(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】運動失調症を治療するためのアセチルロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとの組合せ
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20230614BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/4409 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20230614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P21/00
A61P25/02
A61K31/4409
A61K31/433
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571228
(86)(22)【出願日】2021-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 IB2021054399
(87)【国際公開番号】W WO2021234642
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519445635
【氏名又は名称】イントラビオ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ストルップ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC85
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA37
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA22
4C206ZA94
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、それを必要としている対象において運動失調症を治療する方法であって、アセチル-ロイシンと4-アミノピリジンとの組合せ又はアセチル-ロイシンとアセタゾラミドとの組合せを該対象に投与することによる、前記方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象において運動失調症を治療する方法であって、治療的有効量のアセチル-ロイシンと、(i)治療的有効量の4-アミノピリジン又は(ii)治療的有効量のアセタゾラミドとの組合せを該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、同時に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、単一の医薬製剤として投与される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、2つの別々の医薬製剤として投与される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、順次投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
アセチル-ロイシンが、4-アミノピリジン又はアセタゾラミドの前に投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
アセチル-ロイシンが、4-アミノピリジン又はアセタゾラミドの後に投与される、請求項5記載の方法。
【請求項8】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、約1分~約6時間の間隔を空けて投与される、請求項5~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、約1分~3時間の間隔を空けて投与される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、約1分~1時間の間隔を空けて投与される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、経口投与される、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
アセチル-ロイシンが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
4-アミノピリジン又はアセタゾラミドが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
1日当たり約3g~約15gのアセチル-ロイシンが投与される、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
1日当たり約10mg~約30mgの4-アミノピリジン又は約500mg~約1000mgのアセタゾラミドが、投与される、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アセチル-ロイシンと4-アミノピリジン又はアセタゾラミドとが、発作性運動失調症を治療する第一選択治療として投与される、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記運動失調症が、反復発作性運動失調症である、請求項1~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記反復発作性運動失調症が、反復発作性運動失調症2型である、請求項1~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
アセチル-ロイシンが、4-アミノピリジンと組み合わせて前記対象に投与される、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
アセチル-ロイシンが、アセタゾラミドと組み合わせて前記対象に投与される、請求項1~18のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-DL-ロイシンである、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-L-ロイシンである、請求項1~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失を有する、請求項1~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
対象において運動失調症を治療するための、アセチル-ロイシン及び4-アミノピリジン又はアセタゾラミドを含むキット。
【請求項25】
前記対象に前記アセチル-ロイシン及び4-アミノピリジン又はアセタゾラミドを投与するための説明書をさらに含む、請求項24記載のキット。
【請求項26】
前記運動失調症が、反復発作性運動失調症2型である、請求項24又は25記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本開示は、対象において運動失調症、例えば、反復発作性運動失調症(episodic ataxia)を治療するためのアセチル-ロイシンと4-アミノピリジンとの組合せ又はアセチル-ロイシンとアセタゾラミドとの組合せを提供する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
運動失調症は、遺伝性のことも後天性のこともある。遺伝性運動失調症は、多くの場合手、発話、及び眼球運動の協調の低下並びに/又は小脳の萎縮を伴う歩行の緩徐進行性協調運動障害を特徴とする一群の遺伝性障害であるが、これには、常染色体顕性運動失調症、例えば、脊髄小脳運動失調症又は反復発作性運動失調症、及び常染色体性潜性運動失調症、例えば、ニーマン・ピック病、ガングリオシドーシス、又は毛細血管拡張性運動失調症が含まれる。Adam MP, Ardinger HH, Pagon RAら編集の文献「遺伝子レビュー(GeneReviews)(登録商標)(インターネット))」, Seattle (WA): University of Washington. Seattle; 1993-2020内のBird TDの文献「遺伝性運動失調症概要(Hereditary Ataxia Overview)」、1998年10月28日(2019年7月25日更新)。後天性運動失調症には、孤発性運動失調症又は多系統萎縮症(MSA)が含まれる。Ashizawa及びXiaの文献、Continuum (Minneap Min) 22:1208-1226 (2016)。
【0003】
反復発作性運動失調症(EA)は、姿勢と歩行との不均衡、四肢失調、構音障害、及び眼振を伴う小脳性運動失調症の再発エピソードを特徴とする稀な遺伝性神経障害である。EAは、多くの場合、身体的もしくは感情的ストレス、又はアルコールによって誘発され、嘔気及び嘔吐を伴う。Kipfer及びStruppの文献Movement Disorders Clinical Practice 1:285-290, doi:10.1002/mdc3.12075 (2014); Jen及びWanの文献「臨床神経学のハンドブック(Handbook of Clinical Neurology)」 155:205-215, doi:10.1016/b978-0-444-64189-2.00013-5 (2018)。
