(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】溜まり形成デバイス
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20230615BHJP
【FI】
C03B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570147
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-01-12
(86)【国際出願番号】 US2021031234
(87)【国際公開番号】W WO2021236353
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】油田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】アランブリユール コマンドゥル,カウシィク
(57)【要約】
ガラス板製造装置及び方法を開示する。本装置は、ガラス送達デバイスと、溜まり形成デバイスであって、ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れの少なくとも一部に接触してその進路を変えるように配置される溜まり形成デバイスと、ガラス送達デバイスから落下して溜まり形成デバイスで進路を変えた流れに目標位置で接触し、流れとの接触を離脱位置で失ってガラスリボンを生成するように構成されるサイドローラと、を備える。溜まり形成デバイスとサイドローラは、目標位置より上流側且つ溜まり形成デバイスとサイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するように互いに相対配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス送達デバイスと、
前記ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスであって、前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れの少なくとも一部に接触してその進路を変えるような向きとされる溜まり形成デバイスと、
中心軸を中心に回転し、前記ガラス送達デバイスから落下して前記溜まり形成デバイスで進路を変えた流れに目標位置で接触し、前記流れとの接触を離脱位置で失ってガラスリボンを生成するように構成されたサイドローラと、
を備えるガラス板製造装置であって、
前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラは、前記目標位置より上流側且つ前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、前記サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するように互いに相対配置され、
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れは、第1の厚さT1を有しており、該第1の厚さT1は、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい、ガラス板製造装置。
【請求項2】
前記サイドローラより下流側に配置され、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンを受けるように構成された一組のエッジホイールと、
前記一組のエッジホイールより下流側に配置され、所望の第3の厚さT3まで前記ガラスリボンを引き伸ばすように構成された一組のプルローラと、をさらに備え、
T2はT3より大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記溜まり形成デバイスが溜まり形成ローラを備え、該溜まり形成ローラはその中心軸を中心に回転するように構成されており、
前記溜まり形成ローラと前記サイドローラとは、それぞれの中心軸を中心に反対方向に回転し、
前記溜まり形成ローラは、前記サイドローラの回転速度と同一速度かそれよりも速い速度で回転する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記溜まり形成デバイスが楔形のゲートを備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記サイドローラに対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に、前記溜まり形成デバイスを位置変更することにより、前記厚さ制御ギャップの寸法を調整可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスが、前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスの表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスをそれぞれ備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れが、約1000℃以上の温度と、200kP以下の液相粘度とを有している、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記サイドローラの前記離脱位置から落下する前記ガラスリボンが、約1000℃以下の温度と、200kP以上の液相粘度とを有している、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記サイドローラは、前記目標位置から前記離脱位置まで前記流れに伴走して回転するように構成され、
前記サイドローラは、前記流れの粘度を上昇させて、前記目標位置における前記流れの粘度が前記離脱位置における前記流れの液相粘度よりも低くなるようにする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ガラス送達デバイスが、尾びれ状の開口部、スロット状の開口部、フュージョン成形アイソパイプ、又は押出炉を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
ガラス送達デバイスから溶融ガラスの流れを送るステップと、
前記ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスに溶融ガラスの前記流れの少なくとも一部を接触させてその進路を変えるステップと、
前記ガラス送達デバイスから落下する前記流れと前記溜まり形成デバイスで進路を変えた前記流れの一部とを、サイドローラにより目標位置で受け、前記流れが前記サイドローラとの接触を失って前記サイドローラから落下する離脱位置からガラスリボンを生成するステップと、
