(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】線維化疾患を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/10 20060101AFI20230614BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20230614BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230614BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230614BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230614BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230614BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K38/22
A61P21/04
A61P25/02
A61P19/02
A61P17/00
A61P11/00
A61K9/72
A61K47/34
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571207
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021033606
(87)【国際公開番号】W WO2021237061
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】301069856
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】300057805
【氏名又は名称】ベス イスラエル デアコネス メディカル センター
【氏名又は名称原語表記】Beth lsrael Deaconess Medical Center
【住所又は居所原語表記】330 Brookline Avenue,Boston,Massachusetts 02215,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリンスタッフ, マーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレッシング, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン, アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ, ジャック
(72)【発明者】
【氏名】クック, キャサリン
(72)【発明者】
【氏名】ナザリアン, アラ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス, エドワード ケー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA93
4C076BB11
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC29
4C076DD23
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE24A
4C076EE32
4C076EE48A
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084DB48
4C084DB51
4C084MA23
4C084MA44
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZA20
4C084ZA22
4C084ZA94
4C084ZA96
(57)【要約】
本発明は、疾患および障害を処置するための組成物および方法を提供する。一部の実施形態では、組成物および方法は、抗線維化薬を含む微小粒子またはその組成物の投与を伴う。本明細書に記載の一態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、(i)前記微小粒子の直径が1~100μmである、(ii)抗線維化剤がリラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する;(iii)前記脂肪族ポリエステルの分子量が10,000~200,000ダルトンである;または(iv)微小粒子がビニルポリマーをさらに含む、製剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、(i)前記微小粒子の直径が1~100μmである、(ii)前記抗線維化剤が、リラキシンであり、総質量の0.01~10%の量で存在する、(iii)前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである;または(iv)前記微小粒子が、ビニルポリマーをさらに含む、製剤。
【請求項2】
前記抗線維化剤が、受容体RXFP1のアゴニストである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記抗線維化剤が、ヒトリラキシン-2または類似体もしくはバリアントである、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ-ラクチド-co-グリコリドまたはポリカプロラクトンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラクトンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステルが、エステル官能基、アルキル-エステル官能基またはカルボン酸官能基で終わるものである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
ポリ(ビニルアルコール)またはポリ(ピロリドン)であるビニルポリマーを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記製剤が、分子量が10,000~200,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記微小粒子の直径が、1~75μm;または1~50μm;または5~50μm;または25~50μm;または30~50μm;または40~50μmである、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記脂肪族ポリエステルが、15:85~25:75のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
ビニルポリマーを総質量の0.01~0.1%の量で含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.005~5%である、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記抗線維化剤が、リラキシンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
ビヒクル溶液中に懸濁した微小粒子を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
塩化ナトリウム液体溶液またはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項16】
凍結乾燥粉末の形態の微小粒子を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が、持続放出製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
前記製剤が、持続放出製剤であり、前記抗線維化剤が、長期間にわたって放出される、請求項1に記載の製剤。
【請求項19】
前記抗線維化剤が、少なくとも1日;または少なくとも2日間;または少なくとも3日間;または少なくとも4日間;または少なくとも5日間;または少なくとも6日間;または少なくとも1週間;または少なくとも2週間;または少なくとも3週間;または少なくとも4週間;または少なくとも5週間、または少なくとも6週間;または少なくとも8週間;または少なくとも9週間;少なくとも10週間;または少なくとも12週間;または少なくとも15週間;または1~5日間;または2~5日間;または1~2日間;または2~3日間;または3~4日間;または4~5日間;または3~10日間;または1~15週間;または2~10週間;または4~8週間;または8~15週間;または約1日;または約2日間;または約3日間;または約4日間;または約5日間;または約6日間;または約1週間;または約2週間;または約3週間;または約4週間;または約5週間;または約6週間;または約7週間;または約8週間;または約9週間;または約10週間の、またはそれよりも長い長期間にわたって放出される持続放出製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項20】
エアロゾルとしての吸入による投与、関節内注射による投与または筋肉内注射による投与のために製剤化されたものである、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
前記抗線維化剤が対象に体重1kg当たり1~2000μgの用量で投与されるように前記対象に投与される、請求項1に記載の製剤。
【請求項22】
線維化疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1に記載の製剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
表1または表2に列挙されている疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患を有すると診断された対象を同定するステップと、請求項1に記載の製剤を前記対象に投与するステップとを含む方法。
【請求項24】
前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、脳卒中、外傷性脳損傷、末梢神経損傷、脊髄性筋萎縮症(I型、II型、III型、またはIV型)、脳性麻痺、先天性多発性関節拘縮症、腕橈関節の線維症、腕尺関節の線維症、肩甲上腕関節の線維症、脛骨大腿骨関節の線維症、股関節の線維症、距腿関節の線維症、顎関節の線維症、中手指節関節の線維症、中足指節関節の線維症、関節周囲筋組織の線維症、セルライトおよび間質性肺疾患からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記投与するステップが、エアロゾルとしての吸入によるもの、関節内注射によるもの、筋肉内注射によるもの、皮内注射によるもの、皮下注射によるもの、嚢内注射によるもの、被膜周囲への注射によるもの、筋腱注射によるもの、靭帯内注射によるもの、靭帯周囲への注射によるもの、腱内注射によるもの、腱周囲への注射によるもの、骨腱内注射によるもの、骨腱周囲への注射によるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、ベッカー型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、ベッカー型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、脊髄筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、脊髄筋ジストロフィーであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、先天性多発性関節拘縮症であり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、先天性多発性関節拘縮症であり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、脳性麻痺であり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、脳性麻痺であり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、脳卒中であり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、脳卒中であり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、外傷性脳損傷であり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、外傷性脳損傷であり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、末梢神経損傷であり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、末梢神経損傷であり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
微小粒子のサイズが、1μm~10μmであり、前記投与するステップが、エアロゾルとしての吸入によるものである;前記微小粒子のサイズが、20μm~100μmであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記微小粒子のサイズが、5μm~50μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記疾患が、間質性肺疾患であり、前記微小粒子の直径が、1~10μmであり、前記投与するステップが、エアロゾルとしての吸入によるものである;前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記微小粒子の直径が、10~30μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記微小粒子の直径が、25~50μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記微小粒子の直径が、10~30μmであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記微小粒子の直径が、25~50μmであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、脊髄性筋萎縮症であり、前記微小粒子の直径が、10~30μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、脊髄性筋萎縮症であり、前記微小粒子の直径が、25~50μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、脊髄性筋萎縮症であり、前記微小粒子の直径が、10~30μmであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、脊髄性筋萎縮症であり、前記微小粒子の直径が、25~50μmであり、前記投与するステップが、筋肉内注射によるものである;前記疾患が、関節線維症であり、前記微小粒子の直径が、10~30μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである;前記疾患が、関節線維症であり、前記微小粒子の直径が、25~50μmであり、前記投与するステップが、関節内注射によるものである、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記製剤が、前記抗線維化剤が対象に体重1kg当たり1~2000μgの用量で投与されるように前記対象に投与される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる2020年5月22日出願の米国仮出願第63/028,961号の利益を主張するものである。
【0002】
技術分野
本明細書に記載の技術は、線維化疾患を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
関節硬直(joint stiffness)は、重大な公衆衛生問題であり、現行の処置選択肢によりもたらされるアウトカムは変動し、また、限定されたものである。関節硬直は、体のあらゆる関節、例えば、肩関節、肘関節、手首関節、指関節、股関節(hip joint)、膝関節、足首関節、足指関節、脊椎および顎などに影響を及ぼし得る。肩関節が関節硬直の影響を受けることも多く、これは、拘縮肩とも称され、また、「凍結肩」としても公知である。
【0004】
拘縮肩は、自己限定性疾患とみなされるが、回復には時間がかかり、困難であり、著しい数の患者が完全なROMを取り戻すことができない。保存的治療(すなわち、理学療法)に関する報告されたアウトカムは大幅に変動し、評価の仕方に大きく左右される(Neviaser A.S. and Neviaser R.J., J. Am. Acad. Orthop. Surg. 2011, 19 (9): 536-42)。主観的なアウトカム評価基準を用いると、客観的なアウトカム評価基準を用いた場合よりも結果がより好都合なものになる傾向がある。1つの試験では、最低限の治療により処置された患者の90%が肩の機能に対して満足であると報告した(Griggs S.M. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 2000, 82-A (10): 1398-407)。しかし、客観的なアウトカムを使用した別の試験では、患者の50%において疼痛が残り、60%において動きの不十分さが残っていることが報告された(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992; 74(5): 738-46)。拘縮肩の症状は発症の4.4年後に軽度~中等度の症状が持続している可能性がある。重症疾患を被っている患者に関しては、そのような機能障害により日常活動および仕事関係の責任が妨げられる(Hand C. et al., Journal of Shoulder and Elbow Surgery 2008, 17(2): 231-6)。患者が保存的管理に応答しない場合、他の処置選択肢が利用可能である。麻酔下マニピュレーションの形態での手術介入により、動きを元に戻し、疼痛を低減させることができるが、これには、骨折、腱断裂、および神経損傷などの併発症が付随する(Castellarin G. et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2004, 85 (8): 1236-40;Hsu S.Y. and Chan K.M., International Orthopaedics, 1991, 15(2): 79-83;Parker R.D. et al., Orthopedics, 1989, 12(7): 989-90)。マニピュレーションまたは鏡視下関節包解離術では信頼できる一貫性のある結果がもたらされないという報告が複数存在する(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992, 74(5): 738-46;Ryans I. et al., Rheumatology 2005, 44(4): 529-35)。したがって、関節硬直に対するより効果的かつ一貫性のある治療が必要とされている。
【0005】
その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT出願第US2017/055799号;PCT出願第US14/380163号;およびDisseration defense of William Blessing dated August 26, 2019も参照されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本明細書に記載の一態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、(i)前記微小粒子の直径が1~100μmである、(ii)抗線維化剤がリラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する;(iii)前記脂肪族ポリエステルの分子量が10,000~200,000ダルトンである;または(iv)微小粒子がビニルポリマーをさらに含む、製剤を提供する。
【0007】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記抗線維化剤は、受容体RXFP1のアゴニストである。
【0008】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記抗線維化剤は、ヒトリラキシン-2または類似体もしくはバリアントである。
【0009】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ポリ-ラクチド-co-グリコリドである。
【0010】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトンである。
【0011】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記脂肪族ポリエステルは、エステル官能基、アルキル-エステル官能基、アミン官能基、イソシアネート官能基、イソチオシアネート官能基、フッ化ベンゾイル官能基、マレイミド官能基、ヨードアセトアミド官能基、2-チオピリジン官能基、3-アリールプロピオロニトリル官能基、ジアゾニウム塩、アルデヒド、ケトン、アジド、アルキン、シクロオクチン、ホスフィンまたはカルボン酸官能基で終わるものである。
【0012】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、ポリ(ビニルアルコール)またはポリ(ピロリドン)であるビニルポリマーを含む。
【0013】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、分子量が10,000~200,000ダルトンであるビニルポリマーを含む。
【0014】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記微小粒子の直径は、1~75μm;または1~50μm;または5~50μm;または25~50μm;または30~50μm;または40~50μmである。
【0015】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記脂肪族ポリエステルは、15:85~25:75のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである。
【0016】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、ビニルポリマーを総質量の0.01~1.0%の量で含む。
【0017】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記抗線維化剤は、製剤の総質量の0.005~5%である。
【0018】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記抗線維化剤は、リラキシンである。
【0019】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、液体溶液中に懸濁した微小粒子を含む。
【0020】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、塩化ナトリウム液体溶液またはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含む。
【0021】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、持続放出製剤である。
【0022】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、持続放出製剤であり、抗線維化剤が長期間にわたって放出される。
【0023】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記製剤は、持続放出製剤であり、抗線維化剤が少なくとも1日の長期間にわたって放出される。
【0024】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、エアロゾルとしての吸入による投与、関節内注射による投与または筋肉内注射による投与のために製剤化されたものである。
【0025】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、抗線維化剤が対象につき体重1kg当たり1~2000μgの用量で投与されるように対象に投与される。
【0026】
本明細書の任意の態様の一部の実施形態では、本明細書で提供される製剤は、液体溶液中に懸濁している。一部の実施形態では、微小粒子製剤は液体溶液中に懸濁しており、ここで、微小粒子は、溶液全体の約0.0001~0.001%である;または溶液全体の約0.001~0.01%である;または溶液全体の約0.01~0.05%である;または溶液全体の約0.05~0.1%である;または溶液全体の約0.1~1%である;または溶液全体の約1~10%である;または溶液全体の約10~20%である;または溶液全体の約20~30%である;または溶液全体の約30~50%である;または溶液全体の約50~75%である;または溶液全体の約75~90%である。一部の実施形態では、上述のパーセンテージは重量パーセンテージであり、他の実施形態では、上述のパーセンテージは体積パーセンテージである。
【0027】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を有する微小粒子を含み、ここで、微小粒子の直径は1~100μmである。
【0028】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を有する微小粒子を含み、ここで、抗線維化剤はリラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する。
【0029】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を有する微小粒子を含み、ここで、前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである。
【0030】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を有する微小粒子を含む。
【0031】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を有する微小粒子を含み、ここで、前記微小粒子の直径は1~100μmである。
【0032】
線維化疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に本明細書に記載の任意の製剤を投与するステップを含む、方法。
【0033】
表1または表2に列挙されている疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患を有すると診断された対象を同定するステップと、本明細書に記載の任意の製剤を対象に投与するステップとを含む方法。
【0034】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、疾患は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症(I型、II型、III型、またはIV型)、脳性麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷、末梢神経損傷(peripheral nerve injury)、先天性多発性関節拘縮症、腕橈関節の線維症、腕尺関節の線維症、肩甲上腕関節の線維症、脛骨大腿骨関節の線維症、股関節(acetabulofemoral joint)の線維症、距腿関節の線維症、顎関節の線維症、中手指節関節の線維症、中足指節関節の線維症、関節周囲筋組織の線維症、セルライトおよび間質性肺疾患からなる群から選択される。
【0035】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、前記投与するステップは、エアロゾルとしての吸入によるもの、関節内注射によるもの、関節周囲への注射によるもの、筋肉内注射によるもの、筋肉周囲への注射によるもの、皮内注射によるもの、皮下注射によるもの、嚢内注射によるもの、被膜周囲への注射によるもの、靭帯内注射によるもの、靭帯周囲への注射によるもの、腱内注射によるもの、腱周囲への注射によるもの、筋腱内注射によるもの、筋腱周囲への注射によるもの、骨腱内注射によるもの、骨腱周囲への注射によるものである。
【0036】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患はベッカー型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患はベッカー型筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脊髄筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は脊髄筋ジストロフィーであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は先天性多発性関節拘縮症であり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は先天性多発性関節拘縮症であり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脳性麻痺であり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は脳性麻痺であり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脳卒中であり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は脳卒中であり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は外傷性脳損傷であり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は外傷性脳損傷であり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は末梢神経損傷であり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は末梢神経損傷であり、前記投与するステップは関節内注射によるものである。
【0037】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、微小粒子のサイズは1μm~10μmであり、前記投与するステップはエアロゾルとしての吸入によるものである;微小粒子のサイズは20μm~100μmであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;微小粒子のサイズは5μm~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである。
【0038】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、疾患は間質性肺疾患であり、微小粒子の直径は1~10μmであり、前記投与するステップはエアロゾルとしての吸入によるものである;疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィーであり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は脊髄性筋萎縮症であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脊髄性筋萎縮症であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脊髄性筋萎縮症であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は脊髄性筋萎縮症であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは筋肉内注射によるものである;疾患は関節線維症(joint arthrofibrosis)であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は関節線維症(joint arthrofibrosis)であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである、;疾患は関節脳性麻痺(joint Cerebral Palsy)であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は脳性麻痺(joint Cerebral Palsy)であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は関節脳卒中(joint Stroke)であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は関節脳卒中(joint Stroke)であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は外傷性脳損傷であり、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は外傷性脳損傷であり、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は末梢神経損傷、微小粒子の直径は10~30μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである;疾患は末梢神経損傷、微小粒子の直径は25~50μmであり、前記投与するステップは関節内注射によるものである。
【0039】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、抗線維化剤が対象につき体重1kg当たり1~2000μgの用量で投与されるように対象に投与される。
定義
【0040】
便宜上、本発明、実施例、および添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語および句の意味を提示する。別段の指定があるまたは文脈から暗黙的に示される場合を除き、以下の用語および句には、以下に提示される意味が含まれる。この定義は、特定の実施形態の説明を補助するために提示されるものであり、また、当該技術の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、この定義により特許請求された技術が限定されるものではない。特に定義されていなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本技術が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。当技術分野における用語の使用と本明細書に提示されるその定義との間に明らかな矛盾がある場合、本明細書内に提示される定義が優先される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、作用剤、例えばリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントの、関節の硬直(stiffened joint)を有する対象にデポ剤によって投与した場合に、関節の硬直の処置に影響を及ぼす(例えば、関節の硬直または関節の硬直の1つもしくは複数の症状を減弱させる、好転させるまたは維持することによって)ために十分である量を包含するものとする。「有効量」は、作用剤の順序、作用剤の投与の仕方、関節硬直の重症度、ならびに処置を受ける対象の病歴、年齢、体重、家族歴、遺伝子構造、もしあれば先行するまたは同時の処置の型、および他の個々の特徴に応じて変動し得る。
