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特表2023-526526標的化ナノ粒子を含む相乗的な抗ウイルス医薬組成物
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  • 特表-標的化ナノ粒子を含む相乗的な抗ウイルス医薬組成物 図1
  • 特表-標的化ナノ粒子を含む相乗的な抗ウイルス医薬組成物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】標的化ナノ粒子を含む相乗的な抗ウイルス医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20230614BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/09 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/4965 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/4706 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20230614BHJP
   A61K 31/635 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K47/36
A61P31/12
A61P43/00 121
A61P31/14
A61K45/06
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K9/14
A61K31/09
A61K31/675
A61K31/4965
A61K31/4706
A61K38/08
A61K31/635
A61K31/47
A61K31/506
A61K31/513
A61K31/472
A61K31/427
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571261
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 CA2021050699
(87)【国際公開番号】W WO2021232169
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/028,958
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352616
【氏名又は名称】ニューコロジー・バイオメディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nuecology Biomedical Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】スン,チャン チン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ディーン モー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE36
4C076EE36A
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF01
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084AA20
4C084BA44
4C084DC32
4C084MA02
4C084MA43
4C084NA05
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA25
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC42
4C086BC48
4C086BC82
4C086DA20
4C086DA38
4C086GA05
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA05
4C086ZB33
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA33
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA63
4C206NA05
4C206ZB33
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、医薬的に許容される活性分子である、第1薬、すなわちレムデシビルと、ナノ粒子に共封入され、同時送達される第2薬、またはそれらの組合せが、両親媒性多糖巨大分子によって担持されている二剤含有ナノ粒子、ならびにこのようなナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。本開示はまた、抗ウイルス処置に置おけるナノ粒子および医薬組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1抗ウイルス薬と第2抗ウイルス薬を含むナノ粒子であって、第1薬および第2薬が、アルギン酸-オレイン酸(AGO)粒子に封入されている、ナノ粒子。
【請求項2】
AGO粒子が、脂肪酸-修飾アルギン酸塩、およびオレイン酸-修飾アルギン酸、omeg-3-修飾アルギン酸、オレイン酸-修飾アルギン酸からなる群より選択される分子を含む、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
第1抗ウイルス薬が、レムデシビルである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項4】
第2抗ウイルス薬が、オートファジー阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、抗生物質または植物薬である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項5】
