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特表2023-526587改変型上皮成長因子受容体及び細胞追跡におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】改変型上皮成長因子受容体及び細胞追跡におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230615BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230615BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20230615BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230615BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230615BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230615BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20230615BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230615BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230615BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230615BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230615BHJP
   A61K 38/16 20060101ALN20230615BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C07K14/71
C07K19/00
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12Q1/02
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/12
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
C12N15/09 100
C07K16/28
A61K38/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569013
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2021062873
(87)【国際公開番号】W WO2021229075
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】2007169.2
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(71)【出願人】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン イーティーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナルディーニ,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ジェノベーゼ,ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】ババッソーリ,バレンティーナ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ05
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QR74
4B063QS33
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB32
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
(a)NGFR若しくはGMS SFRアルファシグナルペプチド;(b)EGFR若しくはNGFR膜貫通ドメイン;及び/又は(c)NGFR若しくはEGFR細胞質テール、に機能的に連結された上皮成長因子受容体(EGFR)細胞外エピトープをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【選択図】図1-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
(a)NGFR若しくはGMS SFRアルファシグナルペプチド、
(b)EGFR若しくはNGFR膜貫通ドメイン、及び/又は
(c)NGFR若しくはEGFR細胞質テール、場合により、(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);若しくは3つ以下のアミノ酸置換、付加、若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体のアミノ酸配列を含む細胞質テール、
並びに、場合によりリサイクリングシグナル
に機能的に連結された、上皮成長因子受容体(EGFR)細胞外エピトープをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、さらに場合により、EGFR細胞外エピトープがトランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)である、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、
(a)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列、及び/又は
(b)(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は3つ以下のアミノ酸置換、付加、若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
をさらに含むポリヌクレオチド。
【請求項3】
(a)NGFRシグナルペプチドが、配列番号4若しくはその断片に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、及び/又は
(b)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が、配列番号5若しくはその断片に対して少なくとも70%の同一性を有する、
請求項1又は2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
EGFRtが、EGFRドメインIII、EGFRドメインIV、及びEGFR膜貫通ドメインを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
EGFRtが、EGFRドメインI、EGFRドメインII、EGFR膜近傍ドメイン、又はEGFRチロシンキナーゼドメインを含まない、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
EGFRtが、配列番号2又はその断片に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
EGFRtをコードするヌクレオチド配列が、配列番号3又はその断片に対して少なくとも70%の同一性を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
(a)配列番号17若しくはその断片に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、及び/又は
(b)配列番号16若しくはその断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
(a)配列番号19若しくは21若しくはそれらの断片に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、及び/又は
(b)配列番号18若しくは20若しくはそれらの断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
(a)配列番号23若しくは25若しくはそれらの断片に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、及び/又は
(b)配列番号22若しくは24若しくはそれらの断片に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
EGFRtをコードするヌクレオチド配列が、弱いプロモーターに機能的に連結されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
導入遺伝子をさらに含み、場合により、導入遺伝子とEGFRtをコードするヌクレオチド配列との間にIRESエレメントがある、請求項1から11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
例えば導入遺伝子及び/又はEGFRtコード配列を含み、遺伝子編集による挿入のためのものである、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
導入遺伝子が、キメラ抗原受容体をコードする、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされるEGFRtタンパク質。
【請求項16】
請求項1から14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むウイルスベクター。
【請求項17】
レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又はアデノウイルスベクターである、請求項16に記載のウイルスベクター。
【請求項18】
請求項1から14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項16若しくは17に記載のウイルスベクターを含む、細胞。
【請求項19】
治療における使用のための、請求項1から14又は16から18のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、ウイルスベクター、又は細胞。
【請求項20】
形質導入された細胞を選択する方法であって、
(a)細胞の集団に、請求項1から14、16又は17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程、及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を選択する工程
を含む方法。
【請求項21】
形質導入された細胞を枯渇させる方法であって、
(a)細胞の集団に、請求項1から14、16又は17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、及び
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程
を含み、場合により、(i)EGFRt結合剤が枯渇剤と機能的に連結されている、又は(ii)工程(b)の細胞集団を、EGFRt結合剤に結合する枯渇剤と接触させるものであり、該枯渇剤は、EGFRt結合剤が結合した細胞を死滅させる、方法。
【請求項22】
形質導入された細胞を追跡する方法であって、
(a)細胞の集団に、請求項1から14、16又は17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、
(b)形質導入された細胞集団を、検出可能な標識に機能的に連結されたEGFRt結合剤と接触させる工程、及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を検出する工程
を含む方法。
【請求項23】
インビトロ又はエクスビボでの方法である、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
EGFRt結合剤が抗体であり、場合により、EGFRt結合剤がセツキシマブである、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
枯渇剤が毒素を含み、場合により、枯渇剤がサポリンを含む、請求項21、23又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項21から25のいずれか一項に記載の方法を含む処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変された上皮成長因子受容体(EGFR)に関する。特に、本発明は、改変型EGFRを発現するように操作された細胞の集団を選択、枯渇及び追跡する際の改変型EGFRの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子操作された細胞の投与、例えば、操作されたT細胞の養子移入、又は操作された造血幹細胞若しくは造血前駆細胞の移植は、治療、例えば、感染性疾患、新生物疾患、及び遺伝性疾患を処置するための強力なツールである。
【0003】
対象への投与前の操作された細胞の選択、したがって治療効果を欠く細胞の低減又は排除が、いくつかの場合に必要とされる。加えて、注入後の操作された細胞を追跡し、毒性の場合にそれらを枯渇又は排除することは、遺伝子操作された細胞産物の有利な能力である。
【0004】
遺伝子操作された細胞をインビトロで選択するために、又は遺伝子操作された細胞をインビボで追跡する及び枯渇させるために、いくつかの戦略が使用されている。異種酵素の使用によるインビトロ選択が用いられてきたが、このようなアプローチは免疫原性に関する問題を抱えている。ΔNGFR、CD34、CD19、CD20及びCD4、並びにCD90などのヒト細胞表面タンパク質もまた、エクスビボ遺伝子改変細胞の同定のための代理マーカーとして使用されている。しかしながら、これらの候補はいずれも、操作された造血細胞に特有ではないので、理想的ではない。実際、それらは、血液区画を含む様々な組織において発現され、特定の改変細胞の追跡を困難にし、枯渇の場合の治療の毒性を悪化させる。
【0005】
ヒト上皮成長因子受容体の機能的に不活性なトランケートバージョン(EGFRt)が、改変細胞の選択、追跡及び枯渇の候補として提案されている(Wang et al. (2011) Blood 118(5): 1255-1263)。EGFRは、造血系の細胞によって発現されない。EGFRtを生成するために、野生型受容体は、無傷のセツキシマブ結合部位が保持されたが、2つの細胞外ドメイン及びその細胞質テールの除去によって、リガンド結合とシグナル伝達活性とができなくなった。
【0006】
EGFRtは、移植された細胞の完全な排除を可能にし、有害な副作用をもたらし得る高用量のモノクローナル抗体の使用を回避するなどの最適な機能性のために、細胞表面上で高レベルで発現されなければならない。しかしながら、従来の転写プロモーターを使用する場合など、いくつかの状況において、以前のEGFRt構築物の発現は低い。
【0007】
この問題は、双方向性又は二シストロン性ベクター(すなわち、内部リボソーム侵入配列(IRES)を介するなど、同じ転写産物から2つの遺伝子産物を発現する)で形質導入された細胞、又はEGFRtが別の治療産物に融合される場合(すなわち、自己切断ペプチドを介する)、又はEGFRt発現が遺伝子編集によって低発現標的遺伝子座に連結される場合に特に関連する。これは、細胞を選択し、インビボで追跡し、有害事象の場合に枯渇させる必要がある場合に、重大な安全上の懸念を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、特に、導入された構築物が弱い発現制御系の制御下にあり得る状況において、遺伝子操作された細胞を選択、枯渇、及び追跡する手段が、当技術分野において有意に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、その発現が弱いプロモーターによって駆動される場合であっても、細胞の表面上で増加した安定性及び発現を示す、操作された上皮成長因子受容体を開発した。
【0010】
本発明者らは、(i)小胞体へのタンパク質翻訳を効率的に駆動するための非定型シグナルペプチド;(ii)EGFRタンパク質の細胞表面リサイクリングを安定化及び増加させる操作された細胞質テール;並びに/又は(iii)タンパク質翻訳を増加させるためのオープンリーディングフレーム配列の最適化、を利用することによって、増強されたEGFRt(eEGFRt)を生じさせるために、翻訳及び細胞表面安定性を改善するためにEGFRtを最適化した。これらの改変を適用することにより、本発明者らは、低用量のモノクローナル抗体の投与により、インビトロでの遺伝子改変細胞の回収、並びにインビトロ及びインビボでのそれらの枯渇を可能にすることによって、遺伝子改変された低発現細胞に対するeEGFRtマーカーの改善された有用性を実証した。この改善は、低発現細胞を排除し、投与される枯渇抗体の望ましくない作用のリスクを低減することによって、有害事象の場合の操作された細胞の安全性プロファイルを増加させる。
【0011】
一態様では、本発明は、以下:
(a)NGFR若しくはGMS SFRアルファシグナルペプチド;
(b)EGFR若しくはNGFR膜貫通ドメイン;及び/又は
(c)NGFR若しくはEGFR細胞質テール、
並びに場合によりリサイクリングシグナル、
と機能的に連結された、上皮成長因子受容体(EGFR)細胞外エピトープをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、細胞質テールは、(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、EGFR細胞外エピトープは、1又は複数のEGFR細胞外ドメイン又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIII又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIV又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIII及びEGFRドメインIV又はその一部を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはトランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)である。
【0015】
別の態様では、本発明は、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、以下:
(a)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び/又は
(b)(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
をさらに含むポリヌクレオチドを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、
(a)NGFRシグナルペプチドは、配列番号4に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;及び/又は
(b)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5に対して少なくとも70%の同一性を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFRドメインIII及びEGFRドメインIVを含む。いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFR膜貫通ドメイン又はNGFR膜貫通ドメイン、好ましくはEGFR膜貫通ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFRドメインI、EGFRドメインII、EGFR膜近傍ドメイン又はEGFRチロシンキナーゼドメインを含まない。
【0018】
いくつかの実施形態において、EGFRtは、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に対して少なくとも70%の同一性を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、
(a)配列番号17に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする;及び/又は
(b)配列番号16に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、
(a)配列番号19若しくは21に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする;及び/又は
