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特表2023-526457新規のヌクレオリン-結合ペプチド及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】新規のヌクレオリン-結合ペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20230614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20230614BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20230614BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
A61K47/64
A61K47/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570596
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 IB2021054235
(87)【国際公開番号】W WO2021234550
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0059487
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522450897
【氏名又は名称】アニゲン カンパニー、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェイル
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ジョン - ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ - ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ジェ - ハ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC27
4C076EE23
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA52
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4H045BA15
4H045BA40
4H045BA57
4H045BA72
4H045EA20
4H045EA51
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、ヌクレオリンに特異的に結合する新規のペプチドに関し、より詳細には、特定のアミノ酸配列で表されるペプチド、前記ペプチド及び抗癌剤を含む接合体、前記ペプチド及び細胞透過性ペプチドを含む融合ペプチド、前記ペプチドを含む癌診断用組成物、及び前記ペプチド又は接合体を含む癌予防又は治療用組成物に関する。本発明では、MAP合成方法及びOBOC組み合わせ方法を使用してスクリーニングしたペプチドリガンドAGMペプチド及びその変異体が癌細胞に特異的に結合し、抗癌剤との接合体が癌成長を抑制することを確認した(in vitro及びin vivo)。よって、NCL-標的化AGMペプチドは、癌治療法で診断及び標的薬物伝達に有用に利用可能である。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とするヌクレオリン(nucleolin;NCL)に特異的に結合するAGMペプチド:
(a)配列番号1乃至配列番号8のうちいずれか一つで表されるアミノ酸配列;及び
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、下記の群から選ばれる一つ以上のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列:
(i)N-末端から5番目のメチオニン残基の置換;
(ii)N-末端から7番目のチロシン残基の置換;及び
(iii)C-末端へのロイシン又はリシン残基の挿入。
【請求項2】
前記(b)のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列は、配列番号9乃至配列番号15及び配列番号20で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のAGMペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のAGMペプチドとポリエチレングリコール(polyethyleneglycol、PEG)鎖とが接合されたAGMペプチド-PEG接合体。
【請求項4】
前記ポリエチレングリコール鎖は、2個乃至24個のエチレングリコール基を含むことを特徴とする、請求項3に記載のAGMペプチド-PEG接合体。
【請求項5】
前記AGMペプチドとポリエチレングリコール鎖はリンカーを介して連結されることを特徴とする、請求項3に記載のAGMペプチド-PEG接合体。
【請求項6】
請求項3に記載のAGMペプチド-PEG接合体及び薬物を含むAGMペプチド-PEG-薬物接合体。
【請求項7】
前記薬物は、パクリタキセル(paclitaxel)又はドセタキセル(docetaxel)などのタキソール(taxol)及びタキサン、マイタンシノイド、アウリスタチン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルハイドラザイド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソウレア(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、α-アマニチン、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、ピロロベンゾジアゼピン、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busulfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロレリン酢酸塩(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルベリン、ベルテポルフィン(verteporfin)、クルクミン、アブラキサン、フォルフィリノックス、オキサリプラチン、ゼローダ及びインドールカルボキサミド、フタロシアニン(phthalocyanine)、チューブリシン、光減作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タラミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)、タプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素、及び細菌や動植物由来の毒素からなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のAGMペプチド-PEG-薬物接合体。
【請求項8】
前記AGMペプチド-PEG接合体と薬物はリンカーを介して連結されることを特徴とする、請求項6に記載のAGMペプチド-PEG-薬物接合体。
【請求項9】
請求項3に記載のAGMペプチド-PEG接合体を2個以上含む多量体。
【請求項10】
2個乃至8個のAGMペプチド-PEG接合体を含むことを特徴とする、請求項9に記載の多量体。
【請求項11】
前記2個以上のAGMペプチド-PEG接合体がリンカーによって互いに連結されることを特徴とする、請求項9に記載の多量体。
【請求項12】
請求項9に記載の多量体及び薬物を含む多量体-薬物接合体。
【請求項13】
前記薬物は、パクリタキセル(paclitaxel)又はドセタキセル(docetaxel)などのタキソール(taxol)及びタキサン、マイタンシノイド、アウリスタチン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルハイドラザイド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソウレア(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、α-アマニチン、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、ピロロベンゾジアゼピン、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busulfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロレリン酢酸塩(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルベリン、ベルテポルフィン(verteporfin)、クルクミン、アブラキサン、フォルフィリノックス、オキサリプラチン、ゼローダ及びインドールカルボキサミド、フタロシアニン(phthalocyanine)、チューブリシン、光減作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タラミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridiniumion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)、タプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素、及び細菌や動植物由来の毒素からなる群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項12に記載の多量体-薬物接合体。
【請求項14】
前記多量体と薬物はリンカーを介して連結されることを特徴とする、請求項13に記載の多量体-薬物接合体。
【請求項15】
請求項3に記載のAGMペプチド-PEG接合体と、細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合されたAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド。
【請求項16】
前記細胞透過性ペプチドは、配列番号31乃至配列番号80のアミノ酸配列で構成された群から選ばれることを特徴とする、請求項15に記載のAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド。
【請求項17】
前記AGMペプチド-PEG接合体と細胞透過性ペプチドはリンカーを介して連結されることを特徴とする、請求項15に記載のAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド。
【請求項18】
請求項9に記載の多量体と、細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合された多量体-CPP融合ペプチド。
【請求項19】
請求項1~3に記載のAGMペプチド、請求項4~5に記載のAGMペプチド-PEG接合体、請求項6~8に記載のAGMペプチド-PEG-薬物接合体、請求項9~11に記載の多量体、請求項12~14に記載の多量体-薬物接合体、請求項15~17に記載のAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は請求項18に記載の多量体-CPP融合ペプチドを含む癌診断用組成物。
【請求項20】
請求項1~3に記載のAGMペプチド、請求項4~5に記載のAGMペプチド-PEG接合体、請求項6~8に記載のAGMペプチド-PEG-薬物接合体、請求項9~11に記載の多量体、請求項12~14に記載の多量体-薬物接合体、請求項15~17に記載のAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は請求項18に記載の多量体-CPP融合ペプチドを含む癌予防又は治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオリンに特異的に結合する新規のペプチドに関し、より詳細には、特定のアミノ酸配列で表示されるペプチド、前記ペプチド及び抗癌剤を含む接合体、前記ペプチド及び細胞透過性ペプチドを含む融合ペプチド、前記ペプチドを含む癌診断用組成物、及び前記ペプチド又は接合体を含む癌予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌-特異的リガンドを薬学的担体として用いることは、従来の薬物によって達成されることに比べて相対的に化学療法製剤の組織又は細胞特異的伝達を可能にし、全身毒性を減少させる(Allen TM.Nat Rev Cancer.2002;2:750-63)。癌-特異的リガンドのうちナノ粒子及び抗体は、臨床癌診断及び治療で広く研究されてきた(Yao VJ,et al.J Control Release.2016;240:267-86)。初期段階で個別患者の癌を感知及びモニタリングし、治療効果を高めるために長期間にわたって抗癌剤を伝達できるので、同時に診断及び治療できる(theragnostic)ナノ粒子及び抗体は、個人オーダーメード型医薬品分野で大きな可能性を示している(Palmieri D,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2015;112:9418-23)。ナノ粒子は、有望な薬物運搬体システムであるが、循環不安定性、不適切な組織分布及び細胞毒性のため、実際の適用に限界を示す(Sukhanova A,et al.Nanoscale Res Lett.2018;13:44)。また、治療用抗体は、大きいサイズを有するので、腫瘍組織への伝達及び拡散が遅いという限界を有する(Epenetos AA,et al.Cancer Res.1986;46:3183-91)。
【0003】
古典的な診断及び治療方法に対する代案として、治療効率を高め、ナノ粒子及び抗体癌治療法と関連した副作用を減少させるために、癌-特異ペプチドが使用され得る(Mori T.Curr Pharm Des.2004;10:2335-43)。ペプチドリガンドは、容易な大量合成、低い免疫原性、無毒性代謝産物の生成及び高いin vivo生体適合性を含めて、多くの長所を有している(McGregor DP.Curr Opin Pharmacol.2008;8:616-9)。ペプチドを発掘する多くの方法のうち、OBOC(one-bead-one-compound)組み合わせ方法は、ペプチドリガンドをスクリーニングする強力な方法の一つである(Lam KS,et al.Chem Rev.1997;97:411-48)。OBOC組み合わせライブラリに基づいたペプチドスクリーニング接近法は、癌及び他の疾病での細胞標的化のための新規のペプチドリガンドの発見を促進させた(Mikawa M,et al.Mol Cancer Ther.2004;3:1329-34)。多数の癌-特異的ペプチドがin vitro OBOC組み合わせスクリーニング又は他の方法を使用して分離されたが、いくつかの課題が残っている。特に、ペプチドを薬物として使用する際の主要な短所としては、他のペプチダーゼ(peptidase)による非常に速い切断による非常に短い半減期を挙げることができる(Borchardt TR,et al.Adv Drug Deliv Rev.1997;27:235-56)。本発明者等は、多重-抗原ペプチド(multiple-antigen peptide;MAP)デンドリマー形態(dendrimeric form)の生活性ペプチドを合成する専用接近法を開発することによって、前記記載の各問題を克服しようとした。デンドリマー形態の単量体ペプチドの合成は、タンパク質分解酵素(protease)及びペプチダーゼ活性に対する獲得抵抗性によって安定性を増加させることができる(McGuire MJ,et al.Sci Rep.2014;4:4480)。
【0004】
