(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】スライド上にプリントされたバイオマーカーおよびロマノフスキー型染色サンプルを調製するための自動化プラットフォームの使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230614BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
G01N33/53 Y
G01N33/536 D
G01N33/536 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570667
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021033246
(87)【国際公開番号】W WO2021236829
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516038209
【氏名又は名称】ロシュ・ダイアグノスティクス・ヘマトロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ROCHE DIAGNOSTICS HEMATOLOGY, INC.
【住所又は居所原語表記】9115 HAGUE ROAD,INDIANAPOLIS, INDIANA 46256 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノイバウアー-ペルフク,アンナ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ホーヘンデイク,ヤン-ヘリット
(72)【発明者】
【氏名】グレーザー,ニコール
(72)【発明者】
【氏名】ザーニサー,デイビッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ムイ,キャサリン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】タッケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】トーレス-ナーゲル,ノラ
(57)【要約】
本開示は、一般に、細胞サンプルにおけるバイオマーカー発現の検出、特性評価および形態学的分析のための方法およびシステムに関する。本方法は、分子バイオマーカーおよび細胞形態分析のためのロマノフスキー型染色のために細胞を染色するための自動化プラットフォームの使用を可能にする。開示された方法に従って調製された細胞は、ある特定の症状の診断にも使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞サンプル中のバイオマーカーおよび形態を検出するための方法であって、
細胞サンプルを、前記細胞サンプル中のバイオマーカーに特異的に結合する1種以上のバイオマーカー特異的試薬と接触させることと、
バイオマーカー染色細胞サンプルを固体支持体上に堆積させることと、
1種以上のバイオマーカーについて前記バイオマーカー染色細胞サンプルを分析することと、
前記バイオマーカー染色細胞サンプルをロマノフスキー型染色剤で染色して、ロマノフスキー型染色細胞サンプルを得ることと、
前記ロマノフスキー型染色細胞サンプルを分析して、前記ロマノフスキー型染色細胞サンプル中の少なくとも1つの細胞の形態を決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞サンプルを、前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬に特異的に結合する1種以上の検出試薬と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1種以上の検出試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬および前記1種以上の検出試薬が、染料である、請求項2および3に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、体液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオマーカーが、細胞外バイオマーカー、細胞内バイオマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体支持体が、顕微鏡スライド、カバースリップ、プレート、トレイ、カップ、チューブ、バイアル、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞サンプルが、単層で前記固体支持体上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞サンプルが、前記細胞サンプルを前記固体支持体上にプリントすることによって、前記固体支持体上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
自動化染色プラットフォームで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
細胞サンプル中のバイオマーカーおよび形態を検出するための自動化された方法であって、
細胞サンプルを、前記細胞サンプル中のバイオマーカーに特異的に結合する1種以上のバイオマーカー特異的試薬と接触させて、バイオマーカー染色細胞サンプルを得ることと、
前記バイオマーカー染色細胞サンプルを固体支持体上に堆積させることと、
1種以上のバイオマーカーについて前記バイオマーカー染色細胞サンプルを分析することと、
前記バイオマーカー染色細胞サンプルをロマノフスキー型染色剤で染色して、ロマノフスキー型染色細胞サンプルを得ることと、
前記ロマノフスキー型染色細胞サンプルを分析して、前記ロマノフスキー型染色細胞サンプル中の少なくとも1つの細胞の形態を決定することと
を含む、自動化された方法。
【請求項13】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞サンプルを、前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬に特異的に結合する1種以上の検出試薬と接触させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1種以上の検出試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬および前記1種以上の検出試薬が、染料である、請求項13および14に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルが、体液サンプルである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記バイオマーカーが、細胞外バイオマーカー、細胞内バイオマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記固体支持体が、顕微鏡スライド、カバースリップ、プレート、トレイ、カップ、チューブ、バイアル、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞サンプルが、単層で前記固体支持体上に堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞サンプルが、前記細胞サンプルを前記固体支持体上にプリントすることによって、前記固体支持体上に堆積される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
