(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】GLP-2の持続型結合体の液状製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/22 20060101AFI20230614BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230614BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230614BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K38/22
A61P1/00
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/34
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571830
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021006455
(87)【国際公開番号】W WO2021235913
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061878
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ホン スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ベ スン ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC16
4C076CC41
4C076DD09F
4C076DD09Q
4C076DD15Z
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD51Q
4C076DD55Q
4C076DD60Q
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076EE23Q
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF63
4C076GG41
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084BA44
4C084DB35
4C084MA66
4C084NA03
4C084ZA66
4C085AA35
4C085BB36
4C085BB42
4C085DD61
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)の持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるGLP-2の持続型結合体を18nmol/mL~18630nmol/mLで含み、
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及びpHを4.5~6.5の範囲で維持するための分量の緩衝物質を含む安定化剤を含むGLP-2の持続型結合体の液状製剤:
【化1】
ここで、
Xは、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体であり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Fは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す。
【請求項2】
前記GLP-2誘導体は、天然型GLP-2配列で少なくとも一つのアミノ酸において置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択された変形が起こったものである、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項3】
前記Xは、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤:
[一般式1]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号9)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X
2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X
30はリシン又はアルギニンであり;
X
34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン、又はシステインである。
【請求項4】
前記Xは
(1)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、
(2)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34がリシンであるか、
(3)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がリシンであるか、
(4)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がリシンであり、X
34が6-アジドリシンであるか、
(5)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がグリシンであり、X
30がアルギニンであり、X
34がシステインであるか、
(6)X
1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインであるか、又は
(7)X
1がヒスチジンであり、X
2がAibであり、X
30がリシンであり、X
34がシステインである、請求項3に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項5】
前記Xは下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤:
[一般式2]
X
1X
2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX
30ITDX
34(配列番号10)
ここで、
X
1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はカルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X
2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X
30はリシン又はアルギニンであり;
X
34は一つ以上の任意のアミノ酸又は変形が起こった一つ以上の任意のアミノ酸である。
【請求項6】
前記GLP-2誘導体は、配列番号2~8からなる群から選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項7】
前記免疫グロブリンFc切片は、非グリコシル化されたIgG4 Fc領域である、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項8】
前記Fは、2個のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記2個のポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖のみに連結されている、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項9】
前記Lは、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項10】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部位の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項11】
前記免疫グロブリンFc切片が配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項12】
前記液状製剤のpHは4.8~6.0である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項13】
前記安定化剤は、非イオン性界面活性剤及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項14】
前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項15】
前記緩衝物質の濃度は、5~100mMである、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項16】
前記糖アルコールは、マンニトール及びソルビトールで構成される群から選択される一つ以上である、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項17】
前記糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項18】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、又はそれらの組み合わせである、請求項13に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項20】
前記非イオン性界面活性剤は、液状製剤内に0.001~0.2%(w/v)の濃度で存在する、請求項13に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項21】
前記アミノ酸は、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項22】
前記アミノ酸は、液状製剤内に0.01~1mg/mLの濃度で存在する、請求項13に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項23】
前記液状製剤は、
18nmol/mL~18630nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
5~100mMの緩衝物質;
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)の非イオン性界面活性剤;及び
0.01~1mg/mLのアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5である、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項24】
前記液状製剤は、
18nmol/mL~18630nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
5~100mMのクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;
1~20%(w/v)のグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤;及び
0.01~1mg/mLのメチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5である、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項25】
前記液状製剤は、
186~2981nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
10~40mMの酢酸とその塩、又はクエン酸とその塩の緩衝物質;
1~20%(w/v)のスクロース、マンニトール、ソルビトール、又はそれらの組み合わせ;
0.002~0.05%(w/v)のポリソルベート;及び
0.02~0.5mg/mLのメチオニンを含み、
pH4.8~6.0である、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項26】
前記液状製剤は、多価アルコールをさらに含む、請求項1に記載のGLP-2の持続型結合体の液状製剤。
【請求項27】
(i)グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、GLP-2の持続型結合体と(ii)糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤を互いに混合する段階を含む、
請求項1~26のいずれか一項に記載の液状製剤を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)の持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)は摂取された栄養分に反応し、小腸のL-細胞から生成される33個のアミノ酸で構成されたペプチドであり、腸疾患、腸損傷及び胃疾患の治療剤として有望な可能性を示してきた。
【0003】
ところが、GLP-2を薬物として商用化するためには、先に解決しなければならない問題がある。GLP-2のようなペプチドは一般に安定性が低いため変性しやすく、体内のタンパク質加水分解酵素により分解されてその活性を失い、また相対的に大きさが小さく腎臓を通じて簡単に除去されるため、薬理成分としてペプチドを含む医薬品の血中濃度及び力価を維持するためにはペプチド薬物を患者に頻繁に投与する必要がある。しかし、ペプチド薬物はほとんど注射剤の形態で患者に投与され、したがって、生理活性ペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射するようになるが、これは、患者に大きな苦痛を引き起こす。特に、GLP-2は生理活性半減期が7分以下と非常に短い。これはジペプチジルペプチダーゼIV(以下、DPPIV)によるGLP-2のアミノ酸の2番(Ala)と3番(Asp)の間の切断によるGLP-2の力価喪失に起因する(Bolette H. et al., The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2000, 85(8):2884-2888)。このようなGLP-2の生理活性半減期を増加させるために、本発明者らはGLP-2の持続型結合体を開発した(韓国公開公報第10-2010-0104382)。