そこで、本発明者等は、OBOC組み合わせスクリーニングとMAP合成とを結合し、ヒト乳癌(breast cancer)及び結腸直腸癌(colorectal cancer)細胞に特異的に結合するAGM又はAGMペプチドと命名された各ペプチドリガンドシリーズを発明した。In vivo蛍光イメージング試験を通じて、各AGMシリーズが正常組織よりは腫瘍に遥かに多く分布されていることを立証した。また、パクリタキセル(PTX)-接合AGMを処理すると、癌細胞でPTX蓄積を改善させ、in vitroでPTX単独処理に比べて乳癌及び結腸直腸癌細胞をさらに効果的に抑制した。また、PTX-接合AGM処理は、腫瘍組織でPTXの特異的局所化(localization)を促進し、乳癌の異種移植(xenograft)モデルで細胞毒性を増加させ、薬物蓄積及び抗癌効能を向上させた。さらに、プルダウン(pull-down)分析及びLC-MS/MSを通じて、ヌクレオリン(NCL)がAGMの標的タンパク質であることを確認した。NCLは、核小体(nucleolus)に最も多く存在するタンパク質である。本発明では、in vitroで抗-NCL抗体を用いて癌細胞増殖を抑制させ、細胞死滅率(apoptotic rates)を増加させることによって、癌細胞膜NCLの過剰発現及び細胞膜NCLの中和を確認した。発癌性役割及び癌細胞膜での発現により、NCLは、癌治療のための魅力的な標的である。以上の内容をまとめると、前記各結果は、各AGMシリーズが癌診断及び治療のための新規の腫瘍-標的化ペプチドであることを示す。
【0005】
本背景技術部分に記載の前記情報は、本発明の背景に対する理解を向上させるためのものに過ぎないので、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者に既に知られている先行技術を形成する情報を含まなくてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヌクレオリン(nucleolin;NCL)に特異的に結合するペプチドを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記ペプチド及び抗癌剤を含む接合体を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記ペプチドを含む2個以上の多量体(multimer)を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記多量体及び抗癌剤を含む接合体を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記ペプチドと細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合された融合ペプチド、及び前記多量体と細胞透過性ペプチドとが結合された融合ペプチドを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記ペプチド又は多量体を含む癌診断用組成物、癌診断方法、癌診断のための前記ペプチド又は多量体の用途、及び癌診断用薬剤製造のための前記ペプチド又は多量体の使用を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、前記ペプチド、前記接合体又は多量体を含む癌予防又は治療用組成物、癌予防又は治療方法、癌予防又は治療のための前記ペプチド、接合体又は多量体の用途、及び癌予防又は治療用薬剤製造のための前記ペプチド、接合体又は多量体の使用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、
(a)配列番号1乃至配列番号8のうちいずれか一つで表されるアミノ酸配列;及び
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、
(i)N-末端から5番目のメチオニン残基の置換、
(ii)N-末端から7番目のチロシン残基の置換、及び
(iii)C-末端へのロイシン又はリシン残基の挿入
で構成された群から選ばれる一つ以上のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列;
で構成された群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とするヌクレオリン(nucleolin;NCL)に特異的に結合するペプチドを提供する。
また、本発明は、前記ペプチド及び抗癌剤を含む接合体を提供する。
また、本発明は、前記ペプチドを含む多量体を提供する。
また、本発明は、前記多量体及び抗癌剤を含む接合体を提供する。
また、本発明は、前記ペプチドと細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合された融合ペプチドを提供する。
また、本発明は、前記多量体と細胞透過性ペプチドとが結合された融合ペプチドを提供する。
また、本発明は、前記ペプチド又は多量体を含む癌診断用組成物、癌診断方法、癌診断のための前記ペプチド又は多量体の用途、及び癌診断用薬剤製造のための前記ペプチド又は多量体の使用を提供する。
また、本発明は、前記ペプチド、前記接合体又は多量体を含む癌予防又は治療用組成物、癌予防又は治療方法、癌予防又は治療のための前記ペプチド、接合体又は多量体の用途、及び癌予防又は治療用薬剤製造のための前記ペプチド、接合体又は多量体の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明に係るAGM-330とPEGとが接合された接合体(conjugate)の単量体(AGM-330m)、二量体(AGM-330d)、及び四量体(AGM-330t)の構造を示した図である。
図2図2は、本発明に係るAGM-330-PEG接合体と細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合されたAGM-330-CPP融合ペプチドの構造を示した図である。
図3図3は、ペプチドライブラリ合成及びスクリーニング段階を表現した模式図である:1.Split-mix合成方法を行い、組み合わせOBOCライブラリを構築する。;2.約2,600,000個のライブラリ合成;3.OBOCライブラリをCOインキュベーターで癌細胞と共に培養する。;4.細胞表面分子に対する親和性を有するリガンドを運搬するビードは細胞で覆われる。;5.ポジティブビードを倒立顕微鏡下でピペットを用いて採取する。;6.ポジティブビードの配列をエドマンマイクロシーケンシング(Edman microsequencing)で測定する。;7.OBOC組み合わせペプチドライブラリスクリーニングから確認された癌-特異的ペプチドリガンド候補。
図4図4は、癌-特異的リガンドに対するOBOCライブラリのスクリーニング及びMAP合成を示した図である。 図4Aは、癌細胞株及び正常細胞に対するペプチドの結合特異性を示した図で、図4Bは、選択された8個のビードの細胞結合特異性を示す全体-細胞結合分析結果であって、多数の乳癌及び結腸直腸癌細胞と正常の乳房及び結腸直腸細胞を10cells/mlに再懸濁させ、ビードと共に培養した。全ての実験を3回繰り返し、スケールバー(Scale bar)は200μmである。図4Cは、FITC-標識された(labeled)AGM-330、AGM-331及びAGM-332の免疫蛍光の共焦点イメージングによって決定された結合特異性を示した図で、核は、DAP(blue)で染色され、スケールバーは50μmである。図4Dは、AGM-330の結合特異性を示した図で、AGM-330の細胞結合を決定するために全体-細胞結合分析を行い、スケールバーは200μmである。図4Eは、AGM-330の合成手順を示した図で、試薬及び条件は次の通りである:(i)Fmoc-Lys-(Fmoc)-OH、ピペリジン、DMF;(ii)Fmoc-Lys-(Fmoc)-OH、ピペリジン、DMF;(iii)RHGAMVYLK-OH、ピペリジン;(iv)ピペリジン、DMF.Fmoc=9-フルオレニルメトキシカルボニル、DMF=ジメチルホルムアミド。図4Fは、多数の乳癌及び結腸直腸癌細胞と正常な乳房及び結腸直腸細胞のうち癌細胞に対するAGM-330の特異性を示すFACS分析結果であって、棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図5図5は、AGM-330(AGM-330m、AGM-330d、AGM-330t)によるペプチドin vivo安定性評価結果である。AGM-330 2mg/kgをマウスの尾静脈を介して注入した後、0、0.167、1、2、4、6、8、12、24及び48時間ごとにヘパリンがコーティングされた管を用いて目から血液を採取した。4℃での血液凝固を許容した後、4℃で10分間5000rpmで遠心分離することによって血清を収集した。残っている血清内のペプチド部分は、抗-AGM-330抗体を通じてELISAプレートに直ぐ固定させた。吸光度は、VersaMax ELISAプレートリーダー(plate reader)(Molecular Devices)を使用して450nmの波長で測定され、薬物動態学(Pharmacokinetics)はphoenix WinNonlin 8.1(Pharsight Corporation、Mountain View、CA、USA)プログラムで分析した。
図6図6は、AGM-330t又はAGM-330d処理時の細胞生存力分析結果である。癌細胞及び正常細胞(1×10cells/well)を96-ウェルプレートにシーディング(seeding)し、24時間にわたって培養した後、細胞を、血清の濃度を異ならせて、48時間にわたって増加する濃度のAGM-330t又はAGM-330dで処理した。細胞生存力は、製造社の指示に従ってCellVia WST-1アッセイ(Young In Frontier)によって評価され、生存細胞の数は、VersaMax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して450nmの波長で測定された。
図7図7は、AGM-330の分子標的及び特性を確認した結果を示した図である。 図7Aは、ビオチンプルダウン(biotin pull-down)分析、質量分析及びウェスタンブロットの模式図である。図7Bは、10%のSDS-PAGEによる分離後、親和性カラムから溶出されたタンパク質のクマシーブリリアントブルー(Coomassie brilliant blue)染色結果であって、Lane 1:タンパク質マーカー(protein marker);Lane 2:ビオチンプルダウンアッセイ前の総ライセート(total lysate before biotin pull-down assay);Lane 3:AGM-330-ビオチンでのインキュベート後のフロースルー(flow-through after incubation with AGM-330-biotin);Lane 4-6:ビード洗浄分画(bead washing fraction);Lane 7-8:AGM-330結合タンパク質の溶出(elution of AGM-330 binding proteins)である。*赤色の星印は、タンパク質バンドがゲル内分解のために切断された後、LC-MS/MS分析が行われたことを示す。図7Cは、MSで検出されたペプチドのタンパク質データベース検索であって、AGM-330結合パートナーとしてのNCLを確認した結果である。図7Dは、LC-MS/MS分析から得た遺伝子リストであって、信頼スコア(confidence score)は、識別されたタンパク質のマスコットスコア(mascot score)を示す。図7Eは、抗-NCL抗体を使用したビオチンプルダウンから溶出されたタンパク質の免疫ブロッティング分析結果であって、矢印は、NCLの存在を意味する。図7Fは、AGM-330に結合するNCLドメインの分析結果であって、相違するGFP-NCL構築物(construct)をHEK293T細胞に形質注入させ、AGM-330-ビオチンをストレプトアビジンビードに結合されたNCL残基1-710、残基1-322又は残基323-710に添加し、ビード上のタンパク質を抗-GFP抗体を用いて免疫ブロッティングで分析した。
図8図8は、組換えNCLに対するAGM-330の親和度をSPRによって評価した結果であって、Kで表示された。表示されたSPRセンサーグラムは、類似する結果を有する互いに異なるセンサーチップを使用する3つの個別実験セットを代表する実験の結果である。組換えNCLは、CM5センサーチップに固定された。多様な濃度のAGM-330(20nM-2.5μM)を、固定されたNCLと共に培養し、Biacore T-200装置で分析した。
図9図9は、ビオチンプルダウン分析によるAGM-330と精製されたNCLとの間の直接的な相互作用分析結果であって、溶出されたタンパク質の免疫ブロッティング分析は、抗-NCL抗体を使用してビオチンプルダウンを形成する。Lane 1:タンパク質マーカー(protein marker);Lane 2:精製されたNCLの入力(input of purified NCL);Lane 3:AGM-330-ビオチンでのインキュベート後のフロースルー(flow through after incubated with AGM-330-biotin);Lane 4-6:ビード洗浄分画(bead washing fraction);Lane 7-8:AGM-330結合タンパク質の溶出(elution of AGM-330 binding proteins)。矢印は、NCLの存在を意味する。
図10図10は、AGM-330と各変異体のELISAに対する親和度試験である。癌細胞(1×10cells/well)を96-ウェルプレートにシーディングし、24時間にわたって培養した後、細胞を、2時間にわたって増加する濃度のビオチンが連結された13種のペプチドで処理した。その後、高親和性アビジン-ビオチン相互作用を通じてアビジン-HRPを付着させ、HRP酵素を通じてTMB基質を青色に転換させた。そして、酸を添加することによって反応を終決させ、450mmでウェルを判読し、13種の親和度をELISAで評価した。
図11図11は、in vitro及びin vivo AGM-330の結合特異性を示した図である。 図11A及び図11Bは、多数の癌及び正常細胞の蛍光共焦点顕微鏡観察結果であって、MCF-10A、MCF-7、MDA-MB-231(図11A)又はCCD-18Co、HT-29、HCT-116(図11B)細胞を37℃で30分間5μmol/l AGM-330-FITCと共に培養し、NCLは、1次抗-NCL抗体で染色され、AGM-330とNCLとの結合は、Alexa Fluor 594に連結された抗-マウス2次抗体を使用して明らかになっており、細胞は、4%のパラホルムアルデヒドで固定され、核はDAPIで染色された。マージ(Merge)は、DAPIによるAGM-330-FITC、NCL及び核染色を示し、AGM-330-FITCは、FITC-接合(conjugated)AGM-330で、スケールバーは20μmである。図11Cは、多様な準細胞分画でのNCL分布をMCF-10A、MCF-7及びMDA-MB-231細胞で分析した結果であって、抗-NCL抗体を使用して血漿膜、細胞基質及び核NCLを免疫ブロッティングした。図11Dは、siRNAを用いたNCLのノックダウンによって細胞膜に対するAGM-330の結合が抑制されることを示した図であって、MDA-MB-231細胞を48時間にわたって形質注入させた後、5μmol/lのAGM-330-FITCを2時間にわたって添加し、細胞をPBSで2回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドで固定させた。蛍光共焦点顕微鏡を使用して蛍光を観察し、AGM-330-FITCは、FITC-接合AGM-330で、スケールバーは20μmである。図11Eは、多様な準細胞分画でのNCL分布をsiNCL1処理した後、MCF-10A、MCF-7及びMDA-MB-231細胞で分析した結果であって、血漿膜、細胞基質及び核NCLを抗-NCL抗体を使用して免疫ブロッティングした。図11Fは、実験プロトコルの模式図であって、麻酔された6週齢の雄NPGTMマウスの乳腺脂肪パッドにマトリゲルと1×10 MDA-MB-231-luc細胞の1:1混合物を接種し、腫瘍細胞の接種後、腫瘍の体積が約100mmに到逹したとき、free Alexa680又はAGM-330-Alexa680を尾静脈に注射した。図11G及び図11Hは、MDA-MB-231-luc担腫瘍(tumor-bearing)マウスで10nmolのfree Alexa680(図11G)又は10nmolのAGM-330-Alexa680(図11H)の静脈注射後、30分、1時間、6時間及び24時間のin vivo蛍光イメージを示した図であって、心臓、脾臓、肺、脳、肝、腎臓及び腫瘍を含む主要器官の蛍光イメージは、相違する処理でマウスから除去され、AGM-330-FITCは、FITC-接合AGM-330である。図11I及び図11Jは、腫瘍(図11I)及び他の器官(図11J)で3匹の動物のライブイメージングからAlexa680-連関蛍光の平均輻射効率を示したグラフであって、棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図12図12は、膜及び細胞質抽出物でNCL発現を確認した結果である。