(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ERCP後膵炎を予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/13 20060101AFI20230615BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230615BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/407 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/121 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/5415 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/4152 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/603 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/60 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/63 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20230615BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K38/13
A61P1/18
A61K45/06
A61P43/00 121
A61K31/706
A61K31/405
A61K31/407
A61K31/192
A61K31/40
A61K31/196
A61K31/121
A61K31/421
A61K31/5415
A61K31/4152
A61K31/616
A61K31/603
A61K31/60
A61K31/63
A61K31/365
A61K31/42
A61K31/444
A61K31/18
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570450
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021023144
(87)【国際公開番号】W WO2021236222
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フサイン ソハイル ゼット.
(72)【発明者】
【氏名】バラカト モニク ティー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA01
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4C086BC69
4C086BC89
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4C086CB03
4C086CB22
4C086CB29
4C086DA17
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4C086GA08
4C086GA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA66
4C086ZB11
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
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4C206DA24
4C206DA25
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4C206MA14
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4C206ZA66
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書において、カルシニューリン阻害物質と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とを含む組成物、ならびにERCP後膵炎(PEP)を予防するためにそのような組成物を投与する関連方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシニューリン阻害物質と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とを含む、組成物。
【請求項2】
前記カルシニューリン阻害物質が、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記NSAIDが、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、エノール酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチラート、選択的COX-2阻害物質、スルホンアニリド、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記酢酸誘導体が、インドメタシン、ケトロラク、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記プロピオン酸誘導体が、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキシブプロフェン、フェノプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記エノール酸誘導体が、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記アントラニル酸誘導体が、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記サリチラートが、アスピリン、ジフルニサル、サリチル酸、サルサレート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記選択的COX-2阻害物質が、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記スルホンアニリドがニメスリドである、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
