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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】陰圧創傷治療(NPWT)システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20230614BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20230614BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F13/02 310J
A61F13/00 301C
A61F13/02 310R
A61F13/02 345
A61F13/02 310H
A61F13/00 301J
A61F13/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570726
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2021063747
(87)【国際公開番号】W WO2021239652
(87)【国際公開日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】20176258.0
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】アライン ルクス
(72)【発明者】
【氏名】マーリン スベンソン
(72)【発明者】
【氏名】ビクトリア シェップステット
(72)【発明者】
【氏名】マーリン ホルメン
(72)【発明者】
【氏名】エリノール ボリオス
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA39
4C267BB18
4C267BB23
4C267BB36
4C267CC01
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG14
4C267GG37
4C267GG46
4C267JJ03
4C267JJ06
4C267JJ08
4C267JJ09
4C267JJ12
4C267JJ14
(57)【要約】
本開示はおおまかに言えば、陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)であって、モバイル型陰圧装置(101)と、管類アセンブリ(105)と、非吸収性又は吸収性被覆材(104)とを含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)であって、
- ハウジング(102)と、前記ハウジング(102)内部に配置された陰圧ポンプと、前記ハウジング(102)に取り外し可能に接続されたキャニスタ(103)と、を含むモバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置(101)と、
- 吸収性又は非吸収性被覆材(104)と、
- 前記吸収性又は非吸収性被覆材(104)を前記NPWT装置に流体接続するように構成された当該管類アセンブリ(105)であって、前記管類アセンブリ(105)が、
- 前記被覆材(104)に接続されるように構成されている第1管類(106)であって、当該第1管類(106)の遠位端が第1コネクタ部分(107)に取り付けられている、第1管類(106)と、
- 前記キャニスタ(103)に接続されるように構成されている第2管類(108)であって、当該第2管類(108)の遠位端が第2コネクタ部分(109)に取り付けられており、前記第2コネクタ部分(109)が前記第1コネクタ部分(107)に取り外し可能に接続されるように構成されており、前記システム(100)が動作中2~7ml/minの流速で前記被覆材(104)へ空気を供給する手段を含む、第2管類(108)と、
を含む管類アセンブリ(105)と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項2】
前記被覆材へ空気を供給するための前記手段が、2~7ml/min、好ましくは3~5ml/minの流速で、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)の陰圧で空気を供給するように構成されている、請求項1に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項3】
空気を供給するための前記手段が、前記第1コネクタ部分(107)及び前記第2コネクタ部分(190)内に配置されたエアフィルタを含み、前記エアフィルタが、前記被覆材(104)及び/又は前記第1管類(106)内への周囲空気の供給を制御するように構成されている、請求項1又は2に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項4】
前記エアフィルタが疎水性且つ多孔質の材料を含み、孔の径が2~20μm、好ましくは5~12μmである、請求項3に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項5】
前記エアフィルタがポリエチレン、好ましくは焼結ポリエチレンを含む、請求項3又は4に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項6】
前記第1管類(106)が、前記被覆材(104)から流体を除去するように構成された流体管路(111)と、前記被覆材(104)及び/又は前記流体管路(111)へ空気を供給するように構成された空気管路(112)とを含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項7】
前記非吸収性又は吸収性被覆材(104)が熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層(117)と、シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層(121)とを少なくとも含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項8】
前記接着性皮膚接触層(121)が、少なくとも1つのポリウレタンフィルム(121a)とシリコーンゲル層(121b)とを含む積層体である、請求項7に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項9】
前記被覆材(104)の裏打ち層(117)が、NWSP070.4R0(15)によって測定して、500~3500g/m/24h、好ましくは700~2600g/m/24hの水蒸気透過率(MVTR)を有している、請求項1から8までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項10】
前記被覆材(104)が吸収性であり、前記第1管類(106)が前記被覆材(104)に予め取り付けられている、請求項1から9までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項11】
前記被覆材(104)が吸収性であり、裏打ち層(117)と、接着性皮膚接触層(121)と、前記接着性皮膚接触層(121)と前記裏打ち層(117)との間に配置された吸収性構造(122)とを含み、前記裏打ち層(117)及び前記接着性皮膚接触層(121)が、前記吸収性構造(122)の輪郭に沿って縁部分(123)を形成するように、前記吸収性構造(122)の周囲を超えて延在するように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項12】
前記接着性皮膚接触層(121)が、前記吸収性構造(122)の下側に位置する領域内に複数のアパーチャ(128)を含み、且つ前記縁部分(123)を形成する領域内ではアパーチャを欠いている、請求項11に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項13】
前記吸収性被覆材(104)が、前記接着性皮膚接触層(121)と前記吸収性構造(122)との間に配置された透過層(124)を含み、前記透過層(124)がスペーサファブリック材料を含む、請求項11又は12に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項14】
前記吸収性被覆材(104)が、前記吸収性構造(122)と前記裏打ち層(117)との間に液体展延層(125)を含む、請求項11から13までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項15】
前記吸収性被覆材(104)の保持能力が、明細書中に記載された試験法によって測定して300~700mg/cm2、好ましくは400~600mg/cm2である、請求項1から14までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項16】
前記裏打ち層(117)が、前記第1管類(106)に前記被覆材(104)を接続するように構成された結合用部材(116)を含み、前記吸収性構造(122)の少なくとも一部と前記裏打ち層(117)が開口部(126)を含み、前記開口部(126)が前記結合用部材(116)の下側に配置されており、液体展延層(125)が存在する場合、開口部を欠いている、請求項11から15までのいずれか1項に記載の陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項17】
陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)であって、前記NPWTシステムが、
- 創傷被覆材(104)であって、前記創傷被覆材が、創傷部位によって部分的に画定された密閉空間を形成するために設けられており、前記創傷被覆材が、吸収性又は非吸収性被覆材のうちの少なくとも一つであり、前記吸収性又は非吸収性被覆材が熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層(117)と、シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層とを少なくとも含む、創傷被覆材(104)と、
- 所定の供給速度で前記創傷被覆材へ空気を供給する手段であって、前記速度が2~7ml/min、好ましくは3~5ml/minである、空気を供給するための手段と、
- NPWT装置(101)であって、
- ハウジング(102)、
- 前記ハウジングの内部に配置されたバッテリー(118)、
- 前記ハウジングの内部に配置された陰圧ポンプ(904)、
- 前記ハウジングの内部に配置された制御ユニット(902)であって、前記制御ユニットが、前記バッテリー及び前記陰圧ポンプに電気的に接続されている、制御ユニット(902)、及び
- 前記陰圧ポンプ及び前記創傷被覆材に流体接続されたキャニスタ(103)、
を含むNPWT装置(101)と、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)であって、
前記制御ユニットが、
- 前記バッテリーの中間電圧レベルを測定し、
- 前記陰圧ポンプを操作するためのパルス幅変調(PWM)スキームであって、前記PWMスキームが前記所定の供給速度、前記中間電圧レベル、及び所定の陰圧レベルに基づいて選択され、前記所定の陰圧レベルが-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)である、前記陰圧ポンプを操作するためのパルス幅変調(PWM)スキームを選択し、且つ
- 前記選択されたPWMスキームに従って前記陰圧ポンプを操作するように、
構成されている、
陰圧創傷治療(NPWT)システム(100)。
【請求項18】
前記NPWTシステムが、構成部分のキットとして提供され、前記キットが非吸収性被覆材及び吸収性被覆材の両方を含む、請求項1から17までのいずれか1項に記載のNPWTシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、陰圧創傷治療システムであって、モバイル型陰圧装置と、管類アセンブリと、非吸収性又は吸収性被覆材(dressing)とを含む、陰圧創傷治療(NPWT)システムに関する。
【背景技術】
【0002】
