(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(54)【発明の名称】高アンモニア血症を治療するためのオルニチンフェニルアセテートの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20230615BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230615BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230615BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230615BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P1/16
A61P3/00
A61P7/00
A61K31/192
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570503
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021032773
(87)【国際公開番号】W WO2021236522
(87)【国際公開日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506164729
【氏名又は名称】オセラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】ビルチェス,レジス
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206FA53
4C206KA13
4C206KA15
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA06
4C206NA07
4C206NA14
4C206ZA51
4C206ZA75
4C206ZC21
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示の実施形態は、高アンモニア血症を治療または寛解させるためのオルニチンフェニルアセテートの用量、およびこれを、慢性肝疾患、例えば硬変を有する患者に投与する方法に関する。一部の実施形態において、患者は、肝疾患の合併症として肝性脳症も有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
前記患者のベースラインQT間隔についての情報を査定または受け取ること、
第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に前記患者に投与することと、
第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に前記患者に投与することと、
を含み、
前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートが前記第1の量よりも少ない、方法。
【請求項2】
前記ベースラインQT間隔が、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のQT間隔の2つ以上の測定の平均として決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
QT間隔の2つの測定が、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の30分前および15分前に行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後における、前記ベースラインQT間隔からのQT間隔の変化についての情報を査定するまたは受け取ることをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記QT間隔の変化が、前記第1の時間帯における1つまたは複数のQT間隔と、前記ベースラインQT間隔との差である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記QT間隔の変化が、前記ベースラインQT間隔から20%を超える増加である場合、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記QT間隔の変化が、前記第2の時間帯における1つまたは複数のQT間隔と、前記ベースラインQT間隔との差である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記QT間隔の変化が、前記ベースラインQT間隔から20%を超える増加である場合、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記QT間隔が心電図(ECG)により測定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記QT間隔が、Fridericiaの方程式(QTcF)を使用して心拍数を修正される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記患者の査定ベースラインQTcFが500ms未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者が前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のQT延長において1つまたは複数のリスク因子を有するかについて情報を得ること、または得たことをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記QT延長のリスク因子が、低カリウム血症、低マグネシウム血症、先天性QT延長症候群、疑わしいもしくは実際の急性心筋梗塞、または1種もしくは複数種のQT延長薬による同時療法、あるいはこれらの組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、低カリウム血症、低マグネシウム血症、または先天性QT延長症候群を有さない、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者には任意のQT延長薬が同時に投与されていない、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記疑わしい急性心筋梗塞が、発生中のまたは新たなECGシグナルを伴うトロポニンI値の上昇によって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が0~約0.4ng/mLのトロポニンI(TnI)レベルを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
1種または複数種のQT延長薬による患者の同時療法についての情報を受け取るまたは受け取ったことと、
第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に前記患者に投与することと、
第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に前記患者に投与することと、
を含み、
前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートが前記第1の量よりも少ない、方法。
【請求項19】
必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、
第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に前記患者に投与することと、
第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に前記患者に投与することと、を含み、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートが前記第1の量よりも少なく、
前記患者が1種または複数種のQT延長薬を同時に摂取しない、方法。
【請求項20】
前記QT延長薬が、アミオダロン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アステミゾール、アジスロマイシン、ベプリジル、クロロキン、クロルプロマジン、シロスタゾール、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、コカイン、ジソピラミド、ドフェチリド、ドンペリドン、ドネペジル、ドロネダロン、ドロペリドール、エリスロマイシン、エスシタロプラム、フレカイニド、フルコナゾール、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、ハロファントリン、ハロペリドール、イボガイン、イブチリド、レボフロキサシン、レボメプロマジン(メトトリメプラジン)、レボメタジル酢酸エステル、レボスルピリド、メソリダジン、メサドン、モキシフロキサシン、オンダンセトロン、オキサリプラチン、パパベリンHCl(冠状動脈内)、ペンタミジン、ピモジド、プロブコール、プロカインアミド、プロポフォール、キニジン、ロキシスロマイシン、セボフルラン、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スルトプリド、テルフェナジン、テラプレビル、テルリプレシン、テロジリン、チオリダジン、およびバンデタニブからなる群から選択される、請求項13、18、または19に記載の方法。
【請求項21】
