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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】陰圧創傷治療(NPWT)被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20230614BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/00 301M
A61F13/02 310M
A61F13/02 310A
A61F13/02 310J
A61M27/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570711
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063748
(87)【国際公開番号】W WO2021239653
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20176277.0
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】マーリン スベンソン
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア シェップステット
(72)【発明者】
【氏名】マーリン ホルメン
(72)【発明者】
【氏名】エリノール ボリオス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267JJ03
4C267JJ07
(57)【要約】
本開示は、一般に、裏打ち層(101)と接着性皮膚接触層(102)とを含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)に関するものであり、接着性皮膚接触層(102)は、被覆材(100)を皮膚表面に対して着脱可能に接着するように構成されており、裏打ち層(101)は、結合用部材(104)を含み、結合用部材(104)は、管類(105)を含み、管類(105)は、被覆材(100)を、陰圧源に対して及び遠隔の流体収集手段に対して接続するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち層(101)と、接着性皮膚接触層(102)と、前記裏打ち層(101)及び前記接着性皮膚接触層(102)の間に配置された吸収性構造(103)と、を含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)において;前記接着性皮膚接触層(102)は、前記被覆材(100)を皮膚表面に対して着脱可能に接着するように構成され、前記裏打ち層(101)は、前記被覆材(100)を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された管類(105)を含む結合用部材(104)を含んでいる陰圧創傷治療(NPWT)被覆材であって、前記吸収性構造(103)は、10mg/cm2~20mg/cm2の量の、好ましくは13mg/cm2~17mg/cm2の量の、超吸収性粒子を含む、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項2】
前記吸収性構造(103)は、250g/m2~550g/m2の、好ましくは350g/m2~450g/m2の、基本重量を有している、請求項1に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項3】
前記被覆材(100)は、本明細書で説明する試験方法によって測定された際に、300mg/cm2~700mg/cm2の、好ましくは400mg/cm2~600mg/cm2の、保持能力を有している、請求項1又は2に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項4】
前記吸収性構造(103)は、第1液体展延層(103b)と、前記超吸収性粒子を含む超吸収性層(103a)と、第2液体展延層(103c)と、を含み、前記超吸収性層(103a)は、前記第1液体展延層(103b)と前記第2液体展延層(103c)との間に配置されている、請求項1から3の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項5】
前記第1液体展延層(103b)は、前記超吸収性層(103a)の下方に配置され、前記第2液体展延層(103c)よりも大きな液体展延能力を有している、請求項4に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項6】
前記吸収性構造(103)はエンボス加工されている、請求項1から5の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項7】
前記被覆材(100)は、前記接着性皮膚接触層(102)と前記吸収性構造(103)との間に配置された透過層(106)をさらに含み、前記透過層(106)は、スペーサファブリックを含む、請求項1から6の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項8】
前記被覆材(100)は、前記吸収性構造と前記透過層との間に、複数の接着性ストリップを含む、請求項7に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項9】
前記被覆材は、前記裏打ち層(101)と前記吸収性構造(103)との間に配置された液体展延層(108)を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項10】
前記裏打ち層(101)と、前記吸収性構造(103)の少なくとも一部は、開口部(109)を含み;前記開口部(109)は、前記結合用部材(104)の下に配置されており、液体展延層(108)が存在する場合には、前記液体展延層(108)には、開口部は設けられていない、請求項1から9の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項11】
前記裏打ち層(101)及び前記接着性皮膚接触層(102)は、前記吸収性構造(103)の周辺部を超えて延在し、前記吸収性構造(103)の輪郭に沿って縁部分(110)を形成するように構成され、前記接着性皮膚接触層(102)は、前記吸収性構造(103)の直下領域に、複数のアパーチャ(111)を含み、前記縁部分(110)が形成されている領域には、アパーチャが設けられていない、請求項1から10の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項12】
前記裏打ち層(101)は、NWSP070.4R0(15)によって測定された際に、500g/m2/24h~3500g/m2/24hの範囲内の、好ましくは600g/m2/24h~2700g/m2/24hの範囲内の、水蒸気透過率(MVTR)を有している、請求項1から11の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項13】
前記管類(105)は、前記被覆材(100)から流体を除去するように構成された流体導管(112)と、前記流体導管(112)に対して及び/又は前記被覆材(100)に対して空気を供給するように構成された空気導管(113)と、を含む、請求項1から12の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)。
【請求項14】
陰圧創傷治療(NPWT)システム(200)であって、
- 請求項1から13の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)と、
- 陰圧源と、
- 前記陰圧源に対して及び前記被覆材(100)に対して流体接続された遠隔の流体収集手段(117)と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム(200)。
【請求項15】
前記遠隔の流体収集手段(117)は、キャニスタであり、前記キャニスタ及び前記陰圧源は、同じ装置(118)の内部に配置され、前記装置(118)は、内部に前記陰圧源が配置されているハウジング(116)を含み、前記キャニスタ(117)は、前記ハウジング(116)に着脱可能に接続されている、請求項14に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(300)。
【請求項16】
前記システムは、動作時に2ml/min~7ml/minの速度で前記被覆材に空気を供給する手段を含む、請求項14又は15に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項17】
キット(300)であって、
請求項1から13の何れか一項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(100)を含み、陰圧源、キャニスタ(117)、バッテリ(124)、及び/又は接着性ストリップ(125)、から選択された少なくとも1つの追加的な構成要素を、さらに含む、キット(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材(dressing)に関する。本発明は同様に、このような被覆材を含むシステム及びキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷治療(NPWT)は、陰圧ポンプを用いて創傷に対して準大気圧を適用することにより、例えば外科、急性及び慢性創傷などの治癒を促進する技術である。創傷の治癒は、創傷上に適用された被覆材又はカバーを通して真空などの陰圧を適用することによって達成される。これにより、余剰な創傷滲出液が引抜かれ、こうしてその部域に対する血流量が増大し、肉芽組織の形成が促進される。NPWT技術は同様に、創傷の外部障害の低減も可能にし、余剰の流体を創傷部位から離れるように輸送する。
【0003】
NPWT技術は、これまでのところ、主として病院環境内にいる間の患者に対して適用されてきた。しかしながら、最近の製品開発により、家庭環境内で患者がこの技術を使用できるようになっている。