陰圧創傷治療(NPWT)は、陰圧ポンプを用いて創傷に対して準大気圧を加えることにより、例えば外科、急性及び慢性創傷などの治癒を促進する技術である。創傷の治癒は、創傷上へ被着された被覆材又はカバーを通して真空などの陰圧を加えることによって達成される。過剰な創傷滲出液がこれにより引き出される。このことは部位への血流を増大させ、これにより、余剰な創傷滲出液が引抜かれ、こうしてその部域に対する血流量が増大し、肉芽組織の形成が促進される。NPWT技術は同様に、創傷の外部障害の低減も可能にし、余剰の流体を創傷部位から離れるように輸送する。
【0003】
NPWT技術は、これまでのところ、主として病院環境内にいる間の患者に対して適用されてきた。しかしながら、最近の製品開発により、家庭環境内で患者がこの技術を使用できるようになっている。
【0004】
病院の環境内において、治療すべき創傷は、一般的に、まずガーゼやフォームなどの創傷充填材が充填される開放性の空洞型創傷である。創傷はその後、接着フィルムで密封され、ドレン又はポートを介して陰圧ポンプに連結され得る。フォーム、ガーゼ及び/又は接着フィルムのサイズは、創傷のサイズ、形状又はタイプに応じて適応されカットされ得る。適用手順は一般的に介護者によって実施される。このようなシステムにおいて使用される陰圧ポンプは、一般的に大型のものであり、概して、大量の創傷滲出液を処理することが可能な大きな容量を有する。
【0005】
家庭環境内では、患者が持ち歩くことのできる携帯型NPWT装置が概して好まれる。携帯型NPWT装置は一般的に、管類を用いて陰圧源に連結されるように構成された吸収性被覆材を含む。このような装置内で使用されるポンプは、一般的に、比較的小型であり、より限定的な容量を有する。吸収性被覆材を含むNPWTシステムはまた病院又は介護施設内で、具体的には滲出液の少ない又は「閉鎖」した創傷、例えば外科的に閉鎖された切開部においても利用される。
【0006】
大抵の可搬性NPWTシステムでは、被覆材は創傷滲出液を収集するための唯一の手段として役立ち、これに対して、開放空洞創傷の治療のために適合されたNPWTシステム(病院環境)では、創傷部位から遠隔配置された流体収集手段、例えばキャニスタが含まれる。このようなシステムでは、キャニスタは、主要な創傷滲出液の収集手段として役立つ。
【0007】
NPWTシステムの被覆材が非吸収性であるのか吸収性であるのか、あるいは被着処置を行うようになっているのが介護者であるのか又は家庭環境内の着用者であるのかにかかわらず、この分野においては、具体的にはこのような創傷を取り扱う介護者及び患者の負担を軽減することに関して改善の余地がある。滲出性創傷は患者に多大な不快及び/又は痛みをもたらすだけでなく、看護職員及び他の介護者にも面倒を引き起こす。システム構成部分は一般的には、低滲出性創傷を対象としたNPWTシステムと、高滲出性創傷を対象としたNPWTシステムとの間でそれぞれ大きく変化し、ポンプの種々のメカニズム及びアルゴリズムが、利用される被覆材及びシステム構成部分に応じて調節又は変更されることを必要とすることが一般的である。
【0008】
したがって、いかなる介護状況又は介護環境においても、あらゆるタイプの創傷、及びあらゆるタイプの着用者又は患者のために使用し得る、シンプルで信頼性の高いNPWTシステムが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2759310号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3023083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題点に照らして、本開示の目的は、NPWTシステムに関連して、具体的にはシンプルであり且つあらゆるタイプの創傷のための使用に適したシステムを提供することに関連して、改善手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1態様によれば、陰圧創傷治療(NPWT)システムであって、
- 当該モバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置がハウジングと、前記ハウジング内部に配置された陰圧ポンプと、前記ハウジングに取り外し可能に接続されたキャニスタとを含むモバイル型陰圧創傷治療(NPWT)装置と、
- 吸収性又は非吸収性被覆材と、
- 前記NPWT装置に前記吸収性又は非吸収性被覆材を流体接続するように構成された当該管類アセンブリであって、前記管類アセンブリが、
- 当該第1管類が、前記被覆材に接続されるように構成されており、前記第1管類の遠位端が第1コネクタ部分に取り付けられている、第1管類と、
- 当該第2管類が前記キャニスタに接続されるように構成されており、前記第2管類の遠位端が第2コネクタ部分に取り付けられており、前記第2コネクタ部分が、前記第1コネクタ部分に取り外し可能に接続されるように構成されており、前記システムが動作中2~7ml/minの流速で前記被覆材へ空気を供給する手段を含む、第2管類と
を含む管類アセンブリと、
を含む、陰圧創傷治療(NPWT)システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本開示は、2~7ml/minの範囲内の空気の供給によって、陰圧創傷治療装置及びNPWTシステムの残りの構成部分が、非吸収性被覆材及び吸収性被覆材の両方と一緒に使用されるのを可能にするという認識に基づいている。システム設定を交換又は変更する必要はなく、同じ設定を両方の計画のために利用することができる。換言すれば、NPWTシステムは、あらゆるタイプの創傷、高滲出及び低滲出の創傷と一緒に使用するのに適している。
【0013】
例えば、病院環境では、看護職員が創傷を調べ、非吸収性被覆材(又は吸収性被覆材)が最良の治療選択肢であると判断することができる。完全に異なる構成部分集合、すなわち異なる種類の陰圧源を使用し、別個のキャニスタなどを使用し、又は陰圧ポンプのメカニズム又はアルゴリズムを適合させる代わりに、同じタイプの構成部分を利用することができ、そして被覆材タイプだけを変更すればよい。
【0014】
さらに、システムは組み立てが容易であり、各構成部分を容易且つ迅速に結合し分離することができる。例えば、着用者は、シャワーを浴び又は着替えをしようとする場合には、NPWT被覆材をNPWT装置から容易に分離することができる。
【0015】
被覆材が吸収性であるか非吸収性であるかにかかわらず、被覆材の第1コネクタ部分は同じなので、第2(キャニスタ)管類の第2コネクタ部分は、両被覆材タイプに接続されるように構成されている。このことは、介護者が柔軟且つ容易に使用することを可能にするので有利である。例えば、介護者は創傷をチェックしたときに、創傷の特徴が変化し、異なるタイプの被覆材(例えば吸収性被覆材の代わりに非吸収性被覆材、又はその逆)が必要であるとの結論に至り、これにより被覆材からNPWT装置を容易に取り外し、被覆材を交換し、そしてNPWT装置を交換された被覆材と再び接続することができる。
【0016】
NPWTシステムへの空気の供給は、具体的には潜在的な滲出液閉塞、又は管類内に形成される液柱を解消する目的で、開放空洞創傷及び接着フィルム被覆材との関連において知られている。本発明者は、2~7ml/minの流速が、滲出がより少ない創傷のためにも有益であり、NPWTシステムが吸収性被覆材とともに使用されるときに好都合な影響を与えることを見出した。さらに、この範囲は、特定の創傷又は介護の計画のために必要となる被覆材のタイプに応じてシステムを容易に切り換え得るように、両システムの設定のために利用できる間隔を表す。
【0017】
過度に多い空気が導入されると、このことはシステムの安定性に不都合な影響を及ぼすことがあり、ポンプは一般的にはより高い頻度で作動させなければならない。
【0018】
実施態様において、前記被覆材へ空気を供給するための前記手段が、2~7ml、好ましくは3~5ml/minの流量で、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)の陰圧で空気を供給するように構成されている。
【0019】
被覆材へ空気を供給するための手段は、周囲空気が制御された方法でシステムに入るようにすることを含んでもよい。例えば、周囲空気は、第1及び/又は第2コネクタ部分に関連する入口によって、システム内へ導入することができる。NPWTシステムは、特定の空気供給手段に限定されることはなく、空気の流量が制御され、動作中に2~7ml/minのレベルに、例えば動作中に3~5ml/minのレベルに維持される限り、いかなる手段を使用することもできる。
【0020】
実施態様において、NPWT装置は、被覆材への空気の供給を調整するように構成されている。
【0021】
実施態様において、空気を供給するための前記手段が、前記第1コネクタ部分及び前記第2コネクタ部分内に配置されたエアフィルタを含み、前記エアフィルタが、前記被覆材及び/又は前記第1管類内への空気の供給を制御するように構成されている。
【0022】
このような配置は、被覆材へ空気を供給するための手段が、周囲空気をコネクタ部分内への導入を用いて行うものであれば、特に好ましい。エアフィルタは、第1及び/又は第2コネクタ部分と関連する空気入口内に配置されていてよい。
【0023】
前記エアフィルタが好ましくは疎水性且つ多孔質の材料を含み、前記孔の径が2~20μm、好ましくは5~12μmである。
【0024】
前記エアフィルタはポリエチレン、好ましくは焼結ポリエチレンを含んでよい。
【0025】
このようなフィルタは、改善された濾過特性、良好な耐化学薬品性及び熱可塑性と関連しており、そしてまた環境に優しい。
【0026】
実施態様において、前記第1管類が、前記被覆材から流体を除去するように構成された流体管路と、前記被覆材及び/又は前記流体管路へ空気を供給するように構成された空気管路とを含む。
【0027】
このことは、被覆材内へのスムーズで均一な空気供給を可能にし、管類内の潜在的な液柱及び液体閉塞の問題を解消するのに有益である。
【0028】
実施態様において、前記非吸収性又は吸収性被覆材が熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層と、シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層とを少なくとも含む。
【0029】
熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層は柔軟であり、延伸させて中程度に伸長することができ、応力を除去するとその元の形状に戻ることができる。接着性皮膚接触層は皮膚又は着用者の創傷と接触した状態で配置され、したがって皮膚に優しいシリコーンゲルが好ましい。接着性皮膚接触層は、被覆材が所定の位置に留まるのに十分に皮膚に対して接着性を有するものの、取り外し及び再接着を繰り返してもその接着性を維持するように構成されている。
【0030】
好ましくは、前記接着性皮膚接触層が、少なくとも1つのポリウレタンフィルムとシリコーンゲル層とを含む積層体である。
【0031】
ポリウレタンフィルムは剛性と安定性とを接着性皮膚接触層に、そして被覆材に与えるが、接着性皮膚接触層は柔軟であり、運動中に着用者の皮膚上に接着して留まるのをなおも可能にする。
【0032】
さらに、熱可塑性エラストマー、例えばポリウレタンフィルムとシリコーンゲル層とを含む積層体は、気密な陰圧創傷治療システムをもたらす。発明者が見出したところによれば、このような被覆材が本開示のシステム内で利用されると、望まれない空気漏れが発生するのが阻止される。したがって、より安定なNPWTシステムが提供され、ノイズが阻止され、そしてバッテリーの消費量が低減される。
【0033】
実施態様において、前記被覆材の裏打ち層は、NWSP070.4R0(15)によって測定して、500~3500g/m2/24h、好ましくは700~2600g/m2/24hの水蒸気透過率(MVTR)を有している。
【0034】
上記範囲のMVTRは、NPWTシステム及び適用される療法に種々の利点をもたらす。発明者が見出したところによれば、裏打ち層のMVTRが比較的低いことによって、陰圧ポンプの作動がより低頻度な状態であり、より安定な療法が観察された。全体的に見て、このことはバッテリーの消費量、ノイズの低減、及び長時間にわたる且つより安定な創傷治療の観点から好都合な効果をもたらす。このことは、システムが吸収性被覆材を含み、この吸収性被覆材が水蒸気透過率の著しく高い裏打ち層を一般的に含む場合には、特に驚くべきことである。
