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特表2023-526466燃料ガス供給システム及び高圧ガスインジェクションエンジンに燃料ガスを供給するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】燃料ガス供給システム及び高圧ガスインジェクションエンジンに燃料ガスを供給するための方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230614BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570659
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063141
(87)【国際公開番号】W WO2021233915
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】20175575.8
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20175873.7
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592229502
【氏名又は名称】ブルクハルト コンプレッション アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】シュロート、ローマン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172EA03
3E172HA04
(57)【要約】
液化ガスタンク(3)、好ましくはLNGタンクに貯蔵されているガスを高圧ガスインジェクションエンジン(2)に供給するための燃料ガス供給システム(1)であって、液化ガス(F1)が前記液化ガスタンク(3)から供給される高圧ポンプ(5)と、高圧熱交換器(13)が配置されている凝縮器(6)と、前記高圧ポンプ(5)に対して前記高圧熱交換器(13)を介して接続されており、前記凝縮器(6)の下流に配置されている高圧気化器(7)であって、前記ガスは前記高圧気化器(7)の下流において前記高圧ガスインジェクションエンジン(2)に対して供給される、高圧気化器(7)と、ボイルオフガス(F2)が前記液化ガスタンク(3)から供給される圧縮器(9)であって、入口(15d)を介して前記凝縮器(6)へと下流に接続されており、前記ボイルオフガス(F2)を前記凝縮器(6)の中に導入する、圧縮器(9)と、液体ガス(F1)が前記高圧ポンプ(5)から供給される凝縮核発生器(10)と、を備え、前記凝縮核発生器(10)と、前記入口(15d)とは、互いに前記凝縮器(6)に配置されていて、前記凝縮器(6)において前記凝縮核発生器(10)によって発生する前記凝縮核は、供給された前記ボイルオフガス(F1)の凝縮を促進することによって、前記凝縮核から液体ガス(F1)が形成されるように構成されているとともに、前記凝縮器(6)において形成される前記液体ガス(F1)が前記高圧ポンプ(5)、前記液体ガスタンク(3)、又はその両方に対して供給されるように構成されている、燃料ガス供給システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスタンク(3)、特にLNGタンクに貯蔵されているガスを高圧ガスインジェクションエンジン(2)に供給するための燃料ガス供給システム(1)であって、
液化ガス(F1)を前記液化ガスタンク(3)から供給して高圧液化ガスに圧縮するために、前記液化ガスタンク(3)に対して流体連通するように接続可能な高圧ポンプ(5)と、
高圧熱交換器(13)が配置されている凝縮器(6)と、
前記高圧ポンプ(5)に対して前記高圧熱交換器(13)を介して流体連通するように接続されており、前記凝縮器(6)の下流に配置されている高圧気化器(7)であって、前記高圧気化器(7)は前記高圧液体ガスを高圧燃料ガスに変換して、前記高圧燃料ガスは前記高圧気化器(7)の下流において前記高圧ガスインジェクションエンジン(2)に対して供給される、高圧気化器(7)と、
前記液化ガスタンク(3)からボイルオフガス(F2)を供給するように前記液体ガスタンク(3)に対して流体連通するように接続可能である圧縮器(9)であって、入口(15d)を介して前記凝縮器(6)の内部スペース(6d)へと下流に流体連通するように接続されており、前記ボイルオフガス(F2)を前記内部スペース(6d)の中に導入する、圧縮器(9)と、
前記高圧ポンプ(5)へと上流に流体連通するように接続されている凝縮核発生器(10)と、を備え、前記凝縮核発生器(10)は、前記高圧液体ガスから液体ガスの液滴(10a)を発生させ、該液滴は凝縮核として働き、前記凝縮核発生器(10)は、導入された前記ボイルオフガス(F2)の凝縮を前記凝縮核を介して促進するために、前記凝縮核を前記内部スペース(6d)の中に導入し、それによって、前記凝縮核から液化ガス(F1)が形成されるように構成されているとともに、前記凝縮器(6)において形成される前記液化ガス(F1)が前記高圧ポンプ(5)、前記液化ガスタンク(3)、又はその両方に対して供給されるように構成されている、燃料ガス供給システム。
【請求項2】
供給された前記ボイルオフガス(F2)と熱交換する熱交換器(8)が、前記圧縮器(9)の上流に配置されており、前記凝縮核発生器(10)は、前記熱交換器(8)が供給される前記高圧液体ガスと熱交換するために、前記熱交換器(8)へと、また続いて前記高圧ポンプ(5)へと上流に流体連通するように接続されている、請求項1に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項3】
供給された前記ボイルオフガス(F2)と熱交換する熱交換器(8)が、前記圧縮器(9)の上流に配置されており、前記圧縮器(9)は、前記熱交換器(8)が前記圧縮器(9)によって圧縮される前記ボイルオフガス(F2)と熱交換するために、前記熱交換器(8)へと上流に流体連通するように接続されている、請求項1に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項4】
上方からの前記ボイルオフガス(F2)の前記入口(15d)は、前記凝縮器(6)の中へ入り、前記高圧熱交換器(13)は前記凝縮器(6)内部において垂直方向に延在しており、前記高圧熱交換器(13)は、前記高圧液体ガスが高圧熱交換器(13)の底部から頂部へと流れるように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項5】
