(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の液状製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/26 20060101AFI20230614BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230614BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230614BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230614BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230614BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230614BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230614BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230614BHJP
C07K 14/605 20060101ALI20230614BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P3/00
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/18
A61P3/04
A61P3/10
C07K14/605 ZNA
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571835
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021006462
(87)【国際公開番号】W WO2021235916
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061875
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リム ヒュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ベ スン ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076CC21
4C076DD07F
4C076DD09F
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD51Q
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076EE41
4C076EE49F
4C076EE59
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF63
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA16
4C084NA14
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
4C085AA25
4C085AA33
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続型結合体の液状製剤であって、前記液状製剤は
18~920nmol/mLの下記化学式(1)の持続型結合体;
前記液状製剤のpHを5.0~7.0の範囲で維持するための分量の緩衝物質;と
0.5~10%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;を含む液状製剤:
【化1】
前記化学式(1)において、Qは、下記一般式1のペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Zは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す:
[一般式1]
Xaa1-Aib-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-
Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-
Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1、配列番号47)
前記一般式1において、
下線を引いたN末端から16番であるグルタミン酸(Glu)及び20番であるリシン(Lys)残基の間でラクタム環が形成され、
Xaa1はヒスチジン、4-イミダゾアセチル(CA)、又はチロシンであり、
Xaa3はグルタミン酸又はグルタミンであり、
Xaa10はチロシン、又はシステインであり、
Xaa12はリシン、又はイソロイシンであり、
Xaa13はチロシン、アラニン、又はシステインであり、
Xaa14はロイシン、又はメチオニンであり、
Xaa15はシステイン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa17はアルギニン、イソロイシン、システイン、又はリシンであり、
Xaa18はアラニン、アルギニン、又はヒスチジンであり、
Xaa19はアラニン、グルタミン、又はシステインであり、
Xaa21はグルタミン酸、又はアスパラギン酸であり、
Xaa24はグルタミン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa28はアラニン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸、又はヒスチジンであり、
Xaa30はシステイン、グリシン、リシン、又はヒスチジンであるか、存在せず、
R1はシステイン、m-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号48)、又はm-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号49)であるか、又は存在せず、
ここで、
mはCys、又はProであり、
nはCys、又はGly、であるか、又は存在しない。
【請求項2】
前記ペプチドは、配列番号1~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項3】
前記ペプチドは、配列番号1、2、9、19、21~27、30~32、又は40~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号9、30~32、又は42~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号9である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項6】
前記R1は、システイン、Cys-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号50)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号51)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-Gly(配列番号52)、Pro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号53)、又はPro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys(配列番号54)であるか、存在しない、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項7】
Qは、そのC末端がアミド化している、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項8】
Qは、システインの硫黄原子を通じて連結されている、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項9】
前記免疫グロブリンFc切片は、IgG4由来である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項10】
Zは、2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されている、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項11】
Zは、配列番号76のアミノ酸配列のホモ二量体である、請求項1~10のいずれか一項に記載の液状製剤。
【請求項12】
Zは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されている、請求項11に記載の液状製剤。
【請求項13】
前記免疫グロブリンFc切片とQがグリコシル化されていない、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項14】
前記Lは、ポリエチレングリコールである、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項15】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部位の化学式量は1~100kDaの範囲にある、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項16】
前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択する、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項17】
前記緩衝物質は、酢酸とその塩である、請求項14に記載の液状製剤。
【請求項18】
前記液状製剤のpHは、5.0~5.5である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項19】
前記液状製剤のpHは、5.0~6.5である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項20】
前記液状製剤のpHは、5.1~6.0である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項21】
前記液状製剤のpHは、5.1~5.5である、請求項20に記載の液状製剤。
【請求項22】
前記緩衝物質の濃度は、液状製剤のpHを5.0~7.0の範囲で維持するための5~100mMである、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項23】
前記糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項24】
前記糖は、スクロースである、請求項23に記載の液状製剤。
【請求項25】
前記糖アルコールは、マンニトール及びソルビトールで構成される群から選択される一つ以上である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項26】
前記液状製剤は、非イオン性界面活性剤及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項27】
等張化剤をさらに含む、請求項26に記載の液状製剤。
【請求項28】
前記非イオン性界面活性剤は、液状製剤内に0.01~0.1%(w/v)の濃度である、請求項26に記載の液状製剤。
【請求項29】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、又はそれらの組み合わせである、請求項26に記載の液状製剤。
【請求項30】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択する、請求項29に記載の液状製剤。
【請求項31】
前記アミノ酸は、アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する安定化剤をさらに含む、請求項26に記載の液状製剤。
【請求項32】
前記液状製剤は
90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;
前記液状製剤のpHが5.0~6.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;
1~10%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び
ポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;と
アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の液状製剤。
【請求項33】
前記液状製剤は
90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;
前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;
4~10%(w/v)の糖;及び
ポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;と
アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する、請求項1~31のいずれか一項に記載の液状製剤。
【請求項34】
前記液状製剤は
90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;
前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;及び
4~10%(w/v)の糖を含有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の液状製剤。
【請求項35】
前記液状製剤は
アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤をさらに含有する、請求項34に記載の液状製剤。
【請求項36】
前記液状製剤は
ポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤をさらに含有する、請求項34に記載の液状製剤。
【請求項37】
前記液状製剤は
ポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤をさらに含有する、請求項35に記載の液状製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満と2型糖尿病を含む糖尿病は、現代社会に入って発生する代表的な代謝疾患の一つであり、世界的な健康脅威要素として認識されており、疾病の発症に伴う経済的費用も急増する傾向にある。
【0003】
GLP-1、GIPは代表的な胃腸ホルモンで、神経ホルモンであり、食物摂取に伴う血中糖濃度の調節に関与する物質である。グルカゴンは、膵臓から分泌されるペプチドホルモンであり、前記の二つの物質と共に血中糖濃度調節作用に関与する。
【0004】
GLP-1は、飲食物の摂取に刺激を受け、小腸から分泌されるホルモンであり、血糖濃度依存的に膵臓におけるインスリン分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制して血糖濃度を下げる作用を助ける。また、満腹因子として作用して胃腸の消化作用を遅らせ、飲食消化物の胃腸通過時間を遅らせて飲食物の摂取を減らす役割を有する。さらに、ラットに投与すると、飲食の摂取抑制と体重減少効果があることが報告されており、このような効果は、正常状態と肥満状態の両方で同様に示されることが確認され、肥満治療剤としての可能性を示した。
【0005】
GLP-1とともに飲食の摂取に刺激を受けて分泌される胃腸ホルモンの一つであるGIPは、小腸のK細胞から分泌される42個のアミノ酸で構成されたホルモンであり、血糖濃度に依存的に膵臓におけるインスリン分泌を促進し、血糖濃度を下げるのを助ける機能を果たし、GLP-1の活性増加効果、抗炎症効果などが報告された。
【0006】
グルカゴンは、薬物治療又は疾病、ホルモンや酵素欠乏などの原因で血糖が低下し始めると膵臓で産生される。グルカゴンは、肝臓にシグナルを伝達してグリコーゲンを分解してグルコースを放出するように誘導し、血糖レベルを正常レベルまで高める役割をする。それだけでなく、グルカゴンは、血糖上昇効果に加え、動物やヒトにおける食欲抑制及び脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼ(hormone sensitive lipase)を活性化させ、脂肪分解を促進及びエネルギー代謝(energy expenditure)を促進して抗肥満効果を奏することが報告された。
【0007】