【0035】
実施態様において、前記被覆材が吸収性であり、そして前記第1管類が前記被覆材に予め取り付けられている。
【0036】
管類は、被覆材に接続された結合用部材によって取り付けられてよい。結合用部材は、被覆材の裏打ち層に取り付けられる。第1管類が予め取り付けられているという構成は、システムの構成部分の迅速な組み立てを可能にする。こうして、着用者はNPWT装置から被覆材を迅速且つ容易に分離し再接続することができる。
【0037】
実施態様において、前記被覆材が吸収性であり、そして裏打ち層と、接着性皮膚接触層と、前記接着性皮膚接触層と前記裏打ち層との間に配置された吸収性構造とを含み、前記裏打ち層及び前記接着性皮膚接触層が、前記吸収性構造の輪郭に沿って縁部分を形成するように、前記吸収性構造の周囲を超えて延在するように構成されている。
【0038】
換言すれば、吸収性被覆材はいわゆる「縁取り被覆材(bordered dressing)」である。
【0039】
実施態様において、前記接着性皮膚接触層が、前記吸収性構造の下側に位置する領域内に複数のアパーチャを含むが、しかし前記縁部分を形成する領域内ではアパーチャを欠いている。
【0040】
発明者が見出したところによれば、このような被覆材は、本開示のNPWTシステム内で利用されると、著しく改善された接着を可能にする。したがって、被覆材の着用時間は改善される。
【0041】
実施態様において、前記吸収性被覆材が、前記裏打ち層と前記吸収性構造との間に配置された透過層を含み、前記透過層がスペーサファブリック材料を含む。
【0042】
透過層は、陰圧源から創傷部位へ陰圧を伝達するのを容易にするように働く。
【0043】
実施態様において、前記吸収性被覆材の保持能力が、後述の試験法によって測定して300~700mg/cm2、好ましくは400~600mg/cm2である。
【0044】
発明者が見出したところによれば、被覆材の保持能力は、被覆材とキャニスタとの間の滲出液分布に大きく影響する。本開示のNPWTシステム(被覆材は吸収性である)では、被覆材及びキャニスタの両方は、過剰な創傷滲出液を管理するように構成されている。被覆材及びキャニスタそれぞれによって貯えられた創傷滲出液の分布間のバランスが適切であることが、このように望ましい。例えば、被覆材があまりにも速く、そしてあまりにも「多く」吸収すると、被覆材は、キャニスタへ向かう滲出液の移動が始まる前に飽和してしまうおそれがある。このことは、皮膚上に留まる被覆材の能力に不都合な影響を及ぼし得る。すなわち、被覆材の着用時間が短くなる。キャニスタと被覆材とのバランスが不適切になり、そして被覆材は一般的には比較的頻繁に交換することが必要となる。これに対して、あまりにも多くの滲出液がキャニスタへ移動させられると、キャニスタは主要な流体収集手段となる。このことも望ましくない。それというのも、あまりにも急速な滲出液流は、キャニスタと被覆材とを接続するポート及び管路を塞ぎ、陰圧の創傷部位への伝達が損なわれるおそれがあるからである。さらに、キャニスタはより頻繁に交換し空にすることが必要となる場合があり、こうして被覆材の最大限の吸収能力が利用されなくなる。
【0045】
したがって、被覆材は、被覆材によって吸収され対処された創傷滲出液と、被覆材から除去され、すなわちキャニスタへ移動させられる創傷滲出液との間のバランスのとれた分布をもたらすように調整される。
【0046】
実施態様において、前記吸収性被覆材が、前記吸収性構造と前記裏打ち層との間に液体展延層を含む。
【0047】
吸収性構造と裏打ち層との間に液体展延層を設けることにより、液体対処及び液体分配に関していくつかの利点がもたらされる。液体展延層は、被覆材とキャニスタとの間の制御された、そしてバランスのとれた液体分配を可能にする。流体収集手段として機能する被覆材の能力が最適化される一方、滲出液の大部分を管類によって被覆材から除去し輸送することが依然として可能である。さらに、液体展延層は、被覆材内部の創傷滲出液の広がり及び分布を改善し、これにより、滲出液が被覆材から(裏打ち層を通して)蒸発し得る、より広い表面積を形成する。液体展延層のより広い表面積はこのように、過剰な滲出液をより効率的に取り除き、そして創傷部位を比較的乾燥した状態に保つように作用することができる。
【0048】
液体展延層はまた、潜在的な「逆流」滲出液、すなわち反対方向に(管類から被覆材へ)流れる滲出液の分布を改善する。このことは、被覆材が陰圧源及び/又は遠隔の流体収集手段から分離される場合に発生し得る。液体展延層は、このような滲出液逆流が、創傷部位へ向かって1つのスポットで逆流するのではなく広がることを保証する。このように、創傷部位は比較的乾燥した状態に保つことができる。
【0049】
一般的には、前記裏打ち層が、前記第1管類に前記被覆材を接続するように構成された結合用部材を含み、前記裏打ち層と前記吸収性構造の少なくとも一部とが開口部を含み、前記開口部が前記結合用部材の下側に配置されており、前記液体展延層が存在する場合、開口部を欠いている。
【0050】
開口部は、創傷部位と被覆材の管類との流体連通を、ひいては創傷部位とキャニスタとの流体連通をも保証するために役立つ。液体展延層は、存在する場合には、滲出液の潜在的なゲル化粒子及び望まれない大型粒子が、被覆材の管類に入るのを阻止するために、このような開口部を欠いている。被覆材の結合用部材の下側の領域内では、液体展延層は、被覆材内部から管類を通してキャニスタへ液体を移動させるように構成されている。
【0051】
本開示の別の態様によれば、陰圧創傷治療(NPWT)システムであって、前記NPWTシステムは、創傷被覆材であって、前記創傷被覆材が創傷部位によって部分的に画定された密閉空間を形成するために設けられており、前記創傷被覆材が吸収性又は非吸収性被覆材のうちの少なくとも一つであり、前記非吸収性又は吸収性被覆材が熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層と、シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層と、を少なくとも含む、前記創傷被覆材と、所定の供給速度で前記創傷被覆材へ空気を供給する手段であって、前記速度が2~7ml/min、好ましくは3~5ml/minである、空気を供給するための手段と、NPWT装置であって、ハウジングと、前記ハウジング内部に配置されたバッテリーと、前記ハウジング内部に配置された陰圧ポンプと、前記ハウジング内部に配置された制御ユニットであって、前記制御ユニットが、前記バッテリー及び前記陰圧ポンプに電気的に接続されている、制御ユニットと、前記陰圧ポンプ及び前記創傷被覆材に流体接続されたキャニスタと、を含むNPWT装置と、を含む、NPWTシステムであって、前記制御ユニットが、前記バッテリーの中間電圧レベルを測定し、前記陰圧ポンプを操作するためのパルス幅変調(PWM)スキームであって、前記PWMスキームが前記所定の供給速度、前記中間電圧レベル、及び所定の陰圧レベルに基づいて選択され、前記所定の陰圧レベルが-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)である、前記陰圧ポンプを操作するためのパルス幅変調(PWM)スキームを選択し、そして、前記選択されたPWMスキームに従って前記陰圧ポンプを操作するように、構成されている、陰圧創傷治療(NPWT)システムが提供される。
【0052】
本開示の本態様に即して、NPWT装置とともに含まれる制御ユニットは、NPWT装置に接続された創傷被覆材がどのようなタイプであるかとは無関係に、密閉空間に与えられた陰圧が所定の範囲内にあることを保証するように適合されている。
【0053】
この機能は、バッテリーの中間電圧レベルとのバランスをとりながら、予期される漏れ及び所望の負圧(negative pressure)を考慮に入れつつ、NPWT装置のための一定及び可変の動作パラメータを入念に監視することにより達成される。具体的には、バッテリーの中間電圧レベルは、動作時間にわたって変化しており、一般的には、バッテリーの中間電圧レベルはNPWT装置を操作している間に低下する。
【0054】
さらに、陰圧ポンプの動作速度が本質的に一定(例えば陰圧ポンプが作動中において典型的には±10%以内)に保たれるのを保証することが、本開示に即して見た場合に望ましい。それというのも、陰圧ポンプの速度を本質的に一定に保つことにより、陰圧ポンプの音響レベルも本質的に一定レベルになり、NPWT装置を使用する患者への障害を軽減するからである。
【0055】
以下のNPWTシステムは、構成部分のキットとして提供してもよく、前記キットは非吸収性被覆材及び吸収性被覆材の両方を含む。
【0056】
添付の特許請求の範囲、及び下記説明を研究すれば、本開示のさらなる特徴、及び利点が明らかになる。本開示の範囲から逸脱することなしに、本開示の種々異なる特徴を組み合わせて、下記のもの以外の実施態様を作り出し得ることは当業者には明らかである。
【0057】
具体的な特徴及び利点を含む本開示の種々の態様は、下記詳細な説明及び添付の図面から容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、本開示の例示的な実施態様に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムを概念的に示す図である。
図2図2は、構成部分のキットの形態のシステムであって、キットが吸収性被覆材を含むシステムを示す図である。
図3図3は、構成部分のキットの形態のシステムであって、キットが非吸収性被覆材を含むシステムを示す図である。
図4a図4aは、本開示のNPWTシステム内での使用に適した吸収性被覆材を示す図である。
図4b図4bは、図4aの吸収性被覆材を、結合用部材及び管類が取り外された状態で示す断面部分図である。
図4c図4cは、本開示の被覆材のNPWTシステム内での使用に適した吸収性被覆材を示す分解図である。
図5図5は、本開示のシステムで測定した平均Toffであって、MVTRがそれぞれ2530g/m2/24h、及び3940g/m2/24hの裏打ち層を有する2つの吸収性被覆材(被覆材A及び被覆材B)を比較した図である。
図6図6は、本開示のシステム内で使用したときの、キャニスタと3つの異なる吸収性被覆材(被覆材D,C及びA)との間の液体分配を示す図である。
図7a図7aは、本開示のNPWTシステムを用いた試験期間7日後の第1吸収性被覆材(被覆材D)を示す写真である。
図7b図7bは、本開示のNPWTシステムを用いた試験期間7日後の第2吸収性被覆材(被覆材C)を示す写真である。
図7c図7cは、本開示のNPWTシステムを用いた試験期間9日後の第3吸収性被覆材(被覆材A)を示す写真である。
図8a図8aは、液体に晒した後で、第2吸収性被覆材(被覆材E)と比較した第1吸収性被覆材(被覆材A)を、被覆材の裏打ち層から見た写真である。
図8b図8bは、液体に晒した後で、第2吸収性被覆材(被覆材E)と比較した第1吸収性被覆材(被覆材A)を、接着性皮膚接触層が取り外された状態で被覆材の透過層から見た写真である。
図9図9は、本開示の例示的な実施態様に係るNPWT装置の例示的な機能上の構成図である。
図10図10は、実施例6において経時的な空気漏れ及び圧力減衰を測定するための試験設定を概略的に示す図である。
図11図11は、2つの異なる非吸収性被覆材を含むシステム内の経時的な平均圧力減衰(mmHg)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
添付の図面を参照しながら本開示を以下により十分に説明する。図面には本開示の現在好ましい実施態様が示されている。しかしながら、本開示は数多くの種々異なる形態で具体化されてよく、本明細書中に示された実施態様に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施態様は完璧さ及び網羅性のために提供され、本開示の範囲を当業者に十分に伝える。同様の符号は一貫して同様の要素を示す。
【0060】
図1を参照すると、本開示に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムが概念的に示されている。NPWTシステム100は、
- ハウジング102と、ハウジング102内部に配置された陰圧ポンプと、ハウジング102に取り外し可能に接続されたキャニスタ103と、を含む陰圧創傷治療(NPWT)装置101と、
