IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイスクルテクス・リミテッドの特許一覧

特表2023-526451ネクチン-4に特異的な二環式ペプチドリガンド及びその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ネクチン-4に特異的な二環式ペプチドリガンド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/07 20060101AFI20230614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230614BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230614BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230614BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
   C07K 7/54 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K38/07
A61P35/00
A61K39/395 T
A61P11/00
A61P15/00
A61P1/00
A61P1/18
A61P13/02
A61K47/64
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/34
A61K47/02
A61K9/19
A61K9/08
A61P43/00 121
C07K7/54 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570573
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 GB2021051220
(87)【国際公開番号】W WO2021234391
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,536
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン, エイミー キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】リム, ダレン
(72)【発明者】
【氏名】マーンケ, リサ
(72)【発明者】
【氏名】リグビー, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト, テレンス アレン
(72)【発明者】
【氏名】ウィティ, デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA94
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD22Z
4C076DD51Z
4C076DD67
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076FF12
4C076FF16
4C076FF31
4C076FF61
4C076FF68
4C076GG06
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA02
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA10
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA31
4H045BA72
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、二環式毒素複合体BT8009、またはその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物、及びその使用に関する。一実施形態では、医薬組成物は、BT8009、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、好ましくはニボルマブと併用して、患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍の治療で使用するためのものである。本発明は、二環式毒素複合体、またはその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物に関する。本発明はまた、罹患組織におけるネクチン-4の過剰発現を特徴とする疾患、障害、または病態を予防または治療するための、二環式毒素複合体、またはその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ならびに緩衝剤、安定剤または抗凍結剤、及び界面活性剤から選択される薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記緩衝剤がヒスチジンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記安定剤または抗凍結剤がスクロースである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤がポリソルベート20である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
pH調整剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記pH調整剤が、塩酸を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
凍結乾燥粉末形態の固体の医薬組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
水をさらに含む液体の医薬組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
BT8009、またはその薬学的に許容される塩;
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約1.31~2.62mgのヒスチジン;
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約15~30mgのスクロース;及び
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約0.05~0.1mgのポリソルベート20
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
約21.2mgのBT8009、またはその薬学的に許容される塩;
約27.8mgのヒスチジン;
約318mgのスクロース;及び
約1.06mgのポリソルベート20
を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
約2~4mg/mLのBT8009、またはその薬学的に許容される塩;
約5.24mg/mLのヒスチジン;
約60mg/mLのスクロース;及び
約0.2mg/mLのポリソルベート20
を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物を患者に静脈内投与することを含む、前記患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍の治療方法。
【請求項13】
前記ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍が、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、三種陰性乳癌(TNBC)、胃/上部消化管(GI)癌、膵臓癌、及び尿路上皮癌からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記医薬組成物を、7日に1回投与する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物を、約2.5、5.0、7.5、10.0、13.0または17.0mg/mの用量で投与する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物を、約60分間のIV注入によって投与する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ニボルマブを投与することをさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ニボルマブを、約30分間のIV注入によって投与する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二環式毒素複合体、またはその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物に関する。本発明はまた、罹患組織におけるネクチン-4の過剰発現を特徴とする疾患、障害、または病態を予防または治療するための、二環式毒素複合体、またはその薬学的に許容される塩、またはその医薬組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
