(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】追加的な熱エネルギー散逸表面領域を有するエネルギーフィルタを有するイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/266 20060101AFI20230615BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230615BHJP
H01J 37/05 20060101ALI20230615BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H01L21/265 M
H01L21/265 603C
H01J37/05
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569462
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021060116
(87)【国際公開番号】W WO2021228500
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518351230
【氏名又は名称】エムアイツー‐ファクトリー ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン クリッペンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン カサト
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB04
5C101EE25
5C101EE34
5C101EE44
5C101EE61
5C101FF02
(57)【要約】
エネルギーフィルタ(25)を含むイオン注入装置(20)であって、エネルギーフィルタ(25)は、熱エネルギー散逸表面領域を有し、エネルギーフィルタ(25)は、第1の表面及び第1の表面の反対側に配設された第2の表面を有する膜を含み、第1の表面は、構造化表面である、イオン注入装置(20)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーフィルタ(25)を含むイオン注入装置(20)であって、
前記エネルギーフィルタ(25)は、熱エネルギー散逸表面領域を有し、前記エネルギーフィルタ(25)は、第1の表面、及び、前記第1の表面の反対側に配設された第2の表面を有する膜を含み、前記第1の表面は、構造化表面である、イオン注入装置(20)。
【請求項2】
第1の構造化表面、又は前記第2の表面は、その上に配置された微細構造を有して、追加的な熱エネルギー散逸表面領域を形成し、前記微細構造の空間的寸法は、前記第1の構造化表面上の構造の空間的寸法の3~5%である、請求項1に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項3】
前記微細構造は、ランダムに構成された構造又は三角形断面を有する構造の1つを有する、請求項2に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項4】
前記エネルギーフィルタ(25)は、第1の膜(400a~c)からある距離に配設された更なる膜(400a~c)を有する複数の膜(400a~c)を含む、請求項1に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項5】
イオンビーム源(5)、基材材料(30)及び前記イオンビーム源(5)と前記基材材料(30)との間に配設された複数の膜(400a~c)を更に含む、請求項4に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項6】
前記複数の膜(400a~c)のうちのいずれかの膜間の間隔を変更するための位置決め要素(430)を更に含む、請求項4又は5に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項7】
前記第1の膜(400a~c)又は更なる膜(400a~c)の1つと前記基材材料(30)との間に配設されたコリメータ(420)を更に含む、請求項4~6のいずれか一項に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項8】
前記第1の表面の前記構造は、三角形断面を有する構造のものであるか又はピラミッド形状である、請求項1又は2に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項9】
前記エネルギーフィルタ(25)は、シリコン膜から製造される、請求項1~8のいずれか一項に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項10】
ハウジング(410、510)を更に含み、前記エネルギーフィルタ(25)は、前記ハウジング(410、510)内に取り付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項11】
前記ハウジング(510)は、冷却流体(530)を移送するための複数の流路(510)を更に含む、請求項10に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項12】
