IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーティー レスピラトリー リミテッドの特許一覧

特表2023-526583結核を治療及び抑制するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】結核を治療及び抑制するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230615BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230615BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K9/12
A61K9/72
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/26
A61P31/06
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022564200
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 GB2021050934
(87)【国際公開番号】W WO2021214439
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】2005986.1
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2008285.5
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIPLOC
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521529581
【氏名又は名称】サーティー レスピラトリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THIRTY RESPIRATORY LIMITED
【住所又は居所原語表記】1 Red Place, London W1K 6PL, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー センプル ムンロー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー バリー ウッド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス デイヴィッド ブート
(72)【発明者】
【氏名】クリス ポール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA25
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC15
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD22
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD59
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA07
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA56
4C086NA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、結核及びマイコバクテリウム属tuberculosisに対する抗バクテリア剤として使用するための、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される、1つ以上の薬剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核及びマイコバクテリウム属tuberculosisに対する抗バクテリア剤として使用するための、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される、1つ以上の薬剤。
【請求項2】
前記一酸化窒素生成組成物、または前記一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体が、1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、任意選択的に、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項3】
前記1つ以上の有機ポリオールが、存在する場合、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む、糖アルコールを含む、請求項2に記載の使用のための薬剤。
【請求項4】
前記有機ポリオールが、マンニトール、ラクチトール、またはそれらの混合物を含む、請求項2に記載の使用のための薬剤。
【請求項5】
前記プロトン源が、クエン酸、アスコルビン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項6】
前記酸が、同じ濃度の前記酸の水溶液によって呈されるよりも高いpHまで緩衝される、請求項2~5のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項7】
前記より高いpHが、約5~8の範囲にある、請求項6に記載の使用のための薬剤。
【請求項8】
前記より高いpHが、5.2以上である、請求項6に記載の使用のための薬剤。
【請求項9】
前記より高いpHが、5.2~6の範囲にある、請求項8に記載の使用のための薬剤。
【請求項10】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項2~9のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項11】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項2~9のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項12】
前記一酸化窒素、前記一酸化窒素生成組成物、前記一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体、前記使用を実施するための方法、前記使用を実施するための物質もしくは組成物、前記使用を実施するためのキット、または前記使用を実施するためのディスペンサーのうちの1つ以上が、本出願の123~137頁の記述1~43のうちのいずれか1つに定義されている、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項13】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項10に定義される方法によって調製されるかまた
は調製可能である、請求項12に記載の使用のための薬剤。
【請求項14】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項11に定義される方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項12に記載の使用のための薬剤。
【請求項15】
ヒトまたは動物対象における結核またはバクテリアM.tuberculosisから生じる感染を治療するかまたは緩和するかまたは防止する方法であって、抗バクテリア有効量の、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の薬剤を、前記ヒトまたは動物対象に、例えば、前記対象の肺に投与することを含む、前記方法。
【請求項16】
前記方法での使用のための前記薬剤が、請求項2~12のいずれか1項に記載の使用のための薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項19】
前記一酸化窒素、前記一酸化窒素生成組成物、前記一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体、前記方法を実施するための物質もしくは組成物、前記方法を実施するためのキット、または前記方法を実施するためのディスペンサーのうちの1つ以上が、本出願の123~137頁の記述1~43のうちのいずれか1つに定義されている、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項17に定義される方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項18に定義される方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
表面または空間、例えば、ヒトもしくは動物の体の一部である表面もしくは空間、例えば、肺、または非生物表面もしくは空間を処理して、前記表面上または前記空間中の生M.tuberculosisバクテリアの量を低減する方法であって、前記表面もしくは前記空間、またはその近傍に、抗バクテリア有効量の、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の薬剤を適用することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記方法での使用のための前記薬剤が、請求項2~12のいずれか1項に記載の使用のための薬剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオー
ルの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
前記一酸化窒素、前記一酸化窒素生成組成物、前記一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体、前記方法を実施するための物質もしくは組成物、前記方法を実施するためのキット、または前記方法を実施するためのディスペンサーのうちの1つ以上が、本出願の123~137頁の記述1~43のうちのいずれか1つに定義されている、請求項22~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項24に定義される方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記一酸化窒素生成組成物が、請求項25に定義される方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
請求項15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、及び28のいずれか1項に記載の方法で使用するための、組成物、物質、キット、ディスペンサー、またはデバイス。
【請求項30】
請求項29に記載のディスペンサーを使用して、ヒトまたは動物対象における結核、またはM.tuberculosisから生じる感染の治療もしくは緩和もしくは防止のために、あるいは表面または空間、例えば、ヒトもしくは動物の体の一部である表面もしくは空間、例えば、肺、または非生物表面もしくは空間を処理して、前記表面上または前記空間中の生M.tuberculosisバクテリアの量を低減するために分配される場合の、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結核を治療及び抑制するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患である結核は、バクテリアマイコバクテリウム属tuberculosisによって引き起こされる。多くの国で甚大な死傷者を出しているこの疾患に対する完全に満足のいく治療は、現在見出されていない。多くの場合、結核は、ウイルス感染を含む他の病原性感染と関連して存在する。結核に対する有効な薬剤が、結核患者に一般的に存在するウイルス及び他の病原体に対する活性を含む、広範な活性を有する場合、その薬剤は実質的に利点となるであろう。
【0003】
本発明は、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物の構成成分または成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の活性剤が、ヒト及び動物における結核に対する有効なインビボ治療(療法的及び予防的の両方)を提供する、M.tuberculosisに対する有効なインビトロ抗バクテリア剤であるという驚くべき発見に基づいている。M.tuberculosisの伝播、ならびにそれによる表面の汚染を防止するための、表面(非生物表面、ならびにヒトまたは動物の体の手、腕、及び体の他の外側表面を含む)及び空間の有効な抗バクテリア治療もまた、本発明によって提供される。
【0004】
本発明の好ましい実施形態では、一酸化窒素は、亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源とを含む、NO生成系によって生成され得る。有機非カルボン酸は、有機非カルボン酸還元性酸であり得る。そのような系は、患者の肺に投与することができるNO生成組成物に具現化することができる。
【0005】
NO生成系は、1つ以上の有機ポリオールを含み得る。1つ以上の有機ポリオールは、存在する場合、好適には、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む、糖アルコールを含み得る。
【0006】
活性剤、例えば、NO生成組成物は、任意の好適な物理的形態、例えば、液体の形態で、または例えば、エアロゾルもしくはミストとして担体気体もしくは空気中に含まれる液滴の形態で、患者の肺に送達され得る。
【0007】
本発明によれば、一酸化窒素の生成のためのプロトン源として機能する酸は、比較的高いpH、例えば、約5~約8のpH、例えば約5.2以上、例えば5.2~5.8の範囲、すなわち、患者の口、鼻経路、気道、及び肺の組織によって生理学的に許容されるpHまで緩衝される場合、有効であり得ることが更に見出されている。
【0008】
一酸化窒素及びNO生成組成物は、本明細書で考察されるように、様々な抗細菌性及び他の有利な生理学的活性を有し、結果として、本発明によって提供されるM.tuberculosisに対する抗バクテリア作用が、患者に感染している場合があるか、または患者が感染しやすい場合がある他の病原体(二次的なバクテリア感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及び真菌感染を含む)に対する同時に有益な活性を伴うことができる。
【0009】
本明細書で報告されているように、NO生成組成物が、ある特定の方式、すなわち、以下の方法のうちの1つによって調製される場合、M.tuberculosisに対する抗バクテリア効果が向上され得ることがインビトロで見出されている:
(a)亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される組成物を提供することを含む、NOx生成組成物を調製する方法、
(b)亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される組成物を提供することを含む、NOx生成組成物を調製する方法。
【0010】
これらの代替的な方法は、本発明の特定の態様を構成する。
【0011】
一酸化窒素(NO)及び一酸化窒素前駆体は、潜在的な薬学的薬剤として広く研究されている。一酸化窒素は、血管内皮細胞によって合成及び放出され、とりわけ、血管局所抵抗及び血流を調節する重要な役割を果たす、強力な血管拡張剤である。哺乳類細胞では、一酸化窒素は、主にL-アルギニンの酵素による酸化によってL-シトルリンと共に生成される。一酸化窒素はまた、NOシンターゼ酵素とは独立しているように思われる機序によって皮膚から放出される。一酸化窒素はまた、血小板及び白血球の凝集及び接着の両方の阻害、細胞増殖の阻害、スーパーオキシドラジカルの捕捉、ならびに内皮層浸透性の調節に関与する。がん治療における一酸化窒素の役割は、その開示が、参照により本明細書に組み込まれるBiochemistry(Moscow),63(7),802-809(1998)で考察された。一酸化窒素は、それらの開示が、参照により本明細書に組み込まれる、J.Clin.Invest.99(12),2818-2825(1997)においてF C Fangによって概説されているように、ならびに例えば、WO95/22335及びWO02/20026(Aberdeen University)に記載されているように、抗細菌特性を有することが示されている。一酸化窒素、窒素の他の酸化物、及びその前駆体の生成のための系の他の既知の使用及び用途は、本発明の説明で以下に提供されている。
【0012】
治療のための一酸化窒素、窒素の他の酸化物、及びその前駆体の効率的な生成、ならびに生物及び細胞への送達に関連して、依然として実質的な問題が存在する。一酸化窒素の生成のために広く採用されている系は、出発亜硝酸塩と比較して初期亜硝酸(HNO)を等モル量で生成し、次いで亜硝酸が、水素イオン及び水で容易に一酸化窒素及び硝酸塩に分解される、鉱物酸を使用する亜硝酸塩の酸性化に依存している。分解は、以下の平衡等式(1)によって表すことができる:
3HNO→2NO+NO +H+HO (1)
【0013】
NOの収率を最大化しようとするために、亜硝酸の形成が一般に好ましい約4未満のpHで亜硝酸塩の酸性化を実施することが従来的である。しかしながら、pH<4の使用は、酸が動物組織と接触するインビボでの使用には好適ではない。より高いpHは、細胞及び生体系に対してより良性であるが、4超のpHでは、以前の系は、NOの満足な収率を生成しなかった。pH4を上回って生成されるNOの量を増加させようとするには、大量の亜硝酸塩が必要であり、これは、治療用途では実用的ではなく、経済的ではない。加えて、等式(1)によって表される変換は、亜硝酸の短い半減期を考慮して容易に制御可能ではないので、治療使用のための一酸化窒素の制御された放出は困難である。一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応は、本明細書では、「NOx生成反応」もしくは「NOxを生成するための反応」、または同様の文言と称され、「NOx」は、亜硝酸塩、特に一酸化窒素、窒素の他の酸化物、及びその前駆体の、個々の、及び任意の組み合わせで集合的な酸性化の生成物の両方を指すために使用される。生成されるNOxの各構成成分は、気体として発生させることができるか、または反応混合物中の溶液になることができるか、または最初に溶液になり、その後気体として発生させることができ
るか、またはそれらの任意の組み合わせであり得ることが理解されるであろう。
【0014】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO00/53193は、プロトン源がアスコルビン酸である、皮膚虚血を治療するための、及び創傷治癒を促進するためのクリームまたは軟膏について記載している。実施例1は、KY Jelly(商標)に基づくゲルについて記載し、実施例7では、ゲルを皮膚と直接接触させた試験、及び皮膚を膜によって保護した試験の両方を行った。アスコルビン酸の使用は、顕著な皮膚炎症を回避すると主張された(WO00/53193、2頁)。しかしながら、実際には、ゲルが直接皮膚と接触した場合、ゲルの低いpHに起因して皮膚炎症の程度は満足のいくものではなく、皮膚保護膜は、膜が存在した場合、ゲルの効果を減弱させた。その結果、ゲルは市販されていない。WO00/53193の組成物は、ポリオールを含まない。
【0015】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO02/20026は、プロトン源がクエン酸またはサリチル酸である、皮膚の薬物耐性感染を治療するための皮膚調製物について記載している。亜硝酸塩含有組成物及び酸含有組成物が、ツインバレルディスペンサーから分配され、次いで、組成物が混合されて、皮膚上に広げられる前に酸の亜硝酸塩との反応が引き起こされる。プロピレングリコール及びポリエチレングリコールが、任意選択的な保存剤であると教示され、グリセリン(グリセロール)が、亜硝酸塩組成物と共に使用するための任意選択的なチキソトロピック剤であると教示されている。酸と亜硝酸塩との間の反応を開始するためにその場で混合される、それぞれクエン酸及び亜硝酸塩の一対のクリーム中に、プロピレングリコールが使用された(例えば、WO02/20026、実施例3、製剤1)。酸と亜硝酸塩との間の反応を開始するためにその場で混合される、それぞれクエン酸及び亜硝酸塩の一対のローション中に、セトステアリルアルコールと共にグリセロールが使用された(例えば、WO02/20026、実施例3、製剤3)。反応混合物の好ましいpHは、5以下、特に4以下のpHであり、望ましくない皮膚炎症を引き起こすことが予想されるであろう。より高いpHを使用して敏感な鼻粘膜の刺激を回避することができるように、アスコルビン酸またはアスコルビンパルミチン酸(ascorbic palmitate)などの還元性酸が使用され得る、鼻スプレーもまた教示されている。しかしながら、pHが高いほど反応が遅くなるであろうことが認識されている(WO02/20026、16頁、第2段落)。
【0016】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS6103275(2000年8月15日公開)は、亜硝酸塩を酸性化するために、1~4のpKaを有するマレイン酸などの有機酸と共にアスコルビン酸などの還元剤の使用について記載している。粘性(ゲル)組成物は、局所使用のための反応生成物の放出を遅らせるために使用される。酸及び亜硝酸塩は、一酸化窒素の生成が開始されるまで分離して保持され、還元剤は、第1及び第2のゲルのうちの少なくとも1つに含まれると記述されている。方法が使用されるべきpH範囲は、指定されていない。しかしながら、緩衝液構成成分が酸と称される事実は、これらの化合物が、主にプロトン化形態で存在することを示し得、したがって、組成物のpHは、4よりも実質的に低い必要がある。1~4のpKaを有する酸の存在は、そのpHでの製剤の良好な緩衝能力を確実にする。そのような酸の組み込みは、亜硝酸塩を一酸化窒素に変換する連続的な効率が維持されるようなレベルでpHが維持されることを確実にする簡便な方式であるが、低いpHは、皮膚との接触時に実質的に望ましくない皮膚刺激を引き起こすことが予想されるであろう。US6103275の組成物は、ポリオールを含まない。
【0017】
参照により本明細書に組み込まれるWO2003/013489では、その場で一緒に混合される、それぞれクエン酸及び亜硝酸塩のゲル基剤として、3%のポリビニルアルコール(PA)を提案している(WO2003/013489、実施例7)。しかしながら、試験データ(WO2003/013489、表11及び12)は、PAでは安定したゲ
ルを形成することができなかったことを示しており、PA組成物は、決して混合または一緒に使用されなかった。最終組成物まで追跡されなかった上の提案とは別に、WO2003/013489の組成物は、ポリオールを含まない。
【0018】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2005/0037093号は、亜硝酸塩-酸反応に基づく一酸化窒素生成組成物について記載しており、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールを含む任意選択的な賦形剤について言及している。
【0019】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる中国特許出願第CN101028229号は、亜硝酸塩と酸との反応によって一酸化窒素を生成する化粧品について記載している。とりわけ、追加の成分としてのグリセリン、プロピレングリコール、及びモノステアリン酸グリセリンの任意選択的な使用について教示している。特定の実施例において成分として、トリヒドロキシエチルアミンが更に言及されている。
【0020】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる中国特許出願第CN101062050号は、亜硝酸塩と酸との反応によって一酸化窒素を生成する育毛促進製品について記載している。とりわけ、追加の成分としてのグリセリン、プロピレングリコール、及びモノステアリン酸グリセリンの任意選択的な使用について教示している。特定の実施例で成分として、D-パントテニルアルコール、及びパンテノールとイノシトールとの組み合わせが言及されている。
【0021】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2008/110872は、例えばポリオール及びポリエチレングリコールから選択される極性溶媒を任意選択的に含有する、発泡性一酸化窒素ドナー組成物について記載している(段落[0055]及び[0056])。特定のポリオールは、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール(butynediol)、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、及びヘキサン-1,2,6-トリオールであると記述されている。任意選択的な更なる成分として、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール1000(PEG1000)、PEG4000、PEG6000、及びPEG8000が多くのポリマー剤のリストで言及されている(段落[0062])。任意選択的な浸透向上剤として、グリセロール(グリセリン)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコール、ならびにエチレングリコール、ヘキシレングリコール、他のグリコール、ならびにポリエチレングリコールなどのポリオールもまた、段落[0190]及び[0191]において言及されている。
【0022】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2009/019498は、亜硝酸塩及びプロトン源の追加の構成成分として、1~4の間のpKaを有さない非チオール還元剤の使用について記載している。非チオール還元剤の例は、ヨウ化物アニオン、ブチル化ヒドロキノン、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、及びベータ-カロテンであると記述されている。ブチル化ヒドロキノンとは別に、WO2009/019498の組成物は、ポリオールを含まない。
【0023】
それらの開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/188174及びWO2014/188175は、プロトン源が、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸及びスルホン酸塩基を含むハイドロゲルである、皮膚病変のための包帯系及び経皮送達系について記載している。皮膚接触一次層は、亜硝酸塩を吸入
させたポリプロピレンメッシュである。メッシュが皮膚上に配置され、最上層としてハイドロゲルがメッシュ上にオーバーレイされると、酸と亜硝酸塩との反応生成物が、許容されない皮膚刺激を伴わずに皮膚に良好に送達されることが見出されている。WO2014/18175では、例えば、ポリビニルアルコールから形成され、亜硝酸塩を含有する溶解性フィルムである、一次層に接触する代替皮膚が開示されている。両方の参考文献において、ハイドロゲルがグリセロールを含み得ることが教示されており、その目的は記述されていない。しかしながら、グリセロールが可塑剤としてこのタイプのハイドロゲルに添加されることは周知である(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO00/06215、14頁を参照されたい)。参考文献は、ある特定のヒドロキシル含有成分、特に1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、アスコルビン酸、及びブチル化ヒドロキノンが存在しないことの好ましさについて開示している。
【0024】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2014/0335207号は、「亜硝酸塩媒体」と「酸性化媒体」との混合時に一酸化窒素を生成する局所混合物について記載している。「亜硝酸塩媒体」の具体的な実施形態は、段落[0050]~[0055]に個々に記載されており、亜硝酸塩が1つ以上のポリオール構成成分と共に存在する。段落[0054]及び[0055]に記載の一般的な亜硝酸塩媒体は、グリセリン、ステアリン酸グリセリル、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン、及びヘキシレングリコールから選択されるポリオールを含有し、他の段落に記載の特定の実施形態は、上のうちのいくつか及びブチレングリコールを含有する。これらのポリオールはまた、段落[0056]~[0062]に記載の「酸性化媒体」の実施形態の構成成分である。
【0025】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2015/0030702号は、亜硝酸塩-酸反応に基づく皮膚包帯について記載している。皮膚包帯は、ヒドロキノンまたはブチル化ヒドロキノンなどの非チオール還元剤を含む。皮膚包帯は、ポリビニルアルコールまたはポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーを含む、ハイドロゲルを含み得る。
【0026】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2017/0209485号は、発泡体または血清担体中の一酸化窒素を局所的に適用するための装置及び方法について記載している。表面張力を増加させる、及び/または蒸気圧を低下させるための任意選択的な添加剤としてのグリセロール及び(特定されていない)「グリセロール様構成成分」の使用が、段落[0070]に記載されている。
【0027】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2019/0134080号は、少なくとも1つの亜硝酸塩反応物を含む第1の溶液及び少なくとも1つの酸性反応物を含む第2の溶液を含む複数部分の組み合わせから形成される発泡体として、一酸化窒素生成系を皮膚に局所的に適用するための組成物及び方法について記載している。発泡体として組み合わせの構成成分を保持、通気、及び分配するためのデバイスについても記載している。表面張力を増加させる、及び/または蒸気圧を低下させるための任意選択的な添加剤としてのグリセロールの使用が、言及されている(段落[0068])。
【0028】
上に言及されたように、本発明は、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物の構成成分または成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の活性剤が、ヒト及び動物における結核に対する有効なインビボ治療(療法的及び予防的の両方)を提供する、M.tuberculosisに対する有効なインビトロ抗バクテリア剤であるという驚くべき発見に基づいている。M.tuberculosisの伝播、ならびにそれによる表面の汚染を防止するための、表面(非生物表面、ならびにヒトまたは動物の体の手、腕、及び体の他の外側表面
を含む)及び空間の有効な抗バクテリア治療もまた、本発明によって提供される。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、一酸化窒素は、亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源とを含む、NO生成系によって生成され得る。有機非カルボン酸は、有機非カルボン酸還元性酸であり得る。そのような系は、患者の肺に投与することができるNO生成組成物に具現化することができる。
【0030】
NO生成系は、1つ以上の有機ポリオールを含み得る。1つ以上の有機ポリオールは、存在する場合、好適には、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む、糖アルコールを含み得る。
【0031】
活性剤、例えば、NO生成組成物、または一酸化窒素生成組成物の構成成分もしくは成分の組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体は、任意の好適な物理的形態、例えば、液体の形態で、または例えば、エアロゾルもしくはミストとして担持気体もしくは空気中に含まれる液滴の形態で、患者の肺に送達され得る。
【0032】
本発明によれば、一酸化窒素の生成のためのプロトン源として機能する酸は、比較的高いpH、例えば、約5~約8、例えば約5.2以上、例えば5.2~5.8の範囲、すなわち、患者の口、鼻経路、気道、及び肺の組織によって生理学的に許容されるpHまで緩衝される場合、有効であり得ることが更に見出された。
【0033】
一酸化窒素及びNO生成組成物は、本明細書で考察されるように、様々な抗細菌性及び他の有利な生理学的活性を有し、結果として、本発明によって提供されるM.tuberculosisに対する抗バクテリア作用が、患者に感染している場合があるか、または患者が感染しやすい場合がある他の病原体(二次的なバクテリア感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及び真菌感染を含む)に対する同時に有益な活性を伴うことができる。
【0034】
本明細書で報告されているように、NO生成組成物が、ある特定の方式、すなわち、以下の方法のうちの1つによって調製される場合、M.tuberculosisに対する抗バクテリア効果が向上され得ることがインビトロで見出されている:
(a)亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される組成物を提供することを含む、NOx生成組成物を調製する方法、
(b)亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される組成物を提供することを含む、NOx生成組成物を調製する方法。
【0035】
これらの代替的な方法は、本発明の特定の態様を構成する。
【0036】
一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体(総じてNOxと称される)は、1つ以上の有機ポリオールの存在下で、有機カルボン酸、及び亜硝酸塩酸化剤として有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源を使用して、これまでよりも効率的に、かつ向上された反応出力で生成され得る。加えて、亜硝酸塩酸化剤として有機還元性酸を使用するそのような反応系の抗細菌的に有効な反応生成物は、インビボ抗細菌活性などの有益な生理学的活性を有する組成物として直接送達するために、そのようなpHで動作する反応系を利用可能にする、生理学的に許容可能なpH、例えば、約5~約8のpHで、1つ以上の有機ポリオールの使用の有無に関わらず送達可能であることが見出されている。本発明の基礎となる一酸化窒素生成方法は、生理学的に有効量の一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または
任意選択的にその前駆体を、任意選択的に、NOx気体生成の初期の強力な噴出後に、長期間、例えば約2時間超、例えば約5時間超、例えば約10時間超生成し、医薬品及び他の用途における潜在的に顕著な使用をもたらすことが見出されている。初期の強力な噴出が必要ではない場合、対象への反応混合物の投与は、NOx生成反応の開始後一定期間、例えば、NOx生成反応の開始後約10分、30分、または1時間以上の間、行われ得る。
【発明の概要】
【0037】
本発明は、添付の特許請求の範囲に定義され、かつそれによって定義され、以下の明細書に開示される本発明のより一般的な利点の特定の実施形態である。添付の特許請求の範囲に定義され、かつそれによって定義される本発明は、NO生成反応が実施される組み合わせ及び組成物、ならびにその反応の気体生成物を、ヒトまたは動物対象に対象の鼻、口、呼吸器、または肺を介して送達することに関する本発明の一般的な利点の用途に関する。本開示に関連して本明細書に記載の全ての態様、実施例、実施形態、及び優先事項は、添付の特許請求の範囲に定義され、かつそれによって定義される本発明に対して互いに等しくかつ独立して適用可能である。
【0038】
本開示は、一酸化窒素及び任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための系、方法、組み合わせ、キット及び組成物を提供する。
【0039】
系、方法、組み合わせ、キット、及び組成物は、反応物として、1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、を含む。系、方法、組み合わせ、キット、及び組成物は、1つ以上の有機ポリオールを更に含む。還元性酸(すなわち、カルボン酸還元性酸及び非カルボン酸還元性酸)の使用によって、一酸化窒素、及び任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体が、4よりも幾分高いpHで、例えば5~8の範囲で生成されることが可能になる。本開示は、抗細菌使用のための系、方法、組み合わせ、キット、及び組成物を更に提供し、1つ以上の有機ポリオールが、任意選択的であり、反応が、5~8の範囲のプロトン源の開始pHで実施される。
【0040】
第1の態様によれば、本開示は、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための方法であって、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するのに好適な反応条件下で、1つ以上の亜硝酸塩を、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と反応させることを含み、反応が、以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の有機ポリオールの存在下で実施される、方法を提供する:
(a)1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリ
コール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0041】
本開示の第1の態様による方法によって調製された一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体は、本開示の第2の態様を構成する。
【0042】
第3の態様によれば、本開示は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源を使用することと、反応出力を向上する量の1つ以上の有機ポリオールの存在下で反応を実施することと、を含む、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するために、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力を向上する方法を提供する。反応の出力の向上は、1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で実施した反応と比較している。
【0043】
第4の態様によれば、本開示は、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための、反応混合物中での1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力を向上するための、反応混合物中での1つ以上の有機ポリオールの使用であって、プロトン源が、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、使用を提供する。反応の出力の向上は、1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で実施した反応と比較している。
【0044】
第5の態様によれば、本開示は、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための組み合わせ、キット、または組成物であって、組み合わせ、キット、または組成物が、
(i)1つ以上の亜硝酸塩と、
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を
含む、プロトン源と、
(iii)以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の有機ポリオールと、を含む、組み合わせ、キット、または組成物を提供する:
(a)1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0045】
プロトン源が、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルを含み、組み合わせまたはキットが、2つ以上の別個の組成物を含む場合、1つ以上のポリオールが、ハイドロゲルと直接接触または混和した状態で別個の組成物中に存在しないことが好ましい。
【0046】
本開示の第5の態様の組み合わせ、キット、または組成物の化学物質は、例えば、上述の構成成分(i)、(ii)、及び(iii)、ならびに任意選択的に水及び/またはp
H緩衝液から本質的になり得る。「本質的にからなる」という表現は、例えば、少量の1つ以上の追加の構成成分の存在が許容され得、ただし、上述の構成成分(i)、(ii)及び(iii)、ならびに任意選択的に水及び/またはpH緩衝液の効果が悪影響を受けないことを条件とする。そのような1つ以上の追加の構成成分の総量は、好適には、組み合わせ、キットの化学成分、または組成物の約20重量%または体積%未満、例えば約15重量%または体積%未満、例えば約10重量%または体積%未満、例えば約5重量%または体積%未満であり得る。
【0047】
組み合わせ、キット、または組成物の化学物質は、上述の構成成分(i)、(ii)、及び(iii)、ならびに任意選択的に水及び/またはpH緩衝液、及び/または例えば、組み合わせ、キットの化学成分、もしくは組成物の約20重量%もしくは体積%未満、例えば約15重量%もしくは体積%未満、例えば約10重量%もしくは体積%未満、例えば約5重量%もしくは体積%未満の量の1つ以上の追加の構成成分からなり得る。
【0048】
第6の態様によれば、本開示は、
(i)1つ以上の亜硝酸塩と、
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源と、
(iii)1つ以上の有機ポリオールと、を含み、
構成成分(i)、(ii)及び(iii)を互いに近接させて組み合わせもしくはキットを形成するか、または混和して、組成物を形成することを含む、方法を提供し、
1つ以上の有機ポリオールが、以下のうちの1つ以上を特徴とする:
(a)1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミ
ン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0049】
本明細書で使用される「組み合わせ」という表現は、近接させ、一緒に使用される別個の物質または組成物(「構成成分」と称される)を指す。構成成分を近接させることは、複数の段階で達成され得、それによって、構成成分のうちの全てではなくいくつかが、最初に、半組み合わせ(sub-combination)または部分的組み合わせへと一緒にされ、その後これが、1つ以上の更なる構成成分または他の半組み合わせもしくは部分的組み合わせと近接される。「近接」は、密接な混和物、溶液、もしくは懸濁液を含み得るか、または、例えば、後の使用の簡便性のために構成成分が一緒に提供されるキットの別々の容器内で、密接な混和物、溶液、もしくは懸濁液の総量にはならない、近似の物理的近接を示し得る。例えば、1つ以上の亜硝酸塩(またはそれらのうちのいくつか)と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸(またはそれらのうちのいくつか)とをそれぞれ含む、亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分は、別個に、またはキットの別個の容器に保管され得、NOx生成反応を開始するために混合することによって、使用するために一緒にされ得る。1つ以上の有機ポリオールは、亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分のうちの一方もしくは両方に提供され得るか、またはNOx生成反応が開始されるときにまた混合される有機ポリオール構成成分に別々に提供され得る。構成成分のうちのいずれか1つ以上は、それ自体が、複数の部分及び複数の容器内に存在し得る。例えば、亜硝酸塩及びプロトン源が、同じ溶液中にあり、したがって反応することが可能であるので、NOx生成反応が直ちに開始されるような方式で、組み合わせを近接させることができる。代替的に、例えば、亜硝酸塩及びプロトン源が、乾燥粉末混和物中にあるか、またはNOx生成反応が開始される前に(例えば、組み合わせによって接触される粘膜からの)水を必要とするカプセル化された粒子として存在するので、NOx生成反応が直ちに開始されないが、開始前に1つ以上の更なるステップまたは行為を行うことが必要であるそのような方式で、組み合わせを近接させてもよい。
【0050】
実施形態では、本開示の第1~第6の態様は、互いに独立して、上述の特色(a)のみ、または特色(b)のみ、または特色(c)のみ、または特色(d)のみ、または特色(e)のみ、または特色(f)のみ、または特色(g)のみ、または(b)のみに言及する場合特色(h)、または(c)のみに言及する場合特色(h)、または(d)のみに言及する場合特色(h)、または(e)のみに言及する場合特色(h)、または(f)のみに言及する場合特色(h)、または(g)のみに言及する場合特色(h)、または特色(a)及び(b)のみ、または特色(a)及び(b)に言及する場合特色(h)、または特色(a)及び(c)のみ、または特色(h)に言及する場合特色(a)及び(c)、または特色(a)及び(d)のみ、または特色(a)及び(d)に言及する場合特色(h)、または特色(a)及び(e)のみ、または特色(a)及び(e)に言及する場合特色(h)、または特色(a)及び(f)のみ、または特色(a)及び(f)に言及する場合特色(h)、または特色(a)及び(g)のみ、または特色(a)及び(g)に言及する場合特色(h)、または特色(b)及び(c)のみ、または(b)及び(c)に言及する場合特色(h)特色、または特色(b)及び(d)のみ、または特色(b)及び(d)に言及す
る場合特色(h)、または特色(b)及び(e)のみ、または特色(b)及び(e)に言及する場合特色(h)、または特色(b)及び(f)のみ、または特色(b)及び(f)に言及する場合特色(h)、または特色(a)、(b)、(c)、及び(f)のみ、または特色(a)、(b)、(c)、及び(f)に言及する場合特色(h)、または特色(a)~(g)の全て、または特色(c)~(g)の全てに言及する場合特色(h)と一緒に特色(a)及び(b)を特徴とし得る。
