(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】固体粒子高配合インクを取り扱うインクジェットインクシステム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20230614BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 301
B41J2/175 305
B41J2/175 501
B41J2/175 111
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570313
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021033270
(87)【国際公開番号】W WO2021236849
(87)【国際公開日】2021-11-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503468695
【氏名又は名称】フエロ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】ドーヴァット,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キッフェル,ヤニヴ
(72)【発明者】
【氏名】レワルトウスキー,アーノン
(72)【発明者】
【氏名】スチョイ,オレン
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュ,オムリ ベン
(72)【発明者】
【氏名】ミクラツキー,エフレーム
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB50
2C056EB51
2C056EB53
2C056EC15
2C056EC19
2C056FC01
2C056KA01
2C056KB16
2C056KC02
(57)【要約】
本願は、インクジェットプリンタ用のインク供給システムについて記載する。このシステムは、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドにインクを送給するように動作する第1のインクタンクと、少なくとも1つの印字ヘッドを通って流れ、少なくとも1つの印字ヘッドによって使用されなかったインクを受け取るように動作する第2のインクタンクと、を含む。印刷用インクは、第1のタンクから印字ヘッドを通って第2のインクタンクに低圧によって引き込まれる。インクタンクの各々は、円筒形管状セグメントと、円錐台形内部セクションを有するセグメントと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドにインクを送給するように動作する第1のインクタンクと、
少なくとも1つの印字ヘッドを通って流れ、少なくとも1つの印字ヘッドによって使用されなかったインクを受け取るように動作する第2のインクタンクと、を含み、
前記第1及び第2のインクタンクの本体が、円筒形管状のセグメントと、円錐体形内部セクションを有するセグメントと、を含み、
印刷用のインクが、第1のタンクから印字ヘッドを通って第2のインクタンクに引き込まれる、インクジェットプリンタ用のインク供給システム。
【請求項2】
少なくとも1つのインクタンクが、
最低インクレベルセンサと、
最高インクレベルセンサと、を含む、
請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項3】
前記最低インクレベルセンサ及び前記最高インクレベルセンサは、フローティングレベルセンサ、磁気リードスイッチ型フロート、固体電気光学スイッチ、導電率センサ、容量性、超音波、及びピエゾ共振スイッチからなるセンサ群のうちの1つである、請求項2に記載のインク供給システム。
【請求項4】
前記最低レベルセンサは、前記第2のインクタンクから前記第1のインクタンクにインクを供給するポンプを作動させる、請求項2に記載のインク供給システム。
【請求項5】
前記第1のインクタンクは、少なくとも1つの印字ヘッドにインクを送給する、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項6】
前記第1及び第2のインクタンクは、少なくとも1つのインクスロッシング低減バッフルを含む、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項7】
前記インクタンクの前記円筒形セグメントは、前記インクタンクの円錐台形内部セクションを有するセグメントに固定して結合される、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項8】
前記インクタンクの前記円筒形セグメント及び前記インクタンクの前記円錐台形内部セクションを有するセグメントが同一方向に延在する、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項9】