そこで、GLP-1の血糖調節及び体重減少効果を利用して糖尿病と肥満の治療剤として開発しようとする研究が活発に進められており、GLP-1と約50%レベルのアミノ酸配列類似性を有するトカゲ毒(lizard venom)から作られるエキセンジン-4(exendin-4)も同種疾患に対する治療剤としての開発が進行中である。しかし、現在まで報告されているところによると、GLP-1とエキセンジン-4を用いた治療剤の場合、副作用として嘔吐と吐き気を伴うという問題が発生することが知られている。(Syed YY., Drugs., 2015 Jul;75(10):1141-1152)。
【0008】
よって、血糖調節、体重減少効果を有しながら嘔吐や吐き気などの副作用が発生せず、GLP-1とGIP、そしてグルカゴン受容体を高く活性化させる新規な物質が開発されている。また、GLP-1、GIP、グルカゴン受容体に対する活性化の比率が多様な物質、例えば、血糖強化のためにGLP-1及びGIPの活性は高いが、比較的グルカゴンの活性は低いため、体重減少効力もあるが、血糖調節能力がより高い物質や、GLP-1、GIP、及びグルカゴンのいずれも活性が高いため、体重減少効果の高い物質が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許公開第WO97/34631号
【特許文献2】国際特許公開第96/32478号
【特許文献3】国際公開特許WO2007/021129
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Syed YY., Drugs., 2015 Jul;75(10):1141-1152
【非特許文献2】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
開発されたグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体すべてに対して活性を有するペプチドの持続型結合体をウイルス汚染の懸念なしに長時間保管可能な安定な液状製剤の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の液状製剤を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、前記液状製剤の製造方法を提供することである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による液状製剤は、簡単な剤形で分子量の大きい本発明の結合体に保存安定性を提供し、経済的な提供が可能な利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a-1b】実施例3の液状製剤(クエン酸ナトリウム、pH 5.5、マンニトール、ポリソルベート20、メチオニン)に基づいて、緩衝物質の種類に応じたグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を確認した結果である。具体的には、表9のような組成をそれぞれグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の液状製剤として用いて25℃で6週保管後に安定性結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具現する一つの様態は、グルカゴン、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)及びGIP(Glucose-dependent insuliontropic polypeptide)三重活性体の持続型結合体の液状製剤である。前記持続型結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドが免疫グロブリンFc切片にリンカ一により共有結合されている物質を意味する。
【0017】
一つの具体例として、本発明は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体を薬理学的有効量として含み、i)緩衝物質及びii)糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせを含むアルブミン非含有安定化剤を含む、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤に関する。前記持続型結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドが免疫グロブリンFc切片に共有結合されている物質を意味する。
【0018】
一つの具体例として、前記液状製剤は、下記化学式(1)の持続型結合体;緩衝物質;及び糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせを含む持続型結合体の液状製剤であることを特徴とする::
【0019】
Q - La - Z・・・(1)
【0020】
前記化学式(1)において、Qは、下記一般式1のペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Zは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す:
【0021】
[一般式1]
Xaa1-Aib-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1、配列番号47)
【0022】
前記一般式1において、
下線を引いたN末端から16番であるグルタミン酸(Glu)及び20番であるリシン(Lys)残基の間でラクタム環が形成され、
Xaa1はヒスチジン、4-イミダゾアセチル(CA)、又はチロシンであり、
Xaa3はグルタミン酸又はグルタミンであり、
Xaa10はチロシン、又はシステインであり、
Xaa12はリシン、又はイソロイシンであり、
Xaa13はチロシン、アラニン、又はシステインであり、
Xaa14はロイシン、又はメチオニンであり、
Xaa15はシステイン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa17はアルギニン、イソロイシン、システイン、又はリシンであり、
Xaa18はアラニン、アルギニン、又はヒスチジンであり、
Xaa19はアラニン、グルタミン、又はシステインであり、
Xaa21はグルタミン酸、又はアスパラギン酸であり、
Xaa24はグルタミン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa28はアラニン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸、又はヒスチジンであり、
Xaa30はシステイン、グリシン、リシン、又はヒスチジンであるか、存在せず、
R1はシステイン、m-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号48)、又はm-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号49)であるか、又は存在せず、
ここで、
mはCys、又はProであり、
nはCys、又はGly、であるか、又は存在しなくてもよい。前記Aibはアミノイソ酪酸を意味する。
【0023】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は18~920nmol/mLの前記化学式(1)の持続型結合体;前記液状製剤のpHを5.0~7.0の範囲で維持するための分量の緩衝物質;及び0.5~10%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;を含む持続型結合体の液状製剤であることを特徴とする。
【0024】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は等張化剤、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする。
【0025】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は等張化剤を含まないことを特徴とする。
【0026】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含まないことを特徴とする。
【0027】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチドは配列番号1~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0028】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチドは配列番号1、2、9、19、21~27、30~32、又は40~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0029】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチドは配列番号9、30~32、又は42~46から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0030】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチドは配列番号9のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0031】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記R1はシステイン、Cys-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号50)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号51)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-Gly(配列番号52)、Pro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号53)、又はPro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys(配列番号54)であるか、又は存在しないことを特徴とする。
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Lはポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0032】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部位の化学式量は1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記化学式(1)の構造は下記化学式(2)の構造であることを特徴とする:
【0033】
【0034】
ここで、Q及びZは化学式(1)で定義した通りである。
【0035】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記エチレングリコール繰り返し単位は[OCH2CH2]nであり、nは自然数で、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDaになるように定められることを特徴とする。
【0036】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記nの値は、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が10kDaになるように定められることを特徴とする。
【0037】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記QはそのC末端がアミド化したことを特徴とする。
【0038】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Qはペプチド内のシステインの硫黄原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0039】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はIgG4由来であることを特徴とする。
【0040】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Zは2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されたことを特徴とする。
【0041】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Zは配列番号76のアミノ酸配列である単量体を含むことを特徴とする。
【0042】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Zは配列番号76のアミノ酸配列の単量体のホモ二量体であることを特徴とする。
【0043】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ZはそのN-末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0044】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片であるZとQがグリコシル化されていないことを特徴とする。
【0045】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0046】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質はクエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、ヒスチジン緩衝溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0047】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質は、酢酸とその塩であることを特徴とする。
【0048】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは5.0~5.5であることを特徴とする。
【0049】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは5.0~6.5であることを特徴とする。
【0050】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは5.1~6.0であることを特徴とする。
【0051】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは5.1~5.5であることを特徴とする。
【0052】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質の濃度は液状製剤のpHを5.0~7.0の範囲で維持するための5~100mMであることを特徴とする。
【0053】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖又は糖アルコールはスクロース、マンニトール、及びソルビトールで構成される群から選択される一つ以上であることを特徴とする。
【0054】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖又は糖アルコールは製剤内に1~20%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする。前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記持続型結合体は製剤内に18~2757nmol/mL、18~920nmol/mL、18~919nmol/mL、90~552nmol/mL、150~600nmol/mL、183~552nmol/mL、400~550nmol/mL、又は150~200nmol/mLの濃度で存在することを特徴とする。
【0055】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖はグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0056】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖はスクロースであることを特徴とする。
【0057】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖アルコールはマンニトール及びソルビトールで構成される群から選択される一つ以上であることを特徴とする。