【0051】
他の実施形態では、本発明の第1の態様~第6の態様は、互いに独立して、上述の特色(c)、(f)、及び(i)のみ、または特色(c)、(f)、及び(j)のみ、または特色(c)及び(f)に言及する場合特色(i)及び(h)、または特色(c)及び(f)に言及する場合特色(j)及び(h)、または特色(d)、(g)、及び(i)のみ、または特色(d)、(g)、及び(j)のみ、または特色(d)及び(g)に言及する場合特色(i)及び(h)、または特色(d)及び(g)に言及する場合特色(j)及び(h)、または特色(e)、(f)、及び(i)のみ、または特色(e)、(f)、及び(j)のみ、または特色(e)及び(f)に言及する場合特色(i)及び(h)、または特色(e)及び(f)に言及する場合特色(j)及び(h)を特徴とし得る。
【0052】
本開示の第1~第6の態様は、(a)~(g)の全て、または特色(c)~(g)に言及する場合特色(h)と一緒に特色(a)及び(b)、または特色(c)、(f)、及び(i)のみ、または特色(c)、(f)、及び(j)のみ、または特色(i)及び(h)に言及する場合特色(c)及び(f)、または特色(j)及び(h)に言及する場合特色(c)及び(f)、または特色(d)、(g)及び(i)のみ、または特色(d)、(g)、及び(j)のみ、または特色(d)及び(g)に言及する場合特色(i)及び(h)、または特色(d)及び(g)に言及する場合特色(j)及び(h)、または特色(e)、(f)、及び(i)のみ、または特色(e)、(f)、及び(j)のみ、または特色(e)及び(f)に言及する場合特色(i)及び(h)、または特色(e)及び(f)に言及する場合特色(j)及び(h)のいずれかを特徴とする。特色(d)、(e)、及び(g)は、特色(c)及び(f)が本開示を特徴付ける場合、重複していることに留意され、その場合、特色(d)、(e)、及び(g)(または特色(d)、(e)及び(g)に言及する場合特色(h))は、リストから省略してもよく、特徴付ける特色(c)及び(f)(または特色(c)及び(f)に言及する場合特色(h))の例とみなされ得る。
【0053】
本明細書で使用される「1つ以上の有機ポリオールの反応出力を向上する量」という表現は、1つ以上の有機ポリオールの量が引き起こす、NOx生成反応からの一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体のうちの少なくとも1つの量及び/または出力期間が、1つ以上の有機ポリオールを用いない同じ条件下で反応が実施された場合よりも高いことを意味する。「量」という表現は、特に、開始反応系において反応するために利用可能な亜硝酸塩グラム当たりの、発生した気体状一酸化窒素の総質量を意味する。本発明の基礎となる実験的作業によって、発生した気体状一酸化窒素、任意選択的に他の気体の量も測定し、これらが向上されることが見出された。このことから、生成されたNOxの総質量は、本発明によって向上されると考えられるので、「量」という表現は、反応混合物中で溶液になる一酸化窒素の総質量ならびにNOx反応生成物の総質量を含むとも理解される。「出力期間」という表現は、特に、気体状一酸化窒素、任意選択的にまた他の気体のうちの少なくとも1つが、反応が完了する前に反応で発生する時間の長さを意味する。「1つ以上の有機ポリオールの反応出力を向上する量」という語句の考察において上で説明されているのと同じ理由から、「出力期間」という語句はまた、一酸化窒素が反応混合物中で溶液になる時間の長さ、ならびにNOx反応生成物が生成される時間の長さを含むと考えられる。周知のように、最終的には、亜硝酸塩は、プロトン源との反応によって枯渇し、NOx生成反応中に上昇するpHが、その最大値に達し、反応が停止する。本発明の第1の態様の方法は、NOx生成反応の収率、限定さ
れないが特に、生成されるNOの量、例えば、生成される気体状NOの量を、少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、例えば少なくとも約25%、例えば最大約150%の向上の程度、例えば最大約125%の向上の程度、例えば最大約100%の向上の程度、例えば最大約75%の向上の程度、向上することが好ましい。本発明の第1の態様の方法は、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体のうちの少なくとも1つ、好ましくは一酸化窒素が、反応が完了する前に反応において少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%発生する時間の長さを向上することが好ましい。本発明を使用して、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体のうちの少なくとも1つ、好ましくは一酸化窒素、及び最も好ましくは気体状一酸化窒素が発生し、特に有効量で発生する期間は、少なくとも約2時間、例えば少なくとも約5時間、例えば最大または約10時間超向上され得る。一酸化窒素の発生のこの程度の時間の向上は、例えば、ポリオール構成成分を使用せずに同じ量の一酸化窒素を発生させるための期間の最大または約150%超の向上の程度、例えば最大約125%の向上の程度、例えば最大約100%の向上の程度、例えば最大約75%の向上の程度を表し得る。
【0054】
一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的に前駆体の生成は、任意の目的のためであり得る。治療目的及び非治療目的の両方を以下に例示し、考察する。
【0055】
第7の態様によれば、本開示は、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、標的位置、例えば、任意の細胞、臓器、表面、構造、対象、またはその内部空間に送達する、治療方法または非治療方法であって、方法が、(a)本開示の第5の態様による組み合わせもしくは組成物を、標的位置もしくはその近傍に投与すること、または(b)本開示の第1もしくは第3の態様による方法を使用して、もしくは本開示の第4の態様による使用を実施して、もしくは本開示の第5の態様による組み合わせ、キット、もしくは組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/またはその前駆体を、標的位置もしくはその近傍に送達すること、または(c)本開示の第2の態様による一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、標的位置もしくはその近傍に送達すること、を含む、方法を提供する。
【0056】
本開示の第7の態様の方法は、例えば、治療を必要とする対象における細菌感染を治療する方法であり得る。対象は、例えば、ヒト対象または他の哺乳類対象であり得る。細菌感染は、例えば、バクテリア感染、ウイルス感染、真菌感染、微小寄生虫感染、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0057】
本開示の第7の態様の方法は、例えば、対象に対して実施される血管拡張の方法であり得る。対象は、例えば、ヒト対象または他の哺乳類対象であり得る。
【0058】
本開示の第7の態様の方法は、例えば、抗細菌方法であり得る。抗細菌方法は、ある場所において、細菌、例えばバクテリア、ウイルス、真菌細胞、及び/または微小寄生生物の数を低減して、それらの増殖を防止するか、またはそれらの増殖速度を制限することであり得る。そのような方法によって標的とされる細菌は、例えば、浮遊性の細胞もしくは粒子であり得るか、またはバイオフィルムもしくは他のコロニーとして存在し得る。本開示によって標的とされる浮遊性または非浮遊性に関わらず、任意の細菌集団は、1つの細菌種もしくは株からなり得るか、または2つ以上の種もしくは株を含み得る。
【0059】
第8の態様によれば、本開示は、治療に使用するための、本開示の第5の態様による組
み合わせ、キット、もしくは組成物、または本開示の第2の態様による一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を提供する。
【0060】
本開示の第8の態様による使用のための、組み合わせ、キット、または組成物、または一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体は、例えば、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、対象またはその中の内部空間に送達する治療方法での使用であり得、方法が、(a)本開示の第5の態様による組み合わせもしくは組成物を、対象、もしくは内部空間、もしくはその近傍に投与すること、または(b)本開示の第1もしくは第3の態様による方法を使用するか、もしくは本開示の第4の態様による使用を実施するか、もしくは本開示の第5の態様による組み合わせ、キット、もしくは組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、対象、もしくは内部空間、もしくはその近傍に送達すること、または(c)本開示の第2の態様よる一酸化窒素、任意選択的に、他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、対象、もしくは内部空間、もしくはその近傍に送達すること、を含む。
【0061】
本開示によれば、3日後にM.abscessusを最大100%死滅させること、及び/またはM.tuberculosis、H1N1インフルエンザウイルス、SARS-CoVウイルス、及びSARS-CoV-2ウイルスを死滅させることによって証明される、生物静力学的効果及び殺生物効果の観点から良好な抗細菌活性が、プロトン源が、5~8の範囲の初期pHを有するクエン酸(有機カルボン酸)またはアスコルビン酸(有機非カルボン酸還元性酸)である場合にも提供されることが驚くべきことに見出された。本明細書における「初期pH」という表現は、その初期pHに影響を及ぼすであろう反応混合物の他の構成成分が存在する前に、任意の所望のpH緩衝液を含むプロトン源の初期に形成される水溶液のpHを指す。この抗細菌効果は、1つ以上の有機ポリオールの存在に依存しないが、1つ以上の有機ポリオール、例えば、マンニトールまたはソルビトールの存在によって向上されるように思われる。酸(例えば、クエン酸またはアスコルビン酸)が、5~8の範囲の初期pHを有するNOx生成反応生成物からの強力な抗細菌効果の発見は特に驚くべきものであり、結核、多剤耐性結核、及び非結核性マイコバクテリウム属感染を含む、治療が困難である及び/または抗生物質に耐性であるものを含む、呼吸器及び肺感染の治療における有望な用途を提供する。5~8の範囲のpHで、反応混合物、またはその構成成分、またはその前駆体を含有するネブライザーで投与される水性組成物の吸入を介した、そのような感染の治療を提案することができる。「広範な」治療として知られている、バクテリア、ウイルス、真菌、及び寄生虫の群のうちの2つ以上からの病原体を潜在的に含む、複数の病原体を含む感染の治療(療法的及び/または予防的治療、ならびに病原体の拡散を防止するための生物及び非生物表面、及び空間のインビトロ治療を含む)もまた、本発明によって可能になる。
【0062】
第9の態様によれば、本開示は、第7の態様による抗細菌方法の修正版を提供し、方法が、(a)本開示の第5の態様による組み合わせもしくは組成物を、標的とする細菌、もしくはその近傍、もしくは細菌に感染した対象、もしくはそのような対象の内部空間に投与すること、または(b)本開示の第1もしくは第3の態様による方法を使用して、もしくは本開示の第4の態様による使用を実施して、もしくは本開示の第5の態様による組み合わせ、キット、もしくは組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、標的とする細菌、もしくはその近傍、もしくは細菌に感染した対象、もしくはそのような対象の内部空間に送達すること、または(c)本開示の第2の態様による一酸化窒素、任意選択的に
窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を、標的とする細菌、もしくはその近傍、もしくは細菌に感染した対象、もしくはそのような対象の内部空間に送達すること、を含み、ただし、pH、または1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHに影響を及ぼすであろう、NOx生成反応混合物の他の構成成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pHが、5~8の範囲にあり、1つ以上のポリオールが、任意選択的であり、省略してもよいことを条件とする。
【0063】
本開示の第9の態様による方法を実施する場合、本開示の第5または第8の態様による組み合わせ、キット、または組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成することができ、ただし、pH、または1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHに影響を及ぼすであろう、NOx生成反応混合物の他の構成成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pHが、5~8の範囲にあり、1つ以上のポリオールが、任意選択的であり、省略してもよいことを条件とする。
【0064】
本開示の第9の態様の方法は、例えば、治療を必要とする対象における細菌感染を治療する方法であり得る。対象は、例えば、ヒト対象または他の哺乳類対象であり得る。細菌感染は、例えば、バクテリア感染、ウイルス感染、真菌感染、微小寄生虫感染、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。細菌感染は、粘膜を含む対象の皮膚上に存在し得る。本発明による細菌感染は、対象の内部空間、例えば、対象の鼻、口、呼吸器、肺、または肺胸膜の内層に存在し得る。
【0065】
ヒトまたは動物の体に投与される、本開示の全ての態様で使用される構成成分及び混合物、ならびにヒトまたは動物の体に投与される任意の担体及び賦形剤は、好ましくは、投与時の組織の刺激及び炎症を最小限に抑えるために生体適合性であり、及び/または薬学的に許容されるであろう。
【0066】
本開示による組み合わせ、キット、及び組成物は、以下より詳細に記載されるであろう多様な好適な装置及びデバイスと共に保管及び使用され得る。本開示による方法は、好適には、以下より詳細に記載されるであろう、そのような装置及びデバイスを使用して、実施され得る。
【0067】
本開示のいずれか1つ以上の態様に関して具体的に記載される全ての実施形態、実施例、及び優先事項は、本開示のいずれか1つ以上の他の態様(複数可)に適用可能であると理解されるものである。加えて、望ましい場合、本開示の一態様による任意の方法または使用は、任意の他の態様による組み合わせ、キット、または組成物を使用して実施され得る。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本開示の態様は、特定の実施形態を参照して詳細に説明される。以下に記載の特定の実施形態は、そのような態様と明らかに互換性がない場合を除き、本開示の態様のうちのいずれかに適用され得る。特定の実施形態はまた、互換性がない場合を除き、各々に及び他の全ての特定の実施形態と組み合わせ可能である。
【0069】
亜硝酸塩及び亜硝酸塩構成成分
本開示の態様は、1つ以上の亜硝酸塩の使用を伴う。以下において、「亜硝酸塩構成成分」という用語は、1つ以上の亜硝酸塩そのもの、及び一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的に、1つ以上の亜硝酸塩を含有するその前駆体を生成するための反応系の任意の構成成分を網羅する。
【0070】
亜硝酸塩の選択は、特に限定されない。本開示の組成物に使用され得る亜硝酸塩の具体例としては、アルカリ金属亜硝酸塩またはアルカリ土類金属亜硝酸塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、1つ以上の亜硝酸塩は、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、FrNO、AgNO、Be(NO、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Mn(NO、Ba(NO、Ra(NO、及びそれらの任意の混合物から選択される。
【0071】
特定の実施形態では、亜硝酸塩は、NaNOまたはKNOである。一実施形態では、亜硝酸塩は、NaNOである。
【0072】
一実施形態では、亜硝酸塩構成成分は、本開示で使用するために、乾燥形態、任意選択的に粉末などの粒子状形態で提供され得る。望ましい場合、亜硝酸塩構成成分は、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応を制御または遅延させる目的で、カプセル化またはマイクロカプセル化され得る。乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、亜硝酸塩構成成分の保管を補助することができる。なお更に、乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、医療デバイスなどの小さい対象物への亜硝酸塩構成成分の組み込みを補助することができる。そのような対象物としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管ステント及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科手術用ネジ及びピン、ならびに他の薄い医療物品及び/またはインプラント可能な物品、ならびに吸入器(手持ち及びネブライザー)が挙げられる。更なる詳細については、以下の見出し「構成成分の任意選択的なカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」の段落を参照されたい。
【0073】
望ましい場合、任意選択的にカプセル化またはマイクロカプセル化された亜硝酸塩構成成分は、乾燥粉末もしくは結晶として、またはゲルもしくは他の担体系、例えば水性ゲルもしくはその溶液としての、例えば水性担体と関連して存在し得る。乾燥形態または粉末形態の亜硝酸塩構成成分は、使用前に水を添加することによって、簡便に溶液にすることができる。NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に酸性化の前(例えば直前)のそのような亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に酸性化の前(例えば直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.01M~約2Mの範囲にある。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に酸性化の前(例えば直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.1M~約2Mの範囲にある。より具体的な実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に酸性化の前(例えば直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.2M~約1.6Mの範囲にある。実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に酸性化の前(例えば直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、0.8~1.2Mの範囲にあり得る。例えば、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)、特に有機カルボン酸構成成分との組み合わせの前(例えば直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M、または約1.7Mであり得る。
【0074】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせる行為は、当業者に周知であるように、各溶液中の各溶質または溶質の組み合わせの濃度の希釈を引き起こすであろうことに留意されたい。例えば、等体積の溶質A及びBの2つの1Mの溶液を混合する行為は、Aの濃度の0.5Mへの変化、Bの濃度の0.5Mへの変化を引き起こす。別段記
述または暗示されない限り、本明細書に記載の亜硝酸塩の濃度は、液体、例えば溶液として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)の初期溶液中の濃度である。NOx生成反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の構成成分及びその調製方法を知っていることによって容易に導出することができる。
【0075】
望ましい場合、亜硝酸塩構成成分は、乾燥形態であるかまたは担体液中であるかに関わらず、1つ以上のポリオールまたはそのようなポリオールのうちのいくつかを含み得る。
【0076】
亜硝酸塩構成成分が、ゲルまたは他の担体系、例えば水性ゲルまたは溶液としての、例えば水性担体中に保管されることが望ましい場合、亜硝酸塩を含有する系は、保管中に亜硝酸塩の分解を防止するのに好適なpHまで緩衝されることが好ましい。約6~9、例えば約7のpHが好ましい。
【0077】
亜硝酸塩構成成分は、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成することが所望されるまで、プロトン源と接触させないことが好ましい。この理由により、亜硝酸塩構成成分は、好ましくは、キット、装置、またはデバイスのリザーバまたは容器に保持される。しかしながら、代替的に、亜硝酸塩構成成分、プロトン源、及び1つ以上のポリオールの乾燥構成成分を、乾燥組成物、例えば、粒子状混合物として保持すること、ならびに水または別の好適な溶媒もしくは液体担体を単純に添加することによって反応を開始させることが可能であり得る。
【0078】
亜硝酸塩は、薬学的に許容されるグレードの亜硝酸塩であり得る。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩は、薬局方グレードである。換言すると、亜硝酸塩は、亜硝酸塩のための1つ以上の有効な薬局方研究論文に準拠し得る。例えば、亜硝酸塩は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方、または日本薬局方のうちの1つ以上の亜硝酸塩の研究論文に準拠し得る。
【0079】
特定の実施形態では、使用される亜硝酸塩は、その特徴について以下の限定のうちの1つ以上を有する:
(i)亜硝酸塩は、約0.02重量%、約0.01重量%、または約0.001重量%以下の炭酸ナトリウムを含有する、
(ii)亜硝酸塩は、約10ppm(0.001重量%)以下のアルキル-ナフタレンスルホン酸ナトリウムなどの固化防止剤を含有する、
(iii)亜硝酸塩は、白色からオフホワイトの固体である、
(iv)亜硝酸塩は、関連するUSPにおける関連する方法に従って決定された、カチオンについて正の同定を有する、
(v)亜硝酸塩は、関連するUSPの関連する方法に従って決定された、亜硝酸塩について正の同定試験を有する、
(vi)亜硝酸塩は、任意選択的に、関連するUSP熱量測定アッセイ、例えば、サプレッサー付き電気伝導率検出法と組み合わせたイオンクロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーによって決定して、約97重量%以上または98重量%以上の亜硝酸塩、及び/または102重量%以下または101重量%以下の亜硝酸塩を含有する、
(vii)亜硝酸塩は、25℃の10%溶液中で測定した場合、任意選択的に、関連するUSPに従って測定した場合、及び/またはpH計を使用して、約7~約9、または約8~約9のpHを有する、
(viii)亜硝酸塩は、約0.25重量%以下または約0.01重量%の乾燥減量を有する、
(ix)亜硝酸塩は、任意選択的に、カールフィッシャー方法によって測定して、約0.5重量%以下の水含有量を有する、
(x)亜硝酸塩中の重金属含有量は、約10ppm以下の重金属であり、任意選択的に
、亜硝酸塩中の重金属含有量は、約10ppm以下である、
(xi)亜硝酸塩は、約0.4重量%以下の硝酸塩を含有し、任意選択的に、亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウムである場合、約0.4重量%以下の硝酸ナトリウムを含有し、亜硝酸塩が亜硝酸カリウムである場合、約0.4重量%以下の硝酸カリウムを含有する、
(xii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下または約0.001重量%の不溶性物質を含有する、
(xiii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の塩化物を含有する、
(xiv)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下の硫酸塩を含有する、
(xv)亜硝酸塩は、約0.001重量%以下の鉄を含有する、
(xvi)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下のカルシウムを含有する、
(xvii)亜硝酸塩が亜硝酸カリウムではない場合、亜硝酸塩は、約0.005重量%以下または約0.001重量%のカリウムを含有し、亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウムではない場合、約0.005重量%以下または約0.001重量%のナトリウムを含有する、
(xviii)亜硝酸塩は、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下の有機揮発性化合物を含有する、
(xix)亜硝酸塩は、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下のエタノールを含有する、
(xx)亜硝酸塩は、約3000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下のメタノールを含有する、
(xxi)亜硝酸塩は、約50ppm以下、約25ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下、約7.9ppm以下、約8ppm以下、約6ppm以下、約5.6ppm以下、または約2.5ppm以下の非揮発性有機炭素を含有する、
(xxii)亜硝酸塩は、約0.05ppm以下の水銀を含有する、
(xxiii)亜硝酸塩は、約2ppm以下または0.2ppmのアルミニウムを含有する、
(xxiv)亜硝酸塩は、約3ppm以下または1ppmのヒ素を含有する、
(xxv)亜硝酸塩は、約0.003重量%以下または0.001重量%のセレンを含有する、
(xxvi)亜硝酸塩中の細菌負荷の総好気性菌数は、約100CFU/g以下である、
(xxvii)硝酸塩中の酵母及びカビの総数は、約20CFU/g以下である、
(xxviii)亜硝酸塩は、約0.25EU/mg以下または0.018EU/mgのバクテリアエンドトキシンを含有する、ならびに
(xxix)亜硝酸塩は、約0.1ppm未満のリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸三ナトリウムなどのリン酸塩を含有し、好ましくは、亜硝酸塩は、検出可能な量のリン酸塩を含有しない。
【0080】
ある特定の実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴のうちの2つ以上を有する。更なる実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴のうちの5つ以上を有する。更に更なる実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴のうちの10個以上を有する。更に更なる実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴のうちの15個以上を有する。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴のうちの20個以上を有する。特定の実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴の全てを有する。より具体的な実施形態では、亜硝酸塩は、(i)~(xxix)の特徴の全てを有する亜硝酸ナトリウムである。
【0081】
いくつかの実施形態では、亜硝酸塩は、任意選択的に、関連するUSP熱量測定アッセイによって決定して、例えば、サプレッサー付き電気伝導率検出法と組み合わせたイオン
クロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーによって決定して、約97重量%~約101重量%の範囲の亜硝酸塩を含有する。代替的な実施形態では、亜硝酸塩は、任意選択的に、関連するUSP熱量測定アッセイによって決定して、例えば、サプレッサー付き電気伝導率検出法と組み合わせたイオンクロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーによって決定して、約98重量%~約102重量%の範囲の亜硝酸塩を含有する
【0082】
特定の実施形態では、亜硝酸塩は、以下の特徴を有する:
(i)亜硝酸塩は、約0.02重量%以下の炭酸ナトリウムを含有する、
(ii)亜硝酸塩は、約10ppm以下の固化防止剤を含有する、
(vi)亜硝酸塩は、USP熱量測定アッセイによって決定して、97重量%以上の亜硝酸塩、及び101重量%以下の亜硝酸塩を含有する、
(viii)亜硝酸塩は、約0.25重量%以下の乾燥減量を有する、
(ix)亜硝酸塩は、約0.5重量%以下の水含有量を有する、
(x)亜硝酸塩中の重金属含有量は、約10ppm以下である、
(xi)亜硝酸塩は、約0.4重量%以下の硝酸塩を含有する、
(xii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の不溶性物質を含有する、
(xiii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の塩化物を含有する、
(xiv)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下の硫酸塩を含有する、
(xv)亜硝酸塩は、約0.001重量%以下の鉄を含有する、
(xvi)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下のカルシウムを含有する、
(xviii)亜硝酸塩は、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下の有機揮発性化合物を含有する、
(xxi)亜硝酸塩は、約10ppm以下または約2.5ppm以下の非揮発性有機炭素を含有する、
(xxii)亜硝酸塩は、約0.05ppm以下の水銀を含有する、
(xxiii)亜硝酸塩は、約2ppm以下のアルミニウムを含有する、
(xxiv)亜硝酸塩は、約3ppm以下のヒ素を含有する、
(xxv)亜硝酸塩は、約0.003重量%以下のセレンを含有する、
(xxvi)亜硝酸塩中の細菌負荷の総好気性菌数は、約100CFU/g以下である、
(xxvii)硝酸塩中の酵母及びカビの総数は、約20CFU/g以下である、ならびに
(xxviii)亜硝酸塩は、約0.25EU/mg以下のバクテリアエンドドキシンを含有する。
【0083】
これらの実施形態では、亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウムであり得、約0.005重量%以下のカリウムを含有し得る。好ましくは、亜硝酸ナトリウムはまた、以下の限定のうちの1つ以上を有する:
(iii)亜硝酸ナトリウムは、白色からオフホワイトの固体である、
(iv)亜硝酸ナトリウムは、関連するUSPにおける関連する方法に従って決定された、ナトリウムについて正の同定を有する、
(v)亜硝酸ナトリウムは、関連するUSPの関連する方法に従って決定された、亜硝酸塩について正の同定試験を有する、
(vii)亜硝酸ナトリウムは、25℃の10%溶液中で測定した場合、任意選択的に、関連するUSPに従って測定した場合、及び/またはpH計を使用して、約7~約9、または約8~約9のpHを有する、
(xix)亜硝酸ナトリウムは、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下のエタノールを含有する、
(xx)亜硝酸塩は、約3000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下、または約10ppm以下のメタノールを含有する、ならびに
(xxix)亜硝酸塩は、約0.1ppm未満のリン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、またはリン酸三ナトリウムなどのリン酸塩を含有し、好ましくは、亜硝酸塩は、検出可能な量のリン酸塩を含有しない。
【0084】
(i)~(xxix)の特徴は、USP XXXII(2009)の関連する方法に従って決定され得る。(i)~(xxix)の特徴を決定するための方法は、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2010/093746に提供されている。(i)~(xxix)の特徴のうちの1つ以上を有する亜硝酸ナトリウムを調製する方法もまた、WO2010/093746に記載されている。
【0085】
1つ以上の有機カルボン酸を含むプロトン源、及びプロトン源構成成分
本開示の態様は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源を含む。以下において、「プロトン源構成成分」という用語は、プロトン源そのもの、及び一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的に、プロトン源を含有するその前駆体を生成するための反応系の任意の構成成分を網羅する。
【0086】
この段落では、有機カルボン酸をより詳細に例示する。
【0087】
「有機カルボン酸」という表現は、本明細書において、分子内に1つ以上の-COOH基を含有する任意の有機酸を指す。有機カルボン酸は、直鎖または分岐鎖であり得る。カルボン酸は、飽和または不飽和であり得る。カルボン酸は、脂肪族または芳香族であり得る。カルボン酸は、非環式または環式であり得る。カルボン酸は、ビニロガスカルボン酸であり得る。
【0088】
有機カルボン酸は、1つ以上の置換基、例えば、1つ以上のヒドロキシル基を担持し得る。本開示で使用され得るヒドロキシル置換有機カルボン酸の例としては、α-ヒドロキシ-カルボン酸、β-ヒドロキシ-カルボン酸、及びγ-ヒドロキシ-カルボン酸が挙げられる。
【0089】
1つ以上の有機カルボン酸、または2つ以上の場合のそれらの各々は、好ましくは、約7未満、より好ましくは7.0未満のpKaを有するべきである。
【0090】
1つ以上のカルボン酸は、1つ以上の還元性カルボン酸であり得るか、それを含み得るか、またはそれからなり得る。
【0091】
カルボン酸は、ハイドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合しているペンダント-COOH基を含有する酸ハイドロゲルであり得る。そのようなカルボン酸含有ハイドロゲルの例は、例えば、それらの全ての開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2007/007115、WO2008/087411、WO2008/087408、WO2014/188174、及びWO2014/18175、ならびにそれらで参照される文書に記載されている。そのようなハイドロゲルは、典型的には、三次元ポリマーマトリックスに共有結合している酸または塩形態のペンダントカルボン酸及びスルホニル基を含む。更なる考察については、以下の見出し「構成成分の他のリザーバ:ハイドロゲル」の段落を参照されたい。
【0092】
それにも関わらず、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸のうちの少なくとも1つは、ポリマーまたは巨大分子、例えば、ハイドロゲルの
三次元ポリマーマトリックスまたは巨大分子マトリックスを形成するポリマーまたは巨大分子に共有結合していないことが一般に好ましい。理論に拘束されることを望むものではないが、証拠、例えば、見出し「有機ポリオール」の段落で以下に考察されるポリオール(複数可)の立体異性への影響の依存性の証拠は、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力を向上するための本開示の効果が、少なくとも部分的に、酸化反応時に有機ポリオール分子(複数可)が亜硝酸塩及びプロトンと相互作用する効果によって達成されることを示唆しており、ポリオール分子の影響下で反応中に反応物分子が配向及び再配置する移動性が重要であり得ることを暗示している。本開示の第8の態様などにおけるように、ポリオールが必ずしも存在しない場合でさえも、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応における反応物間の同じ移動性が重要であり得ることが推定され得る。
【0093】
有機カルボン酸は、例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ(エンボイン(emboic))酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオイン酸(lactobioic acid)、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロト酸、グリセリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、有機カルボン酸は、クエン酸、その塩、及びそれらの組み合わせから選択される。特定の一実施形態では、有機カルボン酸は、クエン酸またはその塩である。カルボン酸は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、または乳酸とグリコール酸とのコポリマーなどの、ポリマーまた重合カルボン酸であり得るか、またはそれらを含み得る。本明細書で使用される「有機カルボン酸」という用語はまた、有機カルボン酸の部分エステルもしくは完全エステルまたはその部分塩もしくは完全塩を網羅し、ただし、これらが、本発明による使用においてプロトン源として機能することができることを条件とする。
【0094】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の接触直前のプロトン源のpHを緩衝して、既知の範囲内にpHを制御し、亜硝酸塩が消費される際のpHの増加速度を制限することが好ましい。更なる詳細については、以下の見出し「pH制御、任意選択的な緩衝液系」の段落を参照されたい。特に、プロトン源の少なくとも1つの有機カルボン酸が、好適には、その共役塩基と共に存在し得ることが想定される。酸及びその共役塩基は、好適には、水性担体中で緩衝液を形成し得る。それによって、NOx生成反応が進行する際に、所望のpH、好ましくは約3~9、例えば約4~8の範囲のpH、生理学的接触、または生細胞及び生物との接触に好ましい約5~約8の範囲に維持されるように、緩衝液が選択され得る。共役塩基は、存在する場合、別個に添加され得るか、または酸及び/または塩基、好ましくは鉱物酸及び/または鉱物塩基を使用してpHを調整することによって、プロトン源からその場で生成され得る。
【0095】
pHに影響を及ぼすであろうNOx生成反応混合物の他の構成成分が添加される前の(例えば直前の)、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、または1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、好適には、約3~9、例えば約4~8、例えば約5~8の範囲にある。プロトン源に関連して本明細書で使用される「初期pH」という表現は、pHに影響を及ぼすであろうNOx生成反応混合物の他の構成成分(一部ではあるがその全てではない構成成分を含む)が添加される前(例えば直前)の、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液のpHを意味する。プロトン源の水溶液の乾燥粉末プロトン源材料または他の前駆体は、所望の初期pHを有する水溶液を生じるであろう適切な量で使用されるであろう。
【0096】
プロトン源構成成分が、ゲルまたは他の担体系、例えば水性ゲルまたは溶液としての、例えば水性担体中に保管されることが望ましい場合、プロトン源を含有する系は、保管中に酸性化を防止維持し、プロトン源の分解を防止するのに好適なpHまで緩衝されることが好ましい。約3~6、例えば約3~5のpHが好ましい。望ましい場合、pHは、プロトン源構成成分の使用の直前に塩基を添加することによって上昇させることができる。
【0097】
例えば、一部の患者は、クエン酸に対する不耐性を有する。患者を、治療前に酸に対する不耐性の可能性について試験し、それに応じて酸構成成分を選択するべきである。
【0098】
一実施形態では、プロトン源構成成分またはその部分は、本開示において使用するために、乾燥形態、任意選択的に粉末などの粒子状形態で提供され得る。望ましい場合、プロトン源構成成分またはその部分は、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応を制御または遅延させる目的で、カプセル化またはマイクロカプセル化され得る。プロトン源が、室温で通常液体またはゲル状態を有する場合、カプセル化形態が特に使用され得る。乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、プロトン源構成成分の保管を補助することができる。なお更に、乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、医療デバイスなどの小さい対象物へのプロトン源構成成分の組み込みを補助することができる。そのような対象物としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管ステント及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科手術用ネジ及びピン、ならびに他の薄い医療物品及び/またはインプラント可能な物品が挙げられる。更なる詳細については、以下の見出し「構成成分の任意選択的なカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」の段落を参照されたい。
【0099】
望ましい場合、任意選択的にカプセル化またはマイクロカプセル化された1つ以上の有機カルボン酸は、乾燥粉末もしくは結晶として、またはゲルもしくは他の担体系、例えば水性ゲルもしくはその溶液としての、例えば水性担体と関連して、プロトン源構成成分中に存在し得る。乾燥形態または粉末形態の有機カルボン酸を含有するプロトン源構成成分は、使用前に水を添加することによって、簡便に溶液にすることができる。NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分を添加する前(例えば直前)、特に亜硝酸塩との反応の開始前(例えば直前)の、(存在する任意の有機非カルボン酸還元性酸を含む)そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の構成成分を添加する前(例えば直前)、特に亜硝酸塩との反応の開始前(例えば直前)の、そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、約0.01M~約2Mの範囲にある。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前の、そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、約0.1M~約2Mの範囲にある。より具体的な実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前の、そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、約0.2M~約1.6Mの範囲にある。実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前の、そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、0.8~1.2Mの範囲にあり得る。例えば、亜硝酸塩との反応の開始前の、そのような溶液中の総プロトン源のモル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M、または約1.7Mであり得る。
【0100】
本明細書で使用される「総プロトン源のモル濃度」、「総プロトン源の濃度」などの表現は、プロトン(H)ドナー部分または(2つ以上が存在する場合)複数のプロトン()ドナー部分のうちの少なくとも1つが、優先的にプロトン化される、すなわちモル基準で50%超がプロトン化されるpHで、本発明に従ってプロトン源として使用される有機カルボン酸(複数可)及び/または有機非カルボン酸(複数可)のいずれかの濃度を指すと理解されるべきである。換言すると、NOx生成反応の開始前に、pHが、より高い
pHまで調整され、それによって、プロトン化の程度が低減する場合、総プロトン源のモル濃度または濃度は、それに応じて低減するとみなされない。
【0101】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせる行為は、当業者に周知であるように、各溶液中の各溶質または溶質の組み合わせの濃度の希釈を引き起こすであろうことに留意されたい。例えば、等体積の溶質A及びBの2つの1Mの溶液を混合する行為は、Aの濃度の0.5Mへの変化、Bの濃度の0.5Mへの変化を引き起こす。別段記述または暗示されない限り、本明細書に記載のプロトン源の濃度は、液体、例えば溶液として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)の初期溶液中の濃度である。NOx生成反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の構成成分及びその調製方法を知っていることによって容易に導出することができる。
【0102】
乾燥形態または粉末形態のプロトン源構成成分は、使用前に水を添加することによって、簡便に溶液にすることができる。
【0103】
望ましい場合、1つ以上の有機カルボン酸は、乾燥形態または担体液中であるかに関わらず、1つ以上のポリオールまたはそのようなポリオールのうちのいくつかとの混和物または溶液中に存在し得る。
【0104】
