IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アストラゼネカ・アクチエボラーグの特許一覧

特表2023-526400局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量
<>
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図1A
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図1B
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図2
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図3A
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図3B
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図4
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図5A
  • 特表-局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】局所進行性又は転移性尿路上皮がんにおける免疫療法に対する感受性に関連する遺伝子変異量
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20230614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230614BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P35/04
G01N33/53 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570357
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063659
(87)【国際公開番号】W WO2021234150
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/028,070
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】シー,ハン
(72)【発明者】
【氏名】クジオラ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヒッグス,ブランドン ダブリュー
【テーマコード(参考)】
4B063
4C085
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA07
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR58
4B063QR62
4B063QS16
4B063QS17
4B063QS25
4B063QS33
4B063QS34
4B063QX02
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
(57)【要約】
本開示は、一般に、デュルバルマブで治療された患者における全生存を予測するための、PD-L1の発現の使用、血液に基づく遺伝子変異量、及び免疫療法に対する感受性又は抵抗性に関連する循環腫瘍DNA中の突然変異の同定に基づく、尿路上皮がん患者を治療するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする患者における尿路上皮がん(UC)治療の成功を予測する方法であって、
(a)前記患者の腫瘍細胞(TC)及び免疫細胞(IC)でのプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現を判定することと、
(b)前記患者の遺伝子変異量(TMB)を判定することと、
を含み、高いPD-L1の発現が前記治療の成功を予測し、且つ高いTMBが前記治療の成功をさらに予測する、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することをさらに含み、FGFR3遺伝子における体細胞突然変異の欠如が前記治療の成功をさらに予測する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高いPD-L1の発現が、TC及び/又はICの25%又はそれ以上でのPD-L1の発現を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記UC治療が、デュルバルマブによる治療を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
治療の成功が、標準治療と比較されるときの全生存の増加によって判定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が、少なくとも1つのプラチナベースの化学療法ラインを以前に受けた、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かの判定が、前記患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記UC治療が、尿路上皮がんに対する治療である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
それを必要とする患者における尿路上皮がん(UC)治療の成功を予測する方法であって、前記患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、FGFR3遺伝子における体細胞突然変異の欠如が前記治療の成功を予測する、方法。