【0004】
ただし、GLP-2の持続型結合体を長時間保管できる安定した液状製剤の開発が依然として要求される。具体的には、GLP-2の持続型結合体が含まれた薬物を製品として供給するためには、保存運送の過程で光、熱、又は添加剤内の不純物により誘導された劣化による変性、凝集、吸着又は加水分解などの物理化学的な変化を抑制しながら生体内効力を維持させることが必須である。液状製剤の温度、pH、添加剤などが分解産物の生成速度に影響を及ぼすが、現在まで全てのタンパク質を安定化させて臨床に適用できるようにする組成はまだ知られておらず、特定タンパク質で安定化効果を奏する液状組成が他のタンパク質の安定化には適用されない場合が多い。目的のタンパク質の液状における安定性を極大化させるために、タンパク質の特異分解産物の生成速度を最小化させる因子及び添加剤の選定及びそれらの組み合わせが広範囲に先行される必要があることが当業界に知られている。
【0005】
特に、生体内持続性及び安定性を高めたGLP-2の持続型結合体の場合、生理活性ペプチドであるGLP-2と免疫グロブリンFc切片が結合した形態であるため、分子量及び体積がGLP-2より非常に増加し、タンパク質を安定化するための特別な組成が要求される。また、生理活性ペプチドであるGLP-2と免疫グロブリンFc切片は、それぞれ物理化学的特性が異なるペプチド又はタンパク質であるため、生理活性ペプチドであるGLP-2と免疫グロブリンFc切片を同時に安定化しなければならない。しかし、相違するペプチド又はタンパク質は、それらの物理化学的差異により、保存中に相違する比率及び相違する条件の下で漸進的に非活性化され、それぞれのペプチド又はタンパク質に適した安定化剤を併用する場合、相互間の競争作用及び副作用により目的としたところと異なる逆効果をもたらすことがある。また、保存中に保存されたタンパク質の本質が変化したり濃度が変化するため、相違する効果を示することがある。従って、GLP-2の持続型結合体の場合、生理活性ペプチドであるGLP-2と免疫グロブリンFc切片を同時に安定化する安定化剤の組成を見出すことに多くの困難がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開公報第10-2010-0104382
【特許文献2】韓国公開特許第10-2019-0037181号公報
【特許文献3】国際特許公開第WO97/34631号明細書
【特許文献4】国際特許公開第96/32478号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bolette H. et al., The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 2000, 85(8):2884-2888
【非特許文献2】H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)の持続型結合体の液状製剤を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記液状製剤を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を具現する一つの様態はグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)の持続型結合体の液状製剤である。
【0011】
一つの具体例として、本発明はGLP-2及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、GLP-2の持続型結合体を薬理学的有効量として含み、
糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤を含む、GLP-2の持続型結合体の液状製剤に関する。
【0012】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記GLP-2の持続型結合体は下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0013】
X - La - F・・・(1)
【0014】
ここで、
Xは、天然型GLP-2又はGLP-2誘導体であり;
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Fは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す。
【0015】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記化学式(1)で表されるGLP-2の持続型結合体を18nmol/mL~18630nmol/mLで含み、
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及びpHを4.5~6.5の範囲で維持するための分量の緩衝物質を含む安定化剤を含むことを特徴とする。
【0016】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記GLP-2誘導体は天然型GLP-2配列で少なくとも一つのアミノ酸において置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択された変形が起こったことを特徴とする。
【0017】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Xは、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0018】
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0019】
ここで、
X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X30はリシン又はアルギニンであり;
X34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン、又はシステインである。
【0020】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Xは
(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、
(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、
(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、
(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、
(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、
(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は
(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであることを特徴とする。
【0021】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Xは、下記一般式2で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0022】
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0023】
ここで、
X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X30はリシン又はアルギニンであり;
X34は一つ以上の任意のアミノ酸又は変形が起こった一つ以上の任意のアミノ酸である。
【0024】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記GLP-2誘導体は配列番号2~8からなる群から選択されたアミノ酸配列であることを特徴とする。
【0025】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はIgG4 Fc領域であることを特徴とする。
【0026】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Fは、2個のポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記2個のポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖のみに連結されていることを特徴とする。
【0027】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0028】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部位(moiety)の化学式量は1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0029】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片が配列番号32のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0030】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記安定化剤は非イオン性界面活性剤及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする。
【0031】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記安定化剤は、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;非イオン性界面活性剤;及びアミノ酸を含むことを特徴とする。
【0032】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は等張化剤を含まないか、又は含むものであってもよい。
【0033】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0034】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは4.8~6.0であることを特徴とする。
【0035】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖アルコールはマンニトール及びソルビトールで構成される群から選択される一つ以上であることを特徴とする。
【0036】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖はグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0037】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0038】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0039】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、製剤内に0.001~0.2%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする。
【0040】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記アミノ酸は、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0041】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記アミノ酸は液状製剤内に0.01~1mg/mLの濃度で存在することを特徴とする。
【0042】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は
18nmol/mL~18630nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
5~100mMのクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;
1~20%(w/v)のグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤;及び
0.01~1mg/mLのメチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5であることを特徴とする。
【0043】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は
18nmol/mL~18630nmol/mLの持続型結合体;
5~100mMの緩衝物質;
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)の非イオン性界面活性剤;及び
0.01~1mg/mLのアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5であることを特徴とする。
【0044】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は
186~2981nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
10~40mMの酢酸とその塩、又はクエン酸とその塩の緩衝物質;