前記凝縮核発生器(10)は、1つ以上の高圧ノズルを有し、好ましくはノズル直径が1~1000μmの範囲、特に好ましくは5~500μmの範囲の高圧ノズルを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項6】
前記凝縮核発生器(10)は、前記凝縮核発生器(10)によって発生する凝縮核(10a)が、前記凝縮器(6)の前記内部スペース(6d)における凝縮部分(6a)の中に導入されるように配置されており、前記内部スペース(6d)は凝縮温度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項7】
前記凝縮核発生器(10)は、前記液体ガス(F1)の流れる方向における前記高圧熱交換器(13)の冷却ラインの始めから半分、好ましくは始めから3分の1において、前記凝縮核が前記凝縮器(6)の前記内部スペース(6d)に入るように配置されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項8】
ボイルオフガス(F2)の一時的な貯蔵のための貯蔵タンク(14)が前記液化ガスタンク(3)の下流に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項9】
前記高圧ポンプ(5)は、少なくとも第1の高圧ポンプ(5a)と第2の高圧ポンプ(5b)とを備え、前記第1の高圧ポンプ(5a)は、前記凝縮核発生器(10)に対して流体連通するように接続されているとともに、前記高圧熱交換器(13)を介して前記高圧気化器(7)に対して流体連通するように接続されており、前記第2の高圧ポンプ(5b)は、前記高圧気化器(7)に対して流体連通するように接続されており、前記高圧熱交換器(13)を迂回する、請求項1~8のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項10】
前記第1の高圧ポンプ(5a)は、液化ガス(F1)を供給するように、前記液化ガスタンク(3)に対して流体連通するように接続されており、前記第2の高圧ポンプ(5b)は、前記凝縮器(6)に蓄積されている液化ガス(F1)を前記第2の高圧ポンプ(5b)に供給するように、前記凝縮器(6)の出口(6e)に対して流体連通するように接続されている、請求項9に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項11】
前記第2の高圧ポンプ(5b)は、前記凝縮器(6)の前記出口(6e)と、前記液化ガスタンク(3)と、に対して流体連通するように接続されており、バルブ(25f,25g)は、前記凝縮器(6)から供給される前記液化ガス(F1)の一部と、前記液化ガスタンク(3)から供給される前記液化ガス(F1)の一部と、を制御するように提供されている、請求項10に記載の燃料ガス供給システム(1)。
【請求項12】
液化ガスタンク(3)、特にLNGタンクに、一部は液化ガス(F1)として、また一部は気化ガス(F2)として貯蔵されているガスを、高圧ガスインジェクションエンジン(2)に供給するための方法であって、
前記液化ガス(F1)が前記液化ガスタンク(3)から高圧ポンプ(5)に対して供給されて、前記高圧ポンプ(5)によって高圧液化ガスに圧縮される工程と、
前記高圧液体ガスが、次いで凝縮器(6)に配置されている高圧熱交換器(13)に対して供給され、続いて高圧気化器(7)に対して供給される工程と、
前記高圧液体ガスが、前記高圧気化器(7)において高圧燃料ガスに変換される工程であって、前記ボイルオフガス(F2)を前記液化ガスタンク(3)から圧縮器(9)に対して供給し、次いで前記凝縮器(6)の中に導入することによって、前記高圧ガスインジェクションエンジン(2)に対して供給される高圧の燃料ガスが生成される工程と、
凝縮核発生器(10)において高圧液化ガスから液化ガスの液滴の形態の凝縮核の流れを発生させる工程であって、前記液化ガスの液滴によって前記ボイルオフガス(F2)の液化ガス(F1)への凝縮を促進するために、前記凝縮器(6)において、導入される前記ボイルオフガス(F2)に対して核を供給する工程と、
前記凝縮器(6)において形成される前記液化ガス(F1)が、前記高圧ポンプ(4)、前記液化ガスタンク(3)、又はその両方に対して供給される工程と、を備える、方法。
【請求項13】
前記凝縮核発生器(10)において発生する液体ガスの液滴の形態の凝縮核の前記流れは、前記凝縮器(6)において、導入される前記ボイルオフガス(F2)に対して供給され、凝縮される前記ガスの質量流量に基づいて1~5%の質量流量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記液体ガス(F1)は前記凝縮器(6)において前記高圧熱交換器(13)の底部から頂部に搬送され、前記ボイルオフガス(F2)は前記凝縮器(6)において頂部から底部に向流により搬送される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記凝縮器(6)の内部スペース(6d)に、前記ボイルオフガス(F2)が前記液体ガス(F1)の沸点未満の温度を有する凝縮部分(6a)が発生し、
過冷却された液体ガスの液滴(10a)の形態にある前記凝縮核が、前記凝縮部分(6a)の中へ噴霧される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
発生した前記凝縮部分には、-140℃~-80℃、好ましくは-120℃~-100℃の温度と、絶対圧0.5~3MPa(5~30bara)、好ましくは絶対圧1~2MPa(10~20bara)の圧力が存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記高圧ポンプ(5)又は前記高圧ポンプの下流から高圧液体ガスの側流が引き抜かれ、
前記側流は、熱交換器(8)において冷却され、
前記液化ガスタンク(3)から放出されるボイルオフガス(F2)は、前記熱交換器(8)において同時に加熱され、
前記ボイルオフガス(F2)は、前記熱交換器(8)の下流において前記凝縮器(6)に対して供給され、