【請求項10】
前記UC治療が、デュルバルマブによる治療を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
治療の成功が、標準治療と比較されるときの全生存の増加によって判定される、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が、少なくとも1つのプラチナベースの化学療法ラインを以前に受けた、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かの判定が、前記患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
それを必要とする患者における尿路上皮がん(UC)治療の成功を予測する方法であって、前記患者がATリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、ARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異が前記治療の成功を予測する、方法。
【請求項15】
前記がん治療が、デュルバルマブによる治療を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
治療の成功が、標準治療と比較されるときの全生存の増加によって判定される、請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、少なくとも1つのプラチナベースの化学療法ラインを以前に受けた、請求項14~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者がARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かの判定が、前記患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
それを必要とする患者における尿路上皮がん(UC)を治療する方法であって、
(a)前記患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;
(b)患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を欠いている場合、治療する若しくは治療を継続するか、又は前記患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有する場合、治療を中断することと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記治療が、デュルバルマブによる治療を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
それを必要とする患者における尿路上皮がん(UC)を治療する方法であって、
(a)前記患者がA-Tリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;
(b)患者がARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有する場合、治療する又は治療を継続することと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記治療が、デュルバルマブによる治療を含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、デュルバルマブで治療された患者における全生存を予測するための、PD-L1の発現の使用、血液に基づく遺伝子変異量、及び免疫療法に対する感受性又は抵抗性に関連する循環腫瘍DNA中の突然変異の同定に基づく、尿路上皮がん患者を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿路上皮がん(UC)は、特に、免疫系を回避するため、プログラム細胞死1(PD-1)/プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)経路に依存することから、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)にとっての有望な標的である。UCはまた、他の腫瘍と比較して、比較的高いPD-L1の発現を示す。進行性UCを有する患者において、PD-L1アンタゴニストのデュルバルマブを含む、いくつかの抗PD-1/PD-L1剤の場合、臨床活性及び許容できる安全性が認められている。
【0003】
遺伝子変異量(TMB)は、いくつかのがんにおいて、免疫療法に対する応答に対する予測バイオマーカーとして同定されているが、特定の遺伝子における体細胞突然変異が免疫療法に対する感受性を駆動し得るか否かはいまだ定かでない。循環腫瘍DNA(ctDNA)中で検出される体細胞突然変異を用いて、疾患進行、治療法に対する応答、及び原発性及び転移性病変のクローン性を評価することができる。免疫浸潤の尺度として、インターフェロンγ経路遺伝子のコピー数負荷も、免疫療法に対する応答のバイオマーカーとして同定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)を介する異常なシグナル伝達は、細胞増殖、生存、遊走、及び分化を促進し、腫瘍発現を引き起こす。UCにおけるFGFR3の改変は、ドライバー突然変異である傾向がある。FGFR1-4に対する活性を有するチロシンキナーゼ阻害剤であるエルダフィチニブの試験は、FGFRの改変を有する局所進行性/転移性UCを有する、以前に治療された患者の40%において客観的応答を示したが、この徴候について米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)(FDA)によって認可されている。また、FGFR3阻害剤のより早期の臨床試験は、一部の患者において励みになる結果を示したが、応答の機構は十分には理解されておらず、患者選択を改善するためのさらなるバイオマーカーが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者の腫瘍細胞(TC)及び免疫細胞(IC)でのプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現を判定することを含み、ここで高いPD-L1の発現は治療の成功を予測する、方法を提供する。
