較して、TCR導入遺伝子のコピーを決定する。
【0050】
特定の実施形態において、試験されるサンプルには、核酸サンプルが含まれる。
【0051】
特定の実施形態において、核酸サンプルは、M個の細胞から抽出された全核酸であり、Mは正の整数である。例えば、Mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。
【0052】
特定の実施形態において、工程(b)は、以下の工程を含む:
S1)マウスTCR遺伝子の保存領域を標的遺伝子断片として選択する工程、
S2)標的遺伝子断片をベクターに挿入して標準プラスミドを構築し、これを標準原液とし、段階希釈して一連の標準物質を得る工程、
S3)標準物質及び試験されるサンプルの遺伝子に対してリアルタイム蛍光定量的PCR(qPCR)を行い、標準物質のCt値及びコピー数に基づいて検量線を作成し、計算式を得る工程、並びに
S4)試験されるサンプルのCt値を工程S3)の検量線の計算式に当てはめ、試験されるサンプルの遺伝子コピーを得る工程。
【0053】
特定の実施形態において、工程(b)は、以下の工程を含む:
R1)標的遺伝子断片としてのマウスTCR遺伝子の保存領域、及び既知の配列を有する参照遺伝子を選択する工程、
R2)標的遺伝子断片をベクターに挿入して標準プラスミドを構築し、これを標準ストック溶液として使用し、次いで段階希釈を行って一連の標準物質を得る工程、
R3)本開示の第1の態様に係る試薬を使用して、標準物質の遺伝子及び試験されるサンプルに対してリアルタイム蛍光定量的PCR(qPCR)を行い、一連の標準物質のCt値及びコピー数に基づいて検量線を作成し、計算式を得る工程、
R4)参照遺伝子(例えば、RNaseP遺伝子)のCt値を使用して、各サンプルのキャリブレーション係数を計算する工程、並びに
R5)ゲノム1μg当たりの参照遺伝子のコピー数と比較することにより、試験されるサンプル中のゲノム1μg当たりのTCR遺伝子のコピー数を得る工程。
【0054】
特定の実施形態において、工程(b)は、ヒトバックグラウンドDNAを追加する工程を更に含む。
【0055】
特定の実施形態において、ヒトバックグラウンドDNAは、末梢血単核細胞(PBMC)のゲノムDNAである。
【0056】
特定の実施形態において、ヒトバックグラウンドDNAの量は50ngである。
【0057】
本開示の範囲内で、本開示の前述の技術的特徴及び以下で詳細に説明する技術的特徴(例えば、実施形態)を互いに組み合わせて、新しい又は好ましい技術的解決法を形成できることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】マウスTCR遺伝子の保存領域の配列に従って設計された4セットのプライマー/プローブを示す。
図2-1A】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-1B】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-1C】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-1D】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-2A】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-2B】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-2C】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図2-2D】4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応の検量線を示す。図2-1A、2-1B、2-1C、及び2-1Dは、バックグラウンドのゲノムDNAの非存在下での曲線を示す。図2-2A、2-2B、2-2C、及び2-2Dは、バックグラウンドゲノムDNAの存在下での曲線を示す。
図3A】デュプレックス反応における4組のプライマー/プローブの検量線を示す。
図3B】デュプレックス反応における4組のプライマー/プローブの検量線を示す。
図3C】デュプレックス反応における4組のプライマー/プローブの検量線を示す。
図3D】デュプレックス反応における4組のプライマー/プローブの検量線を示す。
図4-1】検量線のコピー数の点が最も少ない選択を示す。図4-1は、検量線上の点の増幅曲線を示す。図4-2は、10コピーを最低点として使用した検量線であり、図4-3は、10コピーを最低点として削除した後の検量線である。
図4-2】検量線のコピー数の点が最も少ない選択を示す。図4-1は、検量線上の点の増幅曲線を示す。図4-2は、10コピーを最低点として使用した検量線であり、図4-3は、10コピーを最低点として削除した後の検量線である。
図4-3】検量線のコピー数の点が最も少ない選択を示す。図4-1は、検量線上の点の増幅曲線を示す。図4-2は、10コピーを最低点として使用した検量線であり、図4-3は、10コピーを最低点として削除した後の検量線である。
図5-1】D1プライマー/プローブについて異なる濃度でのデュプレックス反応試験を示す。図5-1は、1xプライマー濃度(0.9μMプライマー、0.25μMプローブ)での試験を示す。図5-2は、0.5x濃度(0.45μMプライマー、0.125μMプローブ)での試験を示す。図5-3は、2×プライマー濃度(1.8μMプライマー、0.5μMプローブ)での試験を示す。
図5-2】D1プライマー/プローブについて異なる濃度でのデュプレックス反応試験を示す。図5-1は、1xプライマー濃度(0.9μMプライマー、0.25μMプローブ)での試験を示す。図5-2は、0.5x濃度(0.45μMプライマー、0.125μMプローブ)での試験を示す。図5-3は、2×プライマー濃度(1.8μMプライマー、0.5μMプローブ)での試験を示す。
図5-3】D1プライマー/プローブについて異なる濃度でのデュプレックス反応試験を示す。図5-1は、1xプライマー濃度(0.9μMプライマー、0.25μMプローブ)での試験を示す。図5-2は、0.5x濃度(0.45μMプライマー、0.125μMプローブ)での試験を示す。図5-3は、2×プライマー濃度(1.8μMプライマー、0.5μMプローブ)での試験を示す。
図6-1】バックグラウンドgDNAの異なる濃度でのD1プライマー/プローブのデュプレックス反応試験を示す。図6-1は、100ng gDNAを用いた試験を示す。図6-2は、50ng gDNAを用いた試験を示す。図6-3は、25ng gDNAを用いた試験を示す。
図6-2】バックグラウンドgDNAの異なる濃度でのD1プライマー/プローブのデュプレックス反応試験を示す。図6-1は、100ng gDNAを用いた試験を示す。図6-2は、50ng gDNAを用いた試験を示す。図6-3は、25ng gDNAを用いた試験を示す。
図6-3】バックグラウンドgDNAの異なる濃度でのD1プライマー/プローブのデュプレックス反応試験を示す。図6-1は、100ng gDNAを用いた試験を示す。図6-2は、50ng gDNAを用いた試験を示す。図6-3は、25ng gDNAを用いた試験を示す。
図7A】50ngのバックグラウンド下で、0.45μMプライマー、0.125μMプローブを用いたD1プライマー/プローブについての複数回反復デュプレックス反応試験を示す。
図7B】50ngのバックグラウンド下で、0.45μMプライマー、0.125μMプローブを用いたD1プライマー/プローブについての複数回反復デュプレックス反応試験を示す。
図7C】50ngのバックグラウンド下で、0.45μMプライマー、0.125μMプローブを用いたD1プライマー/プローブについての複数回反復デュプレックス反応試験を示す。
図7D】50ngのバックグラウンド下で、0.45μMプライマー、0.125μMプローブを用いたD1プライマー/プローブについての複数回反復デュプレックス反応試験を示す。