- 吸収性又は非吸収性被覆材104と、
- NPWT装置101に吸収性又は非吸収性被覆材104を流体接続するように構成された管類アセンブリ105であって、当該管類アセンブリ105が、
- 被覆材104に接続されるように構成されており、第1管類106の遠位端が第1コネクタ部分(図2又は図3の符号107参照)に取り付けられている、第1管類106と、
- キャニスタ103に接続されるように構成された第2管類108であって、当該第2管類108の遠位端が第2コネクタ部分(図2又は図3の符号109参照)に取り付けられており、第2コネクタ部分が、第1コネクタ部分に取り外し可能に接続されるように構成されており、システム100が動作中2~7ml/minの流速で被覆材104へ空気を供給する手段を含む、第2管類108と
を含む管類アセンブリ105と、
を含む。
【0061】
好ましくは、被覆材へ空気を供給するための手段は、2~7ml、好ましくは3~5ml/minの流速で、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)の陰圧で空気を供給するように構成されている。
【0062】
本開示の文脈において、「陰圧創傷治療(negative pressure wound therapy)」は、創傷から過剰な流体を除去するために、陰圧源(例えば真空ポンプ)を利用する療法を意味する。創傷は開放性の創傷であってよく、あるいは閉鎖された創傷、すなわち外科的に閉鎖された切開部であってもよく、したがってこの用語は「局所陰圧(TNP)療法(topical negative pressure (TNP) therapy)」の用途をも含む。陰圧(TNP)療法は、閉鎖された切開部との関連でしばしば使用される用語である。
【0063】
本明細書中に使用される「流体接続される」という用語は、広義に解釈されるべきであり、例えばキャニスタ103と陰圧ポンプと被覆材104との流体接続/連通を可能にする管類、管路、又はチャネルのあらゆる形態を含んでよい。
【0064】
陰圧ポンプは、陰圧ポンプがアクティブ状態にあるときに陰圧を確立するように構成されている。陰圧ポンプは、生体適合性であり、そして十分且つ治療的な真空レベルに引くいかなるタイプのポンプであってもよい。実施態様において、陰圧ポンプはダイアフラム型又は蠕動型のポンプである。達成されるべき陰圧レベルは約-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)である。
【0065】
キャニスタ103はハウジング102に取り外し可能に接続されている。換言すれば、キャニスタ103はハウジングに解除可能に接続されている。取り外し可能な接続は、摩擦結合、バヨネット結合、スナップ結合、係止爪付コネクタ、又はこれに類するものを含む従来の手段によって形成されてよい。取り外し可能な形態は、ユーザ又は介護者がキャニスタ103を取り外して、収集された液体を空にし、そして続いてキャニスタ103をハウジング102に再び取り付け直すのを可能にする。
【0066】
キャニスタ103は、例えば成形プラスチック又はこれに類するものから形成することができる。キャニスタ103は好ましくは少なくとも部分的に透明/半透明であり、これによりキャニスタ103の内部を見ることによって、ユーザがキャニスタ103の残存容量を判断するのを助ける。
【0067】
例えば、キャニスタ103の内部容積は0~300ml、例えば40~100mlである。キャニスタ103の内部容積は創傷のタイプに応じて変化してよい。実施態様において、キャニスタ103は、液体吸収性材料を含む。可能な実施態様では、キャニスタ103の内部容積の少なくとも75%が、液体吸収性材料で占められている。
【0068】
陰圧ポンプはキャニスタ103に流体接続されている。入口ポートをキャニスタ103に形成することにより、第2管類108との接続が可能になる。NPWT装置101の他の場所に、しかし依然としてキャニスタ103に流体接続されている場所に、入口部分が形成されてもよい。入口ポートと第2管類108との接続は、NPWT装置101の通常動作中に漏れが形成されないことを保証するシール接続である。第2管類108は、摩擦結合、バヨネット結合、スナップ結合、係止爪付コネクタ、又はこれに類するものを含む従来の手段を介して入口に解除可能に接続されてよい。
【0069】
NPWT装置101は、管類アセンブリ105によって被覆材104に接続されている。図1では、第1コネクタ部分107及び第2コネクタ部分109は、コネクタユニット110を形成するための接続状態で示されている。コネクタユニット110は、被覆材104とNPWT装置101との間の位置に配置されている。第1コネクタ部分107と第2コネクタ部分109とは、被覆材104をNPWT装置101から容易に分離し得るように、取り外し可能に接続されている。このことは有益である。それというのは、ユーザがシャワーを浴びようとするときに、又は何らかの他の理由で、被覆材104を装置101から分離することを決定し得るからである。これはまた、介護者が創傷の状態に応じて、非吸収性タイプから吸収性タイプへ被覆材を切り換えることをも可能にする。
【0070】
図1では、第1管類106は二重管路であるのに対して、NPWT装置101とコネクタユニット110との間の第2管類108は単一管路である。NPWTシステムは、このような構造に限定されることは決してないが、NPWT装置101と被覆材104との間には単一管路又は二重管路を含んでよい。
【0071】
好ましくは、少なくとも第1管類106は、被覆材104から流体を除去するように構成された流体管路111と、被覆材104へ、且つ/又は流体管路111へ空気を供給するように構成された空気管路112とを含む。
【0072】
NPWTシステム100は、2~7ml/min、例えば3~5ml/minの流速で、-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)の陰圧で被覆材104へ空気を供給するための手段を含む。
【0073】
図1に示されたNPWTシステム100において、コネクタユニット100(矢印113によって示されている)によって、周囲空気がシステム内に導入されている。例えば、第1及び/又は第2コネクタ部分(107及び109)は、被覆材104及び/又は1管類106内への周囲空気の供給を制御するように構成されたエアフィルタ(図示せず)を含む。エアフィルタは例えば、第1及び/又は第2コネクタ部分(107及び109)の空気流入ポート内に配置されていてよい。
【0074】
エアフィルタは好ましくは疎水性且つ多孔質の材料を含み、孔の径は2~20μm、好ましくは5~12μmである。フィルタの孔径は非圧縮状態で測定される。
【0075】
エアフィルタは好ましくはポリエチレン、好ましくは焼結ポリエチレンを含む。
【0076】
焼結ポリエチレンフィルタは反復線状分子構造-CH2-CH2を有する。この構造は、強い分子結合により不活性であり、改善された耐化学薬品性、軽量性、熱可塑性及び良好な濾過特性を特徴とする。焼結ポリエチレンフィルタはまた環境に優しい。それというのは、これは有毒廃棄物を生成せず、洗い流して再使用できるからである。
【0077】
空気供給手段がエアフィルタを含む場合、エアフィルタは、動作中に2~7ml/min、好ましくは3~5ml/minの範囲で、例えば-10665.8(-80)~-19998.4Pa(-150mmHg)、例えば-13332.2(-100)~-17331.9Pa(-130mmHg)の陰圧で空気を供給することを保証する。
【0078】
なお、空気は別の方法でシステム内へ導入してもよく、またエアフィルタをシステム内の別の位置に設けてもよい。空気供給の調整は実施態様において、NPWT装置101によって制御することができる。
【0079】
使用中、被覆材104は、ユーザ/患者114の創傷部位に配置され、密閉空間を形成する。管類アセンブリ105は、被覆材104をNPWT装置101に流体接続するように構成されている。NPWT装置101は次いで、例えばユーザ/患者によって、スタート/一時停止ボタン115を押すことによって作動させられる。陰圧ポンプはこれにより作動させられる。作動時には、陰圧ポンプは、キャニスタ103と、管類アセンブリ105(第1管類106及び第2管類108を含む)と、被覆材104によって形成された密閉空間と、を通して空気を排出し始める。したがって、陰圧は密閉空間内部に形成される。液体が創傷部位に形成されている場合には、創傷部位由来のこの液体は、少なくとも部分的に、管類アセンブリ105を通してキャニスタ103内へ「引き入れる」ことができる。液体の量、すなわち創傷から引き出されキャニスタ103内に収集される滲出液の量は、治療されている創傷のタイプ、並びに使用される被覆材のタイプに依存する。被覆材104が吸収性の場合、液体分配の間の実質的に等しいバランスが望ましい。
【0080】
キャニスタ103から陰圧ポンプに液体を通さないことを保証する目的で、キャニスタ103と陰圧ポンプとの間に好適なフィルタ部材(図示せず)を配置してもよい。
【0081】
本開示のNPWTシステムは、それぞれ図2及び図3に示されているように、構成部分のキットとして提供されてよい。
【0082】
図2には、吸収性被覆材を含むキットが示されている。キット200は前述の通りの少なくとも1つの吸収性被覆材104を含む。被覆材104は、予め取り付けられた第1管類106を含む。第1管類106は、被覆材104の裏打ち層117に取り付けられた結合用部材116によって取り付けられている。第1管類106が予め取り付けられているということによって、システム/キットの構成部分の迅速な組み立てが可能である。
【0083】
第1管類106の遠位端は第1コネクタ部分107に取り付けられている。キット200はさらに、ハウジング102内部に配置された陰圧ポンプを含む。キットはまたキャニスタ103を含む。キャニスタ103は第2管類108を含む。第2管類108の遠位端は第2コネクタ部分109に取り付けられている。第2コネクタ部分109は、被覆材104の第1管類106と結合する第1コネクタ部分107に接続されるように構成されている。キット200は付加的な構成部分、例えばNPWT装置101に給電するための付加的なバッテリー118と、被覆材104の縁部分と着用者の皮膚との接着を改善するための接着ストリップ119とを含んでよい。
【0084】
図2に示されたキットは、在宅ケアに特に適しているが、病院又は介護施設環境においても有利に使用される。NPWT装置101は、ユーザによって例えばポケット、ベルト、ストラップ、又はこれに類するもので持ち運ばれるように構成されている。被覆材104及びキット200の他の構成部分はユーザによって容易に組み立てることができる。
【0085】
キット200の構成部分は種々様々であってよい。例えば、1つのキットは上述の構成部分すべてを含んでよいのに対して、他のキットは2つ又は3つの構成部分だけを含有する。一般的には、少なくとも被覆材104と、NPWT装置101と、管類アセンブリとが1つのキット内に含まれている。キット200は、任意には複数の接着ストリップ119と一緒に包装された状態で、本明細書中に前述した複数のNPWT被覆材を含んでよい。
【0086】
したがって、キット200は、本明細書中で前述された吸収性の陰圧創傷治療被覆材と、少なくとも1つの付加的な構成部分とを含んでよい。この付加的な構成部分は、陰圧源、キャニスタ103、バッテリー118及び/又は接着ストリップ119から選択される。
【0087】
図3では、非吸収性被覆材104を含むキット300が示されている。
【0088】
このようなキットの場合、第1管類106は一般的には被覆材104に予め取り付けられてはおらず、別個の構成部分として包装されている。第1管類106は結合用部材116に取り付けられた第1遠位端と、第1コネクタ部分107に取り付けられた第2遠位端とを含む。したがって介護者は、結合用部材116を被覆材104の裏打ち層に取り付け、次いで第1コネクタ部分107をキャニスタ管類108の第2コネクタ部分109に接続することができる。
【0089】
さらに、キット300は創傷フィラー材料、例えばガーゼ又はフォームを含んでよい。図3では、創傷フィラー材料はフォーム120である。創傷フィラー材料は、被覆材104の被着前に、創傷に(介護者によって)被着されることになっている。
【0090】