自動化染色プラットフォームで実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
細胞サンプル中のバイオマーカーおよび形態を検出するための方法であって、
細胞サンプルを、前記細胞サンプル中のバイオマーカーに特異的に結合する1種以上のバイオマーカー特異的試薬と接触させることと、
バイオマーカー染色細胞サンプルを固体支持体上に堆積させることと、
スライド上の細胞サンプルを、前記細胞サンプル中のバイオマーカーに特異的に結合する1種以上の追加のバイオマーカー特異的試薬と接触させることと、
1種以上のバイオマーカーについて前記バイオマーカー染色細胞サンプルを分析することと、
前記バイオマーカー染色細胞サンプルをロマノフスキー型染色剤で染色して、ロマノフスキー型染色細胞サンプルを得ることと、
前記ロマノフスキー型染色細胞サンプルを分析して、前記ロマノフスキー型染色細胞サンプル中の少なくとも1つの細胞の形態を決定することと
を含む、方法。
【請求項24】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞サンプルを、前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬に特異的に結合する1種以上の検出試薬と接触させることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記1種以上の検出試薬が、蛍光標識、明視野標識、ナノ粒子標識、およびこれらの組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1種以上のバイオマーカー特異的試薬および前記1種以上の検出試薬が、染料である、請求項24および25に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルが、体液サンプルである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記バイオマーカーが、細胞外バイオマーカー、細胞内バイオマーカー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記固体支持体が、顕微鏡スライド、カバースリップ、プレート、トレイ、カップ、チューブ、バイアル、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞サンプルが、単層で前記固体支持体上に堆積される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞サンプルが、前記細胞サンプルを前記固体支持体上にプリントすることによって、前記固体支持体上に堆積される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
自動化染色プラットフォームで実施される、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月20日に出願された米国仮特許出願番号63/027,720号に対する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
本開示は、一般に、細胞サンプルにおけるバイオマーカー発現の検出、特性評価および形態学的分析のための方法およびシステムに関する。本方法は、分子バイオマーカーおよび細胞形態のためのロマノフスキー型染色のために細胞を染色するための自動化プラットフォームの使用を可能にする。開示された方法に従って調製された細胞は、ある特定の症状の診断にも使用することができる。
【0003】
細胞サンプルは、血液サンプルのスクリーニングおよび細胞サンプルを使用した診断を含む診断に有用である。血液サンプルを使用した診断では、典型的には、血液サンプルの一部を形態学的分析に使用する。形態学的分析のために染色されたサンプルは、一般に再使用可能ではない。血液サンプルの別の部分をフローサイトメトリーによって評価して、分子マーカーを検出する。サンプルの一部が形態学的分析に使用され、別の部分がフローサイトメトリーに使用される場合、形態学的に異常な細胞と分子バイオマーカーについて染色された細胞との間の1対1の比較は不可能である。このワークフローはまた、高価で時間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、形態学的に異常な細胞と分子バイオマーカーについて染色された細胞との間の比較を可能にするサンプル調製および分析のための組成物および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の簡単な説明
本開示は、一般に、サンプル調製および分析のための方法に関する。本方法は、有利には、形態学的に異常な細胞と分子バイオマーカーについて染色された細胞との間の比較を可能にする。本方法は、分子バイオマーカーおよび細胞形態のためのロマノフスキー型染色のために細胞を染色するための自動化プラットフォームの使用を可能にする。開示された方法に従って調製された細胞は、ある特定の症状の診断にも使用することができる。
【0006】
本開示はよりよく理解され、上に示される以外の特徴、態様および利点は、その以下の詳細な説明を考慮すると明らかになるであろう。このような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】体液サンプルにおけるCD45染色およびロマノフスキー型染色の蛍光像を示す図。
【
図2】多重染色アプローチを使用したCD45およびCD20染色の蛍光像を示す図。四角で囲まれた領域は、同じ細胞のCD45陽性/CD20陰性染色を示す。
【
図3A】
図3Aは、ロマノフスキー染色剤で染色された細胞サンプルを示す図。Mon=単球、Lym=リンパ球、Neu=好中球、Neu?(好中球?)=可能性のある好中球。
【
図3B】
図3Bは、CD45バイオマーカーで染色された細胞サンプルを示す図。Mon=単球、Lym=リンパ球、Neu=好中球、Neu?(好中球?)=可能性のある好中球。
【
図3C】
図3Cは、CD14 APCで染色された細胞サンプルを示す図。Mon=単球、Lym=リンパ球、Neu=好中球、Neu?(好中球?)=可能性のある好中球。
【
図4A】
図4Aは、ロマノフスキー染色剤で染色された細胞サンプルを示す図。
【
図4B】
図4Bは、CD45バイオマーカーで染色された細胞サンプルを示す図。
【
図5A】
図5Aは、ロマノフスキー染色剤で染色された細胞サンプルを示す図。
【
図5B】
図5Bは、CD45バイオマーカーで染色された細胞サンプルを示す図。
【
図6A】
図6Aは、CD45について染色された細胞サンプルを示す図。
【
図6B】
図6Bは、ロマノフスキー染色剤について染色された細胞サンプルを示す図。
【
図7A】
図7Aは、CD45について染色された細胞サンプルを示す図。
【
図7B】
図7Bは、ロマノフスキー染色剤について染色された細胞サンプルを示す図。
【
図8】CD45について染色された細胞サンプルを示す図。
【
図9A】
図9Aは、ロマノフスキー染色された細胞サンプルを示す図。
【
図9B】
図9Bは、CD45染色された細胞サンプルを示す図。
【
図9C】
図9Cは、リンパ球を丸で囲んだ、CD3染色された細胞サンプルを示す図。
【
図9D】
図9Dは、CD19染色された細胞サンプルを示す図。
【
図10D】
図10Dは、リンパ球を丸で囲んだ、CD19染色された細胞サンプルを示す図。
【
図11D】
図11Dは、CD3染色された細胞サンプルを示す図。
図11Eは、CD16および56染色された細胞サンプルを示す図。
【
図14】ロマノフスキー染色、CD45染色、CD19染色、CD3染色およびCD16&56染色された同じ細胞サンプルを示す図。
【
図15】
図15Aは、CD3、CD4、CD8、CD16およびCD19について染色された細胞サンプルを示す図。
