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特表2023-526456単層広角インピーダンス整合(WAIM)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】単層広角インピーダンス整合(WAIM)
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/50 20060101AFI20230614BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20230614BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230614BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230614BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230614BHJP
   H01Q 13/20 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
H01Q1/50
H01Q1/40
H01Q13/08
H01Q21/06
H01Q1/38
H01Q13/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570590
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 US2021033267
(87)【国際公開番号】W WO2021236846
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/027,190
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/322,602
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516247177
【氏名又は名称】カイメタ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】モハマド アミン モメニ ハサン アバディ セイエド
(72)【発明者】
【氏名】サゼガー モフセン
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA10
5J021AB05
5J021AB06
5J021HA07
5J021JA06
5J045AA01
5J045AA06
5J045DA05
5J045DA10
5J045NA02
5J046AA03
5J046AB03
5J046AB07
5J046AB13
5J046PA07
5J046TA03
(57)【要約】
単層広角インピーダンス整合(WAIM)及びこれを使用する方法が記載されている。一実施形態では、アンテナは、無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するアパーチャと、アパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供するために、アパーチャに結合された単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナであって、
無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するアパーチャと、
前記アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供するために、前記アパーチャに結合された単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、
を備える、アンテナ。
【請求項2】
前記単層WAIM構造は、サブ波長素子の2次元(2D)アレイを有する容量性インピーダンス表面を含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記サブ波長素子は、容量性パッチの2Dアレイを含む、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記容量性パッチは、正方形パッチである、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記容量性パッチは、六角形パッチである、請求項3に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記サブ波長素子は、分割リング共振器又はダイポールである、請求項2に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記単層WAIM構造は基板を含み、前記単層WAIM構造のサブ波長素子が、前記基板上にスクリーン印刷されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記単層WAIM構造は、少なくとも誘電体スペーサによって前記アパーチャから分離されている、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記単層WAIM構造のインピーダンスは、特徴及び周囲媒体の物理的寸法に基づいている、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記単層WAIM構造のインピーダンスは、走査角度と伝搬波の偏波の関数であり、前記アンテナの走査平面から独立している、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記単層WAIM構造は回転対称性を有する、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項12】
前記アパーチャはメタサーフェスを含む、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項13】
アンテナであって、
無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するメタサーフェスと、
前記アパーチャに結合されて、前記アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供する単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、
を備え、
前記単層WAIM構造は、サブ波長素子の2次元(2D)アレイを有する容量性インピーダンス表面を有する、
アンテナ。
【請求項14】
前記サブ波長素子は、容量性パッチの2Dアレイを含む、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項15】
前記容量性パッチは、正方形パッチ又は六角形パッチである、請求項14に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記サブ波長素子は、分割リング共振器又はダイポールである、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記単層WAIM構造は基板を含み、前記単層WAIM構造のサブ波長素子が、前記基板上にスクリーン印刷されている、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項18】
前記単層WAIM構造は、少なくとも誘電体スペーサによって前記アパーチャから分離されている、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項19】
前記単層WAIM構造のインピーダンスは、特徴及び周囲媒体の物理的寸法に基づいている、請求項18に記載のアンテナ。
【請求項20】
前記単層WAIM構造のインピーダンスは、走査角度及び伝搬波の偏波の関数であり、前記アンテナの走査平面から独立している、請求項13に記載のアンテナ。
【請求項21】
アンテナであって、
無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するメタサーフェスと、
前記メタサーフェスに結合された誘電体層と、
前記誘電体層に結合されて、前記アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供する単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、
を備え、
前記単層WAIM構造は、容量性素子の2次元(2D)アレイがスクリーン印刷された基板を含む、
アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2020年5月19日に出願された米国仮特許出願番号第63/027,190号及び2021年5月17日に出願された米国非仮出願17/322,602号の米国特許法第119(e)に基づく利益を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、衛星通信の分野に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、衛星アンテナで使用される広角インピーダンス整合(WAIM)構造に関する。
【背景技術】
【0003】
アンテナ利得は、ネットワークカバレッジ(network coverage)及び速度を決定付けるので、衛星通信システムにとって最も重要なパラメータの1つである。より具体的には、利得が高いほど、よりカバレッジが良好で、より高速になることを意味し、これは、競争の激しい衛星市場において極めて重要である。衛星側では、アンテナでの受信電力が極めて低いので、受信(Rx)帯域にわたるアンテナ利得が重要とすることができる。フラットパネル電子走査アンテナの走査角度では、ブロードサイドの場合に比べてこれらの角度での減衰の増加及びアンテナ利得の低下に起因してより重要となり、高い利得値が、アンテナと衛星との間のリンクを閉じる必須のパラメータになる。送信(Tx)帯域にわたって、利得が低いと所望の信号強度を得るためにアンテナにより多くの電力を供給する必要があり、これはコスト、温度、熱雑音などが高くなることを意味するので、利得はまた重要である。
