(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】少なくとも1つのエラストマーマトリックスおよび非硫酸化多糖を含む生体材料およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20230614BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230614BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20230614BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20230614BHJP
A61L 15/26 20060101ALI20230614BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/60
A61L27/58
A61L15/26 100
A61L15/28 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571177
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2021063472
(87)【国際公開番号】W WO2021234088
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】522452053
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ トゥレーズ パリ-ノール ヴィルタヌーズ
【氏名又は名称原語表記】UNIV PARIS XIII PARIS-NORD VILLETANEUSE
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】522452064
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ サン-ジョゼフ ドゥ ベイルート
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE ST-JOSEPH DE BEYROUTH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】リュタムスキ,ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】ロマン,ジェラルディヌ
(72)【発明者】
【氏名】シャンゴタド,シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】セニ,カリム
(72)【発明者】
【氏名】シャカール,カロル
(72)【発明者】
【氏名】マナル,ワシム
(72)【発明者】
【氏名】ユネス,ロナルド
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AA01
4C081AA12
4C081AA13
4C081AA14
4C081AB11
4C081AB19
4C081BA00
4C081BA16
4C081BB07
4C081CA161
4C081CA211
4C081CC01
4C081CD012
4C081CD082
4C081DA01
4C081DA02
4C081DA11
4C081DB03
4C081DC03
4C081EA02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのエラストマーマトリックスと多糖とを含む生体材料、および組織欠損の補強、再建および/または補填、好ましくは軟組織および/または上皮組織の補強、再建および/または補填、好ましくは皮膚および/または粘膜の修復におけるその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織修復用生体材料において、
- 少なくとも1つのエラストマーマトリックスと、
- 非硫酸化多糖と、
を含む生体材料。
【請求項2】
少なくとも1つのエラストマーマトリックスが、ポリ(エステル-尿素-ウレタン)系エラストマーを含み、エステルが、カプロラクトンオリゴマー(PCL)、乳酸オリゴマー(PLA)、グリコール酸オリゴマー(PGA)、ヒドロキシ酪酸オリゴマー(PHB)、ヒドロキシ吉草酸オリゴマー(PVB)、ジオキサノンオリゴマー(PDO)、ポリ(エチレンアジピン酸)オリゴマー(PEA)、ポリ(ブチレンアジピン酸)オリゴマー(PBA)またはこれらの組合せの中から選択されてることを特徴とする、請求項1に記載の生体材料。
【請求項3】
非硫酸化多糖が、ヒアルロン酸であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生体材料。
【請求項4】
エラストマーマトリックスが、0.1~6.0のイソシアネート指数を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項5】
前記生体材料が、500μm~2000μmのマルチスケール細孔サイズを有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項6】
前記生体材料が、60%以上の全孔隙率を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項7】
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスと、
- 非硫酸化多糖と、
を含み、非硫酸化多糖が、1,000kDa以上の分子量を有するヒアルロン酸であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項8】
前記生体材料が、スポンジ、フィルム、包帯、顆粒、モノリスまたは膜の形態であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項9】
組織欠損の補強、再建および/または補填、有利には、軟組織および/または上皮組織の欠損の補強、再建および/または補填、有利には、皮膚および/または粘膜の欠損の補強、再建および/または補填における使用のための、請求項1から8のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項10】
組織の補強、再建および/または補填が、補強、再建および/または補填を行なうべき組織欠損の体積の5体積%以上である、請求項9に記載の生体材料。
【請求項11】
歯肉組織の再建および/または補強における使用のための、請求項1から10のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項12】
内臓組織および/または骨盤組織および/または頭頂組織の再建および/または補強、有利には骨盤臓器脱の治療、骨盤組織の修復、壁の再建および/または補強、消化器創傷の再建および/または補強における使用のための、請求項1から10のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項13】
火傷、有利には熱傷、冷凍火傷、電気火傷、化学火傷、放射線火傷および光化学火傷の治療における使用のための、請求項1から10のいずれか一つに記載の生体材料。
【請求項14】
生体材料の調製方法において、
a) ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製するステップと、
b) エマルジョンを形成するために、水性液相中で非硫酸化多糖を可溶化し、その後ステップa)の有機相中に可溶化された非硫酸化多糖を添加するステップと、
c) 前記生体材料を得るために、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋するステップと、
d) ステップc)で得られた前記生体材料を洗浄するステップと、
e) ステップd)で得られた前記生体材料を乾燥させるステップと、
を含む方法。
【請求項15】
非硫酸化多糖の量が、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において0.05%~2.0%(w/w)を占めている、請求項14に記載の生体材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料ならびに、組織の補強、再建および/または補填、好ましくは軟組織および/または上皮組織の欠損の補強、再建および/または補填、好ましくは皮膚、歯肉および/または粘膜の修復における生体材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周組織の「歯肉歯槽粘膜形成」術は、自然歯の周りと同様に歯科インプラントの周りの機能的、美的および生物学的影響を誘発する歯肉-粘膜軟組織の欠損に関連する諸問題に応えるものである。例えば、歯肉の縮退は、笑ったときの美的でない外見をもたらし、自然発生的かつ/または誘発された過敏症の原因ともなり得、深い虫歯の進行を促進し、上顎および下顎の骨底内での歯の固定を可能にする歯の支持組織(歯周組織)を脅かし得る歯周組織の炎症の存在に関連する機能的障害を誘発し得る。
【0003】
この歯周病は、エナメル-セメント質接合部に関する根尖側への、辺縁歯肉および上皮-結合組織付着接合部の移動という形で現われる。それらの病因は、多元的であり、複数の疾病素質(バイオタイプが薄い、骨の裂開、角化した組織の高さおよび厚みが小さい、歯の位置異常など)、外傷を発生させる歯磨きなどの機械的因子、細菌学的因子(プラークおよび炎症の存在)または咬合性外傷、喫煙その他といった他の因子に関係する。軟組織の欠損、特に口腔および歯の軟組織の欠損は、結果として、外傷性傷害または外科的切除をもたらして、軟組織の元である解剖学的構造の喪失を頻繁にひき起こし得る。その上、軟組織レベルでの変化は、美的外見ひいては患者の満足度にマイナスの影響を及ぼす。欠損のサイズに応じて、軟組織の増加または軟組織の再建または外科的技術によって、美的面で組織変形を矯正することができる。
【0004】
組織管理にはまた、インプラント周囲組織および上顎の稜の調整などの他の適応症が組込まれる可能性がある。この組織の欠落を解決するためには、組織移植の外科的技術を企図する必要がある。
【0005】
歯周組織およびインプラント周囲の環境の長期にわたる持続性に必要な歯肉縮退の治療、厚いバイオタイプを目的とする組織の肥厚化および角化した歯肉帯の増加のために、歯根(または露出したインプラント表面)の被覆を得る目的で、文献中で考証された多数の外科的アプローチが提案されてきた。これらの技術の大部分は、口蓋の第2外科手術部位(口から採取される自己移植)を必要とし、これが手術時間を延長し、術後の悪い結果をもたらす原因となり、多くの悪い結果を生ずる(疼痛、外科手術中または後の大量出血、病的状態、治癒の遅れ、骨壊死、感覚異常または口蓋の永久的な知覚麻痺が指摘されている)。これらの悪い結果は時として、口蓋が薄すぎて十分な組織量を提供するには不適応であるといった解剖学的制約、または痛みを伴う合併症の原因となり得る、他の「ドナー」部位から採取される組織の採取に患者が反対している場合の治療の拒否、に結び付けられるものである。
【0006】
軟組織の欠損を修復するために企図される第1の解決法は、患者の体内の他の場所で採取された結合組織の一部を移植することである。これは、その場合、結合組織の自己移植と呼ばれるものである。自己移植は、組織が患者に由来するものであることから、免疫反応を発生させない。しかしながら、自己移植は、移植された組織中に著しい細胞死という結果を生ずる。移植片が新しい細胞を産生する能力を有していれば、この損失を補償できるが、これは特に移植片の血管新生によって左右される。この血管新生は実際、再建中の組織にとって不可欠のものである。すなわち、血管は、細胞増殖に必要な栄養素およびエネルギーをもたらす。その上、自己移植は、合併症(疼痛、膿瘍、神経痛)を誘発し得る2回の手術(採取およびその後の移植)を前提とする。補填するのに必要な移植片のサイズが、別の重要な限界を表わしている。
【0007】
別の代替案は、同種異系の代用物を使用することにある。
【0008】
軟組織を再建しかつ/または軟組織の欠損を補填するために一般医が従来使用している同種真皮代用物は、Biohorizons社から市販されている製品AlloDerm(登録商標)である。AlloDerm(登録商標)は、全ての細胞内容物(上皮細胞、結合組織細胞、ウイルス細胞、および細菌細胞)を除去しながら基底ケラチノサイトからのヘミデスモソームの係留線維の分離を誘導する、組織の脱表皮化が関与する物理的かつ化学的治療を受けたヒトのドナーの遺体の皮膚から得られたヒト由来の無細胞性真皮マトリックスであり、これは、コラーゲン束を修正しないまたは基底膜の複合体に損傷を加えない条件の下で結合組織マトリックスの成分に損傷を加えずに、全ての細胞成分と共に表皮層を排除することを暗に意味している。このプロセスは、細胞成長とそれに続く組織リモデリングの基礎を提供する細胞外コラーゲンを後に残す。
【0009】
軟組織を再建しかつ/または軟組織の欠損を補填するために一般医が従来使用しているもう1つの同種異系の代用物は、Botiss社から市販されている製品Mucoderm(登録商標)である。Mucoderm(登録商標)は、ブタ真皮とエラスチンから誘導されたI/III型天然コラーゲン系のマトリックスである。
【0010】