【0058】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、非イオン性界面活性剤及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする。
【0059】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は等張化剤をさらに含むことを特徴とする。
【0060】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記等張化剤は塩化ナトリウムであることを特徴とする。
【0061】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0062】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0063】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0064】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤はアルギニン、グリシン、メチオニン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を安定化剤としてさらに含むことを特徴とする。
【0065】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~6.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;1~10%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;とアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有することを特徴とする。
【0066】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;とアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有することを特徴とする。
【0067】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.1~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有することを特徴とする。
【0068】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.1~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;及び4~10%(w/v)の糖を含有することを特徴とする。
【0069】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;及び4~10%(w/v)の糖を含有することを特徴とする。
【0070】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有することを特徴とする。
【0071】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0072】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0073】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記アミノ酸は、メチオニンであることを特徴とする。
【0074】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記メチオニンは製剤内に0.01~1mg/mLの濃度で存在することを特徴とする。
【0075】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記アミノ酸は、メチオニン又はアルギニンであることを特徴とする。
【0076】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記メチオニン又はアルギニンは製剤内に0.01~1mg/mLの濃度で存在することを特徴とする。
【0077】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は苛酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で1週間保管時に性状が透明であることを特徴とする。
【0078】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はIgG、IgA、IgD、IgE又はIgMに由来するFc切片であることを特徴とする。
【0079】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片は(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン;(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン;(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン;(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の一個又は二個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域又はヒンジ領域の一部との組み合わせ;及び(f)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体で構成された群から選択されることを特徴とする。
【0080】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片のそれぞれのドメインは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来した相違する起源を有するドメインのハイブリッドであることを特徴とする。
【0081】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片は、同一の起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された、二量体又は多量体の形態であることを特徴とする。
【0082】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片がIgG4 Fc切片であることを特徴とする。
【0083】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片がヒト非グリコシル化IgG4 Fc切片であることを特徴とする。
【0084】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片は、ジスルフィド結合を形成できる部位が除去される変形、天然型FcからN末端の一部のアミノ酸が除去される変形、天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加される変形、補体結合部位が除去される変形、又はADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity) 部位が除去される変形を含むか、前記変形の組み合わせを含む、天然型Fcの誘導体であることを特徴とする。
【0085】
本発明を具現する他の一態様は、前記液状製剤の製造方法である。
【0086】
一つの具体例として、本発明は(a)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体と(b)i)緩衝物質及びii)糖又は糖アルコールを混合する段階を含む前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤である、持続型結合体の液状製剤の製造方法に関する。
【0087】
前述の具体例のいずれか一つによる方法であって、前記液状製剤は等張化剤、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含むことを特徴とする。
【0088】
本発明を実施するための具体的な内容を説明すれば、次の通りである。
【0089】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0090】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認することができる。また、このような等価物は本発明に含まれることが意図される。
【0091】
本明細書の全般を通じて、天然的に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(2-アミノイソ酪酸、2-aminoisobutyric acid)、Sar(N-methylglycine)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
【0092】
アラニン Ala、A アルギニン Arg、R
アスパラギン Asn、N アスパラギン酸 Asp、D
システインCys、C グルタミン酸 Glu、E
グルタミン Gln、Q グリシンGly、G
ヒスチジン His、H イソロイシン Ile、I
ロイシン Leu、L リシン Lys、K
メチオニン Met、M フェニルアラニン Phe、F
プロリン Pro、P セリン Ser、S
トレオニン Thr、T トリプトファン Trp、W
チロシン Tyr、Y バリン Val、V
【0093】
本発明を具現する一つの様態は、グルカゴン、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)及びGIP(Glucose-dependent insuliontropic polypeptide)三重活性体の持続型結合体の液状製剤を提供する。
【0094】
具体的には、本発明はグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体を薬理学的有効量として含み、緩衝物質及び糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせを含む、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤に関する。
【0095】
具体的には、本発明は下記化学式(1)の持続型結合体;緩衝物質;及び糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;を含む液状製剤を提供する:
【0096】
Q - La - Z・・・(1)
【0097】
前記化学式(1)において、Qは、下記一般式1のペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Zは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す:
【0098】
[一般式1]
Xaa1-Aib-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1、配列番号47)
【0099】
前記一般式1において、
下線を引いたN末端から16番であるグルタミン酸(Glu)及び20番であるリシン(Lys)残基の間でラクタム環が形成され、
Xaa1はヒスチジン、4-イミダゾアセチル(CA)、又はチロシンであり、
Xaa3はグルタミン酸又はグルタミンであり、
Xaa10はチロシン、又はシステインであり、
Xaa12はリシン、又はイソロイシンであり、
Xaa13はチロシン、アラニン、又はシステインであり、
Xaa14はロイシン、又はメチオニンであり、
Xaa15はシステイン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa17はアルギニン、イソロイシン、システイン、又はリシンであり、
Xaa18はアラニン、アルギニン、又はヒスチジンであり、
Xaa19はアラニン、グルタミン、又はシステインであり、
Xaa21はグルタミン酸、又はアスパラギン酸であり、
Xaa24はグルタミン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa28はアラニン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸、又はヒスチジンであり、
Xaa30はシステイン、グリシン、リシン、又はヒスチジンであるか、存在せず、
R1はシステイン、m-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号48)、又はm-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号49)であるか、又は存在せず、
ここで、
mはCys、又はProであり、
nはCys、又はGly、であるか、又は存在しない。
【0100】
本発明において用語「液状製剤」は、医薬品の形態を液状に製剤化した薬物を意味し、これは、液状の内用製剤及び外用製剤をいずれも含む。
【0101】
本発明の液状製剤は、薬理効果を奏する化学式(1)の持続型結合体及び前記薬理効果を奏する物質が液状に製剤化される時、これを一定期間安定に維持及び/又は保存させる物質を含む。前記液状製剤の薬理効果を奏する化学式(1)の持続型結合体以外に含まれる成分は安定化剤と混用され得る。
【0102】
本発明の化学式(1)の持続型結合体の液状製剤において、保存安定性は正確な投与量を保障するために重要である。
【0103】
本発明は、薬理効果を奏する物質である化学式(1)の持続型結合体の特定濃度;pHを5.0~7.0の範囲で維持するための分量の緩衝物質;及び0.5~10%(w/v)の糖アルコール、糖又はそれらの組み合わせ;を含む場合、化学式(1)の持続型結合体の長期間保管時においても安定することを確認し、本発明の新たな剤形を提供するようになった。
本発明の液状製剤に含まれる前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の濃度は18nmol/mL~1840nmol/mLであってもよいが、これに限定されない。
【0104】
一つの具体例として、前記持続型結合体の濃度は18~920nmol/mLであってもよいが、これに限定されない。
【0105】
本発明において用語、「安定化剤」とは、製剤において有効成分などの構成成分を一定期間安定に維持させる物質をいう。本発明の前記安定化剤は、アルブミンを含有しないことが好ましい。タンパク質の安定化剤として用いられ得るヒト血清アルブミンは人体の血液から製造され、ヒト由来の病原性ウイルスによる汚染の可能性が存在し、ゼラチンやウシ血清アルブミンは疾患を引き起こしたり、一部の患者にアレルギー反応を誘発する可能性がある。本発明のアルブミン非含有安定化剤は、ヒトや動物由来の血清アルブミン又は精製されたゼラチンなどの異種タンパク質を含有しないため、ウイルス感染のおそれが少ない。
【0106】
本発明において前記安定化剤は、特にグルカゴンGLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体が安定に保存されるようにする物質を意味する。グルカゴンGLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体において、保存安定性は正確な投与量を保障するためだけでなく、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体結合体に対する抗原性物質の潜在的な生成を抑制するために重要である。
【0107】
本発明の液状製剤に含まれる一構成要素である緩衝物質は、化学式(1)の持続型結合体が安定になるように液状製剤のpHが急激に変化しないように溶液のpHを維持させることができる。前記緩衝物質は緩衝系(buffer system)とも呼ばれ、前記緩衝物質又は緩衝系は液状製剤のpHを維持させる役割をする。目的とする安定化対象物質である化学式(1)の持続型結合体を安定化させることができるpHを維持させる緩衝物質は制限なく用いられてもよい。
【0108】
前記緩衝物質は、リン酸とその共役塩基であるアルカリ塩(例えば、リン酸塩:リン酸ナトリウム、リン酸カリウム又はこれらの水素又は二水素塩)、クエン酸とその塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酢酸とその塩(例えば、酢酸ナトリウム)、ヒスチジンとその塩をはじめとするpH緩衝物質であってもよく、これら緩衝物質の混合物も用いられるが、これに限定されない。
【0109】
