(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20230614BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20230614BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20230614BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230614BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K31/575
A61K31/366
A61K31/40
A61K31/505
A61K45/00
A61K31/215
A61P1/16
A61P29/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570478
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021033746
(87)【国際公開番号】W WO2021237146
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508027589
【氏名又は名称】デュレクト コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リン,ウェイチー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェームス イー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC05
4C086BC42
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB03
4C206DB56
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA75
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する方法が提供される。例えば、上記方法は、5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を投与することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する必要があるヒト対象において非アルコール性脂肪性肝炎を処置する方法であって、該対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を、100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有するヒト対象において低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させる方法であって、該対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有し且つ処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有するヒト対象において血清トリグリセリドを低下させる方法であって、該対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記経口投与が、約110mg/日~約250mg/日である25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記経口投与が、約120mg/日~約200mg/日である25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象に投与される25HC3S又はその塩の総量/kgが約0.5mg/kg/日~約6mg/kg/日である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記総量/kgが約0.6mg/kg/日~約5mg/kg/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記総量/kgが約0.8mg/kg/日~約4mg/kg/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記総量/kgが約1mg/kg/日~約3mg/kg/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記経口投与が、複数回用量の25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記用量を、週に1回~1日3回の頻度で経口投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記用量を1日1回経口投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記用量を1日2回経口投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記経口投与が、少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間、少なくとも28日間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間の投与期間にわたり経口投与することを含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記25HC3S又はその塩を、25HC3S又はその塩及び製薬上許容される担体を含む製剤で経口投与する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記25HC3S又はその塩が25HC3Sの塩を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記25HC3Sの塩がナトリウム塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト対象が少なくとも5%の処置前磁気共鳴画像法-プロトン密度脂肪分画(MRI-PDFF)を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト対象が処置前の磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)≧2.75kPaを有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、約1時間~約5時間又は約1.5時間~約4時間である投与後の血漿中の25HC3Sの半減期(T
1/2)を示す、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記対象が、約100ng/mL~約500ng/mL、約150ng/mL~約400ng/mL、又は約200ng/mL~約300ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記対象が、経口投与した25HC3S又はその塩100mg当たり、約100ng/mL~約300ng/mL、約120ng/mL~約250ng/mL、又は約150ng/mL~約200ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、約900ng
*h/mL~約3000ng
*h/mL、約1000ng
*h/mL~約2500ng
*h/mL、又は約1100ng
*h/mL~約2000ng
*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、経口投与した25HC3S又はその塩100mg当たり、約600ng
*h/mL~約1000ng
*h/mL、約700ng
*h/mL~約900ng
*h/mL、又は約800ng
*h/mL~約900ng
*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、約300L~約1000L、約400L~約900L、又は約500L~約800Lである25HC3Sの見かけの分布容積(Vz/F)を示す、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、約100L~約200L/h、約110L/h~約180L/h、又は約120L/h~約160L/hである25HC3Sの見かけのクリアランス(CL/F)を示す、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを服用しているか、又は該対象に脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象がアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを服用しているか、又は該対象にアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを投与することをさらに含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、該方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法である、前記25HC3S又はその塩。
【請求項30】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、該ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有し、該方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法である、前記25HC3S又はその塩。
【請求項31】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、該方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法である、前記使用。
【請求項32】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、該ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有し、該方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法である、前記使用。
【請求項33】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、前記ヒト対象がスタチン療法を受けている、前記25HC3S又はその塩。
【請求項34】
前記スタチン療法が、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つの投与を含む、請求項33に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【請求項35】
前記方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、請求項33又は34に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【請求項36】
少なくとも1つのスタチンと共投与することにより非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、場合により前記少なくとも1つのスタチンが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを含む、前記25HC3S又はその塩。
【請求項37】
前記ヒト対象が、前記方法を開始する前にスタチン療法を受けている対象であり、場合により前記スタチン療法が、前記方法において前記25HC3S又はその塩と共投与されるスタチンと同じスタチン(1つ又は複数)の投与を含む、請求項36に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【請求項38】
前記方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、請求項36又は37に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【請求項39】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、前記ヒト対象がスタチン療法を受けている、前記使用。
【請求項40】