【0004】
EAには8つサブタイプが知られている。そのうち、EA1及びEA2は、臨床的に最も関連性のあるものである。EA2は、その発症が通常は青年期であるが、遅発型の症例がいくつか報告されている。Imbriciらの文献、Neurology 65:944-946, doi:10.1212/01.wnl.0000176069.64200.28 (2005)。EA2エピソードは、一般に、数分から数時間の間持続し、約50%の患者で片頭痛様の頭痛が併発する。Jenらの文献、Neurology 62:17-22. doi:10.1212/01.wnl.0000101675.61074.50 (2004)。EA2患者は、高頻度で、緩徐進行性発作間欠期ベースライン運動失調症及び明確な中枢性眼球運動機能障害、例えば、主として、注視誘発性又は下向き眼振を発症する。Riantらの文献、Revue Neurologique 167:401-407, doi:10.1016/j.neurol.2010.10.016 (2011)。EA2は、P/Q型電位開口型カルシウムチャネル(Cav2.1)のアルファ-1Aサブユニットをコードする、染色体19p13上のCACNA1A遺伝子に影響を及ぼす変異によって引き起こされる遺伝性の常染色体性顕性チャネル病である。Ophoffらの文献、Cell 87:543-552. doi:10.1016/s0092-8674(00)81373-2 (1996)。EAの患者における治療原則には、医学療法並びに理学療法、歩行機能を保存するための作業療法、及び言語療法が含まれる。Ilgらの文献Cerebellum (London, England) 13:248-268, doi:10.1007/s12311-013-0531-6 (2014); Gandiniらの文献J Neurol. 267:1211-1220, doi: 10.1007/s00415-020-09717-3 (2020)。
【0005】
対象における運動失調症を治療する新規の医学療法が、本技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
(発明の簡単な概要)
予期せずに、出願人は、アセチル-ロイシンを、4-アミノピリジン(4-AP)又はアセタゾラミドと組み合わせて、そのような治療を必要とする対象において、これに限定されないが、反復発作性運動失調症(EA)をはじめとする運動失調症を治療することができることを発見した。いくつかの実施態様において、前記対象は、CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失を有する。
【0007】
一態様において、本開示は、対象における運動失調症の治療における使用のための4-APと組み合わせたアセチル-ロイシンを提供する。
【0008】
一態様において、本開示は、対象における運動失調症の治療における使用のためのアセタゾラミドと組み合わせたアセチル-ロイシンを提供する。
【0009】
別の態様において、本開示は、それを必要としている対象において運動失調症を治療する方法であって、治療的有効量のアセチル-ロイシンと治療的有効量の4-APとの組合せを前記対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、それを必要としている対象において運動失調症を治療する方法であって、治療的有効量のアセチル-ロイシンと治療的有効量のアセタゾラミドとの組合せを前記対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本開示は、運動失調症を治療する第一選択療法のための前記アセチル-ロイシンと4-APとの組合せを提供する。
【0012】
別の態様において、本開示は、運動失調症を治療する第一選択療法のための前記アセチル-ロイシンとアセタゾラミドとの組合せを提供する。
【0013】
別の態様において、本開示は、対象において運動失調症を治療するための、アセチル-ロイシン及び4-APを含むキットを提供する。
【0014】
別の態様において、本開示は、対象において運動失調症を治療するための、アセチル-ロイシン及びアセタゾラミドを含むキットを提供する。
【0015】
前述の概要と以下の詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的であるにすぎず、特許請求された本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、新たに特定されたヘテロ接合性常染色体顕性CACNA1A変異(NM_001127221.1: (c2070_2071delinsGGAG, p.(Phe690Leufs*9)))を有するドイツ人家族の家系図である。この変異は、家族のうちの3世代4名に認められ、一様ではない表現型を示した。説明:*=発端患者、正方形=男性、丸=女性、塗りつぶされた記号=遺伝疾患対象、塗りつぶされていない記号=非遺伝疾患対象。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
一実施態様において、本開示は、対象における運動失調症の治療における使用のための4-AP又はアセタゾラミドと組み合わせたアセチル-ロイシンを提供する。これを、実施態様1と呼ぶ。
【0018】
本開示は、以下のような特定の実施態様2~23を提供する。
【0019】
(実施態様2)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、同時に投与される、実施態様1記載の使用のための組合せ。
【0020】
(実施態様3)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、単一の医薬製剤として投与される、実施態様2記載の使用のための組合せ。
【0021】
(実施態様4)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、2つの別々の医薬製剤として投与される、実施態様2記載の使用のための組合せ。
【0022】
(実施態様5)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、順次投与される、実施態様1記載の使用のための組合せ。
【0023】
(実施態様6)
アセチル-ロイシンが、4-AP又はアセタゾラミドの前に対象に投与される、実施態様5記載の使用のための組合せ。
【0024】
(実施態様7)
アセチル-ロイシンが、4-AP又はアセタゾラミドの後に対象に投与される、実施態様5記載の使用のための組合せ。
【0025】
(実施態様8)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~約6時間の間隔を空けて投与される、実施態様5~7のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0026】
(実施態様9)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~3時間の間隔を空けて投与される、実施態様8記載の使用のための組合せ。
【0027】
(実施態様10)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~1時間の間隔を空けて投与される、実施態様9記載の使用のための組合せ。
【0028】
(実施態様11)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、経口投与される、実施態様1~10のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0029】
(実施態様12)
アセチル-ロイシンが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、実施態様1~11のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0030】
(実施態様13)
4-AP又はアセタゾラミドが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、実施態様1~12のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0031】
(実施態様14)
1日当たり約3g~約15gのアセチル-ロイシンが投与される、実施態様1~13のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0032】
(実施態様15)
1日当たり約10mg~約30mgの4-AP又は約500mg~約1000mgのアセタゾラミドが投与される、実施態様1~14のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0033】
(実施態様16)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、運動失調症を治療する第一選択治療として投与される、実施態様1~15のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0034】
(実施態様17)
前記運動失調症が、EAである、実施態様1~16のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0035】