環状ペプチドは、高い親和性と標的特異性でタンパク質標的に結合することができるため、治療薬の開発にとって魅力的な分子クラスである。実際、抗菌ペプチドバンコマイシン、免疫抑制薬シクロスポリン、または抗がん剤オクトレオチドなど、いくつかの環状ペプチドがすでに臨床で成功裏に使用されている(Driggers et al.(2008),Nat Rev Drug Discov 7(7),608-24)。良好な結合特性は、ペプチドと標的の間に形成される比較的大きな相互作用表面、及び環状構造のコンフォメーションの柔軟性の低下に起因する。例えば、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å;Wu et al.(2007),Science 330,1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å)(Xiong et al.(2002),Science 296(5565),151-5)またはウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å;Zhao et al.(2007),J.Struct Biol 160(1),1-10)のように、通常、大環状分子は数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
環状構造であるため、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも柔軟性が低く、標的に結合した際のエントロピーの損失が小さくなり、結合親和性が高くなる。柔軟性が低下すると、標的特異的なコンフォメーションがロックされ、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性も向上する。この効果は、マトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例示されており、この阻害剤は、その環が開いた場合に他のMMPに対する選択性を失った(Cherney et al.(1998),J Med Chem 41(11),1749-51)。大環状化によって達成される好ましい結合特性は、例えばバンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのように、複数のペプチド環を有する多環式ペプチドでさらに顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前にシステイン残基を含むポリペプチドを合成分子構造につないでいる(Kemp and McNamara(1985),J.Org.Chem;Timmerman et al.(2005),ChemBioChem)。Meloenらは、タンパク質表面の構造を模倣するために、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子を使用して、複数のペプチドループを合成骨格に迅速かつ定量的に環化させた(Timmerman et al.(2005),ChemBioChem)。候補薬物化合物の生成方法において、前記化合物は、例えば、TATA(1,1’,1’’-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン,Heinis et al. Angew Chem,Int Ed.2014;53:1602-1606)のような分子骨格にシステイン含有ポリペプチドを連結することによって生成される。
目的の標的に対する二環式ペプチドの大きなライブラリーを生成し、スクリーニングするために、ファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発された(Heinis et al.(2009),Nat Chem Biol 5(7),502-7及びWO2009/098450)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基と6つのランダムなアミノ酸(Cys-(Xaa)-Cys-(Xaa)-Cys)の2つの領域を含む直鎖状ペプチドのコンビナトリアルライブラリーをファージ上に提示し、システイン側鎖を小分子骨格に共有結合することによって環化した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Driggers et al.(2008),Nat Rev Drug Discov 7(7),608-24
【非特許文献2】Wu et al.(2007),Science 330,1066-71
【非特許文献3】Xiong et al.(2002),Science 296(5565),151-5
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬組成物は、凍結乾燥粉末である。いくつかの実施形態では、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬組成物は、水中の医薬製剤である。
【0007】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性腫瘍の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、水中にBT8009またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬製剤を、IV注入によって患者に毎週投与することを含む、患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性腫瘍の治療方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.本発明の特定の実施形態の一般的説明
別の態様では、本発明は、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍を治療するための、本明細書に記載の医薬組成物の使用方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明は、水中にBT8009またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬製剤を、1時間にわたってIV注入によって患者に毎週投与することを含む、患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性腫瘍の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、水中にBT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬製剤を、単一の薬剤として投与する。いくつかの実施形態では、水中にBT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬製剤を、ニボルマブと併用投与する。いくつかの実施形態では、ニボルマブを、2週間ごとに30分かけて240mg投与する。いくつかの実施形態では、水中にBT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬製剤を、ニボルマブと併用投与して、最初にBT8009、続いてニボルマブを順次注入する。
【0010】
いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、三種陰性乳癌(TNBC)、胃/上部消化管(GI)癌、膵臓癌、及び尿路上皮癌からなる群から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、三種陰性乳癌(TNBC)である。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、胃/上部消化管(GI)癌である。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、膵臓癌である。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、尿路上皮癌である。
【0012】
2.化合物及び定義:
本明細書で使用する場合、用語「BT8009」は、以下に示すような構造を有する二環式毒素複合体であり、分子骨格が、1,1’,1’’-(1,3,5-トリアジナン-1,3,5-トリイル)トリプロパ-2-エン-1-オン(TATA)であり、ペプチドリガンドが、以下のアミノ酸配列を含み:
(β-Ala)-Sar10-CP[1Nal][dD]CiiM[HArg]DWSTP[HyP]WCiii(配列番号1)
式中、Sarはサルコシン、1Nalは1-ナフチルアラニン、HArgはホモアルギニン、HyPはヒドロキシプロリン、C、Cii及びCiiiは、第1、第2及び第3のシステイン残基を表す。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される塩」とは、妥当な医学的判断の正常な範囲内で、過度の毒性、刺激性、アレルギー応答などを起こさずに、ヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適するとともに、合理的なベネフィット/リスク比と釣り合う塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19において薬学的に許容される塩を詳細に説明しており、参照により本明細書に援用される。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、好適な無機及び有機の酸及び塩基に由来する塩が含まれる。薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸のような有機酸と形成されるか、あるいは、イオン交換のように、当技術分野において用いられている他の方法を用いることによって形成される、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【化1】
