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特表2023-526425燃料電池に使用する水素ガスの精製方法
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  • 特表-燃料電池に使用する水素ガスの精製方法 図1
  • 特表-燃料電池に使用する水素ガスの精製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】燃料電池に使用する水素ガスの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/56 20060101AFI20230614BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20230614BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20230614BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230614BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20230614BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230614BHJP
   H01M 8/04791 20160101ALI20230614BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20230614BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230614BHJP
【FI】
C01B3/56 Z
B01J20/22 A
B01J20/26 A
B01J20/20 A
B01J20/20 C
B01J20/18 A
B01J20/28 Z
B01D53/04
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/04791
H01M8/04089
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570525
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 US2021033419
(87)【国際公開番号】W WO2021236936
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/029,200
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】516037501
【氏名又は名称】ヌマット テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】モリス、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フーバー、ウィリアム ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】バープローフ、ロス ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】アルゲタ ファハルド、エドウィン アルフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】ルディック、アレクサンダー マシュー
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA07
4D012CB05
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG05
4G066AA05B
4G066AB06B
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4G066AB09B
4G066AB15B
4G066AB19B
4G066AB21B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA21
4G066CA24
4G066CA29
4G066CA31
4G066CA35
4G066CA43
4G066CA51
4G066CA52
4G066CA56
4G066DA04
4G140FB02
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4G140FD02
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4G140FE01
5H126BB06
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5H127BA22
5H127BB02
5H127DC02
5H127DC05
(57)【要約】
本発明は、一般に、燃料電池で使用するための水素ガスを精製するためのプロセスに関する。このプロセスは、高圧タンクから水素供給流を取り出し、吸着剤を含む精製器を通過させて、燃料電池に送られる精製された水素流を提供することを含む。吸着剤としては、金属有機構造体を用いたものが使用される。吸着剤は、入口と出口を有するキャニスターまたはカートリッジなどの装置に収容することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンクからの水素と少なくとも1つの汚染物質を含む水素流を、精製条件で吸着剤を含む精製器を通して流し、それによって少なくとも1つの汚染物質を実質的に除去して精製された水素流を提供し、
精製された水素流を燃料電池に流す、
方法。
【請求項2】
少なくとも1つの汚染物質は、H2S、CO、ホルムアルデヒド、CO2、COS、CS2、メチルメルカプタン、NH3、炭化水素、ハロゲン化物、および水から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
精製された水素流は、少なくとも99.7%の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
精製器は、約-40℃~約40℃の温度および約100kPa~約84MPaの圧力で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
精製器は、吸着剤を収容するカートリッジを備えることをさらに特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カートリッジは、使い捨てカートリッジである請求項5記載の方法。
【請求項7】
吸着剤は、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、活性炭、共有結合有機構造体(COF)、多孔性有機ポリマー(POP)およびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
精製器は、少なくとも2種類の吸着剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