図8】マウスTCR-T細胞療法を受けている患者の血液サンプル中のTCR遺伝子コピー数の決定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本システム及び方法は、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を迅速かつ正確に決定することができる。これは、臨床試験及び生産中にT細胞中のマウスTCR遺伝子のコピー数を決定するための信頼できるアプローチを提供する。
【0060】
本開示は、マウスTCR遺伝子の保存領域に特異的な4セットのプライマー/TaqManプローブを提供する。本方法において、ヒトバックグラウンドDNAの存在下又は非存在下での標的遺伝子のシングルプレックス反応を行うことができる。ヒトバックグラウンドDNAの存在下又は非存在下での標的遺伝子及び参照遺伝子のデュプレックス反応を行うことができる。
【0061】
本開示は、マウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するためのシステム又はキットを提供する。このシステム又はキットは、第1のプライマー対、第2のプライマー対、第3のプライマー対及び第4のプライマー対から選択される1つ以上のプライマー対を含み得る。
【0062】
第1のプライマー対は、配列番号1に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号2に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はこの核酸配列を有する、又は本質的にこの核酸配列からなる、又はこの核酸配列からなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0063】
第2のプライマー対は、配列番号4に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号5に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はこの核酸配列を有する、又は本質的にこの核酸配列からなる、又はこの核酸配列からなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0064】
第3のプライマー対は、配列番号7に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号8に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はこの核酸配列を有する、又は本質的にこの核酸配列からなる、又はこの核酸配列からなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0065】
第4のプライマー対は、配列番号10に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)プライマー、及び(ii)配列番号11に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はこの核酸配列を有する、又は本質的にこの核酸配列からなる、又はこの核酸配列からなる)プライマーを含む(又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0066】
システム又はキットは、第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、及び第4のプローブから選択される1つ以上のプローブを更に含み得る。
【0067】
第1のプローブ、第2のプローブ、第3のプローブ、又は第4のプローブは、TaqManプローブであり得る。
【0068】
第1のプローブは、配列番号3に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0069】
第2のプローブは、配列番号6に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0070】
第3のプローブは、配列番号9に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0071】
第4のプローブは、配列番号12に示される核酸配列に対して、約80%~約100%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約81%、少なくとも又は約82%、少なくとも又は約83%、少なくとも又は約84%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約86%、少なくとも又は約87%、少なくとも又は約88%、少なくとも又は約89%、少なくとも又は約90%、少なくとも又は約91%、少なくとも又は約92%、少なくとも又は約93%、少なくとも又は約94%、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約96%、少なくとも又は約97%、少なくとも又は約98%、少なくとも又は約99%、又は約100%同一である核酸配列を含む(又はそれを有する、又は本質的にそれからなる、又はそれからなる)ことができる。
【0072】
特定の実施形態において、このシステム又はキットは、第1のプライマー対及び第1のプローブ、第2のプライマー対及び第2のプローブ、第3のプライマー対及び第3のプローブ、第4のプライマー対及び第4のプローブの1つ以上のプライマー/プローブセットを含み得る。
【0073】
特定の実施形態において、このシステム又はキットは、第1のプライマー対及び第1のプローブを含み得る。
【0074】
本開示は、サンプル中のマウスT細胞受容体(TCR)遺伝子のコピー数を決定するための方法を提供する。この方法は、(a)サンプルを本発明のシステム又はキットと接触させること、及び(b)核酸増幅反応を行うことを含み得る。
【0075】
特定の実施形態において、マウスTCR遺伝子は導入遺伝子である。
【0076】
特定の実施形態において、核酸増幅反応はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。
【0077】
プライマーは、核酸とハイブリダイズ(又はアニーリング)することができ、適切な条件下(例えば、適切な緩衝液中及び適切な温度で)でヌクレオチド(RNA又はDNA)重合のための開始部位として機能することができるオリゴヌクレオチドであり得る。プライマーは、標的遺伝子(又は鋳型)に特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドであり得、鋳型、ポリメラーゼ及び適切な緩衝液及び試薬の存在下で、伸長してプライマー伸長産物を形成することができる。いくつかの実施形態において、プライマーは検出可能な部分で標識される。いくつかの実施形態において、プライマーは標識されていない。
【0078】
プローブは、相補配列の標的核酸に結合できるオリゴヌクレオチドであり得る。プローブを検出可能な標識で標識して、プローブの容易な検出を可能にすることができる。しかしながら、代替的に、プローブは標識されていなくてもよいが、標識されたリガンドとの特異的結合によって直接的又は間接的に検出可能であり得る。プライマーはプローブとしても機能し得る。いくつかの実施形態において、プローブはFRETプローブである。いくつかの実施形態において、プローブは、TaqManプローブ、Molecular Beacon、又はScorpionプローブである。いくつかの実施形態において、プローブは検出可能な部分で標識される。本明細書で使用される検出可能な部分には、蛍光色素などの直接検出可能な部分、及び結合対のメンバーなどの間接的に検出可能な部分の両方が含まれる。検出可能な部分が結合対のメンバーである場合、いくつかの実施形態において、結合対の第2のメンバーに結合した検出可能な標識とともにプローブをインキュベートすることによって、プローブを検出可能にすることができる。いくつかの実施形態において、プローブが、例えば、マイクロアレイ又はビーズ上の捕捉プローブである場合などでは、プローブは標識されない。いくつかの実施形態において、プローブは、例えば、ポリメラーゼによって伸長可能ではない。いくつかの実施形態において、プローブは伸長可能である。
