(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20230614BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230614BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230614BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61K47/38
A61P31/14
A61K9/14
A61P37/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573800
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 GB2021000013
(87)【国際公開番号】W WO2021160982
(87)【国際公開日】2021-08-19
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517056239
【氏名又は名称】ナサレゼ パテンツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポポフ、トドル
(72)【発明者】
【氏名】ジョスリング、ピーター デイビッド
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076BB25
4C076CC07
4C076CC35
4C076DD37T
4C076EE32
4C076EE58T
4C076FF31
4C076FF52
4C076GG12
(57)【要約】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、粒子形態の少なくとも1つの化学シグナル伝達剤と、場合により生物学的活性剤とからなる均質化粉末形態の組成物であって、均質化粉末が20pm以上500μmm以下の平均粒径を有する粒子を含む組成物、その使用およびキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子、および
ii)シグナル伝達剤から選択される少なくとも1つの化学剤、および/または
iii)1つまたは複数の生物学的活性剤、
から選択される2つ以上の成分からなる均質化乾燥粉末の形態の組成物であって、
前記均質化乾燥粉末の粒子が、20μm以上500μm以下の平均粒径を有する、組成物。
【請求項2】
前記平均粒径が60μmから150μmの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記平均粒径が80μmから125μmの範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記平均粒径が86μm+/-15μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、
ii)シグナル伝達剤から選択される少なくとも1つの化学剤と、
からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記シグナル伝達剤が、メントール、イチゴ、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、柑橘類、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記シグナル伝達剤が、前記組成物の総重量の0.25%から10%以下を構成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、
ii)抗ウイルス剤、抗菌剤、および抗アレルギー剤から選択される1つまたは複数の生物学的活性剤と、
からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記生物学的活性剤が医薬剤、ハーブ剤、およびホメオパシー剤から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記生物学的活性剤が、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ抽出物、イチョウ抽出物、ビタミンA、EまたはC、ニンニク、1種または複数のプロバイオティクス、ショウガ、エラグ酸、エキナセア、スウェーデン花花粉(Swedish flower pollen)、黒クルミ殻、レモングラス、ヨモギ、グレープフルーツ種子抽出物、ブロッコリー、消化酵素、ヒアルロン酸、レンゲソウ、ローズヒップ、リンドウ、ヒペリカム、セイヨウトチノキ、チョウセンニンジン、緑茶、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、柑橘類、ピクノジェノール、カフェイン、クエルセチン、コエンザイムQ10、ノコギリソウ、ティーツリー、ノニジュース、リパーゼ、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ブラッククミン、安定化アリシン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記生物学的活性剤が、I型(α、β)インターフェロン(IFN)、例えばIFN-β、IFNβ-1b、II型(γ)およびIII型(λ)インターフェロン;レムデシビル;オゼルタミビル;ザナミビル;リバビリン;ロピナビル;ロピナビル-リトナビルとIFNβ-1bとの組み合わせ;モノクローナルおよび(ラクダ)ポリクローナル中和抗体;マクロライドおよび植物アルカロイド;またはそれらの任意の組み合わせから選択される抗ウイルス剤である、請求項8または請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記生物学的活性剤が、レムデシビルおよびイベルメクチンから選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗ウイルス剤が、コロナウイルス種に対して活性を有する、請求項11または請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗ウイルス剤が、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-COV-2、HCov-NL63、HCov-OC43、CoV-HKU1、HCov-229Eおよびそれらの変異株から選択されるコロナウイルス種に対して活性を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が前記生物学的活性剤の持続放出を提供する、請求項8から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記生物学的活性剤が経鼻投与時に全身作用を有する、請求項8から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が経鼻投与医薬品として使用するためのものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物がCOVID-19疾患の治療に使用するためのものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物がCOVID-19疾患の予防に使用するためのものである、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
1)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末にシグナル伝達剤粉末を添加するステップと、
2)ブレンド機において1)の前記2つの成分を拡散的にブレンドするステップと、
3)場合により、粉末化された生物学的活性剤を添加し、さらにブレンドするステップと、
を含む、COVID-19疾患を治療するための医薬品として使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の粉末組成物を製造する方法。
【請求項21】
空中浮遊アレルゲン関連疾患または空中浮遊病原体疾患に対する医薬品として使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の粉末組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔に投与するための乾燥粉末組成物およびその使用に関する。特に、本発明の組成物は、定義された平均粒径の粉末ヒドロキシプロピルメチルセルロース(pHPMC)粒子、シグナル伝達剤、および場合により生物学的活性剤を含む。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎(AR)は、先進国の成人人口の最大25%および小児の40%超が罹患している世界的な健康問題であり、米国単独で年間約20億ドルから50億ドルに及ぶ経済的損失の原因であると考えられている1。
【0003】
HPMC粉末、および鼻腔に投与されたときに形成されるゲルは、治療剤、特にハーブ剤またはホメオパシー剤を鼻腔内投与する有効な手段であることが、例えば米国特許第8,202,550号から知られている。この先行技術の発明は、そこに記載される組成物に含まれる治療剤が治療効果をもたらすことを教示する。pHPMCを鼻腔に投与したときに鼻粘膜と接触すると、水分をゆっくりと放出する保護ゲルおよび共投与される任意の治療剤が形成される。これは持続的な治療効果をもたらし、治療剤の有益な効果は投与後6時間にわたって報告された2。比較すると、従来の鼻腔内組成物(セルロースをほとんどまたは全く含まない液体組成物または粉末組成物など)における鼻腔への活性剤の投与は、典型的には、比較的短い持続時間(4時間未満)の治療効果を提供する。しかしながら、米国特許第8,202,550号には平均粒径の開示はない。
【0004】
先行技術はさらに、アレルギー性鼻炎(AR)および他の呼吸器疾患(特定のウイルス性疾患を含むが、コロナウイルス疾患、特にSARS-CoV-2ウイルスに関連する呼吸器疾患に関するデータはない)を治療するためのHPMC粉末組成物の使用を教示または示唆する。しかしながら、先行技術は、ゲルへの形成前の粉末HPMCの平均粒径に言及していない。
【0005】
Diethart B et al、Nat.Sci.2010;第2巻第2号:79-84は、HPMCおよび寒天ゲルを介したハウスダストダニアレルゲンの拡散、したがってアレルゲンの取り込みを遮断するためにHPMCを使用する可能性を教示している3。ゲルへの形成前の粉末HPMCの平均粒径については言及されていない。
【0006】
M.K.Erofeeva et alによるロシアでの研究(https://medi.ru/info/7023/)は、HPMCが子供のインフルエンザの予防に有用であることを指摘している4。しかしながら、研究で使用された乾燥粉末HPMC含有製剤に使用された平均粒径の表示はなかった。
【0007】
不完全な鼻バリア機能は、持続的な炎症および臨床症状をもたらすアレルギー性鼻炎に関与しており、その中でも鬱血が顕著な役割を果たす。Valerieva,A et alによる最近の研究Allergy Asthma Proc 36:1-6,2015;doi:10.2500/aap.2015.36.3879において、オキシメタゾリンの投与後にHPMCを投与することにより、四季を通じて続く一連のアレルゲンの少なくとも1つに感受性であることが知られている患者のサンプルが緩和されることが示された2。著者らは、使用された統計的方法、短い研究期間および小さいサンプルサイズのために、さらなる研究が必要であると述べた。この研究における平均粒径についての明らかな言及はなく、シグナル伝達剤が使用されたとは思われない。
【0008】
鼻症状の予防および管理のためのHPMC粉末に関するPopov T.A et alによる論文(Popov T.A et al「呼吸器内科の専門的レビュー(Expert Review of Respiratory Medicine)」 2017 Vol.11.No.11.885-892(https://doi.org/10.1080/17476348.2017.1375408)は、HPMCが花粉アレルゲンおよび有害薬剤に対する天然のバリアを提供することを報告した5。論文自体およびそこに引用されているいくつかの研究には、様々な植物花粉およびハウスダストダニアレルゲンが含まれていたが、使用された粉末製剤の平均粒径は言及されなかった。