吸着剤はMOFを備え、MOFは金属イオンコーナー原子を備え、金属イオンは、Li+ , Na+ , K+ , Rb+ , Be2+ , Mg2+ , Ca2+ , Sr2+ , Ba2+ , Sc3+ , Y3+ , Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , V5+ , V4+ ,V3+ , Nb3+ , Ta3+ , Cr3+ , Cr2+ , Mo3+ , W3+ , Mn3+ , Fe3+ , Fe2+ , Ru3+ , Ru2+ , Os3+ , Os2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Pd2+ , Pd+ , Pt2+ , Pt+ , Cu2+ , Cu+ , Ag+ , Au+ ,Zn2+ , Al3+ , Ga3+ , In3+ , Si4+ , Si2+ , Ge4+ , Ge2+ , Sn4+ , Sn2+ , Bi5+ , Bi3+ , Cd2+ , Mn2+ , Tb3+ , Gd3+ , Ce3+ , La3+ およびCr4+ , 及びこれらの混合物から選択され、金属イオンは、少なくとも二座の有機リンカー分子によって結合されて金属有機構造体を形成し、少なくとも二座の有機リンカー分子は、1)1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む飽和または不飽和、直鎖、分枝または環状アルキル基、および、2)共有結合で融合または結合できる1~5個のアリールまたはヘテロアリール環を含む基から選択される1以上の基を含むリンカー骨格を含む1以上の分子から選択され、ここで、ヘテロ原子は、S、N、O、Pおよびそれらの混合物から選択され、任意に飽和および不飽和アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハライド、-OH、-NH2 , -COOH, NO2 , COH, CO(NH2 ), CNおよびチオールの1つまたは複数から選択された1以上の機能基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
金属イオンは、Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , Fe3+ , Fe2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Cu2+ , Cu+ , Zn2+ , Ga3+ , Al3+ およびそれらの混合物から選択され、リンカー分子は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)、トリアジントリス安息香酸(TATB)、2-アミノテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、アセチレンジカルボン酸(ATC)、ベンゼン1,4-ジカルボン酸(BDC)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラカルボキシレート(ATC)、アダマンタントリベンゾエート(ATB)、4,4',4'',4'''-(ピレン-1,3,6,8-テトライル)テトラベンゾイン酸(TBAPy)、メソテトラフェニルポルフィン-4,4',4'',4'''-テトラカルボン酸(TCPPH2)、3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、ピラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
吸着剤は、少なくとも200m2 /gのB.E.T.表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
MOFは、約2オングストローム~約500オングストロームの平均細孔サイズを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
吸着剤は、水素流が流れるベッドの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
吸着剤は、膜、織繊維、不織繊維、モノリス支持体、セラミックフォーム、金属支持体、およびそれらの混合物から選択される固体支持体上に堆積されることをさらに特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
吸着剤は、ペレット、球体、押出成形品、不定形粒子、モノリス形状、およびそれらの混合物から選択される形状に形成されることをさらに特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
MOFは、MOF-74-Co、MOF-74-Ni、MOF-74-Cu、PCN-250、HKUST-1、UiO-66、UiO-66-NH2 , SIFSIX-3-Ni, MIL-88, MIL-89, Ga-soc-MOF, Zn2 (BDC)2 (DABCO)およびこれらの混合物から選択される、請求項9の方法。
【請求項17】
前記方法は、車両に搭載して実施されることをさらに特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
水素流を約0.05kg/hr~約2kg/hrの流量で精製器を通して流す請求項17に記載の方法。
【請求項19】
圧力が約100kPa~約84000kPaまたは100kPa~約40MPaである、請求項4に記載の方法。
【請求項20】
さらに、温度を変化させるか、または圧力を変化させることによって吸着剤を再生することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項21】
高圧タンク、精製器および燃料電池が、定置型電源システムの一部であることをさらに特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項22】
定置型電源システムはコンテナに収容され、電力システムが建物に電力を供給する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
水素流を約0.2kg/hrから約10kg/hrの流量で精製器を通して流す請求項21の方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府出資の研究または開発に関する記述
この発明は、エネルギー省から授与された契約番号DE-SC0019959の下、米国政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は、この発明について一定の権利を有する。
関連出願との相互参照
【0002】
本出願は、2020年5月22日に出願された仮出願63/029,200の優先権を主張し、その全体が本明細書に組み込まれる。
技術分野
【0003】
本発明は、一般に、燃料電池で使用するための水素を精製するプロセス(方法)に関するものである。このプロセス(方法)では、水素貯蔵装置と燃料電池の間に配置される吸着剤を含む精製器を使用する。
【背景技術】
【0004】
近年、高分子電解質膜の中で水素と酸素を電気化学的に反応させ、副産物として水を生成し、車上で作られた電気を車両に供給することが注目されている。高分子電解質膜燃料電池(PEM:polymer electrolyte membrane)は、プロトン交換膜とも呼ばれ、膜のアノード側に水素、カソード側に酸素を含む空気を通す。アノードでは、白金触媒によって水素が水素イオン、より詳しくは陽子と電子に電離される。PEMは、陽子のみをそれを通ってカソード側に通し、そこで水素は酸素と結合して水を生成する。電子はアノード(陽極)からカソード(陰極)へ、外部回路を通り、電気モーターに接続され、自動車を推進させることができる。
【0005】
水素中に一酸化炭素などの不純物が含まれていると、燃料電池に使われる白金触媒を汚染してしまうため、PEM燃料電池に求められる水素の純度は非常に厳しい。車両に使用される水素は、大規模な水蒸気メタン改質装置で合成ガスを製造し、それを精製して水素を製造している。水素は、ガス状または液体状で車両に搭載された高圧タンクに供給される燃料ステーションに配布する。水素の純度が高くなると、車両用燃料としての水素のコストも高くなることが理解できる。さらに、高純度の水素を提供する問題は、水素を車両の燃料タンクに輸送および充填する際に、不純物が水素に混入する可能性があるという点で悪化する。現在、水素は製造時点で精製されており、サプライチェーンを通じて混入した水素の不純物が、車両用燃料電池に混入する可能性がある。
【0006】