前記ハウジング(410、510)は、可視及び赤外光を阻止する、前記ハウジング(510)と熱接触する複数のアブソーバ素子(540)を更に含む、請求項10又は11に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項13】
フィルタフレーム(27)を更に含み、前記エネルギーフィルタ(25)は、前記フィルタフレーム(27)によって保持される、請求項1~12のいずれか一項に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項14】
エネルギーフィルタ(25)のためのハウジング(510)であって、冷却流体(530)を移送するための複数の流路(510)を含むハウジング(510)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願との相互関係
本出願は、2020年5月15日付けで出願されたルクセンブルグ特許出願公開第101807号明細書の優先権及び利益を主張する。ルクセンブルグ特許出願公開第101807号明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、イオン注入のためのエネルギーフィルタ(注入フィルタ)を含むイオン注入装置のための機器及びその使用並びに注入方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、数ナノメートル~数十マイクロメートルの深さ範囲の予め定義された深さプロファイルを伴う、半導体材料又は光学材料などの材料内の欠陥プロファイルのドーピング又は生成を達成するための方法である。このような半導体材料の例は、限定されないが、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウムを含む。このような光学材料の例は、限定されないが、LiNbO3、ガラス及びPMMAを含む。
【0004】
単エネルギーイオン照射によって得ることができるドーピング濃度ピーク若しくは欠陥濃度ピークのものよりも広い深さ分布を有するイオン注入の深さプロファイルを生成するか、又は1回若しくは複数回の単純な単エネルギー注入で生成され得ないドーピング若しくは欠陥深さプロファイルを生成する必要性が存在する。深さプロファイルの使用、構造化エネルギーフィルタを生成する従来技術の方法が知られており、この場合、単エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタコンポーネントを通過するのに伴い、単エネルギーイオンビームのエネルギーが変更される。結果的に得られるエネルギー分布は、深さプロファイルイオン、材料の生成をもたらす。これについては、例えば、欧州特許第0014516B1号明細書(Bartko)又は米国特許出願公開第2019/122850A1号明細書に記述されている。
【0005】
図1には、このようなイオン注入装置20の一例が示されており、この場合、イオンビーム10は、構造化エネルギーフィルタ25に当たる。イオンビーム源5は、サイクロトロン、タンデム加速器又はシングルエンド型静電加速器でもあり得る。他の態様では、イオンビーム源5のエネルギーは、0.5~3.0MeV/核子又は好ましくは1.0~2.0MeV/核子である。特定の一態様では、イオンビーム源は、1.3~1.7MeV/核子のエネルギーを有するイオンビーム10を生成する。イオンビーム10の合計エネルギーは、1~50MeVであり、好適な一態様では4~40MeVであり、好適な一態様では8~30MeVである。イオンビーム10の周波数は、1Hz~2kHであり得、例えば3Hz~500Hzであり得、一態様では7Hz~200Hzであり得る。イオンビーム10は、連続イオンビーム10でもあり得る。イオンビーム10内のイオンの例は、限定されないが、アルミニウム、窒素、水素、ヘリウム、ボロン、リン、炭素、ヒ素及びバナジウムを含む。
【0006】
図1では、エネルギーフィルタ25は、右側に三角形断面形状を有する膜から製造されることがわかるが、このタイプの形状は、本発明を限定せず、他の断面形状を使用することができる。上部イオンビーム10-1は、エネルギーの低減をほとんど伴うことなくエネルギーフィルタ25を通過し、なぜなら、上部イオンビーム10-1がエネルギーフィルタ25を通過するエリア25
minは、エネルギーフィルタ25内の膜の最小厚さを有するためである。換言すれば、左側の上部イオンビーム10-1のエネルギーがE1である場合、上部イオンビーム10-1のエネルギーは、右側で実質的に同じ値E1を有することになる(膜内のイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす膜の阻止能に起因して、小さいエネルギー損失のみを伴う)。
【0007】
一方で、下部イオンビーム10-2は、エリア25maxを通過し、この場合、エネルギーフィルタ25の膜は、その最大厚さを有する。左側の下部イオンビーム10-2のエネルギーE2は、エネルギーフィルタ25によって実質的に吸収され、従って、右側の下部イオンビーム10-2のエネルギーは、低減され、上部イオンビームのエネルギー未満であり、即ちE1>E2である。結果として、より大きいエネルギーの上部イオンビーム10-1は、より乏しいエネルギーの下部イオンビーム10-2よりも基材材料30内でより大きい深さまで貫通し得る。これは、ウエハの一部である基材材料30内に示差的な深さプロファイルをもたらす。