【0004】
衛星通信で用いられるアンテナの1つのタイプは、放射状アパーチャスロットアレイアンテナ(radial aperture slot array antenna)である。近年、このような放射状アパーチャスロットアレイアンテナの性能に対する幾つかの改善がなされている。これらのアンテナの放射効率を制限するパラメータの1つに、アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス不整合がある。この不整合が走査角度で高くなると、この追加的な放射効率の損失が走査損失を招く結果となる。WAIM構造は、適切なインピーダンス整合を行うことで、この問題を軽減する。
【0005】
放射状アパーチャスロットアレイアンテナで使用されるダイポール装荷(dipole loading)について言及した。この装荷は、インピーダンス整合を行うことにより、放射効率を向上させることができる。また、周波数応答をシフトするのに用いることも可能である。スロットダイポールのコンセプトもまた、アンテナ、特にブロードサイドで動作するアンテナの全体的なリターンロス性能を改善することを含めて、アンテナの指向性を改善するために放射状アパーチャスロットアレイアンテナに適用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第14/550,178号明細書
【特許文献2】米国特許出願第14/610,502号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2015/0236412号明細書
【発明の概要】
【0007】
単層広角インピーダンス整合(single-layer Wide Angle Impedance Matching)(WAIM)及びこれを使用するための方法が記載される。一実施形態では、アンテナは、無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子(antenna elements)を有するアパーチャ(aperture)と、アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供するためにアパーチャに結合された単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造(structure)と、を備える。
【0008】
記載された実施形態及びその利点は、添付図面を参照しながら以下の説明を参照することによって最もよく理解することができる。これらの図面は、記載された実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に対して当業者が行い得る形態及び詳細の変更をどのようにも制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造の一実施形態を示す図である。
図1B】単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造の一実施形態を示す図である。
図2A】様々な位置合わせを有するアパーチャ上のWAIM構造の代替の設置を例示する図である。
図2B】様々な位置合わせを有するアパーチャ上のWAIM構造の代替の設置を例示する図である。
図2C】様々な位置合わせを有するアパーチャ上のWAIM構造の代替の設置を例示する図である。
図2D】様々な特徴寸法を使用して同じ性能を達成する柔軟性を示す図である。
図2E】様々な特徴寸法を使用して同じ性能を達成する柔軟性を示す図である。
図2F】様々な特徴寸法を使用して同じ性能を達成する柔軟性を示す図である。
図3】単層WAIM構造の一実施形態に関する利得及び走査損失の改善を示す図である。
図4】単層WAIM構造を設計するためのプロセスの一実施形態のフロー図である。
図5A】WAIM構造で使用するための代替の容量性表面を示す図である。
図5B】WAIM構造で使用するための代替の容量性表面を示す図である。
図5C】WAIM構造で使用するための代替の容量性表面を示す図である。
図6】円筒状給電アンテナの入力給電部の周りに同心リング状に配置されたアンテナ素子の1又は2以上のアレイを有するアパーチャを示す図である。
図7】グランドプレーン及び再構成可能共振器層を含むアンテナ素子の1つの行の斜視図である。
図8A】可変波長共振器/スロットの一実施形態を示す図である。
図8B】物理的なアンテナアパーチャの一実施形態の断面図である。
図9A】スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部を示す図である。
図9B】スロットを含む第2のアイリス基板層の一部を示す図である。
図9C】第2のアイリス基板層の一部上のパッチを示す図である。
図9D】スロット付きアレイの一部を示す上面図である。
図10】円筒状給電アンテナ構造の一実施形態の側面図である。
図11】外向き波を有するアンテナシステムの他の実施形態を示す図である。
図12】アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の一実施形態を示す図である。
図13】TFTパッケージの一実施形態を示す図である。
図14】同時送受信経路を有する通信システムの他の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本発明のより完全な解説を提供するために多数の詳細が示されている。しかしながら、本発明がこれらの特定の詳細なしに実施できることは当業者には明らかであろう。他の事例では、本発明を曖昧にしないために、公知の構造及びデバイスが詳細にではなくブロック図の形式で示されている。
【0011】
アパーチャアンテナのための新しい広角インピーダンス整合(WAIM)構造及びこれを使用するための方法が記載される。WAIM構造は、アンテナアパーチャと自由空間との間に適切なインピーダンス整合を提供することによって、アパーチャアンテナの放射効率を改善する。走査損失の改善はまた、走査角度においてより良好な整合を提供することに起因する。一実施形態では、アンテナアパーチャのインピーダンス及び自由空間のインピーダンスはこれらのパラメータによって変化するので、インピーダンス整合は、周波数、走査角度(scan angle)、及び伝搬波(propagating wave)の偏波(polarization)の関数である。
【0012】
一実施形態では、WAIM設計特性は、アンテナアパーチャのタイプに依存する。一実施形態では、アンテナアパーチャは、漏れ波アンテナ(leaky wave antenna)の一部であり、サブ波長放射スロットを有する。一実施形態では、アンテナアパーチャは、無線周波数(RF)エネルギーを放射する複数のアンテナ素子を有するメタサーフェス(metasurface)である。このようなアンテナ素子は、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子(surface scattering metamaterial antenna elements)とすることができる。液晶(LC)ベースの表面散乱メタマテリアルアンテナ素子の例は、以下により詳細に説明される。しかしながら、アンテナ素子は、LCベースのアンテナ素子であることに限定されない。例えば、別の実施形態では、アンテナ素子は、バラクタダイオードが放射スロットアンテナ素子の同調に使用される、バラクタベースのメタマテリアルアンテナ素子である。サブ波長の放射スロットを有する放射面の等価回路モデルは、小さな抵抗部分を有する並列共振器である。従って、スミスチャート上の周波数に対するインピーダンス曲線は、短セクションに向かう円である。一実施形態では、並列容量と直列インダクタンスを含むL型整合ネットワークが、この構成に適したインピーダンス整合を提供する。
【0013】
一実施形態では、WAIM構造は、サブ波長容量性パッチの2次元周期アレイを有する単層構造である。一実施形態では、この構造は、誘電体基板上に印刷され、誘電体スペーサ(例えば、発泡体など)によってそのアパーチャから分離される。先行技術に優る本明細書に記載の単層WAIM構造の1つの重要な利点は、極めて低コストで簡単に試作及び組み立てができることである。
【0014】
WAIM構造の実施形態は、低コストの製造及び単純な組立プロセスを含む他の重要な利点を有する。一実施形態では、設計の実施形態が単層構造を含むので、これは、代替形態と比較して低い製作コストをもたらし、複数の物理的寸法に関する厳しい公差を排除し、組立プロセスの複雑さを低減する。また、そのインピーダンス整合要素の寸法の選択に柔軟性があるので、製造技術の公差内に十分に収まるように選択することができる。
【0015】
更に、重要なことに、本明細書に記載された実施形態は、そのインピーダンス整合要素とアンテナアパーチャ要素との間の位置/回転整列(positional/rotational alignment)を必要としない。これは、位置公差を排除し、また組立プロセスを単純化するので、より低いコストをもたらす。また、そのインピーダンス整合要素とアンテナ素子との間の位置合わせに依存しないので、この設計は、極めて再現性のあるRF性能を提供する。
【0016】
更に、様々なピクセル寸法で同じRF性能を達成することができる。これにより、必ずしも特徴寸法に厳しい公差を提供しないコスト製造技術を使用することが可能性となる。例えば、一実施形態では、WAIM構造は、基板上にスクリーン印刷されたような素子を有する基板を備える。このような場合におけるスクリーン印刷の使用は、プリント回路基板(PCB)技術に対する極めて低コストな代替方法である。
【0017】
単層WAIM構造は、複数の異なるアンテナアパーチャと共に使用できることに留意されたい。アパーチャアンテナの例は、以下でより詳細に説明される。しかしながら、本明細書に開示されるWAIM構造は、以下に説明されるもの以外のアンテナアパーチャと共に使用されてもよいことに留意されたい。
【0018】
一実施形態では、単層WAIM構造は、誘電体スペーサによってアパーチャから分離された容量性表面によって実現されるL型インピーダンスネットワークを備える。幾つかの実施形態では、容量性インピーダンス表面(capacitive impedance surface)は、サブ波長素子の2Dアレイを使用する。サブ波長素子は、多くの異なるタイプのうちの1又は2以上とすることができる。幾つかの例は、サブ波長パッチ、ダイポール、スプリットリング共振器(SRR)等である。