前記目標位置より上流側且つ前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、前記サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するステップと、
を含む、ガラス板製造方法であって、
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れは、第1の厚さT1を有しており、該第1の厚さT1は、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい、ガラス板製造方法。
【請求項12】
前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンを、前記サイドローラより下流側に配置された一組のエッジホイールで受けるステップと、
前記ガラスリボンを、前記一組のエッジホイールより下流側に配置された一組のプルローラで、所望の第3の厚さT3まで引き伸ばすステップと、をさらに備え、
T2はT3よりも大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記溜まり形成デバイスが溜まり形成ローラを備え、該溜まり形成ローラはその中心軸を中心に回転し、前記サイドローラはその中心軸を中心に回転し、
前記溜まり形成ローラと前記サイドローラとは、それぞれの中心軸を中心に反対方向に回転し、
前記溜まり形成ローラは、前記サイドローラの回転速度と同一速度かそれよりも速い速度で回転する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溜まり形成デバイスが非環状のゲートを備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サイドローラに対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に、前記溜まり形成デバイスを位置変更することにより、前記厚さ制御ギャップの寸法を調整可能である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年5月18日を出願日とする米国仮特許出願第63/026266号の米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、製造プロセス時におけるガラスの流れ、温度、及び厚さを制御する装置及び方法に関し、より詳細には、製造プロセス時における、液相粘度の低いガラスの流れ、温度、及び厚さを制御する溜まり形成デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、平面ガラスの製造は、フロートプロセス又はダウンドローフュージョンプロセスで行われてきた。フュージョンプロセスは、耐火材料製のアイソパイプを包むように、制御された状態でガラスを越流させて2つのガラス流を形成することにより進められる。2つのガラス流はアイソパイプに接触した状態を保ったまま、アイソパイプの下端(ルート部)で合流して半固体のガラス板となる。このガラス板の両面は他のどの面とも接触することがないため、清浄なガラス板が得られる。ただ、フュージョンプロセスにより、(平滑性、厚さ、平坦性(平面性)の点で)優れた表面品質を有するガラス板の製造が可能になったものの、フュージョンプロセスは、すべての種類のガラス組成物に適用できるわけではなかった。
【0004】
ガラス板の移動速度は、一般に、ガラス板の辺縁部(margin)に作用する何対かのエッジホイールを基準に設定される。また、アイソパイプより下流側の、ガラス板が十分に冷却されて固化した後の段階で、プルローラを使用することも一般的で、プルローラによって、ガラス板に張力をかけた状態を維持するとともに、所望の厚さまでガラス板を引き伸ばす。ここで、アイソパイプのルート部と接触しているガラス流が高い粘度に保たれていれば、ガラス流は制御可能である。一方、粘度が十分に高くない場合は、重力が粘性力に勝るため、アイソパイプの下端から流れ出る半固体のガラス流に張力をかけることができなくなる。
【0005】
当業者であれば、約200,000ポアズ(P)を上回る粘度を有するガラス組成物でなければ、従来のフュージョンプロセスに使用することができないことを理解するであろう。ガラス組成物の中には、液相粘度の高さが500kPに達するものがあり、そのようなガラス組成物であれば、アイソパイプのルート部での粘度が高く、ルート部で十分に高い張力をかけることができる。ルート部での張力は、ガラスの厚さと粘度の関数である。ルート部での張力が高ければ、厚さ3mmに達する肉厚のガラス板を製造することができる。しかし、液相粘度が約200kPを下回るガラスがアイソパイプに接触すると、ガラス内に結晶が成長してしまうため、所望の品質のガラス板を製造することができない。したがって、1kPの範囲の液相粘度を有するガラス組成物は、アイソパイプのルート部でのガラス粘度を1kP未満に維持する必要があり、よって、ルート部での張力が大幅に低下してしまう。そして、このようにルート部での張力が低いと、欠陥(例えば、膨み反り(baggy warp)など)が発生する恐れがあるため、製造可能な最大ガラス厚も制限される。
【0006】
このような技術的な問題から、従来のフュージョンプロセスは、液相粘度の低いガラス組成物を用いて優れた品質のガラス板を製造するのに適したものではなかった。このようなガラス組成物からガラス板を製造するプロセスの1つが、特許文献1(2004年5月20日公開)に開示されている。なお、当該明細書のすべての内容は、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。このプロセスでは、アイソパイプから流れる半固体のガラスが、アイソパイプのルート部から少し離れた下方に配置される単サイドローラに自由落下する。そして、ガラスの平均粘度を管理するためには、サイドローラに流れるガラス流の厚さと温度が重要となる。例えば、単サイドローラを流れるガラス流の厚さや平均速度が、ガラス流が単サイドローラに到着した位置から変化すると、サイドローラから出るガラスの厚さ方向の形状が変化し、最終ガラス板製品の厚さにばらつきが生じてしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0093900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、サイドローラ上のガラスの厚さや流れを制御することにより、特許文献1に記載の装置及びプロセスを改良するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、ガラス板製造装置が提供される。本装置は、ガラス送達デバイスと、ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスであって、ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れの少なくとも一部に接触してその進路を変えるような向きとされる溜まり形成デバイスと、を備えることができる。サイドローラは、中心軸を中心に回転し、ガラス送達デバイスから落下して溜まり形成デバイスで進路を変えた流れに目標位置で接触し、流れとの接触を離脱位置で失ってガラスリボンを生成するように構成することができる。溜まり形成デバイスとサイドローラは、目標位置より上流側且つ溜まり形成デバイスとサイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するように互いに相対配置される。ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れは、第1の厚さT1を有しており、第1の厚さT1は、サイドローラから落下するガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい。
