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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(54)【発明の名称】ピロリジン化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230614BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 5/32 20060101ALI20230614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
C07D471/04 103A
C07D471/04 CSP
A61K31/4439
A61P5/32
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513900
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 CN2021093736
(87)【国際公開番号】W WO2021228210
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】202010414013.9
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522447565
【氏名又は名称】シムサー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】517405493
【氏名又は名称】チャンスー シムサー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クー、ポン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、レイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、クオパオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、フォン
(72)【発明者】
【氏名】タン、レンホン
(72)【発明者】
【氏名】レン、チンション
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065AA18
4C065BB04
4C065CC09
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP10
4C065PP12
4C065QQ01
4C065QQ05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC11
(57)【要約】
式(I)により表されるピロリジン化合物又はその薬学的に許容できる塩、それを含む医薬組成物、及びエストロゲン受容体関連疾患の予防又は治療における、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)としての医薬組成物の使用が開示される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
【化1】

式中、
、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はC~Cシクロアルキルから独立して選択され、
、X、X、及びXは、CR又はNから独立して選択され、
は、H、F、Cl、Br、I、OH、CN、C~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、3~10員ヘテロシクリル、C~C10アルコキシ、C~C10シクロアルキルオキシ又は3~10員ヘテロシクリルオキシから選択され、
Yは、O又はNHから選択され、
はC~Cアルキルから独立して選択され、且つ前記C~CアルキルはRにより任意選択で置換されており、
は、F、Cl、Br、I、OH、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はC~Cシクロアルキルから選択され、
但し、式(I)により表される化合物が
【化2】

を含まないことを条件とする、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はC~Cアルキルから独立して選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
、X、X、及びXは、CR又はNから独立して選択され、且つX、X、X、及びX基の少なくとも2つはCRから選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
は、H、F、Cl、Br、I、CN、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシから選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
はC~Cアルキルから選択され、前記C~CアルキルはRにより任意選択で置換されている、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
前記構造単位
【化3】

は、
【化4】

から選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
式(I)により表される前記化合物又はその薬学的に許容できる前記塩は、以下の式(II)により表される化合物、又はその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【化5】
【請求項8】
式(I)により表される前記化合物又はその薬学的に許容できる前記塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【化6】
【請求項9】
式(I)により表される前記化合物又はその薬学的に許容できる前記塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される、請求項1に記載の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【化7】
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩及び薬学的に許容できる補助剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療するための薬物の調製における、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又は請求項10に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記エストロゲン受容体関連疾患は腫瘍であり、
より好ましくは、前記腫瘍は乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌脳転移である、使用。
【請求項12】
エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又は請求項10に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含み、
好ましくは、前記エストロゲン受容体関連疾患は腫瘍であり、
より好ましくは、前記腫瘍は乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌脳転移である、エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療する方法。
【請求項13】
エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩及び薬学的に許容できる補助剤を含む医薬組成物であって、
好ましくは、前記エストロゲン受容体関連疾患は腫瘍であり、
より好ましくは、前記腫瘍は乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌であり、
より好ましくは、前記腫瘍はER陽性乳癌脳転移である、エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「ピロリジン化合物及びその使用」という名称を有し、国家知識産権局に2020年5月15日に提出されたCN202010414013.9号の特許出願番号を有する先行出願の優先権を主張する。上述の先行出願は、参照により全体として本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規ピロリジン化合物又はその薬学的に許容できる塩、それを含む医薬組成物、及び関連疾患の予防又は治療における、選択的エストロゲン受容体分解薬((Selective Estrogen Receptor Degrader or Downregulator, SERD))としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
エストロゲン(E2)及びエストロゲンα受容体(ERα)は、乳癌の発生及び発症の重要な推進因子である。乳癌を有する患者の3分の2超においてER転写因子が発現され、且つER陽性患者の大多数において、ERは早期内分泌療法の後ですら進行する腫瘍の主要な推進因子のままであり、したがって、ERは乳癌療法の重要な標的である(Pharmacology & Therapeutics 186(2018)1-24)。内分泌療法の目的はER活性を低下させることである。ERのアロステリック修飾剤であり、ERへの結合後にERの転写活性を阻害するERのアロステリック調節剤であるタモキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体調節剤(SERMs)、アンドロゲンのエストロゲンへの転化を阻害することにより体内のエストロゲンのレベルを減少させるアロマターゼ阻害剤(AI)、及びERアンタゴニストとして作用してERの活性を阻害するだけでなく、ERタンパク質分解も誘導するフルベストラントなどの選択的エストロゲン受容体発現ダウンレギュレーターを含む、主に3種の療法がある。内分泌療法は、エストロゲン受容体陽性乳癌を有する患者にとって第一選択であるが、約30%の患者は治療後に再発し、転移性乳癌を有するほとんど全ての患者は薬剤耐性を起こし、そのため、疾患は進行する。内分泌療法に対する耐性の機構は主に2種類あり、1つは、エストロゲン受容体をコードする遺伝子ESR1の活性化変異、増幅、及び他の遺伝子との融合、エストロゲン受容体の共制御因子及び下流細胞周期制御因子の調節不全などを含む、エストロゲン受容体シグナル伝達経路自体に集中することであり、もう1つは、成長因子受容体経路などのエストロゲン受容体シグナル伝達経路と交差反応するシグナル伝達経路の活性化を含む(Oncol Ther,2017,5:17-29)。
【0004】
臨床の検出結果によると、乳癌患者の約70~80%はエストロゲン受容体(ER)陽性であり、そのような乳癌細胞の増殖は、ERに大きく依存しており、乳癌死亡症例の50%はこのサブタイプのものである。早期ER陽性乳癌はより良好な予後を有し、5年生存率は90%を超える。術後内分泌療法(TAM又はAI薬)を受ける患者の約30%は10年以内に再発を経験するが、それでも標準的な内分泌療法を受けることができる。それでもなお、主にESR1-LBD変異により起こされる獲得性薬剤耐性及び遠隔転移(骨、脳、肝臓、肺、及びリンパ節になど、約10%~15%の患者は脳転移を有する)が出現し、患者は治療に耐性をもつようになり、薬剤に耐性を有する患者の数が増える。進行性転移性乳癌を有する患者において、脳転移は、肺、肝臓、及び骨転移より遅く、その予後は不良であり、臨床薬物治療後の生存期間中央値はわずか2~9か月である。
【0005】
フルベストラントは、疾患がタモキシフェン又はアロマターゼ阻害剤による治療の後に進行するER陽性転移性乳癌を有する閉経後患者の治療のために臨床認可された最初で唯一のSERD薬物である。現在、AstraZeneca(特許出願国際公開第2018077630A1号参照)及びGenentech(特許出願国際公開第2019245974A1号参照)も、新規構造の一連のSERD化合物及びその対応する医学的使用を開示している。複数の研究から得られたデータは、フルベストラントにより治療された患者におけるER分解が完全には達成されなかったことを示した。さらに、筋肉内注射により起こされる注射部位での疼痛、腫脹、及び発赤などの明らかな反応、緩徐な吸収、体内の限定された曝露量(フルベストラントは血液脳関門を通って浸透できず、単一の筋肉内注射の極量はわずか500mgであり、その薬力学特性及び筋肉内投与経路が患者に与えることができる極量を限定している)などの特性は、その臨床用途を大きく限定する。したがって、新たな治療選択肢が、ER陽性乳癌を有する患者のために差し迫って必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩を提供し、
【0007】
【化1】
【0008】
式中、
、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はC~Cシクロアルキルから独立して選択され、
、X、X、及びXは、CR又はNから独立して選択され、
は、H、F、Cl、Br、I、OH、CN、C~C10アルキル、C~C10シクロアルキル、3~10員ヘテロシクリル、C~C10アルコキシ、C~C10シクロアルキルオキシ、又は3~10員ヘテロシクリルオキシから選択され、
Yは、O又はNHから選択され、
はC~Cアルキルから独立して選択され、且つC~CアルキルはRにより任意選択で置換されており、
は、F、Cl、Br、I、OH、CN、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はC~Cシクロアルキルから選択され、
但し、式(I)により表される化合物は、
【0009】
【化2】
【0010】
を含まないことを条件とする。
【0011】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の式(II)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される。
【0012】
【化3】
【0013】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、式(III)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される。
【0014】
【化4】
【0015】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はC~Cアルキルから独立して選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はC~Cアルキルから独立して選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はメチルから独立して選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、又はC~Cアルキルから独立して選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、Cl、Br、I、又はメチルから独立して選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、R、R、R、及びRは、H、F、又はメチルから独立して選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、R及びRは、H、F、又はメチルから独立して選択される。
【0022】
いくつかの実施形態において、R及びRは、H又はメチルから独立して選択される。
【0023】
いくつかの実施形態において、R及びRはHから独立して選択される。
【0024】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0025】
【化5】
【0026】
は、
【0027】
【化6】
【0028】
から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0030】
【化7】
【0031】
は、
【0032】
【化8】
【0033】
から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0035】
【化9】
【0036】
は、
【0037】
【化10】
【0038】
から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0040】
【化11】
【0041】
は、
【0042】
【化12】
【0043】
から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0045】
【化13】
【0046】
は、
【0047】
【化14】
【0048】
から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0050】
【化15】
【0051】
は、
【0052】
【化16】
【0053】
から選択される。
【0054】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0055】
【化17】
【0056】
は、
【0057】
【化18】
【0058】
から選択される。
【0059】
いくつかの実施形態において、X、X、X、及びXは、CR又はNから独立して選択され、且つX、X、X、及びX基の少なくとも2つはCRから選択される。
【0060】
いくつかの実施形態において、X、X、X、及びXは、CR又はNから独立して選択され、且つX、X、X、及びX基の少なくとも3つはCRから選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシから選択される。
【0062】