本発明の液状製剤は、前記緩衝物質を含む緩衝溶液を液状製剤の溶媒として含み、具体的には、前記緩衝溶液は、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)、酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)、リン酸緩衝溶液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝溶液)、ヒスチジン緩衝溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、前記緩衝溶液又は液状製剤内の緩衝物質(クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、又はそれらの組み合わせ)は、目標とする液状製剤のpHを維持するのに十分な分量の濃度で含まれてもよい。
【0110】
前記液状製剤のpHは、約5.0~pH約7.0、例えば、pH約5.0~pH約6.8、pH約5.0~約6.7、pH約5.0~約6.6、pH約5.0~pH約6.5、pH約5.0~約6.4、pH約5.0~約6.3、pH約5.0~約6.2、pH約5.0~約6.1、pH約5.0~6.0、pH約5.0~約5.9、pH約5.0~5.8、pH約5.0~約5.7、pH約5.0~約5.6、pH約5.0~約5.5、pH約5.0~約5.4、pH約5.0~約5.3、pH約5.0~約5.2、約5.1~pH約7.0、例えば、pH約5.1~pH約6.8、pH約5.1~約6.7、pH約5.1~約6.6、pH約5.1~pH約6.5、pH約5.1~約6.4、pH約5.1~約6.3、pH約5.1~約6.2、pH約5.1~約6.1、pH約5.1~6.0、pH約5.1~約5.9、pH約5.1~5.8、pH約5.1~約5.7、pH約5.1~約5.6、pH約5.1~約5.5、pH約5.1~約5.4、pH約5.1~約5.3、pH約5.1~約5.2、又はpH約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、又は7.0であってもよいが、特にこれに限定されない。
【0111】
前記目標とするpHになり得るようにする液状製剤の濃度は、約1mM~約200mMであってもよく、よりも具体的には、約5mM~約100mM、約5mM~約80mM、約5mM~約40mM、約8mM~約40mM、約5mM~約30mM、又は約5mM~約25mM、約10mM~約25mM、約15mM~約25mM、約18mM~約24mM、約18mM~約22mM、又は約20mMであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0112】
一つの具体例として、前記緩衝物質は、酢酸とその塩であってもよいが、これに限定されない。
【0113】
もう一つの具体例として、前記緩衝溶液は酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)又はクエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0114】
一方、製剤の製造において、成分を水(例えば、WFI)に溶かし、HCl及び/又はNaOHなどを用いて緩衝溶液又は製剤のpHを目的とするpHに調整することができ、これは当業界に既に通常用いられる方法である。従って、請求項にpH調節子に関する別途の言及がなくても、このような方法を通じて製剤が調整されたpHを有することができるということは、当業者が理解することができる。
【0115】
本発明の安定化剤に含まれる一構成要素である糖アルコールは多数の水酸基を含む物質をいい、糖のアルデヒド基及び/又はケトン基などがアルコール基で置換された物質を含み、多重水酸基を含む糖類なども含む。前記糖又は糖アルコールは、グルカゴンGLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を増大させることができる。例えば、前記糖アルコールは、マンニトール及びソルビトールからなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0116】
本発明の液状製剤に含まれる一構成要素である糖(saccharide)は、単糖類、二糖類、多糖類、オリゴ糖類などをいい、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の安定性を増大させることができる。具体的な例としては、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、フコース及びキシロースなどの単糖類;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類;ラフィノース及びデキストランなどの多糖類などを挙げることができるが、これに制限されない。
【0117】
一つの具体例として前記糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これに制限されない。
【0118】
例えば、前記糖はスクロースであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0119】
前記糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせは、液状製剤の全体溶液比約0.5~約20%(w/v)、約0.5~約10%(w/v)、約0.5~約6 %(w/v)、約1~約20%(w/v)、約1~15%(w/v)、約2~約15%(w/v)、約2~約12%(w/v)、約2~約12%(w/v)、約3~約10%(w/v)、約4~約10%(w/v)、約4~約6%(w/v)、約5~約10%(w/v)、約6~約10%(w/v)、約7~約10%(w/v)、約7~約9%(w/v)、約8~約9%(w/v)、又は約1.0 %(w/v)、約3.0 %(w/v)、約5.0 %(w/v)、又は約8.0 %(w/v)の濃度で存在してもよいが、特にこれに限定されない。
【0120】
また、特にこれに制限されないが、前記液状製剤は、等張化剤、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含んでもよい。
【0121】
従って、前記液状製剤の安定化剤は、i)緩衝物質及びii)糖又は糖アルコールとして必須で構成されてもよいが、i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)非イオン性界面活性剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)等張化剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)アミノ酸;及びiv)非イオン性界面活性剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)アミノ酸;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、及びiv)等張化剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、及びiv)アミノ酸;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)等張化剤、及びiv)アミノ酸;又はi)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、iv)等張化剤、及びv)アミノ酸で必須で構成されるものであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。ここで、安定化剤を構成する各成分の種類及び濃度あるいはpHについては、前記あるいは下記の内容が全て適用されることは明確である。
【0122】
特にこれに制限されないが、前記液状製剤に含まれる一構成要素である非イオン性界面活性剤はタンパク質溶液の表面張力を下げて疎水性表面にタンパク質が吸着又は凝集することを防止することができる。
【0123】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート);前記ポリオキシエチレンの後の数値(20)は、オキシエチレン基(-(CH2CH2O)-)の総数を意味する)、ポロキサマー(PEO-PPO-PEO共重合体;PEO:poly(ethylene oxide)、PPO:poly(propylene oxide))、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化合物(例えば、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル:C1-C30)、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンコポリマー(アルキル:C1-C30)など)、ソジウムドデシルサルフェート(sodium dodecyl sulphate、SDS)などであってもよく、又はポリソルベート又はポロキサマーを挙げることができ、これらが一つ又は二つ以上の組み合わせの形態でも用いられる。
【0124】
具体的には、前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、又はポロキサマー188であってもよく、これらが組み合わせられて用いられてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0125】
本発明において前記非イオン性界面活性剤は高濃度で含まれないことが好ましく、具体的には、本発明の製剤に約0.2%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.001~約0.2%(w/v)、約0.001~約0.1%(w/v)、約0.001~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.08%(w/v)、約0.002~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.04%(w/v)、約0.01~約0.03%(w/v)、約0.01~約0.1%(w/v)、又は約0.02%(w/v)で含まれてもよいが、特にこれに限定されない。
【0126】
前記液状製剤に追加され得る選択的構成要素としての安定化剤の一種であるアミノ酸は、メチオニン、アルギニン、グリシン、又はそれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されない。また、前記アミノ酸はL-形態であってもよいが、特にこれに限定されない。前記アミノ酸は、メチオニン又はアルギニンであってもよい。また、前記メチオニンはL-メチオニンであり、前記アルギニンはL-アルギニンであってもよいが、特にこれに限定されない。
【0127】
前記アミノ酸はタンパク質の酸化反応などにより起こり得る不純物の生成を抑制させることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0128】
前記アミノ酸は製剤内に約0.01~約1mg/mLの濃度、約0.01~約0.8mg/mL、約0.01~約0.5mg/mL、約0.02~約0.5mg/mL、又は約0.02~約0.4mg/mL、又は約0.1mg/mLで存在してもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0129】
一つの具体例として、緩衝物質及び糖又は糖アルコールを含む前記液状製剤は、等張化剤を含むか、又は含まないか、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含まなくてもよいが、これに制限されない。
【0130】
前記等張化剤は、浸透圧の調節を示す物質をいう。前記等張化剤は、本発明による液状製剤を体内に投与する場合、浸透圧を適宜維持する役割をすることができる。
【0131】
このような等張化剤の代表的な例としては、水溶性無機塩として塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はクエン酸ナトリウムを挙げることができ、具体的には、塩化ナトリウムを挙げることができるが、特にこれに制限されるものではない。このような無機塩は、上述した安定化剤にさらに含まれる選択的な成分であってもよく、特にこれに制限されない。これと併せて上述した安定化制も等張化剤として役割をすることができる。
【0132】
本発明による製剤において前記等張化剤の濃度は、0~約200mM、0~約150mM、0~約100mM、約10~約200mM、約10~約150mM、約10~約100mM、約10~約50mM、約20~約100mM、約40~約110mM、約20~約80mM、約20~約50mM、約20~約30mM、又は約40~約50mM、約40~約60mM、約90~約110mMであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0133】
一方、本発明の液状製剤には前記の液状製剤の必須の構成要素である糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及び緩衝物質以外に選択的構成要素である非イオン性界面活性剤及びアミノ酸以外に本発明の効果を損傷させない範囲内で当業界に公知となっているその他の成分乃至物質が選択的にさらに含まれてもよいが、これに制限されない。
【0134】
前記製剤はさらに多価アルコールを含んでもよいが、特にこれに制限されない。
【0135】
例えば、i)緩衝物質及びii)糖又は糖アルコールだけでなく、多価アルコールを含むことができ、i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)非イオン性界面活性剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)等張化剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)アミノ酸;及びiv)非イオン性界面活性剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、及びiii)アミノ酸;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、及びiv)等張化剤;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、及びiv)アミノ酸;i)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)等張化剤、及びiv)アミノ酸;又はi)緩衝物質、ii)糖又は糖アルコール、iii)非イオン性界面活性剤、iv)等張化剤、及びv)アミノ酸で必須で構成される安定化剤に多価アルコールをさらに含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0136】
本発明の製剤にさらに含まれてもよい多価アルコールの例としては、プロピレングリコール及び低分子量のポリエチレングリコール、グリセロール、低分子量のポリプロピレングリコールなどを挙げることができ、これらの一つ又は二つ以上の組み合わせの形態で用いられてもよいが、これに制限されない。
【0137】
本発明において化学式(1)の持続型結合体は、本発明の液状製剤に含まれる有効成分であり、薬理学的有効量で製剤に含まれてもよい。その例として前記持続型結合体の濃度は、製剤内に約18~約2800nmol/mL、約18~約2757nmol/mL、約18~約2576nmol/mL、約18~約2392nmol/mL、約18~約2208nmol/mL、約18~約2024nmol/mL、約18~約1840nmol/mL、約18~約1656nmol/mL、約18~約1472nmol/mL、約18~約1288nmol/mL、約18~約1104nmol/mL、約18~約920nmol/mL、約18~約919nmol/mL、約18~約828nmol/mL、約18~約740nmol/mL、約18~約736nmol/mL、約18~約644nmol/mL、約18~約552nmol/mL、約18~約460nmol/mL、約18~約368nmol/mL、約18~約276nmol/mL、約18~約184nmol/mL、約18~約92nmol/mL、約90nmol/mL、約552nmol/mL、約90nmol/mL、約600nmol/mL、約450nmol/mL、約600nmol/mL、約500nmol/mL、約600nmol/mL、約530nmol/mL、約580nmol/mL、約183nmol/mL、約184nmol/mL、約183.79nmol/mL、約183.8nmol/mL、約183~約276nmol/mL、約183~約386nmol/mL、約183~約460nmol/mL、約183~約552nmol/mL、約183~約560nmol/mL、約183~約644nmol/mL、約183~約736nmol/mL、約183~約740nmol/mL、約551nmol/mL、約552nmol/mL、約551.37nmol/mL、約551.4nmol/mL、約150~約200nmol/mL、約170~約200nmol/mLであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0138】