【0009】
HPMC粉末自体およびペパーミントおよび野生ニンニクを含有するHPMC粉末は、対照と比較した場合、インビトロ研究においてSPEV細胞培養物中のH5N1のウイルス力価を減少させることが示されている(Lvov DKおよびDeryabin PG「病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に感染した細胞培養物中のNasaleze(Nasaval)およびNasaleze Travel(Nasaleze Plus)の殺ウイルス性活性(Virucidal Activity of Nasaleze(Nasaval)and Nasaleze Travel(Nasaleze Plus)in Cell Cultures Infected with Pathogenic Avian Flu virus(H5N1))」2010,European Journal for Nutraceutical Research 1-8,www.phytomedcentral.org)6。平均粒径、およびウイルス取り込みに対するブロッキング剤としてのHPMC粉末の有効性にどのような影響を及ぼし得るかについての言及はない。
【0010】
HPMC粉末およびニンニクからの安定化アリシン抽出物の添加は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の特定の株、すなわちUEL301の評価で示され、様々な製剤で有意な生物学的活性を示した(Cutler University of East London、March 2003)。平均粒径、および細菌除去に対するブロッキング剤としてのHPMC粉末の有効性にどのような影響を及ぼし得るかについての言及はない。
【0011】
ここに記載された平均粒径を有し、水分と接触してゲルを形成することができるシグナル伝達剤および/または生物学的活性剤のみを含むHPMCの粉末状組成物は、先行技術の組成物に比べて、ウイルス感染(ウイルス粒子のサイズ範囲0.005μmから0.3μm)、花粉粒(サイズ範囲10μmから1000μm)などの浮遊粒子によって引き起こされるアレルギー性鼻炎(AR)、ハウスダストダニ(サイズ範囲100μmから300μm)などの生物源からの粒子の吸入によって引き起こされるアレルギー反応、および例えばPM2.5からPM10など、空気中に浮遊する汚染粒子(サイズ範囲1μmから150μm)の吸入によるアレルギー反応を制御または含有するのにより効率的であることが分かった7。吸入される粒子のサイズの広い範囲、および発明のHPMC粉末の平均粒径の範囲を考えると、これは驚くべきことである。
【0012】
中東での致命的なコロナウイルス疾患の最近の2つの大流行、およびヒトに感染する新たなコロナウイルス型が現在進化している中東での第3の大流行を考慮すると、宿主生物に定着する前に、そのようなウイルスの拡散を少なくとも減速、遮断および/または無効化することができる製剤を提供する緊急の必要性がある。極東からの新しいコロナウイルス株(2019-n CoV、別名SAR-COV-2)に関するさらなる問題は、症状が現れる前の約2週間にわたって宿主(ヒト)中に存在し得ることである。本発明の組成物が定期的な送気によって予防的および/または治癒的に鼻内層に適用される場合、疾患の封じ込めが可能であり得る。
【0013】
上記に示唆された利点および他の利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【0014】
以前は、平均粒径は5μm以上500μm以下の範囲でなければならないと考えられていた。しかし、新たなデータは、本明細書に詳述されているように、最適な平均粒径が20μm以上500μm以下の範囲にあることを示している。
【0015】
約20μmから約500μmの範囲内、好ましくは60μm以上150μm以下の範囲内、より好ましくは80から125μmの範囲内にある本発明の乾燥粉末組成物の平均粒径は、空中浮遊アレルゲンをゲル中に捕捉するのに驚くほど効率的であることがここで見出された。さらに、経鼻適用のために設計された本発明の乾燥粉末組成物は、コロナウイルスなどの空気媒介ウイルスに対する薬物の送達に有望である。
【発明の概要】
【0016】
本発明によれば、
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子、および
ii)シグナル伝達剤から選択される少なくとも1つの化学剤、および/または
iii)1つまたは複数の生物学的活性剤、
から選択される2つ以上の成分からなる均質化乾燥粉末の形態の組成物が提供され、
均質化乾燥粉末粒子は、20μm以上500μm以下の平均粒径を有する。
【0017】
本発明の粉末組成物は、添加されるシグナル伝達剤および/または添加される生物学的活性剤に応じて、好ましくは20から500μm、好ましくは60から150μm、より好ましくは80から125μm、例えば86μm+/-15μmの範囲の平均粒径を有する。
【0018】
本発明の組成物は、鼻を介した送気による鼻粘膜への適用のために設計される。
【0019】
本発明の組成物は、添付の例に示すように、水分と接触してゲルを形成することができなければならない。本発明の組成物は、鼻粘膜のpHを有意に低下させることができる添加剤など、水分と接触してゲルを形成する能力を妨げ得る、または実質的に妨げ得る添加剤を含有すべきではない。本発明の乾燥粉末粒子は、鼻粘膜と接触すると水分を吸収し、それによってその表面にゲルマトリックスを形成する。ゲルの機能は、少なくとも2つあると考えられ、第1に、鼻粘膜を通じた空中浮遊アレルゲンおよびウイルスなどの小さな微粒子の取り込みに対する物理的バリアとして作用し、第2に、鼻粘膜細胞を越えて血流内への選択される薬物の拡散を可能にする。本発明の乾燥粉末組成物の水和中に、水分との接触によってゲルマトリックスが形成され、より大きな粒子とより小さな粒子が組み合わさって分子ネットまたは分子マトリックスを形成し、より小さな粒子はより大きな粒子間の空間または間隙を占め、したがってゲル形成に寄与し、より大きな粒子がより容易に一緒に包含されるのを助けると考えられる。粒子状物質はゲル中に捕捉され、粘膜をほとんど通過することができない。
【0020】
本発明の組成物は、医薬剤、ハーブ剤、およびホメオパシー剤から選択される生物学的活性剤を含むことができる。適切なホメオパシー剤およびハーブ剤は、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ抽出物、イチョウ抽出物、ビタミンA、EまたはC、ニンニク、ライム、1種または複数のプロバイオティクス、ショウガ、エラグ酸、エキナセア、スウェーデン花花粉(Swedish flower pollen)、黒クルミ殻、レモングラス、ヨモギ、グレープフルーツ種子抽出物、ブロッコリー、消化酵素、ヒアルロン酸、レンゲソウ、ローズヒップ、リンドウ、ヒペリカム、セイヨウトチノキ、チョウセンニンジン、緑茶、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、柑橘類、ピクノジェノール、カフェイン、クエルセチン、コエンザイムQ10、ノコギリソウ、ティーツリー、ノニジュース、リパーゼ、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ブラッククミン、安定化アリシン、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0021】
本発明の組成物は、薬学的抗ウイルス剤、すなわちI型(α、β)インターフェロン(IFN)、例えばIFN-β、IFNβ-1 b、II型(γ)およびIII型(λ)インターフェロン、Fujifilm Toyama Chemicaから入手可能なファビピラビル(別名ファビロビル、T-705、およびアビガン)、レムデシビル、オゼルタミビル、ザナミビル、リバビリン、ロピナビル、ロピナビル-リトナビルとIFNβ-1bとの組み合わせ、モノクローナルおよび(ラクダ)ポリクローナル中和抗体およびマクロライド、例えばイベルメクチン、植物アルカロイド、例えばコルヒチンなどから選択される生物学的活性剤を含むことができる。一般にコロナウイルスに対して使用する可能性を示す化合物は、ChemDivから入手可能なK22、構造名(Z)-N-(3-(4-(4-ブロモフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-3-オキソ-1-フェニルプロパ-1-エン-2-イル)ベンズアミドである(カリフォルニア州サンディエゴ、カタログ番号4295-0370)。この化合物は、膜結合型ウイルスRNA合成を標的とし、MERSウイルスを含む多様なコロナウイルスにおいて強力な阻害を示す。さらに好適な生物学的活性剤としては、グリフィシアなどの紅藻類から抽出可能な約121のアミノ酸の単離されたグリフィシンレクチンタンパク質、およびその生物学的に活性な単離された抗ウイルス類似体、およびそれを含有する天然海藻抽出物が挙げられる(Journal of Virology 2010,O’Keefe,B.R et al「コロナウイルス科の新生ウイルスに対する抗ウイルス性タンパク質グリフィシンの広域スペクトルインビトロ活性およびインビトロ有効性(Broad Spectrum In Vitro Activity and In Vivo Efficacy of the Antiviral Protein Griffithsin against Emerging Viruses of the Family Coronaviridae)」8.オンラインDOI公開:10.1128/JVI.02322-09;Marine Drugs 2019 Oct.;17(10):567、Choongho Lee「グリフィシン-紅藻類由来の強力な広域スペクトル抗ウイルスレクチン:発見から臨床適用まで(Griffithsin a highly potent Broad Spectrum Anti-Viral Lectin from Red Algae:From Discovery to Clinical Application)」オンライン公開2019年10月6日doi:10.3390/md 17100567。
【0022】
本発明による組成物は、pHPMC、本明細書で定義される生物学的活性剤、ならびにシグナル伝達剤または添加剤、例えばメントール、イチゴ、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダーおよび柑橘類、またはそれらの任意の組み合わせなどを含有し得る。柑橘類の例としては、レモン、ライムおよびキンカン(cumquat、別名kumquat)が挙げられ得る。好ましくは、シグナル伝達剤は、鼻粘膜に対する刺激物であることが知られていないか、または関与していないもの、例えば、レモン、ライム、キンカン(cumquat、別名kumquat)およびイチゴから選択されるものである。
【0023】
シグナル伝達剤は、組成物の総重量の0.25%w/wから≦2%w/w、好ましくは0.50%w/wから2%w/wで存在し得る。生物学的活性剤は、組成物の8%w/wから9.75%w/wを構成する。本発明の均質化乾燥粉末組成物は、設計に応じて、90%w/wから最大99.75%w/wのHPMC粒子からなる。
【0024】
本発明の組成物は、インフルエンザウイルス、例えばA型、H1N1型、H5N1型およびH3N2型など、コロナウイルス、例えばMERS-CoV、SAR-CoV、HCoV-229E、HCov-NL63、HCoV-OC43、CoV-HKU1、および2019nCoV(別名SAR-COV-2)から選択されるウイルス、ならびに細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)およびエンテロバクター種などの生理学を物理的に含有および/または破壊することができる。
【0025】
本発明の第2の実施形態では、
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、
ii)シグナル伝達剤から選択される少なくとも1つの化学薬剤と、
からなる均質化乾燥粉末の形態の組成物が提供される。
【0026】
本発明の第2の実施形態の均質化乾燥粉末(pHPMC)は、上記で提供されたものと同じ定義された平均粒径を有する。