前記QT延長薬が、アマンタジン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アムホテリシンB、アタザナビル、ベンドロフルメチアジド、ベンドロフルアジド、抱水クロラール、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エソメプラゾール、ファモチジン、フルオキセチン、フルボキサミン、ガランタミン、ガレノキサシン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシジン、インダパミド、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ロペラミド、メトクロプラミド、メトラゾン、メトロニダゾール、ネルフィナビル、オランザピン、オメプラゾール、パロキセチン、ピペラシリン、タゾバクタム、ポサコナゾール、プロパフェノン、クエチアピン、キニーネ硫酸塩、ラノラジン、セルトラリン、ソリフェナシン、トラゾドン、トルセミド(トラセミド)、ボリコナゾール、およびジプラシドンからなる群から選択される、請求項13、18、または19に記載の方法。
【請求項22】
前記QT延長薬が、アルフゾシン、アポモルヒネ、アリピプラゾール、アルテニモル、ピペラキン、アセナピン、アトモキセチン、ベダキリン、ベンダムスチン、ベンペリドール、ベトリキサバン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブプレノルフィン、カボザンチニブ、カペシタビン、セリチニブ、クロファジミン、クロミプラミン、クロザピン、クリゾチニブ、シアメマジン(シアメプロマジン)、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デガレリクス、デラマニド、デシプラミン、デューテトラベナジン、デクスメデトミジン、ドラセトロン、エファビレンツ、エリグルスタット、エピルビシン、エリブリンメシル酸塩、エゾガビン(レチガビン)、フェルバメート、フィンゴリモド、フルオロウラシル(5-FU)、フルペンチキソール、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ヒドロコドン、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン)、イノツズマブオゾガマイシン、イスラジピン、ケタンセリン、ラパチニブ、レンバチニブ、リチウム、ロピナビル、リトナビル、メルペロン、ミドスタウリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル、ヒドロクロロチアジド、ネシツムマブ、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、ヌシネルセン、オフロキサシン、オシメルチニブ、オキシトシン、パリペリドン、パロノセトロン、パノビノスタット、パシレオチド、パゾパニブ、ペルフルトレン脂質マイクロスフェア、ペルフェナジン、ピルジカイニド、ピマバンセリン、ピパンペロン、プリマキンリン酸塩、プロメタジン、プロチペンジル、リボシクリブ、リルピビリン、リスペリドン、ロミデプシン、サキナビル、セルチンドール、ソラフェニブ、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラバンシン、テリスロマイシン、テトラベナジン、チアプリド、チピラシル、トリフルリジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラマドール、トリミプラミン、トロピセトロン、バルベナジン、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリノスタット、およびゾテピンからなる群から選択される、請求項13、18、または19に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のベースラインQT間隔と比較した、前記第1の量または前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際のQT間隔の変化についての情報を査定するまたは受け取ることをさらに含む、請求項18から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記QT間隔の変化が、前記ベースラインQT間隔から20%を超える増加である場合、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記QT間隔の変化が、前記ベースラインQT間隔から20%を超える増加である場合、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約20gであり、前記第1の時間帯が約6時間である、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートが約15gであり、前記第2の時間帯が約18時間である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートが、前記第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後に投与される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第3の時間帯において、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後に、第3の量のオルニチンフェニルアセテートを投与することをさらに含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第3の時間帯が約4日間であり、1日(24時間)に投与される前記第3の量のオルニチンフェニルアセテートが、前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートと同じである、または前記第2の量のオルニチンフェニルアセテートより少ない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第3の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後における、前記ベースラインQT間隔からのQT間隔の変化についての情報を査定するまたは受け取ることをさらに含む、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記QT間隔の変化が、前記第3の時間帯における1つまたは複数のQT間隔と、前記ベースラインQT間隔との差として決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記QT間隔の変化が、前記ベースラインQT間隔から20%を超える増加である場合、前記第3の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
オルニチンフェニルアセテートが連続静脈内注入で投与される、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が標準治療(standard of care)も受けている、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記標準治療が、リファキシミンを伴う、または伴わないラクツロースを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、肝硬変、肝代償不全、急性肝疾患、慢性肝疾患、門脈圧亢進症、または尿素サイクル異常症を有する、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者が、1つまたは複数の肝性脳症エピソードを患っている、または患ったことがある、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
慢性肝不全の急性増悪(acute on-chronic liver failure)は、初期には異常な行動および損なわれた認知(compromised cognition)として現れる。肝性脳症(HE)の発症を臨床で正確に指摘できることはまれであるが、進行性肝疾患を有する患者にとっての標識点である。硬変を有する患者のおよそ60%~70%が、神経認知障害(neurocognitive impairment)の少なくともかすかな兆候を有し、HEが、硬変で入院した患者の主要な診断である。顕性HEは、硬変母集団においておよそ30%の有病率を有し、米国で毎年入院する患者のおよそ150,000人を占める。硬変を有する重症HE患者は、最初の1年間だけで50%を超える死亡率に関連している。
【0002】
肝性脳症は、主にアンモニアである腸由来毒素が、通常ではそのような薬剤を解毒する欠陥肝臓を迂回し、これらの毒素が循環に入り、血液脳関門を通過し、神経伝達および中枢神経系の機能に障害をもたらすときに発生する精神神経障害である。肝性脳症は、急性肝不全、進行性肝硬変の状況における慢性進行性肝疾患(顕性HE)、および/または肝疾患を伴う、もしくは伴わない門脈大静脈吻合術の結果という状況で起こりうる。HEの病理発生は不完全にしか理解されていないが、静脈血中アンモニア濃度の増加が依然としてHEを理解するための中枢であることに変わりなく、HEのエピソードを治療する、ならびに予防する新規の安全で有効な静脈血中アンモニア低下療法が必要であることを支持している。
【0003】
食事によるタンパク質制限は、硬変を有する患者において循環静脈血中アンモニアを間接的に低減する戦略として、長い間提唱されてきた。しかし、最近のデータは、この戦略がHEの予防に有効ではなく、より筋消耗になりやすくして患者に有害でありうることが示されている。