出願人は、有害な不純物を除去するために、より使用箇所に近い二次精製ポイントを導入することでこの問題に対処する。以下に詳述するように、出願人らは、タンクからの水素を十分に精製して、触媒に害を与えることなく燃料電池に供給できるプロセスを開発した。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態は、高圧タンクからの少なくとも1つの汚染物質を含む水素流を、精製条件で吸着剤を含む精製器を通して流し、それによって少なくとも1つの汚染物質を実質的に除去して精製された水素流を提供する工程と、精製された水素流を燃料電池に流す工程とを備える方法(プロセス)である。
【0008】
さらに別の実施形態では、精製された水素流は、自動車技術会(Society of Automotive Engineers (SAE))の水素仕様書No.J2719_201109の仕様に適合する。
【0009】
別の実施形態では、吸着剤は、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、活性炭、共有結合有機構造体(COF)、多孔性有機ポリマー(POP)、およびそれらの混合物から選択される。
【0010】
さらなる実施形態は、吸着剤はMOFを含み、MOFは金属イオンコーナー原子を含み、金属イオンは、Li+ , Na+ , K+ , Rb+ , Be2+ , Mg2+ , Ca2+ , Sr2+ , Ba2+ , Sc3+ , Y3+ , Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , V5+ , V4+ ,V3+ , Nb3+ , Ta3+ , Cr3+ , Cr2+ , Mo3+ , W3+ , Mn3+ , Fe3+ , Fe2+ , Ru3+ , Ru2+ , Os3+ , Os2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Pd2+ , Pd+ , Pt2+ , Pt+ , Cu2+ , Cu+ ,. Ag+ , Au+ ,Zn2+ , Al3+ , Ga3+ , In3+ , Si4+ , Si2+ , Ge4+ , Ge2+ , Sn4+ , Sn2+ , Bi5+ , Bi3+ , Cd2+ , Mn2+ , Tb3+ , Gd3+ , Ce3+ , La3+ およびCr4+ , 及びこれらの混合物から選択され、金属イオンコーナー原子は、少なくとも二座の有機リンカー分子によって結合されて金属有機構造体を形成するプロセスである。オプションとして、二座の無機リンカー分子も使用することができる。有機リンカー分子は、飽和または不飽和アルキルまたはアリール骨格を含み、任意に1つ以上のヘテロ原子S、N、O、またはPを含み、任意にその骨格に結合した1つ以上の官能基を含む1以上の配位子から選択でき、各配位子は金属イオンコーナー原子に結合できる2以上の部位を含み、これによって金属有機構造体を形成することができる。
【0011】
さらに別の実施形態では、MOFは金属イオンコーナー原子を含み、金属イオンはTi4+ , Zr4+ , Hf4+ , Fe3+ , Fe2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Cu2+ , Cu+ , Zn2+ , Ga3+ , Al3+ およびこれらの混合物から選択される。
【0012】
一実施形態では、有機リンカー分子は、置換または非置換の単核または多核の芳香族ジ-、トリ-、およびテトラ-カルボン酸および、非置換または置換の少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族ジ-、トリ-、およびテトラ-カルボン酸およびそれらの混合物から選択される。一実施形態では、SiF6 のような無機ハロゲン化物も、構造体構造中のリンカーとして使用することができる。
【0013】
一実施形態において、リンカーは、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)、トリアジントリス安息香酸(TATB)、2-アミノテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、アセチレンジカルボン酸(ADC)、ベンゼン1,4-ジカルボン酸(BDC)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラカルボキシレート(ATC)、アダマンタントリベンゾエート(ATB)、4,4',4'',4'''-(ピレン-1,3,6,8-テトライル)テトラベンゾエート(TBAPy)、メソテトラフェニルポルフィン-4,4',4'',4'''-テトラカルボン酸(TCPPH2),3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸,2,5-ジヒドロキシテレフタル酸,ピラジン,1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン,SiF6 ,およびこれらの混合物から選択される。
【0014】
さらにさらなる実施形態では、MOFは、MOF-74-Co、MOF-74-Ni、MOF-74-Cu、PCN-250、HKUST-1、UiO-66、UiO-66-NH2 、SIFSIX-3、MIL-88、MIL-89、Ga-soc-MOF、Zn2 (BDC)2 (DABCO)およびこれらの混合物から選択される。
【0015】
さらに別の実施形態は、吸着剤は、約200 m2 /gから10000 m2 /gのB.E.T.表面積を有する場合である。
【0016】
別の実施形態は、MOFは、約2オングストローム~約500オングストロームの細孔サイズを有する場合であり、別の実施形態では、MOFは、約3オングストローム~約500オングストロームの細孔サイズを有する場合である。
【0017】
さらなる実施形態は、除去すべき汚染物質が、H2S、CO、ホルムアルデヒド、CO2、COS、CS2、メチルメルカプタン、NH3、炭化水素、ハロゲン化物、水、およびこれらの混合物から選択される場合である。
【0018】
さらに別の実施形態では、MOFなどの吸着剤は、水素流が流れるベッドの形態である。
【0019】
別の実施形態は、精製器は、MOFなどの吸着剤を含むカートリッジを備える場合である。カートリッジは、使い捨てのカートリッジとすることができる。
【0020】
さらにさらなる実施形態では、MOFなどの吸着剤は、ペレット、球体、押出成形品、不定形粒子、モノリス形状、およびそれらの混合物から選択される形状に形成される。
【0021】
実施形態は、MOFなどの吸着剤は、膜、織繊維、不織繊維、モノリス支持体、セラミック支持体、金属支持体、およびそれらの混合物から選択される固体支持体上に堆積される場合である。
【0022】
さらなる実施形態は、精製器を約-40℃から約40℃の温度および約100kPaから約84MPaの圧力で作動させ、水素流を約0.05kg/hrから約2kg/hrの流速で精製器を通して流すことを含んでいる。
【0023】
さらに別の実施形態では、このプロセスは、水素を動力源とする電動車両に搭載されて実施される。
【0024】
さらに別の実施形態では、MOFなどの吸着剤は、温度を変更したり、圧力を変更したりすることによって再生される。
【0025】
さらに別の実施形態として、高圧タンク、精製器、燃料電池が定置型電源システムの一部である場合がある。
【0026】
さらなる実施形態は、定置型電源システムがコンテナに収容され、その電力システムが個人住宅や商業ビル、住宅などの建物に電力を供給する場合である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、いくつかのMOF吸着剤による一成分水素吸着量を室温での圧力の関数としてプロットしたものである。
【0028】
図2図2は、Fe-PCN-250 MOFのCO/H2 選択性を、25°Cにおける圧力に対してプロットしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