【0079】
いくつかの実施形態において、プライマー又はプローブは、標的遺伝子からの配列の少なくとも又は約8個、少なくとも又は約9個、少なくとも又は約10個、少なくとも又は約11個、少なくとも又は約12個、少なくとも又は13個、少なくとも又は約14個、少なくとも又は約15個、少なくとも又は約16個、少なくとも又は約17個、少なくとも又は約18個、少なくとも又は約19個、少なくとも又は約20個、少なくとも又は約21個、少なくとも又は約22個、少なくとも又は約23個、少なくとも又は約24個、少なくとも又は約25個、少なくとも又は約26個、少なくとも又は約27個、少なくとも又は約28個、少なくとも又は約29個、又は少なくとも又は約30個の連続するヌクレオチドに対して、同一であるか又は相補的である。いくつかの実施形態において、プライマーはまた、標的遺伝子に対して同一でないか又は相補的でない部分又は領域を含み得る。いくつかの実施形態において、標的遺伝子に対して同一であるか又は相補的であるプライマーの領域は、標的遺伝子に対して同一でないか又は相補的でないプライマーのいかなる領域も同一であるか又は相補的である領域を破壊しないように、隣接している。プライマー又はプローブは、標的分子に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的であり得る。特定の実施形態において、プライマー又はプローブは、少なくとも又は約7ヌクレオチドの配列にわたって、10-30ヌクレオチドの範囲の配列にわたって、少なくとも14-25ヌクレオチドの配列にわたって、標的核酸配列に対して少なくとも65%相補的であり得る。いくつかの実施形態において、プライマー又はプローブは、少なくとも又は約8個、少なくとも又は約9個、少なくとも又は約10個、少なくとも又は約11個、少なくとも又は約12個、少なくとも又は約13個、少なくとも又は約14個、少なくとも又は約15個、少なくとも又は約16個、少なくとも又は約17個、少なくとも又は約18個、少なくとも又は約19個、少なくとも又は約20個、少なくとも又は約21個、少なくとも又は約22個、少なくとも又は約23個、少なくとも又は約24個、少なくとも又は約25個、少なくとも又は約26個、少なくとも又は約27個、少なくとも又は約28個、少なくとも又は約29個、あるいは少なくとも又は約30個の連続する標的分子(例えば、TCR遺伝子)のヌクレオチドの配列に対して相補的である領域を含む。プライマー又はプローブが「標的分子の少なくともx個の連続するヌクレオチドに対して相補的」である領域を含む場合、プライマー又はプローブは、標的分子の少なくともx個の連続するヌクレオチドに対して少なくとも95%相補的であり得る。いくつかの実施形態において、プライマー又はプローブは、標的分子に対して少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%相補的である。
【0080】
プライマー又はプローブは、10~30ヌクレオチド、15~30ヌクレオチド、15~25ヌクレオチド、17~24ヌクレオチド、30~50ヌクレオチド、7~15ヌクレオチド、15~20ヌクレオチド、少なくとも20、30、又は40ヌクレオチド、あるいは少なくとも又は約50、60、70、80、又は90ヌクレオチドを含み得る。プライマー又はプローブは、少なくとも又は約7ヌクレオチド、少なくとも又は約8ヌクレオチド、少なくとも又は約9ヌクレオチド、少なくとも又は約10ヌクレオチド、少なくとも又は約11ヌクレオチド、少なくとも又は約12ヌクレオチド、又は約13ヌクレオチド、少なくとも又は約14ヌクレオチド、少なくとも又は約15ヌクレオチド、少なくとも又は約16ヌクレオチド、少なくとも又は約17ヌクレオチド、少なくとも又は約18ヌクレオチド、少なくとも又は約19ヌクレオチド、少なくとも又は約20ヌクレオチド、少なくとも又は約21ヌクレオチド、少なくとも又は約22ヌクレオチド、少なくとも又は約23ヌクレオチド、少なくとも又は約24ヌクレオチド、又は少なくとも又は約25ヌクレオチド、少なくとも又は約26ヌクレオチド、少なくとも又は約27ヌクレオチド、少なくとも又は約28ヌクレオチド、少なくとも又は約29ヌクレオチド、あるいは少なくとも又は約30ヌクレオチドを有し得る。いくつかの実施形態において、プライマー又はプローブは、標的遺伝子又は配列中の配列と比較した場合に、1、2又は3塩基のミスマッチを伴う配列を有する。
【0081】
いくつかの実施形態において、プライマー対が提供される。プライマー対は、増幅反応において使用される場合に、プライマー対が核酸の複数のコピーを生成するならば、核酸を増幅できると言われる。これらの複数のコピーは、増幅反応において追加される追加のヌクレオチド配列を含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、リアルタイムPCRは、TaqManプローブ、分子ビーコンプローブ、及びスコーピオンプローブを含むがこれらに限定されないFRETプローブを使用して実施され得る。いくつかの実施形態において、リアルタイムPCR検出及び定量は、TaqManプローブ、例えば、DNAの一端に共有結合した蛍光色素/標識及びDNAの他端に共有結合したクエンチャー分子を典型的に有する線状プローブを用いて実施される。FRETプローブは、FRETプローブが標的遺伝子又は標的遺伝子のアンプリコンにハイブリダイズするとき、色素蛍光がクエンチされるように、かつ標的遺伝子又は標的遺伝子のアンプリコンが増幅される間にプローブが消化されるとき、色素がプローブから放出され、蛍光シグナルが生成されるように、標的遺伝子の領域に相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、サンプル中の標的遺伝子の存在が検出される。
【0083】
いくつかの実施形態において、FRETプローブに対して使用できる標識/色素には、Alexa Fluor色素、BODIPY FLなどのBODIPY色素、カスケードブルー、カスケードイエロー、クマリン並びに7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリン及びヒドロキシクマリンなどのその誘導体、Cy3及びCy5などのシアニン色素、エオシン及びエリスロシン、フルオレセイン及びフルオレセインイソチオシアネートなどのその誘導体、Quantum Dye(商標)などのランタニドイオンの大環状キレート、マリーナブルー、オレゴングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミン、及びローダミン6Gなどのローダミン色素、テキサスレッド、チアゾールオレンジ-エチジウムヘテロ二量体などの蛍光エネルギー転移色素、並びにTOTABなどの比色及び蛍光色素が含まれる。標識/色素の特定の例にはまた、Alexa Fluor350、Alexa Fluor405、Alexa Fluor430、Alexa Fluor488、Alexa Fluor500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor610、Alexa Fluor633、Alexa Fluor647、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680、Alexa Fluor700、及びAlexa Fluor750;BODIPY493/503、BODIPY530/550、BODIPY558/568、BODIPY564/570、BODIPY576/589、BODIPY581/591、BODIPY630/650、BODIPY650/655、BODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、及びBODIPY-TRなどのアミン反応性BODIPY色素;Cy3、Cy5、6-FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6-JOE、オレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514、パシフィックブルー、REG、ローダミングリーン、ローダミンレッド、レノグラフィン、ROX、SYPRO、TAMRA、2’,4’,5’,7’-テトラブロモスルホンフルオレセイン、並びにTETも含まれるが、これらに限定されない。