第2薬が、ファビピラビル、アビガン、ヒドロキシクロロキン、カルフィルゾミブ、ダルナビル、ピタバスタチン、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ダルナビル、レジパスビル、テラプレビル、ロスバスタチンカルシウム、アトバコン、モエキシプリル、モエキシプリル、モエキシプリル、アジスロマイシン、クルクミン、アルテミシニンおよびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項6】
レムデシビル-クルクミン粒子である、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項7】
AGO粒子が、粒子の表面上でヒトアンジオテンシン-変換酵素2(ACE2)抗体とコンジュゲートしている、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項8】
粒子径が、50nm~600nmである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項9】
粒子径が、50nm~300nmである、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子を含む、医薬組成物。
【請求項11】
第1抗ウイルス薬と第2抗ウイルス薬を含み、第1薬がレムデシビルであり、第2薬がクルクミンである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
コロナウイルスに対し有効である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
SARS-CoV-2に対し有効である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
コロナウイルスに対し有効である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
SARS-CoV-2に対し有効である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象体に投与することを含む、対象体におけるウイルス感染の処置方法。
【請求項17】
ウイルスが、コロナウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ウイルスが、SARS-CoV-2である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相乗効果を提供する、標的化ナノ粒子を含む抗ウイルス医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスの処置は、臨床診療における主要な課題となっている。ワクチンは、ヒトのウイルス関連疾患を解決するための決定的かつ究極の手段の1つとして認識されている。コロナウイルス、例えば2002年から2003年にSARS-CoV-1および2019年から2021年にSARS-CoV-2が発生した。世界保健機関(WHO)による正式名称COVID-19は、2019年の発生以来、世界中の人間の生活と生活様式を脅かしている。
【0003】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされた新型コロナウイルス疾患2019、COVID-19の世界的パンデミックは、2019年12月に中国の武漢で始まり、その後世界中に広がっている。2020年4月末現在、200を超える国で、300万人を超える症例および23万を超える死亡が報告されている。この新しいベータコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)および中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に似ている。その遺伝的近接性に基づいて、それはコウモリ由来のコロナウイルスが起源であり、未知の中間哺乳類宿主を介してヒトに広がったと考えられる。SARS-CoV-2のウイルスゲノムは迅速に配列決定され、診断的試験、疫学的追跡、予防および治療戦略の開発が可能になった。現在、何らかの可能性のある治療法がCOVID-19の疑いまたは確認された入院患者の転帰を改善するという無作為化臨床試験からの強力で臨床的に決定的な証拠はない。
【0004】
COVID-19またはより一般的にはコロナウイルスとして知られているものに対する治癒またはより良好な処置が切実に必要とされており、あらゆる種類の可能性のある薬物(FDA承認または未承認薬を含む)、例えば、ファビピラビルまたはアビガン、ヒドロキシクロロキン、カルフィルゾミブ、ダルナビル(darunavi)、ピタバスタチン、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ダルナビル、レジパスビル、テラプレビル、ロスバスタチンカルシウム、アトバコン、モエキシプリル、アジスロマイシン、クルクミン、デキサメサゾンまたはアルテミシニンなどの薬物の1つで構成される第2薬を用いた、多くの試みが、現在のパンデミック状況での、感染拡大速度を効果的に遅らせ、さらに重要なこととして死亡率を低下または阻止するために、様々な国で広く研究されている。しかしながら、臨床効果におけるその低い有効性が低いか、より高い死亡率を引き起こす深刻な副作用が、臨床的に報告されているとおり警鐘されている。例えば、クロロキンおよびヒドロキシクロロキンは、マラリア、関節リウマチおよび狼瘡に対して有効であるが、COVID-19には有効ではないと考えられ、心臓の副作用による死亡の原因となっており、レムデシビルは広域スペクトルの抗ウイルス薬であり、2020年現在、レムデシビルはCOVID-19の特定の処置として試験されており、重篤な疾患で入院している患者の緊急処置のために緊急使用許可(EUA)の下で米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。しかしながら、入院患者に深刻な肝臓および腎臓の損傷または機能不全を引き起こした。これらの上記の薬物の組合せは、相乗的な治療効果があることがわかっているが、副作用も生じる。
