(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】抵抗ヒーターのための受動的及び能動的な較正方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
H05B3/00 310D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570531
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021033227
(87)【国際公開番号】W WO2021236812
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502137880
【氏名又は名称】ワトロー エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ブリートロウ, スタントン, エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ブリットニー
(72)【発明者】
【氏名】プタシエンスキー, ケヴィン
【テーマコード(参考)】
3K058
【Fターム(参考)】
3K058AA41
3K058CA03
3K058CA04
3K058CA69
3K058CB24
(57)【要約】
ヒーターに第1の温度設定点にまで電力供給することを含む、ヒーターを較正する方法。ヒーターは、変化する抵抗温度係数を有する抵抗加熱要素を備える。方法はさらに、ヒーターが第1の温度設定点から第1の温度設定点よりも低い第2の温度設定点にまで冷却されているときに、抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、複数の抵抗測定値を複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーターを較正する方法であって、
ある抵抗温度係数を有する抵抗加熱素子を備えていて等温環境中にあるヒーターに、第1の温度設定点にまで電力を供給することと、
前記ヒーターが第1の温度設定点から第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、
前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ヒーターが前記第1の温度設定点にあるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために、前記ヒーターへの電力供給を停止することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照部材が前記ヒーターの外表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ヒーターの前記表面の前記複数の参照温度測定値が赤外線カメラによって取得される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の参照温度測定値が熱電対付きウェハーによって取得され、前記参照部材が前記熱電対付きウェハーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度と同時に測定することと、前記測定された電流と電圧とのうちの少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めることと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ヒーターを較正する方法であって、
変化する抵抗温度係数を有する抵抗加熱素子を備えていて指定された環境中にあるヒーターに、第1の温度設定点にまで電力を供給することと、
前記ヒーターが第1の温度設定点から前記第1の温度設定点よりも低い第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、
前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記指定された環境が等温環境である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記指定された環境が、その中でワークピースを加熱するように前記ヒーターが動作可能である動作環境である、請求項7に記載された方法。
【請求項10】