色素/クエンチャーの対(すなわち、ドナー/アクセプターの対)の例には、フルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/ダブシル、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/QSY7又はQSY9色素が含まれるが、これらに限定されない。ドナー及びアクセプターが同じである場合、いくつかの実施形態において、蛍光脱分極によってFRETを検出することができる。色素/クエンチャー対(すなわち、ドナー/アクセプター対)の特定の例には、Alexa Fluor350/Alexa Fluor488、Alexa Fluor488/Alexa Fluor546、Alexa Fluor488/Alexa Fluor555、Alexa Fluor488/Alexa Fluor568、Alexa Fluor488/Alexa Fluor594、Alexa Fluor488/Alexa Fluor647、Alexa Fluor 546/Alexa Fluor568、Alexa Fluor546/Alexa Fluor 594、Alexa Fluor546/Alexa Fluor647、Alexa Fluor 555/Alexa Fluor594、Alexa Fluor555/Alexa Fluor647、Alexa Fluor568/Alexa Fluor647、Alexa Fluor594/Alexa Fluor647、Alexa Fluor350/QSY35、Alexa Fluor350/ダブシル、Alexa Fluor488/QSY35、Alexa Fluor488/ダブシル、Alexa Fluor488/QSY7又はQSY9、Alexa Fluor555/QSY7又はQSY9、Alexa Fluor568/QSY7又はQSY9、Alexa Fluor568/QSY21、Alexa Fluor594/QSY21、及びAlexa Fluor647/QSY21が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法における使用のためのリアルタイムPCRプローブの調製に有用な蛍光標識デオキシリボヌクレオチドの例には、ジニトロフェニル(DNP)-1’-dUTP、カスケードブルー-7-dUTP、Alexa Fluor488-5-dUTP、フルオレセイン-12-dUTP、オレゴングリーン488-5-dUTP、BODIPY FL-14-dUTP、ローダミングリーン-5-dUTP、Alexa Fluor532-5-dUTP、BODIPY TMR-14-dUTP、テトラメチルローダミン-6-dUTP、Alexa Fluor546-14-dUTP、Alexa Fluor568-5-dUTP、テキサスレッド-12-dUTP、テキサスレッド-5-dUTP、BODIPY TR-14-dUTP、Alexa Fluor594-5-dUTP、BODIPY630/650-14-dUTP、BODIPY650/665-14-dUTP、Alexa Fluor488-7-OBEA-dCTP、Alexa Fluor546-16-OBEA-dCTP、Alexa Fluor594-7-OBEA-dCTP、Alexa Fluor 647-12-OBEA-dCTPが含まれる。
【0084】
核酸増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、マルチプレックスPCR、定量的PCR(Q-PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写ベースの増幅システム(TAS)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)、ライゲーション検出反応(LDR)、ローリングサークル増幅(RCA)、ハイパーブランチRCA(HRCA)、マルチプレックスライゲーション依存プローブ増幅(MLPA)、ライゲーションに続くQレプリカーゼ増幅、プライマー伸長、鎖置換増幅(SDA)、超分岐鎖置換増幅、複数置換増幅(MDA)、2段階マルチプレックス増幅などであり得る。核酸増幅反応はまた、OLA/PCR、PCR/OLA、LDR/PCR、PCR/PCR/LDR、PCR/LDR、LCR/PCR、PCR/LCR(組み合わせ連鎖反応-CCRとしても知られる)などでもあり得る。核酸増幅反応は、マルチプレックスPCR、例えばマルチプレックスリアルタイムPCRによって実行され得る。このような技術の説明は、他のソースの中でも、Ausbel et al.;PCR Primer:A Laboratory Manual,Diffenbach編,Cold Spring Harbor Press(1995);The Electronic Protocol Book,Chang Bioscience(2002);Msuihら、J.Clin.Micro.34:501-07(1996);The Nucleic Acid Protocols Handbook,R.Rapley編、Humana Press,Totowa,N.J.(2002);Abramson et al.,Curr.Opin.Biotechnol.1993年2月;4(1):41-7において見出され得る。
【0085】
「qPCR」という用語は、「リアルタイムPCR」又は「動的ポリメラーゼ連鎖反応」としても知られる定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を指すために本明細書で使用される。
【0086】
核酸を含むサンプルは、当技術分野で知られている従来の方法を使用して生物源から得ることができる。特に、本明細書に記載の方法において有用なDNA又はRNAは、細菌、原生動物、真菌(例えば、酵母)、ウイルス、オルガネラ、並びに植物又は動物などの高等生物、特に、哺乳動物、より特に、ヒトを含む任意の供給源から抽出及び/又は増幅することができる。核酸は、細胞、体液(例えば、血液、血液分画、尿、羊水など)、又は組織サンプルから、様々な標準技術のいずれかによって抽出又は増幅することができる。例示的なサンプルには、血漿、血清、血液、脊髄液、リンパ液、腹水、胸膜液、口腔液、絨毛膜絨毛、及び皮膚の外部セクションのサンプル、呼吸器、腸、生殖器、及び尿路からのサンプル、涙液、唾液、血液細胞、幹細胞、又はがん細胞若しくは組織(例えば、腫瘍)のサンプルが含まれる。例えば、胎児DNAのサンプルは、胚から(例えば、1つ又はいくつかの胚細胞又は胎児細胞から)、又は母体の血液から得ることができる。サンプルは、生きている生物若しくは死んだ生物から、又はインビトロ培養から得ることができる。例示的なサンプルには、単一細胞、ホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプル、及び針生検を含むことができる。本明細書に記載の方法において有用な核酸はまた、cDNA、コスミド、YAC、BAC、P1、PACライブラリーなどを含む1つ以上の核酸ライブラリーに由来することができる。
【0087】
特定の実施形態において、コピー数は、ある量のゲノムDNA(例えば、1μg、50ngなど、ゲノムDNA)中の遺伝子のコピーであり得る。特定の実施形態において、コピー数は、あるサンプル中の遺伝子のコピーであり得る。特定の実施形態において、コピー数は、細胞当たり又は細胞集団中の遺伝子のコピーであり得る。特定の実施形態において、コピー数は、細胞集団中の遺伝子の平均コピー数であり得る。
【0088】