【0004】
顕性HEのエピソードを有する患者の治療のための現行の治療指針は、毎日3回の便通を生じるように調整された非吸収性二糖であるラクツロースを第一選択薬剤として、25mlの用量で1日2回投与することを推奨している。腸内細菌叢を変更するリファキシミンは、顕性HEの再発のリスクを低減するために承認されている。
【0005】
L-オルニチンL-アスパラギン酸塩(本明細書以下、LOLAと称される)は、ヨーロッパおよびアジアにおいてIV製品として入手可能であり、循環静脈血中アンモニアをグルタミンの形態で捕捉することによって患者の利益になりうるが、急性肝不全における利益は実証できなかった。フェニル酢酸およびそのプロドラッグであるフェニル酪酸(塩またはエステル)は、非常に高い循環グルタミンレベルを有する遺伝的尿素サイクル異常症患者において、アンモニアを低減することに成功裏に使用されてきた。高静脈血中アンモニア負荷を低減するためにフェニル酢酸またはフェニル酪酸(塩またはエステル)のみを使用する手法は、慢性肝疾患の患者において有効に働くことが期待されず、それは、これらの患者は典型的には低い循環グルタミンレベル(グルタミンシンターゼの低減された発現)を有するからであるが、グリセロールフェニル酪酸による再発性HEを予防するための経口予防法についての最近のデータは、有望な結果を示している。加えて、不十分な除脂肪筋量を有する硬変患者における慢性的治療および持続的なグルタミン枯渇のリスクは、依然として懸念材料のままである。このように、慢性肝疾患、例えば硬変を有する患者において、HEの代替的で有効な治療の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、患者のベースラインQT間隔についての情報を査定するまたは受け取ることと、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することとを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少ない方法に関する。
【0007】
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、1種または複数種のQT延長薬による患者の同時療法についての情報を受け取るまたは受け取ったことと、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することとを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少ない方法に関する。一部の実施形態において、方法は、任意のQT延長薬を同時に摂取しないように患者に助言すること、またはQT延長薬の併用が禁忌であることについての情報を患者に提供することをさらに含む。
【0008】
本開示の追加の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することとを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少なく、患者が1種または複数種のQT延長薬を同時に摂取しない方法に関する。一部の実施形態において、方法は、任意のQT延長薬を同時に摂取しないように患者に助言すること、またはQT延長薬の併用が禁忌であることについての情報を患者に提供することをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に記載されている方法の実施形態は、必要性のある対象において高アンモニア血症を治療する、または寛解させるためのオルニチンフェニルアセテートの使用に関する。一部の場合において、対象は少なくとも1つの顕性肝性脳症エピソードを経験している、または経験した。方法は、オルニチンフェニルアセテートの投与前に対象のベースラインQT間隔を測定することを含み、オルニチンフェニルアセテートの投与の際および後に対象のQT間隔の追加的な測定を行って、QT間隔の変化をモニターすることをさらに含むことができる。加えて、方法は、任意の同時QT延長薬を含む対象の病歴および処方歴についての情報を取得するまたは受け取ることを、さらに含むことができる。方法は、QT延長薬の併用が禁忌であることについての情報を患者に提供することを、さらに含むことができる。方法は、オルニチンフェニルアセテートの投与前のQT延長に関して、1つまたは複数のリスク因子の情報を受け取ること、またはリスク因子を査定することもさらに含むことができる。さらなる実施形態において、方法は、本明細書に記載されている情報または査定(例えば、QT間隔の変化、QT延長についてのリスク因子、例えば低カリウム血症、低マグネシウム血症、先天性QT延長症候群、疑わしいもしくは実際の急性心筋梗塞、または1種もしくは複数種のQT延長薬による同時療法など)に基づいてオルニチンフェニルアセテートの用量を調整または低減することを含むことができる。
【0010】
定義
本明細書に使用されるセクションの見出しは、編成の目的のみであり、記載される主題を制限するものと解釈されるべきではない。
【0011】
特に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術および科学用語は、当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。用語「含む(including)」、ならびに他の形態、例えば「含む(include)」、「含む(includes)」および「含んだ(included)」の使用は、制限的ではない。用語「有する(having)」、ならびに他の形態、例えば「有する(have)」、「有する(has)」および「有した(had)」の使用は、制限的ではない。本出願に使用されるとき、移行句または請求項本文であっても、用語「含む(comprise(s))」および「含む(comprising)」は、制約のない意味を有すると解釈されるべきである。すなわち、上記用語は、語句「少なくとも~を有する」または「少なくとも~を含む」の同義語として解釈されるべきである。例えば、方法の文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、方法が少なくとも列挙されたステップを含むが、追加的なステップも含みうることを意味する。化合物、組成物、製剤、またはデバイスの文脈で使用される場合、用語「含む(comprising)」は、化合物、組成物、製剤、またはデバイスが、少なくとも列挙された特徴または構成成分を含むが、追加的な特徴または構成成分も含みうることを意味する。
【0012】
フェニル酢酸(PAA)のL-オルニチン塩であるL-オルニチンフェニルアセテート(LOPAまたはL-OPAとも称される)は、様々な程度の肝性脳症(HE)を有する患者において、アンモニア濃度を低減するためにアンモニア除去経路を使用する新規のアンモニア低下剤である。
【0013】
LOPAの静脈内(IV)製剤は、オルニチンとフェニル酢酸の相乗効果により高められたアンモニア排除を介して、硬変の状況でアンモニア排泄用の代替的経路を許容する固定用量組合せ療法である。オルニチンはグルタミンシンターゼの活性を刺激し、体筋が、アンモニアの非毒性担体であるグルタミンの形態で循環アンモニアを捕捉することを誘導する。次いで、グルタミンはフェニル酢酸と抱合して、フェニルアセチルグルタミン(PAGN)を形成し、尿中に排泄される。この戦略は、グルタミナーゼによるグルタミンの最終的な再循環および分解を予防し、アンモニアの再形成を回避する。
【0014】
当該技術において良く理解されているように、異なる機器によりX線回折パターンが測定されるときの実験変動のため、2シータ(2θ)値が0.2°以内(すなわち、±0.2°)であると認められる場合、ピーク位置は等しいと推定される。例えば、米国薬局方は、10個の最強回折ピークの角度状況が標準物質の±0.2°以内にあると認められ、ピークの相対強度が20%を超えて変動しない場合、素性が確証されると記述している。したがって、本明細書に列挙されている位置の0.2°以内のピーク位置は、同一であると推定される。
【0015】
用語「HEST」は、本明細書に記載されるとき、患者のHEの重症度を評価する一連の基準を指す。一部の場合において、HESTは下記の表A、BまたはCを指す。HESTの詳細およびHEを患っている患者の診断に関連するその使用は、その全体が参照により組み込まれる国際特許出願第PCT/US2020/031854号明細書に見出すことができる。
【0016】
「治療する(treat)」、「治療(treatment)」または「治療している(treating)」は、本明細書で使用されるとき、予防および/または治療目的で医薬組成物/製剤を投与することを指す。用語「予防処置(prophylactic treatment)」は、まだ疾患を患っていないが特定の疾患にかかりやすい、または特定の疾患のリスクがある患者を治療することを指し、それによって治療は患者が疾患を発症する可能性を低減する。用語「治療処置(therapeutic treatment)」は、すでに疾患を患っている患者に治療を施すことを指す。
【0017】