2~15%(w/v)のスクロース、マンニトール、ソルビトール、又はそれらの組み合わせ;
0.002~0.05%(w/v)のポリソルベート;及び
0.02~0.5mg/mLのメチオニンを含み、
pH4.8~6.0であることを特徴とする。
【0045】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は多価アルコールをさらに含むことを特徴とする。
【0046】
本発明を具現する他の一態様は、前記液状製剤の製造方法である。
【0047】
一つの具体例として、本発明は(i)GLP-2及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、GLP-2の持続型結合体と(ii)糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤を互いに混合する段階を含む、前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0048】
本発明による液状製剤は簡単な剤形で分子量が大きい本発明の結合体に保存安定性を提供し、経済的な提供が可能な利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】緩衝物質の種類とpHによるGLP-2誘導体の持続型結合体の安定性を確認した結果である(IEX(%):表3のIE-HPLC(%)、GLP-2誘導体の持続型結合体の残存率)。
【
図2】安定化剤の種類とpHによるGLP-2誘導体の持続型結合体の安定性を確認した結果である(IEX(%):表5のIE-HPLC(%)、GLP-2誘導体の持続型結合体の残存率)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明を実施するための具体的な内容を説明すれば、次の通りである。
【0051】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0052】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認することができる。また、このような等価物は本発明に含まれることが意図される。
【0053】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(α-アミノイソブチル酸;2-aminoisobutyric acid)、AZK(6-azidolysine)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
【0054】
アラニン Ala,A アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn,N アスパラギン酸 Asp,D
システイン Cys,C グルタミン酸 Glu,E
グルタミン Gln,Q グリシンGly,G
ヒスチジン His,H イソロイシン Ile,I
ロイシン Leu,L リシン Lys,K
メチオニン Met,M フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro,P セリン Ser,S
トレオニン Thr,T トリプトファン Trp,W
チロシン Tyr,Y バリン Val,V
【0055】
本発明を具現する一つの様態は、グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2;GLP-2)の持続型結合体の液状製剤を提供する。
【0056】
具体的には、本発明は、GLP-2及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、GLP-2の持続型結合体を薬理学的有効量として含み、
【0057】
糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤を含む、GLP-2の持続型結合体の液状製剤を提供する。
【0058】
本発明において用語「液状製剤」は、医薬品の形態を液状に製剤化した薬物を意味し、これは液状の内用製剤及び外用製剤をいずれも含む。
【0059】
本発明の液状製剤は、薬理効果を奏するGLP-2の持続型結合体及び前記薬理効果を奏する物質が液状に製剤化される時、これを一定期間安定に維持及び/又は保存させる物質を含む。前記液状製剤の薬理効果を奏するGLP-2の持続型結合体以外に含まれる成分は安定化剤と混用され得る。
【0060】
本発明のGLP-2の持続型結合体の液状製剤において、保存安定性は正確な投与量を保障するために重要である。
【0061】
本発明の液状製剤は、GLP-2の持続型結合体と安定化剤を含む。
【0062】
本発明において用語、「安定化剤」とは、製剤において有効成分などの構成成分を一定期間安定に維持させる物質をいう。
【0063】
本発明の安定化剤はアルブミン非含有安定化剤であってもよいが、これに限定されない。タンパク質の安定化剤として用いられ得るヒト血清アルブミンは人体の血液から製造され、ヒト由来の病原性ウイルスによる汚染の可能性が存在し、ゼラチンやウシ血清アルブミンは疾患を引き起こしたり、一部の患者にアレルギー反応を誘発する可能性がある。前記アルブミン非含有安定化剤は、ヒトや動物由来の血清アルブミン又は精製されたゼラチンなどの異種タンパク質を含有しないためウイルス感染のおそれが少ない。
【0064】
本発明において前記安定化剤は、特にGLP-2の持続型結合体が安定に保存され得るようにする物質を意味する。GLP-2の持続型結合体において、保存安定性は正確な投与量を保障するためだけでなく、GLP-2の持続型結合体に対する抗原性物質の潜在的な生成を抑制するために重要である。
【0065】
前記安定化剤は、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含んでもよい。このような液状製剤はGLP-2の持続型結合体を安定的に保存できる溶液剤形であってもよい。
【0066】
本発明の安定化剤に含まれる緩衝物質は、GLP-2の持続型結合体が安定するように液状製剤のpHが急激に変化しないように溶液のpHを維持させることができる。
【0067】
前記緩衝物質は、リン酸とその共役塩基であるアルカリ塩(例えば、リン酸塩:リン酸ナトリウム、リン酸カリウム又はこれらの水素又は二水素塩)、クエン酸とその塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酢酸とその塩(例えば、酢酸ナトリウム)、ヒスチジンとその塩をはじめとするpH緩衝物質であってもよく、これら緩衝物質の混合物も用いられるが、これに制限されない。
【0068】
本発明の液状製剤は、前記緩衝物質を含む緩衝溶液を液状製剤の溶媒として含み得、具体的には、前記緩衝溶液は、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)、酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)、リン酸緩衝溶液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝溶液)、ヒスチジン緩衝溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。より具体的には、前記緩衝溶液は、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)、酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)、ヒスチジン緩衝溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、より一層具体的には、前記緩衝溶液は、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)、酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0069】
前記緩衝溶液又は液状製剤内の緩衝物質(クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、又はそれらの組み合わせ)は目標とする液状製剤のpHを維持するのに十分な分量の濃度で含まれてもよい。具体的には、前記緩衝物質の濃度は約2mM~約200mMであってもよく、よりも具体的には、約5mM~約100mM、約5mM~約80mM、約5mM~約40mM、約10mM~約40mM、約10mM~約30mM、約15mM~約25mMであってもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0070】
前記緩衝溶液又は液状製剤のpHは、pH約4.0~pH約7.0、具体的には、pH約4.0~pH約6.8、pH約4.2~pH約6.6、pH約4.3~pH約6.5、さらに具体的には、pH約4.5~pH約6.5、pH約4.5~pH約6.3、pH約4.5~pH約6.0、pH約4.8~pH約6.5、pH約4.8~約pH 6.0、pH約5.1~pH約6.0、又はpH約4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、又は7.0であってもよいが、これに限定されない。
【0071】
本発明の全般において用語、「約」は±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などを全て含む範囲であり、約という用語の後に出る数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに限定されない。
【0072】
一方、液状製剤の製造において、成分を水(例えば、WFI)に溶かし、HCl及び/又はNaOHなどを用いて緩衝溶液又は製剤のpHを目的とするpHに調整することができ、これは当業界に既に通常用いられる方法である。従って、請求項にpH調節子に関する別途の言及がなくても、このような方法を通じて製剤が調整されたpHを有することができるということは、当業者が理解することができる。
【0073】
本発明の安定化剤に含まれる糖アルコールは多数の水酸基を含む物質であり、糖のアルデヒド基及び/又はケトン基などがアルコール基で置換された物質の総称であり、GLP-2の持続型結合体の安定性を増大させることができる。例えば、前記糖アルコールはマンニトール及びソルビトールからなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0074】
本発明の安定化剤に含まれる糖(saccharide)は、単糖類、二糖類、多糖類、オリゴ糖類などを言い、GLP-2の持続型結合体の安定性を増大させることができる。具体的な例としては、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、フコース及びキシロースなどの単糖類;ラクトース、マルトース、及びスクロースなどの二糖類;ラフィノース及びデキストランなどの多糖類などを挙げることができるが、これに制限されない。
【0075】
前記糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせは、全体溶液比約1~約20%(w/v)、約1~約15%(w/v)、約2~約15%(w/v)、約2~約12%(w/v)、約2~約10%(w/v)、約3~約10%(w/v)、約4~約10%(w/v)、約4~約9%(w/v)、約5~約9%(w/v)、約5~約8%(w/v)、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20%(w/v)、約5%(w/v)、又は約8%(w/v)の濃度で存在してもよいが、特にこれに限定されない。
【0076】
また、本発明の安定化剤は、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含んでもよいが、これに制限されない。従って、前記安定化剤は、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質で必須で構成されてもよいが、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;及び非イオン性界面活性剤、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;及びアミノ酸、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;非イオン性界面活性剤;及びアミノ酸で必須で構成されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0077】
ここで、安定化剤を構成する各成分の種類及び濃度あるいはpHに対しては、前記あるいは下記の内容がいずれも適用されることは明確である。
【0078】
特にこれに制限されないが、前記非イオン性界面活性剤は、タンパク質溶液の表面張力を下げて疎水性表面にタンパク質が吸着又は凝集することを防止することができる。
【0079】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤の具体的な例としてはポリソルベート又はポロキサマーを挙げることができ、これらが一つ又は二つ以上の組み合わせの形態でも用いられる。
【0080】
具体的には、前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、又はポロキサマー188であってもよく、これらが組み合わせられて用いられてもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0081】
本発明において前記非イオン性界面活性剤は高濃度で含まれないことが好ましく、具体的には、本発明の製剤に約0.2%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.001~約0.2%(w/v)、約0.001~約0.1%(w/v)、約0.001~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.08%(w/v)、約0.002~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.04%(w/v)、約0.01~約0.03%(w/v)、又は約0.02%(w/v)で含まれてもよいが、特にこれに限定されない。