【化2】
【0014】
好適な塩基に由来する塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、及びN(C1-4アルキル)塩が含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩として、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成される非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンが挙げられる。塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及は前記リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0015】
本発明の塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法、例えば、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,P.Heinrich Stahl(Editor),Camille G.Wermuth(Editor),ISBN:3-90639-026-8,Hardcover,388 pages,August 2002に記載されている方法によって合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を適切な塩基または酸と水中または有機溶媒中、または両者の混合物中で反応させることによって調製することができる。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、所与の値または範囲の10%以内の意味を有するものとする。いくつかの実施形態では、用語「約」は、所与の値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%以内を指す。
【0017】
特に明記しない限り、本明細書に示す構造はまた、構造のすべての異性型(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、及び幾何学的(または配座))形態;例えば、各不斉中心のR及びS配置、Z及びE二重結合異性体、ならびにZ及びE配座異性体も含むことを意図する。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、並びにエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何学的(または配座)異性体の混合物は、本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物のすべての互変異性型は、本発明の範囲内である。さらに、特に明記しない限り、本明細書に示す構造はまた、1つ以上の同位体濃縮原子が存在することのみが異なる化合物を含むことを意図する。例えば、重水素もしくは三重水素による水素の置換、または13Cもしくは14C濃縮炭素による炭素の置換を含む本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、分析ツールとして、生物学的アッセイにおけるプローブとして、または本発明による治療薬として有用である。
【0018】
3.医薬組成物
一態様によれば、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、約21.2mgのBT8009またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、固体の医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本発明の固体の医薬組成物は、粉末である。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、凍結乾燥粉末である。いくつかの実施形態では、本発明の固体の医薬組成物は、顆粒である。
【0020】
一態様によれば、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩を、溶液用の滅菌凍結乾燥粉末として提供する。いくつかの実施形態では、BT8009またはその薬学的に許容される塩を、クロロブチル栓及びアルミニウムシールを備えた10mLのI型透明ガラスバイアルに収容する。いくつかの実施形態では、各バイアルは、5.0mLの注射用水(WFI)で再構成するために、21.2mg/バイアルのBT8009または、その薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、4mg/mLのBT8009溶液が生成され(再構成された原薬は、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含有する)、5.0mLの再構成された溶液を回収して、0.9%生理食塩水でさらに希釈してIV注入を介して投与するための20mg用量を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、液体の医薬組成物である。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、許容されるビヒクルまたは溶媒中の医薬製剤である。いくつかの実施形態では、許容されるビヒクルまたは溶媒は、滅菌水、リンゲル液、U.S.P.及び等張塩化ナトリウム溶液から選択される。いくつかの実施形態では、許容されるビヒクルまたは溶媒は、滅菌水である。いくつかの実施形態では、許容されるビヒクルまたは溶媒は、滅菌された注射可能な媒体である。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、約2~4mg/mLのBT8009またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、約4mg/mLのBT8009またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤または担体は、緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、プロタミン硫酸塩などの、飽和植物脂肪酸、水、塩、または電解質の部分グリセリド混合物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂から選択される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジンである。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、水酸化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、塩酸である。
【0023】
いくつかの実施形態では、緩衝剤は、本発明の医薬組成物のpHを約6~8に調整する量である。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約1~3mgの量のヒスチジンである。いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約1.31または2.62mgの量である。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、ヒスチジンを約5.24mg/mLの濃度で含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、約6~8のpHである。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、約6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0のpHである。いくつかの実施形態では、本発明の液体の医薬組成物は、約6.5または7.0のpHである。
【0025】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤または担体は、安定剤または抗凍結剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、エチレングリコールである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、グリセロールである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、プロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(MPD)である。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、トレハロースである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、ホルムアミドである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、プロリンである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、グリセロール3-リン酸である。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、ソルビトールである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、ジエチルグリコールである。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤は、スクロースである。