図15Bは、ロマノフスキー染色された細胞サンプルを示す図。
【
図16】CD4(BV750)染色、CD3(AF488)染色、CD19(AF594)染色、CD16(AF647)染色、CD8(JF549)染色された細胞サンプル、および組み合わされた蛍光像を示す図。
【
図17】
図17Aは、CD3、CD4、CD8、CD16、およびCD19について染色された細胞サンプルを示す図。
図17Bは、ロマノフスキー染色された細胞サンプルを示す図。
【
図18】CD3(AF488)、CD4(BV750)、CD8(JF549)、CD16(AF647)、CD19(AF594)について染色された細胞サンプルの個々のパネル、および組み合わされた蛍光像を示す図。
【
図19】
図19Aは、CD3、CD4、CD8、およびCD16について染色された細胞サンプルを示す図。
図19Bは、ロマノフスキー染色された細胞サンプルを示す図。
【
図20】CD3(AF488)、CD4(BV750)、CD8(JF549)、CD16(AF647)、CD19(AF594)について染色された細胞サンプルの個々のパネル、および組み合わされた蛍光像を示す図。
【
図21】
図21Aは、CD3、CD4、CD8、およびCD16について染色された細胞サンプルを示す図。
図21Bは、ロマノフスキー染色された細胞サンプルを示す図。
【
図22】CD3(AF488)、CD4(BV750)、CD8(JF549)、CD16(AF647)、CD19(AF594)について染色された細胞サンプルの個々のパネル、および組み合わされた蛍光像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で述べるものと同様のまたはそれと同等の任意の方法および材料を、方開示の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が以下で述べられる。
【0009】
本開示または様々なバージョンの要素を導入するとき、「a」、「an」、「the」、および「前記(said)」という冠詞は、これらの要素のうちの1つ以上が存在することを意味することが意図される。「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(including)」、および「有する(having)」という用語は、包括的であることが意図され、列挙される要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、「対象」または「個体」という用語は哺乳動物である。適切な哺乳動物には、例えば、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒト、およびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「サンプル」は、バイオマーカーの有無について試験することができる対象から得られる任意の材料を指す。本明細書で使用される場合、「細胞サンプル(cellular sample)」および「細胞サンプル(cell sample)」は、細胞培養物、体液サンプル、および病理学的、組織学的、または細胞学的解釈のために採取された外科標本などのインタクトな細胞を含む任意のサンプルを指す。適切なサンプルには、例えば、体液サンプル(全血、骨髄、尿、精液、唾液、痰、乳頭分泌物、母乳、滑液、脳脊髄液(CSF)、腹水、腹腔液、心膜液、胆汁、胃液、粘液、リンパ液、汗、涙液、嘔吐物、胸水、耳垢、鼻分泌物/分泌物、または皮膚腺液など)、体液画分(血漿、バフィーコートおよび赤血球画分を含む血液画分など)、微細針吸引物(骨髄吸引物など)、洗浄液(例えば、気管支洗浄液、気管支肺胞洗浄液、鼻洗浄液、注水(douche)または浣腸)、および掻き取りまたはブラシサンプル(例えば、子宮頸部、肛門、口、食道、胃、または気管支からの掻き取りまたはブラシ)が含まれる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「検出可能な部分」は、サンプル上に堆積した検出可能な部分の存在(すなわち定性分析)および/または濃度(すなわち、定量分析)を示す、(視覚的、電子的またはその他の方法で)検出可能なシグナルを発することができる分子または材料を指す。検出可能なシグナルは、光子(高周波、マイクロ波周波数、赤外振動数、可視周波数、および紫外線周波数の光子を含む)の吸収、放出、および/または散乱を含む、任意の既知のまたはまだ発見されていないメカニズムによって生成され得る。「検出可能な部分」という用語には、発色性、蛍光性、リン光性、および発光性の分子および材料、ある物質を別の物質に変換して(無色の物質を着色された物質に変換することによって、もしくはその逆、または沈殿物を生成するか、サンプルの濁度を上げることによって)検出可能な差異を提供する触媒(酵素など)が含まれる。いくつかの例では、検出可能な部分は、クマリン、フルオレセイン(またはフルオレセイン誘導体および類縁体)、ローダミン、レゾルフィン、ルミノフォアおよびシアニンを含むいくつかの一般的な化学クラスに属するフルオロフォアである。蛍光分子の追加例は、Molecular Probes Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,Molecular Probes,Eugene,OR,ThermoFisher Scientific,第11版に記載されている。他の実施形態では、検出可能な部分が、ジアミノベンジジン(DAB)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCOVERY Purple)、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、およびローダミン110(ローダミン)を含む染料などの明視野顕微鏡法を介して検出可能な分子である。他の例では、検出可能な部分が、金または銀ナノ粒子などのナノ粒子である。他の検出可能な部分が存在するか、または将来開発される可能性があり、「検出可能な部分」の範囲内と見なされるべきである。
【0013】
当業者に公知のように、ロマノフスキー型染色剤は、細胞診サンプルの染色に有用な異染染色性染色剤を指し、染色剤は、カチオン性チアジン染料(例えば、ポリクロムメチレンブルー、アズールA、アズールB、アズールC、アズールIV、symジメチルチオニン、チオニン、メチレンバイオレットBernsthen、メチルチオノリン、トルイジンブルー、およびこれらの組み合わせ)およびアニオン性ハロゲン化フルオレセイン染料(例えば、エオシンA、エオシンY、エオシンG、およびこれらの組み合わせ)を含む。適切なロマノフスキー型染色剤には、例えば、ロマノフスキー染色剤、マラコウスキー染色剤、ギムザ染色剤、メイ-グリュンワルド染色剤、メイ-グリュンワルド-ギムザ(MGG)染色剤、ジェンナー染色剤、ライト染色剤、リーシュマン染色剤およびDIFF-QUICK(独自の改変ライト染色剤)が含まれる。ロマノフスキー型染色の場合、サンプルを固定剤で固定することができる。適切な固定剤には、例えば、アルコールベースの固定剤(例えば、メタノール)およびアルデヒドベースの固定剤(例えば、緩衝ホルマリンなどのホルムアルデヒド)が含まれる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「検出試薬」は、細胞サンプルに結合したバイオマーカー特異的試薬に近接して染色剤を堆積させるために使用される任意の試薬を指す。