亜硝酸塩構成成分は、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成することが所望されるまで、プロトン源と反応可能に接触させないことが好ましい。この理由により、プロトン源構成成分またはその一部分は、好ましくは、キット、装置、またはデバイスのリザーバまたは容器に保持される。しかしながら、代替的に、1つ以上の亜硝酸塩、または亜硝酸塩構成成分、プロトン源、及び1つ以上のポリオールの乾燥構成成分を、乾燥組成物、例えば、粒子状混合物として保持すること、ならびに水または別の好適な溶媒もしくは液体担体を単純に添加することによって反応を開始させることが可能であり得る。
【0105】
1つ以上の有機非カルボン酸還元性酸を含むプロトン源構成成分
1つ以上の有機カルボン酸を含むか、またはそれらからなるプロトン源構成成分の上の考察は、1つ以上の有機非カルボン酸還元性酸を含むか、またはそれらからなるプロトン源構成成分に類似して適用される。この段落では、有機非カルボン酸還元性酸をより詳細に例示する。
【0106】
「有機非カルボン酸還元性酸」という表現は、本明細書において、分子内に-COOH基を含有しない任意の有機還元性酸を指す。有機非カルボン酸還元性酸は、直鎖または分岐鎖であり得る。非カルボン酸還元性酸は、飽和または不飽和であり得る。非カルボン酸還元性酸は、脂肪族または芳香族であり得る。非カルボン酸還元性酸は、非環式または環式であり得る。非カルボン酸還元性酸は、ビニロガスであり得る。
【0107】
1つ以上の有機非カルボン酸還元性酸、または2つ以上の場合のそれらの各々は、好ましくは、約7未満、より好ましくは7.0未満のpKaを有するべきである。
【0108】
上に説明された理由で、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸のうちの少なくとも1つは、ポリマー分子、例えば、ハイドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合していないことが一般に好ましい。
【0109】
有機非カルボン酸還元性酸は、例えば、アスコルビン酸;アスコルビン酸パルミチン酸(パルミチン酸アルコルビル);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアス
コルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸、及び6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアスコルビン酸塩誘導体;還元酸などの酸性レダクトン;エリソルビン酸;シュウ酸;それらの塩;ならびにそれらの組み合わせから選択され得る。特定の一実施形態では、有機非カルボン酸還元性酸は、アスコルビン酸またはその塩である。
【0110】
有機非カルボン酸還元性酸は、1つ以上の置換基、例えば、1つ以上のヒドロキシル基を担持し得る。本開示で使用され得るヒドロキシル置換有機非カルボン酸還元性酸の例としては、酸性レダクトン、例えば還元酸(2.3-ジヒドロキシ-2-シクロペンタノン)が挙げられる。
【0111】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の接触後のプロトン源及び/または反応混合物のpHを緩衝して、既知の範囲内にpHを制御し、亜硝酸塩が消費される際のpHの増加を制御することが好ましい。更なる詳細については、以下の見出し「pH制御、任意選択的な緩衝液系」の段落を参照されたい。特に、プロトン源の少なくとも1つの有機非カルボン酸還元性酸が、好適には、その共役塩基と共に存在し得ることが想定される。酸及びその共役塩基は、好適には、水性担体中で緩衝液を形成し得る。それによって、NO生成反応が進行する際に、所望のpH、好ましくは約3~9、例えば約4~8の範囲のpH、生理学的接触、または生細胞及び生物との接触に好ましい約5~約8の範囲に維持されるように、緩衝液が選択され得る。共役塩基は、存在する場合、別個に添加され得るか、または酸及び/または塩基、好ましくは鉱物酸及び/または鉱物塩基を使用してpHを調整することによって、プロトン源からその場で生成され得る。
【0112】
pHに影響を及ぼすであろうNOx生成反応混合物の他の構成成分が添加される前の(例えば直前の)、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、または1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、好適には、約3~9、例えば約4~8、例えば約5~8の範囲にある。プロトン源の水溶液の乾燥粉末プロトン源材料または他の前駆体は、所望の初期pHを有する水溶液を生じるであろう適切な量で使用されるであろう。
【0113】
プロトン源構成成分が、ゲルまたは他の担体系、例えば水性ゲルまたは溶液としての、例えば水性担体中に保管されることが望ましい場合、プロトン源を含有する系は、保管中に酸性化を防止維持し、プロトン源の分解を防止するのに好適なpHまで緩衝されることが好ましい。約3~6、例えば約3~5のpHが好ましい。望ましい場合、pHは、プロトン源構成成分の使用の直前に塩基を添加することによって上昇させることができる。
【0114】
シュウ酸など一部の還元性酸は、有毒である。酸構成成分は、それに応じて選択されるべきである。
【0115】
1つ以上の有機非カルボン酸還元性酸は、上述の様式で、1つ以上の有機カルボン酸に加えて、またはその代わりに、プロトン源構成成分において使用され得る。更なる詳細については、見出し「1つ以上の有機カルボン酸を含むプロトン源、及びプロトン源構成成分」の段落を参照されたい。
【0116】
有機ポリオール及び有機ポリオール構成成分
本開示の態様は、1つ以上の有機ポリオールを含む。以下において、「有機ポリオール構成成分」または「ポリオール構成成分」という用語は、有機ポリオールそのもの、及び一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的に、有機ポリオールを含有するその前駆体を生成するための反応系の任意の構成成分を網羅する。
【0117】
本明細書における「有機ポリオール」という表現は、プロトン源ではなく、糖または多糖ではない(「糖」及び「多糖」としては、オリゴ糖、グリカン、及びグリコサミノグリカンが挙げられる)、特に亜硝酸塩反応のための2つ以上のヒドロキシル基を有する有機分子を指す。したがって、有機ポリオールは、約7以上、例えば7.0以上のpKaを有するであろう。
【0118】
本明細書における「有機ポリオール」という表現は、好ましくは、還元剤を除外する。したがって、その全ての態様における本発明の一実施形態では、有機ポリオールは、還元剤を除外する。2つ以上のヒドロキシル基を有する有機分子であり、糖または多糖ではない還元剤の例は、チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸、及びエリソルビン酸塩である。したがって、チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルビン酸塩、及びエリソルビン酸塩は、それらが還元剤であるので、好ましくは、「有機ポリオール」という表現から除外される。いずれにせよ、アスコルビン酸及びエリソルビン酸は、特に亜硝酸塩反応のためのプロトン源であるので、表現から除外される。疑義を回避するために、プロトン源である還元剤、例えば、アスコルビン酸及び/またはエリソルビン酸が、本発明のプロトン源、または本発明のプロトン源構成成分、組み合わせ、キット、組成物、使用、方法、もしくは任意の他の部分、及びそれらがプロトン源として存在する実用化される手段から除外されないことを確認する。
【0119】
有機ポリオールは、環式もしくは非環式であり得るか、または1つ以上の環式有機ポリオールと1つ以上の非環式有機ポリオールとの混合物であり得る。例えば、1つ以上の有機ポリオールは、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のアルカン、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のシクロアルカン、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のシクロアルキルアルカン、及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。最も好ましくは、有機ポリオールは、OH以外のいかなる置換基も担持しない。
【0120】
好ましくは、1つ以上の有機ポリオールは、1つ以上の非環式有機ポリオールである。好ましい1つ以上の非環式有機ポリオールは、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子を有する糖アルコールから選択される。好ましい1つ以上の非環式有機ポリオールは、アルジトール、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子を有するアルジトールから選択される。1つ以上の有機ポリオールが、サポニン、サポゲニン、ステロイド、またはステロイド性グリコシドを含まないことが好ましい。
【0121】
代替的に、1つ以上の有機ポリオールは、1つ以上の環式有機ポリオールであり得る。これらの実施形態では、1つ以上の環式有機ポリオールは、環式糖アルコールまたは環式アルジトールであり得る。例えば、1つ以上の環式ポリオールは、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12個の炭素原子を有する環式糖アルコール、または4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12個の炭素原子を有する環式アルジトールであり得る。環式ポリオールの特定の例は、イノシトールである。
【0122】
いくつかの実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、7つ以上のヒドロキシ基を有する。特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、7つ以上のヒドロキシ基を有する糖アルコールまたはアルジトールである。より具体的な実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9つ以上のヒドロキシ基を有する。更なる実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9つ以上のヒドロキシ基を有する糖アルコールまたはアルジトールである。いくつかの実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、20個以下のヒドロキシル
基を有する。特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、20個以下のヒドロキシ基を有する糖アルコールまたはアルジトールである。より具体的な実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、15個以下のヒドロキシル基を有する。更なる実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、15個以下のヒドロキシル基を有する糖アルコールまたはアルジトールである。1つ以上の有機ポリオールは、7~20の範囲、より具体的には9~15の範囲のヒドロキシル基の数を有し得る。ある特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9、12、15、または18個のヒドロキシ基を含む。
【0123】
好ましくは、1つ以上の有機ポリオールは、例えば、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む、例えばそれらからなる糖アルコール化合物である。1つ以上の有機ポリオールは、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位の直鎖、または1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位の分岐鎖を含む、例えば、それらからなる糖アルコール化合物であり得る。
【0124】
本明細書で使用される単糖単位は、化合物中の少なくとも1つの他の単位(別の単糖単位または非環式糖アルコール単位に関わらない)に共有結合している単糖を指す。本明細書で使用される非環式糖アルコール単位は、化合物中の少なくとも1つの他の単位(単糖単位または別の非環式糖アルコール単位に関わらない)に共有結合している非環式糖アルコールを指す。化合物中の単位は、エーテル結合を通じて連結され得る。いくつかの実施形態では、単糖単位のうちの1つ以上は、グリコシド結合を通じて化合物の他の単位に共有結合している。特定の実施形態では、単糖単位の各々は、グリコシド結合を通じて化合物の他の単位に共有結合している。ある特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、単糖を有するグリコシド、またはオリゴ糖グリコン、及び非環式糖アルコールアグリコンである。
【0125】
好ましい非環式糖アルコール単位は、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子を有する糖アルコール単位である。特定の実施形態では、非環式糖アルコール単位は、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、及びボレミトールの単位からなる群から選択される。
【0126】
特定の実施形態では、単糖単位のうちの1つ以上は、CまたはC単糖単位である。換言すると、単糖単位のうちの1つ以上は、ペントースまたはヘキソース単位である。より具体的な実施形態では、各単糖単位は、CまたはC単糖単位である。特定の実施形態では、糖アルコール単位のうちの1つ以上は、CまたはC糖アルコール単位である。より具体的な実施形態では、各糖アルコール単位は、CまたはC糖アルコール単位である。
【0127】
ある特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、n個の単糖単位及びm個の非環式糖アルコール単位を含み、例えば、それらからなり、nが、整数かつ少なくとも1であり、mが、整数かつ少なくとも1であり、かつ(n+m)が、10以下である。ある特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、1つの非環式糖アルコール単位で終端するn個の単糖単位の鎖を含み、例えば、それからなり、nが、1~9の整数である。これらの実施形態では、単糖単位の鎖は、グリコシド結合によって共有結合し得る。特定の実施形態では、各単糖単位は、グリコシド結合によって別の単糖単位または非環式糖アルコール単位に共有結合している。ある特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、1つの非環式アルコール単位で終端する1、2、または3つの単糖単位の鎖を含み、例えばそれからなり、1、2、3つ、または各々の単糖単位は、CまたはC単糖単位であり得る。非環式アルコール単位は、CまたはC糖アルコール単位であり得る。糖アルコール化合物の例としては、限定されないが、イソマルト、マルチトール、及びラクチトール(n=1);
マルトトリイトール(n=2);及びマルトテトライトール(n=3)が挙げられる。
【0128】
そのような糖アルコール化合物は、二糖またはオリゴ糖に由来する糖アルコールとして記載され得る。本明細書で使用される場合、オリゴ糖は、3~10個の単糖単位からなる糖を指す。二糖またはオリゴ糖に由来する糖アルコールは、二糖、オリゴ糖、または多糖から(例えば、加水分解及び水素化から)合成(例えば、水素化)され得るが、二糖、オリゴ糖、または多糖から合成される化合物に限定されない。例えば、二糖に由来する糖アルコールは、単糖及び糖アルコールの脱水反応から形成され得る。1つ以上の有機ポリオールは、二糖、三糖、または四糖に由来する糖アルコールであり得る。二糖に由来する糖アルコールの例としては、限定されないが、イソマルト、マルチトール、及びラクチトールが挙げられる。三糖に由来する糖アルコールの例としては、限定されないが、マルトトリイトールが挙げられる。四糖に由来する糖アルコールの例としては、限定されないが、マルトテトライトールが挙げられる。
【0129】
好適な有機ポリオールとして、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される任意のものが言及され得る。使用され得、存在する場合、グリセロールは、好ましくは、1つ以上の他の有機ポリオール、例えば、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、またはそれらの任意の組み合わせと関連する。
【0130】
多くの有機ポリオールは、1つ以上のキラル中心を含有し、したがって立体異性体形態で存在する。有機ポリオールの全ての立体異性体形態及び光学異性体及び異性体混合物が、本開示及び特許の範囲内に含まれることが意図される。特に、全てのキラル有機ポリオールのD及び/またはL形態、ならびにそれらの全ての混合物が使用され得る。
【0131】
興味深いことに、本開示におけるポリオールの使用の効果は、立体化学に依存することが見出されている。したがって、本開示で使用するための1つ以上の有機ポリオールの光学異性体形態または光学異性体混合物の選択は、少なくともNO生成量の観点から、亜硝酸塩とプロトン源との間の反応の結果に影響を及ぼし得る。
【0132】
例えば、ソルビトールは、1つのヒドロキシル基の配向において互いに異なる、マンニトールの立体異性体である。以下の実施例2D及び2E(図5及び6)に示されるように、亜硝酸塩とプロトン源との間の反応の出力に対するソルビトール及びマンニトールの効果は、同一の反応系において異なる。
【0133】
特定の実施形態では、有機ポリオールは、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、及びそれらの任意の組み合わせの群から選択される。アラビトールは、DもしくはLアラビトール、またはそれらの混合物であり得る。キシリトールは、DもしくはLキシリトール、またはそれらの混合物であり得る。ソルビトールは、DもしくはLソルビトール、またはそれらの混合物であり得る。マンニトールは、DもしくはLマンニトール、またはそれらの混合物であり得る。
【0134】
特定の実施形態では、1つ以上のポリオールは、本明細書に記載の1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位(二糖またはオリゴ糖に由来する糖アルコールを含む)を含む、例えばそれらからなる、糖アルコール化合物であり、本明細書に記載の系
、方法、組み合わせ、キット、及び組成物で使用される場合、結核バクテリアの治療または結核菌の数を低減するための抗細菌方法で使用するためのものであるか、治療または方法のためのものである。
【0135】
一実施形態では、有機ポリオール構成成分は、本開示で使用するために、乾燥形態、任意選択的に粉末などの粒子状形態で提供され得る。望ましい場合、有機ポリオールは、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応におけるポリオールの関与を制御または遅延させる目的で、カプセル化またはマイクロカプセル化され得る。有機ポリオールが、室温で通常液体またはゲル状態を有する場合、カプセル化形態が特に使用され得る。乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、有機ポリオール構成成分の保管を補助することができる。なお更に、乾燥形態及び/またはカプセル化は、単独で、または本開示による一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分との混和物であるかに関わらず、医療デバイスなどの小さい対象物への有機ポリオール構成成分の組み込みを補助することができる。そのような対象物としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管ステント及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科手術用ネジ及びピン、ならびに他の薄い医療物品及び/またはインプラント可能な物品が挙げられる。更なる詳細については、以下の見出し「構成成分の任意選択的なカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」の段落を参照されたい。
【0136】
代替的に、有機ポリオール構成成分は、担体媒体、例えば、水性担体液体またはゲル担体を含み得る。有機ポリオールが、室温で通常液体である場合、追加の担体構成成分を全く含まずにそれ自体で使用され得るか、または1つ以上の担体添加剤、例えば、水との混和物で使用され得る。
【0137】
望ましい場合、任意選択的にカプセル化またはマイクロカプセル化された1つ以上の有機ポリオールは、乾燥粉末もしくは結晶として、またはゲルもしくは他の担体系、例えば水性ゲルもしくはその溶液としての、例えば水性担体と関連して、ポリオール構成成分中に存在し得る。乾燥形態または粉末形態の有機ポリオールを含有するポリオール構成成分は、使用前に水を添加することによって、簡便に溶液にすることができる。亜硝酸塩との反応の開始前の、そのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、ポリオールの、または溶液中の各ポリオールの飽和限界までの任意の濃度であり得る。例えば、合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のそのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、約0.01M~約2Mの範囲にある。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のそのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、約0.1M~約2Mの範囲にある。より具体的な実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のそのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、約0.2M~約1.6Mの範囲にある。実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のそのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、0.8~1.2Mの範囲にあり得る。例えば、亜硝酸塩との反応の開始前のそのような溶液中の合計1つ以上のポリオールのモル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M、または約1.7Mであり得る。
【0138】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせる行為は、当業者に周知であるように、各溶液中の各溶質または溶質の組み合わせの濃度の希釈を引き起こすであろうことに留意されたい。例えば、等体積の溶質A及びBの2つの1Mの溶液を混合する行為は、Aの濃度の0.5Mへの変化、Bの濃度の0.5Mへの変化を引き起こす。別段記述または暗示されない限り、本明細書に記載の有機ポリオールの濃度は、液体、例えば溶液として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の構成成分の添加前(例えば直前)
の初期溶液中の濃度である。NOx生成反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の構成成分及びその調製方法を知っていることによって容易に導出することができる。
【0139】
乾燥形態または粉末形態のポリオール構成成分は、使用前に水を添加することによって、簡便に溶液にすることができる。
【0140】
望ましい場合、ポリオールは、乾燥形態または担体液中であるかに関わらず、1つ以上の亜硝酸塩、またはプロトン源、またはそのようなプロトン源のうちのいくつかとの混和物または溶液中に存在し得る。
【0141】
使用前に一酸化窒素を生成するための反応の他の構成成分から分離して亜硝酸塩が保持される特定の実施形態では、亜硝酸塩構成成分が、1つ以上のポリオールを含み得る。これらの実施形態では、有機カルボン酸構成成分は、ポリオールを実質的に含まない場合がある。代替的な実施形態では、有機カルボン酸構成成分は、1つ以上のポリオールを含む。これらの実施形態では、亜硝酸塩構成成分は、ポリオールを実質的に含まない場合がある。更なる実施形態では、有機カルボン酸構成成分及び亜硝酸塩構成成分は各々、2つの構成成分間で同じであっても異なっていてもよい1つ以上のポリオールを含み得る。
【0142】
別の実施形態では、有機カルボン酸構成成分及び亜硝酸塩構成成分は、ポリオールを実質的に含まない場合があり、1つ以上のポリオールは、別個のポリオール構成成分に含まれ得る。
【0143】
反応混合物中の亜硝酸塩、プロトン源、及び任意のポリオールの相対濃度
NOx生成反応の開始時(または開始前)のポリオール構成成分中または反応溶液中のいずれかの1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、好適には、亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍、例えば、亜硝酸塩構成成分中または反応溶液中の亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.3~約1.2倍であり得る。1つ以上の有機ポリオールと亜硝酸イオンとの間の同じ相対モル濃度は、好適には、本発明による組み合わせもしくはキットの構成成分、または本発明による組成物において、NOx生成反応の開始前(例えば、開始直前)に提供される。
【0144】
NOx生成反応の開始時(または開始前)のポリオール構成成分中または反応溶液中のいずれかの1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、好適にはプロトン源の総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば、プロトン源構成成分中または反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の約0.1~約2倍であり得る。1つ以上の有機ポリオールとプロトン源との間の同じ相対モル濃度は、好適には、本発明による組み合わせもしくはキットの構成成分、または本発明による組成物において、NOx生成反応の開始前(例えば、開始直前)に提供される。
【0145】
任意選択な追加の構成成分
本開示で使用するための組み合わせ、キット、または組成物は、様々な希釈剤、担体、及び賦形剤に組み込まれ得、及び/またはそれらが使用される組み合わせ、キット、もしくは組成物に1つ以上の特定の利益を提供することを意図した1つ以上の追加の構成成分、特定の機能的構成成分と関連して提供され得る。そのような希釈剤、担体、賦形剤、及び/または追加の構成成分は、一般に、インビボでの使用が望まれる場合、生理学的に適合可能であろう。
【0146】
好適な生理学的に適合する希釈剤、担体、及び/または賦形剤の例としては、限定されないが、ラクトース、デンプン、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウ
ム(sodium crosscarmellose)、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0147】
一般に、意図される投与モードに応じて、薬学的製剤は、約0.005重量%~約95重量%、好ましくは約0.5重量%~約50重量%の本発明の組み合わせもしくは組成物、またはそれらの構成成分を含有するであろう。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に既知であるか、または明らかであろう。
【0148】
賦形剤は、意図された使用または投与経路に応じて既知の賦形剤から選択され得、それによって、反応物及び/または反応生成物は、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体の送達のために標的部位に送達されるものである。例えば、クリーム、ローション、及び軟膏は、亜硝酸塩をクリーム、ローション、及び軟膏基剤などの賦形剤、または他の増粘剤及び粘化剤(例えば、Eudragit L100、カルボポール、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシメチルセルロース)に組み込むことによって製剤化され得る。プロトン源は、カルボポール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロースから選択される賦形剤に、または水性基剤中に組み込まれ得る。フィルムを形成することが望ましい場合、例えば、プロピレングリコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ゼラチン、グアーガム、及びシェラックなどのフィルム形成賦形剤が使用され得る。
【0149】
任意選択的な追加の構成成分は、例えば、甘味剤、矯味剤、増粘剤、粘化剤、湿潤剤、潤滑剤、結合剤、フィルム形成剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、着色剤、臭気剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、薬学的に活性な薬剤、及び防腐剤から選択され得る。そのような構成成分は、当技術分野で周知であり、それらの詳細な考察は、当業者には必要ではない。湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、結合剤、及び可溶化剤などの補助物質の例としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなどが挙げられる。甘味剤または矯味剤としては、例えば、糖、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム、または味覚、後味、不快な塩味、酸味、もしくは苦味の感覚に有益な影響を及ぼし、(例えば、咳もしくは喉の痛み、または送達される用量を低減し得るか、もしくは処方された治療レジメンに対する患者のコンプライアンスに悪影響を及ぼし得るなどの、他の望ましくない副作用を引き起こすことによる)経口もしくは吸入製剤のレシピエントを刺激する傾向を低減する他の化合物を挙げることができる。ある特定の矯味剤は、亜硝酸塩のうちの1つ以上と複合体を形成し得る。増粘剤、粘化剤、及びフィルム形成剤の例は、上に提供している。
【0150】
薬学的に活性な薬剤及び他の追加の構成成分、例えば、希釈剤、担体、及び賦形剤として機能するものの選択は、関連する疾患または医療的状態の治療レジメンに対するその好適性、ならびに本開示による組み合わせまたは組成物の所望の投与経路によって決定され得る。Martindale,39th Edition(2017)、the Merck Index,15th Edition(2013)、Goodman&Gilman’s“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,13th Edition(2017)、the British National Formulary on-line(https://bnf.nice.org.uk/),Remington:“The Science&Practice of Pharmacy”,22nd Edition(2012)、またはthe Physician’s Desk Reference,71st Edition(2017)などの標準的な参考文献を参照してもよい。
【0151】
本開示による構成成分及び組成物が、治療目的のために動物(ヒトを含む)対象に投与され得る投与経路の例としては、局所(例えば、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペースト、エモリエント、スプレー)、耳腔、鼻(例えば、スプレー)、膣、直腸(例えば、坐薬)、経口(例えば、ミスト、スプレー、マウスウォッシュ、エアロゾル)、経腸(例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、カプセル、シロップ、エリキシル)、及び非経口(例えば、注射液)、眼、耳、鼻、もしくは喉(例えば、ドロップ)、または呼吸器もしくは肺(例えば、ミスト、エアロゾル、粉末吸入)を介するものが挙げられる。
【0152】
本開示による構成成分及び組成物に組み込まれ得るか、または構成成分及び組成物と同時投与され得る薬学的に活性な薬剤の例としては、抗生物質、ステロイド、麻酔薬(例えば、リグノカイン(リドカイン)、アメソカイン(テトラカイン)、キシロカイン、ブピバカイン、プリロカイン、ロピファカイン(ropivfacaine)、ベンゾカイン、メピボカイン(mepivocaine)、コカイン、またはそれらの任意の組み合わせなどの局所麻酔薬)、鎮痛剤、抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID))、抗感染剤、ワクチン、免疫抑制剤、抗痙攣剤、抗認知症薬物、プロスタグランジン、解熱剤、抗真菌剤(anticycotics)、抗乾癬剤、抗ウイルス剤、血管拡張剤もしくは血管収縮剤、日焼け止め調製物(例えば、PABA)、抗ヒスタミン剤、エストロゲン、プロゲステロン、もしくはアンドロゲンなどのホルモン、抗脂漏剤(antiseborrhetic agent)、アルファもしくはベータ遮断薬などの心血管治療剤、またはロガイン、ビタミン、皮膚軟化剤、酵素、マスト細胞安定化剤、殺疥癬虫剤、殺シラミ剤、角質溶解剤、潤滑剤、麻薬、シャンプー、抗ニキビ調製物、やけど治療調製物、洗浄剤、脱臭剤、脱色剤、おむつ(オムツ)湿疹治療製品、エモリエント、保湿剤、光感作性薬剤、ツタウルシもしくはアメリカツタウルシもしくはスマック製品、日焼け治療調製物、タンパク質、ペプチド、プロテオグリカン、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(DNA、RNAなど)、鉱物、成長因子、タール含有調製物、蜂蜜含有調製物(例えば、マヌカハニーを含有する調製物)、いぼ治療調製物、湿布、創傷ケア製品、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0153】
具体的な例としては、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、アセチルサリチル酸、パラセタモール、プロプラノロール、メトプロロール、及びオキシコドンなどの鎮痛剤;甲状腺放出ホルモン;エストラゲン、プロゲステロン、及びテストステロンなどの性ホルモン;インスリン;ベラパミル;バソプレッシン;ヒドロコルチゾン;スコポラミン;ニトログリセリン;二硝酸イソソルビド(isosorbide dintirate);テルフェナジンなどの抗ヒスタミン剤;クロニジン;ニコチン;シクロスポリン、メトトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸塩、シクロホスファミド、TNF-αアンタゴニスト、及び抗IL5、-IL4Ra、-IL6、-IL13、-IL17、-IL23サイトカインモノクローナル抗体などの非ステロイド性免疫抑制薬物;抗痙攣剤;ならびにアパモルフィン(apamorphine)及びアポラミン及びリバスチグミンなどのアルツハイマー病、認知症、及び/またはパーキンソン病のための薬物が挙げられる。望ましい場合、任意選択的な追加の構成成分のうちのいずれかは、例えば、その放出を制御または遅延させる目的のために、カプセル化またはマイクロカプセル化され得る。更なる詳細については、以下の見出し「構成成分の任意選択的なカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」の段落を参照されたい。
【0154】
構成成分の任意選択的なカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)
本開示で使用するための組み合わせ、キット、及び組成物の構成成分のうちの少なくともいくつかは、カプセル化、例えば、マイクロカプセル化され得る。
【0155】
NO生成のためのマイクロカプセル化された構成成分の使用は、化学的に安定した形態にある前駆体からの比較的不安定な化合物(NOなど)の長期間の生成を提供するので、
有用である。複数のマイクロカプセル化された反応物及び/または1つ以上の任意選択的な追加の構成成分は、乾燥環境で容易に混合及び互いに接触させて保管することができ、NOの生成は、単に少量の水を前駆体混合物に提供することによって開始することができる。代替的に、マイクロカプセル化された反応物及び/または1つ以上の任意選択的な追加の構成成分のそのような混合物は、対象、例えば、皮膚、粘膜表面に直接、または本発明に従って、対象の鼻、口、呼吸器、及び/または肺に適用され得、生理学的環境自体が、治療量のNOの放出を引き起こすのに十分な水を提供する。更なる利点は、マイクロカプセル化された反応物及び/または1つ以上の任意選択的な追加の構成成分が占める体積が比較的小さいので、医療デバイスなどの小さな対象物に容易に組み込むことができることである。そのような対象物としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管ステント及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科手術用ネジ及びピン、ならびに他の薄い医療物品及び/またはインプラント可能な物品が挙げられる。
【0156】
反応物及び/または1つ以上の任意選択的な追加の構成成分のカプセル化またはマイクロカプセル化のための生成方法の一例は、反応物及び/または1つ以上の任意選択的な追加の構成成分の溶融物またはポリマー溶液を噴霧乾燥させて、ポリマーマトリックス内に分散された材料を含む個々の粒子の微細に分割された粉末を生成することである。パンコーティング、気中懸濁コーティング、遠心押出、繊維紡績、繊維押出、ノズル振動、イオノトロピックゲル化、コアセルベート相分離、界面架橋、原位置重合、及びマトリックス重合などの他のカプセル化またはマイクロカプセル化方法も使用され得る。カプセル化ポリマーは、好ましくは生体適合性である。そのようなポリマーとしては、エチルセルロース、ゼイン(トウモロコシ及びコーンを含むある特定の草種に見られるプロラミン種子貯蔵タンパク質)などの天然ポリマー、キトサン、ヒアルロン酸、及びアルギン酸、または生分解性ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、または多糖が挙げられる(Park et al,Molecules10(2005),pages141-161を参照されたい)。医薬品及び他の薬剤の送達のために、1つの化学物質が上に示されるようにマイクロカプセル化されている組成物は、周知である。Shalaby and Jamiolkowskiの米国特許第4130639号、Buchholz and Meduskiの米国特許第6491748号を参照されたい。しかしながら、そのような組成物の事実上全てにおいて、マイクロカプセル化されるのは治療剤であり、治療剤は、マイクロカプセル化された試薬の反応によって生成されない。しかしながら、従来技術の教示の適切な修正は、当業者の技術の範囲内であろう。NO付加物/ドナーを含む医療物品のための一酸化窒素放出ポリマーが記載されている。例えば、Arnoldの米国特許第7829553号(carbon-based diazeniumdiolates attached to hydrophobic polymers)、Knappの米国特許第7135189号(a nitrosothiol precursor and a nitric oxide donor)を参照されたい。
【0157】
pH制御、任意選択的な緩衝液系
組成物は、制御されたpH値を有し得る。特に、組成物は、3.0~8.0の範囲、またはより具体的には4.0~8.0の範囲のpH値を有し得る。より具体的な実施形態では、組成物は、4.0~7.4の範囲のpH値を有する。更により具体的な実施形態では、組成物は、4.0~6.0の範囲のpHを有し得る。これらの実施形態では、組成物は、4.5~6.0の範囲のpHを有し得る。
【0158】
組成物のpHは、任意の既知の様式で制御され得る。特定の実施形態では、有機カルボン酸構成成分または有機還元性酸構成成分のpHは、亜硝酸塩構成成分との組み合わせの前に制御される。いくつかの実施形態では、有機カルボン酸構成成分または有機還元性酸
構成成分は、緩衝液を含む。緩衝液は、リン酸緩衝液などの薬理学的に許容される緩衝液であり得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、有機カルボン酸または有機非カルボン酸還元性酸と、それらの塩対応物とを混合することによって形成される。例えば、有機カルボン酸構成成分は、有機カルボン酸と、有機カルボン酸の塩とを含み得る。有機非カルボン酸還元性酸構成成分は、有機非カルボン酸還元性酸と、有機非カルボン酸還元性酸の塩とを含み得る。特定の実施形態では、有機カルボン酸構成成分は、クエン酸と、クエン酸塩とを含む。他の実施形態では、有機カルボン酸構成成分または有機還元性酸構成成分は、アスコルビン酸と、アスコルビン酸塩とを含む。いくつかの実施形態では、有機カルボン酸構成成分としては、有機カルボン酸と、更なる有機酸の塩とを含む。例えば、有機カルボン酸構成成分は、クエン酸と、アスコルビン酸塩とを含み得る。更に更なる実施形態では、有機カルボン酸構成成分は、有機カルボン酸と、有機カルボン酸の塩と、更なる有機カルボン酸の塩とを含み得る。例えば、有機カルボン酸構成成分は、クエン酸と、クエン酸塩と、アスコルビン酸塩とを含み得る。
【0160】
他の実施形態では、緩衝液は、有機カルボン酸または有機非カルボン酸還元性酸のpHを調整して、酸(プロトン化形態)がその塩対応物と混和して共存することによって、形成される。これは、好適には、有機カルボン酸または有機非カルボン酸還元性酸に、緩衝系をその場で生成するような量で、強鉱物塩基、及び任意選択的に強鉱物酸を添加することによって達成される。好適な強鉱物塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び水酸化セシウムが挙げられる。好適な強鉱物酸の例としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸、及び硝酸が挙げられる。
【0161】
特に、本開示による組み合わせまたは組成物を、本発明に従って、鼻、口、呼吸器、または肺への投与の場合などの、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜、または他の組織に接触させる場合、緩衝液は、1つ以上の生理学的緩衝液を含み得る。好適な生理学的に適合する緩衝液の例としては、約5~約9のpH範囲で緩衝するグッド緩衝液、例えば、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、N-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸(ADA)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、2-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(BIS-TRIS)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-プロパン(BIS-TRISプロパン)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、ジグリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(4-ブタンスルホン酸)(HEPBS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸)二水和物(POPSO)、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPSO)、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、N-[トリ(ヒドロキシメチル)-メチル]グリシン(トリシン)、または2-アミノ-2-(ヒドロキシメチ
ル)-1,3-プロパンジオール(TRIZMA)が挙げられる。
【0162】
組成物の浸透圧
特に、皮膚、粘膜との接触を生じさせるであろう経路によって、または本発明に従って、ヒトもしくは動物対象の鼻、口、呼吸器、もしくは肺生理学的系に送達される亜硝酸塩、プロトン源、有機ポリオール、またはそれらの任意の組み合わせの任意の溶液の溶質強度は、対象の臓器及び組織の任意の望ましくない脱水を回避するように制御されるべきである。
【0163】
1キログラムの溶媒中に溶解させた溶質のモル数として定義される浸透圧(Osm)は、キログラム当たりの浸透圧(Osmol/kg)として表され得る。本開示に従ってヒトまたは動物対象に投与される任意の溶液の浸透圧は、一般に、約100~約5000mOsmol/kg、例えば、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000~約2000、2250、2750、300、3250、350、3750、400、4250、450、4750、または5000mOsmol/kgの範囲にあるべきである。
【0164】
NOx生成を開始する構成成分の混合
NOx生成を開始するために、NOx生成系の構成成分が混合される順序は、それによって生成されたNOxを使用した結果に対する影響を有し得ることを見出した。この効果の証拠は、以下の実施例6に提供される。
【0165】
その実施例では、一方で、亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物中の所望の濃度よりも高い濃度で所望の割合でまず混合し、次いで、好適には、濃縮物を水で希釈して、使用される組成物で到達するか、または他方で、亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物の所望の濃度で所望の割合でまず混合するかに応じて、THP-1細胞におけるバクテリアM.tuberculosis HN878を死滅させるための本発明による組成物の有効性が異なることを実証する。
【0166】
更に、構成成分のどの混合方式が、抗細菌効果の観点からより良好な結果を生じるかは予測可能ではない。一般に、使用される組成物で到達するために比較的濃縮された事前混合物を希釈することが、THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN878に対するより良好な抗細菌効果を生じ得ると思われるが、場合によっては、構成成分が使用のための所望の濃度でまず混合される方法ほど良好ではない結果を生じる。
【0167】