したがって、キット300は本明細書に前述した非吸収性の陰圧創傷治療被覆材と、少なくとも1つの付加的な構成部分とを含んでよい。この付加的な構成部分は、陰圧源、キャニスタ103、バッテリー118、付加的な管類、創傷フィラー材料120、及び/又は接着ストリップ119から選択される。
【0091】
実施態様において、キットは吸収性被覆材と非吸収性被覆材との両方を含む。こうして、介護者は、創傷の特徴に応じて、どの被覆材(吸収性又は非吸収性)が利用するのに最も適しているかを選択することができる。さらに介護者は、創傷の特徴が変化した場合に、被覆材を容易に切り換えることができる。
【0092】
図4a~cは、本開示の例示的な実施態様に基づく陰圧創傷治療(NPWT)被覆材104を示している。図示の被覆材は吸収性であり、本開示のNPWTシステムと一緒に使用するのに適している。
【0093】
しかしながら被覆材のいくつかの特徴は、被覆材が吸収性であるか非吸収性であるかにかかわらず同じである。
【0094】
例えば、吸収性又は非吸収性被覆材は、熱可塑性エラストマーを含む裏打ち層117と、シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層121とを含む。
【0095】
裏打ち層117は被覆材104の最外層であり、着用者の皮膚から見て外方に向くように構成されている。裏打ち層は熱可塑性エラストマーを含む。熱可塑性エラストマーは、延伸させることによって適度に伸長することができ、そして応力を除去すると元の形状に戻ることができる。熱可塑性エラストマーを含む好適な材料の例は、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリエチレンを含む。裏打ち層は、ポリエステル系不織布材料と、少なくとも1つのポリウレタンフィルムとの積層体であってもよい。好ましくは、裏打ち層は熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。
【0096】
裏打ち層の厚さは10~40μm、好ましくは15~25μmであってよい。裏打ち層117は少なくとも1つのフィルムを含んでよい。例えば、裏打ち層は、2つ以上のフィルムによって形成された積層体である。裏打ち層に接着剤、例えばポリアクリレート接着剤の薄い層を塗布することにより、裏打ち層を接着性皮膚接触層に、又は存在する場合には吸収性構造又は被覆材の任意の他の層に取り付けることができる。本開示の文脈において、裏打ち層117は少なくとも1つの熱可塑性エラストマーのフィルムと、その上に塗布された接着剤(例えばポリアクリレート)とを含む。接着剤は、連続的又は不連続的なパターンを成して塗布することができる。
【0097】
接着性皮膚接触層121は被覆材の最下層である。接着性皮膚接触層121は、皮膚表面、例えば患者の皮膚又は創傷に被覆材を取り外し可能に接着させるように構成されている。換言すれば、接着性皮膚接触層は「創傷接触層」と呼ばれることもある。
【0098】
接着性皮膚接触層121は好ましくはシリコーン系接着剤、すなわちシリコーンゲルを含む。シリコーンゲルを含む接着性皮膚接触層は皮膚に優しく、外傷をもたらすことなしに取り外すのが容易である。
【0099】
接着性皮膚接触層121は、図4bに最も良く示されているように、ポリマー系フィルム121aとシリコーンゲル層121bとを含む積層体であってよい。
【0100】
シリコーンゲル層121bは、着用者の皮膚に接触するように形成されている。
【0101】
ポリマー系フィルム121aは好ましくは通気性フィルムであり、例えばポリエチレン、ポリアミド、又はポリエステルポリウレタンを含んでよい。好ましくは、ポリマー系フィルムはポリウレタンを含む。ポリウレタンフィルムの厚さは15~100μm、例えば20~80μm、好ましくは20~60μmであってよい。
【0102】
実施例6において実証されているように、ポリマー系フィルム、例えばポリウレタンフィルムとシリコーンゲル層とを含む積層体は、気密な陰圧創傷治療システムを提供する。発明者は、このような被覆材が本開示のシステム内に利用されると、望まれない空気漏れの発生が阻止されることを見出した。このことはバッテリーの消費量、ノイズの低減、及び長時間にわたる且つより安定な創傷治療に関連して好都合な効果をもたらす。
【0103】
接着性皮膚接触層121及び/又はシリコーンゲル層121b内に使用するのに適したシリコーンゲルの例は、二成分RTVシステム、例えば本明細書中で述べられるQ72218 (Dow Corning)及びSilGel 612 (Wacker Chemie AG)、並びにNuSilシリコーンエレストマーがある。本発明の実施態様では、接着剤は、ASTM D 937及びDIN 51580に基づく方法によって測定した場合に、柔らかさ(針入度)が8~22mm、例えば12~17mmの軟質シリコーンゲルを含んでよい。該当方法は、特許文献2(欧州特許出願第14194054.4号)に記載されている。接着性皮膚接触層の厚さは一般的には少なくとも20μmである。接着性皮膚接触層の厚さは100~200μmであってもよい。
【0104】
吸収性又は非吸収性被覆材の裏打ち層117は、500~3500g/m2/24h、好ましくは600~2700、例えば700~2600、例えば1400~2600g/m2/24hの水蒸気透過率(MVTR)を有していてよい。
【0105】
「水蒸気透過率(MVTR)」は、裏打ち層が、当該裏打ち層からの水分の透過を可能にする速度である。水蒸気透過率は、標準的方法NWSP070.4R0(15)によって測定される。MVTRは、38℃の温度で測定される。
【0106】
滲出性創傷は、水蒸気透過率(MVTR)が著しく高い裏打ち層を有する吸収性被覆材を必要とすることが概ね知られている。本開示の文脈では、MVTRが低減された裏打ち層は、被覆材が陰圧創傷治療において用いられた場合、意外にもプラスの効果がもたらされる。500~3500g/m2/24h、好ましくは700~2600g/m2/24hのMVTRを有する裏打ち層は、陰圧創傷治療及びシステムの安定性を改善し、陰圧源、すなわちポンプに対して好都合な効果をもたらし、陰圧源は治療中ほど強力に機能する必要がない。陰圧源があまり頻繁に作動しない状態で、より安定した治療が観察され、そしてさらに、被覆材内部に収集された滲出流体を裏打ち層から周囲へ首尾よく蒸発させることができる。全体的に見て、このことはバッテリーの消費量、ノイズの低減、及び長時間にわたる且つより安定な創傷の治療の観点からプラスの効果をもたらす。
【0107】
本開示の被覆材104によって、下記実施例1で実証されるように、ポンプ作動回数が少なくとも26%低減されることが観察された。
【0108】
機械方向(MD)及び/又は機械横方向(CD)における裏打ち層の引張強度は、ISO 527-3/2/200によって測定した場合に30~70Mpa、例えば35~55Mpaであってよい。引張強度は、15mm幅のストリップで測定される。裏打ち層117は、患者の運動中に裏打ち層上に加えられる力に耐えるのに十分な「強度」を有し、それでもなお柔軟性及び十分な延伸度を可能にしなければならない。裏打ち層の引張強度は、安定した信頼性高い治療を提供する上で影響をもたらす。裏打ち層は、患者の運動中に裏打ち層の裂断又は破裂を防止するのに十分な剛性を有しなければならない。例えば、吸収性構造は、存在する場合には、厚くなればなるほど縁部において裏打ち層に擦れる可能性があることから、吸収性構造の縁部は、特に破断しやすい。裏打ち層内に穿孔(perforation)又はスリットが形成されている場合、このことは、被覆材及びシステム内への望ましくない空気漏れが付随し得る。結果として治療及びシステムの安定性は損なわれる。
【0109】
被覆材が吸収性の場合、第1管類106は、図4aに示されているように被覆材104に予め取り付けられてよい。第1管類106は、裏打ち層117に取り付けられた結合用部材116によって取り付けられている。第1管類が予め取り付けられているということは、システムの構成部分の迅速な組み立てを可能にする。
【0110】
管類106及び/又は結合用部材116はエラストマー及び/又はポリマー材料から製作された任意の適宜の可撓性材料であってよい。第1管類106は結合用部材116に固定的に取り付けられている。別の実施態様では、第1管類106は結合用部材116に取り外し可能に取り付けられている。
【0111】
結合用部材116は、被覆材の裏打ち層に取り付けられるように構成されたアタッチメント部分を含む。結合用部材は裏打ち層に接着されてよい。結合用部材は、管類106に、すなわち空気管路112に、そして流体管路111にそれぞれ接続されるように構成された流体入口及び流体出口を含んでもよい。
【0112】
結合用部材は、特許文献1(欧州特許出願第13152841.6号)に定義された構造を有していてよい。
【0113】
図4a~cに示された吸収性被覆材104は裏打ち層117と、接着性皮膚接触層121と、前記接着性皮膚接触層121と前記裏打ち層117との間に配置された吸収性構造122とを含み、裏打ち層117及び接着性皮膚接触層121は、吸収性構造122の輪郭に沿って縁部分123を形成するために、吸収性構造122の周囲を超えて延びるように構成されている。
【0114】
吸収性構造122は「創傷パッド」と呼ぶこともできる。創傷パッドは吸収性構造122とは別の付加的な層を含んでよい。吸収性被覆材は、一般的には「縁付き被覆材(bordered dressing)」と呼ばれる。
【0115】
図4b及び4cに示されているように、接着性皮膚接触層121は、吸収性構造122の下側に位置する領域内に複数のアパーチャ128を含むが、しかし縁部分を形成する領域内ではアパーチャを欠いている。
【0116】
アパーチャは、接着性皮膚接触層121を通って延びる穿孔であってよい。
【0117】
発明者は、2つの吸収性被覆材の間の接着力を比較した。非アパーチャ型、すなわち非穿孔型の縁部分を含む被覆材は、接着性皮膚接触層全体に亘って穿孔が形成された被覆材と比較して、本開示のNPWTシステム内で使用されると、著しく改善された接着力が認められた(実施例5参照)。
【0118】
図4b及び4cを参照すると、吸収性被覆材は、接着性皮膚接触層121と吸収性構造122との間に配置された透過層124を含む。
【0119】
透過層124はフォーム、ニードルパンチ不織布、スルーエアボンド不織布、又はスペーサファブリックを含んでよい。透過層124は特定の材料に限定されることはなく、湿潤状態及び乾燥状態の両方において、陰圧を創傷領域に伝達し得ることを保証するように構成された任意の材料を使用することができる。透過層124は、流体を創傷部位から離れるように吸収性構造内へ輸送して、皮膚を比較的乾燥した状態のままにし得ることを保証する。
【0120】
好ましくは、透過層124はスペーサファブリックを含む。スペーサファブリックは、陰圧創傷治療(NPWT)被覆材内でしばしば利用される三次元材料である。
【0121】
実施態様において、スペーサファブリック層の厚さは、1.5~4mm、例えば2~3mmである。この厚さは乾燥状態下において測定される。スペーサファブリックの基本重量は150~500g/m2(gsm)、例えば200~350g/m2(gsm)であってよい。
【0122】
スペーサファブリック層124は、一般的には頂部層及び底部層と、頂部層と底部層との間のパイルフィラメントの相互接続層とを含む。パイルフィラメントの相互接続層の繊度は200~500デニール、例えば250~350デニールであってよい。
【0123】
スペーサファブリック層124は、耐圧縮性であり、使用中に被覆材に加えられる圧力に耐えるように構成されている。圧縮力が被覆材に加えられた後、透過層124は、力を除去した後、直ちにその元の形状に戻るように構成されている。
【0124】
吸収性被覆材104は、吸収性構造122と裏打ち層117との間に液体展延層125を含んでよい。
【0125】
液体展延層125は、創傷滲出液の広がりを改善し、湿分が裏打ち層117を通して蒸発し得る、より広い表面積を形成するように構成されている。裏打ち層の下に液体展延層を設けると、裏打ち層の低減された水蒸気透過率(MVTR)を「補償(compensate)」することができる。
【0126】
液体展延層125は、好ましくは親水性且つ多孔質の層である。このように、滲出液は創傷部位から、液体展延層125を通してキャニスタへ(管類アセンブリによって)効率的に移動させることができる。
【0127】
液体展延層125は、繊維性材料であってよい。例えば、液体展延層125は、不織布を含んでよい。不織布は、前記層に、そして被覆材等に適宜にバランスのとれた剛性を与える。不織布液体展延層125は、材料の大部分にわたって流体を分配し、滲出液を制御された状態で、管類アセンブリによってキャニスタに移動させることができる。