本発明において用語、「約」は±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.01などを全て含む範囲であり、約という用語の後に出る数値と同等又は類似の範囲の数値を全て含むが、これに限定されない。
【0139】
前記液状製剤は、一つの具体例として、化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する緩衝物質;糖;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する非イオン性界面活性剤;とアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する安定化剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0140】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~6.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;1~10%(w/v)の糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;とアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0141】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤;とアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0142】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.1~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0143】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.1~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;及び4~10%(w/v)の糖を含有する液状製剤であってもよい。
【0144】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;及び4~10%(w/v)の糖を含有する液状製剤であってもよい。
【0145】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びアルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0146】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0147】
前記液状製剤は、一つの具体例として、90~552nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが5.0~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する0.01~1mg/mLの安定化剤;及びポロキサマー、ポリソルベート又はそれらの組み合わせから選択する0.01~0.1%(w/v)の非イオン性界面活性剤を含有する液状製剤であってもよい。
【0148】
前記液状製剤は、苛酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で1週間保管時に性状が透明なものであってもよい。
【0149】
本発明において用語「苛酷試験(stress testing)」とは、医薬品の安定性に対する根本的特性を究明しようとする試験を意味する。医薬品の開発過程で行われ、加速試験よりも苛酷な条件で行われ、医薬品の予想分解産物と物理的変化を究明するのに役立つ。
【0150】
一方、下記では本発明の液状製剤に含まれる有効成分であるグルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体についてより具体的に説明する。
【0151】
本発明において用語、「グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体」は、本発明の液状製剤に含まれる有効成分であり、薬理学的有効量で製剤に含まれてもよい。前記持続型結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに免疫グロブリンFc切片が連結された形態であってもよい。
【0152】
前記結合体は、免疫グロブリンFc切片が結合していない前記ペプチドに比べて増加した効力の持続性を示すことができ、本発明において前記一般式1のペプチドの化学式(1)による結合体は「持続型結合体」と称し、「持続型三重活性体結合体」、「ペプチド結合体」又は「化学式(1)の持続型結合体」と混用され得る。
【0153】
一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc切片とQは糖鎖化されていなくてもよいが、これに限定されない。
【0154】
一方、このような結合体は、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0155】
本願の持続型結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドと免疫グロブリンFc切片が互いに連結された形態であってもよく、その連結方法は特に制限されないが、リンカーを通じて前記ペプチドと免疫グロブリンFc切片が互いに連結されたものであってもよい。
【0156】
一つの具体例として、本発明の持続型結合体は、下記化学式(1)の構造を有する。
【0157】
Q - La - Z・・・(1)
【0158】
前記化学式(1)において、Qは、下記一般式1のペプチドであり、
Lは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり;
aは、0又は自然数であり、ただし、aが2以上である時、それぞれのLは互いに独立しており;
Zは、免疫グロブリンFc切片であり、
-は、共有結合を示す。
【0159】
前記化学式(1)の持続型結合体のQは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドであってもよい。「グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して有意な水準の活性を有する多様な物質、例えば、多様なペプチドを含む。
【0160】
特にこれに制限されるものではないが、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して有意な水準の活性を有するペプチドとして、本願において「三重活性体」と混用され得る。
【0161】
より具体的には、前記化学式(1)のQはグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドは下記一般式1の配列を含む、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドである:
【0162】
[一般式1]
Xaa1-Aib-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1、配列番号47)
【0163】
前記一般式1において、
下線を引いたN末端から16番であるグルタミン酸(Glu)及び20番であるリシン(Lys)残基の間でラクタム環が形成され、
Xaa1はヒスチジン、4-イミダゾアセチル(CA)、又はチロシンであり、
Xaa3はグルタミン酸又はグルタミンであり、
Xaa10はチロシン、又はシステインであり、
Xaa12はリシン、又はイソロイシンであり、
Xaa13はチロシン、アラニン、又はシステインであり、
Xaa14はロイシン、又はメチオニンであり、
Xaa15はシステイン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa17はアルギニン、イソロイシン、システイン、又はリシンであり、
Xaa18はアラニン、アルギニン、又はヒスチジンであり、
Xaa19はアラニン、グルタミン、又はシステインであり、
Xaa21はグルタミン酸、又はアスパラギン酸であり、
Xaa24はグルタミン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa28はアラニン、アスパラギン、又はアスパラギン酸であり、
Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸、又はヒスチジンであり、
Xaa30はシステイン、グリシン、リシン、又はヒスチジンであるか、存在せず、
R1はシステイン、m-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号48)、又はm-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-n(配列番号49)であるか、又は存在せず、
ここで、
mはCys、又はProであり、
nはCys、又はGly、であるか、又は存在しない。
【0164】
前記一般式1のAibはアミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid)を意味する。
【0165】
本明細書において「Aib」は「2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid)」又は「アミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid)」と混用され、2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid)とアミノイソ酪酸(aminoisobutyric acid)は混用され得る。
【0166】
前記ペプチドは、配列番号1~46から選択されたアミノ酸配列を含むもの、配列番号1~46からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0167】
このようなペプチドの例として、配列番号:1、2、9、19、21~27、30~32、又は40~46からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むか、これで(必須で)構成されたペプチドを挙げることができるが、特にこれに限定されるものではない。もう一つの例として、前記ペプチドは配列番号9、30~32、又は42~46からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むか、これで(必須で)構成されたペプチドであってもよく、又は配列番号9のアミノ酸配列を含むか、これで(必須で)構成されたペプチドであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0168】
また、前記一般式1において、R1はシステイン、Cys-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号50)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号51)、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-Gly(配列番号52)、Pro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser(配列番号53)、又はPro-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys(配列番号54)であるか、存在しなくてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0169】
また、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドは分子内架橋(intramolecular bridge)を含むことを特徴とする。例えば、共有結合的架橋又は非共有結合的架橋であってもよく、具体的には、環を含む形態であってもよい。前記一般式1の下線を引いたアミノ酸残基である16番目のアミノ酸であるグルタミン酸と20番目のアミノ酸であるリシン間に環を形成するものであってもよいが、特にこれに制限されない。前記環の非制限的な例としてラクタム架橋(又はラクタム環)を含んでもよい。
【0170】
また、本発明によるペプチドはペプチドそのもの、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、又はこの溶媒和物の形態をいずれも含む。また、ペプチドは薬学的に許容される任意の形態であってもよい。
【0171】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0172】
前記用語、「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、又はアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0173】
本発明において用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含んでもよい。
【0174】
また、本発明で用いられた用語「溶媒和物」は、本発明によるペプチド又はこの塩が溶媒分子と複合体を形成したことをいう。
【0175】
また、本願において「特定配列番号で構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一又は相当する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加又は自然に発生し得る突然変異、あるいはこの潜在性突然変異(silent mutation)を除くものではなく、このような配列の付加あるいは突然変異を有する場合にも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0176】
一方、このようなペプチドは非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0177】
前記ペプチドのC末端はアミド化されるか、又は自由カルボキシル基(-COOH)を有するペプチドであるか、又はC末端が変形されていないペプチドを含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0178】
一つの具体例として、前記QはC末端がアミド化しているものであってもよいが、これに限定されない。
【0179】
一つの具体例として、前記Qは非糖鎖化されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0180】
前記一般式1のペプチドはSolid phase合成法を通じて合成されてもよい、組換え方法でも生産可能であり、商業的に依頼して製造できるが、これに限定されない。
【0181】
本発明において用語「化学式(1)の持続型結合体」は本発明の液状製剤に含まれる有効成分であり、薬理学的有効量で液状製剤に含まれてもよい。具体的には、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc領域が互いにリンカーで連結された形態であり、前記結合体は免疫グロブリンFc領域が結合していないグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに比べて増加した効力の持続性を示すことができる。
【0182】
また、化学式(1)の持続型結合体においてグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドであるQと免疫グロブリンFc切片の連結は、物理又は化学結合であるか、非共有又は共有結合であってもよく、具体的には共有結合であってもよいが、これに限定されない。
【0183】
また、化学式(1)のペプチド結合体はグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドであるQと免疫グロブリンFc切片の連結方法は特に制限されないが、リンカーを通じてグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドと免疫グロブリンFc切片が互いに連結されたものであってもよい。
【0184】
具体的には、本願の液状製剤に含まれる持続型結合体は前記化学式(1)で表されるものであってもよい。
【0185】
前記化学式(1)において共有結合によりLを通じてQとZが互いに結合されてもよい。
【0186】
より具体的には、QとL、及びLとZは共有結合で互いに連結されてもよく、その時、前記結合体は化学式(1)の順にQ、L、及びZが共有結合を通じてそれぞれ連結された結合体であってもよい。
【0187】
また、前記Qは、Zが直接的に連結されたり(即ち、前記化学式においてaが0であったり)、又はリンカー(L)を通じて連結されたものであってもよい。
