(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムの動作を制御するための制御装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230615BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230615BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
F25B1/00 341U
F25B1/00 361A
F25B1/00 371F
F25B49/02 520M
F25B1/00 101E
F25B1/00 331E
F25B43/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570413
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018131
(87)【国際公開番号】W WO2021235301
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510048875
【氏名又は名称】ダイキン ヨーロッパ エヌ.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】DAIKIN EUROPE N.V.
【住所又は居所原語表記】Zandvoordestraat 300,Oostende 8400,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】コーネリス,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】河野 聡
(57)【要約】
液側開閉弁(420)と、ガス側開閉弁(460)と、熱源側熱交換器(230)を通過する流体の温度を検出するよう構成される周囲温度検出器(520)と、制御装置(600)と、を有するヒートポンプシステム(100)を提供する。制御装置は、液側開閉弁を閉じるとともにガス側開閉弁を開いた状態で圧縮機(210)を作動させることによって、利用側配管部から熱源側配管部(101)へと冷媒を回収する冷媒回収動作を実行するよう、周囲温度が所定の値以上である場合(S1600:No)、圧縮機回転速度の増加率が、周囲温度が所定の値より低い場合(S1700)の増加率と比較して、低くなるよう(S1800)、圧縮機を制御するように、構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプであって、
圧縮機と、
内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器と、
前記圧縮機の吐出ポートおよび前記熱源側熱交換器のそれぞれに接続される高圧冷媒管と、
前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のそれぞれに接続される液冷媒管と、
前記利用側熱交換器および前記圧縮機の吸入ポートのそれぞれに接続される低圧冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される液側開閉弁と、
前記液冷媒管に配置される膨張機構と、
前記低圧冷媒管に配置されるガス側開閉弁と、
前記熱源側熱交換器を通過する流体の温度を周囲温度として検出するよう構成される周囲温度検出器と、
前記液側開閉弁を閉じるとともに前記ガス側開閉弁を開いた状態で前記圧縮機を作動させることによって、利用側配管部から熱源側配管部へと冷媒を回収する冷媒回収動作を実行するよう、前記ヒートポンプシステムを制御するように構成される制御装置と、
を備え、
前記利用側配管部は、前記液側開閉弁と前記ガス側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも前記利用側熱交換器を含み、
前記熱源側配管部は、前記ガス側開閉弁と前記液側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも前記圧縮機を含み、
前記冷媒回収動作において、前記周囲温度が所定の周囲温度値以上である場合、圧縮機回転速度の増加率が、前記周囲温度が前記所定の周囲温度値より低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して、小さくなるよう、前記制御装置は前記圧縮機を制御するように構成される、
ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記利用側配管部における冷媒漏れの発生を検出するよう構成される冷媒漏出検出器をさらに備え、
前記制御装置は、冷媒漏れの発生が検出されたときに前記冷媒回収動作を実行するよう前記ヒートポンプシステムを制御するように構成されている、
請求項1に記載のヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記熱源側熱交換器は、外気が通過するよう構成されている、
請求項1または2に記載のヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記熱源側熱交換器と前記液側開閉弁との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記ガス側開閉弁と前記圧縮機との間の点で前記低圧冷媒管に接続されるバイパス管と、
前記バイパス管に配置されるバイパス膨張機構と、
前記バイパス管と前記圧縮機との間の点で前記低圧冷媒管に配置されるアキュムレータと、
を更に備え、
前記制御装置は、前記冷媒回収動作において、前記バイパス膨張機構を開くよう制御するように構成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記液冷媒管内を流れる冷媒と前記バイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器をさらに備え、
前記バイパス膨張機構は、前記液冷媒管と前記冷媒熱交換器との間の点で前記バイパス管に配置されている、
請求項4に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
前記圧縮機の前記吐出ポートに接続される吐出側冷媒管と、
前記圧縮機の前記吸入ポートに接続される吸入側冷媒管と、
前記熱源側熱交換器に接続される第一ガス冷媒管と、
前記利用側熱交換器に接続される第二ガス冷媒管と、
冷却モード接続と加熱モード接続とを切り換えるよう構成されるモード切換機構と、
をさらに備え、
前記冷却モード接続では、前記吐出側冷媒管と前記第一ガス冷媒管とが互いに接続されて前記高圧冷媒管を形成するとともに、前記吸入側冷媒管と前記第二ガス冷媒管とが互いに接続されて前記低圧冷媒管を形成し、
前記加熱モード接続では、前記吐出側冷媒管と前記第二ガス冷媒管とが互いに接続されて前記高圧冷媒管を形成するとともに、前記吸入側冷媒管と前記第一ガス冷媒管とが互いに接続されて前記低圧冷媒管を形成し、
前記制御装置は、前記冷媒回収動作が実行されるときには、前記冷却モード接続で動作するよう構成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の蒸発温度を検出するよう構成される蒸発温度検出器をさらに備えており、
前記圧縮機は、前記蒸発温度が目標蒸発温度値に近づくよう、圧縮機回転速度を制御するように構成されており、
前記制御装置は、前記冷媒回収動作が開始されたときには、前記目標蒸発温度値を通常の冷却運転において用いられる目標蒸発温度値と比較して下げるよう構成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項8】
前記冷媒漏出検出器を備える、請求項2~7のいずれか一に記載のヒートポンプシステムであって、
前記圧縮機が動作していない際に冷媒漏れの発生が検出されたとき、前記制御装置が、前記冷媒回収動作において、前記液側開閉弁が閉じそして前記液側開閉弁が閉じた後に前記圧縮機の動作が開始されるよう、前記ヒートポンプシステムを制御するように構成されている、
ヒートポンプシステム。
【請求項9】
前記冷媒漏出検出器を備える、請求項2~8のいずれか一に記載のヒートポンプシステムであって、
前記圧縮機が動作している際に冷媒漏れの発生が検出されたとき、前記制御装置は、前記冷媒回収動作において、前記圧縮機の動作を停止し、前記圧縮機の動作が停止後に第一所定時間が経過したときに冷媒の回収を開始し、前記圧縮機の動作が停止している間に前記液側開閉弁が閉じるよう、前記ヒートポンプシステムを制御するように構成されている、
ヒートポンプシステム。
【請求項10】
前記バイパス膨張機構を備える、請求項8または9に記載のヒートポンプシステムであって、
前記制御装置は、前記冷媒回収動作において、前記圧縮機の動作が停止している間、前記バイパス膨張機構を開くよう制御するように、そして、前記膨張機構が前記熱源側熱交換器と前記バイパス管の間の点に配置される熱源側膨張機構を有する場合には前記熱源側膨張機構を開くよう制御するように構成されている、
ヒートポンプシステム。
【請求項11】
前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される吸入圧力検出器をさらに備え、
前記制御装置は、前記冷媒回収動作において、前記圧縮機が冷媒を回収するよう動作している間に所定のバルブ閉止条件が満たされたときには前記ガス側開閉弁が閉止を開始するよう、前記ヒートポンプシステムを制御するように構成されており、
前記所定のバルブ閉止条件には、前記圧縮機が冷媒を回収するよう動作している間、前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力が、第二所定時間の間、第一所定吸入圧力値より低く保持されていたことが含まれている、
請求項1~10のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記冷媒回収動作において、所定の圧縮機停止条件が満たされたときには前記圧縮機の動作を停止するよう、前記圧縮機を制御するように構成されており、
前記所定の圧縮機停止条件には、
前記高圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力の変化率が、所定吐出圧力変化率値より小さく、かつ前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力の変化率が、前記所定吐出圧力変化率値に等しいまたは異なる所定吸入圧力変化率値よりも小さい第一条件、