【0006】
本開示は、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、ここでFGFR3遺伝子における体細胞突然変異の欠如は治療の成功を予測する、方法をさらに提供する。
【0007】
本開示は、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者がATリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、ここでARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異は治療の成功を予測する、方法をさらに提供する。
【0008】
本開示は、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法であって、(a)患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;(b)患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を欠いている場合、治療する若しくは治療を継続するか、又は患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有する場合、治療を中断することと、を含む、方法をさらに提供する。
【0009】
本開示は、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法であって、(a)患者がA-Tリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;(b)患者がARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有する場合、治療する又は治療を継続することと、を含む、方法をさらに提供する。
【0010】
特許請求された発明の具体的な実施形態は、特定の実施形態の以下のより詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】≧2Lの事前のプラチナ集団における、盲検独立中央判定(BICR)による応答までの時間及び応答の持続時間に対するPD-L1の発現による活性を示す。
図1B】BICRによる腫瘍サイズにおけるベースラインからの最高百分率変化に対するPD-L1の発現による抗腫瘍活性、及び≧2Lの事前のプラチナ集団におけるベースラインからの任意の腫瘍縮小を有する患者(ベースライン及び≧1のベースライン後スキャン時に標的病変を有する患者)の百分率を示す。 PD-L1の発現状態は、患者13名において、(生検における不十分な腫瘍に起因して)未知であったか、又は(試験がデータカットオフ時に進められていなかったため)利用できなかった;任意の腫瘍サイズ減少を有する患者の百分率(ベースライン後腫瘍評価を伴わない患者を除外した);RECIST v1.1によると、リンパ節が標的病変に含まれる患者の場合、CRはベースラインからの-100%の変化に等しくないことがある
図2】≧2Lの事前のプラチナ集団におけるPD-L1の発現による全生存(OS)のカプランマイヤー推定を示す。
図3A】FGFR3突然変異状態によって層別化された患者におけるOSの確率のカプランマイヤー推定を示す。
図3B】FGFR3突然変異状態及びPD-L1の発現によって層別化された患者におけるOSの確率のカプランマイヤー推定を示す。
図4】遺伝子変異量(TMB)状態によって層別化された患者におけるOSの確率のカプランマイヤー推定を示す。
図5図5A及び図5Bは、ARID1A又はNOTCH1突然変異状態によって層別化されたUC患者におけるOSの確率のカプランマイヤー推定をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、一般に、デュルバルマブで治療された患者における全生存を予測するための、PD-L1の発現の使用、血液に基づく遺伝子変異量、及び免疫療法に対する感受性又は抵抗性に関連する循環腫瘍DNA中の突然変異の同定に基づく、尿路上皮がん患者を治療するための方法に関する。
【0013】
本開示に従って用いられる通り、別段の指示がない限り、全ての科学技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有するように理解されるものとする。特に文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。
【0014】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者の腫瘍細胞(TC)及び免疫細胞(IC)でのプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現を判定することを含み、ここで高いPD-L1発現は治療の成功を予測する、方法が本明細書に提供される。
【0015】
一部の実施形態では、高いPD-L1の発現は、TC及び/又はICの25%以上でのPD-L1の発現を含む。
【0016】
一部の実施形態では、がん治療の成功を予測する方法は、患者の遺伝子変異量(TMB)を判定することをさらに含み、ここで高いTMBは治療の成功をさらに予測する。
【0017】
