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特表2023-526378α-サイクリン基質並びにその製造方法及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】α-サイクリン基質並びにその製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230614BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230614BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230614BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230614BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20230614BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/47
C12P21/02 C
C12N1/21
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570220
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 US2021033016
(87)【国際公開番号】W WO2021236678
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/026,394
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519404919
【氏名又は名称】アンプリオン、インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522080661
【氏名又は名称】コンチャ、ルイス
(71)【出願人】
【識別番号】522080672
【氏名又は名称】ファリス、カーリー
(71)【出願人】
【識別番号】522080683
【氏名又は名称】オルギン、ブレット
(71)【出願人】
【識別番号】522447196
【氏名又は名称】マ、イフア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンチャ、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ファリス、カーリー
(72)【発明者】
【氏名】オルギン、ブレット
(72)【発明者】
【氏名】マ、イフア
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE02
4B064CE05
4B064CE06
4B064CE12
4B064DA13
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA45
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA05
4H045GA26
(57)【要約】
αSシード増幅アッセイ(seed amplification assay:SAA)において自己凝集する傾向の減少を示すヒトα-シヌクレイン(αS)タンパク質又はその保存的バリアントの産生のための発現ベクターが提供される。発現ベクターは、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、大腸菌(E.Coli)等の宿主細胞によって発現された場合にヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む。コドンは、発現されたタンパク質におけるアミノ酸の誤組込み(misincorporation)を回避するために最適化されている。発現されたタンパク質の精製方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3を除く、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する核酸配列。
【請求項2】
配列番号6を含むタンパク質を産生するための発現ベクターであって、配列番号3を除く、配列番号1と少なくとも95%の同一性を含む核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項3】
配列番号4を除く、配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を更に含む、請求項2に記載の発現ベクター。
【請求項4】
請求項2に記載の発現ベクターを使用して調製された、配列番号6を含むタンパク質。
【請求項5】
配列番号6を含むタンパク質を調製するための方法であって、
配列番号3を除く、配列番号1と少なくとも95%の同一性を含む核酸配列を含む発現ベクターを腸内細菌宿主細胞に形質転換する工程と、
前記タンパク質を産生するのに有効な条件下で前記腸内細菌宿主細胞を培養する工程と、
前記腸内細菌宿主細胞から前記タンパク質を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項6】
前記発現ベクターが、配列番号4を除く、配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記腸内細菌が大腸菌(Escherichia Coli)を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記得ることが、マイクロフルイダイザーを使用して前記形質転換細胞を溶解することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解が細胞溶解物を生成し、前記方法が、
(i)前記細胞溶解物を清澄化する工程と、
(ii)前記清澄化された溶解物を、結晶性ケイ酸カルシウム水和物の合成吸着剤と接触させる工程と、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶解が細胞溶解物を生成し、前記方法が、
(i)前記細胞溶解物を清澄化する工程と、
(ii)前記清澄化された溶解物を酸で約3.5以下のpHにする工程と、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記溶解が細胞溶解物を生成し、前記方法が、
(i)前記細胞溶解物を清澄化する工程と、
(ii)前記清澄化された溶解物を酸で約2以下のpHにする工程と、
(iii)リポ多糖を添加する工程と、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記リポ多糖を添加する前に、
(i)前記酸性化された溶解物を中和する工程と、
(ii)前記中和された溶解物を濾過する工程と、
(iii)前記濾過された溶解物をクロマトグラフィに供して前記タンパク質を得る工程と、
(iv)前記タンパク質を濾過する工程と、
(v)前記濾過されたタンパク質を透析する工程と、
(vi)前記透析されたタンパク質を濾過する工程と、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記透析濾過されたタンパク質を少なくとも2回濾過することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記溶解が細胞溶解物を生成し、前記方法が、
(i)前記細胞溶解物を清澄化する工程と、
(ii)前記清澄化された溶解物を酸で約3.5のpHにして、第1の酸性化溶解物を生成する工程と、
(iii)前記第1の酸性化溶解物を清澄化する工程と、
(iv)前記清澄化された第1の酸性化溶解物を約2未満のpHに酸性化して、第2の酸性化溶解物を生成する工程と、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
(i)前記第2の酸性化溶解物を清澄化する工程と、
(ii)前記第2の酸性化溶解物を濾過する工程と、
(iii)前記濾過された第2の酸性化溶解物を中和する工程と、
(iv)前記中和された溶解物を濾過する工程と、
(v)前記濾過され中和された溶解物をクロマトグラフィに供して前記タンパク質を得る工程と、
(vi)前記タンパク質を濾過する工程と、
(vii)前記濾過されたタンパク質を透析する工程と、
(viii)前記透析されたタンパク質を濾過する工程と、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月18日に出願された米国仮特許出願第63/026,394号の優先権を主張する。
配列表
配列表はASCII形式で電子的に提出されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2021年5月18日に作成されたASCIIコピーの名称はAmprion-SUBS-AS-PCT.txtであり、サイズは39,523バイトである。
【背景技術】
【0002】
総称して「シヌクレイン病」と呼ばれる特定の変性脳疾患は、罹患した対象の脳におけるミスフォールディングα-シヌクレイン(αS)タンパク質の病理学的蓄積を伴う。ミスフォールディングαSタンパク質は、生物系内のその典型的な非病原性の正常な機能に関与する時とは異なる構造的立体配座を有するαSタンパク質である。ミスフォールディングαSタンパク質は凝集し得、凝集体中に又は凝集体として存在している可能性がある。ミスフォールディングαSタンパク質は、αSタンパク質凝集体に局在し得る。ミスフォールディングαSタンパク質は、非機能性タンパク質であり得る。ミスフォールディングαSタンパク質は、αSタンパク質の病原性配座異性体であり得る。
【0003】
シヌクレイン病には、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)、及び多系統萎縮症(MSA)、並びに稀な神経軸索ジストロフィーが含まれる。いくつかの証拠は、αSのミスフォールディング及び凝集の過程が、臨床症状及び実質的な脳損傷の発症の数年又は数十年前に始まり得ることを示している。したがって、シヌクレイン病の早期診断を容易にするためのαS凝集体及び/又はミスフォールディングαSタンパク質の検出は、不可逆的な神経病理学的変化が生じる前に介入を可能にするために極めて重要であることが判明し得る。
【0004】
