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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】液状製剤
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20230614BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C07K14/00
C07K16/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022571864
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021006461
(87)【国際公開番号】W WO2021235915
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061879
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】リ ジ ウン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA50
4H045BA18
4H045BA51
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA27
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド結合体の液状製剤であって、前記液状製剤は
18~940nmol/mLの下記化学式(1)のペプチド結合体;
前記液状製剤のpHを4.5~7.5の範囲で維持するための分量の緩衝物質;
1~20%(w/v)の糖;及び
0.001~0.2%(w/v)の非イオン性界面活性剤;を含む液状製剤:
【化1】
・・・(1)
前記化学式(1)においてQは下記一般式1のペプチドであり;
Zはヒト免疫グロブリンFc切片であり;
nは自然数であり、nの値は前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量が10kDaとなるように定められ、
[一般式1]
His-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Tyr-Leu-Asp-Xaa16-Lys-Arg-Ala-Xaa20-Glu-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Cys(配列番号1)、
このとき、一般式1において、
Xaa2は2-アミノイソブチル酸(Aib)、Xaa12はリシン(K)、Xaa16はグルタミン酸(E)、Xaa20はリシン(K)であり;
Xaa12とXaa16またはXaa16とXaa20の残基との間にラクタム環が形成されていても、形成されていなくてもよい。
【請求項2】
前記ペプチドは、配列番号2~4のいずれか一つのアミノ酸配列である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項3】
Qは、配列番号3のアミノ酸配列である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項4】
Qは、そのC末端がアミド化している、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項5】
Qは、システインの硫黄原子を通じて連結されている、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項6】
前記免疫グロブリンFc切片はIgG4由来である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項7】
Zは、2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されている、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項8】
Zは、配列番号5のアミノ酸配列である単量体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の液状製剤。
【請求項9】
Zは、そのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されている、請求項8に記載の液状製剤。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFc切片とQがグリコシル化されていない、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項11】
前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択する、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項12】
前記緩衝物質は、酢酸とその塩である、請求項11に記載の液状製剤。
【請求項13】
前記液状製剤のpHは4.8~6.0である、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項14】
前記液状製剤のpHは4.9~5.3である、請求項13に記載の液状製剤。
【請求項15】
前記液状製剤は、糖アルコールを含まない、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項16】
前記糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項17】
前記糖は、スクロースである、請求項16に記載の液状製剤。
【請求項18】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択する、請求項18に記載の液状製剤。
【請求項20】
前記液状製剤は、アルギニン、グリシン、メチオニン及びそれらの組み合わせからなる群から選択する安定化剤をさらに含む、請求項1に記載の液状製剤。
【請求項21】
前記液状製剤は
C末端がアミド化しているQのシステイン硫黄原子を通じて連結された93~565nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;
前記液状製剤のpHが4.8~5.5となるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;
4~10%(w/v)の糖;及び
0.01~0.1%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベートまたはそれらの組み合わせから選択する非イオン性界面活性剤;を含有する、請求項9に記載の液状製剤。
【請求項22】
前記化学式(1)のペプチド結合体の濃度は274~474nmol/mLである、請求項21に記載の液状製剤。
【請求項23】
前記液状製剤は、過酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で1週間保管時に性状が透明である、請求項21に記載の液状製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、経済的発展と食習慣などの変化により肥満、高脂血症、高血圧、動脈硬化、高インスリン血症、糖尿病又は肝疾患など多様な疾患を含むメタボリックシンドローム関連疾患の発病が急増している状況である。このような疾患はそれぞれ発生することもあるが、一般には互いに密接な関連を結んでいながら種々の症状を伴って発生する場合が大部分である。特に、国際保健機構(World Health Organisation、WHO)によると、全世界的に10億人以上の成人が過体重であり、そのうち少なくとも300万人以上が臨床的に肥満であり、特にヨーロッパで毎年250,000人、全世界的には毎年250万人以上が過体重と関連して死亡した。肥満は、全世界的な疾病として各種疾患の原因にもなる深刻な疾病であるが、個人の自救的な努力により克服できると信じられる傾向がある。しかし、肥満は意外と治療が容易ではないが、その理由は、肥満が食欲調節及びエネルギー代謝の作用機序に関連した複雑な疾患のためである。したがって、肥満を治療するためには、患者自身の努力だけでなく食欲調節及びエネルギー代謝と関連した非正常な作用機序を治療する方法が同時に行われなければならないため、前記非正常な作用機序を治療できる医薬を開発しようとする努力が続いている。
【0003】
上述した努力の結果として、リモナバント(Rimonabant、Sanofi-Aventis)、シブトラミン(Sibutramin、Abbott)、コントレイブ(Contrave、Takeda)、オルリスタット(Orlistat、Roche)などの肥満治療剤が開発されたが、これらは致命的な副作用を示したり肥満治療の効果が不備であるという短所があった。このように、従来の肥満治療剤の問題を解消できる新たな医薬品を開発しようとする研究が活発に進められており、最近は、GLP-1とグルカゴンの2種類のペプチド受容体にいずれも活性を有するオキシントモジュリン(oxyntomodulin)が脚光を浴びている。前記オキシントモジュリンは、グルカゴンの前駆体であるプレグルカゴン(pre-glucagon)から作られるペプチドであり、GLP-1の食物摂取阻害、満腹感増進効力とグルカゴンの脂肪分解機能を示し、抗肥満治療剤としての可能性を高めている。このようなオキシントモジュリンペプチドの二重機能性(dual function)に基づいて肥満治療目的の医薬を開発するための研究が活発に進められている。例えば、韓国特許登録第925017号にはヒトの過体重を治療するための、経口、非経口、粘膜(mucosal)、直腸、皮下または経皮性投与用薬学的組成物が開示されているが、有効成分としてオキシントモジュリンを含む。しかし、オキシントモジュリンを含む肥満治療剤は、生体内半減期が短く、一日に3回ずつ高用量を投与しても肥満治療効果も低い水準を示すことが報告されている。したがって、オキシントモジュリンを変形させて生体内半減期を増大させたり肥満治療効果を増大させようとする努力が続いている。一方、既存に開発されたオキシントモジュリンまたはその誘導体は依然として短い半減期と低い薬効により毎日投与しなければならず、過量の薬物を投与しなければならない2つの大きな短所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許登録第925017号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10-725315号
【特許文献3】国際特許公開第WO97/34631号
【特許文献4】国際特許公開第96/32478号
【特許文献5】国際公開公報WO2014-073842号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
溶液状態のタンパク質及びペプチドに安定化剤を添加して薬物の物理化学的変化を抑制しながら長期間保存する場合にも薬物の生体内効力を維持させる開発の必要性が台頭している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの目的は、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤の製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤は、糖アルコールが存在せずに糖が存在することを特徴とする新たな組成で、長期保管安定性はもちろん医薬品の安定性を判断する過酷試験及び/または加速試験で優れた効果を提供し、医薬品の分解なしに安定的に保管できる新たな液状製剤として利用できる。また、本発明の液状製剤は、血液の浸透圧と類似した水準の浸透圧範囲を有しているところ、患者に投与時に痛みを誘発せず、患者投与便宜性を増進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を具現する一つの態様は、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤である。前記持続型結合体は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドが免疫グロブリンFc切片にリンカーにより共有結合されている物質を意味することができる。