前記高圧液化ガスは、前記熱交換器(8)の下流において前記凝縮核発生器(10)に対して供給される、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記高圧液体ガスは、絶対圧15MPa~40MPaの範囲の圧力に圧縮される、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~11のいずれか一項に記載の燃料ガス供給システム1を備える商船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス供給システムに関する。本発明は、燃料ガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給する方法に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、ますます重要になっているエネルギー源である。商船では、天然ガスは、ボイルオフガスの純度及び温室効果ガス削減に関する船舶業に対する新たに適用可能な要件を満たすための代替燃料としてますます用いられるようになっている。燃料として用いられている天然ガスは、典型的に船舶上に、液化天然ガス、又は略してLNG等の液体形態で、ほぼ大気圧かつ約-163℃の温度でLNGタンクに貯蔵されている。液化天然ガスの沸点は大気圧で約-162℃と低いため、LNGタンクに外部から作用している熱は、絶えず液体ガスを気化させる。これがボイルオフガス(BOG)としてLNGタンクの上部に蓄積し、LNGタンクの圧力上昇を引き起こす。係る圧力上昇を打ち消すために、BOG再液化装置を提供することが知られている。BOG再液化装置は、ボイルオフガスを液化して、液化ガスとしてLNGタンクに戻す。別の可能性は、ボイルオフガスを船舶の推進燃料として直接用いることである。係る目的のために、天然ガスは高圧燃料ガスを形成するように、例えば、絶対圧15~30MPa又は40MPa(150~300bara又は400bara)の範囲の高い圧力に圧縮されて、高圧ガスインジェクションエンジンに対して供給される。そうしたエンジンは、例えば、MAN-SE社によってME-GIエンジンの名称のもとに売られている。そうしたエンジンは、好ましくは商船の主要な推進システムを形成する。
【0003】
特許文献1は、液化天然ガスタンカーの高圧ガスインジェクションエンジンエンジンに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給システムを開示する。係るシステムによって、LNGタンクに貯蔵されている天然ガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給可能であるような高い圧力に圧縮することが可能になる一方、係るシステムによって、必要であればボイルオフガスを再液化して、続いてそれを高圧ガスインジェクションエンジン及び/又はLNGタンクに供給することによって、LNGタンクの過度の圧力上昇を防ぐことが可能になる。特許文献1に開示されている燃料ガス供給システムは、比較的複雑で高価であることと、再液化のために外部の冷却回路を用いることと、作動するためにかなりの量のエネルギーを必要とすることと、という欠点を有する。
【0004】
特許文献2は、気化ガスの液化、再液化又は利用を制御することによって余分な気化ガスをリサイクルするための方法を示す。該方法は、気化ガスを液化する工程と、液化ガスをガス貯蔵タンクに選択的に戻す工程、又は液化ガスを第1及び第2のバルブを通じて液化ガス気化器に選択的に供給する工程と、を備える。所与の量の液化ガスが、温度、圧力、及び流量を制御することによって燃料としての送達に適しているように、液化ガス気化器で気化される。さらに、該方法は、気化されたガスを推進システムの燃料として供給する工程と、液化され、気化されたガスを回収する工程、又は第1、第2、第3、及び第4のバルブを開放/閉止して、気化されたガスの少量を燃焼する工程と、を備える。係るシステムでは、注入される過冷却されたLNGの特定の熱容量が、BOGを再液化するために用いられる。しかしながら、これは低圧のシステムであり、燃料ガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給するのには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0030149号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-0726290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経済的により有利な燃料ガス供給システムを形成することが、本発明の課題である。その上、高圧ガスインジェクションエンジンに燃料ガスを供給するための経済的により有利な方法を形成することが、本発明の課題である。係る課題は、請求項1の特徴を有する燃料ガス供給システムで解決される。従属項2~11は、さらに、有利な実施形態に関係する。課題は、さらに、請求項12の特徴を備える方法で解決される。従属項13~18は、さらに、有利な方法ステップに関係する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題は、以下のような燃料ガス供給システムで特に解決される。
すなわち、液化ガスタンク、特にLNGタンクに貯蔵されているガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給するための燃料ガス供給システムであって、
液化ガスを前記液化ガスタンクから供給して高圧液化ガスに圧縮して、高圧液体ガスとしてそれぞれ提供するために、前記液化ガスタンクに対して流体連通するように接続可能な高圧ポンプ(好ましくは、低圧ポンプを介して接続可能である)と、
高圧熱交換器が配置されている凝縮器と、
前記高圧ポンプに対して前記高圧熱交換器を介して流体連通するように接続されており、前記凝縮器の下流に配置されている高圧気化器であって、前記高圧気化器は前記高圧液体ガスを高圧燃料ガスに変換して、前記高圧燃料ガスは前記高圧気化器の下流において前記高圧ガスインジェクションエンジンに対して供給される、高圧気化器と、
前記液体ガスタンクからボイルオフガスを供給するように前記液体ガスタンクに対して流体連通するように接続可能である圧縮器であって、前記ボイルオフガスを前記内部スペースの中に導入するように入口を介して下流の前記凝縮器の内部スペースに流体連通するように接続されている、圧縮器と、
前記高圧ポンプへと上流に流体連通するように接続されている凝縮核発生器と、を備え、前記凝縮核発生器は、前記高圧液体ガスから液体ガスの液滴を発生させ、該液滴は凝縮核として働き、前記凝縮核発生器は、導入された前記ボイルオフガスの凝縮を前記凝縮核を介して促進するために、前記凝縮核を前記内部スペースの中に導入し、それによって、前記凝縮核から液体ガスが形成されるように構成されているとともに、前記凝縮器において形成される前記液体ガスが前記高圧ポンプ、前記液体ガスタンク、又はその両方に対して供給されるように構成されている、燃料ガス供給システムで特に解決される。