【0188】
一つの具体例として、前記化学式(1)の持続型結合体の一構成要素であるLaはエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであり、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、また、当該分野に既に知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0189】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含むリンカーであるLは、結合体で構成される以前は、結合体の製造に用いられる作用基を末端に含むものであってもよい。本発明による持続型結合体は、前記作用基を通じてQとZが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、前記エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーは2個、又は3個以上の作用基を含めてもよく、各作用基は同一又は相異してもよいが、これに制限されない。
【0190】
具体的には、前記リンカーは下記化学式(3)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、これに限定されるものではない:
【0191】
【0192】
ここで、n=10~2400、n=10~480、又はn=50~250であるが、これに限定されない。
前記持続型結合体においてPEGの一部は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素と、この-(CH2CH2O)n-の間に介在する酸素原子も含めてもよいが、これに制限されるものではない。
【0193】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、又はモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にこれに限定されるものではない。
【0194】
一つの具体例として前記エチレングリコール繰り返し単位は、その例として、[OCH2CH2]nで表されることができ、n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が0超~約100kDaになるように定められることができるが、これに限定されない。もう一つの例として、前記n値は自然数で前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が約1~約100kDa、約1~約80kDa、約1~約50kDa、約1~約30kDa、約1~約25kDa、約1~約20kDa、約1~約15kDa、約1~約13kDa、約1~約11kDa、約1~約10kDa、約1~約8kDa、約1~約5kDa、約1~約3.4kDa、約3~約30kDa、約3~約27kDa、約3~約25kDa、約3~約22kDa、約3~約20kDa、約3~約18kDa、約3~約16kDa、約3~約15kDa、約3~約13kDa、約3~約11kDa、約3~約10kDa、約3~約8kDa、約3~約5kDa、約3~約3.4kDa、約8~約30kDa、約8~約27kDa、約8~約25kDa、約8~約22kDa、約8~約20kDa、約8~約18kDa、約8~約16kDa、約8~約15kDa、約8~約13kDa、約8~約11kDa、約8~約10kDa、約9~約15kDa、約9~約14kDa、約9~約13kDa、約9~約12kDa、約9~約11kDa、約9.5~約10.5kDa、又は約10kDaであってもよいが、これに限定されない。
【0195】
一つの具体例として、前記リンカーの両末端は免疫グロブリンFc切片のチオール基、アミノ基、ヒドロキシル基及び一般式1のペプチドのチオール基、アミノ基、アジド基、ヒドロキシル基に結合してもよいが、これに限定されない。
【0196】
具体的には、前記リンカーは両末端にそれぞれ免疫グロブリンFc及び一般式1のペプチド結合され得る反応基、具体的には、免疫グロブリンFc切片のシステインのチオール基;N末端、リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンに位置したアミノ基;及び/又はC末端に位置したヒドロキシル基と結合し、一般式1のペプチドのシステインのチオール基;リシン、アルギニン、グルタミン及び/又はヒスチジンのアミノ基;アジドリシンのアジド基;及び/又はヒドロキシル基結合され得る反応基を含んでもよいが、これに限定されない。
【0197】
より具体的には、前記リンカーの反応基はアルデヒドグループ、マレイミドグループ及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される一つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0198】
前記において、アルデヒドグループにおいてプロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを例として挙げることができるが、これに限定されない。
【0199】
前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルカルボキシメチル、スクシンイミジル吉草酸、スクシンイミジルメチルブタン酸、スクシンイミジルメチルプロピオン酸、スクシンイミジルブタン酸、スクシンイミジルプロピオン酸、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられてもよいが、これに限定されない。
【0200】
前記リンカーは、前記のような反応基を通じて免疫グロブリンFc切片であるZ及び一般式1のペプチドであるQに連結され、リンカー連結部に転換されてもよい。
【0201】
また、アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものより遥かに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成できるが、これに制限されない。
【0202】
本発明のリンカーの末端反応基は互いに同一又は異なってもよい。前記リンカーは、末端にアルデヒドグループ反応基を有するものであってもよく、また、前記リンカーは、末端にそれぞれアルデヒドグループ及びマレイミド反応基を有してもよく、又は末端にそれぞれアルデヒドグループ及びスクシンイミド反応基を有してもよいが、これに制限されない。
【0203】
例えば、一方の末端にはマレイミドグループを、他方の末端にはアルデヒドグループ、プロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを有することができる。また、一つの例として、一方の末端にはスクシンイミジルグループを、他方の末端にはプロピオンアルデヒドグループ又はブチルアルデヒドグループを有することができる。
【0204】
プロピオン側の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールをリンカーとして用いる場合には、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前記多様な反応基で活性化したり、商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の結合体を製造できる。
【0205】
一つの具体的な実施形態において前記リンカーの反応基が一般式1のペプチドのシステイン残基、より具体的には、システインの-SH基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0206】
もし、マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基は一般式1のペプチドの-SH基とチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基は免疫グロブリンFcの-NH2基と還元的アルキル化反応を通じて連結できるが、これに制限されず、これは一例に該当する。
【0207】
このような還元的アルキル化を通じてPEGの一方の末端に位置した酸素原子に免疫グロブリンFc切片のN末端アミノ基が-CH
2CH
2CH
2-の構造を有するリンカー作用基を通じて互いに連結され、-PEG-O-CH
2CH
2CH
2NH-免疫グロブリンFcのような構造を形成でき、チオエーテル結合を通じてPEGの一方の末端が一般式1のペプチドのシステインに位置した硫黄原子に連結された構造を形成できる。上述したチオエーテル結合は
の構造を含んでもよい。
【0208】
しかし、上述した例に特に制限されるものではなく、これは一例に該当する。
【0209】
また、前記結合体において、リンカーの反応基が免疫グロブリンFc切片のN-末端に位置した-NH2と連結されたものであってもよいが、これは一例に該当する。
【0210】
また、前記結合体において、一般式1のペプチドは反応基を有するリンカーとC末端を通じて連結され得るが、これは一例に該当する。
【0211】
本発明において「C末端」は、ペプチドのカルボキシ末端を意味することであり、本発明の目的上、リンカーと結合できる位置をいう。その例として、これに制限されないが、C末端の最末端のアミノ酸残基だけでなく、C末端周囲のアミノ酸残基をいずれも含んでもよく、具体的には最末端から1番目~20番目のアミノ酸残基を含んでもよいが、これに限定されない。
【0212】
一つの具体例として、前記化学式(1)の結合体は下記化学式(2)の構造を有することができる。
【0213】
・・・(2)
前記化学式(2)においてQは前記で説明した一般式1のペプチドであり、
Zは、免疫グロブリンFc切片であり、
nは自然数であってもよい。その時、nに関する説明は、前述の通りである。
【0214】
一つの具体例として、前記化学式(2)の持続型結合体は配列番号47の一般式1のペプチドQと免疫グロブリンFc切片Zがエチレングリコール繰り返し部を介在して共有結合で連結された構造として、それぞれQは化学式(2)のスクシンイミド環に、Zは化学式(2)のオキシプロピレン基に連結される形態であってもよい。
【0215】
前記化学式(2)において、前記nの値は、前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が1~100kDa、又は1~20kDa又は10kDaになるように定められるものであってもよいが、これに限定されない。
【0216】
前記ペプチド結合体のQはグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドであってもよい。
【0217】
一実施形態において化学式(2)のスクシンイミド環にQが連結される部位はQのC-末端システインの硫黄原子であってもよい。
【0218】
前記化学式(1)又は(2)のZは免疫グロブリンFc切片であり、本明細書において免疫グロブリンFc切片といえば、免疫グロブリンのパパインの消化から得る天然型配列だけでなく、その誘導体、置換体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はこれらの組み合わせにより変換され、天然型と相異なった配列など、変形体まで網羅して含まれる。前記誘導体、置換体、変形体はFcRnに結合する能力を有することを前提とする。
【0219】
Z内において前記オキシプロピレン基に連結される部位は特に限定されない。本発明の一実施形態において前記オキシプロピレン基に連結されるZの部位はN末端窒素又はZ内部残基の窒素原子(例えば、リシンのイプシロン窒素)であってもよい。本発明の一具体的な実施形態において、Zが化学式(1)のオキシプロピレン基に連結される部位はZのN末端プロリンであってもよいが、これに制限されない。
【0220】
前記Zは2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されている構造であってもよいが、これに制限されない。前記窒素原子を通じての連結はリシンのイプシロンアミノ原子やN末端アミノ基に還元的アミノ化を通じて連結されてもよいが、これに制限されない。
【0221】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(即ち、還元的アミノ化が可能な作用基)と反応してアミンを生成した後、還元反応によりアミン結合を形成させる反応を意味し、当該技術分野に広く知られている有機合成反応である。
【0222】
一つの具体例として、前記ZはそのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0223】
本発明において、「免疫グロブリンFc切片」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域を除いた、重鎖定常領域を意味する。具体的には、前記免疫グロブリンFc切片は重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)の部分を含むものであってもよく、より具体的には、ヒンジ領域(ヒンジ領域全体又は一部を意味する)をさらに含むものであってもよい。
【0224】
前記免疫グロブリンFc切片は本発明の化学式(1)のペプチド結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、前記化学式(1)においてZに該当することができる。
【0225】
このような免疫グロブリンFc切片は重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含めてもよいが、これに限定されるものではない。
【0226】
本発明において、免疫グロブリンFc切片はN末端に特定ヒンジ配列を含んでもよい。
本発明の用語、「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)を通じて免疫グロブリンFc切片の二量体を形成する部位を意味する。
【0227】
本発明において、前記ヒンジ配列は、下記アミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異されたものであってもよいが、これに制限されない:
【0228】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号55)。
【0229】
前記ヒンジ配列は、配列番号55のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して一つのシステイン残基のみを含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は一つのシステイン残基のみを含む、3~12個のアミノ酸で構成されたものであってもよいが、これに限定されない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は次のような配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号56)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号57)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号58)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号59)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号60)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号61)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号62)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号63)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号64)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号65)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号66)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号67)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号68)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号69)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号70)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号71)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号72)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号73)、Ser-Cys-Pro(配列番号74)。より具体的には、前記ヒンジ配列は配列番号74(Ser-Cys-Pro)又は配列番号65(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0230】