前記スタチン療法が、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つの投与を含む、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記処置する方法が請求項1~28のいずれか1項に記載された方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、請求項39又は40に記載の使用。
【請求項42】
少なくとも1つのスタチンと共投与することにより非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、場合により前記少なくとも1つのスタチンが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを含む、前記使用。
【請求項43】
前記ヒト対象が、前記方法を開始する前にスタチン療法を受けている対象であり、場合により前記スタチン療法が、前記方法において前記25HC3S又はその塩と共投与されるスタチンと同じスタチン(1つ又は複数)の投与を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記処置する方法が、請求項1~28のいずれか1項に記載された方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、請求項42又は43に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年5月22日に出願された米国仮特許出願第63/029,364号;2020年5月26日に出願された米国仮特許出願第63/030,213号;2020年11月12日に出願された米国仮特許出願第63/113,119号;及び2021年2月5日に出願された米国仮特許出願第63/146,556号の優先権の利益を主張し、これらの出願の開示は参照により本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、アルコール消費と関連付けられない(not linked)非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の極度且つ進行性の形態であり、炎症(肝炎)をさらに伴う。NASHは、肝細胞のバルーニング変性(本明細書中「肝細胞バルーニング(hepatocyte ballooning)」とも呼ばれる)を伴い、これは、アポトーシスの一形態であると考えられる、このプロセス中の細胞のサイズの増加(すなわち、膨張(ballooning))を指す。バルーン化した細胞は、典型的には隣接する肝細胞のサイズの2~3倍であり、H&E染色した切片上のわずかに透明な細胞質を特徴とする。肝臓の細胞死及び炎症応答は、肝線維症において中心的な役割を果たす星状細胞の活性化をもたらす。さらなる疾患の進行は、肝硬変及び肝細胞がん(HCC)につながり、肝不全を生じさせ、最終的には死に至る。
【0003】
初期段階のNASHに罹患している患者の場合、大幅な減量などのライフスタイルへの介入は、脂肪症(steatosis)のプロセスを遅延させるか、又は反転させることもできる。しかしながら、進行したNASHを有する患者の場合、現在利用可能な治療法は存在しない。脂肪肝疾患(FLD)及びNASHの重大性と、満たされていない臨床ニーズを考慮すると、有効な治療処置が緊急に必要とされている。
【0004】
本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第8,399,441号には、高コレステロール及び/又は高トリグリセリド及び/又は炎症に関連する状態(例えば、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、非アルコール性脂肪性肝疾患(例えば、NASH)、アテローム性動脈硬化症等)の処置のための、5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)及びその塩の使用が開示されている。
【0005】
本明細書中に参照により組み込まれる米国特許第9,034,859号には、肝臓損傷又は肝臓疾患(例えば、NASH)の予防及び処置のための、25HC3S及びその塩の使用が開示されている。
【0006】
KEMPら,“Safety and pharmacokinetics of DUR-928 in patients with non-alcoholic steatohepatitis - A Phase 1b study”(国際肝臓会議(2017)で発表されたポスターセッション)は、生検で確認されたNASH患者及び対応対照対象(MCS)における経口投与されたDUR-928の第1b相単回用量範囲(50mg及び200mg)の安全性/PK試験について開示している。
【0007】
SHAHら,“Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Response in Individual NASH Patients Receiving Two Dose Levels of DUR-928,”(NASHサミット - 2019(2019年4月22日~25日))は、NASH患者への5-コレステン-3β,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)の経口投与について開示している。上記患者は、約2ヶ月離して投与された50mg用量及び200mg用量の両方を投与された。SHAHらは、50mg用量レベルと200mg用量レベルとの間で生物学的反応の用量依存的な変化はなかったと結論付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,399,441号
【特許文献2】米国特許第9,034,859号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】KEMPら,“Safety and pharmacokinetics of DUR-928 in patients with non-alcoholic steatohepatitis - A Phase 1b study”
【非特許文献2】SHAHら,“Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Response in Individual NASH Patients Receiving Two Dose Levels of DUR-928”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
NASHを処置するための改善された方法に対する緊急の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する様々な方法を提供する。本方法は、有効量の5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を投与することを含む。特定の例では、本方法は、25HC3S又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で投与することを含む。
【0012】
本開示の結果は驚くべきものである。この結果は、少なくとも記載された用量が、改善された低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)レベルをもたらしたため、驚くべきものである。例えば本明細書中でさらに論じられ且つ証明されるとおり、本発明の特定の投与レジメンが改善された臨床転帰をもたらし得ることが、今回予想外に見出された。
【0013】
本開示のさらなる態様:
1. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する必要があるヒト対象において非アルコール性脂肪性肝炎を処置する方法であって、上記対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を、100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、上記方法。
【0014】
2. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有するヒト対象において低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を低下させる方法であって、上記対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、上記方法。
【0015】
3. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を有し且つ処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有するヒト対象において血清トリグリセリドを低下させる方法であって、上記対象に5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で経口投与することを含む、上記方法。
【0016】
4. 前記経口投与が、約110mg/日~約250mg/日である25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0017】
5. 前記経口投与が、約120mg/日~約200mg/日である25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0018】
6. 前記対象に投与される25HC3S又はその塩の総量/kgが約0.5mg/kg/日~約6mg/kg/日である、態様1~5のいずれか1つの方法。
【0019】
7. 前記総量/kgが約0.6mg/kg/日~約5mg/kg/日である、態様6の方法。
【0020】
8. 前記総量/kgが約0.8mg/kg/日~約4mg/kg/日である、態様6の方法。
【0021】
9. 前記総量/kgが約1mg/kg/日~約3mg/kg/日である、態様6の方法。
【0022】
10. 前記経口投与が、複数回用量の25HC3S又はその塩を経口投与することを含む、態様1~9のいずれか1つの方法。
【0023】
11. 前記用量を、週に1回~1日3回の頻度で経口投与する、態様10の方法。
【0024】
12. 前記用量を1日1回経口投与する、態様11の方法。
【0025】
13. 前記用量を1日2回経口投与する、態様11の方法。
【0026】
14. 前記経口投与が、少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間、少なくとも28日間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間の投与期間にわたり経口投与することを含む、態様10~13のいずれか1つの方法。
【0027】
15. 前記25HC3S又はその塩を、25HC3S又はその塩及び製薬上許容される担体を含む製剤で経口投与する、態様1~14のいずれか1つの方法。
【0028】
16. 前記25HC3S又はその塩が25HC3Sの塩を含む、態様1~15のいずれか1つの方法。
【0029】
17. 前記25HC3Sの塩がナトリウム塩である、態様16の方法。
【0030】
18. 前記ヒト対象が少なくとも5%の処置前磁気共鳴画像法-プロトン密度脂肪分画(MRI-PDFF)を有する、態様1~17のいずれか1つの方法。
【0031】
19. 前記ヒト対象が、≧2.75kPaという、処置前の磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)を有する、態様1~18のいずれか1つの方法。
【0032】
20. 前記対象が、約1時間~約5時間又は約1.5時間~約4時間である投与後の血漿中の25HC3Sの半減期(T1/2)を示す、態様1~19のいずれか1つの方法。
【0033】
21. 前記対象が、約100ng/mL~約500ng/mL、約150ng/mL~約400ng/mL、又は約200ng/mL~約300ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、態様1~20のいずれか1つの方法。
【0034】
22. 前記対象が、経口投与した25HC3S又はその塩100mg当たり、約100ng/mL~約300ng/mL、約120ng/mL~約250ng/mL、又は約150ng/mL~約200ng/mLである25HC3SのCmaxを示す、態様1~23のいずれか1つの方法。
【0035】
23. 前記対象が、約900ng*h/mL~約3000ng*h/mL、約1000ng*h/mL~約2500ng*h/mL、又は約1100ng*h/mL~約2000ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、態様1~22のいずれか1つの方法。