残念なことに、可溶性ミスフォールディングαSタンパク質は、検出が非常に困難であるような少量で体液中に存在する。しかしながら、最近、ミスフォールディングαS凝集体(すなわち、ミスフォールディングαSタンパク質の非共有結合的会合)の検出、特に、シード増幅アッセイ(SAA)(以前はタンパク質ミスフォールディング環状増幅(PMCA)として知られていた)による検出において著しい進歩がなされている。例えば、米国特許第20160077111号、米国特許第20210063416号、及び米国非仮特許出願第17/154,966号を参照されたく、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。簡潔には、生物学的試料(例えば、血液、皮膚、脳脊髄液等)をプレインキュベーション混合物と接触させ、プレインキュベーション混合物はモノマーαS基質、緩衝組成物、塩、及び指示薬を含んで、インキュベーション混合物を形成する。インキュベーション混合物に対して複数のインキュベーションサイクルが行われる。各インキュベーションサイクルは、(1)生物学的試料中に存在する任意の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在下で、モノマーαS基質のミスフォールディング及び/又は凝集を引き起こすのに有効なインキュベーション混合物をインキュベートすること、並びに(2)インキュベーション混合物を物理的に破壊して、ミスフォールディングαS凝集体を「脱凝集」、すなわち崩壊又は破壊して、より小さな凝集体を放出することを含む。次いで、αS凝集体は「シード」として作用し得る。指示薬蛍光によるミスフォールディングαS凝集体の検出は、生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在を示す。可溶性ミスフォールディングαSタンパク質を含有する生物学的試料を用いたαS-SAAプロセスの例示的な描写を図1に示す。
【0005】
αS-SAA技術に対する重要な制限は、広範な試験に十分な規模でSAA適格モノマーαS基質を製造することが困難であることである。SAA適格モノマーαS基質を製造するための1つのアプローチは、ヒトαSタンパク質をコードする核酸配列、例えば配列番号4によって表されるプラスミドを含む発現ベクターを腸内細菌宿主細胞(例えば、大腸菌(Escherichia Coli)(「E.Coli」))に形質転換し、モノマーヒトαSタンパク質を産生するのに有効な条件下で腸内細菌宿主細胞を培養し、腸内細菌宿主細胞からヒトαSタンパク質を得、ヒトαSタンパク質を精製して、組換えモノマーαS基質を得ることである。しかし、得られたモノマーαS基質は、場合によっては、特に位置136に、チロシンの代わりに「誤組込みされた」システインを含んでいた。「誤組込みされた」とは、宿主細胞、例えば大腸菌(E.Coli)等の微生物において、1つの生物のタンパク質の核酸、例えばヒトαSタンパク質をコードするヒト核酸を発現する時に、特定のアミノ酸、例えばシステインが他のアミノ酸、例えばチロシンに意図せずに置換され得るプロセスを指す。モノマーαS基質中のシステイン残基の存在は、二量体化による自己凝集及びミスフォールディングをもたらし得る。
【0006】
αSタンパク質の凝集は、ミスフォールディングタンパク質障害の病態の予想される部分であり、αS-SAAにおいて有利に使用されるが、モノマーαS基質が可能な限り自己凝集しないことが重要である。自己凝集とは、生物学的試料中に可溶性ミスフォールディングαSタンパク質が存在しない場合でも生じる凝集を指す。自己凝集する傾向は、そのアミノ酸配列に存在するαSタンパク質の固有の特徴である。
【0007】
相対的な動態及び程度に応じて、モノマーαS基質の自己凝集及びミスフォールディングは、生物学的試料中のミスフォールディングαS凝集体を増幅及び検出するためのαS-SAAの使用において致命的な因子であることが判明し得る。モノマーαS基質の自己凝集が起こると、結果は「偽陽性」、すなわち、可溶性ミスフォールディングαSタンパク質が生物学的試料中に存在しなかったにもかかわらずミスフォールディングαS凝集体が検出されるか、又は生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の不正確に高い定量的評価であり得る。
【0008】
既存のモノマーαS基質の別の制限は、生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在下でモノマーαS基質が凝集しないことである。これは、とりわけ、モノマーαS基質が可溶性ミスフォールディングαSタンパク質との十分な相同性を欠く場合に起こり得る。モノマーαS基質と生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質との凝集が起こらない場合、結果は「偽陰性」、すなわち、可溶性ミスフォールディングαSタンパク質が生物学的試料中に存在したにもかかわらずミスフォールディングαS凝集体が検出されないか、又は生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の不正確な低定量評価であり得る。
【0009】
したがって、一方ではモノマーαS基質の自己凝集及びミスフォールディング、並びに他方では生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質と凝集しないことは、試験された対象の誤診断又は不正確な予後をもたらし得る。したがって、適切なSAA条件と共に、αS-SAAで使用した場合に自己凝集を低減、減速、又は防止するが、生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在下でその活性を依然として保持するモノマーαS基質が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
αS-SAAにおいて自己凝集する傾向の減少を示すヒトαSタンパク質又はその保存的バリアント(最終的には「モノマーαS基質」)の製造のための発現ベクターが提供される。発現ベクターは、ヒトαSタンパク質又はその保存的バリアントをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、大腸菌(E.Coli)等の腸内細菌宿主細胞によって発現された場合にヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む。いくつかの態様では、コドンは、アミノ酸の誤組込み(misincorporation)を回避するために最適化されている。いくつかの態様では、コドンは、発現されたタンパク質におけるシステインの誤組込みを回避するために最適化されている。更なる態様では、コドンは、発現されたタンパク質の位置39、125、133及び136の少なくとも1つにおけるシステインの誤組込みを回避するように最適化されている。
【0011】
一態様では、発現ベクターは、配列番号1によって表されるか、又は配列番号1と少なくとも90%の同一性を有するコード核酸配列を含み得る。一態様では、発現ベクターはプラスミドであり得る。例えば、発現ベクターは、T7-lacオペロン系によってタンパク質の発現を可能にするプラスミドであり得る。一態様では、発現ベクターは、配列番号2によって表されるか、又は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有する、配列番号1を含むプラスミドであり得る。いくつかの態様では、モノマーαS基質は、配列番号6によって表される。
【0012】
精製されたモノマーヒトαS基質又は保存的バリアントを作製するための方法も提供される。方法は、モノマーヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含む発現ベクターを宿主細胞に形質転換する工程であって、核酸配列は、発現されたタンパク質におけるアミノ酸の誤組込みを回避するために最適化されたコドンを含む工程と、モノマーヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するのに有効な条件下で宿主細胞を培養する工程と、モノマーヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを宿主細胞から得る工程と、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを約3.5以下のpHで1つ又は複数の酸沈殿工程に供し、続いてクロマトグラフィに供することによって、モノマーヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを精製して、精製されたモノマーヒトαS基質又は保存的バリアントを得る工程と、を含む。いくつかの態様では、宿主細胞は、大腸菌(E.Coli)等の腸内細菌、例えば大腸菌(E.Coli)Bl21(DE3)、BL21(DE3)-pLysS等である。そのような態様では、方法は、精製後に細菌脂質を除去する工程及び/又はモノマーヒトαS基質又は保存的バリアントにリポ多糖(「LPS」)を添加する工程を更に含む。
【0013】
最後に、組換え腸内細菌細胞が提供され、組換え腸内細菌細胞は、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するための発現ベクターを含み、発現ベクターは、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、細胞によって発現された場合に、アミノ酸の誤組込みのない、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む。
【0014】
本発明は、以下の図を参照することによってより容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】可溶性ミスフォールディングαSタンパク質を含有する生物学的試料を用いた「高速」αS-SAAプロセスの例示的な描写を示す図である。
【0016】
図2A】配列番号2によって表されるプラスミドを用いて形質転換された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質のゲル電気泳動結果を示す図である。ジチオスレイトール(「DTT」)で処理した場合の結果を示す。
図2B】配列番号2によって表されるプラスミドを用いて形質転換された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質のゲル電気泳動結果を示す図である。処理なしの場合の結果を示す。
【0017】
図3】DTTによる処理及び30又は50kDaフィルタによる濾過の前後に、配列番号4によって表されるプラスミドを使用して形質転換された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された基質のゲル電気泳動結果を示す図である。
【0018】