【0010】
さらなる実施形態は、ガラス板製造方法を含む。本方法は、ガラス送達デバイスから溶融ガラスの流れを送るステップと、ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスに溶融ガラスの流れの少なくとも一部を接触させてその進路を変えるステップと、ガラス送達デバイスから落下する流れと溜まり形成デバイスで進路を変えた流れの一部とを、サイドローラにより目標位置で受け、流れがサイドローラとの接触を失ってサイドローラから落下する離脱位置からガラスリボンを生成するステップと、目標位置より上流側且つ溜まり形成デバイスとサイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するステップと、を含むことができる。ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れは、第1の厚さT1を有しており、第1の厚さT1は、サイドローラから落下するガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい。
【0011】
以下の詳細な説明において、本明細書に開示の実施形態のさらなる特徴及び利点を示す。下記のさらなる特徴及び利点は、当業者であれば、ある程度はその説明から明らかであろうし、あるいは、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、及び添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を実施することによって理解するであろう。
【0012】
上述の概略的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、実施形態を提示するものであり、本明細書に開示する実施形態の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図するものである。また、添付の図面は、さらなる理解のために添付するものであり、本明細書に組み込まれ、その一部をなすものとする。図面は、本開示の種々の実施形態を例示的に示すものであり、以下の詳細な説明と併せて、種々の実施形態の原理及び作用を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】約200kP未満の液相粘度を有するガラス組成物用の従来技術のガラス製造装置の断面図
【
図2】本明細書の実施形態に係る、溜まり形成デバイスを備えたガラス成形装置の断面図
【
図3】本明細書の実施形態に係る、溜まり形成デバイスを備えた他のガラス成形装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示の実施形態について詳細に説明する。添付の図面は、これらの実施形態の例を示すものである。図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。なお、本開示は、多種多様な形態で実施することができるものであり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。
【0015】
本明細書において、「約(about)」という用語は、量、大きさ、配合、パラメータなどの量や特性が、必ずしも厳密なものではなく、厳密にその値である必要もなく、むしろ、公差や、換算係数、端数処理、測定誤差などの当業者に公知の他の因子を必要に応じて織り込んだ、その量や特性の近似値及び/又はそれに前後する値であってもよいことを意味している。
【0016】
本明細書において、「約」ある特定の値以上、「約」ある特定の値~「約」他の特定の値、又は、「約」該他の特定の値以下、という形で範囲を表現する場合がある。このような表現で範囲を表す場合、該ある特定の値~該他の特定の値を含む他の実施形態が存在する。同様に、ある値の前に「約」をつけてその値を近似値として表現する場合、その特定の値自身によって構成される他の実施形態も存在することが理解されるであろう。また、各範囲の両端点が持つ意味は、互いに相関しているとともに互いに独立でもあることも理解されるであろう。
【0017】
本明細書において、方向性のある用語(例えば、上へ(up)、下へ(down)、上方(above)、下方(below)、右(right)、左(left)、前(front)、後(back)、上(top)、下(bottom)、横(laterally)、縦(longitudinally)など)は、図面を参照したものに過ぎず、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0018】
別段の明示的な記載がない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではなく、また、いかなる装置に関しても、特定の向きを要請すると意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合、及び、装置クレームにおいて個々の構成要素の並び順や向きを実際に記載している場合を除き、又は、その他、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲若しくは発明の詳細な説明において明確になされている場合、及び、装置の構成要素の特定の並び順や特定の向きを記載している場合を除き、順序(並び順)や向きが推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの並び、操作の流れ、構成要素の並び順、又は構成要素の向きについての論法の問題、文法的な構成又は句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数又は種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0019】