MDA-MB-231細胞を非-標的スクランブル(scrambled)siRNA(Scr)又はNCL標的siNCL1、siNCL2又はsiNCL3で形質感染させ、24時間後、遺伝子沈黙効率は、リアルタイムPCRによって決定された。mRNAレベルに基づいたとき、siNCL1は、標的遺伝子ノックダウンで著しい効率を示したので、追加実験のために選択された。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図13図13は、乳癌及び結腸直腸癌でのNCLの発現プロファイル及び機能的研究結果を示した図である。 図13Aは、Curtisデータセット及びAlonデータセットで観察された腫瘍発生乳癌腫又は結腸直腸腺癌腫の患者とNCL mRNA発現レベルとの間の有意な相関関係を示した図であって、Oncomineデータリポジトリ(dataset repository)(www.oncomine.org)を用いた。図13Bは、2個の独立的なコホート(cohorts)(Bertucci and Sveen)でNCL発現に基づいた乳癌及び結腸直腸癌の患者で行われたカプランマイヤー(Kaplan-Meier)生存分析結果である。図13C及び図13Dは、正常組織(図13C)及び癌組織(図13D)でのNCLに対する免疫組織化学(immunohistochemistry;IHC)分析結果であって、スケールバーは100μmである。図13E図13Hは、癌細胞及び正常細胞を24時間にわたって無血清培地で指示された量の抗-NCL抗体又はIgGで処理した後の細胞生存力を示した結果であって、MCF-10A(図13E)、MDA-MB-231(図13F)、CCD-18Co(図13G)及びHCT-116(図13H)の細胞生存力をWST分析で測定し、死滅細胞(apoptotic cells)は、アネキシン(Annexin)V細胞を染色することによって可視化された。細胞を抗-NCL抗体で中和させ、24時間にわたって無血清培地で培養し、死滅細胞は、FACS分析によって測定された(図13I)。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図14図14は、AGM-330t-PTXのin vivo腫瘍抑制効能を示した図である。 図14Aは、多数の乳癌及び結腸直腸癌細胞と正常細胞でWST検定によって48時間にわたって決定された、AGM-330t-PTX処理による増殖抑制結果を示した図である。図14Bは、実験プロトコルの模式図であって、麻酔された6週齢の雄NPGマウスの乳腺脂肪パッドにマトリゲルと1×10 MDA-MB-231-luc細胞の1:1混合物を接種し、原発性腫瘍(primary tumor)の体積が約100mmに到逹すると、腫瘍-保有マウスをビヒクル(PBS)、AGM-330t(16.68mg/kg)、PTX(それぞれ2mg/kg又は10mg/kg)、AGM-330t-PTX(19.05mg/kg)(n=6/グループ)で処理した。図14C図14Eは、乳癌異種移植モデルで評価されたAGM-330t-PTX処理効果を示した結果であって、図14Cは、犠牲日まで週に2回測定された原発性腫瘍の体積を示した図で、体積(mm)=(長さ(mm))×(幅(mm))×0.5の計算式によって計算された。図14Dは、犠牲当日、全ての原発性腫瘍を分離したことを示した図で、図14Eは、原発性腫瘍の重量を評価した結果である。図14F図14Iは、Ki-67(図14F図14H)及びTUNEL(図14G図14I)染色を用いた代表的な腫瘍の免疫組織化学セクションを示した図であって、核は、DAPI(blue)で染色され、スケールバーは50μmである。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図15図15は、AGM-330tの癌特異性によるPTXの効能向上を確認した結果である。心臓穿孔によるイソフルラン誘導深麻酔下で異種移植されたマウスから血液を収集し、4℃での血液凝固を許容した後、4℃で10分間3000rpmで遠心分離することによって血清を収集した。血清でのALB(図15A)、GOT(図15B)、GPT(図15C)、TP-PS(図15D)及びUA(図15E)レベルの分析は、製造社のプロトコルによって獣医血液学アナライザー(veterinary hematology analyzer)(Fuji DRI-Chem 3500 s、Fujifilm、Tokyo、Japan)を使用して行われた。ALB:アルブミン;GOT:glutamic oxaloacetic transaminase;GTP:グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ;TP-PS:総タンパク質/タンパク質スキャン;UA:尿酸。図15Fは、3週間の相違する処理後、異種移植マウスの体重変化を示した図である。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図16図16は、AGM-330d-PTXを用いた抗癌効果確認結果であって、図16Aは、PTX接合AGM-330dの構造を示した図である。図16Bは、実験プロトコルの模式図であって、麻酔された6週齢の雄NPGマウスの乳腺脂肪パッドにマトリゲルと1×10 MDA-MB-231-luc細胞の1:1混合物を接種し、MDA-MB-231-luc細胞腫瘍を有するマウスは、ビヒクル(PBS)、AGM-330d(8.34mg/kg)、PTX(それぞれ2mg/kg又は10mg/kg)、AGM-330d-PTX(10.71mg/kg)(n=6/グループ)で処理された。図16C及び図16Dは、全身生物発光イメージング(whole-body bioluminescence imaging)を通じた腫瘍成長モニタリング結果であって、ホタルルシフェラーゼ(firefly luciferase)を発現する増殖(growing)MDA-MB-231細胞をマウスの乳腺脂肪パッドに注射した。AGM-330d-PTXの治療効果は、生物発光イメージング(bioluminescence imaging)によって評価され(図16C)、5個の相違するマウスグループで5日ごとの生物発光(bioluminescence)強度を示した(図16D)。図16E図16Gは、乳癌異種移植モデルにおいてAGM-330d-PTX処理の治療効果を評価した結果であって、犠牲当日、全ての原発性腫瘍を分離し、体積を評価しており(図16E図16F)、原発性腫瘍の重量は、犠牲日まで週に2回測定された(図16G)。原発性腫瘍の体積は、次の公式で計算された:体積(mm)=(長さ(mm))×(幅(mm))×0.5。図16Hは、異種移植マウスで指示された3週間の相違する処理後の体重変化を示したグラフである。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison) で統計分析を行い、*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
図17図17は、AGM-330t-mCPP融合ペプチドの合成過程を示した図である。
図18図18は、AGM-330t-mCPP融合ペプチド、AGM-330t及びマレイミド-CPPのHPLC及びMS分析結果を示した図である。
図19図19は、AGM-330t、mCPP及びAGM-330t-mCPP融合ペプチドの細胞毒性効果を示したグラフである。
図20図20は、AGM-330t、mCPP及びAGM-330t-mCPP融合ペプチドによる細胞死滅効果を示した図であって、死滅細胞は、FACS分析によって測定された。棒グラフは平均±SDを示し、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)で統計分析を行った。***は、P<0.001を示し、NSは、Not Significantを意味する。
図21図21は、AGM-330t-mCPP融合ペプチドの濃度別のアポトーシス誘導効果を示した図である。
図22図22は、AGM-330m-mCPP、AGM-330d-dCPP及びAGM-330t-tCPP融合ペプチドの濃度別の細胞毒性効果を示したグラフである。
図23図23は、AGM-330mとAGM-330m-mCPP、AGM-330dとAGM-330d-dCPP、及びAGM-330tとAGM-330t-tCPPのそれぞれの組み合わせの濃度別の細胞毒性効果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
別の方式で定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野で熟練した専門家によって通常的に理解されるのと同一の意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野でよく知られており、通常的に使用されるものである。
【0010】
本発明の一観点では、
(a)配列番号1乃至配列番号8のうちいずれか一つで表されるアミノ酸配列;及び
(b)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、
(i)N-末端から5番目のメチオニン残基の置換;
(ii)N-末端から7番目のチロシン残基の置換;及び
(iii)C-末端へのロイシン又はリシン残基の挿入;
で構成された群から選ばれる一つ以上のアミノ酸変異を含むアミノ酸配列;
で構成された群から選ばれるアミノ酸配列を含むことを特徴とするヌクレオリン(nucleolin;NCL)に特異的に結合するペプチドに関する。
【0011】
機能的且つ具体的に腫瘍を標的とし得るペプチドリガンドの発見は、癌の診断及び治療に新しい機会を提供する。しかし、ペプチドリガンドの使用は、それらの短い生物学的半減期のために大きく制限されてきた。
【0012】
本発明では、多重-抗原-ペプチド(multiple-antigen-peptide;MAP)合成方法と共に、OBOC(one-bead-one-compound)組み合わせ方法を使用して2,600,000個のペプチドライブラリを合成した後、これから表1に記載のアミノ酸配列を有する新しい癌-特異的ペプチドリガンドであるAGM-330、AGM-331、AGM-332、AGM-333、AGM-334、AGM-335、AGM-336、AGM-337を同定し(図3参照)、細胞結合分析、フローサイトメトリー及び蛍光共焦点顕微鏡を用いて試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)で前記各ペプチドリガンドが癌細胞に特異的に結合することを確認した。
【0013】
また、プルダウン分析及びLC-MS/MS分析を通じて、膜ヌクレオリン(nucleolin;NCL)がAGM-330、AGM-331、AGM-332、AGM-333、AGM-334、AGM-335、AGM-336、AGM-337の標的タンパク質であることを確認し、パクリタキセル(paclitaxel;PTX)と前記AGM-330などの接合体を処理する場合、PTX単独処理に比べて癌の成長を劇的に抑制させることを確認した。
【表1】
【0014】
前記8個のペプチドのうち3個(AGM-330、AGM-331及びAGM-332)は、乳癌細胞株(MDA-MB-231)に対して強く且つ特異的であり、優先的な結合を示しており、ヒト正常乳房細胞株(MCF-10A)には結合しないか、弱く結合した(図4A及び図4B参照)。
【0015】
また、配列番号1のアミノ酸配列を有するAGM-330において一部のアミノ酸残基の変異を有する場合にも、依然として、ヌクレオリンに対する強く且つ特異的な結合特性を維持することを確認した。
【0016】
具体的には、本発明において、前記アミノ酸変異は、配列番号1のアミノ酸配列において、
(i)N-末端から5番目のメチオニン残基の置換;
(ii)N-末端から7番目のチロシン残基の置換;及び
(iii)C-末端へのロイシン又はリシン残基の挿入;
で構成された群から選ばれた一つ以上の変異であり得るが、これに限定されない。
好ましくは、前記アミノ酸変異は、配列番号1のアミノ酸配列において、
(i)N-末端から5番目のメチオニン(methionine)残基のロイシン(leucine)又はノルロイシン(norleucine)への置換;
(ii)N-末端から7番目のチロシン(tyrosine)残基のフェニルアラニン(phenylalanine)への置換;及び
(iii)C-末端へのロイシン(leucine)及びリシン残基の挿入;
で構成された群から選ばれた一つ以上の変異であり得るが、これに限定されない。
【0017】
本発明において、前記変異を含むアミノ酸配列は、配列番号9乃至配列番号15及び配列番号20で構成された群から選ばれることを特徴とすることができるが、これに制限されない(表2)。
【表2】
【0018】
前記配列番号13のアミノ酸配列において、「Nle」は、ノルロイシンを意味する。
【0019】
本発明において、「AGM」、「AGMペプチド」又は「AGMペプチドリガンド」は、前記配列番号1乃至配列番号20で構成された群から選ばれたアミノ酸配列を有するペプチドを通称したり、そのうち一つ以上のペプチドを意味する。
【0020】
本発明において、前記AGMペプチドは、ヌクレオリン(nucleolin;NCL)に特異的に結合することを特徴とすることができる。
【0021】
以前の研究によると、NCLは、主に正常細胞の核に局部的に存在するにもかかわらず、相違する類型の癌細胞で膜NCLの強い過剰発現を示した(Shen N,et al.Oncotarget.2014;5:5494-509)。これらの研究と共に、本発明では、NCLが活発に増殖する癌細胞の膜では過剰発現されるが、正常細胞では過剰発現されないことを立証した。したがって、NCLを標的とする分子は、副作用を最小化しながら薬物を腫瘍に選択的に伝達するための効果的な接近法を提供することができる(Li F,et al.Nat Commun.2017;8:1390)。また、本発明では、特定の抗体への中和を通じて癌細胞に対する膜NCLの役割を立証した。予想通り、アポトーシス(apoptosis)速度が増加した後、抗体-媒介NCL中和が続いた(図13J)。結論的に、NCLは、癌治療のための理想的な治療的マーカーであり、NCL-標的AGM-330は、広範囲なヒト癌の診断及び治療のための道具として大きな潜在力を有している。
【0022】
本発明の一実施例において、AGMペプチド、具体的にAGM-330は、癌細胞に特異的に結合するが、正常乳房及び結腸直腸細胞には弱く結合されたり、又は全く結合されなかった。このような結果は、AGMペプチドが癌に特異的であることを示唆し、癌-標的化ペプチドの開発のための主要候補になるようにする。特に、マウス異種移植研究において、AGMペプチド処理は、心臓、脾臓、肺又は脳より腫瘍でさらに多くの蓄積を示した。癌細胞に対するAGMペプチドの特異的標的化能力は、癌診断のための潜在的な分子道具になり得ることを意味する。
【0023】
また、本発明は、前記AGMペプチドと、-[CH-CH-O]-の構造を有するエチレングリコール基(ethylene glycol group)を2個以上含むポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)鎖とが接合されたAGMペプチド-PEG接合体に関する。
【0024】
本発明において、ポリエチレングリコール鎖は、化学式1の構造を有する一般的なポリエチレングリコール鎖のみならず、その誘導体(derivatives)を全て含む概念で使用され、ポリエチレングリコール鎖の誘導体としては、化学式2の構造を有するアミノポリエチレングリコールカルボン酸(amino polyethylene glycol carboxylic acid)が例示され得るが、これに限定されない。
【化1】
【0025】
ポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)とのコンジュゲーション(PEGylation)は、治療用タンパク質の薬理学的特性を改善するために広く使用されてきた(Gupta V,et al.J Cell Commun Signal.2019;13:319-30)。本発明において、立体障害を減少させ、親水性を増加させるためにPEG化(PEGylation)を使用した。しかし、PEGは、免疫原性のため、治療分子に否定的な臨床的影響を及ぼす(Moreno A,et al.Cell Chem.Biol.2019;26:634-44.e3)。以前の研究は、PEG化された分子に対する抗-PEG免疫反応がPEG化の程度の免疫原性及びPEGの分子量に依存することを提案した(Wan X,et al.Process Biochem.2017;52:183-91)。