図4A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH4への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図4B】健康な対照(HC)において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH4への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0019】
図5A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH3.5への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図5B】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH3.5への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0020】
図6A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH3への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図6B】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH3への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0021】
図7A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図7B】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0022】
図8A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.0への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図8B】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.0への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0023】
図9A】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図9B】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図9C】確認されたPD試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図9D】HCにおいて、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0024】
図10A】確認されたMSA試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(2つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図10B】MSA試料の存在下において、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.5への酸沈殿によって精製され、更に様々な量のLPSが補充された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(2つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0025】
図11】適切なSAA条件と共に、αS-SAAアッセイで使用した場合にミスフォールディング及び自己凝集を低減、減速又は防止するが、生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在下でその活性を保持するモノマーαS基質を精製するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【0026】
図12A】確認されたPD試料の存在下で、図11に示されるように、配列番号2によって表されるプラスミドを使用して形質転換され、最初にpH3.5で、再びpH2.0で、2つの酸沈殿工程によって精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図12B】確認されたPD試料の存在下で、図11に示されるように、配列番号2によって表されるプラスミドを使用して形質転換され、最初にpH3.5で、再びpH2.0で、2つの酸沈殿工程によって精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図12C】確認されたPD試料の存在下で、図11に示されるように、配列番号2によって表されるプラスミドを使用して形質転換され、最初にpH3.5で、再びpH2.0で、2つの酸沈殿工程によって精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図12D】HCにおいて、図11に示されるように、配列番号2によって表されるプラスミドを使用して形質転換され、最初にpH3.5で、再びpH2.0で、2つの酸沈殿工程によって精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【0027】
図13A】配列番号2で表されるプラスミドを使用して形質転換され、約pH3.1まで酸沈殿によって精製され、合成シードの存在下で50kDaフィルタを使用して透析濾過されたタンパク質の第2の濾過によって更に精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図13B】配列番号2で表されるプラスミドを使用して形質転換され、約pH3.1まで酸沈殿によって精製され、HCにおいて50kDaフィルタを使用して、透析濾過されたタンパク質の第2の濾過によって更に精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図13C】配列番号2で表されるプラスミドを使用して形質転換され、約pH3.1まで酸沈殿によって精製され、合成シードの存在下で30kDaフィルタを使用して透析濾過されたタンパク質の第2の濾過によって更に精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
図13D】配列番号2で表されるプラスミドを使用して形質転換され、約pH3.1まで酸沈殿によって精製され、HCにおいて30kDaフィルタを使用して、透析濾過されたタンパク質の第2の濾過によって更に精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
αS発現ベクター
適切に精製された、αS-SAAにおいて自己凝集する傾向の減少を示すモノマーαSタンパク質の産生のための発現ベクターが提供される。発現ベクターは、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、適切な宿主細胞によって発現された場合にヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを製造するように最適化されたコドンを含む。一態様では、宿主細胞は、大腸菌(E.Coli)等の腸内細菌宿主細胞である。別の態様では、宿主細胞は、S2昆虫細胞、酵母細胞、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。いくつかの態様では、コドンは、アミノ酸の組込みを回避するために最適化されている。いくつかの態様では、コドンは、発現されたタンパク質におけるシステインの誤組込みを回避するために最適化されている。更なる態様では、コドンは、発現されたタンパク質の位置39、125、133及び136の少なくとも1つにおけるシステインの誤組込みを回避するように最適化されている。
【0029】
一態様では、発現ベクターは、配列番号1によって表されるか、又は配列番号1と少なくとも90%の同一性を有するコード核酸配列を含み得る。一態様では、発現ベクターはプラスミドであり得る。例えば、発現ベクターは、T7-lacオペロン系によってタンパク質の発現を可能にするプラスミドであり得る。一態様では、発現ベクターは、配列番号2によって表されるか、又は配列番号2と少なくとも90%の同一性を有する、配列番号1を含むプラスミドであり得る。
【0030】
いくつかのアミノ酸は、2つ以上のコドンによってコードされ得る。特定の種類の細胞で使用される特定のコドンには自然な階層が存在する。したがって、ヒトαSタンパク質の宿主細胞発現のために構成された核酸配列は、ヒト細胞においてヒトαSタンパク質を発現する対応する核酸配列とは異なり得る。例えば、大腸菌(E.Coli)等の微生物におけるヒトαSタンパク質の発現のために構成された核酸配列は、例えば、選択されたアミノ酸に対するヒト典型的コドンに対する細菌典型的コドンの置換を含み得る。例えば、大腸菌(E.Coli)等の微生物におけるヒトαSタンパク質の発現のために構成された核酸配列は、TACコドンではなくチロシンを発現するTATコドンを含み得、これはシステインの誤組込みをもたらし得る。
【0031】
配列番号1は、大腸菌(E.Coli)での発現時に、大腸菌(E.Coli)でのヒト天然核酸の発現と比較して(例えば、配列番号4によって表されるように、配列番号3を含むコード核酸配列を含む発現ベクターを介して)、他のアミノ酸の中でも、配列番号6の39、125、133及び136の位置の1つ又は複数におけるチロシンに対するシステインの誤組込みを緩和する。システインの誤組込みは、他のアミノ酸の誤組込みとは対照的に、二量体の形成のために検出可能である(図3参照)。組換え宿主細胞で発現すると、産生されているαSタンパク質(配列番号6)は、位置39、125、133及び136のうちの1つ又は複数でシステインの誤組込みが実質的に減少しているか、又は全くない。
【0032】
様々な態様では、発現ベクターは、腸内細菌宿主細胞における最適化された核酸配列(例えば、配列番号1)の発現に有効な調節配列に作動可能に連結され得る。「作動可能に連結される」という用語は、要素が機能的に接続され、互いに相互作用することができるような、様々なポリヌクレオチド要素の互いに対する配置を指す。そのような要素としては、限定されないが、プロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化配列、1つ又は複数のイントロン及び/又はエクソン、並びに発現される目的の遺伝子のコード配列が挙げられ得る。発現ベクターは、大腸菌(E.Coli)における配列番号1によって表される核酸配列の発現に有効な調節配列に作動可能に連結され得る。多くの適切なベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、限定するものではないが、複製起点、1つ又は複数のマーカ遺伝子、エンハンサー要素、プロモータ、及び転写終結配列のうちの1つ又は複数が含まれる。
