IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カルロス・アルベルト・リヴェロスの特許一覧

特表2023-526547気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物のシステム、方法、及び使用
<>
  • 特表-気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物のシステム、方法、及び使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物のシステム、方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230614BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230614BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/72
A61P31/12
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K31/7048
A61K31/519
A61K31/573
A61P31/14
A61P31/16
A61K9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571809
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 IB2021054451
(87)【国際公開番号】W WO2021234668
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】63/028,714
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/182,125
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522455102
【氏名又は名称】カルロス・アルベルト・リヴェロス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・アルベルト・リヴェロス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC35
4C084AA17
4C084MA13
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086CB05
4C086DA10
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA55
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
感染の初期において特定のウイルスのウイルス複製を低下させるための、又はウイルスに対する高リスクの曝露が検出若しくは予測された場合の予防剤として、特定の薬物の投与において有用なシステム、方法、使用、組合せ、及びキット、全身曝露を最小限にしつつ高い局所的濃度の特定の薬物を効率的に投与すること。具体的には、本発明は、ウイルス複製を低下させるための特定の噴霧化した薬物のシステム、方法、使用、医薬組合せ、及び医薬キットをいう。開発では、少なくとも1つの特定の薬物を上気道及び下気道粘膜内に直接送達するために吸入器又は噴霧器を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入可能なミストの形態で特定の薬物の治療上有効な用量を送達するための装置において、前記特定の薬物を投与する工程を含む、上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物の治療上有効な用量を投与するためのシステム。
【請求項2】
特定の薬物が、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビルバムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
特定の薬物を、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロンから選択される抗炎症剤と更に組み合わせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
特定の薬物がイベルメクチンである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
イベルメクチンを1日3回、5日間投与する、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
イベルメクチンを3mLの用量で8時間毎に5日間投与する、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
イベルメクチンが0.1~3%の間の濃度である、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
ウイルス複製が、RNAウイルス、MERS、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及びインフルエンザから選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
RNAウイルスがインポーチン(IMP)α/β1を使用し、DENV 1~4、西ナイルウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及びインフルエンザから選択される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