【0008】
課題は、以下のような燃料ガス供給システムでさらに解決される。
すなわち、液化ガスタンクに貯蔵されているガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給するための燃料ガス供給システムであって、
液化ガスが前記液化ガスタンクから供給される高圧ポンプと、
高圧熱交換器が配置されている凝縮器と、
前記高圧ポンプに対して前記高圧熱交換器を介して接続されており、前記凝縮器の下流に配置されている高圧気化器であって、前記ガスは前記高圧気化器の後で前記高圧ガスインジェクションエンジンに対して供給される、高圧気化器と、
ボイルオフガスが前記液化ガスタンクから供給される圧縮器であって、入口を介して前記凝縮器へと下流に接続されており、前記ボイルオフガスを前記凝縮器の中に導入する、圧縮器と、
液体ガスが前記高圧ポンプから供給される凝縮核発生器と、を備え、前記凝縮核発生器と、前記入口とは、互いに前記凝縮器に配置されていて、前記凝縮核発生器によって発生する前記凝縮核は、供給された前記ボイルオフガスの前記凝縮器における凝縮を促進することによって、前記凝縮核から液化ガスが形成されるように構成されているとともに、前記凝縮器において形成される前記液化ガスが前記高圧ポンプ、前記液化ガスタンク、又はその両方に対して供給されるように構成されている、燃料ガス供給システムでさらに解決される。
【0009】
課題は、以下のような方法で特に解決される。
すなわち、ガスを高圧ガスインジェクションエンジンに供給するための方法であって、前記ガスは、液化ガスタンクに、一部は液化ガスとして、また一部は気化ガスとして貯蔵されており、
前記液化ガスが前記液化ガスタンクから高圧ポンプに対して供給されて、前記高圧ポンプによって高圧液化ガスに圧縮される工程であって、前記高圧液体ガスが、次いで凝縮器に配置されている高圧熱交換器に対して供給され、続いて高圧気化器に対して供給され、前記高圧液体ガスが、前記高圧気化器において高圧燃料ガスに変換されて、前記高圧ガスインジェクションエンジンに対して供給される高圧の燃料ガスが生成される工程と、
前記液化ガスタンクからの前記ボイルオフガスは圧縮器に対して供給され、次いで前記凝縮器の中に導入される工程であって、液化ガスの液滴の形態の凝縮核の流れは凝縮核発生器において高圧液化ガスから発生し、前記液化ガスの液滴によって前記ボイルオフガスの液化ガスへの凝縮を促進するために、前記凝縮器において、導入される前記ボイルオフガス(F2)に対して核を供給する工程と、
前記凝縮器において形成される前記液化ガスが、前記高圧ポンプ、前記液化ガスタンク、又はその両方に対して供給される工程と、を備える、方法で特に解決される。
【0010】
その上、課題は、以下のような方法でさらに解決される。
すなわち、液化ガスタンクに、一部は液化ガスとして、また一部は排気ガスとして貯蔵されているガスを、高圧ガスインジェクションエンジンに供給するための方法であって、
前記液化ガスが前記液化ガスタンクから高圧ポンプに対して供給され、次いで凝縮器に配置されている高圧熱交換器に対して供給され、続いて高圧気化器に対して供給されて、前記高圧ガスインジェクションエンジンに対して供給される高圧の燃料ガスが生成される工程と、
前記ボイルオフガスを圧縮器に対して供給し、次いで前記凝縮器の中に導入する工程と、
前記ボイルオフガスの液体ガスへの凝縮を促進するために、前記凝縮器において、導入される前記ボイルオフガスに対して凝縮を供給する工程と、
前記凝縮器において形成される前記液体ガスが、前記高圧ポンプ、前記液体ガスタンク、又はその両方に対して供給される工程と、を備える、方法でさらに解決される。
【0011】
本発明に従った燃料ガス供給システムは、凝縮器を用いて、ボイルオフガスを液体ガスに凝縮する。係る目的のために、凝縮核は、凝縮核発生器を採用して、液体ガスから発生する。そしてその凝縮核は、凝縮器内部で凝縮器の内部スペースに位置するボイルオフガスと接触するようになり、ボイルオフガスは凝縮核に付着して、それによって液体ガスに凝縮する。凝縮核は、好ましくは、ノズル(特に、スプレーノズル)を通過した高圧液体ガスによって発生するように、凝縮核として働く複数の液体液滴がノズルによって発生する。本発明に従った燃料ガス供給システムは、凝縮が比較的低い圧力で起きるという強みを有する。例えばLNGでは絶対圧5MPa(50bara)未満の範囲、好ましくは絶対圧2~3MPa(20~30bara)の範囲、さらに特に好ましくは絶対圧1~2MPa(10~20bara)の範囲の圧力で起きる。そして本発明に従った燃料ガス供給システムは、凝縮物又は液体ガスは比較的低い温度で生成されるという強みを有する。例えば-120℃未満の温度、さらに好ましくは-120℃~-150℃の範囲の温度で生成される。絶対圧2MPa(20bara)未満の圧力は、2段圧縮器がボイルオフガスF2を圧縮器9で圧縮するのに十分であるという強みを有する。絶対圧4~5MPa(40~50bara)の範囲の圧力では、3段圧縮器9が必要である。コストの理由のために、2段圧縮器9又は、絶対圧1~2MPa(10~20bara)の範囲での排気ガスF2の圧縮が特に好まれる。凝縮中の凝縮器内部の比較的低い圧力によって、凝縮器の上流においてボイルオフガスの圧縮工程のためにより低い比エンタルピーが必要とされる。そして圧縮工程は、そのボイルオフガスが凝縮器に対して供給される前に起きる。これによって、より小さい、すなわちより安価な凝縮器が係る圧縮工程に十分であるという強みになる。凝縮のより低い温度によって、凝縮物が続いて高圧ポンプに対して供給されるならば、さらに高圧ポンプでの気化が減少するようにし、さらにそれゆえに高圧ポンプのメンテナンス間の平均時間(さらにMTBOとして言及される)が増加して、本発明に従った燃料ガス供給ガス供給システムは、よりコスト効果的にかつ確実に動作することが可能である。
【0012】
「高圧ポンプ(Hochdruckpumpe)」は本発明の意味において、特に、絶対圧8MPa(80bara)以上の圧力を発生する、好ましくは絶対圧10~40MPa(100~400bara)の圧力を発生する、典型的には絶対圧15~30MPa(150~300bara)の圧力を発生するポンプを意味することが理解される。それは容積式機械(例えばピストンポンプ)であってよい。他方で、「低圧ポンプ(Niederdruckpumpe)」は、絶対圧8MPa(80bara)以下の圧力、典型的には絶対圧0.5~2.5MPa(5~25bara)の圧力を発生するポンプ(例えば、流体機械)を意味することが理解される。