【0033】
αSタンパク質は、改変なしで組換え産生されてもよく、あるいは異種ポリペプチド、例えばシグナル配列、又は成熟タンパク質若しくはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドとの融合ポリペプチドとして産生されてもよい。一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であってもよく、又はベクターに挿入されるコード配列の一部であってもよい。一態様では、選択される異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識及び処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものであり得る。
【0034】
発現ベクターは通常、選択マーカとも呼ばれる選択遺伝子を含む。選択遺伝子は、選択培地中で増殖させた形質転換宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターで形質転換されていない宿主細胞は、培養培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、又はテトラサイクリンに対する耐性を付与するか、(b)栄養要求性欠乏を補完するか、又は(c)複合培地から入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。
【0035】
発現ベクターは、宿主生物によって認識され、直交するタンパク質コード配列に作動可能に連結されたプロモータを含有する。プロモータは、それらが作動可能に連結されている特定の核酸配列の転写を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)(一般に約100~1000bp以内)に位置する非翻訳配列である。そのようなプロモータは、典型的には、誘導性及び構成性の2つのクラスに分類される。誘導性プロモータは、培養条件のいくらかの変化、例えば栄養素の有無又は温度の変化に応答して、それらの制御下でDNAからの転写レベルの増加を開始するプロモータである。様々な潜在的な宿主細胞によって認識される多くのプロモータは周知である。
【0036】
一態様では、発現ベクターは、配列番号1によって表されるコード核酸配列、又は配列番号1に対する少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99の配列同一率を有する核酸配列を含み得る。いくつかの態様では、核酸配列は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。核酸配列は配列番号3ではない。
【0037】
発現ベクターはプラスミドであり得る。例えば、発現ベクターは、配列番号2で表されるプラスミドであり得る。いくつかの態様では、プラスミド核酸配列は、配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。プラスミド核酸配列は配列番号4ではない。
【0038】
明確にするために、配列番号1は、C末端histagを有するヒトαSをコードする最適化されたDNA配列である。配列番号1は、配列番号2の一部である(配列番号2の1459~1899bp)。配列番号2は、配列番号1を含むベクター又はプラスミド全体のDNA配列である。配列番号3は、C末端histagを有するヒトαSをコードする非最適化DNA配列である。配列番号3は、配列番号4の一部である(配列番号4の1459~1899bp)。配列番号4は、配列番号3を含むベクター又はプラスミド全体のDNA配列である。
【0039】
遺伝暗号の縮重性のために、様々な異なるヌクレオチド配列を使用して、所与のポリペプチドをコードすることができる。本開示は、本明細書に記載のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする任意の配列のDNA化合物を含む。同様の様式で、ポリペプチドは、典型的には、所望の活性の喪失又は有意な喪失なしに、そのアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失及び挿入を認容することができる。
【0040】
ヌクレオチド同一性は、2つのポリヌクレオチドの残基を整列されて、それらの配列の長さに沿って同一のヌクレオチドの数を最適化することによって決定される。共有されるヌクレオチドの数を最適化するために、いずれか又は両方の配列のギャップが整列を行う際に許容されるが、各配列のヌクレオチドはそれにもかかわらず、それらの適切な順序のままでなければならない。好ましくは、2つのヌクレオチド配列は、Tatusova,et al.(FEMS Microbiology Letters,174,p.247-50(1999))によって記載されるように、BLAST2検索アルゴリズムのBlastnプログラムを使用して比較され、国立生物工学情報センターのウェブサイトのワールドワイドウェブで、分子データベースセクションのBLASTの下で入手可能である。好ましくは、reward for match=1、penalty for mismatch=-2、open gap penalty=5、extension gap penalty=2、gap x dropoff=50、expect=10、wordsize=11、及び任意選択的にfilter onを含む、全てのBLAST2検索パラメータのデフォルト値が使用される。BLAST検索アルゴリズムを使用した2つのヌクレオチド配列の比較では、ヌクレオチド同一性は「同一性」と呼ばれる。
【0041】
組換えαSタンパク質産生細胞
ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するための発現ベクターを含む組換え腸内細菌細胞も提供される。発現ベクターは、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含み得、核酸配列は、細胞によって発現された場合にヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを製造するように最適化されたコドンを含む。
【0042】
腸内細菌科(Enterobacteriaceae)としてより正式に知られている腸内細菌は、グラム陰性細菌のファミリである。腸内細菌科ファミリのメンバは、桿菌(bacilli)(棒状)であり、典型的には1~5μmの長さであり、通常は運動のための鞭毛を含む。腸内細菌の例としては、大腸菌(E.Coli)、サルモネラ(Salmonella)、クレブシエラ(Klebsiella)、シゲラ(Shigella)、エンテロバクター(Enterobacter)、及びシトロバクター(Citrobacter)が挙げられる。
【0043】
いくつかの態様では、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列は、大腸菌(E.Coli)宿主細胞、例えば大腸菌(E.Coli)Bl21(DE3)、BL21(DE3)-pLysS等によって発現された場合にヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む。大腸菌(E.Coli)は、lacUV5プロモータの制御下でT7RNAポリメラーゼの遺伝子を発現する必要があり、IPTG又は自己誘導によってT7 RNAポリメラーゼの発現を誘導することを可能にする。T7 RNAポリメラーゼが発現されると、それはプラスミドにおける配列番号1の転写を可能にする。BL21(DE3)細胞は、必要な表現型を有する。
【0044】
様々な態様では、腸内細菌細胞に含まれる発現ベクターは、本明細書に記載の発現ベクターの特徴のいずれかを含み得る。例えば、いくつかの態様では、発現ベクターは、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する核酸配列を含む。更なる態様において、組換え宿主細胞で発現される組換えαSタンパク質は、位置39、125、133及び136のうちの1つ又は複数におけるシステインの誤組込みを含む、アミノ酸の誤組込みの非存在又は緩和によって特性決定される。
【0045】
「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換えベクターが導入された細胞(特定の対象細胞及びそのような細胞の子孫)を指す。変異又は環境の影響のいずれかに起因して後続の世代で特定の改変が起こり得るため、子孫は、実際には親細胞と同一でない可能性があるが、依然として「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞(例えば、組換え腸内細菌細胞)は、単離された細胞、培養で成長した細胞株であってもよく、又は生体組織若しくは生物に存在する細胞であってもよい。
【0046】
モノマーαS基質の調製方法
αS-SAAに使用するためのモノマーαS基質を調製する方法も提供される。方法は、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含む腸内細菌宿主細胞を提供する工程であって、核酸配列は、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む、工程と、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するのに有効な条件下で腸内細菌宿主細胞を培養する工程と、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを腸内細菌宿主細胞から得る工程と、を含む。いくつかの態様において、方法は、ヒトαSのアナログ又はペプチド断片を提供する。
【0047】
「モノマーαSタンパク質」及び「モノマーαS基質」という語句は互換的に使用され、1つ又は複数のαSタンパク質分子又はそれらの天然の非病原性構成の保存的バリアントを指す。いくつかの態様では、モノマーαS基質は、140個のアミノ酸を有し、14,460Daの分子質量を有し、以下の配列によって表される野生型又は組換えヒトαSタンパク質を含むか、それらから本質的になるか、又はそれからなる。
【0048】
配列番号5:
【数1】
【0049】