吸入可能なミストが0.5~10μmの間の粒径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
治療上有効な用量の特定の薬物の吸入可能なミストを、上気道及び下気道粘膜内に投与する工程を含む、それを必要としている対象においてウイルス複製を低下させる方法。
【請求項12】
特定の薬物が、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、バムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
特定の薬物をエアロゾル吸入器によって投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
特定の薬物がイベルメクチンである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
イベルメクチンをエアロゾル吸入器によって投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
吸入可能なミストが0.5~10μmの間の粒径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
特定の薬物を、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロンから選択される抗炎症剤と更に組み合わせる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ウイルス複製が、RNAウイルス、MERS、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及びインフルエンザから選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
特定の薬物を疾患の初期中に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
RNAウイルスがインポーチン(IMP)α/β1を使用し、DENV 1~4、西ナイルウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及びインフルエンザから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
イベルメクチンを1日3回、5日間投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
イベルメクチンを3mLの用量で8時間毎に5日間投与する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
イベルメクチンが0.1~3%の間の濃度である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製によって引き起こされた疾患の処置における、噴霧化した特定の薬物の使用。
【請求項25】
特定の薬物が、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、バムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せから選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製によって引き起こされた疾患の処置において有用な薬物の調製のための、噴霧化した特定の薬物の使用であって、特定の薬物が、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、バムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せから選択される、使用。
【請求項27】
ウイルス複製が、RNAウイルス、MERS、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及びインフルエンザから選択されるウイルスによって引き起こされる、請求項24又は26に記載の使用。
【請求項28】
イベルメクチンを、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロン、又はその組合せのうちの少なくとも1つと組み合わせる、請求項24又は26に記載の使用。
【請求項29】
治療上有効な用量の
イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビルバムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せからなる群から選択される、上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物と、
バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロン、又はその組合せからなる群から選択される抗炎症剤と
の、医薬組合せ物。
【請求項30】
特定の薬物がイベルメクチンであり、抗炎症剤がデキサメタゾンである、請求項29に記載の医薬組合せ物。
【請求項31】
イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビルバムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せからなる群から選択される、上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物と、
バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロン、又はその組合せからなる群から選択される抗炎症剤と