前記ヒーターが前記第1の温度設定点にあるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために、前記ヒーターへの電力供給を停止することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記参照部材が前記ヒーターの外表面である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒーターの前記表面の前記複数の参照温度測定値が赤外線カメラによって取得される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の参照温度測定値が熱電対付きウェハーによって取得され、前記参照部材が前記熱電対付きウェハーである、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度と同時に測定することと、前記測定された電流と電圧とのうちの少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めることと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
抵抗加熱素子を備えるヒーターを制御するための制御システムであって、
調節可能である出力電圧を前記ヒーターに提供するようにされた電力変換器と、
前記ヒーターに印加される前記出力電圧を決定するようにされた制御部と、を備え、
前記制御部が、
前記ヒーターを制御するための複数の制御プログラムを保存するようにされたメモリであって、前記複数の制御プログラムが較正プロセスを含んでいる、メモリと、
前記複数の制御プログラムを実行するようにされたプロセッサと、を備え、
前記較正プロセスが、前記ヒーターが指定された環境中にある状態で、
前記ヒーターを第1の温度設定点にまで加熱するために前記ヒーターへの電力供給を開始することと、
前記ヒーターが前記第1の温度設定点から第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、
前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、
を行なうための命令を含む、制御システム。
【請求項16】
前記較正プロセスが、前記ヒーターが前記第1の温度設定点であるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために前記ヒーターへの電力供給を停止するための命令をさらに含む、請求項15に記載の制御システム。
【請求項17】
前記参照部材が前記ヒーターの外表面である、請求項15に記載の制御システム。
【請求項18】
前記第2の温度設定点が前記第1の温度設定点よりも低い、請求項15に記載の制御システム。
【請求項19】
前記指定された環境が等温環境である、請求項15に記載の制御システム。
【請求項20】
前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、前記較正プロセスが、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度測定値と同時に測定し、電流と電圧とのうちの前記少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めるための命令をさらに含む、請求項15に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2020年5月19日に出願された米国仮特許出願第63/027,285号の優先権及び利益を主張する。上記出願の開示は参照によりここに包含される。
【0002】
本開示は、抵抗ヒーターを較正することに関する。
【背景技術】
【0003】
この項の記載は、単に本開示に関連する背景情報を提供するものであり、必ずしも従来技術を構成しない。
【0004】
半導体加工のためのペデスタルヒーターは、通常、加熱プレートを備え、この加熱プレートは、基板、及び基板に設けられて1つ又は複数の加熱ゾーンを画定する1つ又は複数の抵抗加熱素子を有する。いくつかの用途では、抵抗加熱素子は、4本のリード線(例えば、加熱素子用の2本と別体の温度センサー用の2本)ではなく2本だけのリード線を備えてヒーターとして及び温度センサーとして機能する。そのような抵抗加熱素子においては、抵抗材料が抵抗温度係数(TCR)を画定し、抵抗加熱素子の温度をTCR及び加熱素子の抵抗測定値に基づいて求めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチゾーンヒーターなどのペデスタルヒーターは、抵抗加熱素子の抵抗値に基づいて抵抗加熱素子の温度を求める制御システムによって制御されるようにできる。マルチゾーンヒーターを制御するために、制御システムは、電圧測定値及び/又は電流測定値に基づいて抵抗値を計算し、その計算した抵抗値に基づいて各ゾーンの温度を求める。抵抗値を温度に関連付けるテーブルなどの事前に規定された抵抗-温度データを使用することができるが、たとえ抵抗加熱素子が同じ材料から作られていたとしても、ヒーターは相互に異なるように動作するかもしれない。これは、例えば、製造上のばらつき、材料バッチのばらつき、ヒーターの経過年数、サイクルの数、及び/又は他の要因によって生じ、これは計算された温度に不正確さを生じさせる。例えばマルチゾーン用途での二線式抵抗ヒーターの使用に関連したこれらの及び他の問題が、本開示によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この項は、本発明の概括的な要約を提供し、その全範囲またはそのすべての特徴の包括的な開示を行うものではない。