【0082】
前記アミノ酸は、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせであってもよく、具体的にはメチオニンであってもよい。また、前記メチオニンはL-メチオニンであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0083】
前記アミノ酸はタンパク質の酸化反応などにより生じ得る不純物の生成を抑制させることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0084】
前記アミノ酸は製剤内に約0.01~約1mg/mLの濃度、具体的には、約0.01~約0.8mg/mL、約0.01~約0.5mg/mL、約0.02~約0.5mg/mL、又は約0.02~約0.4mg/mLで存在してもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0085】
一方、本発明の液状製剤はさらに多価アルコールを含んでもよいが、特にこれに限定されない。
【0086】
例えば、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤だけでなく、多価アルコールを含んでもよい。具体的には、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;及び非イオン性界面活性剤、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;及びアミノ酸、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;非イオン性界面活性剤;及びアミノ酸で必須で構成される安定化剤に多価アルコールをさらに含んでもよいが、特にこれに制限されるものではない。
【0087】
本発明の製剤にさらに含まれてもよい多価アルコールの好ましい例としては、プロピレングリコール及び低分子量のポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量のポリプロピレングリコールなどを挙げることができ、これらの一つ又は二つ以上の組み合わせの形態で用いられる。また、本発明の多価アルコールから糖アルコールが除外されてもよいが、これに制限されない。
【0088】
一方、本発明の液状製剤には前記説明した糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;緩衝物質;アミノ酸;及び非イオン性界面活性剤の以外に、本発明の効果を損傷させない範囲内で当業界に公知となっているその他の成分乃至物質が選択的にさらに含まれてもよい。
【0089】
一方、本発明の液状製剤の一つの具体例は等張化剤を含んでも含まなくてもよい。前記等張化剤は浸透圧の調節を示す物質をいう。前記等張化剤は本発明による液状製剤を体内に投与する場合、浸透圧を適宜維持する役割をすることができる。
【0090】
このような等張化剤の代表的な例としては、水溶性無機塩として塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はクエン酸ナトリウムなどを挙げることができ、具体的には塩化ナトリウムを挙げることができるが、特にこれに制限されるものではない。このような無機塩は、上述した安定化剤にさらに含まれる選択的な成分であってもよく、特にこれに制限されない。これと併せて上述した安定化制も等張化剤として役割を果たすことができる。
【0091】
本発明による製剤において前記等張化剤の濃度は0~200mM、0~150mM、0~100mM、10~200mM、10~150mM、10~100mM、10~50mM、20~100mM、20~80mM、20~50mM、20~30mM、又は40~50mMであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0092】
本発明において用語「GLP-2の持続型結合体」は、本発明の液状製剤に含まれる有効成分であり、薬理学的有効量で製剤に含まれてもよく、その例としてGLP-2の持続型結合体の濃度が、約18~約18630nmol/mL、約18~約14904nmol/mL、約18~約9315nmol/mL、約18~約7452nmol/mL、約18~約5589nmol/mL、約18~約4658nmol/mL、約18~約2981nmol/mL、約18~約1863nmol/mL、約18~約1491nmol/mL、約18~約1211nmol/mL、約18~約932nmol/mL、約18~約746nmol/mL、約18~約559nmol/mL、約18~約373nmol/mL、約37~約5589nmol/mL、約93~約2236nmol/mL、約149~約1491nmol/mL、約186~約2981nmol/mL、約186~約1118nmol/mL、約93~約18630nmol/mL、約186~約9315nmol/mL、約279~約5589nmol/mL、約372~約4658nmol/mL、約465~約3726nmol/mL、約558~約2981nmol/mL、約18~約14910nmol/mL、約18~約9320nmol/mL、約18~約7460nmol/mL、約18~約5590nmol/mL、約18~約4660nmol/mL、約18~約1870nmol/mL、約18~約1220nmol/mL、約18~約940nmol/mL、約18~約750nmol/mL、約18~約560nmol/mL、又は約18~約380nmol/mL、約37~約5590nmol/mL、約93~約2240nmol/mL、約149~約1500nmol/mL、約186~約2990nmol/mL、約186~約1120nmol/mL、約186~約9320nmol/mL、約279~約5590nmol/mL、約372~約4660nmol/mL、約465~約3730nmol/mL、約558~約2990nmol/mL、約186nmol/mL、約186.3nmol/mL、約187nmol/mL、約1117nmol/mL、約1117.8nmol/mL、約1118nmol/mL、約558nmol/mL、約558.9nmol/mL、約559nmol/mL、約1490nmol/mL、約1490.4nmol/mL、約1491nmol/mL、約2980nmol/mL、約2980.8nmol/mL、又は約2981nmol/mLであってもよいが、これに限定されない。
【0093】
具体的には、持続型結合体はGLP-2に免疫グロブリンFc切片が連結された形態であってもよい。前記結合体は免疫グロブリンFc切片が結合していないGLP-2に比べて増加した効力の持続性を示すことができ、本発明では、このような結合体を「持続型結合体」と称する。本発明において持続型結合体は結合体と混用される。
【0094】
一方、このような結合体は、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0095】
また、GLP-2の持続型結合体においてGLP-2と免疫グロブリンFc切片の連結は、物理又は化学結合であるか、非共有又は共有結合であってもよく、具体的に共有結合であってもよいが、これに制限されない。
【0096】
また、GLP-2の持続型結合体はGLP-2と免疫グロブリンFc切片の連結方法は特に制限されないが、リンカーを通じてGLP-2と免疫グロブリンFc切片が互いに連結されたものであってもよい。
【0097】
また、GLP-2の持続型結合体に関する韓国公開特許第10-2019-0037181号は参照として本願に含まれる。
【0098】
一つの具体的な実施形態において、本発明のGLP-2の持続型結合体は下記化学式(1)の構造を有する。
【0099】
X - La - F・・・(1)
【0100】
ここで、
Xは、GLP-2であり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Fは、免疫グロブリンFc切片であり、
前記「-」は非共有結合あるいは共有結合など如何なる化学的結合であってもよい。
【0101】
一つの具体的な実施形態において、本発明の液状製剤は、前記化学式(1)で表されるGLP-2の持続型結合体を18nmol/mL~18630nmol/mLで含み、
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及びpHを4.5~6.5の範囲で維持するための分量の緩衝物質を含む安定化剤を含んでもよい。
【0102】
本明細書においてFc切片といえば、免疫グロブリンのパパインの消化から得る天然型配列だけでなく、その誘導体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はこれらの組み合わせにより変換され、天然型と相異なった配列まで網羅して含まれる。
【0103】
本発明において用語「グルカゴン様ペプチド-2(Glucagon-like peptide-2、GLP-2)」は、腸損傷、腸疾患、及び胃疾患などの予防、治療及び改善機能を有するペプチド(化学式(1)においてXに該当)であり、天然型GLP-2だけでなく、そのアゴニスト(agonist)及び誘導体(derivative)なども含む。
【0104】
前記天然型GLP-2のアミノ酸配列は下記の通りである。
GLP-2(1-33)
HADGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD(配列番号1)
【0105】
本発明において「GLP-2受容体アゴニスト」は、生体内GLP-2受容体と結合して天然型GLP-2と同一のあるいは類似の生理活性を引き起こす物質をいう。例えば、GLP-2アゴニストには天然型GLP-2又はGLP-2誘導体が含まれてもよい。
【0106】
本発明において「GLP-2誘導体」は、天然型GLP-2において少なくとも一つ以上のアミノ酸において置換(substitution)、追加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択された変形が起こったものであってもよく、天然型GLP-2のように腸損傷、腸疾患又は胃疾患などの予防、治療及び/又は改善機能を有する天然型GLP-2の模倣体を含む。追加されるアミノ酸は、非天然型アミノ酸(例;D型アミノ酸)も可能であり、天然型アミノ酸以外に非天然型アミノ酸の置換も可能である。前記追加されるアミノ酸配列は天然型GLP-2に由来したものであってもよいが、これに限定されない。また、本発明においてアミノ酸の変形は、少なくとも一つのアミノ酸の置換、追加、除去、又はそれらの組み合わせと共に;又はこれと独立に、アミノ酸残基の一部のグループが化学的に置換(例;alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基で置換)、除去(例;deamination)及び/又は修飾(例;N-methylation)されたことを意味してもよいが、これに制限されるものではない。
【0107】
一つの具体的な実施形態において、本発明のGLP-2の誘導体は、天然型GLP-2とアミノ酸配列で少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性を示すものであってもよく/示したり、GLP-2のアミノ酸の一つの残基の一部のグループが化学的に置換(例;alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基で置換)、除去(例;deamination)及び/又は修飾(例;N-methylation)された形態であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0108】
具体的には、天然型GLP-2のアゴニスト及び誘導体は、これに制限されないが、腸損傷、腸疾患及び胃疾患などの予防、治療及び改善機能を有することができる。
【0109】
一つの具体的な実施形態において本発明のGLP-2は、N末端アミノ基が置換、除去、又は修飾されてもよいが、これに制限されない。本発明のGLP-2は、持続型結合体の製造時にGLP-2の生体内活性に重要な部位であるN末端に結合が起こることを防止するために、N末端ヒスチジンのアルファアミノ基を除去する方法、N末端アミノ基をヒドロキシル(hydroxyl)基又はカルボキシル(carboxyl)基で置換して合成する方法、N末端ヒスチジンのアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基を除去してイミダゾ-アセチル(imidazo-acetyl)作用基のみを残す方法、N末端アミノ基を二個のメチル基で修飾する方法などを通じて製造されてもよい。
【0110】
具体的には、GLP-2は、GLP-2のN末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジルGLP-2(imidazoacetyl-deshistidyl-GLP-2、CA-GLP-2)、GLP-2のN末端アミノ基が除去されたデスアミノヒスチジルGLP-2(desaminohistidyl GLP-2、DA-GLP-2)、GLP-2のN末端アミノ基がヒドロキシル基で置換されたβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジルGLP-2(β-hydroxyimidazopropionyldeshistidyl GLP-2、HY-GLP-2)、GLP-2のN末端アミノ基が二個のメチル基で修飾されたN-ジメチルヒスチジルGLP-2(N-dimethylhistidyl GLP-2、DM-GLP-2)、又はGLP-2のN末端アミノ基がカルボキシル基で置換されたβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジル-GLP-2(β-carboxyimidazopropionyl-deshistidyl GLP-2、CX-GLP-2)であってもよいが、これに限定されない。一つの非制限的な例示としてGLP-2誘導体の製造に用いられた物質構造は下記の通りである。