本発明の免疫グロブリンFc切片はヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の化学式(1)の持続型結合体はリンカーの一方の末端が二量体の免疫グロブリンFc切片の一鎖に連結された形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0231】
本発明の用語、「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味することであり、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個以上のアミノ酸まで含むものであってもよい。本発明の免疫グロブリンFc切片はヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに限定されない。
【0232】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等又は向上した効果を奏する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除いて、一部又は全体の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。また、CH2及び/又はCH3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0233】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc切片は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の1個又は2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、又は6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0234】
また、一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc切片は二量体形態(dimeric form)であってもよく、二量体形態の一つのFc領域に一般式1のペプチドの一分子が共有結合的に連結されてもよく、その時、前記免疫グロブリンFcと一般式1のペプチドはエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーにより互いに連結されてもよい。一方、二量体形態の一つのFc領域に一般式1のペプチドの二分子が対称的に結合することも可能である。その時、前記免疫グロブリンFcと一般式1のペプチドはエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、前記例に制限されるものではない。
【0235】
また、本発明の免疫グロブリンFc切片は天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はこれらの組み合わせにより相違する配列を有することを意味する。
【0236】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として用いられ得る。
【0237】
また、ジスルフィド結合を形成できる部位が除去されたり、天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去されたり、又は天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもできるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために補体結合部位、例えば、Clq結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc切片の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0238】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知となっている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も通常生じる交換はアミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly 間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されてもよい。
【0239】
前記Fc誘導体は本発明のFc切片と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであってもよい。
【0240】
また、このようなFc切片は、ヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット又はモルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞又は微生物から得られた組換え型又はその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は全体免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離できる。さらに具体的な実施形態においてはヒト由来のFc領域を微生物から得た組換え型免疫グロブリンFc切片である。
【0241】
また、免疫グロブリンFc切片は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的方法のような常法が用いられ得る。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc切片は補体(c1q)との結合力が顕著に低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が減少又は除去されるため、生体内において不要な免疫反応を誘発しない。このような点で薬物のキャリアとしての本来の目的に、より符合する形態は糖鎖が除去されたり非グリコシル化された免疫グロブリンFc切片であるといえる。
【0242】
本発明において「糖鎖の除去(Deglycosylation)」は酵素で糖を除去したFc切片をいい、非グリコシル化(Aglycosylation)は原核動物、さらに具体的な実施形態では大腸菌で生産してグリコシル化されていないFc切片を意味する。
【0243】
一方、免疫グロブリンFc切片は、ヒト又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、さらに具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0244】
また、免疫グロブリンFc切片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来又はそれらの組み合わせ(combination)又はこれらの混成(hybrid)によるFc切片であってもよい。さらに具体的な実施形態ではヒトの血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であり、より具体的な実施形態ではリガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となったIgG由来である。より一層具体的な実施形態において前記免疫グロブリンFc切片はIgG4 Fc切片であり、最も具体的な実施形態において前記免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc切片であるが、これに限定されるものではない。
【0245】
また、一つの具体的な実施形態において、免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4 Fcの断片であり、各単量体(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain 形態)を通じて2個の単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)の形態であってもよく、その時、ホモ二量体の各単量体は独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合、即ち、2個の内部のジスルフィド結合(intra-chain 形態)を有したり/有することができる。各単量体のアミノ酸の数は221個のアミノ酸で構成されてもよく、ホモ二量体を形成するアミノ酸は計442個のアミノ酸からなってもよいが、これに限定されない。具体的には、免疫グロブリンFc切片は配列番号76のアミノ酸配列(221個のアミノ酸で構成される)を有する単量体2個が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間にジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであってもよいが、これに限定されない。
【0246】
前記化学式(1)のZは配列番号76のアミノ酸配列である単量体を含むものであってもよく、前記Zは配列番号76のアミノ酸配列の単量体のホモ二量体であってもよいが、これに限定されない。
【0247】
一つの例として、免疫グロブリンFc切片は、配列番号75のアミノ酸配列(442個のアミノ酸で構成される)を含むホモ二量体であってもよいが、これに限定されない。
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する時、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc切片をコードするポリペプチドが相違する起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成するものを意味する。即ち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなるグループから選択された2個以上の断片から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0248】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に2個以上の相違する起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループから1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含めてもよい。
【0249】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではそれらの組み合わせ又はこれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存的傷害(CDC、Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc切片である。
【0250】
一方、前記液状製剤は、メタボリックシンドロームの予防又は治療のためのものであってもよい。
【0251】
本発明において用語「予防」とは、前記結合体又はこれを含む製剤の投与でメタボリックシンドロームの発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、前記結合体又はこれを含む製剤の投与でメタボリックシンドロームの症状が好転したり有益になる全ての行為を意味する。
【0252】
本発明において用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、特にこれに制限されないが、前記組成物が生体内の標的に到達できる任意の一般的な経路を通じて投与されてもよく、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、血内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、又は直腸内投与などが挙げられる。
【0253】
本発明を具現するもう一つの様態は、前記液状製剤の製造方法を提供する。
【0254】
具体的には、前記製造方法は、(a)グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体と(b)i)緩衝物質及びii)糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせを含む安定化剤を互いに混合する段階を含むものであってもよい。
【0255】
一方、前記安定化剤は、等張化剤、非イオン性界面活性剤、及びアミノ酸からなる群から選択される一つ以上の成分をさらに含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0256】
前記持続型結合体、緩衝物質、糖アルコール、糖、又はそれらの組み合わせ、等張化剤、非イオン性界面活性剤、アミノ酸、及び安定化剤については、前述の通りである。
【0257】
本発明を具現するもう一つの様態は、前記液状製剤をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、メタボリックシンドロームの予防又は治療方法を提供する。
【0258】
前記液状製剤、メタボリックシンドローム、予防、及び治療については、前述の通りである。
【0259】
前記個体は、本発明の製剤の投与が必要な個体であり、本発明の液状製剤で治療可能な個体は制限なく含み、具体的には、ヒト又はラット、家畜などを含む哺乳動物を含む。
【0260】
本発明の治療方法は、液状製剤を薬学的有効量で投与することを含んでもよい。適した総1日使用量は、正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定患者に関する具体的な治療的有効量は達成しようとする反応の種類と程度、場合によって異なる製剤が用いられるかどうかをはじめとする具体的組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物と共に用いられたり同時に用いられる薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子により異なって適用することが好ましい。
【0261】
本発明を具現するもう一つの様態は、メタボリックシンドロームの予防又は治療用薬剤の製造において、前記液状製剤の用途である。
【0262】
前記液状製剤、メタボリックシンドローム、予防、及び治療については、前述の通りである。
【0263】
本発明を具現するもう一つの様態は、メタボリックシンドロームの予防又は治療に用いるための前記液状製剤の用途である。
【0264】
前記液状製剤、メタボリックシンドローム、予防、及び治療については、前述の通りである。
【0265】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0266】
製造例:グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の製造
グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体を次のような方法で製造した。
1-1:グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の製造
GLP-1受容体、GIP受容体及びグルカゴン受容体にいずれも活性を示す三重活性体を製造し、下記表1にその配列を示した。
【0267】
【0268】
前記表1に記載された配列において、Xで表記されたアミノ酸は非天然型アミノ酸であるAib(aminoisobutyric acid)であり、下線で表示されたアミノ酸は下線で表示されたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、前記表1においてCAは4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)を、Yはチロシンを意味する。
【0269】
1-2:三重活性体のin vitro 活性の測定
前記1-1で製造された三重活性体の活性を測定するためにGLP-1受容体、グルカゴン(GCG)受容体、及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を用いてin vitroで細胞活性を測定する方法を用いた。
【0270】