【0007】
一形態においては、本開示は、変化する抵抗温度係数を有する抵抗加熱素子を備えていて等温環境中にあるヒーターに、第1の温度設定点にまで電力を供給することを含む方法に関する。方法はさらに、前記ヒーターが第1の温度設定点から前記第1の温度設定点よりも低い第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、を含む。
【0008】
別の形態においては、方法は、前記ヒーターが前記第1の温度設定点にあるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために、前記ヒーターへの電力供給を停止することをさらに含む。
【0009】
さらに別の形態においては、前記参照部材が前記ヒーターの外表面である。
【0010】
一形態においては、前記ヒーターの前記表面の前記複数の参照温度測定値が赤外線カメラによって取得される。
【0011】
別の形態においては、前記複数の参照温度測定値が熱電対付きウェハーによって取得され、前記参照部材が前記熱電対付きウェハーである。
【0012】
さらに別の形態においては、前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度と同時に測定することと、前記測定された電流と電圧とのうちの少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めることと、をさらに含む。
【0013】
一形態においては、本開示は、変化する抵抗温度係数を有する抵抗加熱素子を備えていて指定された環境中にあるヒーターに、第1の温度設定点にまで電力を供給することを含む方法に関する。方法はさらに、前記ヒーターが第1の温度設定点から前記第1の温度設定点よりも低い第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、を含む。
【0014】
別の形態においては、前記ヒーターのための前記指定された環境が等温環境である。
【0015】
さらに別の形態においては、前記指定された環境が、その中でワークピースを加熱するように前記ヒーターが動作可能である動作環境である。
【0016】
一形態においては、方法は、前記ヒーターが前記第1の温度設定点にあるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために、前記ヒーターへの電力供給を停止することをさらに含む。
【0017】
別の形態においては、前記参照部材が前記ヒーターの外表面である。
【0018】
さらに別の形態においては、前記ヒーターの前記表面の前記複数の参照温度測定値が赤外線カメラによって取得される。
【0019】
一形態においては、前記複数の参照温度測定値が熱電対付きウェハーによって取得され、前記参照部材が前記熱電対付きウェハーである。
【0020】
別の形態においては、前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度と同時に測定することと、前記測定された電流と電圧とのうちの少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めることと、をさらに含む。
【0021】
また別の形態においては、本開示は、抵抗加熱素子を備えるヒーターを制御するための制御システムに関する。制御システムは、調節可能である出力電圧を前記ヒーターに提供するようにされた電力変換器と、前記ヒーターに印加される前記出力電圧を決定するようにされた制御部と、を備える。制御部は、前記ヒーターを制御するための複数の制御プログラムを保存するようにされたメモリであって、前記複数の制御プログラムが較正プロセスを含んでいる、メモリを備える。制御部はさらに、前記複数の制御プログラムを実行するようにされたプロセッサを備え、ヒーターは指定された環境中にある状態とされる。較正プロセスは、前記ヒーターを第1の温度設定点にまで加熱するために前記ヒーターへの電力供給を開始することと、前記ヒーターが前記第1の温度設定点から第2の温度設定点にまで受動的に冷却されているときに、前記抵抗加熱素子の複数の抵抗測定値及び参照部材の複数の参照温度測定値を同時に取得することと、前記複数の抵抗測定値を前記複数の参照温度測定値と関連付ける抵抗-温度較正テーブルを生成することと、を行なうための命令を含む。
【0022】
一形態においては、前記較正プロセスが、前記ヒーターが前記第1の温度設定点であるときに、前記ヒーターを受動的に冷却するために前記ヒーターへの電力供給を停止するための命令をさらに含む。