【0036】
24. 前記対象が、経口投与された25HC3S又はその塩100mg当たり、約600ng*h/mL~約1000ng*h/mL、約700ng*h/mL~約900ng*h/mL、又は約800ng*h/mL~約900ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す、態様1~23のいずれか1つの方法。
【0037】
25. 前記対象が、約300L~約1000L、約400L~約900L、又は約500L~約800Lである25HC3Sの見かけの分布容積(Vz/F)を示す、態様1~24のいずれか1つの方法。
【0038】
26. 前記対象が、約100L~約200L/h、約110L/h~約180L/h、又は約120L/h~約160L/hである25HC3Sの見かけのクリアランス(CL/F)を示す、態様1~25のいずれか1つの方法。
【0039】
27. 前記対象が、脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを服用しているか、又は上記対象に脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを投与することをさらに含む、態様1~26のいずれか1つの方法。
【0040】
28. 前記対象が、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチン(Simvastatin)の少なくとも1つを服用しているか、又は上記対象に、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを投与することをさらに含む、態様1~27のいずれか1つの方法。
【0041】
29. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、上記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義されるものである、上記25HC3S又はその塩。
【0042】
30. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、上記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有し、上記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義されるものである、上記25HC3S又はその塩。
【0043】
31. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、上記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義されるものである、上記使用。
【0044】
32. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、上記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有し、上記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義されるものである、上記使用。
【0045】
33. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、前記ヒト対象がスタチン療法を受けている、上記25HC3S又はその塩。
【0046】
34. 前記スタチン療法が、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つの投与を含む、態様33に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【0047】
35. 前記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義される方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、態様33又は34に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【0048】
36. 少なくとも1つのスタチンと共投与することにより非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩であって、場合により前記少なくとも1つのスタチンが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを含む、上記25HC3S又はその塩。
【0049】
37. 前記ヒト対象が、前記方法を開始する前にスタチン療法を受けている対象であり、場合により前記スタチン療法が、前記方法において前記25HC3S又はその塩と共投与されるスタチンと同じスタチン(1つ又は複数)の投与を含む、態様36に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【0050】
38. 前記方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義される方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、態様36又は37に記載の使用のための5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩。
【0051】
39. 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、前記ヒト対象がスタチン療法を受けている、上記使用。
【0052】
40. 前記スタチン療法が、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つの投与を含む、態様39に記載の使用。
【0053】
41. 前記処置する方法が態様1~28のいずれか1つにおいて定義される方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、態様39又は40に記載の使用。
【0054】
42. 少なくとも1つのスタチンと共投与することにより非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)をその必要があるヒト対象において処置する方法に使用するための医薬を製造するための方法における5-コレステン-3,25-ジオール,3-スルフェート(25HC3S)又はその塩の使用であって、場合により前記少なくとも1つのスタチンが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを含む、上記使用。
【0055】
43. 前記ヒト対象が、前記方法を開始する前にスタチン療法を受けている対象であり、場合により前記スタチン療法が、前記方法において前記25HC3S又はその塩と共投与されるスタチンと同じスタチン(1つ又は複数)の投与を含む、態様42に記載の使用。
【0056】
44. 前記処置する方法が、態様1~28のいずれか1つにおいて定義される方法であり、場合により前記ヒト対象が処置前のトリグリセリド≧200mg/dLを有する、態様42又は43に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】特定の実施形態による25HC3Sを投与された対象の平均(mean)薬物動態(PK)パラメータを表す。
【
図2】特定の実施形態による50mg 25HC3Sの投与後の、健常対象及びNASH対象についての25HC3Sの薬物動態(PK)血漿濃度を表す。
【
図3】特定の実施形態による200mg 25HC3Sの投与後の、健常対象及びNASH対象についての25HC3Sの薬物動態(PK)血漿濃度を表す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
発明の詳細な説明
本明細書中には、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための方法が記載される。上記方法は、肝臓と25HC3S又はその塩とを接触させることを含む。上記接触は、一般的に、ヒト患者に25HC3S又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で投与することを伴う。
【0059】
上記のとおり、本開示の結果は驚くべきものである。この結果は、少なくとも記載された用量が、改善された低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)レベルをもたらしたため、驚くべきものである。
【0060】
定義
本明細書全体を通して下記の定義を使用する:
本明細書中で使用する「処置する(治療する)」(処置(治療)、処置すること(治療すること)等)は、25HC3Sまたはその塩を、以下(1)~(3)、すなわち:(1) NASHの少なくとも1つの症状を既に示すヒト対象、及び/又は(2) 例えば訓練を受けた臨床専門家により、NASHを有すると診断されるヒト対象、及び/又は(3) 1つ以上の体液、例えば血液の実験室検査(例えば、分子指標)若しくは臨床検査に基づいてNASHを有すると判断されるヒト対象に投与することを指す。特定の実施形態では、対象は肝組織生検によりNASHを有すると診断されている。言い換えれば、NASHと関連していることが知られている少なくとも1つのパラメータが、上記対象において測定されるか、検出されるか又は観察されている。NASHの「処置(治療)」は、25HC3S又はその塩の投与前又は投与時に存在していたNASHの少なくとも1つの症状の軽減若しくは減弱、又は一部の例では完全な根絶を含む。一部の実施形態では、本開示によるNASHの処置は、より詳細に後述するように、対象におけるNASHの実験室的指標又は臨床的指標を改善するのに十分なものである。特定の場合には、対象におけるNASHの実験室的指標又は臨床的指標の改善とは、上記対象がもはやNASHを有していないとみなされるということである。
【0061】
「肝機能障害」は、肝臓がその期待される機能を果たさない容態又は健康状態、例えば特定の生物学的指標又は分子指標が正常な生理的範囲から外れていると測定される容態又は健康状態を意味する。肝機能とは、生理的範囲内にある、肝臓の期待される機能を表す。当業者は、検診(medical examination)における肝臓の各機能を認識している。肝機能障害は、典型的には、場合により解剖学的損傷の非存在下で、肝臓における進行性及び潜在的に可逆性の生理的機能障害を発症する臨床症候群を伴う。
【0062】
「肝不全」は、外部からの臨床的介入なしには正常な恒常性を維持できない程度までの肝機能障害を意味する。
【0063】
「CK-18」はサイトケラチン-18フラグメントを指し、これは、組織学的検査によりNASHを有すると判断された患者においてこのフラグメントが顕著に増加し、上記フラグメントのより高い血液血漿レベルが肝生検で線維症を有する確率と相関するという点で、NASHの非侵襲的バイオマーカーとして同定されている。本明細書中に参照により組み込まれるFeldsteinら, Hepatology, 50:1072-1078 (2009)を参照されたい。
【0064】
「製薬上許容される」とは、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、それが投与される宿主に対して毒性ではない物質を指す。
【0065】
NASHを処置する方法
本開示は、NASHの処置の必要がある患者に25HC3S又はその塩を100mg/日~300mg/日の量で投与することを含む、NASHの処置のための治療法を提供する。一部の実施形態において、処置の必要がある患者は、NASHを有すると診断された患者である。一部の実施形態において、本明細書中に記載される25HC3S又はその塩による処置は、NASHを遅延させ、停止させ、又は改善する。
【0066】
患者集団
本開示の治療法から利益を得る可能性の高い患者は、本明細書中で論じられているか又は当業者に公知の様々な手段により容易に同定することができる。さらに、患者がこの治療法に反応するか否かを判断するための方法も提供される。一部の実施形態において、腹部画像検査、例えば超音波検査、コンピュータ断層撮影(CT)、及び/又は磁気共鳴画像法(MRI)などを使用して、上記疾患を有する患者を診断する(例えば、上記疾患が存在するか否か及びその重症度を評価する)ことができる。このような非侵襲的診断は、所望の場合、肝生検によって、より決定的に確認することができる。一部の実施形態では、NASHを診断するために1以上のバイオマーカーが使用される。一部の実施形態において、本開示により処置される患者は、NASHの一次診断を受けており、25HC3S又はその塩がそのために現在臨床開発中である任意の他の状態(例えば、アルコール性肝炎(AH)又はCOVID-19)について、25HC3S又はその塩により処置されていない。