本明細書において、「a」、「an」、及び「the(その/前記)」で示す単数形は、文脈上明らかに複数形を含まないことが明らかである場合を除き、対応する複数形に対する言及も包含するものとする。したがって、例えば、ある構成要素を冠詞「a」で導く表現は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その構成要素を2つ以上有する態様も包含する。
【0020】
本明細書において、「例示的(exemplary)」や「例(example)」という用語、又はそれらの種々の変化形を用いる場合、例(example)や実例(instance,illustration)として挙げていることを意味している。よって、本明細書において「例示的」又は「例」として記載した態様(aspect)や意匠(design)はいずれも、他より好ましい又は有利な態様や意匠であると解釈すべきではない。さらに、例示は、明確にするためや理解をしてもらうためにのみ行われているのであって、提示した例によって開示する主題又は本開示の関連部分を制限又は限定することを、いかなる形においても意図するものではない。理解されるように、様々な範囲で無数に追加の例や代替の例を提示することができるが、簡潔にするためにそれらを省略している。
【0021】
本明細書において、本明細書において、「備える」「含む」「有する」(comprising,including)という用語、及びその変化形は、特に断りのない限り、オープンエンドな用語として同義的に解釈すべきである。「備える」「含む」「有する」という移行句に続いて要素を列挙する場合、その列挙は非限定的なものであり、この列挙に具体的に記載している要素に加えて、さらに要素が存在する可能性を含意するものである。
【0022】
本明細書において、「実質的な(substantial)」や「実質的に(substantially)」という用語、及びその変化形は、記載した特徴が、値又は記載に等しい又は略等しいことを付記することを意図したものである。例えば、「実質的に平坦な(substantially planar)」面は、平坦又は略平坦な面を指すことを意図している。また、「実質的に」によって、2つの値が等しい又はほぼ等しいことを示すことも意図している。いくつかの実施形態では、「実質的に」によって、互いの誤差が約10%以内である値を示すことができ、例えば、互いの誤差が約5%以内、又は、互いの誤差が約2%以内である値を示すことができる。
【0023】
図1は、先行技術のガラス板製造装置の断面図である。
図1の装置は、溶融ガラスの塊(1)から溶融ガラスの流れ(1a)を供給するためのガラス送達デバイス(200)と、流れが到着する位置(「12時」位置付近)及び流れが離脱する位置(「3時」位置付近)を有する回転可能なサイドローラ(4a)と、を備えている。また、この装置は、サイドローラ(4a)を離脱したガラスリボンの辺縁部に作用する一組のエッジホイール(7)と、エッジホイール(7)より下流側にあり、ガラスリボンの幅全体に作用する一組のプルローラ(8)とをさらに備えている。先行技術のガラス板製造装置及びプロセスは、特許文献1(2004年5月20日公開)に開示されており、当該明細書のすべての内容は、参照することにより本明細書の一部をなすものとする。
図1に示す先行技術の装置は単サイドローラ(4a)を有しているため、送達デバイス(200)からの溶融ガラスはすべてサイドローラ(4a)上に落下する。したがって、ガラス送達デバイス(200)から出るガラス流に変動があると、それがサイドローラから離脱するガラスの厚さ(T)に直接影響し、ガラスの厚さ(T)が変化してしまう。このプロセスは、サイドローラより下流側(例えば、プルローラ8)に厚さ調整機能を有しているが、サイドローラ(4a)の離脱位置から出るガラス流の厚さに何らかの変動があれば、最終ガラス板製品の厚さ方向の形状にも局所的なばらつきが生じてしまう恐れがある。
【0024】
図2及び
図3に示すように、種々の実施形態において、本明細書に開示の改良されたガラス板製造装置(100)及びガラス板製造方法は、特に、溶融ガラスの流れ(101a)を供給するためのガラス送達デバイス(200)と、サイドローラ(104)と、溜まり形成デバイス(102)と、を備えている。いくつかの実施形態では、単サイドローラ(104)が設けられる。
【0025】
なお、ガラス送達デバイス(200)は、特に限定されるものではない。溶融ガラスの流れ(101a)は、任意の適切なガラス送達方法で送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、溶融ガラス(101a)を、坩堝若しくは予め成型された取鍋からバッチ送達することができ、又は、溶融ガラス(101a)を、尾びれ状の開口部、スロット状の開口部、フュージョン成形アイソパイプ、押出炉、傾斜トラフなどからガラスの流れとして連続的に成形ロールに供給することもできる。
【0026】
種々の実施形態において、サイドローラ(104)は、円筒形状を有し、その中心軸(すなわち、ローラの長手方向軸)を中心に回転するように構成されている。サイドローラ(104)は、ローラ自身とこれに接触する溶融ガラスの流れとの間の相対的な動きを相殺するような方向と速度で回転する。したがって、サイドローラ(104)は、溶融ガラスの流れ(101a)を機械的に安定させるために用いられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)は、サイドローラ(104)の表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスを備えている。例えば、いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)は、冷却流体(例えば、空気又は水)を循環させるための1つ以上の内部凹部を有している。かかる実施形態では、サイドローラ(104)の温度を、その表面温度を含めて制御することができるため、制御された形で流れ(101a)を冷却することによって流れの粘度を調整した後に、流れ(101a)がサイドローラ(104)を離脱してエッジホイール(107)に向かうようにすることができる。装置の動作中、離脱位置でのガラスの粘度を維持して、厚さを一定に保つと共に張力変動を最小限に抑えるように、サイドローラ(104)の伝導冷却は一貫して行う必要がある。いくつかの実施形態では、温度調整デバイスは、サイドローラ(104)の温度を、その表面温度を含めて制御することにより、流れ(101a)を所望の粘度に保つための発熱体を備えている。
【0028】
いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)は目標位置(104a)を有しており、この目標位置(104a)で、サイドローラ(104)は、ガラス送達デバイス(200)から落下する流れ(101a)と溜まり形成デバイス(102)で進路を変えた流れの一部とを受ける。いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)は離脱位置(104b)を有しており、この離脱位置(104b)で、流れはサイドローラ(104)との接触を失って、サイドローラ(104)から落下し、ガラスリボン(101b)となる。いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)は、目標位置(104a)から離脱位置(104b)まで流れに伴走して回転するように構成され、サイドローラ(104)は、流れの粘度を上昇させて、目標位置における流れの粘度が離脱位置における流れの粘度よりも低くなるようにする。