(実施態様18)
前記EAが、反復発作性運動失調症2型(EA2)である、実施態様17記載の使用のための組合せ。
【0036】
(実施態様19)
アセチル-ロイシンが、4-APと組み合わされる、実施態様1~18のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0037】
(実施態様20)
アセチル-ロイシンが、アセタゾラミドと組み合わされる、実施態様1~18のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0038】
(実施態様21)
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-DL-ロイシンである、実施態様1~20のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0039】
(実施態様22)
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-L-ロイシンである、実施態様1~20のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0040】
(実施態様23)
前記対象が、CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失を有する、実施態様1~22のいずれか1つに記載の使用のための組合せ。
【0041】
別の実施態様において、本開示は、それを必要としている対象において運動失調症を治療する方法であって、治療的有効量のアセチル-ロイシンと、(i)治療的有効量の4-AP;又は(ii)治療的有効量のアセタゾラミドとの組合せを前記対象に投与することを含む、前記方法を提供する。これを、実施態様Iと呼ぶ。
【0042】
本開示は、以下のような特定の実施態様II~XXVIを提供する。
【0043】
(実施態様II)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、同時に投与される、実施態様I記載の方法。
【0044】
(実施態様III)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、単一の医薬製剤として投与される、実施態様II記載の方法。
【0045】
(実施態様IV)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、2つの別々の医薬製剤として投与される、実施態様II記載の方法。
【0046】
(実施態様V)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、順次投与される、実施態様I記載の方法。
【0047】
(実施態様VI)
アセチル-ロイシンが、4-AP又はアセタゾラミドの前に投与される、実施態様V記載の方法。
【0048】
(実施態様VII)
アセチル-ロイシンが、4-AP又はアセタゾラミドの後に投与される、実施態様V記載の方法。
【0049】
(実施態様VIII)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~約6時間の間隔を空けて投与される、実施態様V~VIIのいずれか1つに記載の方法。
【0050】
(実施態様IX)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~3時間の間隔を空けて投与される、実施態様VIII記載の方法。
【0051】
(実施態様X)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、約1分~1時間の間隔を空けて投与される、実施態様IX記載の方法。
【0052】
(実施態様XI)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、経口投与される、実施態様I~Xのいずれか1つに記載の方法。
【0053】
(実施態様XII)
アセチル-ロイシンが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、実施態様I~XIのいずれか1つに記載の方法。
【0054】
(実施態様XIII)
4-AP又はアセタゾラミドが、1日当たり1回、2回、又は3回投与される、実施態様I~XIIのいずれか1つに記載の方法。
【0055】
(実施態様XIV)
1日当たり約3g~約15gのアセチル-ロイシンが投与される、実施態様I~XIIIのいずれか1つに記載の方法。
【0056】
(実施態様XV)
1日当たり約10mg~約30mgの4-AP又は約500mg~約1000mgのアセタゾラミドが投与される、実施態様I~XIVのいずれか1つに記載の方法。
【0057】
(実施態様XVI)
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとが、運動失調症を治療する第一選択治療として投与される、実施態様I~XVのいずれか1つに記載の方法。
【0058】
(実施態様XVII)
前記運動失調症が、EAである、実施態様I~XVIのいずれか1つに記載の方法。
【0059】
(実施態様XVIII)
前記EAが、反復発作性運動失調症2型(EA2)である、実施態様I~XVIIのいずれか1つに記載の方法。
【0060】
(実施態様XIX)
治療的有効量のアセチル-ロイシンが、治療的有効量の4-APと共に投与される、実施態様I~XVIIIのいずれか1つに記載の方法。
【0061】
(実施態様XX)
治療的有効量のアセチル-ロイシンが、治療的有効量のアセタゾラミドと共に投与される、実施態様I~XIXのいずれか1つに記載の方法。
【0062】
(実施態様XXI)
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-DL-ロイシンである、実施態様I~XXのいずれか1つに記載の方法。
【0063】
(実施態様XXII)
前記アセチル-ロイシンが、N-アセチル-L-ロイシンである、実施態様I~XXのいずれか1つに記載の方法。
【0064】
(実施態様XXIII)
前記対象が、CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失を有する、実施態様I~XXIIのいずれか1つに記載の方法。
【0065】
(実施態様XXIV)
対象において運動失調症を治療するための、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを含むキット。
【0066】
(実施態様XXV)
前記アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを前記対象に投与するための説明書をさらに含む、実施態様XXIV記載のキット。
【0067】
(実施態様XXVI)
前記運動失調症が、反復発作性運動失調症2型である、実施態様XXIV又はXXV記載のキット。
【0068】
(定義)
本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数形の指示対象を含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「約(approximately)」及び「約(about)」という用語は、通常、規定の量、頻度、又は値の±20%を包含することが理解されるべきである。本明細書で与えられる数量は、別途記載されない限り、近似的であり、明示的に記載されない場合に、「約(about)」又は「約(approximately)」という用語を推測することができることを意味する。
【0070】
本明細書で使用される「投与する」、「投与」、又は「投与すること」という用語は、(1)アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとの組合せを、健康従事者もしくはその委任代理人のいずれかによって、又はその指導の下で提供し、供与し、投与し、及び/又は処方すること、並びに(2)アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを、対象自身又は人間自身で服用し、摂取し、又は消費することを指す。アセチル-ロイシン、4-AP、又はアセタゾラミド対する言及はいずれも、明示的に記載されていない場合であっても、その医薬として許容し得る塩を含む。
【0071】
本明細書で言及される「医薬として許容し得る塩」は、医薬用途での使用に適している任意の塩調製物である。医薬として許容し得る塩としては、アミン塩、例えば、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン、及び他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミ、1-パラ-クロロ-ベンジル-2-ピロリジン-1'-イルメチルベンゾイミダゾール、ジエチルアミン、及び他のアルキルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど;アルカリ金属塩、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなど;アルカリ土類金属塩、例えば、バリウム、カルシウム、マグネシウムなど;遷移金属塩、例えば、亜鉛、アルミニウムなど;他の金属塩、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウムなど;鉱酸、例えば、塩酸塩、硫酸塩など;並びに有機酸の塩、例えば、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、フマル酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを、当技術分野で公知の教示に従って製剤化し、対象に投与することができる。例えば、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを、別個の医薬組成物として製剤化することができる。これらの医薬組成物は、当該活性剤、すなわち、アセチル-ロイシン又は4-APもしくはアセタゾラミド、並びに1以上の医薬として許容し得る担体を含んでもよい。また、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとは、双方の活性剤及び1以上の医薬として許容し得る担体を含む単一の医薬組成物として製剤化されてもよい。