「遺伝子変異量」又は「TMB」は、腫瘍中で見出される突然変異の量を指す。TMBは、異なる腫瘍タイプの中で変化する。一部の腫瘍タイプは、それら以外より高い比率で突然変異を有する。TMBは、当該分野で公知の種々のツールによって測定され得る。特定の実施形態では、これらのツールは、Foundation Medicine and Guardant Healthの測定ツールである。他の実施形態では、TMBは、ctDNAアッセイによって測定され得る。腫瘍がTMBを高いレベルで有するか又は低いレベルで有するかの判定は、類似の腫瘍を有する参照集団と比較し、突然変異/メガベース(mut/Mb)の中央値又は平均レベルを決定することによって判定され得る。一部の実施形態では、高いTMBは、≧12~≧20突然変異/メガベース(mut/Mb)と定義される。他の実施形態では、高いTMBは、≧16突然変異/メガベース(mut/Mb)と定義される。他の実施形態では、高いTMBは、≧20突然変異/メガベース(mut/Mb)と定義される。一部の実施形態では、突然変異は、表1に概説されるものから選択されてもよい。一部の実施形態では、突然変異は、患者がFGFR3における突然変異(例えば、体細胞突然変異)を欠いている(例えば、患者が、表1に概説される突然変異「R397C」/「C>T」及び「S249C」/「C>G」を欠いている、又は表1に概説される突然変異「R397C」/「C>T」、「TACC3遺伝子への融合」及び「S249C」/「C>G」を欠いている)という条件で、表1に概説されるものから選択されてもよい。
【0018】
TMBが高いか否かの判定は、腫瘍タイプと腫瘍タイプの間で変化し得る。腫瘍がTMBを高いレベルで有するか又は低いレベルで有するかの判定は、類似の腫瘍を有する参照集団と比較し、突然変異/メガベース(mut/Mb)の中央値又は平均レベルを決定することによって判定され得る。一部の実施形態では、TMBのレベルは、低い(1~5突然変異/mb)、中間(6~19突然変異/mb)、及び高い(≧20突然変異/mb)のように分かれる。
【0019】
一部の実施形態では、がん治療の成功を予測する方法は、患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)における体細胞突然変異を有するか否かを判定することをさらに含み、FGFR3における体細胞突然変異の欠如は、治療の成功をさらに予測する。特定の実施形態では、患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)における体細胞突然変異を有するか否かの判定は、患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される。
【0020】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、ここでFGFR3遺伝子における体細胞突然変異の欠如は治療の成功を予測する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かの判定は、患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される。
【0021】
「FGFR3」という用語は、プロセシングを受けていない「完全長」FGFR3及び細胞内でのプロセシングに起因するFGFR3の任意の形態を包含する。該用語はまた、FGFR3の天然に存在する変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を包含する。
【0022】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがん治療の成功を予測する方法であって、患者がATリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することを含み、ここでARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異は治療の成功を予測する、方法が本明細書に提供される。一部の実施形態では、患者がARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かの判定は、患者の循環腫瘍DNA(ctDNA)を用いて判定される。
【0023】
「ARID1A」という用語は、プロセシングを受けていない「完全長」ARID1A及び細胞内でのプロセシングに起因するARID1Aの任意の形態を包含する。該用語はまた、ARID1Aの天然に存在する変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を包含する。
【0024】
「NOTCH1」という用語は、プロセシングを受けていない「完全長」NOTCH1及び細胞内でのプロセシングに起因するNOTCH1の任意の形態を包含する。該用語はまた、NOTCH1の天然に存在する変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を包含する。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、デュルバルマブによる治療を含む。「デュルバルマブ」という用語は、本明細書で用いられるとき、米国特許第9,493,565号明細書(ここでデュルバルマブは、「2.14H9OPT」と称される)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示の通り、PD-L1に選択的に結合し、PD-L1のPD-1及びCD80受容体への結合を遮断する抗体を指す。デュルバルマブの結晶化可能(Fc)ドメイン断片は、抗体依存性細胞傷害(「ADCC」)を媒介することに関与する補体成分C1q及びFcγ受容体への結合を低下させる、IgG1重鎖の定常ドメイン内の三重突然変異を含む。デュルバルマブは、インビトロでヒトT細胞活性化のPD-L1媒介性抑制を軽減し得、T細胞依存性機構を介して異種移植片モデルにおける腫瘍増殖を阻害する。