前記カルシニューリン阻害物質がタクロリムスであり、かつ/または前記NSAIDがインドメタシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
対象における内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎(PEP)を予防するために有効な量の前記カルシニューリン阻害物質と前記NSAIDとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される担体が直腸投与に適するものである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
坐剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
対象におけるPEPを予防するための方法であって、請求項1に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記対象がERCPをまさに受けようとしている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象に対してERCPが実施される前に、前記組成物が投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記投与することが直腸投与によるものである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
対象におけるPEPを予防するための組成物であって、カルシニューリン阻害物質と、直腸投与に適した薬学的に許容される担体とを含む、前記組成物。
【請求項21】
前記カルシニューリン阻害物質が、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
坐剤である、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記対象にインドメタシン投与の禁忌がある、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
インドメタシン投与の前記禁忌が、妊娠、凝血障害、抗凝血の必要性、NSAID感受性またはアレルギー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
対象におけるPEPを予防するための方法であって、請求項20に記載の組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記対象がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、臨床状況および/または医師の判断に基づいて、前記組成物を投与される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月20日に出願された米国特許仮出願第63/027,541号の優先権を主張するものであり、その開示内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下になされた発明の権利に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された契約DK093491の下に政府の支援を受けて行われたものである。米国政府は、この発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)は、毎年50万人ほどのアメリカ人に行われている、一般的な、救命のための消化管(GI)処置である。ERCPは、内視鏡を介して胆管または膵管(PD)に放射線造影(RC)色素を注入することによって行われる。この処置は、総胆管に詰まった胆石の除去などのいくつかのGI緊急事態のために、また、胆膵の解剖学的構造の直接X線造影のために不可欠である。
【0004】
しかし、ERCP後膵炎(PEP)は、現在、ERCPを受けた患者に3~15%の割合で発生する合併症である。PEPは、患者にとって耐え難いほどの痛みを伴う膵臓の致死的な炎症性疾患であり、それは、医療のクオリティ・メトリクスを低下させる費用のかかる医原性の合併症である。最近のPDステント留置、抗炎症予防、および輸液投与により、一部の施設ではPEPの発生率が低めの範囲まで低下しているが、PEPは依然としてERCPの最も頻度の高い有害事象であり、現在の予防法の有効性と実用性についてはまだ議論の余地がある。
【0005】
そのため、PEPの根底にある発生機構を特異的に標的とした、PEPの予防のための改善された治療法が必要とされている。本開示は、この必要性に対処して、関連した利点および他の利点を提供するものである。
【発明の概要】
【0006】
概要
いくつかの局面において、本明細書において、カルシニューリン阻害物質と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とを含む組成物が提供される。
【0007】
いくつかの態様では、カルシニューリン阻害物質は、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0008】
いくつかの態様では、NSAIDは、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、エノール酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチラート、選択的COX-2阻害物質、スルホンアニリド、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0009】
酢酸誘導体の非限定的な例としては、インドメタシン、ケトロラク、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