しかしながら、これらの製品には多くの不都合がある。実際、これらの製品は、比較的コストが高く、非常に長い術後追跡を必要とし、マトリックスの早期露出は移植片の血管新生を制限し、後に、後退被覆の潜在的可能性の減少をひき起こす可能性がある。その上、Mucoderm(登録商標)は、壊死プロセスを受ける。新形成組織によるAlloDerm(登録商標)またはMucoderm(登録商標)の治癒および置換は極めて遅く、およそ10週間である。実際、失活であるその構造を理由として、AlloDerm(登録商標)またはMucoderm(登録商標)の治癒および置換は、近隣組織内に存在する細胞および血管によって左右され、このため、構造的および機能的不規則性の形で現われ得る取込みの減速が導かれる。その上、それらの高分子構造は、それらの高分子組成の類似性が推測されるにもかかわらず、生理学的歯肉とは異なるものである。実際、同種異系代用物の非常に高密度のコラーゲン網は、インビトロでの細胞コロニー形成ならびにインビトロおよびインビボでの組織リモデリングを制限すると思われる。実際、歯肉細胞外マトリックスは、機械的応力に耐えるために絶えずリモデリングされている。しかしながら、観察された線維形成プロセスは、移植された部位での歯肉の非生理学的リモデリングに起因するものである。その上、異物をもつ多核化巨細胞が連続して存在することにより、同種異系代用物の結合不良および持続する臨床的発赤を誘発する可能性がある。その上、Mucoderm(登録商標)は、ひとたび移植されると、治癒の時に収縮し、この治癒の間に創傷の収縮をひき起こす可能性のあるリモデリングプロセスが発生することが実証された。さらに、Mucoderm(登録商標)は、インプラントが大きな機械的応力に付され強い炎症反応の原因である場合に、崩壊の問題を提起することが実証されている。最後に、一部の同種異系代用物が動物由来であることによって、時として、宗教的または哲学的信条のための拒否につながる可能性がある。
【0011】
他の外科学分野もまた、外傷性傷害(火傷、擦過傷、裂傷)、老化または疾患に関係する組織の欠損または喪失を補填することを目的とするか;または外傷性傷害、老化または疾患の後に組織を補強することを目的とする生体適合性材料を探し求めている。例えば、多くの会社が、婦人科、泌尿器科、または内臓(または頭頂)の手術における補強材として使用されるインプラントの設計を専門としている。これらの材料は、脈管創傷、消化器創傷、内臓脱出症などの治療のために設計され得る。これらの生体材料はこうして、骨盤臓器脱の治療向け、より詳細には女性の骨盤臓器脱(前段(泌尿器、膀胱瘤、腹圧性失禁)、中段(生殖器、膣ヘルニア)および/または後段(消化器、直腸ヘルニア))または男性のペイロニー病の治療における補強用インプラントの設計のために応用可能である。このとき、生体材料は、拡張可能な補強材シート、あらゆる形状の膜ウィックまたはインプラントウィックの形態で使用され得る。多少の差こそあれ成功裏に使用された生体材料は、現在、異種由来、(例えばBard France SAS社から市販されているPelvicol(登録商標))または合成由来(例えばSOFRADIM社から市販されているParietex(登録商標)のようなポリプロピレン)のものである。しかしながら、Pelvicol(登録商標)は、インプラントが大きな機械的応力に付された場合に崩壊の問題を提起し、強い炎症反応の原因となる。
【0012】
米国特許出願公開第2012/239161号明細書は、カプロラクトンおよび寒天またはゼラチンをベースとするエラストマーマトリックスについて記述している。中国特許第108034225号明細書は、エラストマーマトリックスとキトサンを含む複合材料の調製方法について記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/239161号明細書
【特許文献2】中国特許第108034225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような理由から、一般医にとって使用が容易であり、弾性および体積保存の観点から見て軟組織中での移植にとって適切な機械的特性を有する、組織欠損の補強、再建および/または補填を行なう能力を有する新規の生体材料を提供する必要性が存在する。これはまた、優れた生体適合性および組織再生に適した分解を有する生体材料を提供することでもある。これはまた、動物由来でない生体材料を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、
- 少なくとも1つのエラストマーマトリックスと、
- 非硫酸化糖類ポリマーと、
を含む組織修復用生体材料を対象とする。
【0016】
本発明はまた、組織修復、好ましくは軟組織および/または上皮組織の修復、好ましくは皮膚および/または粘膜の修復における前記生体材料の使用を対象とする。
【0017】
本発明はまた、生体材料の調製方法も対象とする。
【0018】
したがって本発明は、
- 少なくとも1つのエラストマーマトリックスと、
- 非硫酸化糖類ポリマーと、
を含む、組織修復用生体材料を対象とする。
【0019】
本発明は、細胞遊走および血管新生に有利に作用する多孔質で生体吸収性/生分解性のエラストマー生体材料を提案するという利点を有する。本発明に係る生体材料はまた、微生物汚染のいかなるリスクも無く組織のより良いバイオインテグレーションをも提供する。
【0020】
本発明の意味合いにおいて、「生体材料」とは、医療の利用分野のために使用され適応された材料のことである。有利には、本発明に係る生体材料は、その表面または内部で線維芽細胞が接着し、遊走し増殖することのできる物理的支持体であり、この物理的支持体は吸収され生分解可能であり、こうして新たに形成された結合組織によるその置換を可能にする能力を有する。
【0021】
有利には、本発明に係る生体材料は、その個別の特性が互いに組合わさり、かつ個別に使用したとき少なくとも1つのエラストマーマトリックスまたは非硫酸化多糖で観察され得ない特性である極めて改善された包括的性能を有する、少なくとも1つのエラストマーマトリックスまたは非硫酸化多糖を含む。
【0022】
発明者らは、意外にも、本発明に係る少なくとも1つのエラストマーマトリックスと非硫酸化多糖を含む生体材料が:
- 細胞が及ぼす力のストレスだけでなく修復すべきゾーン内の再生プロセスにも耐え、このゾーン内の軟組織のための支持体となるのに十分な機械的特性、
- 本発明の生体材料の内部血管新生を可能にしながら、線維芽細胞、栄養素およびこれらのプロセスの規則化に介入する他の分子の循環を可能にする孔隙率および相互連結度、
- 細胞接着、およびこれらのプロセスの規則化に介入する分子の吸着を可能にする粗度、
を有することを示した。
【0023】
有利には、発明者らは、患者に移植された場合に生体材料がコラーゲン合成および血管新生を活性化させ、損傷を受けた組織の急速な再建を可能にする能力を有することを示した。
【0024】
本発明の特定の一実施形態において、非硫酸化多糖は、共有結合によりエラストマーマトリックスに付着され得る。本発明の別の特定の一実施形態において、非硫酸化多糖は、エラストマーマトリックスの中および表面で分散させられ得る。
【0025】
本発明の意味合いにおいて、「エラストマーマトリックス」とは、単一のエラストマーまたは2つ以上のエラストマー系の組合せで構成された構造のことであり、前記構造は非硫酸化多糖を内含する能力を有する。有利には、エラストマーマトリックスのイソシアネート指数は、0.1~6.0である。有利には、イソシアネート指数は、0.1~5.0、有利には0.2~4.9、有利には0.3~4.8、有利には0.4~4.7、有利には0.5~4.7、有利には0.6~4.6、有利には0.7~4.5、有利には0.8~4.5、有利には0.9~4.5、有利には1~4.5、有利には1.05~4.5、有利には1.1~4.5、有利には1.2~4.5、有利には1.3~4.5、有利には1.4~4.5、有利には1.5~4.5、有利には2.0~4.5、有利には2.5~4.5、有利には2.6~4.4、有利には2.7~4.3、有利には2.8~4.2、有利には2.9~4.1、有利には3.0~4.0である。
【0026】
有利には、本発明に係る少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、優れた生分解性、優れた生体適合性、および優れた機械的特性を有する。
【0027】
本発明の意味合いにおいて、「エラストマー」とは、架橋後に得られた「ゴム性弾性」特性を有する単数または複数のポリマーを意味する。本発明の特定の一実施形態においては、エラストマーは生体適合性および生分解性を有していなければならない。有利には、本発明の生体材料の圧縮ヤング係数は1kPa~1000kPa、有利には50kPa~900kPa、有利には50kPa~800kPa、有利には50kPa~700kPa、有利には50kPa~600kPa、有利には50kPa~500kPa、有利には100kPa~400kPaである。
【0028】
本発明の意味合いにおいて、「生体適合性の」エラストマーマトリックスとは、患者の体内への移植のための適合性と同時にそこに非硫酸化多糖を内含させるための適合性も有し、かつ生体材料がひとたびヒトまたは動物の患者の体内に移植された時点での軟組織の再建に適応されているエラストマーマトリックスのことである。
【0029】
本発明の意味合いにおいて、「患者の体内への移植のための適合性を有する」とは、例えば指令2001/83/CEの意味合いにおいて、移植された場合に治療的観点から見て有利なベネフィット/リスク比を有するエラストマーマトリックスを意味する。
【0030】
本発明の意味合いにおいて、「非硫酸化多糖を内含させるための適合性を有する」とは、エラストマーマトリックス内での前記非硫酸化多糖の活性を全くまたはほとんど劣化させずに非硫酸化多糖の取込みを可能にするエラストマーマトリックスを意味する。有利には、非硫酸化多糖は、エラストマーマトリックス内に取込まれる。換言すると、非硫酸化多糖は、本発明に係る生体材料の製造の際にエラストマーマトリックス内に直接組込まれる。
【0031】
本発明の意味合いにおいて、「生分解性の」エラストマーマトリックスとは、その材料が移植されたヒトまたは動物の患者の体内で、エラストマーマトリックスの分解、可溶化または吸収という単数または複数の異なるまたは相補的なメカニズムを介して、漸進的な消滅という共通目的をもって、生体再吸収性および/または生分解性および/または生体吸収性を有するエラストマーマトリックスのことである。
【0032】
本発明の特定の一実施形態において、本発明に係る少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(エステル-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む。
【0033】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(エステル-尿素-ウレタン)系エラストマーを含み、エステルは、カプロラクトンオリゴマー(PCL)、乳酸オリゴマー(PLA)、グリコール酸オリゴマー(PGA)、ヒドロキシ酪酸オリゴマー(PHB)、ヒドロキシ吉草酸オリゴマー(PVB)、ジオキサノンオリゴマー(PDO)、ポリ(エチレンアジピン酸)オリゴマー(PEA)、ポリ(ブチレンアジピン酸)オリゴマー(PBA)またはこれらの組合せの中から選択されている。
【0034】
特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0035】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。
【0036】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0037】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0038】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0039】
特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(乳酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0040】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0041】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0042】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0043】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。
【0044】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。
【0045】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。
【0046】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0047】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0048】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0049】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)およびポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0050】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)およびポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。