【0027】
本発明の第2の実施形態による組成物は、シグナル伝達剤または添加剤、例えばメントール、イチゴ、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダーおよび柑橘類、またはそれらの任意の組み合わせを含有する。柑橘類の例としては、レモン、ライムおよびキンカン(cumquat、別名kumquat)が挙げられ得る。好ましくは、シグナル伝達剤は、鼻粘膜に対する刺激物であることが知られていないか、または関与していないもの、例えば、レモン、ライム、キンカン(cumquat、別名kumquat)およびイチゴから選択されるものである。
【0028】
本発明の第2の実施形態におけるシグナル伝達剤は、組成物の総重量の0.25%w/wから10%w/w以下、好ましくは0.50%w/wから5%w/wを構成する。本発明の第2の実施形態の均質化乾燥粉末組成物は、設計に応じて、本明細書で定義される約90%w/wから最大99.75%w/wのHPMC粒子からなる。好ましくは、本発明の第2の実施形態の組成物は、設計に応じて、組成物の90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%w/wを超える本明細書で定義されるHPMC粒子を含有する。
【0029】
本発明の組成物にそのようなシグナル伝達剤を含めることは、投与が行われたことを患者が認識することを可能にし、かつ患者の投与の記憶を助けることができる識別可能な感覚の形態で、使用時に感覚フィードバックを患者に提供することを意図している。したがって、本発明の目的のために、シグナル伝達剤は、主に嗅覚および/または味覚をユーザに与えるものとして定義される。
【0030】
シグナル伝達剤は、対象に対して他の有益な効果を有し得る。理論に拘束される意図はないが、ミントを含む本発明による特定の製剤は、気道の拡張を助ける効果を有し得る。これは、喘息に罹患している患者を治療するために製剤が使用される場合に特に有益であり得る。一部の患者、特に緊張した状態の患者は、不規則なパターンで呼吸する傾向がある。ミントなどの薬剤を含むHPMC製剤の投与はまた、正常な呼吸パターンを回復させるのに役立ち得る好感触因子を提供し得る。
【0031】
本発明の第3の実施形態では、
i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、
ii)抗ウイルス剤、抗菌剤、および抗アレルギー剤から選択される1つまたは複数の生物学的活性剤と、
からなる組成物が提供される。
【0032】
生物学的活性剤は、設計に応じて、組成物の2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%もしくは10%w/wまたはそれらの間の任意の値からなる。本発明の第3の実施形態の均質化乾燥粉末組成物は、90%w/wから98%w/wのpHPMC粒子からなる。好ましくは、本発明の第3の実施形態の組成物は、設計に応じて、組成物の90、91、92、93、94、95、96、97、もしくは98%w/wを超える、またはその間の任意の値で本明細書で定義されるpHPMC粒子を含有する。
【0033】
本発明の第3の実施形態の組成物は、医薬品、ハーブ剤およびホメオパシー剤から選択される治療剤からの1種または複数の生物学的活性剤からなる。適切なハーブ剤およびホメオパシー剤は、典型的には、抗菌、抗ウイルスまたは抗炎症機能の1つまたは複数を有するものから選択される。本発明の第3の態様で使用される生物学的活性剤の選択は、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ抽出物、イチョウ抽出物、ビタミンA、EまたはC、ニンニク、1種または複数のプロバイオティクス、ショウガ、エラグ酸、エキナセア、スウェーデン花花粉(Swedish flower pollen)、黒クルミ殻、レモングラス、ヨモギ、グレープフルーツ種子抽出物、ブロッコリー、消化酵素、ヒアルロン酸、レンゲソウ、ローズヒップ、リンドウ、ヒペリカム、セイヨウトチノキ、チョウセンニンジン、緑茶、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ピクノジェノール、カフェイン、クエルセチン、コエンザイムQ10、ノコギリソウ、ティーツリー、ノニジュース、リパーゼ、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ブラッククミン、安定化アリシン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0034】
本発明の第3の実施形態において使用されるさらに好適な生物学的活性剤は、コロナウイルスによって引き起こされる疾患、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)、SAR-COV2ウイルスによって引き起こされるCOVID19、中東呼吸器症候群(MERS)、コロナウイルスE229Eなどに対して有望性を示す医薬品であり、それらの変異株は、I型(α、β)インターフェロン(IFN)、例えばIFN-β、IFNβ-1 b、II型(γ)およびIII型(λ)インターフェロン、Fujifilm Toyama Chemicaから入手可能なファビピラビル(別名ファビロビル、T-705、およびアビガン)、レムデシビル、オゼルタミビル、ザナミビル、リバビリン、ロピナビル、ロピナビル-リトナビルとIFNβ-1bとの組み合わせ、モノクローナルおよび(ラクダ)ポリクローナル中和抗体およびマクロライド、例えばイベルメクチン、植物アルカロイド、例えばコルヒチンなどから選択される。一般にコロナウイルスに対して使用する可能性を示す化合物は、ChemDivから入手可能なK22、構造名(Z)-N-(3-(4-(4-ブロモフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-3-オキソ-1-フェニルプロパ-1-エン-2-イル)ベンズアミドである(カリフォルニア州サンディエゴ、カタログ番号4295-0370)。この化合物は、膜結合型ウイルスRNA合成を標的とし、MERSウイルスを含む多様なコロナウイルスにおいて強力な阻害を示す。さらに好適な生物学的活性剤としては、グリフィシアなどの紅藻類から抽出可能な約121のアミノ酸の単離されたグリフィシンレクチンタンパク質、およびその生物学的に活性な単離された抗ウイルス類似体、およびそれを含有する天然海藻抽出物が挙げられる(Journal of Virology 2010,O’Keefe,B.R et al「コロナウイルス科の新生ウイルスに対する抗ウイルス性タンパク質グリフィシンの広域スペクトルインビトロ活性およびインビトロ有効性(Broad Spectrum In Vitro Activity and In Vivo Efficacy of the Antiviral Protein Griffithsin against Emerging Viruses of the Family Coronaviridae)」.オンラインDOI公開:10.1128/JVI.02322-098;Marine Drugs 2019 Oct.;17(10):567、Choongho Lee「グリフィシン-紅藻類由来の強力な広域スペクトル抗ウイルスレクチン:発見から臨床適用まで(Griffithsin a highly potent Broad Spectrum Anti-Viral Lectin from Red Algae:From Discovery to Clinical Application)」オンライン公開2019年10月6日doi:10.3390/md 17100567。
【0035】
好ましい医薬品には、レムデシビルおよびイベルメクチンが含まれる。
【0036】
典型的には、本発明の組成物は、本明細書で定義される生物学的活性剤の持続放出を提供する。典型的には、生物学的活性剤は、経鼻投与時に全身作用を有する。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、HPMC、シグナル伝達剤および生物学的活性剤の組み合わせは、連続投与または同時投与のために提供される。HPMC、シグナル伝達剤および生物学的活性剤は、単一の調製物に一緒に含まれ得る。あるいは、HPMC、シグナル伝達剤および生物学的活性剤は、連続投与のために別々の調製物で提供されてもよい。投与が連続的である場合、HPMCおよび/またはシグナル伝達剤は、生物学的活性剤の前もしくは後、またはその両方で投与され得る。同様に、生物学的活性剤は、HPMCおよび/もしくはシグナル伝達剤の前もしくは後、またはその両方に投与され得る。
【0038】
粉末HPMCおよび/またはシグナル伝達剤が生物学的活性剤と同じ調製物に含まれる場合、調製物は好ましくは粉末の形態である。粉末HPMCおよび/またはシグナル伝達剤が生物学的活性剤とは別個の調製物に含まれる場合、HPMCは好ましくは粉末の形態である。しかしながら、生物学的活性剤は、任意の形態であってもよく、好ましくは、粉末、液体、クリームまたはゲルの形態など、経鼻投与に適した形態である。
【0039】
本発明の組成物において、粉末HPMCは、設計に応じて、組成物の総重量の少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%w/wの割合で存在する。
【0040】
本発明の別の実施形態では、HPMCと生物学的活性剤との組み合わせは、連続投与または同時投与のために提供される。HPMCおよび生物学的活性剤は、単一の調製物に一緒に含まれ得る。あるいは、HPMCおよび生物学的活性剤は、連続投与のために別々の調製物で提供されてもよい。投与が連続的である場合、HPMCは、生物学的活性剤の前および/または後に投与され得る。あるいは、生物学的活性剤は、HPMCの前および/または後に投与され得る。
【0041】
HPMCおよび生物学的活性剤が別々の調製物に含まれる場合、薬剤は、粉末、液体、クリームまたはゲルなど、鼻腔内投与に適した任意の形態であり得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、本明細書で定義されるHPMC粉末組成物およびシグナル伝達剤を含むキットが提供される。そのようなキットは、インフルエンザウイルス、例えばA型、H1N1型、H5N1型およびH3N2型など、コロナウイルス、例えばMERS-CoV、SAR-CoV、HCoV-229E、HCov-NL63、HCoV-OC43、CoV-HKU1、および2019nCoV(別名SAR-COV-2)などのウイルスからのウイルス攻撃、ならびに細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、エンテロバクター種などから保護するために予防的または治療的に使用されることを目的とする。
【0043】
本明細書で示唆されるように、シグナル伝達剤添加剤は、メントール、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、柑橘類、イチゴ、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。好ましくは、シグナル伝達剤は、刺激物であることが知られていないか、または関与していないもの、例えば、イチゴ、レモン、ライム、キンカン(cumquat、別名kumquat)、または他の柑橘類源から選択されるものである。
【0044】
シグナル伝達剤は、適用される組成物の総重量の0.25%から10%以下、好ましくは0.50%から5%を構成する。
【0045】
本発明の第4の実施形態によれば、同時投与または連続投与のためのHPMC粉末組成物、シグナル伝達剤および生物学的活性剤を含むキットが提供される。シグナル伝達剤は、組成物の総重量の0.25%から10%以下、好ましくは0.50%から5%を構成する。そのようなキットはまた、A型インフルエンザウイルス、例えば、H1N1型、H5N1型およびH3N2型など、コロナウイルス、例えばMERS-CoV、SAR-CoV、HCoV-229E、HCov-NL63、HCoV-OC43、CoV-HKU1、および2019-nCoV(別名SAR-COV-2)などのウイルスからのウイルス攻撃、ならびに細菌、例えば黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylococcus aureus)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、エンテロバクター種などから保護するために予防的または治療的に使用されることを目的とする。