【0067】
一部の例では、処置される患者は、磁気共鳴画像法-プロトン密度脂肪分画(MRI-PDFF)>5%、例えば>10%、>15%、>20%、>25%、又は>30%を有する。一部の例では、処置される患者は、4%~60%、例えば5%~50%、10%~40%、又は15%~30%のMRI-PDFFを有する。
【0068】
一部の例では、処置される患者は、磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)≧2kPa、例えば≧2.5kPa、≧3kPa、≧3.5kPa、≧4.0kPa、又は≧4.5kPaを有する。一部の例では、処置される患者は、約2kPa~約10kPa、例えば約3kPa~約8kPa、又は約3.5kPa~約6kPaのMREを有する。
【0069】
一部の例では、処置される患者は、Fibroscan(登録商標)値≧5kPa、例えば≧7kPa、≧7.5kPa、≧12.5kPa、又は≧14kPaを有する。一部の例では、処置される患者は、約7kPa~約75kPa、例えば約7.5kPa~約60kPa、約8kPa~約50kPa、又は10kPa~約40kPaのFibroscan(登録商標)値を有する。
【0070】
一部の例では、処置される患者は、CAPスコア>200dB/m、例えば>250dB/m、又は>300dB/mを有する。一部の例では、処置される患者は、約200dB/m~約400dB/m、例えば約250dB/m~約300dB/mのCAPスコアを有する。
【0071】
一部の実施形態において、患者は、例えば、増大した血清のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)レベル、総ビリルビン(TBL)レベル、及び/又はアルカリホスファターゼ(ALP)レベルの存在により判断される異常肝機能を示す。一部の実施形態において、処置される患者は、高ALTレベル、高ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ、及び/又は高アルカリホスファターゼレベル(例えば、正常上限を約1.5~4倍上回るレベル)を有する。一部の例では、処置される患者は、正常上限(ULN)の>1倍及び<5倍のALT濃度を有する。一部の例では、処置される患者は、ALT濃度<30U/L、例えば<20U/Lを有する。一部の例では、処置される患者は、正常上限(ULN)の<5xのAST濃度を有する。一部の例では、処置される患者は、GGT>15U/L、例えばGGT>30U/Lを有する。一部の例では、処置される患者は、5U/L~500U/L、例えば15U/L~400U/L、20U/L~350U/L、又は30U/L~300U/LのGGTを有する。一部の実施形態において、処置される患者は、正常上限内のALTレベル、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼレベル、及び/又はアルカリホスファターゼレベルを有する。
【0072】
一部の例では、処置されるべき患者は、高脂質レベル、特に高レベルの血清トリグリセリドを有する。一部の例では、上記患者は、高血清コレステロール、例えば、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)及びトリグリセリド(TG)などを有する。一部の例では、処置されるべき患者は、低レベルのHDLコレステロールを有する。一部の例では、処置されるべき患者は、高血圧を有する。一部の例では、処置されるべき患者は、心血管疾患を有する。一部の例では、処置されるべき患者は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する。一部の例では、処置されるべき患者は、慢性腎疾患(CKD)を有する。一部の例では、処置されるべき患者は、糖尿病を有する。
【0073】
一部の実施形態において、NASHは、画像検査を用いて診断される。一部の実施形態において、NASHは、スコアリングシステム、例えば、限定するものではないが、脂肪肝指数、NAFLD肝臓脂肪スコア、NAFLD活性スコア、又は肝臓脂肪症指数などを用いて診断される。一部の実施形態において、NASHは、脂肪症(steatosis)(0~3)、小葉炎症(lobular inflammation)(0~3)、及び肝細胞バルーニング(0~2)の程度に基づく集成値を提供する、NAFLD活性スコア(NAS)を用いて診断される。Kleinerら, Hepatology, 41:1313-1321 (2005);及びBugianesiら, J Hepatology, 65:643-644 (2016)を参照されたい。一部の例では、処置されるべき患者は、ステージ1、2、又は3の線維症及びNAS≧4(脂肪症、肝細胞バルーニング、及び小葉炎症のそれぞれについて少なくとも1ポイント)を有する。
【0074】
NASHは、病理学的に1型及び2型に分類されており、これらのうち1型は成人患者においてより一般的に見られ、一方2型は子供においてより一般的に見られる。1型NASHは、典型的には、脂肪症、肝細胞バルーニング、及び類洞周囲線維症を特徴とする。2型NASHは、典型的には、脂肪症、門脈炎症、及び門脈線維症を特徴とする。例えば、Schwimmerら, Hepatology, 42:641-649 (2005)を参照されたい。NASHのさらなる進行は、重篤な線維症、肝硬変、及び末期の肝疾患につながり得る。一部の実施形態において、処置されるべき患者は1型NASHを有する。一部の実施形態において、処置されるべき患者は2型NASHを有する。一部の実施形態において、処置されるべき患者は、初期のNASHを有する。一部の実施形態において、処置されるべき患者は、中期のNASHを有する。一部の実施形態において、処置されるべき患者は、後期のNASHを有する(例えば、肝臓の重篤な線維症及び/又は肝硬変を有する)。
【0075】
一部の実施形態において、NASHは、画像検査を用いて診断される。一部の実施形態において、NASHは、スコアリングシステム、例えば、限定するものではないが、NAFLD活性スコア(例えば、>5のスコア)、又は脂肪症、活性、及び線維症(SAF)スコア、又はNAFLD線維症スコア;血清バイオマーカー(例えば、サイトケラチン-18);又はそれらの組み合わせなどを用いて診断される。Bedossaら, Hepatology, 56:1751-1759 (2012);Arabら, Gastroenterol Hepatol, 40:388-394 (2017)を参照されたい。一部の実施形態において、線維症は、エラストグラフィー(例えば、Fibroscan(登録商標)を用いて検出され及び/又は測定される。
【0076】
一部の実施形態において、処置されるべき患者は、CK-18などの1以上のバイオマーカーの使用により同定される。CK-18レベルは、患者若しくは疾患のリスクを有する疑いがある個体における免疫組織化学検査、肝生検からの組織学的検査により測定されるか、又は血漿レベルの測定を介して測定されるかに関わらず、典型的には、処置の必要がある対象においては、健常個体において測定されたレベルと比較して上昇しているであろう。本開示は、特定の又は任意の提案された作用機序に限定されるものではないが、NASH患者におけるCK-18レベルの減少は、肝細胞アポトーシスの減少と相関することが予想され得る。一部の実施形態において、本開示による25HC3S又はその塩により処置されるNASHを有する患者は、処置又は標準治療を受けていない患者と比較して、肝細胞アポトーシスの減少を示す。
【0077】
一部の例では、処置されるべき患者は、アディポネクチン、高感度C反応性タンパク質(hsCRP)、サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)-1β、IL-6、IL-12、IL-17、IL-18、及び腫瘍壊死因子アルファ(TNFα))、サイトケラチン-18(M30及びM65の両方)、N末端III型コラーゲンプロペプチド(pro-C3)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI1)、血清胆汁酸、マトリクスメタロプロテイナーゼ-1の組織阻害剤(TIMP1)、及び/又はヒアルロン酸(HA)により測定される、炎症マーカー、細胞死マーカー、及び線維症マーカーを含む血漿バイオマーカー又は血清バイオマーカーにより同定される。
【0078】
実施形態において、処置されるべき患者は、新生児、幼児、子供及び成人を含むヒト対象であり得る。一部の実施形態において、処置されるべき患者は、ヒト成人である。一部の実施形態において、処置されるべき患者は子供である。一部の実施形態において、患者は、17歳以下、例えば15 歳以下、例えば10歳以下、例えば9歳以下、例えば8歳以下、例えば7歳以下、例えば6歳以下、例えば5歳以下、例えば4歳以下、例えば3歳以下、例えば2歳以下、例えば1歳以下、例えば6ヶ月以下、例えば1月以下であるヒト対象であり、新生児のヒト対象を含む。一部の実施形態において、患者は、18~44歳、例えば20~40歳、例えば25~35歳であるヒト対象である。一部の実施形態において、患者は、45~65歳、例えば50~60歳であるヒト対象である。特定の実施形態において、患者は、65歳以上、例えば70歳以上、例えば75歳以上、例えば80歳以上、例えば85歳以上、例えば90歳以上、例えば95歳以上であるヒト対象であり、100歳以上のヒト対象を含む。
【0079】
一部の例では、処置されるべき患者は、BMI>20kg/m2、例えば>25kg/m2、>30kg/m2、又は>35kg/m2を有する。一部の例では、処置されるべき患者は、約20kg/m2~約60kg/m2、例えば約25kg/m2~約50kg/m2、又は約30kg/m2~約40kg/m2のBMIを有する。
【0080】
一部の実施形態において、処置されるべき患者はアルコール性肝炎(AH)を有さない。一部の実施形態において、処置されるべき患者はCOVID-19を有さない。
【0081】
疑義を回避するため、処置されるべき患者は複数の2つ以上の上記特徴を有し得、本開示は、これらの特徴の任意の組み合わせを有する患者に対して行われる処置方法を明確に含む。このような診断上の特徴の1つの厳密に非限定的な組み合わせは、本明細書の実施例の節において選択基準(inclusive criteria)として定義される特徴の組み合わせである(特に選択基準4、ただし他の付番された基準又はこれらの付番された基準の任意の組み合わせも含む)。
【0082】
投与レジメン
本方法の実施は、一般的に、NASHに罹患している患者を同定すること、及び25HC3S又はその塩を許容される形態で適切な経路により投与することを含む。
【0083】
一部の実施形態において、投与される25HC3S又はその塩の総量は、100mg/日~300mg/日、例えば約110mg/日~約250mg/日、又は約120mg/日~約200mg/日(例えば約130~約170mg/日、又は約150mg/日)である。好ましくは、投与される25HC3S又はその塩の総量は、100mg/日超(例えば、少なくとも約105mg/日、通例は少なくとも約110mg/日)である。
【0084】
一部の例では、対象に投与される25HC3S又はその塩の体重kg当たりの総量は、約0.5mg/kg/日~約6mg/kg/日、例えば約0.6mg/kg/日~約5mg/kg/日、約0.8mg/kg/日~約4mg/kg/日、又は約1mg/kg/日~約3mg/kg/日である。
【0085】
本方法において投与される25HC3S又はその塩は、1回用量で投与することも可能であり、又は複数の別々の用量で、ある期間(本明細書中「投与期間」とも呼ばれる)にわたり投与することもできる。一部の例では、投与は、複数回用量の25HC3S又はその塩を投与することを含む。
【0086】
一部の例では、上記用量は、週に1回~1日3回の頻度で投与される。一部の例では、上記用量は1日1回投与される。一部の例では、上記用量は1日2回投与される。
【0087】
本開示の化合物の投与は断続的であってもよく又は逐次的若しくは連続的であってもよいし、定速若しくは制御速度であってもよい。投与は任意の経路、例えば経口、経皮、又は非経口(例えば静脈内注射、筋肉内注射及び/又は皮下注射など)によるものであってよい。典型的には、経口投与が好ましい。
【0088】