前述のように、車両の動力源として燃料電池を使用することが注目されている。このような燃料電池では、燃料電池に使用される触媒(通常は白金)を不活性化または破壊しないために、超純水素を使用することが不可欠である。車両に搭載された燃料電池に水素を供給する方法としては、高圧タンクを使用するのが一般的である。この水素は純粋であるが、燃料電池に供給するのに十分な純度を有していない場合がある。本出願人は、高圧タンクからの水素を十分に精製して、燃料電池触媒を損傷することなく燃料電池に供給することができるプロセスを開発した。このプロセスは、一般に、高圧タンクからの水素と少なくとも1つの汚染物質とを含む水素流を、吸着剤を備える精製器に精製条件において通過させ、それによって少なくとも1つの汚染物質を実質的に除去し、精製された水素流を提供し、それを燃料電池に流すことを含む。
【0030】
本発明の1つの要素は、水素流、すなわち精製されるべき供給流を流す吸着剤である。使用できる吸着剤は、少なくとも200 m2/g、少なくとも400 m2/g、少なくとも600 m2/g、少なくとも1000 m2/g、少なくとも5000 m2/g、少なくとも8000 m2/g、または少なくとも10000 m2/gのB.E.T.表面積によって特徴づけられる任意の数の吸着剤を備える。特定の態様では、表面積は約200 m2/g~約10,000 m2/gである。この特性を有し、本発明で使用できる吸着剤の一般的なカテゴリには、金属有機構造体材料(MOF)、ゼオライト、活性炭、共有結合有機構造体(COF)、多孔性有機ポリマー(POP)およびそれらの混合物が限定されることなく含まれる。
【0031】
MOFは、高い表面積を持つ多孔質吸着剤として知られている。MOF吸着剤は、金属イオンのコーナー原子と、そのコーナー原子に結合しそれによってフレームワーク構造を形成する少なくとも二座のリンカー分子または配位子を備える。使用できる金属イオンとしては、Li+ , Na+ , K+ , Rb+ , Be2+ , Mg2+ , Ca2+ , Sr2+ , Ba2+ , Sc3+ , Y3+ , Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , V5+ , V4+ ,V3+ , Nb3+ , Ta3+ , Cr3+ , Cr2+ , Mo3+ , W3+ , Mn3+ , Fe3+ , Fe2+ , Ru3+ , Ru2+ , Os3+ , Os2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Pd2+ , Pd+ , Pt2+ , Pt+ , Cu2+ , Cu+ ,. Ag+ , Au+ ,Zn2+ , Al3+ , Ga3+ , In3+ , Si4+ , Si2+ , Ge4+ , Ge2+ , Sn4+ , Sn2+ , Bi5+ , Bi3+ , Cd2+ , Mn2+ , Tb3+ , Gd3+ , Ce3+ , La3+.,およびCr4+ , およびそれらの混合物などがあるが、それだけにとどまらない。金属イオンのサブグループは、Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , Fe3+ , Fe2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Cu2+ , Cu+ , Zn2+ , Ga3+ , Al3+ およびこれらの混合物から選択される。このサブグループから、金属イオンのさらなるサブグループは、Ti4+ , Zr4+ , Fe3+ , Co3+ , Ni2+ , Cu2+ , Zn2+ , Ga3+ , Al3+ およびそれらの混合物から選択されるものを含む。
【0032】
金属イオンコーナー原子は、金属イオンコーナー原子に結合可能な2つ以上の部位を含む少なくとも二座の有機リンカー分子によって結合され、金属有機構造体構造を形成する。任意で、少なくとも二座の無機リンカー分子も使用することができる。少なくとも二座の有機リンカー分子には、飽和または不飽和アルキルまたはアリール骨格を有し、任意に1つまたは複数のヘテロ原子S、N、OまたはPを含み、また任意にその骨格に結合した1つまたは複数の官能基を含むものがあるが、これらに限定されるわけではない。特定の実施形態では、リンカー骨格は、1)1~10個の炭素原子を有し、任意でヘテロ原子を有する飽和または不飽和、直鎖、分岐または環状アルキル基、および2)共有結合で融合または結合できる1~5個のアリールまたはヘテロアリール環を含む基、から選択される1以上の基を備えることができ、ここでヘテロ原子はS、N、O、Pおよびこれらの混合物から選択される。リンカー分子の骨格は、飽和および不飽和アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン化物、-OH、-NH2 、-COOH、NO2 、COH、CO(NH2)、CNおよびチオールを含むがこれに限定されない1または複数の官能基が結合していてもよい。一実施形態では、その官能基は、COOHおよびNH2 から選択される。
【0033】
また、構造体構造中のリンカーとして、SiF6 などのハロゲン化ケイ素を用いてもよい。
【0034】
これらの配位子のサブグループには、置換または非置換の、単核または多核の芳香族ジ-、トリ-およびテトラカルボン酸、ならびに非置換または置換で少なくとも1つのヘテロ原子を有する、芳香族ジ-、トリ-およびテトラカルボン酸が含まれる。これらの配位子の具体的な実施形態としては、これに限定されないが、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)、トリアジントリス安息香酸(TATB)、2-アミノテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、アセチレンジカルボン酸(ADC)、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸(BDC)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB).アダマンタンテトラカルボキシレート(ATC)、アダマンタントリベンゾエート(ATB)、4,4',4'',4'''-(ピレン-1,3,6,8-テトライル)テトラベンゾエート(TBAPy)、メソテトラフェニルポルフィン-4,4',4'',4'''-テトラカルボン酸(TCPPH2),3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸,2,5-ジヒドロキシテレフタル酸,ピラジン,1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、SiF6 、およびこれらの混合物を含む。
【0035】
特定のMOFは、限定されないが、MOF-74-Co、MOF-74-Ni、MOF-74-Cu、PCN-250、HKUST-1、UiO-66、UiO-66-NH2 、SIFSIX-3-Ni、MIL-88、MIL-89、Ga-soc-MOF、Zn2 (BDC)2 (DABCO)およびこれらの混合物を含んでいる。
【0036】
MOF組成物の調製方法はいくつかあるが、最も一般的に用いられているのはソルボサーマル合成法である。例えば、Yujia Sun and Hong-Cai Zhou, Recent Progress in the Synthesis of Metal Organic Frameworks, Sci. Technol.Adv. Mater.16 (2015), 054202を参照することができ、これは参照により組み込まれる。この手順では、金属塩と所望の配位子/リンカーを適切な溶媒に溶解し、高温で必要な時間だけ反応させる。MOFが形成されると、粉末を反応混合物から単離し、洗浄し、乾燥させる。
【0037】