用語「羽ばたき振戦」は、本明細書で使用されるとき、代謝性脳症が原因で体位を維持することが不可能であることによって特徴付けられる運動障害を指す。手を可能な限り後方に背屈させながら腕を前方にまっすぐ保持するように患者に求めることによって、身体検査において誘発させることができる。羽ばたき振戦が存在する場合、手の下向きの「羽ばたき」が不規則に発生し、続いて一瞬であるがはっきりと分かる瞬間の後、背屈位置に戻る。一部の場合では、両手が同時に下方へ「羽ばたく」。患者が腕を前方に保持できない場合、羽ばたき振戦を誘発する代替的手法は、患者に腕をベッドにうつ伏せに静止させ、次いで手をベッドから離して背屈するように求め、ここでもその位置で30秒間保持することを伴う。ミオクローヌスは、下方「羽ばたき」による突然の緊張喪失ではなく、結果として生じる上方「筋反射」を伴う突然の緊張増加を表すという事実によって区別される。振戦は、作動筋系および拮抗筋系の交互収縮に続発性の多少の律動的振動運動の存在によって区別される(Moore DP and Puri BK, Textbook of Clinical Neuropsychiatry and Behavioral Neuroscience, 2012, 3rd edition. London: Taylor & Francis Ltd.)。本明細書に記載されている肝性脳症ステージ分けツール(HEST)の一部の実施形態において、30秒間に3つ以上の羽ばたきは、羽ばたき振戦が陽性であると考慮される。
【0018】
用語「昏迷」は、本明細書で使用されるとき、重要な精神機能の欠如、および患っている人がほぼ全体的に無応答であり、基礎的な刺激、例えば疼痛にのみ応答する意識レベルを指す。外部刺激に対する反応への機能障害により特徴付けられる。本明細書に記載されているHESTの一部の実施形態において、患者が重症の眠気を有する(中程度の刺激で覚醒しうるが、ほぼ直後に眠りに落ちる)場合、または患者が無応答であり、患者が激しい繰り返しの刺激によってのみ覚醒しうる場合、または患者の会話が理解不能である場合、患者は昏迷状態であると考慮される。
【0019】
用語「重度の眠気」は、本明細書で使用されるとき、対象が中程度の刺激で覚醒しうるが、ほぼ直後に眠りに落ちる状態を指す。
【0020】
用語「明らかな錯乱状態」および「著しい見当識障害(gross disorientation)」は、本明細書で使用されるとき、質問または指示に対する不適切な応答;困惑;質問への不注意;またはこれらの組合せなどの行動を含むことができる。
【0021】
本明細書で使用されるとき、用語「昏睡」または「昏睡性」は、覚醒不能な無応答状態と定義される。
【0022】
高アンモニア血症の治療
本開示の一部の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、患者のベースラインQT間隔についての情報を査定するまたは受け取ることと、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少ない方法に関する。
【0023】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、ベースラインQT間隔は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のQT間隔の2つ以上の測定の平均として決定される。一実施形態において、ベースラインQT間隔は、QT間隔の2つの測定の平均として決定され、例えば、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の30分前に一方の測定が行われ、15分前にもう一方の測定が行われる。
【0024】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、方法は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後の、例えば、第1の時間帯における、ベースラインQT間隔からのQT間隔の変化についての情報を査定するまたは受け取ることをさらに含む。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯は、約1時間~約10時間、例えば、約2時間~約9時間、約3時間~約8時間、約4時間~約7時間、または約5時間~約6時間である。一実施形態において、第1の時間帯は約6時間である。一部の非限定例として、QT間隔の変化は、第1の時間帯における1つまたは複数のQT間隔(例えば、第1の時間帯の開始の1、2、3、4、5もしくは6時間後に行われた測定、または任意の2つ以上の測定の平均)とベースラインQT間隔との差として計算されうる。一部の実施形態において、方法は、QT間隔の変化がベースラインQT間隔からの増加である場合、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む。一部のそのような実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、約10g、12g、14g、16g、18g、20g、22g、24g、26g、28gもしくは30g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、約12g~約28g、約14g~約26g、約16g~約24g、または約18g~約22gでありうる。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは約20gである。QT間隔の変化がベースラインQT間隔より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)である場合、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、本明細書に記載されている標準用量より、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%減少または低減されうる。
【0025】
一部の実施形態において、方法は、第2の時間帯における第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後の、ベースラインQT間隔からのQT間隔の変化についての情報を査定するまたは受け取ることをさらに含む。一部の実施形態において、第2の時間帯は第1の時間帯より長い。一部のそのような実施形態において、第2の時間帯は、約12時間~約24時間、または約16時間~約20時間である。一実施形態において、第2の時間帯は約18時間である。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯および第2の時間帯の合計は、約18時間~約36時間、または約20時間~約30時間である。一実施形態において、第1および第2の時間帯の合計は約24時間である。一部の非限定例として、QT間隔の変化は、第2の時間帯における1つまたは複数のQT間隔(例えば、第2の時間帯の開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間後に行われた測定、または任意の2つ以上の測定の平均)とベースラインQT間隔との差として計算されうる。一部の実施形態において、方法は、QT間隔の変化がベースラインQT間隔からの増加である場合、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、約5g~約25g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5g、20g、22.5gもしくは25g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、約7.5g~約22.5g、約10g~約20g、または約12.5g~約17.5gである。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは約15gである。QT間隔の変化がベースラインQT間隔より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)である場合、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、本明細書に記載されている標準用量より、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%減少または低減されうる。
【0026】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、QT間隔は心電図(ECG)により測定される。一部のさらなる実施形態において、QT間隔は、Fridericiaの方程式(QTcF)を使用して心拍数を修正される。一実施形態において、患者のベースラインQTcFは、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前では500ms未満である。換言すると、患者のベースラインQTcFが500ms以上である場合、そのような患者はオルニチンフェニルアセテートを摂取することから除外される。
【0027】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、方法は、患者が第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のQT延長に1つまたは複数のリスク因子を有するかについて情報を得ること、または得たことをさらに含むことができる。QT延長のリスク因子は、低カリウム血症、低マグネシウム血症、先天性QT延長症候群、疑わしいもしくは実際の急性心筋梗塞、または1種もしくは複数種のQT延長薬による同時療法、あるいはこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。一部のそのような実施形態において、疑わしい急性心筋梗塞は、発生中のまたは新たなECGシグナルを伴うトロポニンI値の上昇によって決定される。正常なトロポニンI(TnI)レベルは、一般に0~約0.4ng/mLである。一部の場合において、低カリウム血症、低マグネシウム血症、先天性QT延長症候群、または疑わしいもしくは実際の急性心筋梗塞を有する患者は、オルニチンフェニルアセテートを摂取することから除外される。一部の他の場合において、任意のQT延長薬を同時に摂取している患者も、オルニチンフェニルアセテートを摂取することから除外される。