プロピオン酸誘導体の非限定的な例としては、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキシブプロフェン、フェノプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0011】
エノール酸誘導体の非限定的な例としては、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
アントラニル酸誘導体の非限定的な例としては、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
サリチラートの非限定的な例としては、アスピリン、ジフルニサル、サリチル酸、サルサレート、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
選択的COX-2阻害物質の非限定的な例としては、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
スルホンアニリドの非限定的な例は、ニメスリドである。
【0016】
特定の態様では、カルシニューリン阻害物質はタクロリムスであり、かつ/またはNSAIDはインドメタシンである。特定の他の態様では、カルシニューリン阻害物質はシクロスポリンであり、かつ/またはNSAIDはインドメタシンである。特別の態様では、カルシニューリン阻害物質はタクロリムスであり、かつNSAIDはインドメタシンである。
【0017】
いくつかの態様では、前記組成物は、対象におけるPEPを予防するために有効な量のカルシニューリン阻害物質とNSAIDとを含む。
【0018】
いくつかの態様では、前記組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの態様では、薬学的に許容される担体は、直腸投与に適するものである。特定の態様では、前記組成物は坐剤である。
【0019】
他の局面において、本明細書において、ERCP後膵炎(PEP)を予防するために本明細書に記載の組成物を対象に投与する方法が提供される。
【0020】
いくつかの態様では、前記対象は、ERCPをまさに受けようとしている。特定の態様では、前記対象に対してERCPが実施される前に、前記組成物が投与される。他の態様では、投与することは直腸投与によるものである。特別の態様では、前記対象はヒトである。
【0021】
さらなる局面において、本明細書において、カルシニューリン阻害物質と、直腸投与に適した薬学的に許容される担体とを含む、対象におけるPEPを予防するための組成物が提供される。関連する局面において、本明細書において、そのような組成物を投与することを含む、対象におけるPEPを予防するための方法が提供される。特定の態様では、前記対象(例えば、ヒト)は、臨床状況および/または医師の判断に基づいて、前記組成物を投与される。
【0022】
いくつかの態様では、カルシニューリン阻害物質は、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の態様では、前記組成物は坐剤である。
【0023】
いくつかの態様では、前記対象にNSAID(例えば、インドメタシン)投与の禁忌がある。禁忌の非限定的な例としては、妊娠、凝血障害、抗凝血の必要性、NSAID感受性またはアレルギー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
I. 序論
本発明者らは、ERCP後膵炎(PEP)の重要な初期シグナル伝達経路が、カルシウム活性化型ホスファターゼであるカルシニューリンの活性化であることを見いだした。新しい実験モデルにおいて、我々は、PEPがカルシニューリンに依存していることを明らかにした。また、我々は、膵臓内でのカルシニューリンの特異的な遺伝子欠失を介して、または重要なこととして、膵臓近傍へのカルシニューリン阻害物質の薬理学的投与によって、PEPが予防されることをも見いだした。
【0025】
直腸投与は、膵臓への予防薬の送達を高めるための経路を提供するが、それは、門脈循環への直接吸収と、そのための膵臓への流れがあるからである。多くの施設で行われているPEP予防のための現在の標準治療は、直腸インドメタシンを投与することであり、これは、シクロオキシゲナーゼおよびホスホリパーゼA2経路を含めて、PEP発症後に続いて起こる膵臓の炎症の違った面を軽減すると考えられる。
【0026】
本開示は、カルシニューリン阻害物質(例えば、タクロリムス、シクロスポリン)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、インドメタシン)の組み合わせを含む組成物、ならびにPEPを予防するためのその使用に関する。以下の理論によって拘束されるものではないが、前記組成物は、それらが2つの広範な独立した炎症経路を標的とするため、特に有利である:すなわち、カルシニューリン阻害物質は、膵臓の炎症を開始するカルシニューリンを含む初期炎症シグナルを遮断し、NSAIDは独立した後期炎症シグナルを標的とする。前記組成物は、門脈を介した膵臓循環を直接標的とするために、直腸投与に適した薬学的に許容される担体を用いて、例えば坐剤として、製剤化することができる。前記組成物は、ERCP処置を受けようとしている患者に、ERCPの開始直前に投与することが可能である。
【0027】
PEP予防のための、本明細書に記載された組成物は、現在の治療法に比べて多くの競争上の優位性を提供し;それらは、膵管ステント留置術(合併症のリスク、処置を繰り返すなど)および静脈内(IV)水分補給(禁忌を示すことが多い)よりも時間がかからず、安全であり、直腸インドメタシン単独よりも2倍有効(例えば、>75%対35~40%)であり、すぐに使用できる低侵襲性の製剤(例えば、直腸投与)であり、入院と病的状態の減少によるコスト削減をもたらすからである。
【0028】
II. 定義
本明細書で使用される以下の用語は、特に断りのない限り、それらに定められた意味を有する。
【0029】