いくつかの実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はC~Cアルコキシから選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、I、CN、又はメトキシルから選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、I、又はCNから選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、Rは、H、F、Cl、Br、又はIから選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、Rは、H又はFから選択される。
【0067】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0068】
【化19】
【0069】
は、
【0070】
【化20】
【0071】
から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態において、構造単位
【0073】
【化21】
【0074】
は、
【化22】
【0075】
から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態において、RはC~Cアルキルから選択され、C~CアルキルはRにより任意選択で置換される。
【0077】
いくつかの実施形態において、Rは、F、Cl、Br、I、OH、又はCNから選択される。
【0078】
いくつかの実施形態において、Rは、F、OH、又はCNから選択される。
【0079】
いくつかの実施形態において、Rは、F又はOHから選択される。
【0080】
いくつかの実施形態において、Rは、CHCF、CHCHF、CHCFCHOH、又はCHCFCHCNから選択される。
【0081】
いくつかの実施形態において、Rは、CHCF又はCHCFCHOHから選択される。
【0082】
いくつかの実施形態において、Yは、NHから選択される。
【0083】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される:
【0084】
【化23】
【0085】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される:
【0086】
【化24】
【0087】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される:
【0088】
【化25】
【0089】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される:
【0090】
【化26】
【0091】
いくつかの実施形態において、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩は、以下の化合物又はその薬学的に許容できる塩から選択される:
【0092】
【化27】
【0093】
本発明は、式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩及び薬学的に許容できる補助剤を含む医薬組成物も提供する。
【0094】
さらに、本発明は、エストロゲン受容体関連疾患を予防又は治療するための薬物の調製における、式(I)により表される化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又はその医薬組成物の使用に関する。
【0095】
さらに、本発明は、エストロゲン受容体関連疾患の予防又は治療に使用するための、式(I)により表される化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又はその医薬組成物に関する。
【0096】
さらに、本発明は、エストロゲン受容体関連疾患の予防又は治療における、式(I)により表される化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又はその医薬組成物の使用に関する。
【0097】
さらに、本発明は、エストロゲン受容体関連疾患の予防又は治療のための、式(I)により表される化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又はその医薬組成物に関する。
【0098】
本発明は、エストロゲン受容体関連疾患を治療する方法であって、患者に、本発明の式(I)により表される化合物又はその薬学的に許容できる塩を含む、治療上有効な量の医薬調製物を投与することを含む方法にも関する。
【0099】
本発明の好ましい実施形態において、エストロゲン受容体関連疾患としては、腫瘍があるがこれに限定されない。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、エストロゲン受容体関連疾患は乳癌である。
【0101】
本発明の好ましい実施形態において、エストロゲン受容体関連疾患はER陽性乳癌である。
【0102】
本発明の好ましい実施形態において、エストロゲン受容体関連疾患はER陽性乳癌脳転移である。
【0103】
本発明の好ましい実施形態において、患者は乳癌を有する患者である。
【0104】
本発明の好ましい実施形態において、患者はER陽性乳癌を有する患者である。
【0105】
本発明の好ましい実施形態において、患者はER陽性乳癌脳転移を有する患者である。
【0106】
本発明の化合物は、インビトロ及びインビボでの良好な抗腫瘍活性並びに創薬可能性を有する。インビボの実験は、本発明の化合物がER陽性乳癌のマウスモデルにおける腫瘍成長を著しく阻害でき、ER陽性乳癌の頭蓋内マウスモデルにおいて生存期間を著しく改善することを見出した。さらに、本発明の化合物は高いバイオアベイラビリティ及びERの分解の強力な能力を有し、経口投与でき、良好な血液脳関門透過性及びER陽性乳癌(特にER陽性乳癌脳転移)を効果的に治療する潜在力を有する。
【0107】
術語の定義及び説明
特記されない限り、本発明の明細書及び特許請求の範囲に記載される基及び用語の定義は、例としてのそれらの定義、例示的な定義、好ましい定義、表に説明される定義、及び例における具体的な化合物の定義を含み、互いに組み合わされ、組み込まれ得る。そのような組合せ及び組込みの後で得られる基の定義及び化合物構造は、本発明の明細書に記載される範囲内にあるものとする。
【0108】
本明細書で使用される通り、
【0109】
【化28】
【0110】
は、連結部位を指す。
【0111】
用語「薬学的に許容できる塩」は、無機酸及び塩基の塩並びに有機酸及び塩基の塩を含む、非毒性の酸又は塩基の薬学的に許容できる塩を指す。
【0112】
用語「立体異性体」は、シス及びトランス異性体、エナンチオマー並びにジアステレオマーを含む、分子中の原子の異なる空間的配置の結果として作られる異性体を指す。
【0113】
本発明の化合物は、炭素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子などの不斉原子(光学中心)又は非対称の二重結合を有し得る。ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体は本発明の範囲内に包含される。
【0114】
本明細書のラセミ体又はエナンチオマー的に純粋な化合物の図による表現は、Maehr,J.Chem.Ed.1985,62:114-120に由来する。特記されない限り、くさび形の実線の結合及びくさび形の破線の結合
【0115】
【化29】
【0116】
は立体中心の絶対配置を表すために使用され、直線の実線の結合及び直線の破線の結合
【0117】
【化30】
【0118】
は脂環式化合物のシス又はトランス配置を表すために使用される。本明細書に記載される化合物がオレフィン性二重結合又は幾何学的非対称性の他の中心を含む場合、且つ特記されない限り、化合物がE及びZ幾何異性体を両方含むことが意図される。同様に、全ての互変異性形態が本発明の範囲内に包含される。
【0119】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性の形態で存在し得る。本発明は、シス及びトランス異性体、(-)及び(+)エナンチオマー、(R)及び(S)エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、及びラセミ混合物、並びにエナンチオマー的又はジアステレオマー的に濃縮された混合物などの他のそれらの混合物を含む、そのような全ての化合物を企図し、それらの全ては本発明の範囲内にある。追加の不斉炭素原子、不斉硫黄原子、不斉窒素原子、又は不斉リン原子が、アルキル基などの置換基中に存在し得る。これらの異性体及びそれらの混合物の全ては、本発明の範囲内に包含される。本願の不斉原子を含む化合物は、光学活性-純粋又はラセミ形態に分離できる。光学活性-純粋形態は、ラセミ混合物から分割することも、キラル原料又はキラル試薬を使用することにより合成することもできる。立体異性体の非限定的な例には、下記があるが、これらに限定されない。
【0120】
【化31】
【0121】
用語「互変異性体」は、分子内の2つの位置にある原子の迅速な動きから生じる官能基異性体を指す。本発明の化合物は互変異性を示し得る。互変異性化合物は、2種以上の相互転換する形態で存在し得る。互変異性体は、一般的に、平衡形態で存在するので、単一の互変異性体を分離する試みは通常混合物の形成をもたらし、その化学的及び物理的性質は化合物の混合物と一致する。平衡の位置は、分子内の化学的性質に依存する。例えば、アセトアルデヒドなどの多くの脂肪族アルデヒド及びケトンでは、ケトン形態が優勢である、フェノールでは、エノール形態が優勢である。本発明は、化合物の全互変異性形態を包含する。
【0122】
用語「医薬組成物」は、本明細書に記載される1種以上の化合物若しくは生理学的/薬学的に許容できる塩又はそのプロドラッグと生理学的/薬学的に許容できる補助剤などの他の化学成分の混合物を意味する。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を促進することである。
【0123】
用語「置換された」は、指定された原子の原子価状態が正常であり、置換された化合物が安定であることを条件として、指定された原子上の任意の1つ以上の水素原子が置換基により置換されていることを意味する。置換基がオキソ(すなわち=O)である場合、それは2つの水素原子が置換されたことを意味するが、これは芳香族基上では起こらないだろう。
【0124】
用語「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記載される事象又は状況が起こることも起こらないこともあることを意味し、説明は、事象又は状況の発生及び非発生を含む。例えば、表現「エチルは「任意選択で」ハロゲンにより置換される」は、エチルが、非置換(CHCH)、一置換(CHCHFなど)、多置換(CHFCHF、CHCHFなど)、又は完全に置換され得る(CFCF)ことを意味する。1つ以上の置換基を含む基に関して、立体的に実際的でなく、且つ/又は合成面で実現不可能であるあらゆる置換又は置換パターンが、そのような基に導入されることが意図されないことが、当業者により理解されるだろう。
【0125】
任意の可変要素(R、Rなど)が、化合物の構成又は構造において1回以上出現する場合、各場合でのその定義は独立である。例えば、基が2つのRにより置換される場合、各Rは独立した選択肢を有する。
【0126】
-(CH-など、連結基の数が0である場合、それは、連結基が結合であることを意味する。
【0127】
可変要素の1つが化学結合又は非存在から選択される場合、それは、それが結合している2つの基が直接結合していることを意味する。例えば、A-L-Z中でLが結合を表す場合、それは、構造が実際にはA-Zであることを意味する。
【0128】
本明細書で言及される連結基の連結方向が示されていない場合、連結方向は任意である。例えば、構造単位
【0129】
【化32】
【0130】
中のLが「C~Cアルキレン-O」から選択される場合、Lは、環Q及びRに、左から右に読む順序と同じ方向に結合して、「環Q-C~Cアルキレン-O-R」を形成でき、環Q及びRに、左から右に読む方向と逆方向に結合して、「環Q-O-C~Cアルキレン-R」を形成することもできる。
【0131】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0132】
本明細書でのC~Cは、それが、m~nの範囲内である整数値の炭素原子を有することを意味する。例えば、「C~C10」は、該基が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素原子を有し得ることを意味する。
【0133】
用語「アルキル」は、直鎖でも分岐鎖でもよい一般式C2n+1の炭化水素基を指す。用語「C~C10アルキル」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を示すと理解されるものとする。例えば、前記アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-エチルブチル、1-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、又は1,2-ジメチルブチルであり、好ましくは、「C~C10アルキル」は、「C~Cアルキル」又は「C~Cアルキル」を含み得て、「C~Cアルキル」は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を示すと理解されるものとし、「C~Cアルキル」は、1、2、又は3個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を示すと理解されるものとする。
【0134】
用語「C~C10アルコキシ」は、「C~C10アルキルオキシ」又は「C~C10アルキル-O-」であると理解でき、好ましくは、「C~C10アルコキシ」は、「C~Cアルコキシ」又は「C~Cアルコキシ」を含み得る。
【0135】
用語「C~C10シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、若しくはシクロデシルなど、3~10個の炭素原子を有する飽和一価単環式若しくは二環式炭化水素環又はデカリン環などの二環式炭化水素基を示すと理解されるものとする。用語「C~Cシクロアルキル」は、3~6個の炭素原子を有する飽和一価単環式又は二環式炭化水素環を示すと理解されるものとする。
【0136】
用語「C~C10シクロアルキルオキシ」は「C~C10シクロアルキル-O-」であると理解でき、好ましくは、「C~C10シクロアルキルオキシ」は、「C~Cシクロアルキルオキシ」を含み得る。
【0137】
用語「ヘテロシクリル」は、完全飽和又は部分飽和(全体として芳香族であるヘテロ芳香族基ではない)の一価、単環式、縮合環、スピロ環式、又は架橋環基であって、その中の環原子が1~5個のヘテロ原子又はヘテロ原子基(すなわち、ヘテロ原子を含む原子基)を含むものを指すが、ここで、「ヘテロ原子又はヘテロ原子基」としては、窒素原子(N)、酸素原子(O)、硫黄原子(S)、リン原子(P)、ホウ素原子(B)、=O、=S、-O-N=、-C(=O)O-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)-、及び任意選択で置換されている-NH-、-S(=O)(=NH)-、-C(=O)NH-、-C(=NH)-、-S(=O)NH-、S(=O)NH-、-NHC(=O)NH-などがあるが、これらに限定されない。用語「3~10員ヘテロシクリル」は、3、4、5、6、7、8、9、又は10の数の環原子を含むヘテロシクリル基であって、環原子が、上述のヘテロ原子又はヘテロ原子基から独立して選択される1~5個のヘテロ原子又はヘテロ原子基を含むヘテロシクリル基を意味する。詳細には、3員ヘテロシクリルの例としては、エポキシプロピル又はアザシクロプロピルがあるがこれらに限定されない。4員ヘテロシクリルの例としては、アゼチジニル、オキセタニルがあるがこれらに限定されない。5員ヘテロシクリルの例としては、テトラヒドロフラニル、ジオキソリル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、4,5-ジヒドロオキサゾール、又は2,5-ジヒドロ-1H-ピロリルがあるがこれらに限定されない。6員ヘテロシクリルの例としては、テトラヒドロピラニル、ピペリジル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、トリチアニル、テトラヒドロピリジル、又は4H-[1,3,4]チアジアジニルがあるがこれらに限定されない。7員ヘテロシクリルの例としては、ジアゼパニルがあるがこれに限定されない。ヘテロシクリルは二環式基でもよく、具体的には、5,5員二環式基の例としては、ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-イルがあるがこれに限定されず、5,6員二環式基の例としては、ヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2(1H)-イル、5,6,7,8-テトラヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジニル又は5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,5-a]ピラジニルがあるがこれらに限定されない。任意選択で、ヘテロシクリルは上述の4~7員ヘテロシクリルのベンゾ縮合環基でもよく、例としては、ジヒドロイソキノリニルなどがあるがこれに限定されない。任意選択で、3~10員ヘテロシクリルは「3~10員ヘテロシクロアルキル」であり得て、「3~10員のヘテロシクロアルキル」は、「3~7員ヘテロシクロアルキル」又は「5~6員ヘテロシクロアルキル」などの範囲をさらに含み得る。本願の二環式ヘテロシクリル基の一部は、部分的に1つのベンゼン環又は1つのヘテロ芳香族環を含むが、ヘテロシクリル基はそれでも全体としては非芳香族である。
【0138】
用語「3~10員ヘテロシクリルオキシ」とは、「3~10員ヘテロシクリル-O-」を指す。
【0139】
用語「治療」とは、疾患又は疾患と関連する1つ以上の症状を予防する、改善する、又は無くすための本願の化合物又は調製物の投与を指し、
(i)特に、哺乳動物が病態になりやすいが、その病態であると診断されていない場合の哺乳動物における疾患又は病態の発生の予防、
(ii)疾患又は病態の阻害、すなわちそれらの発生を抑制すること、
(iii)疾患又は病態の軽減、すなわち疾患又は病態の消散
を含む。
【0140】