適切な検出試薬には、例えば、一次検出試薬(抗体に直接コンジュゲートした検出可能な部分など)、二次検出試薬(一次抗体に結合できる二次抗体など)、三次検出試薬(二次抗体に結合できる三次抗体など)、バイオマーカー特異的試薬と直接的または間接的に会合した酵素、蛍光または発色性染色剤の堆積をもたらすこのような酵素と反応性の化学物質、染色工程の合間に使用される洗浄試薬などが含まれる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「特異的検出試薬」は、細胞サンプルの文脈において標的化学構造に特異的に結合することができる物質の任意の組成物を指す。本明細書で使用される場合、「特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的な」という句は、生物学的分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と特異的検出試薬との間の測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的に特異的に結合する抗体は、他の10の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易におよび/またはより長い持続時間でこの標的に結合する抗体である。一実施形態では、特異的検出試薬が無関係の標的に結合する程度が、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定した場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合するバイオマーカー特異的試薬が、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。別の実施形態では、特異的結合が、排他的結合を含むことができるが、必須ではない。例示的な特異的検出試薬としては、特定のヌクレオチド配列に特異的な核酸プローブ、抗体およびその抗原結合断片、ならびにADNECTIN(第10 FN3フィブロネクチンに基づく足場;Bristol-Myers-Squibb Co.)、AFFIBODY(S.アウレウス(S.aureus)に由来するプロテインAのZドメインに基づく足場;Affibody AB、スウェーデン国ソルナ)、AVIMER(ドメインA/LDL受容体に基づく足場;Amgen、カリフォルニア州サウザンドオークス)、dAb(VHまたはVL抗体ドメインに基づく足場;GlaxoSmithKline PLC、英国ケンブリッジ)、DARPin(アンキリンリピートタンパク質に基づく足場;Molecular Partners AG、スイス国チューリッヒ)、ANTICALIN(リポカリンに基づく足場;Pieris AG、ドイツ国フィライジング)、NANOBODY(VHH(ラクダ類Igに基づく足場);Ablynx N/V、ベルギー国ヘント)、TRANS-BODY(トランスフェリンに基づく足場;Pfizer Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)、SMIP(Emergent Biosolutions,Inc.、メリーランド州ロックビル)、およびTETRANECTIN(C型レクチンドメイン(CTLD)に基づく足場)、テトラネクチン;Borean Pharma A/S、デンマーク国オーフス)を含む操作された特異的結合組成物が挙げられる。このような操作された特異的結合構造の説明は、Wurch et al.,Development of Novel Protein Scaffolds as Alternatives to Whole Antibodies for Imaging and Therapy:Status on Discovery Research and Clinical Validation,Current Pharmaceutical Biotechnology,Vol.9,pp.502-509(2008)に概説されており、その内容は参照により組み込まれる。
【0016】
当業者に公知のように、蛍光標識は、蛍光顕微鏡法のためのバイオマーカーを染色するのに適した検出可能な部分である。例としては、蛍光およびりん光染料ならびにナノ材料(量子ドットなど)が挙げられる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー」という用語は、生物学的サンプルまたは該生物学的サンプルが得られる対象を特徴付けるために使用できる、生物学的サンプル中に見られる任意の分子または分子群を指すものとする。例えば、バイオマーカーは、その存在、非存在、または相対的存在量が、特定の細胞または組織の種類もしくは状態の特徴、および/または特定の病的症状もしくは状態の特徴、および/または病的症状の重症度の指標、病的症状の進行もしくは退行の可能性の指標、および/または病的症状が特定の処置に反応する可能性の指標である、分子もしくは分子群であり得る。別の例として、バイオマーカーは、細胞型もしくは微生物(細菌、マイコバクテリア、真菌、ウイルスなど)、または置換分子もしくはそれらの分子群であり得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「バイオマーカー特異的試薬」は、細胞サンプル中のバイオマーカーに直接特異的に結合できる特異的検出試薬を指す。例としては、サンプルのバイオマーカーと免疫反応性の一次抗体、およびサンプルの核酸バイオマーカーに相補的な核酸ハイブリダイゼーションプローブが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「明視野標識」は、明視野顕微鏡法のために細胞サンプルを染色するのに適した検出可能な部分を指す。例としては、細胞サンプルに接着しない種から細胞サンプルに接着することができる種(DABなど)に変換され得る発色染料、金属組織染料、および発色団含有染料が挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「直接アッセイ」は、バイオマーカーを含むサンプルの領域が、検出可能な部分を観察することによって顕微鏡で検出され得るように、検出可能な部分と直接コンジュゲートしたバイオマーカー特異的試薬をサンプル内のバイオマーカーに結合させることによって、細胞サンプル中のバイオマーカーを染色することを含むプロセスを指す。例としては、直接標識されたコンジュゲートを用いた、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、および銀インサイチュハイブリダイゼーション(SISH)が挙げられる。直接アッセイの利点には、使用される試薬の量の減少、したがってコストの減少、アッセイの完了までの時間の短縮、ならびに同じ細胞上のバイオマーカーおよびロマノフスキーまたは他の染色剤を検出する能力が含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アフィニティアッセイ」は、バイオマーカーを含むサンプルの領域が顕微鏡で検出され得るように、結合したバイオマーカー特異的試薬に近接してサンプル上に検出可能な部分を堆積させるように、サンプル内のバイオマーカーにバイオマーカー特異的試薬を結合させることによって、細胞サンプル中のバイオマーカーを染色することを含むプロセスを指す。