本開示において、25HC3S又はその塩は、mg/日で規定される特定の量で投与される。しかし、当業者には明らかであるとおり、本開示は、投与が、複数回用量の25HC3S又はその塩を投与することを含み、且つ投与頻度が1日複数回であり得るか、又は1日1回未満でもあり得る投与レジメンを包含する。従って、疑義を回避するため、特定量(mg/日)は、投与期間中、1日につき投与される25HC3S又はその塩の平均総量を指すことが理解されるであろう(ここで上記投与期間は、典型的には、記載される1日用量(mg/日)の投与の初日に開始し、従って、場合により用量漸増の任意の予備期間を除く)。例えば、用量が1日2回投与される場合、mg/日で規定される特定量は、2回用量の総量(mg)に等しい。さらなる例として、用量が週に1回投与される場合、mg/日で規定される特定量は、週に1回投与される用量の7分の1に等しい。投与期間は、典型的には、記載される1日用量(mg/日)の投与の最終日に終了する。従って、一般的に、記載される1日用量(mg/日)は、投与期間中に投与される25HC3S又はその塩の総量を、投与期間中の日数で割ったものである。
【0089】
本開示の実施形態において、経口投与は、前記少なくとも7日間、例えば少なくとも14日間、又は少なくとも28日間、例えば少なくとも56日間、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、又は少なくとも1年間などの投与期間の量を投与することを含む。実施形態において、投与期間は、本明細書中でさらに論じられるように、処置が1以上のパラメータの改善、例えば、ALT酵素レベルの改善、炎症の減少、脂肪症の減少、NASH症状の重症度の低下、CK-18などのNASHバイオマーカーのレベルの低下、又は肝線維症の遅延、停止、又は改善をもたらしたと判断されるまで継続する。
【0090】
一部の例では、対象が、脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを服用しているか、又は本方法が、対象に脂質低下薬、例えばスタチン、フェノフィブラート、オメガ-3脂肪酸、イコサペントエチル、及び魚油の少なくとも1つを投与することをさらに含む。例えば、本方法は、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つを投与することをさらに含み得る。25HC3S又はその塩とスタチンの両方の投与の結果は、トリグリセリド及び非HDLコレステロールの低下の程度に関して驚くべきものである。
【0091】
スタチン療法を受けている対象における25HC3S又はその塩の投与の結果は、例えば、有害な症状の低下の程度、例えばトリグリセリド及び非HDLコレステロールの低下の程度に関して驚くべきものである。スタチン療法は、少なくとも1つのスタチン、例えば、限定するものではないが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンの少なくとも1つの投与を含む。疑義を回避するため、「スタチン療法を受けているヒト対象(ヒト対象がスタチン療法を受けている)」という用語は、本開示により処置される対象を定義する場合、典型的には、本開示の方法を開始する前に、例えば25HC3S又はその塩の投与を開始する前にスタチン療法を受けている/受けたヒト対象を指す。上記ヒト対象は、25HCS3又はその塩による処置期間中にスタチン療法を投与され続けていてもよく、又は投与され続けていなくてもよく、任意の継続されたスタチン療法は、25HCS3又はその塩による処置期間を開始する前のスタチン療法と同一であってもよく、又はこれと異なっていてもよい。当業者に周知であるとおり、スタチン療法は広く処方される薬物療法であり、従って、本開示の主題が有利に実施され得る、容易に認識可能であり且つ明確に定義されるヒト対象の集団(すなわち、特定の患者群)を同定する。
【0092】
一部の例では、25HC3S又はその塩の投与後の最高薬物濃度到達時間(Tmax)は、1時間~5時間、例えば1.5時間~4時間、又は2時間~3.5時間である。
【0093】
一部の例では、対象は、約100ng/mL~約500ng/mL、約150ng/mL~約400ng/mL、又は約200ng/mL~約300ng/mLである25HC3SのCmaxを示す。対象は、経口投与した25HC3S又はその塩100mg当たり、約100ng/mL~約300ng/mL、約120ng/mL~約250ng/mL、又は約150ng/mL~約200ng/mLである25HC3SのCmaxを示し得る。
【0094】
一部の例では、対象は、約900ng*h/mL~約3000ng*h/mL、約1000ng*h/mL~約2500ng*h/mL、又は約1100ng*h/mL~約2000ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示す。対象は、経口投与した25HC3S又はその塩100mg当たり、約600ng*h/mL~約1000ng*h/mL、約700ng*h/mL~約900ng*h/mL、又は約800ng*h/mL~約900ng*h/mLである25HC3SのAUCinfを示し得る。
【0095】
一部の例では、対象は、約300L~約1000L、約400L~約900L、又は約500L~約800Lである25HC3Sの見かけの分布容積(Vz/F)を示す。
【0096】
一部の例では、対象は、約100L~約200L/h, 約110L/h~約180L/h、又は約120L/h~約160L/hである25HC3Sの見かけのクリアランス(CL/F)を示す。
【0097】
一部の実施形態において、処置は、1以上のパラメータの改善、例えば、ALT酵素レベルの改善、炎症の減少、脂肪症の減少、NASH症状の重症度の低下、CK-18などのNASHバイオマーカーのレベルの低下、又は肝線維症の遅延、停止、若しくは改善をもたらす。
【0098】
一部の実施形態において、処置は、対象における肝細胞バルーニングの低下をもたらす。一部の実施形態において、処置は、NASH患者における炎症及び/又は線維症の減少をもたらす。一部の実施形態において、処置は、対象における血漿CK-18レベルの低下をもたらす。
【0099】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法による処置は、1以上のパラメータの改善、例えば、限定するものではないが、NAS(バルーニング及び炎症)並びに/又は線維症の改善;SAF(脂肪症、活性、及び線維症)スコアの改善;脂肪性肝炎の完全消散;線維症の非悪化;脂肪性肝炎の悪化を伴わない線維症の改善;又は、肝硬変、死亡、肝移植、肝細胞がん、並びに代償不全事象、例えば肝性脳症、入院を必要とする静脈瘤出血、介入を必要とする腹水、及び自発性細菌性腹膜炎への進行の組織病理学的評価により測定される、疾患進行までの時間の増加をもたらす。一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法による処置は、肝細胞バルーニングの改善(すなわち低下)をもたらす。一部の実施形態において、肝細胞バルーニングは、ヘマトキシリン及びエオシン染色を用いて可視化される。
【0100】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法による処置は、1以上のNASHのバイオマーカー、例えば、限定するものではないが、アポトーシスのマーカー(例えば、CK-18フラグメント)、アディポカイン(例えば、アディポネクチン、レプチン、レジスチン、又はビスファチン)、炎症マーカー(例えば、TNF-a、IL-6、走化性タンパク質-1、又は高感度C反応性タンパク質)の改善をもたらす。例えば、Neumanら, Can J Gastroenterol Hepatol, 28:607-618 (2014);Casteraら, Nat Rev Gastroenterol Hepatol., 10:666-675 (2013)を参照されたい。一部の実施形態において、バイオマーカー値は、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、又は脳脊髄液を含むサンプルを用いて測定される。一部の実施形態において、バイオマーカー値は、細胞及び/又は組織、例えば、肝細胞又は肝組織を含むサンプルを用いて測定される。一部の実施形態において、処置は、バイオマーカーCK-18の改善をもたらす。一部の実施形態において、処置は、対象における血漿CK-18レベルの低下をもたらす。
【0101】
一部の実施形態において、患者は、25HC3S又はその塩の治療法の経過中に、本明細書中に記載される診断検査を用いて(例えば、腹部画像検査を用いて)モニターされる。一部の実施形態において、本方法は、治療法のコース(例えば、本明細書中に記載される25HC3S又はその塩の投与)を継続することをさらに含む。一部の実施形態において、本方法は、上記診断が、例えば治癒が達成されるときに、より低い用量がより安全であるか又はより高い用量と同等に有効であると考えられることを保証する場合、又は継続的な治療効果が期待されないことを保証する(warrant)場合に、25HC3S又はその塩の投与量を、漸減し、低減し、又は停止することをさらに含む。一部の実施形態において、本方法は、その方法が有効ではないと判断される場合に25HC3S又はその塩の投与量を増加すること、並びに任意の用量での継続投与又は用量漸増が有効である可能性が低いと判断される場合に治療法を停止することを含み得る。
【0102】
患者が本開示による処置を受けている一部の実施形態においては、腹部画像法、超音波検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は生検によるNASHの指標(indication)は、処置前の患者において測定された指標よりも低い場合があり、これは、患者が上記治療法に良好に反応していることを示す。患者が本開示の治療法に良好に反応している場合、上記治療法は、その状態の存在が正常対照レベルと同等のレベルに低下するまで継続される。場合により、上記治療法は、NASH症状の軽減を維持するために継続される。あるいは、上記治療法は、患者において脂肪症の所望のレベルが達成される(脂肪症の不存在を含む)まで継続される。処置は、腹部画像法、超音波検査、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は生検による評価を用いてその処置が有効である(効力がある)と判断される限り継続され得る。処置は、脂肪症、バルーニング、及び壊死性炎症の1以上における測定された改善を通して有効であると判断することができる。一実施形態において、処置は、バルーニングの低下の誘導により示される測定された改善を通して有効であると判断される。一実施形態において、処置は、炎症の低下により示される測定された改善を通して有効であると判断される。一実施形態において、処置は、血清ALTレベルの低下、インスリン感受性の改善(例えば、インスリン抵抗性の低下)、脂肪症の低下、炎症の低下、及び線維症の低下の少なくとも1つにより示される測定された改善を通して有効であると判断される。一実施形態において、処置は、線維症及び/又は肝硬変の退縮又は反転の誘導により示される測定された改善を通して有効であると判断される。
【0103】
一部の実施形態において、処置は、対照値と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の、1以上のパラメータの改善(例えば、NASスコア又はSAFスコアの低下、肝細胞バルーニングの低下、線維症の低下、又はCK-18レベルの低下)をもたらす。一部の実施形態において、処置は、対照値と比較して少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、又は少なくとも10倍の、1以上のパラメータの改善をもたらす。一部の実施形態において、対照値は、処置の開始の前に決定される、対象についてのベースライン値である。
【0104】
一部の実施形態において、本開示は、(a) NASH処置の必要がある対象において腹部画像法、超音波試験、磁気共鳴画像法、CTスキャン、及び/又は肝生検を介してNASHのレベル及び重症度を測定すること(ここでNASHのレベル及び重症度は処置が開始した後に測定される)、(b) ステップ(a)において測定されたNASHのレベル及び重症度を、NASHのベースラインのレベル及び重症度と比較すること(ここでベースラインのレベル及び重症度は、処置が始まる前に同じ対象において測定される)、及び(c) 比較ステップに基づいてNASH処置の有効性を判断することによる、NASH処置の有効性をその必要がある対象において判断する方法を提供する。
【0105】
さらに、一部の実施形態において、本開示は、(a) NASH処置の必要がある対象においてNASHのレベル及び重症度を処置が開始した後で測定すること、(b) NASHのレベル及び重症度を参照値と比較すること(ここで参照値は、NASHに罹患している患者の集団から決定される平均値である)、及び(c) 比較ステップに基づいてNASH処置の有効性を判断することによる、NASH処置の有効性(効力)をその必要がある対象において判断する方法を提供する。一部の実施形態において、治療法の有効性は、NAFLD活性スコア(NAS)及び線維症を評価するための肝生検及び分析により判断され;この目的のために、経頸静脈的肝生検法を利用することができる。好適な患者としては、NASHと証明された生検を有する患者、NASHのリスクが高い患者、4以上のNASを有する患者、肝線維症を有するNASH患者、及びステージ2以上の肝線維症を有するNASH患者などが挙げられる。