前記低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力が、前記第一所定吸入圧力値より低い第二所定吸入圧力値より低い第二条件、
前記圧縮機が冷媒を回収するよう動作を開始した後、第三所定時間が経過した第三条件、
前記ガス側開閉弁の閉止が完了した後、第四所定時間が経過した第四条件、
前記圧縮機の現在の吐出温度が前記圧縮機の先の吐出温度より低く、かつ、前記圧縮機の吐出過熱度が所定過熱度値より低い第五条件、
前記圧縮機の吐出温度が所定吐出温度値より高い第六条件、および
前記ガス側開閉弁の閉止開始後、第五所定時間が経過した第七条件
のうちの少なくとも一つが含まれている、
請求項1~11のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム。
【請求項13】
ヒートポンプシステムの動作を制御するのための制御装置であって、
前記ヒートポンプシステムは、
圧縮機と、
内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される熱源側熱交換器と、
内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される利用側熱交換器と、
前記圧縮機の吐出ポートおよび前記熱源側熱交換器のそれぞれに接続される高圧冷媒管と、
前記熱源側熱交換器および前記利用側熱交換器のそれぞれに接続される液冷媒管と、
前記利用側熱交換器および前記圧縮機の吸入ポートのそれぞれに接続される低圧冷媒管と、
前記液冷媒管に配置される液側開閉弁と、
前記液冷媒管に配置される膨張機構と、
前記低圧冷媒管に配置されるガス側開閉弁と、
前記熱源側熱交換器と前記液側開閉弁との間の点で前記液冷媒管に接続されるとともに、前記ガス側開閉弁と前記圧縮機との間の点で前記低圧冷媒管に接続されるバイパス管と、
前記バイパス管に配置されるバイパス膨張機構と、
前記熱源側熱交換器を通過する流体の温度を周囲温度として検出するよう構成される周囲温度検出器と、
を備えており、
前記制御装置は、前記液側開閉弁を閉じるとともに前記ガス側開閉弁を開いた状態で前記圧縮機を作動させることによって、利用側配管部から熱源側配管部へと冷媒を回収する冷媒回収動作を実行するよう、前記ヒートポンプシステムを制御するように構成されており、
前記利用側配管部は、前記液側開閉弁と前記ガス側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも前記利用側熱交換器を含み、
前記熱源側配管部は、前記ガス側開閉弁と前記液側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも前記圧縮機を含み、
前記冷媒回収動作において、前記周囲温度が所定の周囲温度値以上である場合、圧縮機回転速度の増加率が、前記周囲温度が前記所定の周囲温度値より低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して、低くなるよう、前記制御装置は前記圧縮機を制御するように構成される、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムの動作を制御するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第3115714号明細書は、冷媒回収動作を実行するよう構成されるヒートポンプシステムを提案している。冷媒回収動作においては、液冷媒管に配置されている開閉弁を閉じると同時にガス冷媒管に配置されている開閉弁を開いた状態で、圧縮機を動作させることによって、冷媒は利用側配管部から熱源側配管部へ回収される。
【0003】
しかしながら、冷媒回収動作の際には、圧縮機から放出される冷媒の圧力は過度に高くなる傾向がある。その結果、冷媒回収動作が完了する前に、この高い圧力のために、圧縮機を停止させる必要がある場合もある。一方、このような高い圧力を防止するために圧縮機の回転速度を単に低下させると、圧縮機の吸引力は、冷媒回収動作を完了するには不十分となってしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3115714号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、冷媒回収動作を完了することができるヒートポンプシステムおよびヒートポンプシステムの動作を制御するための制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の第一面では、圧縮機と、熱源側熱交換器と、利用側熱交換器と、高圧冷媒管と、液冷媒管と、低圧冷媒管と、液側開閉弁と、膨張機構と、ガス側開閉弁と、周囲温度検出器と制御装置と、を備えるヒートポンプシステムを提供する。熱源側熱交換器は、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。利用側熱交換器は、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。高圧冷媒管は、圧縮機の吐出ポートおよび熱源側熱交換器のそれぞれに接続される。液冷媒管は、熱源側熱交換器および利用側熱交換器のそれぞれに接続される。低圧冷媒管は、利用側熱交換器および圧縮機の吸入ポートのそれぞれに接続される。液側開閉弁は、液冷媒管に配置される。膨張機構は、液冷媒管に配置される。ガス側開閉弁は、低圧冷媒管に配置される。周囲温度検出器は、熱源側熱交換器を通過する流体の温度を周囲温度として検出するよう構成される。液側開閉弁を閉じるとともにガス側開閉弁を開いた状態で圧縮機を作動させることによって、利用側配管部から熱源側配管部へと冷媒を回収する冷媒回収動作を実行するよう、制御装置はヒートポンプシステムを制御するように構成される。利用側配管部は、液側開閉弁とガス側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも利用側熱交換器を含む。熱源側配管部は、ガス側開閉弁と液側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも圧縮機を含む。冷媒回収動作において、周囲温度が所定の周囲温度値以上である場合、圧縮機回転速度の増加率が、周囲温度が所定の周囲温度値より低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して、低くなるよう、制御装置は圧縮機を制御するように構成される。
【0007】
ヒートポンプシステムにおいては、熱源側熱交換器において冷媒との熱交換する流体の温度が高くなるにつれて、圧縮機から放出される冷媒の圧力も高くなる傾向がある。一方、冷媒回収動作の際には、圧縮機から放出される冷媒の圧力は、その動作の始めに最大(ピーク)となる。流体の温度が高い場合には、放出される冷媒の圧力ピークは過度に高くなるおそれがあり、安全上の理由から保護制御によって圧縮機の動作を停止する必要がある。この点に関して、上記構成によって、熱源側熱交換器を通る流体の温度が比較的高いときには、冷媒回収動作の際の圧縮機回転速度の増加率を制限することができる。これにより、圧力ピークが流体の温度のせいで許容できる上限を超えそうなときには、放出される冷媒の圧力ピークを制限することができ、圧縮機の停止を避けることができる。圧縮機回転速度の増加率が制限される場合であっても、圧縮機回転速度は、長い時間を要するとしても、最終的には同じ所望の圧縮機回転速度に達することができる。したがって、より確実に冷媒回収動作を完了することができる。
【0008】
上述のヒートポンプシステムの好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、利用側配管部における冷媒漏れの発生を検出するよう構成される冷媒漏出検出器を備えることができる。制御装置は、冷媒漏れの発生が検出されたときに冷媒回収動作を実行するよう、ヒートポンプシステムを制御するように構成される。
【0009】
上記構成によって、冷媒漏れが利用側配管部において生じたときには、利用側配管部から冷媒を抜き取ることができる。これにより、さらなる冷媒漏れを防止することができ漏洩箇所の修復を安全に行うことができる。
【0010】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか一に関する好ましい態様では、熱源側熱交換器は、外気が通過できるよう構成される。
【0011】
外気は、容易にかつ安価に利用できるヒートポンプシステムの冷熱源/温熱源の1つである。一方、外気は、地域、季節および時間に応じて大きく変化する傾向がある。この点に関して、上述した通り、本発明にかかる冷媒回収動作は、流体の温度が比較的高い場合であっても完了することができる。したがって、上記構成によって、低コストで冷媒回収動作ができるヒートポンプシステムを得ることができる。
【0012】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、バイパス管と、バイパス膨張機構と、アキュムレータと、を備える。バイパス管は、熱源側熱交換器と液側開閉弁との間の点で液冷媒管に接続されるとともに、ガス側開閉弁と圧縮機との間の点で低圧冷媒管に接続される。バイパス膨張機構は、バイパス管に配置される。アキュムレータは、バイパス管と圧縮機との間の点で低圧冷媒管に配置される。制御装置は、冷媒回収動作において、バイパス膨張機構を開くよう制御するように構成される。
【0013】
上記構成によって、冷媒を利用側配管部から熱源側配管部へ吸い込むとともに、吸い込んだ冷媒を熱源側配管部において循環させることができる。また、冷媒を、熱源側熱交換器にだけでなくアキュムレータにも蓄積することができる。こうして、放出される冷媒の圧力が過度に高くなることを防止しながら、回収する冷媒の量を増やすことができる。さらに、回収する冷媒の量に関係なく、熱源側熱交換器の容量をそれに必要とされる熱交換容量から決定できる。したがって、熱源側熱交換器の寸法および設計を最適化することができる。
【0014】
バイパス管を備える上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、液冷媒管内を流れる冷媒とバイパス管内を流れる冷媒との間で熱交換を行うよう構成される冷媒熱交換器を備える。バイパス膨張機構は、液冷媒管と冷媒熱交換器との間の点でバイパス管に配置される。
【0015】
上記構成によって、冷媒熱交換器と、バイパス管と、バイパス膨張機構は、ヒートポンプシステムにおいて広く用いられているいわゆる過冷却システムとして機能する。過冷却システムのバイパス管およびバイパス膨張機構は、したがって、熱源側配管部において冷媒を循環させるよう利用できる。その結果、低コストで冷媒回収動作ができるヒートポンプシステムを得ることができる。