【0004】
病院の環境内において、治療すべき創傷は、一般的に、まずガーゼやフォームなどの創傷充填材が充填される開放性の空洞型創傷である。創傷はその後、接着フィルムで密封され、ドレン又はポートを介して真空ポンプに連結され得る。フォーム、ガーゼ及び/又は接着フィルム被覆材のサイズは、創傷のサイズ、形状又はタイプに応じて適応されカットされ得る。適用手順は一般的に介護者によって実施される。このようなシステムにおいて使用される陰圧ポンプは、一般的に大型のものであり、概して、大量の創傷滲出液を処理するため大きな容量を有する。このタイプのシステムには、被覆材から遠隔に配置されたキャニスタなどの流体収集手段が一般的に含まれている。創傷から排出される創傷滲出液は、流体収集のためキャニスタまで管類によって移送される。
【0005】
家庭環境内では、患者が持ち歩くことのできる携帯型NPWT装置が概して好まれる。携帯型NPWT装置は一般的に、管類を用いて陰圧源に連結されるように構成された吸収性被覆材を含む。このような装置内で使用されるポンプは、一般的に、比較的小型であり、より限定的な容量を有する。
【0006】
大部分の携帯型NPWTシステムにおいて、被覆材は創傷滲出液を収集する唯一の手段として役立つ。大量の創傷滲出液に対処する場合、被覆材は、急速に飽和状態となり得る。これは、被覆材の皮膚上残留能力にマイナスの影響を与える可能性がある。すなわち、被覆材の着用時間は短縮される。その結果、被覆材は、廃棄され新しい被覆材と交換される必要がある。
【0007】
したがって、陰圧創傷治療における使用のための被覆材に関して、詳細には、被覆材の着用時間を改善できるように創傷滲出液に対処する被覆材の能力に関して改善の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2759310号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3023083号明細書
【発明の概要】
【0009】
上述の問題を考慮して、本開示の目的は、NPWTの利用分野向けの被覆材に関して改善すること、詳細にはNPWTシステム全体及び適用される治療が効率よく機能するように、被覆材の着用時間及びその創傷滲出液を対処する能力を改善することにある。
【0010】
本開示の第1態様によれば、裏打ち層と、接着性皮膚接触層と、裏打ち層と接着性皮膚接触層との間に配置された吸収性構造と、を含む陰圧創傷治療(NPWT)被覆材が提供され、接着性皮膚接触層は、被覆材を皮膚表面に対して着脱可能に接着するように構成されており、裏打ち層は、管類を含む結合用部材を含み、管類は、被覆材を、陰圧源に対してと、遠隔の流体収集手段に対して接続するように構成されており、吸収性構造は10mg/cm2~20mg/cm2の量の、好ましくは13mg/cm2~17mg/cm2の量の超吸収性粒子を含む。
【0011】
本開示は、被覆材によって貯蔵される創傷滲出液と、被覆材から(遠隔の流体収集手段へと)除去される創傷滲出液との間の適切な分配バランスが達成され得るという認識に基づいている。これにより、被覆材の装着時間が向上する。本開示の被覆材は、被覆材を、遠隔に配置された流体収集手段に接続するように構成された管類を含む。言い換えれば、創傷滲出液は、被覆材により貯蔵され、被覆材から除去される。被覆材は、被覆材の内部に液体を効率的に分配することを確保するように設計されているだけでなく、管類を介して被覆材から相当量の液体を移送させることを確保するようにも設計されている。被覆材の吸収が速すぎる場合には、さらに「多すぎる」場合には、遠隔の流体収集手段への滲出液の移送が始まるよりも前に、被覆材が飽和状態となる場合がある。これは、被覆材が皮膚に留まる能力に対して悪影響を及ぼす可能性がある、すなわち、被覆材の装着時間が短くなる。例えば、キャニスタなどの遠隔の流体収集手段と、被覆材との間のバランスが不適切であると、一般的には、被覆材を頻繁に交換する必要が生じる。対照的に、滲出液が、例えばキャニスタなどの遠隔の流体収集手段に対して移送され過ぎると、そのような遠隔の流体収集手段が、流体収集に関して支配的な手段となってしまう。これは、滲出液の速すぎる流れが、流体収集手段と被覆材とを接続しているポート及び導管を閉塞し得ることのために、また、創傷部位に対する陰圧の伝達が損なわれ得ることのために、やはり好ましくない。さらに、遠隔の流体収集手段がキャニスタである場合には、キャニスタを頻繁に交換して空にしなければならないこととなり、これにより、被覆材の全吸収能力が利用されなくなる。
【0012】
本開示の陰圧創傷治療(NPWT)被覆材を用いて、被覆材内に保有される創傷滲出液と、被覆材から除去される創傷滲出液との間での、制御され且つバランスのとれた液体分配が達成される。2つの流体収集手段(被覆材、及び、遠隔の流体収集手段)どうしの間でのバランスのとれた液体分配は、被覆材の装着時間の長時間化を可能とする。
【0013】
吸収性構造は、10mg/cm2~20mg/cm2の量の、好ましくは13mg/cm2~17mg/cm2の量の、超吸収性(SAP)粒子を含む。
【0014】
この範囲は、液体吸収と、被覆材からの液体除去との間で適切なバランスをとる上で有益である。上記範囲でのSAP粒子の分配は、吸収性構造による「充分な」吸収と保持とを可能とする。本明細書で上述したように、「多すぎる」(又は「速すぎる」)吸収が、被覆材とキャニスタとの間での、滲出液の分配のバランスを乱し得るために、被覆材は、好ましくは、「多すぎる」(又は「速すぎる」)吸収を行わない。よって、吸収性構造は、被覆材の内部での創傷滲出液の分配を最適化するように構成されているが、更に、遠隔に配置された流体収集手段に向けて滲出液を除去することを確保するようにも構成されている。
【0015】
吸収性構造は、250g/m2~550g/m2の、好ましくは350g/m2~450g/m2の、基本重量を有してもよい。
【0016】
これにより、液体分配と、液体除去との間の均等さが得られる。さらに、上記範囲の基本重量は、被覆材を柔軟で薄いものとする。
【0017】
実施形態では、被覆材は、実施例2で説明する試験方法によって測定された際に、300mg/cm2~700mg/cm2の、好ましくは400mg/cm2~600mg/cm2の保持能力を有している。
【0018】
本発明者らは、被覆材の保持能力が、保持される液体と、除去される液体と、のバランスのとれた分配が達成されることを確保するに際して、すなわち、2つの流体収集手段(被覆材、及び、遠隔の流体収集手段)どうしの間で滲出液のバランスをとることを確保するに際して、重要であることを見出した。よって、本開示の被覆材は、創傷滲出液の35%~65%を例えば40%~60%を、貯蔵するように構成されているとともに、創傷滲出液の35%~65%を例えば40%~60%を、被覆材から管類を介して遠隔の流体収集手段へと、除去するように構成されている。
【0019】
実施形態では、吸収性構造は、超吸収性層と、少なくとも1つの液体展延層とを含む。超吸収性層は、滲出液が遠隔の流体収集手段へと移送される前に、滲出液を吸収して一時的に保持するように構成されている。超吸収性ポリマー粒子は、ヒドロゲルの形成時に多量の液体を吸収することができる。
【0020】
実施形態では、吸収性構造は、少なくとも、第1液体展延層と第2液体展延層とを含み、超吸収性層は、第1液体展延層と第2液体展延層との間に配置されている。
【0021】
創傷部位から流れてくる創傷滲出液は、まず、第1液体展延層がなす領域にわたって分配され、その後、超吸収性層によって吸収される。第2液体分配層は、超吸収性層からの滲出液を分配し、これにより、滲出液は、広い領域にわたって展延した後に、裏打ち層から蒸発するか、あるいは、管類を介して遠隔の流体収集手段へと移送される。
【0022】
実施形態では、第1液体展延層は、超吸収性層の下方に配置されているとともに、第2液体展延層よりも大きな液体展延能力を有している。
【0023】
よって、液体展延勾配を伴う吸収性構造が達成され、これは、被覆材の内部に液体を保持する上での、及び被覆材から液体を除去する上での、吸収性構造の能力に影響を与える。
【0024】
実施形態では、吸収性構造はエンボス加工されている。
【0025】
エンボス加工された吸収性構造は、被覆材の液体対処特性を向上させるとともに、創傷滲出液の、バランスのとれた展延及びより制御された展延に寄与する。さらに、エンボス加工された吸収性構造は、被覆材が、その形状及び薄さを保持することを可能としつつ、同時に柔軟であることも可能とする。
【0026】
被覆材は、接着性皮膚接触層と吸収性構造との間に配置された透過層をさらに含み、透過層は、スペーサファブリックを含む。
【0027】
透過層は、陰圧源から創傷部位へと陰圧を伝達することを容易にするように機能する。
【0028】
実施形態では、被覆材は、吸収性構造と透過層との間に、複数の接着性ストリップを含む。
【0029】
接着性ストリップは、結合用部材及び管類に向かう滲出液の流れを止めるように構成されている。上述したように、本開示の被覆材は、好ましくは、被覆材と、遠隔に配置された流体収集手段との間における、液体の適切且つ実質的に均等なバランスを可能とする構成を有している。
【0030】
接着性ストリップは、被覆材の全吸収能力が利用され得るよう、遠隔に配置された流体収集手段に向かって滲出液が過度に速く流れることを防止するように機能する。したがって、接着性ストリップは、被覆材と、例えば遠隔に配置されたキャニスタとの間の、創傷滲出液の望ましい分配に寄与し得る。
【0031】
実施形態では、被覆材は、裏打ち層と吸収性構造との間に配置された液体展延層を含む。
【0032】
吸収性構造が、2つの液体展延層を含む場合には、裏打ち層と吸収性構造との間に配置された液体展延層は、第3液体展延層と称され得る。
【0033】
吸収性構造と裏打ち層との間に(第3)液体展延層を設けることによって、液体の対処及び液体分配の点で、いくつかの利点が得られる。液体展延層は、被覆材と、遠隔に配置された流体収集手段との間での、制御され且つバランスのとれた液体分配に寄与する。流体収集手段として機能するという、被覆材の能力が最適化されつつ、管類を介して被覆材から滲出液のかなりの部分を、なおも除去して移送することができる。
【0034】