【0128】
液体展延層125は、管類アセンブリ105から被覆材へ向かって流れる潜在的な滲出液流を、すなわち「間違った」方向に流れる滲出液流を、広げるためにも有益である。滲出液の逆流は、被覆材を着用している人が陰圧源及びキャニスタ(すなわち陰圧創傷治療(NPWT)装置)から被覆材を分離する場合に発生することがある。例えば、患者がシャワーを浴びるか又は着替えようとする場合に、NPWT被覆材を分離することがある。液体展延層125は、このような滲出液逆流が、創傷部位へ向かって一箇所で逆流するのではなくむしろ広がることを保証する。このようにして、創傷部位は比較的乾燥した状態に保つことができる。
【0129】
液体展延層125は、メルトブロー、スパンボンド、スパンレース、又はカーボン不織布を含んでよい。不織布において使用するのに適したポリマーの例は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、及び他のポリオレフィンホモポリマー及びコポリマーである。例えば、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維又はこれらの混合物の熱可塑性繊維を含む不織布ウェブが使用されてよい。前記ウェブは、熱可塑性繊維を高含有率で有し、少なくとも50%、例えば少なくとも70%の熱可塑性繊維を含有することができる。不織布は、例えば70:30の比率のポリエステル及びビスコースの混合物であってよい。不織布の基本重量は、10~80g/m2、例えば20~50g/m2であってよい。液体展延層は、スパンボンド-メルトブロー、又はスパンボンド-メルトブロー-スパンボンド(SMS)ウェブであってもよい。
【0130】
液体展延層125は好ましくは、吸収性構造から流れる創傷滲出液を吸収するための能力を有する。実施態様では、液体展延層125は、標準試験法NWSP 10.1によって測定して、少なくとも10g/gの吸収能力を有する。
【0131】
吸収性構造122は、創傷滲出液を吸収し、このような創傷滲出液を効率的に分配するように構成されている。前述のように、本開示のNPWTシステムがキャニスタと接着性被覆材とを含む場合、これらの流体収集手段の間に液体のバランスのとれた分布が望まれる。吸収性構造122はこのように、滲出液を保持し分配するための一時的リザーバとして機能する一方、さらに管類アセンブリによるキャニスタへの液体輸送を制御する。
【0132】
被覆材が創傷滲出液をあまりにも速くあまりにも「多く」吸収する場合には、キャニスタへ移動させられる滲出液は少なくなる。この状況において、被覆材は主要な流体収集手段として機能し、この結果、被覆材の着用時間を損なうおそれがある。これに対して、キャニスタへ移動させられる滲出液があまりにも多い場合には、キャニスタはより頻繁に空にして交換する必要がある。
【0133】
実施態様において、吸収性被覆材は、実施例3に記載された試験方法によって測定した場合に、300~700mg/cm2、好ましくは400~600mg/cm2の保持能力を有する。
【0134】
発明者らは、2つの流体収集手段(被覆材及びキャニスタ)間の液体のバランスがとれた分布が達成されるのを保証するために、被覆材の保持能力が重要であることを見出した。これにより、被覆材の着用時間は改善される。
【0135】
本開示の被覆材は、創傷滲出液の35~65%、例えば40~60%を貯蔵し、そして創傷滲出液の35~65%、例えば40~60%を被覆材からキャニスタへ除去するように構成されている。
【0136】
被覆材とキャニスタとの間の液体の分布は、好ましくは40:60~60:40である。発明者らは、このような分布は、被覆材の交換を必要とすることなしに最長9日間の治療にわたって維持することができることを見出した(実施例2参照)。
【0137】
吸収性構造122は、1つ又は複数の層を含んでよく、ここでこれらの層のうちの少なくとも1つは、超吸収性ポリマー(SAP)を含む超吸収性層122aである。
【0138】
「超吸収性ポリマー」又は「SAP」は、水性流体中で自重の最大300倍を吸収し得るポリマーである。超吸収性ポリマーは、ヒドロゲルの形成時に多量の流体を吸収することができる水膨潤性且つ水不溶性のポリマーによって構成されている。本開示に従って使用するための超吸収性ポリマーは、無機又は有機の架橋親水性ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、架橋ポリアクリレート、及びこれに類するものであってよい。一般的には、超吸収性ポリマー(SAP)はアクリル酸ナトリウムを含む。SAP材料は粒子、繊維、フレーク、又はこれに類するものの形態を成していてよい。好ましくは、SAP材料は超吸収性ポリマー(SAP)粒子の形態を成している。超吸収性粒子のサイズは45~850μm、好ましくは150~600μmであってよい。
【0139】
実施態様において、吸収性構造内の超吸収性粒子の量は、10~20g/cm2、好ましくは13~17mg/cm2である。
【0140】
発明者らは、この範囲が本開示に係る被覆材にとって有益であることを見出した。このような吸収性構造は「妥当な」レベルで滲出液を吸収する。過度に多いSAPが含まれる場合、SAP層は膨潤し、過度に多く且つ速く吸収する可能性がある。このことは、被覆材が単独の又は少なくとも主要な流体収集手段としての役割を果たすという効果をもたらし得る。本開示の文脈において、遠隔に配置された流体収集手段、例えばキャニスタと、(流体収集手段とも見なされる)被覆材との間のバランスは、好ましくは50:50、例えば少なくとも40:60又は60:40である。以上で言及したように、このバランスは、被覆材の着用時間を改善するために重要である。
【0141】
吸収性構造122は好ましくは250~550g/m2、好ましくは350~450g/m2の基本重量(basis weight)を有する。このようにして、液体分配は制御され、液体吸収と被覆材からの液体除去との適正なバランスが観察される。さらに、被覆材は柔軟であり、着用者の動きに対してより良く適応することができる。
【0142】
図4cに示されているように、吸収性構造122は3つの層122a~cを含む。
【0143】
吸収性構造122の最下層122bは、液体展延層122bである。創傷部位から液体展延層122bに入った滲出液は、吸収性構造122の他の層に入る前に均一に分配され、これにより、超吸収性層122a及び吸収性構造122の他の層に向かってより広い表面積を形成する。
【0144】
吸収性構造122は、第1液体展延層122bと、超吸収性層122aと、第2液体展延層122cとを含んでよく、超吸収性層122aは、第1及び第2液体展延層(122b,122c)の間に配置されている。
【0145】
第1及び/又は第2液体展延層は、滲出液を効率的に分配し得る任意の材料を含んでよい。例えば第1及び/又は第2液体展延層は、不織布材料を含む。
【0146】
実施態様において、第1液体展延層122bは、超吸収性層122aの下側に配置され、第2液体展延層122cよりも大きい液体展延能力を有する。液体拡散勾配を有する吸収性構造がこのように達成され、これは、被覆材から、及び、被覆材内部で、吸収性構造122が液体をそれぞれ保持し除去するための吸収性構造122の能力に影響を与える。
【0147】
例えば、第1液体展延層122bは不織布を含んでよい。不織布の基本重量は、20~50g/m2(gsm)、例えば30~40g/m2(gsm)の範囲内のグラメジであってよい。液体展延層122bの厚さは0.2~1.2mm、例えば0.2~0.6mmであってよい。この厚さは乾燥状態で測定される。
【0148】
第2液体展延層122cは薄織物又は不織布層であってよい。一般的には、上側の層122cの展延能力は、下側の液体展延層122bの展延能力よりも低い。
【0149】
層122cはまた、超吸収性層122aからのSAP粒子の漏れを阻止するのに役立つ。超吸収性層122aのSAP粒子は、超吸収性層122aに入った滲出液と化学的に結合し、これにより水性ゲルを形成する。層122cは、ゲル化粒子が裏打ち層117に向かって、及び第1管類106を含む結合用部材116に向かって動くのを阻止する。第1管類106内部のゲル粒子の望ましくない閉塞はこれにより阻止される。層122c(又は122b)は、製造プロセス中に担体として役立つ「支持層」としても作用する。好ましくは、層122cは液体展延層であり、被覆材104の裏打ち層117に向かって、分配された液体のより広い間接的な表面を形成するのに役立つ。
【0150】
吸収性構造の種々の層は、複合的な液体吸収及び保持構造を形成し、そして改善された液体分配が観察される。詳細には、それぞれ保持される及び除去される滲出液の制御された分布が観察されている。
【0151】
実施態様において、吸収性構造122は、付加的な層を含む。
【0152】
吸収性構造122は、好ましくはエンボス加工されている。換言すれば、吸収性構造122の表面は構造化されており、複数の凹凸(図示せず)を含んでよい。このことは、基本重量が増大するのに伴って、複数の層を含む吸収性構造122は剛性を有し且つ厚くなり得ることから、有益である。エンボス加工は、吸収性構造が、柔軟でありながら、その形状及び薄さを保持するのを可能にする。エンボス加工された吸収性構造はまた、被覆材104内部での創傷滲出液の制御された展延を保証する。構造の圧縮領域内では、増強された展延及び分配が得られる。
【0153】
超吸収性層122aは、エアレイド(airlaid)超吸収性層であってよい。実施態様では、エアレイド超吸収性層122aは、超吸収性粒子と、セルロース繊維と、二成分繊維と、を含む。
【0154】
例えば、エアレイド超吸収性層は、
- 30~50重量%、好ましくは35~50重量%の超吸収性粒子と、
- 30~50重量%、好ましくは40~50重量%のセルロース繊維と、
- 3~10重量%、好ましくは5~8重量%の二成分繊維と、
- 3~8重量%ポリエチレンと
を含んでよい。
【0155】
このような超吸収性層は、改善された液体対処特性及び適正な液体分配を可能にする。さらに、これは、ゲルの閉塞を阻止し、大量の流体が対処されるときに吸収性構造が圧潰するのを阻止する。
【0156】
二成分繊維は、結合剤として作用し、特に湿潤状態においてSAP層の形状を維持する。二成分繊維は、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートと(PE/PET)から形成されてよい。
【0157】
超吸収性層122aの厚さは、0.8~2.5mm、例えば1.4~2.2mm、例えば1.8~2.0mmであってよい。この厚さは乾燥状態で測定される。
【0158】
図4a及び4cに示されているように、裏打ち層は、被覆材を第1管類106に接続するように構成された結合用部材116を含む。裏打ち層117及び吸収性構造122の少なくとも一部分は、開口部126(図4b及び4c参照)を含み;開口部126は、結合用部材116の下側に配置されており、液体展延層125が存在する場合、開口部を欠いている。
【0159】
開口部126は、創傷部位とキャニスタ/管類アセンブリとの間の流体連通を保証する。開口部は、また創傷部位への陰圧の伝達を可能にする。結合用部材116は、裏打ち層内の開口部と重なる(図4cに最も良く示されている)。
【0160】
図4cでは、吸収性構造122は3つの層を含んでおり、これらの層のそれぞれは開口部126を含む。しかしながら、吸収性構造122の唯一の層又は2つの層内に開口部が設けられていることも同様に構想可能である。
【0161】
液体展延層125がいかなる開口部をも含有していないという事実は、ゲル化粒子及び望まれない大型粒子が被覆材104の第1管類106に入るのを阻止する。
【0162】
図4cでは、透過層124と吸収性構造122との間に、複数の接着性ストライプ127が設けられている。
【0163】
接着性ストライプ127は、結合用部材116及び第1管類106へ向かう滲出液の流れを止めるように構成されている。前述のように、本開示の被覆材104は、好ましくは、被覆材とキャニスタとの間の適正なほぼ等しいバランスを可能にする構造を有している。好ましくは、創傷滲出液の約40~60%が、被覆材によって対処されるのに対して、40~60%がキャニスタへ輸送される。
【0164】