したがって、本発明の一実施形態では、NOx生成組成物を調製する方法は、亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される組成物を提供することを含む。
【0168】
したがって、本発明の別の実施形態では、NOx生成組成物を調製する方法は、亜硝酸塩、プロトン源、及び有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される組成物を提供することを含む。
【0169】
好ましい実施形態
本開示の第1~第8の態様の好ましい実施形態は、以下のうちの1つ以上が存在する実施形態である:
-1つ以上の亜硝酸塩が、1つ以上のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む
(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-プロトン源が、アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-当該アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子が、ポリマーまたは巨大分子に共有結合していない、
-1つ以上の有機ポリオールが、分子当たり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコールまたはアルジトール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-1つ以上の有機ポリオールが、1つの非環式アルコール単位で終端する1、2、または3つの単糖単位の鎖を含む、例えば、それらからなる糖アルコール化合物であり、任意選択的に、1、2、3つ、または各単糖単位が、CもしくはC単糖単位であり、及び/または非環式アルコール単位が、CもしくはC糖アルコール単位、例えば、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールである、
-NOx生成反応の開始時または開始前のポリオール構成成分中または反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が、亜硝酸塩構成成分中または反応溶液中の亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である、
-NOx生成反応開始時または開始前のポリオール構成成分中または反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が、プロトン源構成成分中または反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴わない用途では、3.0~9.0の範囲にある、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴う用途では、4.0~8.0の範囲にある、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、本発明に従って、動物(ヒトを含む)対象の鼻、口、呼吸器、または肺との間の接触を伴う用途では、5.0~8.0の範囲にある、
-標的となる細菌が、以下の見出し「抗細菌使用のための標的」の段落に列挙される細菌、例えば、限定されないが、それらの抗生物質耐性株を含む、インフルエンザウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、マイコバクテリウム属tuberculosis、マイコバクテリウム属abscessus、Pseudomonas aeruginosaから選択される。
【0170】
本開示の第9の態様の好ましい実施形態は、以下のうちの1つ以上が存在する実施形態である:
-1つ以上の亜硝酸塩が、1つ以上のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-プロトン源が、アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-当該アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子が、ポリマーまたは巨大分子に共有結合していない、
-1つ以上の有機ポリオールが、分子当たり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコールまたはアルジトール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-1つ以上の有機ポリオールが、1つの非環式アルコール単位で終端する1、2、または3つの単糖単位の鎖を含む、例えば、それらからなる糖アルコール化合物であり、任意選択的に、1、2、3つ、または各単糖単位が、CもしくはC単糖単位であり、及び/または非環式アルコール単位が、CもしくはC糖アルコール単位、例えば、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールである、
-NOx生成反応の開始時または開始前のポリオール構成成分中または反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が、亜硝酸塩構成成分中または反応溶液中の亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である、
-NOx生成反応開始時または開始前のポリオール構成成分中または反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が、プロトン源構成成分中または反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴わない用途では、3.0~9.0の範囲にある、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴う用途では、4.0~8.0の範囲にある、
-NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHが、反応混合物と、本発明に従って、動物(ヒトを含む)対象の鼻、口、呼吸器、または肺との間の接触を伴う用途では、5.0~8.0の範囲にある、
-標的となる細菌が、以下の見出し「抗細菌使用のための標的」の段落に列挙される細菌、例えば、限定されないが、それらの抗生物質耐性株を含む、インフルエンザウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、マイコバクテリウム属tuberculosis、マイコバクテリウム属abscessus、Pseudomonas aeruginosaから選択される。
【0171】
組み合わせ及び組成物
NOx生成反応は、いくつかの方式で開始され得る。それらは、一般に、NOx生成反応を開始することができる条件下で、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源とを接触させることを特徴とする。
【0172】
反応は、組み合わせの別個の構成成分を組み合わせることによって開始され得る。組み合わせることは、インビトロで達成され得、生じた組成物は、次いで、対象に投与され得るか、または本開示に従って処理される任意の表面に適用され得る。代替的に、発生した気体は、対象に投与され得るか、または本開示に従って処理される任意の表面に適用され得る。なお更に、生じた組成物の両方の使用は、気体の発生がいくらか起こった後に、組成物が対象に投与されるか、または処理される任意の表面に適用されるように、時間的に間隔をあけて進行され得る。
【0173】
組み合わせることは、段階的であり得、例えば、構成成分の乾燥粉末形態を最初に混合し、次いで、水または別の液体担体媒体と混合して反応が開始される。代替的に、構成成分の乾燥粉末形態を、最初に水または別の液体担体媒体と個々に混合し、その後、2つ以
上の液体を混合して反応が開始されてもよい。
【0174】
代替的に、本開示によるNOx生成反応の構成成分のうちの少なくとも一部は、単一組成物中の混和物中に存在し得、NOx生成反応は、組成物上で開始され得る。NOx生成反応を開始する1つの可能性のある方式は、例えば、組成物の構成成分が乾燥もしくはカプセル化形態である場合には反応を開始する重要な構成成分もしくは添加剤、例えば水を、または組成物の構成成分がプロトン源を欠く場合にはプロトン源を、添加することであり得る。
【0175】
本開示によるキットは、典型的には、NOx生成反応の発生が防止される状況下で、本開示による組み合わせまたは本開示による組成物の1つ以上の構成成分を含む。キットの部品は、典型的には容器に保持され、容器は、NOx生成反応を開始するのに必要であろう混合を容易にするように分離または適合され得る。キットの使用者によって他の必要な構成成分に導入される必要がある、NOx生成反応を開始するための重要な開始構成成分は、例えば、亜硝酸塩構成成分、プロトン源構成成分、もしくはポリオール構成成分のうちの1つであり得るか、または追加の成分、典型的には、使用者によって供給され得る水などの一般的に入手可能な構成成分であり得る。
【0176】
本特許に定義及び記載の組み合わせ及び組成物のパラメータは、典型的には、pH、濃度、及び浸透圧などの物理的パラメータを含む。これらは、可能な場合、NOx生成反応の開始前に測定されるものである。別段記述されない限り、pHパラメータは、NOx生成反応の開始を意図した濃度での脱イオン水中のプロトン源のpHを指す。別段記述されない限り、溶液の濃度は、他の構成成分と混合してNOx生成反応を開始する前の濃度を指す。典型的には、亜硝酸塩及び有機カルボン酸または有機還元性酸が混合時に反応して、一酸化窒素気体を生成する場合、NOx生成反応が進行している間、そのようなパラメータを容易に測定することは可能ではない。
【0177】
更に、反応混合物中の場合、成分の濃度は、混合前の組み合わせの部分におけるそれらの濃度に必ずしも対応しないであろうことに留意されるであろう。例えば、本開示によるNOx生成反応を開始するための組成物が、事前に作製された溶液として一緒に添加される、およそ等しい体積の亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分から形成されると仮定する。その実施形態では、混合された反応組成物は、亜硝酸塩濃度が亜硝酸塩構成成分の濃度の半分であり、プロトン源濃度がプロトン源構成成分の濃度の半分である。
【0178】
組み合わせ及び組成物の部分は、NOx生成反応の間または後に、系の意図された使用に応じて、任意の好適な物理的形態であり得る。例えば、組み合わせ及び組成物の部分は、各々、液体、ゲル、またはフィルムの形態であり得るので、NOx生成反応混合物は、同様に、液体、ゲル、またはフィルムの形態である。液体は、呼吸器または肺への吸入のために噴霧することが可能であるように適合され得る。NOx生成混合物が、口または喉に適用されることが意図される場合、組み合わせ及び組成物の部分は、マウスウォッシュまたは飲料の形態であり得る。代替的に、NOx生成反応混合物が、局所投与で皮膚に適用されることが意図される場合、組み合わせ及び組成物の部分は、軟膏、ローション、またはクリームの形態であり得る。
【0179】
多構成成分系、キット、及びディスペンサー
本明細書に記載の多構成成分系は、本開示に従って定義され、本明細書に記載されるように、任意選択的にポリオール構成成分と共に、亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分を含み得る。多構成成分系の構成成分は、互いに接触され、反応混合物及び/または発生した気体が、使用前に構成成分を保持するための好適な容器またはリザーバの手段、ならびに構成成分を混合し、反応混合物及び/または発生した気体を分配し、一般に当該混
合及び分配を制御するための手段によって分配されるように適合される。好ましい一実施形態では、反応混合物は、気流に含まれる液滴のミストまたはエアロゾルの形態で分配され得る。
【0180】
本開示のキット及びディスペンサーは、一般に、使用前に構成成分を保持するための容器、構成成分を混合し、反応混合物及び/または発生した気体を分配し、一般に当該混合及び分配を制御するための少なくとも1つのデバイスまたは他の手段のうちの少なくともいくつか、ならびに存在する場合、使用前にキットまたはディスペンサーの容器(複数可)に含有されるそのまたはそれらの構成成分(複数可)を含む。好適には、使用説明書、または使用説明が見出され得る指示書、例えば、使用のためのオンライン説明書が存在し得る。そのようなキット及びディスペンサーは、本開示の更なる態様を構成する。
【0181】
本開示のキットは、構成成分を混合し、反応混合物及び/または発生した気体を分配し、一般に当該混合及び分配を制御するための容器及び手段の比較的単純な集合体であり得る。研究目的のために、または混合及び分配操作における幅広い改変が予想され得、許容され得る場合、好適には、そのようなキットが提供され得る。
【0182】
本開示の他のキットは、本開示の1つ以上のディスペンサーと一緒に、消耗品を含む1つ以上の容器のより洗練された集合体であり得る(任意選択的に、使用者によって供給される水または他の一般的に入手可能な成分(複数可)と共に、NOx生成反応を開始するために使用者によって必要とされる組み合わせ(複数可)及び/または組成物(複数可)である)。
【0183】
本開示のディスペンサーは、一般に、反応混合物、反応混合物を含む担体、及び/または発生した気体を分配する繰り返される同様の行為に適合されるであろう。ディスペンサーは、NOxを生成する反応混合物を含む組成物、または発生した気体をディスペンサーから搬出し、それを標的に指向させるためのポンプまたは推進システムを備え得る。推進システムは、好適には、医療使用に対して薬学的に許容されるかまたは生体適合性であろう加圧気体及び/または液化気体、例えば、加圧空気または加圧/液化ブタンを使用し得る。代替的に、使用者の肺からの吸引を使用して、NOを生成する反応混合物を含む組成物、または発生した気体をディスペンサーから搬出し、それを標的に指向させてもよい。本開示で使用するためのディスペンサーは、好適には、使用者がディスペンサーを作動させることができる手動操作可能なトリガーまたはボタンなどの作動デバイスを備え得る。そのようなディスペンサーは、専門使用、研究使用、消費者使用、または患者使用に適合され得、標的を治療する意図された経路を容易にするように対応して適合され得る。
【0184】
広範なキット及びディスペンサー装置が、原則的に既知であり、これらは、使用前に構成成分を保持し、構成成分を混合するか、または当該混合を容易にし、反応混合物を含む組成物及び/または発生した気体を分配し、一般に当該混合及び分配を制御するか、または当該制御を促進するために使用され得るか、または容易に適合され得る。
【0185】
例えば、以下である:
-注射器、例えばツインバレル分配注射器。
-容器系、例えば、ポンプ行為容器、握る行為の容器、または振盪行為の容器、例えば、少なくとも亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分を混合し、NOx生成反応物を含む組成物または発生した気体を分配するための2つの容器を含む。そのような系は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS2019/0134080に記載されている。
-水溶液中で使用する前に構成成分を保持し、構成成分を混合し、液体反応混合物を噴霧し、ヒトの肺への吸入のためにそれを分配し、一般に当該混合及び分配を制御するため
の、装置。例としては、ソフトミスト吸入器、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、及び振動メッシュネブライザーが挙げられる。亜硝酸塩の酸性化による噴霧されたNOx生成反応媒体の吸入のための、好適なネブライザー、液滴サイズ、共剤、包装形態などの選択は、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれるWO03/032928及びWO2009/086470に記載されている。
-上の装置は、事前混合された液体反応混合物をネブライザーに充填した後に噴霧し、ヒトの肺への吸入のためにそれを分配し、一般に当該混合及び分配を制御するように調整され得る。
-水溶液中で使用する前に構成成分を保持し、構成成分を混合し、液体反応混合物をエアロゾル化し、ヒトの肺への吸入のためにそれを分配し、一般に当該混合及び分配を制御するための、装置。例としては、定用量吸入器が挙げられる。亜硝酸塩の酸性化による噴霧されたNOx生成反応媒体の吸入のための、好適な液滴サイズ、共剤、包装形態などの選択は、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれるWO03/032928及びWO2009/086470に記載されている。
-一酸化窒素放出溶液を上気道にスプレーするための技法及び装置は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9730956号に記載されている。
-乾燥粉末形態で使用する前に構成成分を保持し、ヒトの肺への吸入のためにそれを分配するための装置。例としては、乾燥粉末吸入器(DPI)が挙げられ、これは、単回用量カプセルまたは複数回用量乾燥粉末吸入器として、リザーバ粉末または複数回用量の別個のブリスターとしてのいずれかで製剤化され得る。反応媒体を肺内に提供して、亜硝酸塩の酸性化によってNOをその場で生成するための、乾燥粉末組み合わせの吸入のための好適な粉末粒径、共剤、包装形態などの選択は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2009/086470に記載されている。
-溶液形態で使用前に構成成分を保持し、それらを通気させ、皮膚消毒剤使用のため、または皮膚障害を治療するための発泡体としてそれを分配するためのディスペンサーは、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2013/0200109号、米国特許第7066356号、及び米国特許出願第2019/0134080号に記載されている。
-構成成分を保持し、対象の皮膚に分配するための経皮パッチアセンブリは、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/188175に記載されている。
【0186】
本開示の組み合わせ及び組成物、または発生した気体の投薬量は、治療される疾患、障害、もしくは状態(医療的治療の場合)、または所望の効果(非医療的治療の場合)、必要とされる治療の重症度、ならびに治療される対象の状態、年齢、及び健康、または非医療的治療の場合、治療される標的の性質に応じて、幅広い限定の間で変動し得る。医療的治療の場合、最終的には、使用する適切な投薬量は、医師が決定するであろう。非医療的治療の場合、当業者は、妥当な試験による関連文献の概説によって、適切な投薬量及び治療方法を研究することが可能であろう。
【0187】
いくつかの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、またはそれから発生した気体は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後600秒以内に、標的位置、例えば、細菌細胞、生組織、臓器、構造、または対象に投与され得る。この方式では、標的位置は、一酸化窒素の大きな噴出に曝露され得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物は、標的位置のその場でまたは近傍で、例えば、非生物表面及び空間を含む、細菌細胞、生組織、臓器、構造、または対象の上、中、またはその近傍で形成され得る。これらの実施形態では、投与は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後0秒で有効である。他の実施形態では、組成物は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後0秒超~600秒未満の範囲で標的位置またはその近傍に投与される。より具体的な実施形態で
は、組成物は、0~120秒の範囲で投与される。更なる実施形態では、組成物は、0~60秒の範囲で投与される。
【0189】
他の実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、またはそれから発生した気体は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後600秒超、例えば2000秒超、例えば4000秒超、例えば8000秒超、標的位置、またはその近傍、例えば細菌細胞、生組織、臓器、構造、もしくは対象に投与され得る。その場合、標的位置、例えば、細菌細胞、生組織、臓器、構造、または対象は、必ずしも一酸化窒素の大量の噴出に曝露される必要はない場合があるが、依然として、抗細菌効果などの有益な特性を経験し得る。これらの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、またはそれから発生した気体は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後最大48時間投与され得る。特定の実施形態では、組成物、またはそれから発生した気体は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後最大数週間または数ヶ月、例えば、最大約6ヶ月、または最大約2ヶ月、または最大約1ヶ月、または最大約3週間、または最大約2週間、または最大約1週間、または最大約3日、または最大約24時間投与され得る。
【0190】
NOx生成反応が起こっている組成物、またはそれから発生した気体は、適切に保管されている場合、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後48時間超投与され得る。例えば、組成物は、例えば真空下で密封容器内に保管され得る。密封容器内での保管は、典型的には、亜硝酸塩と有機カルボン酸または有機還元性酸とを組み合わせた後24時間以内に実施される。組成物は、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とを組み合わせた後600秒以内に密封容器に保管され得る。この方式では、ある割合の一酸化窒素気体が保持され得る。NOx生成組成物が低温、例えば約-30℃~約+10℃の範囲、例えば約1℃~約10℃の範囲の温度で保管される場合、気体の発生速度は実質的に遅くなり得、組成物の保管時間が非常に長くなる。
【0191】
特定の実施形態では、エアロゾルディスペンサーは、液体形態(例えば、水溶液)の亜硝酸塩構成成分を含有する第1のリザーバと、液体形態(例えば、水溶液)のプロトン源構成成分を含有する第2のリザーバと、を有する複数のリザーバを含み得る。この実施形態では、各構成成分は、好適には、当該亜硝酸塩及びプロトン源の構成成分が混合される前、混合される間、または混合された後に、推進剤と混合され得る。
【0192】
別の特定の実施形態では、ディスペンサーは、本開示の組成物を含有するシングルバレル注射器であり得る。組成物の粘度は、手動行為によって、または注射器の電動操作によって、注射器から分配されることが可能であるように選択され得る。例えば、組成物は、液体またはゲルであり得る。
【0193】
別の特定の実施形態では、ディスペンサーは、亜硝酸塩構成成分を含有する第1のバレルと、プロトン源構成成分を含有する第2のバレルと、を有する、マルチバレル注射器であり得る。構成成分の粘度は、手動行為によって、または注射器の電動操作によって、注射器から分配されることが可能であるように選択され得る。例えば、各構成成分は、独立して、液体またはゲルであり得る。
【0194】
構成成分用の他のリザーバ:ハイドロゲル
本開示のいくつかの実施形態では、分子リザーバ、例えば、ハイドロゲルが使用され得る。ハイドロゲルは、水、他の水性液体、または他の非水性親水性液体の乾燥重量の何倍も吸入及び保持する能力を有する、非常に水和された、通常、架橋された、三次元ポリマーネットワーク(ホモポリマーまたはコポリマー)または巨大分子ネットワークである。液体の吸入は、通常、ハイドロゲルの膨潤を伴う。ポリマーまたは巨大分子に共有結合し
ている構成成分化学基の好適な選択によって、酸性ハイドロゲル、または他の特殊な化学的特性を有するハイドロゲルを調製することができる。
【0195】
本開示においてプロトン源構成成分として機能することができるハイドロゲルは既知である。そのような酸性-COOH基含有ハイドロゲルの例は、例えば、それらの全ての開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2007/007115、WO2008/087411、WO2008/087408、WO2014/188174、及びWO2014/18175、ならびにそれらで参照される文書に記載されている。NOx生成と併せて医薬品の経皮送達を含む、NOx生成を使用するスキンケアにおけるそのようなハイドロゲルの使用は、特に、WO2014/188174及びWO2014/188175に記載されている。そのようなハイドロゲルの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS、Vinati Organics Ltdから入手可能)、及びそれらの塩のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。(メタ)アクリル酸を含むか、またはそれからなるモノマーから形成されるポリマーは、本開示によるプロトン源として使用するために、ペンダントカルボン酸基を含むであろう。
【0196】
したがって、例えば、多構成成分系は、プロトン源構成成分を含み、任意選択的に有機ポリオールを更に含有する第1の酸性ハイドロゲルパッドまたは層構成成分を含み得、他の構成成分が、亜硝酸塩構成成分であり得る。亜硝酸塩構成成分は、例えば、溶解させた亜硝酸塩を含有する液体媒体であり得る。この方式では、ハイドロゲルパッドまたは層の表面を亜硝酸塩構成成分と接触させて、NOx生成反応を開始させることができる。代替的に、亜硝酸塩構成成分は、固体担体とハイドロゲルとの間の接触時にハイドロゲルが吸入した液体に溶解させるのにアクセス可能な形態で、亜硝酸塩を含有する固体担体、例えば、パッドまたは層であり得る。
【0197】
典型的には、固体担体パッドまたは層は、一酸化窒素の拡散に対して浸透性である(完全に浸透性または少なくとも半浸透性である)。この方式では、固体担体パッドまたは層及びハイドロゲルが組み合わされて、亜硝酸塩構成成分とプロトン源構成成分とが組み合わされると、一酸化窒素が治療領域に拡散し得る。固体担体パッドまたは層は、例えば、メッシュ、不織布バット、フィルム、発泡体、アルギン酸塩層または膜であり得る。
【0198】
特定の実施形態では、固体担体層は、メッシュである。メッシュは、ある特定の物質が通過する格子の穴または隙間を形成する、固体、典型的には可撓性の連結された多数のストランドであり得る。メッシュは、織布または不織布であり得る。いくつかの実施形態では、メッシュは、不織布である。
【0199】
固体担体層、例えばメッシュは、ポリマー材料から作製され得る。好適なポリマー材料の例としては、限定されないが、ビスコース、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、またはそれらのブレンドが挙げられる。ポリマー材料は、例えば、その親水性を増加させるように処理され得る。特定の実施形態では、固体担体層は、ポリプロピレンメッシュである。
【0200】
特定の実施形態では、固体担体は、吸収性であり、亜硝酸塩構成成分は、固体担体内に少なくとも部分的に吸収、吸入、または含浸される。吸収、吸入、または含浸された亜硝酸塩構成成分は、(乾燥させた)固体であり得るか、または固体担体内の水溶液中に存在し得る。
【0201】
特定の実施形態では、固体担体は、2つ以上の層を含み、亜硝酸塩構成成分は、少なくとも1つの層に吸収、吸入、もしくは含浸されるか、または少なくとも1つの外層にコー
ティングされる。例えば、固体担体は、乾燥及び/または溶液形態の1つ以上の亜硝酸塩を吸収、吸入、含浸、またはコーティングされたポリプロピレンメッシュ層などの2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の層を含み得る。
【0202】
酸性ハイドロゲルは、内部のプロトン化ペンダント酸性基の大量供給に起因する自然な緩衝能力を有し、酸性ハイドロゲルからのHイオンは、NOx生成反応中に表面のペンダント酸性部分が脱プロトン化される際に、吸入された水性媒体を介して移行して、ハイドロゲル構造の表面で比較的酸性のpHを維持することができる。
【0203】
非酸性(例えば、中性または塩基性)ハイドロゲルもまた既知であり、亜硝酸塩構成成分及び/またはポリオール構成成分は、本開示での使用のために吸入及び含有され得る。プロトン供給源がハイドロゲルと接触させた液体媒体中に提供されることによって、及び/またはプロトン供給源が固体担体に吸収、吸入、含浸、またはコーティングされることによって、プロトン供給源構成成分を、そのようなハイドロゲルと接触させることができる。そのようなハイドロゲルにおいて、亜硝酸塩構成成分、プロトン源構成成分、またはポリオール構成成分のいずれも、ハイドロゲルのポリマーネットワークまたは巨大分子ネットワークに共有結合していないことが条件であり得、例えば、亜硝酸塩構成成分及びプロトン源構成成分が、NOx生成反応の開始が所望されるまで一緒に反応してはならないことを考慮して、本開示に必要な構成成分の全ては、ハイドロゲルに吸入され、ハイドロゲル塊内で水性媒体に含有され得るが、ハイドロゲルのポリマーまたは巨大分子に共有結合してはならない。
【0204】
ハイドロゲルパッドまたは層の厚さは、0.5~2mmの範囲にあり得る。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルパッドまたは層の厚さは、1~2mmの範囲にある。特定の実施形態では、ハイドロゲルパッドまたは層の厚さは、1.0~1.6mmの範囲にある。
【0205】
一般に、プロトン源構成成分に関して上述された特色は、プロトン源構成成分として機能する任意の酸性ハイドロゲルに等しく適用されるであろう。したがって、例えば、ハイドロゲルは、ハイドロゲルのpHを4.0~9.0、または5.0~8.0の範囲に維持するために緩衝液を含有し得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、ハイドロゲルは、バリア層を含み得る。バリア層は、典型的には、ポリウレタンフィルムなどのポリマーフィルムであり、ハイドロゲルの外側表面上に位置する。使用において、バリア層は、典型的には、組み合わせられた多構成成分系と大気との間にバリアを設けるために、例えば、対象の皮膚に対してハイドロゲルの対向表面上に位置する。ハイドロゲルに隣接するバリアフィルムの表面は、典型的には、隣接するハイドロゲル表面よりも大きな表面積を有する。この方式では、バリア層は、ハイドロゲルの周辺部を超えて延在し得る。これらの実施形態では、バリア層は、使用中に、例えば対象の皮膚に対してハイドロゲルを接着するために、その周辺縁部の周囲に接着剤を有し得る。
【0207】
特定の実施形態では、本開示は、
a)NaNOなどの1つ以上の亜硝酸塩を吸入、含浸、またはコーティングされた1つ以上のメッシュと、
b)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源を含む、ハイドロゲルと、を含み、
構成成分(a)が、構成成分(b)から分離されており、構成成分(a)及び(b)のうちの1つ以上が、
以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の有機ポリオールを更に含む、2構成成分系
を提供する:
(a)1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0208】
疑義を回避するために、開示の態様に関連して上述した特色(a)~(h)を特徴付けるための実施形態及び優先事項が、この実施形態に等しく適用されることを本明細書において確認する。
【0209】
そのような系は、例えば、構成成分(a)と(b)とを組み合わせてNOx生成反応を開始することによって使用され得る。次いで、そのような組み合わせは、例えば、局所適用によって、ヒトまたは動物の体の療法または他の治療で使用され得る。使用は、WO2014/188174及びWO2014/188175に記載されているようなものであり得るか、または以下に記載されているようなものであり得る。系はまた、以下に記載さ
れる非医療使用に用いられ得る。系が対象の皮膚(粘膜を含む)に接触する局所医療用途に使用される場合、1つ以上のメッシュは、皮膚接触層(複数可)であり得る。
【0210】
治療または外科手術での使用
NOx生成反応が本開示に従って進行している組成物、及びそれから発生した気体は、治癒的及び/または予防的治療、疾患及び障害及び状態を是正するための外科手術、美容外科手術、ヒト及び獣医学的医療及び外科手術を含む再建外科手術を含む、治療及び外科手術における多くの用途を有する。組成物またはそれから発生した気体による治療に応答する物理的な形状異常または異常が、不安、うつ、または別の精神疾患もしくは障害を引き起こすかまたは増悪させる場合、物理的状態の治療、防止、または緩和は、それに応じて精神状態を治療、防止、または緩和することができ、それによって、本開示の使用は、精神衛生の分野にも及ぶ。
【0211】
一酸化窒素及び一酸化窒素生成組成物及びそれに基づく医療的治療の多くの生理学的効果が文献において報告されており、その結果、多くの療法的治療が開発されている。以下の非限定的なリストを、例として提供する。列挙されている使用、ならびに列挙されていない他の使用は、本開示及び特許内に包含される。
一酸化窒素による血管の拡張は、血液供給を上昇させる、及び/または血圧を低下させる(van Faassen et al.,Med.Res.Rev.2009 Sept;29(5),pages683-741を参照されたい)。
高血圧を有する患者において、血圧を低下させ、血管コンプライアンスを改善し、上皮機能を回復させるための経口での一酸化窒素補給の急な効果は、HoustonらによるJ.Clin.Hypertens.(Greenwich),July2014,16(7),pages524-529、
Protection by nitric oxide of tissues from damage due to low blood supply(van Faassen et al.,Med.Res.Rev.2009 Sept;29(5),pages683-741を参照されたい)、
Action of nitric oxide as a neurotransmitter in nitrergic neurons,for example nitrergic neurons active on smooth muscle,for example in the gastrointestinal tract and erectile tissue(Toda et al.,Pharmacol.Ther.,2005 May;106(2),pages233-266を参照されたい)、
Inhibition by nitric oxide of vascular smooth muscle contraction and growth,platelet aggregation and leukocyte adhesion
to the endothelium,assisting vessel homeostasis(Dessey and Ferron,Current Medical Chemistry-Anti-inflammatory and Anti-allergy Agents in Medicinal Chemistry,2004;3(3),pages207-216を参照されたい)、
Action of nitric oxide to decrease heart contractility and heart rate(Navin et al.,J.Cardiovascular Pharmacology,2002;39(2),pages298-309を参照されたい)、
Critical neonatal care to promote capillary and pulmonary dilation,for example treatment of primary pulmonary hypertens
ion in neonatal patients,and post-meconium aspiration(Barrington et al.,The Cochrane Database of Systematic Reviews,2017;1,CD000399(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17375630)、またChotigeat et al.,J.Med.Assoc.Thai.,2007;90(2),pages266-271、またHayward et al.,Cardiovascular Research,1999;43(3),pages628-638を参照されたい)、
Prevention of vascular damage,endothelial dysfunction and vascular inflammation,neuropathy and non-healing ulcers,and reducing the consequent danger of requiring lower limb amputation,in diabetes patients(nfb University Studies-“Nitric Oxide Holds Promise for Diabetes”,http://www.nfb.org/Images/nfb/Publications/vod/vod212/vodspr0613.htmを参照されたい)、
Improvement of hypoxemia in acute lung injury,acute respiratory distress syndrome and severe pulmonary hypertension;treatment of reversible causes of hypoxemic
respiratory distress(Mark et al.,N.Eng.J.Med.,Dec.22,2005;353(25),pages2683-2695を参照されたい)、
Administration of nitric oxide as salvage therapy in patients with acute right ventricular failure secondary to pulmonary embolism(Summerfield et al.,2011;Respir.Care57(3),pages444-448を参照されたい)、
Treatment of angina,the effects of paraquat poisoning and other cardiovascular disorders(Abrams,The American Journal of
Cardiology,1996;77(13),pages31C-37Cを参照されたい)、
Treatment of bladder contractile dysfunctions(Moro et al.,Eur.J.Pharmacol.,January 2012;674(2-3),pages445-449、またAndersson etal.,Br.J.Pharmacol.February2008;153(7),pages1438-1444を参照されたい)、
Treatment of acute and chronic lung infections and sepsis(Fang et al.,Nature Reviews.Microbiology,October2004;2(10),pages820-832、またGoldfarb et al.,Critical Care Medicine,January2007;35(1),pages290-292を参照されたい)に記載されており、
一酸化窒素を含む毒反応性窒素中間体(RNI)は、細菌毒性のマイコバクテリウム属tuberculosisに対する活性化されたネズミマクロファージの抗マイコバクテリア効果におけるエフェクター分子として提案されており(Chan et al.,J.Exp.Med.,April1992;175,pages1111-1122を参照されたい)、
気体状一酸化窒素は、嚢胞性線維症を有する患者における、抗生物質耐性バクテリア及び真菌の肺感染の治療に有効であり得(Deppisch et al.,9 February2016;“Gaseous nitric oxide to treat antibiotic resistant bacterial and fungal lung infections in patients with cystic fibrosis:a Phase I clinical study”,Springer,DOI10.1007/s15010-016-0879-xを参照されたい)、
一酸化窒素は、耐性構築の可能性が低い皮膚科学的疾患に対する潜在的な広範な局所的抗細菌剤として報告されており(B L Adler and A J Friedman,Future Sci.OA,2015;1(1),FSO37を参照されたい)、
一酸化窒素は、神経伝達物質であり、神経活性、ならびに回避反応から男性及び女性における性器勃起までの範囲にわたる様々な機能と関連しており(Kim et al.,J.Nutrition,2004,134,page28735を参照されたい)、
男性の勃起障害及び勃起不全を治療するための一酸化窒素の使用が、Sullivan
et al.,Cardiovascular Research,August1999,43(3),pages658-665に記載されており、
創傷治癒の補助、虚血再灌流傷害の低減、外科手術からの心臓及び肺の回復の補助、ならびに血管外科手術からの回復の補助、ならびに整形外科手術からの術後回復の補助のための外科手術用アジュバントとしての一酸化窒素の潜在的な使用が報告されており(A Krausz and A J Friedman,Future Sci.OA,2015;1(1),FSO56を参照されたい)、
NOの抗細菌効果及び創傷治癒効果が、WO95/22335、及びHardwick,et al.,2001,Clin,Sci.100,pages395-400に記載されており、
欧州特許第1411908号(Aberdeen University)は、一酸化窒素が、Aspergillus nigerを含む、爪下感染を治療するのに有効であることを示すと言われているデータを報告しており、
足白癬(水虫)などの真菌皮膚感染の治療のための、皮膚へのNOx生成組成物の局所適用(Weller,et al.J.Am.Acad.Dermatol.,1998
April,38(4),pages559-563を参照されたい)、
ウイルス性皮膚感染の治療のための、皮膚へのNOx生成組成物の局所適用(WO99/44622を参照されたい)、
(Raynaud現象としても知られている)Raynaud症候群などの血管収縮が基礎となる問題である状態の治療のための、皮膚へのNOx生成物の局所適用(Tucker,et al.Lancet,13 November1999,354,9191,pages1670-1675を参照されたい)、
末梢虚血、ならびにRaynaud現象などの関連状態、ならびに術後創傷及びやけどなどの創傷の治療のための、皮膚表面での一酸化窒素の局所的生成を生成するための薬剤としての、酸性化亜硝酸塩の使用が、WO2000/053193に記載されており、
ヒトにおける創傷を治療するための液体一酸化窒素放出溶液(NORS)の使用が、米国特許第9,730,956号(Stenzler,et al.)によって特許請求されている。NORSはまた、抗バクテリア、抗真菌、及び/または抗ウイルス特性を有すると主張されており、Acetobacter baumanii、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Escherichia coli、及びMannheimia haemolyticaに対する抗バクテリア有効性を示すと言われるデータが提供されている。H1N1インフルエンザウイルス、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、及びウシパラインフルエンザ-3ウイルスに対するNORSの抗ウイルス有効性を示すと言われているデータが提供されている。Trichophyton rubrum及びTrichophyton mentagrophy
tesに対するNORSの抗真菌有効性を示すと言われているデータが提供されており、
Chou S-H,et al.,The effects of debanding on the lung expression of ET-1,eNOS,and cGMP in rats with left ventricular pressure overload.Exp.Biol.Med.2005,231,pages954-959、
Gladwin MT,et al.,Nitrite as a vascular
endocrine nitric oxide reservoir that contributes to hypoxic signaling,cytoprotection,and vasodilation.Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.2006,291,pages H2026-H2035、
Hunter CJ,et al.,Inhaled nebulized nitrite is a hypoxia-sensitive NO-dependent selective pulmonary vasodilator.Nat.Med.2004,10,pages1122-1127、
Ozaki M,et al.,Reduced hypoxic pulmonary vascular remodeling by nitric oxide from the endothelium.Hypertension.2001,37,pages322-327、
Rubin LJ,2006.Pulmonary arterial hypertension.Proc.Am.Thorac.Soc.3,pages111-115、
Yellon D.M.,et al.,2007.Myocardial Reperfusion Injury,N.Engl.J.Med.,357,pages1121-35、
Duranski M.R.,et al.,Cytoprotective effects of nitrite during in vivo ischemia-reperfusion of the heart and liver.J.Clin.Invest.2005,115,pages1232-1240、