いくつかの態様では、モノマーαSタンパク質は、配列番号5の保存的バリアントを含むか、それらから本質的になるか、又はそれからなる。保存的バリアントは、類似の生化学的特性を有し、αS-SAA中の得られたタンパク質の活性に対して最小又は有益な影響を有するアミノ酸に対して、1つ又はいくつかのアミノ酸の置換又は付加においてのみ配列番号5から逸脱するペプチド又はアミノ酸配列であり得る。保存的バリアントは、基本成分、すなわち配列番号5と実質的に同様に機能的に作用しなければならない。例えば、配列番号5の保存的バリアントは、ミスフォールディングαSタンパク質と凝集し、同様の反応条件下で配列番号5と実質的に同様の反応速度を有する凝集体を形成する。
【0050】
一般に、(配列番号5又は本明細書に開示される配列番号のいずれかの)保存的バリアントは、例えば、アミノ酸配列において、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個(5%)及び最大14個(10%)の置換、付加又は欠失を有し得る。いくつかの態様では、配列番号5の保存的バリアントは、他の哺乳動物種、例えばげっ歯類及び非ヒト霊長類のαSタンパク質を含み得る。いくつかの態様では、配列番号6~23の保存的バリアントは、他の哺乳動物種、例えばげっ歯類及び非ヒト霊長類の同様にタグ付けされたαSタンパク質を含み得る(すなわち、変異はαSタンパク質の140アミノ酸配列内にある)。いくつかの態様において、本発明は、モノマーαS基質として配列番号5を除外する。
【0051】
いくつかの態様では、モノマーαS基質は、配列番号5のC末端に6個の追加のヒスチジンアミノ酸(すなわち、ポリHis精製タグ)を含む組換えαSタンパク質を含み、15,283Daの分子質量をもたらし、以下の配列によって表される。
【0052】
配列番号6:
【数2】
【0053】
したがって、配列番号6は、C末端上の6個の更なるヒスチジンアミノ酸によって配列番号5と区別可能である。ヒスチジンタグの保持は、ヒトモノマーαS基質が自己凝集を回避する能力を改善し得る。配列番号6は、例えば、1つ又は複数のアミノ酸がN末端に付加されている配列番号5(及び配列番号6)の保存的バリアントと更に区別可能である。いくつかの態様では、1つ又は複数のアミノ酸がN末端に付加されている配列番号5の保存的バリアントは除外される。しかしながら、いくつかの態様は、N末端付加を含む。したがって、
【0054】
配列番号7:
【数3】
【0055】
例えば、FLAG、HA、Myc及びV5を含む更なる精製タグが企図され、したがって、以下の配列番号を生成する。
【0056】
配列番号8:
【数4】
【0057】
配列番号9:
【数5】
【0058】
配列番号10:
【数6】
【0059】
配列番号11:
【数7】
【0060】
配列番号12:
【数8】
【0061】
配列番号13:
【数9】
【0062】
配列番号14:
【数10】
【0063】
配列番号15:
【数11】
【0064】
配列番号16:
【数12】
【0065】
配列番号17:
【数13】
【0066】
配列番号18:
【数14】
【0067】
配列番号19:
【数15】
【0068】
配列番号20:
【数16】
【0069】
配列番号21:
【数17】
【0070】
配列番号22:
【数18】
【0071】
配列番号23:
【数19】
【0072】
野生型タンパク質と比較して実質的に同等又は変化したαS活性を示すモノマーαS基質、そのポリペプチドフラグメント、変異体、切断体、誘導体及びスプライスバリアントの調製も同様に企図される。これらのバリアントは、意図的であってもよく、例えば部位特異的変異誘発によって得られる修飾であってもよく、又は偶発的であってもよく、例えばα-シヌクレインタンパク質の産生体である宿主における変異によって得られてもよい。これらの用語の範囲内には、本明細書中に具体的に列挙されるαSタンパク質、並びにその全ての実質的に相同な類似体及び対立遺伝子バリアントが含まれる。
【0073】
類似体は、保存的アミノ酸置換によって作製され得る。「保存的アミノ酸置換」は、例えば、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものを含み得る。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
【0074】
「非必須」アミノ酸残基は、αSの生物学的活性を消失させることなく、又はより好ましくは実質的に変化させることなく、αSの野生型配列から変化させることができる残基である。したがって、αSタンパク質中の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリからの別のアミノ酸残基で置き換えられる。あるいは、別の態様では、飽和変異誘発等によって、αSコード配列の全部又は一部に沿って変異をランダムに導入することができ、得られた変異体をαS生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する変異体を同定することができる。αSのヌクレオチド配列の変異誘発後、コードされたタンパク質を組換え発現させ、タンパク質の活性を決定することができる。
【0075】
本明細書で製造されたモノマーαS基質は、自己凝集する傾向の減少を示す。いくつかの態様では、モノマーαS基質は、αS-SAA条件下で自己凝集しない。他の態様では、モノマーαS基質は、モノマーαS基質を調製する以前の方法によって得られたモノマーαS基質の自己凝集のレベル又は速度よりもはるかに低いレベル及び/又ははるかに遅い速度で自己凝集する。そのような態様では、自己凝集の速度及び/又はレベルは、本明細書に記載の方法以外の方法を使用して得られたモノマーαS基質の凝集レベルと比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、又は90%以下であり得る。他の態様では、モノマーαS基質は、モノマーαS基質と可溶性ミスフォールディングαSタンパク質との凝集の速度又はレベルよりも遅い速度又は低いレベルで自己凝集する。そのような例では、検出の強度(相対蛍光単位)又は蛍光増加が始まる期間によって、シヌクレイン病陽性試料が、モノマーαS基質の単なる自己凝集と区別され得るため、αS-SAA検出は依然として成功している。本明細書に記載のモノマーαS基質の自己凝集の減少は、得られるモノマーαS基質組成の違いを含む、モノマーαS基質を調製するために使用される方法の違いの結果であり得る。
【0076】
ヒトモノマーαS基質又は保存的バリアントを調製する方法は、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントをコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養することを含み得、核酸配列は、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを産生するように最適化されたコドンを含む。細胞は、プロモータの誘導、形質転換体の選択、又は所望の配列をコードする遺伝子の増幅のために適切に改変された従来の栄養培地中で培養され得る。培養培地は、緩衝液、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質、微量元素及びグルコース又は同等のエネルギー源を含み得る。任意の他の必要な補助剤もまた、当業者に知られているであろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞で以前に使用されたものであり、当業者には明らかであろう。大腸菌(E.Coli)を使用して組換えタンパク質を産生するための戦略の考察については、Gopal G.,Kumar A.,Protein J.,32(6):419-25(2013)を参照されたく、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
モノマーαS基質を調製する方法は、本明細書に記載の発現ベクターのいずれかを含み得る。いくつかの態様では、腸内細菌は大腸菌(E.Coli)である。更なる態様では、発現ベクターの核酸配列は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む。なお更なる態様では、発現ベクターは、配列番号2と少なくとも95%の同一性を有する配列を含むプラスミドである。更なる態様では、コドンは、発現されたヒトαSタンパク質又は保存的バリアントにおけるシステインの誤組込みを含むアミノ酸組込みを回避するように最適化されている。
【0078】
細胞を適切な時間(例えば、4~24時間)培養で増殖させた後、細胞を溶解し、溶解した細胞からモノマーαSタンパク質を精製する。細胞を溶解するために、フレンチプレス、超音波処理、凍結融解、化学的溶解、及び顕微溶液化の使用等の様々な方法を使用することができる。精製は、遠心分離、カラム精製、透析、及び約3.5以下のpHへの酸沈殿、場合によりその後のLPSの添加及び/又は限外濾過(10kDa~300kDa)等の様々な異なる精製工程を含み得る。
【0079】
いくつかの態様では、宿主細胞からモノマーαS基質を調製する方法は、マイクロフルイダイザーを使用して細胞を溶解することを含む。マイクロフルイダイザーは、一定の制御された剪断速度を供給することによって細胞内内容物の完全性を維持しながら細胞を高効率で破壊し、その後のタンパク質精製を容易にする大きな細胞膜断片をもたらす。細胞溶解のためのマイクロフルイダイザーの使用は、精製モノマーαS基質が自己凝集する傾向を減少させることができる。適切なマイクロフルイダイザーの例は、Microfluidicsによって製造されたLM20 Microfluidizer(登録商標)High Shear Fluid Homogenizerである。
【0080】
モノマーαS基質を調製する方法は、モノマーαS基質を、脂質等の宿主細胞の他の成分から分離する工程を含み得る。いくつかの態様では、宿主細胞(例えば、大腸菌(E.Coli))からモノマーαS基質を得ることは、モノマーαS基質を脂質除去剤(「LRA」)と接触させて脂質夾雑物(すなわち、細胞成分)を除去することを含む。したがって、様々な他の細胞成分と混合されたモノマーαS基質は、細胞溶解後にLRAと接触し、モノマーαS基質は、タンパク質を脂質から分離する遠心分離によって除去される(LRA及び結合した脂質は、遠心分離中にペレット画分に進む)。望ましくない脂質成分を除去するためのLRAの使用は、得られた組成物中の組換えモノマーαS基質の自己凝集を回避する能力を改善し得る。LRAは、合成ケイ酸カルシウム水和物に基づく市販の薬剤(Millipore Sigmaから入手可能)である。
【0081】