本明細書で使用される用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」は、1つのメンバーを有する局面を含むだけでなく、2つ以上のメンバーを有する局面をも含む。例えば、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に他を指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「作用物質(an agent)」または「作用物質(the agent)」への言及には、複数のそのような作用物質が含まれる。
【0030】
数値xに関する用語「約」とは、例えばx±10%を意味する。
【0031】
用語「カルシニューリン阻害物質」とは、カルシウムおよびカルモジュリン依存性セリン/スレオニンプロテインホスファターゼであるカルシニューリンの活性を阻害する薬物クラスのメンバーを指す。カルシニューリン阻害物質の非限定的な例としては、タクロリムス(FK-506)、シクロスポリン(シクロスポリンAまたはCsA)、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
「非ステロイド性抗炎症薬」または「NSAID」という用語は、炎症の主要な生物学的メディエーター、例えばプロスタグランジンの合成に関与する、1つまたは複数のシクロオキシゲナーゼ酵素(例えば、COX-1および/またはCOX-2)の活性を阻害する薬物クラスのメンバーを指す。NSAIDsは、それらの化学構造または作用機序に基づいて分類することができる。化学構造によって分類されるNSAIDsの非限定的な例としては、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、エノール酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチラート、スルホンアニリド、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせが挙げられる。作用機序によって分類されるNSAIDsの非限定的な例としては、選択的COX-2阻害物質、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
「内視鏡的逆行性胆管膵管造影」または「ERCP」という用語は、胆管系または膵管系の特定の問題を診断し治療するために、内視鏡検査と蛍光透視法の使用を組み合わせた処置を指す。ERCPは、主として、胆石、炎症性狭窄(瘢痕)、漏出(外傷および手術からの漏出)、および癌を含めて、胆管および主膵管の状態を診断し治療するために使用される。
【0034】
「ERCP後膵炎」または「PEP」という用語は、ERCPの24時間後に新たに発症した膵炎(すなわち、血清アミラーゼ値の少なくとも3倍上昇を伴う新しい膵臓型腹痛)の存在を指す。PEPはERCPの最も多くみられる合併症であり、重大な病的状態につながるだけでなく、時には死亡に至ることもある。
【0035】
「予防すること」または「予防」という用語は、PEPの1つ以上の症状を改善すること;そのような症状が発生する前にそれらが現れるのを防ぐこと;PEPの進行を遅くするか、完全に止めること;PEPの発症もしくは重症度を遅らせること;またはそれらの任意の組み合わせ;のいずれか1つを指す。
【0036】
「投与する」、「投与すること」、または「投与」という用語は、所望の生物学的作用部位への本明細書に記載の組成物の送達を可能にするために使用され得る方法を指す。こうした方法には、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、動脈内、血管内、心内、髄腔内、鼻腔内、皮内、硝子体内など)、経粘膜投与、経口投与、直腸投与(例えば、坐剤として)、および局所投与が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、PEPを予防するために、またはPEPに関連する1つ以上の症状を緩和するために、有効量の本明細書に記載の組成物を投与するための追加の方法について知っているであろう。
【0037】
「有効量」または「有効用量」という用語は、有益なまたは所望の臨床効果、例えば対象におけるPEPの予防、をもたらすのに十分な、本明細書に記載の組成物または作用物質(例えば、カルシニューリン阻害物質またはNSAID)の量を指す。有効量または有効用量は、患者の年齢、体格、胃腸(GI)の状態または疾患の種類もしくは程度を含むがこれらに限定されない各患者に固有の要因、および前記組成物の投与経路に基づくことができる。作用物質の有効量は、最初に、細胞培養と動物モデルから推定することが可能である。例えば、細胞培養法で決定されたIC50値は動物モデルでの出発点となり、動物モデルで決定されたIC50値はヒトでの有効用量を見つけるために利用することができる。
【0038】
用語「薬学的に許容される担体」とは、対象への大きな刺激を引き起こさず、かつ投与された作用物質の生物学的活性および特性を損なわない、担体または希釈剤を指す。
【0039】
「対象」、「個体」、および「患者」という用語は、本明細書では、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指すために交換可能に使用される。哺乳動物には、マウス、ラット、サル、ヒト、家畜、競技用動物、およびペットが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
III. 薬学的組成物
本明細書に記載の組成物は、作用物質の組み合わせ(例えば、カルシニューリン阻害物質とNSAID)を含み、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。特定の局面において、薬学的に許容される担体は、一部には、投与される特定の組成物によってだけでなく、前記組成物を投与するために用いられる特定の方法によって決まる。したがって、本発明の薬学的組成物の好適な製剤は多種多様である(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 第18版, Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)を参照されたい)。
【0041】