前記第1のインクタンクが、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドにインクを送給するように動作し、前記第1のインクタンクが、円錐台形内部セクションを有するセグメントの細い部分に位置する少なくとも1つのインク出口を通じてインクを送給する、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項10】
前記インク供給システムは、インクシステム内のインクの連続的なインク循環をサポートする、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項11】
連続的なインク循環、及び円錐台形内部セクションを有するセグメントの円錐状面は、インク滞留点の形成を防止する、請求項10に記載のインク供給システム。
【請求項12】
円錐台形セグメントの角度は、インク中の固体粒子の割合に依存し、インク配合、粘度、及び顔料に相関するものとして、インクの沈降を回避するように選択される、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項13】
負圧が前記第1のインクタンクから前記印字ヘッドを通じて前記第2のインクタンクにインクを引き込む、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項14】
前記第1のインクタンクから前記印字ヘッドを通じて前記第2のインクタンクにインクを引き込む負圧は、-0.05~-0.5barである、請求項13に記載のインク供給システム。
【請求項15】
前記第1のインクタンクはインクドレインチャンネルを含み、前記第2のインクタンクはインクドレイン口を含む、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項16】
インクの流れは、ノズルの回復及びインクからの空気の除去をサポートするのに十分である、請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項17】
第1のインクタンク及び第2のインクタンク並びに少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを含むインクジェット印刷システムを提供するステップと、
第1のインクタンクと第2のインクタンクとの間に圧力差を発生させ、圧力差によって第1のインクタンクから印字ヘッドを通じて第2のインクタンクにインクを引き込むステップと、
円筒形管状セグメント及び円錐台形内部セクションを有するセグメントを含む本体を有するインクタンクを使用するステップであって、各インクタンクが最低インクレベルセンサ及び最高インクレベルセンサをさらに含むステップと、を含み、
最低インクレベルセンサが、第2のインクタンクから第1のインクタンクへインクを移送するポンプを作動させる、インクジェット印刷システムにおいてインクジェット印字ヘッドにインクを供給する方法。
【請求項18】
第1のインクタンクを利用して、少なくとも1つの印字ヘッドにインクを送給する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記最高インクレベルセンサが、過剰なインクを排出し、インク溢れを防止するように動作する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
負圧発生装置を使用し、第1のインクタンクと第2のインクタンクとの間に圧力差を発生させる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のインクタンクと前記第2のインクタンクとの間の圧力差が-0.05~-0.5barである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
インクの沈降及びインクの滞留点を回避するように、内部円錐台形セクションを有するセグメントの角度を選択する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のインクタンクのドレインチャンネル及び前記第2のインクタンクのインクドレイン口を通じてシステムの排液を行う、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
ノズルの回復及びインクからの空気除去をサポートするのに十分なインクの流れを発生させる、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも40%の固体粒子を有する粒子高配合インクを使用してインクジェット印刷システムを作動させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1のインクタンク及び第2のインクタンク並びに少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを含むインクジェット印刷システムを提供するステップと、