【0026】
いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤(例えば、スクロース)は、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約10~35mgの量である。いくつかの実施形態では、安定剤または抗凍結剤(例えば、スクロース)は、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約15または30mgの量である。いくつかの実施形態では、液体の医薬組成物は、約60mg/mLの濃度で安定剤または抗凍結剤(例えば、スクロース)を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤または担体は、界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-60、ポリソルベート-65、ポリソルベート-80、ポリソルベート-85、またはそれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton(商標);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウレル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノレアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル)、ミリスタルニドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;メチルココイル-ナトリウム、またはメチルオフェイル-タウリン二ナトリウム;及びMonaquat(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、ならびにエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68)から選択される。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20である。
【0028】
いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約0.01~0.15mgの量である。いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)は、BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約0.025、0.05、または0.1mgの量である。いくつかの実施形態では、液体の医薬組成物は、約0.1または0.2mg/mLの濃度で界面活性剤(例えば、ポリソルベート20)を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤または担体は、等張性調整剤を含む。いくつかの実施形態では、等張性調整剤は、塩化ナトリウム、デキストロース、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、等張性調整剤は、デキストロースである。いくつかの実施形態では、等張性調整剤は、塩化ナトリウムである。いくつかの実施形態では、等張性調整剤は、塩化ナトリウムとデキストロースの組み合わせである。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、以下を含む:
BT8009、またはその薬学的に許容される塩;
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約1.31~2.62mgのヒスチジン;
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約15~30mgのスクロース;及び
BT8009、またはその薬学的に許容されるもの1mgあたり約0.05~0.1mgのポリソルベート20。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明は、固体の医薬組成物を提供し、それは、以下を含む凍結乾燥粉末である:
約21.2mgのBT8009、またはその薬学的に許容される塩;
約27.8mgのヒスチジン;
約318mgのスクロース;及び
約1.06mgのポリソルベート20。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、以下を含む液体の医薬組成物を提供する:
約2~4mg/mLのBT8009、またはその薬学的に許容される塩;
約5.24mg/mLのヒスチジン;
約60mg/mLのスクロース;及び
約0.2mg/mLのポリソルベート20。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の固体の医薬組成物を、水に溶解することによって調製される、液体の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の固体の医薬組成物を、注射可能な媒体(例えば、0.9%w/v生理食塩水または5%デキストロース)に溶解することによって調製される、液体の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の固体の医薬組成物を水中で再構成し、続いて0.9%w/v生理食塩水で希釈することによって調製される、液体の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、液体の医薬組成物を、IV投与のために0.9%w/v生理食塩水IVバッグ中に希釈する。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含む、固体の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、BT8009、またはその薬学的に許容される塩、ヒスチジン、スクロース、ポリソルベート20、及び水を含む、液体の医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物の成分は、上記の量、濃度、及び比率である。
【0035】
4.医薬組成物の使用
一態様では、本発明は、本明細書に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、患者におけるネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍を治療するための方法、または使用を提供する。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、三種陰性乳癌(TNBC)、胃/上部消化管(GI)癌、膵臓癌及び尿路上皮癌から選択される。いくつかの実施形態では、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍は、NSCLCの腺癌サブタイプ(アデノ-NSCLC)である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、本明細書に記載の医薬組成物を患者に静脈内投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、IV注射によって投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、IV注入によって投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のIV注入を、約5~30分間持続させる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のIV注入を、約30~90分間持続させる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のIV注入を、約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90分間持続させる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のIV注入を、約60分間持続させる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物のIV注入を、約2、2.5、3、3.5または4時間持続させる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、1、2、3、4、5、6、または7日ごとに1回、患者に投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、毎週、患者に投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、2週に1回、患者に投与する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約1~27mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約2~20mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約2~20mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約2.2、4.4、7.3、11、14.6、または19.4mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約2.5、5.0、7.5、10.0、13.0、または17.0mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約1.5~3.5、3.5~5.5、6.5~8.5、10~12、13.5~15.5、または18.5~20.5mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約1~10または10~20mg/mの用量で投与する。