Jung K-H.,et al.,Early intravenous infusion of sodium nitrite protects brain against in vivo ischemia-reperfusion injury,Stroke,2006,37,pages2744-2750、
Esme H.,et al.,Beneficial Effects of Supplemental Nitric Oxide Donor Given during Reperfusion Period in Reperfusion-Induced Lung Injury.Thorac.Cardiovasc.Surg.2006,54,pages477-483、
ヒトにおける皮膚品質を改善するための薬剤としてNOを放出するための酸性化亜硝酸塩の使用が、中国特許出願第CN101028229号に記載されており、
ヒトにおける髪の成長を促進し、脱毛症を防止または治療するための薬剤としてNOを放出するための酸性化亜硝酸塩の使用が、中国特許出願第CN101062050号に記載されている。
【0212】
一酸化窒素の生理学的効果に関する他の一般考察は、例えば、Lancaster et al.,Proc Natl Acad Sci,1996,91,pages8137-8141、Ignarro et al.,Proc Natl Acad Sci,1987,84,pages9265-9269に見出すことができ、Brent,J Cell Science,2003,116,pages9-15で概説されてお
り、Murad,N Engl J Med,2006,355,pages2003-2011で概説されている。
【0213】
NOの送達のために公開されている薬理学的形態は、Butler and Feelisch,Circulation,2008,117,pages2151-2159に概説されている。
【0214】
上に引用された刊行物の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
本開示は、限定されないが、上の参考文献に公開されている特定の治療使用及び外科手術使用、ならびに全ての他の公開されている治療使用及び外科手術使用、ならびに一酸化窒素及び一酸化窒素生成反応の生成物の生理学的効果の基礎知識に基づく治療及び外科手術使用を含む、一酸化窒素及び一酸化窒素生成系の全ての治療使用及び外科手術使用に適用可能である。
【0216】
血管拡張
血管拡張を誘発する一酸化窒素の特性は、本開示の組み合わせ及び組成物ならびにそれから発生した気体を使用する治療のうちの多くを特徴付ける。
【0217】
血管拡張に応答する疾患、障害、及び状態の特定の例としては、限定されないが、虚血及び皮膚病変に関連する状態が挙げられる。
【0218】
組織虚血に関連する状態としては、Raynauld症候群、重度の原発性血管痙攣、及び組織虚血、例えば、外科手術、敗血症性ショック、照射、または末梢血管疾患(例えば、糖尿病及び他の慢性全身疾患)によって引き起こされる組織虚血が挙げられる。
【0219】
外科手術の結果として組織虚血に関連する状態の治療または防止に使用される場合、本開示の組み合わせもしくは組成物、または本開示を使用するNOx生成反応から発生した一酸化窒素は、外科手術前、外科手術中、または外科手術後に対象に投与され得る。組み合わせ、組成物、または発生した気体は、外科手術部位に、または外科手術部位の近傍に投与され得る。組織虚血のこの治療または防止が使用され得る外科手術手順の例としては、移植手術、組織または臓器移植外科手術、冠動脈外科手術、頸動脈カテーテル挿入、化学療法薬物などの全身への薬剤を投与するための留置動脈または静脈カテーテルを提供するための外科手術、限定されないが、有茎皮弁または回転皮弁を含む美容外科手術手順、以前の外科手術手順と同じ部位で切開が行われる繰り返しの外科手術、(動脈硬化症または糖尿病を有する患者などにおける)皮膚不良及び/または不良な基礎組織灌流の領域、または随伴性疾患の結果として不良な灌流が予測され得る領域で実施される外科手術、血管が損傷されているかまたは傷ついている外傷の場合の外科手術、ならびに皮膚または皮下の動静脈奇形を除去または切除するための外科手術が挙げられる。
【0220】
例えば、組み合わせ、組成物、または発生した気体は、本開示による組み合わせ、組成物、または発生した気体を臓器に投与することによって、臓器の虚血再灌流傷害の治療または防止に使用され得る。臓器は、心臓(例えば、心筋虚血を防止または治療するため)、脳(例えば、脳虚血及びまたは梗塞(脳卒中)を治療または防止するため)、肺(例えば、肺の虚血再灌流傷害を治療または防止するため)、腎臓(例えば、腎臓の虚血再灌流傷害を治療または防止するため)、及び肝臓(例えば、肝臓の虚血再灌流傷害を治療または防止するため)から選択される1つ以上であり得る。外科手術は、臓器の移植であり得る。組み合わせ、組成物、または発生した気体の投与は、虚血エピソード後であり得るか、または予防的であり得る。
【0221】
経皮薬物送達の使用
薬物の経皮送達を誘発する一酸化窒素の特性は、本開示の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の別の重要な有用性を表す。
【0222】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO02/17881及びWO2014/188175は、一酸化窒素を生成するための組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の経皮的薬物送達のための使用について記載しており、そのような使用のためのそれらの刊行物に記載の同じ条件、優先事項、及び実施例は、本開示の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体にも適用可能である。
【0223】
典型的には、本開示の組み合わせ及び組成物は、対象に経皮的に送達される1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含み、対象の皮膚への適用のための局所的組み合わせまたは組成物形態として提供されるであろう。使用され得る薬学的に活性な薬剤(複数可)の例については、上の見出し「任意選択的な追加の構成成分」の段落を参照されたい。
【0224】
好適な局所的組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ、及び別個のプロトン源含有ハイドロゲルを含み得、その2つは、見出し「組成物または組成物系のための他のリザーバ;ハイドロゲル」の段落において上述のように、対象の皮膚上で一緒に使用されるように適合されている。ポリオール(複数可)及び薬学的に活性な薬剤(複数可)は、組み合わせの1つ以上の別個の構成成分で提供され得るか、もしくはハイドロゲルに組み込まれ得るか、またはこれらの選択肢の任意の組み合わせが、ポリオール(複数可)及び薬学的に活性な薬剤(複数可)のためにそれぞれ用いられ得る。
【0225】
創傷、皮膚病変、及びやけど治療
血管拡張及び薬物の経皮送達を誘発し、細菌を死滅させるかまたは細菌の増殖を防止する一酸化窒素の特性は、創傷、皮膚病変、及びやけどの治療において、本開示の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の別の重要な有用性を生じている。
【0226】
本開示を使用して治療可能な状態としては、潰瘍、皮膚ドナー部位、外科手術の創傷(術後)、やけど(火傷、表面的な部分的な厚さのやけど、及び完全な厚さのやけどなど)、裂傷、及び擦過傷が挙げられる。創傷は、慢性または急性であり得る。潰瘍は、動脈などの様々な起源または静脈起源のものであり得る。潰瘍の例としては、脚潰瘍、例えば、慢性脚潰瘍または急性脚潰瘍、褥瘡、例えば、慢性褥瘡または急性褥瘡、静脈潰瘍、ならびに糖尿病性足潰瘍などの糖尿病に関連する潰瘍が挙げられる。
【0227】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2014/188174は、創傷、皮膚病変、及びやけどを治療するための一酸化窒素を生成するための組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の使用について記載しており、この刊行物に記載の同じ条件が、本開示の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体にも適用可能である。
【0228】
典型的には、本開示の組み合わせ及び組成物は、1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含み、対象の皮膚への適用のための局所的組み合わせまたは組成物形態として提供されるであろう。使用され得る薬学的に活性な薬剤(複数可)の例については、上の見出し「任意選択的な追加の構成成分」の段落を参照されたい。創傷、皮膚病変、及びやけどの治療のために、1つ以上の薬学的に活性な薬剤は、好適には、鎮痛剤及び/または麻酔剤(例えば、局所麻酔剤)(例えば、慢性疼痛、急性疼痛、または神経障害性疼痛を低減するための鎮痛剤及び/または麻酔剤)、抗細菌剤、消毒剤、抗炎症剤、ならびに瘢痕形成防止剤から選択され得る。
【0229】
好適な局所的組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ、及び別個のプロトン源含有ハイドロゲルを含み得、その2つは、見出し「組成物または組成物系のための他のリザーバ;ハイドロゲル」の段落において上述のように、対象の皮膚上で一緒に使用されるように適合されている。ポリオール(複数可)及び薬学的に活性な薬剤(複数可)は、組み合わせの1つ以上の別個の構成成分で提供され得るか、もしくはハイドロゲルに組み込まれ得るか、またはこれらの選択肢の任意の組み合わせが、ポリオール(複数可)及び薬学的に活性な薬剤(複数可)のためにそれぞれ用いられ得る。
【0230】
局所的抗細菌使用
抗細菌用途において、治療的に有効なNO用量は、低く、例えば、数百万分率(ppm)ほどの低さ、例えば、100~600ppm(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるGhaffari et al.,Nitric Oxide Biology and Chemistry,2009,14,pages21-29を参照されたい)であり得るが、一酸化窒素の有効性は、実質的に、皮膚と接触する時間がどの程度維持されるかに依存する(その開示が参照により本明細書に組み込まれるOrmerod et al.,BMC Research Notes,2011,4,pages458-465)。
【0231】
一酸化窒素のゆっくりとした局所放出に関する提案が公開されている(例えば、米国特許第6103275号を参照されたい)。しかしながら、結果として生じる局所NO用量は、1時間未満しか持続せず、これは、不良な局所抗細菌作用しか提供しない。見出し「多構成成分系、キット、及びディスペンサー」の段落及び他の箇所で上で考察されたように、ならびに以下の実施例に示されるように、本開示は、局所及び非局所投与系の両方において、はるかに長いNO投与期間を可能にし、実質的な臨床的利点をもたらす。
【0232】
特に、本開示の組み合わせ及び組成物は、NOx生成反応が開始された後の最初のおよそ200~500秒(「初期噴出」)で、強力な出力の一酸化窒素を提供し、続いて、任意選択的に、気体の発生が停止するかまたは有効レベル未満になる前に、長時間にわたって延長される長期間、一酸化窒素のよりゆっくりとした放出(「尾」)の提供を可能にすることが見出されている。本開示の組み合わせ及び組成物によって発生したNO用量は、公開されている最小有効抗細菌用量を超えており、本開示の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の潜在的な有効局所抗細菌使用をもたらす。
【0233】
局所抗細菌用途のためのNOx生成組み合わせ及び組成物の製剤は、従来技術、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2014/0056957号に十分に記載されており、そのような製剤は、本開示の組み合わせ及び組成物にも適用可能である。別の好適な局所的組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ、及び別個のプロトン源含有ハイドロゲルを含み得、その2つは、見出し「組成物または組成物系のための他のリザーバ;ハイドロゲル」の段落において上述のように、対象の皮膚上で一緒に使用されるように適合されている。ポリオール(複数可)及び任意の薬学的に活性な薬剤(複数可)は、組み合わせの1つ以上の別個の構成成分で提供され得るか、もしくはハイドロゲルに組み込まれ得るか、またはこれらの選択肢の任意の組み合わせが、ポリオール(複数可)及び薬学的に活性な薬剤(複数可)のためにそれぞれ用いられ得る。
【0234】
他の皮膚治療または局所治療
一酸化窒素及び一酸化窒素生成組成物の他の局所用途としては、毛髪の成長を刺激すること、ならびに勃起障害及び勃起不全を治療することが挙げられる。
【0235】
本開示の組み合わせ及び組成物は、そのような治療の局所用途のために製剤化され得る。
【0236】
局所包帯及び包帯系、例えば創傷包帯
局所治療では、治療が適用されている間、多くの場合、皮膚の治療領域を覆うか、または保護することが望ましい。これは、創傷の汚染の防止を補助し、治癒プロセスからの膿または壊死組織片の除去を補助し、入浴もしくはシャワー時の、または衣類との接触を通じての、または対象の通常の活動の結果としての治療組成物の損失を防止または制限し、処理領域のぶつかりもしくは擦れを緩衝することができる。
【0237】
この目的のために、治療を局所包帯または包帯系、例えば創傷包帯または包帯系に組み込むことが一般的である。包帯、または包帯系の少なくとも1つの構成成分部分は、典型的には、防水性または透水性であり得、任意選択的に、皮膚接着部分及び任意選択的にガーゼまたはパッド層などの他の層を備え得る裏材シートを含む。
【0238】
更なる態様では、本開示は、本開示の第5の態様による組み合わせまたは組成物を含む局所包帯、例えば、創傷もしくは皮膚包帯、または包帯系を提供し、包帯または包帯系の少なくとも1つの構成成分が、裏材シート、及び任意選択的に、例えば、ガーゼ及びパッド層から選択される層などの1つ以上の他の層を含む。本開示の第5の態様による組み合わせまたは組成物は、好適には、裏材シートの皮膚に向かう側に配置され、包帯が皮膚に適用され、NOx生成反応が開始されると、所望の皮膚領域が、NOx生成反応混合物またはそれから発生した気体で治療されるように配置される。
【0239】
包帯または包帯系は、好適には、使用前に密封された滅菌パック内に提供され得る。
【0240】
鼻、口、呼吸器、及び肺の使用
血管拡張及び薬物の経皮送達を誘発し、細菌を死滅させるかまたは細菌の増殖を防止するための一酸化窒素の特性は、鼻、口、呼吸器、及び肺の粘膜及び組織の治療における、及び/または本発明の組み合わせ及び組成物を、ヒトまたは動物対象に送達するための投与経路としての鼻、口、呼吸器、及び肺の使用における、本発明の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の別の重要な有用性を生じている。
【0241】
本発明を使用して治療可能な状態としては、例えば、インフルエンザ、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2などのウイルス感染、肺動脈高血圧、移植に関与する心臓、脳、及び臓器の虚血再灌流傷害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(特に、肺気腫、慢性気管支炎)、重篤な喘息ならびにウイルス及びバクテリアによって誘発される喘息及び難治性(非可逆的)喘息の増悪を含む喘息、肺炎、結核、非結核性マイコバクテリア属感染などの鼻内または肺のバクテリア感染、ならびに他のバクテリア及びウイルスの肺感染、例えば、呼吸器のウイルス感染に続く二次的なバクテリア感染などの肺疾患が挙げられる。
【0242】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO2009/086470は、鼻、口、呼吸器、及び肺の疾患を治療するための一酸化窒素を生成するための噴霧される液体組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体の使用、及び/またはそのような組み合わせ及び組成物をヒトまたは動物対象に送達するための投与経路としての鼻、口、呼吸器、及び肺の使用について記載しており、そのような使用のためのその刊行物に記載されている同じ条件、優先事項、及び実施例は、本発明の組み合わせ及び組成物、ならびにそれから発生した気体にも適用可能である。
【0243】
典型的には、鼻、口、呼吸器、及び肺への送達のための本発明の組み合わせ及び組成物は、1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含むであろう。使用され得る薬学的に活性な薬剤(複数可)の例については、上の見出し「任意選択的な追加の構成成分」の段落を参照され
たい。
【0244】
鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)の送達経路を介して本発明を実施するための2つの主な送達方法が可能である。第1は、本発明の組み合わせまたは組成物が、鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)に直接送達されることである。第2は、本発明を使用してNOx生成反応から発生した気体が、本発明の組み合わせまたは組成物が患者の体内に入ることなく、鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)に送達されることである。
【0245】
1.鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への組み合わせまたは組成物の直接送達
組み合わせもしくは組成物、またはそれらの構成成分は、乾燥固体形態で鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)に直接送達され得、それによって、粘膜の流体が、固体構成成分材料を溶解させ、NOx生成反応が開始される。
【0246】
組み合わせの構成成分は、別個にまたは一緒に投与され得る。好ましい一実施形態では、プロトン源またはその少なくとも1つの構成成分は、残りの構成成分の前に投与され得るので、亜硝酸塩構成成分がプロトン源構成成分にその場で接触すると、NOx生成反応の迅速な開始を補助する比較的酸性の環境が粘膜内に確立される。
【0247】
組み合わせの任意の乾燥構成成分、または乾燥組成物の、鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への直接送達は、好適には、治療有効用量の1つ以上の乾燥粉末構成成分(例えば、亜硝酸塩構成成分、プロトン源構成成分、及びポリオール構成成分のうちの1つ以上)または乾燥粉末組成物を対象に送達する、乾燥粉末吸入器を使用する乾燥粉末吸入によって行われ得、乾燥粉末吸入器が、6ミクロン未満の体積平均直径の粒子を含有するエアロゾルを対象に送達する。乾燥粉末吸入器が、吸入呼吸当たり約0.1mg~約100mgの1つ以上の乾燥粉末構成成分または乾燥粉末組成物を、6ミクロン未満の体積平均直径の粒子で対象に送達するように、乾燥粉末吸入器は、乾燥粉末を充填された単回または複数回投与に適合され得る。
【0248】
加えてまたは代替的に、組み合わせもしくは組成物、またはそれらの構成成分は、亜硝酸塩構成成分、プロトン源構成成分、及びポリオール構成成分のうちの1つ以上の溶液の液滴のミストまたはスプレーとして、鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)に直接送達され得る。
【0249】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、一般に、対象の鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への直接送達に適用可能である。限定されないが、例えば、組み合わせもしくは組成物、またはそれらの構成成分は、1つ以上の生理学的に適合可能な希釈剤、担体、及び/または賦形剤と関連して対象の鼻、口、呼吸器、もしくは肺(複数可)に直接投与され得、及び/または1つ以上の追加の構成成分、1つ以上の特定の利益を提供することを意図した特定の機能的構成成分と関連して提供され得る。好適な生理学的に適合する希釈剤、担体、及び/または賦形剤の例としては、限定されないが、ラクトース、デンプン、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。所望される場合、湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、結合剤、及び可溶化剤などの少量の非毒性補助物質、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン誘導体、モノラウリン酸ソルビタン、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなどもまた、存在し得る。一般に、意図される投与モードに応じて、薬学的製剤は、約0.005重量%~約95重量%、好ましくは約0.5重量%~約50重量%の本発明の組み合わせもしくは組成物、またはそれらの構成成分を含有するであろう。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に既
知であるか、または明らかであろう。例えば、Martindale,39th Edition(2017)、the Merck Index,15th Edition(2013)、Goodman&Gilman’s“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,13th Edition(2017)、the British National Formulary on-line(https://bnf.nice.org.uk/),Remington:“The Science&Practice of Pharmacy”,22nd Edition(2012)、またはthe Physician’s Desk Reference,71st Edition(2017)を参照されたい。
【0250】
好ましい一実施形態では、対象の鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への送達のための組み合わせまたは組成物は、好適には、例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなどの希釈剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;デンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体などの結合剤、などのNOx生成反応の構成成分と共に、組み合わせまたは組成物を含有し得る、液体、懸濁される固体、乾燥粉末、凍結乾燥剤、または他の組成物を含有するバイアルなどの単位剤形をとるであろう。
【0251】
組み合わせの構成成分を含む任意の液滴、または液滴形態の組成物の、鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への直接送達は、好適には、治療有効用量の1つ以上の液体構成成分(例えば、亜硝酸塩構成成分、プロトン源構成成分、及びポリオール構成成分のうちの1つ以上)、または液体形態の組成物を対象に送達するネブライザーを使用する吸入によって行われ得、ネブライザーが、5ミクロン未満の体積平均直径の粒子を含有するエアロゾルを対象に送達する。ネブライザーが、5ミクロン未満の体積平均直径の液滴で、好ましくは約2~約5μmの範囲のサイズを有する液滴で、吸入呼吸当たり約0.1mg~約100mgの1つ以上の液体構成成分または液体形態の組成物を対象に送達するように、ネブライザーは、組み合わせの液体構成成分または液体組成物を充填された単回または複数回投与に適合され得る。
【0252】
一実施形態では、ネブライザーは、組み合わせの構成成分を含む液滴、または主に約2~約5ミクロンの質量空気力学的中央直径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)を有する液滴形態の組成物のエアロゾルの形成を可能にすることに基づいて、選択される。
【0253】
一実施形態では、組み合わせの構成成分を含む液滴、または液滴形態の組成物の送達量は、肺病理学、呼吸器感染、及び/または肺外、全身分布のための治療効果を提供して、肺外及び全身疾患も治療する。
【0254】
ジェット及び超音波の2タイプのネブライザーは、2~4μmのサイズを有するエアロゾル粒子を生成し、送達することが可能であることが以前から示されている。これらの粒径は、中間気道堆積に、したがって、Pseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Enterobacter種、Klebsiella pneumoniae、K.oxytoca、Proteus mirabilis、Pseudomonas aeruginosa、Serratia marcescens、Haemophilus influenzae、Burkholderia cepacia、Stenotrophomonas maltophilia、Alcaligenes xylosoxidans、Staphylococcus aureus、及び多剤耐性Pseudomonas aeruginosaなどのグラム陰性バクテリアによって引き起こされる肺のバクテリア感染の治療に最適であることが示されている。しかしながら、特別に製剤化された溶液が使用されない限り、これらのネブライ
ザーは、典型的には、治療効果を得るのに十分な量の薬物を投与するために、より大きな容積を必要とする。ジェットネブライザーは、水溶液の空気圧破壊をエアロゾル液滴に利用する。超音波ネブライザーは、圧電結晶による水溶液のせん断を利用する。しかしながら、典型的には、ジェットネブライザーは、臨床条件下では約10%しか効率的ではないが、超音波ネブライザーは、約5%しか効率的ではない。したがって、肺に堆積し吸収される医薬品の量は、ネブライザーに大量の薬物が配置されているにも関わらず、わずか10%ある。より小さい粒径、または遅い吸入速度は、深い肺への堆積を可能にする。中肺野及び肺胞の両方への堆積、例えば、抗細菌活性のための中気道堆積、または肺動脈高血圧及び全身送達のための中肺野及び/または肺胞堆積は、徴候に応じて、本発明では望ましい場合がある。ネブライザーを使用する製剤送達のための組成物及び方法の例示的な開示は、例えば、振動メッシュネブライザーを使用してエアロゾル化されたミスト送達の技法、プロトコル、及び特徴評価の説明を含む、US2006/0276483に見出すことができる。US2006/0276483の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0255】
したがって、一実施形態では、組み合わせの構成成分を含む液滴の、または液滴形態の組成物のエアロゾルを送達するために、好ましい実施形態では、振動メッシュネブライザーが使用される。振動メッシュネブライザーは、隔壁と流体接触している液体保管容器と、吸入弁及び呼出弁とを備える。一実施形態では、約1~約5mlの送達される液体製剤が保管容器に配置され、エアロゾル生成器は、選択的に約1~約5μmの体積平均直径の粒径の霧化されたエアロゾルを生成することに関与する。
【0256】
したがって、例えば、好ましい実施形態では、本発明による亜硝酸塩構成成分製剤またはプロトン源構成成分、1つ以上の有機ポリオールを任意選択的に含むこれらのうちの一方または両方が、液体噴霧吸入器に配置され、約1~約5μmの体積平均直径の粒径を生成しながら、約1~約5mlの投与溶液中約7~約700mg、好ましくは約1~約5ml中約17.5~約700mg、より好ましくは約1~約5ml中約17.5~約350mg、好ましくは約1~約5ml中約0.1~約300mg、より好ましくは約1~約5ml中約0.25~約90mgの投与量で調製されて送達される。
【0257】
非限定的な例として、噴霧される、組み合わせの構成成分を含む液体、または液滴形態の組成物は、約20分未満、好ましくは約10分未満、より好ましくは約7分未満、より好ましくは約5分未満、より好ましくは約3分未満、及び場合によっては約2分未満であれば最も好ましい、記載の呼吸に適した送達用量で投与され得る。
【0258】
非限定的な例として、他の状況では、噴霧される、組み合わせの構成成分を含む液体、または液滴形態の組成物は、より長い期間にわたって投与される場合、改善された耐容性を達成し得、及び/または曲線下面積(AUC)形状を向上する特徴を呈し得る。これらの条件下では、記載の呼吸に適した送達用量は、約2分超、好ましくは約3分超、より好ましくは約5分超、より好ましくは約7分超、より好ましくは約10分超、及び場合によっては、最も好ましくは約10~約20分である。
【0259】
別個の構成成分製剤の例は、(i)約6超、例えば約6~約8の範囲、例えば約7pHを有する水溶液中の亜硝酸塩と、(ii)水溶液中のプロトン源構成成分と、を含み得、少なくとも2つの別個の液体溶液構成成分(i)及び(ii)が混和されて、ヒト患者または獣医学的対象への送達のためのネブライザーを充填するために使用され得るNOx生成組成物を形成することが可能である。
【0260】
水性及び他の非加圧液体系には、多様なネブライザー(小容量ネブライザーを含む)が、組み合わせまたは組成物の構成成分をエアロゾル化するために利用可能である。圧縮機
駆動ネブライザーは、ジェット技術を組み込み、圧縮空気を使用して液体エアロゾルを生成する。そのようなデバイスは、例えば、Healthdyne Technologies,Inc.、Invacare,Inc.、Mountain Medical Equipment,Inc.、Pari Respiratory,Inc.(Midlothian,VA)、Mada Medical,Inc.、Puritan-Bennet、Schuco,Inc.,DeVilbiss Health Care,Inc.、及びHospitak,Inc.から市販されている。超音波ネブライザーは、圧電結晶の振動形態の機械的エネルギーに依存して、呼吸に適した液滴を生成し、例えば、Omron Heathcare,Inc.及びDeVilbiss Health Care,Inc.から市販されている。振動メッシュネブライザーは、圧電または機械的パルスのいずれかに依存して、呼吸に適した液滴を生成する。本明細書に記載の亜硝酸塩(nitrite)、亜硝酸塩(nitrite salt)、または亜硝酸塩供与化合物もしくは一酸化窒素供与化合物と共に使用するためのネブライザーの他の例は、それらの全ては、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第4,268,460号、同第4,253,468号、同第4,046,146号、同第3,826,255号、同第4,649,911号、同第4,510,929号、同第4,624,251号、同第5,164,740号、同第5,586,550号、同第5,758,637号、同第6,644,304号、同第6,338,443号、同第5,906,202号、同第5,934,272号、同第5,960,792号、同第5,971,951号、同第6,070,575号、同第6,192,876号、同第6,230,706号、同第6,349,719号、同第6,367,470号、同第6,543,442号、同第6,584,971号、同第6,601,581号、同第4,263,907号、同第5,709,202号、同第5,823,179号、同第6,192,876号、同第6,644,304号、同第5,549,102号、同第6,083,922号、同第6,161,536号、同第6,264,922号、同第6,557,549号、及び同第6,612,303号に記載されている。
【0261】
本明細書に記載の組み合わせの構成成分を含む液滴、または液滴形態の組成物と共に使用することができるネブライザーの市販例としては、Aerogen(Aerogen,Inc.,Galway,Ireland)によって製造されたRespirgard II(登録商標)、Aeroneb(登録商標)、Aeroneb(登録商標)Pro、AeroEclipse XL(登録商標)、及びAeroneb(登録商標)Go;Aradigmによって製造されたAERx(登録商標)及びAERx Essence(商標);Respironics、Inc.(Murrysville,Pennsylvania,USA)によって製造されたPorta-Neb(登録商標)、Freeway Freedom(商標)、SideStream、SideStream Plus、Ventstream、及びI-neb;ならびにPARI、GmbH(PARI Respiratory Equipment,Inc.,Midlothian,Virginia、USA;PARI GmbH,Starnberg,Germany)によって製造されたPARI LC-Plus(登録商標)、PARI LC-Star(登録商標)、PARI LC-Sprint(登録商標)、及びe-Flow(商標)が挙げられる。これらのネブライザーのうちのいずれも、製造業者の仕様に従って、フェイスマスクまたはマウスピースのいずれかと共に使用され得る。更なる非限定的な例として、米国特許第6,196,219号は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0262】
一実施形態では、可溶性またはナノ粒子状薬物粒子を含有する水性製剤が提供される。水性エアロゾル製剤では、薬物は、約0.67mg/mL~最大約700mg/mLの濃度で存在し得、ある特定の好ましい実施形態では、亜硝酸塩は、ml当たり約0.667mgの亜硝酸アニオン~ml当たり約100mgの亜硝酸アニオンの濃度で存在する。そのような製剤は、肺の適切な領域への有効な送達を提供し、より濃縮されたエアロゾル製
剤は、大量の薬物物質が非常に短期間で肺に送達されることを可能にする追加の利点を有する。一実施形態では、製剤は、十分に耐容性のある製剤を提供するように最適化される。したがって、ある特定の好ましい実施形態は、亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、または亜硝酸マグネシウムなど)を含み、良好な味、約4.7~約6.5のpH、約100~約3600mOsmol/kgの浸透圧、ある特定の更なる実施形態では、任意選択的に、約30~約300mMの浸透性イオン(例えば、塩化物、臭化物)濃度を有するように製剤化される。
【0263】
一実施形態では、エアロゾル製剤の調製に使用される溶液または希釈剤は、単一バイアル構成として、約4.5~約9.0、好ましくは約4.7~約6.5(例えば、酸性混和物として)、または約7.0~約9.0のpH範囲を有する。本明細書の他の箇所に記載されるようなある特定の実施形態に従って矯味剤を包含するので、このpH範囲は耐容性を改善する。エアロゾルが、酸性または塩基性である場合、気管支痙攣及び咳を引き起こし得る。pHの安全範囲は相対的であり、一部の患者は軽度の酸性エアロゾルを許容することができるが、他の患者は気管支痙攣を経験するであろう。約4.5未満のpHを有する任意のエアロゾルは、典型的には、気管支痙攣を誘発する。約4.5~約5.5のpHを有するエアロゾルは、時折、気管支痙攣を引き起こすであろう。体組織は一般にアルカリ性エアロゾルを緩衝することが不可能であるので、約8を超えるpHを有する任意のエアロゾルは、低い耐容性を有し得る。pHが約4.5未満かつ約8.0超に制御されたエアロゾルは、典型的には、重度の気管支痙攣、咳、及び炎症反応を伴う肺刺激を生じる。これらの理由、ならびに患者における気管支痙攣、咳、または炎症の回避のために、エアロゾル製剤の最適pHは、約pH5.5~約pH8.0であると決定した。
【0264】
結果として、一実施形態では、本明細書に記載の使用のためのエアロゾル製剤は、約4.5~約7.5の間のpHに調整され、酸性混和物では約4.7~約6.5のpH範囲が最も好ましく、単一バイアル構成では約7.0~約8.0のpH範囲が最も好ましい。非限定的な例として、本明細書に開示のある特定の実施形態による組成物はまた、pH緩衝液またはpH調整剤、典型的には、有機酸または塩基から調製される塩を含み得、好ましい実施形態では、本明細書に記載の酸性賦形剤(例えば、クエン酸またはクエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩などの非還元性酸)、またはクエン酸塩などの緩衝液もしくは上述の及び表1を参照して他の緩衝液を含み得る。したがって、これら及び他の代表的な緩衝液としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、もしくはフタル酸の有機酸塩、トリス、トロメタミン、塩酸塩、またはリン酸緩衝液を挙げることができる。
【0265】
多くの患者は、苦味、塩味、甘味、金属味感覚を含む、様々な化学的味覚に対する感受性が増加している。耐容性の良好な薬物製品を作製するために、矯味は、矯味剤及び賦形剤の添加、浸透圧の調整、ならびに甘味料を通じて達成され得る。
【0266】
多くの患者は、様々な化学薬剤に対する感受性が増加しており、気管支痙攣、喘息、またはその他の咳の発生の発生率が高い。患者の気道は、低張状態または高張状態、及び酸性またはアルカリ性状態、ならびに塩化物などの浸透性イオンの存在に対して特に敏感である。これらの状態における不均衡またはある特定の濃度値を超える塩化物の存在は、気管支痙攣事象もしくは炎症事象、及び/または咳をもたらし、吸入に適した製剤による治療をひどく損なう。これらの条件の両方は、本明細書に開示のある特定の実施形態による調節されたpH、浸透圧、及び矯味剤の有利な使用が存在しない場合、気管支内空間へのエアロゾル化された薬物の効率的な送達を妨げ得る。
【0267】
いくつかの実施形態では(または亜硝酸塩供与化合物もしくは一酸化窒素供与化合物の別個の実施形態では)、本明細書に開示の亜硝酸塩化合物の水溶液の浸透圧は、賦形剤を
提供することによって調整される。場合によっては、ある特定の量の塩化物、臭化物、または別のアニオンなどの浸透性イオンは、エアロゾル化された亜硝酸塩の上首尾な有効な送達を促進し得る。しかしながら、本明細書に開示の亜硝酸塩構成成分では、そのような浸透性イオンの量は、典型的には、他の薬物化合物のエアロゾル化された投与に使用される量よりも少ない場合があることが発見されている。
【0268】
気管支痙攣または咳の反射は、全ての場合において、所与の浸透圧を有するエアロゾル化のための希釈剤の使用によって改善されるとは限らない。しかしながら、これらの反射は、多くの場合、希釈剤の浸透圧が、ある特定の範囲内である場合、十分に制御及び/または抑制することができる。安全であり、許容される治療化合物のエアロゾル化のための好ましい溶液は、約30mM~約300mM、好ましくは約50mM~約150mMの様々な塩化物濃度で、約100~約3600mOsmol/kgの総浸透圧を有する。この浸透圧は、気管支痙攣を制御し、浸透性アニオンとしての塩化物濃度は、咳を制御する。臭化物またはヨウ化物アニオンの両方が浸透性イオンであるので、塩化物をそれらに置き換えてもよい。加えて、塩化物イオンを炭酸水素塩に置き換えてもよい。
【0269】
また、ナノ粒子状薬物分散体を凍結乾燥させて、鼻または肺送達に好適な粉末を得ることができる。そのような粉末は、表面改質剤を有する凝集したナノ粒子状薬物粒子を含有し得る。そのような凝集体は、呼吸に適した範囲内、例えば、約2~約5ミクロンのMMADのサイズを有し得る。
【0270】
2.NO生成反応から発生した気体の鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)への送達
一酸化窒素を定量的に患者の肺に送達するための吸入器は、周知である。一般に、一酸化窒素は、現場から離れて生成され、使用のための専用の送達デバイスに接続された加圧シリンダ内で、病院またはクリニックに送達される。一例として、INOmax治療システムが言及され得る(BOC Healthcare,UK、https://www.bochealthcare.co.uk/en/products-and-services/products-and-services-by-category/medical-gases/inomax/inomax.html)。INOmax(Inhaled Nitric Oxide)の略語は、一般に、INOmax治療システムのシリンダ、及び送達デバイスのINOventに使用される。INOmax治療システムの評価は、例えば、Kirmse,et al.,Chest,June1998,113(6),pages1650-1657に公開されている。この刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0271】
本発明の第1の態様による方法は、好適には、専用のNO製造設備で実施され得、本発明の第2の態様による気体製品は、通常の様式で、加圧シリンダ内で使用者に提供される。次いで、加圧気体シリンダは、既知の様式で、分配、監視、投与、混合、及び送達装置と関連して使用される。
【0272】
抗細菌使用の標的
先述のように、本開示のNOx生成反応、及びそれから発生した気体は、潜在的に広範な微生物に対する殺生物または生物静力学的効果を有し、多くの抗細菌用途をもたらす。
【0273】
細菌は、例えば、バクテリア細胞、ウイルス粒子、及び/または真菌細胞、または微小寄生虫から選択されるいずれか1つ以上であり得、かつ個々の細胞、生物、またはコロニーであり得る。バクテリア細胞、ウイルス粒子、及び/または真菌細胞、または微小寄生虫は、例えば、ヒトもしくは他の動物の腸内細菌群として、またはヒトもしくは他の動物の細菌感染として、宿主生物上または宿主生物内に存在し得る。バクテリア、及び/または真菌細胞、及び/またはウイルス粒子、及び/または微小寄生虫は、インビトロ、イン
ビボ、またはエクスビボであり得る。
【0274】
本開示は、対象における皮膚病変の部位における細菌感染の治療または防止に、特に有用であり得る。本開示は、免疫抑制された対象における細菌感染の防止の治療において、特に有用であり得る。
【0275】
ヒトまたは他の動物のバクテリア感染、真菌感染、ウイルスまたは微小寄生虫感染において、細菌が存在する場合、感染は、例えば、一般的な風邪、インフルエンザ、結核、SARS、COVID-19、肺炎、または麻疹などの疾患の背景内であり得る。
【0276】
1.バクテリア細胞
バクテリアは、病原性バクテリア種であり得る。細菌感染は、グラム陽性及びグラム陰性、好気性及び嫌気性、抗生物質感受性及び抗生物質耐性のバクテリアを含む、病原性バクテリア種によって引き起こされる感染であり得る。
【0277】
本発明を使用して標的とされ得るバクテリア種の例としては、Actinomyces、Bacillus、Bartonella、Bordetalla、Borrelia、Brucella、Campylobacter、Chlamydia、Chlamydophila、Clostridium、Corynebacterium、Enterococcus、Escherichia、Francisella、Haemophilus、Heliobacter、Legionella、Leptospira、Listeria、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、Neisseria、Pseudomonas、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Staphylococcus、Streptococcus、Treponema、Ureaplasma、Vibrio、またはYersinia属の種が挙げられる。それらの任意の組み合わせもまた、本発明によって標的とされ得る。
【0278】
特定の実施形態では、細菌は、Corynebacterium、マイコバクテリウム、Streptococcus、Staphylococcus、Pseudomonas、またはそれらの任意の組み合わせの病原性種であり得る。
【0279】
より具体的な実施形態では、標的とされる細菌は、Actinomyces israelii、Bacillus anthracis、Bacteroides fragilis、Bordetella pertussis、Borrelia burgdorferi、Borrelia garinii;Borrelia afzelii;Borrelia recurrentis;Brucella abortus;Brucella canis;Brucella melitensis;Brucella suis;Campylobacter jejuni;Chlamydia pneumoniae;Chlamydia trachomatis;Chlamydophila psittaci;Clostridium botulinum;Clostridium difficile;Clostridium perfringens;Clostridium tetani;Corynebacterium diphtheria;Ehrlichia canis;Ehrlichia chaffeensis;Enterococcus faecalis;Enterococcus faecium;E.coli O157:H7を含むEnterotoxigenic E.coli(ETEC)、Enteropathogenic E.coli、Enteroinvasive E.coli(EIEC)、及びEnterohemorrhagic(EHEC)などのEscherichia coli;Francisella tularensis;Haemophilus influenza;Helicobacter pylori;Klebsiella pneumoniae;
Legionella pneumophila;Leptospira species;Listeria monocytogenes;マイコバクテリウム属leprae;マイコバクテリウム属tuberculosis;マイコバクテリウム属abscessus;マイコバクテリウム属ulcerans;マイコプラズマ pneumoniae;Neisseria gonorrhoeae;Neisseria meningitides;Pseudomonas aeruginosa;Nocardia asteroids;Rickettsia rickettsia;Salmonella typhi;Salmonella typhimurium;Shigella
sonnei;Shigella dysenteriae;Staphylococcus aureus;Staphylococcus epidermidis;Staphylococcus saprophyticus;Streptococcus
agalactiae;Streptococcus pneumoniae;Streptococcus pyogenes;Streptococcus viridans;Treponema pallidum subspecies pallidum;Vibrio cholera;Yersinia pestis;ならびにそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0280】