【0005】
オートファジー阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、抗生物質または植物薬を含む、上記の薬物またはそれらに限定されない薬物候補を用いるために、より良好で相乗的な解決策を見つける臨床的必要性が新たに生じている。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、AGO粒子に封入された抗ウイルス薬候補を用いるための良好で相乗的な解決を提供する。多くの抗ウイルス戦略でよく認識されているように、連続送達または同時送達のいずれかによる薬物の組合せは、ウイルス、特にコロナウイルスに対する優れた治療的相乗効果を発揮している。その過程で、ナノテクノロジーを使用して単一または複数の薬物を封入すると、治療効果が大幅に向上し、同時に、遊離薬物自体および投与を容易にするための薬物と混合して用いる添加剤の毒性に起因する副作用を軽減することが期待されていることが周知である。したがって、複数薬物の共封入および同時送達により、コロナウイルス、例えばSARS-CoV-2に対する相乗効果を与え得る。
【0007】
一態様において、本発明は、第1抗ウイルス薬と第2抗ウイルス薬を含むナノ粒子であって、第1薬および第2薬が、アルギン酸-オレイン酸(AGO)粒子に封入されている、ナノ粒子を提供する。
【0008】
本発明のいくつかの例において、AGO粒子は、脂肪酸-修飾アルギン酸塩、およびオレイン酸-修飾アルギン酸、omeg-3-修飾アルギン酸、オレイン酸-修飾アルギン酸からなる群より選択される分子を含む。
【0009】
本発明の一実施態様において、第1抗ウイルス薬は、レムデシビルである。
【0010】
本発明の一実施態様において、第2抗ウイルス薬は、オートファジー阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、抗生物質または植物薬である。
【0011】
本発明の一例において、第2抗ウイルス薬は、ファビピラビル、アビガン、ヒドロキシクロロキン、カルフィルゾミブ、ダルナビル、ピタバスタチン、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ダルナビル、レジパスビル、テラプレビル、ロスバスタチンカルシウム、アトバコン、モエキシプリル、モエキシプリル、モエキシプリル、アジスロマイシン、クルクミン、アルテミシニンおよびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0012】
本発明の一例において、粒子は、レムデシビル-クルクミン粒子である。
【0013】
一実施態様において、AGO粒子は、粒子の表面上でヒトアンジオテンシン-変換酵素2(ACE2)抗体とコンジュゲートしている。
【0014】
別の態様において、本発明は、本発明による粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、本発明による医薬組成物を対象体に投与することを含む、対象体におけるウイルス感染の処置方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、粒子の粒子径は、50nm~600nm、より好ましくは50nm~300nm;最も好ましくは50nm~100nmの範囲である。
【0017】
また、本発明は、上記の粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、上記の医薬組成物を対象体に投与することを含む、対象体におけるウイルス感染の処置方法を提供する。
【0019】
本発明の一例において、ウイルスは、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2である。
【0020】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。しかしながら、以下の実施例は、単に説明を目的とするものであり、実際に本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上記の概要、および以下の本発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるだろう。本発明を説明する目的で、現在好ましい実施態様が図面に示されている。
【0022】
図1】実施例4で製造した、二剤担持AGOナノ粒子から放出されたレムデシビルおよびデキサメサゾンを示す。
【0023】
図2】実施例4で製造した、二剤担持AGOナノ粒子の球形状を示す。
【0024】
図3】雌性ラットにおけるアルギン酸ナトリウム-mOA(AGO)の急性経口毒性のパイロット試験の組織病理学的所見を示し;副腎(A)、心臓(B)、腎臓(C)、肝臓(D)、肺(E)および脾臓(F)の有意な変化は、2000mg/kg AGO群(動物コード:1)で見られなかった。HE染色。400倍。
【発明を実施するための形態】
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
本発明は、ターゲティング能力を伴うまたは伴わない、抗ウイルス処置のために設計された二剤含有ナノ粒子であって、二剤が、第1薬、すなわちレムデシビル、およびファビピラビル、アビガン、ヒドロキシクロロキン、カルフィルゾミブ、ダルナビル、ピタバスタチン、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ダルナビル、レジパスビル、テラプレビル、ロスバスタチンカルシウム、アトバコン、モエキシプリル、モエキシプリル、モエキシプリル、アジスロマイシン、クルクミンおよびアルテミシニンからなる群の1つより選択される第2薬を含む、ナノ粒子を提供する。