例としては、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、発色インサイチュハイブリダイゼーション(CISH)、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)および銀インサイチュハイブリダイゼーション(SISH)が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「免疫酵素アッセイ」は、バイオマーカー特異的試薬が抗体であるアフィニティ酵素アッセイを指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「多重染色」は、種々のバイオマーカーに結合する複数のバイオマーカー特異的試薬を単一細胞サンプルに適用し、異なる色の染色剤で染色するアフィニティアッセイを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アフィニティ酵素反応」は、バイオマーカー特異的試薬が、バイオマーカーを含むサンプルの領域に酵素(ペルオキシダーゼ酵素またはホスファターゼ酵素など)を局在化させ、一組の検出試薬を酵素と反応させてサンプル上に染料を堆積させるアフィニティアッセイを指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、それらが所望の抗原結合活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含むがこれらに限定されない、種々の抗体構造を包含する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、二重特異性抗体、直鎖抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、および、抗体断片から形成した多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指すために当業者によって理解される通常の意味に従って使用される、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得る変異型抗体は例外であり、そのような変異型は一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部もしくは一部、またはそれらの組み合わせを含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない種々の技術によって作製されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「二次検出試薬」は、バイオマーカー特異的試薬に特異的に結合できる特異的検出試薬を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「単染色」は、サンプルに適用された各バイオマーカー特異的試薬を同じ染色剤で染色するアフィニティアッセイを指す。
【0030】
名詞として使用される場合、「染色剤」という用語は、明視野顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法などを含む顕微鏡分析のために細胞サンプル中の特定の分子または構造を視覚化するために使用できる任意の物質を指す。動詞として使用される場合、「染色する」という用語は、細胞サンプル上に染色剤の堆積をもたらす任意のプロセスを指す。
【0031】
一般に、固体支持体は、多種多様な異なるサンプルキャリアのいずれかとして実装することができる。サンプルキャリアは平面状(例えば、顕微鏡スライド、カバースリップ、プレート、トレイ、および二次元に延在し、比較的狭い厚さを有する他の部材)であり得る。あるいは、サンプルキャリアは非平面であってもよく、カップ、チューブ、バイアル、および他の同様の容器として実施することができ、限定されるものではないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形、および他の多角形を含む断面形状を有する。使用されるサンプルキャリアの種類は、調製ワークフローにおけるサンプルの種類およびプロセス要件に依存し得る。例えば、組織サンプルを支持するために、平面顕微鏡スライドおよびカバースリップを使用することができる。サンプルが比較的高い割合の液体を含む場合、1つ以上のウェルまたはカップ(例えば、単一ウェルまたはマルチウェルサンプルプレート)を有するサンプルキャリアがより便利であり得る。
【0032】
一実施形態では、固体支持体が顕微鏡評価に適合する。一実施形態では、固体支持体が、明視野または蛍光顕微鏡法と適合性であり、本明細書に記載の染色プロセスを通して、目的の細胞のかなりの部分を固体支持体に接着したままにすることを可能にする。一実施形態では、固体支持体が顕微鏡スライドである。
【0033】
直接染色は、サンプルをバイオマーカー特異的試薬または直接コンジュゲート標識を有する試薬と直接混合することによって実施することができる。インキュベーション期間後、サンプルを、さらなる分析および染色のために固体支持体上に直接置くことができる。サンプルは未修飾であってもよく(例えば、全血または体液)、または前処理されていてもよい(例えば、全血調製物から溶解された赤血球)。サンプルおよび試薬の分注は、手動で行うことができる、または自動化プラットフォームを使用して実施することができる。
【0034】
アフィニティ染色およびロマノフスキー染色は、自動化された高度な染色プラットフォームを使用して実施することができる。自動化された高度な染色プラットフォームは、典型的には、少なくとも以下を備える:染色プロトコルで使用される様々な試薬のリザーバー、固体支持体に試薬を分配するためのリザーバーと流体連通している試薬分配ユニット、固体支持体から使用済み試薬および他の廃棄物を除去するための廃棄物除去システム、ならびに試薬分配ユニットおよび廃棄物除去システムの動作を調整する制御システム。染色工程の実施に加えて、多くの自動化された高度な染色プラットフォームは、(サンプルをスライドに付着させるための)スライドベーク、脱蝋(脱パラフィン処理とも呼ばれる)、抗原回復、対比染色、脱水および洗浄、ならびにカバーガラス処理を含む、染色に付属した工程もまた実施することができる(または、このような付属工程を実施する個別のシステムと適合性がある)。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Prichardは、intelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK(Ventana Medical Systems,Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)自動化スライド染色装置を含む、自動化された高度な染色プラットフォームのいくつかの具体例および様々な機能について記載している。さらに、自動化された分析を実施するためのシステムおよび方法を開示するいくつかの米国特許には、米国特許第5,650,327号明細書、同第5,654,200号明細書、同第6,296,809号明細書、同第6,352,861号明細書、同第6,827,901号明細書および同第6,943,029号明細書、ならびに米国公開特許出願第20030211630号明細書および同第20040052685号明細書が含まれ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。市販の染色ユニットは、典型的には、以下のいずれかの原理で動作する:(1)オープン個別スライド染色(open individual slide staining)、ここでは、スライドを水平に配置し、組織サンプルを含むスライドの表面に試薬を水たまりとして分配する(DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)およびintelliPATH(Biocare Medical)染色装置などで実施される);(2)液体オーバーレイ技術、ここでは、試薬は、サンプル上に堆積した不活性流体層で覆われるか、それを通ってサンプルに対して分配される(VENTANA BenchMarkおよびDISCOVERY染色装置などで実施される);(3)毛細管ギャップ染色、ここでは、スライド表面を別の表面(別のスライドまたはカバープレートなど)の近くに配置して狭いギャップを作り、これを通って、毛細管力が吸引され、液体試薬がサンプルと接触し続ける(DAKO TECHMATE、Leica BOND、およびDAKO OMNIS染色装置で使用される染色原理など)。