用語「治療上有効な量」とは、(i)特定の疾患、病態、若しくは障害を治療若しくは予防する、(ii)特定の疾患、病態、若しくは障害の1つ以上の症状を弱め、改善し、若しくは無くす、又は(iii)本明細書に記載される特定の疾患、病態、若しくは障害の1つ以上の症状の発症を予防若しくは遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。「治療上有効な量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、病態及びそれらの重症度、投与の方法、並びに治療される哺乳動物の年齢により変わるであろうが、当業者により、彼ら自身の知識及び本開示に従って規定通りに決定され得る。
【0141】
用語「補助剤」は、薬学的に許容できる不活性な成分を指す。用語「賦形剤」の種類の例としては、非限定的に、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、安定剤、充填剤、希釈剤などがある。賦形剤は、医薬調製物の操作特性を改善でき、すなわち、流動性及び/又は粘着性を増加させることにより、調製物を、直接打錠により好適にすることができる。上述の調製物での使用に好適な典型的な「薬学的に許容できる担体」の例は、炭水化物、デンプン、セルロース及びその誘導体があり、それらは、医薬調製物に通常使用される補助剤である。
【0142】
用語「薬学的に許容できる補助剤」は、生物への著しい刺激作用を有さず、活性化合物の生物活性及び性質を損なわない補助剤を指す。好適な補助剤は当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は水膨張性ポリマー、親水性又は疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などである。
【0143】
言葉「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」などのその変形体は、開放的で非排他的な意味、すなわち「含むがこれらに限定されない」と理解されるものとする。
【0144】
本発明の化合物は、以下に列記される具体的な実施形態、他の化学合成方法との組合せにより形成される実施形態、及び当業者に周知である同等な代わりの実施形態を含む、当業者に周知である種々の合成方法により調製でき、好ましい実施形態としては、本発明の実施例があるがこれに限定されない。
【0145】
本願は、本明細書に列挙されるものに同一であるが、1つ以上の原子が、通常天然にみられる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子に置き換えられている本願の同位体標識された化合物も含む。本願の化合物に組み込むことができる同位元素の例としては、それぞれ、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、123I、125I、及び36Clなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素、及び塩素の同位元素がある。
【0146】
本願の特定の同位体標識された化合物(例えば、H及び14Cにより標識されたもの)は、化合物及び/又は基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化された(すなわちH)及び炭素-14(すなわち14C)同位元素は、それらの調製の容易さ及び検出性のために特に好ましい。15O、13N、11C、及び18Fなどの陽電子放出同位元素は、基質占有率を調査する陽電子放出断層撮影(PET)試験に有用である。本願の同位体標識された化合物は、一般的に、同位体標識されていない試薬を同位体標識された試薬に替えることにより、以下のスキーム及び/又は実施例に開示されるものに類似な以下の手順に従って調製できる。
【0147】
さらに、より重い同位元素(重水素、すなわちHなど)による置換は、より大きい代謝安定性から生じる特定の治療的利益、例えば、増加したインビボ半減期又は減少した投与要件を与え得て、そのためいくつかの状況で好ましくなり得るが、重水素置換は部分的でも完全でもよく、部分的な重水素置換は、少なくとも1つの水素が少なくとも1つの重水素により置換されていることを意味する。
【0148】
本願の医薬組成物は、本願の化合物を、適切な薬学的に許容できる補助剤と組み合わせることにより調製され得る。例えば、本願の医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、乳剤、懸濁剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、ミクロスフェア、及びエアゾール剤など、固体、半固体、液体、又は気体状調製物に製剤され得る。
【0149】
本願による化合物若しくはその薬学的に許容できる塩又はその医薬組成物の典型的投与経路としては、経口投与、直腸投与、外用投与、吸入による投与、非経口投与、舌下投与、膣内投与、鼻腔内投与、眼内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び静脈内投与があるが、これらに限定されない。
【0150】
本願の医薬組成物は、従来の混合方法、溶解方法、造粒方法、糖衣錠製造方法、粉砕方法、乳化方法、及び凍結乾燥方法など、当技術分野において周知である方法を利用して製造できる。
【0151】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は経口形態である。経口投与のために、医薬組成物は、活性化合物を、当技術分野に周知である薬学的に許容できる補助剤と混合することにより製剤され得る。そのような補助剤により、本願の化合物が、患者への経口投与のために、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、懸濁剤などに製剤されることが可能になる。
【0152】
固体経口組成物は、従来の混合、充填、又は錠剤形成方法により調製され得る。例えば、それは、活性化合物を固体補助剤と混合し、生じた混合物を任意選択で粉砕し、必要な場合他の好適な補助剤を加え、混合物を顆粒剤に加工して、錠剤又は糖衣錠剤のコアを得ることにより得ることができる。好適な補助剤としては、結合剤、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、甘味剤、又は着香剤などがあるが、これらに限定されない。
【0153】
医薬組成物は、好適な単位用量形態の滅菌された液剤、懸濁剤、又は凍結乾燥製品など、非経口投与にも好適であり得る。
【0154】
本明細書に記載される全ての投与方法での一般式Iの化合物の連日投与量(daily administration dose)は、単回投与又は分割投与の形態で、0.01mg/kg体重~100mg/kg体重、好ましくは0.05mg/kg体重~50mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg体重~30mg/kg体重である。
【0155】
本発明の具体的な実施形態に記載される化学反応は、好適な溶媒中で完了するが、溶媒は、本発明の化学変化並びにそれにより要求される試薬及び材料に好適でなくてはならない。本発明の化合物を得るために、場合によって、当業者は、既存の実施形態に基づいて合成工程又は反応スキームを改変又は選択する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0156】
図1】化合物3のNOESYスペクトルである。
図2】試験例9のMCF-7皮下腫瘍モデルの腫瘍成長曲線略図である。
図3】試験例9の動物でのMCF-7皮下腫瘍モデルの体重変化略図である。
図4】試験例10のマウスでのMCF-7頭蓋内モデルの生存曲線略図である。
図5】試験例10のマウスでのMCF-7頭蓋内モデルの体重変化略図である。
【発明を実施するための形態】
【0157】
本発明の技術的解決法が、以下の実施例により詳細に説明されるが、本発明の保護の範囲はこれらを含むがこれらに限定されない。
【0158】
化合物の構造は、核磁気共鳴(NMR)及び/又は質量分析法(MS)により決定される。NMRシフトは、10-6(ppm)で計算される。NMR分析の溶媒は、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化クロロホルム、重水素化メタノールなどであり、内部標準はテトラメチルシラン(TMS)である。「IC50」は半数阻害濃度を指し、最大阻害効果の半分が達成される濃度である。
【実施例
【0159】
実施例1:N-(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物1)の合成
【0160】
【化33】
【0161】
合成方法:
【0162】
【化34】
【0163】
工程1:tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマートの合成
【0164】
【化35】
【0165】
tert-ブチルピロリジン-3-イルカルバマート(1.00g、5.37mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液(5mol・L-1、2.15mL)及び1-ヨード-3-フルオロプロパン(1.06g、5.64mmol)を加えた。反応溶液を25℃で16時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後、反応溶液を酢酸エチルにより希釈し、次いで飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、水相及び有機相を別々に回収した。水相を酢酸エチル(50mL)で3回抽出し、次いで有機相を全て合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を減圧下で濃縮乾固し、次いでカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール=100/1)により精製すると、生成物tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(0.81g)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.57(t,J=5.77Hz,1H),4.45(t,J=5.77Hz,1H),4.11(br d,J=7.78Hz,1H),3.05-2.97(m,1H),2.93-2.81(m,1H),2.80-2.69(m,3H),2.66-2.56(m,1H),2.30-2.20(m,1H),2.04-1.87(m,2H),1.78-1.68(m,1H),1.51-1.38(m,9H).
【0166】
工程2:1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩の合成
【0167】
【化36】
【0168】
tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(0.81g、3.12mmol)を1,4-ジオキサン(9mL)に溶解させ、次いで塩化水素酸-1,4-ジオキサン溶液(4moL・L-1、9mL)を加え、混合物を反応させると、黄色の透明な溶液を得た。反応溶液を25℃で3時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後に、反応溶液を減圧下で濃縮乾固すると、化合物1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(0.71g)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.68(t,J=5.52Hz,1H),4.56(s,1H),4.30-3.79(m,3H),3.68(s,1H),3.48(br s,2H),3.31-3.21(m,1H),2.82-2.46(m,1H),2.32-2.14(m,3H).
【0169】
工程3:(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)プロパン-2-アミンの合成
【0170】
【化37】
【0171】
(2R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミン(600mg、3.44mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(445.05mg、3.44mmol)を1,4-ジオキサン(10mL)に溶解させ、1,4-ジオキサン(5mL)に溶解させたトリフルオロメタンスルホン酸トリフルオロエチル(1.20g、5.17mmol)を25℃で加え、反応溶液を75℃で16時間撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮乾固した。次いで、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=3/1)により精製すると、生成物(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)プロパン-2-アミン(0.69g)を得た。
MS m/z(ESI):257.2[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.56-7.54(d,J=8.0Hz,1H),7.36-7.34(d,J=8.0Hz,1H),7.12-7.08(m,2H),7.03-7.00(m,1H),3.26-3.23(m,2H),3.12-3.10(m,1H),2.93-2.88(m,1H),2.80-2.78(m,1H),1.11(d,J=6.0Hz,3H)
【0172】
工程4:(1S,3R)-1-(5-ブロモピリジン-2-イル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドールの合成
【0173】
【化38】
【0174】
(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)プロパン-2-アミン(120.00mg、468.26μmol)をトルエン(2mL)に溶解させ、5-ブロモ-ピリジン-2-ホルムアルデヒド(87.10mg、468.26μmol)及び酢酸(562.40mg、9.37mmol)を加えると、反応溶液は黄色の透明溶液であった。反応溶液を90℃で10時間撹拌した。LCMSにより検出して反応の完了後、反応溶液を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固し、薄層クロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=4/1)により精製すると、(1S,3R)-1-(5-ブロモピリジン-2-イル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(110.00mg)を得た。
MS m/z(ESI):424.1,426.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 8.59(s,1H),8.01-7.94(m,1H),7.54(d,J=8.53Hz,1H),7.46(d,J=7.78Hz,1H),7.30(d,J=8.03Hz,1H),7.08(d,J=7.59Hz,1H),7.03-6.96(m,1H),5.08(s,1H),3.58-3.46(m,1H),3.38-3.34(m,1H),3.13-2.99-(m,1H),2.80(d,J=4.52Hz,1H),2.70-2.61(m,1H),1.26(d,J=6.78Hz,3H).
【0175】
工程5:N-(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミンの合成
【0176】
【化39】
【0177】
(1S,3R)-1-(5-ブロモピリジン-2-イル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(110.00mg、259.28μmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解させ、1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(68.18mg、311.13μmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(149.50mg、1.56mmol)、及びメタンスルホン酸(2-ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシル-2,4,6-トリイソプロピル-1,1-ビフェニル)(2-アミノ-1,1-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)(23.50mg、25.93μmol)を加えると、反応溶液は窒素雰囲気下で茶色の濁った溶液であった。反応溶液を80℃で4時間撹拌した。LCMSにより検出して反応の完了後、反応溶液を室温に冷却し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、分取液体クロマトグラフィー(Phenomenex Gemini C18カラム、3μmシリカ、直径30mm、長さ75mm)、(溶離液として、水(0.225%ギ酸を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、化合物N-(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(22.23mg)を得た。
MS m/z(ESI):490.2[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.88(d,J=2.76Hz,1H),7.46(d,J=7.78Hz,1H),7.25(dd,J=7.91,3.89Hz,2H),7.09-6.96(m,3H),4.97(s,1H),4.60(t,J=5.65Hz,1H),4.48(t,J=5.65Hz,1H),4.15(br s,1H),3.52-3.36(m,3H),3.25-3.14(m,1H),3.09-2.88(m,6H),2.68(s,1H),2.51-2.39(m,1H),2.11-1.85(m,3H),1.20(d,J=6.53Hz,3H).