【0027】
レムデシビル
【0028】
レムデシビルは、FDAが緊急使用のみに承認した有望な抗ウイルス薬として認識されており、エステラーゼとホスホルアミダーゼの作用によってGS-441524モノホスフェートに変換されるプロドラッグである。これは次に、ヌクレオチドキナーゼによってトリホスホGS-441525にさらにリン酸化される。アデノシンヌクレオチド三リン酸アナログとして、ウイルスRNA依存RNAポリメラーゼの作用を妨害し、ウイルスエキソリボヌクレアーゼ(ExoN)によるプルーフリーディングを回避し、ウイルスRNA産生の減少を引き起こす。呼吸器多核体ウイルスなどの一部のウイルスでは、RNA依存性RNAポリメラーゼを休止させ得るが、その主な効果(エボラの場合)は、不可逆的な連鎖停止を誘発することである。他の多くのチェーンターミネーターとは異なり、これはその後のヌクレオチドの付加を妨げることによって媒介されるのではなく、遅れて、更なる塩基が成長するRNA鎖に付加された後に生ずる。また、他の阻害薬、抗生物質、および/またはクルクミンなどの植物薬とのレムデシビルをその後の医療目的のために可能性のあるポリマーナノ粒子を用いて共封入するのは可能性のある組合せである。
【0029】
他の抗ウイルス薬
【0030】
本発明によれば、第2薬は、抗ウイルス活性を示す、オートファジー阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、抗生物質または植物薬であり得る。一実施態様において、第2薬は、ファビピラビル、アビガン、ヒドロキシクロロキン、カルフィルゾミブ、ダルナビル、ピタバスタチン、ラミブジン、ロピナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ダルナビル、レジパスビル、テラプレビル、ロスバスタチンカルシウム、アトバコン、モエキシプリル、モエキシプリル、モエキシプリル、アジスロマイシン、クルクミン、アルテミシニンおよびそれらの組合せからなる群より選択される。多くの抗癌戦略でよく認識されているように、連続送達または同時送達のいずれかによる薬物の組合せは、悪性腫瘍に対する優れた治療的相乗効果を発揮する。
【0031】
アルギン酸-オレイン酸(AGO)粒子
【0032】
アルギン酸-オレイン酸(AGO)粒子は、「AGO」とも呼ばれ、2021年3月5日に出願されたPCT/CA2021/050293(出典明示によりその全体として本明細書の一部とする)に開示されている新しい巨大分子から作られた粒子である。AGO高分子は、スペーサーで結合されたアルギン酸とオレイン酸で構成され、アルギン酸-オレイン酸(AGO)粒子は、AGO巨大分子から形成される。AGO粒子は、制御された細胞適合性、制御された分解(腎臓の代謝による)などの生体機能を有し、これは、医療現場での最終的な使用のために、臨床的に有利な特性、例えば細胞特異的な適合性、非免疫原性および構造安定性を変化させることなく修飾アルギン酸に導入される。
【0033】
AGO粒子の例は、脂肪酸-修飾アルギン酸塩、およびオレイン酸-修飾アルギン酸、omeg-3-修飾アルギン酸、オレイン酸-修飾アルギン酸からなる群より選択される分子を含む。
【0034】
本発明による医薬組成物は、当業者に周知の技術を用いて経口投与に適した剤形に製剤化し得て、剤形としては、注射剤(例えば、無菌水溶液または分散液)、無菌粉末、錠剤。トローチ、丸剤、カプセル剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明による医薬組成物は、経鼻スプレー、筋肉内注射および皮下注射の1つ以上の経路によって投与され得る。
【0036】
特定の実施態様において、医薬組成物は、経口投与および皮下注射に適した剤形に製剤化される。
【0037】
本発明による医薬組成物は、製剤の分野で広く用いられる医薬的に許容される担体をさらに含み得る。例えば、医薬的に許容される担体は、溶媒、乳化剤、懸濁化剤、分解剤、結合剤、添加剤、安定化剤、キレート剤、希釈剤、ゲル化剤、防腐剤、滑沢剤、吸収遅延剤、可塑剤、賦形剤、崩壊剤、界面活性剤および/または増粘剤の1つ以上の物質を含み得る。
【0038】
本発明による医薬組成物の用量および投与頻度は、処置される疾患の重症度、投与経路、ならびに処置される対象体の体重、年齢、身体的状態および反応の要素に応じて変化し得る。例えば、本発明による医薬組成物の1日用量は、体表面積1m2当たり50mg~150mgであり得て、1日または1週間ベースの期間に1回または数回の用量で投与され得る。
【0039】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明のいずれも例示的かつ説明的なものに過ぎず、本発明の限定するものではないと理解されたい。
【0040】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、限定ではなく実証の目的で示される。
【実施例
【0041】
実施例1. レムデシビル-クルクミン含有ナノ粒子の製造
【0042】
1.0mgのレムデシビル粉末(Selleckchemから購入)および0.5mgのクルクミン(Sigmaから購入)を、0.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)およびDI水溶液中に溶解させて、レムデシビル濃度が20mg/mLおよびクルクミン濃度が10mg/mLであるレムデシビルストック溶液を調製した。5μLのレムデシビル-クルクミンストック溶液を、95μLのDI水溶液に加えて、レムデシビル濃度が1mg/mLおよびクルクミン濃度が0.5mg/mLである希釈レムデシビル-クルクミン溶液を得た。
【0043】