【0042】
「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、作用剤、例えばリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントの、関節の硬直を有し、関節の硬直の症状、例えば、関節硬直の影響を受けている関節を動かした際の疼痛、もしくは動かすこともしくは可動域の制限が現在生じているか、もしくはまだ生じていない対象、および/または、関節の硬直が発生するリスクがある対象に、デポ剤として投与した場合に、関節の硬直またはその症状のうちの1つもしくは複数を防止するまたは好転させるために十分である量も包含するものとする。関節の硬直を好転させることには、関節硬直の進行の過程を緩徐化すること、または後で発生する関節硬直の重症度を低減させることが含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、サルおよびチンパンジー)、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット、マウス、ウマ、およびクジラ)を含めた哺乳動物、または鳥類(例えば、アヒルまたはガチョウ)などである。ある実施形態では、対象は、ヒト、例えば、関節の硬直について評価を受けるヒト、関節の硬直が発生するリスクがあるヒト、関節の硬直を有するヒト、および/または関節の硬直に対する処置を受けるヒトなどである。
【0044】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」、または「好転(amelioration)」という用語は、治療的処置を指し、ここで、目的は、状態、例えば線維症に関連する状態、例えば線維化疾患および障害の進行または重症度を逆転させる、緩和する、好転させる、阻害する、緩徐化する、または停止させることである。「処置すること」という用語は、線維化疾患および障害の少なくとも1つの悪影響または症状(例えば、炎症、関節の硬直(stiffening of a joint)、関節の拘縮、筋拘縮によって引き起こされるものではない関節の拘縮、筋拘縮に付随する関節の拘縮、疼痛、可動性の低下、呼吸困難、筋硬直、筋機能障害、皮膚の陥凹、ケロイド瘢痕化、熱傷に関連する瘢痕化)を低減させることまたは緩和することを包含する。処置は、一般に、それにより1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減した場合、「効果的」である。あるいは、処置は、それにより疾患の進行が低減または停止した場合、「効果的」である。すなわち、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、症状の進行もしくは悪化が休止するか、または少なくとも、処置の非存在下で予測されるものと比較して緩徐化することも包含する。有益なまたは所望の臨床結果には、これだけに限定されないが、1つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患進行の遅延もしくは緩徐化、疾患の状態の好転もしくは一時的緩和、寛解(部分的であるか完全であるかにかかわらず)、および/または、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず死亡率の低下、が含まれる。疾患の「処置」という用語は、疾患の症状または副作用の軽減をもたらすこと(緩和的処置を含む)も包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「防止(prevention)」または「防止すること(preventing)」は、関節の硬直に関して使用される場合、対象、例えばヒト対象にそのような関節の硬直に付随する症状が発生する可能性の低下、または関節の硬直に付随する症状の発生頻度および/もしくは持続時間の低減を指す。関節の硬直が発生する可能性は、例えば、関節の硬直に関する1つまたは複数の危険因子を有する対象に関節の硬直が発生しないか、または関節の硬直が同じ危険因子を有しており、本明細書に記載の処置を受けていない集団と比べて低い重症度で発生する場合、低下する。関節の硬直が発生しないこと、または関節の硬直に付随する症状の発生の低下(例えば、少なくとも約10%の低下)、または症状の遅延が示されること(例えば、数日間、数週間、数カ月間または数年間の遅延)は効果的な防止とみなされる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「投与すること(administering)」という用語は、本明細書に開示される治療薬(例えば、本明細書に記載の抗線維化剤を含むマイクロカプセル)または組成物を、対象に、作用剤の対象への少なくとも部分的な送達をもたらす方法または経路によってもたらすことを指す。組成物、例えば、本明細書に開示される作用剤を含む医薬組成物を、対象に対する効果的な処置をもたらす任意の適当な経路によって投与することができる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、ヒトまたは動物を意味する。通常、動物は、脊椎動物、例えば、霊長類、齧歯類、飼育動物または狩猟動物などである。霊長類としては、例えば、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。齧歯類としては、例えば、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが挙げられる。飼育動物および狩猟動物としては、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、スイギュウ、ネコ科動物種、例えば、イエネコ、イヌ科動物種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、および魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが挙げられる。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「個体」、「患者」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0048】
対象は哺乳動物であることが好ましい。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物を、疾患、例えば、線維症に関連する疾患または障害の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。対象は雄であっても雌であってもよい。
【0049】
対象は、処置を必要とする疾患もしくは障害(例えば、線維症に関連する疾患もしくは障害)またはそのような疾患もしくは障害に関連する1つもしくは複数の合併症に罹患しているまたはそれを有すると以前に診断または同定されたことがあり、必要に応じて、その疾患もしくは障害または疾患もしくは障害に関連する1つもしくは複数の合併症に対する処置をすでに受けたことがある対象であってよい。あるいは、対象はまた、そのような疾患もしくは障害(例えば、線維症に関連する疾患もしくは障害)または関連する合併症を有すると以前に診断されていない対象であってもよい。例えば、対象は、疾患もしくは障害または疾患もしくは障害に関連する1つもしくは複数の合併症に関する1つまたは複数の危険因子を示している対象であってもよく、危険因子を示していない対象であってもよい。
【0050】
「微小粒子」という用語は、これだけに限定されないが、マイクロスフェア、微粒剤、マイクロスポンジ、または、作用剤、例えばリラキシンを封入することが可能な内部マトリックスを伴う、所定の寸法を有する任意の非球状粒子を包含する。
【0051】
「微小粒子」という用語は、直径が好ましくは500μm未満、より好ましくは1μmから50μmの間である粒子を指す。微小粒子にはナノ粒子も含めることができる。ナノ粒子とは、直径が1μmよりも小さく、かつ10nmよりも大きいことが好ましい粒子を指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「作用剤」は、例えば、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの発現を阻害する、または、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに結合する、その刺激を部分的にもしくは完全に遮断する、その活性化を減少させる、妨げる、遅延させる、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの活性を不活化する、それに対する感受性を低下させる、またはその活性をダウンレギュレートする、分子、タンパク質、ペプチド、抗体、または核酸を指す。セルピンB1を阻害する、例えば、ポリペプチドの発現、例えば翻訳、翻訳後プロセシング、安定性、分解、もしくは核もしくは細胞質への局在化、またはポリヌクレオチドの転写、転写後プロセシング、安定性もしくは分解を阻害する、または、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドに結合する、その刺激、DNA結合、転写因子活性もしくは酵素活性を部分的にもしくは完全に遮断する、それを減少させる、それを妨げる、その活性化を遅延させる、それを不活化する、それに対する感受性を低下させる、もしくはその活性をダウンレギュレートする作用剤。作用剤は、直接的に作用するものであっても間接的に作用するものであってもよい。
【0053】
「作用剤」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、これだけに限定されないが、小分子、核酸、ポリペプチド、ペプチド、薬物、イオンなどの任意の化合物または物質を意味する。「作用剤」は、これだけに限定することなく、合成および天然に存在するタンパク質性および非タンパク質性の実体を含めた任意の化学物質、実体または部分であり得る。一部の実施形態では、作用剤は、これだけに限定することなく、タンパク質、オリゴヌクレオチド、リボザイム、DNAザイム、糖タンパク質、siRNA、リポタンパク質、アプタマー、ならびにこれらの改変および組合せなどを含めた、核酸、核酸類似体、タンパク質、抗体、ペプチド、アプタマー、核酸のオリゴマー、アミノ酸、または炭水化物であり得る。ある特定の実施形態では、作用剤は、化学的部分を有する小分子である。例えば、化学的部分には、マクロライド、レプトマイシンおよびこれらの関連する天然物または類似体を含めた、非置換または置換アルキル、芳香族、またはヘテロシクリル部分が含まれる。化合物は、所望の活性および/または特性を有することが公知であり得る、または多様な化合物のライブラリーから選択することができる。
【0054】
作用剤は、1つまたは複数の化学的クラス、例えば有機分子に由来する分子であってよく、それらには、有機金属分子、無機分子、遺伝子配列などが含まれる。作用剤はまた、1つまたは複数のタンパク質由来の融合タンパク質、キメラタンパク質(例えば、関連するまたは異なる分子の機能的に意義深い領域のドメイン切り換えまたは相同組換え)、合成タンパク質または置換、欠失、挿入および他のバリアントを含めた他のタンパク質バリエーションが含まれ得る。
【0055】
本明細書に記載の方法および組成物は、抗線維化剤、例えばリラキシンまたはその機能的バリアントを含む。本明細書で使用される場合、「リラキシン2」は、ペプチドホルモンのリラキシンサブファミリーおよびインスリンスーパーファミリーのメンバーをコードする遺伝子を指す。H2;RLXH2;H2-RLX;bA12D24.1.1;およびbA12D24.1.2としても公知のリラキシン2の配列は、いくつかの種に関して、例えば、ヒトリラキシン2(NCBI遺伝子ID:6019)ポリペプチド(例えば、NCBI参照配列NP_001316120.1)およびmRNA(例えば、NCBI参照配列NM_001329191.2)が公知である。リラキシン2は、ヒトリラキシン2を指し得、その天然に存在するバリアント、分子、および対立遺伝子が含まれる。リラキシン2は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタなどのリラキシン2を指す。
【0056】
「低減/低下/減少させる/する(decrease)」、「低減/低下/減少した(reduced)」、「低減/低下/減少(reduction)」、または「阻害する」という用語は全て、本明細書では、統計的に有意な量の低減/低下/減少を意味するように使用される。一部の実施形態では、「低減/低下/減少させる/する(decrease)」、「低減/低下/減少した(reduced)」、「低減/低下/減少(reduction)」、または「阻害する」は、一般には、適当な対照(例えば、所与の処置が存在しない場合)と比較して少なくとも10%の低減/低下/減少を意味し、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、またはそれよりも大きな低減/低下/減少が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「低減/低下/減少(reduction)」または「阻害」には、参照レベルと比較した完全な阻害または低減/低下/減少(reduction)は包含されない。「完全な阻害」は、適当な対照と比較して100%の阻害である。
【0057】
「増大/増加/上昇させる/する(increase)」、「増強する」、または「活性化する」という用語は全て、本明細書では、再現性のある統計的に有意な量の増大/増加/上昇(increase)を意味するように使用される。一部の実施形態では、「増大/増加/上昇させる/する(increase)」、「増強する」、または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増大/増加/上昇を意味し得、例えば、参照レベルと比較して少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%もしくは100%を含めて100%までの増大/増加/上昇もしくは10~100%の間の任意の増大/増加/上昇、または、適当な対照と比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の増大/増加/上昇、20倍の増大/増加/上昇、30倍の増大/増加/上昇、40倍の増大/増加/上昇、50倍の増大/増加/上昇、6倍の増大/増加/上昇、75倍の増大/増加/上昇、100倍の増大/増加/上昇などもしくは2倍から10倍の間もしくはそれよりも大きい増大/増加/上昇を意味し得る。マーカーに関しては、「増大/増加/上昇(increase)」は、そのようなレベルの再現性のある統計的に有意な上昇である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「参照レベル」は、正常な、他の点では影響を受けていない細胞集団または組織(例えば、健康な対象から得た生体試料、または対象から以前の時点で得た生体試料、例えば、患者から、線維化疾患または障害を有すると診断される前に得た生体試料、または、本明細書に開示される作用剤と接触させていない生体試料)を指す。
【0059】
本明細書で使用される場合、「適当な対照」は、無処置の、他の点では同一の細胞または集団(例えば、本明細書に記載の作用剤を投与されていない、または非対照細胞と比較して本明細書に記載の作用剤を一部しか投与されていない患者)を指す。
【0060】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般に、2標準偏差(2SD)またはそれよりも大きな差異を意味する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物、方法、および方法または組成物に必須であるそれらのそれぞれの構成成分(複数可)に関して使用され、さらに、不特定の要素の組み入れに関して、それが必須であるか否かにかかわらず、開かれたものである。
【0062】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその実施形態の基本的なおよび新規のまたは機能的な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない追加的な要素の存在を許容するものである。
【0063】
本明細書で使用される場合、「脂肪族ポリエステル」という用語は、これだけに限定することなく、以下のポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(γ-バレロラクトン)、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギネート、アガロース、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(ブチレンサクシネート)、ポリ(アルキレンアルカノエート)、ポリ(プロピレンサクシネート)、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ペクチン、ポリ(リシン)、双頭型両親媒性分子、グリコシル-ヌクレオシド、およびフルオロカーボン鎖を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ビニルポリマー」という用語は、これだけに限定することなく、ポリ(ビニルアルコール)ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(スチレン)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(シアン化ビニル)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(硝酸ビニル)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルポリピロリドン)、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリNIPAM、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ベタイン)、tween(20、40、60、80)、デシルグルコシドグリセロールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、トリトンx-100、カルボキシルエチルセルロース、ヒプロメロース、およびプルロニックF-127を含めた分子を指す。一部の実施形態では、列挙された分子をそれらの乳化および安定化特性に関して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】
図1は、微小粒子がバッチ間で一貫して、かつ低多分散性で調製されること示す。(上)リラキシン-2が封入されたPLGA微小粒子は球状の形態を示す。(下)動的光散乱分析によって示される通り、これらは低多分散性および流体力学的半径7.6μmで合成される。
【0066】
【
図2】
図2は、リラキシン-2が、生理的温度における封入および放出の間、そのフォールディングおよび安定性を維持することを示す。(左)円偏光二色性分光法により、リラキシン-2が、2重エマルションプロセスの影響を受けず、PLGA微小粒子合成の間、そのアルファヘリックス二次構造を維持することができることが示される。(右)リラキシン-2は、37℃で2カ月間に至るまで安定であり、アルファヘリックス構造のいかなる喪失もともなわない。1~4時間のスペクトルは全て重なっている。
【0067】
【
図3】
図3は、PLGA微小粒子への封入により、リラキシン-2の持続放出が可能になることを示す。(上)30日間の経過にわたって、リラキシン-2が負荷されたPLGA微小粒子から、最初のリラキシン-2の60%が放出される。放出は最初の3週間は緩徐であり、3週間に急速に増加する。(下)微小粒子は経時的に分解される。2週間後から始まり、ポリマー表面上で加水分解が起こるにしたがって粒子の平滑な表面が失われる。4週間後、粒子は多孔質になり、これがリラキシン-2の放出速度の上昇の原因となる。スケールバー=2μm。
【0068】
【
図4】
図4は、リラキシン-2が、in vitroにおいて4週間に至るまでにわたって放出され、コラーゲン発現を低減させることができることを示す。(上)滑膜細胞における無処理の対照と比較したI型コラーゲン発現の有意なダウンレギュレーションによって説明される通り、4週間の経過にわたってリラキシン-2が有効用量で放出された。(下)デンシトメトリーにより、I型コラーゲンがおよそ50%に低減することが明らかになる。
【0069】
【
図5】
図5は、in vitroにおいてリラキシン-2が負荷された大きな微小粒子がマウスマクロファージによるエンドサイトーシスによって取り込まれないことを示す。(左)平均直径が4.5μmである蛍光標識された対照PLGA-微小粒子(赤色)は24時間のインキュベーション後にRAW264.7マウスマクロファージによるエンドサイトーシスによって取り込まれる。(右)蛍光標識された、リラキシン-2が負荷された微小粒子はRAW264.7マクロファージから排除され、内部に蛍光を発しない。上の画像は10×拡大率で捕捉されたものであり、下の画像は20×拡大率で捕捉されたものである。
【0070】
【
図6】
図6は、低分子量および種々の物理的特性の領域を有する超分子ゲル構成物の構造を示す。ボーラビス尿素(bola bis urea)分子1およびグルコシル-ヌクレオシドフッ素化両親媒性物質はどちらも疎水性領域(赤色)、芳香族性領域(青色)、および親水性領域(黒色)を有する。これらの領域は、それぞれ、疎水性の組合せ、パイーパイスタッキング、および互いとの水素結合に好都合である。
【0071】
【
図7】
図7は、リラキシン-2を、その構造を損なうことなく、両親媒性ハイドロゲル中に首尾よく負荷することができることを示す。リラキシン-2は、そのアルファヘリックスコンフォメーションが乱されていないことを示す円偏光二色性によって示される通り、95℃で少なくとも1時間のインキュベーションに対して耐性を有する(左)。リラキシン-2が負荷された両親媒性物質は、それらの内部にリラキシン-2が組み入れられるとゲル化する(右)。
【0072】
【
図8】
図8は、ボーラビス尿素1の流体力学的特性を示す。(左)1wt%、2wt%、および5wt%密度のゲル1は全て、それらの貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)によって示される通り、周波数100rad/sまでの固体様材料を示す。全てのゲルに関してG’>G’’であり、ここで、G’/G’’はほぼ一定のままであり、wt%から独立している。G’およびG’’の絶対値はゲル密度に対数比例する。(右)線形粘弾性領域を、0.01%ひずみから100%ひずみまでにわたるひずみ掃引から決定した。5%ゲルで最小LVERが示されたことが示され、ここで、2.2%ひずみにおいてG’’>G’である。2%ゲルおよび1%ゲルでは、それぞれ5.8%ひずみおよび6.4%ひずみにおいてLVERから移行した(垂直方向、点線)
【0073】
【
図9】
図9は、グリコシル-ヌクレオシドフッ素化両親媒性物質2の流体力学的特性を示す。(左)1wt%密度、1.5wt%密度、および5wt%密度におけるゲル2は全て、それらの貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)によって示される通り、周波数100rad/sまでの固体様材料を示した。G’およびG’’の絶対値はゲル密度に対数比例する。(右)線形粘弾性領域を、0.01%ひずみから100%ひずみまでにわたるひずみ掃引から決定した。5%ゲルで最小LVERが示されたことが示され、ここで、9%ひずみにおいてG’’>G’である。2%ゲルおよび1%ゲルはそれぞれ20%ひずみおよび30%ひずみにおいてLVERから移行した(垂直方向、点線)。
【0074】
【
図10】
図10は、リラキシン-2が、両方の両親媒性ゲル製剤から、異なるカイネティクスで8日間にわたって放出されることを示す。両親媒性物質1で作られたゲル(緑色)からは、リラキシン-2が両親媒性物質2で作られたゲル(青色)よりも有意に緩徐な様式で放出される。化合物2で作られたゲルからはこの時間枠にわたってほとんど全てのリラキシン-2が放出されるが、一方、1で作られたゲルからは、およそ5分の1の速さで放出される。1で作られたゲルについては放出速度とwt%に比例が観察されるが、一方、この比例は、2で作られたゲルでは存在しない。
【0075】
【
図11】
図11は、リラキシン-2治療により、7週間で、内旋ROMがベースラインレベルに戻るまで改善されるが、外旋ROMには影響がないことを示す。(左)抜糸後の内旋ROMが健康な手術を受けていない群(青色)では変わらないことを示す。手術を受けた群の全てでROMの手術後ベースラインの減少が示されるが、mIA群およびRMP群では、第2週までに健康なベースラインまで戻る有意な増大が示される。ビヒクル対照では、第7週まで処置群よりも有意に小さいROMが示される。(中央)手術を受けた群の外旋ROMは有意に小さく、本試験の経過にわたって、健康なベースラインに戻るまで改善されない。(右)総ROMについては処置群でビヒクル対照と比較してわずかな改善が示されるが、試験の過程中にベースラインROMは実現されない。
【0076】
【
図12】
図12は、関節線維症(arthrofibrosis)の組織学的特質がビヒクル対照では観察されるが、処置群および健康群では観察されないことを示す。(左)上腕骨頭および肩甲上腕関節のH&E染色により、ビヒクル対照における関節包(矢じり)の付近への線維芽細胞の沈着が増加していることが示される。この沈着は健康対照では著しく少ない。上腕骨の上部(矢印)への周囲への線維芽細胞の浸潤も見られ、これは健康対照および処置群では見られない。(中央)サフラニンO染色により、グリコサミノグリカンのアーキテクチャが全群の間でほとんど変化しないことが示される。(右)肩関節のシリウスレッド染色により、線維症を示す方向性を有する方向づけで線維芽細胞の著しい沈着が示される。ビヒクル対照以外には線維化関節包(fibrotic capsule)と関節包が線引きされる(矢印)。
【0077】
【
図13】
図13は、リラキシン-2の持続放出により、総ROMが改善されることを示す。拘縮の誘導は、ビヒクル群(n=9)と負荷されたデポ剤群(n=7)の間で一致している(時間=0)。内旋可動域(中央)および総可動域(右)については後の時点で回復が示され、これにより、関節腔内へのリラキシン放出の有効性が示される。
【発明を実施するための形態】
【0078】
詳細な説明
拘縮肩は、米国の人口のおよそ2%またはおよそ6百万個体に影響を及ぼしている。女性の方が男性よりも多く影響を受けることも多いが、遺伝学的または人種偏好は分かっていない(Robinson C.M. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2012, 94(1): 1-9;Ewald A., Am. Fam. Physician 2011, 83 (4): 417-22)。拘縮肩の回復は困難であり、時間がかかり、著しい数の患者が完全な関節機能を取り戻すことができない。この状態は、生活の質および生産性の両方に影響を及ぼす。その主な特色は、進行性の肩甲上腕関節包の線維症に起因して、能動的および受動的な肩甲上腕の動きの両方が有痛性に徐々に失われることである。収縮した関節包(capsule)により、特にそれが急に引き延ばされた時に疼痛が引き起こされ、動きの機械的制限が生じる。一次性(特発性)拘縮肩の疾患経過は疼痛および硬直の緩徐な発症(2~9カ月にわたる)で始まり、それが次第に、肩甲上腕関節の受動的および能動的な可動域(ROM)の両方を制限するようになる(Sharma S., Annals of the Royal College of Surgeons of England 2011 93 (5): 343-4;discussion 5-6)。疼痛は夜間に激しくなる可能性があり、患者は影響を受けている側を下にして眠ることができなくなる。続いて、疼痛は一般に4~12カ月の期間にわたって和らぐが、硬直によりROMが、特に外旋面に重度に制限される。ROMは2~4年の期間にわたって緩徐に改善される。二次性拘縮肩は、同様の発出および進行を有するものであるが、既知の内因的または外因的原因によるものである(Sheridan M.A. and Hannafin J.A., Orthop. Clin. North Am. 2006, 37 (4): 531-9)。外傷または外科手術後二次性拘縮肩のこれらの事象後の種々の程度での発生率は100%であり、持続的な理学療法が必要であり、必ずしも元の動きが戻るとは限らない。
【0079】
拘縮肩の病理は、腋窩ひだが消える癒着を伴う肩甲上腕関節包の肥厚である。線維化関節包がそれ自体および上腕骨の解剖頸と癒着し、関節内の容積が減少し、関節内の滑液が著しく減少する(Hand G.C. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2007, 89(7): 928-32)。関節包(capsule)の生検では、慢性炎症性浸潤、滑膜の内層が存在しないこと、および滑膜下線維症が示される(Ozaki J. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1989, 71 (10): 1511-5;Wiley A.M., Arthroscopy 1991, 7(2): 138-43;Rodeo S.A. et al., J. Orthop. Res. 1997, 15 (3): 427-36)。患者生検試料から、T細胞、B細胞、滑膜細胞、線維芽細胞および転換性筋線維芽細胞がI型およびIII型コラーゲンと共に存在することが確認される(Rodeo S.A. et al., J. Orthop. Res. 1997, 15(3): 427-36;Bunker T.D. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2000, 82(5): 768-73)。遺伝子およびタンパク質発現アッセイにより、COL1A1およびCOL1A3、インターロイキン-6、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害物質(TIMP)の増加、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼの活性の低下を含めた、線維症、炎症、および軟骨形成に関連する産物が見出されている(Hagiwara Y. et al., Osteoarthritis Cartilage 2012, 20(3): 241-9)。これらのデータは、炎症性の変化により、線維芽細胞および免疫細胞の動員、線維化プロセスの促進ならびにコラーゲンの不適切な沈着が開始されることを示すものである。あるいは、線維化変化が最初に起こり、その後に炎症が続く場合もある。この場合、線維症は、コラーゲンのリモデリングを支配する細胞シグナル伝達経路に欠陥があり得る、基礎をなす疾患プロセスに起因し得る(Bunker T.D. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2000, 82(5): 768-73)。例えば、合成TIMPであるマリマスタットを用いた処置を受けた患者に拘縮肩が発生し、マリマスタットを中断すると、疾患が退行した(Hutchinson J.W. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 1998, 80(5): 9078)。
【0080】
拘縮肩は、自己限定性疾患とみなされるが、回復には時間がかかり、困難であり、著しい数の患者が完全なROMを取り戻すことができない。保存的治療(すなわち、理学療法)に関する報告されたアウトカムは大幅に変動し、評価の仕方に大きく左右される(Neviaser A.S. and Neviaser R.J., J. Am. Acad. Orthop. Surg. 2011, 19(9): 536-42)。主観的なアウトカム評価基準を用いると、客観的なアウトカム評価基準を用いた場合よりも結果がより好都合なものになる傾向がある。1つの試験では、最低限の治療により処置された患者の90%が肩の機能に対して満足であると報告した(Griggs S.M. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 2000, 82-A (10): 1398-407)。しかし、客観的なアウトカムを使用した別の試験では、患者の50%において疼痛が残り、60%において動きの不十分さが残っていることが報告された(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992; 74(5): 738-46)。拘縮肩の症状は発症の4.4年後に軽度~中等度の症状が持続している可能性がある。重症疾患を被っている患者に関しては、そのような機能障害により日常活動および仕事関係の責任が妨げられる(Hand C. et al., Journal of Shoulder and Elbow Surgery 2008, 17(2): 231-6)。患者が保存的管理に応答しない場合、他の処置選択肢が利用可能である。麻酔下マニピュレーションの形態での手術介入により、動きを元に戻し、疼痛を低減させることができるが、これには、骨折、腱断裂、および神経損傷などの併発症が付随する(Castellarin G. et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2004, 85(8): 1236-40;Hsu S.Y. and Chan K.M., International Orthopaedics, 1991, 15(2): 79-83;Parker R.D. et al., Orthopedics, 1989, 12(7): 989-90)。マニピュレーションまたは鏡視下関節包解離術では信頼できる一貫性のある結果がもたらされないという報告が複数存在する(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992, 74(5): 738-46;Ryans I. et al., Rheumatology 2005, 44(4): 529-35)。したがって、関節硬直に対するより効果的かつ一貫性のある治療が必要とされている。
【0081】
本明細書に記載の態様は、抗線維化剤を送達するための微小粒子を提供する。例えば、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子。ある特定の実施形態では、微小粒子は、ビニルポリマーをさらに含む。
【0082】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の微小粒子のいずれかを含む、それからなる、またはそれから本質的になる組成物または製剤を提供する。
【0083】
本発明の他の態様は、線維症に関連する疾患または障害を有する対象を処置するための方法、それを必要とする前記対象に本明細書に記載の微小粒子のいずれか、本明細書に記載の組成物のいずれか、または本明細書に記載の製剤のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。
抗線維化剤
【0084】
抗線維化剤を含む微小粒子が本明細書に記載される。
【0085】
一実施形態では、抗線維化剤は、受容体RXFP1のアゴニストである。一実施形態では、抗線維化剤は、ヒトリラキシン-2または類似体もしくはバリアントである。
【0086】
「リラキシン」という用語は、本明細書で使用される場合、リラキシンファミリーに属するポリペプチド(例えばリラキシン-2)、リラキシン類似体(例えばリラキシン受容体に結合するポリペプチド)、または前述のいずれかの断片(例えば、生物活性断片)もしくはバリアント、および/またはリラキシン受容体ファミリーのタンパク質(RXFP1、RXFP2、RXFP3、RXFP4)に結合する作用剤のアゴニストである任意の作用剤を指す。
【0087】