【0019】
図1Aは、WAIM構造の一実施形態を示す。この実施形態では、単層WAIM構造100は、複数のアンテナ素子101を有するメタサーフェスを含むアンテナアパーチャの上にある。一実施形態では、アンテナ素子101は、スロット共振器(例えば、表面散乱メタマテリアルアンテナ素子、RF放射アンテナ素子など)を備える。WAIM構造100は、サブ波長正方形パッチ102の2次元(2D)アレイを備える。一実施形態では、パッチ102は、メタサーフェスであるこの構造が容量性層として機能することを保証するためにサブ波長パッチである。一実施形態では、パッチ102は、容量性パッチ(capacitive patches)である。一実施形態では、パッチ102は、基板上に印刷される。一実施形態では、WAIM構造100は、誘電体スペーサ又は発泡体によってアパーチャから分離される。
【0020】
WAIM構造は、図1Bに示される等価回路モデルを使用してモデル化することができる。図1Bのモデルを参照すると、容量性パッチ102は、並列キャパシタンスによってモデル化され、アパーチャとパッチ102との間のスペーサは、伝送線路の短いセクションでモデル化される。
【0021】
このタイプの単層WAIM構造が望まれる理由は幾つかある。第1に、同じ性能を達成するために物理的なパラメータを選択する柔軟性がある。この表面の固有キャパシタンスは、パッチ及びその周囲の媒体の物理的寸法の関数である。式(1)は、法線入射波について(for a normal incident wave)このキャパシタンス値を計算するための1次近似式を示している。
【数1】
この式についての詳細な情報については、Luukkonen他、「Simple and accurate analytical model of planar grids and high-impedance surfaces comprising metal strips or patches」、IEEE Transactions on Antennas and Propagation、vol.56、no.6、pp.1623-1632、June2008を参照されたい。この式において、sは隣接するパッチ間のギャップ間隔、Dは周期性である。この式は、ギャップ間隔と周期性が波長よりも遙かに小さい限り、これらの多くのセットにより同じキャパシタンスを実現できることを示しています。このことは、製造法の許容公差に応じてパラメータを選択することができるので、重要である。
【0022】
第2に、この面のインピーダンスは、アンテナの走査面(すなわちφ)に依存しない。これは、構造の90度回転対称性と、固有キャパシタンスが隣接するパッチの平行なエッジ間の電界によって形成されることに起因する。この特徴は、回転対称であるアパーチャを有する特定のアンテナにおいて望まれるものである。
【0023】
第3に、一実施形態では、WAIM構造の表面インピーダンスは、走査角度と伝搬波の偏波の関数である。WAIM構造は、適切に設計された場合、様々な走査角度において直交する両方の偏波(すなわち、TE及びTM)に対してアンテナアパーチャと自由空間インピーダンスの間のインピーダンス整合を提供する。
【0024】
第4に、一実施形態では、WAIM構造は、極めて広帯域である。従って、広帯域放射素子を有するか又は異なる周波数で複数の放射素子を有するアパーチャに対してインピーダンス整合を潜在的に提供することができる。この特徴は、アパーチャが複数の放射素子によって占められている特定のアンテナにおいて重要である。
【0025】
WAIM構造の実施形態の設計手順の一実施形態は、図1Bに示されるその等価回路モデルに基づいている。このモデルにおいて、全てのパラメータは、走査角度と波の偏波の関数である。式(2)及び(3)は、伝送線路インピーダンスが走査角及び偏波の関数としてどのように変化するかを示している(η0はブロードサイドでの自由空間インピーダンス)。これらの式はまた、自由空間においても有効である。
【数2】
【数3】
【0026】
式(4)及び(5)は、直交偏波に対して走査角度の関数としてキャパシタンスがどのように変化するかを示している。C0はブロードサイドでのキャパシタンスである。
【数4】
【数5】
【0027】
誘電体基板の特性は予め定められているとすると、設計上の重要なパラメータは、発泡体の厚みとキャパシタンス値C0である。これらの値は、全走査及び横方向電気(TE)、横方向磁気(TM)両偏波で所望のインピーダンス整合をこの設計が提供するように定義される。他のどのような偏波もこれら2つの直交偏波に分解できるので、これは一般的な解決策である。
【0028】
次に、等価回路モデルで選択されたパラメータが物理パラメータにマッピングされる。hは、単に誘電体スペーサ(例えば、発泡体、誘電積層体、ポリエステル、ポリカーボネート、ガラス、ハニカムスペーサ等)の厚さである点に留意されたい。キャパシタンスは、式(1)を用いてパッチの寸法と周期性にマッピングされる。
【0029】
一実施形態では、単層WAIM構造は、接着剤を用いて誘電体スペーサに取り付けられることに留意されたい。一実施形態では、誘電体スペーサは、接着剤を使用してアンテナアパーチャに取り付けられる。一実施形態では、誘電体層の高さは60milである。代替的に、誘電体層は、他のサイズ(例えば、1.5mm)であってもよい。代替的な実施形態では、単層WAIM構造、誘電体層及びアンテナ層は、一緒に取り付けられず、互いに接触している。このような場合、他のアンテナ構成要素(例えば、レードーム)が、これらの構成要素を所定の位置に保持する。
【0030】
一実施形態では、単層WAIMは、誘電体層の上に作製される。一実施形態では、単層WAIMは、誘電体層の上にスクリーン印刷される。これにより、2つの層が1つの層に減少する。
【0031】
本明細書に開示されるWAIM構造の実施形態に関連する多くの利点が存在する。例えば、上述したように、提案された設計は、位置/回転位置合わせを必要としない。図2A~2Cは、様々な位置合わせを用いたアパーチャへのWAIMの代替的な設置を示している。この場合、これらの実施形態の各々のWAIM構造は、同じサイズである正方形容量性パッチを含む。
【0032】
図2Aを参照すると、単層WAIM構造201は、アンテナ素子202を有するアパーチャ上の容量性パッチ203の2Dアレイを備える。2Dアレイのパッチ203は、水平方向及び垂直方向に整列したアレイを横切ってパターン化された正方形である。図2Bを参照すると、単層WAIM構造211は、アンテナ素子212を有するアパーチャ上に容量性パッチ213の2Dアレイを備える。図2Bの2Dアレイは、22.5度回転していることを除いて、図2Aのものと同じである。図2Cを参照すると、単層WAIM構造221は、アンテナ素子222を有するアパーチャ上に容量性パッチ223の2Dアレイを備える。図2Cの2Dアレイは、45度(図2Bの2Dアレイに対して22.5度)回転している以外は、図2Aのアレイと同じである。
【0033】
また、議論したように、異なるパッチ幅及び周期性を有する容量性パッチの2Dアレイを使用して同じ性能を達成することができる。図2D~2Fは、様々な特徴寸法を使用して同じ性能を達成する単層WAIM構造の例を示す図である。図2Dを参照すると、単層WAIM構造231は、アンテナ素子232を有するアパーチャ上の容量性パッチ233の2Dアレイを備える。2Dアレイのパッチ233は、正方形であり、水平方向及び垂直方向に整列したアレイにわたってパターン化されている。図2Eを参照すると、単層WAIM構造241は、アンテナ素子242を有するアパーチャ上に容量性パッチ243の2Dアレイを備える。しかしながら、図2Eの2Dアレイのパッチのサイズは、図2Aのパッチよりも小さい。図2Fを参照すると、単層WAIM構造251は、アンテナ素子252を有するアパーチャ上に容量性パッチ253の2Dアレイを備える。この場合、図2Fの2Dアレイのパッチのサイズは、図2Eのパッチよりも小さい(従って、図2Dのパッチよりも小さい。
【0034】
一実施形態では、容量性パッチは、基板(例えば、プリント回路基板(PCB)(例えば、FR4など)、ポリカーボネート、ガラスなど)上の金属(例えば、銅、銀など)である。一実施形態では、パッチをスクリーン印刷する場合、基材はポリエステルを含む。パッチは、様々な厚さとすることができる。一実施形態では、パッチの厚さは、17um、35umなどである。一実施形態では、正方形のパッチの各々は、200mil×200milである。しかしながら、上述したように、他のサイズを使用することができる(例えば、250mil×250milなど)。
【0035】
本明細書に開示されるWAIMの実施形態は、アンテナアパーチャと自由空間との間に適切なインピーダンス整合を提供することによって放射効率を向上させる。放射効率の改善は、アンテナ利得の改善をもたらす。図3は、例示的なアンテナアパーチャにおけるブロードサイド及びTE面(H-pol)での60degの利得測定を示す。図3を参照すると、3つのサブバンドでの試験結果が示されている。破線は、WAIM構造なしでの測定を示し、実線はWAIM構造を取り付けた場合の利得を示している。ブロードサイドと走査の両方でWAIM構造が設置された場合、大幅な改善が観察された。利得の改善がブロードサイドよりも大きいので、走査ロスも大きく改善されている。
【0036】
図4は、単層WAIM構造を設計するためのプロセスの一実施形態を示すフロー図である。図4を参照すると、プロセスは、様々な走査角度及び偏波に対するアンテナアパーチャインピーダンスを決定することによって始まる(処理ブロック401)。一実施形態では、これは、解析的及び全波フローケモデルシミュレーションを使用して実行され、全てのアンテナ素子(例えば、アパーチャ上の全ての受信及び送信放射素子)、走査角度及び偏波を含む入力を使用して実行される(410)。
【0037】
様々な走査角度及び偏波に対するアンテナアパーチャインピーダンスが決定されると、処理ロジック(processing logic)は、パラメータ値をWAIM等価回路モデルに入力する(処理ブロック402)。一実施形態では、モデルへの入力は、解析的ABCD-行列計算を実行した結果を含む(411)。出力は、回路モデル電気パラメータである。一実施形態では、これらの出力は、等価回路モデルにおける伝送線路の長さ及びキャパシタンス値を含む。