前記各細胞株は、CHO(chinese hamster ovary)にヒトGLP-1受容体、ヒトGCG受容体及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1、GCG及びGIPの活性を測定するのに適している。従って、各部分に対する活性をそれぞれの形質転換細胞株を用いて測定した。
【0271】
前記1-1で製造された三重活性体のGLP-1活性測定のためにヒトGLP-1を50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続的に希釈し、前記1-1で製造された三重活性体を400nMから4倍ずつ0.00038nMまで連続的に希釈した。前記培養されたヒトGLP-1受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続的に希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用して蓄積されたcAMPを通じてEC50値を算出した後、互いに比較した。ヒトGLP-1比相対力価は下記表2に示した。
【0272】
前記1-1で製造された三重活性体のGCG活性測定のためにヒトGCGを50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続的に希釈し、前記1-1で製造された三重活性体を400nMから4倍ずつ0.00038nMまで連続的に希釈した。前記培養されたヒトGCG受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続的に希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用して蓄積されたcAMPを通じてEC50値を算出した後、互いに比較した。ヒトGCG比相対力価は下記表2に示した。
【0273】
前記1-1で製造された三重活性体のGIP活性測定のためにヒトGIPを50nMから4倍ずつ0.000048nMまで連続的に希釈し、前記1-1で製造された三重活性体を400nMから4倍ずつ0.00038nMまで連続的に希釈した。前記培養されたヒトGIP受容体が発現されたCHO細胞から培養液を除去し、連続的に希釈された各物質を5μlずつ前記細胞に添加した後、cAMP抗体が含まれた緩衝液を5μlずつ追加した後、15分間常温で培養した。その後、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)が含まれたdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、90分間常温で反応させた。前記反応が完了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer、USA)に適用して蓄積されたcAMPを通じてEC50値を算出した後、互いに比較した。ヒトGIP比相対力価は下記表2に示した。
【0274】
【0275】
前記で製造した三重活性体はGLP-1、GIP及びグルカゴン受容体にいずれも優れた効果を奏することを確認した。
【0276】
1-3:三重活性体の持続型結合体の製造
代表的な三重活性体として配列番号9番のペプチドを用いて持続型結合体を製造した。三重活性体とポリエチレングリコールリンカーの連結体を製造するために両末端の水素がそれぞれ3-(3-マレイミドプロピオンアミド)プロピル基及び3-オキソプロピル基(プロピオンアルデヒド基)で置換された分子量10kDaの線状改質ポリエチレングリコールであるマレイミド-PEG-アルデヒド(日本NOF社)を前記三重活性体のシステイン残基に反応させることにより三重活性体をマレイミド-PEG-アルデヒドのマレイミド側の末端にペギル化させた。具体的には、三重活性体とマレイミド-PEG-アルデヒドのモル比を1:1~3、タンパク質の濃度を1~5mg/mlにして低温で0.5~3時間反応させた。その時、反応は50mM Tris緩衝液(pH7.5)に20~60%のイソプロパノールが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をSPセファロースHP(GE healthcare、米国)に適用してシステインにモノペギル化された三重活性体を精製した。
【0277】
免疫グロブリンFc切片は、N末端にPro-Ser-Cys-Pro配列のヒンジ領域を有する免疫グロブリンFc切片(49.8kDa、配列番号76の二鎖がジスルフィド結合で連結されたホモ二量体)を用いて国際公開特許WO2007/021129に記載された方法で製造した。
【0278】
次に、前記精製されたモノペギル化された三重活性体と免疫グロブリンFcをモル比を1:1~5、タンパク質の濃度を10~50mg/mLにして4~8℃で12~18時間反応させた。反応は100mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤である10~50mMのシアノ水素化ホウ素ナトリウムボロヒドリドと10~30%のイソプロパノールが添加された環境下で行われた。反応が終了した後、前記反応液をブチルセファロースFF精製カラム(GE healthcare、米国)とSource ISO精製カラム(GE healthcare、米国)に適用し、前記モノペギル化された三重活性体のアルデヒド側ポリエチレングリコール末端が免疫グロブリンFcホモ二量体の二鎖中の一鎖のN末端プロリン窒素に連結された三重活性体の持続型結合体を精製した。
【0279】
製造後に逆相クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ及びイオン交換クロマトグラフィで分析した純度は95%以上であった。
【0280】
ここで、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体及び免疫グロブリンFc切片がPEGを通じて連結された結合体を、「グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体」と命名した。
【0281】
実施例1:pHによるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性の評価
緩衝物質、糖アルコールとしてマンニトール、界面活性剤としてポリソルベート20、そしてメチオニンからなる液状製剤に基づいて多様なpH下でグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。比較例として、pH4.5の製剤を用いた。
【0282】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表3のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法(Ion Exchange High Performance Liquid Chromatography、IE-HPLC)と逆相クロマトグラフィ法(Reverse Phase-High Performance Liquid Chromatography、RP-HPLC)を用いて安定性を分析した。
【0283】
表4のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積%値を保存試験初期面積%値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0284】
【0285】
【0286】
前記結果から見られるように、クエン酸ナトリウム、pH5.0の組成を有する製剤(#1)、クエン酸ナトリウム、pH5.5の組成を有する製剤(#2)において、25℃で6週間高い安定性を示した。pH6.0の組成を有する製剤(#3)及びpH6.5の組成を有する製剤(#4)も6週間安定性を示した。比較例であるpH4.5の組成の場合には、6週間で沈殿が起こったことを確認することができた。
【0287】
実施例2:糖又は糖アルコールの種類によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性の評価
グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の保存安定性を増大させるためにさらに含み得る糖又は糖アルコールの例としては、マンノース、グルコース、フコース及びキシロースなどの単糖類とラクトース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ラフィノース及びデキストランなどの多糖類を挙げることができる。そのうち、前記実施例1で確認されたマンニトール及びスクロースとソルビトールによるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。そのとき、マンニトール、スクロース及びソルビトールの濃度は、市販中の剤形及び許可機関で勧める最大許容範囲を考慮した。
【0288】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表5のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法と逆相クロマトグラフィ法を用いて分析した。
【0289】
表6のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積%値を保存試験初期面積%値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0290】
【0291】
【0292】
前記結果から見られるように、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の保存安定性を増大させるために含まれる糖又は糖アルコールであるマンニトール、ソルビトール、そしてスクロースをそれぞれ5%、5%、及び8%で含む場合、類似の安定性を示した。
【0293】
実施例3:糖又は糖アルコール濃度によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性の評価
前記実施例1又は実施例2で確認された液状製剤の組成(クエン酸ナトリウム、pH5.5、マンニトール、ポリソルベート20、及びメチオニン)に基づいて糖又は糖アルコール濃度によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。そのとき、共に追加された等張化剤の濃度は、市販中の剤形の許容範囲と正常血漿浸透圧を考慮して等張化剤の濃度を選定した。
【0294】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表7のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法と逆相クロマトグラフィ法を用いて分析した。
【0295】
表8のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積%値を保存試験初期面積%値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0296】
【0297】
【0298】
前記結果から見られるように、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の製剤に糖アルコール濃度が1%~5%含まれた場合、類似の安定性を示した。
【0299】
実施例4:緩衝物質の種類によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性の評価
前記液状製剤の組成(クエン酸ナトリウム、pH5.5、マンニトール、ポリソルベート20、及びメチオニン)に基づいて緩衝物質の種類によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。
【0300】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表9のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法と逆相クロマトグラフィ法を用いて分析した。
【0301】
表10のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積百分率値を保存試験初期面積百分率値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0302】
【0303】
【0304】
前記結果から見られるように、緩衝物質がクエン酸ナトリウム(#1)及び酢酸ナトリウム(#2)であるとき、25℃で6週間高い安定性を示した。また、緩衝物質がヒスチジン(#3)である時も良好な安定性を示すことを確認した。(
図1a及びb)。
【0305】
実施例5:非イオン性界面活性剤の種類によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性の評価
酢酸ナトリウム、スクロース及びメチオニン組成の液状製剤において非イオン性界面活性剤の種類によるグルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。
【0306】
そのとき、非イオン性界面活性剤としてポリソルベート20、ポリソルベート80及びポロキサマー188の濃度は市販中の剤形を考慮した。
【0307】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表11のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法と逆相クロマトグラフィ法を用いて分析した。
【0308】
表12のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積百分率値を保存試験初期面積百分率値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0309】
【0310】
【0311】
非イオン性界面活性剤としてポリソルベート20(#1)、ポリソルベート80(#2)及びポロキサマー188(#3)をそれぞれ含む製剤の場合、類似の安定性を示した。
【0312】
実施例6:非イオン性界面活性剤及びアミノ酸を含むか否かによる持続型グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体結合体の安定性の評価
液状製剤が非イオン性界面活性剤又はアミノ酸の安定化剤を含む又は含まないとき、グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体の持続型結合体の安定性を比較した。
【0313】
前記製造例で得た三重活性体の持続型結合体を下記表13のような組成(持続型結合体の濃度は183.79nmol/mL)の液状製剤に製造して25℃で6週間保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法と逆相クロマトグラフィ法を用いて分析した。
【0314】
表14のIE-HPLC(%)及びRP-HPLC(%)は、測定時点における面積百分率値を保存試験初期面積百分率値で除した比(Area%/Start Area%)の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の初期濃度(183.79nmol/mL濃度)からの残存率を示す。
【0315】
【0316】
【0317】
前記結果から見られるように、非イオン性界面活性剤及びアミノ酸を含む製剤とこれを含まない製剤は互いに類似の安定性を示した。
【0318】
実施例7:濃度による持続型グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体結合体の安定性の評価
前記実施例6のpH5.1の酢酸ナトリウム、スクロース、ポリソルベート20、そしてメチオニンからなる液状製剤の高濃度の適用のために表15のような濃度で長期保存及び加速安定性を確認した。
【0319】
そのため、5±3℃及び25±2℃で保管した後、イオン交換クロマトグラフィ法、逆相クロマトグラフィ法及びサイズ排除クロマトグラフィ法を用いて分析した。表16及び表17のIE-HPLC(%)、RP-HPLC(%)及びSE-HPLC(%)は、測定時点における面積百分率値を保存試験初期面積百分率値で除した比の百分率数値であり、三重活性体の持続型結合体の残存率を示す。
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
前記結果から見られるように、長期保存安定性試験の結果、183.79~551.37nmol/mLタンパク質濃度で持続型グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体結合体は、本発明の液状製剤において類似に安定したことを確認した。即ち、このような結果は、多様な濃度の持続型グルカゴン、GLP-1及びGIP三重活性体結合体が本発明の液状製剤の組成で安定性を有していることを示唆するものである。
【0324】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
【国際調査報告】