特に、細菌は、Chlamydia pneumoniae、Bacillus anthracis、Corynebacterium diphtheria、Haemophilus influenza、マイコバクテリウム属leprae、マイコバクテリウム属tuberculosis、マイコバクテリウム属abscessus、マイコバクテリウム属ulcerans、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumoniae、またはそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0281】
細菌は、抗生物質耐性もしくは抗生物質感受性病原性バクテリア種、またはバクテリア種の抗生物質耐性または抗生物質感受性株であり得る。一酸化窒素を使用して、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)及びメチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)を治療することは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるWO02/20026に記載されている。したがって、本発明を使用して死滅または治療され得る抗生物質耐性または抗生物質感受性の病原性バクテリア種の例は、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)またはメチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)である。
【0282】
2.真菌細胞
細菌は、病原性真菌種であり得る。細菌感染は、病原性酵母を含む病原性真菌種によって引き起こされる感染であり得る。
【0283】
本発明を使用して標的とされ得る真菌種の例としては、Aspergillus、Blastomyces、カンジダ(例えば、Candida auris)、Coccidioides、Cryptococcus(特に、Cryptococcus neofromansまたはCryptococcus gattii)、Hisoplamsa、Murcomycetes、Pneumocystis(例えば、Pneumocystis jirovecii)、Sporothrix、Talaromyces、またはそれらの任意の組み合わせの種が挙げられる。
【0284】
真菌感染の例としては、アスペルギルス症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症など)、足白癬(水虫)、膣カンジダなどのカンジダの病原性種によって引き起こされる感染、真菌の爪白癬、ならびにおむつかぶれ、頑癬(股部白癬)、及び体部白癬(輪癬)が
挙げられる。
【0285】
3.ウイルス粒子
細菌は、ウイルス粒子であり得る。感染は、病原性ウイルスによって引き起こされ得る。
【0286】
本発明を使用して標的とされ得るウイルスの例としては、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、呼吸合胞体ウイルス(RSV)、アストロウイルス、及び肝炎ウイルスが挙げられる。特に、本発明の組成物は、H1N1インフルエンザウイルス、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス、ウシ呼吸器多核体ウイルス、ウシパラインフルエンザ-3ウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、及びそれらの任意の組み合わせから選択される群のうちの1つによって引き起こされる感染の治療または防止に使用され得る。
【0287】
特に、本発明は、ウイルス感染によって引き起こされる疾患または障害の治療に適用され得る。本発明によって標的とされ得るそのような疾患の例としては、呼吸器ウイルス疾患、消化管ウイルス疾患、発熱性ウイルス疾患、肝炎ウイルス疾患、皮膚ウイルス疾患、出血性ウイルス疾患、及び神経性ウイルス疾患が挙げられる。
【0288】
呼吸器ウイルス感染としては、インフルエンザ、ライノウイルス(すなわち、一般的な風邪ウイルス)、呼吸器合胞体ウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス感染、例えば、COVID-19、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)が挙げられる。消化管ウイルス疾患としては、ノロウイルス感染、ロタウイルス感染、アデノウイルス感染、及びアストロウイルス感染が挙げられる。発熱性ウイルス疾患としては、麻疹、風疹、水痘、帯状疱疹、突発性発疹、天然痘、第5病、及びチクングニアウイルス疾患が挙げられる。肝炎ウイルス疾患としては、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、及びE型肝炎が挙げられる。皮膚ウイルス疾患としては、尖圭コンジローマ、口腔ヘルペス、生殖器ヘルペス、及び伝染性軟属腫などの疣贅が挙げられる。出血性ウイルス疾患としては、エボラ、ラサ熱、デング熱、黄熱病、Marbug出血熱、及びクリミア-コンゴ出血熱が挙げられる。本発明を使用して標的とされ得る神経性ウイルス疾患としては、ポリオ、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎、及び狂犬病が挙げられる。
【0289】
4.寄生微生物
細菌は、寄生微生物(微小寄生虫)であり得る。感染は、病原性寄生微生物によって引き起こされ得る。
【0290】
本発明を使用して標的とされ得る寄生微生物の例としては、原生動物が挙げられる。
【0291】
特に、本発明は、肉質虫(例えば、アメーバ、例えば、Entamoeba histolyticaまたはEntamoeba disparなどのアメーバ)、鞭毛藻(例えば、鞭毛虫、例えば、Giardia及びLeishmania)、繊毛虫(例えば、繊毛虫、例えば、Balantidium)、胞子虫(例えば、Plasmodium及びCryptosporidium)、及びそれらの任意の組み合わせの原生動物群を標的とし得る。
【0292】
本発明を使用して治療され得る寄生虫感染としては、マラリア、アメーバ赤痢、及びリーシュマニア症(例えば、皮膚リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症、または内臓リーシュマニア症)が挙げられる。
【0293】
ヒト/動物宿主または対象
対象は、動物またはヒト対象であり得る。本明細書における「動物」という用語は、一般に、ヒトを含み得るが、しかしながら、「動物」という用語が、「動物またはヒト対象」などの語句に現れる場合、文脈から、特に非ヒト動物を指すか、または「ヒト」への言及が、疑義を回避するために、動物がヒトであり得るという選択肢を特定したに過ぎないことが理解されるであろう。
【0294】
特定の実施形態では、対象は、ヒト対象である。ヒト対象は、乳児または成人対象であり得る。
【0295】
特定の実施形態では、対象は、脊椎動物対象である。脊椎動物は、無顎綱(無顎魚類)、軟骨魚綱(軟骨魚類)、硬骨魚綱(硬骨魚類)、両生綱(両生類)、爬虫綱(爬虫類)、鳥綱(鳥類)、または哺乳綱(哺乳類)のものであり得る。特定の実施形態では、対象は、哺乳綱または鳥綱における動物対象である。
【0296】
特定の実施形態では、対象は、家畜種の動物である。家畜種の動物は、以下のうちの1つであり得る:
-ヒトのニッチに適合させた片利共生物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット)
-食品として入手されるかまたは養殖される獲物または農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)、及び
-主に牽引目的の動物(例えば、ウマ、ラクダ、ロバ)
【0297】
家畜の例としては、限定されないが、アルパカ、アダックス、バイソン、ラクダ、カナリア、カピバラ、ネコ、ウシ(バリ牛を含む)、ニワトリ、クビワペッカリー、シカ(ダマジカ、ニホンジカ、クチジロジカ、及びオジロジカを含む)、イヌ、ロバ、銀鳩、アヒル、エランド、ヘラジカ、エミュ、フェレット、ガヤル、ヤギ、ガチョウ、ホロホロチョウ、モルモット、クーズー、ウマ、ラマ、ミンク、アメリカヘラジカ、マウス、ラバ、ジャコウウシ、ダチョウ、オウム、ブタ、ハト、ウズラ、ウサギ、ラット(アフリカアシネズミを含む)、トナカイ、シロオリックス、ヒツジ、七面鳥、水牛、ヤク、及びコブウシが挙げられる。
【0298】
動物/ヒト宿主または対象の臓器、構造、及び内部空間
本開示の組成物または多構成成分系が投与される臓器は、限定されない。臓器の例としては、皮膚、ならびに呼吸器系、泌尿器系、心臓血管系、消化器系、内分泌系、排泄系、リンパ系、免疫系、外皮系、筋肉系、神経系、生殖系、及び骨格系の臓器が挙げられる。
【0299】
心血管系の臓器の例としては、心臓、肺、血液、及び血管が挙げられる。消化器系の臓器の例としては、唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、結腸、直腸、及び肛門が挙げられる。内分泌系の臓器の例としては、視床下部、下垂体、松果体または松果腺、甲状腺、副甲状腺、及び副腎、すなわち副腎腺が挙げられる。排泄系の臓器の例としては、腎臓、尿管、膀胱、及び尿道が挙げられる。リンパ系の臓器の例としては、リンパ、リンパ節、及び血管が挙げられる。免疫系の臓器の例としては、扁桃、アデノイド、胸腺、及び脾臓が挙げられる。外皮系の臓器の例としては、哺乳類の皮膚、毛髪、及び爪、ならびに魚類、爬虫類、及び鳥類の鱗、ならびに鳥類の羽根が挙げられる。神経系の臓器の例としては、脳、脊髄、及び神経が挙げられる。生殖系の臓器の例としては、卵巣、卵管、子宮、外陰部、膣、精巣、精管、精嚢、前立腺、及び陰茎などの性器が挙げられる。骨格系の臓器の例としては、骨、軟骨、靭帯、及び腱が挙げられる。
【0300】
ヒト対象の腔としては、限定されないが、口、鼻、耳、喉、呼吸器、肺、消化管、頭蓋腔もしくは脊椎腔などの背側腔、または胸腔などの腹側体腔、腹腔、または骨盤腔が挙げられる。鼻、口、呼吸器、及び肺(複数可)の投与経路は、本発明の特徴的な特色である
【0301】
表面のインビトロ抗細菌処理
本開示の構成成分及び組成物、ならびに本開示によるNOx生成反応から発生した気体は、インビトロで抗細菌処理を適用するために使用され得る。「インビトロ」とは、最終的に医療用途を意図され得る場合でさえ、治療される表面が生きた生物ではないことを意味する。
【0302】
そのような有用性の例としては、使用前の外科手術用機器、皮下注射針、及び他の医療デバイスを滅菌するための、ならびに病原体の拡散を低減または防止するために、病院、またはクリニック、または他の任意の場所での表面を洗浄または処理するための方法を含む。
【0303】
他の例としては、対象の体内にデバイスを配置する前に、ステント(例えば、冠動脈ステント)、外科手術用ネジ、ロッド、プレート、及びスプリント、整形外科用インプラント、心臓ペースメーカー、インスリン注入デバイス、カテーテル、オストミー器具、眼内レンズ、人工内耳、電気刺激によって疼痛を低減するインプラント、インプラント可能な避妊デバイス、神経刺激装置、人工心臓弁、電極、静脈内点滴及び薬物達デバイスなどの人工器官及びインプラント可能なデバイスを滅菌するための方法が挙げられる。
【0304】
望ましい場合、本開示の構成成分または組成物は、人工器官またはインプラント可能なデバイスの表面上にコーティングされ得、それによって、NOx生成反応で発生したNOが、他の組織もしくは臓器に灌流され得るか、または人工器官もしくはインプラントされたデバイスの近傍で他の生理学的効果を発揮し得る。
【0305】
本開示の構成成分または組成物を含むコーティングなどの機能性コーティングの組み込みを含む、人工器官またはインプラント可能なデバイスの表面を生体適合させるための技法は、当業者に周知である。例えば、それらの全ての開示が参照により本明細書に組み込まれるGultepe et al.,Advanced Drug Delivery
Reviews,8 March2010,62(3),pages305-315、ならびに米国特許第5702754号及び同第6270788号、ならびにそれらに参照される刊行物を参照されたい。
【0306】
非生物表面のより一般的な抗細菌処理のための組成物及び方法は、当技術分野で周知であり、本明細書では更なる説明は必要ではない。抗バクテリア組成物は、例えば、ヘルスケア産業、食品サービス産業、食肉加工産業、及び個人消費者による民間部門で使用される。抗細菌洗浄組成物は、典型的には、水性及び/またはアルコール性担体中に、1つ以上の活性抗バクテリア剤またはその構成成分、界面活性剤、及び1つ以上の他の成分、例えば、染料、香料、pH調整剤、増粘剤、スキンコンディショナーなどを含有する。広範な消毒剤または抗細菌剤組成物は、表面上の様々な病原体の病原体負荷を低減することを目的とする。典型的には、組成物は液体であり(または使用前に固体の事前混合物から液体にされる)、液体は、任意の所望の濃度調整の後、好適には、水の添加によって、多くの場合、布または他の拭き取りデバイスの助けを借りて、処理される表面上に拡散またはスプレーされ、次いで、乾燥するまで放置されるか、または拭き取られ得る。表面を処理する従来の組成物及び方法は、原則的に、本発明と共に使用されることに適用可能であり、それによって、活性抗細菌剤は、本発明によるNOx生成組成物またはその構成成分であるかまたはそれを含む。
【0307】
本発明と関連して使用され得る既知の抗細菌組成物及び使用する方法の更なる考察及び例については、例えば、それらの内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ
る米国特許第6,110,908号、同第5,776,430号、同第5,635,462号、同第6,107,261号、同第6,034,133号、同第6,136,771号、同第8,034,844号、欧州特許出願第EP0505935号、ならびにPCT特許出願第WO98/01110号、同第WO95/32705号、同第WO95/09605号、及び同第WO98/55096号を参照している。
【0308】
ヒト及び/または動物のウェルビーイングを改善するための使用
上で考察された医療用途に加えて、本開示は、ヒトまたは動物対象における非治療用途に使用され得る。対象が健康であるか、または対象が有している任意の診断された疾患、障害、もしくは状態の治療を適用が標的としていないという点で、非治療用途は、治療用途とは区別される。
【0309】
非治療用途としては、対象が正常に機能するか、または将来の感染に対抗することがより良好に可能であるように、対象のウェルビーイングもしくはウェルビーイングの感覚を改善すること、または対象の代謝効率もしくは免疫系活性を上昇させることを目的とした治療を挙げることができる。非治療用途はまた、対象の認知機能を補助するか、または自信及び制御感を生じる治療も含む。
【0310】
そのような非治療用途での使用では、本開示の組み合わせ及び組成物は、薬学的製剤に類似して、または非薬学的方式で製剤化され得る。薬学的製剤に類似した製剤の更なる詳細については、上の見出し「任意選択的な追加の構成成分」の段落を参照されたい。非薬学的製剤は、好適には、食品添加物、栄養補助食品製剤、食品、飲料、及び飲料添加物を含み得る。食品及び飲料に添加されるように適合された製剤は、好適には、液体または粉末の形態であり得る。栄養補助食品製剤は、好適には、錠剤、カプセル、または経口摂取可能な液体の形態であり得る。
【0311】
見出し「治療または外科手術における使用」の段落で上に言及されたように、本開示の医療及び/または外科手術使用は、向上したウェルビーイングまたは自信の観点から患者に二次的利益を提供し得る。
【0312】
植物使用
生きたまたは枯れた植物に対する、一酸化窒素の有益な影響が知られている。本開示は、生きたまたは枯れた植物に有益な効果を提供するための、方法、装置、組み合わせ、キット、組成物、使用、及びそれから発生した気体の適用を含む。
【0313】
植物に対する、一酸化窒素及び一酸化窒素生成系の既知の使用の例は、以下が挙げられる:
一酸化窒素による、切花及び植物のしおれの防止または遅延(Siegel-Itzkovich,BMJ,1999;319(7205),page274、またMur et al.,2013;“Nitric oxide in plants:an assessment of the current state of knowledge”,AoB PLANTS doi:10.1093/aobpla/pls052(https://doi.org/10.1093%2Faobpla%2Fpls052)を参照されたい);
一酸化窒素による、植物-病原体の相互作用の調節、植物の過敏感応答の促進、窒素固定根粒における生物との共生、側根及び不定根及び根毛の発達、ならびに気孔開放の制御(上に引用されたMur et al.,2013を参照されたい);
植物における抗酸化物質及び活性酸素種応答における一酸化窒素の役割(BioMetalsにおける、Verma et al.,2013;“Nitric oxide(NO)counteracts cadmium-induced cytotoxic
processes mediated by reactive oxygen species(ROS)in Brassica juncea:cross-talk
between ROS,NO and antioxidant responses”を参照されたい);
オーキシン、サイトカイニン、及び他の植物ホルモンのシグナル伝達経路における一酸化窒素の役割(Liu et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences,2013;110(4),pages1548-1553を参照されたい)。
【0314】
上に引用された刊行物の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0315】
更に、限定されないが特に、見出し「治療または外科手術における使用」、「局所抗細菌使用」、「鼻、口、呼吸器、及び肺使用」、及び「抗細菌使用のための標的」の段落に上述されている、本開示の一酸化窒素生成系及びそれから発生した気体の抗細菌効果は、植物の細菌感染を標的とすることにも等しく適用可能であり、本開示は、そのような使用にも及ぶ。
【0316】
植物における一酸化窒素及び一酸化窒素生成系の上の既知の使用及び全ての他の使用は、本開示を使用する一酸化窒素生成反応、及び/または一酸化窒素、任意選択的にそれによって生成される窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体と共に使用される場合、本開示の更なる態様を構成する。
【0317】
処理される植物は、特に、作物または家庭用植物、すなわち、ヒトによって栽培される植物種であり得る。
【0318】
作物としては、限定されないが、穀物、野菜、及び果物などの食品用の作物、キニーネなどの薬学的に活性な成分用の作物、綿または亜麻などの繊維用の作物、ゴム及び木材などの他の材料用の作物、ならびにバラ及びチューリップなどの花用の作物が挙げられる。
【0319】
ヒトの食品消費用の作物の更なる例としては、限定されないが、米、小麦、サトウキビ、及び他の砂糖作物、コーン、大豆油、ジャガイモ、ヤシ油、キャッサバ、豆果、ヒマワリ種子油、菜種油、マスタード油、ソルガム、キビ、落花生、豆、サツマイモ、バナナ、大豆、綿実油、ピーナッツ、落花生油、ヤムイモ、トマト、ブドウ、タマネギ、リンゴ、コーヒー、マンゴー、マンゴスチン、グアバ、チリ、ピーマン、茶、キュウリ、オレンジ、クルミ、アーモンド、ニンジン、カブ、ココナッツ、タンジェリン、レモン、ライム、イチゴ、及びヘーゼルナッツの作物を生産するための作物が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0320】
図1】実施例1の異なる反応条件において経時的に発生した一酸化窒素(亜硝酸塩mg当たりのnmol NO)の累積プロットを示す。
図2】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図3】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図4】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図5】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図6】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図7】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図8】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図9】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図10】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図11】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図12】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図13】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図14】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図15】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図16】実施例2に記載の様々な試験からの結果を示す。
図17】SIFT-MS測定に使用される装置の概略図を示す。
図18】既知の抗生物質の組み合わせ、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液、及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液のM.abscessusに対する抗細菌活性に関する、実施例3に記載の様々な試験からの結果を示す。
図19】既知の抗生物質の組み合わせ、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液、及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液のM.abscessusに対する抗細菌活性に関する、実施例3に記載の様々な試験からの結果を示す。
図20】既知の抗生物質の組み合わせ、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液、及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液のM.abscessusに対する抗細菌活性に関する、実施例3に記載の様々な試験からの結果を示す。
図21】既知の抗生物質の組み合わせ、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液、及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液のM.abscessusに対する抗細菌活性に関する、実施例3に記載の様々な試験からの結果を示す。
図22】クエン酸、亜硝酸ナトリウム、及びマンニトールを含有する溶液についての多数の臨床単離株培養物に対する最小阻害濃度(MIC)に関する、実施例4に記載の試験からの結果を示す。
図23】ポリオールを含む及び含まない、カルボン酸-亜硝酸塩溶液のPseudomonas aeruginosaに対する抗細菌活性に関する、実施例5に記載の試験からの結果を示す。
図24】THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN878に対する抗細菌活性に関する、実施例6に記載の試験からの結果を示す。
図25】THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN878に対する抗細菌活性に関する、実施例6に記載の試験からの結果を示す。
図26】THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN878に対する抗細菌活性に関する、実施例6に記載の試験からの結果を示す。
図27】THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN878に対する抗細菌活性に関する、実施例6に記載の試験からの結果を示す。
図28】MDCK細胞における、細胞毒性(LDH細胞毒性アッセイ)及びH1N1インフルエンザAウイルスに対する抗細菌活性に関する、実施例7に記載の試験からの結果、(a)(水平軸が亜硝酸塩モル濃度である)様々な希釈でのMOI=0.002(●)及びMOI=0.02(■)での、細胞毒性を灰色で、細胞毒性スケールを右側に示しており(最大0.015M以下の測定された亜硝酸塩濃度での細胞毒性は、LDH対照の<1%であった)、(b)オセルタミビル(1μM)と比較した、MOI=0.002及び亜硝酸塩濃度0.15M、0.015M、及び0.0015Mでのプレート写真を示している。前文に引用したプレートの順序は、図中のプレートの左から右への順序と同じである(2つの実験があり、各対応する実験のプレートが、上下に示されている)。オセルタミビルのプレートの対の右隣にある一番右のプレートの対は、ウイルス対照である。細胞毒性は、LDH対照の%(感染後24時間での3つのLDHアッセイの平均)として、試験プレートの各対の下に示されている。
図29】(実施例3に記載の)類似の条件下での、アミカシン及び陰性対照と比較した、亜硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウムを使用してpH5.8まで緩衝したクエン酸、及びマンニトールの酸性化溶液の、M.abscessusを死滅させるための有効性の試験の結果を示す。
図30】ヒト対象における肺感染の治療に使用するための、実施例10に記載の本発明の実施形態を概略形態で示す。
図31】ヒト対象における肺感染の治療に使用するための、吸入された気体状一酸化窒素(図31の左側)と比較した、本発明による液体NO生成製剤と肺組織との間の接触時点の図(図31の右側)を概略形態で示す。
図32】実施例8のLDH細胞毒性アッセイ(実験1&2)の結果を示す。データを、2つの実験の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、灰色の誤差バーとして示される。最大LDH活性(細胞+溶解緩衝液)を100%に設定し、全ての試料結果を、この値と比較する。LDH陽性対照は、キットからの陽性対照であった。黒色のバー(2時間培養)は、各場合における各対のバーの左側のバーであり、赤色のバー(24時間培養)は、各場合における各対のバーの右側のバーである。
図33】MOI3.0での実施例8(実験1)のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示す。実験1では、4つの多重感染(MOI)でSARS-CoV-2を使用して、1つのウイルス収率低減アッセイ(virus yield reduction assay)を実施し、接種材料ウイルスの逆力価測定(back titration)を使用して確認した。3のMOIで接種した細胞では、2.1log 10TCID50/mlが、力価測定後のウイルス対照ウェルで見出された。試験した条件のうちのいくつかでは、SARS-CoV-2収率の低減が観察され得る。インキュベーション24時間後、最も低い3つのMOI(すなわち、0.3、0.03、及び0.003)でほとんどウイルスが検出されなかった。おそらく、Vero E6細胞での24時間の複製は、高レベルの子ウイルスを得るのに十分ではない。データを、2つの力価測定の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、誤差バーとして示される。クロロキン及び細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
図34(a)】MOI3.0での実施例8(実験2)のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示す。方法論は、製剤が実験2製剤であり、インキュベーションが、子ウイルスのレベルを増加させるために24時間ではなく48時間実施されたことを除いて、それらのMOIでの実験1の部分に対応する。データを、2つの力価測定の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、誤差バーとして示される。クロロキン及び細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
図34(b)】MOI0.3での実施例8(実験2)のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示す。方法論は、製剤が実験2製剤であり、インキュベーションが、子ウイルスのレベルを増加させるために24時間ではなく48時間実施されたことを除いて、それらのMOIでの実験1の部分に対応する。データを、2つの力価測定の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、誤差バーとして示される。クロロキン及び細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
図35】MOI3.0での実施例9のSARS-CoVに対する抗ウイルス試験の結果を示す。クリスタルバイオレットでの細胞単層染色の前に、2つのプレートを顕微鏡でチェックし、細胞変性効果(CPE)についてスコアを付けた。これらのプレートにおいて、下にある単層の上部での細胞壊死組織片の形態でCPEが存在することが見出された。顕微鏡でチェックした2つのプレートの結果を示す。データは、条件ごとに単一の力価測定である。残りのプレートについては、細胞単層の高すぎる密度に起因して、クリスタルバイオレット染色後にCPEをスコア付けすることができなかった。細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【実施例
【0321】
以下の非限定的な実施例は、本発明の更なる例示のために提供される。
【0322】
実施例1及び2で使用した材料、装置、及び方法
溶液
0.1及び1Mのクエン酸(Health Supplies Limited,Thornton Heath,UK)、0.1Mのクエン酸ナトリウム(Fisher Scientific,Loughborough,UK)、1Mの亜硝酸ナトリウム(Sigma Aldrich,Dorset,UK)、0.5及び1Mのソルビトール(Special Ingredients,Chesterfield,UK)、0.5及び1MのD-マンニトール(Sigma Aldrich,Dorset,UK)、3Mの水酸化ナトリウム(Fisher Scientific,Loughborough,UK)、ならびに0.1及び1MのL-アスコルビン酸(ICN Biomedicals Inc.,Ohio,US)の適切な質量を脱イオン水中に溶解させることによって、ストック溶液を調製した。脱イオン水(18.2MΩ)を、Arium Mini lab water system(Sartorius,Germany)から入手した。
【0323】
クエン酸/クエン酸緩衝溶液を、以下の2つの方法によって調製した:
1.Sigma Aldrich,2018(https://www.sigmaaldrich.com/life-science/core-bioreagents/biological-buffers/learning-center/buffer-reference-center.html)によって記載されている体積を使用して、0.1Mのクエン酸及び0.1Mのクエン酸ナトリウムのストック溶液を滴定する、
2.0.1Mまたは1Mのいずれかの調製のために、既知の質量のクエン酸を少量の脱イオン水に溶解させ、次いで、3Mの水酸化ナトリウム及び脱イオン水のストック溶液を滴定して、所望の緩衝溶液pH(pH3~pH6.2)を達成する。
【0324】
方法1のクエン酸及びクエン酸ナトリウムの代わりに、方法1にアスコルビン酸及びアルコルビン酸ナトリウムを使用して、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝溶液を類似して調製した。
【0325】
ポリオールの包含は、既知の質量の亜硝酸ナトリウムをポリオールのストック溶液(例えば、ソルビトールまたはマンニトールのいずれか)と溶解させることによって達成した。
【0326】
緩衝溶液及びストックの成分の添加順序は重要ではなく、任意の混合順序を使用してもよい。
【0327】
全ての標準溶液は、調製の48時間以内に使用した。脱イオン水に溶解させたフタル酸塩(pH4)及びリン酸塩(pH7)錠剤(Fisher Scientific UK
Ltd,Leicestershire,UK)を使用して、較正緩衝溶液を調製した。
【0328】
選択イオンフローチューブ質量分析(SIFT-MS)の起動及び検証
Voice 200選択イオンフローチューブ質量分析計(SIFT-MS)(Syft Technologies Ltd,New Zealand)を、本報告書に記載の全ての気体分析に使用した。この機器は、ヘリウム(BOC,Surrey,UK)を担体気体として使用する。
【0329】
分析前に、単純な起動手順で使用するように、SIFT-MSを準備した。機器をスタンバイモードから外し、一連の圧力チェックを行って、キャピラリー流量が操作の許容範囲内であることを確認した。これに続いて、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及び
キシレンを含有する製造業者の較正気体標準物質(Syft Technologies
Ltd,New Zealand)を使用する自動検証手順を行った。最後に、10ppmの二酸化窒素標準物質(Air Products PLC,Surrey,UK)を使用する社内性能チェックを行った。
【0330】
NOの生成手順
SIFT-MS装置、反応チャンバ、及び気体経路を図17に示されるように設定した。
【0331】
HT1 Temperature Smart Sensor(SensorPush,New York,US)を用いて、反応チャンバ内の温度を継続的に監視した。反応チャンバ、シリコーンシールを有する670mLのプラスチック(ビスフェノールAを含まない(BPAを含まない))クリップロックチューブ(Tesco,Welwyn Garden City,UK)を、チャンバを通りSIFT-MS入口キャピラリー上に連続的に湿気のある空気を循環させるポンプに取り付けた。Vernon,W.,and
Whitby,L.(1931)The quantitative humidification of air in laboratory experiments,Trans.Faraday Soc.27,248-255によって記載のものと類似する方法で、脱イオン水を含有する2つのDreschelボトルに空気をポンプによって通すことによって、加湿を達成した。この系を、使用前に30分間均等化させた。NO、NO、及びHONOのリアルタイム検出及び定量化のために、連続的なSIFT-MSスキャンを開始した。これらの化合物について安定したベースラインの読み取り(>2分間の一貫した濃度)が観察されたら、試料を反応チャンバに入れ、3時間監視した。
【0332】
SIFT-MS検証後、120℃まで加熱したキャピラリー入口延長部を、T接合部を介して反応チャンバの出口に取り付け、SIFT-MSが反応チャンバから流出する気体をリアルタイムで試料採取することを可能にした。
【0333】
RKW-Group,Frankenthal,Germanyからのおよそ0.3cm×0.3cmの梳綿した不織布平方メートル当たり20グラム(20gsm)のポリプロピレンメッシュを、計量ボート(約3mg)で計量することによって、試料を調製した。10μLの試験溶液または対照溶液の液滴をメッシュの中心に添加した後、これを再計量した(液滴をメッシュに確実に浸み込ませた)。最後に、計量ボート内の充填されたメッシュを反応チャンバに入れ、最終10μLの緩衝溶液の液滴をメッシュの中心にピペットで移した。反応チャンバを速やかに密閉し、窒素種の生成をSIFT-MSインターフェースで瞬時に観察した。
【0334】
生成された気体の分析
SIFT-MSの選択イオンモードを使用して、生成された気体を分析し、各1000秒持続する連続バッチでスキャンを実施した。以下の生成物の質量:亜硝酸では30m/z、亜硝酸では48m/z、二酸化窒素では46m/z、及び一酸化窒素では30m/zを、繰り返しスキャンした前駆体陽イオン:ヒドロニウム(H)、ニトロシウム(nitrosium)(NO)、及びジオキシゲニル(O )の3つ全てを使用して、これらの測定を達成した。660ml/分で空気をチャンバに流し、SIFT-MS入口で2.7ml/分の流量のこの空気流を試料採取した。
【0335】
全ての実施例のpH測定
全てのpH測定には、ガラス電極LE438プローブを備えたFive Easy pH計(Mettler Toledo,Switzerland)を使用した。第2のpH計、手持ち型205プローブ(Testo,Alton,US)を用いて、この電極の
精度を確実にした。pH計の毎日の較正には、新鮮な較正緩衝溶液を使用した。
【0336】
実施例1
1M/c.pH3のクエン酸を、1Mのポリオールを含む及び含まない、1Mの亜硝酸ナトリウムを吸入させたメッシュに接触させることを使用する、一酸化窒素の生成。
SIFT-MS装置、反応チャンバ、及び気体経路を、上述の図17に示されるように設定した。
【0337】
1Mのマンニトール及び1Mのソルビトールをそれぞれ含有する1Mの亜硝酸ナトリウムの2つの試験溶液を、上述のようにメッシュに吸入させて、2つの試験メッシュを作製した。
【0338】
ポリオールを含む1Mの亜硝酸ナトリウムの対照溶液を、上述のようにメッシュに吸入させて対照メッシュを作製した。
【0339】
上述の2つの方法1及び2のいずれかによって調製し、各試験において、約3のpHを有する1Mのクエン酸/クエン酸緩衝液の緩衝溶液を試験メッシュ及び対照メッシュの各々に添加して、上述のように気体生成を開始した。
【0340】
結果を図1に示す。
【0341】
メッシュが1Mのマンニトールまたは1Mのソルビトール(マンニトールは、ソルビトールよりも大きな効果を有する)も含有した場合、1M/c.pH3クエン酸と接触させた1Mの亜硝酸ナトリウム吸入メッシュは、ポリオールが存在しなかった場合よりも顕著に多量の一酸化窒素を生成したことを、データは示している。
【0342】
実施例2
一酸化窒素の生成に対する、異なるカルボン酸、酸濃度、pH、及びポリオールの効果の調査
有機酸、pH、及びポリオールを以下のように変動させながら、上のように試料を調製した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0343】
SIFT-MS装置、反応チャンバ、及び気体経路を、上述の図17に示されるように設定した。
【0344】
上述の試験溶液を上述のメッシュに吸入させて、試験メッシュを作製した。
【0345】
使用する場合、ポリオールを含む1Mの亜硝酸ナトリウムの対照溶液を、上述のようにメッシュに吸入させて対照メッシュを作製した。
【0346】
上述の2つの方法1及び2のいずれかによって調製し、上述のpHを有する上述の緩衝溶液または各緩衝溶液を、各試験において試験メッシュ、及び使用する場合対照メッシュの各々に添加して、上述のように気体生成を開始した。
【0347】
結果を図2~13に示す。図における「通常」は、ポリオールが存在しないことを指す。
【0348】
図2は、ポリオールの不在下でクエン酸/クエン酸緩衝液またはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液(pHおよそ3)によって生成されるNO発生速度を比較する。グラフは、クエン酸/クエン酸緩衝液が、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液よりも高いレベルで、より高い初期噴出を生成し、発生がより長く持続することを明確に示している。クエン酸/クエン酸緩衝液は、約55000ppbでピークを描くが、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液は、約28000ppbでピークを描く。
【0349】
図3は、ポリオールを含む及び含まない、クエン酸/クエン酸緩衝液及び亜硝酸塩系に関する。ポリオール濃度は、1Mである。発生速度、初期噴出、及び経時的な結果の放出は、ポリオールなしと比較して、ポリオールの存在下で変化する。キシリトール及びマンニトールは、最高のピークを生成し、続いてソルビトール、次いでポリオールなし、次いでアラビトールである。500~1000秒の領域では、キシリトール及びアラビトールは、最高の出力を有し、続いてマンニトール、ソルビトール、次いでポリオールなしである。ピーク噴出マンニトール=キシリトール(約64000ppb)>ソルビトール(約53000ppb)>ポリオールなし(約50000ppb)>アラビトール(約40000ppb)。
【0350】
図4は、ポリオールを含む及び含まない、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液及び亜硝酸塩系に関する。ポリオール濃度は、1Mである。ピーク噴出マンニトール(約40000ppb)>アラビトール(約35000ppb)>キシリトール=ポリオールなし(約30000ppb)>ソルビトール(約23000ppb)、すなわち、図3のクエン酸/クエン酸緩衝液系とは異なる順番である。
【0351】
図5は、ポリオールを含む及び含まない、クエン酸/クエン酸緩衝液及び亜硝酸塩系に関する(マンニトールの線とほぼ同じピーク噴出を有する「ポリオールなし」の線は、明確性のために省略されている)。ポリオール濃度は、0.5Mである。ピーク噴出アラビトール(約76000ppb)>>ポリオールなし=マンニトール(約48000ppb)>キシリトール=ソルビトール(約40000ppb)。これは、類似の1Mのポリオールクエン酸/クエン酸緩衝液系(図3)と比較して異なる順番であり、ポリオール効果がポリオール濃度に依存することを示していることが見られるであろう。
【0352】
図6は、ポリオールを含む及び含まない、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液及び亜硝酸塩系に関する(ソルビトールの線とほぼ同じピーク噴出を有する「ポリオールなし」の線は、明確性のために省略されている)。ポリオール濃度は、0.5Mである。ピーク噴出キシリトール(約50000ppb)>マンニトール(約38000ppb)>ソルビトール=ポリオールなし(約30000ppb)>アラビトール(約23000ppb)。再び、類似のクエン酸/クエン酸緩衝液(0.5Mのポリオール)及びアスコルビン酸/アスコルビン酸塩(1Mのポリオール)系(それぞれ、図5及び4)と比較して、異なる順番が観察される。したがって、ポリオール効果は、ポリオール化学/立体化学及びポリオールモル濃度に依存することが実証される。
【0353】
図7及び8は、クエン酸/クエン酸緩衝液またはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、及びポリオール(0.5M)の存在を用いたNO発生速度を比較する。これらのグラフは、図2~6で観察された差のうちのいくつかを強調する。図7のクエン酸/クエン酸緩衝液は、約76000ppbでピークを描くが、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液は、約22000ppbでピークを描く。図8のクエン酸/クエン酸緩衝液は、約48000ppbでピークを描くが、アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液は、約38000ppbでピークを描く。
【0354】
図9は、1Mのポリオール濃度の累積出力を比較している。アスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液での3000秒での差は、マンニトール>ソルビトール=アラビトール>キシリトールの順序で小さい。3000秒のクエン酸/クエン酸緩衝液では、順序は、キシリトール>アラビトール>マンニトール>ソルビトール>ポリオールなしである。データは、一酸化窒素の出力が、例えば、ポリオールなし(3000秒後に亜硝酸塩mg当たり約10000nmolの累積一酸化窒素発生を得、その後依然として上昇さえしている曲線E)とキシリトール(同じ時間後に亜硝酸塩mg当たり約20000nmolの累積一
酸化窒素発生を得、また依然として上昇している曲線A)との間で、最大約100%、または更には約100%超増加することができることを示している。
【0355】
図10は、0.5Mのポリオール濃度の累積出力を比較している。3000秒でのクエン酸/クエン酸緩衝液では、順序は、アラビトール>マンニトール=キシリトール>ソルビトール>ポリオールなしである(明確性のために、ソルビトールの線の下にあるクエン酸/クエン酸緩衝液の「ポリオールなし」の線は省略されている)。3000秒のアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液では、順序は、キシリトール>マンニトール>ソルビトール>アラビトールである。再び、この順序は、1Mのポリオール(図9)と比較して異なる。
【0356】
図11~13は、マンニトール(0.5M)を含み、異なるpHのクエン酸/クエン酸緩衝液1M及び亜硝酸ナトリウム(1M)の累積プロットを比較する。PHが増加するにつれて差は小さくなり、pH6.2で差は消失した。それによって、これらの実験から、ポリオール効果もまた、pHに依存することが見られる。
【0357】
図14は、1Mの亜硝酸ナトリウム溶液中に存在するグリセロールを含む及び含まない(1M及び2M)、クエン酸/クエン酸緩衝液(1M、pHおよそ2)の累積NO(nmol/メッシュ面積cm)出力を示す。最初の2000秒にかけて、1M及び2MのグリセロールのNO出力は、ポリオールが存在しない場合よりもわずかに低い。より長い時間では、グリセロール含有製剤は、より大きな出力を有し、2Mのグリセロールは、より大きな出力を有する。
【0358】
図15は、亜硝酸塩溶液中に存在するポリオールを含むかまたは含まない、クエン酸/クエン酸緩衝液(1M、pHおよそ2)及び1Mの亜硝酸ナトリウム溶液の累積NO(nmol/メッシュ面積cm)出力を示す。プロットは、マンニトール/亜硝酸塩溶液中にグリセロールを含むことによって、グリセロールが存在しない場合と比較して、出力が低減されることを示している。しかしながら、驚くべきことに、マンニトールの場合とは異なり、ソルビトール/亜硝酸塩溶液中にグリセロールを含むことによって、グリセロールが存在しない場合の出力と比較して、NO出力が向上する。
【0359】
