(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】サイトカイン放出症候群の診断及び処置の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230614BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230614BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230614BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20230614BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230614BHJP
C07K 2/00 20060101ALN20230614BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20230614BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K31/7105
A61K48/00
A61P11/00
A61P29/00
C12N15/115 Z
C07K16/00
C07K2/00
C12N15/113 140Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571293
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2021063224
(87)【国際公開番号】W WO2021233962
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509181699
【氏名又は名称】アンスティテュ・クリー
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・ソリエ
(72)【発明者】
【氏名】サラ・ワトソン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB11
4C084ZC41
4C085AA14
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZC41
4H045AA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、サイトカイン放出症候群(CRS)の処置のための方法及び医薬組成物に関する。本発明はまた、サイトカイン放出症候群を患っている患者の診断方法にも関する。本発明者らが調査するところは、特にSARS-CoV-2患者における、重度の炎症反応及びサイトカイン放出症候群における鉄ホメオスタシス及びCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの役割である。本発明者らが実証するところは、M1マクロファージの活性化の過程で、鉄エンドサイトーシスがCD44依存様式で上方制御されること、及び、CD44タンパク質レベルが上昇すること、である。本効果はM1マクロファージに特異的であるが、一方、カノニカルな鉄エンドサイトーシスタンパク質TfR1/CD71のレベルは未変化のままである。本発明では、発明者らは、重度の炎症反応における、例えばSARS-CoV-2患者で観察されるサイトカイン放出症候群におけるCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの直接的な役割へのin vitroの証拠を提供する。したがって、本発明は、それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群の、特に重度のCOVID-19関連サイトカイン放出症候群の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸経路のアンタゴニストに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸経路のアンタゴニストであって、
CD44アンタゴニスト及びCD44発現阻害剤からなる群から選択される、CD44をターゲットとする化合物からなる群から選択される、CD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項2】
前記サイトカイン放出症候群が、重度のCOVID-19関連サイトカイン放出症候群である、請求項1に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項3】
前記CD44アンタゴニストが、低有機分子、ポリペプチド、アプタマー又は抗体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項4】
前記抗体がRG7356及びビバツズマブからなる群から選択される、請求項3に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項5】
前記CD44発現阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、siRNA、RNAi、及びリボザイムからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項6】
それを必要とする対象における呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項7】
それを必要とする対象におけるマクロファージ活性化症候群(MAS)の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【請求項8】
それを必要とする対象における鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、サイトカイン放出症候群(CRS)の処置のための方法及び医薬組成物に関する。本発明はまた、サイトカイン放出症候群を患っている患者の診断方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
最近の研究が示したところは、サイトカイン放出症候群(CRS)がSARS-CoV-2患者の罹患性及び死亡率の主原因であり、この場合、インターロイキン6(IL6)の上昇が呼吸不全と関連があることである(Moore JB、June CH. Cytokine release syndrome in severe COVID-19. Science. 2020年5月1日;368(6490):473~474頁. doi: 10.1126/science. abb8925)。また、CD44/ヒアルロナート(HA)が肺胞マクロファージにおけるケモカイン遺伝子発現を調節することも示されている(McKeeら、Hyaluronan (HA) fragments induce chemokine gene expression in alveolar macrophages. The role of HA size and CD44. J Clin Invest. 1996年11月15日;98(10):2403~13頁. DOI: 10.1172/JCI1 19054)。更に、フェリチンのレベルが、重症のSARS-CoV-2患者では高度に上方制御されていることが示されており(Zhouら、Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China, a retrospective cohort study. The Lancet (2020) DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30566-3)、このことが示唆するところは、Covid-19の生理病理学における鉄の因果的役割である。
【0003】
Perriconeら(Authorea,Inc,DOI:10.22541/au.158880283.3460 4328)は、高フェリチン血症症候群の一部としてのCOVID-19の背景における除鉄療法の役割に関するものである。Dalamagaら(2020、Metabolism, Clinical and experimental、108、154260)は、COVID-19の処置レジメンの補助剤としての鉄キレート剤の可能な有用性に関するものである。
【0004】
本発明者らは最近になって、上皮間葉転換、がんの進行、免疫応答及び炎症の調節に関与するHyalの原形質膜受容体であるCD44の機能的役割について解明した。特に、本発明者らが発見したところは、CD44ががん細胞及び免疫T細胞において鉄結合Hyalのエンドサイトーシスを媒介することである。これに関連して、本発明者らが示したところは、鉄がエピジェネティックな可塑性(epigenetic plasticity)及び細胞のアイデンティティの調節において中枢的な役割を果たし、その結果、金属触媒として作用して抑制性ヒストンマークH3K9me2及びH3K27me3の脱メチル化を促進することである。本研究の過程で、本発明者らが見いだしたところは、IL6受容体をコードする遺伝子(IL6R/CD126)が、トップの鉄制御性遺伝子の1つであり、この場合、鉄 - したがってCD44/Hyal - がH3K9me2の枯渇を媒介してIL6Rの上方制御をもたらすことである。重要なことに、本発明者らはまた、抗CD44抗体が鉄エンドサイトーシスをブロックし、その結果、この効果に拮抗することができることを示した。本研究は、基礎研究の科学者そして臨床医も含めて広範囲の科学界で国際的にかなりの関心を高めている(Mullerら、CD44 regulates epigenetic plasticity by mediating iron endocytosis、BioRxiv、DOI:https://doi.org/10.1101/693424、Nature Chemistryに受理)。
【0005】
本開示で、本発明者らが実証するところは、M1マクロファージの活性化過程で、鉄エンドサイトーシスがCD44依存様式で上方制御されること、及び、CD44タンパク質レベルが上昇すること、である。本効果はM1マクロファージに特異的であるが、一方、カノニカルな鉄エンドサイトーシスタンパク質TfR1/CD71のレベルは未変化のままである。まとめると、これらのデータは、SARS-CoV-2患者で観察される重度の炎症反応におけるCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの直接的な役割を暗示している。
【0006】
また、特にSARS-CoV-2患者において、サイトカイン放出症候群(CRS)の処置におけるCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストの使用に関しては、本技術分野では開示がまったくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/144890号
【特許文献2】国際公開第0139815号
【特許文献3】国際公開第2004/018000号
【特許文献4】国際公開第2005/049082号
【特許文献5】国際公開第2008/079246号
【特許文献6】国際公開第2014/023869号
【特許文献7】国際公開第2005/087264号
【特許文献8】国際公開第2014/198843号
【特許文献9】国際公開第2011/095498号
【特許文献10】国際公開第2013/063498号
【特許文献11】国際公開第2007/039761号
【特許文献12】国際公開第2015/097170号
【特許文献13】米国特許第4,816,567号
【特許文献14】米国特許第5,225,539号
【特許文献15】米国特許第5,585,089号
【特許文献16】米国特許第5,693,761号
【特許文献17】米国特許第5,693,762号
【特許文献18】米国特許第5,859,205号
【特許文献19】国際公開第90/07861号
【特許文献20】米国特許第5,591,669号
【特許文献21】米国特許第5,598,369号
【特許文献22】米国特許第5,545,806号
【特許文献23】米国特許第5,545,807号
【特許文献24】米国特許第6,150,584号
【特許文献25】米国特許第5,565,332号
【特許文献26】米国特許第5,573,905号
【特許文献27】米国特許第5,229,275号
【特許文献28】米国特許第5,567,610号
【特許文献29】米国特許第5,800,988号
【特許文献30】米国特許第5,874,541号
【特許文献31】米国特許第6,015,695号
【特許文献32】米国特許第6,765,087号
【特許文献33】米国特許第6,838,254号
【特許文献34】米国特許第6,566,135号
【特許文献35】米国特許第6,566,131号
【特許文献36】米国特許第6,365,354号
【特許文献37】米国特許第6,410,323号
【特許文献38】米国特許第6,107,091号
【特許文献39】米国特許第6,046,321号
【特許文献40】米国特許第5,981,732号
【特許文献41】米国特許第6,573,099号
【特許文献42】米国特許第6,506,559号
【特許文献43】国際公開第01/36646号
【特許文献44】国際公開第99/32619号
【特許文献45】国際公開第01/68836号
【特許文献46】中国特許第104561000号
【特許文献47】国際公開第0149266号
【特許文献48】国際公開第2009103727号
【特許文献49】国際公開第2011109521号
【特許文献50】国際公開第2014059417号
【特許文献51】国際公開第2017153475号
【特許文献52】国際公開第2019233982号
【特許文献53】米国特許第5,374,771号
【特許文献54】米国特許第4,683,202号
【特許文献55】米国特許第5,854,033号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moore JB、June CH. Cytokine release syndrome in severe COVID-19. Science. 2020年5月1日;368(6490):473~474頁. doi: 10.1126/science. abb8925
【非特許文献2】McKeeら、Hyaluronan (HA) fragments induce chemokine gene expression in alveolar macrophages. The role of HA size and CD44. J Clin Invest. 1996年11月15日;98(10):2403~13頁. DOI: 10.1172/JCI1 19054
【非特許文献3】Zhouら、Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China, a retrospective cohort study. The Lancet (2020) DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30566-3
【非特許文献4】Perriconeら(Authorea, Inc, DOI: 10.22541/au.158880283.3460 4328)
【非特許文献5】Dalamagaら(2020、Metabolism, Clinical and experimental、108、154260)
【非特許文献6】Mullerら、CD44 regulates epigenetic plasticity by mediating iron endocytosis、BioRxiv、DOI: https://doi.org/10.1101/693424、Nature Chemistryに受理
【非特許文献7】Shimabukuro-Vornhagenら、Cytokine release syndrome. J Immunother Cancer. 2018年6月15日;6(1):56頁. doi:10.1186/s40425-018-0343-9
【非特許文献8】Davilaら、Efficacy and toxicity management of 19-28z CAR T cell therapy in B cell acute lymphoblastic leukemia. Sci Transl Med. 2014年2月19日;6(224):224ra25. doi: 10.1126/scitranslmed
【非特許文献9】Shalabiら、Novel Designs of Early Phase Trials for Cancer Therapeutics.第12章 - Cell-Based Therapies: A New Frontier of Personalized Medicine.編者: Shivaani Kummar、Chris Takimoto. Academic Press、2018、175~191頁, ISBN 9780128125120, doi. org/10.1016/B978-0-12-812512-0.00012-9
【非特許文献10】Maudeら、Managing cytokine release syndrome associated with novel T cell-engaging therapies. Cancer J. 2014年3月-4月;20(2): 119~22頁. doi: 10.1097/PPO.0000000000000035
【非特許文献11】Ranieriら、ARDS Definition Task Force. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA. 2012年6月20日;307(23):2526~33頁. doi:10.1001/jama.2012.5669
【非特許文献12】Hernandez -Beeftinkら、Genomics and the Acute Respiratory Distress Syndrome: Current and Future Directions. Int J Mol Sci. 2019年8月16日;20(16). pii: E4004. doi: 10.3390/ijms20164004
【非特許文献13】The American Lung Association (lung.org/lung-health-diseases)
【非特許文献14】Mayo Clinic College of Medicine and Science (mayoclinic.org/patient-care-and-health-information)
【非特許文献15】Whyte CS、Morrow GB、Mitchell JL、Chowdary P、Mutch NJ. Fibrinolytic abnormalities in acute respiratory distress syndrome (ARDS) and versatility of thrombolytic drugs to treat COVID-19. J Thromb Haemost. 2020年4月23日. doi: 10.1111/jth.14872