(b)配列番号18若しくは20に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、
(a)配列番号23若しくは25に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする;及び/又は
(b)配列番号22又は24に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は弱いプロモーターに機能的に連結される。
【0024】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは導入遺伝子をさらに含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド、例えば、導入遺伝子及び/又はEGFRtコード配列を含むポリヌクレオチドは、遺伝子編集による挿入のためのものである。
【0026】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子はキメラ抗原受容体をコードする。
【0027】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるEGFRtタンパク質を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はアデノウイルスベクターである。
【0030】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを含む細胞を提供する。
【0031】
別の態様では、本発明は、治療に使用するための、本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクター又は細胞を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、医薬の製造のための、本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクター又は細胞の使用を提供する。
【0033】
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を選択する方法であって、
(a)細胞の集団に、本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程;
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程;及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を選択する工程
を含む方法を提供する。
【0034】
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を枯渇させる方法であって、
(a)細胞の集団に、本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程;及び
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程
を含む方法を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、EGFRt結合剤は、枯渇剤に機能的に連結される。いくつかの実施形態では、工程(b)の細胞集団を、EGFRt結合剤に結合する枯渇剤と接触させる。いくつかの実施形態において、細胞の表面上に発現されるEGFRtへのEGFRt結合剤の結合は、細胞の死を引き起こす。いくつかの実施形態において、枯渇剤は、EGFRt結合剤が結合している細胞を死滅させる。
【0036】
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を追跡する方法であって、
(a)細胞の集団に、本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程;
(b)形質導入された細胞集団を、検出可能な標識に機能的に連結されたEGFRt結合剤と接触させる工程;及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を検出する工程
を含む方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、インビトロ又はエクスビボ方法である。
【0038】
いくつかの実施形態では、EGFRt結合剤は抗体である。いくつかの実施形態において、EGFRt結合剤はセツキシマブである
【0039】
いくつかの実施形態では、枯渇剤は毒素を含む。いくつかの実施形態では、枯渇剤はサポリンを含む。
【0040】
別の態様では、本発明は、本発明の形質導入された細胞を選択する方法、形質導入された細胞を枯渇させる方法、及び/又は形質導入された細胞を追跡する方法を含む処置方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1-1】EGFRt改変は、CD40LG遺伝子編集手順後にタンパク質表面発現を改善し、インビトロ濃縮及び操作された細胞のインビトロ/インビボ枯渇を可能にした。(A)CD4+ Tリンパ球を編集するために使用される3つの矯正ドナーテンプレートの概略図。CD40LG遺伝子座のイントロン1内に挿入されたのは、スプライスアクセプター(SA)と、それに続くエクソン2からエクソン5のCD40LG cDNAと、その内因性3'UTR及びポリAとによって構成される、500bpの相同アームを有する矯正ドナー鋳型であった。IRES配列とそれに続くEGFRt遺伝子(i)又はeEGFRt 1遺伝子(ii)又はeEGFRt 2遺伝子(iii)のいずれかを、cDNA配列と3'UTR配列との間にクローニングした。編集が起こると、CD40LG内因性プロモーターは、CD40LG遺伝子及びEGFRt/改変型EGFRt遺伝子の両方の発現を駆動する。
図1-2】(B)編集されたCD4+非活性化T細胞におけるEGFR遺伝子発現を示す代表的なフローサイトメトリードットプロットを相対平均蛍光強度(MFI)と共に示す。(C)免疫磁気濃縮前(eEGFRt 1/eEGFRt 2バー)及び免疫磁気濃縮後(eEGFRt 1+/eEGFR 2+バー)のeEGFRt+編集細胞のパーセンテージを示すヒストグラムプロット。eEGFR 1-及びeEGFR 2-バーは、選択手順後に陰性画分に保持されたeEGFRt+細胞のパーセンテージを示す。
図1-3】(D)アセンブルされた免疫毒素(黒色バー)、抗体のみ(赤色バー)又は毒素のみ(緑色バー)でインビトロで処理した後のeEGFR+改変細胞のパーセンテージを示すヒストグラムプロット。(E)セツキシマブ腹腔内注射で処置した(赤線)又は処置しなかった(青線)、異種移植NSGマウスの末梢血(PB)において回収されたeEGFRt+ T細胞のパーセンテージの時間経過。eEGFRt+細胞のパーセンテージを、フローサイトメトリー分析(i)及びデジタル液滴PCR分子アッセイ(ii)の両方によって評価した。
図2A】EGFRt改変は、双方向性レンチウイルスベクターによる形質導入後にタンパク質表面発現を改善する。(A)hPGKプロモーターの制御下でGFPレポーター遺伝子をセンスで、最小CMVプロモーターによって駆動されるtEGFR(図2Ai)又は改変型EGFRt(eEGFRt1-図2Aii)のいずれかをアンチセンスで発現する双方向性レンチウイルスベクターの模式図。
図2B】(B)形質導入されたT細胞におけるEGFR遺伝子発現を示す代表的なフローサイトメトリードットプロットを相対平均蛍光強度(MFI)と共に示す。
図3】リサイクリングシグナルを有するEGFRt改変は、遺伝子編集手順後のEGFRタンパク質発現をさらに改善しなかった。編集されたCD4+非活性化(基底レベル)又は活性化(刺激)T細胞におけるEGFRt遺伝子発現を示す代表的なフローサイトメトリードットプロット。
図4】リサイクリングシグナルなしのEGFRt改変は、遺伝子編集手順後のEGFR表面発現を改善した。編集されたCD4+非活性化(基底レベル)T細胞におけるEGFRt遺伝子発現の時間経過を示す代表的なフローサイトメトリードットプロットを相対平均蛍光強度(MFI)と共に示す。
図5-1】編集されたT細胞は、臨床適合性のセレクターEGFRtを利用することによって特異的に枯渇させることができる。(A)Pma/イオノマイシン刺激の0時間後及び8時間後に雄性HDに由来するバルク編集CD4+ T細胞におけるEGFRt発現を示す代表的なプロット。図1Aに示す3つの構築物を用いて細胞を編集した。(B)FACS分析により測定した、雄性HD由来CD4+ T細胞におけるCD40LG編集後17日目のT細胞亜集団内のレポーター+細胞のパーセンテージ。NGFR(n=7)、eEGFRt 1(EGFR改変型1とも呼ばれる; n=7)又はeEGFRt 2(EGFR改変型2とも呼ばれる; n=4)を有するドナーテンプレートを用いて細胞を編集した。対応のあるウィルコクソン検定。n=4であるため、EGFR改変型2は分析に含めなかった。
図5-2】(C)雄性HD由来UT T細胞(n=14)又は(B)からのバルク編集T細胞における集団組成。LMEモデル、その後の事後解析。n=4であるため、EGFR改変型2は分析に含めなかった。平均± SEM。(D)RFIによって測定されたPMA/イオノマイシン刺激後のCD40L表面発現の時間経過(リポーター-細胞に対して正規化;左パネル)及び(B)からの編集又は未編集T細胞に対するパーセンテージ(右パネル)(リポーター-n=12を除く各群についてn=4)。(E)ELISPOTアッセイにより評価したIgG+分泌B細胞。B細胞をHDのPBから単離し、雄性HD選別NGFR/EGFR+、NGFR/EGFR-及びUT T細胞と共培養し、休止(R)するか、又はビーズ(B)若しくはPMA/イオノマイシン(PI)で刺激した。単独(-)又はsCD40Lの存在下(+)で培養したB細胞を、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した(各群についてn=2)。
図5-3】(F)HDのPBから単離され、(E)からの雄性HD T細胞と共培養された同種(allogeneic)選別B細胞におけるCell Trace希釈アッセイによるB細胞増殖能の分析。単独(-)又はsCD40Lの存在下(+)で培養したB細胞を、それぞれ陰性及び陽性対照として使用した(各群についてn=2)。(G)免疫毒素(左)、抗体(中)又は毒素(右)での処置の3日後に雄性HDに由来するバルク編集CD4+ T細胞におけるhEGFRt発現を示す代表的なプロット。(H)FACS分析によって測定された、5 nM又は1 nMの免疫毒素、抗体又は毒素による処置の3日後のhEGFRt+ T細胞のパーセンテージを示すヒストグラム。Dunnの多重比較によるFriedman検定。統計解析のための統一群として、異なる用量条件を用いた。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「構成される(comprised of)」は、「含む(including)」若しくは「含む(includes)」;又は「含有する(containing)」若しくは「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバー、要素又はステップを排除しない。用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「構成される(comprised of)」は用語「からなる(consisting of)」も含む。
【0043】
キメラセレクター
本発明者らは、それが発現される細胞の選択、枯渇及び追跡に使用され得る操作された細胞表面タンパク質を開発した。本明細書において「キメラセレクター」と呼ぶことができるタンパク質は、上皮成長因子受容体(EGFR)の細胞外エピトープを含み、その発現が弱いプロモーターによって駆動される場合であっても、細胞の表面上で増加した安定性及び発現を示す。EGFR細胞外エピトープは、例えば、セツキシマブなどの抗EGFR抗体によって選択的に結合され得る。
【0044】
一態様では、本発明は、以下:
(a)NGFR若しくはGMS SFRアルファシグナルペプチド;
(b)EGFR若しくはNGFR膜貫通ドメイン;及び/又は
(c)NGFR若しくはEGFR細胞質テール、
並びに場合によりリサイクリングシグナル、
に機能的に連結された、上皮成長因子受容体(EGFR)細胞外エピトープをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0045】
いくつかの実施形態において、細胞質テールは、(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は最大3つ(3つ以下)のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体のアミノ酸配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、EGFR細胞外エピトープは、1若しくは複数のEGFR細胞外ドメイン又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIII又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIV又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはEGFRドメインIII及びEGFRドメインIV又はその一部を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、EGFR細胞外エピトープはトランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)である。
【0048】
上皮成長因子受容体(EGFR)
上皮成長因子受容体(EGFR)は、ErbB1及びHER1としても知られ、細胞外リガンドの上皮成長因子ファミリーのメンバーのための細胞表面受容体である。
【0049】
ヒトEGFRの配列の例は以下である:
【化1】
【0050】
成熟野生型EGFRは、(N末端からC末端に)ドメインI、II、III及びIVと呼ばれる4つの細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;膜近傍ドメイン;チロシンキナーゼドメイン;並びに調節領域を含み得る(Ferguson, K.M. (2008) Annu Rev Biophys 37: 353-373を参照されたい)。当業者は、公知の配列比較ツールを用いて、EGFR配列中のドメインを容易に特定することができる。
【0051】
例えば、EGFRドメインは、配列番号1において、配列番号1のN末端メチオニンが残基1に割り当てられる慣例に従うアミノ酸番号付けに基づいて、以下の通りであり得る:シグナルペプチド(アミノ酸1~24);ドメインI(アミノ酸25~189);ドメインII(アミノ酸190~334);ドメインIII(アミノ酸335~504);ドメインIV(アミノ酸505~644);膜貫通ドメイン(アミノ酸645~667);膜近傍ドメイン(アミノ酸668~709);チロシンキナーゼドメイン(アミノ酸710~977);及び調節領域(アミノ酸978~1210)。当業者は、配列番号1に対する配列アライメントを実施することによって、相同タンパク質中の類似ドメインを容易に決定することができる。
【0052】
機能的に不活性なトランケートバージョンの上皮成長因子受容体は、改変細胞の選択、追跡及び枯渇のための候補として以前に提案されている(Wang et al. (2011) Blood 118(5): 1255-1263)。Wangらにおいてトランケート型EGFRを生成するために、野生型受容体は、2つの細胞外ドメイン(ドメインI及びII)及びその細胞質テール(膜近傍ドメイン及びチロシンキナーゼドメインを含む)を除去することによって、リガンド結合とシグナル伝達活性とができなくなった。
【0053】
本発明者らは、その発現が弱いプロモーターによって駆動される場合であっても、細胞の表面上で増加した安定性及び発現を示す、改善されたトランケート型上皮成長因子受容体を開発した。
【0054】
一態様では、本発明は、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、以下:
(a)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び/又は
(b)(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
をさらに含むポリヌクレオチドを提供する。
【0055】
別の態様では、本発明は、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、以下:
(a)GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び/又は
(b)(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40);又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)変異体のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列
をさらに含むポリヌクレオチドを提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列及びNGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列及びGMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列、及びKRWNRGIL(配列番号39)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列、及びRRRHIVRK(配列番号40)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0059】
KRWNRGIL(配列番号39)又はRRRHIVRK(配列番号40)のアミノ酸配列は、本明細書において「細胞質テール」又は「細胞質ドメイン」と称され得る。KRWNRGIL(配列番号39)は、本明細書においてNGFR細胞質テールと称され得る。RRRHIVRK(配列番号40)は、本明細書においてEGFR細胞質テールと称され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは、(a)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び(b)KRWNRGIL(配列番号39)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは、(a)NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び(b)RRRHIVRK(配列番号40)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは、(a)GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び(b)KRWNRGIL(配列番号39)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、トランケート型上皮成長因子受容体(EGFRt)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは、(a)GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;及び(b)RRRHIVRK(配列番号40)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有するその変異体をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0062】
好ましくは、本発明のEGFRtは、例えば、セツキシマブなどの抗EGFR抗体によって選択的に結合され得る、EGFR細胞外エピトープを含むトランケート型EGFRである。好ましくは、EGFRtはシグナル伝達活性又はトラフィッキング(輸送)活性を欠く。
【0063】
いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFRドメインIII及びEGFRドメインIVを含む。いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFR膜貫通ドメイン又はNGFR膜貫通ドメイン、好ましくはEGFR膜貫通ドメインをさらに含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、EGFRtは、EGFRドメインIII、EGFRドメインIV及びEGFR膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態において、EGFRtは、EGFRドメインIII、EGFRドメインIV及びNGFR膜貫通ドメインからなる。
【0065】