【0046】
適切な生物学的活性剤は、セイヨウオトギリソウ、セイヨウカノコソウ抽出物、イチョウ抽出物、ビタミンA、EまたはC、ニンニク、1種または複数のプロバイオティクス、ショウガ、エラグ酸、エキナセア、スウェーデン花花粉(Swedish flower pollen)、黒クルミ殻、レモングラス、ヨモギ、グレープフルーツ種子抽出物、ブロッコリー、消化酵素、ヒアルロン酸、レンゲソウ、ローズヒップ、リンドウ、ヒペリカム、セイヨウトチノキ、チョウセンニンジン、緑茶、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ピクノジェノール、カフェイン、クエルセチン、コエンザイムQ10、ノコギリソウ、ティーツリー、ノニジュース、リパーゼ、フルクトオリゴ糖、イヌリン、ブラッククミン、安定化アリシン、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0047】
コロナウイルスによって引き起こされる疾患、例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)に対して有望性を示すさらに好適な生物学的活性剤としては、I型(α、β)インターフェロン(IFN)、例えば、IFN-β、IFNβ-1b、II型(γ)およびIII型(λ)インターフェロン、レムデシビル、オゼルタミビル、ザナミビル、リバビリン、ロピナビル、ロピナビル-リトナビルとIFNβ-1bとの組み合わせ、モノクローナルおよび(ラクダ)ポリクローナル中和抗体およびマクロライド、例えばイベルメクチン、植物アルカロイド、例えばコルヒチンなどが挙げられる。一般にコロナウイルスに対して使用する可能性を示す化合物は、ChemDivから入手可能なK22、構造名(Z)-N-(3-(4-(4-ブロモフェニル)-4-ヒドロキシピペリジン-1-イル)-3-オキソ-1-フェニルプロパ-1-エン-2-イル)ベンズアミドである(カリフォルニア州サンディエゴ、カタログ番号4295-0370)。この化合物は、膜結合型ウイルスRNA合成を標的とし、MERSウイルスを含む多様なコロナウイルスにおいて強力な阻害を示す。さらに好適な生物学的活性剤としては、グリフィシアなどの紅藻類から抽出可能な約121のアミノ酸の単離されたグリフィシンレクチンタンパク質、およびその生物学的に活性な単離された抗ウイルス類似体、およびそれを含有する天然海藻抽出物が挙げられる(Journal of Virology 2010,O’Keefe,B.R et al「コロナウイルス科の新生ウイルスに対する抗ウイルス性タンパク質グリフィシンの広域スペクトルインビトロ活性およびインビトロ有効性(Broad Spectrum In Vitro Activity and In Vivo Efficacy of the Antiviral Protein Griffithsin against Emerging Viruses of the Family Coronaviridae)」.オンラインDOI公開:10.1128/JVI.02322-09;Marine Drugs 2019 Oct.;17(10):567、Choongho Lee「グリフィシン-紅藻類由来の強力な広域スペクトル抗ウイルスレクチン:発見から臨床適用まで(Griffithsin a highly potent Broad Spectrum Anti-Viral Lectin from Red Algae:From Discovery to Clinical Application)」オンライン公開2019年10月6日doi:10.3390/md 17100567。
【0048】
ここでも、シグナル伝達剤または添加剤は、メントール、イチゴ、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、柑橘類、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。好ましくは、シグナル伝達剤は、刺激物であることが知られていないか、または関与していないもの、例えば、レモン、ライム、キンカン(cumquat、別名kumquat)、または他の柑橘類源から選択されるものである。
【0049】
シグナル伝達剤は、適用される組成物の総重量の0.25%から10%以下、好ましくは0.50%から3%を構成する。
【0050】
本発明の粉末組成物は、他の添加剤または分子成分を含まず、これは鼻粘膜への適用時にゲルを形成する本発明の組成物の能力をそのような添加剤が妨害し得るためである。鼻腔内のゲルの形成に有害なこのような添加剤としては、クエン酸ナトリウムおよび塩化ベンザルコニウムと組み合わせたクエン酸が挙げられる。さらに、鼻腔内組成物にしばしば使用される他の添加剤または成分、例えば他の乾燥粉末または溶液は、刺激を引き起こすか、または毛様体運動に影響を及ぼす可能性があり、例えば、溶媒、例えばプロピレングリコール、吸収促進剤、例えばシクロデキストリンまたはグリコシド、または粘膜付着剤、例えばキトサンが挙げられる。そのような添加剤の使用は、不快感を引き起こし、鼻の正常な機能を妨げる可能性があり、それが呼吸に悪影響を及ぼし得るため、望ましくない可能性がある。
【0051】
粉末成分は、リボンブレンダー、または同様のタイプのブレンダーを使用して約15から20分間一緒にブレンドすることができる。混合時間は、粉末の水分含有量および適合性に依存する。成分は、米国薬局方(USP/NF)の乾燥減量法で確認されるように、ブレンド直後に5%未満の含水量を有することが好ましい。
【0052】
本発明による組成物を分配するのに適した装置は、例えば、欧州特許第1368090号明細書および欧州特許第3183022号明細書に開示されており、その教示はその全体が本明細書に組み込まれる。そこに開示されているボトルは、分配される粉末の量を制限するための非常に単純な機構を使用する。天然粘液を増強するために鼻腔に送達される粉末セルロースの量を正確に制御する必要はないが、過剰な粉末の投与は、潜在的に鼻腔の不快な閉塞を引き起こす可能性があり、鼻を通る呼吸が困難になる可能性さえある。
【0053】
本発明による組成物は、好ましくは、鼻孔あたり約1mgから約10mgの量で投与される。好ましくは、用量は、約2.5mgから約7.5mg、3mgから約7mg、約4mgから約6mg、または約5mgである。
【0054】
本発明の第5の実施形態では、本明細書に示す不規則なサイズおよび形状を有し、新たに調製した場合に118μmの平均粒径を有する、本発明で使用するための乾燥自由流動性pHPMC粒子自体(すなわち、本発明の組成物を形成する他の乾燥粉末成分の添加前)が提供される。貯蔵条件下では、空気からの水分は粒子によって吸収され、粒子を最大14%まで膨潤させることができるが、依然として自由流動性粉末形態のままである。貯蔵された粒子は、最大約134μmの平均粒径を想定し得る。したがって、HPMCの粒子自体は、吸湿に応じて、約110μmから140μm、好ましくは約115μmから約135μm、より好ましくは118μmから134μmの平均粒径を有し得る。
【0055】
本発明の第6の実施形態として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、シグナル伝達剤から選択される粒子形態の少なくとも1つの化学剤とからなる均質化乾燥粉末形態の組成物が提供され、均質化粉末は、ヒトなどの哺乳動物における呼吸器疾患の治療または封じ込めに使用するための20μm以上500μm以下の平均粒径を有する粒子を含み、疾患は、ウイルス、植物花粉およびハウスダストダニなどの浮遊アレルゲン、ならびに/またはPM2.5およびPM10などの浮遊汚染粒子のうちの1つ以上によって引き起こされる。そのような組成物は、MERS-CoV、SAR-CoV、および2019 nCov(別名SAR-COV-2)から選択されるコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患を治療するために使用され得る。
【0056】
本発明のこの実施形態の組成物は、好ましくは、粒子の平均粒径が60から150μm、好ましくは80から125μm、より好ましくは86μm+/-15μmの範囲にある粉末HPMC粒子からなり、シグナル伝達剤は、ミント、スペアミント、ペパーミント、ユーカリ、ラベンダー、柑橘類、またはそれらの任意の組み合わせの群から選択される。好ましくは、シグナル伝達剤は、柑橘類、レモン、ライム、キンカン(cumquat、別名kumquat)、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。シグナル伝達剤は、組成物の総重量の0.25%から10%以下を構成する。
【0057】
本発明のさらなる実施形態として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粒子と、シグナル伝達剤から選択される粒子形態の少なくとも1つの化学剤と、1種または複数の生物学的活性剤とからなる均質化乾燥粉末形態の組成物が提供され、均質化粉末は、ヒトなどの哺乳動物における呼吸器疾患のための医薬品として使用するために平均粒径20μm以上500μm以下、好ましくは60μm以上150μm以下、より好ましくは80μm以上125μm以下、例えば86μm+/-15μmを有する粒子を含み、疾患は、ウイルス、植物花粉およびハウスダストダニなどの浮遊アレルゲン、ならびに/またはPM2.5およびPM10などの浮遊汚染粒子のうちの1つ以上によって引き起こされる。そのような組成物は、MERS-CoV、SAR-CoVおよび2019-nCov(別名SAR-COV-2)から選択されるコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患を治療するために使用され得る。本発明のこの態様における全ての均質化乾燥粉末成分およびその量に関する定義は、本明細書中上記で定義される通りである。
【0058】
本発明のさらなる実施形態として、本明細書で定義される組成物が提供され、この組成物は経鼻投与医薬品として使用するためのものである。
【0059】
本発明のなおさらなる実施形態として、本明細書で定義される組成物が提供され、この組成物はCOVID-19疾患の治療に使用するためのものである。
【0060】
本発明のなおさらなる実施形態として、本明細書で定義される組成物が提供され、この組成物はCOVID-19疾患の予防に使用するためのものである。
【0061】
当然のことながら、当業者は、本明細書に詳述される本発明の全ての組成的実施形態が、鼻を通じた送気による鼻粘膜への送達のためのものであることを理解するであろう。
【0062】
1)ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末にシグナル伝達剤粉末を添加することと、
2)ブレンド機において1)の2つの成分を拡散的にブレンドすることと、
3)場合により、粉末化された生物学的活性剤を添加し、さらにブレンドすることと、
を含む、COVID-19疾患を治療するための医薬品として使用するための粉末組成物を製造する方法も提供される。
【0063】
次に、本発明を示す例および図を示す。例および図の教示は、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】2年間にわたる連続粉末バッチの累積量(平均)を示す図である。これは粒径分析装置(Beckman Coulter LS粒径分析装置)によって分析された。
【
図2】走査型電子顕微鏡(倍率100倍)におけるHPMCを構成する粒子が気道内の沈着の重要な因子として形態を示す図である。
【
図3】試料の調製、本発明のpHPMCの試験、および寒天拡散法(インビトロ)を使用したDer p 1アレルゲンに対する競合企業のヒプロメロース(cHPMC)粉末との比較のための段階的手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図3のプロトコルを参照すると、
*対照試料の場合:余分な厚さの試料層および寒天ブロックを添加せずに上記と同じ手順に従う。
#参照試料の場合:HPMCまたはヒプロメロース層およびDer p 1を添加せずに上記と同じ手順に従う。