0.5mgのオレイン酸-修飾アルギン酸(AGO)(すなわち両親媒性アルギン酸)粉末(Nuecology Biomedical Inc.から購入、Canada)を、エッペンドルフチューブに加え、その後50μLの希釈レムデシビル-クルクミン溶液を加えた。0.95mLの1X PBS溶液を、得られた混合物に加えて、初期AGO濃度が0.5mg/mLならびに初期遊離レムデシビル濃度が50μg/mLおよび遊離クルクミン濃度が25μg/mLである1mLの混合溶液(pH7.4)を形成させた。上記手順を1回繰り返して、同じ初期AGO濃度ならびに同じ初期の遊離レムデシビルおよびクルクミン濃度である別の混合溶液を形成させた。その後、2つの混合溶液を、4℃にて12時間撹拌して、2つの二剤AGOナノ粒子溶液を形成させた。
【0044】
実施例2. レムデシビル-クルクミン含有AGOナノ粒子の薬物封入率の決定
【0045】
この実施例のセクションAで得られたレムデシビル-クルクミン担持ナノ粒子溶液の薬物封入率を、以下のとおり決定した。
【0046】
レムデシビルとクルクミンのストック溶液を連続希釈して、それぞれレムデシビルとクルクミンの標準溶液を得た。レムデシビルとクルクミンの標準溶液の吸光度を、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC-UV)を用いて決定した。
【0047】
さらに、レムデシビル-クルクミンナノ粒子溶液の各々を、12,000rpm、4℃にて10分間遠心分離した。結果として500μLの上清を得て、500μLのDMSO溶液に加えて、1mLの試験溶液を形成させた。その後、試験溶液を、HPLCを用いた決定に供して、試験溶液を検量線と比較して、それぞれ未封入のレムデシビルおよびクルクミン濃度(すなわち残りの遊離薬物濃度)を決定した。試験溶液の薬物封入率を、次の式(1)を用いて計算した:
A=[(B-C)/B]×100 (1)
A=薬物封入率(%)
B=初期の遊離薬物濃度
C=各試験溶液の未封入薬物濃度
【0048】
得られた実験データを、平均±SD(標準偏差)または平均として表す。
【0049】
12時間および24時間の撹拌により製造したレムデシビル-クルクミンナノ粒子溶液の薬物封入率は、それぞれ75.4%±0.35%および64%±0.25%であった。言い換えれば、12時間および24時間の撹拌により製造したナノ粒子溶液のナノ粒子濃度(すなわち封入されたレムデシビルおよびクルクミンの濃度)は、それぞれ約50.7μg/mLおよび約40μg/mLであった。
【0050】
実施例3. 本発明によるナノ粒子の物理的特性の決定
【0051】
実施例1で用いた適量のAGO粉末を、1mLの脱イオン(DI)溶液中に溶解させて、AGO濃度が1.0mg/mLであるAGOナノ粒子溶液を形成させた。
【0052】
薬物封入率が60~75%およびレムデシビル-クルクミンナノ粒子濃度が30μg/mLであり、この実施例のセクションAで得た、ナノ粒子溶液中のレムデシビル-クルクミンナノ粒子を、抗ACE2抗体とコンジュゲートさせた。具体的には、1μLの抗ヒトACE2抗体(2回蒸留水中1mg/mL)を、レムデシビル-クルクミンナノ粒子溶液に加え、4℃にて1時間撹拌した。0.05mLのEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)溶液(0.1%、w/v)を、得られた溶液に加えて、その後4時間以上静置した。したがって、抗ACE2 AGOナノ粒子を含む抗ヒトACE2抗体コンジュゲート粒子溶液を形成させた。抗ACE2抗体コンジュゲートナノ粒子溶液の薬物封入率を、一般にこの実施例に記載の方法に従って決定した。
【0053】
AGOナノ粒子、レムデシビル-クルクミンナノ粒子および抗ACE2レムデシビル-クルクミンナノ粒子の流体力学的直径を、BI-200SM Goniometer(Brookhaven Inc.、Holtsville、NY)で動的光散乱法(DLS)により2回蒸留水中で測定した。
【0054】
AGOナノ粒子、レムデシビル-クルクミンナノ粒子、抗ACE2レムデシビル-クルクミンナノ粒子のゼータ電位を、レーザードップラー風速計システム(Beckman Coulter Inc.、USA)により2回蒸留水中で測定して、これらの粒子の表面電位を調べた。
【0055】
また、AGOナノ粒子およびレムデシビル-クルクミンナノ粒子を、Jeol 2100 Transmission Electron Microscope(Jeol Ltd.、Japan)を用いて20,000倍で観察して、これらの粒子の粒子径を決定し、CHCによるガネテスピブの封入および抗EGFR抗体のコンジュゲートを確認した。得られた実験データを、平均±SD(標準偏差)または平均として表す。
【0056】
抗体-コンジュゲートナノ粒子溶液の薬物封入率は、55~70%であった。言い換えれば、抗体-コンジュゲートナノ粒子溶液の抗ACE2レムデシビル-デキサメサゾンナノ粒子濃度は、35μg/mLであった。
【0057】
AGOナノ粒子、レムデシビル-デキサメサゾンAGOナノ粒子および抗ACE2レムデシビル-デキサメサゾンナノ粒子の流体力学的直径およびゼータ電位を、下記表1に示す。
【表1】
【0058】
表1に示すとおり、レムデシビル-デキサメサゾンナノ粒子の流体力学的直径は、AGO粒子のものより大きく、これは両方の薬物を薬物担体AGOに封入し、ナノ粒子を形成できたことを示している。さらに、抗ACE2二剤AGOナノ粒子の流体力学的直径は、二剤AGOナノ粒子のものより大きく、これは抗ACE2抗体を、AGOにより封入されたレムデシビルおよびクルクミンの両方を有するナノ粒子をコンジュゲートできたことを示している。
【0059】
上記に照らして、AGOは、レムデシビルおよびクルクミンの両方を同時に封入して、ナノ粒子を形成でき、これに生物学的機能分子をさらにコンジュゲートさせることができる。
【0060】
実施例4. レムデシビル-デキサメサゾン含有AGOナノ粒子の薬物封入率の決定
【0061】
レムデシビル-デキサメサゾン担持AGOナノ粒子溶液を、実施例2に示す製造条件に基づいて製造し、以下のとおり薬物封入率を決定した。
【0062】