本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体は、薬学的組成物の製剤化において当業者に知られている標準的な薬学的に許容された担体のいずれかを含む。こうして、作用物質は、単独で、例えば薬学的に許容される塩として、またはコンジュゲートとして存在し、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液(PBS)、水性エタノール、またはグルコース、マンニトール、デキストラン、プロピレングリコール、油(例えば、植物油、動物油、合成油など)、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ゼラチン、ポリソルベート80の溶液などの、薬学的に許容される希釈剤中の製剤として、または適切な賦形剤中の固体製剤として調製することができる。
【0042】
特定の態様では、薬学的組成物は、1つまたは複数のバッファー(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールなど)、静菌剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、製剤をレシピエントの血液と等張、低張または弱高張にする溶質、懸濁化剤、増粘剤、防腐剤、香味剤、甘味剤、および着色化合物を適宜含んでいる。
【0043】
前記薬学的組成物は、剤形に適合した方法で、かつ有効になるような量で投与される。投与される量は、例えば、個体の年齢、体重、身体活動、食事、および胃腸(GI)の状態または疾患の種類、程度もしくは重症度などの、様々な要因に依存している。特定の態様では、用量の大きさはまた、特定の個体における作用物質の投与に伴う有害な副作用の存在、性質、および程度によって決まることがある。
【0044】
しかしながら、任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルおよび投与頻度は変化し得るものであり、採用される特定の作用物質の活性、それらの作用物質の代謝安定性と作用時間、年齢、体重、遺伝的特性、健康全般、性別、食事、投与方法と投与時間、排出速度、薬物組み合わせ、特定の病態の重症度、ERCP処置を受ける宿主を含めて、様々な要因に依存することが理解されるであろう。
【0045】
特定の態様では、作用物質の用量は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体の剤形、例えば、錠剤、丸薬、ペレット剤、カプセル剤、粉剤、溶液剤、懸濁液剤、乳濁液剤、坐剤、停留浣腸、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ジェル剤、エアロゾル剤、フォーム剤などの形態をとることができ、正確な投与量の簡便投与に適した単位剤形とすることが好ましい。
【0046】
本明細書で使用される用語「単位剤形」とは、ヒトおよび他の哺乳動物に対する単位投与量として適した、物理的に離散した単位を指し、各単位は、所望の作用発現、耐容性および/または効果をもたらすように計算された所定量の作用物質を、適切な薬学的添加剤と組み合わせて含有する。さらに、より濃縮された剤形を調製することもでき、その後、そこからより希薄な単位剤形を得ることができる。したがって、より濃縮された剤形は、実質的に、作用物質の量の、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10倍、またはそれ以上を含有することになる。
【0047】
このような剤形を調製するための方法は、当業者に知られている(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 前掲を参照されたい)。剤形は、一般的に、従来の薬学的担体または賦形剤を含み、さらに他の薬剤、担体、アジュバント、希釈剤、組織透過促進剤、可溶化剤などを含んでもよい。適切な賦形剤は、当技術分野で周知の方法により、特定の剤形および投与経路に合わせて選択することができる(例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 前掲を参照されたい)。
【0048】
適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、生理食塩水、シロップ、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリアクリル酸、例えば、カーボポール941、カーボポール980、カーボポール981など、が挙げられるが、これらに限定されない。剤形はさらに、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油;湿潤剤;乳化剤;懸濁化剤;保存剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、エチル、およびプロピル(すなわちパラベン);pH調整剤、例えば、無機および有機の酸および塩基;甘味剤;ならびに香味剤を含むことができる。また、剤形は、生分解性ポリマービーズ、デキストラン、およびシクロデキストリン包接錯体を含んでもよい。
【0049】
直腸製剤は、液体、半固体、または固体の製剤であり得る。直腸投与の場合、有効用量は坐剤、直腸用カプセル剤、直腸用溶液剤、乳濁剤、または懸濁液剤(例えば、停留浣腸)、直腸用の溶液剤もしくは懸濁液剤のための粉剤または錠剤、およびクリーム剤、軟膏剤、ジェル剤、フォーム剤などの半固体の直腸製剤の剤形とすることができる。直腸投与は、直腸に医薬を供給するように設計された特殊なカテーテルを用いて行うこともできる。製剤の安定性にも作用部位での作用物質のバイオアベイラビリティにも悪影響を及ぼさない賦形剤は、どれも使用可能である。
【0050】
坐剤は、水に溶解もしくは分散可能または体温で溶融可能である適切な基剤に分散または溶解された作用物質を含むことができる。成形により調製する場合には、マクロゴール、ゼラチンと水とグリセロールなどからなるゼリー状混合物、硬化植物油、硬質脂肪、またはココアバターなどの坐剤用の基剤が通常使用される。また、希釈剤、吸着剤、滑沢剤、抗菌防腐剤、着色剤などの添加剤を加えてもよい。
【0051】
直腸用のカプセル剤は、潤滑コーティングが施されていてもよいことを除けば、一般にソフトカプセル剤に似ている、固体の単回投与製剤である。直腸カプセル剤の内容物は、通常、植物油などの非水性液体中の、または適切な賦形剤の半固体混合物中の作用物質の溶液または懸濁液である。