【0066】
ベースライン測定の場合、Der p 1抗原20μlをPBS-T溶液0.5mlに添加し、上記の最後の3工程に従い、その後ELISA測定を行う。
【0067】
実験セクション
セクション1
安全性プロファイルを支持する粉末HPMC(HPMC)の物理化学的特性評価
HPMC自体は完全に特徴付けられている。不活性天然物であるHPMCの物理的および生化学的特性は、安全性の懸念の根拠を与えない。その好ましい安全性プロファイルは、これまでに行われた全ての臨床試験で支持されており、いずれにおいても重大および/または重度の有害事象は報告されていない(Popov TA,Aberg N,Emberlin J,et al「鼻症状の予防および管理のためのメチルセルロース粉末(Methyl-cellulose powder for prevention and management of nasal symptoms.)」Expert review of respiratory medicine.Nov 2017;11(11):885-892)5、7。単一のエクスビボ研究は、より高用量のセルロース粉末が、鼻上皮の生存率およびその毛様体拍動頻度に負の影響を及ぼし得ることを示唆している(Zhou M,Zuo KJ,Xu ZF,et al「ヒト鼻上皮細胞活性および毛様体拍動頻度に対するセルロース粉末の影響(Effect of Cellulose Powder on Human Nasal Epithelial Cell Activity and Ciliary Beat Frequency.)」International archives of allergy and immunology.2019;178(3):229-237)9。それでも、鼻への送気による使用を意図しているため、本発明者らは化合物の徹底的な特性評価を行い、ラットにおいて毒物学研究を行った。
【0068】
本発明者らは、平均粒径を得るためにレーザー回折技術によってHPMCバッチを日常的にアッセイした。粒径分布が測定され、99.4%の粒子が5から500μmの直径範囲内に入り、平均粒径は118μmである(
図1)。
【0069】
ソフトウェアGrimm Dust Monitor3.20に接続されたGrimm 1.109レーザー粒子計数器を使用して、粒子数および質量分布を三連で測定した。相関分析を使用して試験-再試験の信頼性を評価した結果、ピアソン係数は0.998および0.985であった。実際の粒子質量およびカウント分布は可変であることが証明され、全ての粒子サイズの平均は6,095.0μg/m
3であり、質量分布の標準偏差は4,709.9μg/m
3(平均の75.4%)であり、カウント分布の平均は619,135,967カウント/m
3であり、標準偏差は330,964,124カウント/m
3(平均の57.5%)であった。HPMCの粒径分布は、より大きな粒子に向かって大きく歪んでいる。HPMC粒子の分布パターンは、粉末を送達するために利用される実際的な送達方法、セルロースの吸湿性に起因するそれらの形態および膨潤挙動に依存する(Telko MJ、Hickey AJ.「乾燥粉末吸入器製剤(Dry powder inhaler formulation.)」Respiratory care.Sep 2005;50(9):1209-1227)
10。HPMCの粒子は、鼻への沈着に影響を及ぼし得る不均一な形状および表面を特徴とする(
図2)。粒子の粗い構造は、接触面積の増加による膨潤を改善し、その結果、鼻のより効率的でより速い膨潤がもたらされる(Diethart B「アレルギー性鼻炎の治療薬としての不活性ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の使用。[第10章「ヒト鼻細胞に対するHPMC適用の効果」](The use of inert Hydoxypropyl methylcellulose powder as a remedy for allergic rhinitis.[Chpt 10’’The effect of HPMC application on human nasal cells’’.])」:University of Coventry in collaboration with University of Worcester;2009)。
【0070】
鼻腔内の沈着の他の決定要因は、形状、密度、潜在的な電荷、個々の呼吸パターンおよび気流速度である。5μmより大きい粒子は鼻咽頭に沈着し、1から5μmの粒径は、能動的に吸入される場合、気管および気管支樹の壁に沈着し得る。鼻および気管-気管支気道に沈着した粒子は、粘液層に捕捉され、それと共に咽頭に移動し、嚥下される。1ミクロン未満の粒径のみが肺胞に達する可能性がある。本発明者らの研究では、粒子の0.63%のみが直径5μm未満であり、1.9μm未満の粒子は検出されなかった。換言すれば、HPMC粒子は本質的にいずれも肺胞に到達せず、したがって、全量が嚥下されたと見なすことができる。この種の範囲の粒径は、アレルギー性鼻炎におけるアレルゲンおよび非アレルギー性鼻炎における任意の刺激物または感染因子から粘膜を保護することにおいて最大の局所効果を達成する際に、鼻腔における標的化された沈着に有利である。
【0071】
粒子の膨潤は、鼻腔内の水分と接触するとすぐに始まり、粉末はまた、鼻の空気から水分を吸収して直径の成長を引き起こす。これは、粒径が増大するにつれて効率が増大する鼻内の沈着の増大をもたらすと考えられる。これらの固有の特性は、HPMCが季節性アレルギー性鼻炎の症状を迅速に解消する際に果たし得る役割に関する説明を提供する。全体として、HPMCは、グラム量で経口投与された場合に非常に安全な材料であり、鼻への送気のためのミリグラム量のNasalezeの使用は、認識可能なリスクを示さない。ラットでの90日間の摂食試験からの5000mg/kg体重/日の無毒性量(NOAEL)に基づいて、5mg/kg体重/日のヒトによるHPMCの摂取に対する耐容摂取量が認められ、これは0.047mg/kg体重/日の推定現在消費量より100倍以上多かった(Burdock GA「食品成分としてのヒドロキシプロピルメチルセルロースの安全性評価(Safety assessment of hydroxypropyl methylcellulose as a food ingredient.)」Food and chemical toxicology:an international journal published for the British Industrial Biological Research Association.Dec2007;45(12):2341-2351)11。遺伝毒性または生殖毒性の研究は確認されていないが、材料の化学的性質、食品使用におけるそれらの認識された安全性および摂食試験における毒性の欠如は、さらなる研究が必要であることを示唆していない。
【0072】
結論として、インビトロ研究は、水分と接触するとゲルを形成するHPMCの能力を支持し、これは、浮遊アレルゲンおよび粒子状物質に対する信頼性の高いバリアを提供する。ラットにおける研究はまた、口を介したかなり高用量のHPMCの送気が動物の肺、心臓および肝臓に影響を及ぼさないことを示す。臨床診療では、HPMCが下気道に吸入されることは想定されておらず、引用された動物研究は、これが意図せず起こったとしても有害な結果は予想されないという追加の予防手段を提供する。
【0073】
専門的解説
鼻粘膜とそれを攻撃する周囲環境中の有害物質(アレルゲン、刺激物、微生物)との間の接触を防ぐことは、気道における炎症事象およびその後の臨床症状の誘発を防ぐための最も簡単で最も自然なアプローチである。このアプローチは「バリア強化対策」と呼ばれ、アレルゲン回避を達成するための手段と見なされ得る(Andersson M,Greiff L,Ojeda P,Wollmer P「アレルギー性鼻炎の治療方針としてのバリア強化対策:系統的レビュー(Barrier-forcing measures as a treatment principle in allyl rhenis:a systematic review)」Current medical research and opinion.Jun 2014;30(6):1131-1137)12。
【0074】
理想的には、適切に実施された場合、この戦略は、任意の他の治療作用の使用を不要にすることができる。バリアエンハンサーとして様々な物質、すなわち白色ワセリン、花粉ブロッカークリーム、脂質ベースの軟膏、マイクロエマルジョン、リポソーム製剤、海水ゲルを使用する試みがなされている。
【0075】
列挙されたアプローチの多くは、時の試練に耐えることができず、放棄されている。微結晶粉末ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、特許を取得した医療機器に開発され、アレルギー性鼻炎の管理においてライセンスされている(製品一般情報はhttps://www.nasaleze.com/で入手可能)。その臨床的有効性および現実世界での有効性は、数十の研究で証明されている。道中には未解決の問題があり、研究室、インビトロおよびエクスビボ研究において考慮され、試験されてきた。本概要はこれまでに公開されていないデータを提供し、これは気道疾患の予防および治療のための天然産物のより広範な適用の基礎として医療および患者のコミュニティに有用であり得る。
【0076】
主要な問題
・HPMCは、特許化された薬物送達系を有するセルロース誘導体粉末である。
・鼻内に送気されたHPMCは、99.4%が直径5から500μmの範囲内にある粒子のスペクトルを放出する。
・HPMC粒子は、高度に吸湿性であり、粗い形状および表面を有し、鼻に通気されたときに迅速な膨潤およびゲル形成をもたらす。
・HPMCゲル層はバリアを設定し、鼻粘膜と花粉、チリダニアレルゲンおよび2.5μmの粒子状物質(PM2.5)との接触を防止する(回避効果)。
・理論的議論およびセルロース誘導体の長期間の経験に加えて、ラットにおける研究は、HPMCが肺に沈着せず、有害な全身作用を引き起こさないことを実証した。
【0077】
セクション2
セルロースとシグナル伝達剤との均一な混合の前後の粒径の説明
IOM915K HPMCセルロース粉末の粒径の定義
IOM915Kと呼ばれる純粋なHPMCは、胸部外気道を特異的に標的とする多分散粉末である。鼻腔内に注入された場合、96%を超えるIOM915K粉末は、直ちに始まるゲル形成に利用可能である。
【0078】
初期粒径測定では、純粋なセルロース粉末が2ミクロンから478.50ミクロンの間で異なり、平均粒径が約118μmであることが示された。有効用量がいつ注入されたかをエンドユーザが判断できるように設計されたシグナル伝達剤の導入は、初期の臨床試験研究では用量が注入されたことを確実にすることが困難であったという報告後の2006年に導入された(Josling P、Steadman S「季節性アレルギー性鼻炎の治療のためのセルロース粉末の使用(Use of cellulose powder for the treatment of seasonal allergic rhinitis)」Adv Therapy 20、213-219、200313;およびEmberlin JC and Lewis RA「成人の花粉症緩和のための不活性セルロースの二重盲検プラセボ対照試験(A double blind placebo controlled trial of inert cellulose for the relief of hay fever in adults)」Current Med Research and Opinion,22,275-285,2006)14。
【0079】
これは、粉末均質化および制御された混合手順が以下のように採用されたことを意味する。
【0080】
粉末の均質化
本発明者らは、IOM915K HPMC粉末を使用し、標準的な操作手順の下でレモン、ミント、ニンニクおよびイチゴを含む本発明者らの確立されたシグナル伝達剤と混合する。
【0081】
2018年7月10日付けQMS手順4改訂11。粉末を、水分含有量、密度および粒径ならびに標準的な微生物分析について日常的にアッセイする。粉末の混合は、各混合物について合計15分間、Vブレンダーを使用して完了する。これは、粉末の貯蔵、混合の準備、混合割合の計算、および工業グレードのVブレンダー機(V100、型番A39525-2、供給元Key Packaging Machinery Limited)の使用のための本発明者らのプロトコルに従う。