【0013】
液化ガスタンクはLNGタンクであり、燃料ガスは天然ガス(特にメタン)であることが好ましい。しかしながら、さらに他の燃料ガス(特に、エチレン、エタン又はアンモニア)が考えられる。次いで、本システム及び本工程は、適切な圧力及び温度条件下で動作されなければならない。アンモニアを燃料とする場合では、例えば、高圧ポンプは絶対圧30~40MPa(300~400bara)の圧力を発生する。そうした液体ガスは液体ガス液滴として凝縮器の内部スペースの中に導入されることが可能である。凝縮器の凝縮する部分は-10~+10℃の温度及び絶対圧0.5~1MPa(5~10bara)の圧力である。
【0014】
好ましい実施形態において、凝縮されるガス流の質量流量と比べて、少量の液化ガスが凝縮核発生器によって注入されさえすればよい。特に、凝縮核発生器における液体ガス(F1)の質量流量は、凝縮されるガス(F2)の質量流量の1~5%であってよい。
【0015】
本発明に従った燃料ガス供給システムは、以上の通り、本工程で発生する再液化されるボイルオフガス又は液化ガスの再液化圧力が減少するとともに再液化温度が低下するという強みを有する。
【0016】
本発明に従った燃料ガス供給システムは、凝縮器の上流においてボイルオフガスの圧縮が低減した比エンタルピーを必要とすることによって、係る圧縮器はよりコスト効果的に設計されることが可能であることと、その上、低減された事業運営費(OPEX)及び特に、低減されたエネルギーコストが係る圧縮器にかかることと、という更なる強みを有する。
【0017】
本発明に従った燃料ガス供給システムは、改善した凝縮が、資本的支出(CAPEX)を低減するより小さい凝縮器設計を必要とするという更なる強みを有する。本発明に従った熱交換器は、間接熱伝達に基づいた熱交換器(すなわち、熱透過性の壁によって流れが分離されている)である。これによって、冷却材が冷却部分に対して高い圧力(例えば、絶対圧8~30MPa(80~300bara))で供給されていて、さらに実質的に同じ圧力で冷却部分を去る高圧熱交換器を実現することが可能になる。改善された凝縮によって、より小さい熱伝達面積の高圧熱交換器で十分であり、より小さい高圧熱交換器と、したがってより小さい凝縮器とが、凝縮器の中に必要とされる。
【0018】
本発明に従った燃料ガス供給システムは、ボイルオフガスから凝縮されたより低い温度の液体ガスが高圧ポンプの性能を改善するという、更なる強みを有する。
好ましくは、高圧液体ガスの側流は、高圧ポンプから、又は高圧ポンプの下流から取られる。有利には、係る高圧液体ガスの側流は、熱交換器で、液体ガスタンクからのボイルオフガスが係る熱交換器に対して供給されている状態で、冷却される。有利には、ボイルオフガスを凝縮するための凝縮器は、凝縮核発生器又は液滴発生のための注入器システムを備える。その凝縮核発生器又は液滴発生のための注入器システムは、凝縮核又はエアロゾル液滴を発生するために及びそれらを凝縮器の内部スペースの中に導入するために又はそれらを凝縮器の内部スペースに噴霧するために、過冷却された高圧液体ガスが供給される。そして凝縮核は排気ガスの凝縮を改善する役目を果たす。LNGは、適切な液滴サイズを保証する専用のノズルで注入されて、これらのLNG液滴は凝縮核として働くことが可能である。物理的表面効果、曲率効果、又は界面効果(さらにギブス・トムソン効果として既知である)は、係る工程に用いられる。技術的な原理はナノテクノロジー及びエアロゾルテクノロジーの分野において既知である。ノズルは高圧ノズルであることが好ましい。特にノズル直径が1~1000μmの範囲、好ましくは5~500μmの範囲の高圧ノズルであることが好ましい。そうした高圧ノズルは、対応する範囲の液滴(典型的には、100nm~100μmの直径、好ましくは500nm~50μmの直径の液滴)を生成するのに適している。
【0019】
有利な実施形態では、前記ボイルオフガス(F2)は、上方から前記凝縮器の中へ入り、前記高圧熱交換器は前記凝縮器内部において垂直に延在しており、前記高圧熱交換器の前記高圧液体ガスが底部から頂部へと流れるように配置されている。これによって、凝縮器内部の自然な温度勾配が維持される。好ましくは、凝縮核発生器は、凝縮核発生器によって発生する凝縮核が、内部スペースが凝縮温度である凝縮部分において、凝縮器の内部スペースの中に導入されるように配置されている。例えば、絶対圧1.7MPa(17bara)の圧力で、天然ガスの沸点は約-110℃である。凝縮器でのボイルオフガスF2の完全な再液化を達成するために、実際の凝縮温度は約-120℃であってよい。好ましくは、前記凝縮核発生器は、前記液体ガス(F1)の流れる方向における前記高圧熱交換器の冷却ラインの始めから半分、好ましくは始めから3分の1において、前記凝縮核が前記凝縮器の前記内部スペースに入るように配置されている。
【0020】
本発明は、様々な実施形態を基にして以下に詳細に記載されている。
実施形態を説明するために用いられる図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】燃料ガス供給システムの第1の実施形態の概略図。
図2】燃料ガス供給システムの第2の実施形態の概略図。
図3】燃料ガス供給システムの第3の実施形態の概略図。
図4】燃料ガス供給システムの第4の実施形態の概略図。
図5】燃料ガス供給システムの第5の実施形態の概略図。
図6】凝縮器の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
原則として、図面中の同じ部分は同じ参照番号で示される。