【0178】
実施例2:N-((R)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物2)の合成及び実施例3:N-((S)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物3)の合成
【0179】
【化40】
【0180】
ラセミ体N-(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(80.00mg、153.61μmol)を、キラル分離(DAICEL CHIRALPAK AY-Hカラム、5μmシリカ、直径30mm、長さ250mm、溶離液として、イソプロパノール(0.1%アンモニア水を含む)と水の極性が漸減する混合物を使用する)に付し、分取液体クロマトグラフィー(Phenomenex Gemini C18カラム、3μmシリカ、直径30mm、長さ75mm、溶離液として、水(0.05%アンモニア水を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、N-((R)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(8.22mg、2.627分の保持時間)及びN-((S)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(10.85mg、2.817分の保持時間)を得た。
【0181】
N-((R)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物2):
MS m/z(ESI):490.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.89(d,J=2.76Hz,1H),7.48-7.44(m,1H),7.29-7.24(m,2H),7.09-7.04(m,2H),7.00(s,1H),4.98(s,1H),4.64-4.60(m,1H),4.52-4.48(m,1H),4.25-4.16(m,1H),3.54-3.36(m,4H),3.25-3.09(m,4H),3.05(s,1H),2.89(d,J=4.52Hz,1H),2.70-2.60(m,1H),2.55-2.42(m,1H),2.16-1.94(m,3H),1.20(d,J=6.78Hz,3H).
【0182】
N-((S)(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物3):
MS m/z(ESI):489.25,490.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.90-7.88(m,1H),7.48-7.43(m,1H),7.29-7.23(m,2H),7.09-7.03(m,2H),7.03-6.97(m,1H),4.99-4.97(m,1H),4.63-4.59(m,1H),4.52-4.47-(m,1H),4.24-4.16(m,1H),3.52-3.36(m,4H),3.15(br s,4H),3.05-2.99(m,1H),2.96-2.88(m,1H),2.68(s,1H),2.57-2.43(m,1H),2.12-1.94(m,3H),1.20(d,J=6.53Hz,3H).
【0183】
N-((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(化合物3)は、以下の合成方法によっても得ることができる。
【0184】
【化41】
【0185】
工程1:(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマートの合成
【0186】
【化42】
【0187】
(S)-tert-ブチルピロリジン-3-イルカルバマート(500.00mg、2.68mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液(5mol・L-1、1.07mL)及び1-ヨード-3-フルオロプロパン(529.88mg、2.82mmol)を加えた。反応溶液を25℃で16時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後に、反応溶液を酢酸エチル(50mL)により希釈し、次いで飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)で洗浄し、水相及び有機相を別々に回収した。水相を酢酸エチル(20mL)で3回抽出し、次いで全ての有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を減圧下で濃縮乾固し、次いでカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール=100/1)により精製すると、生成物(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(480.00mg)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.58-4.53(m,1H),4.46-4.40(m,1H),4.14-4.04(m,1H),2.93-2.85(m,1H),2.77-2.67(m,1H),2.61(dd,J=7.78,5.52Hz,3H),2.47-2.40(m,1H),2.29-2.17(m,1H),1.99-1.82(m,2H),1.71-1.61(m,1H),1.45(s,9H).
【0188】
工程2:(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩の合成
【0189】
【化43】
【0190】
(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(480.00mg、1.93mmol)を1,4-ジオキサン(3mL)に溶解させ、次いで、塩化水素酸-1,4-ジオキサン溶液(4moL・L-1、4.94mL)を加えると、反応溶液は黄色の透明溶液であった。反応溶液を25℃で3時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後に、反応溶液を減圧下で濃縮すると、化合物(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(450.00mg)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 8.80-8.42(m,3H),4.62(s,1H),4.51(s,1H),4.12-3.45(m,3H),3.17(br s,3H),2.35-1.99(m,4H).
【0191】
工程3:N-((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミンの合成
【0192】
【化44】
【0193】
(1S,3R)-1-(5-ブロモピリジン-2-イル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(140.00mg、263.99μmol)をテトラヒドロフラン(3mL)に溶解させ、(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(86.77mg、316.79μmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(152.22mg、1.58mmol)、及びメタンスルホン酸(2-ジシクロヘキシルホスフィノ)-3,6-ジメトキシル-2,4,6-トリイソプロピル-1,1-ビフェニル)(2-アミノ-1,1-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)(23.93mg、26.40μmol)を加えて、反応溶液を、80℃で、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。LCMSにより検出して反応の完了後、反応溶液を室温に冷却し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、分取液体クロマトグラフィー(Phenomenex Gemini C18カラム、3μmシリカ、直径30mm、長さ75mm)、(溶離液として、水(0.225%ギ酸を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、化合物N-((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)-6-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)ピリジン-3-アミン(37.79mg)を得た。
MS m/z(ESI):365.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.89(d,J=2.76Hz,1H),7.46(d,J=7.78Hz,1H),7.25(d,J=8.53Hz,2H),7.09-7.03(m,2H),7.02-6.97(m,1H),4.98(s,1H),4.60(t,J=5.65Hz,1H),4.49(t,J=5.65Hz,1H),4.18(br s,1H),3.51-3.35(m,4H),3.14-2.99(m,5H),2.92(dd,J=15.18,4.89Hz,1H),2.65(dd,J=16.06,6.78Hz,1H),2.53-2.42(m,1H),2.12-1.92(m,3H),1.20(d,J=6.78Hz,3H).
【0194】
化合物3の絶対配置の特定
2D NMRによる特定:
【0195】
【化45】
【0196】
NOESYスペクトル(図1)は、化合物3の3位のメチル水素が、1位の水素と明らかなNOE効果を有することを示し、それにより、2つが同じ側にあることが証明され、6員ピペリジン環上の1位のピリジルと3位のメチルがトランスであり、3位の炭素原子の絶対配置がRであると知られているので、1位の炭素原子の絶対配置はSである。
【0197】
実施例4:(S)-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(化合物4)の合成
【0198】
【化46】
【0199】
合成方法:
【0200】
【化47】
【0201】
工程1:(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマートの合成
【0202】
【化48】
【0203】
(S)-tert-ブチルピロリジン-3-イルカルバマート(500.00mg、2.68mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液(5mol・L-1、1.07mL)及び1-ヨード-3-フルオロプロパン(529.88mg、2.82mmol)を加えた。反応溶液を25℃で16時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後に、反応溶液を酢酸エチル(50mL)により希釈し、次いで飽和塩化アンモニウム溶液(10mL)で洗浄し、水相及び有機相を別々に回収した。水相を酢酸エチル(20mL)で3回抽出し、次いで全ての有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を減圧下で濃縮乾固し、次いでカラムクロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン/メタノール=100/1)により精製すると、生成物(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(480.00mg)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.58-4.53(m,1H),4.46-4.40(m,1H),4.14-4.04(m,1H),2.93-2.85(m,1H),2.77-2.67(m,1H),2.61(dd,J=7.78,5.52Hz,3H),2.47-2.40(m,1H),2.29-2.17(m,1H),1.99-1.82(m,2H),1.71-1.61(m,1H),1.45(s,9H).
【0204】
工程2:(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩の合成
【0205】
【化49】
【0206】
(S)-tert-ブチル(1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(480.00mg、1.93mmol)を1,4-ジオキサン(3mL)に溶解させ、次いで、塩化水素酸-1,4-ジオキサン溶液(4moL・L-1、4.94mL)を加えると、反応溶液は黄色の透明溶液であった。反応溶液を25℃で3時間撹拌した。TLCにより検出して原料の反応の完了後に、反応溶液を減圧下で濃縮すると、化合物(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(450.00mg)を得た。
H NMR(400MHz,DMSO-d)δ 8.80-8.42(m,3H),4.62(s,1H),4.51(s,1H),4.12-3.45(m,3H),3.17(br s,3H),2.35-1.99(m,4H).
【0207】
工程3:(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドールの合成
【0208】
【化50】
【0209】
(R)-1-(1H-インドール-3-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)プロパン-2-アミン(890mg、3.47mmol)及び4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンズアルデヒド(844.27mg、3.82mmol)をトルエン(10mL)及び酢酸(2mL)に溶解させ、反応溶液を90℃で6時間撹拌した。反応溶液を減圧下で濃縮乾固した。次いで、反応溶液を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=20/1)により精製すると、生成物(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(850mg)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.45-7.43(d,J=7.60Hz,1H),7.24-7.20(m,3H),7.05-6.99(m,2H),5.36(s,1H),3.57-3.54(m,1H),3.46-3.40(m,1H),3.01-2.95(m,2H),2.70-2.65(m,1H),1.20(d,J=6.4Hz,3H).
【0210】
工程4:(S)-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミンの合成
【0211】
【化51】
【0212】
(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジル[3,4-b]インドール(80.00mg、174.20μmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解させ、(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(38.20mg、209.04μmol)及びナトリウムtert-ブトキシド(100.45mg、1.05mmol)を加え、混合物を均一に撹拌し、次いで、トリス(ジベンザルアセトン)ジパラジウム(31.90mg、34.84μmol)及び(±)-2,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)-11-ビナフチル(54.23mg、87.10μmol)を窒素雰囲気下で加えた。反応溶液を、80℃で4時間撹拌して反応させた。LCMSにより検出して原料の反応の完了後、反応溶液を濾過し、次いで、フィルターケーキをテトラヒドロフランによりすすぎ、濾液を減圧下で濃縮乾固し、分取液体クロマトグラフィー(Phenomenex Gemini C18カラム、7μmシリカ、直径50mm、長さ250mm、溶離液として、水(0.225%ギ酸を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、化合物(S)-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(4.69mg)を得た。
MS m/z(ESI):525.2[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 8.49(s,1H),7.42(d,J=7.3Hz,1H),7.21(d,J=7.8Hz,1H),7.08-6.94(m,2H),6.19(d,J=11.5Hz,2H),5.24(s,1H),4.60(t,J=5.6Hz,1H),4.48(t,J=5.6Hz,1H),4.11(br s,1H),3.62-3.53(m,1H),3.21(br s,1H),3.09-2.94(m,6H),2.63(dd,J=15.3,4.3Hz,1H),2.51-2.38(m,1H),2.12-1.99(m,2H),1.96-1.85(m,1H),1.39-1.29(m,2H),1.19(d,J=6.5Hz,3H).
【0213】
実施例5:トランス-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(化合物5)の合成
【0214】
【化52】
【0215】
合成方法:
【0216】
【化53】
【0217】
工程1:tert-ブチル(トランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマートの合成
【0218】
【化54】
【0219】
1-フルオロ-3-ヨードプロパン(151.86mg、807.87μmol)及びtert-ブチル(トランス-4-フルオロピロリジン-3-イル)カルバマート(150mg、734.43μmol)をアセトニトリル(4mL)に溶解させ、炭酸カリウム(203.00mg、1.47mmol)を25℃で加え、反応溶液を60℃で13時間撹拌した。反応溶液を25℃に冷却し、濾過し、減圧下で濃縮乾固した。次いで、粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/メタノール=10/1)により精製すると、生成物tert-ブチル(トランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(0.15g)を得た。
MS m/z(ESI):265.0[M+H]
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 4.87(br s,1H),4.59(t,J=5.9Hz,1H),4.48(t,J=5.9Hz,1H),4.16(br s,1H),3.29-3.05(m,1H),3.01-2.87(m,1H),2.78-2.41(m,4H),2.02-1.81(m,2H),1.48(s,9H).