【0082】
Vブレンダーは、75°から90°の角度で接合された2つの中空円筒状シェルからなる。ブレンダー容器は、回転を可能にするためにトラニオン上に取り付けられる。Vブレンダーが回転すると、材料は連続的に分割されて再結合し、材料が容器内に自由落下するときに混合が起こる。材料と容器の長い直線側面との間の摩擦接触の増加と組み合わされた材料の繰り返しの収束および発散運動は、穏やかであるが均一な混合をもたらす。
【0083】
Vブレンダーでのブレンドの主な機構は拡散である。拡散ブレンドは、固体粒子の小規模ランダム運動を特徴とする。ブレンダーの動きは、個々の粒子の移動度を増加させ、したがって拡散ブレンドを促進する。拡散ブレンドは、新たに開発された界面上に粒子が分布する場合に生じる。分離効果がない場合、拡散ブレンドはやがて高度の均一性をもたらす。したがって、正確なブレンド配合物が必要な場合、Vブレンダーが好ましい。Vブレンダーはまた、IOM915Kと、全体のブレンド混合物の5%未満で存在するシグナル伝達剤との間の均質化の場合と同様に、一部の成分が全体のブレンドサイズの5パーセントほどの低さであり得る用途によく適している。通常のブレンド時間は典型的には15分で本発明の粉末の完全な均質化が確実になる。
【0084】
IOM915K+シグナル伝達剤粒径の定義
粉末の均質化の後、粒径は純粋なIOM915Kから著しく変化する。混合すると、大きな粒子の割合は、シグナル伝達剤と混合されたときにVブレンダーで破壊されるため、サイズが小さくなる。同様に、5ミクロン未満の小さな粒子の小さな割合は、凝集してより大きな粒子を形成する。粒径の分析は、粉末混合物が4から395ミクロンであり、平均86.2μmであることを示す。
【0085】
さらなる研究はまた、経時的に、すなわち数ヶ月の期間にわたって、全体的な粒径平均が増加する傾向があることを示している。
【0086】
HPMC混合物は、周囲温度での貯蔵中にサイズが約14%増加する。したがって、本発明者らの粉末は空気から水分を吸収し、直径が大きくなり、鼻腔への注入下で粉末を気道内のより高い位置に沈着させると仮定される。これは、粒径の増加に伴って効率が増加する鼻内沈着の増加をもたらし得る。
【0087】
IOM915Kセルロースならびにレモン、ミント、イチゴおよびニンニクの特許製剤を含有する抽出物の本発明者らのNasalezeファミリーを現在提供している大規模臨床試験データベースから、本発明者らは、小さな粒子が肺または脳に到達することはないこと、そして本発明者らの平均粒径86.2μmがこれらの粒子の関連質量と共に持続性アレルギー性鼻炎における症状の非常に効果的な制御、ならびに花粉、ウイルス、細菌、真菌およびPM2.5およびPM10などの環境毒素を含む病原体の除去を可能にすることを示した。
【0088】
セクション3
セクション3(a)
コロナウイルス229Eに対する、シグナル伝達剤としてミントと野生ニンニク抽出物とを配合したpHPMC粉末の予防および治療能力の決定。
【0089】
1.0 目的
ヒトコロナウイルス229E(CoV229E)に対するNasaleze(登録商標)粉末(平均粒径約82μm)の抗ウイルス有効性を判定すること。
5%w/wヨーロッパ野生ニンニク抽出物を、Pfannenschmidt GmbH、ドイツ、ハンブルクから得た。
Nasaleze Limited(現地)からの93%w/w Nasaleze(登録商標)粉末
【0090】
2.0 材料および方法
2.1 試験生物
細胞型:
Medical Research Councilヒト線維芽細胞株5[MRC-5(ATCC(登録商標)CCL-171)]
ウイルス:ヒトコロナウイルス229E(CoV229E)(ATCC(登録商標)VR-740)
【0091】
2.2 試験剤
この試験で使用した試験剤を表1に示す。
【表1】
【0092】
2.3 機器および媒体
機器:
クラスIIバイオセーフティキャビネット-BioMAT、ThermoFisher Scientific、英国 ボルテックス-Grant Instruments、英国
UKAS較正マルチチャネルピペット(P300)-Gilson(登録商標)、英国 UKAS較正マルチチャネルピペット(P20)-Gilson(登録商標)、英国
UKAS較正ピペット(0.5-1000μL範囲)-Proline(登録商標)Plus、英国 96ウェルプレート-ThermoFisher Scientific、英国
CO2インキュベータ-Thermo Scientific、英国
組織培養フラスコ-Nunc,ThermoFisher Scientific,英国 Olympus CK2倒立顕微鏡-KeyMed,英国
VWB2水浴-VWR、英国
Vacuboy Aspirator-INTEGRA、英国
媒体:
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)-Gibco(商標)、英国
ペニシリン-ストレプトマイシン-ThermoFisher Scientific、英国、
イーグル最小必須培地(EMEM)-ATCC(登録商標)、英国 ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)
Gibco(商標)、英国
ウシ胎児血清(FBS)-Gibco(商標)、米国
トリプシン-EDTA-Gibco(商標)、英国
トリパンブルー-Sigma-Aldrich、英国
【0093】
2.4 方法
2.4.1 細胞維持およびアッセイ設定
MRC-5細胞をヒトコロナウイルス229E(CoV229E)増殖のための宿主細胞株として使用した。MRC-5細胞を、イーグル最小必須培地(EMEM)に20%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充して(完全EMEM)37±2℃および5%CO2で維持した。細胞傷害性スクリーニングおよび抗ウイルスアッセイの準備として、MRC-5細胞を24ウェルプレートに1.0×105細胞/mLで播種し、37±2℃および5%CO2で24時間、または80~90%の集密度に達するまでインキュベートした。組織培養感染量50(TCID50)試験の準備として、MRC-5細胞を96ウェルプレートに2×105細胞mL-1で播種し、37±2℃および5%CO2で24時間インキュベートした。
【0094】
2.4.2 フェーズ1:鼻スプレー製剤の細胞傷害性スクリーニング
Nasaleze(登録商標)HPMC粉末を、2%FBSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシン(アッセイ培地)を補充したEMEM中で3.2mg/0.1mL、6.4mg/0.1mLおよび12.8mg/0.1mLに希釈した。試験プレートから完全EMEMを吸引し、各試験濃度の100μLを複製ウェルに添加した。20±2℃で10分間のインキュベーション期間の後、さらなる400μLのアッセイ培地を試験ウェルに添加した。プレートを37±2℃および5%CO
2で24時間インキュベートした。インキュベーション後、視覚的スコアリングを、ISO10993-5ガイドラインに従って0~4のスケールで実施した(表2)。細胞傷害性効果を、MRC-5細胞に対する様々な形態学的変化(細胞の丸み、剥離および細胞溶解など)に基づいて評価した。
【表2】
【0095】
2.4.3 フェーズ2:Nasaleze(登録商標)粉末の予防および治療能力の評価
MRC-5細胞を2つの方法に従ってNasaleze(登録商標)粉末で処理して、製剤の予防能力および治療能力を決定した。各実験条件について複製ウェルを利用して24ウェルプレートでアッセイを実施した。
【0096】
2.4.3.1 ヒトコロナウイルス229E感染前にNasaleze(登録商標)粉末を用いたMRC-5細胞の予防的処置
CoV229Eに対するNasaleze(登録商標)粉末の予防能力を評価するために、MRC-5細胞を3.2mgの製剤で10分間前処理した後、CoV229E感染多重度(MOI)1(高用量)および0.01(低用量)で感染させた。試験プレートから完全EMEMを吸引し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄した後、100μLのアッセイ培地に3.2mgのNasaleze(登録商標)粉末を適用した。20±2℃で10分間インキュベートした後、細胞に100μLのCoV229Eを接種し、予め希釈して高MOI感染および低MOI感染を達成し、35±2℃および5%CO2で30分間インキュベートした。次に、感染細胞にさらに300μLのアッセイ培地を補充し、35±2℃および5%CO2で4日間インキュベートした。MRC-5細胞に対するウイルスの細胞変性効果(CPE)を、表2に記載の基準に対して2日目、3日目および4日目にスコア化した。3日目および4日目に、100μLの培地を各ウェルから採取してウイルス力価を決定した後、100μLの新鮮なアッセイ培地と交換した。採取した試料は、ウイルス価測定に必要とされるまで-80℃で保存した。
【0097】
2.4.3.2 ヒトコロナウイルス229E感染MRC-5細胞のNasaleze(登録商標)粉末による処理
CoV229Eに対するNasaleze(登録商標)粉末の治療能力を評価するために、MRC-5細胞に、最初にそれぞれ高MOI1および低MOI0.01のCoV229Eを感染させた後、製剤で処理した。完全EMEMを試験プレートから吸引し、DPBSで1回洗浄した後、100μLの予め希釈したCoV229Eを接種して高MOI感染および低MOI感染を達成し、35±2℃および5%CO2で30分間インキュベートした。インキュベーション後、ウイルス接種材料を除去し、100μLアッセイ培地中の3.2mg用量のNasaleze(登録商標)粉末を細胞に添加し、20±2℃で10分間インキュベートして、ゲルバリアを形成させた。次に、処理した細胞にさらに300μLのアッセイ培地を補充し、35±2℃および5%CO2で4日間インキュベートした。MRC-5細胞上のウイルスのCPEを、表2に記載の基準で2日目、3日目および4日目にスコア化した。3日目および4日目に、100μLの培地を各ウェルから採取してウイルス力価を決定した後、別の100μLの新鮮なアッセイ培地と交換した。採取した試料は、ウイルス価測定に必要とされるまで-80℃で保存した。
【0098】
2.4.4 TCID50によるウイルス感染性の定量
採取した試料のウイルス力価を決定するために、アッセイ培地で10倍連続希釈を行った。培地を細胞プレートのウェルから吸引し、細胞をDPBSで洗浄した。試料の各希釈物100マイクロリットルを対応する試験ウェルに添加した。試験プレートを35±2℃および5%CO2で7日間インキュベートした。各試験条件に対して4つの複製ウェルがあった。インキュベーション後、Olympus CK2倒立顕微鏡を使用してウイルスCPEを決定した。スピアマン-カーバー法を用いてウイルス力価を計算した。
【0099】
3.0 結果
3.1 フェーズ1:細胞傷害性スクリーニング
24時間の接触時間後にNasaleze(登録商標)粉末に曝露したMRC-5細胞では、観察可能な細胞傷害性は認められなかった(表3)。視覚的スコアリングを行うと、Nasaleze(登録商標)粉末で形成されたゲルバリアが細胞単層の上に見えた。さらに、処理細胞上に残渣が認められた(データは示さず)。
【表3】
【0100】
3.2 コロナウイルス229E感染前にNasaleze(登録商標)粉末を用いたMRC-5細胞の予防的処置
3.2.1. Nasaleze(登録商標)粉末で前処理したMRC-5細胞に対するCoV229Eの細胞変性効果
2日目、3日目および4日間のインキュベーション期間後、試験プレートのCPEをスコア化した(表4~表6)。CPEが観察された(視覚データは示さず)。高MOIのCoV229EとNasaleze(登録商標)粉末で処理した複製細胞は、2日目にわずかなCPEを示し、3日目および4日目に重度のCPEを示した。低MOIのCoV229EとNasaleze(登録商標)粉末で処理した複製細胞は、2日目にCPEを示さず、3日目および4日目に中等度のCPEを示した。
【表4】
【表5】
【表6】
【0101】
3.2.2 Nasaleze(登録商標)粉末で前処理した試料のウイルス滴定