【0106】
一部の実施形態において、本発明による治療法に応答する患者は、治療法を継続するにつれて少なくともCK-18レベルの任意の増加の遅延を示すことが期待される。一部の実施形態において、治療法に最も良好に反応する患者は、完全な治療的利益が実現されるにつれて安定して経時的に低下するCK-18レベルを有するであろう。従って、一部の実施形態において、本開示は、(a) 対象由来のサンプルから得られたサンプル(例えば、血液、血漿、又は組織サンプル)中のバイオマーカーCK-18のレベルを測定することを介してNASHのレベル及び重症度を測定すること(ここでNASHのレベル及び重症度は処置が開始した後に測定される)、(b) (a)において測定されたNASHのレベル及び重症度を、処置が始まる前に同じ対象において測定される、対象におけるNASHのベースラインのレベル及び重症度と比較すること、及び(c) 上記比較ステップに基づいてNASH処置の有効性を判断すること(ここでCK-18レベルのプラトー又は減少は、NASH処置の有効性を示す)による、NASH処置の有効性をその必要がある対象において判断する方法を提供する。
【0107】
一部の実施形態において、本発明により処置される患者は、完全な治療的利益が実現されるにつれて経時的に低下する1以上のバイオマーカーのレベルを示す。従って、一部の実施形態において、本開示は、(a) C反応性タンパク質、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1、インターロイキン-1ベータ、インターロイキン-6、インターロイキン-12、インターロイキン-17、インターロイキン-18、腫瘍壊死因子、胆汁酸、アディポネクチン及びアディポネクチン、HMWからなる群から選択される1以上のバイオマーカーのレベルを測定することを介してNASHのレベル及び重症度を測定すること;(b) (a)において測定されたNASHのレベル及び重症度を、処置が始まる前に同じ対象において測定される、対象におけるNASHのベースラインのレベル及び重症度と比較すること、及び(c) 比較ステップに基づいてNASH処置の有効性を判断すること(ここでバイオマーカーレベル(1つ又は複数)のプラトー又は減少は、NASH処置の有効性を示す)ことによる、NASH処置の有効性をその必要がある対象において判断する方法を提供する。
【0108】
一部の例では、方法は、CK-18、M30バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0109】
一部の例では、方法は、CK-18、M65バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0110】
一部の例では、方法は、C反応性タンパク質バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0111】
一部の例では、方法は、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0112】
一部の例では、方法は、インターロイキン-1ベータバイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0113】
一部の例では、方法は、インターロイキン-6バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0114】
一部の例では、方法は、インターロイキン-12バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0115】
一部の例では、方法は、インターロイキン-17バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0116】
一部の例では、方法は、インターロイキン-18バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0117】
一部の例では、方法は、腫瘍壊死因子バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0118】
一部の例では、方法は、胆汁酸バイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0119】
一部の例では、方法は、アディポネクチンバイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0120】
一部の例では、方法は、アディポネクチン、HMWバイオマーカーのレベルを、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上(40%以上を含む)低下させるのに十分な方法で対象を処置することを含む。
【0121】
特定の実施形態において、本開示の方法及び組成物は、1以上の高血清肝酵素(elevated serum liver enzyme)の量を低下させるのに十分である。一部の例では、本主題の方法及び組成物は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上低下させるのに十分であり、血清ALTの存在を40%以上低下させることを含む。特定の例では、25HC3Sの投与は、血清ALTの量をALTの正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0122】
特定の実施形態において、本開示の方法及び組成物は、1以上の高血清肝酵素の量を低下させるのに十分である。一部の例では、本主題の方法及び組成物は、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上低下させるのに十分であり、血清ASTの存在を40%以上低下させることを含む。特定の例では、25HC3Sの投与は、血清ASTの量をASTの正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0123】
一部の例では、本主題の方法及び組成物は、血清ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上、例えば16%以上、例えば17%以上、例えば18%以上、例えば19%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、例えば30%以上、例えば35%以上低下させるのに十分であり、血清GGTの存在を40%以上低下させることを含む。特定の例では、25HC3Sの投与は、血清GGTの量をGGTの正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0124】
一部の例では、本主題の方法及び組成物は、肝組織の硬さ(硬度)を測定する超音波装置であるFibroScanにより測定される肝硬度を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上低下させるのに十分である。特定の例では、25HC3Sの投与は、肝硬度の量を肝硬度の正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0125】
一部の例では、本主題の方法及び組成物は、血清トリグリセリド(TG)を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上低下させるのに十分である。特定の例では、25HC3Sの投与は、血清TGの量をTGの正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0126】
一部の例では、本主題の方法及び組成物は、血清低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-C)を、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば3%以上、例えば4%以上、例えば5%以上、例えば6%以上、例えば7%以上、例えば8%以上、例えば9%以上、例えば10%以上、例えば11%以上、例えば12%以上、例えば13%以上、例えば14%以上、例えば15%以上低下させるのに十分である。特定の例では、25HC3Sの投与は、血清LDL-Cの量をLDL-Cの正常レベルの上限未満の量まで低下させるのに十分である。
【0127】
組成物、単位剤形及びキット
上記25HC3Sは、純粋な形態で、若しくは好適なエリキシル剤など(一般に「担体」と呼ばれる)を含む製薬上許容される製剤で投与してもよく、又は製薬上許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩若しくはリチウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム等)若しくは他の複合体として投与してもよい。一部の例では、上記25HC3Sは、25HC3Sのナトリウム塩などの25HC3Sの塩として投与される。25HC3S又はその塩は、典型的には、経口投与、注射投与及び/又は静脈内投与に適した組成物として投与される。
【0128】
活性成分は、製薬上許容され且つ上記活性成分と適合性がある賦形剤、例えば、製薬上許容され且つ生理学的に許容される担体と混合してもよい。好適な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水(塩化ナトリウム)、環状オリゴ糖(シクロデキストリンなど、例えばその開示が参照により本明細書中に組み込まれる米国特許公開第2019/0269695号に記載されているシクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、又はそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、上記組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)などを含有していてもよい。水を組成物(例えば、注射用組成物)の調製用の担体として使用することも可能であり、この組成物は、組成物を等張にするために従来の緩衝剤及び薬剤も含み得る。他の可能性のある添加剤及び他の材料(好ましくは、一般に安全とみなされている[GRAS]材料)としては、界面活性剤(TWEEN(登録商標)、オレイン酸等);溶剤、安定化剤、エリキシル剤、およびカプセル材料(ラクトース、リポソーム等)などが挙げられる。メチルパラベン又は塩化ベンザルコニウム(benzalkium chloride)などの防腐剤を使用することもできる。本開示の組成物は、上記組成物を意図される投与経路に適した形態で提供するために、任意のこのような追加成分を含有し得る。さらに、この化合物を、水性ビヒクル又は油性ビヒクルと共に製剤化してもよい。
【0129】
上記製剤に応じて、25HC3S又はその塩が上記組成物の約1重量%~約99重量%で存在し、かつ媒体となる「担体」が上記組成物の約1重量%~約99重量%を占めることが予想される。本開示の医薬組成物は、任意の好適な製薬上許容される添加剤又は付加物を、それらが25HC3S又はその塩の治療効果を妨げないか又は上記治療効果に干渉しない程度まで含み得る。
【0130】
一態様において、本明細書中に記載される方法において使用するための25HC3S又はその塩を含む組成物、単位剤形、医薬パッケージ、及びキットが提供される。一部の実施形態において、製剤、単位剤形、医薬パッケージ、及び/又はキットは、NASHの処置において使用するためのものである。
【0131】
一部の実施形態において、経口の25HC3S又はその塩の製剤は、即時放出調製物として製剤化され、例えば、丸剤、カプセル剤、又は錠剤の形態の単位剤形中に便利にパッケージされ、その後でこれらはピルボトル又はブリスターパッケージ中にパッケージされ得る。本開示の医薬組成物の投与量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の用途によって異なり得る。適切な用量又は投与経路の決定は、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0132】
一部の実施形態において、製剤は持続放出調製物として製剤化され、例えば、バイアル、アンプル、シリンジ、ボトル又は他の液体適合性容器の形態の単位剤形中に便利にパッケージされる。
【0133】