の同時、連続的、又は別々の投与を可能にする、医薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれている、2020年5月22日に出願の米国仮出願第63/028,714号及び2021年4月30日に出願の米国仮出願第63/182,125号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書に含有される開示は、一般に、COVID-19等の上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製によって引き起こされた疾患の処置に有用なシステム、方法、使用、組合せ、及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
2019年の11月から12月頃に、新規コロナウイルスが武漢(中国)における肺炎事例の原因として同定された。これは蔓延し、中国全土、その後に世界中の他の国々にわたる流行病をもたらした。2020年2月に、世界保健機関が疾患をCOVID-19と命名し、これはコロナウイルス疾患2019(coronavirus disease 2019)を表す。このウイルスは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)としても知られる(1)。
【0004】
COVID-19は、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス(及びいくつかのコウモリコロナウイルス)と同じ亜属であるが異なるクレードに属するベータコロナウイルスである。受容体結合遺伝子領域の構造はSARSコロナウイルスのそれと非常に類似しており、ウイルスは同じ受容体、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を細胞侵入に使用することが示されている(2)。
【0005】
症例が急速に増加している状況下では、軽症例の不適切な管理が医療制度及び医療費の負担を増やす場合がある。ウイルス排除は回復及び医療ケアからの退院の評価における主要な標準であるが、初期の結果は、症状の急速な寛解にもかかわらずウイルスRNAの残留は不均一であり、非常に軽症な症例においてされも3週間を超える場合があることを示していた。更に、長い入院滞在は、病院関連の精神健康問題及び予想外の院内感染のリスクを増加させ得る。(9)
【0006】
当初、大流行は、中国の武漢で生きた動物を販売していた海産食品市場との初期関連が同定されていた。しかし、流行が進行するにつれ、人から人への蔓延が主な感染経路となった。
【0007】
人から人への感染は主に呼吸器系の飛沫を介して起こると考えられており、インフルエンザの蔓延に似ている。飛沫感染では、感染した人が呼吸、咳、くしゃみ、又は会話する際にウイルスが呼吸器分泌物に放出され、そのような分泌物が粘膜と直接接触した場合に、別の人を感染させることができる。また、感染は、人が感染表面に触れ、その後にその眼、鼻、又は口に触れた場合にも起こる場合がある。飛沫は典型的には6フィート(約2メートル)を超えて移動することはなく、空気中に留まらない。この問題については依然として議論の余地がある。
【0008】
SARS-CoV-2が自然条件下で空気感染経路を通じて(空気中に時間及び距離にわたって残る、飛沫よりも小さな粒子を通じて)感染させることができるかどうかは、議論の余地がある。
【0009】
感染メカニズムに関する現在の不確かさを反映して、保健医療設定における空気感染の予防措置に関する推奨は場所によって異なる。空気感染の予防措置は、エアロゾル生成行為を行う場合に普遍的に推奨される。
【0010】
SARS-CoV-2は、症状の発生前及び病気の経過中ずっと感染させる可能性があると見られている。しかし、この論点の情報を与えるほとんどのデータは呼吸器及び他の検体からのウイルスRNA検出を評価する研究からのものであり、ウイルスRNAの検出は必ずしも感染性ウイルスの存在を示さない。
【0011】
ある研究は、感染性が症状発症の2.3日前に始まり、症状発症の0.7日前にピークとなり、7日以内に下降したことを示唆している。しかし、ほとんどの患者は症状発症後に隔離されており、感染性に関係なく病気の後期には感染のリスクを低下させるであろう。これらの発見は、患者が感染のより早い段階においてより感染性であり得るという可能性を提起するが、この仮説を確認するためにはさらなるデータが必要である(3)。
【0012】
人がどれくらいの期間、感染性を維持するかも不確かである。ウイルス排出の期間は様々である。広範囲であると見られ、これは病気の重篤度に依存し得る。病気が軽症(低酸素症なし)であった21人の患者の一研究では、90パーセントが、症状の発症の10日後まで上咽頭スワブでウイルスRNA試験が繰り返し陰性であった。試験は、病気がより重症であった患者において、より長い間陽性であった(4)。対照的に、病気が軽症から中等症(集中治療を必要とした者はいない)であった56人の患者の別の研究では、経鼻又は口咽頭検体からのウイルスRNA排出期間の中央値は24日間であり、最長は42日間であった(5)。しかし、上で言及するように、検出可能なウイルスRNAは感染性ウイルスの単離と必ずしも相関しておらず、それを下回ると感染性の見込みがないウイルスRNAレベルの閾値もあり得る。上述の軽症のCOVID-19に罹患している9人の患者の研究では、ウイルスRNAレベルが<106個のコピー/mLであった場合に、感染性ウイルスは呼吸器検体から検出されなかった(6)。
【0013】
SARS-CoV-2感染症に罹患している個体からの感染のリスクは、曝露の種類及び時間、予防措置の使用、並びに可能性のある個々の要因(例えば呼吸器分泌物中のウイルスの量)によって変動する。
【0014】
ウイルスに対する抗体が、感染した者において誘導される。予備的証拠により、これらの抗体の一部は防御的であることが示唆されているが、これは未だ決定的に確立されていない。すべての感染した患者が防御免疫応答を発生するかどうか、及びいかなる防御効果もどれほど長く持続するかは不明である。