【0111】
【0112】
本願においてイミダゾアセチルデスヒスチジル(ジン)、デスアミノヒスチジル(ジン)、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジル(ジン)、N-ジメチルヒスチジル(ジン)、及びβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジル(ジン)は、それぞれイミダゾアセチル、デス-アミノ-ヒスチジル、β-ヒドロキシ-イミダゾプロピオニル、ジメチル-ヒスチジル、β-カルボキシル-イミダゾプロピオニルと同様の意味で用いられる。
【0113】
一つの具体的な実施形態において、GLP-2誘導体は、配列番号1において1番、2番、30番及び33番のアミノ酸中の少なくとも一つのアミノ酸における変形を含んでもよいが、これに制限されない。具体的には、本発明においてアミノ酸の変形は、少なくとも一つのアミノ酸の置換、追加、除去、修飾及びこれらの組み合わせからなる群から選択された変形であってもよく、この時に追加されるアミノ酸は非天然型アミノ酸(例;D型アミノ酸)も可能であり、天然型アミノ酸以外に非天然型アミノ酸の置換も可能である。前記追加されるアミノ酸配列は天然型GLP-2に由来したものであってもよいが、これに限定されない。また、本発明においてアミノ酸の変形は、少なくとも一つのアミノ酸の置換、追加、除去、又はこれらの組み合わせと共に;又はこれと独立に、アミノ酸残基の一部のグループが化学的に置換(例;alpha-methylation、alpha-hydroxylation、azido基で置換)、除去(例;deamination)及び/又は修飾(例;N-methylation)されたことを意味し得るが、これに限定されるものではない。
【0114】
一つの具体的な実施形態において、GLP-2は下記一般式1のアミノ酸配列を含んでもよいが、これに制限されない:
【0115】
[一般式1]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号9)
【0116】
ここで、
X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X30はリシン又はアルギニンであり;
X34は存在しないか、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、6-アジドリシン、又はシステインである。
【0117】
一つの具体的な実施形態において、GLP-2は下記一般式2のアミノ酸配列を含んでもよいが、これに制限されない:
【0118】
[一般式2]
X1X2DGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTX30ITDX34(配列番号10)
【0119】
ここで、
X1はヒスチジン、イミダゾアセチルデスヒスチジン、デスアミノヒスチジン、β-ヒドロキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジン、N-ジメチルヒスチジン、又はβ-カルボキシイミダゾプロピオニルデスヒスチジンであり;
X2はアラニン、グリシン、又はAib(2-aminoisobutyric acid)であり;
X30はリシン又はアルギニンであり;
X34は一つ以上の任意のアミノ酸又は変形が起こった一つ以上の任意のアミノ酸である。
【0120】
具体的には、前記アミノ酸は天然型アミノ酸又は非天然型アミノ酸であってもよく、前記アミノ酸の変形は前述した通りである。
【0121】
また、前記一般式1又は2のアミノ酸配列の中で配列番号1と同一の配列は除いてもよいが、これに制限されない。
【0122】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は、天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシン又はAib(2-aminoisobutyric acid)への置換、30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換、又はこれらの組み合わせを有してもよいが、これに制限されない。また、前記GLP-2誘導体はC末端(例えば、33番目のアミノ酸)にチオール基(例えば、システイン)、アミノ基(例えば、リシン、アルギニン、グルタミン又はヒスチジン)、又はアジド基(例えば、6-アジドリシン)が導入されてもよいが、これに制限されない。
【0123】
GLP-2誘導体の持続型結合体の製造時に前記導入されたグループで結合が起こるため、これを用いて結合位置が選択的に調節されたGLP-2結合体を製造できる。具体的には、GLP-2誘導体のヒドロキシル基、チオール基、アミノ基又はアジド基にリンカーの一方の末端が結合し、リンカーの他方の末端に生体内半減期を増加させる物質(例えば、免疫グロブリンFc切片)が結合されてもよい。前記チオール基、アミノ基又はアジド基はGLP-2にアミノ酸を追加して導入させることができるが、これに制限されない。前記チオール基はGLP-2にシステイン(C)を追加して導入され;アミノ基はリシン(K)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)又はヒスチジン(H)を追加して導入され;アジド基は6-アジドリシン(6-azidolysine,AZK)を追加して導入されてもよいが、これに制限されない。
【0124】
具体的には、GLP-2誘導体は少なくとも一つの残基がシステイン、リシン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン又は6-アジドリシンであってもよいが、これに制限されない。
【0125】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換及びC末端にチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号2のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0126】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換及びC末端にアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号3のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0127】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然型GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換及びC末端にアミノ基(例えば、リシン)の導入を含み、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号4のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0128】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換及びC末端にアジド基(例えば、6-アジドリシン)の導入を含み、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号5のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0129】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンのグリシンへの置換、天然型GLP-2の30番目のアミノ酸であるリシンのアルギニンへの置換及びC末端にチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号6のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。
【0130】
具体的には、本発明のGLP-2誘導体は天然型GLP-2の2番目のアミノ酸であるアラニンの2-アミノイソ酪酸への置換及びC末端にチオール基(例えば、システイン)の導入を含み、その例として配列番号8のアミノ酸配列を有することができ、さらに具体的には、N末端の第一のアミノ酸であるヒスチジン残基のアルファ炭素及びアルファ炭素に結合したN末端アミノ基が除去されたイミダゾアセチルデスヒスチジンを含んでもよく、その例として配列番号7のアミノ酸配列を有してもよいが、これに制限されない。前記配列番号2~8のGLP-2誘導体を下記表1に示した。
【0131】
【0132】
前記表1においてcaHはヒスチジンの代わりにイミダゾアセチルデスヒスチジンで置換されたことを、Aibは2アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid)を、AZKは6-アジド-L-リシン(6-azido-L-lysyine)を指す。
【0133】
本発明によるGLP-2は、前記の特定配列を含むペプチド、前記の特定配列で構成された(又は必須で構成された)ペプチドであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0134】
一方、本願において「特定配列番号で構成される(からなる)」ペプチド又はGLP-2と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチド又はGLP-2と同一又は相当する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加又は自然に発生し得る突然変異、あるいはこのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、このような配列の付加あるいは突然変異を有する場合にも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0135】
具体的には、GLP-2誘導体は一般式1又は一般式2において(1)X2がグリシン又はAibであるか、(2)X30がリシン又はアルギニンであるか、又は(3)X2がグリシン又はAibであり、X30がリシン又はアルギニンであってもよいが、これに限定されない。
【0136】
具体的には、GLP-2誘導体は一般式1又は一般式2において、
(1)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、
(2)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34がリシンであるか、
(3)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がリシンであるか、
(4)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がリシンであり、X34が6-アジドリシンであるか、
(5)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がグリシンであり、X30がアルギニンであり、X34がシステインであるか、
(6)X1がイミダゾアセチルデスヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであるか、又は
(7)X1がヒスチジンであり、X2がAibであり、X30がリシンであり、X34がシステインであってもよいが、これに限定されない。
【0137】
本発明において、前記GLP-2誘導体は生体内のタンパク質切断酵素から保護し、安定性を増加させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾されたり有機基で保護されたり、又はGLP-2の末端などにアミノ酸が追加されて変形された形態であってもよい。
【0138】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているため、このような電荷を除去するために、N末端をアセチル化(acetylation)及び/又は-末端のアミド化(amidation)を行ってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。具体的には、本発明において、GLP-2誘導体はそのC末端が変形されないか、アミド化したものであってもよいが、これに限定されない。
【0139】
本発明のGLP-2は、Solid phase合成法を通じて合成されることができ、組換え方法でも生産可能であり、商業的に依頼して製造できる。
【0140】
前記化学式(1)において共有化学結合、非共有化学結合又はそれらの組み合わせによりLを通じてFとXとが互いに結合されてもよい。
【0141】
より具体的には、XとL、及びLとFは共有結合で互いに連結されてもよく、その時、前記結合体は化学式(1)の順に、X、L、及びFが共有結合を通じてそれぞれ連結された結合体であってもよい。
【0142】
また、前記FはXと直接的に連結されたり(即ち、前記化学式(1)においてaが0であったり)、又はリンカー(L)を通じて連結されたものであってもよい。
【0143】
一つの具体例として、前記化学式(1)の持続型結合体の一構成要素であるLaはエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカー、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、また、当該分野に既に知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0144】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであるLは、結合体で構成される以前は結合体の製造に用いられる作用基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は前記作用基を通じてXとFが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、前記エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーは2個、又は3個以上の作用基を含めてもよく、各作用基は同一又は相異してもよいが、これに制限されない。
