(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】エネルギーフィルタ及び追加的な加熱素子を含むイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/05 20060101AFI20230615BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230615BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
H01J37/05
H01L21/265 603B
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569463
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 EP2021062827
(87)【国際公開番号】W WO2021229054
(87)【国際公開日】2021-11-18
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518351230
【氏名又は名称】エムアイツー‐ファクトリー ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン クリッペンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン カサト
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB04
5C101EE25
5C101EE34
5C101EE44
5C101EE61
5C101FF02
(57)【要約】
構造化膜を有するエネルギーフィルタ(25)であって、イオンビームからの吸収エネルギーによって加熱されるエネルギーフィルタ(25)と、エネルギーフィルタ(25)を加熱するための少なくとも1つの追加的な加熱素子(50a~d、55a~d、60、70)とを含むイオン注入装置(20)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入装置(20)であって、
構造化膜を有するエネルギーフィルタ(25)であって、イオンビームからの吸収エネルギーによって加熱されるエネルギーフィルタ(25)と、
前記エネルギーフィルタ(25)を加熱するための少なくとも1つの追加的な加熱素子(50a~d、55a~d、60、70)と、を含むイオン注入装置(20)。
【請求項2】
前記追加的な加熱素子は、電気接点(50a~d)によって導電体(55a~d)に接続された抵抗素子である、請求項1に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項3】
前記抵抗素子は、エネルギーフィルタ膜、バルク材料(23)又は層(21))の少なくとも1つであり、特に、前記抵抗素子は、ケイ素、炭化ケイ素、炭素、複合材料又は多層材料から製造される、請求項2に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項4】
少なくとも1つの追加的な加熱素子エネルギーフィルタ(25)は、外部加熱素子(60、70)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項5】
前記外部加熱素子は、加熱可能なチャック(60)又はハウジング(410、510)内に取り付けられた外部光源(70)である、請求項4に記載のイオン注入装置(20)。
【請求項6】
イオン深さプロファイルを伴って基材材料(30)内にイオンを注入する方法であって、
- 少なくとも既定の温度までエネルギーフィルタ(25)を予熱するステップ(500)であって、前記エネルギーフィルタ(25)は、構造化膜を含む、ステップ(500)と、
- 既定の長さの時間にわたり、前記エネルギーフィルタ(25)を通してイオンビーム(10)を前記基材材料(30)に誘導するステップ(510)と、
- 前記エネルギーフィルタ(25)を冷却するステップ(520)と
を含む方法。
【請求項7】