【0015】
COVID-19の診断は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるSARS-CoV-2 RNAの検出によって行う。様々なRT-PCRアッセイが世界中で使用されている。様々なアッセイがSARSCoV-2ゲノムの様々な領域を増幅及び検出する。一般的な遺伝子標的としては、ヌクレオカプシド(N)、エンベロープ(E)、スパイク(S)、及びRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)、並びに最初のオープンリーディングフレーム中の領域が挙げられる(7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Pereraら、2020 Emerging Infectious Diseases
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
血清学的試験は血液中のSARS-CoV-2に対する抗体を検出し、十分に妥当性確認されたものは、COVID-19を有する患者の同定を助けることができる。しかし、感度及び特異性は依然として十分に定義されていない。検出可能な抗体が形成されるまでには、一般に、数日間から週間を要し、例えば、IgMでは最大12日、及びIgGでは最大14日である(8)。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、疾患の初期段階において上気道及び下気道粘膜における特定のウイルスのウイルス複製を低下させるため、又は高リスクの曝露が検出若しくは予測された場合の予防剤としての、特定の薬物の投与において有用な、方法、システム、使用、組合せ、及びキットを提供する。薬物に応じて、疾患のより後の段階にも対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】2つの患者群、すなわち、実施例2の処置を受けた患者(処置(TREATMENT)と命名)及び最良標準治療処置を受けた患者(BSCと命名)の平均サブゲノムRNA量の結果を示す図である。X軸は試料を採取した日に対応し(0、3、5、及び7日目)、Y軸はサブゲノムRNA量(コピー数/mL)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
投与するためのシステム、ウイルス複製を低下させるための方法、気道粘膜における特定のウイルスの処置における噴霧化した薬物の使用、並びに前記処置において有用な組合せ及びキットを開発し、本明細書に記載する。特定の薬物を含む、システム、方法、使用、並びに関連する組合せ及びキットは、疾患の初期中においてウイルス複製を低下させるために、又はウイルスに対する高リスクの曝露が検出若しくは予測された場合の予防剤として、有用である。具体的には、システム、方法、使用、並びに関連する組合せ及びキットは、ウイルス複製を低下させるために特定の薬物を投与する工程を含む。開発では、特定の薬物を上気道及び下気道粘膜内に投与するために吸入器又は噴霧器を使用する。
【0021】
上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるために、治療上有効な用量の特定の薬物を投与するためのシステムは、前記特定の薬物を、治療上有効な用量の前記特定の薬物を送達するための装置中で、肺内に直接、吸入可能なミストの形態又は吸入可能な形態で投与する工程を含む。吸入可能なミストは、必要な対象が吸入することができるガス中に細かく分割された液体を懸濁したものである。
【0022】
上で言及するように、治療上有効な用量の特定の薬物の吸入可能なミストを、上気道及び下気道粘膜内に投与する工程を含む、それを必要としている対象においてウイルス複製を低下させる方法も記載されている。
【0023】
投与するためのシステム、ウイルス複製を低下させるための方法、及び上で言及した特定の薬物の使用は、呼吸器ウイルスによって引き起こされたウイルス複製を低下させる。呼吸器ウイルスという用語は、本出願において、ウイルス複製が気道で起こるウイルスとして理解される。したがって、COVID-19と同様に感染し、特定の薬物に対してある程度の応答を有するウイルスは呼吸器ウイルスとみなされ、例えば、RNAウイルス、MERS、MERS-CoV、SARS-CoV、SARS-CoV-1、及びインフルエンザであり、ここで、RNAウイルスはインポーチン(IMP)α/β1を使用し、DENV 1~4、西ナイルウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及びインフルエンザから選択される。
【0024】
上で言及した組合せ及びキットとしては、呼吸器ウイルスによって引き起こされたウイルス複製を低下させることにおいて有用な特定の薬物、及び追加の抗炎症剤が挙げられる。
【0025】
ウイルスの初期感染において、ウイルスは上気道の表面に感染し、その後、続いて下気道に蔓延することを考慮して、本発明者らは、噴霧、吸入、又は鼻腔内投与がイベルメクチン等の特定の薬物の溶液の適切な投与経路であり、上気道及び下気道で利用可能なイベルメクチンの量が、気道におけるウイルスの初期複製を低下させるために十分であり得ることを発見した。結果として、この作用は感染症の初期段階におけるウイルス複製を低下させ、また、これはより低いウイルス量も表す。したがって、個体では、イベルメクチンの送達は疾患の重篤度を最小限にするであろう。
【0026】
これらの投与経路が噴霧化したイベルメクチンで有望な結果を示していることを考慮すると、他の分子を用いても、分子が標的部位に直接送達されること及び十分な量でのその作用メカニズムが同様に促進される可能性が高いため、ウイルス複製が低下する(対象において最初に採った試料と比較して)であろうことが予想される。
【0027】