【0029】
種々の実施形態において、溜まり形成デバイス(102)は、ガラス送達デバイス(200)より下流側かつ下方に配置され、溜まり形成デバイス(102)の少なくとも一部がサイドローラ(104)より上流側に配置される。溶融ガラスの流れ(101a)が落下することができる、ガラス送達デバイス(200)と溜まり形成デバイス(102)との間の距離(高さ)は、当然ながら制限される。流れが不安定になる前に、それを取り込む必要がある。許容可能な落下高さは、当然ながら、ガラスの組成、送達粘度、流量によって変化する。いくつかの実施形態では、落下高さは、約2ミリメートル(mm)~約150mm、又は約10mm~約100mm、又は約50mm~約80mmの範囲とすることができる。なお、これらの範囲は、端点とその間の量の任意の組み合わせを含む。かかる実施形態では、溜まり形成デバイス(102)は、ガラス送達デバイス(200)から落下する流れ(101a)の少なくとも一部に接触してその進路を変えるように配置、構成されている。また、かかる実施形態では、溜まり形成デバイス(102)とサイドローラ(104)は、その間に厚さ制御ギャップ(110)を形成するように互いに相対配置される。かかる実施形態では、サイドローラ(104)の表面に、余分な溶融ガラスの溜まり(106)ができる。そして、かかる実施形態では、溜まり(106)の位置は、サイドローラ(104)上の目標位置(104a)より上流側、且つサイドローラと溜まり形成デバイス(102)との間の厚さ制御ギャップ(110)より上流側となる。いくつかの実施形態では、溜まり(106)が大きくなり過ぎないように、厚さ制御ギャップ(110)を決定する。いくつかの実施形態では、厚さ制御ギャップ(110)と溜まり(106)の大きさ(又は離脱位置でのガラス温度)との間のフィードバック制御により、厚さ制御ギャップ(110)の設定値を管理することができる。
【0030】
溜まり形成デバイス(102)及びサイドローラ(104)をガラス送達デバイス(200)に対してこのように配置することにより、装置(100)は、重力による下向きの力で、溶融ガラスの流れ(101a)を、送達デバイス(200)から溜まり形成デバイス(102)及びサイドローラ(104)に向かって降下させることができる。いくつかの実施形態では、送達デバイス(200)から出る溶融ガラスの流量を制御する。いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)と溜まり形成デバイス(102)との間の厚さ制御ギャップ(110)によって、サイドローラ(104)の表面上に溜まり(106)が形成される。かかる実施形態では、溜まり(106)により、サイドローラ(104)上の流量を制御された状態とすることができる。換言すれば、厚さ制御ギャップ(110)より上流側に溜まり(106)を維持しながら、サイドローラ(104)が回転することにより、安定したガラス流を実現することができる。かかる実施形態では、サイドローラ(104)が一定の速度で駆動するため、温度が一定となり、所望の粘度を得ることができる。かかる実施形態では、サイドローラ(104)の回転速度は、送達デバイス(200)から出る溶融ガラスの流量から独立している。さらに、いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)の回転速度は、下流で使用されるガラスリボンの厚さ調整のための構成要素(例えば、エッジホイール、プルローラ)からも独立している。
【0031】
いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)の位置及び配置は、調整可能とされる。例えば、いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)は、ガラス送達デバイスの下方に配置されるとともに、サイドローラ(104)に対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に位置変更することができる。サイドローラ(104)から溜まり形成デバイス(102)までの距離を顧慮しながら溜まり形成デバイス(102)の位置や配置を調整することにより、厚さ制御ギャップ(110)の大きさを調整・制御可能とすることができる。かかる実施形態では、サイドローラ(104)と溜まり形成デバイス(102)との間の距離を調整可能とすることにより、厚さ制御ギャップ(110)の長さを調整可能としている。
【0032】
いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)が、溜まり形成デバイス(102)の表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスを備えている。かかる実施形態では、溶融ガラスの塊の中に結晶が核生成されないように、溜まり形成デバイス(102)の温度を適宜調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)は、冷却流体(例えば、空気又は水)を循環させるための1つ以上の内部凹部を有している。いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)は、発熱体を備えている。したがって、かかる実施形態では、溜まり形成デバイス(102)の温度を、その表面温度を含めて制御することができるため、制御された形で流れ(101a)を冷却又は加温することによって流れの粘度を調整した後に、流れ(101a)が溜まり形成デバイス(102)を離脱してサイドローラ(104)及び/又はエッジホイール(107)に向かうようにすることができる。装置の動作中、ガラスを所望の粘度に維持できるように、溜まり形成デバイス(102)の伝導冷却又は加熱は一貫して行う必要がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、