インスリンスーパーファミリーに属するリラキシンは、およそ6kDaのタンパク質である(Sherwood O.D., Endocr. Rev. 2004, 25 (2): 205-34)。インスリンと同様に、リラキシンは、プレプロ形態から、鎖間ジスルフィド架橋2つおよびA鎖内の鎖内ジスルフィド1つによって接続したAペプチド鎖とBペプチド鎖を含有する成熟ホルモンにプロセシングされる(Chan L.J. et al., Protein Pept. Lett. 2011, 18(3): 220-9)。リラキシンは、MMPの発現を増大させ、TIMPの発現を低減させることにより、コラーゲン分泌を容易に減少させ、コラーゲン分解を増加させる(Samuel C.S. et al., Cell Mol. Life Sci. 2007, 64(12): 1539-57)。このホルモンは、子宮収縮を阻害し、子宮頸部の成長および軟化を誘導して分娩を補助する場合、生殖に関与する(Parry L.J. et al., Adv. Exp. Med. Biol. 2007, 612: 34-48)。最近、高度に精製された組換え型のH2リラキシン、またはヒトリラキシン-2が、結合組織を改変するその能力およびその潜在的な抗線維化特性の両方を評価するために、いくつかのin vitroおよびin vivo系において試験されている。いくつかの試験では、リラキシン-2が、多数のレベルで作用して線維症に関連する線維形成およびコラーゲン過剰発現を阻害し、肺線維症、腎臓線維症、心臓線維症、および肝線維症(hepatic fibrosis)を防止および処置することができることが報告されている(Bennett R.G., Transl. Res. 2009, 154(1): 1-6)。ヒト線維芽細胞をリラキシンで処理することにより、I型およびIII型コラーゲンならびにフィブロネクチンのレベルの低下が引き起こされた(Unemori E.N. et al., The Journal of Clinical Investigation 1996, 98(12): 2739-45)。in vivoでは、リラキシン-2により、ブレオマイシンによって誘導される肺におけるコラーゲンの集積が減少し、線維症の全体量が改善された(Unemori E.N. et al., The Journal of Clinical Investigation 1996, 98(12): 2739-45)。培養された腎臓線維芽細胞、上皮細胞およびメサンギウム細胞に関しては、リラキシン-2により、TGF-βにより誘導されるフィブロネクチンレベルが低下し、フィブロネクチン分解が増加した(McDonald G.A. et al., American Journal of Physiology Renal Physiology 2003, 285(1): F59-67)。リラキシン-2は、急速な薬物動態プロファイルを有することが示されている。リラキシン-2が、強皮症、急性心不全に対する処置として、および子宮頸部熟化による分娩誘発に関して調査された以前の臨床試験では、静脈内投与またはミニポンプによる皮下投与のいずれかによるリラキシン-2の連続した注入が利用された。リラキシン-2の有効性には、下流のシグナル伝達のための膜貫通リラキシン受容体の活性化が必要である。以前の臨床試験では、薬物動態的限定を克服するために、連続した注入が利用された。リラキシン-2を限局的に持続放出させると、連続した投与を必要とすることなく、持続的な受容体活性化が実現される。
【0088】
それに反する指定がなければ、「リラキシン」という用語は、本明細書で使用される場合、リラキシンまたはその類似体、断片(例えば、生物活性断片)もしくはバリアントを包含する。「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、インスリンスーパーファミリーに属するリラキシン様ペプチドファミリーの任意のメンバーを包含する。リラキシン様ペプチドファミリーには、リラキシン様(RLN)ペプチド、例えばリラキシン-1(RLN1)、リラキシン-2(RLN2)およびリラキシン-3(RLN3)、およびインスリン様(INSL)ペプチド、例えば、INSL3、INSL4、INSL5およびINSL6が含まれる。ヒトRLN1の代表的な配列が本明細書において配列番号4~7として記載されている;ヒトRLN2の代表的な配列が本明細書において配列番号1~3として記載されている;ヒトRLN3の代表的な配列が本明細書において配列番号8~10として記載されている;ヒトINSL3の代表的な配列が本明細書において配列番号11として記載されている;ヒトINSL4の代表的な配列が本明細書において配列番号12~13として記載されている;ヒトINSL5の代表的な配列が本明細書において配列番号14~15として記載されている;および、ヒトINSL6の代表的な配列が本明細書において配列番号16として記載されている。一部の実施形態では、「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、配列番号1~16のいずれかに対して少なくとも70%、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、96%、97%、98%または少なくとも99%の配列同一性を有する任意のポリペプチド、ならびに配列番号1~16のいずれかを含む任意のポリペプチド配列を包含し得る。本発明の一実施形態では、リラキシンは、RLN1、RLN2またはRLN3を含む。一実施形態では、リラキシンは、リラキシン-1を含む。別の実施形態では、リラキシンは、リラキシン-3を含む。好ましい実施形態では、リラキシンは、リラキシン-2である。本発明の別の実施形態では、リラキシンは、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6を含む。一実施形態では、リラキシンは、INSL3である。一実施形態では、リラキシンは、INSL4である。一実施形態では、リラキシンは、INSL5である。一実施形態では、リラキシンは、INSL6である。
【0089】
一部の実施形態では、リラキシンは、例えば、細菌、哺乳動物または酵母宿主細胞において組換えによって産生される。他の態様では、リラキシンは、完全にまたは部分的に化学合成されたものである。
【0090】
一部の実施形態では、リラキシンという用語は、リラキシンファミリータンパク質受容体(RXFP1、RXFP2、RXFP3、RXFP4)と相互作用することが可能な、受容体の形態、機能、または活性に影響を及ぼす任意の天然、合成、または半合成の組成物を包含する。これらの化合物には、これだけに限定されないが、ネイティブなリラキシン-2、リラキシン-2バリアント、ポリペプチド、DNAまたはRNAポリヌクレオチド、小分子、ならびに、以前に記載された、リラキシン-2タンパク質とコンジュゲートしたまたはそれと結び付いた化合物のいずれかが含まれる。
【0091】
「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、リラキシン様ペプチドファミリーの任意のメンバーも包含し得、それらには、リラキシン様(RLN)ペプチド、例えばリラキシン-1(RLN1)、リラキシン-2(RLN2)およびリラキシン-3(RLN3)、およびインスリン様(INSL)ペプチド、例えば、INSL3、INSL4、INSL5およびINSL6が含まれる。ヒトRLN1の代表的な配列が本明細書において配列番号4~7として記載されている;ヒトRLN2の代表的な配列が本明細書において配列番号1~3として記載されている;ヒトRLN3の代表的な配列が本明細書において配列番号8~10として記載されている;ヒトINSL3の代表的な配列が本明細書において配列番号11として記載されている;ヒトINSL4の代表的な配列が本明細書において配列番号12~13として記載されている;ヒトINSL5の代表的な配列が本明細書において配列番号14~15として記載されている;およびヒトINSL6の代表的な配列が本明細書において配列番号16として記載されている。「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、一部の実施形態では、配列番号1~16のいずれかに対して少なくとも70%、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の配列同一性を有する任意のポリペプチド、ならびに配列番号1~16のいずれかを含む任意のポリペプチド配列も包含する。製剤の一実施形態では、リラキシンは、RLN1、RLN2またはRLN3を含む。一実施形態では、リラキシンは、リラキシン-2である。別の実施形態では、リラキシンは、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6を含む。
【0092】
「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、一部の実施形態では、リラキシン様ペプチドファミリーの任意の変異体メンバーも包含し得る。そのような変異体は、例えば、RLN1、RLN2、RLN3、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6の既知の配列の1つまたは複数のアミノ酸(ネイティブまたは非ネイティブ)の1つまたは複数の変異、例えば、置換、付加または欠失を含むRLN1、RLN2、RLN3、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6であり得る。例えばリラキシン様ペプチドファミリーの変異体メンバーには、RLN1、RLN2、RLN3、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6の任意の天然に存在するまたは人工的に作製されたバリアントが含まれ得る。
【0093】
「リラキシン断片」または「リラキシンの断片」という用語は、本明細書で使用される場合、リラキシンの断片、すなわち、リラキシンファミリー受容体との相互作用を通じて関節の硬直を処置するその能力を保持する、リラキシン様ペプチドファミリーの任意のメンバーの部分配列を包含する。例としては、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願第EP1641824B1号(Relaxin superfamily peptide analogues)に記載されている配列が挙げられる。
【0094】
「リラキシン類似体」または「リラキシンの類似体」という用語は、リラキシンの生物学的活性、すなわち、リラキシンファミリー受容体と相互作用する能力を有する任意の非リラキシンポリペプチド配列を包含する。一実施形態では、そのようなポリペプチド配列は、プロラクチンまたはその類似体、断片もしくはバリアントを含み得る。別の実施形態では、そのような配列は、ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11, 49, 45511-45519に記載されているB7-33として公知のリラキシンの短縮型B鎖類似体を含み得る。
【0095】
一部の実施形態では、作用剤または「リラキシン類似体」という用語は、リラキシン受容体アゴニスト、例えばリラキシン受容体、例えば、RXFP1、RXFP2、RXFP3およびRXFP4のうちの1つまたは複数に結合し、それを活性化することができる任意の作用剤、例えば、小分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは多糖も包含し得る。例えばリラキシン受容体アゴニストは、リラキシンの受容体結合性部位を含むポリペプチドであってよい。リラキシン受容体アゴニストはまた、リラキシン受容体、例えば、RXFP1、RXFP2、RXFP3およびRXFP4に結合し、それを活性化することが可能な任意の他の配列を含むポリペプチドであってもよい。他の例としては、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第US20130237481A1号(Modified relaxin polypeptides and their uses)、米国特許出願第US20180222960A1号(Modified relaxin polypeptides comprising a pharmacokinetic enhancer and uses thereof)、米国特許出願第US8445635B2(Modified H2 relaxin for tumor suppression)、欧州特許出願第EP3067365A1号(Human relaxin analogue, pharmaceutical composition of same, and pharmaceutical application of same)、および米国特許出願第US20180222960A1号(Modified relaxin polypeptides comprising a pharmacokinetic enhancer and uses thereof)に記載されているアゴニストが挙げられる。
【0096】
「リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアント」という用語は、任意の組換えによって産生されたリラキシン、例えば、Novartisによって開発されたセリラキシン(RLX030)などを包含する。組換えリラキシン、例えばリラキシン-2を産生させるための方法は、例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,464,756号に記載されている。組換えによって産生されたリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントは、リラキシン配列、例えば、RLN1、RLN2、RLN3、INSL3、INSL4、INSL5またはINSL6、および、組換えによる産生後のリラキシンの精製を補助するためのヒスチジン(His)タグを含み得る。
【0097】
リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントはまた、1つまたは複数の化学修飾、例えばリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントに共有結合により付着した化学基も含み得る。そのような化学基には、例えば、炭水化物または他のポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、例えば、ポリペプチド、例えば、1つまたは複数の脂質が含まれ得る(Design and Synthesis of Potent, Long-Acting Lipidated Relaxin-2 Analogs, Bioconjugate Chem. 2019, 30, 1, 83-89)。他の例としては、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第US2018/0326079号(NOVELFATTYACIDS AND THEIR USE IN CONJUGATION TO BIOMOLECULES)、US9,931,372B2(SYNTHETIC APELIN FATTYACID CONJUGATES WITH IMPROVED HALF-LIFE)に記載されている断片またはバリアントが挙げられる。
【0098】
一部の実施形態では、RXLP1活性化の効果を延長または増強するために、リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントをML290またはその類似体、断片もしくはバリアントと同時投与する(Kocan, M., et al. Sci. Rep., 2017)。
【0099】
一部の実施形態では、リラキシンという用語は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの断片、例えば、抗体または抗体の断片に付着した、例えば、共有結合により付着したリラキシン、例えば、WO2017/100540に記載されている免疫グロブリン融合タンパク質を包含する。他の実施形態では、リラキシンという用語は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの断片を付着した、例えば、共有結合により付着したリラキシンを包含しない。
微小粒子、ならびにその組成物および製剤
【0100】
本明細書に記載の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子に関する。例示的な脂肪族ポリエステルとしては、ポリ-ラクチド-co-グリコリド、またはポリカプロラクトンが挙げられる。
【0101】
一実施形態では、微小粒子は、ビニルポリマーをさらに含む。例示的なビニルポリマーとしては、ポリ(ビニルアルコール)またはポリ(ピロリドン)が挙げられる。
【0102】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、微小粒子の直径は1~100μmである。
【0103】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、抗線維化剤は、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する。
【0104】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、脂肪族ポリエステルの分子量は、10,000~200,000ダルトンである。
【0105】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子である。
【0106】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、微小粒子の直径は、1~100μmである。
【0107】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、抗線維化剤は、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する。
【0108】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子であり、脂肪族ポリエステルの分子量は、10,000~200,000ダルトンである。
【0109】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、微小粒子の直径は、1~100μmである。
【0110】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、抗線維化剤は、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する。
【0111】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、脂肪族ポリエステルの分子量は、10,000~200,000ダルトンである。
【0112】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、微小粒子の直径は、1~50μmである。
【0113】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、抗線維化剤は、リラキシンであり、総質量の0.1~33%の量で存在する。
【0114】
本明細書の別の態様は、脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子であり、脂肪族ポリエステルの分子量は、10,000~200,000ダルトンである。
【0115】
一実施形態では、製剤(例えば、抗線維化剤、リラキシン、ビニルポリマー、脂肪族ポリエステルなど)の特色が、質量パーセンテージ;重量パーセント;総質量に対するパーセントなどで表された特定の量である場合、別段の指定のない限り、パーセンテージは、溶液中に懸濁していない微小粒子に基づく。そのような状況では、特許請求される製剤が溶液中に懸濁した微小粒子を含む場合、質量パーセンテージは、それでも、微小粒子および懸濁溶液を含む溶液全体ではなく、微小粒子としての質量パーセンテージを指す。
【0116】
医薬組成物
【0117】
本明細書の種々の態様は、本明細書に記載の微小粒子のいずれかを含む組成物に関する。種々の実施形態では、組成物は、医薬組成物である。
【0118】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、活性成分(例えばリラキシンなどの抗線維化剤)と組み合わせた場合に、成分が生物学的活性を保持することを可能にし、また、対象の免疫系と非反応性である、任意の材料または物質を包含し得る。例としては、これだけに限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液、油/水エマルションなどのエマルション、および種々の型の湿潤剤(wetting agent)などの標準の医薬担体のいずれかが挙げられる。「薬学的に許容される」という句は、本明細書では、良好な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または併発症を伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するために適した、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すように使用される。
【0119】
「薬学的に許容される担体」という句は、本明細書で使用される場合、対象作用剤を体の1つの器官または部分から体の別の器官または部分に運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入用材料を意味する。組織培養培地は「薬学的に許容される担体」という用語から除外される。各担体は、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならず、例えば、担体は、処置に関する作用剤の影響を低減しないものである。言い換えれば、担体は、薬学的に不活性である。「生理的に耐容される担体」および「生体適合性送達ビヒクル」という用語は互換的に使用される。医薬担体の非限定的な例としては、粒子またはポリマーに基づくビヒクル、例えば、ナノ粒子、微小粒子、ポリマーマイクロスフェア、またはポリマー-薬物コンジュゲートなどが挙げられる。
【0120】
一部の実施形態では、医薬組成物は、液体剤形または固体剤形である。経口投与用の液体剤形としては、これだけに限定されないが、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。さらに、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物などの、当技術分野で一般に使用される不活性な希釈剤を含有し得る。不活性な希釈剤に加えて、経口用組成物は、湿潤剤(wetting agent)、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、ならびに香料などの補助剤も含み得る。
【0121】
一部の実施形態では、液体剤形を、ポイント・オブ・ケア時またはその近くで、提供された本明細書に開示される製剤の凍結乾燥物または凍結乾燥粉末を希釈剤溶液を使用して再構成するまたは再懸濁させることによって調製する。
【0122】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固体剤形では、本明細書に記載の作用剤を、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、ならびに/または、a)充填剤もしくは増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸など、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴムなど、c)湿潤剤(humectant)、例えば、グリセロールなど、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、および炭酸ナトリウムなど、e)溶解遅延剤、例えば、パラフィンなど、f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物など、g)湿潤剤(wetting agent)、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土など、ならびにi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、ならびにこれらの混合物と混合する。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形は緩衝剤も含み得る。
【0123】
同様の型の固体組成物を、例えば、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用することにより、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセルに充填剤として使用することもできる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤という固体剤形は、腸溶コーティングおよび医薬製剤の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらの固体剤形は、必要に応じて、乳白剤を含有し、また、腸管のある特定の部分において活性成分(複数可)のみを、または活性成分(複数可)を優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。同様の型の固体組成物を、例えばラクトースまたは乳糖ならびに高分子量のポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用して、軟充填ゼラチンカプセルおよび硬充填ゼラチンカプセルに充填剤として使用することもできる。
【0124】
一部の実施形態では、固体剤形は凍結乾燥粉末である。
【0125】
一部の剤形では、凍結乾燥粉末である固体剤形は、希釈剤を用いて再懸濁または再構成させることが意図されたものである。
【0126】
作用剤はまた、上記の1つまたは複数の賦形剤と共にマイクロカプセル封入された形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤という固体剤形は、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび医薬製剤の技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固体剤形では、作用剤をスクロース、ラクトースおよびデンプンなどの少なくとも1種の不活性な希釈剤と混和することができる。そのような剤形は、通常の慣例と同様に、不活性な希釈剤以外の追加的な物質、例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶セルロースなども含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。これらの固体剤形は、必要に応じて、乳白剤を含有し、また、腸管のある特定の部分において活性成分(複数可)のみを、または活性成分(複数可)を優先的に、必要に応じて遅延様式で放出する組成物であってもよい。使用することができる包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。
【0127】
医薬組成物には、それぞれが所定量の活性化合物を含有する別個の単位、例えば、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、シロップ剤、エリキシル剤、加工食品、マイクロエマルション、溶液、懸濁剤、ロゼンジ、もしくはゲル-コーティングされたアンプルなどとして;散剤もしくは顆粒剤として;水性液もしくは非水性液中の溶液もしくは懸濁剤として;または水中油エマルションもしくは油中水エマルションとして提供することができる、経口投与に適した製剤が含まれる。
【0128】
適宜に、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、水性または油性懸濁剤、分散可能な散在または顆粒剤、エマルション、溶解する固体材料、圧注液などを含めた、直腸内投与に適した製剤を使用することができる。製剤は、坐薬基剤を形成する1種または複数種の固体担体、例えばカカオバター中に活性成分を含む単位用量坐剤として提供されることが好ましい。そのような製剤に適した担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、およびこれらの組合せが挙げられる。あるいは、本発明の迅速再定着展開剤(rapid recolonization deployment agent)を用いた結腸洗浄液を結腸または直腸内投与用に製剤化することができる。
【0129】
本発明は、ポリペプチド治療薬をそれを必要とする対象に送達するための持続放出製剤を提供する。本発明の持続放出製剤は、作用剤のハイドロゲル、微小粒子またはいくつかのマトリックス封入からなる。作用剤の1つの例はリラキシンである。持続放出は、デポ剤支持材料に封入されたまたはリンカーを介して化学的に結合した作用剤、例えばリラキシンを含む。リンカーは、ポリマー、切断不可能なリンカー、または化学的もしくは酵素的手段のいずれかによって切断可能なリンカーを含み得る。デポ剤は、in situで、作用剤と材料を混合した後に形成することができる。デポ剤は、リラキシンと材料を混合する前に形成することができる。
【0130】
作用剤、例えばリラキシンを含む持続放出製剤は、1つまたは複数のポリマーを含むハイドロゲルまたは微小粒子の形態であってよい。持続放出リラキシン製剤に使用することができるポリマーとしては、これらに限定することなく、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギネート、アガロース、ポリ(エチレングリコールジメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ-ラクチド-co-グリコリド、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、ペクチン、ポリ(リシン)、ポリヒドロキシブチレート、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アクリレート)、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニックポリオール、ポリオキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(無水物)、ポリ(ビニルピロリドン)、双頭型両親媒性分子、グリコシル-ヌクレオシド、およびフルオロカーボン鎖を挙げることができる。
【0131】
本明細書に記載の態様のいずれかの一部の実施形態では、作用剤を対象に制御放出または遅延放出手段によって投与する。最適に設計された制御放出調製物の医学的処置における使用は、状態を最小限の期間内で治癒させるまたは制御するために最小限の原薬が使用されることを特徴とすることが理想的である。制御放出製剤の利点として以下が挙げられる:1)薬物の活性が延長されること;2)投薬頻度が低減すること;3)患者の服薬遵守が高まること;4)薬物の総使用量が減少すること;5)局所的または全身性の副作用が低減すること;6)薬物蓄積が最小化されること;7)血中レベルのゆらぎが低減すること;8)処置の有効性が改善されること;9)薬物活性の相乗作用または喪失が低減すること;および10)疾患または状態の制御のスピードが改善されること(Kim, Cherng-ju, Controlled Release Dosage Form Design, 2 (Technomic Publishing, Lancaster, Pa.: 2000))。制御放出製剤を使用して、式(I)の化合物の作用の開始、作用の持続時間、治療域内の血漿中レベル、および血中レベルのピークを制御することができる。特に、制御放出または長期放出剤形または製剤を使用して、作用剤の最大効果が実現されると同時に、薬物の過少量投薬(すなわち、最低治療レベルを下回ること)ならびに薬物の毒性レベルを超えることのどちらによっても生じる恐れがある潜在的な有害作用および安全性の懸念が最小化されることを確実にすることができる。
【0132】
種々の公知の制御放出または長期放出剤形、製剤、およびデバイスを本明細書に記載の任意の作用剤と共に使用するために適合させることができる。例としては、これだけに限定されないが、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;同第4,008,719号;同第5,674,533号;同第5,059,595号;同第5,591,767号;同第5,120,548号;同第5,073,543号;同第5,639,476号;同第5,354,556号;同第5,733,566号;および同第6,365,185号に記載されているものが挙げられる。これらの剤形を使用して、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、浸透性膜、浸透系(例えば、OROS(登録商標)(Alza Corporation、Mountain View、Calif.USA)など)、多層コーティング、微小粒子、リポソーム、またはマイクロスフェアまたはこれらの組合せを様々な割合での所望の放出プロファイルをもたらすために使用して1つまたは複数の活性成分の遅延放出または制御放出をもたらすことができる。さらに、イオン交換材料を使用して、本開示の化合物を固定化された吸着した塩の形態に調製し、したがって、薬物の制御送達をもたらすことができる。特定の陰イオン交換体の例としては、これだけに限定されないが、DUOLITE(登録商標)A568およびDUOLITE(登録商標)AP143(Rohm&Haas、Spring House,Pa.USA)が挙げられる。
【0133】
一部の実施形態では、リラキシンを負荷させる前または後の任意の上述のポリマーを、これだけに限定されないが、ゲル浸透クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー、MALDI-TOF質量分析、粘度測定、および光散乱(例えば、多角度、小角レーザー)を含めた技法によって特徴付けることができる(例えば、サイズ、分子量、電荷、二次構造、および純度)。
【0134】
一部の実施形態では、リラキシンの放出速度を、これだけに限定されないが、高速液体クロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着検定法、およびリガンド結合アッセイを含めた技法によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、リラキシンの放出速度を、製剤もその中に存在する、任意の生体に関連する液体溶液または懸濁液または培地(例えば、生理食塩水、哺乳動物細胞培養培地、合成滑液、滑液、血清、合成血清、血漿、合成血漿および脱イオン水)中のリラキシンの濃度として測定する。特定の実施形態では、製剤および生体に関連する液体溶液または懸濁液を特定の温度で維持する。特定の実施形態では、製剤および生体に関連する液体溶液または懸濁液を設定されたまたは変動する運動速度で撹拌または混合する。特定の実施形態では、生体に関連する液体溶液または懸濁液中に放出されるリラキシンの濃度を、直接酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。特定の実施形態では、生体に関連する液体溶液または懸濁液中に放出されるリラキシンの濃度を、間接酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。特定の実施形態では、生体に関連する液体溶液または懸濁液中に放出されるリラキシンの濃度を、サンドイッチ酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。好ましい実施形態では、生体に関連する液体溶液または懸濁液中に放出されるリラキシンの濃度を、Bio-techne corporationのHuman Relaxin-2 Quantikine ELISA Kitを使用して測定する。
【0135】
一部の実施形態では、リラキシン微小粒子のサイズおよび形態(例えば、直径、球形度、および多孔度)を、これだけに限定されないが、動的光散乱、コールターカウンター、顕微鏡、ふるい分析、動的画像解析、静的画像解析、およびレーザー回析を含めた技法によって特徴付けることができる。
【0136】