特定の実施形態において、コピー数は、DNAサンプル中の参照ポリヌクレオチド/遺伝子のコピー数に対する標的ポリヌクレオチド/遺伝子のコピー数の比として表され得る遺伝子の(ゲノム当たりの)相対的コピー数であり得る。参照ポリヌクレオチド/遺伝子は、単一コピーの参照ポリヌクレオチド/遺伝子であり得る(コピー数は1であり得る)。ポリヌクレオチド/遺伝子の相対的コピー数(ゲノム当たり)は、DNAサンプル中の参照ポリヌクレオチド/遺伝子のコピー数に対する標的ポリヌクレオチド/遺伝子のコピー数の比として表すことができる。参照配列のゲノムコピー数は既知である。このように、標的ポリヌクレオチドのコピー数は、標的ポリヌクレオチド/遺伝子の相対的コピー数を決定するために、参照ポリヌクレオチド/遺伝子に対して分析することができる。例えば、RNaseP遺伝子は単一コピー遺伝子であり、コピー数アッセイにおいて参照遺伝子として使用され得る。例証のために、他の有用な参照配列には、ベータ-アクチン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ヒドロキシメチルビランシンターゼ(HMBS)、ベータ-アクチン、及び/又はベータ-グロビンが含まれるが、しかしながら、本発明は特定の参照配列に限定されないことが理解される。
【0089】
2つの遺伝子(標的ポリヌクレオチド/遺伝子及び参照ポリヌクレオチド/遺伝子)について2つの異なる標識(例えば、蛍光色素)を用いて同じ反応中又は同じ装置上で2つのアッセイを使用することにより、本明細書に記載の方法は、同じDNAサンプル中で両方の遺伝子を同時に定量化するために、同時に使用することができる。あるいは、標的遺伝子を1つの反応で増幅し、参照遺伝子を別の反応でアッセイし、データを比較することができる。これらの2つの遺伝子の比率は、DNAサンプル中の標的ポリヌクレオチド配列又は目的の遺伝子の相対的コピー数である。
【0090】
システムは組成物であり得る。いくつかの実施形態において、組成物は水性組成物である。いくつかの実施形態において、水性組成物は、リン酸、tris、HEPESなどの緩衝成分、及び/又は以下に議論するような追加の成分を含む。いくつかの実施形態において、組成物は乾燥しており、例えば、凍結乾燥されており、流体の添加による再構成のために適している。乾燥組成物は、1つ以上の緩衝成分及び/又は追加の成分を含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、組成物は、1つ以上の追加の成分を更に含む。追加の成分には、NaCl、KCl、及びMgClなどの塩、Taqなどの熱安定性ポリメラーゼを含むポリメラーゼ、dNTP、ウシ血清アルブミン(BSA)等、β-メルカプトエタノールなどの還元剤、EDTA等が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、組成物の意図される用途に応じて、適切な組成物成分を選択することができる。
【0092】
キット
いくつかの実施形態において、キットは本発明のシステムを含む。いくつかの実施形態において、キットは、上記に議論した少なくとも1つのプライマー対及び/又はプローブを含む。いくつかの実施形態において、キットは、熱安定性ポリメラーゼなどの少なくとも1つのポリメラーゼを更に含む。いくつかの実施形態において、キットは更なるdNTPを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のリアルタイムPCR法における使用のためのキットは、1つ以上の標的遺伝子特異的FRETプローブ及び/又は標的遺伝子の増幅のための1つ以上のプライマーを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも1セット、少なくとも2セット、少なくとも3セット、又は少なくとも4セットのプライマーを含む。いくつかの実施形態において、キットは、参照ポリヌクレオチド/遺伝子を増幅するための少なくとも1セットのプライマーを更に含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるリアルタイムPCR法における使用のためのキットは、増幅反応における使用のための試薬を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、Taqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼなどの酵素を含む。いくつかの実施形態において、キットは、増幅における使用のためのデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を更に含む。いくつかの実施形態において、キットは、プローブ及びプライマーの特異的なハイブリダイゼーションのために最適化された緩衝液を含む。
【0095】
本開示におけるキットは、マウスTCR遺伝子の保存領域のためのプライマー対及びTaqManプローブを含んでもよく、プライマーは、(i)配列番号1に示される配列を有するプライマー及び配列番号2に示される配列を有するプライマーを含む第1のプライマー対(D1)、(ii)配列番号4に示される配列を有するプライマー及び配列番号5に示される配列を有するプライマーを含む第2のプライマー対(A1)、並びに(iii)第1のプライマー対と第2のプライマー対との組み合わせからなる群から選択される。
【0096】
特定の実施形態において、プライマー対は第1のプライマー対であり、キットは、配列番号3に示される配列を有する第1のTaqManプローブを更に含む。
【0097】
特定の実施形態において、プライマー対は第2のプライマー対であり、キットは、配列番号6に示される配列を有する第2のTaqManプローブを更に含む。
【0098】
場合により、前述のキットは、(i)配列番号7に示される配列を有するプライマー及び配列番号8に示される配列を有するプライマーを含む第3のプライマー対(B1)、並びに(ii)配列番号10に示される配列を有するプライマー及び配列番号11に示される配列を有するプライマーを含む第4のプライマー対(C1)からなる群から選択されるプライマー対を更に含む。
【0099】
特定の実施形態において、プライマー対は第3のプライマー対であり、キットは、配列番号9に示される配列を有する第3のTaqmanプローブを更に含む。
【0100】
特定の実施形態において、プライマー対は第4のプライマー対であり、キットは、配列番号12に示される配列を有する第4のTaqmanプローブを更に含む。
【0101】
特定の実施形態において、本開示において、Taqmanプローブの5’末端は蛍光レポーター(例えば、FAM又はVIC)で標識され、3’末端は蛍光クエンチャー(例えば、MGB又はTAMRA)で標識される。あるいは、Taqmanプローブの3’末端は蛍光レポーター(例えば、FAM又はVIC)で標識され、5’末端は蛍光クエンチャー(例えば、MGB又はTAMRA)で標識される。
【0102】
本開示におけるキットは、1つ以上の容器を更に含んでもよく、上記のプライマー対及びTaqManプローブは、異なる容器に入れるか、又は同じ容器に組み合わせることができる。
【0103】
試薬の組み合わせ
本開示における試薬は、マウスTCR導入遺伝子のコピー数を決定するための試薬の組み合わせを指し得る。
【0104】
本開示における試薬は、第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブを含み得、ここで、第1のプライマー対は、配列番号1に示される配列を有するプライマー及び配列番号2に示される配列を有するプライマーを含み、第1のTaqManプローブの配列は、配列番号3に示される通りであり、並びに/又は第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブを含み得、ここで、第2のプライマー対は、配列番号4に示される配列を有するプライマー及び配列番号5に示される配列を有するプライマーを含み、第2のTaqManプローブの配列は、配列番号6に示される通りであり、並びに/又はRNase P参照遺伝子プライマー/プローブを含み得る。
【0105】
マウスTCR遺伝子コピー数を決定するための方法
本方法は、以下の工程を含み得る:
(a)試験するサンプルを提供する工程、
(b)マウスTCR遺伝子の保存領域についてのプライマー対及びTaqManプローブを使用して、試験対象のサンプルに対してPCR増幅を実施し、それによってTCR導入遺伝子のコピー数を決定する工程、及び