【0051】
別の特定の一実施形態において、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)、ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)、ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)、ポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)、およびポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系のエラストマーを含むマトリックスである。
【0052】
これらのエラストマーは実際、本発明の実施を可能にし、さらに、細胞適合性を有し、欠損のある組織の生理学的ストレスの復元を可能にし、復元後の再手術を回避し、欠損のある組織の適正な再建を可能にするという利点を有する。極めて有利には、多孔質生体材料の少なくとも1つのエラストマーマトリックスは、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むマトリックスである。ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むこのマトリックスには、そこに柔軟性を付与するエラストマーの性質および組織再建に適応した相互連結された多孔質構造を有するという利点もある。
【0053】
本発明の特定の一実施形態において、非硫酸化多糖は、カラギーナン、アルギン酸塩、キサンタン、キトサン、キチン、ヒアルロン酸、グリコーゲン、セルロースおよびその誘導体、ペクチン、デンプンおよびその誘導体、デキストランおよびキシランまたはこれらの混合物を含む群の中から選択され得る。したがって、有利には、非硫酸化多糖は、単独の多糖または非硫酸化多糖の混合物で構成され得る。
【0054】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る非硫酸化多糖は、ヒアルロン酸である。
【0055】
本発明の意味合いにおいて、「ヒアルロン酸」とは、単独でまたは混合物として架橋されたまたは架橋されない;場合によっては単独でまたは混合物として置換により化学的に修飾された;かつ/または場合によっては単独でまたは混合物としてその塩の1つの形態をした、ヒアルロン酸を意味する。
【0056】
有利には、ヒアルロン酸は、高分子量のヒアルロン酸である。本発明の意味合いにおいて、「高分子量のヒアルロン酸」とは、1,000kDa以上の分子量を有するヒアルロン酸のことである。反対に、「低分子量のヒアルロン酸」とは、1,000kDa未満の分子量を有するヒアルロン酸のことである。
【0057】
本発明の特定の一実施形態において、ヒアルロン酸は、1,000kDa以上、有利には10,000kDa以上、有利には100,000kDa以上、有利には1,000,000kDa以上、有利には1,500,000kDa以上、有利には2,000,000kDa以上の分子量を有する。有利には、本発明のヒアルロン酸は、1,500,000kDaの分子量を有する。有利には、高分子量のヒアルロン酸の使用は、非免疫原性および抗血管形成という特性に加えて、治癒の初期段階でマトリックス高分子、特にコラーゲンの構造化を可能にし、これは、低分子量のヒアルロン酸では得られないことである。
【0058】
本発明の有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(エステル-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスであって、ここでエステルは、カプロラクトンオリゴマー(PCL)、乳酸オリゴマー(PLA)、グリコール酸オリゴマー(PGA)、ヒドロキシ酪酸オリゴマー(PHB)、ヒドロキシ吉草酸オリゴマー(PVB)、ジオキサノンオリゴマー(PDO)、ポリ(エチレンアジピン酸)オリゴマー(PEA)、ポリ(ブチレンアジピン酸)オリゴマー(PBA)またはこれらの組合せの中から選択されている;および
-非硫酸化多糖。
【0059】
本発明の第1の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0060】
本発明の第2の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0061】
本発明の第3の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0062】
本発明の第4の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(乳酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0063】
本発明の第5の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0064】
本発明の第6の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0065】
本発明の第7の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)、ポリ(乳酸-尿素-ウレタン)およびポリ(グリコール酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0066】
本発明の第8の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(ヒドロキシ酪酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0067】
本発明の第9の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(ヒドロキシ吉草酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0068】
本発明の第10の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(ジオキサノン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0069】
本発明の第11の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(エチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0070】
本発明の第12の特定の実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、以下のものを含む:
- ポリ(ブチレンアジピン酸-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 非硫酸化多糖。
【0071】
有利には、上述の実施形態(実施形態1~12)の1つによると、非硫酸化多糖はヒアルロン酸であり得る。有利には、ヒアルロン酸は、高分子量のヒアルロン酸である。
【0072】
本発明の特に有利な一実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含むエラストマーマトリックスおよび
- ヒアルロン酸。
【0073】
有利には、多孔質生体材料は以下のものを含む:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 高分子量のヒアルロン酸。
【0074】
有利には、多孔質生体材料は以下のもののみで構成されている:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および
- 高分子量のヒアルロン酸。
【0075】
本発明の有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料は、以下のものを含有する:
- ポリ(エステル-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスであって、ここでエステルは、カプロラクトンオリゴマー(PCL)、乳酸オリゴマー(PLA)、グリコール酸オリゴマー(PGA)、ヒドロキシ酪酸オリゴマー(PHB)、ヒドロキシ吉草酸オリゴマー(PVB)、ジオキサノンオリゴマー(PDO)、ポリ(エチレンアジピン酸)オリゴマー(PEA)、ポリ(ブチレンアジピン酸)オリゴマー(PBA)またはこれらの組合せの中から選択されている;および
- 非硫酸化多糖。
【0076】
有利には、多孔質生体材料は、以下のものを含有する:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックス、および、
- 高分子量のヒアルロン酸。
【0077】
有利には、発明者らは、ヒアルロン酸、特に高分子量のヒアルロン酸と、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスとの特定の組合せが、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを単独で含む多孔質エラストマーマトリックスを使用した場合に比べて、細胞遊走の増大のみならず、多孔質生体材料の内部および周辺におけるさらに優れた血管新生およびさらに優れた組織再建を可能にする、ということを明らかにした。実際、ヒアルロン酸の添加は、コラーゲン合成の増大をひき起こし、こうしてより構造化された組織を得ることが可能になる。
【0078】
本発明の特定の一実施形態において、生体材料は50μm~2000μmのマルチスケール細孔サイズを有する。本発明の意味合いにおいて、「細孔サイズ」および「細孔直径」なる用語は、互いに交換可能に使用することができる。「マルチスケール細孔サイズ」とは、細孔サイズの可変的分布、すなわち、数ミクロンの細孔と同時にそれより小さいサイズの細孔を可変的割合で含む細孔サイズの分布のことである。一例として、50μm~2000μmのマルチスケール細孔サイズを有する生体材料は、生体材料が、同時にかつ同一の生体材料中に、50μm~2000μmの可変的サイズを有する細孔を含んでいることを意味する。非限定的な一例として、50μm~2000μmのマルチスケール細孔サイズを有する生体材料とは、その生体材料が同時にかつ同一の生体材料中に、例えば50μmのサイズを有する細孔、100μmのサイズを有する細孔、500μmのサイズを有する細孔、1500μmのサイズを有する細孔、2000μmのサイズを有する細孔を含むことを意味する。有利には、生体材料は、50μm~1200μmのマルチスケール細孔サイズを有する。有利には、平均細孔サイズは500μm~700μmである。
【0079】
有利には、前記生体材料は、500μm~2000μmのマルチスケール細孔サイズを有する。
【0080】
本発明の有利な一実施形態において、生体材料の細孔は、粗面を有する。
【0081】
本発明の有利な一実施形態において、生体材料は、60%以上の全孔隙率を有する。本発明の意味合いにおいて、「全孔隙率」とは、生体材料の包括的体積に対する物質無しの空間の体積の比率のことである。
【0082】
有利には、多孔質生体材料の全孔隙率は、60%超、有利には61%超、有利には62%超、有利には63%超、有利には64%超、有利には65%超、有利には66%超、有利には67%超、有利には68%超、有利には69%超、有利には70%超、有利には71%超、有利には72%超、有利には73%超、有利には74%超、有利には75%超、有利には76%超、有利には77%超、有利には78%超、有利には79%超、有利には80%超、有利には81%超、有利には82%超、有利には83%超、有利には84%超、有利には85%超、有利には86%超、有利には87%超、有利には88%超、有利には89%超、有利には90%超、有利には91%超、有利には92%超、有利には93%超、有利には94%超、有利には95%超、有利には96%超、有利には97%超、有利には98%超、有利には99%超である。特に有利な一実施形態において、生体材料は80%超の全孔隙率を有する。有利には、生体材料の全孔隙率は、60%~95%、有利には61%~89%、有利には62%~88%、有利には63%~87%、有利には64%~86%、有利には65%~85%、有利には66%~84%、有利には67%~83%、有利には68%~82%、有利には69%~81%、有利には70%~80%である。極めて有利な一実施形態において、多孔質生体材料は、70%~95%の全孔隙率を有する。
【0083】
本発明の特定の一実施形態において、生体材料は、60%~100%の細孔間相互連結度を有する。有利には、細孔間相互連結度は、65%~100%、有利には70%~100%、有利には75%~100%、有利には80%~100%、有利には85%~100%、有利には90%~100%、有利には91%~100%、有利には92%~100%、有利には93%~100%、有利には94%~100%、有利には95%~100%、有利には96%~100%、有利には97%~100%、有利には98%~100%、有利には99%~100%である。本発明の極めて有利な一実施形態において、細孔間相互連結度は65%超、有利には70%超、有利には75%超、有利には80%超、有利には85%超、有利には90%超、有利には91%超、有利には92%超、有利には93%超、有利には94%超、有利には95%超、有利には96%超、有利には97%超、有利には98%超、有利には99%超である。本発明の極めて有利な一実施形態において、生体材料は、100%の細孔間相互連結度を有する。