さらに、液体展延層は、被覆材の内部での創傷滲出液の展延及び分配を向上させ、これにより、被覆材から(裏打ち層を通して)滲出液を蒸発させ得るより大きな表面積を形成する。よって、液体展延層のより大きな表面積は、余剰の滲出液をより効率的に取り除くように作用し得る。
【0035】
液体展延層は、また、潜在的な「逆流」する滲出液の分配を改善する、すなわち、逆方向に(管類から、被覆材へと)流れる滲出液の分配を改良する。これは、例えば、被覆材が、陰圧源から及び/又は遠隔の流体収集手段から切り離された場合に発生し得る。液体展延層は、そのような滲出液の逆流が一箇所で創傷部位に向かって逆流するのではなく、展延することを確実にする。このようにして、創傷部位を比較的乾燥した状態に維持することができる。
【0036】
実施形態では、裏打ち層と、吸収性構造の少なくとも一部は、結合用部材の直下に配置された開口部を含み、液体展延層が存在する場合には、液体展延層には、開口部は設けられていない。
【0037】
開口部は、創傷部位と被覆材の管類との間の流体連通を確保するように機能し、これにより、また、創傷部位と、遠隔に配置された流体収集手段との間の流体連通も確保するように役立つ。
【0038】
滲出液中の潜在的なゲル化粒子及び望ましくない大きな微粒子が被覆材の管類内へと侵入してしまうことを防止するために、液体展延層には、そのような開口部が設けられていない。被覆材の結合用部材の下部にある部域内では、液体展延層は、被覆材の内部から、管類を介して遠隔の流体収集手段へと、液体を移送するように構成されている。
【0039】
一般的には、裏打ち層及び接着性皮膚接触層は、吸収性構造の周辺部を超えて延在して、吸収性構造の輪郭に沿って縁部分を形成するようにするように構成されており、接着性皮膚接触層は、吸収性構造の直下領域に複数のアパーチャを含むが、縁部分が形成されている領域には、アパーチャが設けられていない。
【0040】
アパーチャは、被覆材の内部への創傷滲出液の吸収を向上させるように機能し、したがって、アパーチャは、吸収が行われる領域内に配置される。吸収性層の、被覆材の縁部分を形成している領域には、好ましくは、アパーチャが設けられていない。このようにして、皮膚に対しての接着性が増強され、これにより、被覆材の滞留能力が長時間化される。
【0041】
実施形態において、裏打ち層は、NWSP070.4RO(15)により測定された場合に500~3500g/m2/24hの範囲内、好ましくは600~2700g/m2/24hの範囲内の水蒸気透過率(MVTR)を有する。
【0042】
水蒸気透過率(MVTR)とは、裏打ち層が(ひいては被覆材も同様に)水分を蒸発させる速度である。滲出性創傷には、極めて高い水蒸気透過率(MVTR)を有する裏打ち層を伴う吸収性被覆材が必要とされるということは、概して公知である。当該技術分野において知られていることとは対照的に、該発明者らは、低いMVTRを有する裏打ち層には意外にも、このような被覆材を陰圧創傷治療において適用した場合にプラスの効果が付随する、ということを認識した。500~3500g/m2/24hの範囲内のMVTRを有する裏打ち層が陰圧創傷治療及びシステムの安定性を改善し、陰圧源すなわちポンプに対するプラスの効果を有し、陰圧源は治療中においてさほど強力に機能する必要がない。以上で規定されたMVTR範囲はなお、余剰の水分が効率的に被覆材から除去されて創傷の治癒が促進されることも保証することができる。さらに裏打ち層の下方に液体展延層を設けることで、裏打ち層の低い水蒸気透過率(MVTR)を「補償」することが可能である。
【0043】
実施形態において、管類は、被覆材に由来の流体を除去するように構成された流体導管と、流体導管及び/又は被覆材に対して空気を供給するように構成された空気導管とを含む。
【0044】
少量かつ制御された空気の流入は、創傷部位から流体をより効率良く引抜きかつ流体を遠隔に配置された流体収集手段、例えばキャニスタまで輸送するのに有益であり得る。空気の導入は、管類内に形成される潜在的な滲出液の閉塞又は液柱を消散させ得る。
【0045】
第2の態様によると、
- 以上で説明された陰圧創傷治療(NPWT)被覆材と、
- 陰圧源と、
- 陰圧源及び被覆材に対して流体連結された遠隔の流体収集手段と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システムが提供される。
【0046】
実施形態において、遠隔の流体収集手段はキャニスタであり、キャニスタ及び陰圧源は同じ装置の内部に配置されており;装置はハウジングを含み、このハウジング内に陰圧源が配置され、キャニスタは、ハウジングに対して離脱可能な形で連結されている。
【0047】
離脱可能な構成は、ユーザ又は介護者がキャニスタを取外し収集された液体を空けて、その後キャニスタを再び陰圧源に取付けることを可能にする。
【0048】
実施形態において、NPWTシステムは、動作中、2~7ml/minの流量で被覆材に空気を供給するための手段を含む。
【0049】
前述の通り、少量でかつ制御された空気の流入は、創傷部位からより効率的に流体を引抜き、例えばキャニスタなどの遠隔に配置された流体収集手段に流体を輸送するために有益であり得る。管類の液柱及び詰まりに関係する問題が防止されるような形で、制御された比較的低い率で管類(例えば空気導管)を用いて被覆材に対し空気を供給することができる。このようにして、所望の圧力レベルが創傷部位に伝送される。陰圧創傷治療システムにおいては、一般的にキャニスタ内部の圧力と創傷部位の圧力の間に重力により導入される静圧差が存在する。これは、キャニスタと創傷部位の間の高さの差に起因する。静圧の変化は、創傷部位において適正な陰圧レベルを提供する能力に影響を及ぼし得る。少ない空気の流量の供給又は空気の漏出(leakage)により、これらの問題を解決する場合がある。さらに、過度に多い空気が導入された場合、これは、システムの安定性にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、一般的に、ポンプはより高い頻度で作動される。
【0050】
第3の態様によると、以上で説明された通りの陰圧創傷治療(NPWT)被覆材を含むキットが提供される。
【0051】
本開示のさらなる特徴及びそれに伴う利点は、添付のクレーム及び以下の説明を検討した時点で明らかになるものである。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の異なる特徴を組み合わせて、以下で説明するもの以外の実施形態を創出することができるということを認識する。
【0052】
特定の特徴点及び利点を含めて、本開示の様々な態様は、以下の詳細な説明から、及び添付図面から、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1a図1aは、本開示の例示的実施形態に係る被覆材を示す。
図1b図1bは、結合用部材及び管類が除去されている、図1aの被覆材の部分的断面図を示す。
図1c図1cは、本開示の例示的実施形態に係る被覆材の分割図を示す。
図2図2は、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムを概念的に示す。
図3図3は、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)キットを示す。
図4図4は、キャニスタと本開示の例示的実施形態に係る被覆材との間の液体分配、及びキャニスタと2つの参照被覆材との間の液体分配を示している。
図5a図5aは、7日間の試験期間中に試験液体に曝露された後の、参照被覆材(被覆材D)の写真である。
図5b図5bは、7日間の試験期間中に試験液体に曝露された後の、別の参照被覆材(被覆材C)の写真である。
図5c図5cは、9日間の試験期間中に試験液体に曝露された後の、本開示の例示的実施形態による被覆材(被覆材A)の写真である。
図6a図6aは、液体に曝露された後における、第2被覆材(被覆材E)と比較した、第1被覆材(被覆材A)について、被覆材の裏打ち層から見た写真を示す。
図6b図6bは、液体に曝露された後における、第2被覆材(被覆材E)と比較した、第1被覆材(被覆材A)について、接着性皮膚接触層が除去された場合の、透過層から見た写真を示す。
図7図7は、それぞれ2530g/m2/24h及び3940g/m2/24hのMVTRを有する裏打ち層を伴う、2つの異なる被覆材(被覆材A及び被覆材B)を比較する、ポンプ作動の間の平均時間Toffを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
ここで本開示について、本開示の現在好まれている実施形態が示されている添付図面を参照しながら、以下でより完全に説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で具体化可能であり、本明細書中に記載されている実施形態に限定されるものとみなされるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、完璧さ及び網羅性のために提供され、当業者に対して本開示の範囲を完全に伝達するものである。全体を通して、同じ参照文字は、同じ要素を意味する。
【0055】
図1a及び1bは、本開示の例示的実施形態に係る陰圧創傷治療(NPWT)被覆材100を示す。NPWT被覆材100は、裏打ち層101、接着性皮膚接触層(図1b中の102参照)及び裏打ち層101と接着性皮膚接触層の間に配置された吸収性構造103を含み;接着性皮膚接触層は、被覆材100を皮膚表面に対し接着させるように構成されており、裏打ち層101は、被覆材100を陰圧源及び遠隔の流体収集手段に連結するように構成された管類105を含む結合用部材104を含んでおり、吸収性構造103は、10mg/cm2~20mg/cm2の量の、好ましくは13mg/cm2~17mg/cm2の量の、超吸収性粒子を含む。
【0056】
本明細書中で使用されている「陰圧創傷治療被覆材」なる用語は、陰圧創傷治療において使用するための被覆材を意味する。本開示に関連して、「陰圧創傷治療」は、創傷から余剰の流体を除去するために陰圧源(例えば真空ポンプ)を利用する治療を意味する。創傷は、開放性の創傷であり得、あるいは閉鎖創傷、すなわち外科的閉鎖切開でもあり得、したがって、この用語は、閉鎖切開に関連して用いられることの多い用語である「局所陰圧(topical negative pressure、TNP)治療」の利用分野をも包含する。