【0016】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、吐出側冷媒管と、吸入側冷媒管と、第一ガス冷媒管と、第二ガス冷媒管と、モード切換機構とを備える。吐出側冷媒管は、圧縮機の吐出ポートに接続される。吸入側冷媒管は、圧縮機の吸入ポートに接続される。第一ガス冷媒管は、熱源側熱交換器に接続される。第二ガス冷媒管は、利用側熱交換器に接続される。モード切換機構は、冷却モード接続と加熱モード接続との間で切り換えるよう構成される。冷却モード接続では、吐出側冷媒管と第一ガス冷媒管とが互いに接続されて高圧冷媒管を形成するとともに、吸入側冷媒管と第二ガス冷媒管とが互いに接続されて低圧冷媒管を形成する。加熱モード接続では、吐出側冷媒管と第二ガス冷媒管とが互いに接続されて高圧冷媒管を形成するとともに、吸入側冷媒管と第一ガス冷媒管とが互いに接続されて低圧冷媒管を形成する。制御装置は、冷媒回収動作が実行されるときには、冷却モード接続で動作するよう構成される。
【0017】
モード切換機構により、ヒートポンプシステムは、冷却動作と加熱動作との両方を実行することができる。なお、冷媒回収動作では、モード切換機構は、冷却動作の接続状態になければならない。上記構成によってヒートポンプシステムが冷却機能と加熱機能との両方を有する場合であっても、冷媒回収動作を適切に実行することができる。
【0018】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、低圧冷媒管内を流れる冷媒の蒸発温度を検出するよう構成される蒸発温度検出器を備える。圧縮機は、蒸発温度が目標蒸発温度値に近づくよう、圧縮機回転速度を制御するように構成される。制御装置は、冷媒回収動作が開始されたときには、目標蒸発温度値を、通常の冷却動作において用いられる目標蒸発温度値と比較して下げるよう構成される。
【0019】
目標蒸発温度値に基づいて圧縮機回転速度を制御することによって、ヒートポンプシステムの性能を最適化できる。上記構成によって目標蒸発温度値を単に変更することによって、圧縮機を冷媒回収動作で容易に動作させ続けることができる。
【0020】
冷媒漏出検出器を備える上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、圧縮機が動作していない際に冷媒漏れの発生が検出されたとき、制御装置は、冷媒回収動作において、液側開閉弁を閉じ、そして液側開閉弁が閉じた後に圧縮機の動作が開始されるよう、ヒートポンプシステムを制御するように構成される。
【0021】
圧縮機を動作させながら液側開閉弁を閉じる場合には、液側開閉弁において圧力差が生じ、そのため、完全に閉じることがより困難になる。この点に関して、上記構成によって、冷媒を回収する圧縮機の動作は、液側開閉弁が閉じた状態で、開始される。これにより、速やかにかつ効率的に冷媒の回収を開始でき、液側開閉弁における冷媒の流れを適切に遮断することができる。
【0022】
冷媒漏出検出器を備える上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、圧縮機の動作中に冷媒漏れの発生が検出されたとき、制御装置は、冷媒回収動作において、圧縮機の動作を停止し、圧縮機の動作の停止後に第一所定時間が経過したときに冷媒の回収を開始し、圧縮機の動作が停止している間に液側開閉弁が閉じるよう、ヒートポンプシステムを制御するように構成される。
【0023】
圧縮機を動作させながら液側開閉弁を閉じる場合には、液側開閉弁において圧力差が生じ、そのため、完全に閉じることがより困難になる。この点に関して、上記構成によって、冷媒を回収する圧縮機の動作は、液側開閉弁が閉じた状態で、開始される。これにより、圧縮機が動作している間に冷媒漏れが発生した場合であっても、液側開閉弁における冷媒の流れを適切に遮断することができる。また、圧縮機の動作の停止が第一所定時間保持されるので、圧縮機が動作を開始する前に液側開閉弁の閉止を完了することができる。
【0024】
バイパス膨張機構を備える上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、冷媒回収動作において、圧縮機の動作が停止されている間バイパス膨張機構を開くよう制御するように、そして、膨張機構が熱源側熱交換器とバイパス管との間の点に配置される熱源側膨張機構を有する場合には熱源側膨張機構を開くよう制御するように、制御装置は構成される。
【0025】
上記構成によって冷媒を回収する圧縮機の動作は、バイパス膨張機構と熱源側膨張機構とが開いている状態で、開始される。こうして、速やかにかつ効率的に熱源側配管部において冷媒の循環を開始することができる。
【0026】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、ヒートポンプシステムは、さらに、低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力を検出するよう構成される吸入圧力検出器を備える。冷媒回収動作において、圧縮機が冷媒を回収するよう動作している間に所定のバルブ閉止条件が満たされたときにはガス側開閉弁が閉止を開始するよう、制御装置はヒートポンプシステムを制御するように構成される。所定のバルブ閉止条件には、圧縮機が冷媒を回収するよう動作している間、低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力が、第二所定時間の間、第一所定吸入圧力値より低く保持されていたことが含まれる。
【0027】
上記構成によって、低圧冷媒管の圧力が十分に低くなったときに、つまり、冷媒が利用側配管部から熱源側配管部へと十分に回収されたときに、低圧冷媒管の冷媒の流れを遮断することができる。これにより、冷媒を十分に回収しながら、ガス側開閉弁をより早く閉じ、したがって、圧縮機の動作をより早く停止させることができる。
【0028】
上述のヒートポンプシステムのうちのいずれか1つに関するさらなる他の好ましい態様では、制御装置は、冷媒回収動作において、所定の圧縮機停止条件が満たされたときには圧縮機の動作が停止するよう圧縮機を制御するように構成される。所定の圧縮機停止条件には、第一条件~第七条件のうちの少なくとも一つが含まれる。第一条件は、高圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力の変化率が、所定吐出圧力変化率値より小さく、かつ低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力の変化率が、所定吐出圧力変化率値に等しいまたは異なる、所定吸入圧力変化率値よりも小さいことである。第二条件は、低圧冷媒管内を流れる冷媒の圧力が、第一所定吸入圧力値より低い、第二所定吸入圧力値より低いことである。第三条件は、圧縮機が冷媒を回収するよう動作を開始した後、第三所定時間が経過したことである。第四条件は、ガス側開閉弁の閉止が完了した後、第四所定時間が経過したことである。第五条件は、圧縮機の現在の吐出温度が圧縮機の先の吐出温度より低く、かつ、圧縮機の吐出過熱度が所定過熱度値より低いことである。第六条件は、圧縮機の吐出温度が所定吐出温度値より高いことである。第七条件は、ガス側開閉弁の閉止開始後、第五所定時間が経過したことである。
【0029】
上記構成によって適切なタイミングで冷媒回収動作を完了するよう圧縮機の動作を停止させることができる。例えば、低圧冷媒管を介して熱源側配管部から利用側配管部へと冷媒が戻る方向に流れるのを防止できる状態にヒートポンプシステムがあるときに、かつ/または、安全上の理由等のために圧縮機の動作を停止させる必要があるときに、圧縮機の動作を停止させることができる。
【0030】
本発明の第二面では、圧縮機と、熱源側熱交換器と、利用側熱交換器と、高圧冷媒管と、液冷媒管と、低圧冷媒管と、液側開閉弁と、膨張機構と、ガス側開閉弁と、バイパス管と、バイパス膨張機構と、周囲温度検出器と、を備えるヒートポンプシステムの動作を制御する制御装置を提供する。熱源側熱交換器は、内部を流れる冷媒と、通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。利用側熱交換器は、内部を流れる冷媒と、過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。高圧冷媒管は、圧縮機の吐出ポートおよび熱源側熱交換器のそれぞれに接続される。液冷媒管は、熱源側熱交換器および利用側熱交換器のそれぞれに接続される。低圧冷媒管は、利用側熱交換器および圧縮機の吸入ポートのそれぞれに接続される。液側開閉弁は、液冷媒管に配置される。膨張機構は、液冷媒管に配置される。ガス側開閉弁は、低圧冷媒管に配置される。バイパス管は、熱源側熱交換器と液側開閉弁との間の点で液冷媒管に接続されるとともに、ガス側開閉弁と圧縮機との間の点で低圧冷媒管に接続される。バイパス膨張機構は、バイパス管に配置される。周囲温度検出器は、熱源側熱交換器を通過する流体の温度を周囲温度として検出するよう構成される。制御装置は、液側開閉弁を閉じるとともにガス側開閉弁を開いた状態で圧縮機を作動させることによって、利用側配管部から熱源側配管部へと冷媒を回収する冷媒回収動作を実行するよう、ヒートポンプシステムを制御するように構成される。利用側配管部は、液側開閉弁とガス側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも利用側熱交換器を含む。熱源側配管部は、ガス側開閉弁と液側開閉弁との間に延設されるとともに、少なくとも圧縮機を含む。制御装置は、冷媒回収動作において、周囲温度が所定の周囲温度値以上である場合、圧縮機回転速度の増加率が、周囲温度が所定の周囲温度値より低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して低くなるよう、圧縮機を制御するように構成される。
【0031】
ヒートポンプシステムにおいては、熱源側熱交換器において冷媒と熱交換する流体の温度が高くなるにつれて、圧縮機から放出される冷媒の圧力も高くなる傾向がある。一方、冷媒回収動作の際には、圧縮機から放出される冷媒の圧力は、その動作の始めに最大となる。流体の温度が高い場合には、放出される冷媒の圧力ピークは過度に高くなるおそれがあり、安全上の理由から保護制御によって圧縮機の動作を停止する必要がある。この点に関して、上記構成によって、熱源側熱交換器を通る流体の温度が比較的高いときには、冷媒回収動作の際の圧縮機回転速度の増加率を制限するよう、ヒートポンプシステムを制御することができる。これにより、圧力ピークが流体の温度のせいで許容できる上限を超えそうなときには、放出される冷媒の圧力ピークを制限することができ、圧縮機の停止を避けることができる。圧縮機回転速度の増加率が制限される場合であっても、圧縮機回転速度は、長い時間を要するとしても、最終的には同じ所望の圧縮機回転速度に達することができる。したがって、より確実にヒートポンプシステムの冷媒回収動作を完了することができる。また、本発明にかかる制御装置を既存のヒートポンプシステムに単に適用することによって、上記の効果を既存のヒートポンプシステムにおいて達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す制御装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置によって実行される冷媒回収動作のプロセスを示すフローチャートの第一部分である。