【0084】
極めて有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料は、50μm~2000μmの細孔サイズ、60%以上の全孔隙率および60%~100%の細孔間相互連結度を有する。
【0085】
有利には、本発明に係る生体材料は、50μm~1200μmの平均細孔サイズ、60%~95%の全孔隙率および60~100%の細孔間相互連結度を有する。
【0086】
有利には、本発明に係る生体材料は、500μm~700μmの平均細孔サイズ、70%~95%の全孔隙率および100%の細孔間相互連結度を有する。
【0087】
極めて有利な一実施形態において、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスおよびヒアルロン酸を含む多孔質生体材料は、500μm~2000μmの細孔サイズ、60%~95%の全孔隙率および60%~100%の細孔間相互連結度を有する。
【0088】
有利には、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスおよびヒアルロン酸を含む生体材料は、500μm~700μmの平均細孔サイズ、70%~95%の全孔隙率、および100%の細孔間相互連結度を有する。材料の孔隙率、細孔サイズおよびそれらの相互連結は、生体材料が血管新生し漸進的に吸収される能力に対して大きな影響をもたらす。
【0089】
したがって、その60%~95%の全孔隙率およびその500μm~2000μmの細孔サイズおよびその100%の細孔間相互連結度によって、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスとヒアルロン酸とを含む生体材料は、結合組織および血管の細胞接着および細胞遊走に極めて適応している。実際、相互連結された多孔質網は、細胞の付着および細胞の成長ひいては新形成された結合組織の成長を誘導することを可能にする。その上、ヒアルロン酸の存在は、血管形成を刺激し、こうして再血管新生および生体材料の結合を改善できるようにする。同時に、線維芽細胞は、生体材料の内部および周辺で接着し増殖する。生体材料の吸収および生体材料の内部および周辺に存在する線維芽細胞によるコラーゲンの同時産生は、数ヵ月後に新たに形成された結合組織による完全なその置換を導く。したがって、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーを含む少なくとも1つのエラストマーマトリックスおよびヒアルロン酸を含む生体材料は、再血管新生、軟組織の高速結合に有利に作用し、自己移植結合組織の確実な代用物を提供する。
【0090】
本発明に係る生体材料のサイズは、組織欠損のサイズおよび厚みに左右される。本発明の特定の一実施形態において、生体材料は、5mm~20cmのサイズおよび100μm~4cmの厚みを有する。
【0091】
有利には、生体材料のサイズは5mm~20cm、有利には10mm~20cm、有利には50mm~20cm、有利には100mm~20cm、有利には500mm~20cm、有利には1cm~20cm、有利には2cm~20cm、有利には3cm~20cm、有利には4cm~20cm、有利には5cm~20cm、有利には6cm~20cm、有利には7cm~20cm、有利には8cm~20cm、有利には9cm~20cm、有利には10cm~20cm、有利には11cm~20cm、有利には12cm~20cm、有利には13cm~20cm、有利には14cm~20cm、有利には15cm~20cmである。
【0092】
有利には、生体材料の厚みは、100μm~4cm、有利には200μm~4cm、有利には500μm~4cm、有利には1mm~4cm、有利には2mm~4cm、有利には3mm~4cm、有利には4mm~4cm、有利には5mm~4cm、有利には6mm~4cm、有利には7mm~4cm、有利には8mm~4cm、有利には9mm~4cm、有利には1cm~4cm、有利には1cm~3cmである。
【0093】
有利な特定の一実施形態において、生体材料の厚みは、本発明に係る生体材料が粘膜、詳細には歯肉の組織欠損の補強、再建および/または補填において使用される場合、1~3mmである。
【0094】
有利な特定の一実施形態において、生体材料の表面は、少なくとも25mm2である。有利には、生体材料は、少なくとも50mm2、有利には少なくとも100mm2、有利には少なくとも150mm2、有利には少なくとも200mm2、有利には少なくとも250mm2、有利には少なくとも300mm2、有利には少なくとも350mm2、有利には少なくとも400mm2、有利には少なくとも450mm2、有利には少なくとも500mm2、有利には少なくとも550mm2、有利には少なくとも600mm2、有利には少なくとも650mm2、有利には少なくとも700mm2、有利には少なくとも750mm2、有利には少なくとも800mm2、有利には少なくとも850mm2、有利には少なくとも900mm2、有利には少なくとも950mm2、有利には少なくとも1000mm2、有利には少なくとも15cm2、有利には少なくとも20cm2、有利には少なくとも25cm2、有利には少なくとも30cm2、有利には少なくとも35cm2、有利には少なくとも40cm2、有利には少なくとも45cm2、有利には少なくとも50cm2、有利には少なくとも55cm2、有利には少なくとも60cm2、有利には少なくとも65cm2、有利には少なくとも70cm2、有利には少なくとも75cm2、有利には少なくとも80cm2、有利には少なくとも85cm2、有利には少なくとも90cm2、有利には少なくとも95cm2、有利には少なくとも100cm2、有利には少なくとも150cm2、有利には少なくとも200cm2、有利には少なくとも250cm2、有利には少なくとも300cm2、有利には少なくとも350cm2、有利には少なくとも400cm2の表面を有する。有利な一実施形態において、生体材料は、25mm2~400cm2の体積を有する。
【0095】
本発明の特定の一実施形態において、生体材料は、少なくとも1mm3の体積を有する。有利には、生体材料は、少なくとも2mm3、有利には少なくとも3mm3、有利には少なくとも4mm3、有利には少なくとも5mm3、有利には少なくとも6mm3、有利には少なくとも7mm3、有利には少なくとも8mm3、有利には少なくとも9mm3、有利には少なくとも10mm3、有利には少なくとも20mm3、有利には少なくとも30mm3、有利には少なくとも40mm3、有利には少なくとも50cm3、有利には少なくとも60mm3、有利には少なくとも70mm3、有利には少なくとも80mm3、有利には少なくとも90mm3、有利には少なくとも100mm3、有利には少なくとも150mm3、有利には少なくとも200mm3、有利には少なくとも250mm3、有利には少なくとも300mm3、有利には少なくとも350mm3、有利には少なくとも400mm3、有利には少なくとも450mm3、有利には少なくとも500mm3、有利には少なくとも550mm3、有利には少なくとも600mm3、有利には少なくとも650mm3、有利には少なくとも700mm3、有利には少なくとも750mm3、有利には少なくとも800mm3、有利には少なくとも850mm3、有利には少なくとも900mm3、有利には少なくとも950mm3、有利には少なくとも1cm3、有利には少なくとも1.5cm3、有利には少なくとも2cm3、有利には少なくとも2.5cm3、有利には少なくとも3cm3、有利には少なくとも3.5cm3、有利には少なくとも4cm3、有利には少なくとも4.5cm3、有利には少なくとも5cm3、有利には少なくとも5.5cm3、有利には少なくとも6cm3、有利には少なくとも6.5cm3、有利には少なくとも7cm3、有利には少なくとも7.5cm3、有利には少なくとも8cm3、有利には少なくとも8.5cm3、有利には少なくとも9cm3、有利には少なくとも9.5cm3、有利には少なくとも10cm3の体積を有する。有利な一実施形態において、生体材料は、1mm3~10cm3の体積を有する。
【0096】
本発明の有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料は、スポンジ、フィルム、膜、顆粒、モノリスまたは創傷被覆材の形態を呈し得る。
【0097】
本発明の特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、単独で使用される。本発明の別の一実施形態において、生体材料は、さらに、活性剤と組合せて使用され得る。有利には、活性剤は、本発明に係る生体材料の細孔の内部に配置され、生体材料の細孔を部分的または全体的に覆う。有利には、活性剤は、以下の方法、すなわち活性剤による生体材料の被覆、活性剤中への生体材料の浸漬、生体材料上への活性剤の噴霧、生体材料上への活性剤の気化、あるいは前記生体材料の細孔を充填するおよび/または補填することを可能にする当業者にとって周知の他のあらゆる技術、のうちの1つによって添加可能である。有利には、活性剤は、移植部位上に適用するのに望ましい生理学的特性を有するあらゆる治療薬または医薬的活性成分(非限定的に核酸、タンパク質、脂質および糖質を含む)であり得る。治療薬には、非限定的に、抗生剤および抗ウイルス薬などの抗感染症剤;化学療法剤(例えば抗ガン剤);拒絶反応抑制剤;鎮痛剤および鎮痛剤組合せ;抗炎症剤;ステロイドなどのホルモン;成長因子(非限定的にサイトカイン、ケモカインおよびインタロイキンを含む)、凝固因子(第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第V因子)、アルブミン、フィブリノーゲン、フォン・ヴィレブランド因子、トロンビン阻害剤、抗血栓薬、血栓溶解剤、線維素溶解薬、血管攣縮阻害剤、カルシウムチャンネル阻害剤、血管拡張剤、抗高血圧薬、抗菌薬、抗生剤、表面糖タンパク質受容体阻害剤、抗血小板薬、抗有糸分裂薬、微小管阻害剤、抗分泌薬、アクチン阻害剤、リモデリング阻害剤、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗剤、抗増殖剤、抗ガン化学療法剤、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗薬、成長因子、ドーパミン作動薬、放射線治療薬、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE)、フリーラジカル捕捉剤、キレート剤、酸化防止剤、抗ポリメラーゼ薬、抗ウイルス薬、光線力学的療法薬および遺伝子療法薬、および天然由来のまたは遺伝子組換えされた他のタンパク質、多糖、糖タンパク質、およびリポタンパク質、あるいはこれらの組合せが含まれるが、このリストは限定的なものではない。本発明の極めて有利な一実施形態において、活性剤は、治療薬の組合せ、そして特に抗生剤および成長因子の組合せである。
【0098】
本発明の別の態様は、組織欠損の補強、再建および/または補填におけるその使用のための、本発明に係る生体材料に関する。本発明の意味合いにおいて、「組織欠損の補強」とは、生体材料の生体適合性により、そして特にヒアルロン酸の存在により、コラーゲンの合成および/またはコラーゲンの被着を誘発することによる、組織密度の増加を意味する。
【0099】
本発明の意味合いにおいて、「組織欠損の再建」とは、生体材料の生体適合性により、そして特にヒアルロン酸の存在により、コラーゲンの合成および/またはコラーゲンの被着を誘発することによる、組織欠損の修復を意味する。
【0100】
本発明の意味合いにおいて、「組織欠損の補填」とは、生体材料の生体適合性により、そして特にヒアルロン酸の存在により、コラーゲンの合成および/またはコラーゲンの被着を誘発することによる、組織欠損の充填を意味する。
【0101】
本発明の特定の一実施形態において、組織の補強、再建および/または補填は、補強、再建および/または補填を行なうべき組織欠損の体積の5体積%以上である。有利には、組織の補強、再建および/または補填は、再建および/または補填を行なうべき組織の体積の6体積%以上、有利には7%以上、有利には8%以上、有利には9%以上、有利には10%以上、有利には11%以上、有利には12%以上、有利には13%以上、有利には14%以上、有利には15%以上、有利には16%以上、有利には17%以上、有利には18%以上、有利には19%以上、有利には20%以上、有利には21%以上、有利には22%以上、有利には23%以上、有利には24%以上、有利には25%以上、有利には26%以上、有利には27%以上、有利には28%以上、有利には29%以上、有利には30%以上、有利には31%以上、有利には32%以上、有利には33%以上、有利には34%以上、有利には35%以上、有利には36%以上、有利には37%以上、有利には38%以上、有利には39%以上、有利には40%以上、有利には41%以上、有利には42%以上、有利には43%以上、有利には44%以上、有利には45%以上、有利には46%以上、有利には47%以上、有利には48%以上、有利には49%である。有利には、組織の補強、再建および/または補填は、補強、再建および/または補填を行なうべき組織欠損の体積の50体積%以下である。