モノマーαS基質又はモノマーαS基質組成物を調製する方法は、最初に、LPS等の脂質、又はDNA及びRNA等の核酸からモノマーαS基質を分離する工程を含み得る。いくつかの態様では、モノマーαS基質を宿主細胞(例えば、大腸菌(E.Coli))から得ることは、約pH2.0以下を含むpH3.50未満への塩酸(HCl)の添加による非シヌクレイン成分の沈殿を含む。いくつかの態様では、方法は、酸沈殿したモノマーαS基質にLPSを添加することを含む。
【0082】
一態様では、宿主細胞からモノマーαS基質を得ることは、ヒトαSタンパク質又は保存的バリアントを約3.5以下のpHで、例えば最初にpH3.5で、再びpH2で、1つ又は複数の酸沈殿工程に供し、続いてクロマトグラフィに供して、精製モノマーαS基質又は保存的バリアントを得ることによる非シヌクレイン成分の沈殿を含む。そのような態様の一例が、図11に示されるフローチャートによって示される。
【0083】
モノマーαS基質組成物から金属結合タンパク質(例えば、鉄取込み調節因子タンパク質;FUR)等の夾雑物を除去する選択肢には、鉄-IMAC、抗体枯渇、精製タグ(αSタンパク質によって使用されるhistag又は他の精製タグ以外)を含む内因性大腸菌(E.Coli)FURのゲノム修飾、ニッケルカラムへの結合を減少させる鉄飽和、又はニッケル-IMAC中のFe++による除去洗浄が含まれる。いくつかの態様では、モノマーαS基質の精製は、本質的に全ての他のタンパク質(例えば、金属結合タンパク質)を除外することを含む。更なる態様では、金属結合タンパク質は鉄取込み調節因子(FUR)である。
【0084】
αSタンパク質組成物
単離されたヒトモノマーαS基質又は保存的バリアント組成物はまた、タンパク質を懸濁及び/又は保存するための適切な培地を含み得る。例えば、いくつかの態様では、モノマーαS基質又は保存的バリアント組成物は、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝液を含む。更なる態様では、組成物は、配列番号5~23及びPIPESのうちの1つから本質的になる。モノマーαS基質は、溶解した腸内細菌細胞からの脂質夾雑物等の他の物質を実質的に含まなくてもよい。
【0085】
いくつかの態様では、ヒトモノマーαS基質又は保存的バリアント組成物は、本質的に夾雑物を含まないように精製される。精製されたモノマーαS基質又は保存的バリアントに見られる夾雑物のほとんどは、宿主細胞起源のタンパク質であり、ヒト起源の潜在的な夾雑物はごくわずかである。MS/MSは、酵素消化後の断片を検出し、断片フットプリントを公知のタンパク質のフットプリントと比較することによってタンパク質を同定し、公知のデータベースで利用可能である。したがって、いくつかの断片は、宿主細胞以外の微生物(例えば、大腸菌(E.Coli))と一致し得る。しかしながら、ほとんどの原核生物混入タンパク質は宿主細胞に由来するであろう。
【0086】
全てのヒト起源タンパク質の得られた相対的存在量は、モノマーαS基質と比較して極めて低い。ヒト起源の最も代表的な夾雑物は、シトクロムB5及びケラチン関連ペプチドである。
【0087】
細菌起源の夾雑物については、ほとんどが発現宿主である腸内細菌宿主細胞(例えば、大腸菌(E.Coli))由来である。今までのところ、最も可能性が高く豊富な細菌夾雑物は、大腸菌(E.Coli)由来のFURであるようである。このタンパク質は鉄に対して親和性を有し、鉄の細胞内濃度を制御する役割を果たす。鉄がFURに結合すると、鉄はDNAと結合できるようになり、調節因子として作用することができる。鉄及びニッケルは両方とも二価カチオンであるため、鉄に結合するFURの能力は、IMAC精製中にFURがモノマーαS基質と共精製する理由である可能性がある。αS-SAAコンピテントモノマーαS基質又は保存的バリアントは、自己凝集性基質よりも低い濃度のFURタンパク質を含有し得る。FURが自己凝集を誘発する潜在的な機構は、モノマーαS基質とFURによって担持された残留鉄又はニッケルとの間のイオン相互作用を含み得る。FURの分子量はαSと実質的に同じであり、分子量ベースの識別ツールで夾雑物を隠し得る。
【0088】
比較的高い存在量及び一致するスコアを有する大腸菌(E.Coli)由来のいくつかの他の注目すべき夾雑物は、異化産物遺伝子活性化因子、HIT様タンパク質、FKBP型ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼ、及びいくつかのリボソームタンパク質である。カタボライト遺伝子活性化因子は、FURのような別のDNA結合タンパク質であるが、金属補因子を必要としない。HITタンパク質は、亜鉛の結合に関与し得るヒスチジントライアドモチーフ(histidine triad motif)を有するタンパク質であり、ヌクレオチドに結合することができることが示されている。したがって、トライアドモチーフはまた、ニッケルに対する親和性を有し得、これにより、HITタンパク質がモノマーαS基質と共精製され得る。
【0089】
したがって、いくつかの態様では、ヒトモノマーαS基質又は保存的バリアント組成物は、他のタンパク質を本質的に含まない。いくつかの態様では、他のタンパク質は金属結合タンパク質を含み、更なる態様では、金属結合タンパク質はFURを含む。金属結合タンパク質には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ニッケル、バナジウム、モリブデン、及びタングステン等の金属イオンに結合(例えば、キレート)するタンパク質が含まれる。
【0090】
本発明の態様において組成物から除外されるヒトモノマーαS基質又は保存的バリアント組成物の潜在的な夾雑物には、以下が含まれ得る。鉄取込み調節タンパク質OS=大腸菌(Escherichia coli);カタボライト遺伝子活性化剤OS=大腸菌(Escherichia coli);30Sリボソームタンパク質S12 OS=大腸菌(Escherichia coli);HIT様タンパク質hinT OS=大腸菌(Escherichia coli);FKBP型ペプチジル-プロリルシス-トランスイソメラーゼslyD OS=大腸菌(Escherichia coli);二官能性ポリミキシン耐性タンパク質ArnA OS=大腸菌(Escherichia coli);50Sリボソームタンパク質L27 OS=大腸菌(Escherichia coli);ホルミルテトラヒドロ葉酸デフォリラーゼOS=大腸菌(Escherichia coli);30Sリボソームタンパク質S15 OS=大腸菌(Escherichia coli);グルコサミン-フルクトース-6-リン酸アミノトランスフェラーゼ[異性化]OS=大腸菌(Escherichia coli);シグマDの調節因子OS=大腸菌(Escherichia coli);アシル-[アシル-担体-タンパク質]-UDP-N-アセチルグルコサミンO-アシルトランスフェラーゼOS=大腸菌(Escherichia coli);UPF0047タンパク質yjbQ OS=大腸菌(Escherichia coli);アラビノース5-リン酸イソメラーゼGutQ OS=大腸菌(Escherichia coli);50Sリボソームタンパク質L28 OS=大腸菌(Escherichia coli);30Sリボソームタンパク質S16 OS=パラバクテロイデス・ジスタソニス(Parabacteroides distasonis);30Sリボソームタンパク質S20 OS=大腸菌(Escherichia coli);アラビノース5-リン酸イソメラーゼKdsD OS=大腸菌(Escherichia coli);30Sリボソームタンパク質S2 OS=大腸菌(Escherichia coli);50Sリボソームタンパク質L7/L12OS=キネオコッカス・ラジオトレランス(Kineococcus radiotolerans);リボソームRNA大サブユニットメチルトランスフェラーゼA OS=大腸菌(Escherichia coli);ヌクレオシド二リン酸キナーゼOS=アルカニボラックス・ボルクメンシス(Alcanivorax borkumensis);未分類のHTH型転写調節因子yeiE OS=大腸菌(Escherichia coli);30Sリボソームタンパク質S7 OS=大腸菌(Escherichia coli);NADH-キノンオキシドレダクターゼのサブユニットB OS=ゲオバクター種(Geobacter sp);NADH-キノンオキシドレダクターゼのサブユニットB OS=ヤナスチア種(Jannaschia sp);30Sリボソームタンパク質S16 OS=バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron);伸長因子Tu OS=アクチノバシラス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)血清型3;50Sリボソームタンパク質L4 OS=アシネトバクター種(Acinetobacter sp.);50Sリボソームタンパク質L25 OS=カルディセルロシルプター・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus);スペルミジンN(1)-アセチルトランスフェラーゼOS=大腸菌(Escherichia coli);50Sリボソームタンパク質L4 OS=髄膜炎菌血清(Neisseria meningitidis)グループC;アミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼOS=大腸菌(Escherichia coli);推定される未分類化タンパク質yghX OS=大腸菌(Escherichia coli);N-ヒドロキシアリールアミン O-アセチルトランスフェラーゼ OS=大腸菌(Escherichia coli);外膜タンパク質A OS=大腸菌(Escherichia coli);リボソームRNA小サブユニットメチルトランスフェラーゼH OS=サーモアナエロバクター・テングコンゲネシス(Thermoanaerobacter tengcongensis);リボソームRNA小サブユニットメチルトランスフェラーゼH OS=クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum);ホスホリボシルホルミルグリシンアミジンシクロリガーゼOS=ゲオバチルス種(Geobacillus sp);未分類タンパク質yhbW OS=大腸菌(Escherichia coli);推定アシル-[アシル-担体-タンパク質]デサチュラーゼdesA1 OS=結核菌(Mycobacterium tuberculosis);リボフラビン生合成タンパク質RibD OS=大腸菌(Escherichia