毛細管ギャップ染色を何回か繰り返しても、ギャップ内の流体は混ざらない(例えばDAKO TECHMATEおよびLeica BONDなどにおいて)。ダイナミックギャップ染色と呼ばれる毛細管ギャップ染色のバリエーションでは、毛細管力を利用してスライドにサンプルを塗布し、その後インキュベーション中に平行表面を互いに対して並進させて試薬を撹拌して試薬混合を行う(例えばDAKO OMNISスライド染色装置(Agilent)に実装されている)。並進ギャップ染色では、並進可能なヘッドがスライドの上に配置される。ヘッドの下面は、スライドの並進中にスライド上の液体から液体のメニスカスが形成されるのを可能にするのに十分な小ささの第1のギャップ分だけ、スライドから間隔が空いている。スライドの幅よりも小さい横寸法を有する混合延長部が、並進可能なヘッドの下面から延在して、混合延長部とスライドとの間の第1のギャップよりも小さい第2のギャップを画定する。ヘッドの並進中、混合延長部の横寸法は、スライド上の液体中に、概ね第2のギャップから第1のギャップに至る方向に横の移動を生じさせるのに十分である。国際公開第2011/139978号公報A1を参照されたい。最近、スライド上に試薬を堆積させるためにインクジェット技術を使用することが提案された。国際公開第2016-170008号公報A1を参照されたい。この染色技術の一覧は包括的であることを意図しておらず、アフィニティ染色によるバイオマーカー染色を実施するための完全または半自動化システムである。
【0035】
多重法では、バイオマーカー特異的試薬および検出試薬は、異なるバイオマーカーを差次的に標識できるように適用される。異なるバイオマーカーの差次的標識を達成するための一方法は、異なるバイオマーカー特異的試薬または検出試薬間で交差反応性をもたらさないバイオマーカー特異的試薬と検出試薬との組み合わせを選択することである(「組み合わせ染色」と呼ばれる)。例えば、一次検出試薬が使用される場合、各バイオマーカー特異的試薬は、検出時にスペクトル的に区別可能な固有の検出可能な部分を有する。バイオマーカー特異的試薬間の交差反応性は、例えば、異なる動物種に由来する一次抗体(マウス抗体、ウサギ抗体、ラット抗体、およびヤギ抗体など)を選択することによっても最小限に抑えることができる。
【0036】
異なるバイオマーカーの差次的標識を達成する別の方法は、各バイオマーカーについてサンプルを連続的に染色することである。いくつかの実施形態では、最初に試薬のカクテルを使用して直接染色を適用することができ、サンプルを基板に移すことができ、次いで、追加のバイオマーカーを基板上の細胞に適用することができる。
【0037】
当業者によって理解されるように、組み合わせ染色および連続染色方法を組み合わせてもよい。例えば、バイオマーカー特異的試薬のサブセットのみが組み合わせ染色に適合する場合、組み合わせ染色に適合するバイオマーカー特異的試薬を組み合わせ染色法を使用してサンプルに適用し、残りのバイオマーカー特異的試薬を連続染色法を使用して適用する逐次染色法を修正することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、多重化法が蛍光多重化法である。いくつかの実施形態では、多重化法が明視野多重化法である。いくつかの実施形態では、多重化法がナノ粒子検出法である。多重化法の組み合わせも使用することができる。
【0039】
サンプルをバイオマーカー特異的試薬および検出試薬のセットで染色し、サンプル内に含まれるバイオマーカーに近接したサンプル上の検出可能な部分を得るため。
【0040】
いくつかの実施形態では、検出可能な部分が、バイオマーカー特異的試薬に直接コンジュゲートされているため、バイオマーカー特異的試薬がその標的に結合すると、サンプル上に堆積する(一般に、直接標識法と呼ばれる)。直接標識法は、多くの場合、より直接的に定量可能であるが、二次標識よりも低い検出感度を有する可能性がある。
【0041】
他の実施形態では、検出可能な部分の堆積が、バイオマーカー特異的試薬と会合する二次検出試薬の使用によって行われる(一般に間接標識法と呼ばれる)。間接標識法は、バイオマーカー特異的試薬に近接して堆積させることができる検出可能な部分の数を増加させ、したがって、特に染料と組み合わせて使用される場合、直接標識法よりも高感度であることが多い。間接的な方法の一例は、バイオマーカー特異的試薬に局在する酵素反応を使用して、検出可能な部分を堆積させる。このような反応に適した酵素は周知であり、例えば、オキシドレダクターゼ、ヒドロラーゼ、およびペルオキシダーゼが挙げられる。明示的に挙げられる具体的な酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、およびβ-ラクタマーゼである。酵素は、バイオマーカー特異的試薬に直接コンジュゲートされ得るか、または標識コンジュゲートを介してバイオマーカー特異的試薬と間接的に会合され得る。本明細書で使用される場合、「標識コンジュゲート」は、(a)特異的検出試薬、および(b)特異的検出試薬にコンジュゲートされた酵素を含み、該酵素は、適切な反応条件下で色素原もしくはフルオロフォア、シグナル伝達コンジュゲート、または酵素反応性染料と反応して、インサイチュでの染料の生成および/または組織サンプルに対する染料の堆積をもたらす。標識コンジュゲートの適切な特異的検出試薬は、二次検出試薬(一次抗体に結合した種特異的二次抗体、ハプテン複合化した一次抗体に結合した抗ハプテン抗体、またはビオチン化一次抗体に結合したビオチン結合タンパク質)、三次検出試薬(二次抗体に結合した種特異的三次抗体、ハプテン複合化した二次抗体に結合した抗ハプテン抗体、またはビオチン化二次抗体に結合した結合タンパク質など)、または他のこのような配置であり得る。次いで、このようにサンプルに結合したバイオマーカー特異的試薬に局在化した酵素を、検出可能な部分を堆積させるためにいくつかのスキームで使用することができる。場合によっては、酵素は発色性化合物/発色基質と反応する。発色性化合物/発色基質の特定の非限定的な例としては、4-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(XGal)、メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gal)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、またはテトラゾリウムバイオレットが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、酵素を金属組織学的検出スキームで使用することができる。金属組織学的検出方法には、アルカリホスファターゼなどの酵素を水溶性金属イオンおよび酵素の酸化還元不活性基質と組み合わせて使用することが含まれる。いくつかの実施形態では、基質が酵素によってレドックス活性剤に変換され、レドックス活性剤が金属イオンを還元し、検出可能な沈殿を形成させる。(例えば、2004年12月20日に出願された米国特許出願第11/015,646号明細書、PCT公開第2005/003777号明細書および米国特許出願公開第2004/0265922号明細書を参照されたい。これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。金属組織学的検出方法は、酸化還元酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼなど)を水溶性金属イオン、酸化剤、および還元剤とともに使用して、検出可能な沈殿を形成することを含む。(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,670,113号明細書を参照されたい)。