本発明のプロセスで使用することができる別の吸着剤は、ゼオライトである。ゼオライトは、微多孔性であり、コーナー共有AlO2 およびSiO2 四面体から形成される結晶性アルミノシリケート組成物である。天然に存在するおよび合成的に調製された両方とも、多数のゼオライトを本発明の実施において使用することができる。合成ゼオライトは、Si、Al、およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン、および/または有機アンモニウムカチオンのような構造指示剤の適切な供給源を用いる水熱合成を介して調製される。構造指示剤はゼオライトの細孔内に存在し、最終的に形成される特定の構造に大きく関与している。これらの種は、アルミニウムに関連する構造体電荷のバランスをとり、スペースフィラーとしての役割も果たす。天然に存在するゼオライトとしては、フォジャサイト、アナリシム、チャバザイト、クリノプチロライト、ホイランダイト、ナトロライト、フィリップサイト、スチルバイト、モルデナイト、エリオナイト、オフタイト、フェリエライトおよびこれらの混合物などがあるが、それだけにとどまらない。これらのうち、フォジャサイト、チャバザイト、クリノプチロライト、フィリップサイト、モルデナイト、エリオナイト、オフレタイト、フェリエライトおよびこれらの混合物が特に注目される。合成ゼオライトには、限定されないが、ゼオライトA、B、X、Y、L、アルファ、ベータ、オメガ、ZSM-5、シリカライト、ZSM-11、MCM-22、ZK-4、EU-1、FU-1、NU-1、LZ-210およびその混合物が含まれる。ゼオライト中のシリカの一部または全部を置換することができる。例えば、SAPO, ALPO、MeAPO、ここでMeはLi、Be、B、Mg、Mn、Si、Ti、Fe、Zn、Ga、Ge、As、およびCrから選択される金属である。ゼオライトの歴史とその構造および特性のレビューは、Studies in Surface Science and Catalysis, vol.137, H. van Bekkum, E.M. Flanigen, P.A. Jacobs and J.C. Jansen (editors), 2001, Elsevier Science B.V. に掲載されており、参照により組み込まれるものとする。
【0038】
活性炭は、高多孔質、高表面積の吸着材料であり、大部分が非晶質構造である。主に芳香族配置の炭素原子がランダムな架橋によって結合したものから成る。その秩序度は、出発原料や熱履歴によって変化する。水蒸気賦活された石炭の黒鉛板はある程度秩序立っているが、化学的に賦活された木材では、より非晶質の芳香族構造が見られる。ランダムな結合により、炭素層間に多数の亀裂、隙間、空隙を持つ非常に多孔質な構造が形成される。活性炭吸着剤は、主に細孔サイズと細孔容積の要件に基づいて、特定の用途向けに調整される。空隙率やその他のパラメータは、以下のように制御される。1) 原料選択、2) 活性化処理条件、3) 後処理工程。用途に応じて、活性炭は粉末(PAC)、顆粒(GAC)、押出成形品(EAC)の形態になることがある。この3つの形態はすべて、さまざまな粒子径で提供される。活性炭の基礎知識については、「Activated Carbon: Fundamentals and New Applications, Ken Koehlert, Chemical Engineering, July 2017, pp.32-40に記載されており、これは参照により組み込まれる。
【0039】
多孔性有機ポリマー(POP)は、少なくとも複数の有機モノマーからの重合生成物である。POPは一般的に多点(3点以上の接続点)のモノマー単位から構成される。微多孔性高分子材料の架橋度は、添加する架橋分子の濃度に依存するが、POPの架橋は、モノマーまたはコモノマーユニットの価数/トピシティに依存する。また、POPの架橋は剛直なビルディングブロックの間で形成されるので、通常柔軟な鎖と側鎖の間で形成されるポリマーゲルの架橋とは異なる。POPsは非晶質材料であり、その合成は当技術分野でよく知られている。例えば、POPsは、以下の反応から合成することができる。1) カテコールとハロゲン化アリール、2) 無水物モノマーとジアミンモノマー、3) カルボキシルモノマーとジアミンモノマー。
【0040】
共有結合有機構造体(COF)は、結晶性材料であるという点でPOPsのサブセットである。この場合も、これらの材料とその合成は、当技術分野でよく知られている。
【0041】
どのタイプの吸着剤を選んでも、吸着剤が約2~約500オングストローム、または約3~約500オングストローム、または約3~約200オングストローム、または約3~約100オングストローム、または約5~約200オングストローム、または約10~約200オングストローム、または約5~約100オングストロームまたは約10~約100オングストロームの孔を有することが必要である。2オングストロームより大きい、または3オングストロームより大きい細孔を有することによって、吸着剤は、実質的に水素を吸着することなく汚染物質または不純物を吸着することができる。
【0042】
各種吸着剤は、粉末の形態で使用することができるが、ペレット、球体、円盤、モノリス体、不定形粒子、押出成形品などの各種形状体に形成することが有利な場合がある。これらの種類の形状体を形成する方法は、当技術分野でよく知られている。吸着材は、それ自体で、またはバインダーを含むことによって、様々な形状に形成することができる。バインダーを選択する際には、所望の形状体が形成された後に表面積及び吸着容量に悪影響を及ぼさないようなバインダーを選択することが重要である。バインダーとして使用できる材料としては、セルロース、シリカ、カーボン、アルミナ、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
形成プロセス(成形方法)は、通常、吸着剤組成物を溶媒またはバインダー+溶媒と混合することによって厚いペースト状材料を調製することを含む。ペースト状材料が形成されると、それは約1~2mmの孔を有するダイを通して押し出され、様々な長さ、例えば6~10mmの押出成形品を形成することができる。ペースト、あるいは粉末そのものを高圧で加圧して、ペレットや錠剤を形成することができる。形状を形成する他の手段としては、圧力成形、金属成形、ペレタイジング、造粒、押出し、圧延法、マルマーライジングなどがある。
【0044】
本発明のさらに別の態様では、吸着材は、モノリス、球状支持体、セラミックフォーム、ガラス繊維、織布、不織布、膜、ペレット、押出成形品、不定形粒子、およびこれらの混合物などの物品に堆積させることができるが、これらに限定されるものではない。所望の物品がモノリス、球状支持体、セラミックフォーム、ペレット、押出成形品、または不定形粒子である場合、吸着剤組成物のスラリーを調製し、ディッピング、スプレードライなどの手段によって物品に堆積させ、その後、乾燥し、任意で焼成することができる。MOF、POP、またはCOFと膜支持体の場合、膜上に直接MOF、POP、またはCOF組成物を形成することが可能である。本発明の吸着剤組成物は、電気紡糸、直接結晶成長、層毎堆積などの技術により、布(織物および不織布)またはポリマー上に堆積または分散させることができる。
【0045】
前の段落に記載された吸着剤または吸着剤含有物品は、水素供給流を物品、例えばモノリス、フォーム、膜、布に通して流すことによって水素供給流を精製するのに用いられ、それによって吸着剤は汚染物質の少なくとも一部を吸着し、精製(浄化)された水素流を提供することになる。吸着剤物品または粉末はまた、様々なタイプの硬質容器に入れることができる。例えば、粉末、押出成形品、錠剤または球体は、水素供給流が流れるベッドに収容することができる。ベッドは、入口および出口ポートを有するキャニスター(様々な形状のもの)など、様々な種類のハウジングに入れることができる。布(織物および不織布の両方)はまた、プリーツフィルターなどのフィルターに形成することができるが、これらに限定されるものではなく、やはり水素供給流が流れるカートリッジなどの剛性容器に収容することができる。プリーツフィルターは、様々な形状およびサイズのフレームに支持され、水素供給流がその中を流れるようにすることも可能である。フレームは、金属、木材、プラスチックなど、様々な種類の材料で作ることができるが、これらに限定されない。ガラス繊維をグラスウールに成形し、硬質フィルターフレームに収容することもできる。