【0008】
図1の右側には、この深さプロファイルが示されている。切り刻まれた三角形のエリアは、イオンがd1~d2の深さで基材材料を貫通することを示す。ガウス曲線は、エネルギーフィルタ25なしでの、d3の深さの最大値を有する深さプロファイルを示す。イオンビーム10-1のエネルギーの一部がエネルギーフィルタ25内で吸収されるため、深さd3は、深さd2よりも大きいことを理解されたい。
【0009】
従来技術において、エネルギーフィルタ25を製造するためのいくつかの既知の原理が存在する。通常、エネルギーフィルタ25は、
図1に示される三角形断面パターンなどの望ましいパターンを生成するようにエッチングされたエネルギーフィルタ25の表面を有するバルク材料から製造される。独国特許出願公開第102016106119B4号明細書(Csato/Krippendorf)では、異なるイオンビームエネルギー低減特性を有する材料の層から製造されたエネルギーフィルタが記述されている。このCsato/Krippendorf特許出願に記述されているエネルギーフィルタから結果として得られる深さプロファイルは、材料の層の構造及び表面の構造に依存する。
【0010】
その詳細が参照により本明細書に援用される、本出願人の同時係属中の独国特許出願公開第102019120623.5号明細書では、更なる構造原理が示されており、そこでは、エネルギーフィルタは、垂直壁によって一緒に接続される離間した微細構造化層を含む。
【0011】
エネルギーフィルタ25を通して吸収され得るイオンビーム10からの最大出力は、3つの要因:エネルギーフィルタ25の有効冷却メカニズム、エネルギーフィルタ25が製造される膜の熱-機械特性、及び、エネルギーフィルタ25が製造される材料の選択に依存する。通常のプロセスでは、出力の約50%がエネルギーフィルタ25内で吸収され、これは、プロセス状態に応じて80%まで上昇し得る。
【0012】
図2にエネルギーフィルタの一例が示されており、この場合、エネルギーフィルタ25は、フレーム27内に取り付けられた三角形の構造化膜から製造される。非限定的な一例では、エネルギーフィルタ25は、例えば、(2~20μmの通常の厚さであるが、最大で200μmの)シリコン層21と、(約400μmの厚さの)バルクシリコン23との間に挟持された、0.2~1μmの厚さを有する、例えば絶縁層である二酸化ケイ素層22を含む絶縁体上のシリコンなど、材料の単一片から製造することができる。構造化膜は、例えば、シリコンから製造されるが、炭化ケイ素又は別の炭素に基づく材料又はセラミックから製造することもできる。
【0013】
イオンビーム10の所与のイオン電流のイオン注入プロセスにおけるウエハスループットを最適化し、従ってイオンビーム10を効率的に使用するために、エネルギーフィルタ25の膜のみを照射し、膜が所定の位置に保持されるフレーム27を照射しないことが好ましい。実際には、フレーム27の少なくとも一部もイオンビーム10によって照射され、従って加熱される可能性が高い。実際には、フレーム27の全体が照射される可能性がある。エネルギーフィルタ25を形成する膜が加熱されるが、膜は、薄い(即ち2μm~20μmであるが、最大で200μmである)ため、非常に小さい熱伝導率を有する。膜は、サイズが2×2cm2~35×35cm2であり、且つウエハのサイズに対応する。膜とフレーム27との間には、熱伝導がほとんど存在しない。従って、モノリシックフレーム27は、膜の冷却に寄与せず、関連する膜のための唯一の冷却メカニズムは、膜からの熱放射である。エネルギーフィルタ25内の膜の局所的な加熱は、エネルギーフィルタ25を形成する膜及びフレームの加熱された部分間の熱応力を増大させる。
【0014】
更に、イオンビーム10からのエネルギーの、膜の一部のみにおける吸収に起因する膜の局所的な加熱も膜内に熱応力をもたらし、膜25に対する機械的変形又は損傷をもたらし得る。膜の加熱は、非常に短い時間期間内、即ち1秒未満、多くの場合にミリ秒のレベルでも発生する。膜の照射されない部分による冷却効果は、エネルギーフィルタ25内に温度勾配をもたらす。この冷却効果は、パルス化イオンビーム10及びスキャンイオンビーム10の場合に特に顕著である。これらの温度勾配は、エネルギーフィルタ25の膜が製造される材料内の欠陥及び別個の相の形成と、場合により(注入された種に起因する)予想外の材料の変化とをもたらし得る。
【0015】
過去には、欠陥又は材料改質の問題は、この問題が発生しない規定された最大イオン線量で使用するための安全動作条件を規定することにより克服されてきた。しかし、膜に対する機械的変形及び損傷の長期的な影響は、対処されていない。長期的な影響が無視された場、これは、ウエハ材料内のプロファイルの変化をもたらし、従って拒絶されなければならないウエハをもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、エネルギーフィルタのための冷却メカニズム並びにフィルタ及びフレームにわたる温度の均一化の改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書は、エネルギーフィルタを含むイオン注入装置を教示し、エネルギーフィルタは、エネルギーフィルタのより効率的な冷却を可能にするために、追加的な熱エネルギー散逸表面領域を有する。