【0073】
別々又は単一の組成物中で一緒のいずれかのアセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを含む医薬組成物は、それらが用いられることとなる様式に応じて多くの異なる形態のうちのいずれかの形態をとり得る。したがって、例えば、医薬組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液の形態、又は治療を必要としている対象に投与し得る任意の他の好適な形態のものであってもよい。
【0074】
本明細書で言及される「医薬として許容し得る担体」は、医薬組成物の製剤化において有用であることが当技術分野で知られている、任意の既知の化合物又は既知の化合物の組合せ、例えば、賦形剤、担体などである。医薬組成物の担体は、それが与えられる対象によって忍容されるものであるべきであることが理解されるであろう。
【0075】
一実施態様において、医薬として許容し得る担体は、固体であってもよく、組成物は、粉末又は錠剤の形態のものであってもよい。医薬として許容し得る固体の担体としては、香味剤、緩衝剤、滑沢剤、安定化剤、可溶化剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、色素、充填剤、滑剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味料、防腐剤、色素、コーティング剤、又は錠剤崩壊剤としても作用し得る1以上の物質を挙げることができるが、これらに限定されない。担体はまた、封入材料であってもよい。粉末において、担体は、微細に分割された本発明による活性剤と混合された微細に分割された固体であってもよい。錠剤において、活性剤は、好適な割合で必要な圧縮特性を有する担体と混合され、所望の形態及びサイズで圧縮されていてもよい。粉末及び錠剤は、例えば、最大99%の活性剤を含有し得る。好適な固体担体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、及びイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施態様において、医薬として許容し得る担体は、ゲルであってもよく、組成物は、クリームなどの形態のものであってもよい。
【0076】
担体としては、1以上の賦形剤又は希釈剤を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような賦形剤の例は、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶性セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルカム、コロイド状二酸化ケイ素などである。
【0077】
別の実施態様において、医薬として許容し得る担体は、液体であってもよい。一実施態様において、医薬組成物は、溶液の形態のものである。液体担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、及び加圧組成物を調製する際に使用される。アセチル-ロイシン及び/又は4-APもしくはアセタゾラミドは、医薬として許容し得る液体担体、例えば、水、有機溶媒、両方の混合物、又は医薬として許容し得る油もしくは脂に溶解又は懸濁させることができる。液体担体は、他の好適な医薬添加物、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、香味剤、懸濁化剤、増粘剤、着色料、粘度調節剤、安定化剤、又は浸透圧調節剤を含有し得る。経口及び非経口投与用の液体担体の好適な例としては、水(上記のような添加物、例えば、セルロース誘導体を一部含有するもの、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えば、グリコールを含む)並びにそれらの誘導体、並びに油(例えば、分別ヤシ油及びラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与のために、担体はまた、油性エステル、例えば、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルであってもよい。滅菌液体担体は、非経口投与用の滅菌液体形態組成物において有用である。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素又は他の医薬として許容し得る噴射剤であってもよい。
【0078】
滅菌溶液又は懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、及び皮下注射によって利用することができる。活性剤は、滅菌水、生理食塩水、又は他の適切な滅菌注射可能媒体を用いて、投与時に溶解又は懸濁させることができる滅菌固体組成物として調製されてもよい。
【0079】
組成物は、他の溶質又は懸濁化剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な生理食塩水又はグルコース)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステル及びエチレンオキシドと共重合させたその無水物)などを含有する滅菌溶液又は懸濁液の形態で経口投与することができる。組成物は、液体又は固体組成物形態のいずれかで経口投与することもできる。経口投与に好適な組成物としては、丸薬、カプセル、顆粒、錠剤、及び粉末などの固体形態、並びに溶液、シロップ、エリキシル、及び懸濁液などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、エマルジョン、及び懸濁液が挙げられる。
【0080】
一実施態様において、アセチル-ロイシン、4-AP、及びアセタゾラミドの医薬組成物は、錠剤などの固体経口剤形である。錠剤において、活性剤は、好適な割合で必要な圧縮特性を有する医薬として許容し得る担体などのビヒクルと混合され、所望の形態及びサイズで圧縮されていてもよい。錠剤は、最大99重量%の活性剤を含有し得る。
【0081】
錠剤などの固体経口剤形中の医薬組成物は、調剤学の分野で公知の任意の方法によって調製することができる。医薬組成物は、通常、活性剤を従来の医薬として許容し得る担体と混合することにより調製される。
【0082】
アセチル-ロイシンを含む錠剤は、当技術分野で公知のように製剤化することができる。例えば、Tanganil(登録商標)は、コムギデンプン、アルファ化トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))デンプン、炭酸カルシウム、及びステアリン酸マグネシウムを賦形剤として含む。例えば、同じ又は類似の賦形剤を本開示とともに利用することができる。
【0083】
各々の700mg Tanganil(登録商標)錠剤の組成は、次の通りである: 500mgアセチル-DL-ロイシン、88mgコムギデンプン、88mgアルファ化トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))デンプン、13mg炭酸カルシウム、及び11mgステアリン酸マグネシウム。例えば、同じ錠剤を本開示の方法で利用することができる。
【0084】
上で論じられているように、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとは、任意の数の異なる形態を取る医薬組成物として製剤化し、投与することができる。例えば、アセチル-ロイシンは、血液脳関門を横断するその送達を容易にするための医薬組成物として製剤化することができる。さらなる例として、アセチル-ロイシンは、血液脳関門を迂回するための医薬組成物として製剤化することができる。
【0085】