【
図4】
図4は、制御装置によって実行される冷媒回収動作のプロセスを示すフローチャートの第二部分である。
【
図5】
図5は、圧縮機停止条件として用いる条件の例を示す表である。
【
図6】
図6は、好ましい実施態様にかかるヒートポンプシステムの第一変形例の概略構成図である。
【
図7】
図7は、好ましい実施態様にかかるヒートポンプシステムの第二変形例の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明にかかるヒートポンプシステムの好ましい実施形態(以下「本実施形態」という)を、図面を参照して、説明する。例えば、本実施形態にかかるヒートポンプシステムは、冷却運転と加熱運転とが可能なR32冷媒を用いる空気調節システムである。
<システムの回路構成>
【0034】
図1は、本実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略的構成図である。
【0035】
図1に示す通り、ヒートポンプシステム100は、圧縮機210と、モード切換機構220と、熱源側熱交換器230と、利用側熱交換器240と、アキュムレータ250とを備えている。熱源側熱交換器230は、熱源側ファン231を備えてもよい。また、利用側熱交換器240は、利用側ファン241を備える。
【0036】
また、ヒートポンプシステム100は、吐出側冷媒管310と、第一ガス冷媒管320と、液冷媒管330と、第二ガス冷媒管340と、吸入側冷媒管350と、を備える。吐出側冷媒管310は、圧縮機210の吐出ポートおよびモード切換機構220のそれぞれに接続される。第一ガス冷媒管320は、モード切換機構220および熱源側熱交換器230のそれぞれに接続される。液冷媒管330は、熱源側熱交換器230および利用側熱交換器240のそれぞれに接続される。第二ガス冷媒管340は、利用側熱交換器240およびモード切換機構220のそれぞれに接続される。吸入側冷媒管350は、モード切換機構220および圧縮機210の吸入ポートのそれぞれに接続される。アキュムレータ250は、吸入側冷媒管350に配置される。
【0037】
ヒートポンプシステム100は、さらに、熱源側膨張機構410と、液側開閉弁420と、液側ストップバルブ430と、利用側膨張機構440と、ガス側ストップバルブ450と、ガス側開閉弁460とを備える。熱源側膨張機構410、液側開閉弁420、液側ストップバルブ430および利用側膨張機構440は、この順で、熱源側熱交換器230から利用側熱交換器240へと向かう方向に沿って液冷媒管330に配置される。ガス側ストップバルブ450およびガス側開閉弁460は、この順で、利用側熱交換器240からモード切換機構220へと向かう方向に沿って第二ガス冷媒管340に配置される。熱源側膨張機構410および利用側膨張機構440は、それぞれ、本発明にかかる膨張機構に対応する。
【0038】
ヒートポンプシステム100は、さらに、冷媒熱交換器260と、バイパス管360と、バイパス膨張機構470と、を備える。冷媒熱交換器260は、熱源側膨張機構410と液側開閉弁420との間の位置で液冷媒管330に配置される。バイパス管360は、液冷媒管330および吸入側冷媒管350のそれぞれに、利用側熱交換器240と並列に、接続される。より具体的には、バイパス管360は、熱源側膨張機構410と冷媒熱交換器260との間の点で液冷媒管330に接続されるとともに、モード切換機構220とアキュムレータ250との間の点で吸入側冷媒管350に接続される。バイパス管360の一部は、冷媒熱交換器260に配置される。バイパス膨張機構470は、液冷媒管330と冷媒熱交換器260との間の点でバイパス管360に配置される。
【0039】
ヒートポンプシステム100は、さらに、吐出側冷媒状態検出器510と、周囲温度検出器520と、冷媒漏出検出器530と、吸入側冷媒状態検出器540と、を備える。吐出側冷媒状態検出器510は、吐出側冷媒管310に取り付けられる。周囲温度検出器520は、熱源側熱交換器230の近傍に配置される。冷媒漏出検出器530は、利用側熱交換器240の近傍に配置される。吸入側冷媒状態検出器540は、アキュムレータ250と圧縮機210との間の点で吸入側冷媒管350に取り付けられる。吸入側冷媒状態検出器540は、本発明にかかる蒸発温度検出器および吸入圧力検出器のそれぞれに対応する。
【0040】
ヒートポンプシステム100はさらに制御装置(コントローラ)600を備える。制御装置600は、有線/無線通信経路(図示せず)によって、上記の各機器のそれぞれに接続される。
【0041】
ヒートポンプシステム100は、熱源側ユニット110と利用側ユニット120とを別々のユニットとして有することができる。例えば、熱源側ユニット110は屋外に配置されるユニットであり、利用側ユニット120は空調すべき対象空間内にまたは近くに配置されるユニットである。この場合には、少なくとも、圧縮機210、ガス側開閉弁460、液側開閉弁420および制御装置600は、熱源側ユニット110に配置され、そして、少なくとも利用側熱交換器240は利用側ユニット120に配置される。
【0042】
本実施形態において、液冷媒管330および第二ガス冷媒管340は、熱源側ユニット110と利用側ユニット120との間に延設される。上述の各機器のうち利用側膨張機構440、利用側熱交換器240、利用側ファン241および冷媒漏出検出器530は、利用側ユニット120に配置され、そして、他の機器は熱源側ユニット110に配置される。制御装置600を、利用側ユニット120に配置される副制御装置(サブコントローラ)(図示せず)を介して利用側ユニット120の各機器に接続することもできる。利用側ユニット120のサブコントローラを制御装置600の一部と言うこともできる。
<各機構の機能>
【0043】
圧縮機210は、吸入ポートおよび吐出ポートを有するとともに、吸入ポートを介して冷媒を吸入し、吸入した冷媒を内部で圧縮し、吐出ポートから圧縮した冷媒を吐出するよう構成される。
【0044】
モード切換機構220は、冷却モード接続と加熱モード接続とを切り換えるよう構成される。冷却モード接続では、モード切換機構220は、吐出側冷媒管310と第一ガス冷媒管320とを互いに接続してこれにより高圧冷媒管を形成するとともに、吸入側冷媒管350と第二ガス冷媒管340とを互いに接続してこれにより低圧冷媒管を形成する。加熱モード接続ではモード切換機構220は、吐出側冷媒管310と第二ガス冷媒管340とを互いに接続してこれにより高圧冷媒管を形成するとともに、吸入側冷媒管350と第一ガス冷媒管320とを互いに接続してこれにより低圧冷媒管を形成する。ここで、高圧冷媒管は、圧縮機210の吐出ポートおよび熱源側熱交換器230のそれぞれに接続される管(流路)であり、低圧冷媒管は、利用側熱交換器240および圧縮機210の吸入ポートのそれぞれに管(流路)である。モード切換機構220を四方切換弁とすることができる。
【0045】
熱源側熱交換器230は、冷媒が、第一ガス冷媒管320から流入し、液冷媒管330へと流れることができるよう、また逆方向にも流れることができるよう構成される。また、熱源側熱交換器230は、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。本実施形態において、熱源側熱交換器230は、外気が通過できるよう構成される。熱源側ファン231は、熱源側熱交換器230を通過する空気の流れを促進するよう構成される。
【0046】
利用側熱交換器240は、冷媒が、液冷媒管330に流入し、第二ガス冷媒管340へと流れることができるよう、また逆方向にも流れることができるよう構成される。また、利用側熱交換器240は、内部を流れる冷媒と通過する流体との間で熱交換を行うよう構成される。本実施形態において、利用側熱交換器240は、対象空間内の室内空気および/または外気が通過するよう構成される。利用側ファン241は、利用側熱交換器240を通過する空気の流れを促進するよう構成される。利用側熱交換器240を通過した空気は対象空間へと供給される。
【0047】
アキュムレータ250は、アキュムレータ260へと流入する冷媒からガス冷媒を分離して、分離したガス冷媒を送出するよう構成される。また、アキュムレータ250は、ヒートポンプシステム100のヒートポンプ回路における過剰な冷媒を蓄積するよう、構成される。
【0048】
冷媒熱交換器260は、液冷媒管330内を流れる冷媒と、バイパス管360内へと流れてバイパス膨張機構470によって減圧されて膨張した冷媒と、の間で熱交換が行われるよう構成される。冷媒熱交換器260は、液冷媒管330の一部およびバイパス管360の一部をそれぞれ形成し、それらの間で熱伝導を行う二つの流路を有することができる。
【0049】
熱源側膨張機構410は、熱源側膨張機構410が部分的に開いているときには、熱源側膨張機構410を通って流れる冷媒を減圧して膨張させるよう、構成される。より具体的には、ヒートポンプシステム100の加熱運転中には、熱源側膨張機構410は、制御装置600による制御によって、利用側熱交換器240から熱源側熱交換器230へと液冷媒管330内を流れる冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。熱源側膨張機構410を電気膨張弁とすることができる。
【0050】
液側開閉弁420は、液側開閉弁を通る冷媒の流れを調整するよう構成される。より具体的には、液側開閉弁420は、制御装置600による制御によって、液側開閉弁420が全閉となったときには、液冷媒管330の少なくとも一部の冷媒の流れを遮断する。液側開閉弁420を電気膨張弁とすることができる。
【0051】
液側ストップバルブ430は、閉じるよう手動で操作されたとき、液側ストップバルブ430を通る冷媒の流れを停止するよう構成される。閉じるよう手動で操作されない限り、液側ストップバルブ430は全開に保持される。液側ストップバルブ430を、ヒートポンプ回路への冷媒の充填やヒートポンプ回路からの冷媒の放出を可能にしながら開いた状態と閉じた状態との間で切り換えられるよう構成される、サービスバルブとすることもできる。