特定の薬物は、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビル、バムラニビマブ、バムラニビマブ/エテセビマブ組合せ療法、ロピナビル、リトナビル、ロピナビル-リトナビル組合せ療法、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せからなる群から選択される。siRNA分子としては、siLuc、siN-2、siN-3、siN-4、siR-7、siR-8、siR-9、siR-10、siR11、siR-12、siR-13、siR-14、及びsiR-15が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用する用語「感染」とは、任意の当業者が知っているであろうように一般的に定義され、他の対象への感染を含む。本方法、システム、及び使用が、同じ対象内のウイルス複製を防止する、すなわち予防することも考慮される。ウイルス複製は、主に肺胞、肺、又は気管支を含む上気道及び粘膜を通じたものであると考えられる。
【0029】
in vitroデータがウイルスに対する様々な薬物の頑強な証拠を提供しているが、その既知の投与経路の一部(例えば、経口、筋肉内)は、臨床的に達成可能なその血漿及び肺濃度との相関を含まない。しかし、その噴霧、吸入、又は鼻腔内投与は、感染の初期段階に上気道の表面において十分な濃度を達成することができる。
【0030】
本発明者らは、既に知られており、in vitroでウイルス複製を低下させるために試験された特定の薬物の使用を、異なる経路(例えば噴霧又は吸入)によって投与して、疾患の初期の上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させる、又は高リスクの曝露が検出若しくは予測された場合の予防剤とすることができることを見出した。より重要なことに、噴霧、吸入、又は鼻腔内の提示は、血清/血液中の薬物の量を低下させることによって、副作用の可能性をより低くすると同時に、上気道及び下気道における初期設置及び複製期の期間中に薬物とウイルスとの良好なレベルの接触を提供することができる。
【0031】
以下に記載する治療上有効な用量を投与するためのシステム及びウイルス複製を低下させるための方法は、特定の薬物を肺内に直接送達することができ、特定の薬物は、抗炎症剤等の他の薬剤と更に組み合わせる。
【0032】
抗炎症剤は、それだけには限定されないが、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、及びベクロメタゾンから選択される。
【0033】
界面活性剤、噴霧剤、溶媒、共溶媒、凍結保護剤、及び/又は緩衝塩等の追加の構成成分は、適切な噴霧化を達成するために特定の薬物を含む溶液中に含まれる薬学的に許容される賦形剤である。薬学的に許容される賦形剤としては、それだけには限定されないが、グリセロール、プロピレングリコール、グリセリン、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0034】
また、ウイルス複製によって引き起こされた疾患の処置における、噴霧化した特定の薬物の使用も開示する。また、ウイルス複製によって引き起こされた疾患の処置において有用な医薬の調製における、噴霧化した特定の薬物の使用も開示する。
【0035】
前記使用において、薬物は上記定義したとおりであるが、抗炎症剤と組み合わせることもできる。抗炎症剤は、それだけには限定されないが、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、及びベクロメタゾンから選択される。単独又は他の分子若しくは薬物と組み合わせた噴霧化した特定の薬物はまた、ウイルスの感染を防止することにおいても有用である。
【0036】
SARS-CoV-2(COVID19)ウイルスに対して良好なin vitro活性を有する治療上有効な用量の薬物を投与するために、吸入器又は噴霧器、好ましくは使い捨ての構成成分を使用する方法は、これら及び他の薬物にも適用可能又は適応可能である。
【0037】
本明細書に記載したシステム及び方法、並びに使い捨ての構成成分の使用のおかげで、特定の薬物を多数の人々に投与することが可能である。その結果、換気補助を必要とする重症な症例が顕著に減少し、致命的症例が減少することが期待できる。
【0038】
本明細書に記載したシステム、方法、及び使用は、それだけには限定されないが、とりわけ、医療従事者、高齢者、公衆、中でも航空機に曝された人々等、接触又は接触のリスクの後の疾患の発生を防止するために使用することができる。
【0039】
イベルメクチン及び抗ウイルス剤
イベルメクチンは、寄生生物感染症を処置するための、食品薬品局(FDA)によって認可されている、世界的に使用されている薬物である。この薬剤はヒト及び動物において使用されている。近接過去には、以前の流行事象中にウイルスを処置するために、その使用が調査された(12)。
【0040】
イベルメクチンは、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)インテグラーゼタンパク質(IN)とIN核内移行を司っているインポーチン(IMP)α/β1ヘテロ二量体との間の相互作用の阻害剤として元々同定され(13)、それ以後に、IN核内移行及びHIV-1複製を阻害することが確認されている(14)。イベルメクチンの他の使用が報告されているが(15)、イベルメクチンは、宿主及びウイルスタンパク質の核内移行を阻害することが示されており(16)、これにはシミアンウイルスSV40大腫瘍抗原(T-ag)及びデングウイルス(DENV)非構造タンパク質5が挙げられる(13、14)。より重要なことに、これは、DENV 1~4(17)、西ナイルウイルス(18)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)(19)、及びインフルエンザ(20)等のRNAウイルスによる感染を制限することが実証されており、この広スペクトラム活性は、感染中に多くの様々なRNAウイルスがIMPα/β1に依存することが原因であると考えられている(21)(22)。イベルメクチンは同様に、DNAウイルス仮性狂犬病ウイルス(PRV)に対してin vitro及びin vivoのどちらにおいても有効であることが示されており、イベルメクチン処置はPRVに感染したマウスにおいて生存率を増加させることが示されている(23)。