一部の実施形態において、医薬パッケージ又はキットは、NASHの処置において使用するためのものである。一部の実施形態において、上記医薬パッケージ又はキットは、本明細書中に開示される方法による使用のための使用説明資料(instructional materials)をさらに含む。上記使用説明資料は、典型的には書面の又は印刷された資料を含むが、このような資料に限定されるものではない。このような説明を保存し、それらをエンドユーザーに伝えることができる任意の媒体が本発明により想定される。このような媒体としては、限定するものではないが、電子保存媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)などが挙げられる。このような媒体は、かかる使用説明資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含み得る。
【0134】
本発明を下記の実施例によりさらに説明する。これらの実施例は非限定的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。別段に明記しない限り、実施例中に示される全てのパーセンテージ、部等は重量基準である。
【実施例】
【0135】
実施例1
概要
本実施例は、ステージ1~3の線維症を有するNASH患者における25HC3Sの4週間投与の安全性、薬物動態、及び生物学的活性シグナルを評価するための無作為化、オープンラベル、多施設米国試験であった。1用量群当たり21名の患者で、合計63名の患者が試験を完了した(MRI-PDFF測定の完了)。25HC3Sナトリウムを50mg、150mg、又は600mg(300mgを1日2回(BID))で毎日経口投与した。この試験における患者を、2週間(14日間)モニターし、4週間(28日間)投薬し、さらに4週間(28日間)追跡調査した。
【0136】
【0137】
結果
25HC3Sは、3つの用量全てにおいて良好に忍容され、薬物に関連する重篤な有害事象は観察されなかった。反復投与後のPKパラメータは、単回投与後のPKパラメータと同等であり、用量依存性であった。
【0138】
低用量群及び高用量群は、それぞれ-16%及び-17%の、血清ALTレベルのベースラインからの統計的に有意な中央値低下を示した。また高用量群は、血清ASTレベル(-18%)及びGGTレベル(-8%)、並びにFIB-4スコア(-15%)及びAPRIスコア(-26%)の、ベースラインからの統計的に有意な中央値低下も示した。低用量群は、FibroScanにより測定される肝硬度において、28日目においてベースラインからの統計的に有意な低下(-10%)を有していた。
【0139】
低用量群及び中用量群における患者はまた、血清トリグリセリド(50mg群において-13%)又はLDL-C(150mg群において-11%)の、ベースラインから28日目の統計的に有意な中央値低下も有していた。全用量群にわたる高ベースライントリグリセリドを有する患者(≧200mg/dL;n=16)は、28日目においてベースラインから-24%という中央値低下を有していた(p<0.01)。
【0140】
各用量群において、MRI-PDFFを受けた患者の43%は、4週間の投与後に、MRI-PDFFで測定して≧10%のベースラインからの肝臓脂肪低下を示した。各サブグループ中のこれらの患者におけるそれぞれ-18%、-19%、及び-23%の肝臓脂肪のベースラインからの中央値低下は、統計的に有意であった。各用量群の肝臓脂肪含有量の低下は、血清ALTレベルの有意な低下も伴っていた。各サブグループは、それぞれ-21%、-19%、及び-32%の、血清ALTレベルのベースラインからの統計的に有意な中央値低下を示した。
【0141】
ベースラインから28日目の、全用量群にわたる高ベースライントリグリセリドを有する患者(≧200mg/dL;n=16)においては、血清トリグリセリドの24%低下があった(p<0.01)。
【0142】
PDFFによる≧10%肝臓脂肪低下を有する患者の43%において、低用量及び高用量の4週間の25HC3S処置を受けた患者は両方とも、AST(-24%及び-39%)、FIB-4スコア(-19%及び-21%)、並びにAPRIスコア(-27%及び-36%)の統計的に有意な中央値低下も有していたが、一方、低用量処置を受けた患者は、GGTレベルの統計的に有意な中央値低下(-13%)も有していた。
【0143】
さらに、3つの用量群全てにおけるPDFFによる≧10%の肝臓脂肪低下を有する上記43%の患者において、FibroScan(登録商標)により測定される肝硬度の傾向的な(trended)又は統計的に有意な低下が存在していた(それぞれ-7%、-9%、及び-9%)。
【0144】
上記の結果は、以下の表にさらにまとめられる:
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
薬物動態
投与された25HC3Sの薬物動態を決定した。平均(標準偏差)薬物動態パラメータは、
図1及び以下の表にまとめられる。
【0153】
薬物動態パラメータの参照
血漿濃度データから、25HC3Sについて下記のPKパラメータを推定した。
Cmax 25HC3Sの最高観測血漿濃度
Tmax Cmaxの時間(観測時点)
Clast 血漿中の25HC3Sの最終観測定量可能濃度
Tlast Clastの最終観測時点
AUC0-12 時間ゼロから投与後12時間の血漿濃度対時間曲線下面積。線形/対数台形公式により算出した。
AUC0-last 時間ゼロから定量限界を上回る最終測定濃度までの血漿濃度対時間曲線下面積(線形/対数台形公式)。
Cmin 25HC3Sの最低観測濃度。
Tlast Clastの最終(観測時点)
AUCinf 無限時間に外挿された濃度対時間曲線下面積(線形/対数台形公式)、AUC0-last+(Clast/λ)として算出した
%AUCexp AUC0-lastとAUCinfの間に外挿されたAUCのパーセント
T1/2 血漿中の薬物の終末相消失半減期の推定値、2の自然対数を終末相消失速度定数(λ)で割ることにより算出した。
λ 血漿濃度対時間曲線の終末対数線形部分に関連する一次速度定数。
CL/F 薬物の投与後の見かけのクリアランス:CL= 用量/AUCinf、ここで「用量」は薬物の用量である。
Vz/F 25HC3Sの見かけの分布容積。
【0154】
【0155】
試験前及び試験中に、対象の一部は、スタチン(アトルバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、又はシンバスタチン)を投与された。25HC3及びスタチンの両方を投与されていた対象は、以下の表に示されるとおり、投与後28日目に低下したトリグリセリド及び非HDLを有していた:
【表1-9】
【0156】
結論
本実施例は、低用量が、より高い用量と比較して(例えば、MRI-PDFFで測定して)低下した肝臓脂肪をもたらしたことを示した。本実施例は、中用量が、改善された低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)レベルをもたらしたことを示した。本実施例は、高用量が、改善された酵素レベル(例えば、ALT、AST、GGT)をもたらしたことを示し、改善された肝機能を示唆していた。
【0157】
実施例2
概要
本実施例は、NASHを有する対象及び対照健常対象に投与された25HC3Sの無作為化、用量範囲探索、単回投与安全性及び薬物動態試験であった。この試験は、経口25HC3Sの2つの単回用量レベルを評価する2つの連続コホートにおいて行われた。各コホートについて、10名のNASHを有する対象が登録され、これらの対象は、肝硬変と非肝硬変へとさらに分類された。各対象は、試験処置の1つの用量のみを投与された。第2コホートは、コホート1から得られた安全性及び忍容性データの検討後に投与された。コホート1は、50mgの25HC3Sナトリウムを投与され、コホート2は、200mgの25HC3Sナトリウムを投与された。
【0158】
結果
25HC3Sの薬物動態(PK)血漿濃度は、以下の表2.1(50mg用量)及び表2.2(200mg用量)にまとめられる。血漿 25HC3Sレベルは、コホート1の健常対象については投与後12時間まで、コホート2の健常対象においては投与後16時間まで検出可能であった(表2.1)。50mg 25HC3S(
図2)及び200mg 25HC3S(
図3)の投与後、健常対象とNASH対象の両方について、血漿プロファイルは類似していた。健常対象については、用量の4倍の増加は、平均C
maxの約3倍の増加をもたらした(50mg用量:93.967±27.343ng/mL及び200mg用量:260.500±54.779ng/mL)。これは、AUCパラメータについても観察された(表2.1及び表2.2)。同様に、NASH対象は、用量の4倍の増加に対して、C
maxパラメータ及びAUCパラメータの両方における約3倍の増加も示した(表2.1及び2.2)。平均%AUC
expは低く、(AUCが)計算可能であった場合、上記採血スケジュールが、AUCの大部分をとらえるのに適切であったことを示唆していた。
【0159】
個々の血漿オーバーレイプロットは、健常対象(n=6)とNASH対象(n=10)についての対象数が異なるにも関わらず、NASH対象が、Cmaxパラメータ及びAUCパラメータについてより大きな変動性を示す傾向があったことを示した。コホート1及び2について、NASH対象では、健常対象に対して幾何平均Cmaxが18~24%増加し、これはNASH対象における25~50%高いCV%幾何平均を伴っていた(表2.1)。幾何平均AUC0-12及びAUC0-lastは、コホート1においてはNASH対象と健常対象との間で類似していたが、コホート2においては約30%高い傾向があり、ここで%CVはNASH対象において50%高かった。AUC0-inf(コホート2)は、NASH対象において約20%高かった。従って、比較的高い%CVを考慮に入れると、Cmax及びAUCに関して、健常対象とNASH対象との間の明確な差は結論付けられなかった(表2.1)。
【0160】
【0161】
投与の前及び後に測定された過渡エラストグラフィー(TE)及び磁気共鳴エラストグラフィー(MRE)による肝硬度は、50mg群では-11%(TE)又は-6%(MRE)、150mg群では-7%(TE)又は4%(MRE)、600mg群では-2%(TE)又は0%(MRE)変化した。
【0162】
4週間の投与の終了時に、肝線維症マーカーであるpro-C3の血漿レベルは、50mg、150mg、及び600mgを投与された群において、それぞれベースラインから-8%、-1%、及び-5%減少した。投与後2週間の追跡調査において、pro-C3レベルは、50mg、150mg、及び600mgを投与された群において、それぞれベースラインから-7%、8%、及び1%であった。
【0163】
4週間の25HC3S処置後のインスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA-IR)により、インスリン抵抗性の全体的な改善も観察された。投与の終了時、HOMA-IRは、50mg、150mg、及び600mg投与された群において、それぞれベースラインから-22%、-18%、及び1%であった。投与後2週間の追跡調査では、HOMA-IRは、50mg投与された群においてはベースラインから-10%、150mg及び600mg投与された群においては、それぞれ17%及び3%であった。
【0164】
結論
この報告は、正常な健常対象及びNASH対象への用量50mg(コホート1)での経口投与後の25HC3Sの薬物動態を、200mg(コホート2)と対比して示す。コホート2における健常対象は、CL/Fを171.25±28.60L/hと決定し、Vz/Fを434.05±128.07 Lと決定することを可能とするのに十分なデータを提供した。これは、健常対象群とNASH対象群の両方にわたる平均値が1.674時間から2.511時間と比較的一定のままであったT1/2の結果により裏付けられた。AUC0-last及びAUCinfはコホート内で一貫しており、Cmaxと共に、25HC3S用量の増加に伴って比例未満で増加する傾向があった。
【0165】
NASHについては、健常対象に対するCmax(幾何平均)の18~24%の増加が観察された。しかしながら、NASH対象についてのより高いCV%幾何平均は、この観察結果を不確定なものとした。同様に、曝露(AUCパラメータ)を考慮した場合、NASH対象における潜在的な増加傾向(31%まで)は、より高いCV%幾何平均により相殺された。従って、25HC3Sナトリウムが健常対象に投与されたか又はNASH患者に投与されたかに関わらず、薬物動態において明らかな差異は生じないことが結論付けられた。
【0166】
実施例3
目的