一実施態様において、例えば、アセチル-L-ロイシン又はその塩を含む医薬組成物は、コロイド薬物担体系などのナノ送達用に製剤化される。好適な例としては、リポソーム、ナノ粒子(例えば、ポリマー性、脂質、及び無機ナノ粒子)、ナノゲル、デンドリマー、ミセル、ナノエマルジョン、ポリマーソーム、エクソソーム、並びに量子ドットが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Patelらの文献、「血液脳関門を横断する:脳への薬物送達における最近の進歩(Crossing the Blood-Brain Barrier: Recent Advances in Drug Delivery to the Brain)」、CNS Drugs 31:109-133(2017); Kabanovらの文献、「血液脳関門を横断する薬物送達のための新技術(New Technologies for Drug Delivery across the Blood Brain Barrier)」、Curr Pharm Des., 10(12):1355-1363(2004); Chengらの文献、「インビトロ血液脳関門モデル及びアルツハイマー病Tg2576マウスで試験された高安定化クルクミンナノ粒子(Highly Stabilized Curcumin Nanoparticles Tested in an In Vitro Blood-Brain Barrier Model and in Alzheimer's Disease Tg2576 Mice)」、The AAPS Journal, vol. 15, no. 2, pp. 324-336(2013); Lahdeらの文献、「エアロゾルフローリアクター法を用いた様々な条件下でのL-ロイシンナノ粒子の産生(Production of L-Leucine Nanoparticles under Various Conditions Using an Aerosol Flow Reactor Method)」、Journal of Nanomaterials, vol. 2008, article ID 680897(2008)を参照されたい。
【0086】
一実施態様において、例えば、N-アセチル-L-ロイシン又はその塩を含む医薬組成物は、例えば、注射又は注入による、中枢神経系(CNS)への直接送達用に製剤化される。CNSへの直接送達のための製剤及びCNSへの直接送達の方法は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第9,283,181号を参照されたい。そのような投与の例としては、鼻腔内、脳室内(intraventricular)、髄腔内、頭蓋内へのもの、及び鼻腔粘膜移植による送達が挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、医薬組成物は、脳室内(intracerebroventricular)注入によって投与される。
【0087】
一実施態様において、医薬組成物は、鼻腔内送達用に製剤化される(及び鼻腔内送達によって投与される)。例えば、Hansonらの文献、「鼻腔内送達は、血液脳関門を迂回して、治療剤を中枢神経系に標的化し、神経変性疾患を治療する(Intranasal delivery bypasses the blood-brain barrier to target therapeutic agents to the central nervous system and treat neurodegenerative disease)」、BMC Neurosci. 9(Suppl 3):S5(2008)を参照されたい。一実施態様において、医薬組成物は、鼻腔粘膜移植による送達用に製剤化される(及び鼻腔粘膜移植による送達によって投与される)。一実施態様において、医薬組成物は、脳室内注射又は注入用に製剤化される(及び脳室内注射又は注入によって投与される)。別の実施態様において、医薬組成物は、髄腔内嚢内注射又は注入用に製剤化される(及び髄腔内嚢内注射又は注入によって投与される)。一実施態様において、医薬組成物は、髄腔内腰部注射又は注入用に製剤化される(及び髄腔内腰部注射又は注入によって投与される)。
【0088】
限定するものではないが、当技術分野で公知の穿頭孔穿刺又は大槽穿刺又は腰椎穿刺などによる注射を含む、様々な技法を使用することができる。内部のもの(例えば、埋め込まれたもの)であれ、外部のものであれ、例えば、ポンプ、カテーテル、リザーバなどの、様々な装置を当技術分野で公知の送達のために使用することができる。一実施態様において、投与間隔は、2週間に1回である。
【0089】
「運動失調症」という用語は、対象における随意筋運動の協調障害を指す。運動失調症は、遺伝性のことも後天性のこともある。遺伝性運動失調症は、手、発話、及び眼球運動の協調の低下並びに/又は小脳の萎縮を伴うことが多い歩行の緩徐進行性協調運動障害を特徴とする一群の遺伝性障害であるが、これには、常染色体優性運動失調症、例えば、脊髄小脳性運動失調症又は反復発作性運動失調症、及び常染色体劣性運動失調症、例えば、ニーマン・ピック病、ガングリオシドーシス、又は毛細血管拡張性運動失調症が含まれる。Adam MP, Ardinger HH, Pagon RAら編集の文献「遺伝子レビュー(GeneReviews)(登録商標)(インターネット))」 Seattle (WA): University of Washington. Seattle; 1993-2020内のBird TDの文献「遺伝性運動失調症概要(Hereditary Ataxia Overview)」、1998年10月28日(2019年7月25日更新);Beaudinらの文献、4:3 https://doi.org/10.1186/s40673-017-0061-y (2017)。後天性運動失調症には、孤発性運動失調症又は多系統萎縮症(MSA)が含まれる。Ashizawa及びXiaの文献Continuum (Minneap Min) 22:1208-1226 (2016)。一実施態様において、運動失調症は、反復発作性運動失調症、例えば、反復発作性運動失調症1~7型である。別の実施態様において、反復発作性運動失調症は、反復発作性運動失調症1又は2型である。別の実施態様において、反復発作性運動失調症は、反復発作性運動失調症2型である。別の実施態様において、前記対象は、CACNA1A遺伝子に変異を有し、そのような変異としては、Sintasらの文献、Sci Rep 7:2514 doi: 10.1038/s41598-017-02554-x (2017)に記載されているもののうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。別の実施態様において、前記対象は、CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失を有する。Kimらの文献、J Clin Neurol 2:268-271 (2006); Denierらの文献、Neurology;52:1816-1821 (1999)。
【0090】
「反復発作性運動失調症」又は「EA」という用語は、数分から数時間持続する体幹運動失調及び協調運動障害の再発性の発作を特徴とする障害を指す。反復発作性運動失調症の8つのサブタイプが、臨床的及び遺伝学的特徴により定義されている。反復発作性運動失調症2型(EA2)は、最もよく見られるサブタイプである。EA2エピソードは、再発性運動失調症、数時間にわたる不明瞭発語、及び発作間欠期眼振を特徴とする。通常、発症は、人生の初期であるが、かなり遅い発症の患者も報告されている。回転性めまい及び変動性全身脱力感が、よく見られる。他の症状としては、構音障害、複視、強直性上方注視(tonic upward gaze)、頭痛、発作、ジストニア、及び/又は認知障害が挙げられるが、これらに限定されない。Choi及びChoiの文献、J Mov Disord 9:129-135, DOI: https://doi.org/10.14802/jmd.16028 (2016)。
【0091】
「アセチル-ロイシン」という用語は、集合的に、N-アセチル-DL-ロイシン(ADLL)又はその医薬として許容し得る塩;N-アセチル-D-ロイシン(ADL)又はその医薬として許容し得る塩;及びN-アセチル-L-ロイシン(ALL)又はその医薬として許容し得る塩をいう。アセチル-ロイシンという用語は、1以上の原子が異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、及びN-アセチル-L-ロイシンの同位体標識された類似体を含む。組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、及び酸素の同位体、例えば、2H(又は重水素(D))、3H、11C、13C、14C、15N、18O、及び17Oなどが挙げられる。一実施態様において、アセチル-ロイシン内のある位置の原子の実質的に全てが、異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、アセチル-ロイシンの同位体標識された類似体が提供される。別の実施態様において、アセチル-ロイシン内のある位置の原子の一部が置き換えられている、アセチル-ロイシンの同位体標識された類似体が提供され、例えば、アセチル-ロイシンは、1以上の位置で、異なる原子質量又は質量数を有する原子で濃縮されている。同位体標識されたアセチル-ロイシンは、当技術分野において公知の方法によって調製することができる。
【0092】
一実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンは、同位体標識されていない。
【0093】