【0038】
次に、処理ロジックは、電気的パラメータを物理的パラメータにマッピングする(処理ブロック403)。一実施形態では、これは、当該技術分野で周知の方法で、一次近似式又は全波シミュレーションを使用して行われる(412)。マッピングが完了すると、処理ロジックは、設計に対して全波アパーチャシミュレーションを実行する(処理ブロック404)。
【0039】
複数の代替の実施形態が存在する。例えば、本明細書に開示されるWAIM構造は、サブ波長放射素子のアレイを有する何れかのアンテナアパーチャと共に使用することができる。更に、同じ素子幾何形状をインピーダンス整合ネットワークとして複数の層を有するWAIM構造に拡張することができる。
【0040】
また、上述したように、容量性表面は、様々なサブ波長素子の2次元アレイを用いて実装することができる。図5A~5Cは、代替構成を有するWAIM構造の例を示す図である。図5Aを参照すると、単層WAIM構造500は、正方形の容量性パッチ501の2Dパターンを含む。図5Bを参照すると、単層WAIM構造510は、六角形の容量性パッチ511の2Dパターンを含む。図5Cを参照すると、単層WAIM構造520は、スプリットリング共振器(SSR)521の2Dパターンを含む。他の形状の容量性素子も使用することができる。
【0041】
アンテナシステムの実施例
1つの実施形態において、平面アンテナは、メタマテリアルアンテナシステムの一部である。通信衛星地上局のメタマテリアルアンテナシステムの実施形態について説明する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、民間商用衛星通信のためのKa帯域周波数又はKu帯域周波数の何れかを用いて動作するモバイルプラットフォーム(例えば、航空、海上、陸上など)上で動作する衛星地上局(ES)の構成要素又はサブシステムである。アンテナシステムの実施形態は、モバイルプラットフォーム上ではない地上局(例えば、固定又は可搬型地上局)でも用いることができる点に留意されたい。
【0042】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、表面散乱メタマテリアル技術を用いて、別個のアンテナを介した送信及び受信ビームを形成しステアリングする。
【0043】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、3つの機能的サブシステム、すなわち(1)円筒波給電アーキテクチャから構成される導波構造、(2)アンテナ素子の一部である波散乱メタマテリアル単セルのアレイ、及び(3)ホログラフィック原理を用いたメタマテリアル散乱素子から調節可能な放射場(ビーム)の形成を命令する制御構造から構成される。
【0044】
アンテナ素子
図6は、円筒状給電ホログラフィック半径アパーチャアンテナ(cylindrically fed holographic radial aperture antenna)の1つの実施形態の概略図である。図6を参照すると、アンテナアパーチャは、円筒状給電アンテナの入力給電602の周りに同心リング状に配置されたアンテナ素子603の1又は2以上のアレイ601を有する。1つの実施形態では、アンテナ素子603は、RFエネルギーを放射する無線周波数(RF)共振器である。1つの実施形態では、アンテナ素子603は、アンテナアパーチャの表面全体にインターリーブされ分布されたRx及びTxアイリスの両方を含む。このようなアンテナ素子の例について、以下で詳細に記載される。本明細書に記載されるRF共振器は、円筒状給電を含まないアンテナにも用いることができる点に留意されたい。
【0045】
1つの実施形態では、アンテナは、入力給電602を介して円筒波給電(cylindrical wave feed)を提供するのに用いられる同軸給電を含む。1つの実施形態では、円筒波給電アーキテクチャは給電ポイントから円筒状に外向きに拡がる励起(excitation)を中心ポイントからアンテナに給電する。すなわち、円筒状給電アンテナは、外向きに進む同心給電波を生成する。それでも、円筒状給電の周りの円筒状給電アンテナの形状は、円形、正方形、又は何らかの形状とすることができる。別の実施形態では、円筒状給電アンテナは、内向きに進む給電波を生成する。このような場合、給電波は円形構造から生じるのが最も自然である。
【0046】
1つの実施形態では、アンテナ素子603はアイリスを含み、図6のアパーチャアンテナは、可変波長液晶(LC)材料を介してアイリスに放射する円筒状給電波からの励起を用いることによって形成される主ビームを生成するのに用いられる。1つの実施形態では、アンテナを励起して、所望の走査角度の水平又は垂直分極電界を放射することができる。
【0047】
1つの実施形態では、アンテナ素子は、1つのグループのパッチアンテナを含む。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを含む。1つの実施形態では、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体、誘電体基板、及び上部導体からなる単セルの一部であり、上部導体は、上部導体にエッチング加工され又は堆積される相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んでいる。当業者であれば理解されるであろうが、CELCの関連におけるLCは、液晶とは異なり、インダクタンス・キャパシタンスを意味する。
【0048】
1つの実施形態において、液晶(LC)は、散乱素子の周りのギャップに配置される。このLCは、上述の直接駆動の実施形態によって駆動される。1つの実施形態において、液晶は、各単セルに封入されて、スロットに関連する下部導体をスロットのパッチに関連する上部導体から分離する。液晶は、液晶を構成する分子の配向の関数である誘電率を有し、分子の配向(従って、誘電率)は、液晶の両端のバイアス電圧を調整することによって制御することができる。1つの実施形態において、液晶は、この特性を利用して、誘導波からCELCへのエネルギー伝達のためにオン/オフスイッチを組み込む。スイッチオンになると、CELCは、電気的に小さなダイポールアンテナのように電磁波を放射する。本明細書における教示は、エネルギー伝達に関して2値的に動作する液晶を有することに限定されるものではない。
【0049】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの給電幾何形状は、アンテナ素子を給電波における波ベクトルに対して45度(45°)の角度に位置決めすることを可能にする。他の位置(例えば、40°)を利用できる点に留意されたい。この素子の位置により、素子が受け取った又は素子から送信/放射される自由空間波の制御が可能となる。1つの実施形態において、アンテナ素子は、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも小さい素子間隔で配列される。例えば、1波長当たりに4つの散乱素子が存在する場合には、30GHzの送信アンテナにおける素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の1/4)である。
【0050】
1つの実施形態において、素子の2つのセットは、互いに垂直であり、同じ同調状態に制御された場合に等しい振幅の励起を同時に有する。これら素子のセットを給電波励起に対して+/-45度回転させると、両方の所望の特徴を同時に達成する。一方のセットを0度回転させ、他方を90度回転させると、直交の目標は達成されるが、等振幅励起の目標は達成されないことになる。0度及び90度は、単一の構造でのアンテナ素子のアレイが2つの側から給電されるときに、分離を達成するのに使用できることに留意されたい。
【0051】
各単セルからの放射出力の量は、コントローラを使用してパッチに電圧(LCチャネルの両端の電位)を印加することによって制御される。各パッチへのトレースは、パッチアンテナに電圧を供給するのに使用される。この電圧は、キャパシタンス及びひいては個々の素子の共振周波数を同調又は離調させて、ビームフォーミングを実現するのに使用される。必要な電圧は、使用される液晶混合物に依存する。液晶混合物の電圧同調特性は、液晶が電圧の影響を受け始める閾値電圧と、それ以上に電圧を高めても液晶での大きな同調が生じなくなる飽和電圧とによって、主として説明される。これらの2つの特性パラメータは、異なる液晶混合物については変化することができる。
【0052】
1つの実施形態において、上記で検討したように、マトリクス駆動回路(matrix drive)は、セルごとに別個の接続(直接駆動)を有することなく各セルを他の全てのセルとは別個に駆動するために、パッチに電圧を印加するのに使用される。素子の密度が高いので、マトリクス駆動回路は、各セルを個別にアドレス指定する効率的な方法である。
【0053】
1つの実施形態において、アンテナシステム用の制御構造は、2つの主要コンポーネントを含み、アンテナシステム用のアンテナアレイコントローラ(駆動電子機器を含む)は、波散乱構造の下方に存在し、マトリクス駆動スイッチングアレイは、放射を妨害しないように、放射RFアレイ全体にわたって散在する。1つの実施形態において、アンテナシステム用の駆動電子機器は、各散乱素子へのACバイアス信号の振幅又はデューティサイクルを調整することによって、この素子に対するバイアス電圧を調整し、商用テレビジョン機器で使用される商用既製LCD制御装置を含む。
【0054】
1つの実施形態において、アンテナアレイコントローラはまた、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサを含有する。制御構造はまた、プロセッサに位置及び向き情報を提供するセンサ(例えば、GPS受信機、3軸コンパス、3軸加速度計、3軸ジャイロ、3軸磁力計など)を組み込むこともできる。位置及び向き情報は、地上局内の他のシステムによってプロセッサに提供することができ、及び/又はアンテナシステムの一部でないものとすることができる。
【0055】