【0052】
利用側膨張機構440は、利用側膨張機構440が部分的に開いているときには、利用側膨張機構を通って流れる冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。より具体的には、ヒートポンプシステム100の冷却運転中には、利用側膨張機構440は、制御装置600による制御によって、熱源側熱交換器230から利用側熱交換器240へと液冷媒管330内を流れる冷媒を減圧して膨張させるよう構成される。利用側膨張機構440を電気膨張弁とすることができる。
【0053】
ガス側ストップバルブ450は、閉じるよう手動で操作されたとき、ガス側ストップバルブを通る冷媒の流れを停止するよう構成される。閉じるよう手動で操作されない限り、ガス側ストップバルブ450は全開に保持される。液側ストップバルブ430を、ヒートポンプ回路への冷媒の充填やヒートポンプ回路からの冷媒の放出を可能にしながら開いた状態と閉じた状態との間で切り換えられるよう構成される、サービス・バルブとすることもできる。
【0054】
ガス側開閉弁460は、ガス側開閉弁を通る冷媒の流れを調整するよう構成される。より具体的には、ガス側開閉弁460は、制御装置600による制御によって、ガス側開閉弁460が全閉になったときには、液冷媒管330の少なくとも一部の冷媒の流れを遮断する。ガス側開閉弁460を電気膨張弁とすることができる。
【0055】
一般に、第二ガス冷媒管340の直径は、液冷媒管330の直径より大きい。したがって、ガス側開閉弁460のCv値は、液側開閉弁420のCv値より大きい。例えば、ガス側開閉弁460のCv値は、液側開閉弁420のCv値より5倍以上大きい。ガス側開閉弁460のCv値を5とすることができ、液側開閉弁420のCv値を0.6とすることができる。この場合、熱源側膨張機構410のCv値を0.3とすることができる。
【0056】
バイパス膨張機構470は、バイパス膨張機構470が部分的に開いているときには、バイパス膨張機構を通って流れる冷媒を減圧して膨張させるよう、構成される。より具体的には、ヒートポンプシステム100が冷却運転中で、後述する冷媒回収動作において動作している際には、バイパス膨張機構470は、制御装置600による制御によって、液冷媒管330から吸入側冷媒管350へとバイパス管360内を流れる冷媒を減圧して膨張させるよう、構成される。バイパス膨張機構470を電気膨張弁とできる。
【0057】
以下の説明においては、熱源側膨張機構410、液側開閉弁420、利用側膨張機構440、ガス側開閉弁460およびバイパス膨張機構470を、必要に応じて集合的に「制御弁」と呼ぶ。
【0058】
吐出側冷媒管310内を流れる冷媒の圧力および/または温度を検出し、検出した圧力(以下「吐出圧力Pc」という)および/または検出した温度(以下「吐出温度Tdi」という)を示す吐出側冷媒情報を制御装置600へと連続的にまたは定期的に送信するよう、吐出側冷媒状態検出器510は構成される。任意選択的にまたは追加的に、検出した吐出圧力Pcおよび/または吐出温度Tdiが所定量変化したとき、かつ/または、制御装置600からの要求の受信に応じて、吐出側冷媒状態検出器510は、吐出側冷媒情報を送信してもよい。吐出側冷媒状態検出器510は、容量圧力センサおよび/またはサーミスタとすることができる。
【0059】
周囲温度検出器520は、熱源側熱交換器230を通過する流体(外気)の温度を検出し、検出温度(以下「周囲温度Ta」という)を示す周囲温度情報を、制御装置600へと連続的にまたは定期的に送信するよう、構成される。任意選択的にまたは追加的に、検出した温度Taが所定量変化したとき、かつ/または、制御装置600からの要求の受信に応じて、周囲温度検出器520は周囲温度情報を送信してもよい。周囲温度検出器520を、熱源側熱交換器230の上流側の、熱源側熱交換器230を通過する外気の空気流路に配置されるサーミスタとすることができる。言い換えれば、周囲温度検出器520は、熱源側熱交換器230の冷媒と熱交換することになる流体の温度を検出するよう、構成される。
【0060】
冷媒漏出検出器530は、利用側ユニット120の冷媒漏れの発生を検出し、冷媒漏れ情報を制御装置600へと連続的にまたは定期的に送信するよう、構成される。冷媒漏れ情報は、利用側ユニット120において冷媒漏れが発生した(以下では単に「冷媒漏れ」という)か否か示す情報である。任意選択的にまたは追加的に、冷媒漏出検出器530は、冷媒漏れが発生したときに冷媒漏れ情報を送信することもできる。
【0061】
冷媒漏出検出器530を、ヒートポンプシステム100において用いられる冷媒に反応する半導体ガスセンサとすることができる。この場合、冷媒漏出検出器530は、冷媒漏出検出器530の周囲の空気の冷媒の濃度を検出し、検出した濃度を示す検出値を冷媒漏れ情報として出力する。検出値が所定閾値よりも大きいか否かに応じて、冷媒漏れが発生したか否かが示される。冷媒漏出検出器530は、利用側ユニット120にまたは対象空間に配置される。冷媒が空気より重い場合、例えばR32冷媒である場合、冷媒漏出検出器530は好ましくは、利用側熱交換器240が配置される空気室(エアチャンバ、図示せず)の内側底面上にまたは近傍に配置される。
【0062】
吸入側冷媒状態検出器540は、吸入側冷媒管350内を流れる冷媒の圧力を検出し、吸入側冷媒管350内を流れる冷媒の蒸発温度を検出するよう構成される。吸入側冷媒状態検出器540はさらに、検出した圧力(以下「吸入圧力Pe」という)および検出した蒸発温度TeSを示す吸入側冷媒情報を制御装置600へと連続的にまたは定期的に送信するよう構成される。任意選択的にまたは追加的に、検出した吸入圧力Peおよび/または蒸発温度TeSが所定量変化したとき、かつ/または制御装置600からの要求の受信に応じて、吸入側冷媒状態検出器540は吸入側冷媒情報を送信することもできる。
【0063】
吸入側冷媒状態検出器540には、吸入側冷媒管350内を流れる冷媒の圧力を検出する静電容量式圧力センサと、吸入側冷媒管350内を流れる冷媒の温度を検出するよう構成されるサーミスタと、を含めることができる。吸入側冷媒状態検出器540はさらに、記憶媒体と計算器とを有することができる。この場合、記憶メモリは、既知の冷媒の圧力とその圧力における冷媒の蒸発温度TeSとの間の相関を示すテーブル情報を予め記憶している。計算器は、検出した圧力とテーブルとに基づいて冷媒の蒸発温度TeSを計算する。なお、この計算を制御装置600によって実行することもできる。
【0064】
以下の説明においては、吐出側冷媒状態検出器510、周囲温度検出器520、冷媒漏出検出器530および吸入側冷媒状態検出器540を、必要に応じて集合的に「センサ」と呼ぶ。
【0065】
ユーザまたは外部コントローラによって行われる命令に応じて冷却モード接続と加熱モード接続との間でモード切換機構220を切り換え、ヒートポンプシステム100の冷却運転および加熱運転を制御するよう、制御装置600は構成される。
【0066】
冷却運転においては、圧縮機210から吐出される冷媒が、熱源側熱交換器230、利用側熱交換器240ならびにバイパス管360のそれぞれ、およびアキュムレータ250を、この順で通って流れて、圧縮機210へと吸引されるよう、制御装置600は、ヒートポンプシステム100の各機器を制御する。
図1に示す矢印は、ヒートポンプシステム100が冷却運転にあるときの冷媒の流れの方向を示す。冷却運転においては、熱源側ユニット110は凝縮器として機能し、利用側ユニット120は蒸発器として機能する。
【0067】
加熱運転においては、圧縮機210から吐出される冷媒が、利用側熱交換器240、熱源側熱交換器230およびアキュムレータ250を、この順で通って流れて、圧縮機210へと吸引されるよう、制御装置600は、各機器を制御する。モード切換機構220が加熱モード接続にあるときには、第一ガス冷媒管320は吸入側冷媒管350の一部であり、第二ガス冷媒管340は吐出側冷媒管310の一部であるということができる。加熱運転においては、熱源側ユニット110は蒸発器として機能し、利用側ユニット120は凝縮器として機能する。
【0068】
制御装置600は、冷媒漏れの発生が検出されたときに冷媒回収動作を実行するようヒートポンプシステム100を制御するように、構成される。冷媒回収動作は、液側開閉弁420を閉じるとともにガス側開閉弁460を開いた状態で圧縮機210を作動させることによって、利用側配管部102から熱源側配管部101へと冷媒を回収する動作である。ここで、熱源側配管部101は、ガス側開閉弁460と液側開閉弁420との間に延設されるとともに、少なくとも圧縮機210を含んでいる配管部分である。また、熱源側配管部101は、熱源側熱交換器230を含む。利用側配管部102は、液側開閉弁420とガス側開閉弁460との間に延設されるとともに、少なくとも利用側熱交換器240を含んでいる配管部分である。
【0069】
本実施形態において、熱源側配管部101は、モード切換機構220に接続される第二ガス冷媒管340の一部と、モード切換機構220と、吸入側冷媒管350と、アキュムレータ250と、圧縮機210と、吐出側冷媒管310と、第一ガス冷媒管320と、熱源側熱交換器230と、熱源側熱交換器230に接続される液冷媒管330の一部と、熱源側膨張機構410と、冷媒熱交換器260と、バイパス管360と、バイパス膨張機構470と、を含む。利用側配管部102は、利用側熱交換器240に接続される液冷媒管330の一部と、液側ストップバルブ430と、利用側膨張機構440と、利用側熱交換器240に接続される第二ガス冷媒管340の一部と、ガス側ストップバルブ450と、を含む。
【0070】
冷媒回収動作においては、利用側配管部102内にある冷媒は、第二ガス冷媒管340を介して圧縮機210の吸入ポートへと吸引され、その後、熱源側熱交換器230とバイパス管360とアキュムレータ250とを通って熱源側配管部101内で循環するよう、制御装置600はヒートポンプシステム100の各機器を制御する。熱源側配管部101内で循環する際、冷媒は、アキュムレータ250および熱源側熱交換器230に蓄積される。
【0071】
制御装置600は、さらに、冷媒回収動作において、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_th以上である場合、圧縮機回転速度の増加率が、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_thより低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して小さくなるよう、圧縮機210を制御するように構成される。ここで、「圧縮機回転速度」は、例えば毎分の回転数で表され圧縮機210の回転速度を意味する。圧縮機回転速度の増加率は、例えば単位時間当たりの圧縮機回転速度の増加した量である。