図1は、高圧ガスインジェクションエンジン2(好ましくは、ME-GIエンジン)に燃料ガス(好ましくは、メタン)を供給するための燃料ガス供給システム1を示す。燃料ガスは、LNGタンク3に、部分的には液体ガスF1の形態で、LNGタンク3で起きている液体ガスF1の気化によって部分的にはボイルオフガスF2の形態で、貯蔵されている。係るボイルオフガスF2は、さらに、BOG又はNBOG(天然ボイルオフガス)として呼ばれている。高圧ガスインジェクションエンジン2に燃料ガスを供給するために、LNGタンク3に位置する液化ガスF1は、次いで、低圧ポンプ4と、低圧流体ライン16aと、を介して高圧ポンプ5に対して供給される。そして高圧ポンプ5は、その液化ガスF1の圧力を例えば、絶対圧15~30MPa(150~300bara)の間の高い圧力に増加する。係る高圧液体ガスは、次いで、高圧流体ライン17aと、高圧熱交換器13と、高圧流体ライン17bと、を介して、高圧気化器7に対して供給される。そして高圧気化器7は、その高圧液体ガスをガス状又は超臨界的な高圧ガスに気化する。係る高圧ガス(示されている実施形態中では約30MPa(300bara)の圧力を有する)は、高圧ガスインジェクションエンジン2に対して供給される。示されている燃料ガス供給システム1は、さらに、液体ガスF1及びボイルオフガスF2が燃料ガス供給システムの動作中に少なくとも存在する、内部スペース6dを有する凝縮器6を備える。ボイルオフガスF2は、LNGタンク3からガスライン15aを介して、ボイルオフガスF2を圧縮する圧縮器9に対して供給される。それによって、係る圧縮されたボイルオフガスF2は、ガスライン15cと、次の入口15dと、を介して凝縮器6の内部スペース6dの中に供給される。燃料ガス供給システム1は、さらに、高圧液体ガスが高圧ポンプ5によって側流又は高圧流体ライン18aを介して供給される、凝縮核発生器10を備える。凝縮核発生器10および入口15dは、凝縮核発生器10によって発生して内部スペース6dの中へ噴霧される液体凝縮核10a又は液体ガス液滴が凝縮器6において供給されたボイルオフガスF2の凝縮を促進して、ボイルオフガスF2が凝縮核上に蓄積して液体ガスF1へと凝縮し、次いで、凝縮器6のより低い範囲に蓄積するべく、協働するように凝縮器6に配置されている。凝縮器6に蓄積している係る液体ガスF1は、出口6eと、戻りライン21と、を介して高圧ポンプ5に対して供給される。又は、図3に示すように、凝縮器6に蓄積している係る液体ガスF1は、高圧ポンプ5及び/又はLNGタンク3に対して随意に供給される。高圧熱交換器13は、図1に示されているように、凝縮器6の内容物(特に、そこに位置しているボイルオフガスF2)を間接熱交換によって冷却して、それを凝縮するために凝縮器6又はその内部に配置されている。熱交換器13を通じて流れている超臨界的な高圧液体ガスは、それゆえにヒートシンクの機能を有する。圧縮器9は、例えばピストン式圧縮器として、例えばラビリンスピストン圧縮器として、さらに例えば2段又は3段ピストン圧縮器として設計される圧縮器であって、1つ以上のピストン圧縮器、好ましくは、LNGタンク3の下流に配置されている第1のピストン圧縮器は、ラビリンスピストン圧縮器として設計される。しかしながら、圧縮器又は1つ以上の圧縮器段は、さらに、ターボ圧縮器として、又は別の圧縮器技術で設計されてよい。
【0023】
随意に、燃料ガス供給システム1は、さらに、低圧流体ライン16bと、バルブ25aと、を備えて、低圧ポンプ4によって送達される液体ガスF1の少なくとも部分的な流れを低圧気化器12に供給する。そして低圧気化器7はその液体ガスF1をガス状の低圧ガス(例えば、絶対圧0.7~0.9MPa(7~9bara)の範囲の圧力を有する)に気化する。係る低圧ガスは、低圧消費部11(例えば、ガス動力発電機又はボイラー)に対して供給される。
【0024】
図6は、図1に従った燃料ガス供給システム1に用いられることが可能な、凝縮器6の実施形態を詳細に示す。ボイルオフガスF2は、凝縮器6の内部スペース6dの中に、ガスライン15cと頂部の入口15dとを介して導入される。高圧液体ガスの側流は、凝縮器6の内部スペース6dの中に、高圧ライン18aと、凝縮核となる複数の液滴10aを形成する凝縮核発生器10とを介して注入される。戻りライン21は、凝縮器6の内部スペースの底部に通じていて、内部スペースのより低い部分に位置する液体ガスF1を放出する。高圧熱交換器13は凝縮器6の内部スペース6dに、好ましくは底部から頂部の垂直方向に延在する。高圧液体ガスは、高圧流体ライン17aを介して供給されて、高圧流体ライン17bを介して放出される。有利には、図4に示されるように、高圧熱交換器13は、ボイルオフガスF2が又はボイルオフガスF2と液体ガスF1の液滴との混合物が位置している内部スペース6dの部分の内のほとんどの部分(例えば、9/10)にわたって延在する。
【0025】
動作中、凝縮器6は、例えば、下記の工程パラメータで動作されることが可能である。高圧液体ガスは、高圧熱交換器13に対して絶対圧30MPa(300bara)の圧力で供給されて、基本的には同じ圧力で高圧熱交換器13を離れる。ボイルオフガスF1は、絶対圧1.7MPa(17bara)の圧力及び+40℃の温度で入口15dを介して凝縮器6の内部スペース6dの中に上方から導入される。入口15dから凝縮器6の内部を下向きに流れているボイルオフガスF1は、高圧熱交換器13によって冷却されて、凝縮部分6aが液体ガスF1の表面6bと境界領域6cとの間に形成される。そして凝縮部分6aでは、そのボイルオフガスF2は、内部スペース6dに存在する圧力を考慮に入れると、液体ガスF1の沸点未満の温度である。凝縮核発生器10によって発生する液体ガス液滴10aの形態の凝縮核は、好ましくは、凝縮部分6aの中に噴霧されることによって、係る部分に位置するボイルオフガスF2は、これらの凝縮核で凝縮して、次いで表面6bを介して凝縮器6の液体ガスF1を含んでいる体積部分6eに対して供給される。液体ガスF1は、本明細書に記載の工程例では、体積部分6eで絶対圧1.7MPa(17bara)の圧力及び-120℃の温度である。
【0026】
燃料ガス供給システム1の動作方法は、下記の例に基づいて詳細に説明される。LNGタンクが積荷スペースの大部分を占める液化ガスタンカーと比較して、商船は積荷スペースが輸送される商品に利用可能であるように、比較的小さいLNGタンクを有する。そうした商船の高圧ガスインジェクションエンジン2は、航海中例えば、約10t/hのガス需要がある。商船のLNGタンクでは、ボイルオフレート(BOR)(ボイルオフガスF2に気化する液体ガスF1の量)は例えば、約800kg/hである。他方で、燃料ガス供給システム1は、高圧ガスインジェクションエンジン2に、荷重次第で変化する、十分大きな高圧燃料ガス量を供給することに関して課題を有する。その上、燃料ガス供給システム1は、LNG15タンクのガス圧力を監視することと、ガス圧力が所与の値を超えないようにすることに関して課題を有する。その上、燃料ガス供給システム1は、LNGタンクに位置する余分のボイルオフガスが経済的及び環境保護の観点から有利な手法で用いられるようにすることと、特に、高圧ガスインジェクションエンジン2に対して供給されるように用いられるようにすることと、必要ならば低圧消費部11に供給されるように用いられるようにすることと、に関して課題を有する。
【0027】