【0026】
本発明において、前記ポリエチレングリコール鎖は、2個乃至24個のエチレングリコール単位を有することを特徴とすることができ、好ましくは4個乃至20個、さらに好ましくは6個乃至18個、最も好ましくは6個乃至12個のエチレングリコール単位を有することを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0027】
前記ポリエチレングリコール鎖は、AGMペプチドとリンカーを介して連結されることを特徴とすることができる。これによって、AGMペプチド-PEG接合体は、次の構造式1の形態を有し得るが、これに制限されない。
AGM-L-PEG(構造式1)
前記構造式1において、「PEG」は、ポリエチレングリコール鎖を意味し、Lは、リンカーを意味する。
前記リンカーLは、好ましくは単一結合(直接結合)、C-C20アルキル、C-C20アルキレン、-S-、-NH-及び-O-で構成された群から選ばれ得るが、これに限定さなく、AGMペプチドのC-末端アミノ酸のカルボキシ基と共に、-CONH-の形態をなすペプチド結合(peptide bond)を含み得るが、これに限定されない。
また、前記構造式1のAGMペプチド-PEG接合体のうちAGMと結合しているPEGに、他側末端には他の物質、好ましくは薬物(drug)を接合させるための官能基(functional group)が導入され得る。このような官能基には、カルボキシル(COOH)、アミン(NH)及びチオール(thiol)基などが例示され得るが、これに限定されない。
【0028】
例示的に、構造式2乃至構造式4のように、AGMペプチド-PEG接合体のうちAGMペプチドと結合しているPEGの他側末端にアミン(NH)を有するリシン(Lysine、K)及び/又はチオール基を有するシステイン(Cysteine、C)が接合された形態であり得るが、これに限定されない。
AGM-L-PEG-K(構造式2)
AGM-L-PEG-C(構造式3)
AGM-L-PEG-K-C(構造式4)
例示的に、本発明の一実施例において、AGMペプチドのうちAGM-300とPEGの接合体であるAGM-330-PEG接合体のAGMと結合しているPEGの他側末端にリシン及びシステインが導入されたAGM-330単量体(AGMm)は、構造式5のような形態であり得る。
RHGAMVYLK-L-PEG-K-C(構造式5)
前記構造式5において、PEGは、C末端のリシン(K)のカルボキシ基とアミンとの縮合反応を通じて構造式6のような形態のペプチド結合を含むリンカー(L)によってAGM-330のC末端に連結された形態であり得るが、これに限定されない。
【化2】
【0029】
本発明は、他の観点において、前記AGMペプチド又はAGMペプチド-PEG接合体及び薬物を含むAGMペプチド-薬物接合体又はAGMペプチド-PEG-薬物接合体に関する。
【0030】
本発明において、前記薬物は、薬理学的効果を示す製剤であって、具体的には、化学療法剤、毒素、マイクロRNA(miRNA)、siRNA、shRNA、又は放射性同位元素であり得る。前記化学療法剤は、例えば、細胞毒性製剤又は免疫抑制剤であり得る。具体的には、前記化学療法剤は、マイクロチューブリン抑制剤、有糸分裂抑制剤、トポイソメラーゼ抑制剤、又はDNAインターカレーターとして機能し得る化学療法剤を含むことができ、また、免疫調節化合物、抗癌剤及び抗ウイルス剤、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0031】
好ましくは、前記薬物は、抗癌剤(anti-cancer agent)であってもよく、前記抗癌剤は、パクリタキセル(paclitaxel)又はドセタキセル(docetaxel)などのタキソール(taxol)及びタキサン、マイタンシノイド、アウリスタチン、アミノプテリン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、タリソマイシン、カンプトテシン、N8-アセチルスペルミジン、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメチルスルホニルハイドラザイド、エスペラマイシン、エトポシド、6-メルカプトプリン、ドラスタチン、トリコテセン、カリケアミシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンA、マイトマイシンC、クロラムブシル、デュオカルマイシン、L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)、メルカプトプリン(mercaptopurine)、チオグアニン(thioguanine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、シタラビン(cytarabine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、ニトロソウレア(nitrosourea)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、マイトマイシン(mitomycin)、ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、トポテカン(topotecan)、窒素マスタード(nitrogen mustard)、シトキサン(cytoxan)、α-アマニチン、エトポシド(etoposide)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、CNU(bischloroethylnitrosourea)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン(camptothecin)、ブレオマイシン(bleomycin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、プリカマイシン(plicamycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ビノレルビン(vinorelbine)、クロラムブシル(chlorambucil)、メルファラン(melphalan)、ピロロベンゾジアゼピン、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、ブスルファン(busulfan)、トレオスルファン(treosulfan)、デカルバジン(decarbazine)、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシン C(mitomycin C)、トリメトレキサート(trimetrexate)、ミコフェノール酸(mycophenolic acid)、チアゾフリン(tiazofurin)、リバビリン(ribavirin)、EICAR(5-ethynyl-1-beta-Dribofuranosylimidazole-4-carboxamide)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、デフェロキサミン(deferoxamine)、フロクスウリジン(floxuridine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、シタラビン(cytarabine(ara C))、シトシンアラビノシド(cytosine arabinoside)、フルダラビン(fludarabine)、タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、メゲストロール(megestrol)、ゴセレリン(goserelin)、リュープロレリン酢酸塩(leuprolide acetate)、フルタミド(flutamide)、ビカルタミド(bicalutamide)、EB1089、CB1093、KH1060、ベルベリン、ベルテポルフィン(verteporfin)、クルクミン、アブラキサン、フォルフィリノックス、オキサリプラチン、ゼローダ及びインドールカルボキサミド、フタロシアニン(phthalocyanine)、チューブリシン、減作剤Pe4(photosensitizer Pe4)、デメトキシ-ヒポクレリンA(demethoxy-hypocrellin A)、インターフェロン-α(Interferon-α)、インターフェロン-γ(Interferon-γ)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ベルケイド(velcade)、レバミド(revamid)、タラミド(thalamid)、ロバスタチン(lovastatin)、1-メチル-4-フェニルピリジニウムイオン(1-methyl-4-phenylpyridinium ion)、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD(actinomycin D)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ブレオマイシンA2(bleomycin A2)、ブレオマイシンB2(bleomycin B2)、ペプロマイシン(peplomycin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ベラパミル(verapamil)、タプシガルギン(thapsigargin)、核酸分解酵素、及び細菌や動植物由来の毒素からなる群から選ばれた一つ以上であることを特徴とすることができるが、これに制限されない。
【0032】
本発明の一実施例において、ヒト乳癌異種移植マウスモデルでAGM-330-PTX(AGM-330-PEG接合体とパクリタキセル(PTX)とを接合させた接合体)を処理した場合、PTX-処理群と比較して腫瘍の体積及び重量の60%及び46%の減少を示した(図14C乃至図14E参照)。癌細胞及び組織に対するAGM-330の効率的な標的化能力は、癌治療のための抗癌剤伝達において有望な方法を提供する。
【0033】
パクリタキセル(paclitaxel;PTX)は、最も有望な癌化学療法薬物のうち一つと見なされ、多くの相違するヒト悪性腫瘍に対してテストされた(Ramalingam S,Belani CP.Expert Opin.Pharmacother.2004;5:1771-80)。しかし、PTXで治療する際には、PTXの高い疎水性及びその剤形と関連した困難さによって制限がある。また、PTX治療と関連した多くの副作用は、製剤化に使用される希釈溶媒に起因する(Hennenfent KL,Govindan R.Ann Oncol.2006;17:735-49)。しかし、PTXと異なり、AGMペプチド、特に、AGMペプチド-PEG接合体と接合されたPTXは、非常に親水性である特性を示す。このような親水性は、薬物動力学的プロファイルを改善させ、少量の毒性希釈バッファーの使用を可能にし、化学療法の一般的な毒性をさらに減少させることができる。AGMペプチドを用いて標的化された伝達を通じて、毒性などの副作用を減少できるだけでなく、治療効果を著しく改善できるという長所がある。
【0034】
本発明において、前記AGMペプチド又はAGMペプチド-PEG接合体は、薬物、好ましくは抗癌剤とリンカー(L)を介して連結されたり、又は直接連結されることを特徴とすることができる。
【0035】
前記リンカー(L)は切断性(cleavable)であり得る。前記切断性リンカー(L)は、細胞内の条件で切断可能な形態、すなわち、細胞内の環境で抗体から薬物がリンカーの切断を通じて放出できるようにする。
【0036】
前記リンカー(L)は、細胞内の環境、例えば、リソソーム又はエンドソームに存在する切断剤によって切断されてもよく、例えば、細胞内のペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素、例えば、リソソーム又はエンドソームプロテアーゼによって切断され得るペプチドリンカーであってもよい。一般に、ペプチドリンカーは、少なくとも2個以上のアミノ酸の長さを有する。前記切断剤は、カテプシンB、カテプシンD、及びプラスミンを含むことができ、ペプチドを加水分解し、薬物を標的細胞内に放出できるようにする。
【0037】
前記ペプチドリンカーは、チオール依存性プロテアーゼカテプシン-Bによって切断されてもよく、これは、癌組織で過剰発現され、例えば、Phe-Leu又はGly-Phe-Leu-Glyリンカーであってもよい。また、前記ペプチドリンカーは、例えば、細胞内のプロテアーゼによって切断され得るものであって、Val-Citリンカー又はPhe-Lysリンカーであり得る。
【0038】
一つの実施例において、前記切断性リンカーはpH敏感性であって、特定のpH値で加水分解に敏感になり得る。一般に、pH敏感性リンカーは、酸性条件で加水分解され得ることを示す。例えば、リソソームで加水分解され得る酸性不安定リンカーは、例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シース-アコニットアミド(cis-aconitic amide)、オルトエステル、アセタール、ケタールなどであり得る。
【0039】
他の実施例において、前記リンカーは、還元条件で切断されてもよく、例えば、二硫化リンカーがこれに該当し得る。SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオ酢酸)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)酪酸)及びSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)を使用して多様な二硫化結合が形成され得る。
【0040】
また、前記リンカーは、例えば、非切断性リンカーであってもよく、抗体加水分解段階のみを通じて薬物が放出され、例えば、アミノ酸-リンカー-薬物接合体を生産する。このような類型のリンカーは、チオエーテル基又はマレイミドカプロイル基(maleimidocaproyl)であってもよく、これによって血液内の安定性を維持することができる。
【0041】
場合によって、前記AGMペプチド、又はAGMペプチド-PEGの接合体は、薬物、好ましくは、抗癌剤と非共有性結合又は共有性結合を通じて直接連結されることを特徴とすることができるが、これに制限されない。
【0042】
前記非共有性結合は、例えば、水素結合、静電気的相互作用、疎水性相互作用、バンデルバルス相互作用、π-π相互作用及びカチオン-π相互作用からなる群から選ばれた1種以上であり得る。
【0043】
本発明は、他の観点において、前記AGMペプチド、又はAGMペプチド-PEG接合体を2個以上含む多量体に関する。
【0044】
本発明において、前記多量体は、2個乃至8個のAGMペプチド、又はAGMペプチド-PEG接合体を含むことができ、好ましくは2個乃至6個、さらに好ましくは2個乃至4個のAGMペプチド、又はAGMペプチド-PEG接合体を含むことを特徴とすることができるが、これに制限されない。
【0045】
例示的に、本発明において、前記多量体のうち二量体(dimer)は、2個のAGMペプチド、又はAGMペプチド-PEG接合体がリンカー(L)によって互いに連結されることを特徴とすることができ、多量体のうち四量体(tetramer)は、前記二量体が追加的なリンカー(L)によって互いに連結されることを特徴とすることができるが、これに制限されない。さらに、六量体(hexamer)や八量体(octamer)、及びそれ以上の多量体も類似する形態で連結され得ることは、通常の技術者にとって自明である。
【0046】
例示的に、本発明に係るAGMペプチド-PEG接合体の二量体及び四量体は、構造式7及び構造式8のような形態を有し得るが、これに限定されない。
【化3】

【化4】
【0047】
前記リンカーL及びLは、互いに同一又は異なってもよく、独立的に切断性(cleavable)又は非切断性(non-cleavable)であってもよい。
【0048】
前記リンカーL及びLは、独立的に単一結合(直接結合)、アミノ酸又はその誘導体(derivatives)、C-C20アルキル、C-C20アルキレン、-S-、-NH-及び-O-で構成された群から選ばれ得るが、これに限定されなく、好ましくは、アミノ酸又はその誘導体、さらに好ましくは、2以上のアミン基を有するリシン(Lys、K)又はアルギニン(Arg、R)であり得るが、これに限定されない。
【0049】
最も好ましくは、前記リンカーL及びLとしてリシン(Lys、K)が使用されてもよく、前記リシンのアミングループ(NH)が-C-CONH-などのペプチド結合と類似する形態でPEGと連結され得るが、これに限定されない。