【0057】
本開示のNPWT被覆材100は、「創傷パッド」とも称され得る吸収性構造を含む。NPWT被覆材は、一般的には、「縁付き被覆材」と称される。裏打ち層101及び接着性皮膚接触層は、吸収性構造103の輪郭を超えて延在するように構成されており、これにより、縁部分110を形成している。
【0058】
本明細書で使用した際には、「皮膚表面」という用語は、着用者の皮膚を指す。皮膚は、開放創又は閉鎖創などの処置対象をなす創傷を含み得る。
【0059】
本開示のNPWT被覆材100は、遠隔の流体収集手段を含むNPWTシステム内での使用のために適応されている。本明細書中で使用される「遠隔の流体収集手段」なる用語は、流体収集手段が、例えば被覆材と陰圧源の間など、被覆材から一定の距離のところに配置されているか、又は陰圧源に連結されていることを意味している。また、陰圧源及び流体収集手段は、同じNPWT装置内に配置されてもよい。
【0060】
吸収性構造103は、創傷滲出液を吸収し、且つ、そのような創傷滲出液を効率的に分配するように、構成されている。吸収性構造103は、滲出液を保持して分配するための一時的なリザーバとして機能するとともに、同時に、管類105を介して被覆材から導出される液体移送を制御する。
【0061】
被覆材と遠隔の流体収集手段との間の液体分配は、好ましくは、40:60~60:40である。本発明者らは、このような分配が、被覆材を交換する必要なく、最大で9日間の治療にわたって維持され得ることを見出した(実施例1を参照)。
【0062】
吸収性構造103は、被覆材の装着時間を向上させるよう、2つの流体収集手段(被覆材及び遠隔の流体収集手段)の間でバランスのとれた液体分配を確保する。
【0063】
吸収性構造103は、1つ又は複数の層を含んでもよく、それら層の少なくとも1つは、超吸収性ポリマー(superabsorbent polymer、SAP)粒子を含む超吸収性層103aである。
【0064】
「超吸収性ポリマー」すなわち「SAP」とは、水性流体内で自重の最大300倍まで吸収し得るポリマーのことである。超吸収性ポリマーは、ヒドロゲルの形成時に大量の流体を吸収し得る、水膨潤性ポリマー及び水不溶性ポリマーによって構成されている。本開示に従って使用するための超吸収性ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、架橋ポリアクリレート、及び同種のもの、などの、無機又は有機の架橋親水性ポリマーであってもよい。一般的には、超吸収性(SAP)粒子は、アクリル酸ナトリウムを含む。SAP材料は、粒子の形態である。超吸収性粒子のサイズは、45μm~850μmの範囲、例えば150μm~600μmの範囲、であってもよい。
【0065】
吸収性構造103中の超吸収性粒子の量は、10mg/cm2~20mg/cm2、好ましくは13mg/cm2~17mg/cm2、である。
【0066】
本発明者らは、この範囲が本開示による被覆材にとって有益であることを見出した。このような超吸収性層は、「適度な」レベルで滲出液を吸収する。含まれているSAPが多すぎる場合には、SAP層は膨潤し、過度に多く過度に急速に吸収する可能性がある。これは、被覆材が、流体収集のための唯一の手段として、又は少なくとも優勢な手段として、機能するという効果を有し得る。本開示との関連において、例えばキャニスタなどの遠隔に配置された流体収集手段と、被覆材(これもまた、流体収集手段と見なされる)との間のバランスは、好ましくは50:50であり、例えば少なくとも40:60又は60:40である。本明細書で上述したように、このバランスは、被覆材の装着時間を向上させる上で重要である。
【0067】
吸収性構造103は、250g/m2~550g/m2の、好ましくは350g/m2~450g/m2の、基本重量を有している。
【0068】
このようにして、液体分配が制御され、液体の吸収と、被覆材からの液体除去との間で適切なバランスが観察される。さらに、被覆材は柔軟なものであり、より良好な態様で、着用者の動きに適応し得るものであってもよい。
【0069】
実施形態では、被覆材は、実施例2で説明する試験方法によって測定された際に、300mg/cm2~700mg/cm2の、好ましくは400mg/cm2~600mg/cm2の、保持能力を有している。
【0070】
本発明者らは、2つの流体収集手段(被覆材、及び、例えばキャニスタ)の間でバランスのとれた液体分配が達成されることを確保するために、被覆材の保持能力が重要であることを見出した。
【0071】
好ましくは、吸収性構造は、少なくとも1つの超吸収性層103aと、少なくとも1つの液体展延層とを含む。
【0072】
液体展延層は、創傷部位から流れてくる液体を吸収して分配するように構成されている。液体展延層は、超吸収性層の下方に配置されてもよい。したがって、液体展延層は、創傷滲出液を、超吸収性層によって吸収され得るよう、大きな表面積にわたって均一に分配して展延させる。代替的には、液体展延層は、超吸収性層の上方に配置される。このようにして、液体展延層は、滲出液が裏打ち層から蒸発し得る大きな表面積を可能とする。
【0073】
図1cに示すように、吸収性構造103は、3つの層103a~103cを含む。
【0074】
吸収性構造103の最下層103bは、液体展延層103bである。創傷部位から液体展延層103bへと入る滲出液は、吸収性構造103の(1つ若しくは複数の)他の層へ入る前に均等に分配され、これにより、超吸収性層103a及び吸収性構造103の(1つ若しくは複数の)他の層に向けて、より大きな表面積を形成する。
【0075】
吸収性構造103は、第1液体展延層103bと、超吸収性層103aと、第2液体展延層103cと、を含んでもよく、超吸収性層103aは、第1液体展延層103bと、第2液体展延層103cとの間に配置されている。
【0076】
第1液体展延層及び/又は第2液体展延層は、滲出液を効率的な態様で分配する能力を有した任意の材料を含んでもよい。例えば、第1液体展延層及び/又は第2液体展延層は、不織布材料を含む。
【0077】
実施形態では、第1液体展延層103bは、超吸収性層103aの下方に配置されるとともに、第2液体展延層103cよりも大きな液体展延能力を有している。よって、液体展延勾配を有した吸収性構造が達成され、これは、被覆材からの及び被覆材の内部で液体をそれぞれ保持及び除去する吸収性構造103の能力に対して、影響を与える。
【0078】
例えば、第1液体展延層103bは、不織布を含んでもよい。20~50g/m2(gsm)、例えば30~40g/m2(gsm)の範囲内の坪量を有していてよい。液体展延層103bの厚さは、0.2mm~1.2mm、例えば0.2mm~0.6mm、であってもよい。厚さは、乾燥状態で測定される。
【0079】
第2液体展延層103cは、薄織物又は不織布層であり得る。一般的には、上側の層103cの展延能力は、下側の液体展延層103bの展延能力よりも低い。
【0080】
層103cは同様に、超吸収性層103aからのSAP粒子の漏出を防止するのにも役立つ。超吸収性層103aのSAP粒子は、超吸収性層103aに入る滲出液と化学的に結合し、これにより水性ゲルを形成する。層103cは、ゲル化粒子が裏打ち層101に向かって及び管類105を含む結合用部材104に向かって移動するのを防ぐ。こうして、管類105内部でのゲル粒子による望ましくない閉塞が防止される。好ましくは、層103cは、液体展延層であり、被覆材100の裏打ち層101に向かって、分配された液体のより大きな間接的表面を創出するのに役立つ。層103c又は103bは、同様に、「支持層」としても役立ち、製造プロセス中、担体として役立ち得る。
【0081】
吸収性構造のさまざまな層は、複合的液体吸収及び保持構造を創出し、改善された液体分配が観察される。詳細には、それぞれ保持及び除去されている滲出液の制御された分配が観察された。
【0082】
実施形態では、吸収性構造103は、追加的な層を含む。
【0083】
吸収性構造103は好ましくは、エンボス加工されている。換言すると、吸収性構造103の表面は構造化されており、複数の陥凹と隆起(図示せず)を含み得る。このことは、基本重量の増大に伴って複数の層を含む吸収性構造103は堅く厚くなり得ることから、有益である。エンボス加工は、吸収性構造が、柔軟でありながらその形状及び厚みを保持することを可能にする。エンボス加工された吸収性構造は、また、被覆材100の内部での創傷滲出液の、制御された展延を確保する。滲出液の増強された展延及び分配は、構造体の圧縮された領域において得られる。
【0084】
超吸収性層103aは、エアレイド(airlaid)超吸収性層であってもよい。実施形態では、エアレイド超吸収性層103aは、超吸収性粒子と、セルロース繊維と、二成分繊維とを含む。
【0085】
このような超吸収性層により、液体の対処特性を向上させ得るとともに、液体を適切に分配することができる。さらに、ゲルによる閉塞を防止するとともに、大量の流体を取り扱う時に吸収性構造が崩壊することを防止する。二成分繊維は、結合剤として作用し、特に湿潤状態において、SAP層の形状を維持する。二成分繊維は、ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレート(PE/PET)から形成されてもよい。
【0086】
例えば、エアレイド超吸収性層は、
- 30重量%~50重量%の、好ましくは35重量%~50重量%の、超吸収性粒子と、
- 30重量%~50重量%の、好ましくは40重量%~50重量%の、セルロース繊維と、
- 3重量%~10重量%の、好ましくは5重量%~8重量%の、二成分繊維と、
- 3重量%~8重量%のポリエチレンと、
を含んでもよい。
【0087】
超吸収性層103aの厚さは、0.8mm~2.5mm、例えば1.4mm~2.2mm、例えば1.8mm~2.0mmであってもよい。厚さは、乾燥状態で測定される。
【0088】
被覆材100は、接着性皮膚接触層102と吸収性構造103との間に配置された透過層106を、さらに含んでもよい。
【0089】
透過層106は、フォーム、ニードルパンチ不織布、スルーエアボンド不織布、又は、スペーサファブリックを含んでもよい。透過層106は、特定の材料に限定されるものではなく、湿潤状態及び乾燥状態の両方において、創傷領域に対して陰圧を確実に伝達し得るように構成された任意の材料を、使用することができる。透過層106は、皮膚が比較的乾燥した状態を維持し得るよう、流体が創傷部位から吸収性構造へと移送され得ることを確保する。