【0026】
一部の実施形態では、治療の成功は、標準治療と比較されるときの全生存の増加によって判定される。一部の実施形態では、治療の成功は、好ましい客観的奏効率(ORR)によって判定される。「標準治療」(SOC)及び「プラチナベースの化学療法」は、アブラキサン、カルボプラチン、ゲムシタビン、シスプラチン、ペメトレキセド、又はパクリタキセルの少なくとも1つを含む化学療法治療を指す。一部の実施形態では、SOCは、アブラキサン+カルボプラチン、ゲムシタビン+シスプラチン、ゲムシタビン+カルボプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチン、ペメトレキセド+シスプラチン、又はパクリタキセル+カルボプラチン、及び/又は客観的奏効率を含む。
【0027】
本明細書で用いられるとき、全生存(「OS」)は、治療日に始まり任意の原因に起因する死亡に至る期間に関する。OSは、例えば、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月などの期間内の全生存を指してもよい。
【0028】
本明細書で用いられるとき、ORR(「ORR」)は、予め規定された量と比較しての腫瘍量の減少を伴う患者の割合に関する。ORRは、例えば、6か月、9か月、12か月、18か月、24か月などの期間内のORRを指してもよい。
【0029】
一部の実施形態では、患者は、少なくとも1つのプラチナベースの化学療法ラインを以前に受けた。
【0030】
「患者」という用語は、ヒト及び非ヒト動物、特に哺乳類を含むことが意図される。患者は、ヒトであってもよい。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、患者を腫瘍障害及び/又はがん障害に対して治療することに関する。一部の実施形態では、がんは、メラノーマ、乳がん、膵がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)及び小細胞肺がん(SCLC))、肝細胞がん、胆管細胞がん又は胆道がん、胃がん、食道がん、頭頚部がん、腎がん、子宮頸がん、結腸直腸がん、又は尿路上皮がんである。
【0032】
「治療」又は「治療する」という用語は、本明細書で用いられるとき、治療的処置を指す。治療を必要とする者は、がんを有する対象を含む。一部の実施形態では、本明細書で開示される方法を用いて、腫瘍を治療することができる。他の実施形態では、腫瘍の治療は、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍減少を促進すること、又は腫瘍増殖を阻害することと腫瘍減少を促進することの両方を含む。
【0033】
「投与」又は「投与する」という用語は、本明細書で用いられるとき、1つ又は複数の化合物を、所望の効果を達成するため、任意の適切な経路によって、提供すること、接触させること、及び/又は送達することを指す。投与は、限定はされないが、経口、舌下、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、関節内、動脈内、関節滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病変内、又は頭蓋内注射)、経皮、局所、頬側、直腸、膣、経鼻、点眼、吸入経由、及びインプラントを含んでもよい。
【0034】
「医薬組成物」又は「治療組成物」という用語は、本明細書で用いられるとき、対象に適切に投与されるとき、所望の治療効果を誘導することが可能な化合物又は組成物を指す。一部の実施形態では、本開示は、薬学的に許容できる担体及び治療有効量の少なくとも1つの本開示の抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
「薬学的に許容できる担体」又は「生理学的に許容できる担体」という用語は、本明細書で用いられるとき、本開示の1つ又は複数の抗体の送達を達成又は増強するのに適した1つ又は複数の製剤材料を指す。
【0036】
インビボ投与において使用されるとき、本開示の製剤は、滅菌性である必要がある。本開示の製剤は、例えば、滅菌濾過又は放射線を含む様々な無菌化方法によって無菌化されてもよい。一実施形態では、製剤は、予め無菌化された0.22ミクロンフィルターによって濾過滅菌される。注射用の滅菌組成物は、“Remington:The Science&Practice of Pharmacy,”21st ed.,Lippincott Williams&Wilkins(2005)に記載のような通常の薬務に従って製剤化され得る。
【0037】
製剤は、単位剤形で存在し得、当該技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。本開示の製剤における活性成分の実際の用量レベルは、特定の対象、組成物、及び投与様式における所望の治療反応を対象に対して有毒でない条件で達成するのに有効である活性成分の量(例えば、「治療有効量」)を得るため、変化してもよい。用量はまた、(例えば、ポンプを介する)連続注入を介して投与され得る。投与用量はまた、投与経路に依存し得る。例えば、皮下投与は、静脈内投与より高い用量を必要とし得る。
【0038】
固形癌効果判定基準(RECIST)は、がん患者が治療中に改善するか、同じ状態に留まるか、又は悪化する場合に確定する、公表された規則のセットを指す。患者が有し得る応答のタイプは、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、進行性疾患(PD)、及び安定状態(SD)である。
【0039】
本明細書に提供される方法は、腫瘍の疾患制御(DC)に用いることができる。疾患制御は、完全寛解(CR)、部分寛解(PR)、又は安定状態(SD)であり得る。