一部の実施形態では、リラキシン微小粒子中のリラキシンの総負荷含有量(例えば、重量/体積としてのリラキシンのパーセント、重量/重量としてのリラキシンのパーセント)を、これだけに限定されないが、物質収支、高速液体クロマトグラフィー、超高速液体クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着検定法、およびリガンド結合アッセイを含めた技法によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、リラキシンの総負荷含有量を評価するために、製剤を精製し、溶解させることができる。
【0137】
一部の実施形態では、リラキシン微小粒子中のリラキシンの総負荷含有量(すなわち、質量)を、製剤全体を溶解させることができる任意の液体溶液、懸濁液または培地(例えば、生理食塩水、哺乳動物細胞培養培地、合成滑液、滑液、血清、合成血清、血漿、合成血漿、塩化メチレン、アセトニトリル、酢酸エチル、および脱イオン水)中のリラキシンの濃度として測定する。特定の実施形態では、液体溶液、懸濁液、または培地中に製剤を溶解させた後のリラキシンの濃度を、直接酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。特定の実施形態では、液体溶液、懸濁液、または培地中に製剤を溶解させた後のリラキシンの濃度を、間接酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。特定の実施形態では、液体溶液、懸濁液、または培地中に製剤を溶解させた後のリラキシンの濃度を、サンドイッチ酵素結合免疫吸着検定法を使用して測定する。好ましい実施形態では、液体溶液、懸濁液、または培地中に製剤を溶解させた後のリラキシンの濃度を、Bio-techne corporationのHuman Relaxin-2 Quantikine ELISA Kitを使用して測定する。
【0138】
ある特定の実施形態では、持続放出製剤は、PEG、例えば、直鎖状PEGまたは分枝PEGを含む。ある特定の実施形態では、PEGの分子量は、0.2kDaよりも大きい、0.5kDaよりも大きい、1kDaよりも大きい、5kDaよりも大きい、10kDaよりも大きい、または20kDaよりも大きい。
【0139】
一部の実施形態では、ハイドロゲルは、ハイドロゲルを調製するためにデンドロンと反応させるチオエステルを内部に有するPEGに基づく架橋剤で構成される。これらのハイドロゲルを様々な重量パーセントで調製して機械的特性をモジュレートすることができる。特定の実施形態では、内部のチオエステルにより、システインメチルエステル溶液を使用することによる制御された溶解が可能になる。特定の実施形態では、これだけに限定されないが、放出プロファイル、ヤング率、剛性率、疎水性、および弾性を含めたゲル材料の特性を、チオエステル部分を改変してハイドロゲルの材料特性をモジュレートすることにより、変動させることができる。
【0140】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ポリ-ラクチド-co-グリコリドである。
【0141】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、ポリカプロラクトンである。
【0142】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルの分子量は、10,000~200,000ダルトン;10,000~150,000ダルトン;または25,000~125,000ダルトン;または40,00~100,000ダルトン;10,000~30,000ダルトン;30,000~50,000ダルトン;50,000~70,000ダルトン;70,000~90,000ダルトン;90,000~120,000ダルトン;または120,000~150,000ダルトンである。
【0143】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、エステル官能基で終わるものである。
【0144】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、アルキル-エステル官能基で終わるものである。
【0145】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、カルボン酸官能基で終わるものである。
【0146】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、アミン官能基、イソシアネート官能基、イソチオシアネート官能基、フッ化ベンゾイル官能基、マレイミド官能基、ヨードアセトアミド官能基、2-チオピリジン官能基、3-アリールプロピオロニトリル官能基、ジアゾニウム塩、アルデヒド、ケトン、アジド、アルキン、シクロオクチン、またはホスフィンで終わるものである。本明細書の任意の態様の一実施形態では、これらの官能基により、PLGAと生体分子のバイオコンジュゲーションが可能になる。
【0147】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、ポリ(ビニルアルコール)であるビニルポリマーを含む。
【0148】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、ポリ(ピロリドン)であるビニルポリマーを含む。
【0149】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、分子量が10,000~200,000ダルトン;10,000~150,000ダルトン;または25,000~125,000ダルトン;または40,00~100,000ダルトン;10,000~30,000ダルトン;30,000~50,000ダルトン;50,000~70,000ダルトン;70,000~90,000ダルトン;90,000~120,000ダルトン;または120,000~150,000ダルトンであるビニルポリマーを含む。
【0150】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、微小粒子の直径は、1~100μmである。
【0151】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、微小粒子の直径は、1~75μm;または1~50μm;または5~50μm;または25~50μm;または30~50μm;または40~50μm;または5~10μm;5~8μm;8~12μm;12~18μm;18~25μm;25~35μm;35~45μm;45~50μm;1μm;2μm;3μm;4μm;5μm;6μm;7μm;8μm;9μm;10μm;15μm;20μm;25μm;30μm;35μm;40μm;45μm;50μm;75μm;100μm;150μm;または200μmである。
【0152】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、脂肪族ポリエステルは、15:85~25:75のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;25:75~35:65のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;35:65~45:55のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;45:55~55:45のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;55:45~65:35のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;65:35~75:25のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;75:25~85:15のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;約50:50のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;約45:55のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;約55:45のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;約40:60のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリド;または約60:40のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである。
【0153】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、総質量の約0.01~0.1%;総質量の0.1~0.3%;総質量の0.2~0.9%;総質量の0.3~0.7%;総質量の0.4~0.6%;総質量の0.3~0.6%;総質量の0.6~1.0%;総質量の1.0~5.0%;総質量の5.0~10.0%;総質量の10.0~30.0%;総質量の0.1%;総質量の0.2%;総質量の0.3%;総質量の0.4%;総質量の0.5%;総質量の0.6%;総質量の0.7%;総質量の0.8%;総質量の0.9%;総質量の10%;総質量の15%;総質量の20%;総質量の25%;総質量の30%;または総質量の33%であるビニルポリマーを含む。
【0154】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、抗線維化剤は、製剤の総質量の0.005~5%である。本明細書の任意の態様の一実施形態では、抗線維化剤は、0.01~10%、0.01~33%、または製剤の総質量の0.1~5%;または製剤の総質量の0.2~4%;または製剤の総質量の0.3~3%;または製剤の総質量の0.5~2%;または製剤の総質量の0.5~1.5%;または製剤の総質量の0.5~3%;または製剤の総質量の1~2%;または製剤の総質量の1~5%;または製剤の総質量の3~7%;または製剤の総質量の5~10%である。
【0155】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、抗線維化剤は、製剤の総質量の約0.005~0.01%;製剤の総質量の0.01~0.05%;製剤の総質量の0.05~0.1%;製剤の総質量の0.1~0.5%;製剤の総質量の0.5~1.0%;製剤の総質量の1.0~2.5%;製剤の総質量の2.5~5.0%;製剤の総質量の0.25%;製剤の総質量の0.5%;製剤の総質量の0.75%;製剤の総質量の1%;製剤の総質量の1.25%;製剤の総質量の1.5%;製剤の総質量の1.75%;製剤の総質量の2%;製剤の総質量の2.5%;製剤の総質量の3%;または総質量の製剤の5%である。
【0156】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、約50:50のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む。
【0157】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、約50:50のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシンおよび約0.0重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む。
【0158】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、約60:40のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む。
【0159】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、40:60のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む。
【0160】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、液体溶液中に懸濁した微小粒子を含む。
【0161】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、塩化ナトリウム液体溶液中に懸濁した微小粒子を含む。
【0162】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、塩化ナトリウム液体溶液中に懸濁した微小粒子を含み、塩化ナトリウムは、液体溶液の0.5~1.5w/w%;または0.75~1.25w/w%;または約0.5w/w%;または約0.6w/w%;または約0.7w/w%;または約0.8w/w%;または約0.9w/w%;または約1.0w/w%;または約1.1w/w%;または約1.2w/w%;または約1.3w/w%;または約1.4w/w%;または約1.5w/w%である。
【0163】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含む。
【0164】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含み、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液は、液体溶液の0.1~1.0w/w%;または0.25~0.75w/w%;または約0.1w/w%;または約0.2w/w%;または約0.3w/w%;または約0.4w/w%;または約0.5w/w%;または約0.6w/w%;または約0.7w/w%;または約0.8w/w%;または約0.9w/w%;または約1.0w/w%である。
【0165】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、持続放出製剤である。
【0166】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、持続放出製剤であり、抗線維化剤が長期間にわたって放出される。
【0167】
リラキシンに持続的な臨床的抗線維化効果を発揮させるためには、経時的なリラキシンの濃度が持続的な時間にわたって最小有効濃度を超えることが生理的に望ましい。リラキシンのボーラス投薬は動物において効果的でないことが報告されている。リラキシンの持続的投薬は動物において効果的であることが報告されている。
【0168】
リラキシンの一定した持続的投薬は、リラキシンを微小粒子から直線的な放出速度(すなわち、ボーラス効果またはバースト放出効果があるもの)で放出させることによって実現することができる。
【0169】
本明細書の任意の態様の一実施形態では、製剤は、持続放出製剤であり、抗線維化剤が、少なくとも1日;または少なくとも2日間;または少なくとも3日間;または少なくとも4日間;または少なくとも5日間;または少なくとも6日間;または少なくとも1週間;または少なくとも2週間;または少なくとも3週間;または少なくとも4週間;または少なくとも5週間、または少なくとも6週間;または少なくとも8週間;または少なくとも9週間;少なくとも10週間;または少なくとも12週間;または少なくとも15週間;または1~5日間;または2~5日間;または1~2日間;または2~3日間;または3~4日間;または4~5日間;または3~10日間;または1~15週間;または2~10週間;または4~8週間;または8~15週間;または約1日;または約2日間;または約3日間;または約4日間;または約5日間;または約6日間;または約1週間;または約2週間;または約3週間;または約4週間;または約5週間;または約6週間;または約7週間;または約8週間;または約9週間;または約10週間の、またはそれよりも長い長期間にわたって放出される。
線維症に関連する疾患または障害の処置
【0170】
一部の実施形態では、本明細書に記載の製剤を対象に投与する。一部の実施形態では、本明細書に記載の製剤を対象の体の器官または場所、対象における疾患または徴候を、表1および/または表2に記載されている投与経路を使用して処置するために使用する。
【0171】
【0172】
【0173】
一部の実施形態では、表1または表2に列挙されている疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患を有すると診断された対象を同定するステップと、本発明の製剤を対象に投与するステップとを伴う方法が提供される。一部の実施形態では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、I型脊髄性筋萎縮症、II型脊髄性筋萎縮症、III型脊髄性筋萎縮症、IV型脊髄性筋萎縮症、脳性麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷、末梢神経損傷、および先天性多発性関節拘縮症、腕橈関節の線維症、腕尺関節の線維症、肩甲上腕関節の線維症、脛骨大腿骨関節の線維症、股関節(acetabulofemoral joint)の線維症、距腿関節の線維症、顎関節の線維症、中手指節関節の線維症、中足指節関節の線維症、関節周囲筋組織の線維症およびセルライトからなる疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患と診断された対象を同定するステップと、前記患者に本発明の組成物または製剤を投与するステップとを伴う方法が提供される。
【0174】
関節の硬直
【0175】
本明細書に開示される種々の組成物および方法は、関節硬直の種々の態様、前駆症および関連する障害を処置するために有用であり得る。関節硬直は、現行の処置選択肢では変動する限定されたアウトカムがもたらされている、重大な公衆衛生問題である。関節硬直は、体のあらゆる関節、例えば、肩関節、肘関節、手首関節、指関節、股関節(hip joint)、膝関節、足首関節、足指関節、脊椎および顎などに影響を及ぼし得、肩関節が関節硬直の影響を受けることも多く、これは、拘縮肩とも称され、また、「凍結肩」としても公知である。
【0176】
拘縮肩は、米国の人口のおよそ2%、またはおよそ6百万個体に影響を及ぼしている。女性の方が男性よりも多く影響を受けることも多いが、遺伝学的または人種偏好は分かっていない(Robinson C.M. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2012, 94(1): 1-9;Ewald A., Am. Fam. Physician 2011, 83 (4): 417-22)。拘縮肩の回復は困難であり、時間がかかり、著しい数の患者が完全な関節機能を取り戻すことができない。この状態は、生活の質および生産性の両方に影響を及ぼす。その主な特色は、進行性の肩甲上腕関節包の線維症に起因して、能動的および受動的な肩甲上腕の動きの両方が有痛性に徐々に失われることである。収縮した関節包(capsule)により、特にそれが急に引き延ばされた時に疼痛が引き起こされ、動きの機械的制限が生じる。一次性(特発性)拘縮肩の疾患経過は疼痛および硬直の緩徐な発症(2~9カ月にわたる)で始まり、それが次第に、肩甲上腕関節の受動的および能動的な可動域(ROM)の両方を制限するようになる(Sharma S., Annals of the Royal College of Surgeons of England 2011 93 (5): 343-4;discussion 5-6)。疼痛は夜間に激しくなる可能性があり、患者は影響を受けている側を下にして眠ることができなくなる。続いて、疼痛は一般に4~12カ月の期間にわたって和らぐが、硬直によりROMが、特に外旋面に重度に制限される。ROMは2~4年の期間にわたって緩徐に改善される。二次性拘縮肩は、同様の発出および進行を有するものであるが、既知の内因的または外因的原因によるものである(Sheridan M.A. and Hannafin J.A., Orthop. Clin. North Am. 2006, 37(4): 531-9)。外傷または外科手術後二次性拘縮肩のこれらの事象後の種々の程度での発生率は100%であり、持続的な理学療法が必要であり、必ずしも元の動きが戻るとは限らない。
【0177】
拘縮肩の病理は、腋窩ひだが消える癒着を伴う肩甲上腕関節包の肥厚である。線維化関節包がそれ自体および上腕骨の解剖頸と癒着し、関節内の容積が減少し、関節内の滑液が著しく減少する(Hand G.C. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2007, 89(7): 928-32)。関節包(capsule)の生検により、慢性炎症性浸潤、滑膜の内層が存在しないこと、および滑膜下線維症が示される(Ozaki J. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1989, 71(10): 1511-5;Wiley A.M., Arthroscopy 1991, 7(2): 138-43;Rodeo S.A. et al., J. Orthop. Res. 1997, 15(3): 427-36)。患者生検試料から、T細胞、B細胞、滑膜細胞、線維芽細胞および転換性筋線維芽細胞がI型およびIII型コラーゲンと共に存在することが確認される(Rodeo S.A. et al., J. Orthop. Res. 1997, 15(3): 427-36;Bunker T.D. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2000, 82(5): 768-73)。遺伝子およびタンパク質発現アッセイにより、COL1A1およびCOL1A3、インターロイキン-6、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)およびマトリックスメタロプロテイナーゼの阻害物質(TIMP)の増加、ならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性の低下を含めた、線維症、炎症、および軟骨形成に関連する産物が見出されている(Hagiwara Y. et al., Osteoarthritis Cartilage 2012, 20(3): 241-9)。これらのデータは、炎症性の変化により、線維芽細胞および免疫細胞の動員、線維化プロセスの促進ならびにコラーゲンの不適切な沈着が開始されることを示すものである。あるいは、線維化変化が最初に起こり、その後に炎症が続く場合もある。この場合、線維症は、コラーゲンのリモデリングを支配する細胞シグナル伝達経路に欠陥があり得る、基礎をなす疾患プロセスに起因し得る(Bunker T.D. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 2000, 82(5): 768-73)。例えば、合成TIMPであるマリマスタットを用いた処置を受けた患者に拘縮肩が発生し、マリマスタットを中断すると、疾患が退行した(Hutchinson J.W. et al., J. Bone Joint Surg. Br. 1998, 80(5): 907-8)。
【0178】
拘縮肩は、自己限定性疾患とみなされるが、回復には時間がかかり、困難であり、著しい数の患者が完全なROMを取り戻すことができない。保存的治療(すなわち、理学療法)に関する報告されたアウトカムは大幅に変動し、評価の仕方に大きく左右される(Neviaser A.S. and Neviaser R.J., J. Am. Acad. Orthop. Surg. 2011, 19(9): 536-42)。主観的なアウトカム評価基準を用いると、客観的なアウトカム評価基準を用いた場合よりも結果がより好都合なものになる傾向がある。1つの試験では、最低限の治療により処置された患者の90%が肩の機能に対して満足であると報告した(Griggs S.M. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 2000, 82-A(10): 1398-407)。しかし、客観的なアウトカムを使用した別の試験では、患者の50%において疼痛が残り、60%において動きの不十分さが残っていることが報告された(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992; 74(5): 738-46)。拘縮肩の症状は発症の4.4年後に軽度~中等度の症状が持続している可能性がある。重症疾患を被っている患者に関しては、そのような機能障害により日常活動および仕事関係の責任が妨げられる(Hand C. et al., Journal of Shoulder and Elbow Surgery 2008, 17(2): 231-6)。患者が保存的管理に応答しない場合、他の処置選択肢が利用可能である。麻酔下マニピュレーションの形態での手術介入により、動きを元に戻し、疼痛を低減させることができるが、これには、骨折、腱断裂、および神経損傷などの併発症が付随する(Castellarin G. et al., Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2004, 85(8): 1236-40;Hsu S.Y. and Chan K.M., International Orthopaedics, 1991, 15(2): 79-83;Parker R.D. et al., Orthopedics, 1989, 12(7): 989-90)。マニピュレーションまたは鏡視下関節包解離術では信頼できる一貫性のある結果がもたらされないという報告が複数存在する(Shaffer B. et al., J. Bone Joint Surg. Am. 1992, 74(5): 738-46;Ryans I. et al., Rheumatology 2005, 44(4): 529-35)。したがって、関節硬直に対するより効果的かつ一貫性のある治療が必要とされている。
【0179】
生物学的に活性な作用剤を生体適合性かつ生分解性ポリマーマトリックスに封入してから投与することにより、患者における効果的な治療レベルが持続する。ハイドロゲルおよび微小粒子は、埋め込み可能な構造である。これらは、生体適合性であり、無毒性構成物で作られたものであり、免疫原性でもなく刺激も引き起こさず、標的組織を構造的にも機械的にも妨害しないという設計であるので、治療的送達のために望ましい。意義深いことに、これらを目的のエリアに局所的に投与することができる。小分子薬物、DNAおよびタンパク質のマイクロカプセル封入および持続放出のために広範囲にわたって使用される材料の1つはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)である。PLGAは、生体適合性であり、そのペイロードを、ポリマーマトリックスからの拡散によって、およびポリマーマトリックスの分解によっての両方で放出する。分解は、体の水性環境によって触媒される、PLGAの、細胞の代謝の副生成物である乳酸およびグリコール酸への加水分解によって起こる。PLGAは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)により、ヒトへの投与に関して安全であるとみなされている(Han, F.C. et al., Front. Pharmacol. 2016, 7(185))。PLGA微小粒子は、乳酸とグリコール酸の比および乳化プロトコールを調整することによって持続的な薬物放出のために最適化することができる。しかし、異物応答が引き起こされることが報告されている。
【0180】
生物学的に活性な作用剤をラクチド、グリコリド共重合体微小粒子の内部に封入するための技法は公知である。作製技法は、一般に、2つの溶媒相、安定剤、および一方の相に溶解もしくは溶媒和させた生物学的に活性な作用剤の使用、または水/油/水(w/o/w)もしくは水/油(w/o)エマルションの使用のいずれかを含む。最初に述べた作製技法では、2つの相、生物学的に活性な作用剤および安定剤を乳化させ、次いで、一方の相を除去し、それにより、安定化された負荷された作用剤を伴う微小粒子が残る。w/o/w製作技法では、最初の水相は生物学的に活性な化合物を含有するかまたは含有せず、溶解されたポリマーマトリックスを含有する有機相内に乳化させ、次いで、第2の水相内に乳化させる。有機相を除去することにより、生物学的に活性な化合物を含有するまたは含有しない微小粒子が残る。とはいえ、使用される特定の方法およびPLGA組成物は封入材に高度に依存し、全ての封入材に対する一般的な手順/組成物は存在しない。
【0181】
再生医療および組織維持の分野で薬物送達システムとして具体的に使用するための別の有望な材料は、ハイドロゲルである。これらのハイドロゲルは、生物学的に活性な作用剤を封入することが可能なポリマーネットワークである。ハイドロゲルは、生体適合性、せん断減粘特徴、生分解などの、関連性のある生物学的特性を有し、負荷された生物学的に活性な作用剤の安定性にも活性にも影響を及ぼさない。
【0182】
ハイドロゲルの製剤の1つは、生物医学的適用のための注射可能な足場として作用する低分子量ゲル化剤(LMWG)のネットワークを伴う。LMWGは、小分子の自己組織化に由来する超分子構造に起因して、調整可能な生理化学的特性および生物学的特性を有する。具体的には、N-チミングリコシル化頭部基と脂質部分が尿素またはアミド官能基のいずれかを介して連結した双頭型両親媒性分子を有するLMWGが高いin vivo安定性で高速でゲル化し、マクロファージを活性化しないことが示されている(
図1)(Ramen, F.A. et al., Biomaterials. 2017, 145: 72-80)。別のLMWG製剤は、ハイドロゲル製剤の安定性を増大させる高度に組織化された構造に自己組織化する両親媒性物質としてグリコシル-ヌクレオシドとフルオロカーボン鎖の組合せを利用したものである(
図1)(Godeau, G., et al., Tetrahedron Letters 2010, 51: 1012-1015)。それらのLMWG製剤は、生体適合性、構造および純度に対する制御、タンパク質の組み入れを可能にする容易な取扱い手順、機械的安定性、ならびに細胞に対して無毒性であることを含めた多数の有利な特性が実証されている(Godeau, G., et al., Tetrahedron Letters 2010, 51: 1012-1015;Ramen, F.A. et al., Biomaterials. 2017, 145: 72-80)。
【0183】
別のハイドロゲルの製剤は、PEGに基づくハイドロゲルの使用である。この製剤では、PEGに基づくハイドロゲルには、生物学的に活性な作用剤がマトリックスに連結されたかまたは封入されたポリマーPEGマトリックスが含まれる。封入は、生物学的製剤をハイドロゲルに、重合の間に局在化させることによって行われる。作用剤の放出は、ハイドロゲルから組織中への拡散によって起こる。作用剤とハイドロゲルの化学結合の場合、その結合は切断可能な接続または切断不可能な接続のいずれかである。切断可能である場合、連結は、酵素に基づく機構または酵素に基づかない機構のいずれかに依拠する。
【0184】
主要な関節(articular joint)の硬性拘縮または線維症(関節線維症)は、多くの神経運動変性疾患の非常に限定性の共存症および後遺症である。これは、関節内の線維化コラーゲン性組織の蓄積として現れ、有痛性の長期にわたる関節可動域(ROM)の制限として顕在化し、これが不十分な可動性の一因となり、在宅ケア支援または施設収容が必要になる。
【0185】
関節の硬直は、進行性の神経運動障害を有する患者の肩、肘、膝、股関節部、手首、および足首に対して最も限定性ものであり得る。本明細書で提供される製剤および方法によって処置することができる、関節線維症を導く、異なる病因を有する変性疾患としては、これだけに限定されないが、デュシェンヌ型(DMD)およびベッカー型(BMD)筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー(CMD)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)、関節拘縮症、エメリー・ドレイフス型筋ジストロフィー(EMD)、緩徐進行性筋ジストロフィーのファミリー(肢帯型(LGMD)、顔面肩甲上腕型(FSH)、先天性筋緊張性の(CMMD))、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、特発性先天性内反足、ポリオ後症候群、全形態の脳性麻痺(1、2)、(CP)、脳卒中、外傷性脳損傷、および末梢神経損傷が挙げられる。これらの状態の発生率は、ジストロフィーについては人口100,000人当たりおよそ1~10例であり、脳性麻痺については出生数1000件当たり2~3例である(2)。これらの状態の管理に関する国の費用負担は著しいものであり、これらの疾患のうちの3つを管理するためだけで人口全体の国の費用が10億2300万ドル(ALS)、7億8,700万ドル(DMD)、および4億4,800万ドル(CMMD)になると推定される(3)。CDCは、2000年に出生した脳性麻痺を有する患者の集団の介護にかかる全体的な費用が115億を超えると推定している(4)。これらの費用は、医療費ならびに非医療費を表しており、主に筋骨格介護が占めている。
【0186】
神経運動変性状態または神経運動外傷、例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、および末梢神経損傷などを有する患者における関節線維症によって引き起こされる関節可動性の欠如は、さらなる筋緊張、筋線維症および瘢痕化、骨粗鬆症、二次変形、例えば、側弯症および下肢尖足など、ならびに皮膚の完全性の喪失の一因となる。最終的に、関節線維症の結果、歩く能力が失われ、日常生活動作が限定される。患者がもはや歩行することができない病期では、関節拘縮により、看護、安静位でいること、座ること、および衛生にさらに負担がかかる(1)。
【0187】
現在のところ、利用可能な手術によらない処置モダリティは、筋肉関連拘縮を減弱させるためにボツリヌス毒素補給を伴うまたは伴わない、持続的な理学療法、強制的な受動的ストレッチング、連続的なギプス固定、および固定具のみである(1)。線維化した関節の可動性を改善するための外科的介入としては、麻酔下でのマニピュレーション、腱および筋肉切離、ならびに罹患関節の鏡視下関節包解離または切除術が挙げられる(5)。麻酔下での関節のマニピュレーションでは、線維化した関節を強制的に可動化することにより、近接する骨粗鬆症の骨にそれが耐えられるよりも大きな圧力が導入されると、関節周囲および骨幹骨折が生じる恐れがある。多くの患者はまた、マニピュレーションまたは外科的解離の間の筋肉の抵抗を無効にするために麻痺性麻酔剤を適用するための挿管および換気が必要であることを考慮すると、候補として不十分である。長期間の拘縮後の急性の外科的関節解離およびマニピュレーションにより、重症の神経および血管伸展損傷も生じる可能性があり、一貫性のない結果および変動する再発率が伴う。
【0188】
これらの患者の全体的な健康および生活の質は、関節拘縮を消散させることを目的とした代替的な手術によらない処置モダリティによって著しく増強される。本発明は、一部の実施形態では、解決法を提供するものであり、収縮した関節を2~8週間の期間にわたって解離するための理学療法と併せて使用される、非外科的な診療所での関節内注射による治療である。
【0189】
本明細書で提供される種々の態様および実施形態、組成物および方法には、広範囲の対象に対して価値があり得る。神経運動変性疾患を有する患者は、高度に管理される集団であり、生涯にわたる集中的で費用のかかる医学的および非医学的支援を必要とする。現行の標準治療は、保存的処置または外科的介入のいずれかである。対照的に、本明細書で提供される組成物および方法は、一部の実施形態では、診療所における注射、外科手術の排除、および動けない患者に可動性をもたらすことに伴う治療的利益をもたらし、それにより、患者の全体的な健康および生活の質を改善し、支持療法の強度を低下させることができるものである。介護者、医師、および専門家はこのリスクを有する患者集団に対して外科手術を実施せずに関節運動を元に戻すことができる。患者にとっては、動きが改善されることが有益になり、関節可動性を維持するために必要な理学療法が減少する。患者は、状態が進行する長い期間にわたって、自身で動き、日常生活動作を行う自立した能力を保持する。患者は、全体的な筋骨格の健康の改善および心理社会的利益を享受する。支払人に対しては、患者が、より長く自宅で過ごすことができ、可動性が不十分であるという後遺症または自宅で十分な介護および衛生を実施できないことによる施設での介護が必要なくなる可能性が高いことに加えて、患者当たりの手術費が減少するので、これらの状態を管理するための全体的な健康管理費用が減少する。