【0072】
制御装置600は、冷媒回収動作において、圧縮機210が冷媒を回収するよう動作している間に所定のバルブ閉止条件が満たされたときにはガス側開閉弁460が閉止を開始するよう、ヒートポンプシステム100を制御するようにさらに構成される。また、制御装置600は、ガス側開閉弁460の閉止が開始された後に冷媒を回収するための圧縮機210の動作が停止するよう、ヒートポンプシステム100を制御するように構成される。制御装置600に関する詳細は、以下に説明する。
<制御装置の機能的構成>
【0073】
制御装置600は、図示しないが、CPU(中央処理装置)などの演算回路と、CPUによって用いられるRAM(ランダムアクセスメモリ)などの作業メモリと、CPUによって用いられる制御プログラムおよび情報を記憶するROM(読み出し専用メモリ)などの記録媒体と、タイマと、を有する。制御装置600は、ヒートポンプシステム100の動作を制御するために制御プログラムを実行するCPUによって情報処理および信号処理を行うよう構成される。したがって、制御装置600の機能はプログラムの実行によって達成される。
【0074】
図2は、制御装置600の機能的構成を示すブロック図である。
【0075】
図2に示す通り、制御装置600は、記憶部610と、情報入力部620と、通常運転制御部630と、情報出力部640と、冷媒回収制御部650とを有する。
【0076】
記憶部610は、冷媒回収制御部650によって読取り可能な形式で情報を記憶する。記憶する情報には、通常運転制御部630と冷媒回収制御部650とによって用いられる条件および値を含めることができる。記憶する情報を、実験等に基づいて予め準備しておくことができる。
【0077】
情報入力部620は、センサから、ヒートポンプシステム100の動作を制御するために必要な情報を取得し、取得した情報を冷媒回収制御部650へと送信するよう、構成される。さらに、情報入力部620は、取得した情報を通常運転制御部630へ転送することができる。取得すべき情報には、上述した吐出側冷媒情報、周囲温度情報、冷媒漏れ情報および吸入側冷媒情報が含まれる。情報入力部620は、センサのそれぞれと通信するための有線/無線通信インタフェースを有することができる。情報入力部620は、冷媒回収制御部650による制御においては、センサに情報を要求するリクエスト(要求)を送信することもできる
【0078】
通常運転制御部630は、ヒートポンプシステム100の冷却運転および加熱運転を制御するよう、構成される。通常運転制御部630は、冷却運転では、モード切換機構220が冷却モード接続へと切り換わるようにまたは冷却モード接続を維持するよう制御するように、熱源側膨張機構410と液側開閉弁420とガス側開閉弁460とを全開に制御するように、利用側膨張機構440とバイパス膨張機構470とを部分的に開くよう制御するように構成される。通常運転制御部630は、加熱運転では、モード切換機構220が加熱モード接続へと切り換わるようにまたは加熱モード接続を維持するよう制御するように、ガス側開閉弁460と利用側膨張機構440と液側開閉弁420とを全開によう制御するように、熱源側膨張機構410を部分的に開くよう制御するように、バイパス膨張機構470を全閉に制御するように構成される。また、通常運転制御部630は、圧縮機210と熱源側ファン231と利用側ファン241とが冷却運転および加熱運転の両方で動作するよう制御するように構成される。通常運転制御部630は、モード切換機構220、制御弁、圧縮機210、熱源側ファン231および利用側ファン241のそれぞれと通信するための有線/無線通信インタフェースを有することができる。
【0079】
圧縮機210の制御に関して、通常運転制御部630は、蒸発温度TeSが目標蒸発温度値TeS_tgtに近づくよう、圧縮機回転速度を制御するように構成される。ヒートポンプシステム100が冷却運転状態にあるか冷媒回収動作状態にあるかに関わらず、目標蒸発温度値TeS_tgtが用いられるが、後述する通り、目標蒸発温度値TeS_tgtの値は異なる。また、通常運転制御部630は、吐出圧力Pcが所定の閾値より低く維持されているか否かを監視し、吐出圧力Pcが所定の閾値を超えたときには圧縮機回転速度を低下させるよう(すなわち垂下制御が実行されるよう)、構成される。
【0080】
また、通常運転制御部630は、冷媒回収動作の際には、冷媒回収制御部650による制御によってヒートポンプシステム100を制御するよう、構成される。
【0081】
情報出力部640は、冷媒回収制御部650による制御によって、ヒートポンプシステム100のユーザまたは外部デバイス例えば情報出力デバイスに情報を出力するよう、構成される。情報出力部640は、表示装置(ディスプレイデバイス)、電灯、拡声器、外部デバイスに情報を送信するための有線/無線通信インタフェースを有することができる。このように、情報出力部640は、画像、光、音、通信信号等によって情報を出力するよう、構成される。
【0082】
冷媒回収制御部650は、例えば通常運転制御部630を用いることにより、冷媒回収動作を実行するよう構成される。冷媒回収制御部650は、漏出検出部651と、温度検出部652と、加速率切換部653と、タイミング制御部654と、を有する。
【0083】
漏出検出部651は、冷媒漏出検出器530からの冷媒漏れ情報に基づいて冷媒漏れの発生を検出するよう構成される。例えば、漏出検出部651は、冷媒漏出検出器530によって検出された冷媒の濃度が所定の濃度値より大きい場合に冷媒漏れが発生したと判断するよう構成される。なお、この判断は、冷媒漏出検出器530または情報入力部620によって実行することもできる。検出した濃度の時系列データの移動平均を、上記の判断のために用いることもできる。漏出検出部651は、冷媒漏出検出器530によって連続的にまたは定期的に送信される冷媒漏れ情報を受動的に受信することができ、または冷媒漏出検出器530に定期的に要求を送信することによって冷媒漏れ情報を能動的に取得することもできる。
【0084】
温度検出部652は、周囲温度検出器520から周囲温度情報を取得するよう、構成される。温度検出部652は、周囲温度検出器520によって連続的にまたは定期的に送信される周囲温度情報を受動的に受信する、または冷媒漏れが発生したと漏出検出部651が判断した場合には周囲温度検出器520に要求を送信することによって周囲温度情報を能動的に取得することができる。
【0085】
取得した周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_th以上か否かに基づいて目標増加率値Rv_tgtを設定するように、加速率切換部653は構成される。より具体的には、加速率切換部653は、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_th以上である場合には、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_thより低い場合の目標増加率値Rv_tgtと比較して低くなるよう、目標増加率値Rv_tgtを設定するように構成される。
【0086】
タイミング制御部654は、冷媒回収動作におけるイベントのタイミングを制御する冷媒回収動作を実行するよう構成される。特に、タイミング制御部654は、設定された目標増加率値Rv_tgtだけ圧縮機回転速度を上げるよう圧縮機210を制御するように、ガス側開閉弁460が閉じるよう制御するように、そしてガス側開閉弁460の閉止が開始した後に冷媒を回収するための動作を停止するよう圧縮機210を制御するように、構成される。タイミング制御部654の機能は、制御装置600による動作に関する以下の説明において詳述する。
<制御装置による動作>
【0087】
制御装置600の漏出検出部651は、冷却運転の際および加熱運転の際に、圧縮機210が動作していない間、冷媒漏れが発生したか否かの判断を繰り返す。冷媒漏れの発生が検出された場合、制御装置600は、冷媒回収動作を開始する。
【0088】
モード切換機構220が冷却モード接続状態にない際、圧縮機210が動作していない間に、冷媒漏れの発生が検出された場合、制御装置600は、モード切換機構220を冷却モード接続に切り換えるよう制御し、その後冷媒回収動作を開始する。冷却運転の際に、冷媒漏れの発生が検出された場合、制御装置600は、圧縮機210を停止するよう制御し、その後冷媒回収動作を開始する。加熱運転の際に、冷媒漏れの発生が検出された場合、制御装置600は、モード切換機構220を冷却モード接続に切り換えるよう制御し、圧縮機210を停止するよう制御し、その後冷媒回収動作を開始する。いずれの場合も、冷媒回収動作が実行される間、制御装置600は、モード切換機構220が冷却モード接続を保持するよう制御するように構成される。
【0089】
冷媒漏れの発生が検出された場合、冷媒回収制御部650は、ユーザに冷媒漏れの発生を通知するために、情報出力部640を介して警告情報を出力することができる。また、警告情報が、利用側ユニット120の表示装置、電灯、拡声器等(図示せず)から出力されるよう、冷媒回収制御部650は利用側ユニット120に信号を送信することが好ましい。
【0090】
図3は、制御装置600によって実行される冷媒回収動作のプロセスを示すフローチャートの第一部分である。
図4は、そのフローチャートの第二部分である。
【0091】
ステップS1100において、制御装置600のタイミング制御部654は、熱源側膨張機構410を全開に制御するとともに、バイパス膨張機構470を全開に制御する。ここでは、ガス側開閉弁460はすでに開いていなければならず、圧縮機210は停止されたままである。これにより、その後圧縮機210の動作が開始したときには、冷媒を熱源側配管部101内でスムーズに循環させることができる。
【0092】
ステップS1200において、タイミング制御部654は、液側開閉弁420が閉じるよう制御する。これにより、その後圧縮機210の動作が開始したときには、冷媒が液冷媒管330を介して利用側配管部102に流れ込むことを防止することができる。
【0093】
ステップS1300において、タイミング制御部654は、圧縮機回転速度を制御するために用いる目標蒸発温度値TeS_tgtを、冷却運転において通常用いられる値と比較して低い値に設定する。より具体的には、タイミング制御部654は、目標蒸発温度値TeS_tgtを第一目標蒸発温度値TeS_1から第二目標蒸発温度値TeS_2へと変更する。第一目標蒸発温度値TeS_1は初期(デフォルト)値であり、第二目標蒸発温度値TeS_2は第一目標蒸発温度値TeS_1より低い値である。例えば、第一目標蒸発温度値TeS_1は通常の冷却運転において用いられる摂氏-6度(-6℃)であり、第二目標蒸発温度値TeS_2は-30℃である。これにより、蒸発温度TeSが低くなる場合であっても、圧縮機210は冷媒回収動作においても動作し続けることができる。なお、圧縮機210を動作させ続けるための手段はこれに限定されない。