(c)決定されたTCR導入遺伝子のコピー数に基づいて、試験されるサンプルの品質を評価する工程。
【0106】
工程(b)において、第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブを使用することができ、場合により、RNase P参照遺伝子プライマー/プローブセットが使用される。
【0107】
工程(b)において、シングルプレックス又はマルチプレックスPCR増幅が使用され得る。
【0108】
工程(b)において、第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブが使用され得る。
【0109】
工程(b)において、第3のプライマー対及び第3のTaqManプローブが使用され得る。
【0110】
工程(b)において、第4のプライマー対及び第4のTaqManプローブが使用され得る。
【0111】
工程(b)において、(Y1)第1のプライマー対及び第1のTaqManプローブ、並びに(Y2)第2のプライマー対及び第2のTaqManプローブが、PCR増幅のために同時に又は連続的に使用され得る。
【0112】
工程(b)において、Ct値を比較することにより、TCR導入遺伝子のコピー数が決定され得る。
【0113】
工程(b)において、試験されるサンプルのCt値は、TCR導入遺伝子のコピー数を決定するために標準値又は検量線と比較され得る。
【0114】
試験されるサンプルは、核酸サンプルを含み得る。
【0115】
核酸サンプルは、M個の細胞から抽出された全核酸であってもよく、ここでMは正の整数である。例えば、Mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であってよい。
【0116】
工程(b)は、以下の工程を含み得る:
S1)マウスTCR遺伝子の保存領域を標的遺伝子断片として選択する工程、
S2)標的遺伝子断片をベクターに挿入して標準プラスミドを構築し、これを標準ストック溶液として使用し、次いで段階希釈を行って一連の標準製品を得る工程、
S3)標準物質及び試験されるサンプルの遺伝子に対してリアルタイム蛍光定量的PCR(qPCR)を行い、一連の標準物質のCt値及びコピー数に基づいて検量線を作成し、計算式を得る工程、
S4)試験されるサンプルのCt値を工程S3)の検量線の計算式に当てはめ、試験されるサンプルの遺伝子コピー数を得る工程。
【0117】
工程(b)は、以下の工程を含み得る:
R1)標的遺伝子断片としてのマウスTCR遺伝子の保存領域、及び既知の配列を有する参照遺伝子を選択する工程、
R2)標的遺伝子断片をベクターに挿入して標準プラスミドを構築し、これを標準ストック溶液として使用し、次いで段階希釈を行って一連の標準物質を得る工程、
R3)請求項1に記載の試薬を使用して、標準物質の遺伝子及び試験されるサンプルに対してリアルタイム蛍光定量的PCR(qPCR)を行い、一連の標準物質のCt値及びコピー数に基づいて検量線を作成し、計算式を得る工程、
R4)参照遺伝子RNasePのCt値を使用して、各サンプルのキャリブレーション係数を計算する工程、
R5)ゲノム1μg当たりの参照遺伝子のコピー数と比較することにより、試験されるサンプル中のゲノム1μg当たりのTCR遺伝子のコピー数を得る工程。
【0118】
工程(b)は、ヒトバックグラウンドDNAを追加する工程を更に含み得る。
【0119】
ヒトのバックグラウンドDNAは、PBMCのゲノムDNAであり得る。
【0120】
一実施形態において、ヒトバックグラウンドDNAの量は50ngである。
【0121】
一実施形態において、プライマー濃度は0.45μMであり、プローブ濃度は0.125μMである。
【0122】
一実施形態において、標準物質の最小コピー数は10であり、又は最小コピー数ポイントは10コピーである。
【0123】
本発明の主な利点:
1.本開示により提供される検出方法における検量線の直線決定係数(R)は、0.994~0.999の範囲であった。増幅効率は92.3%~101.6%であった。検量線における各濃度点の実行内精度は、0.09%~1.55%の範囲であった。実行間精度は、1.09%~3.07%の範囲であった。参照遺伝子RNasePの実行内精度は0.58%~2.30%の範囲で、実行間精度は1.18%であった。したがって、本開示は、良好な線形関係、増幅効率及び精度を有する。
【0124】
2.本開示のプライマー/プローブセットは、臨床試験及び製品リリースの間にT細胞におけるマウスTCR遺伝子のコピー数を決定するための迅速かつ信頼性の高い検出方法を提供する。
【0125】
3.本開示におけるデュプレックス反応法は、反応において標的遺伝子及び参照遺伝子の同時検出を達成することができ、参照遺伝子の誤った追加検出の可能性を低減する。
【0126】
本発明は、本発明の好ましい実施形態をより十分に例証するために提示される以下の非限定的な実施例を参照することにより、より良好に理解され得る。それらは、決して本発明の広い範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、特定の実施形態に関連して更に説明される。これらの実施形態は、本開示を説明することのみを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。特定の条件が示されない限り、以下の実施形態における実験方法は、通常、従来の条件、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されている条件などを採用するか、又は製造業者によって推奨される条件を採用する。別段の言及がない限り、パーセンテージ及び部は重量パーセンテージ及び重量部である。
【0127】
材料及び一般的な方法
I.実験材料
1.機器:
【表1】
【表2】
【0128】
2.プライマー及びプローブ情報:
2.1 プライマープローブの設計:
図1に示すように、マウスTCR遺伝子の保存領域の配列に従って、4対のプライマープローブを設計した。
【0129】
2.2 プライマープローブの配列の情報:
プライマー及びプローブは、Thermo Fisherに発注した。
【表3】
【0130】
3.プラスミドの合成及びパッケージング
3.1標準プラスミド(pUC57-PC25J)の設計、合成及びパッケージング
標準プラスミドは、TaqManプライマープローブによって検出される標的断片に従って設計される。具体的には、マウスTCR遺伝子の2つの保存領域がpUC57ベクター上に構築される。マウスTCR遺伝子の保存領域の配列は次の通りである。
gacctgcgcaatgtgaccccccctaaggtgtccctgttcgagccttctaaggccgagatcgccaacaagaggaaggccaccctggtgtgcctggcaaggggcttctttccagatcacgtggagctgtcctggtgggtgaatggcaaggaggtgcactctggcgtgagcacagacccccaggcctacaaggagtccaactattcttactgcctgtctagccggctgagagtgagcgccaccttttggcacaaccccaggaatcacttccgctgtcaggtgcagtttcacggcctgtccgaggaggataagtggcctgagggctctcccaagcctgtgacacagaacatcagcgccgaggcatggggaagggcagactgtggcatcaccagcgcctcctatcagcagggcgtgctgagcgccacaatcctgtacgagatcctgctgggcaaggccaccctgtatgctgtgctggtgtcaactctggtggtcatggctatggtgaaacggaaaaactccatccagaatccagagcccgccgtgtatcagctgaaggacccacggagccaggatagcaccctgtgcctgttcaccgactttgatagccagatcaatgtgcctaagacaatggagtccggcacctttatcacagacaagaccgtgctggatatgaaggccatggacagcaagtccaacggcgccatcgcctggtctaatcagacaagcttcacctgccaggatatctttaaggagacaaacgccacctacccatctagcgacgtgccctgtgatgccaccctgacagagaagagcttcgagacagacatgaacctgaattttcagaacctgtccgtgatgggcctgagaatcctgctgctgaaggtggccggcttcaatctgctgatgacactgcgcctgtggtcctct(配列番号13)