創傷滲出液が創傷から排出されると、これは先ず透過層124によって対処され、そして透過層124から出た時点で、接着性ストライプ127は、滲出液を、直接的に管類106へ向かって流れすのではなく、上側の吸収性構造122内へ導く役割を果たす。したがって、接着性ストライプ127を設けることは、被覆材及び遠隔に配置されたキャニスタとの間の創傷滲出液の所望の分配に貢献し得る。開口部126の下側の領域には、好ましくは、いかなる接着性ストライプも存在しない。これは、第1管類106及び結合用部材116の詰まり及び閉塞を防止するためである。
【0165】
「複数のストライプ」とは、被覆材が少なくとも2つの接着性ストライプを含むことを意味する。例えば、被覆材は、被覆材のサイズ並びにストライプの幅に応じて、2~10本、例えば2~6本の接着性ストライプを含んでよい。
【0166】
接着性ストライプ127は、被覆材104の幅に亘って配置されてよい。接着性ストライプ127はこうして、透過層124及び/又は吸収性構造122の側縁部の間に延在するように配置されていてよい。ストライプは好ましくは、管類へ向かう滲出液の流路に対して直交方向に配置されている。したがって、接着性ストライプ127は、被覆材内へ流入する滲出液が、管類へ向かって流れるときに接着性ストライプ127と常に遭遇するように、配置されている。
【0167】
接着剤は好ましくはホットメルト接着剤である。接着性ストライプの幅は3~25mm、例えば5~15mm、例えば6~10mmであってよい。
【0168】
接着性ストライプ127間の距離は、10~50mm、例えば15~30mmであってよい。接着性ストライプ127間の距離は、被覆材104のサイズ及び形状によって左右され得る。
【0169】
図4cにさらに示されているように、接着性皮膚接触層121は、吸収性構造122、及び存在する場合には、透過層124の下側の領域内に複数のアパーチャ128を含むが、しかし縁部分123を形成する領域内ではアパーチャを欠いている。
【0170】
被覆材の縁部分にアパーチャを欠いていることは、被覆材の縁部分123における接着力を改善し、ひいては被覆材の滞留能力を改善するために有益である。
【0171】
アパーチャ128はポリマー系フィルム121a(存在する場合)と、シリコーンゲル層121bとを通って延びている。アパーチャ128は、皮膚部位に対する接着性を損なうことなしに、被覆材104内への体液の吸収を改善する。
【0172】
実施例
実施例1:システム安定性比較試験
2つの吸収性被覆材(それぞれ被覆材A、及び被覆材B)と組み合わせて、本開示に係るシステムを利用して着用試験を行った。被覆材A及び被覆材Bは構造が同様であり、裏打ち層に関してのみ異なっていた。被覆材は底部から頂部へ向かって見て、ポリウレタンフィルム及びシリコーンゲル層を含む接着層と、スペーサファブリック透過層と、吸収性構造(不織布の液体展延層、前述のエアレイドSAP層及び薄織物層(tissue layer)を含む)と、不織布の液体展延層と、裏打ち層とをそれぞれ含んでいた。両方の被覆材共、空気管路及び流体管路を含む予め取り付けられた管類を含んでいた。裏打ち層の特性を下記表1に挙げる。
【表1】
【0173】
脚を120度に曲げた状態(被覆材の管類を上向きにした)で、被覆材を被検者の膝前部に被着した。図1に示されたそれぞれのコネクタ部分によって、モバイル型陰圧装置に管類を接続した。使用したポンプは、ダイアフラム型ポンプであった。図1に開示されている通り、50mlの液体を貯えるように構成されたキャニスタをポンプに接続した。被覆材の管類の遠位端部に取り付けられたコネクタ部分は、エアフィルタを含み、そして被覆材への(空気管路を用いた)空気の供給量が動作中に2~7ml/minになるように、コネクタ内へ周囲空気を導入した。
【0174】
ポンプを作動させ、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に加えた。ポンプ作動間の時間であるToffを最初の5時間(それぞれ0~5時間、及び3~5時間)に亘って記録したが、Toffは、システムの安定性の指標であり、望まれない空気がシステム内へ導入されないことを保証するための手段である。
【0175】
試験を5人の被験者において実施し、0~5時間と、3~5時間の時間に亘って平均Toffを記録した。
【0176】
平均Toffは0~5時間の時間中、被覆材Bについて26秒であったのに対して、被覆材Aについては35秒であった。これは26%の改善であった。改善は3~5時間の時間に関してさらに顕著であった。ここでToffは、本開示の被覆材において40%高かった。その結果は図5及び下記表2に示されている。これらの結果は、裏打ち層の特性が陰圧創傷治療の安定性に影響を与えることを示している。システムは安定し且つ気密であり、ポンプはさほど強力に働く必要はない。
【表2】
【0177】
実施例2:液体分配の比較試験
被覆材とキャニスタとの間の液体分配を試験するために、3つの吸収性被覆材(それぞれ被覆材A、被覆材C、及び被覆材D)と組み合わせて、本開示のシステムで比較試験を実施した。
【0178】
被覆材Aは前述のものと同じ構造を有していた。被覆材Cは、被覆材Aと同じ層構造を有したが、吸収性構造の基本重量はより高いものであり、1cm2当たりの保持能力及び超吸収性粒子の量は異なっていた。
【0179】
被覆材Dは、同じ全体的な層構造を有したが、吸収性構造に関して異なっていた。被覆材Dの吸収性構造は、40重量%の超吸収性繊維(SAF)と60重量%のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維を含む吸収性層、並びに不織布拡散層を含んでいた。被覆材Dの吸収性構造内には、超吸収性粒子は存在しない。
【0180】
すべての被覆材(A,C及びD)は、吸収性構造の上部に配置された不織布拡散層を含んでいた。不織布の液体展延層は、50重量%のビスコース繊維と50重量%の二成分繊維を含んでいた。被覆材の吸収性構造のより詳細な点については、下記表3を参照されたい。
【表3】
【0181】
保持能力は、後述の実施例3において記載したように測定した。
【0182】
予め計量された被覆材を、被覆材面積よりも大きいサイズのプレキシガラス板に取り付けた。プレキシガラス板は、液体流入のための穴を有した。液体流入が被覆材の中央部分内に来るように、被覆材を位置決めした。各々の被覆材は、管類は図1に示されているようにモバイル型陰圧装置に連結された管類を含んでいた。使用されたポンプは、ダイアフラム型ポンプであった。50mlの液体を貯えるように構成されたキャニスタを使用し、前記キャニスタを図1に開示されたハウジング内部に配置されたポンプに接続した。被覆材とNPWT装置(キャニスタとポンプとを含む)とを、前述のようにそれぞれのコネクタ部分によって接続した。被覆材管類と連携する第1コネクタ部分内にエアフィルタを配置した。被覆材への空気の供給量が2~7ml/minになるように、コネクタ内へ周囲空気を導入した。ポンプを作動させ、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に加えた。
【0183】
7日間で300mlの流量(被覆材C及びD)そして9日間で386mlの流量(被覆材A)で、各被覆材の中央に試験液体(ウマ血清)を添加した。被覆材内の陰圧を、全試験期間中-16665.3Pa(-125mmHg)に維持した。試験期間の後、被覆材及びキャニスタの湿潤重量を記録した。各々の被覆材とキャニスタの間の試験液体の分配を計算した。
【0184】
図6に見られるように、被覆材Aとキャニスタとの間の液体分配は61:39であり、これに対して被覆材Cの場合には、液体の大部分が被覆材(90%)内に保たれ、10%のみがキャニスタに移動させられた。被覆材Dでは、被覆材:キャニスタの液体分配が、34:66であった。
【0185】
また、試験期間(それぞれ7日間及び9日間)の後、被覆材の写真を撮影した。図7aに見られるように、被覆材Dは、被覆材構造内部に比較的低い液体分配を有していた。換言すれば、被覆材の吸収能力は、ごく一部しか利用されなかった。その代わりに、より多くの滲出液がキャニスタへ移動させられた。
【0186】
図7bは被覆材Cを示しており、被覆材の大部分が利用された。この図からは明確に見ることはできないが、被覆材は嵩高で「ずぶ濡れ(soaky)」の外観を有した。
【0187】
図7cは、9日間の液体暴露後の被覆材Aを示す。液体の対処のために、被覆材の大部分が利用され、それでもなお、滲出液の少なくとも40%がキャニスタへ移動させるのを可能にした。流体収集手段(被覆材及びキャニスタ)の間の所望の液体分配がこれにより達成された。
【0188】
実施例3:被覆材の保持能力
流体保持能力は、液体を保持する被覆材の能力として定義される。
【0189】
先ず、被覆材試料のために理論的な最大吸収量を評価した。最大吸収能力は、被覆材が余剰の試験液体に曝露されかつ加えられる負荷が存在しない場合に被覆材が吸収し得る液体の量である。
【0190】
被覆材試料A,C及びDを、(被覆材内に存在する全ての層が試験において使用されるように)被覆材の中心部分から所定のサイズ(5x5cm=25cm2)に打ち抜いた。
【0191】
乾燥状態における被覆材試料(A,C及びD)の面積及び重量を記録した。各々の被覆材試料を、十分な体積の試験液体(ウマ血清)を有するボウル内に浸した。試料の上部に細目金網を置くことにより、接着性皮膚接触層が細目金網に向いた状態で、試料を液面の下方まで押し下げた。各試料を吸収時間全体にわたり試験液体で覆って、60分間吸収するよう放置した。吸収時間が完了した時点で、試料を被覆材の1つの角隅で鉛直方向に懸吊することにより、流体を120分間に亘って流し出した。60分間にわたって、試料に液体を吸収させた。吸収時間が完了した時点で、1つの角隅で鉛直方向に保持して、試験片を120秒間に亘って自由に流し出した(下記図面参照)。試料のそれぞれに関して、液体グラム数単位で最大吸収能力を記録した。
【0192】
最大吸収能力を計算した後、同様に試験を(上記のように)実施した。試料には、理論的最大吸収量の80%に相当する試験液体を吸収させた。10分間の吸収時間後、試料の創傷側が下向きになった状態で、16665.3Pa(125mmHg)と同等の圧力を試料に加えた。静圧を120秒間に亘って保持した。次いで、静圧曝露後に試料中に保持されたウマ血清の重量として、保持力を計算した。このように、保持能力は、指定された圧力の大きさの下で液体を保持する製品の能力である。被覆材A,C及びDの保持能力は前記表3に示されている。
【0193】
実施例4:液体の逆流を阻止する際の接着性皮膚接触層の効果
NPWT装置から被覆材が分離された時の問題である滲出液の逆流を対処するための被覆材の能力を試験するために、本開示のシステム及び2つの吸収性被覆材(それぞれ前述の被覆材A、及び被覆材E)を用いて、比較試験を準備した。
【0194】
被覆材Eは被覆材Aと同じ構造を有していたが、裏打ち層と吸収性構造との間の不織布の液体展延層を欠いていた。各被覆材の管類を、実施例1~2に記載されたものと同じ手順によってモバイル型陰圧装置に接続した。
【0195】
キャニスタに約52mlのウマ血清(過剰の液体)を充填した。-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧が安定した時点で、キャニスタをポンプから分離し、そして過剰な液体を被覆材へ戻した。図8a及び8bに見られるように、図8a及び8bに符号104で示された本開示の被覆材(被覆材A)を用いると、滲出液の逆流がより広い表面にわたって分配された。これに対して、被覆材Eにおける滲出液の逆流(図8a及び8bに符号801と表示)は、顕著な程度まで広がることはなく、大部分の滲出液は創傷部位へ向かって直接的に戻された。このように、液体展延層は、両方向に均一な滲出液を展延し分配することに貢献する。
【0196】
実施例5:接着比較試験
2つの異なるタイプの吸収性被覆材の接着力を、陰圧を加える、そして加えない状態で比較する比較試験を準備した。
【0197】
被覆材F及びGは底部から頂部へ向かって見て、ポリウレタンフィルム及びシリコーンゲル層を含む接着層と、超吸収性ポリアクリレート繊維を含む吸収性コアと、ポリウレタン裏打ち層とを含む。被覆材Fと被覆材Gとの違いは、被覆材Fが接着層の全面にわたって穿孔を含むのに対して、被覆材Gは接着層の、吸収性構造の下側の領域内だけに穿孔を含むことであった。したがって、被覆材Gの縁部分は非アパーチャ型、すなわち非穿孔型であった。
【0198】
先ず、陰圧を加えない状態で接着力を試験した。
【0199】