【非特許文献16】Crayneら、The Immunology of Macrophage Activation Syndrome. Front Immunol. 2019年2月1日;10:119頁. doi:10.3389/fimmu.2019.00119
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【非特許文献20】Han Y、Zeng H、Jiang H、Yang Y、Yuan Z、Cheng X、Jing Z、Liu B、Chen J、Nie S、Zhu J、Li F、Ma C. CSC Expert Consensus on Principles of Clinical Management of Patients with Severe Emergent Cardiovascular Diseases during the COVID-19 Epidemic. Circulation. 2020年3月27日. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.047011
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【非特許文献24】Stelzerら、The GeneCards Suite: From Gene Data Mining to Disease Genome Sequence Analyses. Curr Protoc Bioinformatics. 2016年6月20日;54:1.30.1~1.30.33. doi: 10.1002/cpbi.5
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【非特許文献29】Coding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology、第3版、Academic Press、New York、1996
【非特許文献30】Clark, W. R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc.、New York
【非特許文献31】Roitt, I. (1991) Essential Immunology、第7版、Blackwell Scientific Publications、Oxford
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【非特許文献34】MURRY (「Methods in Molecular Biology」、第7巻、Humana Press, Inc., Cliffton、N.J.、1991
【非特許文献35】SANBROOKら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989
【非特許文献36】Limaら、Treatment of iron overload syndrome: a general review. Rev Assoc Med Bras (1992). 2019年10月10日;65(9):1216~1222頁. doi:10.1590/1806-9282.65.9.1216
【非特許文献37】Mobarraら、A Review on Iron Chelators in Treatment of Iron Overload Syndromes. Int J Hematol Oncol Stem Cell Res. 2016年10月1日;10(4):239~247頁
【非特許文献38】Khanら、Synthesis, nature and utility of universal iron chelator Siderophore: A review. Microbiol Res. 2018年7月-8月;212-213: 103~111頁. doi: 10.1016/j.micres.2017.10.012
【非特許文献39】Kontoghiorghes GJ. Comparative efficacy and toxicity of desferrioxamine, deferiprone and other iron and aluminium chelating drugs. Toxicol Lett. 1995年10月;80(1-3):1~18頁
【非特許文献40】Zhouら、M, Zhang X、Qu J. Coronavirus disease 2019 (COVID-19): a clinical update. Front Med. 2020年4月;14(2): 126~135頁. doi: 10.1007/s11684-020-0767-8
【非特許文献41】First-in human phase I clinical trial of RG7356, an anti-CD44 humanized antibody, in patients with advanced, CD44-expressing solid tumors. Oncotarget (2016)、DOI: 10.18632/oncotarget.11098
【発明の概要】
【0009】
本発明の概要
本発明は、サイトカイン放出症候群(CRS)の処置のための方法及び医薬組成物に関する。本発明はまた、サイトカイン放出症候群(CRS)を患っている患者の診断方法にも関する。特に、本発明は特許請求の範囲によって定義される。
【0010】
本開示の一態様では、本発明は、それを必要とする対象においてサイトカイン放出症候群の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸経路のアンタゴニスト又はそれを含む医薬組成物であって、CD44アンタゴニスト及びCD44発現阻害剤からなる群から選択される、CD44をターゲットとする化合物からなる群から選択される、CD44/ヒアルロン酸経路のアンタゴニスト又はそれを含む医薬組成物に関する。本発明は、それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群の処置のための医薬品を製造するための、CD44アンタゴニスト及びCD44発現阻害剤からなる群から選択される、CD44をターゲットとする化合物の使用に更に関する。本発明はまた、それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群の処置のための方法であって、CD44アンタゴニスト及びCD44発現阻害剤からなる群から選択される、CD44をターゲットとする化合物の治療有効量を投与する工程、それによって、サイトカイン放出症候群を予防する工程又は軽減する工程を含む方法にも関する。
【0011】
特定の態様では、サイトカイン放出症候群は重度のCOVID-19関連サイトカイン放出症候群である。
【0012】
必要に応じて、前記CD44アンタゴニストは、低有機分子(small organic molecule)、ポリペプチド、アプタマー又は抗体からなる群から選択される。例を挙げると、前記抗体は、RG7356及びビバツズマブからなる群から選択される。
【0013】
必要に応じて、前記CD44発現阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、siRNA、RNAi、及びリボザイムからなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の詳細な説明
本発明者らが調査するところは、特にSARS-CoV-2患者における、重度の炎症反応及びサイトカイン放出症候群(CRS)における鉄ホメオスタシス及びCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの役割である。本発明者らが実証するところは、M1マクロファージの活性化の過程で、鉄エンドサイトーシスがCD44依存様式で上方制御されること、及び、CD44タンパク質レベルが上昇すること、である。本効果はM1マクロファージに特異的であるが、一方、カノニカルな鉄エンドサイトーシスタンパク質TfR1/CD71のレベルは未変化のままである。本発明では、発明者らは、重度の炎症反応における、例えばSARS-CoV-2患者で観察されるサイトカイン放出症候群(CRS)におけるCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの直接的な役割へのin vitroの証拠を提供する。まとめると、本発明が強調するところは、重度の炎症反応及びサイトカイン放出症候群(CRS)におけるCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの役割、並びにCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストの潜在的な使用、及びサイトカイン放出症候群(CRS)の処置における、特にSARS-CoV-2患者における、鉄ホメオスタシスのターゲティング、である。本発明はまた、重度のCOVID-19への素因の新規なマーカーとしてCD44を特定する。
【0015】
したがって、本開示は、サイトカイン放出症候群(CRS)、特に重度のCOVID-19関連CRSの処置における鉄ホメオスタシスのターゲティングに関する。本発明はまた、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、特に重度のCOVID-19関連ARDSの処置における鉄ホメオスタシスのターゲティングに関する。本発明はまた、マクロファージ活性化症候群(MAS)、特に重度のCOVID-19関連MASの処置における鉄ホメオスタシスのターゲティングに関する。本発明はまた、鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応、特にCOVID-19患者における鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応の処置における鉄ホメオスタシスのターゲティングに関する。本発明はまた、COVID-19、特に重度のCOVID-19の処置における鉄ホメオスタシスのターゲティングにも関する。
【0016】
治療方法
第1の態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群(CRS)の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0017】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象における重度のCOVID-19関連CRSの処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0018】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象における呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0019】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるマクロファージ活性化症候群(MAS)の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0020】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象における鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0021】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象におけるCOVID-19、特に重症COVID-19の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストに関する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」という用語は交換可能であり、哺乳動物を指す。典型的には、本発明による対象とは、任意の対象、好ましくはヒトを指す。特定の実施形態では、「対象」という用語は、サイトカイン放出症候群(CRS)、特にCOVID-19関連CRSに罹患している、又はそれを罹患するリスクがある対象を指す。特定の実施形態では、「対象」という用語は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、特に重度のCOVID-19関連ARDSに罹患している、又はそれを罹患するリスクがある対象を指す。特定の実施形態では、「対象」という用語は、マクロファージ活性化症候群(MAS)、特に重度のCOVID-19関連MASに罹患している、又はそれを罹患するリスクがある対象を指す。特定の実施形態では、「対象」という用語は、鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応、特にCOVID-19患者における鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応に罹患している、又はそれを罹患するリスクがある対象を指す。特定の実施形態では、「対象」という用語は、COVID-19、特に重度のCOVID-19に罹患している、又はそれを罹患するリスクがある対象を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「処置」又は「処置する」という用語は、予防的又は防止的処置並びに治癒的又は疾患修飾処置の両方を指し、それには、疾患に罹るリスクがあるか又は当該疾患に罹っていることが疑われる対象並びに病気である又は疾患状態若しくは医学的状態を患っていると診断されている対象の処置が含まれるとともに、その用語には臨床的再発の抑制が含まれる。処置は、医学的障害を有する対象、又は最終的に障害を獲得するおそれのある対象に、以下のために投与することができる:障害又は再発性障害の1つ若しくは複数の症状の発症を予防する、治癒させる、遅延させるため、それらの重症度を軽減させるため、それらを寛解させるため、或いは、そのような処置がない場合に予想される生存を超えて対象の生存を延長するため。「治療レジメン」とは、病気の処置のパターン、例えば、治療過程で使用される投薬パターンを意味する。治療レジメンには、誘導レジメン及び維持レジメンが含まれ得る。「誘導レジメン」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの一般的目標は、処置レジメンの初期期間過程で患者に高レベルの薬物を提供することである。誘導レジメンでは(部分的に又は全体的に)「負荷レジメン」を用いてもよく、これには、医師が維持レジメン過程で用いると思われるよりも大きい用量の薬物を投与すること、医師が維持レジメン過程で薬物を投与すると思われるよりも更に頻繁に当該薬物を投与すること、又はその両方が含まれ得る。「維持レジメン」又は「維持期間」という語句は、例えば、長期間(数か月又は数年間)の間、対象を寛解状態に保つために、病気の処置過程で対象の維持のために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、連続的療法(例えば、規則的な間隔で、例えば週1回、月1回、年1回等に薬物を投与すること)を用いても、又は、断続的療法(例えば、間断的処置、断続的処置、再発時における処置、又は特定の予め決定された基準[例えば疾患の顕現等]に到達した場合の処置)を用いてもよい。
【0024】
本明細書で使用する場合、「サイトカイン放出症候群」又は「CRS」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、免疫細胞から血中へのサイトカインの大量且つ急速な放出によって引き起こされる疾患を指す。「サイトカイン放出症候群」又は「CRS」という用語はまた、抗体の投与、及び養子T細胞療法に続いて観察される全身性炎症反応、又は、感染症、例えば、コロナウイルス病2019(COVID-19)、敗血症、エボラ、鳥インフルエンザ、並びに非感染性疾患、例えば、移植片対宿主病(GVHD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)及び全身性炎症反応症候群(SIRS)、で起こるサイトカイン反応、も指す(Shimabukuro-Vornhagenら、Cytokine release syndrome. J Immunother Cancer. 2018年6月15日;6(1):56頁.doi:10.1186/s40425-018-0343-9)。「サイトカイン放出症候群」又は「CRS」という用語は、National Cancer Institute (NCI) Dictionary of Cancer Termsに記載のような、一部のタイプの免疫療法による、例えば抗体又はCAR-T細胞による処置後に起こる可能性のある状態、を指し、並びに、免疫療法により影響を受けた免疫細胞から血中へとサイトカインが大量且つ急速に放出されることによって引き起こされる状態、を指す。CRSとはCAR T細胞の最もよくある急性毒性であり、CRSは進行性の全身性炎症プロセスに関連し、高熱、低血圧、低酸素症、神経毒性及び/又は多臓器毒性によって特徴付けられる(Davilaら、Efficacy and toxicity management of 19-28z CAR T cell therapy in B cell acute lymphoblastic leukemia. Sci Transl Med. 2014年2月19日;6(224):224ra25. doi: 10.1126/scitranslmed)。CRSの重症度は、発熱、筋肉痛及び疲労を始めとする軽度の症状から、重度の症状まで、これには、それらに限定されないが、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、低血圧、播種性血管内凝固症候群、腎及び肝毒性、臓器機能不全、サイトカインプロファイル、例えばIL6、IL2R、IL-1ベータの上昇、及び/又は神経毒性が含まれるが、さまざまである(Shalabiら、Novel Designs of Early Phase Trials for Cancer Therapeutics.第12章 - Cell-Based Therapies: A New Frontier of Personalized Medicine.編者: Shivaani Kummar、Chris Takimoto. Academic Press、2018、175~191頁, ISBN 9780128125120, doi. org/10.1016/B978-0-12-812512-0.00012-9;Maudeら、Managing cytokine release syndrome associated with novel T cell-engaging therapies. Cancer J. 2014年3月-4月;20(2): 119~22頁. doi: 10.1097/PPO.0000000000000035)。サイトカイン放出症候群はまた、マクロファージ活性化症候群(MAS)/血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の所見とも関連する場合がある。「サイトカイン放出症候群」という用語はまた、COVID関連CRS、特に重度のCOVID-19関連CRSも指す。最近の研究が示したところは、サイトカイン放出症候群(CRS)がSARS-CoV-2患者の罹患性及び死亡率の主原因であり、この場合、IL6の上昇が呼吸不全と関連があることである(Moore JB、June CH. Cytokine release syndrome in severe COVID-19. Science. 2020年5月1日;368(6490):473~474頁. doi: 10.1126/science. abb8925)。