【0052】
直腸用の溶液剤、乳濁液剤および懸濁液剤(浣腸とも呼ばれる)は、直腸内への適用を目的とした液剤であり、水、グリセロール、マクロゴール、植物油、またはそれらの混合物に溶解または分散された作用物質を含むことができる。それらは、例えば、製剤の粘度を調整するため、pHを調整もしくは安定化するため、作用物質の溶解度を高めるため、および/または製剤を安定化するための添加剤を含有してもよい。直腸用の溶液剤、乳濁液剤、および懸濁液剤は、一般に、約2.5mL~約2000mLの範囲の容量を含む単回投与容器で供給される。この容器は、製剤を直腸に送達するように適合されているか、または適切なアプリケータが添付されている。
【0053】
直腸用の溶液剤または懸濁液剤の調製を目的とした粉剤および錠剤は、投与時に水や他の適切な溶媒に溶解または分散される単回投与製剤である。それらは、溶解もしくは分散を促進するための、または粒子の凝集を防ぐための添加剤を含んでもよい。
【0054】
半固体の直腸製剤には、直腸内の局所治療を目的とした軟膏剤、クリーム剤、ジェル剤、およびフォーム剤が含まれる。それらは通常、直腸に製剤を送達するのに適した容器に入った単回投与製剤として供給されるか、または適切なアプリケータが添付されている。
【0055】
経口投与の場合、有効用量は錠剤、カプセル剤、乳濁液剤、懸濁液剤、溶液剤、シロップ剤、スプレー剤、トローチ剤、粉剤、および徐放性製剤の剤形とすることができる。経口投与に適した賦形剤には、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれる。
【0056】
有効用量は、凍結乾燥された形態で提供することも可能である。そのような剤形は、投与前に再構成するためのバッファー、例えば重炭酸バッファーを含んでもよいし、バッファーが、例えば水で再構成するための、凍結乾燥剤形に含まれてもよい。凍結乾燥剤形は、適切な血管収縮剤、例えばエピネフリンをさらに含み得る。凍結乾燥剤形は、再構成された剤形が個体に直ちに投与され得るように、任意で再構成用バッファーと組み合わせて包装された、シリンジで提供することができる。
【0057】
いくつかの態様では、本発明の薬学的組成物は、水性基剤を含む薬学的に許容される担体を含有する。他の態様では、薬学的に許容される担体は、低粘度コンパウンドを含む。ある場合には、低粘度コンパウンドはゼラチンを含む。他の場合には、低粘度コンパウンドはヒドロゲルを含む。
【0058】
IV. 投与方法
本明細書に記載の組成物は、ERCP後膵炎(PEP)を予防するために対象に投与することができる。前記組成物は、経腸投与(例えば、経口、口腔内、舌下、または直腸)、非経口投与(例えば、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、骨内、または頭蓋内)、または経粘膜投与(例えば、鼻腔内、膣内、または経皮)により投与することが可能である。その他の送達方法には、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様では、前記組成物は直腸に投与される。
【0059】
いくつかの態様では、前記組成物は、例えば、対象に対してERCPが行われる前に、前記対象に1回投与される。前記組成物は、対象にERCPを行う少なくとも約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120分前に投与することができる。特定の態様では、前記組成物は、ERCPに向けての対象の準備およびポジショニングの一環として、麻酔導入後すぐに投与される。
【0060】
いくつかの態様では、前記組成物は、所望の予防効果を得るために、約0.0001mg/kg~約100mg/kg、約0.001mg/kg~約50mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約0.5mg/kg、約0.1mg/kg~約50mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約10mg/対象の体重kgを送達するために十分な投与量レベルで投与され得る。
【0061】
いくつかの態様では、前記組成物は、1回量のNSAID(例えば、インドメタシン)および/または1回量のカルシニューリン阻害物質(例えば、タクロリムス)を含有し、それぞれ独立して、約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mg、またはそれ以上の作用物質を含む。特定の態様では、前記組成物は、100mgのNSAID、例えばインドメタシンを含有する。
【0062】
いくつかの態様では、前記組成物は、1回量のNSAID(例えば、インドメタシン)および/または1回量のカルシニューリン阻害物質(例えば、タクロリムス)を含有し、それぞれ独立して、基準剤形中に存在する作用物質の用量に対応する等価用量を含む。特定の態様では、基準剤形は、約0.1、0.5、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000mg、またはそれ以上の作用物質を含有する。特定の態様では、前記組成物は、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害物質を、タクロリムス経口粉剤15mgに相当する等価用量で含有する。
【0063】
いくつかの態様では、ERCP前に前記組成物を対象に直腸投与すると、現在の標準治療(例えば、直腸インドメタシン単独)と比較して、PEPの発生率が約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上低下する。特定の態様では、ERCP前に前記組成物を対象に直腸投与すると、直腸インドメタシン単独と比較して、PEPの発生率が約75%以上低下する。
【実施例】
【0064】
V. 実施例
具体的な実施例によって本発明をより詳しく説明する。以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、いかなる場合にも本発明を限定することを意図したものではない。
【0065】