次に、本開示に係るNPWTシステム内に陰圧を加えた状態で、接着力を試験した。これらの試験のために、吸収性構造と接着層との間にスペーサファブリック層を配置することにより、被覆材全体を通して、陰圧を均一に分配した。さらに、(図4aに示されているように)これらの被覆材に結合用部材及び管類を取り付けた。吸収性構造は、結合用部材の下部にφ10mmの円形の切り抜きを有した。陰圧との組み合わせで、そして本開示に係るシステムにおいて試験された被覆材をそれぞれ被覆材FNP及び被覆材GNPと呼ぶ。
【0200】
この目的は、本開示に係るNPWTシステムにおける陰圧なしの場合、そして陰圧を加えた場合の吸収性被覆材の接着力の差を評価することである。
【0201】
試験設定は、標準法ASTM D3330/D3330M-04、方法F(完全な製品上で試験、15mmに対して、すなわち被覆材の縁部分の幅に対して平均荷重を測定)に基づいた。
【0202】
方法の目的は、鋼表面(200x100mm)と被覆材の接着層との間の接着を引張テスターによって判定することであった。被覆材を、モバイル型スライドに取り付けられた鋼試験パネルに被着した。
【0203】
それぞれ被覆材FNP、及び被覆材GNPの管類を、例えば図1に示されたそれぞれのコネクタ部分によってモバイル型陰圧装置に接続した。使用されるポンプはダイアフラム型であった。図1に開示されたような、300mlの液体を貯えるように構成されたキャニスタをポンプに接続した。被覆材管類の遠位端に取り付けられたコネクタ部分は、エアフィルタを含み、そして被覆材への(空気管路による)空気の供給量が動作中に2~7ml/minになるように、コネクタ内へ周囲空気を導入した。
【0204】
ポンプを作動させ、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に加えた。
【0205】
引張テスターのクロスヘッドに、モバイル型スライドからのコードを取り付けた。このコードはクロスヘッドが鉛直方向に動くのと同じ速度でスライドを水平方向に動かす。このことは、被覆材がパネルから剥離される角度が90°に保たれることを保証する。
【0206】
試験片を鋼パネルから剥離するのに必要な平均力を300mm/分の速度で測定した。
【0207】
平均荷重接着力を、被覆材の縁領域の下側で、すなわち外側の縁端部から吸収性構造、すなわち創傷パッドまで、約15mmの距離を測定した。接着力の平均荷重を計算した(下記表4参照)。各被覆材カテゴリーに対して、10個の被覆材のプロトタイプを試験した。ただし被覆材GNPの場合には9つの被覆材のプロトタイプを試験した。
【表4】
【0208】
表4で実証されるように、接着力は、非アパーチャ型の縁部分を有する被覆材(被覆材G)が著しく高かった。さらに、そして驚くべきことに、このような被覆材(被覆材GNP)が、本開示に係る陰圧創傷治療(NPWT)システムに含まれると、接着力は高められた。相乗効果が達成され、そしてこの効果は被覆材F対被覆材FNPに対しては観察されなかった。
【0209】
実施例6:空気漏れ評価
結合用部材/裏打ち層の間の界面における空気漏れを測定するために試験を設定した。経時的な圧力減衰として測定された空気漏れを2つの非吸収性被覆材間で比較した。
【0210】
下記非吸収性被覆材を試験において使用した。
被覆材H: 接着性皮膚接触層に接着された20μmポリウレタンフィルムを含む裏打ち層。接着性皮膚接触層は、20μmのポリウレタンフィルムと200g/m2(gsm)のシリコーンゲル層とを含む積層体であった(被覆材厚:280μm、被覆材サイズ:20x28cm)。
【0211】
被覆材I: 接着性皮膚接触層に取り付けられた25μmポリウレタンフィルムを含む裏打ち層。接着性皮膚接触層は25g/m2(gsm)のアクリレート系接着剤を含んだ(被覆材厚:60μm、被覆材サイズ:20x28cm)。
【0212】
参考として、後述のようにエアフィルタのみに対しても空気漏れを測定した。この参考は、これがどの程度、総圧力減衰に関与したかを見るために含まれた。
【0213】
試験設定は図10に概略的に示されている。試験設定において、支持面129を使用した(2mm厚の熱可塑性コポリエステルシート(25x38cm))を使用した。創傷フィラー材料の後ろに深さ1cmまで支持面129の中心領域を成形し、創傷空洞を模擬するために使用した。ポリウレタンフォーム(Avance Solo, Moelnlycke 10x8x3cm)の形態を成す創傷フィラー材料を空洞内に入れた(図10の符号120参照)。評価されるべき非吸収性被覆材を前記フォームの上部で空洞に被せ、縁部を支持面に接着した。被覆材の中心(すなわち下側の前記フォームの中心)に穴(d=1.6mm)を形成した。非吸収性被覆材を、フィルムにテンションを掛けない状態で創傷空洞の境界上に固定した。被覆材は前記フォームから外方へ向かって取り付けた。Mepiseal (Mepiseal(登録商標) Moelnlycke Health Care)を被覆材の外側の縁部に沿って貼ることにより、密にシールし、そして接着ストリップ(図3の符号119参照)を使用して被覆材の外側の縁部を固定した。
【0214】
結合用部材(図10の符号116参照)を静かに加圧しながら裏打ち層に取り付けた(切り抜かれた穴の上方)。結合用部材は空気管路112及び流体管路111を含む管類に取り付けられている。管類の遠位端は、コネクタユニット110を含んでいた。コネクタ部分はエアフィルタ(ポリエチレンを含む)を含み、被覆材への(空気管路による)空気の供給量が動作中に2~7ml/min(約5ml/min)になるように、コネクタ内へ周囲空気を導入した。
【0215】
この試験設定では、流体管路111を結合用部材から約10cmのところで切断し、いわゆるYコネクタ130を使用して、経時的に陰圧をモニタリングするように構成されたシステム132に管類(図10の符号131参照)の一部を接続した。
【0216】
システム内で使用されるポンプはダイアフラム型であった。300mlの液体を貯えるように構成されたキャニスタをポンプに接続した。
【0217】
ポンプを作動させ、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に加えた。ポンプを3分間にわたってオンにすることにより、定常陰圧を保証した。陰圧をシステム132によって1秒ごとに記録した。3分後にポンプをオフにして、分離し、システムのための陰圧の低下を1分間にわたって記録した。
【0218】
ポンプをオフにする前に、エアフィルタを含むコネクタ部分の後ろで管類108を締め付けた。試験設定におけるコネクタ部分のエアフィルタからの漏れの寄与を含むため、流体管路を鉗子133で締め付けた。
【0219】
エアフィルタのみからの空気漏れが被覆材からの漏れよりも著しくは多くないことを検証するために、エアフィルタだけからの圧力低下として測定された漏れを参考として含めた。
【0220】
エアフィルタを含むコネクタ部分から圧力低下を測定するための参考試験設定において、上記のものと同じ支持面を利用した。創傷空洞の上方の中央に、支持面を貫通する穴(d=1.6mm)を形成し、ポリウレタンフォーム(Avance Solo, Moelnlycke 10x8x3cm)を空洞内に入れた。前記穴が上側になるように前記フォームを入れた空洞を逆さまに置き、空洞を平らな表面上に置き、そしてタックシール(tack-it)を創傷空洞の外側縁部に沿って置くことにより、密なシールを得た。
【0221】
結合用部材を創傷空洞に取り付けた(切り抜かれた穴の上方)。結合用部材は空気管路及び流体管路を含む管類に取り付けられた。管類の遠位端はコネクタ部分を含んだ。コネクタ部分はエアフィルタを含み、被覆材への(空気管路による)空気の供給量が動作中に2~7ml/min(約5ml/min)になるように、コネクタ内へ周囲空気を導入した。
【0222】
流体管路を結合用部材から約10cmのところで切断し、Yコネクタを使用して、経時的に陰圧をモニタリングするためのシステムに管類を接続した。
【0223】
ポンプを作動させ、-16665.3Pa(-125mmHg)の陰圧を被覆材に加えた。ポンプを3分間にわたってオンにすることにより、定常陰圧を保証した。陰圧をシステム132によって1秒ごとに記録した。3分後にポンプをオフにして、分離し、システムのための陰圧の低下を1分間にわたって記録した。前述のように、ポンプをオフにする前に、管類108を鉗子133で締め付けた。
【0224】
ポンプがオフにされたときの最初の1分間の陰圧の平均減衰を下記表5に示す。各カテゴリーの4つのプロトタイプを試験に使用した。ポンプがオフにされた後の最初の1分間における被覆材Hの圧力減衰は、エアフィルタのみによる参考試験とほぼ同じレベルであった。このことは、被覆材Hからの空気漏れのほとんどがエアフィルタから由来するものであって、望まれないシステム空気漏れに由来するものではないことを示している。被覆材Iの場合、圧力減衰は著しく大きかった。
【表5】
【0225】
平均圧力減衰は図11にも示されている。被覆材Iの圧力減衰が著しく大きいことが注目される。したがって、ポンプはより高頻度で作動させなければならない。このことは、バッテリーの消費量及びノイズに関して不都合な影響を及ぼすおそれがある。対照的に、被覆材Hを含むNPWTシステムは気密であり、望まれない空気漏れを阻止する。
【0226】
最後に図9を参照すると、本開示の例示的な実施態様に基づくNPWT装置101の例示的な機能スキームが示されている。上記議論に加えて、図9は、制御ユニット902をさらに含むようにNPWT装置101を示している。この制御ユニットは、バッテリー118に電気的に接続され、そして陰圧ポンプ904の動作を制御するように構成されている。制御ユニット902はマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能なデジタル信号プロセッサ、又は別のプログラム可能な装置を含んでよい。制御ユニット902はこれに加えて、又はその代わりに、それぞれ特定用途向け集積回路、プログラム可能なゲートアレイ又はプログラム可能なアレイ論理、プログラム可能なロジックデバイス、又はデジタル信号プロセッサを含んでよい。制御ユニット902がプログラム可能な装置、例えば上述のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はプログラム可能なデジタル信号プロセッサを含む場合、プロセッサは更に、プログラム可能なデバイスの動作を制御するコンピュータ実行可能なコードをさらに含んでもよい。
【0227】
加えて、NPWT装置101は、陰圧ポンプ904と流体接続して配置された少なくとも1つの圧力センサ906を含む。NPWT装置101は好ましくはさらに、制御ユニット902と通信するように配置されたメモリー素子(図示せず)を含む。メモリー素子は好ましくは、所定の供給速度、並びに所定の陰圧レベルに関する情報を保持している。所定の陰圧レベルは-10665.8(-80)~-23998.0Pa(-180mmHg)、好ましくは-13332.2(-100)~-19998.4Pa(-150mmHg)、より好ましくは-14665.5(-110)~-18665.1Pa(-140mmHg)である。
【0228】
制御ユニット902は次いで、測定された中間電圧、所定の供給速度、及び所定の陰圧レベルに基づいて、陰圧ポンプを操作するのに適したパルス幅変調(PWM)スキームを選択する。PWMスキームを選択するときには、制御ユニット902はまた、エンドユーザーが被るノイズ障害を最小限にすることを保証するために、陰圧ポンプ904の動作速度を、本質的に一定であるように、又は少なくとも所望の動作範囲の±10%の範囲内にあるように保つという要望を考慮に入れることになる。
【0229】
本開示のすべての態様の用語、定義、及び実施態様は、必要な変更を加えれば本開示の他の態様に当てはまる。
【0230】
本開示をその特定の例示的な実施態様を参照しながら説明したが、数多くの種々異なる変更形、改変形、及びこれに類するものが当業者には明らかになる。
【0231】
開示された実施態様の変更は、図面、開示、及び添付の請求項を研究することから、本開示を実施する上で当業者によって理解し達成することができる。さらに、請求項において、「含む(comprising)」は他の要素又は工程を排除することはなく、不定冠詞「a」、又は「an」は複数形を排除しない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9
図10
図11
【国際調査報告】