高MOIのCoV229Eによる3日間および4日間のインキュベーション期間の後、陰性対照は、それぞれ5.82±0.35 Log10TCID50/mLおよび5.32±0.35 Log10TCID50/mLの平均ウイルス力価をもたらした。Nasaleze(登録商標)粉末によるMRC-5細胞の前処理は、陰性対照と比較した場合、感染後3日目および4日目にそれぞれ、ウイルス力価の2.68 Log10TCID50/mLおよび2.55 Log10TCID50/mLの減少をもたらした(表7)。
【表7】
【0102】
低MOIのCoV229Eによる3日間および4日間のインキュベーション期間の後、陰性対照は、それぞれ6.02±0.53 Log10TCID50/mLおよび5.39±0.18 Log10TCID50/mLの平均ウイルス力価をもたらした。Nasaleze(登録商標)粉末によるMRC-5細胞の前処理は、陰性対照と比較した場合、感染後3日目および4日目にそれぞれ、ウイルス力価の1.70 Log10TCID50/mLおよび1.00 Log10TCID50/mLの減少をもたらした(表8)。
【表8】
【0103】
3.3 Nasaleze(登録商標)粉末の治療能力
3.3.1 ウイルス感染後にNasaleze(登録商標)粉末で処理したMRC-5細胞に対するCoV229Eの細胞変性効果
2日目、3日目および4日間のインキュベーション期間後、試験プレートのCPEをスコア化した(表9~表11)。観察されたCPEの代表的な画像を
図Bに示す。高MOIのCoV229Eで感染させた後、Nasaleze(登録商標)粉末で処理した複製細胞は、感染後2日目に軽度のCPEを示し、3日目および4日目に重度のCPEを示した。低MOIのCoV229Eで感染後Nasaleze(登録商標)粉末で処理した複製細胞は、感染後2日目にCPEを示さず、3日目および4日目に中等度のCPEを示した。
【表9】
【表10】
【表11】
【0104】
3.3.2 ウイルス感染後にNasaleze(登録商標)粉末で処理した試料のウイルス力価測定
高MOIのCoV229Eによる3日間および4日間のインキュベーション期間の後、陰性対照は、それぞれ5.82±0.35 Log10TCID50/mLおよび5.32±0.35 Log10TCID50/mLの平均ウイルス力価をもたらした。高MOIのCoV229Eによる感染後のNasaleze(登録商標)粉末によるMRC-5細胞の処理は、陰性対照と比較した場合、感染後3日目および4日目にそれぞれ、ウイルス力価の1.07 Log10TCID50/mLおよび1.93 Log10TCID50/mLの減少をもたらした(表12)。
【表12】
【0105】
低MOIのCoV229Eによる3日間および4日間のインキュベーション期間の後、陰性対照は、それぞれ6.50±0.00 Log10TCID50/mLおよび5.89±0.18 Log10TCID50/mLの平均ウイルス力価をもたらした。低MOIのCoV229Eによる感染後のNasaleze(登録商標)粉末によるMRC-5細胞の処理は、陰性対照と比較した場合、感染後3日目および4日目にそれぞれ、ウイルス力価の0.75 Log10TCID50/mLおよび1.00 Log10TCID50/mLの減少をもたらした(表13)。
【表13】
【0106】
4.0 考察
潜在的な病原性ウイルスの拡散は、健康な個体および免疫無防備状態の個体の両方において感染リスクを増加させる。コロナウイルスは、ヒトの様々な上気道疾患の原因となるエンベロープの一本鎖RNAウイルスである。これらの病気は、最近のCOVID-19のパンデミックに見られるように、風邪などの軽度の症状から重度の急性呼吸器症候群にまで及ぶ。コロナウイルスは、主に呼吸器液滴を介して伝達されると考えられており、ウイルスが数日間にわたり媒介物上で活性のままであり得ることを示唆するいくつかの証拠がある。予防的および治療的の両方の介入は、コロナウイルスの拡散を遅らせるおよび/または止めるために不可欠である。コロナウイルス代用株に対する本発明の評価は、製品の有効性の安全な評価を可能にする。コロナウイルス229Eは、構造的および遺伝的にSars-CoV-2ウイルスに類似している。
【0107】
Nasaleze(登録商標)粉末の抗ウイルス効果を調べるために、2つのアプローチを行った。試験の第1群では、MRC-5細胞をNasaleze(登録商標)粉末で前処理した後、高用量および低用量のCoV229Eに感染させた。第2のアプローチは、Nasaleze(登録商標)粉末で処理する前に、MRC-5細胞に高用量および低用量のCoV229Eを感染させた。Nasaleze(登録商標)粉末による処理は、試験の両方の実験群においてウイルス力価の実質的な減少をもたらし、高レベルの抗ウイルス能力を示した。
【0108】
セクション3(b)
1.0 目的
予防的かつ治療ベースのアプローチを使用して、ヒトコロナウイルス229Eに対する2つの鼻用乾燥粉末スプレー製品の抗ウイルス有効性を評価すること。
【0109】
2.0 材料および方法
2.1 試験生物
細胞型:
MRC-5(ATCC(登録商標)CCL-171(商標))継代数3
ウイルス:ヒトコロナウイルス229E(CoV229E)
(ATCC(登録商標)VR-740(商標))-増幅数:1
【0110】
2.2 試験剤
試験で使用した試験剤を表1に列挙する。
【表14】
【0111】
1.REMは、90%HPMC粒子および2%シグナル伝達剤と均一に混合された8%w/wの濃度のレムデシビルからなる。
【0112】
2.IVERは、90%w/wのHPMC粒子および2%シグナル伝達剤と均一に混合された8%w/wの濃度のイベルメクチンからなる。
【0113】
2.3 機器および媒体
機器:
クラスIIバイオセーフティキャビネット-BioMAT、ThermoFisher Scientific、英国 ボルテックス-Grant Instruments、英国
UKAS較正マルチチャネルピペット(P300)-Gilson(登録商標)、英国 UKAS較正マルチチャネルピペット(P20)-Gilson(登録商標)、英国
UKAS較正ピペット(0.5-1000μL範囲)-Proline(登録商標)Plus、英国 96ウェルプレート-ThermoFisher Scientific、英国
24ウェルプレート-ThermoFisher Scientific、英国 CO2 Incubator BB-15-Thermo Scientific、英国
組織培養フラスコ-Nunc,ThermoFisher Scientific,英国 Olympus CK2倒立顕微鏡-KeyMed,英国
VWB2水浴-VWR、英国 Vacuboy Aspirator INTEGRA、英国
媒体:
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)-Gibco(商標)、英国
ペニシリン-ストレプトマイシン-ThermoFisher Scientific、英国 イーグル最小必須培地(EMEM)ATCC(登録商標)、英国
ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)Gibco(商標)、英国
ウシ胎児血清(FBS)-Gibco(商標)、米国
トリプシン-EDTA Gibco(商標)、英国 トリパンブルーSigma Aldrich、英国
【0114】
2.4 方法
2.4.1 細胞維持およびアッセイ設定
MRC-5細胞をヒトコロナウイルス229E増殖のための宿主細胞株として使用した。MRC-5細胞を、イーグル最小必須培地(EMEM)に20%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充して(完全培養EMEM)37±2℃および5%CO2で維持した。細胞傷害性スクリーニングおよび抗ウイルスアッセイの準備として、MRC-5細胞を24ウェルプレートに播種し、37±2℃および5%CO2で24時間、または80~90%の集密度に達するまでインキュベートした。
【0115】
2.4.2 フェーズ1:鼻スプレー製剤の細胞傷害性スクリーニング
試験品を、2%FBSおよび1%ペニシリン-ストレプトマイシン(アッセイ培地)を補充したEMEM中で3.2mg/0.1mLに希釈した。試験プレートから完全培養EMEMを吸引し、各試験濃度の100μLを複製ウェルに添加した。20±2℃で10分間のインキュベーション期間の後、さらなる400μLのアッセイ培地を試験ウェルに添加した。プレートを37±2℃および5%CO
2で24時間インキュベートした。インキュベーション後、視覚的スコアリングを、ISO10993-5ガイドラインに従って0~4のスケールで実施した(表2)。細胞傷害性効果を、MRC-5細胞に対する様々な形態学的変化(細胞の丸み、剥離および細胞溶解など)に基づいて評価した。
【表15】
【0116】
2.4.3 フェーズ2:予防ベースおよび治療ベースのアプローチを使用したヒトコロナウイルス229Eに対する2つの鼻スプレー製剤の抗ウイルス有効性
MRC-5細胞を2つの方法に従って鼻スプレー製剤で処理して、製剤の予防能力および治療能力を決定した。各実験条件について複製ウェルを利用して24ウェルプレートでアッセイを実施した。
【0117】
2.4.3.1 ヒトコロナウイルス229E感染前に2つの鼻スプレー製剤を用いたMRC-5細胞の予防的処置
ヒトコロナウイルス229Eに対する鼻スプレーの予防能力を評価するために、MRC-5細胞を感染前に3.2mg/0.1mLの各製剤で10分間前処理した。試験プレートから完全EMEMを吸引し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄し、100μLのアッセイ培地中3.2mgの試験粉末を適用した。20±2℃で10分間インキュベートした後、細胞に100μLを接種した。
【0118】
2.4.3.2 ヒトコロナウイルス229E感染前に2つの鼻スプレー製剤を用いたMRC-5細胞の予防的処置
ヒトコロナウイルス229Eに対する鼻スプレーの予防能力を評価するために、MRC-5細胞を感染前に3.2mg/0.1mLの各製剤で10分間前処理した。試験プレートから完全EMEMを吸引し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄し、100μLのアッセイ培地中3.2mgの試験粉末を適用した。20±2℃で10分間インキュベートした後、細胞に、100μLのヒトコロナウイルス229Eを接種し、事前に希釈して、高い多重度(0.3)および低い多重度(0.01)を達成した。
【0119】
2.4.3.3 ヒトコロナウイルス229E感染前に2つの鼻スプレー製剤を用いたMRC-5細胞の予防的処置
ヒトコロナウイルス229Eに対する鼻スプレーの予防能力を評価するために、MRC-5細胞を感染前に3.2mg/0.1mLの各製剤で10分間前処理した。試験プレートから完全EMEMを吸引し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で1回洗浄し、100μLのアッセイ培地中3.2mgの試験粉末を適用した。20±2℃で10分間インキュベートした後、細胞に、100μLのヒトコロナウイルス229Eを接種し、事前に希釈して、高い感染多重度(0.3)および低い感染多重度(0.01)を達成した(MOI)。試料を35±2℃および5%CO2で30分間インキュベートした。次に、感染細胞にさらに300μLのアッセイ培地を補充し、35±2℃および5%CO2で4日間インキュベートした。2日目、3日目および4日目に、100μLの培地を各ウェルから採取してウイルス力価を決定した。新鮮なアッセイ培地の100μLアリコートを各採取後に細胞に適用した。採取した試料は、TCID50によるウイルス価測定に必要とされるまで-80℃で保存した。スピアマン-カーバー法を用いてウイルス力価を計算した。
【0120】
2.4.3.4 ヒトコロナウイルス229E感染MRC-5細胞の2つの鼻スプレー製剤による処理
ヒトコロナウイルス229Eに対する鼻スプレーの治療能力を評価するために、MRC-5細胞に、最初に、高MOI0.3のヒトコロナウイルス229Eおよび低MOI0.01のヒトコロナウイルス229Eをそれぞれ感染させた後、これらの2つの製剤の各々で処理を行った。試験プレートから完全EMEMを吸引し、DPBSで1回洗浄した。試料に、100μLの予め希釈したヒトコロナウイルス229Eを接種して、高MOI感染および低MOI感染を達成し、35±2℃および5%CO2で30分間インキュベートした。インキュベーション後、ウイルス接種材料を除去し、100μLアッセイ培地中の3.2mg用量の試験粉末を細胞に添加し、20±2℃で10分間インキュベートして、ゲルバリアを形成させた。次に、処理した細胞にさらに300μLのアッセイ培地を補充し、35±2℃および5%CO2で4日間インキュベートした。2日目、3日目および4日目に、100μLの培地を各ウェルから採取してウイルス力価を決定した。新鮮なアッセイ培地の100μLアリコートを各採取後に細胞に適用した。採取した試料は、TCID50によるウイルス価測定に必要とされるまで-80℃で保存した。スピアマン-カーバー法を用いてウイルス力価を計算した。