いくつかの実施形態では、酵素作用が酵素と染料自体との間で起こり、反応が染料を非結合種からサンプル上に堆積した種に変換する。例えば、DABとペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼなど)との反応により、DABが酸化され、沈殿する。さらに他の実施形態では、検出可能な部分が、酵素と反応してサンプルまたは他の検出成分に結合できる反応性種を形成するように構成された潜在的反応性部分を含むシグナル伝達コンジュゲートを介して堆積する。これらの反応種は、それらの生成の近位、すなわち酵素の近くでサンプルと反応することができるが、非反応種に急速に変換するので、シグナル伝達コンジュゲートは、酵素が堆積する部位から遠位の部位には堆積しない。潜在的反応性部分の例としては、国際公開第2015124703号公報A1に記載されているものなどのキノンメチド(QM)類縁体、および国際公開第2012003476号公報A2に記載されているものなどのチラミドコンジュゲートが挙げられ、これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの例では、潜在的反応性部分が、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCOパープル)、およびローダミン110(ローダミン)などの染料に直接コンジュゲートしている。他の例では、潜在的反応性部分が、特異的結合対の一方のメンバーにコンジュゲートされ、染料が、特異的結合対のもう一方のメンバーに連結される。他の例では、潜在的反応性部分が、特異的結合対の一方のメンバーに連結され、酵素が、特異的結合対の他方のメンバーに連結され、酵素が、(a)染料の生成をもたらすために発色基質と反応であるか、または(b)染料(DABなど)の堆積をもたらすために染料と反応性である。
【0043】
細胞サンプルの薄層を得るために、細胞サンプルは、細胞学調製物を得る様式で固体支持体に適用される。一実施形態では、細胞診標本が、薄層細胞診標本である。細胞サンプルから薄層細胞診標本を得る例示的な方法には、細胞遠心分離、フィルタ転写、重力沈降および細胞プリンティングが含まれる。細胞遠心分離では、細胞サンプルが液体サンプル(例えば、キャリア溶液中の懸濁液または体液サンプル)として提供され、固体支持体と接触させられ、遠心分離される。遠心分離により生じた力により、細胞が固体支持体の表面に沈降し、それによって、細胞診標本が形成される。細胞遠心分離によって得られた薄層の品質および含有量は、例えば、遠心分離の前にサンプルを操作することによって、例えば、細胞濃度を調整すること、粘性サンプルを液化または希釈すること、沈殿またはデブリを除去すること、血液サンプル中の赤血球を溶解すること、サンプルを固定することなどによって最適化することができる。Stokesを一般的に参照されたい。典型的な細胞遠心分離システムは、遠心分離チャンバアセンブリおよびロータを含む。遠心分離チャンバアセンブリは、典型的には、固体支持体と、細胞サンプルの懸濁液を運ぶための容器とを含む。組み立てられると、容器は、懸濁液の表面を固体支持体の表面と接触させる。遠心分離チャンバは、一般に、2つのクラス:沈降中の流体の除去を容易にするチャンバ(例えば、容器と固体支持体との間の界面に隣接して吸収材料を配置することによって)および遠心分離全体を通して液体の保持を容易にするチャンバ(例えば、容器と固体支持体の表面との間の境界面の周囲にシールを配置することによって)に分けることができる。このような配置の例は、参照により本明細書に組み込まれる、F1のStokesで見ることができる。動作中、組み立てられた遠心分離チャンバは、ロータの回転が細胞サンプルの細胞を固体支持体の表面上に沈降させるような向きでロータに取り付けられる。例示的な市販の細胞遠心分離システムとしては、Thermo Scientific製のCYTOSPINシステムが挙げられる。細胞遠心分離を実施するための例示的なプロトコルは、例えば、Kohに見ることができる。いくつかの具体的な実施形態では、サンプルが、顕微鏡スライド上への細胞遠心分離によって調製される。
【0044】
細胞プリンティング法では、少量(例えば、0.1~10μl)の液体細胞サンプルが固体支持体の表面上の別々の位置に堆積し、堆積したサンプルを表面上で乾燥させて細胞診標本を得る。例えば、液体サンプルは、固体支持体の表面に対して(例えば、固体支持体の表面上に平行な列で、または同心円で)移動するアプリケータ先端部を通って流れ、それによって固体支持体の表面上に細胞の実質的に均一な分布を有する単層を形成することができる。細胞プリンティングを実行するための例示的なシステムは、典型的には、少なくとも既知の体積の液体細胞サンプルを分配するためのアプリケータ先端部と、固体支持体の表面に対するアプリケータ先端部の位置を変更するための手段(例えば、先端部を移動させるための手段、固体支持体を移動させるための手段、またはその両方)とを備える。例示的な市販の細胞プリンティングシステムには、Roche製のCOBAS m 511統合血液学分析装置が含まれ、その様々な態様は米国特許第8,815,537号明細書、25同第9,116,087号明細書、同第9,217,695号明細書、および同第9,602,777号明細書に記載されており、その各々は参照によりその全体が組み込まれる。細胞診断用スライドを生成するために細胞プリンティングシステムを使用するための例示的な方法は、Bruegelに見ることができる。いくつかの具体的な実施形態では、サンプルが、スライド上にプリントされた体液サンプルである。いくつかの具体的な実施形態では、サンプルが、スライド上にプリントされた全血サンプルである。COBAS m 511システムなどの細胞プリンティングシステムでは、流体媒体中の細胞の懸濁液を特徴とするサンプルが、分析のために顕微鏡スライドなどのサンプルキャリア上に調製される。サンプルが全血サンプルまたは流体中の血液成分の懸濁液に対応する場合、細胞プリンティングシステムは、サンプルキャリア上に細胞の層を調製する。ある特定の実施形態では、堆積される細胞の層が、細胞がほぼ均一に分布している単層に効果的に対応する。細胞層は、赤血球、白血球、および血小板のいずれか1種以上を含むことができる。サンプルキャリア上にサンプルを堆積させるために、システムは、任意にサンプルを希釈してもよく(例えば、緩衝液、染色液、またはより一般的には、任意の希釈材料を用いて)、希釈されたサンプルのアリコートがサンプルキャリアに適用される。サンプルの適用後、サンプル内の細胞がサンプルキャリアの表面に沈降し始める。ある特定の条件下で適用された場合、沈降細胞は重なり合わず、代わりに所望の単層を形成する。一般に、COBAS m 511統合血液学分析装置などの細胞プリンティングシステムは、アプリケータと、サンプルキャリアを支持するステージとを備える。サンプルは、アプリケータとステージとの間で相対運動が発生すると、アプリケータから排出される。アプリケータおよびステージの相対位置(ならびに様々な他のシステムパラメータ)を慎重に制御することによって、サンプルを再現可能な方法でサンプルキャリアに適用することができる。
【0045】
表1は、バイオマーカー染色がスライド上で実施される、本開示の方法を実施するための例示的なプロトコルを提供する。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
表2は、バイオマーカー染色がチューブ内で実施される、本開示の方法を実施するための例示的なプロトコルを提供する。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
CD実験
材料
様々な濃度(例えば、2mg/mlおよび200μg/ml)の抗体濃度2mg/mlのRoche Penzberg製のCD45。CD20(テキサス州ダラスのSanta Cruz Biotechnology,Inc.)