【0145】
具体的には、前記リンカーは下記化学式(4)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、これに限定されるものではない:
【0146】
【0147】
ここで、n=10~2400、n=10~480、又はn=50~250であるが、これに限定されない。
【0148】
前記持続型結合体においてPEGの一部は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素と、その-(CH2CH2O)n-との間に介在する酸素原子も含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0149】
また、一つの具体的な実施形態において前記結合体はGLP-2と免疫グロブリンFc切片(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーにより共有結合で連結された構造であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0150】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、又はモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にこれに制限されるものではない。
【0151】
一つの具体例として前記エチレングリコール繰り返し単位はその例として、[OCH2CH2]nで表すことができ、n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が0超~約100kDaになるように定められてもよいが、これに限定されない。もう一つの例として、前記n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、約3.4kDa又は約10kDaであってもよいが、これに限定されない。
【0152】
一つの具体的な実施形態において前記リンカーの両末端は免疫グロブリンFc切片のチオール基、アミノ基、ヒドロキシル基及びGLP-2のチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシル基に結合してもよいが、これに制限されない。
【0153】
具体的には、前記リンカーは両末端にそれぞれ免疫グロブリンFe及びGLP-2と結合され得る反応基、具体的には免疫グロブリンFc切片のシステインのチオール基;N-末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置したアミノ基;及び/又はC末端に位置したヒドロキシル基と結合し、GLP-2のシステインのチオール基;リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基;アジドリシンのアジド基;及び/又はヒドロキシル基と結合され得る反応基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0154】
より具体的には、前記反応基は、アルデヒドグループ、マレイミドグループ及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0155】
前記において、アルデヒドグループとしてプロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを例として挙げることができるが、これに制限されない。
【0156】
前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジル吉草酸、スクシンイミジルメチルブタン酸、スクシンイミジルメチルプロピオン酸、スクシンイミジルブタン酸、スクシンイミジルプロピオン酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられてもよいが、これに限定されない。
【0157】
前記リンカーは、前記のような反応基を通じて免疫グロブリンFc切片であるF及びGLP-2であるXに連結され、リンカー連結部に転換されることができる。
【0158】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものより遥かに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成できる。
【0159】
本発明のリンカーの末端反応基は互いに同一又は異なってもよい。前記リンカーは、末端にアルデヒドグループ反応基を有するものであってもよく、また、前記リンカーは、末端にそれぞれアルデヒドグループ及びマレイミド反応基を有してもよく、又は末端にそれぞれアルデヒドグループ及びスクシンイミド反応基を有してもよいが、これに制限されない。
【0160】
例えば、一方の末端にはマレイミドグループを、他方の末端にはアルデヒドグループ、プロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを有することができる。また、一つの例として、一方の末端にはスクシンイミジルグループを、他方の末端にはプロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを有することができる。
【0161】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールをリンカーとして用いる場合には、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前記多様な反応基で活性化したり、商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の結合体を製造できる。
【0162】
一つの具体的な実施形態において前記リンカーの反応基がGLP-2のシステイン残基、より具体的には、システインの-SH基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0163】
もし、マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はGLP-2誘導体の-SH基とチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基と還元的アルキル化反応を通じて連結できるが、これに制限されず、これは一例に該当する。
【0164】
このような還元的アルキル化を通じてPEGの一方の末端に位置した酸素原子に免疫グロブリンFc切片のN末端アミノ基が-CH
2CH
2CH
2-の構造を有するリンカー作用基を通じて互いに連結され、-PEG-O-CH
2CH
2CH
2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成でき、チオエーテル結合を通じてPEGの一方の末端がGLP-2のシステインに位置した硫黄原子に連結された構造を形成できる。上述したチオエーテル結合は
の構造を含んでもよい。
【0165】
しかし、上述した例に特に制限されるものではなく、これは一例に該当する。
【0166】
また、前記結合体において、リンカーの反応基が免疫グロブリンFc切片のN末端に位置した-NH2と連結されたものであってもよいが、これは一例に該当する。
【0167】
また、前記結合体において、GLP-2は反応基を有するリンカーとC末端を通じて連結されてもよいが、これは一例に該当する。
【0168】
本発明において「C末端」は、ペプチドのカルボキシ末端を意味することであり、本発明の目的上、リンカーと結合できる位置をいう。その例として、これに制限されないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端周囲のアミノ酸残基をいずれも含んでもよく、具体的には最末端から1番目~20番目のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0169】
一つの具体例として、前記化学式(1)の結合体は下記化学式(2)又は(3)の構造を有することができる。
【0170】
【0171】
【0172】
前記化学式(2)又は(3)において、Xは、前記で説明した化学式(1)のペプチドであり;
Fは免疫グロブリンFc切片であり;
nは自然数であってもよい。その時、nに関する説明は、前述の通りである。
【0173】
一つの具体例として、前記化学式(2)の持続型結合体は、GLP-2のXと免疫グロブリンFc切片Fがエチレングリコール繰り返し部を介在して共有結合で連結された構造であり、それぞれXは化学式(2)のスクシンイミド環に、Fは化学式(2)のオキシプロピレン基に連結された形態であってもよい。また、前記化学式(3)の持続型結合体は、GLP-2のXと免疫グロブリンFc切片Fがエチレングリコール繰り返し部を介在して共有結合で連結された構造であり、それぞれXは化学式(3)のオキシプロピレン基に、Fは化学式(3)の他のオキシプロピレン基に連結された形態であってもよい。
【0174】
前記化学式(2)又は(3)において、前記nの値は、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDa、又は1~20kDa又は10kDaになるように定められるものであってもよいが、これに限定されない。
【0175】
一つの実施形態において化学式(2)のスクシンイミド環又は化学式(2)のスクシンイミド環にXが連結される部位はXのC末端システインの硫黄原子であってもよい。また、化学式(3)のオキシプロピレン基又は化学式(3)のオキシプロピレン基にXが連結される部位はXのC末端システインの硫黄原子であってもよい。
【0176】
F内において化学式(2)又は化学式(3)のオキシプロピレン基に連結される部位は、特に限定されない。本発明の一つの実施形態において前記オキシプロピレン基に連結されるFの部位は、N-末端窒素又はF内部残基の窒素原子(例えば、リシンのイプシロン窒素)であってもよい。本発明の一つの具体的な実施形態において、Fが化学式(2)又は化学式(3)のオキシプロピレン基に連結される部位は、FのN-末端プロリンであってもよいが、これに制限されない。
【0177】
本発明において、「免疫グロブリンFc切片」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域を除いた、重鎖定常領域を意味する。具体的には、前記免疫グロブリンFc切片は重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)の部分を含むものであってもよく、より具体的には、ヒンジ領域(ヒンジ領域全体又は一部を意味する。)をさらに含むものであってもよい。本発明において免疫グロブリンFc切片は、免疫グロブリンFc領域と混用され得る。
【0178】
本明細書においてFc切片といえば、免疫グロブリンのパパインの消化から得る天然型配列だけでなく、その誘導体、置換体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はこれらの組み合わせにより変換され、天然型と相異なった配列など変形体まで網羅して含まれる。前記誘導体、置換体、変形体はFcRnに結合する能力を有することを前提とする。
【0179】
前記免疫グロブリンFc切片は、本発明の化学式(1)の結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、前記化学式(1)~(3)においてFに該当し得る。
【0180】
前記Fは、二つのポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されている構造であってもよいが、これに制限されない。前記窒素原子を通じての連結はリシンのイプシロンアミノ原子やN末端アミノ基に還元的アミノ化を通じて連結されてもよい。
【0181】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(即ち、還元的アミノ化が可能な作用基)と反応してアミンを生成した後、還元反応によりアミン結合の形成させる反応を意味し、当該技術分野に広く知られている有機合成反応である。
【0182】
一つの具体例として、前記Fは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよい。
【0183】
このような免疫グロブリンFc切片は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0184】
本発明において、免疫グロブリンFc切片は、N末端に特定ヒンジ配列を含んでもよい。
【0185】
本発明において、「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)を通じて免疫グロブリンFc切片の二量体を形成する部位を意味する。
【0186】
本発明において、前記ヒンジ配列は、下記アミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異されたものであってもよいが、これに制限されない:
【0187】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号11)。
【0188】