一実施態様において、同位体標識された類似体は、1以上の水素原子が重水素と置き換えられている、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの重水素化類似体である。一実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が1つ、重水素と置き換えられている。別の実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が2つ、重水素と置き換えられている。別の実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が3つ、重水素と置き換えられている。別の実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が4つ、重水素と置き換えられている。別の実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が5つ、重水素と置き換えられている。別の実施態様において、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン、又はN-アセチル-L-ロイシンの水素原子が6つ、重水素と置き換えられている。
【0094】
一実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-DL-ロイシン、又はその重水素化類似体である。別の実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-D-ロイシン、又はその重水素化類似体である。別の実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-L-ロイシン、又はその重水素化類似体である。
【0095】
別の実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-DL-ロイシンである。別の実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-D-ロイシンである。別の実施態様において、本開示の方法で用いられるアセチル-ロイシンは、N-アセチル-L-ロイシンである。
【0096】
「4-アミノピリジン」、「4-AP」、又は「4AP」という用語は、ファムプリジン、ダルファムプリジン、又はAmpyra(登録商標)としても知られる薬物を指す。4-APの化学構造は:
【化1】
である。
【0097】
「アセタゾラミド」という用語は、Diamoxとしても知られる薬物を指す。アセタゾラミドの化学構造は:
【化2】
である。
【0098】
「組み合わせて投与される」及び類似の句は、2つの薬剤、例えば、アセチル-DL-ロイシン、アセチル-D-ロイシン、又はアセチル-L-ロイシン;と(i)4-AP;又は(ii)アセタゾラミドとが、治療を受けている対象に並行して投与されることを意味する。一実施態様において、アセチル-DL-ロイシン、アセチル-D-ロイシン、もしくはアセチル-L-ロイシン及び4-AP、又はアセチル-DL-ロイシン、アセチル-D-ロイシン、もしくはアセチル-L-ロイシン及びアセタゾラミドが、EA、例えば、EA2を治療する第一選択療法として組み合わせて投与される。いくつかの実施態様において、対象は、単一の薬剤としての4-APでの治療に反応せず、かつ/又は望まれない副作用を被る。いくつかの実施態様において、対象は、単一の薬剤としてのアセタゾラミドでの治療に反応せず、かつ/又は望まれない副作用を被る。
【0099】
「第一選択療法」は、疾病、疾患、又は障害の初期治療のために、医療機関又は規制当局、例えば、米国食品医薬品局又は欧州医薬品庁によって一般的に受け入れられる又は推奨される治療レジメンを意味する。
【0100】
「並行して」は、各活性剤が、(i)同時;又は(ii)異なる時点で任意の順番で順次のいずれかで投与されることを意味する。2つの薬剤の組合せは、各薬剤が、1分未満の間隔を空けて対象に投与される場合に同時に投与されるとみなされる。同時に投与されない場合、双方の薬剤が、所望の治療効果を提供するために順番にかつ時間的に十分に近く対象に投与され、共同して作用してEAを治療することができることが意味される。
【0101】
一実施態様において、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとは、任意の適切な形態及び任意の適当な経路で別々に投与される。一実施態様において、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとの双方は、錠剤又はカプセル剤として前記対象に経口投与される。
【0102】
一実施態様において、アセチル-ロイシンは、対象への4-AP又はアセタゾラミドの投与の1分~24時間前に、該対象に投与される。例えば、アセチル-ロイシンは、対象への4-AP又はアセタゾラミドの投与の5分、10分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、又は12時間前に投与される。
【0103】
別の実施態様において、アセチル-ロイシンは、前記対象への4-AP又はアセタゾラミドと同時に投与される。
【0104】
別の実施態様において、アセチル-ロイシンは、対象への4-AP又はアセタゾラミドの投与から1分~24時間後に、該対象に投与される。例えば、アセチル-ロイシンは、対象への4-AP又はアセタゾラミドの投与から5分、10分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、又は12時間後に投与される。
【0105】
別の実施態様において、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとは、約1分~約24時間の間隔を空けて前記対象に投与される。例えば、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとは、約1分の間隔を空けて、5分の間隔を空けて、10分の間隔を空けて、30分の間隔を空けて、45分の間隔を空けて、1時間の間隔を空けて、1時間~2時間の間隔を空けて、2時間~3時間の間隔を空けて、3時間~4時間の間隔を空けて、4時間~5時間の間隔を空けて、5時間~6時間の間隔を空けて、6時間~7時間の間隔を空けて、7時間~8時間の間隔を空けて、8時間~9時間の間隔を空けて、9時間~10時間の間隔を空けて、10時間~11時間の間隔を空けて、又は11時間~12時間の間隔を空けて投与される。
【0106】
「対象」は、ヒトを意味する。
【0107】
「それを必要としている対象」は、運動失調症を患っておりかつ治療を必要としているヒトを意味する。
【0108】
アセチル-ロイシン又は4-APもしくはアセタゾラミドの「治療有効量」は、対象に投与されたときに、本開示について、治療的及び/又は予防的であり得る所望の効果をもたらすのに必要とされる量となる各活性剤の任意の量である。用量は、使用される具体的な活性剤;治療されることになっている患者の年齢、体重、及び状態;投与経路;並びに必要とされるレジメンなどの様々なパラメータに従って決定することができる。医師は、任意の特定の患者のための必要とされる投与経路と投薬量とを決定することができる。例えば、各活性剤の日用量は、約0.1~約225mg/kg体重、約1~約150mg/kg体重、又は約10~約100mg/kg体重であり得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」は、例えば、緩解(abatement);寛解(remission);1以上の症状、例えば、片頭痛を予防し、減少させ、阻害し、もしくは消失させること;疾患、障害、疾病、もしくは症候群を対象にとってより忍容可能なものにすること;疾患、障害、疾病、もしくは症候群の悪化を減速させること;又はそれを必要としている対象の身体的もしくは精神的健康を向上させることなどの任意の客観的又は主観的パラメータを含む、対象における疾患、障害、疾病、もしくは症候群、例えば、運動失調症の予防、停止、もしくは改善、及び/又は対象における疾患、障害、疾病、もしくは症候群の任意の1以上の症状の予防、停止、もしくは改善における成功の任意の兆候を指す。
【0110】
「治療すること」又は「治療」という用語は、疾患、障害、疾病、又は症候群の阻害、退行、又は均衡状態を誘導することも包含する。例えば、運動失調症の治療を必要としている対象の治療は、対象の運動失調症の発作を減少させること、臨床応答を誘導すること、反復発作性運動失調症の進行を阻害もしくは軽減すること、又は運動失調症の1以上の合併症を阻害もしくは軽減することを含む。
【0111】