【0023】
別の形態においては、前記参照部材が前記ヒーターの外表面である。
【0024】
また別の形態においては、前記第2の温度設定点が前記第1の温度設定点よりも低い。
【0025】
さらに別の形態においては、前記指定された環境が等温環境である。
【0026】
別の形態においては、前記複数の抵抗測定値のうちの1つの抵抗測定値を取得するために、前記較正プロセスが、電流と電圧とのうちの少なくとも一方を前記複数の参照温度測定値と同時に測定し、電流と電圧とのうちの前記少なくとも一方に基づいて前記抵抗測定値を求めるための命令をさらに含む。
【0027】
適用可能な更なる分野はここに提示の記載から明らかにあるであろう。説明及び特定の例は、説明のみを目的とすることを意図しており本開示の範囲を制限することを意図していないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示がよく理解されるように、その様々な形態が例を用いて添付図面を参照して説明される。
【0029】
【
図1A】本開示にかかる、熱システムの機能ブロック図である。
【0030】
【
図1B】
図1Aの熱システムの制御システムの機能ブロック図である。
【0031】
【
図2A】抵抗加熱素子を有する例示的なヒーターの上面図である。
【0032】
【0033】
【
図3】本開示にかかる、ツー・ゾーンペデスタルヒーターに対する抵抗温度オフセットを示すグラフである。
【0034】
【
図4】本開示にかかる、パッシブ較正のセットアップを示す図である。
【0035】
【
図5A】本開示にかかる、アクティブ較正試験のセットアップを示す図である。
【
図5B】本開示にかかる、アクティブ較正試験のセットアップを示す図である。
【0036】
【
図6】本開示にかかる、抵抗-温度較正プロセスのフローチャートである。
【0037】
ここで説明された図面は、説明目的のみのためのものであり、本開示の範囲を如何なるかたちでも限定することを意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明は、実際上、単に例示であり、本開示、応用、又は使用を制限することを意図していない。図面を通して、対応する符号は同様な又は対応する部品及び特徴を示していることが理解されるべきである。
【0039】
本開示は、概して、ヒーターのための抵抗-温度(R-T)較正プロセスに関し、そのヒーターは、ヒーター及びセンサーとして動作可能である抵抗加熱素子を有するマルチゾーンヒーターであり得る。ここに説明されるR-T較正プロセスは、複数の抵抗測定値を複数の参照温度測定値と関連付けるR-Tオフセットデータを生成する。R-Tオフセットデータは、マルチゾーンヒーターの標準動作中に、抵抗加熱素子の抵抗測定値に基づいて抵抗加熱素子の温度を求めるために使用される。
【0040】
本開示の技術にかかるR-T較正プロセスを示すために、マルチゾーンヒーターと制御システムとを有する熱システムの例示的な構成がまず提供される。
図1A及び1Bに示すように、熱システム100は、マルチゾーンペデスタルヒーター102と、ヒーター制御部106及び電力変換器システム108を有する制御システム104とを備える。一形態においては、ヒーター102は、加熱プレート110と、加熱プレート110の底面に配置されたサポートシャフト112とを備える。加熱プレート110は、基板111と、基板111の表面に埋め込まれるか又はそれに沿って配置された複数の抵抗加熱素子(図示しない)とを備える。例えば、そのようなヒーターは、同時係属中の、2018年11月20日に出願され、「経路層を有するマルチゾーンペデスタルヒーター(MULTI-ZONE PEDESTAL HEATER HAVING A ROUTING LAYER)」と題する、米国特許出願第16/196,699号に説明されており、その出願は、本願と共に共通して所有されており、参照によりその全体がここに包含される。
【0041】
一形態においては、基板111は、セラミック又はアルミニウムから作られている。抵抗加熱素子は、ヒーター制御部106によって独立して制御され、
図1Aにおいて一点鎖線で示されているように複数の加熱ゾーン114を画定する。加熱ゾーンは、本開示の範囲内に留まりながら、異なる構成を取ることができ、また2つ以上の加熱ゾーンを備えることができることが、容易に理解される。例えば、
図2A及び2Bに示すように、ヒーター102は、誘電体層202、1つ又は複数の抵抗加熱線(すなわち、抵抗加熱素子)を画定する抵抗層204、及び基板208上に配置された保護層206を備える、ヒーター200とすることができる。
【0042】