前記エネルギーフィルタ(25)の冷却(520)は、予め設定された方式で運ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記エネルギーフィルタ(25)の冷却(520)は、熱放射によって実行される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギーフィルタ(25)の予熱(500)は、前記エネルギーフィルタ(25)内の膜の少なくとも一部、又は、前記エネルギーフィルタ(25)のフレームの一部の別個の予熱を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エネルギーフィルタ(25)の前記予熱(500)は、追加的な加熱素子(50a~d、55a~d、60、70)を使用して実行される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エネルギーフィルタ(25)の前記予熱(500)は、温度プロファイルを使用して実行される、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記追加的な加熱素子(50a~d、55a~d)は、抵抗素子(50a~d、55a~d)、外部ランプ(70)又は前記基材材料(30)が取り付けられる加熱可能なチャック(60)のうちの1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
注入後の加熱ステップ(530)を更に含む、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記注入後の加熱ステップ(530)は、別個の場所で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギーフィルタ(35)の異なる部分は、別々に加熱される、請求項6~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エネルギーフィルタ(35)の少なくとも一部は、前記エネルギーフィルタ(25)に前記イオンビーム(10)を誘導中に加熱される、請求項6~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の出願との相互関係
本出願は、2020年5月15日付けで出願されたルクセンブルグ特許出願公開第101808号明細書の優先権及び利益を主張する。ルクセンブルグ特許出願公開第101808号明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、イオン注入のためのエネルギーフィルタ(注入フィルタ)を含むイオン注入装置のための機器及びその使用並びに注入方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、数ナノメートル~数十マイクロメートルの深さ範囲の予め定義された深さプロファイルを伴う、半導体材料又は光学材料などの材料内の欠陥プロファイルのドーピング又は生成を達成するための方法である。このような半導体材料の例は、限定されないが、ケイ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ガリウム砒素、テルル化カドミウム、セレン化亜鉛を含む。このような光学材料の例は、限定されないが、LiNbO3、石英ガラス又はリン酸チタニルカリウム及びPMMAなどのポリマーを含む。
【0004】
単エネルギーイオン照射によって得ることができるドーピング濃度ピーク若しくは欠陥濃度ピークのものよりも広い深さ分布を有するイオン注入の深さプロファイルを生成するか、又は1回若しくは複数回の単純な単エネルギー注入で生成され得ないドーピング若しくは欠陥深さプロファイルを生成する必要性が存在する。深さプロファイルの使用、構造化エネルギーフィルタを生成する従来技術の方法が知られており、この場合、単エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタコンポーネントを通過するのに伴い、単エネルギーイオンビームのエネルギーが変更される。結果的に得られるエネルギー分布は、深さプロファイルイオン、材料の生成をもたらす。これについては、例えば、欧州特許第0014516B1号明細書(Bartko)に記述されている。
【0005】
図1には、このようなイオン注入装置20の一例が示されており、この場合、イオンビーム10は、真空ハウジング内の構造化エネルギーフィルタ25に当たる。イオンビーム源5は、例えば、0.3~3.0MeV/イオンのエネルギーを有するイオンを生成する高周波線形加速器であり得るが、これは、本発明を限定するものではない。イオンビーム源5は、サイクロトロン、タンデム加速器又はシングルエンド型静電加速器でもあり得る。他の態様では、イオンビーム源5のエネルギーは、0.5~3.0MeV/核子又は好ましくは1.0~2.0MeV/核子である。特定の一実施形態では、イオンビーム源は、1.3~1.7MeV/核子のエネルギーを有するイオンビーム10を生成する。イオンビーム10の合計エネルギーは、1~50MeVであり、好適な一態様では4~40MeVであり、好適な一態様では8~30MeVである。イオンビーム10の周波数は、1Hz~2kHであり得、例えば3Hz~500Hzであり得、一態様では7Hz~200Hzであり得る。イオンビーム10は、連続イオンビーム10でもあり得る。イオンビーム10内のイオンの例は、限定されないが、アルミニウム、窒素、水素、ヘリウム、ボロン、リン、炭素、ヒ素及びバナジウムを含む。