【0121】
3.0 結果
3.1 フェーズ1:2つの鼻スプレー製剤の細胞傷害性スクリーニング
24時間の接触時間後に鼻スプレーに曝露したMRC-5細胞では、観察可能な細胞傷害性は認められなかった(表3)。
【表16】
【0122】
3.2 フェーズ2:予防ベースおよび治療ベースのアプローチを使用したヒトコロナウイルス229Eに対する2つの鼻スプレー製剤の抗ウイルス有効性。
3.2.1 ヒトコロナウイルス229E感染前に鼻スプレー製剤を用いたMRC-5細胞の予防的処置。
3.2.1.1 高MOI
高MOIのヒトコロナウイルス229Eで2日間、3日間および4日間インキュベートした後、陽性感染対照は、それぞれ7.00、6.50および4.75 Log10TCID50mL
-1の平均ウイルス力価をもたらした。1.REMおよび2.IVERによるMRC-5細胞の前処理は、2日間、3日間および4日間のインキュベーション後に回収されたヒトコロナウイルス229Eにおいて最も高い減少をもたらした。(表4)。
【表17】
【0123】
3.2.1.2 低MOI
低MOIのヒトコロナウイルス229Eで2日間、3日間および4日間インキュベートした後、陽性感染対照は、それぞれ7.50、6.67および6.42 Log10TCID50mL
-1の平均ウイルス力価をもたらした。1.REMおよび2.IVERによるMRC-5細胞の前処理は、2日間および4日間のインキュベーション後に回収されたヒトコロナウイルス229Eで最も高い減少をもたらした(表5)。
【表18】
【0124】
3.2.2 ヒトコロナウイルス229E感染MRC-5細胞の2つの鼻スプレー製剤による処理
3.2.2.1 高MOI
高MOIのヒトコロナウイルス229Eで2日間、3日間および4日間インキュベートした後、陽性感染対照は、それぞれ7.00、6.50および4.75 Log10TCID50mL
-1の平均ウイルス力価をもたらした。1.REMおよび2.IVERによるヒトコロナウイルス229E感染MRC-5細胞の処理は、2日間、3日間および4日間のインキュベーション後に回収されたヒトコロナウイルス229Eにおいて最も高い減少をもたらした(表6)。
【表19】
【0125】
3.2.2.2 低MOI
低MOIのヒトコロナウイルス229Eで2日間、3日間および4日間インキュベートした後、陽性感染対照は、それぞれ7.50、6.67および6.42 Log10TCID50mL
-1の平均ウイルス力価をもたらした。1.REMおよび2.IVERによるヒトコロナウイルス229E感染MRC-5細胞の処理は、2日間、3日間および4日間のインキュベーション後に回収されたヒトコロナウイルス229Eにおいて最も高い減少をもたらした(表7)。
【表20】
【0126】
4.0 考察
潜在的な病原性ウイルスの拡散は、健康な個体および免疫無防備状態の個体の両方において感染リスクを増加させる。コロナウイルスは、ヒトの様々な上気道疾患の原因となるエンベロープの一本鎖RNAウイルスである。これらの疾患は、進行中のCOVID-19パンデミックに見られるように、軽度の症状(例えば、一般的な風邪など)から重度の急性呼吸器症候群にまで及び、予防的アプローチと治癒的アプローチの両方をとる介入が、コロナウイルスの拡散を止めること、または遅らせることにおいて不可欠である。本研究において、2つの製剤の予防的および治癒的適用を、高用量および低用量のヒトコロナウイルス229Eに対して評価した。コロナウイルス229Eは、構造的および遺伝的にSars-CoV-2ウイルスに類似している。
【0127】
全ての評価にわたって、REMおよびIVERは、予防的および治癒的適用後に回収されたヒトコロナウイルス229Eの減少をもたらした。
【0128】
将来の研究は、複数の適用後の製剤の効果を調査することができる。将来の研究はまた、インフルエンザA型およびB型、アデノウイルスおよびライノウイルスなどの他の呼吸器ウイルスに対する鼻スプレー製剤を評価することもできる。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)などの細菌性呼吸器病原体も調査することができる。製品の実際の使用をさらに模倣するために、3D鼻モデルを使用して、製剤の適用後の毛様体機能に対する効果を理解することができる。
【0129】
セクション4前文
当技術分野では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、「ヒプロメロース」という同義語によっても知られている。「ヒプロメロース」という用語は、競合製品の製品文献で使用されている。本出願人のHPMC含有粉末の結果を競合剤の結果と区別するために、「ヒプロメロース」をセクション4で使用して、本出願人のHPMC含有粉末と区別する。
【0130】
本明細書における「ヒプロメロース」への全ての言及は、水分と接触した後にそのpHを低下させるように作用する添加剤をさらに含有する競合剤の低pHヒプロメロース含有組成物のみに関することを理解されたい。本発明のHPMC含有粉末は、競合製品に含まれることが知られている種類の添加剤を含まない。
【0131】
セクション4の目的の1つは、本発明のHPMC粉末の性能を競合剤のヒプロメロース含有粉末の性能と比較することである。
【0132】
本出願人のHPMC含有粉末と比較されている競合剤のヒプロメロース含有製品は、以下の成分を有する。
競合製品の文献に記載されているように、89.9%のヒプロメロース、6%のクエン酸、4%のクエン酸ナトリウム、0.1%の塩化ベンザルコニウムおよび0.1%未満のメントール。
【0133】
セクション4
ヒドロキシプロピルメチルセルロースゲルの適用は、低pHヒプロメロースよりも有意に良好にインビトロでDer p 1拡散を遅延させる
背景:
特定のセルロース粉末が鼻内に内部ゲルバリアを形成することによってウイルス粒子を捕捉することができることを示す更新されたARIAガイドラインおよびデータに従って、本発明者らは、アレルギー性鼻炎の鼻症状の緩和およびコロナウイルス229EおよびSARS Cov2を含むウイルス粒子の捕捉について、異なる平均粒径のヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末と競合剤の市販の低pHヒプロメロース粉末を調べた。これらのバリア化合物の有効性は、いくつかの臨床、観察、およびインビトロ研究の対象であった。本研究の目的は、鼻の水分吸収後に形成されるゲルの品質が平均粒径に関連する可能性があり、低粒径が外部病原体に対する有効性の低いバリアを生成し得るという仮説を調査することであった。各化合物によって生成される機械的バリアの品質はまた、長期間にわたって鼻上皮へのアレルゲン拡散を防止するのに重要である。
【0134】
方法:HPMCおよびヒプロメロースゲルを通るDer p 1の拡散を、ELISA法を使用して15分、30分、60分,180分および360分後にインビトロで測定した。鼻粘膜をシミュレートするために、寒天ブロックを使用した。ゲル層のない対照試料を得た。
【0135】
セクション4
ヒドロキシプロピルメチルセルロースゲルの適用は、低pHヒプロメロースよりも有意に良好にインビトロでDer p 1拡散を遅延させる
背景:
特定のセルロース粉末が鼻内に内部ゲルバリアを形成することによってウイルス粒子を捕捉することができることを示す更新されたARIAガイドラインおよびデータに従って、本発明者らは、アレルギー性鼻炎の鼻症状の緩和およびコロナウイルス229EおよびSARS Cov2を含むウイルス粒子の捕捉について、異なる平均粒径のヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末と競合剤の市販の低pHヒプロメロース粉末を調べた。これらのバリア化合物の有効性は、いくつかの臨床、観察、およびインビトロ研究の対象であった。本研究の目的は、鼻の水分吸収後に形成されるゲルの品質が平均粒径に関連する可能性があり、低粒径が外部病原体に対する有効性の低いバリアを生成し得るという仮説を調査することであった。各化合物によって生成される機械的バリアの品質はまた、長期間にわたって鼻上皮へのアレルゲン拡散を防止するのに重要である。
【0136】
方法:HPMCおよびヒプロメロースゲルを通るDer p 1の拡散を、ELISA法を使用して15分、30分、60分,180分および360分後にインビトロで測定した。鼻粘膜をシミュレートするために、寒天ブロックを使用した。ゲル層のない対照試料を得た。
【0137】
結果:
ゲルバリアを適用しなかった対照試料は、15分後にDer p 1溶液の100%を吸収した。比較すると、HPMCはDer p 1拡散を有意に遅延させ、模擬鼻条件下で15分後に寒天ブロックへの浸透をわずか1.33%、360分後にわずか10.41%しか可能にせず、小さい粒子サイズ、中程度の粒子サイズ、およびより大きな粒子サイズの間にわずかな差が見られ、これらは全て、同じ条件下で15分後に5.37%、360分後に25.89%の浸透を可能にしたヒプロメロースゲルよりも優れていた。
【0138】
結論:
HPMCゲルは、ヒプロメロースと比較してインビトロでのDer p 1拡散を有意に減少させる。これは、HPMCのポリマーネットワークの平均メッシュサイズがヒプロメロースの低メッシュサイズよりも効率的なバリアを形成することに起因する可能性があり、様々な病原体を捕捉するための予防バリア形成に重要な意味を有し得る。
【0139】
方法
3つのHPMC化合物を構成し、Nasaleze Limitedによる試験のために提供した。低pHのヒプロメロース化合物の試料は、Nasus Pharma,ILから入手した。
【0140】
Der p 1アレルゲンは、インドのIndoor Biotechnologyから調達した。実験を、
図3に示す段階的プロトコルに従って追跡した。続いてELISA測定を行った。
【0141】
ELISA測定
アッセイで使用したDer p1アレルゲン標準は、Indoor Biotechnologiesから購入し、製造業者の指示に従ってアッセイを実施した。
【0142】
結果および所見
標準溶液20ul中の平均ベースラインアレルゲン含有量は、ストック溶液の推奨される希釈および調製後に153.02ngであることが分かった。
【0143】
結果および観察は、容器(従来の粉末スプレーボトル)からスプレーした場合、3つ全てのHPMC粉末が自然界で自由流動性であるのに対して、ヒプロメロース粉末は、ボトルから自由流動性を得るために数回タップしなければならなかったことを明確に示す。
【0144】
全てのHPMC製剤は、希釈剤と混合したときに直ちに厚く透明で堅いゲルを形成したが、最初ヒプロメロースは、実際には液体であったため、いかなる種類のゲルも形成しなかった。一連の希釈後、50mgの粉末を1mlの0.9%滅菌生理食塩水と混合して、正常な鼻粘膜のpHおよび稠度と一致させることによって、試料からの全てのゲルが5%ゲル溶液になったことが確認された。
【0145】
実験を通して、また30~35℃での6時間のインキュベーション後でさえ、HPMC層は形態が厚く新鮮なままであったが、ヒプロメロース層は完全に乾燥し、ガラススライド表面上に白色沈殿物を形成した。
【表21】
pHPMC小粒子:平均粒径=88.57μm
pHPMC中粒子:平均粒径=107.7μm
pHPMC大粒子:平均粒径=121.00μm
ヒプロメロース(競合剤の低pHヒプロメロース):平均粒径=68.56μm
【0146】
結論
データは、HPMCが、生成されたバリアの品質、一貫性および性質の点で競合剤のヒプロメロースよりも優れていること、およびこれは、HPMCが360分間の検査でDer p 1アレルゲンによる浸透を防ぐことができ、ヒプロメロースよりも約150%効果的であることを意味することを明確に示しており、したがって、本発明者らは、HPMCを使用する場合、花粉、ウイルス、細菌および胞子を含むアレルゲンを鼻粘膜に捕捉する能力がはるかに効率的であると予想する。
【0147】
【国際調査報告】