いくつかの実施形態では、EGFRtはEGFRドメインIを含まない。いくつかの実施形態では、EGFRtはEGFRドメインIIを含まない。いくつかの実施形態では、EGFRtはEGFR膜近傍ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、EGFRtはEGFRチロシンキナーゼドメインを含まない。
【0066】
いくつかの実施形態では、EGFRtは、EGFRドメインI、EGFRドメインII、EGFR膜近傍ドメイン又はEGFRチロシンキナーゼドメインを含まない。
【0067】
EGFRtアミノ酸配列の例は以下である:
【化2】
【0068】
EGFRtをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化3】
【0069】
いくつかの実施形態において、EGFRtは、配列番号2に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、EGFRtは、配列番号2に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、EGFRtは、セツキシマブなどの抗体によって認識可能なエピトープを含む。好ましくは、EGFRtは、シグナル伝達活性又はトラフィッキング(輸送)活性を欠く。
【0070】
いくつかの実施形態において、EGFRtは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、EGFRtは、配列番号2のアミノ酸配列からなる。
【0071】
いくつかの実施形態では、EGFRtは、配列番号2又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、EGFRtは、配列番号2又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、EGFRt又はその断片は、セツキシマブなどの抗体によって認識可能なエピトープを含む。好ましくは、EGFRt又はその断片は、シグナル伝達活性又はトラフィッキング(輸送)活性を欠く。
【0072】
いくつかの実施形態では、EGFRtは、配列番号2のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、EGFRtは、配列番号2のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0073】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列はコドン最適化される。好ましくは、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現のために最適化されたコドンである。
【0074】
いくつかの実施形態において、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。好ましくは、EGFRtは、セツキシマブなどの抗体によって認識可能なエピトープを含む。好ましくは、EGFRtは、シグナル伝達活性又はトラフィッキング(輸送)活性を欠く。
【0075】
いくつかの実施形態において、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は配列番号3である。
【0076】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。好ましくは、EGFRt又はその断片は、セツキシマブなどの抗体によって認識可能なエピトープを含む。好ましくは、EGFRt又はその断片は、シグナル伝達活性又はトラフィッキング(輸送)活性を欠く。
【0077】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、配列番号3又はその断片である。
【0078】
シグナルペプチド
ポリヌクレオチドは、好ましくは、シグナルペプチド、例えばNGFR又はGMS SFRアルファシグナルペプチド、好ましくはNGFRシグナルペプチド、をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0079】
「GMS SFRアルファシグナルペプチド」又は「NGFRシグナルペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、それぞれGMS SFRアルファ又はNGFR天然コード配列によってコードされるシグナルペプチドを指し得る。かかるシグナルペプチドは、タンパク質の発現を細胞表面に向ける。シグナルペプチドは、プロセシング中に未成熟タンパク質から切断され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0081】
NGFRシグナルペプチドの例は以下である:
【化4】
【0082】
NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化5】
【0083】
いくつかの実施形態において、NGFRシグナルペプチドは、配列番号4に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは、配列番号4に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、NGFRシグナルペプチドは、EGFRtの発現を細胞表面に向ける。
【0084】
いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは配列番号4のアミノ酸配列からなる。
【0085】
いくつかの実施形態において、NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号5である。
【0087】
いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは、配列番号4又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは、配列番号4又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、NGFRシグナルペプチド又はその断片は、EGFRtの発現を細胞表面に向ける。
【0088】
いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは配列番号4のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドは配列番号4のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0089】
いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0090】
いくつかの実施形態では、NGFRシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号5又はその断片である。
【0091】
他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0092】
GMS SFRアルファシグナルペプチドの例は、(Wang et al. (2011) Blood 118: 1255-1263)である:
【化6】
【0093】
GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化7】
【0094】
いくつかの実施形態において、GMS SFRアルファシグナルペプチドは、配列番号6に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、GMS SFRアルファシグナルペプチドは、配列番号6に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、GMS SFRアルファシグナルペプチドは、EGFRtの発現を細胞表面に向ける。
【0095】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは配列番号6のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは配列番号6のアミノ酸配列からなる。
【0096】
いくつかの実施形態において、GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号7である。
【0098】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは、配列番号6又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは、配列番号6又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、GMS SFRアルファシグナルペプチド又はその断片は、EGFRtの発現を細胞表面に向ける。
【0099】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは配列番号6のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドは配列番号6のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0100】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、配列番号7又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0101】
いくつかの実施形態では、GMS SFRアルファシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は配列番号7又はその断片である。
【0102】
好ましい実施形態では、シグナルペプチド(例えば、NGFR又はGMS SFRアルファシグナルペプチド、好ましくはNGFRシグナルペプチド)は、EGFRtに機能的に連結される。
【0103】
本明細書で使用される「機能的に連結された」という用語は、2つの成分が、両方が実質的に妨害されない機能を実行することを可能にする様式で一緒に連結されていることを意味し得る。例えば、シグナルペプチドは、EGFRtの発現を細胞表面に向けることができる。
【0104】
例えば、シグナルペプチドは、EGFRtのアミノ末端にあり得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはEGFRtのすぐアミノ末端側にある(immediately to)。
【0105】
細胞質ドメイン
ポリヌクレオチドは、好ましくは細胞質テールをコードするヌクレオチド配列を含む。適切には、ポリヌクレオチドは、(i)KRWNRGIL(配列番号39);若しくは(ii)RRRHIVRK(配列番号40)のアミノ酸配列を含むポリペプチド;又は3つ以下のアミノ酸置換、付加若しくは欠失を有する(i)若しくは(ii)の変異体をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)の変異体は、3つのアミノ酸置換、付加又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)の変異体は、2つのアミノ酸置換、付加又は欠失を有する。いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)の変異体は、1つのアミノ酸置換、付加又は欠失を有する。
【0107】
(i)をコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化8】
【0108】
(ii)をコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化9】
【0109】
いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8又は9に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)をコードするヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号8又は9である。
【0111】
いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)をコードするヌクレオチド配列は、配列番号8若しくは9又はその断片に対して少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、(i)又は(ii)をコードするヌクレオチド配列はそれぞれ配列番号8若しくは9又はその断片である。
【0113】
細胞質ドメイン(例えば、(i)、(ii)又はその変異体)は、C末端にアミノ酸配列アラニン-セリン(AS)をさらに含み得る。したがって、本発明は、配列番号39及び40がそれぞれKRWNRGILAS(配列番号41)及びRRRHIVRKAS(配列番号42)によって置換され得ることをさらに企図する。「AS」配列は、ヌクレオチド配列GCTAGCによってコードされ得る。したがって、本発明は、配列番号8及び9がそれぞれ、AAGCGGTGGAACCGGGGCATCCTGGCTAGC(配列番号43)及びCGGCGGAGACACATCGTGCGGAAGGCTAGC(配列番号44)によって置換されることをさらに企図する。本発明はさらに、配列番号8及び9が、それぞれAAGCGGTGGAACCGGGGCATCCTGGCTAGC(配列番号43)及びCGGCGGAGACACATCGTGCGGAAGGCTAGC(配列番号44)、又はその断片によって置換されることを企図する。
【0114】
好ましくは(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体はEGFRtに機能的に連結される。例えば、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、細胞表面でのEGFRtの安定性及び発現を増加させ得る。
【0115】
例えば、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、EGFRtのカルボキシ末端にあり得る。いくつかの実施形態では、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、EGFRtのすぐカルボキシ末端側(immediately to)にある。
【0116】
好ましい実施形態では、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、EGFRt膜貫通ドメインのカルボキシ末端にあり得る。好ましい実施形態では、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、EGFRt膜貫通ドメインのすぐカルボキシ末端側(immediately to)にある。他の実施形態では、(i)、(ii)のアミノ酸配列又はその変異体は、リンカーペプチドなどのリンカーによってEGFRt膜貫通ドメインのカルボキシ末端に連結される。
【0117】
膜貫通ドメイン
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0118】
EGFR膜貫通ドメインの例は以下である:
【化10】
【0119】
EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化11】
【0120】
いくつかの実施形態において、EGFR膜貫通ドメインは、配列番号10に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、EGFR膜貫通ドメインは、配列番号10に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、EGFR膜貫通ドメインは、EGFRtを細胞膜に固定する。
【0121】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは配列番号10のアミノ酸配列からなる。
【0122】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0123】
いくつかの実施形態において、EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は配列番号11である。
【0124】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは、配列番号10又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは、配列番号10又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、EGFR膜貫通ドメイン又はその断片は、EGFRtを細胞膜に固定する。
【0125】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは配列番号10のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインは配列番号10のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0126】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0127】
いくつかの実施形態では、EGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は配列番号11又はその断片である。
【0128】
NGFR膜貫通ドメインの例は以下である:
【化12】
【0129】
NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化13】
【0130】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは、配列番号12に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは、配列番号12に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、NGFR膜貫通ドメインは、EGFRtを細胞膜に固定する。
【0131】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは配列番号12のアミノ酸配列からなる。
【0132】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号13に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は配列番号13である。
【0134】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは、配列番号12又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは、配列番号12又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、NGFR膜貫通ドメイン又はその断片は、EGFRtを細胞膜に固定する。
【0135】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは配列番号12のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインは配列番号12のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0136】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号13又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、NGFR膜貫通ドメインをコードするヌクレオチド配列は配列番号13又はその断片である。
【0138】
リサイクリングシグナル
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列をさらに含む。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列を含まない。
【0139】
リサイクリングシグナル配列の例は以下である:
【化14】
【0140】
リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列の例は以下である:
【化15】
【0141】
いくつかの実施形態において、リサイクリングシグナルは、配列番号14に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、リサイクリングシグナルは、配列番号14に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、リサイクリングシグナルは、EGFRtの細胞膜への再利用(リサイクル)を促進する。
【0142】
いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは配列番号14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは配列番号14のアミノ酸配列からなる。
【0143】
いくつかの実施形態において、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0144】
いくつかの実施形態において、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列は配列番号15である。
【0145】
いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは、配列番号14又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは、配列番号14又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列からなる。好ましくは、リサイクリングシグナル又はその断片は、EGFRtの細胞膜への再利用(リサイクリング)を促進する。
【0146】
いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは配列番号14のアミノ酸配列又はその断片を含む。いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルは配列番号14のアミノ酸配列又はその断片からなる。
【0147】
いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列は、配列番号15又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、リサイクリングシグナルをコードするヌクレオチド配列は配列番号15又はその断片である。
【0149】
構築物(コンストラクト)
本発明のEGFRt構築物の例として以下が挙げられる:
【表1】
【0150】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号17、19、21、23又は25に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0151】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号17、19、21、23又は25のアミノ酸配列をコードする。
【0152】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22又は24に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22又は24のヌクレオチド配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22又は24に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0155】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22又は24のヌクレオチド配列からなる。
【0156】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号17、19、21、23若しくは25、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0157】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号17、19、21、23若しくは25のアミノ酸配列、又はその断片をコードする。
【0158】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22若しくは24、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22若しくは24のヌクレオチド配列、又はその断片を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22若しくは24、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0161】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、18、20、22若しくは24のヌクレオチド配列、又はその断片からなる。
【0162】
さらなる例示的なEGFRt構築物として以下が挙げられる:
【表2】
【0163】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号29、31、33又は35に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0164】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号29、31、33又は35のアミノ酸配列をコードする。
【0165】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32又は34に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32又は34のヌクレオチド配列を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32又は34に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0168】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32又は34のヌクレオチド配列からなる。
【0169】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37又は38に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37又は38のヌクレオチド配列を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37又は38に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0172】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37又は38のヌクレオチド配列からなる。
【0173】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号29、31、33若しくは35、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0174】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号29、31、33若しくは35のアミノ酸配列、又はその断片をコードする。
【0175】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32若しくは34、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32若しくは34のヌクレオチド配列、又はその断片を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32若しくは34、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0178】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号28、30、32若しくは34のヌクレオチド配列、又はその断片からなる。
【0179】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号37若しくは38、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37若しくは38のヌクレオチド配列、又はその断片を含む。
【0181】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号37若しくは38、又はその断片に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有するヌクレオチド配列からなる。
【0182】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号37若しくは38のヌクレオチド配列、又はその断片からなる。
【0183】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター、好ましくは弱いプロモーターに機能的に連結される。
【0184】
いくつかの実施形態では、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、双方向性(二方向性)プロモーターに機能的に連結される。双方向性プロモーターは、導入遺伝子にさらに機能的に連結され得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはIRESをさらに含む。いくつかの実施形態において、EGFRtをコードするヌクレオチド配列は、IRESの下流にある。
【0186】
導入遺伝子
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは導入遺伝子をさらに含む。ポリヌクレオチドは、例えば、二シストロン性ベクターであってもよく、又は双方向性プロモーターを含んでもよい。二シストロン性ベクターは、IRESを含み得る。
【0187】
好ましくは、導入遺伝子は治療効果を生じる。
【0188】
好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは双方向性プロモーターをさらに含む。双方向性プロモーターは、例えば、導入遺伝子及びEGFRtの両方の発現を制御し得る。
【0190】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチドは二シストロン性ベクターである。二シストロン性ベクターは、IRESを含み得る。
【0191】
キメラ抗原受容体(CAR)
CARは、細胞内シグナル伝達成分、最も一般的には単独で又は1若しくは複数の共刺激ドメインと組み合わせたCD3ζに連結された、細胞外リガンド結合ドメイン、最も一般的にはモノクローナル抗体の単鎖可変領域フラグメント(scFv)を含む。スペーサーは、標的との相互作用を最適化するために、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通部分との間に付加されることが多い。
【0192】
本発明における使用のためのCARは、以下を含み得る:
(i)抗原特異的ターゲティングドメイン;
(ii)膜貫通ドメイン;
(iii)場合により、少なくとも1つの共刺激ドメイン;及び
(iv)細胞内シグナル伝達ドメイン。
【0193】
好ましくは、抗原特異的ターゲティングドメインは、抗体又はその断片、より好ましくは単鎖可変領域フラグメントを含む。
【0194】
膜貫通ドメインの例としては、T細胞受容体複合体、CD28及びCD8aのゼータ鎖の膜貫通ドメインが挙げられる。
【0195】
共刺激ドメインの例としては、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30及びCD40由来の共刺激ドメインが挙げられる。
【0196】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインはCD28由来の共刺激ドメインである。
【0197】
細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、ヒトCD3ζ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、及び免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体が挙げられる。
【0198】
「キメラ抗原受容体」(「CAR」又は「CARs」)という用語は、本明細書で使用される場合、細胞(例えばT細胞、例としてナイーブT細胞、セントラルメモリT細胞、エフェクターメモリT細胞又はそれらの組み合わせなど)に抗原特異性を付与することができる操作された受容体を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体又はキメラ免疫受容体としても知られている。
【0199】
抗原特異的ターゲティングドメインは、対象の標的抗原に結合する能力をCARに提供する。抗原特異的ターゲティングドメインは、好ましくはエフェクター免疫応答を誘発することが望ましい臨床的意義のある抗原を標的とする。
【0200】
抗原特異的ターゲティングドメインは、生物学的分子を特異的に認識し、それに結合する能力を有する任意のタンパク質又はペプチドであり得る。抗原特異的ターゲティングドメインは、目的の生物学的分子のための天然に存在する、合成の、半合成の、又は組換えにより産生された任意の結合パートナーを含む。
【0201】
例示的な抗原特異的ターゲティングドメインとしては、抗体若しくは抗体断片若しくは誘導体、受容体の細胞外ドメイン、細胞表面分子/受容体のリガンド、又はその受容体結合ドメインが挙げられる。
【0202】
好ましい実施形態では、抗原特異的ターゲティングドメインは、抗体であるか、又は抗体に由来する。抗体由来ターゲティングドメインは、抗体の断片、又は抗体の1つ以上の断片の遺伝子操作された産物であり得、その断片は抗原との結合に関与する。例としては、可変領域(Fv)、相補性決定領域(CDR)、Fab、単鎖抗体(scFv)、重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)及びラクダ科動物抗体(VHH)が挙げられる。
【0203】
好ましい態様において、結合ドメインは単鎖抗体(scFv)である。scFvは、例えば、マウス、ヒト又はヒト化scFvであり得る。
【0204】
抗体又はその抗原結合断片に関する「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、抗体の重鎖又は軽鎖の可変領域における高度に可変のループを指す。CDRは、抗原コンホメーションと相互作用し、抗原への結合を大きく決定することができる(しかし、いくつかのフレームワーク領域が結合に関与することが知られている)。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域はそれぞれ3つのCDRを含む。
【0205】
「重鎖可変領域」(「VH」)は、フレームワーク領域(これはCDRよりも高度に保存され、CDRを支持する足場を形成する)として知られる隣接ストレッチの間に存在する3つのCDRを含む抗体の重鎖の断片を指す。
【0206】
「軽鎖可変領域」(「VL」)は、フレームワーク領域の間に存在する3つのCDRを含む抗体の軽鎖の断片を指す。
【0207】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を有する抗体の最小断片を指す。Fvフラグメントは、単一重鎖の可変領域に結合した単一軽鎖の可変領域からなる。
【0208】
「単鎖Fv抗体」(「scFv」)は、直接又はペプチドリンカー配列を介して互いに連結された軽鎖可変領域及び重鎖可変領域からなる操作された抗体を指す。
【0209】
標的抗原に特異的に結合する抗体は、当技術分野で周知の方法を用いて調製することができる。そのような方法には、ファージディスプレイ、ヒト抗体若しくはヒト化抗体を生成する方法、又はヒト抗体を生成するように操作されたトランスジェニック動物若しくは植物を使用する方法が含まれる。部分的又は完全に合成された抗体のファージディスプレイライブラリが利用可能であり、標的分子に結合することができる抗体又はその断片についてスクリーニングすることができる。ヒト抗体のファージディスプレイライブラリも利用可能である。同定された後、抗体をコードするアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を単離及び/又は決定することができる。
【0210】
本発明において使用されるCARはまた、1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。このドメインは、細胞増殖、細胞生存及びメモリ細胞の発生を増強し得る。
【0211】
各共刺激ドメインは、例えば、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-1、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、又はそれらの組み合わせのうちのいずれか1つ又は複数の共刺激ドメインを含む。他のタンパク質由来の共刺激ドメインもまた、本発明において使用されるCARと共に使用され得る。
【0212】
本発明において使用されるCARはまた、細胞内シグナル伝達ドメインを含んでもよい。このドメインは、細胞質ドメインであり得、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞にその特殊化された機能を実行させ得る。細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、限定されるものではないが、T細胞受容体のζ鎖又はその相同体のいずれか(例えば、η鎖、FcεR1γ及びβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖など)、CD3ポリペプチド(Δ、δ及びε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)、並びにT細胞形質導入に関与する他の分子、例えばCD2、CD5及びCD28が挙げられる。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を有する細胞質受容体、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0213】
本発明において使用されるCARはまた、膜貫通ドメインを含み得る。膜貫通ドメインは、I型、II型又はIII型膜貫通タンパク質のいずれかを含む、膜貫通ドメインを有する任意のタンパク質由来の膜貫通配列を含み得る。本発明において使用されるCARの膜貫通ドメインはまた、人工疎水性配列を含んでもよい。本発明において使用されるCARの膜貫通ドメインは、二量体化しないように選択され得る。CAR構築物において使用される膜貫通(TM)領域の例は、1)CD28 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Casucci et al, Blood, 2013, Nov 14;122(20):3461-72.);2)OX40 TM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41);3)41BB TM領域(Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35);4)CD3ゼータTM領域(Pule et al, Mol Ther, 2005, Nov;12(5):933-41; Savoldo B, Blood, 2009, Jun 18;113(25):6392-402.);5)CD8a TM領域(Maher et al, Nat Biotechnol, 2002, Jan;20(1):70-5.; Imai C, Leukemia, 2004, Apr;18(4):676-84; Brentjens et al, CCR, 2007, Sep 15;13(18 Pt 1):5426-35; Milone et al, Mol Ther, 2009, Aug;17(8):1453-64.)である。
【0214】
遺伝子編集
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド又はその部分は、遺伝子編集による挿入のためのものである。
【0215】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ドナーベクター又はドナー鋳型(例えば、遺伝子編集の文脈における)である。
【0216】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子及び/又はEGFRtコード配列は、遺伝子編集による挿入のためのものである。
【0217】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、導入遺伝子とEGFRtをコードするヌクレオチド配列との間にIRES配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、導入遺伝子と、EGFRt、シグナルペプチド及び/又はポリペプチド(例えば、(i)若しくは(ii)、又はその変異体)をコードするヌクレオチド配列との間にIRES配列をさらに含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはプロモーターを含まない。例えば、EGFRt及び/又は導入遺伝子の発現は、ポリヌクレオチド又はその部分が挿入される細胞のゲノム中の内因性プロモーターによって駆動され得る。