【0040】
「完全寛解」(CR)は、測定可能か否かにかかわらず、全ての病変の消失、及び新しい病変の不在を指す。完全寛解の確認は、初回記録日から4週以上の反復的な継続的評価を用いて得ることができる。新しい測定不能な病変は、CRから除外する。
【0041】
「部分寛解」(PR)は、ベースラインに対する≧50%の腫瘍量の減少を指す。確認は、初回記録日から少なくとも4週にわたる継続的な反復的評価を用いて得ることができる。
【0042】
「進行性疾患」(PD)は、最小記録値(最下点)に対する≧25%の腫瘍量の減少を指す。確認は、初回記録日から少なくとも4週にわたる継続的な反復的評価によって得ることができる。新しい測定不能な病変は、PDを定義しない。
【0043】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法であって、(a)患者が線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)遺伝子における体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;(b)患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を欠いている場合、治療する若しくは治療を継続するか、又は患者がFGFR3遺伝子における体細胞突然変異を有する場合、治療を中断することと、を含む、方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、治療は、デュルバルマブによる治療を含む。
【0044】
一部の実施形態では、それを必要とする患者におけるがんを治療する方法であって、(a)患者がATリッチ相互作用ドメイン含有タンパク質1A遺伝子(ARID1A)又はノッチ受容体1(NOTCH1)遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有するか否かを判定することと;(b)患者がARID1A又はNOTCH1遺伝子の少なくとも1つにおける体細胞突然変異を有する場合、治療する若しくは治療を継続することと、を含む、方法が本明細書に提供される。
【0045】
特定の実施形態では、治療(例えば、UC治療)は、デュルバルマブによる治療を含む。
【0046】
一部の実施形態では、FGFR3における体細胞突然変異の参照は、表1に概説されるFGFR3突然変異、例えば、「R397C」/「C>T」、「TACC3遺伝子への融合」及び「S249C」/「C>G」の少なくとも1つを意味し得る。一部の実施形態では、FGFR3における体細胞突然変異の参照は、表1に概説されるFGFR3突然変異、例えば、「R397C」/「C>T」、「TACC3遺伝子への融合」及び「S249C」/「C>G」の少なくとも2つを意味し得る。一部の実施形態では、FGFR3における体細胞突然変異の参照は、表1に概説されるFGFR3突然変異、例えば、「R397C」/「C>T」、「TACC3遺伝子への融合」及び「S249C」/「C>G」の各々を意味し得る。
【実施例
【0047】
以下の実施例は、本開示の具体的な実施形態、及びそれらの様々な使用を例示する。それらは、あくまで説明を目的として記載され、決して特許請求される発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0048】
実施例1:局所進行性/転移性UCにおけるFGFR3及びデュルバルマブ応答
1.方法
試験設計及び参加者
試験1108は、組織学的及び/又は細胞学的に確認された固形腫瘍、0~1の米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)活動状態、並びに適切な臓器及び骨髄機能を有する18歳以上の患者の多施設非盲検試験であった。UCコホートにおける患者は、局所進行性/転移性疾患を有し、進行していたが、先行療法に対して不適格であり、又はいくつもの先行療法を拒絶していた。UCコホートにおける他の主要な適格性基準は以前に報告された(Powles et al.,JAMA Oncol.3(9):e172411(2017))。患者は、過去4週(モノクローナル抗体の場合には6週)以内に任意の事前の免疫療法若しくは治験用抗がん剤、又は任意の同時化学療法、免疫療法、生物学的、若しくはホルモン療法をがんに対して受けていた場合、除外した。
【0049】
PD-L1の発現に関係なく、最初の患者20名を登録した。しかし、予備的データは、PD-L1が、ICで、TCよりも一般に発現され得ることを示唆した(Powles et al.,Nature 515(7528):558-62(2014))。したがって、PD-L1を発現するTCの応答に対する寄与を評価する能力を保証するため、後続する患者は、TCで最低5%のPD-L1発現を有することが求められた。
【0050】
デュルバルマブは、10mg/kgの用量で2週ごとに1回、最大で12か月間、又は確認された進行性疾患、別の抗がん療法の開始、許容できない毒性、若しくは同意の撤回に至るまで、静脈内に投与した。腫瘍評価は、治療期間中、6週目、12週目、及び16週目、次いで8週ごとに実施し;次に治療の12か月後、患者は、フォローアップに入り、初年度には2か月ごと、その後は3か月ごとに腫瘍について評価した。安全性評価は、試験開始からデュルバルマブの最終投与の90日後又は新しい治療の開始まで実施し;有害事象についての国立癌研究所(National Cancer Institute)の一般用語基準(v4.03)に従い、毒性を類別した。フォローアップ中、進行性疾患を発現した患者に、デュルバルマブによる再治療を施した。
【0051】
試験エンドポイント
一次安全性エンドポイントは、有害事象(AE)、重篤なAE、実験室評価、バイタルサイン、及び身体検査の評価を含んだ。特に注目すべきAE(AESI)及び免疫介在性AE(imAE、即ち、免疫介在性機構に合致した、発症30日以内の全身ステロイド、内分泌療法、又は免疫抑制剤による治療を必要とするAESI)も評価した。