【0006】
図1では、エネルギーフィルタ25は、右側に三角形断面形状を有する膜から製造されることがわかるが、このタイプの形状は、本発明を限定せず、他の断面形状を使用することができる。上部イオンビーム10-1は、エネルギーの低減をほとんど伴うことなくエネルギーフィルタ25を通過し、なぜなら、上部イオンビーム10-1がエネルギーフィルタ25を通過するエリア25
minは、エネルギーフィルタ25内の膜の最小厚さを有するためである。換言すれば、左側の上部イオンビーム10-1のエネルギーがE1である場合、上部イオンビーム10-1のエネルギーは、右側で実質的に同じ値E1を有することになる(膜内のイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす膜の阻止能に起因して、小さいエネルギー損失のみを伴う)。
【0007】
一方で、下部イオンビーム10-2は、エリア25maxを通過し、この場合、エネルギーフィルタ25の膜は、その最大厚さを有する。左側の下部イオンビーム10-2のエネルギーE2は、エネルギーフィルタ25によって実質的に吸収され、従って、右側の下部イオンビーム10-2のエネルギーは、低減され、上部イオンビームのエネルギー未満であり、即ちE1>E2である。結果として、より大きいエネルギーの上部イオンビーム10-1は、より乏しいエネルギーの下部イオンビーム10-2よりも基材材料30内でより大きい深さまで貫通し得る。これは、ウエハの一部である基材材料30内に示差的な深さプロファイルをもたらす。
【0008】
図1の右側には、この深さプロファイルが示されている。切り刻まれた三角形のエリアは、イオンがd1~d2の深さで基材材料を貫通することを示す。ガウス曲線は、エネルギーフィルタ25なしでの、d3の深さの最大値を有する深さプロファイルを示す。イオンビーム10-1のエネルギーの一部がエネルギーフィルタ25内で吸収されるため、深さd3は、深さd2よりも大きいことを理解されたい。
【0009】
従来技術において、エネルギーフィルタ25を製造するためのいくつかの既知の原理が存在する。通常、エネルギーフィルタ25は、
図1に示される三角形断面パターンなどの望ましいパターンを生成するようにエッチングされたエネルギーフィルタ25の表面を有するバルク材料から製造される。独国特許出願公開第102016106119B4号明細書(Csato/Krippendorf)では、異なるイオンビームエネルギー低減特性を有する材料の層から製造されたエネルギーフィルタが記述されている。このCsato/Krippendorf特許出願に記述されているエネルギーフィルタから結果として得られる深さプロファイルは、材料の層の構造及び表面の構造に依存する。
【0010】
その詳細が参照により本明細書に援用される、本出願人の同時係属中の独国特許出願公開第102019120623.5号明細書では、更なる構造原理が示されており、そこでは、エネルギーフィルタは、垂直壁によって一緒に接続される離間した微細構造化層を含む。
【0011】
エネルギーフィルタ25内で吸収され得るイオンビーム10からの最大出力は、3つの要因:エネルギーフィルタ25の有効冷却メカニズム、エネルギーフィルタ25が製造される膜の熱-機械特性及びエネルギーフィルタ25が製造される材料の選択に依存する。通常のプロセスでは、出力の約50%がエネルギーフィルタ25内で吸収され、これは、プロセス状態に応じて80%まで上昇し得る。
【0012】
図2にエネルギーフィルタの一例が示されており、この場合、エネルギーフィルタ25は、フレーム27内に取り付けられた三角形の構造化膜から製造される。非限定的な一例では、エネルギーフィルタ25は、例えば、(2~20μmの通常の厚さであるが、最大で200μmの)シリコン層21と、(約400μmの厚さの)バルクシリコン23との間に挟持された、0.2~1μmの厚さを有する、例えば絶縁層である二酸化ケイ素層22を含む絶縁体上のシリコンなど、材料の単一片から製造することができる。構造化膜は、例えば、シリコンから製造されるが、炭化ケイ素又は別の炭素に基づく材料又はセラミックから製造することもできる。
【0013】