大気圧程度及び-163℃の温度で貯蔵されているLNGタンク3の液化ガスF1は、高圧ポンプ5に低圧ポンプ4によって搬送されて、それによって-150℃の温度で絶対圧0.7MPa(7bara)の圧力に圧縮される。高圧ガスインジェクションエンジン2に対して十分に高圧燃料ガスを供給するために、液体ガスF1は続いて高圧ポンプ5において-150℃の搬送温度で絶対圧30MPa(300bara)の圧力の高圧液体ガスに圧縮される。そして次いで、高圧気化器7でガス状又は超臨界的な高圧燃料ガスに圧縮される。このように生成する高圧燃料ガスは、高圧ガスインジェクションエンジン2に対して供給される。供給される高圧燃料ガスの量は、高圧ポンプ5と、必要ならば低圧ポンプ4と、の搬送レートを適切に制御することによって制御することが可能である。
【0028】
ボイルオフガスF2は、タンク3からおおよそ大気圧及び約-162℃の温度で引き抜かれる。そして次いで、圧縮器9で絶対圧1.8MPa(18bara)の圧力に+40℃の出口温度で、圧縮される。このように圧縮されたボイルオフガスF2は、好ましくは、凝縮器6の内部6dの中に係る圧力及び温度で導入される。
【0029】
図6に示されているように、凝縮器6の内部で高圧熱交換器13に位置する高圧液体ガスは、絶対圧30MPa(300bara)の圧力及び-150℃の搬送温度で上方へ流れる。一方、圧縮されたボイルオフガスF2は凝縮器6の内部スペース6dの中に上方から導入される。そして凝縮器6の上部の部分を高圧熱交換器13に沿って下方に流れる。そして、圧縮された排気ガスF2は、次いで、高圧熱交換器13内部を流れている高圧液体ガスに対して向流に流れる。従って排気ガスF2は冷却されて、好ましくはその凝縮温度に冷却される。絶対圧1.7MPa(17bara)の圧力では、ボイルオフガスF1の沸点は約-110℃である。凝縮器6における排気ガスF2の完璧な再液化を達成するために、高圧熱交換器13又はその中を流れている高圧ガスは-110℃未満の温度でエンタルピーを引き取るのに十分なポテンシャルを有している。絶対圧1.7MPa(17bara)での凝縮についての必然的な過飽和を考慮に入れると、実際の凝縮温度は絶対圧1.7MPa(17bara)での沸点未満の、約5~10Kであり得、凝縮は約-120℃で起きる。
【0030】
超臨界的な高圧ガス又は高圧液体ガスが高圧側で高圧熱交換器13に入る-150℃という温度は、熱伝達のために直接的に利用可能でない。なぜなら、いくつかの温度勾配は、超臨界的な高圧ガスと熱交換器13の壁とを介した熱伝達を考慮に入れるべきであるからである。第1のアプローチとして、ボイルオフガスF2に面している側の高圧熱交換器13の壁温度が-145℃であると仮定する。これによって、ボイルオフガスF2から超臨界的な高圧ガス又は高圧液体ガスへの25°Kの温度領域でのエンタルピー移動が可能になる。
【0031】
凝縮器6におけるボイルオフガスF2の液化ガスF1への再液化の効率を増進するために、凝縮核発生器10は凝縮核としての液化ガス液滴を発生するために用いられる。そして凝縮核は、その凝縮器6の内部6dの中に供給される。係る目的のために、高圧ポンプ5によって高圧液体ガスに圧縮された液体ガスF1の一部は、側流18aで凝縮核発生器10に供給される。供給されるその高圧液体ガスは、絶対圧30MPa(300bara)の圧力及び-150℃の温度である。凝縮核発生器10(例えば、1つ以上のノズルを採用する)で発生する液滴10aは、ボイルオフガスF2の温度がその凝縮温度の-110℃よりもすでに低い凝縮器6の凝縮部分6aの中に導入される。凝縮器6に入る液体ガス液滴10aは、次いで、過冷却される。なぜなら、ボイルオフガスF2の凝縮温度は絶対圧1.7MPa(17bara)で110℃であるからである。
【0032】
過冷却された液体ガス液滴10aは、凝縮されるボイルオフガスF2の凝縮核として働く。すなわち、過冷却された各液体ガス液滴10aは凝縮されるボイルオフガスF2からガス分子を引き付ける。液体ガス液滴10a上でのボイルオフガスF2の凝縮は、高圧熱交換器13の外壁上での凝縮よりも、以下の理由により、より効率的である。すなわち、
液体ガス液滴は-150℃に過冷却されて、温度差がより大きくなるため、ボイルオフガスF2のガス分子が引き付けられる可能性がより高くなる。
【0033】
液体ガス液滴の比表面積は、高圧熱交換器13の外壁の同種の表面積よりも大きい。なぜなら、球体の面積は平面又は曲面の面積よりもπ倍大きいからである。
図2及び図3は、燃料ガス供給システム1の更なる実施形態を示す。そしてその実施形態は、図1に従った実施形態と比較して、熱交換器8が、ボイルオフガスF2がLNGタンク3を離れるに至った後の、ボイルオフガスの流れ中に配置されている。そしてその熱交換器8は、高圧ポンプ5の後でかつ凝縮核発生器10に入る前の高圧液体ガスをさらに冷却する役目を果たす。結果として、流体ライン15a,15bを流れているボイルオフガスF2は、熱交換器8で加熱されている。熱交換器8は、好ましくは、高圧液体ガスの側流18aによって供給されて、側流18aは高圧ポンプ5又は高圧ポンプ5の下流において高圧流体ライン17aから取られて、熱交換器8に対して供給される。そして続いて、好ましくは、凝縮核発生器10に供給される。熱交換器8は、好ましくは、図2に示されているように、圧縮器9の上流に配置される。
【0034】
本発明に従った燃料ガス供給システム1のために、図6に示されているように、凝縮器6に対して供給されるボイルオフガスF2の凝縮器6の内部スペース6dでの凝縮が、好ましくはできるだけエネルギー効率よく起きることが重要である。図1図5に示されている燃料ガス供給システム1が、示されていない制御デバイス、及び複数の信号線(例えば、低圧ポンプ4,高圧ポンプ5,圧縮器9、及びバルブ25a~25gを制御するための)と、例えば、幅広い様々な点(燃料ガス供給システム1を通じて流れる液体ガスF1及びボイルオフガスF2、及び高圧液体ガス及び高圧燃料ガス)で圧力及び/又は温度を検出するための複数の信号線及びセンサと、を備えることは、当業者に一般的に既知である。それゆえに、当業者にとって、本開示に基づいて、本発明に従っている燃料ガス供給システム1を有利に動作するために、そして特に、凝縮器6における凝縮が有利に、好ましくはエネルギー効率よく行われるために、本発明に従っている燃料ガス供給システム1が、どの制御オプション及びどのパラメータ最適化を提供するかを理解することは容易である。それゆえに、例えば、凝縮器6におけるボイルオフガスF2の凝縮は、圧縮器9によって送達されるボイルオフガスF2の送達レートと、そして必要であれば、さらに、その温度、及び/又は凝縮核発生器10に側流18a,18bによって供給される高圧液体ガスの搬送レートと、特に、その温度、及び/又は凝縮核発生器10によって生成する凝縮核10aの大きさ及び量、及び/又は凝縮器6の内部スペース6dにおける液体ガス液滴10aの流れの配置及び方向、及び/又は凝縮器6の内部スペース6dにおける高圧熱交換器13の配置及び構成によって影響を受けることは、図1から単純な手法で導き出すことが可能である。さらに、内部スペース6dに噴霧される液体液滴10aの温度、及び/又は導入されるボイルオフガスF2と液体液滴10aとの温度差は、図2図5に示されている熱交換器8の使用及び巧みな配置及び設計によって影響を受けることが可能である。それゆえに、これによって開示されている本発明のアイデアに基づいて、当業者が、自身の専門知識に基づいて、以下のようなやり方の単純な手法で工程パラメータを選択することが可能である。すなわち、燃料ガス供給システムが経済的に有利な手法、及び特にエネルギー効率の良い手法で、動作することが可能なようなやり方と、特に凝縮器6で起きる凝縮工程が高い凝縮率であるようなやり方と、の単純な手法で工程パラメータを選択することが可能である。