【0052】
一次有効性エンドポイントは、固形癌効果判定基準(RECIST v1.1)を用いる盲検独立中央判定(BICR)によって実施される、完全寛解又は部分寛解の百分率と定義されたORRであった。全生存は、二次エンドポイントの中に含めた。臨床結果は、デュルバルマブを受けた全患者(as-treated集団)及び少なくとも1つの事前のプラチナベースの化学療法ラインを受けていた者(第二選択又はより多くのプラチナ後サブグループ、≧2Lの事前のプラチナ集団として表される)について分析した。
【0053】
PD-L1の発現状態は、中央臨床検査によって判定し、スクリーニング中に採取した新しい腫瘍生検から、又は試験登録前6か月以内に採取した利用可能な腫瘍サンプルから得て;複数のサンプルの場合、直近の評価可能なサンプルを使用した。腫瘍細胞(TC)及び免疫細胞(IC)双方でのPD-L1の発現は、VENTANA SP263免疫組織化学的アッセイを用いて評価した。サンプルは、TC及び/又はICでの発現が25%以上であった場合、PD-L1が高いとみなし、TC及びICでのPD-L1の発現が25%未満であった場合、低い又は陰性とみなした。TC及びIC双方でのPD-L1の発現の評価を組み合わせるスコア化アルゴリズムは、デュルバルマブに応答する可能性が最も高い患者の同定において最適であることが見出され、陰性適中率が94.9%であった(Powles et al.,JAMA Oncol.3(9):e172411(2017))。TMBは、腫瘍組織の全エクソーム配列決定を用いて評価し、高いTMBは、分布の中央値を超えるものと定義した。血漿サンプルを、治療前、Guardant 360標的化遺伝子パネルを用いるctDNA分析のため、収集した。目的の候補遺伝子を、BRCA2、NOTCH1、ARID1A、又はNFE2L2における非同義突然変異(表1)を宿す患者における15の異なる腫瘍タイプを通じて、免疫療法で奏効率が改善されることを示す先行研究に基づいて選択した(Kuziora et al.,ESMO 2018.Ann.Oncol.29(suppl_10):x1-x10,2018.doi:10.1093/annonc/mdy493)。また、FGFR3における突然変異を、突然変異状態が免疫療法に対する抵抗性を予測し得ることを示す先行研究に基づいて含めた(Kilgour et al.,ESMO 2018 abstract 786P,doi:10.1093/annonc/mdw373.14;Siefker-Radtke et al.,J.Clin.Oncol.36(15_suppl),4503(2018))。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
統計分析
2017年10月16日のデータカットオフ(DCO)日の30日以上前、初回用量のデュルバルマブを受けた全患者を、安全性及び有効性分析に含めた(as-treated集団)。クロッパー・ピアソン法を用いて、ORR及び95%CIを評価した。Brookmeyer及びCrowley法によって決定された両側95%CIを伴うカプランマイヤー法を用いて、OS、OS率、及びAEの累積発生率を評価した。腫瘍突然変異とPD-L1状態の間の関連性を、フィッシャー直接確率法を用いて評価した。全ての分析において、SAS統計ソフトウェア(v9.3又はそれ以降)又はR(v3.5)を使用した。
【0058】
2.結果
人口統計及びベースライン特徴
DCOで、201名の患者が登録され、治療を受け(as-treated集団)、その192名が≧2Lの事前のプラチナ集団に含まれた。ここで示された有効性結果は、≧2Lの事前のプラチナ集団に対応し;全ての転帰が完全なas-treated集団内で類似した。人口統計及びベースライン特徴を表2に要約し;全患者が転移性疾患を有した。年齢中央値は67歳(範囲、34~88)であった。患者の大半が、男性(71.9%)であり、白人(70.1%)であった、登録時、患者の67.7%が腹部転移を有し(肝臓で35.4%)、11.5%がリンパ節転移のみを有した。PD-L1の発現は、患者の51.6%で高く、患者の41.7%で低く/陰性であり;6.8%が未知のPD-L1状態を有した。TMB(n=37)及びctDNA(n=163)について分析された患者のサブセットにおける人口統計及びベースライン特徴を表3に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
患者の配置
≧2Lの事前のプラチナ集団において、曝露の持続時間中央値は、12.0週(範囲、1.6~54.4)であり、フォローアップの持続時間中央値は、16.8か月(範囲、0.4~37.7)であった。DCOに関しては、試験治療に留まる患者はいなかった。
【0064】
抗腫瘍活性
≧2Lの事前のプラチナ集団におけるORRは、全患者については17.2%(95%CI、12.1~23.3);PD-L1の高いサブグループについては27.3%(18.8~37.1)、PD-L1の低い/陰性のサブグループについては5.0%(1.4~12.3)であった(表4)。治療応答は、早期に起こり(図1A)、応答までの中央値期間は、1.4か月であった(95%CI、1.3~1.4)。応答は、2.7~25.7+月の範囲で耐久性があり、持続時間中央値に達しなかった。応答は、29/33の応答者(87.9%)において≧6か月持続し、21/33の応答者(63.6%)において≧12か月持続した。
【0065】