【0025】
本明細書で使用される場合、「成人呼吸窮迫症候群」又は「ARDS」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、肺侵襲又は全身性侵襲によって引き起こされる急性且つ激烈な肺炎症プロセスを指し、肺炎、感染症、敗血症又は外傷によって最もよく開始される(Ranieriら、ARDS Definition Task Force. Acute respiratory distress syndrome: the Berlin Definition. JAMA. 2012年6月20日;307(23):2526~33頁. doi:10.1001/jama.2012.5669;Hernandez -Beeftinkら、Genomics and the Acute Respiratory Distress Syndrome: Current and Future Directions. Int J Mol Sci. 2019年8月16日;20(16). pii: E4004. doi: 10.3390/ijms20164004)。「成人呼吸窮迫症候群」又は「ARDS」という用語はまた、体液が肺へと漏れることをもたらす生命を脅かす肺損傷も指し、The American Lung Association (lung.org/lung-health-diseases)に記載のように、呼吸が困難になり、酸素が体内に取り込めなくなる。「成人呼吸窮迫症候群」又は「ARDS」という用語はまた呼吸不全も指し、これは以下によって特徴付けられる:徴候及び症状、例えば、重度の息切れ、強制且つ異常な呼吸促迫、低血圧、錯乱及び極度の疲労、並びに、Mayo Clinic College of Medicine and Science(mayoclinic.org/patient-care-and-health-information)に記載のような心臓又は肺の基礎疾患の存在、を伴う肺の広範な炎症の急速な発症によって、特徴付けられる。ARDSの最もよくある根本的な原因として、感染症、敗血症、有害物質の吸入、膵炎、外傷、肺炎、大量輸血及び火傷が挙げられる。ARDSの病態生理は、肺胞腔の急性炎症及び正常なガス交換の低下に起因する。肺胞腔及び肺実質におけるフィブリン沈着は、ARDSとともに一貫して観察され、ヒアリン膜形成及びその後の肺胞線維症の一因である。これにより、呼吸機能障害及び右心不全の発症及び進行が促進される(Whyte CS、Morrow GB、Mitchell JL、Chowdary P、Mutch NJ. Fibrinolytic abnormalities in acute respiratory distress syndrome (ARDS) and versatility of thrombolytic drugs to treat COVID-19. J Thromb Haemost. 2020年4月23日. doi: 10.1111/jth.14872)。「成人呼吸窮迫症候群」又は「ARDS」という用語は、重度のCOVID-19関連ARDSも指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「マクロファージ活性化症候群」又は「MAS」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、汎血球減少症、肝不全、凝固障害、及び神経学的症状によって特徴付けられる疾患を指し、Tリンパ球及び十分に分化したマクロファージの活性化及び無制御な増殖によって引き起こされるとされており、その結果、広範な血球貪食及びサイトカイン過剰産生がもたらされる。「マクロファージ活性化症候群」又は「MAS」という用語はまた、全身性若年性特発性関節炎(SJIA)の個体で及び成人発症スティル病の個体で更に多くの頻度で起こる、リューマチ疾患の生命を脅かす合併症も指す(Crayneら、The Immunology of Macrophage Activation Syndrome. Front Immunol. 2019年2月1日;10:119頁. doi:10.3389/fimmu.2019.00119;Lerkvaleekul及びVilaiyuk. Macrophage activation syndrome: early diagnosis is key. Open Access Rheumatol. 2018年8月31日;10:117~128頁. doi: 10.2147/OARRR.S151013)。「マクロファージ活性化症候群」という用語はまた、重度のCOVID-19関連MASも指す(Merad及びMartin. Pathological inflammation in patients with COVID-19: a key role for monocytes and macrophages. Nat. Rev. Immunol. 2020年5月6日. doi : 10.1038/s41577-020-0331-4)。
【0027】
本明細書で使用される場合、「鉄関連炎症性疾患」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、鉄ホメオスタシスの機能不全に関連する炎症性疾患を指す。一部の実施形態では、「鉄関連炎症性疾患」という用語は、鉄過剰症候群に関連する炎症性疾患に関する。「鉄関連炎症性疾患」という用語はまた、鉄関連の重度の炎症反応、特にCOVID-19患者における鉄関連の重度の炎症反応も指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「肺胞炎症反応」という用語は、当技術分野において一般的な意味を有し、例えば、胸部外傷、虚血/再灌流、出血性ショック、及び熱傷後の、肺胞マクロファージ機能の機能不全に関連する炎症性疾患を指す。「肺胞炎症反応」という用語はまた、急性肺損傷(ALI)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に伴う、肺胞マクロファージにおけるケモカイン遺伝子発現の亢進に関連する炎症性疾患も指す(Nieslerら、Role of alveolar macrophages in the inflammatory response after trauma. Shock. 2014年7月;42(l):3~10頁. doi: 10.1097/SHK.0000000000000167)。「肺胞炎症反応」という用語はまた、COVID-19関連肺胞炎症反応も指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「COVID-19」又は「コロナウイルス病2019」という用語は、当技術分野での一般的な意味を有し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、2019年12月に中国の武漢で新たに特定されたコロナウイルスによって引き起こされる感染性コロナウイルス病を指す。「COVID-19」という用語はまた、2019-nCoV急性呼吸器疾患も指す。COVID-19は軽度から中等度の呼吸器疾患をもたらすが、一部の場合では重度のCOVID-19に発達するおそれがある。
【0030】
本明細書で使用される場合、「重度のCOVID-19」という用語は、当技術分野での一般的な意味を有し、重度の呼吸器疾患、肺炎、ウイルス性敗血症、サイトカイン放出症候群(CRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、炎症反応の亢進によって引き起こされる多臓器不全症候群をもたらすCOVID-19の副作用を指すが、多臓器不全症候群は例えば以下である:腎不全及び肺不全、呼吸不全、動脈炎症、心筋炎(炎症性心筋症としても知られる)、心筋損傷、血栓症、静脈血栓塞栓症、心血管疾患、Han Y、Zeng H、Jiang H、Yang Y、Yuan Z、Cheng X、Jing Z、Liu B、Chen J、Nie S、Zhu J、Li F、Ma C. CSC Expert Consensus on Principles of Clinical Management of Patients with Severe Emergent Cardiovascular Diseases during the COVID-19 Epidemic. Circulation. 2020年3月27日. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.120.047011)に記載のようなものであり、肺塞栓症、神経毒性、川崎病(皮膚粘膜リンパ節症候群としても知られる)、及びCOVID-19の皮膚症状、(Sachdeva M、Gianotti R、Shah M、Lucia B、Tosi D、Veraldi S、Ziv M、Leshem E、Dodiuk-Gad RP. Cutaneous manifestations of COVID-19: Report of three cases and a review of literature. J Dermatol Sci. 2020年4月29日. pii: S0923-1811(20)30149-3. doi: 10.1016/j.jdermsci.2020.04.011)に記載のようなものである。
【0031】
「CD44」という用語は、当技術分野において一般的な意味を有し、細胞間相互作用、細胞接着及び遊走に関与する膜貫通糖タンパク質CD44分子(インディアン血液型)を指す。本明細書で使用される「CD44」という用語は、膜貫通糖タンパク質、ヒアルロン酸(HA又はHyal)の原形質膜受容体を指すことを意図するが、この原形質膜受容体は、多種多様な生理学的及び病理学的プロセスに、それには発生、炎症、免疫応答、創傷治癒、上皮間葉転換(EMT)の調節及びがん進行が含まれるが、関与する(Ponta, H.、Sherman, L. & Herrlich, P. A. CD44: from adhesion molecules to signalling regulators. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 4、33~45頁、(2003);Zoller, M. CD44: can a cancer-initiating cell profit from an abundantly expressed molecule? Nat. Rev. Cancer 11、254~267頁、(2011))。「CD44」という用語はまた、細胞表面糖タンパク質も指し、そのアイソマーは、GeneCards Identifier GC11P035139及びUniProt Knowledgebase UniProtKB/ Swiss-Prot database identifier P16070を有する(Stelzerら、The GeneCards Suite: From Gene Data Mining to Disease Genome Sequence Analyses. Curr Protoc Bioinformatics. 2016年6月20日;54:1.30.1~1.30.33. doi: 10.1002/cpbi.5;UniProt Consortium. UniProt: a worldwide hub of protein knowledge. Nucleic Acids Res. 2019年1月8日;47(D1):D506~D515. doi: 10.1093/nar/gky1049)。CD44は、グリコサミノグリカン生体高分子のクラスであるヒアルロナート(Hyal)と相互作用し、それのエンドサイトーシスを媒介する(Aruffo, A.、Stamenkovic, I、Melnick, M.、Underhill, C. B. & Seed, B. CD44 is the principal cell surface receptor for hyaluronate. Cell 61、1303~1313頁、(1990);Hua, Q.、Knudson, C. B. & Knudson, W. Internalization of hyaluronan by chondrocytes occurs via receptor-mediated endocytosis. J. Cell Sci. 106、365~375頁、(1993))。
【0032】
「ヒアルロン酸」又は「HA」又は「Hyal」という用語は、当技術分野において一般的な意味を有し、ヒアルロナート(Hyal)及びヒアルロナンとしても知られるヒアルロン酸(HA)を指す。本明細書で使用される「ヒアルロン酸」又は「HA」という用語は、グリコサミノグリカン生体高分子のクラスを指すことを意図するが、この生体高分子は、多種多様な細胞機能に、それには細胞増殖、細胞遊走、上皮間葉転換(EMT)及びがん進行が含まれるが、関与する(Aruffo, A.、Stamenkovic, I、Melnick, M.、Underhill, C. B. & Seed, B. CD44 is the principal cell surface receptor for hyaluronate. Cell 61、1303~1313頁、(1990);Hua, Q、Knudson, C. B. & Knudson, W. Internalization of hyaluronan by chondrocytes occurs via receptor-mediated endocytosis. J. Cell Sci. 106、365~375頁、(1993))。
【0033】
本明細書で使用される場合、「CD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニスト」という用語は、それらに限定されないが、以下からなる群から選択される任意の化合物を指す:鉄ホメオスタシスをターゲットとする化合物、CD44アンタゴニスト又はCD44発現阻害剤からなる群から選択されるCD44をターゲットとする化合物、ヒアルロン酸(HA)をターゲットとする化合物、ヒアルロン酸(HA)/鉄内部移行の阻害剤、鉄エンドサイトーシスの阻害剤、鉄キレート剤、例えばデフェロキサミン(DFO);デフェロキサミンメシレート;デフェロキサミン塩酸塩;デフェラシロクス(DFX);デフェリプロン(DFP);デフェリトリン;デフェリポン;メトホルミン;メトホルミニン;デフェリタゾール;ヘプシジン断片;及びシデロフォア。CD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、IL6シグナル伝達に拮抗することによりその治療効果を有する。
【0034】
「CD44アンタゴニスト」という用語は、当技術分野においてその一般的な意味を有し、CD44を選択的に不活化する化合物を指す。「CD44アンタゴニスト」という用語は、以下の任意の化合物を指す:直接的又は間接的に、CD44に関連するシグナル伝達カスケードを阻害し、CD44リガンド結合(ヒアルロン酸(HA))を阻害し、CD44/HA複合体への鉄結合を阻害し、鉄結合CD44/HA複合体のエンドサイトーシスを阻害し、鉄結合Hyal内部移行を阻害し、次いで抑制性ヒストンマークH3K9me2及びH3K27me3の脱メチル化を阻害し、H3K9me2の枯渇を阻害し、且つ鉄制御遺伝子(例えばIL6受容体(IL6R/CD126))の上方制御を阻害することができる化合物。本明細書で使用される場合、「選択的に不活化する」という用語は、化合物であって、受容体及び細胞表面糖タンパク質のCD44シグナル伝達ファミリーの他のサブタイプ又はアイソフォームとのその化合物の相互作用よりも、大きな親和性及び効力それぞれでCD44を優先的に不活性化する化合物を指す。CD44アンタゴニストはまた、CD44活性レベルを低下する化合物も指す。CD44を優先するが、受容体サブタイプ及び細胞表面糖タンパク質の他のCD44シグナル伝達ファミリーも不活化することができる化合物が、部分的又は完全なアンタゴニストとして、企図される。典型的には、CD44アンタゴニストは、低有機分子、ポリペプチド、アプタマー又は抗体である。
【0035】
CD44アンタゴニストは、国際公開第2008/144890号;国際公開第0139815号;国際公開第2004/018000号;国際公開第2005/049082号;国際公開第2008/079246号;国際公開第2014/023869号;国際公開第2005/087264号に記載のように当技術分野でよく知られている。
【0036】
化合物がCD44アンタゴニストであるかどうかを判定するための試験及びアッセイは、国際公開第2014/198843号;国際公開第2008/144890号;国際公開第2011/095498号;国際公開第2013/063498号;国際公開第2004/018000号;国際公開第2005/049082号;国際公開第2008/079246号;国際公開第2005/087264号;国際公開第2014/023869号;国際公開第2007/039761号「CRYSTAL STRUCTURE OF CD44 AND ITS USE」;Weigandら、2012;D'Arenaら、2014、に記載のように当技術分野でよく知られている。
【0037】
一部の実施形態では、CD44アンタゴニストは、それに限定されないが、RG7356抗CD44抗体からなる群から選択される抗CD44抗体;ビバツズマブ;国際公開第2008/144890号;国際公開第2004/018000号;国際公開第2005/049082号;国際公開第2008/079246号;国際公開第2005/087264号に記載の抗体、である。
【0038】
一部の実施形態では、CD44アンタゴニストとは、ペプチド、又はそれに限定されないが、国際公開第2015/097170号に記載のリガンドから選択されるCD44リガンドである。
【0039】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、上記のCD44(及びヒアルロン酸(HA))抗体への結合に対して競合する。
【0040】