イオンビーム10の所与のイオン電流のイオン注入プロセスにおけるウエハスループットを最適化し、従ってイオンビーム10を効率的に使用するために、エネルギーフィルタ25の膜のみを照射し、膜が所定の位置に保持されるフレーム27を照射しないことが好ましい。実際には、フレーム27の少なくとも一部もイオンビーム10によって照射され、従って加熱される可能性が高い。実際には、フレーム27の全体が照射される可能性がある。エネルギーフィルタ25を形成する膜が加熱されるが、膜は、薄い(即ち2~20μmであるが、最大で200μmである)ため、非常に小さい熱伝導率を有する。膜は、サイズが2×2cm2~35×35cm2であり、且つウエハのサイズに対応する。膜とフレーム27との間には、熱伝導がほとんど存在しない。従って、モノリシックフレーム27は、膜の冷却に寄与せず、関連する膜のための唯一の冷却メカニズムは、膜からの熱放射である。
【0014】
エネルギーフィルタ25内の膜の加熱は、エネルギーフィルタ25を形成する膜及びフレーム27の加熱された部分間の熱応力を増大させる。
図3Bにこれが示されており、膜及びフレーム27の異なる熱容量に起因して、より小さい膜は、より嵩高いフレームよりもはるかに高速で加熱することを示している。この差が膜とフィルタとの間の熱応力をもたらし、それが機械的な変形をもたらし得る。
【0015】
更に、イオンビームからのエネルギーの、膜の一部のみにおける吸収に起因する膜の局所的な加熱も膜内に熱応力をもたらし、エネルギーフィルタ25内の膜に対する機械的変形又は損傷をもたらし得る。膜の加熱は、非常に短い時間期間内、即ち1秒未満、多くの場合にミリ秒のレベルでも発生する。エネルギーフィルタの照射されない部分上の冷却効果は、エネルギーフィルタ25内に温度勾配をもたらす。この冷却効果は、パルス化イオンビーム10及びスキャンイオンビーム10の場合に特に顕著である。これらの温度勾配は、エネルギーフィルタ25の膜が製造される材料内の欠陥及び別個の相の形成と、場合により(注入された種に起因する)予想外の材料の変化とをもたらし得る。
【0016】
エネルギーフィルタ25は、エネルギーフィルタの温度が200℃~400℃未満であるとき、イオンビーム10に起因してはるかに迅速に加熱することも見出されており、
図3Aにこれが示されている。
図3Aは、異なるエネルギーを有するイオンの吸収について、連続照射中の粒子流密度に対する、℃を単位とした温度の依存性の一例を示す。実線は、2MeVエネルギーのイオンのシミュレーションを示し、上側の線は、8MeVエネルギーのイオンに関するものである。中間の線は、
図3Aに示されるように、4MeV及び6MeVのイオンに関するものである。
図3Aに示される例は、例示を目的としたものに過ぎず、フィルタの設計及びプロセス条件に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書は、エネルギーフィルタを含むイオン注入装置を教示し、エネルギーフィルタは、エネルギーフィルタに追加的な加熱素子を追加するためのものである。追加的な加熱素子の追加は、エネルギーフィルタを通過するイオンビームからもたらされる温度勾配を低減するために、エネルギーフィルタを予熱するためのものである。
【0018】
追加的な加熱素子は、一態様では、電気接点によって導電体に接続された抵抗素子であり得る。電流は、エネルギーフィルタのフレームを形成するバルクシリコン及び/又はエネルギーフィルタの膜を通して流れ、且つ材料を加熱する。
【0019】
別の態様では、追加的な加熱素子エネルギーは、限定されないが、加熱可能なチャック又はハウジング内に取り付けられた外部光源などの外部加熱素子である。
【0020】
本明細書は、イオン深さプロファイルを伴って基材材料内にイオンを注入する方法も記述する。本明細書で概説される方法は、少なくとも既定の温度までエネルギーフィルタを予熱するステップと、既定の長さの時間にわたり、エネルギーフィルタを通してイオンビームを基材材料に誘導するステップと、その後、エネルギーフィルタを冷却するステップとを含む。
【0021】
エネルギーフィルタの予熱は、エネルギーフィルタ内の膜の少なくとも一部又はエネルギーフィルタのフレームの一部の別個の予熱を含み得、抵抗素子、外部ランプ又は基材材料が取り付けられる加熱可能なチャックなどの追加的な加熱素子を使用することによって実行される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術で既知のエネルギーフィルタを有するイオン注入装置の原理を示す。
【
図2】エネルギーフィルタを有するイオン注入装置の構造である。
【