【0094】
ステップS1400において、タイミング制御部654は、利用側膨張機構440を開くよう制御する。これにより、その後圧縮機210の動作が開始したときには、冷媒が利用側配管部102からスムーズに流れ出すことができる。利用側膨張機構440は漸進的に開くことが好ましい。
【0095】
ステップS1500において、タイミング制御部654は、圧縮機210の動作を開始するよう制御する。これにより、利用側配管部102にある冷媒の、第二ガス冷媒管340を介した熱源側配管部101への吸引が開始される。圧縮機210の動作が停止した後、第一所定時間T_1が経過した後にのみ、圧縮機210の動作を開始することが好ましい。例えば、第一所定時間T_1は1分である。これにより、圧縮機210の動作を開始する前に、制御弁の準備を確実に完了しておくことができる。
【0096】
上記ステップS1100~S1500によって、液側開閉弁が閉じており、かつ熱源側膨張機構410とバイパス膨張機構470と利用側膨張機構440とガス側開閉弁460とが開いている状態で、圧縮機の動作を開始することができる。なお、制御弁のこのような状態を準備するための手段は、上記ステップS1100~S1400に限定されない。
【0097】
ステップS1600において、温度検出部652が、周囲温度Taを取得し、そして加速率切換部653が、取得した周囲温度Taが所定周囲温度値Ta_thより低いか否かを判断する。検出した周囲温度Taの時系列データの移動平均を、上記の判断のために用いることもできる。周囲温度Taが所定周囲温度値Ta_thより低い場合(S1600:Yes)、プロセスはステップS1700へと移行する。周囲温度Taが所定周囲温度値Ta_th以上である場合(S1600:No)、プロセスはステップS1800へと移行する。例えば、所定周囲温度値Ta_thは35℃である。
【0098】
ステップS1700において、加速率切換部653は、第一所定増加率値Rv_1を目標増加率値Rv_tgtに設定する。
【0099】
ステップS1800において、加速率切換部653は、第二所定増加率値Rv_2を目標増加率値Rv_tgtに設定する。ここで、第二所定増加率値Rv_2は、第一所定増加率値Rv_1より低い。
【0100】
ステップS1900において、タイミング制御部654は、設定された値である目標増加率値Rv_tgtでの圧縮機回転速度の増加が開始されるよう、圧縮機210を制御する。タイミング制御部654は、圧縮機210が所定の周波数で回転を開始するよう、そして所定の間隔で所定の増分で周波数を増加させることによって圧縮機回転速度を増加するよう、制御することもできる。所定の増分を、蒸発温度TeS等に基づいてそれぞれの間隔ごとに決定することができる。この場合、目標増加率値Rv_tgtを、それぞれの間隔における増分の上限として用いることができる。言い換えれば、タイミング制御部654は、上限をステップS1800においてそれぞれの間隔に増加すべき周波数の増分に設定することができ、ステップS1700においては上限を実質的に設定しない。
【0101】
上述した通り蒸発温度TeSが目標蒸発温度値TeS_tgtに近づくよう、漸進的に周波数が増加するように、圧縮機210は制御される。なお、冷媒回収動作の際には、ステップS1300において目標蒸発温度値TeS_tgtが下げられているので、蒸発温度TeSは目標蒸発温度値TeS_tgtには達しない。したがって、圧縮機210は、回転速度を増加しながら動作し続ける。プロセスがステップS1800へと移行した場合、圧縮機回転速度が同一速度に達するまでの時間は、プロセスがステップS1700へと移行した場合よりも長くなる。
【0102】
上記ステップS1600~S1900により、周囲温度Taが比較的高いときには圧縮機回転速度の増加速度を低くしながら圧縮機回転速度を増加することができる。
【0103】
ステップS2000において、タイミング制御部654は、所定のバルブ閉止条件が満たされたか否かを判断する。所定のバルブ閉止条件は、冷媒が利用側配管部102から熱源側配管部101へと十分に回収されたことを示す条件である。
【0104】
本実施形態において、所定のバルブ閉止条件は、ガス側開閉弁460の閉止がまだ開始されていない状態で、吸入圧力Peが第一所定吸入圧力値Pe_1より低く第二所定時間T_2の間保持されたという条件である。この判断のために、タイミング制御部654は、吸入圧力Peを取得し、上記の所定のバルブ閉止条件が満たされたか否かを判断する。検出した吸入圧力Peの時系列データの移動平均を、上記の判断のために用いることもできる。例えば、第一所定吸入圧力値Pe_1は3.0キロパスカルであり、第二所定時間T_2は30秒である。なお、第二所定時間T_2の継続時間を、上記の所定のバルブ閉止条件から除外することもできる。後述するステップS2100がすでに実行されていた場合には、ガス側開閉弁460の閉止を開始する必要がある。
【0105】
吸入圧力Peが第一所定吸入圧力値Pe_1より低く第二所定時間T_2の間保持され、かつガス側開閉弁460の閉止がまだ開始されていない場合(S2000:Yes)、プロセスはステップS2100へと移行する。吸入圧力Peが第一所定吸入圧力値Pe_1以上である場合、吸入圧力Peが第一所定吸入圧力値Pe_1よりも低い状態があっても第二所定時間T_2の間保持されなかった場合、またはガス側開閉弁460の閉止がすでに開始されていた場合(S2000:No)、プロセスは、ステップS2200へと移行する。
【0106】
ステップS2100において、タイミング制御部654は、ガス側開閉弁460に閉止を開始させるよう制御する。これにより、その後圧縮機210の動作が停止する場合であっても、第二ガス冷媒管340を介して熱源側配管部101から利用側配管部102へと戻る方向に冷媒が流れるのを防止するために、ガス側開閉弁460が閉じられる。ガス側開閉弁460は漸進的に閉じることが好ましい。例えば、タイミング制御部654は、閉弁(シャットオフ)信号をガス側開閉弁460に送信することによって、ガス側開閉弁460が閉止を開始するよう制御する。シャットオフ信号を、ゼロへと減少していくパルス数を有するパルス信号とすることもできる。
【0107】
ステップS2200において、タイミング制御部654は、所定の圧縮機停止条件が満たされるか否かを判断する。所定の圧縮機停止条件は、圧縮機210の動作が停止する場合であっても、第二ガス冷媒管340を介して熱源側配管部101から利用側配管部102へと戻る方向に冷媒が流れるのを防止できる、かつ/または圧縮機210の動作を安全上の理由等のために停止させる必要があることを示す条件である。所定の圧縮機停止条件が満たされない場合(S2200:No)、プロセスはステップS2000に戻る。所定の圧縮機停止条件が満たされた場合(S2200:Yes)、プロセスはステップS2300へと移行する。
【0108】
図5は、圧縮機停止条件の例を示す表である。例えば、圧縮機停止条件には、
図5に示す第一条件~第七条件のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0109】
第一条件は、吐出圧力Pcの変化率(以下「吐出圧力変化率|Rpc|」という)が所定吐出圧力変化率値Rpc_thより小さく、かつ吸入圧力Peの変化率(以下「吸入圧力変化率|Rpe|」という)が所定吸入圧力変化率値Rpe_thより小さいという条件である。所定吸入圧力変化率値Rpe_thを、所定吐出圧力変化率値Rpc_thと同じ値とすることも異なる値とすることもできる。ここで、吐出圧力変化率|Rpc|を単位時間当たりの吐出圧力Pcの変化量の絶対値とでき、吸入圧力変化率|Rpe|を単位時間当たりの吸入圧力Peの変化量の絶対値とできる。例えば、所定吐出圧力変化率値Rpc_thおよび所定吸入圧力変化率値Rpe_thはともに、毎秒0.2kgf/cm2である。検出吐出圧力Pcの時系列データの移動平均および検出吸入圧力Peの時系列データの移動平均を、この条件の判断のために用いることができる。
【0110】
第二条件は、吸入圧力Peが、ステップS2000において用いられる第一所定吸入圧力値Pe_1よりも低い第二所定吸入圧力値Pe_2よりも低いという条件である。例えば、第二所定吸入圧力値Pe_2は、1.0キロパスカルである。検出した吸入圧力Peの時系列データの移動平均を、この条件の判断のために用いることもできる。
【0111】
第三条件は、ステップS1500において圧縮機210が動作を開始した後第三所定時間T_3が経過したという条件である。例えば、第三所定時間T_3は15分である。
【0112】
第四条件は、ガス側開閉弁460の閉止が完了した後第四所定時間T_4が経過したという条件である。例えば、第四所定時間T_4は2分である。なお、第四所定時間T_4をゼロとすることもできる。タイミング制御部654は、センサを用いてガス側開閉弁460の閉止の完了を検出することができる。
【0113】
第五条件は、圧縮機210の現在の吐出温度Tdi_nが先の吐出温度Tdi_n-1より低く、かつ圧縮機の吐出過熱度HDSHが所定過熱度値HDSH_minより低いという条件である。ここで、現在の吐出温度Tdi_nは、新たに取得した圧縮機210の吐出温度である。先の吐出温度Tdi_n-1は、現在の吐出温度Tdi_nの前に検出された吐出温度の値のうち最後の圧縮機210の吐出温度、または現在の吐出温度Tdi_nの検出より所定時間前のタイミングで検出された吐出温度である。吐出過熱度HDSHは、吐出側冷媒管310へと流れ込む冷媒の過熱度である。例えば、所定過熱度値HDSH_minは10ケルビンであり、所定期間は10秒である。吐出過熱度HDSHは、検出吐出圧力Pcに対応する飽和温度を検出吐出温度Tdiから減算することによって、取得できる。この場合、冷媒の圧力と冷媒の飽和温度との間の既知の相関を示すテーブルを記憶部610に予め記憶しておく。
【0114】
第六条件は、吐出温度Tdiが所定吐出温度値Tdi_thより高いという条件である。例えば、所定吐出温度値Tdi_thは108ケルビンである。検出した吐出温度Tdiの時系列データの移動平均を、この条件の判断のために用いることもできる。
【0115】
第七条件は、ステップS2100においてガス側開閉弁460の閉止が開始した後に第五所定時間T_5が経過したという条件である。第五所定時間T_5は、ガス側開閉弁460が閉じるために要する時間より長いことが好ましい。ガス側開閉弁460が閉じるのために必要な時間は、実験等によって予め決定できる。
【0116】