より具体的には、アンテナアレイコントローラは、動作周波数においてどの位相レベル及び振幅レベルで、どの素子をオフにしてオンにするかを制御する。これらの素子は、電圧の印加によって周波数動作に対して選択的に離調される。
【0056】
送信については、コントローラが、RFパッチに電圧信号のアレイを供給し、変調又は制御パターンを生成する。制御パターンにより、素子が異なる状態に変化する。1つの実施形態において、多状態制御が使用され、この多状態制御では、様々な素子が異なるレベルにオン及びオフされ、矩形波(すなわち、正弦波グレイシェード変調パターン)ではなく、正弦波制御パターンに更に近づく。1つの実施形態において、一部の素子が放射し、一部の素子が放射しないのではなく、一部の素子が他の素子よりも強力に放射する。可変放射は、特定の電圧レベルを印加することによって達成され、これにより液晶誘電率を様々な量に調整し、素子を可変的に離調させて一部の素子に他の素子よりも多く放射させるようにする。
【0057】
メタマテリアル素子アレイによる集束ビームの生成は、増加的干渉及び減殺的干渉の現象よって説明することができる。個々の電磁波は、これらの電磁波が自由空間で交わったときに同相を有する場合には合算(増加的干渉)され、これらの電磁波が自由空間で交わった場合に、これらの電磁波が逆位相にある場合には、電磁波は互いに打ち消し合う(減殺的干渉)。スロット式アンテナにおけるスロットが、各連続するスロットが誘導波の励起点から異なる距離に位置するように位置決めされた場合には、この素子からの散乱波は、前のスロットの散乱波と異なる位相を有するようになる。スロットが、誘導波長の4分の1の間隔を置いて配置される場合には、各スロットは、前のスロットから4分の1位相遅延を有して波を散乱させることになる。
【0058】
アレイを使用すると、生成できる増加的干渉及び減殺的干渉のパターン数を増加させることができるので、理論的には、ホログラフィの原理を使用して、アンテナアレイのボアサイトからプラスマイナス90度(90°)のあらゆる方向にビームを向けることができるようになる。このように、どのメタマテリアル単セルをオンにするか又はオフにするかを制御することによって(すなわち、どのセルをオンにし、どのセルをオフにするかについてのパターンを変更することによって)、異なる増加的干渉及び減殺的干渉パターンを生成でき、アンテナは、メインビームの方向を変えることができる。単セルをオン及びオフにするのに必要な時間は、ビームが1つの位置から別の位置に切り替わることができる速度を決定付ける。
【0059】
1つの実施形態において、アンテナシステムは、アップリンクアンテナ用の1つの誘導可能なビーム(steerable beam)と、ダウンリンクアンテナの用の1つの誘導可能なビームとを生成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、メタマテリアル技術を使用して、ビームを受信し、衛星からの信号を復号し、及び衛星に向けられる送信ビームを形成する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、デジタル信号処理を使用してビームを電気的に形成し誘導するアンテナシステム(フェーズドアレイアンテナなど)とは対照的に、アナログシステムである。1つの実施形態において、アンテナシステムは、特に、従来のディッシュ型衛星受信機と比較したときに、平面で比較的薄型である「表面」アンテナとみなされる。
【0060】
図7は、グランドプレーン及び再構成可能共振器層を含むアンテナ素子の1つの行の斜視図を示している。再構成可能共振器層(reconfigurable resonator layer)1230は、可変波長スロット(tunable slots)1210のアレイを含む。可変波長スロット1210のアレイは、アンテナを所望の方向に向けるように構成することができる。可変波長スロットの各々は、液晶の両端の電圧を変化させることによって同調/調整することができる。
【0061】
制御モジュール1280は、再構成可能共振器層1230に結合され、図8Aにおける液晶の両端の電圧を変化させることによって可変波長スロット1210のアレイを変調する。制御モジュール1280は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、マイクロプロセッサ、コントローラ、システムオンチップ(SoC)、又は他の処理論理回路を含むことができる。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、可変波長スロット1210のアレイを駆動するための論理回路(例えば、マルチプレクサ)を含む。1つの実施形態において、制御モジュール1280は、可変波長スロット1210のアレイ上に駆動されるホログラフィック回折パターンに関する仕様を含むデータを受け取る。ホログラフィック回折パターンは、アンテナと衛星との間の空間関係に応答して生成され、ホログラフィック回折パターンが、ダウンリンクビーム(及びアンテナシステムが送信を行う場合には、アップリンクビーム)を通信に好適な方向に誘導することができる。各図には図示されていないが、制御モジュール1280と同様の制御モジュールは、本開示の図に記載された可変波長スロットの各アレイを駆動することができる。
【0062】
無線周波数(「RF」)ホログラフィもまた、RF基準ビームがRFホログラフィック回折パターンに遭遇したときに、所望のRFビームを生成できる類似の技術を使用して実施可能である。衛星通信の場合には、基準ビームは、給電波1205などの給電波の形態である(幾つかの実施形態において、約20GHz)。給電波を放射ビームに変換するために(送信又は受信の何れかの目的で)、所望のRFビーム(目標ビーム)と給電波(基準ビーム)との間の干渉パターンが計算される。干渉パターンは、給電波が、所望のRFビーム(所望の形状及び方向を有する)に「ステアリング(steering)」されるように、可変波長共振器/スロット1210のアレイ上に回折パターンとして駆動される。言い換えると、ホログラフィック回折パターンに遭遇した給電波は、通信システムの設計要件に従って形成される目標ビームを「再構成する(reconstructs)」。ホログラフィック回折パターンは、各素子の励起を包含し、Winを導波路における波動方程式として、Woutを射出波(outgoing wave)上の波動方程式として、次式によって計算される。
【数6】
【0063】
図8Aは、可変波長共振器/スロット1210の1つの実施形態を示している。可変波長共振器/スロット1210は、アイリス/スロット1212、放射パッチ1211、及びアイリス1212とパッチ1211との間に配置された液晶1213を含む。1つの実施形態において、放射パッチ1211は、アイリス1212と同じ場所に配置される。
【0064】
図8Bは、物理的アンテナアパーチャの1つの実施形態の断面図を示している。アンテナアパーチャは、グランドプレーン1245と、再構成可能共振器層1230に含まれるアイリス層1233内の金属層1236とを含む。1つの実施形態において、図8Bのアンテナアパーチャは、図8Aの複数の可変波長共振器/スロット1210を含む。アイリス/スロット1212は、金属層1236の開口部(openings)によって定められる。図7の給電波1205などの給電波は、衛星通信チャネルに適合するマイクロ波周波数を有することができる。給電波は、グランドプレーン1245と共振器層1230との間を伝播する。
【0065】
再構成可能共振器層1230はまた、ガスケット層1233及びパッチ層1231を含む。ガスケット層1233は、パッチ層1231及びアイリス層1232の間に配置される。1つの実施形態において、スペーサは、ガスケット層1233と置き換えることができることに留意されたい。1つの実施形態において、アイリス層1232は、金属層1236として銅層を含むプリント回路基板(「PCB」)である。1つの実施形態において、アイリス層1232はガラスである。アイリス層1232は、他のタイプの基板とすることができる。
【0066】
開口部は、銅層内でエッチングされて、アイリス/スロット1212を形成する。1つの実施形態において、アイリス層1232は、導電性接合層によって、図8Bにおける別の構造(例えば、導波路)に導電的に結合される。1つの実施形態において、アイリス層は、導電性接合層によって導電的に結合されるものではなく、その代わりに、非導電性接合層と相互連結することに留意されたい。
【0067】
また、パッチ層1231は、放射パッチ1211として金属を含むPCBとすることができる。1つの実施形態において、ガスケット層1233は、金属層1236とパッチ1211との間の寸法を定める機械的離隔部をもたらすスペーサ1239を含む。1つの実施形態において、スペーサは75ミクロンであるが、他のサイズ(例えば3~200mm)が使用できる。上述したように、1つの実施形態において、図8Bのアンテナアパーチャは、図8Aのパッチ1211、液晶1213、及びアイリス1212を含む可変波長共振器/スロット1210などの複数の可変波長共振器/スロットを備える。液晶1213用のチャンバは、スペーサ1239、アイリス層1232、及び金属層1236によって定められる。チャンバが、液晶で充填された場合には、パッチ層1231は、スペーサ1239上に積層されて、共振器層1230内に液晶をシールすることができる。
【0068】
パッチ層1231とアイリス層1232との間の電圧は、パッチとスロット(例えば、可変波長共振器/スロット1210)との間のギャップ内の液晶を同調するように変調することができる。液晶1213の両端の電圧を調整すると、スロット(例えば、可変波長共振器/スロット1210)のキャパシタンスが変化する。従って、スロット(例えば、可変波長共振器/スロット1210)のリアクタンスは、キャパシタンスを変化させることによって変えることができる。また、可変波長共振器/スロット1210の共振周波数は、次式:
【数7】