図3A】増大するイオン電流密度を有するフィルタの温度依存性を示す。
【
図3B】膜とフィルタの間の温度上昇の差を時間の関数として示す。
【
図4A-4E】加熱素子を有するエネルギーフィルタの5つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここで、図面に基づいて本発明を説明する。本明細書で記述される本発明の実施形態及び態様は、例に過ぎず、決して請求項の保護範囲を限定しないことを理解されたい。本発明は、請求項及びその均等物によって定義される。本発明の一態様又は実施形態の特徴は、本発明の異なる1つ又は複数の態様及び/又は実施形態の特徴と組み合わされ得ることを理解されたい。
【0024】
図4A~
図4Dは、加熱素子を有するハウジング内のエネルギーフィルタ25の3つの例を示す。図示のエネルギーフィルタ25は、同じ要素を示すために
図1のものと同じ参照符号を使用する。加熱素子は、イオン注入のためのエネルギーフィルタ25の使用前、使用中及び使用後、エネルギーフィルタ25を加熱するために使用される。
図3Aの検討から、イオン注入ビーム10に起因してエネルギーフィルタ25内で散逸される追加的なエネルギーは、より高い温度(例えば、約200~400℃超)ではるかに小さいことがわかる。これは、エネルギーフィルタ25の照射される部分と、エネルギーフィルタ25の照射されない部分との間の温度差が、一般に、エネルギーフィルタ25内のはるかに小さい熱応力をもたらす50~200℃未満になることを意味する。
【0025】
図4Aは、加熱素子の一例を示す。この例では、加熱素子は、エネルギーフィルタ25及び膜が取り付けられるフレーム27の抵抗性加熱によるものである。この例では、この図で観察されるように、接点50a及び50cは、バルクシリコン層23に接続された状態で取り付けられ、電流は、フレーム27を通して導電体55aから導電体55cまで(又は逆に)流れ、フレーム27は、フレーム27内の材料、即ちバルクシリコン23の電気抵抗値に起因して加熱し、接点50b及び50dは、対応する導電体55b及び55dに接続される。電流は、シリコン層21から形成された膜を通して電気接点50bから電気接点50dまで(又は逆に)流れ、膜は、シリコン層21内の材料の電気抵抗値に起因して加熱する。
【0026】
図4Bに示される例でも、フレーム27を加熱するために抵抗性加熱が使用される。この場合、シリコン層21に適用された電気接点50b又は50dが存在しない。バルクシリコン23の抵抗性加熱は、
図4Aの例と同一である。この例では、電流は、膜を通して流れない。
図3Bは、フレーム27が膜よりも低速で加熱し、従って膜を別個に加熱する必要がない場合があることを示す。
【0027】
図4Cに示される例は、エネルギーフィルタ25又はフレーム27の抵抗性加熱を使用せず、基材材料30が配置される加熱可能なチャック60からの熱放射の原理を使用する。加熱可能なチャック60からの熱放射は、矢印65によって示されるように、エネルギーフィルタ25の膜に向かって放射される。この例では、エネルギーフィルタ25を単独で加熱することができるか、又はエネルギーフィルタ25及びフレーム27の組合せを加熱することができる。
【0028】
図4Dに示される例では、同様の原理が利用される。この場合、熱ランプ又はレーザーなどの光源70がエネルギーフィルタ25の近傍に配置され、これは、エネルギーフィルタ25を加熱するために熱放射をエネルギーフィルタ25に向かって放射する。光源70は、ハウジングの外側に配置され、且つハウジング内のウィンドウを通して放射することもできる。
図4Dは、光源70の単一のもののみを示すが、エネルギーフィルタ25の均一な加熱を可能にするために複数の光源70が存在し得ることを理解されたい。また、エネルギーフィルタ25の異なる側に光源70の異なるものが存在し得る。
【0029】
図4Eに示される更なる例では、別個にフレーム27を加熱するために、別個の加熱素子80がフレーム27の周りに配置される。
【0030】
図4A~
図4Eに示される追加的な加熱素子及びその形状は、本発明を限定するものではなく、エネルギーフィルタ25の膜内の局所的な温度差を低減するためにエネルギーフィルタ25を加熱するように、他の加熱素子及び形状を利用することができる。これは、エネルギーフィルタ25内の熱応力を低減し、従ってエネルギーフィルタ25の寿命を増大させる。異なる加熱素子の2つ以上を組み合わせることが可能であろうことを理解されたい。
【0031】