【0090】
好ましくは、透過層106は、スペーサファブリックを含む。スペーサファブリックは、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材においてしばしば利用される三次元材料である。
【0091】
実施形態では、スペーサファブリック層は、1.5mm~4mmの、例えば2mm~3mmの、厚さを有している。厚さは、乾燥状態で測定される。スペーサファブリックの基本重量は150~500g/m2(gsm)、例えば200~350g/m2(gsm)、であってもよい。
【0092】
スペーサファブリック層106は、一般的には、頂部層と底部層、そして頂部層と底部層の間のパイルフィラメントの相互連結層と、を含む。パイルフィラメントからなる相互連結層は、200デニール~500デニールの、例えば250デニール~350デニールの、繊度を有してもよい。
【0093】
スペーサファブリック層106は、圧縮強度が高く、使用中に被覆材に加わる圧力に耐えるように構成されている。圧縮力が被覆材に加えられた後、透過層106は、力が除去された直後にその原初の形状に復帰するように構成されている。
【0094】
実施形態では、被覆材は、透過層106と吸収性構造103との間に、複数の接着性ストリップ107を含む。
【0095】
接着性ストリップ107は、結合用部材104及び管類105に向かう滲出液の流れを止めるように構成されている。本明細書で上述したように、本開示の被覆材100は、好ましくは、被覆材と、遠隔に配置された流体収集手段との間での、適切なかつ実質的に均等なバランスを可能とする構成を有する。
【0096】
創傷滲出液が創傷部位から排出される時には、創傷滲出液は、まず、透過層106によって対処され、そして、透過層106から出る時点で、接着性ストリップ107が、滲出液を、管類105に向けて直接的に流すのではなく、その上に位置した吸収性構造103内へと案内するように機能する。したがって、接着性ストリップ107の設置は、被覆材と遠隔に配置されたキャニスタとの間での、創傷滲出液の所望の分配に寄与し得る。開口部109の直下の領域には、いかなる接着性ストリップも存在しないことが好ましい。これは、管類105及び結合用部材104の、詰まり及び閉塞を防止するためである。
【0097】
「複数のストリップ」とは、被覆材が少なくとも2つの接着性ストリップを含むことを意味している。例えば、被覆材は、被覆材のサイズに応じて、また、ストリップの幅に応じて、2本~10本の、例えば2本~6本の、接着性ストリップを含んでもよい。
【0098】
接着性ストリップ107は、被覆材100の幅に亘って配置されてもよい。よって、接着性ストリップは、透過層106及び/又は吸収性構造103の側縁部の間へと延在するように配置されてもよい。ストリップは、好ましくは、管類105に向かう滲出液の流路に対して直交して配置される。したがって、接着性ストリップ107は、被覆材内へ流入する滲出液が、管類105に向けて流れる時には、常に接着性ストリップ107と遭遇しなければならないように配置される。
【0099】
接着剤は、好ましくは、ホットメルト接着剤である。接着性ストリップの幅は、3mm~25mm、例えば5mm~15mm、例えば6mm~10mmの範囲内であってもよい。
【0100】
接着性ストリップ107間の距離は、10mm~50mm、例えば15mm~30mm、であってもよい。接着性ストリップ107間の距離は、被覆材100のサイズ及び形状に依存してもよい。
【0101】
図1b及び図1cに示すように、被覆材100は、裏打ち層101と吸収性構造103との間に配置された液体展延層108を含む。
【0102】
液体展延層108は、実施形態では第3液体展延層とも称され得るものであって、吸収性構造103の表面積の、少なくとも90%にわたって延在するように構成されている。好ましくは、液体展延層108は、吸収性構造103の表面積の全体にわたって延在するように構成されている。液体展延層108には、開口部が設けられていない。したがって、液体展延層108及び吸収性構造103は、同じ外形寸法及び同じ断面積を有する。これは、大きな表面にわたって液体の効率的な展延を確保する上で、さらに、被覆材からの液体蒸発を向上させる上で有益である。
【0103】
液体展延層108は、創傷滲出液の展延を向上させるように、そして、水分が裏打ち層101を通して蒸発し得るより大きな表面積を形成するように構成されている。
【0104】
液体展延層108は、好ましくは、親水性かつ多孔性の層である。このようにして、滲出液は、創傷部位から、液体展延層108を通して、管類105へと、効率的に移送され得る(そしてこれにより遠隔の流体収集手段へと、効率的な態様で移送され得る)。
【0105】
液体展延層108は、繊維状材料であってもよい。例えば、液体展延層108は、不織布を含んでもよい。不織布は、層に対して、及びそのような被覆材に対して、適切でバランスのとれた剛性を付与する。不織布製の液体展延層108は、材料の大部分にわたって液体を分配する能力と、被覆材と遠隔に配置された流体収集手段とを接続している管類105に対して、制御された態様で滲出液を移送する能力とを有している。
【0106】
液体展延層108は、流体を創傷部位から及び吸収性構造103から導出することを補助するとともに、同時に、吸収性被覆材の最大の吸収量が利用され得ることを確保する。
【0107】
液体展延層108は、また、管類105から被覆材に向かって流れる潜在的な滲出液を、すなわち「誤った」方向に流れる滲出液を、展延させる上でも、有益である。滲出液の逆流は、被覆材の着用者が、被覆材を、陰圧源から及び流体収集手段から切り離した際に、発生し得る。例えば、患者は、シャワーを浴びたり衣服を着替えたりする場合に、NPWT被覆材を切り離すことがある。液体展延層108は、そのような滲出液の逆流が、一箇所で創傷部位に向けて逆流するのではなく、展延することを確保する。このようにして、創傷部位を、比較的乾燥した状態に維持することができる。
【0108】
液体展延層108は、メルトブロー、スパンボンド、又はスパンレース不織布、を含んでもよい。不織布において使用するのに適したポリマーの例は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、並びに、他のポリオレフィンのホモポリマー及びコポリマー、である。例えば、ポリプロピレンの熱可塑性繊維とポリエチレン繊維とを含む不織布ウェブ、又はそれらの混合物を含む不織布ウェブ、が使用されてもよい。ウェブは、熱可塑性繊維を大きな含有率で有してもよく、少なくとも50%の、例えば少なくとも70%の、熱可塑性繊維を含有してもよい。不織布は、ポリエステルとビスコースの混合物であってもよく、例えば70:30の比率での混合物であってもよい。不織布の基本重量は、10g/m2~80g/m2の、例えば20g/m2~50g/m2の、範囲内であってもよい。液体展延層は、また、スパンボンド-メルトブローンウェブ、又はスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)ウェブ、であってもよい。
【0109】
液体展延層108は、好ましくは、吸収性構造から流れる創傷滲出液を吸収する能力を有している。実施形態では、液体展延層108は、標準試験法NWSP10.1によって測定された際に、少なくとも10g/gの吸収能力を有している。
【0110】
図1b及び図1cに最も明瞭に示すように、裏打ち層101と、吸収性構造103の少なくとも一部とは、結合用部材104の直下に配置された開口部109を含む。液体展延層108には、開口部が設けられていない。
【0111】
開口部109は、創傷部位と、遠隔に配置された流体収集手段と、の間の流体連通を確保する。開口部は、また、創傷部位に対して陰圧を伝達することを可能とする。結合用部材104は、(図1cに最も明瞭に示すように)裏打ち層内の開口部109を覆っている。図1cでは、吸収性構造103は、3つの層を含み、それら層のそれぞれは、開口部109を含む。しかしながら、また、開口部が、吸収性構造の1つの層内にのみ設けられることや、又は2つの層内に設けられることも、想定される。
【0112】
液体展延層108が全く開口部を含まないことにより、ゲル化粒子及び望ましくないより大きな微粒子が、被覆材100の管類105内へと侵入してしまうことが防止される。
【0113】
裏打ち層101及び接着性皮膚接触層102は、吸収性構造103の周辺部を超えて延在して、吸収性構造103の輪郭に沿って縁部分110を形成するように構成されている。言い換えれば、被覆材は、パッド部分と、縁部分110とを含む。パッド部分は、吸収性構造103と、液体展延層108(存在する場合)と、透過層(存在する場合)とを含む。したがって、縁部分110は、液体展延層108の周辺部も超えて延在するように構成されている。実施形態では、パッド部分は、追加的な層を含む。
【0114】
好ましい実施形態では、接着性皮膚接触層102は、吸収性構造103の直下領域に複数のアパーチャ111を含むが、縁部分110を形成する領域には、アパーチャは設けられていない(図1cを参照)。
【0115】
被覆材の縁部分にアパーチャが設けられていないことは、被覆材の縁部分110における接着性を向上させる上で、ひいては、被覆材の滞留能力を向上させる上で、有益である。
【0116】
接着性皮膚接触層102は、被覆材の最下層である。接着性皮膚接触層102は、被覆材を、皮膚表面に対して、着脱可能に接着するように構成されている。言い換えれば、接着性皮膚接触層102は、着用者の皮膚に対して又は創傷に対して、接触するように構成されている。この層は、また、「創傷接触層」又は「皮膚接触層」とも称され得る。
【0117】
接着性皮膚接触層102は、好ましくは、シリコーン系接着剤、すなわちシリコーンゲルを含む。シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層は、皮膚に優しいものであるとともに、外傷を引き起こすことなく容易に剥がすことができる。また、被覆材が所定位置に留まるようにして皮膚に対しての充分な接着性を有しつつも、取り外し及び再貼付を繰り返してもその接着性を維持するように構成されている。
【0118】