【0050】
また、前記AGMペプチド、又はAGMペプチド-PEG接合体のリンカーの一末端には、他の物質、好ましくは薬物を接合させるための官能基が導入され得る。例えば、前記構造式7でのL、構造式8でのLに薬物を接合させるための官能基が導入され得る。
【0051】
このような官能基には、アミン(NH)及びチオール(thiol)基などが例示され得るが、これに限定されなく、例示的に、アミン(NH)を有するリシン(Lysine、K)及び/又はチオール基を有するシステイン(Cysteine、C)が導入された形態であり得るが、これに限定されない。
【0052】
例示的に、本発明の一実施例において、AGM-330二量体(AGM-330d)及びAGM-330四量体(AGM-330t)は、下記の表3のような構造を有し得るが、これに限定されない。
【表3】
【0053】
本発明の一実施例において、AGM-330d-PTXを使用して抗癌効能を試験した(図16A)。その結果、AGM-330d-PTX-処理マウスは、PTX-処理マウスと比較してルシフェラーゼ活性の劇的な減少を示した(図16C-D)。また、AGM-330d-PTX処理は、PTX-処理群と比較して、腫瘍の体積及び重量が著しく減少した(図16E-G)。AGM-330t-PTXと同様に、マウスの体重は、ビヒクル(PBS)投与と比較して、AGM-330d-PTX投与によって影響を受けなかった(図16H)。AGM-330dの癌特異性は、PTXの効能を向上させ、腫瘍組織で治療薬物の濃度を増加させることができる。
【0054】
本発明は、更に他の観点において、AGMペプチド-PEG接合体を2個以上含む多量体と薬物、好ましくは抗癌剤を含む多量体-薬物接合体に関する。
【0055】
本発明において、多量体-薬物接合体には、AGMペプチド-薬物接合体又はAGMペプチド-PEG-薬物接合体に関する説明が準用されてもよく、これによって、各リンカーや薬物などは、上述したAGMペプチド-薬物接合体又はAGMペプチド-PEG-薬物接合体での定義と同一に解釈される。
【0056】
本発明は、更に他の観点において、AGMペプチド-PEG接合体と細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合されたAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチドに関する。
【0057】
本発明において、用語「細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)」は、一種の信号ペプチド(signal peptide)であって、タンパク質、DNA、RNAなどの高分子物質を細胞内に伝達しようとする目的で使用される特定のアミノ酸配列の組み合わせであるペプチドである。現在まで、多様な低分子化合物、タンパク質、ペプチド、RNA、DNAなどの高分子物質の細胞内伝達のために用いられている。細胞透過性ペプチドは、ほとんどがタンパク質-透過ドメイン(protein-transduction domain)や膜-移動シーケンス(membranetranslocating sequence)から誘導されており、一般的な外部物質の細胞内流入経路とは異なり、細胞膜に損傷を与えない状態で細胞内に移動し、細胞膜を通過できないものとして知られているDNAやタンパク質も細胞内に伝達できる画期的な役割をするものとして期待されている。
【0058】
本発明の融合ペプチドとしては、細胞透過性ペプチドを用いており、前記細胞透過性ペプチドは、細胞内在化(endocytosis)メカニズムによって細胞内に入り込む特徴を有しているものであれば特に制限されないが、好ましくは、下記の表4に羅列された細胞透過性ペプチド又はその変異体で構成された群から選んで使用することができる。
【表4】
【0059】
さらに好ましくは、前記細胞透過性ペプチドは、下記の表5に羅列された細胞透過性ペプチド又はその変異体で構成された群から選ばれることを特徴とすることができ、下記の表5のペプチドの製造及び特性は、韓国登録特許第10-1169030号を参照することができる。最も好ましくは、前記細胞透過性ペプチドは、配列番号48のアミノ酸配列を含むことを特徴とすることができる。
【表5-1】

【表5-2】
【0060】
本発明の一実施例では、前記表5のDS4-3ペプチドで表された配列番号48の細胞透過性ペプチドを選択して実験を行っており、前記実際に使用した細胞透過性ペプチド以外の他の細胞透過性ペプチドを本発明のペプチドと融合させた場合にも、本発明と類似する効果が表れることは当業者にとって自明であろう。
【0061】
本発明において、前記AGMペプチド-PEG接合体と細胞透過性ペプチドは、リンカーを介して連結されることを特徴とすることができる。好ましくは、マレイミド-カルボキシ二官能性リンカー(carboxy bifunctional linker)を介して連結されることを特徴とすることができるが、これに制限されない。
【0062】
本発明は、更に他の観点において、AGMペプチド-PEG接合体を2個以上含む多量体と細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)とが結合された多量体-CPP融合ペプチドに関する。
【0063】
本発明において、多量体-CPP融合ペプチドには、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチドに関する説明が準用されてもよく、これによって各リンカーや細胞透過性ペプチドなどは、上述したAGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチドでの定義と同一に解釈される。
【0064】
本発明は、更に他の観点において、前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを含む癌診断用組成物に関する。
【0065】
本発明は、更に他の観点において、前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを用いた癌診断方法に関する。
【0066】
本発明は、更に他の観点において、癌診断のための前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドの用途に関する。
【0067】
本発明は、更に他の観点において、癌診断用薬剤の製造のための前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドの使用に関する。
【0068】
本発明の診断用組成物を用いて発病の有無又は発病可能性を予測できる癌は、白血病、骨髓増殖性疾患、リンパ種、乳癌、肝癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸部癌、神経膠腫癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、胃腺癌、子宮癌、膀胱癌、甲状腺癌、黒色腫、扁平上皮癌、造血癌、腎臓癌及び頭頸部癌などであり得るが、これに制限されない。
【0069】
本明細書において、用語「診断」は、特定の疾病又は疾患に対する対象(subject)の感受性(susceptibility)を判定すること、対象が特定の疾病又は疾患を現在有しているのか否かを判定すること、特定の疾病又は疾患にかかった対象の予後(prognosis)(例えば、前-転移性又は転移性癌状態の同定、癌の段階決定又は治療に対する癌の反応性決定)を判定すること、又は、テラメトリックス(therametrics)(例えば、治療効能に対する情報を提供するために客体の状態をモニタリングすること)を含む。本発明の目的上、前記診断は、上記の疾患の発病有無又は発病可能性(危険性)を確認することである。
【0070】
本発明は、更に他の観点において、前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを含む癌予防又は治療用組成物に関する。
【0071】
本発明は、更に他の観点において、前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを対象体に投与する段階を含む癌予防又は治療方法に関する。
【0072】
本発明は、更に他の観点において、癌予防又は治療のための前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドの用途に関する。
【0073】
本発明は、更に他の観点において、癌予防又は治療用薬剤の製造のための前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドの使用に関する。
【0074】
本発明の組成物で治療できる癌又は癌腫は、特に制限されなく、固形癌及び白血病などのヌクレオリンと関連した癌であり得る。このような癌の例は、白血病、骨髓増殖性疾患、リンパ種、乳癌、肝癌、胃癌、卵巣癌、子宮頸部癌、神経膠腫癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、胃腺癌、子宮癌、膀胱癌、甲状腺癌、黒色腫、扁平上皮癌、造血癌(hematopoietic cancers)、腎臓癌又は頭頸部癌(head and neck cancers)などであり得るが、これに制限されない。
【0075】
本発明において、「癌」と「腫瘍」は、同一の意味で使用されており、典型的に調節されていない細胞成長/増殖を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を称したり意味する。
【0076】
本発明において、用語「予防」は、前記ペプチド又は接合体を含む組成物の投与で癌を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。また、用語「治療」は、前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを含む組成物の投与で癌の症状が好転又は完治する全ての行為を意味する。
【0077】
本発明に係る癌予防又は治療用組成物は、薬学的に有効な量の前記AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドを単独で含んだり、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含むことができる。上記で薬学的に有効な量は、癌の症状を予防、改善及び治療するのに十分な量を言う。
【0078】
前記「薬学的に許容される」は、生理学的に許容され、ヒトに投与されるとき、通常、胃腸障害、めまいなどのアレルギー反応又はこれと類似する反応を起こさないことを意味する。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウムカルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。また、前記組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤などをさらに含むことができる。適切な薬学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0079】
また、本発明の組成物は、AGMペプチド、AGMペプチド-PEG接合体、AGMペプチド-PEG-薬物接合体、多量体、多量体-薬物接合体、AGMペプチド-PEG-CPP融合ペプチド又は多量体-CPP融合ペプチドと共に、癌治療効果を有する公知の有効成分を1種以上含むことができる。
【0080】
本発明の組成物は、ヒトを除外した哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続又は遅延された放出を提供できるように当業界に公知となった方法を使用して剤形化され得る。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質又は硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であり得る。
【0081】
本発明の組成物は、経口、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む多くの経路を介して投与することができ、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び患者の重症度などの多くの因子によって適宜選択され得る。また、本発明に係る癌予防又は治療用組成物は、癌の症状を予防、改善又は治療する効果を有する公知の化合物と並行して投与することができる。
【実施例
【0082】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0083】
実施例1:材料及び方法
実施例1-1:OBOCライブラリ合成
OBOCライブラリを固相(solid-phase)TentaGel MB NHレジン(Rapp Polymere GmbH、Tubingen、Germany)で合成した。「split-mix」合成方法を行い、それぞれ数百万個のビード/リガンドのランダムライブラリを含有する組み合わせOBOCライブラリを構築した。約2,600,000個のOBOCライブラリを合成するために、5gのTentagel MB NHレジン(200μm、520,000beads/g)が使用された。ビードの表面上のリガンドは、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)ケミストリー及びN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(GL Biochem、Shanghai、China)/N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(GL Biochem)カップリングを用いた標準固相ペプチド合成技術によって合成された。カップリングの完了は、ニンヒドリン(ninhydrin)テストで確認した。ビードは、使用前まで4℃で70%のエタノールに貯蔵された。
【0084】
実施例1-2:倫理及び細胞培養
ヒト組織と関連した全ての研究は、光州科学技術院(Gwangju Institute of Science and Technology)の研究倫理審議委員会(IRB)によって事前に承認された(#20191008-BR-48-03-02)。全ての動物実験は、光州科学技術院の実験動物運営委員会(IACUC)の指針に従って行われた(GIST-2019-040)。全ての培養物を95%エア/5%COと共に、37℃で維持される加湿インキュベーターで成長させた。正常ヒト乳房細胞株MCF-10Aは、ATCC(American Type Culture Collection)から入手し、BPE(bovine pituitary extract)(Cambrex Bioscience、Walkersville、MD)が補充されたMEGM完全成長培地(MEGM、Lonza、Walkersville、MD)に増殖させた。正常ヒト結腸直腸細胞株CCD-18Coは、韓国細胞株銀行(Seoul、Republic of Korea)で入手した。MCF-7、MDA-MB-231、HT-29及びHCT-116を含むヒト乳癌及び結腸直腸癌細胞株は、韓国細胞株銀行で入手した。Jurkat T細胞も韓国細胞株銀行で入手した。ルシフェラーゼ(Luciferase)-発現MDA-MB-231癌細胞株は、PerkinElmer(PerkinElmer、Hopkinton、MA)から入手した。それぞれの癌細胞株は、10%加熱不活性化(heat-inactivated)FBS(fetal bovine serum)(Gibco)、0.1mg/mlストレプトマイシン(Gibco)、及び100units/mlペニシリン(Gibco)が補充されたRPMI1640(Gibco、Waltham、USA)及びDMEM(Gibco)で成長させた。
【0085】
実施例1-3:癌-特異的リガンドに対するOBOCライブラリスクリーニング
スクリーニング前に、ビードを二重蒸留水及びリン酸塩緩衝食塩水(PBS;Welgene Inc.,Republic of Korea)で広範囲に洗浄した。トリプシン/EDTA(Gibco)を用いて癌細胞及び正常細胞を培養皿から分離し、相応する培養培地で洗浄した後、10cells/mlで再懸濁させ、ペトリ皿のOBOCビードと37℃加湿COインキュベーターで振盪しながら(60rpm)培養した。細胞によって結合されたビードは、顕微鏡下で一つ以上の細胞層で覆われた中心ビードを有するロゼット状(rosettes)として表れた。倒立顕微鏡(inverted microscope)下でポジティブビードをピペットで選び出し、グアニジン-HCL(8M、20min)で処理し、ビードの表面の細胞及びタンパク質を除去し、正常乳腺上皮細胞で2次スクリーニングを行い、偽陽性結合を除去した。両ラウンドで細胞結合を有するビードのみを選別し、ペプチドシーケンシングを行った。