【0041】
最近、Calyらは、Vero-hSLAM細胞への単一の付加に続く、SARS-CoV-2に対するイベルメクチンのin vitro活性を報告し、これらのデータは「イベルメクチンが可能性のあるSARS-CoV-2抗ウイルス剤として更に考慮するに値することを実証している」と示唆している(25)。単独では、これらのin vitroデータは頑強かつ有望であるが、上述のように、この報告は、in vitroの知見と、達成可能な血漿濃度との相関、及び、より重要なことに、大環状ラクトン(この事例では具体的にはイベルメクチン)が純粋な治療選択肢であるかどうかの決定を可能にする肺濃度との相関を含んでいない。
【0042】
Calyらは、Vero-hSLAM細胞を、SARS-CoV-2単離体オーストラリア/VIC01/2020を用いた感染の2時間後から実験の終わりまで、5μMの濃度のイベルメクチンに浸した。SARS-CoV-2 RNAは、RT-PCRによって、0~3日目に、上清及び細胞ペレット実験の両方において決定した。著者らは、それぞれ上清(放出されたビリオン)及び細胞関連ウイルスRNA(全ウイルス)において、DMSO対照に対して24時間目にイベルメクチンではウイルスRNAの93~99.8%の低下を記録した。彼らはまた、48時間目までにウイルスRNAの5000倍の低下、及び72時間目でのその効果の維持も記載している。濃度-応答プロフィールを確立するために、イベルメクチンの段階希釈を用いて追加の実験を実施し、著者らはイベルメクチンをSARS-CoV-2の強力な阻害剤とし、IC50をこれらの条件下で約2μMであると決定したことを記載している(26)。
【0043】
Calyらによる発見は有望である一方で、Calyらによってin vitro SARS-CoV-2実験において使用された5μMの濃度のイベルメクチンがin vivoで達成できるという証拠は存在しない。ヒトにおけるイベルメクチンの薬物動態学は十分に記載されており、報告された最も高い用量であるおよそ1700μg/kg(すなわちFDAに認可された用量である200μg/kgの8.5倍)を用いた場合でさえ、最大血漿濃度は0.28μMしかなかった。これは、SARS-CoV-2のウイルス複製をin vitroで低下させるために必要な濃度よりも18倍低い。組織中におけるイベルメクチンの蓄積はわずかであり、従来の用量で抗ウイルス効果を達成するためには十分とならないであろう。高用量のイベルメクチンは成人又は小児において良好に耐容されているが、5μMの濃度でのイベルメクチンの臨床効果は不明であり、毒性に関連している場合がある。したがって、イベルメクチンはSARS-CoV-2に対してin vitro活性を有するが、この効果はin vivoで既知の用量で観察される可能性は低い。
【0044】
しかし、以下の実施例中に実証されるように、上記開示したシステム、方法、及び使用では、特定の薬物がイベルメクチンである場合、これを1日3回、5日間投与する。更に、特定の薬物がイベルメクチンである場合、これを3~6mL又は3~5mLの用量で、8時間毎に5日間投与する。特定の薬物がイベルメクチンである場合、液体溶液は0.1~3%、好ましくは1%の濃度である。
【0045】
最後に、特定の薬物がイベルメクチンであり、これをデキサメタゾン等の抗ウイルス剤と組み合わせて投与する場合、これらはそれぞれ10:1の比率で投与する。
【0046】
医薬キット及び医薬組合せ
本明細書で使用する用語「医薬キット」又は「医薬組合せ」とは、医薬組成物若しくは特定の薬物を投与するために使用する組成物、及び/又は抗炎症剤と組み合わせた特定の薬物を意味する。特定の薬物及び抗炎症剤を同時に投与する場合、医薬キット又は医薬組合せは特定の薬物及び抗炎症剤を単一の医薬組成物又は別々の医薬組成物中に含有することができる。化合物を同時に投与しない場合、医薬キット又は組合せを特定の薬物及び抗炎症剤を別々の医薬組成物中に含有するであろう。医薬キット又は組合せは、特定の薬物及び抗炎症剤を、単一のパッケージ中の別々の医薬組成物中で、又は別々のパッケージ中の別々の医薬組成物中で含む。
【0047】
一実施形態では、医薬キット又は組合せは、以下の構成成分、すなわち、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物と、薬学的に許容される担体と関連した別の特定の薬物とを含む。別の実施形態では、医薬キット又は組合せは、以下の構成成分、すなわち、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物と、薬学的に許容される担体と関連した別の特定の薬物とを含み、構成成分は、連続的、別々、及び/又は同時の投与に適切である形態で提供される。
【0048】
一実施形態では、医薬キット又は組合せは、以下の構成成分、すなわち、薬学的に許容される担体と関連した、単一の医薬組成物中の特定の薬物及び抗炎症剤を含む。別の実施形態では、医薬キット又は組合せは、以下の構成成分、すなわち、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物と、薬学的に許容される担体と関連した抗炎症剤とを含む。更に別の実施形態では、医薬キット又は組合せは、以下の構成成分、すなわち、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物と、薬学的に許容される担体と関連した抗炎症剤とを含み、構成成分は、連続的、別々、及び/又は同時の投与に適切である形態で提供される。