【0046】
また、水素供給流を精製するために、2種類以上の吸着剤を用いることができることも本発明の範囲内である。例えば、精製器がベッドの形状である場合、2種以上の吸着剤を混合し、1つのベッドに形成することができる。あるいは、吸着剤をベッドの中で別々の層として使用することもできる。吸着剤を織布や不織布などの布に堆積させる場合には、吸着剤を混合して堆積させたり、1枚の布に別々の層として堆積させたり、別々の布に堆積させて層状にしたりすることができる。吸着剤をペレット、球体、押出成形品などの形状に成形する場合は、やはり2種以上の吸着剤粉末を組み合わせて、そのような形状に成形すればよい。あるいは、各吸着剤を所望の固体形状物品に成形した後、別々の層に配置したり、固体形状物品を混合した後、ベッドなどに配置することも可能である。
【0047】
一実施形態では、プロセスは、少なくとも99%の純度、一実施形態では少なくとも99.5%の純度、一実施形態では少なくとも99.9%の純度、一実施形態では少なくとも99.97%の純度を有する水素流をもたらす。一実施形態では、プロセスは、具体的に少なくともSAE水素仕様番号J2719_201109(https://www.sae.org/standards/content/j2719_201511/ でSAEから入手可能)の要件を少なくとも満たすことを特徴とする精製された水素流をもたらす。

この仕様では、水素の純度を99.97%以上とし、さまざまな汚染物質や不純物について個別に制限している。
【0048】
吸着剤がどのように形成され、どのような形状であるかにかかわらず、吸着剤に加えて制御装置、加熱または冷却要素、フィルターハウジング、およびセンサーを含むことができる精製器は、水素供給流を精製(浄化)する方法および条件下で操作される。精製器は、通常、約-40oCから約40oC、または約-30oCから約40oC、または約-20oCから約40oC、または約-10oCから約40oC、または約0oCから約40oCの温度で動作させる。精製器は、通常、約100kPa~約84MPa、または約100kPa~約60MPa、または約100kPa~約40MPa、または約100kPa~約30MPa、または約100kPa~約20MPa、または約100kPa~約15MPa、または約100kPa~約10MPa、または100kPa~約5MPa、または100kPa~約1500kPa程度の圧力で操作される。精製器を通過する流量は、燃料電池に十分な精製された水素を供給しながら、十分な汚染物質を吸着できる範囲である必要がある。この流量は、精製器のサイズと燃料電池のサイズに依存する。すなわち、車両、例えば自動車に搭載して処理を行うか、定置型電源、例えば住宅や商業ビル用の電源に搭載して処理を行うかである。車両の場合、流量は、通常、約0.05kg/hr~約2kg/hr、または約0.05kg/hr~約1.2kg/hrである。定置型電源の場合は、約0.2kg/hrから約10kg/hr、または約0.3kg/hrから約7kg/hrである。海上船舶、航空機、トラックや産業車両などの大型車両など、他の用途の流量は、燃料電池のサイズと電力需要に基づいて当業者が決定することができる。
【0049】
燃料電池および燃料電池技術はよく知られているので、ここでさらに説明する必要はない。
【0050】
一度使用された吸着剤、すなわち汚染物質を吸着するための最大容量に達した吸着剤は、圧力変化、すなわち圧力スイング吸着(PSA)、温度変化、すなわち温度スイング吸着(TSA)、または溶剤洗浄を含む再処理技術によって再生することができる。PSAとTSAは、一方のベッドが再生されている間他方がオンラインであるように、2つの容器またはベッドを使用し、その場で行うことができる。吸着剤の再生は、精製器システム(浄化システム)のコスト低減につながります。
【0051】
一実施形態では、本発明のプロセスは、自動車などの車両に搭載して実施することができる。上述した精製器(浄化装置)は、高圧水素タンクの出口ポートと燃料電池の入口ポートとの間に容易に配置することができる。正確な配管、制御弁、制御システム、例えばコンピュータ制御などは、当業者によく知られているため、ここでは説明しない。
【0052】
このプロセスと、それに伴う水素タンク、精製器、および燃料電池は、住宅などの住宅構造物やオフィスビルなどの商業構造物に電力を供給するために使用できる定置型電源システムとして使用することも可能である。この場合、すべてのコンポーネントは、電力を供給する必要がある場所の近くに配置することができる容器に収容することができる。
実施例
【0053】
実施例1:Ga-soc-MOFの合成
【0054】
Ga-soc-MOFをJ. Am.Chem.Soc. 2012, 134, 32, 13176-13179に報告されている手順で合成した。100 mLパイレックス瓶に硝酸ガリウム水和物(0.6g)と3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸(0.4g)を投入した。次に、この固体をDMSO (40mL)とアセトニトリル (40mL)の混合物に溶解させた。この反応混合物を120℃のオーブンで24時間加熱し、得られた固体沈殿物を遠心分離により分離した。次に、そのMOFを水で洗浄し、メタノールでソックスレー抽出した。最後に、MOFを真空下150℃で乾燥させた。
【0055】
実施例2:MOF-74-Coの合成
【0056】
MOF-74-Coは、Inorg. Chem.2016, 55, 23, 12110-12113に報告されている手順で合成した。1Lスクリューキャップボトルで、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(1.45g)および硝酸コバルト(II)六水和物(7.13g)を600mLの1:1:1(v/v/v)DMF、EtOHおよびH2O溶液中に溶解させた。この懸濁液を均質な溶液になるまで超音波処理し、100℃のオーブンに18時間入れた。この混合物を室温まで冷却し、上澄み液をデカントした。その後、結晶をDMFで洗浄し、48時間かけてメタノールで4回溶媒交換を行った。そのサンプルは真空下150℃で乾燥させた。
【0057】
実施例3:HKUST-1の合成
【0058】
HKUST-1は、Inorg. Chem. 2016, 55, 23, 12110-12113に報告されている手順で合成した。1Lスクリューキャップボトルで1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(21.8g)および硝酸銅(II)三水和物(77.22g)を930mLの15:15:1(v/v/v)溶液のEtOH、H2O、およびDMFに懸濁させた。この懸濁液を80℃で16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、上澄み液をデカントした。青色結晶をMeOHで洗浄し、真空下150℃で乾燥させた。
【0059】
実施例4:MOF-74-Niの合成
【0060】
MOF-74-Niは、J.Am.Chem.Soc. 2008, 130, 33, 10870-10871で報告されている手順で合成した。1-L スクリューキャップジャーに、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(1.434g)とNi(NO3)2-6H2O(7.134g)の固体混合物を加え、DMF-ethanol-水の1:1:1(v/v/v)混合溶液(600mL)と混合した。懸濁液を混合し、均質になるまで超音波処理した。反応ジャーにしっかりとキャップをし、100℃のオーブンに24時間入れた。混合物をオーブンから取り出し、すべて室温まで冷却した。固体を濾過し、60℃で24時間かけてDMFで3回洗浄した。次に、固体をさらにメタノールで16時間ソックスレー抽出した。最後に、MOFを真空下150℃で活性化した。