第1のインクタンクと第2のインクタンクとの間に圧力差を発生させ、圧力差によって第1のインクタンクから印字ヘッドを通じて第2のインクタンクにインクを引き込むステップと、
円筒形管状セグメント及び円錐台形内部セクションを有するセグメントを含む本体を有するインクタンクを使用するステップであって、各インクタンクが最低インクレベルセンサ及び最高インクレベルセンサをさらに含むステップと、を含み
最低インクレベルセンサが、第2のインクタンクから第1のインクタンクへインクを移送するポンプを作動させる、インクジェット印刷システムにおいてインク循環を発生させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置及び方法は、ガラス基体へのインクジェット印刷の分野に関し、特に、印刷に適した物性にインクを維持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷技術は、印刷ヘッド(印字ヘッド)アセンブリから基体上に小さなインク滴を吐出することによって画像を生成する。インクジェット印刷は多用途の印刷方法であり、画像は多種多様な材料上に配することができる。紙への印刷のほか、木材、セラミック、金属、ガラスなどの基材への印刷にも、インクジェット印刷装置が使用される。インクジェット印刷用のインクは、無機顔料粒子、溶媒、安定化剤、その他のインク成分を含むことができる。ガラスに印刷するためのインクには、サブミクロンのガラスフリット粒子が含まれている。
【0003】
サブミクロンのガラス粒子及び無機顔料は、ガラスの焼き入れ(tempering)工程又はアニール工程で、後にガラス基体に融着又は焼成される。インクを基体に融着させることによって、基体が存続する限り持続することができる鮮やかで耐久性のあるデザインの創出がサポートされる。顔料は、インクに特定の色を与える。
【0004】
印字ヘッド(プリントヘッド)は、複数のインク滴吐出ノズルを含む。一般的に、インクリザーバ又はタンクは、印字ヘッドにインクを送給する。印刷される画像は、印字ヘッドのノズルの動作を決定する。すべてのノズルが常にインク滴を吐出しているわけではない。吐出されなかったインクは、インク送給タンクに戻る。インクのパラメータを一定に保つことは、安定した印刷結果に寄与する。いくつかのプリンタにおいては、インクは連続的に攪拌され、インクタンクリザーバからより小さい印字ヘッドチャンバへ(場合によってはノズルにも)、そして再びメインタンクに戻るというサイクルの連続した流れがサポートされている。
【0005】
サブミクロンのガラス及び顔料の粒子は、有機粒子の4~5倍の重さがある。無機物の高密度粒子は急速に沈殿し、インクジェット印字ヘッドのインク経路やノズルを詰まらせ、インクの攪拌や循環を常に必要とする。このようなインクの沈殿は、印刷の不均一性、さらにはシステムの閉塞につながる。そのため、ガラスやセラミック材料への印刷用インクなど、粒子状の物質を含むインク用のインクジェットプリンタには、通常、これらの問題を防止するためのインク循環・攪拌システムが搭載されている。これらの必要性は、必然的に、インクの消耗に加えて、ハードウェア及びメンテナンスのコストを発生させる。
【0006】
以下の米国、欧州、及び日本の特許は、異なるインク循環システムを開示している:US20100232827;US20100085405;US20110234711;US20120194619;US8,608,300;US8,926,077;DE60025095;EP3159174;JP25088599;及びWO2019/117697。
【0007】
[定義]
フラスタム(frustum)とは、円錐形又は角錐形の底面に平行な平面で頂部を切り取って形成される円錐(cone)又は角錐(pyramid)の基底部をいう。本明細書で使用する円錐台形(frustoconical)及び角錐台形(frustopyramidal)とは、切頭円錐(truncated cone)及び切頭角錐(truncated pyramid)を意味する。
【0008】
高配合インク(high load ink)とは、固体粒子を高い割合で含有するインクのことである。固体粒子高配合インクの例としては、ガラス用途の印刷に使用されるインクがあり得る。典型的には、そのようなインクは、40重量%よりも多くの粒子、さらには80重量%以下の固体粒子を含む。
【0009】
本開示で使用されるように、用語「画像面積(image content)」は、画像が占める印刷領域の割合を意味する。例えば、15%の画像面積は、60%の画像面積が必要とするよりも大幅に少ないインクを必要とする。
【0010】
インクスロッシング(ink sloshing)は、部分的に充填されたインクタンクにおける液体インクの自由表面の周期的又はランダムな動きである。インクタンクの急加速又は急制動はインクスロッシングの原因となる。
【発明の概要】
【0011】