図2に示すように、溜まり形成デバイス(102)は、溜まり形成ローラ(102a)である。かかる実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)は、サイドローラ(104)より上流側に配置されている。いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)は、抗力に応じて、遊び状態又は駆動状態となる。例えば、流れが溜まり形成ローラ(102a)を回転させるのに十分な抵抗を有している場合には、ローラは遊びロールとなり、流れが溜まり形成ローラ(102a)を回転させるのに十分な抵抗を有していない場合は、モータ駆動するようにする。いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)は、円筒形状を有し、その中心軸(すなわち、ローラの長手方向軸)を中心に回転するように構成されている。いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)とサイドローラ(104)とを、流れ(101a)の両側に配置し、それぞれの中心軸を中心に反対方向に回転させる。例えば、いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)が反時計回りに回転して、サイドローラ(104)は時計回りに回転する。また、いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)が時計回りに回転して、サイドローラ(104)は反時計回りに回転する。いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)は、溜まり形成ローラ(102a)とサイドローラ(104)の間の温度/粘度勾配に応じて、サイドローラ(104)の回転速度と同一速度かそれよりも速い速度で回転する。さらに、サイドローラ(104)を出るガラス流の厚さを一定とすることにより、サイドローラ(104)の回転速度を、エッジホイール(107)やプルローラ(108)の設定に係わらず一定速度とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、
図3に示すように、溜まり形成デバイス(102)は、溜まり形成ゲート(102b)である。かかる実施形態では、溜まり形成ゲート(102b)は、サイドローラ(104)より上流側に配置されている。溜まり形成ローラ(102a)と同様に、溜まり形成ゲート(102b)は、サイドローラ(104)を出る溶融ガラスの流れ(101a)の厚さを強制的に一定とすることができる。溜まり形成ゲート(102b)は、任意の適切な大きさと形状を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、溜まり形成ゲート(102b)は、溶融ガラスの流れ(101a)をサイドローラ(104)に向けて案内するのに適した、楔形や矩形などの形状を有している。
【0035】
いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)又は溜まり形成ゲート(102b)が、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)の表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスを備えている。かかる実施形態では、溶融ガラスの塊の中に結晶が核生成されないように、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)の温度を適宜調整することができる。例えば、いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)は、冷却流体(例えば、空気又は水)を循環させるための1つ以上の内部凹部を有している。いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)は、発熱体を備えている。したがって、かかる実施形態では、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)の温度を、その表面温度を含めて制御することができるため、制御された形で流れ(101a)を冷却又は加温することによって流れの粘度を調整した後に、流れ(101a)が溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)を離脱してサイドローラ(104)及び/又はエッジホイール(107)に向かうようにすることができる。装置の動作中、ガラスを所望の粘度に維持できるように、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)の伝導冷却又は加熱は一貫して行う必要がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ(102a)又は溜まり形成ゲート(102b)の位置及び配置は、調整可能とされる。例えば、いくつかの実施形態では、溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)は、ガラス送達デバイスの下方に配置されるとともに、サイドローラ(104)に対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に位置変更することができる。サイドローラ(104)から溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)までの距離を顧慮しながら溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)の位置や配置を調整することにより、厚さ制御ギャップ(110)の大きさを調整・制御可能とすることができる。かかる実施形態では、サイドローラ(104)と溜まり形成ローラ又はゲート(102a、102b)との間の距離を調整可能とすることにより、厚さ制御ギャップ(110)の長さを調整可能としている。
【0037】
いくつかの実施形態では、装置(100)は、サイドローラ(104)より下流側に配置され、サイドローラ(104)から流れてくるガラスリボン(101b)を受けるように構成された一組のエッジホイール(107)を備えている。いくつかの実施形態では、エッジホイール(107)は、ガラスリボン(101b)の辺縁部(すなわち、外縁部)にのみ作用する。かかる実施形態では、辺縁部はその後取り除かれ、最終ガラス製品から排除することができる。いくつかの実施形態では、装置(100)は、一組のエッジホイール(107)より下流側に配置された一組のプルローラ(108)を備えている。いくつかの実施形態では、プルローラ(108)は、ガラスリボン(101b)の幅全体に作用する。いくつかの実施形態では、プルローラ(108)は、最終ガラス製品に所望の厚さまでガラスリボン(101b)を引き伸ばすように構成されている。かかる実施形態では、プルローラ(108)によって、下流側での厚さ調整機能が得られる。
【0038】
図2及び