一形態においては、ヒーター102は、抵抗加熱素子が4本ではなく2本のリード線のみが加熱素子に動作可能に接続されている、ヒーターとして及び温度センサーとして機能する「二線式」ヒーターである。そのような二線式の能力は、例えば、本願と共有して譲渡された米国特許第7,196,295号に開示されており、参照によりその全体がここに包含される。通常、二線式システムにおいては、抵抗加熱素子は、抵抗加熱素子の平均温度が抵抗加熱素子の抵抗値の変化に基づいて求められるように、温度の変化と共に抵抗値が変化する材料によって既定される。一形態においては、抵抗加熱素子の抵抗値は、まず加熱素子に係る電圧及びそこを流れる電流を測定し、次にオームの法則を利用することによって、計算されて求められる。抵抗加熱素子は、比較的に高い抵抗温度係数(TCR)の材料、負のTCR材料、すなわち換言すれば、非線形TCRを有する材料によって既定される。ヒーター102はペデスタルヒーターとして与えられているが、本開示は、とりわけ、静電チャック(ESC)ヒーター、ノズルヒーター、又は流体ヒーターなどの他のタイプのヒーターにも適用可能であり、ここに示されて説明されているペデスタルヒーターに限定されるべきではない。
【0043】
制御システム104は、ヒーター102の動作を制御するようにされ、より具体的にはゾーン114のそれぞれへの電力を独立して制御するようにされている。一形態においては、制御システム104は、ゾーン114に端子115を介して電気的に接続されて、各ゾーン114が、電力を供給し温度を検出する2つの端子に接続されるようにされる。
【0044】
一形態においては、制御システム104は、とりわけ、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカー、タッチスクリーンなどの1つ又は複数のユーザーインターフェースを有するコンピュータデバイス117に、(例えば、無線及び/又は有線接続で)通信接続されている。ユーザーは、コンピュータデバイス117を使用して、温度設定値、電力設定値などの入力又はコマンド、テストを実行するためのコマンド、又は制御システムによって保存されたプロセスを提供することができる。
【0045】
制御システム104は、電力変換器システム108に入力電圧(例えば、240V、208V)を供給する電源118に、付随的なインターロック120を介して、電気的に接続されている。インターロック120は、電源118と電力変換器システム108との間を流れる電力を制御し、また電力を電源118から遮断するための安全機構としてヒーター制御部106によって操作可能である。
図1Aには示されているが、制御システム104はインターロック120を含まなくても良い。
【0046】
電力変換器システム108は、入力電圧を調節して出力電圧(VOUT)をヒーター102に印加するように動作可能である。一形態においては、電力変換器システム108は、調節可能電力を所与のゾーン114(図中では114-1~114-N)の抵抗加熱素子に印加するように動作可能である複数の電力変換器122(図中では122-1~122-N)を備える。そのような電力変換器システムの一例が本願と共通して譲渡された米国特許第10,690,705号に開示されており、参照によりその全体がここに包含される。この例では、各電力変換器が、ヒーター制御部によって操作可能であり、所与のゾーン114の1つ又は複数の加熱素子に対する入力電圧より小さいか又は等しい所望の出力電圧を発生させる降圧変換器を備える。したがって、電力変換器システムは、カスタマイズ可能な大きさの電力(すなわち、所望の電力)をヒーターの各ゾーンに供給するように動作可能である。
【0047】
二線式ヒーターを使用して、制御システム104は、抵抗加熱素子の電気的特性(すなわち、電圧及び/又は電流)を測定するためにセンサー回路124(すなわち、
図1Bでは124-1~124-N)を備え、その電気的特性は、抵抗、温度、及び他の適した情報などのゾーンの性能特性を求めるために使用される。一形態においては、所与のセンサー回路124は、所与のゾーン114の加熱素子を通って流れる電流及び同加熱素子に印加された電圧をそれぞれ測定するための電流計126及び電圧計128を備える。各電流計126は電流を測定するためのシャント130を備え、各電圧計128は分圧器132を備え、分圧器132は抵抗器132-1~132-2によって表わされる。代替的に、電流計126は、シャント130に代えて、HALセンサー又は変流器を用いて電流を測定することもできる。一形態においては、電流計126及び電圧計128は、加熱素子に印加されている電力にかかわらず電流と電圧を同時に測定する電力計測チップとして提供される。別の形態においては、電圧測定値及び/又は電流測定値は、米国特許第7,196,295号に説明されているように、ゼロクロッシングで取得される。
【0048】