【0011】
一つの具体例として、前記液状製剤は、下記化学式(1)のペプチド結合体;緩衝物質;糖;及び非イオン性界面活性剤;を含むペプチド結合体の液状製剤であることを特徴とする。
【0012】
・・・(1)
前記化学式(1)においてQは下記一般式1のペプチドであり;
Zはヒト免疫グロブリンFc切片であり;
nは自然数であり、nの値は前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が10kDaになるように定められ、
【0013】
[一般式1]
His-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Tyr-Leu-Asp-Xaa16-Lys-Arg-Ala-Xaa20-Glu-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Cys(配列番号1)、
【0014】
このとき、一般式1において、
Xaa2は2-アミノイソブチル酸、Xaa12はリシン、Xaa16はグルタミン酸、Xaa20はリシンであり;
Xaa12とXaa16またはXaa16とXaa20の残基との間にラクタム環が形成されていても、形成されていなくてもよい。
【0015】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は18~940nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHを4.5~7.5の範囲で維持するための分量の緩衝物質;1~20%(w/v)の糖;及び0.001~0.2%(w/v)の非イオン性界面活性剤;を含むペプチド結合体の液状製剤であることを特徴とする。
【0016】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチドは配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0017】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ペプチド、Qは配列番号3のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0018】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記QはそのC末端がアミド化したことを特徴とする。
【0019】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Qはペプチド内のシステインの硫黄原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0020】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はIgG4由来であることを特徴とする。
【0021】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Zは、2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されたことを特徴とする。
【0022】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記Zは、配列番号5のアミノ酸配列である単量体を含むことを特徴とする。
【0023】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記ZはそのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたことを特徴とする。
【0024】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片とQがグリコシル化されていないことを特徴とする。
【0025】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は糖アルコールを含まないことを特徴とする。
【0026】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は等張化剤を含まないか、又は含むものであってもよい。
【0027】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質は、クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0028】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質は、酢酸とその塩であることを特徴とする。
【0029】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは4.8~6.0であることを特徴とする。
【0030】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤のpHは4.9~5.3であることを特徴とする。
【0031】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記緩衝物質の濃度は液状製剤のpHを4.5~7.5の範囲で維持するための5~100mMであることを特徴とする。
【0032】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0033】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖は、スクロースであることを特徴とする。
【0034】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記糖は、液状製剤内に1~20%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする。
【0035】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、ポリソルベート、又はそれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0036】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー188、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80及びそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0037】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記非イオン性界面活性剤は、液状製剤内に0.001%~0.2%(w/v)の濃度で存在することを特徴とする。
【0038】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記化学式(1)のペプチド結合体は、液状製剤内に18~940nmol/mlの濃度で存在することを特徴とする。
【0039】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、アルギニン、グリシン、メチオニン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸を安定化剤としてさらに含むことを特徴とする。
【0040】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、化学式(1)のペプチド結合体;クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される糖;及びポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含み、pHは4.8~6.0であることを特徴とする。
【0041】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMのクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;1%~20%(w/v)のグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される糖;及び0.001%~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0042】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMの酢酸とその塩;1%~20%(w/v)のスクロース;及び0.001%~0.2%(w/v)のポリソルベートを含むことを特徴とする。
【0043】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はIgG、IgA、IgD、IgE又はIgMに由来するFc切片であることを特徴とする。
【0044】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片は(a)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン;(b)CH1ドメイン及びCH2ドメイン;(c)CH1ドメイン及びCH3ドメイン;(d)CH2ドメイン及びCH3ドメイン;(e)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の一個又は二個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域又はヒンジ領域の一部との組み合わせ;及び(f)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体で構成された群から選択されることを特徴とする。
【0045】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片のそれぞれのドメインは、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMからなる群から選択される免疫グロブリンに由来した相違する起源を有するドメインのハイブリッドであることを特徴とする。
【0046】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片は同一の起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンで構成された、二量体又は多量体の形態であることを特徴とする。
【0047】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片がIgG4 Fc切片であることを特徴とする。
【0048】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片がヒト非グリコシル化IgG4 Fc切片であることを特徴とする。