【0131】
3.2 pUC57空のプラスミド
pUC57は標的遺伝子を含まない空のプラスミドである。
【0132】
4.ネガティブコントロール
ネガティブコントロール(NC)は、ヒトPBMCのゲノムDNAである。
【0133】
5.ポジティブコントロール
ポジティブコントロール(PC)は、TCR陽性細胞のゲノムDNAに由来する。
【表4】
【0134】
6.シングルプレックス反応実験:
標準プライマープローブの濃度(TCRプライマー0.9μM、プローブ0.25μM)
【表5】
【0135】
7.デュプレックス反応実験:
標準プライマープローブの濃度(TCRプライマー0.9μM、プローブ0.25μM)
【表6】
【0136】
デュプレックスプライマープローブ濃度(TCRプライマー1.8μM、プローブ0.5μM)
【表7】
【0137】
低プライマープローブ濃度(TCRプライマー0.45μM、プローブ0.125μM)
【表8】
【0138】
qPCR検出は、機械で実施された。反応は標準的な条件下で実行された:
ポリメラーゼ活性化:95℃で10分
PCR:40サイクル
変性:95℃で15秒
アニール/伸長:60℃で60秒
【0139】
8.実験結果の処理:
反応終了後、ソフトウェアは各サンプルのCt値、並びに各反応のネガティブコントロール及びポジティブコントロールのTCR遺伝子コピー数を自動的に出力する。RNaseP遺伝子のCt値に基づいて、各サンプルのキャリブレーション係数(CF)を以下のように計算した:CF1=2-(CtRNaseP(NC)-CtRNaseP(PC))。CF2=Ct(PC)/平均Ct(PC)、ここで、平均Ct(PC)は、以前のエラーのない決定におけるポジティブコントロールのCt値の平均値である。1μgのPCゲノム中のTCR遺伝子コピー数は次のように計算された。
TCR遺伝子のコピー数=コピー数/各反応で加えたDNA量(ng)×CF1×CF2×1000ng
【0140】
9.データ分析:
検量線のRは≧0.99であるべきであり、増幅効率は90%から110%の範囲である。TCR遺伝子検出のCt閾値は0.1であり、これは、実験プロトコルの最適化の間に群間の比較を容易にする。実際の試験の間に、閾値を「自動」に設定できる。RNaseP参照遺伝子の検出のCt閾値は、自動閾値に設定される。NTC及びNCコントロールのCt値は、なし又は≧39であるべきである。
【0141】
実施例1シングルプレックスTaqMan qPCR
この実験では、DNAバックグラウンドがある場合とない場合の4セットのプライマー-プローブ試薬の増幅結果を試験した。
【0142】
方法は以下の通りである。TCRプライマー/プローブの存在下で、参照遺伝子RNasePプライマー/プローブの非存在下で、ヒトバックグラウンドgDNAの有無にかかわらず、TCRプライマー/プローブの4セットの検量線パラメータを試験した。
【0143】
4セットのプライマープローブの検量線は、図2-1A~2-1D及び2-2A~2-2Dに示す通りであり、四角記号は標準サンプルを表し、丸記号は試験サンプルを表す。
【0144】
バックグラウンドgDNAを用いない4セットのプライマー/プローブのシングルプレックス反応パラメータは次の通りである。
【表9】
【0145】
バックグラウンドgDNAを有する4セットのプライマープローブのシングルプレックス反応パラメータは次の通りである。
【表10】
【0146】
結果は次のことを示している。
(a)4セットのプライマー/プローブのR及び増幅効率は、バックグラウンドのヒトgDNAの存在下又は非存在下でのシングルプレックス反応で標準に達した。
【0147】
(b)バックグラウンドのヒトgDNAの存在下で、A1及びD1は、シングルプレックス反応試験において、より高い増幅効率、より高い感度、及び優れた信頼性を示した。
【0148】
(c)最小10コピーから最大10コピーの範囲で、バックグラウンドのヒトgDNAの存在下又は非存在下で、4セットのプライマー/プローブは全て、必要な産物を効果的に増幅できた。具体的には、A1及びD1はより良好な増幅特異性を示し、バックグラウンドのヒトgDNAの干渉はほとんどなかったが、バックグラウンドのヒトgDNAはB1に干渉した。
【0149】
実施例2デュプレックスTaqMan qPCR
TCRプライマー/プローブ及び参照遺伝子RNasePプライマー/プローブの存在下で、4セットのTCRプライマー/プローブの検量線パラメータを、ヒトバックグラウンドgDNAの存在下で測定した。
【0150】
デュプレックス反応では、患者の血液サンプルをシミュレートしたヒト単球ゲノムDNAに加えて、参照遺伝子RNasePを検出するためのプライマー/プローブもまた反応系に追加さした。標的TCR遺伝子を検出すると同時に、参照遺伝子RNasePも検出した。結果は、ヒトgDNAシミュレーションバックグラウンドをデュプレックス反応に追加すると、4セットのプライマーのR及び増幅効率が大幅に低下し、標準に達していなかったことを示す。他の3セットのプライマー/プローブと比較して、D1プライマーセットは、標準に近いデュプレックス反応でより良好なデータを生成した。その後、プライマーD1のための実験条件を最適化した。
【0151】
4セットのプライマー/プローブの検量線を図3A~3Dに示し、四角は標準サンプルを表し、丸は試験サンプルを表す。
【0152】
バックグラウンドgDNAを用いた4セットのプライマー/プローブのデュプレックス反応パラメータは次の通りである。
【表11】
【0153】
実施例3検量線の最低コピーポイントの選択
上記の実験結果は、図4-1の2つの矢印の長さで示されているように、検量線のコピー数が少ない場合の反応時の誤差が比較的大きいことを示す。理論的には、2つの矢印の長さは等しくなければならない。ただし、コピー数が少ない領域では、増幅効率が大幅に低下する。そこで、最小コピー数を増やすことを検討した。
【0154】
10コピーポイント存在下及び10コピーポイント除去後のプライマー/プローブD1の検量線は、それぞれ図4-2及び図4-3に示される通りである。四角は標準サンプル、丸は試験サンプルを示す。
【表12】
【0155】
コピー数のデータは、R及び検量線全体の増幅効率に影響する。10コピーポイントのデータを削除すると、検量線の増幅効率は良好であった。その後、最小コピーポイントを10コピーから50コピーに引き上げることを検討した。
【0156】
実施例4異なるプライマー濃度下でのTaqMan qPCRによるD1プライマープローブ試験
実験において、プライマーは0.9μM、プローブは0.25μMであった。プライマー及び/又はプローブ(例えば、D1)の濃度を変えることで増幅効率を最適化できるかどうかを試験した。異なる濃度でのプライマーD1の実験データを図5-1、5-2、及び5-3に示す。
【0157】
異なる濃度で設定されたD1プライマー/プローブのパラメータを以下に示す。
【表13】
【0158】
は、異なる濃度のD1プライマー/プローブを用いて良好であった。しかし、増幅効率は、プライマー/プローブの濃度が低い場合にのみ良好であった。
【0159】
実施例5低濃度のD1プライマー/プローブを用いた異なる濃度のバックグラウンドgDNAの効果
低濃度のプライマー/プローブを使用した場合、増幅効率は高かった。プライマー濃度に加えて、実験においてRNasePの効果が存在する。バックグラウンドgDNAの量を減らすと、反応の増幅効率を改善することができる。低濃度のプライマー/プローブを使用して、反応に対する様々な濃度のバックグラウンドgDNAの影響を調べ、検量線を図6-1、6-2、及び6-3に示す。異なるバックグラウンドgDNA濃度を有するD1プライマー/プローブのパラメータを以下に示す。
【表14】
【0160】