インクジェットプリンタ用のインク供給システム(ink delivery system)は、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドにインクを送給するように動作する第1のインクタンクと、少なくとも1つの印字ヘッドを通って流れ、少なくとも1つの印字ヘッドによって使用されなかったインクを受け取るように動作する第2のインクタンクと、を含む。インクタンクの各々は、円筒形の管状セグメント(a cylindrical tubular segment)と、円錐台形内部セクションを有するセグメント(a segment with frustoconical inner section)と、を含む。インクタンクの円筒形セグメント、及び円錐台形内部セクションを有するセグメントは、同じ方向に延びている。
【0012】
負圧により、印刷インクが、第1のインクタンクから印字ヘッドを通って第2のインクタンクのインクに引き込まれる。インク供給システムの第1のインクタンクは、1つ又は複数の印字ヘッドにインクを供給する。インク供給システムのインクタンクの各々は、最低インクレベルセンサと;最高インクレベルセンサと、を含む。第1のインクタンクの最低レベルセンサは、第2のインクタンクから第1のインクタンクへインクを供給するポンプを作動させる。最高インクレベルセンサは、過多なインクを排出し、インクの溢れを防ぐように動作する。インクタンクの各々は、少なくとも1つのスロッシング低減バッフル(sloshing reducing baffle)を含む。
【0013】
インク供給システムは、インクシステム内でインクを連続的に循環させる。連続的なインク循環は、インク滞留点の形成を防止し、インクの流れは、ノズルの回復及びインクからの空気の除去をサポートするのに十分である。インク供給システムは、インクドレインチャネルを含み、システムからのインクの排出及びインクシステムの洗浄をサポートする。
【0014】
インクジェット印刷システムにおいて1つ又は複数のインクジェット印字ヘッドに同時にインクを供給するためのインク供給システムの使用方法も開示する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[図面のリスト及び図面の簡単な説明]
インク供給システムの特定の例を、添付図面を参照しながら以下に説明する。同一の参照数字は異なる図において共通の要素を指示する。
【0016】
【
図1】
図1は、インクジェットプリンタ用の粒子高配合インク供給システムの例の正面図である。
【
図2A】
図2Aは、球状の内面を有するセグメントを含むインクタンクの例である。
【
図2B】
図2Bは、放物面状の内面を有するセグメントを含むインクタンクの例である。
【
図3】
図3は、粒子高配合インク供給システムの追加的な詳細を提供する。
【
図4】
図4は、粒子高配合インク供給システムのさらなる詳細を提供する。
【
図5】
図5は、インクスロッシング防止バッフルの動作を示す粒子インク供給システムの例の上面図である。
【
図6】
図6は、インク供給システムからのインクの排出を示すフローチャートである。
【説明】
【0017】
インクジェット印刷技術は、印刷ヘッド(印字ヘッド)アセンブリから基体上に小さなインク滴を吐出することによって画像を生成する。ソフトウェア又はハードウェアに実装されたラスタ画像プロセッサを含むコンピュータが、インク滴の吐出プロセスを制御する。インク滴を吐出させて画像を形成する印字ヘッドに、インクが連続的に送給される。印字ヘッド又は印字ヘッドのアセンブリは、インク貯蔵タンクからのインクフローによって供給されるインクのすべてを使用しない場合がある。画像面積は、使用されるインクの量を規定する。その結果、未使用のインクがインクタンクに流れ戻ることがある。しかしながら、未使用インクは、インク貯蔵タンク内のインクと特性が同一ではなく、インク組成を維持するいくつかの補助システムが、通常、未使用インクフローに含まれる。
【0018】
ガラスへの印刷用インクは、サブミクロンのガラスフリット及び顔料粒子を含む。これらの粒子は、有機粒子よりも4~5倍重い。サブミクロン粒子は急速に沈降し、インク経路、インクジェット印字ヘッドのノズルを詰まらせ、常にインクの攪拌又は循環を必要とする。インク循環は、固体粒子の沈降速度を低下させることができるが、固体粒子の沈降プロセスを排除することはできない。
【0019】
本開示は、標準的なインク、特に、粒子材料を多く含むインク、例えば、ガラス又はセラミック材料への印刷用インク、に適した、簡易なインク供給システムを提案する。
【0020】