coli);リボソームRNA大サブユニットメチルトランスフェラーゼG OS=大腸菌(Escherichia coli);二官能性タンパク質putA OS=大腸菌(Escherichia coli);NADH-キノンオキシドレダクターゼのサブユニットG OS=大腸菌(Escherichia coli);D-アミノ酸デヒドロゲナーゼ小サブユニットOS=アゾトバクター・ビネランジイ(Azotobacter vinelandii);ペプチダーゼT OS=エルウィニア・カロトボラ亜種アトロセプチカ(Erwinia carotovora subsp.atroseptica);コビリン酸A,C-ジアミドシンターゼOS=ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus);ATPシンターゼサブユニットβ OS=リケッチア・アカリ(Rickettsia akari);UPF0371タンパク質M6_Spy1067 OS=化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogene)血清型;NAD還元ヒドロゲナーゼhoxSサブユニットα OS=水素細菌(Cupriavidus necator);シャペロンタンパク質DnaK OS=大腸菌(Escherichia coli);ウレアーゼサブユニットα OS=エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)血清型;1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸シンターゼOS=ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium);翻訳開始因子IF-2 OS=プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)。
【0091】
SAAにおけるモノマーαS基質の使用方法
自己凝集する傾向が低下した本明細書に記載のヒトモノマーαS基質又は保存的バリアント組成物は、αS-SAAの基質タンパク質として有用である。例示的なαS-SAA方法には、米国特許第20160077111号(「スローアッセイ」)、米国特許第20210063416号(「高速アッセイ」)、及び米国非仮特許出願第17/154,966号に開示されているものが含まれる。
【0092】
本発明の特定の態様をより明確に説明するために、例が含まれている。
【0093】

例1:配列番号2を使用する配列番号6の組換えモノマーαS基質の合成
大腸菌(E.Coli)BL21(DE3)を、製造者の説明書(Lucigen(登録商標)E.cloni(登録商標)Express Chemically Competent Cells,MA019 Rev.31OCT2016)に従って、配列番号2によって表されるプラスミドを含む発現ベクターで形質転換した。このプラスミドは、配列番号1によって表されるコドン最適化された核酸配列を含み、これは、アミノ酸の誤組込みを伴わずに配列番号6によって表されるC末端His Tag αSタンパク質をコードする。
【0094】
細菌ペレットを自己誘導培地を使用して一晩インハウスで増殖させた。ペレットを、B-Per試薬及びSDS-PAGEを使用して封入体について試験した。配列番号6で表されるαSタンパク質は高発現し(全タンパク質の約30%)、B-Perによって検出される封入体はなかった。配列番号1をDNA配列決定によって検証した。
【0095】
例2:顕微溶液化及び酸沈殿によるαSタンパク質の精製
αSタンパク質を含有する細菌ペレットを例1に記載のように調製し、洗浄し、-80℃で凍結し、使用するまで保存した。精製のために、細胞を溶解緩衝液(50mMのNaH2PO4 pH:8.0、0.3MのNaCl、0.2mMのEDTA、20mMのイミダゾール、1mMのPMSF、0.1mMのTCEP)中、30℃に設定した水浴中で40~45分間解凍した。細胞を、ペレットの重量の4倍に相当する最終体積の溶解緩衝液(20gのペレットに対して80mLの溶解緩衝液)に再懸濁した。再懸濁した細胞を、標準的な真空ポンプを用いて脱気した。再懸濁した細胞をマイクロフルイダイザー(LM20 Microfluidizer(登録商標))によって溶解した。粗溶解物を遠心分離によって清澄化して、大きな細胞残屑を除去した。
【0096】
清澄化された溶解物を、撹拌中に1MのHClを段階的に添加することによって滴定した。標的pHに達した後、酸性化溶解物を撹拌しながら20~60分間インキュベートした。酸性化した溶解物を遠心分離によって清澄化し、上清を1MのNaOHを用いてpH8.00に中和した。中和した溶解物を0.22μmフィルタで濾過し、材料をニッケル-セファロース樹脂を含むカラムに充填した。
【0097】
クロマトグラフィは、標準的なプロトコルを用いて行った。中和され濾過された溶解物を充填した後、充填カラムを第1の洗浄緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.5MのNaCl、20mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)及び第2の洗浄緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.15M NaCl、20mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)で洗浄した。タンパク質を溶出緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.15MのNaCl、250mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)で溶出し、溶出画分を氷上で回収した。溶出画分をSDS-PAGE及びクーマシー染色によって評価して、夾雑物の量がより少なく、組換えαSタンパク質の量がより多い画分を決定した。
【0098】
溶出画分を高αS及び低夾雑物でプールした後、1×PBS中で1:200の希釈係数で4~5時間透析した。2回目の透析を、合計で1:80,000の希釈係数で一晩行った(1:400)。
【0099】
透析した材料を、50,000ダルトンMWCO Amicon遠心分離デバイスを用いて濾過した。50kDaの濾過された材料は最終的なαSモノマー生成物であり、精度を高めるために、BCA、A280、又はA280とBCAとの組合わせによってタンパク質濃度を決定した。タンパク質を、それぞれ約6.5mgを含む単回使用一定分量に等分した。
【0100】
図2A及び図2Bは、ヌクレオチド配列(配列番号1)を含むプラスミド(配列番号2)を使用して調製されたC末端His Tag αSタンパク質(配列番号6)についての電気泳動結果を示す。C末端His Tag αSタンパク質一定分量を2つの画分に分離した。C末端His Tag αSタンパク質一定分量の1つの画分を、ジスルフィド結合還元条件下でDTTと接触させた。図2A及び図2Bに示されるように、C末端His Tag αSタンパク質のそれぞれ還元画分及び非還元画分は、1レーン当たりのタンパク質量が1μg、2μg及び4μgで行われた場合、本質的に同一であった。二量体形成に対応するバンドは見えなかった。したがって、ヌクレオチド配列(配列番号1)を含むプラスミド(配列番号2)は、大腸菌(E.Coli)で発現させた場合、システイン誤組込みなしC末端His Tag αSタンパク質配列(配列番号6)を生成する。
【0101】
比較例1:最適化コドンを使用せずに調製した組換えヒトモノマーαS基質のゲル電気泳動
図3は、DTTによる処理の前後にヌクレオチド配列(配列番号3)を含むプラスミド(配列番号4)を使用して調製したC末端HisTag αSタンパク質(配列番号6を意図するが、システインの誤組込みのため、おそらく配列番号6及び配列番号6-Y136Cの混合物を含む)の電気泳動結果を示す。レーン1(左から1番目のレーン)は、インキュベーション混合物の様々な分子量画分を示す。レーン2は、組換えモノマーαSタンパク質試薬(SD*)を示す。レーン3は、30kDaカットオフフィルタを通る濾液(F)を示す。レーン4は、30kDaカットオフフィルタによって捕捉された保持液(R)を示す。レーン5は、50kDaカットオフフィルタを通る濾液を示す。レーン6は、50kDaカットオフフィルタによって捕捉された保持液を示す。C末端HisTag αSタンパク質は、約15kDaの公称分子量を有するが、SDS-PAGEでは17kDaマーカよりわずかに高く泳動する。したがって、レーン3の30kDaカットオフフィルタを通る濾液の電気泳動は、C末端HisTag αSタンパク質に対応する約15kDaのバンドを示した。意図された15kDaの組換えモノマーフォールディングαSタンパク質に加えて、図3、レーン4、5及び6は約36kDaのバンドを示した。DTTで処理した後、約36kDaのバンドが消失し、約15kDaの予想されるバンドのみが残り、二量体の存在及びモノマーへの分離を示した。
【0102】
例3:酸沈殿モノマーαS基質のαS-SAA
酸沈殿したαSモノマーを使用するαS-SAAを、以下のパラメータを使用して「高速アッセイ」手順によって行った:
【表1】
【0103】
図4Aは、確認されたPD試料の存在下での(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示し、モノマーαS基質をpH4への酸沈殿によって精製した。モノマーαS基質は、PD試料の存在下で予想通り凝集し、60~70時間の間にFmaxに達した。しかしながら、モノマーαS基質は、HCからのCSF試料を分析すると、自己凝集の高い傾向を示した(図4B)。
【0104】
同様に、図5Aは、確認されたPD試料の存在下での(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示し、モノマーαS基質をpH3.5への酸沈殿によって精製した。モノマーαS基質は、PD試料の存在下で予想通り凝集し、60~70時間の間にFmaxに達したが、pH4.0の酸沈殿を使用して生成された基質よりも大きな変動性を示した。モノマーαS基質は、HCとの中程度の自己凝集を示した(図5B)。
【0105】
図6Aは、確認されたPD試料の存在下での(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示し、モノマーαS基質をpH3への酸沈殿によって精製した。pH3では、PD凝集は、3つのウェルのうちの2つのみについて予想通りである。第3のウェルははるかに低い蛍光を示し、これは自己凝集によって説明され得る。より驚くべきことに、HC(図6B)は「再現性よく陽性」であり、このようにして精製された基質は自己凝集しやすいことを示している(更に、PD試料からの第3の反復が自己凝集し得るという仮説を裏付けている)。