ヒーター制御部106は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、及びマイクロプロセッサによって実行されるコンピュータ可読命令を保存するためのメモリを備える。ヒーター制御部106は、1つ又は複数の制御プロセスを実行するようにされ、その制御プロセスにおいて、ヒーター制御部106は、入力電圧の100%、入力電圧の90%などの、ゾーンに印加される所望の電力を決定する。例示的な制御プロセスは、本願と共有して譲渡された米国特許第10,690,705号及び米国特許第10,908,195号に説明されており、参照によりその全体がここに包含される。一形態においては、制御プロセスは、抵抗加熱素子の温度及び/又はワークピースの温度に基づいて、抵抗加熱素子に印加される電力を調節する。
【0049】
精確な温度測定値を取得するために、ヒーター制御部106は、本開示のR-T較正プロセス150を実行して抵抗加熱素子の抵抗値とヒーター102の周りの参照エリアの温度(すなわち、参照温度)との間の相関関係を生成するように動作可能である。より具体的には、ヒーター102がワークピースを加熱している通常動作の間、ヒーター制御部106は、電流抵抗測定値及びR-Tオフセットデータに基づいて、ワークピースがその上に位置しているヒーター102の表面温度を求める。よって、別個のセンサーが不要になる。
【0050】
再び
図1Aを参照して、R-T較正プロセスにために、熱システム100には参照エリアの温度を測定するための1つ又は複数の別個の参照センサー152が設けられている。参照センサー152は、赤外線カメラ、熱電対付き(TC)ウェハー、1つ又は複数の熱電対、抵抗-温度検出器、及び/又は温度を測定するための他の適したセンサーとすることができる。例えば、一形態においては、参照センサー152は、ヒーター102の上に配置されてヒーター102の表面温度を測定する赤外線カメラであり、ヒーター102の表面が参照エリアで、表面温度が参照温度である。別の例においては、参照センサーは、ウェハーと温度を測定するためにウェハーに沿って分布した複数のTCとを有するTCウェハーとすることができる。較正の間、TCウェハーは、ヒーター102上に配置されて様々な方法を用いて表面に固定され、その方法としては、これらに限定されるわけではないが、ヒーター102及びTCウェハーを有するチャンバを加圧すること、TCウェハーをヒーター102に接着すること、又は重力によることがある。TCウェハーの各TCは、制御システム104に与えられた温度を測定する。TCウェハーの表面がヒーター102に接触している状態では、参照エリアはヒーター102の表面として提供され、参照温度はヒーターの表面に沿った温度である。
【0051】
R-T較正プロセスにために、制御システム104は、ヒーター102を加熱するようにされ、より具体的には、ヒーター102の表面を第1の温度設定点(T_sp1)にまで加熱するようにされている。表面が一定の温度プロファイルを有するようになると、制御システム104は、ヒーターへの電力供給を停止し、また参照温度が第1の温度設定点よりも小さい第2の温度設定点(T_sp2)に等しくなるまで参照温度及び各ゾーンに対する抵抗加熱素子の抵抗値を同時に測定する。抵抗測定のために、制御システム104は、電圧測定値及び電流測定値をセンサー回路から取得して、抵抗加熱素子の抵抗値を求める。一形態においては、参照温度測定値及び抵抗測定値は、参照センサー及びセンサー回路の処理速度に基づいて、連続的に測定される。別の形態においては、参照温度測定値及び抵抗測定値は、(例えば、とりわけ、5分ごと、10分ごと、の時間間隔で)定期的に測定される。温度オフセットデータを求めるために如何なる数の測定値が取得されてもよく、ここに説明された例に限定されないことが容易に理解されるべきである。
【0052】
制御システム104は、参照温度測定値を抵抗加熱素子の抵抗測定値と相関させて、R-Tオフセットデータを取得する。参照センサーのタイプ及び/又は数に基づいて、制御システム104は、参照センサーからの生測定値を処理して、参照温度測定値を取得する。例えば、IRカメラに関して、IRカメラによって提供された熱画像は、1つ又は複数の抵抗加熱素子によって既定された複数の加熱ゾーンによって加熱されたヒーターの表面全体にわたる表面温度を提供する。したがって、所与の加熱素子に関して、制御システム104は、所与の抵抗加熱素子によって加熱されたそれぞれのエリアに対して、所与の抵抗加熱素子の抵抗値を参照温度測定値と相関させる。ウェハーの特定のエリアに提供されたTCからの温度測定値がそのエリアを加熱している抵抗加熱素子と関連付けられるようにして、同様な相関関係がTCウェハーに対しても完了する。
【0053】
制御システム104は、R-Tオフセットデータを生成して保存し、抵抗加熱素子の抵抗測定値に基づいて参照温度を求めるためにR-Tオフセットデータを使用する。一形態においては、R-Tオフセットデータは、数あるフォーマットの中でもとりわけ、テーブル、チャート、及び/又はアルゴリズムとして提供されるようにできる。R-Tオフセットデータは、単に抵抗値及び温度測定値として提供されるようにでき、又は、TCRvs温度などの抵抗及び/又は温度に依存するパラメータとすることができる。例えば、