【0049】
更に別の実施形態では、医薬キット又は組合せは、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物を含む第1の容器と、薬学的に許容される担体と関連した別の特定の薬物を含む第2の容器と、前記第1及び第2の容器を含有するための容器手段とを含む。更に別の実施形態では、医薬キット又は組合せは、薬学的に許容される担体と関連した特定の薬物を含む第1の容器と、薬学的に許容される担体と関連した抗炎症剤を含む第2の容器と、前記第1及び第2の容器を含有するための容器手段とを含む。
【0050】
医薬キット又は組合せはまた、噴霧を介して投与する固定用量の所定の薬剤を有する少なくとも1つの容器も含む。一実施形態では、医薬キット又は組合せは、決定された薬剤、又は、少なくとも1つの特定の薬剤と、少なくとも1つの抗炎症剤と、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルとの組合せを有する複数の容器、例えば、決定された薬剤の3つの用量を患者に8時間毎に投与することを可能にする、10mLの3つの容器(アンプル又はバイアル型)を含む。
【0051】
「医薬キット」又は「医薬組合せ」は、投薬量及び投与の指示等の指示によって提供することもできる。そのような投薬量及び投与の指示は、医師に、例えば薬物製品ラベルによって提供される種類のものであることができる、又は、患者への指示等の、医師によって提供される種類のものであることができる。
【0052】
治療上有効な用量の、イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビルバムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せからなる群から選択される、上気道及び下気道粘膜におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物と、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロン、又はその組合せからなる群から選択される抗炎症剤との、医薬組合せ。一実施形態では、医薬組合せ中の特定の薬物はイベルメクチンであり、抗炎症剤はデキサメタゾンである。
【0053】
イベルメクチン、ニタゾキサニド、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、セラメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、レムデシビル、ナファモスタット、モルヌピラビル、アンプリジェン、アマンタジン、ウミフェノビル、モロキシジン、オセルタミビル、ペラミビル、リマンタジン、バロキサビルマルボキシル、ザナミビルバムラニビマブ、ロピナビル、リトナビル、カシリビマブ、イムデビマブ、トシリズマブ、エテセビマブ、VIR-7831、EXO-CD24、PF-07321332、MIR-19、及びsiRNA分子、又はその組合せからなる群から選択される、上気道及び下気道粘膜中におけるウイルス複製を低下させるための特定の薬物と、バリシチニブ、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びメチルプレドニゾロン、又はその組合せからなる群から選択される抗炎症剤との同時、連続的、又は別々の投与を可能にする、医薬キット。
【0054】
薬物を肺に送達するために使用する装置
吸入器及び噴霧器は、薬物を肺に直接送達するために使用される、2つの最も一般的な装置である。公共の設定では、送達装置を素早く再利用して薬物を別の人に送達することを可能にするために、薬物を送達するために使用する装置は使い捨ての構成成分を含み得る。
【0055】
特定の薬物の溶液の噴霧は、エアロゾルを生成するための一般的な方法である。特定の薬物を噴霧によって送達するために、特定の薬物を最初に液体媒体(通常は水性)中に分散させなければならないことが可能である。分散力(ガスジェット又は超音波のいずれか)を適用した後、特定の薬物の粒子はエアロゾル液滴内に含有され、その後、これが吸入される。特定の薬物の溶液の配合物は、一般に、特定の薬物の溶解度及び安定性を最適化するように設計されている。
【0056】
噴霧器は、薬物を肺に直接、吸入可能な形態で、又は吸入可能なミストとして分配することができる、薬剤送達装置である。噴霧機器は、液体薬物又は溶液を、肺、肺胞、又は気管支に直接吸入することができる小さなエアロゾル液滴又はミストへと微粒化及び気化するために、酸素、圧縮空気、及び更には超音波出力を含む方法の混合を使用する。
【0057】
噴霧器は、液体薬物を、ガス内の液体粒子の懸濁物であるエアロゾル(ミスト又は吸入可能な形態)へと変換する。噴霧器では、特定の薬物は、それを必要としている患者によって吸入され、肺に直接送達されるミストとして現れる。液滴又は粒子の大きさは噴霧器の構成よび空気圧に依存するが、一般に0.5~10μm又は2~5μmの間を変動する。
【0058】
2種類の噴霧器、すなわち卓上又は携帯用噴霧器が消費者に利用可能である。卓上噴霧器は重く、持ち歩くことを意図せず、稼働にコンセントを必要とする。他方、携帯用噴霧器は容易に持ち歩くことができ、軽量の装置である。
【0059】
携帯用噴霧器は、患者が屋外及び家又は公共の場の屋内のどちらにいる場合でも特定の薬物を送達するように設計されている、手持ち装置である。携帯用噴霧器は、典型的には、液体の特定の薬物をミストに変換するためのシステムと、薬物を保持するための噴霧器カップ又は容器と、特定の薬物を吸入するためのマウスピース又はマスクを備える。本発明のシステムでは、マウスピース及び又はマスクは使い捨ての構成成分を含み得る。容器中に入れた薬剤は、患者によって、肺に直接到達するミストの形態で吸入される。