図1bに示すように、接着性皮膚接触層102は、2つの層を含んでもよい。例えば、接着性皮膚接触層102は、ポリマー系フィルム102aと、シリコーンゲル層102bと、を含んでもよく、その場合、シリコーンゲル層102bは、着用者の皮膚に対して接触するように構成されている。
【0119】
ポリマー系フィルム102aは、好ましくは、通気性のフィルムであり、例えばポリエチレン、ポリアミド、又は、ポリエステル、ポリウレタン、を含んでもよい。好ましくは、ポリマー系フィルムは、ポリウレタンを含む。ポリウレタンフィルムの厚さは、15μm~100μm、例えば20μm~80μm、好ましくは20μm~60μm、であってもよい。
【0120】
接着性皮膚接触層102及び/又はシリコーンゲル層102b内で使用するのに適したシリコーンゲルの例は、本明細書中に記載の二成分RTV系、例えばQ72218(Dow Corning)及びSilGel 612(Wacker Chemie AG)、並びに、NuSilシリコーンエラストマー、がある。本発明の実施形態では、接着剤は、特許文献2(欧州特許出願第14194054.4号)中に記載された方法である、ASTM D 937及びDIN 51580に基づく方法によって測定した際に、8mm~22mmの、例えば12mm~17mmの柔らかさ(針入度)を有した軟質シリコーンゲルを含んでもよい。接着性皮膚接触層の厚さは、一般的には、少なくとも20μmである。接着性皮膚接触層の厚さは、100μm~200μmであってもよい。
【0121】
図1cに示すように、接着性皮膚接触層102は、複数のアパーチャ111を含む。アパーチャ111は、ポリマーフィルム102a(存在する場合)及びシリコーンゲル層102bを貫通して、延在する。アパーチャ111は、皮膚領域に対する接着性を損なうことなく、被覆材100内への体液の吸収を向上させる。
【0122】
裏打ち層101は、被覆材の最も外側の層であり、着用者の皮膚から見て外方を向くように構成されている。
【0123】
実施形態では、裏打ち層は、500g/m2/24h~3500g/m2/24hの範囲内の、好ましくは600g/m2/24h~2700g/m2/24hの範囲内の、例えば700g/m2/24h~2600g/m2/24hの範囲の、例えば1400g/m2/24h~2600g/m2/24hの範囲内の、水蒸気透過率(moisture vapor transmission rate、MVTR)を有している。
【0124】
「水蒸気透過率(MVTR)」とは、裏打ち層が、裏打ち層から水分を透過させる速度である。水蒸気透過率は、標準法NWSP070.4R0(15)により測定される。MVTRは、38℃の温度で測定される。
【0125】
陰圧源の駆動頻度が少なく、より安定した治療が観察され、なおかつ、被覆材の内部に収集された滲出液は、裏打ち層から周囲環境へと、首尾よく蒸発させることができる。全体として、このことは、バッテリの消耗の点で、ノイズの低減の点で、長時間の且つより安定した創傷の治療の点で、好ましい効果を有している。
【0126】
本開示の被覆材100が、遠隔に配置された流体収集手段を含むNPWTシステム内に適用された時には、創傷滲出液は、創傷部位から、管類105を用いて、流体収集手段へと、引き抜かれる。管類を通して、滲出液を連続的に(又は、断続的に)除去するためには、NPWT源、すなわち、規則的な間隔で作動される真空ポンプが必要である。しかしながら、ポンプが過度に頻繁に、さらに、「必要以上」の速度で作動される場合、それによりノイズならびにバッテリの消耗に関するマイナスの帰結がもたらされる。本開示の被覆材100の場合には、以下の実施例4で実証するように、少なくとも26%の、ポンプの作動の減少が観察されている。
【0127】
裏打ち層101は、ISO527-3/2/200により測定された際に、30MPa~70MPaの、好ましくは35MPa~55MPaの、機械方向(machine direction、MD)での及び/又は機械直交方向(cross-machine direction、CD)での、引張強度を有してもよい。引張強度は、15mm幅のストリップで測定される。
【0128】
好ましくは、裏打ち層101は、患者の移動時に裏打ち層上に印加される力に耐え、なおかつ、柔軟性と、充分な伸縮性を可能にするのに十分な「強度」を有する。引張強度も同様に、安定的で信頼性の高い治療を提供する上で、影響を有している。裏打ち層は、患者の移動時に裏打ち層が破れたり破断したりしないよう、充分な剛性を有していなければならない。例えば、吸収性構造が厚くなればなるほど縁部において裏打ち層に擦れる可能性があることから、吸収性構造の縁部は特に破断し易い可能性がある。裏打ち層に、穿孔又はスリットが形成されている場合、これには、被覆材及びシステム内への、望ましくない空気の漏洩が付随する可能性がある。その結果、治療及びシステムの安定性が損なわれかねない。しかしながら、裏打ち層は、ユーザの運動又は膝などの関節の屈曲に被覆材を適応させることができるように、なおも充分な柔軟性を有していなければならない。
【0129】
裏打ち層101は、一般的には、熱可塑性エラストマーを含む。熱可塑性エラストマーは、適度な伸びへと引き伸ばされる能力と、応力が除去された時には元の形状へと復帰する能力とを有している。熱可塑性エラストマーを含む適切な材料の例は、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリエチレン、を含む。裏打ち層は、また、ポリエステル系不織布材料と少なくとも1つのポリウレタンフィルムとの積送品であってもよい。
【0130】
好ましくは、裏打ち層は、熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0131】
裏打ち層の厚さは、10μm~40μm、好ましくは15μm~30μm、の範囲内であってもよい。
【0132】
裏打ち層101は、少なくとも1つのフィルムを含んでもよい。例えば、裏打ち層は、2つ以上のフィルムを含んでもよい。実施形態では、裏打ち層は、2つ以上のフィルムによって形成された積層品である。ポリアクリレート接着剤などの接着剤からなる薄い層を裏打ち層に塗布して、裏打ち層を、接着性皮膚接触層に対して、又は存在する場合には吸収性構造に対して、又は被覆材の任意の他の層に対して、取り付けてもよい。本開示の文脈では、裏打ち層101は、熱可塑性エラストマーとその上に適用された接着剤(例えば、ポリアクリレート)とを含む少なくとも1つのフィルムを含む。接着剤は、連続的なパターンで、又は不連続的なパターンで、塗布されてもよい。
【0133】
図1aを参照すると、管類105は、被覆材から流体を除去するように構成された流体導管112と、流体導管112及び/又は被覆材100に対して空気を供給するように構成された空気導管113と、を含む。さらに、管類105は、被覆材及び創傷部位に対して陰圧を伝達するように構成されている。
【0134】
管類105及び/又は結合用部材104は、エラストマー及び/又はポリマー材料から製造された任意の適切な可撓性のチューブから形成されてもよい。管類は、結合用部材104に取り付けられている。実施形態では、管類105は、結合用部材104に対して、しっかりと又は固定的に取り付けられる。代替的な実施形態では、管類105は、結合用部材104に対して、着脱可能に取り付けられる。
【0135】
結合用部材104は、一般的には、被覆材の裏打ち層に取り付けられるように構成された取付け部分を含む。結合用部材は、裏打ち層に対して、接着力で取り付けられてもよい。結合用部材は、また、管類105に対して接続されるように構成された流体入口及び流体出口を含んでもよい、すなわち、空気導管113に対して接続されるように構成された流体入口と、流体導管112に対して接続されるように構成された流体出口とを含んでもよい。
【0136】
結合用部材は、特許文献1(欧州特許出願第13152841.6号)で定義された構造を有してもよい。
【0137】
実施形態では、管類105の遠位端部は、第1コネクタ部分114に連結されている。第1コネクタ部分114は、例えばキャニスタなどの遠隔の流体収集手段と結び付けられた第2コネクタ部分に対して接続されるように、さらに、実施形態では、陰圧源に対して接続されるように、構成されている(例えば、キャニスタチューブと結び付けられた第2コネクタ部分123が図示されている図3を参照)。
【0138】
図2を参照すると、本開示による陰圧創傷治療(NPWT)システムが、概念的に図示されている。
【0139】
陰圧創傷治療(NPWT)システム200は、本開示によるNPWT被覆材100を含む。被覆材100は、患者115の膝に適用される。
【0140】
NPWTシステム200は、
- 本明細書で上述したような陰圧創傷治療(NPWT)被覆材100と、
- 陰圧源と、
- 陰圧源及び被覆材100に対して流体接続された遠隔の流体収集手段117と、
を含む。
【0141】
陰圧源とは、陰圧ポンプが作動状態にある時に陰圧を確立するように構成された陰圧ポンプのことである。陰圧ポンプは、生体適合性があるとともに適切な治療効果のある真空レベルを維持したり又は引き入れるあらゆるタイプのポンプであってもよい。好ましくは、達成されるべき陰圧レベルは、約-2666.4Pa(-20mmHg)~約-39996.7Pa(-300mHg)の範囲である。本開示の実施形態においては、約-10665.8Pa(-80mmHg)~約-23998.0(-180)、好ましくは約-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1(-140mmHg)Paの陰圧範囲が使用される。実施形態では、陰圧ポンプは、ダイヤフラムタイプのポンプ、又は蠕動タイプのポンプ、である。
【0142】
本明細書で使用した際には、「流体接続されている」という用語は、広義に解釈されるべきであり、例えば、遠隔の流体収集手段117と陰圧源と被覆材100との間の流体接続/流体連通を提供する、任意の形態での管類や導管や又はチャネルを含んでもよい。
【0143】
遠隔の流体収集手段117は、例えばキャニスタなどの、任意の種類の流体容器であってもよい。代替的には、遠隔の流体収集手段は、NPWT被覆材又はNPWTシステムの管類の内部に存在する吸収性材料であってもよい、あるいは、被覆材又は本開示の被覆材とキャニスタとの間に配置された吸収性構造であってもよい。一般的には、遠隔の流体収集手段117は、キャニスタである。