グリセロールを使用する場合、1Mのグリセロール溶液をまず作製し、それを1Mのソルビトールまたは1Mのマンニトール溶液を作製するために使用し、ひいては、それを1Mの亜硝酸塩溶液を作製するために使用した。
【0360】
図16は、亜硝酸ナトリウム(1M)溶液中に存在するマンニトール(0.5M)を含む及び含まない、クエン酸/クエン酸緩衝液(1M、pH5.8)の累積NO出力(mol/亜硝酸塩mg)を示す。プロットは、ポリオールを含むことによって、およそ2000秒の反応時間後に、より大きなNO出力を生じることを示している。
【0361】
図16は、約5超、特に約5.5超の生理学的に重要なpHレベルで、マンニトールが、マンニトールを含まない同じ系と比較して一酸化窒素の生成を向上し、10000秒(167分)後に亜硝酸塩mg当たり1400nmol NOの累積レベルを提供することを示している。
【0362】
実施例3
ポリオールを含む及び含まない、様々な有機酸及び亜硝酸塩溶液を用いたM.abscessus培養物に対する活性
材料
4.7gのMiddlebrook 7H9ブロスベース(Sigma-Aldric
h)を900mlの蒸留水で再構成し、121℃で15分間、オートクレーブで処理した。オートクレーブで処理した7H9溶液(450ml当たり50ml、合計100ml添加)に、MiddlebrookADC増殖補給剤(Sigma-Aldrich)を添加した。
【0363】
1Mの亜硝酸ナトリウム(Emsure):清潔なスクリュートップのガラスボトル内で、6.9gの亜硝酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解させる。121℃で15分間、混合物をオートクレーブで処理する。
【0364】
1Mのクエン酸(Sigma-Aldrich):清潔なスクリュートップのガラスボトル内で、19.2gのクエン酸粉末を100mlの蒸留水に溶解させる。121℃で15分間、混合物をオートクレーブで処理する。
【0365】
1Mのアスコルビン酸(Sigma-Aldrich):滅菌ガラスボトルに、17.6gのアスコルビン酸粉末を添加する。100mlの滅菌した蒸留水に完全に溶解させる。短い半減期に起因して、厳密な滅菌技術を使用して毎日調製した。固有の不安定性に起因してオートクレーブで処理しなかったが、使用前に0.2μフィルターで濾過した。
【0366】
1Mのクエン酸ナトリウム三塩基二水和物(Sigma-Aldrich):清潔なスクリュートップのガラスボトル内で、29.4gのクエン酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解させる。121℃で15分間、混合物をオートクレーブで処理する。
【0367】
1MのL-アスコルビン酸ナトリウム塩(Acros Organics):清潔なスクリュートップのガラスボトル内で、19.8gのアスコルビン酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解させる。121℃で15分間、混合物をオートクレーブで処理する。
【0368】
ポリオールを含む実験には、D-マンニトール(Sigma-Aldrich)を使用した。上述の亜硝酸ナトリウムストック溶液にポリオールを添加して、以下のストック溶液を形成した:
ストック溶液A-1Mの亜硝酸ナトリウム&0.5Mのマンニトール
ストック溶液B-1.5Mの亜硝酸ナトリウム及び0.5Mのマンニトール
【0369】
1.5Mのクエン酸のストック溶液も調製した。
【0370】
希釈倍数に対して各構成成分のモル濃度を調整し、各実験溶液の正しい最終モル濃度を確認した。
【0371】
マイコバクテリウム属abscessus(MAB)
この実施例では、全ての実験条件に対して、実験室参照株マイコバクテリウム属abscessus ATCC19977luxを使用した。
【0372】
方法論
50mlのファルコンチューブを、チューブT(試験懸濁液)、チューブA(酸対照)、及びチューブC(対照)とラベル付けした。
【0373】
8mlの7H9+ADC補給剤を各チューブに添加した。次いで、(以前、およそ3~4のMcFarland標準まで増殖させた)100μlのMAB懸濁液を添加した。MAB懸濁液のベースライン相対発光量(RLU)の読み取りを行った。ボルテックスすることによって、内容物を混合した。
【0374】
ポリオール(マンニトール)が存在しない場合のチューブ内容物
チューブT:1mlの亜硝酸ナトリウム(1M)溶液をチューブに添加し、直後に1mlのクエン酸溶液(1M)またはアスコルビン酸溶液(1M)を添加して、10ml中0.1Mの最終濃度を得た。内容物を穏やかな反転によって混合し、37℃で24時間インキュベートした。
【0375】
チューブA:1mlのクエン酸溶液(1M)またはアスコルビン酸溶液(1M)をチューブに添加し、1mlの滅菌した蒸留水を添加して、10mlの最終体積を生成して、酸に対して0.1Mの濃度を試験した。内容物を穏やかな反転によって混合し、37℃で24時間インキュベートした。
【0376】
チューブC:2mlの滅菌した蒸留水をチューブに添加して、10mlの合計体積を作製した。これは、最適な条件下での増殖を評価するための対照である。内容物を穏やかな反転によって混合し、37℃で24時間インキュベートした。
【0377】
ポリオール(マンニトール)が存在した場合のチューブTの内容物
マンニトールが存在した場合、チューブTの内容物は、以下の通りであった:
1.チューブT:亜硝酸ナトリウム(1M)&マンニトール(0.5M)1ml、及び1mlのクエン酸(1M)
2.チューブT:亜硝酸ナトリウム(1.5M)&マンニトール(0.5M)1ml、及び1mlのクエン酸(1M)
3.チューブT:亜硝酸ナトリウム(1M)&マンニトール(0.5M)1ml、及び1mlのクエン酸(1.5M)
【0378】
30分、60分、及び24時間のインキュベーションでRLUを測定して、T、A、及びC溶液の活性を評価した。
【0379】
24時間のインキュベーションの後、チューブC、チューブA、及びチューブTをColumbia Blood Agar(VWR化学物質)上にプレーティングした。37℃で72時間、プレートをインキュベートした。コロニー形成単位(CFU)を、インキュベーションの3、5、及び7日目に読み取った。CL2実験施設内のCL2生物学的安全キャビネット内で全ての作業を行った。
【0380】
結果を図18~21に示す。
【0381】
図18は、0.1Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液(チューブT)が、6.0、6.5、7.0、及び7.4のpH値での0.1Mのクエン酸のみの溶液(チューブA)と比較して、5及び5.5のpHで7日後のM.abscessus培養の排除、及びM.abscessus培養の低減に有効であることを示している。図18はまた、0.1Mのアスコルビン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液(チューブT)が、6.5、7.0、及び7.4のpH値でのアスコルビン酸のみの溶液(チューブA)と比較して、5.0、5.5、及び6.0のpH値で7日後のM.abscessus培養の排除、及びM.abscessus培養の低減に有効であることを示している。
【0382】
図19a)は、0.1Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、3日のインキュベーション後のM.abscessus培養物のCFUの低減に有効であり、0.05Mのマンニトールを含む、0.1Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、3日のインキュベーション後のM.abscessus培養のほぼ完全な排除に有効であることを示している。図19b)は、マンニトールを含まない、0.1Mのクエン酸及び0.1M
の亜硝酸塩の溶液が、5日のインキュベーション後のM.abscessusの低減したCFUを維持するのに有効であることを示している。図はまた、0.05Mのマンニトールを含む、0.1Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、5日のインキュベーション後のM.abscessus培養物のCFUの低減に有効であることを示している。
【0383】
図20a)は、0.15Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、3日のインキュベーション後のM.abscessus培養物のCFUの低減に有効であり、0.05Mのマンニトールを含む、0.15Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、3日のインキュベーション後のM.abscessus培養の排除に有効であることを示している。図20b)は、マンニトールを含まない、0.15Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、5日のインキュベーション後のM.abscessusの低減したCFUを維持するのに有効であることを示している。図はまた、0.05Mのマンニトールを含む、0.15Mのクエン酸及び0.1Mの亜硝酸塩の溶液が、5日のインキュベーション後のM.abscessus培養の排除に有効であることを示している。
【0384】
図21は、0.1Mのクエン酸及び0.15Mの亜硝酸塩の溶液が、3日のインキュベーション後のM.abscessus培養物のCFUの低減、及び5日のインキュベーション後のM.abscessus培養物のCFUの低減の維持に有効であることを示している。図はまた、0.05Mのマンニトールを含む、0.1Mのクエン酸及び0.15Mの亜硝酸塩の溶液が、3及び5日のインキュベーション後のM.abscessus培養の排除に有効であることを示している。
【0385】
実施例4
様々な臨床単離株培養物における、マイコバクテリウム属abscessus(Mabs)及びマイコバクテリウム属tuberculosis(Mtb)に対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の最小阻害濃度(MIC)
健康な志願者
書面によるインフォームドコンセント(倫理承認参照REC No.12/WA/0148)を提供した健康な志願者から末梢血試料を採取した。
【0386】
マイコバクテリア株
マイコバクテリウム属abscessus(ATCC19977)及びマイコバクテリウム属tuberculosis(H37RV)の両方の株は、相対発光量(RLU)の測定、ならびにバクテリア生存の従来のコロニー形成単位(CFU)測定を可能にする、バクテリアルシフェラーゼ(lux)遺伝子カセット(luxCDABE)を含有していた。
【0387】
一般試薬
【表2】
【0388】
治療条件
治療1:クエン酸0.15M、亜硝酸ナトリウム0.1M、及びマンニトール0.05M治療2:クエン酸0.1M、亜硝酸ナトリウム0.15M、及びマンニトール0.05M
【0389】
ブロス微量希釈最小阻害濃度(MIC)
抗細菌薬感受性試験の臨床検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)によって作成されたガイドライン(M07-A9)に従って、M abscessus及びM tuberculosisに対する各治療についてのMICを測定した。各治療の倍希釈をプレート全てに行い、プレートを37℃でインキュベートし、Mabsでは3及び7日目、Mtbでは14及び21日目に読み取った。試験は2回行った。
【0390】
CL2実験施設内のCL2生物学的安全キャビネット内で全ての作業を行った。
【0391】
M.abscessusに対する1.5Mのクエン酸、1Mの亜硝酸ナトリウム、及び0.5Mのマンニトールの溶液の最小阻害濃度は、4.7mMであることが見出された。M.tuberculosisに対する1.5Mのクエン酸、1Mの亜硝酸ナトリウム、及び0.5Mのマンニトールの溶液の最小阻害濃度は、2.3mMであることが更に見出された。
【0392】
M.abscessusに対する1Mのクエン酸、1.5Mの亜硝酸ナトリウム、及び0.5Mのマンニトールの溶液の最小阻害濃度は、3.1mMであることが見出された。M.tuberculosisに対する1Mのクエン酸、1.5Mの亜硝酸ナトリウム、
及び0.5Mのマンニトールの溶液の最小阻害濃度は、1.6mMであることが更に見出された。
【0393】
また、Floto Laboratory,Cambridge University,UK(https://www.flotolab.com/)M.abscessus臨床単離株ライブラリからの単離株番号570、571、573、575、578、579、580、581、582、583、584、585、589、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、616、617、619、812、825、829、839、845、848、853、857、858、873、894、898、909、919、928、932、942、944、955、956、959、963、964、965、968、975、980、982、985、993、995、1000、1001、1007、1011、1017、1023、1024、1026、1027、1042、1043、1045、1047、1049、1054、1063、1066、1067、1070、1072、1073、1074、1075、1076、1077、1078、1079、1082、1086、1094、1096、1101、1103、1104、及び1106を使用するブロス微量希釈によって、最小阻害濃度(MIC)を実行した。各個々の単離株を2回評価した。
【0394】
臨床単離株の試験結果を図22a)及びb)に示す。グラフは、単離株のインキュベーションの3、4、及び5日後に得た読み取り値を用いた、M.abscessusに対する一酸化窒素の2回のMICを示している。また、インキュベーションの7日目にプレートを読み取ったが、5日目と比較して、差は見られなかった。実験室株ATCC19977luxを、両方の実験において対照として使用し、臨床単離株に対する比較結果を示す。
【0395】
図22は、クエン酸-亜硝酸塩-マンニトール溶液が、広範な臨床単離株にわたって効果を有することを示している。大部分の臨床単離株の最小阻害濃度は、0.1Mのクエン酸、0.15Mの亜硝酸塩、及び0.05Mのマンニトールの溶液では0.02M以内であり(図22a)、大部分の臨床単離株の最小阻害濃度は、0.15Mのクエン酸、0.1Mの亜硝酸塩、及び0.05Mのマンニトールの溶液では0.04M以内であった(図22b)。
【0396】
両方の図では、ある特定の試料のMICは、日が異なれば異なった。これらは、単離株試料の同定コードの上に2つ以上の点が示されている試料である。一般に、インキュベーションの数日後には、その状況で、低いMICではなく、高いMICが観察された。全体的に、低いクエン酸(0.1M)と高い亜硝酸ナトリウム(0.15M)との組み合わせ(図22(a))は、高いクエン酸(0.15M)と低い亜硝酸ナトリウム(0.1M)との組み合わせ(図22(b))よりも有効である。
【0397】
カルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液によるM.abscessusのインビトロ死滅を示す追加のデータを、図29に示す。この図では、類似の条件下で24時間の期間にわたって、亜硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム溶液を使用してpH5.8まで緩衝したクエン酸、及びマンニトールの水性製剤のM.abscessus死滅有効性を、アミカシン及び陰性対照と比較して実証している。
【0398】
実施例5
ポリオールを含む及び含まない、カルボン酸-亜硝酸塩溶液のPseudomonas aeruginosaに対する抗細菌活性
装置及び培地
UKAS較正済みピペット(100~1000μL範囲)-Proline(登録商標)Plus
UKAS較正済みマルチチャネルピペット(P300及びP20)-Gilson(登録商標),UK
ユニバーサルチューブ-SLS,UK
較正済み天秤-HR-100A
微生物インキュベータ-Heratherm(商標),ThermoFisher Scientific,UK
トリプトン大豆寒天(TSA)-Southern Group Laboratories,UK
トリプトン大豆ブロス(TSB)-Acumedia(登録商標),SLS,UK
麦芽寒天-Acumedia(登録商標),Acumedia(登録商標),SLS,UK
Brain Heart Infusionブロス(BHIB)-Acumedia(登録商標),SLS,UK
Sabouraudデキストロースブロス(SDB)-Acumedia(登録商標),SLS,UK
Dey-Engley中和剤(DE-N)-Acumedia(登録商標),SLS,UK
クエン酸-Sigma,UK
亜硝酸ナトリウム-Sigma,UK マンニトール-Sigma,UK
ソルビトール-Sigma,UK
【0399】
試験微生物
Pseudomonas aeruginosa NCTC13618-嚢胞性線維症患者から単離
【0400】
製剤
【表3】
【0401】
濃度1-1Mのクエン酸プラス1Mの亜硝酸ナトリウム(0.5Mのポリオールを含むかまたは含まない)
濃度2-0.5Mのクエン酸プラス1Mの亜硝酸ナトリウム(0.5Mのポリオールを含むかまたは含まない)
濃度3-0.5Mのクエン酸プラス0.5Mの亜硝酸ナトリウム(0.5Mのポリオー
ルを含むかまたは含まない)
【0402】
Dey-Engley中和剤検証
トリプトン大豆寒天(TSA)からPseudomonas aeruginosaの24時間培養物を採取し、これを使用して1×10±5×10CFUmL-1懸濁液を調製した。これをBrain Heart Infusionブロス(BHIB)中で更に希釈して、1×10±5×10CFUmL-1希釈標準懸濁液を調製した。
【0403】
連続希釈及び塗抹プレーティングによって、開始接種材料を確認した。対照(9mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び1mLの接種材料)、毒性(9mLのDey-Engley中和剤(DE-N)及び1mLの接種材料)、及び中和剤有効性(8mLの中和剤、1mLの試験薬剤、及び1mLの接種材料)の試料を使用して、中和剤の検証を実施した。5分の処理に続いて、各チューブから200μLの懸濁液を取り出し、連続希釈し、100μLをTSA上にプレーティングした。37±2℃で18~24時間、寒天プレートをインキュベートした。
【0404】
浮遊性の生物に対する抗細菌有効性
TSAからP.aeruginosaの24時間培養物を採取し、これを使用して1×10±5×10CFUmL-1懸濁液を調製した。これをBHIB中で更に希釈して、1×10±5×10CFUmL-1希釈標準懸濁液を調製した。8mLのバクテリア溶液でユニバーサルチューブを充填した。
【0405】
1mlのクエン酸溶液及び1mLの亜硝酸ナトリウム溶液を各試験薬剤に添加して、上述の必要濃度を得た。37±2℃で24時間、溶液をインキュベートした。インキュベーション期間に続いて、各チューブから1mLを取り出し、9mLの中和剤を含有するチューブに移した。連続希釈及びプレート計数を使用して、生存生物を定量化した。
【0406】
結果を図23に示す。
【0407】
データは、以下のPseudomonasに対する抗細菌有効性を示している:
-ポリオール(0.5M)を含む及び含まない、亜硝酸塩(1M)と混合したクエン酸(1M)(「Conc.1」)、
-ポリオール(0.5M)を含む及び含まない、亜硝酸塩(1M)と混合したクエン酸(0.5M)(「Conc.2」)、及び
-ポリオール(0.5M)を含む及び含まない、亜硝酸塩(0.5M)と混合したクエン酸(1M)(「Conc.3」)。
【0408】
クエン酸溶液は、(製剤1、3、及び5では)pH5.2、及び(製剤2、4、及び6では)6.0である。製剤1及び2は、ポリオールを含有せず、製剤3及び4は、マンニトールを含み、製剤5及び6は、ソルビトールを含有する。
【0409】
全ての製剤では、pH5.2で良好な有効性が示されている。pH6では、マンニトールを含む製剤は、わずかにより有効である。
【0410】
実施例6
M.tuberculosis HN878に対する、THP-1細胞における亜硝酸塩、有機酸、及びポリオールを含む製剤の有効性を評価した。
【0411】
製剤
以下の表に記載のように製剤を調製した。試料参照における末尾FCによって示される
「濃縮」として調製方法が記載される場合、これは、最初に、亜硝酸ナトリウム(0.75M)、ポリオール(0.25M)、及び酸(0.5M)の3つ全ての成分を含有する濃縮事前混合物として製剤を作製し、次いで蒸留水で希釈して、表に記載の各々の所望の濃度に到達したことを意味する。試料参照における末尾FDによって示される「希釈」として調製方法が記載される場合、これは、最初に所望の濃度で3つ全ての成分、すなわち亜硝酸ナトリウム(0.15M)、ポリオール(0.05M)、及び酸(0.1M)を含有する事前混合物として製剤を最初に作製し、次いで蒸留水で希釈して、表に記載の各々の所望濃度に到達したことを意味する。
【0412】
M.tuberculosis HN878に対するインビトロバクテリア阻害アッセイのために、各製剤内で、連続希釈によって様々な濃度、すなわち、16、8、4、2、1、0.5、0.25、及び0.125μg/mlの亜硝酸ナトリウムを調製した。
【表4】
【0413】
THP-1マクロファージ(1)化合物スクリーニングアッセイを使用して、MICマクロファージ試験を実施した。
【0414】
マクロファージの調製及び培養:THP-1細胞を2週間増殖させた。その後、5×10細胞/mLの濃度のマクロファージの完全DMEM培地中に、THP-1細胞を懸濁させた。24ウェル組織培養プレート、ウェル当たり2mL(ウェル当たり1×10)で、細胞を播種した。細胞の1つの24ウェルプレートは、7つの様々な薬物濃度プラス未処理の対照で3回試験する。薬物アッセイプレートに加えて、感染日にバクテリアの取り込みを決定するために、1つの追加のプレート(または少なくとも3つの追加のウェル)を播種した。37℃、5%のCOの加湿したチャンバ内で、細胞をインキュベートした。DMEM抗生物質/抗真菌剤を含まない完全培地は、3日のアッセイ中に変化しなかった。
【0415】
マクロファージ用の完全DMEM培地:
以下を補給したダルベッコ改変イーグル培地(Cellgro15-017-cv):
熱不活化ウシ胎児血清(Atlas Biologicals,Fort Collins,CO,F-0500-A)(10%)
L929調整済み培地(10%)
L-グルタミン(Sigma G-7513)(2mM)
HEPES緩衝液(Sigma H-0887)(10mM)抗生物質/抗真菌剤(Sigma A-9909)(1×)
MEM非必須アミノ酸(Sigma M-7145)(1×)
2-メルカプトエタノール(Sigma M-6250)(50nM)
【0416】
L-929調整済み培地:
75cmフラスコ内で、55mLのDMEM+10%のウシ胎児血清中に、ATCC由来のL-929(CCL-1)細胞を4.7×10細胞で播種した。THP-1細胞では、細胞を3日間増殖させた。3日目に上清を収集し、0.45μmフィルターに通して濾過し、アリコートし、-20℃で凍結させた。THP-1感染のために、細胞を含まない濾液をDMEM培地に使用した。
【0417】
THP-1細胞の感染:
0日目に、培地を細胞から除去し、マクロファージ1対バクテリア10の比のMOIで、M.tuberculosis HN878を含有する0.2mlの抗生物質/抗真菌剤を含有しないDMEMで置き換えた。閉じたZiplocバッグの内側に組織培養プレートを入れ、インキュベータに戻した。インキュベータの内側に入れ、バッグを開封した。バクテリアと共に細胞を2時間インキュベートした。感染後、細胞の外側に付着しているバクテリアを除去し、各ウェルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、様々な薬物濃度を有する2mLの抗生物質/抗真菌剤を含まない完全DMEM培地を添加した。薬物濃度を調製するために、次のチューブ内で以前の10mlの懸濁液を10mlの完全培地プラス血清に添加することによって、連続2倍希釈を実施した。組織培養プレートを、37℃+5%のCOのインキュベータに戻した(薬物は、ウェルに3日間残留させた)。各薬物濃度を、3つのウェルで試験した。
【0418】
細胞溶解物のプレーティング及びTHP-1細胞の細胞生存率の評価を、感染の2時間、1、2、及び5日後に実施した。組織培養培地を全てのウェルから除去し、細胞を1mlのPBSで2回洗浄した。次に、1mlの滅菌再蒸留水+0.05%のTween-80を各ウェルに添加し、細胞を室温で5~10分間放置した。細胞溶解物を、24ウェル組織培養プレート内の滅菌生理食塩水中1:10で連続希釈した。1/1,000希釈ステップを通じて、希釈した細胞溶解物を7H11/OADC寒天上に配置した。(連続希釈物を作製するために、細胞の各24ウェルTCプレートは、4つの24ウェルTCプレート、及び24個の寒天「クワッド」プレートを必要とする)。プレートを32℃で30
日間インキュベートし、コロニーを数えてCFU/mlを決定した。
【0419】
結果:
インビトロTHP-1 HN878光学密度結果
バクテリアを阻害する最も希釈された組成物(すなわち、16、8、4、2、1、0.5、0.25、0.125μg/mlとして示されるスケールでの特定の製剤の最大希釈レベル)として報告される最小阻害濃度(MIC)
【表5】
【0420】
結果を図24~27に示す。
【0421】
図24:M.tuberculosis HN878に対する30RESP001FC及びFD(濃縮及び希釈)の有効性を、THP-1細胞において評価した。感染2時間後(0日目)、1、2、及び5日後、ならびに16μg/ml(▲)、8μg/ml(逆三角、白抜き)、4μg/ml(ダイヤ、白抜き)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(ダイヤ、塗りつぶし)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処理の製剤30RESP001FC(濃縮)(A)及び30RESP001FD(希釈)(B)の有効性を、THP-1マクロファージにおけるM.tuberculosis HN878(四角、白抜き)の細胞内死滅について評価した。図24のプロットの各々では、それぞれ16μg/ml及び8μg/mlでの処理についての▲及び(逆三角、白抜き)プロットの線は、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより有効であるので、それぞれ0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理についての▲及び▼プロットの線と区別することができる。換言すると、16μg/ml及び8μg/mlでの処理についてのプロットの線は、特に5日目に、0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理よりも顕著に低いCFU値を示す。同様に、1μg/mlでの処理についての□プロットの線は、1μg/mlでの処理がより有効であるので、処理なしの(四角、白抜き)プロットの線と容易に区別することができる。処理なしの(四角、白抜き)プロットの線は、1日目以降に上昇し、1×10超を維持するCFU値を有する。
【0422】
「16μg/ml」として記載される、上のMIC表及び図24に言及される30RESP001FC及びFD組成物は、0.15Mの亜硝酸ナトリウム、0.05Mのマンニトール、及び0.1Mのクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、各々の
8、4、2、1、0.5、0.25、及び0.125μg/mlの組成物が、それぞれ、16~0.125μg/mlの当該順序で、先の組成物の50%希釈である(すなわち、濃度を半減させている)。
【0423】
THP-1マクロファージを、M.tuberculosisに1:10のMOIで感染させ、感染2時間後(0日目)、1、2、及び5日後にバクテリアコロニー計数方法(CFU)を直ちに使用して細胞内バクテリア数を決定した。示される値は、1つの独立した実験からの平均±SDである。特に、30RESP001FC及びFD(濃縮及び希釈)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において、未処理の対照と比較して、M.tuberculosis HN878に対する増加した有効性が存在した(*、p<0.05)。
【0424】
図25:M.tuberculosis HN878に対する30RESP002FC及びFD(濃縮及び希釈)の有効性を、THP-1細胞において評価した。感染2時間後、1、2、及び5日後、ならびに16μg/ml(▲)、8μg/ml(逆三角、白抜き)、4μg/ml(ダイヤ、白抜き)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(ダイヤ、塗りつぶし)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処理の30RESP002FC(濃縮)(A)及び30RESP002FD(希釈)(B)の製剤の有効性を、THP-1マクロファージにおけるM.tuberculosis HN878(四角、白抜き)の細胞内死滅について評価した。図25のプロットの各々では、それぞれ16μg/ml及び8μg/mlでの処理についての▲及び(逆三角、白抜き)プロットの線は、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより有効であるので、それぞれ0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理についての▲及び▼プロットの線と区別することができる。換言すると、16μg/ml及び8μg/mlでの処理についてのプロットの線は、特に5日目に、0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理よりも顕著に低いCFU値を示す。同様に、1μg/mlでの処理についての□プロットの線は、1μg/mlでの処理がより有効であるので、処理なしの(四角、白抜き)プロットの線と容易に区別することができる。処理なしの(四角、白抜き)プロットの線は、1日目以降に上昇し、1×10超を維持するCFU値を有する。
【0425】
「16μg/ml」として記載される、上のMIC表及び図25に言及される30RESP002FC及びFD組成物は、0.15Mの亜硝酸ナトリウム、0.05Mのラクチトール、及び0.1Mのクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、各々の8、4、2、1、0.5、0.25、及び0.125μg/mlの組成物が、それぞれ、16~0.125μg/mlの当該順序で、先の組成物の50%希釈である(すなわち、濃度を半減させている)。
【0426】
THP-1マクロファージを、M.tuberculosisに1:10のMOIで感染させ、感染2時間後、1、2、及び5日後にバクテリアコロニー計数方法(CFU)を使用して細胞内バクテリア数を直ちに決定した。示される値は、1つの独立した実験からの平均±SDである。30RESP002FC(濃縮)16μg/ml、ならびに30RESP002FD(希釈)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において、未処理の対照と比較して、M.tuberculosis HN878に対する増加した有効性が存在した(*、p<0.05)。
【0427】
図26:M.tuberculosis HN878に対する30RESP003FC及びFD(濃縮及び希釈)の有効性を、THP-1細胞において評価した。感染2時間後(0日目)、1、2、及び5日後、ならびに16μg/ml(▲)、8μg/ml(逆三角、白抜き)、4μg/ml(ダイヤ、白抜き)、2μg/ml(○)、1μg/ml(
□)、0.5μg/ml(ダイヤ、塗りつぶし)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処理の30RESP003FC(濃縮)(A)及び30RESP003FD(希釈)(B)の有効性を、THP-1マクロファージにおけるM.tuberculosis HN878(四角、白抜き)の細胞内死滅について評価した。図26のプロットの各々では、それぞれ16μg/ml及び8μg/mlでの処理についての▲及び(逆三角、白抜き)プロットの線は、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより有効であるので、それぞれ0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理についての▲及び▼プロットの線と区別することができる。換言すると、16μg/ml及び8μg/mlでの処理についてのプロットの線は、特に5日目に、0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理よりも顕著に低いCFU値を示す。同様に、1μg/mlでの処理についての□プロットの線は、1μg/mlでの処理がより有効であるので、処理なしの(四角、白抜き)プロットの線と容易に区別することができる。処理なしの(四角、白抜き)プロットの線は、1日目以降に上昇し、1×10超を維持するCFU値を有する。
【0428】
THP-1マクロファージを、M.tuberculosisに1:10のMOIで感染させ、感染2時間後、1、2、及び5日後にバクテリアコロニー計数方法(CFU)を使用して細胞内バクテリア数を直ちに決定した。示される値は、1つの独立した実験からの平均±SDである。30RESP003FC(濃縮)16μg/ml及び8μg/ml、ならびに30RESP003FD16μg/mlでの処理において、未処理の対照と比較して、M.tuberculosis HN878に対する増加した有効性が存在した(*、p<0.05)。
【0429】
「16μg/ml」として記載される、上のMIC表及び図26に言及される30RESP003FC及びFD組成物は、0.1Mの亜硝酸ナトリウム、0.05Mのマンニトール、及び0.1Mのクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、各々の8、4、2、1、0.5、0.25、及び0.125μg/mlの組成物が、それぞれ、16~0.125μg/mlの当該順序で、先の組成物の50%希釈である(すなわち、濃度を半減させている)。
【0430】
図27:M.tuberculosis HN878に対する30RESP004FC及びFD(濃縮及び希釈)の有効性を、THP-1細胞において評価した。感染2時間後(0日目)、1、2、及び5日後、ならびに16μg/ml(▲)、8μg/ml(逆三角、白抜き)、4μg/ml(ダイヤ、白抜き)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(ダイヤ、塗りつぶし)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処理の30RESP004FC(濃縮)(A)及び30RESP004FD(希釈)(B)の製剤の有効性を、THP-1マクロファージにおけるM.tuberculosis HN878(四角、白抜き)の細胞内死滅について評価した。図27のプロットの各々では、それぞれ16μg/ml及び8μg/mlでの処理についての▲及び(逆三角、白抜き)プロットの線は、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより有効であるので、それぞれ0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理についての▲及び▼プロットの線と区別することができる。換言すると、16μg/ml及び8μg/mlでの処理についてのプロットの線は、特に5日目に、0.25μg/ml及び0.125μg/mlでの処理よりも顕著に低いCFU値を示す。同様に、1μg/mlでの処理についての□プロットの線は、1μg/mlでの処理がより有効であるので、処理なしの(四角、白抜き)プロットの線と容易に区別することができる。処理なしの(四角、白抜き)プロットの線は、1日目以降に上昇し、1×10超を維持するCFU値を有する。
【0431】
「16μg/ml」として記載される、上のMIC表及び図27に言及される30RE
SP004FC及びFD組成物は、0.1Mの亜硝酸ナトリウム、0.05Mのマンニトール、及び0.1Mのアスコルビン酸/アスコルビン酸(希釈後の最終モル濃度)を含み、各々の8、4、2、1、0.5、0.25、及び0.125μg/mlの組成物が、それぞれ、16~0.125μg/mlの当該順序で、先の組成物の50%希釈である(すなわち、濃度を半減させている)。
【0432】
THP-1マクロファージを、M.tuberculosisに1:10のMOIで感染させ、1、2、及び5日後にバクテリアコロニー計数方法(CFU)を使用して細胞内バクテリア数を直ちに決定した。示される値は、1つの独立した実験からの平均±SDである。30RESP004FC(濃縮)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において、未処理の対照と比較して、M.tuberculosis HN878に対する増加した有効性が存在した(*、p<0.05)。
【0433】
製剤は、MICを上回る好適な投薬量でM.tuberculosis HN878のインビトロ阻害を示すと結論付けられる。
【0434】
また、製剤を作製する様式が、実施例6の試験において、M.tuberculosis HN878に対するそれらのインビトロ抗バクテリア効果に影響を及ぼすことにも留意されたい。
【0435】
これは、製剤1の8μg/ml濃度の、そのFCバージョンとFDバージョンとの間の有効性を比較することによって示される(図24Bに対する24A)。FCバージョンの有効性は、インキュベーション後少なくとも5日間にわたって強く増加するが、FDバージョンの有効性は、同じ期間にわたってあまり強く増加しない。これは、16μg/ml濃度とは対照的であり、FCバージョンとFDバージョンとの間で、同じ期間にわたって非常に同様の良好な有効性を示している。
【0436】
製剤2では、異なる挙動が観察される(図25Bに対する25A)。FDバージョンの16μg/ml濃度の有効性は、インキュベーション後の最初の2日間、FCバージョンよりも強く増加し、次いで変化しないが、インキュベーション後の5日まで、FDバージョンでは有効性が良好であり、FCでは非常に良好である。8μg/ml濃度の場合、FDバージョンの有効性は、インキュベーション後少なくとも5日間にわたって良好な有効性まで強く増加するが、FCバージョンの有効性は、同じ期間にわたってあまり強く増加しない。
【0437】
したがって、少なくともより高い濃度では、水を添加して最終的な阻害製剤に到達する段階が、初期抗バクテリア作用及び5日間にわたるバクテリア死滅の程度の両方の観点から、製剤の抗バクテリア作用に物質的に影響を及ぼし得ることが示されている。一般に、普遍的ではないが、亜硝酸ナトリウム、ポリオール、及び酸成分との濃縮事前混合物として最初に、所望の相対モル割合であるが、使用に所望されるよりも高い濃度(例えば、使用に所望されるよりも少なくとも3倍、例えば少なくとも5倍以上の濃縮、例えば使用に所望されるよりも約3倍~約80倍以上の濃縮)で製剤を作製し、次いでただ濃縮物を希釈して使用のための製剤を得ることによって、インキュベーション後0~5日の期間にわたってより良好な抗バクテリア作用がもたらされる。
【0438】
実施例7
H1N1インフルエンザAウイルスに対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の細胞毒性及び抗ウイルス活性
実施例6における製剤30RESP001FC、その10倍希釈、及びその100倍希釈にそれぞれに対応するF1C1、F1C2、及びF1C3と指定した試験製剤を、オセ
ルタミビル溶液(1μM)及びウイルス対照と共に使用して、MDCK細胞において、24時間後の比較細胞毒性及びH1N1インフルエンザAウイルス死滅効果を得た。実施例8と類似するLDH細胞毒性アッセイによって、細胞毒性をアッセイした。様々な範囲で希釈した(水平軸は、亜硝酸塩モル濃度である)、MDCK細胞における、MOI=0.002(●)及びMOI=0.02(■)でのH1N1インフルエンザAウイルスに対する抗細菌活性を測定し、細胞毒性を灰色で、細胞毒性スケールを右側に示した(最大0.015M以下の亜硝酸塩濃度で測定した細胞毒性は、LDH対照の≦1%であった)。MOI=0.002、ならびに亜硝酸塩濃度0.15M、0.015M、及び0.0015Mで、オセルタミビル(1μM)と比較したプレート写真を得た。結果を図28に示す。最後から2番目に引用したプレートの順序は、図中のプレートの左から右への順序と同じである(2つの実験があり、各対応する実験のプレートが、上下に示されている)。オセルタミビルのプレートの対の右隣にある一番右のプレートの対は、ウイルス対照である。細胞毒性は、LDH対照の%(感染後24時間での3つのLDHアッセイの平均)として、試験プレートの各対の下に示されている。
【0439】
結果は、亜硝酸塩/クエン酸/ポリオール製剤の好適な用量では、ウイルスが完全根絶され、オセルタミビルよりも明らかに優れていることを示している。亜硝酸塩/クエン酸/ポリオール製剤の同様の抗ウイルス活性が、ライノウイルス及び呼吸合胞体ウイルス(RSV)で示されている。
【0440】
これらの結果は、ヒト及び動物対象における呼吸器ウイルス感染の療法及び予防治療が、本発明による亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤によって提供されることを示している。
【0441】
実施例8
コロナウイルスSARS-CoV-2に対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の細胞毒性及び抗ウイルス活性
材料
試験製剤F1(pH5.8)
亜硝酸ナトリウム、pH5.8のクエン酸、及びマンニトール(ポリオール)の水性液である6つの試験濃度の製剤1(F1)を、1.5Mの亜硝酸ナトリウム、pH5.8の0.91Mのクエン酸/クエン酸緩衝液、及び0.5Mのマンニトールの溶液のストック溶液から以下に記載の方法によって調製して、以下の試験組成物を得た:
【表6】
【0442】
F1と共に使用した対照
pH5.8の対照製剤を、0.1Mのクエン酸+アッセイ緩衝液+細胞から調製した。
【0443】
陰性対照は、アッセイ緩衝液+細胞であった。
【0444】
陽性対照は、クロロキン+細胞であった。
【0445】
試験製剤F2(pH5.4)
亜硝酸ナトリウム、pH5.4のクエン酸、及びマンニトール(ポリオール)の水性液である6つの試験濃度の製剤2(F2)を、1.5Mの亜硝酸ナトリウム、pH5.4の0.91Mのクエン酸/クエン酸緩衝液、及び0.5Mのマンニトールの溶液のストック溶液から以下に記載の方法によって調製して、以下の試験組成物を得た:
【表7】
【0446】
F2と共に使用した対照
pH5.4の対照製剤を、0.1Mのクエン酸+アッセイ緩衝液+細胞から調製した。
【0447】
陰性対照は、アッセイ緩衝液+細胞であった。
【0448】
陽性対照は、クロロキン+細胞であった。
【0449】
化学試薬
亜硝酸ナトリウム:
グレード:亜硝酸ナトリウムエクストラピュアPh Eur,USP.亜硝酸ナトリウムCAS番号7632-00-0、EC番号231-555-9.,エクストラピュアPh Eur,USP,Sigma Aldrichから、製品コード1.065441000。
【0450】
クエン酸:
グレード:無水クエン酸粉末EMPROVE(登録商標)ESSENTIAL Ph Eur,BP,JP,USP,E330,FCC,Sigma Aldrichから、製品コード1.002425000。
【0451】
D-マニトール:
グレード:EP、FCC、USP試験仕様を満たすD-マンニトール、Sigma Aldrichから、製品コードM8429-100G。
【0452】
リン酸クロロキン:
グレード:薬学的二次標準物質、Sigma Aldrichから、製品コードPHR1258-1G。
【0453】
ストック溶液の調製
クエン酸溶液を調製するために、19.2gのクエン酸に90mlの蒸留水、続いて1
0mlの3Mの水酸化ナトリウムを添加し、次いで蒸留水で希釈してpHを調整する(pH5.4では160mlまで、pH5.8では190mlまで)。代替的な方法では、19.2gのクエン酸、続いて1.2gの水酸化ナトリウムに20mlの蒸留水を添加し、その後、10Mの水酸化ナトリウムでpHを調整し、100mlまで蒸留水で希釈する。溶液は、0.22μmフィルターを使用する注射器濾過によって滅菌する。
【0454】
1.0Mの亜硝酸ナトリウム溶液を調製するために、100mLの蒸留水を6.9gの亜硝酸ナトリウムに添加した。1.5Mの亜硝酸ナトリウム溶液を調製するために、10.35gの亜硝酸ナトリウムに100mLの蒸留水を添加した。
【0455】
指定された場合、9.1gのマンニトールを添加して、0.22μmフィルターを使用する注射器濾過によって0.5Mの濃度の滅菌溶液を得た。
【0456】
製剤の調製
亜硝酸塩及びマンニトールの溶液と混合する前に、緩衝クエン酸溶液のpHを、所望の値まで制御する。製剤の記述されるpHは、亜硝酸塩及びマンニトールの溶液と混合する前に作製された緩衝クエン酸溶液のpHである。
【0457】
製剤を作製するための1つの好適な方式は、以下のとおりである:0.5Mのマンニトールを含有する亜硝酸ナトリウム(1.5M)を混合容器に添加し、直後に1:1の混合物(亜硝酸塩+ポリオール:クエン酸)中のpH制御したクエン酸溶液に添加する。溶液を、穏やかな反転によって混合する。混合したら、混合物を密封容器(例えば、50mlのファルコンチューブ)内で、周囲温度で5分間保持する。次いで、0.75Mの亜硝酸塩、0.25Mのマンニトール、及びクエン酸を含有する生じた溶液を、アッセイ緩衝液(1.2倍濃縮)中で5倍希釈して、アッセイにおいて亜硝酸塩0.15M、マンニトール0.05M、及び例えばクエン酸0.1Mの最終試験濃度を得る。1:1混合物(例:亜硝酸塩0.75M、マンニトール0.25M、クエン酸0.5Mとして開始する混合物)の連続希釈は、蒸留水及び/またはアッセイ緩衝液培地で行う。全ての製剤濃度は、周囲温度で保管することができる。溶液は、各実験で新たに作製する。
【0458】
追加の対照
追加の対照として、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)を、その目的に好適であると既知の様々な濃度で使用し、SNAP50、SNAP100、SNAP200、SNAP300、及びSNAP400として示した。SNAPは、これらの試験における陽性NOドナー対照として機能する既知のNOドナーであり、NOがインビトロで細胞毒性ではないことの検証を提供する。SNAP分子のN-アセチルペンシラミン(NAP)部分のアッセイに対する任意の潜在的な影響を制御するために、対応する濃度のNAPをNOブランク対照として使用し、NAP50、NAP100、NAP200、NAP300、及びNAP400として示した。
【0459】
ウイルス
SARS-CoV-2臨床単離株。
【0460】
細胞株
Vero E6.