【0190】
本発明は、それを必要とする対象における関節の硬直を処置または防止するための方法を提供する。方法は、対象に、リラキシンファミリー受容体の作用剤またはリガンド、リラキシン-2バリアント、単一ドメインラクダ科動物抗体断片、ペプチド配列、ポリヌクレオチド、または小分子を含めた標的化作用剤と化学的にコンジュゲートしたリラキシン-2を有効量で投与し、したがって、対象における関節の硬直または周囲組織エリアを処置するステップを含む。
【0191】
関節の硬直を処置するための現行の方法としては、理学療法または外科手術、例えば、マニピュレーションおよび解離などが挙げられ、これらでは信頼できるまたは一貫した結果は得られない(Diercks R.L. et al., J. Shoulder Elbow Surg. 2004, 13(5): 499-502)。理学療法は、理学療法士による持続的なマニピュレーションを伴うものであり、外科手術は、外科医による侵襲性の外科的解離、その後、再度持続的な治療を伴うものである。別の現行の方法であるPonseti法は、ストレッチング後の再ギプス固定の連続を伴い、時には収縮した腱の外科的解離を行うものである。
【0192】
本発明の方法は、一部の実施形態では、関節または組織エリアの硬直を確実にかつ有効に処置するために使用ことができ、一方で、使用する侵襲性の手順も最低限のもの、例えば、外来としてまたは診療所において実施することができる関節内注射であるので、多くの現在利用可能な方法と比較して有利である。したがって、本発明のいくつかの方法は、線維症に起因し得る関節の硬直、例えば、肩関節の管理に関するパラダイムシフトを構成する。本発明のいくつかの方法は、最低限に侵襲性の手順、例えば、リラキシン-2、例えば、持続放出製剤に封入されたリラキシン-2の関節内または関節周囲への注射を伴うものである。関節内注射は、必要に応じて、関節の硬直が首尾よく処置されるまで、例えば、関節の動きが元に戻り、動きの間の疼痛が除去されるまで、繰り返すことができる。本発明のいくつかの方法を使用すれば、現在利用可能な方法を使用した場合よりも著しく速くかつ有効に関節の硬直の上首尾の処置を実現することができる。
【0193】
関節の硬直、例えば肩関節の病理には、腋窩ひだが消える癒着を伴う肩甲上腕関節包の肥厚が含まれる。線維化関節包がそれ自体および上腕骨の解剖頸と癒着し、関節内の容積が減少し、関節内の滑液が著しく減少する。関節包(capsule)の生検では、慢性炎症性浸潤と、それと共に、線維芽細胞および転換性筋線維芽細胞がI型およびIII型コラーゲンと共に存在することが示される。遺伝子およびタンパク質発現アッセイにより、COL1A1およびCOL1A3、インターロイキン-6(IL-6)、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)およびTMPの増加、ならびにMMP活性の低下を含めた、線維症、炎症、および軟骨形成に関連する構成成分が見出されている。この証拠から、炎症性の変化により、線維芽細胞および免疫細胞の動員、線維化プロセスの促進および過剰なコラーゲンの不適切な沈着が開始されることが示される。あるいは、線維症が最初に起こり、その後に炎症が続く可能性もある。線維症は、コラーゲンのリモデリングを支配する細胞シグナル伝達経路の欠陥に続発する。
【0194】
特定の理論に縛られることを望むものではなく、作用剤、例えばリラキシンは、例えば、ハイドロゲルまたは粒子、関節内注射、持続放出製剤によって関節にまたは関節付近に送達されると、コラーゲン分解を促進し、それにより、滑膜における細胞外マトリックス(ECM)の恒常性を変更すると考えられる。この投与により、関節硬直の低減および関節の可動域の増大がもたらされる。
【0195】
一実施形態では、本発明の抗線維化作用剤を単独療法として投与する。一実施形態では、本発明の抗線維化作用剤を少なくとも1種の追加的な治療薬と共に投与する。例示的な追加的な治療薬としては、これだけに限定されないが、追加的な抗線維化治療薬または理学療法が挙げられる。
【0196】
一部の実施形態では、リラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントを、IFN-α、IFN-β、srli B、M3、MMP1、MMP8などの他のネイティブな抗線維化作用剤と同時投与する。さらに、リラキシン受容体以外の受容体を標的とする他の抗線維化作用剤:TGF-ベータ阻害剤(Esbriet、ピルフェニドン)、チロシンキナーゼ阻害剤(Ofev、ニンテダニブ)、PPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)アゴニスト(Ianifibranor、IVA337)、IL-1阻害剤(Arcalyst、リロナセプト)、IL-6阻害剤(Actmera、トシリズマブ)、B細胞阻害剤(リツキシマブ)、T細胞阻害剤(Orencia、アバタセプト)、リゾホスファチジン酸阻害剤(SAR100842、Sanofi)、ハロフジノン、d-ペニシラミン、コルヒチン、シクロスポリン、TGFベータ遮断薬、p38 MAPK遮断薬の使用。
【0197】
関節の硬直を処置するための方法
【0198】
本発明の一部の態様は、関節の硬直を処置または防止するための方法を提供する。本明細書で使用される場合、「処置すること(treating)」、「処置する(treat)」または「処置(treatment)」という用語は、これだけに限定されないが、1つまたは複数の関節の硬直に付随する症状(例えば、関節を動かした際の疼痛、関節の動きの低下または関節の可動域の減少)の緩和または好転;関節の硬直に起因する動かすことの制限の減弱;関節硬直の安定化(すなわち、悪化しないこと);検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、関節の硬直に起因する動かすことの制限(例えば、関節を動かした際の疼痛、関節の動きの低下または関節の可動域の減少)の好転または一時的緩和、を含めた有益なまたは所望の結果を指す。
【0199】
一部の実施形態では、本発明の方法により、関節の硬直の処置がもたらされ、したがって、関節を動かした際の疼痛が、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれよりも大きく低減し、好ましくは、関節の硬直の影響を受けていない個体の正常の範囲内に入る許容されるレベルまで下がる。
【0200】
一部の実施形態では、本発明の方法により、関節硬直の影響を受けている関節を動かせること、またはその可動域が元に戻る。例えば、本発明の方法に従った関節の硬直の処置により、関節硬直の影響を受けている関節を動かせること、またはその可動域が、関節の硬直の影響を受けていない個体の正常の範囲内に入る許容されるレベルの少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または100%のレベルまで、元に戻り得る。
【0201】
一部の実施形態では、本発明の方法によってもたらされる対象における関節の硬直の防止または処置は、著しい有害事象を伴わず、対象におけるコラーゲン構造または組織、例えば、関節のコラーゲン構造または組織、例えば、関節軟骨などに対するに著しい損傷を伴わずに実現される。例えば、本発明の方法は、関節のアーキテクチャを破壊しない、関節の硬直の防止または処置を提供する。体内のコラーゲン構造、例えば、関節のコラーゲン構造に対する損傷は、当技術分野で公知の方法によって、例えば、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)、アグリカン、II型コラーゲン、プロテオグリカン、MMPおよび炎症性メディエーターおよびサイトカインなどの滑液中の種々のマーカーのレベルを測定することによって評価することができる。MRIなどのイメージング技法を使用して、関節および軟骨アーキテクチャを可視化することもできる。
【0202】
一部の実施形態では、作用剤(例えばリラキシン)が負荷されたデポ剤を関節内に投与すると、リラキシンの全身投与に付随する著しい有害事象を伴わずに、本発明の方法による関節の硬直の防止または処置が実現される。全身性硬化症を処置するためのリラキシンの使用に関する第III相臨床試験では、24週間のリラキシンの皮下注入を受けた患者の一部においてクレアチンクリアランスおよび腎臓有害事象が低減した;しかし、全身性硬化症には腎臓生理機能の異常が付随し、影響を受けている患者は、リラキシン処置と組み合わせた場合にそのような腎臓の事象にかかりやすくなる恐れがある(Khanna, D., et al., Arthritis and Rheumatism 2009, 60(4): 1102-1111)。リラキシンを本発明の方法によって関節内投与する場合、関節の硬直の防止または処置のための投与中および投与後に、腎クリーゼおよび高血圧症の徴候について、血清クレアチンレベル、尿中タンパク質レベル、血液細胞計数、血液中のヘモグロビン濃度ならびに収縮期血圧および拡張期血圧をモニタリングする。
【0203】
本明細書に提示される一態様は、表1または表2に列挙されている疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患を有すると診断された対象を同定するステップと、前述の実施形態のいずれか1つの製剤を対象に投与するステップとを含む方法である。
【0204】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0205】
本明細書に提示される別の態様は、ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0206】
本明細書に提示される別の態様は、I型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0207】
本明細書に提示される別の態様は、II型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0208】
本明細書に提示される別の態様は、III型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0209】
本明細書に提示される別の態様は、IV型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0210】
本明細書に提示される別の態様は、脳性麻痺と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0211】
本明細書に提示される別の態様は、先天性多発性関節拘縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0212】
本明細書に提示される別の態様は、腕橈関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0213】
本明細書に提示される別の態様は、腕尺関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0214】
本明細書に提示される別の態様は、肩甲上腕関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0215】
本明細書に提示される別の態様は、脛骨大腿骨関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0216】
本明細書に提示される別の態様は、股関節(acetabulofemoral joint)の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0217】
本明細書に提示される別の態様は、距腿関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0218】
本明細書に提示される別の態様は、顎関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0219】
本明細書に提示される別の態様は、中手指節関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0220】
本明細書に提示される別の態様は、中足指節関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0221】
本明細書に提示される別の態様は、関節周囲筋組織の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0222】
本明細書に提示される別の態様は、セルライトを有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0223】
本明細書に提示される別の態様は、間質性肺疾患を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法である。
【0224】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤をエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法である。
【0225】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0226】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0227】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を皮内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0228】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を皮下注射によって投与するステップを含む方法である。
【0229】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を嚢内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0230】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を被膜周囲への注射によって投与するステップを含む方法である。
【0231】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を靭帯内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0232】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を靭帯周囲への注射によって投与するステップを含む方法である。
【0233】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を腱内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0234】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を腱周囲への注射によって投与するステップを含む方法である。
【0235】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋腱内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0236】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋腱周囲への注射によって投与するステップを含む方法である。
【0237】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を骨腱内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0238】
本明細書に提示される別の態様は、前述の対象のいずれかに、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を骨腱周囲への注射によって投与するステップを含む方法である。
【0239】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0240】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0241】
本明細書に提示される別の態様は、ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0242】
本明細書に提示される別の態様は、ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0243】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0244】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0245】
本明細書に提示される別の態様は、先天性多発性関節拘縮症と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0246】
本明細書に提示される別の態様は、先天性多発性関節拘縮症と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0247】
本明細書に提示される別の態様は、脳性麻痺と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0248】
本明細書に提示される別の態様は、脳卒中と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0249】
本明細書に提示される別の態様は、脳卒中と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0250】
本明細書に提示される別の態様は、外傷性脳損傷と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0251】
本明細書に提示される別の態様は、外傷性脳損傷と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0252】
本明細書に提示される別の態様は、末梢神経損傷と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0253】
本明細書に提示される別の態様は、末梢神経損傷と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を、関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0254】
本明細書に提示される別の態様は、脳性麻痺と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0255】
本明細書に提示される別の態様は、1μm~10μmのサイズを有する前述の実施形態のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法である。
【0256】
本明細書に提示される別の態様は、20μm~100μmのサイズを有する前述の実施形態のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0257】
本明細書に提示される別の態様は、5μm~50μmのサイズを有する前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0258】
本明細書に提示される別の態様は、間質性肺疾患と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法である。
【0259】
本明細書に提示される別の態様は、間質性肺疾患と診断された対象に、前述の実施形態のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法である。
【0260】
本明細書に提示される別の態様は、間質性肺疾患と診断された対象に、微小粒子の直径が1~10μmである前述の実施形態のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法である。
【0261】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0262】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0263】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の実施形態のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0264】
本明細書に提示される別の態様は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の実施形態のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0265】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0266】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0267】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の実施形態のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0268】
本明細書に提示される別の態様は、脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の実施形態のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0269】
本明細書に提示される別の態様は、関節線維症(joint arthrofibrosis)と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0270】
本明細書に提示される別の態様は、関節線維症(joint arthrofibrosis)と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の実施形態のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法である。
【0271】
本明細書に提示される別の態様は、製剤が、エアロゾルとしての吸入によって送達される、前述の実施形態のいずれかの方法または製剤である。
【0272】
本明細書に提示される別の態様は、製剤が、関節内注射によって送達される、前述の実施形態のいずれかの方法または製剤である。
【0273】
本明細書に提示される別の態様は、製剤が、筋肉内注射によって送達される、前述の実施形態のいずれかの方法または製剤である。
【0274】
一実施形態では、製剤が、対象に、抗線維化剤(例えばリラキシン)が体重1kg当たり1~2000μgの用量で;または体重1kg当たり10~100μg;または体重1kg当たり100~200μg;または体重1kg当たり200~500μg;または体重1kg当たり500~1000μg;または体重1kg当たり25~75μg;または体重1kg当たり30~70μg;または体重1kg当たり40~60μg;または体重1kg当たり1~10μg;または体重1kg当たり1~5μg;または体重1kg当たり4~8μg;または体重1kg当たり約2μg;または体重1kg当たり約5μg;または体重1kg当たり約10μg;または体重1kg当たり約20μg;または体重1kg当たり約25μg;または体重1kg当たり約30μg;または体重1kg当たり約35μg;または体重1kg当たり約40μg;または体重1kg当たり約45μg;または体重1kg当たり約50μg;または体重1kg当たり約55μg;または体重1kg当たり約60μg;または体重1kg当たり約65μg;または体重1kg当たり約70μg;または体重1kg当たり約75μg;または体重1kg当たり約100μg;または体重1kg当たり約200μg;または体重1kg当たり約500μgで対象に投与されるように投与される、前述の実施形態のいずれか1つの方法または製剤。
投与
【0275】
一部の実施形態では、本発明の方法は、作用剤、例えばリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントを、対象に、デポ剤を使用して投与するステップを含む。「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」または「投与(administration)」という用語は、作用剤を対象の系内にまたは対象内もしくは対象上の特定の領域に送達する任意の方法を包含する。例えばリラキシンまたは作用剤が負荷されたデポ剤を、静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、鼻腔内に、経口的に、経皮的に(transcutaneously)、粘膜を通じて、関節内に、関節周囲に、嚢内に、被膜周囲に、腱内に、腱周囲に、靭帯内に、靭帯周囲に、肺への吸入によってまたは眼に特異的な投与経路によって、投与することができる。作用剤が負荷されたデポ剤を投与するステップは、協力して働く何人かの人によって実施されてよく、例えば、デポ剤によって対象に投与されるリラキシンもしくはその類似体、断片もしくはバリアントを処方すること、および/または、リラキシンもしくはその類似体、断片もしくはバリアントを、デポ剤によって、例えば、経口送達、皮下送達、中心ラインを通じた静脈内送達などによる自己送達によってか、または訓練された専門家による送達、例えば、関節内送達、静脈内送達、筋肉内送達、腫瘍内送達などによって服薬するための指示を直接もしくは別の人を通じて提供することが含まれ得る。
【0276】
好ましい実施形態では、作用剤、例えばリラキシンまたはその類似体、断片もしくはバリアントを、デポ剤を使用し、局所的に、例えば、対象の関節にまたは関節内に直接投与する。作用剤(例えばリラキシン)が負荷されたデポ剤を、関節内注射によって、または関節へのもしくは関節周囲の組織内への局部適用によって局所投与することが有利であり、その理由は、より低用量の作用剤を対象に送達することが可能になり、全身送達に付随する副作用、例えば背痛および関節痛などが回避されるからである。
【0277】
例えば、心不全を処置するためのリラキシンに関する以前の臨床的調査では、リラキシンが30マイクログラム/kg/日で2日間にわたって全身投薬(静脈内注入)され、効果に関する試験の主要エンドポイントは達成されなかった。強皮症を処置するためのリラキシンに関する別の以前の臨床的調査では、リラキシンが25マイクログラム/kg/日で24週間にわたって全身投薬(皮下送達)され、効果に関する試験の主要エンドポイントは達成されなかった。対照的に、本開示の製剤は、リラキシンを局所的に(全身的にではなく)約0.1マイクログラム/kg/日の有効用量で約4週間または約6週間にわたって送達することができ、臨床的効果を実証することができるものである。
【0278】
一実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を対象に関節内注射によって投与する。一実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を対象に関節内、関節周囲、嚢内、被膜周囲、靭帯内、靭帯周囲、腱内、腱周囲、骨腱内、または骨腱周囲への注射(集合的に「関節内注射」)、またはこれらの組合せによって投与する。一実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を対象に単回の関節内注射によって投与する。一実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を対象に多数回の関節内注射によって投与する。作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤の多数回の関節内注射を対象に規則的な時間間隔で、例えば、1日ごとに、2日ごとに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに、7日ごとに、8日ごとに、9日ごとに、10日ごとに、11日ごとに、12日ごとに、13日ごとに、または14日ごとに投与することができる。作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤の多数回の関節内注射からなる処置のコースを繰り返すことができる。
【0279】
一実施形態では、作用剤を腱、骨腱接合部、腱-骨境界面、腱付着部、または筋肉-腱付着点にまたはその付近に投与する。そのような組織は、とりわけ、以下の腱組織から選択することができる:
・肩
・小円筋腱(回旋筋腱板)、棘下筋腱、棘上筋腱、肩甲下筋腱
・肘/前腕
・三角筋腱、二頭筋腱、三頭筋腱、腕橈骨筋腱、短橈側手根伸筋腱、長橈側手根伸筋腱、回外筋腱
・手首
・橈側手根屈筋腱、尺側手根屈筋腱、橈側手根伸筋腱、短橈側手根伸筋腱
・股関節部/鼠径部
・腸腰筋腱、内閉鎖筋腱、長内転筋腱、短内転筋腱および大内転筋腱、大殿筋腱および中殿筋腱、腸脛靭帯
・膝
・四頭筋腱、膝蓋腱、膝窩腱、縫工筋腱
・足首
・腓腹筋腱、アキレス腱、ヒラメ筋腱、前脛骨筋腱、長腓骨筋腱
・手(手指)
・長指屈筋腱、骨間腱、深指屈筋腱、小指外転筋腱
・手(母指)
・母指対立筋腱、母指屈筋腱、伸筋腱および母指外転筋腱
・足(足指)
・長母指屈筋腱、短指屈筋腱、虫様腱、母指外転筋腱、長指屈筋腱、小指外転筋腱、足底腱膜(Plantar Fasciitis)
・背中
・多裂筋腱、腰方形筋腱、胸最長筋腱、腸肋筋腱、胸棘筋腱、大腰筋腱
【0280】
作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤の関節内注射は、関節内注射に適した針を有するシリンジを使用することによって実現することができる。関節内注射に適した針は、30Gの針、29Gの針、28Gの針、27Gの針、26sGの針、26Gの針、25.5Gの針、25sGの針、25Gの針、24.5Gの針、24Gの針、23.5Gの針、23sGの針、23Gの針、22.5Gの針、22sGの針、22Gの針、21.5Gの針、21Gの針、20.5Gの針、20Gの針、19.5Gの針、19Gの針、18.5Gの針および18Gの針からなる群から選択することができる。特定の実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を21Gの針によって投与する。
【0281】
別の好ましい実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を、対象に、局部的に、例えば経皮的に(transcutaneously)投与することができる。例えば、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を、関節、例えば、指関節に局部的に適用されるゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、滴剤、坐薬、噴霧剤、液体または粉末組成物として投与することができる。
【0282】
一部の実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を、対象に、関節の硬直を処置または防止するために、医学的手技、例えば外科手術の間に投与することができる。関節の硬直は外科手術によって生じる可能性があるので、外科手術の間にリラキシンを投与することにより、対象における関節の硬直の形成を防止することができる。一実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤をカニューレまたは切開によって投与することができる。
【0283】
別の実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を、外来での関節鏡、蛍光透視または超音波により誘導される手順の間に投与することができる。
【0284】
好ましい実施形態では、作用剤、例えばリラキシンが負荷されたデポ剤を対象に持続放出製剤として局所的に投与する。リラキシンを持続放出製剤として投与することは、注射の繰り返しが回避され、治療用量のリラキシンを一貫した信頼できる様式で所望の期間にわたって送達することができるので、有利である。ポリペプチドを送達するために使用することができる例示的な持続放出製剤は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれるVaishya et al., Expert. Opin. Drug Deliv. 2015, 12 (3): 415-40に記載されている。
【0285】
本発明のある特定の実施形態は、神経運動変性疾患における二次関節線維症の発生に対する、リラキシン-2を例えば持続放出製剤として局所的に関節内送達することによる解決法を提供する。一部の実施形態では、リラキシン-2により、in-vivo神経運動変性関節線維症大型動物モデルにおける線維症を、NO-sGC-cGMP経路によりTGF-β1シグナル伝達を阻害し、それにより、関節硬直を低減し、可動域を増大させることによって低減することができる。
【0286】
一部の実施形態では、製剤を、ポイント・オブ・ケア時またはその近くで、希釈剤で再懸濁または再構成するための凍結乾燥粉末として提供する。
【0287】
臨床的に、処置にあたる医師が、リラキシン-2微小粒子製剤などの本明細書に開示される製剤を、進行性の神経運動変性状態を有する患者の患部の収縮した関節および関節周囲組織に注射することができる。これらの注射は、診療所の状況で解剖学的ランドマークを使用してまたは超音波による誘導の下で行われる。注射の後に理学療法の標準コースを続けることができる。より難しい関節内注射(すなわち、股関節部、脊椎)に関しては、整形外科医または介入放射線科医による、蛍光透視により誘導される注射も実施することができる。一部の実施形態では、以下の利点があり得る:高リスクの外科手術が排除されること;生涯の健康管理費用が減少すること;標準の診療所での注射技法によりリラキシン-2が滑膜関節腔に局所注射されること;全身的ではなく局所的な送達の結果として用量が最小化されること;局所送達によりオフターゲットの副作用が低減し、安全性が増大すること。
【0288】
当該製剤により、関節の周囲の組織に加えて、リラキシン受容体を発現する追加的な標的器官の線維症も、異なる投与経路によって処置することができる。
【0289】
肺線維症、例えば、間質性肺疾患、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、高血圧症などに対しては、製剤を、肺への吸入によってまたは鼻腔内に持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。
【0290】
肝線維症(liver fibrosis)、例えば、B型またはC型肝炎、長期間にわたるアルコールの乱用、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎による硬変症など;腎線維症、例えば、慢性腎疾患、末期腎疾患、間質性腎線維症など;および心疾患、例えば、心不全、心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、肥大性心筋症などに対しては、製剤を、静脈内に、筋肉内にまたは静脈内に(例えば、カテーテルによってなど)持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。
【0291】
腸疾患、例えば、クローン病、炎症性腸疾患、腸症、および他の腸線維症などに対しては、製剤を、鼻腔内に、経口的に、粘膜を通じて、持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。
【0292】
皮膚の状態、例えば、強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、セルライトなどに対しては、製剤を、筋肉内に、皮下に、皮内に、または経皮的に(transcutaneously)持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。
【0293】