【0102】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る多孔質生体材料は、ヒトまたは動物における組織の補強、再建および/または補填のために使用可能である。一例として、動物は、ウマ、ポニー、イヌ、ネコ、ラット、マウス、雄ブタ、雌ブタ、雌ウシ、去勢ウシ、雄ウシ、子ウシ、ヤギ、雌ヒツジ、雄ヒツジ、雌子ヒツジ、雄子ヒツジ、ロバ、ラクダ、ヒトコブラクダであり得るが、このリストは限定的なものではない。
【0103】
有利には、本発明に係る多孔質生体材料は、軟組織および/または上皮組織の欠損の補強、再建および/または補填のために使用可能である。
【0104】
本発明の意味合いにおいて、「軟組織」とは、器官および他の組織を取り囲み、支持しかつ連結する、骨質でなくかつ上皮で構成されていない組織を意味する。有利には、軟組織は、身体の器官および他の部分を取り囲み、支持しかつ連結し;身体に形状および構造を与え;器官を保護し;身体の一部分から他の部分へと血液などの液体を循環させ;エネルギーを蓄積する。
【0105】
本発明の特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、ヒトまたは動物由来のあらゆるタイプの軟組織の補強、再建および/または補填を行なうために使用可能である。有利には、軟組織は、線維組織、筋肉、詳細には平滑筋、骨格筋および心筋、滑膜組織、血管、リンパ管、内臓および神経を含む群の中から選択され得るが、このリストは限定的なものではない。
【0106】
特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、ヒトまたは動物由来のあらゆるタイプの上皮組織の補強、再建および/または補填を行なうために使用可能である。有利には、本発明に係る生体材料は、皮膚および/または粘膜の欠損の補強、再建および/または補填のために使用可能である。有利には、粘膜は、口腔粘膜であり得る。
【0107】
特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、あらゆるタイプの上皮組織の補強、再建および/または補填を行なうため、有利には歯肉の補強、再建および/または補填において、特に、歯根の被覆を得るため、歯肉縮退の治療、厚いバイオタイプを目的とする組織の肥厚化、角化した歯肉帯の増加のために歯根の被覆を得るため、歯の支持および定着を復元するため、または歯周炎に続く組織の再建のために使用可能である。
【0108】
特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、例えば脈管創傷、消化器損傷、または内臓脱出を補強するためといったように、特に婦人科、泌尿器科または内臓(または頭頂)の手術の枠内で、軟組織および/または上皮組織の欠損を補強するために使用可能である。別の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、骨盤臓器脱の治療向け、より詳細には、女性の骨盤臓器脱、すなわち前段(泌尿器、膀胱瘤、腹圧性尿失禁)、中段(生殖器、膣ヘルニア)および/または後段(消化器、直腸ヘルニア)の治療における補強用インプラントの設計のために使用可能である。
【0109】
本発明に係る別の態様は、火傷の治療におけるその使用のための本発明に係る生体材料に関する。有利には、本発明に係る生体材料は、火傷の治療のために極めて有用である。有利には、本発明に係る生体材料は、熱傷、冷凍火傷、電気火傷、化学火傷および放射線火傷の治療のために極めて有用である。
【0110】
本発明の態様は、火傷、有利には熱傷、冷凍火傷、電気火傷、化学火傷、放射線火傷および光化学火傷の治療におけるその使用のための本発明に係る生体材料に関する。
【0111】
本発明の意味合いにおいて、「熱傷」とは、火炎、高温蒸気もしくは沸とうした液体との外部接触によってかまたは接触(この場合重症度は対象物の温度および接触時間により左右される)によって誘発される外部熱傷を意味し、内部熱傷は、気道または消化管に関するものであり、高温製品(食料、気体、なかでも燃焼によって生成される気体)もしくは苛性物質(化学製品)の吸収または吸入の結果としてもたらされる。
【0112】
本発明の意味合いにおいて、「冷凍火傷」とは、凍傷のことである。凍傷は、何か冷たいものおよび摩擦によってひき起こされ得る。
【0113】
本発明の意味合いにおいて、「電気火傷」とは、電気アーク(火事による熱傷)に起因するかまたは導体との直接的接触による(つねに深い)、皮膚、粘膜(場合によっては内部粘膜)、組織の軟質部分に関係し得る部分的または全体的破壊を意味する。
【0114】
本発明の意味合いにおいて、「化学火傷」とは、強酸(塩酸、硫酸、硝酸)または強塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)の苛性作用に起因する皮膚、粘膜(場合によっては内部粘膜)、組織の軟質部分に関係し得る部分的または全体的破壊を意味する。
【0115】
本発明の意味合いにおいて、「放射線火傷」とは、電磁放射線、粒子体によってひき起こされる火傷または放射線皮膚炎を意味する。
【0116】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料は、ヒトまたは動物における火傷の治療のために使用可能である。一例として、動物は、ウマ、ポニー、イヌ、ネコ、ラット、マウス、雄ブタ、雌ブタ、雌ウシ、雄ウシ、去勢ウシ、子ウシ、ヤギ、雌ヒツジ、雄ヒツジ、雌子ヒツジ、雄子ヒツジ、ロバ、ラクダ、ヒトコブラクダ、であり得るが、このリストは限定的なものではない。
【0117】
本発明の別の態様は、本発明に係る生体材料の調製方法に関する。本発明の特定の一実施形態において、本発明に係る生体材料は、ポリ-HIPE法(高内相エマルジョンの形成および重合/架橋)によって得られる。高内相エマルジョンつまりHIPEは、非混和性の液体/液体分散系から成り、その中で、分散相とも呼ばれる内相の体積は、エマルジョンの合計体積の約74%~75%超の体積、すなわち単分散球のコンパクトなパッケージングのために幾何学的に可能であるものよりも大きい体積を占めている。
【0118】
特定の一実施形態において、生体材料の調製方法には、以下のステップが含まれる;
a) ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製するステップと、
b) エマルジョンを形成するために、水性液相中で非硫酸化多糖を可溶化させ、その後ステップa)の有機相中に可溶化された非硫酸化多糖を添加するステップと、
c) 前記生体材料を得るために、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋するステップと、
d) ステップc)で得られた前記生体材料を洗浄するステップと、
e) ステップd)で得られた前記生体材料を乾燥させるステップ。
【0119】
本発明の一実施形態において、ステップa)は、ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製することからなる。有利には、有機相はさらに、オリゴエステル、有機溶媒、架橋剤、触媒および界面活性剤を含む。有利には、有機相は有機溶媒、ポリカプロラクトントリオールオリゴマー、表面活性剤Span80、架橋剤ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、および触媒ジラウリン酸ジブチル錫(DBTDL)を含む。有利には、有機溶媒はトルエンである。
【0120】
特定の一実施形態において、ステップa)は、ポリカプロラクトントリオールオリゴマーと表面活性剤Span80を有機溶媒中で可溶化することからなる第1のステップa1)、そして次に、有機層を形成するためにステップa1)の溶液中に架橋剤HMDIと触媒DBTDLを添加することからなる第2のステップa2)を含む。本発明の有利な一実施形態においては、2.4mlの有機溶媒が使用され、1.3gのポリカプロラクトントリオールオリゴマー、1.3gの表面活性剤Span80、1.04mlの架橋剤HMDIおよび12滴の触媒DBTDLが使用される。有利には、当業者であれば、本発明に係る多孔質生体材料に所望される細孔サイズに応じて、トルエン、ポリカプロラクトントリオールオリゴマー、表面活性剤Span80、架橋剤HMDIおよび触媒DBTDLの量を適応させることができるものである。有利には、有機溶媒はトルエンである。
【0121】
特定の一実施形態において、該方法のステップb)は、エマルジョンを形成するために、水性液相中で非硫酸化多糖を可溶化させ、その後、ステップa)の有機相中に可溶化された非硫酸化多糖を添加することからなる。本発明の特定の一実施形態において、非硫酸化多糖は、水性液相中で可溶化されていなければならない。本発明の特定の一実施形態において、水性液相は、滅菌精製水である。有利には、当業者であれば、生体材料のために所望される細孔サイズに応じて水の量を適応させることができるものである。本発明の有利な一実施形態において、使用される精製水量は、50mLである。
【0122】
本発明の特定の一実施形態において、水性液相は、エマルジョンが得られるまで、撹拌下で有機相中に漸進的に注ぎ込まれる。有利には、非硫酸化多糖は少なくとも0.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも1.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも1.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも2.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも2.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも3.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも3.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも4.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも4.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも5.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも5.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも6.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも6.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも7.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも7.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも8.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも8.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも9.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも9.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも10.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも10.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも11.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも11.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも12.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも12.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも13.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも13.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも14.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも14.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも15.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも15.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも16.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも16.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも17.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも17.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも18.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも18.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも19.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも19.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも20.0mg/mlの濃度で導入される。有利には、非硫酸化多糖は、0.5mg/mL~20mg/mLの濃度で導入される。