疾患、障害、疾病、又は症候群の損傷又は病的状態を予防し、停止させ、又は改善すること、例えば、疾患、障害、疾病、又は症候群の1以上の症状を予防し、減少させ、阻害し、又は消失させることは、例えば、身体検査、神経学的検査、及び/又は精神鑑定の結果を含む、客観的及び/又は主観的パラメータに基づくことができる。特定の疾患、例えば、運動失調症、例えば、EAの治療の成功は、例えば、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとでの治療が開始される前の疾患の重症度、例えば、運動失調症の客観的及び/又は主観的パラメータを、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとでの治療の開始後の疾患の重症度と比較することによって測定又は評価することができる。例えば、運動失調症の重症度は、尺度、指標、レーティング、又はスコアを用いて評価することができる。一実施態様において、本明細書に記載される治療は、そのような評価を、症状を示す対象に特徴的な値又は程度から症状を示さない対象に特徴的な値又は程度へと改善する。一実施態様において、本明細書に記載される治療は、ベースラインと比較して、そのような評価を改善する。ベースラインは、例えば、疾患の任意の治療を開始する前の又はアセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとを用いる疾患の治療を開始する前の対象の状態であってもよい。或いは、ベースラインは、例えば、疾患の治療を開始して一定時間後の対象の状態であってもよい。一実施態様において、本明細書に記載されるアセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとでの治療は、ベースラインと比較して、対象の評価(例えば、客観的及び/又は主観的パラメータ、例えば、SARAの尺度、指標、レーティング、又はスコア)を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%改善する。一実施態様において、評価は、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は100%改善される。
【0112】
一実施態様において、アセチル-ロイシンは、1日当たり約500mg~約30gの範囲の用量で投与される。例えば、アセチル-ロイシンは、任意に固体経口又は液体経口経路によって、1日当たり約500mg~約15gの範囲の用量、1日当たり約1.5g~約10gの範囲の用量で投与される。N-アセチル-DL-ロイシンは、例えば、朝及び夜の2回の投与で3~4錠、1日当たり1.5g~2gの用量で成人に処方されるTanganil(登録商標)の用量に従う用量で投与することができる。
【0113】
アセチル-ロイシンの単一のエナンチオマー、すなわち、N-アセチル-D-ロイシン又はN-アセチル-L-ロイシンが投与される場合、用量を相応に低下させることができる。例えば、N-アセチル-L-ロイシンのみ又はN-アセチル-D-ロイシンのみが投与される場合、用量は、1日当たり約250mg~約15gの範囲、1日当たり約250mg~約10gの範囲、又は1日当たり約250mg~約5gの範囲、例えば、1日当たり約0.75g~約5gの範囲であり得る。
【0114】
一実施態様において、投与されるアセチル-ロイシンの用量範囲は、1日当たり約1g~約30gである。例えば、投与されるアセチル-ロイシンの用量範囲は、1日当たり約1g~約15g、1日当たり約1g~約10g、又は1日当たり約1.5g~約7g、1日当たり15.1g~約30g、1日当たり16g~約30g、1日当たり17g~約30g、1日当たり18g~約30g、1日当たり19g~約30g、又は1日当たり20g~約30gである。これは、1日当たり約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14g~約15gであり得る。これは、1日当たり約2、3、4、5、6、7、8、又は9g~約10gであり得る。これは、1日当たり15.1、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、25、27、28、又は29g~約30gであり得る。これは、1日当たり約1.5gを超えるが、1日当たり約15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、又は5g未満であり得る。一実施態様において、用量は、1日当たり約4g~約6gの範囲である。一実施態様において、用量は、1日当たり約4g~約5gの範囲である。一実施態様において、用量は、1日当たり約4.5gである。一実施態様において、用量は、1日当たり約5gである。一実施態様において、用量は、1日当たり約1g、1日当たり約2g、1日当たり約3g、1日当たり約4g、1日当たり約5g、1日当たり約6g、1日当たり約7g、1日当たり約8g、1日当たり約9g、1日当たり約10g、1日当たり約11g、1日当たり約12g、1日当たり約13g、1日当たり約14g、又は1日当たり約15gである。別の実施態様において、用量は、1日当たり約16g、1日当たり約17g、1日当たり約18g、1日当たり約19g、又は1日当たり約20gである。別の実施態様において、用量は、1日当たり約21g、1日当たり約22g、1日当たり約23g、1日当たり約24g、1日当たり約25g、1日当たり約26g、1日当たり約27g、1日当たり約28g、1日当たり約29g、又は1日当たり約30gである。一実施態様において、これらの用量は、固体経口剤形、特に、錠剤で投与される。別の実施態様において、これらの用量は、そのラセミ形態にあるときのアセチル-ロイシンのためのものである。エナンチオマー過剰が存在するときのアセチル-ロイシンの用量は、より低く、例えば、約50%低い。したがって、半分にしたときの上に列挙した用量範囲も本開示によって明示的に包含される。
【0115】
一実施態様において、4-APは、1日当たり約0.01mg~約1g、例えば、1日当たり約5mg~約100mg、例えば、1日当たり約15mg~約30mgの範囲の用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約5mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約10mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約15mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約20mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約25mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、1日当たり約30mgの用量で投与される。別の実施態様において、4-APは、2つの分割された用量で投与される。
【0116】
一実施態様において、アセタゾラミドは、1日当たり約100mg~約2000mgの範囲の用量で投与される。別の実施態様において、アセタゾラミドは、1日当たり約250mgの用量で投与される。別の実施態様において、アセタゾラミドは、1日当たり約500mgの用量で投与される。別の実施態様において、アセタゾラミドは、1日当たり約750mgの用量で投与される。別の実施態様において、アセタゾラミドは、1日当たり約1000mgの用量で投与される。
【0117】
一実施態様において、アセチル-ロイシン又は4-APもしくはアセタゾラミドの全日用量を、複数回の投与にまたがって拡大することができる、すなわち、全日用量を達成するために、投与を1日に2回以上行うことができる。例として、アセチル-ロイシンの全日用量を提供するための必要な錠剤の数を、2回の投与(例えば、朝及び夜)又は3回の投与(例えば、朝、正午、及び夜)にまたがって分割することができる。各々の用量を、食物と一緒に又は食物なしで、好適に投与することができる。例えば、N-アセチル-L-ロイシン又はN-アセチル-DL-ロイシンを、食事前に約1もしくは約2時間、例えば、食事前に少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約40分、もしくは少なくとも約1時間投与してもよく、又は食事後に約1、約2、もしくは約3時間、例えば、食事後に少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約2時間、もしくは少なくとも約2.5時間待って投与してもよい。例えば、4.5gの全日用量のアセチル-DL-ロイシンを、朝食前、朝食と一緒、又は朝食後の3錠のTanganil(登録商標)(又は同等物)錠剤、昼食前、昼食と一緒、又は昼食後の3錠のさらなる錠剤、及び夕食前、夕食と一緒、又は夕食後の3錠のさらなる錠剤として投与してもよい。
【0118】
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとの組合せの治療期間は、約7日以上であり得る。例えば、治療期間は、約2週間以上、約3週間以上、約1カ月以上、約6週間以上、約7週間以上、又は約2カ月以上であり得る。一実施態様において、治療期間は、約3月以上、例えば、約4カ月以上、約5カ月以上、又は約6カ月以上である。また、治療期間は、約1年以上、約2年以上、約4年以上、約5年以上、又は約10年以上であり得る。また、治療期間は、対象の一生涯であり得る。
【0119】
アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとの組合せの剤形、投与量、投薬スケジュール、及び治療期間の任意の及び全ての組合せが本開示によって想定され、包含される。一実施態様において、アセチル-ロイシンの用量は、1日当たり約4g~約10gであり、約2カ月以上の治療期間にわたり、1日当たり1、2、又は3回の投与にまたがって服用される。別の実施態様において、アセチル-ロイシンの用量は、1日当たり4gを超えるが、5gを超えず、約6カ月以上の治療期間にわたり、1日当たり1、2、又は3回の投与にまたがって服用される。剤形は、固体経口剤形、特に、錠剤であり得る。
【0120】