タイミング制御部654は、上記の第一条件~第七条件のうちの一つのみを用いることもできる。任意選択的に、タイミング制御部654は、上記の第一条件~第七条件のうちの任意の二つ以上の組み合わせを、AND条件(論理積)またはOR条件(論理和)として、用いることができる。なお、所定の圧縮機停止条件はこれらに限定されない。いずれの場合も、タイミング制御部654は、所定の圧縮機停止条件を判断するために必要な情報を取得するよう構成される。
【0117】
図4のステップS2300において、タイミング制御部654は、利用側膨張機構440を閉じるよう制御する。
【0118】
ステップS2400において、タイミング制御部654は、圧縮機210が動作を停止するよう制御し、熱源側膨張機構410とバイパス膨張機構470とを閉じるよう制御する。例えば、タイミング制御部654は、圧縮機210への電力供給を停止するよう制御することによって、圧縮機210が動作を停止するよう制御する。ステップS2000において所定のバルブ閉止条件が満たされず、ステップS2200において所定の圧縮機停止条件が満たされた場合、プロセスがステップS2300およびS2400へと移行するときにはガス側開閉弁460の閉止は開始されていない。この場合、ステップS2400において、タイミング制御部654は、ガス側開閉弁460を閉じるよう制御する。
【0119】
上記のステップS2000~S2400によって、冷媒回収動作を終了できるまたは終了しなければないときには、圧縮機210の動作を停止し、制御弁を閉じることができる。その後、冷媒回収動作は終了する。冷媒回収動作が終了すると、冷媒回収制御部650は情報出力部640を介して終了情報を出力することができ、これにより、ユーザに冷媒回収動作の終了を通知することができる。また、終了情報が、利用側ユニット120の表示装置、電灯、拡声器等から出力されるよう、冷媒回収制御部650は利用側ユニット120に信号を送信することが好ましい。
【0120】
冷媒回収動作の終了の後、ヒートポンプシステム100のユーザまたは整備員が、利用側ユニット120の冷媒漏出点を修理することができる。大部分の冷媒が利用側配管部102から排出されているので、修理を安全に実行することができる。
<利点のある効果>
【0121】
上述した通り、ヒートポンプシステム100は、冷媒回収動作において、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_th以上である場合、圧縮機回転速度の増加率Rv_tgtが、周囲温度Taが所定の周囲温度値Ta_thより低い場合の圧縮機回転速度の増加率と比較して低くなるよう、圧縮機210を制御するように構成される。これにより、圧縮機回転速度を増加させながら、圧縮機210の吐出圧力Pcが過度に高くなること防止でき、したがって、より確実に冷媒回収動作を完了することができる。
<変形例>
【0122】
添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱しない限り、ヒートポンプシステム100ならびに/もしくは制御装置600の構成および動作は上記で説明した構成および動作に限定されない。例えば、ヒートポンプシステム100の要素のうちのいくつかおよび制御装置600によって実行される動作ステップのうちのいくつかを、省略することができる。
【0123】
例えば、冷蔵システムの場合、すなわち、加熱運転が必要とされない場合、モード切換機構220および熱源側膨張機構410を省略できる。ヒートポンプシステム100に必要とされる性能が高くない場合には、冷媒熱交換器260を省略できる。液冷媒管330および吸入側冷媒管350のそれぞれに、利用側熱交換器240と並列に接続されるバイパス管がない場合、アキュムレータ250を省略できる。十分な空気の流れが確実に熱源側熱交換器230および/または利用側熱交換器240を通過する場合、熱源側ファン231および/または利用側ファン241を省略できる。ヒートポンプシステム100aが単一ユニットとして形成される場合、液側ストップバルブ430およびガス側ストップバルブ450を省略できる。
【0124】
制御装置600は、所定の条件が満たされたときにのみ、冷媒漏れが発生したか否かの判断を実行することもできる。例えば、制御装置600は、圧縮機210が動作していない間のみ、その判断を繰り返すことができる。冷媒漏れの発生がユーザの操作によって伝達される場合、冷媒漏出検出器530を省略できる。また、他のイベントによって、例えば冷媒漏れが発生したか否かに関わらず冷媒回収動作の開始を要求する命令の入力によって、冷媒回収動作を作動することもできる。省略された要素に関連する制御装置600のステップを省略することができる。制御装置600によるプロセスに必要ではないセンサのうちの一つ以上を省略できる。
【0125】
図6は、本実施形態にかかるヒートポンプシステム100の第一変形例としてのヒートポンプシステムの概略構成図である。
【0126】
図6に示す通り、ヒートポンプシステム100aは、圧縮機210と、熱源側熱交換器230と、利用側熱交換器240と、バイパス管360と圧縮機210との間の点に配置されるアキュムレータ250と、熱源側熱交換器230に接続される吐出側冷媒管310と、液冷媒管330と、利用側熱交換器240に接続される吸入側冷媒管350と、バイパス管360と、利用側膨張機構440と、ガス側開閉弁460と、バイパス膨張機構470と、周囲温度検出器520と、制御装置600に対応する制御装置600aと、を備える。利用側膨張機構440を、熱源側熱交換器230とバイパス管360との間の点に配置することができる。この構成においては、吐出側冷媒管310が、本発明にかかる高圧冷媒管に対応し、吸入側冷媒管350が本発明にかかる低圧冷媒管に対応する。このように、上述した通り、ヒートポンプシステム100aが、
図1を用いて本実施形態を用いて説明した他の要素を必ずしも備える必要はない。加えて、さらなる要素を省略することができる。
【0127】
図7は、本実施形態にかかるヒートポンプシステム100の第二変形例としてのヒートポンプシステムの概略構成図である。
【0128】
図7に示す通り、第一変形例と比較して、ヒートポンプシステム100bは、バイパス管360、バイパス膨張機構470およびアキュムレータ250を備えていない。これらの要素を省略した場合であっても、冷媒を利用側配管部102から熱源側配管部101へと吸い込むことができ、吸い込まれた冷媒を主に熱源側熱交換器230に蓄積することができる。制御装置600に対応するヒートポンプシステム100bの制御装置600bは、実行する必要があるステップが少ない。
【0129】
本実施形態の他の変形例も考えられる。例えば、制御装置600は、異なる所定周囲温度値Ta_th1,Ta_th2,…に対応する三以上の異なる所定増加率値Rv_1,Rv_2,Rv_3,…を設定することができ、周囲温度検出器520は、外部デバイスから例えば有線/無線通信により気象情報サーバから、外気の温度を取得することもできる。この場合、周囲温度検出器520を、熱源側熱交換器230の近傍に配置する必要がない。
【0130】
冷媒漏出検出器530を、利用側配管部102の任意の部分の冷媒漏れの発生を検出するよう、構成することもできる。制御装置600を、熱源側配管部101の外側に配置することもできる。また、制御装置600を、ヒートポンプシステム100の他の部分から離間して配置することもできる。熱源側熱交換器230を通る流体および利用側熱交換器240を通る流体を、空気以外の流体、例えば水とすることもできる。R32冷媒以外の冷媒を用いることもできる。
【0131】
複数の利用側ユニット120を、熱源側ユニット110に接続することもできる。この場合、液側開閉弁420を、液冷媒管330から利用側ユニット120へと向かうよう分岐される副液冷媒管のそれぞれに配置することもでき、ガス側開閉弁460を、第二ガス冷媒管340から利用側ユニット120へと向かうよう分岐される副ガス冷媒管のそれぞれに配置することもできる。液側開閉弁420およびガス側開閉弁460は、熱源側ユニット110内にまたは熱源側ユニット110の近傍に配置されることが好ましい。利用側ユニット120のうちのいずれかまたは対応する利用側配管部102のいずれかにおいて冷媒漏れの発生が検出された場合、冷媒回収動作が実行される。液側開閉弁420およびガス側開閉弁460のうち、冷媒漏れが発生した利用側ユニット120に対応するガス側開閉弁460のみが、冷媒回収動作の際に、開くことが好ましい。
【0132】
本発明の説明のために実施形態および変形例が選択されたに過ぎず、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱することがない範囲で、種々の変更、変形ができることは、本開示から当業者には明らかであろう。例えば、特に記載しない限り、必要に応じておよび/または所望により、種々のコンポーネントの大きさ、形状、配置、向きを、変更によりそれらの意図する機能を損なわない限り、変更できる。特に記載しない限り、直接的に接続された、または互いが接触しているよう示した二つのコンポーネントは変更によりそれらの意図する機能を損なわない限り、それらの間に中間構造を有することができる。特に記載しない限り、一つのエレメントの機能は二つによって達成することができ、またその逆の場合も同様である。一の態様の構造および機能を他の態様に適用することもできる。すべての利点が必ずしも同時に特定の態様にもたらされる必要はない。したがって、本発明にかかる実施形態の上記説明は例示のためのみのものである。
【符号の説明】
【0133】
100,100a,100b ヒートポンプシステム
101 熱源側配管部
102 利用側配管部
110 熱源側ユニット
120 利用側ユニット
210 圧縮機
220 モード切換機構
230 熱源側熱交換器
231 熱源側ファン
240 利用側熱交換器
241 利用側ファン
250 アキュムレータ
260 冷媒熱交換器
310 吐出側冷媒管(高圧冷媒管)
320 第一ガス冷媒管(高圧冷媒管、低圧冷媒管)
330 液冷媒管
340 第二ガス冷媒管(低圧冷媒管、高圧冷媒管)
350 吸入側冷媒管(低圧冷媒管)
360 バイパス管
410 熱源側膨張機構(膨張機構)
420 液側開閉弁
430 液側ストップバルブ
440 利用側膨張機構(膨張機構)
450 ガス側ストップバルブ
460 ガス側開閉弁
470 バイパス膨張機構
510 吐出側冷媒状態検出器
520 周囲温度検出器
530 冷媒漏出検出器
540 吸入側冷媒状態検出器(蒸発温度検出器、吸入圧力検出器)
600,600a,600b 制御装置
610 記憶部
620 情報入力部
630 通常運転制御部
640 情報出力部
650 冷媒回収制御部
651 漏出検出部
652 温度検出部
653 加速率切換部
654 タイミング制御部
【国際調査報告】