【0220】
工程2:トランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩の合成
【0221】
【化55】
【0222】
tert-ブチル((トランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)カルバマート(150mg、567.51μmol)を1,4-ジオキサン(2mL)に溶解させ、4Mジオキサン塩酸(2.13mL)を加え、反応溶液を、25℃で13時間撹拌して反応させた。反応溶液を濃縮すると、生成物トランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(0.12g)を得た。
MS m/z(ESI):165.2[M+H]
【0223】
工程3:トランス-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミンの合成
【0224】
【化56】
【0225】
(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(140mg、304.84μmol)及びトランス-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(86.74mg、365.81μmol)を3級ペンタノール(5mL)に溶解させ、メタンスルホン酸(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシル-2,4,6-トリイソプロピル-1,1-ビフェニル)(2-アミノ-1,1-ビフェニル-2-イル)パラジウム(II)(25.50mg、30.48μmol)及び炭酸セシウム(595.95mg、1.83mmol)を加えた。窒素により3回置換(replaced)した後に、反応溶液を120℃で13時間撹拌した。反応溶液を室温に冷却し、水(10mL)に注ぎ、溶液を10分間撹拌し、2回酢酸エチル(20mL)で抽出し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固した。次いで、粗生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=2/1)及び分取液体クロマトグラフィー(PhenomenexGemini-NXカラム、3μmシリカ、直径30mm、長さ75mm、溶離液として、水(0.05%アンモニア水を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、生成物トランス-N-(3,5-ジフルオロ-4-((1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)フェニル)-4-フルオロ-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(27.5mg)を得た。
MS m/z(ESI):543.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.42(d,J=7.5Hz,1H),7.22(d,J=7.5Hz,1H),7.09-6.93(m,2H),6.30-6.16(m,2H),5.25(s,1H),4.58(t,J=5.8Hz,1H),4.46(t,J=5.8Hz,1H),4.11-3.87(m,1H),3.67-3.53(m,1H),3.43-3.34(m,3H),3.19-2.92(m,3H),2.81-2.55(m,4H),2.29(dd,J=6.9,9.7Hz,1H),2.02-1.83(m,2H),1.19(d,J=6.4Hz,3H).
【0226】
実施例6:トランス-N-[3,5-ジフルオロ-4-[(1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3,4,9-テトラヒドロピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミン(化合物6)の合成
【0227】
【化57】
【0228】
合成方法:
【0229】
【化58】
【0230】
工程1:tert-ブチルN-[トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-イル]カルバマートの合成
【0231】
【化59】
【0232】
tert-ブチルN-[トランス-4-メチルピロリジン-3-イル]カルバマート(80mg、399.45μmol)及び炭酸カリウム(110.41mg、798.89μmol)をアセトニトリル(8mL)に溶解させ、次いで、1-フルオロ-3-ヨード-プロパン(90.11mg、479.34μmol)を加え、反応溶液を50℃に加熱し、16時間撹拌した。反応の完了をLCMSによりモニターした。反応溶液を濾過し、濾液を濃縮乾固し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル/メタノール=5/1)により精製すると、化合物tert-ブチルN-[トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-イル]カルバマート(85mg)を得た。
MS m/z(ESI):261.1[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.66(br d,J=2.4Hz,1H),4.61-4.42(m,2H),4.05-3.93(m,1H),3.71-3.56(m,2H),3.17(br d,J=9.4Hz,1H),2.90(br s,2H),2.54(br s,1H),2.19(br d,J=5.2Hz,2H),2.07-1.89(m,1H),1.47(s,9H),1.24-1.11(m,3H).
【0233】
工程2:トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミン塩酸塩の合成
【0234】
【化60】
【0235】
tert-ブチルN-[トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-イル]カルバマート(80mg、307.28μmol)をジオキサン(2mL)に溶解させ、次いで、4Mジオキサン塩酸(1.54mL)を加え、反応溶液を室温で一晩撹拌した。反応溶液を濃縮乾固すると、化合物トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミン塩酸塩(70mg)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 4.73-4.64(m,1H),4.61-4.50(m,1H),4.23-4.06(m,1H),4.02-3.63(m,5H),3.54-3.42(m,1H),3.01-2.58(m,1H),2.32-2.12(m,2H),1.37-1.27(m,3H).
【0236】
工程3:トランス-N-[3,5-ジフルオロ-4-[(1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3,4,9-テトラヒドロピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミンの合成
【0237】
【化61】
【0238】
トランス-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミン塩酸塩(30mg、128.67μmol)、(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロ-フェニル)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3,4,9-テトラヒドロピリジノ[3,4-b]インドール(76.82mg、167.27μmol)及び炭酸セシウム(167.69mg、514.68μmol)をジオキサン(8mL)に溶解させ、次いで、tBuBrettphos-Pd-G3(5.50mg、6.43μmol)を加えた。反応溶液を窒素により3回置換し、次いで、120℃に加熱し、一晩撹拌した。反応の完了をLCMSによりモニターした。メタノール(15mL)を反応溶液に加え、混合物を濾過し、濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=2/1)及び分取液体クロマトグラフィー(Phenomenex Synergi C18カラム、4μmシリカ、直径30mm、長さ150mm、溶離液として、水(0.225%ギ酸を含む)とアセトニトリルの極性が漸減する混合物を使用する)により精製すると、化合物トランス-N-[3,5-ジフルオロ-4-[(1S,3R)-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3,4,9-テトラヒドロピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル]フェニル]-1-(3-フルオロプロピル)-4-メチル-ピロリジン-3-アミン(1.35mg)を得た。
MS m/z(ESI):539.3[M+H]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.42(d,J=7.6Hz,1H),7.21(d,J=8.8Hz,1H),7.08-6.86(m,2H),6.21(d,J=11.6Hz,2H),5.24(s,1H),4.62-4.58(m,1H),4.52-4.45(m,1H),3.73-3.65(m,1H),3.62-3.47(m,3H),3.23-3.15(m,2H),3.08-2.95(m,2H),2.86-2.54(m,2H),2.41-2.00(m,3H),1.42-1.25(m 2H),1.23(dd,J=3.2,Hz,6.8Hz,3H),1.19(d,J=6.4Hz,3H).
【0239】
実施例7:3-((1S,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-(((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-2(9H)-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オールの合成
【0240】
【化62】
【0241】
合成方法
【0242】
【化63】
【0243】
工程1:3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホナートの合成
【0244】
【化64】
【0245】
3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール(1g、2.85mmol)及び2,6-ジメチルピリジン(366.88mg、3.42mmol)を無水ジクロロメタン(15mL)に溶解させ、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(885.52mg、3.14mmol)を氷水浴中で滴加した。反応溶液を25℃で16時間撹拌した。TLC(シリカ、石油エーテル:酢酸エチル=10:1)によりモニターされた反応の完了後に、反応溶液を、水(10mL)、塩化水素酸(1mol/L、10mL)、及び飽和炭酸ナトリウム溶液(10mL)により連続的に洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた後に、有機相を減圧下で濃縮乾固し、次いでカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=100/15)により精製すると、生成物3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホナート(880.00mg)を得た。
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.66(d,J=7.0Hz,4H),7.50-7.36(m,6H),4.96(t,J=12.2Hz,2H),3.90(t,J=12.0Hz,2H),1.06(s,9H).
【0246】
工程2:(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパ-2-イル)-3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロパン-1-アミンの合成
【0247】
【化65】
【0248】
3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピルトリフルオロメタンスルホナート(822.49mg、1.70mmol)及び(R)-1-(1H-インドール-3-イル)プロパン-2-アミン(270mg、1.55mmol)を1,4-ジオキサン(10mL)に溶解させ、次いで、N-エチル-N-イソプロピルプロパン-2-アミン(600.81mg、4.65mmol)を加えた。反応溶液を、80℃で16時間撹拌して反応させた。反応の完了をLCMSによりモニターし、反応溶液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=100/17)により精製すると、生成物(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパ-2-イル)-3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロパン-1-アミン(662.00mg)を得た。
MS m/z(ESI):507.2[M+H]
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.72-7.63(m,4H),7.61(d,J=7.9Hz,1H),7.49-7.33(m,7H),7.20(dt,J=1.1,7.6Hz,1H),7.14-7.09(m,1H),7.01(d,J=2.3Hz,1H),3.89-3.76(m,2H),3.27-3.05(m,3H),2.94-2.77(m,2H),1.13(d,J=6.3Hz,3H),1.06(s,9H).
【0249】
工程3:(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドールの合成
【0250】
【化66】
【0251】
(R)-N-(1-(1H-インドール-3-イル)プロパ-2-イル)-3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロパン-1-アミン(300mg、592.07μmol)及び4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンズアルデヒド(143.93mg、651.27μmol)をトルエン(5mL)に溶解させ、次いで、酢酸(355.55mg、5.92mmol、338.62uL)を加えた。反応溶液を90℃で16時間撹拌して反応させた。反応の完了をLCMS及びTLC(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)によりモニターし、反応溶液を減圧下で濃縮乾固した。反応濃縮物を酢酸エチル(5mL)により希釈し、次いで、3回ブライン(5mL)で洗浄し、回収した水相を酢酸エチル(10mL)で3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾固し、次いで、薄層クロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=10/1)により精製すると、(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(350.00mg)を得た。
MS m/z(ESI):708.9[M+H]
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ 7.65-7.59(m,4H),7.52(br d,J=6.5Hz,1H),7.44-7.37(m,6H),7.25-7.20(m,1H),7.12(m,J=5.6,7.2Hz,2H),6.95(d,J=8.3Hz,2H),5.28(s,1H),4.01-3.88(m,1H),3.69-3.54(m,2H),3.35-3.20(m,1H),2.98(dd,J=4.6,14.7Hz,1H),2.83-2.69(m,1H),2.60(dd,J=3.8,15.6Hz,1H),1.15(d,J=6.5Hz,3H),1.04(s,9H).
【0252】
工程4:(S)-N-(4-((1S,3R)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)-3,5-ジフルオロフェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミンの合成
【0253】
【化67】
【0254】
(1S,3R)-1-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロフェニル)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール(300.00mg、422.72μmol)及び(S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン塩酸塩(129mg、507.27μmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、次いで、ナトリウムtert-ブトキシド(243.75mg、2.54mol)及び2,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1-ビナフチル(131.61mg、211.36μmol)を加え、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(77.42mg、84.54μmol)を窒素雰囲気下で反応系に加えた。反応溶液を80℃で16時間撹拌して反応させた。LCMSによりモニターされた反応の完了後に、反応溶液を減圧下で濃縮乾固した。反応濃縮物を酢酸エチル(10mL)により希釈し、次いで、水(10mL)で3回洗浄し、回収した水相を酢酸エチル(20mL)で3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾固し、次いで、薄層クロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/テトラヒドロフラン=1/1、1%アンモニア水)により精製すると、(S)-N-(4-((1S,3R)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)-3,5-ジフルオロフェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(54.00mg)を得た。
MS m/z(ESI):400.5[M+H]
【0255】
工程5:3-((1S,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-(((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-2(9H)-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オールの合成
【0256】
【化68】
【0257】
(S)-N-(4-((1S,3R)-2-(3-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジフルオロプロピル)-3-メチル-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-1-イル)-3,5-ジフルオロフェニル)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-アミン(50.00mg、64.52μmol)をテトラヒドロフラン(2mL)に溶解させ、テトラブチルアンモニウムフルオリドテトラヒドロフラン溶液(1mol/L、129.04uL)を加えた。反応溶液を25℃で5時間撹拌して反応させた。反応の完了をTLC(シリカ、ジクロロメタン:メタノール=10:1)によりモニターし、次いで、5mLの水を反応溶液に加えて、溶液を室温で10分間撹拌した。有機相をブライン(5mL)で3回洗浄し、回収した水相を酢酸エチル(10mL)で3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾固し、次いで、薄層クロマトグラフィー(シリカ、ジクロロメタン:メタノール=10:1)により精製すると、化合物3-((1S,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-(((S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-ピリジノ[3,4-b]インドール-2(9H)-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オール(32.00mg)を得た。
MS m/z(ESI):559.1[M+Na]
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ 7.38(d,J=7.3Hz,1H),7.18(d,J=7.5Hz,1H),7.02-6.91(m,2H),6.14(d,J=11.8Hz,2H),5.15(s,1H),4.53(t,J=5.8Hz,1H),4.42(t,J=5.6Hz,1H),3.99-3.91(m,1H),3.86-3.72(m,1H),3.66-3.57(m,1H),3.52-3.39(m,1H),3.20-3.08(m,1H),3.00-2.91(m,2H),2.84-2.73(m,2H),2.70-2.51(m,5H),2.37-2.26(m,1H),1.98-1.83(m,2H),1.76-1.65(m,1H),1.14(d,J=6.5Hz,3H).