【0049】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記免疫グロブリンFc切片はジスルフィド結合を形成できる部位が除去される変形、天然型FcからN末端の一部のアミノ酸が除去される変形、天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加される変形、補体結合部位が除去される変形、又はADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去される変形を含むか、前記変形の組み合わせを含む、天然型Fcの誘導体であることを特徴とする。
【0050】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、配列番号2、3または4を含有するQを含む化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMのクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;1%~20%(w/v)のグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される糖;及び0.001%~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0051】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、配列番号2、3または4を含有するQを含む化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMのクエン酸塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;1%~20%(w/v)のスクロース;及び0.001%~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0052】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、C末端がアミド化しているQがシステイン硫黄原子を通じて連結された93~565nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが4.8~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及び0.01~0.1%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベートまたはそれらの組み合わせから選択する非イオン性界面活性剤;を含むことを特徴とする。
【0053】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、C末端がアミド化しているQがシステイン硫黄原子を通じて連結され、ZはそのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結された、93~565nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが4.8~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及び0.01~0.1%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベートまたはそれらの組み合わせから選択する非イオン性界面活性剤;を含むことを特徴とする。
【0054】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、液状製剤内の前記化学式(1)のペプチド結合体の濃度は274~474nmol/mLであることを特徴とする。
【0055】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、液状製剤内の前記化学式(1)のペプチド結合体の濃度は320~430nmol/mLであることを特徴とする。
【0056】
前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤であって、前記液状製剤は、過酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で1週間保管時に性状が透明であることを特徴とする。
【0057】
本発明を具現する他の一つの様態は、前記(a)化学式(1)のペプチド結合体と(b)i)緩衝物質、ii)糖、及びiii)界面活性剤を混合する段階を含む、前述の具体例のいずれか一つによる液状製剤である、ペプチド結合体の液状製剤の製造方法である。
【0058】
本発明を実施するための具体的な内容を説明すれば、次の通りである。
【0059】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0060】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて本出願に記載された本発明の特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認することができる。また、このような等価物は本発明に含まれることが意図される。
【0061】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(α-アミノイソブチル酸)のような他のアミノ酸について一般的に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書で略語として言及されたアミノ酸はIUPAC-IUB命名法により記載された。
【0062】
アラニン Ala、A アルギニン Arg、R
アスパラギン Asn、N アスパラギン酸 Asp、D
システインCys、C グルタミン酸 Glu、E
グルタミン Gln、Q グリシンGly、G
ヒスチジン His、H イソロイシン Ile、I
ロイシン Leu、L リシン Lys、K
メチオニン Met、M フェニルアラニン Phe、F
プロリン Pro、P セリン Ser、S
トレオニン Thr、T トリプトファン Trp、W
チロシン Tyr、Y バリン Val、V
【0063】
本発明を具現するための一つの態様は、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc切片が互いに連結された、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の液状製剤を提供する。
【0064】
具体的には、下記化学式(1)のペプチド結合体;緩衝物質;糖;及び非イオン性界面活性剤;を含む液状製剤を提供する。
【0065】
・・・(1)
【0066】
前記化学式(1)においてQは下記一般式1のペプチドであり;
Zはヒト免疫グロブリンFc切片であり;
nは自然数であり、nの値は前記ペプチド結合体内の[OCH2CH2]n部位の平均分子量、例えば、数平均分子量が10kDaになるように定められ、
[一般式1]
His-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Tyr-Leu-Asp-Xaa16-Lys-Arg-Ala-Xaa20-Glu-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Cys(配列番号1)、
【0067】
このとき、一般式1において、
Xaa2は2-アミノイソブチル酸(Aib)、Xaa12はリシン(K)、Xaa16はグルタミン酸(E)、Xaa20はリシン(K)であり;
Xaa12とXaa16またはXaa16とXaa20の残基との間にラクタム環が形成されていても、形成されていなくてもよい。
【0068】
前記化学式(1)のペプチド結合体は、配列番号1のペプチドQとヒト免疫グロブリンFc切片Zがエチレングリコール繰り返し部を介在して共有結合で連結された構造であり、それぞれQは化学式(1)のスクシンイミド環に、Zは化学式(1)のオキシプロピレン基に連結される。
【0069】
前記ペプチド結合体のQは、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドであってもよい。
【0070】
一実施形態において、化学式(1)のスクシンイミド環にQが連結される部位は、QのC末端システムの硫黄原子である。
【0071】
Zは、ヒト免疫グロブリンFc切片であり、本明細書においてヒト免疫グロブリンFc切片と言えば、免疫グロブリンのパパイン消化から得る天然型配列だけでなく、その誘導体、例えば、天然配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはそれらの組み合わせにより変換され、天然型と相異なった配列まで網羅して含まれる。
【0072】
Z内において前記オキシプロピレン基に連結される部位は特に限定されない。本発明の一実施形態において、前記オキシプロピレン基に連結されるZの部位は、N末端窒素またはZ内部残基の窒素原子(例えば、リシンのイプシロン窒素)であってもよい。本発明の一つの具体的な実施形態において、Zが化学式(1)のオキシプロピレン基に連結される部位はZのN末端プロリンであってもよい。
【0073】
前記Zは、2個のポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記二鎖中の一鎖の窒素原子を通じてのみ連結されている構造であってもよいが、これに制限されない。前記窒素原子を通じた連結は、リシンのイプシロンアミノ原子やN末端アミノ基に還元的アミノ化を通じて連結できる。
【0074】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基またはアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な作用基)と反応してアミンを生成した後、還元反応によりアミン結合を形成させる反応を意味し、当該技術分野において広く知られている有機合成反応である。
【0075】
一つの具体例として、前記ZはそのN末端プロリンの窒素原子を通じて連結されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0076】
一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc切片とQはグリコシル化されていなくてもよいが、これに制限されない。本発明において前記化学式(1)のペプチド結合体は「持続型結合体」と称する。本発明において持続型結合体は「持続型オキシントモジュリン誘導体結合体」または「ペプチド結合体」と混用され得る。
【0077】
本発明において用語「液状製剤」は医薬品の形態を液状に製剤化した薬物を意味し、これは液状の内用製剤及び外用製剤をいずれも含む。
【0078】
本発明の液状製剤は、薬理効果を奏する化学式(1)のペプチド結合体及び前記薬理効果を奏する物質が液状に製剤化される時、これを一定期間安定に維持及び/又は保存させる物質を含む。
【0079】
本発明の化学式(1)のペプチド結合体の液状製剤において、保存安定性は正確な投与量を保障するために重要である。
【0080】
前記液状製剤は、緩衝物質、糖、及び非イオン性界面活性剤を含むことができる。このような液状製剤はグルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体を安定的に保存できる溶液剤形であってもよい。
【0081】
また、前記液状製剤は、アルギニン、グリシン、メチオニン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸である安定化剤をさらに含むことができるが、これに制限されない。