に従って変化し、ここで、fは、スロット1210の共振周波数であり、L及びCは、それぞれ、スロット1210のインダクタンス及びキャパシタンスである。スロット1210の共振周波数は、導波路を通って伝播する給電波1205から放射されるエネルギーに影響を与える。一例として、給電波1205が20GHzである場合には、スロット1210の共振周波数は、17GHzに調整(キャパシタンスを調整することによって)されて、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを実質的に結合しないようにすることができる。或いは、スロット1210の共振周波数は、20GHzに調整されて、スロット1210が、給電波1205からのエネルギーを結合し、このエネルギーを自由空間に放射するようにすることができる。所与の実施例は、2値的(完全に放射するか、又は全く放射しない)であるが、リアクタンス及びひいてはスロット1210の共振周波数の完全なグレースケール制御は、多値範囲にわたる電圧変化を用いて実施可能である。従って、各可変波長共振器/ススロット1210から放射されるエネルギーを精密に制御して、可変波長スロット(例えば、可変波長共振器/スロット)のアレイによって詳細なホログラフィック回折パターンを形成できるようになる。
【0069】
1つの実施形態において、行における可変波長スロットは、互いにλ/5だけ離間して配置される。他の間隔を使用することもできる。1つの実施形態において、行における各可変波長スロットは、隣接する行における最も近い可変波長スロットからλ/2だけ離間して配置され、従って、異なる行における共通して配向された可変波長スロットは、λ/4だけ離間して配置されるが、他の間隔(例えば、λ/5、λ/6.3)も可能である。別の実施形態において、行における各可変波長スロットは、隣接する行における最も近い可変波長スロットからλ/3だけ離間して配置される。
【0070】
本発明の実施形態は、2014年11月21日に出願された「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna」という名称の米国特許出願14/550,178号、及び2015年1月30日に出願された「Ridged Waveguide Feed Structures for Reconfigurable Antenna」という名称の米国特許出願第14/610,502号に記載されているような再構成可能なメタマテリアル技術を使用する。
【0071】
図9A-Dは、スロット付きアレイを形成する様々な層の1つの実施形態を示している。アンテナアレイは、図6に示されている例示的なリングのようなリング状に位置決めされたアンテナ素子を含む。この実施例では、アンテナアレイは、2つの異なるタイプの周波数帯域に使用される2つの異なるタイプのアンテナ素子を有することに留意されたい。
【0072】
図9Aは、スロットに対応する位置を有する第1のアイリス基板層の一部を示している。図9Aを参照すると、円は、アイリス基板の底部側におけるメタライゼーション内の空き領域/スロットであり、給電部(給電波)への素子の結合を制御するためのものである。この層は、任意選択の層であり、全ての設計で使用される訳ではない点に留意されたい。図9Bは、スロットを含む第2のアイリス基板層の一部を示している。図9Cは、第2のアイリス基板層の一部を覆うパッチを示している。図9Dは、スロット付きアレイの一部の上面図を示している。
【0073】
図10は、円筒状給電アンテナ構造の1つの実施形態の側面図を示している。アンテナは、二重層給電構造(すなわち、2つの層の給電構造)を使用して内向き進行波(inwardly travelling wave)を生成する。1つの実施形態において、アンテナは、円形の外形を含むが、このことは必須ではない。すなわち、非円形の内向きの進行構造を用いることができる。1つの実施形態では、図10のアンテナ構造は、例えば、2014年11月21日に出願された「Dynamic Polarization and Coupling Control from a Steerable Cylindrically Fed Holographic Antenna」という名称の米国公開第2015/0236412号に記載されるような同軸給電を含む。
【0074】
図10を参照すると、同軸ピン1601は、アンテナの下側レベルで場を励起するのに使用される。1つの実施形態において、同軸ピン1601は、容易に入手できる50Ω同軸ピンである。同軸ピン1601は、導電性グランドプレーン1602であるアンテナ構造の底部に結合(例えば、ボルト締め(bolted))される。
【0075】
内部導体である間隙導体(interstitial conductor)1603は、導電性グランドプレーン1602から離隔される。1つの実施形態において、導電性グランドプレーン1602及び間隙導体1603は互いに平行である。1つの実施形態において、グランドプレーン1602と間隙導体1603との間の距離は、0.1インチ~0.15インチである。別の実施形態において、この距離はλ/2とすることができ、ここでλは、動作周波数での進行波の波長である。
【0076】
グランドプレーン1602は、スペーサ1604を介して間隙導体1603から離隔される。1つの実施形態において、スペーサ1604は、発泡体又は空気状スペーサである。1つの実施形態において、スペーサ1604は、プラスチックスペーサを含む。
【0077】
間隙導体1603の上部には、誘電体層1605がある。1つの実施形態において、誘電体層1605はプラスチックである。誘電体層1605の目的は、自由空間速度に対して進行波を減速することである。1つの実施形態において、誘電体層1605は、自由空間に対して30%進行波を減速する。1つの実施形態において、ビームフォーミングに好適な屈折率の範囲は、1.2~1.8であり、自由空間は、定義上、1に等しい屈折率を有する。例えば、プラスチックなどの他の誘電スペーサ材料を用いて、この効果を達成することができる。所望の波動減速効果を達成する限り、プラスチック以外の材料を使用できる点に留意されたい。或いは、誘電体層1605として、例えば機械加工又はリソグラフィにより定めることができる周期的サブ波長金属構造などの分散構造を有する材料を使用することができる。
【0078】
RFアレイ1606は誘電体層1605の上部にある。1つの実施形態において、間隙導体1603とRFアレイ1606との間の距離は、0.1~0.15インチである。別の実施形態において、この距離はλeff/2とすることができ、ここでλeffは設計周波数での媒体中の有効波長である。
【0079】
アンテナは、側面1607及び1608を含む。側面1607及び1608は、同軸ピン1601からの進行波給電が反射によって間隙導体1603の下方の領域(スペーサ層)から間隙導体1603の上方の領域(誘電体層)に伝播するような角度が付けられる。1つの実施形態において、側面1607及び1608の角度は45度の角度である。代替の実施形態において、側面1607及び1608は、反射を達成するために連続した半径に置き換えることができる。図10は、45度の角度を有する角度付き側部を示しているが、下部給電レベルから上部給電レベルへの信号伝播を達成する他の角度を使用することができる。すなわち、下部給電の有効波長が、上部給電の有効波長とは一般的に異なることを考慮すると、理想的な45度の角度からの何らかの偏差を使用して、下部給電レベルから上部給電レベルへの伝送を助けることができる。例えば、別の実施形態において、45度の角度は、単一の段部に置き換えられる。アンテナの一端上の段部は、誘電体層、間隙導体、及びスペーサ層を一周する。同じ2つの段部が、これらの層の他方の端部に存在する。
【0080】
動作中、給電波が同軸ピン1601から供給されると、この給電波は、グランドプレーン1602と間隙導体1603との間の領域で同軸ピン1601から同心円状に外向きに進む。同心円状射出波は、側部1607及び1608により反射され、間隙導体1603とRFアレイ1606との間の領域で内向きに進む。円形外周の縁部(エッジ)からの反射は、この波を同相に留まらせる(すなわち、この反射は、同相反射である)。進行波は、誘電体層1605によって減速する。この時点で、進行波は、RFアレイ1606の素子との相互作用及び励起を開始して、所望の散乱を取得する。
【0081】
進行波を終了させるため、アンテナの幾何学的中心で終端部1609がアンテナに含まれる。1つの実施形態において、終端部1609は、ピン終端(例えば、50Ωピン)を含む。別の実施形態において、終端部1609は、未使用エネルギーを終端させて、アンテナの給電構造を通る当該未使用エネルギーが反射して戻るのを阻止するRF吸収体を含む。これらは、RFアレイ1606の上部で使用することができる。
【0082】
図11は、アンテナシステムの別の実施形態を射出波と共に示している。図11を参照すると、2つのグランドプレーン1610、1611は、互いに実質的に平行であり、グランドプレーンの間に誘電体層1612(例えば、プラスチック層など)を有している。RF吸収体1619(例えば、抵抗器)は、2つのグランドプレーン1610及び1611を共に結合する。同軸ピン1615(例えば、50Ω)は、アンテナに給電する。RFアレイ1616は、誘電体層1612及びグランドプレーン1610の上部に存在する。
【0083】
作動時には、給電波は。同軸ピン1615を介して給電され、同心状外向きに進んでRFアレイ1616の素子と相互作用する。
【0084】
図10及び11の両方のアンテナにおける円筒状給電は、アンテナのサービス角度を改善する。1つの実施形態において、アンテナシステムは、プラスマイナス45度の方位角(±45°Az)及びプラスマイナス25度の仰角(±25°El)からなるサービス角度の代わりに、全方向でボアサイトから75度(75°)のサービス角度を有する。多数の個々の放射体から構成された何らかのビームフォーミングアンテナと同様に、全体のアンテナ利得は、それ自体が角度に依存するものである構成素子の利得に依存する。一般的な放射素子が使用される場合には、全体のアンテナ利得は、典型的には、ビームがボアサイトから離れて向けられるにつれて減少する。ボアサイトから75度外れたところでは、約6dBの有意な利得低下が予期される。
【0085】
円筒状給電部を有するアンテナの実施形態は、1又は2以上の問題を解決する。これらは、共通分割器ネットワークを用いて給電されるアンテナと比較して給電構造を飛躍的に簡素化し、及びひいては全体で必要とされるアンテナ及びアンテナ給電量を低減するステップと、より粗い制御(全てを単純なバイナリ制御にまで拡張すること)で高ビーム性能を維持することによって製造及び制御誤差に対する感度を低下させるステップと、円筒状に配向された給電波が遠距離場において空間的に多様なサイドローブをもたらすので、直線的給電部と比較してより有利なサイドローブパターンを与えるステップと、偏波器を必要とせずに、左旋円偏波、右旋円偏波及び直線偏波を可能にすることを含めて偏波を動的であることを可能にするステップと、を含む。