【0123】
特定の一実施形態において、多糖はヒアルロン酸、有利には高分子量のヒアルロン酸である。有利には、ヒアルロン酸は、少なくとも0.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも1.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも1.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも2.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも2.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも3.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも3.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも4.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも4.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも5.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも5.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも6.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも6.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも7.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも7.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも8.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも8.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも9.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも9.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも10.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも10.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも11.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも11.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも12.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも12.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも13.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも13.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも14.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも14.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも15.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも15.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも16.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも16.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも17.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも17.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも18.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも18.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも19.0mg/mLの濃度、有利には少なくとも19.5mg/mLの濃度、有利には少なくとも20.0mg/mlの濃度で導入される。
【0124】
本発明の特定の一実施形態において、非硫酸化多糖の量は、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において0.05重量%~2.0重量%(w/w)に相当する。有利には、非硫酸化多糖は、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において少なくとも0.05重量%、有利には、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において、少なくとも0.06重量%、有利には少なくとも0.07重量%、有利には少なくとも0.08重量%、有利には少なくとも0.09重量%、有利には少なくとも0.10重量%、有利には少なくとも0.20重量%、有利には少なくとも0.30重量%、有利には少なくとも0.40重量%、有利には少なくとも0.50重量%、有利には少なくとも0.60重量%、有利には少なくとも0.70重量%、有利には少なくとも0.80重量%、有利には少なくとも0.90重量%、有利には少なくとも1.0重量%、有利には少なくとも1.10重量%、有利には少なくとも1.20重量%、有利には少なくとも1.30重量%、有利には少なくとも1.40重量%、有利には少なくとも1.50重量%、有利には少なくとも1.60重量%、有利には少なくとも1.70重量%、有利には少なくとも1.80重量%、有利には少なくとも1.90重量%、有利には少なくとも2.0重量%(w/w)を占める。有利には、非硫酸化多糖の量は、エマルジョン中に存在する水相の質量との関係において、0.05重量%~2.0重量%(w/w)に相当する。有利には、非硫酸化多糖は、エマルジョン中に存在する水相の質量との関係において、0.06重量%~2.0重量%、有利には0.07重量%~2.0重量%、有利には0.08重量%~2.0重量%、有利には0.09重量%~2.0重量%、有利には0.10重量%~2.0重量%、有利には0.20重量%~2.0重量%、有利には0.30重量%~2.0重量%、有利には0.40重量%~2.0重量%、有利には0.50重量%~2.0重量%、有利には0.60重量%~2.0重量%、有利には0.70重量%~2.0重量%、有利には0.80重量%~2.0重量%、有利には0.90重量%~2.0重量%、有利には1.0重量%~2.0重量%、有利には1.10重量%~2.0重量%、有利には1.20重量%~2.0重量%、有利には1.30重量%~2.0重量%、有利には1.40重量%~2.0重量%、有利には1.50重量%~2.0重量%、有利には1.60重量%~2.0重量%、有利には1.70重量%~2.0重量%、有利には1.80重量%~2.0重量%、有利には1.90重量%~2.0重量%(w/w)を占める。本発明の極めて有利な一実施形態において非硫酸化多糖は、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において、0.10重量%(w/w)を占める。
【0125】
本発明の特定の一実施形態において、ヒアルロン酸の量は、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において0.05重量%~2.0重量%(w/w)に相当する。有利には、ヒアルロン酸は、エマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において少なくとも0.05重量%、有利には、エマルジョン中に存在する水相の質量との関係において少なくとも0.06重量%、有利には少なくとも0.07重量%、有利には少なくとも0.08重量%、有利には少なくとも0.09重量%、有利には少なくとも0.10重量%、有利には少なくとも0.20重量%、有利には少なくとも0.30重量%、有利には少なくとも0.40重量%、有利には少なくとも0.50重量%、有利には少なくとも0.60重量%、有利には少なくとも0.70重量%、有利には少なくとも0.80重量%、有利には少なくとも0.90重量%、有利には少なくとも1.0重量%、有利には少なくとも1.10重量%、有利には少なくとも1.20重量%、有利には少なくとも1.30重量%、有利には少なくとも1.40重量%、有利には少なくとも1.50重量%、有利には少なくとも1.60重量%、有利には少なくとも1.70重量%、有利には少なくとも1.80重量%、有利には少なくとも1.90重量%、有利には少なくとも2.0重量%(w/w)を占める。有利には、ヒアルロン酸の量は、エマルジョン中に存在する水相の質量との関係において0.05重量%~2.0重量%(w/w)に相当する。有利には、ヒアルロン酸は、エマルジョン中に存在する水相の質量との関係において0.06重量%~2.0重量%、有利には0.07重量%~2.0重量%、有利には0.08重量%~2.0重量%、有利には0.09重量%~2.0重量%、有利には0.10重量%~2.0重量%、有利には0.20重量%~2.0重量%、有利には0.30重量%~2.0重量%、有利には0.40重量%~2.0重量%、有利には0.50重量%~2.0重量%、有利には0.60重量%~2.0重量%、有利には0.70重量%~2.0重量%、有利には0.80重量%~2.0重量%、有利には0.90重量%~2.0重量%、有利には1.0重量%~2.0重量%、有利には1.10重量%~2.0重量%、有利には1.20重量%~2.0重量%、有利には1.30重量%~2.0重量%、有利には1.40重量%~2.0重量%、有利には1.50重量%~2.0重量%、有利には1.60重量%~2.0重量%、有利には1.70重量%~2.0重量%、有利には1.80重量%~2.0重量%、有利には1.90重量%~2.0重量%(w/w)を占める。本発明の極めて有利な一実施形態において、ヒアルロン酸はエマルジョン中に存在する水性液相の質量との関係において0.10重量%(w/w)を占める。
【0126】
特定の一実施形態において、本発明に係る前記生体材料を得るために、該方法のステップc)は、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋することからなる。有利には、架橋は、生体材料に対して所望される形状を付与するために、金型内で実施される。有利には、ステップb)で得られたエマルジョンは、10~30時間の間30℃~80℃の温度に置かれる。有利には、ステップb)で得られたエマルジョンは、35℃~65℃の温度、有利には40℃~60℃の温度、有利には45℃~65℃の温度、有利には50℃~60℃の温度、有利には55℃の温度に置かれる。有利には、ステップb)で得られたエマルジョンは、10~30時間、有利には11~29時間、有利には12~29時間、有利には13~28時間、有利には14~27時間、有利には15~27時間、有利には16~27時間、有利には17~27時間、有利には18~26時間、有利には19~25時間、有利には20~24時間、有利には22時間の間、30℃~70℃の温度に置かれる。有利には、当業者であれば、生体材料に所望される細孔サイズに応じて温度を適応させることができるものである。
【0127】
本発明の特定の一実施形態において、ステップc)で得られた本発明に係る生体材料は、ステップd)に先立って焼きなましされる。有利には、ステップc)で得られた本発明に係る生体材料は、少なくとも50℃の温度で少なくとも1時間焼きなましされる。有利には、ステップc)で得られた本発明に係る多孔質生体材料は、100℃の温度で2時間焼きなましされる。
【0128】