【0258】
生物学的活性及び関連性質の試験
試験例1:MCF7細胞中のエストロゲン受容体に対する本発明の化合物の分解効果の検出
1.実験目的
実験の目的は、MCF7細胞中の内因性発現したエストロゲン受容体に対する本発明の化合物の分解活性を測定すること並びに化合物の活性をDC50及び最大分解効率(maximum degradation efficiency)に従って評価することである。
【0259】
2.実験方法
MCF7細胞(ATCC、HTB-22)を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM(Gibco、11995-065)完全培地中で培養した。実験の第1日に、MCF7細胞を、384ウェルプレート中に3000細胞/ウェルの密度で完全培地を使用して植菌し、37℃の5%CO細胞インキュベーター内で培養した。試験すべき化合物をDMSOに10mMのストック濃度で溶解させ、溶液をEcho 550(Labcyte Inc.)により希釈し、細胞培養プレートに加えた。100nMの処理のための出発濃度を有する各化合物を、9つの濃度点を有する3倍勾配希釈に付した。0.5%DMSOを含むブランク対照を設定し、対照として二重の反復実験ウェルを各濃度点で設定した。培養物を、37℃の5%CO細胞インキュベーター内で24時間培養した。パラホルムアルデヒドを各細胞培養ウェル中の細胞培地に加え、パラホルムアルデヒドの最終濃度は細胞を固定化するために約3.7%であった。混合物を30分間反応させた後、上清を廃棄し、50μLのPBSを、1回洗浄するために各ウェルに加えた。細胞を、0.5%v/v Tween-20を含むPBSにより30分間処理し、PBSで1回洗浄した。ブロッキング溶液(5%BSA、0.05%Tween-20を含むPBS)を加え、混合物を室温で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去し、一次抗体(抗-ER mAb、エストロゲン受容体α(D8H8)ウサギmAb、GST、8644S番、1:1000希釈、抗-GAPDH mAb、GAPDH(D4C6R)マウスmAb、GST、97166S番、1:2000希釈)の混合物溶液を加え、混合物を室温で3時間インキュベートした。培養物をPBST(0.05%Tween-20を含むPBS)で3回洗浄した。検出用の二次抗体(800CW-ヤギ抗-ウサギIgG、LI-COR、P/N:926-32211、1:1000希釈、680RD-ヤギ抗-マウスIgG、LI-COR、925-68070番、1:1000希釈)を加え、混合物を、室温で、暗所で45分間インキュベートした。PBSTで3回洗浄した後、各ウェルの蛍光シグナルを、Odyssey CLxを使用して読み取り、Chanel 800(ER)/Chanel 680(GAPDH)の値を計算した。0.1μMフルベストラントにより処理したウェルを100%分解対照として使用し、各濃度点での分解率を計算した。XlLfitによりデータを分析及び処理し、各化合物の分解活性DC50及び最大分解率Imaxを計算した。データ分析に関して表1を参照されたい。
【0260】
【表1】
【0261】
試験例2:MCF7細胞の増殖に対する本発明の化合物の阻害効果の検出
1.実験目的
実験の目的は、インビトロでMCF7細胞の増殖に対する本発明の化合物の阻害効果を測定すること並びにIC50及び最大阻害効率(maximum inhibitory efficiency)に従って化合物の活性を評価することである。
【0262】
2.実験方法
MCF7細胞(ATCC、HTB-22)を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM(Gibco、11995-065)完全培地中で培養した。実験の第1日に、MCF7細胞を、384ウェルプレート中に500細胞/ウェルの密度で完全培地を使用して植菌し、37℃の5%CO細胞インキュベーター内で一晩培養した。翌日、試験すべき化合物を薬物処理のために加え、10mMのストック濃度を有する化合物溶液をEcho550(Labcyte Inc.)により希釈し、各細胞培養ウェルに移した。細胞中の100nMの処理のための出発濃度を有する各化合物を、9つの濃度点とする3倍勾配希釈に付した。0.3%DMSOを含むブランク対照を設定し、対照としての二重の反復実験ウェルを各濃度点で設定した。培養物を、37℃の5%CO細胞インキュベーター内で7日間培養し、細胞培養プレートを第8日に取り出した。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(Promega、G7573)を加え、室温で10分間静置した後、マルチレベルマイクロプレートリーダーEnVision(PerkinElmer)を使用してルミネセンスシグナル値を読み取り、各化合物の阻害活性IC50を、XLfitを使用して化合物濃度及びルミネセンスシグナル値に従って計算した。
【0263】
3.データ分析に関して表2を参照されたい。
【0264】
【表2】
【0265】
試験例3:CYP2C9及びCYP2D6酵素活性に対する本発明の化合物の阻害効果
本発明の化合物によるCYP2C9及びCYP2D6酵素活性の阻害を、以下の試験方法により測定した。
【0266】
I.試験材料及び装置
1.ヒト肝臓ミクロソーム(Corning 452117)
2.NADPH(Solarbio 705Y021)
3.陽性基質ジクロフェナク(Sigma SLBV3438)、デキストロメトルファン(TRC 3-EDO-175-1)、及びミダゾラム(Cerilliant FE01161704)
4.陽性阻害剤スルファフェナゾール(D.Ehrenstorfer GmbH 109012)、キニジン(TCI WEODL-RE)、及びケトコナゾール(Sigma 100M1091V)
5.AB Sciex Triple Quad 5500液体クロマトグラフィー-質量分析法
【0267】
II.試験工程
1.100mMリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の調製:7.098gのNaHPOを秤量し、500mLの純水を加え、超音波溶解に付して、溶液Aを得た。3.400gのKHPOを秤量し、250mLの純水を加え、超音波溶解に付して、溶液Bを得た。溶液Aをスターラー上に配置し、pHが7.4に達するまで溶液Bをゆっくりと加えて、100mM PBS緩衝液を調製した。
【0268】
2.100mM PBS緩衝液による10mM NADPH溶液の調製。本発明の化合物の10mMストック溶液をDMSOにより希釈して、200×濃度の化合物使用溶液(6000、2000、600、200、60、20、0μM)を得た。陽性阻害剤のストック溶液をDMSOにより希釈して、200×濃度の陽性阻害剤使用溶液(スルファフェナゾール、1000、300、100、30、10、3、0μM、キニジン/ケトコナゾール、100、30、10、3、1、0.3、0μM)を得た。200×濃度の基質使用溶液(120μMのジクロフェナク、400μMのデキストロメトルファン、及び200μMのミダゾラム)を、水、アセトニトリル、又はアセトニトリル/メタノール中に調製した。
【0269】
3.2μlの20mg/ml肝臓ミクロソーム溶液、1μlの基質使用溶液、1μlの化合物使用溶液、及び176μlのPBS緩衝液をとり、均一に混合し、37℃の水浴中で15分間プレインキュベートした。陽性対照群に、化合物使用溶液の代わりに、1μlのジクロフェナク、デキストロメトルファン、又はミダゾラム使用溶液を加えた。同時に、10mMのNADPH溶液を、37℃水浴中で15分間共にプレインキュベートした。15分後に、20μlのNADPHを各ウェルに加えて、反応を開始させ、反応物を、37℃で5分間(CYP2C9)又は20分間(CYP2D6)インキュベートした。二重の試料を全インキュベーション試料に設定した。対応する時間のインキュベーションの後に、内部標準を含む400ulの氷メタノール(ice methanol)を全試料に加えることにより、反応を停止させた。混合物をボルテックスにより均一に混合し、3220gで、4℃で、40分間遠心分離した。遠心分離後に、100μLの上清をローディングプレートに移し、LC-MS/MS分析のために、100μLの超純水を加えて均一に混合した。
【0270】
CYP2C9及びCYP2D6に対する本発明の化合物のIC50値を、Excel XLfit 5.3.1.3.により計算した。
【0271】
【表3】
【0272】
試験例4:本発明の化合物の血漿タンパク結合率の測定
ヒト血漿タンパク結合は、標的への結合に利用可能な遊離(非結合)薬物の量を制御する主要な因子であり、薬物の観察されるインビボ効能に重要な役割を果たす。したがって、類似の効力及び曝露レベルを有する化合物の間で、高い遊離分率(低レベルの血漿タンパク結合)を有する化合物は、増大した効能を示し得る。
【0273】
5つの種(ヒト、サル、イヌ、ラット、及びマウス)の血漿中の本発明の化合物のタンパク結合率を、以下の試験方法により測定した。
【0274】
I.試験材料及び装置
1.ヒト血漿(BioIVT)、ビーグル犬血漿(BioIVT)、SDラット血漿(BioIVT)、CD-1マウス血漿(BioIVT)、
2.96ウェル平衡透析プレート(HTDialysis LLC、Gales Ferry、CT、HTD96B)、平衡透析膜(MWCO 12-14K、1101番)、
3.陽性対照化合物ワルファリン、
4.ABI QTrap 5500液体クロマトグラフィー-質量分析法。
【0275】
II.試験工程
1.100mMリン酸ナトリウム及び150mM NaClの濃度を有する緩衝液の調製:14.2g/L NaHPO及び8.77g/L NaClの濃度を有するアルカリ性溶液を超純水により調製し、12.0g/L NaHPO及び8.77g/L NaClを有する酸性溶液を超純水により調製した。アルカリ性溶液を酸性溶液によりpH7.4まで滴定し、100mMリン酸ナトリウム及び150mM NaClの濃度を有する緩衝液を調製した。
2.透析膜の調製:透析膜を超純水に60分間浸漬して、膜を2片に分離し、次いで20%エタノール中に20分間浸漬して、最終的に透析に使用される緩衝液に20分間浸漬した。
3.血漿の調製:凍結血漿を、室温で急速に解凍し、次いで血漿を3,220gで4℃で10分間遠心分離して血餅を除き、上清を新たな遠心分離管に回収した。血漿のpHを測定し、記録して、7~8のpHを有する血漿を使用した。
3.化合物含有血漿試料の調製:本発明の化合物又は陽性対照化合物の10mMストック溶液をDMSOにより希釈して、200μM使用溶液を得た。597μlのヒト、サル、イヌ、ラット、又はマウス血漿に、3μlの200μM化合物使用溶液を加えて、1μMの最終濃度を有する血漿試料を得た。
4.平衡透析工程:透析装置を、操作説明書に従って組み立てた。1μM化合物を含む120μLの血漿試料を透析膜の片側に加え、等体積の透析液(リン酸緩衝液)をその他方の側に加えた。二重の試料を実験のために設定した。透析プレートを密封し、インキュベーション装置に入れ、37℃、5%CO、約100rpmで6時間インキュベートした。インキュベーションの完了後、密封フィルムを除去し、50μlを、各ウェル中のそれぞれ緩衝液側及び血漿側から、新たなプレートの別なウェルにピペットで移した。50μlのブランク血漿をリン酸緩衝液試料に加え、等体積のブランクリン酸緩衝液を血漿試料に加え、次いで、内部標準を含む300μlのアセトニトリルを加えて、タンパク質を沈殿させた。混合物を5分間ボルテックスにかけ、3,220gで、4℃で30分間遠心分離した。100μLの上清をローディングプレートに入れ、LC-MS/MS分析のために、100μLの超純水を加えて均一に混合した。
【0276】
緩衝液側及び血漿側の化合物のピーク面積を測定した。化合物の血漿タンパク結合率を計算する式は下記の通りである:
遊離率%=(内部標準ピーク面積緩衝液側に対する化合物ピーク面積の比/内部標準ピーク面積血漿側に対する化合物ピーク面積の比)×100
結合率%=100-遊離率%
【0277】
全データをMicrosoft Excelソフトウェアにより計算した。本発明の化合物の血漿タンパク結合率値を計算した。
【0278】
【表4】
【0279】
試験例5:pH7.4のリン酸緩衝液への本発明の化合物の見かけの溶解度
経口投与された化合物が作用部位に到達でき、腸により効果的に吸収され得る目的で、化合物は溶解形態にあることが期待され、したがって、高い固有溶解度を有する化合物は医薬的使用により好適であり得る。
【0280】
I.材料及び試薬
試験すべき化合物は、記載された方法に従って調製した。対照薬物プロゲステロンをSigmaから購入した。pH7.4のリン酸緩衝液を発明者らの実験室で調製した。アセトニトリル及びメタノールはFisherから購入した。他の試薬は市場から購入した。
【0281】
1.5ml平底ガラスバイアル(BioTech Solutions)、ポリテトラフルオロエチレン/シリコーンストッパー(BioTech Solutions)、ポリテトラフルオロエチレンコート撹拌棒、MultiScreenHTS HV(0.45μm)96ウェルプレートフィルタープレート(Millipore、MSHVN4510又はMSHVN4550)、Eppendorf Thermomixer Comfort、バキュームマニフォールドORVMN96(Orochem)。
【0282】
II.実験工程
1)ストック溶液の調製
試験すべき物質及び対照薬物プロゲステロンの10mMストック溶液をDMSOにより調製した。
【0283】
2)見かけの溶解度測定の工程
試験すべき物質の10mMストック溶液を30μLとり、対応する96ウェルプレート中の対応する位置に明示された順序で加えた。970μLのリン酸緩衝液(pH7.4)を試料プレート中の対応するバイアルに加えた。実験を、並行して二連で実施した。攪拌棒を各バイアルに加え、ポリテトラフルオロエチレン/シリコーンストッパーをその上にカバーした。次いで、試料トレイをEppendorf Thermomixer Comfort内に配置し、1100rpmで、2時間25℃で振盪した。2時間後、ストッパーを除去し、攪拌棒を大型磁石により吸い出し、次いで試料を試料プレートからフィルタープレートに移した。真空ポンプを使用して陰圧を作り、試料を濾過した。5μLの濾液を新たな試料プレートに移し、次いで5μLのDMSO及び490μLの50%ACN(IS).HO(内部標準アセトニトリル:水=1:1)を加えた。ピーク形状によっては、より良好なピーク形状のために、試料希釈液を特定の比率の50%ACN(IS).HOにより希釈することが可能になり得る。試験すべき物質の溶解度又は液体クロマトグラフィー-質量分析法に対するその反応のシグナル強度に応じて、希釈倍率(dilution fold)を調整できる。
【0284】
3)試料分析の工程
ローディングプレートを、オートサンプラーのローディングトレイに配置し、試料を液体クロマトグラフィー-質量分析法分析により評価した。
【0285】
III.実験工程
計算は全てMicrosoft Excelにより実施した。試料濾液の分析及び定量化は、液体クロマトグラフィー-質量分析法を使用して、既知濃度の標準のピークを特性化及び定量化することにより達成した。リン酸緩衝液(PH7.4)への本発明の化合物の見かけの溶解度を計算した。
【0286】
【表5】
【0287】
試験例6:本発明の化合物が、電位依存性カリウムイオンチャネルhERGに対して潜在的な阻害効果を有するかどうか
hERGカリウムチャネルは、心臓中の正常な電気活性に極めて重要である。不整脈は、種々の薬物によるhERGチャネルの遮断により誘導され得る。そのような副作用は前臨床安全性試験における薬物無効(drug failure)の一般的な原因であり、したがって、hERGチャネル遮断活性の最小化は、薬物候補にとって望ましい性質であり得る。
【0288】
I.材料及び試薬
【0289】
【表6-1】
【0290】
2.細胞株及び培養
hERGイオンチャネルを安定的に発現しているHEK293細胞株(カタログ番号K1236)をInvitrogenから購入した。細胞株を、85%DMEM、10%透析ウシ胎児血清、0.1mM非必須アミノ酸溶液、100U/mLペニシリン-ストレプトマイシン溶液、25mM HEPES、5μg/mLブラストサイジン、及び400μg/mLジェネティシンを含む培地中で培養した。細胞密度が培養皿の底面積の40%~80%に増加すると、トリプシンを消化及び継代のために使用し、細胞を週に3回継代した。実験の前に、細胞を6cm培養皿中で5×10の密度で培養し、1μg/mLドキシサイクリンを48時間加えることにより誘導し、次いで、細胞を消化して、その後の手作業のパッチクランプ実験のためにガラススライド上に植菌した。
【0291】
3.試験すべき化合物の調製
1)SOP-ADMET-MAN-007標準操作手順書に従って、試験すべき化合物をDMSOにより溶解させ、10mMの最終濃度を有するストック溶液に調製した。
2)ストック溶液を、1:3の比でDMSOによる勾配希釈に付して、それぞれ3.33mM、1.11mM、及び0.37mMの3種の他の中間濃度を有する溶液にした。
3)実験の開始前に、試験すべき化合物のストック溶液及び中間溶液を、細胞外液により1000倍希釈して、10μM、3.33μM、1.11μM、及び0.37μMの一連の濃度を有する使用溶液を得た、さらに、10mMのストック溶液を、細胞外液により333.33倍希釈して、30μMの濃度を有する使用溶液を得た。使用溶液中のDMSOの含量は0.1~0.3%(体積比)である。
(備考:使用溶液中のDMSOの含量は、細胞傷害性を避けるために1%(体積比)以内に制御されなければならない。)
4)使用溶液の調製の完了後に、目視観察を実施して、沈殿物又は濁った物質が使用溶液中にあるかどうかを確認した。沈殿物又は濁った物質がある場合、それは、おそらく、生理溶液への化合物の低い溶解度のためであったが、次いで、それを水浴中で30分間超音波処理にさらに付して、溶液の透明性を改善できる。
5)30μM、10μM、3.33μM、1.11μM、及び0.37μMの5つの濃度での、hERGチャネルに対する試験物質の潜在的阻害効果を測定し、用量効果曲線をフィッティングし、IC50を計算した。
【0292】
II.実験方法
1.培養皿中のHEK293細胞を載せた小さなガラススライドを、マイクロマニピュレーターの潅流タンク内に配置した。
2.適切な量の細胞を調整し、Olympus IX51、IX71、又はIX73倒立顕微鏡下で視野の中心に配置し、ガラス電極の先端を、10倍の対物レンズを使用することにより見つけ、視野の中心に配置した。次いで、マイクロマニピュレーターを使用することにより電極を下に動かし、その間、電極がゆっくりと細胞に接近できるように、粗い焦点調整ノブを調整した。
3.細胞に接近する場合、40倍の対物レンズを観察に使用し、電極が徐々に細胞の表面に接近できるように、マイクロマニピュレーターを精密な調整に使用する。
4.陰圧をかけて、電極の先端と細胞膜の間に1GΩより高い抵抗を有するギガシールを形成した。
5.瞬時の容量性電流(capacitive current)Cfastを電圧-クランプモードで補償した。次いで、短い陰圧を繰り返して加えて膜を破裂させ、それにより最終的に全細胞記録モードを形成した。
6.-60mVに固定した膜電位の下で、緩徐な容量性電流Cslow、細胞膜キャパシタンス(Cm)、及び入力膜抵抗(input membrane resistance)(Ra)をそれぞれ補償した。
7.細胞を安定化させた後、クランプ電圧を-90mVに変え、サンプリング周波数を20kHzに設定し、フィルタリング周波数を10kHzに設定した。リーク電流の検出条件は、クランプ電圧を-80mVに変えて、時間経過が500msであった。
8.hERG電流を測定する方法は下記の通りである:脱分極指令電圧を4.8秒間かけることにより膜電位を-80mVから+30mVに脱分極させ、それに続いて再分極電圧を5.2秒間瞬時にかけ、膜電位を-50mVに下げてチャネル不活性化を除き、その結果、hERGテール電流を観察した。テール電流のピーク値がhERG電流の規模である。
9.試験すべき化合物を検出するのに使用されるhERG電流を、投与前に連続的に120秒間記録して、試験細胞により生み出されるhERG電流の安定性を評価した。評価基準の許容できる範囲内の安定な細胞のみをその後の化合物試験に使用できる。
10.hERG電流に対する、試験すべき化合物の阻害効果の測定:最初に、0.1%DMSOを含む細胞外液中で測定したhERG電流を検出ベースラインとして使用した。hERG電流が少なくとも5分間安定を保った後、試験すべき化合物を含む溶液を、細胞の周囲で低濃度から高濃度に灌流させた。各潅流の完了後約5分間待つことにより、化合物が細胞に対して完全に作用するようになり、hERG電流を同時に記録した。記録される電流が安定になった後、最後の5つのhERG電流値を記録し、その平均値を、特定の濃度でのその最終電流値とした。化合物試験の完了後に、150nMのドフェチリドを同じ細胞に加えて、その電流を完全に阻害して、それをその細胞の陽性対照として使用した。さらに、陽性化合物ドフェチリドを、試験化合物実験の前と完了後の両方で、同じパッチクランプシステムにより検出し、検出システム全体の信頼性及び感度を確かにした。
【0293】
III.データ分析
データをPatchMasterソフトウェアによりエクスポートし、以下の工程に従って分析した:
1)ブランク溶媒又は化合物勾配溶液の潅流後に、安定な状態で得られた5つの連続的な電流値の平均値を、それぞれ「テール電流値ブランク」及び「テール電流値化合物」として計算する。
2)電流阻害パーセントを以下の式により計算した。
【数1】

3)用量効果曲線をGraphPad Prism 8.0ソフトウェアによりフィッティングし、IC50値を計算した。
【0294】
本発明の化合物によるhERGの阻害は以下の表6に示す通りである。
【0295】
【表6-2】
【0296】
試験例7:マウスでの本発明の化合物の薬物動態的評価
実験材料
CD-1マウスを、Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入した。DMSO(ジメチルスルホキシド)、HP-β-CD(ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、テトラエチレングリコール、Captisol(SBE-β-CD、スルホブチル-β-シクロデキストリン)をSigmaから購入した。アセトニトリルをMerck(USA)から購入した。
【0297】
実験方法
6匹の雌のCD-1マウス(20~30g、4~6週)を、3匹のマウス/群で2群にランダム化した。第1群には試験化合物を尾静脈注射により1mg/kgの投与量で与え、ビヒクルは、水中10%HP-β-CD中の5%DMSOであり、第2群には試験化合物を10mg/kgの投与量で経口的に与え、ビヒクルは、水中40%テトラエチレングリコール(v/v)、7.5%Captisol(w/v)であった。実験の前に、動物に飼料及び水を通常通り与えた。投与前及び投与の0.083(静脈注射群のみ)、0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間後に、各群のマウスの静脈から血液をサンプリングした。収集した全血試料をKEDTA抗凝固チューブに入れ、5分間遠心分離し(12,000rpm、4℃)、次いで、血漿を後の検出のために採取した。
【0298】