別の実施形態では、本発明の化合物はアプタマーである。アプタマーは、分子認識に関して抗体の代替物となる分子のクラスである。アプタマーは、高い親和性及び特異性で任意のクラスのターゲット分子を事実上認識する能力を備えるオリゴヌクレオチド配列である。そのようなリガンドは、Tuerk C及びGold L.、1990に記載のように、ランダム配列ライブラリーの試験管内進化法(SELEX)をとおして単離することができる。ランダム配列ライブラリーは、DNAのコンビナトリアル化学合成により入手可能である。このライブラリーでは、各メンバーは、最終的に化学修飾される、ユニークな配列の直鎖状オリゴマーである。このクラスの分子の可能な改変、用途及び利点については、Jayasena S.D.、(1999)でレビューされている。ペプチドアプタマーは、プラットフォームタンパク質によって、例えば、ツーハイブリッド法によりコンビナトリアルライブラリーから選択される大腸菌(E. coli)チオレドキシンAによって提示される、コンフォメーション制約された抗体可変領域からなる(Colasら、1996)。次いで、上記のように本発明のターゲットに対して向けられたアプタマーが産生された後、当業者は、ターゲットを遮断又は不活化するものを容易に選択することができる。
【0041】
別の実施形態では、本発明の化合物は、ターゲットに対して向けられた抗体(「抗体部分」を含む用語)である。
【0042】
本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体はヒト化抗体である。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体はキメラ抗体である。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体の軽鎖を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体の重鎖を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体のFab部分を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体のF(ab')2部分を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体のFc部分を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体のFv部分を含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体の可変ドメインを含む。本明細書に記載の抗体又はそれの部分の一実施形態では、抗体の部分は、抗体の1つ又は複数のCDRドメインを含む。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抗体」には、天然に存在する抗体と天然に存在しない抗体の両方が含まれる。特に、「抗体」には、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにそれの一価断片及び二価断片が含まれる。更に、「抗体」には、キメラ抗体、完全合成抗体、一本鎖抗体及びそれらの断片が含まれる。抗体は、ヒト抗体であっても非ヒト抗体であってもよい。非ヒト抗体は、リコンビナント方法によってヒト化させて、ヒトにおいてその免疫原性を減少させることができる。
【0044】
抗体は、従来の方法論にしたがって調製される。モノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein (Nature、256:495頁、1975)の方法を使用して産生することができる。本発明において有用なモノクローナル抗体を調製するために、マウス又は他の適当な宿主動物を適切な間隔で(例えば、週2回、週1回、月2回又は月1回)ターゲットの抗原型を用いて免疫する。屠殺の1週間以内で、最終「追加免疫」の抗原を動物に投与することができる。免疫過程で免疫学的アジュバントを使用することが望ましいことが多い。適切な免疫学的アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、ミョウバン、Ribiアジュバント、Hunter's Titermax、サポニンアジュバント、例えばQS21若しくはQuilA、又はCpG含有免疫刺激オリゴヌクレオチドが挙げられる。他の適切なアジュバントは当技術分野でよく知られている。皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、鼻腔内又は他の経路によって、動物を免疫することができる。複数の経路によって、複数の形態の抗原で所定の動物を免疫することができる。
【0045】
簡潔に言えば、抗原は、ターゲット中の目的の抗原領域に相当する合成ペプチドとして提供することができる。免疫レジメンに続いて、動物の脾臓、リンパ節又は他の臓器からリンパ球を分離し、作用剤、例えばポリエチレングリコールを使用して適切な骨髄腫細胞株と融合させてハイブリドーマを形成する。融合に続いて、(Coding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology、第3版、Academic Press、New York、1996)に記載のような標準法を使用して、融合パートナーではなくハイブリドーマが増殖可能な培地中に、細胞を置く。ハイブリドーマの培養に続いて、所望の特異性、すなわち、抗原を選択的に結合する抗体の存在について、細胞上清を解析する。適切な解析技法としては、ELISA、フローサイトメトリー、免疫沈降及びウエスタンブロッティングが挙げられる。他のスクリーニング技法が当技術分野でよく知られている。好ましい技法とは、立体配座的にインタクトであり、天然にフォールディングされた抗原に対する抗体の結合を確認するもの、例えば未変性ELISA、フローサイトメトリー及び免疫沈降である。
【0046】
重要なことに、当技術分野でよく知られているように、抗体分子のごく一部のみが、パラトープが、そのエピトープに対する抗体の結合に関与する(全体としては、Clark, W. R. (1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley & Sons, Inc.、New York;Roitt, I. (1991) Essential Immunology、第7版、Blackwell Scientific Publications、Oxfordを参照されたい)。Fc'領域及びFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合に関与しない。pFc'領域が酵素的に切断された抗体、又はpFc'領域なしで産生された抗体は、(F(ab')2断片と称されるが、インタクトな抗体の抗原結合部位の両方を保持する。同様に、Fc領域が酵素的に切断された抗体、又はFc領域なしで産生された抗体は、Fab断片と称されるが、インタクトな抗体分子の抗原結合部位の一方を保持する。更に進めて、Fab断片は、共有結合した抗体軽鎖と、Fdと称される抗体重鎖の一部とからなる。Fd断片は、抗体特異性の主たる決定基であり(単一のFd断片は、抗体特異性を変化させることなく、最大10個の異なる軽鎖と会合することができる)、Fd断片は、単独でエピトープ結合能を保持する。
【0047】
抗体の抗原結合部分内には、当技術分野でよく知られているように、抗原のエピトープと直接的に相互作用する相補性決定領域(CDR)と、パラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)とが存在する(全体として、Clark、1986;Roitt、1991を参照されたい)。IgG免疫グロブリンの重鎖Fd断片及び軽鎖の両方において、3つの相補性決定領域(CDR1からCDRS)によってそれぞれ隔てられた4つのフレームワーク領域(FR1からFR4)が存在する。CDR、特にCDRS領域は、特に重鎖CDRSは、抗体特異性を大きく担う。
【0048】
哺乳動物抗体の非CDR領域を同種特異的抗体又は異種特異的抗体の類似領域で置き換え、一方、元の抗体のエピトープ特異性を保持することができることは、現在では当技術分野で十分に確立されている。このことは、「ヒト化」抗体の開発及び使用において最も明確に証明されており、この場合、非ヒトCDRがヒトFR領域及び/又はFc/pFc'領域に共有結合して機能的抗体を産生する。
【0049】
本発明は、ある特定の実施形態において、抗体のヒト化型を含む組成物及び方法を提供する。本明細書で使用される場合、「ヒト化」とは、CDR領域外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリン分子に由来する対応するアミノ酸で置き換えられている、抗体を云う。ヒト化の方法としては、それらに限定されないが、米国特許第4,816,567号、米国特許第5,225,539号、米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号及び米国特許第5,859,205号に記載のものが挙げられ、これらは、参照により本明細書に組み入れられる。また、上記米国特許第5,585,089及び米国特許第5,693,761並びに国際公開第90/07861号ではまた、可能な4つの基準が提唱されており、これらは、ヒト化抗体の設計において使用することができる。第1の提案とは、アクセプターの場合、ヒト化されるドナー免疫グロブリンと普通には相同的な特定のヒト免疫グロブリン由来のフレームワークを使用すること、又は多数のヒト抗体由来のコンセンサスフレームワークを使用することであった。第2の提案とは、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク中のあるアミノ酸が普通のものではなく、その位置にてのドナーアミノ酸がヒト配列に定型的なものである場合、それなら、アクセプターではなくドナーアミノ酸を選択することができることであった。第3の提案とは、ヒト化免疫グロブリン鎖中の3つのCDRに直接隣接する位置において、アクセプターアミノ酸ではなくドナーアミノ酸を選択することができることであった。第4の提案とは、抗体の三次元モデルにおいて、アミノ酸がCDRの3A以内に側鎖原子を有すると予測されるとともにCDRと相互作用することができると予測されるフレームワーク位置に、ドナーアミノ酸残基を使用することであった。上記方法は、当業者であればヒト化抗体の作製に用い得るいくつかの方法の単なる例示である。当業者であれば、他の抗体ヒト化方法を熟知しているであろう。
【0050】
抗体のヒト化形態の一実施形態では、CDR領域外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリン分子由来のアミノ酸で置き換えられているが、この場合、1つ又は複数のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分又は全部は未変化である。アミノ酸の軽微な付加、欠失、挿入、置換又は改変は、抗体が所定の抗原を結合する能力を抑制しない限り許容可能である。適切なヒト免疫グロブリン分子には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgMの各分子が含まれるであろう。「ヒト化」抗体は、元々の抗体と類似の抗原特異性を保持する。しかし、ヒト化に関するある特定の方法を使用して、抗体の結合の親和性及び/又は特異性を、Wuら、/. Mol. Biol. 294:151頁、1999によって記載のように、その内容は参照により本明細書に組み入れられるが、「指向性進化」方法を使用して向上させることができる。
【0051】
完全ヒト型モノクローナル抗体も、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子座の大部分についてトランスジェニックなマウスを免疫することによって、調製することができる。例えば、米国特許第5,591,669号、米国特許第5,598,369号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,545,807号、米国特許第6,150,584号及びそこで引用されている参考文献を参照されたく、それらの内容は、参照により本明細書に組み入れられる。これらの動物は遺伝子改変されており、したがって、内因性(例えば、マウス)抗体の産生の上で機能的欠失が存在する。これらの動物を、更に改変してヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有せしめ、その結果、これらの動物を免疫すると目的の抗原に対する完全ヒト型抗体の産生がもたらされることになる。これらのマウス(例えば、XenoMouse(Abgenix社)、HuMAbマウス(Medarex社/GenPharm社))の免疫に続いて、モノクローナル抗体を標準的なハイブリドーマ技術にしたがって、調製することができる。こういったモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンアミノ酸配列を有することになり、したがって、ヒトに投与した場合にヒト抗マウス抗体(KAMA社)応答を誘発しない。
【0052】
ヒト抗体を産生するためのin vitro方法も存在する。これらとしては、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,565,332号及び米国特許第5,573,905号)及びヒトB細胞のin vitro刺激(米国特許第5,229,275号及び米国特許第5,567,610号)が挙げられる。これらの特許の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
したがって、当業者であれば明らかであるように、本発明はまた以下を提供する:F(ab')2Fab、Fv及びFdの各断片;キメラ抗体、この場合、Fc及び/又はFR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3の各領域が、相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置き換えられている;キメラF(ab')2断片抗体、この場合、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3の各領域が、相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置き換えられている;キメラFab断片抗体、この場合、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2及び/又は軽鎖CDR3の各領域が、相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置き換えられている;並びに、キメラFd断片抗体、この場合、FR及び/又はCDR1及び/又はCDR2の各領域が、相同的なヒト配列又は非ヒト配列によって置き換えられている。本発明にはまた、いわゆる一本鎖抗体も含まれる。
【0054】
種々の抗体分子及び断片は、よく知られている免疫グロブリンクラスのいずれかに由来することができ、これには、それらに限定されないが、IgA、分泌性IgA、IgE、IgG及びIgMが含まれる。IgGサブクラスも当業者によく知られており、それらに限定されないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれる。好ましい実施形態では、本発明の化合物はヒトIgG4である。
【0055】
別の実施形態では、本発明による抗体は、単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「VHH」という用語は、ラクダ科哺乳動物に見いだすことができる、抗体の単一重鎖可変ドメインのタイプを指し、これは軽鎖を自然に欠いている。このようなVHHは、「nanobody(登録商標)」とも称される。本発明によれば、sdAbは、特にラマsdAbとすることができる。「VHH」という用語は、3つの相補性決定領域(CDR):CDR1、CDR2及びCDR3を有する単一重鎖を指す。「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、VHHの結合親和性及び特異性を画定する超可変アミノ酸配列を指す。
【0056】
本発明によるVHHは、ルーチンの実験を使用して、当業者であれば容易に調製することができる。VHHバリアント及びそれの改変型は、当技術分野で知られている任意の技術、例えばin vitro成熟の下で産生することができる。
【0057】
VHH又はsdAbは、免疫動物から得られた血液、リンパ節、又は脾臓のcDNA由来のVドメインレパートリーをファージディスプレイベクターに、例えばpHEN2に、PCRクローニングすることによって、通常には産生される。抗原特異的VHHは、固定化抗原上に、例えば、試験管のプラスチック表面にコーティングされた抗原上に、ストレプトアビジンビーズに固定化されたビオチン化抗原上に、又は細胞の表面で発現した膜タンパク質上に、ファージライブラリーをパニングすることによって、普通には選択される。しかし、そのようなVHHは、数回の免疫を受けた動物に由来するVHHよりも、その抗原に対して低親和性を示す場合が多い。免疫ライブラリーからのVHHの高い親和性は、免疫動物のリンパ臓器におけるB細胞のクローン増殖過程でのバリアントVHHの自然選択に起因する。非免疫ライブラリーからのVHHの親和性は、そういった戦略をin vitroで模倣することによって、すなわち、CDR領域の部位特異的突然変異誘発と、高めたストリンジェンシー条件下での(より高温、高又は低塩濃度、高又は低pH、及び抗原濃度の低抗原濃度)、固定化抗原上のパンニングの更なるラウンドとによって、改善することができる場合が多い。ラクダ科動物由来のVHHは、従来の抗体の相当するドメインよりもはるかに高いレベルで、大腸菌のペリプラズムで容易に発現され、それから精製される。VHHは一般に高い溶解性及び安定性を呈し、酵母、植物、及び哺乳動物の各細胞で容易に産生することもできる。例えば、「Hamersの特許」では、所望の任意のターゲットに対するVHHを産生するための方法及び技法が記載されている(例えば、米国特許第5,800,988号;米国特許第5,874,541号及び米国特許第6,015,695号を参照されたい)。「Hamersの特許」は、細菌宿主、例えば大腸菌における(例えば、米国特許第6,765,087号を参照されたい)における、及びより下等真核生物宿主、例えばカビ(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)又はトリコデルマ(Trichoderma))における、又は酵母(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)、ハンゼヌラ(Hansenula)又はピキア(Pichia))における(例えば米国特許第6,838,254号を参照されたい)、VHHの産生が特に記載されている。