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、約21、22、23、24、25、26、または27mg/mの用量で投与する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、少なくとも18歳の患者に投与する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)のパフォーマンスステータススコア0または1を有する患者に投与する。ECOGのパフォーマンスステータススコア0及び1を実施例1に記載する。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、固形がん効果判定基準(RECIST)v1.1で測定可能な疾患を有する患者に投与する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、許容可能な臓器機能を有する患者に投与する。いくつかの実施形態では、許容可能な臓器機能を有する患者は、以下から選択される検査データを有する:
腎機能:Cockcroft-Gault方程式による、または24時間の尿収集によって測定される、≧50mL/分のクレアチニンクリアランス;
総ビリルビン≦1.5×ULN(正常上限値);
血清アルブミン≧2.5g/dL;
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦2.5×ULN、または肝転移の存在下で≦5×ULN;
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×ULN、または肝転移の存在下で≦5×ULN;及び
国際標準比(INR)<1.3または≦治験ULN(抗凝固薬は許可されない)。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、許容可能な血液機能を有する患者に投与する。いくつかの実施形態では、許容可能な血液機能を有する患者は、以下から選択される検査データを有する:
ヘモグロビン≧9g/dL;
好中球絶対数(ANC)≧1500細胞/mm;及び
血小板数≧75,000細胞/mm
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、妊娠検査陰性(スクリーニング時の血清検査陰性及び本発明の医薬組成物の最初の投与前3日以内の尿検査または血清検査陰性)を有する出産の可能性のある女性(WOCBP)患者に投与する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、治験責任医師の判断に従って、BT8009治療の開始後12週間以上の余命を有する患者に投与する。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、以下のように進行性で組織学的に確認された悪性固形腫瘍を有する患者に投与する:a)尿路上皮(移行上皮)癌で、ネクチン-4を対象とした治療を受けていない;またはb)ネクチン-4発現が陽性である腫瘍組織(新鮮な生検または12か月未満のアーカイブされた試料、抗がん治療の介入なし)試験を有する;またはc)ネクチン-4と歴史的に関連していることが知られている以下のような固形腫瘍:膵臓、TNBC、NSCLC、胃、食道または卵巣。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、適切な標的療法、例えば、関連するがん遺伝子ドライバーNSCLC患者のためのEGFRまたはALK療法を含む以前に行われた療法の後に再発したか、またはその療法に対して難治性であった疾患を有し、かつ、承認された、または標準的な治療法の選択肢がないために、第I相試験の候補である患者に投与する。
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、新鮮な生検または保存された組織(生後12か月未満で介入抗がん療法なし)上でネクチン-4を発現することが確認された固形腫瘍転移性再発性疾患を有する患者に投与する(適格であり、関連するがん遺伝子ドライバーNSCLC患者に対するEGFRまたはALK療法などの適切な標的療法を含む、すべての標準治療オプションを使い果たしている必要があり、少なくとも1つの以前の治療ラインに失敗しており、直近の治療ラインにおいてX線写真の進行のエビデンスを有している必要がある)。
【0049】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、ネクチン-4を対象とする療法を受けていない患者に投与する。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物を、以下のように適切な標準治療の選択肢をすべて使い果たした進行性固形腫瘍の患者に投与する:1)GFR(CGまたは24時間尿による)40~50ml/分(または同等の単位)を有する患者が登録され、最初に評価され(SRCの節を参照のこと)、続いて;2)GFR30~40ml/分(または同等の単位)を有する患者を評価する。
【0051】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与前14日以内に化学療法治療を受けていない。いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与前28日以内または5半減期以内(いずれか短い方)に抗がん治療を受けていない。いくつかの実施形態では、患者は、有害事象共通用語規準(CTCAE)v5.0でグレード1に回復した前治療の毒性を有する(グレード2以下でなければならない脱毛症を除く)。
【0052】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与4週間以内に実験的治療を受けていない。
【0053】
いくつかの実施形態では、患者は、ネクチン-4標的療法による以前の治療を受けていない。
【0054】
いくつかの実施形態では、患者は、CYP3A4の強力な阻害剤もしくは誘導剤、または薬草ベースもしくは食物ベースを含むP-gpの強力な阻害剤による治療を現在受けていない。
【0055】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の成分のいずれに対しても、またはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)に対しても感受性を有していない。
【0056】
いくつかの実施形態では、患者は、体重>100kg(222.2ポンド)またはBSA>2.21m(身長175cmに対してヒト100kg相当を表す)を有さない。
【0057】
いくつかの実施形態では、患者は、眼(ドライアイ、角膜混濁、または角膜炎のモニタリングに関連するか、もしくは混乱させる可能性のある病態);皮膚(湿疹または乾癬などの自己免疫性の病態を含むがこれらに限定されない発疹のモニタリングに関連するか、または混乱させる可能性のある病態)、生命を脅かす疾病、制御不能な活動性感染症または臓器系機能障害(腹水、凝固障害、脳症など)、あるいは、胃腸、皮膚及び肺の併存疾患の考慮、ならびに臨床的に重大な併存疾患がないことを確認するための胸部CTのスクリーニングのレビューを含む、患者の安全性を損なう可能性があるか、または研究結果の完全性を妨害または損なう可能性のある他の理由を含むがこれらに限定されない、重大な医学的病態を有していない。
【0058】
いくつかの実施形態では、患者は、甲状腺ホルモンで適切に制御され、治療で少なくとも2か月間安定している場合、グレード2以下の甲状腺内分泌症の既往を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、患者は、臨床的に関連するトロポニン上昇を有していない。
【0060】
いくつかの実施形態では、患者は、ヘモグロビンA1C(HbA1c)≧8%として定義される、制御不能な糖尿病を有していない。
【0061】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与から4週間以内に大手術(血管アクセスの留置を除く)を受けておらず、研究療法を開始する前に十分に回復している。
【0062】