【0028】
本開示の一部の追加の実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、1種または複数種のQT延長薬による患者の同時療法についての情報を受け取るまたは受け取ったことと、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することとを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少ない方法に関する。本開示の一部のさらなる実施形態は、必要性のある患者において高アンモニア血症を治療する、または寛解させる方法であって、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを第1の時間帯に患者に投与することと、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを第2の時間帯に患者に投与することとを含み、第1の量のオルニチンフェニルアセテートが約10g~約30gであり、第2の量のオルニチンフェニルアセテートが第1の量よりも少なく、患者が1種または複数種のQT延長薬を同時に摂取しない方法に関する。
【0029】
一部の実施形態において、方法は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のベースラインQT間隔についての情報を査定し、または受け取り、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後(例えば、第1の時間帯の最中または後であるが、第2の時間帯が始まる前)の情報を査定して、または受け取ってベースラインQT間隔からのQT間隔の変化を決定することをさらに含むことができる。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯は、約1時間~約10時間、例えば、約2時間~約9時間、約3時間~約8時間、約4時間~約7時間、または約5時間~約6時間である。一実施形態において、第1の時間帯は約6時間である。一部の非限定例として、QT間隔の変化は、第1の時間帯における1つまたは複数のQT間隔(例えば、第1の時間帯の開始の1、2、3、4、5もしくは6時間後に行われた測定、または任意の2つ以上の測定の平均)とベースラインQT間隔との差として計算されうる。一部の実施形態において、方法は、QT間隔の変化がベースラインQT間隔からの増加である場合、第1の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む。一部のそのような実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、約10g、12g、14g、16g、18g、20g、22g、24g、26g、28gもしくは30g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、約12g~約28g、約14g~約26g、約16g~約24g、または約18g~約22gでありうる。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは約20gである。QT間隔の変化がベースラインQT間隔より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)である場合、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、本明細書に記載されている標準用量より、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%減少または低減されうる。
【0030】
一部のさらなる実施形態において、方法は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のベースラインQT間隔についての情報を査定し、または受け取り、第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際または後(すなわち、第2の時間帯の最中または後)の情報を査定して、または受け取ってベースラインQT間隔からのQT間隔の変化を決定することをさらに含むことができる。一部のそのような実施形態において、第2の時間帯は、約12時間~約24時間、または約16時間~約20時間である。一実施形態において、第2の時間帯は約18時間である。一部のそのような実施形態において、第1の時間帯および第2の時間帯の合計は、約18時間~約36時間、または約20時間~約30時間である。一実施形態において、第1および第2の時間帯の合計は約24時間である。一部の非限定例として、QT間隔の変化は、第2の時間帯における1つまたは複数のQT間隔(例えば、第2の時間帯の開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12時間後に行われた測定、または任意の2つ以上の測定の平均)とベースラインQT間隔との差として計算されうる。一部の実施形態において、方法は、QT間隔の変化がベースラインQT間隔からの増加である場合、第2の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む。一部の実施形態において、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、約5g~約25g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5g、20g、22.5gもしくは25g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、約7.5g~約22.5g、約10g~約20g、または約12.5g~約17.5gである。一実施形態において、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは約15gである。QT間隔の変化がベースラインQT間隔より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)である場合、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、本明細書に記載されている標準用量より、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%減少または低減されうる。
【0031】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、方法は、第3の時間帯において、第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の完了後に、第3の量のオルニチンフェニルアセテートを投与することをさらに含むことができる。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した短時間後(例えば、第2の量の投与が完了した5分~2時間以内)に投与される。一部の実施形態において、第3の時間帯は、約2日間~約10日間、例えば、約3日間~約9日間、または約4日間~約8日間である。一実施形態において、第3の時間帯は4日間(96時間)である。一部の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第3の時間帯に連続的に投与される。他の実施形態において、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第3の時間帯の範囲内で別々の投薬時間帯で投与される。一部の実施形態において、1日(24時間)に投与される第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第2の量のオルニチンフェニルアセテートと同じである、または第2の量のオルニチンフェニルアセテートより少ない。例えば、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、約5g~約25g、例えば、約5g、7.5g、10g、12.5g、15g、17.5g、20g、22.5gもしくは25g、または前記値のいずれか2つにより確定された範囲である。例えば、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、約7.5g~約22.5g、約10g~約20g、または約12.5g~約17.5gである。一実施形態において、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは約15gである。一部のさらなる実施形態において、方法は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前のベースラインQT間隔についての情報を査定し、または受け取り、第3の量のオルニチンフェニルアセテートの投与の際(すなわち、第3の時間帯の最中)の情報を査定して、または受け取ってベースラインQT間隔からのQT間隔の変化を決定することをさらに含むことができる。一部の実施形態において、方法は、QT間隔の変化がベースラインQT間隔からの増加である場合、第3の量のオルニチンフェニルアセテートを調整することをさらに含む。QT間隔の変化がベースラインQT間隔より少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)である場合、第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、本明細書に記載されている標準用量より、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%減少または低減されうる。