【0018】
イオン注入装置の一態様では、エネルギーフィルタは、第1の表面及び第1の表面の反対側に配設された第2の表面を有する膜を含む。第1の構造表面又は第2の表面の少なくとも1つは、その上に配置された微細構造を有し、且つ追加的な熱エネルギー散逸表面領域を形成する。微細構造の空間的寸法は、第1の構造化表面上の構造の空間的寸法の3~5%である。しかし、これらの寸法は、本発明を限定するものではない。微細構造は、ランダムに構成された構造又は三角形断面を有する構造の1つを有する。
【0019】
イオン注入装置の別の態様では、エネルギーフィルタは、例えば、イオンビーム源と基材材料との間に配設された第1の膜からある距離に配設された更なる膜を有する複数の膜を含む。イオン注入装置は、異なる深さプロファイルが基材内に生成されることを可能にするために、横方向又は水平方向のいずれかにおいて、複数の膜のうちの膜間の間隔を移動させるための位置決め要素を更に含み得る。
【0020】
更なる一態様では、イオン注入装置は、第1の膜又は更なる膜の1つと基材材料との間に配設されたコリメータを更に含み得る。コリメータは、イオンが基材上の位置に到達し、同じ量のエネルギー及び従って貫通深さを実質的に有するように、所定の角度で散乱されたイオンビーム内のイオンを吸収する。
【0021】
イオン注入装置の更なる一態様では、イオン注入装置のハウジングは、ハウジング並びに従ってイオン注入装置のフレーム及び膜の加熱を低減し、且つそれを冷却するために、冷却流体を移送するための複数の流路を更に含む。
【0022】
イオン注入装置は、熱放射の吸収を促進するために、ハウジングと熱接触する複数のアブソーバ素子を提供され得る。これらのアブソーバ素子は、可視及び赤外光を阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術で既知であるエネルギーフィルタを有するイオン注入装置の原理を示す。
【
図2】エネルギーフィルタを有するイオン注入装置の構造を示す。
【
図3】微細構造を有するエネルギーフィルタを示す。
【
図4】エネルギーフィルタ内の複数の膜及び開放/閉鎖されたコリメーション装置を示す。
【
図5】エネルギーフィルタのための冷却システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、図面に基づいて本発明を説明する。本明細書で記述される本発明の態様は、例に過ぎず、決して請求項の保護範囲を限定しないことを理解されたい。本発明は、請求項及びその均等物によって定義される。本発明の一態様の特徴は、本発明の異なる1つ又は複数の態様の特徴と組み合わされ得ることを理解されたい。
【0025】
図3は、本明細書の一態様によるエネルギーフィルタ25の膜のための構造を示す。
図3Aは、当技術分野で既知である、三角形断面を有するエネルギーフィルタ25のための構造化膜を示す。
図3Bは、エネルギーフィルタ25内の膜25の一方の表面上の微細構造を示し、
図3Cは、エネルギーフィルタ25の両方の表面上の微細構造を示す。換言すれば、エネルギーフィルタ25は、その規則的な三角形断面形態に加えて、1つ又は複数の表面上に追加的な微細構造を有する膜を有する。
【0026】
図3に示される非限定的な例では、三角形形態の高さhは、16μmであり、及び間隔sは、20μmである。エネルギーフィルタ25は、異なる寸法を有するように製造され得、例えば、高さは、1μm~200μmであり得、及び間隔は、1μm~400μmであり得る。
【0027】
微細構造は、エネルギーフィルタ25を通過するイオンビーム10のエネルギープロファイルに影響を及ぼすことになる。しかし、エネルギープロファイルが3~5%の公差を有すると仮定することにより、微細構造は、高さhの値の3~5%の高さ(図ではmhとして表示されているが、正確な縮尺ではない)を有し得、及び間隔(図ではmsとして表示されているが、正確な縮尺ではない)は、間隔sの距離の3~5%であり得る。当然のことながら、エネルギープロファイルの変化は、エネルギーフィルタ20の両面における微細構造の影響を受けることを理解されたい。
【0028】
微細構造は、バルク材料からエネルギーフィルタ20をエッチングするか、又は基材上に材料を堆積させることにより生成される。当技術分野において、既知のいくつかの方法が存在する。例えば、フォトリソグラフィ、eビームリソグラフィ又はレーザービームリソグラフィなどのパターン化技法を使用することにより、マスクを基材上に生成することができる。マスクは、フォトレジスト、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、クロミウム又は他の材料から製造される。ウェット化学エッチング技法は、例えば、水酸化カリウム、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)及び他の異方性エッチング溶液、プラズマエッチング技法及びイオンビームエッチングを使用する。
【0029】