【0144】
図2では、陰圧源は、携帯型陰圧創傷治療(NPWT)装置118のハウジング116の内部に含まれている。キャニスタは、好ましくは、ハウジング116に対して着脱可能に接続されている。
【0145】
言い換えれば、キャニスタ117は、ハウジング116に対して解放可能に接続されている。着脱可能な接続は、摩擦嵌合、バイオネット結合、スナップ嵌合、係止爪付コネクタ、又は同種のもの、を含めた従来的手段によるものであってもよい。着脱可能な構成により、ユーザ又は介護者は、キャニスタ117を取り外して、収集した液体を空とすることができ、その後、キャニスタ117を、再びハウジング116に対して再装着することができる。
【0146】
キャニスタ117は、例えば成型プラスチック又は同種のものから形成されてもよい。キャニスタ117は、好ましくは、キャニスタ117の残存容量を決定する上でユーザを支援するため、キャニスタ117の内部を検分できるように、少なくとも部分的に透明/半透明である。
【0147】
例えば、キャニスタ117の内容積は、30ml~300mlであり、例えば40ml~150mlである。キャニスタ103の内容積は、創傷のタイプに応じて変動され得る。実施形態では、キャニスタ117は、液体吸収性材料を含む。可能な実施形態では、キャニスタ103の内容積の少なくとも75%が、液体吸収性材料によって占有されている。
【0148】
NPWT装置118は、管類105を用いて被覆材101に接続されてもよい。図2に示す実施形態では、NPWTシステムは、被覆材100とNPWT装置118との間の位置に、コネクタユニット119を含む。コネクタユニット119は、第1コネクタ部分(図1では、114で表記している)と、第2コネクタ部分(図3における123を参照)と、を含んでもよい。コネクタ部分114及び123は、被覆材をNPWT装置118から容易に取り外し得るよう、好ましくは、着脱可能に接続される。これは、ユーザがシャワーを浴びようとした時に又は何らかの他の理由で、ユーザが被覆材を装置118から取り外すことを決定し得ることのために、携帯型NPWTシステムにおいて、有益である。
【0149】
図2では、管類105は二重導管であり、他方、NPWT装置118とコネクタユニット119との間の管類120は、単一導管である。NPWTシステムは、決してそのような構成に限定されるものではなく、NPWT装置118と被覆材100との間に、単一導管又は二重導管を含んでもよい。NPWTシステムは、また、コネクタユニット119を使用することに限定されるものでもない。管類105は、実施形態では、NPWT装置118にまで延在するように構成されてもよい。
【0150】
NPWTシステム200は、好ましくは、動作時には2ml/min~7ml/minの速度での、被覆材に対しての空気を供給する手段を含む。
【0151】
好ましくは、被覆材に空気を供給するための手段は、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1(-140mmHg)の陰圧で2~7ml、好ましくは3~5mlの率で空気を供給するように構成されている。
【0152】
図2に示すNPWTシステム100では、周囲空気が、コネクタユニット119(矢印121によって図示されている)を用いて、システム内へと導入される。例えば、第1コネクタ部分及び/又は第2コネクタ部分(114及び123)は、被覆材100内への、及び/又は管類105内への、空気供給を制御するように構成されたエアフィルタ(図示せず)を含んでもよい。第1コネクタ部分及び/又は第2コネクタ部分(114及び123)は、例えば、内部にエアフィルタが配置された吸気ポートを含んでもよい。
【0153】
エアフィルタは、好ましくは、疎水性かつ多孔質の材料を含み、細孔のサイズは、2μm~20μmの範囲内、好ましくは5μm~12μmの範囲内である。フィルタの細孔サイズは、非圧縮状態で測定される。
【0154】
エアフィルタは、好ましくは、ポリエチレンを含み、好ましくは焼結ポリエチレンを含む。
【0155】
焼結ポリエチレンフィルタは、繰り返しの直線状分子構造-CH2-CH2を有している。この構造は、強力な分子結合を有した不活性なものであり、改善された化学的耐性、軽量性、熱可塑性、及び優れた濾過特性を特徴とする。焼結ポリエチレンフィルタは、また、有毒な廃棄物を出さず、洗浄して再利用され得るため、環境にも優しいものである。
【0156】
エアフィルタは、動作中、例えば-10665.8Pa(-80mmHg)~-19998.4Pa(-150mmHg)、例えば-13332.2(-100mmHg)~-17331.9Pa(-130mmHg)の陰圧で空気の供給が2~7ml/分の範囲内であることを保証する。
【0157】
空気が、代替的な態様でシステム内へと導入されてもよいこと、また、エアフィルタが、システム内の代替的な位置に設けられてもよいことに、留意されたい。空気供給の調節は、実施形態では、NPWT装置118によって制御されてもよい。
【0158】
使用時には、被覆材100は、ユーザ/患者の創傷部位のところに配置され、これにより、密閉空間を形成する。管類(105及び120)は、被覆材100を、NPWT装置118に対して、例えばNPWT装置118の入口ポートに対して、流体接続するために設けている。その後、NPWT装置118は、例えば、ユーザ/患者が、開始/一時停止ボタン122を押すことによって、作動される。これにより、陰圧ポンプが作動される。作動時には、陰圧ポンプは、キャニスタ117、管類(120及び105)、及び被覆材100によって形成された密閉空間を通して、空気を排出し始めることとなる。したがって、密閉空間の内部には、陰圧が生成されることとなる。液体が創傷部位に形成されている場合には、創傷部位由来のこの液体は、少なくとも部分的に、創傷部位から、管類(105及び120)を通して、キャニスタ117内へと、「吸引」されてもよい。創傷から吸引されてキャニスタ117内に収集される液体すなわち滲出液の量は、処置対象をなす創傷のタイプと、使用される創傷被覆材のタイプと、に依存することとなる。本開示の文脈内では、液体分配の間で、実質的に均等なバランスが所望される。キャニスタ117と陰圧ポンプとの間には、適切なフィルタ部材(図示せず)が配置されてもよく、これにより、キャニスタ117から陰圧ポンプへと、一切の液体を通過させないことが確保される。
【0159】
キャニスタ117は、管類120に対しての接続を可能とするための入口ポートを含んでもよい。入口ポートと管類120との間の接続は、好ましくは、密閉接続であり、これにより、NPWT装置118の通常動作時に入口ポートのところで漏洩が起こらないことが確保される。管類120は、好ましくは、摩擦嵌合、バイオネット結合、スナップ嵌合、係止爪付コネクタ、又は同種のもの、を含めた従来的手段によって、入口ポートに対して解放可能に接続される。同様の密閉が、キャニスタ117と陰圧ポンプとの間に形成される。
【0160】
図3は、好ましい実施形態によるキット300を示している。キット300は、本明細書で上述したような少なくとも1つのNPWT被覆材100を含む。
【0161】
被覆材は、管類105を含む。好ましくは、管類105は、例えば被覆材100の裏打ち層に取り付けられた結合用部材104を用いて、被覆材に予め取り付けられる。管類105が予め取り付けられていることにより、システム/キットの各構成要素を迅速に組み立てることができる。
【0162】
管類105の遠位端部は、第1コネクタ部分114に対して接続される。キットは、ハウジング116の内部に配置された陰圧源をさらに含んでもよい。キットは、また、キャニスタ117を含んでもよい。キャニスタは、第2管類120を含んでもよい。第2管類120の遠位端部は、第2コネクタ部分123を含んでもよい。第2コネクタ部分123は、被覆材100の管類105に関連した第1コネクタ部分114に対して接続されるように構成されている。キット300は、NPWT装置118に電力を供給するための追加的なバッテリ124などの、また、被覆材の縁部分と着用者の皮膚との間の接着を向上させるための接着性ストリップ125などの、追加的な構成要素を含んでもよい。
【0163】
図3に示すキットは、在宅ケアに適しているが、病院内でも、又は介護施設という環境においても、有利に使用される。NPWT装置は、ユーザが例えばポケットに入れて、ベルトに入れて、ストラップに入れて、又は同種のものに入れて、ユーザが携帯するのに適している。被覆材10及びキット300の他の構成要素は、ユーザが容易に組み立てることができる。
【0164】
キット300の構成要素は、様々であってもよい。例えば、あるキットは、上述したすべての構成要素を含み得るものであり、他方、他のキットは、2つ又は3つの構成要素だけを含有している。
【0165】
キット300は、本明細書で上述したような複数のNPWT被覆材を含んでもよく、任意には、複数の接着性ストリップと共に包装された状態で複数のNPWT被覆材を含んでもよい。
【0166】
したがって、キット300は、本明細書で上述したような陰圧創傷治療被覆材と、少なくとも1つの追加的な構成要素と、を含み、その場合、追加的な構成要素は、陰圧源、キャニスタ117、バッテリ124、及び/又は(1つ若しくは複数の)接着性ストリップ125、から選択される。
【0167】
本開示のキット(及び、NPWTシステム)において使用されるNPWT装置118は、装置の動作を制御するために必要な機能及び構成要素を含む。例えば、NPWT装置は、バッテリに電気的に接続された制御ユニットを含んでもよい。そのような制御ユニットは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブルデジタル信号プロセッサ、又は、別のプログラマブルデバイス、を含んでもよい。加えて、NPWT装置118は、陰圧ポンプと流体連通して配置された少なくとも1つの圧力センサを含んでもよい。
【実施例
【0168】
実施例1:液体分配の比較試験
被覆材とキャニスタとの間の液体分配を試験するために、本開示の例示的な実施形態による被覆材(被覆材A)と、2つの参照被覆材(被覆材C及びD)とを使用して、比較試験を実行した。
【0169】