図1は、インクジェットプリンタ用の粒子高配合インク供給システムの例を示す正面図である。システム100は、第1のインクタンク104と、インクジェット印字ヘッド108と、第2のインクタンク112と、を含む。インクは、ドットが付された体積144で図示されている。一例において、第1のインクタンク及び第2のインクタンクの本体は、それぞれ、円筒形管状セグメント116と、円錐状表面を有する円錐台形内部セクション(円錐台状内部セクション、錐台形内部セクション)124を有するセグメント120と、を含む。別の例において、円筒形管状セグメントは、異なる数のファセットを有する多面形管状セグメント、楕円形断面を有する管状セグメント、及び非対称円錐形状を含む他の対称又は非対称形状によって置き換えることができる。多面形管状セグメントのファセット数は、3つ、5つ、8つ、又はそれ以上とすることができる。いくつかの例において、角錐台形内部セクションを有するセグメントは、円錐台形内部セクション124を有するセグメント120に代わることができる。
【0021】
インクタンク104及び112の各々の円筒形管状セグメント116及び円錐台形内部セクション124を有するセグメント120は、それらの間で固定的に(強固に)接続することができる。いくつかの例において、円筒形セグメント116と円錐台形内部セクション124を有するセグメント120との間にガスケットを挿入することができる。円筒形管状セグメント116の軸と円錐台形内部セクション124を有するセグメント120の軸は、同一方向に延び、同軸、同一直線とすることができ、又は互いにある角度で配向さえすることができる。
【0022】
周囲空気の侵入を可能にする開口132を有するカバー又は蓋128-1は、第1のインクタンク104を覆っている。部品(fitting)136によって終端された管160は、インク又は洗浄液の進入及び第1のインクタンク104からの排出をサポートする。真空バルブ140は、真空ポンプとすることができる負圧発生装置との流体連通をサポートする。真空バルブ140は、第2のインクタンク112のカバー128-2に取り付けられている。負圧発生装置によって発生する負圧は、第1のインクタンク104と第2のインクタンク112との間に圧力差を発生させる。この圧力差により、印刷インクが第1のタンク104から印字ヘッド108を通って第2のインクタンク112に引き込まれる。第1のタンクから印字ヘッドを通って第2のインクタンクにインクを引き込む負圧は、-0.05~-0.5barである。負圧によって生じたインクの流れは、ノズルの回復及び通常インク脱気(ink degassing)と呼ばれるインクからの空気除去をサポートするのに十分なものである。
【0023】
第1のインクタンク104のインク出口148は、1つの印字ヘッドにインクを送給又は供給するが、インク出口は、2個、4個、8個、又は16個の印字ヘッド108にインクを供給するように構成することができる。矢印152は、第1のインクタンク104から印字ヘッドを通って第2のインクタンク112に至るインクの流れを示す。インクがインク供給システムの中を循環するたびに、インクは印字ヘッド108を通過する。動作すると、印字ヘッド108は、基体(図示せず)に向かってインク滴110を吐出する。ソフトウェア又はハードウェアに実装されたラスタ画像プロセッサを含むコンピュータ(図示せず)は、画像面積に従って、印字ヘッド108によるインク滴110吐出のプロセスを制御する。
【0024】
円錐台形セグメント120は、水平面を有さず、沈降物を蓄積しない。円錐台形セクションの角度150は、20~160度とすることができ、多くは45~100度とすることができる。インク中の固体粒子の割合(インク配合(ink load))は、角度150の値の選択に影響を与える。角度150は、インク配合の相関事項としてインクの沈降を避けるために選択され、インクに加えて、配合は、インク粘度、使用される顔料の種類、及び他の要素を考慮する。
【0025】
円錐台形内部セクション124を有するセグメント120とインクタンクの円筒形管状セクションとの接続は、円錐台形内部セクション124の底部に位置するインク出口に向かって沈降物が滑りやすくなるように選択される。いくつかの例において、内部円錐台形セクション124を有するセグメント120は、球状内部セクション204を有するセグメント(
図2A)又は放物線状内部セクション208を有するセグメント(
図2B)によって置き換えることができる。球状内部セクション204及び放物線状内部セクション208は共に凹面である。インク出口148に向かって沈降物がスライドするのを促進する凸面を含む他の表面も考慮することができる。
【0026】
図3は、高配合インク供給システムの追加的な詳細を提供する。インク供給システム100のインクタンク104及び112の各々は、最低インクレベル又は低レベルセンサ304及び最高インクレベル又はオーバーフローレベルセンサ308を含む。最低インクレベルセンサ304及び最高インクレベルセンサ308は、フローティングセンサ、磁気リードスイッチベースのフロート、固体電気光学スイッチ、導電率センサ、容量性、超音波、及びピエゾ共振スイッチからなるセンサ群のうちの1つとすることができる。センサ304及び308は、インクタンクカバー128-1及び128-2に取り付けることができ、又はインクタンク104及び112の内部円筒面に取り付けることができる。センサ304及び308は、同じ種類であってもよいし、又は異なる種類であってもよい。