強重合プロセス領域における、反応性イオンエッチング又はイソプロパノールなどの添加剤を有する水酸化カリウム溶液の使用など、自己マスクエッチング技法を使用することもできる。
【0030】
選択的堆積モード又は原子層堆積モードにおける化学気相蒸着などの自己マスキング堆積技法を使用することもできる。
【0031】
マスキングを伴わない層の連続的な堆積又はエッチングも知られている。これは、フェムトレーザーアブレーション、又は合焦イオンビーム堆積、又は材料の除去を使用する。
【0032】
微細構造の生成は、表面膜25の表面を機械的に粗化するか、シリコン若しくは炭素などの材料の追加的な薄い層を追加するか、又はレーザーアブレーションなどの他の技法を使用することにより実現され得ることを理解されたい。
【0033】
エネルギーフィルタ25の膜の構造が異なる構造を有し、且つ三角形断面を有する形態ではないことが可能である。例えば、エネルギーフィルタ25は、当技術分野で既知のように、一連のピラミッドから構成され得る。次いで、微細構造は、ピラミッドの表面上に配置されることになるであろう。
【0034】
微細構造の効果は、より大きい表面領域に起因して、エネルギーフィルタ25のより大きい程度の熱冷却を可能にするより大きい表面領域をエネルギーフィルタ25の膜に提供することである。
【0035】
図4A及び
図4Bに本発明の更なる態様が示されており、この場合、エネルギーフィルタ25は、ハウジング410内の複数のフレーム27内に取り付けられた複数の膜400a~cを含む。ハウジング410は、炭化ケイ素又は別の炭素材料の内側被覆を有する鋼から製造することができる。内側被覆は、半導体基材の汚染を低減又は除去するために使用される。
図4Aは、エネルギーフィルタ25の複数の多層を示し、
図4Bは、三角形断面薄膜を有するエネルギーフィルタ25を示す。エネルギーフィルタ25の膜は、
図3に示される微細構造も含み得る。
【0036】
エネルギーフィルタ25を形成する複数の膜400a~cがハウジング410内に配置される。複数の膜400a~cは、膜400a~cの個々の膜間及び膜400a~cと基材材料30との間の間隔を変更するように、ハウジング410内でイオンビーム10の方向に沿った方向に移動させることができる。間隔は、例えば、圧電素子又はマイクロモーターなどの位置決め要素430を使用して垂直及び水平方向の両方で変更することができる。
【0037】
図4A及び
図4Bの構成は、イオンビーム10が複数の膜400a~cを通過した後、イオンビーム10をコリメートするための(任意の)コリメータ420も含む。コリメータ420は、端部で開放又は閉鎖することができる。複数の膜400a~cのそれぞれの膜は、それぞれ通過するイオンビーム10のエネルギーの一部分を吸収し、従って、エネルギーフィルタ25が製造される膜400a~cは、膜400a、400b又は400cの単一のもの未満のエネルギーを吸収することを理解されたい。複数の膜400a~cは、熱放出を通して冷却される。
【0038】
図4A及び
図4Bに示されるエネルギーフィルタ25の構成は、基材材料30を貫通するイオンについて異なる深さプロファイルが生成されることも可能にする。複数の膜400a~cは、
図4A及び
図4Bでは類似するものとして示されているが、複数の膜400a~cのそれぞれは、必要に応じて異なるプロファイルを有することができる。
【0039】
図4には、3つの膜400a~cが示されているが、膜400a~cの数は、更に大きくなり得ることを理解されたい。膜400a~cの数の増大は、より大きいエネルギーが散逸されることを可能にする。膜400a~cの単一のもので散逸され得るエネルギーの最大量が、損傷を回避するために1.6W/cm
2であるものとする。イオンビーム10が10MeVのエネルギーを有し、エネルギーの50%が基材材料30内で堆積パターンを生成するために必要とされると仮定した場合、イオンビーム10内のイオン電流は、0.23μA/cm
2である。5つの膜400a~cの場合、膜400a~cのそれぞれの膜が同じ量のエネルギーを吸収し得ると仮定され、最大イオン電流は、1.6μA/cm
2となる。
【0040】
図5に本発明の更なる一態様が示されており、この場合、エネルギーフィルタ25は、冷却ハウジング500内に取り付けられる。冷却ハウジング500は、冷却流体530が通る1つ又は複数の流路510を冷却ハウジング500の壁520内に有する。冷却流体530は、例えば、水である。エネルギーフィルタ25から放射された熱放射は、壁520によって吸収され、熱は、次いで、冷却流体520を通して散逸される。
【0041】
更なる一態様では、壁520の内側は、例えば、シリコン又は炭素に基づく材料のアブソーバ素子540を有し、且つマイクロメートル~ミリメートルの領域の厚さを有し得る。アブソーバ素子540は、エネルギーフィルタ25からの放射熱エネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0042】
5 イオンビーム源
10 イオンビーム
20 イオン実装装置
21 シリコン層
22 二酸化ケイ素装置
23 バルクシリコン
25 エネルギーフィルタ
27 フィルタフレーム
30 基材材料
400a~c 膜
410 ハウジング
420 コリメータ
430 位置決め要素
500 冷却ハウジング
510 流路
520 壁
530 冷却流体
540 アブソーバ素子
【国際調査報告】