図3に示すように、種々の実施形態において、改良されたガラス板製造装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、これらの改良された装置及び方法は、約200kP未満、又は約100kP未満、又は約1kP未満の液相粘度値を有するガラス組成物に対して特に有用である。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約1kP~約200kP、又は約1kP~約100kPの範囲の液相粘度値を有する。いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)を追加することにより、ガラスの液相粘度制御性、特にサイドローラ(104)の表面上を流れてサイドローラ(104)から離脱するガラスの液相粘度制御性を高めることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ガラス送達デバイス(200)から目標位置(104a)に向かって落下する溶融ガラスの流れ(101a)は、約1000℃以上の範囲の温度と、約100P~約50kPの範囲の液相粘度とを有している。いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)の表面上に流れ落ちるガラスは、約700℃~約1400℃の範囲の温度と、約1kP~約200kP、又は約1kP~約100kP、又は約100kP~約200kPの範囲の粘度とを有している。いくつかの実施形態では、サイドローラ(104)の離脱位置(104b)から流れ出るガラスリボン(101b)は、約1000℃以下の範囲の温度と、約300kPの液相粘度とを有している。
【0040】
本明細書に開示の改良されたガラス板製造装置及び方法によれば、サイドローラ(104)に流れ落ち、流れ出るガラスの厚さ、温度及び粘度に対する優れた制御性が得られる。いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイス(102)を追加することにより、サイドローラ(104)の表面上を流れるガラスの厚さ制御性を高めることができる。いくつかの実施形態では、ガラス送達デバイス(200)から落下する溶融ガラスの流れ(101a)は第1の厚さ(T1)を有しており、サイドローラ(104)から離脱するガラスリボン(101b)は第2の厚さ(T2)を有している。かかる実施形態では、(T1)は(T2)よりも大きい。いくつかの実施形態では、第2の厚さ(T2)は、厚さ制御ギャップ(110)と等しいか、又は厚さ制御ギャップ(110)より薄い。いくつかの実施形態では、一組のエッジホイール(107)及び一組のプルローラ(108)より下流側において得られるガラスリボン(101c)は、第3の厚さ(T3)を有している。かかる実施形態では、(T2)は(T3)よりも大きい。したがって、いくつかの実施形態では、溜まり形成デバイスによって、ガラス板の厚さの制御性を高めることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ガラス板製造方法は、ガラス送達デバイス(200)から溶融ガラスの流れ(101a)を供給するステップと、ガラス送達デバイス(200)の下に配置される溜まり形成デバイス(102)に溶融ガラスの流れ(101a)を接触させて、これにより、溶融ガラスの流れ(101a)がガラス送達デバイス(200)から落下する際に当該流れの少なくとも一部の進路を変えるステップと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ガラス送達デバイス(200)から落下する流れと溜まり形成デバイス(102)で進路を変えた流れの一部とを、単サイドローラ(104)で延ばして、ガラスリボンとするステップを含んでいる。サイドローラ(104)は、流れを受ける目標位置(104a)と、流れがサイドローラ(104)との接触を失ってサイドローラ(104)から落下する離脱位置(104b)とを有している。いくつかの実施形態では、本方法は、溜まり形成デバイス(102)とサイドローラ(104)との間に厚さ制御ギャップ(110)を形成して、目標位置(104a)より上流側且つ厚さ制御ギャップ(110)より上流側の位置で、サイドローラ(104)の表面上に溶融ガラス(106)の溜まりを形成するステップを含んでいる。いくつかの実施形態では、本方法は、溶融ガラスの流れ(101a)及び溜まり(106)にサイドローラ(104)の表面を伴走させながら、ガラスリボン(101b)を形成するステップを含んでいる。かかる実施形態では、ガラス送達デバイス(200)から落下する溶融ガラスの流れ(101a)は第1の厚さ(T1)を有しており、サイドローラ(104)から落下するガラスリボン(101b)は第2の厚さ(T2)を有しており、(T1)は(T2)よりも大きい。いくつかの実施形態では、本方法は、サイドローラ(104)より下流側に配置され、サイドローラ(104)から落下するガラスリボン(101b)の辺縁部を受けるように構成された一組のエッジホイール(107)と、一組のエッジホイール(107)より下流側に配置され、所望の第3の厚さ(T3)(101c)までガラスリボン(101b)を引き伸ばすように構成された一組のプルローラ(108)と、を設けるステップを含む。かかる実施形態では、(T2)は(T3)よりも大きい。
【0042】
当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本開示の実施形態に種々の変形及び変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、本開示は、そのような変形や変更が添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲を逸脱しない場合に、当該変形や変更も範囲に含むことが意図されている。
【0043】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0044】
実施形態1
ガラス送達デバイスと、
前記ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスであって、前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの流れの少なくとも一部に接触してその進路を変えるような向きとされる溜まり形成デバイスと、
中心軸を中心に回転し、前記ガラス送達デバイスから落下して前記溜まり形成デバイスで進路を変えた流れに目標位置で接触し、前記流れとの接触を離脱位置で失ってガラスリボンを生成するように構成されたサイドローラと、
を備えるガラス板製造装置であって、
前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラは、前記目標位置より上流側且つ前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、前記サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するように互いに相対配置され、
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れは、第1の厚さT1を有しており、該第1の厚さT1は、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい、ガラス板製造装置。