実施例1. タクロリムスとインドメタシンとを含有する直腸用組成物の製剤化
タクロリムスとインドメタシンとを含有する組成物の直腸を介した送達を最適化するために、これらの薬剤の迅速かつ予測可能な送達をもたらす成分が選択される。直腸は、消化管の他の部分と比べて、比較的一定していて静的であり、これはこの送達様式の利点となる。直腸は、平均液量が1~3mLであり、pH7~8の中性で、緩衝能力が最小であり、タクロリムスとインドメタシンの送達用ビヒクルは、この点を考慮したものである。例示的な組成物は、100mgのインドメタシンと、タクロリムス経口粉剤15mgに対応する等価用量を含有する。
【0066】
実施例2. タクロリムスとインドメタシンとを含有する直腸用組成物によるPEPの予防
タクロリムスとインドメタシンの直腸製剤は、ERCPに向けての標準的な患者の準備とポジショニングの一環として、麻酔導入後すぐに患者に投与される。この投与時間枠は、ERCP前の患者の準備の過程で途切れなく組み込まれ、また、ERCP関連機器の使用およびERCP後膵炎(PEP)のリスクを高める造影剤注入の間、両薬剤の最適で予測可能な局所および全身の治療レベルをもたらす。ERCP前に前記製剤を投与すると、現在の標準治療と比較して、PEPの発生率が約75%以上低下する。
【0067】
VI. 例示的な態様
本開示の主題に従って提供される例示的な態様には、特許請求の範囲および以下の態様が含まれるが、これらに限定されない。
1. カルシニューリン阻害物質と非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)とを含む、組成物。
2. カルシニューリン阻害物質が、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様1の組成物。
3. NSAIDが、酢酸誘導体、プロピオン酸誘導体、エノール酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチラート、選択的COX-2阻害物質、スルホンアニリド、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様1または2の組成物。
4. 酢酸誘導体が、インドメタシン、ケトロラク、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
5. プロピオン酸誘導体が、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、デキシブプロフェン、フェノプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
6. エノール酸誘導体が、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
7. アントラニル酸誘導体が、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
8. サリチラートが、アスピリン、ジフルニサル、サリチル酸、サルサレート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
9. 選択的COX-2阻害物質が、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様3の組成物。
10. スルホンアニリドがニメスリドである、態様3の組成物。
11. カルシニューリン阻害物質がタクロリムスであり、かつ/またはNSAIDがインドメタシンである、態様1の組成物。
12. 対象における内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎(PEP)を予防するために有効な量のカルシニューリン阻害物質とNSAIDとを含む、態様1~11のいずれかの組成物。
13. 薬学的に許容される担体をさらに含む、態様1~12のいずれかの組成物。
14. 薬学的に許容される担体が直腸投与に適するものである、態様13の組成物。
15. 坐剤である、態様1~14のいずれかの組成物。
16. 対象におけるPEPを予防するための方法であって、態様1~15のいずれかの組成物を対象に投与することを含む、方法。
17. 対象がERCPをまさに受けようとしている、態様16の方法。
18. 対象に対してERCPが実施される前に、組成物が投与される、態様16または17の方法。
19. 投与することが直腸投与によるものである、態様16~18のいずれかの方法。
20. 対象におけるPEPを予防するための組成物であって、カルシニューリン阻害物質と、直腸投与に適した薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
21. カルシニューリン阻害物質が、タクロリムス、シクロスポリン、ボクロスポリン、ピメクロリムス、それらのプロドラッグ、それらのアナログ、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様20の組成物。
22. 坐剤である、態様20または21の組成物。
23. 対象にインドメタシン投与の禁忌がある、態様20~22のいずれかの組成物。
24. インドメタシン投与の禁忌が、妊娠、凝血障害、抗凝血の必要性、NSAID感受性またはアレルギー、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、態様23の組成物。
25. 対象におけるPEPを予防するための方法であって、態様20~24のいずれかの組成物を対象に投与することを含む、方法。
26. 対象がヒトである、態様25の方法。
27. 対象が、臨床状況および/または医師の判断に基づいて、組成物を投与される、態様26の方法。
【0068】
前述の発明は、理解を明確にするために、例示および実施例によって多少詳しく説明されているが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正を実施できることが理解されるであろう。さらに、本明細書で提供される各参考文献は、各参考文献が個別に参照により組み入れられるのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【国際調査報告】