【0219】
例えば、ポリヌクレオチドは、導入遺伝子、IRES及びEGFRtコード配列(場合によりプロモーターを含まない)を含み得る。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、遺伝子編集(例えば、細胞のゲノムに挿入され、場合により、導入遺伝子及びEGFRtの発現が内因性プロモーターによって駆動される)において使用され得る。例えば、遺伝子編集は、細胞、例えばT細胞又は造血幹細胞若しくは前駆細胞などに適用され得る。
【0220】
CD40LG遺伝子編集のさらなる例示的文脈において、CD40LG遺伝子は一般に、造血幹細胞又は前駆細胞において発現されず、その結果、IRES-EGFRt構築物は、本発明のポリヌクレオチドを介して、又は別の系を介して、プロモーターも挿入されることを必要とし得る(例えば、IRESの上流のTetO7-最小プロモーター)。
【0221】
「遺伝子編集」という用語は、核酸が細胞内で挿入、欠失又は置換される遺伝子工学の種類を指す。遺伝子編集は、ポリヌクレオチド(例えば、ゲノム)中の所望の部位に標的化され得る、操作されたヌクレアーゼを使用して達成され得る。そのようなヌクレアーゼは、所望の位置で部位特異的二本鎖切断を生じ得、次いで、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え(HR)を通して修復され得、標的化突然変異をもたらす。
【0222】
そのようなヌクレアーゼは、ウイルスベクターなどのベクターを使用して標的細胞に送達され得る。
【0223】
当技術分野で公知の適切なヌクレアーゼの例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びクラスター化された規則的に間隔を置いた短いパリンドローム反復配列(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats: CRISPR)/Cas系(Gaj, T. et al. (2013) Trends Biotechnol. 31: 397-405; Sander, J.D. et al. (2014) Nat. Biotechnol. 32: 347-55)が挙げられる。
【0224】
メガヌクレアーゼ(Meganuclease)(Silve, G. et al. (2011) Cur. Gene Ther. 11: 11-27)もまた、遺伝子編集のための適切なヌクレアーゼとして使用され得る。
【0225】
CRISPR/Cas系は、RNA誘導(ガイド)DNA結合系であり(van der Oost et al. (2014) Nat. Rev. Microbiol. 12: 479-92)、ここで、ガイドRNA(gRNA)は、Cas9ドメインが特定の配列に標的化されることを可能にするように選択され得る。gRNAの設計のための方法は、当該技術分野で知られている。さらに、完全直交Cas9タンパク質、並びにCas9/gRNAリボ核タンパク質複合体及び異なるタンパク質に結合するためのgRNA構造/組成物の変形例が、細胞の所望のゲノム部位に異なるエフェクタードメインを同時に方向性をもって標的化するために最近開発され(Esvelt et al. (2013) Nat. Methods 10: 1116-21; Zetsche, B. et al. (2015) Cell pii: S0092-8674(15)01200-3; Dahlman, J.E. et al. (2015) Nat. Biotechnol. 2015 Oct 5. doi: 10.1038/nbt.3390. [Epub ahead of print]; Zalatan, J.G. et al. (2015) Cell 160: 339-50; Paix, A. et al. (2015) Genetics 201: 47-54)、本発明での使用のために好適である。
【0226】
ポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、DNA又はRNA、好ましくはDNAを含んでもよい。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖でもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは単離されたポリヌクレオチドである。数多くの異なるポリヌクレオチドが、遺伝コードの縮重の結果として同じポリペプチドをコードできることは当業者であれば理解するだろう。さらに、当業者であれば、常用の技法を使用して、本発明のポリペプチドが発現されることになる任意の特定の宿主生物のコドン使用法を反映するように、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行ってもよいことは理解されるべきである。
【0227】
ポリヌクレオチドは、当技術分野で利用可能である任意の方法によって改変してもよい。そのような改変を、本発明のポリヌクレオチドのインビボ活性又は寿命を増強するために実行し得る。
【0228】
ポリヌクレオチド、例えばDNAポリヌクレオチドは、組換え的に、合成的に、又は当業者であれば利用可能な任意の手段によっても作製し得る。ポリヌクレオチドは標準技法によりクローニングしてもよい。
【0229】
より長いポリヌクレオチドは、一般的には、組換え手段を使用して、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)クローニング技法を使用して作製される。これは、クローニングするのが望ましい標的配列に隣接している一対のプライマー(例えば、約15~30ヌクレオチドのもの)を作製し、プライマーを動物細胞又はヒト細胞から得たmRNA又はcDNAに接触させ、所望の領域の増幅を引き起こす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅された断片を単離し(例えば、アガロースゲルを用いて反応混合物を精製することにより)、増幅されたDNAを回収することを含む。プライマーは、増幅されたDNAを適切なベクター中にクローニングできるように、適切な制限酵素認識部位を含有するように設計し得る。
【0230】
細胞
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む細胞を提供する。
【0231】
いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、リンパ球又は幹細胞、例えば造血幹細胞又は人工多能性幹細胞(iPS)などである。
【0232】
いくつかの実施形態では、細胞は、造血幹細胞又は造血前駆細胞である。いくつかの実施形態において、細胞はT細胞である。
【0233】
例えば、細胞は、CD4細胞、CD8細胞、Th0細胞、Tc0細胞、Th1細胞、Tc1細胞、Th2細胞、Tc2細胞、Th17細胞、Th22細胞、γ/δT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ダブルネガティブT細胞、ナイーブT細胞、メモリ幹T細胞、セントラルメモリT細胞、エフェクターメモリT細胞、エフェクターT細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、造血幹細胞及び多能性幹細胞からなる群より選択され得る。
【0234】
細胞は、対象から単離されたものであってもよい。
【0235】
本発明の細胞は、養子細胞移入における使用のために提供され得る。本明細書で使用される場合、「養子細胞移入(adoptive cell transfer)」という用語は、患者への細胞集団の投与を指す。典型的には、細胞は対象から単離されたT細胞であり、次いで、患者に投与される前に、インビトロで遺伝子改変され、培養される。
【0236】
養子細胞移入は、同種異系(allogenic)又は自家(autologous)であり得る。
【0237】
「自家細胞移入」とは、出発細胞集団(次いで、本発明に係るポリヌクレオチド又はベクターで形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象と同じ対象から得られることを理解されたい。自家移入は、免疫学的不適合に関連する課題を回避し、遺伝的に適合したドナーの利用可能性にかかわらず、対象に利用可能であるので、利点がある。
【0238】
「同種異系細胞移入」とは、出発細胞集団(次いで、本発明に係るポリヌクレオチド又はベクターで形質導入される)が、形質導入された細胞集団が投与される対象とは異なる対象から得られることを理解されたい。好ましくは、免疫学的不適合性のリスクを最小限にするために、ドナーは細胞が投与される対象に遺伝的に適合される。あるいは、ドナーは患者とミスマッチであり、無関係であってもよい。
【0239】
ベクター
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはベクターである。好ましくは、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はアデノウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはウイルスゲノムである。
【0240】
別の態様において、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを提供する。
【0241】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はアデノウイルスベクターである。
【0242】
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、ウイルスベクター粒子の形態である。
【0243】
ベクターは、何らかの存在物のある環境から別の環境への移動を可能にするか又は推進するツールである。本発明に従えば、例としては、組換え核酸技術に使用される一部のベクターは、核酸断片(例えば、異種性のcDNA断片などの、異種性のDNA断片)などの存在物が標的細胞に移動されることを可能にする。ベクターは、細胞内における異種性の核酸(DNA又はRNA)の維持、核酸断片を含むベクターの複製の促進、及び/又は核酸断片にコードされるタンパク質の発現促進の目的に役立ち得る。
【0244】
本発明において使用されるポリヌクレオチドを含むベクターは、トランスフェクション、形質導入及び形質転換などの当技術分野で公知の様々な技術を使用して細胞に導入することができる。
【0245】
トランスフェクションは、核酸を細胞に組み込む一般的な方法を指し、ポリヌクレオチドを細胞に送達するために非ウイルスベクターを使用する方法を含む。形質導入は、ウイルスベクターを使用して細胞に核酸を組み込む方法を指し得る。
【0246】
レトロウイルス及びレンチウイルスベクター
レトロウイルスベクターは、任意の好適なレトロウイルスに由来し得るか又は由来可能であり得る。多数の異なるレトロウイルスが同定されている。例として、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、アベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球症ウイルス-29 (MC29)及びトリ赤芽球症ウイルス(AEV)が挙げられる。レトロウイルスの詳細なリストは、Coffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に見出すことができる。
【0247】
レトロウイルスは2つのカテゴリー、「単純(simple)」及び「複雑(complex)」に大きく分けられ得る。レトロウイルスはさらにその上7群に分けられ得る。これらの群のうち5つは発がん性を有するレトロウイルスを代表する。残りの2群はレンチウイルス及びスプーマウイルスである。
【0248】
レトロウイルス及びレンチウイルスゲノムの基本構造は、5' LTR及び3' LTRなどの多くの共通の特徴を共有する。これらの間又は内部には、ゲノムをパッケージングすることを可能にするパッケージングシグナル、プライマー結合部位、宿主細胞ゲノムへの組み込みを可能にするための組み込み部位、並びにパッケージング成分(これらはウイルス粒子のアセンブリに必要なポリペプチドである)をコードするgag、pol及びenv遺伝子が位置する。レンチウイルスはHIVにおけるrev及びRRE配列などのさらなる特徴を有し、これは、組み込まれたプロウイルスのRNA転写物を、感染した標的細胞の核から細胞質へ効率的に輸送(export)することを可能にする。
【0249】
プロウイルスでは、これらの遺伝子が長末端反復(LTR)と呼ばれる領域によって両末端に隣接(フランキング)している。LTRは、プロウイルスの組み込み及び転写に関与する。LTRはまた、エンハンサー-プロモーター配列として働き、ウイルス遺伝子の発現を制御することができる。
【0250】
LTR自体は、3つのエレメント:U3、R及びU5に分割され得る同一の配列である。U3は、RNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、RNAの両末端で繰り返される配列に由来する。U5は、RNAの5’末端に特有の配列に由来する。3つのエレメントのサイズは、異なるレトロウイルス間でかなり変化し得る。
【0251】
欠損レトロウイルスベクターゲノムにおいて、gag、pol及びenvは、不在であるか又は機能的ではない。
【0252】
典型的なレトロウイルスベクターでは、複製に必須の1又は複数のタンパク質コード領域の少なくとも一部がウイルスから除去され得る。これは、ウイルスベクターの複製を欠損させる。ウイルスゲノムの一部はまた、標的宿主細胞を形質導入することができ、かつ/又はそのゲノムを宿主ゲノムに組み込むことができる候補調節部分を含むベクターを生成するために、ベクターゲノム中の調節制御領域及びレポーター部分に機能的に連結された候補調節部分をコードするライブラリによって置き換えられてもよい。
【0253】
レンチウイルスベクターは、より大きな群のレトロウイルスベクターの一部である。レンチウイルスの詳細なリストはCoffin, J.M. et al. (1997) Retroviruses, Cold Spring Harbour Laboratory Press, 758-63に見出すことができる。簡単に述べると、レンチウイルスは、霊長類と非霊長類の群に分けられる。霊長類レンチウイルスの例としては、限定されるものではないが、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因病原体である、ヒト免疫不全ウイルス(HIV);サル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルスの例としては、プロトタイプである「スローウイルス(slow virus)」のビスナ/マエディウイルス(VMV)、並びに関連するヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)、より最近になって記載されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)及び牛免疫不全ウイルス(BIV)が挙げられる。
【0254】
レンチウイルスファミリーは、レンチウイルスが分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する能力を有する点でレトロウイルスとは異なる(Lewis, P et al. (1992) EMBO J. 11: 3053-8; Lewis, P.F. et al. (1994) J. Virol. 68: 510-6)。対照的に、MLVなどの他のレトロウイルスは、例えば、筋肉、脳、肺及び肝臓組織を構成するものなどの非分裂細胞又はゆっくり分裂する細胞に感染することができない。
【0255】
レンチウイルスベクターは、本明細書で使用される場合、レンチウイルスに由来し得る少なくとも1つの構成部分を含むベクターである。好ましくは、その構成部分は、ベクターが細胞に感染する、遺伝子を発現する、又は複製される生物学的機構に関与する。
【0256】
レンチウイルスベクターは、「霊長類」ベクターであり得る。レンチウイルスベクターは、「非霊長類」ベクター(すなわち、霊長類、特にヒトに主に感染しないウイルスに由来する)であってもよい。非霊長類レンチウイルスの例としては、霊長類に自然感染しないレンチウイルス科(Lentiviridae)の任意のメンバーであり得る。
【0257】
レンチウイルスに基づくベクターの例として、HIV-1及びHIV-2に基づくベクターを以下に記載する。
【0258】
HIV-1ベクターは、単純レトロウイルスにも見られるシス作用エレメントを含む。gagオープンリーディングフレーム内に伸びる配列がHIV-1のパッケージングに重要であることが示されている。したがって、HIV-1ベクターは、翻訳開始コドンが変異しているgagの関連部分を含むことが多い。さらに、ほとんどのHIV-1ベクターはまた、RREを含むenv遺伝子の一部を含む。RevはRREに結合し、これにより、完全長又は単一スプライシングされたmRNAを核から細胞質へ輸送(transport)することができる。Rev及び/又はRREの非存在下では、完全長HIV-1 RNAが核内に蓄積する。あるいは、Mason-Pfizerサルウイルスなどの特定の単純レトロウイルスからの構成的輸送エレメントを使用して、Rev及びRREの必要性を軽減することができる。HIV-1 LTRプロモーターからの効率的な転写には、ウイルスタンパク質Tatが必要である。
【0259】
ほとんどのHIV-2に基づくベクターは、HIV-1ベクターと構造的に非常に類似している。HIV-1に基づくベクターと同様に、HIV-2ベクターもまた、完全長又は単一スプライシングされたウイルスRNAの効率的な輸送のためにRREを必要とする。
【0260】
好ましくは、本発明において使用されるウイルスベクターは最小ウイルスゲノムを有する。
【0261】
「最小ウイルスゲノム」とは、標的宿主細胞に感染し、目的のヌクレオチド配列を形質導入し、送達するために必要な機能性を提供するために、非必須エレメントを除去し、必須エレメントを保持するようにウイルスベクターが操作されていることを理解されたい。この戦略のさらなる詳細は、WO 1998/017815に見出すことができる。
【0262】
好ましくは、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターは、パッケージング成分の存在下で、標的細胞に感染することができるが、最終標的細胞内で感染性ウイルス粒子を産生するために独立した複製ができないウイルス粒子へのRNAゲノムのパッケージングを可能にするのに十分なレンチウイルス遺伝情報を有する。好ましくは、ベクターは、複製に必須の機能的gag-pol及び/又はenv遺伝子及び/又は他の遺伝子を欠く(欠損する)。
【0263】
しかしながら、宿主細胞/パッケージング細胞内でウイルスゲノムを産生するために使用されるプラスミドベクターはまた、宿主細胞/パッケージング細胞内でゲノムの転写を指示するためにレンチウイルスゲノムに機能的に連結された転写調節制御配列を含む。これらの調節配列は、転写されたウイルス配列(すなわち、5’U3領域)に関連する天然配列であってもよく、又はそれらは、異種プロモーター、例えば別のウイルスプロモーター(例えば、CMVプロモーター)などであってもよい。
【0264】
ベクターは、ウイルスエンハンサー及びプロモーター配列が欠失されている自己不活性化(SIN)ベクターであってもよい。SINベクターは、野生型ベクターの効力と同様の効力で、インビボで生成し非分裂細胞に形質導入することができる。SINプロウイルスにおける長末端反復配列(LTR)の転写不活性化は、複製能を有するウイルスによる動員(mobilisation)を妨げるはずである。これはまた、LTRの任意のシス作用効果を排除することによって、内部プロモーターからの遺伝子の調節された発現を可能にするはずである。
【0265】
ベクターは、組込み欠損であり得る。組込み欠損レンチウイルスベクター(IDLV)は、例えば、ベクターを触媒的に不活性なインテグラーゼ(例えば、触媒部位にD64V変異を有するHIVインテグラーゼ;Naldini, L. et al. (1996) Science 272: 263-7; Naldini, L. et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11382-8; Leavitt, A.D. et al. (1996) J. Virol. 70: 721-8)でパッケージングすることにより、又はベクターLTRから必須att配列を改変若しくは欠失することにより(Nightingale, S.J. et al. (2006) Mol. Ther. 13: 1121-32)、又は上記の組み合わせにより、作製することができる。