≧2Lの事前のプラチナ集団内の11/192の患者(5.7%);PD-L1の高いサブグループ内の8/99(8.1%)、PD-L1の低い/陰性のサブグループ内の2/80(2.5%)、及びPD-L1状態が未知である場合の1/13(7.7%)が、完全寛解(CR)を経験した。PD-L1の発現が低い/陰性の患者におけるas-treated集団内の、全部で12/201(6.0%)において、1つのさらなるCRが認められた(表4及び図1B)。(ベースライン後腫瘍評価を伴わない患者を除く)任意の程度の腫瘍縮小が、≧2Lの事前のプラチナ集団のPD-L1の高いサブグループ、PD-L1の低い/陰性のサブグループ、及びPD-L1が未知のサブグループにおける患者のそれぞれ、53.5%、21.3%、及び69.2%において起こった。
【0066】
病勢コントロール率(DCR)は、≧2Lの事前のプラチナ集団において35.4%(95%CI、28.7~42.6);PD-L1の高いサブグループにおいて43.4%(33.5~53.8)及びPD-L1の低い/陰性のサブグループにおいて21.3%(12.9~31.8)であった(表4)。
【0067】
【表8】
【0068】
生存
この非無作為化試験において、ベースラインECOG活動状態、転移部位、又は以前の治療ラインに関係なく、臨床的有用性が、≧2Lの事前のプラチナ集団内の全サブグループを通じて認められた。全生存中央値(mOS)は、10.5か月であり:PD-L1の高いサブグループにおいて19.8か月、及びPD-L1の低い/陰性のサブグループにおいて4.8か月であった(図2)。6か月、9か月、及び12か月でのOS率は、それぞれ、58.9%、50.9%、及び46.1%であった。
【0069】
安全性
新しい安全性シグナルは認められなかった。as-treated集団の59.7%において任意グレードの治療関連AE(TRAE)、また9.5%においてグレード3/4のTRAEが報告された。疲労(19.4%)、食欲低下(9.0%)、及び発疹(9.0%)が最も好発した(表5)。それらは一般に初期に起こった。治療関連死が患者2名(1.0%)で起こり、1名が自己免疫性肝炎に起因し、1名が間質性肺炎に起因した。患者6名(3.0%)が、TRAEに起因し、デュルバルマブを中断した。特に注目すべき任意グレードの治療関連AEが患者の36.3%で起こり、4.5%においてグレード3/4であった。任意グレードの治療関連imAEが患者の11.4%で報告され、2.0%においてグレード3/4であった。PD-L1の高いグループとPD-L1の低い/陰性のグループの間で、安全性における明確な差異は認められなかった。
【0070】
バイオマーカー
高いTMBを有する患者は、低いTMBを有する患者と比較して改善されたOSを有した(ハザード比[HR]0.53、95%CI、0.2~1.5;図4)。
【0071】
FGFR3 wt患者(20%[27/134])における奏効率は、FGFR3 mut患者(10%[3/29])より高かった。中央値OSは、FGFR3 mut患者における4.0か月に対してFGFR3 wt患者における13.4か月であった(HR0.49[95%CI、0.3~0.79]、図3A)。FGFR3 mut患者における生存の確率は、12か月目(0.31[95%CI、0.18~0.56]対0.54[95%CI、0.45~0.63])及び24か月目(0対0.38[95%CI、0.27~0.52])、FGFR3 wt患者より低かった。
【0072】
逆に、ARID1A(30%[13/43]対15%[18/120])、及びNOTCH1(56%[5/9]対17%[26/154])における非同義突然変異を有する患者における奏効率は、wt患者より高かった。ARID1A及びNOTCH1突然変異を有する患者は、より長いOSへの傾向を示した(図5)。
【0073】
高いPD-L1の発現を有する患者におけるOSは、低い/陰性の発現を有する患者より長かった。特に、高いPD-L1の発現を有するFGFR3 wt患者において、奏効率は最高であり、OSは最長であった(図3B)。
【0074】
既知のFGFR3及びPD-L1状態を有する患者において、PD-L1の発現は、81/135(60.0%)のFGFR3 wt患者及び10/28(35.7%)のFGFR3 mut患者において高かった。フィッシャー直接検定及び多変量Cox比例ハザードモデルは、PD-L1状態がFGFR3突然変異状態に有意に関連する(p=0.01)が、ARID1A(p=0.36)又はNOTCH1(p=0.24)突然変異状態に有意に関連しないことを示した。
【0075】
既知のFGFR3突然変異及びPD-L1状態を有する患者において、奏効率は、PD-L1の高い発現を有するFGFR3 wt患者(24/80[30.0%])及び高いPD-L1の発現を有するFGFR3 mut患者(2/10[20%])において最高であった。奏効率は、低い/陰性のPD-L1の発現を有する患者において最低であった(FGFR3 wt患者における1/45[2.2%]及びFGFR3 mut患者における1/18[5.5%])。
【0076】
高いPD-L1の発現を有する患者の中で、中央値OSは、FGFR3 wtグループにおける19.9か月に対してFGFR3 mutグループにおける7.2か月であった(HR0.48[95%CI 0.21~1.09])。FGFR3 wtグループは、高いTMBを有する患者18名及び低いTMBを有する患者13名を含み;それらの中央値OSは、それぞれ、非到達(95%CI 5.0-NA)及び13.7か月(95%CI 1.0-NA)であった。FGFR3状態とTMB状態の間の相関は認められなかった(p=1.0)。
【0077】
本明細書中で言及される全ての特許及び出版物は、独立する特許及び出版物の各々が参照により組み込まれるように具体的且つ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本願の任意のセクションにおける任意の参考文献の引用又は同定は、かかる参考文献が特許請求された発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されないものとする。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】