図3は、ツー・ゾーンペデスタルヒーターに対するR-Tオフセットを捕らえたグラフを表わしている。具体的には、グラフは、それぞれがゾーン1(Z1)及びゾーン2(Z2)を有するペデスタルA~Dに対するデータ(TCRvs温度)を提供している。
【0054】
本開示のR-T較正プロセスは、抵抗加熱素子の材料特性を取得するために様々な条件下で実行されて、その材料特性を例えばヒーター又は他の参照エリアの表面温度に相関させる。特に、R-T較正プロセスは、ヒーターが熱的に絶縁された状態で又は等温環境内でパッシブ較正として実行され、及び/又はヒーターが半導体加工チャンバなどのその動作環境内に提供された状態でアクティブ較正として実行されるようにできる。
【0055】
抵抗加熱素子を規定する特定の材料のための標準的なR-T曲線に代えて又はそれに加えて、パッシブ較正は、ヒーター内の抵抗加熱素子に対するカスタムR-T曲線を生成する。カスタムR-T曲線を取得するために、ヒーター102は、熱的に絶縁されて抵抗加熱素子からの熱損失を最小限にし、ヒーターの表面温度が抵抗加熱素子の温度と等しいか実質的に同じとなるようにする。
【0056】
例示的な構成において、
図4はパッシブ較正のためのセットアップ500を示しており、マルチゾーンヒーターが等温環境内に提供されている。具体的には、パッシブ較正のためのセットアップ500は、複数の抵抗加熱素子を有するマルチゾーンヒーター504を収容する等温チャンバ502を備える。マルチゾーンヒーター504は、ヒーター102と同様である。ここで、等温チャンバ502は、ヒーターを熱的に絶縁して抵抗加熱素子とヒーター504の表面との間での熱損失を低減させるようにヒーター504を包み込む断熱材を備える。マルチゾーンヒーター504のための等温環境は、他の適した構成を採用することもでき、等温チャンバ502に限定されないことが理解されるべきである。
【0057】
パッシブ較正のためのセットアップ500はさらに、ヒーター504への電力供給を制御するための制御システム104と同様な制御システム506を備える。ここで、参照センサーは、各加熱ゾーンに対して少なくとも1つの温度測定値が取得されるようにして、ヒーター504の表面温度を表面に沿った様々な位置で測定するように配置された複数のTC508として提供される。
【0058】
この構成では、制御システム506は、本開示のR-T較正プロセスを実行して、抵抗加熱素子の抵抗値とゾーンのそれぞれでの表面温度とを測定する。操作者は、例えば、抵抗値及び温度を連続的に測定するか又は測定値を定期的に取得するように、測定の頻度を設定することができる。受信したデータに基づいて、制御システム506は、抵抗加熱素子の抵抗値をヒーター504の表面温度と関連付けるR-T曲線を生成し、その表面温度は抵抗加熱素子の温度を示している。一形態においては、制御システム506は、所与のゾーンでの抵抗加熱素子に対する抵抗測定値及び加熱ゾーンで取得された温度測定値を用いて、各加熱ゾーンに対するR-T曲線を提供する。例えば、
図3は、内側ゾーン及び外側ゾーンをそれぞれが有する様々なツー・ゾーンヒーターに対する、パッシブ較正の間に生成されたR-T曲線を示している。
【0059】
アクティブ較正プロセスのために、R-T較正プロセスは、ヒーター102がワークピースを加熱しているときと同じ動作条件下におかれた状態で、R-Tオフセットデータを取得するように実行される。すなわち、アクティブ較正プロセスは、ヒーター102上での、よって抵抗加熱素子上での、動作条件が有する効果を捕らえる。具体的には、このR-Tオフセットデータは、例えば、抵抗加熱素子とヒーター102の表面との間、及びヒーター102の表面と外部環境との間の熱損失により、パッシブ較正プロセス中のR-Tオフセットデータとは異なるものになり得る。
【0060】
一例として、
図5A及び5Bには、アクティブ較正テストのためのセットアップ600が示されており、ヒーター602は半導体ウェハーを加熱するように設計された半導体加工チャンバ604内に設けられている。ヒーター602は、ヒーター102と同様なマルチゾーンヒーターである。この例においては、半導体加工チャンバ604は、テストプロセスのためのものであり、実際の半導体加工チャンバを模倣している。一変形形態では、アクティブ較正プロセスは、実際の半導体チャンバ製造施設において実行されてもよい。
【0061】
アクティブ較正テストのためのセットアップ600はさらに、ヒーター602への電力供給を制御するために、制御システム104と同様な制御システム606を備える。ここで、参照センサーは、ヒーター602の表面温度を測定するTCウェハー608として提供され、それは測定される参照エリアである。TCウェハー608の代わりに、1つ又は複数のTC又はIRカメラを、ヒーター102の表面温度を測定するために使用してもよい。制御システム606は、本開示のR-T較正プロセスを実行して、抵抗加熱素子の抵抗値とゾーンのそれぞれでの表面温度とを測定し、上述のようにR-Tオフセットデータを生成する。