【0266】
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
AAVベクターは、AAVゲノム又はその断片若しくは誘導体を含み得る。
【0267】
AAVゲノムはポリヌクレオチド配列であり、この配列はAAV粒子の生成に必要とされる機能をコードし得る。これらの機能としては、宿主細胞におけるAAVの複製及びパッケージングサイクルにおいて作動する機能、例えばAAV粒子へのAAVゲノムのキャプシド形成が挙げられる。天然に存在するAAVは複製欠損性であり、複製及びパッケージングサイクルの完了に関してはトランスのヘルパー機能の供給に依存している。したがって、本発明のAAVベクターのAAVゲノムは典型的には複製欠損性である。
【0268】
AAVゲノムは、ポジティブセンス又はネガティブセンスのいずれかの一本鎖形態であっても、あるいは二本鎖形態であってもよい。二本鎖形態の使用により、標的細胞におけるDNA複製段階の迂回が可能となり、そのため導入遺伝子の発現を促進することができる。
【0269】
AAVゲノムは、AAVの任意の天然由来の血清型、単離株(isolate)又はクレードから得たものであってもよい。したがって、AAVゲノムは、天然に存在するAAVの全ゲノムであってもよい。当業者には公知であるように、天然に存在するAAVは、様々な生物学的システムに応じて分類することができる。
【0270】
一般に、AAVはそれらの血清型の点から言及される。血清型はAAVの変異体亜種に対応しており、この変異体亜種は、そのキャプシド表面抗原の発現プロファイルにより、他の変異体亜種と区別するために利用できる特有の反応性を有する。典型的には、特定のAAV血清型を有するウイルスは、任意の他のAAV血清型に特異的な中和抗体とは効率的に交差反応しない。
【0271】
AAV血清型にはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10及びAAV11が含まれ、また組換え血清型、例えば、霊長類の脳から近年同定されたRec2及びRec3も含まれる。
【0272】
いくつかの実施形態では、AAVは、AAV1、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV9、rh10、rh39又はrh43血清型である。いくつかの実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV1、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV9、rh10、rh39又はrh43血清型キャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV1、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV9、rh10、rh39又はrh43ベクター粒子である。
【0273】
いくつかの実施形態において、AAVは、AAV9;AAV9 PHP.B;AAV9 PHP.eB;又はAAVrh10血清型である。いくつかの実施形態において、AAVベクター粒子は、AAV9;AAV9 PHP.B;AAV9 PHP.eB;又はAAVrh10血清型キャプシドタンパク質を含む。
【0274】
キャプシドタンパク質は、人工又は変異キャプシドタンパク質であってもよい。
【0275】
本明細書で使用される「人工キャプシド」という用語は、キャプシド粒子が天然に存在しないアミノ酸配列を含むか、又は天然に存在するキャプシドアミノ酸配列から操作された(例えば、改変された)アミノ酸配列を含むことを意味する。
【0276】
言い換えれば、人工キャプシドタンパク質は、人工キャプシドアミノ酸配列及びそれが由来する親キャプシドアミノ酸配列をアライメントした場合に、親キャプシドの配列と比較してアミノ酸配列における変異又はバリエーションを含む。配列アライメントの方法は当技術分野において周知であり、本明細書において参照される。
【0277】
AAV血清型の概説は、Choiら (2005) Curr. Gene Ther. 5:299-310 及びWuら (2006) Molecular Therapy 14:316-27中に見出すことができる。本発明に使用するためのAAVゲノムの配列、又はITR配列、rep若しくはcap遺伝子を含むAAVゲノムのエレメントの配列は、AAV全ゲノム配列に関する次のアクセッション番号:アデノ随伴ウイルス1 NC_002077、AF063497;アデノ随伴ウイルス2 NC_001401;アデノ随伴ウイルス3 NC_001729;アデノ随伴ウイルス3B NC_001863;アデノ随伴ウイルス4 NC_001829;アデノ随伴ウイルス5 Y18065、AF085716;アデノ随伴ウイルス6 NC_001862;トリAAV ATCC VR-865 AY186198、AY629583、NC_004828;トリAAV株DA-1 NC_006263、AY629583;ウシAAV NC_005889、AY388617に由来するものであり得る。
【0278】
AAVは、クレード又はクローンの点から言及される場合もある。これは天然由来のAAVの系統発生関係を指しており、また典型的には、共通祖先まで遡及することが可能であり、かつそのすべての子孫を含むAAVの系統発生群を指す。さらに、AAVは、特定の単離株、すなわち自然界に見出される特定のAAVの遺伝子単離株(genetic isolate)の点で言及される場合がある。遺伝子単離株という用語は、他の天然に存在するAAVとの遺伝子混合が限定的に行われたAAVの集団を説明するものであり、それによって遺伝子レベルで認識できる程度に異なる集団が定義される。
【0279】
当業者であれば、本発明において使用するためのAAVの適当な血清型、クレード、クローン又は単離株を、それらの共通の一般知識に基づいて選択することができる。
【0280】
AAV血清型は、AAVウイルスの感染(又は向性(tropism))の組織特異性を決定する。
【0281】
典型的には、AAVの天然由来の血清型、単離株又はクレードのAAVゲノムは、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)を含む。ITR配列はシスに作用することにより機能的な複製起点を提供し、細胞のゲノムからのベクターの組み込み及び切り取りを可能にする。好適な実施形態では、1つ以上のITR配列が、本明細書に開示のヌクレオチド配列に隣接している。AAVゲノムはまた、パッケージング遺伝子、例えばAAV粒子のパッケージング機能をコードするrep及び/又はcap遺伝子も含み得る。rep遺伝子は、タンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40又はその変異体のうちの1つ以上をコードしている。cap遺伝子は、1つ以上のキャプシドタンパク質、例えばVP1、VP2及びVP3又はその変異体をコードしている。これらのタンパク質はAAV粒子のキャプシドを構成している。
【0282】
プロモーターは、パッケージング遺伝子の各々に機能的に連結されている。かかるプロモーターの具体例としては、p5、p19及びp40プロモーター(Laughlinら (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:5567-5571)が挙げられる。例えば、p5及びp19プロモーターは、通常はrep遺伝子を発現させるために使用するが、p40プロモーターは通常はcap遺伝子を発現させるために使用する。
【0283】
先に論じた通り、本発明のAAVベクターに使用するAAVゲノムは、それ故に天然に存在するAAVの全ゲノムであってもよい。例えば、全AAVゲノムを含むベクターを使用することにより、AAVベクター又はベクター粒子をインビトロで調製し得る。しかし、かかるベクターは原理上は患者に投与しうるものの、これは実際には滅多に実施されない。好ましくは、AAVゲノムを患者への投与のために誘導体化する。かかる誘導体化は当分野では標準的であり、本発明はAAVゲノムの任意の公知の誘導体、及び当分野で公知の技術を適用することにより作製しうる誘導体の使用を包含する。AAVゲノム及びAAVキャプシドの誘導体化は、Coura及びNardi (2007) Virology Journal 4:99、並びにChoiら、及びWu ら(上述)に概説されている。
【0284】
AAVゲノムの誘導体は、インビボで本発明のAAVベクターからの導入遺伝子の発現を可能にする、AAVゲノムの任意の末端切断形態又は改変形態を含む。典型的には、最小ウイルス配列を含むが上記機能は保持するようにAAVゲノムを大きく切断することが可能である。これは、ベクターと野生型ウイルスとの組換えのリスクを低減し、また標的細胞においてウイルス遺伝子タンパク質の存在による細胞性免疫応答の誘発を回避する安全上の理由から好ましい。
【0285】
典型的には、誘導体は、少なくとも1つの逆方向末端反復配列(ITR)、好ましくは1つを超えるITR、例えば2つのITR又はそれ以上を含む。ITRのうちの1つ以上は、異なる血清型を有するAAVゲノムに由来していてもよく、又はキメラITR若しくは変異ITRであってもよい。好適な変異ITRは、trs(末端分解部位)の欠失を有するものである。この欠失により、コード配列と相補配列の両方を含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補型AAVゲノムを作製するためのゲノムの連続複製が可能となる。これにより、標的細胞におけるDNA複製の迂回が可能となり、またそのために加速された導入遺伝子の発現が可能となる。
【0286】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、少なくとも1つの、例えば2つの、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11 ITRを含む。いくつかの実施形態において、AAVベクターは、少なくとも1つのAAV9 ITRを含む。
【0287】
いくつかの実施形態において、AAVベクターは、2つのAAV9 ITRを含む。
【0288】
1つ以上のITRは、好ましくは本明細書に開示のヌクレオチド配列に両末端で隣接している。1つ以上のITRの包含は、例えば宿主細胞DNAポリメラーゼの作用による一本鎖ベクターDNAの二本鎖DNAへの変換後に、宿主細胞の核における本発明のベクターのコンカテマー形成を促進することが好ましい。かかるエピソームコンカテマーの形成により宿主細胞の生存期間中のベクター構築物が保護され、それによりインビボでの導入遺伝子の持続発現が可能となる。
【0289】
好適な実施形態では、ITRエレメントは、誘導体において天然AAVゲノムから保持される唯一の配列である。したがって、誘導体は、好ましくは天然ゲノムのrep及び/又はcap遺伝子並びに天然ゲノムの任意の他の配列を含まない。これは、先に記載した理由のため、また宿主細胞ゲノムへのベクターの組み込みの可能性を低減するためにも好ましい。さらに、AAVゲノムのサイズを縮小することで、導入遺伝子に加えて、ベクター内に他の配列エレメント(例えば、調節エレメント)を組み込む際の柔軟性を高めることができる。
【0290】
したがって、次の部分:1つの逆方向末端反復(ITR)配列、複製(rep)及びキャプシド(cap)遺伝子、は本発明の誘導体では除去されていてもよい。しかし、いくつかの実施形態では、誘導体は、1つ以上のrep及び/若しくはcap遺伝子又はAAVゲノムの他のウイルス配列をさらに含んでいてもよい。天然に存在するAAVはヒト19番染色体上の特定の部位に高頻度で組み込み、またベクターの組み込み能力の保持が治療環境において許容されうるような、無視できる頻度のランダムな組み込みを示す。
【0291】
誘導体がキャプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2及び/又はVP3を含む場合、この誘導体は、1つ以上の天然に存在するAAVのキメラ、シャッフル(shuffled)又はキャプシド改変誘導体であってもよい。特に、本発明は、同一ベクター内へのAAVの異なる血清型、クレード、クローン、又は単離株由来のキャプシドタンパク質配列の提供(すなわちシュードタイプベクター)を包含する。したがって、一実施形態において、AAVベクターは、シュードタイプAAVベクター粒子の形態である。
【0292】
キメラ、シャッフル又はキャプシド改変誘導体は、典型的には、AAVベクターに1つ以上の所望の機能性を提供するように選択される。したがって、これらの誘導体は、天然に存在するAAVゲノム、例えばAAV2のAAVゲノムを含むAAVベクターと比較して、遺伝子送達の効率の向上、免疫原性(体液性若しくは細胞性)の低減、向性(tropism)範囲の変更及び/又は特定の細胞型の標的化の改善を示す場合がある。遺伝子送達の効率の向上は、細胞表面での受容体又は共受容体の結合の改善、内部移行の改善、細胞内及び核内へのトラッフィッキング(輸送)の改善、ウイルス粒子の脱殻の改善並びに一本鎖ゲノムの二本鎖形態への変換の改善により達成してもよい。また、効率の向上は、ベクター用量が、これを必要としない組織への投与により希釈されないような、変更された向性範囲又は特定の細胞集団の標的化に関係している場合もある。
【0293】
キメラキャプシドタンパク質には、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のキャプシドコード配列間の組換えにより作製されるものが含まれる。これは、例えば1つの血清型の非感染性キャプシド配列を異なる血清型のキャプシド配列と共トランスフェクトし、指向性選択(directed selection)を利用して所望の特性を有するキャプシド配列について選択するマーカーレスキュー法により実施し得る。この異なる血清型のキャプシド配列は、新規キメラキャプシドタンパク質を作製するために、細胞内で相同組換えにより変更することができる。
【0294】
またキメラキャプシドタンパク質には、特定のキャプシドタンパク質ドメイン、表面ループ又は特定のアミノ酸残基を、2つ以上のキャプシドタンパク質の間、例えば異なる血清型の2つ以上のキャプシドタンパク質の間で移動させるためのキャプシドタンパク質配列の操作により作製されるものも含まれる。
【0295】
シャッフル又はキメラキャプシドタンパク質は同様に、DNAシャッフリングにより、又はエラープローンPCRにより作製してもよい。ハイブリッドAAVキャプシド遺伝子は、関連するAAV遺伝子の配列、例えば複数の異なる血清型のキャプシドタンパク質をコードする配列をランダムに断片化し、その後続いて、配列相同性を有する領域では交差も生じうるセルフプライミングポリメラーゼ反応でその断片を再構成することにより、作製し得る。この方法でいくつかの血清型のキャプシド遺伝子をシャッフルすることにより作製したハイブリッドAAV遺伝子のライブラリーは、所望の機能性を有するウイルスクローンを同定するためにスクリーニングすることができる。同様に、エラープローンPCRを利用してAAVキャプシド遺伝子をランダムに変異させることで、変異体の多様なライブラリーを作製してもよく、その後これを所望の特性について選択し得る。
【0296】
キャプシド遺伝子の配列を同様に遺伝的に改変することにより、天然の野生型配列に関して特定の欠失、置換又は挿入を導入してもよい。特に、キャプシド遺伝子は、キャプシドコード配列のオープンリーディングフレーム内への、又はキャプシドコード配列のN-及び/若しくはC-末端での非関連タンパク質又はペプチドの配列の挿入により改変し得る。
【0297】
非関連タンパク質又はペプチドは、有利には、特定の細胞型に対するリガンドとして作用し、それにより標的細胞への改善された結合を与えるか、又は特定の細胞集団に対するベクターの標的化の特異性を改善するものでありうる。また、非関連タンパク質は、産生プロセスの一環としてのウイルス粒子の精製を促進するもの、すなわちエピトープ又はアフィニティータグであってもよい。挿入の部位は、典型的には、ウイルス粒子の他の機能、例えばウイルス粒子の内部移行、トラッフィッキング(輸送)に干渉しないように選択される。当業者であれば、それらの共通の一般知識に基づいて挿入のための適切な部位を同定することができる。
【0298】
本発明はさらに、天然AAVゲノムの配列とは異なる順序及び配置のAAVゲノムの配列の提供を包含する。本発明は、1つ以上のAAV配列又は遺伝子と、別のウイルス由来の配列との又は2つ以上のウイルスに由来する配列から構成されるキメラ遺伝子との置換もまた包含する。かかるキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関連ウイルスタンパク質に由来する配列から構成されるものであってもよい。
【0299】
本発明のAAV粒子は、ある血清型のITRを有するAAVゲノム又は誘導体が異なる血清型のキャプシド内にパッケージングされている、トランスキャプシド化形態を含む。本発明のAAV粒子は、2つ以上の異なる血清型に由来する非改変キャプシドタンパク質の混合物がウイルスのキャプシドを構成しているモザイク形態も含む。またAAV粒子は、キャプシド表面に吸着したリガンドを有する化学修飾形態も含む。例えば、かかるリガンドとしては、特定の細胞表面受容体を標的化するための抗体を挙げることができる。
【0300】
AAVベクターは、本明細書中で言及したヌクレオチド配列の複数コピー(例えば、2、3など)を含んでいてもよい。
【0301】
アデノウイルスベクター
アデノウイルスは、RNA中間体を経由しない二本鎖直鎖状DNAウイルスである。遺伝学的な配列相同性に基づいた6つの小群に分けられる、50種類以上の異なるヒト血清型のアデノウイルスがある。アデノウイルスの天然の標的は、呼吸器及び胃腸の上皮であり、一般的に軽度の症状のみを生じる。血清型2及び5(95%配列相同性を有する)はアデノウイルスベクター系において最も一般的に使用され、通常は若年における上気道の感染症に関連する。
【0302】
アデノウイルスは遺伝子治療及び異種性遺伝子の発現のためのベクターとして使用されてきた。その大きな(36kb)ゲノムは8kbまでの外来挿入DNAを収容することができ、補完するセルラインにおいて効率的に複製し1012までの非常に高い力価を生産することができる。アデノウイルスはしたがって初代の非複製性細胞における遺伝子発現を研究するための最良の系の1つである。
【0303】
アデノウイルスゲノムからのウイルス又は外来性の遺伝子の発現は複製細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは受容体媒介性エンドサイトーシスにより細胞に入る。一度細胞の中に入れば、アデノウイルスベクターは滅多に宿主染色体中に組み込まれない。その代わりに、アデノウイルスベクターは宿主の核の中で直鎖状ゲノムとしてエピソーマルに(宿主ゲノムから独立して)機能する。故に組換えアデノウイルスの使用は、宿主ゲノムへのランダムな組込みに関連した問題を軽減する。
【0304】
選択、枯渇及び追跡の方法
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を選択する方法であって、
(a)細胞の集団に本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程、及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を選択する工程
を含む方法を提供する。
【0305】
選択の方法は、EGFRエピトープ又はEGFRtを含む細胞を濃縮することができる。
【0306】
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を追跡する方法であって、
(a)細胞の集団に本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、
(b)形質導入された細胞集団を、検出可能な標識に機能的に連結されたEGFRt結合剤と接触させる工程、及び
(c)EGFRt結合剤に結合した細胞を検出する工程
を含む方法を提供する。
【0307】
好ましくは、EGFRt結合剤は、EGFRtに実質的に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、EGFRt結合剤は抗体である。EGFRtに結合する薬剤及び抗体は当技術分野で公知であり、セツキシマブが挙げられる。いくつかの実施形態において、EGFRt結合剤は、セツキシマブである。
【0308】
細胞の集団は、特定の表現型又は特徴を示す細胞について、そしてその表現型若しくは特徴を示さないか又はそれをより低い程度で示す他の細胞から、選択的に精製され得る。例えば、特異的マーカー(例えば、本発明のEGFRエピトープ又はEGFRt)を発現する細胞の集団は、出発細胞集団から精製され得る。
【0309】
ある種の細胞について細胞集団を「濃縮(富化)する」ことによって、その種の細胞の濃度が集団内で増加することが理解されるべきである。他の種の細胞の濃度は、同時に低減され得る。
【0310】
精製又は濃縮は、他の種の細胞の実質的に純粋な細胞集団をもたらし得る。
【0311】