泌尿生殖器および婦人科の状態、例えば、ペイロニー病および子宮筋腫などに対しては、製剤を、経皮的に(transcutaneously)または経粘膜的に持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。
【0294】
眼の疾患、例えば、外眼筋の先天性線維症、網膜下線維症、網膜上線維症、角膜線維症などに対しては、製剤を、局部的に、局所的な眼への投与(すなわち、結膜下、網膜下、硝子体内、眼球後、前房内)によって、または全身的に(すなわち、経口、静脈内、経鼻)、持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射もしくは投薬または一連の注射もしくは投薬で提供することができる。処置に適した追加的な疾患および状態としては、デュピュイトラン病(収縮し、手指の可動域を限定する、手のひらにおけるコラーゲン束の形成)ペイロニー病(陰茎の曲がりを引き起こす;勃起を歪める過剰な非弾性コラーゲン)、イヌおよびヒト脂肪腫(良性の脂肪性腫瘍の被膜を有する沈着物)、子宮筋腫(重要な共存症を有する良性腫瘍)、足底線維腫症(足の深部結合組織の肥厚によって引き起こされる疼痛および能力障害)、乳房の被膜拘縮(乳房を変形させ、疼痛を引き起こす可能性がある手術後併発症)、肥厚性瘢痕&ケロイド(傷害部位の皮膚上に形成される瘢痕)、ダーカム病(肥満および過度に敏感な有痛性脂肪組織)膝関節線維症(可動域に影響を及ぼし得る、埋め込み後に形成される癒着)、尿道狭窄、狭小化(尿流に影響を及ぼす尿道の狭小化)が挙げられる。
【0295】
本明細書に記載の微小粒子および作用剤を、線維症に関連する疾患または障害を有するまたは有すると診断された対象に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、有効量の微小粒子または作用剤を、対象に、疾患または障害の少なくとも1つの症状を緩和するために投与することを含む。本明細書で使用される場合、「線維症に関連する疾患または障害の少なくとも1つの症状を緩和する」とは、線維化疾患または障害に付随する何らかの状態または症状を好転させることである。等価の無処置の対照と比較して、そのような低減は、任意の標準の技法によって測定して、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%であるまたはそれよりも大きい。本明細書に記載の作用剤を対象に投与するための種々の手段が当業者に公知である。態様のいずれかの一実施形態では、作用剤を全身的にまたは局所的に(例えば、脳、または他の影響を受けている器官、例えば、結腸に)投与する。
【0296】
態様のいずれかの一実施形態では、作用剤を静脈内に投与する。態様のいずれかの一実施形態では、作用剤を連続的に、間隔を空けて、または散発的に投与する。作用剤の投与経路は、送達される作用剤の型(例えば、抗体、小分子、RNAi)に対して最適化され、それは、当業者が決定することができる。
【0297】
「有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患または障害の少なくとも1つ、または複数の症状を緩和することを必要とする線維症に関連する疾患または障害を有するまたは有すると診断された対象に投与することができる、本明細書に記載の微小粒子または抗線維化作用剤の量を指す。したがって、「治療有効量」という用語は、典型的な対象に投与した場合に特定の抗疾患または障害効果をもたらすために十分である作用剤の量を指す。有効量は、本明細書で使用される場合、種々の状況において、疾患もしくは障害の症状の発生を遅らせるため、疾患もしくは障害の症状(例えば、炎症、関節の硬直(stiffening of a joint)、疼痛、可動性の低下、呼吸困難)の過程を変更するため、または疾患もしくは障害の症状(例えば、炎症、関節の硬直(stiffening of a joint)、疼痛、可動性の低下、呼吸困難)を逆転させるために十分である微小粒子または作用剤の量も包含する。したがって、正確な「有効量」を特定することは一般に実行不可能である。しかし、任意の所与の症例に対して、適当な「有効量」を当業者が常套的な実験のみを使用して決定することができる。
【0298】
態様のいずれかの一実施形態では、作用剤を連続的に(例えば、ある期間にわたって一定のレベルで)投与する。作用剤の連続した投与は、例えば、表皮パッチ、連続放出製剤、またはオンボディインジェクターによって実現することができる。
【0299】
有効量、毒性、および治療有効性を、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的手順によって評価することができる。投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて変動し得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示す組成物および方法が好ましい。治療有効用量を、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。同様に細胞培養物において、または適当な動物モデルにおいて決定されたIC50(すなわち、症状の最大半量の阻害が実現される作用剤の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を実現するための用量を動物モデルにおいて設定することができる。血漿中のレベルを例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の投薬量の効果を適切なバイオアッセイ、例えば、とりわけ、神経機能の測定、または血液検査によってモニタリングすることができる。投薬量を、医師が決定し、必要に応じて、観察された処置の効果に適するように調整することができる。
投薬量
【0300】
「単位剤形」という用語は、本明細書使用される場合、適切な1回の投与用の投薬量を指す。例として、単位剤形は、送達デバイス、例えば、シリンジまたは点滴静注袋中に配分される治療薬の量であり得る。態様のいずれかの一実施形態では、単位剤形を単回投与で投与する。別の実施形態では、1つよりも多くの単位剤形を同時に投与することができる。
【0301】
本明細書に記載の作用剤の投薬量は、医師が決定し、必要に応じて、観察された治療の効果に適するように調整することができる。処置の持続時間および頻度に関して、処置により治療的利益がいつもたらされるかを決定するため、およびさらなる細胞を投与するか、処置を中止するか、処置を再開するか、または処置レジメンに他の変更を行うかを決定するために、熟練臨床医が対象をモニタリングすることが典型的である。投薬量は、サイトカイン放出症候群などの有害な副作用を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、投薬量は、患者の年齢、状態、および性別に応じて変動し、当業者が決定することができる。何らかの併発症が生じた場合には、投薬量を個々の医師が調整することもできる。
【0302】
有効用量を最初に細胞培養アッセイから推定することができる。動物における用量を設定することができる。一般に、組成物は、本発明の化合物が、1μg/kg~1000mg/kg;1μg/kg~500mg/kg;1μg/kg~150mg/kg、1μg/kg~100mg/kg、1μg/kg~50mg/kg、1μg/kg~20mg/kg、1μg/kg~10mg/kg、1μg/kg~1mg/kg、100μg/kg~100mg/kg、100μg/kg~50mg/kg、100μg/kg~20mg/kg、100μg/kg~10mg/kg、100μg/kg~1mg/kg、1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~100mg/kg、10mg/kg~50mg/kg、または10mg/kg~20mg/kgの用量で使用されるまたはもたらされるように投与される。本明細書に示される範囲には、全ての中間の範囲が含まれる、例えば、1mg/kg~10mg/kgという範囲には、1mg/kg~2mg/kg、1mg/kg~3mg/kg、1mg/kg~4mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、1mg/kg~6mg/kg、1mg/kg~7mg/kg、1mg/kg~8mg/kg、1mg/kg~9mg/kg、2mg/kg~10mg/kg、3mg/kg~10mg/kg、4mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、6mg/kg~10mg/kg、7mg/kg~10mg/kg、8mg/kg~10mg/kg、9mg/kg~10mg/kgなどの範囲が含まれることが理解されるべきである。約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.3mg/kg~約5mg/kg、または0.5mg/kg~約3mg/kgの用量(ボーラスまたは連続した注入のいずれかとして)がさらに意図されている。上記の範囲の中間の範囲、例えば、1mg/kg~10mg/kgの範囲に関しては、例えば、2mg/kg~8mg/kg、3mg/kg~7mg/kg、4mg/kg~6mg/kgなどの使用または用量範囲なども本発明の範囲内に入ることがさらに理解されるべきである。
組合せ治療
【0303】
態様のいずれかの一実施形態では、本明細書に記載の微小粒子または作用剤を単独療法として使用する。態様のいずれかの別の実施形態では、線維症に関連する疾患、状態または障害などの疾患、状態または障害に対して、本明細書に記載の微小粒子または作用剤を他の公知の作用剤および治療(すなわち、併用治療)と組み合わせて使用することができる。「組み合わせて」投与するとは、本明細書で使用される場合、対象の障害による苦痛の過程中に、2種(またはそれよりも多くの)異なる処置を対象に送達すること、例えば、対象が障害(線維化疾患または障害)と診断された後、かつ、障害が治癒もしくは除去されるまたは他の理由で処置が中止される前に、2種またはそれよりも多くの処置を送達することを意味する。一部の実施形態では、1つの処置の送達が第2の処置の送達の開始時にまだ行われており、したがって、投与に関して重複が生じる。これは、時には、本明細書では、「同時」または「並行送達」と称される。他の実施形態では、1つの処置の送達は他の処置の送達の開始前に終了している。いずれの場合でも、一部の実施形態では、処置は、組合せ投与に起因してより効果的になる。例えば、第2の処置がより効果的になる、例えば、より少ない第2の処置で等価の効果が認められる、または、第2の処置により、第2の処置を第1の処置の非存在下で投与した場合よりも大きな程度まで症状が低減する、または第1の処置に関して類似の状況が認められる。一部の実施形態では、送達は、障害に関連する症状、または他のパラメータの低減が、1つの処置を他の処置の非存在下で送達した場合に観察されるものよりも大きくなるようなものである。2種の処置の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的よりも大きいものであり得る。送達は、送達される第1の処置の効果が、第2の処置が送達されるときにまだ検出可能であるようなものであり得る。本明細書に記載の作用剤と少なくとも1種の追加的な治療を同時に、同じもしくは別々の組成物として投与することもでき、逐次的に投与することもできる。逐次的投与に関しては、本明細書に記載の作用剤を最初に投与し、追加的な作用剤を次に投与することもでき、投与の順序を逆にすることもできる。作用剤および/または他の治療剤、手順またはモダリティを、障害の活動性の期間中に投与することもでき、疾患の寛解または活動性が低い期間中に投与することもできる。本開示の微小粒子または作用剤を別の処置の前に、別の処置と並行して、別の処置の後に、または障害の寛解中に投与することができる。
【0304】
組合せで投与する場合、作用剤および追加的な作用剤(例えば、第2のまたは第3の作用剤)、または全てを、各作用剤を個別に、例えば単独療法として使用される場合の量または投薬量よりも多い、少ない、または同じ量または用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、作用剤、追加的な作用剤(例えば、第2のまたは第3の作用剤)、または全ての投与される量または投薬量は、個別に使用される各作用剤の量または投薬量よりも少ない(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%)。他の実施形態では、所望の効果(例えば、線維化疾患または障害の処置)をもたらす作用剤、追加的な作用剤(例えば、第2のまたは第3の作用剤)、または全ての量または投薬量は、同じ治療効果を実現するために個別に必要とされる各作用剤の量または投薬量よりも少ない(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%少ない)。
【0305】
一部の実施形態では、併用治療は、当技術分野において一般的なアスピリン、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、ステロイド、神経遮断薬、および鎮痛薬などの薬物である。
【0306】
一部の実施形態では、併用治療は、これだけに限定されないが、デフラザコート、エテプリルセン、カシメルセン、ゴロジルセン、アタルレン、ギビノスタット、ビルトラルセン、パムレブルマブ、SRP-9001、SRP-5051、DS-5141B、SCAAV9.U7.ACCA、PF-06939926、SGT-001、またはAT702を含めた、筋ジストロフィーに対する薬物である。
【0307】
一部の実施形態では、併用治療は、これだけに限定されないが、Spinraza、Zolgensma、Evrysdi、SRK-015、CK-2127107、LMI070、AVXS-101、BIIB110、またはp38aMAPK阻害剤を含めた、脊髄性筋萎縮症に対する薬物である。
【0308】
一部の実施形態では、併用治療は、これだけに限定されないが、抗コリン薬、例えば、メタンスルホン酸ベンズトロピン、カルビドパ-レボドパ(Sinemet)、グリコピロレート(Robinul)、プロシクリジン塩酸塩(Kemadrin)、およびトリヘキシフェニジル塩酸塩など;抗痙攣薬、例えば、ガバペンチン(Neurontin)、ラモトリジン(Lamictal)、オクスカルバゼピン(Trileptal)、トピラマート(Topamax)、およびゾニサミド(Zonegran)など;または、鎮痙薬、すなわち筋弛緩薬、例えば、バクロフェン、ボツリヌス毒素、ジアゼパム(Valium(R))、Dantrolene、Flexeril(シクロベンザプリン(Cyclobenzadrine))、Dantrium(ダントロレン)、またはTizanidineを含めた、脳性麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷、または末梢神経損傷に対する薬物である。
【0309】
一部の実施形態では、併用治療は理学療法である。
【0310】
一部の実施形態では、併用治療は、これだけに限定されないが、外科的解離、鏡視下関節包解離術、または外科的修復を含めた外科的介入である。
【0311】
一部の実施形態では、併用治療は、これだけに限定されないが、高周波エネルギー適用、例えば、高周波アブレーション、熱エネルギー適用または除去、例えば、冷凍アブレーション、超音波エネルギー適用、例えば、超音波に基づく治療的な技法、電気エネルギー適用、例えば、経皮的電気神経刺激術(TEN)、または、光曝露などの他の電磁気エネルギー適用または除去方法を含めた、エネルギーに基づく技法である。
【0312】
一部の実施形態では、併用治療は、歩行または他の運動に基づく機能障害を有する患者の歩行運動または他の運動を補助するために設計された外骨格である。
【0313】
非経口用剤形
【0314】
本明細書に記載の作用剤の非経口用剤形を、対象に、これだけに限定されないが、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内を含めた種々の経路によって投与することができる。非経口用剤形の投与は、一般には混入物質に対する患者の天然の防御をバイパスするので、非経口用剤形は、滅菌されたものまたは患者の投与前に滅菌可能なものであることが好ましい。非経口用剤形の例としては、これだけに限定されないが、注射の準備ができた溶液、注射のために薬学的に許容されるビヒクル中に溶解または懸濁させる準備ができた乾燥生成物、注射の準備ができた懸濁剤、制御放出非経口用剤形、およびエマルションが挙げられる。
【0315】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という句は、本明細書で使用される場合、経腸および局部投与以外の、通常、注射による投与形式を意味し、それらとしては、これだけに限定することなく、静脈内、筋肉内、筋肉周囲、動脈内、くも膜下腔内、脳室内、嚢内、被膜周囲、眼窩内、心臓内、皮内、皮膚周囲、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節周囲、莢膜下、くも膜下、脊髄内、脳脊髄内、および胸骨内注射、注入ならびに他の注射または注入技法が挙げられる。これだけに限定することなく、経口投与は、液剤、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、持続放出製剤、含嗽剤、散剤などの形態であってよい。本発明の非経口用剤形を提供するために使用することができる適切なビヒクル溶液は当業者には周知である。本明細書で使用される場合、「ビヒクル溶液」という句は、限定することなく、滅菌水;USP注射用水;生理食塩水溶液;カルボキシメチルセルロースナトリウム;グルコース溶液;水性ビヒクル、例えば、これだけに限定されないが、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射、ブドウ糖注射液、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射液、ならびに乳酸リンゲル液注射液など;水混和性ビヒクル、例えば、これだけに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールなど;ならびに、非水性ビヒクル、例えば、これだけに限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、および安息香酸ベンジルなどを包含する。
有効性
【0316】
例えば、線維症に関連する疾患または障害を処置するための、本明細書に記載の作用剤の有効性は、当業者が決定することができる。しかし、「効果的な処置」という用語が本明細書で使用される場合、処置は、例えば、本明細書に記載の方法に従った処置後に少なくとも10%、線維化疾患の徴候または症状のうちの1つまたは複数が有益に変更された場合、他の臨床的に許容される症状が改善された、もしくはさらには好転した場合、または所望の応答が誘導された場合、「効果的な処置」とみなされる。有効性は、例えば、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患のマーカー、指標、症状、および/もしくは発生率、または任意の他の適当な測定可能なパラメータを測定することによって評価することができる。有効性はまた、個体に、入院または医療介入の必要によって評価される悪化(すなわち、疾患または障害の症状によって測定される疾患または障害の進行)が生じないことによっても評価することができる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、かつ/または本明細書に記載されている。
【0317】
場合によって、有効性を、本明細書に記載の状態の動物モデル、例えば、線維化疾患または障害のマウスモデルまたは適当な動物モデルにおいて評価することができる。実験動物モデルを使用する場合、処置の有効性は、マーカーに統計的に有意な変化が観察された場合に証明される。
【0318】
一部の実施形態では、処置の有効性には、投与後の異物応答または免疫反応の最小化が含まれる。例えば、ビヒクル対照製剤(例えば、治療剤を含有しないPLGA微小粒子)を投与すると、マクロファージおよび免疫活性化ならびに炎症が引き出される可能性があるが、一方、本開示により記載される製剤を投与した場合には、処置および投与後の評価の全体を通してあらゆる時点でより低い免疫応答が引き出されるかまたは引き出される免疫応答が完全に抑止される可能性がある。
【0319】
一部の実施形態では、本開示により記載される製剤の投与によって生じる異物応答が、ステロイドを治療剤として含有するPLGA微小粒子の投与によって生じる異物応答と比較して低減または抑止される可能性がある。
【0320】
本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書において具体的には開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で実施することができる。使用されている用語および表現は、説明する用語として使用されており、限定ではなく、そのような用語および表現の使用に関して、示され、いかなる記載されている特徴の等価物またはその一部も排除するものではなく、特許請求された本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが理解される。したがって、本発明を好ましい実施形態および必要に応じた特色によって具体的に開示したが、当業者は本明細書において開示されている概念の改変および変形を行うことができること、および、そのような改変および変形は、添付の実施形態によっておよび本発明の他の箇所において定義される本発明の範囲内に入るとみなされることが理解されるべきである。
【0321】
本明細書において言及または引用されている論文、特許、および特許出願、ならびに全ての他の文書および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の刊行物がそれぞれ具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。出願人らは、任意のそのような論文、特許、特許出願、または他の文書からのありとあらゆる材料および情報を本出願に物理的に組み込む権利を有する。
【0322】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、定量的用語プラス10%またはマイナス10%を意味する。例えば、「約3%」は、2.7~3.3%を包含し、「約10%」は、9~11%を包含する。さらに、「約」が本明細書において定量的用語と併せて使用される場合、その値プラス10%またはマイナス10%に加えて、定量的用語の正確な値も意図され、記載されている-例えば、「約3%」という用語は、正確に3%を明白に意図し、記載し、包含することが理解される。
【0323】
本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、限定されることなく、広く読み取られるべきである。さらに、本明細書で使用される用語および表現は、説明する用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語および表現の使用に関して、示され、記載されている特徴の等価物またはその一部のいずれも排除するものではなく、特許請求された本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが理解される。したがって、本発明は好ましい実施形態および必要に応じた特色によって具体的に開示されているが、当業者は本明細書の開示の中で具体化される本発明の改変および変形を行うことができること、および、そのような改変および変形が、本発明の種々の態様および実施形態の範囲内に入ることが意図されていることが理解されるべきである。
【0324】
本発明のある特定の態様および実施形態が本明細書に広範にかつ包括的に記載されている。包括的な発明の範囲内に入る狭義の種および下位概念の分類のそれぞれも本明細書において意図されている発明の一部の態様および実施形態を形成する。これには、類概念から何らかの対象物を排除する条件または否定的な限定を伴う発明の包括的な説明も、排除される材料が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず、含まれる。
【0325】
さらに、本発明の特色または態様がマーカッシュ群の用語で記載されている場合、本明細書において意図されている発明の一部の態様および実施形態もまた、それにより、マーカッシュ群のあらゆる個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して記載されることが当業者には理解されよう。
【0326】
本発明の好ましい実施形態が本明細書において示され、記載されているが、そのような実施形態が単に例として提供されていることは当業者には明白であろう。当業者は、本発明から逸脱することなく多数の変形、変化および置換をすぐに思いつくであろう。本明細書に記載の発明の実施形態に対する種々の代替を本発明の実施に使用することができることが理解されるべきである。以下の実施形態により本発明の範囲が定義されること、ならびに、それにより、これらの実施形態の範囲内に入る方法および構造およびそれらの等価物が包含されることが意図されている。
【0327】
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、これらの発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似した、またはそれと等しい任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、改変および変形も本発明の主旨および範囲内に包含されることが理解されよう。好ましい方法および材料がここに記載されている。
【0328】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願は、具体的にかつ個別に参照により組み込まれることが示されたものと同じく参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めた本明細書が優先される。
【0329】
本明細書に記載の技術の一部の実施形態を以下の番号が付された項目のいずれかに従って定義することができる:
1.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、前記微小粒子の直径が、1~100μmである、製剤。
2.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、抗線維化剤が、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する、製剤。
3.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである、製剤。
4.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤。
5.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、前記微小粒子の直径が、1~100μmである、製剤。
6.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、抗線維化剤が、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する、製剤。
7.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含む微小粒子を含む製剤であって、前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである、製剤。
8.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、前記微小粒子の直径が、1~100μmである、製剤。
9.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、抗線維化剤が、リラキシンであり、総質量の0.01~33%の量で存在する、製剤。
10.脂肪族ポリエステルおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである、製剤。
11.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、前記微小粒子の直径が、1~50μmである、製剤。
12.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、抗線維化剤が、リラキシンであり、総質量の0.1~10%の量で存在する、製剤。
13.脂肪族ポリエステル、ビニルポリマーおよび抗線維化剤を含むPLGA微小粒子を含む製剤であって、前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである、製剤。
14.前記抗線維化剤が、受容体RXFP1のアゴニストである、前述の項目のいずれか1つの製剤。
15.前記抗線維化剤が、ヒトリラキシン-2または類似体もしくはバリアントである、前述の項目のいずれか1つの製剤。
16.脂肪族ポリエステルが、ポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれか1つの製剤。
17.脂肪族ポリエステルが、ポリカプロラクトンである、前述の項目のいずれか1つの製剤。
18.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~200,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
19.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~150,000ダルトン;または25,000~125,000ダルトン;または40,00~100,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
20.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、10,000~30,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
21.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、30,000~50,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
22.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、50,000~70,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
23.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、70,000~90,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
24.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、90,000~120,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
25.前記脂肪族ポリエステルの分子量が、120,000~150,000ダルトンである、前述の項目のいずれかの製剤。
26.前記脂肪族ポリエステルが、エステル官能基で終わるものである、前述の項目のいずれかの製剤。
27.前記脂肪族ポリエステルが、アルキル-エステル官能基で終わるものである、前述の項目のいずれかの製剤。
28.前記脂肪族ポリエステルが、カルボン酸官能基で終わるものである、前述の項目のいずれかの製剤。
29.ポリ(ビニルアルコール)であるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
30.ポリ(ピロリドン)であるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
31.分子量が10,000~200,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
32.前記製剤が、分子量が10,000~150,000ダルトン;または25,000~125,000ダルトン;または40,00~100,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
33.分子量が30,000~50,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
34.分子量が50,000~70,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
35.分子量が70,000~90,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
36.分子量が90,000~120,000ダルトンであるビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
37.前記微小粒子の直径が、1~100μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
38.前記微小粒子の直径が、1~75μm;または1~50μm;または5~50μm;または25~50μm;または30~50μm;または40~50μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
39.前記微小粒子の直径が、5~10μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
40.前記微小粒子の直径が、5~8μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
41.前記微小粒子の直径が、8~12μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
42.前記微小粒子の直径が、12~18μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
43.前記微小粒子の直径が、18~25μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
44.前記微小粒子の直径が、25~35μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
45.前記微小粒子の直径が、35~45μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
46.前記微小粒子の直径が、45~50μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
47.前記微小粒子の直径が、約1μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
48.前記微小粒子の直径が、約2μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
49.前記微小粒子の直径が、約3μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
50.前記微小粒子の直径が、約4μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
51.前記微小粒子の直径が、約5μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
52.前記微小粒子の直径が、約6μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
53.前記微小粒子の直径が、約7μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
54.前記微小粒子の直径が、約8μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
55.前記微小粒子の直径が、約9μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