いくつかの実施形態では、患者は、試験治療の30日以内に生ワクチンを受けていない。
【0063】
いくつかの実施形態では、患者は、制御不能な症候性脳転移を有していない(ステロイドを使用せずに、または毎日10mg以下もしくは試験治療開始時と同等量の安定もしくは少ない用量のプレドニゾンで、少なくとも4週間の局所療法の後、安定した神経学的状態を有していなければならず、かつ神経学的及び他の有害事象の評価を混乱させるであろう神経学的機能障害がない必要がある)。
【0064】
いくつかの実施形態では、患者は、BT8009の初回投与前に、制御不能な高血圧(収縮期血圧[BP]収縮期BP≧160mmHgまたは拡張期BP≧100mmHg)を有していない(少なくとも2か月間安定的に制御されていなければならない)。
【0065】
いくつかの実施形態では、患者は、治験責任医師の見解における、試験の結果を混乱させるか、患者の参加を阻むか、または参加することが患者の最善の利益にならない可能性のある、任意の病態、治療または検査異常の履歴または現在のエビデンスを有していない。
【0066】
いくつかの実施形態では、患者は、BT8009の初回投与前6か月以内に記録された、脳血管事象(脳卒中または一過性脳虚血性発作)、不安定狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全またはニューヨーク心臓協会クラスIII~IVの症状の病歴、あるいは:a.平均安静時補正QT間隔(QTcF)>470ミリ秒、b.QTc延長のリスク、または心不全、低カリウム血症、先天性QT延長症候群、QT延長症候群もしくは40歳未満の原因不明の突然死の家族歴などの不整脈事象のリスクを高める任意の要因、またはQT間隔を延長することが知られている任意の併用薬、あるいはc.安静時心電図(ECG)のリズム、伝導、または形態における任意の臨床的に重要な異常(治験責任医師によって評価される)、例えば、完全左脚ブロック、第3度心ブロックを有していない。
【0067】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与前6か月以内に平均安静時補正QT間隔(QTcF)>470ミリ秒を有していない。
【0068】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与前の6か月以内に、QTc延長のリスク、または心不全、低カリウム血症、先天性QT延長症候群、QT延長症候群もしくは40歳未満の原因不明の突然死の家族歴、またはQT間隔を延長することが知られている併用薬などの不整脈事象のリスクを高める要因を有していない。
【0069】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の初回投与前の6か月以内に、安静時心電図(ECG)のリズム、伝導、または形態における臨床的に重要な異常、例えば、完全左脚ブロック、第3度心ブロックを有していない。
【0070】
いくつかの実施形態では、患者は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)を有していない。
【0071】
いくつかの実施形態では、患者は、陽性のB型肝炎表面抗原及び/または抗B型肝炎コア抗体を有していない。
【0072】
いくつかの実施形態では、患者は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイが陰性であり、適切な抗ウイルス療法を受けている。
【0073】
いくつかの実施形態では、患者は、C型肝炎ウイルス(HCV)抗体が陽性である場合、陽性のウイルス負荷を伴う活動性C型肝炎感染症を有する。
【0074】
いくつかの実施形態では、患者は、C型肝炎感染症の治療を受けており、12週間以上ウイルス学的応答を持続している。
【0075】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の最初の投与前の3年以内に別の悪性腫瘍を有していない。いくつかの実施形態では、患者は、以前に診断された悪性腫瘍に由来する残存疾患を有していない(治癒意図で適切に治療された基底細胞癌、皮膚扁平上皮細胞、in situ子宮頸部上皮内腫瘍/子宮頸癌またはin situ黒色腫または乳房のin situ腺管癌を除く)。
【0076】
いくつかの実施形態では、患者は、本発明の医薬組成物の最初の投与前の直近14日以内に、全身性のIV抗感染症治療を受けていないか、または発熱を有していない。
【0077】
いくつかの実施形態では、患者は、関連する最近の全身性ウイルス症候群の疑い、または治験責任医師の見解において、解決されていない検疫/隔離の必要性を有していない。
【0078】
いくつかの実施形態では、患者は、プロトコル及び/または経過観察手順を順守できない心理的、家族的、社会学的、または地理的条件を有していない。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明は、ネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍を治療するための、本発明の医薬組成物とニボルマブとの併用を提供する。ニボルマブは、https://www.opdivohcp.com/dosing/dosing-schedulesに見出され得るラベルに記載されているとおりに投与することができる(その内容は、その全体が参照により本明細書に援用される)。いくつかの実施形態では、ニボルマブを、2週間ごとに240mg投与する。いくつかの実施形態では、ニボルマブを、4週間ごとに480mg投与する。いくつかの実施形態では、ニボルマブを、30分間のIV注入として投与する。
【0080】
併用のいくつかの実施形態では、患者は、免疫チェックポイント阻害剤に対する不耐性であることがこれまでに知られていない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、チェックポイント阻害剤療法に対する過剰感受性であることが知られていない。併用のいくつかの実施形態では、患者は以前に臓器移植を受けていない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、臨床的に関連する免疫不全であると以前に診断されていない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、治療を必要とする活動性の全身性感染症を有していない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、1日10mg当量より多くのプレドニゾンまたは他の強力な免疫抑制剤を服用していない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、脱毛症または白斑以外の自己免疫疾患の病歴を有していない。併用のいくつかの実施形態では、患者は、間質性肺疾患の病歴を有していない。
【実施例
【0081】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に明記しない限り、すべてのアミノ酸はL配置で使用した。
【0082】
略語
略語または特殊用語の説明
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【0083】
実施例1.ネクチン-4発現に関連する進行性悪性腫瘍患者におけるBT8009の安全性、薬物動態、及び予備臨床活性の第I/II相試験
患者数:最大146人の患者がこの試験に登録される予定であり;パートAで34人-パートA-2で20人、2つのパートBコホートでそれぞれ40人及びパートCコホートで12人である。
【0084】
目的:主要目的
【0085】
主要目的
【0086】
患者数:最大146人の患者がこの試験に登録される予定であり;パートAで34人-パートA-2で20人、2つのパートBコホートでそれぞれ40人及びパートCコホートで12人である。
【0087】
目的:主要目的
【0088】
主要目的
用量漸増及び腎コホート(パートA-1、A-2、パートC)の主要目的は以下のとおりである:
・ 単剤療法(パートA-1)またはニボルマブとの併用(パートA-2)でのネクチン-4発現に関連する進行性悪性固形腫瘍の患者、または腎不全を有する進行性悪性固形腫瘍の患者(パートC)におけるBT8009の安全性と忍容性を評価すること。
・ 観測される場合、BT8009の最大耐量(MTD)を定義し、単独療法及びニボルマブとの併用(パートA-1及びA-2)での推奨される第II相用量(RP2D)を決定すること。
拡大コホート(パートB-1及びB-2)の主要目的は以下のとおりである:
・ RECIST1.1を使用して単剤療法(パートB-1)及びニボルマブとの併用(パートB-2)でのネクチン-4発現に関連する固形腫瘍適応症の患者におけるBT8009の臨床活性を評価すること。
【0089】
副次的目的
用量漸増(パートA-1及びA-2)及び腎コホート(パートC)の副次的目的は以下のとおりである:
・ 単剤療法(パートA-1)及びニボルマブとの併用(パートA-2)でのネクチン-4に関連する進行性悪性固形腫瘍の患者、または腎不全を有する進行性悪性固形腫瘍の患者(パートC)におけるBT8009投与で達成された抗腫瘍活性の予備的シグナルを評価すること。
単剤療法(パートA-1)及びニボルマブとの併用(パートA-2)でのネクチン-4に関連する進行性悪性固形腫瘍の患者、または腎不全を有する進行性悪性固形腫瘍の患者(パートC)におけるBT8009の薬物動態(PK)パラメータを決定すること。
・ 抗薬物抗体(ADA)発生の発生率を決定すること。