【0061】
実施例5:UiO-66の合成
【0062】
UiO-66は、Inorg.Chem.2011, 50, 15, 6853-6855から適用した手順で合成した。N,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に溶解したテレフタル酸(0.5g、3mmol)の第1の溶液を調製した。N,N-ジメチルホルムアミド(30mL)中のZrCl4 (0.233g,1mmol)の第二の溶液を調製した。2つの溶液を合わせ、120℃で24時間加熱して微結晶粉末を形成した。この微結晶粉末を、DMF(3×10mL)で30分かけて洗浄した濾過によって回収した。次に、MOFを5日間にわたってMeOH(5×30mL)で洗浄した。最後に、MOFを真空下120℃で48時間活性化した。
【0063】
実施例6:UiO-66-NH2の合成
【0064】
UiO-66-NH2 は、Inorg.Chem.2011, 50, 15, 6853-6855に従って合成した。2-アミノテレフタル酸(0.543g,3mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(10mL)に加え、完全に溶解させた。ZrCl4 (0.233g,1mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(30mL)に完全に溶解させた。2つの溶液を合わせ、120℃で24時間加熱し、微結晶粉末を形成させた。微結晶粉末を濾過によって集め、DMF(3×10mL)で30分かけて洗浄した。MOFをMeOHで洗浄した。最後に、MOFを真空下120℃で48時間活性化させた。
【0065】
実施例7:PCN-250の合成
【0066】
PCN-250は、Nat Commun 5, 5723 (2014)に報告されている手順で合成した。パイレックスバイアルに、3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸(10mg)、Fe3O(CH3COO)6(15mg)、およびDMF 2ml中の酢酸(1ml)を超音波溶解させた。この混合物を140℃のオーブンで12時間加熱した。室温まで冷却した後、暗褐色の結晶を濾過によって集め、次にDMF、次いでMeOHで洗浄した。最後に、MOFを真空下150℃で48時間活性化させた。
【0067】
実施例8:SIFSIX-3-Niの合成
【0068】
SIFSIX-3-Niは、Chem. Commun., 2015, 51, 15530-15533に報告されている手順で合成した。テフロンライニング鋼製爆弾反応器において、NiSiF6 (0.20g)をピラジン(0.16g)と混合した後、20mlメタノールに溶解し、3日間85℃に加熱した。得られた青い粉末を集め、DMFで洗浄し、次にメタノールで洗浄した。最後に、MOFを真空下150℃で48時間活性化した。
【0069】
実施例9:Zn2 (BDC)2 (DABCO)の合成
Zn2 (BDC)2 (DABCO)は、Angew.Chem.Int.Ed.2004, 43, 5033 -5036に報告されている手順で合成した。テフロンライニング鋼製爆弾反応器に、Zn(NO3)2-6H2O(1.0g), H2-ベンゼンジカルボン酸(0.560g), および 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO) (0.187g)をDMF(40mL)に懸濁させ、120oCで2日間加熱した。形成された無色の結晶性沈殿物を集め、DMFで洗浄し、真空下150℃で48時間活性化させた。
【0070】
例10:破過実験。
【0071】
上記のMOFのいくつかについて、いくつかの不純物に対する容量と、不純物が破過(breakthrough)するのに必要な時間を測定するために試験を行った。MOFのサンプル(200mg)をカラムに入れ、不純物とヘリウムの混合物を100kPaの圧力で50 sccmで流した。カラムから出る不純物の量は時間の関数として測定された。試験したガスの初期濃度は、Heキャリアガス中250ppmのNH3; Heキャリアガス中262ppmのCO; Heキャリアガス中150ppmのH2Sであった。ガスとカラムはすべて室温であった。これらの実験結果を以下の表1に示す。
表1:各種不純物に対するMOFの破過時間と吸着容量
【表1】
【0072】
これらの結果から、MOFなどの吸着剤は、不純物がppmレベルという非常に低い濃度であっても、不純物を除去することが可能であることがわかる。
【0073】
実施例11:MOFへの水素の吸着
【0074】
上記で合成したMOFについて、室温で吸着する水素の量を測定する試験を行った。吸着等温線は、室温で様々な圧力で実行された。実験結果は、圧力(バール)の関数として水素の取り込み量(uptake)(mmol H2 /g of MOF)を示す図1に示されている。この結果から、6バール(600kPa)までの水素の吸着量は非常に少ないことがわかる。これは、MOFは不純物を非常によく吸着する一方で、水素をほとんど吸着しないため、水素の精製に適していることを示している。
【0075】
実施例12:圧力の関数としての吸着選択性(不純物/水素)
【0076】
Fe-PCN-250を使用して、MOFの水素とCO不純物の相対選択性に対する圧力の影響をモデル化した。まず、Fe-PCN-250のCO等温線を室温で1kPaから936kPa(0.01バールから9.36バール)まで測定した。次に、Fe-PCN-250のH2 等温線をグランドカノニカルモンテカルロ法(GCMC)を用いて25℃、1x10-5 から950バールの範囲でシミュレーションを行った。実験したCO等温線とシミュレーションされたH2 等温線は、ともに経験的なLangmuir等温線モデルに適合した。0.999999 H2 と 1x10-6 COの固定気相モル分率における CO/H2 二成分等温線を計算するために、適合した一成分等温線を用いて、理想吸着溶液理論(IAST, Ideal Adsorbed Solution Theory)が適用された。IASTで計算された二成分等温線から導かれる二成分選択性(binary selectivity)は次のように定義される。

ここで、xi は吸着相のガス i のモル分率、yi は気相のガス i のモル分率である。これらの結果を図2に示す。図2は、気相のCO/H2モル分率に対する吸着相のCO/H2モル分率比を圧力(バール)でプロットしたものである。より高い圧力では、Fe-PCN-250にH2 が著しく取り込まれている。これは、H2 がMOF上の吸着部位に対してCOと競合していることを意味し、MOFの精製効率が低下し、水素純度が低下していることを意味する。
【0077】
実施例13:MOFの再生
【0078】
UiO-66、およびUiO-66-NH2 、再生可能な範囲を決定するためにテストされた。MOFにアンモニアを流し、真空下で室温または100o CでMOFを処理して、各MOFを再生した。この処理の後、MOFを再びアンモニアを含む流れにさらした。その結果、UiO-66は完全に再生されたのに対し、UiO-66-NH2 は部分的にしか再生されないことが分った。このUiO-66-NH2 MOFは、再生条件をさらに調整することで、完全に再生させることができると考えられる。
【0079】
これ以上詳しく説明することなく、先行する説明を用いることにより、当業者は、本発明を最大限に活用し、その精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の本質的な特徴を容易に把握し、本発明の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先の好ましい具体的な実施形態は、単に例示であって、本開示の残りの部分を何ら限定するものではなく、添付の請求項の範囲に含まれる様々な変更および同等の配置をカバーすることが意図されるものと解釈される。