【0461】
アッセイ
LDHアッセイ(細胞毒性):
CyQUANTTM LDH細胞毒性アッセイキット、Invitrogen;カタログ番号C20300及びC20301。組織培養感染用量(TCID50)を、読み取りと
して細胞変性効果(CPE)スコア付けを使用して決定した(ウイルス力価)。
【0462】
亜硝酸塩製剤(全ての濃度)、pH5.8またはpH5.4のクエン酸塩対照、陰性対照、及び陽性対照(その内容が参照により本明細書に組み込まれるKeyaerts,E、Biochem Biophys Res Commun,323,264-268(2004)に記載のクロロキン)のVero E6細胞に対する細胞毒性を、亜硝酸塩/対照添加後2時間及び24時間で試験した。LDH放出を、2時間及び24時間の時点での読み取りとして測定した。各化合物/製剤を実験当たり3回試験した。
【0463】
SARS-CoV-2阻害:
0時間で、Vero E6細胞を、製剤または対照の存在下でウイルスに感染させ、1時間インキュベートした。このインキュベーション期間後、接種材料を除去し、細胞を洗浄した。次いで、洗浄した細胞に、新鮮な製剤または対照を添加した。感染24時間後に、Vero E6細胞上清を採取し、力価測定し、ウイルス力価測定物を6日間インキュベートし、その後読み出して、任意のウイルス収率低減を決定した。3.0及び0.3を含む4つのMOIで別個の試験を実施したが、これらの2つのMOIのみを力価測定した。読み取りは、クリスタルバイオレット(細胞単層)染色、続いてCPEスコア付けによって行った。
【0464】
結果
結果を図32~34に示す。
【0465】
図32は、LDH細胞毒性アッセイの結果を示す(それぞれ、試験製剤1及び2を使用した、実験1及び2からの組み合わせたグラフ)。データを、2つの実験の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、灰色の誤差バーとして示される。最大LDH活性(細胞+溶解緩衝液)を100%に設定し、全ての試料結果を、この値と比較する。LDH陽性対照は、キットからの陽性対照であった。黒色のバー(2時間培養)は、各場合における各対のバーの左側のバーであり、赤色のバー(24時間培養)は、各場合における各対のバーの右側のバーである。
【0466】
図33は、MOI3.0での実験1のSARS-CoVに対する抗ウイルス試験の結果を示す。実験1では、4つの多重感染(MOI)でSARS-CoV-2を使用して、1つのウイルス収率低減アッセイを実施し、接種材料ウイルスの逆力価測定を使用して確認した。3のMOIで接種した細胞では、2.1log10TCID50/mlが、力価測定後のウイルス対照ウェルで見出された。試験した条件のうちのいくつかでは、SARS-CoV-2収率の低減が観察され得る。インキュベーション24時間後、最も低い3つのMOI(すなわち、0.3、0.03、及び0.003)でほとんどウイルスが検出されなかった。おそらく、Vero E6細胞での24時間の複製は、高レベルの子ウイルスを得るのに十分ではない。データを、2つの力価測定の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、誤差バーとして示される。クロロキン及び細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0467】
図34は、(a)MOI3.0及び(b)MOI0.3での実験2のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示す。方法論は、製剤が実験2製剤(様々な濃度での試験製剤2)であり、インキュベーションが、子ウイルスのレベルを増加させるために24時間ではなく48時間実施されたことを除いて、それらのMOIでの実験1の部分に対応する。データを、2つの力価測定の平均+標準偏差(SD)として表す。SDは、誤差バーとして示される。クロロキン及び細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0468】
考察
NO生成水性製剤は、LDHアッセイでは細胞毒性ではない(図32)。特に、より高い濃度の亜硝酸塩、酸、及びポリオールでの、SARS-Cov-2に対するインビトロ抗ウイルス作用は、見事であり、クロロキンと同等である(図33及び34)。
【0469】
NO生成水性製剤は、驚くほど高いpHで有効である。pH5.4及び5.8を試験したが、より低いpH5.2または更に低いpHもまた、有効性を有すると予想されるであろう。
【0470】
更に、データは、有機カルボン酸(pH5.4または5.8まで緩衝されたクエン酸など)が、NO生成製剤の不在下で、SARS-CoV-2に対する驚くべき低い細胞毒性及び高いインビトロ抗ウイルス作用を有することを明らかにしている(図32~34、「クエン酸pH5.8」及び「クエン酸pH5.4」のバー)。比較的高いpHのカルボン酸製剤は、気道及び肺組織表面に対して無毒であると予想されるので、そのような製剤は、肺内活性剤として魅力的になる。SARS-Cov-2は、SARS-Covと同じコロナウイルスファミリーに属し、ウイルス間に類似点が存在するので、そのような有機カルボン酸が、SARS-Covウイルス、2002年及び2003年にアウトブレイクが多数記録された重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となるコロナウイルスに対しても、同等の有効性を示すであろうことが予測されるのは妥当である。
【0471】
実施例9
コロナウイルスSARS-CoVに対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の抗ウイルス活性
SARS-CoV-2に対する本発明によって提供される抗ウイルス活性とSARS-CoVに対する本発明によって提供される抗ウイルス活性との類似性を調査するために、以下の実験を実施した。
【0472】
MOI3.0でのSARS-CoVに対する抗ウイルス活性について、製剤F1C1、F1C2、F1C3、及びF1C4を試験した。方法論は、実施例8に記載の抗ウイルス試験に類似していた。クリスタルバイオレットでの細胞単層染色の前に、2つのプレートを顕微鏡でチェックし、細胞変性効果(CPE)についてスコアを付けた。これらのプレートにおいて、下にある単層の上部での細胞壊死組織片の形態でCPEが存在することが見出された。
【0473】
顕微鏡でチェックした2つのプレートの結果を図35に示す。データは、条件ごとに単一の力価測定である。残りのプレートについては、細胞単層の高すぎる密度に起因して、クリスタルバイオレット染色後にCPEをスコア付けすることができなかった。細胞対照のlog10 TCID50/ml値での水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0474】
図35に示されるように、少なくとも製剤F1C1及びF1C2は、SARS-CoVに対して良好なインビトロ抗ウイルス活性を提供した。
【0475】
実施例10
ヒト使用のための吸入器
本発明による液体組成物を用いるヒト使用のための吸入器の実施形態を、図30及び31に概略的に示す。
【0476】
吸入器は、好適には、圧縮気体によって動力供給され、一般に従来の様式で、吸入器の1つの手動による作動に応答して、吸入器のリザーバから亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤
を含む液滴の1つの用量を送達するように構成される。典型的には、吸入器を使用するときに喘息患者によって従来行われているように、対象は、吸入器を作動させると同時に吸入する。図30に示されるように、用量当たり約3分の治療時間が好適であり、活性組成物の好適な用量で最大約2時間の効果持続時間を提供するべきである。
【0477】
空気によって運ばれる液滴は、対象の感染した肺に移動し、そこで、肺の感染した(例えば、ウイルス感染した)膜に接触する。図31は、水性一酸化窒素(NO)生成組成物(「水性NO」)の複数の液滴が肺の内層に堆積する、本発明の効果を右側に示す。図31は、水性一酸化窒素(NO)生成組成物の代わりに、気体状一酸化窒素が対象によって吸入される場合の対応する効果を左側に示している(「一酸化窒素吸入」)。
【0478】
示されているように、吸入された一酸化窒素が使用されるであろう場合、有効性は大幅に低減する可能性がある。それは、吸入された一酸化窒素が肺の膜内層を通って血流に入ることができる前に対象によって吐き出される割合だけでなく、吸入された一酸化窒素が吸入された空気中の酸素によって有毒な二酸化窒素(NO)に酸化される別の割合である。二酸化窒素は、対象を治療するための気体状一酸化窒素の利用可能性を枯渇させることに加えて、対象の肺に有害な影響を有する。
【0479】
結果として、本発明による亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤を使用することによって、患者の肺に、及び肺を介して患者の血流に一酸化窒素をより効率的かつ有効に送達することが達成される。
【0480】
結論
先述は、限定することなく本発明を幅広く説明する。当業者に明らかであろうような変形及び修正は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。本発明にまたは本発明に対して特許が付与されている任意の特定の管轄の法律が、添付の特許請求の範囲と等価である技術の不正な使用に対する特許の実施を提供する範囲において、所有者は、特許がそのような等価の技術を網羅することを意図している。
【0481】
また、添付の特許請求の範囲の保護範囲の等価物は、適用可能な法律によって許容される範囲まで特許請求の範囲によって網羅される。例えば、一般に、本明細書に記載のNOx生成反応の構成成分または構成成分の部分を混合する順序は重要ではなく、NOx生成反応が早期に開始されないことを条件とする。本発明の任意の組み合わせ、キット、または組成物の必須構成成分及び非必須構成成分の混合の任意の順序が網羅されることが意図される。1つ以上の構成成分が、液体形態、例えば溶液で使用される場合、反応混合物または反応混合物の任意の構成成分部分中の(限定されないが、その構成成分またはそれらの構成成分を含む)溶質の濃度に及ぼすその構成成分またはそれらの構成成分の混和物の影響は、その1つ以上の構成成分が固体形態または液体形態で異なる体積または濃度で使用されるであろう場合と比較して、異なる可能性が高い。本発明の組み合わせ、キット、及び組成物を形成するための構成成分の全ての等価な濃度及び/または物理的な形態(固体、液体、溶液)の使用、ならびに当該組み合わせ、キット、及び組成物を調製するための全ての等価なステップ及びステップの順序は、本明細書に記載されていないか、または具体的に特許請求されていない場合でさえも、適用可能な法律によって許容される範囲まで、本特許請求の範囲の範囲内である。
【0482】
以下の記述は、特許請求の範囲において参照される本開示の態様または実施形態を定義する。
【0483】
1.対象の鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)を介してヒトまたは動物対象に、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を送達す
る治療または非治療的方法であって、前記方法が、
(A)前記対象の前記鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)を介して前記対象に、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための組み合わせまたは組成物を投与することであって、前記組み合わせまたは組成物が、
(i)1つ以上の亜硝酸塩と、
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源と、
(iii)以下のうちの1つ以上を特徴とする、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、前記投与すること、
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応の出力を向上する量で存在し、前記反応の出力の前記向上が、前記1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で実施した反応と比較していること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含
まないこと、
あるいは、
(B)前記対象の前記鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)を介して前記対象に、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を投与することであって、それらが、
(i)1つ以上の亜硝酸塩を、
(ii)一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するのに好適な反応条件下で、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、反応させることを含む方法によって調製され、前記反応が、
(iii)以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の有機ポリオールの存在下で実施される、前記投与すること、を含む、前記方法:
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含
まないこと。
【0484】
2.前記プロトン源が、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルを含み、前記組み合わせまたはキットが、2つ以上の別個の組成物を含み、前記1つ以上のポリオールが、前記ハイドロゲルと直接接触または混和した状態で別個の組成物中に存在しない、記述1に記載の方法。
【0485】
3.前記組み合わせまたは組成物が、前記構成成分(i)、(ii)、及び(iii)、ならびに任意選択的に水及び/またはpH緩衝液から本質的になる、記述1(A)または記述2に記載の方法。
【0486】
4.前記組み合わせまたは組成物が、前記構成成分(i)、(ii)、及び(iii)、ならびに任意選択的に水及び/またはpH緩衝液、及び/または前記組み合わせもしくは組成物の重量%もしくは体積の約20%未満の量の1つ以上の追加の構成成分からなる、記述1(A)または記述2に記載の方法。
【0487】
5.治療を必要とする対象、例えば、ヒト対象もしくは他の哺乳類対象における細菌感染、例えば、バクテリア感染、ウイルス感染、真菌感染、微小寄生虫感染、またはそれらの任意の組み合わせを治療する方法である、先行記述のいずれか1項に記載の方法。
【0488】
6.対象、例えば、ヒト対象または他の哺乳類対象に対して実施される血管拡張するための方法である、記述1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0489】
7.例えば、前記対象のある場所において、細菌、例えばバクテリア、ウイルス、真菌細胞、及び/または微小寄生虫の数を低減して、それらの増殖を防止するか、またはそれらの増殖速度を制限するための抗細菌方法である、記述1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0490】
8.前記細菌感染が、前記対象の皮膚、例えば、粘膜上、または前記対象の内部空間、例えば、前記対象の鼻、口、呼吸器、もしくは肺、または前記対象の肺胸膜の内層にある、記述5に記載の方法。
【0491】
9.前記対象に投与される前記組み合わせまたは組成物において、pH、または前記1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の前記反応混合物のpHに影響を及ぼすであろう、前記NOx生成反応混合物の他の構成成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含む前記プロトン源の水溶液の初期pHが、5~8の範囲にあり、前記1つ以上のポリオールが、任意選択的であり、省略してもよい、記述7に記載の抗細菌方法の修正版。
【0492】
10.外科手術的方法または治療と外科手術との両方を含む方法と関連して実施される、記述1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0493】
11.物質または組成物であって、
(A)1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための、治療及び/または外科手術における使用のための組み合わせまたは組成物であって、前記組み合わせまたは組成物が、
(i)1つ以上の亜硝酸塩と、
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源と、
(iii)以下のうちの1つ以上を特徴とする1つ以上の有機ポリオールと、を含み、
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応の出力を向上する量で存在し、前記反応の出力の前記向上が、前記1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で実施した反応と比較していること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと、
前記治療及び/または外科手術が、前記対象の前記鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)を介して前記対象に、前記組み合わせまたは組成物を投与することを含む、前記組み合わせまたは組成物であるか、
あるいは、
(B)治療及び/または外科手術に使用するための一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体であって、それらが、
(i)1つ以上の亜硝酸塩を、
(ii)一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するのに好適な反応条件下で、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性
酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、反応させることを含む方法によって調製され、前記反応が、
(iii)
以下のうちの1つ以上を特徴とする、1つ以上の有機ポリオールの存在下で実施され:
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと、
前記治療及び/または外科手術が、前記対象の前記鼻、口、呼吸器もしくは肺(複数可)を介して前記対象に、前記一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を投与することを含む、前記一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体であるか、
あるいは、
(C)前記対象の鼻、口、呼吸器、または肺(複数可)に投与するための、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及
び/または任意選択的にその前駆体を生成するための組み合わせまたは組成物であって、前記組み合わせまたは組成物が、
(i)1つ以上の亜硝酸塩と、
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含む、プロトン源と、
(iii)以下のうちの1つ以上を特徴とする、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、組み合わせまたは組成物である、前記物質または組成物:
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応の出力を向上する量で存在し、前記反応の出力の前記向上が、前記1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で実施した反応と比較していること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0494】
12.前記治療及び/または外科手術が、記述1~10のいずれか1項に記載の方法を
含む、記述11に記載の物質または組成物。
【0495】
13.前記1つ以上の亜硝酸塩が、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、FrNO、AgNO、Be(NO、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Mn(NO、Ba(NO、Ra(NO、及びそれらの任意の混合物から選択される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0496】
14.前記1つ以上の亜硝酸塩が、NaNO、またはKNO、またはそれらの混合物である、記述13に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0497】
15.前記1つ以上の亜硝酸塩、または前記1つ以上の亜硝酸塩を含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、乾燥形態、例えば、粒子状乾燥形態で存在する、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0498】
16.前記1つ以上の亜硝酸塩、または前記1つ以上の亜硝酸塩を含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、水性担体、例えば、水性液体またはゲル中の溶液中に存在する、記述1~14のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0499】
17.前記溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度が、約0.001M~約5Mの範囲にある、記述16に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0500】
18.前記1つ以上の亜硝酸塩、または前記1つ以上の亜硝酸塩を含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分のpHが、好ましくは、約6~約9のpHまで緩衝される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0501】
19.前記プロトン源の前記1つ以上の有機カルボン酸が、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ(エンボイン)酸、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオイン酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロト酸、グリセリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、それらの塩、及びそれらの組み合わせ;例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、または乳酸とグリコール酸とのコポリマーなどの、1つ以上のポリマーまた重合カルボン酸;ハイドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合しているペンダント-COOH基を含有する1つ以上の酸ハイドロゲル;プロトン源として機能することができることを条件とする、部分的なもしくは完全なエステル、及びそれらの部分的な塩もしくは完全な塩;ならびにそれらの任意の混合物または組み合わせから選択される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0502】
20.前記1つ以上のカルボン酸が、クエン酸、その塩、及びそれらの組み合わせから選択される、記述19に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0503】
21.前記プロトン源の前記1つ以上の非カルボン酸還元性酸が、アスコルビン酸;アスコルビン酸パルミチン酸(パルミチン酸アルコルビル);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアスコルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸、及び6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアス
コルビン酸誘導体;例えば、還元酸などの酸性レダクトン;エリソルビン酸;シュウ酸;それらの塩;ならびにそれらの組み合わせから選択される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0504】
22.前記有機非カルボン酸還元性酸が、アスコルビン酸またはその塩である、記述21に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0505】
23.前記プロトン源もしくはその構成成分部分、または前記プロトン源を含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、乾燥形態、例えば粒子状乾燥形態で存在する、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0506】
24.前記プロトン源もしくはその構成成分部分、または前記プロトン源を含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、水性担体、例えば、水性液体またはゲル中の溶液中に存在する、記述1~22のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0507】
25.前記溶液中のプロトン源のモル濃度が、約0.001M~約5Mの範囲にある、記述24に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0508】
26.前記プロトン源のpHが、好ましくは、約3~約9、例えば約4~約8、例えば約5~約8のpHまで緩衝される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0509】
27.前記1つ以上の有機ポリオールが、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の炭素原子を有するアルジトールから選択される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0510】
28.前記1つ以上の有機ポリオールが、エリスリトール、スレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、グリセロール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0511】
29.1つ以上の有機ポリオールが、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、記述27または28に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0512】
30.前記1つ以上の有機ポリオール、または前記1つ以上の有機ポリオールを含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、乾燥形態、例えば、粒子状乾燥形態で存在する、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0513】
31.前記1つ以上の有機ポリオール、または前記1つ以上の有機ポリオールを含有する前記NOx生成反応系の任意の構成成分が、水性担体、例えば、水性液体またはゲル中の溶液中に存在する、記述1~29のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0514】
32.前記溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が、約0.001M~約5Mの範囲にある、記述31に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0515】
33.
(a)前記NOx生成反応開始時もしくは反応開始前の前記ポリオール構成成分もしくは前記反応溶液中のいずれか1つ以上の有機ポリオールの前記総モル濃度が、前記亜硝酸塩構成成分もしくは前記反応溶液中の亜硝酸イオンの総モル濃度の、約0.05~約3、例えば約0.1~約2、例えば約0.25~約1.5倍であるか、または
(b)前記NOx生成反応開始時もしくは反応開始前の前記ポリオール構成成分もしくは前記反応溶液中のいずれか1つ以上の有機ポリオールの前記総モル濃度が、前記プロトン源構成成分もしくは反応溶液中の前記プロトン源の総モル濃度の、約0.05~約3、例えば、約0.1~約2、例えば約0.25~約1.5倍である、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0516】
34.1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体を生成するための前記組み合わせまたは組成物が、希釈剤、担体、賦形剤、甘味剤、矯味剤、増粘剤、粘化剤、湿潤剤、フィルム形成剤、潤滑剤、結合剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、着色剤、臭気剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、薬学的に活性な薬剤、防腐剤、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の追加の構成成分を更に含む、先行記述のいずれか1項に記載の方法、または物質もしくは組成物。
【0517】
35.先行記述のいずれか1項に記載の方法で使用するための、または先行記述のいずれか1項に記載の物質もしくは組成物の調製及び任意選択的に送達に使用するための、キットであって、タイプ(i)、(ii)、及び存在する場合(iii)の構成成分化学物質に加えて、前記キットが、以下のうちの少なくとも1つ:使用前に前記構成成分を保持するための容器;前記構成成分を混合し、前記反応混合物及び/または前記発生した気体を分配し、前記混合及び分配を制御するための少なくとも1つのデバイスまたは他の手段、使用説明書、ならびに使用のための説明が見出され得る指示書、例えば、使用のためのオンライン説明書を含む、前記キット。
【0518】
36.記述1~10、及び13~34のいずれか1項に記載の方法で使用するためのディスペンサーであって、前記記述に定義されているタイプ(i)、(ii)、及び存在する場合(iii)の構成成分化学物質と、使用前に前記構成成分を保持するための少なくとも1つの容器と、前記構成成分の混合、ならびに前記反応混合物、その1つ以上の構成成分、及び/または前記ディスペンサーから出る前記発生した気体の分配を制御し、標的にそれを指向させるための少なくとも1つのデバイスまたは他の手段と、を備える、前記ディスペンサー。
【0519】
37.前記ディスペンサーが、前記反応混合物、その1つ以上の構成成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の構成成分を含む担体、及び/または前記発生した気体を分配する繰り返しの同様の動作に適合されている、記述36に記載のディスペンサー。
【0520】
38.前記ディスペンサーが、前記NO生成反応混合物を含む前記組成物、その前記構成成分のうちの1つ以上、または前記発生した気体を前記ディスペンサーから搬出し、標的にそれを指向させるためのポンプまたは推進システムを備える、記述36または37に記載のディスペンサー。
【0521】
39.前記ディスペンサーが、ヒトまたは動物対象の鼻、口、呼吸器、または肺に、前記反応混合物、その1つ以上の構成成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の構成成分を含む担体、及び/または前記発生した気体を指向させるように適合
されている、記述36~38のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【0522】
40.一酸化窒素気体の加圧シリンダと、前記加圧シリンダに接続可能であり、ヒトまたは動物対象の鼻、口、呼吸器、または肺に前記加圧シリンダからの前記一酸化窒素気体を送達するように適合されている送達デバイスと、を備え、前記一酸化窒素が、一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/またはその前駆体を生成するのに好適な反応条件下で、1つ以上の亜硝酸塩を、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と反応させることを含む方法によって生成された一酸化窒素であり、前記反応が、
以下のうちの1つ以上を特徴とする、1つ以上の有機ポリオールの存在下で実施される、一酸化窒素ディスペンサー:
(a)前記1つ以上の有機ポリオールが、反応出力を向上する量で存在すること、
(b)前記プロトン源が、単に、三次元ポリマーマトリックスに共有結合しているペンダントカルボン酸基を含むハイドロゲルではないこと、
(c)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(d)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、グリセロールではないこと、
(f)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(g)1つ以上の粘度増加剤が使用される場合、前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、ポリビニルアルコールではないこと、
(h)「単に~ではない」という単語が、「含まない」によって置き換えられる、上の(b)~(g)のうちのいずれか1つ以上、
(i)前記1つ以上の有機ポリオールが、単に、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に列挙されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせではないこと、
(j)前記1つ以上の有機ポリオールが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン(ステアリン酸グリセリル)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチネジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリルグリコール、本明細書に記載されているもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルビン酸塩、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、または上のうちのいずれかとグリセロール及び/またはポリビニルアルコールとの任意の組み合わせを含まないこと。
【0523】
41.記述38~40のいずれか1項に記載のディスペンサーを使用して分配される場合の、一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体。
【0524】
42.先行記述のいずれか1項に記載のディスペンサーを使用して分配される場合の、方法、または物質、もしくは組成物、もしくはキット、もしくはディスペンサー、もしくは一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体であって、
-前記1つ以上の亜硝酸塩が、1つ以上のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含み(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-前記プロトン源が、アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、それらを含むか、または本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-前記アスコルビン酸もしくはアスコルビン酸/アスコルビン酸緩衝液、クエン酸もしくはクエン酸/クエン酸緩衝液、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子が、ポリマーまたは巨大分子に共有結合しておらず、
-前記1つ以上の有機ポリオールが、分子当たり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコールまたはアルジトール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アラビトール、キシリトール、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含み(例えば、それらを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらのみからなる)、
-前記NOx生成反応の開始時または開始前の前記ポリオール構成成分中または前記反応溶液中のいずれか1つ以上の前記有機ポリオールの総モル濃度が、亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍であり、
-前記NOx生成反応開始時または開始前の前記ポリオール構成成分中または前記反応溶液中のいずれか1つ以上の前記有機ポリオールの総モル濃度が、プロトン源構成成分中または反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍であり、
-前記NOx生成反応の開始前、特に直前の前記プロトン源のpHが、前記反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴わない用途では、3.0~9.0の範囲にあり、
-前記NOx生成反応の開始前、特に直前の前記プロトン源のpHが、前記反応混合物と、細胞または動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、臓器、または他の組織との間の接触を伴う用途では、4.0~8.0の範囲にあり、
-前記NO生成反応の開始前、特に直前の前記プロトン源のpHが、前記反応混合物と、動物(ヒトを含む)対象の鼻、口、呼吸器、または肺との間の接触を伴う用途では、5.0~8.0の範囲にあり、
-M.tuberculosisに加えて、標的とする細菌が、Actinomyces、Bacillus、Bartonella、Bordetalla、Borrelia、Brucella、Campylobacter、Chlamydia、Chlamydophila、Clostridium、Corynebacterium、Enterococcus、Escherichia、Francisella、Haemophilus、Heliobacter、Legionella、Leptospira、Listeria、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、Neisseria、Pseudomonas、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Staphylococcus、Streptococcus、Treponema、Ureaplasma、Vibrio、Yersinia genera、またはそれらの
任意の組み合わせのリストにおけるバクテリア種;Aspergillus、Blastomyces、Candida、Coccidioides、Cryptococcus、Hisoplamsa、Murcomycetes、Pneumocystis、Sporothrix、Talaromycesのリストにおける真菌種、またはそれらの任意の組み合わせ;インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、アストロウイルス、肝炎ウイルスのリストにおけるウイルス、またはそれらの任意の組み合わせ;ならびに肉質虫、鞭毛藻、繊毛虫、胞子虫、またはそれらの任意の組み合わせの列挙における原生動物;例えば、SARS-CoVまたはSARS-CoV-2、及びマイコバクテリウム属abscessus、Pseudomonas aeruginosaを含む非tuberculosisマイコバクテリアから選択される、前記方法、または物質、もしくは組成物、もしくはキット、もしくはディスペンサー、もしくは一酸化窒素、任意選択的に窒素の他の酸化物、及び/または任意選択的にその前駆体。
【0525】
43.前記1つ以上の有機ポリオールが存在する場合、還元剤を含まない(すなわち、除外する)、先行記述のいずれか1項に記載のディスペンサーを使用して分配される場合の、方法、または物質、もしくは組成物、もしくはキット、もしくはディスペンサー、もしくは一酸化窒素、任意選択的に他の窒素の酸化物、及び/またはその前駆体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34(a)】
図34(b)】
図35
【手続補正書】
【提出日】2022-02-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結核及びマイコバクテリウム属tuberculosisに対する抗バクテリア剤として使用するための、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の薬剤であって、前記薬剤が、一酸化窒素生成組成物またはその構成成分であるかまたはそれを含み、前記一酸化窒素生成組成物、または前記一酸化窒素生成組成物のための成分の前記組み合わせもしくは組み合わせ可能な会合体が、1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、前記1つ以上の薬剤。
【請求項2】
前記1つ以上の有機ポリオールが、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む、糖アルコールを含む、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項3】
前記有機ポリオールが、マンニトール、ラクチトール、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の使用のための薬剤。
【請求項4】
前記プロトン源が、クエン酸、アスコルビン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項5】
前記酸が、同じ濃度の前記酸の水溶液によって呈されるよりも高いpHまで緩衝される、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項6】
前記より高いpHが、約5~8の範囲にある、請求項5に記載の使用のための薬剤。
【請求項7】
前記より高いpHが、5.2以上である、請求項5に記載の使用のための薬剤。
【請求項8】
前記より高いpHが、5.2~6の範囲にある、請求項7に記載の使用のための薬剤。
【請求項9】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオー
ルの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項10】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のための薬剤。
【請求項11】
ヒトまたは動物対象における結核またはバクテリアM.tuberculosisから生じる感染を治療または緩和または防止する方法であって、抗バクテリア有効量の、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の薬剤を前記ヒトまたは動物対象に、例えば、前記対象の肺に投与することを含み、前記薬剤が、一酸化窒素生成組成物またはその構成成分であるかまたはそれを含み、前記一酸化窒素生成組成物、または前記一酸化窒素生成組成物のための成分の前記組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体が、1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、前記方法。
【請求項12】
前記方法での使用のための前記薬剤が、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための薬剤である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
表面または空間、例えばヒトもしくは動物の体の一部である表面もしくは空間、例えば、肺、または非生物表面もしくは空間を処理して、前記表面上または前記空間内の生M.tuberculosisバクテリアの量を低減する方法であって、前記表面もしくは前記空間、またはその近傍に、抗バクテリア有効量の、一酸化窒素(NO)、一酸化窒素生成組成物、一酸化窒素生成組成物のための成分の組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の薬剤を適用することを含み、前記薬剤が、一酸化窒素生成組成物またはその構成成分であるかまたはそれを含み、前記一酸化窒素生成組成物、または前記一酸化窒素生成組成物のための成分の前記組み合わせまたは組み合わせ可能な会合体が、1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元性酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、1つ以上の有機ポリオールと、を含む、前記方法。
【請求項16】
前記方法での使用のための前記薬剤が、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための薬剤である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物において所望されるよりも高い濃度で、所望の割合で混合して、濃縮事前混合物を形成し、その後、その濃縮事前混合物を、好適には水で希釈して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記一酸化窒素生成組成物が、前記亜硝酸塩、前記プロトン源、及び前記有機ポリオールの構成成分を、使用される形態の前記組成物の所望の濃度で、所望の割合で混合して、使用される前記組成物を提供することを含む方法によって調製されるかまたは調製可能である、請求項15または16に記載の方法。
【国際調査報告】