【0106】
図7Aは、確認されたPD試料の存在下での(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示し、モノマーαS基質をpH2.5への酸沈殿によって精製した。驚くべきことに、PD凝集は、再現性の低さ、陽性ウェルの凝集の遅延(75~90時間)、及び1つの反復に対する増幅の欠如の点で大きく影響され、偽陰性結果を生成する可能性があった。逆に、モノマーαS基質は自己凝集しなかった(図7B)。
【0107】
図8A及び図8Bは、確認されたPD試料の存在下において(図8A)、及びHCにおいて(図8B)、配列番号2で表されるプラスミドを用いて形質転換され、pH2.0への酸沈殿によって精製された、大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)において発現された、配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す。結果はpH2.5と一貫しており、3つの反復のうちの2つのみが陽性であったため、HCにおける自己凝集はなく、PD凝集は低かった。
【0108】
例4:PD試料のαS-SAAの前の酸沈殿(pH2.5)モノマーαS基質へのLPSの添加
LPSを、例3に記載される酸沈殿(pH2.5)モノマーαS基質に添加した。図9Aは、60,000エンドトキシン単位(EnU)のLPSを使用した、確認されたPD試料の存在下でのαS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線(独立した3つの反復)を示す。LPSは凝集を加速させ、これは約50時間で始まった。2つの反復は明らかに陽性であり、再現性のある凝集を示したが、3番目ははるかに低い最大蛍光(Fmax)を示した。1つの反復の変動性及び低いFmaxにもかかわらず、この試料は陽性と考えられる。60,000EnUのLPSは非常に高レベルの自己凝集を誘導した(図9B)。600EnUのLPS添加は、3つの反復の実験の再現性を実質的に改善し、これらは全て予想される50~75時間で陽性であった(図9C)。驚くべきことに、LPDの600EnUは自己凝集を誘導せず、HC試料を陰性として明確に同定することを可能にした(図9D)。
【0109】
例5:MSA試料のαS-SAAの前の酸沈殿(pH2.5)モノマーαS基質へのLPSの添加
LPSを、酸沈殿(pH2.5)モノマーαS基質に添加した。図10A及び図10Bは、それぞれ600EnU及び120EnUを使用する、確認されたMSA試料の存在下での(2つの反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す。LPSは低蛍光で凝集を誘導し、MSA診断と一致した。
【0110】
例5:顕微溶液化及び二重酸沈殿によるαSタンパク質の精製
図11は、αS-適切なSAA条件と共に、αS-SAAで使用した場合にミスフォールディング及び自己凝集を低減、減速又は防止するが、生物学的試料中の可溶性ミスフォールディングαSタンパク質の存在下でその活性を保持するモノマーαS基質を精製するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【0111】
したがって、αSタンパク質を含有する細菌ペレットを例1に記載のように調製し、洗浄し、-80℃で凍結し、使用するまで保存した。精製のために、細胞を溶解緩衝液(50mMのNaH2PO4 pH:8.0、0.3MのNaCl、0.2mMのEDTA、20mMのイミダゾール、1mMのPMSF、0.1mMのTCEP)中、30℃に設定した水浴中で40~45分間解凍した。細胞を、ペレットの重量の4倍に相当する最終体積の溶解緩衝液(20gのペレットに対して80mLの溶解緩衝液)に再懸濁した。再懸濁した細胞を、標準的な真空ポンプを用いて脱気した。再懸濁した細胞をマイクロフルイダイザー(Microfluidics(商標)製LM20 Microfluidizer)によって溶解した。粗溶解物を遠心分離によって清澄化して、大きな細胞残屑を除去した。
【0112】
清澄化された溶解物を、撹拌中に1MのHClを段階的に添加することによって滴定した。3.5の標的pHに達した後、酸性化溶解物を撹拌しながら20~60分間インキュベートした。酸性化溶解物を遠心分離によって清澄化した。清澄化された溶解物を、撹拌中に1MのHClを段階的に添加することによって再び滴定した。2.0の標的pHに達した後、酸性化溶解物を撹拌しながら20~60分間インキュベートした。二重酸性化溶解物を遠心分離によって清澄化し、0.45μmフィルタによって濾過し、上清を1MのNaOHを使用してpH8.00に中和した。中和した溶解物を0.22μmフィルタで濾過し、材料をニッケル-セファロース樹脂を含むカラムに充填した。
【0113】
クロマトグラフィは、標準的なプロトコルを用いて行った。中和され濾過された溶解物を充填した後、充填カラムを第1の洗浄緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.5MのNaCl、20mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)及び第2の洗浄緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.15M NaCl、20mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)で洗浄した。タンパク質を溶出緩衝液(50mMのNaHPO pH:7.4、0.15MのNaCl、250mMのイミダゾール、0.1mMのTCEP)で溶出し、溶出画分を氷上で回収した。溶出画分をSDS-PAGE及びクーマシー染色によって評価して、夾雑物の量がより少なく、組換えαSタンパク質の量がより多い画分を決定した。
【0114】
溶出画分を高αS及び低夾雑物でプールした後、1×PBS中で1:200の希釈係数で4~5時間透析した。2回目の透析を、合計で1:80,000の希釈係数で一晩行った(1:400)。
【0115】
透析した材料を、50,000ダルトンMWCO Amicon遠心分離デバイスを用いて濾過した。50kDaの濾過された材料は最終的なαSモノマー生成物であり、精度を高めるために、BCA、A280、又はA280とBCAとの組合わせによってタンパク質濃度を決定した。タンパク質を、それぞれ約6.5mgを含む単回使用一定分量に等分した。
【0116】
図12A~12Dは、3つの異なる確認されたPD試料の存在下(図12A~12C)及びHC(図12D)で得られたαSタンパク質の(3つの反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す。PD試料は優れた再現性を示し、HCは自己凝集を示さなかった。これは、pH3.5での単一の酸沈殿工程を使用したHCで示される自己凝集(図5B)及びpH2.0での単一の酸沈殿工程を使用したPD試料での所望の凝集の欠如(図8A)を考慮すると、驚くべきことであり、直感に反する。
【0117】
例6:顕微溶液化、酸沈殿、及び多重濾過によるαSタンパク質の精製
透析し、濾過したαS基質の1つの一定分量を50kDaで2回濾過し、且つ透析し、濾過したαS基質の1つの一定分量を30kDaで2回濾過したことを除いて、酸沈殿pH目標を約3.1にして、例2に記載したようにαS基質を調製した。
【0118】
図13A~13Dは、配列番号2で表されるプラスミドを使用して形質転換され、約pH3.1まで酸沈殿によって精製され、合成シードの存在下(図13A)及びHCにおいて(図13B)50kDaフィルタを使用して、又は合成シードの存在下(図13C)及びHCにおいて(図13D)30kDaフィルタを使用して透析濾過されたタンパク質の第2の濾過によって更に精製された大腸菌(E.Coli)株BL21(DE3)で発現された配列番号6に対応するモノマーαS基質を使用した(3つの独立した反復の)αS-SAA「高速アッセイ」凝集曲線を示す。
【0119】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0120】
値の範囲が提供される場合、文脈上明確に指示されない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載値又は介在値は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界を条件として、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0121】
数字に関連する「約」という用語は、その数字の±10%を含むことが意図されている。これは、「約」が独立した数字を変更することであるか、数字の範囲の両端のいずれか又は両方で数字を変更することであるかにかかわらず当てはまる。言い換えると、「約10」は9~11を意味する。同様に、「約10~約20」は、9~22及び11~18を企図する。「約」という用語がない場合、正確な数が意図される。言い換えると、「10」は10を意味する。
【0122】
単数形「a」、「and」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「試料(a sample)」への言及はまた、複数のそのような試料を含み、「モノマーαS基質(a monomeric αS substrate)」への言及は、1つ又は複数のそのような分子等への言及を含む。
【0123】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物、並びに電子的に利用可能な資料の完全な開示は、本明細書の特定の引用がそのように述べているか否かにかかわらず、参照により組み込まれる。上記の詳細な説明及び例は、理解を明確にするためにのみ与えられている。不必要な制限はそこから理解されるべきではない。本発明は、図示及び記載された正確な詳細に限定されず、当業者に明らかな変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明内に含まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0124】
配列表1~23 <223>合成
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
【手続補正書】
【提出日】2023-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023526378000001.app
【国際調査報告】