レムデシビルとデキサメサゾンのストック溶液を連続希釈して、それぞれレムデシビルとデキサメサゾンの標準溶液を得た。レムデシビルとデキサメサゾンの標準溶液の吸光度を、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)を用いて決定した。
【0063】
さらに、レムデシビル-デキサメサゾンAGOナノ粒子溶液の各々を、10,000rpm、4℃にて10分間遠心分離した。500μLの得られた上清を得て、500μLのDMSO溶液に加えて、1mLの試験溶液を形成させた。その後、試験溶液を、UPLCを用いた決定に供して、試験溶液を検量線と比較して、それぞれ未封入のレムデシビルおよびデキサメサゾン濃度(すなわち残りの遊離薬物濃度)を決定した。試験溶液の薬物封入率を、次の式(1)を用いて計算した:
A=[(B-C)/B]×100 (2)
A=薬物封入率(%)
B=初期の遊離薬物濃度
C=各試験溶液の未封入薬物濃度
【0064】
得られた実験データを、平均±SD(標準偏差)または平均として表す。
【0065】
24時間の撹拌により製造したレムデシビル-デキサメサゾンAGOナノ粒子溶液の薬物封入率は、レムデシビルおよびデキサメサゾンについて、それぞれ71.8%±0.75%および89.2%±0.54%であった(表2)。言い換えれば、24時間の撹拌により製造したナノ粒子溶液のナノ粒子濃度(すなわち封入されたレムデシビルおよびデキサメサゾンの濃度)は、それぞれ約40μg/mLおよび約20μg/mLであった。
【表2】
【0066】
実施例5. レムデシビル-デキサメサゾンAGOナノ粒子の薬物溶出試験
【0067】
インビトロ薬物放出試験を、実施例4で製造した二剤担持AGOナノ粒子をpH4のPBS中に懸濁させることにより実施した。懸濁液を、1.5mLエッペンドルフチューブに分けた。チューブを、オービタルシェーカーインキュベーターで37℃にて穏やかに振とうした。所定の時間(4、8、12、24、36および48時間)で、放出された(遊離)薬物を、遠心分離により薬物負荷ナノ粒子から分離した。レムデシビルおよびデキサメタゾンについては、試料を12,000rpmにて4分間遠心分離し、沈殿して放出されたレムデシビルおよびデキサメタゾンからなるペレットを分析した。レムデシビルおよびデキサメタゾンの濃度を、UPLCにより定量した。各時間に放出されたレムデシビルおよびデキサメタゾンのパーセンテージを、次の式から計算した:
放出薬物(%)=[(放出薬物)/(初期量の薬物)]×100 (2)
【0068】
72時間の薬物放出プロファイルを図1に示す。レムデシビルが約48時間で枯渇したことは明らかであるが、デキサメタゾンはより遅い放出プロファイルを示し、72時間の溶出時間で70%の放出に達した。この薬物放出試験は、両方の薬物が、製造されたままの二剤担持AGOナノ粒子から異なる放出動態で同時放出できることを示した。この試験はまた、医薬品の相乗効果による潜在的な治療効果を示しているが、製造されたままのナノ粒子はインビボで抗ウイルス処置に作用しており、臨床解釈に有益であり得る。
【0069】
実施例6. レムデシビル-デキサメサゾンAGOナノ粒子の構造形態
【0070】
二剤AGOナノ粒子の形態構造を、図2に示すとおり、走査型電子顕微鏡を用いて調べた。製造したままの二剤担持粒子は、サイズが約100~250nmの範囲の球形状を示し、これは、AGO分子の自己組織化挙動が、薬物封入効率の高い穏やかで中性の水溶液の下で効率的に処理できることを示唆している。この知見はまた、目的の薬物を封入および送達するためのリポソームの形成などの従来の高エネルギー乳化プロセスと比較して、優れた処理の利点を示唆している。
【0071】
実施例7. 経口投与によるレムデシビル-デキサメサゾン担持AGOナノ粒子のバイオセーフティーのインビボ評価
【0072】
(1)飼育および試験システム:すべての動物実験および飼育は、Agricultural Technology Research InstituteのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)により承認された(IACUC No. 109064)。
【0073】
飼育:ATRIのAAALAC認定施設に動物を収容した。動物室では、ポリカーボネート製のケージを用いて、性別および処置が同じ動物を収容した。
温度:22±4℃
相対湿度:30~70%
光サイクル:12時間明、12時間暗
食事:Autoclaved laboratory 5053-PicoLab(登録商標) Rodent Diet 20(LabDiet、Richmond、IN、USA)
水:オートクレーブRO水を、ケージに取り付けられた水ボトルにより自由摂取させた。
識別:動物を耳ノッチで識別し、各ケージをケージ番号、試験番号、IACUC番号、性別、処置および動物ID番号で標識した。
(2)試験システム:
種および供給源:Sprague Dawley種/BioLASCO Taiwan Co. Ltd.
週齢および体重:試験開始時、ラットは約8週齢で、投与前の体重範囲は177.43g~210.66gであった。
性別/数:雌/3
順化:動物をATRI動物センターのGLP動物施設に隔離し、投与前に試験室で6日間順応させる。
【0074】
(3)試験物の製造:「AGO」を実施例4に従って製造および処理した。試験物を秤量し、通常の生理食塩水と混合して溶解させ、投与前に200mg/mLに希釈した。
【0075】
(4)実験手順:
投与前16~18時間、投与後3~4時間動物を絶食させた。
投与は、投与日に測定した体重に基づいて、10mL/kgの量でシリンジおよび栄養チューブを用いて行った。
臨床観察:動物を投与後10分間は連続観察し、投与日は投与の30分後および4時間後に観察した。投与後1日目から14日目まで動物を1日1回観察した。
体重測定:投与の0日後(投与前)、7日後および14日後に電子天秤で体重を測定した。
肉眼的剖検:投与の14日後に生存動物を肉眼的剖検に供した。生存動物を、イソフルラン麻酔下で腹部大動脈から出血させて安楽死させた。すべての動物について、体の外面、すべての開口部、皮下組織、頭蓋、腹部および骨盤の腔とその内容物を観察した。