【0058】
別の態様では、本発明は、ターゲットへの結合にあたって本発明の抗体と競合する抗体を提供する。
【0059】
本明細書で使用される場合、所定の抗原又はエピトープへの抗体の結合の文脈における「結合」という用語は典型的には、例を挙げると、可溶形態の抗原をリガンドとして及び抗体を分析物として使用して、BIAcore 3000装置において表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定した場合、約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、又は更には約10-11M以下のKDに相当する親和性を備える結合である。BIACORE(登録商標)(GE Healthcare社、Piscaataway、NJ)は、モノクローナル抗体のエピトープのビンパネルにルーチンで使用される多様な表面プラズモン共鳴アッセイフォーマットの1つである。通常には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するためそのKDよりも10分の一以下である、例えば100分の一以下である、例を挙げると1,000分の一以下である、例えば10,000分の一以下である、例を挙げると100,000分の一である、KDに相当する親和性を備える所定の抗原に、抗体は結合するが、非特異的抗原とは所定の抗原と同一ではないか、又は密接には関連していないものである。抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が高い親和性を有する)場合、それなら、抗体が抗原を結合するKDは通常には、非特異的抗原についてのそのKDよりも10,000分の一以下である。そのような結合が検出できないか(例えば、可溶形態の抗原をリガンドとして、抗体を分析物として使用したBIAcore 3000装置においてプラズモン共鳴(SPR)技術を使用して)、又は、そのような検出が、当該抗体と異なる化学構造又はアミノ酸配列を有する抗原又はエピトープとにより検出される結合よりも100分の一、500分の一、1000分の一以下であるか、いずれかである場合、抗体は抗原又はエピトープを本質的に結合しないと云う。
【0060】
標準抗原結合アッセイにおいて本発明の他の抗体と交差競合する(例えば、統計的に有意な様式で本発明の他の抗体の結合を競合的に阻害する)それらの能力に基づいて、更なる抗体を特定することができる。ターゲットへの本発明の抗体の結合を阻害する試験抗体の能力が実証するところは、試験抗体がターゲットに結合するにあたり当該抗体と競合することができることである;そのような抗体は、非限定的な理論にしたがって、それが競合する、抗体と同じ又は関連する(例えば、構造的に類似の又は空間的に近位の)ターゲットのエピトープに結合することができる。このように、本発明の別の態様は、本明細書に開示の抗体と同じ抗原に結合し、それと競合する抗体を提供する。本明細書で使用される場合、競合抗体が本発明の抗体又は抗原結合断片のターゲット結合を、等モル濃度の競合抗体の存在下で、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%超で阻害する場合、抗体は結合に当たり「競合する」。
【0061】
他の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片は、ターゲットの1つ又は複数のエピトープに結合する。一部の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片が結合するエピトープは、線状エピトープである。他の実施形態では、本発明の抗体又は抗原結合断片が結合するエピトープは、非線状の立体構造エピトープである。
【0062】
一実施形態では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、CD44発現阻害剤である。
【0063】
遺伝子又は核酸の発現の文脈で使用される場合の「発現」という用語は、遺伝子に含有される情報の遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物とは、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA又は他の任意のタイプのRNA)であっても、mRNAの翻訳によって生成されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物にはまた、プロセスによって、例えば、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、及び編集によって改変されたメッセンジャーRNA、並びに、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、及びグリコシル化によって改変されたタンパク質も含まれる。
【0064】
「発現阻害剤」とは、遺伝子の発現を阻害する生物学的効果を有する天然又は合成化合物を指す。「発現の阻害剤」とは、ターゲット遺伝子の発現及び/又はターゲットタンパク質の発現を阻害する生物学的効果を有する任意の化合物を指す。本発明の一実施形態では、発現の前記阻害剤は、ショートヘアピンRNA(shRNA)、低分子阻害性RNA(siRNA)、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。好ましくは、発現の阻害剤はsiRNA又はshRNAである。
【0065】
本発明で使用するためのターゲット発現阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築物をベースにすることができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、これにはアンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子が含まれるが、以下のように作用すると思われる:ターゲットmRNAに結合することによってターゲットmRNAの翻訳を直接遮断し、したがってタンパク質翻訳を阻止するか又はmRNA分解を高め、そうして細胞内で、ターゲットタンパク質のレベルを低下させ、その結果、活性を低下させる。例えば、少なくとも約15塩基であり、ターゲットをコードするmRNA転写配列のユニークな領域に相補性なアンチセンスオリゴヌクレオチドを、例えば、従来のホスホジエステル技法によって合成することができるとともに、例えば、静脈内注射又は注入によって投与することができる。その配列が既知である遺伝子の遺伝子発現を特異的に軽減するためにアンチセンス技法を使用する方法は、当技術分野では知られている(例えば、米国特許第6,566,135号;米国特許第6,566,131号;米国特許第6,365,354号;米国特許第6,410,323号;米国特許第6,107,091号;米国特許第6,046,321号;及び米国特許第5,981,732号を参照されたい)。
【0066】
低分子阻害性RNA(siRNA)はまた、本発明で使用するためのターゲット発現の阻害剤として機能することができる。ターゲット遺伝子発現を、対象又は細胞を低分子2本鎖RNA(dsRNA)又は低分子2本鎖RNAの生成を引き起こすベクター若しくは構築物と接触させることによって減少させることができ、その結果、ターゲット発現が特異的に阻害される(すなわち、RNA干渉又はRNAi)。その配列が既知である遺伝子については、適当なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターの選択方法は当技術分野でよく知られている(例えば、Tuschl, T.ら(1999);Elbashir, S. M.ら(2001);Hannon, GJ. (2002);McManus, MTら(2002);Brummelkamp, TR.ら(2002);米国特許第6,573,099号及び米国特許第6,506,559号;並びに国際公開第01/36646号、国際公開第99/32619号、及び国際公開第01/68836号を参照されたい)。
【0067】
ショートヘアピンRNA(shRNA)又は低分子阻害性RNA(siRNA)は、本発明で使用するための遺伝子発現の阻害剤として機能することができる。遺伝子発現を、低分子二本鎖RNA(dsRNA)、又は低分子二本鎖RNAの生成を引き起こすベクター又は構築物を用いて減少させることができ、その結果、遺伝子発現が特異的に阻害される(すなわち、RNA干渉又はRNAi)。その配列が既知である遺伝子については、適当なdsRNA又はdsRNAをコードするベクターの選択方法は当技術分野でよく知られている。
【0068】
リボザイムも、本発明で使用するターゲット発現阻害剤として機能することができる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素RNA分子である。リボザイム作用のメカニズムには、リボザイム分子の相補性ターゲットRNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、これに続いてエンドヌクレアーゼ切断が伴う。ターゲットmRNA配列のエンドヌクレアーゼ切断を特異的且つ効率的に触媒する操作されたヘアピン又はハンマーヘッドモチーフリボザイム分子は、それによって本発明の範囲内で有用である。潜在的な任意のRNAターゲット内の特定のリボザイム切断部位は、通常には以下の配列、GUA、GUU、及びGUCを含むリボザイム切断部位についてターゲット分子をスキャンすることによって最初に特定される。特定したら、切断部位を含有するターゲット遺伝子の領域に対応する約15個と20個の間のリボヌクレオチドのショートRNA配列を、予測される構造的特性について、例えば、オリゴヌクレオチド配列を不適切にするおそれのある二次構造について評価することができる。候補ターゲットの適合性はまた、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、相補性オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションへの候補ターゲットの到達性を試験することによっても評価することができる。
【0069】
ターゲット阻害剤として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)とリボザイムの両方とも、既知の方法によって調製することができる。これには、化学合成の技法、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成のような技法が含まれる。或いは、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって生成することができる。そのようなDNA配列は、適切なRNAポリメラーゼプロモーターを、例えば、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターを組み込む多種多様なベクターに組み込むことができる。細胞内安定性を向上させ且つ半減期を延長する手段として、本発明のオリゴヌクレオチドへと種々の改変を導入することができる。可能性のある改変として、それらに限定されないが、分子の5'及び/又は3'末端へのリボヌクレオチド若しくはデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列の付加、又は、オリゴヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼリンケージよりはむしろホスホロチオエート若しくは2'-O-メチルの使用、が挙げられる。
【0070】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、及びリボザイムは、単独で、又はベクターと会合でin vivoで送達することができる。その最も広い意味では、「ベクター」とは、細胞に、好ましくはターゲットを発現する細胞に、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸の移入を容易にすることができる任意のビヒクルである。好ましくは、ベクターは、ベクターの非存在下でもたらされると思われる分解の程度と比べて分解が低減した状態で、細胞に核酸を輸送する。全体として、本発明において有用なベクターには、それらに限定されないが、アンチセンスオリゴヌクレオチドsiRNA又はリボザイム核酸配列の挿入又は組込みによって操作された、プラスミド、ファージミド、ウイルス、ウイルス源又は細菌源に由来するその他のビヒクルが含まれる。ウイルスベクターは、好ましいタイプのベクターであり、これには、それらに限定されないが、以下のウイルス由来の核酸配列が含まれる:レトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス及びラウス肉腫ウイルス;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタイン・バーウイルス;パピローマウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;並びにRNAウイルス、例えば、レトロウイルス。名を挙げられていないが当技術分野で知られている他のベクターを容易に用いることができる。
【0071】
好ましいウイルスベクターとは、非細胞変性真核細胞ウイルスをベースとするものであり、この場合、非必須遺伝子が目的の遺伝子に置き換えられている。非細胞変性ウイルスとしてレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)が挙げられ、そのライフサイクルはゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写、それに続く宿主細胞DNAへのプロウイルス統合を伴う。レトロウイルスは、ヒトの遺伝子療法試験で承認されている。最も有用なのは、複製欠損(すなわち、所望のタンパク質の合成を方向付けることができるが、感染性粒子を製造することができない)であるそういったレトロウイルスである。このような遺伝的に変更されたレトロウイルス発現ベクターは、in vivoでの遺伝子の高効率形質導入のための一般用途を有する。複製欠損レトロウイルスを生成するための標準プロトコル(これには、プラスミドへの外因性遺伝的材料の組込み、プラスミドによるパッケージング細胞株のトランスフェクション、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの産生、組織培養培地からのウイルス粒子の収集、及びウイルス粒子によるターゲット細胞の感染の工程が含まれる)は、KRIEGLER (A Laboratory Manual」、W.H. Freeman C.O.、New York、1990)に及びMURRY (「Methods in Molecular Biology」、第7巻、Humana Press, Inc., Cliffton、N.J.、1991)に提供されている。
【0072】
ある特定の用途に好ましいウイルスは、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスであり、これらは、遺伝子療法におけるヒトでの使用がすでに承認されている二本鎖DNAウイルスである。アデノ随伴ウイルスは、複製欠損であるように操作することができるとともに広範囲の細胞タイプ及び種に感染することができる。これは、利点、例えば、熱及び脂質溶媒安定性;造血細胞を含めて多様な系列の細胞における高い形質導入頻度;並びに複数系列の形質導入を可能とする重複感染阻害の欠落、を更に有する。報告によると、アデノ随伴ウイルスは、部位特異的様式でヒト細胞DNAに統合することができ、これにより、レトロウイルス感染に特徴的な挿入突然変異誘発の可能性及び挿入遺伝子発現の変動の可能性を最小化することができる。加えて、野生型アデノ随伴ウイルス感染を、選択圧なしで100回超の継代の間、組織培養において追跡したが、このことにより、アデノ随伴ウイルスゲノム統合は相対的に安定な事象であることが暗示される。アデノ随伴ウイルスは、染色体外様式で機能することもできる。
【0073】
他のベクターとして、プラスミドベクターが挙げられる。プラスミドベクターは、当技術分野で広範に記載されており、当業者によく知られている。例えば、SANBROOKら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989を参照されたい。ここ数年において、プラスミドベクターは、抗原をコードする遺伝子をin vivoで細胞に送達するためのDNAワクチンとして使用されてきた。プラスミドベクターは、多くのウイルスベクターと安全上の同じ懸念を有していないので、このことで、特に有利である。しかし、こういったプラスミドは、宿主細胞と適合するプロモーターを有しており、プラスミド内で作動可能にコードされた遺伝子からペプチドを発現することができる。よく使用される一部のプラスミドとして、pBR322、pUC18、pUC19、pRC/CMV、SV40、並びにpBlueScripが挙げられる。他のプラスミドは当業者によく知られている。加えて、プラスミドは、制限酵素及びライゲーション反応を使用してカスタム設計を行って、DNAの特定の断片を除去及び付加することができる。プラスミドは、さまざまな非経口経路、粘膜経路、及び局所経路によって送達することができる。例えば、DNAプラスミドは、筋肉内、皮内、皮下、又はその他の経路によって注射することができる。DNAプラスミドはまた、鼻腔内スプレー剤又はドロップ剤、肛門坐剤及び経口で投与することもすることができる。遺伝子銃を使用して表皮又は粘膜表面へと投与することもできる。プラスミドは、水性溶液で、金粒子上へと乾燥させて、又それらに限定されないがリポソーム、デンドリマー、コクリエート及びマイクロカプセル化を始めとする別のDNA送達システムに付随して、与えることができる。
【0074】
一部の実施形態では、CD44発現阻害剤は、中国特許第104561000号に記載のようなCD44遺伝子を阻害する核酸である。
【0075】
本開示の別の態様では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストとは、鉄キレート剤である。
【0076】
本明細書で使用される場合、「鉄キレート剤」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、鉄をキレートし、次いで鉄の細胞レベルを枯渇させる任意の化合物を指す。「鉄キレート剤」という用語はまた、患者の血液、組織及び臓器から過剰な鉄、有毒な鉄を排除する化合物も指す。
【0077】
鉄キレート剤は、例えば以下に記載のように、当技術分野でよく知られている:
国際公開第0149266号;国際公開第2009103727号;国際公開第2011109521号;国際公開第2014059417号;国際公開第2017153475号;国際公開第2019233982号及びLimaら、Treatment of iron overload syndrome: a general review. Rev Assoc Med Bras (1992). 2019年10月10日;65(9):1216~1222頁. doi:10.1590/1806-9282.65.9.1216; Mobarraら、A Review on Iron Chelators in Treatment of Iron Overload Syndromes. Int J Hematol Oncol Stem Cell Res. 2016年10月1日;10(4):239~247頁; Khanら、Synthesis, nature and utility of universal iron chelator Siderophore: A review. Microbiol Res. 2018年7月-8月;212-213: 103~111頁. doi: 10.1016/j.micres.2017.10.012; Khanら、Synthesis, nature and utility of universal iron chelator Siderophore: A review. Microbiol Res. 2018年7月-8月;212-213: 103~111頁. doi: 10.1016/j.micres.2017.10.012; Kontoghiorghes GJ. Comparative efficacy and toxicity of desferrioxamine, deferiprone and other iron and aluminium chelating drugs. Toxicol Lett. 1995年10月;80(1-3):1~18頁。
【0078】
化合物が鉄キレート剤であるかどうか判定するための試験及びアッセイは、以下に記載のように、当業者によく知られている:国際公開第0149266号;国際公開第2009103727号;国際公開第2011109521号;国際公開第2014059417号;国際公開第2017153475号;国際公開第2019233982号。
【0079】
一部の態様では、鉄キレート剤は、それらに限定されないが、以下からなる群から選択される:デフェロキサミン(DFO)(デスフェラル、デスフェリオキサミン、DFB、CAS番号:70-51-9としても知られる);デフェロキサミンメシレート(CAS番号:138-14-7);デフェロキサミン塩酸塩(CAS番号:1950-39-6);デフェラシロクス(DFX);デフェリプロン(DFP);デフェリトリン;デフェリポン;メトホルミン;メトホルミニン;デフェリタゾール;3-ヒドロキシ-4-ピリジノン;3-ヒドロキシ-4-ピリジノン誘導体;ヘプシジン及びヘプシジン断片(ミニヘプシジン);ポリアミン-ジヒドロキシ安息香酸及びポリアミン-ジヒドロキシ安息香酸コンジュゲート;ピリドキサールイソニコチノイルヒドラゾン(PIH);ロドトルリン酸;N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸(HBED)、N,N'-ビス(2-ヒドロキシベンジル)プロピレン-1,3-ジアミン-N,N-二酢酸(HBPD))、2,3-ジヒドロキシ安息香酸;ジエチルトリアミン五酢酸(DTPA);並びに以下に記載の化合物:米国特許第5,374,771号;国際公開第0149266号;国際公開第2009103727号;国際公開第2011109521号;国際公開第2014059417号;国際公開第2017153475号;国際公開第2019233982号;及びLimaら、Treatment of iron overload syndrome: a general review. Rev Assoc Med Bras (1992). 2019年10月10日10;65(9):1216~1222頁. doi:10.1590/1806-9282.65.9.1216; Kontoghiorghes GJ. Comparative efficacy and toxicity of desferrioxamine, deferiprone and other iron and aluminium chelating drugs. Toxicol Lett. 1995年10月;80(1-3):1~18頁。
【0080】
一部の態様では、鉄キレート剤は、それらに限定されないが、メトホルミン、メトホルミン誘導体、例えばメトホルミニン、及び国際公開第2019233982号に記載のビグアニジルラジカルを含む化合物、からなる群から選択される、ビグアニドの誘導体である。
【0081】
一部の態様では、鉄キレート剤は、それらに限定されないが、以下からなる群から選択される:細菌シデロフォア及びシデロフォア(カテコレート、ヒドロキサメート、カルボキシレート又は混合型)、例えばデスフェリオキサミンによって生成される鉄キレート剤;カテコレートシデロフォア:エンテロバクチン;ビブリオフェリン;混合シデロフォア:エルシニアバクチン;及びフィトシデロフォア:ムギネ酸;並びに(Khanら、Synthesis, nature and utility of universal iron chelator - Siderophore: A review. Microbiol Res. 2018年7月-8月;212-213: 103~111頁. doi: 10.1016/j.micres.2017.10.012)に記載の鉄キレート剤。
【0082】
一部の態様では、鉄キレート剤は、リソソーム鉄隔離低分子イロノマイシンである。
【0083】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象においてサイトカイン放出症候群(CRS)を処置する方法であって、治療有効量のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0084】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において重度のCOVID-19関連CRSを処置する方法であって、治療有効量のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0085】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象において呼吸窮迫症候群(ARDS)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、鉄関連炎症性疾患及び/又は肺胞炎症反応を処置する方法であって、治療有効量のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0086】
更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象においてCOVID-19、特に重度のCOVID-19を処置する方法であって、治療有効量のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【0087】
一部の実施形態では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、抗サイトカイン放出症候群(CRS)の処置と組合せで投与される。
【0088】
一部の実施形態では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、抗重度のCOVID-19関連CRS処置と組合せで投与される。
【0089】
一部の実施形態では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、呼吸窮迫症候群(ARDS)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、鉄関連炎症性疾患及び/又は肺胞炎症反応の処置において使用される更なる任意の化合物と組合せで投与される。
【0090】
一部の実施形態では、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、抗COVID-19の処置、特に抗重度のCOVID-19の処置と組合せで投与される。
【0091】
特に、本発明のCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストは、抗炎症剤と組合せで投与することができる。
【0092】
「抗サイトカイン放出症候群(CRS)の処置」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、CRS対象者によって施されるCRSの処置及び任意のタイプのCRS療法で使用される任意の化合物を指し、これには、CRSの処置において使用される任意の化合物が含まれる(Shimabukuro-Vornhagenら、Cytokine release syndrome. J Immunother Cancer. 2018年6月15日;6(1):56頁. doi:10.1186/s40425-018-0343-9;Moore JB、June CH. Cytokine release syndrome in severe COVID-19. Science. 2020年5月1日;368(6490):473~474頁. doi: 10.1126/science. abb8925)。
【0093】
CRSの処置において使用される化合物及び療法には、それらに限定されないが、以下が含まれる:抗ヒスタミン薬;解熱剤;水分補給療法で使用される経口又は静脈内輸液;抗生物質療法;BiTEブリナツモマブ;IL6アンタゴニスト、例えばシルツキシマブのようなIL6をターゲットとする作用剤又はトシリズマブ及びサリルマブのようなIL6Rをターゲットとする作用剤;抗TNFα剤、例えばエタネルセプト;抗GM-CSF剤、例えばレンジルマブ;イブルチニブ;並びにT細胞枯渇抗体療法、例えば、アレムツズマブ及び抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、IL-1Rベースの阻害剤(アナキンラ)及びシクロホスファミド;並びに抗炎症剤。
【0094】
「抗COVID-19の処置」という用語は、当技術分野において一般的な意味を有し、COVID-19対象者によって施される任意のタイプのCOVID-19の治療を指し、これには、COVID-19の処置において使用される任意の化合物、例えば、抗ウイルス剤、重度のCOVID-19関連CRSの処置において使用される化合物、及び抗炎症剤が含まれる(Zhouら、M, Zhang X、Qu J. Coronavirus disease 2019 (COVID-19): a clinical update. Front Med. 2020年4月;14(2): 126~135頁. doi: 10.1007/s11684-020-0767-8)。
【0095】
COVID-19の処置において使用される化合物及び療法には、それらに限定されないが、以下が含まれる:抗ウイルス剤、例えば、レムデシビル(GS-5734)、GS-441524、ロピナビル、リトナビル、ロピナビル/リトナビル(LPV/r)の組合せ、ロピナビル/リトナビルとインターフェロンベータ1-アルファの組合せ(LPV/r/INF-β-1aの組合せ)、リバビリン、リバビリンとインターフェロン-αの組合せ(リバビリンとINF-α2bの組合せ)、及びアビドール(ウミフェノビル又はアルビドール);IL6アンタゴニスト、例えばシルツキシマブのようなIL6をターゲットとする作用剤又はトシリズマブ、サリルマブのようなIL6Rをターゲットとする作用剤;IL-1βアナキンラのアンタゴニストのようなIL-1アンタゴニスト;TNFブロッカー;IFN-αβ阻害剤;クロロキン;ヒドロキシクロロキン(HCQ);コルチコステロイド;抗生物質及び抗真菌剤のような抗菌剤;静脈内免疫グロブリン(IVIG);回復期血漿療法;抗凝固剤;酸素療法、例えば、高流量鼻カニューレ酸素療法(HFNC)、非侵襲的人工呼吸器(NIV)、侵襲的人工呼吸器及び体外式膜型人工肺(ECMO);継続的な腎代替療法(CRRT);並びにCRSの処置において使用される化合物。
【0096】
抗炎症剤には、それらに限定されないが、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えば、インドメタシン、イブプロフェン、酢酸サリチル酸、スリンダク、ピロキシカム、及びナプロキセン;並びにコルチコステロイドが含まれる。
【0097】
医薬組成物
本発明の化合物は、医薬組成物で使用又は調製することができる。
【0098】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象においてサイトカイン放出症候群(CRS)の処置における使用のための本発明の化合物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0099】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において重度のCOVID-19関連CRSの処置における使用のための本発明の化合物及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0100】
典型的には、本発明の化合物は、医薬的に許容される賦形剤、及び必要に応じて徐放性マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組合せで、治療組成物を形成することができる。
【0101】
典型的には、上記の本発明による化合物は、治療有効量で患者に投与される。
【0102】
上記の本発明の化合物の「治療有効量」により、任意の医学的処置に適用可能な合理的な受益度/危険度の比にての化合物の十分な量が示される。しかし、本発明の化合物及び組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医が決定することになることを理解されたい。特定の任意の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、以下を始めとするさまざまな要因次第である:処置される障害及び当該障害の重度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;投与時期、投与経路、用いられる特定の化合物の排泄速度;処置期間;用いられる特定の化合物と組合せで又は同時に使用される薬物;並びに医療技術の分野でよく知られている類似の因子。例えば、所望の治療効果を達成するのに要するレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始すること、及び所望の効果が達成されるまで投薬量を漸増させることは、十分に当業者の範囲内である。しかし、製品の1日投薬量は、成人当たり1日当たり0.01から1,000mgまでの広範囲にわたって変えることができる。典型的には、組成物は、処置される患者への投薬量の対症調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの本発明の化合物を含有する。医薬は典型的には、約0.01mgから約500mgまでの本発明の化合物、好ましくは1mgから約100mgまでの本発明の化合物を含有する。薬物の有効量は体重1kg当たり1日当たり0.0002mgから約20mgまでの、とりわけ体重1kg当たり1日当たり約0.001mgから7mgまでの投薬量レベルでたいていは供給される。
【0103】
ある特定の実施形態では、本発明による化合物は、0.01μMと20μMの間の濃度で使用することができ、特に、本発明の化合物は、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0μMの濃度で使用することができる。
【0104】
本発明によれば、本発明の化合物は、医薬組成物の形で対象に投与される。典型的には、本発明の化合物は、医薬的に許容される賦形剤、及び必要に応じて持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組み合わせて、治療用組成物を形成することができる。「医薬的に」又は「医薬的に許容される」とは、適宜、哺乳動物に、とりわけヒトに投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、又はその他の都合の悪い反応を生じない分子実体及び組成物を指す。医薬的に許容される担体又は賦形剤とは、非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料又は任意のタイプの製剤化補助剤を指す。
【0105】
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与用の本発明の医薬組成物では、活性成分は単独で又は別の活性成分と組合せで、単位投与剤形で、慣用的な医薬的支持体との混合物として、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口経路形態、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口用懸濁剤又は液剤、舌下及び頬側投与形態、エアロゾル、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、髄腔内及び鼻腔内の各投与形態及び直腸投与形態、を含む。
【0106】