【0086】
波散乱素子(Wave Scattering Elements)のアレイ
図10のRFアレイ1606及び図11のRFアレイ1616は、放射体として機能する1つのグループのパッチアンテナ(すなわち、散乱体)を含む波散乱サブシステムを含む。このパッチアンテナのグループは、散乱メタマテリアル素子のアレイを含む。
【0087】
1つの実施形態において、アンテナシステムにおける各散乱素子は、下部導体と、誘電体基板と、相補的電気誘導型容量性共振器(「相補型電気LC」又は「CELC」)を組み込んだ上部導体とからなる単セルの一部であり、相補的電気誘導型容量性共振器は、上部導体にエッチング又は堆積される。
【0088】
1つの実施形態において、液晶(LC)が、散乱素子の周りのギャップに注入される。液晶は各単セルにエンキャプスレートされて更にスロットに関連付けられる下部導体を、パッチに関連付けられる上部導体から分離する。液晶は、液晶を含む分子の配向の関数である誘電率を有し、更に分子の配向(及び従って誘電率)は、液晶両端のバイアス電圧を調節することによって制御することができる。この特性を用いて、液晶は、誘導波からCELCへのエネルギーの伝送のためのオン/オフスイッチとして作用する。スイッチオンされた時に、CELCは、電気的に小さなダイポールアンテナのような電磁波を発生する。
【0089】
LCの厚みを制御することで、ビームスイッチング速度が上昇する。下部導体と上部導体の間のギャップ(液晶の厚み)が50パーセント(50%)低減すると、速度が4倍に増大する。別の実施形態では、液晶の厚みが、約14ミリ秒(14ms)のビームスイッチング速度を結果として生じる。1つの実施形態において、LCが、7ミリ秒(7ms)要件を満たすことができるよう、応答性を改良するために当該技術で公知の方式でドープされる。
【0090】
CELC素子は、CELC素子の平面に平行に且つCELCギャップ補完材に垂直に印加される磁界に応答する。電圧がメタマテリアル散乱単セルの液晶に印加されると、誘導波の磁界成分がCELCの磁気励起を誘起し、その結果、誘導波と同じ周波数の電磁波を生成する。
【0091】
単一のCELCによって生成される電磁波の位相は、誘導波ベクトルのCELCの位置によって選択することができる。各セルは、CELCに平行な誘導波と同相の波を生成する。CELCが波長より小さいので、出力波は、CELCの真下を通過する場合の誘導波の位相と同じ位相を有する。
【0092】
1つの実施形態において、このアンテナシステムの円筒状給電幾何形状が、CELC素子を波給電の波ベクトルに対して45度(45°)角度に位置付けられるようにする。素子のこの位置は、素子から生成されるか又は素子によって受信される自由空間波の偏波の制御を可能にする。1つの実施形態において、CELCは、アンテナの動作周波数の自由空間波長よりも小さい素子間隔で配列される。例えば、1波長当たりに4つの散乱素子がある場合、30GHz送信アンテナの素子は、約2.5mm(すなわち、30GHzの10mm自由空間波長の1/4)になる。
【0093】
1つの実施形態において、CELCは、パッチアンテナ間に液晶を有してスロットの上方に並置されたパッチを含むパッチアンテナで実装される。この点において、メタマテリアルアンテナは、スロット(散乱)導波路のように作用する。スロット導波路に関しては、出力波の位相は、誘導波に対するスロットの位置に依存する。
【0094】
セルの配置(Cell Placement)
1つの実施形態において、アンテナ素子は、系統的マトリクス駆動回路を可能にするように円筒状給電アンテナのアパーチャ上に配置される。セルの配置は、マトリクス駆動用のトランジスタの配置を含む。図12は、アンテナ素子に対するマトリクス駆動回路の配置の1つの実施形態を示している。図12を参照すると、行コントローラ1701は、行選択信号Row1(行1)及びRow2(行2)それぞれを介してトランジスタ1711、1712に結合され、列コントローラ1702は、列選択信号Column1(列1)を介してトランジスタ1711、1712に結合される。また、トランジスタ1711は、パッチへの接続1731を介してアンテナ素子1721に結合され、トランジスタ1712は、パッチへの接続1732を介してアンテナ素子1722に結合される。
【0095】
単セルが非正規グリッド内に配置されて円筒状給電アンテナ上でマトリクス駆動回路を実現する最初の手法では、2つのステップが実行される。第1のステップでは、セルが同心リング上に配置され、セルの各々は、セルの傍らに配置されたトランジスタに接続され、このトランジスタが、各セルを別々に駆動するスイッチとして機能する。第2のステップでは、マトリクス駆動回路は、このマトリクス駆動手法が必要とするときにあらゆるトランジスタを一意のアドレスで接続するように構築される。マトリクス駆動回路は、行と列のトレースによって構築される(LCDと同様)が、セルはリング上に配置されるので、各トランジスタに一意のアドレスを割り当てる系統的方法は存在しない。このマッピング問題は、全てのトランジスタをカバーするために極めて複雑な回路を生じさせ、経路設定を行う物理的トレースの数が著しく増加させることになる。セルが高密度であるので、これらのトレースは、カップリング効果に起因してアンテナのRF性能を妨げる。また、トレースが複雑であり実装密度が高いことに起因して、トレースの経路設定は、商業的に入手可能なレイアウトツールによって行うことができない。
【0096】
1つの実施形態において、マトリクス駆動回路は、セル及びトランジスタが配置される前に事前に定められる。このことは、各々が一意のアドレスを有する全てのセルを駆動するのに必要な最小数のトレースが確保される。この方式は、駆動回路の複雑性を軽減して経路設定を簡素化し、これによってアンテナのRF性能が向上する。
【0097】
より具体的には、1つの手法では、第1のステップにおいて、セルは、各セルの一意のアドレスを表す行及び列から構成された正方形グリッド上に配置される。第2のステップにおいて、セルは、セルのアドレス、及び第1のステップで定められた行及び列への接続性が維持されながら、グループ化されて同心円に変換される。この変換の目的は、セルをリング上に配置するだけでなく、アパーチャ全体にわたってセル間の距離及びリング間の距離を一定に保つことである。この目的を達成するために、セルをグループ化する幾つかの方法が存在する。
【0098】
1つの実施形態において、TFTパッケージは、マトリクス駆動回路における配置及び一意のアドレス指定を可能にするのに使用される。図13は、TFTパッケージの1つの実施形態を示している。図13を参照すると、TFT及び保持キャパシタ1803が、入力ポート及び出力ポートと共に示されている。トレース1801に接続された2つの入力ポートと、トレース1802に接続された2つの出力ポートとがあり、行及び列を使用してTFTを共に接続する。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、90°の角度で交差して、行のトレースと列のトレースとの間の結合が低減され、場合によっては最小となることがある。1つの実施形態において、行のトレース及び列のトレースは、様々な層上に存在する。
【0099】
全二重通信システムの実施例
別の実施形態において、複合アンテナアパーチャは、全二重通信システムで使用される。図14は、同時送信及び受信経路を有する通信システムの別の実施形態のブロック図である。1つの送信経路及び1つの受信経路のみが示されているが、通信システムは、1つよりも多い送信経路及び/又は1つよりも多い受信経路を含むことができる。
【0100】
図14を参照すると、アンテナ1401は、上述のように異なる周波数で同時に送信及び受信するように独立して動作可能な2つの空間的に交互配置されたアンテナアレイを含む。1つの実施形態において、アンテナ1401は、ダイプレクサ1445に結合される。この結合は、1又は2以上の給電ネットワークによるものとすることができる。1つの実施形態において、放射状給電アンテナの場合、ダイプレクサ1445は、2つの信号を組み合わせるものであり、アンテナ1401とダイプレクサ1445の間の接続は、両方の周波数を搬送できる単一の広帯域給電ネットワークである。
【0101】
ダイプレクサ1445は、低ノイズブロックダウンコンバータ(LNB)1427に結合され、このLNBは、当技術分野において周知の方法でノイズフィルタリング機能、ダウンコンバート機能、及び増幅機能を実行する。1つの実施形態において、LNB1427は、室外ユニット(ODU)に存在する。別の実施形態において、LNB1427は、アンテナ装置に組み込まれる。LNB1427は、コンピューティングシステム1440(例えば、コンピュータシステム、モデムなど)に結合されたモデム1460に結合される。
【0102】
モデム1460は、アナログデジタル変換器(ADC)1422を含み、このADCは、LNB1427に結合されて、ダイプレクサ1445から出力された受信信号をデジタル形式に変換する。デジタル形式に変換されると、信号は、復調器1423によって復調されて、復号器1424によって復号されて、受信波上の符号化されたデータが得られる。次に、復号されたデータは、コントローラ1425に送られ、このコントローラが、このデータをコンピューティングシステム1440に送る。
【0103】
モデム1460は更に、コンピューティングシステム1440から送信されたデータを符号化するエンコーダ1430を含む。符号化されたデータは、変調器1431によって変調され、次に、デジタルアナログ変換器(DAC)1432によってアナログに変換される。次に、アナログ信号は、BUC(アップコンバート及び高域増幅器)1433によってフィルタリングされて、ダイプレクサ1445の1つのポートに供給される。1つの実施形態において、BUC1433は、室外ユニット(ODU)に存在する。
【0104】
当技術分野において周知の方法で動作するダイプレクサ1445は、伝送のため送信信号をアンテナ1401に供給する。
【0105】