採血と処置:血液サンプルを腹部大動脈から得て、抗凝固剤なしで採取した。
血清を、冷蔵遠心分離機で3,500rpmで15分間、4℃で1時間以内に遠心分離することにより採取した。各血清サンプルを-30℃で保存した。
組織採取と臓器重量測定:すべての動物について、心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓および副腎を摘出し、電子天秤を用いて重量を測定した。心臓、肺、脾臓、肝臓、腎臓および副腎を、10%中和緩衝ホルマリンで保存した。
【0076】
結果
【表3】

(1)死亡率/瀕死率:試験期間中、動物の死亡は観察されなかった。
(2)臨床的観察:試験期間中、すべての動物で臨床的に有害な徴候は観察されなかった。
(3)体重:試験期間中、すべての動物で異常は観察されなかった。
(4)肉眼的解剖所見:解剖日に、すべての動物で異常所見は観察されなかった。
(5)臓器重量:各動物の臓器重量を観察し、表3に示した。異常な増殖または変化は観察されなかった。
表3
【0077】
実施例8. 実施例7から調製した重要臓器の組織病理学的分析
【0078】
この試験は、Nuecology Biomedical Inc.(Vancouver, BC, Canada)によって委託された。この試験は、雌性ラットにおける強制経口投与による、試験物であるアルギン酸ナトリウム-mOA(AGO)により誘発される病理学的変化を評価した。8週齢の雌性Sprague Dawleyラット3匹に、2回蒸留H2O溶液中2,000mg/kgのAGOを強制経口投与した。すべてのラットを14日目に屠殺した。心臓、腎臓、肺、肝臓および脾臓を回収し、組織病理学的評価に供された。組織病理学的評価下で、心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変は、AGO処置雌で見られなかった。
【0079】
結論として、2,000mg/kgアルギン酸ナトリウム-mOAの急性経口毒性のパイロット試験は、組織病理学的検査によると、雌性ラットの心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変を引き起こさなかった。
【0080】
8週齢の雌性Sprague Dawleyラット3匹に、2回蒸留H2O溶液中2,000mg/kgのアルギン酸ナトリウム-mOA(AGO)を強制経口投与した。すべてのラットを14日目に屠殺した。
【0081】
心臓、腎臓、肺、肝臓および脾臓を回収し、組織病理学的評価に供された(表3)。組織病理学的評価のために、組織をさらに処理し、パラフィンに包埋し、マイクロトーンで3μmに切断し、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色で染色し、光学顕微鏡(BX-53、Olympus、Tokyo、Japan)で評価した。
【0082】
病変の重症度を、Shackelfordら(Toxicologic Pathology 30: 93-96, 2002)が記述した方法に従ってグレード付けした。病変の程度を重症度に応じて1~5にグレード付けした:1=最小(<1%);2=極小(1~25%);3=中等度(26~50%);4=中重度(51~75%);5=重度/高(76~100%)。各臓器の病理学的用語体系を表4に示す。
【表4】
【0083】
結果:
【0084】
組織病理学的所見:
【0085】
心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓:心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変は、2,000mg/kg用量のAGO処置群で見られなかった(図3;表5)。
【0086】
結論:
【0087】
8週齢の雌性Sprague Dawleyラット3匹に、2回蒸留H2O溶液中2,000mg/kgのアルギン酸ナトリウム-mOA(AGO)を強制経口投与した。すべてのラットを14日目に屠殺した。心臓、腎臓、肺、肝臓、肺および脾臓を回収し、組織病理学的評価に供された。
【0088】
組織病理学的評価から、心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変は、AGO 2,000mg/kg処置雌性ラットで見られなかった(表6)。
【0089】
結論として、2,000mg/kgアルギン酸ナトリウム-mOAの急性経口毒性のパイロット試験は、組織病理学的検査によると、雌性ラットの心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変を引き起こさなかった。
【0090】
実施例9. 皮下注射投与によるレムデシビル-担持ACE2-コーティングAGOナノ粒子の急性毒性についてのインビボ評価
【0091】
レムデシビル担持ACE2-コーティングされたAGOナノ粒子溶液を、実施例2に示した製造条件に基づいて製造し、インビボの皮下注射投与による急性毒性を決定した。
【0092】
7週齢の雌性ICRマウス15匹を、PBS緩衝水溶液中7.5mg/kg(L)、15mg/kg(M)および25mg/kg(H)のRAGOゲルのマウスへの皮下(sc)注射による投与からなる3群に分けた。各群には、皮下経路による試験物を1回投与した5匹の雌性マウスが含まれた。注射量は100μL/20g体重であった。すべてのマウスを14日目に屠殺した。
【0093】
心臓、腎臓、肺、肝臓および脾臓を回収し、組織病理学的評価に供された(表8)。組織病理学的評価のために、組織をさらに処理し、パラフィンに包埋し、マイクロトーンで3mmに切断し、ヘマトキシリン・エオシン(HE)染色で染色し、光学顕微鏡(BX-53、Olympus、Tokyo、Japan)で評価した。
【表5】

【表6】

【表7】
【表8】
【0094】
病変の重症度を、Shackelfordら(Toxicologic Pathology 30: 93-96, 2002)が記述した方法に従ってグレード付けした。病変の程度を重症度に応じて1~5にグレード付けした:1=最小(<1%);2=極小(1~25%);3=中等度(26~50%);4=中重度(51~75%);5=重度/高(76~100%)。各臓器の病理学的用語体系を表9に示す。