典型的には、医薬組成物は、注射することが可能な製剤にとって医薬的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて、滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると注射液の構成を可能とする乾燥した、とりわけ凍結乾燥させた組成物とすることができる。注射用途に適した医薬形態としては、無菌水性溶液又は分散体;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液又は分散体の即時調製向けの無菌粉末が挙げられる。いずれの場合も、形態は無菌でなければならず、容易なシリンガビリティー(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。形態は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、微生物の、例えば細菌及び真菌の汚染作用に対して保存されていなければならない。本発明の化合物を遊離塩基又は薬理学的に許容される塩として含む溶液は、界面活性剤と、例えばヒドロキシプロピルセルロースと、適切に混合された水中において調製することができる。分散体はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で並びに油中で調製することができる。通常の保存及び使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有する。本発明の化合物は、中性形態又は塩形態で組成物へと製剤化することができる。医薬的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これは、例えば塩酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄のような無機塩基、及び、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等のような有機塩基、から誘導することもできる。担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒であっても分散媒であってもよい。適当な流動性は、例えば、コーティング剤、例えばレシチンの使用によって、分散体の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防御は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収延長は、組成物中に吸収を遅延させる作用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによってもたらすことができる。無菌注射液は、必要量の活性化合物を適当な溶媒中に、必要であれば上に列挙されたいくつかの他の成分と共に組み込ませることによって、これに続いて、滅菌ろ過することによって、調製される。一般的に、分散体は、本発明の種々の滅菌された作用剤を、基本分散媒と上に列挙されたものからの必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクルへと組み込ませることによって調製される。無菌注射液の調製用の無菌粉末の場合、典型的な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技法であり、これにより、それの前もって滅菌ろ過された溶液から、本発明の化合物に更なる任意の所望の成分をプラスした粉末が得られる。直接注射用のより濃縮された又は高度に濃縮された溶液の調製も企図されており、この場合、溶媒としてのDMSOの使用によって極端に急速な浸透がもたらされ、その結果、高濃度の活性薬剤が小さな腫瘍領域に送達されると、想定されている。製剤化の際に、液剤は、投薬製剤と適合性の様式で、且つ治療上有効である量で投与されることになる。製剤は、さまざまな剤形で、例えば上記の注射可能な溶液のタイプで、容易に投与されるが、薬物放出カプセル等も用いることができる。水性溶液での非経口投与の場合、例えば、液剤は、必要であれば適切に緩衝化すべきであり、液体希釈剤はまず、十分な食塩水又はブドウ糖を用いて適切に等張とすべきである。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の各投与にとりわけ適している。これに関連して、用いることができる無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者であれば知っているであろう。投薬量の幾分かの変動が、処置される対象の状態に応じて必然的に行なわれるであろう。投与責任者は、いずれにおいても、個々の対象向けに適当な用量を決定するであろう。
【0107】
本発明の医薬組成物は、サイトカイン放出症候群(CRS)の処置において使用される更なる任意の化合物を含むことができる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、重度のCOVID-19関連CRSの処置において使用される更なる任意の化合物を含むことができる。
【0109】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、呼吸窮迫症候群(ARDS)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、鉄関連炎症性疾患及び/又は肺胞炎症反応の処置において使用される更なる任意の化合物を含むことができる。
【0110】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、COVID-19、特に重度のCOVID-19の処置において使用される更なる任意の化合物を含むことができる。
【0111】
一実施形態では、前記更なる活性化合物は、同じ組成物に含有されてもよく、別々に投与されてもよい。
【0112】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、それを必要とする対象においてサイトカイン放出症候群(CRS)の処置で同時に、別々に又は順次に使用するための組合せ調製物に関する。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は、それを必要とする対象において重度のCOVID-19関連CRSの処置で同時に、別々に又は順次に使用するための組合せ調製物に関する。
【0114】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、呼吸窮迫症候群(ARDS)、マクロファージ活性化症候群(MAS)、鉄関連炎症性疾患及び/又は肺胞炎症反応の処置で同時に、別々に又は順次に使用するための組合せ調製物に関する。
【0115】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、COVID-19、特に重度のCOVID-19の処置で同時に、別々に又は順次に使用するための組合せ調製物に関する。
【0116】
本発明は、本発明の化合物を含むキットも提供する。本発明の化合物を含有するキットは、治療方法での用途が見いだされるものである。
【0117】
診断法
更なる態様では、本発明は、重度のCOVID-19への素因のバイオマーカーとしてCD44を使用して、次いで重度のCOVID-19の発生を予測することに関する。
【0118】
したがって、本発明は、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象を特定する方法であって、前記対象から得た生体試料においてCD44の発現レベルを測定する工程を含む方法に関する。
【0119】
本明細書で使用される場合、「生体試料」という用語は、対象に由来する任意の生体試料を、例えば、血液試料、末梢血試料、気管支肺胞試料、気管支試料、肺胞試料、鼻咽頭試料、喀痰試料、粘液試料、気管試料又は鼻腔試料を、指す。
【0120】
本発明の方法は、生体試料中のCD44の発現レベルを参照値と比較することからなる工程を更に含むことができ、ここで、生体試料と参照値との間のCD44の発現レベルの差異を検出することは、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象を指示する。
【0121】
本明細書で使用される場合、「参照値」とは、閾値又はカットオフ値を指す。通常には、「閾値」又は「カットオフ値」は実験的に、経験的に又は理論的に決定することができる。閾値は既存の実験及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択することもでき、当業者であれば理解するはずである。閾値は、試験の機能及び受益度/危険度のバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床的帰結)に従って最適な感度及び特異性を得るように決定することが求められる。通常には、最適な感度と特異性(ひいては閾値)は、実験データに基づく受信者動作特性(ROC)曲線を使用して決定することができる。好ましくは、当業者であれば、(本発明の方法に従って得られた)発現レベルを規定の閾値と比較することができる。本発明の一実施形態では、閾値は、重度のCOVID-19を有する1人又は複数の対象に由来する生体試料において決定された発現レベル(又は比、又はスコア)から導き出される。更に、適切に預けられた履歴的な対象の試料における発現レベル(又は比、又はスコア)の遡及的測定値を、これら閾値を確立する上で使用することができる。
【0122】
一実施形態では、参照値は、重度のCOVID-19を有していない、又はそれを有する若しくは発症するリスクがない対象に関連する生体試料において決定されたCD44の発現レベルに相当するとし得る。したがって、参照値よりも高いCD44の発現レベルは、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象を指示しており、参照値よりも低い又はそれに等しいCD44の発現レベルは、重度のCOVID-19を有していない、又はそれを有する若しくは発症するリスクがない対象を指示する。
【0123】
別の実施形態では、参照値は、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象に関連する生体試料において決定されたCD44の発現レベルに相当するとし得る。したがって、参照値よりも高い又は等しいCD44の発現レベルは、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象を指示しており、参照値よりも低いCD44の発現レベルは、重度のCOVID-19を有していない、又はそれを有する若しくは発症するリスクがない対象を指示する。
【0124】
CD44の発現レベルを解析することは、転写された核酸又は翻訳されたタンパク質の発現を検出するための多種多様なよく知られている方法のいずれかによって、評価することができる。
【0125】
一実施形態では、CD44の発現レベルは、CD44遺伝子のmRNA転写物又はmRNA前駆体の、例えば新生RNAの発現を解析することによって評価される。前記解析は、対象からの生体試料の細胞からmRNA/cDNAを調製し、mRNA/cDNAを参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることによって、評価することができる。調製したmRNA/cDNAはハイブリダイゼーション又は増幅アッセイで使用することができるが、これには、それらに限定されないが、サザン又はノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、例えば定量的PCR(TaqMan社)、及びプローブアレイ、例えばGeneChip(TM)DNA Arrays (AFFYMETRIX社)が含まれる。
【0126】
有利には、CD44をコードする遺伝子から転写されたmRNAの発現レベルの解析には、核酸増幅のプロセスであって、例えば、RT-PCR(米国特許第4,683,202号に記載の実験の実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany、1991)、自家持続配列複製(Guatelliら、1990)、転写増幅システム(Kwohら、1989)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardiら、1988)、ローリングサークル複製(米国特許第5,854,033号)又は他の任意の核酸増幅法による核酸増幅のプロセスが関与するが、これに続いて、当業者によく知られている技法を使用して増幅分子を検出する。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数で存在する場合、核酸分子の検出にとりわけ有用である。本明細書で使用される場合、増幅プライマーとは、遺伝子の5'又は3'領域(それぞれプラス鎖及びマイナス鎖、又は逆も同様である)にアニーリングすることができるとともに、合間に短い領域を含有することができる、一対の核酸分子であると定義される。一般には、増幅プライマーは、約10個から30個までのヌクレオチドの長さであり、約50個から200個までのヌクレオチドの長さの領域に隣接する。適当な条件下で且つ適当な試薬を用いた場合には、そのようなプライマーによって、プライマーが隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅が可能となる。
【0127】
別の実施形態では、CD44の発現レベルは、前記遺伝子から翻訳されたタンパク質の発現を解析することによって評価される。前記解析は、抗体(例えば、放射性標識、発色団標識、フルオロフォア標識、又は酵素標識の各抗体)、抗体誘導体(例えば、基質との又はタンパク質/リガンドペアの部分のタンパク質若しくはリガンド(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)との抗体コンジュゲート)、又は抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離された抗体超可変ドメイン等)、を使用して評価することができるが、それらは、CD44をコードする遺伝子から翻訳されたタンパク質に特異的に結合する。
【0128】
前記解析は、当業者によく知られているさまざまな技法、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット解析及び酵素結合免疫吸着アッセイ(RIA)が挙げられるがそれらに限定されない、によって評価することができる。
【0129】
更なる態様では、本発明の方法は、マクロファージ活性化を特定することによって実施される。
【0130】
一実施形態では、マクロファージ活性化は、サイトカインプロファイルを測定することによって評価される。マクロファージ活性化を解析することは、本発明の方法に従って評価することができる。
【0131】
本発明の更なる態様は、本発明の方法を実施することによるCOVID-19の進行を監視する方法に関する。
【0132】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において重度のCOVID-19を処置する方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
(i)本発明による方法を実施することによって、重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがある対象を特定する工程と、
(ii)対象が重度のCOVID-19を有する、又はそれを有する若しくは発症するリスクがあると結論される場合、前記対象にCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを投与する工程。
【0133】
更なる態様では、本発明は、本発明の化合物の効率のバイオマーカーとしてCD44を使用して、次いで、本発明の化合物に対する対象の応答を予測することに関する。
【0134】
したがって、本発明は、サイトカイン放出症候群(CRS)を患っている対象がCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストによる応答を達成するかどうか判定するための方法であって、CD44の発現レベルを決定する工程を含み、ここで、前記発現レベルは処置に対する対象の応答と関連がある、方法に関する。
【0135】
別の態様では、本発明は、COVID-19、特に重度のCOVID-19を患っている対象がCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストによる応答を達成するかどうか判定するための方法であって、CD44の発現レベルを決定する工程を含み、ここで、前記発現レベルは処置に対する対象の応答と関連がある、方法に関する。
【0136】
一部の実施形態では、方法は、i)CD44の発現レベルを決定する工程と、ii)工程i)で決定された発現レベルを所定の参照値と比較する工程と、iii)工程i)で決定されたレベルが所定の参照値よりも高い場合に対象は応答を達成すると結論する工程とを含む。
【0137】
したがって、方法は、レスポンダーをノンレスポンダーから識別するのに特に適する。本明細書で使用される場合、本開示の文脈において「レスポンダー」という用語は、応答を達成する対象、すなわち疾患が根絶、軽減、又は改善されている対象を指す。本発明よれば、レスポンダーは、客観的な応答を有し、したがって当該用語は、安定化した疾患を有する対象を包含しないので、当該疾患は治療後に進行していない。ノンレスポンダー又は不応対象には、治療後に疾患が軽減又は改善を示さない対象が含まれる。本発明によれば、「ノンレスポンダー」という用語にはまた、安定化した疾患を有する対象も含まれる。通常、レスポンダー又はノンレスポンダーとして対象を特徴付けることは、基準又はトレーニングセットを参照することにより実施することができる。基準は、レスポンダー若しくはノンレスポンダーであることが知られている対象のプロファイルであってもよく、あるいは数値であってもよい。このような所定の基準は、適切な任意の形態で、例えば、印刷されたリスト若しくはダイヤグラム、コンピュータソフトウェアプログラム、又はその他の媒体で、提供することができる。患者がノンレスポンダーであると結論される場合、医師は、治療を停止及び変更して更なるあらゆる有害な副作用を回避する決定を行う可能性がある。
【0138】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において重度のCOVID-19を処置する方法であって、以下の工程:
(i)本発明による方法を実施することによって、対象がCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストによる応答を達成するかどうか判定する工程と、
(ii)対象がレスポンダーであると結論付けられる場合に、前記対象にCD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストを投与する工程と、
を含む、方法に関する。
【0139】
本発明を、以下の図及び例によって更に例示する。しかし、それらの例及び図は、本発明の範囲をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
図
【図面の簡単な説明】
【0140】
【
図1】活性化マクロファージにおけるCD44及びRhoNOX-Mの増加の図である。GM-CSF処理単球(M1)をLPS(100ng/mL)で24時間活性化し、CSF1処理単球をIL4(20ng/mL)で24時間活性化した。CD44、TfR及びRhoNOX-Mをフローサイトメトリーによって測定した。
【
図2】マクロファージ活性化過程でのCD44依存性鉄エンドサイトーシスの図である。
【
図3】CD44アンタゴニストが、活性化単球由来マクロファージにおいて細胞内鉄のレベルの低下を誘発することを示す図である。(A)siCtrl.又はsiCD44で処理した活性化(act.)単球由来マクロファージ(MDM)における細胞内の鉄及び銅のICP-MS。n=7人のドナー。(B)CD44又は対照siRNAに対してsiRNAをトランスフェクトしたact.MDMにおけるCD44の代表的なウエスタンブロット。n=4人のドナー。Mann-Whitney検定。平均値±SEM。(C)抗CD44抗体RG7356で処理したact.MDMにおける細胞内の鉄及び銅のICP-MS。n=7人のドナー。異なるドナーを、各パネルに別々にドットで表示する。
【実施例】
【0141】
(実施例1)
材料及び方法