拡大コホート(パートB-1及びB-2)の副次的目的は以下のとおりである:
・ 単剤療法(パートB-1)及びニボルマブとの併用(パートB-2)でのネクチン-4に関連する固形腫瘍適応症の患者におけるBT8009の安全性及び忍容性を評価すること。
・ BT8009の薬物動態(PK)パラメータを決定すること。
・ 抗薬物抗体(ADA)発生の発生率を決定すること。
【0090】
試験設計
この試験は、単剤(パートA-1、B-1、C)及びニボルマブ(パートA-2及びB-2)との併用で投与したBT8009の第I/II相、ヒト初回投与、非盲検用量漸増試験である。この試験は以下の3つの部分を有する:パートA、用量漸増、パートB、用量拡大、及びパートC、腎不全。代表的な潜在的スキームを含む試験スキームを図3に示す。
【0091】
治験薬、用量、及び投与様式:
・BT8009を、用量漸増コホート(A-1及びA-2)では漸増用量で、拡大コホート(B-1及びB-2)ではRP2Dで、腎コホート(C)では1時間にわたって点滴として静脈内投与する。
・パートA-2及びB-2の併用療法では、ニボルマブ240mgを2週間ごとに30分にわたって投与する。
【0092】
選択基準-全患者:
研究に参加するには、患者は以下の基準を満たす必要がある:
1. 試験固有の手順、サンプリング、または分析を実施する前に、現地のガイドラインに従って、患者または法定後見人が署名及び日付を記入した同意説明文書。
患者が試験の任意の部分(例えば、腫瘍生検)への参加を拒否した場合、患者に不利益や利益の損失はなく、試験の他の態様から除外されることはない。
2. 同意説明文書の署名時に少なくとも18歳である
3. 米国東海岸がん臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータススコアが0または1(付録Aを参照のこと)
患者は、固形がん効果判定基準(RECIST)v1.1に従って測定可能な疾患を有していなければならない(付録Bを参照のこと)。
5.以下の検査データによって証明される、許容可能な臓器機能:
a. 以下の腎機能:Cockcroft-Gault方程式または同等物による、≧50mL/分のクレアチニンクリアランス;
b. 総ビリルビン≦1.5×ULN(正常上限値)
c. 血清アルブミン≧2.5g/dL
d. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)≦2.5×ULN、または肝転移の存在下で≦5×ULN
e. アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×ULN、または肝転移の存在下で≦5×ULN
f. 国際標準比(INR)<1.3または≦治験ULN
6.許容可能な血液機能(BT8009の最初の投与から2週間以内での赤血球もしくは血小板の輸血または成長因子は許可されない):
a. ヘモグロビン≧9g/dL
b. 好中球絶対数(ANC)≧1500細胞/mm3
c.血小板数≧75,000細胞/mm3
7.出産の可能性のある女性の妊娠検査(WOCBP)が陰性(スクリーニング時の血清検査が陰性であり、BT8009の初回投与前3日以内の尿または血清検査が陰性である。非WOCBPの定義は付録Cに記載されている。出産の可能性のある女性パートナーを有する男性患者と出産の可能性のある女性患者は、試験への参加中及び治験薬の最後の投与後6か月間、少なくとも臨床試験促進グループ(CTFG)の推奨事項と同程度に保守的に(1%未満の失敗率)、非常に効果的な避妊(経口及びホルモン避妊薬が許可される)に従う必要がある(https://www.hma.eu/fileadmin/dateien/Human_Medicines/01-About_HMA/Working_Groups/CTFG/2014_09_HMA_CTFG_C ontraception.pdf)、(付録C)。男性患者は、治験薬の最終投与後6か月間、治験参加中の精子提供も控えなければならず、女性はその間授乳や卵子提供をしてはならない。
8.BT8009の初回投与日から12か月以内にアーカイブされた腫瘍試料が利用可能であるか、またはスクリーニング中に新鮮な腫瘍生検を提供する意思がある。
9. 治験責任医師の判定による、BT8009治療の開始後12週間以上の平均余命。
10.プロトコルと試験手順を順守する意思があり、順守できなければならない。
追加の選択基準-パートAのみ
11.以下のように進行性で組織学的に確認された悪性固形腫瘍を有する患者:
a)尿路上皮(移行上皮)癌で、ネクチン-4を対象とした治療を受けていない;または
b)ネクチン-4発現が陽性である腫瘍組織(新鮮な生検または12か月未満のアーカイブされた試料、抗がん治療の介入なし)試験を有する;または
c)ネクチン-4と歴史的に関連していることが知られている以下のような固形腫瘍:膵臓、TNBC、NSCLC、胃、食道もしくは卵巣。
例外:単一対象の加速コホートには、SRCが別段の見解を示さない限り、上記の定義に限定されない進行性固形腫瘍の患者を登録してもよい。すべての患者は、適切な標的療法、例えば、関連するがん遺伝子ドライバーNSCLC患者のためのEGFRまたはALK療法を含む以前に行われた療法の後に再発したか、またはその療法に対して難治性であった疾患を有している必要があり、かつ、承認された、または標準的な治療法の選択肢がないために、第I相試験の候補である。治験依頼者は、登録中いつでもa)、b)、またはc)を要求してよい。治験依頼者及び/またはSRCは、バイオマーカー、安全性、抗腫瘍活性、またはPKの評価を強化する必要があると感じた場合、用量漸増中の任意の時点で特定の腫瘍(サブ)タイプの登録を要求することを決定してもよい。
【0093】
追加の選択基準-パートB-1及びB-2 ネクチン4バスケット単剤療法及び併用コホート
12.新鮮な生検または保存された組織(生後12か月未満で介入抗がん療法なし)上でネクチン-4を発現することが確認された固形腫瘍転移性再発性疾患を有する患者(適格であり、関連するがん遺伝子ドライバーNSCLC患者に対するEGFRまたはALK療法などの適切な標的療法を含む、すべての標準治療オプションを使い果たしている必要があり、少なくとも1つの以前の治療ラインに失敗しており、直近の治療ラインにおいてX線写真の進行のエビデンスを有している必要がある)。患者は、ネクチン4を対象とした治療を受けていない必要がある。治験依頼者は、尿路上皮(移行細胞)患者を許可しないと決定してもよい。患者の腫瘍が治療の標的となる体細胞変異またはドライバー変異を含むことが示されている場合、治療は地域で承認された適切な治療法で行われなければならず、治療は地域の標準的な治療基準に基づいて行われている必要がある。プラチナ治療が適用できる場合、FDA承認または適切な現地承認治療が、現地の標準ガイドラインに基づいて実施されている必要がある。以前に免疫療法を受けていた場合、最後の投与は、BT8009の初回投与の少なくとも28日前でなければならない。治験依頼者及び/またはSRCは、抗腫瘍活性のために集団を充実させる必要があると感じた場合、拡大中の任意の時点で上記の定義を満たす特定の腫瘍(サブ)タイプの登録を要求することを決定してもよい。
13. コホートごとに少なくとも6人の患者が、生検に適した少なくとも1つの腫瘍病変を有している必要があり、BT8009の初回投与前及びサイクル1の任意の投与後に生検を受ける意思がある必要がある。
追加の選択基準-パートC 腎不全コホート
14. 以下のように適切な標準治療の選択肢をすべて使い果たした進行性固形腫瘍の患者は適格である:1)GFR(CGまたは24時間尿による)40~50ml/分(または同等の単位)を有する6人の患者が登録され、最初に評価され(SRCの節を参照のこと)、続いて;2)GFR30~40ml/分(または同等の単位)を有する6人の患者を評価する。治験依頼者は、腫瘍(サブ)タイプまたは選択されたネクチン-4を指定することを選択してもよい。
【0094】
除外基準-全患者:
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験登録から除外される:
1. 試験治療の初回投与前14日以内の化学療法治療、他の抗がん治療、28日以内の治療または5半減期のいずれか短い方。前治療の毒性が、有害事象共通用語規準(CTCAE)v5.0でグレード1に回復していなければならない(グレード2以下でなければならない脱毛症を除く)。
2. BT8009の初回投与から4週間以内の実験的治療。
3. ネクチン-4標的療法による前治療
4. CYP3A4の強力な阻害剤もしくは強力な誘導剤、または薬草ベースもしくは食物ベースを含むP-gpの強力な阻害剤による治療を現在受けている(付録F)。
5. 治験薬またはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)の成分のいずれかに対する既知の感受性。
6. 体重>100kg(222.2ポンド)またはBSA>2.21m(身長175cmに対してヒト100kg相当を表す)。
7. 眼(ドライアイ、角膜混濁、または角膜炎のモニタリングに関連するか、もしくは混乱させる可能性のある病態);皮膚(湿疹または乾癬などの自己免疫性の病態を含むがこれらに限定されない発疹のモニタリングに関連するか、または混乱させる可能性のある病態)、生命を脅かす疾病、制御不能な活動性感染症または臓器系機能障害(腹水、凝固障害、脳症など)、あるいは、治験責任医師の見解における、胃腸、皮膚及び肺の併存疾患の考慮、ならびに臨床的に重大な併存疾患がないことを確認するための胸部CTのスクリーニングのレビューを含む、患者の安全性を損なう可能性があるか、または研究結果の完全性を妨害または損なう可能性のある他の理由を含むがこれらに限定されない、重大な医学的病態。甲状腺ホルモンで適切に制御され、治療で少なくとも2か月間安定している場合、グレード2以下の甲状腺内分泌症の既往は許可される。