【0032】
本明細書に記載されている方法のいずれかの1つの特定の例において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは約20gであり、第1の時間帯は約6時間である。第2の量のオルニチンフェニルアセテートは約15gであり、第2の時間帯は約18時間である。第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後、または第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した短時間後(例えば、第1の量の投与が完了した5分~1時間以内)に投与される。第3の量のオルニチンフェニルアセテートは1日(24時間)当たり約15gであり、第3の時間帯は約4日間(96時間)である。第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後、または第2の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した短時間後(例えば、第2の量の投与が完了した5分~1時間以内)に投与される。各時間帯において、オルニチンフェニルアセテートは連続的に投与される。患者のQT間隔は、第1、第2または第3の時間帯のいずれかの最中で査定またはモニターすることにより、ベースラインQT間隔と比較されうる。加えて、第1の量、第2の量または第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、QT間隔の増加(例えば、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、または60msを超えるQT間隔の増加)が観察される場合、調整または低減されうる。例えば、オルニチンフェニルアセテートの量は、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%低減されうる。
【0033】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、本明細書に開示されている第1の量、第2の量または第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、体重が50kg未満の患者、特にチャイルド・ピュー分類C(Child-Pugh C classification)を有する患者において低減されうる。一部のそのような実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは約15gであり、第1の時間帯は約6時間である。第2の量のオルニチンフェニルアセテートは約10gであり、第2の時間帯は約18時間である。第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した直後、または第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与が完了した短時間後(例えば、第1の量の投与が完了した5分~1時間以内)に投与される。第3の量のオルニチンフェニルアセテートは1日(24時間)当たり約10gであり、第3の時間帯は約4日間(96時間)である。
【0034】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、第1の量、第2の量または第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、異なる経路を介して、例えば、静脈内、経口、腹腔内などで投与されうる。一部の実施形態において、第1の量、第2の量および第3の量のオルニチンフェニルアセテートは、それぞれ静脈内注入で投与される。一実施形態において、第1の量のオルニチンフェニルアセテートは、6時間かけて連続静脈内注入により投与され、第2の量のオルニチンフェニルアセテートは、18時間かけて連続静脈内注入により投与され、第3量のオルニチンフェニルアセテートは、4日間(96時間)かけて連続静脈内注入により投与される。
【0035】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、方法は、オルニチンフェニルアセテートが投与される場合、任意のQT延長薬を同時に摂取しないように患者に助言すること、もしくは情報を提供すること、またはQT延長薬の併用が禁忌であることについての情報を患者に提供することをさらに含むことができる。さらなる実施形態において、患者は、オルニチンフェニルアセテートの投与の前または後に、QT延長薬の併用が禁忌であることについての情報を受け取ることもできる。
【0036】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、QT延長薬は、アミオダロン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アステミゾール、アジスロマイシン、ベプリジル、クロロキン、クロルプロマジン、シロスタゾール、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、コカイン、ジソピラミド、ドフェチリド、ドンペリドン、ドネペジル、ドロネダロン、ドロペリドール、エリスロマイシン、エスシタロプラム、フレカイニド、フルコナゾール、ガチフロキサシン、グレパフロキサシン、ハロファントリン、ハロペリドール、イボガイン、イブチリド、レボフロキサシン、レボメプロマジン(メトトリメプラジン)、レボメタジル酢酸エステル、レボスルピリド、メソリダジン、メサドン、モキシフロキサシン、オンダンセトロン、オキサリプラチン、パパベリンHCl(冠状動脈内)、ペンタミジン、ピモジド、プロブコール、プロカインアミド、プロポフォール、キニジン、ロキシスロマイシン、セボフルラン、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スルトプリド、テルフェナジン、テラプレビル、テルリプレシン、テロジリン、チオリダジン、およびバンデタニブからなる群から選択されうる。一部の他の実施形態において、QT延長薬は、アマンタジン、アミスルプリド、アミトリプチリン、アムホテリシンB、アタザナビル、ベンドロフルメチアジド、ベンドロフルアジド、抱水クロラール、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エソメプラゾール、ファモチジン、フルオキセチン、フルボキサミン、ガランタミン、ガレノキサシン、ヒドロキシクロロキン、ヒドロキシジン、インダパミド、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ロペラミド、メトクロプラミド、メトラゾン、メトロニダゾール、ネルフィナビル、オランザピン、オメプラゾール、パロキセチン、ピペラシリン、タゾバクタム、ポサコナゾール、プロパフェノン、クエチアピン、キニーネ硫酸塩、ラノラジン、セルトラリン、ソリフェナシン、トラゾドン、トルセミド(トラセミド)、ボリコナゾール、およびジプラシドンからなる群から選択されうる。他の実施形態において、QT延長薬は、アルフゾシン、アポモルヒネ、アリピプラゾール、アルテニモル、ピペラキン、アセナピン、アトモキセチン、ベダキリン、ベンダムスチン、ベンペリドール、ベトリキサバン(betrixaban)、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブプレノルフィン、カボザンチニブ、カペシタビン、セリチニブ、クロファジミン、クロミプラミン、クロザピン、クリゾチニブ、シアメマジン(シアメプロマジン(cyamepromazine))、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デガレリクス、デラマニド、デシプラミン、デューテトラベナジン、デクスメデトミジン、ドラセトロン、エファビレンツ、エリグルスタット、エピルビシン、エリブリンメシル酸塩、エゾガビン(レチガビン)、フェルバメート、フィンゴリモド、フルオロウラシル(5-FU)、フルペンチキソール、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ヒドロコドン、イロペリドン、イミプラミン(メリプラミン(melipramine))、イノツズマブオゾガマイシン、イスラジピン、ケタンセリン、ラパチニブ、レンバチニブ、リチウム、ロピナビル、リトナビル、メルペロン、ミドスタウリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル、ヒドロクロロチアジド(hydrocholorothiazide)、ネシツムマブ、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、ヌシネルセン、オフロキサシン、オシメルチニブ、オキシトシン、パリペリドン、パロノセトロン、パノビノスタット、パシレオチド、パゾパニブ、ペルフルトレン脂質マイクロスフェア(perflutren lipid microsphere)、ペルフェナジン、ピルジカイニド、ピマバンセリン、ピパンペロン、プリマキンリン酸塩、プロメタジン、プロチペンジル、リボシクリブ、リルピビリン、リスペリドン、ロミデプシン、サキナビル、セルチンドール、ソラフェニブ、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラバンシン、テリスロマイシン、テトラベナジン、チアプリド、チピラシル、トリフルリジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラマドール、トリミプラミン、トロピセトロン、バルベナジン、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリノスタット、およびゾテピンからなる群から選択されうる。