【0082】
例えば、前記液状製剤は、薬理効果を示す化学式(1)のペプチド結合体の他に液状製剤の組成で緩衝物質、糖及び非イオン性界面活性剤を必須に含めてもよく、または緩衝物質、糖、非イオン性界面活性剤を必須に含み、追加の構成要素としてアミノ酸である安定化剤を含んでもよいが、特にこれに制限されない。本発明者らは驚くべきことにペプチド液状製剤の組成として緩衝物質、糖アルコール及び非イオン性界面活性剤とアミノ酸を含有する既存の製剤と比較して糖アルコールの代わりに糖に交換する場合、アミノ酸安定化剤を含有しなくても優れた安定性を示すことを見出した。さらに、緩衝物質、糖アルコール及び非イオン性界面活性剤とアミノ酸を含有する従来技術の製剤の場合、製剤の安定性を確保できる成分の濃度では血液に比べて浸透圧が高いという問題があったが、本発明の製剤では浸透圧を血液と類似した水準に下げることができるだけでなく、安定性も従来技術の製剤と少なくとも対等又は向上させるという長所がある。具体的には、従来技術の製剤において糖アルコールを糖に交換し、pHを一部調整することにより、前述の安定性と血液に類似した浸透圧を実現することができる。
【0083】
一般に、血液の場合、浸透圧が約300mOsm/kgである。本発明の製剤は、前記血液の浸透圧と類似した範囲であってもよく、その例として300±50mOsm/kgであってもよい。このように、血液の浸透圧と類似した浸透圧を有する本発明の製剤は、患者に投与時に痛みを誘発せず、投与の便宜性を増進させることができる。
【0084】
一方、本発明の製剤に追加で含まれてもよいアミノ酸であるメチオニンの場合、その存否による安定性に影響はないため、除外されてもよい。
【0085】
このような本発明の一つの具体的な実施形態によれば、液状製剤が12ヶ月までも安定的に前述した持続型結合体を維持することができ、長期安定性に優れ、加速条件でも6ヶ月まで残存率が良いだけでなく、過酷条件でも4週間まで透明な性状を維持する。
【0086】
本発明の液状製剤の一つの具体例は、糖アルコールを含まなくてもよい。
【0087】
本発明の液状製剤の一つの具体例は、等張化剤を含むか、又は含まないものであってもよい。例えば、本発明の液状製剤は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、またはクエン酸ナトリウムなどを含まないものであってもよいが、これに制限されない。
【0088】
前記等張化剤は、浸透圧の調節を示す物質をいう。前記等張化剤は、本発明による液状製剤を体内に投与する場合、浸透圧を適切に維持する役割を果たすことができる。
【0089】
このような等張化剤の代表的な例としては、水溶性無機塩として塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、またはクエン酸ナトリウムが挙げられ、具体的には、塩化ナトリウムが挙げられるが、特にこれに制限されるものではない。
【0090】
本発明による製剤において、前記等張化剤の濃度は0~200mM、0~150mM、0~100mM、10~200mM、10~150mM、10~100mM、10~50mM、20~100mM、20~80mM、20~50mM、20~30mM、又は40~50mMであってもよいが、特にこれに制限されるものではない。このような等張化剤は、上述の液状製剤に追加で含まれる選択的な成分であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0091】
ここで、液状製剤を構成する各成分の種類及び濃度あるいはpHに対しては、下記内容が全て適用されることは明らかである。
【0092】
本発明の液状製剤に含まれる一構成要素である緩衝物質は、化学式(1)のペプチド結合体が安定になるように液状製剤のpHが急激に変化しないように溶液のpHを維持させることができる。前記緩衝物質は、緩衝系(buffer system)とも呼ばれ、前記緩衝物質又は緩衝系は液状製剤のpHを維持させる役割をする。目的とする安定化対象物質である化学式(1)のペプチド結合体を安定化させることができるpHを維持させる緩衝物質は制限なく用いられ得る。
【0093】
前記緩衝物質は、リン酸とその共役塩基であるアルカリ塩(例えば、リン酸塩:リン酸ナトリウム、リン酸カリウム又はこれらの水素又は二水素塩)、クエン酸とその塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、酢酸とその塩(例えば、酢酸ナトリウム)、ヒスチジンとその塩をはじめとするpH緩衝物質であってもよく、これら緩衝物質の混合物も用いられるが、これに限定されない。
【0094】
本発明の液状製剤は、前記緩衝物質を含む緩衝溶液を液状製剤の溶媒として含んでもよく、具体的には、前記緩衝溶液は、クエン酸緩衝溶液(例えば、クエン酸ナトリウム緩衝溶液)、酢酸緩衝溶液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝溶液)、リン酸緩衝溶液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝溶液)、ヒスチジン緩衝溶液、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよく、前記緩衝溶液又は液状製剤内の緩衝物質(クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、又はそれらの組み合わせ)は目標とする液状製剤のpHを維持するのに十分な分量の濃度で含まれてもよい。
【0095】
前記液状製剤のpHは、pH約4.5~pH約7.5、例えば、pH約4.5~pH約7.0、pH約4.5~約6.5、pH約4.5~約6.3、pH約4.5~pH約6.0、pH約4.5~約5.9、pH約4.6~約5.8、pH約4.7~約5.8、pH約4.8~約6.0、pH約4.8~5.8、pH約4.8~約5.7、pH約4.8~5.6、pH約4.8~約5.5、pH約4.8~約5.4、pH約4.8~約5.3、pH約4.9~約5.3、pH約4.9~約5.2、pH約5.0~約5.2又はpH約5.1であってもよいが、特にこれに限定されない。
【0096】
前記目標とするpHになるようにする液状製剤の濃度は、約1mM~約200mMであってもよく、よりも具体的には、約5mM~約100mM、約5mM~約80mM、約5mM~約40mM、約8mM~約40mM、約5mM~約30mM又は約5mM~約25mMであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0097】
本発明の液状製剤に含まれる一構成要素である糖(saccharide)は、単糖類、二糖類、多糖類、オリゴ糖類などをいい、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドの持続型結合体の安定性を増大させることができる。具体的な例としては、マンノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、フコース及びキシロースなどの単糖類;ラクトース、マルトース、スクロースなどの二糖類;ラフィノース及びデキストランなどの多糖類などを挙げることができるが、これに制限されない。
【0098】
前記糖は、液状製剤の全溶液比約1~約20%(w/v)、約1~15%(w/v)、約2~約15%(w/v)、約2~約12%(w/v)、約2~約12%(w/v)、約3~約10%(w/v)、約4~約10%(w/v)、約5~約10%(w/v)、約6~約10%(w/v)、約7~約10%(w/v)、約7~約9%(w/v)、約8~約9%(w/v)又は約8.5 %(w/v)の濃度で存在してもよいが、特にこれに限定されない。
【0099】
特にこれに制限されないが、前記液状製剤に含まれる一構成要素である非イオン性界面活性剤は、タンパク質溶液の表面張力を下げて疎水性表面にタンパク質が吸着又は凝集することを防止することができる。
【0100】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート);前記ポリオキシエチレンの後の数値(20)は、オキシエチレン基(-(CH2CH2O)-)の総数を意味する)、ポロキサマー(PEO-PPO-PEO共重合体;PEO:poly(ethylene oxide)、PPO:poly(propylene oxide))、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化合物(例えば、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル:C1-C30)、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンコポリマー(アルキル:C1-C30)など)、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulphate、SDS)などであってもよく、又はポリソルベート又はポロキサマーを挙げることができ、これらが一つ又は二つ以上の組み合わせの形態でも用いられる。
【0101】
具体的には、前記非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリソルベート20、又はポロキサマー188であってもよく、これらが組み合わせられて用いられてもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0102】
本発明において前記非イオン性界面活性剤は高濃度で含まれないことが好ましく、具体的には、本発明の製剤に約0.2%(w/v)以下の濃度、例えば、約0.001~約0.2%(w/v)、約0.001~約0.1%(w/v)、約0.001~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.08%(w/v)、約0.002~約0.05%(w/v)、約0.005~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.05%(w/v)、約0.01~約0.04%(w/v)、約0.01~約0.03%(w/v)、又は約0.02%(w/v)で含まれてもよいが、特にこれに限定されない。
【0103】
前記液状製剤に追加され得る選択的構成要素としての安定化剤であるアミノ酸は、メチオニン、アルギニン、グリシン又はそれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されない。また、前記アミノ酸はL-形態であってもよいが、特にこれに制限されない。
【0104】
前記アミノ酸は、タンパク質の酸化反応などにより起こり得る不純物の生成を抑制させることができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0105】
前記アミノ酸は製剤内に約0.01~約1mg/mLの濃度、約0.01~約0.8mg/mL、約0.01~約0.5mg/mL、約0.02~約0.5mg/mL、又は約0.02~約0.4mg/mLで存在してもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0106】
一方、本発明の液状製剤には、前記液状製剤の必須の構成要素である糖;緩衝物質;及び非イオン性界面活性剤以外に、選択的構成要素である安定化剤としてのアミノ酸以外に本発明の効果を損傷させない範囲内で当業界に公知となっているその他の成分乃至物質が選択的にさらに含まれてもよいが、これに制限されない。
【0107】