コントローラ1450は、単一の複合物理的アパーチャ上のアンテナ素子の2つのアレイを含むアンテナ1401を制御する。
【0106】
通信システムは、上述のコンバイナ/アービタを含むよう修正されることになる。このような場合、コンバイナ/アービタは、モデムの後で且つBUC及びLNBの前にある。
【0107】
図14に示された全二重通信システムは、限定ではないが、インターネット通信、車両通信(ソフトウェアアップデートを含む)などを含む幾つかの用途を有する点に留意されたい。
【0108】
本明細書に記載する幾つかの例示的な実施形態が存在する。
【0109】
実施例1は、アンテナであって、無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するアパーチャと、アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供するために、アパーチャに結合された単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、を備える、アンテナである。
【0110】
実施例2は、単層WAIM構造が、サブ波長素子の2次元(2D)アレイを有する容量性インピーダンス表面を含むことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0111】
実施例3は、サブ波長素子が容量性パッチの2Dアレイを含むことを任意選択的に含むことができる実施例2のアンテナである。
【0112】
実施例4は、容量性パッチが正方形パッチ(square-shaped patches)であることを任意選択的に含むことができる実施例3のアンテナである。
【0113】
実施例5は、容量性パッチが六角形パッチ(hexagonal-shaped patches)であることを任意選択的に含むことができる実施例3のアンテナである。
【0114】
実施例6は、サブ波長素子が分割リング共振器(split-ring resonators)又はダイポールであることを任意選択的に含むことができる実施例2のアンテナである。
【0115】
実施例7は、単層WAIM構造は基板を含み、単層WAIM構造のサブ波長素子が、基板上にスクリーン印刷されている(screen printed)ことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0116】
実施例8は、単層WAIM構造が少なくとも誘電体スペーサによってアパーチャから分離されていることを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0117】
実施例9は、単層WAIM構造のインピーダンスが特徴及び周囲媒体の物理的寸法に基づいていることを任意選択的に含むことができる実施例8のアンテナである。
【0118】
実施例10は、単層WAIM構造のインピーダンスが、走査角度と伝搬波の偏波の関数であり、アンテナの走査平面から独立していることを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0119】
実施例11は、単層WAIM構造は回転対称性を有することを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0120】
実施例12は、アパーチャはメタサーフェスを含むことを任意選択的に含むことができる実施例1のアンテナである。
【0121】
例13は、アンテナであって、無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するメタサーフェスと、アパーチャに結合されて、アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供する単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、を備え、単層WAIM構造が、サブ波長素子の2次元(2D)アレイを有する容量性インピーダンス表面を有する、アンテナである。
【0122】
例14は、サブ波長素子が、容量性パッチの2Dアレイを含むことを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0123】
実施例15は、容量性パッチが、正方形パッチ又は六角形パッチであることを任意選択的に含むことができる実施例14のアンテナである。
【0124】
実施例16は、サブ波長素子が、分割リング共振器又はダイポールであることを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0125】
実施例17は、単層WAIM構造が基板を含み、単層WAIM構造のサブ波長素子が、基板上にスクリーン印刷されていることを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0126】
実施例18は、単層WAIM構造が少なくとも誘電体スペーサによってアパーチャから分離されていることを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0127】
実施例19は、単層WAIM構造のインピーダンスが、特徴及び周囲媒体の物理的寸法に基づいていることを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0128】
実施例20は、単層WAIM構造のインピーダンスが、走査角度及び伝搬波の偏波の関数であり、アンテナの走査平面に依存しないことを任意選択的に含むことができる実施例13のアンテナである。
【0129】
例21は、アンテナであって、無線周波数(RF)エネルギーを放射するように動作可能な複数のアンテナ素子を有するメタサーフェスと、メタサーフェスに結合された誘電体層と、誘電体層に結合されて、アンテナアパーチャと自由空間との間のインピーダンス整合を提供する単層広角インピーダンス整合(WAIM)構造と、を備え、単層WAIM構造が、容量性素子の2次元(2D)アレイがスクリーン印刷された基板を含む、アンテナである。
【0130】
以上の詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する演算のアルゴリズム及び記号表現の観点で提示されている。これらのアルゴリズム的記述及び表現は、データ処理技術分野の当業者により、自らの作業の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される手段である。アルゴリズムは、ここでは一般的に、望ましい結果に至る自己矛盾のない一連のステップであると考えられる。これらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必須ではないが、通常は、これらの量は、格納、転送、結合、比較、及び他の操作が可能な電気信号又は磁気信号の形式を取る。これらの信号をビット、値、要素、記号、符号、用語、又は数字などと言及することは、主として共通使用という理由で時に好都合であることが判明している。
【0131】
しかしながら、これらの用語及び類似の用語は、全て適切な物理量に関連付けられるものとし、且つこれらの量に付与される有利なラベルに過ぎないことに注意されたい。以下の説明から明らかなように、特に明記しない限り、説明全体を通して、「処理する」又は「演算する」又は「計算する」又は「決定する」又は「表示する」などのような用語を利用する説明は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理的な(電子的な)量として表されるデータをそのコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報ストレージ、送信又は表示デバイス内の物理量として同様に表される別のデータに操作及び変換するコンピュータシステム又は類似の電子コンピュータデバイスのアクション及び処理を指すことが認められる。
【0132】
本発明はまた、本明細書の作動を実行するための装置に関する。この装置は、必要とされる目的のために特別に構成することができ、又はコンピュータに格納されたコンピュータプログラムによって選択的に起動又は再構成される汎用コンピュータを有することができる。このようなコンピュータプログラムは、限定ではないが、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROM、及び光磁気ディスクを含むあらゆるタイプのディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気又は光カード、又は電子命令の格納に適するあらゆるタイプの媒体のようなコンピュータ可読ストレージ媒体に格納することができ、各々がコンピュータシステムバスに結合される。
【0133】
本明細書に提示したアルゴリズム及び表示は、何れの特定のコンピュータ又は他の装置とも本質的に関連付けられたものではない。様々な汎用システムを本明細書の教示によるプログラムと共に使用することができ、又は必要とされる方法ステップを実行するより特殊化された装置を構成することが有利であることが判明する場合がある。様々なこれらのシステムに必要とされる構造は、以下の説明から明らかであろう。これに加えて、本発明は、何れの特定のプログラミング言語に関連しても説明されていない。様々なプログラミング言語を使用して、本明細書に説明した本発明の教示を実施することができることが認められるであろう。
【0134】
機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ)によって可読の形態の情報を格納又は送信するための何れかの機構を含む。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイスなどを含む。
【0135】
本発明の多くの改変及び修正が前述の説明を読んだ後で疑いなく当業者には明らかになるであろうが、例証によって図示及び説明された何れの特定の実施形態も限定として捉えられるものではない点を理解されたい。従って、様々な実施形態の詳細事項への言及は、本発明にとって基本的なものとしてみなされる特徴のみを記載する請求項の範囲を限定するものではない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】