【0035】
更なる実施形態では、図3は、制御可能なバルブ25d,25eを介してガスライン15a,15cに対して接続されているガス貯蔵タンク14を示す。ガス貯蔵タンク14は、特に高圧ガスインジェクションエンジン2が燃料を必要としない期間中(例えば、商船が静止しているから)にボイルオフガスF2を保持するように用いられる。そうした期間中に、高圧液体ガスは高圧ガスインジェクションエンジン2に対して供給されず、凝縮器6における熱交換器13の高圧液体ガスは、ヒートシンクとして働くことができない。そしてそれゆえに、凝縮器6における冷却が起きず、凝縮器6における凝縮は停止するようになる。しかしながら、商船の停止中、気化ガスF2はLNGタンク3に依然として蓄積する。そして気化ガスF2は、そのLNGタンク3の容認できない圧力上昇を防止するために、LNGタンク3から放出される必要がある。ガス貯蔵タンク14は、そうした期間中にとりわけ有利である。なぜなら、ボイルオフガスF2は、圧縮器9を介してガス貯蔵タンク14に対して搬送されることが可能であり、そのガス貯蔵タンク14の中に一時的に貯蔵されることが可能であり、次いでガス貯蔵タンク14から移されて、商船の航海中又は高圧ガスインジェクションエンジン2への高圧液化ガスの供給中に凝縮器6において液化されることが可能であるからである。
【0036】
ガス貯蔵容器14は、有利には、高多孔質固体(例えば、吸収剤又は金属水素化合物)又は液体溶媒で満たされている。そしてそれは、同じ圧力及び温度の空の容器の貯蔵容量と比較して、ガス貯蔵容器14の貯蔵容量を相当に増加する。ガス貯蔵タンク14が貯蔵動作でないとき又は空にされているときに、ガス貯蔵タンク14は、バルブ25dを開放することとバルブ25eを閉止することとによって、圧縮器9の吸込みライン15bに対して接続される。ガス貯蔵タンク14が貯蔵モードであるとき、ガス貯蔵タンク14は、バルブ25eを開放することとバルブ25dを閉止することとによって圧縮器9の下流において放出ライン15cに対して接続される。低圧消費部11へのガスの流れを制御するように、及び必要であれば、凝縮器6と低圧消費部11との間のガス量の分配を制御するように提供されている流体ライン15eと、好ましくは制御可能なバルブ25cと、さらに好ましくは制御可能なバルブ25bと、を介して低圧消費部11対して少なくとも一部のボイルオフガスF2を供給することが有利であることがさらに証明されてよい。
【0037】
凝縮器6の内部スペース6dの外に戻りライン21を介して流れる液体ガスF1を高圧ポンプ5のバルブ25f及び/又はLNGタンク3へのバルブ25gを介して制御可能に供給することが有利であることがさらに証明されてよい。
【0038】
図4は、燃料ガス供給システム1の以下のようなさらなる実施形態を示す。すなわち、ボイルオフガスF2は、タンク3の下流において熱交換器8に対して供給されて、次いで圧縮器9で圧縮されて圧縮されたボイルオフガスF2を形成し、係る圧縮されたボイルオフガスF2は熱交換器8に同様に供給される。そして圧縮されたボイルオフガスF2は熱交換器8で強く冷却され、このように冷却されたものは、凝縮器6に対して入口15dを介して供給される。係る圧縮されかつ強く冷却された排気ガスF2は、凝縮器6において係る排気ガスF2はより良く又はより単純に、すなわちよりエネルギー効率よく凝縮するという強みを有する。
【0039】
図5は、燃料ガス供給システム1の更なる実施形態を示す。そしてその実施形態は、図3に示されている実施形態と比較して、2つの別の高圧ポンプ5(すなわち第1の高圧ポンプ5a及び第2の高圧ポンプ5b)と、それに接続されている2つの別の高圧液体ライン17a,17cとを有する。さらに、図5に従った実施形態例は、図3に従った実施形態例と比較して、戻りライン21におけるバルブ25gがなく、したがってタンク3への戻りがない。図5に従った実施形態は、好ましくは、タンク3からの液体ガスF1が第1の高圧ポンプ5aだけに供給されて、高圧液体ガスを形成するために第1の高圧ポンプ5aにおいて圧縮されるように動作する。係る高圧液体ガスは、図5に示されているように、高圧熱交換器13に対して供給されて、次いで高圧気化器7に対して供給される。有利な工程では、凝縮器6に位置する液体ガスF1(実質的に凝縮物である)は、第2の高圧ポンプ5bに対して供給されて、第2の高圧ポンプ5bにおいて高圧液体ガスに圧縮される。そして高圧液体ガスは、その凝縮器6を迂回して、高圧液体ライン17bの中に及び/又は直接的に高圧気化器7の中に供給される。係る配置又は工程は、タンク3から放出される液体ガスF1が、凝縮器6で発生する凝縮物又は液体ガスF1及び低圧流体ライン16aに戻る液体ガスF1によって加熱されないという強みを有する。それゆえに、係る実施形態は、凝縮器6においての凝縮がより高い効率又は効率ファクターを有するという強みを有する。別の可能な方法では、第2の高圧ポンプ5bは、凝縮器6からの凝縮物又は液体ガスF1のみがバルブ25fを介して供給されること、又はタンク3からの液体ガスF1のみがバルブ25gを介して供給されること、又はしかるべくバルブ25f,25gの両方を制御することによって、凝縮器6からの液体ガスF1の部分とタンク3からの液体ガスF1の部分とを備える混合物を備えることが可能である。これらの2つの部分の液体ガスF1の混合率は、燃料ガス供給システム1のそれぞれの動作点に依存して、例えば燃料ガス供給システム1の効率を最適化するために、例えば高圧ガスインジェクションエンジン2によって要求される高圧燃料ガスの量に依存して可変である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】