56.前記微小粒子の直径が、約10μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
57.前記微小粒子の直径が、約15μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
58.前記微小粒子の直径が、約20μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
59.前記微小粒子の直径が、約25μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
60.前記微小粒子の直径が、約30μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
61.前記微小粒子の直径が、約35μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
62.前記微小粒子の直径が、約40μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
63.前記微小粒子の直径が、約45μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
64.前記微小粒子の直径が、約50μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
65.前記微小粒子の直径が、約75μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
66.前記微小粒子の直径が、約100μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
67.前記微小粒子の直径が、約150μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
68.前記微小粒子の直径が、約200μmである、前述の項目のいずれかの製剤。
69.前記脂肪族ポリエステルが、15:85~25:75のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
70.前記脂肪族ポリエステルが、25:75~35:65のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
71.前記脂肪族ポリエステルが、35:65~45:55のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
72.前記脂肪族ポリエステルが、45:55~55:45のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
73.前記脂肪族ポリエステルが、55:45~65:35のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
74.前記脂肪族ポリエステルが、65:35~75:25のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
75.前記脂肪族ポリエステルが、75:25~85:15のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
76.前記脂肪族ポリエステルが、約50:50のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
77.前記脂肪族ポリエステルが、約45:55のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
78.前記脂肪族ポリエステルが、約55:45のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
79.前記脂肪族ポリエステルが、約40:60のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。
80.前記脂肪族ポリエステルが、約60:40のラクチド:グリコリドであるモル比を有するポリ-ラクチド-co-グリコリドである、前述の項目のいずれかの製剤。総質量の0.01~0.1%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
81.総質量の0.1~0.3%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
82.総質量の0.2~0.9%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
83.総質量の0.3~0.7%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
84.総質量の0.4~0.6%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
85.総質量の0.3~0.6%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
86.総質量の0.6~1.0%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
87.総質量の1.0~5.0%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
88.総質量の5.0~10.0%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
89.総質量の10.0~30.0%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
90.総質量の約0.1%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
91.総質量の約0.2%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
92.総質量の約0.3%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
93.総質量の約0.4%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
94.総質量の約0.5%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
95.総質量の約0.6%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
96.総質量の約0.7%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
97.総質量の約0.8%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
98.総質量の約0.9%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
99.総質量の約10%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
100.総質量の約15%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
101.総質量の約20%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
102.総質量の約25%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
103.総質量の約30%のビニルポリマーを含む、前述の項目のいずれかの製剤。
104.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.005~5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
105.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.01~10%;0.01~33%;もしくは0.1~5%;または製剤の総質量の0.2~4%;または製剤の総質量の0.3~3%;または製剤の総質量の0.5~2%;または製剤の総質量の0.5~1.5%;または製剤の総質量の0.5~3%;または製剤の総質量の1~2%;または製剤の総質量の1~5%;または製剤の総質量の3~7%;または製剤の総質量の5~10%である、前述の項目のいずれかの製剤。
106.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.005~0.01%である、前述の項目のいずれかの製剤。
107.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.01~0.05%である、前述の項目のいずれかの製剤。
108.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.05~0.1%である、前述の項目のいずれかの製剤。
109.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.1~0.5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
110.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の0.5~1.0%である、前述の項目のいずれかの製剤。
111.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の1.0~2.5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
112.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の2.5~5.0%である、前述の項目のいずれかの製剤。
113.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約0.25%である、前述の項目のいずれかの製剤。
114.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約0.5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
115.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約0.75%である、前述の項目のいずれかの製剤。
116.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約1%である、前述の項目のいずれかの製剤。
117.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約1.25%である、前述の項目のいずれかの製剤。
118.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約1.5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
119.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約1.75%である、前述の項目のいずれかの製剤。
120.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約2%である、前述の項目のいずれかの製剤。
121.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約2.5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
122.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約3%である、前述の項目のいずれかの製剤。
123.前記抗線維化剤が、製剤の総質量の約5%である、前述の項目のいずれかの製剤。
124.前記抗線維化剤が、リラキシンである、前述の項目のいずれかの製剤。
125.約50:50のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
126.約50:50のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシンおよび約0.0重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
127.約60:40のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
128.40:60のラクチド:グリコリドであるPLGAモル比、微小粒子の約1重量%で負荷されたリラキシン、および約0.5重量%の濃度のPVAを有するPLGA微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
129.ビヒクル溶液中に懸濁した微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
130.塩化ナトリウム液体溶液中に懸濁した微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
131.塩化ナトリウム液体溶液中に懸濁した微小粒子を含み、前記塩化ナトリウムが、液体溶液の0.5~1.5w/w%;または0.75~1.25w/w%;または約0.5w/w%;または約0.6w/w%;または約0.7w/w%;または約0.8w/w%;または約0.9w/w%;または約1.0w/w%;または約1.1w/w%;または約1.2w/w%;または約1.3w/w%;または約1.4w/w%;または約1.5w/w%である、前述の項目のいずれかの製剤。
132.カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含む、前述の項目のいずれかの製剤。
133.カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液中に懸濁した微小粒子を含み、前記カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液が、液体溶液の0.1~1.0w/w%;または0.25~0.75w/w%;または約0.1w/w%;または約0.2w/w%;または約0.3w/w%;または約0.4w/w%;または約0.5w/w%;または約0.6w/w%;または約0.7w/w%;または約0.8w/w%;または約0.9w/w%;または約1.0w/w%である、前述の項目のいずれかの製剤。
134.持続放出製剤である、前述の項目のいずれかの製剤。
135.抗線維化剤が長期間にわたって放出される持続放出製剤である、前述の項目のいずれかの製剤。
136.抗線維化剤が、少なくとも1日;または少なくとも2日間;または少なくとも3日間;または少なくとも4日間;または少なくとも5日間;または少なくとも6日間;または少なくとも1週間;または少なくとも2週間;または少なくとも3週間;または少なくとも4週間;または少なくとも5週間、または少なくとも6週間;または少なくとも8週間;または少なくとも9週間;少なくとも10週間;または少なくとも12週間;または少なくとも15週間;または1~5日間;または2~5日間;または1~2日間;または2~3日間;または3~4日間;または4~5日間;または3~10日間;または1~15週間;または2~10週間;または4~8週間;または8~15週間;または約1日;または約2日間;または約3日間;または約4日間;または約5日間;または約6日間;または約1週間;または約2週間;または約3週間;または約4週間;または約5週間;または約6週間;または約7週間;または約8週間;または約9週間;または約10週間の、またはそれよりも長い長期間にわたって放出される持続放出製剤である、前述の項目のいずれかの製剤。
137.表1または表2に列挙されている疾患の群から選択される1つまたは複数の疾患を有すると診断された対象を同定するステップと、前述の項目のいずれか1つの製剤を対象に投与するステップとを含む方法。
138.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
139.ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
140.I型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
141.II型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
142.III型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
143.IV型脊髄性筋萎縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
144.脳性麻痺、脳卒中、外傷性脳損傷、および/または末梢神経損傷(peripheral nerve damage)と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
145.先天性多発性関節拘縮症と診断された対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
146.腕橈関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
147.腕尺関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
148.肩甲上腕関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
149.脛骨大腿骨関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
150.股関節(acetabulofemoral joint)の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
151.距腿関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
152.顎関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
153.中手指節関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
154.中足指節関節の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
155.関節周囲筋組織の線維症を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
156.セルライトを有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
157.間質性肺疾患を有する対象を同定するステップと、前記患者に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を投与するステップとを含む方法。
158.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤をエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法。
159.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
160.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
161.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を皮内注射によって投与するステップを含む方法。
162.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を皮下注射によって投与するステップを含む方法。
163.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を嚢内注射によって投与するステップを含む方法。
164.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を被膜周囲への注射によって投与するステップを含む方法。
165.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を靭帯内注射によって投与するステップを含む方法。
166.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を靭帯周囲への注射によって投与するステップを含む方法。
167.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を腱内注射によって投与するステップを含む方法。
168.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を腱周囲への注射によって投与するステップを含む方法。
169.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を骨腱内注射によって投与するステップを含む方法。
170.前述の対象のいずれかに、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を骨腱周囲への注射によって投与するステップを含む方法。
171.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
172.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
173.ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
174.ベッカー型筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
175.脊髄筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
176.脊髄筋ジストロフィーと診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
177.先天性多発性関節拘縮症と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
178.先天性多発性関節拘縮症と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
179.脳性麻痺と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
180.脳性麻痺と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
181.脳卒中と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
182.脳卒中と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
183.外傷性脳損傷と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
184.外傷性脳損傷と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
185.末梢神経損傷(peripheral nerve damage)と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
186.末梢神経損傷(peripheral nerve damage)と診断された対象に、前述の項目のいずれかの組成物または製剤を関節内注射によって投与するステップを含む方法。
187.1μm~10μmのサイズを有する前述の項目のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法。
188.20μm~100μmのサイズを有する前述の項目のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
189.5μm~50μmのサイズを有する前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
190.間質性肺疾患と診断された対象に、前述の項目のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法。
191.間質性肺疾患と診断された対象に、前述の項目のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法。
192.間質性肺疾患と診断された対象に、微小粒子の直径が1~10μmである前述の項目のいずれかをエアロゾルとしての吸入によって投与するステップを含む方法。
193.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
194.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
195.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の項目のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
196.デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の項目のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
197.脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
198.脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
199.脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の項目のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
200.脊髄性筋萎縮症と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の項目のいずれかを筋肉内注射によって投与するステップを含む方法。
201.関節線維症(joint arthrofibrosis)と診断された対象に、微小粒子の直径が10~30μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
202.関節線維症(joint arthrofibrosis)と診断された対象に、微小粒子の直径が25~50μmである前述の項目のいずれかを関節内注射によって投与するステップを含む方法。
203.製剤が、エアロゾルとしての吸入によって送達される、前述の項目のいずれかの方法または製剤。
204.製剤が、関節内注射によって送達される、前述の項目のいずれかの方法または製剤。
205.製剤が、筋肉内注射によって送達される、前述の項目のいずれかの方法または製剤。
206.製剤が、対象に、抗線維化剤(例えばリラキシン)が体重1kg当たり1~2000μg;または体重1kg当たり10~100μg;または体重1kg当たり100~200μg;または体重1kg当たり200~500μg;または体重1kg当たり500~1000μg;または体重1kg当たり25~75μg;または体重1kg当たり30~70μg;または体重1kg当たり40~60μg;または体重1kg当たり1~10μg;または体重1kg当たり1~5μg;または体重1kg当たり4~8μg;または体重1kg当たり約2μg;または体重1kg当たり約5μg;または体重1kg当たり約10μg;または体重1kg当たり約20μg;または体重1kg当たり約25μg;または体重1kg当たり約30μg;または体重1kg当たり約35μg;または体重1kg当たり約40μg;または体重1kg当たり約45μg;または体重1kg当たり約50μg;または体重1kg当たり約55μg;または体重1kg当たり約60μg;または体重1kg当たり約65μg;または体重1kg当たり約70μg;または体重1kg当たり約75μg;または体重1kg当たり約100μg;または体重1kg当たり約200μg;または体重1kg当たり約500μgの用量で対象に投与されるように投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
207.製剤が、1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
208.製剤が、1回よりも多く投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
209.製剤が、1週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
210.製剤が、2週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
211.製剤が、3週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
212.製剤が、4週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
213.製剤が、6週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
214.製剤が、8週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
215.製剤が、10週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
216.製剤が、12週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
217.製剤が、16週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
218.製剤が、20週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
219.製剤が、24~26週間に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
220.製剤が、8カ月に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
221.製剤が、9カ月に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
222.製剤が、12カ月に1回投与される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
223.抗線維化剤が、微小粒子から、線形放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
224.抗線維化剤が、微小粒子から、非線形放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
225.抗線維化剤が、微小粒子から、最初のボーラスを伴って、その放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
226.抗線維化剤が、微小粒子から、最初のボーラスを伴わずに、その放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
227.抗線維化剤が、微小粒子から、最初の数日後にバースト放出を伴って、その放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
228.抗線維化剤が、微小粒子から、バースト放出を伴わずに、その放出プロファイルで放出される、前述の項目のいずれか1つの方法または製剤。
【0330】
本明細書に記載の技術の一部の実施形態を以下の追加的な番号が付された項目のいずれかに従って定義することができる:
1.線維化疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、リラキシンファミリーペプチド受容体に結合する作用剤を投与するステップを含む、方法。
2.リラキシンファミリーペプチド受容体が、RXFP1、RXFP2、RXFP3、またはRXFP4である、任意の前述の項目の方法。
3.作用剤が、受容体のネイティブなリガンドである、任意の前述の項目の方法。
4.ネイティブなリガンドが、リラキシン-2またはリラキシン-2バリアントである、任意の前述の項目の方法。
5.リラキシン-2バリアントが、ネイティブなリラキシン-2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同様である、任意の前述の項目の方法。
6.作用剤が、細菌、哺乳動物または酵母宿主細胞において組換えによって産生されたものである、任意の前述の項目の方法。
7.作用剤が、完全にまたは部分的に化学合成されたものである、任意の前述の項目の方法。
8.作用剤が、標的化部分とコンジュゲートしている、任意の前述の項目の方法。
9.標的化部分が、単一ドメインラクダ科動物抗体断片、ペプチド配列、ポリヌクレオチド、または小分子、または小分子アロステリックモジュレーターからなる群から選択される、任意の前述の項目の方法。
10.作用剤が、デポ剤に含まれている、任意の前述の項目の方法。
11.デポ剤が、
a.0.1μm3の体積;
b.1つまたは複数のポリマーで構成されること;または
c.1つまたは複数の自己組織化した小分子で構成されること
のうちの少なくとも1つを有する、任意の前述の項目の方法。
12.デポ剤の直径が、1~100μmである、任意の前述の項目の方法。
13.デポ剤が、低分子量ゲル化剤で構成されるハイドロゲルで構成される、任意の前述の項目の方法。
14.デポ剤が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)で構成される、任意の前述の項目の方法。
15.デポ剤が、ポリエチレングリコールで構成される架橋結合したハイドロゲルで構成される、任意の前述の項目の方法。
16.デポ剤が、両親媒性小分子で構成される自己組織化した両親媒性ハイドロゲルで構成される任意の前述の項目の方法。
17.線維化疾患が、関節包の線維化硬化(stiffened fibrotic joint capsules)、肺線維症(すなわち、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、高血圧症)、肝線維症(liver fibrosis)(すなわち、B型またはC型肝炎、長期間にわたるアルコールの乱用、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎硬変症)、腎線維症(すなわち、慢性腎疾患、末期腎疾患、間質性腎線維症)、心疾患(すなわち、心不全、心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、肥大性心筋症)、腸疾患(すなわち、クローン病、炎症性腸疾患、腸症、および他の腸線維症)、皮膚の状態(すなわち、強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、セルライト)、泌尿生殖器および婦人科の状態(ペイロニー病、子宮筋腫)および眼の疾患(すなわち、外眼筋の先天性線維症、網膜下線維症、網膜上線維症、角膜線維症)からなる群から選択される、任意の前述の項目の方法。
18.作用剤が、標的器官に局所的に投与される、任意の前述の項目の方法。
19.作用剤が、全身的に投与される、任意の前述の項目の方法。
20.作用剤が、関節内、関節周囲、嚢内、被膜周囲、靭帯内、靭帯周囲、腱内、腱周囲、骨腱内、または骨腱周囲への注射によって、筋肉内に、皮下に、皮内に、鼻腔内に、経口的に、経皮的に(transcutaneously)、粘膜を通じて、経皮的に(transcutaneously)、または肺への吸入によって投与される、任意の前述の項目の方法。
21.投与が、蛍光透視または超音波による誘導の下で行われる、任意の前述の項目の方法。
22.標的器官が、肺、腎臓、肝臓、心臓、皮膚または眼である、任意の前述の項目の方法。