【0095】
結果:
【0096】
(1)組織病理学的所見:
心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓:
心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変は、7.5mg/kg RAGO、15mg/kgおよび25mg/kgの用量処置群で見られなかった(表10)。
【0097】
(2)非特異的所見:
腎臓:
-病巣性管状嚢胞
25mg/kgのRAGOゲル群の1匹の雌性マウスのみが、腎臓で病巣性の極小管状嚢胞を示した(図3A~C)。発生率は、H-RAGO群で1/5であった。腎臓では、試験物による顕著な処置関連の影響は認められなかった(表10)。
肝臓:
-多病巣性脂肪変化
M-RAGOゲルの雌性マウスは、肝臓で多病巣性の極小脂肪変化を示した(図1D~F)。発生率は、M-RAGOゲルマウスで1/5であった。肝臓では、試験物による顕著な処置関連の影響は認められなかった(表10)。
肺:
-びまん性人工肺胞虚脱
RAGOゲル処置雌性マウスのすべての群は、肺で極小から中等度/重度の人工肺胞虚脱を示した(図3G~I)。発生率は、RAGOゲルで処置した雌性マウスで5/5、5/5および5/5であった。肺では、試験物による顕著な処置関連の影響は認められなかった(表10)。
【0098】
結論:
【0099】
7週齢の雌性ICRマウス15匹を、PBS緩衝水溶液中7.5mg/kg(L)、15mg/kg(M)および25mg/kg(H)のRAGOゲルのマウスへの皮下(sc)注射による投与からなる3群に分けた。各群には、皮下経路による試験物を1回投与した5匹の雌性マウスが含まれた。すべてのマウスを14日目に屠殺した。心臓、腎臓、肺、肝臓、肺および脾臓を回収し、組織病理学的評価に供された。
【0100】
組織病理学的評価から、心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変は、雌性マウスにおいて皮下(sc)注射により7.5mg/kg(L)、15mg/kg(M)および25mg/kg(H)のRAGOゲルを投与された群で見られなかった。腎臓での極小管状嚢胞、肝臓での多病巣性脂肪など、いくつかの非特異的または人工的な病変が見つかった。びまん性肺胞虚脱が肺の肺胞腔で観察され、不適切な固定に関連している可能性がある。顕微鏡検査では、試験物による臓器への顕著な処置関連の影響は生じなかった。これらの観察は表および図に示されており、非特異的または人工的な病変および偶発的な所見であると見なされた。結論として、雌性マウスへの皮下注射による7.5、15または25mg/kgの用量でのレムデシビル負荷AGOゲルの毒性試験は、組織病理学的検査によると、マウスの心臓、腎臓、肝臓、肺または脾臓の重大な病変を引き起こさなかった。
【表9】

【表10】
【0101】
実施例10. レムデシビル-クルクミン含有AGOTMナノ粒子の製造
【0102】
1.0mgのレムデシビル粉末(Selleckchemから購入)および0.5mgのメトトレキサート(MTX、Sigmaから購入)を、それぞれ0.5mLのジメチルスルホキシド(DMSO)およびDI水溶液中に溶解させて、レムデシビル濃度が20mg/mLおよびMTX濃度が10mg/mLであるレムデシビルストック溶液を調製した。5μLのレムデシビル-メトトレキサートストック溶液を、95μLのDI水溶液に加えて、レムデシビル濃度が1mg/mLおよびメトトレキサート濃度が0.5mg/mLである希釈レムデシビル-メトトレキサート溶液を得た。
【0103】
0.5mgのオレイン酸-修飾アルギン酸(AGOTM)(すなわち両親媒性アルギン酸)粉末(Nuecology Biomedical Inc.、Canada)を、エッペンドルフチューブに加え、その後50μLの希釈レムデシビル-メトトレキサート溶液を加えた。0.95mLの1X PBS溶液を、得られた混合物に加えて、初期AGOTM濃度が0.5mg/mLおよび初期の遊離レムデシビル濃度が40μg/mLおよび遊離メトトレキサート濃度が40μg/mLである1mLの混合溶液(pH7.4)を形成させた。上記手順を1回繰り返して、同じ初期AGOTM濃度および異なる比の初期の遊離レムデシビルおよびメトトレキサート濃度である別の混合溶液(表11)を形成させた。その後、薬物濃度が1:1、2:1、5:1の範囲である2つの混合溶液を、4℃にて12時間撹拌して、二剤AGOTMナノ粒子溶液を形成させた。
【表11】
【0104】
これらの2つの薬物をAGOTMナノ粒子に封入した後、得られた二剤AGOTMナノ粒子の物理的特性を、表12に示すとおり、ゼータ電位および粒子径について特性評価した。
【表12】
【0105】
得られたレムデシビル-MTX AGOTMナノ粒子の「絶対」ゼータ電位は20~32mVの範囲を示し、これは生理食塩水、血液、体液などの水ベースの溶液中で高いコロイド安定性を有する二剤担持AGOTMナノ粒子を示している。これは、抗ウイルス目的で医薬用途に使用できる可能性を示唆している。その上、得られた二剤AGOTMナノ粒子は、650~約900nmの範囲のサイズを示し、これは、IV注射、SC注射、経口および鼻スプレーなどを含む多くの投与経路にも適している。
【0106】
本明細書は多くの詳細を含むが、これらは本発明の範囲または特許請求の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、本発明の特定の実施態様または例に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施態様または例との関連で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施態様で組み合わせて実施することもできる。
図1
図2
図3
【国際調査報告】