【0086】
実施例1-4:ペプチド及び2’-マレイミド-PTXの化学的合成
全てのペプチド及び2’-マレイミド-PTXは、それぞれ固相ペプチド合成(peptide synthesis)及びシュテークリヒエステル化(Steglich esterification)を用いてAnyGen(Gwangju、Republic of Korea)によって合成された。ペプチド及び2’-マレイミド-PTXの純度及び分子量は、それぞれHPLC及びMALDI-TOF MS(matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry)を使用して決定された(Shimadzu、Kyoto、Japan)。
【0087】
実施例1-5:AGM-330-PTXの合成
ペプチド分岐-チオール中間体(Peptide branched-thiol intermediates)をDMF(500μM)(Duksan Chemical、Korea)に溶解させ、DMF(5mM)(10Equivalents)及び0.1%v/v DIPEA(Duksan)で2’-マレイミド-PTX溶液と混合させた。反応物を室温で30分間撹拌した後、HPLC(Shimadzu)で精製した。HPLCで精製した後、MALDI-TOF MS(Shimadzu)を使用してAGM-330-PTXの分子量を測定した。
【0088】
実施例1-6:血清安定性試験
予熱された100%ヒト血清(Sigma-Aldrich)を用いてペプチドの貯蔵溶液(100μM)を10倍希釈し、37℃で0時間、3時間、6時間、9時間及び24時間にわたって培養した。PBSでのペプチドが対照群として含まれた。4℃で10分間3Mの最終濃度で尿素(urea)を用いて血清タンパク質を変性させた後、最終濃度7%(v/v)(4℃、10分)でトリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)で血清タンパク質を沈澱させ、遠心分離(17,000×g、10分)することによって反応を停止させた。それぞれのサンプルの上澄み液を回収し、溶媒A(0.05%(v/v)TFA in HO)で5%~65%溶媒B(アセトニトリル90%(v/v)と0.045%(v/v)TFA in HO)の線形勾配を使用して215nmでモニタリングしながら1ml/minの流速で25分にわたって分析カラム(analytical column)を行った。各ペプチドの溶出プロファイルは、0時点からPBSサンプルによって確認された。血清-処理されたサンプルに残っているペプチドの百分率は、各時点で収得されたペプチドピークの高さと0時点で収得されたペプチドピークの高さとを比較することによって決定した。各実験は3回行われた。
【0089】
実施例1-7:フローサイトメトリー(Flow cytometry)
FACS(Fluorescence-activated cell-sorting)分析を使用してFITC-ペプチドの結合を確認した。FITC-ペプチド用貯蔵溶液(100μM)は、ペプチドをPBSに溶解させて製造した。MCF-10A、MCF-7、MDA-MB-231、CCD-18Co、HT-29及びHCT-116細胞を3ml培地を含有する6-ウェルプレートに10cells/wellでシーディングし、プレートを37℃で一晩中培養した。翌日、FITC-標識されたペプチド(1μM)を含有する新しいFBS-フリー培地(1ml)に培地を交替し、37℃で30分間さらに培養した。その後、培地を除去し、細胞が冷たいPBSで洗浄し、任意の残留ペプチドを除去した。適切なトリプシン/EDTAを各ウェルに添加した後、37℃で3分~5分間培養した。培地を添加することによってトリプシン/EDTAを直ぐ中和させ、細胞懸濁液を遠心分離チューブに移した。細胞を分離し、PBSで2回洗浄した。対照群細胞も、ペプチドを除いては、類似する方式で処理された。製造された細胞をFACScanto II(BD Biosciences)フローサイトメーター(flow cytometer)で分析した。FACSデータは、FlowJoソフトウェア(TreeStar)で分析された。
【0090】
実施例1-8:ビオチンプルダウン分析
細胞溶解物(500μg/ml)をビオチン化(biotinylated)AGM-330(500ng/ml)と共に、4℃で12時間にわたって培養した後、ストレプトアビジンビード(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)によって1時間にわたって室温でプルダウンさせた。培養後、ビードを洗浄バッファーで3回洗浄した。溶出バッファーをビードに添加し、ビードからタンパク質を抽出した後、最終的にSDS-PAGEで分析した。ビオチンプルダウン分析で由来したタンパク質を識別して特徴付けるために、ProteomeTech(Seoul、Korea)でLC-結合(coupled)ESI-MS/MS分析を行った。
【0091】
実施例1-9:AGM-330結合ドメイン識別
ヒトNCL cDNAクローン(Addgene)からGFP-NCL(残基1-710)、GFP-△N-NCL(残基322-710)及びGFP-△C-NCL(残基1-321)を含むNCL構築物(constructs)を作り、pEGFP-C2ベクター(Addgene)のXhoI及びBamHIサイトにサブクローニングさせた。これらのベクターは、製造社の勧告によってリポフェクタミン2000(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)によって形質注入(transfection)させた。ビオチン化AGM-330ペプチドをストレプトアビジンビード(Thermo Fisher Scientific)に添加し、混合物を室温で1時間にわたって振盪しながら培養した。ビードは、洗浄バッファーで3回洗浄された。洗浄後、GFP-タグ付き(tagged)NCLタンパク質を含有する形質注入された細胞溶解物から製造された溶解物(300μl)にビードを添加した。反応混合物を4℃で12時間にわたって培養し、AGM-330とGFP-タグ付きNCLタンパク質とが結合されるようにした。続いて、ビードを洗浄バッファーで洗浄した。同一の体積の2×電気泳動サンプルバッファーをビードに添加し、95℃で5分間加熱することによってビードからタンパク質を抽出した。SDS-PAGE及び免疫ブロット分析でタンパク質を最終的に分析した。
【0092】
実施例1-10:Jurkat細胞からのNCLの精製
25mlの20mMトリス/HCl、pH7.5、150mM NaCl、5mM MgCl、5mM β-メルカプトエタノール、0.5%(v/v)トリトンX-100、1mMマリマスタット(AdooQ Bioscience、Irvine、CA、USA)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Millipore、Billerica、MA、USA)で1.0X10Jurkat細胞を4℃で1時間にわたって溶解させ、NCLを製造した。v)トリトンX-100、1mMのマリマスタット(AdooQ Bioscience、Irvine、CA、USA)、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Millipore、Billerica、MA、USA)。核を1200×gで5分間遠心分離することによってペレット化した後、上澄み液を12,000×gで30分間遠心分離し、-80℃で貯蔵した。核のない(nucleus-free)抽出物からNCLを精製するために、速い2段階クロマトグラフィー手順を使用した。全ての段階は、1mMマリスタット及び完全なプロテアーゼ阻害剤カクテルの存在下で氷冷(ice-cold)バッファー及びカラムを使用して4℃で行った。Jurkat細胞(25ml)の細胞質抽出物をpH7.0、20mMリン酸ナトリウムで10倍希釈し、5mlのMono Q5/50GLカラム(Sigma-Aldrich)に通過させた。pH7.0、150mlの20mMリン酸ナトリウムでカラムを洗浄した後、1M NaClを含有する同一のバッファーの10mlで吸着したタンパク質を溶出させた。溶出液を50mMトリス/HCl、pH7.9、5mM MgCl、0.1mM EDTA、1mM β-メルカプトエタノール(バッファーA)で10倍希釈し、同一のバッファーで平衡させた1ml HiFiQヘパリンHPカラム(Protein Ark、UK)にローディングした。0.2M硫酸アンモニウムを含有する20mlのバッファーAでゲルを洗浄し、0.6M硫酸アンモニウムを含有した2mlのバッファーAでタンパク質を50μl分画に溶出させた。NCLを集め、4℃で2時間にわたって1mMマリマスタットを含有するPBSに透析した後、-80℃で貯蔵した。クマシーブルーで染色された10% SDSアクリルアミドゲルに対する追加制御により、単一105kDaタンパク質バンドとして精製されたNCLの存在を確認した。NCLの部分分解産物に該当する2個の70及び50kDaタンパク質バンドが全体のタンパク質の10%未満の量で観察された。
【0093】
実施例1-11:結合親和度
結合親和度は、SPR(surface plasmone resonance)分光法(spectroscopy)(Biacore T-200)によってテストされた。組換えヌクレオリンタンパク質をCM5センサーチップに固定した後、AGM-330を濃度別に(20nM~2.5μM)処理し、それぞれに対するセンサーグラムを分析し、K値を決定した。
【0094】
実施例1-12:タンパク質分離及びウェスタンブロット分析
プロテアーゼ阻害剤カクテル(Millipore)を含有するRIPAバッファー(20mMトリス-HCl、pH7.5、200mM NaCl、0.5%トリトンX-100)に細胞を溶解させた。製造社のプロトコルによって、タンパク質分析キット(Bio-Rad)を用いてタンパク質の濃度を測定した。総タンパク質をSDS-PAGEに適用し、ポリフッ化ビニリデン膜に移動させた。ブロットは、NCL(Abcam)及びGFP(Abcam)に対する1次抗体でプローブされた。ローディング対照群として、抗-β-アクチン抗体(Santa Cruz Biotechnology)、抗-P-カドヘリン(Abcam)及び抗-ラミンA/C(Abcam)が使用された。続いて、ブロットをTBST(10mMトリス-HCl、50mM NaCl及び0.25%ツイン-20)で洗浄し、ホースラディシュペルオキシダーゼ-接合2次抗体と共に培養した。強化された化学発光(chemiluminescence)試薬(Thermo Fisher Scientific)を使用して標的タンパク質の存在を探知した。
【0095】
実施例1-13:免疫蛍光染色
MDA-MB-231-luc異種移植組織には、免疫蛍光染色のためにホルマリン-固定及びパラフィン-包埋が行われた。細胞をポリ-L-リシン及びコラーゲンI-コートカバーガラス(coated cover glasses)にシーディングし、4%ホルマリンで固定させた。組織スライド及び細胞を、0.1%トリトンX-100で透過性を有するように作り、2%BSA(Sigma-Aldrich)でブロッキングした。1次抗-NC(1:200)、抗-TUNEL(1:200)及び抗-Ki-67(1:500)抗体を使用し、上述したように染色を行った。全ての核は、DAPIで対照染色された。免疫蛍光イメージをH&E-染色イメージとマッチングさせた。
【0096】
実施例1-14:siRNA(Small interfering RNA)-媒介ノックダウン
NCLを標的とするsiRNA(NM_005381.3 in NCBI database)及びスクランブルsiRNA(scr) は、Bioneer(Daejeon、Republic of Korea)から購入した。効率的なNCL形質注入のために、製造社のプロトコルに従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用してsiRNA形質注入を行った。3個の相違するsiRNA配列が使用され、これらの効率性はリアルタイムPCRによって評価された。
【0097】
siNCL1:(センス)5’-GAGCUAACCCUUAUCUGUA(dTdT)-3’(配列番号21)
(アンチセンス)5’-UACAGAUAAGGGUUAGCUC(dTdT)-3’(配列番号22)
siNCL2:(センス)5’-CACAAGGAAAGAAGACGAA(dTdT)-3’(配列番号23)
(アンチセンス)5’-UUCGUCUUCUUUCCUUGUG(dTdT)-3’(配列番号24)
siNCL3:(センス)5’-GACGAAGUUUGAAUAGCUU(dTdT)-3’(配列番号25)
(アンチセンス)5’-AAGCUAUUCAAACUUCGUC(dTdT)-3’(配列番号26)
【0098】
qRT-PCR分析によって決定されたmRNAレベルに基づいて最も効果的なsiRNAを選択し、生成されたタンパク質レベルをウェスタンブロット分析で検証した。
【0099】
実施例1-15:リアルタイムPCR
RNAiso(Takara、Shiga、Japan)を使用して全体のRNAを抽出し、260/280吸光度比率を測定することによってRNA純度を検証した。PrimeScriptTMファーストストランドcDNA合成キット(1st strand cDNA Synthesis Kit)(Takara、Shiga、Japan)を使用して第一鎖cDNAを合成し、PowerSYBR(登録商標)グリーンPCRマスターミックス(Green PCR Master Mix)(Applied Biosystems)と共に、各PCR混合物に10分の1のcDNAを使用した。リアルタイムPCRは、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を使用して行われた。選択された遺伝子の相対的mRNA発現をβ-アクチンの発現に標準化し、ddCt方法を使用して定量化した。PCRプライマーの配列を下記の表6に羅列した。
【表6】
【0100】
実施例1-16:抗体中和分析
100μlの培地を含有する96-ウェルプレートに1×10cells/wellで癌及び正常細胞株をシーディングし、プレートを37℃で一晩中培養した。一晩中培養した後、細胞を37℃で一晩中抗-NCL抗体(Cell Signaling Technology、Beverly、MA、USA)の不在又は存在下で24時間にわたって培養した。培養後、製造社の指示に従ってCellVia WST-1アッセイ(Young In Frontier、Seoul、Korea)で細胞生存力を評価した。
【0101】
実施例1-17:アポトーシス(apoptosis)分析(アネキシンV)
アポトーシス細胞の定量的評価は、アネキシンV-FITC(fluorescein isothiocyanate)アポトーシス検出キットI(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)を使用して行われた。細胞を収集し、冷たいPBSで2回洗浄した後、結合バッファー(1×10cells/ml)に再懸濁させた。次に、100μlの懸濁液をチューブに移し、5μlのFITCアネキシンV及びPI(propidium iodide)と混合した。続いて、混合物を穏やかにボルテックス(vortexing)した後、暗室において15分間室温で培養した。培養後、400μlの1×結合バッファーを添加し、細胞に対してフローサイトメトリーで分析した。
【0102】
実施例1-18:細胞増殖分析
癌細胞及び正常細胞(1×10cells/well)を96-ウェルプレートにシーディングした。24時間にわたって培養した後、細胞を、増加する濃度のAGM-330、PTX及びAGM-330-PTXで48時間にわたって処理した。細胞生存力は、製造社の指示に従ってCellVia WST-1アッセイ(Young In Frontier)で評価した。生存細胞の数は、VersaMax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して450nmの波長で測定された。
【0103】
実施例1-19:腫瘍形成(Tumorigenesis)実験