エネルギーフィルタ25の加熱は、エネルギーフィルタ25の膜材料内にトラップされたガス粒子の欠陥又は拡散のアニーリングに起因して、エネルギーフィルタ25の特性の変化をもたらし得ることを理解されたい。アニーリングは、欠陥が修復される点で有益であり得る。特性を変更することが可能であり、エネルギーフィルタ25を非常に迅速に(約数ミリ秒で)加熱し、次いでイオンビーム10がオフにされた後にエネルギーフィルタ25を冷却することによって最小限にされ得る。この場合、エネルギーフィルタ25の膜の材料内で誘発された任意の欠陥は、膜材料内において、エネルギーの観点で好ましい位置に移動するための時間を有さず、エネルギーフィルタ25の膜材料内で事実上「凍結」されるであろう。一方で、欠陥の修復を要する場合、エネルギーフィルタ27をより低速で加熱するか、又はエネルギーフィルタ27をより長い時間にわたって上昇した温度に維持することが必要となり得る。
図4A~
図4Eに示される追加的な加熱素子は、エネルギーフィルタ27を加熱するための示差的な温度プロファイルの生成を可能にする。
【0032】
エネルギーフィルタ25は、バルク材料から又は基材上に材料を堆積させることにより生成される。当技術分野において、既知のいくつかの方法が存在する。例えば、フォトリソグラフィ、eビームリソグラフィ又はレーザービームリソグラフィなどのパターン化技法を使用することにより、マスクを基材上に生成することができる。マスクは、フォトレジスト、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、クロミウム又は他の材料から製造される。ウェット化学エッチング技法は、例えば、水酸化カリウム、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)及び他の異方性エッチング溶液、プラズマエッチング技法及びイオンビームエッチングを使用する。
【0033】
ここで、
図1を参照して示されるものと類似の堆積プロファイルを提供するための、イオンビーム源5から基材材料30内へのイオンの注入のための方法について、
図5を参照して説明する。第1のステップ500では、エネルギーフィルタ25は、少なくとも既定の温度に予熱される。既定の温度は、好ましくは、イオンビーム10(
図3を参照されたい)の通過に起因するエネルギーフィルタ25の温度の上昇が低減されるように選択される。既定の温度は、例えば、200℃~500℃(又は他の態様では400℃)の範囲であり得るが、これは、本発明を限定するものではない。エネルギーフィルタ25の異なる部分を示差的に加熱することも可能であろう。
【0034】
ステップ510では、イオンビーム10は、
図1に示されるように、基材材料30内にイオンを注入するために、既定の長さの時間にわたり、エネルギーフィルタ25を通して基材材料30に誘導される。この段階では、(膜及びフレーム27を含むか又は膜とフレームとの間の)エネルギーフィルタ25内の温度勾配を低減するために、エネルギーフィルタ25を加熱することもできる。最後に、ステップ520では、エネルギーフィルタ25が冷却される。予熱ステップ500及び冷却ステップ520は、均一に実行される必要はない。上述のように、必要に応じて異なる温度プロファイルを設計することができる。
【0035】
一態様では、エネルギーフィルタ25の冷却は、熱放射によって実行される。エネルギーフィルタ25をより迅速に冷却するために、エネルギーフィルタ25又はイオン注入装置のハウジング内で冷却流体を使用することも可能であろう。エネルギーフィルタ25の冷却については、例えば、同時に出願された本出願人の特許出願第xxxx号明細書に教示されている。
【0036】
更なる態様では、ステップ530において、その後、注入プロセスが完了した後、即ちイオンビーム10が除去された後、イオンビーム10によって生じたエネルギーフィルタ25内の欠陥を除去するためにシリコン膜をアニーリングするように、例えば500℃~1100℃の温度にエネルギーフィルタ25を加熱することができる。この注入後の加熱ステップ530は、イオン注入装置内で実行することができるか、又はエネルギーフィルタ25をイオン注入装置から除去することができる。この注入後の加熱ステップ530は、すべての注入実行後、特定の投与値/単位面積に到達した後又は規則的な時間間隔で実行することができる。注入後の加熱ステップ530は、一態様では、膜の可塑性変形を最小化するための急速熱処理ステップである。
【符号の説明】
【0037】
5 イオンビーム源
10 イオンビーム
20 イオン注入装置
21 シリコン層
22 二酸化ケイ素層
23 バルクシリコン
25 エネルギーフィルタ
27 フィルタフレーム
30 基材材料
50 電気接点
55 導電体
60 チャック
65 熱放射
70 光源
80 加熱素子
【国際調査報告】