10μLのマウス血漿試料を採取し、150μLのアセトニトリル溶媒(内部標準化合物が含まれていた)を加えて、タンパク質を沈殿させた。混合物を5分間ボルテックスにかけた後、遠心分離(14,000rpm)を5分間実施した。上清を0.1%(v/v)FAを含む水により2倍希釈し、定量的検出のためにLC-MS/MSシステム(AB Sciex Triple Quad 6500+)に注入した。較正標準曲線を、品質管理試料と共にCD-1マウス血漿中で準備し、血漿濃度を測定した。10倍希釈試料では、2μLの試料を採取し、18μLのブランク血漿を加えた。混合物を0.5分間ボルテックスにかけた後、300μLのアセトニトリル溶媒(内部標準化合物を含んでいた)を加えて、タンパク質を沈殿させた。他の処理工程は、希釈しない試料のものと同一であった。
【0299】
PK試験結果は以下に示す通りであり、本発明の化合物は、マウスにおいて良好なPK性質及び経口バイオアベイラビリティを示す。
【0300】
【表7】
【0301】
試験例8:ラットにおける本発明の化合物の血液脳関門(BBB)透過性
動物の血液脳関門を通る透過による薬物の脳への充分な曝露は、脳転移性病変に対する薬物の有効性を達成するための必須事項である。従って、脳内の薬物の分布は、頭蓋内モデルにおいて薬物が腫瘍成長を阻害できるかどうかを決定するために、投与後に動物の血漿及び脳組織内の薬物濃度を測定することにより評価できる。
【0302】
実験材料
雌のSDラットをBeijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.から購入した。MC(メチルセルロース)をSigmaから購入した、アセトニトリルをMerck(USA)から購入した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)をSangon Biotech Co.,Ltd.から購入した。
【0303】
実験方法
6匹の雌のSDラット(200~300g、6~8週)を、3匹のラット/群で2群にランダム化した。各ラットに本発明の化合物を与え、ビヒクルは0.5%メチルセルロース水溶液であった。動物に水を通常通り与え、実験前に一晩絶食させ、投与4時間後に給餌を再開した。血漿及び脳組織を、各群のラットから投与の2時間後に収集した。収集した全血試料をKEDTA抗凝固チューブに入れ、5分間遠心分離し(12,000rpm、4℃)、次いで、血漿を後の検出のために採取した。組織収集の後に、組織を濾紙により乾燥させ、試料を後の検出のために-80℃フリーザー内で保存した。
【0304】
10μLのラット血漿試料を採取し、150μLのアセトニトリル溶媒(内部標準化合物を含んでいた)を加えて、タンパク質を沈殿させた。混合物を5分間ボルテックスにかけた後、遠心分離(14,000rpm)を5分間実施した。上清を、0.1%(v/v)FAを含む水により2倍希釈し、定量的検出のためにLC-MS/MSシステム(AB Sciex Triple Quad 6500+)に注入した。10倍希釈試料では、2μLの試料を採取し、18μLのブランク血漿を加えた。混合物を0.5分間ボルテックスにかけた後、300μLのアセトニトリル溶媒(内部標準化合物を含んでいた)を加えて、タンパク質を沈殿させた。他の処理工程は、希釈しない試料のものと同一であった。較正標準曲線を、血漿品質管理試料と共にSDラット血漿中で準備して、血漿濃度を測定した。
【0305】
ラットから得た脳組織試料を、最初に、4倍の質量体積(mass volume)のPBSホモジネートと共にホモジナイズした。20μLの脳組織ホモジネート試料を採取し、20μLのブランクマウス血漿を加えた。混合物を希釈し、均一に混合し、600μLのアセトニトリル溶媒(内部標準化合物を含んでいた)を加えて、タンパク質を沈殿させた。混合物を5分間ボルテックスにかけた後、遠心分離(14,000rpm)を5分間実施した。上清を、0.1%(v/v)FAを含む水により2倍希釈し、定量的検出のためにLC-MS/MSシステム(AB Sciex Triple Quad 6500+)に注入した。本発明の化合物番号実施例3は優れた血液脳関門透過性を示し、ラットの脳組織内で高い薬物曝露を有する。
【0306】
BBB試験の結果は以下に示すとおりである。
【0307】
【表8】
【0308】
試験例9:マウスのMCF-7皮下腫瘍モデルでの本発明の化合物の成長阻害実験
実験試薬
ヒト乳癌MCF-7細胞:ATCC、HTB-22
17β-エストラジオール錠剤:Innovative Research of America、カタログ番号:SE-121、60日放出、0.72mg/ペレット
EMEM培地:ATCC、カタログ番号:30-2003
ウシ胎児血清:Gbico、カタログ番号:1099-141C
ペニシリン(Pen Strep):Gibco、カタログ番号:15240-122
組換え型ヒトインスリン:Shanghai Yeasen Biotechnology Co.,Ltd.カタログ番号:40112ES60
0.25%トリプシン-EDTA:Gibco、カタログ番号:25200-072
D-PBS(Ca及びMgイオンを含まないリン酸緩衝生理食塩水):Hyclone、カタログ番号:SH30256.01
Matrigel:Corning、カタログ番号:356237
【0309】
実験方法
動物情報:NPGマウス(雌、6~7週、体重:約19~28g)をBeijing Vitalstar Biotechnology Co.,Ltd.から購入した。マウスにSPF環境で給餌し、各ケージ位置を個別に通気した。全動物は、標準的な認定された市販の実験用飼料及び水に自由にアクセスできた。
【0310】
細胞培養:ヒト乳癌MCF-7細胞株を、インビトロで、10%ウシ胎児血清、1%Pen Strep、及び10μg/ml組換え型ヒトインスリンを補ったEMEM(細胞培地)中で、37℃の5%COインキュベーター内で培養した。0.25%トリプシン-EDTA消化溶液による従来の消化処理を、継代のために週に1回実施した。細胞飽和が80%~90%であり、数が必要条件に達すると、細胞を回収して計数した。
【0311】
細胞接種:0.1ml/(1×10を含む)MCF-7細胞懸濁液(D-PBS:Matrigelの体積比=1:1)を、各マウスの右の背中に皮下接種し、細胞接種の4日前に、マウスに17β-エストラジオール錠剤を皮下接種した。細胞接種後24日に、マウスを腫瘍体積に従って投与のための群にランダム化し、群に分けた日は第0日であった。
【0312】
投与:化合物番号実施例1を、1、3、又は10mg/kgの投与量で、1日1回(QD)3週間、経口(PO)投与した。化合物番号実施例2を、10mg/kgの投与量で、1日1回(QD)3週間、経口(PO)投与した。8匹のマウスはビヒクル群であり、6匹のマウスは投与群であった。
【0313】
腫瘍測定及び実験指標:
腫瘍の直径を、ノギスにより週に2回測定した。腫瘍体積の計算式は、V=0.5a×bであり、式中、a及びbはそれぞれ腫瘍の長径及び短径を表す。マウスの体重を週に2回測定した。
【0314】
化合物の腫瘍阻害効能を、腫瘍成長阻害(TGI)(%)を使用して評価した。TGI(%)=[(1-(特定の処置群における投与終了時の平均腫瘍体積-処置群における投与開始時の平均腫瘍体積)/(溶媒対照群における投与終了時の平均腫瘍体積-溶媒対照群における投与開始時の平均腫瘍体積)]×100%。
【0315】
実験結果:
表9、図2、及び図3を参照されたい。マウスでの皮下移植腫瘍のMCF-7モデルにおいて、本発明の化合物番号実施例3は、1mg/kg、3mg/kg、又は10mg/kgで1日1回経口投与した場合、腫瘍成長に対して有意な阻害効果(P<0.01)を有し、良好な用量-応答関係を示す。3mg/kg及び10mg/kgの投与量で投与した場合、化合物は、腫瘍を縮小させる効果を示す。本発明の化合物番号実施例3は、10mg/kgで1日1回経口投与した場合、腫瘍成長に対して有意な阻害効果(P<0.01)を有し、腫瘍を縮小させる効果を示す。化合物番号実施例3及び実施例7は、試みた投与量でマウスの体重に著しい影響を与えない。
【0316】
【表9】
【0317】
試験例10:マウスのMCF-7頭蓋内腫瘍モデルでの本発明の化合物の成長阻害実験
実験試薬/装置:
ヒト乳癌MCF-7細胞:ATCC、HTB-22
17β-エストラジオール錠剤:Innovative Research of America、カタログ番号:SE-121、60日放出、0.72mg/ペレット
EMEM培地:ATCC、カタログ番号:30-2003
ウシ胎児血清:Gibco、カタログ番号:1099-141C
ペニシリン(Pen Strep):Gibco、カタログ番号:15240-122
組換え型ヒトインスリン:Shanghai Yeasen Biotechnology Co.,Ltd.カタログ番号:40112ES60
0.25%トリプシン-EDTA:Gibco、カタログ番号:25200-072
定位固定装置:RWD Life Technology Co.,Ltd.カタログ番号:Standard/Digital/Single Arm/Mouse/68055
マイクロインジェクションポンプ:KDS、カタログ番号:Legato130
小型ハンドヘルド頭蓋ドリル:RWD Life Technology Co.,Ltd.カタログ番号:78001
【0318】
実験方法:
動物情報:NPGマウス(雌、6~8週、体重:約17~29g)をBeijing Vitalstar Biotechnology Co.,Ltd.から購入した。マウスにSPF環境で給餌し、各ケージ位置を個別に通気した。全動物は、標準的な認定された市販の実験用飼料及び水に自由にアクセスできた。
【0319】
細胞培養:ヒト乳癌MCF-7細胞株を、インビトロで、10%ウシ胎児血清、1%Pen Strep、及び10μg/ml組換え型ヒトインスリンを補ったEMEM(細胞培地)中で、37℃の5%COインキュベーター内で培養した。0.25%トリプシン-EDTA消化溶液による従来の消化処理を、継代のために週に2回実施した。細胞飽和が80%~90%であり、数が必要条件に達すると、細胞を回収して計数した。
【0320】
細胞接種:15μl/(2×10を含む)MCF-7細胞懸濁液を、定位固定装置、マイクロインジェクションポンプ、及び小型のハンドヘルド頭蓋ドリルを使用してマウスの脳内に接種し、細胞接種の3日前に、マウスに17β-エストラジオール錠剤を皮下接種した。細胞接種後8日で、マウスを、その体重により投与のために群にランダム化し、群に分けた日は第0日であった。
【0321】
投与:フルベストラント(AstraZeneca)を、250mg/kgの投与量で皮下注射(SC)により、週に1回(QW)投与し、化合物番号実施例3を、30mg/kgの投与量で、経口(PO)で1日1回(QD)投与した。11匹のマウスはビヒクル群であり、8匹のマウスは投与群であった。状態不良又は実験の終了により安楽死させたマウスの死亡まで、全ての群のマウスに連続的に投与した。
【0322】
実験観察及び評価項目:
マウスの体重を週に2回測定し、マウスの生存状態を観察した。
【0323】
第48日の実験終了時に、全てのマウスを安楽死させた。
【0324】
実験結果:
図4及び図5を参照されたい。マウスのMCF-7頭蓋内腫瘍モデルにおいて、フルベストラント群(250mg/kg 週に1回皮下投与)のマウスは体重が減り続け、マウスの生存状態は、溶媒対照群のものと有意には異ならなかった(生存期間中央値、溶媒対照群では29日、フルベストラント群では29.5日)。本発明の化合物番号実施例3の群(30mg/kg 1日1回経口投与)のマウスは、体重が安定しており、実験終了まで異常がなかった。死亡例は、本発明の実施例3の化合物の群のマウスでは起こらなかった。溶媒対照又はフルベストラントと比べると、実施例3の化合物は、マウスのMCF-7頭蓋内腫瘍モデルにおいて有意な阻害効果を有し、マウスの生存期間は有意に長い(P<0.01)。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】