したがって、50ngのバックグラウンドgDNAを用いて、D1プライマー/プローブ濃度を半分にすると(0.45μMプライマー、0.125μMプローブにすると)、R及び増幅効率は良好であった。
【0161】
実施例6検証実験
1.検量線の検証
実験結果は、50ngのバックグラウンドgDNAと組み合わせた低濃度のD1プライマー/プローブが、デュプレックス反応において優れた検量線パラメータを生成したことを示す。したがって、実験のランダムエラーを排除するために、この条件は実験的に複数回検証した。実験結果を図7A~7Dに示す。
【0162】
半分の量のDNA(0.45μMプライマー、0.125μMプローブ)で50ngのバックグラウンドgDNAを用いたD1プライマー/プローブの4回の反復実験のデータは次の通りである。
【表15】
【0163】
4回の反復実験では、検量線パラメータは全て要件を満たし、比較的安定していた。
【0164】
2.正確さの検証
上記の実験データから、検量線が確立されると、TaqMan検出法の線形パラメータが実験要件を満たすことができることを知ることができる。実験計画の検出正確さを更に検証するために、異なるコピーで事前に準備された品質管理製品を検出し、測定値と理論値との差を比較して、この検出計画の正確さを検証し、一方で、検出の正確さ範囲を決定した。
【0165】
品質管理製品のコピー数の範囲は、実際に検出されたコピー数に応じて決定され、これは、定量上限(HLOQ)、高品質管理(HQC)、中高品質管理(MHQC)、中品質管理(MQC)、低品質管理(LQC)、及び定量下限(LLOQ)を含む。対応する品質管理製品のコピー数は、50ngのgDNAで、それぞれ、3.5×10、1.75×10、3500、700、140、及び28であった。品質管理製品の調製方法を以下に示す。
【表16】
【0166】
調製された品質管理製品は均一に包装され、品質管理製品の一貫性及び各試験実験の独立性を確保するために試験時に採取された。
【0167】
正確さ検証実験は独立して5回行った。実験結果は、表1~表5の通りである。
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【0168】
標準TCRプラスミドの希釈範囲は、最初は10~1×10に設計した。デュプレックス反応の参照遺伝子の影響により、感度はわずかに低下した。一方で、最初の正確さ試験実験において、最低点は1×10であるべきと判断された。したがって、標準TCRプラスミドは、1×10~1×10コピー/反応の範囲で希釈された。Rは0.994から0.999の範囲で、増幅効率は92.3%~101.6%であった。検量線上の各濃度点の実行内精度は0.09%~1.55%であった。実行間精度は1.09%~3.07%であった。参照遺伝子RNasePの実行内精度は0.58%~2.30%、実行間精度は1.18%であった。直線性及び精度は良好であり、方法論的検証の要件を満たしていた。
【0169】
TCRのHLOQ、HQC、MHQC、MQC、LQC、及びLLOQの実行内正確さは、それぞれ、85.0%~107.6%、96.8%~119.7%、113.2%~133.0%、105.0%~147.8%、75.5%~99.4%、22.7%~112.2%であった。HLOQ、HQC、MHQC、MQC、LQC、及びLLOQの実行間正確さは、それぞれ、95.6%、107.6%、123.0%、123.1%、89.9%、及び64.8%であった。
【0170】
コピー数に基づいて計算すると、TCRのHLOQ、HQC、MHQC、MQC、LQC、及びLLOQの実行内精度は、それぞれ、1.5%~6.8%、2.0%~2.4%、2.9%~5.4%、4.5%~16.2%、12.3%から27%、及び32.1%から96.6%であり、実行間精度は、それぞれ、9.4%、9.2%、7.4%、16.1%、26.0%、及び62.2%であった。
【0171】
実施例7患者の血液サンプルにおけるTCR遺伝子コピー数の決定
対象は、臨床試験NCT03971747の肝臓がん患者であった。ベースライン期間の基準点として使用される抗AFP TCR(マウス)自己T細胞注入を患者が受けてから13日目に血液サンプルを採取した。細胞注入の日、並びに細胞注入後4、7、10、14、21及び28日目に試験のために血液サンプルを採取した。各サンプリングポイントからの血液サンプル中のPBMCゲノムDNAに伴うマウスTCRのコピー数は、患者の様々な時点でのAFP TCR-T細胞の動的増幅を反映している可能性がある。臨床試験において、この方法を使用して、T TCR(マウス)自己T細胞療法を受けている患者の血液サンプル中のTCR遺伝子コピー数を定量的に決定し、TCR-T細胞の増幅を間接的に測定した。
【0172】
実験結果を表6及び図8に示す。
【表22】
【0173】
結果は、患者が低用量のAFP TCR-T細胞の静脈内注入を受けた後、体内のTCR-T細胞の増殖が検出できたことを示す。この方法では、比較的低いレベルのシグナルを検出できる。この結果は、臨床試験において低用量の改変T細胞を投与した場合、T細胞の増幅レベルが低かったことを示す。また、この検出方法は比較的感度が高いことも示す。
【0174】
実施例8担がんマウスの腫瘍におけるTCRコピー数の決定
本発明者らはまた、この検出方法を使用して、AFP TCR(マウス)-T細胞を注射した担がんマウスの腫瘍組織をアッセイした。実験用マウスは、BiocytogenのB-NDG系統から選択され、腫瘍モデルは、HepG2細胞の皮下注射によって確立され、その後5日間増殖させた。AFP TCR-T細胞注射後28日目に、実験マウスにおける腫瘍組織を取り出し、ゲノムDNAのマウスTCR遺伝子をアッセイした。
【0175】
実験結果は表7の通りである。
【表23】
【0176】
実験結果は、注射後28日目に、ブランク、低用量及び中用量群でシグナルが検出されなかったことを示す。マウスTCRのコピー数は、高用量群で決定された。これは、注射後の改変T細胞が標的固形腫瘍組織に浸潤し効果を発揮できることを示す。
【0177】
概要
TCR遺伝子のコピー数がTaqMan法によって検出される場合、D1プライマー/プローブセットを使用して検量線が作成され得る。RNasePデュプレックス反応については、10、50、又は100コピーが検量線の最小コピー数ポイントとして使用され得る。これは、試験結果に基づいて決定され得る。
【0178】
特定の実施形態において、バックグラウンドgDNAの量が50ngである場合、D1プライマー/プローブセットについては、プライマー濃度は0.45μMであり、プローブ濃度は0.125μMである。
【0179】
更に、この方法は、臨床的に使用でき、感度が高い。
【0180】
本開示の範囲は、上記に具体的に示され記載されたものによって限定されない。当業者は、示された材料、構成、構造及び寸法の例に対する好適な代替物があることを認識する。特許及び様々な刊行物を含む多数の参考文献が、本発明の記載において引用及び議論されている。そのような参考文献の引用及び考察は、単に本開示の記載を明確にするだけのために提供されており、いかなる参考文献も本明細書に記載された発明に対する先行技術であることを承認するものではない。本明細書において引用され議論された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されたものの変更、修正及び他の実施は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者には想到される。本開示の特定の実施形態を示し記載してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく変更及び修正を行い得ることは当業者には明らかとなる。前述の説明で述べた事項及び添付の図面は、例示としてのみ提供され、限定としては提供されるのではない。
図1
図2-1A】
図2-1B】
図2-1C】
図2-1D】
図2-2A】
図2-2B】
図2-2C】
図2-2D】
図3A
図3B
図3C
図3D
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【配列表】
2023526355000001.app
【国際調査報告】