全ての動物実験は、IACUC指針に従って行われた(GIST-2019-040)。腫瘍形成実験のために、麻酔された6週齢の雌NOD-scid Il2rg-/-マウス(NPGTM、VITALSTAR)を100μl体積の1×10MDA-MB-231-luc細胞がある乳腺脂肪パッドに接種した(n=5~6 for each group)。腫瘍細胞の接種後、腫瘍の体積が約100mmに到逹したとき、マウスを下記の5個の群に無作為に分けた:(i)対照群(control)、(ii)低用量のパクリタキセル(low-dose paclitaxel)(2mg/kg)、(iii)高用量のパクリタキセル(high-dose paclitaxel)(10mg/kg)、(iv)AGM-330(16.68mg/kg又は8.34mg/kg)、及び(v)AGM-330-PTX(19.05mg/kg又は10.71mg/kg)。週に二回腫瘍の大きさを測定し、次の式を用いて腫瘍の体積を計算した:
体積(mm)=(長さ(mm))×(幅(mm))×0.5
生物発光イメージング実験のために、D-ルシフェリン(150mg/kg)(PerkinElmer)をそれぞれのマウスの腹腔内に注射し、IVIS 100イメージングシステム(Xenogen、Corporation、Alameda、CA)を生物発光モニタリングに使用した。気体イソフルラン(BK Pharm、Ilsan、Korea)でマウスを麻酔させ、イメージングチャンバーに配置した。10分後、各動物を1分の露出時間でイメージングした。全ての生物発光イメージデータは、リビングイメージソフトウェア(バージョン4.5.2、PerkinElmer)によって提供された。腫瘍から検出された光子は、平均光度(photon/sec/cm/sr)に変換された。平均光度値は、強度領域(region of intensity;ROI)で得た定量的データであり、各マウスの全身に割り当てられた直四角形の領域で生物発光細胞によって放出された光子を含む。
【0104】
実施例1-20:生物情報学
Oncomine癌マイクロアレイデータベース(http://www.oncomine.org/)を使用し、正常乳房及び結腸直腸組織と乳癌腫及び結腸直腸腺癌腫組織でNCLの発現レベルを分析した。これらの遺伝子発現データはlog2変換され、中央値中心であった。全てのグラフィック及び統計値は、GraphPadプリズム5.0を用いて分析し、P-値は、スチューデントの両側t検定(two-tailed Student’s t-test)(P<0.05)によって計算された。R2プラットホームを使用し、カプランマイヤープロットを生成し、乳房腫瘍及び結腸直腸腫瘍でのNCL発現レベルによって患者をグループ化した。
【0105】
実施例1-21:統計分析
全ての統計データは、平均±SD(n=3)で表示された。二つのグループの間の統計的比較は、スチューデントのt検定(Student’s t test)によって決定され、多くのグループの間の比較は、一元配置分散分析とダネットの多重比較(one-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparison)によって決定された。in vivo実験の場合、マウスの数は各凡例に表示された。ログランク検定は、カプランマイヤー分析に使用された。*、**及び***は、それぞれP<0.05、P<0.01及びP<0.001を示す。
【0106】
実施例2:OBOC組み合わせスクリーニング及びMAP合成方法による癌-標的化ペプチドリガンドの同定及び特性確認
新しい癌-特異的ペプチドリガンドを同定するために、5gのTentagel MBNHレジン(200μm、520,000beads/g、図3)を使用して2,600,000個のライブラリを合成した。ビードに羅列されたペプチドライブラリ(一度に50,000個~100,000個のビードが使用される)をヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231)と混合した。合計~1,000,000個のビードをスクリーニングし、8個のポジティブビードを検出し、マイクロシーケンシングのために分離した。これらの8個のペプチドのうち3個(AGM-330、AGM-331及びAGM-332)は、MDA-MB-231に対して強い優先的な結合を示しており、ヒト正常乳房細胞株(MCF-10A)には結合しないか、弱く結合した(図4A図4B)。その次に、これらの3個のペプチドをFITC(fluorescein isothiocyanate)で標識し、MDA-MB-231細胞に結合できるか否かを確認した。AGM-331及びAGM-332と比較するとき、AGM-330で最も強い蛍光信号が検出された(図4C)。細胞成長ビード分析(cell-growth-on-bead assay)及び蛍光イメージングからスクリーニング結果を確認するために、AGM-330をTentagel MB NHレジンで再合成した。細胞成長ビードの分析結果、AGM-330ビードは、15分内にヒト乳癌細胞株(MCF7及びMDA-MB-231)とヒト結腸直腸癌細胞株(HT-29及びHCT-116)によって完全に覆われた(図4D)。一方、AGM-331及びAGM-332は、相対的に非特異的であり、ヒト正常乳房細胞株(MCF-10A)及びヒト正常結腸直腸細胞株(CCD-18Co)に結合した。また、AGM-330は、MCF-10A又はCCD-18Co細胞に非常に弱く結合したり、全く結合しなかったので、イメージング及び治療的標的化製剤の全てに対する優秀な候補になり得る。
【0107】
現在、安定性が低いので、治療剤としてのペプチドの使用は大きく制限されてきた:ペプチドは、in vivoで主にプロテアーゼ及びペプチダーゼによって分解される(Bottger R,et al.PLoS One.2017;12:e0178943)。本発明では、ペプチドリガンドの安定性を改善するために、MAPデンドリマー形態のAGM-330を合成し、これは、プロテアーゼ及びペプチダーゼ活性に対して獲得された抵抗性によって増加した安定性を示すことができる。AGM-330の合成(図4E)は、リシンコア-接合(lysine core-conjugated)Wangレジン(2、3)を作るために、20%ピペリジン及びDMFの存在下でFmoc-Cys(Trt)Wangレジン(1)及びFmoc-Lys(Fmoc)-OHで開示される。続いて、20%ピペリジンの存在下でRHGAMVYLK-PEG12-OHで処理し、Fmoc-及びTrt-保護されたAGM-330(4)を製造した。AGM-330(4)のFmoc-及びTrt-保護基は、DMFのピペリジンによって迅速に除去され、AGM-330(5)が製造された。
【0108】
選定されたペプチドリガンドAGM-330の生体内の安定性及び結合力の増進のために、MAP(Multiple Antigen Peptide)合成法を通じて二量体及び四量体の形態で合成した。
【0109】
ペプチド安定性の増進有無を評価するために、ペプチドのin vivo半減期を分析した。AGM-330m、AGM-330d、AGM-330t 2mg/kgをC57BL/6マウスの尾静脈を通じて注入し、残っている血清内のペプチド部分は、抗-AGM-330抗体を通じてELISAプレートに直ぐ固定させた。吸光度は、VersaMax ELISAプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して450nmの波長で測定され、薬物動態(Pharmacokinetics)は、フェニックスWinNonlin 8.1(Pharsight Corporation、Mountain View、CA、USA)プログラムで分析した。分析の結果、AGM-330m、AGM-330d、AGM-330tの半減期(T1/2)は、それぞれ0.42±0.33時間、1.82±0.36時間、9.43±1.21時間で、血中最大集中時間(Tmax)は、いずれも0.167時間であった。血中最大濃度(Cmax)は、それぞれ1.27±0.12μg/mL、1.71±0.11μg/mL、1.875±0.67μg/mLで、曲線下の面積(AUC)は、それぞれ0.64±0.09μg/h/mL、1.77±0.12μg/h/mL、21.42±0.81μg/h/mLであった(図5)。結果的に、四量体AGM-330(AGM-330t)は、単量体又は二量体ペプチドより高い安定性を有することが確認された。
【0110】
次に、MAPリガンドが癌細胞に選択的に結合できるか否かを調査するために、FITC-標識されたAGM-330(AGM-330-FITC)で処理された癌細胞を非処理細胞と比較した。AGM-330-FITCを無血清培地で37℃、2時間にわたって細胞(1×10)と培養し、接合体(conjugates)を完全に維持させた。その次に、固有蛍光ペプチド-処理された細胞を、非処理細胞に対して、平均蛍光強度(mean fluorescence intensity;MFI)の変化に基づいて比較・測定した(図4F)。その結果、AGM-330-FITCは、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29及びHCT-116に対する有意な癌細胞結合を示しており、これは、非処理細胞に比べて処理細胞のMFIが相対的に増加したことによって立証された通りである。対照的には、2時間培養した後、接合体は、MCF-10A及びCCD-18Coを含む正常細胞に対して著しく減少した結合を示した一方で、癌細胞に対しては強い優先的結合を示した。
【0111】
AGM-330が細胞毒性を示すか否かを調査するために、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29、及びHCT-116を含む多くの癌細胞と、MCF-10A及びCCD-18Coを含む各正常細胞でIC50値を評価した。AGM-330t及びAGM-330dのIC50値は、血清の濃度と関係なく、全ての細胞株で100μMより大きかった(図6)。これは、AGM-330が癌又は正常細胞株の細胞生存力に著しく影響を及ぼさないことを意味する。以上の内容をまとめると、前記各データは、AGM-330が標的細胞生存力に影響を及ぼさない状態で癌細胞の標的化に利用可能であることを示唆する。
【0112】
実施例3:AGM-330の潜在的標的である癌細胞成長の強力な調節因子NCL
AGM-330の未知の標的タンパク質を確認するために、親和性カラムクロマトグラフィー(affinity column chromatography)及び質量分析法ベースのプロテオミクス接近方式を使用し、MDA-MB-231細胞の細胞溶解物からAGM-330-相互作用タンパク質を確認した(図7A)。親和性カラムクロマトグラフィーを行った後、SDS-PAGE分析を通じて溶出分画にのみ存在する様々な別個のタンパク質バンド(55-100kDa)を確認した(図7B)。LC-MS/MS分析を使用して6個のタンパク質を確認し、これらの切除されたバンドのペプチド識別は、100kDaで主要なタンパク質バンドのうち一つがヌクレオリン(NCL)として特性化されたことを示した。NCLは710個のアミノ酸で構成され、LC-MS/MS分析によって識別された22個の他のペプチド断片は、NCLのアミノ酸配列と一致した(NCBIデータベースのヒトNCL(accession number:gi189306)に対する総スコア(total score)881及び24%のシーケンスカバレッジ(sequence coverage))(図7C-D)。また、抗-NCL抗体を使用した免疫ブロット分析を通じて、AGM-330親和性カラムでの溶出物でNCLの濃縮をさらに確認した(図7E)。よって、プロテオミクス研究は、NCLがAGM-330-相互作用タンパク質であることを示唆する。
【0113】
AGM-330のNCLに対する結合親和度を確認するために、AGM-330を使用してSPR(surface plasmone resonance)検定を行った。図8に示したように、K値が約57.7nMであって、NCLに対して非常に高い結合親和度を示すことを確認した。
【0114】
AGM-330とNCLとの間の相互作用に関与するドメインを調査するために、ビオチンプルダウン分析を使用した。ビオチン化AGM-330(AGM-330-ビオチン)を餌(bait)として使用し、NCL突然変異体をプルダウンさせた。NCLのいくつかの欠失突然変異体が生成された。これらは、いずれもGFPに融合された野生型及び多様なNCL突然変異体、NCL1(1-710)、NCL2(323-710)及びNCL3(1-322)をコーディングする発現ベクターで形質注入されたHEK293T細胞から細胞抽出物を製造した。AGM-330-ビオチンは、野生型NCL1(1-710)及びNCL3(1-322)をプルダウンさせたが、NCL2(323-710)はプルダウンさせなかった(図7F)。このような結果は、NCLのN-末端領域(1-322)がAGM-330の結合に重要であることを示す。AGM-330とNCLとの間の直接的な相互作用をさらに確認するために、精製されたNCL及びAGM-330-ビオチンをビオチンプルダウン分析に使用した。抗-NCL抗体を使用した免疫ブロット分析を通じて、溶出分画でNCLの濃縮を確認した(図9)。
【0115】
以上の内容をまとめると、AGM-330がNCLと直接相互作用することを意味する。
【0116】
実施例4:AGM-330とNCLとの相互作用に必須的なアミノ酸残基の確認
癌細胞(1×10cells/well)を96-ウェルプレートに24時間にわたって培養した。AGM-330及びPEG化させた前記表2の12種のペプチドをビオチン連結させ、細胞を、2時間にわたって増加する濃度の前記13種のペプチドで処理した。
【0117】
その後、高親和性アビジン-ビオチン相互作用を通じてアビジン-HRPを付着させ、HRP酵素を通じてTMB基質を青色に転換させた。その後、酸を添加することによって反応を終決させ、450mmでウェルを判読し、13種の親和度をELISAで評価した。
【0118】
PEG化された13種のペプチドの吸光度を図10に示した。配列番号9、10、11、14の4種のペプチドは、AGM-330と類似する吸光度を示した。また、配列番号12、13、15、20の4種のペプチドは、AGM-330より増進した吸光度を示した。5番のメチオニン(M5)残基のロイシン又はノルロイシンへの置換、7番のチロシン(Y7)残基のフェニルアラニンへの置換、及びC-末端への反復的なロイシン(L)及びリシン(K)残基の挿入が結合力を増進させた。よって、M5及びY7残基の疎水性アミノ酸への置換又はC-末端へのL及びKの挿入が結合力を向上できることを示唆する。
【0119】
しかし、配列番号16乃至配列番号19のペプチドは、AGM-330より減少した吸光度を示した。1番のアルギニン(R1)と2番のヒスチジン(H2)残基の欠失、N-末端への反復的なアルギニン(R)及びヒスチジン(H)残基の挿入、及び反転配列は結合力を減少させた。よって、R1及びH2を含めて、配列の方向性が保存されなければならないことを示唆する。
【0120】
実施例5:in vitro及びin vivoで癌細胞に特異的に結合するAGM-330
蛍光顕微鏡を使用して他の細胞株に対する細胞結合分析でNCLに対するAGM-330の特異性を評価した。実験は、多数の癌細胞株、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29及びHCT-116と、正常細胞株、MCF-10A及びCCD-18Coを用いて行った。5μmol/L AGM-330-FITCで細胞を1時間にわたって培養した後、共焦点イメージングによって結合特異性を確認した。細胞をDAPIと共に培養し、核(青色蛍光)を対照染色した。NCLのN-末端ドメインに結合する抗-NCL抗体及びAGM-330-FITCでの二重-免疫蛍光染色を通じて、AGM-330がNCLに結合することを示すNCLとAGM-330-FITCとの間の重畳を確認した(図11A-B)。
【0121】
次に、MCF-7、MDA-MB-231及びMCF-10A細胞でNCLの相対的な量及び細胞内の位置を確認し、NCLの発現レベル又は位置の差が癌細胞に対するAGM-330の感受性と関連しているか否かを確認した。細胞の準細胞分画(subcellular fraction)を分離し、ウェスタンブロッティングによって細胞内の総NCLのみならず、細胞基質(cytosol)、核及び細胞膜抽出物でのNCLの発現を分析した。その結果、NCL発現は、MCF-10A及びCCD-18Co細胞と比較して、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29及びHCT-116細胞の膜及び細胞質抽出物で上昇した(図11C図12A)。全ての細胞株において、NCLの核レベルの有意な差は観察されなかった。
【0122】