この試験の目的は、雄Sprague Dawleyラットにおける[4-14C]-25HC3S-由来放射能の血漿薬物動態を決定すること、雄Sprague Dawleyラットにおける[4-14C]-25HC3S-由来放射能の消失経路及び排泄マスバランスを決定すること、雄のSprague Dawleyラット及びLong Evansラットにおいて単回静脈内(ボーラス)投与後に定量的全身オートラジオグラフィー法を使用して[4-14C]-25HC3S-由来放射能の組織分布及び組織薬物動態を決定すること、及び[4-14C]-25HC3S-由来放射能の代謝産物プロファイリングのための血漿、尿、及び糞便ホモジネートサンプルを用意することであった。
【0167】
試験設計
9匹の雄Sprague Dawleyラット(群1)を薬物動態相用に設計し、3匹の雄Sprague Dawleyラット(群2)を排泄マスバランス相用に設計し、7匹の雄Sprague Dawleyラット(群3)及び9匹の雄Long Evansラット(群4)を組織分布相用に設計した。全動物が、10mg/kgの[14C]-25HC3S及び225μCi/kgの標的放射能の単回静脈内投与を受けた。投与後約0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、48、及び72時間で、群1動物の全てから血液サンプルを採取した。投与後168時間を通して、群2動物の全てから定期的に尿及び糞便を採取した。群3については投与後約0.083、0.5、1、4、8、24、及び168時間で、また群4については投与後約0.083、0.5、1、4、8、24、168、336、及び504時間で、1匹の動物/群/時点をイソフルランで麻酔し、血液サンプルを採取した。血液採取後、動物をCO2吸入により安楽死させ、定量的全身オートラジオグラフィーによる処理のために死体をドライアイス/ヘキサンバス中で凍結させた。全血、血漿、尿、糞便、ケージリンス、及びケージ洗浄液を、液体シンチレーション計数により総放射能について分析した。
【0168】
結果及び重要な所見
ラットに10mg/kgで投与された[4-14C]-25HC3Sの単回静脈内(ボーラス)投与後、平均血漿C0は25,900ng-当量/gであり、AUClastは27,900 h*ng-当量/gであった。終末消失相T1/2は26.6時間であった。
【0169】
排泄データに基づくと、[4-14C]-25HC3Sの10mg/kgでの単回静脈内(ボーラス)投与後に、投与された用量の約100.2%が、ラット由来の尿、糞鞭、及びケージリンスにおいて168時間にわたり回収された。回収された放射能の大部分は糞便中にあり(83.0%)、胆汁排泄がラットにおける排泄の主要な経路であることを示していた。
【0170】
群3における雄Sprague Dawleyラットへの10mg/kgでの[4-14C]-25HC3Sの単回静脈内(ボーラス)投与後、[4-14C]-25HC3S及び/又はその代謝産物は、目(水晶体)を除く全組織において広く分布し、定量的全身オートラジオグラフィーにより検出された。血漿濃度は、薬物動態相において決定された血漿濃度と類似していた。全血Cmaxは8530ng-当量/gであり、AUClastは25,200h*ng-当量/gであった。血漿曝露と全血曝露には、0.79の血漿:全血AUClast比により測定された無視し得る差が存在し、25HC3Sは、血漿と血液細胞に等しく分配されることを示していた。T1/2は、血漿中では44.3時間、全血中では52.2時間であった(PK相とQWBA相との間の血漿T1/2の差は、血液採取時点の差によるものである)。
【0171】
[4-14C]-25HC3S-由来放射能についてのCmax及びAUClastは、肝臓において、それぞれ87,900ng-当量/gまで、及び364,000h・ng/gまでと最高であった。腎臓(全切片)、小腸(壁)、肺、及び副腎の濃度は43,200ng-当量/g~13,600ng-当量/gであり、12,400ng-当量/gの最高血漿濃度より高かった。胸腺、骨(大腿骨)、ぶどう膜、脂肪、精巣、及び脳の濃度は他の組織と比較して最も低く、<5000ng-当量/g(約1500ng-当量/g)であった。残りの組織は、5000~10,800ng-当量/gの濃度を有していた。Tmaxは、投与後0.083~0.5時間の場合が最も多かった。濃度は、副腎、ハーダー腺、肝臓、及び小腸を除く全組織において、投与後168時間までに定量限界未満であった。AUClastを用いて算出すると、組織:血漿比は、肝臓及び小腸(壁)について、それぞれ11.4及び7.44と高かった。高い肝臓濃度及び小腸濃度は、静脈内投与後の広範な胆汁(糞便)排泄と一致していた。他の全ての組織:血漿比は、残りの組織型に対する限定された親和性を示した。
【0172】
雄Long Evansラットへの10mg/kgでの[4-14C]-25HC3Sの単回静脈内投与の投与は、Sprague Dawleyラットと対比して、投与後最初の168時間にわたり血漿濃度又は全血濃度において実質的な差異がないことを明らかにし;有色動物(pigmented animals)では、血漿濃度及び全血濃度は、投与後336時間までに血漿及び全血において定量限界未満となった。有色皮膚若しくは非有色皮膚又はぶどう膜への結合において差異はないようであり;全組織について、濃度は投与後168時間までに定量限界未満であった。
【0173】
ラット由来の血漿、尿及び糞便を、25HC3S関連放射性標識化物質の決定について分析した。サンプルを、放射線検出を有する高速液体クロマトグラフィーを用いてプロファイリングし、質量分析及びタンデム質量分析を使用して代謝特性評価を行った。
【0174】
群1のラットから、0.083、0.25、0.5、及び1時間の採取時点で血漿プールを作成した。これらの群1のサンプルプール及び群3の0.083時間の血漿サンプルから、0.083時間及び0.25時間の採取物中に存在する最大成分は、放射能の約58%~92%を示す親25HC3Sに起因すると考えられた。0.5時間採取物及び1時間採取物において放射能の>10%で存在する3個の代謝産物は、M14(相対観測強度15%以下)、M24(相対観測強度13%以下)、及びM28(相対観測強度83%以下)であった。代謝産物のプロファイリング及び特性決定に適した放射能を有する時点(投与後1時間まで)の中で、25HC3Sに対する曝露(AUC)に関連する放射能の約54%は25HC3Sに起因すると考えられ、約34%はM28に起因すると考えられ、残りは微量代謝産物に起因すると考えられた。
【0175】
群2について、投与後0~6時間及び6~12時間で尿プールを調製した。存在する最大成分は、放射能の約78%~93%を示す親25HC3Sに起因すると考えられた。合計4個の代謝産物を同定したが、用量の>1.2%又は相対観測強度>10%で存在する代謝産物はなかった。少なくとも1つのサンプル中に<10%相対観測強度で存在していた4個の代謝産物は、M7(相対観測強度<5%)、M16(相対観測強度<3%)、M19(相対観測強度<6%)、及びM25(相対観測強度<5%)であった。
【0176】
群2について、投与後0~12時間、12~24時間、及び24~48時間で糞便プールを調製した。
【0177】
合計14個の代謝産物を同定した。用量の≧5%で存在していた4個の代謝産物は、M1(用量の21%、相対観測強度23%~30%)、M2(用量の7%、相対観測強度4%~12%)、M3(用量の15%、相対観測強度13%~23%)、並びにM4(用量の8%、相対観測強度6%~12%)であった。親25HC3Sは、用量の2%で存在していた(相対観測強度1%~5%)。
【0178】
一次代謝経路は、25HC3Sの酸化を伴い、スルフェート基のヒドロキシル基への変換、それに続くさらなる酸化をもたらし、デオキシコール酸及びコール酸又はそれらの異性体に関連する胆汁酸構造を形成した。さらに、デオキシコール酸(又はデオキシコール酸の異性体)のグルタチオンコンジュゲーションが、その構造に対応する分子量を有する代謝産物の存在により示唆された。血漿サンプル、尿サンプル、又は糞便サンプルのいずれにおいても、デスモステロールスルフェート又は25-ヒドロキシコレステロールのいずれも検出されなかった。
【0179】
実施例4
ラットに75mg/kgで投与された[14C]-25HC3Sの単回経口(強制)投与後、血漿Cmaxは3800ng当量/gであり、AUClastは96,400h・ng当量/gであった。終末消失相T1/2は27.3時間であった。
【0180】
排泄データに基づくと、[14C]-25HC3Sの75mg/kgでの単回経口(強制)投与後に、投与された用量の約94.5%が、ラット由来の尿、糞便、及びケージリンスにおいて回収された。回収された放射能の大部分は糞便中にあり(94.2%)、胆汁排泄が、ラットにおける吸収された25HC3Sの主要な排泄経路であることを示していた。
【0181】
雄Sprague Dawleyラットへの75mg/kgでの[14C]-25HC3Sの単回経口(強制)投与後、[14C]-25HC3S及び/又はその代謝産物は、目(水晶体)を除く全組織において広く分布し、定量的全身オートラジオグラフィーにより検出された。目(水晶体)においては、[14C]-25HC3S-由来放射能は検出されなかった。血漿濃度は、薬物動態相において決定されたものと類似しており、定量下限を上回っていた。全血Cmaxは2850ng当量/gであり、AUClastは127,000 h・ng当量/gであった。1.12の血漿:全血AUClast比により測定された血漿曝露と全血曝露には無視し得る差が存在し、25HC3Sが血漿と血液細胞にほぼ等しく分配されたことを示していた。
【0182】
定量的全身オートラジオグラフィーにより分析した組織については、測定可能な場合、[14C]-25HC3S-由来放射能のCmaxは、小腸(壁)、続いて胃(壁)において最も高く、それぞれ424,000ng当量/g及び204,000ng当量/gであった。膵臓濃度及び肝臓濃度は、23,500ng当量/g~28,100ng当量/gであった。ぶどう膜濃度及び脳濃度は、他の組織と比較して最も低く、約1000ng当量/gであった。皮膚、胸腺、前立腺、及び下垂体の組織濃度は<3000ng当量/gであった。残りの組織は、3600ng-当量/g~10,700ng当量/gの濃度を有していた。Tmaxは、投与後6時間以下であった。投与後168時間までに、副腎及び肝臓を除く全組織において、組織濃度は定量限界近く又はそれ未満であった。AUClastを使用して算出すると、組織:血漿比は小腸(壁、15.4)が最も高く、続いて肝臓及び副腎について、それぞれ6.96及び6.64と高かった。高い肝臓濃度及び小腸濃度は、経口投与及び胆汁(糞便)排泄と一致する。他の全ての組織:血漿比は、残りの組織型に対する限定された親和性を示した。
【0183】
血漿及び糞便抽出物中の放射標識された成分をプロファイリングし、放射線-高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法及び高速液体クロマトグラフィー/質量分析(HPLC/MS)法を使用して同定した。
【0184】
代謝産物のプロファイリング及び同定を必要とするのに十分な放射能を含む尿サンプルは存在しなかった。
【0185】
投与後2、4、及び6時間で採取された群1(75mg/kg、[14C]-25HC3S)サンプルについて、血漿プールを調製した。投与後2時間の血漿中、主要放射性標識成分は親25HC3Sであり、これは相対観測強度(ROI)63%及び2090ng-当量/gの濃度で存在していた。1個の代謝産物M29は、ROI 37%及び1233ng-当量/gの濃度を有する25-ヒドロキシコレステロールとして同定された。投与後4時間及び6時間の血漿採取物は、放射線プロファイリングに十分な濃度を含んでいなかった。
【0186】
投与後0~24、24~48、48~72、72~96、96~120、120~144、及び144~168時間から採取した群2(75mg/kg、[14C]-25HC3S)サンプルについて、糞便プールを調製した。合計11個の代謝産物を同定した。上記代謝産物はいずれも、用量の≧5%では存在しなかった。用量の2~5%で存在する代謝産物は、M1(総用量の4.5%、ROI 1%~69%)、M3(総用量の4.6%、ROI 1%~44%)、M4(総用量の2.0%、ROI 0%~10%)、M8(総用量の3.1%、ROI 1%~46%)、M29(総用量の1.9%、ROI 0%~2%)、及びM30(総用量の3.3%、ROI 0%~5%)であった。主要放射性標識成分は親25HC3Sであり、これは総用量の71.1%(ROI 0%~88%)で存在していた。
【0187】
放射性標識デスモステロールスルフェートは、血漿サンプル又は糞便サンプルのいずれにおいても見出されなかった。
【0188】
一次代謝経路は25HC3Sの酸化を伴い、スルフェート基のヒドロキシル基への変換、それに続くさらなる酸化をもたらし、デオキシコール酸及びコール酸又はそれらの異性体並びに25-ヒドロキシコレステロールに関連する胆汁酸構造を形成した。
【国際調査報告】