前記化学式(1)のペプチド結合体である持続型結合体は、液状製剤内に薬理学的有効量として存在することができ、その例として化学式(1)のペプチド結合体の濃度が約18~約940nmol/mL、約18.7~約935nmol/mL、約18~約842nmol/mL、約18~約748nmol/mL、約18~約655nmol/mL、約18~約561nmol/mL、約18~約468nmol/mL、約18~約374nmol/mL、約93~約940nmol/mL、約93.5~約561nmol/mL、約93~約842nmol/mL、約93~約748nmol/mL、約93~約655nmol/mL、約93~約565nmol/mL、約93~約561nmol/mL、約93~約468nmol/mL、約150~約468nmol/mL、約200~約468nmol/mL、約250~約468nmol/mL、約274~約474nmol/mL,約280~約468nmol/mL、約300~約468nmol/mL、約300~約450nmol/mL、約320~約430nmol/mL、約320~約440nmol/mL、約340~約420nmol/mL、約340~約400nmol/mL、約350~約400nmol/mL、約360~約390nmol/mL、約365~約385nmol/mL、約370~約380nmol/mL、約93~約374nmol/mL又は約374nmol/mLであってもよいが、これに限定されない。
【0108】
本発明において用語、「約」は、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1、±0.01などをすべて含む範囲であり、約という用語の後の数値と同等、もしくは類似した範囲の数値を全て含むが、これに制限されない。
【0109】
前記液状製剤は、一つの具体例として、化学式(1)のペプチド結合体;クエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される糖;及びポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含み、pHは4.8~6.0であってもよい。
【0110】
前記液状製剤は、一つの具体例として、18~940nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMのクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝物質;1%~20%(w/v)のグルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、スクロース、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される糖;及び0.001%~0.2%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベート及びそれらの組み合わせからなる群から選択される非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0111】
前記液状製剤は、一つの具体例として、18~940nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;液状製剤のpHを4.8~6.0の範囲で維持するための5~100mMの酢酸とその塩;1%~20%(w/v)のスクロース;及び0.001%~0.2%(w/v)のポリソルベートを含むことができるが、これに制限されない。
【0112】
前記液状製剤は、一つの具体例として、C末端がアミド化しているQのシステインの硫黄原子を通じて連結された93~565nmol/mLの化学式(1)のペプチド結合体;前記液状製剤のpHが4.8~5.5になるようにクエン酸とその塩、酢酸とその塩、ヒスチジンとその塩、リン酸とその塩及びそれらの組み合わせから選択する5~25mMの緩衝物質;4~10%(w/v)の糖;及び0.01~0.1%(w/v)のポロキサマー、ポリソルベートまたはこれらの組み合わせから選択する非イオン性界面活性剤;を含有する液状製剤であってもよいが、これに制限されない。
【0113】
前記液状製剤は、過酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で1週間保管時に性状が透明なものであってもよい。
【0114】
一つの具体例として、前記液状製剤は、過酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75±5%の条件で約1週間以上、約2週間以上、約3週間以上、約4週間以上保管時に性状が透明なものであってもよい。
【0115】
本発明の一実施例によれば、化学式(1)のペプチド結合体以外に緩衝物質;糖;及び非イオン性界面活性剤からなる液状製剤の組成が緩衝物質;糖アルコール;アミノ酸;及び非イオン性界面活性剤からなる液状製剤の組成より25±2℃及び相対湿度60±5%の条件である加速条件で6ヶ月まで安定性が高く、過酷試験条件である40±2℃及び相対湿度75%±5%の条件で1週間保管時に性状が透明であり、4週間までも依然として性状が透明であることを確認した(表6~9)。
【0116】
本発明において用語「加速試験(accelerated testing)」は、医薬品の公式安定性試験の一部過度な保管条件を採択して原料医薬品又は完成医薬品の化学的分解または物理的変化を増加させるように考案された試験を意味する。長期安定性試験以外に、加速試験資料を活用して非加速条件で長期間にわたる化学的な影響を評価し、運送中に発生し得る状況のように、短期間中に表示保管条件を外れたときの影響を評価することができる。通常の保管状態より過度の温度や湿度の条件下で原料や医薬品の化学的変性、物理的変化の速度を増加できるように考案された試験である。
【0117】
本発明において用語「過酷試験(stress testing)」は、医薬品の安定性に対する根本的特性を究明する試験を意味する。医薬品の開発過程で行われ、加速試験よりさらに過酷な条件で行われ、医薬品の予想分解産物と物理的変化を究明するのに役立つ。
【0118】
前記化学式(1)のペプチド結合体のQは、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドであってもよい。「グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチド」は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して有意な水準の活性を有する多様な物質、例えば、多様なペプチドを含む。
【0119】
特にこれに制限されるものではないが、前記グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して有意な水準の活性を有するペプチドとして、本願において「GCG/GLP-1受容体デュアルアゴニスト」、「二重作用剤」、「オキシントモジュリン誘導体」と混用され得る。
【0120】
より具体的には、前記グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドは、下記一般式1の配列を含む、グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドであってもよい。
[一般式1]
His-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Xaa12-Tyr-Leu-Asp-Xaa16-Lys-Arg-Ala-Xaa20-Glu-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr-Cys(配列番号1)、
【0121】
このとき、一般式1において、
Xaa2は2-アミノイソブチル酸(Aib)、Xaa12はリシン(K)、Xaa16はグルタミン酸(E)、Xaa20はリシン(K)であり;
Xaa12とXaa16またはXaa16とXaa20の残基との間にラクタム環が形成されていても、形成されていなくてもよい。
【0122】
本明細書で「Aib」は「2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)」または「アミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)」と混用されてもよく、2-アミノイソブチル酸(2-aminoisobutyric acid)とアミノイソブチル酸(aminoisobutyric acid)は混用され得る。
【0123】
前記ペプチドは、配列番号2、3、または4のアミノ酸配列を含むもの、配列番号2、3、または4からなる群から選択されたアミノ酸配列で(必須に)構成されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0124】
一方、本願において「特定配列番号で構成されるペプチド」と記載されているとしても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一又は相当する活性を有する場合であれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加又は自然に発生し得る突然変異、あるいはこのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、このような配列の付加あるいは突然変異を有する場合にも、本願の範囲内に属することが自明である。
【0125】
一方、このようなペプチドは、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0126】
前記ペプチドのC末端はアミド化されるか、又は自由カルボキシル基(-COOH)を有するペプチドであるか、又はC末端が変形されていないペプチドを含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0127】
一つの具体例として、前記QはC末端がアミド化しているものであってもよいが、これに限定されない。
【0128】
一つの具体例として、前記Qは非グリコシル化されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0129】
また、前記グルカゴン受容体及びGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体に対して活性を有するペプチドは分子内架橋(intramolecular bridge)を含むことができ(例えば、共有結合的架橋または非共有結合的架橋)、具体的には、環を含む形態であってもよく、前記一般式の12番のアミノ酸と16番のアミノ酸、または16番のアミノ酸と20番のアミノ酸間に環を形成するものであってもよいが、特にこれに制限されない。前記環の非制限的な例としてラクタム架橋(又はラクタム環)を含んでもよい。
【0130】
また、本発明によるペプチドはペプチドそのもの、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容可能な塩)、又はその溶媒和物の形態をいずれも含む。また、ペプチドは薬学的に許容される任意の形態であってもよい。
【0131】
前記塩の種類は特に制限されない。ただし、個体、例えば、哺乳類に安全で効果的な形態であることが好ましいが、特にこれに制限されるものではない。
【0132】
前記用語、「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、又はアレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用可能な物質を意味する。
【0133】
本発明において用語、「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩は、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含み得る。