【0045】
実施形態2
前記サイドローラより下流側に配置され、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンを受けるように構成された一組のエッジホイールと、
前記一組のエッジホイールより下流側に配置され、所望の第3の厚さT3まで前記ガラスリボンを引き伸ばすように構成された一組のプルローラと、をさらに備え、
T2はT3より大きい、実施形態1に記載の装置。
【0046】
実施形態3
前記溜まり形成デバイスが溜まり形成ローラを備え、該溜まり形成ローラはその中心軸を中心に回転するように構成されており、
前記溜まり形成ローラと前記サイドローラとは、それぞれの中心軸を中心に反対方向に回転し、
前記溜まり形成ローラは、前記サイドローラの回転速度と同一速度かそれよりも速い速度で回転する、実施形態1に記載の装置。
【0047】
実施形態4
前記溜まり形成デバイスが楔形のゲートを備えている、実施形態1に記載の装置。
【0048】
実施形態5
前記サイドローラに対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に、前記溜まり形成デバイスを位置変更することにより、前記厚さ制御ギャップの寸法を調整可能である、実施形態1に記載の装置。
【0049】
実施形態6
前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスが、前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスの表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスをそれぞれ備えている、実施形態1に記載の装置。
【0050】
実施形態7
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れが、約1000℃以上の温度と、200kP以下の液相粘度とを有している、実施形態1に記載の装置。
【0051】
実施形態8
前記サイドローラの前記離脱位置から落下する前記ガラスリボンが、約1000℃以下の温度と、200kP以上の液相粘度とを有している、実施形態1に記載の装置。
【0052】
実施形態9
前記サイドローラは、前記目標位置から前記離脱位置まで前記流れに伴走して回転するように構成され、
前記サイドローラは、前記流れの粘度を上昇させて、前記目標位置における前記流れの粘度が前記離脱位置における前記流れの液相粘度よりも低くなるようにする、実施形態1に記載の装置。
【0053】
実施形態10
前記ガラス送達デバイスが、尾びれ状の開口部、スロット状の開口部、フュージョン成形アイソパイプ、又は押出炉を備えている、実施形態1に記載の装置。
【0054】
実施形態11
ガラス送達デバイスから溶融ガラスの流れを送るステップと、
前記ガラス送達デバイスの下方に配置される溜まり形成デバイスに溶融ガラスの前記流れの少なくとも一部を接触させてその進路を変えるステップと、
前記ガラス送達デバイスから落下する前記流れと前記溜まり形成デバイスで進路を変えた前記流れの一部とを、サイドローラにより目標位置で受け、前記流れが前記サイドローラとの接触を失って前記サイドローラから落下する離脱位置からガラスリボンを生成するステップと、
前記目標位置より上流側且つ前記溜まり形成デバイスと前記サイドローラとの間の厚さ制御ギャップより上流側の位置において、前記サイドローラの表面に溶融ガラスの溜まりを形成するステップと、
を含む、ガラス板製造方法であって、
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れは、第1の厚さT1を有しており、該第1の厚さT1は、前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンの第2の厚さT2よりも大きい、ガラス板製造方法。
【0055】
実施形態12
前記サイドローラから落下する前記ガラスリボンを、前記サイドローラより下流側に配置された一組のエッジホイールで受けるステップと、
前記ガラスリボンを、前記一組のエッジホイールより下流側に配置された一組のプルローラで、所望の第3の厚さT3まで引き伸ばすステップと、をさらに備え、
T2はT3よりも大きい、実施形態11に記載の方法。
【0056】
実施形態13
前記溜まり形成デバイスが溜まり形成ローラを備え、該溜まり形成ローラはその中心軸を中心に回転し、前記サイドローラはその中心軸を中心に回転し、
前記溜まり形成ローラと前記サイドローラとは、それぞれの中心軸を中心に反対方向に回転し、
前記溜まり形成ローラは、前記サイドローラの回転速度と同一速度かそれよりも速い速度で回転する、実施形態11に記載の方法。
【0057】
実施形態14
前記溜まり形成デバイスが非環状のゲートを備えている、実施形態11に記載の方法。
【0058】
実施形態15
前記サイドローラに対して横方向、縦方向、及び/又は接線方向に、前記溜まり形成デバイスを位置変更することにより、前記厚さ制御ギャップの寸法を調整可能である、実施形態11に記載の方法。
【0059】
実施形態16
前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスが、前記サイドローラ及び/又は前記溜まり形成デバイスの表面の温度を一定に保つように構成された温度調整デバイスをそれぞれ備えている、実施形態11に記載の方法。
【0060】
実施形態17
前記ガラス送達デバイスから落下する溶融ガラスの前記流れが、約1000℃以上の温度と、200kP以下の液相粘度とを有している、実施形態11に記載の方法。
【0061】
実施形態18
前記サイドローラの前記離脱位置から落下する前記ガラスリボンが、約1000℃以下の温度と、200kP以上の液相粘度とを有している、実施形態11に記載の方法。
【0062】
実施形態19
前記サイドローラは、前記目標位置から前記離脱位置まで前記流れに伴走して回転し、
前記サイドローラは、前記流れの粘度を上昇させて、前記目標位置における前記流れの粘度が前記離脱位置における前記流れの粘度よりも低くなるようにする、実施形態11に記載の方法。
【0063】
実施形態20
前記ガラス送達デバイスが、尾びれ状の開口部、スロット状の開口部、フュージョン成形アイソパイプ、又は押出炉を備えている、実施形態11に記載の方法。
【符号の説明】
【0064】
1 溶融ガラスの塊
1a 溶融ガラスの流れ
4a サイドローラ
7 エッジホイール
8 プルローラ
100 ガラス板製造装置
101a 溶融ガラスの流れ
101b、101c ガラスリボン
102 溜まり形成デバイス
102a 溜まり形成ローラ
102b 溜まり形成ゲート
104 サイドローラ
104a 目標位置
104b 離脱位置
106 溶融ガラスの溜まり
107 エッジホイール
108 プルローラ
110 厚さ制御ギャップ
200 ガラス送達デバイス
【国際調査報告】