図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製された水素を水素燃料電池に供給するための方法であって、
なくとも1つの汚染物質を含む水素ガスを収容する高圧タンクと、吸着剤を含む精製器と、燃料電池を備えるシステムを提供し、
前記高圧タンクからの水素流を精製条件で前記精製器を通して流し、それによって前記少なくとも1つの汚染物質を実質的に除去して精製された水素流を提供し、
前記精製された水素流を前記燃料電池に流す、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの汚染物質は、H2S、CO、ホルムアルデヒド、CO2、COS、CS2、メチルメルカプタン、NH3、炭化水素、ハロゲン化物、および水から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製された水素流は、少なくとも99.7%の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記精製器は、約-40℃~約40℃の温度および約100kPa~約84MPaの圧力で運転される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記精製器は、前記吸着剤を収容するカートリッジを備えることをさらに特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記カートリッジは、使い捨てカートリッジである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記吸着剤は、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、活性炭、共有結合有機構造体(COF)、多孔性有機ポリマー(POP)およびそれらの混合物から選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記精製器は、少なくとも2種類の前記吸着剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤はMOFを含み、前記MOFは金属イオンコーナー原子を含み、金属イオンは、Li+ , Na+ , K+ , Rb+ , Be2+ , Mg2+ , Ca2+ , Sr2+ , Ba2+ , Sc3+ , Y3+ , Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , V5+ , V4+ ,V3+ , Nb3+ , Ta3+ , Cr3+ , Cr2+ , Mo3+ , W3+ , Mn3+ , Fe3+ , Fe2+ , Ru3+ , Ru2+ , Os3+ , Os2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Pd2+ , Pd+ , Pt2+ , Pt+ , Cu2+ , Cu+ , Ag+ , Au+ ,Zn2+ , Al3+ , Ga3+ , In3+ , Si4+ , Si2+ , Ge4+ , Ge2+ , Sn4+ , Sn2+ , Bi5+ , Bi3+ , Cd2+ , Mn2+ , Tb3+ , Gd3+ , Ce3+ , La3+ およびCr4+ , 及びこれらの混合物から選択され、金属イオンは、少なくとも二座の有機リンカー分子によって結合されて金属有機構造体を形成し、少なくとも二座の有機リンカー分子は、1)1から10の炭素原子を有し任意にヘテロ原子を含む飽和または不飽和、直鎖、分枝または環状アルキル基、および、2)共有結合で融合または結合できる1~5個のアリールまたはヘテロアリール環を含む基から選択される1以上の基を含むリンカー骨格を含む1以上の分子から選択され、ここで、ヘテロ原子は、S、N、O、Pおよびそれらの混合物から選択され、任意に飽和および不飽和アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハライド、-OH、-NH2 , -COOH, NO2 , COH, CO(NH2 ), CNおよびチオールの1つまたは複数から選択された1以上の機能基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
金属イオンは、Ti4+ , Zr4+ , Hf4+ , Fe3+ , Fe2+ , Co3+ , Co2+ , Ni2+ , Ni+ , Cu2+ , Cu+ , Zn2+ , Ga3+ , Al3+ およびそれらの混合物から選択され、リンカー分子は、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC)、トリアジントリス安息香酸(TATB)、2-アミノテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(NDC)、アセチレンジカルボン酸(ATC)、ベンゼン1,4-ジカルボン酸(BDC)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラカルボキシレート(ATC)、アダマンタントリベンゾエート(ATB)、4,4',4'',4'''-(ピレン-1,3,6,8-テトライル)テトラベンゾイン酸(TBAPy)、メソテトラフェニルポルフィン-4,4',4'',4'''-テトラカルボン酸(TCPPH2)、3,3',5,5'-アゾベンゼンテトラカルボン酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、ピラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記吸着剤は、少なくとも200m2 /gのB.E.T.表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記MOFは、約2オングストローム~約500オングストロームの平均細孔サイズを有する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記吸着剤は、水素流が流れるベッドの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記MOFは、MOF-74-Co、MOF-74-Ni、MOF-74-Cu、PCN-250、HKUST-1、UiO-66、UiO-66-NH2 , SIFSIX-3-Ni, MIL-88, MIL-89, Ga-soc-MOF, Zn2 (BDC)2 (DABCO)およびこれらの混合物から選択される、請求項9の方法。
【請求項15】
前記方法は、車両に搭載して実施されることをさらに特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
水素流を約0.05kg/hrから約2kg/hrの流量で前記精製器を通して流す請求項1に記載の方法。
【請求項17】
圧力が約100kPa~約84000kPaまたは100kPa~約40MPaである、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記高圧タンク、精製器および燃料電池が、定置型電源システムの一部であることをさらに特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項19】
前記定置型電源システムはコンテナに収容され、前記電源システムが建物に電力を供給する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素流を約0.2kg/hrから約10kg/hrの流量で前記精製器を通して流す請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】