【0037】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、患者は、また、標準治療(standard of care)も受け、例えば、患者はリファキシミンを伴って、または伴うことなくラクツロースを受ける。
【0038】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、オルニチンフェニルアセテートはL-オルニチンフェニルアセテートである。
【0039】
本明細書に記載されている方法の任意の実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニルアセテートのうちの少なくとも1つは、約100mg/mL~約500mg/mLのオルニチンフェニルアセテートを含む水溶液として投与される。一部の実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニルアセテートのそれぞれは、約200mg/mL~約400mg/mLのオルニチンフェニルアセテートを含む水溶液として投与される。一実施形態において、第1、第2、および第3の量のオルニチンフェニルアセテートのそれぞれは、約300mg/mLのオルニチンフェニルアセテートを含む水溶液として投与される。一部のそのような実施形態において、オルニチンフェニルアセテートの水溶液は、少なくとも約5のpH、例えば、約5.4~約6.5のpH範囲を有する。一部の実施形態において、オルニチンフェニルアセテートの水溶液は、投与前に、約2℃~約8℃(例えば、5℃)の温度で保存される。
【0040】
本明細書に記載されている方法のいずれかの実施形態において、患者は、1つまたは複数の状態、例えば、肝硬変、肝代償不全(liver decompensation)、急性肝疾患、慢性肝疾患、門脈圧亢進症、もしくは尿素サイクル異常症、またはこれらの状態の組合せを有することがある。一部のさらなる実施形態において、患者は、肝性脳症(HE)もしくは顕性HEのリスクがありうる、HEもしくは顕性HEのエピソードを患っていることがありうる、またはHEもしくは顕性HEの1つもしくは複数のエピソードを患ったことがある。
【0041】
本明細書に記載されている方法の一部の実施形態において、患者は硬変を有する。一部の場合において、患者は、HEのリスクがある、またはHEの少なくとも1つのエピソードを、例えば硬変の合併症として顕性HE(表A、BもしくはCに例示されている肝性脳症ステージ分けツール(HEST)により定義して、ステージ2、3、もしくは4)を患ったことがあった。一部の場合において、患者は1つまたは複数の肝性脳症エピソードが原因で入院することもある。一部のそのような場合において、患者は、第1の量のオルニチンフェニルアセテートの投与前に、少なくとも4時間~6時間の標準治療を受けている。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
多数および様々な変更を本発明の精神から逸脱することなく行うことができることを、当業者は理解する。したがって、本開示の実施形態は、例示のためだけであり、本発明の範囲を制限することを意図しないことが、明確に理解されるべきである。本明細書に参照される任意の参考文献は、本明細書に考察される材料として、その全体が参照により組み込まれる。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、非限定的であり、本開示の様々な態様の単なる代表例である。
【0047】
[実施例1]
肝性脳症のエピソードに関連する硬変および高アンモニア血症を有する入院患者において、L-オルニチンフェニルアセテート(LOPA)の静脈内製剤の有効性、安全性、および耐性を評価するための、多施設無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験をここに要約する。この試験は、プラセボと比較した、Fridericiaの方程式(QTcF)を使用して心拍数を修正されたQT間隔に対するLOPAの潜在的効果を評価するサブスタディ(substudy)を含む。選ばれた患者は、メインスタディ(main study)の患者とすべて同じ手順を受け、加えて、より集中的な心電図(ECG)検査も受けて、QTcF間隔に対するLOPAの効果を定量化する。
【0048】
試験設計
これは、2つの並行群による無作為化プラセボ対照二重盲検多施設優位第3相試験である。およそ400人の患者が、世界中のおよそ150箇所の試験場に登録する計画である。この試験には、硬変の合併症として、高アンモニア血症に関連する(肝性脳症ステージ分けツール[HEST]によりステージ2、3または4と評価された)顕性HEのエピソードを経験している入院患者が登録する。患者を2つの治療群の1つに無作為化する。
1.LOPA+標準治療(SoC)。
2.プラセボ+SoC。
【0049】
患者を、3つの要因に従って無作為層別化する対話型電話/ウエブ応答システム(IXRS)を使用して、治療群に1:1比で割り当てる。
・リファキシミンの使用(あり対なし)。
・HESTステージ2対HESTステージ3およびステージ4。
・チャイルド・ピュー分類(C-P)の分類C対AおよびB。
【0050】
顕性HEの標準治療(SoC)としてラクツロース±リファキシミンの治療は、研究者の臨床判断および通常の医療施設診療に従って投与されるべきである。患者は、医療状態および通常の臨床トリアージに従って病院のいずれかの場所に配置されうる(すなわち、患者は、この試験に参加するために特定のユニット、例えば集中治療室に、配置される必要はなく、救急部門を含む任意の入院設定が受け入れられる)。
【0051】
患者の50%までが、SoCの一部としてリファキシミンを受けることが許容される。リファキシミン包含の条件は、以下の通りである。
・スクリーニングの10日以内にリファキシミン治療を開始した、またはリファキシミン治療に変更した患者は、除外される。
・スクリーニング前の10日以内にリファキシミンの投与を全く受けなかった患者は、HEの治療の一部としてリファキシミンを始めることができる。これらの患者では、リファキシミンを試験治療の1日目の開始と同時に始めるべきである。
【0052】
試験は、以下の試験期間を含む。
【0053】
スクリーニング/無作為化/ベースライン期間。顕性HEを有すると診断された患者が、ラクツロース±リファキシミンのSoC治療を最低6時間受けた後(ただし、用量は、スクリーニング前の10日以内に開始されず、変更もされないことが条件である)、書面によるインフォームドコンセントから始めて、スクリーニング作業を開始してもよい。スクリーニングおよびベースライン評価は、患者が試験治療を可能な限り早く、顕性HEの診断時からおよそ24時間以内に受け始めることができるように、可能な限り迅速に完了されるべきである。スクリーニング中に、評価および手順を実施し、情報を収集して、試験の適格性を決定し、患者のベースライン情報を確立する。すべてのスクリーニング手順が完了した後、患者を治療のために無作為化する。
【0054】
治療期間。患者は1:1に無作為化されて、LOPA+SoCまたはプラセボ+SoCのいずれかを5日間(120時間)まで受ける。以下の投薬レジメンがこの試験のために計画される。
・最初の24時間の治療(0~24時間未満)
初期投薬(LD):20gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを含有する6時間のIV注入(0~6時間)。
中間投薬:最初のLDの直後に、15gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを含有する18時間のIV注入(6~24時間)。
・治療の残り(24時間以上~120時間以下)
維持投薬:15gのLOPA+SoCまたはプラセボ+SoCを24時間当たり15gの速度の連続IV注入で4日間まで(24時間~120時間まで)。
【0055】
注入開始時間は0時間(1日目)であり、120時間(5日目)まで続く。治療期間は、有効性、安全性、およびPKの評価を含む。注入は、退院の少なくとも3時間前に停止させなければならない。したがって、連続試験治療の5日目(120時間)の前に(医学的に適切であれば)退院する患者は、完全な120時間の意図される治療を受けないことになる。治療終了時(EOT)評価は、最後の注入の終了後に実施される。最後の評価は、最後の注入の終了後の3時間以内(±1時間)に実施されるべきである。すべての患者は、治療終了時(EOT)評価を完成することが予測される(完全な120時間の意図される治療を受けなかった患者も含まれる)。
【0056】
安全性のために、患者が試験薬物治療を受けている間は、静脈血中アンモニア濃度およびPAA濃度がモニターされる。独立した非盲検医療監視員(independent unblinded medical monitor)は、PAAおよびアンモニア濃度データを継続的にレビューする。独立した非盲検医療監視員は、安全性モニタリング計画(Safety Monitoring Plans)に概説されたように、IDSMBと特別安全性審査会議を開催する必要がある治験依頼者に通知することがある。
【0057】