8. 臨床的に関連するトロポニンの上昇(地域の参照基準を考慮)。
9. a)ヘモグロビンA1C(HbA1c)≧8%として定義される制御不能の糖尿病
10.BT8009の初回投与から4週間以内に大手術(血管アクセスの配置を除く)を受け、試験治療を開始する前に十分に回復している必要がある
11.試験治療の30日以内の生ワクチンの接種
12.制御不能な症候性脳転移(ステロイドを使用せずに、または毎日10mg以下もしくは試験治療開始時と同等量の安定もしくは少ない用量のプレドニゾンで、少なくとも4週間の局所療法の後、安定した神経学的状態を有していなければならないか、あるいは神経学的及び他の有害事象の評価を混乱させるであろう神経学的機能障害がない必要がある)。
13.BT8009の初回投与前の、制御不能な高血圧(収縮期血圧[BP]収縮期BP≧160mmHgまたは拡張期BP≧100mmHg)(少なくとも2か月間安定的に制御されていなければならない)を有する患者。
14.以下を含むがこれらに限定されない、治験責任医師の見解における、試験の結果を混乱させるか、患者の参加を阻むか、または参加することが患者の最善の利益にならない可能性のある、任意の病態、治療または検査異常の履歴または現在のエビデンス:
BT8009の初回投与前の6か月以内に記録された、脳血管事象(脳卒中または一過性虚血発作)、不安定狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、またはニューヨーク心臓協会のクラスIII~IVの症状の病歴を有する患者(付録Dを参照のこと)あるいは:
a.平均安静時補正QT間隔(QTcF)>470ミリ秒
b.QTc延長のリスク、または心不全、低カリウム血症、先天性QT延長症候群、QT延長症候群もしくは40歳未満の原因不明の突然死の家族歴、またはQT間隔を延長することが知られている併用薬などの不整脈事象のリスクを高める任意の要因
c.安静時心電図(ECG)のリズム、伝導、または形態における臨床的に重要な異常(治験責任医師によって評価される)、例えば、完全左脚ブロック、第3度心ブロック
15.既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)
16.陽性のB型肝炎表面抗原及び/または抗B型肝炎コア抗体を有する患者。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイが陰性であり、適切な抗ウイルス療法が許可される患者。
17.C型肝炎ウイルス(HCV)抗体が陽性の場合、ウイルス負荷が陽性である活動性C型肝炎感染症(抗体が陰性の場合、ウイルス負荷は適用されない)。C型肝炎感染症の治療を受けた患者は、12週間以上の持続的なウイルス学的反応が記録されている場合に、含めることができる。
18.BT8009の初回投与前3年以内の別の悪性腫瘍の病歴、または以前に診断された悪性腫瘍に由来する残存疾患のエビデンス(治癒意図で適切に治療された基底細胞癌、皮膚扁平上皮細胞、in situ子宮頸部上皮内腫瘍/子宮頸癌またはin situ黒色腫または乳房のin situ腺管癌を除く)。
19.BT8009の初回投与前の過去14日以内の全身性IV抗感染症治療、または発熱。
関連する最近の全身性ウイルス症候群の疑い、または治験責任医師の見解における、解決されていない検疫/隔離の必要性。
21. プロトコル及び/またはプロトコルに概説された経過観察手順を順守できない心理的、家族的、社会学的、または地理的条件。
【0095】
追加の除外基準 パートA-2及びB-2 ニボルマブ併用コホート
22. 前治療での免疫チェックポイント阻害剤に対する不耐性
23. チェックポイント阻害剤療法に対する既知の過敏症
24. 前治療での臓器移植(同種異系を含む)
25. 臨床的に関連する免疫不全の診断
26. 治療を必要とする活動性の全身感染症
27. 1日あたり10mg以上のプレドニゾン当量または他の強力な免疫抑制剤
28. インスリンで十分に抑制されるI型DM以外の自己免疫疾患、脱毛症または白斑の病歴
間質性肺疾患の病歴
【0096】
相関性試験:
すべての患者は、アーカイブまたは新鮮な腫瘍材料を提供する必要がある。
ネクチン-4の発現レベルを評価するための腫瘍生検及び追加の分子遺伝学的特徴決定(すなわち、特定の体細胞変異の評価など)。この材料は、組織ブロックまたは10~15枚のパラフィン浸漬無染色スライドとして提供する必要がある。
BT8009の腫瘍内PK/薬力学的効果を調査するために、投与前及び投与後の腫瘍生検を収集する。投与前及び投与後の1回の腫瘍生検は、パートBの患者の必須サブセット(コホートあたり6人)を除いて任意選択である。投与後生検は、BT8009投与後4~36時間以内である限り、投与後のサイクル1で必要になる。サイクル2、3、または4において、任意の患者について、任意選択で生検を行ってよい。
さらなる詳細については、評価スケジュール(SOA)を参照されたい。
投与前及び投与後の血液試料も収集し、薬力学、応答、及び治療抵抗性バイオマーカー、例えば、循環腫瘍由来DNA(ctDNA)における体細胞変異、ADA、及び薬理ゲノム解析を評価する。
【0097】
統計的方法
用量漸増(A-1及びA-2に個別に適用):この試験で調査する用量レベルの実際の数は、用量規制毒性(DLT)に基づく非耐容量の決定に依存する。MTDは、DLTに基づいて定義される(第5節を参照のこと)。他の安全性データ、ならびに試験の実施中に観察されるPK特性、及び抗腫瘍活性の傾向。治療サイクルは、SOAに従って連続して実施する。1人の患者が所定の用量レベルでDLTを経験した場合、さらに3人の患者を同じ用量で治療する。
次の用量レベルに進む前に、1サイクルの治療(28日)を完了した少なくとも3人の患者のコホートの評価が必要である。さらなる詳細については、第5節を参照されたい。
単一の対象及び3+3回の漸増(用量レベル1~4)における忍容性のエビデンスに従って、その後のすべての投与間隔の漸増は、過用量制御(EWOC)原則を伴う2パラメータのベイズロジスティック回帰モデル(BLRM)を使用した連続再評価法(CRM)に基づき、それにより、後続の用量レベルに、安全でないと判断される用量レベル(DLT率≧33%)の可能性が25%未満であるという過用量基準を満たす用量の中で、目的の間隔(20%、33%)で生じる最も高い事後確率のDLTが含まれる。累積DLT/安全性データにBLRMを適用し、結果をSRCに提供し、各用量レベルでの正確な用量漸増が正式に推奨される。第5節に推定の用量漸増スキームを示し、完全な詳細を付録G:用量漸増設計の詳細及び動作特性に示す。第5節を参照されたい。
パートB(B-1及びB-2)では、各拡大コホートに対して無益性解析を行う。P<0.17の帰無仮説とP≧0.380の対立仮説を検定するためのサイモン2段階デザイン。有効性の評価が可能な最初の14人の患者で薬物を試験した後、3人以下が応答した場合(ORR≧21%)、試験を終了する。試験が第2段階に進む場合、有効性の評価が可能な合計40例の患者(追加の26人の患者)を試験する。応答の合計数が10未満の場合、その薬物は中止する。
したがって、試験に採用される患者の最大数は146;パートA-1から34人、パートA-2から20人、2つのパートBコホートのそれぞれから40人、パートC腎コホートから12人である。
【0098】
実施例2.BT8009製剤
BT8009製剤を、溶液用の滅菌凍結乾燥粉末として製剤化する。医薬品は、クロロブチル栓とアルミニウムシールを備えた10mLのI型透明ガラスバイアルに収容される。各バイアルの表示強度には、5.0mLの注射用水(WFI)で再構成するために、21.2mg/バイアルが含まれる。押しのけ容積0.3mLで、4mg/mLのBT8009溶液を生成し(再構成された原薬は、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20を含有する)、5.0mLの再構成された溶液を回収して、0.9%生理食塩水でさらに希釈してIV注入を介して投与するための20mg用量を提供する。
【0099】
製剤の説明及び組成
【0100】
BT8009製剤は、ブチル栓とアルミニウムシールを備えた10mLのI型透明ガラスバイアル中に、再構成するために白色からオフホワイトの無菌凍結乾燥粉末として臨床使用のために供給される。製造中、凍結乾燥前に各バイアルに5.3mLの4mg/mLバルク溶液を充填し、バイアルあたり21.2mgのBT8009を提供する。使用時に、BT8009製剤を5.0mLの無菌WFIで再構成し(再構成容積の5.3mL溶液を戻すため)、4mg/mLの目標濃度でBT8009を提供し、IV投与(注入)前に5%デキストロースでさらに希釈する。0.3mLの過剰量により、バイアルから5mLの抽出可能量が確保され、さらに希釈するために最大20mgの用量が提供される。
【0101】
ヒスチジン緩衝液の効果的な緩衝範囲内で、塩酸を使用して充填溶液のpHを目標のpH7.0(7.4ではない)に調整する。必要な絶対量は、バッチで使用するL-ヒスチジンの実際の量に依存し、これは、pH7.0に到達するのに「十分な量」として示される。
【0102】
BT8009製剤(21.2mg/バイアル)の組成及び定量的組成の完全な説明を表1に示す。
【表1】
【配列表】
2023526451000001.app
【国際調査報告】