前記ヒンジ配列は、配列番号11のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して一つのシステイン残基のみを含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、一つのシステイン残基のみを含む、3~12個のアミノ酸で構成されたものであってもよいが、これに限定されない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次のような配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号12)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号13)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号14)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号15)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号16)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号17)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号18)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号19)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号20)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号21)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号22)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号23)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号24)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号25)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号26)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号27)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号28)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号29)、Ser-Cys-Pro(配列番号30)。
【0189】
さらに具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号30(Ser-Cys-Pro)又は配列番号21(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0190】
本発明のGLP-2誘導体持続型結合体の一つのさらに具体的な形態において、前記結合体内の前記免疫グロブリンFc領域のN末端はプロリンであり、この結合体は、前記プロリンの窒素原子を通じてFc領域がリンカーに連結されたものである。
【0191】
一つの具体的な実施形態において、免疫グロブリンFc切片は、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の二分子がホモ二量体(homodimer)やヘテロ二量体(hetero dimer)の二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の結合体はリンカーの一方の末端が二量体の免疫グロブリンFc切片の一鎖に連結された形態であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0192】
また、本発明の免疫グロブリンFc切片は、ヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに制限されない。
【0193】
本発明において、「N末端」はタンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味するものであり、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個以上のアミノ酸まで含むものであってもよい。
【0194】
また、本発明の免疫グロブリンFc切片は、天然型と実質的に同等又は向上した効果を奏する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除いて、一部又は全体の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc切片であってもよい。また、CH2及び/又はCH3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0195】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc切片は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の一個又は二個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、又は6)重鎖定常領域各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0196】
また、一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc切片は二量体形態(dimericform)であってもよく、二量体形態の一つのFc切片にXの一分子が共有結合的に連結されてもよく、その時、前記免疫グロブリンFcとXはリンカーにより互いに連結されてもよい。一方、二量体形態の一つのFc切片にXの二分子が対称的に結合することも可能である。その時、前記免疫グロブリンFcとXはリンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、前記例に制限されるものではない。
【0197】
また、本発明の免疫グロブリンFc切片は天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はこれらの組み合わせにより相違する配列を有することを意味する。
【0198】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として用いられてもよい。
【0199】
また、ジスルフィド結合を形成できる部位が除去されたり、天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去されたり、又は天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために補体結合部位、例えば、Clq結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc切片の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0200】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知となっている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も通常生じる交換はアミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されることもできる。
【0201】
前記Fc誘導体は、本発明のFc切片と同等の生物学的活性を示し、Fc切片の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであってもよい。
【0202】
また、このようなFc切片は、ヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット又はモルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞又は微生物から得られた組換え型又はその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は全体免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離できる。さらに具体的な実施形態においてはヒト由来のFc切片を微生物から得た組換え型免疫グロブリンFc切片である。
【0203】
また、免疫グロブリンFc切片は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc切片は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が減少又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、薬物のキャリアとしての本来の目的に、より符合する形態は糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc切片であるといえる。
【0204】
本発明において「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc切片をいい、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核動物、さらに具体的な実施形態においては大腸菌で生産してグリコシル化していないFc切片を意味する。
【0205】
一方、免疫グロブリンFc切片は、ヒト又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、さらに具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0206】
また、免疫グロブリンFc切片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来又はそれらの組み合わせ(combination)又はそれらの混成(hybrid)によるFc切片であってもよい。さらに具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、より具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となったIgG由来のものである。より一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc切片はIgG4 Fc切片であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc切片であるが、これに制限されるものではない。
【0207】
また、一つの具体例として、免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4 Fcの断片であり、各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)を通じて二個の単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)であってもよく、その時、ホモ二量体は各単量体において35番及び95番のシステイン間及び141番及び199番のシステイン間に内部のジスルフィド結合、即ち二個のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有したり/有し、各単量体のアミノ酸の数は221個であってもよく、ホモ二量体を形成するアミノ酸は全体442個のアミノ酸であってもよいが、これに制限されない。具体的には、免疫グロブリンFc切片は配列番号32のアミノ酸配列(442個のアミノ酸で構成される)を含むホモ二量体(ここで、配列番号31のアミノ酸配列(221個のアミノ酸で構成される)を有する単量体二個が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体内の単量体は、それぞれ独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成する)であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0208】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc切片をコードするポリペプチドが相違する起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。即ち、IgGFc、IgAFc、IgMFc、IgDFc及びIgEのFc切片からなるグループから選択された2個以上の切片から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0209】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に2個以上の相違する起源の免疫グロブリンFc切片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループより1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含めてもよい。
【0210】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではそれらの組み合わせ又はこれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存的毒性(CDC、Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc切片である。
【0211】
一方、GLP-2又はGLP-2の持続型結合体はペプチドそのもの、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、又はその溶媒和物の形態をいずれも含む。
【0212】
また、GLP-2又はGLP-2の持続型結合体は薬学的に許容される任意の形態であってもよい。