化学試薬及び抗体。GM-CSF及びIFN-gammaはMiltenyi社(Miltenyi Biotec社、Somerville、MA、米国)から、デフェロキサミン(DFO)はSigma-Aldrich社(SIGMA-ALDRICH社、Saint-Quentin Fallavier、フランス)から、RhoNox-M(自社)、Hyaluronate Fluorescein (FITC-Hyal)は(#YH4532、Carbosynth社、San Diego、CA、米国)から、ヒト血清由来トランスフェリン、Alexa Fluor 647コンジュゲート(TF-647) (#T23366)は(ThermoFisher Scientific社、Waltham、MA、米国)から、入手した。CD44に対する抗体(#ab189524、WB: 1:30000、Abcam社、Cambridge、MA、米国)、Ferritin(#ab75973、WB: 1:1000、Abcam社)、H3K9me2 (#4658S、WB: 1:1000、Cell Signaling社、Danvers、MA、米国)、トランスフェリン受容体1(TfR1) (#13-6800、WB: 1:1000、Thermo Fisher Scientific社)を使用した。
【0142】
細胞培養。末梢血試料は健常なドナーから採取した。汎単球を、製造元の取扱説明書(Miltenyi Biotec社、Somerville、MA、米国)に従ってマイクロビーズを使用して選別し、10%ウシ胎児血清で補充したグルタミン(Thermo Fisher Scientific社)を含むRPMI 1640で培養し、GM-CSF 100ng/mLに曝露して、それらの分化を生じさせた。5日の分化後、マクロファージをIFN-g(50ng/mL)で活性化し、24時間DF0(10μm)で処理した。
【0143】
気管支肺胞洗浄(BAL)。COVID患者からのBALを遠心分離し、次いで、5%CO2含有の加湿雰囲気中、37℃で血清又は抗生物質無しの無血清RPMI 1640培地のプラスチック皿に付着させることにより、肺胞マクロファージを精製した。概ね15~30分のインキュベーションの後、非接着細胞を除去し、接着細胞の層を氷冷滅菌PBS 10mLで2回洗浄した。接着細胞を、DFO又はRG7356によって一晩処理した。
【0144】
細胞の形態。位相コントラスト画像を、CKX41顕微鏡(Olympus社)及びcellSens Entryイメージングソフトウェア(Olympus社)でキャプチャし、その後に、各細胞の長軸と短軸(長軸、細胞の最長の長さ;短軸、長軸に垂直な方向で核を横切る長さ)をマニュアルでトレースして、これらの軸の比として伸長因子を測定した。
【0145】
細胞表現型のフローサイトメトリー解析。細胞を氷冷PBSで洗浄し、Fcブロック(Human TruStain FcX、Biolegend社、London、英国、1/20)と共に15分間インキュベートし、抗体と共に4℃で20分間インキュベートし、洗浄し、その後に、BD LSRFortessa X-20を使用して解析した。抗体は、AlexaFluor700-CD80(#561133、BD社、Franklin Lakes、NJ、米国)、PE/Cy7-CD86(#561128、BD社)、APC/Alexa750-CD71(#A89313、Beckman coulter社、Brea、CA、米国)、Krome orange-CD14(#B01175、Beckman coulter社)、Pacific Blue-CD16(#A82792、Beckman coulter社)、PE-CD163(#556018、BD社)及びAlexaFluor647-CD44(#NB500-481AF647、Novus Biologicals社)であった。データをFlowJo software v. 10.0.00003で解析した。
【0146】
免疫蛍光顕微鏡。サイトスピン遠心分離を使用して細胞をスライド上にスポットし、PBSで洗浄し、PBS中の4%ホルムアルデヒドで20分間固定し、PBSで洗浄し、後固定し、冷70%エタノールで20分間透過処理し、PBSで洗浄し、PBS中8%ウシ血清アルブミン(BSA)で1時間ブロックし、PBS中1%BSAの一次抗体と共に2時間インキュベートし、洗浄し、Alexa Fluor 488又は555とコンジュゲートした二次抗体と1時間インキュベートし、洗浄し、DAPIを含むVectashield封入剤(Vector Laboratories社、Burlingame、CA、米国)を使用してマウンティングした。
【0147】
その他の蛍光イメージング実験。生細胞を、RhoNox-M、FITC-Hyal、TF-647含有培地中、5%CO2で37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、サイトスピン遠心分離を使用してスライド上にスポットし、DAPIを含むVectashield封入剤(Vector Laboratories社)を使用してマウンティングした。
【0148】
Deltavisionリアルタイム顕微鏡(Applied Precision社)を使用して蛍光画像を取得した。40×/1.4NA、60×/1.4NA、及び100×/1.4NAの対物レンズを2D及び3D取得に使用した。データをSoftWorx(レイショーコンザーバティブ - 15イテレーション、Applied Precision社)でデコンボリューションし、ImageJで処理した。すべての画像を、zスタックとして取得した。
【0149】
誘導結合プラズマ質量分析。テフロンセプタムを備えたガラスバイアルを硝酸65%(VWR社)でクリーニングし、超純水(Sigma-Aldrich社)で洗浄し、乾燥させた。実験の24時間前に細胞をプレーティングした。すべての実験で、細胞を処理前にFBSフリーの培地で2時間インキュベートした。細胞を回収し、これに続いてPBSで2回洗浄した。次いで、細胞を自動細胞カウンター(Entek社)を使用してカウントし、PBS 100μL中にクリーンバイアルへと移し、凍結乾燥機(CHRIST社)を使用して試料を凍結乾燥した。次いで、試料を65%硝酸と一晩混合し、これに続いて、80℃で2時間加熱した。試料を超純水(Sigma-Aldrich社)で最終濃度0.475N硝酸に希釈し、続いて行うICP-MS分析向けにメタルフリー遠心バイアル(VWR社)に移した。Agilent 7900 ICP-QMSを低分解能モードで使用して、56Fe濃度を測定した。試料導入を、Scottスプレーチャンバーをとおしてマイクロネブライザー(MicroMist社、0.2mL/min)で行った。同位体を、ヘリウムガス(5mL/min)による衝突反応インターフェースを使用して測定して、多原子干渉を排除した。スカンジウム及びインジウムの内部標準を、試料とのインライン混合後に注入して、シグナルドリフト及びマトリックス効果の欠如を制御した。認証標準物の混合物を、試料の濃度にまたがる濃度で測定して、カウント測定値を溶液中の濃度に変換した。試料濃度の不確実性を、ICP-MSブランクの代数的伝達体及び試料カウントの不確実性を使用して算出した。値は、乾燥重量及び細胞数によって正規化した。
【0150】
イムノブロット解析。細胞をPBSで2回洗浄し、ベンゾナーゼ(#VWR社、Fontenay-Sous-Bois、フランス)含有の2×Laemmli緩衝剤に溶解させ、抽出物を37℃で1時間インキュベートし、NanoDrop 2000分光光度計(ThermoFisher Scientific社)を使用して定量化した。タンパク質ライセートをNu-PAGE 4-12% Bis-Trisゲル(Invitrogen社、Carlsbad、CA、米国)で分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad社、Hercules、CA、米国)へとエレクトロブロットした。ミルクで飽和した膜を一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートし、次いでペルオキシダーゼコンジュゲート抗IgG二次抗体(Jackson Laboratories社、Bar Harbor、ME、米国)とともに45分間インキュベートした。シグナルを、SuperSignal West Pico PLUS又はWest Femto増強化学発光検出キット(Thermo Fisher Scientific社)を使用してオートラジオグラフィーによって見えるようにした。
【0151】
ヒトマクロファージ上清中のサイトカインプロファイル。IL1ベータ、IL4、IL6、IL8、IL10、IL12、IFNガンマ及びTNF-アルファ濃度を、ヒトPro-Inflammatory Combo 1 U-Plex(MSD社、Rockville、MD、米国)を使用して細胞培養上清中で測定した。キットを製造元のガイドラインに従ってランさせ、化学発光シグナルをSector Imager 2400(MSD社)で測定した。
【0152】
RNA配列決定。RNeasy mini kit(QIAGEN社、Germantown、MD、米国)を使用して抽出したRNAを、SureSelect Automated Strand Specific RNA Library Preparation Kitを使用して処理し、試料当たり少なくとも4000万回の読み取りに到達するように、ペアエンド100bpモードでIllumina Novaseq 6000で配列決定した。遺伝子発現の検証は、下に列挙するqRT-PCRによって行う。
【0153】
結果
本発明者らの未公開データが指示するところは、M1マクロファージの活性化の過程で、鉄エンドサイトーシスがCD44依存様式で上方制御されること、及び、CD44タンパク質レベルが上昇すること、である。更に、RhoNox-1によって観察されるように、活性化されたM1マクロファージにおいてリソソームFe
2+が増加する。本効果は、M1マクロファージに特異的であり、カノニカルな鉄エンドサイトーシスタンパク質TfR1/CD71のレベルは未変化のままである(
図1及び
図2)。
【0154】
(実施例2)
材料及び方法
細胞培養。末梢血試料は異なる健常なドナー(Etablissement Francais du Sang)から採取した。汎単球を、製造元の取扱説明書(Miltenyi Biotec社、130-096-537)に従ってマイクロビーズを使用してネガティブマグネティック選別によって分離し、グルタミン(Thermo Fisher Scientific社、61870010)、10%ウシ胎児血清で補充したRPMI 1640で培養し、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、Miltenyi Biotec社、130-093-866、100ng/mL)で処理して、マクロファージ(MDM)への分化を誘導した。分化の5日目に、MDMを、リポ多糖(LPS、InvivoGen社、tlrl-3pelps、100ng/mL、24時間)及びインターフェロン-γ(IFNγ、Miltenyi Biotec社、130-096-484、20ng/mL、24時間)で処理して、活性化MDM(act. MDM)を生成し、抗CD44抗体RG7356で同時処理するか、AMAXA Nucleofectorトランスフェクションシステム(LONZA社)を使用して対照若しくはCD44 siRNAでトランスフェクトした。CD44の特異的下方制御に適した低分子干渉RNAは以下のとおりである:
5' -GAAUAUAACCUGCCGCUUU-3'(配列番号1)、
5' -CAAGUGGACUCAACGGAGA-3'(配列番号2)、
5' -CGAAGAAGGUGUGUGGGCAGA-3'(配列番号3)、及び
5' -GAUCAACAGUGGCAAUGGA-3'(配列番号4)。
【0155】
ウエスタンブロッティング。細胞を指示のとおりに処理し、次いで1×PBSで洗浄した。タンパク質をベンゾナーゼ(VWR社、70664-3、1:100)含有の2×Laemmli緩衝剤に溶かし、抽出物を37℃で1時間インキュベートし、NanoDrop 2000分光光度計(ThermoFisher Scientific社)を使用して定量化した。タンパク質ライセートを、SDS-PAGE電気泳動(Invitrogen sure-lockシステム及びNu-PAGE 4-12% Bis-Trisプレキャストゲル)によって分離し、Trans-Blot SDセミドライ電気泳動トランスファーセル(Bio-rad社)を使用してニトロセルロース膜(Amersham Protran 0.45μm)に転写した。膜を、0.1%Tween-20/1×PBS中の5%脱脂スキムミルク粉末で1時間ブロックした。次いで、5%BSA、0.1%Tween-20/1×PBS中の関連一次抗体を用いて、ブロットを4℃で一晩、緩やかな動きにてプローブした。膜を、0.1%Tween-20/1×PBSで3回洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Jackson Laboratories社)と共に5%脱脂スキムミルク粉末、0.1%Tween-20/1×PBS中で室温で1時間インキュベートし、0.1%Tween-20/1×PBSで3回洗浄した。抗原を、SuperSignal West Pico PLUS化学発光検出キット(ThermoFisher Scientific社、34580及び34096)を使用して検出した。Fusion Solo S Imaging System(Vilber社)を使用してシグナルを記録し、γ-チューブリンの信号に対して正規化されたピクセル強度を使用してImageJで定量化した。
【0156】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)。HA(Carbosynth社、FH45321、600~1000kDa、1mg/mL)をLPS及びIFNγと一緒に添加し、細胞を24時間処理した。テフロンセプタムを備えたガラスバイアルを硝酸65%(VWR社、Suprapur、1.00441.0250)でクリーニングし、超純水(Sigma-Aldrich社、1012620500)で洗浄し、乾燥させた。細胞を回収し、これに続いて1×PBSで2回洗浄した。次いで、細胞を自動細胞カウンター(Entek社)を使用してカウントし、1×PBS 200μL中にクリーンガラスバイアルへと移し、凍結乾燥機(CHRIST社、22080)を使用して試料を凍結乾燥した。次いで、試料を硝酸65%と一晩混合し、80℃で2時間加熱した。試料を超純水で最終濃度0.475N硝酸に希釈し、続いて行うICP-MS分析向けにメタルフリー遠心バイアル(VWR社、89049-172)に移した。Agilent 7900 ICP-QMSを低分解能モードで使用して、56Fe及び63Cuの量を測定した。試料導入を、Scottスプレーチャンバーをとおしてマイクロネブライザー(MicroMist社、0.2mL/min)で行った。同位体を、ヘリウムガス(5mL/min)による衝突反応インターフェースを使用して測定して、多原子干渉を排除した。スカンジウム及びインジウムの内部標準を、試料とのインライン混合後に注入して、シグナルドリフト及びマトリックス効果の欠如を制御した。認証標準物の混合物を、試料の濃度にまたがる濃度で測定して、カウント測定値を溶液中の濃度に変換した。試料濃度の不確実性を、ICP-MSブランクの代数的伝達体及び試料カウントの不確実性を使用して算出した。値は、細胞数に対して正規化した。
【0157】
結果
CD44に対する低分子干渉RNA(siRNA)を使用したCD44の下方制御によって、対照RNAと比較して、活性化された単球由来M1マクロファージ(act. MDM)中の総鉄量が減少した(
図3A、
図3B)。加えて、CD44を結合するブロッキング抗体(RG7356)での処理によれば、act MDM中の総鉄量が減少する(
図3C)。これらのデータによって確認されたところは、CD44が炎症性マクロファージの活性化過程で鉄の取込みを媒介することである。
【0158】
まとめると、これらのデータは、SARS-CoV-2患者で観察される重度の炎症反応におけるCD44媒介性鉄エンドサイトーシスの直接的な役割を暗示している。Institut Curieは、臨床的に承認された抗CD44抗体であるRG7356の使用に関して経験に富んでいるところであり、RG7356は、転帰不良であるがん患者において期待できる結果を示している(First-in human phase I clinical trial of RG7356, an anti-CD44 humanized antibody, in patients with advanced, CD44-expressing solid tumors. Oncotarget (2016)、DOI: 10.18632/oncotarget.11098)。本明細書で、本発明者らが評価するところは、CD44/ヒアルロン酸(HA)経路のアンタゴニストの使用の効果、及び、例えば、DFOを使用してIL6シグナル伝達に拮抗するとともにSARS-CoV-2患者をCRSから保護することによる、鉄ホメオスタシスのターゲティングの効果、である。
【0159】
参考文献:
本出願全体をとおして、さまざまな参考文献により本発明が属する現行の技術水準が記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象におけるサイトカイン放出症候群の処置における使用のためのCD44/ヒアルロン酸経路のアンタゴニスト
を含む医薬組成物であって、
CD44/ヒアルロン酸(HA)経路の前記アンタゴニストが、CD44アンタゴニスト及びCD44発現阻害剤からなる群から選択される、CD44をターゲットとする化合物からなる群から選択される、
医薬組成物。
【請求項2】
前記サイトカイン放出症候群が、重度のCOVID-19関連サイトカイン放出症候群である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記CD44アンタゴニストが、低有機分子、ポリペプチド、アプタマー又は抗体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体が
、RG7356及びビバツズマブからなる群から選択される、請求項3に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記CD44発現阻害剤が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、siRNA、RNAi、及びリボザイムからなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
それを必要とする対象における呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
それを必要とする対象におけるマクロファージ活性化症候群(MAS)の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
それを必要とする対象における鉄関連炎症性疾患及び肺胞炎症反応の処置における使用のための、請求項1から5のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】