【0062】
図4、5A、及び5Bの較正のためのセットアップには示されていないが、それぞれの制御システムは、参照センサー及び/又はヒーターなどの他のコンポーネントと通信接続されている。
【0063】
一形態においては、ヒーター(例として、ヒーター102など)は、パッシブ較正及びアクティブ較正を受けて、パッシブ較正での抵抗加熱素子の制御された抵抗測定値をアクティブ較正での制御されていない抵抗測定値に関連付けるR-Tオフセットデータを取得する。別の形態においては、ヒーターは、アクティブ較正は受けるが、パッシブ較正は受けないようにできる。
【0064】
図6に示すように、R-T較正プロセス700が提供され、これは本開示の制御システムによって実行されるようにできる。参照センサーが所定位置にある状態で、制御システムは、702で加熱ゾーンに電力を印加して熱を発生させ、704で参照センサーから参照温度測定値を取得する。706で、制御システムは、取得した参照温度測定値が第1の温度設定点(T_sp1)と等しいかを判断する。すなわち、制御システムが、ヒーターの各加熱ゾーンに対する温度測定値を受信して、ヒーターの表面温度が一定である(すなわち、T_sp1である)かを判断する。もしそうであれば、制御システムは、708でヒーターへの電力供給を停止して、抵抗値と参照温度を同時に測定する。710で、制御システムは、参照温度が第2の温度設定点(T_sp2)と等しいかを判断する。もしそうであれば、制御システムは、712で測定を止めて参照温度を抵抗測定値に相関させてR-Tオフセットデータを取得する。
【0065】
R-T較正プロセス700はR-T較正プロセスの単なる一例であり、他の適したルーチンを使用することもできることが理解されるべきである。
【0066】
別段の明示的な記載がなければ、機械的/熱的特性、組成割合、寸法及び/又は公差、又は他の特徴を指示する全ての数値は、本開示の範囲を説明するときの単語「約」又は「略」によって修正されるものとして理解されるであろう。この修正は、工業的実施、材料、製造、及び組立の公差、並びに性能試験を含む様々な理由に対して望ましい。
【0067】
ここでの使用において、A、B、及びCのうちの少なくとも1つという表現は、非排他的論理ORを用いた論理(A OR B OR C)を意味するものとして解釈されるべきであり、「Aの少なくとも1つ、Bの少なくとも1つ、及びCの少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきではない。
【0068】
図面において、矢印によって示された矢印の方向は、概して、説明図にとって関心のある情報(データ又は命令)の流れを明示している。例えば、要素A及び要素Bが様々な情報を交換したが要素Aから要素Bに送られた情報が説明図に関連しているときには、矢印は要素Aから要素Bに向けられる。この一方向矢印は、他の情報が要素Bから要素Aに送られていないことを示唆するものではない。また、要素Aから要素Bに送られる情報に対して、要素Bは、要素Aにその情報の要求又はその情報の受信確認を送信することができる。
【0069】
本願において、用語「制御部」は用語「回路」と置換可能である。制御部は、次のものを意味するか、その一部であるか、又はそれを備えるものである:特定用途向け集積回路(ASIC);デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタル混合のディスクリート回路;デジタル、アナログ、又はアナログ/デジタル混合の集積回路;組合せ論理回路;フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA);コードを実行する(共用の、専用の、又はグループの)プロセッサ回路;プロセッサ回路によって実行されるコードを保存する(共用の、専用の、又はグループの)メモリ回路;上記の機能をもたらす他の適したハードウェアコンポーネント;又はシステム・オン・チップなどの上記の幾つか又は全ての組合せ。
【0070】
用語「コード」は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又はマイクロコードを含み、またプログラム、ルーチン、ファンクション、クラス、データ構造、及び/又はオブジェクトとも称されうる。用語「メモリ」は、用語「コンピュータ可読媒体」の一部である。用語「コンピュータ可読媒体」は、ここでの使用では、(搬送波のような)媒体を通って伝播する一時的な電気的又は電磁的信号を含まない。そのため、用語「コンピュータ可読媒体」は、有形で持続的であると見なされ得る。
【0071】
本開示の記載は、実際上、単なる例示であり、よって、本開示の要旨から逸脱しない変形形態は本開示の範囲内にあるとされることが意図されている。そのような変形形態は、本開示の精神及び範囲から逸脱したものとして見なされないものとする。
【国際調査報告】