【0213】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0214】
前記用語、「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、又はアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0215】
本発明において用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含んでもよい。
【0216】
また、本発明で用いられた用語「溶媒和物」とは、本発明によるペプチド、化合物又はこの塩が溶媒分子と複合体を形成したことをいう。
【0217】
具体的な例として、本発明の液状製剤は、
GLP-2の持続型結合体;
クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;
グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール又はそれらの組み合わせ;
ポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤;及び
メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、グリシン、システイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5であってもよいが、これに限定されない。
【0218】
具体的な例として、本発明の液状製剤は、
薬理学的有効量(例えば、18nmol/mL~18630nmol/mL)のGLP-2の持続型結合体;
5~100mMの緩衝物質;
1~20%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)の非イオン性界面活性剤;及び
0.01~1mg/mLのアミノ酸を含み、
pH4.5~6.5であってもよいが、これに限定されない。
【0219】
具体的な例として、本発明の液状製剤は、
18~18630nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
5~100mMの酢酸とその塩、又はクエン酸とその塩の緩衝物質;
1~20%(w/v)のスクロース、マンニトール、ソルビトール、又はそれらの組み合わせ;
0.001~0.2%(w/v)のポリソルベート;及び
0.01~1mg/mLのメチオニンを含み、
pH4.5~6.5であってもよいが、これに限定されない。
【0220】
具体的な例として、本発明の液状製剤は、
186~2981nmol/mLのGLP-2の持続型結合体;
10~40mMの酢酸とその塩、又はクエン酸とその塩の緩衝物質;
2~15%(w/v)のスクロース、マンニトール、ソルビトール、又はそれらの組み合わせ;
0.002~0.05%(w/v)のポリソルベート;及び
0.02~0.5mg/mLのメチオニンを含み、
pH4.8~6.0であってもよいが、これに限定されない。
【0221】
本発明を具現するもう一つの様態は、前記液状製剤の製造方法を提供する。
【0222】
具体的には、前記製造方法は(i)GLP-2及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、GLP-2の持続型結合体と(ii)糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質を含む安定化剤を互いに混合する段階を含んでもよい。
【0223】
前記GLP-2の持続型結合体、緩衝物質、糖アルコール、糖、安定化剤及び液状製剤については、前述の通りである。
【0224】
本発明の治療方法は、液状製剤を薬学的(治療的)有効量で投与することを含んでもよい。適した総1日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定患者に関する具体的な薬学的(治療的)有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって異なる製剤が用いられるかどうかをはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に用いられたり同時に用いられる薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子により異なって適用することが好ましい。
【0225】
以下、本発明を下記実施例により、より詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0226】
実施例1.CA-GLP-2 KC-PEG(10K)-免疫グロブリンFc結合体又はCA-GLP-2 RC-PEG(10K)免疫グロブリンFc結合体の製造
10kDa MAL-ALD PEG(両末端の水素がそれぞれ3-[3-(N-マレイミジル)プロパノール]アミノプロピル基と3-オキソプロピル基(プロピルアルデヒド基)で改質された分子量10kDaのポリエチレングリコールであるマレイミド-PEG-アルデヒド、日本NOF社)をCA-GLP-2 KC又はCA-GLP-2 RC(CPC、Chinese Peptide Co、中国)の34番のシステイン残基にペギル化させるためにCA-GLP-2 KC又はCA-GLP-2 RCとPEGのモル比を1:1~2、ペプチド濃度を1~3mg/mlにして1~3時間反応させた。その時、反応は50mMトリス(Tris)pH7.5とイソプロパノールの混合溶媒で行われた。反応液は、クエン酸ナトリウムpH2.0、エタノールが含まれたバッファと塩化カリウム濃度勾配を用いたSP Sepharose High Performance(GE,米国)カラムを用いてモノペギル化された(mono-PEGylated)CA-GLP-2 KC又はモノペギル化されたCA-GLP-2 RCを精製した。
【0227】
次に、前記精製されたモノペギル化されたCA-GLP-2 KC又はモノペギル化されたCA-GLP-2 RCと配列番号32の免疫グロブリンFc切片のモル比が1:2~1:6になるようにし、全体タンパク質濃度を30~35mg/mLにして2~8℃で12~20時間反応させた。その時、反応液は100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)とイソプロパノールに還元剤として20mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウム[sodium cyanoborohydride(NaCNBH3)]を添加した。
【0228】
反応が終結した後、反応液はビス-トリス(bis-Tris)pH6.5バッファと塩化ナトリウム濃度勾配を用いてSource15Q(GE,米国)カラムに適用し、硫酸アンモニウムとクエン酸ナトリウムpH5.0~5.2の濃度勾配を用いてSource 15ISO(GE、米国)に適用し、免疫グロブリンFcにCA-GLP-2 KC又はCA-GLP-2 RCがPEGにより共有結合で連結された結合体であるCA-GLP-2 KC(10K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 KC-PEG(10K)-免疫グロブリンFcとCA-GLP-2 RC(10K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 RC-PEG(10K)-免疫グロブリンFcを精製した。HPLC逆相分析結果、結合体の純度は、それぞれ92.9%、95.6%であった。
【0229】
実施例2.CA-GLP-2 RK-PEG(3.4K又は10K)免疫グロブリンFc結合体の製造
3.4kDa又は10kDa ALD(2)PEG(両末端の水素が3-オキソプロピル基(プロピルアルデヒド基)で改質された、分子量3.4kDa又は10kDaのポリエチレングリコールであるアルデヒド-PEG-アルデヒド、日本NOF社)をCA-GLP-2 RK(CPC、Chinese Peptide Co.,中国)の34番のリシン残基にペギル化させるためにCA-GLP-2 RKとPEGのモル比を1:5~1:20、ペプチド濃度を5~10mg/mLにして2~8℃で4~16時間反応させた。その時、反応は20mMヘペス(HEPES)pH7.5とエタノールで行われ、還元剤である20mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムボロヒドリドを添加して反応させた。反応液は、クエン酸ナトリウムpH2.0、エタノールが含まれた緩衝溶液と塩化カリウム濃度勾配を用いたSource 15S(GE,米国)カラムを用いてモノペギル化されたCA-GLP-2 RKを精製した。
【0230】
次に、前記精製されたモノペギル化されたCA-GLP-2 RKと配列番号32の免疫グロブリンFc切片の結合体を前記実施例1と同様な反応及び精製条件に応じて、製造及び精製した。HPLC逆相分析結果、免疫グロブリンFc切片にCA-GLP-2 RKがPEGにより共有結合で連結された結合体であるCA-GLP-2 RK(3.4K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 RK-PEG(3.4K)-免疫グロブリンFcとCA GLP-2RK(10K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 RK-PEG(10K)-免疫グロブリンFcの純度は、それぞれ94.3%、92.6%であった。
【0231】
実施例3.CA-GLP-2 KK-PEG(10K)-免疫グロブリンFc結合体及びCA-GLP-2 KAZK-PEG(10K)-免疫グロブリンFc結合体の製造
実施例2の方法によりCA-GLP-2 KK及びCA-GLP-2 KAZKを用いて、配列番号32の免疫グロブリンFc切片にCA-GLP-2 KK又はCA-GLP-2 KAZKがPEGにより共有結合で連結された結合体であるCA GLP-2 KK(10K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 KK-PEG(10K)-免疫グロブリンFcとCA GLP-2 KAZK(10K PEG)誘導体の持続型結合体CA-GLP-2 KAZK-PEG(10K)-免疫グロブリンFcを製造及び精製した。
【0232】
実施例4:緩衝物質の種類とpHによるGLP-2誘導体ペプチドの持続型結合体の安定性評価
緩衝物質、界面活性剤としてポリソルベート20、糖アルコール、そしてメチオニンからなる液状製剤に基づいて緩衝物質の種類とpHの下でGLP-2誘導体ペプチド(以下、「GLP-2誘導体」と命名)の持続型結合体の安定性を比較した。
【0233】
下記表2のような組成をそれぞれGLP-2誘導体(CA-GLP-2 RK(3.4K PEG))の持続型結合体(液状製剤内の濃度:約186.3nmol/mL)の液状製剤として用いて25℃で5週間保管後、イオン交換クロマトグラフィ法(Ion Exchange High Performance Liquid Chromatography、IE-HPLC)、逆相クロマトグラフィ法(Reverse Phase-High Performance Liquid Chromatography、RP-HPLC)及びサイズ排除クロマトグラフィ法(Size Exclusion Chromatography、SE-HPLC)を用いて分析した。
【0234】
表3のIE-HPLC(%)、RP-HPLC(%)及びSE-HPLC(%)はArea%/Start Area%(%)であり、初期結果値に比べたGLP-2誘導体の持続型結合体の残存率を示す。
【0235】
【0236】
【0237】
前記結果から見られるように、クエン酸ナトリウムと酢酸ナトリウム緩衝液の存在下でpHにより安定性の変化を有することを確認した。
【0238】
実施例5:安定化剤の種類とpHによるGLP-2誘導体の持続型結合体の安定性評価
前記液状製剤の組成(酢酸ナトリウム、ポリソルベート20及びメチオニン)に基づいて安定化剤の種類及びpHによるGLP-2誘導体の持続型結合体の安定性を比較した。
【0239】
安定化剤の場合、前記実施例1で確認されたマンニトールを含めてソルビトールとスクロースを追加し、pHは5.1と6.0を比較してGLP-2誘導体の持続型結合体の安定性を比較した。
【0240】
その時、マンニトール、ソルビトール及びスクロースの濃度は、市販の剤形及び許可機関で勧める最大許容の範囲を考慮した。
【0241】
下記表4のような組成をそれぞれGLP-2誘導体(CA-GLP-2 RK(3.4K PEG))の持続型結合体(液状製剤内の濃度:約1117.8nmol/mL)の液状製剤として用いて25℃で4週間保管後、IE-HPLC、RP-HPLC及びSE-HPLCを用いて分析した。
【0242】
表5のIE-HPLC(%)、RP-HPLC(%)及びSE-HPLC(%)はArea%/Start Area%(%)であり、初期結果値に比べたGLP-2誘導体の持続型結合体の残存率を示す。
【0243】
【0244】
【0245】
前記結果から見られるように、本願発明の液状製剤においてGLP-2誘導体の持続型結合体は安定した。
【0246】
実施例6:最終剤形組成を用いたGLP-2誘導体の持続型結合体の高濃度液状剤形の長期保存安定性試験
前述の実施例を通じて最終選択したpH6.0の酢酸ナトリウム、スクロース、ポリソルベート20及びメチオニンを含む液状製剤を用いて、GLP-2誘導体(CA-GLP-2 RK(3.4K PEG))の持続型結合体三つの濃度別高濃度液状剤形の長期保存安定性を分析した。表6は5±3℃で12カ月保管された高濃度液状剤形の長期保存安定性結果を示し、RP-HPLC(%)及びSE-HPLC(%)はArea%/Start Area%(%)であり、初期結果値に比べたGLP-2誘導体の持続型結合体の残存率を示す。
【0247】
【0248】
長期保存安定性試験の結果、三つの高濃度のGLP-2誘導体の持続型結合体は、本発明の液状製剤において9カ月以上安定していることを確認した。
【0249】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】