特異的マーカー(例えば、本発明のEGFRエピトープ又はEGFRt)を発現する細胞の集団を精製又は濃縮することは、そのマーカーに結合する、好ましくはそのマーカーに実質的に特異的に結合する薬剤を使用することによって達成され得る。細胞マーカーに結合する薬剤は、抗体、例えば、本発明のEGFRエピトープ又はEGFRtに結合する抗体であり得る。
【0312】
「抗体」という用語は、選択された標的に結合することができる完全抗体又は抗体断片を指し、Fv、ScFv、F(ab’)及びF(ab’)2、モノクローナル及びポリクローナル抗体、操作された抗体(キメラ、CDRグラフト及びヒト化抗体を含む)、並びにファージディスプレイ又は代替技術を用いて作製された人工的に選択された抗体が含まれる。
【0313】
さらに、古典的抗体の代替物、例えば、「アビボディ(avibodies)」、「アビマー(avimers)」、「アンチカリン(anticalins)」、「ナノボディ」及び「DARPin」も本発明において使用され得る。
【0314】
特異的マーカーに結合する薬剤は、当技術分野で公知の多くの技術のいずれかを使用して同定可能であるように標識され得る。薬剤は、本質的に標識されていてもよく、又は標識をコンジュゲートすることによって修飾されていてもよい。「コンジュゲートする」とは、薬剤及び標識が機能的に連結されていることを理解されたい。これは、薬剤及び標識が、それらの機能(例えば、マーカーへの結合、蛍光同定を可能にする、又は磁場中に置かれたときの分離を可能にする)を実質的に妨害されずに実施できるように、一緒に連結されることを意味する。コンジュゲーションの適切な方法は当技術分野において周知であり、当業者によって容易に同定可能であろう。
【0315】
標識は、例えば、標識された薬剤及びそれが結合している任意の細胞がその環境から精製され(例えば、薬剤は、磁気ビーズ又はアビジンなどのアフィニティータグで標識され得る)、検出され、又はその両方を可能にし得る。標識としての使用に適した検出可能なマーカーには、フルオロフォア(例えば、緑色、サクランボ、シアン及びオレンジ色の蛍光タンパク質)並びにペプチドタグ(例えば、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ及びHAタグ)が含まれる。
【0316】
特定のマーカーを発現する細胞の集団を分離するための多くの技術が、当技術分野において公知である。これらには、磁気ビーズに基づく分離技術(例えば、閉回路磁気ビーズに基づく分離)、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、アフィニティタグ精製(例えば、アフィニティカラム又はビーズ、例としてアビジン標識剤を分離するためのビオチンカラムなどを使用する)、及び顕微鏡に基づく技術が含まれる。
【0317】
また、異なる技術の組み合わせ、例えば、磁気ビーズに基づく分離工程、続いて、フローサイトメトリーによる1又は複数の追加の(陽性又は陰性)マーカーについて得られた細胞集団の選別を使用して、分離を行うことも可能であり得る。
【0318】
例えば、CliniMACS(登録商標)系(Miltenyi)を用いて、臨床用等級の分離を行ってもよい。これは、閉回路磁気ビーズに基づく分離技術の一例である。
【0319】
特定のマーカーを発現する細胞の集団を検出する(場合により定量する)ための多くの技術が、当技術分野において公知である。これらには、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、及び顕微鏡に基づく技術が含まれる。
【0320】
別の態様では、本発明は、形質導入された細胞を枯渇させる方法であって、
(a)細胞の集団に、本発明のポリヌクレオチド又はウイルスベクターを形質導入する工程、及び
(b)形質導入された細胞集団をEGFRt結合剤と接触させる工程
を含む方法を提供する。
【0321】
いくつかの実施形態において、EGFRt結合剤が結合する細胞は、例えばマクロファージによって媒介される、抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって死滅される。
【0322】
いくつかの実施形態では、EGFRt結合剤は、枯渇剤に機能的に連結される。いくつかの実施形態では、工程(b)の細胞集団を、EGFRt結合剤に結合する枯渇剤と接触させる。例えば、EGFRt結合剤はビオチンに機能的に連結され得、枯渇剤はストレプトアビジンを含み得、逆もまた同様である。
【0323】
枯渇剤は、EGFRt結合剤が結合している細胞を死滅させる、好ましくは選択的に死滅させることができる。いくつかの実施形態では、枯渇剤は毒素を含む。いくつかの実施形態では、枯渇剤はサポリンを含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、方法は、インビトロ又はエクスビボの方法である。
【0325】
治療方法
別の態様では、本発明は、治療に使用するための、本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクター又は細胞を提供する。
【0326】
別の態様では、本発明は、本発明の選択、枯渇又は追跡の方法を含む処置方法(治療方法)を提供する。
【0327】
本明細書における処置(治療)への全ての言及は、治癒的、緩和的及び予防的処置を含む。哺乳動物、特にヒトの処置が好ましい。ヒト及び獣医学的処置の両方が本発明の範囲内である。
【0328】
医薬組成物及び注入溶液
本発明における使用のための薬剤は単独で投与することができるが、それらは一般に、特にヒト治療のために、医薬用担体、賦形剤又は希釈剤との混合物で投与される。
【0329】
本発明の医薬、例えばベクター粒子は、製剤化して医薬組成物としてもよい。これらの組成物は、医薬に加えて、製薬上許容しうる担体、希釈剤、賦形剤、緩衝剤、安定剤又は当分野で周知の他の物質を含んでいてもよい。かかる物質は、毒性のないものとすべきであり、また活性成分の効果を妨げるべきではない。担体又は他の物質の正確な性質は、投与の経路、例えば、静脈内又は動脈内経路に応じて当業者が決定することができる。
【0330】
医薬組成物は、典型的には液体形態である。液体医薬組成物は、通常は液体担体、例えば、水、石油、動物油若しくは植物油、鉱油又は合成油を含む。生理食塩水、塩化マグネシウム、デキストロース若しくは他の糖類溶液、又はグリコール類、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールが含まれていてもよい。場合によっては、界面活性剤、例えばプルロン酸(PF68)0.001%を使用してもよい。場合によっては、血清アルブミンが組成物において使用され得る。
【0331】
注入の場合、活性成分は、発熱物質を含まず、かつ適切なpH、等張性及び安定性を有する水溶液の形態であり得る。当業者であれば、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液又は乳酸加リンゲル注射液などの等張ビヒクルを使用して適切な溶液を上手く調製することができる。防腐剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤及び/又は他の添加剤を必要に応じて含めてもよい。
【0332】
遅延放出の場合、医薬を、持続放出のために製剤化した医薬組成物、例えば生体適合性ポリマーから形成したマイクロカプセル又は当分野で公知の方法によるリポソーム担体系に含めてもよい。
【0333】
細胞療法製品の取り扱いは、好ましくは細胞療法のためのFACT-JACIE International Standardsに従って行われる。
【0334】
投与
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、対象に全身投与される。
【0335】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、対象に局所的に投与される。
【0336】
本明細書で使用される「全身送達」又は「全身投与」という用語は、本発明の薬剤が、循環系に、例えば薬剤の広範な分布を達成するために、投与されることを意味する。対照的に、局所(topical)又は局部(local)投与は、薬剤の送達を局所領域に制限する。
【0337】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、血管内、静脈内又は動脈内に投与される。
【0338】
投与量
当業者は、対象に投与するための本発明の薬剤の適切な用量を容易に決定することができる。典型的には、医師が個々の患者に最も適した実際の投薬量を決定し、それは使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全身の健康、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物の組合せ、特定の症状の重症度、並びに治療を受ける個体を含む様々な因子に依存する。もちろん、より高い又はより低い用量範囲が有益である個々の場合があり得、そのような場合は本発明の範囲内である。
【0339】
対象
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト動物のいずれかを指す。
【0340】
非ヒト動物の例としては、脊椎動物、例えば、哺乳動物、例として非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、イヌ、げっ歯類(例えば、マウス、ラット又はモルモット)、ブタ及びネコなどが挙げられる。非ヒト動物はコンパニオン動物(ペット動物)であってもよい。
【0341】
好ましくは、対象はヒトである。
【0342】
変異体、誘導体、類似体、相同体及び断片
本明細書中に記載した特定のタンパク質及びヌクレオチドに加えて、本発明はその変異体、誘導体、類似体、相同体及び断片もまた包含する。
【0343】
本発明との関連においては、任意の所与の配列の「変異体(バリアント)」は、その特定の配列の残基(アミノ酸残基又は核酸残基)が、問題のポリペプチド又はポリヌクレオチドがその内在性機能の少なくとも1つを保持するように修飾されている配列である。変異体配列は、天然に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド中に存在する少なくとも1つの残基の付加、欠失、置換、修飾、交換(replacement)及び/又は変異により取得することができる。
【0344】
本明細書中で使用する用語「誘導体」は、本発明のタンパク質又はポリペプチドに関しては、その配列からの、又はその配列への1つ(又はそれ以上)のアミノ酸残基の任意の置換、変異、修飾、交換、欠失及び/又は付加を含むが、結果として生じるタンパク質又はポリペプチドは、その内因性機能のうちの少なくとも1つを保有しているものとする。
【0345】
本明細書中で使用する用語「類似体」は、ポリペプチド又はポリヌクレオチドに関しては、任意の模倣物、すなわち、模倣されるポリペプチド又はポリヌクレオチドの内因性機能のうちの少なくとも1つを保有する化学化合物を含む。
【0346】
典型的には、アミノ酸置換は、例えば1、2若しくは3~10個又は20個の置換としてもよいが、その修飾された配列は、所要の活性又は能力を実質的に保持しているものとする。アミノ酸置換は、天然には存在しない類似体の使用を含んでいてもよい。
【0347】
本発明に使用するタンパク質は同様に、サイレント変化を生じて機能的に同等のタンパク質をもたらすアミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有していてもよい。計画的なアミノ酸置換は、その内因性機能が保持される限りは、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/又は両親媒性という点での類似性に基づいて実施することができる。例えば、負の電荷をもつアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、正の電荷をもつアミノ酸にはリジン及びアルギニンが含まれ、また同様の親水性値を有する非荷電極性頭部基をもつアミノ酸にはアスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン及びチロシンが含まれる。
【0348】
保存的置換は、例えば下記表に従って実施することができる。2列目の同一ブロック内のアミノ酸、及び好ましくは3列目の同一行内のアミノ酸は、互いに置換することができる:
【表3】
【0349】
本明細書中で使用する用語「相同体(ホモログ)」は、野生型アミノ酸配列又は野生型ヌクレオチド配列と一定の相同性を有する物質を意味する。用語「相同性」は、「同一性」と同等とみなすことができる。
【0350】
本発明に関して、相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%又は90%の同一性、好ましくは少なくとも95%、96%又は97%又は98%又は99%の同一性を有しうるアミノ酸配列を含むとみなされる。典型的には、相同体は対象アミノ酸配列と同じ活性部位などを含む。相同性を類似性(すなわち類似した化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の点から考えることもできるが、本発明との関連においては、相同性を配列同一性の点から表現することが好ましい。
【0351】
本発明に関して、相同配列は、対象配列と少なくとも50%、55%、65%、75%、85%又は90%の同一性、好ましくは少なくとも95%、96%又は97%又は98%又は99%の同一性を有しうるヌクレオチド配列を含むとみなされる。相同性を類似性の点から考えることもできるが、本発明との関連においては、相同性を配列同一性の点から表現することが好ましい。
【0352】
好ましくは、本明細書中で詳述する配列番号のうちのいずれか1つに対してパーセント同一性を有する配列と言う時は、言及した配列番号の全長にわたって、記載したパーセント同一性を有する配列を指す。
【0353】
相同性比較は、目視で、又はより一般的には、容易に入手可能な配列比較プログラムを用いて実行することができる。これらの公に利用可能なコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間のパーセント相同性又はパーセント同一性を算出することができる。
【0354】
パーセント相同性は、連続した配列に対して算出してもよい、すなわち、ある配列を他の配列と整列させて、ある配列中の各アミノ酸又はヌクレオチドを他の配列中の対応アミノ酸又はヌクレオチドと一度に1残基ずつ直接比較する。これは「ギャップのない」アライメントと呼ばれている。典型的には、かかるギャップのないアライメントは、比較的少ない数の残基に対してのみ実施する。
【0355】
これは非常に単純で一貫した方法であるが、例えば、他の点では同一である配列対において、アミノ酸又はヌクレオチド配列中の1つの挿入又は欠失により次に続く残基又はコドンがアライメントから排除される場合があり、したがってグローバルアライメントを実施するとパーセント相同性の大幅な減少が生じる可能性があるということを考慮していない。その結果、大抵の配列比較方法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを与えることなく考えうる挿入及び欠失を考慮した最適なアライメントを生成するように設計される。これは、配列アライメントに「ギャップ」を挿入して局地的相同性を最大化しようと試みることにより達成される。
【0356】
しかし、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一アミノ酸又はヌクレオチドに関して、可能な限り少ないギャップ(2つの比較配列間のより高い関連性を反映する)を有する配列アライメントが多くのギャップを有する配列アライメントより高いスコアを達成するように、アライメントに生じる各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、ギャップ中のその後の各残基に対してより小さいペナルティーを課す「アフィンギャップコスト」を使用する。これは最も一般的に使用されるギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、当然ながら、より少ないギャップを含む最適化されたアライメントを生成する。殆どのアライメントプログラムは、ギャップペナルティーを修正できる。しかし、配列比較のためにかかるソフトウェアを使用する場合は、デフォルト値を使用することが好ましい。例えばGCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用する場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップについては-12であり、各伸長については-4である。
【0357】
最大パーセント相同性の算出は、それ故に、第1にギャップペナルティーを考慮した最適なアライメントの生成を必要とする。かかるアライメントを実行するための適切なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(University of Wisconsin, USA;Devereuxら (1984) Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施できる他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら (1999) 前掲 - Ch. 18を参照されたい)、FASTA(Atschulら (1990) J. Mol. Biol. 403-410)及びGENEWORKS比較ツール集が挙げられるが、これらに限定されない。BLAST及びFASTAは共に、オフライン及びオンライン検索に利用可能である(Ausubelら (1999) 前掲, pages 7-58~7-60を参照されたい)。しかし、一部の適用については、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。別のツールBLAST 2 Sequencesもまた、タンパク質及びヌクレオチド配列の比較に利用できる(FEMS Microbiol. Lett. (1999) 174(2):247-50;FEMS Microbiol. Lett. (1999) 177(1):187-8)。
【0358】
最終的なパーセント相同性は同一性の点から測定できるが、アライメントプロセス自体は、典型的には、全か無かの対比較に基づくものではない。その代わりに、スコアを化学的類似性又は進化距離に基づく各ペアワイズ比較に割り当てる、スケール変換(scaled)類似性スコア行列を通常は使用する。一般的に使用されるかかる行列の例は、BLOSUM62行列(BLASTプログラム集のプログラム用のデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、通常は、パブリックデフォルト値、又はカスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)が供給されていればこれを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照されたい)。一部の適用については、GCGパッケージにはパブリックデフォルト値を、又は他のソフトウェアにはBLOSUM62などのデフォルト行列を使用することが好ましい。
【0359】
ソフトウェアにより最適なアライメントが生成されれば、パーセント相同性、好ましくはパーセント配列同一性を算出することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一環としてこれを行い、数値結果をもたらす。
【0360】
「断片」もまた変異体であり、この用語は典型的には、機能的に、又は例えばアッセイにおいて重要なポリペプチド又はポリヌクレオチドの選択された領域を指す。したがって、「断片」は、全長ポリペプチド又は全長ポリヌクレオチドの一部であるアミノ酸配列又は核酸配列を指す。
【0361】
かかる変異体は、標準的な組換えDNA技術、例えば部位特異的突然変異誘発を利用して調製してもよい。挿入を行う場合は、挿入部位の両側の天然に存在する配列に対応する5'及び3'隣接領域と共に挿入物をコードする合成DNAを作製してもよい。それらの隣接領域は、天然に存在する配列中の部位に対応する都合のよい制限部位を含有しており、そのためこの配列を適当な酵素(複数可)で切断し、合成DNAをその切断部に連結することができる。DNAをその後本発明に従って発現させることにより、コードされたタンパク質を作製する。これらの方法は、DNA配列を操作するための当分野で公知の多くの標準的技術の単なる例示であって、他の公知技術も同様に利用可能である。
【0362】
コドン最適化
本発明において使用されるポリヌクレオチドは、コドン最適化され得る。コドン最適化は、WO 1999/41397及びWO 2001/79518に以前に記載されている。異なる細胞は、特定のコドンの使用法が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量のバイアスに対応する。配列中のコドンを、対応するtRNAの相対的存在量と一致するように調整するように改変することによって、発現を増加させることが可能である。同様に、対応するtRNAが特定の細胞型において稀であることが知られているコドンを意図的に選択することによって、発現を減少させることが可能である。したがって、さらなる程度の翻訳制御が利用可能である。コドン使用表は、哺乳動物細胞について、並びに様々な他の生物について当技術分野で知られている。