一実施態様において、アセチル-ロイシンと4-AP又はアセタゾラミドとの組合せが、運動失調症又は運動失調症の1以上の症状を治療するために使用される。別の実施態様において、前記運動失調症は、EAである。別の実施態様において、EAは、EA2である。本明細書で使用される、「運動失調症又は運動失調症の1以上の症状を治療する」などは、それを行わなければ顕在化するであろうことが典型的な疾患進行から予想される運動失調症又は運動失調症の1以上の症状の発症を遅らせること、運動失調症の重症度を低下させるか、又は運動失調症に伴う1以上の既存の症状の重症度を低下させるかもしくは該症状を消失させること、運動失調症又は運動失調症の1以上の症状の進行を典型的な疾患進行と比較して経時的に遅らせること、及び/又は運動失調症又は運動失調症の1以上の症状の進行を経時的に反転させることを意味する。
【0121】
運動失調症の「症状」は、運動失調症に伴う任意の臨床的又は検査上の顕在化、例えば、歩行協調運動及び手指/手の協調運動の低下、構音障害、眼振などを含み、対象が感知又は観察できるものに限定されない。例えば、EAの症状としては、回転性めまい、構音障害、複視、脱力感、強直性の上方注視、頭痛、発作、ジストニア、及び/又は認知障害が挙げられるが、これらに限定されない。症状の開始は、出生時から成人期までの範囲にわたり得る。
【0122】
経時的な又は治療の間の運動失調症又は運動失調症の1以上の症状の進行は、例えば、2つ以上の時点で1以上の公知の試験を用い、結果を比較することによってモニタリングすることができる。疾患の進行及び/又は重症度は、例えば、運動失調症評価及びレーティングのための尺度(the Scale for the Assessment and Rating of Ataxia; SARA)、脊髄小脳性運動失調症機能インデックス(Spinocerebellar Ataxia Functional Index; SCAFI)、国際協調運動失調評価尺度(the International Cooperative Ataxia Rating Scale; ICARS)、簡略運動失調症評定尺度(the brief ataxia rating scale; BARS)、改変身体障害評定尺度(the modified Disability Rating Scale; mDRS)、EuroQol 5Q-5D-5L (EQ-5D-5L)、ビジュアルアナログ尺度(the visual analogue scale; VAS)、ウェクスラー成人知能尺度-改訂版(Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised; WAIS-R)、小児用ウェクスラー知能尺度-IV (WISC-IV)、モントリオール認知評価(Montreal Cognitive Assessment; MoCA)、又は他の適当な試験を用いて評価することができる。
【実施例】
【0123】
(実施例)
(実施例1)
47歳のドイツ人女性が、前方に転倒する感覚、及び15歳前後に始まった随伴性の全頭性頭痛(holocephalic headache)を伴う姿勢のバランスの障害(厳密な回転性めまいなし、嘔気や嘔吐なし)の再発性の一過性発作(recurrent episodic attacks)で受診した。発作は、毎日起こり、ストレスの多い状況で最もよく起こり、通常、数時間続いた。他の誘因は、明らかではなかった。受診した時までに、患者は、持続的なめまい及び発作の間の姿勢の不安定さを感じており、そのために、日常の行動を定期的な援助に頼っていた。患者の病歴から発作(seizure)や失神の証拠はなかった。診断は不明のままであり、それまでに具体的な治療は試みられていなかった。
【0124】
患者の臨床的及び神経眼科学的検査によって両側性水平性注視誘発性及び反跳性眼振、全方向の衝動性追跡、測定過大性水平性サッケード、全方向の視運動眼振の減少、及び水平方向の両側で減少したVORを伴う小脳眼球運動機能障害が分かった。指-指追跡(finger-to-finger-following)では、僅かな測定過大性運動が示された。ロンベルクの試験によって、タンデム姿勢での平衡失調が分かった。GAITRiteシステムを用いる定量的な歩行分析で、僅かに低下した速度及び歩幅が示されたが、患者の年齢コホートでさらなる異常は示されなかった。患者の頭部MRIによって、いくつかの小さいテント上白質病変が示されたが、時としてEA2で報告されるようなはっきりした小脳虫部萎縮は示されなかった。
【0125】
「次世代シークエンシング及びサンガーシークエンシング」方法を用いる遺伝子検査によって、CACNA1A遺伝子のエクソン16における新規のヘテロ接合性病原性バリアントNM_001127221.1: (c2070_2071delinsGGAG, p.(Phe690Leufs*9))が明らかとなった。CACNA1A遺伝子のエクソン16における第2070位~第2071位にシトシン及びチミジンの欠失及びこの位置での4つのヌクレオチドの挿入が確認された。これは、翻訳の間のフレームシフト、及び8つの変更されたアミノ酸の導入後のコドン位置698でのタンパク質合成の早期停止を招く。
【0126】
該患者の家族のうちのさらに3名(
図1)で、同じヘテロ接合性CACNA1A変異が見られた。臨床的表現型は、かなり異なっていた:該患者の68歳の母親は、40歳で初めて認識された歩行の緩徐進行性不均衡を患っていたが、運動失調症のエピソードはなく、まだ補助なしで生活していた。患者の45歳の弟は、運動失調症や、回転性めまいや、不均衡の悪化の症状やエピソードを何ら報告しなかった。彼は、小児初期から、イブプロフェンに部分的に反応性の断続的な頭痛を患っていたことを報告したのみである。患者の15歳の甥(患者の弟の息子)は、14歳から、典型的には、数時間持続し、ストレスによって誘発される歩行の不均衡、回転性めまい、及び頭痛を伴う一過性の発作を患っていた。
【0127】
この一様ではない表現型の理由の1つは、不完全な浸透度であろう。前記文献内のエクソン6における病原性CACNA1Aバリアントを原因とする家族内の不完全な浸透度のエビデンスが存在する。Angeliniらの文献、European Journal of Medical Genetics 62:103530. doi:10.1016/j.ejmg.2018.08.011 (2019)。しかしながら、他の遺伝子の関与を排除することはできない。主要な方法論的な制限因子の1つは、遺伝的モザイクをカバーしているという普遍的な確実性がないことである。
【0128】
前記患者は、4-アミノピリジン(20mg/日)やアセタゾラミド(250mg~500mg/日)での治療に反応しなかった。Griggsらの文献、Neurology 28:1259-1264. doi:10.1212/wnl.28.12.1259 (1978)。アセタゾラミドも、該患者が耐容性を示さない副作用として異常知覚及び腎機能障害を引き起こし、従って、投薬量をさらに増加することはなかった。
【0129】
次に、前記患者を、4-アミノピリジン(Fampyra(商標)(15mg/日)とアセチル-DL-ロイシン(5g/日)との組合せで治療した。後続の12ヶ月の観察期間を通して、客観的な臨床的及び機能的測定値(例えば、ビデオ眼球運動記録法、歩行分析、及び運動失調症スコア(SARAスコア4)など)の驚くべき安定化、並びに主観的な関連性のある、患者の日常の行動の改善が、発作間欠期に観察された。さらなる疾患の進行は、認められなかった。
【0130】
(実施例2)
患者は、スロバキア出身の26歳の男性であった。労作及びストレスが、8歳で始まった回転性めまい及び嘔吐を誘発していた。17歳までに、患者は、頻発する嘔吐、回転性めまい、運動失調症、及び理解不能な発話を経験した。患者は、反復発作性運動失調症2型と診断された。薬物療法を行わないと、患者は、1日当たり1回又は2回の運動失調症のエピソードを経験した。
【0131】
18歳の時、患者を、アセタゾラミドで治療した。エピソードの頻度が、ある期間1週間あたり2又は3回まで低下し、次いで、1日当たり1回の運動失調症のエピソードの頻度に戻った。
【0132】
患者を、アセターロザミド(acetalozamide)と1日当たり5gのTanganil(アセチル-DL-ロイシン)との組合せで治療し、患者の状態が安定化した。3ヶ月の治療後、患者は、1回の運動失調症のエピソード及び2回の回転性めまいの発作を経験した。また、患者は、セルトラリンも服用した。遺伝子検査によって、該患者が、CACNA1Aバリアントp.Gly297Arg (c.889G>A)を有していることが示された。
【0133】
(引例)
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【0135】
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【0152】
本明細書に記載されている特徴の全て(任意の添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)、並びに/又はそのように開示されている任意の方法の工程の全ては、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互排他的である組合せを除いて、上記の態様のいずれかと任意の組合せで組み合わせることができる。
【0153】
前述の実施態様及び例示は、本開示の範囲のいかなる点に関しても限定的であることが意図されないこと、及び本明細書に提示される特許請求は、本明細書に明示的に提示されているかどうかにかかわらず、全ての実施態様及び例示を包含することが理解されるべきである。
【0154】
本明細書に引用される特許、特許出願、及び刊行物は全て、その全体が引用により完全に本明細書中に組み込まれる。
【国際調査報告】