【実施例
【0060】
(実施例1)
イベルメクチン1%
SARS CoV2に感染した、治験に含めることが適格とされた対象は、噴霧を介して投与したイベルメクチン1%を感染の初期段階に受けた。イベルメクチンは、3mLの用量(0.03g)で8時間毎に5日間、自宅隔離で投与したが、遠隔医療を介して積極的に管理した。
【0061】
この投与システムは、サブゲノムmRNAによって測定したウイルス複製、ひいては上気道及び下気道の活性SARS-CoV-2ウイルスの量を90%より多く低下させ、疾患の重篤度及び持続期間を含めた有意な臨床的改善をもたらした。
【0062】
(実施例2)
イベルメクチン1%及びデキサメタゾンの投与
噴霧用のイベルメクチン溶液は、3mLのイベルメクチン1%(10mg/mL、Vecol社、Bogota Colombiaによって供給、https://vecol.com.co/)を0.3mL(1.2mg)のデキサメタゾン溶液(4mg/mL)、ホルマールグリセロール、及びプロピレングリコールと混合することによって調製した。
【0063】
3mLの溶液を対象に、肺内に直接、吸入可能なミストの形態で投与した。噴霧した投与溶液のおよそ10%しか呼吸器経路に到達しないことを考えると、それぞれの噴霧は、およそ3mgのイベルメクチンを平均して150ccの死腔及びおそらくは一部の肺胞空間に分布させ、およそ0.02mg/ccを送達し、これはウイルス複製を阻害するために必要なIC50濃度を超えていた(IC50=0.00175mg/cc)。フェーズ1中、これらの用量は健康な個体において肺機能試験の変化を引き起こさなかったことが実証された。
【0064】
デキサメタゾンと組み合わせたイベルメクチンは、噴霧器によって1日3回、5日間投与した。
【0065】
サブゲノムmRNAによって測定したウイルス複製の統計的に有意な減少が、プラセボと比較してイベルメクチン及びデキサメタゾンの組合せの投与後に観察された。
【0066】
(実施例3)
予備データ
SARS-CoV-2疾患の初期(疾患の「初期」とは、患者がウイルスに対して陽性であると自覚した1日目、又は症状が始まった後の最初の3日間以内とみなす)の、シャリテ基金(Charite Foundation)プロトコルの下でGen E、Gen N、及びGen RdRpの遺伝子うちの少なくとも1つを発現した、14人の外来患者を、実施例2に記載した処置に供した。同じ研究の下、最善の対症療法(BSC)処置で処置した7人の異なる外来患者のウイルス複製も評価した。様々なBSC処置の中で、患者はとりわけアセトアミノフェン、抗炎症剤、気管支拡張剤等で処置した。使用したプロトコルのさらなる詳細は、https://clinicaltrials.gov/に登録されている治験番号NCT04595136号において見つけることができる。
【0067】
実施例2の処置が、評価したすべての外来患者においてBSC処置と比較してウイルスの複製能力を低下させるために有用であったかを評価するために、上咽頭区域のブラッシング試料を0、3、5、及び7日目に採取し、遺伝物質(この場合はRNA)を前記試料から抽出した。
【0068】
RNAを試料からVN143ウイルスRNAミニキット(Genolution社)を使用して抽出した。この方法はコロナウイルスサブゲノムmRNAを検出するための公開された方法から改変した。精製したRNAを、SuperScript II(ThermoFisher Scientific社、https://www.thermofisher.com)及びSARS-CoV-2特異的プライマー(WHSA-29950R:5'-TCTCCTAAGAAGCTATTAAAAT-3')を使用して逆転写させた。得られた相補的DNAを、プライマー(FAM WHSA-00025F:5'-CCAACCAACTTTCGATCTCTTGTA-3' BHQ1及びFAM WHSA-29925R:5'-ATGGGGATAGCACTACTAAAATTA-3' BHQ1)を用いて、qPCR(94℃で30秒間、56℃で30秒間、及び72℃で1.5分間を40サイクル。小サブゲノムmRNAを増幅するための最適化された条件)及びAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(ThermoFisher Scientific社)に供した(Pereraら、2020 Emerging Infectious Diseases)。定量は、単位複製配列断片を4つの既知の濃度(100、1,000、10,000、及び1,000,000個のコピー/ml)で挿入したプラスミドを用いて実施した。得られた結果を図1に例示する(すべての患者の平均)。
【0069】
得られた結果から、研究者らは、BSC患者群内で、一部の者はその症状の増加を示し、他の者は減少(すなわち改善)を示し、一部の者は変化がなかった、又はその状態が処置の終わりに悪化したことに注目した。これらの結果により、この群内では単一の標準の挙動又は一般的なパターンがなかったことが確認された。
【0070】
実施例2に従って処置した患者群に関して(図1中の処置(TREATMENT))、すべての評価した症例において、RNA量が低下した、すなわちウイルスの複製能力が経時的に低下したことを実証する明確な傾向が観察された。これらの肯定的な結果により、実施例2の処置をSARS-CoV-2疾患の初期に実施した場合、ウイルスの複製能力が減少すると研究を結論付けることが可能となった。
【0071】
それぞれの群において達成されたサブゲノムRNAの平均ウイルス複製量を比較すると(図1)、BSC群の結果と比較した場合に処置(TREATMENT)群はより急な勾配を有し、BSC処置と比較した場合に実施例2に従って処置した患者におけるウイルスの複製能力のより速い低下が実証されると結論付けることができる。
【0072】
以下の参考文献は、本明細書に参考として組み込まれている。
(参考文献)
図1
【国際調査報告】