膜-発現NCLが癌細胞に対するAGM-330結合に決定的であるか否かを調査しようとした。NCLをノックダウンさせるために、特異的に標的化するsiRNAを使用した。NCLを標的とする3個のsiRNA(siNCL1、siNCL2及びsiNCL3)がNCL-ノックダウン細胞で相違する効能を示すことを確認した。siNCL1がMDA-MB-231細胞で最も高いノックダウン効能を示したので、追加実験のために選択した(図12B)。その次に、siNCL1処理後、癌細胞膜でNCL発現が減少するか否かを確認するために、siNCL1処理された細胞の準細胞分画を分離し、ウェスタンブロッティングを通じて細胞基質、核及び細胞膜抽出物でNCLの発現を分析した。その結果、siNCL1処理は、細胞基質及び細胞膜分画でNCLの基底発現を強力に抑制した(図11D)。NCLの発現レベル研究結果により、本発明者等は、膜NCLの発現減少がAGM-330結合に影響を及ぼすことを確認した。スクランブル(Scrambled)siRNA-処理細胞は、対照群と類似する蛍光信号を示した。しかし、減少したAGM-330結合により、siNCL1-処理群で蛍光信号がほとんど又は全く検出されなかった(図11E)。蛍光イメージングは、癌細胞の膜に結合する抗-NCL抗体とAGM-330-FITCが抗-NCL抗体蛍光と共に共局在化(colocalize)されることを示した(図11A-B)。また、突然変異分析を通じて、NCLのN-末端ドメインがNCLとAGM-330との間の相互作用を担当することを確認した(図7F)。前記各結果は、AGM-330が癌細胞膜で発現されるNCLと直接相互作用することを示唆する。
【0123】
次に、ヒト乳癌の異種移植モデルを使用して、in vivoイメージングを通じてAGM-330の癌-標的化特性を評価した(図11F)。AGM-330がin vivoで癌細胞を選択的に標的化できるか否かを調査するために、Alexa680で標識されたAGM-330(AGM-330-Alexa680)が処理された腫瘍-保有マウス(tumor-bearing mice)をAleax680単独処理されたマウスと比較した。1時間後、AGM-330-Alexa680分画腫瘍の近赤外線蛍光(near-infrared fluorescent;NIRF)強度は、対照群の腫瘍より有意に高かった:(対照群)3.04×10±1.38 10(p/sec/cm/sr)/(μW/cm)に比べて、(AGM-330-Alexa680)1.19×10±1.90 10(p/sec/cm/sr)/(μW/cm)、n=3、P<0.001(図11G-I)。また、2時間目に腫瘍及び他の主要臓器でAGM-330-Alexa680とAlexa680単独の注射容量百分率を分析し、接合蛍光(conjugated fluorescent)分布に対するAGM-330の効果を定量的に調査した。腎臓と肝を除いては、腫瘍組織で各器官のグラム当たりのNIRF光子の総数は、他の器官の場合よりも遥かに高く、これは、AGM-330の腫瘍-標的化特性が対照群の場合よりも遥かに高いことを示す決定的な証拠である(図11J)。以上の内容をまとめると、NIRFイメージは、AGM-330がin vivoで正常な器官でない腫瘍組織の全体に主に蓄積されることを示す。
【0124】
実施例6:NCLと癌進行との間の正の相関関係及び抗-NCL抗体の膜NCL中和を通じた細胞増殖抑制効果の確認
前記各実施例に基づいて、癌細胞株でNCL発現パターンを確認した。ヒト癌組織でのNCL発現を調査するために、Oncomineデータセットレポジトリ(dataset repository)(www.oncomine.org)を使用して、利用可能な乳癌及び結腸直腸癌データセットを分析した。144個の1次乳房組織に比べて、67個の乳癌腫でNCLが相対的に発現することをCurtisデータセットで分析した。NCL mRNA発現は、正常乳房組織と比較して乳癌腫で有意に上向き調節された(P<0.001、図13A)。また、Alonデータセットにおいて、NCL mRNAの発現は、結腸直腸腺癌腫で正常組織より有意に高かった(P<0.01、図13A)。その次に、本発明者等は、乳癌と結腸直腸癌の患者において、高いNCL発現が、疾病のない低い生存率などの不良な予後と関連していることを確認した(Bertucci and Sveen dataset from ‘R2:Genomics Analysis and Visualization platform(http://r2.amc.nl)’)(図13B)。これは、乳癌及び結腸直腸癌の患者において、高いNCL発現が、不良な予後マーカーとしての役割をするという以前の報告書と一致する(van Long FN,et al.Cancers.2018;10:390)。ヒト癌及び正常組織でのNCL発現分布を決定するために、免疫組織化学(immunohistochemistry;IHC)分析でNCL発現を分析した。IHC分析を通じて、NCLが正常乳房及び結腸直腸組織と比較してヒト乳癌及び結腸直腸癌組織の膜及び細胞質領域で増加したことが明らかになり(図13C-D)、これは、免疫蛍光イメージング(図11A-B)及びウェスタンブロッティング(図11C)の結果と一致する。また、以前の報告書によると、上向き調節された膜NCLが、癌増殖及びアポトーシスの抑制に関与するリガンドに対する受容体として相互作用することが明らかになった(Chen SC,et al.Oncotarget.2015;6:16253-70)。これによって、膜発現NCLが癌細胞での機能調節に必須的であるか否かを調査するために、本発明者等は、in vitro MDA-MB-231とHCT-116細胞及びMCF-10AとCCD-18Co細胞で単一クローン抗-NCL抗体を使用して膜発現NCLを中和させた。まず、24時間にわたって相違する濃度で抗体で処理された正常及び癌細胞において細胞生存力を評価した。NCL抗体(50μg/ml)の処理時、MDA-MB-231及びHCT-116細胞で細胞生存率がそれぞれ35%と32%減少したが、対照群及びIgG処理群と比較して、正常細胞では有意な減少が観察されなかった(MCF-10A及びCCD-18Co)(図13E-H)。また、癌細胞に対する抗-NCL抗体の細胞毒性効果の原因を調査するためにアポトーシス分析を行った。24時間にわたって相違する濃度で抗体で処理したMDA-MB-231及びHCT-116細胞は、アネキシンV及びPIを使用して染色した。フローサイトメトリーによると、初期及び後期アポトーシス段階で癌細胞の百分率が抗-NCL抗体濃度-依存的方式で増加した(図13I)。
【0125】
本発明者等は、多様な類型の癌の膜と細胞質でNCLが過剰発現され、NCLの過剰発現が癌患者の不良な予後生存と関連していることを確認した。前記各結果は、特に癌細胞増殖及びアポトーシスの制御側面で、癌細胞でのNCL膜部分に対する重要な役割を説明する。以上の内容をまとめると、前記各結果は、NCLが癌成長に重要な役割をし、膜NCL標的化が、化学療法薬物を用いた癌治療と関連して有望なバイオマーカーになり得ることを示唆する。
【0126】
実施例7:パクリタキセル-接合AGM-330のin vitro及びマウス異種移植モデルでの効果的な癌成長抑制効果の確認
パクリタキセル(PTX)をAGM-330と接合させ、よく確立された化学療法剤に連結された癌-標的リガンド(AGM-330-PTX)を得た。PTXは、マレイミド-カルボキシ二官能性リンカーと直交接合(orthogonal conjugation)された。AGM-330t-PTXが癌細胞増殖を抑制するか否かを調査するために、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29及びHCT-116を含む多くの癌細胞株でIC50値を評価した(図14A)。MDA-MB-231細胞において、PTX単独及びAGM-330t-PTXに対するIC50値は、それぞれ6.8μM及び3.6μMであった。結果は、3つの癌細胞株の全てにおいて類似していた(MCF-7、HCT-116及びHT-29)。しかし、MCF-10A細胞において、PTX単独及びAGM-330t-PTXに対するIC50値は、それぞれ22.1μM及び35.3μMであった。
【0127】
癌細胞株でのin vitro増殖分析により、AGM-330t-PTXが潜在的なin vivo治療剤になり得るか否かを調査した。NPGマウスの乳腺脂肪パッドにMDA-MB-231-luc細胞を接種した。皮下腫瘍が100mmに成長した後、尾静脈注射で週に2回それぞれビヒクル(PBS)、AGM-330t(16.68mg/kg)、PTX(それぞれ2mg/kg及び10mg/kg)、AGM-330t-PTX(19.05mg/kg)を処理した5個の群(n=5/グループ)に動物を分け、比較効能研究を行った(図14B)。3週にわたってキャリバールール(caliber rule)で週に2回体積を測定することによって、腫瘍成長をモニタリングした。ビヒクル(PBS)-処理マウス及びAGM-330-処理マウスは、腫瘍の平均体積で有意な差を示しておらず、これは、in vitro実験と一致する。しかし、AGM-330t-PTX(807±90mm for 19.05mg/kg、n=5)処理マウスの腫瘍の平均体積は、同一の容量のPTX(1671±199mm for 2mg/kg、n=5、P<0.001)処理動物に比べて約52%減少した。また、AGM-330t-PTX-処理マウスは、day 21にPTX-処理マウスの5倍増加した容量と比較して向上した薬物効能を示した(988±78mm for 10mg/kg、n=5、P<0.05)(図14C-D)。前記結果と一致して、AGM-330t-PTX(1.3±0.1g for 19.05mg/kg)処理マウスの腫瘍の最終平均重さは、PTX(それぞれ2.1±0.4g for 2mg/kg及び1.5±0.1g for 10mg/kg、n=5)に比べて著しく減少した(図14E)。
【0128】
また、切除された腫瘍の組織学的染色を行い、独立的な病理学者がスライドを評価した。それぞれH&E染色、Ki-67及びTNEL分析によって立証されたように、AGM-330t-PTX-処理マウスから切除された中間腫瘍は、癌性細胞数の減少及びアポトーシス細胞核の増加を示した(図14F-I)。対照的に、ビヒクル(PBS)-及びAGM-330t-処理腫瘍は、さらに多くの数の腫瘍細胞を含有しており、アポトーシスの兆候はほとんどなかった。また、マウスの体重は、ビヒクル(PBS)投与と比較してAGM-330t-PTX投与によって影響を受けておらず、血液化学分析は、AGM-330t-PTX-処理マウスで毒性の有害な兆候を示さなかった(図15A-F)。よって、このような発見は、AGM-330の腫瘍特異性が、検出可能な副作用なしでPTXの効能を向上できることを示唆する。結果的に、本発明に係るAGM-330は、癌治療に対する潜在的な治療薬物伝達体になり得ることを示唆する。
さらに、PEG化免疫原性の影響を減少させるために、AGM-330tよりPEG化程度の低いAGM-330d-PTXを使用して抗癌効能を試験した(図16A)。その結果、AGM-330d-PTX-処理マウスは、PTX-処理マウスと比較してルシフェラーゼ活性の劇的な減少を示した(図16C-D)。また、AGM-330d-PTX処理によると、PTX-処理群と比較して腫瘍の体積及び重量が著しく減少した(図16E-G)。AGM-330-PTXと同様に、マウスの体重は、ビヒクル(PBS)投与と比較してAGM-330d-PTX投与によって影響を受けなかった(図16H)。AGM-330dの癌特異性は、PTXの効能を向上させ、腫瘍組織で治療薬物の濃度を増加させることができる。
【0129】
実施例8:AGM-330とCPPとが結合された融合ペプチドの合成
AGM-330の細胞透過性を増加させるために、細胞透過性ペプチド(Cell Penetrating Peptide;CPP)を結合させ、融合ペプチドを製作した。
AGM-330tにマレイミドと結合したCPP(RIMRILRILKLAR;配列番号48)をpH7.0~7.5で反応させると、AGM-330tの官能基であるチオール基とチオール-マレイミド反応によって結合され、AGM-330t-mCPP融合ペプチドが合成される(図17)。
【0130】
製作されたAGM-330t-mCPP融合ペプチドのHPLC及びMS分析結果、保持時間(retention time)23.2分及び分子量7876Daであることを確認し、AGM-330t、マレイミド-mCPPの分析結果と共に図18に示した。
【0131】
実施例9:AGM-330とCPPとが結合された融合ペプチドの細胞毒性の確認
実施例8で製作されたAGM-330t-mCPP融合ペプチドの細胞毒性を調査するために、MCF-7、MDA-MB-231、HT-29、HCT-116及びPANC-1を含む多くの癌細胞とCCD-18Coの正常細胞でIC50値を評価した(表7)。
【表7】
【0132】
AGM-330t-mCPP融合ペプチドのIC50値は、大腸癌細胞株HT-29及びHCT-116に対してそれぞれ7.829μM及び4.714μM、乳癌細胞株MCF-7及びMDA-MB-231に対してそれぞれ7.173μM及び20μM以上を示した(図19)。これは、AGM-330t-mCPP融合ペプチドが癌細胞特異的な抑制効果を有することを意味する。
【0133】
実施例10:AGM-330とCPPとが結合された融合ペプチドのin vitro癌細胞アポトーシス(apoptosis)誘導効果の確認
実施例8で製作されたAGM-330t-mCPP融合ペプチドの癌細胞アポトーシス誘導効果を調査するために、48時間にわたってCPP、AGM-330t及びAGM-330t-CPPで処理したHCT-116、HT-29及びCCD-18Co細胞をアネキシンV及びPIを使用して染色した。その結果、癌細胞特異的アポトーシス誘導効果を確認し(図20)、AGM-330t-mCPPの濃度別の実験結果、濃度-依存的方式でアポトーシス促進タンパク質が増加することを確認した(図21)。
【0134】
実施例11:AGM-330及びAGM-330-CPP併用効果の確認
実施例8のような方法によって製作されたAGM-330m-mCPP、AGM-330d-dCPP及びAGM-330t-tCPP融合ペプチドのそれぞれとこれらの組み合わせの細胞毒性を調査するために、HCT-116、HT-29、MCF-7及びMDA-MB-231でIC50値を評価した。
【0135】
AGM-330m-mCPP、AGM-330d-dCPP及びAGM-330t-tCPP融合ペプチドのIC50値は、大腸癌細胞株HCT-116に対してそれぞれ23.3μM、5.47μM及び3.79μMを示し、HT-29に対してそれぞれ20.67μM、3.75μM及び3.3μMを示す一方で、乳癌細胞株MCF-7に対してそれぞれ>20μM、4.208μM及び3.802μMを示し、MDA-MB-231に対してそれぞれ>20μM、3.843μM及び3.497μMを示した(図22)。結果的に、AGM-330-CPP融合ペプチドが癌細胞特異的抑制効果を有することを確認することができる。
【0136】
AGM-330m及びAGM-330m-mCPP、AMG-330d及びAGM-330d-dCPP、そして、AGM-330t及びAGM-330t-tCPP融合ペプチドの併用時、IC50値は、大腸癌細胞株HCT-116に対してそれぞれ14.3μM、4.25μM及び3.15μMを示し、HT-29に対してそれぞれ14.2μM、4.76μM及び3.05μMを示す一方で、乳癌細胞株MCF-7に対してそれぞれ18.7μM、3.416μM及び3.309μMを示し、MDA-MB-231に対してそれぞれ14.7μM、3.662μM及び3.258μMを示した(図23)。結果的に、AGM-330及びAGM-330-CPPの併用時にも、癌細胞特異的抑制効果を示すことを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明では、MAP合成方法及びOBOC組み合わせ方法を使用してスクリーニングしたAGMペプチドリガンド及びその変異体が癌細胞に特異的に結合し、抗癌剤との接合体が癌成長を抑制することを確認した(in vitro及びin vivo)。よって、NCL-標的化AGMは、癌治療法で診断及び標的薬物伝達に有用に利用可能である。
【0138】
以上では、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は好ましい実施様態に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言えるだろう。
図1
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図20
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図22
図23
【配列表】
2023526457000001.app
【国際調査報告】