23.対象に、少なくとも第2の治療法を施行する、任意の前述の項目の方法。
24.少なくとも第2の治療法が、理学療法である、任意の前述の項目の方法。
25.少なくとも第2の治療法が、外科手術である、任意の前述の項目の方法。
26.投与するステップの前に、対象を、線維化疾患を有すると診断するステップを含む、任意の前述の項目の方法。
27.投与するステップの前に、対象が線維化疾患を有すると診断されるアッセイの結果を受け取るステップを含む、任意の前述の項目の方法。
28.線維化疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象に、リラキシンファミリーペプチド受容体に結合する作用剤を投与するステップを含み、作用剤が、持続放出のためにデポ剤に含まれている、方法。
29.リラキシンファミリーペプチド受容体に結合する作用剤を含む組成物。
30.リラキシンファミリーペプチド受容体が、RXFP1、RXFP2、RXFP3、またはRXFP4である、任意の前述の項目の組成物。
31.作用剤が、受容体のネイティブなリガンドである、任意の前述の項目の組成物。
32.ネイティブなリガンドが、リラキシン-2またはリラキシン-2バリアントである、任意の前述の項目の組成物。
33.リラキシン-2バリアントが、ネイティブなリラキシン-2と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同様である、任意の前述の項目の組成物。
34.作用剤が、細菌、哺乳動物または酵母宿主細胞において組換えによって産生されたものである、任意の前述の項目の組成物。
35.作用剤が、完全にまたは部分的に化学合成されたものである、任意の前述の項目の組成物。
36.作用剤が、標的化部分とコンジュゲートしている、任意の前述の項目の組成物。
37.標的化部分が、単一ドメインラクダ科動物抗体断片、ペプチド配列、ポリヌクレオチド、または小分子、または小分子アロステリックモジュレーターからなる群から選択される、任意の前述の項目の組成物。
38.作用剤が、デポ剤に含まれている、任意の前述の項目の組成物。
39.デポ剤が、
a.0.1μm3の体積;
b.1つまたは複数のポリマーで構成されること;または
c.1つまたは複数の自己組織化した小分子で構成されること
のうちの少なくとも1つを有する、任意の前述の項目の組成物。
40.デポ剤の直径が、1~100μmである、任意の前述の項目の組成物。
41.デポ剤が、低分子量ゲル化剤で構成されるハイドロゲルで構成される、任意の前述の項目の組成物。
42.デポ剤が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)で構成される、任意の前述の項目の組成物。
43.デポ剤が、ポリエチレングリコールで構成される架橋結合したハイドロゲルで構成される、任意の前述の項目の組成物。
44.デポ剤が、両親媒性小分子で構成される自己組織化した両親媒性ハイドロゲルで構成される、任意の前述の項目の組成物。
45.線維化疾患を処置するための、任意の前述の項目の組成物の使用。
【実施例】
【0331】
本発明を以下の実施例においてさらに記載し、これは本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
リラキシン-2が負荷された微小粒子の合成、特徴付け、および評価
【0332】
リラキシン-2が負荷されたPLGA微小粒子(RMP)を、Igartua, M., et. al., International Journal of Pharmaceutics, 1998, 169 (1): 45-54に記載されている水/油/水(w/o/w)法に基づいて、ELISA分析によって決定して1.27×10
-3wt%のリラキシン負荷で調製した。粒子を得るために方法の大幅な最適化および調整が必要であった。ポリマーを調製するための明白でない独特の条件のセットを同定するために、量、時間、温度、混合スピード、ポリマーLA:GA含有量を全て変動させた。ELISA分析により封入効率が90~95%であることも明らかになった。動的光散乱(DLS)により、粒子が、直径7.65μmであることが示され、SEMによると多分散性が小さく、また形状が球状であった。リラキシン-2微小粒子中のリラキシン-2はそのネイティブな二次構造および三次構造をw/o/w2重エマルションプロセスの間維持した。円偏光二色性スペクトルにより、新しく調製したリラキシン-2と乳化したリラキシン-2の間に変化がないことが示された(
図2、左)。さらに、リラキシン-2は37℃で2カ月間にわたって安定であった(
図2、右)。凝集および綿状沈殿を減少させるため、ならびに、23Gの針による投与を容易にするために、リラキシン-2PLGA微小粒子を、バッチ間で一貫させて調製し、PEG-600に再懸濁させた。
【0333】
リラキシン-2微小粒子を噴霧乾燥によって調製する。15,000RPMで高速回旋し、出口周速250m/秒および空気流量40m/秒の回旋円盤噴霧器により、35μmのリラキシン-2微小粒子を作製する。供給液は、リラキシン-2(H2O中1mg/ml)およびPL:GA(ラクチド:グリコリドのモル比45:65、M.W.50,000~75,000ダルトン、カルボン酸で終わるもの、塩化メチレン中50mg/ml)のエマルションを含む。
【0334】
リラキシン-2微小粒子を溶媒抽出によって調製する。リラキシン-2(0.5mg/ml)およびPL:GA(ラクチド:グリコリドのモル比50:50、M.W.70,000~90,000ダルトン、エステルで終わるもの、50mg/ml)のエマルションを酢酸エチル中で形成させる。体積で1%のポリ-ビニルアルコール(M.W.30,000ダルトン)を急速に混合中のエマルションに添加し、次いで、残りの溶媒を蒸発によって除去する。凍結乾燥前のリラキシン-2微粒子の直径は48μmである。
【0335】
微小粒子からのリラキシン-2の放出をリラキシン-2 ELISAによって数量化した。生体に関連する緩衝剤のレザバー中のリラキシン-2の濃度は、滑液を模倣することが意図されている(ダルベッコ改変イーグル培地+20%熱失活ウシ胎仔血清+25μg/mlのブタエステラーゼ+1%ペニシリンストレプトマイシン)を、3日ごとに60日間の経過にわたって決定した。28日後、最初に封入されたリラキシン-2の85%が粒子から放出された(
図3、上)。放出は、最初の4週間は半線形速度で起こった(
図3、上)。様々な時点でのリラキシン-2微小粒子のSEM画像解析により、第3週に、リラキシン微小粒子がバルク浸食によって分解したことが示された。第5週および第6週において、リラキシン-2微小粒子は高多孔度のほぼ完全な分解を示し、分解され平滑な表面が失われ、しわになった。第4週までに、RMPは、最初に調製された時と比較した多孔度の実質的な増大によって示される通り、著しく分解した(
図3、下)。
【0336】
トランスウェルにおいてヒト線維芽細胞様滑膜細胞(HFLS)をリラキシン-2微小粒子で処理することにより、様々な時点でのリラキシン-2の放出および放出されたリラキシン-2の有効性を評価することが可能になる。リラキシン-2微小粒子から放出されたリラキシン-2により、5ng/mLのTGFβ-1の存在下でのI型コラーゲン発現のダウンレギュレーションによって示される通り、4週間に至るまで抗線維化有効性が実証された(
図4、上)。第1週、第3週、および第4週において、リラキシン-2の存在下でのI型コラーゲンの発現は基礎レベルの20~30%であった。2週間の時点ではコラーゲン発現の50%のダウンレギュレーションが示された(
図4、下)。
【0337】
滑膜関節腔は、2つの主要な細胞型:滑液線維芽細胞およびマクロファージからなる。RAW267.4マウスマクロファージのリラキシン-2微小粒子に対するin vitro許容性を評価した。24時間の処理後、マクロファージは平均直径4.5μmの蛍光標識された対照微小粒子に内部移行した(
図5、左)。24時間の処理後、マクロファージは平均直径7.6μmの蛍光標識された対照微小粒子には内部移行しなかった(
図5、右)。
(実施例2)
リラキシン-2の持続放出のための両親媒性ハイドロゲルデポ剤の形成および特徴付け
【0338】
リラキシン-2の持続放出を制御するためにリラキシン-2を物理的に閉じ込めるための両親媒性ハイドロゲルを2種合成した(
図6)。これらの両親媒性分子は95℃で融解し、厳密に室温まで徐冷すると非共有結合性の相互作用により凝結するものであった。1のアルキル鎖および2のフッ化アルキル鎖により、各分子間の疎水性相互作用が可能になり、一方、トリゾール部分およびチミジン部分により、パイーパイスタッキングが可能になる。最後に、デオキシリボースおよびグルコース基により、水素結合が容易になる(Godeau, G., et al., Tetrahedron Letters 2010, 51: 1012-1015;Ramen, F.A. et al., Biomaterials. 2017, 145: 72-80)。まとめると、これらの両親媒性分子は独特の安定な超分子アセンブリを創出し、それは37℃で 少なくとも2週間にわたって安定である。この安定性特色が、ハイドロゲルを使用することの別の新規所見および利点である。1および2それぞれ3つのゲルを、ウシ血清アルブミンおよびリラキシン-2を異なる密度で用い、各分子をタンパク質を伴うリン酸緩衝食塩水の溶液中に溶解させ、95℃で30分間加熱することによって創出した。円偏光二色性分光法によるとリラキシン-2はこの温度で少なくとも1時間の処理後にそのフォールディングされた3D構造を維持する(
図7、左)。室温まで冷却した後、リラキシン-2が負荷されたゲルは完全凝結した(
図7、右)。
【0339】
リラキシン-2が負荷されたこれらの超分子ハイドロゲルの流体力学的特性を評価した。貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G’’)を1rad/sから100rad/sまでの周波数掃引により決定した。この範囲では、全てのゲルが損失弾性率よりも大きな貯蔵弾性率を維持し(G’>G’’)、それにより、全てのゲルがこの周波数レジームで粘性液体よりも弾性固体として挙動することが示される(
図8、左、
図9、左)。種々のwt%でのゲル1のひずみ掃引により、高wt%ゲルから低wt%ゲルまで、それぞれ2.2%ひずみから6.4%ひずみの間の線形粘弾性領域(LVER)が明らかになる(
図8、右)。LVERは、ゲルwt%に逆に関連する。あるいは、種々のwt%のゲル2では、この関連性は失われる(
図9、右)。5wt%ゲルで最も狭いLVERが示され、9%ひずみで終了する。1.5wt%ゲルで最も広いLVERが示され、30%で終了し、1wt%ゲルはこの2つの中間であり、LVERが20%ひずみで終了する(
図9、右)。
【0340】
1に関して1wt%および2wt%、ならびに2に関して1wt%および1.5wt%の放出プロファイルを、リン酸緩衝食塩水のレザバー中、37℃で8日間の経過にわたって評価した。この時間枠では、分子2から創出されたゲルのどちらからも負荷されたリラキシン-2の総量の90%および84%が放出された(
図10)。化合物1から調製されたゲルでは、化合物2の放出パターンよりも有意に緩徐な放出パターンが示された。これらのゲルからは、負荷されたリラキシン-2の総量の15%および27%しか放出されなかった(
図10)。化合物1で作られたゲルでは、放出時間とwt%の比例関係が示されたが、一方、化合物2で作られたゲルではこの傾向は見られなかった。8週間の経過にわたって、全てのゲルがインタクトなままであり、いくらかの膨張が観察された。材料分解の明らかな徴候は認められなかった。これらの2種のゲルによりリラキシンが異なる速度で放出される理由の理解は不明であり、それ自体がこの注目すべき所見を示すものである。
(実施例3)
ラットにおける拘縮肩モデルの展開
【0341】
Villa-Camacho et al., Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 2015,24 (11): 1809-16の刊行物に記載されている本実験の目的は、拘縮肩のin vivo動物モデルにおいて、肩甲上腕関節の関節外内固定の、肩のカイネティクスおよびキネマティクスに対する影響を調査することであった。ラットにおける肩の関節外内固定により、その後の回旋ROMの減少およ関節硬直の増大が生じ、それが少なくとも8週間にわたって持続することが予測された。
【0342】
本試験は、Institutional Animal Care and Use Committeeによる承認を受けたものであり、Sprague-Dawleyラット10匹(250~300g、Charles River Laboratories、Wilmington、MA、USA)を本試験に使用した。各動物について、インタクトな左肩の度ごとのトルクを、あらゆる外科的介入の前(ベースライン)の80°の内旋(慣例により負の値)と60°の外旋(慣例により正の値)の間の回旋角度の関数として測定した。蛍光透視法によって確認された通り、回旋は、最小の肩甲骨の動員が引き出されることが観察された境界内に限局した。したがって、60°外旋ためのトルク値(τOUT)および80°内旋ためのトルク値(τINT)を各動物について記録した。
【0343】
各動物の左前肢を、関節外内固定を使用して固定化した。イソフルラン麻酔下、肩甲骨の脊椎に対して垂直に縦方向の皮膚切開を行った。2本のNo.2-0ブレイドポリエステル縫合糸(Ethibond Excel、Ethicon-San Lorenzo、PR、USA)を肩甲骨の内側縁と上腕骨幹部の間に通し、きつく締めて肩関節を固定化した(
図1、パネルA)。外科手術中に筋肉構造のマニピュレーションは行わず、動物を手順直後からケージ内で通常に活動させた。
【0344】
固定化の8週間後、拘束用縫合糸を除去し、10匹の動物を2つの群に分けて、ROMの変化(ROM群、n=5)および関節硬直(硬直群、n=5)について評価した。ROM群では、キネマティクスの変化を、経過観察期間中、ベースライン時に測定されたτOUTおよびτINTで実現されるROMを測定することによって縦方向に数量化した。これは、固定化によりROMの著しい減少が媒介されるかどうかを評価するために行った。硬直群では、関節カイネティクスを、それぞれ元の80°の内旋および60°の外旋を実現するために必要なτOUTおよびτINTの差異を測定することによって調査した。両群についての測定を抜糸直後(経過観察の0日目)およびその後一定の間隔で行った(連続した3時点で10%未満の変化が観察されるまでは週に2回、その時点で、測定頻度を週に1回に減らした)。各群についてのベースライン測定値を内部対照として使用して、研究に必要な動物の総数を減らした。同じ動物の対側肩を使用した場合であってもROMおよび測定されたトルクのどちらも検体間変動が大きかったので、内部対照を使用することで内部妥当性および統計的検出力も増大した。最後に、パイロット研究により、検体内測定値が8週間の期間中、再現性が高く、安定なままであったことが実証された。
【0345】
ROMおよびトルク測定を、センサーアセンブリ、回転軸、およびアームクランプからなるデバイスを使用し、全身麻酔下で実施した。センサーアセンブリは、感知軸が回旋の中心と同一線上になるように軸に固定された、方向センサー(3DM-GX3-15、MicroStrain -Williston、VT)、ならびに反応トルクセンサー(TFF400、Futek-Irvine、CA)を含有するものであった。前肢を3点(手首、肘、および腕)で固定し、感知軸が上腕骨の長軸と一直線になることを確実にした。センサーアセンブリの回転により、肩甲上腕関節内での直接の上腕骨内旋および上腕骨外旋がもたらされた。
【0346】
ROMおよびトルクを再現性よく捕捉するために、マイクロコントローラーで運動制御されるステッパー(UNO R3、Arduino、Italy)によって受動的肢回旋を実施した。このシステムは、反応トルクセンサーまたは方向センサーからのインプットを利用してROMおよびトルクの動的測定を開始および終了するものであった。ROM群では、回旋ROMの変化を0.2°の分解能で検出するために、予め設定したプログラム可能なトルク値、各動物に特異的なものとベースライン時に測定されたもの(τOUTおよびτINT)をインプット変数として使用した。硬直群では、トルクの変化を0.01N/mmの分解能で測定するために、予め設定したプログラム可能な回旋角度(60°外旋、80°内旋)をインプットとして使用した。マイクロコントローラーをMATLAB 7.13.0.564(MathWorks Inc -Natick、MA、USA)を使用してコンピュータによって方向づけた。
【0347】
ROM群では、平均ROM値を3つの異なる時点(ベースライン、抜糸直後、および8週間経過観察した時点)で反復測定分散分析によって比較した。硬直群では、比較のために2つの異なるメトリクスを使用した:1)完全なROMを実現するために必要なトルクの差異、および2)回旋角度-トルク曲線下面積から推定される硬直。両群についてP<0.05の値を統計的に有意であるとみなした。経過観察期間中のROMの時間的な挙動を決定した。抜糸直後には、総ROMにベースラインと比較して63%の減少が認められた(51°±10°対136°±0°;P<0.001)。同様に、総トルクがベースラインと比較して13.4N.mm増大した(22.6±5.9N.mm対9.2±2.6N.mm;P=0.002)。8週間経過観察した時点でまだ総ROMの制限および内旋のトルクの増大が残っていることが明らかであった(113°±8°対137°±0°、P<0.001および3.5±0.4N.mm対2.7±0.7N.mm、P=0.036)。
【0348】
カイネティクスおよびキネマティクスの変化は一過性のものではなかった。8週間経過観察した時点で、ROMの減少および関節硬直の増大の両方が有意であった。この拘縮肩モデルの自然進行および時間的挙動を評価した試験は存在しないが、固定化期間後8週間後に関節に残っていた変化は恒久的なものである可能性が高いことが予想される(Trudel G. et al., Journal of Applied Physiology (Bethesda, Md : 1985), 2014, 117 (7): 730-7)。実施例4に示されている結果から、ラットにおける拘縮肩モデルを使用して、拘縮肩を処置するための治療介入を評価することができることが示される。
【0349】
上記の所見は、その後、同様の拘縮肩のモデルを独立に報告しているKimらによって検証された(Kim et al., J. Orthop. Surg. Res. 2016; 11 (1): 160)。肩甲上腕関節の腋窩陥凹の一連の顕微鏡画像は、6週間にわたって取得された、Kimらによって見られたものと同様であった。マッソントリクローム染色を利用して線維症(赤色)を同定した。3日時点および6週間時点での拘縮発生の組織学的証拠が観察された。線維症および炎症が初期に生じ、固定化の間持続し、特に、炎症細胞の浸潤、莢膜の肥厚、および莢膜組織内の血管新生が早くも3日時点で明白であった。急性炎症反応は第6週までに低減したが、莢膜の肥厚および線維化した構造はまだ残っており、これは、他の試験からの所見を密接に模倣するものであった(Trudel et al., J. Appl. Physiol. (1985), 2014, 117 (7): 730-7)。ROMの減少および硬直の増大が続くこのモデルを用いると、拘縮肩に対する現行のおよび潜在的な治療介入を包括的に評価することが可能になる。
(実施例4)
マウスモデルにおける関節の硬直を処置するためのリラキシン-2微小粒子の使用
【0350】
本試験では、組換えヒトリラキシン-2の、Villa-Camacho et al., Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 2015, 24 (11): 1809-16に記載されている拘縮肩の動物モデルにおける肩甲上腕関節のカイネティクスおよびキネマティクスに対する影響を調査した。リラキシン-2の多数回の関節内(mIA)注射で処置したラットは、8週間のモニタリング期間全体を通して無処置の対照よりも迅速な可動域(ROM)の回復を示すことが予測された。各動物について、あらゆる外科的介入の前のインタクトな左肩の度ごとのトルクを100°の内旋と60°の外旋の間の回旋角度の関数として測定した。8週間の固定化後、ROMを測定し、ラットにリラキシン-2をリン酸緩衝食塩水中2μg/kg注射(すなわち、ビヒクル群)で、蛍光透視による誘導の下、硬直した肩の滑膜関節腔に直接注射した(0日目)。ラットは、2μg/kgのリラキシン-2を2日に1回、10日間にわたって投与される注射を合計5回受け、合計でラット当たり10μg/kgが投与された(すなわち、MIA群)。ラットに、0日目に、およそ10μg/kgのリラキシン-2が封入されたPLGA微小粒子を単回用量で注射した(すなわち、RMP群)。追加的な対照として、動物の別のセットに、拘縮肩を生じさせず、2μg/kgのリラキシン-2の注射を、2日に1回、10日間にわたって合計5回受けさせ、合計でラット当たり10μg/kgを投与した(すなわち、健康+MIA群)。キネマティクスの変化を0日目に開始して経過観察期間中、ベースライン時に測定されたτOUTおよびτINTで実現されるROMを測定することによって縦方向に数量化した。ROM測定を、抜糸直後(経過観察の0日目)、および、その後、8週間の経過観察期間にわたって一定の間隔で行った(連続した3時点で10%未満の変化が観察されるまでは週に2回、その時点からは測定頻度を週に1回に減らした)。各群についてのベースライン測定値が、対側の傷害を受けていない肩の同じROM測定値に加えて内部対照として機能した。リラキシン-2またはリラキシンが負荷された微小粒子(RMP)をmIAを受けたラットでは、内旋ROMが8週間の経過観察期間後にベースライン測定値まで戻ることが実証された(
図11)。このモデルを使用して、はるかに高い用量でのリラキシンの単回の関節注射またはリラキシン-2の静脈内注射では、無処置の対照群と比較して同様に抑制された内旋ROMが示される。肩関節の組織学的分析により、無処置のラットの固定化された肩は、上腕骨頭上の関節包(capsule)と関節面の線引きされた分離の低減、線維芽細胞浸潤および莢膜癒着を有したが、一方、リラキシン-2(Blessing, W.A., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 2019, 116: 12183-12192)またはリラキシンが負荷された微小粒子のmIAを受けたラットの固定化された肩には、いかなる明らかな癒着もなく、滑膜と関節軟骨表面は互いに分離されたままであり、適当な細胞組織化が伴い、また、ビヒクル微小粒子対照と比較して異物応答の低減が示されることが実証された(
図12)。
【0351】
上記の拘縮モデルを使用し、動物に、0日目にビヒクル(空の微小粒子)またはリラキシンが負荷された微小粒子(すなわち、SR-RLX)を受けさせ、8週間にわたって経過観察した。
図13は、リラキシン-2が負荷された微小粒子の単回の関節内注射受けたラットの肩の可動域の回復が、リラキシン-2の5回の関節内注射を受けたラットの肩の可動域の回復と同様であったことを示す。対照である負荷されていないビヒクル微小粒子および対照である生理食塩水注射では、同様のROM回復が実証された。この回復は、全ての内旋角度および外旋角度のデータについてリラキシン-2処置群の回復よりも低度のものであった。14日時点および16日時点で、リラキシンが負荷されたデポ剤で処置したラット(n=7)と負荷されていないビヒクル対照(n=9)の間で総可動域に統計的有意差が認められた(p<0.01)。このデータは、
図11からの結果と一致する。
(実施例5)
ヒト対象における関節の硬直を処置するための、リラキシン-2が負荷された微小粒子の使用
【0352】
リラキシンが1%重量/重量で負荷されたPLGA(ラクチド:グリコリドのモル比45:65、M.W.50,000~75,000ダルトン、カルボン酸で終わるもの)で構成される直径35μmのリラキシン-2微小粒子を、肩癒着性関節包炎と診断された患者に投与する。注射前に、リラキシン-2微小粒子を滅菌等張性カルボキシメチルセルロース希釈剤に最終的な用量が体重1kg当たり50μgになるような総体積まで再懸濁させる。投与は、23Gの針を使用した1mlの関節内注射の形態である。注射後、患者を関節可動域(例えば、内旋、外旋、回内、回外、屈曲、伸展、外転、および内転)の変化、患者により報告される疼痛、可動性、患者により報告される自律性、ならびに患者により報告される生活の質についてモニタリングする。
(実施例6)
NMDに続発する関節の硬直を処置するための、リラキシン-2が負荷された微小粒子の使用。
【0353】
リラキシンが0.5%重量/重量で負荷されたPLGA(ラクチド:グリコリドのモル比50:50、M.W.70,000~90,000ダルトン、エステルで終わるもの)およびPVA(M.W.30,000ダルトン)で構成される直径35μmのリラキシン微小粒子を、股関節(acetabulofemoral joint)の拘縮を示している、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された患者に投与する。注射前に、リラキシン微小粒子を滅菌された生理食塩水緩衝剤に基づく希釈剤に最終的な用量が体重1kg当たり20μgになるような総体積まで再懸濁させる。投与は、21Gの針を使用した1mlの関節内注射の形態である。その後、10μg/kgで1mlの注射を最初の注射の後、14日ごとに70日間行う。最初の注射後、繰り返し投薬の間、および投薬レジームの完了後に、患者を関節可動域(例えば、内旋、外旋、回内、回外、屈曲、伸展、外転、および内転)の変化、患者により報告される疼痛、可動性、患者により報告される自律性、ならびに患者により報告される生活の質についてモニタリングする。
(実施例7)
肺線維症を処置するための、リラキシン-2が負荷された微小粒子の使用。
【0354】
リラキシンが0.5%重量/重量で負荷されたPLGAで構成される直径3.1μmのリラキシン微小粒子を、努力肺活量の減少および乾性咳を示している、特発性肺線維症と診断された患者に投与する。投与前に、リラキシン微小粒子を穏やかに撹拌して、貯蔵中に形成されたあらゆる乾燥粉末凝集塊を脱凝集させる。乾燥粉末の定量噴霧式吸入器を使用して、患者に25μg/kgと等しい用量を吸入させる。投与後、患者を、CTスキャンによる線維症の病理学的特質の減少について、ならびに努力肺活量の増加、および呼吸窮迫症状の低減についてモニタリングする。
(実施例8)
線維症処置するためのリラキシン-2の使用。
【0355】
本発明は、対象における、関節包の線維化硬化、肺線維症(すなわち、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、高血圧症)、肝線維症(liver fibrosis)(すなわち、B型またはC型肝炎、長期間にわたるアルコールの乱用、非アルコール性脂肪性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、胆汁うっ滞、自己免疫性肝炎硬変症)、腎線維症(すなわち、慢性腎疾患、末期腎疾患、間質性腎線維症)、心疾患(すなわち、心不全、心筋梗塞、大動脈弁狭窄症、肥大性心筋症)、腸疾患(すなわち、クローン病、炎症性腸疾患、腸症、および他の腸線維症)、皮膚の状態(すなわち、強皮症、ケロイド、肥厚性瘢痕、セルライト)、泌尿生殖器および婦人科の状態(ペロニー病、子宮筋腫)および眼の疾患(すなわち、外眼筋の先天性線維症、網膜下線維症、網膜上線維症、角膜線維症)を含めた線維化疾患を、リラキシンファミリーペプチド受容体(RXFP1、RXFP2、RXFP3、RXFP4)に対する結合性作用剤を含有するデポ剤を投与することによって処置するための組成物(composition of matter)および方法を提供する。作用剤は、受容体のネイティブなリガンド、リラキシン-2、リラキシン-2バリアント、単一ドメインラクダ科動物抗体断片、ペプチド配列、ポリヌクレオチド、または小分子を含めた標的化作用剤と化学的にコンジュゲートしたリラキシン-2、または小分子アロステリックモジュレーターである。デポ剤は、少なくとも0.1μm3の体積を有し、最低限に効果的な臨床用量を数週間~数カ月にわたって送達する1つもしくは複数のポリマーまたは自己組織化した小分子で構成される物体である。リラキシンが負荷されたデポ剤を静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、鼻腔内に、経口的に、経皮的に(transcutaneously)、粘膜を通じて、関節内に、関節周囲に、嚢内に、被膜周囲に、腱内に、腱周囲に、靭帯内に、靭帯周囲に、肺への吸入によってまたは眼への特異的投与経路によって持続放出製剤として投与することができ、また、単回の注射または一連の注射として提供することができる。
配列の一覧表
配列番号1
>gi116497221HgbAA126416.1 リラキシン2[Homo sapiens]
MPRLFFFHLLGVCLLLNQFSRAVADSWMEEVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAEIVPSFINKDTETINMMSEFVANLPQELKLTLSEMQPALPQLQQHVPVLKDSSLLFEEFKKLIRNRQSEAADSSPSELKYLGLDTHSRKKRQLYSALANKCCHVGCTKRSLARFC
配列番号2
>gill16496899IgbIAAI26420.1I リラキシン2[Homo sapiens]
MPRLFFFHLLGVCLLLNQFSRAVADSWMEEVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAEIVPSFINKDIETINMMSEFVANLPQELKLILSEMQPALPQLQQHVPVLKDSSLLFEEFKKLIRNRQSEAADSSPSELKYLGLDTHSRKKRQLYSALANKCCHVGCTKRSLARFC
配列番号3
>gil313884020IgbIADR83496.1I リラキシン2、部分的[合成構築物]
MPRLFFFHLLGVCLLLNQFSRAVADSWMEEVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAEIVPSFINKDIETINMMSEFVANLPQELKLILSEMQPALPQLQQHVPVLKDSSLLFEEFKKLIRNRQSEAADSSPSELKYLGLDTHSRKKRQLYSALANKCCHVGCTKRSLARFC
配列番号4
>gill3543609IgbIAAH05956.1I リラキシン1[Homo sapiens]
MPRLFLFHLLEFCLLLNQFSRAVAAKWKDDVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAEIVPSFINKDIETIIIMLEFIANLPPELKAALSERQPSLPELQQYVPALKDSNLSFEEFKKLIRNRQSEAADSNPSELKYLGLDTHSQKKRRPYVALFEKCCLIGCTKRSLAKYC
配列番号5
>gill19579171IgblEAW58767.1I リラキシン1、アイソフォーム CRA_a[Homo sapienss]
MPRLFLFHLLEFCLLLNQFSRAVAAKWKDDVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAEIVPSFINKDIETIIIMLEFIANLPPELKAALSERQPSLPELQQYVPALKDSNLSFEEFKKLIRNRQSEAADSNPSELKYLGLDTHSQKKRRPYVALFEKCCLIGCTKRSLAKYC
配列番号6
>gi119579172gbEAW58768.1 リラキシン1、アイソフォーム CRA b[Homo sapiens]
MPRLFLFHLLEFCLLLNQFSRAVAAKWKDDVIKLCGRELVRAQIAICGMSTWSKRSLSQEDAPQTPRPVAGISSSLLRRRLFEDHDGPSFLV
配列番号7
>gill19579173Hg-bEAW58769.1 リラキシン1、アイソフォーム CRA c[Homo sapiens]
MLEFIANLPPELKAALSERQPSLPELQQYVPALKDSNLSFEEFKKLIRNRQSEAADSNPSELKYLGLDTHSQKKRRPYVALFEKCCLIGCTKRSLAKYC
配列番号8
>gi119604794gbEAW84388.1 リラキシン3[Homo sapiens]
MARYMLLLLLAVWVLTGELWPGAEARAAPYGVRLCGREFIRAVIFTCGGSRWRRSDILAHEAMGDTFPDADADEDSLAGELDEAMGSSEWLALTKSPQAFYRGRPSWQGTPGVLRGSRDVLAGLSSSCCKWGCSKSEISSLC
配列番号9
>gi187954661gbAAI40936.1 リラキシン3[Homo sapiens]
MARYMLLLLLAVWVLTGELWPGAEARAAPYGVRLCGREFIRAVIFTCGGSRWRRSDILAHEAMGDTFPDADADEDSLAGELDEAMGSSEWLALTKSPQAFYRGRPSWQGTPVVLRGSRDVLAGLSSSCCKWGCSKSEISSLC
配列番号10
>gi17484096HgbAAL40345.1AF447451 1 リラキシン3[Homo sapiens]
MARYMLLLLLAVWVLTGELWPGAEARAAPYGVRLCGREFIRAVIFTCGGSRWRRSDILAHEAMGDTFPDADADEDSLAGELDEAMGSSEWLALTKSPQAFYRGRPSWQGTPGVLRGSRDVLAGLSSSCCKWGCSKSEISSLC
配列番号11
>gi317373369spJ)51460.2INSL3 ヒト RecName:全長=インスリン様3;
MDPRLPAWALVLLGPALVFALGPAPTPEMREKLCGHHEVRALVRVCGGPRWSTEARRPATGGDRELLQWLERRHLLHGLVADSNLTLGPGLQPLPQTSHHHRHHRAAATNPARYCCLSGCTQQDLLTLCPY
配列番号12
>gi119579176gbEAW58772.1 インスリン様4(胎盤)[Homo sapiens]
MASLFRSYLPAIWLLLSQLLRESLAAELRGCGPRFGKHLLSYCPMPEKTFTTTPGGWLLESGRPKEMVSTSNNKDGQALGTTSEFIPNLSPELKKPLSEGQPSLKKIILSRKKRSGRHRFDPFCCEVICDDGTSVKLCT
配列番号13
>gi20070773HgbAAH26254.1 インスリン様4(胎盤)[Homo sapiens]
MASLFRSYLPAIWLLLSQLLRESLAAELRGCGPRFGKHLLSYCPMPEKTFTTTPGGWLLESGRPKEMVSTSNNKDGQALGTTSEFIPNLSPELKKPLSEGQPSLKKIILSRKKRSGRHRFDPFCCEVICDDGTSVKLCT
配列番号14
>gi37183171AQ89389.1 INSL5[Homo sapiens]
MKGSIFTLFLFSVLFAISEVRSKESVRLCGLEYIRTVIYICASSRWRRHLEGIPQAQQAETGNSFQLPHKREFSEENPAQNLPKVDASGEDRLWGGQMPTEELWKSKKHSVMSRQDLQTLCCTDGCSMTDLSALC
配列番号15
>giH4768935gbAAD29686.1AF133816 1 インスリン様ペプチド INSL5[Homo sapiens]
MKGSIFTLFLFSVLFAISEVRSKESVRLCGLEYIRTVIYICASSRWRRHLEGIPQAQQAETGNSFQLPHKREFSEENPAQNLPKVDASGEDRLWGGQMPTEELWKSKKHSVMSRQDLQTLCCTDGCSMTDLSALC
配列番号16
>gik5059419gbAAD39003.1AF156094 1 インスリン様タンパク質6[Homo sapiens]
MPRLLRLSLLWLGLLLVRFSRELSDISSARKLCGRYLVKEIEKLCGHANWSQFRFEEETPFSRLIAQASEKVEAYSPYQFESPQTASPARGRGTNPVSTSWEEAVNSWEMQSLPEYKDKKGYSPLGKTREFSSSHNINVYIHENAFFQKKRRNKIKTLSNLFWGHHPQRKRRGYSEKCCLTGCTKEELSIACLPYIDFKRLKEKRSSLVTKIY
【配列表】
【国際調査報告】