治療終了時(EOT)までに臨床応答を達成した、チャイルド・ピュー分類の分類AまたはBを有する最低216人の患者は、85%の検出力を達成するために一次分析を必要とし、したがって、チャイルド・ピュー分類の分類AまたはBを有する少なくとも360人(1群当たり180人)の患者の登録が、この試験には予期される。チャイルド・ピュー分類の分類Cを有する追加の40人までの患者も、この患者母集団における試験治療の安全性および有効性を探究するために登録される。この試験の合計試料サイズは400人と推定されるが、試験は、216の臨床事象がチャイルド・ピュー分類AおよびB母集団に観察されるまで、400人を超えて登録し続ける。
【0058】
最初の患者の最初の来診から最後の患者の最後の来診までの試験継続期間は、適格な患者を確認および登録する試験場所の能力によって左右される。試験全体は、最初の患者が無作為化される時間から完了するまでおよそ30~36か月間を必要とすると予測される。
【0059】
追跡期間。EOT評価が完了した後、患者は、この試験の30日間までの追跡(F/U)期間に入る。F/U期間は、安全性評価を含む。すべての患者は、2回のF/U来診のために試験場所に戻り、これは、14日目(±2日)および30日目(±2日)に行われる。
【0060】
最終EOI後に24時間以上にわたって依然として入院している患者では、適切であれば、追加の安全性および有効性評価を、最終EOIの24時間後および退院前の時点の2つの時点で実施する。
【0061】
患者は、合計でおよそ5週間まで試験に参加することができる。患者の試験参加は、最後の追跡評価が完了した後に完了したと考慮される。試験は、24時間までのスクリーニング/ベースライン/無作為化期間、5日治療期間(120時間またはEOTまで)、および30日追跡(F/U)期間を含む。
【0062】
QTcサブスタディに参加している患者は、QTcサブスタディの試験事象のスケジュール(表1)に特定された時点で三重に査定される、12誘導ECGトレースを有する。メインスタディおよびQTcサブスタディのECGを、デジタルECG記録装置で収集する。ECGが査定される場合、患者は最小限の手順活動で10分間仰臥位になっているべきである。ECGにスケジュールされた時点は、一般に血漿PKのものと同じである。そのような場合、ECGは、バイタルサイン測定、採血および食事の前に実施されるべきである。
【0063】
【0064】
中央ECG研究所は分析のために公称時点の1~2分以内にECGを三重に抽出する。投薬の実際の時間が中央ECG研究所に通信される。ペースラインおよび投薬後の心拍数、ならびにQT、RR、QRSおよびPR間隔を盲検様式で測定する。QTcは、手作業による過剰読取りQT値を使用し、Fridericia修正方法を使用して計算される。
【0065】
2つの投薬前時点(注入開始(SIO)の30分および15分前)のそれぞれにおいて、単一QTcF値は、個々の時点で得た三重ECG記録を平均することによって決定される。2つの投薬前時点のそれぞれにおける個々のQTcF値が平均され、結果は、ベースラインQTcFと考慮される。ベースラインQTcF値からの変化(ΔQTcF)は、このベースライン値を使用して査定される。
【0066】
ECG抽出の予め定義された投薬後時点のそれぞれにおいて、単一QTcF値は、個々の時点で得た三重記録を平均することによって決定される。それぞれの時点の個々のQTcF値をQTcF分析に使用する。QTcサブスタディで決定されるQTc変数を下記の表2に記載する。
【0067】
【0068】
米国特許出願第62/916,159号(その全体が参照により組み込まれる)に開示されている標準除外基準に加えて、以下の患者がQTサブスタディから除外される:1)スクリーニング時に≧500msのQTcFを有する患者;2)QT延長に関連するリスク因子(例えば、低カリウム血症、低マグネシウム血症、先天性QT延長症候群、本明細書に記載されているQT延長薬による同時療法)を有する患者;3)発生中のまたは新たなECGシグナルを伴うトロポニンI値の連続的上昇によって明白な疑わしい急性心筋梗塞を有する患者(注:スクリーニングトロポニンIの上昇を有する患者は、3時間ごとに収集した連続トロポニンIレベルを有するはずであり、ECGを実施して、心筋虚血を除外するべきである。連続トロポニンIレベルにおける持続的または上向きの上昇傾向、および発生中または新たなECGの変化は、心筋虚血を示すことがあり、心臓病専門医との相談が必要なこともある)。
【0069】
試験治療の開始後に、臨床的に有意な心臓知見(QTcFのベースラインからの変化が含まれるが、これに限定されない)が確認される場合、研究者または被指名専門家は、患者が試験を続けることができるか、および管理または投薬の変更が必要であるかを決定する。
【0070】
ECGの分析
経時的な心拍数、QTおよびQTcFを、治療群により各患者で列挙する。QTcF測定を、治療群および時点により要約する。時間プロファイルに対するQTcFのベースラインからの変化をプロットする。加えて、QTcF間隔についての以下の分類分析を、EOTおよび試験の終了時(EOS)で以下の基準(すなわち、臨床的に注目される異常値)のそれぞれを満たす患者の数およびパーセンテージとして、各治療群において表す。
【0071】
絶対QTcF間隔延長:
・男性のQTcF間隔>450ms。
・女性のQTcF間隔>480ms。
・QTcF間隔>500ms。
QTcFの投薬前ベースラインからの変化:
・ベースラインからのQTcF間隔の増加>30ms。
・ベースラインからのQTcF間隔の増加>60ms。
【0072】
心拍数、PR間隔およびQRS持続期間を含む他のECGパラメーターのベースラインからの変化も、ECG形態の新たな出現と同様に要約する。
【0073】
PR間隔およびQRS間隔の追加の分類分析は、各スケジュールECG時点で以下の基準をそれぞれ満たした患者の数およびパーセンテージを含む:
・QRS間隔>120msおよびベースラインからの25%の増加。
・PR間隔>200msおよびベースラインからの25%の増加。
【0074】
[実施例2]
この実施例では、無作為化二重盲検プラセボ対照国際試験を132箇所で行って、硬変、高アンモニア血症、および表Aに示されている肝性脳症ステージ分けツール(HEST)によりステージ≧2の顕性肝性脳症(OHE)で入院した患者において、オルニチンフェニルアセテート(OP)を評価した。ステージ2の肝性脳症での試験参加を認定するためには、5つの見張り(sentinel)質問で羽ばたき振戦および≧1の誤りの両方がスクリーニング時およびベースライン時で現れなければならなかった。試験薬物注入の開始後の肝性脳症応答を記録するため、羽ばたき振戦が解消し、5つの質問のすべてが正確に答えられた場合のみ、患者をステージ0/1に改善として分類した。
【0075】
適格な患者は、スクリーニング時(SOCのみ[例えば、ラクツロース]により12時間以内に応答した患者の登録を防ぐため、病院でHEの診断を受けた≧12時間後)、およびベースライン時(試験1日目および無作為化)に急性HEで入院した、硬変(証拠がある、または確立された)を有する18~75歳の男性または非妊娠女性であった。
【0076】
治療(注入の開始)を無作為化の≦1時間(±15分)後に始めた。HEを、注入開始の前、注入の際に毎日(午前7時および午後5時±1時間)、注入終了の3時間後、ならびに19日目(注入終了の2週間後)に、HESTスコア、グラスゴー昏睡スケール、および改変見当識ログ(MO-log)により査定した。医学的に適切であれば、患者は、連続注入の5日(120時間)前に退院することができた。残った患者では、HEパラメーターを注入終了の24時間後に再査定し、退院が追跡期間の最中に発生する場合には、退院の直前に再査定した。すべての患者は、試験薬物の休止後に2週間の追跡来診を有した。
【0077】
OPまたはプラセボ(5%デキストロース水溶液)の連続IV注入を、研究者の臨床判断および通常の医療施設診療に基づいて、SOC(例えば、2~3回の便通を達成するために、リファキシミンを伴ったまたは伴わないラクツロース)に加えて、≦5日間(別個の抹消静脈内カテーテルを介して500mL/24時間[20.8mL/時間])にわたって与えた。OPに割り当てた患者を、ベースラインチャイルド・ピュースコア(40、30、または20mg/mLのそれぞれが4~6、7~9、または10~12ポイントであり、各要素[腹水、総ビリルビン、アルブミン、および国際標準化比]が1~3ポイントの範囲であり、すべての患者がHEを有した)に従って、3つの投与量(10、15、または20g/d)のうちの1つに無作為化した。主な終点は、治療意図集団(intent-to-treat population)において肝性脳症ステージ分けツールを使用した、確証臨床応答までの時間であった。安全性の分析は、有害事象(AE)、検査評価、MELDスコアのベースラインからの変化、バイタルサイン、ならびにQTcF(Fridericia修正を伴うQT間隔)およびPR間隔を含む心電図変化を含んだ。
【0078】
安全性の終点を治療群および/または薬物投与量で評価した。フィッシャーの正確確率検定を、治療下で発現したAE(TEAE)の基本語(preferred term)、≧1TEAEを有する患者、治療下で発現したQTcF>30または60msec、QTcF>450または>500msecを有する患者、PR間隔のベースラインからの変化(PR間隔が>200msecである場合、>25%の増加)、QRS群(QRS群が>100msecである場合、>25%の増加)、および心電図心拍数(ベースラインから<50拍動/分への>25%の減少、またはベースラインから>100拍動/分への>25%の増加)の群間比較に使用した。
【0079】
プラセボに対して統計的に有意ではないが、僅かに高い割合の患者が、OP治療群においてプラセボに対して>60msecのQTcF増加を有した(それぞれ、11%対7%)ことが観察された。絶対QTcFの>500msecが、OPおよびプラセボを受けた患者それぞれの15%および8%に観察された。
【国際調査報告】