被覆材Aは、下から上に向けて、ポリウレタンフィルム及びシリコーンゲル層を含む接着性皮膚接触層と、スペーサファブリック製透過層と、吸収性構造(不織布の液体展延層、本明細書で上述したエアレイドSAP層、及び、ティッシュ層、を含む)と、不織布の液体展延層と、裏打ち層とをそれぞれ含むものであった。被覆材Cは、被覆材Aと同じ層構成を有するが、吸収性構造の基本重量がより大きなものであり、1cm2あたりの保持能力及び超吸収性粒子の量が相違するものであった。
【0170】
被覆材Dは、全体的な層構成については同じであるが、吸収性構造が相違するものであった。被覆材Dの吸収性構造は、40重量%の超吸収性繊維(superabsorbent fibers、SAF)と、60重量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維と、を含む吸収性層と、不織布製液体展延層と、を含むものであった。被覆材Dの吸収性構造内には、超吸収性粒子は存在しなかった。
【0171】
すべての被覆材(A、C、及びD)は、空気導管と流体導管とを含む予め取り付けられた管類を含むものであった。
【0172】
さらに、すべての被覆材(A、C、及びD)は、吸収性構造の上方に配置された不織布の液体展延層を含むものであった。不織布の液体展延層は、50重量%のビスコース繊維と50重量%の二成分繊維と、を含むものであった。被覆材の吸収性構造に関する詳細については、以下の表1を参照されたい。
【0173】
【表1】
【0174】
以下では、実施例2で説明する通りに、保持能力を測定した。
【0175】
予め重量測定した被覆材を、被覆材領域より大きなサイズのプレキシガラスプレートに取り付けた。プレキシガラスプレートは、液体流入用の穴を有するものであった。液体流入が被覆材の中央部分となるようにして、被覆材を配置した。各々の被覆材は、図2に示すように、モバイル型の陰圧装置に対して接続された管類を有するものであった。使用したポンプは、ダイヤフラムタイプのポンプであった。50mlの液体を貯蔵するように構成されたキャニスタを使用し、図2に開示するようなハウジング内部に配置されたポンプに接続した。被覆材及びNPWT装置(キャニスタと、ポンプとを含む)を、本明細書で上述したようにして、それぞれ対応するコネクタ部分によって接続した。被覆材の管類に付随した第1コネクタ部分の内部には、エアフィルタを配置した。被覆材に対する空気供給が2ml/min~7ml/minの範囲内になるようにして、周囲空気を、コネクタ内及びシステム内へと、導入した。ポンプを作動し、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に適用した。
【0176】
試験液体(ウマの血清)を、各被覆材の中央に添加し、7日間で300mlの流量とし(被覆材C及びD)、また、9日間で386mlの流量とした(被覆材A)。被覆材内の陰圧を、全試験期間中、-16665.3Pa(-125mmHg)に維持した。試験期間の終了後に、被覆材及びキャニスタの、湿潤重量を記録した。各被覆材とキャニスタと間で、試験液体の分配を計算した。
【0177】
図4から理解され得るように、被覆材Aとキャニスタとの間の液体分配は61:39であり、他方、被覆材Cに関しては、大部分の液体は被覆材内に保持され(90%)、キャニスタへと移送されたのは、わずかに10%であった。被覆材Dに関しては、被覆材:キャニスタの液体分配は34:66であった。
【0178】
また、試験期間(それぞれ、7日及び9日)後の被覆材の写真を撮影した。図5aから理解され得るように、被覆材Dは、被覆材構造の内部での液体分配が不十分であった。言い換えれば、被覆材の吸収能力のごく一部しか利用されなかった。その代わり、より多くの滲出液が、キャニスタへと移送された。
【0179】
図5bは、被覆材Cを示しており、ここでは、被覆材の大部分が使用されていた。この図からは明確に見えないものの、被覆材は、嵩高く「ふやけた」外観を有していた。
【0180】
図5cは、9日間の液体曝露後の被覆材Aを示す。被覆材の大部分が液体に対処するために使用され、それでもなお、少なくとも39%の滲出液をキャニスタに移送させることができた。流体収集手段(被覆材とキャニスタ)間の所望される液体分配がこうして達成された。
【0181】
実施例2:被覆材の保持能力
液体保持能力とは、被覆材が液体を保持する容量として定義される。
【0182】
まず、被覆材サンプルに関して、理論的最大吸収量を評価した。最大吸収能力とは、過剰な試験液体に曝露された時に、負荷がかかっていない状態で、被覆材が吸収し得る液体の量のことである。
【0183】
被覆材サンプルA、C、及びDを、被覆材の中央部分から、所定のサイズ(5cm×5cm=25cm2)へと打ち抜いた(被覆材に存在するすべての層が、試験に使用された)。
【0184】
乾燥状態の被覆材サンプル(A、C、及びD)の面積及び重量を記録した。各々の被覆材サンプルを、多量の試験液体(ウマの血清)を入れたボウル内に浸漬した。細目金網を、サンプル上に配置し、接着性皮膚接触層が細目金網の方を向くようにして、液体表面の下方へと押し込んだ。各サンプルを、吸収時間全体にわたり試験液体で覆った状態で、60分間吸収するように放置した。吸収時間の終了後に、サンプルを、1つの被覆材の一隅に垂直に吊るして、120秒間にわたって液体を流し出した。60分間にわたって、サンプルに液体を吸収させた。吸収時間が完了した時点で、一隅で垂直に保持して、供試体を120秒間自由に流し出した(以下の図を参照のこと)。試料各々について液体グラム数単位で最大吸収能力を記録した。
【0185】
最大吸収能力を計算した後、(上述した通りの)同じ試験を行なった。サンプルに、理論的最大吸収量の80%に対応する試験液体を吸収させた。10分間の吸収時間の後に、サンプルの創傷側が下向きになった状態で、サンプルに対して、16665.3Pa(125mmHg)と等価な圧力を印加した。静圧を、120秒間にわたって維持した。その後、静圧への曝露後にサンプル内に保持されたウマの血清の重量として、保持力を算出した。よって、保持能力とは、所定圧力下で製品が液体を保持する能力のことである。被覆材A、C、及びDに関する保持能力は、本明細書中の表1に示した通りである。
【0186】
実施例3:液体展延層の液体逆流防止効果
被覆材をNPWT装置から切り離す時に問題となり得る滲出液の逆流を対処するに際しての、被覆材の能力を試験するために、2つの吸収性被覆材(本明細書で上述した被覆材A、及び、被覆材E)を使用して、比較試験を設定した。被覆材Eは、被覆材Aと同じ構成を有していたが、裏打ち層と吸収性構造との間に、不織布の液体展延層を有していないものであった。各被覆材の管類を、実施例1で説明したのと同じ手順で、モバイル型の陰圧装置に対して接続した。
【0187】
キャニスタを、約52mlのウマの血清(過剰な液体)によって充填した。16665.3Pa(125mmHg)の陰圧が安定した時に、キャニスタをポンプから切り離し、過剰な液体を、被覆材へと戻した。図6a及び図6bから理解され得るように、滲出液の逆流は、図6a及び図6bにおいて100で示すように、本開示の被覆材(被覆材A)の場合には、より大きな表面上へと分配した。対照的に、被覆材Eにおける滲出液の逆流(図6a及び図6bにおいて601と表示)は、有意な程度に展延しておらず、滲出液のより大きな割合が、創傷部位に向けて直接的に逆送された。こうして、液体展延層は、両方向において滲出液の均等な展延及び分配に貢献する。
【0188】
実施例4:システムの安定性比較試験
2つの被覆材(本明細書で上述した被覆材A、及び、被覆材B)を利用して、装着試験を実施した。被覆材A及び被覆材Bは、構成において同様であるものの、裏打ち層に関してのみ相違するものであった。両方の被覆材とも、空気導管と流体導管とを含む管類が予め取り付けられたものであった。裏打ち層の特性について、以下の表2に記載する。
【0189】
【表2】
【0190】
脚を120度に曲げた状態で、被験者の前膝に対して、被覆材を適用した(被覆材の管類は、上を向いている)。管類を、図2に示すように、それぞれ対応するコネクタ部分を用いてモバイル型の陰圧装置に接続した。使用したポンプは、ダイヤフラム型ポンプであった。図1に開示する通り、50mlの液体を貯蔵するように構成されたキャニスタを、ポンプに対して接続した。被覆材の管類の遠位端部に取り付けられたコネクタ部分は、エアフィルタを含み、動作中は(空気導管を用いた)被覆材に対する空気供給が2ml/min~7ml/minの範囲内となるように、コネクタ内に周囲空気を導入した。
【0191】
ポンプを作動させて、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を、被覆材に対して適用した。複数のポンプの作動の間の時間Toffを最初の5時間(それぞれ0~5時間及び3~5時間)に亘って記録したが、これは、システムの安定性の標示であり、所望されない空気がシステム内に導入されないよう保証するための手段である。
【0192】
試験を5人の被験者に対して実行し、0時間~5時間における、及び3時間~5時間における、平均Toffを記録した。
【0193】
被覆材Aに関する平均Toffは、0時間~5時間では35秒であり、これに対し、被覆材Bでは26秒であり、これは、26%の改良である。改良は、3時間~5時間に関して、さらに顕著であり、その場合、Toffは、本開示の被覆材に関しては、40%大きかった。結果は、図7に、及び以下の表3に、示されている。これらの結果は、裏打ち層の特性が、陰圧創傷治療の安定性に影響を及ぼすことを示している。システムは、安定的であって気密性が高く、ポンプは、それほど稼動する必要がない。
【0194】
【表3】
【0195】
本開示のすべての態様における、用語、定義、及び実施形態は、本開示の他の態様に対して準用される。
【0196】
本開示について、特定の例示的な実施形態を参照して説明しているが、多くの異なる、変更、改変、及び同種のものは、当業者には明らかであろう。
【0197】
開示した実施形態に関する変形例は、図面や開示や及び添付の特許請求の範囲を検討することにより、本開示を実施する当業者によって理解されて効果を発揮することができる。さらに、特許請求の範囲では、「含む」という用語は、他の構成要素又は他のステップを除外するものではなく、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という不定冠詞は、複数を除外するものではない。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7
【国際調査報告】