抗体希釈用のインキュベーション緩衝液(0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBS中3%BSA)。
【0055】
全血サンプル
プロトコル1.濃度2mg/mlの単一抗体:(例えば、CD45)。
【0056】
1μlを99μlのインキュベーション緩衝液に添加して、20μg/ml抗体のストック溶液番号1を作製した。5μlのストック溶液番号1を45μlの全血と混合して、およそ2μg/mlの最終抗体濃度を作製した。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、次いで、Cobas m 511上に置き、画像化のためにスライドを作製した。
【0057】
プロトコル番号2.濃度200μg/mlの単一抗体:(例えば、CD20)。
20μlを180μlのインキュベーション緩衝液に添加して、20μg/ml抗体のストック溶液番号2を作製した。5μlのストック溶液番号2を45μlの全血と混合して、およそ2μg/mlの最終抗体濃度を作製した。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、次いで、COBAS m 511上に置き、画像化のためにスライドを作製した。
【0058】
プロトコル番号3:多重化抗体試験(例えば、CD45およびCD20).
プロトコル番号1および番号2からのストック溶液番号1およびストック溶液番号2を使用した。5μlのストック溶液番号1および5μlのストック溶液番号2を40μlの全血と混合して、各抗体のおよそ2μg/mlの最終抗体濃度を達成した。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、次いで、COBAS m 511上に置き、画像化のためにスライドを作製した。
【0059】
図1Aに示されるように、CD45およびロマノフスキー型染色について細胞を陽性染色した。
【0060】
図1Bに示されるように、本方法は、同じスライド上のCD45陽性/CD20陽性細胞とCD45陽性/CD20陰性細胞とを区別した。
【実施例】
【0061】
実施例:CD45およびCD14-APC
CD45-PerCPは、濃度1.26mg/mlでRoche Penzbergから入手した。CD45ストック溶液を、サンプル中の最終濃度5μg/mlで、濃度55.44μg/ml(4.4μLを、95.4μlの、0.02%アジ化ナトリウムを含むPBS中3%のBSAブロッキング緩衝液に添加した)で使用した。CD14-APCをBeckman Coulter(REF IM 2580)から入手し、10μl/100μlサンプルの推奨濃度で使用した。試験したサンプル:100μlのEDTA血液+10μlのストック溶液CD45+10μlのCD14。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、その後、スライドをCOBAS m 511にプリントした。蛍光検出後/画像化スライドをCOBAS m 511でロマノフスキー染色し、明視野顕微鏡で画像化した。
【0062】
実施例:Roche Penzberg製のCD45を、上記のように使用した-スライド1。BioLegend製カタログ番号368506のCD45を使用した:50μlのEDTA血液+10μlのCD45-スライド2。各スライドについて別々に:混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、その後、スライドをCOBAS m 511にプリントした。蛍光検出後/画像化スライドをCOBAS m 511でロマノフスキー染色し、明視野顕微鏡で画像化した。
【0063】
実施例:濃度1.26mg/mlでRoche Penzbergから入手したCD45-PerCP。ストック溶液:濃度30μg/mL(サンプル中の最終濃度5μg/ml)。濃度0.47mg/mlでRoche Penzbergから入手したCD19-APC。ストック溶液:濃度120μg/ml(サンプル中の最終濃度20μg/ml)。濃度1.7mg/mlでRoche Penzbergから入手したCD3-AlexaFluor488。ストック溶液:濃度60μg/ml(サンプル中の最終濃度10μg/ml)。
【0064】
2.4μlのCD45、25.5μlのCD19、3.5μlのCD3および68.6μlのPBS緩衝液を添加することによって、上記濃度の3種全てのCDマーカーを含むストック溶液を調製した:試験したサンプル:50μlのEDTA血液+10μlのストック溶液。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、その後、スライドをCOBAS m 511にプリントした。蛍光検出後/画像化スライドをCOBAS m 511でロマノフスキー染色し、明視野顕微鏡法で画像化した。
【0065】
実施例:BD Multitest 6-color TBNK(カタログ番号644611)
試験したサンプル:50μlのEDTA血液+10μlのBD Multitest 6-color TBN。混合物を暗所中、室温で15分間インキュベートし、その後、スライドをCOBAS m 511にプリントした。蛍光検出後/画像化スライドをCOBAS m 511でロマノフスキー染色し、明視野顕微鏡法で画像化した。
【0066】
図15~
図22は、明視野顕微鏡法で画像化された対応するロマノフスキー染色とのCD3、CD4、CD8、CD16、およびCD19についての多重染色を示す。
【0067】
対象からの全血サンプルの収集後、バイオマーカー検出試薬(各特異的バイオマーカーに対する蛍光標識一次抗体)をサンプルに添加した。次いで、サンプルのアリコートを顕微鏡スライドにプリントし、蛍光顕微鏡法によって画像化した。サンプルの蛍光像を得た後、サンプルを固定し、顕微鏡スライド上でロマノフスキー染色した。次いで、ロマノフスキー染色サンプル中の細胞形態を明視野顕微鏡法によって得た。蛍光像をマージし、明視野像と比較した。
【0068】
他の実験では、全血サンプルに含有される赤血球を溶解した。次いで、溶解工程後にサンプルを洗浄して、全血サンプルに含有される細胞残屑および物質を除去し、サンプル中の白血球を濃縮した。次いで、洗浄した細胞サンプルをバイオマーカー検出試薬で染色し、洗浄して未結合試薬を除去し、顕微鏡スライドにプリントし、蛍光染色のために画像化し、引き続いてロマノフスキー染色のための調製および細胞形態のための画像化を行った。
【0069】
本開示の組成物および方法は、有利には、1種以上のバイオマーカーについて染色された細胞と、細胞形態を分析するためにロマノフスキー染色された細胞を並べて比較することを可能にする。本方法は、使用される試薬の量および種類が減少するため、あまり複雑でなく、コストを削減する。本方法は、インキュベーション時間を著しく短縮し、より少ない処理工程を使用する。
【国際調査報告】