【0027】
標準的なインク供給システム動作の過程において、矢印152(
図1及び
図4)で示すように、インクは第1のインクタンク104から印字ヘッド108を通って第2のインクタンク112へ流れる。高配合インクがインク供給システムの中を循環するたびに、インクは印字ヘッド108及び円錐台形内部セクション124を有するセグメント120を通過する。動作すると、印字ヘッド108は、基体(図示せず)に向かってインク滴110を吐出する。第1のインクタンク104内のインクレベルが低インクレベル又は最低インクレベルに達すると、第1のインクタンク104の最低インクレベルセンサ304は、ポンプ404を作動させ、第2のインクタンク112から第1のインクタンク104にインクを供給する。最高インクレベルセンサ308は、過剰なインクを排出し、インクの溢れを防止するように動作している。
【0028】
インクレベルセンサ304及び308の使用は、インクタンク104及び112内のインクレベルの信頼性のある検出及び監視をサポートする。ポンプ404によって第2のインクタンク112から第1のインクタンク104にインクを供給するプロセスは、インク供給システムにおける連続的なインク循環をサポートする。
【0029】
インク供給システムにおいて、円錐台形内部セクション124を有するセグメント120は、固体粒子が堆積することができる表面を有さず、連続的なインク循環を容易にし、インク滞留点の形成を防止する。
【0030】
インク供給システム100はメインインク512及び508タンク(図示せず)も含むことができる。メインインクタンクは、インク供給及び循環システム100へのインクの初期充填に加えて、印刷過程でインク消耗によって引き起こされる第1及び第2インクタンク104及び112への追加インク充填サイクルをサポートする。
【0031】
典型的には、インク供給システム100は、基体上を往復移動するキャリッジに搭載される。キャリッジに搭載されたインク供給システム100は、キャリッジの移動方向504に対して任意の角度で配向することができる。キャリッジが加速もしくは減速するとき、又は移動方向が変わるとき、インクスロッシングが発生する可能性がある。インクスロッシングは、印刷の品質に影響を与え、センサ304及び308の読み取り値を変化させる。印刷品質に対するインクスロッシング効果の影響を緩和するために、インク供給システムは、それぞれのインクタンク104及び112(
図5)の各々に取り付けられたインクスロッシング低減バッフル504及び508を含む。インクスロッシング低減バッフル508及び512の向きは、バッフル面がキャリッジの移動方向に対して垂直又はほぼ垂直となるような向きである。インクスロッシング低減バッフル508及び512のこのような向きは、インクスロッシング効果の緩和又は打消しさえ可能にする。
【0032】
インク供給システム内のインクを別のインクに変更したり、インク供給システム100を洗浄したりする必要があることがある。インク供給システム100(
図4)は、一端164が第1のインクタンク104の底部に近接し、部品(fitting)136を通る遠位端168が負圧発生装置又はポンプの大本に接続されるチューブ160とすることができるインクドレインチャンネルをさらに含む。
【0033】
図6は、インク供給システムからのインクの排出を示すフローチャートである。初めに、インクドレインチャンネル又はチューブ160を通るインクが、第1のインクタンク104から流出されるか又は排出される(ブロック604)。ポンプ404が動作状態となり(ブロック608)、インクタンク112及び印字ヘッド108に残っているインクを移送する(ブロック612)。第2のインクタンク112は、インクドレイン口412(
図4)を含み、インクドレイン口412を通じてポンプ404(
図4)がインクタンク112からインクを除去し、除去されたインクを既に空いている第1のインクタンク104に移送する。第1のインクタンク104に移送されたインクは、上記で説明したように、インクドレインチャンネル又はチューブ160を通じて第1のインクタンク104から除去される(ブロック616)。インクの移送と除去のサイクルは、インクの全てがインク供給システム100から完全に除去されるまで、必要に応じて続けられる。
【0034】
インク供給システム100を洗浄するために、溶媒又はインク洗浄液を使用することができる。溶媒は、インクドレインチャンネル又はチューブ160を通じてインク供給システムに充填され、上述したようにシステムから除去又は排出される。
【0035】
これまで説明してきた例の様々な特徴は、様々な方法で組み合わせて、インク供給システムの多数の追加的な例を生み出すことができることは理解されるべきである。従って、インク供給システムは、本明細書に記載されたそれらの特定の例及び方法によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる代替物、変更物、及び均等物を含むものである。
【国際調査報告】