【0363】
当業者であれば、開示された本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に開示された本発明のすべての特徴を組み合わせることができることを理解するであろう。
【0364】
本発明の好ましい特徴及び実施形態を、本明細書中に非限定例として記載する。
【0365】
本発明の実施には、特に指示しない限り、化学、生化学、分子生物学、微生物学及び免疫学の従来の技術を用いるが、これらは当業者の能力の範囲内である。かかる技術は文献で説明されている。例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F.及びManiatis, T. (1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press;Ausubel, F.M.ら (1995及び定期増刊) Current Protocols in Molecular Biology, Ch. 9, 13及び16, John Wiley及びSons;Roe, B., Crabtree, J. 及びKahn, A. (1996) DNA Isolation and Sequencing:Essential Techniques, John Wiley及びSons;Polak, J.M.及びMcGee, J.O’D (1990) In Situ Hybridization:Principles and Practice, Oxford University Press;Gait, M.J. (1984) Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach, IRL Press;並びにLilley, D.M.及びDahlberg, J.E. (1992) Methods in Enzymology:DNA Structures Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA, Academic Pressを参照されたい。これらの一般テキストは、各々が参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【0366】
[実施例]
[実施例1]
結果
EGFRtタンパク質表面発現の改善を評価するために、遺伝子編集手法の利点を用いて、高免疫グロブリンM(HIGM1)を伴うX連鎖免疫不全を引き起こす変異である、CD40LG遺伝子の矯正を行った。CD40LG遺伝子の第1イントロン中に、IRES配列に結合させたCD40LG cDNAのコドン最適化バージョン(エクソン2からエクソン5まで)とEGFRt(図1Ai)又は改変型EGFRt(図1Aii/iii)配列と、次いでCD40LG内在性3'UTRとポリAとを保有する矯正構築物を組み込んだ。この戦略では、CD40LGプロモーターが、CD40LG遺伝子及びEGFRt又は改変型EGFRt遺伝子の両発現を制御する。通常、CD40LGは、リンパ球活性化の後にのみCD4+T細胞の表面に発現される一方で、このタンパク質は、基底レベルでは、タンパク質移行が厳密に制御されていること、また最も重要なことには、CD40LGプロモーター活性化状態が弱いという2つの理由のため検出できない。したがって、EGFRt又は改変型EGFRt遺伝子を保有する様々な矯正構築物を用いて編集した非活性化型CD4+T細胞を利用して、EGFRt安定性及び表面発現の増強を検討した。
【0367】
改変型EGFRt配列は、i)より頻度の高いコドン使用法によるタンパク質翻訳を促進させるようにオープンリーディングフレーム配列のコドン最適化を行うこと、ii)新規のシグナルペプチドを導入すること、及びiii)タンパク質を膜中に固定させ、安定化させるために、dNGFR遺伝子(図1Aii)又は内在性EGFR遺伝子(図1Aiii)のいずれかから得た新規の8個のアミノ酸の細胞質テールを導入することによって調製した。
【0368】
実験的構築物のヌクレオチド配列は、以下のものを含む。
非改変型EGFRt
【化16】
【0369】
主な構成要素:
SA.CD40LG
IRES
元のシグナルペプチドを有するEGFRt(太字)
CD40LG 3'UTR及びポリA
【0370】
NGFRシグナルペプチド及びNGFR細胞質ドメインを有する改変型EGFRt
【化17】
【0371】
主な構成要素:
SA.CD40LG
IRES
dNGFRシグナルペプチド
EGFRt(太字)
dNGFR細胞質ドメイン(網かけ)
CD40LG 3'UTR及びポリA
【0372】
NGFRシグナルペプチド及びEGFR細胞質ドメインを有する改変型EGFRt
【化18】
【0373】
主な構成要素:
SA.CD40LG
IRES
dNGFRシグナルペプチド
EGFRt(太字)
EGFR細胞質ドメイン(網かけ)
CD40LG 3'UTR及びポリA
【0374】
CD40LG内在性プロモーターによって発現させた場合、改変型EGFRt(eEGFRt)タンパク質だけが、編集された非活性化型CD4+T細胞の表面で測定可能であったことが見出され(図1B)、表面タンパク質発現は5倍にまで高められていた。さらに、eEGFRtタンパク質がCD4+T細胞表面で明確に検出可能であったことから、ビオチン化セツキシマブを使用した免疫磁気精製を利用することによって、インビトロで標的細胞を濃縮することができた(図1C)。
【0375】
EGFRt細胞外ドメインにリンカーを介してdNGFR膜貫通及び細胞質ドメインの両方を組み入れた、さらなる改変型EGFRt配列も調製した。細胞表面でのタンパク質再利用の増加を評価するために、リサイクリングシグナルを含む構築物(図3)又はリサイクリングシグナルを含まない構築物(図4)をすべて試験した。簡潔に述べると、改変型EGFRtにリサイクリングシグナルが存在すると、EGFRt発現は、基底レベル又はT細胞活性化後のいずれにおいても、コドン最適化配列に対して改善しなかったことが見出された(図3)。しかしながら、リサイクリングシグナルが全く存在しない場合、改変型EGFRt遺伝子はすべて、基底レベルでのコドン最適化遺伝子(1)と比較して、安定した、より高い発現を示し(MFIとして測定)、EGFRt表面発現を改善していた(図4)。
【0376】
次いで、ビオチン化セツキシマブ(抗体)と複合(assemble)させたストレプトアビジン-サポリン(毒素)から構成される特定の免疫毒素で処理することによって、インビトロでのeEGFRt+被編集細胞の枯渇を評価した。この手法を用いると、複合型免疫毒素の存在下で培養した場合にのみ、毒素のみ又は抗体のみで処理したリンパ球に対してeEGFRt+細胞の低減率が1.8倍であったことが観察された(図1D)。最後に、大量のヒト被編集T細胞をNod-Scid-ガンマ(NSG)マウスへ異種移植することによって、インビボでのeEGFRt+細胞の枯渇を評価した。これらのマウスは、T、B、及びNK細胞を欠いているにもかかわらず、限定的なマクロファージ機能性を保有する。よって、マクロファージ媒介型の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を利用するセツキシマブでマウスを処置することによって、eEGFRt+T細胞が(少なくとも部分的に)枯渇するはずであるという仮説を立てた。これに従って、セツキシマブ処置後のNSGマウスからeEGFRt発現細胞が除去されたことが見出された(図1E)。
【0377】
このように、改変型ドナーテンプレートを使用して細胞を編集することによって、刺激がない場合でもEGFRtタンパク質が被編集T細胞の表面に発現されており(図5A)、さらに重要なことには、前のテンプレートと比べて、同様の遺伝子編集効率(図5B)、培養組成物(図5C)、CD40L発現の制御(図5D)、及び機能性(図5E、F)が観察された。編集細胞が枯渇されうるかどうかを評価するために、インビトロにおいて、免疫毒素を用いてEGFRt保有細胞を選択的に除去する戦略を探索した。タンパク質合成阻害剤である毒素サポリンにコンジュゲートしたセツキシマブ(セツキシマブ-SAP)の存在下で又は対照として抗体及び毒素のみの存在下で、編集T細胞を培養することによって、いずれの試験用量においてもEGFRt発現リンパ球の実質的な枯渇(約50%)が観察され(図5G、H)、EGFRtが被編集細胞の選択及び枯渇のために好適であることが確認された。
【0378】
別の遺伝子療法の環境において得られる改善を確認するために、レンチウイルスベクターの利点を用いた。センスではhPGKプロモーターの制御下でGFPレポーター遺伝子を、またアンチセンスでは最小CMVプロモーターによって駆動されるtEGFR(図2Ai)又は本発明者の改変型バージョン(eEGFRt 1、図2Aii)のいずれかを発現する、2つの双方向性レンチウイルスベクターをクローニングした。CAR-T細胞療法の状況を模倣するために、T細胞にこれらのベクターを形質導入し、EGFRt発現を測定した。eEGFRtタンパク質表面発現は、39倍にまで高まった。
【0379】
結論として、記載した改変を用いると、低発現細胞においてもEGFRtセレクター遺伝子の使用を改善することができ、インビトロでの改変型細胞の回収及びインビボでのそれらの枯渇が可能となることが実証され、これは、操作された細胞の安全性プロファイルを高めるものである。
【0380】
材料及び方法
初代細胞
末梢血単核球(PBMC)は、バッフィコート(Buffy Coat)から、Ficollを使用して連続遠心分離によって新鮮に精製した。バッフィコートは、ヘルシンキ宣言に従って、健康な供血者による血液生成物供与専用の施設内インフォームドコンセントの署名のもと使用される、匿名扱いの献血残留物として得た。CD4 T細胞は、製造業者の使用説明書に従ってCD4 T細胞単離キット(Miltenyi Biotech)を使用して免疫磁気分離によって単離し、抗CD3/抗CD28抗体をコンジュゲートした磁気ビーズ(Dynabeads human T-activator CD3/CD28、Thermo Fisher)を使用して刺激した(細胞:ビーズ比、1:3)。細胞は、10% FBS(Euroclone)、ペニシリン(100IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、2%グルタミン、並びにIL-7(5ng/ml;Preprotech)及びIL-15(5ng/ml;Preprotech)を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Corning)で維持した。6日間の培養後、Dynabeadsを除去した。全実験において、T細胞は健康な男性提供者から得た。
【0381】
フローサイトメトリー及び機能性解析並びにPMA/イオノマイシン刺激を行うために、T細胞を21日間増殖させた。表示した時点で、製造業者の使用説明書に従って抗ビオチンマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を使用して、ビオチン化セツキシマブ抗体(クローン番号HU1、R&D System)を使用してEGFRt+被編集細胞を濃縮した。磁気分離はLSカラムを用いて行った。
【0382】
細胞はすべて、5% CO2加湿雰囲気中、37℃で培養した。
【0383】
ドナーテンプレート及びヌクレアーゼ
HDR用のAAV6ドナーテンプレートは、トリプルトランスフェクション法によってTIGEM Vector Coreによって作製されたAAV2末端逆位配列含有構築物から生成し、塩化セシウム勾配での超遠心分離によって精製した。形質導入用のレンチウイルス(LV)ドナーテンプレートは、HIV由来の第三世代自己不活化トランスファー構築物を利用して作製した。LV原液を調製し、力価は既述の通り測定した(Lombardo, A.ら(2007) Nat Biotechnol 25:1298~306頁)。
【0384】
リボ核タンパク質(RNP)は、S.p.Cas9タンパク質(Aldevron)と合成cr:tracrRNA(Integrated DNA Technologies)とを、1:2のモル比で、25℃で10分間インキュベートすることによって構築させた。
【0385】
初代細胞の遺伝子操作
3日間の刺激の後、初代細胞の遺伝子編集を行った。106個の初代T細胞は、PBSで洗浄し、1.25μMのリボ核タンパク質と共にエレクトロポレーションし(RNP-P3 Primary Cell 4D-Nucleofector X Kit、プログラムDS-130;Lonza)、エレクトロポレーションの15分後、5×104vg/細胞の用量のAAV6を形質導入した。
【0386】
2日間の刺激後、LV形質導入を行った。106個の初代T細胞に、MOI 100でIDLVを感染させた。
【0387】
フローサイトメトリー解析
細胞蛍光解析は、DIVAソフトウエアを備えたFACS Canto II(BD Pharmingen)で行うか、又はFSC expressソフトウエア(v.6、De Novo Software)で解析した。製造業者の使用説明書に従って、7-アミノアクチノマイシン(Sigma Aldrich)をフローサイトメトリーのための試料調製物に含めて、死細胞を解析から除外した。
【0388】
Pma/イオノマイシン処理
エレクトロポレーションから6から12日後、T細胞を、サイトカインを含まない培地中で、ホルボール-12-ミリステート-13-アセテート(Phorbol-12-myristate-13-acetate)(PMA、10ng/ml;Calbiochem)及びイオノマイシン(500ng/ml、Sigma-Aldrich)で5時間刺激し、次いで洗浄し、完全培地中で培養した。連続的なフローサイトメトリー解析により(活性化の0、3、6、8、24、48時間後)、T細胞でのCD40Lの表面発現を24/48時間以上経過追跡した。
【0389】
被編集T細胞のエクスビボでの機能性研究
ナイーブB細胞は、製造業者の使用説明書に従ってヒトナイーブB細胞単離キットII(Miltenyi Biotec)を使用して、免疫磁気ネガティブセレクション法によって末梢血単核球から単離した。細胞はすべて、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Thermo Fisher scientific)、20% FBS、20mM N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(HEPES)(いずれもSigma-Aldrichより入手)、1% L-グルタミン(Life Technologies)、及び55uM 2-メルカプトエタノール(Gibco-Life Technologies)を含有するRPMI 1640(CORNING)中で培養した。
【0390】
共培養に先立ち、CD4 T細胞を洗浄し、サイトカインを含まない培地中で一晩休ませた。次いで、以下の2種類の異なる刺激を使用して、T細胞を5時間かけて活性化した。
1. ビーズ:細胞比1:1のCD3/CD28 Dynabeads(Gibco-Life Technologies)
2. ホルボールミリステートアセテート(PMA 1ng/mL、Sigma Aldrich)及びイオノマイシン(500ng/mL、Sigma Aldrich)
【0391】
Dynabeads及びPMA/イオノマイシンを除去し、完全培地で細胞を洗浄した後、96ウェル平底プレート(CORNING)で200uLの以前に記載された培地中で、B細胞とT細胞とを1:3のB細胞:T細胞比で共培養した。
【0392】
T細胞及びB細胞を、IL-2(50ng/mL)、IL-7(5ng/mL)、及びIL-15(5ng/mL)(すべてPeproTechより入手)の存在下、培養液中で5日間維持し、B細胞を、以下のサイトカイン:IL-21(100ng/mL)(PeproTech)、ヒトToll様受容体9(TLR9)アゴニストCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)1826(2.5ug/mL)(InvivoGen)、抗IgA+IgG+IgM(15ug/mL、ヤギ抗ヒトIgA+IgG+IgM)(Jackson ImmunoResearch)、及び可溶性CD40L(3ug/mL)(ENZO Life Sciences)の様々な組合せを使用して刺激した。
【0393】
B細胞の増殖を評価するために、ナイーブB細胞を、製造業者の使用説明書に従ってCellTrace(商標)Violet Cell Proliferation Kit(ThermoFisher Scientific)で標識し、次いで、以前に記載の手順に従ってT細胞と共培養した。5日間のT/B共培養後、FACSによって増殖を解析した。
【0394】
共培養の5日後に、抗IgG又は抗IgM(いずれもSouthern Biotechより入手)をコートしたニトロセルロース膜(Merk Millipore)を含むプレート中で行うELISPOTアッセイによって、免疫グロブリン分泌細胞を解析した。PBS(CORNING)及び1% BSA(Sigma-Aldrich)でブロッキングした後、細胞総数の段階希釈物(0.5×104から0.25×104まで)を加え、37℃で一晩インキュベートした。プレートは、次いでアイソタイプ特異的二次抗体(いずれもSouthern Biotechより入手)とともにインキュベートし、その後、ストレプトアビジン-HRP(ThermoFisher)と共にインキュベートし、最後に、発色基質として3-アミノ-9-エチルカルバゾール(Sigma Aldrich)を用いて顕色させた。Automated ELISA-Spot Assay Video Analysis System(AELVIS)を使用してプレートをスキャンし、カウントして、スポット数/ウェルを決定した。
【0395】
分子解析
デジタルドロップレットPCR(ddPCR)解析では、製造業者の使用説明書に従ってQX200 Droplet Digital PCR System(Biorad)を使用して、5~50ngのゲノムDNAを解析した。HDR ddPCRプライマー及びプローブは、ドナー配列と標的遺伝子座の間の接合部及び正規化のために使用した対照配列(ヒトTTC5遺伝子、PrimePCR ddPCR Copy Number Assay、Biorad)に対して設計した。アニーリング及び伸長のための熱条件は、次のように調整した:55℃ 1分間、72℃ 2分間。
【0396】
インビトロでの枯渇
インビトロでの枯渇では、96ウェル丸底プレートの完全培地中に5,000個のT細胞/ウェルを播種した。αEGFR-SAP免疫毒素は、ビオチン化セツキシマブ抗体(クローン番号Hu1、R&D Systems)をストレプトアビジン-SAPコンジュゲート(ストレプトアビジン当たり2.3個のサポリン分子、Advanced Targeting Systems)と1:1のモル比で合わせることによって調製し、使用の直前にPBSで2つの用量(5nM、1nM)に希釈した。細胞に、免疫毒素、及び同量の抗体のみ又は毒素のみを3日間加え、次いで、フローサイトメトリー解析のためにリンパ球を収集した。
【0397】
インビボでの枯渇
培養20日目に、10×106個のバルク被編集CD4 T細胞を7~10週齢の雄NSGマウスに静脈内注入した。試料サイズは、利用可能な被処理細胞の総数によって決定した。移植の2週間後、4日間、実験マウスの半数を、腹腔内注射によって1mg/マウスのセツキシマブ(Erbitux; Merck、5mg/ml)で処置した。マウスの各実験群への割り当ては無作為とした。(FACS及びddPCRによる)遺伝子編集された細胞の存在は、マウスの眼からの連続的な血液採取によりモニタリングした。マウスを週1回モニタリングし、計量して、移植片対宿主病の徴候の出現を最終的に観察した。
【0398】
上記の明細書において言及された刊行物はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の開示されたポリヌクレオチド、タンパク質、ベクター、細胞、使用、及び方法の様々な改変及び変形は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者には明らかとなろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態に関連して開示されてはいるが、特許請求の範囲に記載の発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解すべきである。実際には、当業者には明らかである本発明を実施するための開示された態様の様々な改変は、以下の特許請求の範囲内にあるものとする。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2A
図2B
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
【配列表】
2023526587000001.app
【国際調査報告】