【0134】
また、本発明で用いられた用語「溶媒和物」は、本発明によるペプチド又はこの塩が溶媒分子と複合体を形成したことをいう。
【0135】
本発明において用語、「化学式(1)のペプチド結合体」は、本発明の液状製剤に含まれる有効成分であり、薬理学的有効量で液状製剤に含まれてもよい。具体的には、前記グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチド及び免疫グロブリンFc領域が互いにリンカーで連結された形態であり、前記結合体は免疫グロブリンFc領域が結合されていないグルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドに比べて増加した効力の持続性を示すことができ、本発明では、このような結合体を「持続型結合体」と呼ぶ。本発明において、持続型結合体は「持続型オキシントモジュリン誘導体結合体」または「ペプチド結合体」と混用される。
【0136】
一方、このような結合体は、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0137】
また、化学式(1)のペプチド結合体において、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドであるQと免疫グロブリンFc切片の連結は、物理または化学結合であるか、非共有または共有結合であってもよく、具体的には、共有結合であってもよいが、これに制限されない。
【0138】
また、化学式(1)のペプチド結合体は、グルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドであるQと免疫グロブリンFc切片の連結方法は、特に制限されないが、リンカーを通じてグルカゴン受容体及びGLP-1受容体に対して活性を有するペプチドと免疫グロブリンFc切片が互いに連結されたものであってもよい。
【0139】
具体的には、本願の液状製剤に含まれる持続型結合体は前記化学式(1)で表されるものであってもよい。
【0140】
このようなペプチド結合体の製造方法は、大韓民国登録特許第10-725315号に記載されており、前記明細書は全体が本願の参照として挿入される。
【0141】
本発明において、「免疫グロブリンFc切片」は、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域を除いた、重鎖定常領域を意味する。具体的には、前記免疫グロブリンFc切片は 重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)の部分を含むものであってもよく、より具体的には、ヒンジ領域(ヒンジ領域全体又は一部を意味する)をさらに含むものであってもよい。
【0142】
前記免疫グロブリンFc切片は、本発明の化学式(1)のペプチド結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、前記化学式(1)においてZに該当し得る。
【0143】
このような免疫グロブリンFc切片は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0144】
本発明において、免疫グロブリンFc切片は、N末端に特定ヒンジ配列を含んでもよい。
【0145】
本発明の用語、「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)を通じて免疫グロブリンFc切片の二量体を形成する部位を意味する。
【0146】
本発明において、前記ヒンジ配列は、下記アミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して一つのシステイン残基のみを有するように変異されたものであってもよいが、これに制限されない:
【0147】
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号6)。
【0148】
前記ヒンジ配列は、配列番号6のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して一つのシステイン残基のみを含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、一つのシステイン残基のみを含む、3~12個のアミノ酸で構成されたものであってもよいが、これに限定されない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次のような配列を有することができる:Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号7)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号8)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号9)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号10)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号11)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号12)、Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号13)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号14)、Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号15)、Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号16)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号17)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号18)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号19)、Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号20)、Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号21)、Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号22)、Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号23)、Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号24)、Ser-Cys-Pro(配列番号25)。より具体的には、ヒンジ配列は 配列番号25(Ser-Cys-Pro)又は配列番号16(Pro-Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これに限定されない。
【0149】
本発明の免疫グロブリンFc切片はヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の2分子が二量体を形成した形態であってもよく、また、本発明の化学式(1)のペプチド結合体はリンカーの一方の末端が二量体の免疫グロブリンFc切片の一鎖に連結された形態であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0150】
本発明の用語、「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味することであり、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個以上のアミノ酸まで含むものであってもよい。本発明の免疫グロブリンFc切片はヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに限定されない。
【0151】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等又は向上した効果を奏する限り、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域のみを除いて、一部又は全体の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張したFc切片であってもよい。また、CH2及び/又はCH3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0152】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc切片は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン中の一個又は2個以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0153】
また、一つの具体例として、前記免疫グロブリンFc切片は二量体形態(dimeric form)であってもよく、二量体形態の一つのFc領域に一般式1のペプチドの一分子が共有結合的に連結されてもよく、その時、前記免疫グロブリンFcと一般式1のペプチドはポリエチレングリコールリンカーにより互いに連結されてもよい。一方、二量体形態の一つのFc領域に一般式1のペプチドの二分子が対称的に結合することも可能である。その時、前記免疫グロブリンFcと一般式1のペプチドはポリエチレングリコールリンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、前記例に制限されるものではない。
【0154】
また、本発明の免疫グロブリンFc切片は天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的又は保存的置換又はそれらの組み合わせにより相違する配列を有することを意味する。
【0155】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として用いられ得る。
【0156】
また、ジスルフィド結合を形成できる部位が除去されたり、天然型FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去されたり、又は天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもできるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクタ機能をなくすために補体結合部位、例えば、Clq結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc切片の配列誘導体を製造する技術は、国際特許公開第WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0157】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知となっている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も通常生じる交換はアミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などで修飾(modification)されることもできる。
【0158】