特定の一実施形態において、ステップd)の洗浄ステップは、架橋の際に反応しなかったポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な試薬、ならびになおも存在する界面活性剤および触媒を除去することを可能にする。有利には、ステップd)の洗浄は、ジクロロメタン、ジクロロメタン/ヘキサン、ヘキサン、水、これらの製品の混合物のうちの1つを使用するかまたはこれらの製品の連続的適用を用いて、実施される。有利には、ステップd)の洗浄は、少なくとも24時間のジクロロメタンと乾燥済み本発明に係る多孔質生体材料の接触ステップと、それに続く少なくとも24時間ジクロロメタン/ヘキサン(50体積%/50体積%)での洗浄ステップ、それに続く少なくとも24時間ヘキサンでの洗浄ステップ、そして少なくとも24時間精製水での最後の洗浄ステップによって実施される。
【0129】
特定の一実施形態において、本発明に係る方法は、さらに、ステップc)とステップd)の間の乾燥ステップを含み得る。有利には、この乾燥ステップは、外気乾燥によってかまたはオーブン内で実施され得る。当業者であれば、乾燥すべき材料に応じて、オーブンの温度を適応させることができるものである。有利には、乾燥は、少なくとも7日間、外気乾燥によって実施される。
【0130】
特定の一実施形態において、ステップe)の乾燥は、外気乾燥によってかまたはオーブン内で実施され得る。当業者であれば、乾燥すべき材料に応じて、オーブンの温度を適応させることができるものである。有利には、乾燥は、少なくとも15日間、外気乾燥によって実施される。
【0131】
特定の一実施形態において、本発明に係る方法はさらに、前記生体材料の乾燥ステップe)の後に滅菌ステップf)を含むことができる。特定の一実施形態において、滅菌ステップf)は、乾燥した生体材料上で直接、または水性媒体中での生体材料の真空洗浄の後に実施され得る。有利には、滅菌は、水性媒体中での真空洗浄の後に実施される。
【0132】
一実施形態において、滅菌ステップf)は、以下のように実施され得る:
f1) 真空下で1時間、本発明に係る生体材料を滅菌水中に接触させるステップ、
f2) 滅菌水を置換し、真空下において4時間、本発明に係る生体材料を置換済み滅菌水中に接触させるステップ、
f3) ステップe2)に由来する本発明に係る生体材料を真空下で1時間70%のエタノール中に接触させるステップ、
f4) 70%エタノールを滅菌水で置換し、周囲圧力下で一晩、ステップe3)に由来する本発明に係る生体材料を滅菌水中に接触させるステップ、
f5) 水中でステップf4)に由来する本発明に係る生体材料をオートクレーブにより滅菌するステップ。
【0133】
別の一実施形態において、滅菌ステップf)は、ガンマ放射線によって実施され得る。別の一実施形態において、滅菌ステップf)は、ベータ放射線によって実施され得る。有利には、ベータおよび/またはガンマ放射線の線量は、15~45kGyであり得る。有利には、ベータおよび/またはガンマ放射線の線量は、25kGyである。有利には、ベータおよび/またはガンマ放射線の線量は、15kGyである。
【0134】
別の一実施形態において、滅菌ステップf)は、酸化エチレンと生体材料を接触させることによって実施され得る。
【0135】
別の一実施形態において、滅菌ステップf)は、気体由来のプラズマ相と生体材料との接触によって実施され得る。
【0136】
別の一実施形態において、滅菌ステップf)は、生体材料に電子ビーム(E-beam、Eビーム)を照射することによって実施され得る。電子ビームによる照射処理には、以下の利点がある:処理時間がより短い、供給ラインの効率の改善、エラストマーマトリックスの脆化リスクがより少ない、生体材料内の酸化損傷がより少ない、エラストマーマトリックスに変色が無いため、この生体材料が清潔で安全なものとなる。その上、電子ビームによる照射処理は、エコロジー処理である。
【0137】
特定の一実施形態において、本発明に係る方法は、さらに、滅菌ステップf)の後に、前記生体材料の保存ステップg)を含み得る。有利には、前記生体材料の保存ステップg)は、使用まで生体材料を70%のエタノール中に接触させることによって実施される。
【0138】
本発明の特定の一実施形態において、生体材料の調製方法は、以下のステップを含む:
a) ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製するステップ、
b) エマルジョンを形成するために、水性液相中で非硫酸化多糖を可溶化し、その後ステップa)の有機相中に可溶化された非硫酸化多糖を添加するステップ、
c) 前記多孔質生体材料を得るために、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋するステップ、
d) ステップc)で得られた前記多孔質生体材料を洗浄するステップ、
e) ステップd)で得られた前記生体材料を乾燥させるステップ、
f) ステップd)に由来する生体材料を滅菌するステップ、および
g) 任意には、生体材料を保存するステップ。
【0139】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料の調製方法は、以下のステップを含む:
a) ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製するステップであって、ポリカプロラクトントリオールオリゴマーおよび表面活性剤Span80を有機溶媒中で可溶化させることからなる第1のステップa1)、その後有機層を形成するために、ステップa1)の溶液中に架橋剤HMDIおよび触媒DBTDLを添加することからなる第2のステップa2)を含むステップ、
b) エマルジョンを形成するために、滅菌精製水ベースの水性液相中で非硫酸化多糖を可溶化させ、その後ステップa)の液体に対して有機相中に可溶化された非硫酸化多糖を添加するステップ、
c) 前記多孔質生体材料を得るために、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋するステップ、および
d) ステップc)で得られた前記生体材料を洗浄するステップ、
e) ステップd)で得られた前記生体材料を少なくとも15日間乾燥させるステップ、
f) ステップe)に由来する多孔質生体材料を滅菌するステップ、および
g) 任意には、生体材料を保存するステップ。
【0140】
本発明の極めて有利な一実施形態において、本発明に係る生体材料の調製方法は、以下のステップを含む:
a) ポリ(エステル-尿素-ウレタン)の合成に必要な化合物を含む有機相を調製するステップであって、ポリカプロラクトントリオールオリゴマーおよび表面活性剤Span80をトルエン中で可溶化させることからなる第1のステップa1)、その後有機層を形成するために、ステップa1)の溶液中に架橋剤HMDIおよび触媒DBTDLを添加することからなる第2のステップa2)を含むステップ、
b) エマルジョンを形成するために、滅菌精製水ベースの水性液相中でヒアルロン酸、有利には、高分子量のヒアルロン酸を可溶化させ、その後ステップa)の液体に対して有機相中で可溶化された非硫酸化多糖を添加するステップ、
c) 前記多孔質生体材料を得るために、ステップb)で得られたエマルジョンを重合/架橋するステップ、
d) ステップc)で得られた前記生体材料を洗浄するステップ、
e) ステップd)で得られた前記生体材料を少なくとも15日間乾燥させるステップ、
f) ステップe)に由来する多孔質生体材料を滅菌するステップ、および
g) 任意には、生体材料を保存するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【
図1】本発明に係る多孔質生体材料を表わす。画像は、3D顕微鏡法(VHX Keyence)によって得られたものである。
【
図2】ヒアルロン酸(a)、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマー-マトリックス単独(b)、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(c)、そしてスペクトルcおよびbのサブストラクション(d)のフーリエ変換赤外線分光法(FTIR)による分析を表わしている。
【
図3】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(a、c)およびヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(bとd)の、37℃そして加速した55℃および75℃でのインビトロ分解の際の質量損失および質量吸収率を表わす。
【
図4】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の内部での、10日目から40日目までの細胞(歯肉線維芽細胞)の遊走を表わす。
【
図5】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の内部における20日間の遊走後の細胞(歯肉線維芽細胞)によるコロニー形成を表わす(デジタル3D顕微鏡法-ヘマトキシリン染色)。
【
図6】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の周辺部およびウェル底部上の細胞(歯肉線維芽細胞)の、10日間の培養後の外見を表わす。(光学顕微鏡法-倍率40倍)。
【
図7】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の、ラットにおける皮下移植36日後の細胞化を表わす。(材料は白枠で印付けされている;十新血管新生;※多核巨細胞)(デジタル3D顕微鏡法-ヘマトキシリン/エオシン染色)。
【
図8】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の内部での、ラットにおける皮下移植36日後のコラーゲン構造を表わす(材料は白枠で印付けされている)(デジタル3D顕微鏡法-ピクロシリウスレッド染色-倍率4倍および40倍)。
【
図9】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の内部での、ラットにおける皮下移植36日後の、存在するTリンパ球のマーキングを表わしている。(材料は黒枠で印付けされている)(デジタル3D顕微鏡法-マーキングCD3-倍率4倍および40倍)。
【
図10】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)の内部での、ラットにおける皮下移植36日後の、存在するマクロファージのマーキングを表わす。(材料は黒枠で印付けされている)(デジタル3D顕微鏡法-マーキングCD163-倍率4倍および40倍)。
【
図11】ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)についてのアルシアンブルーによるヒアルロン酸の染色後に得られた光学密度平均値を表わす。
【
図12】15kGyのベータ放射前後のポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)を表わす。画像は、3D顕微鏡法(VHX Keyence)によって得られたものである。
【発明を実施するための形態】
【0142】
実施例1:本発明に係る多孔質生体材料の調合および合成
第1段階において、高分子量のヒアルロン酸を37℃で24時間、滅菌精製水中で可溶化させた。その後、溶液を0.2μmのフィルタ上で濾過した。第2段階で、高い内部相のエマルジョンを得るために、この水溶液を、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックスの合成に必要な化合物を含む有機相中に注いだ。その後、このエマルジョンの重合/架橋により、本発明に係る多孔質生体材料を得る。複数のヒアルロン酸濃度を試験した。複数の水相/有機相体積比を試験した。異なる合成温度もまた検討した。これらの異なるパラメータは、材料の細孔サイズに影響を及ぼす。歯肉代用物といった利用分野において選定された足場は、平均サイズ600+/-170μmで50μmから1400μmまでの直径を有する細孔を有するものである。これらの材料は、以下の実施例において特徴付けされている。
【0143】
本発明に係る多孔質生体材料を得るために選定された調合および合成は、以下の通りである:
- 水相中のヒアルロン酸濃度:1mg/mL
- 水相/有機相体積比:92.5/7.5%
- 合成温度:37℃で18時間;55℃で4時間;100℃で2時間。
【0144】
実施例2:本発明に係る多孔質生体材料の物理化学的および機械的特性
得られた本発明に係る多孔質生体材料の物理化学的特性を、以下の方法によって試験した:
- 合成した生体材料中に存在する化学官能基の分析のための、フーリエ変換赤外線分光法(FTIR);
- 生体材料の形態学的観察のための、3D顕微鏡法(VHX Keyence);
- 多孔質構造の相互連結度を決定するための体積吸収率(rv)測定;
- 多孔質生体材料のヤング係数(E1
*)を評価することを可能にする、膨張による架橋結節点間の平均分子質量(Mc)の測定。
【0145】
1. 相互連結度/孔隙率、
3D顕微鏡法によって得られた画像(
図1)は、本発明に係る生体材料が、平均サイズ600+/-170μmで直径50μmから1400μmまでのマルチスケール細孔サイズを有する相互連結度の高い(rv=100%)多孔質形態(孔隙率=90+/-2%)を有していることを示している。
【0146】
2. 化学組成および親水性、
FTIR分析(
図2)により、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス内のヒアルロン酸の存在が確認される。ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独のスペクトルは、3333cm