前記Fc誘導体は本発明のFc切片と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させたものであってもよい。
【0159】
また、このようなFc切片はヒト、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット又はモルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られてもよく、形質転換された動物細胞又は微生物から得られた組換え型又はその誘導体であってもよい。ここで、天然型から獲得する方法は全体免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して獲得する方法であってもよい。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィ(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離できる。さらに具体的な実施形態においてはヒト由来のFc切片を微生物から得たヒト免疫グロブリンFc切片である。
【0160】
また、免疫グロブリンFc切片は天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的方法のような常法が用いられ得る。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc切片は補体(c1q)との結合力が顕著に低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が減少又は除去されるため、生体内において不要な免疫反応を誘発しない。このような点で薬物のキャリアとしての本来の目的に、より符合する形態は糖鎖が除去されたり非グリコシル化された免疫グロブリンFc切片であるといえる。
【0161】
本発明において「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc切片をいい、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核動物、さらに具体的な実施形態では大腸菌で生産してグリコシル化されていないFc切片を意味する。
【0162】
一方、免疫グロブリンFc切片はヒト又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラビット、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、さらに具体的な実施形態においてはヒト起源であってもよいが、これに限定されない。
【0163】
また、免疫グロブリンFc切片はIgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来又はそれらの組み合わせ(combination)又はこれらの混成(hybrid)によるFc切片であってもよい。さらに具体的な実施形態では、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来であり、より具体的な実施形態ではリガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となったIgG由来である。より一層具体的な実施形態において前記免疫グロブリンFc切片はIgG4 Fc切片であり、最も具体的な実施形態において前記免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc切片であるが、これに限定されるものではない。
【0164】
また、一つの具体的な実施形態において、免疫グロブリンFc切片はヒトIgG4 Fcの断片であり、各単量体(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain 形態)を通じて2個の単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)の形態であってもよく、その時、ホモ二量体の各単量体は独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合、即ち、2個の内部のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有したり/有することができる。各単量体のアミノ酸の数は221個のアミノ酸で構成されてもよく、ホモ二量体を形成するアミノ酸は計442個のアミノ酸からなってもよいが、これに限定されない。具体的には、免疫グロブリンFc切片は配列番号5のアミノ酸配列(221個のアミノ酸で構成される)を有する単量体2個が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間にジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立に35番及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであってもよいが、これに限定されない。一つの例として、免疫グロブリンFc切片は配列番号26のアミノ酸配列(442個のアミノ酸で構成される)を含むホモ二量体であってもよいが、これに限定されない。
【0165】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する時、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc切片をコードするポリペプチドが相違する起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。即ち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなるグループから選択された2個以上の断片から二量体又は多量体の製造が可能である。
【0166】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に2個以上の相違する起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループから1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含めてもよい。
【0167】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではそれらの組み合わせ又はこれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存的毒性(CDC、Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc切片である。
【0168】
本発明を具現するもう一つの態様は、前記(a)化学式(1)のペプチド結合体と(b)i)緩衝物質、ii)糖、及びiii)非イオン性界面活性剤を混合する段階を含む、化学式(1)のペプチド結合体の液状製剤の製造方法を提供する。
【0169】
結合体、緩衝物質、糖、及び非イオン性界面活性剤、及び液状製剤は前記で説明した通りである。
【0170】
本発明のもう一つの実施形態として、本発明は、前記液状製剤を含む肥満や糖尿病の予防または治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0171】
本発明において用語、「予防」とは、目的とする疾患の発明を抑制したり遅延させるすべての行為を意味する。本発明において「予防」とは、本発明の結合体を投与することにより血糖異常やインスリン分泌量調節異常などの糖尿病症状、または体重増加や体脂肪比率の増加などの肥満症状の発生を抑制したり遅延させることを意味する。
【0172】
本発明において用語、「治療」とは、発生した病気の症状を軽減、改善または緩和させるすべての行為を意味する。本発明において「治療」とは、本発明の結合体を投与することにより、前記糖尿病症状や肥満症状が軽減、改善または緩和され、血糖正常化、インスリン分泌正常化、体重減少、または体脂肪比率減少などの現象が現れることを意味する。
【0173】
本発明において用語、「肥満」とは、体内に脂肪組織が過多な状態であり、身体肥満指数(体重(kg)を身長(m)の二乗で割った値)が25以上であれば、肥満と定義される。肥満は、長い期間にわたりエネルギー消費量に比べて営養素を過多に摂取してエネルギー不均衡により誘発されることが通常である。肥満は、身体全体に影響を及ぼす代謝疾患であり、糖尿病及び高脂血症にかかる可能性が高くなり、性機能障害、関節炎、心血管系疾患の発病危険が高くなり、一部の場合、癌の発生とも連関がある。
【0174】
本発明において用語、「糖尿病」とは、インスリンの分泌量が不足したり、正常な機能が得られないなどの代謝疾患の一種であり、血中グルコースの濃度が高くなる高血糖を特徴とし、高血糖により様々な症状を起こし、尿からグルコースを排出する病気を意味する。
【0175】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。本発明において用語、「薬学的に許容」とは、治療効果を示すことができる程度の十分な量と副作用を引き起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合または同時用いられる薬物など、医学分野によく知られている要素に応じて当業者により容易に決定され得る。
【0176】
本発明のもう一つの実施形態として、本発明は、前記液状製剤を個体に投与する段階を含む肥満や糖尿病の予防または治療方法を提供する。
【0177】
前記液状製剤、肥満及び糖尿病は前記の通りである。
【0178】
前記個体は、肥満または糖尿病が疑われる個体であり、前記疾患が発病したり発病する可能性のあるヒトまたはラット、家畜などを含む哺乳動物を意味するが、本発明の液状製剤で治療可能な個体は制限なく含まれる。
【0179】
本発明の治療方法は、液状製剤を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与することを含んでもよい。適した総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で処置医により決定され、1回又は数回に分けて投与できる。しかし、本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤が用いられるかどうかをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に用いられたり同時に用いられる薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られている類似因子により異なって適用することが好ましい。
【0180】
以下、本発明を下記実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0181】
実施例1:GLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストの製造
GLP-1受容体及びグルカゴン受容体の両方に活性を示すGLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストの本発明の液状製剤における安定性を測定するために、下記のアミノ酸配列を有するGLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストを合成した(表1)。本願においてGLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストは、オキシントモジュリン誘導体と混用され得る。
【0182】
【表1】
【0183】
前記の表1において太字で表示されたアミノ酸は、太字で表示されたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、Aibは、非天然型アミノ酸であるaminoisobutyric acidを意味する。
【0184】
実施例2:単一ペギル化された(mono-PEGylated)免疫グロブリンFc切片の製造
実施例2-1.単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片の製造
免疫グロブリンFc切片の二つのN末端中の一つだけにペギル化(PEGylation)された構造の単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片を製造するために、N末端にPro-Ser-Cys-Pro配列のヒンジ領域を有する免疫グロブリンFc切片(49.8kDa、配列番号5のホモ二量体)を化学式(2)のPEGリンカー(数平均分子量10kDa)にモル比は免疫グロブリンFc:PEGリンカー=1:1で、免疫グロブリンFc切片の濃度を50g/Lにして6±4℃で約4時間反応させた。
【0185】
・・・(2)
【0186】
具体的には、反応は5mM Bis Tris(pH6.5)とリン酸カリウムが含まれた組成で行われ、10mM NaCNBH3(sodium cyanoborohydride)還元剤を加えて反応させた。単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片を得るために、前記反応液をBisTrisバッファで希釈し、精製した。
【0187】
この時、CaptoQ ImpRes(GE Healthcare、陰イオン交換クロマトグラフィー)カラムを利用してBisTrisが含まれたバッファと塩化ナトリウム濃度勾配で単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片を精製した。
【0188】
実施例2-2.単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片の構造分析
前記実施例2-1の方法で製造された単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片の構造をMALDI-TOF及びPeptide mappingを通じて分析した。MALDI-TOF分析の結果、単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片の予想分子量と一致し、Peptide mapping分析の結果、免疫グロブリンFc切片のN末端にPEGが90%以上ペギル化されたことを確認した。
【0189】
一方、前記実施例2-1の方法で製造された単一ペギル化された(Mono-PEGylated)免疫グロブリンFc切片(化学式(3))をSE-HPLC、RP-HPLCとIE-HPLC分析法を使用して分析した結果、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では80%以上の純度で製造されたことが確認された。
【0190】
・・・(3)
【0191】
実施例3:ペギル化された免疫グロブリンFc切片とオキシントモジュリン誘導体の連結による結合体製造
前記実施例2-1で製造された単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片を代表的なオキシントモジュリン誘導体として選択した配列番号3(C末端アミド化)のオキシントモジュリン誘導体と連結して持続型結合体を次のように製造した。
【0192】
限外/透析ろ過なしにpeptide conjugationを通じて単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片をオキシントモジュリン誘導体と反応させた。具体的には、実施例2-1の陰イオン交換クロマトグラフィー後、限外/透析ろ過なしにGLP-1/グルカゴン受容体デュアルアゴニストであるオキシントモジュリン誘導体(配列番号3)のpeptide conjugation反応を行い、持続型結合体(免疫グロブリンFc切片-PEGを含むリンカー-オキシントモジュリン誘導体)を製造した。本願において「持続型結合体」は、「持続型オキシントモジュリン誘導体結合体」と混用され得る。
【0193】
この時、単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片のPEGの一方の末端のマレイミド反応基とオキシントモジュリン誘導体のシステインが結合するように単一ペギル化された免疫グロブリンFc切片とオキシントモジュリン誘導体のモル比を1:1にし、オキシントモジュリン誘導体のタンパク質濃度を0.2g/Lにして6±4℃で約2時間反応させた。この時、反応液は、イソプロパノールを含むTris-Cl(6±4℃)バッファで行われた。反応後の結果物をSE-HPLC、RP-HPLC及びIE-HPLC分析法で分析した結果、免疫グロブリンFc切片-PEGを含むリンカー-オキシントモジュリン誘導体結合体(化学式(4))の純度はSE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では80%以上、及びIE-HPLC測定では80%以上であることが確認された。
【0194】
その後、前記反応物の結果物としてSource 15ISO(GE Healthcare)カラムを使用し、一回の疎水性相互作用クロマトグラフィーを行った。これにより、反応副産物を除去し、免疫グロブリンFc切片-PEGを含むリンカー-オキシントモジュリン誘導体の結合体を得た。この時、クエン酸ナトリウムが含まれたバッファと硫酸アンモニウムの濃度勾配を利用して精製した。
【0195】
溶出された免疫グロブリンFc切片-PEGを含むリンカー-オキシントモジュリン誘導体結合体(化学式(4))は、MALDI-TOF、SE-HPLC、RP-HPLC及びIE-HPLC分析法を使用して分析し、MALDI-TOF分析の結果、免疫グロブリンFc切片-PEGを含むリンカー-オキシントモジュリン誘導体結合体の予想分子量と一致し、SE-HPLC測定では90%以上、RP-HPLC測定では90%以上、及びIE-HPLC測定では90%以上の高純度で製造されたことを確認した。
【0196】
・・・(4)
【0197】
実施例4:液状製剤の製造及び浸透圧の評価
実施例3で製造された持続型オキシントモジュリン誘導体結合体の新たに作られた組成である液状製剤の安定性を確認するために、比較例として国際公開公報であるWO2014-073842に公知となった組成の液状製剤(比較例)及び本願発明による新たな組成の液状製剤(実施例)を下記表2のような組成で製造した。実施例の製剤は、本願発明の安定化剤の組成である緩衝剤、糖及び非イオン性界面活性剤の代表的な例であり、緩衝物質としては酢酸と酢酸ナトリウム、糖としてはスクロース、非イオン性界面活性剤としてはポリソルベート20を選択した。
【0198】
既存の製剤である比較例の製剤は、血液に比べて浸透圧が高く、これに加えて安定性をさらに改善させるために新たな製剤を製作した。安定性を改善させるために既存の製剤のpHを下げながら、マンニトールをスクロースに変更した。これにより、浸透圧も血液と類似した水準に減少したことを確認し、メチオニン添加有無は安定性に影響がないため、本願発明の実施例では除去した。浸透圧測定の結果、比較例の製剤は494mOsm/kgであり、実施例の製剤は305mOsm/kgで、血液の浸透圧(~300mOsm/kg)と類似した水準であった。
【0199】
【表2】
【0200】
実施例5:実施例の液状製剤の長期安定性の評価
実施例4で製造された持続型オキシントモジュリン誘導体結合体の液状製剤の組成(実施例)の長期安定性を確認するために、5±3℃で0~12ヶ月間保管した後、イオン交換クロマトグラフィー法(Ion Exchange-High Performance Liquid Chromatography,IE-HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー法(Size Exclusion-High Performance Liquid Chromatography,SE-HPLC)、逆相クロマトグラフィー法(Reverse Phase-High Performance Liquid Chromatography,RP-HPLC)を用いて分析した。表3、4、5ではIE-HPLC(%),RP-HPLC(%)とSE-HPLC(%)は、持続型オキシントモジュリン誘導体結合体に該当するピークの各分析時点におけるArea%を示す。
【0201】
【表3】
【0202】
【表4】
【0203】
【表5】
【0204】
前記の結果から分かるように、本願発明の液状製剤の組成は、12ヶ月間までも安定性が高いことを確認し、長期保管において最適の組成であることが分かった。
【0205】
実施例6:加速安定性の評価
実施例4で製造された実施例の液状製剤と比較例の液状製剤の加速安定性を確認するために、25±2℃及び相対湿度60±5%である条件で0~6ヶ月間保管した後、IE-HPLC、RP-HPLC、SE-HPLCを利用して分析した。加速安定性試験は、過度な保管条件を採用して原料医薬品又は完成医薬品の化学的分解又は物理的変化を増加させるように考案された試験であり、長期安定性試験以外に、加速安定性評価を通じて非加速条件において長期間にわたる化学的影響を評価し、運送中に発生し得る状況のように、短期間に表示保管条件を外れた時の影響を評価することができる。表6、7、8では、IE-HPLC(%)、RP-HPLC(%)とSE-HPLC(%)は、持続型オキシントモジュリン誘導体結合体に該当するピークの各分析時点におけるArea%を示す。
【0206】
【表6】
【0207】
【表7】
【0208】
【表8】
【0209】
前記表6、7、及び8の結果から分かるように、本願発明の糖アルコールが存在せず、糖であるスクロースが存在する液状製剤の組成物が加速条件下で比較例に比べて6ヶ月間までも安定性が高いことを確認した。このような結果は、本願発明の液状製剤の組成は安定性が高いことを示唆するものである。
【0210】
実施例7:過酷安定性の評価
実施例4で製造された持続型オキシントモジュリン誘導体結合体の実施例の液状製剤の苛酷安定性を確認するために、比較例の液状製剤と個別に40±2℃及び相対湿度75±5%である条件で0~4週間保管後、性状を分析した。過酷安定性試験は、申請された保存条件以外の条件に製品が露出した場合、このような条件変化が製品に及ぼす影響を決定し、原料医薬品及び/または完成医薬品の分解様相及び物理化学的安定性を把握する試験である。表9では、前記過酷条件における比較例及び実施例の液状製剤の性状を示した。
【0211】
【表9】
【0212】
前記の表9の結果から分かるように、過酷条件下において比較例の液状製剤組成の場合、1週間から持続型オキシントモジュリン誘導体結合体の性状が不透明になり、3週目には沈殿が起きることに比べて本願発明の糖アルコールが存在せず、糖であるスクロースが存在する液状製剤の組成物である実施例の組成は、4週間までも透明な性状を維持し、安定化の対象である持続型オキシントモジュリン誘導体結合体が沈殿することなく安定したことを確認した。このような結果は、本願発明の液状製剤の組成が公知となった組成に比べて安定性が高いため、医薬品の液状製剤として提供できることを示唆するものである。
【0213】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した各実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【配列表】
2023526555000001.app
【国際調査報告】