-1、1537cm
-1および1248cm
-1におけるウレタンの-NH基、1730cm
-1におけるウレタンのおよび1620cm
-1における尿素の-C=O基、1575cm
-1における尿素の-CNH基、および1164cm
-1における-COOエステル基のような、これらの材料を表わすスペクトル帯を有している。ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独および本発明に係る多孔質生体材料に対応するスペクトルの間のサブストラクションは、この本発明に係る多孔質生体材料の中のヒアルロン酸の存在を、特に多糖の環の-CCH、-OCHおよび-COH基に典型的な1612cm
-1における帯ならびに1554cm
-1および1381cm
-1における帯の存在を介して明らかにしている。
【0147】
ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独についてのθ=112+/-16°対ヒアルロン酸を含む多孔質生体材料についてのθ=69+/-12°という水接触角度の測定値が証明しているように、ヒアルロン酸の取込みは材料の親水性を増大させる。したがって、本発明に係る多孔質生体材料は、線維芽細胞の接着性により適した表面親水性を有しており、ここでこの線維芽細胞は60°~80°の水接触角度を有する表面上でより大きな接着性を有している。
【0148】
さらに、精製水中に材料を15日間浸漬させて得られた吸水率は、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独についての約400%からヒアルロン酸を含む多孔質生体材料についての約700%へと移行する。このことは、本発明に係る多孔質生体材料が、液体の浸透ひいては細胞浸潤のためにより適したものであることを示している。
【0149】
3. 機械的特性
架橋結節間の平均モル質量(Mc)を、トルエン中の膨張測定によって決定した。ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独は、4860+/-240g/molのMc値を有し、これによって、多孔質材料のヤング係数E1
*を評価することが可能になる。220+/-25kPaの値は、材料のエラストマー性を証明している。ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独と等価の孔隙率の細孔サイズを有するもの)は、5380+/-1460g/molのMc値を有し、これにより123+/-11kPaのE1
*の値を推定することが可能となる。したがって、ヒアルロン酸は、ポリマーマトリックスのエラストマー性を保存しながら、本発明に係る多孔質生体材料の係数のわずかな減少に寄与し、こうして、本発明に係る生体材料は、材料の内部での細胞遊走の際に線維芽細胞によって及ぼされる収縮力に耐えることができる。
【0150】
4. 分解反応速度
組織工学のための多孔質生体材料の製造の際の重要な基準は、この多孔質生体材料が経時的に新形成組織によって置換されなければならないことから、その吸収性にある。インビトロ分解研究を、ISO10993-13規格にしたがって実施した。分解反応速度を、特に、37℃、55℃および75℃における水吸着率および質量損失の測定によって評価した(
図3)。ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独とヒアルロン酸を含む本発明に係る生体材料の間では、6ヵ月目までは37℃および55℃でいかなる差異も確認されなかった。75℃での加速分解試験は、ヒアルロン酸を含む本発明に係る生体材料がポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独よりも極めてわずかではあるが急速に分解することを示した。これは、材料の親水性の増大に起因するものである。本発明に係る生体材料は、37℃で6ヵ月超安定している。生体材料の寿命は、より極端な条件のためインビボで著しく短縮される。それでも、本発明に係る生体材料は、組織工学の利用分野において使用されるために十分な安定性を有するものである。
【0151】
実施例3:本発明に係る多孔質生体材料と細胞(歯肉線維芽細胞)間の相互作用-インビトロ研究
ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料と、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独の「誘引」能力を試験するために、歯肉線維芽細胞を用いたコロニー形成試験を実施した。材料を80%のコンフルエンスで歯肉線維芽細胞マット上に被着させる。細胞遊走を、材料との接触から10日後、30日後および40日後に決定した。材料の上および内部に存在する細胞の集計を、酵素処理による細胞の剥離後に実施する。得られた結果は、細胞が材料内を遊走する能力を有することを示している(
図4)。歯肉線維芽細胞は、材料の細孔の表面で、遊走し、増殖し、展延する能力を有する(
図5)。
【0152】
興味深いことに、ウェルの底部に存在する細胞は、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料の周辺にある場合、材料に直交して配向させられている(
図6)。皮膚の線維芽細胞が、架橋したヒアルロン酸ベースの皮膚補填用製品の近辺に展延し整列する傾向を有し、包括的に線維芽細胞機能の改善をもたらすことが示された(Quanら、Journal of Investigative Dermatology、2013、vol 133、658~667頁)。この結果は、むしろ補填用製品による皮膚の細胞外マトリックスの構造的補強のせいであったものの、我々の結果から見て、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料がそれを取り巻く細胞に対して影響を及ぼすということは明らかである。
【0153】
実施例4:ラットにおける皮下ポケットモデル内の軟組織再生のための本発明に係る多孔質生体材料の潜在力のインビボ研究
ラット(Sprague-Dawley、生後8週目の雄ラット)の背側正中線に沿って、皮下で足場を移植することによって、インビボ試験を実施した。この研究により、移植の際の本発明に係る多孔質生体材料の生体適合性、バイオインテグレーションおよび有効性を評価することが可能になる。
【0154】
ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独に比べたヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料の有効性を評価するために、皮下での前記マトリックスの移植後36日目まで、複数の動物ロットを追跡した。動物の屠殺後に採取した材料の組織学的研究により、本発明に係る材料の有効性を評価した。
【0155】
7日および36日という該研究の各時間について、5匹のラットのロット(ラット20匹)は、以下のグループで構成されていた:
- ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独の動物グループ
- 非硫酸化多糖を含むポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックスの動物グループ。
【0156】
皮下ポケットモデルは、ラットの背中に正中切開を行なうこと、そして評価すべき材料が中に挿入されることになる皮下ポケットを創出することからなる。
【0157】
1. 外科的処置
ケタミン/キシラジン1.2mL/kgの筋肉注射により、動物を麻酔する(50/15mg/kg)。動物の背部をねじり、その後Betadine(登録商標)で消毒する。ラットの背に正中切開を施し、皮膚弁を両側でもち上げる。ポリマーマトリックス(直径1cm×厚み2~3mm)を、正中線の両側に挿入し、安定化させる。その後、5.0の吸収可能な縫合糸により皮膚平面を縫合する。
【0158】
動物を毎日監視し、その全身状態ならびに挙動を観察する。実験の全期間にわたり、動物は可動性喪失を全く示さず攻撃性の兆候も示さなかった。体重曲線は規則的に推移した。創傷のところで、炎症または壊死の兆候は全く存在しなかった。
【0159】
2. インプラントの調製
ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックスをその保存媒質(70%エタノール)から取り出し、撹拌下で5分間、生理学的血清で濯ぐ。その後、これらのエラストマーマトリックスを皮下ポケット内に設置する。
【0160】
3. 組織学
7~36日後に動物を屠殺する。エラストマーマトリックスを取り出し、10%のパラホルムアルデヒドで固定し、増大するアルコール浴中で脱水させ、次にパラフィンに包埋する。その後、手動式ミクロトームで5μMのカットを行なう。
【0161】
脱パラフィンおよび再水和の後、切片をヘマトキシリンエオシン(ヘマトキシリン:カリウムミョウバンの5%水溶液中の0.2%のヘマテイン/2%の水性エオシン)、またはピクロシリウスレッド(飽和ピクリン酸溶液中0.1%のピクロシリウスレッド)で染色して、コラーゲンを明らかにする。
【0162】
4. 結果
実験室用ラットにおいて背部分に皮下移植された生体材料の細孔には、ヘマトキシリンエオシン(
図7)およびピクロシリウスレッド(
図8)による染色の後の組織学切片が示すように、原線維性結合組織が侵入している。
【0163】
移植から7日後に、表面に最も近い生体材料の細孔の3分の1に、線維性結合組織が侵入し、そこには多数の線維芽細胞タイプの細胞が存在する。移植から36日後に、単独のポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス中で50%よりやや少ない細孔がコロニー形成され、一方ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料中では約100%がコロニー形成されている(
図7)。高い倍率では、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独の細孔に、細孔の表面に完全に接着しているようには見えない結合マトリックスが侵入している。この表面は、炎症性細胞ならびに赤血球であり得る多くの丸核細胞によってコロニー形成されているように思われる。これに対して、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料の細孔には、細孔の表面と接触した状態にとどまっている線維性結合組織が侵入している。エラストマーマトリックス単独の場合に比べて丸核細胞の数は極端に減少しているようであり、炎症性成分の減少を表示している。完全に構成された脈管が、結合組織内に存在し、赤血球は、浸出の兆候無く十分にそこに限定されている。多核巨細胞もまた、細孔の表面および材料自体の上に存在する。細孔内部の結合組織は、生体材料と接触した状態にとどまる。移植から36日後に、リンパ球およびマクロファージの数の減少が、しかもヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料においてより有意である形で見られる(
図9および
図10)。ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料は、より適合性があると思われる。
【0164】
実施例5:ヒアルロン酸の定量アッセイ
ヒアルロン酸の定量アッセイは、アルシアンブルーを用いて比色アッセイ技術によって行なわれる。簡潔に言うと、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)および、ヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)を切断し、計量しその後2時間アルシアンブルー溶液中でインキュベートする。余剰の色素を酢酸ナトリウム緩衝溶液(50mM/MgCl250mM、pH5.8)で置換する。その後、材料を60%のエタノール溶液、次に80%の酢酸溶液中でインキュベートする。675nmで光学密度を測定する。
【0165】
ヒアルロン酸定量アッセイを、製造プロセスの異なる段階で行ない、これにより本発明に係る多孔質生体材料の1gあたり425μgのHAという平均濃度を決定することができた(
図11参照)。
【0166】
実施例6:ベータおよびガンマ線による滅菌
ベータ処理による滅菌は、電子加速器によって発出されたベータ線に対して、調節された速度で連続して生体材料を通過させることからなる電離方法によって行なわれた。15、25および45Gyの線量を試験した。例えば、25kGy+/-10%で行なわれる線量は、以下の処理条件下で実施された:周波数640Hz/走査設定値2.6/回転数:1/速度:0.898m/min。
【0167】
ガンマ処理による滅菌は、限定的な持続時間中コバルト60放射線源により発出されるガンマ線に生体材料を曝露することからなる電離方法によって行なわれた。実施された線量は、25kGy+/-10%であった。
【0168】
3D顕微鏡法によって得られた画像(
図12)は、15kGyでのベータ線による滅菌について、ポリ(カプロラクトン-尿素-ウレタン)系エラストマーマトリックス単独(エラストマー)およびヒアルロン酸を含む本発明に係る多孔質生体材料(エラストマー-HA)が構造改変を起こしていない、ということを示している。15~45kGyのベータおよびガンマ線線量についても、本発明に係る生体材料が乾燥しているか水性媒質内にあるかに関わらず、同じ結果が得られた。
【国際調査報告】